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1961-03-07 第38回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月七日(火曜日)    午前十時三十七分開会   —————————————   委員の異動 本日委員杉原荒太君及び久保等君辞任 につき、その補欠として井川伊平君及 び大矢正君を議長において指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     館  哲二君    理事            梶原 茂嘉君            中野 文門君            平島 敏夫君            米田 正文君            阿具根 登君            占部 秀男君            松浦 清一君            千田  正君    委員            井川 伊平君            泉山 三六君            太田 正孝君            大谷 贇雄君            金丸 冨夫君            小林 英三君            小柳 牧衞君            小山邦太郎君            塩見 俊二君            重政 庸徳君            白井  勇君            手島  栄君            一松 定吉君            武藤 常介君            村松 久義君            村山 道雄君            山本  杉君            湯澤三千男君            横山 フク君            大矢  正君            小酒井義男君            小柳  勇君            羽生 三七君            森 元治郎君            森中 守義君            東   隆君            山田 節男君            白木義一郎君            辻  政信君            森 八三一君            岩間 正男君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    法 務 大 臣 植木庚子郎君    外 務 大 臣 小坂善太郎君    大 蔵 大 臣 水田三喜男君    文 部 大 臣 荒木萬壽夫君    厚 生 大 臣 古井 喜實君    農 林 大 臣 周東 英雄君    通商産業大臣  椎名悦三郎君    運 輸 大 臣 木暮武太夫君    郵 政 大 臣 小金 義照君    労 働 大 臣 石田 博英君    建 設 大 臣 中村 梅吉君    自 治 大 臣 安井  謙君    国 務 大 臣 池田正之輔君    国 務 大 臣 小澤佐重喜君    国 務 大 臣 迫水 久常君    国 務 大 臣 西村 直己君   政府委員    法制局長官   林  修三君    防衛庁教育局長 小幡 久男君    防衛庁装備局長 塚本 敏夫君    経済企画庁調整    局長      中野 正一君    外務省アジア局    長       伊関佑二郎君    外務省アメリカ    局長      安藤 吉光君    外務省経済局長 牛場 信彦君    外務省条約局長 中川  融君    外務省国際連合    局長      鶴岡 千仭君    大蔵省主計局長 石原 周夫君    大蔵省主税局長 村山 達雄君    大蔵省理財局長 西原 直廉君    大蔵省銀行局長 石野 信一君    大蔵省為替局長 賀屋 正雄君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    運輸省鉄道監督    局長      岡本  悟君    電気通信監理官 松田 英一君   事務局側    常任委員会専門    員       正木 千冬君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十六年度一般会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度特別会計予算内閣  提出衆議院送付) ○昭和三十六年度政府関係機関予算  (内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会開会いたします。  昭和三十六年度一般会計予算昭和三十六年度特別会計予算昭和三十六年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続けます。
  3. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 議事進行。きのうも、一時開会がまさに三十分遅刻、きょうも開会が三十分近く遅刻であります。衆議院予算が通過したから、もう参議院予算委員会は少し緊張の度をゆるめてもよかろうと、こういうようなことであるのか。総理大臣は、もう定刻にぴたっと来て席についておられる。大臣諸公は、それぞれ御用事があるであろうけれども、こういうことであっては、参議院予算審議は遅々として進んでいかぬことになる。ことに、私は質問を要求しておいたのに、この私すら総括質問委員長はやめさした。そういうように、時間をセーブしようというように、委員長が名委員長としてやっておる。しかるに、総理が来ておられるのに、山田節男議員の要求をしておられる大臣諸公がそろわぬので、この開会がおくれておる。こういうことでは、夕方になって、まただんだんおくれていって、そのために、また質問の日にちを延長しなければならぬというような事態が起こってくる。委員長は、これに対して今後どういう処置をなさるか。衆議院予算が通過したら、参議院の方は予算委員会はどうでもいい——まさかそんなことはないと思うが、もしそういうような気持ちが閣僚諸君の中にあるとすれば、総理大臣は一番初めから来ているのだが、これは、はなはだ私は参議院軽視のそしりを免れないものと思う。また館名委員長の威令が届かぬということになる。委員長の所懐をこの際伺って、今後の対策について御所信を承っておきたいと思います。
  4. 占部秀男

    占部秀男君 関連。今、大谷議員が言われたことは、しごくもっともなことで、そこで委員長にお伺いをしたいのですが、きょう定刻に開くということは、きのうから予定しておることであって、各大臣の方に委員長としてはおそらく通告をされたろうし、また各大臣の方からも、委員長に対していろいろな点について話し合いがあったと思うのです。それにもかかわらず、こういうような形が行なわれているということは、私は非常に遺憾に思うのです。そういうような取り扱いの点について、委員長としてはどういうようにやられたのか。ことにきょうは、午後には総理がおられなくなる。こういうようなことになっておる。そういうようなときに、こんなに時間をとるようでは、われわれは十分の審議ができないということになる。これは野党側としても非常に重大な問題ですから、委員長、その点について、御答弁をあわせてお願いをいたしたいと思います。
  5. 館哲二

    委員長館哲二君) ただいま大谷君並びに占部君の議事進行に関する御発言は、おそらく全委員のお考えだと思うのであります。この際委員長として、政府に今後ともできるだけ御勉励を願うことを申し上げておきます。  議事を進行さしていただきます。質疑を続けます。山田節男君。
  6. 山田節男

    山田節男君 最初に、私ちょっと政府閣僚の皆さまにお願い申し上げたいと思いますことは、わが党に割り当てられております質問時間が非常に制約されておりますので、質問者はしかも二名でございますので、短時間の間に、かなり多岐にわたった質問を申し上げますので、関係大臣の御列席が十分でないと時間をとりますので、能率上この点を特に申し上げておきます。  まず最初に、私は昨日の羽生並び杉原委員から御質問がありました国連中心主義外交について、若干質問いたしたいと思います。  池田内閣が第一次内閣ができまして以来、外交方針は、自由国家群の一員として、あくまでこの国連中心平和外交を推進していく、こういうことをおっしゃっておるのであります。ところで御存じのように、昨年の九月の第十五総会以来、国連機能というものが、麻痺したとは申しませんけれども、非常に理想とする国連機能というものが薄らいできておるということは現実でございます。そういう点から、さらに第十五総会におきましては、フルシチョフ首相は、国連機構改革事務総長を三人制にしろ、その他国連機構改革の案を出したのでございますが、その後の国際情勢の転換をみますと、ことに最近のコンゴーにおきまするあの紛争問題、これは国連緊急警察軍が行っておりますけれども、今朝のジャパン・タイムズを見ますと、この国連緊急警察隊は、コンゴーは撤退しなくちゃならぬのじゃないかというようなことを報じるような工合でございまして、今日の国連機能というものは、まさに危機に直面しているのであります。換言いたしますと、国連そのもの一つ転換期に今立っているのじゃないか。かように考えるのでありますが、この点につきまして、私は池田総理の、この国連危機に直面している、あるいは転換期にあるかどうかというこの御認識の点について、まずお伺い申し上げたいと思います。
  7. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) コンゴーの問題が起こる以前から、そういう傾向が見られたのでございまするが、コンゴー問題が起こりまして、ほんとうに転換期と申しまするかあるいは危機と申しますか、私はどちらかというと非常にむずかしい——危機とは申しません、むずかしい状態になったことと考えているのであります。われわれはむずかしい状態をできるだけ早く解決するよう、努力しなければならぬと思うのであります。
  8. 山田節男

    山田節男君 今の総理のお言葉によれば、国連機能が、その目的とすることに十分に効果を発揮してないということについては、私は同じ意見を持たれたことと理解いたします。そこで、私どもの解するところによりますると、なぜ国連が本旨とする機能を失うかというその原因を考えてみますると、御承知のように、国連憲章はドイツが無条件降伏いたしました直後、すなわち一九四五年の六月二十六日に、サンフランシスコでこれは署名されたのであります。それから約二カ月いたしまして、日本が無条件降伏いたした。この国連憲章が成立しましたのは、いわゆるこの広島、長崎に原子爆弾が投下されました二カ月前にこれができた。すなわち、この国連憲章の前文にありまするように、一生において二度も悲惨な大戦争を味わったと、こういうことを再び繰り返してはならないという、非常に強い平和への意欲をもって作られたのでございまするけれども、この原子力時代に入りまして、すなわち国連憲章が作られた後のいわゆるこの原子力——原子爆弾あるいはその後のICBM、そういうようなものの時代と、ちょうど境目にあったのであります。私は今後の国連が、原子力時代、すなわち核兵器時代、すなわち今日は、こういう核兵器を所有する国、これが含まれるところの全面的戦争になった場合は、たとえばよしんば、これが局地戦争であっても、その交戦国間だけのこれは勝敗ではなくいたしまして、全人類の破滅になるというふうな時代なんです。そういう今日と、それ以前のときの国際情勢からいたしまして、また国際連盟の過去の失敗に省みまして、国際連合というものを作ったのであります。そこに私は、今日のこの国際連合機能というものが、現在の国際情勢にミートしないという、この根本的な国連の欠陥と申しますか、弱点があるのじゃないかと私は思うのですが、この点についての総理並びに外務大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  9. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 現在の国連が非常に総理言葉のように、試練に直面しているということは、非常なことでありまして、われわれとしては、この唯一の世界平和の維持機構である国連を何とかして盛り立てて参りたいと、かように考えているのであります。しかも今お言葉のように、一たび核戦力を用いるにおきましては、非常な人類ためにおおうべからざる災厄を招くということは、これは各国において認識せられていることだと思います。しかも、なおその認識のもとにおいて、国連が現在のような情勢を来たしているのは何のゆえであるか、結局私は国連というものに対する各国の協力のよって来たる認識の問題だと思うのであります。私は国連という場所を、決してプロパガンダの場所にしたり、相互がこの場所において、ただ票をもって争うというような考え方を捨てて地道に話し合って、そこに良識と理性の場として国連を育て上げていくという覚悟に徹しなければならない、非常に大切な認識の問題があるのではないかというふうに考えるのでございます。私どもとしては、そういう場として国連を作り上げるということに努力したいと思っておるのでございます。
  10. 山田節男

    山田節男君 一月三十日の池田総理施政演説の中に、また、続いて小坂外務大臣外交演説の中にも、国連を強化する、こういう言葉が入っておるのであります。昨年の第十五国連総会におきまして——私は当時ニューヨークにおりまして、大臣演説を直接聞くことはできませんでしたけれども、そのテキストをニューヨーク・タイムスで拝見いたしました。その中でも、やはり日本政府代表といたしまして、国連を強化しなければならない。それは要するに国連機能を強化し、そうして国連権威——インフルエンスというものを高揚するということが加盟国全員の最高の義務であると、こう言っておるのでありますが、これは趣旨としてはまことにいいのでありますが、しからば、一体具体的に言えば、こういうふうに国連インフルエンスを高め、そして機能を強化する。これは具体的にはどういうことをお考えになって、こういうことを表明されたのか、その内容を御説明を願いたい。
  11. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 私は国連というものを話し合いの場にするということを強調いたしておるのであります。とかく新しい国が多く入って参りまして、そしていまだ議事にもいろいろ習熟しない点もございまするので、何か国連一つの宣伝の気球を上げたり、あるいはそこで決議案を出すというようなことだけが国連であるというように持っていかれがちでございますから、決議案を出すことも必要でございまするけれども、そうしたことよりも、いかにしてお互いに平和の問題を話し合うということにする場にするかという雰囲気を持つことこそ大事であるということを強調したつもりでございます。  しかしながら、その具体的な方法におきましては、現在の国連のあり方というものは、かつての参加国が非常に少ない時代に作られたものでございまするから、たとえば安保理事会あるいは社会経済理事会といったようなものの構成が非常に片寄っており、とかく、ともすれば大国中心主義になり、あるいは新たに加盟したところのアジア・アフリカの諸国の利益あるいはその繁栄をもたらす声が十分に反映しないような傾向になりがちな構成になっておるという点を改めてもらいたいということが一つでございます。  それからもう一つは、国連憲章自身について、これをやはり変えていく。その中には、御承知のように山田さんもかねてから御主張になっておられますように、旧敵国に対する条章というものがあるわけでございます。これは一九四五年にできた当時の国連憲章としては必要であったと思いまするけれども、今日においてはこの条章は必ずしも適切ではない面もあるわけでございます。そこでこの条章改正に対するところの委員会というものを作ったらどうかというふうにも思うのでございます。そしてそういう条章改正することを中心とした論議の中から、今後の国連はいかにあるべきかということを各国が寄って話し合うということが意義があろうかと思うのであります。しかし御承知のようにこの条章改正については、ソ連が強い反対を示しております。私は現在のいき方としては、条章改正研究ため委員会を設けるという行き方あたりから始めたら言うかというような提案をいたしておるような次第であることは、すでに山田さんも御承知いただいておると思います。
  12. 山田節男

    山田節男君 小坂外務大臣も昨年の第十五回国連総会の、ことに九月十四日のフルシチョフ演説をいたしましたその後の数日間のあの状況をごらんになればわかりますが、今日の国連というものは、これは全く職業外交官の何と申しますか、ネゴシエーションと申しますか、各国代表としての一種の交渉舞台になっている。でありまするから、これらの代表のバックは常に政府なり国があるのでありまするから、今小坂外相の言われるように国連を静かな話し合いの場にする、理性が支配する場にすべきだとおっしゃいますけれども現実はそうじゃない。なぜそうならないかと言えば、この国連機構そのものが、組織そのもの各国を単位としての代表より成り立っているから、そこに私は静かな話し合い理性の通らない場になっているのじゃないかと、私はかように考えるのであります。  そこで、ただいま小坂外相からのお話もございましたが、国連憲章改正の問題であります。これは国連憲章改正条項が百八条、百九条にございまして、百九条によりますれば、もし第十回総会国連憲章改正議題が載らなかった場合には、特別の委員会を作って、そしてなるべくすみやかに国連憲章改正の時期、場所等を、これを審議決定するように取りはからうべきだというような規定があるのでございます。第十回の総会に出ませんので、それを第十二回総会、第十四回総会、一九五九年までには必らずこれを出さなくちゃならぬ。岸総理国連総会に出席し、松平国連大使もともども国連憲章審議のすみやかに行なわれるように要請したのでありまして、国連憲章改正ということにつきましては、賛成の討論をいたしておるのであります。しかし、ただいま小坂外相が言われますように、このことが常にソ連拒否権発動によって成立しない。こういう現状であるということはわかるのでございますが、先ほど申し上げましたように今日の国連というものは、これは一九四五年に作られますときに、これはどうせこういうものが十年も二十年も同じような憲章でいくものじゃない。必ず国際情勢の変化があるから、そういう改正条項を行なうということを意識として持っている、ところが、この国連憲章改正ということが依然としてソ連拒否権発動ためにこれが成立しない。こうなるというと、国連が、先ほど申し上げましたように、今日の国際緊張を緩和し、戦争の脅威を撲滅し、国連機構を確保するためにどうしても国連憲章改正しなければならない。そこで私は、これはやはり池田総理並びに小坂外務大臣にお伺いするのでありまするが、国連憲章改正、これは総会におきまして三分の二以上の賛成があれば、これはできることになっているのであります。御承知のように今日におきましては、おそらく百国をこえております。昨年の十五総会に九十七カ国と覚えておりまするが、その中で少なくとも私は過半数のものは、一国一票とすれば三分の二は確保できるのじゃないか。また確保するために私は日本としましては日本憲法建前から申しましても、私は日本政府がイニシアチブをとり、そして国連憲章改正する委員会を作って実現するように努力すれば、これは私は不可能じゃないと思うのであります。この点に関しまして、日本政府としてはそれだけの、国連憲章改正して今日の国際緊張の緩和、戦争の撲滅、核兵器の禁止、あるいは軍備撤廃まで持っていくような国連機構の改善のために努力なさる御決意があるのかどうか。この点を一つ総理並びに外務大臣両方からお伺いしたい。総理政治哲学としての理想をお持ちであろうから、私はあえて御答弁をお願いしたい。
  13. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) その点につきまして、十分検討を続けていきたいと思います。
  14. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ただいま総理からお答えになりましたように、非常にいろいろな障害があるわけでございます。われわれ強い意思を持っておりますけれども山田さんすでに御承知のように、ソ連の態度というものは非常にこれに反対をしておるのでございます。そこで、われわれといたしましては、まずそれの実行可能なる一つ方法といたしまして、改正するとすればどういう点が問題であるかということの研究を始めようではないか、その研究委員会を作るからということで各国を説いておりまして、これについては徐々に問題が理解されつつあるのでございますが、私どもは、今、山田さんの仰せられたような気持をもちましてこの研究委員会を作ることをまず手がけたいという気持でおる次第でございます。
  15. 山田節男

    山田節男君 国連憲章審議会を組織いたしまして、国連憲章改正をするために国際的に働きかけると、これは、私はまことに必要なことだと思いまするが、その前に、やはり日本平和憲法建前からいたしましても、やはりこの国連憲章改正する場合には、世界平和を永遠に確保し得る、それがためには戦争をなくするんだ、それがためには各国軍備を撤廃してもいいんだ、撤廃できるような状態に持っていくような国連——国連と申しますか、そういう一つ世界機構に持っていかなくちゃならない。そのためには、これは各国に働きかけるにいたしましても、やはり日本としては国連憲章をどういう工合に変えたらいいんだかという私はアイデアがなくちゃいけないと思う。これはついでだから申し上げまするが、一昨年の三月にアメリカの上院、下院におきまして、いわゆる世界法を通じての世界平和確立という決議案——これはすなわちアイゼンハワー大統領に対しまして、先ほど申し上げましたような第十四回の総会、一九五九年までに、アイゼンハワー大統領政府の所轄のかなり高い程度のレベルにおいて国連憲章を、いかに、どの点を改正すべきかということを、これを至急調査研究して、そしてアメリカとしては国連憲章改正委員会においてこういう点を提案しよう、こういうような上下両院決議によりまして——アイゼンハワーは、御存じのように国連改造問題研究に着手いたしまして、国連憲章改正調査研究特別委員会を作ったこともありました。これは外務大臣御存じのことと思いますが、日本としましても、やはり外務省国連局がございますので、国連局がそれだけの機能を持っておるかどうか存じませんが、私は、日本政府アメリカ以上に真剣に、この国連憲章のどの点をどういうように変えるかということを、国内的にも早急に研究し、調査いたしまして、結論を持つべきだと思いますが、そういう御計画はお持ちになっておらないのですか。
  16. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) 世界の恒久平和と人類の福祉を目ざして、各国主権を放棄して一つ世界連邦的な機構のもとに入るべきであるという非常に高い理想を掲げて運動を続けておられる各位に対しまして、私は常々深く敬意を表しておるのでございますが、現実は、しかしながら御承知通りでございます。国連ハマーショルド事務総長が言っておりまするように、人間は立って歩くことを覚える前に、まず、はうことを覚えねばならぬということを言っておるのは、非常に私は明言だと存じますが、現在の国連を通じて、まず世界各国世界連帯意識を生ぜしめていく。その世界連帯意識を高めつつ、漸次世界国家的な方向に持っていくということを考えるしかないと思うのでございます。国連憲章改正につきましては、国連局中心といたしまして、いろいろ研究をいたしておりまするが、まだその具体的にどうという段階までは達しておりません。さしあたり旧敵国条項改正というようなことが一番主体になるべきだと思いますが、これもまた非常にデッド・ロックがあることは山田さんも御承知通りの事情があるわけでございまして、なかなかこの道は遠いのでございます。しかし道は遠く険しくとも、われわれはその理想に向かってできるだけの努力を進めていきたい、かように考えております。
  17. 山田節男

