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国務大臣(
水田三喜男君) 今輸出の伸び悩んでいる原因は、やはり世界経済、特に米国の事情を中心としたことから起こったことだと思います。で、ようやくドル流出が最近とまるというようなことになって参りましたし、マルクの
引き上げも一応さらに引き続いてあるだろうと、いろいろ当初は予想されておりましたが、そう引き続いた
引き上げもなかろうというところに落ちついてきましたので、一応この問題が落ちつきますれば、また国際の流動性というものは強化しますし、それによって世界貿易の量というものが縮小するという方向には行きませんので、これから世界貿易量の拡張という方向へ事態が動き出してくるだろうということも予想されますので、そうすれば当初
政府が予想しておったような輸出の確保ということも、私は大体できるだろうと思っております。で、また、私どももこの輸出政策については、これは本腰を入れてかかれば、やる方法もいろいろ
考えられますので、私どもは輸出政策については今後本腰を入れて対策を立てるつもりでございます。
輸入の方は、これは高度成長政策をとる以上は輸入の
増加というのはこれは避けられません。設備投資が三千億くらいかりに多くなったとすれば、外貨はこれに一億ドルくらいを要するだろうというような見方も行なわれておりますが、不当に設備投資を多くして輸入をふやすということは問題でございますが、必要な成長を確保するための輸入というものは、少しも心配のないことでございますし、
昭和三十一年のときの事情を申しますと、あのときには輸入が非常に多かったのですが、しかしそれでも輸入が多いために外貨をなくしても、原材料の蓄積というものが非常にあのとき多くて、六億ドル以上あると計算されておったくらいでございますので、もう少しがまんしていけば輸入がとまって、十月以後の輸出期にぶつかって、国際収支は、あのあとで見られたように完全に直るという見通しを私どもも持ってはおりましたが、あのときの事情の違うことは、
日本が外貨をなくしておって、反対に財産は持っておるが支払いに困ったところへきたらという問題がございまして、引き締め政策というようなものをとったのでございますが、今の事情は全く違いまして、この三月末には二十億ドルの外貨を
日本が持つという
状態でございましたら、不当に経済を膨張させることは問題であるとしましても、今予想している高度成長政策を続けるために、かりに外貨が若干二十億ドルを切るような事態になっても、これは少しも心配することはないのでございまして、そのために外貨を蓄積しておることでございますから、ためておくのがいいんだ、これが能だという
考えをとるべきじゃないと思います。ただ問題なのは、
日本は明治以来もう外貨がないことでほんとうに皆頭を使ってきていますから、いわば外貨ノイローゼといいますか、ちょっともうなくなったらさあ大へんだと騒ぐ方が先で、そういうふうに今まで頭をもう訓練されておりましたために、いろいろ批判が出るのでございますが、長期的な観点からこの経済を伸ばそうと見る以上は、外貨が必要に応じて減ったりふえたりするということを心配する理由はどこにもないだろうと私は思います。で、一定期間外貨がかりになくなっても、その後に続くのは輸出増になってきますし、一年、二年の期間じゃなくて、少なくとも三年の幅で見るべきだという
意見もございますが、三年、五年の幅で見るのなら少しも心配はないのであって、
政府の政策がちゃんとしっかりして一貫しておるのなら、私は少しも心配は要らないだろうと思います。ですから、今年の予想は、六月、七月ごろまでかりに経常収支の赤字が続いたって何も心配する必要はない。で、後半期にいって輸出政策をわれわれが本気になってやれば、それで今予想されるとにかく最後の総合収支において黒字を出せるという自信を持っておりますが、ほんとうは高度成長政策をやりながら、年じゅう黒字基調でいくということが、少し政策的にはぜいたくだとすら私は思っているので、もっとなくしてもほんとうはいいのじゃないかとさえ思っているのですが、幸い
日本は成長政策を完遂しながら、実現しながら、しかも外貨はどんどんふえていったという非常に幸運なところにこの一、二年恵まれておるということは事実でございますので、私は今の
政府の政策でやっていけば、これはもう心配のある、世間が騒ぐような事態に全くならないと思っております。