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1961-03-10 第38回国会 参議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月十日(金曜日)    午後一時四十八分開会   —————————————   委員の異動 三月十日委員泉山三六君、一松定吉 君、山田節男君及び森八三一君辞任に つき、その補欠として高橋進太郎君、 上林忠次君、片岡文重君及び加賀山之 雄君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事            梶原 茂嘉君            中野 文門君            平島 敏夫君            米田 正文君            阿具根 登君            占部 秀男君            松浦 清一君            千田  正君            杉山 昌作君    委員            井川 伊平君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            上林 忠次君            小林 英三君            小柳 牧衞君            小山邦太郎君            塩見 俊二君            下村  定君            白井  勇君            高橋進太郎君            手島  栄君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            山本  杉君            湯澤三千男君            横山 フク君            大矢  正君            木村禧八郎君            小林 孝平君            小柳  勇君            田中  一君            高田なほ子君            羽生 三七君            藤田藤太郎君            森中 守義君            東   隆君            片岡 文重君            小平 芳平君            辻  政信君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 古井 喜實君    農 林 大 臣 周東 英雄君    通商産業大臣  椎名悦三郎君    運 輸 大 臣 木暮武太夫君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 小澤佐重喜君    国 務 大 臣 迫水 久常君    国 務 大 臣 西村 直己君   政府委員    内閣官房長官  大平 正芳君    法制局長官   林  修三君    総理府総務長官 藤枝 泉介君    公正取引委員会    委員長     佐藤  基君    北海道開発庁総    務監理官    木村 三男君    北海道開発庁主    幹       角  政也君    防衛庁長官官房    長       加藤 陽三君    防衛庁教育局長 小幡 久男君    防衛庁経理局長 木村 秀弘君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    経済企画庁総合    計画局長    大来佐武郎君    公安調査庁次長 関   之君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    通商産業大臣官    房長      樋詰 誠明君    通商産業省通商    局長      今井 善衞君    通商産業省企業    局長      松尾 金蔵君    建設大臣官房長 鬼丸 勝之君    建設大臣官房会    計課長     三橋 信一君    建設省河川局長 山内 一郎君    建設省道路局長 高野  務君    建設省住宅局長 稗田  治君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会を開会いたします。  委員変更について報告いたします。  本日、山田節男君が辞任されまして、その補欠として片岡文重君が選任されました。
  3. 館哲二

    委員長館哲二君) 昭和三十六年度一般会計予算昭和三十六年度特別会計予算昭和三十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続けます。下村定君。
  4. 下村定

    下村定君 割り当てられました時間がきわめて局限されておりますので、私は質問を国の安全保障の問題に限定をいたしまして、その中で主として日本国防体制現状に関する政府側の御観察、並びに改善を要すると認められる二、三の点についてお伺いいたしたいと存じます。  まず、政策の問題に入るに先だちまして、私は国防一つの基盤でありまする国民国防に対する感情ということについてお伺いしたいと思います。終戦後、日本におきましては、いろいろな原因によりまして、国民国防に関する意識が著しく低下し、なかんずく、婦人、青年層等の間におきましては、あるいは不純な宣伝に迷わされ、あるいは自由、権利の本旨をはき違えて、いわゆる利己主義に陥り、国民としての大切な使命を忘れておる者が多いように観察いたします。また、防衛力を整備するということがあたかも戦争に通ずるような錯覚を持ち、または核兵器残虐性をおそれる余りに、新しい兵器といえば危険性のないものまで一律にこれを排撃しようとするような例が少なくありません。しかるに、列国を見渡しますと、ソ連中共等におきましては、憲法において国民国防の義務があるということを明示いたしております。そのほかの国々におきましても、憲法にいまの規定があるなしにかかわらず、国の大小にかかわらず、中立といなとを問わず、国民国防に対する意識はきわめて旺盛であるように観察しております。現在の国際情勢下におきまして、日本だけがひとり例外的に安易な平和感に浸ってぼんやりしておることはできないような形勢だと私は考えております。この点に対する政府のお考えはいかがでありましょうか。また、もし私がただいま申し上げたことをお認めいただけますならば、これに対してどういう政策をおとりになりますか。まず総理大臣にお伺いしたいと存じます。  もちろん、国防意識高揚と申しますことは、そのことだけを単独にやれるものではありませんから、それを含んだ国民精神の作興という点につきまして、どういうことをどういう方針でやるということを簡単にお答えを願いたいと存じます。
  5. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国防に関しまする考え方が、国民全般からいって必ずしも一致していないことはお話通りでございます。この原因するところは、あるいは世界戦争を思い出したり、またその結果できました憲法上の制約の問題等、いろいろな原因があると思いますが、私はやはり国防の根幹をなすものはやはり国民がわが国、わが国土を愛し、民族文化を愛す、これが私はもとになると思うのであります。従いまして、先般の施政演説におきましても、このことを強調して参った次第でございます。
  6. 下村定

    下村定君 ただいまの御答弁につきましては、重ねてお尋ねを申し上げませんが、いま少しく、こういう問題をこういう方針でやるつもりだということをお聞かせいただければ幸いと存じます。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 戦争は放棄いたしましたが、しかし、わが国土民族を守るための自衛手段は私はとるべきにと思う。従いまして、国力の許す範囲内におきまして国土を守る、民族を守るという措置は自分で講じ、また足らざるところは、他の国と条約を結びまして、共同防衛体制をとっておる次第でございます。
  8. 下村定

    下村定君 私のお伺いしたかったのは、たとえば教育についてはどういう方針でやる、あるいは広報宣伝についてはどういうことをやるということを簡単にお答え願いたかったのであります。  教育につきましては、私はこれは最も今の問題に関連して重要なことと考えておりますが、去る二月十三日の衆議院における予算委員会において、荒木文部大臣から大体の御説明を承っておりますから、私は重ねてこの席では質問を差し控えます。  次に、広報宣伝並びに情報の問題であります。これにつきましては、一つ総理府広報室並びに内閣調査室においてどういうことを今年度どれだけの予算でやっておられますか。この点について関係長官からお伺いしたいと思います。
  9. 藤枝泉介

    政府委員藤枝泉介君) 総理府広報室において行ないます広報は、政府施策を十分に国民皆さん理解をしていただき、御協力を願うという意味においてやっておりまして、刊行物の出版、ラジオ、テレビを通じまする広報等中心にいたしてやっております。本年度予算は約一億八千万円でございますが、御審議をいただいております来年度予算におきましては約三億一千万円に増加いたしておるわけでございます。  で、総理府広報室のやります使命は、ただいま申し上げましたように、政府施策を十分に国民に徹底していただくということでございまして、内閣調査室の方の資料情報を集め、政府施策にこれを反映するということとは切り離して行なっているような次第でございます。
  10. 大平正芳

    政府委員大平正芳君) 御案内のように、内閣調査室におきましては、内閣重要施策の立案に資する情報収集調査、並びに各行政官庁におきましてとっております情報収集調査のうち、内閣重要施策に関連があるものの連絡調整ということが内閣調査室任務でございます。具体的に申し上げますれば、海外主要諸国の放送を聴取し、これを翻訳いたします仕事と、それから内外の新聞とか、定期刊行物文献等参考資料収集調査、それからアジアを中心といたします諸国の社会・経済文化等に関する調査研究、それから民主主義理論についての調査研究、各省庁から受けました資料の分析、検討、それからまた各省庁間の情報関係連絡会議等によりまして、各情報機能の重複がないように調整することを鋭意やっている次第でございます。来年度要求予算は約三億円ばかりになっております。
  11. 下村定

    下村定君 マスコミの対策につきましては、両方でいかなる連携をもっておやりになっておりますか。簡単にお答えを願います。
  12. 藤枝泉介

    政府委員藤枝泉介君) ただいま官房長官から申し上げましたように、調査室におきまして各般情報、その他を調査をしていただきまして、これを元にいたしまして、政府政策が決定され、そうしてその決定された政策広報室におきまして、幾多の媒介物を通じまして国民皆さん方に知っていただくという形で連携をいたしておる次第でございます。
  13. 下村定

    下村定君 私はこの情報並びに広報宣伝ということは、ひとり国防上のみならず国政全般にわたりまして非常に重要なことと考えております。また日本における一つ弱点でもあると考えております。ただいま承るところによりますと、予算におきまして非常に少ない。両方合わせて三億である。ことに広報室の方は本年度十九億の要求をされましたのに対して、先ほどお答え通り査定されております。単に予算の面だけでその仕事の内容や何かをはかることはできませんけれども、その点からいいましても、これは将来大いに拡充する必要があるんじゃないかと存じております。この問題はこのぐらいにとどめます。  次に、私ははなはだ僭越な申し分でありますけれども日本におきましてはこの防衛に関する問題、国家安全保障に関する問題が、ほかの政務に比べて閑却されているように感ずるのであります。現在世界各国は、いずれも平和の追求並びに軍備の縮小ということに大きな努力をされておりますけれども、その反面におきまして国防の充実ということを重視しております。いろいろの機会におけるフルシチョフの演説、また本年発表されましたケネディ大統領一般教書におきましても、この点が十分に表われておると存じます。去る一月三十日に本国会の劈頭において池田総理大臣施政演説をされましたが、防衛の問題には言及されなかったように私は記憶しております。私はこんな問題をあげつらってかれこれ申し上げるのでございませんけれども、以下二、三の点につきましてお伺いをしたいと思うのであります。  第一は、国防会議運営であります。国防会議政策実行機関ではありませんけれども総理大臣諮問機関として、国防に関する重要な政策を審議する最高の組織であります。ところが、創設以来五年間、この会議はいかに運営されたのでありましょう。私の承知しております限りにおきましては、昭和三十二年に現在あります国防基本方針、これに伴う第一次の防衛計画を策定されました。去る一月西村防衛庁長官の御提議によりまして、陸上自衛隊改編問題等を審議されました。これ以外には目ぼしいことはやっておられないように私は存じます。また、のみならず、グラマン、ロッキードと申しますようなああいう専門的な事柄を、不用意に国防会議に取り上げられて批判のまととなったこともございます。それならば、はたしてこの五年間にやるべき重要なことはなかったのでありましょうか、現在の総理大臣以下閣僚の皆様は、その当時は会議議員ではおありにならなかったのであります。私は過去のことは追求いたしませんが、今後、国防会議はいかにあるべきか、国防会議あり方につきましてお尋ねをしたいと思いますが、まず西村防衛庁長官お答えを願います。
  14. 西村直己

    国務大臣西村直己君) 先ほどお話がありました国防につきまして、国防意欲自主防衛意欲高揚ということは、きわめて喫緊の要務であると考えております。もちろん私どもは、直接の防衛自体につきましては、民生安定というものと十分均衡をとりながら考えて参らなきゃならぬと思いますと同時に、防衛は単に防衛庁なり、自衛隊だけの任務でありませんで、他のいろいろな角度から広範に考えなければならない、そのために国防会議というもの、またその基本的な計画を立てる、基本方針を立てると同時に、他産業との調整と申しますか、関連するような事柄、あるいは国防上の重要な事項を決定する、こういうふうに定められております。従いまして、先般来議長である総理大臣中心に、常時月に一回程度はまず国防会議メンバー意見をする態勢を作りながら、事最終の決定に至る段階については、国防会議を開いて決定するように、議長に、私としましてもまた他の議員の方々にも、御同意を得てやって参りたい、こういう考えでただいまのところ進めておる次第でございます。
  15. 下村定

    下村定君 同じく国防会議あり方につきまして、世界情勢からごらんになった、今後国防会議はいかにあるべきかという御見解を、外務大臣からお答えをいただきたいと存じます。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) お答えを申し上げます。国防という問題が今日の世界全体の動きと関連いたしまして考えられなければならぬことは当然でございまするので、私は、今後国防会議懇談会の形でできるだけ回数を多くしてやり、そしてその間に常時世界各般情勢に対する認識を、お互いに私どもデータを提供いたしまして、深めていくということはやはり必要であろうと、かような観点で防衛庁長官の御提案になりまする懇談会方式というものに賛意を表しておる次第でございます。
  17. 下村定

    下村定君 運営につきましては、両大臣の御答弁を了承いたしました。ただ、何をやるかということにつきまして、僭越ながら私の私見を申し上げますと、最近数年間におきましては核兵器の非常な発達、また東西力均衡というようなことが原因になりまして、全面的戦争に対しては強いブレーキがかかっております。大戦争の発生は、ほとんどその可能性がないものと私も考えております。しかしがら、東西両陣営のみぞが埋まったわけではございません。ことにソ連中共等世界共産革命の意図を捨てない限り、今後も闘争は依然として続くものと予想いたします。ただ武力戦が行き詰まっております関係上、その闘争手段としては、将来はたとえば心理戦思想戦経済戦、いわば謀略的の意味の深まった闘争手段が、従来よりも一そう重くとられるのではないか、こう存ずるのであります。このことは先ほども申しましたが、日本のためには非常な脅威であります。日本はこれに大きな弱点を暴露しております。先ほど申しました情報広報宣伝のごときこともその一つであります。こういう状態を考えますと、今後の日本国防は、従来のような軍事に偏した、言葉は悪いかもしれませんが、防衛庁まかせの方策ではいけないと思うのであります。すなわち、国政の広い範囲にわたる視野から国策の全般について考えられまして、それに必要なる施策総理大臣からそれぞれのところにお示しになる、そして総合的な国防政策が立てられなきゃならぬと存ずるのであります。こういう計画こそ私は国防会議の主題であって、今後はこれに重点を置かれるということが必要であろうと存ずるのであります。また緊急な課題とも思います。このことにつきましては、一昨年の秋、内閣委員会におきまして、また昨年の六月十二日の安保特別委員会におきまして、私は二回前総理大臣質問をいたしました。当時の岸総理大臣からは、御理解のある御答弁をいただいております。が、その実効は私の知る限りにおいてまだ現われていないように思うのでございます。これに関しまして、あらためて総理大臣の御意向をお伺いいたします。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 広報宣伝あるいはいろいろな調査につきましては、国防の点からもまた治安の点からも必要でございますので、先ほど総務長官官房長官から申しましたごとく、十分の数ではございませんけれども、従来の予算に比しまして、画期的な増額をいたした次第でございます。なおまた私は、外務省におきまして出先機関の活動を強化し、そして世界情勢を探る上からも、今年外務省の方の予算もふやしまして、外国におけるいろいろな情報も収集するようにいたしたのでございます。従来にもまして力を入れていることは、たとえ金願におきまして十分ではございませんけれども、気持におきましては相当やっているつもりでございます。
  19. 下村定

    下村定君 次は、日米安保条約運営につきまして西村防衛庁長官並びに外務大臣にお伺いいたしますが、あの条約に基づいて設置されました安全保障協議委員会というものがありまして、日本では外務大臣防衛庁長官アメリカ側は東京のアメリカ大使太平洋軍司令官、これがメンバーになっておられます。で、私の考えますところでは、そのおえら方会議も必要でありましょうけれども条約運営適確にやるためには、その下に下部組織が必要であると思うのであります。経済面におきましても軍事上におきましても、それを必要と痛感しております。何となれば、これがなければ、常時両者の意思を疎通し、情報を交換し、立場を理解するということはできません。従って、いざ事があった場合に、どうして共同防衛計画が立てられましょう。また核兵器の持ち込みとか、配備の変更とか、いわゆる事前協議というものを、この私の申します下都組織を通じ、またおえら方会議におきまして、ふだんからやっておられれば、ほとんど事前協議をあらためてやる必要がないじゃないかとまで考えるのであります。これにつきましては、私は六月十二日の安保特別委員会におきまして、当時の藤山外務大臣並びに赤城防衛庁長官質問いたしました、御両君から同意の旨をお答えいただいております。その後の進度はいかがになっておりましょうか、外務大臣からお答えいただきたい。
  20. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 安保条約の第四条に基づきまする随時協議をいたしまする機関といたしまして、安保協議委員会が設けられているのであります。これは私が就任いたしましてから、江崎防衛庁長官と、それから在日のマッカーサー大使フェルト太平洋軍司令官との間に協議委員会を持ったわけであります。これは、そのうち適当なる機会を見て、西村長官も当時おられませんでしたから、開きたいと考えております。  そこで、ただいまの御設問の、専門委員会をこの下部機構として設けたらどうかという点でございます。これは寄り寄り研究をいたしておりまするが、これは御承知のようにNATOあるいはSEATOのような数カ国間のものと異なりまして、二国間のものでございまするので、この場合には双方に専門的な機関がございまして、隔意ない懇談を常時遂げられるわけでございますので、先方といたしましては、そこまでもやらぬでも、常時できるのではないかという見解も持っております。まあ現在のところは、この機能は十分果たし得ておるように私どもは思っておるわけでございますが、なおそうした御意見もございますから、今後十分に検討させていただきたいと思っております。
  21. 下村定

    下村定君 次に、現在の防衛庁を省に昇格することについてお伺いいたします。私は、この際、防衛庁を省に昇格することの必要を感ずるものであります。その理由につきましては、もう長くなりますから申しませんが、先般の衆議院における地方行政並びに法務連合委員会におきまして、行政管理庁長官から、諸般情勢考えると、まだ少し早いように思うという御答弁がありました。諸般情勢と申しますものは、どういうことをお指しになるのでありますか、御答弁を願います。
  22. 小澤佐重喜

    国務大臣小澤佐重喜君) だんだん御意見が、同じ御意見がたくさんあるのでありますが、やはり私の考えとしては、客観情勢がまだそこへきていないと思うのであります。そうしてその客観情勢はどういうものかということでありますが、それは御承知通りでありまして、ここで今申せないと思います。
  23. 下村定