    山田節男君 ただいまの小坂外務大臣の御答弁にもありますように、要するに今日の国連というものが、各加盟国がおのおの従来の完全主権、すなわち国防というものもこれは今日の主権においてはなくてはならぬものだというような観念のもとに各国が存在しておるというところに、戦争の脅威が起きてくるので、そういう意味で、私は単なる戦争防止、戦争の撲滅というのみならず、やはり今後の国際開発その他の問題にいたしましても、結局私は、従来のように各国が古い意味の国家完全主権を主張するような今日の国連では、とうてい世界平和の確保というものはできない、人類の平和というもの、幸福というものは、もたらせない。交通通信の進歩しました今日におきましては、もうすでにいわゆる各民族の見地から立って、国家主義の政治というものは、これはすでに時代錯誤でございまして、やはり世界人類という立場から見た世界政治が実現されないというと、どうしても私は戦争の脅威というものが絶えないと思います。そういう意味におきまして、私は、政府のただいまの御意見にもありますように、国連憲章改正、しかしながらこの改正は、要するにいわゆる国防に関して超国家的な、たとえば国防に関する主権に関しては、これは新しくできる国連あるいは世界政府に対してこれを移譲するということになって、しかもその問題は、国際警察隊にいたしましても、国際警察隊が各国から志願者を募集いたしまして、国連に忠誠を誓い、国連の装備したものによって、またその共助によって組織されておる国際警察というものが、たとえば二十万、世界コンゴー、スエズその他危険な地域にこれが国際的な治安を保つためにおるというようにするためにも、これはやはり今までのいわゆる国家の主権の重要なるエレメントとして国防というものを持たしておる今日のいわゆる主権の観念では、とうていこの世界の平和というものは確保できない、私どもはかように考えるのであります。そういう意味から、これは小坂外務大臣世界連邦運動には非常に御理解があり、またこの運動に御援助願っておるのでありますが、アメリカあるいは西ドイツあるいは英国のマクミラン首相にいたしましても、いわゆるどうしても世界政府、ワールド・オーソリティというようなものを、これを国連に……。ここまで持っていかないというと世界平和は確保できないということを申しておるのでありまして、私は国会の同僚のみならず、ことに行政の府にあられる総理外務大臣に、この点に一つ十分意を用いていただいて、時代にミートするように世界各国に呼びかけるのみならず、大いに努力して、そういう趨勢をすみやかに実現するようにお願いを申し上げて、この問題については質問を打ち切りたいと思います。  次に、貿易振興の問題でございまするが、この問題につきましては、すでに衆議院におきましていろいろな角度から質問をされておるのでありまするが、私は、ただその中で貿易振興の条件、これはいろいろな条件がございまするが、その整備について二、三御質問申し上げたいと思います。  御承知のように日本は西ドイツあるいは英国と同じように、やはり貿易に依存する国である、いわゆる貿易立国ということの政策が最も私は重要であると思うのであります。しかしながら、この貿易を振興する、貿易によってわれわれは生存しなくちゃならぬというこの宿命の上に立って、しかも国際条件というものは非常に変わってくるものである。そういう点から、今日の日本が置かれておりまする国際情勢のもとにおきまして、きわめて計画的なまた何と申しますか、西ドイツが戦後実施いたしましたような、きわめて計画的なこの貿易産業政策と申しますか、いわゆる外国と競争しにくいドイツ独特の、しかも安くて非常に品質がいい、こういうものに重点を置いて戦後復興したドイツの貿易というものが、非常な繁栄を来たしたということは、先年こちらに参りましたエアハルト大臣の言うたところであり、また奇跡のドイツの繁栄というものが、そこに根本があったということは、これは周知の事実でございます。そこで、私はお伺いしたいのでございまするが、この日本の貿易振興は、いろいろ通産省あるいは経済企画庁あるいは大蔵省、運輸省——国際観光上から申しますれば運輸省もこれに参加しているわけでありますが、こういう点から、私は貿易国策というものに対しまして、一つの総合的な計画というものが必要であると思うのでありますが、これはまず主管大臣である通産大臣より、この問題についてどういう考えをお持ちになっておるのか、具体的にお示し願いたい。
  18. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 貿易振興の問題は、きわめて重要な課題でございます。で、これに対して、もちろん総合的な計画を持って臨まなければならぬのでございますが、しかし各地域ごとにそれぞれ打つべき手が違ってこなければならぬという関係もございますから、総合性を持つと同時に、また個別的に各地域ごとに対策を考えていかなければならぬのでございます。そこで、まず前提といたしまして、貿易向けの輸出品、一体どういうものを作って、どういう所に向ければいいかというようなその前提の調査、その調査が正確にないと、総合計画も個別計画もみな狂って参ります。そういう関係で、わが国の貿易政策といたしましては、ジェトロを、前提の調査をする機関として、これの機能を高めるというところに重点をまず置いているのであります。それから総合計画といたしましては、やはり各国の、ことに低開発国に共通な現象といたしましては、外貨が十分にないのに物がほしいという関係にありますので、延べ払い制度を大幅に認める必要がある。そのためには輸出金融というものを潤沢にしなければならない、そういったような関係を重視しております。そうして個別的に各市場対策によって輸出の振興を推進するという、大体そういう構想でやっている次第であります。
  19. 山田節男

    山田節男君 どうも今の通産大臣の御答弁だけでは、日本の貿易に企画性があるというようには思われないのでありますが、特に日本の輸出は、御承知のように雑貨品が多いのであります。それは主として中小企業、中小工業の生産物であるという点におきまして、私は特に貿易につきましては政府がもっと企画性を持たしてやるべきだと考えますので、こういう問題を提起したわけでありますが、私どもがことに東南アジア地域諸国につきまして感じますことは、たとえばタイであるとかバンコックであるとか、あるいはラングーン、カラチ、こういう所に参りますというと、そこに四十社に余るような商社の代表がおりまして、しかも繊維関係が四社も五社も、鉄鋼関係も三社ございます。こういうように同じ商品別、あるいは電気器具等におきましては、私の知るところ、カラチにおきましては六社ある。そしてそういう物の売りさばきにつきましての激甚な競争を日本の商社同士がやる、こういうありさまであります。これは一体買う方から見ましても、こういうように日本の商社が過当競争を現地でやるというこの事態が、私は日本の貿易に対する非常な不信を買う要素になっていると思うのであります。こういうものに対して、一体、政府としては、何かの規制を加える方法があるだろうと思うのですが、この点についての具体策があるかどうか、一つお伺いしたいと思います。
  20. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘のように、海外市場において見られる現象は過当競争であります。そしてこれを排除する方法といたしましては、やはりその本元である国内の本部そのものの態度を改めなければならぬ。そのために輸出入取引法が施行されておるのでありますが、さらに施行した現況にかんがみて、不備の点が多々認められますので、新しくこれを補完するよう、ただいま研究しておる次第であります。やはり秩序ある進出、秩序ある取引、お互いにたたき合いをして、そしてお互いが損をするというような、そういう過当競争を排除するには、やはり法制が必要であるということでありますので、その法制について考究しておる次第でございます。
  21. 山田節男

    山田節男君 この日本の貿易振興のための市場開発にはいろいろな方向がございましょうが、政府としては、これは外務省、外国公館としてございまするし、また私の了解する限りにおきましては、かなり多数の通産省の事務官が大公使、総領事館等に駐在しておることも私は知っておるのであります。私の見る限りにおきましては、どうも外務省の出先におきまして通産官と外務省との密接なタイ・アップといいますか、連絡協調というものがないのではないか。これは、私は、一カ所ばかりではございません、そういうものを南米においてもあるいはヨーロッパにおいても見ておるのでありますが、この点について、私は特に印象を深くいたしますのは、一九五〇年と思いますが、駐日ドイツ大使館におきましては、二名の通商参事官、事務官を併置いたしまして、北は札幌から南は鹿児島に至るまで、ショー・ウインドーまで精細に調査し、品質、価格、生産工場の調査はもとよりでありますけれども、そういう工合にやりまして、本国ドイツ政府の貿易省と外務省とにこのレポートを送る、しかもそれを、今度は貿易業者あるいは生産者に対する連絡、情報の提供ということもきわめて迅速、正確であり、ここらあたりがドイツが全く奇跡の繁栄を来たした大きな原因がある。今日、七十億の外貨を保有する大きな私は原因だと思うのでありますが、こういう点につきまして、一体外務省、通産省、少なくともトップの大臣の間におきまして、貿易振興のために何らかこれを調整するような道をお考えになっておるのかどうか、その点を一つ大臣からお答えいただきたいと思います。
  22. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) まことに御指摘の点は非常に重要な点だと存じまして、きわめて同感でございます。われわれの在外公館におきましては、出先の商社の連絡会というようなものを必要に応じて作りまして、いろいろ指導いたしておるのでございますが、とにかく通産省との関係は非常に重要だと存じます。現在外務省から通産省へ出向しております者は十四名でございます。また、通産省から外務省に出向しておられる方は、本省において十名、在外において三十七名おられるのでございまして、これらの諸君がよく連絡をとるということは、これまた非常に必要なことだと存じます。ただ、貿易全体としていえますることは、たとえば北米地区に非常にわれわれの輸出が多いわけでございまするが、ある商品をとってみますと、ある国に対して、真空管を例にとってみますと、三十三年度は二十三万個出ております。これが三十四年になりますると二百五十万個になり、これが三十五年になると五百万個近くになる。そこで、非常にフラッドしてしまう。従って、先方から強いクレームが来るというようなことがございますので、通産大臣が言われましたように、どうしてもここに秩序ある輸出というものをもっと考えていかなければいかぬのじゃないかと思います。  また、東南アジア地区におきましては、これは何といっても一次産品の買付をこちらがするという必要もございます。やはり貿易は片貿易では先方はとても満足せぬのでございますから、そういう点ももっと配慮せねばならぬ点であろうかと思います。これらは、国内の大臣レベルにおいてよく連絡をとって解決をして参りたいと、かように思っておる次第でございます。
  23. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外務省と通産省との連絡関係は、ただいま外務大臣からお話し申し上げた通りでありますが、さらに、私、若干追加して申し上げますが、専門の海外調査員、先ほど申し上げたように、ジェトロが大体それに当たっておりますが、さらに専門調査員を各市場に配置をして、絶えずその商況あるいは日本品の市場における成果等を調べておるのであります。そのほかに、調査員とまでいかない派遣員を合わせますというと、調査員三十数名、それに五十名ほどで八十数名、これが海外の調査に当たっておる。これは、各商社の調査員がやらないような主として基本的な調査をやっておるのでございます。かなり成功を納めておると思うのであります。それで、この調査の結果は、今度国内におきましては貿易相談所に——各地の商工会議所等にありますが、その貿易相談所にその資料を持ち込んで、そして海外の市場というものは大体こうなっておる、であるからして、ここに力を入れることが必要であるというような、その相談に応じて、海外における市場の知識を国内の中小企業に与えておる、こういうような状況でただいま進んでおる状況でございます。
  24. 山田節男

    山田節男君 これに関連しましてプラント輸出の問題でありますが、私は現実の例をもって御質問申し上げますが、ブラジルのサンパウロにトヨタ自動車が進出することになっておりまして、ブラジル政府としても非常にこれを歓迎しておりまして、かなり特権的な待遇を与えるように聞いておったのであります。しかるところ、現実にトヨタ自動車が一体どういうものをあそこで作ったかと言いますと、全く初めの計画の十分の一にも足りないような、単なる組み立て工場程度のものしか作らない。それがためにブラジル政府は非常に失望し、かつ憤慨いたしまして、日本のそういったようなプラント輸出に対してはもう将来絶対に信用できないというので、今度はドイツのベンツ、それからフォルクス・ワーゲン、フランスのシムカ、これらの自動車工業が進出いたしまして、私、一昨年参りますというと、非常にりっぱな工場、しかも、部品まで作るという工場を作って、ブラジルのバス、トラックのほとんど九割を製造しておる状態であります。私はこのとき現地で、これは外務省の公館の諸君、通産省の参事官とも話したのでありますが、こういうことを、これはいかなる国内事情があろうとも、少なくとも一国に対して、これは政府——外務省も通産省も中に入って、仲立ちしているに違いないのでありますから、それが全くだましたようなことになるということは、これは私は日本の信用というものを非常に落としておると思う。現地も非常にこれに対しては憤慨しておるような状況であります。こういうようなことが今後重ねて起きるようなことがございますというと、やはりこのプラント輸出というものに対しまして——東南アジア諸国におきましてもそうでありますが、そういう事例がもし今後もあるといたしますれば、私は重大問題だと思いますが、もし、こういうことが再び起きるというようなことになりましたら、政府としては、これは十分——私は一たん約束したものは、いかなる事情があろうとも、やはり実現させるのが、私はこれは政府の義務であるとも思うのでありますが、こういう事例がある。私は将来、そういうことのないことを希望するのでありますが、こういうことに対し、一体通産大臣として善処する道はあるのかどうか、この点を一つお伺いしたい。
  25. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘の事実はまだ十分に通産省に知られておりません。ただ推測を交えて申し上げて恐縮でありますが、ブラジルとの間で相当貸し越しができまして、そのような関係で対ブラジルの進出が非常ににぶった事例が過去においてあったそうでありますが、何かそれに関連したことでもあったのではないか、かように考えるのでありますが、よく調査をいたしまして、いやしくも海外に信を失うような経済進出をやるということのないように調査をいたしまして、該当の事実がもし見当たりますならば、十分に善処したいと思っております。
  26. 山田節男

    山田節男君 時間の関係上、もう一点ございますが、これを打ち切りまして、次には、御承知のように、為替自由化の趨勢は、日本といえどもこれを払いのけることはできない。ことに原綿、原毛等が四月からこれが自由化しますというと、日本の貿易もほとんど六〇%近くは自由化するということになってくるのであります。通貨の交換性回復とこの為替自由化の拡大ということは、これは日本の貿易振興ということにつきましても、これはもとより重大な問題であり、政府もこれについてはいろいろ対策を講じられておることと私は思うのでありますが、特に従来ガットの委員会におきましてしばしば問題になっておる、日本代表答弁に苦しむような問題でございますが、例の日本の農産物の問題であります。農産物を自由化する——特に米、麦、大豆、この自由化というものは、これは私は将来、農業の保護の見地からいたしますならば、実施は、これは日本におけるそういう方面の態勢が準備できるまでは、これは私は実施すべきではないと思います。しかし、おそかれ早かれ、これが二、三年後であるか、あるいは五年先であるか、これはわかりませんけれども、とにかくこれは、農産物の自由化というものは、当然私どもは覚悟しなければならぬ。過日、政府から農業基本法も提案されました。これもやはり一方から考えますならば、農業の体質改善、農業経営の合理化、生産性の向上あるいは農産物のコストを引き下げるということに主たる目的があると私は思うのであります。この点は、農産物の自由化という問題につきましては、政府としてただいま具体的には申されないと思いますけれども、昨今続いてくる外国からの貿易使節団等を見ましても、個人的に会いましても、こういうことは常に話題になる。この点に対しまして一体政府、これは農林大臣、通産大臣、むしろ農林大臣の御所管と思いますが、農産物の貿易自由化というものに対して一体どういう御準備をなさっておるか。また、はっきりは申されないでしょうけれども、少なくとも五年以内、あるいは三年以内、こういうようなことをもしお示し願えますれば御答弁願いたい。
  27. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ごもっともなお尋ねでございますが、私ども貿易・為替自由化につきましては、日本の産業発展に関連いたしましても、これは原則的には必要なことと思っておりますが、その間にありまして、御指摘の農産物に関する問題に関しましては、御承知のように、日本の農産物はかなりまだ国際競争力の弱いものが多いのであります。従いまして、ただいま御指摘になりました米麦、また今後われわれが成長農産物として国内における増産をはかっていこうというような畜産製品等につきましては、当分自由化はいたさないつもりでございます。
  28. 山田節男

    山田節男君 これは質問でございませんが、要するに、日本の貿易を振興するとなれば、もとより輸出を増大しなければなりませんけれども、輸出を増大するためには、やはり外国から買わなければたらない。たとえば麦の問題にいたしましても、大豆の問題にいたしましても、米の問題にいたしましても、やはり外国から——こっちから買ってもらうためには、この農産物を買わなければならない。そういう今日の貿易の実情から申しまして、貿易振興ということになれば、やはりカナダの木材であるとか、豪州の酪農、バター、チーズ、こういうものもやはり買わなければならない。でありますから、こういうものをいつまでも自由化しないということになると、私は貿易振興上から言いまして、一つの隘路と申しますか、ハンディキャップになる、かように考えますので、もとより農業保護の立場を捨てるわけではありませんけれども、農業基本法もできることでありますから、特に意を用いていただきたいということを申し上げまして、この点に関する質問を終わりたいと思います。  それからドル防衛の問題でございますが、これまた衆議院におきましてかなり詳しく論議されておりますので、私は深くは入りません。ただ昨今新聞に報ぜられますところによりますと、ドイツのドル防衛に対する協力はかなり具体的なものが、しかも多くなった、新聞を見ますと、マルクを切り上げて、そうしてこのドル防衛の協力まですることを決定した。金利も下げた。そうしてこのレートの引き上げということは、やはりレート引き上げは、ドイツのアメリカからの輸入もふえるのだということで、かなり積極的にやっておるわけです。このドイツが初めはしぶっていたドル防衛の協力ということが後進地域の経済援助であるとか、あるいはガリオア、エロアの資金の返済であるとか、こういうようなかなり積極的態度をとっておる。これは必ず日本に対しましても、ことに池田内閣のもとにおける日米安保条約の基本に立つ、むしろ向米一辺倒と申していいくらい仲のいい国であります。アメリカからドル防衛に対しての内輪話ぐらいあったろうと私は思うのであります。ドル防衛について、日本政府に対しまして正式に、あるいは内々何かの申し出があったかどうか、この点をまずお伺い申し上げます。
  29. 小坂善太郎

    国務大臣小坂善太郎君) ドルが今日世界、ことに自由世界の通貨として非常に大きな地位を占めていることは申すまでもないことでございまして、われわれ自身、やはりドル価値の維持ということは、人ごとと考えられない重要な問題だと思っております。しかし、この問題について、公式にも、また内輪話としても、われわれはアメリカから何ら要請を受けた事実はございません。ただ、昨年暮れ、非常にドル防衛の問題が日程に上がりまして以来、ICAの援助その他の打ち切りが日本に対して大きな影響をもたらすのではないかということが話題になりましたとき、私の方から進んでこちらにおられるマッカーサー大使に会いまして、この問題はどうだという点についてただしたことはございます。その結果、非常にわれわれに対しての影響は少なかろうという判断を得たことはございますけれども、先方から進んでこうこうこういう措置をやってくれとか、あるいはこういうことが望ましいのだというような話は、公式的にも、内輪話としてもございません次第でございます。
  30. 山田節男

    山田節男君 これはドイツは現在七十億ドルの外貨、ことにドルを持っておりますし、日本はわずか十七億ドルか十八億ドルくらいのドルしか持っていないのであります。もとよりドイツに対するドル防衛の協力と日本に要請するであろうドル防衛の協力というものとは差がありましょうが、私は先ほど申し上げました今日の一連の関係から申しても、当然そういうことは申し出るだろうということは、政府は予想しておられるだろうと思うのであります。そこで、これは仮定の上に立ちますが、先ほどお話のICAの問題、あるいは日本における各基地の要員あるいはPXに納めている日本の製品あるいは特需の問題、いろいろ響くでありましょうが、あれこれ勘案いたしまして、ドル防衛が、予想の上に立つことになるかもしれませんが、これは必ず日本にそういう協力の要請があるということを前提といたしますというと、一体、日本のことに貿易方面においてどういう影響を及ぼすかという、これは私は経済企画庁なり、あるいは通産省なり大蔵省におきましては、その目安ぐらい立つだろうと思うのでありますが、この点について、もしお示し願える程度のお考えがあればお伺いしたい。
  31. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通り、ドイツと日本とは、ドル防衛に対しての協力をするにしてもその度合いが違います。私は、今回のマルク五%引き上げということは、これは二、三年前にドイツのエアハルト経済相が、ドイツのマルク引き上げというのが国際会議その他で議論になりました。イギリスやフランスがかぜを引いたからドイツにもかぜを引けということは無理だ、絶対反対をしておったのであります。しかし、御承知通りドイツの経済は過去四年、三年前ぐらいは毎年十億ドルぐらいずつドルがふえてきた。おととしが六十億ドルから五十億ドルほどに、十億ドル減りました。五十億ドルになりました。ただいまは、昨年の十一月で二十五億ドルふえまして、七十五億ドルになっている。これはドイツが非常に実は完全雇用、輸出インフレというふうな状態、ことにコスト・インフレの傾向がある。ドル防衛ということに協力するかたわら、ドイツの経済としてはこの際、マルク引き上げの方法がドイツ経済としてもいい、こういうことから私はきているのじゃないか、両方からきていると思います。まあ続いてギルダーの引き上げがありました。オランダに対しましても、ベルギーとは違いまして、オランダもやはりドイツ並みにコスト・インフレ的の傾向がある自分の経済からいっても私はやるべき手段と、そう思っておるのであります。日本に対しまして、小坂外務大臣が言ったように、直接にどうこうということはきておりません。ただ、昨年のドル防衛の問題のときにも、ICAが非常に減るとか、軍人の家族が帰るとか、大へんなことになるといって大へんな論議だったのです。世界各国では、このドル防衛につきまして、ICAとか軍人引き揚げについて日本ほど騒いでいなかった。私はそのときに、かぜを引いたくらいのものだと、軽く受けたくらいのものだと見ていました。ドルとしても、一億二千万ドルのICAはどのくらい減るか、あるいはまた、軍人家族がお帰りになってどのくらい減るかという計算は一応してみましたが、ICAの問題にしても、たとえば朝鮮の肥料にしても、アメリカからは輸出能力がないし、値段が違うし、原則的にはそういってもICAはそう減らない、全部なくなるという議論もありましたが、私はそう減らないと思っております。また軍人の家族も、新聞でごらんの通り、経費を少なくする程度で、今のドル防衛の直接の大した影響はない、全体を合わせましても、家族の分が五、六千万ドルぐらい、全部減ったとしても、七、八千万ドル、半分減るということはありますまい、全体として。私はあの当時言っておりましたように、ドル防衛ということについての問題は、これはやはりアメリカの輸出ドライブ、これが相当日本に影響がある、このことを私は相当考えなければならぬと、こう言っております。最近の問題では、アメリカの機械を日本に相当売りつけようと努力しておるのです、今の延べ払いで。その点を聞くのでございまするが、私は、全体としてやはり貿易面の競争ということが現われてくるくらいに思っておるのであります。
  32. 山田節男

    山田節男君 それに関連しまして、例のガリオア、エロアの問題にも触れたいと思いますが、昨日羽生委員から、きわめて詳細しかも正確な資料をもっていろいろ質疑がありまして、政府の意図がわかって、これ以上私は御質問申し上げませんが、ただ、このガリオアは、これは占領地域の救済資金でございます。エロアは、申すまでもなく、これは占領地域の経済復興の一つの資金でございます。昨日、羽生委員質問に対しまして政府のお考えが述べられましたが、私は、これはやはり池田総理が六月二十日にはケネディ大統領にお会いになるということでありますが、旧知の財政関係の、財務関係の要人とも会われるのでありますから、私特にお願い申し上げたいことは、どうも昨日の各大臣の御答弁を聞きましても、まだこのガリオア、エロアに対しての確固たる数字もないし、また、方針もまだ固まっていないという状況でございますが、これはやはり、われわれ無条件の降伏をした、占領軍政下にありましてこのガリオアを受け、これは当然われわれ権利とは申しませんが、しかし、この終戦直後におきましては、相当やはり日本の財宝が外国に出ておる。今日でもぽつぽつ出てきますが、そういうようなものも勘案いたしまするというと、これは、それだからこんなものは払う必要はない、そういうやぼなことを申し上げるのではございませんが、池田総理が向こうで政治的な一つの会見をおやりになる。この問題につきましては、額はなるほどドイツに比べれば少のうございます。ドイツと日本とは、これまた事情も違うのです。一つガリオア、エロアが、ドル防衛の一環として返還を要求されるということにたりますと、もとより債務であることは否認するものではございませんが、国会が承認すれば国家の債務でありますから、返還という問題は起きますが、その前に、池田総理としては、十分政治的会談によって、あなたは財政の権威者でありますから、如才なく一つこの点は政治的会談によって、まけてくれという意味で申し上げるのではございませんが、国民の納得するような一つ処置をしていただきたい、こうお願い申し上げたい。  時間がたっておりますから、ただ一つ、私この問題に関してただしたいと思いますことは、従来日本は、ドルを持っておれば金と変わりはないのだという考えです。もちろん、戦争におきまして、ヨーロッパ、世界各国ともと申し上げていいと思いますが、ドルが今度金と同じようになる。ところが、通貨の交換性が回復して参りまして以後、特にドル防衛のアメリカの政策自身によりまして、ドルの値段というものは将来不安である。またこの間も、御存じのように、ニューヨークにおきまして、一オンス三十六ドルの金がロンドンにおきまして四十ドルした、このようなことから勘案しまして、今日日本がドルを保有しておるということは一つの危険ではないか。むしろ金を持つべきだ。金は、これは、しばしば問題になっておりますように、現在安過ぎるのです。将来値上げする、こういうような国際的な情勢から見ましても、過日池田総理は、ドルはすなわち金だとおっしゃっておりますが、この金保有へ私は政策を変更すべきではないかと思いますが、この点に対する総理あるいは大蔵大臣の御意見を承りたい。
  33. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通り、ドルを金にするという傾向は、ヨーロッパでは非常に強い。御承知通り、ヨーロッパでは、たぶんドイツが七十五億ドルで二十八、九億ドル、四割近く金を持っておる。これが一番低いので、他の国は、イタリーなんか八〇%くらい握っておる。こういう傾向にまで日本もいかなければならぬと思っておるのでございますが、ただ、パーセンテージと申しますと、急にいわゆる外貨がふえた、ユーザンスとかユーロー・マネーでふえておるのですから、これを直ちに、八〇%とか九〇%の金の保有というわけには参りませんが、われわれとしては、できるだけ早い機会に、できるだけ金で持とうという考えを持っておるのであります。
  34. 山田節男

