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1961-03-28 第38回国会 参議院 予算委員会第四分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十八日(火曜日)    午前十時三十六分開会    ――――――――――   委員の異動 本日委員大矢正君及び田中一君辞任に つき、その補欠として森元治郎君及び 米田勲君を予算委員長において指名し た。    ――――――――――  出席者は左の通り。    主査      東   隆君    副主査     横山 フク君    委員            大谷 贇雄君            梶原 茂嘉君            山本  杉君            占部 秀男君            米田  勲君            中尾 辰義君   国務大臣    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    自 治 大 臣 安井  謙君   政府委員    中央青少年問題    協議会事務局長 深見吉之助君    公安調査庁次長 関   之君    文部大臣官房長 天城  勲君    文部大臣官房会    計課長     安嶋  弥君    文部省初等中等    教育局長    内藤誉三郎君    文部省大学学術    局長      小林 行雄君    文部省社会教育    局長      斎藤  正君    文部省体育局長 杉江  清君    文部省調査局長 田中  彰君    文部省管理局長 福田  繁君    文化財保護委員    会事務局長   清水 康平君    自治大臣官房長 柴田  護君    自治大臣官房会    計課長     中西 陽一君    自治省行政局長 藤井 貞夫君    自治省選挙局長 松村 清之君    自治省財政局長 奥野 誠亮君    自治省税務局長 後藤田正晴君    消防庁長官   鈴木 琢二君   説明員    大蔵省主計局主    計官      佐々木達夫君    ――――――――――   本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)    ――――――――――
  2. 東隆

    主査東隆君) これより予算委員会第四分科会を開会いたします。  昭和三十六年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、文部省及び自治省所管を議題といたします。  まず、本件について政府より説明を願います。最初に自治省よりお願いをいたします。
  3. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 自治省関係昭和三十六年度歳入歳出予算につきまして、その概略を御説明申し上げます。  昭和三十六年度自治省所管一般会計予算は、歳入二千五百余万円、歳出三千六百十八億四千八百余万円であります。歳出予算では、前年度の第二次補正後の予算額三千三百六十九億九千八百余万円に対し、二百四十八億四千九百余万円の増額となっており、前年度の当初予算額二千九百十八億三千九百余万円に対し、七百億八百余万円の増額となっております。  自治省所管歳出予算に計上いたしましたものは、自治本省及び消防庁事務執行に必要な経費でありますが、以下そのおもなるものにつきまして御説明申し上げます。  第一に、交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れに必要な経費でありますが、この経費総額三千一五百六十六億一千百余万円で、前年度当初予算額二千八百六十五億一千六百余万円に比べて、七百億九千五百余万円の増額となっており、地方交付税交付金及び臨時地方特別交付金財源として交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れられるものの合算額であります。  まず、地方交付税交付金につきましては、地方交付税法に基づき、昭和三十六年度における所得税法人税及び酒税収入見込み額のそれぞれ百分の二十八・五に相当する額の合算額当該年度以前における交付税でまだ交付していない額を加算した額三千五百二十九億五千五百余万円を計上しておりますが、これは前年度の当初予算額二千八百三十五億三千百余万円に比べて、六百九十四億二千三百余万円増額しております。  次に、臨時地方特別交付金につきましては、臨時地方特別交付金に関する法律規定により、昭和三十六年度における所得税法人税及び酒税収入見込み額のそれぞれ百分の〇・三に相当する額三十六億五千六百余万円を計上しておりますが、これは前年度の当初予算額二十九億八千四百余万円に比べて、六億七千百余万円の増額となっております。  なお、昭和三十五年度予算については、第一次補正及び第二次補正において、交付税及び譲与税配付金特別会計繰り入れに必要な経費として四百五十一億四千九百余万円が追加されましたので、総額では三千三百十六億六千五百余万円となったのでありますが、昭和三十五年度分の地方交付税特例に関する法律により、このうち三百六億七千八百余万円は、今後特別の事情がなければ三十六年度に繰り越されることになっておりますので、三十五年度に実際に交付される額は三千百九億八千六百余万円であり、三十六年度交付される額は三千七百七十二億九千余万円となるので、三十六年度においては実質上前年度より六百六十三億三百余万円の増額となるのであります。  第二に、選挙の常時啓発に要する経費であります。この経費総額三億円でありまして、前年度の一億三千余万円に比べて、一億六千九百余万円の増額となっております。この経費は、選挙公明かつ適正に行なわれるよう選挙人政治意識向上をはかるために要する経費でありますが、昭和三十六年度におきましては、大幅に増額し、選挙公明化の推進を一段と強化する所存であります。  第三に、市町村経営改善に必要な経費でありますが、総額一億六百余万円であります。この経費は、市町村事務運営を刷新し行政効率を高めるために、モデル市町村を設定して事務処理合理化を推進し、市町村長等に対する研修を行なう等の措置により、現下緊要とされる市町村経営合理化促進し、もって住民福祉の増進をはかるために要するものであります。  第四に、地方開発関連調査に要する経費でありますが、総額一千余万円であります。この経費は、現在の大都市の人口及び産業の過度の集中を防止し、後進地域における開発繁栄促進し、もって地域内における所得格差の是正をはかるために、地方開発の拠点としての基幹的都市建設を推進するのに必要な基礎的調査実施することに必要なものであります。  第五に、新市町村建設促進費であります。この経費総額六千百余万円で、前年度の八億八百余万円に比べて、七億四千六百余万円の減額となっております。これは、前年度に七億二千九百余万円計上されておりました市町村に対する国庫補助金が不要になったためであります。新市町村建設事業費に対して数年来継続して実施して参りました国庫補助金交付は、三十五年度をもってその必要額を全部交付し終わりましたので、三十六年度においては、引き続き必要と認められます新市町村建設事業遂行に関する指導事務費のみを計上したのであります。  第六は、奄美群島復興事業費であります。この経費総額十四億一千四百余万円で、前年度の工三億五千九百余万円に比べて、五千四百余万円の増額となっております。この経費は、奄美群島復興計画に基づく昭和三十六年度分の事業実施するために必要な経費及びその運営に必要な人件費であります。奄美群島復興計画は、昭和二十九年度から三十八年度までの十年間に、国費百二十一億一千八百余万円をもって、同群島復興をはかるため、公共土木施設整備産業振興等総額百八十二億九千六百余万円の聖業を行なおうとするものでありまして、事業に着手して以来逐次その成果を上げて参りましたが、三十六年度においてもさらに事業量増加をはかり、計画遂行進捗を期そうとするものであります。なお、本予算実施により三十六年度末における事業進捗率は、国庫補助事業計画総額に対し約七七%に達する見込みであります。  第七は、奄美群島復興融資基金出資金に必要な経費であります。この経費総額は八千万円で、前年度同額を計上いたしております。この経費は、奄美群島復興特別措置法に基づいて、同群居における産業経済振興促進するため必要な金融円滑化をはかることを目的として設立せられております。奄美群島復興信用基金に対する追加出資に必要な経費であります。奄美群島復興信用基金は創設以来よくその目的達成のため努力を尽くして参っておりますが、疲弊した群島経済復興をはかるには、なお、その資金不足いたしておりますので、明年度においても本年度同額追加出資しようとするものであります。これにより、同基金に対する三十六年度末における政府出資総額は二億六千万円となります。  第八は、国有提供施設等所在市町村助成交付金であります。この経費総額十億円で、前年度同額を計上いたしております。この経費は、国有提供施設等所在市町村助成交付金に関する法律に基づき、国有財産のうち、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定実施に伴う国有財産管理に関する法律第二条の規定による国有提供施設等の所在する都及び市町村に対し、助成交付金交付するために要するものであります。  第九は、地方財政再建促進に必要な経費でありますが、総額四億九千三百余万円で、前年度の六億九千百余万円に比べて、一億九千八百余万円の減額となっております。この経費は、財政再建団体に対する再建指導及び財政再建団体の起こしました財政再建債に対する利子補給を行なうために必要な経費でありますが、財政再建が軌道に乗り、財政再建債が逐次償還されて参りますのに伴い、その利子補給金が三十六年度には四億六千七百余万円に減少するので、前年度に比べて減額となっているのであります。  第十は、公共土木施設及び農地等の小災害地方債元利補給に必要な経費であります。この経費総額三億七千五百余万円で、前年度の一億九千余万円に比べて、一億八千五百余万円の増額となっております。この経費は、昭和三十三年七月、八月及び九月の風水害により被害を受けた地方公共団体起債特例等に関する法律、及び、昭和三十四年七月及び八月の水害又は同年八月及び九月の風水害を受けた地方公共団体起債特例等に関する法律に基づき、公共土木施設及び農地等の小災害にかかる地方債に対する昭和三十六年度分の元利償還金相当額当該地方公共団体交付するために要するものであります。  第十一は、固定資産税特例債元利補給に必要な経費であります。この経費総額二億一千七百余万円で、前年度の三千百余万円に比べて、一億八千五百余万円の増額となっております。この経費は、地方財政法附則第三十三条の規定により、国が引き受けた固定資産税制限税率の引き下げに伴う減収補てんにかかる地方債に対する昭和三十六年度分の元利相当額関係市町村交付するために要するものであります。  以上のほか、町名地番整理促進費として三百三拾余万円を計上しております。これはわが国における町名地番の混乱の現状国民生活上も行政上もきわめて不利不便を招いていることにかんがみ、三十五年度に若干の都市町名地番整理方法について実験を行なったのでありますが、三十六年度においても引き続き実験を継続するかたわら、総理府に審議会を設置し、住居地表示方法根本的検討を行なうために要する経費であります。  また、固定資産税評価制度の改正及び公営企業指導態勢強化等に対処するため定員を十九名増加いたしております。  なお、予算計上所管は異なっておりますが、当省の事務関係のある予算といたしまして、公営企業金融公庫に対してその経営基礎充実するために必要な政府出資金増額するための経費三億円が別途大蔵省所管産業投資特別会計に計上されております。これより、昭和三十二年度以来の公営企業金融公庫に対する政府出資金は、二十一億円になります。  以上が自治本省関係一般会計予算概要でありますが、次に特別会計予算概要を御説明申し上げます。  自治本省関係特別会計といたしましては、大蔵省及び自治省所管交付税及び譲与税配付金特別会計だけでありますが、本会計歳入は三千九百九十八億四千二百余万円、歳出は三千九百九十億一千八百余万円になっておりまして、歳入は、一般会計から地方交付税交付金及び臨時地方特別交付金財源として受け入れる収入と、入場税法地方道路税法及び特別とん税法規定に基づき徴収する租税収入と、交付税及び譲与税配付金特別会計法規定により、前年度の決算上の剰余金見込み額を本年度において受け入れる収入その他であります。歳出は、地方交付税法臨時特別地方交付金に関する法律入場譲与税法地方道路譲与税法及び特別とん譲与税法規定により、おのおの定められた地方公共団体に対して交付または譲与するために必要な経費その他となっております。  次に、消防庁予算概要を御説明申し上げます。第一に、消防施設整備費補助に必要な経費でありますが、総額六億八千万円で、前年度の六億五千万円に比して、三千万円の増額となっております。この経費は、消防施設強化促進法に基づき市町村消防施設費及び都道府県の消防学校設置費に対して、補助するために要するものでありまして、三十六年度におきましては、消防ポンプに対する補助増額を主として、消防力近代化を一そう促進する所存であります。第二に、退職消防団員報償に必要な経費であります。この経費総額七千万円でありまして、三十六年度に初めて計上された経費であります。御承知のように、消防団員はほとんど無報酬で災害時の危険な活動に従事している実情にありますので、多年勤続して退職する消防団員に対しまして、国としてその苦労を謝するため、この経費をもって報償を行ないたいと考えております。その他消防団員等公務災害補償責任共済基金補償費及び事務費に対する補助金として二千二百余万円及び日本消防協会に対して火災予防宣伝事業を委託するために要する経費として一千五百万円を計上いたしております。  以上をもちまして、昭和三十六年度自治省関係一般会計予算及び特別会計予算説明を終わります。何とぞよろしく御審議のほどをお願い申し上げます。    ――――――――――
  4. 東隆

    主査東隆君) 分科担当委員に変更がございましたから、御報告をいたします。  本日田中一君が辞任せられ、その補欠として米田勲君が選任せられました。    ――――――――――
  5. 東隆

    主査東隆君) それでは、これより文部省より説明をお願いいたします。
  6. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 昭和三十六年度文部省所管予算案の大要について御説明申し上げます。  昭和三十六年度文部省所管予算額は二千四百十六億千九百九万五千円でありまして、これを前年度予算額二千百四十一億四十二万三千円に比較いたしますと、二百七十五億千八百六十八万二千円の増加となっております。また、この文部省所管予算額一般会計予算額に占める比率は一二%強となっております。  次に、昭和三十六年度予算案のうち重要な事項について申し述べたいと存じます。  第一は、初等中等教育改善充実に必要な経費であります。  義務教育水準維持向上をはかるため、前年度に引き続き、公立義務教育学校教職員定数増加及び施設整備、特に中学校生徒の急増に対処するため必要な経費を計上しております。まず、義務教育費国庫負担金といたしましては、小中学校児童生徒数自然増減等に伴う教職員九千百六十六人の増員、人事院勧告による給与改訂の平年度化、恩給及び退職手当の増、校長管理職手当支給率引き上げ等に必要な経費を含めまして、所要給与費千三百二十五億三千五百万円を、また教材費として十七億八千九百万円を計上したのであります。  次に公立文教施設につきましては、これが整備に必要な経費百一億七千一五百七十七万二千円を計上したのであります。すなわち、本年度においては中学校の不正常授業の解消を目途とした施設整備を最重点として四十四億二千六十八万七千円を、さらに工業高等学校一般校舎整備費を新たに補助対象として一億九千二百九十七万六千円を計上いたしましたほか、屋内運動場整備学校統合促進危険校舎改築等を既定五ヵ年計画の線に沿い実施することとしたのであります。  第二は、科学技術教育振興に必要な経費であります。  まず初等中等教育におきましては、理科教育及び産業教育振興重点を置き、それぞれの振興法に基づく補助金を八億五千五万二千円及び十七億七千二百六十九万五千円と大幡に増額計上したのであります。特に、産業教育につきましては、中堅技術者不足に対処するため、前年度に引き続き、高等学校機械課程二十三、電気課程二十三、工業化学課程二十一、建築課程九、土木課程九、合計八十五課程新設し、生徒一万人の増募をはかるとともに、新設課程については補助率を従来の三分の一から二分の一に引き上げたほか、設備更新費特別設備費等をそれぞれ増額し、また中学校技術家庭科設備につきましては、本年度以降二カ年度整備を完了する目標のもとに所要経費の大幅な増額をはかったのであります。  次に大学教育につきましては、国立学校において、大阪大学基礎工学部新設、三工業短期大学新設理工系二十六学科新設、十九学科拡充改組等により、千七百九十人の学生増募を行ない専用技術者養成をはかったほか、工業教員不足に対処するため全国九つ国立大学工業教員養成所を設置することといたしました。さらに、科学研究の面におきましては、原子力研究を拡充するとともに、プラズマ研究所及び原爆放射能医学研究所新設する等の措置を講じ、また、科学研究費交付金等に必要な経費二十一億九千四百万円を、在外研究員の派遣に必要な経費一億九千百万円を、また民間学術研究団体補助金一億三千百十一万七千円を、さらに前年度に引き続き南極地域観測事業実施するために要する経費二億二千八百四十八万二千円をそれぞれ計上したのであります。  第三は、国立学校運営に必要な経費であります。これは、国立大学七十二、国立短期大学二、国立高等学校八、大学付置研究所五十八、大学付属病院二十三を維持運営するため必要な経費でありまして、本年度におきましては、さきに申し述べましたように、科学技術教育振興の線に沿いまして、北海道大学ほか六大学原子力に関する講座または部門を増設し、東北大学薬学研究科を、九州大学ほか四大学工学研究科にそれぞれ修士課程または博士課程を、大阪大学基礎工学部を、東北大学ほか二十三大学に二十六の理工系学科新設し、また宇都宮、長岡及び宇部に工業短期大学をそれぞれ創設するとともに、東京工業大学ほか八大学工業教員養成所を付置し、プラズマ研究所を名古屋大学に、原爆放射能医学研究所を広島大学にそれぞれ創設することといたしたのであります。また、教官研究費教官研究旅費設備費等については大幅な予算増額を行ない、基準経費充実をはかったのであります。  以上申し述べました経費を含め、国立学校運営に必要な経費総額は六百四十六億二千四百五十四万円でありまして、国立学校の項に四百六十二億千三百五十万八千円を、大学付属病院の項に百二十九億二百九十四万八千円を、大学付置研究所の項に五十五億八百八万四千円をそれぞれ計上したのであります。  次に、国立文教施設整備につきましては、施設現状にかんがみ予算の大幅の増額をはかることといたしましたが、科学技術教育振興の見地から理工系学部建物等重点的に整備するとともに、一般施設整備病院施設整備老朽建物改築等のため、前年度予算額の六五%増の七十一億六千六百七十九万三千円を増額計上したのであります。  第四は、教育機会均等人材開発に必要な経費であります。  優秀な学徒で経済的に困窮している者に対して国がこれを援助し、その向学の志を全うさせることは、きわめて重要なことであります。このため、日本育英会に対する奨学資金の貸付と、その事務費補助に必要な経費として五十三億九千七十五万七千円を計上したのでありますが、本年度特別奨学生を大幅に増員し、高等学校生徒新規採用を六千人から二万三千人に倍増し、大学生にも新たに八千人の採用者を予定したほか、大学院学生に対する奨学金の単価の引き上げ等を行なったのであります。  次に、義務教育の円滑な実施をはかるためには、経済的理由により就学困難な状況にある児童生徒に対して特別の援助を行なう必要があるのでありますが、これが援助の範囲を従来の要保護二・五%を三%に、準要保護二%を四%にそれぞれ引き上げることとし、教科書については二億五千三百九十六万四千円、給食費については五億六千九百五十万九千円、修学旅行費については一億八千五十三万三千円、保健医療費については一億九千四百五十九万二千円を計上したほか、本年度より新たに学用品について五億三千四百四十六万九千円を、通学費について六百三十二万七千円を、同様の趣旨によりそれぞれ補助することといたしたのであります。  次に、僻地教育充実をはかるため、従来に引き続き僻地教員宿舎建築費四百戸分、テレビ受像機設置費四百校分、その他火力発電施設スクールバス、ボートに対する補助等を含めまして、九千七百五十六万九千円を計上したのであります。  次に、盲、ろう学校及び養護学校への就学奨励については、援助率を従来の六〇%から七〇%に引き上げるとともに、本年度より新たに小中学部学用品費及び高等部寄宿舎食費援助対象とする等のため必要な経費を加えて二億三千二百四十七万三千円を、さらに、養護学校設備及び特殊学級計画設置に伴う設備整備費並びにスクールバス購入費に対する補助を合わせまして六千四百五十四万円を、また、新たに盲学校五、ろう学校三を対象とし、新職業開拓のための施設設備補助金として五百八十五万六千円を計上する等、特殊教育振興にさらに意を用いたのであります。  次に、中学校生徒一斉学力テストに要する経費として、九千五百十九万八千円を新規に計上いたしておりますが、これは、学力水準を全国的に調査し、教育に対する反省と改善資料を得、また教育指導に関する客観的資料を得ることを目的としておるのであります。  第五は、勤労青少年教育及び社会教育振興に必要な経費であります。  勤労青少年教育振興は、学校教育社会教育の両面において両者相待って行なわなければなりませんが、学校教育の面におきましては、従来に引き続き放送利用による高等学校通信教育の普及のための経費として千七百五十一万千円、定時制高等学校設備費及び通信教育運営費補助として一億二千三百十万七千円、定時制教育または通信教育に従事する校長教員に対する定時制及び通信教育手当補助として一億九千九百五十四万九千円、夜間定時制高等学校給食施設設備補助として六百六万五千円をそれぞれ計上したほか、新たに夜間定時制高等学校生徒三十三万七千五百人に対して、ミルクを給与するための補助金として七千五百十三万八千円を計上いたしたのであります。  次に、社会教育の面におきましては、前年度に引き続き青年学級改善充実をはかるため一億二千八十九万二千円、婦人学級の開設、婦人国外研究活動等を助成するため八千六百三十四万九千円、青少年団体及び婦人団体その他の社会教育関係団体の行なう事業を助成するため六千万円、さらに、公民館、図書館、博物館、背年の家及び児童文化センター等社会教育施設設備整備するため一億六千八百九十八万八千円、教育放送等視聴覚教育の積極的な活動を助成するため七千八百二万千円をそれぞれ計上いたしたのでありますが、青年学級振興及び公民館等社会教育施設整備を特に重点として予算増額をはかったのであります。  第六は、体育振興に必要な経費であります。  体育は、国民の健康を維持増進し、その生活を明るくする上に重要な意義を持つものでありますが、前年度に引き続き、体育館十七カ所、プール四十三カ所の国民体育施設整備するため一億二千六百十四万円、オリンピック東京大会実施準備費として国立競技場の拡充、オリンピック組織委員会の機構拡充、競技技術の向上等に要する経費を含めまして二億七千八百三万七千円、国際学生スポーツ週間競技大会選手派遣費、日仏学生柔道交歓等の国際スポーツ交歓費として六百万円、さらに青少年のスポーツ・リクレーション活動、指定市町村青少年スポーツ活動、全国青年大会、全国高等学校体育大会、国際庭球試合参加等の助成費として五千八百万円をそれぞれ計上したのであります。  第七は、私立学校教育振興助成に必要な経費であります。  私立学校教育の重要性については、あらためて申すまでもないところでありますが、まず、私立学校施設等の整備に要する資金に充てるため、私立学校振興会に対する政府出資金として八億円を計上し、また私立学校における科学技術教育を拡充振興するため私立大学理科特別助成として十億九百四十八万三千円、私立大学研究設備助成として五億五千二百八十八万千円を、さらに私立学校教職員の福祉増進のため私立学校教職員共済組合に対しその給付費及び事務費の一部を補助するに必要な経費九千六十一万円を、それぞれ増額計上し、また新たに私立特殊教育学校に対する補助として、三百二十万円を計上したのであります。  第八は、国際文化の交流及び文化財保存事業に必要な経費であります。  まず、沖繩の教育につきましては、従来からの教員の内地派遣研究制度の実施及び国費沖繩留学生の招致のほか、新たに現職教員の再教育講習会に対する講師の派遣、沖繩在住高等学校生徒の特別奨学制度実施のための資金援助等を行なうこととし、これらのために必要な経費五千八百七十一万七千円、また、国際文化の交流につきましては、東南アジア、中近東、欧米等よりの外国人留学生の招致に要する経費として七千八百八十六万六千円を計上しましたほか、外国人留学生の受け入れ等の事業を行なっている財団法人日本国教育協会の事業費の補助として千八百十八万五千円、また、第六回ユネスコ執行委員会、その他の国際会議に出席するための外国旅費として千七十万七千円をそれぞれ計上したのであります。  次に、文化財保存事業は逐年その成果を上げておりますが、本年度も前年度に引き続き国宝、重要文化財等の保存修理、防災施設整備を行ない、さらに、無形文化財を保護する等のため必要な経費を含めて五億四千九百四十四万八千円を計上しました。また、国立劇場の設立準備のため二千二百万円を前年度に引き続き計上し、その事業促進を期し、さらに、国宝重要文化財等の買い上げに必要な経費増額して五千万円を計上したのであります。  以上のほか、公立高等学校普通課程における家庭科設備費の補助教職員の研修、研究の場としての教育会館の建設、東アジア文化研究促進及び研究成果の普及をはかるため、ユネスコ束アジア文化研究センターを財団法人東洋文庫に付置すること、また、東京国立博物館の法隆寺献納御物収蔵庫新営、近代美術館の増築、史料館の民族資料収蔵庫新営等のため必要な予算を計上しているのであります。  以上文部省所管に属する昭和三十六年度予算案の大要につきまして御説明申し上げた次第であります。何とぞ御審議の上、御賛同あらんことを希望いたします。
  7. 東隆

    主査東隆君) それでは、これから質疑に入りますが、ただいま政府側から出席されておりますのは、自治省関係安井自治大臣、柴田自治大臣官房長、中西自治大臣官房会課長文部省関係は荒木文部大臣、天城文部大臣官房長、内藤文部省初等中等教育局長、小林大学学術局長、斎藤社会教育局長、杉江体育局長田中調査局長、福田管理局長、清水文化財保護委員会事務局長、深見中央青少年問題協議会事務局長、安嶋文部大臣官房会課長、以上の方が出席をされております。  ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  8. 東隆

    主査東隆君) 速記を起こして下さい。  それでは、これより質疑に入ります。最初に通告のありました米田勲君にお願いいたします。
  9. 米田勲

    米田勲君 それでは、最初に、予算案の内容に入る前に、一般的な教育行政の面について若干質問をしたあと、予算に入りたいと思います。  最初に、教育基本法は、日本国憲法の精神にのっとり、教育目的を明示して、日本の教育の基本を確立したものであります。そして法律に定める学校教職員は、ここに明示された教育目的を達成するために、教育の現場における多くの困難を克服して、職責遂行のためにたゆみなく教育活動が続けられておるわけであります。教育基本法の第十条に示されているように、文部大臣は、これらの教職員教育活動教育目的遂行するのに必要な諸条件をよりよく整備確立するため、教育行政に全力を尽くす責任を負うていると私は考えておるのであります。そこで、大臣にお伺いしたいことは、日本の教育の中における教育行政、文部大臣の教育行政権の範囲、教育行政権の限界とその任務をどういうように把握せられておられるかということをお聞きしたいのであります。それは、荒木文部大臣の最近における言動の中に、教育行政権の限界を逸脱しているような言動がたびたび見られますので、この際特にこのことについて明らかにいたしたいと考えて御質問をいたす次第であります。
  10. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。まあ一言にして申し上げれば、教育関係して定められておる憲法、教育基本法以下の法律制度に定められた職責をいたすべきだと、こう考えておる次第であります。
  11. 米田勲

    米田勲君 私は、文部大臣の任務、行政権の権限の範囲というものは、あくまでも教育現場における教育活動の内容に立ち入ってはならないというふうに考えておるわけです。教職員教育活動が十分にその効果を上げ得るような諸条件を、あなたの教育行政権を通じて整備していくという限界を守って、文部大臣に教育行政の責任を果たしていくべきだと思うのであるが、あなたは間々全国の各地を歩いて、教育現場の教育活動そのものに対して種々立ち入って意見を述べている。これはどうも私は教育行政権の範囲を逸脱しているのではないかというふうに考えますが、大臣のあらためての御見解をお伺いいたします。
  12. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 私は先刻も申し上げたような心がまえで今日まで参っておるつもりでございまして、法律制度に違反し、もしくは逸脱して、教育の現場に不当な関与をするという意思もなければ、そういうことを言ったこと、したこと、覚えはございません。
  13. 米田勲

    米田勲君 相当時間が制限されておりますので、その詳細なことについてはなお文教委員会の方ですることにして、きょうは割愛をします。  それでは次に、最近、政治、経済、教育などの各分野にわたって日本国憲法がとみに軽視される風潮が見られる。はなはだしきに至っては、憲法九十九条に定める憲法を尊重し擁護する義務を負うている者の中にすら、日本国憲法を軽視する傾向を助長をしたり、憲法をじゅうりんするがごとき言動が見られると私は思うのであります。そこで、文教行政の責任者である荒木文相は、こういう傾向をどのように脅えておられるのかということと、さらにもう一つは、あなたの職責上、憲法を擁護し、憲法を尊重する精神を養っていくために、教育行政上今日まで特に具体的にはどのような努力をしたか。さらに、今後この憲法の精神を尊重する、憲法を擁護するということについて、教育行政権の範囲内に限られるとは思いますが、あなたはどういうことを具体的に考えておられるかということをお尋ねいたします。
  14. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 憲法軽視の風潮があるという仰せでございますが、一般的にはそういうことはないと思います。日本人である限り、憲法を守っていくのが当然。ただ遺憾なことは、日教組の言動等にむしろ憲法を軽視し、無視するがごときことが一再ならず起こったことを、私は国民とともにはなはだ遺憾に思っている次第でございます。  憲法を守るためにどういう具体的のことをしてきたかという仰せでございますが、これはすべてが憲法の範囲内において規律せられ、行動すべき制約を受け、責任を持っておることでございますから、一々申し上げることはないように思います。あくまでも今の憲法を忠実に守り、ことに憲法の要請しておる法治主義は徹底的に貫くべきだということが特に重大なように思っておる次第でございます。
  15. 米田勲

    米田勲君 この問題について再度お尋ねをいたしますが、あなた、ことさらに日教組の問題だけを今取り上げて言われておりますが、どうもあなたの最近の言動の中に、憲法や教育基本法は敗戦後の異常な国情のもとに占領軍のはなはだしい拘束を受けてできた占領政策の申し子のようなものである、これは日本の国の憲法や基本法としてはふさわしくない、ということを発言をしておるわけです。私は、一国会議員であり、一国民であれば、憲法に対しても、基本法に対しても自由に発電することはよろしいと思います。批判することは。しかし、少なくも今日教育行政の責任ある国務大臣の位置につき、文部大臣の位置についている者が、日本の教育の基本をなしておる憲法あるいは教育基本法を占領軍の申し子のようなものであるとか、(「その通り」と呼ぶ者あり)黙っていなさい。まじめに聞いているのだ。(「こちらもまじめだ」と呼ぶ者あり)やじはやめて下さいよ。あなただって自分がやるときには気分が悪いでしょう。  そういう占領政策の申し子であるといったような言い方は、少なくも、憲法を尊重したり教育基本法を尊重したりする精神を養うよりも、むしろ軽視をするという考え方を植えつけるのに役立つと思うが、一体あなたの今日の立場としてそういうものの言い方をし、そういう批判の仕方が自由に行なわれて差しつかえないのであるという認識でやっているのかどうか、その点をお伺いいたします。
  16. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 結論から先に申し上げれば、当然のことであると思っております。憲法について再検討されつつあることは、私が申し上げるまでもなく御承知のところでありまして、国権の最高機関たる国会の審議を経て定まった憲法調査会法に基づいて再検討が現に行なわれつつある。国民何人といえども現在の憲法を軽視するなどという者は原則としていないわけでありますが、そういう憲法を尊重すると思えば思うほど、この成立過程等にも思いをはせつつ、もっといいものにしたいという願い、これは当然の国民の権利であり、また政府であろうと、あるいは国会であろうと、あるいは裁判所であろうと、そういう立法的な輪講をすることは私は自由であり、むしろ望ましいことと思います。むしろ憲法を尊重する、尊重すると言いながら、尊重しない風潮のあることが大いに戎心を必要とすることと思います。  教育基本法については、毎度私は申し上げておりますが、教育基本法が制定されましたときの環境、占領直後であったということ、思うことが言えなかったという状態のもとに案画せられ、国会の審議すらもが自由の意思の表明は許されなかった。意思の表明を結論づけるための法案等の修正等はすべてアプルーバルをもらわなければできなかったということに思いを返しまして、そのことから、スタートとしてもっといい教育基本法を作れないものかという角度から再検討すべき課題だと申しておるのであります。こういう発言は、私は今の憲法制度からいきますれば、国会において法案の提案等の権限が与えられていると同時に、政府側も、立法論をたたかわしながら、案を作って国会に御審議をお願いするという職責も持っているわけでございますから、そういう職責からいたしましても、常に教育基本法はもちろんのこと、学校教育法その他もろもろの教育に関する法律制度につきましては、よりよき方向へ、よりよき方向への意欲を持って検討することは当然の職責と心得ております。
  17. 米田勲

    米田勲君 大臣のものの言い方は、一応人を納得させるように考えられるが、大事なところが抜けている。あなたは、国会の中で、憲法の調査会が設けられて、鋭意検討が続けられている、だから自分もそれに対して国務大臣として批判をしたり、意見を述べたりすることはかえっていいことであるというふうに考えている。しかし、あなたが考えなければならないことは、あなたは日本の教育行政の当面責任者としての今職責にある、単なる国会議員ではない。しかも、あなたはすぐ法律を尊重するとか、憲法を尊重するとかいうことを口にする。そんなことは当然のことだ。しかし、今行なわれている日本の教育は何を基本にして行なわれているのか。それは日本の憲法であり、日本の法律として定まっている教育基本法なのである。それなしに今の日本の教育が行なわれるとあなたはお考えかどうか。そういう基本の憲法や基本法がなしにして、今の日本の教育が行なわれているとあなたは考えているのかどうか。まさかそういうばかなことを考えているはずはない。日本の学校教育に努力をしている教職員は、すべてそういう立場に根拠及び足場を置いて努力している。その足場及び根拠にしているところの憲法や教育基本法に対して、文部大臣の職責にある者が、こんなものはわれわれの自由な意思が反映したものではない、ろくに国会においても意見を述べられなかった憲法や基本法なんだ、そんなものは占領政策の申し子であるというものの言い方は、だれが考えても、教育基本法や憲法を尊重している、こういうようには受け取れない。あなたがあえてそれを言うのは強弁というものだ。  私は、少なくも政府であるあなた方が、その改正を決意し、国会に対して改正の発議を出した、そういう段階においては大いに論じてけっこうでしょう。しかし、あなた方はまだ、憲法も教育基本法も、これを改正するという決意を閣議に出しておらない。国会にもそういうものは提案しておらない、そうして、そのものは、先ほども言うように、日本の教育を進めていくよりどころになっている大切なものなんだ、それに対して自由にものを言ったり、批判することは、何ら差しつかえないという考え方は、どこか大きく間違ってはいないだろうか、あなたのものの考え方が。私はそう思う。あなたの見解を再度お聞きしたい。
  18. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 遺憾ながら、米田さんとその見解が私は違うのでありまして、憲法や教育基本法、学校教育法、ことごとくの国会で定められた国民の意思といえども、その定められたものを改めるまでは、現にあるものを忠実に守っていくということは当然のことだと思います。さりとて、現在ある法律制度、憲法といえども同断と思いますが、成立過程、内容等を考えて、こうもしたらよくなりはせぬかという考え方を持つことは自由であり、好ましいことであると思います。それは何も憲法そのものを否定したり、軽視したりということでなしに、憲法というものは、教育基本法というものは、大事な国の基本を定めるものだから、あくまでもこれは忠実に守っていかなければならない。しかし、同じ守るにしても、もっといいものになす方法はないだろうか、問題はないだろうかということを考えることは、とりもなおさず、私は憲法なり教育基本法等の法律制度を尊重するがゆえに出てくるのであって、むしろ私はさっきも申し上げましたように、口先だけで憲法と法律を尊重するのだという人々が、現実には今の憲法、今の法律制度を踏みにじっていてはばからないという風潮があることが、むしろ国民的には大へんなことではなかろうかということをおそれるのでありまして、一言もこれには触れてはならないということが今の新憲法の趣旨ではない。常に国民とともに前向きによりよい方向への努力をすることこそが、国民すべての責任であり、また政府であろうと国会であろうと、ともにそういう責任を持っておると私は思うのであります。
  19. 米田勲