    下村定君 時間がありませんから、これ以上追及いたしませんが、今私のあげました三つの問題、国防会議機能向上、それから日米安保条約運営能率化、それから防衛庁昇格の問題、これは、これをやっても大してお金の要ることではございません。また私の考えでは、憲法に抵触するとも考えておりまません。政府に熱意があれば、今でも、すぐでもできることだと考えるのであります。が、この席ではこれ以上申しません。どうかこの問題は、今後とも、この場限りのこととされませんで、慎重に御研究になり、なるべく早く緒についていただかれることをお願いいたします。  次に、私は、自衛隊そのもの現状予算との関係につきましてお伺いをいたします。昭和三十二年に策定されました国防方針の中に、次の文句があります。「国力、国情に応じ、自衛のため必要な限度において効率的な防衛力を漸進的に整備する。」とあります。私は、この項は実に要領を得た名文であると存ずるのであります。すなわちこのことは政治優先、シビル・コントロールの大原則のもとに、最も合理的に実行されることを心から念願するものであります。すなわち民生の安定、経済政策の遂行を害しないように防衛費を極力節約することについては、いささかの異議も持っておりません。また現在の自衛隊は整備の過渡期にありますから、いまだ国防方針にあります自衛上必要な限度を満たしていないこともやむを得ないと存じます。しかしながら、自衛隊ははたして効率的に整備されておるかいなかと申すことにつきましては、私は大きな疑問を持っております。かような公開の席上において内情の欠陥を暴露するようなことはいたしたくありません。差し控えますが、一例を陸上自衛隊の装備について申しますと、言葉は悪いのでございますが、現状はあたかも破れ障子のようなもので、ワクはありますけれども、紙は十分に張られておりません。これでは荒い風が防げないばかりか、すき間風にも耐えられないのじゃないかとも考えております。  二、三の例を指摘いたします。陸上自衛隊が現在持っております兵器の中には、いわゆるアメリカのお古というのがまだたくさんあります。しかも大砲とか、戦車というようなものは、格納庫を作る金がないというので露天になっておる部隊が非常に多いのであります。雨ざらしであります。中にもこの戦車は、現在どこの国を見渡しましても陸上兵器中の主役であります。ところが日本の持っております戦車は数こそ何百両もありますけれども、もう衰損しておりまして、しかも旧式であるために、その部品はアメリカに行ってもない、従ってやむを得ず古いものをつぶして、共食いをしているありさまであります。なお、今回試作をされました中戦車は、その性能におきましては、世界に誇り得る優秀なものであります。ところがその生産につきまして、明年度予算におきまして、生産業者に対する長期一括の契約が認められませんでしたので、来年度わずかに十両、明後年以後の継続の契約はお先まっ暗という状態と伺っております。これは生産業者にとりましても非常な迷惑であり、また財政の上から言っても不経済であると存じます。携帯兵器について申しますと、数は十何万持っておりますが、その三分の一は衰損をしております。自衛隊に参りまして隊員に聞いてみますと、ねらっても当たりません、こういうことを嘆息しております。弾薬について申しますと、これは経験に基づく列国の兵学界における常識といたしまして、いくさの始まり、緒戦、有時初動の際には弾が非常によけい要るというので、緒戦のための弾薬の備蓄ということは非常に重視しております。彼らの考えを現在の自衛隊の兵力に対照して勘定してみますというと、日本では少なくとも二十万トン、これは大砲から小銃までであります。すべてで二十万トンを用意しておくことが必要であると申すのであります。ところが三十六年度のストックは九万二千トンであります。それを年々約七千トンづつ演習のために消費いたします。その補充は三千トン以下でありますから、このままの状態をほうっておけば、年々再々ストックが減少しまして、せっかくこれからお立てになる第二次の防衛計画が完成するときには、形は整いますが、たまにおいては非常な不足であります。六万八千トンしかないわけになります。これでは十三師団の編成が終わりましても、そのうちの八、九師団は竹やりでも持たさなければいくさの役に立たないと申しても私は過言ではないと思います。一方、この兵器弾薬の調達は、現在はこれは民間の生産業者に依存せざるを得ないのでありますから、これらに関して生産力の維持防衛という施策は、ほとんど行なわれておりません。二月十五日衆議院予算委員会における西村防衛庁長官の御説明によりますと、防衛生産の全体の額は、金属鉱工業の生産量に比較いたしまして、わずかに一%であるということを御説明になっております。これだけでかれこれ言うのではありませんけれども、一例として申し上げるわけです。また、燃料につきましては、兵器弾薬以上に心細い状態でありますが、時間の関係上それは省略たします。  以上は兵器弾薬の数だけについて一例を述べたのでありますが、ほかにも類例はたくさんございます。また、効率的な防衛力を整備するためには、いわゆる質の改善、すなわち装備の近代化ということが絶対に必要だろうと思います。また、今後アメリカの日本に対する軍事援助が減少するということも考えられなければならぬと思います。  以上のようなことを考えあわせますと、防衛費を今後ある程度増額することはやむを得ないであろうと存ずるのであります。また、現内閣は、福祉国家の建設に大きな努力を傾注されていることはまことにけっこうでありますが、過ぐる安保条約闘争下において、私どもは、過去八年間にわたる経験を基礎といたしまして、国の繁栄をはかるために安全保障を確保することは絶対に必要である、現にそれで国が繁栄したのだということを申して参りました。これは事実に照らし決してうそではありません。こういう点から考えまして、今後の防衛力に要する費用につきまして、大蔵大臣はいかにお考えになっておりますか。私は、もとより防衛費をやたらに増大させるとか、国力、国情に比例しない身分不和応な防衛力を持つべきだということは、毛頭考えておりません。
  24. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 昭和三十二年の五月二十日のあの閣議決定の線に基づきまして、私どもは、国力の許す限り均衡をとって防衛庁から出た計画予算を具体化するということに今後も努力するつもりでございます。
  25. 下村定

    下村定君 時間がありませんので、質問はこのくらいにとどめますが、国の財政が豊かになり国民所得が増大しましても、国民そのものに国防の必要に関する正しい認識がありませんでは、必要な国防費を支出することは、国民が納得しないだろうと思います。その反対に、国民国防に関する正しい認識があるならば、少々高額でも国民は進んでこれを納得するだろうと思うのであります。私は、政府がいわゆる第二次防衛整備計画におきまして、ほんとうに効率的であり、かつむだのない防衛力を整備されることを念願しますとともに、手段を尽くして先ほど申し上げましたような国民国防意識を振作向上しまして、政府国民とがすっきり納得し合ったところで、先ほど読み上げました国防基本方針の文字、すなわち国力、国情に応じて自衛上必要最小限度とする防衛力を、効率的な防衛力を漸進的に整備する、あれを文字通り実行していただきたいということを念願して、私の質問を終わります。
  26. 館哲二

    委員長館哲二君) 三時半から再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後二時二十八分休憩    ————・————    午後三時四十三分開会
  27. 館哲二

    委員長館哲二君) これより委員会を再開いたします。  質疑を続けます。田中一君。
  28. 田中一

    ○田中一君 私は、非常にじみな質問でございますけれども、三十六年度予算を起点とする公共事業の全般にわたって質疑をいたします。  そこで前もって申し上げたいのは、池田総理が総裁になられ、総理に就任されて以来、まっ先にお唱えになったのは社会保障、次に減税、続いて公共事業等を申されてねった。今日この内容というのは相当変貌されております。公共事業が前面に打ち出されまして、第二次補正に見られたこれまた二つ三つの大きな、国民が求めているような形の政策を大きく打ち出された。そうして財政投融資によって産業基盤の確立という、所得倍増への道を示されております。どうして国民が一番望んでおるところの社会保障、減税を後退させ、公共事業を優先的に大きく出されたか。計算してみますと、大体において十カ年間所得倍増を訴えておる総理として、これを公共投資を考えてみますと、十年間に十六兆一千三百億になっております。これだけの膨大な事業を行なって、われわれ国民に一応安定した生活を持たせようという意図であろうと存じますけれども、すりかえの真意というもの、それから公共事業において具体的な道路の問題その他、なぜそうなったのかという点について、各省大臣からおのおの担当の問題につきまして御答弁願います前に、総理からお答え願いたいと思います。
  29. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 減税、社会保障、公共投資、これにつきまして、何も私は後退いたしていないと思うのであります。ただ、しいて申せば、私は予想しておった以上に、社会保障制度の拡充強化ができたと考えておるのでございます。減税の平年度一千億円以上、所得税、法人税を中心とした減税はいたしました。ただ、これを補正をするための法人の特別措置法につきまして、増税をはかったということでありますが、これは前から申し上げたときにもそれがあったのであります。社会保障制度は 御承知通り厚生省関係のみでも六百三十六億、今までにない画期的な増額でございます。千八百億円が二千四百億ということのこの状況は、いまだかつてない私は拡充と思っておるのであります。それから公共投資の増加ということは、日本経済を伸ばしていって、将来の減税、社会保障制度の拡充のこれはもとをなすものでありますので、私は、今後とも十分社会保障制度に力を入れられ、また減税もでき得るというもとはやはり公共投資でございます。もちろん公共投資だけでいくものじゃございませんから、経済均衡ある総合的発展を遂げるためには、民間が自分らの創意工夫をやっておるのに合わせまして、民間ではできない国としてのとるべき措置をやっていくことが高度の成長を達成するゆえんでございますし、その高度の成長こそ、社会保障制度の拡充と減税への道でございますから、この三本の柱につきましては、十分力を入れてやったのであります。
  30. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今、総理からお答えになりました通り、特に公共事業を多くしたということはございませんが、予算のふえ方の比率から見ましても、社会保障は三四%以上のふえ方をいたしておりますし、公共事業は約二四%、国の予算の伸び率に見合った程度の伸びでございますが、減税と三つの均衡をとってやったものでございまして、私どもは公共事業、特別にこれだけを重点にしたというふうには考えておりません。民間投資を見ましても、かりに一年に三兆、十年間としましても三十何兆、四十兆近い民間投資が行なわれるということに対して、公共投資が今までこれに伴わなかったということをいろいろ考えてみますと、この程度の公共投資は日本産業基盤を整備するために将来必要なものだと考えておりまして、この初年度予算としての配慮をしたというだけでございます。
  31. 田中一

    ○田中一君 一つ各省大臣、各行所管事業について考え方の答弁を求めます。
  32. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) お答えを申し上げます。今回の所得倍増計画におきまして、運輸省の関係いたしておりまする港湾に対する投資は、十カ年におきまして五千三百億円の投資を予定しておるわけでございます。そこで、十カ年計画の前半の五カ年におきまして二千五百億円を投資いたしまして、まず第一は、横浜あるいは神戸のような重要特定港湾の整備をいたしまして外国貿易に資することにいたします。さらに石炭、油あるいは鉱石等の工業の原材料を運びまする港湾につきましては、これを整備いたしまして、これらの港湾の付近の産業の基盤をしっかりさせるということに力をいたしまして、さらにそういう重要なものばかりでなく、地方にわたりましてたくさんの港湾を整備いたしまして、地方産業の開発と、従来放任されておりました地域格差の是正ということに力を尽くしていくということ、以上の三点につきまして五カ年間二千五百億の投資によって港湾を整備いたしたいと、こう考えておる次第でございます。
  33. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 基本的には、先ほど総理大臣からお答えいただいた通りであります。
  34. 田中一

    ○田中一君 三十六年度予算が御承知のように、今、総理が説明されたようなものだろうけれども、後年度ねらっておるところは何か。これは結局、産業基盤の確立というところに重点を置いておる。これは昨日同僚の木村委員にも御答弁になっておりますが、そこで、その規模というもの、たとえば今、運輸大臣答弁されたように、港湾の整備、道路の整備等々は何をねらっておるのかという点についても非常に疑問を持つわけなんです。私どもは、公共事業というものは、少なくとも国民のものでなければならない、かように考えております。国民所得の倍増計画というものは、昨日木村委員答弁になりましたけれども国民の総所得にすぎないのであって、国民個々のふところに入るというものじゃございません。そこで当然何によって国民所得を増大するかということになりますと、今言っておるような産業基盤の確立、いわゆる民間産業の繁栄によって国民所得が伸びるのだということを言っておる。その前提をなすものは何かと申しますと、今年から始まっておる公共事業の諾施設でございます。衆議院におきましても、大臣答弁というものは、大体われわれが認識しておるものでございますからあえて申しませんが、具体的にこれだけの大きな投資というものが十カ年間に消化し得るかどうかという点について、いささか各所管大臣について質疑をいたして参りたいと存じます。  第一に道路整備は、本年度は新しい計画のもとに出発いたしますから、道路整備の点について質疑をいたして参りますが、一体道路整備五カ年計画、本年度計画というものは、この具体的な実施方法、実施区域というものに対しては、昨日木村委員からその詳細の報告を求めましたけれども大臣はまだこれができる段階ではない、かような答弁をしておりました。まあこれは私はもうできておるものと思っております。予算が通らない前に各地の路線の、整備される路線というものを発表いたしますならば、これはわれわれ社会党が、これはもうかまいませんけれども、おそらく自民党、与党内において相当な混乱があるというようなおもんばかりからいまだその路線の決定を、むろん内定はしておる、その内定すらわれわれ国会にはお示しにならない、かように見ております。従って、今度の計画が国道一級、二級とか、これを重点に置いていることは申すまでもございません。そこで、数字としては説明を求めませんから、具体的に、道路というものは起点、終点がございます。たとえば改修あるいは新線等、一応全国的ないわゆる所得倍増への道を歩く計画というものはどんなものであるかという点について、詳細説明を願いたいと思う。
  35. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 現在の大体の基本的な考え方といたしましては、一級国道、二級国道等の国道は、全国主要の地点と結び合っている幹線でございますので、これらについて一級国道は五カ年以内に整備、改修及び舗装を完了し、二級国道につきましては、十年を目標に完成をするという角度に立ちまして、そのほかに現在通産省等で行なっておりまする工業立地条件の調査、こういうものの進展に伴いまして、これと見合った経済成長の基盤になるような道路整備をいたしたい。あわせて地方主道、地方道につきましても、これはおろそかにできないことでございますので、極力その整備をはかって、産業基盤の強化に資して参りたい、かように考えておる次第でございます。
  36. 田中一

    ○田中一君 そういう抽象的なものを所管の建設大臣としてお述べになるだけでは足りないのです。言葉は単に産業基盤の確立、こういう一つの究極のこれは構想あるいは希望です。しかし、具体的に本年度から始まる道路整備というものは、もう少しはっきりしたもので、通産省が新しい工業地帯を作るという法案を出そうとしておる。しかしながら、その起点はどこかと、昨日も木村委員が言っているように、太平洋岸にあるところの既成工業都市です、これを重点的に整備をしていこうというところが重点になっております。しかし、それだけで、数々池田内閣くらい美しい言葉を作った内閣はございません。なかなか魅力のある言葉を示しておりますけれども、実体が明らかになっておりません。私ども衆参両院においていろいろ伺うのも、その実体を、もし池田内閣政策がいいならば、これ国民に知らしめたいという点なんであります。具体的に三十六年度予算が計上されておるのであります。この内容についてもう少し親切に、道路整備五カ年計画にしても、あるいは通産大臣所管の問題にいたしましても、運輸大臣所管の港湾の問題にいたしましても、具体的にお示し願いたい、かように考えます。従って、今の答弁では不十分でございます。建設大臣、それから運輸大臣、通産大臣経済企画庁長官、個々にお述べを願いたいと思います。これは国民の名によって伺ったんでございます。
  37. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 昨日も申し上げましたように、大体道路整備の目標及び分量につきましては、予算の確定を待ちました後に閣議決定に付する制度になっておりますので、目下一級国道については、二級国道については、あるいは地方主要道その他の地方道、あるいは建設機械、あるいは有料道路というような工合に細分をいたしまして成案を得たい、かように存じておる次第でございます。ただ、所得倍増計画に並行した具体的なことはどうかと、こういうお話でございましたが、御承知通り、後進地域の開発を目ざしまして、三十六年度経済企画庁を中心に通産省、建設省、自治省等、各省にその調査に関する予算が計上されましたので、われわれといたしましては、この具体的な調査検討の成果を待ちまして、これに見合った道路整備をやっていきたい、こう考えておりますので、現在のところといたしましては、先ほど申し上げたような次第で、基本的なことだけを考えて進めておるようなわけでございます。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 工業開発の問題につきましては、ただいま通商産業省といたしましては、各府県からのお申し出を待って、そうして各府県ごと数カ所、工業立地の条件を調査いたして、ただいままで百六十六カ所あったと思います。それで、今度はそれを、この段階になりますると、まだ不十分でありまするから、各業態、業種から見て一体どうであろうというような、もっと多角的、立体的な調査をいたしまして、そうしてこれを県に公開して、一般の企業の参考資料にする。それとともに、また各企業がどういう一体工業進出について傾向を示しておるかということも、実際について見る必要がありますので、業種あるいは規模を限って届け出をしてもらい、そうして著しくその工場進出のやり方が立地の条件と合わないというような場合、そういう場合には勧告をするというようなことを考えまして、改正案を今回国会に提出して、御審議を願うことになっております。さらに積極的な、工場開発促進法とでも申しますか、そういったような構想は持っておるのでありますが、まだ具体的に結論が出ておりません。各省とも、あるいは基本都市の構想であるとか、いろいろ各省々々で、それぞれのお立場から案を練っておるようでありますが、われわれとしては、工場分散の促進をどういう構想のもとにやるかということを考えており、いずれ関係各省と総合的に問題を検討して、そうして調和のとれた制度を作り出したい、かように考えておる次第であります。
  39. 田中一

    ○田中一君 運輸大臣、やって下さい。こまかく、個々の問題を説明していただきたいと言っておるのです。
  40. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) お答え申し上げます。  ただいま申し上げましたような三つの方針に従いまして、五カ年間に二千五百億の投資をいたすことにいたしておるわけでございまして、これは、地方の港湾にまで及びますもので、私ども考えておりますることは、三百余の港湾について今回から整備を始めていきたいと、こういうふうに考えております。
  41. 田中一

    ○田中一君 経済企画庁長官伺いますが、一体何を作らせようとしてなさっておるのか、国民が求めておるものは何かという点について具体的にお示し願いたいのです。そうしてあるいは、現在の企業がわれわれにむだ使いだけをさせて利潤を上げておるという傾向がたくさんございます。たとえば、電気洗濯機にいたしましても、年々新型を出して購売力をそそる。従ってこれじゃ、なるほど自由経済のこれが原則であるという説明があるかもしらぬけれども国民がどういうものを求めておるかという点が欠けております。従って、それらの港湾の整備、道路あるいは工業地帯の造成という点につきましては、どこにどういうものを招致し、あるいは勧奨し、国民のための生活安定のための物資を作るかという点について伺います。昨日も、貿易ということを強く強調されて総理はおりますけれども、まずその前に求めるものは、われわれの生活、同時にまた、われわれの消費生活の向上です。従って、国民の求めるものがもとにならなければ、だれのために産業基盤の確立をするかという点の疑問が起きるわけです。具体的にお示しを願います。
  42. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) ちょっと、具体的と言われても、非常にお答えのしにくいというより、むしろお答えができない御質問でございますが、要するに、現在必要である公共投資の目標というのは、産業基盤の整備と国民の生活環境の改善ということが公共投資の目的だと思います。従いまして、これを各省がそれぞれその方向で研究をいたしまして、所得倍増計画では、一応十カ年間に十六兆の公共投資でやるのだということを一応の道しるべとしては立てておりますが、これを一応は道しるべといたしまして、各省でそれぞれ道路については道路の五カ年計画を作る。その場合には経済企画庁に協議がある、それから、産業立地の問題につきましても、通産省が中心になると思いますが、やっておりますし、低開発の地域の問題につきましては、総合的な見地から、経済企画庁におきましても、低開発地域に工場が行きやすいようにするという一つの環境を整備する法律は出しておりまして、こういう準備はずっとしておりますけれども、具体的に、どこからどこまでの道路が必要なのか、どことどこの港湾が必要なのか、経済企画庁から具体的にその構想を示せとおっしゃっても、ちょっとこれはお答えができません。
  43. 田中一

    ○田中一君 経済企画庁長官に、道路や港湾整備などを伺っているのではございません。道路を作るなら、やはり新しく造成される工業地帯あるいは港等を結ぶのが政府のねらいだと思う。しかし、その工場に何を生産さすかという点でございますが、自由競争のままにまかしておこうとするのか、これは当然そうでしょう。しかし、今通産大臣が言っているように、多少の干渉や規制はしなければならぬということを言っていますが、どういう商品を出すかという点でございます。そして観念的な産業基盤の確立で所得倍増という飛躍した考えでなくして、これこれが足りない、これこれを作らせてこうするのだという計画がなくちゃならぬと思う。そこに基づいてすべての所得倍増論というものが生まれてきていると思う。従って、それを申し上げているのです。これは、あるいはおのれの職分ではない、通産大臣あたりだとおっしゃるかもしれませんが、これは、当然経済企画庁長官が各省のものをまとめて考えられた計画であろうと見ておりますから、御答弁願います。
  44. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 現在の日本国民の生活というものは、割当制度ではございませんで、めいめいが自分でほしい物を買い、ほしくない物は買わないわけです。従って、どういう品物が要るのか、ほしがっているのかということは、そのときそのときによってこれは変わってくるのだと思います。それが自由主義経済のいいところであると同時に、またなかなかむずかしいところであると思いますから、従って、今後どこの土地にはどういう品物を作らせる工場を作る予定かと、こうお聞きになりましても、これは、社会主義の社会ならいざ知らず、われわれの社会では、自由主義の社会では、そういうことはできないのでございまして、要するに地域格差を是正するために、現在低所得の地域に工場を誘致する、その工場というのは、おのずからその企業者が全体を判断をして、こういう品物を作ったら売れるだろうというところで作っていくのだと、こういうふうに私は考えておりますがゆえに、田中さんがおっしゃいましたように、国民の求めているものを政府がみずからきめて、それを配分して、どこの地域にこういうものを作る、こういう一種の社会主義的な経済政策は、われわれとしてはとっておりません。
  45. 田中一

