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下村定君 時間がありませんから、これ以上追及いたしませんが、今私のあげました三つの問題、
国防会議の
機能向上、それから
日米安保条約運営の
能率化、それから
防衛庁昇格の問題、これは、これをやっても大してお金の要ることではございません。また私の
考えでは、
憲法に抵触するとも
考えておりまません。
政府に熱意があれば、今でも、すぐでもできることだと
考えるのであります。が、この席ではこれ以上申しません。どうかこの問題は、今後とも、この場限りのこととされませんで、慎重に御
研究になり、なるべく早く緒についていただかれることをお願いいたします。
次に、私は、
自衛隊そのものの
現状と
予算との
関係につきましてお
伺いをいたします。
昭和三十二年に策定されました
国防方針の中に、次の文句があります。「
国力、国情に応じ、
自衛のため必要な
限度において効率的な
防衛力を漸進的に整備する。」とあります。私は、この項は実に要領を得た名文であると存ずるのであります。すなわちこのことは
政治優先、シビル・コントロールの大原則のもとに、最も合理的に実行されることを心から念願するものであります。すなわち民生の安定、
経済政策の遂行を害しないように
防衛費を極力節約することについては、いささかの異議も持っておりません。また現在の
自衛隊は整備の
過渡期にありますから、いまだ
国防方針にあります
自衛上必要な
限度を満たしていないこともやむを得ないと存じます。しかしながら、
自衛隊ははたして効率的に整備されておるかいなかと申すことにつきましては、私は大きな疑問を持っております。かような公開の席上において内情の欠陥を暴露するようなことはいたしたくありません。差し控えますが、一例を
陸上自衛隊の装備について申しますと、
言葉は悪いのでございますが、
現状はあたかも破れ障子のようなもので、ワクはありますけれ
ども、紙は十分に張られておりません。これでは荒い風が防げないばかりか、すき間風にも耐えられないのじゃないかとも
考えております。
二、三の例を指摘いたします。
陸上自衛隊が現在持っております兵器の中には、いわゆるアメリカのお古というのがまだたくさんあります。しかも大砲とか、戦車というようなものは、格納庫を作る金がないというので露天になっておる部隊が非常に多いのであります。雨ざらしであります。中にもこの戦車は、現在どこの国を見渡しましても陸上兵器中の主役であります。ところが
日本の持っております戦車は数こそ何百両もありますけれ
ども、もう衰損しておりまして、しかも旧式であるために、その部品はアメリカに行ってもない、従ってやむを得ず古いものをつぶして、共食いをしているありさまであります。なお、今回試作をされました中戦車は、その性能におきましては、
世界に誇り得る優秀なものであります。ところがその生産につきまして、明
年度の
予算におきまして、生
産業者に対する長期一括の契約が認められませんでしたので、来
年度わずかに十両、明後年以後の継続の契約はお先まっ暗という状態と伺っております。これは生
産業者にとりましても非常な迷惑であり、また財政の上から言っても不
経済であると存じます。携帯兵器について申しますと、数は十何万持っておりますが、その三分の一は衰損をしております。
自衛隊に参りまして隊員に聞いてみますと、ねらっても当たりません、こういうことを嘆息しております。弾薬について申しますと、これは経験に基づく列国の兵学界における常識といたしまして、いくさの始まり、緒戦、有時初動の際には弾が非常によけい要るというので、緒戦のための弾薬の備蓄ということは非常に重視しております。彼らの
考えを現在の
自衛隊の兵力に対照して勘定してみますというと、
日本では少なくとも二十万トン、これは大砲から小銃までであります。すべてで二十万トンを用意しておくことが必要であると申すのであります。ところが三十六
年度のストックは九万二千トンであります。それを年々約七千トンづつ演習のために消費いたします。その補充は三千トン以下でありますから、このままの状態をほうっておけば、年々再々ストックが減少しまして、せっかくこれからお立てになる第二次の
防衛計画が完成するときには、形は整いますが、たまにおいては非常な不足であります。六万八千トンしかないわけになります。これでは十三師団の編成が終わりましても、そのうちの八、九師団は竹やりでも持たさなければいくさの役に立たないと申しても私は過言ではないと思います。一方、この兵器弾薬の調達は、現在はこれは民間の生
産業者に依存せざるを得ないのでありますから、これらに関して生産力の維持
防衛という
施策は、ほとんど行なわれておりません。二月十五日
衆議院予算委員会における
西村防衛庁長官の御説明によりますと、
防衛生産の全体の額は、金属鉱工業の生産量に比較いたしまして、わずかに一%であるということを御説明になっております。これだけでかれこれ言うのではありませんけれ
ども、一例として申し上げるわけです。また、燃料につきましては、兵器弾薬以上に心細い状態でありますが、時間の
関係上それは省略たします。
以上は兵器弾薬の数だけについて一例を述べたのでありますが、ほかにも類例はたくさんございます。また、効率的な
防衛力を整備するためには、いわゆる質の改善、すなわち装備の近代化ということが絶対に必要だろうと思います。また、今後アメリカの
日本に対する
軍事援助が減少するということも
考えられなければならぬと思います。
以上のようなことを
考えあわせますと、
防衛費を今後ある程度増額することはやむを得ないであろうと存ずるのであります。また、現
内閣は、福祉国家の建設に大きな努力を傾注されていることはまことにけっこうでありますが、過ぐる
安保条約の
闘争下において、私
どもは、過去八年間にわたる経験を基礎といたしまして、国の繁栄をはかるために
安全保障を確保することは絶対に必要である、現にそれで国が繁栄したのだということを申して参りました。これは事実に照らし決してうそではありません。こういう点から
考えまして、今後の
防衛力に要する費用につきまして、大蔵
大臣はいかにお
考えになっておりますか。私は、もとより
防衛費をやたらに増大させるとか、
国力、国情に比例しない身分不和応な
防衛力を持つべきだということは、毛頭
考えておりません。