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1961-05-22 第38回国会 参議院 予算委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十二日(月曜日)    午後一時三十三分開会   —————————————   委員の異動 本日委員谷口慶吉君辞任につき、その 補欠として金丸冨夫君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事            梶原 茂嘉君            後藤 義隆君            平島 敏夫君            米田 正文君            阿具根 登君            相馬 助治君            杉山 昌作君    委員            小沢久太郎君            大泉 寛三君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            上林 忠次君            小山邦太郎君            佐野  廣君            白井  勇者            杉原 荒太君            手島  栄君            一松 定吉君            武藤 常介君            山本 利壽君            湯澤三千男君            横山 フク君            大矢  正君            木村禧八郎君            小柳  勇君            高田なほ子君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            森 元治郎君            森中 守義君            田上 松衞君            松浦 清一君            市川 房枝君            小平 芳平君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 古井 喜實君    農 林 大 臣 周東 英雄君    通商産業大臣  椎名悦三郎君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    国 務 大 臣 迫水 久常君   政府委員    法制局長官   林  修三君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    経済企画庁総合    計画局長    大来佐武郎君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省条約局長 中川  融君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主計局次    長       佐藤 一郎君    大蔵省主計局次    長       谷村  裕君    文部省管理局長 福田  繁君    厚生省公衆衛生    局長      尾村 偉久君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    農林省農地局長 伊東 正義君    食糧庁長官   須賀 賢二君    通商産業省通商    局長      今井 善衛君    通商産業省鉱山    保安局長    小岩井康朔君    通商産業省公益    事業局長    大堀  弘君    労働省労政局長 冨樫 総一君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度特別会計予算補正  (特第1号)(内閣提出、衆議院送  付) ○昭和三十六年度政府関係機関予算補  正(機第1号)(内閣提出、衆議院  送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会を開会いたします。  委員の変更について報告いたします。  本日谷口慶吉君が辞任されまして、その補欠として金丸冨夫君が選任されました。   —————————————
  3. 館哲二