    ○田中一君 冗談じゃありません。一体各企業が勝手に何でも作っていいのだというものでは、これは政治じゃないのです。何も国民が消費する消費財というものをめいめい勝手に作るわけじゃございません。やはり国が相当の資本の役人をして行なっているのが今日の大企業の実態です。しかし、かりに直接にその企業に資本を送らぬでも、今回計画されておるところの公共事業というものは、すべてこれらに奉仕するという形でなされております。具体的に説明ができないとおっしゃるけれども、たとえば洞海湾の港湾整備の問題にいたしましても、これは簡単じゃないのです。八幡製鉄所のために整備をしておるのでございます。なるほど鉄鋼業のうちの大きな比重を占めておる八幡製鉄所の事業でございますから、国家的な意味もございましょう。しかし、そういう形においてすべての企業に奉仕をしておるのが公共事業の実態ではなかろうか、こう考えております。たとえば、太平洋岸の港湾の整備を盛んにやる。しかし、北海道あるいは日本海面の整備はいたしておりません。むろんこれは、池田内閣の性格からいって、日ソ、日中、日朝の貿易等の利便をお考えになっておらないのかもしれませんけれども日本国民としては、地域差をなくそうという場合には、やはりそれらの地域の繁栄がなくちゃならぬと思います。従って、現在あるところの、あなた方が日ごろ親しみなじんでおるところの財界の方々の企業だけが、今回の公共事業の奉仕という姿に見られるわけでございます。私は、この点については私の独断ではないと思う。いろいろな角度から、マスコミも取り上げております。従って、経済企画庁長官が、ただ単に、自由経済であるから、勝手に好きなものを作らすのであると言うだけでは足りないのであります。この点について、たとえば、日本の鉄鋼業がどうなる、石炭はどうなる、そういう面の日本全体の経済計画考えるのが経済企画庁長官でございましょう。従って、これに奉仕しようという、これに結びつけようという公共事業の今日のあり方に対しましては、あなた自身が知っているはずでございます。それがなくては計画が立たないはずでございます。もう一ぺん迫水さんから御答弁願いたいと思います。
  46. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) たとえば鉄にいたしますれば、十年後、所得、総生産が倍増になりました場合の企画は、四千八百万トンの鉄を作る、そういう形になるということは、所得倍増計画で一応想定をいたしております。その四千八百万トンの鉄を作るのに、どことどことどこに製鉄工場を設けるかということは、これから先の問題であって、それまで今現在きめておるわけではございません。たとえば、先ほどおっしゃいました埋め立ての問題にしましても、これは、八幡製鉄という一つの製鉄の母体が、日本国民の生活のために必要な鉄を生産するために必要な公共下乗だと思いますので、私は、八幡製鉄という大企業に奉仕する、八幡製鉄のためだけの道路とは私は決して思いません。やっぱりそれによって生産されてくるところの鉄は、日本国民全部が使うのですから、国民の利益のための公共投資だと、こう考えておるのでありまするが、要するに、一つの目標、所得倍増計画においては、目標数字というものは一応査定いたしておりますけれども、それを具体的にどこに何の工場が来るのか、そうしてどうするということは、これから先の問題であって、従って、その間を結びますところの道路等の計画も、一応の計画はできましょうけれども、随時その事態に応じて若干ずつ修正をしていかなきゃならぬようなことになるだろうと私は思っております。
  47. 田中一

    ○田中一君 地域格差をなくすという方向を出しておりますが、これらの具体的なものが出ているはずなんです。どの地方にはどうするんだ、ここにはこうするんだ、たとえばその企業というものは何々会社が出るか存じません。しかしながら、地方格差をなくすという前提に立つならば、一応の構想がなくちゃならぬはずでございます。
  48. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 地域格差の問題についてお答えを忘れまして、相済みませんでしたが、お話通りできるだけ地域的な所得格差をなくそう。所得倍増計画におきましては、やや経済効率という問題の考え方に偏し過ぎまして、太平洋ベルト地帯というような構想が出ておりますけれども、これでは、ただいまお示しのように、所得格差を是正するということから若干離れるので、たとえば東北でありますとか、私の郷里でありまする南九州でありますとか、そういう所得格差の低いところにも工場が来てほしいと、分散しようと、こういう計画はございます。その計画を実現するために、通産省におけるところの工業立地の調査でありますとか、あるいは建設省の広域都市の研究でありますとか、自治省におきまするところの基幹都市の研究でありますとか、さらに、私どものところで主管として提出いたしました、低開発地域に対するところの工場分散に関する法律、そういうようなもので、地方に工場をずっと分散する素地を作っていこうというのが現在の段階でございますが、どこの地域にどういう工場を作る、従って、その工場と工場との間を結ぶ道路はどういうふうにするのか、その具体的な格好を示せと、今田中さんはおっしゃっているようでございますけれども、そのお答えをする段階には現在なっていないのでございます。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。ただいま地域開発につきまして、東北方面もやや対象になっているようなお話でございますが、政府がわれわれに出した所得倍増計画によりますと、北海道、東北、裏日本は、大体次の十カ年計画の対象になるようになっているのです。ところが、今度の地域開発計画につきましては、それも含めるわけですか。太平洋沿岸のベルト地帯を中心にやると、資本の効率の上に重点を置いて、やはり地域格差の是正ということには役立たないことになるから、それで、東北、北海道、裏日本も対象に含めるということなんですか。そうしますと、われわれがいただいた資料と違うのです。
  50. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 経済審議会という経済企画庁の附属機関の答申をいたしました所得倍増計画には、今木村さんのおっしゃいました通り、太平洋ベルト地帯というものは最初の十年間のものであって、裏日本とかあるいは北海道、東北というのは、その次の中心になって開発する。南九州のごときはもっとずっとあとだと、こういうふうになっているわけです。しかしそれでは、いわゆる所得格差の是正ということから考えて、どうもうまくなさそうなものですから、そこで、所得倍増計画のその点をもう一ぺん練り直してもと実は考えたのでありますけれども、時間的な関係もございましたので、所得倍増計画内閣計画として決定いたしますと同時に、所得倍増計画の構想という別個のものを、お手元にあると思いますが、企画庁でも出しました。所得倍増計画の最初についています。そこのところの(ハ)に、「後進地域の開発促進」とか「産業の適正配置の推進と公共投資の地域別配分の再検討」という題目で書いてありまして、従って、所得倍増計画のあの部分は、まあこれでもって、何と申しますか、若干考え方が変わった方向でいくということになるのであります。
  51. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連質問ですから、これだけでやめますが、私は、その企画庁が出しましたものを読んで、それをもとにして質問しているのです。なるほど経済審議会が答申したあの答申には、非常にはっきり北海道、東北、裏日本、これは第二回目の十カ年計画の対象とはっきりなっていますが、経済企画庁のきめたこの構想には、若干次の十カ年計画の準備的な措置も、この十年間に多少やるようなことが書いてあるのですよ。書いてありますが、ニュアンスが多少違う程度であって、やはり重点は、あくまでも太平洋沿岸のベルト地帯の開発に置かれておるのですよ、それをお読みになれば。重点はそうなんです。それで一部でそういう批判があるので、また自治省あたりで基幹都市の問題も出てきましたし、そういうこともあるので、そういうふうに多少ニュアンスを変えて表現をしておりますが、実態はあくまでもやはり資本の効率ということが重点になって、公共投資あるいは工場の立地計画というものが行なわれていくと思われるのです。多少ニュアンスは変わっても、同じですよ、実態は。それから受ける印象はそうです。それが非常に問題だと思うのです。
  52. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私どもが所得倍増計画の構想というものを書きましたときには、多少ニュアンスが違うということよりも、もう少し強い意味だったと思います。そこで、具体的には現在企画庁で総合開発計画というものをやっておりまして、その作業は今盛んに進行中でありますけれども、たとえば全国平均の国民所得を一〇〇としました場合に、南九州の地域の国民所得は七五くらいに抑えたらいいのか、八〇に押えるべきか、あるいは七〇に押えるべきかということを検討して、今かりに七〇に押えるべきだという結論が出た場合には、その場合、農業でどのくらい持たせるか、工業で持たせるにはどのくらいの工場をここへ持ってこなければならないかという、非常に詳細な計算をしつつ、目下総合計画というものを策定中でございますので、所得倍増計画と両々相待って、後進性の低開発地域との間の所得格差の是正というものの計画を立てたい、こう思っております。
  53. 田中一

    ○田中一君 そこで、この膨大な公共事業を行なっていこうという初年度でありますから、いろいろの角度から三十六年度の、本年度予算というものは検討されたと思うのです。むろんこの計画全部を完成しようという熱意はあると思います。そこで具体的に質問いたしますが、たとえば建設能力、こういうものをどのくらい推定されているのか。現在国が投資しようという、国が行なおうという公共事業のほかに、民間事業というものがどのくらいになっているか、これに対して現在どういうような能力の配分によって建設されつつあるかという点、それから道路、港湾等にいたしましても、すべてこれは民間の力を借りなければならぬでございましょう。その場合の実態というものをほんとうに握っておるかどうかという点でございます。
  54. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お答えを申し上げます。工事能力の問題は、今回の予算編成にあたりまして以来、いろいろな角度から検討いたしておるのでございますが、問題は、機械化あるいは今度御審議をいただいております建設業法の改正等により、またコンサルタントの活用等によりまして、十分に消化し得るという確信の上に立っておるのでございますが、ただ、もう一つのネックは、御承知のように、用地の収得でございます。従いまして、この用地取得についても、新たな構想を立てまして促進をはかる道を講じたい。しかし、個人の権利、利益との関連もございますので、これらの点を慎重に進めて参りたいということで、目下急いで、公共用地取得制度調査会の答申を得ましたので、この答申を基礎に目下立案をいたしておる段階でございます。まあこれらと相待ちまして工事能力が十分に発揮して参れると、かように思っております。
  55. 田中一

    ○田中一君 十分に間に合うというような考え方で本年度予算を組んだとするならば、大へんこれは大きな誤まりがございます。たとえば労銀の単価にいたしましても、前年度から比較して相当な伸びを示しておる、五割程度の賃金の高騰を示しておる。まあセメントは大体横ばいでございますけれども、木材その他は相当な高騰を示しておるという事態をどういう工合に認識されて予算を組まれたかです。これは建設大臣に伺うよりも、建設大臣はもっとおそらく値上がり——値上がりというか、高い賃金を要求したと思いますから大蔵大臣伺いますが、本年度予算上の建設労働者の賃金等は、何の基準によって計算いたしましたか。われわれの了解するところは、前年度と変わっておりませんというような説明を聞いておりますけれども、これで可能かどうか、あるいは主要の資材等につきましても、見通しを一つお聞かせ願いたいと思います。
  56. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) ことしの積算の基礎は、大体三十五年度の額を基礎にしております。
  57. 田中一

    ○田中一君 三十五年度の単価で流化可能であるというお考えですか。
  58. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 先ほどの消化能力の問題は、この予算編成のときに、いろいろ建設省当局とだいぶ私どもも折衝いたしましたが、これは心配がないということと、それから資材費について、木材、これは上昇の傾向が予見されましたので、この問題についてもいろいろ検討しましたが、できるだけ上げないということで、現に政府も、木材の値段を上げない対策を現在やっておりますが、そこらに資材の心配はございましても、セメントその他は大体心配はない、若干値上がりというものが見られたにしましても、一方、機械化の問題、効率の問題等によって、大体三十五年度を基礎にした積算でそう大きい狂いなくやっていけるというのが予算を組むときの私ども考え方でございます。
  59. 田中一

    ○田中一君 建設大臣伺いますが、本年度の住宅公団の労銀の単価を四%程度上げました。これは住宅公団のものは上げなきゃならないという考えでもって、他の営繕等は上げないでもいいのだというお考えでございましたか、あるいはどうして公団の住宅の建設単価というものを引き上げになったかという点を、あなた自身でどういう要求を大蔵省にしておったか、それらの経緯をまぜて説明願って、そうして現在あるところの公団住宅と他の一般の単価との差というものに対する理由を大蔵大臣から一つ答弁願いたいと思います。
  60. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御承知通り、公団住宅、それから公共住宅、これにつきましては単価の是正ができまして、住宅局の当局者に確かめましても、これで大体やっていけるということでございますが、ただ公営住宅につきましては、実は単価の是正を大蔵当局に極力お願いをいたしたのでございますが、大蔵省の言い分としては、この公営住宅の補助は、これは補助単価であって、建設単価を指しているのじゃないのだ。ですから補助単価であるから、この公営住宅の補助分については単価の是正が至難であるということで、三十六年度予算編成には打開ができなかったようなわけでございます。それから、実は土木、道路その他の工事につきましては、私の承知いたしておりますところでは、大体職員の給与が一二%ほど上がりまして、これに対して、工事に使用いたしまする人夫の単価見積もりは約一三%ほど上げていただいておると承知いたしておるのであります。これで十分とは言えないかもしれませんが、これによって工事能力を発揮して施行していく建前でおるわけでございます。
  61. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 公団、公庫につきましては、今お話のあった通り、若干の市価引き上げを認めましたが、公営住宅の方は、坪数、不燃の問題等の向上を見込んでいる関係もあって、大体基準単価としては従来通りというふうに査定をしたということでございます。
  62. 田中一

    ○田中一君 三十五年度発行の建設白書を見ますと、大体三十五年度は、推定も含めて二兆円の仕事を消化される見込みだと、こう報告しております。そこで、三十六年度は民間事業も含めてどれくらい推定しておられるか。これは建設大臣から答弁を願います。
  63. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 三十六年度は、大体二兆三千億ほどを見込んでおります、民間を合わせまして。
  64. 田中一

    ○田中一君 こういたしますと、三千億程度の労働者の対策というものはどう考えておりますか。ことに、この問題は二年ほど前からちょうど石田さんが前の労働大臣——第一期か第二期か知らぬが、労働大臣のときに、あなたは熱意を込めて建設技能者の訓練にあたっておった。あなたがいないうちにすっかりだめになりました。再び今度は大臣になったから相当伸びると思いますけれども、どの府県でも、建設労働者というものは訓練を受けたがらないというのが実態なんです。そこで、その三千億程度伸びようというこの消化能力というものはどこに求めるかという点を、建設大臣、労働大臣いろいろ話し合ってのことだと思いますけれども、どういう見方を持っておりますか。これは機械力だけでは解決つかない問題です。機械力も、御承知通りオペレーターが必要でございます。それらの点につきましても、非常に足りないという実態を一つどう考えておるか。
  65. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お答え申し上げます。  大体機械力の増強をはかりまして、今年度機械の整備についての予算も相当ふやしていただくことができまして、機械力の増強によって三〇%くらいの工事能力の増強ができよう。なお、オペレーターの不足等は確かに御説の通りでございますので、この養成につきましては、極力努力をいたしております次第でございます。また、下級建設技術者の養成につきましては、ちょうど予算編成中、私の名をもって公式に労働省に要請をいたしました。労働省は大蔵省と折衝されまして、ある程度の予算措置が講じられたわけでありますが、これではなお不十分でございますので、目下建設業界とも交渉いたしまして、建設業界における業界の要請ということを相当やってもらうべく実は話し合いをいたしております。すでに着手をしておる分もございます。さらにこれを強めていきまして、十分に工事の消化のできるようにいたしたいと、かように思うわけでございます。
  66. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) お答えを申し上げます。  建設関係労働者の、特に技能を有する労働者の不足につきましては御指摘の通りでありまして、本年度におきましては、その増強について格段の配慮を払ったつもりでございます。まず、一般及び総合職業訓練所におきましては、大体定員の三八%に当たります一万四千人を訓練する予定であります。それから事業内職業訓練所におきましては、定員の六万三千人の三〇%に当たります一万八千六百人を訓練する予定であります。そのほか、本年から初めて実行いたしますものは、建設技能訓練センターとでも申しますか、業の技能者の養成だけを目的といたします専門職業訓練所を千葉県と愛知県に設置する予定でございます。ただ、前回やはり田中さんの御質問お答えをしたのでありますが、私どもといたしましては、この技能の上昇に伴いまする賃金の関係につきまして、この建設関係労働者の賃金体系、特に公共事業の内部におきます賃金のあり方につきまして、なお根本的な、かつ、体系を持った検討を必要といたしておりまするので、そういう点について関係各省と研究を重ねて参りたいと存じておる次第でございます。
  67. 田中一

    ○田中一君 建設大臣にもう一つその問題で伺いますが、あなたのところには、二万人からなる直接国土保全の任に当たっておるところの職員が地方建設局におられます。そこで、これらの方々に十分働いてもらう量、分野、それから道路整備五カ年計画のように、一時に膨大な事業を消化しようという現段階で、比重をどう考えておるか、どういう配分で、そうして双方ともに矛盾のない事業がなし得るような方法を考えておられるか。仄聞するところによりますと、だいぶ本年度の事業の遂行が困難であるというようなことも伺っております。それで安心して仕事ができるというような形の施策をおとりにならないからそういうことになるかと思います。そこで、現段階でどう考えておるか、三十六年度予算の消化のためにはどういう方法でいこうとするか、伺っておきます。
  68. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ちょっとよくお聞き取りいたしかねたのでありますが、大体先ほど二兆三千億は民間と公共事業と約半分、五〇%、五〇%くらいのはずだと思います。それから公団の公共事業をどういうふうに実施していくかということにつきましては、御承知通り、建設省の建設関係の職員というのは二万以上の数に上っております。まあこれらに極力建設の遂行に当たってもらうと同時に、今度の事業量から申しますと、わずか百数十名の増員しかしていただけませんでしたので、これではなかなか困難なわけでございますが、しかしながら、設計にいたしましてもその他にいたしましても、できるだけコンサルタントな活用いたしまして、また直轄工事、直営工事の分量を、現在おりまする役所の人員の限度にとどめまして、その他の分は業界の協力によって請負に付して工事の遂行をはかっていこう。それには建設業界の強化といいますか、いろいろの態勢を整備する必要もございますので、御承知通り、建設業法の改正案を提案いたしまして御審議をいただいております次第で、この業法の改正によりまして、建設業審議会の御意見等も伺い、また知識を拝借いたしまして、請負契約のやり方その他改善をすべき点を改善をいたしまして消化をはかっていきたい、かように考えておる次第でございます。
  69. 田中一

    ○田中一君 私が申し上げているのは、あなたの方の所管の地方建設局には二万名の職員がおられる。これらの方々にはどういう面の仕事を担当させようとしているのか、あるいは道路も行なっております。従って、これをも強化してやろうとするのか、その点の対策を伺っているのです。
  70. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 現在おります建設関係の職員には、極力努力をしてもらわなければなりませんが、しかし、今日の時世でございますから、あまり強度の労働強化を課さないように、この点は十分注意して参りたいと思います。
  71. 田中一