    山田節男君 次に、投資信託の問題、ことに公社債信託が去る一月から開始されまして、膨大な資金が集結されつつあるということについて、若干の政府の所信をただしたいと思います。  この公社債投信ブームが非常に急激に、しかも膨張いたしまして、従来公社債の資金は二百五十億程度の金じゃないか、これが一月、二月の公社債信託に寄せられる金を見ますと、六百ないし七百億になるのです。こういう事態は、これは今後の金融におきまして大きな革命的な事態をもたらすのではないか、かように私は考えるのですが、ことにこの国民大衆の意識が貯蓄意識から利殖意識に移る、当然のことだと思うのですが、こういうことがますます強くなるといたしますと、私は、従来の銀行業務と証券業務、すなわち産業投資は、こういう公社債信託を通じて投資されていくということになると、従来の銀行とかなり交錯した、何というのですか、摩擦と申しますか、逆に申しますと、商業銀行と産業投資の部面は、これは、こういう投資家が直接投資をやるというようなことになってきて、たくさん新しい問題が起きるのではないか、この点に関しての政府の所信を聞きたいのであります。特にこの一月公社債信託が始まりまして以来、郵便貯金が激減をいたしておるということは事実であります。これは新聞でありまするから、正確かどうか知りませんけれども、少なくとも本年度、三十五年度におきまして、郵便貯金の増加、これは現在では、昨年度の百三十億円を上回っておるといいまするけれども、しかし、この公社債信託が始まって以来非常に減りまして、百三十億円の上回りにつきまして、ことしはわずか六十五億ぐらいしか上回っていない。こういうことになりますというと、これは私は、国の予算としての財政投融資の原資の不足というような現象を呈するのじゃないかと思いまするが、こういうことがもし起こるとしますれば、政府は一体どういうような対策を持とうとするのか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  35. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 御承知のように、公社債市場を育成して、長期資金の確保をはかるという必要はございますので、そういう面から非常に有意義であると思って、公社債信託を今回許可したのでございまするが、結果は非常にただいまのところ好調でございまして、しかし、これは発足したばかりで、いつまでこの傾向が続くかどうかということはまだわかりませんので、私ども、もう少し推移を見たいと思っております。これは、御承知のように、政府がもう一つ低金利政策、この際日本の金利水準を国際水準にさや寄せする方向の施策をとる、こういうことをやりました、この政策の過程において起こった一つの現象とも見られるだろうと思います。ですから、銀行の金利が下がる、これに伴なって預金金利の引き下げということまで行なわれる、この政策が先に出たために、いろいろ金融界にも変化が見られたわけでございますが、これによって、この次に来るべきものは、公社債の条件とか、長期金利の問題とか、いろいろ一連の関連した問題が均衡がとれるような形に落ちつくなら、経済は落ちついてくるということになりますので、これは、一つこういうことをやっただけじゃなくて、これに関連して、今後一連の均衡した政策をとろうというのが私ども考えでございますので、この落ちつき方によって、いろいろな今見られているような一時的な摩擦というようなものも私は解消していくものと考えております。最近郵便貯金、銀行預金が減ったというお話でございましたが、この二、三カ月の傾向は、確かにそういう傾向はとっておりますが、これは、郵貯の金利引き下げというようなものがやはりある程度響いておることは事実だと思います。しかし、これは郵貯だけでなくて、これに均衡のとれた預金金利の引き下げというようなことが行なわれるときには、またこれは事態が落ちついて参って、今の傾向がそのまま続くとは考えられません。私どもも、将来の金利政策を考えまして、この三十六年度は、従ってそう多い郵貯の伸びを予想しない。大体三十五年度横ばい程度ということを考えて、千四百五十億円ぐらいを産投の原資に見込むという措置をとってありますので、この程度の郵貯の確保は、大体私はできるのじゃないかと考えております。
  36. 山田節男

    山田節男君 これは、池田内閣の二兆予算、積極財政でありました、経済成長率も九%以上というこれは目途でありますから、今後やはりこれの投資信託というものは、ますますこれは盛んになるのじゃないか。政府の、これは大衆投資家がまあかなりおるのでありますから、こういうものの保護の見地からも、私は、従来の証券業者が株の委託売買、すなわちブローカーの業務と、それから自己で株を売ったり買ったりする自己資金でやるディーラーという業務、この二つの仕事をやっているわけです。これがために、非常な株で損を、いわゆるディーラーの業務で損をいたしまして、顧客に迷惑をかけたという例も昨年はあったように私は記憶するのであります。一体こういうように、投資信託が重大な進出を産業投資方面に占めることになりますれば、政府は何らかの監督をしなければならぬと思いますが、私は、ブローカー業務とディーラー業務とは分けて営業させるべきだ、そのためには法的措置も必要だと思うのでありますが、これらに対する大蔵省の御見解を承わりたい。
  37. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この二つの分離という方向は、どうしても今後必要な方向だろうと考えておりまして、今、証券審議会にもこの問題の研究を願っております。また、政府自身もこの問題を研究しておるところでございまして、将来そういう方向への指導は十分に尽くしたいと考えております。
  38. 山田節男

    山田節男君 時間がございませんから、非常に端折って、しり切れトンボの質問になりますが、せっかく科学技術庁長官もわざわざお越し願っていることでありますから、科学技術の問題でありますが、これは私は、何と申しましても、日本は、戦争中、戦後、科学技術に対します非常な空白時代が長うございまして、今日の欧米諸国に比べれば、幾多の面においてまだおくれておると思うのであります。しかも、今日の科学技術というものは、産業あるいはことに生産性向上、あるいは国民生活全般から申しまして、この科学技術というものは非常な重要なものである。ことに日本の経済成長を健全に、国際競争に耐えるものにしようというには、どうしてもこの科学技術に対する根本的な私は国策が必要だと思います。今年度におきまして、かなり予算がふやされましたけれども、私の見るところでは、まだまだ足りないのであります。科学技術庁の科学技術振興費を大体私拾ってみますと、約四百二十億円、これは、イギリスにおきましては、技術の訓練のために、日本の金にいたしまして約千二百億円、それに調査研究ための補助金というものが、これまた千三百億円というぐらいに出しておるのであります。こういう点から見まして、どうも日本政府が従来科学技術に対する認識が非常に足りないのじゃないか。今年度は、昨年度に比べればかなりふえておりまするけれども、しかし、ドイツ、アメリカあるいはイギリス等に比べれば、まだまだこれは低いのであります。ソ連と比較いたしますと、全く問題にならぬような状態でありますが、これに対しまして、これは総理なりあるいは科学技術庁、文部省等のこの科学技術というものの教育振興あるいは科学技術の振興ということについて、もう少し本気に、しかも予算的に申しましても、私はもっと金を使ってやるべきだと思うのでありますが、こういう基本的態度についての総理大臣、文部大臣あるいは科学技術庁長官の心がまえを一つ伺っておきたいと思います。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 科学技術の振興は産業発展のもとでございます。われわれは十分これにつきまして力を入れたいと思っておるのであります。ことに、所得倍増のために絶対、技術者は必要でございます。ただいまの機構では、十年後におきましては大体、大学出の技術者が十七万人足りない、また、それ以下の高等学校程度、専門学校程度の分で四十七万技能者が足りない、こういうような技術者の会議での答申が出ておるのであります。で、われわれといたしましては、この不足する技術者を早急に埋めていかなければならない。これにつきまして、昭和三十六年度からそういう方向へ施策を向けていっておるのであります。何分にも校舎の関係、また先生の関係等々がございますので、一ぺんにどうこういうわけには参りませんが、そういう方向に向かって技術者の養成に力を入れていくと同時に、民間団体におきまする研究費支出、あるいはまた民間団体におきまする技術者の利用等々につきましても、格段の努力を続けていきたいと考えます。
  40. 池田正之輔

    国務大臣池田正之輔君) ただいま総理からお答えがありましたので、蛇足でありますが、科学技術庁といたしましても、三十六年度の予算におきまして、御承知のように、金額はまことに貧弱でございます。はなはだ残念でありますけれども、しかし、その内容をしさいに御検討願えれば、今までなかった新技術の開発の事業団、あるいは理化学研究——日本の科学技術のメッカとも称され、また重要な存在である理化学研究所を拡充するために、これを移転するというような新しい費目も出ましたし、あるいはプラズマの研究でございますとか、そうした新しい研究の課題がそれぞれ予算の面に芽を出しましたので、明年度からはこれがさらに拡大されていく、かように考えております。ただ、申すまでもなく、これはただ単に科学と申しましてもすそ野が広いのでございまして、従って、技術者の教育の面からまず出発しなきゃならぬ。そういう面になりますと、文教当局とも十分にこれは相談をいたし、また研究をいたしまして、基礎研究から積み上げていく、かような方向で進みたいと、かように考えております。
  41. 荒木萬壽夫

    国務大臣荒木萬壽夫君) お答え申し上げます。総理から概略お答え申し上げましたことで尽きているようなものでございますが、幾らか補足させていただきます。  御指摘の通り、終戦後の日本の教育界において、ともすれば科学技術が、軽視されたとは言えないまでも、とかく断片的であって、総合性が欠けておると批評されるようでございます。そこで、当面、科学技術者の需要に応じ得ない状態であることは万々御承知でございますが、当面のことは応急措置を、もろもろのことをやりまして何とか間に合わせるとしまして、長い目で見て、科学技術教育をもっとみっちりやらなきゃならないという要請にこたえねばならないと思います。従いまして、小中学校、高等学校から科学技術教育のもっと基礎学力をつけるという考え方で、小中学校、高等学校と三十六年度から着手をいたしまして、順次新しい教育課程を定めて、教科書もそれに応じて、すでに小学校の方は作っておりますが、そういうことで、子供のときから科学技術になじませるという角度で育成をして参りたいという考えでございます。さらに、工業高等学校につきましては、先刻総理からお答え申し上げました通り、極力——これは御案内の通り、都道府県みずからが設置者になっておりますけれども、従って、従来国としては単に起債を与えることによって助成して参ったのでございますが、所得倍増の問題ともむろんからみ合いまして、それを離れましても、御指摘の通り、科学技術教育をもっとしっかりやらなきゃならぬという角度からいいましても、しかもそれをテンポを早めねばならないという要請に応じますためには、今までのように都道府県施設者みずからやれとほうり放しでおったのではとても間に合わないと考えますので、今までも産業教育振興法によって何がしかの助成をいたしておりましたが、その補助率を上げますと同時に、工業高校の普通校舎についても三分の一の補助を三十六年度から新規に開始することによって促進していきたい。授業内容につきましては、先刻申し上げたようなことで、もっと実を入れていきたい、こういうことでございます。なお、大学の教育につきましては、三十六年度予算においては約十億円ばかり、前年度に比べまして四、五億円の増加で、大したことではございませんけれども、特に科学技術教育の、ことに基礎的の方面の新しい学部、学科等の新設、増設等を中心に、予算案の中にも盛り込んでいるような次第でございまして、小中学校、属等学校、大学を通じて、総合的な一つの目標を定めて進んでいくような方途を講ずべきだ。さらに、むろん十分ではございませんが、年々歳々テンポを早めてその実現をはかりたい、かように考えている次第でございます。
  42. 山田節男

    山田節男君 次に、電波の問題でありますが、時間がございませんから簡単にお伺いしますが、まず池田総理にお伺いしますが、前岸内閣時代、これは私ははなはだ遺憾でありますけれども、郵政省の電波行政というものは全く利権の巣くつといいますか、伏魔殿化したということはまことに残念にたえない。電波の憲法である電波法の第一条にあるように、電波はこれは国民の共有物であります。国が、政府がかわっていかに効率を上げて公平に利用するかという責任を持っている。しかるに、この電波というものが利権扱いされ、遺憾な事態が次々に起きておったということは、これは事実でございます。そこで、池田内閣としまして、電波行政に関する限りにおいては、従来のようなことでなく、あくまでも電波法に基づき公平な、また能率的な、しかも国民の福祉を増進するように電波行政をやる御意見であるかどうか、まず池田総理にお伺いしたい。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通り、今の時代で電波行政というものは最も必要な行政の一つでございます。従いまして、電波法に規定しておりまする公平にしてしかも能率的な運営をはからなければならないことは当然でございます。そういう意味におきまして、私は今後十分注意を怠らないつもりでございます。
  44. 山田節男

    山田節男君 そこで、この電波の事業は非常に発展いたしまして、おそらくわれわれの想像以上に発展いたしまして、たとえば放送事業におきましては、今日民間、公共放送を入れまして、ラジオ、テレビ、カラー・テレビはほとんど飽和点に達するまでに発展を見ております。そこで問題になりますのは、こうして民間放送がラジオで百七、あるいはテレビにおいて五十九、カラー・テレビにおいて四、こういうことになりますと、民間放送と公共放送とを一体これはどういうように電波行政の立場から処理していくか、これは重大な問題であります。現行の放送法ではとうていまかない切れないという点があります。政府はそういう点を善処するために、電波法あるいは放送法の根本的な改正を近き将来やるつもりであるかどうか、この点をお伺いいたします。
  45. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) ただいま御質問の電波法あるいは放送法、この法律が制定せられまして相当急激な発展をいたしております。そして根本的に検討すべき時期だという御意見も伺っております。これは何分にも非常な基本的な重要な問題でございますので、広く各方面の知識なり御経験を伺いまして、これを総合して改善にあるいは改正に手をつけるべきでありますが、どういうふうな方法で手をつけるか慎重に今考究中でございます。
  46. 山田節男

    山田節男君 次に、公共放送のNHKの問題でありますが、この三十六年度予算についてはきょうの閣議で決定するやに伺っておりまするが、このNHKの経営の問題でありますが、その根本となる受信料の問題——放送法第三十二条によりまするというと、NHKの放送を受信できるような設備を持っている場合にはNHKに受信料を払わなければならないということになっている。逆にいえば、NHKのテレビ、ラジオを見たり聞いたりしなければ払わなくてもいいということになっている。これがために、一昨年以来ラジオの聴取料というものが、NHKは激減いたしております。数年前千五百万は払っておったものが、おそらく今日は一千万をわずかにこえている程度じゃないか。こういう非常に減収を来たす、これは今日の民間放送と公共放送の並立している私は当然の結果であります。今日はまだテレビが六百万をこえたぐらいで、まだまだ二百万、三百万伸びるでありましょうけれども、テレビの収入も、これもやはり数年後にはヒータに達するということになれば、NHKの年々増大する経費、しかも公共放送の使命を発揮するためには、どうしても財政的な基礎をはっきりと固めなくちゃならない。そのためにはNHKの受信料というものを一体どうするかということが、私は根本的な問題であろうと思います。すでに私は七、八年前からこのことを言っておるのでありますけれども、依然として、まあ金が入ってくるものでありますからどうにかできるために、今日までこれの根本的な改革をやらない。しかし、私はもうすでに今日三十六年度の予算を編成するにあたっても、このことをはっきりきめておかないというと大きな災いをなすと思います。この放送法の改正問題、これをやがてやるということをおっしゃいましたけれども、当面の問題として、日本国民のものであるNHKの経営の将来ということになれば、受信料という問題はどうしても私は根本的に政府考えて、NHKがいやがっても政府がこれをやらせるべきものではないかと思うのでありますが、この点に対しての所管大臣の御意見を伺いたいと思います。
  47. 小金義照

    国務大臣(小金義照君) ただいまNHKの受信料の問題についてのお話でございますが、これまた公共放送の基本的な問題でありまして、三十六年度の計画は本日閣議で御決定を見まして、御承認に私は意見をつけて出しましたけれども、ラジオのNHKの聴取料といいますか、それが年々減って参っております。今、三十六年度の予想では、大体千百万台ぐらい減ってくる。片一方、テレビジョンの方は最近二百万台以上をこえてふえております。そこで聴取料をどういう形でとるか、外国の立法並びにNHKの実態から来るいろいろな法律上の問題がございますので、これも今申し上げました放送法、それから電波法の基本問題の一つとして取り上げていきたいと思っております。なお、三十六年度の計画を承認するのに際して、もうすでに手をつけべきであったじゃないかという御意見でございますが、これは三十六年度中に料金等を基礎にしてNHK自身が一つの検討をいたしまして、政府政府の立場においてこれを検討して参りたい。結局、三十七年度以降になりましてまことに恐縮でありますが、そういう状態でございます。
  48. 山田節男

    山田節男君 この問題でありますが、これ以上申し上げる時間ございませんから申し上げませんが、ただ、NHKの受信料、いわゆる契約料、すなわちこれは聞かなければ払わなくてもいいという、これが根本の今日の問題になってきていると思うのであります。やはり受信免許料、あるいは税金にするか、外国の立法の現行をよくお調べになって、そうしてやはり公共放送の基礎を、永久にと申しませんが、恒久的な基礎を固めて、これは受信料というものの観念を変えなくちゃいかぬと思う。でありますから、この点は速急に一つ政府の方におきまして方針を決定していただきたいと思います。  それから、最後に基幹都市の問題でありますが、これも私はいろいろ質問申し上げる事項がありますが、ただ一つだけ伺いますが、基幹都市、こういう問題につきまして、これは将来当然起こる問題でありますけれども、しかし、従来、たとえば今回の水資源の開発事業団ですが、こういう点を見ましても、まことに各省が権利争いをいたしまして、うまくいかない。各都市の基幹部市の問題につきましても、自治省、建設省、通産省、経済企画庁、おのおの責任を持っている。たとえば地元の、ある例を申しますれば、広島県の福山におきまして、二百万坪使って大工場を誘致しようといいましても、そうすれば船が、やはり港湾問題になれば運輸省、あるいはダムを作れば建設省、経済企画庁は経済企画庁としての一つの案を、こういうことになりますと、総合的に地元が工場誘致しようとしましても、いろいろなことに引っかかりができまして、なかなかこれが具体化しない。特に埋め立て二百万坪、あの地帯は七百万坪埋められるというのでありますけれども、坪五千円としましても、二百万坪ならば百億円かかる。そういうことになれば、一体費用はどうして出すかというのが、これまた大きな問題でありまして、これは業者が金を出す、それで埋め立てればいいのじゃないかということも言われるでありましょうけれども、しかし、原則としてはやはり自治体がそこで金を、財政的といいますか、融資を受けましてやるというのが、一番いいのじゃないかと思うのでありますけれども、そういうことになりますと、地方の自治体としまして、一体そういう金を借りる道につきまして、いろいろ苦心をいたしますけれども、かなり多額の金が動きますというと、これまた自治省に伺ってみても、なかなかいい方法がないというようなことで、工場誘致とか、あるいは工場立地、あるいは基幹部市、その他こういう面を勘案してみますというと、関係省のばらばらなやり方というものが、私、今ガンとなっていると思うのであります。こういう点につきまして、総理はどういうお考えを持っているか存じませんが、少なくとも関係の省の大臣の方々の御所見をここで一つはっきり伺いたいと存ずる次第であります。
  49. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お話の地域格差をなくするということは、どうしても緊急の必要なる仕事だと思います。それにつきまして、政府がそれぞれの面からこの目的のために施策を進めているというのが現状でございまして、自治省といたしましては、国と地方団体とがほんとうに協力できる態勢というものを目標に、今の基幹都市の構想を進めているわけであります。むろん、これをやりまするに際しましては、各省と十分な調査研究の機関を通じまして協調もし、協定もしなければなるまい。また、具体的なさしあたりの問題につきましては、今御指摘の問題でございますが、たとえば地方の公共事業で、後進地域に対しましては国の補助率のかさ上げをやる。あるいは税の減免に対する補充措置をやる。また、特別に償還が確実なものでありますれば、あるいは地方団体に対して特別な起債を認めるといったような点を考慮したいと思っております。御説のように進みますにつきましては、十分調査の段階を通じて各省とも協力をいたし、能率の上がるような方策をとりたいと考える次第でございます。
  50. 中村梅吉