    委員長館哲二君) 昭和三十六年度特別会計予算補正(特第1号)、昭和三十六年度政府関係機関予算補正(機第1号)、以上両案を一括して議題といたします。質疑を続けます。梶原茂嘉君。
  4. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私は、まず外交の問題に関しまして、二、三総理及び外務大臣にお伺いしたいと思うのです。  第一は、中共との関係でありますが、総理は、しばしば中共の問題に対しては、前向きの姿勢でもって、できる限り世界の情勢の推移を見詰めながら、慎重に考えていきたいという趣旨見解をお示しになっておるのであります。その限りにおきましては、われわれ全面的に同感をするのであります。そして、その方向において、たとえば経済交流であるとか、文化交流の点においては、積み上げ方式でこれを推進していこう、こういう趣旨も表明されておるわけであります。そのことも異論のないところであります。ただここで、私、外務大臣にまず伺いたいのは、そういう方向において、貿易を推進していく上で、総理も、また外務大臣も、これまでその見解を公にされておるのでありまするが、政府間の貿易協定ということはこれはとらない。なぜかというと、それは中華人民共和国の承認につながる懸念があるから、それは控えなければならないという趣旨のようであります。政府責任としては、国民を保護し、国民の権益を守っていくということは、これは当然のことであろう、そのことは貿易についても同様だと思うのであります。私が疑問とするところは、政府間の協定であれば、それが必然的に相手国政府承認することに通ずるという、その点であります。そのことは国際法上も、そういう原則といいますか理論があるのか。あるいは国際法上の慣例として、そういうことが確立しているのか。一体その政府間で貿易協定をすれば、それは相手国政府承認に通ずるというこの考え方根拠といいますか、それはどういうところにあるのか。これを一つ示しを願いたいと思います。
  5. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 政府間で貿易協定を締結するという場合、双方の政府が、その貿易取りきめの内容について、責任を持つということでございまするから、勢いその政府政府関係、なすわち相手国政府承認したということになると考えるのでございます。で、例を申しましても、一九五五年六月に、エジプト中共との間に通商代表部が設けられまして、これは間もなく承認になっているのでございます。それからキューバの例もございまするが、これは一九六〇年、キューバとの関係で通商取りきめができまして、間もなく——これは十日以内だったと思いますが、中共承認ということになっておりまするのでございまして、法律的に申しましても、また事実問題といたしましても、今申し上げました二つの例は、事実問題としてそういうことになりますと、すぐに国民政府の方が経済断交をする、国交断交をするというようなことになりまして、勢い国民政府との間には外交関係はなくなる、中共との間に外交関係が持たれる、かような例にもなっておりまするし、理論的にも、実際的にも、政府間貿易協定というのは、さようなことになっているということでございます。ただ最近、従来政経不可分という考え方で、まあ私どもはさようなふうに中共政府がいっていると観念させられておったのでございますけれども、最近は御承知のように、カナダ中共、あるいはオーストラリアと中共との間に相当大量の穀物の買付が行なわれております。ことにカナダとの間には、一九六三年までの間に小麦五百万トン、大麦百万トンという非常に大量の買付がなされております。カナダはもとより中共承認いたしておりません。その間に、いかなるふうに理解したらよろしいか、若干その点に変化があったように感ぜられる次第であります。
  6. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私は国際法上の理論とか、現実慣例等をよく承知いたしておるわけでは毛頭ございません。ただ相手国政府承認するかしないかというのは、これはこちらの方の自主的な一つの意思と申しますか、これがやはり中心ではなかろうかと思うのであります。かりに協定を、貿易についてあるいはその他の事項においてしても、こちらの考えとして相手方をこれによって承認するわけではないという考え方があれば、おのずから事柄は別途ではなかろうか、こういうふうな感じがするのであります。たとえば郵便でありましたか、そういうものの協定については、これは決して承認にはつながらないという説明を伺ったやに思うのであります。しかし二つ政権の間の話し合いという点については、これは私は理論上も別段の相違がないように思うのであります。従って、今外務大臣が例に出されました、たとえばエジプトの問題とか、キューバの問題、これはおそらくはもともと相手国承認するという考え方が一面にあって、その上で現実のそういう措置がとられてきたのであろうと思うのであります。そういう場合ももちろんありましょうし、そうでない場合もあり得ていいのではなかろうか、こういうふうに思うのであります。  それから、今外務大臣が過去の経緯についてお話になったわけでありますが、昭和三十三年の春でありましたか、第四次民間協定が結ばれる際に、周知のように、四つの項目にわたる付属的な協定民間協定の形において行なわれようとしたわけであります。しかしその内容を見ますると、民間という形はとっておるけれども、それぞれの国にその代表部を置き、そこに従事する者の身分の問題を取りきめる、あるいは裁判上の問題を取りきめる、さらに国旗掲揚に関する問題の取りきめもあったのであります。これらは実質的に考えますると、政府責任というものなしには当時も私には考えられなかったのであります。それは民間の形をとることは、当時の実情としては異存がないのでありますけれども、実質的に考えると、やはりこれは政府責任に属するものである、こういうふうに考えたいのであります。はたしてそれが結果において今外務大臣が御指摘のように、台湾政府国民政府に非常な刺激を与え、非常な反響を受けたわけであります。それに対して当時の政府は、まあいろいろと弁解と言いますか、言いわけと言いますかをした。経済断交事柄も起こったわけであります。台湾とのそういう折衝の経緯がさらに中共刺激をいたしたこともありましょうが、中共からも非常な反撃を受けたわけであります。もしこれが単純な民間だけの協定であれば、何も台湾からもとやかく日本政府が言われるはずもあるまいし、中共自体において毛、そう民間同士の問題について反撃を加えることもなかったのではなかろうかと思う。結局実質的に考えれば、政府責任に属することであったから問題は私はそういうふうに進展したと思うのであります。幸か不幸か、不幸なことだったと思いますけれども、その結果ついにわが方としては、この貿易の問題についても静観という態度を取って、自来三年有余に及んでいるのが実情のようであります。相手国が純然たる民主国と申しますか、であれば、これまた民間同士ということも当然あり得ることで、現にあるわけでありますけれども、共産圏の国といたしましては、形は民間であっても実質はこれは国の貿易であることには変わりはないと思う。相手は国なんです。それに対してこちらは民間だというのでやっていきますると、結果において、ともすればこちらの民間の形というものが公の一つ立場地位というようなものを帯びてくる。純粋な民間の性格から少しはみ出してくるというようなこともあり得ようかと思う。そういうことは適切な事柄とは考えられない。今日こういう事態にあたって前向きの姿勢をとるという一つの基本的な構想のもとにこの問題を考えていくといたしますれば、三年前の三十三年の春以前の姿に戻る。戻るということは、これは言葉じりにこだわるわけではありませんけれども、うしろ向きの格好になるような感じがいたします。非常にむずかしいことじゃなかろうか。こう思うのであります。やはり前向きの姿勢において考えていくとすれば、そこを一歩踏み切っていくと申しますか、ということが大事なことのように思われるのであります。  ちょっとこれはそれますけれども、たとえば中共戦犯等関係で抑留されている抑留邦人の問題でもそうであります。われわれ日本人戦犯その他の事情で外国に抑留されているその国が日本政府として承認しておる国であろうとなかろうと、その日本人を保護していく、守っていくということは当然私は政府の本来の責任であろうと思う。ところが、従来中共に抑留されている邦人の問題についても、これはそれを日本政府が世話することが中共承認につながるという理屈であるのかどうか。これはどうか私は知りませんけれども、政府はわれ関せずという態度を表面にはとっておるわけであります。現在まだ中共には十数人の日本人が抑留されておるのであります。これらに対して政府は当然その責任話し合いを進める。相手がわが方を承認しておろうがなかろうが、それは第二の問題である。政府当然の私は責任であるだろうと、こう思うのであります。  問題はちょっとそれたわけでありますが、今後の積み上げ方式において前向きの姿勢で進んでいくということであれば、私は外務大臣とされましては、貿易協定政府間で結んでも、それは直ちに相手国承認にはつながらないのだというととろに一つの目標を瞬いて努力を進めていくのが、現在の段階における外交上の課題ではなかろうか、こう、ひそかに思うわけであります。私は何も中共承認した方がいい、従ってその一つステップとして両国政府間の協定をした方がいいということを言っているわけでは毛頭ありません。しかし、過去三年前のあの経過から考えまして、相当これから先、この問題を打開していくためには、政府自体責任を持っていくべきだ、しかもそのことが決して中共政権承認にはならないだろうというところを、一つ打開していくことが必要じゃないか、こういう趣旨で質問を申し上げているわけであります。外務大臣なり総理一つ考えを承りたいと思います。
  7. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 先ほど御答弁を申し上げましたように、従来、政府間協定というものが承認につながると、かように一般的に法律解釈が行なわれておりますし、また、実際問題といたしましても、過去においてのエジプトあるいはキューバの例を見ましても、この政府が、政府間協定貿易上いたしますときには、すでにその承認前提としてそれがなされているという実際上の点がございますし、この点については、従来から申し上げましたような考え方を変えておらないのでございます、ただ、一体、それじゃ政府間協定というのは何がゆえに必要であるかといいますと、これは、結局両国政府相互不信感を持たず、お互いにその立場を尊重して、そして初めて結ばれるものでございますから、やはりそういう政府間の貿易協定が結ばれまする場合には、まず、その前提となる相互不信感というものが払拭されなければならないというふうに思うのでございます。従いまして、その間に至る積み上げ方式ということは、現実の問題として登場してくるものだ考えている次第でございます。
  8. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 異論を差しはさむつもりはありませんけれども、両方の不信感前提としながら、しかも貿易の推進は大いにやろう、これは民間でおやりになったらいいだろうという考え方は、私は必ずしも賢明なといいますか、正しい積み上げ方式とも受け取れないのでありますが、その点はそれでけっこうであります。しかし、先ほどお示しの、理論的にもあるいは例において、もそうであるという点につきましては、これは私の希望でありますけれども、十分一つ今後御検討をお願いしたいと思います。  それから、これも中共に関連する第二の問題でありますが、現在、中共承認しておらない最大の国は、私はアメリカであろうと思います。そのアメリカにおいても、アイゼンハワー大統領時代中共とは公の、ある接触を持っていたのであります。ケネディ大統領になりましてからも、中共との接触は、これを尊重するといいますか、それに相当の重点を置いていくという考え方であるように伝えられているのであります。(「ノーノー」と呼ぶ者あり)現実にはいろいろ変化はありましょうけれども、ある一つの公的なタッチといいますか、これがあるのは否定できないのであります。私は、中国と日本の置かれておる特殊の立場といいますか、そういうものから見まして、何らか一つこれは公の、どういうレベルでどういうことになりますか、これは私の関知するところではありませんけれども、何らかタッチする、一つ接触を保つ工夫があっていいんではなかろうか。これを、決してその中共承認の問題とか、国連加盟問題とか、そういうものに結びつけて考えておるわけじゃありません。現実の問題としてそういうことを外交上工夫されるということ、これがやはり総理の言われる前向きの姿勢における一つステップといいますか、事柄じゃないか、こう思うのであります。この点についての御意見を承りたいと思います。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 中共に何らかの形で接触を保つという考え方に基づきまして、総理がさきのこの委員会におきましても言われましたように、あるいは郵便協定であるとか気象の協定でありますとか、そういうものに対しては、まずここから接触していくことが一つの方法ではなかろうか、こう言われておる次第だと存じております。しかしこの問題につきましては、やはり先ほど申しましたように、相互信頼関係というものがその基礎にあるととが必要ではないかと思います。相互にその国の立場を尊重して、お互いにその内政に干渉しない、こういう立場接触が保たれなければ、いたずらに接触してもこれはよろしくないと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり)その観点に立ちますと、総理大臣が言われましたように、いまだに何ら反応がないということは、その点で私は若干遺憾の気持を持つのでございます。そういうことから接触を保ちつつ、相互にその立場をよく理解し合ってということが、やはりその接触をさらに拡大する原動力になろうかと思いますが、こちらだけでそういうことがやれるわけではございません。
  10. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 次に、私は韓国の問題について若干お伺いしたいと思います。  これまで李承晩政権異変あと今日まで、韓国の新しい張勉政権について、とかくいろいろの観測といいますか、があったのであります。遠からず何らか相当変化が起こりはしないかというふうなことも、別にはっきりした根拠があったわけではありませんけれども、いわれておったように思います。ある不安の念を持って見て参ったように思います。ところが五月十六日軍部のクーデターによりまして非常に大きな異変が起こったわけであります。こういう段階でああいう形で革命が起こるということは、これはおそらく予想をされなかったことであろうと思います。われわれは、何といいましても最も近い隣国でありまするだけに、非常な大きな実は衝撃を受けたのであります。従来残念ながら日韓交渉相当長きにわたって行なわれておりましたけれども、われわれ国民といたしましては、どうもお隣の韓国の実際の情勢事情というものにはきわめてうとい立場にいたわけであります。これは国交が正常化しておらない現在の段階においてはやむを得ないことかと思います。しかし、ああいう大きな異変が起こった、今日までかれこれ一週間近くたったわけでありますが、相当いろいろの情報が手元に収集されたことと思うのでありますが、この際、あの革命——革命といいますか、異変につきまして、その実態、その真相について、外務大臣より御説明をお願いしたいと思います。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 御承知のように昨年の四月に李承晩政権民主革命によって倒れたということで、そのあと張勉内閣が成立したわけでございまするが、やはりこうした過程を通して成立した内閣というものは、そのあとに来る事後処理というものを非常に困難なことにしておることは、これは当然でございまするが、まあ何といっても、回復されましたる言論集会結社の自由ということに基づきまして民主的な韓国を打ち立てる。そのためには、従前からあった諸種法律を整備しなければならぬということが必要でございまするが、それに対しまして、従来からの勢力の反発というようなものもございます。そこで、なかなか苦しい立場にあったことは認められるのでございまするが、ようやく革命後一年をけみしまして、諸般の法律的な問題、あるいはその以前に権勢の地位におりましたる人たちに対する処罰の問題等がようやく目鼻がつきかけて、これから韓国の建設に向かって諸種の強力なる手を打とう、こういう段階であるようにわれわれ承知いたしておったのでございます。従いまして、不安定の中にありまする張勉政権実態というものについては、十分われわれはこれを知っておるのでございまするけれども、さればといって、一衣帯水の地位にある韓国が、できるだけ早く民主的な国としてそして繁栄していく、民生を向上していくということに、われわれとしてもできる限りの協力をなし得ればと思って日韓交渉等も進めておったような次第でございまするが、今申しましたような事情で、なかなか経済的な手が打てない。一方、農村地帯におきましては、非常な疲弊した経済状態である。そこで、一方から言いますると、同じ民族である朝鮮人二つの国に分かれておる。これはやはり統合すべきではないか、こういうような動きもあったようでございます。そこで、そういう状態を見ておりますと、一方は共産国である。そして韓国経済事情がそういう状態である。また、言論集会結社の自由ということになりますると、共産主義の浸透というものも非常に言論の自由ということを通じて容易になってくるわけでございますので、そうした傾向がだんだんびまんしてくる。かくのごとくんばということで、軍人の一部がクーデターを起こしたと、かようなことのようでございます。  そこで、このクーデターは、大体三千六百人の軍人が参加したということでございます。第二軍という人たちでございますが、これが一応御承知のように成功いたしまして、そして、革命委員会は六項目をあげてその態度を表明いたしたのでありますが、御承知でございましょうが、一応読んでみますと、まず第一に、反共を第一の使命とし、今までの形式的な反共体制を再調整し強化する。第二は、国連憲章を守り、国際条約を忠実に履行し、米国を初めとする自由友邦との友好を強化する。三、韓国社会の腐敗と旧悪を一掃する。四、絶望と飢餓状態にある民生苦を早急に解決し、国家の自立経済改善に総力を注ぐ。五、国土統一のため共産主義に対決できる実力の培養に全力を集中する。第六、このような任務が達成されれば、清新で良心的な政治家政権を委譲し、軍は本来の任務に復帰する。かような六項目をあげておるのでございます。  韓国の民主的な柱でありまする大統領ユン・ポソン氏に対しましては、当人は辞職の意を持っておったようでございまするが、結局これを翻意いたしました。現在大統領としてとどまって新内閣張都暎氏のもとに結成されたと、こういう段階でございます。  わが方に対しましては、この韓国委員会考え方というものをこちらの代表部を通して土曜日の口に言うて参りました。日本関係というものは自分らは大事に考えておるというふうな趣旨も添えられておったようでございます。  われわれの方といたしましては、まあこれに対していろいろの批評をするということは一切避けまして、事態を十分に見守ると、かような態度に出たいと存じております。  なお、こちらに参っておりました日韓関係代表者は全部帰国を要請されたという状態のようでございます。
  12. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 今回の韓国の大きな革命的な異変動機といいますか、につきましては、ただいま外務大臣からいろいろの情勢をお話しいただいたのであります。御承知のように、この動機についてのいろいろの観測が行なわれておるのであります。最近のラオスの問題あるいは南ベトナムの問題、まあそれらを通じて今回の事件も一つの関連性のあるような考え方から見ると、いろいろ見方もあるようであります。そのことは、北の北鮮方面からの強圧というか圧力といいますか、これが非常に急激に増強されつつある。あるいは韓国内部における一つの左の勢力の台頭といいますか、そういうものとの関連とか、いろいろ見方があるようでありまするが、まあこれはただいま外務大臣も言われましたような趣旨でわれわれといたしましても理解する、ほかは、この際としてはないかと思うのであります。将来、この新しい軍部による政権がきわめて短期であって、あとはできる限り早い機会に普通の形の民政といいますか、そういう面に移行をするんだということが言われておるようでありますが、はたしてそういうふうになるものであろうか、あるいは、相当長きにわたって軍部を中心にする政権というものが続いて、それによって韓国の政治が行なわれるのであろうか、これもこの時点でそれを判断することは困難でありましょうけれども、一応、革命委員会ですか、その方の責任者としては、できるだけ早い機会に委譲をするんだということを言っておるようであります。外務大臣とされましては、どういうふうなお見通しを持っておられましょうか、もしできれば伺いたいと思います。
  13. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 軍事革命委員会政府の側におきまして、できるだけ民政、本来のシビリアンの内閣に移すということを言っておるようでございまするが、われわれといたしましては、一日も早くその韓国の政情というのが平静に復して、そうして民生安定に努力し得るような形になることを望んでおるわけであります。ただ、革命自身が、クーデターをいたしますということでありますから、非常に極秘のうちに事を運ばねばならなかった関係もございましょうし、そういう関係もありまして、クーデターそのものに対する計画は非常に緻密に行なわれたと思われまするけれども、そのあとのことについては何も計画がなかったのじゃなかろうかという気もいたすのでございます。従いまして、そうあと関係が急速にできるというふうにも見かねる節もあろうかと存じます。
  14. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私は、今回の韓国異変相当強い衝撃を受けたのであります。この新しい軍部の政権が今後どうなるか、表明されておるように、また、外務大臣が今期待されておるように、新しい民政におけるノーマルな姿に移行するものかどうか、かりに移行することがあるといたしましても、事態相当深刻の度を増していくのじゃなかろうか、一路安定した方向に進んでいくというふうにはどうしても考えられないんであります。むしろ事態は、われわれの立場から見ましても、ほんとうに憂慮すべき方向に展開する危険があるんではなかろうか、こういうふうに、少し思い過ぎかもしれませんけれども、感じておるのであります。  そこで、これは私は、総理に伺いたいんでありますが、日韓交渉は、ずいぶん長い時間をかけて今日まで参りました。先般来の外務大臣説明なりお考えによれば、遠からず解決して、国交が正常化する期待もあったのでありまするけれども、事態がこうなるというと、なかなかそう簡単には考えられないことになったわけであります。先ほど、中共の問題のときに、外務大臣が繰り返して、両国の間というか、両国政府の間のといいますか、相互信頼ということがいろいろの問題の基礎であるということを言われたのであります。私は、そういうことはその通りだと実は思います。韓国は、最もわれわれの国に近い。歴史的にもいろいろ関連性を持ってきた。そういう観点から、善隣友好といいますか。そういうことが外交の方針として当然のことであり、望ましいことだということについても一点異論はありません。しかしながら、口だけの友好善隣とかいうことだけでは、問題の実体を解決することはできないのであって、やはり両国国民大衆の相互信頼、相互の信用友愛といいますか、そういうものが両国国民大衆にあって、それを基調として、私は、国交の正常化ということも実現するのではないかと、かねがね考えていたのであります。残念ながら今日までそういう事態ではないというふうに思います。今後どうなりますか、これは今後の問題であります。総理は、衆議院の予算委員会でありましたかにおいて、中共の問題は、これは世界的の問題である、従って、世界的の情勢を見きわめて考えるべき事柄であろう、しかし、韓国の問題はそれと若干趣が違うという趣旨見解を述べられておるのであります。私は、韓国日本は、自由陣営の立場において、同じ立場に立っておるということは、その通り考えるのでありますけれども、韓国の問題も、なるほど中共の問題とは若干趣が違いますけれども、国内に三十八度線があって、そうして東西冷戦のただ中にいるのであります。従って、韓国の問題を外交考える上においては、やはり世界の情勢の推移等も十分考え合わせて、慎重の上にも慎重の態度をとってこれに臨むということが賢明にしてかつ必要なことではないかと、かねがね考えていたのであります。ぜひ一つ、慎重な態度でこれはお臨みをいただきたい、こう希望をいたすわけでありますが、総理一つ御所見を伺いたい。
