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国務大臣(石田博英君) 中小企業の労働問題は、大別いたしますと、
一つは労働者保護の問題、それからもう
一つは頻発する
傾向にあります労使間の紛争処理の問題とに分けられると思います。
労働者保護の見地から考えますと、先ほど通産大臣のお話にもありました
通り、現在賃金その他労働条件の上に規模別賃金格差が存在するのであります。従って、
所得倍増計画を推進して参りまする過程において、その格差の縮小に努めなければならないわけでありますから、賃金の上昇は大企業より中小企業の方が多くなければその格差の縮小が行なわれないのであります。労働政策としては、中小企業の賃金の上昇率が大企業の上昇率を上回るようにして参らなければならないと存じます。しかし、この賃金格差の存在の
原因は、これまた先ほど通産大臣の御
答弁のように、ほとんど生産性の差と比例をいたしております。この生産性の差を縮めて参ります上における労働行政といたしましては、よき安定した労働力を中小企業に供給することでありますが、そのためには、また逆に労働条件の向上もあわせてはかっていかなければならないのであります。そこで、私
どもは、中小企業が単独で行ない得ないものに対しまして、政策的な援助の手を差し伸べているのであります。
その
一つは、最低賃金制の大幅な普及であります。これは今後三カ年の間に二百五十万人の労働者に適用することを目的に行政効果を上げるために
努力をいたしておりますとともに、その決定賃金額も、昨今の
現状にかんがみまして、十五才で少なくとも二百円以下にならないように、日給二百円以下にならないように指導をし、二百円以下のものに対しましては、それ以上に改訂するように指導をいたしております。また、退職金共済制度、あるいは失業保険、労災保険、健康保険等の
社会保険も、小規模事業場に拡張適用いたしますように、すでに法制化を見ておりますので、この行政効果を上げるように
努力をいたしております。さらに、住宅
福祉施設等におきまして、中小企業が単独で行ない得ない場合におきましては、地域的な共同あるいは同業の共同等によりまして、それらの施設を行ないますように、本年度から更生年金の還元融資額を三十億円設定いたしておるわけであります。
また、大企業はそれぞれ企業内の各種の訓練をいたしておりまするし、また優秀な労働力を優先採用できる
立場にありまするから、これは別といたしましても、中小企業にいい技術労働者を得られないという点があります。今労働力の需給
関係から見ますと、技術労働者、それから若年労働者の不足が一番深刻な問題であります。これに対しましては、
一般ないし総合職業訓練所の訓練生は、これは主として中小企業を対象として行なっているのでありますが、しかし、これとても労働条件の悪いところに、みすみす悪いとわかっておるところに、われわれはあっせんするわけには参りません。やはり労働条件をよくしていかなければなりませんが、さらに考えなければなりませんことは、現在、中小企業におきましてはいわゆる労務管理というものについての未成熟な面が労使双方に非常に多いのであります。極端に申しますると、就業規則、あるいは労働協約というようなものがないところが大部分といってよろしいのでありまして、昨今私
どもの方の指導による実例によりますと、拘束時間を著しく
減少して、なお生産時間を上げているという事例が多々見られるのでありまして、そういう
方面の検討、指導が必要であろうと存じておる次第であります。
要は、いい安定した労働力を供給するという面を通じまして、中小企業の生産性の向上に寄与し、それによって中小企業の労働条件の向上をはかって参りたい。目標は格差を縮めるところにあるのでありまするから、賃金その他の上昇率は当然大企業より早くなければならない。しかし、これは大企業及びそれに関連する下請等の中小企業の場合におきましては、やはり大企業との相互的協力制度を作っていかないと、どうしても大企業の労働者が先取りをする
傾向にありまするので、大企業を中心といたします関連産業の組織を今編成中でありまして、すでに茨城県日立製作所、日立鉱山等を中心といたします組織ができまして、相当の成績をあげているのであります。
それから、最近頻発いたしまする労使間の紛争でありますが、その
原因は、第一に、まず経済的な基盤の脆弱による労働条件が低位にあるということであります。これはおおいがたい事実であります。第二は、労使双方とも労働問題について未成熟であるということであります。第一の基盤の強化は、これは先ほどから申し上げました
通りでございます。第二の労働問題についての知識経験の足りなさは、これはやはり
教育によって補っていかなければならないのでありますが、この結果といたしまして、労働者側は組合結成即争議、争議即職場占拠、そして暴力事犯ということにつながります。また、経営者側もこれを話し合いによって処理しようとはしないで、すぐに民事その他の裁判によって処理しようとか、あるいは第三者の応援を求めてこれを処理しようとするところに、やはり暴力事犯発生の
原因がございます。従って、これは就業規則、労働協約等を促進せしめますとともに、いい健全な労働組合を持つことはやはりよき労使
関係樹立の前提であるという認識を強めていかなければならないのでありますし、それと同時に、裁判や力でものを処理するのではなくて、第三者機関、すなわち地方の労働
委員会等の利用によって、第三者のあっせんで平和裏に
解決するという風習を作りあげていくように指導をいたして参りたいと考えている次第でございます。