    国務大臣(中村梅吉君) ただいまの点についてお答え申し上げます。  三十六年度予算には各省にいろいろな調査費等が計上されまして、御指摘のような感じが予算だけを見ますとないでもないと思います。しかし、今度今国会に提案になります企画庁の後進地域の工業開発促進法、あるいは通産省の工業立地の調査等に関する法律の一部改正、その他私の考えをもっていたしますと、いずれも後進地域にできるだけ工業を誘致したい。そして工場を分散するように、また、大都市周辺に過度の人口の集中状態がありますので、この過度の人口集中をできるだけ取り除いていくようにしたいというようなことをいずれも目標といたしておるのでありまして、これは政府の地域的所得格差是正ということを目標にして、各省それぞれの担任に応じて私は作業を進めておるものと思うのであります。実はさきに建設省として世間に公表いたしました広域都市建設という考え方も同じような実は方向を目ざしておるのでありまして、そのように地方の後進地域に工業を誘致する、あるいは人口の分散をはかる、産業の立地条件に応じてやっていこうということにつきましては、市町村の行政区域にとらわれておりましては、なかなか地方開発ということがうまく参りませんので、そういう行政地域にとらわれないで、広域的な立地条件に応じた地域開発をやっていきたいということが考え方でございまして、われわれの方の考えも、政府全体のねらいとしてやはり一致しておる方向に実は考えておる次第でございます。ただ、各省ともそれぞれ所得がございますので、別々のことを考えておるように一見見えますけれども、内容は、先ほど申し上げましたように、後進地域の開発あるいは過度の人口集中の排除、工業の適正配置、こういうようなことを目標にして、それぞれ後進地域の開発をはかっていこうということをねらっておるのでありまして、私はこういう意味から、予算は各省につけましたけれども、これは決してばらばらなものではなくして、目標は一貫した政府としての一つの方向へ進んでおるものである。また、進むべきものである、かように考えておる次第でございます。
  51. 迫水久常

    国務大臣(迫水久常君) お話のように、今建設大臣が言われ、自治大臣が言われましたが、所得格差の是正といいますか、全般的な能率的な生産性の向上のためにいろいろ構想がありまして、自治省では基幹都市建設構想、建設省では広域都市建設構想、通産省では工業地帯の開発構想、いろいろございます。御指摘の通りでございます。そこでこれは予算がそれぞれのところに若干ずつついておりますが、これはどうしても総合的に調整する必要がありますので、企画庁といたしましては、全国総合開発計画を早急に策定しよう、それから地域経済問題調査会というのを今度御審議を願っておりますが、こういうようなところでも、これを調整いたしましていくつもりでおります。  なお、予算の件につきましては、各省に若干ずつの調査費がつきましたほかに、経済企画庁所管として、調査費のまた調整費というようなものを五千万円計上してございます。十分の調整をとって、今建設大臣が言いましたように、同一の方向で整然といきたい、こう考えております。
  52. 山田節男

    山田節男君 これで終わります。   —————————————
  53. 館哲二

    委員長館哲二君) この際、委員の変更について御報告いたします。  本日、杉原荒太君及び久保等君が辞任されまして、その補欠として、井川伊平君及び大矢正君が選任されました。   —————————————
  54. 館哲二

    委員長館哲二君) 次に、白木義一郎君。
  55. 白木義一郎

    白木義一郎君 最初に、地方財政につきまして、総理大臣、大蔵大臣、自治大臣にお伺いしたいと思います。  昭和三十六年度の地方財政計画の規模を拝見いたしますと、歳入歳出とも一兆九千百二十六億円、三十五年度の一兆五千三百八十一億円に比較いたしまして三千七百四十五億円の増、二四・三%の伸びとなっております。これは多年の懸案でありました地方財政の健全化に役立つものと見られておりますが、三十四年度の決算で、赤字団体が五百五十五団体、百二十七億円の赤字が計上され、再建債たな上げ団体を含めますと八百七十六団体、二十三府県八百五十三市町村というのがその実情でありまして、三十六年度の財政規模の歳出構成考えるならば、地方財政の土台そのものがこれまではあまりしっかりしたものではなかった。そのところへ、三十五年十月から実施されました人事院勧告に基づく公務員給与改定の平年度化に伴う経費の増額であります。このために、いかに歳入の増加が見込まれるとはいいながら、再び不健全化する心配が非常に濃厚になって参っております。御承知のごとく、地方団体も歳出中に占める人件費の割合が非常に多く、このため退職金の特別措置で退職を勧めたり、また、昇給のストップをしたりしてその縮少をはかって参ってきたのでございます。しかるに三十五年八月の人事院の勧告は、七年ぶりの全面改定で、平均一二・五%という高率で、地方団体のこれまでの努力を一瞬に吹き飛ばしてしまい、三十六年度から地方公務員の給与関係費は六百億ないし六百二十億円と見られ、地方財政計画総額の約三分の一に当たる割合になってきてしまったわけでございます。一方、歳入面では、税法改正によって、住民税、事業税、遊興飲食税、また固定資産税、電気ガス税等、九十八億円の減収となり、軽油引取税の引き上げにより三十九億、差引五十九億の減少、地方交付税で九百億円増加いたしまして、計二千三百億円の歳入増加が見込まれておりますが、このような伸びも大幅な支出増をまかない切れず、このために地方自治団体が独自に実施をしなければならないところの高等学校の増設、また、校舎の増改築、国道の整備に見合う地方道の整備等は相当削減しなければならなくなり、同時に、PTAやまた消防会費等、各種寄付金など、本来国費でやるべき仕事も地方住民の税外負担となり、その対象も三十六年度予算に非常に困難になって参ってきております。従って、地方団体の体質改善という面からも、最も大きな点は給与関係費が七千二百三十七億円、歳出予算の三八%を示しておりますが、国家予算の割合はわずか二〇%であり、しかも歳入予算における地方税の総額が七千六百十九億円であり、これは地方税のほとんどが地方公務員の人件費に消費されております。自分たちの納めた地方税がほとんど公務員の人件費に使われてしまっているということを地方住民は知ったならば非常に問題であると思うのでございます。一般国民としては、人件費に地方税が使われるということよりも、投資的経費をふやしてもらって、道路や学校、あるいは住宅をどんどん整備してもらいたがっている。  このような地方団体の実情に対して、総理大臣は、地方自治体の育成という大きな立場からどのような将来のお考えを持っているか、まずお尋ねしておきたいと思います。
  56. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 地方財政も年々膨張して参っておりまするが、その内容につきましては、数年前よりよほど変わって健全化されつつあると思います。  御質問の要点は、地方団体固有の財源に匹敵するほどの地方公務員関係の給料が要る、こういうことでございまするが、これは、地方財政というものが義務教育費、あるいはまた、高等学校経費等々、相当公務員の給与の支払いが地方財政の相当部分になっているということは従来からの問題であるのであります。ただ、たまたま固有の財源と給与とが匹敵する、こうおっしゃいましても、やっぱり全体としてこれは使われる問題でございますから、固有の財源に給与がいったと、こう断定することは少し早過ぎるんじゃないかと思います。私といたしましては、まだ十分ではございませんが、地方財政は年を追うて健全化しておるということを考えております。
  57. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) ただいまお話しの、地方財政で、来年度の給与がほとんど地方税収の大部分を占めるんじゃないか、こういう御指摘でございますが、数字といたしましては確かにそういう勘定になります。地方財政の収入総額が大体八千億に対しまして、いわゆる給与関係費が七千二百億となっております。しかし、そのうちの五五%というものはいわゆる義務教育費あるいは高校の教員費、警察官の給与費、すなわち住民の直接行政に関係のある費用が五五%を占めている。これは一種の行政費である、こう見てもよかろうと思います。また、ベース・アッフ等ございましたが、これも三十五年度に比べますと、給与費の総額が三十五年度の当初計画では四〇%、今回は三七・九%といったように、全体に比率は落ちているわけでございます。  なお、この投資経費につきましても、一般の公共事業費が千五百億程度ふえておりますうちに、八百億はこれは地方が単独で今後いろいろ操作ができるというような費用を見込んでおり、また、社会福祉の費用につきましても相当な増額を見ている。今のような漸進的に総理の言われるような向上はせられております。しかし、まだ全体の同有財源が全体から見まして四〇%そこそこといったような状況は決してこのままでいいとは思いませんので、今後とも地方、国を通ずる地方財政の画配分といったようなことについては十分考慮を払って参りたいと思っている次第でございます。
  58. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、大蔵大臣に伺っておきますが、憲法にうたわれております地方自治の建前から言って、国税を減税いたしますと自動的に地方団体の税収が減少するという制度については、今後深い研究を続けていかなければならないと思いますが、財源が地方団体には乏しく、国に依存しなければ財政的にやっていけないという地方自治は単なる名目上にすぎないと思いますが、いずれにいたしましても、先ほど申し上げた通りの地方の実情では、地方交付税に大きく依存していかなければ健全化は望めない実情であります。従いまして、大蔵大臣は、現行の交付税率二八・五%を将来三〇%に漸次改めていくお考えはお持ちでないでしょうか。
  59. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 地方団体の財源は地方税の収入だけではございませんで、今おっしゃられているように地方交付税や地方譲与税のほかに、国庫から大きい支出は、地方債、雑収入、こういう財源が加わって地方団体の各種の財政需要をまかなっているということでございますが、御承知のように、最近地方税の収入が非常に多くなってきておりますし、また、今言った全体の財源の総合から見ますというと、たとえば三十六年度の地方財政を見ますというと、歳入規模の増加は約三千七百億円、このうち公共事業、社会保障、義務教育費等、国の補助負担金の増加に伴って地方が負担する歳出の増が千七百億でございます。こういうことになりますと、あと二千億円が一般職員の給与費の増とそれから単独事業の増加を初めとする一般行政水準の向上の経費の増加というようなものに割り振られておりますが、そういう行政水準の向上に使われる金額の増が二千億円ということは、国の財政の今年度のふえ方から、増加のあり方から比べても決して私はそう少ないものではないと考えております。従って、さっき総理から言われましたように、三、四年前の地方財政を見ましたら、最近はこの点ではもう画期的な改善ということでございまして、今の財政計画でいくなら、私は交付税をふやすという措置をとらなくても地方財政はりっぱにやっていけるのじゃないかと思います。で、かりにこれを多くふやす場合の計算をしてみますと、将来こちらの方は三税の収入を無条件に持っていってしまう歳入になってしまうし、国の方の予算とのいろいろな比較をやってみますというと、国と地方の予算が完全にバランスを失するというような方向も考えられますので、国と地方との財源調整をどういうふうにやったらいいかということは、これからの大きい課題でございますので、今私どもは特に税を中心にして、国と地方の配分のあり方というようなものから正しい姿を考えていって、そうして財政力の配分というようなものも合理的な基準を見つけたいという今作業をやっておるときでございますが、見通しとしましては、交付税をさらに多くするという方向は、やはり方向としては私はあまり好ましい方向ではないし、また事実そういう方向をとらなくとも地方財政計画というものは、将来非常に今よりもいい形でやっていけるのではないか、私自身は今そう思っております。
  60. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、先ほどの地方税がほとんど人件費に消費されておる、これは内容のあり方によってまた見方が違うと、このように思いますが、しかし、地方住民は単純に自分たちの納めた税金がほとんど給与に消費されてしまうというような感じを持っているわけでございますが、その地方住民に直接大きな関係のある都道府県や市町村が独自に行なっていかなければならない単独事業、すなわち直接地方住民の生活を潤すであろうところの事業が圧迫されていく感じを持つのであります。しかも、自治省が老齢の職員の退職を促進するために準備しておりました地方公務員の退職年金制度で、そういう問題が今度の予算編成では大蔵省で認められなかったかのように聞いておりますが、地方団体は引き続き人件費で悩んでいかなければならない。人件費は毎年増額をしていかなければならないのは当然でございます。地方財政の合理化は人件費のいかんにかかっておると思うのでございます。地方公務員に退職年金制度をしき、老齢退職者の老後をしっかりと保障しつつ、定年制を取り上げ、地方団体の体質改善また充実をはかり、地方住民の要望に、また地方財政の充実にこたえていく自治大臣のお気持はございませんか。
  61. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) お話の通りに地方財政に占める人件費の割合は非常に重要なものでございますが、最近の内容、趨勢につきましては先ほど申し上げた通りでございます。しかし、さらにより効率化しますためにはどうしてもでき得る限り合理化が必要でございます。そのためにはいわゆる退職年金制度というものを地方においても国と同様の制度を作りたいと考えておりますが特に財政負担等の関係でまだ検討を要するものがございまして、ただいま国会に出すわけに参りませんがいずれできる限り早くこの制度を実施に移して、さらに将来定年制というものもこの制度と並行してぜひ考えていきたい、こういうふうに考えております。
  62. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、ガソリン税の点についてお伺いをしておきたいと思いますが、ガソリン及び軽油の消費量は年々非常に急激な増加を示しております。そして毎年のように増税をされてきておりますが、道路整備五カ年計画の発足といたしまして、キロ当たり一万一千円のガソリン税に二千円の増徴が行なわれた昭和二十九年度以来、地方道路財源の充実といい、また新五カ年計画遂行のためといい、三十四年度には二倍にふくれ上がり、さらに軽油引取税は一万四百円の二〇%の引き上げ、ガソリン税は現行二万二千七百円の一五%も引き上げが行なわれているように思っております。従いまして、政府は現行道路整備五カ年計画を改めまして、昭和三十六年度を初年度といたします新道路整備五カ年計画を発表いたし、予算額も二兆一千億といわれております。わが国の道路の実情から見て、道路の整備拡充が緊急を要する現在では、道路整備計画はぜひとも遂行をされなければならない問題であると思いますが、その財源をガソリン税及び軽油引取税の増徴に求める点について、政府は慎重なる考慮を払っていただかなければならないと思います。なぜかならば、低額所得者たる中小商工業者がその生業を営むために消費するところのガソリンに課せられました税負担はガソリン税総収入の一千億円の中で実に六百億円に上っておるといわれております。ガソリン税が大幅に増税されましても、これを他に、転嫁できない自家用貨物自動車は全国で百三十万五千台に上り、このうち通常大型トラックといわれているものはわずかに十二万八千台、残る百十七万七千台は小型四輪貨物や三輪貨物、軽自動四輪または軽三輪貨物、農耕作業車等であります。これらはいずれも中小商工業者または農林業者または漁業者等が生産のためにサービス用として使用している車でございます。また軽二輪車、自動二輪車の数は百十万台といわれており、いわゆる小売商店にとりましては、商品配達用の車であり、中小商工業者にとりましては、自転車の代用品に使用されておる部類のものであります。わが国の総車両数の七割八分を占めております。数の上からいいましても八百屋または魚屋あるいは炭屋等の中小商工業者がお得意回りあるいは御用聞き等に使用するガソリンが全国消費量の六〇%に達せんとする実情でございます。またこの増税は同じく中小企業である石油販売業者の営業をも圧迫を加えているものであります。すなわちガソリンの仕入れというものは税込み価格で行なわれておるので、増税が実現されれば、それだけ多額の金融を必要とし、そのため非常に困難な金融操作を販売業者はしいられなければならない実情でございます。さらにわが国における石油製品の商取引習慣上、その取引の大半が手形取引であり、しかもその手形は九十日以上のものが多く、これがため税の納入が円滑に行なわれず、石油販売業者は税金の立てかえなり、または金利の負担、貸し倒れなど、全面的に危険負担をしいられております。このままガソリン税が増税されるならば、以上のような理由によりまして、わが国の中小企業者の経営は危険に瀕し、政府の唱えておる中小企業の育成もから手形に終わることになるのであります。さらにガソリン税の増徴はトラック業界またタクシー、バス業界等の運賃値上げは必至と見られ、鉄道料金の値上げとともに諸物価に非常に大きな影響を与えずにはおかないと思います。従って、一般的な考えで公債は債務の形となるので健全財政ではないという主張もございますが、たとえ債務の形となっても、中小企業の育成の面からいえば、道路整備は一般財源と道路公債をもって当たり、大企業、大資本も資本的に資金的に参加せしめる方法が至当であると思いますが、総理大臣並びに大蔵大臣の所見を伺いたいと思います。
  63. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 現行ガソリン税も決して負担が軽いとは言えないと思いますが、従ってこの増徴につきましては主要各国の税負担の割合とか、ガソリンの価格というものを参考にして、無理のない程度に抑えるということにしまして、増税率を一五%にとどめたのでございますが、このガソリン税の一五%がどういう影響を及ぼすかということについては十分検討いたしましたが、物価へのはね返りというようなもの、それから運賃に対する影響というようなものも十分に検討しましたが、割合に軽微である、しかもガソリンの値段の低下傾向というようなもの、いろいろなものもにらみ合わせて、この程度のものは一応はそう大きい影響を、私どもは、与えない。しかも車を持つ人が受益者でございますので、そういう点を考慮して、道路整備の事業というものは一般財源のほかに特にガソリン税を特定財源にして、これによって道路整備を行なうという制度になっておる現状から見まして、今までの道路計画を変えて、ここで思い切った道路計画を立てようというからには、五カ年間において八百何十億——九百億円近い一般会計の負担に見合って、この程度のガソリン税の増徴はやむを得ないという判断で、こういう措置をとったような次第でございます。
  64. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、国鉄運賃について総理並びに運輸大臣にお伺いしたいと思います。政府は公共料金の値上げに踏み切り、その値上げ案の中心である国鉄運賃は平均一二%の値上げを骨格にして、旅客一四・六%、貨物一五%の値上げを四月以降に実施するといっておりますが、国鉄運賃の値上げという問題は他の輸送機関運賃、あるいは一般諸物価の高騰を招く原因となって、国民大衆の生活を圧迫する心配がございます。警戒をしなければならないのは、便乗的な値上げの根拠になるということでございます。経済が好調で、個人消費が旺盛になればおのずから物価値上げの風潮が起きてくるのも当然でございます。この物価値上げの風潮が生ずれば、合理的な理由のないものまで値上げをしようとする傾向が生じてくるのでございます。政府は、従いまして、国鉄運賃等の公共料金の値上げについては特別の配慮を持っていかなければならないと思います。今回の運賃改正は特に公共性の著しいものであり、すでに物価値上げの風潮が起きつつあるように思いますが、政府はあえて所得倍増計画を実施するために国鉄運賃の引き上げはやむを得ぬという見解でその引き上げに踏み切ってしまっておりますが、運賃改訂以外に方策がないものかどうか。減税の公約のあとから、国民年金、郵便あるいはガソリン税等の引き上げは、減税に相反し、矛盾すると考えますが、総理の所信をお伺いしたいと思います。
  65. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お説のような点がございますので、国鉄運賃値上げにつきましては、いろいろ方法考えておるのでございます。何分にも輸送量の増加ということを考えますと、国鉄経理の合理化あるいは借入金等によりましてやろうとしても十分でございませんので、やむを得ず、この際ある程度の値上げを決意した次第でございます。何分にも物価への影響その他を考えまして、できるだけ引き上げ率を抑えたような次第でございます。
  66. 白木義一郎

    白木義一郎君 国鉄の輸送力は、現状でも国民の輸送需要をまかない切れない実情でありまして、今後激増する輸送需要の増大に対処し、昭和三十六年度を初年度とする新五カ年計画の資金といたしまして四百八十六億円を運賃改訂による増収額といたしまして見込んでおりますが、運賃改訂に際しまして、必ず取り上げられる問題は、日本国有鉄道の性格でございます。国鉄はその公共性の立場から、地方の産業を開発する国土開発あるいはまた地域の所得格差を是正する意味におきましても、赤字覚悟の山村にも新線を建設し、地方住民の要望にこたえていかなければならないと思いますが、一方、独立採算制の面から公共性とのジレンマに苦しんでいかなければならないのがその現状でございます。公共性の面は、政府が責任を持って見るべきであり、独立採算制度に合理性を持たすべきであると思いますが、すなわち日本国有鉄道法第三条第一項は、五項目にわたる業務の経営を国鉄に課し、この指定業務以外の業務を行なった役員に対し、十万円以下の罰金に処する旨の罰則を定めております。私鉄はターミナルにデパートを経営し、あるいは不動産事業、遊園地、団地等も作っておりますが、独立採算制をとる国鉄にこのような多角経営をなさしめることは、公共事業に資金を回さねばならぬ国鉄にとって必要な事業と考えますが、料金改正をあくまで続けていかなければならないものかどうか。運輸大臣は、国鉄の独立採算制と公共性という、この二つの相反する性格について、もう少し詳しく検討した結果を国民に理解をさせていかなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  67. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) お答えを申し上げます。  御承知通り、国鉄は高度の公共性を持っておりますために、公共負担が多いのでございまして、一方、国鉄の経営を合理的にやるために独立採算制で能率的にこれを経営いたさなければならぬということに相なっておるのでございまして、従いまして政府といたしましては、国鉄の公共負担になる分に対しましても何とか心配してやりたいということを常に考えておるのでございまして、たとえて申しまするならば、傷病者の無賃乗車に対して、予算をもってこれを補ってやるとか、あるいはまた、とかく国鉄の経営から見れば大きな負担となる赤字線の新線の経営に対しましては、その利子補給を今年度の予算におきましては三億八百余万円を負担してやる、こういうようなことをいたしております次第でございます。ただいまのお話の中に、利用者運賃の値上げによらずに、政府一つ金を出して世話をみてやったらどうかという御趣旨がございましたが、御承知通り日本政府が国有鉄道を直営をいたしておりまする時分から、利用者の負担によりまして、建設あるいは設備の整備、改善等をやって参りまして、一般国民の税収を主といたしまする一般財政の方から、国鉄の経営の負担をいたすということはやっておりません沿革もございます。従いまして、今回は所得倍増計画に関連いたしまして、今隘路となろうといたしておりまする国鉄を整備強化いたすために、まず政府としては、財政投融資をできるだけふやしてやるということが一つでございます。しかし、これも利子負担が多くなりまして、国鉄の経営の支障になりましては困りますから、ある程度のところでこれはとめるべきでございますが、また国鉄といたしましても、その経営の合理化によりまして、自己資金を捻出するということをいたしておりますとともに、一方利用者の、今までの国鉄運賃というものが、ほかの物価に比較いたしまして割合に低位にあるということにかんがみまして、また一方、今御指摘のように、国民の生活に差し響く点を考慮いたしまして、この程度ならば物価にも影響を及ぼさないという程度の今度運賃改訂をやった次第でございまして、前に三回運賃の改訂をやりましても、その統計を見ますると、物価にはさして響かないという実情であります。  それから国鉄が私鉄のように多角経営をやってはどうだというお話しでございますが、日本国有鉄道といたしましては、ただいまの御指摘のように、鉄道法第三条にその営業を明記してございますので、国民福祉の増進のために輸送を主としてやるべきものであるのでございまするが、いろいろ今後におきましては、検討すべき問題も含まれておるのではないかというふうに考える次第でございます。
  68. 白木義一郎