    米田勲君 あなたの言うことは詭弁ですよ。前向きにとか何とかというようなことを言っておるが、あなたが憲法や基本法に対して触れる場合には、決して前向きではない。それをこきおろしている。そういうことで日本の教育行政の基本をなしておる大切なものを批判して歩くことは、文部大臣の自由に許されることではない。この見解はしつこくあなたとやっておっても、あなたの性格をよく私は承知しておりますから、これ以上論議は発展させないことにして、次に進みます。  次に、あなたにお伺いしたいことは、現在日本の教育義務教育といわれるものは小学校中学校の九年であります。そこで私は考えるのに、あなた方もよくふだん言っておりますが、文化国家とかあるいは福祉国家の建設といったようなことを目ざしておるというお話でありますが、そういうことに思いをいたすときに、国民全体の教育の水準を引き上げるということは、これは日本の教育行政を担当しておる者の常に考えなければならないことではないかというふうに思うのです。そこで、私は結論的にお聞きしたいことは、今の義務教育の小中学校教育と前後して、御承知のように、学校教育法にいう幼稚園教育それから高等学校教育というものがあるわけです。この幼稚園、高校の教育を文部大臣は現在教育行政上どういう位置に把握をしておられるか、将来この幼稚園教育、高校教育というものと義務教育との関係をどういうように発展をさせようとしておるか、関連をつけて発展をさせようとしておるかという点について、一つ御見解をお伺いしたいわけです。
  20. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答えを申し上げますが、具体的な結論づけた考え方は今私の念頭にございません。ただしかし、幼稚園教育というものが義務教育につながる幼児教育と申しますか、なるべくつながりやすくしていくという考え方で努力が注がれなければならない。また、高等学校にしましても、普通高校に関する限りは特にそうだと思いますが、義務教育課程を終わって、家庭の事情の許す者が高等学校に入って、さらに義務教育課程を高度なものに育て上げてもらって社会人となるという性質のものである限りにおいては、義務教育とのこれまたつながりを念頭に置きながら両校教育の成果が上がるように持っていくべきだ、そういうふうに思うのでありますが、いきなり、これを義務教育年限を延長するとかいうふうな意味合いにおいての、具体的結論づけの気持で一つの考えを持っておるというものは持ち合わせがない。最初申し上げたことを繰り返しますが、私はそういうふうに考えておる次第であります。
  21. 米田勲

    米田勲君 はっきりお考えが聞き取れないわけですが、幼稚園の教育の問題について私はこう考えるわけです。幼稚園教育というのは、義務教育の前に行なわれる幼児教育なんですが、現在の教育学説あるいは教育の実際がその定説になっているのは、義務教育である小学校教育をより効果あるものにし、また各人の持っている個性や能力を十分に伸ばすということをねらうのなら、当然小学校に入学する以前の幼稚園教育というものを重視しなければならぬ、こういうふうにいわれておるわけです。ところが、あなたによくお考えを願いたいことは、あなたは幼稚園教育を重視しますということはちょっと口はばったくて言えないような立場じゃないかというふうに私は思うのです。なぜかといいますと、現在の幼稚園教育に対して、国はほとんど――ほとんどと言っていいが、教育財政上の援助に努力をはかっておらない。払っておらない。三十六年度予算案で見ましても、非義務制諸学校の中の幼稚園の建物が一千万円計上されております。それだけであります。二兆円に近い予算の中で、幼稚園教育を考えてくれたと思うのはこの一千万円。これでは私は、いかに幼稚園教育を文部大臣が大切だと説いても、それはから念仏ではないかと思うのです。現在の幼稚園教育は、大臣は御承知かどうかわかりませんが、あげてこれは民間あるいは市町村のそれにまかされてしまっておるわけです。ところが、そのために実際幼稚園の実態はどうかというと、その施設、大谷さんもよく知っている通り、設備きわめて貧弱であります。また幼稚園の教職員、その身分はきわめて不安定だということは、これは事実をたくさんあげることができるわけです。しかも、待遇給与に至っては全く劣悪であります。同じ義務教育の小中学校教職員と同じ学歴同じ資格を持っておる人が、この幼稚園の先生になると、それと比べて非常に悪い条件の給与の中で活動をしているわけであります。こういうようないろいろな悪条件を解決するのでなければ、将来の幼稚園教育の発展というか、その持つ任務を十分に果たしていくことはできないと私は思うわけです。この点について文部大臣の見解を特にお聞きしたいわけです。  また、国民教育水準の向上のために、特に私は努力をして、幼稚園教育に対し財政的な援助あるいは補助を一ぺんに行なうことができなくても、漸次拡大をしていって、そうして年次計画をもって漸次拡大をしていく。これはもちろん国の援助によって、財政的な援助によってそれを計画する。そのことによって園児をできるだけたくさん収容するようにしていって、やがて九五%内外の園児を収容できるところまで前進をする段階が来たならば、これを小学校と同様に義務制に切りかえて、日本の教育の水準をさらに引き上げるというふうに努力をすべきでないか。それには年次計画が必要で、一気にそこへいけないから、年次計画を立ててその努力をすべきだ。その年次計画には、当然国が財政的に補助をしていくということをだんだん前進させるということなしには、今の市町村の財政実態、民間企業になっておる幼稚園の実態からいって、とうていそれは望めないので、特にそういう考え方に立つべきだと思うのですが、文部大臣のこのことについての見解をお伺いしたいわけです。
  22. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) ただいまのお話に対しましては、まあ気持としては同感でございます。しからばどういう内容でどういう見通しを持っていくかということは、まだ申し上げ切れませんけれども、今あなたが言われたお気持は私も同感でございます。
  23. 米田勲

    米田勲君 ぜひこのことについては、今年度予算では間に合っておりませんから、そういう同感であるなら、鋭意文部省の中で検討してもらって、少なくも来年はそれの芽が出るように、文部大臣の特段の一つ努力をここで要請しておきます。  次いで、高等学校教育の問題でありますが、御承知のように、従来とも高等学校の進学の希望者に対して入学を許可される者の割合は非常に低く、いわば高校の門というのは非常に狭いのであります。そのために、せっかく向学心に燃える少年が、高校入学を目ざしてもはいれないというのが全国各地に見られている状況です。これは大都市においては比較的緩和されてきておりますが、地方に参りますと依然としてそういう状況であります。ところが、大臣も御承知のように、昭和三十七年度以降年々中学校の卒業生が激増をいたしますとなると、当然高校の進学希望者が急増をしてくるということが考えられるわけであります。現在ですら高校の進学の門はきわめて狭く、社会問題すら起こっている事実もあるのに、近い将来ぐんぐんふえていく高校進学希望者の実情に対して、あなたが出された三十六年度予算案では、非義務制諸学校の高校建物に二億六千万円、そのうちに工業高校の建物に一億九千万円ですから、普通高校にはわずか七千万円という勘定になります。これでは高校の進学希望者が激増をしていくのに対応していくことができないのじゃないか、こういうふうにまず私は考えるのです。これに対応するためには、大いに高等学校新設するとか、現在の高等学校の学級を増加させて増築をしていくとかいうようにしなければならないのでありますが、あなたの今の予算の組み方では、ほとんど地方公共団体の自主財源でそんなことはやりなさい、それはあなた方の責任だよという態度であります。  私は、国の文教政策を考えた場合に、今の市町村自治体の、あるいは都道府県の自治体の財政現状から見て、この高校進学希望者が激増をしていくのに対応できるような、父母、大衆の願いにこたえられるような、高校の新設あるいは学級の増加による増築等の問題は消化し切れない。それを消化させるとすれば、思い切った国のこれに対する財源支出が必要であるというふうに考えられるわけです。私の考えは、高校の進学を希望する者は近い将来において全員入学できるような条件をこの日本において確立することが大事だというふうに考える立場を持っておりますので、特に今回の予算に表われたこの高校の志望者の急増に対すの対策が何ゆえにこんな貧弱なものになったのか、それを一つお聞かせ願いたいわけです。
  24. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。まず第一に、高校進学希望者にとっては高校の門がきわめて狭き門であるというようなお話でございましたが、三十五年度の実情を調べてみますると、高校進学志望者が約百六万七千人、そのうち百二万二千人が入学しておりますので、その入学率は九六%ということに相なっております。もっとも、最終的に落ちつく先に落ちつきますまでの経過においては、申すまでもなくいわゆる有名校に集中するために、志願者と入学者との比率は大へんな倍数になっておるところがあるとは思いますが、しかし、今申したように、進学志望者対人学者ということになりますと、九六%といえばもうほとんど進学の希望は満たされておるということが言えようかと思います。  そこで、問題は、高校の生徒が急増します時期を控えて、施設設備等が間に合わないのじゃないか、従っていわゆるきわめて狭き門が一般的になっちまいやせぬかという御懸念の御質問でございますが、御指摘の通り、三十六年度予算だけを見ますると、おしかりを受けねばならぬことになっておることははなはだ遺憾に存じております。しかし、いささか今までより前向きと申しますか、態様を一変いたしましたことは、三十八年度生徒収容のための施設を三十六年度から着手して、三十六、三十七の二カ年がかりで整備して、三十八年の学年初頭を迎えるときには支障のないようにいたしたい。その目標は、生徒が急増していきますに応じて、今申し上げたような進学志望の比率を同様な程度、もしくはそれよりある程度上回るであろうと想定し、そして入学率は九六%見当を確保したいと、そういう考え方で臨んでおるわけでございます。しかし、三十六年度予算だけから申し上げますと、今申し上げたことが三十六、三十七の二年継続事業として、なるほどそういうことを考えておるかと一見しておわかりいただける数字になっていないことは遺憾といえばまあ遺憾でございますが、今申した目標を達成する努力はあらゆる努力を傾注したいと思っておるのであります。  さしあたり、三十六年度としましては、工業高校に金がかかるし、施設設備にも日にちがかかりますから、主として工業高校に重点を置いて予算措置をいたしたのであります。従来工業高校等については、御案内の産業振興法に基づく補助が行なわれておったのですが、それが幾らか補助率を上げるということ、さらに従来は工業高校としても、普通一般校舎については補助金というものは全然考えられないままで、すなわち都道府県が設置責任者なりという建前で来ておりましたのを、生徒の急増ということはとりもなおさずこれは一種の終戦処理の課題と考えるべきである、ことに所得倍増という政府の施策に、都道府県に協力してもらうという趣旨も合わせ考えました場合に、普通一般校舎についても国の立場から何がしかの補助金を支給してしかるべしという考えで、御審議中の予算案にも、補助率はわずかではございますけれども、従来なかったものを補助金をつけることによって促進をし、国の政策に協力してもらうと同時に、あわせて生徒急増対策の一助にもしたい、こういうことになっております。  で、まあ一般普通高校につきましては、御指摘の通り、国の助成金というものは掲げられておりません。おりませんが、起債財源として三十億円が予定されております。高校の分もございますけれども、幾分普通高校の校舎の施設引き当ての財源として考えておるような次第でありまして、普通高校についても、今申し上げたいわば終戦処理的な課題だという点では同様でございますので、できれば、わずかでも、気は心でもいいから、国の助成金をつけたいという希望は持っておりましたが、予算折衝途中において撃退されまして、そいつは予算案には載せ得ませんでしたことを遺憾に存じます。しかし、財源としては十分に起債財源を増強するという建前になっておるわけであります。
  25. 米田勲

    米田勲君 大臣も、ことしの予算では、高校の進学希望者が急増するのに対応する予算としてはまずいということはお認めのようであります。私はこの際あなたにお考えを願っておきたいのは、現在の時点においては、あなたの言っているようなパーセントにまでこぎつけたでしょう。しかし、政府みずから今後所得倍増計画だとか、の所得を引き上げていくんだという政策を経済政策としては進めているわけですね。そういうことになれば、これは経済的に家庭の事情が許せば、子供を高等学校に学ばしたいというのは世の親のすべての願いであります。だから、その面からいくと、あなた方の経済政策がかりに成功するとすれば、これはその面からの高校進学者というものはまず激増すると見なくちゃならない。それに加えて、数字の上にも明らかに出ておるように、三十八年度までに非常に多数の中学生が卒業していく面からも、現在と同じ生活条件であっても進学志望者が激増するという、この二つの面が考えられるわけであります。だから、私はもっと積極的に、大蔵省とねばってこの問題を解決するために、大臣は努力すべきだ。起債を準備したって、それはあくまでも起債です。国がてこ入れをしてやったということにはならぬのですよ。これはこの点では、あなたは来年度と二カ年で完成をしようというのですから、あなたが来年まで文部大臣をやっているかどうかは私の知るところではありませんけれども、少なくも、しかし今日そういうふうに説明をしておられることを信頼して、来年度においては抜本的にこの高校進学者の激増をしていくのに対応できるように、起債の面についてだけでなく、国からも高校の新設増設等についての援助をするということをするように、ぜひやりたいということをここでもう一言御返事をいただいておいて前に進みたいと思うが、いかがですか。
  26. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 大体先ほど申し上げたことで一応尽きておりますが、さらに再質問的に念を押されましたから申し上げますが、三十七年度と三十六年度を一緒にして生徒急増対策に万遺憾ないよう、それから御指摘のように、進学希望の、希望率と崩しますか、それもある程度向上することも、これは当然予想せねばならない。そのこともある程度は考慮に置いた計画のもとに考えておることをさっき申し上げたわけですが、あらゆる努力をして支障なからしめる責任は当然政府側にある、こう思います。文部大臣がだれでありましょうとも、生徒本位にものを考える責任を持っておる以上は、その努力は必ずやるものと思います。  ただ、一般両校の施設設備について補助金を必ずつけるということを、お約束はちょっといたしかねると思います。努力はいたします。同時に、起債財源を提供することは、その地方公共団体の長い負債となって残ることは当然といたしましても、施設設備をする能力は与えられるわけでございますから、必ずしも百点はとれないまでも、合格点ではあろうかと思うわけであります。また、助成のことも希望を捨てておるわけではありませんから、さらに努力を重ねたいと思います。
  27. 米田勲

    米田勲君 それでは、次に、盲ろう学校の、特殊学校の問題について大臣の見解を一つお聞きしたいのですが、この盲ろう学校に学んでいる子供というのは、非常にお気の毒な条件にある人たちであります。だから、私は、小学校中学校、この盲ろう学校と並べて考えたときには、行政を担当するものの立場としては、まず盲ろう学校の問題を処理するというくらいの熱意がなければならぬのではないか。ところが、最近の文部省のやり方は、小学校をやり、中学校をやり、高等学校をやってから、この古ろう学校というふうにすべて行なわれてきておるわけです。教科書費の問題についても、給食費の問題についても、あるいは修学旅行費の問題についても、医療費の問題についても、小中学校の方を先につける。一年か二年おくれて、いろいろな運動が行なわれると、今度はこの盲ろう学校につけるといったふうに、すべておくれて行なわれているように私は理解しておるわけです。そこで、私はそういう従来のやり方を一つぜひ改めてもらいたいという希望を強く持っておりますが、特にお伺いしたいと思うのは、盲ろう学校高等部施設整備について、小中学校と同様に国庫補助対象にしてもらえないか、すべきでないかというふうに考えております。盲ろう学校高等部というのは、これは大臣も御承知のように、あんま、はり、灸の免許状をとるためには、大体高等部を卒業しなければとれないのです。だから、私は、小中学校と同様に、盲ろう学校高等部施設整備について、国庫補助をやるというふうに方針を切りかえてもらいたい、これが一点。  もう一つは、盲ろう学校の寮母の問題です。これは実際の状況をごらんになったかどうかわかりませんが、二十四時間勤務であります。特別なからだの不自由な子供たちと起居をともにしているのですから、二十四時間勤務であります。この二十四時間勤務をしておる寮母を二交代にしてしかるべきでないか。あまりにも過労な勤務条件をしいておるのではないかということが一点と、もう一点は、この寮母に対して時間外勤務手当を支給すべきではないか。この二十四時間勤務しているような非常に重い責任と過労な条件にある寮母に、時間外勤務手当が今日なお支給されていないという不合理は、何としてもこれは是正しなくちゃならぬというふうに私は考えるわけです。そこで、この点についても国庫負担を行なってこれを改善するというような、こういう小さな点にまで一つ一つ目を及ぼして、援助の手を差し伸べていって、初めて盲ろう学校教育が、からだの不自由な子供たちがみんなと同じような条件で教育できるようになるのではないか、こういうふうに考えますので、その点について特に大臣の見解をこの際お聞きしたい。今年の予算ではだめですと言われても、それは困る。どういうお考えなのか、どういう決意なのか、そういう改善ができないのかどうかという点を私は聞いておるんです。
  28. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 盲ろう学校に通学せねばならないような児童生徒の立場、あるいはその家庭の気持、想像に余りあると思います。その点、米田さんのお考えと同じであります。それに対して政府としてのそういう面に対する努力が、むしろ一般のまともな児童生徒に対するよりは出おくれがちで進んできておるということも事実でございましょう。努力はする意思がありましても、十分届かなかった点があろうかと思いますが、私は、三十六年度予算案に、今御指摘の点について十分の施策を盛り込んでおるとは申しませんけれども、お説のような気持で、こういう児童生徒に対処すべきだということはことごとく同感でありまして、努力の足らざるところは今後に譲らしていただきますが、何がしかの施策はいたしております。具体的には必要とあらば政府委員からお答えすることになろうかと思いますが、考え方として米田さんのお考えに同感であります。さらに検討さしていただきます。
  29. 米田勲

    米田勲君 これは先ほど述べた特に二点について、少なくも来年度これを仕上げるという一つ決意をここでお聞きしておきたい。同感ですだけでは、問題は解決つかぬ。来年は思い切ってこれを解決するという、一つそれくらいの熱意ある答弁がいただきたい。
  30. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 同感でありますことは、熱意と努力を注ぐ責任を感ずる意味合いであります。
  31. 米田勲

    米田勲君 それでは、次に、特殊学級の担当教員の俸給の調整の問題ですが、これは小さいことになりますが、なかなか解決がつかないので、この分科会の席上で一つ内藤さんにお聞きしますが、公立小中学校特殊学級を担当している教員の俸給調整額については、人事院規則の九の六の規定によって調整数は一ときめられておるわけです。他学年学級担当手当と比較して、これはあまりにも低額に過ぎないか、著しく均衡を失しておるのではないかというふうに考えます。特殊教育振興の大切なことは、今さらこれは私が申し上げるまでもないことでありますので、それを担当しておる教員に対して、その俸給の調整数を二に引き上げるようにできないものかどうか、こういう点について一つ、こまかい点ですけれども、内藤さんにお伺いをします。
  32. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 現在の特殊教育に従事する教職員の調整額は、御承知の通り八%でございます。将来これを上げるかどうかということにつきましては、他との均衡もございますので、十分今後検討さしていただきたいと思います。
  33. 米田勲

    米田勲君 大臣、特殊学校教育の実情をごらんになったことがありますか。
  34. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答えします。私立の学校を一つだけ見に行ったことはありますが、それ以外には文教の担当者になる以前に郷里で一、二見に行った程度でございます。
  35. 米田勲

    米田勲君 大臣、私の今内藤さんに質問をし、要望をしたことは、特殊学級の実態を理解しておられるなら、それを担当している教員に当然それくらいの思い切ったことはすべきだというふうにだれしもなるはずであります。この点については今の問題というわけにはいきませんが、来年度この問題をぜひ解決つけていただきたいというふうに要望をしておきます。  次は、義務教育関係についてお尋ねをいたします。大臣にお伺いしますが、義務教育充実徹底しなければならないということは、これはもうだれが考えても当然なんですが、現在の時点に立って義務教育整備改善をしなければならないという条件というのは、一体どういう点であろうか。問題となって解決を急いでおる義務教育を推進するための重点的な問題は何だというふうに把握しているか。非常に抽象的な私は聞き方ですが、どういう把握の仕方をしておられるか、どういう点に重点を置いて考えておられるのか、大臣にまずお伺いをいたします。
  36. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 試験問題を出されたようで、ちょっとお答えしにくいのでございますが、第一に、教育の行なわれる場所を整備する、教職員充実する、教職員の質を量とともに向上させる、さらに教育内容についても常時検討を加えてよりよき内容に育てあげる、一応連想しますことはそういうことでございますが、具体的にお尋ねいただけばありがとうございますが、抽象的な御質問には大体以上をもってお答えといたします。
  37. 米田勲

    米田勲君 大臣もやはりしっかり問題をとらえておることはよくわかりますが、お伺いしますが、あなた、義務教育の小中学校のすし詰め教室というのがある。すし詰め学級という問題があるんです。一体このすし詰め学級とかすし詰め教室というのは、どういう学級をさして言うのか、大臣はおわかりでしょうか。
  38. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 大体五十名以内ということを一応標準にしておると承知いたします。現在は小中学校はそれぞれ五十四名、五十六名ということになっておると聞いておりますが、これはなるべくすみやかに五十名以内にするように、人的、物的、設備充実のために努力すべき課題と心得ております。
  39. 米田勲

    米田勲君 内藤さんにお伺いいたしますが、現在小中学校において全国的にすし詰め学級の総学級数は幾らになりますか。
  40. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 以前は十四、五万ございましたが、現在は小中合わせまして約八万でございます。
  41. 米田勲

    米田勲君 その数字には間違いがありませんか。会議録に載っておりますが、推定とか、めくら見当でおっしゃられておるのではないでしょうね。
  42. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 間違いございません。
  43. 米田勲

    米田勲君 それではお伺いしますが、二十八国会で、公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律案というのが政府から提案になって、可決になっております。現在これは法律になって出ているわけです。そのときの政府の提案理由の説明の中にこういうことを言っております。「一学級五十一人以上を収容する学級、いわゆるすし詰め学級は、小中学校を通じ、総学級数の約三分の一に相当する約十四万学級に上るのでありますが、これらの学級における教育につきましては、教師に負担が加わるばかりでなく、児童生徒指導も困難となるのでありまして、教育効果を向上させる上にいろいろ支障を来たしておるのであります。このような点にかんがみ、学級規模を適正化し、教育効果の向上をはかるため、学校の種類に応じ学級編制の標準を決定する」云々ということがあります。これはおわかりだと思います。大臣、よく聞いておって下さいよ。ですから、学級編制及び教職員定数の標準に関する法律は、一学級五十一人以上の児童生徒を収容するいわゆるすし詰め学級なるものを解消して、法定の児童生徒を収容する学級編制をすみやかに実現をして、教師の過重な負担をなくし、教育の効果を上げるために、教育行政上この法律をもって義務づけたものであります。これはおわかりだろうと思います。これは政府の、この法案を審議した際の、質問に答えた答弁並びに提案理由の説明を調べれば、一目瞭然であります。ところが、次が私の言いたいところなんだ。  三十六年度予算案では、今内藤初中局長が言われたように、八万学級のすし詰め学級があるということを確認しておりながら、それに対して一歩も改善をするという態度に予算上出なかった。これは私に言わせると、さきに政府みずから出した法律案のねらい、趣旨にもとるのではないか。中学校生徒は九十七万八千名の急増でありますのに、前年通り、学級の編制は小学校一学級五十六人、中学校五十四人の編制に据え置いてしまって、そういう条件をきめてしまって、そうしてこの先ほどの提案説明を聞くと、教職員九千百六十六人の増員といっていますが、あなた方からもらっておるこちらの方のあれによると、八千五百六十六人の教職員をふやしておる予算を組んだ、こういうのですが、私の特に聞きたい点は、さきの法律の建前からいっても、その法律が何のために制定されたかという経過から見ても、政府の答弁から見ても、八千五百六十六名をふやすというこの予算は、法律の建前から見てけしからぬのではないかというふうに、言葉は悪いが、私は思うわけです。一体これはどういうことなのか、御説明を願いたい。
  44. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今お述べになりましたように、中学校の急増がございましたので、約百万人に上る生徒の増でございます。もちろん、小学校の方は今減少いたしておりますので、差引いたしまして、なお八千五百人の定員増を来たしたわけでございます。すし詰め学級を解消するという五ヵ年計画は、三十八年度までに完全に実施する考えでおります。本年は生徒の急増がございましたので、当初の計画から足踏みをするということにしておったわけでございます。
  45. 米田勲

    米田勲君 大臣、すし詰め学級を五ヵ年で解消しようというのは、文部省計画でしょう。八万学級から現にかかえておるすし詰め学級を、五ヵ年計画で解消をしようというのなら、ことしもその解消のための計画を実現に移さなければならぬという理屈ではありませんか。ことしは足踏みするのだ。――来年のことを言われても困るのだ、この予算委員会は。五ヵ年計画は一体来年度どうなったのですか。これは、足踏みしたことでしょう。放棄したことでしょう、一応。その次の年からまたやるのですという、そういう五ヵ年計画はあまり聞いたことがない。年次計画というものは、一ぺんにあるところまで到達できないから、小刻みにいこうというのが年次計画でしょう。文部省のこの予算の組み方というものは、来年度放棄している。五ヵ年計画じゃないのです、それは。どうも、私はその点について納得ができない。大臣、これは大蔵省との折衝のときに、一体どうしてあなたは、このことについて最後まで粘って、がんばらなかったのですか。なぜ放棄したのです、五ヵ年計画を。
  46. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。今政府委員からお誓えした通り、五ヵ年計画そのもので、足踏みするという考え方で立てられておると承知いたしております。もちろん、足踏みしないで解消するということができれば、それに越したことはないのは、これは言うを待たないのでありますが、生徒が急増する。それがピークが過ぎれば非常に減少していくという事実は目前にあるわけでございますから、納税者たる国民の立場と、子供の親たる国民の立場と、両方をかね合いで考えまして、足踏みするということになっておったと承知いたしますが、従いまして、形の上では、米田さん御指摘のように、足踏みするというのはけしからぬという格好になっておりますけれども、実質的に言えば、国民は納得してくれるのじゃなかろうか。そうして、五十名以内にする時期は、もう目前に物理的に可能な条件が待ちかまえておりますから、そのときまで一つごしんぼう願いたいということでなかろうかと思います。ですから、そういう基本線に立って予算折衝いたしましたので、初めから足踏み概算要求であったわけであります。
  47. 米田勲

    米田勲君 この予算の組み方は、私はそちらの方では十分覚えていますが、小学校生徒が七十九万七千人減る、中学校生徒は九十七万八千人ふえる。これを差し引いて十八万一千人ふえると。それに対応して、小学校教員は減らし、中学校教員はふやして、八千五百六十六人という計数を出した。このやり方が私は間違いだという。このやり方はなぜ間違いだかというと、これは先ほどの法律案を提案したときに、あなた方の方では、こういうことを国会で説明している。「第三は経過措置でありまして、以上の標準を一挙に実施することといたしますと、学校施設整備その他につきまして急激な負担を伴うこととなりますので、標準に達していない都道府県につきましては、」、その次の言葉です。「児童生徒数の減少、学校施設整備等の状況を考慮して暫定的な標準を定め、漸次標準に達するよう経過措置を設けることといたしたのであります。」、なぜ私は、このとき政府説明をしたことを出したかというと、法律そのものは、できるだけ早く五十一人以上すし詰め学級を解消しなければならぬ、そのためにこの法律を作るのだと、法律でこれを強制するのだと、こういうふうにうたっているわけなんです。そういうように考えた。説明も、そうしている。このねらいは、学校教育法の施行規則にもある。小学校の同学年の児童で編制する一学級の児童数は、法令に特別の定めのある場合を除いて五十人以下にするというのが建前なんです。五十人以下にしようという。その五十人以下にしようというのは、ただ漫然としていてはできないから、現在のすし詰め学級、当時十四万学級でおった現状からこの法律をきめて、可及的すみやかに五十人以下の学級編制に切りかえたいというのが法律を出した政府の意図であり、そういう説明であったのです。いいですか。  その点をよくお考えいただくと、どういう結論が出てくるかというと、標準に達していない場合には、児童生徒数の減少云々を考慮してと、漸次標準に達するようにするというのですから、小学校の児童数が著しく減少をしたときの条件、この法律は、そういう条件の生まれてきたときに五十一人以上の学級編制にしているのを五十人に近づけるようにやるべきだということを言っておる。そういう法律の趣旨であり、そういう提案をした政府の趣旨であるのに、小学校生徒は減る、しかし中学校生徒はふえるのだから、相殺をして教職員の定数を翻り出すというこの今回の文部省予算案の組み方は、私に言わせると、国会で、実行のできないことを説明したのか、法律の建前を尊重しなかったのか、すし詰め学級を解消するということに対して熱意がないか、いずれかではないかと思う。なぜ小学校生徒が減少したこの機会に、五十六人の学級編制を五十五人、五十四人とする条件を基本として学級編制をするように、この法の定めに従って努力をしないのか。  大体、大臣、五十六人編制というのは、これはけしからぬですよ。五十人を五人こした編制にする場合に、知事はあなたに意見を聞かなくちゃならぬということになっている。そうでしょう、内藤さん。勝手に五十人を五人こすような学級にこしらえて、知らぬ顔していられないことになっておる。文部大臣が一々容喙することはまずいので、意見を聞かなければならぬということになっておる。その意見を聞いたときにあなた方はどうするかという質問に対して、そういうことは認めないと、こういうことすら答弁をしておるのです、この二十八国会で。それなのに、今度もまた、過渡的に今まではやむを得なかったとしても、五十六人というのは、すでに知事がそれをやろうとしても、あなた方が注意をして、財源措置をしてやって、それはだめだといって意見を述べるべき立場にあるあなた方が、平然として、法律を定めたときの趣旨にも反するし、こういうような差っ引き計算で、できるだけ文教予算を減らすというやり方で事を済ませてしまおうというのは、大体私に言わせるとけしからぬと思う。この法律の建前を大臣はどういうふうに理解をして、こういうことに落ちつけたのか。小学校生徒が減ったときに、五十六人の編制を五十五人、五十四人に減らすという、こういう趣旨でもって法律は作ったんですよ。こんな差っ引き計算をして、八千五百名の教員だけふやして事を間に合わそうという趣旨で法律はできておらぬ。この点はいかがですか。
  48. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) この法律案を提案するときの当初から計画がわかっておりますので、差っ引き計算をいたしたわけでございます。それは、この生徒の急増はやがて減るのでございまして、今中学校の急増で、大体平年度に比べて百五、六十万の増が見込まれるわけでございます。ですから、やがてこれは当然減って参りますので、来年度計画として、大体教員の増は一万人前後で押えたいという、こういう当初の計画に基づきまして計算をいたしたわけでございます。そこで、当初から今申しましたように、小中学校生徒の総数を押えて計画を立ったわけでございまして、何か本年に限ってこういう差っ引き計算をしたのはけしからぬというおしかりでございますけれども、これは本年だけじゃなく、前年度も、その前の年も、同じような計算をして参ったわけでございます。  で、問題は、五ヵ年計画を作るときに、三十八年までには小中とも五十人以下にすると、こういうことで大蔵省とも十分打ち合わせしておりますし、政府の方針もきまっておりますので、三十八年度には小中とも五十人にする。  それから、米田委員からお尋ねの、五十五人をこえた場合には文部大臣に協議する、意見を聞くという建前に法律はなっております。これは本則でそうなっておりまして、附則におきましては、今申しましたように、一ぺんに五十にはできませんので、当初小学校は六十以上かかえておりましたので、毎年度その数を減じまして、今日五十六にいたしたわけでございまして、これはあくまでも最高限の数でございまして、これ以上は認めないという考え方でございます。
  49. 米田勲