  15. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 中華人民共和国も、また韓国も、われわれとしては、歴史的に地理的に特別の関係にあることは、お話の通りでございます。ただ、問題の取り扱い方につきましては、私は、重いとか軽いとか、あるいは前後とかいう問題ではなしに、おのずから日本としては、とるべき措置の具体的問題につきましては、相当変わってくると考える、また変わるべきが今までの経過からいって当然だ。しかし、あくまで外交、ことに隣接の関係にあります両国につきましては、十分慎重に、世界の情勢と国内の国民の気持等を考えまして、十分慎重に努力を重ねていきたいと思います。
  16. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 私は次に、今回の補正予算に関連いたします問題について、労働大臣に一つお伺いしたいと思います。  今回の補正予算は、わが国の公共企業体における職員の給与の改善がその内容であります。この予算の提案の理由の説明において、あるいはその他のこの問題に関連するいろいろの機会において、大蔵大臣なり労働大臣は、しばしば、今度の給与改善は、三月二十七日に行なわれました公共企業体労働委員会の仲裁裁定を完全履行することである、この完全履行するということは、公労法の精神を尊重し、公共企業体における健全な労働慣行を確立する趣旨においてこれを行なうのだということを吉明、説明をされているのであります。政府が、今回の問題に関連して、との委員会に仲裁裁定を申請したのであります。従って、仲裁裁定の制度の趣旨からいいましても、その結論に当事者である政府関係の機関が従うということは、これは当然のことではないかと思います。当然そうあるべきことだと思います。特に予算の関係で、過去におけるいろいろ問題もありましょうけれども、根本の趣旨においては当然そうあるべきだ。従って、今回の予算提案においても、公共企業体における労使の健全な慣行を確立する、そのために完全実施をするのだ、これは少し見当違いじゃないか。当然のことなんです。これをもって健全な慣行を確立するのだというふうな考え方は、ちょっと私には実はふに落ちないのであります。その点の一つ説明を、簡単でいいですから、お願いしたい。
  17. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 公共企業体だけではございません。労使関係というのは、現在健全な慣行が確立されているとは考えておりません。健全な慣行が確立されるように努力をいたして参っているつもりであります。そこで、公共企業体の労使関係は、御承知のごとく、憲法で、多くのすべての労働者に与えられている労働三権の中で、争議権は公共企業体の労働者諸君には与えられていないわけであります。それにかわるものといたしまして、仲裁裁定が最終的な判決として労使双方を拘束することになっているわけでありますから、その精神からいってあたりまえの話である。あたりまえのことをやるのを、労使の健全なよい慣行を確立するとうたうのはどういうことだろうかという御議論が出て参るのは、ごもっともであります。しかし、あたりまえのことがあたりまえの通り労使双方で行なわれておりますと、健全な慣行は確立されるのでありまして、現に明確に法律で禁止してあることでも、守られないということが多いことでありまするし、また、それを守らないで、破っていくのだというようなことが、やはり労働者の権利を前へ進めるために必要なんだというような議論もございまして、従って私は、労使のいい慣行を確立するためには、労使双方の信頼と理解が得られることが第一でありますけれども、それが得られない、その過程として、あるいは媒介として、私どもは、第三者機関の構成に対する信頼を確立していくことが必要であり、それに労使双方が従っていくという慣行を作り上げていくことが必要である、そういう意味におきまして、仲裁裁定を政府が完全実施するという例を重ねて参りますことが、労使のよき慣行を作り上げる前提になるのだと、こう私どもは考えておる次第であります。
  18. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 労働大臣の御説明の、あるいは御意見の段階、その範囲においては、私もよく了解いたします。しかし、仲裁裁定に持ち込んで、ある結論が出て、それに従っていくということは、私、当然のことだろう、それを私が申し上げますことは、今回のこの公共企業体の労働運動といいますか、ベース・アップに関連する一連の経過を見まするというと、逆に、健全な労使関係の慣行を確立していく方向と逆じゃないか、こういうふうな感じを私は非常に抱いたわけであります。それで、私そういう質問をしたわけであります。私は、直接いろいろそういう問題についての知識はありませんけれども、御承知のように、今回は、ほとんど団体交渉の始まりまする当初の段階において、最終段階の半日ストのことが宣言され、一応取り上げられた、違法の行為についても、これをあえてやるという態勢が現実に別に出てくる。それに対して政府は、これは、政府からいえば、これは正当な規制でありましょうけれども、違反者に対しては厳重な態度で臨むということが出てきた。私は、公共企業体の労使の健全な慣行というのは、何も仲裁裁定を尊重するというのではなくて、その前に、与えられておる団体交渉というものをお互いが尊重するということが、健全な慣行を確立する方向じゃないか、私はこう思うのであります。それが大事なことじゃないか、そのために、公共企業体には団体交渉の権能が法律上与えられておる。政府もそれは尊重すべきである。労働組合の方においても、その機能というものを十分活用すべきである。こういうふうに思うのです。それがあって、初めて公共企業体の労使が健全な方向に進んでいく。こう思うのでありますが、今回は、前のことは別といたしまして、その大事な団体交渉というものがやや置き去りになって、ある程度のもちろんあれはあったでしょうけれども、むしろそれは二義的に扱われて、そうして仲裁裁定にすぐ入ってしまって、これを尊重するのだ、こういう行き方というものは、これから先を考えるというと、これは決して健全な方向ではあるまい、こういう感じを持ったのであります。公共企業体における団体交渉、これは大事な機能であるけれども、これがどうもうまく動かない。一体これはどこに原因があるのか、私はよくはわかりませんけれども、今度の仲裁裁定に持ち込んで、それを全面的にやるんだ、この点だけにしぼって考えていくと、これは、一般公務員の場合の人事院の勧告と性格がだんだん似てくるのではないか、こういう感さえするのであります。特に私の疑問とする点は、公共企業体の現在の制度のもとにおいては、予算その他にいろいろ制約がある。いろいろ制約があって、団体交渉の権能は、なるほど労働組合に与えられておるけれども、それを受けて立つ公共企業体には、その権能に十分応じ得るだけの用意といいますか、能力といいますか、それがない、それが制約されておる。従って、結果において、団体交渉というものは、非常にゆがめられた形において存在する。勢いほかに行かざるを得ないというところに、一つの制度上の欠陥があるのではなかろうか。制度を今のままにしておいて、現に予算の審議をやっておるわけです。そういうふうな実体が制度的にできてきて、そして団体交渉を中核にするところの労使のいい慣行と書ってみたって、なかなかうまくいかない、何らかの制度的な一つの改善といいますか、掘り下げた検討をしていかないと、石田労働大臣、非常に労使の健全な慣行の樹立には熱意を示されておるのでありますけれども、将来私はいかがであろうかと、実はこういう懸念を持つのであります。そういう観点から、今回の公共企業体の一連の動きに関連して、労働大臣の一つ見解をお伺いしたい。こう思うのであります。
  19. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 労使のいい慣行を作り上げる前提は、団体交渉によって労使の問題を処理することを第一の前提としなければならないことは御説の通りでございます。従って、公共企業体におきましても、その団体交渉が力を持って、団体交渉の範囲内で問題が解決されるということが一番望ましいのでございます。しかし、今日までの経過を顧みてみますと、予算上、資金上の理由で、経営者側は常にゼロ回答しかできなくて、そして労働委員会の方に持ち込まれるというのは慣例でございます。しかし、それでは、団体交渉をして労使のよき慣行を作り上げる土台たらしめることはできないわけでございますので、今回は、ゼロ回答しかできなかったような今までの諸条件は、これを排除いたしまして、公社側が自己の良心と責任においてある程度の数字を、妥当と思われる数字を出し得るように私どもは努力をいたしまして、そして団体交渉が行なわれて、各公社それぞれ若干の相違はございますけれども、千円程度、定期の昇給を加えますると、千九百円程度の数字を出したようであります。そこで話し合いが前に進んでくればよかったのでありますが、しかし、一方組合側は、当初の要求から歩み寄りを示さない、公社側もその数字で話をしても、そこのところで前になかなか進まないというので、交渉がこれ以上むずかしいということから、団体交渉は見込みがないというような判断に各公社現業の当局が立たれまして、労働委員会に提訴されたわけであります。そこで、私どもから言いますと、団体交渉がまとまるには、やはり双方の歩み寄りが必要であります。従って、公社現業当局が前例のない具体的に数字を出して参りました以上は、私は、組合側もやはり歩み寄りを示す姿勢をとっていくことが望ましかったと思います。しかし、公社現業当局が、何と申しましても、予算上、資金上の拘束を受けて、普通の民間企業の経営者のごとく、自己の責任においてものが言えないという状態にあることも、私は否定はできないと思います。しかしこれは、現行の制度の上におきましても、団体交渉の結果、経営者が自分の責任と良心において正しいと判断をいたしました妥結をいたしました場合におきましては、私は、やはりその妥結の結論というものを尊重していくべきことは当然であり、それは仲裁裁定の完全実施の精神と同じでありまして、同一の処置を政府はとるべきものと思っておる次第でございます。今回は、現業及び公社当局が一歩前進をいたしまして、これは、おっしゃいましたような、団体交渉を尊重するというところへの一つの前進であります。これを土台といたしまして、今後の公共企業体の労使関係というものは、もっと団体交渉を生かしていくようにやって参りたいと思っておる次第であります。それの障害になる事態につきましては、個々の事例につきまして、私どもはその排除に努めますとともに、制度全般についても、団体交渉を生かしていけるように検討をいたしてみたいと考えておる次第でございます。
  20. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 時間の関係がありますので、簡単に、大蔵大臣なり企画庁長官、農林大臣にお伺いしたいと思います。  第一点は、剰余金の扱いの問題であります。一昨日木村さんとの質疑応答の中にも現われたのでありますが、異常な、予想をこえました経済成長のために、総理大臣といえども考え及ばなかったような剰余が出たわけであります。大体一千億見当であろう。これは、現在の財政法から言うというと、翌々年度に持ち越して、それまでたな上げをして、国債の償還と一般歳入に振り当てていくのであります。ノーマルな情勢の場合においては、それでいいでありましょうけれども、昨今のように、こういうような経済の変化の激しい、伸びの激しい、予想がなかなか困難の場合、そういう場合において、一千億からの、これはまあ一次、二次補正を持った上で、なお一千億でありますが、そういうあれが出る。それを国債の償還と一般歳入に振り当てるということは、いかにも平常の扱いのような感じがいたします。大体この一千億の扱いについては、総理も減税、社会保障、一般行政投資というふうに言われておりますが、まあ少し片寄って考えれば、納税者にバック・ペイする、片寄っているかもしれませんけれども、そういう性格が多分にあろうと思いますが、そこで、本予算の審議のときに、高木参考人が、相当剰余金が出るとすれば、国債を返す、借金を返すという準備もけっこうだろうけれども、減税基金といいますか、減税基金というふうな一つ考え方を検討したらどうであろうかという示唆が一つあったのでございます。私は、研究する少なくとも課題であろうかと思ったのでありますが、まあ税金の問題は、それは別といたしましても、剰余金の扱い方についての現在の制度について、何らかやはりこれは検討をすべき時期ではなかろうかと思うのでありますが、簡単に一つお答え願いたいと思います。
  21. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) まあ一般論として申せば、財政は、この経済情勢に弾力的に対処することが望ましいということでございますから、今のような、現行の剰余金処理の規定がはたして最も適当なものであるかどうかということは、十分私は検討に値するものだろうと考えております。従来からの例を見ますと、この財政法がございましても、必要に迫られた場合は、決算を待たずしてこれだけの剰余金が出る見込みだという見込みがあるという場合には、見込みの範囲内において、次年度の財源にこれを繰り入れて使った例もございますし、また、決算があり次第、その年の、決算ができた年の財源にこれを使用したという例もございます。そうすれば、二年目に使用したのではなくて、すでに翌年度に使用したという例もございますが、昭和二十三年以来は、大体この財政法通りに運用して参りました。従って、当面これは使えないものだということを前提として財政運用を政府はやっている、これが非常な経済の支障にならぬような運営をしておるというのが例になっておりますので、今回の場合を見ましても、これだけの剰余金が出ておっても、第一四半期の対民間収支を見ましても、一般会計では若干の揚超にはなっておりますが、特別会計を通じて見ますと、四月——六月の間はまだ若干の散超というようなことになっておりまして、支出上のいろいろな調整というものが行なわれておることでございますし、特にまあただいまの場合を私どもはやはりこの問題と関連していろいろ研究してはおりますが、今、設備投資と国民の消費増大というようなものを軸として、経済が非常に伸びておる基調にあるときでございまして、これがあったからといって、政府がここで政府需要をさらに追加する必要のある時期というふうにも思われませんので、要するに、支障のないような財政上の運営をやっていくより仕方がないのじゃないかと思っております。
  22. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 物価の問題について簡単にお伺いしたいと思います。もうすでに田植えが始まりまして、本年度の米価をどうするか、非常にめんどうな大きな問題にわれわれ当面せんとしておるのであります。現在の食管制度のもとにおいて、昨年以来採用されておりまする生産費・所得補償方式から言いますというと、異常な豊作でもあって、それが特別に考慮に入れられれば、それは別でありますけれども、そうでない限り、生産者価格の値上がりは、これはすなおに考えるというと、当然という数字がおそらく出てくることと思います。それはそれでいいのであろうか、政府はどう考えておられるかということ、それから、これは迫水長官に伺いますけれども、消費者価格は、御承知のように、昭和三十二年以来今日まで、約三年ほど据え置きになっております。ほかの物価は相当上がっておりますから、比べてみれば、米の消費者価格は下がってきているということになるわけであります。一面国民所得の向上から見まして、生計費の中で占めます食糧費の割合は毎年下がって参ります。おそらく最近においては、四〇%を割る数字が私は出るのじゃなかろうかとさえ思います。食管制度の法律の建前から言いますと、消費者価格を安定して、生計を安定するとありますけれども、当時に比べれば相当余裕が出てきたということも、これは争えない事実であります。従って、消費者価格を本年は一体どうするのだろうか、上げるのであろうか、据え置いていくのであろうかということも、これは非常に微妙な重要な問題と思います。長官は、値上がりムードを懸念されておりまするけれども、きわめて冷静に考えていけば、多少の引き上げもいいのじゃないかという議論もこれは立つわけであります。それらの点についてどういうふうに考えておられるか。一つお伺いしたいと思います。
  23. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御指摘のように、食管法の規定によりまして、米価の決定は、生産費、物価その他の経済事情を参酌してきめることになっておりますが、その規定のもとに、かつてはパリティが中心になってきめられたこともございます。最近において、生産費及び所得補償方式という格好に算定方式がまとまって、その方向に向かっておることも御指摘の通りであります。従って、そういう結果から見ますると、労賃その他物価の値上がりによって、当然米価が上がるであろう、生産者価格は上がるであろうということも、お話の点はごもっともでありますが、別に、反対に生産費所得補償方式ということをとりましても、この反当収量の非常な増加になって参っておりまして、同時にまた、将来に向かっては、就業労働人口の減ということから、いわゆる生産性の向上によってという値上がりのマイナス部分の要因もございますので、それらの問題をあわせつつ十分に考慮して決定をいたしたいと思います。  それから、そういう結果、直ちに消費者米価を上げるんじゃないか、また上げるのかというお尋ねでありますが、消費者の米価というものは、消費者の一般大衆の家計に及ぼす問題もありまするし、また、国民経済全体に及ぼす影響もありますので、それらの点は慎重に考究していきたいと思います。
  24. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 農業基本法の建前から言いまするというと、生産の面においては、選択的拡大ということが大きな基調になっておるようであります。生産物価格安定の考え方としては、むしろ需給の実態に応じた適正な価格を基礎にしながら、消費者の不利益の立場を是正するという考え方のようであります。しごくもっともだと思います。食管制度は、需要者は一人であります。政府が幾らでも無制限に買うというのであります。価格は、所得補償方式をとっておる。従って、皮肉を言うわけではありませんけれども、選択的拡大には最も適した立場に米があるということであります。総理大臣も農林大臣も、食管制度を堅持すると言っておられる。これはけっこうだと思う。しかし、食管制度のもとにおける米価のあり方ということについては、昨年採用された生産費所得補償方式がいいのか、あるいは、今回採用されんとしておる大豆の場合のように、価格は価格、所得補償は別の形で一ついく、価格というものと所得補償という考え方を分離していくということは、私は一つの問題であろうと思います。そういう点について、これは将来一つ十分御検討をお願いしたいと思います。  それから、私は迫水長官にお伺いしたいのは、土地の価格の問題であります。土地が非常な値上がりを示しております。三十年をベースにして三十五年、昨年を見ますと、この間に、都市における地価は四〇〇%、五〇〇%あるいはそれ以上の騰貴を示しております。農村地帯においても、率は比較的少ないのでありますけれども、相当の値上がりを示しております。こういうことは、所得倍増計画を円滑に遂行していくという観点において、私は支障が起こってくるということを懸念するのであります。今の土地の異常な値上がりというものは、一時的現象と見ておられるのか、相当やはり続いていくと見ておられるのか、その点の御見解、また、これに対して何らか必要な措置を検討するお考えであるかどうか、そういう点を伺いたいのであります。農業基本法におきましても、農地というものは、申すまでもなく、生産手段の最大のものであります。これは、その価格というものが非常に変動して上がっていくとなれば、あの農業基本法の眼目でありまする自立経営農家の規模を拡大していくということも、また協業化を促進していくという考え方も、土地それ自体の価格の点で、私は予期せざる支障にぶつかりはしないかということを懸念するのでありまするから、企画庁長官なり農林大臣から、土地の価格について一つ見解を承っておきたい。
  25. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 先ほどの米の消費者価格のことをちょっと私に御質問がありましたが、農林大臣から大体御答弁があったようですけれども、私の個人的といいますか、消費者物価をお預かりしている立場から言うというと、上がるものは何でもきらいという、そういう感じでございますことを一言申し上げておきます。  それから、今の土地の問題については、きわめてごもっともな仰せでございますが、実は、土地の値上がりの中心はやはり宅地でございまして、結局これは、宅地の供給を増加すること及び宅地の利用の能率化をはかるということ以外にこれに対処する方法はございません。きわめて一時的な現象とは思っておりませんで、これは、恒久的なやはり一つの傾向であると考えておりますので、宅地の供給の増強、宅地の造成と申しますか、私、こういうことはここで言い過ぎることになるかもしれませんけれども、農地の転換ということについては、あまりシビアであっては、これは土地の問題、土地価格の問題というものは、なかなか解決しないのじゃないかという感じもいたしておりますので、そこいら辺は、農林省ともよく御相談をしなければならぬと考えておりますが、たとえば、高層建築を奨励するとか、そういういろいろな土地の造成及び利用の能率化ということ以外に対策はない、それにできるだけ努力したい、こういうふうに考えております。
  26. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 最後に一点、これは迫水長官に伺いたいのでありますが、やはり土地の問題でありますが、所得倍増計画の検討過程において、経済審議会においても、ただいま長官は住宅用地の問題について述べておられましたけれども、工業用地についてはいろいろ検討せられておる。十年計画におきましては、その数字はラウンドで申し上げますけれども、約二億万坪近い新しい用地が必要であるという想定のようであります。それだけの新しい用地が必要である。その中で、あの計画によりますると、約半分ぐらい、四割幾らでありますが、相当巨大な用地の坪数が埋め立てに依存をしているのであります。すなわち、既存の陸の土地と、それから埋め立てと、この数字を見ますというと、非常に埋め立てに期待しているウエートが大きいのであります。これは、土地の価格等の関連もあるかもわかりませんけれども、私は、価格の問題は別といたしまして、これはもちろん、前のベルト計画といいますか、あれの中心のときの構想でありますが、多少そのうち変わったかと思いますけれども、一体その国土総合開発全体の立場から、既存の土地、いわゆる陸の土地の利用というもの、埋め立てをしてやっていく、国土狭小ですから、埋め立てはけっこうでありますけれども、埋め立てをして新しい土地を造成していくということについて、何か基本的な考え方があって、そういう結論ができているのかどうか。どういうふうにこれから考えていっていいのか。それは、工場の誘致でありますとか、後進地域のアップの問題であるとか、いろいろな問題と関連をしてくるわけでありますけれども、ともかくそういう計画がある。現在すでにありますような計画と、それから進んでいくピッチの間には相当のギャップがあるわけであります。大阪、堺におきましては、西独の外資を導入して埋め立てをしてやるということが進んで、現に必要な法案がこちらに参っているのであります。東京湾の方はよく知りませんけれども、新聞の報ずるところによるというと、これまた、どこからか外資を借りてこようというわけで、その調査は東京都の人ですか、これが出かけるということが報じられている。国土総合開発の観点あるいは農業基本法の将来の観点、地方の後進地域の引き上げの問題、いろいろとこれは関連して、新しい埋め立てをどういうふうに持っていくのかという点について、どういう考え方政府は持っておられるか。これは、自由にどんどんやるところは一体勝手にやらしていいものであるかどうか、そういう点についての政府としての考え方といいますか、それを一つお聞かせを願いたいと思います。
  27. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 御説の通り、所持倍増計画におきましては、十年間における工業用地の造成必要面積を約一億六千五百万坪と想定しております。そのうち臨海地帯における埋め立て工業用地は約八千八百万坪、これに伴う道路その他の関連公共施設用地を加えますると、臨海の土地の造成の必要な面積は、約一億一千万坪を推定されておりまして、これだけの埋め立てをするという、必要であるという方針をきめております。しかし、これをこの通り実行するかどうかということにつきましては、埋め立てに関する総合的な計画というのは、現在まだ作っておりませんので、これを研究いたさなければなりませんし、また、太平洋ベルト地帯という観点からこれはできておりますので、後進地域の開発というような観点を入れました場合には、内陸において工業用地を造成するというものも出てくるので、これは、一応所得倍増計画にはそういう埋め立ての計画があるということでございまして、これをそのままにここで実行していくというふうに決定しているというわけではございません。なお研究をいたします。
  28. 梶原茂嘉