    ○田中一君 最後に、これは池田総理に伺います。そうしてあなたの一つ決意を伺っておきたいのですが、このように事業か相当伸びております。従って、いろいろ機械化その他によってこの対策は立てられるはずだという説明を各所管大臣が言っておりますが、顕著な例は、昨年、三十五年度の官庁営繕が大体二十九億、それから三十六年度は五十二億に伸びております。一般会計、特別会計等、全体合わせますと、本年度三十五年度は二百八十七億円の官庁営繕を行なっておりますが、三十六年度には四百三億に伸びております。私は、これはまあアメリカの大統領ケネディもそういうことを教書の中で言っておりましたけれども、やはり国民生活になくてはならないという生活環境の整備のためには、これはどしどし仕事はどの場合でも進めなければならぬと思います。これが一枚看板の産業基盤の拡充等のためには今までのようなたくさんの仕事をしておりますけれども、官庁営繕費がここまで伸びるということも、前年度に比べるというと四一%の増です。結局これはこういう形のものを、非常に仕事が皆忙しい、労働者が引張りだこだという中において、あえてこういう建設をしようということは、おそらく池田さんの真意ではなかったのではないかと思うのです。なぜならば、かってフィリピンの賠償問題が行なわれた場合には、民間の建設をも、当時の建設大臣、あるいは総理大臣でございましたか、中止するような勧告も行なっております。仕事が伸びて労働力も足りない、資材も高騰するという傾向の中で、四〇%以上の官庁営繕費、がまんすればがまんできる費用もあったと思います。それらを伸ばすという総理の考え方に対しては私はこれは納得いきません。むろん、常勤職員として各営繕事業を担当しているところの職員はたくさんおられましょう。これらの方々がやり得るものならばいざ知らず、その他を外注によって消化している現状で、不急な官庁工事というものは、これは不景気なときおやりになるのが一番正しいのです。不当なる値上がりに拍車をかけるという片棒をかついじゃいけません。従って、ささやかなものではございます。しかし、この傾向はあっちゃならぬ。この点について総理の一つ決意を伺っておきたいと思います。そうして私の希望するところは、むろん緊急必要なものを選んだと思いますけれども、前年度に比較して四〇%以上も伸びるということは、異常なるものを感じさせます。従って、これに対するお考え方を示していただきたいと思います。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話通り、官庁営繕につきましては、われわれとしても、できるだけ控え目にやっているのであります。しかし、執務の能率の点から申しましても、そういつまでも押えていくわけにいきません。また、仕事の能率から、建設事業の能率からいきましても、やはり適当なスピードでやることが必要でございます。私は、進んで官庁営繕を多くやるという気持ではなしに、やむを得ない点につきまして大蔵省は予算を組んだと思います。
  73. 田中一

    ○田中一君 大蔵大臣、どういう査定をなすったか、やむを得ないものという考え方と、不急なものではないかという考え方は対立するはずのものです。
  74. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この官庁営繕の査定は私どもが全部いたしましたが、これは従来、官庁営繕はやはりあと回しにするという方針で、待たせに待たせてきたものが、ここへきて解決しなければならぬと思われるものが相当出てきました。裁判所の問題にしましても、また通産省が現在使っている建物でも、計算機の重さで二階が落ちそうだというような問題も、現場に皆一々当たって、これはやむを得ぬというようなものに特に私どもは限定したつもりでございます。
  75. 田中一

    ○田中一君 私はそうは見ておりません。やはり本年度の第二次補正に見られるような税の自然増で気持がゆるんできているのです。こういう好況時と申しますか、建設業界の好況時には、官庁営繕のようなものこそ、これはまあ失業対策とは言いませんけれども、不況なときに雇用を伸ばすための政策にするのが正しいと思います。しかし、これはあなたがそういうふうにおっしゃっているのだから、これはもうこれ以上追及しません。しかし、これは今後も心にゆるみがくると、腹にゆるみがくると、少しでもぜいたくをしたがるものです。私はこれはとりません。そこで、先ほど建設大臣が、これらの仕事を遂行するためには、どうしても用地の問題が一番ネックになっているということを言っております。その通りでございます。そこで、先般公共用地取得制度調査会というものを、昨年われわれが国会に出ない国会で、われわれの意思を無視して、建設省に設置されました。そうして、どうやら先般答申が出たようでございます。この内容について私は知っておりますけれども、一応この内容につきます建設大臣考え方、これはむろん単独立法として、特別立法としてお出しになるというような心組みを聞いておりますが、その内容について一応伺っておきます。
  76. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 大体答申をいただきました要旨からいいましても、特に公共性の高い、緊急度の高いものについて特別措置を適用するようにいたしたい。それには役所とか、そういう政府だけが考えたことではいけませんので、公正な審議会を設けまして、その審議会の議に付して、公共性あるいは緊急性について御審議をいただいて、そこできまった事業に対して特別措置を適用するように進めて参りたいということでございます。そこで、特別措置を適用いたしまする内容については、目下検討中でございまして、答申の内容は御承知通りでございますが、最もわれわれが意を用いなければならないことは、できるだけ早めるということが一つと、個人の権利、利益を侵さないということが一つでございます。かような角度に立ちまして、答申の中にもございますように、どうも今までの土地収容法というのは非常によくできておりますけれども、ただ土地収用という手続きのみの規定でございます。今度の場合におきましては、その事業を執行する企業者は、できるだけその企業の本質なり、その必要性なり、あるいは道路にいたしましても、この道路はここを通るより仕方がないのだということについて、地元の市町村はもちろん、地元住民に対して十分のPRが必要である。こういうような企業者側に対する義務づけ等も定めていくことについて目下考究をいたしておるような次第でございます。なお、ほかのダム等の法律には、収用を受けまする人たちの職業あるいは更生等について、相当の具体的な規定を持ったものがございますが、この公共用地の収得につきましても、やはり代替地を渡すとか、あるいは居住の必要の人には居住を供給するというように、現物で補償するというような道も相当に考えに入れていかなければならないのじゃないか。その他手続といたしましては、やはり土地収容法の順序を踏んでいくのが正常の姿でございますから、これは踏むようなコースで考えて参りたいと思いますが、ただ、土地収容法には相当間のびのした部分もございますから、これらを緊急性あるいは公共性の高い事業として認定されたものについては、期間を短縮するというような方法でやっていくような構想で、目下成案を急いでおるような次第でございます。
  77. 田中一

    ○田中一君 昭和二十六年に制定された土地収用法、これを今まで実際に全線にわたって一つ計画そのものに対して適用したことがないのが実態なんです。常に口を開けば、買収に応じてくれないから土地収用法の手続によって取るのだということを言っております。従って土地収用というこの法律に対する政府見解というものをただしておかなければ、今回改正しようというこの考え方に対しては、国民全部が改悪である、改悪であるというような印象を受けるわけであります。私は総理大臣に伺っておきますが、こういうことはあなたあまり御存じないかもしれませんが、たとえば首都高速道路公団が二年前に発足して、いまだ二年間かかって相当な資金をつぎ込もうとしておっても事業が進まない、あるいは御承知のように三年来の対立をいたしておりますところの下筌ダム、蜂の巣城でございますが、これらも解決をしないという点は何か。これは政治に対する不信感でございます。私ども建設常任委員会にそれら反対の人たちを呼んで聞いてみましても、法律をもって行なってくれるのなら喜んでその法律に従いましょう。しかし、理不尽に取るということだけでは承知できませんというのが実態であります。むろんこれは政治と申しましても、行政面の小さな面にまで感情的な対立が行なわれている。今まで土地収容法というものを全面的に活用して、公共用地を取得した例がないのでございます。総理大臣、この答申案についての答え方については建設大臣伺いますけれども、こういう傾向に対して法律を実際に用いないで、説得買収交渉だけで問題を解決しようという態度に対しましては、どうお考えになるか。むろん行政官には権力という背景を持つ人たちが買収交渉に行くわけでございます。これはわれわれが政権をとりましても公共事業をどしどし行なって参ります。従って国民の完全な納得の上に、憲法二十九条の精神を生かして行なっていきたいと思いますけれども、これは今でも大きな政治問題でございます。総理の御見解伺います。
  78. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 戦前におきましての土地収用法等は相当実際に行なわれております。二十六年の土地収用法、私はやはりあの時代に即応する法律がございましたけれども、なるべく説得、納得というふうな方法で行こうとしておったのであります。また、昭和二十六年の土地収用法は必ずしも完全なものではございません。従っていろいろな支障が起こり、仕事の進捗をはばまれておったのでございます。こういうことにかんがみまして、今回新らしい考えのもとに、また十分な規定を設けまして、収用を適正かつ迅速にやろうとしているのが今度の答申案による政府考え方でございます。
  79. 田中一

    ○田中一君 二十六年に法律ができて以来、この法律を動かしておらないのです。総理は今完全なものでないかもしれぬという発言をしておりますけれども、あなたはどこで完全でないという考え方を持つのか私にはわからない。今まで完全に動かした例が少ないのです。部分的には、あの男が反対するからこれを適用して取るのだということはございましたけれども、生かした例がないのです。どこにあなたは現在の土地収用法というものは不十分だとお考えになるのか、お考えになる点を指摘していただきたい。
  80. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大体昭和二十六年の分は、前提として、協議を主にしてやるという建前になっておると思います。その協議の整わないときには法律に基づきまして強制する場合もございまするが、考え方がそういうふうになっておるものだから、また戦後のあの状況から申しまして、私は十分に目的を達し得られなかったと思います。戦前あれが行なわれなかったというのではなく、私は寡聞でございまするが、あの土地収用法の規定によりまして相当収用された事例も聞いております。
  81. 田中一

    ○田中一君 それでは、今までの現行法の土地収用法というものは不十分だ、不十分というところで指摘していただきたいのは、今、建設大臣が言っているところの期間の問題とか、そういう事例が不十分だというのか。あるいは御承知のように、いよいよ事業認定をして仕事を進めて参りますときに、手続が進んで参りますと、すべての補償という、憲法上の補償という義務は収用委員会というものにかかってくる。第三者の手によって補償が決定されるという建前になっておりますが、しからば第三者が決定する収用委員会、収用委員会が決定する価格というものに対しては、これはその収用委員会そのものに対しては、その制度が悪いというお考えに立っておりますか。
  82. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) こまかい問題でございますから法制局長から、あるいは関係大臣からお答えいたします。
  83. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 先般の調査会の答申の中にも、田中さん御存じのようにございますように、調査会の答申のある部分に、どうも今までの土地収用法を適用することがあまりおそいじゃないか。もっと早目に、適用していったら用地取得がもっと早くできるのじゃないかという勧告が一項目あると思います。これは確かにその通りで、今までの土地収用法は非常に私ども見てよくできていると思います。手続としてもよくできていると思いますけれども、しかしながら、相当に期間を要する制度であることもまた間違いがない。そこで企業者といたしましては、何とか話し合いをつけていこうという努力をしまして、その努力に手間どって、そしていよいよ困って初めて土地収用法の適用に入るというようなことで、一そう事態がおくれるという感じは確かにあると思うのでございます。従いまして、こういう点につきましても、まあ調査会の意見考え方の基礎にあるものは、もっと早くから適用をして、そしてすべきことはやって、途中で話がついたらけっこうじゃないかという考え方に立っておるようにうかがえるのでございますが、これらの点につきましても、今度の特別措置を検討いたしますについて十分われわれは配慮していきたいと、こう思っておるわけでございます。
  84. 田中一

    ○田中一君 総理は、この問題はこまかい問題だ、だから自分でなくほかの者に答弁させるという御答弁がございましたけれども、こまかい問題ではないんです。これから所得倍増の基盤となる公共投資というものは、十年間で十六兆一千三百億を使おうというこのもとになるのは用地の問題なんです。どこでも起きます。これを解決してこそ初めてあなたの夢に描いているところのすべての善政がしかれるのでございます。これを忘れては一歩の前進もないわけなんです。総理がそういう感覚では、やはりこれから行なわれるというところの公共用地の取得というものは困難であろうと思います。どうか一つその点は、こういうものこそ眠っている子が——憲法二十九条を守っている子供が他の意思によって起こされ、ゆすぶられ、追いやられるという現実をよく見きわめていただきたいと、こう思うのです。  そこで、建設大臣伺いますが、あなたは、今立案中だからどうかと申しますけれども、これは国民全部が等しくどういうように変えようとするのかということで、重大な関心を持っている。この答申が出て以来、各新聞はあるいは論説に、あるいは読みものにこれを扱いまして、こういう改正によって国民の不利益の方が増大するんではないかというような懸念を持っている。むろんその点につきましては、あなたが答弁できないならば私が一つ一つ伺いいたしますから、それは違う、それはするんだというように御答弁願いたいと思うのです。  アメリカ五十州のうち二州だけがこういう特別立法を行なっております。それは基本法というものは、これは日本の土地収用法も外国のものとあまり変わりございません。ただ、緊急にしてやむを得ないものに対しては特別の立法でこの事業を行なっていくということになっているのです。ほかの国の土地収用法は大体日本の現行法と似かよった精神で立っております。じゃ緊急やむを得ないものとして何をあげているかと思しますると、既成市街地における高速道路でございます。これだけは除外している。何といってもその土地というものが経済的な価値の高いもので、同時にまた、それがよそにいって自分の事業が行なわれないというような悪条件に制約されておりましてできない。この答申による裏を考えてみますと、道路は、むろん何メートル以上の道路はこうするんだとは言っておりますけれども、ねらいは政府自身の行なうというこの直轄工事のうちの、比較して安くその仕事をしようというためにその地点を選んでやっているという、この下筌ダムの問題——ダム等は下筌ダムの問題を一応考えておられると思うのです。従ってダムというものはこれに入れるか。この点だけ一つ入れるとか入れないとかという答弁を願いたい。
  85. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 調査会の答申にはダムが入っております。われわれとしましても、この点を慎重に検討いたしておるのでありますが、ダムは御承知通りその水域における災害防除の関係もございます。早くダムを作らなければ災害をどうしても防ぐ確信を持てないというような場所もあると思いますから、やはりどのダムもこの特別措置を適用するようにしていく必要はもちろんないと思いますが、そういうような河川の状況に応じまして、やはり適用するものはすることのできるように措置しておく方が、災害が一たび参りましたならば大ぜいの人たちが大へんな被害をこうむり、あるいは損害も莫大になることでございますから、早くできた方がその災害の防除になる、洪水調節になるというような場合には適用し得るような道を開いた方がいいのではないかという考えを持っておるのでありますが、なおこれらの点につきましては、具体的に適用範囲をどうするかということは慎重に検討いたしまして結論を得たいと思っております。
  86. 田中一

    ○田中一君 公共事業を行なうそれに対して、相当なネックがあれば、それを切り開いていくことは当然であります。しかし、ここで大蔵大臣に伺っておきますが、なぜ今日の財政法の上から見て単年度の事業だけに用地費が含まれなければならないのか。むろん現行法から見てそうなっておりますけれども、私は、たとえば一億の仕事の中に、本年度の事業は一千万円の用地費が含まれているのだという場合には、用地の担当官というものは一千万円という用地費を抱きながら交渉しているのが現状なんです。こういう予算上の弊害もある。どっちみちその用地がほしいというのならば、法律に基づくところの事業認定を行ない——事業認定ということは、この仕事をするのだ、するのだからこの用地がどうしても必要なんだという意思決定です。事前の買収行為というものはこれは契約行為です。そういう段階で、これは売りません、いやです、一千万円じゃいやです、一億円下さいということもこれは自由です。そこにやはり予算上の措置が不十分だということも言えるのです。その年の年度の用地をその短かい——三月三十一日に予算がかりに通ったといたしましても、仕事を始めるにはなかなかかかります。ことにこの地点にたとえばダムを作るという場合には、調査期間が結論が出てからまた一年も二年もあるわけなんです。それならば全部の用地が取得できるような財政上の措置をすることの方が正しいのではないかという点でございます。私は現行法でもできるのじゃないかと思います。経常費というものを先般改正して認められておりますから、できるのじゃないかと思いますが、その見解はどうですか。そうしてまた、そういう措置をとらなければ一かどの事業の用地費というものの限界がございますから、押しつけられるという印象を被収用者に与えるという点でございますが、その点一つ伺っておきます。
  87. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは現在の予算でも必ずしも単年度に限って押えているわけではございませんし、また国庫債務負担行為の活用の道も開かれておりますので、予算上確実に入手し得る場所であるなら、この方法の道は今の制度でも開かれておるのであります。
  88. 田中一

    ○田中一君 それでは建設大臣伺いますが、そうして予算上の道が開かれておるならば、建設省あるいは農林省、運輸省等、公共用地の取得を、なぜ三年、五年後の事業の用地の取得をなさらぬかということです。今日までの傾向としては地価はどんどん上がっております。また上がるような措置を政府はとっております。地価が上がるような財政上の措置、制度をとっております。従って上がって参ります。当然三年後に必要な用地というものが三年前に必要とわかるならば、その年になぜお買いにならないか。今、大蔵大臣はそれはできるのだという。できるのにそれをなぜなさらないか。これはやはり国民の税金でございます。どうしてそういう措置をとらないのか。またそういう交渉を大蔵省としたことがあるか伺っておきます。そうしてまた三十六年度予算では、必ず国が行なうところの用地、計画的な公共用地というものをまとめて買うような、買収をするような用意を持とうとするかどうか。
  89. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御承知通り、道路と住宅の用地につきましては、用地を先行して取得する道を講じておりまして住宅等につきましては、必要に応じて分量等を申し上げてもよろしいと思いますが、数字の点は煩雑になっていかがかと思いますので、省略をいたしますけれども、相当分量先行いたしまして用地の取得を最近は進めているようなわけでございます。今後一そうこれを活用いたしまして、大蔵当局とも折衝いたしまして、一そうこの用地の先行取得を可能なように、十分措置のできるように運んで参りたい、かように考えております。
  90. 田中一

    ○田中一君 大蔵大臣、三十六年度予算にはそういう措置がとられておりますか。
  91. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) とられているはずでございますが、こまかい点は……。
  92. 田中一

    ○田中一君 予算上のどこにどういう工合にとられているか、一つお示し願いたい。
  93. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) お尋ねの公共用地の先行取得の点でございまするが、これは、本年度の道路並びに住宅の用地につきましてこの金が入っております。  なお、国庫債務負担行為のお話先ほどございましたが、河川及び空港の関係におきまして、国庫債務負担行為によりまして用地を取得いたすことを考えております。
  94. 田中一

    ○田中一君 その予算の立て方は、先行取得のために何十何億、何百何十億のものが別ワクで立っているのですか、その工事費の中に立っているのですか、どっちですか。その事業費の中に立っているのか、立っておらないのか、お伺いいたします。
  95. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) おのおの事業費の中に入っているものでありますから、今ちょっとすぐにこの場所で、おのおの項目で幾らあるかということはちょっと申し上げかねると思いますが、各事業費の中に入っております。
  96. 田中一

    ○田中一君 私はそこに問題があると思うのです。一工事ごとに含まれている事業費に用地費というものは含まれているから、問題が起きるわけなんです。当然年間、金に見積もって五百億なら五百億という用地を取得するのだ、年度計画をまとめるならばそうなるのだということならば、なぜ一本の姿でもって先行取得費というものを立てないか。一事業ごとにこの区域の用地費は幾らかということをきめておりますから、この金はすぐわかります。そこに抵抗があるということ。大蔵大臣、今後とも今のような制度の用地取得費を立てていこうとするか、あるいは今私が申し上げているような先行取得の用地費というものは別にとっていくという考えに立ちますか、一つお答え願いたい。
  97. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) それは予算の立て方の問題でございますから、その方がいいというならそういたします。
  98. 田中一

    ○田中一君 予算の立て方の問題だから、その方がいいというならそういたしますという御答弁でしたね。  昨年の春ごろから「株より土地」なんていうような単行本も出たりなんかしまして、土地の値上がりをあおっております。政府は、まあ私ども社会党も一緒になりまして、何とかこの問題を解決しようとして、いろいろあなたの方で、政府がやるならば社会党も単行法を出さないで一緒にやろう、これは何としても抑制しなければならぬという、非常にわれわれとしては政府に御協力しているはずです。最近単行法を出そうというお考えであるようですが、考え方はどういう考え方でいるか。もう一つは、地価の抑制を考える法律を出そうとするならば、現在ある現行法で数数の行政措置で行なっている地価を上げる方向の施策というものに対して、どういう態度をとるか。それらのものを全部取りやめて、そして地価を抑制するという形のものをとっていこうとするのか。上げる方の施策はそのまま置いておいて、そして押えようというのか、それを一つ伺っておきます。
  99. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 公共用地の取得のために地価を高騰せしめるというような要素は、できるだけ検討いたしまして、排除して参りたいと思います。ただ、問題は、個人の資産に関することでございますから、過度の高騰を法律の力で押えるというようなことも、これは憲法の精神に照らしましてもどうかと考えまして、ちゅうちょいたしておるわけでございます。ただ、宅地造成に関する法律を作っておるので、住宅の宅地だけでもこの過度の高騰の被害をこうむらないようにする必要があるのじゃないかということで、これもいろいろ憲法の建前との関係やら、いろいろな関係がございますので、実は提案の運びになりますまでに手間どっておる。まあ成案を得るまでに、難航しておる問題の一つでございます。何とか関係各方面の理解連絡が完了いたしますならば、こういったような制度を作りましてせめて、住宅の宅地だけでもあまり過度の高騰の被害をこうむらないような措置を講じたい、かように考えておる次第でございます。
  100. 田中一