    米田勲君 大臣がおられなくなりましたから、内藤さんにお伺いしますが……。
  50. 東隆

    主査東隆君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  51. 東隆

    主査東隆君) 速記をつけて。
  52. 米田勲

    米田勲君 今のこの学級編成の問題ですが、小学校五十六人、中学校を五十四人というように前年通り据え置いて、そういう条件を基本にして予算を組んだということは、これは五ヵ年計画の建前からいって、私は何としても理解ができない。  それからこの学級編成及び教職員の定数の標準に関する法律を定めた当時の政府提案の説明からいっても、議員の質問に答えて、文部省が、内藤さんなんか何度も答えておるが、その答えられた趣旨から考えて、ことしもまたこういう条件を押えて予算を組んだということは、私は納得ができない。いうならば食言であるとさえ言いたいのです、私は。大体この審議過程をあなたもまじめにくってごらんになればわかりますが、生徒の数が減少した条件が起こったときには、これを必ずこの方針に沿うように五十人に切り下げる努力をしなければならぬように当時質疑応答をしておるのです。これは今首をひねってもだめです。そうしておる。それなのに、ことしは、中学校生徒は急増するが、幸いに小学校生徒が減る、相殺して八千五百人だ、こういう安易な考えで問題を解決することで、どうして一体すし詰め学級が五ヵ年で解消できますか。あなた方は一年延ばしに延ばして、今年度の三十六年度予算は何とか答弁して、五ヵ年計画だ、五ヵ年計画だと延ばせば、来年は来年の風が吹くというような安易な気持じゃないかと思う。この法律の建前に立って、すし詰め学級を解消しようというほんとうの熱意があるなら、少なくとも小学校の五十六人を五十五入といったような条件にするなら、私は納得できますよ。これはどうもそういう点について、大臣あなたは熱意がないのじゃないですか。すし詰め学級をなくすということに対して、熱意があなたありますか。ほんとうにこれをなくしなければ義務教育教育効果は上げられないのだということを考えるならば、小学校生徒がこんなにたくさん減った時期に、当然学級の編成を改善すべきなんですよ。大体、あなた方は、こんな相殺をして予算上やっておりますが、小学校教員中学校に簡単にはやれないのですよ。免許状の関係もあり、転任をさすのにいろいろの個人の事情もあるので、現場に行くとものすごくこれが問題になる。そんな机の上で、こっちが余ったからこっちに回すといったような簡単なわけにはいかないですよ。それをあえて、学級編成の改善もしようとせず怠って、せっかく法律をきめて、今後の教育行政上の措置について法が拘束してまですし詰め学級を解消しようとしておるのに、今度の文部大臣並びに文部省は、このことについて何ら熱意がない。それでいて、教育の効果を上げろとか、もっとがんばれとか言われても、困るのです。そういう条件をあなた方がよくしなければならぬ。これは、都道府県で勝手にできますか。都道府県で勝手にしたら、全額自治体持ち出しだぞとあなた方しかるじゃないか。そんな金がありますか。そういうことをやると、内藤さんのごときは、僕は耳にしたことがあるが、そんなことを一方でやるなら、こっちの方の予算を削るぞというようなことさえ言ったことがある。私はしつこく言いませんが、大臣、この予算の組み方は、学級編制及び教職員定数に関する標準を定めた法律の趣旨に違反をする、そういう予算の組み方である。そうして、すし詰め学級を解消するという熱意が文部大臣はない、こういうふうに思うが、それでも大臣は別な答弁をするかどうか。父兄が納得しますなんという安易なことで問題は処理できない。あなたの責任はそういうことでは済まないと私は思うのですが、どうですか。
  53. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) これも先刻申し上げたわけでございますが、もともと五ヵ年計画上、足踏みをするという予定のもとに五ヵ年計画が進行中であると、こう理解をしておりましたので、そこで三十六年につきましては、先刻申し上げました通りのお答えをしたわけであります。熱意がないかと言われると、はなはだ困りますが、熱意は人一倍持っておるつもりでございます。三十八年度になりましたらば、必ずこの実現を期する体の努力を今後も一生懸命やりたいと思っております。
  54. 米田勲

    米田勲君 ところで、私は続いて政令二百二号の問題についてあなた方にお考えを願いたいわけです。公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律は、先ほどから私が繰り返して言っているように、この立法の趣旨は、五十一人以上のすし詰め学級を義務教育の場からなくしたい、そして五十人以下の諸外国に見られるような条件に整備したいというのが、その趣旨なんです。ところが、文部省は、同法の施行令で、これは政令二百二号ですが、私に言わせると、これはすし詰め教室解消の道を閉ざしてしまっておる。この政令で、私がなぜこんなものの言い方をするかということを具体的にあなた方に説明をして、見解を求めます。例を北海道の場合にとって、私は北海道の出身ですから、一番わかっておるのですが、申し上げますと、義務教育費国庫負担金の給与費の割り出し条件になっておるところの学級編制の条件を当てはめる場合、三十五年度における北海道の小・中学校教職員の標準定数は、小学校で二万三千百六十九人です。中学校は一万三千四百十五人と、標準定数ではこうなるのです。これは一応なるというそろばんです。ところが、どうしているかというと、実際の予算はそう組んでない。おかしいでしょう。五十六人、五十四人の編制条件を基準にして標準定数で出すと、今申し上げました小・中学校教員定数が出てくるはずなのに、実は予算をそう組まない。どういうことをしておるかというと、個々に予算を削減するために、私に言わせると、凶器を使っておる。それは充足率と称するいかがわしいものであります。このことは、もう文部大臣は皆さんのところにまかせきりかもしれないが、大臣こういうことをやっているということをよく聞いておって下さい。標準定数五千六百五十四を一応出しておきながら、実はそれだけやらないのです。それだけの金はやらない。充足率というものを使っておる。これは、五月一日における小・中学校の条件に対して充足率を設定しているわけですよ。北海道の場合には、小学校は〇・九九七一九という充足率を使われている。中学校は〇・九三〇七五六という充足率を使われている。そうして、これを使ってどうするかというと、定数というものを出しておる。その実行定数は、小学校二万三千百七人、中学校一万二千四百八十六人、こういう実行定数を別に出しておる。こうなりますと、標準定数より小学校は六十二人減、中学校は九百二十九人減になる。五十六人、五十四人の編制条件が、こういう実行定数を充足率をかけて出されたのでは、編制できなくなるのは、わかるでしょう。一学級の収容人員をふやさなければ、編制できなくなるでしょう。教職員の数が、中学校のごときは千人近く標準定数を減らされるのですから、そこで何が起こってきておるかというと、結局、あなた方の手前は、五十六人、五十四人の編制ですよと言いながら、現場で実際編制されておる数というものは、こういうからくりをされて予算が来ないから、六十人、六十一人という――他の理由もあります、もう一つ理由がありますが、それが北海道の多級学校の実態であります。すし詰め教室どころではないのです。こういう政令を一日も早く解消してほしい。こんな充足率を使って標準定数をさらに切り下げるやり方をやめてもらいたいというのが私の主張であります。文部大臣、それじゃ標準定数まで都道府県で五月以降教員が見つかったら充足しなさいとあなたは言うかもしれない。ところが、文部省は、それ以後に標準定数まで教員を採用すると、その分は全額都道府県費持ち出しであります。半額国庫負担しない。それは現実にそうやっておる。その結果どうなるかというと、今の都道府県の財政実態ではどうにもならぬから、半額国庫負担の来ない、そういう標準定数までの充足はできないということになってしまう。そうして、来年になると、また同じ充足率を使われる。それを都道府県が思い切って県費持ち出しでその標準定数まで増員しておけば、次年度はそれが基準になるから、標準定数にごく近いものになっていくのであるが、そういうことのできない都道府県がほとんどだから、北海道の場合もそうであるが、毎年この充足率というものを使われて、何としても標準定数に近づくことができない。こういう弊害が政令二百二号の中にある。これを一つ訂正してもらいたい。そうして、五月以降教員が充足できたら、その分については、一歩下がって、少なくとも標準定数までは自動的に半額国庫負担、こういうふうにしてもらいたいという私の主張なんです。  それからもう一つは、内藤さんはよく御存じのように、五学級以下の小規模学校というものがあるのです。これはあなた方がつけた名前です。その小規模学校では、北海道の例をとると、小学校では、全部で二千三百三十九校あるうちに、五学級以下の学校編成をしておる、すなわち小規模学校は、千六十六校であります。四九%は北海道においては小規模学校なんです。この小規模学校に対してあなた方は何をやっておるかというと、学級担任以外は三校に一名しかくれない。そういう予算の振り向け方なんです。一体この三校に一名の学級担任以外の教員を振り当てるという理論的根拠は何なのか聞きたい。どういう根拠で三校に一人としたか。これは全く机の上での計算ではないかと思う。北海道のような小規模学校の僻陬地がとびとびに相当な距離離れてあるようなところに、三校に一人くらいの割合で学級担任外を配置されて、一体どういうことになるか。あなた方は小規模学校学校経営実態は知らないかもしれない。ところが、小規模学校といえども、校長さんが、学級担任をしながら校長さんをやっておる。この校長さんは、多くはその村や部落の非常に大切な人なんです。非常に対外的にも学校以外の仕事で忙しい。市町村校長会議にも出なければならぬ。市町村教育委員会にも出なければならぬ。この学級担任をしている校長さんは、年間に相当校長職をやるために学校をあけざるを得ない。そうすると、その学校は年間相当日数にわたって先生のいない学級ができるわけです。こういう実情では、こういう小規模学校学校経営ができない、生徒教育上思わしくないというので、北海道の場合何をやっておるかというと、この小規模学校に学級担任外の先生を回しておる。どっから回しておるかというと、それはあなた方に与えられた多級学校の条件を削って、この小規模学校のそれぞれの経営のために、あなた方は認めていないけれども、学級担任外の教員を配置しておる。この二つの面から、北海道の多級学校の一学級の収容人員は六十名を優にオーバーしておる学校が相当ある。それが北海道におけるすし詰め学級の実情であります。これは、同じように充足率を使い、同じように小規模学校に担任外の教員は三校に一名ということで全国的にやっておるのですから、ひとり北海道にこの問題はとどまらない、全国的にこういう弊害を与えておって、職場の条件を悪くしておるという実態であります。時間がありませんので、実情をお話しするのはこの程度にとどめて、小規模学校を三校について一名しか担任外の教員を配置しないという条件をやめてもらいたい。充足率を使って標準定数を出しておきながら、実行定数といって、中学校のことき、北海道の千人近くも職員の定数を削るという、そういうやり方で、どうしてすし詰め学級を解消することができますか。これは、先ほど言った教職員の定数の問題、学級編制の問題についての標準をきめた法律の趣旨にもはなはだしくもとるやり方です。これは特別の事情があったからそういうものを出したのだろうと思うが、今日の段階ではこれをやめてもらいたい。それをやめることが、小規模学校教育のために、そうしてまたすし詰め学級の解消のために、絶対必要な条件になっておるのだということを考えて、ぜひそれをやめてもらいたい。ここでその約束をしてもらいたい。
  55. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 単級学校の場合には、たとえば二十人で一人の先生が配当になるわけでございます。そこで、先ほど政令二百二号のお話が出ましたが、この政令は、教職員定数合理化するために、当時約二万人の増員を考えたわけでございます。その一万人の増員と、それからもう一つは、五十人以上おるところの学級を五十人以下にすると、この二つの要件を持っておるわけでございます。そこで、政令で三十八年までには完全に充足するわけですが、その間におきまして、生徒数の方も六十から五十まで引き下げる、これが一点、それから標準定数までこれも五ヵ年間で充足すると、こういうことでございますので、この二百二号は昭和三十八年には完全に解消する考えでおります。そういう点で、一方において学級編制も五十人以下にし、なお不足の標準定数に満たない分につきましても、これを三十八年度までには全部標準に持っていくように心がけております。  そこで、義務教育の負担金は、先ほど来何か文部省が削るというようなお話がございましたが、これは非常な誤解でございまして、負担金は、御承知の通り、精算負担でございますから、府県がみた分は、教員の増がございますれば、それは当然国が二分の一を負担する責任があるのでございまして、この点は何か誤解ではないかと思うのであります。決して文部省が、都道府県がきめられた定数に対して、国庫負担金を削るような考えは毛頭持っておりません。ただ、これは交付税のあくまでも算定基準の中には当然入るわけでございます。北海道のお話が出ましたが、北海道には、御指摘のように、小規模学校が非常に多いという点で、学級定員のほかに級外教員をどの程度みるかという点で、三校に一校の割合でみております。現実に配当されるところを見ますと、それは一人じゃ間に合わぬから二人という、こういうような結果になって、その結果今度はすし詰め学級が解消できないという弊害が起きておるように見受けられるのでございます。  それから北海道の場合には、特に僻地の学校におきましても、三十人くらいで編制できるところを相当、五十人以上にもしていらっしゃるようで、ですから学級が多くなれば当然教員数が多く算出されるような仕組みになっておるのでございます。こういう点は北海道でも改善をお考えをいただきたいと思うのでございます。で、昭和三十八年にはいずれにいたしましても定数までは完全に充足するし、五十以下にいたします。その後におきまして、今御指摘になったような点で私ども不備な点があろうかと思います。三十八年度以降になりましたら、この定数の改訂もいたしたいと思っております。その際に十分北海道の実情も考慮いたしまして、適正な、合理的な改善をはかって参りたいと思うのでございます。
  56. 米田勲

    米田勲君 今の答弁の中で確認をしたいのは、私の誤解だといってあなたは言っておられるが、標準定数を一応はじき出して充足率を用いて実行定数をはじき出しておることは事実でしょう。それを配付しておるでしょう。その場合五月以降に標準定数まで教職員を採用した場合、あなたの方では自動的に半額国庫負担するという約束ですね、これがまず一点。  それから三十八年度になったら五十人以下にします、五十人にします、こういう将来の話をしているのですが、私はそれは今の五十六人、五十四人のこの学級編制をそうするという話のときにはわかるのですよ、年次計画で。ことし放棄したのはけしからぬと思っておりますけれども、しかし、それよりもなお一そう悪くしている条件のこの充足率を使っている問題、今返事をいただければそれは解決つくが、三校に一人教科担任外の、学級担任外の教員を三校に一人しか配置していないこの小規模学校に対する教職員定数のはじき出し方、これをやめてもらわなければ、それ以前の話ですよ、五十六人、五十四人を改善していく以前の話だ。この二つの点についてはっきり一つ答弁を願いたいと思うのです。
  57. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 北海道で定員を充足されて文部省に申請されますれば、これは当然半額国庫負担の対象になるわけでございます。ですから、これは削減いたしません。  それから小規模学校のお話が出ましたが、北海道の単級、複式の基準は、私どもから見ると高いように見るのです。この法律によりますと、単級の場合は二十人で、一学級二十人で教員一人の配当になるわけです。あるいは複式の場合でも二十五人とか三十人という基準があるわけです。現実には五十人という基準をお使いになっていらっしゃるようでございます。そこで学級編制の基準によって教員定数が改善されるわけなんです。  で、いま一つのお尋ねとして級外教員をどう見るかという問題でございますが、級外教員を担任以外に三校に一人と見たのは少ないという御指摘のようですが、これは必ずしも本校の場合には、本校に校長さんがいるわけで、分校の場合には必ずしも校長がいなくてもいいわけです。しかし、まあ北海道の実情から見ると、どうしても二人置かなければならないというお話も伺っておるわけなんです。文部省としてはできるだけ小規模学校は解消して、大きな学校に統合していただきたい。できるだけ改善をしていただいて大きな学校に統合する。それがどうしてもできないというような事情におかれまするならば、これは三十八年度以降の問題として十分検討したい、こう思うのでございます。
  58. 米田勲

    米田勲君 内藤さんの答弁聞いておると、あなたは長くやっておられるのに非常に認識が不足しておりますよ。あなたは本州の方の府県のことが頭にあるのじゃないですか。あなたは本校と分校と言っておるでしょう。北海道歩いてみたことありますか。小規模学校学校を本校と分校なんということで、本校に校長を置いて、分校に校長を置かないことになるというあなたの考え方は、そんなことでその分校の経営ができますか。それくらいの距離のものですか。あなたの認識は非常に現場の事情と違っているですよ。北海道における千何ぼという、四九%にわたる小規模学校というのは、こく僻陬地であって、そんな分校と本校の関係において、本校に校長がおれば分校まで目が届くというような、そういうなまやさしい条件ではないということをあなた知っているはずでしょう。知っていながら本校と分校、本校に校長を置けばいいだろうということで処置をされて今日に来ているから、それではやり切れないというのが、北海道の実情なんです。だから、あなたの方で認めなくてもみんなそれぞれ学級担任以外の教員を配置しなければやっていけない。その犠牲がどこに来ているかというのです。さっきも言ったように、その犠牲は単級学校に来ているわけです。そこに一そうすし詰め学級を増強している、逆にこのことが。そういうことを言っているので、あなたは現場の実情に合うように予算を組んで下さいよ、政令をきめるにしても。大臣、こまかい点になりましたが、かくの通りです。政令だとか、その他の措置で、すし詰め学級の解消というものはたくさんの隘路がある、未解決の問題がある。現場の実情に合わないことを押しつけている。従って、もう少し御研究なさって、そういうことに鋭意解決のために努力することこそ、荒木文部大臣の責務ではないかと思いますが、この学級編制、小規模学校、あるいは充足率の問題等にわたって、一つ内藤さんからも御返事をいただきますが、最後の締めくくりとして大胆のこの問題に対する解決の決意を聞かしていただきたい。以上で学級編制の問題については終わります。
  59. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 御指摘のように、北海道という特殊事情がございますが、文部省がこの法律を制定いたしました当時は、全国に赤字団体が二十数県ございまして、教員定数がどんどん削減され、教育界に異常な事態が起きておるのであります。それをなくして、どういう貧乏な県におきましても、教育機会均等という線から一定の水準を確保したいと、こういうねらいでやったので、この基準が北海道だけを目当てにしたのではございませんので、多少北海道の特殊事情がありますので、私どもも不備な点があるように見受けられますので、三十八年度以降において、すし詰め学級を解消した際には、十分に考慮に入れて、改善を加えたいと思っています。
  60. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今の小規模学校の話、米田さんと初中局長のお話を聞いておりまして、米田さんのおっしゃることの方がもっともだと聞きます。それは初中局長申し上げた通り、全国的な立場で定められておるがゆえに、北海道の特殊事情をまかない切れてないということのように理解するわけですが、もっと私白房も話を聞いて検討し、解決に努力します。    ――――――――――
  61. 東隆

    主査東隆君) この際分科担当委員に変更がございましたから御報告いたします。  本日、大矢正君が委員を辞任せられ、その補欠として森元治郎君が選任せられました。従いまして、大矢正君の分科担当委員補欠として森元治郎君が委員長から指名されました。  それでは午前中の質疑は、この程度にとどめ、午後は二時から再開することにし、暫時休憩をいたします。    午後零時五十九分休憩    ――――・――――    午後二時十五分開会
  62. 東隆

    主査東隆君) 午前に引き続き、これより分科会を開会いたします。
  63. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 国語の問題に関連してごく簡単に二、三伺いたいと思います。私は別に国語の問題に専門的の知識があるわけでは毛頭ないのであります。普通の気持と申しますか、考え方を基礎にして大臣の所見を伺いたいと思います。初め専務当局でけっこうですけれども、現在の予算に計上されておる国語に関する経費及び施設について、きわめて簡単に一つ御説明願いたいと思います。簡単でけっこうです。
  64. 田中彰

    政府委員田中彰君) 現在の国語審議会運営に必要な経費は百七十万円でございます。これは国語審議会運営いたしますために、国語の改良普及をはかります、あるいは漢字能力の調査、学普請の基準の設定を実施するための経費でございます。
  65. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 それ以外にはないわけですね。
  66. 田中彰

    政府委員田中彰君) そのほかの経費といたしましては、文部省の直轄の研究でございます国語研究所の経費として、約一千万円ほどの計上を見ております。
  67. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 官庁の公文書がいつでしたか、最近横書きに変わったようであります。これはあるいは文部省所管というわけにはならないかもしれませんけれども、官庁の公文書が横書きになった趣旨、目的といいますか、意図、これは一体どこにあるのでしょうか。これは事務当局でけっこうですから、お答えを願いたいと思います。
  68. 田中彰

    政府委員田中彰君) 国語審議会におきまして、国語、国字の問題を審議をいたしておるわけでございますが、この左横書きの問題、これは事務の能率をはかる、あるいは視覚教育の、目で見てもっぱら能率的な見地から、国語審議会で検討をいたしまして、このような措置がとられたわけでございます。
  69. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 もっぱら事務の能率というところに重点があるような御説明であります。それじゃなぜ憲法及び法律、少なくとも公に使われるものについてなぜそれを横書きにしないのですか、事務の能率という点であれば、単に公文書だけに限らず、公の関係にあるものすべて横書きにしていいのではなかろうかと私は思います。そこで、私文部大臣に伺いたいのであります。私は縦書きがいいとか横書きがいいとかという論議をここでするつもりはありません。しかし、われわれ国会においても政府から配付される資料等を見ますと、法律案は御承知のようにこれは縦書きでもあります、それからいろいろの説明資料等になり焦すると、これが横書きになったものが配付されます。それが時には左とじであったり、時には右とじになっております。われわれはなはだ実は迷惑をするのであります。しかも一般国民としては、新聞しかり、雑誌しかり、その他のものでも縦書きが行なわれておるのであります。一体その役所の事務の能率というふうな点だけじゃないでしょうけれども、そういうところに重点を置いて公文書は横書きにするのだというふうなことが、はたしていいのであろうかどうであろうか、そのこと自体がかりに必要であり、いいことであったとしても、結果において全体の日本の国語に関連する一つの調整、調和というものが破れていく、一般は縦響きでやっている、公文書だけが横書きである、そういうことが全体の調和を破り、物事を混乱せしめる一つの災いのもとではなかろうかと、私はこういうふうに思うのでありまして、単純に役所の便宜であるとかいうことで、国語に関連する非常に重大な事柄をきわめて軽々に処理されるというようなことが、今日の国語をめぐっての混乱の状況の一つの私は原因であろう、こういうふうにまあ考えるのであります。この公文雷の横書きの問題に関連して一つその点だけでけっこうですから、大臣のお考えを承わりたいと思います。
  70. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。私も梶原さん以上に国語問題について認識不足でございまして、自信のあるお答えなんかむろんできませんけれども、御指摘の通り、まあ大きくいえば日本の古来の文化、また将来に向かっての日本の文化にも影響する、さらにはまた、国民全般の実生活にも、目には見えないようですけれども大へんな負担を生ずることにも関連しておると思うのでありまして、そういう意味合いから、お話のごとく、卒然として横書きがいい、縦書きでなければならないということを結論づけて、半ば強制的に措置をするということは考えものだ、少なくとも今後はもっと慎重に広く意見を聞いて、しかも時間をかけて自信を持ったところで、初めて全国民に対して責任の負える内容のものが定められていくべきものだ、そういう性質の課題であろうかと思います。
  71. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 当用漢字の制度に関連して伺いたい。当用漢字の漢字を制限しておる現在の制度、これは当用漢字以外の漢字というものを、将来抹殺といいますか、なくしていこうという趣旨なのか、当用漢字以外の漢字の使用というものはあくまで国民の自由であると、これは自由にしておくんだという意図であるのか、これは事務当局でけっこうですから、この点を一つ伺いたいと思います。
  72. 田中彰

    政府委員田中彰君) いわゆる漢字制限につきましては、明治初年以来からやかましく論議をされておる問題でございます。戦前におきましても国語調査会あるいは臨時国語調査会等において論議検討を加えられた問題でございます。戦後官制による国語審議会が……。
  73. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 できるだけ一つ簡明でけっこうです、質問したあれにお答え願います。
  74. 田中彰

    政府委員田中彰君) 漢字の、いわゆる当用漢字の建議を受けまして、これを実施をいたしておるわけでありますが、これはいわゆる強制力を、拘束力を持つものではございません。行政官庁内部に対しては訓令をもって、あるいは告示をもってこれを実施をしておるわけです。一般にまで当用漢字を強制しようという、こういう趣旨のものではございません。この漢字制限の問題は国民の社会生活あるいは学校教育の面、その他学術の面等におきまして非常に影響の大きい問題でございますので、これは慎重に検討されなければならない問題であると考えております。
  75. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 当用漢字で現在きまっておるもの以外ではこれは自由である、ところで、御説明はおそらくそうでありましょう、しかし、文部当局の真に意図されておるところが一体どこにあるのか、私ははっきりつかむことができないのであります。ここで一つ具体的の問題について、これは大臣の御意見を伺いたい。当用漢字が終戦後あの混乱の中で突如として現われまして、現在自由であるという説明でありますけれども、たとえばわれわれ日本人の子供の名前でありますが、これはかって国会でも問題になったと思いますが、名前は当用漢字に限定されておって、それ以外の文字を使うことはできないのであります。若干緩和されたように聞いておりまするけれども、事実これは禁止されておるのであります。世の中にずいぶん禁止されておる事柄がある、しかしその禁を犯すということは、これは可能なんであります。人をぶんなぐるということは、これはよろしくないことであって、それを行なえば当然刑罰の償いというものが伴う。しかし子供の名前をつける場合においては、これは御上がそういうことを禁止しておっても、それを違反しようと思っても違反することもできない。この違反することもできないというほど自由が制限されておる。私はこの自由は憲法前の自由だと思うのですけれども、区役所は受け付けてくれない。当時、私この問題が起こったとき、これはまさしく憲法違反であると真剣に考えまして、現在でもそう思っております。荒木文部大臣は、憲法の問題についてはきわめて関心の深い方であります。自分の子供の名前を自由につけられない、その言葉が制限されておるということは、私は世界各国その例がないと思う。一体どういう意図で、どういう目的で、どういう趣旨で、その名前を制限しておるのか、私には不可解千万であります。訴訟を起こすこともできない。私は実は、憲法違反だから、一つこれは裁判所に持ち出そうと思った。しかし、御承知のように、これは自分の子供でないというと訴訟の対象にならない。いつまでも裁判の時間が手間取って、名前をなくしておくわけにもいかない。実際問題としては、動きがつかない。そういう羽目に日本の国民を陥れる一体権能というものが政府にあるのかどうか、私には不可解千万であります。そういうことが一体日本の文化の上にどういう影響を及ぼすか、教育の上にどういう必要性があるのか、これも私には不可解千万であります。なぜ一体こういう制限をしているのか。私はこれは文化に対する残虐なる権力の乱用であると、いまだにかたく個人的にはそう信じておるのであります。一つ御説明をお願いしたいと思います。
  76. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘の点が憲法違反であるかどうかという憲法解釈論は、むろん私は申し上げる立場でもないし、能力もございません。ただ、御示しの例は、昭和二十二年十二月二十二日に公布されました戸籍法第五十条子の名というところに、「常用平易な文字を用いなければならない。常用平易な文字の範囲は、命令でこれを定める」ということで、戸籍法施行規則第六十条で、別表に掲げるようないわゆる当用漢字の範囲内でないといけないということから、子供の名前をつけるのが制限されておるようでございます。お説のごとくんば、この法律そのものが憲法違反の法律だということになるわけでございますが、何さま国会を通過しました法律の定めるところでございますから、それ自体を今かれこれ批判めいたことを申し上げることは適切でないと思います。ただ、少し時間をとりましておそれ入りますが、戸籍法の改正、その施行規則に引用しております当用漢字の制定の根拠というところにさかのぼりますと、はたして、今梶原さん御指摘のように、日本人の自由であるべき子供の名前づけというものを制限する、漢字の制限の限度を国家的に定めたという、それだけの権威のものであるかどうかということになると、幾分疑問があるようにも思います。と申しますのは、国語審議会は、昭和二十四年に制定されました文部省設置法の中に国語審議会というものが卒然としてあるわけです。そして、それは国語とローマ字の調査、審議をなすのだということで、むろん法律上の審議会ではございますが、それがいかなる目的を持ち、いかなる審議成果の効果が予定されるかという根拠法規は何にもございません。ですから、調査、審議するというだけである。その調査、審議の成果が、漫然とは言えないにいたしましても、十分な国民的な推敲を経ないままに、内閣訓令ないしは告示となって、占領中から一般に周知されて今日に至っておるようであります。占領中のGHQの意図が那辺にあったかは、私は知る由もありませんけれども、少なくとも国語審議会の設置目的と効果ということについては、きわめて輪郭が不明確であります。従って、そういう審議会から出てきました一応の結論的なものは、さらに国民的視野に立ってのいわば世論に聞いて、成熟するに従って、それが半ば強制力を持つような形で取り上げられるというような慎重さが必要でなかったのではなかろうかということを思うのですけれども、これも今後の検討に待たしていただかなければならないことであって、少なくとももう少し慎重な取り扱いが必要ではなかろうか、かように思う次第であります。
  77. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 私は大臣の言われますように、憲法の問題、これは違憲であるかどうかをここで論議しようという気持はないのであります。ただ、なるほど国会を通過した法律基礎があるわけでありますが、日本人の子供の姓名を制限する、その一体法律目的とするところ、趣旨とするところ、これは何としても理解できないのであります。しかも、そこで制限されておる言葉というものは、世上たくさんある。特に、固有名詞となって出てくる場合においては、これは公然と認められておる。戸籍簿にしても、姓の中には当用漢字以外のものがずいぶんあるわけであります。それはよろしいと、しかし名前の方はいけないということになってくるというと、これは何としても理解のしようがないい。その姓の方は書く、それはよろしいというので、これは戸籍上通用しておるわけです。ところが、その同じ言葉が、今度は名前になってくると、それはだめだと、それに対して救済される何らの措置がないということは、私は遠い先の日本の文化といいますか、国語というものに関連して、何としても考え直してもらわなければならぬと思うのであります。この際の大臣の御答弁としては、今のあれでけっこうでありますけれども、一つ文部大臣とされまして、十分慎重にお考えを願いたいと思います。  それから最後に、これは大臣の今御答弁があった点とも関連するのでありますけれども、当用漢字の問題にも関連するわけでありますけれども、国語に関連する政府のあり方と申しますか、公けの権力のあり方の問題でありますが、私は国語審議会のあり方、これは何も知りませんし、これがどうあってほしいということについての意見も持ち合わせておりません。ただ、今日の国語をめぐって、種々混乱しておるような状態にあると言われておるのであります。その原因と責任の大半は、私は政府、特に文部省にあると、こう申し上げて過言でないと信ずるのであります。およそ文字とか言葉、国語というものはその国なり、その国民にとっては生活それ自体であり、またその国の伝統そのものであり、思想そのものであり、文化そのものだ、そういう特質、そういう性格が私は国語であろうと思う。決して一つの方便とか、技術とか、そういうものではないと思うのであります。あるいはこれは私の独断かもわかりませんけれども、私はそう思う。従ってどの国でもその国の言葉、文字、国語というものは大切にしているのであります。非常に大切にしておる。フランスでもそうです。英国でもそうです。ドイツでもそうです。いろいろその言葉の改良というものは、過去においても長年どの国でも問題があります。フランスにおいてはいつでしたか、十八世紀の終わりですか、法律を出してフランス語の改良をやろうとしたこともある。しかし、フランス人はついていかなかったということを聞かされておるのであります。そういう何と申しますか、性格のものを大切にせずに、一時の方便的なというと言い過ぎですけれども、便宜的な考え方でこれを軽く考えたり、あるいは事務の便宜であるとか、能率を上げるのだ、そういうふうな方便的な考え方でこれを軽くみる、あるいは非常に厄介視する、めんどうくさい、これを教えると子供の重荷なんだというふうに厄介視するというふうなことがあっては、私は許されないと思うのであります。もちろん、長い歴史の過程において国語というものが、それぞれ移り変わりをしていくということは、これは当然であります。さきの名前にしても徳川時代の名前と現在の名前じゃずいぶん変わっている。これは何も戸籍簿のお世話になって変わってきたのでは決してない。そのときそのときの社会の状況なり、文化の程度なりいろいろで変わってきた。これが百年先、あるいは二百年先に日本の国語の姿はどうなるか、現在の時点において判断することは私は大それたことだと思う。従ってまた、国語の改良について各国ともいろいろ運動のあることもこれは御承知の通りであります。日本も明治以来いろいろ運動があった。ローマ字の運動もある、けっこうだと思う。カナ文字の運動もある、これもけっこうだと思う。どの国でもこれは共通のことだろうと思います。これは一つの自然的な文化現象なんです、そういうことが。それは私はそれでいいと思う。ただ問題は、長きにわたる民族の伝統に関するといいますか、文化それ自体である国語の問題について、そのある、長い歴史の過程の瞬間的な一時点をとらえて、そのときの公の権力者が直接また間接の権力というものを表面に出して、あるいは背後において、そうして将来を左右するような施策というものを打ち出すということ自体が、私は非常に考えものだと思う。荒木大臣今国語審議会のあり方とか、あるいは慎重にこれを検討をして十分国民の納得のいくようにして、そして考えるべきものだろうというお話がありました。私はそれに納得できない。荒木文部大臣の考え方、あるいは現在のわれわれ日本人の考え方これを基礎にして遠い将来を律するようなことは、これは私は公の権力でやるべきことじゃないのだ、もし将来、あやまちがあったとすれば、取り返しができないことであります。これは言葉が少し激しいけれども、文化というものに対する大きな反逆なのであると思う。それを軽々しく文化の名においてこういうことをいうことが、文化的だとか、いう名において、しかも公の権力というものを基礎にして行なうということ自体が私はよろしくないと思うのであります。先ほど漢字の制限について荒木文部大臣がしばしば占領中の日本の姿、占領政策の関連性を漢字問題についても持ち出されたのであります。その実態はおおむね私は大臣の言われる通りだと思いますけれども、これはうそかほんとうか知りませんけれども、当時の文部省の国語の扱い方、当用漢字を制定をして、漢字を、文字を制限していくという施策について当時の占領――アメリカにおいては、司令部においてはそれは適当なことではないというむしろ意見であったと伝えられております。真偽は私は知りません。おそらくそれはほんとうであろうと思う。アメリカさんといえども、おそらくそうであったろうと思う。しかも、それにもかかわらずというわけではありませんけれども、これは日本独自でやったのでありましょう。ああいう非常な混乱した終戦後のあの姿の中で早急に取り上げて、しかもそれがいいんだという態度で今日までこられた。文部大臣は今度は十分世論を聞いて、納得のし得るような慎重さをもってかかればいい、こう言われますけれども、いかに慎重に考えるにしても、われわれは現在の時点における制約というものをおのずから受けているのです。遠い将来を考えるわけにいかない。非常に大きなあやまちを侵さないとも限らない。国語が乱れてくれば、おのずから思想も乱れる、文化も乱れる、政治も乱れる、日常の生活も乱れがくると思う。直接すぐには響いてこない問題でありますけれども、長きにわたって日本の文化というものを大きく虫ばんでいく危険性のあるものだと、こう私は思うのであります。私、大臣の御答弁を求めるわけではありませんけれども、ぜひこの問題は大臣として十分慎重に考えてもらいたい。文部省としてはいろいろ研究されることもけっこう、調査されることもけっこうであります、当然の職責として。しかし具体的にこうするのだ、この言葉をなくしてしまうのだ、これは横に書かすんだというようなことをいやしくもされない方が、私は日本の文化の将来のために好ましいことだと実は信ずるのであります。大臣の慎重な一つこれは態度といいますか、お考えを私は期待をして、私の質問を終わります。
  78. 東隆