    梶原茂嘉君 現実のピッチが非常に早いようでありまするから、一つ十分御検討をお願いしたいと思います。  これで質問を終わります。   —————————————
  29. 館哲二

    委員長館哲二君) 相馬助治君。
  30. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は、一番最初に、首相に対してガリオア・エロア資金問題についてお尋ねをいたします。  総理は、渡米前に、重要問題について野党の党首と話し合いをするということをお考えのようでございまするが、事外交問題に関して首相がそうした態度をおとりになるということに対しましては、大へんにけっこうなことであり、これがよき慣行になることを私は期待しております。そういう際に一番問題になりますことは、現在政府が、首相の渡米を前にして、ガリオア・エロア両資金を対米債務とみなし、返済額の算定並びに返す方法について検討を進め、それぞれ交渉の段階に入っておるようでございまするが、この資金の返還問題に関して、明確に国論が二つに分かれております。御承知のように、一つは、当然の対米債務であるから返すべきであるという論、国民の一方は、借りたものを返すことは当然である、日本がこれだけ復興してきたこの過程において、アメリカに世話になったという、このことを忘れてはならない、それらを勘案する場合に、返すことはもうきわめて当然ではないか、こういうふうに言うております。また、これに対して一方は、どうも今までの国際法規、国際慣行、国内法規、それらの関係から見て、かつまた、今までの日米両国の当事国の意思表示というようなものから見ても、これをにわかに対米債務として承認することはできないという主張と、これを受けて、国民の一部で、これは返すべきではない、こういうふうな議論に分かれております。そこで、私どもの党の見解といたしまするものは、これがかりに対米債務であるとするならば、政府は、その経過について、しさいに国民に納得のいくような説明をすべきであり、国民の一部が抱いている、かりに返す場合にも二重払いになるような考え方というものに対して、そうでないということを、事実に即して、資料を添えて説明をすべきである、そういう努力がなされず、かつまた、現在の段階においては、われわれとしては、いかなる根拠に基づいて両資金を対米債務とみなしていくのか、判断に苦しむ、かような態度をとっております。このことは、どんなことをしても返す必要がないのだというふうに、明確にきめつけているわけではわれわれはありません。少なくとも現在まで、日本の戦後今日までの足取りを考えるときに、われわれは、アメリカが先進国として、後進国的な立場に戦後置かれたわが国を、この資金によって、いろいろの点から経済復興に寄与してくれたことに対して忘れるわけに参らないのであって、そういう角度からすれば、われわれとしては、今日池田内閣総理大臣を初めとして政府が、この両資金の問題について、その資料の発表を拒む態度というものがわからないのです。交渉中であるから、金額の点について今発表することは妥当でないとする説はわかります。しかし、これが対米債務であるという見解を発表する資料と、これに反対するような、ないしは、それに対して疑問を持つような資料があるのですから、それらのすべてを明快に国民の前に私どもは発表すべきではないかと考えます。衆議院における予算委員会の審議の経過を見ても、また、本委員会において、おととい社会党の木村、羽生両委員の質問に対する政府の答弁等を見ても、この点が十分でございません。この点に関して、首相はどのようにお考えであるか。一つあらためてお伺いをしたいと思います。
  31. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ガリオア・エロアの問題は、過去十年近くからいろいろ論議せられておるのであります。しこうして、これは日本に対しての贈与であるから、払う必要ないという意見も、私はたびたび聞いております。しかし、これはもらったものではない、借りておるものなら、すべからく適当な金額で払うべしという議論もあります。私は、大体において、事柄をはっきりするならば、了解をして下さる国民相当多い。反対論より多いのではないか。新聞、雑誌等におきましても、私は、債務と心得て交渉を始め、はっきりした数字できめることが、国際信用の上からいっても適当であるという議論が多数説と思います。また、私自身といたしましても、あの終戦後飢餓に瀕し、また、産業は全然興らないという状態のとき、食糧その他産業に関する原材料を日本へ送ってきたことは事実でございます。ただ、そのお金の使い方が、昭和二十四年の四月から対日援助見返り資金特別会計をこしらえるまでの贈与物資につきましては、これは御承知通り貿易資金特別会計に入れ、その後また貿易特別会計にその物資を入れ、そうしてその物資代金は、国民がすでに有償でお金を払って消費しておるのであります。その金は貿易資金特別会計あるいはその後の貿易特別会計におきましては、輸出補助金あるいは輸入補給金として使用せられたのでございます。従いまして、国民には、どれだけの品物が来て、そして国民にそれを売って、売った代金がどれだけ輸入補給金、輸出補助金に使われたかということははっきりいたしておりません。だから、われわれはその数字をはっきりしょうとしていろいろな資料を取りまとめ、これを十分研究をして、大体の全体の数字はわかりかけておるのであります。ただ、昭和二十四年四月一日以後の対日援助見返り資金特別会計ができましてからの数字ははっきりいたしておるのであります。  で、私は、過去十年来、この問題についていろいろ考えて参りました。で、対日援助見返り資金特別会計ができましてからのアメリカのガリオア、エロアのお金の行方ははっきりいたしております。これは、産業投資特別会計へ入れました金が二千二百億円ございます。六億数千万ドルになっております。そうしてまた、対日援助見返り資金から、今まで日本の産業の復興に使いました、いわゆる復金債の償還が六百三十億円あったと思います。これは対日援助見返り資金——アメリカのガリオア、エロアの金で復金債の償還をしたのであります。で、また、電電公社の方へ対日援助資金から出したのが百三十億になっております。国鉄にも四十億円、あるいは住宅資金にも百億円、あるいは林野特別会計にも三十億円、アメリカの援助を国民に売った金から出ておる。こういたしますると、私の計算でも大体三千億円に相当するものが、ガリオア、エロアの品物を換価してわれわれの手に渡っている金でございます。これが対日援助見返り資金の使い方。  それ以前のお金はどうなったかというと、先ほど申し上げましたように、輸出補助金、輸入補給金でございます。たとえば向こうで買ってきたものを、国内の安定価格、新物価体系による安定価格、新々物価体系による安定価格という安い値段で外国のものを安く売ったその差額でございます。また、日本のものを輸出する場合において、日本のものが非常に高くて、アメリカやイギリスに行きましても、複数レートで、ほんとうにこっちの値段だけドルやポンドをかせぎ得ないときの輸出資金に充てられたのがこのガリオア、エロアでございます。ガリオア、エロアばかりじゃございません。一般会計におきまして、ある程度の安定帯の費用として補給金を出しております。で、私の記憶にありますところは、昭和二十四年のガリオア、エ口アを対日援助見返り資金特別会計として、国民に売ったアメリカの援助物資の代金をためおく会計を設けましたときには、今の輸出補助金、輸入補給金のために、あるいは安定帯のために、当初に組んだ昭和二十四年の予算は二千二十億円であったのであります。二千億円の国民の税金で、今までガリオアやエロアでやっておったものを、国民の税金二千億円を物価の安定帯と輸出入補助金をやっておったのです。それだけもし援助がなかりせば、われわれの税金は非常に高くなるというのがあのときの実情であったのであります。しかし、日本の経済の安定のために、私はあえてガリオア、エロアをはっきり国民に示すように見返り資金特別会計を作りますと同時に、今までガリオア、エロアで泳いでおった金は国民の税金ではっきりしていこうというので組んだわけです。  しこうして、貿易資金特別会計並びにその後における貿易特別会計から一般会計とのやりくりを見ますと、これはなかなかいろいろ入り組んでおりますし、また昭和二十四年の為替レートをきめる前でございますから、日本の円表示で換算いたしましても、なかなか実態に沿わぬかもしれません、この貿易資金特別会計は、二十一年でございましたか、五千万円と九億五千万円で十億円入れました、一般会計から。そうしてその後におきまして四百億円入れました。そうしてその後、貿易会計になりまして、八十五億円ほど入れたと思います。しかし、今度は、貿易資金特別会計並びに貿易特別会計から一般会計の方に入れた命も二百数十億——三百億近くあります。だから、その点で申しますと、一般会計から貿易特別会計に入れただけ多くなっておりますが、この最後の貿易特別会計から外為資金特別会計に繰り入れた金額も七百七十三億あったと思います。七百七十三億あります。七百七十三億というのは、これは日本の輸出入の計算と、カリオア、エロアの計算の残りものの数字でございます。どれだけが商売でもうけた金か、どれだけがガリオア、エロアの金か、これは計算できません。また七百七十三億というものは、三百六十円レートで換算いたしまして、貿易会計から入れたのであります。こういうことを考えますると、対日援助見返り資金特別会計としてためた金が三千億近くある。別に貿易特別会計から七百七十三億、先般の——先般と申しますか、二、三年前のボンド切り下げによりまして四十億円損をしておりますが、それにいたしましても、七百三十億円というものは、ガリオア、エロアから相当来ておる資金で、外為特別会計に引き受けておるのであります。  こういう実際の状況を見まして、そうしてアメリカからの援助は国民に売って、自分の——政府が持っておる金が現に二千二百億円あります。復金債の償還その他を入れますと三千億円というものは、ガリオア、エロアの換価されたものであるのであります。決して国民から、もう一ぺん小麦や衣料品の代を払ってもらう必要は私はないと思っております。その金は今言ったよらな方法で残っております。その他相当の部分が、貿易特別会計から外為資金への繰り入れも、ほかの原因もある程度ありますけれども、そうして換算率の点もありますけれども、七百三十億円というものは相当部分がガリオア、エロアでいっておるのであります。私はこういう状況を見て、二重払いだとか、あるいはある人が言われるように、腐ったものばかりだというような議論は、国際信用を害する部面と、日本の公正な政治的判断ということからいいますと、私は一応債務と心得まして交渉するのが適当だと考えております。日本ばかりでございません。大体、西ドイツにおいても、そういう考え方でいきまして、そうして債務を十億ドルと確定し、今、未済の八億ドルは直ちに払うというようなことでいっておるようであります。また、ガリオア、エロアはイタリアももらいましたけれども、しかし、イタリアは御承知通り、マドリッド政権が寝返りを打ちまして、連合国軍となった一つの事実は否定できないのであります。  私はいろいろな点を考えまして、議論はございましょうが、何が日本人としなすべきか、何が国際信用を高めて、日本の将来をもっともっと伸ばしていき、世界に信用を得るゆえんはどこにあるかということを自分で過去十年考えまして、そうして今この結末をつける段階であると私は考えまして、交渉を始めておるのであります。ただ、その途中におきまして、先ほど申し上げました、進駐軍が残していきました資料につきましては、十分われわれもできるだけの努力をして結果を見ておるのでありますが、これを今ここへ出すということは交渉の関係上私はしばらく待っていただきまして、そうして大体妥結の見通しが確実になるかあるいは妥結いたしましたら、この間の事情につきまして野党の党首の方々に、十分私の考え方を御説明申し上げたいと考えておるのであります。  ただ、今申し上げました数字の対日援助見返り資金特別会計への繰入額、またそれから復金債償還、あるいは四会計への出資分ははっきりいたしております。この貿易資金特例会計並びに貿特会計の分は、昭和二十二年以来二十六年までの分につきましては、商業勘定も加わっておりまするし、そうした為替レートもはっきりしておりませんので、この点は数字は相当動くとお考え願ってけっこうだと思います。  以上のような状況であります。
  32. 相馬助治