    白木義一郎君 特に伺いたいことは、国鉄の性格の上から言いまして、公共性とそれから独立採算制、この相反する矛盾を今後どう政府として処理していくか、こういう点をもしございましたら、お伺いしておきたいと思います。
  69. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) ただいまお答え申し上げましたように思うのでございまするが、国鉄の公共性を保持しながら、一方では公共企業体としての独立採算制を維持していくということに、今後もそのバランスに気をつけまして、政府としては監督指導よろしきを得たいと思うのでございます。従いましてあまり国鉄の公共負担が多くなるような問題につきましては、できるだけ政府としても、ただいま申し上げましたような新線建設に対する利子補給をいたしますとかいうような手を打ちまして、高度の公共性から参りまする公共負担と、一方公共企業体としての独立採算制というものとの調和よろしきを得るように指導監督して参りたい、こういうふうに考えている次第でございます。
  70. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、国鉄運賃の改訂について検討中でありました運輸審議会が、国鉄の申請通り認めることが適当であると結論を出しました。その答申の中に、同時に政府と国鉄に対しまして、国鉄は経営合理化に努める、また採算のとれない新線建設は極力押えるようにとの要望がされておったようでございますが、国鉄の経営合理化というのは、どういうものであるか。また、採算の取れぬ新線建設を押えるということは、公共性に反すると思っておりますが、どうでしょうか。
  71. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) お答えを申し上げます。ただいま御指摘の運輸審議会からの答申の中にありまする今回の運賃改訂を機といたしまして、国鉄が経営の合理化をなすべしということについてでございますが、国鉄は御承知通り昭和二十七年以来事業分量というものは、経済の伸長に伴いまして増加をいたしておりますけれども、その間ふえた事業量に見合いまする人件費というものは、ふえておらないことははっきりと申し上げることができるのでございます。また、今回の国鉄通貨改訂が国民の負担になりますことにかんがみまして、経営の合理化に力を尽くしたいということを、誠心誠意国鉄としてはやっているのでございまして、たとえて申しまするならば、日本交通公社の切符を代売いたしまする手数料を幾分か引き下げるとか、あるいは国鉄へ納めまするその期間を短縮いたしまするとか、あるいはまた、従来扱っておりました国鉄の広告料を適正にするとか、あるいは国鉄の持っておりまする土地、営造物、建物等の賃貸料を相当適正にいたしまするとかというようなことにつきまして、経営の合理化によりまして、みずからも自己資本を捻出をして、そうして今後の五カ年計画の資金に充てようということに注意をいたしておりまするような次第でございます。こういうふうに国鉄の経営の合理化をいたしまして、一方では資金をみずからの手で捻出するということをやりましても、まだ十分でありませんので、ただいま申し上げましたような国鉄の従来の運賃が、ほかの諸物価に比して著しく低い程度にありますもので、この際これを改訂することが、さして一般物価並びに国民生活に大きな影響を及ぼすものでないということを勘案いたしまして、今度の国鉄運賃改訂に踏み切りましたような次第でございます。
  72. 白木義一郎

    白木義一郎君 国鉄運賃が他の物価に比較して高くないから値上げに踏み切ったのだというようなお話しでございますが、かりに諸物価に比べまして運賃が安いにいたしましても、その安い運賃で今黒字になっている線がたくさんございます。従いまして黒字をもって赤字の路線、赤字新線建設の方へ回さなければならないというような問題が出てくるわけでございます。しかし僻地の、へんぴのところに住んでいるところの住民は、どうしてもその地方の開発のために鉄道が必要な場合に、これを要望をしてくるわけでございますが、一般に政治路線、あるいは赤字路線と論議の対象になっておりますが、これは、その起こりはともかくといたしまして、その地方の住民、あるいは日本の将来の問題から考えますと、どうしてもそこに新線を建設し、将来の大計に備えていくべきが当然だろうと思いますが、その赤字路線に対して、どのように大臣はお考えになっているか、これをお聞きしたいと思います。
  73. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) ただいま御指摘のような鉄道の公共性から見まして、国土開発、あるいは地方産業の振興、あるいは交通脈絡の利便等を考究いたしまして、新しい線路を敷くことに相なるのでございます。これは、御承知通り、鉄道建設審議会におきまして、公正、適当なる審議を経まして建議いたしましたものを、取り上げましたわけでございます。しかしながら、何と申しましても、まだ産業の開発いたしません地方に新しい建設をいたしますのでございますから、なかなかこれは、国鉄の経理のしから見ますれば、いつも赤字となって負担となることを免れないのでございます。従いまして、政府といたしましては、昭和三十六年度から、三億八百余が円という予算を計上いたしまして、この国鉄の公共負担となる赤字線である新線建設に対する借入金に対する利子補給をいたすということにいたしましておるのでございます。また、鉄道建設審議会の議論を見ましても、もし鉄道でなければならぬ場所は、これはどうもやむを得ませんけれども、いろいろの事情を勘案いたしまして、バス等その他の交通によりまして差しつかえないような場所は、なるべくこの新しい線路も、鉄道のような建設費のたくさんかかるものでなく、そういうものに振りかえることが至当だというような意見もあったように聞いておりますのでございます。国鉄といたしましても、いろいろの事情を勘案いたしまして、鉄道でなければどうしてもいかぬ場所はやむを得ませんけれども、そうでない場所におきましては、なるべく赤字の少なくなるような他の交通機関においてこれを代替するような考案、工夫を今後ともいたしまして、なるべく赤字線を少なくするということに力を尽くすように政府としては指導、監督いたしたいと思う次第でございます。
  74. 白木義一郎

    白木義一郎君 次に、運輸省は鉄道営業法の改正案を提出の準備をしていると、このように聞いておりますが、そのうちいつも予算折衝のときに解決のおくれがちである鉄道建設資金問題について、大蔵省資金運用部資金の借り入れ、利子補給などをしやすいような規定を設け、また私鉄の場合には、新線建設に伴う運賃値上げなどの措置が簡単にできるようにすると、このように聞いておりますが、事実でしょうか、どうでしょうか。
  75. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 詳細を鉄道監督局長から御答弁いたさせます。
  76. 岡本悟

    政府委員(岡本悟君) お尋ねの営業法の改正でございますが、先々国会に鉄道営業法の一部改正を御提案申し上げまして、そのまま未審議になっておりますが、今国会に営業法を提案すべく準備、検討は進めて参っておりますが、まだ全面的に最終案ができているわけではございません。  それからなお、お尋ねの改正案の中に、国家の援助規定を入れるかどうかというお尋ねでありますが、相なるべくならそういう趣旨のものを入れたいと、かように考えております。
  77. 白木義一郎

    白木義一郎君 もう一つ、私鉄の場合のことについて、新線建設に伴う運賃値上げなどの措置がしやすいように改めていこうと、こういう点はいかがですか。
  78. 岡本悟

    政府委員(岡本悟君) ただいまのお尋ねの点につきましては、営業法改正案では考えておりません。ただ、私鉄の新線建設につきましては、現在地方鉄道軌道整備法という法律がございまして、しかるべく新線建設について国の援助を行なっております。
  79. 白木義一郎

    白木義一郎君 最後に、国鉄運賃改訂、ガソリン税値上げ等の措置によって、バスや私鉄交通機関の値上げを押える根拠が薄くなると心配をしておりますが、私鉄運賃等の値上げは全くないかどうか、運輸大臣に伺って終わりたいと思います。
  80. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 私鉄、バス等の料金の改訂につきましては、従来、各事業別にその経理をしさいに探究、検討いたしまして、やむを得ないものに限り、個別ごとに許可を与えているということをやっておるのでございまして、この際、国鉄運賃改訂がありましたから、私鉄、バスがこれに便乗して一せいに改訂を企てるというようなことのあるべきはずもございませんし、現に運輸省にはそういうふうな申請というものも見えておらぬわけでございます。私どもといたしましては、そういうような申請がありましたときは、地方消費者の利益を第一と考えまして、経済企画庁とよく緊密な連絡をとりまして処置いたしたい、こういうふうに考える次第でございます。
  81. 館哲二

    委員長館哲二君) 午後は二時半から再開することにいたしまして、これにて休憩いたします。    午後一時六分休憩    ————————    午後二時四十分開会
  82. 館哲二

    委員長館哲二君) これより予算委員会を再開いたします。  午前に引き続いて質疑を行ないます。森八三一君。
  83. 森八三一

    ○森八三一君 昨日から予算審議が本院に移りまして、ただいままで主として外交の問題、貿易の問題等につきましていろいろな角度から質疑が行なわれて参りました。私もそういうようなことにつきましても、多少お尋ねをいたしたい点がないわけではありませんが、時間の制約もありますので、きょうは主として内政問題を中心として数点お尋ねをいたしたいと思います。  最近におきまする国情はきわめて重要な段階に立っていると思います。内政の問題を考えましても、外交の面を取り上げましても、きわめて多くの問題が山積している。そういうような数多くの問題の中には一日の遷延を許しません、寸刻の猶予も与えることのならないような、きわめて緊迫した重要な問題がたくさん存在をいたしていると思います。これらの重要な問題をすみやかに解決して参りまするために、何としても基本的な重要な要諦は、政治の姿が正しくなければならぬ、公明でなければならぬということであろうと思います。このことを基底として問題が解決の歩を進めていくというように私は考えまするし、総理も御就任以来この点には非常に気を配っていらっしゃいますし、過般の施政方針演説におきましても、冒頭にこのことをお取り上げになりまして、日本の政治の姿を正しくする、民主政治、民主主義の徹底、確立をはかるというように所信を表明せられておるのでありまして、この点につきまして国民ことごとく同感であろうと思いますが、しかしこの問題は、ただ単に口先でいっているだけでは問題の解決にはならぬのでございます。それぞれそのことを実践に移していかなければならぬと思います。  そこで第一にお伺いをいたしたいことは、政治の姿を正しくするための一番基底になりまする問題は、今までもしばしば論議されたことであり、衆議院委員会においても相当長時間にわたって質疑が行なわれたことでありまするが、選挙の公明を期するという問題であろうと思います。これが正しくございませんければ、いかに政治の姿を正しくしよう、民主政治を徹底せしめる、民主主義を確立すると申しましても、しょせんそれは口頭禅に終わるであろうと思うのであります。ところが歴代の政府も、この点につきましてはいろいろ御心配になりまして、公明選挙推進のことを取り上げてきておられます。予算の面からこれを拝見いたしますると、昭和二十七年度に公明選挙運動が具体的に取り上げられまして、当初には五十万円ほどの予算でこのことが施行せられておりまして、だんだん年とともに事柄の重要性にかんがみられまして、予算の額も膨張をしてきております。三十五年度には四千五百万円というような額にまでこれが膨張いたしまして、このことの徹底に努力をされておりまするが、はなはだ遺憾なことには公明選挙運動の予算がふえると、正比例的に選挙違反の件数が多くなっておる、しかもその内容が非常に悪質化してきているということが伝えられておりまするし、当局の発表に見ましてもおおむねそのことは当たっていると思うのであります。そこで総理といたしまして、施政方針演説の当初にも述べられております、非常に力強く政治の姿を正しくするんだということを実践されるといたしまするなれば、このことから出発をしなければならぬと思うのでありますが、このことに関しまして今後どういうような取り運びをなされまするのか、あるいはそういう問題をも含めて選挙制度の改正に関する委員会等を発足せしめ、そこで十分討議をしていただきまして、その結論を待ってということにおっしゃるかもしれませんが、私は施政方針演説でああいうように非常に力強い表明をされた前提には、総理としてのお考えが当然これはおありになると思いまするので、まず最初にお気持を伺いたいと思うのであります。
  84. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政治の姿を正すということにつきましてはいろいろの問題がございます。私は為政者自体の問題また国民全般の心がまえの問題もありますが、そのうち重要のものはやはり選挙法の改正であると思います。で、選挙法の改正につきましては、私は従来も調査会がございましたが、今回はもういろいろの問題研究済みでございますが、新たに強力な調査会を法律に基づきまして設け、しかもこの期間を一年といたしまして選挙の公明に関しまするあらゆる問題につきまして結論を出していただきたい、こういう考えで進んでおるのであります。またいかに法ができましても、為政者、政治家並びに国民がその気持になってもらわなければいけません。従来ある程度の予算は組みましたが、今回は画期的に三億数千万円の選挙公明に関する経費を出しております。従来えてして形式的にパンフレットその他を出すような方法でございましたが、私はなかなかパンフレットその他読んでいただけませんので、ラジオとかテレビとかあるいは国民に直結するような方法で、公明選挙に関するPRをやっていきたいという考えで進んでおるのであります。
  85. 森八三一

    ○森八三一君 三億数千万円の予算を取りまして、一カ年間という時間を限って公明な選挙が行なわれまするようなことについて、各般の問題、広範にわたって研究をしてもらうということでありまするが、そうなりますると、その結論が出て参りまするのはおおむね一年先、一年先に出て、来年に参議院の通常選挙がすでに控えておるわけでありますので、おそらく私は来年の通常選挙には間に合わぬということになるんじゃないかと思うのです。総理もお聞きになっておりまするように、これは必ずしも正確なものではないかもしれませんが、世間では五当三落とかいろいろなことを言っておりましたのがだんだん数字が小さくなってきて、昨年の選挙の前には二当一落とかいう言葉が出ました。これは非常にきれいになったかと思うと、けたが違って百万円台から千万円台にまではね上がったということが新聞にもあたりまえのように出ておる。そういうことが選挙法の改正等今お話のようなことの結論が出まして、その上で政府としての考えをとりまとめて措置をするということでは来年の間に合わぬ、こういうことになると思いますが、それでよろしゅうございましょうか。その間どういうような措置をとられるのか。これ以上選挙が腐敗していったのでは、政治の姿勢を正しくすると言っておられる総理の非常に真摯なお気持というものが反映をいたしません。その間の措置をどうされますか。
  86. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 委員会の期間を一年にしたのは一年たってからあとに出るという意味ではございません。私は、普通の委員会は二年とか三年とかいうことでございますが、とにかくできるだけ早くというので一年にいたしておるのでございます。そうして委員の方々が来年の通常国会までに間に合わすようにしていただければこれにこしたことはない。今から何カ月ということをつけるよりも一年ということにしておきますれば、私は来年の通常国会ぐらいまでには結論が出るのではないかと思っておるのでございます。
  87. 森八三一

    ○森八三一君 お言葉を返すようでありますが、非常に国民の主権にも関する大きな問題でありますので、改正をいたしまして、その改正の趣旨が徹底するまでには相当の私は期間をおかなければ、選挙執行の技術上困難が伴い、いろいろな支障が起きると思うのでございます。でございまするから、来年の通常国会にかりに間に合ったといたしましても、その通常国会で結論が出ますのには、今までの状況等を勘案いたしますれば、おそらく会期、相当の日数を経過したところあたりで結論が与えられるということになるのではないかと想像いたします。これは想像でございますが、今までの選挙法改正の経過等を考えてみますると、どうしてもそうならざるを得ないと私は思う。そうなりますると今申し上げましたようなことからいたしまして、次の選挙には総理のお考えになっておるような抜本的な改正を行なった結論というものは間に合わぬ。その間の措置というものは当然これはああいうように非常に力強い表明をされておる総理といたしましては、実践の行動に入らるべきであると思いますが、そうなりますと、ここでお考えになっておるお気持だけでもお聞かせをいただきたい、こう存じますが、いかがでしょうか。
  88. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は選挙の公明を期するのには、まず第一にやはり国民全体がその気になるということが一番の問題だと思います。従いまして先ほど申し上げましたように、予算には画期的な増額をいたしまして、新しい方法で公明をPRしようとしておるのであります。そしてまた法律の問題につきましても私は重要な問題でございまするから、全体として考えた上でやるべきであると思います。
  89. 森八三一

    ○森八三一君 さらに政治の姿を正しくするという第二点として、国会の運営それ自体も正常でなければならぬと思います。このことにつきましては前内閣のときにもしばしばそういうような表明の行なわれたことがありまするが、遺憾ながら行政党間の一片の申し合わせに終わってしまいまして、その実をあげ得なかったことは非常に遺憾に考えるのであります。総理が御就任になりましてからこのことを強くお取り上げになりまして、寛容と忍耐を持って話し合いの政治を進めていくということであります。おそらくそのお気持が先般三十六年度の予算をめぐりまして、衆議院で与野党の間に修正の議が起きまして、それをお取り上げになりまして、両党首の会談にまで持ち込まれたということであろうと思うのであります。遺憾ながらこのことはその結論が得られません、衆議院の段階では。政府の原案が本院に回付せられてきたという経過をたどったのでありますが、その経過を新聞紙で拝見いたしますると、野党側の主張いたしました社会保障費を増額するということについては、池田内閣の重要な三大政策の一つのことでもありいたしますので、趣旨としては賛成である。何とかこの実現がはかれないものかということを御指示なさったようでありますが、主張する側の財源が現政府の政策に重大な影響を与える内容のものであるということで、とうとう話し合いがつかなかったということでございます。世間ではこのことを評しましてもう初めから修正に応ずる気持はなかったのだ、ただ話し合いの政治をやるということを言っている建前から、応じていくことが筋だろうというふうに考えてゼスチュアをやったんだ、という批判をしている人もないわけではありませんが、そういうようなことも新聞の記事には一二出ているのであります。  私は総理のお気持から申しまして、そういうような形式を踏んだゼスチュアをやっている、というような卑怯な態度をおやりになっているものとは承知いたしません。ほんとうにまじめに取り組んでいらっしゃると思います。といたしますれば政府の政策に重大な累を及ぼさないという場合におきましては、予算の修正に応ずるという場合もあり得ると了解してよろしいかどうか、この点につきましての御所信を伺いたいと思います。
  90. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 党首会談の途中におきまして、政調会長、政策審議会会長で一応話をして、そうして新聞に出ているような四つの問題が論議せられたのであります。その場合において三、三、四の問題は聞けない、一の社会保障制度の問題につきましては向こうにりっぱな意見があり、われわれがのめる意見があるなら、これを聞いてみようじゃないか、こういう私の気持で再度やらせたわけでございますが、何と申しましても、われわれの政策の基本である点につきまして、社会党さんの主張をいれるところとならなかったものでありますから、遺憾ながら私は全体をそのままにいたしてやったわけでございます。  もともと私は予算大綱をきめます以前におきましても、社会党の意見もあるいは民社党の意見も聞いてみようという自分の気持があったのであります。初めてのことでございますし、あまりこれが今までと違い過ぎても困りますので、ほかの人の意見も入れまして——今度話し合いはつきませんでしたが、しかし今回の予算に関する党首会談におきまして、今回は不調に終わりましたが、今後こういう問題につきましてはたび重ねてだんだん歩み寄るということにしましょう、という両党の了解はできているのであります。こういう問題は徐々に積み重ねていきたいという気持を持っております。
  91. 森八三一

    ○森八三一君 私がこういう問題を取り上げて質問をいたしますのは、日本の政治形態が二院制度をとっているということでございますので、その二院制度の上に立つ第二院であります参議院の性格というものは、おのずからそこに明確なものがあると思うのであります。そういうような感覚で衆議院におきましては、非常に十分な審査が遂げられましてそれが参議院に回付せられた、参議院参議院なりの立場に立ちましてこれを審査いたしまして、国家国民のためによりよいものを作り上げていくということでなければならないと思うのであります。  そこで社会保障制度というものを充実していくということについては賛成であると、ただその財源を求める手段において野党側の主張をいれることができなかった、だから今回の話し合いについては結論を得るに至らなかったということでありますが、その経過につきましては私もよく了解いたしますが、そういうような時の政府の重大な政策に変更を与えないという内容のものであるといたしますれば、修正に応ずるという態度をおとりになるかどうか、現在の情勢におきましては、衆議院におきましては、自由民主党が多数の信を得て絶対多数の立場にいらっしゃいます。参議院におきましても、いろいろな変遷はございましたが、とにかく頭数の上では絶対多数の状態に置かれております。でございまするので、いかに話し合いをしてどうこうといいましても、民主政治のルールでありまする数の議決ということになりますれば、これは何とも手が出ないということになると思うのでありますが、あくまで話し合いの政治ということで進められていくということと、二院制の上に立つ参議院の本質というものを考えた場合、それが社会保障制度を拡充するということについては好ましいとお考えになっておるならば、政策に重大な累を及ぼさぬ限りにおいて考えてみようというお気持が動いてしかるべきであるように私は思うのでございますが、そういうようにお考えをいただくわけには参りませんかどうか、重ねてお伺いをいたします。
  92. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 重要な仕事はたくさんあるのでございます。しこうして、予算の修正と申しますと、全体の問題を考えていかなければなりませんから、社会保障制度の問題については、修正するかもわかりません。することも考えられます。減税の問題につきましても修正するかもわからない。あるいは公共投資の問題……。社会保障という問題は、あそこに出ておったので言っただけの問題です。私は建前といたしましては、その修正案が、その政党の基本政策に違反せず、そしてみんなが見ても妥当だということになれば、修正にやぶさかではございません。ただ、あくまでも、やはり政党の政策の基本を動かさないということは、これは私は貫いていかなければならぬと思います。
  93. 森八三一