    主査東隆君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  79. 東隆

    主査東隆君) 速記を始めて。
  80. 占部秀男

    ○占部秀男君 自治大臣にお伺いを二、三いたしたいと思います。私の持ち時間は……。
  81. 東隆

    主査東隆君) 十五分。
  82. 占部秀男

    ○占部秀男君 あとは一つ米田君の方へ供出をいたしますから、よろしくどうぞ。  本格的な地方財政上の問題その他はまた予算委員会の総括の質問ときにお伺いいたしますが、とりあえずの問題として二点お伺いを申し上げたいと思いますが、一つはこの地方議員の何と申しますか、この退職金制度の問題で、全国の議員連盟というか、議長会ですか、都道府県議長会の方でだいぶ運動をされておるということを聞いております。私は昔のこの地方議員と違って、新憲法下の地方議員はやはり名誉職じゃございませんので、従って、うんと働いてもらうということのために、退職年金制度のようなものを作るということは私は賛成なんであります。むしろ積極的に作ってもいいんじゃないかということさえ考えておるのです。ただ問題は、その場合に地方財政にだいぶこの議長会の内容というものは影響があると思うのですが、こういう点について自治省として何かお考えはございませんか。たとえば私はこの国会でやっておるような互助年金、こういうような制度ならむしろ作るべきだというような考え方に立っておるのですが、そういう点いかがですか。
  83. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 地方議員の退職年金の制度を一つどういうふうに考えるかというようなお話でございます。私どもこれは国の議員にも互助年金制度がございますし、また地方でいわゆる退職年金制度はできないまでも、それぞれ地方の公務員もそれぞれの退職金制度を持っておるわけでありまするから、地方議員だけが何にもない状況にあるということに対しては、非常に同情と申しますか、遺憾で、何かできた方がいいというふうに考えております。ただ、今御心配のような、しかし、それが相当な数で、市町村まで行きますと相当な議員の数になりまから、それが地方の自治体の財政に影響を及ぼすというようなことがあっては、ちょっと困りますので、今そういう要望に対しましては、それぞれ自治省としても調節をいたして、地方財政に影響のないような方法で互助年金の制度がとられるような一つ仕組みができれば、非常にけっこうではないかということでせっかく折衝中でございます。
  84. 占部秀男

    ○占部秀男君 そのことなんですが、今せっかく検討中はいいんですが、問題が一つの形で世上に起きている以上、やはり問題の性格からしていろいろな誤解、いろいろなその何というかやり取りが行なわれると思うのです。むしろ、僕は自治省が抜本的にこの際互助年金なら互助年金の方向へでも踏み切って立法化するというくらいの積極的な方向でいく方が、問題をあまりいろいろな形で雑音を入れずに解決する道ではないかと、かように考えるのですが、そういう点はいかがでございますか。
  85. 安井謙

    国務大臣安井謙君) 今この自治省政府提案としてはっきりした線を出してはどうかという御趣旨かと思いますが、確かにそれも考えられるのですが、まあ自治省といたしましては、地方公務員の例の退職年金制度というものとこの際は組み合わせて考えるべきものである。しかし、自治体の実情によりこれをぜひなんかの形で単独ででもやりたいということなら、その御意思はわかりますので、一つ地方財政に影響のないように互助年金方式というようなものを別個の形でも作り上げるということに御協力をしたらいいんじゃないか、こういうふうに考えております。
  86. 占部秀男

    ○占部秀男君 もう一つはですね、これは自治省文部省と両方にかかる問題でありますが、学校給食関係であります。文部省の方にちょっとお尋ねいたしますが、この学校給食の現在のこの普及状態ですね、概略簡潔に一つ。
  87. 杉江清

    政府委員(杉江清君) 現在小学校の普及率は六七%でございます。中学校が一一%の普及率でございます。それから高等学校の夜間定時制が二二%の普及率であります。
  88. 占部秀男

    ○占部秀男君 中学、あるいは夜間の定時制の高校の場合は一応別にしても、小学校の普及率は相当高くなって半数以上、むしろ七割まで近く普及しておるという状況ですね。そこで、現在この普及状態がなお進んでおる状態なのか、それとも逆に減退というか、後退しておる状態なのか、その点をお伺いいたします。
  89. 杉江清

    政府委員(杉江清君) 年々漸増いたしてございます。
  90. 占部秀男

    ○占部秀男君 これは文部大臣にお伺いいたしますが、学校給食の漸増しておる、伸びておると、こういう情勢は、結局学校給食ということがいいと、父兄にとっても児童にとってもよいと、こういうことを表わしておる、私は一つの証左であるというふうに考えておるのです。そこで学校給食法は、これは御存じのように、学校給食の普及と健全な発達を国や地方公共団体は努めなければならないということで、国から経費についての補助といいますか、そういうものは出ておっても、これは義務法でないわけでありますね。そこで、思い切って、これを義務法にされるような、つまり全国の小学校には、どこへ行っても学校給食があるのだと、こういうところに持っていくもう段階ではないかと思うのですが、この点どういうふうにお考えになっておられますか。
  91. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 気持としては、義務制にでも持っていきたいくらいに値打ちのある事柄と思います。ですけれども、今すぐ占部さんのお説のようにするというのには、ちょっとまあ時期尚早ではなかろうか、もう少し普及しやすい基本をつちかって、そして行く行くは義務的なものに移行すると、そういうのが今としては適切じゃなかろうかと思っております。
  92. 占部秀男

    ○占部秀男君 私がなぜこの義務制にすべき段階ではないかと申しますと、普及しておる状態もそれに値いするだけの値打ちがあるわけですが、逆に今地方の方では、この学校給食が質的な低下を来たすのではないかというような心配が実はあるからです。それというのも、これは自治省の方にも関係があるわけですけれども、御存じのように、地方団体に対する寄付金、あるいはその他のPTA会費、その他いわゆる寄付金の税外負担の禁止の問題が国会でも大きく取り上げられて、昨年でしたか、地方財政法の第四条を改正してこの問題を入れておりますし、さらに本年もこの問題は大きくなってきておるわけであります。ところが、地方の市町村に行きますと、金がないというところから、結局交付税の中で六十億なり七十億なりの寄付金がなくなる見合いとしての財源措置自治省の方でしておると、こういうことでありますけれども、現実には金がないところから、寄付金が取れないならば、それでは学校給食従事員の結局は首を切ろう、人員を減らそう、あるいはまた、文部省の方のあれで、せっかくの御努力で九百人に一人の数からたしか三百五十人に一人と、あるいは給与単価も上がっておる、こういうような状態を、まあそういうような人にやめてもらって、ほんとうのいわゆるお手伝いさん式な人を臨時に雇って安くあげようとか、そういうような情勢がだいぶ全国的に見られる、この情勢を続けていくと、私は事が給食の問題ですから、いつ何時不測の事態が起らないとも限らないということを心配するわけです。もちろん首になったりあるいは従事される従業員の生活上の問題もありますけれども、たとえばそういうようなことによってなれない人や、あるいは責任のないような人がこの給食問題をやることによって、たとえば中毒問題が起こったり、あるいはいろいろな不潔な問題が起こって問題化されるということになってくる。こういうことになってくると、結局大臣が今言われたように義務法に、するところの値打があるというせっかくの事業が逆行してくるような形に私はなりはせんかということを心配するわけです。そこで、この際思い切って、義務法にするというなら今その段階ではないか。こういうことを私は特に痛切に感じておるのですが、大臣この点はいかがですか。たとえば、今年、来年のうちにやらなくても、五年計画なり三年計画でこれをすっかり全国にりっぱなものを作る、こういうような積極的なお考えはございませんか。その点をお伺いいたします。
  93. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。気持としては、さっき申し上げた通りで、再度の御質問でございますが、やはり同じことを申し上げるほかにないわけであります。ただ、今小学校で六五%の普及率、それを行政指導によりまして極力一〇〇パーセント近くなるように、年々歳々減退しないようにという考えでこれは自治省ともよく連絡をとりながら、市町村あるいは教育委員会を通じて御指摘のようなことがないように、これは考え方によってやれることでございますから、指導、助言を徹底していくというのが当面なすべきことじゃなかろうか。また、これを奨励いたしますためには、わずかではありますが、給食設備につきましては助成金等も従来出しております。これももっと大幅に増額する努力をしながら、徐々に、義務制にしても現実面で混乱のないようにということを念頭において努力していくべきものかと心得ます。
  94. 占部秀男

    ○占部秀男君 この問題は最後ですから念を入れておきたいと思いますが、かりにすぐの義務法にならなくても、せっかくでき上がった学校給食の質的な、質を低下させるような問題があってはならぬと思います。そこで自治省とも相談されて、従業員についても、無理にさような首切りであるとか、あるいはまた給与の入れかえによるところの問題であるとか、そういうような不測の事態が起こらないように、これは両省とも一つ厳重に行政指導をしてもらいたいと思うのですが、この点はいかがでございますか。
  95. 安井謙

    国務大臣安井謙君) ごもっともなお話でございまして、私の方でもこの財政の裏づけをできる限り十分にいたしていきたい。交付税等の基準の計算におきましても、特に三十六年度はそういう方へも配意をいたしておるようでありますし、今後十分文部当局とも相談しながら万全を期したいと思っております。
  96. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 学童給食の問題で、関連してちょっと伺いたいと思います。今日までだんだんとこの施設が拡充せられて参って、相当大きな効果をおさめておることを私も非常に喜ぶものであります。ただ質の問題に関連して、おそかれ早かれ、私考えなくちゃならない問題があるのじゃないかと思います。それは御承知のように、学童給食の初めにおきましては、国内の食糧需給の事情が非常に逼迫しておる。アメリカから恩恵的な食糧が参り、後、余剰農産物の処理の一つの方法として、アメリカの食糧が学童給食の大きな内容をなし、また突っかい棒をなしたような感じであります。現在におきましても学童給食に供給されるパンは、これは外国産の食糧であります。こういう姿が、はたしていつまでもこの通り続いていっていいのであろうか。国内における食糧が相当豊富になり、また特にこの米のごときは、逆に余剰といいますか、余るような傾向も見られておるのであります。やはり私は将来は日本で取れるものを基礎にして、それに栄養を十分考え合わして給食の内容にすべきでなかろうか。いつまでも大事な日本の少年の食糧を、海外に依存しながら進めていくということはいかがであろうかと実は思うのであります。当面の問題ではありません。将来の問題として一つ文部大臣の御意見を伺いたい。
  97. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘の点は、確かに問題でございまして、私どもも将来に向かって検討をしたいと思っておる事柄でございます。すでに御承知の通り、三十六年度予算をめぐりまして、食管会計に依存する姿のあのやり方を続けるかどうかで論議があったわけでございますが、確かにその意味においても検討を必要とするだろうと思います。同じ麦に依存するパン食を建前で今やっておるようですが、これでいくといたしましても、外麦を輸入するその道程において、食管会計の操作によって恩恵的にまかなわれておるがごとき姿、これでいいのか。御指摘の通り、この制度が始まりました当初の食糧難時代だから大へんだという意味の取り上げ方では、あれでよかったかもしれませんけれども、発端はそうであっても、今後は国民体位の向上、あるいは衛生的な見地から、子供たちの幸福をこいねがう角度に置きかえられて、百%給食、占部さんのおっしゃるように義務制にでも持っていきたいくらいの気持であろうと思いますけれども、そうであればあるほどもっと安定した、また国内の食糧政策とも密着して矛盾のない、大蔵当局といえどもそれを推進するにやぶさかでないような内容、方法はないものか、そういう意味合いでの検討を必要とすると思うのであります。その意味合いにおいて、主管局が関係省の事務当局と今せっかく折衝検討中でこざいしまて、でき得れば三十七年度からはもっとすっきりした、安定した制度に変えたいものだ、審議に手間取りまして間に合わなければいざ知らず、そうでない限りは、極力そういう線に沿っての検討、その線を実現するという目安でいかねばならぬと思っております。
  98. 東隆

    主査東隆君) ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  99. 東隆

    主査東隆君) 速記を始めて下さい。
  100. 横山フク

    ○横山フク君 文部省に伺いたいと思うのでございます。ですが、私あまり文部省関係の方はよく存じておりませんので、初歩的なことを伺うかもしれませんが、簡単に御答弁願いたいと思います。現在学校の校舎の建設でございますが、ここに五ヵ年計画概要実施状況というのでいただいております。で、これは坪単価、建設費は単価は全国均一でこざいましょうか、どういう形になっておりますか。
  101. 安嶋弥

    政府委員(安嶋弥君) お答え申し上げます。公立文教施設費の坪当たり単価でございますが、これは全国均一ではございませんで、人件費の地方差等がございますので、若干の格差がございます。しかし、それはごくわずかな格差でございまして、大体は予算単価と申しますか、平均単価で実施されております。
  102. 横山フク

    ○横山フク君 平均単価はどのくらいになっておりますか。
  103. 安嶋弥

    政府委員(安嶋弥君) 鉄筋コンクリートでございますと、五万六千二百円、鉄骨造でございますと四万二千九百円、木造でございますと二万七千二百円ということに相なります。
  104. 横山フク

    ○横山フク君 この鉄骨鉄筋は、その地区によって、文部省の方で指定するのでございますか。
  105. 安嶋弥

    政府委員(安嶋弥君) 鉄骨、鉄筋と木造の振り分けでございますが、御承知の通り、市街地建築物法、あるいは建築基準法等によりまして、耐火構造であることを要する地域につきましては、耐火造ということで、鉄筋あるいは鉄骨の配当をいたしておるわけでございますが、その他の地域につきましては、その地域の各種の事情を勘案いたしまして、これを配当するという方法をとっております。
  106. 横山フク

    ○横山フク君 私がこれを伺いますのは、耐火建築物市街地建築物法、そういう形で規制をするのももちろんけつこうだと思うのです。しかし、もう防災関係という形からみなければいけない。火災だけでなくて、風水害等の関係からもみなければいけないと思うのです。で、これを均一にされまして、たとえば五万六千二百円、こういう形ですと、たとえば市街地あるいは埋立地、名古屋の地区とか、あるいは東京地区あるいは大阪地区その他ございますが、そういう地区になりますと、非常に水面よりも低いようなところもあるわけでございます。こういうところを同じ単価でされますと、結局地下工作といいますか、基礎工事というものに非常に単価を要するものでございます。従いまして、高層建築というものが建てられない。自然軽量鉄骨というような形に、予算関係からなるわけでございます。しかし学校というものは公共的の建物、学校としての教育施設であると同時に、公共的の立場、建物であるわけです。いざという場合には、そこに退避しなければならぬ。当然そういう地域の、水面より低いところにおきましては、三階あるいは五階というようなことで、いざというときにそこに住民が退避できる形もとるべき、もうそういう段階に、すし詰教室を解消するということと同時に、もうそういうところに向かって考えを置いて、そうして建築のあり方を考えていかなければいけない。御承知のように、東京を見ましても、坪当たりの単価が同じでありますために、山の手には、基礎工事が簡単でございますので、高層な学校校舎ができるけれども、下町には基礎工事が非常にかかるために、坪単価で押えられるために、低い建物ができるわけです。しかし実際は山の手にはそういう高層建築はほしくなくて、下町に高層建築の学校がほしいわけです。これは画一にされているために、そういう懸念があるわけです。これは東京に限らず、名古屋、大阪あるいは福岡その他すべてあるわけでございます。もう防災的の角度から、均一の形でなくて、そこに多少の取捨選択があってしかるべきであろうと思うのですが、そういうことをお考えになって勘案されたものでしょうか。
  107. 安嶋弥

    政府委員(安嶋弥君) 公立文教施設が、耐火造であることが望ましいというのは、御指摘の通りでございまして、そういう点から、三十六年度予算におきましては、中学校の不正常授業の解消分、学校統合危険校舎の改築、その他につきましては、従来の耐火造五〇%の比率を六〇%に引き上げて、予算を計上いたしておるわけでございます。前半にいろいろお話がございました、地域によりまして建築費に差等があるということは、これは御指摘の通りかと思いますが、ただ文部省補助金を配当いたします際につけております格差は、これは大体府県単位の格差でございまして、一々の学校の建築、あるいは一々の工事につきまして、その工費が高くつくか、あるいは安く上がるかということまで検討して予算を配当することはいたしておりません。
  108. 横山フク

    ○横山フク君 私もそれは、検討することがなかなか困難なことは、よく存じております。存じておりますが、できないから検討してないという形でなくて、各府県のそういった方々とも、当然連絡があると思います。そういうときに、そういう点に対して、多少中央的に全体を見回しながら、ある程度の示唆を与えることは、当然な措置であると私は考えるのですが、いかがでございましょう。
  109. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 公立学校施設予算の執行につきましては、の単価につきましての地域差というものは、木造については考えております。ただし、今仰せのような地盤の問題につきましては、これはなかなか補助単価として、その中でみるということは困難でございますので、地盤が弱いから、それに伴ってよけい単価がかさむというような問題については、現在の補助制度では考えておりません。
  110. 横山フク

    ○横山フク君 私は、地盤が弱いから、そこをよけいみろと申し上げているのでないのです。ただ全体に、ただ学校を建てればいいというような形で建てるのでなくて、あるいは火災を防ぐというような角度から建物の構造を考えるというのでなくて、全体を考えて、いざというときの防災的な避難所というような形も考えて学校は建てていいのじゃないか。それはそれぞれの場所で、単価が違っておりましょう。それに対して、文部省でそれぞれこまかい単価割りをすることはできないのはわかっております。わかっておりますけれども、そういう形において将来建てるべきであるし、そういう形に対して多少の、文部省が中央においての行政監督官庁として、地方庁の人々とも話し合うときに、そういう角度からの何らかのお話し合いがあってもいいのじゃないか。もうそういう角度の方に向かって、将来の公共建物は進めていくべき角度から、お話し合いが多少あってもいいのじゃないかということを申し上げたのです。
  111. 福田繁

    政府委員(福田繁君) お話しのような点でございますと、私ども常々考えているところでございまして、たとえば防火地区については、もちろんこれは鉄筋で建てるというような考え方をいたしております。それからまた防火地帯でなくとも台風の常習地帯だとか、あるいはこの前にやられました名古屋地区の水害の場合の高潮地帯の改良復旧、そういうものはもちろんそれぞれの地域、あるいは具体的なケースにつきまして、県当局と十分連絡をとって、予算の執行に当たっているわけでございまして、できる限り、また予算の許す範囲におきましては、重点的に、そういった地区については、鉄筋、鉄骨構造によってこれを実施するというような指導をいたしておるわけでございます。
  112. 横山フク

    ○横山フク君 私は鉄筋、鉄骨の指導だけを申し上げているのではなくて、高さにおいても申し上げておるわけでございます。いよいよのときには、鉄骨であっても、低い高さであっては決して防水台風等の浸水に対して防げるわけではございませんので、あらゆる角度からお考えいただきたいと思うわけでございます。時間がかかりますので、この問題はこれくらいにさせていただきますが、次に伺いたいのは、所得倍増に関連いたしまして、科学、技術者の人材養成という角度になりますが、この人材養成につきましては、この間の予算委員会の一般質問で私いたしましたので、それを別の角度から質問いたしたいと思いますが、人材養成をいたしますのには、当然教師の養成ということが先になると思います。教師を養成するのが非常に不十分に考えられますが、現在のこの養成でもって、教師を充足できるとお思いになるのでございましょうか。いかがでございましょうか。
  113. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 担当の政府委員からお答えいたします。
  114. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) ただいま大学学術局長見えておりませんので、私からかわってお答え申し上げます。現在のところ、所得倍増計画に伴う分といたしましては、工業学校教員不足が著しいのでございまして、その他の教員につきましては、大体充足できる見込でございます。工業学校につきましては、三年制の臨時教員養成所を設置いたしまして、八千人程度の養成をはかって参りたいと考えております。
  115. 横山フク

    ○横山フク君 八千人程度の養成を考えられておるのはよく承知いたしております。しかし、この人々を養成して、その人々がはたして教職にとどまるお見通しでもって養成していらっしゃるのでしょうか。
  116. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 給与の面におきまして、あるいは育英資金の返遺その他の面におきましても、格段の措置を講じまして、できるだけ全員が教職につくように指導して参りたいと考えております。
  117. 横山フク

    ○横山フク君 育英資金の面で格段の措置を講ずるというのは、どういう格段の措置をお講じになったのでしょうか。
  118. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 育英資金の面におきまして、従来は高等学校の先生になった場合には返還が免除になっておりませんが、今回は返還の免除措置も講じたいと考えておるわけでございます。
  119. 横山フク

    ○横山フク君 返還の免除を講じてそれで充足できるでございましょうか。たとえば育英資金の、あとで大谷先生から御質問になる問題でございますが、育英会の返還もできでいないくらいで、それらが、資金の返還を免除するという程度ではたしてできるかどうか。新聞にも出ておりますし、あるいは内閣委員会でございましたか、委員会でも論議されましたけれども、少ないのでございます。七校の工業学校の先生を養成いたしておりますところでも、三十四年度で教職にとどまった人は、わずかに一人だったということが出ておる、これは文部省にお調べがあるし、事実だと思います。そういう形の状態にありますのが、育英資金の返還を免除する程度でもって養成ができるとお思いでいらっしゃるのでしょうか。
  120. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 現在工業関係大学教員養成課程がございまして、これは四年制の課程でございます。百三十人程度の養成をいたしておりますが、先ほどお述べになりましたように、現在のままでは産業界の方に流れてしまいまして、教育界に流れる者が非常に少ない。そこで今回は、新たに三年の養成所を作る計画をしておるわけでございまして、この場合に大学と同じように待遇も保障し、また、工業学校等に参ります場合において、初任給調整手当をつける、あるいは育英資金を普通の場合には返すわけでございますけれども、小中学校並みに返還を免除する等の措置によりまして、教育界に人材を誘致するようにいたしたいと考えておるわけでございます。
  121. 横山フク

    ○横山フク君 今お話の、三年制であっても大学を卒業したと同じような待遇をするというお話でございますが、そういう法律改正を出しておありでございましょうか。私こちらしろうとでございますので、あるいはそれは当然出しておるのを伺うような形になるかもしれませんが。
  122. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) この養成所を出ました者につきましては、先ほど内藤局長からお答えしましたように、あらゆる措置を講じて人材を得たいと思いますし、また、実際にこの養成所を卒業しました者が、工業教育の面で活躍してくれるような措置を講じたいと思っているわけでございまして、この工業教育養成所を出ました者の資格につきましては、高等学校の二級免許状を与えるような措置が法案上も行なわれております。また、待遇につきましては、これは文部省として、できれば大学卒業程度の待遇を与えたいという考えをもちまして、人事院等とも折衝をいたしているわけでございます。まだ決着には至りませんけれども、文部省としてはそういう態度で臨んでいるわけでございます。
  123. 横山フク

    ○横山フク君 私は、今臨時教員養成所、これのあり方等についても多くの疑問をもっておりますし、これは同僚の矢嶋議員から文部委員会等で御質問になっていらっしゃいますし、これからもまたなさることだと思いますので、私は、この臨時教員養成所のあり方等については、ここでは質問をいたしませんが、そういう待遇等に対してお考えになっていらっしゃるということでございますが、それができるかどうか。これはできるということでしょうし、私もそこを詰めて申し上げることはきょうはよしますけれども、私はここに人事院からの、人事院の勧告に従って、そうして各給与に改善が行なわれた。そのときに大学教授は二二%のベース・アップをしたし、それから一般行政職は一二・四%のベース・アップをした。非常に大学教授の方がベース・アップがいい。あるいは技術者系統は一六%ですか、非常によくなった。ところが、私はこういう点に対して、お役人の人たちは率直さを欠いていると思う。そういう予算が取れる前には、そう予算の取り方が足りないのでは、とうてい教員は保持できない。あるいは科学技術者は官庁、あるいは公立の研究所に保持できないといって、人事院なり、大蔵省にがんばってなさる。ところが、予算がきまってしまと、いかにも満足のような形で、いろいろの線をお出しになる、ちっとも予算が取れなくても、足りないなら足りないとはっきりなさるべきだと思う。それをそうなさらない。二二%のベース・アップと言いますけれども、あたりまえだと思います。というのは、七等級、八等級というのが教育職にはない。同じ一等級の場合に、行政職も、研究職も、あるいは教育職においても、そのベース・アップの率においてはほとんど変わりない。二級職、三級職においても、四級職、五級職においても変わりない。ただ問題は、教育職の方がベース・アップが割合に多くなっている、あるいは研究職のベース・アップが多くなっているということは、下の八等級がないとか、あるいは七等級がない。だから平均して多くなっているということであって、横の線からいったら、ちっとも変わってない。大学の先生たちは、いわゆる高等小学校出た人は学校の先生になっていない、技術者になっていない。ですから下の線がないから、平均は高くなっているけれども、横の線から見たら同じです。それなのに横の線の七等級、八等級がないので、平均して二二%上がっても、これでもってわが事足れりとおっしゃるのは、率直さを欠いていると思う。最初から足りない、足りないで大蔵省と折衝して、足りないからもらいたいと、折衝が済んで後も足りない、足りないとおっしゃればいい。それをいかにも足りたように、こういうような平均のベース・アップで、この通り上がったと言っても、それはあたりまえです。それで大蔵省じゃぐずぐず言っているんです。予算が取れないのにきまっている。あれで満足するから、この次の予算折衝のときにうまくいかない。足りないのは、足りないでお出しになるべきだと思います。そこら辺は時間もございませんので、私は詰めませんけれども、ただ問題は、こうして給与をよけいにいたします、そうしてそのつもりでございますと言って、はたしておできになりますかということを伺うのです。現在できてない。これからでもおできになりますか。そういうことはおできにならぬのじゃないか。もっと申し上げるならば、私は、医師も開業医は余っていると思います。しかし、保健所の医師は足りない。足りないところの医師を充足するためには、保健所の医師になる人には、学資を別途に厚生省予算から五千円前後出している。そうしてその人たちが学校を出て医師になった後は、保健所に勤めるということを約束して出している。ところが、この工業、理工系教職員が足りないから、そうして三十四年でもって教職にとどまる者がわずかに一人だったならば、はっきりとこういう線でもって、こういう奨学資金、別途資金を出さなかったら人材は確保できない、教職員は確保できない、こういう点で私はがんばるべきだと思いますが、この点はいかがだったのでしょうか。
  124. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) お尋ねの中にございましたように、まあ今度の人事院の勧告によりまして、一般の公務員が一二・四%、それから教官につきましては二二・四%の増がお話の通りございます。ただ、この教官全体の平均ではそういうことになっておりますが、これは教授、助教授あるいは講師、助手とこういうふうに分けて参りますと、それぞれみな比率が違っております。文部省といたしましては、この人事院の勧告が出ましたあとにも、実は講師、助手、いわゆるその教官の中で待遇の比較的低い者についてはもう少し上げるような措置を講じてもらいたいということを折衝をいたしたわけでございます。今回の人事院勧告は確かに全体的には上がっておりますが、文部省の考えております教官の待遇改善の線には必ずしも全面的に沿ったというわけじゃないのでございまして、これで満足であるという態度では実はなかったのでございます。そういうこともございまして、今後も、ことに民間の産業等との給与の関係もございますので、それらの点についてはできるだけ実は今後も努力をして参るつもりでございます。なお、その保健所のお医者さんに関連をいたしまして、たとえば工業教員等についても給費あるいは育英資金の返還免除というような措置を講ずべきではないかというお尋ねでございますが、私どもといたしましても、この工業教員養成所を修業いたしまして、工業教員になりました者につきましては、育英資金の返還免除の措置を、育英会法の一部改正で今回御審議をお願いすることにいたしておるわけでございます。
  125. 横山フク

    ○横山フク君 その育英資金の免除をお願いするといったって、現実に払って返している人はそんなにないのです、新聞でごらんの通り。私はそれがいいとか悪いとか覆うのじゃなくて、公に収さないで済むということなんです。そうじゃなく、そのほかに、別途に保健所のように学費として五千円程度のものをお出しになる、そうしてそのかわりにその教職に必ずとどまるという形の予算措置をお講じにならなかったのかどうかということを伺うのです。
  126. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 実はそういう点も考えまして、予算の折衝のときにはいろいろ話をいたしたわけでございますが、今回はそれがうまくいきませんでした。しかし、そのかわりというわけではございませんけれども、この養成所の授業料の支払い等について特別の措置を講じているわけでございます。
  127. 横山フク

    ○横山フク君 かわりを講じているといいましても、そのかわりとは違うのですね。やっぱり月謝が安いから大ぜい来るでしょう。それは特別を講じてもらったから……。その生徒が大ぜい来るということが目的じゃないでしょう。臨時教員養成所というのは教師を作るのが目的なんでしょう。卒業したら教師にならないでもって民間に行ったら何の意味もなさないでしょう。ですから、学費が安いとか、授業料を免除してやったからということであっても、意味をなさぬと思うのです。と同時に、担当主計官が来ていらっしゃると思いますが、この理工系の人材を養成しなければ所得倍増の計画に間に合っていかぬ、これはすでに御承知の通りだと思うのです。もう十七万人から足らぬということもはっきりした事実なんです。そうしてその点で官公立でもって二千五百七十何人ですか、民間で八百人とか、その点実行予算が少しふえるようなことをうかがっておりますけれども、最終年度で十一万六千人ということを伺っている。その人たちを養成するということで、十七万人に対して八万人にもなっていない、半数にもなっていない、それだけの人を養成するにしても、今教員が足りなくなっているのです。その足りない教員を充足するために文部省措置を講じている。その措置を講じていられても、十分間に合っていないと思う。もっと講ずるべきだと思うところが不十分だと思う。そういう措置に対してもお削りになったのはどういう角度からお刈りになったか伺わせていただきたいと思う。
  128. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) お答え申し上げます。  今先生のおっしゃったその何を削ったということははっきりわからないのでございますが、今度の高等学校の臨時教員養成の問題、この問題につきましては、文部省からの要求をほとんど全面的にのんだわけでございます。従いまして、その点の予算の削減というものはほとんど、――若干人数の点はございますけれども、そういうことでほとんど削っておりません。ただ給費制度の問題がございます。給費の制度の問題というものは、これはただいまの保健所とか、防衛庁とか、国の、国と申しますか、そういう公の機関の問題に奉仕する場合に、特別の目的でやっているのがございます。そういう制度の一環として考えられないわけではございませんけれども、一般の学校――教員養成所は一つの学校でございます。そういうものについて給費制度というものはとっておりません。従いまして、そういう差異からもう少し検討をしなければならぬ、全般の振り合いからということで参りました。ただし、今度われわれ一番心配いたしましたのは、先ほど先生のおっしゃったように、要するに、その学校を卒業してほんとうに先生になるかどうか、この点が一番問題でございます。従いまして、その問題につきまして文部省当局といろいろお話ししたのでございますが、一つはその教科の内容、この教科の内容につきまして、非常に先生になるような教科の内容にするということが一つ。第二点は、卒業した暁において先生になった場合には、何らかの恩典を与えなくちゃならぬという点があります。その点につきましては、その一つの措置として、育英会の資金の返還免除の問題、これは先ほど申しました。もう一つは、授業料を短大並みに一応とるけれども、先生になった場合には、そのたとえば三分の二程度を免除する。従いまして、徴収猶予をする、先生になったらば完全に免除する、先生にならなければとるというような措置、かようなことを講じまして、今の現行で許す限りにおいてこの工業教員養成所の卒業者を工業教員に誘致するというふうな策を講じておる次第でございます。
  129. 横山フク

    ○横山フク君 その教職にとどまらせるために、いろいろ措置をお講じになったように伺っております。でございますが、その程度ではたして、――今まで卒業して年々教職にとどまる人がない実績が、その程度のことではたしてせっかく作った臨時教員養成所、その人々が教職にとどまるような形になるかどうか非常に疑問です。また、大体給費制度については、保健所やなんかのように公のものでないというお話ですが、学校の――高等学校あるいは新しくできる形の五年制の学校――私は不幸にして、その点最初からお断わりしたように、知識はないのです。五年制の新制の学校というのは、民間の学校ですか、公立の学校でございますか、どちらでございますか。学術局長に伺います。
  130. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 中学校卒業を入学資格とする五年制の教育機関ということにつきましては、中教審等でも意見が出ておりますし、また、科学技術庁の答申にもそういう線が出ておりますので、文部省としては、これをできるならば早急に作りたいということで、ただいま法文等について折衝中でございます。これがもしできれば、もちろん国公立にこういう高等専門学校と言いますか、五年制の機関ができることは当然予想されておりますし、また、いわゆる民間と申しますか、私立においても将来はこういったものが私どもとしてはできるであろうということを期待しておるわけです。
  131. 横山フク

    ○横山フク君 そうすると、まだはっきりと具体化していないわけですね。今のお話では具体化していないようでございます。それでは、臨時教員養成所を出る人は、そういう具体化していない学校の先生を目標にしてお作りになるのですか。
  132. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 工業教員養成所を卒業しまして先生になる方は、現在ある工業高等学校の先生になるのでございまして、五年制の一般教育をする教育機関の先生というものを必ずしも目的としておるのではございません。
  133. 横山フク

    ○横山フク君 現在ある工業高等学校の先生を養成するのが目的でございますね。で、現在ある工業高等学校は公立でこざいましょう。違いますか。
  134. 小林行雄

    政府委員(小林行雄君) 公立の工業高等学校が多いのでございますが、中にはもちろん私学のものもございます。
  135. 横山フク

    ○横山フク君 公立の工業高等学校でございますれば、保健所と私は性格がそう変わらないと思っています。保健所の方に給費制度ができているのに、公立の工業高等学校教員として教職にとどめるために、そういった給費制を作ることを何ら特別な措置だとは私は思わない。先ほどの主計官の答弁のところを聞いておりますと、保健所は公立であるから、だから給費制を作るのだ、ところが、この学校生徒は、公立にとどまるのじゃないのだから、だから給費制を作らないのだという形は、私は成り立たないと思うのです。むしろ、ここの学校を出る生徒というのはどれくらいあるか存じませんが、予定されておりますのは、第一年度の三十六年は八百八人ということでございますが、その程度の人々は公立にとどまる人々の方が大多数じゃないかと思う。私は教職にとどまるということを志望している人は、だれでも彼でもこれは全部給費制にしろと言うのじゃないのです。その中でもって公立にとどまる人は、給費制度を作ったらいいじゃないかということです。その人たちの教職にとどまるというのなら、保健所と変わってないのです。お医者さんは全部給費制にしていない。教職にとどまる人には給費制度をやっている。公立の工業高等学校の教職に行く人には給費制度を作るというのは、保健所がやっているけれども、こういう制度は初めてだからこれは検討中だとおっしゃる。これは私は主計官のお話はわからないのです。
  136. 佐々木達夫