    ○相馬助治君 おのおの政党を形作って主義主張が違うのですから、内政問題については画然として両論に分かれて議論をすることはあり得てもよろしいし、またそのことは否定する必要がないと思いますが、事外交問題に関しては、でき得るならば国論を統一いたしまして、国際信用を高める上からも、そしてまたこのたびの首相の渡米にあたってもできるだけその成果を大ならしめるといろことは、立場を離れて全国民の期待するところだと思うのです。そういうふうな角度からながめてみましても、ガリオア、エロア論議というものがきわめて不幸な形で国会においても議論されているというその責任は、しからば野党にあるか与党にあるかと申しますれば、概括して申しますと、そのことを国民に詳細に知らせ得なかった政府責任というものは免れ得ないのではないか、こういうふうに私は考えるのです。今首相はかなり詳細にその点について説明をされました。これが国民の求めておるところだと思うのです。私は前段にも申しましたように、戦後におけるわが国の復興が両資金に負うところ多大であったという事実を率直に私は認めます。かつ講和条約成立以来今日に至るまで、両資金が見返り資金特別会計その他のところから、これが日本の産業資金の給源として運用せられ、その効率もきわめて大であったということも率直に私は認めます。  そこで、問題は、ガリオア、エロアの資金と一口に申しまするけれども、見返り資金特別会計以前のものと以後のものと、これがともするとごっちゃになって論ぜられておる。そうしてお互いに自分の主張に近い材料だけをつかんで、こっちがこうだ、あっちがああだというきらいがあって、一番迷惑しておるのは私は国民じゃないか、こういうふうに思います。それで、その特別会計が出る前の両資金、これは私は明らかに返済の必要がないと考えます。それはへーグの陸戦の法規慣例に関する規則第四十三条が示すように、占領者が占領地の公共の秩序及び生活の回復確保に関する一切の道義的、政治的責務という形から、もちろんアメリカに対する、当時のお世話になったことを感謝するとかしないとかいうことをしばらくおいて、法的に見ればこれはアメリカの当然の私は責任の支出であったと思う。そういうふうな形からながめてみると、ガリオア、エロアというものも、単にこれは債務でないときめつけることも問題が生じてくる。同時に、これは債務であると簡単に片づけてしまうというのは、国民の納得しがたいものが幾つか出て参ります。  そのガリオア、エロアの両資金が正しく債務であるとするならば、憲法の規定するところ並びに財政法上の規定するところに従って、当然何らか適当な機会に国会の議決を私は必要としたと思うのです。もちろん、その議決において両論に当時分かれたでしょう。しかし、それは民主的な手段によって最終的には議会政治をしく日本ではきまるはずなのであって、そういう議決が先行していさえすれば、この重要な段階にあたって、お互いに不愉快な気持を持つことはなかったと、こう思うのでありまするが、それらの点については首相はどのようにお考えか、法的解釈からいってどのようにお考えであるか、伺っておきたいと思います。
  33. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 御質問の第一点の、へーグの陸戦法規四十三条におきまして、占領軍は占領された地域につきましての国民の生活その他必要なものにつきましては、占領軍がこれを施行するということを規定いたしております。しかし、それはその人道上から来た規定だけでありまして、その費用は払わなくてもいいとは陸戦法規に書いてございませんよ。占領軍の義務であるかもわからぬけれども、その施行に対しての弁償は被占領国はしなくてもいいと書いてない。だから、その後におきましても、いろいろ占領費用とか、あるいは賠償とかというものが条約できめられるのでございます。それは人道上からいって、占領されたいわゆる被占領地の国民は、もう飢餓に瀕しようがどんなになろうがいいというわけのものでございません。人道上からいっているのでございます。しからば、それに対しての報償は、その援助を受けた人がどういうふうに払うかということは、これは話し合いの上できめるべきものであるということが、昔からの例になっているのであります。その条文だけをお読みになって、前後を考えないということは、私は解釈上いかがなものかと思います、前例から申しまして。  しこうしてまた、われわれは感謝決議をいたしておりまするが、この援助物資を日本が受け取る場合におきまして、この物資の決済については後日相談する、こういうので、くれたものとしていない。そういうわれわれは令書をもって、そうでございますかと言って受け取っている。これは社会党の内閣のときも、われわれの内閣のときも同じでございます。この問題の決済につきましては後日相談すると、こう言っている。しかもまた、マッカーサーの国会における証言にいたしましても、そうして向こうの陸軍省のあれにいたしましても、これはやったものだということは言っていない。こういうところから経済的にも、道義的に考えましても、私はこれは債務じゃないんだということはいかがなものかと思います。かるがゆえに、ドイツなんかももう八年前にちゃんと払って、契約を済ませ、最近残り全部を一度に払おうとしている。そういうことでございますので、これは従来債務とする——債務だと、こういったならば、国会の承認を受けなければなりませんので、過去八、九年前から債務と心得まして、いかなる債務かということは両国で話をつけます、こう私は申しているのであります。もちろん、われわれのPRも足らなかったものと思いまするが、しかしこの点は私は大体公正な世論は支持して下さっていると見ているのであります。
  34. 相馬助治

    ○相馬助治君 従来この論議がしり切れトンボになったきらいがあるのは、債務である、ないというところに論争の中心があって、従って債務の額がどうであるとか、あるいは返済金の使途がどうであるとか、返済する場合にはどの会計からどういうふうに出して、それが国民経済にどういうふうに響くんだ、こういうことを聞きたいのだが、聞くというと、ああそうか、それではお前らは返すことを認めるのだな、こういうふうに思われはせぬかと思って、聞きたいことも聞かない。政府もそういうことなら堂々と答えられるだろうが、債務だ、債務でない、こういうところだけ言っているから、わしはこう思うというところで議論が一歩も進まなかったのだろうと、こう思うのです。これはわれわれが債務でないと力んでみたところで、相手があることで、具体的に話が進んでおりません。池田首相の見解をもってするならば、国民の大部分がわしらの意見に同調していると高飛車ですし、残念ながら、先般行なわれた選挙では、あなたらが勝っているのだから、これは一応、今どうだこうだと言っても議論にならない。だから、私は若干問題を進めて、国民のためにも聞きたいことを、この際質問をしておきたいと思う。  第一点は、小坂外相が、この資金は当然、その性格からいって、後進国、特にアジア地域の開発援助及び日米間の文化教育の交流に使用するよう米側で配慮されたいという希望を述べたということが、新聞では伝えられておる。私は、これはきわめて正しいし、当然これは言わなくちゃならない理屈だと思うのですが、この点については、首相はどういうふうにお考えでございますか。今さら返す借金に、返した先の使途なんかをごたごた言うのはいけないというお考えでしょうか。外相のお考えに一致しておりましょうか。
  35. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 私は、幾ら返すかということがきまってから、こういう問題を論議すべきと思います。私の性格から申しまして、こっちの言うように、思う通りに使わしてくれるならこれだけ返しましょうとか、こういうことは、私は申したくない。ただ、自分らの気持は以心伝心向こうにわかっていると思います。だから、向こうはどういう考えに出るかということにつきましては、いろいろ手を尽くしておりますから、私は総理として、こういう金を返すが、条件付ということは、私は自分の口から言いたくないのでございますが、外務大臣としては、そういう気持を持っておられるようでございます。一応外務大臣に交渉をまかしておきますが、しかし私は、今の世界の状況を見まして、やはりOECDの問題、DAGの問題等から、アメリカ人の識者も、そういうふうな考え方を持っておられるのじゃないかということも想像にかたくない。そういう場合に、こちらの事務当局がどういうことを言い出すかということは、これはまた外交技術の問題でございましょうから、私は総理といたしまして、債務であるべき場合に、こういう条件、ああいう条件ということをここで申し上げることは妥当でないと考えます。払うべき筋合いのものは、ぴたっとその金額は払い、しかし、わが国の経済力、そしてその他世界の情勢を見まして、ドイツが五年据え置き、三十年年賦、二分五厘の利子と、こういう条件で、いくかどうかは別問題といたしまして、ドイツにいたしましても、国際情勢変化によりまして、八年前から五年据え置き、二分五厘という、そしてその十億ドルか八億数千万ドル残っておると記憶いたしておりまするが、元本の払いは三年たって、その八億ドル余りのものは、イギリスに対する債務と一緒に、一度に払うという計画をしているやに聞いております。しかし、金額がきまり、そして返済の条件がきまる場合におきまして、いろいろお互い立場考えるということは、日米の今までの関係から申しまして、日本はどういうことを考えておるのだろうかということで、いい条件を出してくれるかもわかりませんし、アメリカがどういう考え方を持っているだろうか、それを一つ当たってみようという外務大臣の気持もございましょう。しかし、払うべきものは、これはきちっと払いたいというのが私の考え方でございます。
  36. 相馬助治

    ○相馬助治君 首相自身が性格論をおっしゃったのですが、個人の池田さんの借金の場合には、とやかく言わずに、すぱっと払うというのは見上げた、いわばいい意味での日本人態度だと思います。ところが、これが債務か債務でないかというような問題が起きており、しかも、外務大臣も、この資金の性格からして、当然これだけの私は注文つけるべきだと思うのです。私は当然言うことを言ったと思っているのです。そこへ持ってきて、債務支払いの場合には、大蔵大臣がどこかで話したといわれているが、かりに、これを税金でまかなうという場合には、国民に二重負担という印象も与えるし、事実そうなるから、相当考慮しなければならないという意味の発言もあったやに聞いております。ですから、すぱっと払うというけれども、きまる金額によっては、なかなかそう思い切って相手側が感心するようなことばかりは私はできないのではないか、そこで、交渉の過程において、とやかく言わず、すぱっと払うのがいいのか、それともこういうふうに使ってもらいたいということを注文つけておいた方がいいのか、これは後世になって事実が証明する以外に見当つかないと私は考えているのです。そこで首相、この問題は、事ここまできたのですから、拙速を一つ排して、あなたの渡米の際に、日本人アメリカに抱いている感謝の気持を率直に表明し、同時に、この資金は先進国が後進国に対する援助としてくれたものであるというその精神を生かして、ちょうど日本の育英資金が出世払いで、返されたものは、また次の者の育英に使われていくように、そういう話し合いをつければ、これは債務でないといっている側も、返す場合にも、反対をしながらも納得するであろうし、あなたの渡米の成果も、日米親交の上からも私は効果のあることではないか、こういうふうに考えるのですが、この点については、もう外務大臣に今のところまかせているので、そういうことは考えないという段階でしょうか、それも妙案だから一つ考慮してみようかということですか、承っておきたい。
  37. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 何もこの問題につきまして、私は、自分自身のこととか何とかいうことを考えておりません。そうして重要な問題でございますから、できるだけ慎重にやらなければならぬ、拙速をたっとぶということは考えておりません。そうしてまた、外務大臣におやりを願っておりますが、重要な問題につきましては、もちろん相談を受けております。私は慎重に、しかも、両国の間に完全に気持よく話がきまることを念願してやっているのであります。
  38. 相馬助治

    ○相馬助治君 予定通り党首会談もされたらよろしいし、それから今の答弁の中におっしゃっているように、若干国民に対するPRも不足であったかもしれないということですが、これは明らかに不足ですし、PRというよりも、むしろ当然政府として国民に知らすべき問題であると思いまするから、野党側から資料の要求等が出ておりますが、金額について示すことはどうかと思いますが、それ以外のことはなるべく一つ示して、私以外にもこの問題について議論を進める方があると思いますので、それを通じて国民にわかるように御努力願いたいと、こういうふうに思います。  私は、次の問題を質問したいと思うのですが、今日経済成長の過熱の問題が議論されている、基本的にいえば、政府考えたより、より経済成長度が激しかったというのだから、うれしい話です。しかし、そこで問題なのは、設備投資の抑制というようなものを政府考えているかというような質問、その他これに類する質問に対して、池田さんは、きわめて楽観的に、心配御無用だ、手直しは必要ない、こういうことをおっしゃっている。そこで、はしなくも思い起こしますのは、昭和三十二年六月、石橋内閣相当積極的な財政をやられた。それで、国会において、当時野党の社会党から相当突っ込んだ質問がなされて、大体この辺で手直ししなければいけないのではないかという質問がなされた。ところが、政府は強気一点張りに楽観論を振りまいて、その議論に一顧も与えなかった。そうして国会が終了するや、岸内閣になって、大蔵大臣のあなたは、国会終了直後、金融引き締めをやって、政策の大転換をやられた。このことが今日、あの当時池田さんが引き締めをやったから、日本の経済というのはここまで健全にきたという議論もあるようだし、いやあんな必要はなかったのだという議論もあるから、そのことのいい悪いを私は言っているのではない。この前例からして、今度ちょうど置かれているわれわれの心理的な状況があのときに似ているのですが、池田さんは国会終了後、渡米後、経済は生きものでございますからというようなことで、政策の大変換をするようなことはよもなかろうと思うのですが、念を押しておきたいと思うのです。
  39. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) いつかの場合に答えたと思いますが、あの当時と今の経済、国際収支の事情はよほど変わって参っております。思惑もございませんし、経済基盤も強化されておるし、輸出も問題にならぬほど多うございますし、外貨もあの当時からすると、実質上三、四倍ぐらいといっていいぐらいでございます。輸入はあまり変わっておりません。こういうことから考えまして、私は国会が終わったときに直ちにどうこうということは、今考えておりません。ただ問題は、あのときのいい悪いの問題は別といたしましても、あのときの私のとった措置は、日本経済の高度成長のもとをなしたということを私は確信をいたしております。
  40. 相馬助治