    ○田中一君 それからもう一つ、建設大臣、現在ある行政上のあらゆる制度において、地価が上がるような施策をとっている面はどうでしょうか。そういう小さいことは建設大臣にわかりませんという御答弁なら、だれかわかる人にやってもらってもかまいませんよ。
  101. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 現在の制度で、どうも寡聞にして、よくどういう点の御質問か……・。
  102. 田中一

    ○田中一君 それじゃ、そういう小さいことがわからなければ、わかる人に答弁させて下さい。そういう政策がかりにあるとすれば、それは全部是正いたしますという答弁であるならば……。そうすると、えらいことになりますよ。
  103. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) あるなら、是正するように努力いたします。先ほど申し上げましたように、公共用地の取得ということが一般地価の高騰をあおっているというような現象があるといたしますならば、これらもできるだけ是正の道を工夫して参りたい、かように考えております。
  104. 田中一

    ○田中一君 たとえば、こういう事例なんです。宅地造成のために住宅金融公庫その他が融資を行なっております。その場合に、私鉄会社ならば金を貸してやろう、造成に対する資金を融通してやろうということなんです。これはなるほど公共事業に違いございません。しかしながら、また一面営利事業であるはずでございます。そういう点は、今後ともそういうことはしない、特定なる者に対する融資はしないというお考えなのか。お考えだと了承してよろしゅうございますか。
  105. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 多分金融公庫の宅地造成資金の貸し出しのことかと思いますが、私鉄会社に対しては貸し出しをいたしておりません。できるだけこの住宅金融公庫の宅地造成資金の放出も、現在でも欠点があるかもしれませんが、私ども十分今後研究をいたしまして、不都合のないように進めて参るようにいたしたいと思います。
  106. 田中一

    ○田中一君 今、住宅局長が耳打ちしたのでしょうけれども、特定分譲という融資方法を私鉄には行なっておるのです。なるほど団地という、何万坪の団地じゃないかもしれませんけれども、私鉄会社が自分で建て売りをするのです。五十坪の土地を、自分の土地に建て売りをして、これには融資をしているという現実を言っておるのです。私は、別に何万坪の宅地造成の費用を言っているのじゃありません。
  107. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) お答え申し上げます。私鉄会社自体には、御承知と思いますが、融資をいたしておらないのであります。ただ、私鉄会社その他のそういったような機関が宅地を作り、分譲住宅を作りまして、そして住宅を分譲いたしまする場合には、それを買い受ける者に対する融資はいたしておるのであります。あるいは間接にはそういった作業を援助する形になって、なるほどあるいはその傾向があるかもしれませんが、住宅が必要で、その住宅の分譲を受けたいという人に住宅金融公庫から融資する道を開いておる。現に融資をいたしております。そういうような状態でございます。
  108. 田中一

    ○田中一君 実体は同じなんですよ。実体は同じなんです。実体は同じであっても、建て方が違うということを言っておるのです。そういう巧妙な方法で特定なる大企業に対して融資をする方法をおやめになりますか。おやめになるというのなら、それは是正されるものと信じております。当然、そういう大きな企業が宅地開発あるいは分譲住宅を作るならば、住宅金融公庫の金を借りないで、自分の方で同じような形式の資金をお出しになればいいわけです。建設大臣、そうおっしゃるなら、今後ないと思いますから、それで了承いたします。  地方財政の問題をちょっと伺っておきたいのですが、今度の三十六年度予算の面において、道路その他どのくらいな負担増になっておりますか、三十五年度に比較しまして。
  109. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 三十五年度と六年度を比べまして、地方費におきまして三百八十八億、国費におきましては五百九十九億、合計九百八十七億の増加になっております。
  110. 田中一

    ○田中一君 これに対して、その対策はどういう工合に立てておりますか。
  111. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 対策と申しますと、消化を助けるとかそういったものでございますか。
  112. 田中一

    ○田中一君 財政上の……。
  113. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 財政上の対策といたしましては、ことしは交付税につきましても、あるいは一般税収につきましても、本年と比べまして相当な増額を期待しております。これはそれぞれ所要の財政措置ができるつもりでおります。なお、特に単独事業あるいは従来の規模是正といったようなもので、自治体自身で相当財源を与えてこれを促進させるといったような方法も考えております。
  114. 田中一

    ○田中一君 この道路整備あるいは港湾その他各長期計画の事業の伸びと申しますか、負担——財政的には負担ですね。従来は特別な異常な事件で事件というか、事業増でもって補助金の返上をした例があるように承知しておるんですが、どういうものがございますか、それを一つ
  115. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) かつて非常に地方財政が困窮して赤字を続けておったといったような時代には、一、二そういった例もあったのでございますが、ここ二、三年来、漸次地方財政も軌道に乗って参っております。ことに、ことしは、御承知のように、新しい法律を出しまして、従来の補助金に対して特に財政支出の、財政力といいますか、弱い地方団体に対しましては特別補助率の適用もやる、こういったようなことで、後進地域の開発にも努めておりますので、おそらく大体におきまして事業の消化は可能であろうと思っております。
  116. 田中一

    ○田中一君 総理大臣に伺っておきますが、これだけ今後十カ年間に公共投資として相当な事業を行なわれる。道路法の中には受益者負担という項目があるんですが、これも今日まで一ぺんも負担金を取った例がないように私記憶しておる。そこで、すべての公共投資というものが国民全部のものならば、これはまあ国民全部がある面を負担するのは当然でございましょうけれども、地方的な地域差においてもですよ、今度のような行き方の場合には、受益者負担制度というものを相当使ったらどうか。たとえば新しく通産省が考えておる工業地帯というものを造成する。これに相当整備された、まあ普通国民が直接利用するならばそんなに必要ないというような道路整備を行なう。そういう場合に、特定なるものに対する公共事業によるところの利益に対しては受益者負担制というものを当然とったらどうか、こうも考えるんです。その点は、そういう制度が現行道路法にございますが、行のうというつもりはございませんか。その方がガソリン税を増徴して——ガソリン税はもう国民全部のものです。こういうものを増徴して行のうよりももっと国民としては喜ぶのじゃないか、こう考えます。
  117. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 特定の港湾とか下水あるいは多目的ダム、こういった受益者負担をとっておると思います。なお、この問題につきましては、これが無理になってはいけませんので、やはり実情に沿ったようなやり方でいかなきゃいかぬ。都市計画なんか、都市計画税として昔は取っておったと思います。受益者負担につきましては、その業態と受ける利益、それから公共性の問題を十分検討しなきゃならぬと思います。
  118. 田中一

    ○田中一君 国土保全の事業に対して地方交付金でもって一応の補てんをやっておりますけれども、これは維持管理という面について地方に対するところの補助制度というものを一つ確立したら、国が直轄管理をする面は一級国道に限っておりますけれども、せめて二級国道ぐらいの、あるいは主要道路ですね、これに対するところの補助金制度、これはとるつもりはございませんか。
  119. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お話のような点は十分検討しなきゃならぬと思っております。今一部でも実施はいたしておりますが、さらに検討いたします。
  120. 田中一

    ○田中一君 昨年は、昨年といいますか三十五年度は、割合に災害が僅少で済んだので非常に幸いと思っておりますが、現行法にありますところの法律では、やっぱり原形復旧が前提になっておる。災害を受けるということは、それは不十分だから災害を受けるものであろうと思う。従って、国庫負担法そのものをもう改良復旧だという原則に立つことの方が望ましいのではないか、こう考えるんですが、これは大蔵大臣並びに建設大臣の意向を伺っておきます。災害復旧の「原形」という原則を「改良」に置き直したらどうであるかという点でございます。
  121. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 災害復旧は、御承知通り、原形復旧が建前でございますが、しかし、同時に、改良を要するような状態、あるいは将来の災害を予想しあるいは現状から見まして改良を要する分につきましては、現在も改良を含めて事業を実施いたしており、あるいは関連事業として並行して、関連事業予算を取りましてやっておる部分もあるわけでございます。考え方としましては、今、御指摘のように、改良も一緒にやったらどうか、こういう御趣旨に対しましては、現在でもその趣旨に沿ってやっておるわけでございますが、趣旨としましてはもっともでございますが、しかしながら、復旧の場合と改良の場合とでは、扱い方等にも相違が出て参りますので、現状の方法で不十分な点がありましたならば、これをさらに改善をしていくという行き方の方がよろしいのではないかと、かように考えております。
  122. 田中一

    ○田中一君 災害復旧事業の点ですけれども、私はこういうことを聞いているのです。まあ、これは優秀な技術者がたくさんおるから、そう準備されておると思いますけれども、年次の災害というものは、すべてもう今度どの地点にどのくらいの台風が上がれば、どの地点が破堤する、あるいはどこにどういう大雨が降ると、この川のどこがこわれるのだということの研究と設計、積算等ができておると聞いておるのです。その点は、そのぐらいな準備があってしかるべきだと思うのです。しかしながら、そういう点があるならば、本年度のように災害のないときに、相当な金をまあ自然増収もたくさんあったのでございますから、治山治水の保全費に充てるべきが正しいのではないかと、こう思うのです。で、総理大臣の御意見伺いたいのですが、大体において災害待ちの空気がわれわれには相当あるのです。ことに一番ひどいのは、国会議員でございます。私もその中に入っておりますが、国会議員は災害があると非常に喜んでおるというように聞いているのです。なぜかというと、私は全国区ですから選挙区を持っておりませんが、大体自分の選挙区に災害があると大喜びです。何とか復旧のために努力しよう、協力しようという考え方になるらしいのです。どこそこに台風が来たということ、相当たくさんの電報が国会議員から打たれるそうでございます。私はこういうものこそ平時の自然増収のあった場合には使うべきである、こう思うのです。災害待ちの政治はよくないのです。私たくさん知っております。石田さんの方にも、石田さんが大臣になったためにできたものもある。これは周東さんの場合にも、あなたが大臣になるたびに自分の選挙区が整備される。小澤国務大臣の場合にも、よく知っております。私は全国を歩いております。これはいい政治じゃございません。何とかこういうものをなくして、自然増収があった場合には、これはそういう特定の地区でありますけれども、災害があったから直すのだという考え方でなくて、災害を受けないために余裕があったら、余裕財源をそれに充てていく。どこがこわれるかということは、建設省の技術者はよく知っております。この川に大雨がくれば、こことここがこわれるのだとわかっているのです。一面、建設省の技術者もかわいそうなものです。こわれてくれなくては、あなたたちに義理が果たせないという気持を持っております。当然災害を守るには、上流の砂防事業を行なわなければならぬとわかっていながら、砂防施設をしなければならぬ地区には人が住んでおらない、選挙民がおらないわけです。どうしても人家のたくさんある方に持っていく。もとを直そうという考えは、技術的良心からはそれを望んでおりながら、悪い政治の圧力でもってそれをしないというのが現状なんです。私こんなことを申しますと、居並ぶ閣僚の皆さん方がみんなひしひしと胸にこたえると思う。これであっちゃならぬと思う。この点について、総理、大蔵大臣、農林大臣、建設大臣北海道開発庁長官等どういう考えですか。あなた方の所管の行政区内において、行政面の区域において、そういう実態があるということを知っているはずです。一つ所懐を伺うと同時に、総理から、やはりこれこそ一番大事なことです。三十五年度は割合によかった、しかし、国並びに地方公共団体が負担する損害よりも、国民個人めいめいが失うところの生命財産が大きいのでございます。一つ災害待ちの政治じゃなくして、国土保全、災害から守るための財政投資が多くなされなければならぬ。ことに農林省の場合には、山腹砂防、建設省の場合には上流の渓流の砂防、こういう点に重点を置く、また置かなければならぬ。建設省のあなた方の方の局長あたりは言っているんですよ、よくわかっておる。わかっておるけれども、何といってもあの先生の義理を立てなければならぬから、どうしても橋とか堤防にいかざるを得ないんです。これは人情だと思うのです。一つ所懐を述べていただきたいと思います。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政治家が災害待ちということは、私はよくないことでございます。私自身のところはあまり災害がございませんので、私はそういう考え方は毛頭持っておりません。お話しの通りでございまして、今でもやはり治山治水五カ年計画、これは私は計画的にいっていると思います。治山治水の五カ年計画に属しない点につきましては、これは将来財政の余裕等を見まして、災害を未然に防ぐというふうにお金をためておくとか、あるいは余裕のあったものを使えとか、使っていくということは考えなければならんと思います。ただいまのところは、五カ年計画でやっている次第でございます。
  124. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 災害を防ぐ意味で、御承知のように治山治水十カ年計画をもって実施するということをやっておりますと同時に、たとえば東京、大阪の防潮堤、三陸の防波堤というようなものも、災害に備えて国費を出資して現在やっているのでございます。また、災害を受けた地方も、さっき申しましたように、原形に復旧するということを原則にしておりますが、常に災害がくるたびに、同一個所が破壊されるというようなものに対しましては、さっき建設大臣からお話がありましたように、復旧工率とあわせて改良工事を一緒にやれるという措置を現在とっておりますし、そういうふうに災害に備えた備えというものは、お説の通り災害が出ないときにやるべきだ。国費としてはできるだけこういう国費を計上したいと思っております。
  125. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 災害に対して予防の方が重大で、災害待ちではいかんではないかという御意見は、同感であります。従って御指摘のように、治山治水に関しましては、ただいま大蔵大臣も申しましたように、十カ年計画を立て、前期五カ年、後期五カ年、合わせて十カ年計画を立て、しかしてこれはおのおの特別会計制度を昨年から樹立し、この特別会計制度の樹立ということは、結局予算がないから計画通り毎年々々の仕事ができないというのではいけないので、とにかく今計画を立てる以上、借入金ができるような制度でやるという形をとらず、原則は財政からの金でやるということをきめ、これで実施していこうというのは、そこにねらいがあるわけであります。  なお、きょうは科学技術庁長官がいらっしゃいませんからかわって申し上げますが、その山だけの問題、川だけの問題ではなくて、科学技術庁におきましては、根本的に台風に対する一つの処置が考えられないか、これは私は真剣に前の中曽根長官考えられた事柄、即台風予防対策の研究、これは外国でもやっているわけであります。何らかの方法で台風を未然に予知し、これに対して防ぐ方法はないか、こういう問題も、科学技術庁の研究としてことしの予算に盛られている点はもっぱら災害の予防ということに考えております。
  126. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 御指摘の点は、十分私どもといたしましては、公正にやって参りたいと思います。同時に砂防等につきましては、人のあまりいないところでありますが、砂防の予算も三十六年度相当程度伸びまして、他の治水事業と均衡のとれた予算措置をとってやっております次第で、今後注意して参りたいと思います。
  127. 小澤佐重喜

    国務大臣小澤佐重喜君) 北海道には災害の予算が計上してありませんので、各省でやります。しかし、お話のように、災害を希望するということは毛頭ございませんで、ただなった場合に、できるだけよくするというだけです。
  128. 田中一

    ○田中一君 そこで、一体災害を守ろうと挺身している諸君は、だれかと申しますと、建設省、農林省、運輸省、北海道開発庁等々の職員なんです。それが、ようやく小澤さんが行管長官になったから、きっとそういうことになったと思いますけれども、まあどうやら今まで八年も十年も勤めておった、命がけで水防なり災害を守ったところの諸君がようやく定員化されるということは、非常にうれしいわけです。しかしながら、これらの諸君がまだ正しい姿で任命されておらないという実態でございます。どうもおかしなもので、現場にいる者よりも事務をやる者を優先するというようなことを、建設省ではやっております。農林省はそれはしておりません。古い者から順次やっております。北海道開発庁も実にりっぱにやっているらしい。運輸省もこれは別に問題はございません。ただ、建設省だけがどうもそういうへんぱな扱いをしているという実態を私は知っております。そういうことをしますと、災害のときに困ります。同時にまた、長い間勤めておるところの職員が、みなが幸福になるように考えるのが、建設大臣の務めだと思います。いち早く、そういう他の現業大臣と同じようによい行政をおしきになることが、建設大臣のとるべき道だと思うのです。これはあなたを非難するのじゃなく、建設大臣としてのあなたを非難するのです。これは一つ考えていただきたいと思うのです。かように考えるわけなんですよ。そこで、たとえばそういうへんぱな任命は困ります、古い者順から任命して下さいということを、若い職員がお願いにいくと、けしからぬといって、建設省では各地建で今警官を導入して追っ払っているそうです。これは悪い行政面でございます。おそらく建設大臣は善処せられるものと存じておりますが、これに対するところの決意を一つ伺いたいのです。農林大臣、運輸大臣北海道開発庁長官は、今私が申し上げたような手続で発令を待っております。大蔵省の方では、そういうことは発令次年度に持ち越しても、一こう差しつかえございませんと言っておるそうでございます。お考え方を伺っておきます。
  129. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) もう田中さんは実態を詳しく御存じの通り、制度上行一、行二の区分けがございまして、建設省は非常に現場職員の多いところでございます。従って事務をとります行一と、現場におります行二と、これをかまわず就任年次順で定員化すことになりますと、結局現場職員だけがなって、事務職員は定員化の中に入らないという不公平が起こるきらいがありますので、かようなことから建設省としては、従来から行一、行二の按分によりまして、部分定員化をやって参りましたので、三十五年度の部分定員化につきましても、実は従来のやり方というものは、そういう推移をたどってきておりますので、やはりこの推移に従うということが妥当であるという結論に達しまして、部分定員化の道を講じたような次第であります。他の役所では、あるいは待って、発令せずにおるところもあるように承わりましたが、しかし三十五年度の部分定員化でございますから、年度末が来た以上は、年度をこさないうちに発令をする方が良心的であるというつもりで、実は私どもの方は発令をいたしましたような次第でございます。今後とも十分現場のいざこざと申しますか、不平のないように配慮していきたいと思うようなわけでございます。
  130. 田中一

    ○田中一君 ずいぶんおかしな御答弁なんですが、行一、行二、どちらが優先するかということを言っているのではない、採用の年限の古い者から任用なさいということを言っているのです。そうして、それを古い者からやると事務系統の人たちが任用にならない、こういうことを言っている。任用にならんということは、これは行管を扱っている小澤さんの方と、それから給与を扱っている大蔵大臣と両方の認識が間違いがあるということなんです。国家公務員が事務系統であろうと技術系統であろうと、採用されているのを、今度いよいよ定員化しようという場合には、事務も技術もございません。もしそれが任用できないという数の上におけるところの足りなさならば、定員の数が不足ならば、もっと当然取ればいいのです。そういうことが行一、行二の差別の基準にならないわけです。これは大蔵大臣に伺っておきますが、大蔵大臣が一番その抵抗が強いそうです。五年も六年も現場で働いて、命がけで天災地変に取っ組んで仕事をしているこれらの諸君が、なぜ一般の職員と同じように定員化されないかという点でございます。きょういてあす去るような方をどうこうというのではございません。これを天職と心得て、長い間勤務しているというような者、部分任用であるならば、古い者からするのは当然でございます。私は建設大臣の御答弁では満足いたしません。古い者からおやりになるのは当然です。そうして行一も、行二も、全部定員化することが望ましいので、それをネックとなっているのは、聞くところによると大蔵大臣と行管長官だそうです。お二人から一つ、なぜ建設大臣がみんなを全部定員化しようという熱意を妨げているものは何かという点をお二方に聞いておきます。調査するとかしないとかの問題ではないのです。共済組合には全部入っておるんです。それをなぜ区別しなきゃならぬかということを伺っておきます。これは農林大臣の場合にも当てはまります。北海道開発庁長官の場合にも当てはまります。運輸省の場合にも当てはまるのです。どうしてそういうへんぱな扱い方をされなければならないか。私は、どうしても今度のこの三十五年度のいわば任用制度の定員法というものが廃法になる前において全員が定員化されるという方途をとられなければならぬという強い意思を持っております。従って、どうお考えになるか。残った者はどういうことになるか。お前は永久国家公務員としては扱わないんだということになるのか。非常な大きな政治問題になります。そのためにやはりこういう公共事業というものが阻害される、直轄直営工事が阻害される。そうなったらそんな者はもう使わないんだというような反動的な考えを持つならば、これはおそろしい問題が起きます。これは政党支持云々の問題じゃございません、身分の問題は。正員法を廃法とする前に、この際全員を当然な立場に置くということ、同じ立場に置くということが政治でございます。私は、これに対して大蔵大臣、行管長官お答えを聞く前に、総理の一つ見解を伺っておきます。
  131. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 従来から定員と定員外の制度に相なっておるのでございます。従って、お話の点につきましては、定員外の人をいかようにして定員に組むかという問題は、前からいろいろ議論があったところでございます。最近におきましては、私は現業官庁におきましても相当数の定員化が行なわれたと考えております。そうして、定員化が行なわれた場合におきましていかに定員を使うか、事務、現場等につきましては、各省大臣考えでいくべきものであると考えております。
  132. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 今総理がお答えになった通りでございまして、定員化は三十五年度の定員化もやっておりますし、また、三十六年度予算も定員化で各省と話がついておりますので、この実施については各省にまかしてあるわけであります。
  133. 小澤佐重喜