    説明員佐々木達夫君) 先ほどちょっと言葉が足りなかったと思います。公立だからとかいうことを言いますけれども、ほかの方にも波及するという点もあると思いますから、この問題にもちょっと触れたわけであります。たとえば今この給費制度の問題が出ると、直ちに大学院の給費制度という問題――大学院を卒業して大学の先生になるわけですが、その問題にも波及することも考えられます。その他たとえば、文部当局の問題ばかりでなく、今各官庁あたりで非常に技術者が足りない。そうすると、各官庁の技術者になる人にも給費制度を適用したいというようないろいろな問題が起こってくると思います。他に波及する問題として、そこら辺の問題は、全般的にもう少し見極めた検討をしたいというふうな、そういう意味において申し上げたのでございます。
  137. 横山フク

    ○横山フク君 私はもう少し主計官は頭を固くしなくてもいいと思うのです。それはなるほど官庁でも足りません、官庁にも行かなければならぬでしょう。また、公立学校にも行かなければならぬでしょう、私はそう思います。しかし、現実の問題として、官庁も人が足りないのは事実です。通産省でもって大学出の人がほしくて、通産省の役人が、自分の母校に行って教授に頼んだ。そうして人事院の試験を受けるのに、千円の受験料を通産省でもって五人分、五千円出した。そうして試験を受けた結果、みんな合格したのですけれども、残る人は一人もいなかった。やっと拝み倒して、一人だけ残ってもらったという形です。私は長い将来じゃございません、今のこういう時代には、官公庁やあるいは公立の学校や教職にとどまるという人はないのです、私はそう思う。また、人事院のベース・アップといっても、民間から比べたら格差は大きいですから、そうしたならば、ある時期にはある施策を講ずるのが、私は政治だと思うのです。あまりあちらこちらを見回しながら、全体であちらも響くだろう、こちらも響くだろう……、実際に現実に足らないところは、響いてもいいと思う。そうして、現実の国の要請といいますか、日本の基礎を作るところのそういう面にやるということを、これは私は主計官にお伺いするのじゃなくて、大蔵大臣に伺う問題だと思いますが、もう少し広い角度からこれをやっていくべき問題であると私は思うのです。  もう割当時間は、私三十分しかいただいていないので、過ぎたように思います。で、長くは申しませんが、文部大臣に最後に伺いたいと思いますのは、今、研究職あるいは教育職のベース・アップにしても、あるいは横の線から見たら、平均はなるほど二四・三九%になっておりますけれども、しかし、内容を見たら決してベース・アップになっていない。下がないから、平均が高いだけの話である、あるいは教職にとどまる人がない。教職にとどまる人がなかったならば、日本のあすの繁栄というものは築かれないのでございます。でありますだけに、こういう点に対しましては、私は格段の教職員学校も臨時的にお作りになるくらいです。こうした施策に対しても、臨時的にある制度をお作りになって、待遇改善等をお考えになっていただかなければ、私はこの要請にこたえられないと思うのでございますが、文部大臣はいかがお考えでございましょうか。
  138. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お説に同感でございます。大学教授を初め教職員の給与が、今度の人事院の勧告である程度上がりましたが、それで十分だとはむろん思いません。たとえば大学教授の給与のごときは、従来文部省が一応の目安としておりましたのは、戦前並みにしょう、物価指数によって換算して幾らだという数字は覚えておりませんが、ともかく戦前並みにはしたいものだというのが、当面の目標であります。今度の人事院勧告の線によって給与が上がりましたので、戦前にやや近づきまして三分の二見当に行っているように承知しておりますが、まだ足りないのでございます。で、私は、今後の大学教授を初めとする教職員の重大な職責に顧みまして、また、いわば一生を青少年の育成にあるいは学問の研究に没頭するという、あまりはなばなしくないが、しかし、重要な職場にある人の給与というものは、戦前並みであってはいけない、戦前よりもっと上がるべきものだ、そういうことを目標に今後も努力し続けねばならないと思います。御承知の通り、人事院の勧告に基づいて給与の改訂をする建前になっておりますから、人事院の方にも政府側としても働きかけて、極力すみやかにもっと待遇をよくするという努力をすべきものだと心得ます。  同時に、先ほど来お話の工業教員養成所の問題ですが、本来給費制度を必要とすると考えて、予算概算要求をいたしましたけれども、大蔵省に撃退されたのでございまして、努力不足を思います、また、必要性は依然として考えておりますから、今後さらに大蔵省と折衝いたしまして、確実に工業学校の先生が確保できるように努力したいと思います。   〔主査退席、副主査着席〕
  139. 東隆

    東隆君 私はちょっと文部大臣にお聞きをいたしたいのでありますが、先ほど梶原さんが非常に上手に質問をされたのか、あるいは文部大臣が非常に保守的な性格をお持ちになっておるのか、だいぶ梶原議員の質問に対して同感をされておるようにも聞かれるふしがあったわけであります。  そこで私は、実は国会の議員あるいは文化人などで構成をしております言語政策を話し合う会の会員でございまして、実は梶原議員のあの考え方に対しては、多少意見があるわけであります。横書きの問題については、実のところを申しますと、これは戦後に内閣で何か通達を出されて、そうして官庁その他は横書きにするようにという、命令ではなくて勧告のような形で書面を出されておるはずであります。私どもはそれに対して非常に関心を持っておりまして、そうして、それがどういうふうに行なわれておるか、こういうようなことを調査をしたりいろんなことをやったのでありますが、一番おくれておるところは、実のところを申しますと、国会が一番おくれておるのじゃないか、こういうふうに私は考えておるわけであります。国会の官報を一つ横書きにすれば、一番きき目があるのじゃないか、こんなことを考えてみたり、あるいは新聞を少しは横書きにしてもいいのじゃないか、こんなことを考えたりしたのでありますけれども、これは梶原議員からまっこうから反対をされる筋合いのものになっております。そこで私は横書き等についても、だいぶ大臣の方では、何かそう積極的に奨励をされないようなふうにも見えましたが、実は小学校、それから中学校を通して、おそらく大ていのものは、もう社会科関係からみな横書きのものが多いのじゃないか。で、国語の本ぐらいが縦書きではなかったかと考えているわけであります。従って、横書きをされる方が、もう小さい子供には、横書きの方がなれているのじゃないか。従って、小学校あるいは中学校あるいは高等学校等で、学校で新聞を出されておりますが、その新聞には非常に横書きがふえてきている。そういうような情勢の中にあって、先ほど梶原議員にお答えになったようなことは、これは少しあまりに中正をとられていないのじゃないかと、こういうふうに考えるのですが、横書きについて率直にどういうふうにお考えでありますか、文部大臣は。
  140. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 縦書き、横書き、ローマ字、かな文字あるいは漢字まじり等がいろいろ論議されていることは、私も承知しておりますが、先ほど私が梶原さんにお答え申し上げた意味は、今度審議会という制度及びその運営及びその審議結果の取り扱いということについて申し上げたつもりでございます。それがどうも文部省設置法の中に、国語審議会というものは、まさしく列記されておりますけれども、それが一体いかなる目的を持ち、調査、審議した成果が、どういう結果的な効果を期待しているかということは、法律を通じての国の意思というものは、全然明確ではない。現実の運営にまかされている。しかもその委員は、一番最初は、これは文部省が責任をもって人選したと思いますが、そのあとは、その委員みずからが選考委員を選出して、その選考委員によって推薦されたものが、一応そのまま任命されるという形を踏襲して、今日まできているようでございます。その成果は、政令ないしは告示として取り扱われているようでありますが、これもきわめて事務的に、調査、審議の結論が出れば、そのままが政令となり告示となる、こうなっているわけであります。  そこで私は、もっと検討しなければ明確なことはむろん申し上げかねますけれども、一応思いますことは、国語というものの動向が、変化が、あるいはそれが改良されるという角度から取り上げられたといたしましても、先ほど梶原さんの御指摘のように、日本の文化それ自体に影響を持つ、あるいは国民一般の社会生活の実生活に重大な影響を与える、あるいはマスコミその他の編集にいたしましても、具体的な影響を与えるということであり、しかも依然として、かな文字がいいかあるいは漢字まじり文がいいか、かなづかいも、あれがいいかこれがいいかという論議が尽きないようなむずかしいことが、だれが責任を負うかはっきりわからないままに、現実には強制する権限のもとになされているとは思いませんけれども、事実上は影響をもたらして今日にきている。その結果についても、依然として議論はあるが、反対なら反対の議論に対して、責任をもって、政府という立場で、主権者たる国民に対して、お答えになる責任を持つという態勢ができていないという点が、一つの問題点じゃなかろうかと、一応思うわけであります。そういうことからして、梶原さんの御質問に対して、その取り扱いは慎重でなければなるまい、審議の成果ができ上がりましても、世論に聞いて、そうしてじっくりと腰を落ちつけて、世論の動向に照らして、妥当な時期に実施するならする、こういうふうな慎重な考察、手だてがあってしかるべきじゃなかろうかと一応考えておりますという趣旨を申し上げたつもりであります。
  141. 東隆

    東隆君 私は、国語審議会についても、何か私生児ではないけれども、私生児のようなふうなものになっていると、こういうお話でありますが、先ほど予算はどれくらいだと、こういう問いを発せられたのに対して、百何十万かとか、こういうようなお答えがございました。私は一国の国語をどういうふうにしなければならぬかと、こういうような重大な問題を審議する会は、私は、相当なやはり予算をもってやっていかなければならぬ問題じゃないかと思う。先ほどフランスの例が出ましたけれども、フランスは法律でというよりも、ものすごい学者をたくさん集めて、そうしてフランスの言葉をりっぱなものに作り上げた。従って、フランス語ほど正確にものを表現する言葉はないと、こういうので、外交の方面においてもフランス語を使っている。英語の方はそう正確でないわけなんで、そういうようなこともあるのでありまして、国語はやはり正確なものを作っていかなければならぬ、こう考えております。ことに私は、漢字をそのまま音で読むような形のものがたくさん入って参りますと、ラジオだのその他テレビ、そういうようなものができた今日においては、私は非常に間違いを起こすことにもなりますし、私は、実のところを申しますと、もっとやさしい言葉がたくさんできていかなければならぬのじゃないか、こんなふうにも考えておりまして、漢字ももともと考えてみれば外国語なんでありますから、従って、在来の言葉から考えて参りますると、これは外国語になるわけであります。そういうふうに考えて参りますると、漢字をやはり非常に主張される人は、相当勉強をした、まあ勉強の上では貴族階級の人じゃないか、こういうふうなふうにも考えられます。そういうふうに考えますと、やはりもう少しやさしい表現を使って、そうして事実を知ると、こういうふうになりますると、日本の歴史を学ぶにしても、また、理科学その他の方面を学ぶにいたしましても、私は相当な進度がみられるのじゃないかと、こうも考えますし、必ずしも私は、梶原氏の御意見に、一方的に賛成の意を表することはできないものですから、従って、この問題については、私は、国語審議会をもう少し強化して、そうして強力なものにして、そうしてやっていくと、こういう考え方でお進みになる方が、これがやはり一国の国語を正しい方向に持っていく道ではないかと、しかもこれは文部省が本腰を入れてやるべき筋合いのものではないかと、こういうふうに考えるのですが、この点はいかがですか。
  142. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 本腰を入れてやるべき問題だということは、私も御同感申し上げます。ただ、先ほども申し上げましたように、今の国語審議会なるものの存在意義が不明確であり、目的意識がこれまたはっきりしない。運営それ自体も、どうも遺憾の点があるやに承知いたしますが、今の制度を存続するとしまするならば、政府国民にその成果について責任が持てるということにしなければ、最少限度適切じゃないのじゃなかろうか、それにプラスお説の通り、もっと強力な充実したものにするということも一つの考えであり得ると思います。ですから、何かわけのわからぬようなものでない、もっとはっきりしたものにする、そして国語というものは最低限かかるものだということを、 朝令暮改じゃなしに、きちっときめられるのならきめたらいかがであろうか、それは特に義務教育課程について青少年に教える基本線としては、もう牢固たる微動だもしないものがあってしかるべきじゃないか、それに加えて御指摘のように、社会の進展に応じて新たなものが加わる。やさしいいろんな言葉が加わっていくということは当然あり得ると思いますが、また、たとえば新聞なら新聞で、機械的に活字を拾って編集するという立場からの便宜に応ずるための、たとえば漢字の制限とか、いろいろございましょうが、そういうものはそれぞれの立場々々で便宜的なものを自主的にやれば、定めればいいのだろうと患われます。電報はかな文字でなければ、打てなければかな文字でよろしい。しかし、基本線だけはきちっとしたものが国語としてはあるべきじゃないか。それをもっとお説のごとく、力こぶを入れて、将来に向かって、しょっちゅうぐらっかないものを発見するのが一つの課題であろう、そういうことも連想しながら、むろんまだ未熟なもので、正式に意見として申し上げる段階でもございませんし、内容のものでもございませんが、少なくとも国語審議会をもっと国民全般の認めるような権威あるものに仕立てていくべきじゃないか、さように思います。
  143. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 関連してちょっと発言をしたいと思います。私は、先ほどの質問で、横書きがいいのだとか、縦書きがいいということは一切言ってないつもりであります。どちらがいいということも、私自身言うだけの素養と資格がないのであります。しかし、長年の間、われわれは何千年の間縦書きできたという事実はこれは無視ができない。将来これが横書きになっていくということを、私はよろしくない、いかぬとかいうことを実は申し上げたわけじゃない。政府が、先ほどの御説明によるというと、事務能率の点、それから視覚ですね。眼で見る点からいって、横書きがいいのだということで、政府の公文書を横書きにされた。それを私はとやかく言わない。ただ現実はどうかというと、眼のために視覚のために、いいと言われるけれども、われわれは縦に見たり、横に見たりしなければいかぬ、国会において現にそうである。憲法しかり、法律しかりである。ほかの公文書は横だ。一体これが視覚のためになるのかどうか、私が見てもわからない。そういうところに一つの混迷があるのじゃないか。こういう混迷をそのままにしていいのか、これはそういう混迷が起こってくれば自然に解消される。ところが、政府がどういう自信があって、どういう見識があって横書きがいいのだと言われるのか、これが私にはわからないということを実は申し上げたのであります。それから東さん言われるように、やさしい言葉が好ましい。私はそれはいかぬとは決して言わない。われわれの昔のめんどうくさい漢文からずいぶんやさしくなってきたと私は思います。われわれの小学校時代から比べると、ずいぶんやさしくなってきたと思う。将来もそうなるであろう、それはそれでいいじゃないか。やさしくするために、むずかしいものを追放していく、その追放していくために法律といいますか、国の権力を持ってくれば、そういうことは文化に対する私は罪だという趣旨のことを実は申し上げたのであります。漢字だって、制限しなくたっていい、だんだん変わっていく、当然そうあるべきものであろうと思う。それをしいて公の権力でとやかくするというと伝統というものはこわれる。文学がこわれる。英文学にしたって、フランス文学にしたってその通り、大事にしてきた、フランスが法律でやって失敗した。フランス人はついてこなかった、御承知の通りであります。われわれは言葉を大事にするということが大切だということを私は言ったわけであります。文部大臣の意向は、先ほども聞いた、今も聞いた。りっぱな一つ何か調査会、国語審議会を作り、権威のあるものを作り、一定不動のものを今度はやるのだ、これは十分世論に基礎を置いてやるのだ――きわめてもっともらしい。しかし、そのこと自体が間違いだと私は言っている。この長い歴史のこの段階で、どんな権威のある人を集めて、幾ら、百万円――けっこう、何億かけて調査して研究したって、世論というものは、そのときどきにおいて変わる。十年続く世論なんというのはない。それは世論の性質だ。それを基礎に置いて法律を作ってやったって、一定の不変のものができれば、これはみじめな結果になる、将来。何百年一定不変の基礎でやられた日には、法律基礎にしてやられた日には大へんだ。だからわれわれは、国語審議会でりっぱなものを作ることはいいけれども、言葉というのは、テレビのためにあるものではない。官庁の便宜のために、事務能率のためにあるものでも何でもない。それよりもはるかに大切な問題がある。こう思うのでありまして、やさしくすることは決して異論はない。横書きにすることも決して異論を言うわけではない。しかし、繰り返して言いますけれども、それを強制的な方法、権威とか国の力とかいうものに藉口して、一律に律していくというようなことは、言葉、文字、国語というものの本質から見て、適当じゃあるまいということを申し上げたつもりでありますから、一つ釈明をいたしておきます。
  144. 横山フク

    ○副主査(横山フク君) 東君に御意見あると思いますが、文部省に対する御質問を続行させていただきます。   〔副主査退席、主査着席〕
  145. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 まず第一に伺いますが、発言に混乱がある。先ほど来、質問者は主査々々、答弁者も主査々々と呼びかける。私は今、委員長と言って呼びかけたが、そこでこの場合は委員長ということで呼んでよろしいかどうかを伺いたい。
  146. 東隆

    主査東隆君) 主査になっていますから、どうぞ主査とお呼びを願います。
  147. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そんなねぇ、主査――えっさっさあみたいな呼称では……、(笑声)そういう言葉はあんまり日本の国語として感服しないので、この場合は、委員長なり、小委員長で発言をお許し願いたいが、いかがでこざいましよう。
  148. 東隆

    主査東隆君) 便宜、差しつかえございませんからどうぞ。へたな座長でありますが……。
  149. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 大いに、寛容の精神、まことに感謝にたえません。  そこで文部大臣にお尋ねいたしますが、今もいろいろと梶原議員、また、委員長からも、国語の問題についてのお話がございましたが、私は国語の問題は、第一に文部省の国語課の片すみに国語審議会などを置くべきものではない。こういうことを考えておりますが、文部大臣はそれに対していかなるお考えでございますか。
  150. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 現在、すでに不完全ではございますけれども、文部省設置法の中に国語審議会というものがございますことは先刻も申し上げたのでありますが、法律規定されました審議会という形は一応ございますので、当面これを合理化すると申しましょうか、もっと趣旨をはっきりさせる、責任の所在もはっきりさせるというふうなことで、運用していくべきじゃなかろうかと思っております。将来の問題として国語の重大性にかんがみて、もう少しはっきりした、単独の立法のもとの審議会にでもするという御意向かとも拝察しますが、そういうような意味におきましての課題も当然あり得ると思いますが、今後の検討にまたしていただきたいと思います。
  151. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 去る二十三日その国語審議会で舟橋聖一氏初め五名の方が退場をせられて声明を出した。自来この問題は全国的に一大反響をもたらしておることは御承知の通りであります。そこで一体、この今日の日本の国語の改革が、終戦後において行なわれてきましたが、アメリカの教育使節団の勧告に基づいて、そうして占領政策の一環として、日本の国語政策が行なわれてきておることは明らかでありまして、これはただいまや完全に独立国家として、一本立ちになったのだから、占領政策の踏襲をいつまでもしているべきではない。当然荒木文部大臣は、きわめて正しい姿勢をもって、日本の教育のあり方を是正しよう、こういう熱意に燃えておられる人である。私ども、さすがに荒木文相は古武士の面影ありと大いに絶讃をしておるのでありますが、従って、この国語、国字の問題というものは、私は実は前から非常な関心を持っておる。国語の問題は、私は国文学をやったんじゃないが、小島政二郎がわが若き日の恩師であります。小島政二郎氏やら、私の同窓は奥野信太郎君、それから石坂洋次郎君等等でありますから、従って、日本の国語、言葉というものに対しては、私は深い関心を持ち続けておる一人でございます。  そこで、終戦以来いろいろ国語の改革が行なわれてきましたが、文部省所管には国立の国語研究所がある。そして日本の国語についての研究をしておられる。一方に今、舟橋退場によって巻き起こされた、一大センセーションを起している国語審議会というものがあります。その実態を聞いてみるというと、まことに委員の顔ぶれはそうそうたる方が多い。しかし、文部省のこれに対してのお取り扱いというものは、どうも刺身のつまにも当たらぬような取り扱い待遇を与えている。一体この委員の方々に対する日当は幾らですか、報酬は幾らですか。
  152. 田中彰

    政府委員田中彰君) 今年度は六百円、来年度千円にいたしたいと思っております次第でございます。
  153. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 現在幾らですか。
  154. 田中彰

    政府委員田中彰君) 今年度六百円。
  155. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 昨年は……。
  156. 田中彰

    政府委員田中彰君) 従来は四百円でございました。
  157. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それごらんなさい。一体あなた、今日四百円で天下の学者や文人、忙しい人々、舟橋聖一氏などは天下の作家ですよ。一日四百円とは一体これいかに。それをもって委員としての御待遇を申し上げているとあなたはお考えですか、伺いたい。
  158. 田中彰

    政府委員田中彰君) 十分とは決して思いませんが、予算上の関係でかような次第になっている次第でございます。
  159. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 金の問題をかれこれ申すわけではないが、いかに文部省が国語というものに対して関心の薄さを示し、暴露しているかということは、この一事をもってしても明らかじゃありませんか。従って、文部省の一部課の中に国語審議会があるということになるのですよ。この国語、国字の問題は日本人、日本民族の長く、深い歴史と伝統、その数千年来のわれわれの祖先たちの美しき感情の表白、また、人間の心持の伝達、それらの表現をするものが国語であり、国字である。国語の問題は国民全体のものです。その国民全体の意思、感情表白表現の問題である国語の問題を取り扱うのに、文部省の一部課に。しかも、非常なりっぱな人人がわずかな報酬なぞあえて問題にしないで審議会に出席される。これは日本の国語を思うて下さるからこそ常時出席をされる。聞くところによるというと、その委員会ではほとんど欠席をされた方々がないという、ことほどさように御熱心である。金銭じゃない。しかし、あまりにも報ゆることの薄きを、私は憂愁の気持と深いため息とをもって、日本の文教当局がこの国民の一大問題に対して、まるで刺身のつまのような取り扱いをしているということに対して非常な憤激を、私は与党でありますから当局を支持しなければならぬかもしれないが、しかし、国民の一員として大いなる憤激を持たざるを得ない、いかにお考えですか、大臣。
  160. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 今、御指摘のごとく、委員の手当等、まことに昔のままのような格好で恐縮に思うわけでございます。今後機会を得て、幾らかでもその御労苦に報ゆる気持で考慮したいと思うわけでございます。
  161. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで現在の国語審議会、非常に国民は、重大な関心をこの国語審議会のあり方に対して持っている。先般小汀利得氏も総理並びにあなたに会われたということである。経済評論家の小汀さんがこの国語の問題に重大関心を示して、その会長にもなっておるということは、これは経済人であろうと、宗教人であろうと政治人であろうと、芸能人であろうといかに国民全体が国語問題に関心を持っておるかということの証左であります。ことに、いわんや日本の学校教育の中に、義務教育、またそれ以上の教育機関の中において、国語国字の混乱を来たすというようなことになれば、これは日本の伝統ある文化の破壊を策するということである。従って、非常な関心のもとに総理にも大臣にも会われたということは当然のことです。文部大臣、小汀氏はどういうことを申していましたか。
  162. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 大体新聞に出ておるようなことを言われたようでございます。
  163. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 一方にです、実は私も最初入ったのですが、言語政策を語る会というのにしばらく入っておったのです。ということは、さっき梶原委員からお子さんの名前を区役所で登録されぬ云々の話がございました。私もその御意見に一応賛成ですが、しかし、私の大谷贇雄という字は、御承知の通りの難解、一般の方にはちんぷんかんぶんおわかりにならぬほどむつかしい。だから、親がつけてくれたものだから、実はありがたきことながら、忍耐と寛容とをもって、実は忍びがたきを忍んできておるのでありますが、不便この上もなく閉口頓首している次第です。ところで、おととしの選挙からは、公報には当用漢字以外は全部ひらがなだということで、ひらがなの大谷よし雄になったので、大へん助かった次第です。このように贇雄の贇は、まことに苦労の種、もう何とも、これ以上の苦労、きわまれるものなしと言いたいほどに、今までわが生涯の苦しみのひとつでした。従って、その面からも言語政策を語る会というものに最初大いに関心を持ってそのメンバーに加わって、数回出た。ところが、そのうちにだんだん日がたつうちに周恩来がぬーっと出てきた。周恩来がその会の資料として出てきて、私の手元に送ってくる。その文章を見ると、中共の国語改革についての周恩来メッセージ、が出てくるようになったんで、ははあこれはちょっと左巻きやなあという感じを新たにした。一体国語審議会のメンバーは表音文字を主とする人が多いのか、表意文字を主とする人が多いのか、日本の言語、文字、わが国の国語が健全に発達をし、しかも、なるべく手軽にいこうという主張者が多いのか伺いたい。
  164. 田中彰

    政府委員田中彰君) 表音主義者、表意主義者という話でございますが、従来おられました国語審議会委員の中にはかな文字あるいはローマ宇を主義とするそういう団体に関係しておられる、そういう団体に関係しておるということでございまするならば、あるいはさようなことも言えるかと思うのでありまするけれども、一般的に申しまして、だれが表音主義者であるいは表意主義者であるかといったようなことは、これはにわかに断定はできないと思います。
  165. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 一体、この国語審議会を舟橋聖一氏が脱退をいたしました、その脱退の声明でありますか、見ますというと、なかなか容易ならざることが出ておる。二十五日の東京新聞。「僕は国語をなるべくわかりやすく書くことには賛成なのだがいまの審議会の方向は結局、日本を植民地、ひいては亡国的にする要素を持っていると思うんだ。国語をローマ字やカナ文字だけであらわそうとする方向に国民を引っ張ってゆくことは国民を愚鈍にすることだから委員会でも、しばしばそのことを力説してきたんだが、一向に効果がない。これでは百年河清を待つようなものだから脱退するほかに方法がないと思った」と、こういうことが書いてある。また、舟橋氏外五名が脱退をされたのですが、決してスタンド・プレーをやるのではないというような心持のことも言って、そういう意味のことを言って、「塩田君とも話して確認してきたが、いわゆるゴネドクで僕たちの味方の委員をふやそうというような気持はない。どんなことがあってももはや委員にはならない。同じ言葉を繰り返せば、死ぬことによって反省を促す、という態度をつらぬく」と、きわめて重大です。舟橋氏へのこのインタービュー、この「人物ウィークリー」での訪問の強い印象としては、「舟橋氏の言葉で興味があったのは、国語を表音化、ひいては単純化することは国民を愚鈍にし、革命の基盤を作ろうという考えが――委員の中に、とはいわないけれど、全学連の一部の指導者の中にはあるのではないか、と語ったことであった」と書いてある。今あなたのお話だと、まことに穏やかな、しかも、正しい軌道の審議会であるように思われるが、この舟橋発言によればしからざるの感が濃厚である、この発言に対して、あなたはいかにお考えですか。
  166. 田中彰

    政府委員田中彰君) 国語審議会委員の色分けと申しまするか、どういう主義をとっておるかと、信じておるかといったようなことは、これはまあいわば、いろいろな見方が人によってできると思うのでございます。御指摘のように、この国語審議会が非常に偏しておるといったような談話が何か出ておるようでございます。(大谷贇雄君「何んという無礼なことをいうか。ふまじめだよ」と述ぶ)われわれといたしましては、あくまでも公正な審議を期待しておるわけでございます。
  167. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 今の御答弁はきわめて誠実を欠いております。あなたは所管局長として、この重大問題、一大反響を起こしておる事柄、このマスコミも大々的に取り上げている問題、従って、この問題についての発言者については一般も重大なる関心を持つのはあたりまえじゃないですか。あなた方当局が、何か談話が出ておるようですとは、何です。一体何ですか、今の言葉は。もう少し誠実にならなきゃだめです。何という御答弁。舟橋氏が聞いたらあんたのところへ再び抗議に行くわ。よくありません。さらに福田恒存氏はこう言っている。会議では委員選出や審議の方法が民主的であると力説されていたが、しかし、審議会そのものの出発や重大問題の方向をきめる場合の態度など大前提が非民主的に運ばれている。根本が非民主的だから幾ら民主的に運営しても意味はない、会議を傍聴して、そのからくりがわかったと、福田恒存氏は言っておりますがへこれに対しては一体どうお考えですか。
  168. 田中彰

    政府委員田中彰君) われわれの見ておりまするところ、委員の中にはいろんな御意見があることは、これはむしろ当然だろうと思うのでございます。そこで、国語審議会運営でございますが、国語審議会としては、委員の中にはいろんな意見を持っておられる方があるわけでございます。これは申すまでもないことでありますが、さようないろんな立場に立っておる方々が審議をされまして、いろいろの問題を調査審議をされておるわけでございます。非常に運営が非民的である、こういうお話でございますが、われわれといたしましては、運営の公正を期しておったつもりでございます。あるいはさような御意見もあろうかとも存じます。
  169. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、今のお話だと、公正に行なわれておるように思うということでありますが、しかし、公正に行なわれておらぬ点があったから、舟橋聖一氏は五名の同志とともに退場をし、今のような脱退声明を発表して、文部大臣のところへも舟橋君は行ったという話だ。福田恒存氏は根本的に非民主的だと言っている。ところで、一体この会のメンバーは大体何年ぐらい継続してやっていられますか。いつできたか。そのもとから伺いたい。
  170. 田中彰

    政府委員田中彰君) 現在の国語審議会昭和二十五年に文部省設置法並びに政令によって組織をされている定員は七十人。過般任期を満了いたしましたが、四十五名の委員がおられたわけでございます。
  171. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 この審議会で一番長く委員をしておられる方は何名であるか、伺いたいと思います。
  172. 田中彰

    政府委員田中彰君) 任期は二年でございますが、それを五期勤めておりました委員が九名ございます。
  173. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、その任期を長くお勤め下さっておる方の中に表音主義者は何名あるか。
  174. 田中彰

    政府委員田中彰君) 先ほども申し上げましたように、どの委員が表音主義者であるかということは、(「そんなことがわからぬのかい」と呼ぶ者あり)断定しがたいのでございます。その点は御了承願いたいと思います。
  175. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 はなはだあなたは誠意を欠く答弁が陸続と続いております。その委員の方の発表される文章、その他の言論を注目すれば、それくらいのことは三才の童児といえどもわかるはずです。あなたがわからなければ、担当官の方でおっしゃっていただきたい。
  176. 田中彰

    政府委員田中彰君) 表音主義者、どの方が表音主義者であるかということは申し上げにくいのでありますが、(大谷贇雄君「何のために申し上げにくいんだ。」と述ぶ)ただ、この九名の委員の中でカナモジカイあるいはローマ字会といったような関係者をかりにここで拾ってみますと、土岐善麿氏、大塚明郎氏、それから松坂忠則氏、以上でございます。
  177. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこでね、会長の土岐善麿氏も私は懇意な方です。実は私と同じ大谷派のお寺の出身で、荒木文部大臣も同じ宗内ですが、私はなまぐさだが、荒木さんや、土岐さんはりっぱな方ですが、そういう関係でよく知っている。そこで、土岐さんは日本の短歌の大家ですね。それで、このみずからお作りになるあの美しき土岐さんのポエムと、それと一体土岐氏の音表主義とはどういう関係があるのかしらんと非常に私は疑問に思っているので、やはり中共においでになるとああいうふうになるのかなあと実は思うんですが、これは私土岐さんに御質問する機会を得てするつもりです。そこで、文部大臣は、二十三日の日に、脱退組の舟橋君やらあるいは小汀国語問題協議会理事長等が訪問をいたして、脱退までの状況、いきさつを説明をして、国語審議会の構成を一変するために省令改正などの必要な措置をとることを要望した、こういうことですが、そのときに荒木文相はいかにお答えになったかをお答えしていただきたい。
  178. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 話のやりとりは記憶しませんが、結論的には、先刻お話しが出ましたときに申し上げましたようなことをちょっとお話ししたかと思いますが、それは国語審議会というものの法的な根拠はどこにあるだろうかということ。さらには、その運営につきまして、政令、省令等が出ておるようですが、これをあわせ読みまして、そして二十三日の総会でございましたかが幾分混乱したということと思いあわせて見て、なるほどこれは先刻も申し上げたように、政府側として国語審議会運営そのものは別としまして、たとえば審議の成果の取り扱い方についてどうしたらいいかの根拠がない。あるいはまた、その成果の取り扱いの結果について、国民に対して責任が負いにくい制度になっておる、すべて審議会まかせだというがごとき格好だと承知しますが、これをもうちょっと検討する必要がなかろうかというような気持がしたわけでございます。そういうふうな意味ではお話はなかったようですけれども、少なくとも私は今まで平和であった場が混乱したということで初めて国語審議会の存在を認識したようなことで申しわけないことですけれども、その直後今申し上げたようなところをさしより聞いたり調べたりしましたところが、私の今の感じとしましては、いささか欠陥があるんじゃなかろうか、検討を必要とするんじゃなかろうかと考えるのでございます。
  179. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、欠陥があるんじゃなかろうか、検討をする必要があるんじゃなかろうか、私もそういう印象を深くいたしますが、当面の担当者である局長はどういうふうに、しからばこれを是正をすることが審議会自体の健全なる発達になるとお考えですか、伺っておきます。
  180. 田中彰