    ○相馬助治君 私の質問で、むしろそのときのことがよかったんだというふうに、あなたの自信を強めるだけの答弁になったのですが、私そのことを議論していないのです。そういう見方も相当あることは私も認めているのです。ただこれは問題なのは、今日山際日銀総裁なんかの公的な発表を見ると、設備投資のスピードがやや早過ぎるのではないかということを、資料としてではなく、実感として考えている、何とか政府見通しの線にまでスロー・ダウンをするように金融当局としても努力をしている、考えていると、こういうことなのでして、政府自身も金融政策の面に期待を持って、そちらで適当にやれというような気配がないではないが、私はこの際、長期の見通しに立てば、すぐに設備投資を削るというんではなくっても、大体この辺で行政指導的な立場から何らかの見通しを国民に与えるべきだと思うんですが、そういう必要もございませんか。今どうこうしろというんじゃない。経済の見通し、国内需要の見通しを考えて、行政指導的発言がこの際なされるべきだと思う。しろうとではない池田さんであるから、何かの拍子にちょっと内閣総理大臣になってしまった、経済は何にも知らないという大臣でないのだから、あなたならではの考え方があるだろうと思う。一つお聞かせ願いたい。ないなら仕方がないが。
  41. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) ただいままで答えた通りでございます。少なくとも私は、昭和三十六、七、八の三年間は九%程度で上がっていくだろう、平均でございます。それが今のところは、三十五年度も私の予想よりも多かったし、三十六年度も、ただいまのところ私の予想を上回っている状態であるということは、国会でも申しております。世間もそれを知っておる。自分の予想よりも、あの積極策の池田が、その予想よりも多いと言うことで相当おわかりいただいておるんじゃないかと思います。そうしてまた、日本銀行におきましても、私はこれは直接聞いたわけではございませんが、新聞その他で見ますと、公定歩合の引き上げは今のところ考えていないようであります。そうして六月、七月の金融梗塞の場合に買いオペをするということにつきまして、するとかしないとかいうことは、どんどん変わってきておるようでございます。最近は買いオペはやらないんだろうという、またやりたくないような金融当局の意向が強く出ておるようであります。こういう点は、私はやはり財界にある程度響いておるんじゃないかと思います。ただ経済の、経済政策のあれというものは、そうちょっとしたことでネコの目の変わるようなことをやったら、国民が大へん迷惑をいたします。経済は伸びるものなのに伸びなくて、非常な不景気になったりなんかする、それは国民が非常な迷惑を感ずるところでございます。だからやはり長い目で見て、私はただいまのところ、少し予定よりも早く進んでおるようでございまするが、これは今政策を転換するときではないと思っておるのであります。
  42. 相馬助治

    ○相馬助治君 私は、この際必要なのは、民間に対して倍増計画推進の責任者として、政府はこう考えておるという指針を明瞭に示すことが必要であると、こう申しておるのです。直ちに設備投資を抑制しろとか、金融を大幅に引き締めろということを私は今言うておるのではないのです。ただ、この成長ムードを放置して参りますると、投資が異常に伸びて、過熱して、そうしてそれが国際収支にも悪影響を及ぼすであろうし、物価の問題にもこれが響いてくるであろうし、次にお尋ねしたいと思うが、貿易との関連も、これも考えていかなくちゃならないであろうということを考えますると、どうしてもこの際、長期計画遂行のよき前例として、行政指導、行政措置の構想があっていいのではないかと私は思います。今までこういうふうに長期計画はしてきた、で、ここでこういうふうに手直しするのだというと、野党の方は調子に乗って、それみろお前らの見通しが甘かったのだというようなことを言われるようなことは痛いでしょうが、そういうことは別として、やはり計画をやったのだ、しかもうれしい悲鳴じゃないですか、あなた方の方としては。計画したけれどもそこまでいかないから手直しをするのとだいぶ意味が違う。それより行き過ぎちゃったのだからここらで一つ行政措置をするのだと、いわゆる政府が長期計画をやる場合に、産業計画でも、文教計画でも何でも同じことで、手直しをするというよき前例を私は池田さんの勇断でこの際やるべきだと、こういうふうに主張しておるのです。しかし、まあ手直しの必要がないのだというのですから、ちょっと議論になりませんが、この点は私は手直しというよりも、行政指導の面で十分お考えおきを願いたいと思うのです。そうしてこれがまずくいったときには、後にわれわれはあくまで追及します。追及しますが、そのときは手おくれになるので、あえてこういう発言をしておるということを考えておいていただきたいと思うのです。  次に、私は所得倍増計画についての具体的な一つの反省を、政府自身がお持ちかどうかということを尋ねたいのです。と申しまするのは、倍増計画によって設備投資が順調過ぎるほどどんどん進んでいる。しかし、その要素を見ますと、政府の計画というものが大企業に引きずり回されている。これは経済企画庁長官もどういうふうにお考えか知りませんが、具体的に端的に今度現われたのは、水資源開発促進法案というものを政府が出さざるを得なくなった。これは御承知のように、一つのとこらに工業がどんどんふえてしまって水が必要である。そこで、水資源開発法案というものを出して、公共事業費として金もつけなければならない、道路もつけなければならない、こういうことです。政府の一貫した工場立地計画などというものがない。さっき梶原委員の質問に対しても、土地を造成する案はあるのだが、数字だけがはっきりして、その具体性がきわめて乏しい。迫水さんの説明によると、来年よく考えるのだそうだが、問題はもっと急ピッチに進んでいる。知事と大会社の社長とが取引をして工場を誘致する。どんどん工場を作る。そうすると政府が、そのあとを追っかけて水の世話をしてやる、道路を敷いてやる。これでは何のことはない、地域によって格差はいよいよつのり、その間にはさまって中小企業者の生きる道なんかはないということを極言したい。今のところは経済が前向きだから、中小企業者もどうやら息をついておるが、一たんこれが景気が横ばいないしは不況に見舞われるならば、経済基礎の弱い中小企業者はひとたまりもない。こういうことを考えまするときに、この際、私は政府が所得倍増計画というもの自体を、私が今言うたような面から考え直す必要がないか。考え直す必要がないとすれば、今言うたように、政府の計画が常に大企業の計画、地方の計画に引きずり回される、こういうような弊害を事実認めておるかどうか。認めておるならば、これに対してどんな措置をお考えか、この際これも一つ首相にお尋ねをしたいと思います。
  43. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) お説のような点がございますので、関係各省でこれを調整すべく、私は案を申しつけておるのでございます。関係各省からお答えさせることにいたします。
  44. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 本来ならば、現在、今企画庁が手がけておりまする国土総合開発計画というものが先にできまして、そういうようなものと照合しつつ、所得倍増計画の中の廃業立地計画というものができるべきでありましたけれども、そこのところ手違いをいたしまして、前後いたしましたけれども、ただいま私のところでは、鋭意全国総合開発計画の立案を急いでおります。これを基準にしまして、ただいまお述べになりましたような弊害が起こらないように善処したいと考えております。
  45. 相馬助治

    ○相馬助治君 関連して企画庁長官にお尋ねしますが、工業の設備その他というものは、私は政府が御自慢されているように、かなりやはり急速に目ざましく進んでいる。ところが、それに比較して考えますと、この国の総合開発というものが非常におくれておる。そうしてアンバランスになっている。道路の面からいたしましても、経済効果の多い、たとえば名古屋−大阪間であるとか、大阪−神戸間であるというような場合には、道路は直ちに着手できますけれども、東北地方なんかへ行きますと、これは明らかにおくれておる。あるいは御存じないかもわかりませんが、東京から青森に至る国道はまだ舗装ができていないところがたくさんあります。これが国道かとびっくりするようなところが福島県に入るともうたくさんあります。やっと栃木県のところは、お陰様かどうか知りませんが、やっと栃木県のところは片づいたのですが、福島県の方はひどい。こういうふうな面を見ますと、私はやはり国の総合開発、後進地域の開発ということが非常におくれているのじゃないか。  それから関連して一つ承っておきたいことは、利根水系の開発についても、一たんこれを間違うというと大洪水になって、帝都が脅かされるというような前例もある。これは渡良瀬、鬼怒、こういう水系を含んでいるからです。一体これらの開発が、事実上どう進んでおるのか。企画庁がほんとうに主導権を持ってやっておるのかどうか。で、最近の名古屋地方の災害なんかも、逆に海から水が押してきたというので、どうも自然の力は偉大であるというようなことで、人災でないような考え方も強いけれども、利根水系のはんらんというようなことになれば、これは明らかに人災で、政府責任免れ得ないと思う。関東地方、群馬県から栃木県の山奥の方に大雨でも降れば、私はこれは一挙に池田内閣がひっくり返るような政治問題になると思う、事実上。こういうふうに考えてみますと、一体国の総合計画というのはどういうふうになっているのですか。治山治水、道路、現在の状況と見通しを大体お聞かせ下さい。
  46. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御指摘のように、利根川水系の水の問題というのは、防災の面からも、また国土総合開発の面からも、非常な重要な点でございます。従いまして、建設省としましては、下久保ダム初め幾つかの御任じの通り、ダムを計画いたしまして、適当の地点で、努めて洪水調節になるようなダムの建設を目下推進中でございまして、これらによって洪水の調節及、災害の防止をはかりますと同時に、この水を適当に配分をいたしまして、水資源の開発利用ということにも資していきたい、かような考えで進んでおる次第でございますが、さらに今後、水資源開発促進法ができ、あるいは公団法ができるということに相なりますれば、これらの促進法による審議会及び公団の手によりまして、まず利根川水系のごときはまっ先に重点を置いて検討を行ない、また所要の事業を実施しなければならないことに相なると思います。  先ほど、道路の問題等についても御指摘がございましたが、われわれは今後の道路整備にあたりましては、極力所得格差の、地域格差の是正ということに思いをいたしまして、まあ、とりあえず国道等につきましては、全国まんべんなく整備することを第一義といたしまして、さらに通産省で行なっておりまする産業立地条件の調査と並行いたしまして、地域開発ということについて努力をいたして参りたいと思うのであります。これにつきましては、やはり地方道等の整備につきましては、国も予算を投ずる必要がございますし、また、地方財政の負担分もございますから、これらは自治行政の面とも相当関連を持って参ると思いますので、自治省とも大いに連絡をいたしまして、産業立地条件の調査に並行をいたしまして、できるだけ後進地域の開発に寄与できるようにやって参りたい、かように考えておる次第でございます。
  47. 相馬助治

    ○相馬助治君 私が質問した利根川水系の開発でも、昭和三十二年の五月十日の閣議決定によって、積極的にこれがなされるということで実施され、砂防工事その他については若干上流において見るべきものがあると私も率直に考えますが、何せ下流の方においては、一たん洪水が出ますと大きな問題を引き起こすであろうと思う原因が除去されておりません。これは一つ、ただいま答弁の趣旨に沿って努力されることを希望いたします。  さしあたりオリンピックがすぐに参るというのに、一向に東京都内のオリンピック道路の問題は解決されない。私はオリンピックがあるから東京都内の道路を直せというのじゃなくて、今の自動車の現況その他から見ても、東京都の道路政策というものはきわめて大きい。地方行政体としての東京都にまかせておけないのではないか。それからまた、あの辺にはオリンピック道路絶対反対という立て看板が立っていて、それが風にさらされて古くなっていて、いまだに解決していない。それぞれ立場もあろうと思いますけれども、この問題について、大体この辺で強力な建設大臣は指揮指導をしないと悔いを残すと思うのですが、東京都の関連、その他オリンピック道路といわれるいわばこの付近の道路整備の問題、こういうふうなものはどうなっておりますか。
  48. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お話のように、東京の現状は非常に世の中の変化と、また自動車の増勢の激しさとによりまして、道路整備というものがまことにおくれておったような現状でございます。この点に対しましては、私どもも苦慮いたしまして、急速に道路整備を進めて参りたいという考え方に立ちまして、三十六年度も、従来に比較いたしますと非常に事業量をふやしまして、極力その整備を期しておる次第でございますが、ただ東京都内は御承知通り、道路の拡幅にいたしましても、新設にいたしましても、あるいは高速道路との取りつけ関連道路等にいたしましても、なかなかこの用地買収等が行き悩んで進行をいたさない状態であったのであります。そこで、私就任をいたしまして以来、建設省その他、東京都、あるいは首都圏整備委員会、道路公団等、関係機関が定期的に相集まって、この道路整備の推進の率直な話し合いをする機関を作りまして、最近までに数回の会合をいたしまして、大体都内の道路整備に関する日程表というものを作り上げました。少なくともオリンピック関係上どうしても必要な道路につきましては、昭和三十八年末までには整備のできるような事業計画を立て、また東京都におきましても建設事務所を非常に数をふやしまして、それぞれの日程に従ってその事業、作業を進めるように建設事務所長、が責任を持ってやる体制が整って参りました。今後はよほど急速に進めることができると思うのでありますが、これにはいろいろな立法措置等も裏づけをしてやらなければいけませんので、今国会におきまして、市街地の改造に関する法律案、あるいは防災街区の法律案、あるいはまた現在まで御審議中でございますが、用地取得に関する特別措置法等の立案をいたしまして、あと二つ法律案はすでに両院で議決をいただきましたが、いま一件は審議をしていただいておる最中でございます。これらの法律上の措置も裏づけとして行ないまして、極力関係当局を鞭撻して、できるだけ行き詰まった現状を打開するようにいたしたいとせっかく努力をいたしておるような次第でございます。
  49. 相馬助治