    ○森八三一君 議院内閣制のもとにおける政党政治でございまするから、選挙を通していろいろな政党が公約をなすっていらっしゃいます。そういう国民に約束せられておる筋を曲げてまでどうこうということは、これはもう政党の建前からできない相談でございますので、そういう点を私はかれこれ申し上げておるのではございません。最後に総理のおっしゃいました、それが正しいことであり、取り上げて国民のためためになるという限りにおいては考えてみようというお気持を伺いまして、総理のおっしゃる話し合いの誠意という気持が理解せられましたので、この問題につきましてはこの程度にいたしたいと思います。  その次にお伺いいたしたいことは、最近いろいろの物価が上昇の傾向をたどってきております。これは昨日も物価値上げ反対の婦人団体の方にお会いになりまして、いろいろお聞きになったことでございまするので、私からとやかく御説明を申し上げる必要はないと思います。まさに台所を預っております主婦の皆様は、最近の情勢におののいておると思います。低所得の国民大衆の皆様も、非常に最近の生活の困難にあえいでおると思うのであります。それらは最近におけるいろいろの物価の値上がりということに端を発しておると思います。昨年の臨時国会のときには、御売物価は大体弱含みの横ばいである、大して心配をせぬでもよろしいというような御説明もございました。小売物価につきましても、過去数年の平均が大体累積をして二%程度なんだから、これも卸売物価が安定しておる限りにおいてそんなに大して気に病む必要ははかろうというような経済企画庁の御説明も数字的にあったのでありまするか、本日の新聞でありましたか、昨日の新聞でありましたか、小売物価指数を東京に求めますると、昨年同期に比べまして本年の二月は三・九%上昇をしておるということも報告されております。さらに一般の受けておる認識といたしましては、とうていその程度ではございません。そこで物価の値上がりというものは、どこまでも抑止して参らなければならぬことは申すまでもない。政府も一生懸命にこの問題には取り組んでおっていただけると思うのであります。そこでその実を上げて参りますのには、何といたしましても、企画庁長官も施政方針演説で、値上げムードということを非常におそれるのだということをおっしゃいましたが、そういうような気配を作っていくということにつきましては、どこまでもこれを阻止していかなければならない思うのであります。  そこで、これは私は具体的に国鉄運賃の値上げ問題に関連いたしましてお尋ねいたしたいと思うのであります。まず最初に、この問題について総理にお尋ねいたします前に、運輸大臣にお伺いをいたします。数日前に農林水産委員会におきまして、運輸政務次官、企画庁の政務次官、農林政務次官、国鉄監督の立場にいらっしゃいます監督局長、当面の公社の営業局長というような首脳部の皆様が御出席の際に、昭和三十四年度の国鉄の収支はいかがでございましょうかと、三十五年度はまだ進行中でございますから、これは見込みならわかるかと思いますが、確たる数字はなかろうと思いますので、三十四年度の収支についての問題をお伺いいたしましたところが、ただいまここに資料を持っておりませんので、詳細なお答えはできませんという御答弁でございましたので、三十六年度から実質一二%の運賃値上げということを計画されたという建前から申しますれば、監督の立場にいらっしゃいます、あるいは政務を大臣にかわって見ていらっしゃいます皆様方が、一文も違わぬ数字を聞いているのじゃないので、概数がどのくらいになるかということがわからぬで、それで運賃値上げをやるなんということは、あまりおかしいのじゃないか、こういう質問をちょっといたしましたところが、御答弁ございました。三十四年度は収支差引ゼロであります。その後に御修正がございまして、二十四億円の黒字でございます。こういう御答弁を承りました。そこでいろいろお伺いしている過程におきまして、もしその数字が違っておりますというと、ここでいかに論議いたしましても、あとで変なことになっちゃいますので、もし御修正があれば修正していただきたいという発言をいたしまして、これは速記録に載っておりますが、御修正がなかった。運輸大臣昭和三十四年度の国鉄の収支は差引ゼロでありますか、二十四億円の黒字でありますか、その辺いかがでありますか。
  94. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 鉄道監督局長から洋紙にお答えをさせます。
  95. 森八三一

    ○森八三一君 鉄道監督局長から先日委員会で速記をつけて承ったことでございますので、これはもう修正があれば修正していただきたいと申し上げましても、修正がなかったのでありますから、同じ人から何べん聞いても同じと思いますので、大臣から一つ大臣はどう見ていらっしゃるか、お伺いしたいのであります。
  96. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) お答え申し上げます。昭和三十四年度の営業利益は二十八億円と出ております。二十八億円でございます。
  97. 森八三一

    ○森八三一君 そういたしますると、私は国鉄の経理につきましては、まことに不勉強でよく見ておりませんから、承知はいたしませんが、結論として、昭和三十四年度の国鉄の全収支の結論は、二十八億円のプラス計算であるというように了承してよろしゅうございますか。
  98. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) 三十四年度におきまする収入から経費を引きました営業の利益は、三十四年度におきましては二十八億円でございます。
  99. 森八三一

    ○森八三一君 そういたしますると、三十六年度に二千百億円の経済成長に対応するために必要な新建設工事を行なう。その新建設工事に対して経費のまかないがつかないので、今回実質一割二分の運賃値上げを考えるのだ。その結論として四百八十六億円の運賃収入を見ておる。こういうことの説明を聞いておりますが、それで間違いございませんか。
  100. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) それに間違いございません。
  101. 森八三一

    ○森八三一君 そこでその二千百億円の新投資、新建設事業の内容は一体どうだということを委員会で一々聞いてみますると、初めは東海道新幹線ですか、これが何百億かかかります。これもどうも赤字らしいような説明がございましたので、それはおかしいじゃないか、われわれがこの委員会でも論議はいたしましたし、国鉄の責任者にも来ていただきまして、いろいろの御説明を聞いた結果、だんだん経済の高度成長に見合いまして、国鉄の東海道における輸送力は麻痺しております。このままで放置すれば破綻をしてしまう。そこでどうしてもこういう措置をしなければならず、これをやることによって、輸送力は三倍に増強せられ、東海道新線の収支というものは非常に容易になりますという御説明を承りました。そういうような、収支的にもけっこうなことであり、国の経済成長を達成していくためになさなければならぬことは、これは一日も放置すべきことではないということで、国鉄新幹線のことについても、われわれは心持よく了承をして、これを賛成しておる。ところが、赤字になるような説明でございましたから、これはおかしいじゃないかと、こうだんだん究明いたしますると、それは結論的に赤字にはなりませんという御説明、それから電化の問題なんかも話題に上りましたが、これも経済企画庁等の御説明を聞きまするというと、蒸気機関車を走らせるのと、同じ石炭で電化をしてやるのとでは、二十何パーセントも牽引力が違ってくる。一刻も早く全国鉄を電化したいと思うが、遺憾ながら、その機械の製造の方が間に合わぬということで、われわれもそのことの推進に協力を申し上げておる。といたしますると、二千百億円の新投資というものは一体どうなるかということをだんだん究明していきますると、東海道の新線も赤字計算にはならない。電化事業も赤字にはなりません。ずっと御説明を整理していくと、最後に残ってくる問題は、無人踏切をどうするとか何とかというような、輸送力の増強には関係いたしません。人命に関係するとか、あるいは交通の多少の緩和をするというようなことに関係する部分というものは、これは収益があがって参りませんので、その部分はどうかというと、大体私の質疑応答を通して、胸算用をいたしました結論としては、四百億円程度のものがそういう部類に属するという結論になったのです。そういう結論で間違いございませんかどうか、もし二千百億円の新投資が、赤字計算になると思われる建設事業というのは幾ばくであるのか、概算でようございます。私たちは質疑応答を通して大体四百億円くらい、こういうように承ったのでございますが、いかがでございましょう。
  102. 木暮武太夫

    国務大臣木暮武太夫君) いつの委員会で申し上げましたか、私は同席をいたさなかったので、それは確かであるかどうか申し上げられませんが、御承知通りに、三十六年度を初年度といたしまして、五年間で九千七百五十億円、三十六年度にしてみますと、千九百五十億円のものに、二百億円というものは、借入金を返します金を加えまして二百億円というものを加えるわけでございます。それで今踏切のお話がございましたが、おそらく御説明申し上げましたのは、近ごろ問題になっておりまする人命の安全を保障するための踏切の問題であるとか、あるいは朽廃施設の改良工事でありまする駅舎の改良であるとか、あるいはまた、都会地におきまするところの通勤者の輸送の混雑を緩和するために、あるいは複線を敷かなくちゃならぬとか、あるいは東京、大阪周辺に、この五年間に電車を千両増両するとかいうようなものは、おそらく直接ペイするものでない、こういう御説明をいたしたのだと思うのでございます。で、そういう金額を合わせますると、今の採算に乗らない金額というものが約千二百億円くらいになりますものですから、そこで自己資金として六百億円くらいを捻出いたしましても、なおかつ採算に乗らないものに回しまするところの資金が欠乏しておりますものですから、そこで国鉄運賃の改定、最小限度における国鉄運賃の改定という問題が起こりましたわけでございます。詳細の数字は、国鉄の者がおりますから、御納得のいくように御説明を申し上げさせたいと思います。
  103. 森八三一

    ○森八三一君 多少、私が胸算用でいたしましたので、数字が違っておったようでありますが、そういたしますと、ただいまの大臣の御説明によりますると、二千百億円の新所要経費のうちから、黒字投資というものをさっ引いて、さらに自己資金をさっ引きますると、残りがおおむね六百億円くらい足りなくなる。六百億円くらい足りないものに対して、一カ年間に五百億円の運賃収入を上げるということが、どうしても私にはわかりませんのであります。建設事業でございまするから、かりにその無人踏切のことをどうする、あるいは都市近郊の非常に混雑しておりまする輸送を緩和いたしまして、通勤等の支障のないようにいたすといたしましても、土地の買収とか、そういうもの等につきましては、一カ年間に運賃でまかないをつける必要はない。少なくとも、これは相当長期の年賦償還式に考えていけばよろしいと私は思うのでございます。民間の事業でございますれば当然そうなる。それを一カ年間に五百億円の運賃収入でまかないをつけなきゃならぬということが、どうしても了解いたしかねるのでございますが、こういうことに同意をされておりまする総理、一体、数字にきわめて明るいそうでありまするが、私のそろばんが間違っておるかどうか、また私の考えは、そういうことはいかぬ、こうおっしゃるのかどうか、もちろん、これは資金を要することでございまするので、七千億円の財政投融資の中から回す余裕がない。これはやむを得ないとおっしゃるかもしれませんが、そうだといたしますれば、私は三百億や四百億程度のものでございますれば、建設公債を発行いたしましても、現在の日本の経済力、国力から、やはりそれが直ちにインフレにつながっていくなんという危険なものではないと思うわけであります。むしろ物価引き上げのムードを作っていくことの方がおそろしい。こう思うのでございますが、いかがでございましょうか。
  104. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは、私は数字の問題ではないと思います。経営方針の問題だと思います。将来の状況を見まして、どういうふうにやるのが国鉄の一番いいあれかという問題だと思います。御承知通り、千九百五十億、二千億近い金の中で、出費の中で、どうやってこれをまかなうかという問題、そのときに、お話のように、借入金ばかりでやったらどうか、こういうお話でございますが、千九百五十億のうち、どういうふうな経理状況をしておるかと申しますると、その半分の九百九十五億、九百九十六億ですか、千億近いものが、これは借入金でまかなっておるのであります。そうして残りの千億のうち、いわゆる二兆円余りの国鉄の資産の償却というものが六百億ばかりだったと思います。この六百億というものは、これは計算上出てくるわけでございますが、これは一応金は出てくる、しかしそれは、やはり出費のうちのある程度、補給、修繕等になっているわけでございます。で、その償却の六百億、そうすると、あと四百数十億というものを借入金でやるか、あるいは料金の値上げでやるか、これは政策の問題で数字の問題ではない。今後九千億の分を、今やらないとしますると、ほとんど全部を借入金でやるということになりますと、利子その他が将来大へんな負担になりまするから、何も新線建設に、この料金の引き上げ分を使うというわけじゃございません。全体としての考え方は、二千億のうちの五分の一程度のものは、ここで料金を引き上げるということもやむを得ないことかと私は考えた次第でございます。
  105. 森八三一

    ○森八三一君 今の総理の最後の四百億円くらいのものは、調達ができない、それは国鉄全体の収支の上に立っての話だということでございますが、三十四年度の国鉄の収支というものは、先刻確認いたしましたように、利息も払い何もやって二十八億円のプラス計算だとおっしゃるのですから、その内容はいろいろなものがあると思いますが、この究明は他日に譲りまして、三十四年度では一応の黒字だというなれば、三十六年度に新しく投資をするものだけをまかないをつければよろしいのではないかというのが、私のしろうと考えでございます。  そういたしますと、その新投資のうちの一千億くらいのものは、とにかく黒字で推移のできる新建設事業である。残りの一千億のうち、自己資金でまかない得るものが六百億円あるということでございますれば、残りの四百億というものだけを手当をすればよろしい。その手当をする内容といたしましても相当の建設部分があるわけですから、一カ年間にそれを償却しなくても、年賦償還式に考えていったらいいのじゃないか。  そういたしますと、私は運賃値上げをゼロにしろと申すのではございません。五百億というような大量なものを、ここで求めませんでも、もう少し低い率で考えたらよろしいのではないか、こういうことに、どうも私のそろばんでは、こうなるのでございますが、私が頭が悪くていかぬのかどうか。そうじゃございませんでしょうか。
  106. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国鉄総裁から、あるいは運輸大臣からお答えするのがほんとうかと思いまするが、三十四年の決算をお考えになって、将来をそれによって律せられるということはいかがなものかと思います。  御承知通り、これは言っていいか悪いかわかりませんが、今公労協の春闘問題でいろいろ起こっておりまするが、私は国家公務員の力の賃金の、俸給の引き上げだけで全体のものが済むとは考えておりません。これは、今まで答弁には、みな言っていないようですが、私は個人としては、これは国鉄も、電電公社も、相当考えなければならぬのじゃないか。そのときに、またどれだけ上がるかわかりません。こういうことを言ったなら、それじゃ予算を修正しなければならぬということになるかもしれない。私の想像では、上がるか上がらぬかはわかりませんが、相当問題があるということも一つ考えおき願いたいと思うのであります。それから定期昇給ということもございます。いろいろな点を私は考えて、今初めて申し上げたのですが、大体私の勘といたしましては、この程度やっておくことが、国鉄のためにいいんじゃないかという気がいたしております。
  107. 森八三一

    ○森八三一君 私も、別に総理から、今初めてという非常に低姿勢でお伺いをいたしませんでも、昭和三十五年度中に公務員の給与も引き上げになっておりますから、国鉄の皆様にも、あたたかい気持で、仕事を一生懸命にやっていただくということが必要なので、それに見合う程度のことは、当然これは考えていかなければならないと思います。それによりまして、どの程度人件費の当然の増というものが見込まれまするか、これも私よくわかりませんが、昨年度でありまするか、国鉄の予算——関係機関予算に出ておりまする人件費等から推算をいたしますると、かりに一二・五%の値上げをいたしたといたしまして、全部の平均でそうしたということで、大体百億程度のものではないかと想像をいたしておりますが、これは明確なものではございませんから、はっきりは私申し上げません。  そういうものが当然必要なことはわかります。わかりまするが、経済の高度成長に伴いまして、既設の国鉄施設というものが、相当フルに動いてきております。国鉄の運賃収入というものの自然増と申しまするか、既設の設備で、既設の人件費で伸びてくる自然の運賃収入というものは、これは現在の東海道線が麻痺する状態にまできておるということを考えるだけでも、相当のものになってきておりますので、そういうような三十五年度のいろいろな事象によって起きて参りましたものは、大体、私はつかみ計算でございますが、収入のふえる方と両方で、おおむねまあ、とんとんぐらいになるのじゃないか。そういたしますると、三十四年度の決算帳面じりを一つ押えておいて、それから計算をする。私の計算というやつは、平面ではございまするが、一応われわれが、民間でいろいろな仕事をやりまするときの計算は、そうなる。だから、そういうふうに一つ考えていただく。どうしてもそれが考え得られないという、何といたしましても、運賃を値上げしなければならぬといたしましても、その値上げ率というものは、平均の実質一二%ではなくて、もう少し平均化しますると、圧縮ができるのではないかという感じを私持つのであります。  その場合に、今度は具体的には、一二%値上げをいたしましても、耐えていけるようなものもありましょうし、もう、ちっとも上げてはいかぬというものもありましょうし、それは国全体の民生に与える影響というものを考えまするというと、内容的には相当に峻別をして操作ができるということに私はなってくるのではないかと、こう思うのでありまするが、そういうようなことについて、御再考願う余地はございませんでしょうか。
  108. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国鉄の初めの申請は一五、六%だったと思います。私は運輸大臣に経営の合理化、経費の節約、これを特に行なうようにしていただきまして、たぶん——違っておるかもわかりませんが、二十数億円のあれを出されたのじゃないかと思います。不動産の処分その他でございます。  それから、だんだん経営が拡大していくから、黒字がずっと続くのじゃないかというお話でございますが、御承知通り昭和二十六年、昭和二十八年、昭和三十二年、今と、大体二十六年には三〇%ぐらい上げました。二十八年には一〇%、三十二年には一三%、今度一二%でございますが、その程度の引き上げを、そういう期間にずっとやっていっても、そう楽な経営じゃないのであります。ことに今度は、今の踏み切りとか、いろいろな改良施設、それから、ことにまたサービスの向上等をやりまして、私は経営が、楽に黒字が出るというふうな状態ではないのじゃないかと考えております。長い目で見て、この機会に、やはり十分な輸送力の強化をはかっていくことが、利用者のためにも、また国全体としても適当であると、こう私は決心したわけでございます。
  109. 森八三一

    ○森八三一君 私も長い目で見まして、旅行も愉快にできまするように、日本の経済成長の妨げにもなりませぬように、国鉄の輸送力というものを増強していただきたいということについては、全く賛成でありまして、ちっともそれを、どうしろこうしろというようなことを申し上げているのではございませんが、今、いろいろな物価の値上げということから、国民大衆は非常におののいているという状況下に公共料金を引き上げますることは、非常に感じも悪うございますし、あるいはそれが一つの契機となって、便乗値上げというようなことに発展をしていく危険は多分に私はあると思います。政府が管掌する物価でございますれば、ある程度押えることもできましょうけれども、そうでないものは、これはもう自然に上がっていく。今月からも、すでに牛乳が一円値上がりになっております。そういうことなんかも、ずんずん進んでくるのでございますから、ここでやはり、政府が範を示すという態度を一つとっていただきたい。  それには、今申し上げまするように、もし、私がここで質疑いたしましたように、三十四年度の収支の内容には改善すべきもの、不合理なもの、いろいろあるにいたしましても、とにかくそう帳面じりで収支二十八億円の黒字であるということでございますれば、三十五年度に、どう推移いたしますか、私わかりません。わかりませんが、おおむねの勘として、職員の皆様に対する正常な待遇にするための人件費の増というものと、経済の成長に伴う自然の運賃収入の増というものを、あっちこっちやりますれば、大体、差引そんなに大きな狂いはないんじゃないか。そうすると、三十六年度の新五カ年計画によって、投資をいたします部分がどうなるかということだけを検討すればよろしいんじゃないか。その場合に、東海道新線あるいは電化等、黒字計画になるので、投資というものは一千億円くらいはある、残りの一千億円くらいのもののうち、自己資金で六百億はまかなえるということでございますれば、その残りの四百億円だけを始末すればよろしいんじゃないか。その四百億始末するときに、建設的なものでございますれば、一カ年の運賃収入という損益計算で始末いたしませんでも、年賦償還式に長い目で考えていくと、こういうようにいたしますれば、年度の運賃値上げというものは五%なり三%なりという低率でよろしいんじゃないか。その間、資金の手当をどうするかという問題はもちろん起きて参ります。財政投融資の方から回す余裕がないということになりますれば、一般市場から三百億や四百億円程度のものでございますれば求めましても、それが金融市場に、どういうような悪影響を与えるとか、経済全体に、どういうような麻痺状態を出現するというほどのものではないんじゃないかという感じを持つのであります。  そういうふうに考えていただきますると、政府が率先をして物価の値上げというものについて、これを抑制する態度をとっているんだということになりますので、ひいて他の物価値上げということについても、非常なこれは好影響を来たすと思うわけでありますので、これは総理と、今ここで押し問答いたしましても、大体腹がきまっちまったようなことでございまして、いかがかと思いますが、最初に申し上げましたように、あくまでも話し合いで納得のできることは、予算の修正すらやぶさかでない、こういうような態度を私非常に気持よく受け取っているのでございます。もう一ぺん一つ御再考を願いまして、もし私の申し上げまするようなことになるといたしますれば、その内容において一二%実質引き上げるかと、引き上げないかと、そうして、ほんとうに民生の安定に役立つようなことを一つ考えていただきたい。平均値といたしましては、相当私は引き下げても大丈夫だ、こういう感じが出て参りましたので、もう一ぺん、御再考願うことを希望いたします。  時間が迫って参りましたので、その次の問題に移らせていただきますが、その次にお尋ねいたしたいことは、税の問題に関連してでございますが、今回、多年要望いたしておりました農業者等に対する専従者の控除を認めていただくということになりました点につきましては感謝も申し上げ、敬意も表するのであります。これはもともと、昭和二十五年の税制改正のときに、シャウプ勧告の中にもあったことなんでありまして、まあ当然と言えば当然のことだと思うのであります。  ところが、そのことが地方税の方には影響をさせない、こういうことにきまったやに聞くのであります。こうなりますると、昭和三十四年度の大蔵統計によりますると、農民で、国に直接所得税を納めておりますのは、四十一万七千戸ということでございますから、農家戸数は農林統計から六百万戸といたしますると、専従者控除専従者控除といって、多年要望して参り、昨年の選挙の前にも、相当考えて上げようというような、それとなしに御了解を願ったことが、形の上では実現をいたしまするけれども、結局多数の農民諸君には、何らの影響がない。端的に評しますれば、絵にかいたもちに終わってしまう、こうなると思うのであります。  なぜ一体、地方税にこれを反映なさらないのかす従来の課税方式でやりますれば、当然国税の方で減税が行なわれますれば、そのはね返りというものは住民税の方の基礎になって参りまして及ぶわけなんです。それをなぜここで断ち切られるのか。私思いまするのに、これは地方の財政が非常に苦しい、苦しいからやることであろうと思うのであります。そこで、地方の財政計画の問題につきましてもお伺いをいたしたいことがございますが、まず第一に、なぜ一体地方税に反映させないのか、それを一つ大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  110. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 国税の方におきましては、個人と法人のバランスをとるという必要がございますし、青色申告者と白色申告者の間のバランスというものもとらなければなりません。  そこで、法人においては給与というものが経費に認められておるということとバランスをとろうとしますれば、どうしても個人においても、専従者控除という制度を設けることが適当だということで、青色申告ではやっておりますが、まだ、日本の個人企業の実態を見ますというと、企業と家計の分化というものが完全に行なわれておりませんので、家族に対して給与を支払うという慣行も別に擁立しているわけではございませんので、ここに非常にむずかしい問題がございますが、しかし個人の方が税金が高くて法人の方が安いということで、個人企業は皆法人組織に変えるというような傾向も見られるときでございますので、これを防ぐためにも、このバランスはとらなければならぬと、そこで国税においては専従者控除というものを、白色申告においても今回は踏み切る、こういう措置をとったわけでございますが、これを住民税においても同じようにするかというと、いろいろ問題がございまして、市町村という狭い範囲になりますと、この専従者というものの実体というものがよほどはっきりしないというと、ごく狭い地方においては非常に問題もございますし、税法上も問題がある。一応専従者控除の額をきめても、これが現実に支払われている給与と見るわけにはいかないのを国税で踏み切ったとしましても、地方税になると、そう簡単に参らないという問題がございますことと、国税と、大体住民税というもののまた性格が違いますので、住民税というものは、できるだけ広い範囲の住民にお互いの共同体である自治体の経費を分に応じて、これは分担してもらうというための税金でございますので、その性質から見まして、この住民税に、すぐ専従者控除という観念を取り入れるかどうかという、むろん税法上の問題もあると同時に、実際問題としては、これをやることによって、住民税というものが非常に大幅にこれは減少いたしますので、この地方の収入の減ること、八十億円くらい大体市町村で減ると思いますが、これをどう、そういう場合には補充するかという新しい問題も出て参りますので、そこで私どもは、どうせこの問題は、今政府としては国税、地方税を通じてのあり方、税の配分とか、根本的に税制調査会が調査するという検討の日程に上せているときでございまするので、この検討にゆだねて、今回は、住民税にこの専従者控除というものを取り入れないことが至当だ。ずいぶん議論がございましたが、そういう結論で、今回はこれを見合わせた、踏み切れなかったというのが実際でございます。
  111. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、昭和二十五年の現行の税法制定の際に、シャウプ博士からは、今行なわれんとする勤労者控除というものは実施をすべきだという勧告があったことは十分御承知で、ただ暫定的に、今までは地方の財政問題を考えてやってきた、ここで国税としては踏み切ったが、いろいろ問題があるので検証は将来に譲った、理論的にはどうなんですか、取った方がいいというのか、やめた方がいいのですか、シャウプさんは、日本の税体系を立てるときに勧告なすっているのですね、どっちがいいとお考えですか。
  112. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 私は、さっき申しましたように、地方税というものは、地方の住民が分に応じてお互いの自治体の経費を持ち合うというのが趣旨でございますので、この地方税の中に、今言ったような非常に日本現実の実態には合わない問題もございますので、税法上の問題としては、これを地方税にすぐに持ち込むことは、私は今のところ無理じゃないかと考えております。
  113. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますると、この問題は税制全体の改正の中へ持ち込んで検討をするということであって、住民税に反映せしめることが否であるという結論を得たものではない、こういうように了解してよろしゅうございましょうか。
  114. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) この住民税のあり方については、全体として今再検討をしているときでございますので、この検討の過程において合理的な解決をしたいと考えております。
  115. 森八三一