    政府委員田中彰君) いろいろ問題のありますことは十分承知をいたしております。要はいかにして、この公正な審議をするかということにあるわけでございます。大臣の指示を得まして十分検討いたしたいと思っております。
  181. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで国語問題協議会から文部大臣に提出をされた要望書の中には、この現在の審議会というものは矛盾が多くて偏見、独断があって、われわれとしては、国民生活国民文化の上に及ぼす悪影響をこのまま座視することができないと書いてある。言語、文字は生きものである。国民の長い生活と歴史の中から自然に生じたものであり、ある時、ある人々、ある種の理由によって決定されるものではない。価値という概念は人生から切り離されるとそのあらゆる根拠を失うということは、学問の常識であり、歴史に徴しても明らかである。すぐれた民族、興隆する国民は、みなその国語、文字を愛育し、優秀なる言語、文字を持っておると言っております。しこうして、この国語審議会の性格についても触れて、審議会の隠れたる潜在目標は、世界の文字言語の趨勢に反し、表音文字採用を企図いたしておるものである。そのことは同会の前身である国語調査委員会及び臨時国語調査会の目的方針をそのまま受け継いでいると書いてある。そうして今の前者の調査委員会においては、調査方針の第一項にですよ、文字は音韻文字、フォノグラムを採用することとし、かな、ローマ字等の特質を調査することと掲げ、表音文字化の意図を明示しておると書いてあるが、これに対して一体どうお考えですか、伺います。
  182. 田中彰

    政府委員田中彰君) 昭和九年に官制による国語審議会が設置されたわけでありますが、その前身の国語調査委員会というのがございます。これがこの委員会におきましては今御指摘のように、文字は音韻文字を採用することとし云々ということを調査方針の一つとしておったことは事実でございますが、その後国語調査委員会といたしましては、かたかな、ひらかな読み書きの難易に関する実験報告を行なっただけで終わっておるのでございます。
  183. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、現在のこの日本の国語審議会の組織並びに現実は、私はなかなか容易ならざる底流を含み、また、国語、国字を通じて舟橋氏の言葉を借りれば、国民を愚鈍化せんとする意図が、潜在目標が、あるように受け取れる表現をいたしております。四月馬鹿じゃない、おしなべて一億総白痴、オール馬鹿に国民をしよう、そういう意図がもしあるとするならば、これは重大な国家国民にとって、わが祖先の生めるうるわしの、この輝く伝統を破壊し尽くさんとするような意図があるとするならば、これは容易ならざることだと思うが、文部大臣はもっていかんとなされる。
  184. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘の点について、私自身よくわかりませんので調査したいと思います。
  185. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで先ほど文部大臣はです、これは国語審議会の制度を再検討の必要があるというようなふうに感じておるという御答弁でありますが、一体大臣はです、日本の教育全体を正そうということで非常な苦労をし、非常な努力を払ってやっておられるりっぱな政治家であり、文部大臣であると存じておりますが、その下部の局長初め当局がどう一体考えておるか伺いたい。
  186. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 担当局長以下文部省の公務員は、みな私と一体をなして仕事をいたしております。
  187. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 部下をかばうそのお心持はまことにうるわしくゆかしいと思いまするけれども、現実はさにあらず、天下の有識、令名の人々に対して、その報酬一日たった四百円。さらにまた、その審議会のやり方は公正のようなふうに思うとまことに上っつらをなでるような御答弁。あなたの言う公正のようなふうに真に行なわれているものとすれば、舟橋氏の爆弾声明や脱退の事態は起きてきません。福田恒存氏の発言も断じてあり得ない。日本中の新聞、雑誌、ラジオ等マスコミが一斉に取り上げるこういう問題は絶対に起こってこないと思う。一体、今までに十年間、文部当局は審議会の実情について十分、よく検討をしてやっていらっしゃったのかどうか、それを伺いたい。これは責任問題だ。重大な責任問題ですよ。
  188. 田中彰

    政府委員田中彰君) 委員手当のお話でありますが……。
  189. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 委員手当のことだけを言っておるわけじゃない。
  190. 田中彰

    政府委員田中彰君) 来年度は……。
  191. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 六百円だろ。
  192. 田中彰

    政府委員田中彰君) 千円に引き上げたいと思っております。  それから過般の総会で一部の委員が脱退をした、これは事実でございます。
  193. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 事実でなければオール日本の新聞に出るか。
  194. 田中彰

    政府委員田中彰君) 退場をいたします直接の動機になりましたのは、これは御承知かと思いますが、実は推薦協議会のメンバーを省令で互選をいたすことになっております。その互選の方法につきましていろいろ議論があって、その従来の選挙、投票といったような方法では、公正な推薦協議会が構成されるとは思えない、こういうことであったのでありますが、いろいろ審議の末、やはり従来の投票といったようなことになりまして、それに対してはもちろん非常な不満をもって退座をいたしたような次第であります。
  195. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 私は報酬の金額のことをかれこれ言っておるのじゃない。来年度になったら千円にする、あほらしくてものも言えません。これらの高名なる人々が、年に何日かを犠牲にして、自分の大事な仕事をほおっておいて、日本の国語、国字のために努力をささげて下さる。おそらく審議会の日だけじゃない。年中この問題について念頭から離れぬような、そういう思いを傾けていて下さるそれらの人々に対して、それで人間としての礼儀が尽くせるとお思いになるか。値上がりになったとして一日勤めて千円。去年は四百円。ピースが幾つ買えるか、ピースが少々とはあまりに礼儀を失するとは思いませんか。これは文部省ばかりじゃありませんぞ。文部省外郭の文化財保護委員会も同じこっちゃ。あとで質問しますが、大体文部省というところは、一体人権を尊重していなさるのか。一日渾身の奉仕をしてわずかに一千円、そんなばかな。大谷贇雄、一日中おつとめをして金一千円也のお布施をもらったら私は大いに慨慨しますよ。向こう様まかせのやり方でメーファーズ、たばこ少々。そういうようなことであっては、日本の国語、国字を審議していただく方に対して、私は礼を尽くしておるものとは思えないが、一体全体どうおぼしめしですか。
  196. 田中彰

    政府委員田中彰君) もちろん千円に上がったからといって、これで十分だとは考えておりません。まあ、あまりにも従来些少でございましたので、これを若干上げまして……。
  197. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 若干、千円。
  198. 田中彰

    政府委員田中彰君) 幾分なりとも御労苦に報いたいという気持でございます。
  199. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで文部大臣に伺いますが、この国語審議会は、今日では文部大臣の諮問機関でもない。建議機関になっておる。現実の必要とは全く無縁に、世論を無視して、十分な研究調査も経ず単なる改革のための改革案であっても、恣意的に建議し得るということを国語問題協議会では言っておるが、これをどうお考えですか、文部大臣。
  200. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) まあ先刻来申し上げておりますように、また御指摘のように法律で、ただ、国語審議会は国語及びローマ字について調査審議することと書いてあるだけであります。ですから、この性格が何であるかということも、なかなかつかみにくいのでございますが、従来の運営の仕方は、自発的に調査審議し、結論が出たものをそのまま政令等で、受け取って告示するというがごとき取り扱い方になっておる。内閣告示で受け取りまして公表するというやり方できておるようであります。そういう経過からいたしまして、委員もみずから選ぶ、審議もみずからする、その成果はきわめて通り抜け勘定的に扱われるという、それであっていいだろうか。これが単なる……。
  201. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこだ。
  202. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 意見発表にとどまれば、参考にすればいいという程度であるならばよろしゅうございますが、現実には教科書の問題にも当然これが影響を持ってくる。
  203. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 その通り。
  204. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) まあそういうことからして、新聞雑誌等におきましても、勢い、それを強制力はないと言いながら、事実上は強制されたがごとき結果になるという非常な影響力を持っておりますのに対して、政府は何らこれに、国民に対しての責任を負うという引っかかりがないという形になっております。もとより形は、内閣で受け取りまして、内閣訓令ないしは告示等で取り上げるという形は、政府が責任を負ったということではございますけれども、実資的には何らそこに考慮をさしはさむ余地がないごとき今までの慣例、慣行というものが、はたしてあれでいいだろうか。さりとて、委員が責任を持って下さるという制度にもなっていない。国民の側から見た、納得のいく制度運営という角度の再検討が必要でなかろうかというのが、先刻来申し上げている通りでございます。
  205. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 文部大臣のお考えの意図がだんだん浮き彫りにされてくるので、了承を私もしつつある次第でありますが、そこで、一体この国語審議会というものは、その建議案ができますというと、これは直ちに内閣訓令及び告示の形において公布される、こういうことでございますか。
  206. 田中彰

    政府委員田中彰君) 直ちにこれを訓令、告示に移すということにはなっておりません。たとえば最近では、新送りがなのつけ方が出ておりますが、これは……。
  207. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 今までどうなんだ、今まで。
  208. 田中彰

    政府委員田中彰君) 三十四年の十一月に建議を受けまして、翌年の七月にこれを訓令いたしております。その間、文部省としては検討をしたわけでございます。
  209. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 直ちに、インメディエートリーではない、多少の期間がある。こうおっしゃるんですね。しかし、その建議案をそのままやっぱり、出したのでしょう。いかがです。
  210. 田中彰

    政府委員田中彰君) 関係各省の意見も聞きまして、若干の修正をいたしております。
  211. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 一体その場合に、国語問題研究所に対しては意見を徴しておられるかどうか。またさらに、審議会自体は、りっぱな日本の国立の国語研究所があるが、その意見も聞かれるのか、またそれとの関係はいかが相なっているのでしょうか。
  212. 田中彰

    政府委員田中彰君) 国語研究所は、これはもちろん申すまでもなく、研究機関でございますけれども、これは実施に移す際のいろいろな問題点につきましては、十分意見を聞きましていたしたわけでございます。
  213. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 言葉にとらわれるわけではないが、堂々たる国家が立てた国語研究所がある。今、お話のようなことであるとすれば、この研究所は単なる研究機関で、まるで雲の上の楼閣か、仙人の集まりみたいな存在なのですか。もししかりとするならば、それはおへそみたいな存在としか受け取れぬことになる。単なるアクセサリー的機関ならおやめになったがよろしい、国民の税金による多額の国費を費やす必要がないと思われるかいかに。当然国立研究所にいろいろその考えを聞き、そこの研究成果と比較対象するくらいなことは当然の措置ではないか、国語審議会またしかり、十分お答えがないが研究所と国語審議会との関係はどうなんです。
  214. 田中彰

    政府委員田中彰君) 御質問は、国語研究所と国語審議会との関係だと思います。国語研究所とこの審議会との間には直接の関係はございません。片や国語審議会は文部大臣の国語問題に関する調査審議機関でございます。国語研究所は、文部省がいろいろな国語行政実施いたします場合に、お話のように基礎的な、科学的なデータ、調査に基づくデータを提供する、そういう関係に立っているわけでございます。
  215. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 何も関連ないようなあるような、はなはだ妙な、妙ちきりんな御答弁だが、科学的な基礎データを出すということならば、それはやはり国語審議会の人々にとっても重要なる科学的基礎資料を提供し得るものであると私は思うが、どうですか。一体それとの関係が何もないなんていうことがあり得ますか。
  216. 田中彰

    政府委員田中彰君) 私の言葉が足りませんで申しわけなかったのですが、国語審議会審議が行なわれます場合に、もちろん求められますれば、国語研究所の所長その他の職員が参りまして、基礎的なデータ提供もいたしますしまた説明もする、こういうわけでございます。
  217. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それごらんなさい。そこで、今の御答弁中、さきの国語審議会の建議案を各省で相談をして、修正をしたというお言葉がありましたが、これはきわめて重大ですぞ。役所が日本の国語、国字の問題について修正する権能が一体ありや、いなやということについてしかと、伺いたい。
  218. 田中彰

    政府委員田中彰君) 国語審議会は先ほど大臣からも申し上げましたが、調査審議機関であり、また建議機関である。われわれ法的にはこれはやはり広い意味で諮問機関と解釈しており、また、事実政令関係を見ましても、その議決がこの関係各省を拘束するような規定もございませんので、一応さように解釈いたしている次第でございます。
  219. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 君諮問機関だとおっしゃる、私は、さにあらずと了解をしておる、もう一度御説明願いたい。
  220. 田中彰

    政府委員田中彰君) 言葉を返すようでございますが、私は法律的な性格は、やはり広い意味でこれは諮問機関であると考えております。
  221. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 諮問機関なりとの御答弁、よろしい。しからば、その建議されたる案は、煮て食おうが焼いて食おうが、文部大臣の権限にあると解釈してよろしいか、いかん。
  222. 田中彰

    政府委員田中彰君) 法律的にはいかようにしようと、それは文部大臣の権限ということになりましょうが、しかし、慎重審議を重ねられた結論でございますから、これはやはり文部大臣としても当然これは尊重すべきものと考えます。
  223. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 現実にはどういうことになっておるか。建議案が出た場合に、直ちにという、私が言葉を使ったが、あなたは、いいえ、インメディエートリーでは決してない、直ちにでなく、ちゃんと期間をあけておると、こういうお話だ、現実には建議案はどういうことになっていますか、今までの例から申して、もう一度はっきりと伺いたい。
  224. 田中彰

    政府委員田中彰君) 建議がございましても、必ずしもそれを直ちに訓令、告示ということにしておるわけではございません。たとえばものによりましては、公用文の改善のごとき、これは内閣の問題に移しまして、それでこの通達といったような形をとって実施をしておるようなものもあるわけでございます。
  225. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 私は断じて了承いたしません。この委員会だけの言葉でお茶をにごされるというようなことは了承できません。もしそれ、建議案が直ちに内閣……あなたは直ちにじゃなくて、ちゃんと期間があるとおっしゃるが、期間があるとの御抗弁、なるほど直ちにという時間的な、物理的なインメディエートリーではなくして、あとからの、すなわち、期間ある直ちににしたって、これは大へん愉快な新造成語ですな。一年の間ほったらかしにしておいて、そうして出してもそれは直ちにと同じことじゃありませんか。そういう遁辞というか、妙ちきりんな、日本語にないような、わが国語辞典にはないようなお言葉づかいは、私は委細了承、断じてできません。これが、建議案が、内閣訓令あるいは告示の形で公布される、そうすると名目上はなるほど、強制力を持たぬが、結果においては新聞雑誌がこれを採用する、日本中の子供たちが学校教育でこれを用いなければならぬということになってくる、そういうふうに進められるとしたならば、これは、重大も重大も実にそれこそ重大問題だ。一体全体、文部当局はどうお考えですか。どういう認識に立っておられるのですか。
  226. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) その点も先刻来一再ならず申し上げましたように、きわめて重大な影響を持つ。その割に制度あるいはその運用等については、もっと考えねばならないような点があるように思います。
  227. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、調査局長は、現在の国語審議会を諮問機関だと強弁をなさるが現実は絶対にそうでないような方向に進められておるように私どもは聞いておるのでございます。従って、もししかりとするならば、これはほんとうの諮問機関に直して、その答申案というものは、長いこと時間をかけて、これは日本国民全体の大問題ですよ、子供から墓場にいくまでの問題、男性も女性も、しかも、われわれの祖先が営々築き上げてきた文化の豊かなる恩吹きが、一つ一つの言葉の中にこめられ、また、美しく、尊く、またまた赤き血がにじみ、そのゆかしき伝統が、そのはだの中にこまやかに含まれておる日本の言の葉、しかも、この問題は永遠に続いていく永続的問題なんですよ。永劫に続いていく問題です。わが子と孫とが受け継いでゆくのですぞ。事は、きわめて重大です。従って、これは学者の討議も経なければなりません。世論の試練も受けなければなりません。内閣訓令というようなもので、それこそインメディエートリーに、急速にこれか実施をするということであっては、私は断じてならぬと思う。これは日本の教育を正しい姿に是正しようという荒木文相の誠意の意図に反して、数千年来の祖先から受け継いできた日本の歴史と伝統とに対するきわめて軽率な、おそるべき挑戦だと私は思うのです。われわれの祖先と子孫に対してわが美しく、尊い伝統と文化に対して戦いをいどむおそるべきやり方だと思うのです。事はきわめて重大です。もし局長の言うように、現在においてもはっきりと諮問機関だということならばよろしいが、もしそうするならば私がかれこれ申し上げる理由は毛頭ありませんが、私、国民の一人として深く感ずるところは、現在の審議会局長の言うこととは全くうらはらの感を深くするものでありますが、もしそれ、私の憂うるがごとくであるとするなればですよ、文部当局は明らかに文部大臣の諮問機関として厳重なる法的措置を講ずべきであると思うがいかん。また、その委員の構成についてもその選出方法をきびしく改めて、万人が認むる国語学者、練達なる教育家、識見ある文化人、そういう人人をもって、しかも、広く国民の良識の多数をもって構成すべきであって、万が一にも一部の表音主義者や、無定見なその同調者の手によって、この民族永遠の大問題が取り運ばれていくというようなことがかりにもありとするならば、これは戦慄をおぼえるような、おそるべき重大事だと私は思うのです。私は最初に申しました言語政策を語る会に入って、日本のおびただしい漢字、これをやさしくするということに関しては、これは私自分がみずからの大谷贇雄の名前によって苦しんできた体験にかんがみて、従ってそのこと自体には私は賛成をしておる。しかし、周恩来の国語改革の、国語単純化のメッセージや文章までが現われてくるような言語政策を語る会であっては、これは日本の言語を通じて日本の国民を愚鈍化し、痴呆化す方向に追い込み先ほどの舟橋発言、日本の国を共産化する一大謀略の現われだと私も強く感ぜざるを得ない。私は文部省の片すみの一部課に、わずか四百円、六百円のお礼しか出していないというような非礼至極、国家民族の大問題をはなはだしく冷遇、軽視するようなやり方を文部当局がしておられるということに対しては、私は心からの憤りを感じずにおられませんよ。私は与党でありますけれども限りなき憤りを感ずる。日本の国語国字問題は国民全体の魂の問題ですよ、日本民族の魂の。この大きな問題をかくのごとくきわめて小さな範疇の中に、そしてしかも小さな視野の中において取り扱われておるということは、私は国民の一人として、いかにしても納得ができません。私は、これはもう政令も変えなければだめですよ。あほらしい。今審議会委員は自分たちで次の委員を選任する、そういうことをやって、一体、いいのですか。妙も妙もまことに妙なことですなあ。福田恒存氏がいう、初めから非民主主義だというようなことが、私はそこにあるのではないかと推測せざるを得ません。一体、そんなあほな話がありますかいな。あなたのいう公明なる民主主義的運営はそれは、どうも共産的民主主義ですよ。あなた方、周恩来的謀略にひっかかっておりはしませんか。私は身ぶるいするようなおそろしさを感じます。健全なる国語、健全なる日本民族の文史の発展のために、私は、国語問題審議会は単に文部大臣の諮問機関であってはならぬと私は思う。これは国民全体の、もっと総合的な、そうして、総がかりの、あらゆる知能を動員しての国語問題審議会に、ぜひしなければならぬと思う。祖先の残し伝えてくれた美しき文化と伝統を。この文化財をわれわれの子孫に伝え伝えていく、そうして未来永劫の日本の土台を作る、いしずえを作る最も大きな問題であります。文部省当局、どうか、文部大臣、私の申しましたことおわかりいただけましたでしょうか、この際荒木さん、大臣としての毅然たる御所信を私は承りたい。
  228. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御意見は参考にいたしまして検討させていただきます。
  229. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 簡単に関連して。三十四年の新かなづかいを決定するにあたって、文部省としては関係各省と協議をしてきめた、こういうお話ですが、関係各省とはどういう省であるか、一体各省として国語に関連するかなづかいの問題を審議する権能を持っておるのかどうか、一体どういう省であるか、どういう趣旨で協議をされるつもりであるか、それを一つ伺いたい。
  230. 田中彰

    政府委員田中彰君) 新かなづかいを実施いたします場合には、総理府を初め各省の意見を聞いたわけでございます。
  231. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 どういう趣旨でその各省の意見を聞くのですか。農林省とか通産省、運輸省、それはどういう権限でこの新かなづかいについて発言をするわけですか。そういった権能を持っているのですか。そういう権能と責任を持っているのですか、各省は。
  232. 田中彰

    政府委員田中彰君) これは先ほども申し上げましたように、行政機関内部で行なわれるものでございまして、これはやはり各行政機関の協力なしにはできないわけであります。そこでまあ意見を聞いたわけでございます。
  233. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 ちょっと理解ができないが、いいです。
  234. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 まことに恐縮ですが、もうしばらくお許しを一つお願いを申し上げます。  そこでその次には文化財保護委員会の問題に移りたいと思います。最近、文化財保護委員会が担当しておられる、われわれ祖先が築き上げた日本の美しい伝統に輝くところの重要文化財が、法隆寺の金堂以来、相次いで灰じんに帰しておる。以来どのくらいございますか。
  235. 清水康平

    政府委員(清水康平君) お答え申し上げます。法隆寺の壁画が燃えましたのは昭和二十四年の一月二十六日でございますが、その後、文化財保護委員会が発足後、火の不始末等によって焼失いたしましたのは、愛知の鳳来寺山、東照宮の御供所、それから山梨の金桜神社、それが三十年十二月でございます。その後、延暦寺大講堂が三十一年十月に焼けております。
  236. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 金閣寺は……。
  237. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 金閣寺は文化財保護委員会発足前でございますが、鹿苑寺――金閣寺は二十五年の七月に焼けております。
  238. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 日本の大事な、国民全体の至宝ともいうべき重要文化財が相次いで事故のために焼失をする、に帰する、ついえ去ってしまう、これは日本の伝統を滅びさせることであって、きわめて重大な問題であると思うが、文部大臣はいかにお考えでありますか。
  239. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お説の通りでございまして、まことに遺憾しごくでございます。
  240. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで最近に起こった日光の東照宮の薬師堂の問題でありますが、聞くところによれば、これは文化財保護委員会としては、相当の防災費用も出し、多額の国費を投じて、その保護に当たっておるということですが、一体どのくらい補助を出しておるのですか。
  241. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 御承知のごとく、日光二社一寺――東照宮、二荒神社、輪王寿、これにつきまして文化財保護委員会発足後、防災施設といたしました工事費総額は、三十五年度までに一億一千九百五十一万七千円に達しておりますが、そのうち二十五年度から国で補助いたしましたのは、そのうち五千九百二十五万三千円に達しております。
  242. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そうするというと、あなた、日本のあなたの方の、文化財保護予算の非常に多くの国費が日光にいっておる、こういうことですか。
  243. 清水康平

    政府委員(清水康平君) ただいま申し上げましたのは、昭和二十五年度から三十五年度までの累計でございます。三十六年度に計上しております防災費の予算補助は一億四千五百八十一万九千円になっておりますが、そのうち、ただいまのところ防災施設として日光に補助する予定になっておりますのは五百九十万程度になっております。
  244. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、この日光の薬師堂の問題は、いろいろ防災の施設等はなかなか……水等も非常に整っていて、その防災について万端、国費は大いにいっておるので――すべて工合よくいっておると思われるのですが、そうするというと、これは、管理の点において重大な欠陥があったということですか。
  245. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 日光寺山についての防災施設の状況は非常に整っておったと申しても差しつかえないと思います。一々具体的のことは略しますが、このたびあのようなことが発生いたしまして焼失いたしましたことは、まことに遺憾でございますが、その原因はどこにあるか、究明いたしてみますると、やはり何と申しましても、火器の不始末にあったということを申し上げることは、まことに遺憾に存ずる次第でございます。
  246. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 いろりの不始末だと聞いておる。まだあなた、この薬師堂の隣の建物でも、火気厳禁のところであるにもかかわらず、電気こんろや何かで暖をとっておるという話、このことは御承知ですか。
  247. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 私どもといたしましては、今日までいろいろな機会をとらえまして、管理上、特に火器については注意するように、そのつど指示して参ったのでございます。日光につきましては、今日まで聞くところによりますというと、湯たんぽをもって、一時間ごとに湯たんぽを持っていった。ところが、このたびの薬師堂につきましては、電気器具を使い、いろりも使ったということを聞いて、実はがく然として驚いたような次第であります。それで、まだ一、二カ所そういうところがあるようにあとで報告を聞いて、火の取り締まりについては、より一そう慎重に厳重にやることを要望いたしておる次第でございます。
  248. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、この薬師堂は昼と夜との管理が違うというが、はたしてそうなのか、その点を聞かせていただきたい。
  249. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 御承知と思いますが、明治初年の神払分離の関係上、それからいろいろ問題が出たのでございますが、薬師堂を指定いたしましたのは明治四十一年でございます。その当時は東照宮薬師党と指定してあったのでございますが、御存じだと思いますが、去る三十年、財産登記の関係で、輪玉寺が登記いたしたというところから、所有権について、今いろいろ争いの問題ができております。従いまして管理の面におきまして、どうなっておるかということを申し上げますと、薬師堂は東照宮の境内にあるわけでございます。昼間は輪王寺が、これをお参りする人がありますので、これの管理をいたし、夏は五時、冬は四時に締めて家へ帰る、その後は東照宮がこれを管理するというのが今日までの実情であったわけでございます。
  250. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 問題の根源はそこにある。これは新聞にも出ませんが、容易ならざる問題です。昼は輪王寺が管理をして、夜は東照宮さん、一体そういう二つの頭を持つヘビの物語のような管理の仕方をしておって、両方の頭がおれはあっちへ行こう、私はこっちだなんということでは、事故が起こるのはあたりまえの話ですよ。そこで一体、この東照宮管理の時間に焼けたのか、薬師寺側担当の時間だったのか、どっちなんです。
  251. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 出火がわかりましたのは、その日の午後七時五分ということに相なっております。
  252. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そうするというと、この責任は東照宮側にあると、こういうことでございますか。
  253. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 管理の時間は、ただいま申しましたような関係になっております。東照宮は東照宮として自分の管理の時間に出火したからわれわれの責任であると申し、輪王寺は輪王寺で、内部から出火したのであるからして全面的にわれわれの責任であると、かように申しておる次第でございます。
  254. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そうすると、管理の時刻について言うならば、法的には東照宮に責任があるということなんですね。輪王寺の方は管理担当の時間ではないんだから、もし強弁するならば、自分の方には責任はないと、こう言い張り得る状態にあったにもかかわりませず、輪王寺の執事長は非常な重大な責任を感じて、辞職をしたと聞いておりますが、東照宮の方はいかがですか。
  255. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 先ほど御説明が舌足らずであったのでありますが、輪王寺側は内部の火の不始末から出たから自分たちの責任であると、かように輪王寺は輪王寺として言っておるわけでございます。私どもはこれはやはり夜昼にかかわらず輪王寺も東照宮も、私どもは日光は一山でございますので、心身、身も心も一体となって、管理に万全を期していただきたいと思っているわけであります。
  256. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それはわかります。その通りですが、そうでなければならぬが、現実には夜の七時五分ころに、職員の休憩室付近から出火をしたと、その時刻というものは、東照宮側の責任じゃないんですか。どうなんです。
  257. 清水康平

    政府委員(清水康平君) ただいま失火の原因、責任については警察当局が調査いたしておりますが、火の不始末が何と申しましても薬師堂の内部から出たというところから、薬師寺は自分の方の全体の責任であると、輪王寺はそう言っております。東照宮は東照宮で、自分の勤務の時間中に出たんだ、勤務の時間中に火が出たんだから自分らの責任である、かように申しておるわけであります。
  258. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それは割り切れぬ話です。管理を担当する義務のある時間内のことなんだから、当然お堂の内部も東照宮側が全部を見張ることはあたりまえのことじゃないんですか。そうでしょう、その管理の統率下にあるわけなんでしょう。輪王寺の方は道義的な責任を負うということでしょう。しいて言うならば、そういうことなんでしょう。道義的な責任、そう言い得るのではないかと思うが、それは警察当局が今調べているということだから、だんだん明るみに出てくるでしょうけれども、常識的に考えると、そういうことになるじゃありませんか。そこで、輪王寺の執事長は辞職をしたが、一体東照宮側の方は、国民に対してこの世界に響き渡っている日光の、この名刹、名宝、このきわめて重要な文化財の建物焼失について、どういう責任を感じておるのか伺いたい。
  259. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 出火後、東照宮も輪王寺におきましても責任者が参りまして……。
  260. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 参ったくらいじゃすまぬじゃないですか。一方は責任者が辞職しているじゃないですか。
  261. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 辞職を責任を感じて申し出ております。それから今御指摘の輪王寺の執事長については、辞表を出したということも聞いております。東照宮についてもそれぞれ責任を感じておるわけでございますが、私の方にそのような辞表を出したとかいうようなことは、まだ言っておりません。
  262. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それはおかしいですよ、おかしい。輪王寺さんの方は自分の時間外にあるのにかかわらず、執事長が全責任を感じて辞職しておる。これは新聞にも発表している。東照宮さんの方は、これはあなたの方には恐縮して何でしょうが、これは日本の、精神的にいえば道義の中心であるお宮さんの支配者として、日本の、この世界的な重要文化財を焼失したということに対して、その重大な責任問題について、その意思表示を国民に対してするということは、これは当然のことではありませんか。その点はどうなんですか。
  263. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 責任の問題は、まず第三者から、あるいはまた文部省からあれこれ言うよりも、本人の実感によって措置いたさせなければならぬと思っております。
  264. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 私ははなはだ遺憾なる事態だと思う。このことは日本の道義のために、遺憾の意を表せざるを得ません。  そこで、こういうような日本の重要な文化財が次から次へ焼失をすると、烏有に帰するということは、日本の尊い文化が、貴重な国民の宝が、一つずつなくなる、焼失していくということなんです。従って、文化財保護委員会としても、国家としての補助金を出してあるのだから、それでもってわが事成れりというような考え方では私はいかぬと思うのです。私は日光のようなものは、本来いえばこれは国宝ですから、国が管理をしても私は差しつかえないものと思う、宗教法人ですから、両方とも。その点むつかしいかもしれないが。宗教法人尊重の憲法の建前から、その所有権に関する問題も出てきましょうけれども、これは国民的な、そうして世界の重要文化財としては、私は当然これはそういうようなことが望ましいことではないかと思いますが、それについてお考えをお述べ願いたい。
  265. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 最初に防災についてのお話がございましたが、三十六年度も防災施設は全額で一億四千五百万円ばかり計上してございます。私どもは今後もちろん防災についても充実して参るつもりでおりますが、それをもって事足れりとは思っておりません。防災以上に必要なのはそれを所有し、管理している人たちの心の防災こそ一番大切ではないかと思っておるのでございます。  それから、ただいま社寺等の建物の国の管理のお話がございましたが、それも一つのお考えかと思うのでございますが、日本の大体の宝物、建造物というものは社寺所有が多いのでございます。その人たちが自分のものを、しかも貴重な国民的な財産であるというお考えで所有し、管理するのが現在の状況では一番適当ではないかと思っております。
  266. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 そこで、国家が管理するということになると、これはいろいろ所有権的論議も生じて、これはなかなか問題が起こってくるかもわからぬが、しかしながら、これは防災施設に国の金を出したからそれでそのままでいいのだという考え方は、はたしてどうか。今お話のように社寺がみずからこの国民全体の宝だという、その重要性にかんがみてしっかりとやること、これはもとより当然なことですよ。これは日本国民として祖先伝来の、日本重要文化財を守っていくということは当然のことなんです。ところが、残念ながら、今日、日本民族の中に、わが民族の、このうるわしき土を守る、民族の美しき伝統を守る、守ろうという意識がだんだん薄れてきていることの一つの現われがそういうところに出てきている。従って、これは国としても、金を出したからそれでいいんだということであっては断じてならぬので、日本の重要文化財に対しては国も積極的に社寺と協力をするという態勢をおとりになることが、これは大事だと思うが、文部大臣、どうお考えでしょうか。
  267. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 御指摘の通り、もちろん今政府委員から申しました通り、文化財を保管しておるものが主たる責任をもってやるべきは当然ですけれども、国がやはり協力する、指導するということは、むろん必要であろうと思います。
  268. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 どうか一つ、相次いでこういう――もう法隆寺のあの壁画のごときは、ほんとうに、何とも言いようのない、あの美しい、もう世界の、言葉で言い尽くせぬ尊い宝でした。全くこの日本の美しさが、この日本から、地球から欠けたということに対して、私は胸痛む思いです。次から次へそういうことが起こることにつきましては、政府としてもこれは重大な一つ深い関心と、また、今文部大臣からのお話のように積極的な協力態勢を一つ考えなければいかぬと思います。どうか、十分真剣な御検討を願いたい。  同時に、全国の重要文化財を管理しておる諸君、並びに国民のことごとくが、文化財の尊きゆえんを、この機会において十分に反省をし、再認識をする。そういうやっぱりPRをあなたの方でなさらなければならぬと思うが、これについてどうお考えですか。
  269. 清水康平