    国務大臣小澤佐重喜君) 定員化の問題は別途行政組織法で提案をしておりますが、大体において四万七千ぐらいを定員化するつもりでございます。あとの残に至っては、行政管理庁でよく、実情を調査しましてこれが恒常的職員だという場合にはこれを全部定員化するつもりでございます。
  134. 田中一

    ○田中一君 もう時間……。
  135. 館哲二

    委員長館哲二君) 時間は終了いたしました。
  136. 田中一

    ○田中一君 建設大臣にちょっと伺いたいが、今のような答弁でいいんですか。私は不満でございます。建設大臣要求しているんでしょう、これだけのものをやっていただきたいといって。どこに食い違いがある。共済組合にも加入しておるんです。どこに違いがございますか。
  137. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) 実は三十六年度一万一千余の定員化を認めていただきましたが、まだ残余がございまして、これらはいずれも建設省といたしましては役所で登録の手続をとっておりますから、建設省自体としては人員は完全に把握できております。このことを実は行政管理庁、大蔵省等に申し上げて、予算編成当時にも申し上げたのでありますが、これはやっぱり所管省というものは過去において幾らか水増し主張をした歴史でもあると見えまして、行政管理庁等におきましては、自分の方で十分実態把握をしてからそれから先の分は解決しようということになっておるわけでございます。今行政管理庁長官の言明されましたように、三十六年度はこのくらいであるが、残余の分については実態把握をして引き続きやる考えであるということでございますから、その時期の早からんことを期待いたしておる次第であります。   —————————————
  138. 館哲二

    委員長館哲二君) この際、委員変更について報告いたします。  本日、森八三一君が辞任されまして、その補欠として加賀山之雄君が選任されました。
  139. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  140. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を起こして。  片岡文重君。   —————————————
  141. 片岡文重

    片岡文重君 大へんおそくなって恐縮ですけれども、公共料金の賃上げ問題以下数点についてお伺いしたいと思うのです。  きょうの本会議で国鉄運賃の値上げが説明せられ、それに対して私ども御質疑を申し上げて、二、三御答弁をいただきましたが、その御答弁がはなはだ私どもにとっては納得のいかない答弁でありましたので、まずその補足説明を一つお願いしたいのであります。  その本会議の御質問の際にも若干触れたのでありますけれども、国鉄運賃の値上げということは、池田総理は、選挙前から見通しとして持っておられたのではないか。しかるに選挙中、選挙前から、それらについて何ら国民に対してその了解を求める公約の中に、この国鉄運賃の値上げをいたしますということをお約束しなかった。明らかに、これは国民を欺く行為だと私は思うのですが、そういう点について、総理並びに運輸大臣は、一体国民に対して相済まないとは思わないのか、御所見をまず伺っておきたいと思うのです。
  142. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国鉄運賃の値上げにつきましては、選挙の際にいずれとも私は決心していなかったのであります。できれば私はやらずに済ましたいぐらいな気持はございました。しかし、最後の決はまだ十分いたしておりませんでした。
  143. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 御承知通り、私は選挙が済みましてから、十二月八日に運輸大臣に就任したような次第でございます。私がその当時も発表した意見は、できるならば国鉄運賃改訂に踏み切らないで、合理化その他の方法で資金捻出ができれば、値上げに踏み切らないで済むのではないかということを自分も考え、発表しましたが、その後、国鉄経営の実態を研覈考究いたしました結果、最小限度のものは運賃改訂にその自己資本をよらざるを得ないということに到達したようなことになりました次第でございます。
  144. 片岡文重

    片岡文重君 できれば運賃値上げを押えたいというお考えを持っておられた。これはまことにごもっともだと思います。私がその立場に立っても、できる限り押えたいと思うでしょう。しかし、ほかのものと違って、いやしくも国鉄運賃の値上げ、しかもこれが一%や二%ではない、平均一二・四%も値上げしなければならない。こういう状況にあるということが、当時の総理として、運輸省からの御説明も十分伺っておるでありましょうし、これが見通しとして持ち得なかった、押うべきであったなどとお考えになるということは、これはいやしくも総理大臣としての池田さんの政治家としての識見に関係するのじゃないですか。当然これは値上げをされなければいけないというお考えは、強くお持ちになっておったにもかかわらず、選挙という時期的な関係があって、それが言明できなかったというだけじゃないんですか。
  145. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そういうわけではございません。郵便料金につきまして、はがき、封書を除きますものにつきましては、いちはやく所管大臣から聞いておりましたが、国鉄の経理の内容につきましては、私が聞きましたのは十二月になって、しかもおそいときでございます。
  146. 片岡文重

    片岡文重君 総理大臣がお聞きになったのは十二月もおそくなってからと言うならば、それでは十二月幾日ごろであったかともお聞きしたいと思う。少なくとも選挙前から国鉄は運賃値上げをするであろう。国鉄自身が値上げしなければやれないということはしばしば言明しておったのです。ですから政府関係の局にない私たちでも、当然これは選挙が終われば、再び池田内閣組織されれば国鉄運賃初め全部上がるでしょう。所得倍増よりもまず物価の上がる方が早いでしょうということを私ども警告してきたわけです。これを池田さんがわからないというはずはないのです。選挙前からわかっておったことなんです。しかも国鉄の新五カ年計画は、十二月に入って突如として考えられたものではない。三十五年度打ち切りだということは、すでに三十四年度からわかっておった問題です。しかもこの第二次五カ年計画の財源を求めるために今度の値上げをするのだ、こう言っているわけですから、これが十二月になるまでわからなかったなどということはあり得ない。わかっておったにもかかわらず、これは時期的にただ言明を伏せておったということに私はすぎないと思う。明らかに国民を、だます意思があったか、なかったかということは別問題として、国民欺瞞の意思の有無は別問題として、とにかく結果から見れば、明らかに国民を欺いて、少なくとも国民に大きな失望を与えたことだけは事実です。この点について総理は何ら責任をお感じになりませんか。
  147. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、先ほどお答えした通りでございまして、国鉄の値上げにつきまして聞いたのは、十二月の末であるのであります。五カ年計画の内容につきましても、もちろん十二月まで聞いていなかったのでございます。決してうそを言ったわけでもございませんし、欺瞞のことを言ったわけでもございません。そこで十分今年になりまして検討を加えて、最小限度にとどめるよう指示いたしたのであります。
  148. 片岡文重

    片岡文重君 この、あなたが国民にお約束なさいました所得倍増計画の中に、この国鉄第二次五カ年計画というものは大きな役割を果たしておるわけであります。その倍増計画の中に大きな役割を来たしておる問題を、十二月半ば過ぎてから初めてあなたがお開きになったなどということがほんとうに真に取れるでしょうか。明らかにそういう常識的に判断をしても判断のつくような私は御答弁ではなしに、もっと率直な態度が私はほしいのです。国民もおそらくあなたのそういう率直な態度を私は望んでおられると思うのです。理屈から考えても、第二次五カ年計画の内容があなたの了解なしにできるとも考えられないし、それが倍増計画の立案にあたって全然考えておらなかったということも言えないでしょう。それともあなたは、全然この倍増計画を立てるにあたって第二次五カ年計画というものを考えておられなかったのか、全然考えておられなかったというならこれは話は別です。いかがでしょうか。
  149. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 倍増計画につきましてはいろいろな施策が要りましょう。たとえば資金面におきましても、また、人的資源の点におきましてもいろいろの点があるのであります。従いまして、倍増計画を打ち立てまして、具体的にどういう点にどういう問題が起こるかということは、そのあとの考慮すべき問題でございます。しこうして私は、国鉄運賃はなるべく上げたくないという気持で進んでおったのでございまするが、しさいに国鉄の五カ年計画、また、今の現状の輸送力から申しまして、これは必要であると決心したのは今年になってからでございます。
  150. 片岡文重

    片岡文重君 五カ年計画のこまかな内容まで、その枝葉末節に至るまで御検討はなるほど総理自身がおやりにならないでしょう、そのまた必要もないでしょう。しかし、少なくとも四百八十六億という増収を見込まなければならないほどの、しかも黒字経営の中にあって運賃値上げをするというからには、当然前々から綿密な計画が立てられ、しかもそれは大きくいって大体どういう点どういう点ということが御報告になられ、あるいは御相談になられこの第二次五カ年計画というものはきめられたものだと思うのです。特にこの東海道新幹線を初めとして、通勤輸送、幹線輸送力の増強、その他この大項目くらいは少なくとも閣議に諮られたことでもありましょうし、この五カ年計画の遂行にあたって一体財源をどうするのか、期日はどのくらいかかるのか、技術はどのくらい要するのか、施設はどうするのかというような点につきまして考えられなければ、倍増計画などというものは全く机上の空論にすぎないのではないですか。こういうものが積み立てられていって初めて自信のある倍増計画というものができてくる、その倍増計画にあたって、全然こういう根幹となる問題が考慮されておらなかったということが一体まともに聞けるでしょうか。どうしても首相は当初からこの五カ年計画は聞いておらないとおっしゃるのでしょうか。
  151. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 具体的に五カ年計画を聞いたのは十二月の末ごろでございます。私は大きい所得倍増の計画を立てて、それからその後においていろんな問題をやっていこう、人的の問題につきましても、資金の問題につきましても、倍増計画を立てて、そしてこれからそれに合わせるように予算を編成していこうという考えであるのであります。
  152. 片岡文重

    片岡文重君 そうすると、念のために伺いますが、池田総理のお唱えになっておられまする所得倍増計画というものは、十年後に所得倍増をしようという一つの目標を立てて、それから逆算をして国鉄の五カ年計画も定め、その他の問題も定めてきた、そういうことになるのですか。
  153. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 先ほども申し上げましたが、倍増計画というよりも、私は倍増の構想と、こう申し上げておるのであります。年次計画も何もできておるわけじゃございません。構想につきまして、三十六、七、八という当初におきましては大体九%程度でいけるのじゃないかというふうなことからきておるのであります。しからばそれをやっていくのにはどう具体的に表わすかということは今回の予算で言っておるのであります。
  154. 片岡文重

    片岡文重君 構想を立てられてその構想を実現するように今計画をお立てになる、それは一応私はその通り伺います。そこでそれならば、この国鉄五カ年計画などというものがそう簡単にこれは立てられたものでしょうか。少なくともこれが、第二次池田内閣が発足をしてから池田さんのおっしゃる倍増構想というものに基づいて——計画ではないとおっしゃられましたから、あなたのおっしゃる通りにその倍増構想というふうに私も伺います。その倍増構想を実現するために、国鉄としては、その意を体して運輸省の命によってお作りになったと思う。ということになると、その前に作られておった五カ年計画資料というものは一体どこから出てきたのですか。明らかにこの説明の中には、倍増計画を実現をするためにということがうたってあるじゃないですか。従って、この倍増構想のできる前から、少なくとも十二月もっと以前からこの第二次五カ年計画というものは立てられておった、従って、その財源を求めるために値上げをしなければならないということもきまっておったはずなんです。どうもあなたのおっしゃることとは私は一致しないように思うのですが、いかがですか。
  155. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は一致すると思います。倍増構想に合わすようにこれをやったのであります。そうしてそれは事務当局の方で、いわゆる国鉄、あるいは運輸省の方におきましていろいろ検討はいたしておりましたが、この倍増構想に適応するために立てられたのであります。それを私は十二月のおしまいごろにきめたのであります。
  156. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) ちょっと私も補足さしていただきますが、所得倍増計画というのは御承知のように、経済企画庁の付属機関でありまする経済審議会で立案をいたしたものであります。その立案の過程におきましては、大体所得倍増の十年間において、旅客がどういうようにふえていくであろうか、あるいは貨物がどういうふうになるであろうかということは、構想は運輸省及び国鉄当局から資料をみんなとりまして、その方の小委員会でやったものでございます。従いまして、そういうようなことを達成するためにはどういう計画を立てなければならないかということは、運輸省の事務当局の中ではおのずから計画的なものが逐次形づくられておったと思いますが、所得倍増計画というものの方が先に答申々受けまして、そうして十二月になりまして閣議で決定をいたした次第でございます。従って、運輸省当局におきましては、その間に逐次形づくられてきたところの五カ年計画というものを、閣議決定をした所得倍増計画を実施するための一つ計画として、十二月でしたか、一月でしたか、まあそのずっとあとの時期に正式にうたい出してきたのでありまして、総理大臣は、所得倍増計画経済審議会の中にあってまだ経済審議会が審議していい間には全然御存じはなかったのです。従って、国鉄の五カ年計画というものが出てきたのは、総理のおっしゃる通り十二月であったか、十二月になって予算の問題になってから御承知になったと、こう思います。
  157. 片岡文重

    片岡文重君 迫水経済企画庁長官が補足説明をされましたけれども、そのあなたの御説明の中にも私は納得のいかない大きな矛盾があると思うのです。この所得倍増構想というもの、まだ計画までいかなかったその構想というものは、選挙の最中に大きく国民に訴えられておるわけです。しかしですよ、いやしくも天下の公党たるものが、多少の成算なくしてそういう公約を国民にできるはずのものではないと思うのです、少なくとも政治的良心を持つ限りにおいては。そうすると、池田内閣が、当時は第一次でありましたが、あなたもすでに閣僚であられた、当然その責任の衝にあられて、この構想を総理がお立てになるについては御相談にあずかっておられたと思うのです。そうして作られましたその構想というものは、ではこれをほんとうに責任をもって実現しようとするならば、一体国鉄はどういうふうにやろう、国内の輸送はどうしよう、私鉄にまかせるものはどういうふうにやる、海運の方はどういうふうにやる、陸上輸送はどうする、生産はどうする、大まかなプランは当然作られた上に立って初めて、倍増というものは十年後には可能であるという結論を出されたから、その構想を国民に訴えたんでしょう。それとも、全然その机上プランといいますか、空中楼閣というのか、夢を見るようなことをあの選挙にあたって自民党さんは国民に訴えられたのですか。その点どうです。
  158. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) そこが、総理が先ほどからここで、計画というよりむしろ構想というところであると言っておられるゆえんなんです。つまり、われわれは自由主義経済でありまして、計画経済も、社会主義経済下における計画経済ではございませんから、輸送がどういうような情勢になるであろう、旅客はどういうふうにふえるであろうとかということは、一つの見通しなんです。その全体的の生産量が倍になるためには——農業の部面では大体四割ぐらいしかふえない。しからば生産を倍にするためには、工業の部面ではどのくらいふやしていかなければ倍にならないか、そうすると大体三崎ということになる。そのうちには雇用の問題もございますから、できるだけ雇用をよけいにするため、人をよけい使うためには機械工業でなければならない。いろいろなことからずっと倍増になる場合における一つの構想、それが構想なのでありまして、構想を作っておりまして、それを経済審議会というところで、ずっと計算をして計上をして、和み立てていったわけであります。それを九月に経済審議会の答申を受けましておおむねよかろうということで選挙にも使ったのだと思いますが、いよいよその所得倍増計画を、大体政策の基礎となるところの計画——計画という言葉を総理は非常にきらうわけは、社会主義経済下における計画経済計画とまぎらわしいから、構想ということをしきりに言われるのですが、一応その計画政府が具体的に採用いたしました後におきまして、その構想、見通しを実現するために具体的にどういうふうに鉄道としてはしなければならないかということを考えて立てたところの一つ計画が今度の新五カ年計画なのであります。従って、空中楼閣でも何でもない、見通しをそういうふうに立てたということでありまして、お話と私の答弁との間にちょっと大きな基本的の差異がありますのは、社会主義計画経済における計画でなく、自由主義経済における見通しと一つの誘導、従って総理は、計画という言葉は非常に社会主義の計画経済という場合の計画にまぎらわしいから、むしろ構想というふうにやられたということは、これを閣議決定するときから総理は言っておられたのですけれども、そういう次第でございます。
  159. 松浦清一

    ○松浦清一君 議事進行。ごらんの通り定足数が足りませんので、暫時休憩をして、定足数に満つるまで委員長において努力されんことを望みます。
  160. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記をとめて。    午後六時二十一分速記中止    ————・————    午後六時三十二分速記開始
  161. 館哲二

    委員長館哲二君) それでは速記を始めて。  それでは片岡君お始めを願います。
  162. 片岡文重

    片岡文重君 質問の途中をちょっと……。  経済企画庁長官伺いますが、あなたの今の御説明によりますと、要するに内容としては倍増計画も倍増構想も変わりはないということになると思うのです。ただ、今日社会主義天下ではないからまぎらわしいから計画という言葉を使わないのだということだけのようですから、内容については変わりはない。そういうふうに私は理解して話を進めたいと思う。  で、そうなってくると、もっとその構想という姿の中にも具体的なものが、具体性がなければ国民に約束をする性質のものではないじゃないかと思われる。ところが倍増計画というものはもう解散前から流布されておって……失礼しました。計画ではない。あなたの言う倍増構想ですか、どうもややこしくて言えないけれども、その倍増構想というものが、もう解散前から流布されておる。しかるにそれほどの見通しを持ったものが流布されておりながら、それを実現させていくもろもろの条件というものについて具体性を持ったものがなかった。こういうことは、あなた自身お考えになって話がきわめて矛盾しているとお思いになりませんか。具体的な構想を立てるためには、たとえ総理の言うように逆算をしても、それは構想をきめるまでの段階においてですよ、きめるまでの段階において積み立てていこうが、逆算をしようが、とにかくこれは可能なりという結論を出すからには、その可能だという結論を得るための具体的なものがなければならぬ。その具体的なものというのは一体何か、いわば労働力もあるでしょうし、輸送力もあるでしょうし、生産力もあるでしょう。当然この国鉄というものの果たす役割はどうなければならぬかということが考えられておったはずです。そうでしょう。しかるに、その結果だけは解散前から流布されておって、その結果を作り出す条件が第二次内閣が成立してよほどになってから、十二月になって初めて聞いたなどということは矛盾だらけ、話が撞着だらけじゃないですか。
  163. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 先ほどから申し上げておりますように、所得倍増計画というのは見通しなんです。すなわち昭和四十五年の目標年次の姿というものを現わしておるのが所得倍増計画であります。それを、そういう数字を想定いたしますにつきましては、もちろん経済審議会においてはもろもろの専門家を使い、そうして積み上げて参ったのでありますけれども、所得倍増計画というその計画それ自体は、目標年次の見通しを立てたものでございまして、従って今回の国鉄五カ年計画というのはこの目標を達成するためには、具体的にどういう対策を立てなければいけないか、政府としてはどういう措置をしなければいけないかということを正式に具体的な計画という立場において作り上げたのが国鉄の五カ年計画、それは十二月になってできた、それで構想の方は経済審議会が九月に答申いたしましたからそれを発表いたしております。従って構想、いわゆる所得倍増計画の中では国鉄の輸送力、こういうふうな目標年次における国内の輸送を達成するためには、どういう具体的計画でどういう段取りでいくかということについては、何も所得倍増計画には載っておりまん。従って総理はそれをご存じになるわけがないのです。
  164. 片岡文重