    ○森八三一君 これは、池田総理が大蔵大臣のころにお伺いいたしまして、ちょうど今回のように、運賃や米の値上げのときに、一面には所得税法が改正になりまして減税、その減税の恩典によって、いろいろな物価の値上がりというものを吸収のできまする人はけっこうでございますが、そういうような吸収のできない、すなわち、税を納めておりませんような低所得階層に対してはどうなりましょうかという質問を申し上げましたときに、これははっきり記憶しておりますが、その問題は世界の政治家が税の問題を取り扱うときに一番悩みとしておる問題でありまして、きわめて重要なことではあるが、その解決の名案はございません、今後も鋭意研究をして善処をしたい。これはおそらく総理も、大蔵大臣のときでございますから、御記憶があろうと思います。そういう答弁をいただきました。私も速記を調べまして、ここに速記の写しも持ってきておりますが、まさにそういう御答弁をちょうだいいたしておるのでございます。そこで、そういうお気持といたしますれば、いろいろな問題はあるにいたしましても、この際、国の方で踏み切られた、これを地方税にも反映せしめるということが当面の、そういうむずかしい問題ではあるけれども、非常に大切なことだから善処をしようとする、その態度に通ずるものであると思いますが、そうはならぬのでございましょうか。せめて、そんなことでもしてやらなければ、税に関係のない低所得階層というものは、物価の値上がりの悪影響だけは受けますが、減税の恩典というものはちっとも受けないということになりまして、感じの悪いものが起こってしまう、こう思いますが、せめて、その一つの対策として、国税における措置を地方税に反映せしめるという措置をやっていただきたいと思いますし、その金額はわずか八十億円程度のものであるといたしますれば、四千億の自然増収が予見されておる現在の情勢下におきましては、措置しようとすればできるのじゃないか、こうも思いまするが、いかがでしょうか。
  116. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この前、大蔵大臣のときに御質問なすった問題と、住民税におきまして専従者控除を認めるか認めぬかという問題は、私、直接には理論的のつながりはない。負担の点からいえば、おっしゃる通り、所得税におきまして専従者控除を認めること、これは至当な方法で、ことに法人との関係、ただ、負担分任の関係にいたしますると、住民税につきまして、しかも、税率が所得税のような超過累進のきついものでない場合におきまして、専従者控除を住民税に認めるかということにつきましては、私個人としては、必ずしもあなたのように考えておらない。それは税金が軽くなることにつきましては、私は賛成でございますが、所得税と住民税とは違うという一つの観念が私にはあるのであります。私は、ほかの方法考えられないか、あるいはまた、専従者控除を認めるにいたしましても、所得税のような認め方はどうかという気がいたしておるのであります。私は、所得税を課税しない、いわゆる五人家族で年所得三十九万円以下の人、これについてどういうようにやるかということにつきましては、税を軽くするということも一つでございます。その意味におきましては、私は、電気ガス税というものなんかは相当軽減、免除すべきだと思う。それからまた、間接税におきまして、ある程度のことはやるべきでございます。ただそれよりも、私は、やはりこの全体の所得を上げるということが主じゃないか、こう考えまして、所得倍増ということを言い出したのでございます。結果から見ましても、昭和三十一年には、先般の「政府の窓」なんかに出ておりましたが、三十一年には二十万円以下の方々が七百万人近くあった。それが三十四年、三カ年後におきまして、七百万近いものが五百六十万に、百二十万人減って参りました、二十万円以下の人が、物価安定の場合において。そう考えますると、今残っておる二十万円以下の方、これは世帯ですが、六百八十万人のうち、三カ年に百二十万人というと二割減っております。これをどんどん減らしていくこと、五百八十万人のうち生活保護を受けておる人が六十万世帯でございますから、私は、こういうような二十万円以下の世帯の人を雇用の関係その他各方面で所得を上げていくということが積極的な第一の手段である、第二は、間接税、流通税を減らしていくということが第二の手段である、こう考えておるのであります。住民税の専従者控除について、必ずしも森さんと意見が合わぬかもしれませんが、税の理念としては、私は、所得税と住民税では、控除の仕方につきましてよほど違っていくべき筋合いのものだと考えます。
  117. 館哲二

    委員長館哲二君) 森君、持ち時間が来ておりますから。
  118. 森八三一

    ○森八三一君 最後に、今、税の専門家である総理の所信を伺いましたが、結局、私は、こういうことになりますのは、国の予算の編成と地方財政計画の策定とが時期的にズレておるということが起因ではないかと思う。国の財政、予算等がきまって、そのあとに地方財政計画というものがいつも作られる。今回でも、地方財政計画の提出がおくれておるのですね。ですから、国の大もとの予算がきまってしまったあとで地方財政計画が作られる。だから、もうそこにどうしても抜きさしならぬようになってしまって、最後に、今さら総理は上手に私に言いくるめるといってはいけないかもしれませんが、説明なさっていらっしゃいますが、腹の中では、私の説明に相当賛成していらっしゃると思う。ただ、やりくりがつかぬから、きれいな答弁をしていらっしゃいますけれども、できるならばやってあげたいという気持はあると思う。それが結局、国の予算と地方財政計画の策定との時期が非常にズレてきておる。そこに問題があると思う。ですから、うっかりすると、結局、国の方でお立てになりましたいろいろな公共事業につきましても、配分した予算を返上しておるという事例まである。予算を返上しておるという事例まであるのです。こういうことが問題なんです。そこで、少なくとも、地方財政計画というものと国の予算の編成というものとは、並行して行なわるべきであると思います。そうなれば、地方財政計画も、国家予算提出と同時にまあ国会には出される、並行してわれわれは拝見ができる、こうなると思いますが、大蔵大臣、そういうお取り扱いはできませんでしょうか。そうしなきゃおかしいと思う。
  119. 水田三喜男

    国務大臣水田三喜男君) 事実上は、地方財政計画も国の予算編成と同時に実際は行なわれております。と申しますのは、まず国の歳入がきまらぬ限りは地方交付税の額もきまりませんし、また国の公共事業費がきまらなければ地方財政の負担というものもきまって参りませんので、実際は同時にいろいろ地方財政計画も勘案されておりますが、ただ、従来の順序としまして、国の予算がきまってからそれに基づいて地方財政計画を立てる。これがはっきりして発表されるのがいつもおくれるということから、特にあとからやっておるような印象をお与えかもしれませんが、事実はこれは関連して計画されておるものでございます。
  120. 森八三一

    ○森八三一君 まだ質問は相当残っておりますが、時間が来ましたから、いずれ他日に譲りまして、これで終わります。   —————————————
  121. 館哲二

    委員長館哲二君) 岩間正男君。
  122. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は、日本共産党を代表しまして、池田総理を初め関係閣僚に対しまして、外交並びに国防、治安の問題についてただしたいと思います。  まず最初に、池田総理はこの六月に渡米し、ケネディ大統領と新安保条約調印後の国内体制の問題や、あるいは対中国の問題などで会談し、その際に、第二次防衛増強計画を持っていくということが伝えられています。この第二次計画の内容、さらにその中心点はどういうものか、お伺いしたいと思います。
  123. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 第二次防衛評価はまだできていないのでございますから、持っていこうといったって持っていけないはずであると思います。
  124. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことをあなたは言われるのでありますが、もう既定の事実であるということはニュースも伝えております。また、この前の例でありますけれども、三年ほど前に、岸総理が渡米をするにあたって、国会では、第一次防衛計画を持っていくのかどうか、こういうことを私は質問したことがある。このとき、いや絶対持っていきません、こう言いながら、実際は持っていったと思う。あなたは同じ轍を踏むんじゃないんですか。持っていかないのか、持っていくのか、この点お伺いしたいと思います。
  125. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 第二次防衛計画ができておるならよろしゅうございますけれども、できていないんですから、まだいつできるかということもきまっていないんですから、それがいつできるかきまらないのに、持っていくということにはならないと思います。
  126. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうような答弁で、あなたは今検討中だと、こういうことを言われるわけですけれども、しかし、もうその筋はできているだろう。骨格はわかっているだろう。大体でいいですから、その大筋は、一体どういうものを中心とするか、そういう点について明らかにしてもらいたい。
  127. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 第二次防衛計画は防衛庁でお作りになるんでしょうが、輪郭も何にも私聞いておりません。
  128. 岩間正男

    ○岩間正男君 国防会議議長としてのあなたに私はただしたいのです。それは防衛庁が作るかもしれないけれども、あなたのこれは責任ですよ。そういう問題について何も知らない、こういうふうに総理は言っておられるのですが、これは私は怠慢ではないかと思います。  それでお聞きしますが、第二次防衛計画の中に、自衛隊の核ミサイル化を実行に移すのかどうか、この計画があるのかどうか。具体的に、この問題は重要な問題ですから、御答弁願いたいと思います。
  129. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 第二次防衛計画のいかんを問わず、核兵器は持たぬということを言っておる。第三次におきましても持たぬつもりであります。
  130. 岩間正男

    ○岩間正男君 核ミサイル化はやらないということをはっきり確認してようございますか。
  131. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 核兵器は持たないということはたびたび申しております。
  132. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、その次にお聞きしますが、計画を立てる、そういう態勢の中で秘密保護法を作る、こういうことは、昨年の委員会におきましても赤城防衛庁長官が、これはわれわれの委員会に出まして、そういうことを言っております。あれから一年たっている。いろいろな態勢を考えるというと、秘密保護法を作るということがこの第二次計画と関連して必要になってきているのじゃないか。そこでお聞きするのでありますが、このような考え総理は持っておられますかどうですか、お伺いします。
  133. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 持っておりません。
  134. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、何ですか、あなたの責任ではっきり、池田内閣では核ミサイル化も秘密保護法もやらない、こういうことをはっきりこの議場を通じまして確認してようございますか。
  135. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまの答えでおわかりと思います。
  136. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、この議場を通じて声明されたのでありますから、確認したいと思います、日本国民とともに。  次にお聞きしたいのですが、防衛二法案を出して、統合参謀本部を強化し、また陸上自衛隊を十三個師団に改編したところの一体目的は何です。具体的な目的についてお伺いしたいのであります。
  137. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 防衛庁長官からお答えさせます。
  138. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 防衛二法案はただいま衆議院の方へ提案し、参議院内閣委員会にも提案理由を申し上げたのであります。防衛二法案の中で一つは陸上の現員の中、現在員の中で十三個師団に編成がえをする。従来は十の単位でありましたが、これを機動力あるいは効率化をはかる、こういう意味から単位人数を少なくして、小単位にして日本の地形に合うような機動的な能率的な要求に合うように単位を小さくした。それから、統合幕僚会議の権限を強くする案があるではないか、それはございます。今のように陸、海、空三自衛隊が事態に処しまして統合的に動けるような一つの方向へ持っていく方がより効率的であるし、またこれは世界各国一つ傾向でも、最近の、あるのであります。陸だけでやる、あるいは空だけでやるというのではなくて、三者を一体化して動かさなければならない。その場合に、ただいままでの統合幕僚会議は単なる調整機関でありましたのを調整から案を作るというような面において立案するような面も加える、そういうような改編を加えたのが今回の防衛二法案の、今御質問になった部分の改編、改訂案でございます。
  139. 岩間正男

    ○岩間正男君 この十三個師団の改編の問題は第二次防衛計画と関係がありますか、ありませんか。
  140. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 第二次防衛計画そのものは防衛力の整備計画でございますが、第二次防衛力整備計画は先般の国防会議におきまして防衛庁で立案して、やがてそれができましたときには国防会議にかけます。従って、十三個師団の編成は第二次防衛力整備計画そのものではございません、むしろ第一次防衛力整備計画は三十五年で一応完了していますが、そのワクの中で範囲を変えるわけであります。従って、重要な事項でありますから、国防会議法によりまして重要事項として国防会議を開いて決定したわけであります。
  141. 岩間正男

    ○岩間正男君 関係があるのかないのか、その点明白でありませんが、いかがですか。
  142. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 第二次防衛計画とは直接の関係はありません。ただ、これは第一次防衛計画でやりましたこともおのずから第二次防衛力整備計画の基礎にはなって参るわけであります。
  143. 岩間正男

    ○岩間正男君 まああいまいな答弁で、あるようなないような答弁ですが、その点で、まあ追及することは一応おきまして、私はさきの十三個師団の改編の問題についてお話があったのですが、これを小単位にして日本の実情に合うようにする、こういうことを言われましたが、それだけですか。この目的はそれだけですか。その点をもっと、抽象的ではわかりませんからもっとはっきり明確にしてもらいたいと思うのであります。総理いかがです、総理
  144. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 担当でございますから、私からお答えをいたします。現在までは六管区隊、一つの管区隊が大体一万二千七百名、四混成団、六千七百名ぐらいでありますかに分かれておりました。しかしながら、これをやはり九千あるいは七千の単位に分けるということによりまして、日本は盆地が多いわけでございます。山が。その所で大きな動きをするよりは効率的にいろいろ移動いたしましたり、あるいは隊形を整えて行動をやります場合に機動力を発揮する、あるいは効率的に隊が動ける、こういう意味からいろいろと長い間研究した、運用も従来ずっと研究いたして参りました結果、やはりこれを一応九千あるいは七千の単位に分ける方がよろしいという結論を得まして、ただいまの原案でもって国会にも御審議を願っております。従って国情に合う、地形に合うと同時に、隊の効率運用、こういうことを考えたわけであります。
  145. 岩間正男

    ○岩間正男君 それだけですか。もう少しはっきりつけ加えることはないですか。
  146. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) つけ加えるものはございません。
  147. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、私は、重要な点をあなたは、これは故意かどうかわかりませんが、見のがしていられる、答弁を欠いていられると思う。どうですか。あなたたちからいただいたこの政府の資料、「昭和三十六年度防衛庁予算要求案の大要、」この中で書いておりましょう。昭和三十六年度陸上自衛隊についてこういうことが書いてあります。防衛力及び警備力の向上をはかるため現在の六管区隊、四混成団を昭和三十六年度から昭和三十七年度の二カ年にわたり十三個師団に改編する云々と書いておるのでありますが、この中で防衛力及び警備力の向上、ことに警備力の向上をはかるとうたっておるのでありますが、この内容は、具体的内容はどういうことになるのですか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  148. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 自衛隊の任務は御存じ通り防衛並びに治安維持、二つございます。治安出動、防衛出動両者を兼ね合わせてやっておるということがその説明になっておると思います。同時に、民生協力としての災害派遣等も機動的にやる、こういう付加的な面も起こって参るだろうと思います。
  149. 岩間正男

    ○岩間正男君 警備力の増強ということを、あなたは先ほどの答弁でこれは抜かれたのでありますけれども、私はこれは現在の核ミサイル化の態勢とも関連して、特に国内の治安、弾圧態勢の強化、そういうものが具体的な内容になっておるのじゃないか、そのため政府は一方ならぬ努力をしておって、その態勢を着々進めておると思うのでありますが、この実態はいかがですか。
  150. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 自衛隊の任務は自衛隊法に書いてある通りで何ら変更を加えておりません。
  151. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはそういう答弁で、私の質問に対してあなたはそらしておられると思うのです。しかし、この問題については、非常に国民の民主主義、権利、こういうものと重大な関係があります。すでに今までこれは、国会でもこの内容については防衛庁側からもしばしば明らかにされておると思います。昨年の十月十一日の参議院内閣委員会の速記録を読んでみますと、防衛庁の小幡久男教育局長はこのための治安出動に対する教範につきましては「現在、治安出動の際の訓練の基準といたしまして、そこの教材という意味で検討しております。来年の四月までに部内で検討いたしまして、ほぼ満足なものができ上がりますれば、一応訓練の基準として作っていきたいという程度の意味をもって検討いたしております。」さらにまた「来年の三月」つまり今であります。今年の三月になるわけでありますが、来年の三月に大体第一次草案が内定する運びでやっております。」そうすると、この治安出動の要綱というものはこれはできておるでしょうか。いかがでしょうか。
  152. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 自衛隊の任務は防衛出動と同時に治安維持、しかし、この治安維持は本来は警察が本来の治安維持をいたしまして、及びがたいときには自衛隊が治安維持をするということは、自衛隊法の命ずるところであります。従って、その治安維持に際して勝手な乱れた行動のあることは人権にもむろん影響するわけでありますから、従ってそういう面から考えて治安行動に際してのいろいろな心がまえというものに対して草案を作って、ただいま検討さしておる段階であります。
  153. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、草案については今話が出たのでありますけれども、これはどうですか、どこで検討しておるのですか。検討しておるという話がございましたが、どこで検討しておるか。
  154. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 治安行動の教範草案というものを部隊の一部上級のところへ配付して、それによっていろいろ検討をさしておるのでありまして、まだそれはあくまでも草案の段階でありますから、これからそれによってさらに改善を加え、そうして最終決定にいかなければならぬ、こういう考えでおります。
  155. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは検討とか、草案と言われますけれども、私は事態はもっと進んでいるんじゃないかと思うのです。いろいろな態勢について私たちはこの政府委員答弁、閣僚の答弁の中からそういう事実を指摘することができる。安井国家公安委員長にお聞きしたいのでありますが、あなたの衆議院における予算委員会答弁、これは二月の十三日でありますが、こういうことを言ってますね。「お話の通りに、国内治安の問題に関しまして、これはむろん警察が第一線の任務を負っておるわけでございますが、防衛庁とも十分緊密な関連が必要でございまして、事前に防衛庁長官と国家公安委員長の間に協定ができております。国内治安のため必要な場合に自衛隊が出動します場合の基本綱領もきめておる次第で、なお、それの細目につきましては、防衛次官、警察長官との間にも細目協定をきめて、さらに必要な現地協定といったようなものもきめて、常時出動の際の遺憾なきを期しておるわけでございます。」、こういう答弁がございますが、これに違いはないと思うのです。これはまあ確認を求める必要はないと思いますがね。そうするというと、草案というような、そして検討というようなことを一方で言っておられますけれども、これと即応する態勢では、すでにこれは、この協定まででき、基本なにまできまっておる、こういうことになっておるのですか。これはどうですか。事態はずっと進んでおるのじゃございませんか。いかがでございますか。これは公安委員長にお聞きします。
  156. 安井謙

    国務大臣(安井謙君) 国内の治安を維持する第一義的な任務は警察にあるのでございます。ただ全般的に、国内の全体的な、動乱とかその他が起きた場合には、自衛隊の出動を要請する場合もあり狩ると、そういう場合の相談をいたすという意味の取りきめをしておるだけであります。
  157. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはだいぶ西村防衛庁長官の答弁と食い違いがある。一方は検討、草案、そういう段階でありますが、これははっきりそういうふうな事態がなければできない。これはいかがです。はっきりしておく。
  158. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 今岩間議員が言われた、公安委員長に御質問になったのは、これは基本的な協定、これはすでに昭和二十九年に結ばれておるものであります。きわめてこれは警察が治安維持ができない——法律に書いてある、警察が治安維持ができないと認めたときに、自衛隊に治安出動を要請、あるいは総理大臣の命令でやった場合に、基本的にどうするかというのは、昭和二十九年からそういうものはすでに大筋はきまっております。そういう場合に対する今度は具体的な行動について、人権というものに影響いたします。何と申しましても警察なりあるいは部隊の行動というものは。従って、われわれとしては、それに対して非常に細心な注意をもって練っていかなければならぬ。その指針というものを目下草案として検討中、こういうことであります。
  159. 岩間正男