    政府委員(清水康平君) ただいまの点はつつしんで拝聴いたしたわけでございます。その線に沿うて、今後十分努力して参りたいと思っております。
  270. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 それから、これは実は私は、自分の郷土のことですから、国会で論議をしばらく差し控えておりましたが、衆議院の方で、社会党の元副議長高津正道君がこの問題を取り上げたので、この際私は、郷土の恥ずかしい問題ですけれども、あえてここにお尋ねをせざるを得ぬのでございますが、それは加藤唐九郎氏の問題、すなわち永仁のつぼの問題であります。  これまた日本中を騒がせ、新聞、雑誌等、マスコミことごとくに取り上げられた、きわめて奇々怪々、昭和の妖怪変化物語のようなことだと私は思う。これについて、その後、文化財保護委員会の方が名古屋へ行きなさって、近く指定を取り消すんだというようなことを言われたということですが、その事態は一体どうなっているかを伺いたい。
  271. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 永仁銘瓶子、いわゆる永仁のつぼにつきまして、だいぶ物議をかもしましたこと、文化財保護委員会としてはまことに恐縮に存じている次第でございます。  御承知と思いますが、経緯を簡単に申し上げますと、昨年来、地元の研究家から、あれは鎌倉時代のものではないから、という要望がございました。文化財保護委員会としては、指定してあるものも指定してないものも、常に調査研究しておるわけでございますが、そういう要望がありました関係上、虚心たんかい、真実を明らかにするという態度で、昨秋十何名の専門の方々を中心にして、今日まで様式、技法的な調査のほかに、科学的調査もいたしておりました。大体一つの方向に進んで参りましたので、昨日から開いておりまする文化財専門審議会に諮問いたしまして、不日答申があると思います。その答申に基づいて文化財保護委員会としては適切な措置をとりたい、かように思っておる次第でございます。
  272. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 永仁のつぼ三点のほか、さらに九点も検討を要するというようなことを関係者が言い出し、また、それを強く要望をしておると聞いておりますが、その点はこれまたいかがですか。
  273. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 調査の方法といたしましては、鎌倉時代の焼きもので間違いのないもの、それから近代作と思われるもの、出土の明らかなもの、形の完結されたもの、九十一点集めました。その他、形は完結しておりませんが、破片なども百五十件ばかり集めまして、そうして調査をいたしたわけでございます。当初いわゆる永仁のつぼがまずいろいろ問題になるということがわかり、それと同時に他の二点も相当一つの方向に向かっておるわけでございます。重要文化財に指定されておるもののうちでは、あからさまに申しますというと永仁銘古瀬戸瓶子のほかに他の二件が今審議中でございますので、あまり私専門家でないもので、内容をここで申し上げるのはどうかと思いますが、その二点が今慎重に専門審議会審議中でございます。
  274. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 まだ狛犬なども検討されているわけですね。そのほかにまだいかがわしいと思われるのが九点あるというふうに言っておるが、この点はどうですか。
  275. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 重要文化財に指定されたるものでは、以上申しましたような三点でございます。ただ、御承知かと思いますが、昭和八年に制定せられました重要美術品等認定等に関する法律というのがございます。その中には数点まだ研究を要するものがございます。これも御承知かと思いますが、重要美術品に認定されたるものは当時の社会情勢から、非常に外国へ出る。外国へ出さないで、一時これを仮指定的に認定いたしまして、そうしてゆっくりこれを調査研究をして、そうして当時の、国宝にするものはする、できないものはできないで落とすという意味でもって、重要美術品に認定されたものはあります。その中には調査いたしましたところが、相当これは考えなければならぬものが数件ございます。
  276. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 相次いで重要美術品九点がさらに検討を要するのだと伝えられております。一体、文化財保護委員会には、専門審議会に専門委員の方が委嘱をされてあって、そうしてこれが四つの分科会に分かれていて、それぞれに検討をなさっていらっしゃる。一体、これまたさっきの国語審議会の質問の際の話と全く同じように、ほんの薄謝も薄謝も大薄謝で、これらの天下一流の方々が重要文化財の審査に当たっておいで下さっておるわけですが、一体、この文化財保護委員会としては、今日、この専門委員会の方々は天下一流の方々ばかりだが、これだけの人数で、これらの方々だけでいいとお考えですか。これは、もっとさらに細密な分科会にして、人数を大いにふやす必要があると私は思うのですが、この点について、広くその道の権威を網羅する必要ありやいなやということを伺いたい。
  277. 清水康平

    政府委員(清水康平君) 御承知のごとく文化財保護委員会の諮問機関であります文化財専門審議会の専門委員は九十名以内となっております。学問の進歩等によりまして、研究の内容も細分化されつつありまするので、現在の九十名では若干少ないのじゃないか、かように考えておりまして、三十七年度、来年度予算ですか、その際にはただいま申しました通り、各方面の研究で細分化されてきておりまするから、若干程度ふやさなければならないのじゃないかと、ただいま検討をいたしておる次第でございます。
  278. 大谷贇雄

    ○大谷贇雄君 これは日本の重要美術、重要な文化財を審議をして下さる日本の権威者の方々でありますから、でき得る限りたくさんの権威料に御委嘱をしていかぬというと、今度のような間違いが起こる。従ってこの点については、十分な一つ御配意を願いたい。三十七年度といわすに、どんどん日光でも。まことに残念千万な次第で、この重大な日本の過失を犯したこの機会にもし費用が不足ならば補正予算でもなんでも組んでもらわなきゃいかんじゃないか。文部大臣、大蔵省に乗り込んでもらって、大いに予算をぶんどってきてもらうというように、的な、烈々たる意気込みを示してもらわぬことにゃいけませんな。世界の尊く、しかもかけがえのない至宝がなくなっていくというような重大な問題ですから、そこで、重要文化財の問題が私の頭にこびりついているので、 また、思わず唐九郎問題が逆戻りしましたが、永仁のつぼの問題については、これははなはだ奇怪千万なことである。そうでしょう。重要美術品に指定され、その後相当な年月がたってから、これは私が作ったものですなんていうようなことを、まるで大地のどん底から幽霊でも出てきたように、加藤唐九郎氏がぬーっと出てきて、やったというわけなんですね。これはちょっといやちょっとどころが、すこぶるおかしい、妖怪物語じゃないですか。ちょいちょい加藤唐九郎先生はソ連や中共、共産圏にお出かけでしたね。どうもはなはだ奇妙な、きてれつな感じが、私にはいたしておりますよ。善良純真な、この陶芸のいわば天才的頭脳に洗脳手術が施されたんじゃないかなという疑問、憶測すらわが胸の中にきざしてくるほどです。文化財保護委員会は、天下の権威者が集まって、そうして指定をされた。そうすると、ぬーっと幽霊みたいに出てきて、あれは私が作りました作品でございますと暴露なさる。すると、文化財保護委員会は、おそらくは審議会の方々の凝集的意見統一も行なわれないうちに、担当係官の一人が名古屋へ行って、そしてこれは取り消すことになろうと放言をされる、妙ちきりんな話ですな、これは。あらゆるものの権威を根底からゆすぶろう、ぶちこわそうという意図が働いているのではないかとひそかに想像するのです。身ぶるいが私の身内に起こっています。さっきの国語の問題、文化財の問題、しんしんことして日本のあらゆる方面の権威は失われつつあるのではないかと私はおそれます。これは私はきわめて重大な問題だと思う。どうか一つあらゆる権威者を総網羅をして、そうして、重要美術品、重要文化財の指定等に細心、周到な心配りをしていただいて、今度のようなへまなことのないよう、くれぐれも御注意を。これはどうも妙ですよ。次から次へと奇々怪々が起こってきたらえらいこっちゃ。どうぞこれは河原委員長にも、きょうここにおいでになっておらぬが、あなたから一つ十分お話願って、また、これは文部大臣にも大いに注意を喚起しておきます。おそるべき魔の手がわが国の文化面にまで入り込んできておるという私の想像が杞憂でなければ幸い。もしかりにもそんなことがあり得るとするならば、私は、これは容易ならざることだと思うので、十分その点について、一つ細心なる心づかいを、心配りをお願いいたしたいと思います。  それでは、関公安調査庁次長に長時間お待ちをいただいて、実は赤化の魔手にいざなわれつつある全高連問題全国高等学校生徒連合会問題をやろうと思いましたけれども、私の持ち時間がすでにないとの事でございますので、わざわざ出席して下さった関さんには失礼ですが、わが良識においてこの質問を一応打ち切って、他の機会におきましてこの問題等につきましてはお尋ねをいたすこととして、一応私の質問を打ち切ることにいたします。
  279. 東隆

    主査東隆君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  280. 東隆

    主査東隆君) 速記始めて。
  281. 米田勲

    米田勲君 それでは先ほどの質問に引き続いて残っておる部分を時間の関係もありますので、できるだけ端折って御質問を申し上げていきますが、ぜひ答弁はあいまいなことでなく、的確に一つ簡明にお願いをいたしたいと思います。  まず、最初にお伺いをしたいのは、公立文教施設整備費の問題についてであります。初等、中等教育改善充実には、従来もそうでありましたが、各都道府県の教育委員会は、昨年早くから文部省に対して種々陳情をし、予算増額の必要な実情を訴えてこられたことは御承知の通りであります。ところで、その細まれた予算を見ますると、前年度予算百二十六億四千八百万円に対して、三十六年度は百一億七千五百万円になっております。二十四億七千二百万円の削減であります。私はそのうち内訳を調べてみますと、この削減のほとんど全部は義務制諸学校の分から大きな削減を見ておる。つまり前年度は百十七億円であったものが、三十六年度は八十八億八千六百万円と、二十八億円の大幅な削減をしておるわけです。この予算対象となっているものは、御承知のように、不正常授業の解消、屋内運動場の問題、僻地集会室の問題、危険建物改築、学校統合等の問題等についての予算でありますが、それが二十八億円も大幅に義務制諸学校において削減を見ておる。非義務制諸学校の分については逆に増額をしておる。減額事務費だけであります。私の質問したいのはこのような大きな削減を三十六年度にするという結論を得た文部省の見解は、一体それの対象になっておる諸問題がすでに削減を必要とする段階にきておると判断したのか、それとも他の理由によるものか、その点を明確にしていただきます。
  282. 福田繁

    政府委員(福田繁君) ただいま御質問になりました公立文教施設整備費の問題でございますが、御指摘のように、形の上におきましては、三十三年度と三十六年度予算総額におきましては、約二十八億円減額になっております。ところでこの内容につきましては、御承知のように、三十五年度の当初予算に加えまして三十五年度補正予算を約四十億組んだのでございます。従いまして、この補正予算の分が大体三十六年度と比較いたしますと、減額されるという格好になるわけでありますが、この問題につきましては、おっしゃる通りに中学校の不正常授業の解消ということで校舎の整備を続けて参ったのでありますが、これにつきまして従来当該年度において、当該年度の五月一日現在における生徒数を押えまして、そしてそのときの不足教室を解消していくというようなやり方をいたして参ったわけでございますが、三十五年度補正予算からむしろ前向きにこれを整備する必要があるというような考え方で、特に三十六年度の初頭におきます入学生徒増加を懸念いたしまして、三十五年度予算で、補正予算をもちましてあらかじめ必要な教室をできる限り整備しておく、こういうふうな観点に立ちましたので、補正予算約四十億をお願いしたわけでございます。同時にまた三十六年度予算におきましては、これは三十六年度に必要な教室だけでなくて、三十七年度に必要な不足教室の解消も目ざしまして、これを繰り上げてやるというような観点に立ちまして、そういった従来の扱って参りました方針の変化によるもの、こういうように御了解いただきたいと思います。
  283. 米田勲

    米田勲君 もう一度お聞きしますが、この公立文教施設整備費というのは、ただ単に不正常授業の解消だけがその目的ではない、この費用は。私は今まで文部省がこの予算を立案するまでの間に相当資料整備されての結論だと善意に解釈するわけです。ところが、この問題を一つ一つ検討していきますと、非常に問題があるということに気がついたわけです。これはお問いしながら実情を申し上げたいと思いますが、まずこの費用の中にある屋内運動場の問題ですが、これは私は今ここでは一例として北海道の場合を申し上げますが、実情はこうなっております。北海道の屋内運動場のない学校屋内運動場がいまだにない学校が一千四百三十九校あります。その内訳は小学校が九百二校、中学校は五百三十七校、数字をお聞きになってもおわかりのように、非常に多くの運動場のない学校がございます。小学校における必要坪数は四万三千二百十一坪と計上されておるし、中学校の場合は二万四千三百六十坪といっておる。そうしてこれに対して北海道の教育委員会ではすでに計画を立てて、小学校の場合は三十校分、中学校は四十六校分、その必要坪数として小学校は二千二百七十一坪、中学校は四千二百四坪と、計画を立てたわけです。実際に今ここで時間のないのに屋内運動場の価値や内容を論ずる必要はないのですが、私はどうもこういう実態を北海道の場合に考えてみますと、全国の各都道府県の総計は、一体実態がどうなっているのだということに疑問が起こるわけです。あなたにお伺いしたいのは、全国的に見て運動場のない学校が現在の時点において小学校では何校、中学校では何校、その必要坪数は一体どういうふうになっておるのか、そうしてそのことに対してこの三十六年度で各都道府県の運動場の建築計画は、どういうふうにあなた方の方に陳情して示されておるのか、これをまず小中学校ごとに校数と計画の総坪数を二つ集計したものがあればお伺いをしたい。
  284. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 御承知と存じますが、小学校及び中学校の屋体につきまして、これは公立文教施設の全体計画の中の一環といたしまして、策定いたしておるわけでございます。昭和三十三年の調査によりますと、小学校の全体の不足屋体坪数三万六百四十一坪、中学校七十二万五千十一坪、こういうような全体数になっております。私どもは校数で取り上げないで坪数で取り上げておりますので、坪数で申し上げるわけでございますが、ただ小学校におきましては、この既定の五ヵ年計画の中では戦災を受けた小学校の屋体のみを復旧整備する、こういうような観点から、一般の非戦災校については既定五ヵ年計画では取り上げていないのであります。従って、もし今御指摘になりましたような北海道のような事例を伺っておりますと、あるいは戦災を受けた学校以外の小学校の屋体まで入っているのではなかろうかというように伺ったのでありますが、小学校の方は、現在の五ヵ年計画では戦災校のみでございます。従って今申し上げました三万何がしの坪数は、戦災校の坪数でございます。従来三十四年、五年と二カ年整備をして参りまして、三十六年度実施坪数を加算いたしますと、今申し上げました全体坪数の中で、大体三十六年度までに小学校約五九%、それから中学校、五八%実施される、こういうような計画になっておるわけでございます。従って今後の問題としては、今おっしゃるような意味合いの小学校については、非戦災校についての屋体の整備というものも、当然今後の問題としては検討しなければならぬ、かように考えておるわけでございます。
  285. 米田勲

    米田勲君 これは、小学校の方の屋体の非戦災校については補助対象にしておらぬということは知っておるのですが、しかし、北海道の場合はほとんど戦災を受けていないのです。それでもなおかつ今日に至るもなおこれだけの多くの屋体のない、あの寒冷積雲の地で屋体のない学校があるということですから、予算関係上、小学校の場合は非戦災校については該当させないと、一応過去においてはきめたでありましょうけれども、こうやってやはり国の経済力もついてきている今日だし、屋体のない学校生徒の冬季における学習の状態というものは、あなたは経験がないかもしれませんが、よく現場の教師や生徒の立場に立って、私に言わせるなら、小学校についても中学と同様、補助対象にするよう思い切って切りかえるべきである、それがやはり文部省のやるべき態度ではないかと、こう思うわけです。時間がありませんが、あなたの方で今度組まれたこの予算は、私は現状における屋体のない学校中学校の場合でいっても、一体その半分程度のものしか解消できないようなことであって、この点についても、もっと思い切った改善策が戦後十五年になっているのですから、やってもらわなければならないはずであったというふうに批判をしておるわけです。  次に、この項目の危険建物の改築費の問題ですが、これは三十六年度十九億見積もっております。全国的に一体危険建物の状態はどうなっておるのかということを資料があればお伺いしたいのですが、私はよく例を北海道のことにとりますけれども、北海道で危険点数が四千五百点以下であるものについて、現在八万八百十坪あります。そうして昭和三十六年度で北海道の教育委員会が改築計画を持っておるものは二万六千六百九十八坪、こういう計画であったわけです。ところが、あなた方の組んだ予算では、北海道の問題ですらあまり消化できないのじゃないか。ましてや全国的に見てこの予算では実情に非常に合わないのじゃないかということを痛感をいたしますので、お聞きしたいことは、全国の危険建物の総坪数は小学校中学校おのおの何校で、その坪数は幾らか。三十六年度の都道府県教育委員会がすでに持っておる改築、建築の計画は小学校中学校おのおの何校で、坪数はどうなっておるのか、これを一つお聞きしたい。それとあなた方が見積もったこの予算との関係を見れば、これは結論が出てくるはずであります。
  286. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 義務制学校危険校舎の問題につきましても、先ほど申し上げましたと同様に、昭和三十四年度から五ヵ年計画を立てて、これの整備を逐年やって参っておる次第でございますが、三十三年の危険建物の全体の計画坪数は大体耐用度四千五百点ないし五千点のものをとっておりますが、それによりますと、二百二十一万七千三百二十四坪、これが全体計画でございます。これが基礎数字でございますが、これに基づいて五ヵ年計画を立て、七〇%を補助対象事業といたし、三〇%は単独事業というようなことでできておるわけでございますが、今までにこの計画に基づいて整備されましたパーセントを申しますと、三十四年度に約一九%、三十五年度におきまして一五・六%と整備して参りまして、三十六年度予算による実施坪数を加算いたしますと、大体四七・六%というような比率になるようでございます。もちろん危険校舎の改築はこれで十分だと私ども申し上げられませんけれども、しかしながら、町村といたしましては、危険校舎の改築もやらなければならぬ、中学校の不正常授業を解消するための校舎も整備しなければならぬ、こういうようないろいろ整備の問題が重なっておりますので、いずれを先にするかというような問題もございます。従って各都道府県の教育委員会と町村の側との実施計画の相談におきましても、大体三十六年度におきましては、中学校の不正常あるいは小学校の不正常授業の解消のための校舎をできる限り優先して取り上げていくというような考え方もございますので、従って一般の危険校舎の改築につきましては、大体三十六年度予算坪数の十三万四千坪程度で間に合うというように考えておるわけでございまして、各県から出て参りました実施計画の坪数もそれほど上回っていないのが現状でございます。
  287. 米田勲

    米田勲君 文部大臣、あなたにこの問題の締めくくりとしてお話をしたいのですが、今進めておる予算の組み方、これは五ヵ年計画によってやっておるという答弁なんですね。ところが、この五ヵ年計画立案当時の国の経済力の実態と、今政府が将来を計画しておる経済計画並びに経済力というものは、飛躍的に変わってきているはずです。ところが、予算総体の関係上不正常授業の解消だけに重点を置くというふうに文部省は考えられるかもしれないが、しかし、教育の現場には、あらゆる個所に直接的に問題がころがっているのです。予算総体で何か重点をここに置いてやればいいということには教育現場の実態はいかない。そこにおいては、危険建物に入っておる子供をかかえて教育をしておる。その教育の状態というものは一日も早くこれを解決しなければならぬというのが親の考えであり、子供の考えであり、教師の考えである。だから私は、あなた方の五ヵ年計画というものは、それは一応立てられたでしょう。しかし、先ほども言ったように、この五ヵ年計画の修正を今の段階では必要とするのではないか。前に立てたのだから、これをこのまま押していくというやり方は、今日の日本の国の経済力の伸びと、今後の高度経済成長政策から考えてみても、ひとり文教の計画だけはこういう状態に依然としておいていいということにはならないと私は思うわけであります。そういうことで、文部大臣にこの五ヵ年計画の修正を、今年度はできないとしても、少なくも来年度予算編成までの間には修正を必要とすると私は思うが、考え方はどうか。それともう一つは、地方の教育委員会がいろいろな計画を立て、現場の要求を聞いていろいろな計画を立てても、あなた方の方の計画でこれが切られると、その問題は少なくも三十六年度は解決がつかない、こういう結果になる、あなた方の予算の組み方によって、都道府県の教育委員会がいかにいいことを考え、問題の解決を大幅に前進させようとしても、そのことは解決つかない。そういうあなた方の立場なんです。やり方一つによってだね。そこで、私はあらためて繰り返して申し上げますが、五ヵ年計画の修正を来年度予算の編成までの間にやる意思はないか、そういう段階がきているのじゃないか、こういうことと、もう一つはこの予算公立文教施設整備費に二十数億円の予算削減をするようなやり方をしているが、もっと違う部面について、不正常授業の解消だけでなく、今私が質問で取り上げたような部面に対しても、予算削減をしないで、その点についても力を入れて並行してやっていくという考え方に、私は文部大臣、担当の皆さんがなって、予算を獲得すべきなんです。それが文部省の任務ではなかろうか。それが都道府県の教育委員会の要請にこたえていくことになるんじゃないか。こういう予算の削減の仕方、予算の組み方、それは実態に合わないので、私は文部大臣の見解をこの際お聞きしたい。
  288. 福田繁

    政府委員(福田繁君) 先に……。もちろん三十四年から立てております五ヵ年計画自体では、一応のこの整備の目標、目安がなくては整備計画上困りますので、そういった意味で目標を示したものと考えております。従って、これが絶対不動のものではございませんので、私どもとしましては、三十八年の五ヵ年計画の終了の年を待たずして、できるだけ内容面におきまして、合理的な改正を極力やっていきたい、こういうようなことで常に研究いたしているわけでございます。
  289. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 五ヵ年計画策定の計画と必ずしも私明確に念頭になかったものですから、発言を差し控えましたが、お説のように、教育施設をできればもう理想的な状態に持っていきたいという気持でこの問題と取っ組まねばならぬと思います。ただ、実際問題は、五ヵ年計画等策定するにあたっては、大蔵当局との大筋の話がついていなければ、これは画餅でございますから、その点に相当苦心が今まで払われたと思いますけれども、いかなる苦心がありましょうとも、毎年毎年なるべくよくするようにという考え方で全努力を傾けねばならぬと思います。五ヵ年計画の改訂等につきましても、今政府委員から申し上げましたような考え方をもって今の心がまえで対処したいと思います。
  290. 米田勲

    米田勲君 相当思い切った改善の方向に文部大臣が努力するということを期待して、時間もありませんので、次に進みます。  次にお聞きしたいのは、私は教材費の問題なんです。これはこまかい点に触れますけれども、教材費十七億八千九百万を見積もっておりますが、この単価をなぜ前年通り据え置いたかということなんですよ、私は。こういう文教の経費というものは一気に大幅に飛躍はできないものです。これはわれわれとしても理解ができるわけです。だから、一年々々前進できる条件を獲得するというために文部大臣以下努力をしてもらわなければならぬ。少なくも前年通り据え置いておるということは、停滞をしておることなんですよ。一応の目標としておる条件に到達するのには、その期間停滞をしてしまう。それだけ教育の効果というものが将来取り返しのない問題として空費されていくわけですね。そういうことを考えている私の立場は、この教材費の単価を前年通り据え置いたということについては非常に不満であります。どういう根拠でこれを据え甘くに至ったか、私はどうも現在のその物価の値上がり、あるいは経済政策の全体を考えたときに、単価の前年通り据え置きは切り下げになる、結果は。実際問題としてこういうふうな批判を持っておりますので、この点を、簡単に一つ据え置いた理由と、将来もまたこういう据え置いておくのかということについてお答えを願います。
  291. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 教材費を据え置いたのは御指摘の通り大へん遺憾に思っております。ただ教材費の系統で、理科の設備費、これも同じでございますが、理科の設備費を前年五億五千万を八億に上げたのでございます。なお、中学校技術家庭科新設が三十七年度から予想されますので、前年二億九千万でございましたが、これを六億六百六十万に大幅に引き上げたので、本年は科学技術関係の教材系統の経費重点を置きましたので、一般の教材については単価が据え置きをいたしたわけでございます。しかし、これは来年度中学校の校舎の急増も一応目安がつきますので、三十七年度以降はその中身の整備として大蔵省とも十分打ち合わせをしておりますので、今後大幅に増額すべく努力いたしたいと考えております。
  292. 米田勲

    米田勲君 それではその問題は、一応また文教の方でやることにして、旅費の問題を一つ。旅費はあなた方にすればこれは一割増ですから、相当思い切った改善をしたというお考えかもしれません。しかし、皆さんによくお聞きを願いたいのは、私も教員をやっていた一人として今でも知っておるのですが、各学校にずっと順を追うて配付になってきますね、旅費が。その旅費は北海道の例で言います上、年間一人六百円から七百円の単価になってしまっておるのですよ。これはどうしてこういうことが起こるのでしょう。あなた方はその理由を知っておりますか。それはあなた方がこういう見積もった、見積もればこういうふうに押えますからね。都道府県のまるまる持ち出しでやっているところはわずかしかないはずですよ。やはり四千四百円の単価ということになると、都道府県もこれで押えます。そうすると、春先に定期異動がある。赴任旅費、その赴任旅費にあなた方の組んだ旅費の大かたは持っていかれておるというのが実情で、実際研究のための旅費、研修のための旅費というのは一人当たり年間、私が現場の仕事に携わっておったときでも年間一人七百円ですよ。その当時四千円でした、単価は。これは旅費、旅費といっても赴任旅費と研究のための旅費と二本立で考えていかなければだめですよ。旅費をふやしてやった、しかし、赴任旅費に大かた食われてしまった、こういうのが今の実態で、それがどこでしわ寄せになっていくかあなた方知っております。全部PTA会費ですよ。とても一人年間六百円や七百円の単価の旅費では話になりませんから、結局どこから出してもらう。市町村からというわけにもなかなか参らぬというので、最後はPTA会費です。これがPTA会費が年々累増しているという一つの原因をなしているのです。私はこの旅費の問題は、一括して赴任旅費と研修旅費といいますか、そういうものと込みにして出しておるというやり方よりももっと改善の余地はないか。研修のために相当額の旅費をあなた方の方で見るという条件を加える必要はないのかということを考えます。この点について御意見はいかがでしょう。
  293. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 旅費につきましては四千四百円というのは、決して私も満足すべきだろうとは思っておりませんが、現行の義務教育国庫負担法は、実績に基づいて予算を計上しておりますので、昭和三十五年度の実績は四千四百円でございましたから、それを一応踏襲した。もちろん府県が旅費を十分予算に計上されますれば、国庫負担としてもちろん増額して支給することは差しつかえないわけでございます。ですから、後ほど精算負担という問題が起きてくるわけでございます。北海道は現に修学旅行費のつき添いの関係で昨年二億数千万予算を特別に増額されておりますので、その分につきましても国は二分の一の負担をするわけでございますので、都道府県が実際の使途について必要な経費を組まれますれば、それに基づいて予算を要求する建前になっておるわけでございます。
  294. 米田勲

    米田勲君 内藤局長、あなたの言う通りかもしらぬですよ、理屈は。しかし、それは逆なんですよ。あなたの方で大幅に見積もってくれるならば都道府県の方でもがんばるのですよ。話は逆ですよ、あなた。都道府県の方で実績がそれしかないのだからわれわれの方も半額国庫負担だからこれだけだというのは、これは話としてはわかっても実態ではないですね。都道府県の方でふやそうと思っても、あなたの方でこうやって四千四百円に押えるのだから、とてもこれ以上にする気はありませんよ、楽ではないのですから。だから、これはそういう言い方ではなく、もう少し大幅にあなたの方が引き上げるという態度をまず見せて、それに都道府県が協力していくという態勢でなければ旅費問題は解決つかぬ。この問題だけにこだわっておっては時間がますます過ぎますので、次は超過勤務手当といいますか、時間外勤務手当、これは私の言いたいのは、国家公務員や地方公務員、大学、高校には超過勤務手当、時間外勤務手当が支給されておる。ひとり支給されていないのは小中学校教職員です。これは時間外勤務手当がない。この問題は、私もずいぶん解決したいと思って努力をした時代がある。ところが、これは学校設置者負担だと知事のところに持っていくというわけだ。町村に持っていけば、これは給与の一部じゃないか、われわれの負担すべきもんじゃない、知事から出してもらえ、こうなる。両方でおっつけて十数年来この問題が問題になっておるけれども、解決がつかない。そこであなた方に一つ考えてもらいたいのは、小学校中学校教員だけ時間外勤務手当というものはなくていいのか、現状はないのか、そういうものは。時間外勤務というものはないのか、なくてもやっていけるのか、このことをまず一つ聞きたい。
  295. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 教員につきましては、小中学校のみならず、これは大学から幼稚園に至るまで実は超過勤務手当は支給しないという建前をとっておるのです。そのかわり調整号俸で一号一般の公務員よりはよく見ておるわけでございます。なぜ超過勤務というものを見ないかと申しますと、教員の勤務態様というものが非常に把握しにくいと、特に夏休みのようなものもあるし、春の休み、あるいは冬季の休み等もございまして、なかなか超過勤務の実態というものが把握しがたい。御承知のように授業時数だけが勤務時間でもございませんので、四十四時間の割り振りという形をとっておりますので、実態が把握しがたいと、こういう教職員の職務の特殊性を考えまして、むしろ超過勤務手当よりも調整号俸の方がよろしいと、こういうことで昭和二十三年以来調整号俸ということでこの問題を処理して参ったわけでございます。
  296. 米田勲

    米田勲君 調整号俸を一号俸かぶせたのは超過勤務手当を出さないかわりだったのですか。私は、確かに教育活動というのは勤務実態のとらえづらいことは事実でございます。しかし、あなた方の考え方はそれは昭和二十二年か三年ごろの話ですよ、この問題を検討したのは。しかし、今日十数年を経て依然として教員には超過勤務というものはないんだと、夏休みや冬休みがあるのだからそれで間に合うんじゃないかという、もしですよ、あなた方の考えがあるのなら、これはとんでもない話だと思う。そして調整号俸の一号の問題は、この時間外勤務手当をやらない、交換条件だと今日でもなお主張するならば、これはおかしい。文部当局がそういうことを主張するならおかしい。一体先ほどからこれ問題になっていたでしょう。教員養成しても学校に赴任しないで産業界に行ってしまうというのが実態でしょう。あなた方の苦労の種でしょう。それは何ですか。それは何からきているのですか。これはやはり待遇の問題ですよ。だから昭和二十三年ごろ調整号俸一号教員にかぶせたから、もう時間外勤務手当はいいんだということで出さぬで、そのまま今日まで検討もしないできているということは、これは私は納得ができないのです。従ってこの問題ではあらためて一つ検討してもらいたいという私の強い要望であります。大体文部省の方でもそうでないかと思うが、道庁なんかでも、これは実際は超過勤務手当をだれが何時間したから君には幾ら、だれがしないからやらないということでは実態はないのですよ、それは。そういうことは違法だということになるかもしれないので言われないことだけであって、みんな超過勤務手当をプールしてもらって、そうして適当に相談をしてお互いに楽になるようにしているというのが実態なんです。私はそういう実態から考えてみても、教員の待遇を何らかの方法で引き上げていって、人材を吸収するという立場から考えても、すでにもう昭和二十三年ころに考えた調整号俸による時間外勤務手当を支給しないという方式は今日あらためて検討してしかるべきだ。そうして私はやはり教職員に対しても時間外勤務というものはあり得る、それはこういう形でとらえ得るという結論を十分に打ち出したいと思います。そしてこれに対応する手当を支給するように来年度はぜひがんばっていただきたい、こういう要望を付してこの問題は以上で終わります。  次に、国立近代美術館のことです。これは一言だけ言っておきますが、私はこの間文教委員みんなで行きました。この国立近代美術館は何と貧弱なことかというのが私の結論です。ほかの国から美術家が来て、これが国立美術館でございますといって案内したら、ちょっと汗が出るのじゃないのですか。あれは古い劇場を買って改装をして間に合わせたものです。今日相当文化国家として発展していこうという日本に、これが国立近代美術館でございますというのは納得ができませんよ。私はこれは近い将来に文部省は大いに力んで大蔵省とも話をつけてこの問題を解決してもらいたい。これは単なる私はきょうは要望にしておきます。  ところが、一方教育会館には国庫債務負担五億円として、三十六年度は一億円計上しているのです。一体この教育会館の設立の目的は何かということと、その利用対象はどう考えているのか。運営はどうするのか。一体この教育会館は財団法人にするのかどうか。もしそうするとすれば、これは新たに法律を定める必要がないかというようなことについて、幾つも私は疑問を持つわけであります。この点についてお答えを願います。
  297. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 教育会館は全国の教職員が利用すべき機関でございまして、得に文部省昭和三十六年から教育課程の改正を実施いたす予定をいたしておりますので、文部省関係教育指導者の研修会が相当多いのでございます。そこで、この先生方の研修及び教育研究をする活動がますます活発になりますので、そういう研修及び研究活動に利用したいということでございます。その運営につきましては、現在のところ官庁営繕で組んでいるわけでございますが、今後それを文部省が直轄でするか、あるいは特殊法人という形でもって運営するか、これらの点は十分検討いたしまして、この会館開きまでにはいずれかに決定したい。かりに特殊法人にいたしましても、文部省が直営するにいたしましても、何らかの法的措置が必要であることは御指摘の通りでございます。しかし、財団法人にする意思は毛頭ございません。
  298. 米田勲

    米田勲君 これは一体、どうなんですか。あなた方はね、会館を建てる予算を国会に提案しておいて、その会館の運営文部省直轄でやるのか、特殊法人でやるのか、まだ未定だということは、予算を提案しているあなた方の立場としては言えないことなんじゃないですか。国会に予算を出す限りは、そのできる会館というものが、一体だれの手でどう運営されるかということをあわせて出すべきが至当ではありませんか。
  299. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 現在のところその必要がないというわけで、かりに特殊法人にいたしましても、あるいは直轄にいたしましても、その会館の工事は三十六年度では完成しないわけなんであります。三十七年度以降までに延びるわけでございますから、現在のところその定員なり、運営費を取ってもこれはむだになるわけでございます。
  300. 米田勲

    米田勲君 ちょっと内藤さんの言葉とも思えぬですね。これはすでにこの国会に出すときから五億円の国庫債務負担をするということをちゃんと前提としているのでしょう。そうして一億円出してきているのでしょう。そうである限り、この国会の予算がいいとか悪いとかいう判断をさせるためには、一体この会館がどう運営されるのか、だれの手によって運営されるのかということもあわせて出すことが至当ではないですか。私は、予算だけ出しておいて、それがだれの手でどう運営されるやらさっぱりわからぬ、そういう法的な手続は全然ゼロだという、そういう予算の出し方については私はあまり記憶がないのですが、これは当然並行して、今出してきているこの一億円は、確かに三十六年度で完成しない、一部分ですが、少なくともこの提案をする限り、運営はどうするのか、直轄だとか、あるいは直轄でない、特殊法人なら、それに見合うところの法律を作るとか、この国会で審議をあわせて行なうということでやることが至当ではないか。完成はしないのだから、予算だけ審議して、お前ら、いいか、悪いか予算の面だけで判断しろというやり方は、これは妥当ではあるまいと私は思うのですが、どうですか。
  301. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 今回の予算は官庁営繕として、文部省が基本設計をいたしまして建設省がこれを実施するわけでございます。で、その実施が三十七年度までかかるわけでございますから、三十七年度にこの会館が開くまでには、直営にするか、特殊法人にするか、いずれかにきめる。その際に法案として御審議をわずらわす考えでおります。
  302. 米田勲