    ○相馬助治君 今の答弁の内容についてはよくわかりました。時間がないので深く触れられないことを残念に思いますが、例の朝霞の選手村の問題等を中心として、オリンピックに対して暗い評判が一部には起きているやに承るのであって、これは国際信用上からも、やるときめたからにはこれはやらなくちゃならないと思いまするから、文部大臣初め、少なくともこのオリンピックの問題については道路の問題を初め、その他の問題を中心としてオリンピック自体に日本の体育としての成果を上げると同時に、この機会に、貿易その他国際友誼上有意義な一つの機会としてこれが利用できて、オリンピックをやってよかったと後世の者にまでいわれるように、池田内閣として格段の御努力を期待しておきたいと思います。  次に、私は内閣総理大臣並びに厚生大臣に医療問題について承りたいと思います。今日、医療費の問題をめぐってたびたび日本医師会と厚生省との間に問題が起きております。国民皆保険を願うところの政府と、それからこれに対する医療従事者としてのお医者さんと、この間に意思の疎通を欠くようなことは、これはきわめて残念なことでありまするが、同時に歴史的に見ても、この両者間というものは、問題が起きがちなものであります。そこで、一つ問題になりますことは、お医者さんが先般一斉休診をやった、その解決策を、厚生大臣と両医師会長との間に納得がついたのならば、これは大へん好ましいことだったのでございまするけれども、結局するところ、党三役と両医師会との間に妥結点が見出されて、一斉休診がやめられた。しかも、やめた声明の中に、われわれは取りやめたのではない。政府の出方によってはもう一回やるのだ、こういうことを含めて、問題が一応終結をしているようでありまするが、内閣総理大臣というよりは自民党総裁として、池田首相は、この問題にどのような見解を今日お持ちであるか、一つ承って、次の質問をしたいと思う。
  50. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 先般、日本医師会並びに日本歯科医師会におきまして、一斉休診の決議をしようとしておりましたが、私は事態の重大性にかんがみまして、まず党の三役と向こうの代表者と話をさして、一応了解がついたと聞いておるのであります。その後、今から一、二週間前、また東京都におきまして大会を開いたようであります。私も陳情者に会いまして、いろいろ意見は聞きました。そうして厚生大臣の方にもそれを受け継ぎ、また医師会並びに歯科医師会の方と三役との会見を聞きました。党と医師会との間には、何ら公約違反とか何とかということはないということで、了解がついたと、党の三役から私は聞いておるのであります。その後厚生省は、医療制度審議会の問題等につきまして、社会保障審議会の方にいろいろ諮問をし、そうしてこれに関係の法案を党と話し合って、今立案中か、出しておるかと思います。詳しくは厚生大臣から御答弁いたします。
  51. 相馬助治

    ○相馬助治君 私、基本的な問題として首相に尋ねたかったのですが、詳しいことは厚生大臣に聞けというので、一たん厚生大臣にお聞きして、もう一度お聞きしたいと思います。厚生大臣に承りたいと思いますが、この医療費の値上げの問題については、どの程度まで話が進んでおり、例の本年度の予算の中に盛られておる一〇%の使途その他については、どんな見通しでございますか。
  52. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) 今お話のように、今日までの事実は今年度の予算に総医療費一〇%引き上げということが確定しておる、予算の上でそうなっておる。これを具体化しますには、よく御承知のように、医療協議会にかけてそうしてきめる、これが法律のきめた手続でございますので、この手続は今後残っているわけでございます。それにつきまして、先ほどお話がありましたように、三月の三日でありましたか、あの一斉休診に関連して、自民党の三役と両医師会とお話し合いがあったのであります。この事実もありますので、あのときの話し合いというものは十分考慮に入れ、尊重しながら、しかし、今医療協議会改組の法案を提出して御審議を願っておるわけでありますから、改組後の医療協議会にこれをかけまして、そうして法の要求する手続を満たして最後的に決定する、それにつきましては、申し上げるまでもなく、支払いを受ける受け取る側の両医師会だけでなくて、負担をする側の人の意見は今まで一つも聞いていないのですから、なるほど医師会と歯科医師会の考えはそれは通っておりましょうけれども、払う方の側の被保険者とか保険団体とかいう方の意見はまだ聞いていないのですから、そこで医療協議会において両者ともにここに参加して出てもらうことができますならば、ここで関係両面の人にその意見を十分詰めてその上できめる、こういうわけでありますので、まだ今の改組の法律を出して審議を願っておる中途でありますので、それが幸いに成立し、発足してそこできめる、こういう段取りにいたしておるのが今日の現状であります。
  53. 相馬助治

    ○相馬助治君 厚生大臣としては、第一段の答弁としてそれで一応筋は通っております。法律の示すように、中央医療協議会に諮って、そうしてからきめるのだ、中央医療協議会がまずいと医師会が言われるから、それを今直しているのだ、だから国会は早く通してくれ、それによって相談して、この問題を解決するのだ——ところが、それでは解決しない。自民党の三役が約束している中に、大きな問題が一つある。  それは、七月一日を目標として一〇%相当以上の額で折り合っております。これは労働組合の折り合いなんかじゃ、こんなものは絶対ない。相当額なんて、あとで問題の起きるような言葉は、両方で避けて……。しかし、ここはあなたたちの言うおとなとおとなの話し合いなのかもしれないが、これは厚生大臣としても、えらい御迷惑であろうと思うのです。その点、同情します。問題は、それじゃ全然解決しない。七月一日から事実上やれないじゃないですか、やれますか。中央医療協議会に諮って、法律通りに七月一日からやれますか。
  54. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) まず初めの、相当上回る金額という点でありますが、何にいたしましても、きょうのところきまっている予算というか、使える金は、成立している予算ではっきりしているのでありますからして、この予算以外には、財源はきょうないのでありますから、七月一日前には……。  そうしますと、この予算のもとにおいて、ワク内においてどこまで、一体、大幅にでき得るかと言いまして、そういっても、予算という総ワクがある、それ以外に財源は七月前にはないというわけでありますから、このワク内でないと、七月一日までの処理は、財源的にもできない。こういうわけで、あのワク内で最大限度あの趣旨にのっとって具体化する以外には、今はどうにも手がないのであります。  なお、その次の、七月一日に間に合うかというお話でございますが、で、これにつきましては、医療協議会にかけなければならぬということにはなっておる。今までの医療協議会は、まあ医師会にボイコットされておって動きがつかぬ。そこで、今までの構成を改めて、医師会の発言力を非常に大きくする改正を、今改組案としては出しておるのであります。で、この改組案が成り立ちますれば、今度は、医療協議会が開き得る事態が期待できると、まあこう、われわれとしては思っておるのであります。そこで、今法律は、御審議を願っておることでありますから、この成立を見なければなりません。これだけの時間は、どうしても要ります。それから私どもの方で、事務的な準備は、夜を日についででも急ぐことにいたしましても、医療協議会が発足するといたしまして、協議会における審議は、やはりそれだけ必要な時間がかかる。  そういう点を考えますと、私どもの手元だけで処理できる手続でありませんから、はっきりとは申せませんけれども、われわれの手持ちの仕事を極力切り詰めますれば、そうして協議会の法律も、そうおそくならぬで成立するということにでもなりますれば、七月一日から実施するということは不可能ではないと、また、ぜひそこに持っていきたいと、こういうふうに、今は考えておるところであります。
  55. 相馬助治

    ○相馬助治君 党三役と両医師会がきめたことは、迷惑なことだと思っておりますか。あの際、やむを得ないことだと思っておりますか。
  56. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) これは、あの際の事態を解決するということも、大事なことでありますから、そのために党の三役が乗り出して、あの事態を収拾されたということは、それは一つの大きな意味を持つのでありますからして、でありますからこれはこれであります。……でありますから、その話し合いというものは、極力尊重していかなければならない、そういうふうに考えております。  ただ、私たちといたしましては、関係団体は医師会だけでは、まあ率直に言うとないのであります。保険者の団体もあれば、市町村のごときもあれば、被保険者もある。そっちの方の意見を無視してきめるというわけにもいかぬ。同じ内容の結論になりましても、そういうわけでありますから、行政の立場といたしましては、受け取る方、払う方、負担する方、双方、どっちの意見も十分聞いた上にきめるのが行き届いておると思うのであります。それがまた、法律の要求するところでもあるのでありますから、そういう手続はとらなければならないものと思っておるのであります。まあ、こういうふうに考えておるのでありまして、そこのところには、うまい工合いに処理をする道もなきにしもあらずと、こういうふうに思っておるのであります。
  57. 相馬助治

    ○相馬助治君 今までの社労委での答弁には見られないやわらかなことをおっしゃって、あの際はあれで、やむを得ないと、こういうふうにおっしゃったが、しかし、やっぱり抜け目もなく、あといろいろ説明したことを聞くと、あれはあれじゃ困るのだ、省はこう考えているのだということを、やっぱりあなたは肝心なことを言っている。まことに、賛成、反対は別として、終始一貫ごりっぱです。  ところが、この終始一貫ごりっぱだけでは解決つかない。あなたがおっしゃっているように、中央医療協議会が問題であったから、これを改組して、この国会の議決を待ってから、これに相談してやると、こういうふうに型通りにおっしゃっているが、御承知のように中央医療協議会の今まで、これは全くおかしいので、厚生大臣が諮問するのに、保険局長が諮問される方に入っていて立案して、議決して、執行するのですから、これは、お医者さんの方がへそを曲げるのもやむを得ない。そこで、これを今度は、内閣総理大臣の諮問機関である社会保障制度審議会に頼んで、これが中央医療協議会を直せと、こういうことを言ってきた。そうして、今度出たのはどうですか。医師会がまた、かんかんになっておこっている。御承知のように構成は二十四人だが、今までは医療従事者の利益を代表する者であったのが、今度は利益代表というのをとって、医療従事者は八人としてある。そして、一方の、支払う方を八人としてある。これはこれで、対々ですが、中の学識経験者というのは、これは厚生大臣がおきめになる。厚生大臣は、今までの歴史によると、これは半年で寿命がない、今まではですよ、そうしますと、いつでも厚生官僚によって、中の八人がきめられている。だから医師会の方では、これだけでも勘ぐっちゃって、まただめだ、こういうことをおっしゃっている。しかもその八人の中に、医療担当者と言っている中には、病院協会を入れるのだ——薬剤師協会が一人、歯科医師会が二人、あとは病院協会を一人入れて、あとが医師会だということが伝えられている。伝えられているだけで、内容がはっきりわからない。こういうものが今、国会にかかっている。われわれは迷惑です、こんなことは。全然解決の道のないような法案がかかっている。これができたからといって、問題は一つも解決しない。  そこで問題は、医師会だけを一体相手にしてやっているというのが正しいのか正しくないのかという問題が、必然的にできてくる。これは、内閣総理大臣としても御迷惑な話だと思う。しかし、少なくともあの人たちが、大きな団体として日本の医療制度前進のために努力しているという功績は見のがすことはできない。こういうふうに眺めてくると、やっぱりここでは医療協議会を作って、それで通すのだというようなあたなの考えでは、問題が爆発するだけです。大体、中央医療協議会が問題を解決したことがありますか。ここにいる谷口委員が医師会長のときに、時の首相吉田茂氏と話し合いをして、十一円五十銭という値上げをして、当時、国会も政党もみんなびっくりしてしまった。自来、いつもこの問題は、内閣総理大臣が最後にきめて、ちょんということになったのです。  だからですよ、私は、現実論を聞いているのです。根本的な問題はしばらくおいて、現実論を聞いておるのです。問題を錯綜させないで、一〇%相当額以上のものをあげて問題を解決する自信があるかないかということを聞いている、当面の問題は。
  58. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) 今お話のように、つまり医療協議会というものの運営がうまくいかないで、医療協議会の外で、診療報酬がきめられるというところに、この問題が、従来軌道にはずれておった姿があるのであります。こういうふうに、過去もそうであったし、将来も、そういうふうに医療診療報酬が、一方的に、あるいは力の圧力できめるというような行き方でいったのでは、だれが考えてもおもしろくない。ですから支払いを受ける方は高いほどいいかもしれない、払う方は安いほどいいかもしれない。しかし、高いだけいい、安いだけいいと言ったのではいけないので、合理的なそこに根拠を持ったものを話し合いの場においてきめて、それでごく民主的にきめていくという、軌道に乗せなければいけないというのが、きょうの問題でもあるのであります。過去がそうであったっら、ほうっておけば将来もそうなる。  そこでなぜ軌道に乗らないかということを考えてみると、やはり医療協議会の構成にも無理がある。医師会がボイコットするだけのわけがあるかもしれない。医師会とか、医療を担当する方の側の一に対して、いわば支払う方の立場に立つ人が二になっておるという勢力の関係になっておる。それではおもしろくないから一対一ということに一つ、片方には不満があろうけれども直そうというのが、この今度の改組の基本であります。その上に中立委員は片寄ったものを選ぶだろう、とんでもない話だ、見ていただくに限る。そこで、公正な中立委員を選ばなければならないし、選ぶのであります。そういうふうにいたさなければ軌道に乗らないのでありますから、ぶちこわそうとわれわれは思っていない。何とか軌道に乗せたい。でありますから公正な人を必ず選ぶわけであります。そうしてここで論じてきめる、こういうことでありますから、十分これは理解、納得もし得る話であるのだし、それからなお金額等の問題にいたしましても、この際としては、七月一日前の問題としては、財源はきまった予算しかないのですから、次の問題はとにかくとして、それ以外はだれがどう考えても仕方がないのだから、これはそれ以外、それ以上ここでと言われるのは、これは無理な話なんですから、十分その辺は良識をもって話し、また納得してもらい得るものだと私は思うのであります。またあと方法もないのであります。そんならどうするのだ、もうおしまいで、相変わらずがしゃがしゃにしてしまって、いつまでも混乱させるか。そうはいきませんから双方、われわれも、また関係の方面も、何とかこれを軌道に乗せるように、これは御協力願い・努力をしなければならぬと私は思うのであります。で、そういう意味で、解決できないというふうに私どもは必ずしも思っておりません。何とか解決しなければならぬし、でき得るものだというふうに期待をいたしております。
  59. 相馬助治

    ○相馬助治君 私も何とか解決してもらいたいと思うから質問しているのです。この問題の影響するところは国民一般です。そこで私は首相にお尋ねしたいと思うのですがね。あなたが基本的に厚生大臣をどういうふうに考えているかという問題を聞きたい。古井さんをどうこうというのじゃないのです。厚生大臣が、政党責任内閣として、政党人をもって充てている限り党に忠実でなければならぬ、こういう角度からいうと、古井さんが今まで一貫してとっている態度は、政党人としてあるまじき、がんこきわまりない意見であるということになると思うのです。ところが、一方、厚生大臣が、法律に示すところの厚生行政の長として、その権限によって法に忠実な行使者でなければならぬということになると、何しろ半年で一回くらいずつ厚生大臣がかわってしまうのだから、古井さんががっちりと厚生官僚の意見を聞いて、ともかく、世の非難を身に浴びながらも、とにかく筋を通そうとしているこの態度というものは、厚生省の役人にとっては頼もしき限りだと思うのです。そこで問題は、一体内閣総理大臣としては、一方の党の三役は政治的に解決をしようとしている、一方では厚生大臣はがんばっている、この間に処してどのようにお考えであるかということを具体的に私はお聞きしたいのです。
  60. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 医療費の問題につきましては、従来から非常に厄介な問題がございます。昭和二十六年、二十七年、二十八年の単価の引き上げ、また課税問題等にも私は関係いたしておりますが、なかなかお話のように厄介な点があるのであります。しかし、ただいまのところ、私は党三役からも、厚生大臣からも、先ほど申し上げましたように話し合いでうまくいきつつあると、私は思っておるのであります。われわれは自由民主党員であります。自由民主党の内閣でございます。従いまして、党と内閣との考え方がそうむちゃくちゃに違って、収拾し得ないようなことがあろうとは私は考えておりません。
  61. 相馬助治