    片岡文重君 どうもあなたのお話を伺っておると夢のような気がしてならないのですよ。あなたのおっしゃるそのままだとすれば、その夢のような話で実のないものを少なくとも衆議院解散前にもう国民に流布しておる。単なる見通しにすぎないものを流布していると言っておられる。そこで、私はもう何といいますか、ばか正直に実は質問をしてしまって、率直に言って私は後悔をしている。国鉄で出しているところの二千五年度当初からの、つまりこの第二次五カ年計画の発表されたそもそもの年月日を、ここで調査していないのではなはだこれは残念です。しかし、私のところに持っておるのは、十二月に発表されておる、印刷されておる、この中には日本国有鉄道と書いてある。この日本国有鉄道で発表をしておる資料は十二月なんです。しかもこれにはあなたがおっしゃることが書いてある。明らかに少なくとも十二月以前からこの外部に発表できるだけのものが国鉄において作られておる。これがこの倍増構想の一環をなしておるのでこういうことを書いておるのだから、この構想というものは、もっともっと前からあったに違いない。運輸大臣は第二次内閣によって任命せられた。だから詳しくわからないというなら、ここに一つ国鉄総裁を呼んで、第二次五カ年計画はいつ立てたか一つ伺いたいと思う。
  165. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 私はそれがいつ立てられたかということは、計画は一日にして成るものではありませんから、それで所得倍増計画が、見通しの作業に着手いたしましたのは昭和三十四年の十二月、具体的に着手しましたのが昭和三十五年の二、三月ごろであったと思います。従いまして、その間ずっとその年の九月まで、たしか九月に発表されたと記憶しておりますが、その間ずっとそういう作業をしておりますから、国鉄の内部ではあるいはそういうような計画のようなものが、逐次固まりつつあったのじゃないかと思います。しかし資金計画までそこで固まったかどうかはそれは知りません。しかし輸送力増強の計画はそういうふうに固まってきたのじゃないかと私は思います。それをいよいよ国鉄のほんとうの自分の案として外部に発表したのは十二月ですから、その中間において運賃の値上げをする計画なんというものは、国鉄は申しておりません。従って総理大臣か運賃の値上げをするということを、計画として持っているということをお聞きになったことは、私は……絶対にない、私も聞きませんでした。いよいよそのものができてきて、資金計画の裏づけをしてきたときに、どうしても値上げをしなければならなくなったものだ。もちろんその前からうわさは、新聞等はどうも国鉄は値上げをするのじゃないかといううわさは若干あったような気がしますが、具体的に計画として立てられたのは、発表されたときが立てられたときと私は言うべきだと思うのです。子供がいつ生まれたかというと、生まれた日に生まれたので、その前に十カ月ちゃんと腹の中にいるのですが、その間、いつ生まれたかと言われたら、やはり生まれた日に生まれたと、こう言うほかは仕方がないのだと思うのです。十二月に発表されたらそのときに計画ができたと、こう言わざるを得ないと私は思うのです。
  166. 片岡文重

    片岡文重君 長官、私がここに持っているのが十二月に発表された資料だと言っているのです。つまりさっき、ばか正直に質問し始めたというのは、あなたがこれほどわかり切った事実をよもやごまかすとは思わなかったから、その資料を持ってこなかった。国鉄が発表したのはもっと前から、あなた自身が三十五年の二、三月ごろに国鉄がこの五カ年計画を作っていると今言ったでしょう。今おっしゃったじゃないですか。少なくとも国鉄で案を立てられるのは、あなた方は、大へん失礼ですけれども、税金が増収される、あるいは増税すればそれだけ原資が入ってくる。それを使っていく。消費経済ですから、収支ということについてはそうお考えにならないのかもしれません。しかし、いやしくもたとい日の丸勘定であっても、国鉄という一つの企業を経営していくからには、一体この五カ年計画を立てて、それができるのかできないのかということをまつ先に考えなければならぬはずです、痴愚や白痴でない限りは。そうすると、この五カ年計画というものが立てられつつある段階において、その原資をどこに求めるかということは当然論議されたはずでしょう。その論議が固まって運賃値上げということになってくるのじゃないですか。その運賃値上げがなければ財源はあり得ないのだということは、国鉄当局は言っておるじゃないですか。それに対して政府は全然関知しなかったということはあり得ないじゃないですか。
  167. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) どうも問答のベースが、少し私と片岡さんのベースが違うような気がするのですけれども、私は事実を申し上げておるのでありますが、国鉄が運賃値上げを含む輸送増強五カ年計画を作った、それを発表して政府に持ち込んで、それを認可——認可といいますか、同意を得ようとしたのは十二月だと思います。その前に運輸省の中ではうんと研究しておったと思います。なるべく運賃を上げないようにしようと思ったか、できるだけ運賃を上げようと思ったか、それは知りませんけれども、とにかく研究はしたと思いますけれども、現実に政府に持ち込んできたのは十二月だったと思います。だからこれには十二月と覆いてあるのだと思います。それ以前に国鉄が五カ年計画を立てて、それを政府に持ち込んできたことはございません。そうして五カ年計画というのは、所得倍増計画をそれで全部達成するのじゃないのです。初期の計画——その第一段階の計画なんでありまして、五カ年計画は、所得倍増を達成するためにはまだこれから次の第二の計画が要るものだと私は思っております。従っていつできたのかということが問題ではなくて、政府の部内の方に所得倍増計画、輸送増強計画及びその内容たる運賃値上げの問題がいつ持ち出されたかということが問題なんでして、それは私は十二月だったと思います。
  168. 片岡文重

    片岡文重君 そうすると、第一次池田内閣においては、あなたの、その経済企画庁長官お話をそのまま率直に了承するとして、国鉄の現状については、その倍増構想なるものを御発表になる前に、全然この計画については関係をされておらない、そうしてその倍増構想なるものだけを御発表になった、こういうことに理解してよろしいんですか。
  169. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) 問題の一つの要点というのは、所得倍増計画というのは、経済審議会が作案したものを政府に答申をしてきたのです。経済審議会が作案をしておる間は、政府はもちろん手伝いはいたしました。手伝いはいたしましたけれども、うちの役人も手伝いましたが、各省の役人も手伝いはしましたけれども、それは政府でやったものではないのです。経済審議会という付属機関が作業したものを答申をして、答申を受けてから後に政府は、これを審議いたしまして、十二月の初めでしたか、閣議決定をいたした、十二月の最後の日閣議決定をいたしたような次第ございます。従って政府としては、国鉄の輸送増強計画というものを、その前に聞いておったということはありません。
  170. 片岡文重

    片岡文重君 大体この答申とか諮問とかいうことについては、今の、今じゃない、むしろ歴代の内閣もそうですが、私は失礼だけれども、あまり信用しないのです。政府がこういうものを作ってくれというものを出して、それをそのまま答申させているのが、今日の諮問であり、審議会なんです。これはもう今これから議論を進めていけば、運賃の値上がりを決定する順序を追って見ても、これはわかる。まあ、それは別として、少なくとも部分的な、局部的な問題であるなら、これは別です。しかし、少なくとも消費物価にはほとんど影響させないと言っておっても、なおかつ、全然影響しないとはあなた方は言い切れないわけなんです。それほどの、つまりあなた方は、否定したくて否定しにくて仕方がないにもかかわらず、なおあなた方でも、一%や二%はすると言わざるを得ないほどに重大な、密接に国民生活への関連を持っている国鉄です。それが皆さんのお考えになっているその構想を固めていく上においては、たとえそれが審議会において論議されておりましょうとも、その経過において、この五カ年計画をどうやっていくか、どうさせるか、その財源をどうするかということについて、議論の行なわれないということはあり得ない。これはもう幾ら言ってもあなた方はそれを納得しない。これはもうごまかし通そうとしているから、このわかり切った議論を納得しない、だけなんです。はなはたもって不愉快千万です。しかし、私に与えられた時間もありますから、これは割愛します。そのかわりにこれは運輸委員会等において、国鉄総裁等、証人を前に置いて、もう少しお尋ねをしたいと思います。留保しておきます。  それで、今後の国鉄経営について少しお伺いしたいと思うのです。これも実は本会議お尋ねをした項目であるから、少々恐縮ではありますけれども、どうもそのときの御答弁が明確ではない。そこで具体的に一つお尋ねをしたいのです。  この公共性と企業性とについて、どちらに重点を置くかという問題がまず第一であります。この点について、私が申し上げるまでもなく、御存じとは思いますけれども、この国鉄の経営といいますか、企業的な立場というものが、戦前のような独占企業ではないということについては、おそらく、これは総理を初め、運輸大臣も、経済企画庁長官も、口ではおっしゃるでしょう。けれども、やっておる監督の実態、指導の実態を拝見をすると、旧態依然として、独占企業を認めておるのではないか。たとえば、国営バスと民営バスが競願になった場合、国鉄バスが先願をしておっても、なお、民営企業の圧迫ということで、民営の方に優先許可を与えておる。私は一がいにそれがいけないということを言っているのではないのです。とにかく、たとえばの話で、そのように国鉄の企業というものが、今日他の民営企業との完全な競争場裏に立たされておる。不採算線区の不採算の理由というものは、おおむね、その線区に並行して大型のバスが通っているからにほかならないのです。そういうふうに、独占企業ではなくて、もはや完全な競争企業になっておる。これをまず深く認識していただくならば、独立採算制というものを考えられるならば、この独立採算制に対して成り立つような方法を、やはり政府としてはお考えにならなければいけないのではないか。御案内のように、英国でも、オランダでも、もうこの鉄道への公共負担というものは打ち切っております。西独、フランス、スイスでは公共負担をやっておる。たとえば、学生割引については文部省が負担するとか、農林水産物については農林省とか、いろいろ各省に予算を分けて負担をしておる。ところが、日本の国鉄では、先ほど総理が抽象的にうまいことをおっしゃったようだけれども、具体的には何ら見ておられない。三十五年度の傷痍軍人の無賃輸送に対する負担を大へん御自慢のようにおっしゃいましたけれども、一体金額は幾らでありましょうか。あれは実に三千二百万円ですよ。これは、政府がお出しになった決算説明を私はここに持参しております。三十六年度において六千万何がしを計上しておる。こういう姿を見ると、私は決して日本の鉄道に対して公共負担を行なっているとは言いがたい。これについて、今後もなおこういうやり方をお続けになられるつもりなのか。この公共性と企業性との調和といいますか、それについてもう少し真剣に、一体どうしたらよいかということをお考えになっていただきたいと思うのです。この不合理な公共負担を行なうことが、大きな国鉄経営の赤字の原因にもなるわけです。これは、数字に強い池田総理を数字を申し上げて恐縮ですけれども、三十四年度の公共負担は五百二十五億です。それに対する政府の傷痍軍人その他の補てんというものは三千万に足らないくらいのものです。問題にならない。それからまた、固定資産税その他が八十何億あるはずです。そうすると、今国鉄でもって原資が足りないということで、ほしい増収見込みというものは四百八十六億です。この五百二十五億の公共負担と八十億何がしという固定資産税その他の補てん等を考慮すれば、完全に、運賃値上げなんというものはしなくても、これだけでも済む道理なんです。私は国鉄の経営がこのままでよいとは決して思いません。けれども、こういう公共負担だけを強調して、独採制だ独採制だと言いながら、少しも独採制を認めておらないようなやり方について、今後長くこのままの形態で置かれるおつもりなのかどうか、一つ総理の御所見も伺っておきたいと思う。
  171. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 本会議でも片岡さんの御質問に対してお答えいたしました通り、国鉄の沿革から申しましても、私は公共性を考えながら独立採算制を立てていきたいと、こういうことでございます。戦傷病者の無賃乗車につきましては、三十六年度は六千二百万円計上しておる、三十六年度はそういうことと記憶いたしております。それから多年問題でございました新線に対しまする発行公債の利子負担というものを三十六年度から始めたのでございます。で、今回におきましても、社会福祉の関係等から定額料金を二〇%上げようとしたのも、私は公共性から考えて、ほかと同じような上げ方にいたしたような次第でございます。私は国民全般の気持からいって、やはり相当程度のあれは負担しなきゃならぬ、国鉄が公共性の上からサービスをすべきだと考えております。まあ外国の例その他もおありのようでございまするが、今の国鉄資産の二兆三千億といううち、二兆円近くというものは、これは国民の税金からなっておるのでございます。そうして所得税もかかりませんし、そして配当しなくてもいい等々、沿革から考えますると、ある程度と申しますか、相当程度の公共性によってやっていかなければならぬ。しかし将来の問題としては、すでに御承知通り、農林水産物資につきまして特例の貨物運賃をやっておる。これをどうするかということにつきましては、相当検討していかなければなるまい。また新線の利子補給につきましても、将来いろいろ問題があると思いますけれども、しかし、いずれにいたしましても、私は、独立採算制の建前でいくのでありまするが、沿革その他からいって公共性をある程度加味していかなければならぬと考えております。   —————————————
  172. 館哲二

    委員長館哲二君) この際、委員変更について御報告いたします。  本日、泉山三六君及び一松定吉君が辞任されまして、その補欠として、高橋進太郎君及び上林忠次君が選任されました。   —————————————
  173. 片岡文重

    片岡文重君 総理に伺いますが、これまでの沿革ということを強調されておりますけれども、この沿革を重視されるというところに、そもそも私は、今日の国鉄の置かれている企業的立場というものを千分御認識になっておらない証拠があると思うのです。ですから、そういうお考えの上に立って今日の経営を監督されるということは、いつまでたっても、この国鉄の企業というものを健全なものになし得ないと私は考える。この点総理はそういうふうなお考えを持っておられるのですが、しからば、運輸大臣はその点どうお考えになるでしょうか。
  174. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 総理がお答え申し上げました通り、同じやはり池田内閣の運輸大臣ですから、同じ考えを持っておるわけでございます。ただ、ただいま御指摘になりましたように、バスやその他の新しい交通機関ができなかった時代の、鉄道というものが日本の唯一の交通機関であったときに考えられたような国鉄の立場、御承知のように舗装道路ができて、バスが盛んに通る、大きなトラックがどんどん荷物を運んでおるというような、交通機関の非常なる発展、変化というようなものが参りまして、昔の鉄道が、トラックやバスや、新しい交通機関のなかった時代の、独占的な日本の唯一の輸送機関であったという形を変えつつあることは、これはいなむべからざる事実でございます。ただいま御指摘のような問題につきましては、今後十分に、国鉄の指導、監督をいたす運輸省といたしましては、研究の価値ある問題であるということは認めておるのでございます。
  175. 片岡文重

    片岡文重君 国鉄の経営が公共性と企業性とのアンバランスに陥ってからもう久しい問題です。これは監査委員会の答申を見ましても、報告を見ましても、この点は強く指摘しておられる。従って、今ごろになってこれを十分検討しなければならないなどと言っておる段階ではない。要は、どうしてこの苦難な立場に置かれておる国鉄に対して、国民大衆に負担をかけないで企業を打開させることができるのか、公共負担については、当然受益者がその負担を負えるような方法を政府考えたらいいのです。しかるに、それを公共負担ということにのみ幻惑されて、そういう適切な手を打っておらない。こういうことについて、私は運輸大臣の賢明な施策と具体化をこの際特に要望しておきたいと思います。ただしかし、だからといって国鉄の経営が万全であるとはもちろん私も思いません。これは監査委員会の答申に指摘されておる通り。ただ、先ほども申し上げました通りに、私の見るところでは、従来のこの経営打開というものについて、あまりにも内部にばかり目を向けて、もっと大きく外界の空気を、外の空気を吸おうという意欲がない。そうして行き詰まると運賃値上げだと、これは運賃値上げを行なうのは一番たやすい方法でしょう。特に今日のように、衆参両院において圧倒的な多数を持っておられる皆さんがおきめになることですから、これは遺憾ながらわれわれが切歯扼腕しても及ばない。しかし、それだけに国民大衆は泣かなければならない。こういうやり方について、もっと私は運輸大臣なり、その所得倍増を宣伝をされる総理大臣なりが先頭に立って、真剣に一つ日本の輸送、経済に根幹的な役割を持つこの国鉄の経営について、たとえばということで私は先ほど申し上げたのですが、多角経営を行なうなり、あるいは沿線の開発を行なうなり、積極的な改善方策を立てられたらどうか。そういうことを一つ運輸大臣は、適当な機関がないならば、その適当な機関を設けられるなり何なり、抽象論で任期を無難に過ごしさえすればということでなしに、自分の任期中に一つこれだけは片づけていこうという意欲をもって積極的な打開策をお考えいただけないものかどうか。安易な運賃値上がりなどというこの方法で国民に負担をかけるというやり方については、どうしても私どもには納得できない。ぜひ一つ木暮運輸大臣の任期中に、その方途だけでも示してもらいたいと思うのですが、その決意を一つ伺っておきたい。
  176. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) いろいろ御意見を御開陳になって、私ども教えられるところは多いのでございますが、御承知通り、国が直営いたしておりまする日本国有鉄道のときにおきましても、一般国民の税収を中心とする一般会計から資金を出すということはいたしませなんで、主として利用者の負担が耐えられる程度のものであれば、これによって自己資本を捻出するという方針をとって参りましたのが、日本の国鉄の従来の経営でございます。ことに戦後直接国が経営する機関を離れまして、今度は公共企業体として、別の公共法人として、企業としてみずからが独立採算制を持ちながら、一方公共性を高度に発揮するような立場に立ちましたものでございますから、これは公共企業体というものに対して、一般国民の税金を中心とする一般会計からこれに力を入れるということはいかがなものであるかということも考えられるわけでございまして、たびたび繰り返すように、自己資産を何とか工面して捻出をいたしますることと、それから利子の負担に耐え得る程度の借入金をいたしますと、また先ほども総理からお話がございましたように、公共性発揮のために、公共負担がますます大きくなって、そうして国鉄の経営を圧迫するような状態になりますれば、国家としてはこれが援助を与えていく、こういう三つのやり方でいくよりほかには、今の公共企業体ではいくやり方はないと考えるのでございます。  御承知通りに、国鉄運賃というものは、ほかの物価に比較いたしますると、いろいろの事情で長い間、きわめて低位におかれまして、一例を申し上げますると、昭和十一年の物価指数を一〇〇といたしまして、昭和三十四年の比較をいたしますると、小売物価は二九七になっている。国鉄の旅客運賃は一二九である。電信電話あるいはその他のものは、もっと上っておるのでございますが、国鉄が長く、ほかの物価に比較いたしまして低い状態におかれたということも考えまして、また、過去昭和二十六年あるいは二十八年、三十二年等の国鉄運賃改定が、必ずしも直ちに卸売物価に影響を、及ぼさなかったというような事実を見まして、国鉄運賃改定が直ちに反映して物価が上がるのだというのでなく、物価は御存じの通り、いろいろの需要供給その他複雑な関係によって影響さるるところが多いので、この程度の国鉄運賃改定によりまして、むしろ輸送の状態を円滑にし、強化いたしまして、物の輸送が円滑になり、物価の安定に幾らか役立つのじゃなかろうか、あるいはサービスがよくなる等のことによりまして、利用者が負担いたしましたことに対して、サービスその他の形で還元し得る程度のものではないかと、これはおのおの見込でございますから、私の意見に御反対の人は多いと思いますけれども、私としては、この程度のものでいいのではないかということで、今度の運賃の改定に踏み切ったというような事情があるのでございます。
  177. 片岡文重