    米田勲君 その点については私は依然として納得しないですよ。しかし、それをしつこく申し上げることは、もう時間の関係で許されません。それで割愛しますが、私は念のためにここで申しておきますけれども、世の中には曲げて考えて、どうも文部省は日教組がきらいだから日教組をぶっつぶしてしまう、あるいは分裂をさしてしまって別な教職員の団体を作って、直接間接に指導をして、そうしてこの作る教育会館を根城にして対決させるのだ、そういう批判をしている向きもあります。私はその批判はまだ現実に現われないさきに言うのは早計だと思います。まさか文部省はそういう批判をしている者の言葉にぴったり合うような会館運営はなさらないだろうと思いますが、念のためにちょっとそのことだけお聞きしておきます。
  303. 内藤誉三郎

    政府委員内藤誉三郎君) 日教組をぶっつぶすためにこの会館を設立しようなんということは毛頭考えておりません。
  304. 米田勲

    米田勲君 次は、急いで僻地教育振興の問題について、この予算に現われている面からいろいろな私は疑義があるわけです。これは文部省としても、従来僻地教育振興ということについては相当関心も払い努力もしてきたことであると私は理解をしておるわけですが、どうも現状の僻地各学校の実態から見て、今度の三十六年度予算は納得ができないというのが実態であります。私の気持であります。三十六年度予算は、僻地教員の宿舎建設費に四百戸、二分の一補助で七千万円、これだけですね。ところが、私は僻地教育振興を年来唱えておるんですが、この小規模学校、あなた方の言う小規模学校の先ほど問題にした担任外教員の配置の問題もしかりだが、僻地学校に勤務をする教職員に対して従来与えておる僻地手当では、僻地の学校に優秀な教員を吸収して教育効果を上げるということは至難だというのが実態です。あの僻地手当では実際問題としては問題にならないという状態であります。しかも、だんだんこのごろは適用のやり方がきびしくなってきて、ますます僻地手当の支給の範囲が狭められておるという実態から考えても、これは僻地手当については思い切った優遇措置文部省が考える段階がこなければ、とうてい解決がつかぬということが一つ。  それから、住宅がないのですよ。僻地の学校に住宅がないということは、これまた問題なんです。北海道の例をあげて恐縮ですが、北海道の僻地指定校は二千百十四校です。そうして教員の定数は八百十六人、住宅を保有している戸数というのは五千三百十六戸で、不足の住宅数だけあげても二千八百四十四戸という実態です。全国の私は僻地校の教員住宅の実態は、これから類推して相当まだ困難な問題が未解決のままある。それに対して今度の文部省の四百戸分という解決の仕方は、あまりにもテンポがなまぬるいのではないか。こういう僻地校の教育振興を考えるなら、思い切ったやり方を飛躍的に増大させてやらない限り、問題の解決はいつまでもつかないということを理解すべきだと思います。あなたの方でこのことについて徹底的な考え方を再検討して、国庫補助金を格段に増額をするということを、ぜひ今年度予算を修正をしなさいと言ってもこれはあなた方としてはできない相談ですが、少なくも今からこういう安易なことでは僻地教育は解決つかないということをあらためて認識を願いたいのです。文部大臣も口だけ僻地教育振興などと言ったってだめなんですから、教員の僻地手当の抜本的な改善を考えるということと同時に、この教員が住むところの住宅が相当全国的に不足している実態を解決するために一つがんばってもらいたい。一括して答弁をいただきます。  それから次は、スクール・バスとボートの設置の問題について、あなた方はバスを七台、ボートを三隻、二分の一補助で計上してくれました。しかし、皆さんの何にもないよりはいいという考えでは私は納得できないのですよ。今まで一体このスクール・バスの問題を取り上げてから何年になるのか。そうして累計何台一体予算に見積もってきたのか。一体この七台のバス、今度の計上したバスはどこへ向けようとしておるのか。これはどうも国家予算文部省の組んだ予算で七台とか三隻とかというのは、どうも私は納得できないのですよ。これは市町村予算でないかと思ってちょっと戸惑いするほどであります。このことを一つお聞きをいたします。  それから実際このスクール・バスは、あなた方の考えている以上に、全国的に必要であるということを私は考えます。北海道の僻地指定校は、先ほど申した数でありますけれども、その児童生徒の通学距離を参考のために申し上げておきます。小学校は四キロ以上のところから通っているのが二万三千七百七十三人であります。中学校は六キロ以上のところから通っているものが二千百三十四人おります。この実態を一つとらえてみても、あなた方が取り上げたスクール・バスの問題は、非常にいい着目でありますけれども、これまた飛躍の仕方が、あまりにものろのろし過ぎている。実態に合わないのではないか。せっかくいいところに着目したのだから、もっと思い切った補助の仕方を考えるべきじゃないかというふうに私は考えるわけです。  それから発電施設の設置費として、四百七十四万円見積もってくれました。これは残念ながら去年より二百二十万減額であります。どうして減額なさるのか、私は理由がわからない。と申しますのは、北海道だけでも、僻地指定校で電灯のついていない学校が、まだ三百五十校あります。僻地指定校の六分の一であります。全国的に見ると、まだまだ問題があるのではないか。それに対して発電施設の設置費として、二分の一補助で組んだ火力二十四台、四百七十四万円、去年よりも二百二十万円削減しているというやり方は、これは後退ではありませんか。問題を解決しようとしないで、こうしてやたらにあっちこっちで後退したり、足踏みしたりするのは、文部省の日本の教育を前進させようという立場から見れば、これはちょっと理解できない。  それから次に僻地学校の健康診断の問題です。あなた方は、日本にまだ無医村があるということを理解せられていると思います。だから僻地指定校即無医村とはならないまでも、非常にこれは重なっている。だから僻地学校における児童生徒の健康管理という問題は、あなた方の方では、思い切ってこういう僻地の小規模学校に、養護教員を配置してくれるというような改革はしてくれないから、そういうところには養護教員などはおらぬ。しかも無医村が多い。保健所もまだ伸びておらない。こういうところで子供たちが教育されているのですから、健康管理の問題が非常に問題であります。そこで私は、ぜひ法定の健康診断並びに健康相談をするために、こういう僻地指定校に対して、特別に国庫補助金を組んでもらえないか。もし組んでいるとすれば、それはおよそ実態に合わないものであるので、ぜひ増額をする考えを少なくとも今年度できないとすれば、来年度はぜひ着目をして、がんばってもらわなければならぬ。このことは全国的な叫びであります。ぜひそのことについても実情を、考えをあわせてお伺いします。  そのほかテレビの問題だとかその他の問題がありますけれども、一括して申し上げたいことは、文部大臣に最後にお伺いをしますが、この僻地教育の問題で、私が今申し上げた一つ一つのことをお聞きになっていて、僻地教育振興の隘路はどこにあるのかということを、あなたは理解していただけたと思います。僻地教育振興は幾らあなたが宣伝をされても言葉だけでは解決がつかないのです。こうしてこまかいところまで一つ一つ国が補助の手を伸ばして、都道府県の財政の状態が苦しくともそれに半額を出させるような条件を文部省が積極的にやって、そうして解決をして整備をしていくのでなければ僻地教育振興していかない、こういうふうに考えておるわけです。文部大臣、簡潔でいいですが、僻地教育に対する考え方、そして今私が二、三取り上げた問題等について今年度予算外をどういうふうに考えているのか、来年度予算編成期にはどういうふうな角度から検討をして努力をしてもらえるのかをお伺いします。
  305. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) 僻地教育が十分でないことを私も見聞いたしております。今御指摘のいろいろな問題につきましても今後もちろんうんと努力しなければいかぬと思います。ただ、予算の折衝過程から考えますと新規のことを取り上げるのはなかなか鉄壁を破るようなことで容易でない。どうやら口あけができましたから今後はもう少し幅を広げて要望をし実現を期したいと思いますと同時に、義務教育課程における生徒急増対策がどうやら施設設備の点では一段落的になりまして、教育関係の従来の予算から見ましても幾らか気分的にゆとりが出たような気がいたしますので、そのゆとりを僻地教育等にも特に大蔵省と折衝いたしまして今後重点的に成果を上げていきたいと思います。
  306. 米田勲

    米田勲君 大臣の今後の努力のことについては一応了解をいたしますが、ここで理解をしておいてもらわなければならぬのは、都道府県の方で積極的にそういう予算を組む意思があるなら文部省の方も組みましょうでは絶対に改善していかれないということですよ。文部省が積極的にその問題を打ち出せば、都道府県はその線に苦労をしながらでも合わせてくるというのが実態ですよ。文部省がある水準を出せば、決してその水準以上には特殊な県以外は思い切った文教費を組まない、それが実態ですよ。主導権はあなた方が握っておる。あなたはよく地方分権というようなことを言われますけれども、実際は一つ一つきょうは長い時聞あなたに聞いて参りましたが、一つ一つの問題をとらえてみても、すべてあなた方のところに主導権があるのです。実態は、法律はどうあろうとも、あなた方が一つの水準を示せばそれにみんな右へならえです、四十六都道府県は。だから日本全体の文教を前進させるということを考えるなら、まず文部大臣みずから思い切って国家予算の中で飛躍的に都道府県に対する補助法律の改正等を行なってやっていく以外にないということをあなたにぜひ御理解を願いたいわけです。  いろいろこまかい点にわたってまでは気が回らないことではありましょうけれども、しかし、少なくとも来年度予算編成の八月ころからは、もう少し文部大臣も全般的に目を配って、この人方の言うことだけを一方的に聞かないで、現場の意見も現場の実態もよく文相みずから把握されて、そうして思い切った荒木文政がこういう諸問題の点に打ち込まれますようにぜひ私はこの際に希望しておきます。  そこで最後に一つ二つ時間がなくなりましたけれどもかんべんを願って私は申し上げたいのです。  それは、文部大臣は日教組の代表とは交渉をいたしませんと言い続けております。あなたのお考えはたびたび聞きました。あなたのお考えもある程度私は理解しております。しかし、私はあなたの言っていることには確かに法律上の根拠はありますけれども、日本の教育全体をよくしていこうとする実際的な立場に立てば、もっと判断の仕方が変わってしかるべきではないかというふうに私は思うのです。なぜ、私がこういうふうに申すかというと、あなたは日教組の幹部はおきらいのようであります。しかし、これは毎年、大会で選挙をされてかわります。今の幹部がきらいだから会わないというのであれば、まあ、会う会わぬは自由だとあなたはいつも言われるから、それは別ですが、しかし、日教組と話し合いをする法的な根拠も、義務も、権利もないのだから話し合う必要はないという考え方は、私は、もう一度あなたは御検討願いたいわけです。なぜかというと、私は、この予算分科会にメンバーを入れかえてもらってきて、あなたにお話をしている意味は、こういう現場にたくさんの問題があるんだということを知ってもらいたかったからだ。これは全国の職場から、それぞれの単位の都道府県の組合がこの問題を集約し、日教組へ問題を集約して、教育の現場の改善をはかろうと真剣に考えておるのです。それが実態なのです。行動の中には、あなたの立場からいえば、理解のできない、納得のできないことはあるかもしれません。しかし、それが全部ではないのです。教育の現場をよくしようとして、一つ一つの問題を現場から集約して来ながら、この全国的な日教組の機関に、これらの私がきょう申し上げた問題を集約してあなたに訴えようとなさっている、彼らは。あなたに言わせると、都道府県の教育委員会が法的に交渉の相手であり、場合によっては労働協約に似たものさえも結べるようになっておるのじゃないか、至れり尽くせりの制度ができているじゃないか、そことやりなさい、そう言われておる。何かの雑誌の対談でも私は読みました。しかし、その言い方は、実際の問題をそういう法律ですりかえて、あなたの都合のいいような結論を出しておるということをぜひ私は理解していただきたい。なぜかというと、都道府県の組合が都道府県の教育委員会と交渉をしても、先ほどから私はここで予算の問題一つ一つを指摘したように、当事者能力がないのだ。法律上はあるかもしれませんよ。形式上はあるでありましょう。しかし、教育の現場の諸条件を改善をしていくというためには、当事者能力は私はないと思う。都道府県の教育委員会は、すべてやはり文部省に来て、文部省に了解を願って、国家予算でつけてもらって、そうしてでなければだめなんです。都道府県の教育委員会が、待遇の改善、手当の改善をしようと思っても、やることは自由だが、金がないのですよ。県費まる持ち出しでそんなことをやれる、そういう県はわずかしかないはずです。すべてやはり国からの補助をたよって改善をしていくしかない。それをイエスかノーか言ってくれる場所はあなたの場所なんです。あなたなんです。あなたのイエス、ノーを聞かなければ、団体交渉をやっても、都道府県の教育委員会は組合に対して的確な答弁はできないというのが実態なんです。だから未解決の問題がある。その未解決の問題が、現場の者たちの作っておる職員団体の機関に集約してあなたに訴えようとしている。それが交渉をしてくれということなんです。もちろん、労働協約権を裏づけにした団体交渉権は彼らにはありません。法律できめた団体交渉権もありません。しかし、少なくも荒木文部大臣が、日本の教育全体をよくするために、日本の教員とよく話し合って、理解をし合って、協力をし合っていく体制ができない限りだめだという観点に立つならば、私は大胆に、彼らと話し合いでもいい、交渉でも応ずることが正しいと思う。そこで、あなたがあちらこちらで日教組のやり方について意見を述べられていることを、その席上、大胆率直にあなたは述べられてしかるべきだと、私はこういう批判をしておるが、君らの一体見解はどうなんだろう、こういう事実があるが、君らはどう考えるのだといって、文部大臣が彼らに率直に意見を訴え、また彼らが現場で隘路となっている問題に率直に耳を傾けていく、そういう融和した話し合いの中、協力した話し合いの場を作ることが、私は日本の教育を正しく前進させる大切な条件だと思っております。いたずらに日教組の本部と荒木文部大臣が対立をして、あんなものに会うか、片っ方は片っ方で手きびしく批判をしておる。あなたが幾ら日教組の本部を誹謗しても、実態は現場の教員から積み上げられたあそこは機関なんですよ、少なくとも。その機関の代表者と会うことを、私は政治的な目的がないとしたら、会わないとして今日まで頑強に通されているあなたの態度に対して、もう一度御検討を願うべきだ、それが日本の教育を憂えておる者の共通の願いだ、私はこう思うのです。自由民主党から出た荒木文部大臣という政治的な立場はあるでしょう。しかし、日本の教育は、現場の教職員と文部大臣が対立をしている中では絶対に正しい方向に改善はできません。このことに思いをいたし、そして一つ一つの予算の問題で、教育委員会が当事者能力のないことも、あなた自身も御理解いただいたと思いますので、この際従来の態度はあり、お考えはあったでありましょうけれども、ぜひ近い将来に検討を加えて、現場に起こっている教育の諸問題についてよく事情を聞こうではないか、自分が努力していく重点はどれかということはみずから判断するとしても、現場の人たちの代表の意見も聞こうではないか、しかし、自分の方でも、日本の文教政策上日本の教育の将来のために思わしくないと考えておることは大胆率直にその場所で話をする、そういう話し合いの場ができてこそ、私は日本の教育の前進のために大きなプラスが出てくるのだと思うわけです。いたずらに対立抗争していることだけで日本の教育は前進しないということを、かねがね思っているわけであります。だから文教委員会でもあなたにいろいろな角度から申し上げているのでありますが、ここであらためてあなたに、この地方教育委員会の、私の判断では団体交渉の当事者能力がない、実態はないということと思いあわせて、団体交渉――法律に言う団体交渉ではもちろんない、協約権を伴う団体交渉でもないでしょう。しかし、日教組の代表者と教育の諸問題について話し合うという雅量と、そういう考え方を近い将来にぜひ打ち出してもらうような御決意はないか、あらためてお伺いします。
  307. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) あらためて考え直す必要を認めません。と申しますのは、私は日教組という団体はみずから規定しているがごとく、労働者という立場――広い意味での勤労者という意味かと思いますが、勤労者の団体とみずから規定されているその勤労者の団体、労働組合の代表者と文部大臣が交渉をするということは、すでに御指摘の通り、そういう立場にお互いにない、あくまでも地方分権の建前から都道府県段階以上の交渉相手というのは法的に認めないということが適切だという制度になっておりますから、従って労働組合として、労働者の団体、勤労者の団体という立場におきましては、交渉相手はあくまでも都道府県の教育委員会でなければならない、これはもう制度上当然のことであって、何ら一点の疑義もないことと思うのであります。そうであるならば、日教組の代表者が文部大臣と交渉したいとおっしゃるのは一体何だ、何の必要があるのだということになるわけであります。労働組合である限りは、法律規定しております通りに、給与のこと、勤務時間その他の勤務条件ないしは厚生福利のことと法律上限定されております。労働組合である限りは、その法定事項以外に交渉する課題はないはずであります。ただし、日教組の幹部諸公が、政治家であるという意識をもって話をしたいと言われるならば、それは私は見当違いだと思います。米田さん御指摘のように、たとえば北海道の問題にいたしましても、国会の場において、米田さんなら米田さんを通じて、正式に国民の側に立った御意見なり、あるいは政府批判なりという揚が正式にあるわけですから、政治課題に関する限りは、それが第一義的であってしかるべし、また、教育の現場を担当する教師という立場において、教育の実態それ自身に意見はあると思います。これは当然のことであり、貴重な意見であろうと思いますが、それは当然に、学校の設置者である都道府県、市町村教育委員会に対してその体験を語り合い、相談し合う。そして地域的な特色を持った意見を中央に、文部省に要請していただいて、それを私どもの立場において集大成して、予算措置を講ずべきものは予算措置を講ずる、立法措置を必要とするならば、法律案の改正等という形において国会に提出して御審議を願う。それで必要にして一応十分であると思います。もっとも私は労働組合という立場でなしに、教職員の方々が意見を持っておられる。その知恵を拝借したいとはむろん思います。それは交渉とか、あるいは日教組代表者と文部大臣が合うという形はとるべきでない。個人として教職員として積極的な御意見等を漏らしていただきたい。そういう形が最も適切である、そういうことを申しておるだけでありまして、何も労働組合たる日教組という全面組織の代表者と対抗意識をもってどうしようという、けちな根性は一つもありません。あくまでも日本も教育というものは、基本法の示すがごとく中立であらねばならぬ。自民党に籍を置くものではありますけれども、自民党員という意識、考え方をもって日教組に対しましたり、あるいは教育の場に臨むべきでない。あくまでも法律制度の命ずるまにまに、厳正中立的な考え方で国民に奉仕するという覚悟のもとに対処していかねばならぬと思っておるだけでございます。
  308. 米田勲

    米田勲君 文部大臣のそういう返答はたびたび聞いております。私は大臣が頑迷にそういうことを主張なさるならそれでよろしいです。しかし、私は少なくともあなたのその態度は日本の教育のためにならないということを確信しております。あなたの言う理屈の通りであります、法律や今の制度は。しかし、法律や制度をたてにとって物事が万事片づくというような物の考え方では、政治家である荒木文部大臣としては解せない話であります。しかし、あなたが何か別な意図を持っていれば別ですよ。日教組という団体を相手にしないという政治的な別な立場を持っておるのであれば、それはその点で妥当でありましょう。しかし、私は何度も言っておきますが、都道府県の教育委員会は当事者能力がない、団体交渉についての当事者能力がない相手なんだ。その当事者能力を持っておらない、ほとんど実際的にはの話ですよ、私の言っておるのは。実際的にはあなたの手に握られておる、一つの問題を解決づけるにしてもあなたの手に。現場の勤務条件といっても、教育の現場の条件が整わない限り勤務は困難になってくるわけですよ。だから勤務条件となれば、教育の現場のいろいろな条件ということが付帯的に出てくるわけです。そういういろいろなもろもろの問題について話し合って、日本の教育のために解決の方途を見出したいという、そういう人たちの団体の代表者の言い分を、まっこうから労働者として団体交渉をやるならまっぴらごめんたというあなたの考えには、私は絶対に承服しません。今後も機会あるごとにあなたの頑迷固陋な考え方に対して、私は反省を求めて努力をしていくつもりであります。  最後に、私はあなたにここで締めくくりとして申し上げたいのですが、三月一日発行のある雑誌であります。ここには、この雑誌社の主幹とあなたの対談が二月十三日文部大臣室で行なわれた、その対談が記録されております。この対談の内容を読んでみて、私はあなたとそっくりな思想、あなたとそっくりな見識を持っていることに驚きました。まあ八百長対談に違いないとさえ思われます。それはまあとにかくとして、ここで私はあなたの言い分について納得ができない点がある。まず私は一つの問題は、教育基本法ですが、これは午前中申し上げましたから、このことは内容には触れないことにします。しかし、ただあなたの言っていることは、占領中の申し子なんだと、あなたの言葉通り言うならば、今の教育基本法はどこの国にも通用するような、コスモポリタンを養成するにはあれで十分だろうということを言っております。どこの国の人間を教育する教育基本法かわけがわからぬという言い方です。しかし、あなたにこの際申しておきたいことは、教育基本法と学校教育法と施行規則とをあわせて一つごらんを順いたいのです。基本法はあくまで基本を定めたものであります。それを具体化している、あとの法令で。何も教育基本法の中であなたの言うことが十分に載っていないから、どこの国の子供を教育する基本法かわからぬと言いますが、これを受けて作っている他の法令にはきちっと書いてあります。日本の国の子供の教育です。そういう物の言い方をしているところが私は依然として納得ができない。ただ、私はここで最後にぜひ時間がないのに申し上げておきたいし、あなたの考え方を聞きたいのは、あなたはこの対談で、よい日本人を作る教育ということを主張しております。この言葉の限りにおいては何にも私は異存がありません。あなたはよい日本人を育成することを教育の基本方針にするのだということをふだんから言っておるのですから、このことを言われているこの言葉の限りでは、私は何ら間違いがない。さて、私は戦前十数年初等教育の現場で仕事をした人間です。日本が満州事変から支那事変、太平洋戦争に突入していく間、私は現場で教育の第一線に立っておりました。よい日本人の教育ということを主張をしました。民族主義者でありました。国家主義者でありました。だから、当時のよい日本人を作る教育に私は全霊を打ち込みました。多くの教え子は戦争に行って死んでおります。ここでまたあなたによい日本人を作る教育ということを聞かされて、がく然としておるのです。しかし、この言葉の限りでは私は異存はないのですよ。ただ、あなたが言っておる言葉の中でいろいろ問題があるわけです。大体このよい日本人を作るという日本の教育目標は、戦争当時の日本の教育のスローガンであったのです。これはあなたも、教育の現場にはいなかったかも一しれませんが、ちゃんと覚えておられるはずです。それと今回言われておるよい日本人を作る教育との間に、質的にどこか違いがなければならぬと私は思うのです。もし、かつてわれわれが教育の現場で主張をし、実行をし、理論的にも検討しておったいわゆるよい日本人を作る教育であるなら、それは叫び日本をして民族の回復すべからざる危険な段階に追い込む結果になるということを考えます。同じ言葉ではあるが、今日これを文部大臣が言う限り、質的にその内容は異なっておらなければならない。この点が私の疑問に思う点です。あなたのよい日本人を作る教育というのは、その点の私の懸念に対してどういうお考えなのか、明快にしてもらいたいということであります。  それから、あなたの立論を聞いておるというのではないので、雑誌に載っておる対談、それからあなたがあっちこっちで講演して歩かれた、それを総合判断して――それこそあなたがよく使う手です。総合判断をして、わが民族を愛するということを言っています。わが国土を愛するという言葉を使っております。わが文化を愛するという言葉を使っております。この言葉の限りでは何ら差しつかえないのです。日本の民族を愛し、国土を愛し、文化を愛するということは日本人として当然の感情であります。日本人の立場としては当然であります。しかし、この考え方は、あなたにお考え願わなければならぬのは、民族主義の方向にぐんぐん流れるおそれがあります。この内容を今ここであなたに解明する必要はないと思う。そうして私は国土を愛する、文化を愛するというこの言葉だけであるなら納得ができますけれども、あなたはこういうことを言っておる。よい日本人というのは、今言ったような民族や国土や文化を愛することがまず必要なんだというのを前提にして、それに続いて、高い人格と識見を身につけるとき初めて日本人が完成するのだ、こういう論述の仕方です。そのよい日本人であるがゆえに国際的にも信頼と敬愛をかち得るのだと、こういう立論です、あなたの立論は。私はこの立論の仕方にはどこか誤りをきたしやすいのではないか、これが誤っているとは断言しませんが、誤りをきたしやすいのではないか、民族主義に徹底したり、復古主義に徹底したりしていくやり方には私は危険を伴うのではないか、そういうことに徹底をして、よい日本人に完成することは、そのことがイコール国際的に信頼と敬愛を得るんだという論法は、今の憲法や教育基本法を定めた考え方からいって私は多少の危険を感ずるのです。そしてあなたはこういうことも一言っております。この前から受けているのですが、これは先祖がよき民族への意識と努力で今日のこの日本があるのだ。青少年もこの考えを受け継いでいく責任を自覚しなければならない。そしてこんなに水のきれいな、物の豊富な、四季の移りかわりのきらやかな、気候風土のすぐれたよき国は世界のどこにもないとあなたは言い切っておるのです。よくぞよき所に国作りをしてくれたと、われわれの祖先に感謝するとあなたは言っております。しかし私は、このあなたの言葉を聞いて、国民学校の国語の六年生の最後の巻に出てきた、その文章とこれはそっくりであります。この通り書いてありました。これはまさしく民族主義、国家主義を鼓吹したときのわれわれが最も力を入れた課目であった。この段階にきて、六年生の最後を締めくくるために徹底的にその思想をそういう文章から植えつけた、その文章とあまりにも似ている。あなたは自分の国土に対する認識だとか何とかは私の自由だと言うかもしれません。私はあなたが文部大臣でないならそんなことは何をか言わんやであります。あなたが文教の責任者の地位にあるがゆえに、このかつてわれわれが戦争中に青少年に教えた言葉と同じ言葉を使って気候風土を礼賛し、そしてこの四季の移りかわり、水のきれいなことを礼賛し、よくぞよき所に国作りをしてくれたと祖先を崇敬をしておる気持は、その言葉の限りでは問題はないとしても、そういう復古的な、そういう民族主義的な、かつての日本の教育のあり方が非常に偏狭な民族を作り上げて、アジアの他民族を圧迫し、侵略をし、自分の考えが通らなければ武力をもって生命線を守るのだといってわれわれの民族は戦った。従って、私はあなたに、どういう考えで戦前われわれが教育したこの言葉と同じ考え方を持ち出して、よき日本人を作る教育はこれだと言って、こういうことを天下に明らかにされるのか、あなたの思想は一体何なのか。もしも、私の懸念しているようなものであるならば、断固あなたと戦わなければなりませんということを痛感して、きょうの質問の最後に、あなたのこの対談において述べたこと、これと類似したことを各地で講演をしていること、座談をしていることを通じて、この場合、明確に文部大臣である荒木さんに見解をお聞きしたい。一国会議員の荒木さんの意見ではない、文部大臣としてのあなたの見解を聞きたい。
  309. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。よき日本人を作るのが教育目的であるということは米田さんも御同感であります。そこで、その中身が問題だというふうに非常に被害妄想的な御懸念の御質問のように受け取れますが、よき日本人の中身というのは、憲法の精神を苦笑に身に体したもの、抽象的にいえばそういうことだと思います。よき日本人、もしくは民族主義的に聞こえるようなことをいえば、また戦争になるがことき御心配も御言葉の中にあったようですが、そういうことはあろうはずがない。日本人のことごとくが戦争なんていやと思っている。しかも、そういう傾向を帯びる場合に、国民にかわって制約すべき国権の最高機関があるその構成員は、主権者たる国民選挙を通じて、もろもろの選挙を通じて自分の意思によって選定する、そういう絶対的な政治に対する基本的な権利を持っておる。国民の奉仕者として、文部大臣が教育の場を預かっておるという姿を考えまして、皆さんもお認め下すったように、私の申しておる言葉そのものそれ自体は、かれこれ言う余地はあまりないようだとお認めいただいておるようですが、繰り返し申し上げますが、その言葉の意味する中身というものは、憲法以下の法治国たる日本の制度を十分に頭に置いて健全な行動をするというがごとき本質を持った人間に仕立てよう、こういうことでありまして、私は、どこから考えてもいささかの懸念もない、あくまでも憲法の主張するところの平和主義に徹し、国際協調主義に徹し、しかもデモクラシーに徹するという人間を育成するということでなければならぬと思うのであります。むしろ私は、毎度申し上げるように、口に憲法を尊重するといい、デモクラシーといいながら、法治国たるべき本直を持ったデモクラシーの法律制度そのものを具体的にでんぐり返すようなことを言ったり、したりしておるというようなものがおること、そのことがむしろ国民的には危険があると思うのでありまして、いろいろ御懸念のある、御注意も含んだような御発言を通じての御質問でございますが、私はお答えとして以上のことを申し上げたいと思います。
  310. 米田勲

    米田勲君 もう一言最後に、これで終わります。  文部大臣の今の答弁は、従来聞いたことを繰り返しておるわけです。あなたは、そういうことを言うときには、きわめて現在の日本国憲法を尊重しておるようなものの言い方をしながら、一方で別なことを主張しておるときには、占領政策の申し子だ、これをきめるときには、さっぱり国民の自由な意思が反映できなかったのだというようなことを一方では言っておる。この点は依然として解せない。それからもう一つは、私は、私自身が青少年に教育をしておったときに、何も日本を戦争に追い込むために、あの国家主義、民族主義を徹底的に鼓吹したのではない。しかし、その方向は、自分が経験してみて初めてわかったのは、そういう方向はきわめて危険な方向に民族を陥れていくということを今痛感しておるから、そのことを主張しておるのです。何も自分の国土を愛し、自分の国の文化を愛するといったからといって、それが戦争につながると私は極言をしません。しかし、きわめて偏狭なものの考え方になるぞということを考えてもらいたいわけです。日本の国民が戦前戦争に走った一つの原因は、きわめて偏狭で、自画自賛でうぬぼれが強かったところにもあります。あなたの言っておるように、よくぞこの国に国作りをしてくれたと祖先に対して最大の感謝をしておるが、そんなに日本は国土がよくて資源が豊富な国じゃありません。条件としてはきわめて悪い国です。この国でこの九千万余りの国民が鋭意努力をしてみんなしあわせになろうとしている。あなたの言うような、そういう絵にかいたような国土じゃないんです。それをなおかつこういうふうに礼賛をする。そして民族主義的な色彩がきわめて濃い。私は、この場合ですから一つのものの考え方ですが、こういう復古的な、国家主義的な方向に結びつく民族主義的なものの考え方で文教の責任者として露骨に言動をしてもらっては困りますということです、私の言いたいことは。そういうことは日本の教育の方向を、あなたの時代には曲げられないとしても、曲げる要素をたくさん青少年の中に、国民の中に植えつける結果になる。文部大臣としてはそういう方向を決して望んではいないでしょう。しかし、ほんとうにあなたが文部大臣として行動するなら、それは教育基本法や憲法を、やたらに占領軍の申し子だなどという言い方でなく、先ほど申したようなそういう立場、そういう受けとめ方で努力をしていく必要があるというふうに、私はこういうことは、文部大臣であるから、先ほども申し上げましたように、日本の教育の将来を憂えて念のために申し上げておくわけです。今後、機会あることにあなたも意見を発表なさるでありましょうから、ほんとうにあなたの考えが私の心配している方向には向いていかない、そういうふうな方向に向いていかなかったのたという事実が明らかになれば、私の懸念はぬぐい去られるでありましょうが、今日のあなたの総合した人格、総合した各地における発言、そうしてあなたの性格から見て、多分にその懸念あることを考えて、この際質問の終末に重大な警告を発しておくつもりで発言をしたのであります。以上をもって終わります。
  311. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答えすべき限りじゃございませんが、私が日本の国土はりっぱだ、よきところに国作りしてくれたと、私は心からそう思っておりますが、それは三、四年前に私も世界一回りをしてみまして、敗戦国日本人の一人として静かに観測した結論でもあります。また学校の先生たちが、このごろわずかずつではありますが、毎年海外旅行され、帰ってこられた感想も聞きますが、ほとんど、ことごとくといっていいほど、皆さんが私の申し上げたのと同じ感想を持って帰ってこられるようであります。客観性のある私は観測だと思います。しかし、短所もうんとありますから、その短所はわれわれの国土であるがゆえに短所を補う努力をするということのよすがにもなろうと思うのであります。そういう意味で申し上げていることを御理解いただきたいことと、私が憲法や教育基本法を、初め占領中に作られたことをその意味において批判していることも事実であります。しかし、それはもっといい憲法になす方法はないか、もっといい教育基本法に育て上げる方法はないかという意味において申しているのであって、よしんば何らかの欠陥のある憲法であろうとも、教育基末法であろうとも、現にある限りは、それを着実に守る責任はデモクラシー社会においては当然のことと思います。共産党の諸君は、毎度申し上げることですが、ともすれば、自分たちの気に食わない法律は憲法にあっても無視してよろしいということを言い、かつ行なっておる。そのことをたしなめる意味においても、私は憲法あるいは教育基本法に触れ、かつそれを誠実に実践するということこそ、今の憲法下のデモクラシー社会の国民の当然の責務である、また、立法論として憲法をよりよき法律に仕立て上げるということを常に考え、相談することもまたデモクラシーそのものである、また、憲法の認める当然のことである、こういう考え方に立って申し上げているのでありまして、一方においてはくさしながら、一方においては、都合のいいときにはそれを利用するなどというさもしい考え方でいるのじゃないということをお認めいただきたいと思います。
  312. 東隆

    主査東隆君) ほかに御質疑はございませんか、御質疑もございませんようですから、文部省及び自治省所管についての質疑はこの程度で終了したいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  313. 東隆

    主査東隆君) 御異議がないと認め、さよう決定いたします。なお、明二十九日は厚生省所管について質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時三十二分散会