    ○相馬助治君 かりに、その三役あっせんの通りにきまりますれば、補正予算の問題も出てきます。それから、厚生大臣ががんばっているようにすれば解決をしません。筋は立つかもしれないが、解決はしないわけで、国民が心配をしているのですから、これは池田内閣総理大臣としても十分お考えおきを願って、一つ国民、特にかわいそうな患者が心配することの事態のないように善処方をお願いしたいと思います。  私は、最後に文部大臣にお尋ねをしたいことがございます。御承知のようにベビー・ブームといわれる問題がございまして、この問題に対して、中学校の問題は、あなた方の努力によって一応解決をしております。ところが、昭和四十年度、ピークに当たるこの年は、昭和三十五年度に比べて百五十万人の増高を予想されている。これに対する高等学校の対策はどのようにお考えですか。
  62. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。中学のベビー・ブームの姿が、御指摘の通り三十八年度、九年度、四十年度とブームの影響が現われてくるのは当然でございます。また、御指摘の通り四十年のピーク時は百万人をこえるということに相なりますので、中学の場合と同様、計画的にその必要に応ずる措置を講ぜねばならぬと存じます。そこで、益十六年度から三十八年度を目ざしまして、三十六年度、現年度からすでに御審議を願いまして御決定いただいた本年度予算に、十分ではございませんが、その対策費が盛られておるわけでございます。これは従来、当該年度の生徒増加に対しましては、その年度について施設をして参ったのが従来の例でございますが、それでは迷惑をこうむるのは児童、生徒でございますので、中学に対してとっていただいたと同じように、高等学校につきましても、三十八年度に必要な施設、設備を三十六年度から着手いたしまして、来年度の予算措置と合わせて三十八年度に対処するという立て方で、その一部を御決定いただいたわけでございます。従いまして、三十七年度の予算と合わせませんと三十八年度の対策が出てこない勘定ですけれども、三十八年度も今申し上げた通り、三十九年、四十年に対しましても同様の考え方で、いわゆる前向きの姿勢で遺憾なきを期したいと思っておる次第でございます。
  63. 相馬助治

    ○相馬助治君 その考え方はよくわかりますが、これは自然増の場合に、おっしゃるように、その年の五月になって、生徒の実数によって施設のことを考えたのが、これが文部省の努力、そうしてまた国会の協賛によって前年度中に見込みを立てて措置できるようになって、中学の問題は解決したと思うのです。ところが、この高等学校の場合は、義務教育でないという問題が一つと、それから半額国庫負担法がないから、高等学校教員の定数の改正問題がそれに先行しなければならない問題と、こう考えてみると、非常に私対策がおそいと思うのです。これは特殊な現象です、ベビー・ブームというようなものは。それですから、ことしの予算に対策費が立っているというけれども、見るべきものが、そういうものがない。ほとんどない。わずかに工業高等学校に二億円計上してありますが、これは問題の性質が違うと思うのです。すりかえちゃならないと思うのです。それではお聞きしますが、来年度は相当大規模の予算を取るのですか、また取り得るのですか。
  64. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  先ほどお話しの通り考え方を申し上げたのでございますが、所得倍増問題プラス、ベビー・ブームなわけでございまして、この両面とも都道府県まかせではまかない切れない要素を含んでいると思います。従いまして、こういうことを念頭に貫いて従来の産振法によります実験実習施設設備につきましては産振法に基づく助成金を交付する。従来の三分の一を二分の一の補助率に高めていただくことも本年度措置が済みまして、さらに一般の校舎につきましては、工業高校についてだけは三分の一の補助金を支給するということを本年度から初めてお認めをいただいたわけでございます。ただし一般高校、普通高校につきましては、従来通りの助成金なしでやることになっておりますが、これは大蔵省との予算折衝の途上におきましてわれわれが負けたのでございまして、できることならば三十七年度については、普通高校につきましても助成金をもらいたいものだという希望は捨てておりません。ただ今年度につきましては、工業高校及び普通高校を対象といたしまして、助成金じゃございませんが、三十億の起債財源だけは引き当てが一応できておるわけでありまして、いずれにしましても、御指摘の通り三十七年度にうんと予算をもらわないことには三十八年度に解消できない。三十八年度に予想されます従来の進学率だけは少なくとも確保したいという目標のもとに、さらに定数につきましても、今関係省とせっかく折衝中でございますが、できることならば、この国会にぜひ提案をして、御決定をいただきたいという心組みで対策を急いでおるわけであります。三十八年、三十九年、四十年にかけまして、今申し上げたような規模のもとに遺憾なきを期したいと思います。
  65. 相馬助治

    ○相馬助治君 所得倍増プラス、べビー・ブームという正直な認識をお持ちですが、全くその通りですね。大きな政治問題だと思う。それから交渉の途中で大蔵省に負けたのだと、これまた率直な御答弁ですが、その通りだと思う。われわれ、それについて遺憾のきわみだと思っております。こういう現象に対して水田大蔵大臣どうですか。
  66. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今、文部大臣が言われましたように、工業高等学校校舎の補助、そのほかの補助率の引き上げというようなものはやりましたが、あとの問題は、これはやはり筋の問題でございまして、高等学校の責任は、設立者は府県でございまして、設立者の責任においてこの学校の設置を行なうことになっておりますので、この点をどうするかということになりますと、そう簡単にこれはいける問題ではございませんので、ことしは各府県が困らないように起債額を非常にふやしたということで対処いたしましたが、この学校を作るための経費は、当然必要な財政需要として認められるものでございますから、そのほかの方法によって対処する道もございますので、府県が設立すべき高等学校の補助を全部国費でやるというようなやり方をすべきかどうかは今後の問題でございまして、ことしはそう簡単にいかぬということで話がきまったのですが、これは負けた勝ったの問題ではなくて、そういうのが当然じゃないかと思っております。
  67. 相馬助治

    ○相馬助治君 負けた勝ったというよりも——私は文部大臣が負けたんだと言うことに敬意を表しておる。事実これはそうなんです。で、あなたは、わけのわかったようなわからないようなことをおっしゃっておるのですが、べビー・ブーム分の高等学校を全部国で立てろと私言っていない。ただ補助率をうんと低くして、国が費用を持ってみても、地方は消化できない問題が出てくる。だから補助率の問題がある。それから総額の問題があるのです。そうして一時的な現象であるというところにこの問題の深刻性があるのですから、水田大蔵大臣も十分研究して、そうして何かこう出し惜しみをして、こうわかったようなわからないようなこと言うて、そうして首を下げておれば、上をべビー・ブームが通ってしまうだろうというような考え方は捨てて、大蔵大臣として文部大臣に協力して、ことしはやっと勝ちましたと荒木さんに言わせるように一つしていただきたいと思うのです。  それから文部大臣、あと一点だけお尋ねします。例の科学技術者養成について、科学技術庁長官の勧告とあなたとの間の意見不一致の点が騒がれましたが、これは解決しましたか。
  68. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  科学技術庁長官の勧告は、将来に向かって所得倍増はもちろんのこと、技術革新に、遺憾なきを期するようにしっかりやれという御好意ある忠告だと拝聴いたしまして、その意味では意見の不一致はございませんでした。ただアクセサリー的に、昭和三十六年度について予算なしにやれるものがあるならば検討して、特に私学について、私学がそういう希望があったら認めたらどうだという意味合いの勧告が参考資料を付して付随的にあったのであります。その点につきましても、趣旨は私も異存はありません。ただ実際問題といたしますと、たまたま、知り得た私学だけについてこれを検討するかどうかも問題でありますと同時に、従来国・公・私立を通じまして大学教育の質を低下させないという角度から、大学の設置基準というのが定められておりまして、これはもともと、経過的に申し上げれば、私学側からの意向によって設置基準が定まったのであります。と申しますのは、くどくなりますが、終戦直後新しい学校制度が発足しました直後、私学内部においてもいかがわしき私学も現にあった。これでは私学の名折れだから、質が低下するというので私学の自衛上相談された。設置基準というものが生まれまして、それを文部省令に取り入れまして、国・公・私立を通じて、これを基準に学校教育の質の低下を防いで、今日まで参っております。ところが、その後私学それ自体も良心的になりまして、私学相互の競争的な立場も影響があったと思いますが、質を低下させたのでは自分の学校経営にも影響するというので、非常に良心的になってきた。従って、いかがわしき大学があった当時のものさしでやられたのでは現実に沿わないという面が出てきましたことが、はしなくも私学側の不満の気持の動機となりまして、そういう大勢を察して、技術庁長官が付随的な勧告として出されたものと了解するのであります。  ですから、その意味におきましては、大学設置基準そのものの検討も必要でございましょうし、特にその運用につきましては、国・公・私立、差別をしたことはいまだかつてないようですけれども、私学内部の今申し上げた事情変化に即応して、運用上特に考慮すべき点があるであろうと、そのことを今せっかく検討いたしつつあるところでございまして、実質的に食い違いはございません。付随的な問題につきましては、もうちょっと検討を要することがございますから、せっかく努力中でございます。
  69. 相馬助治

    ○相馬助治君 食い違いがないと言うけれども、食い違いがあったから閣内で問題になったと思うのです。それで、現在はなるほど池田長官が、私大が大幅の定員外入学によって勧告の目的を果たしたと言って引き下がった。かりに、このことが正しいとしても、非常に大きな問題を残していると思う。文部省は、私大の定員外入学というのを実数を把握しておりますか。将来、これに対する国費をつけて、実質的に質の低下しないような方策がありますか。
  70. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。  ただいま御指摘に相なりました点が、実は頭痛の種でございます。今申し上げた設置基準に照らしまして、法律に基づく大学設置審議会の答申を得て、従来措置して参っておるのが定員でございますが、実際は、定員をオーバーして、私学では入学を許可して参っておる。これは、この十数年このかたのいわば慣例みたいになってしまっておるのであります。  しかしこれも一面、入学しましてから四年後に卒業する実数が定員だと考えれば、その間の減耗がございますから、減耗を考慮に入れて、ある程度オーバーして入学を許可したのだという建前かと推察いたします。しかし実情は、その消耗をはるかに上回るところもあるようでございます。正確な把握は遺憾ながらできておりません。定員は、はっきりいたしております。さらにもう一つ、はっきりいたしておりますのは、毎年御案内の通り、指定統計を発表するにつきまして——法律上義務づけられた報告に基づいた指定統計がございます。その指定統計と定員は、およそ七割増ぐらいになっております。指定統計の方がオーバーいたしております、平均いたしまして。そのほかに、実際はプラス・アルファがあるようでございますが、それを正確に把握することは、各私立大学の一つ一つを、会計検査院みたいなような格好で調べ上げなければわからない。そういうことをすることそれ自体が、私学の独自性を侵すおそれありとして、今日までやっていないものですから、正確な把握ができていないと率直に申し上げざるを得ないのであります。  そこで、問題を残すのだという御指摘だと思いますが、私も、そう思います。本来、設置基準に従って、国公私立を通じて公平に大学教育の質の低下を防ぐということを一生懸命やるのが、私どもの立場だと思いますけれども、国立大学と公立には、そのことが可能でございますが、私学につきましては、十数年来、そいつが正確には把握できない状態にある。これは、私学の特殊性にも基づきましょうが、私学経営の非常に困難であるという現実面からいたしまして、ある程度やむを得ぬのじゃなかろうか。だとすれば、設置基準そのものの運営について、私学の実情に即しつつ、しかも質を低下させない方途いかんということが当面の課題として残るわけでありまして、そのことは、さっき申し上げた事柄と合わせまして、今後、十分検討して遺憾なきを期したい、かように思っておる次第でございます。
  71. 館哲二

    委員長館哲二君) 時間が参っております。
  72. 相馬助治

    ○相馬助治君 持ち時間が切れましたので、一点だけ申し上げまして、質問を終わりたいと思います。  文部大臣の御答弁は、きわめて率直です。しかし問題の把握は、やはり私は非常にこれは重大だと思う。従前、やみ学級、やみ定員がありました。しかし、これは慣例上わずかだったと思うのです。ところが、池田長官の声明合戦以来、なかば、このやみ定員というものが公然化したと思うわけです。これがいいか悪いか、私、ここで議論しません。現実に、こうなってきた。これが、はしなくも池田内閣の言う物価倍増計画から言うと、池田さんの言ったことは、数字的に正しいという論証もできるんです。しかし、文部省の長であるあなたとしては、従前の立場から、そういうことを言うこともわかるんですが、これもはっきりと、あなたの敗けなんです。それでやみ定員が、こういうふうにふえた。そうすると、これをどういうふうに教育して、そうして政府が目ざすところの計画に合致させ、同時に質を落さないようにするかということが重大な問題であって、これを、こういう種類の問題には、頑迷な態度を、いつでも持つ大蔵大臣を相手にして、これは、大蔵大臣の水田さんが、どうこうというのじゃなく、性質上——大蔵大臣の本来の大臣という性質上、いつでも、こういう問題には寛大な意思を示さないんですから、来年、この予算をつけることについては、非常に私立大学の問題で、私は大へんだと思うのです。どうか一つ、こういうふうになってしまったからには、このやみ入学の問題について、質の落ちないように、そうして、これが科学技術者の養成に連なるからして、重大問題であるから、一つ、せっかくの努力を——敗けちゃったんですから、仕方がない、努力されることを希望して、私は質問を終わります。
  73. 館哲二

    委員長館哲二君) 明日は、午前十時より開会いたします。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時三十六分散会