    片岡文重君 とにかく今の御答弁を伺っておると、大へん御丁寧な御説明をいただきましたけれども、具体的に、積極的な打開策を立てようという御熱意には乏しいのではないかと残念ながら拝聴せざるを得ない。私は、ぜひ一つ思いを新たにして、積極的な経営に乗り出すように適切な指導と監督を行なわれることを要望いたします。  最後に、この国鉄問題について伺っておきたいのは、最近国鉄の内部において、国有鉄道運賃法を廃止したい、国会の審議から運賃の決定権を取り上げたいという御意見があるやに伺っておりますが、運輸大臣はどうお考えになりますか。
  178. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) そういうことは聞いておりません。従来国鉄から申請してきて、運輸大臣が認可すれば済むようなものにつきましても、広く意見を聞いて行なう考えを持っておりましたので、今日でも一般国民に影響する問題については、広く皆さんの御意見を伺うという考えを変えておりませんですが、今御質問のことについては、私はまだ聞いておりませんから、何ともお答えを申し上げかねます。
  179. 片岡文重

    片岡文重君 時間がありませんので、大へん残念ですが、ほかの問題に移ります。  ILO条約の八十七号条約の批准について、一つ労働大臣にお伺いしたいのですが、きょうの夕刊を見ると、国会に提出される期日までおきめになったやに伺っておりますが、最近の経過、というよりも、今日、どういう状態にあるのか、まず、そこからお伺いいたしましょう。
  180. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私どもはでき得る限り早く国会に提出いたしたいと思いまして、ただいま政府間及び政府と与党間の意見調整に鋭意努力をいたしております段階でございます。
  181. 片岡文重

    片岡文重君 八十七号条約の批准については、すでに前年度の通常国会からも政府は約束をされておるのですから、今さらその調整をするのとか、考えるのとか、検討するのとかという段階ではないはずです。もっと大臣としては積極的な御意思を持っておられると思うのですが、もう夜もおそいことですから、あまりむだなやりとりはしないで、てきぱきと一つ結論だけをお聞かせ願いたいと思う。
  182. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 八十七号条約は申すまでもなく百五号、百十号条約とともに、ILOの基本的な条約でございます。また特に自由主義国家として、その国家の信条の基本にも触れる条約であると認識をいたしております。  従って、私は全力をあげて、でき得る限り早く国会に提出して、そうして御批准の御賛同を得たいと考えておる次第でございます。政府内、及び党内の調整につきまして、調整する必要がないじゃないかという御議論でございますが、昨年から本年にかけましての、いろいろな事情の変化もあり、やはり各種の御議論があるのはやむを得ないところでございまして、その御議論の調整も、ただ、じんぜん日をむなしゅうするのではなくして、全力をあげて急ぎたいと考えておる次第でございます。
  183. 片岡文重

    片岡文重君 まことに不愉快千万な御答弁ですが、これは今、私どもが伝え聞くところによっては、労働大臣としては、その点、その程度しか言えないかもしれない。  しかしあなた方が、少なくとも自民党内閣として、早く批准案を上程して国会の審議を願うと言っておって、もう、一年以上もたっおるのですよ。それを今さら、検討する、調整を必要とする——わかりません。しかも今、あなたは、いろいろな事情の変化がございましたと言っておられますけれども、何の変化もないはずです。その当時と、一体何の変化をしておりますか。何にも変化はない。私は、それよりも一つ誠意をもって国会に提出されるように努力をしていただきたいと思います。  で、何か聞くところによると、閣内で必ずしも意見が一致しておらないというように聞いております。池田総理大臣は、一体、この約束について、この国会に、いつごろ履行されるつもりか。お見通しというよりも、むしろ御決意のほどを伺いたい。
  184. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) できるだけ早くいたしたいと努力いたしております。
  185. 片岡文重

    片岡文重君 できるだけ早いという機会は、一体、いつごろを目途になさっておられますか。
  186. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 一日も早く。まああす、あさってというわけには参らぬと思いますが、来週中には出せるように、労働大臣並びに私も努力をいたしたいと思います。
  187. 片岡文重

    片岡文重君 冗談じゃないですよ。一年半も待たされて、それでなお検討中だなどということですから、この際は少なくとも、そういう幅のある話じゃなしに、ぴしゃりと、来週中なら来週中には必ず出す、いつ幾日までには出すという約束は、ぜひこの際、私はお聞きしておきたいと思う。
  188. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) いろいろな重要な問題を含んでおりますので、政党内閣といたしましては、党との調整もございますので、できるだけ早くはいたしますが、何日と、ここでお約束はいたしかねます。
  189. 片岡文重

    片岡文重君 今、何日という日にちまで区切れないというお話であるなら、先ほどの御答弁では、来週中ぐらいはという御答弁があったのですが、大体来週中には出るというふうに、私ども理解しておいてよろしいですか。
  190. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 来週中には出したいというので努力いたしておるのであります。
  191. 片岡文重

    片岡文重君 無責任きわまる答弁です。とにかく一年も待たしておいて、それでなお、この期に及んで出せない。しかも聞くところによれば、八十七号条約の批准に藉口して、労働者関係の法規の改悪も考えておられるという。  一体、今総理が目途としておられるところ、それはいつごろですか。早く出したいというお考えはわかりましたから、一体、目途としておるのはどのくらいのところをお考えになっておるのか。
  192. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 労働審議会の答申もありますごとく、ILO八十七号の批准につきましては、やっぱり国内関係法規の整備もしなければいけませんし、そうしてまた、労働法規を守るという前提にも立たなければいけないということは御承知通りであります。  従いまして、先ほど来申し上げておるがごとく、なるべく早く、できるだけ早く、こういうので、労働大臣その他関係閣僚に申しつけております。
  193. 片岡文重

    片岡文重君 できるだけ早くという、その抽象論だけでは、私には納得できない。やはり来週中という先ほどお話を、あえて私は言葉じりをとるわけではないのですが、少なくとも責任をもってお答え願わなければ、私には納得できない。そういう、責任を持つという意味においては、少なくとも来週中程度の、来週中といえば、まだ十日近くあるのですから、一年半も待たしておいて、ここへ来て、しかもこの予算にかかっておって、できないということはあり得ない。一つ、もっと責任を持って御答弁をしていただきたい。
  194. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、先ほど来申したことが、一番誠実な答えだと思います。来週中には出したいというので努力し、そうしてできるだけ早く出すように関係閣僚に言いつけておるのでございますから、これ以上のことは申し上げられません。
  195. 片岡文重

    片岡文重君 これ以上のことは申し上げられませんいとうことを了解して、この質問をやめるわけではないですが、来週中には、とにかく出すということを目途に首相はしておられるということに私は予解をして、その期日の点については、質問を打ち切ります。私も時間がないのですから。  そこで、労働大臣にお伺いいたしますが、この八十七号条約に関連または藉口して改正をされる法律、これは一体、何と何があるのですか。
  196. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 関連をした法律につきましては、ただいま、それを含めまして調整中でございます。従って、ただいま私が、ここで具体的に一々申し上げますよりは、終局的にまだ申し上げる段階に立ち至っておりません。地公労法、公労法、公務員法その他の法律について、所要の改正をいたすために、諸般意見調整しつつある段階でございます。
  197. 片岡文重

    片岡文重君 そうすると、公労法、地公労法、国公法、地公法、それだけは改正を行なう。で、あと鉄道営業法その他労働関係の点についての改正は、今日お考えになっておるのですか、おらないのですか。
  198. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 鉄道営業法は、これは御承知のように明治三十三年の制定でありまして……。
  199. 片岡文重

    片岡文重君 労働関係のところだけです。
  200. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 今日の実情とは、非常にそごを来たしておるところが多いのでありまして、これについて全面改正の準備をいたしておるということを承っております。  それから他の法律につきましては、一々まだ最終的に申し上げる段階ではございませんけれども、いろいろ御議論も、目下鋭意調整いたしておるところでございます。具体的にまた申し上げられる段階ではないのであります。
  201. 片岡文重

    片岡文重君 少なくとも、この問題に関す限り、自民党内閣は、前内閣池田内閣は、はなはだ私は怠慢であったと思います。もっとこの問題については、少なくとも安保その他の問題であのときの通常国会で、三十五国会ですか、これができなかったとすれば、今日いち早く、この問題については上程をして批准の手続をとるべきであった。それをできないで、しかも今党内の調整をしておるというがごときは、はなはだもって怠慢しごくである、無責任であると私は思います。早急に、とにかく先ほど首相の言う通り、来週中には国会に出せるように、ぜひ御努力をいただきたい。  仄聞するところによると、この在籍専従者がだいぶ問題になっておるそうですが、労働大臣は、これどうお考えになりますか。
  202. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) これは、民間の労働組合につきましては、諸外国のように職能別、産業別の組織の建前をしておりますところでは、これは、ほとんど例のないことであります。ただわが国のように、企業別組合が約九割近くを占めておりますところにおきましては、労使双方の合意によって、在籍専従を置いておりますことは御承知通りであります。このことにつきましては、これは私は、批評の限りではないと存じます。  ただ、公務員並びにこれに準ずべき公社職員等につきましては、御承知のごとく法律において職務に専心する義務が規定されておるわけであります。従って、こういう見地から、前内閣のときに、これを廃止するという、一定の経過期間を置いて廃止するという案が提出されたことは御承知通りであります。それも含めまして、ただいま意見調整中でございます。従って、政府で成案を得ましてから、公務員のことについては御説明することが適当であると存じております。  それから、前内閣提出して、今回提出時期が御期待に沿うことができずおくれておることについては、私も深く遺憾とし、微力を痛感をいたしておるところであります。鋭意努力をいたしまして、ただいま総理御答弁の御趣旨に沿うようにいたしたいと考えておる次第であります。
  203. 片岡文重

    片岡文重君 率直な御答弁と思います。しからば、その在籍専従者の点に  ついて、公労法その他で廃止をするという点については、労働大臣は、今日の日本の労働組合の現状からいって適当とお考えになりますか、それともこの点については従来通りの方がよろしいとお考えになりますか。労働大臣の御所見を伺いたいと思います。
  204. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 私は、建前  といたしましてはやはり在籍専従というものは公務員の場合には認めるべきものでないと考えます。しかし何事も急激に変化を与えることは、いろいろなよき慣行を樹立するという意味におきましても、考慮をしなければならないと存ずるのであります。従って、これは私の意見でありますが、そういうことを含めまして本来はまだ調整中でありますから、こういう意見を申すのも差し控えるのが妥当かと思いますが、私の所見を申し上げておきたいと思います。私はそういう考え調整に努力をしておるところであります。
  205. 片岡文重

    片岡文重君 とかくこの原則だけではいかないということは、今あなたもおっしゃっておられる。この在籍専従者ということは非常に今後の日本の労働運動を進める上において、また労使の円満な慣行を樹立する上において、特に民主的な労働組合にとっては非常な影響を受けるものと思う。将来日本の労働組合運動がどういう方向にいくかということについても、非常に大きなこれが影響を持つことは私が申し上げることもなく御承知のところでしょう。そこでこの在籍専従者の問題については、労働大臣としては今日の時点に立ってどうすべきか、今日の日本の労働組合の現状からいって、国家公務員等その他の在籍専従者をどうすればいいのかということについて、この建前とか原則とかいうことではなしに、今日の時点に立ってどうすればいいのかということをお聞きしたい。
  206. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 建前、原則は、これはもう片岡さん自身がもう言う必要がないとおっしゃっていることでもございますし、私も先ほど申しました。従ってこれは当然避けますが、今日の時点におきまして私はやはり一定の経過期間というものは、最小限考えるべきものと考えておる次第でございます。
  207. 片岡文重

    片岡文重君 社会保障の問題について二、三承っておきたいのですが、池田内閣として今後の医療制度についてどのような構想を持っておられるか、厚生大臣一つ伺いしておきたい。
  208. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) 医療制度につきましてはまことに問題が多いのでございます。昨今のあの問題以来関心も非常に高まったのでありますが、問題が実に多いのでありますが、特にこの保険医療というものと、それから自由診療的なものとの調和をどうするのかと、このところで大きな問題にぶつかってきておるわけであります。それから保険の内部の問題にはたくさんございます。  また皆保険とは申しましても、医療機関が各地に普及しておりませんものには、皆保険といっても実は医療機関の配置の問題、まことに問題は多いのでありますので、今までもすでに去年から医療制度調査会などでも審議をしていただいておりますけれども、もう少し早目に促進して結論を得なきゃならぬということで、そういう考え方で昨今臨んでおるような状況でございます。
  209. 片岡文重

    片岡文重君 所得倍増構想の中には、長期にわたる、十年間にわたって——厚生大臣よろしいですか——所得倍増の中に即応していけるような社会保障制度というものは、私どもには見受けられないのですが、一体この点について、厚生大臣はどういう点をこの所得倍増構想の中に含ましておるのか。社会保障の充実しないところに完全な所得倍増なんというものは行なわれないと私は思うのですが、これを厚生大臣はどうお考えになりますか。
  210. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) 所得倍増と社会保障、これは基本的に深い関係を持っておると思うのであります。で、所得倍増と申しましても、自分の力で伸びられない、弱い方面を伸ばすところに重点が置かれるはずでありますから、おのずからそこに格差縮小という傾向は出なければならぬわけでありますけれども、格差がなくなるとは言いません。そこでどうしてもぐっと伸びる方とおくれる方との間の調整は、いわゆる所得の振りかえでありまして、つまり社会保障という問題の任務になるわけであります。それで間接的に格差を縮めるということが非常に重要になってくると思うのであります。所得倍増計画にも御案内のように、振りかえ所得の問題にすでに触れてあるわけであります。これで十分かどうか、もう少しこれは検討しなければいけないと思っておるところであります。
  211. 片岡文重

    片岡文重君 三十六年度予算の中にも、このいわゆる所得倍増構想に即応できるような社会保障関係予算というものは私には見当たらない。結局中山厚生大臣がおしかりを受けたようですが、厚生省から出された厚生白書を見ると、池田総理がお考えになっておられるような所得倍増構想では、ますます格差が開くとしてある。そういう総理大臣のもとで、それを否定するような予算の計上が一体できるのですか。この点厚生大臣どうお考えですか。
  212. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) 池田内閣としても大きな柱にとにかく社会保障を立てておることは御承知通り、これは何も池田内閣だからというのでない、時代のこれは方向でありまして、近代の政治の大きな課題でありますから、力を入れているのはあたりまえであると思います。今回の予算でも多いの少ないの見方はございましょうけれども、とにもかくにも六百三十何億という金額、金額だけでは申せませんけれども、飛躍的な前進も示しておるというような状況であります。これはやっていくにきまっておりますし、やらなければならぬ方面だと思うのであります。
  213. 片岡文重

    片岡文重君 時間がないのではなはだ残念ですが、意見を述べてお尋ねするわけにはいきませんので、項目的に羅列をしてお伺いしますから、その点質問の意をくんで具体的に御答弁をしていただきたい。  この医療費の値上げが今度行なわれるようです。この医療費の値上げに伴うところの国民負担については何にも措置されておりません。一体この点について、厚生大臣はどういうふうにお考えになるのか。医療保障がなくて所得倍増のできないことは、これは明白であるし、医療費だけを上げて、その負担にたえきれない国民に対する措置がとられておらないということは、まさにこれは医療保障の逆行である。どうお考えになりますか、お伺いしたい。
  214. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) 今回の医療費の引き上げに伴いまして、ほうっておきますれば掛金、保険料というものを増徴しなければならぬことになるのです。しかしこの点についてはそういうことがなしですむように、掛金や保険料というようなものを増徴しないで済むように処置を講じているわけであります。問題は患者負担になってる部分の増加、これがどうなるかということでありますが、この点は、たとえば国保ならば五割給付ということであるならば、この五割というものは、とにかく患者が負担するのだという建前でありますから、この建前自体を改めて、五割を七割ということにいかないのは、これは建前上余儀ないことであるのであります。しかし保険料などは増徴しないで済むような手当はいたしておるわけであります。
  215. 片岡文重

    片岡文重君 それも私ども考えるほどの手当はいたしておりません。少なくともこの負担に耐え切れないような患者に対しては、この国庫負担を五割から七割ぐらいにまで進めたらどうかということは、従来われわれしばしば繰り返しておりますが、厚生大臣はこれについて今後いつごろになったらそういうことができるのか、お見通しを伺いたい。
  216. 古井喜實

    国務大臣(古井喜實君) ただいまの問題は値上げ問題とは直接関係があるわけじゃありませんが、しかし給付率の引き上げという問題は、三十六年度は御承知のように国保でも、結核と精神病、一番お互いの悩みの種のこの病気には七割給付ということに引き上げるわけであります。けれども、それだけで足るか足らぬかと申しますと、もっと考えなくちゃいけない。それはその次の段階の問題で、大いにこれは検討していきたいと思っておるわけであります。
  217. 片岡文重

    片岡文重君 交通問題でもう一つ池田総理にお伺いしたいのですが、最近のこの都内における交通の頻度、それから通勤の輸送の困難等々いろいろあります。これは国鉄は国鉄、私鉄は私鉄、都内は都内ということで、皆まちまちに問題の解決に当たってるようですが、こういうことではいけないと私は考える。そこでこの、たとえば都市交通問題委員会とか、あるいは首都圏整備委員会とか、いろいろなところでいろいろな関係の部門だけをやっておるようですけれども、将来長い間の見通しの上に立って、もっと政府は強力に国鉄も私鉄も都バスも都電も、全部を強力に統合することは、自由主義の建前であるあなた方にはおできにならないでしょうけれども、少なくとももっと系統的に総合的に交通緩和の方策がとられるような機関を設置して、緩和に強力に乗り出したらいいと思いますが、こういう点について池田総理大臣はどうお考えですか。
  218. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 最近の交通難の状況から見まして、そういう議論が上っておるのであります。またその議論はずっと以前からございます。しかしなかなか今までの伝統、また所管の関係、また財源の関係等で厄介な問題でございます。しかし、このままにほうっておくわけにはいきませんので、ただいま総理府連絡協議会を作りまして、緊密な連絡を取りつつこの緩和の方法を研究いたしておるのであります。
  219. 片岡文重

    片岡文重君 もう一つそれでは伺いますが、最近東京湾の開発というよりも、沿岸の利用をめぐって、東京都、千葉県、神奈川県等の沿岸には非常な利権屋が入っておるとさえうわさをされております。こういうことはやはり首都を奥に控えておる東京湾の問題を考えると、このまま放置すべきではないと私は考える。そこで東京湾開発ということについて政府はもっと真剣に、かつ具体的な方策を立てられるように早急に特別の機関でも設けられて、政党にまかせないでやっていかれたらどうかと思いますが、御意見伺いたいと思います。
  220. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 東京湾開発につきましても非常に膨大な計画もいわれております。加納君なんかやっておるようであります。また具体的にいわゆる京葉地区埋め立てというので、もう民間の人でやっておるのがあります。いろいろあるようでございますが、利権屋が入っておるかどうかは存じません。しかし重大な問題でございますから、建設省では考えておると思います。
  221. 片岡文重

    片岡文重君 総理ちょっと勘違いしないで聞いていただきたいのですが、今利権屋が入っておると私は断定するわけではないのです。利権屋が入る危険が多分にあるということで、現に建設省、農林省の間では御意見が合わない、そうして問題を起こしておるところもある。ですからそういうところでなしに、もっと中心になってこの東京湾というものをどうするかということで、百年後の先を見通す構想をお立てになってみたらいかがですかと、こういうことを申し上げているのです。
  222. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは東京を中心として衛星都市あるいは埋め立て、またいろいろ一部には学校その他を他の地区へ移したらどうか、いろいろな議論がございます。私はこういう問題につきまして、今具体的にどうこうという意見を申し上げることはございませんが、建設大臣その他に御研究は願っておる次第でございます。
  223. 館哲二

    委員長館哲二君) 明日は午前十時に開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十一分散会