    ○岩間正男君 草案で、検討ということを簡単に言っておられますけれども、その内容は、すでにこれは実施されておる。たとえば昨年一月に第一普通科連隊第二大隊、これが習志野から市ケ谷に移ってきて、治安出動の演習をやっている事実ははっきりございましょう。これは通称首都防衛部隊と呼ばれて、自衛隊のこれはいわゆるモデル部隊となっています。また、昨年の安保反対闘争のときを見ましても、治安出動のための外出禁止令、あるいは待機態勢がとられたことは、これはまぎれのない事実です。こういう既成事実を集大成して治安出動草案というものができていると思う。従いまして私は、草案がはっきりあるとおっしゃっているのでありますから、この草案の内容をここで明らかにしていただきたい。これは非常に重要な問題でございますから、この点お伺いいたします。
  160. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 治安出動の場合には、警察官職務執行法に準用いたしまして大体やるのでありまして、従って、それらの事柄はおのずから明らかになって参るのであります。特にただいま訓練等をやっておりますが、自衛隊の任務は防衛の任務とそれから間接侵略または治安と、こういうようなものが当然の任務でありますから、平素から私はこれを訓練することはあたりまえではないかと考えております。
  161. 岩間正男

    ○岩間正男君 この草案の内容について池田総理御存じですか。それから閣議でもこういう問題は検討されたことはございますか。
  162. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は寡聞にして存じておりません。従って、閣議にかかっていないと思います。
  163. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは重大なことですな。この内容はいずれ検討されると思いますけれども、重大な問題だと思うのです。一国の総理が、国防会議の議長が、これを知らない。そうしてこのような草案が行なわれているというところにこれは重大な問題があるのです。私はどうしても防衛二法の審議並びに当委員会予算審議におきまして、この治安出動草案というものを出して検討するということは、日本の民主主義のために非常に私は重要な課題だと考えます。これを出してほしいと思うのでありますけれども、いかがでございましょう。
  164. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) もちろん私どもは国会の正式の御要求があれば、それに対処して出し方については検討はいたして参りたいと考えております。
  165. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは委員長から要求してもらえますか、どうですか。出す意思があるのですか、いかがでございますか。
  166. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私も国会議員でございますから、国会の調査権というものは存じております。しかしながら、これは国会の正式の御要求に基づいた上、私どもとしては判断をいたしたいと、こう考えるのでございます。
  167. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはなんですか、委員長、正式の要求でこれ要求できますか。
  168. 館哲二

    委員長館哲二君) これはまた理事会に諮りまして、委員会の御意見を聞いて決定したいと思います。
  169. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは私は、この内容を検討するということが非常に重要な段階であると思います。それで、要求があれば出す、そういうことでありますが、実は私は要求したのです。ところが出してない。私はこれ要求したのです。ところが、片々たるものしか出していません。こんなもので審議できますか。どうして出さない。ちゃんと正式ななにで要求したのです。委員会の要求で理事会にかけて出した、行動草案を出せと、どうして出さないのです。
  170. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) もちろん国会で、正式の委員会として御要求があって、その上において、われわれとしてはその間において国の利益と重大な影響があるかどうかによって判断してきめて参りたいと、こう考えております。
  171. 岩間正男

    ○岩間正男君 出さないのですよ。これは要求を出して一週間ぐらいたった。いまだに片々たる、この草案について実にもう問題にならない、三くだり半の草案なんです。こんなものじゃないと思うのです。こんなものじゃないのです。なぜ出さない。当然これは出して、ここで審議するわれわれの審議に差しつかえないようにするのが当然のあなたの任務でしょう。ところが、実際は、正式の要求があれば出すとか言って、実際は出していない。なぜ出さないのです。何かこれは堂々と出せないそういう理由があるのですか。国民の前に公表でもできない何か秘密があるのですか。私はこの点、早くはっきりこの要求にこたえて出すべきだったと思うのですが、どうなんです。
  172. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 国会が、委員会といたしまして委員長中心に御要求いただき、その間において私どもとしては国家の重大なる利益に関係がどの程度あるか、それらを判断して私どもとしては決定したい、こう考えております。
  173. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもこういう当委員会をなめたような答弁では私はいかぬと思う。(「いや、なめておらぬ」と呼ぶ者あり)なめておらぬ、どうしてです。いや、そんなことはありません。あなたの方で私は当然出すべきだと思うのです。こういうものを出さないとすれば、私の方でこれは出さなくちゃならぬです。今まで出すといって出さない、そういう格好ではこれは話にならないですよ。私はこの草案についてこれはぜひただしたい。  それで第一に、この草案について、これはB版の二百七十八ページにもわたる膨大なものです。しかも、内容は非常に危険なものです。自衛隊が日本国民を敵視し、合法的な大衆運動を弾圧し、これを圧殺するための計画書であるといわれても仕方のないものです。このような行動指針を示すものです。しかも、これは単なる草案ではない。はしがきを読んでみましょう。「本書は、主として連隊以下の各級指揮官及び幕僚に対し陸上自衛隊の治安出動及びこれに関する訓練の一般的準拠を与えることを目的とし、一般の作戦行動に比し治安行動上特に考慮すべき特異事項について記述する」、こういうふうにはしがきに書いて、そのあとに防衛庁陸上幕僚監部の陸上幕僚長杉田一次氏の名によりまして、「陸上自衛隊の訓練に資するため治安行動(草案)を配布する。昭和三十五年十一月九日」、こういうふうにこれはなっております。こういうものをすでにもう部隊に出して、当委員会からも要求されたものに対して、いまだにこれは出していない。ここに非常に問題がある。  さらに私はこの目次の一部分を読み上げたいと思います。「第一編総論、第一章総説」、それから第二編に入りまして、「各種状況における行動、第一章総説、第二章出動準備、第一節概説、第二節情報活動」、その中に「第一款事態緊迫時における情報活動、第二款出動待機間における情報活動、第三節出動準備の推進、第三章移動及び集結、第一節概説、第二節移動、第三節集結、第四章制圧行動、第一節概説、第一款要説、第二款制圧行動一般の要領、第三款制圧の方式、第二節制圧準備、第一款要説、第二款情報活動、第三款関係機関との連絡・調整、第四款制圧計画、第五款制圧命令、第六款予行、第三節制圧(行動の実施)、第一款要説、第二款群衆と暴徒の分離、第三款軽易な装備を有する暴徒の制圧、第四款強力な装備を有する暴徒の制圧、第四節特殊地形等における制圧行動、第一款市街地における制圧行動、第二款山地における制圧行動、第三款夜間における制圧行動、第四款炭鉱地帯における制圧行動」以下云々となっております。  このはしがきと目次を読んだだけでもこれは大へんなものであることがわかると思うのです。私は時間の関係から、委員長にお願いいたしますが、この全文を公式な議事録にとどめていただきたい、このことをお願い申し上げたい。
  174. 館哲二

    委員長館哲二君) これはまた理事会に諮りましてその上決定したいと思います。
  175. 岩間正男

    ○岩間正男君 防衛庁はここに草案を持ってきておりますか、持ってきておりませんか。
  176. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 別に草案というものは、私はここでは用意はいたしておりません。
  177. 岩間正男

    ○岩間正男君 今、私の読み上げましたものは、防衛庁の草案と全く同じものだと思うのでありますが、これを認められますか。
  178. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私は草案の内容は具体的に存じておりません。ただ草案というものが、大体治安出動に必要な、いわゆる人権を損傷しないような、また部隊の規律を維持し、しかも、法律に定められた警察力が一般的に維持できなかった限度において、そのときに出動する行動の要領をきめたものだ、そういうふうに考えております。ただいまお読みになりましたのは、どういう形でどういうところからどういう文書があなたのお手元へ入っておられるのか私は存じません。
  179. 岩間正男

    ○岩間正男君 防衛庁の政府委員来ておりますか。今御序じないと言ったのですが、この事実どうです、防衛庁の政府委員
  180. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答えいたします。ただいま手元に草案を持ってきておりませんが、長官からお答えいた、しました通り、防衛庁としましては、そういった件については、しっかりした締めくくりをつけるという意味で基準を作っておることは事実であります。現在お読みになったものは、われわれのものと同じだかどうかはこの席で確かではありません。
  181. 阿具根登

    ○阿具根登君 もう草案ができておるとするならば、ただいま前書を読んだだけでも、私どもが黙って聞き捨てにすることのできないものをたくさん含んでいると思う。これは正しいものであるかどうか、はっきり委員長は責任を持ってここでさしなさい。
  182. 館哲二

    委員長館哲二君) 防衛庁お答えありますか。
  183. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 私といたしましては、治安のそういう平素の訓練の基準を示すための一般協定はすでにもう——最悪の警察で力が及ばないときにはどうするかという基本協定は、昭和二十九年に、ただごく大筋のものができておりまして、従いまして、法律上命ぜられたる任務を遂行する部隊としては、何らかの基準がなければいかぬわけであります。その基準には、ただいま教育局長が申しましたように、行動に関する基準案というものはできておるが、しかしながら、それを軽々に最後の方針としてきめるには、まだまだよく練ってみなければならぬという意味で、草案としてまだ検討の段階であるというふうに申し上げておるわけであります。ただ岩間議員がそこでお出しになったものが、それが内容的に私は事実であるかどうかということは、私としては今手元にございませんし、確認する余裕もないわけであります。
  184. 岩間正男

    ○岩間正男君 防衛庁長官は、さっき私は知らないと言ったでしょう。知らないと言っていて、私の出したものがそうでないかどうかということは私は言えないのじゃないかと思う。だから、私はこれは政府委員に聞いている。実際事務を取り扱っている政府委員に聞いている。政府委員はこれは逃げ言葉で言っていますけれども、これは事実だかどうかということ、この認定ぐらいできないでは仕事にならぬじゃないですか、どうなんですか、はっきり答えて下さい。
  185. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 防衛庁長官としてお答えいたします。  昭和二十九年に、当時の防衛庁長官と国家公安委員長との間に、法律に基づくいわゆる治安出動の場合においては、基本的にはどういうふうにする、もちろん警察の後詰として、何としても警察が最後までやる、しかし、警察力で維持ができないと法律に書いてあります場合におきましては、自衛隊は任務として治安維持をしなければならぬ。大筋として基本協定ができた以上は、その任務を遂行する基準というものは何らかできていなければならない、その基準をきめる草案程度というものは出してありますということは、私もこの席を通じて申し上げたのであります。ただ具体的な内容につきましては、私は手元にもないし、また十分見ているわけでもない、こういうことを申し上げておるのであります。
  186. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はそういう弁解を聞いているのじゃない。この草案と、それから防衛庁の草案が同じものであるかどうかということを聞いているのです。しかし、それについては何らお答えがない、政府委員からもお答えがない。私はけしからぬと思うのであります。要求した資料としては出していないで、こういう片々たるものでごまかしておいて、そうして今度私の方がこういうものを提示しますると、全く今のような言葉にしかならない。あなた方、持ってきていないのですか。そうしてここで審議している。私が要求しているのだから、従って、当然その関係のなには質問されるぐらいのことは見当つきそうなものだ。そんな怠慢なことでどうしますか。持ってきてないのですか。政府委員答弁して下さい。どうなんですか。
  187. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 現在まだ陸幕において検討しておる段階でございまして、私はここに手元に持っておりませんものですから、どのページがどのページにどうこうということは直ちにお答えできないのは残念であります。
  188. 岩間正男

    ○岩間正男君 今読んだ項目は目次にありますか、はしがきに。
  189. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) お答えいたします。詳しく覚えておらないのは残念であります。
  190. 岩間正男

    ○岩間正男君 健忘症みたいじゃしようがないですな。答弁にならね。そういう怠慢じゃだめです。  それでは、私はこの資料を当委員会に出されることは、当然要求したいと思うし、出すべきだと思うのですが、大体この内容の簡単な点について、私は明らかにしたいと思うのであります。第一に、この問題の中で一体、暴徒とかなんとかという言葉を盛んに使っておる。しかし、その内容はだれかといえば、ほかならない日本の国民であります。そうして、その対象になっているものを見ますというと、まずこういうことを言っているのです。「各種状況における制圧要領」という中に、「暴徒が老幼婦女子をたてとして行動している場合は、」そうして「スクラム等を組み、又は坐り込み・横臥等により部隊の前進を妨害する暴徒に対しては、催涙ガス等を使用してその妨害を排除する。状況により催涙ガス等を使用できない場合においては、やむを得ず引抜きを行なうことがある。この際においても煙を使用する等により暴徒を混乱におとし入れ、あるいは暴徒の積極的な行動に対しては直ちに他の制圧方法を用いうるようあらかじめ準備を整えておくことが必要である。」。それから、「引抜き」という条項を見ますというと、「引抜きとは、スクラムを組み、あるいは坐り込み等により制圧部隊の行動を妨害する暴徒を排除するためにとる基礎的な戦術的行動である。」、こういうふうに言っております。どうですか。すわり込みをやる、スクラムを組む、これは一体、今日労働者以外にこういうことをやる人がありますか。これを暴徒の名において、しかも、これはいろいろな武器を使っておる。こういうような弾圧体制をとっておるのが、まさしく治安出動草案の内容じゃないですか。この点どうです。あなたはさっきから弁解がましいことを言って、いかにももっともらしいことを言っておりますけれども、こういうことは自衛隊法のどこに書いてあるのか。自衛隊法から逸脱していると思うのですが、どうですか。
  191. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 自衛隊法をお読みいただきますと、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合」、一般の警察力をもっては治安を維持できない場合のみ、私どもの統轄しております自衛隊は出動命令を受けるなら、治安出動をいたすわけであります。ただいまの御意見といいますか、御質問になりましたような事柄は、やはり警察においても、一つの治安維持の行動として、望ましくはないけれども、とられる場合があるのであります。自衛隊の場合におきましても、それに準じて、警察力が全部維持ができないと認めた法律に命ぜられる場合において、大体似たような行動をとることができるという、それを言っておられるのではないかと思います。従って、自衛隊法によるところの任務の範囲内に入ると思います。
  192. 阿具根登

    ○阿具根登君 議事運営について。私は、先ほど発言したのですが、この草案が正しいものであるか、正しいものでないかということがはっきりしておらないのに、この内容について答弁を行なっておられるわけです。質疑をやられておられるわけです。これは正しいやり方ですか。これを自衛隊で作った草案だとお認めになって、ここで論争されておるならば、私は審議を進めてもらってもいいと思うのですけれども、それをはっきりしておらなくて、この内容について答弁を行なわれるというのはおかしいと思う。これが正しいものであるかどうか、はっきりさしてもらいたい。
  193. 小林英三

    ○小林英三君 議事進行。今阿具根君がおっしゃいましたが、私は、今、岩間君が質問なさっておることは、先ほどの草案というものが、防衛庁の事務当局も、防衛庁長官も、はっきりそれであるかどうかわからぬと言っておる。わからぬものをここで質問されるということ自身がおかしい。僕は阿具根君の言う通りだと思う。こういう問題は、委員長質問者に一応注意していただくこと、それからもう一つ、今、防衛庁当局が御答弁になりましたことは、これは草案について御答弁になったのでなくして、今、質問されたような内容について御答弁になったものと私は考えます。
  194. 阿具根登

    ○阿具根登君 ちょっと誤解があるのですが、これが違うということなら違うということを防衛庁長官はここではっきり言うべきなんです。違うとも言えない。あるいはそうでないとも言えない。そうして質問に入ればそれにお答えされるということは、これを認めておるということなんです。認めておるということになれば、今、読まれただけにわれわれもうんと質問がある。だから、これは正しいのであるか、正しいのでないかということをはっきりしてから入るということです。岩間君の方は正しいから持ってきておられる。これが正しくないとするなら、正しいのはこういうものがあるのだと、中身を、言われないなら言われないでけっこう、理事会で見せてもらってけっこう、そういうことを順序立ててやらなければだめだと思う。
  195. 館哲二

    委員長館哲二君) 委員長から長官に質問いたしますが、これは草案であって、何も現在行なっているものではないのですか。
  196. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 委員長にお答えいたします。ただいま岩間議員が質問されている内容については、私は確認ができません。ここに手元にもございません。問題は、自衛隊でもっては、先ほど来答弁申し上げておりますように、治安維持の任務がございます。従って、それに対しての基準というものを草案程度に検討をしておる、これは事実でございます。
  197. 館哲二

    委員長館哲二君) 委員長は先ほどから岩間君の御質問の材料になっていますものは、草案であると聞いている。草案であれば、防衛庁の内部で今検討せられているものでありまして、それについてここで論議といいますか、御質問になりましても、御質問ができないのではないかと思いますが……。
  198. 一松定吉

    ○一松定吉君 議事進行。私は岩間君が、これが防衛庁から出たものであるならば、防衛庁の何の何がしからどこで受け取ったのだ、これを前提として明らかにして、その提出した人はいわゆる防衛庁の正当の役人であり、その人から岩間君が受け取ったということであれば、それを否定して、自分はこういう人からこういう手続によって受け取ったのだ、それを防衛庁長官は、あなたは知らないのか、これならばよくわかる。出所がどこから来たかわかりもしない、ただ防衛庁から出ただけです、というのでは、抽象的なことであって、だれが岩間君にそれを渡したという事実は明らかになっておりません。だから、岩間君が、これは草案であるというならば、あなたのうちの庁の何の何がしから私が受け取ったのだ、これを主張し、これを立証した後において、これがいわゆる草案である、こういうことなら当然ですけれども、出所が明らかでなくて、どうしたのかわかりもしないものを持ってきて、そうして防衛庁の人にこれをどうだどうだと言ったって、それを防衛庁が認めていなければ、それはいや正しいものであるというようなことは、これは断言はできません。だから、もし岩間君が防衛庁に責任を負わせて、防衛庁で出所したものであるかどうかということなら、いつ、何どき、防衛庁のだれの何がしから自分が受け取ったものであるんだ、だから、その防衛庁の何がしを呼んで、その事実があるかどうか、その事実がある、それならば、防衛庁長官の言う通り、こういう順序で行くならば正しい。筋が通る。それをしないで、ただこの紙きれを持って来て、防衛庁々々々と言ったって、防衛庁長官はこれを認めるわけにいかぬのは、これは常識ですから、そういうようなことを一つ前提としてやらなければ、今、委員長は、草案として認めるというようなことをあなたはおっしゃったが、それは、あなたの言うことは間違いですから、そういうようなことを言うべきものではない。
  199. 岩間正男

    ○岩間正男君 一松先輩のお話がございましたけれども、これは、明らかにする段階が来れば明らかにできます。これは、日本の人民の力が非常に強まっておるということを具体的に示すものです。天網かいかい疎にして漏らさず、悪いことはできないものだ。こういう形でこれは入ったものでありまして、この問題についてわれわれはただしておる。そうして草案があるというのですから、その草案に違うなら違うと言ったらいいでしょう、あなたたちは。違うなら違う、ここが違う、それはだめだ、こう言って質問に対して答弁するのがあなたたちの任務なんです。今言ったような形式論になっておりますから、そういうことでは話にならぬと思います。  だから、委員長の処置はどうするのですか。私は、ここではっきりこの草案を持って来て、ここで対決するならするでよろしい。とにかく私は今ただしておるわけです。この内容についてただしておるわけです。  それから、草案という話でありましたけれども、草案という段階ではないじゃないですか。すでにこれは部隊に配付されて、そうして先ほど申しましたように、実は一部は実施されておるじゃないか。こういう一つの実施されておるものなんです。こういう形で、草案などと言ってごまかされたって私はいかぬ段階になってきておると思う。従いまして、委員長、はっきりこの問題を処置していただきたいと思います。
  200. 館哲二

    委員長館哲二君) じゃ委員長からお答えいたしますが、今、一松委員からの話につきましても、私は、今草案ということでお話があったのですが、草案は役所の中での草案でありまして、それをここで議論をしてもしようがないと思うのです。
  201. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、草案だって非常に重大です。草案のうちにやらなくちゃならないということもあるし、事実上これは草案の意義を持たしていると私たちは判断している。そういう点でこれは質問を継続したいと思うのですが、これについて——まあ妨害しないで下さい。  その次に、第3款「軽易な装備を有する暴徒の制圧」「この種暴徒は、しばしばわが武器使用を封ずるため、暴力を用いることなく多数の座り込みなどにより部隊の行動を妨害する。」さらに目次を見ますというと、どういうものが対象になっているかというと、「特殊地形等における制圧行動」「市街地における制圧行動」「山地における制圧行動」「夜間における制圧行動」、さらに、「炭鉱地帯等における制圧行動」、この中で炭鉱地帯というのは、炭鉱地帯、さらに工場地帯、電源地帯というような対象を含んでいるのであります。これはまことに私は、今の日本の現状から考えまして、労働者に対する、大衆運動に対する弾圧としか考えられないのであります。  一体、西村防衛庁長官はこの事実を軽く見られましたけれども、私はお伺いしたい。三池問題あるいは安保のために、国民が自分の権利、自分の生活を守るために当然憲法の保障する団結権、労働権によって行動したことについて、あなたは一体これを暴徒とみなすのかみなさないのか、どうですか。
  202. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 草案についてはお答えできませんが、一般論として自衛隊の行動の基準を申し上げますが、この間の衆議院予算委員会でもお答えいたしましたが、昨年の安保騒動の程度では、まだ警察力でも治安維持できる段階であると私は断定し、自衛隊は出ていないし、また、出すべきでないと私は考えております。
  203. 岩間正男

    ○岩間正男君 問題はむしろ逆なんじゃないか。昨年のように、ああいうような事態があって、ことに安保については、ハガチー事件というものがあって、ハガチーが御承知のように日本の自衛隊の行動についていろいろ意見を出した。アメリカの要人から、なぜ一体アメリカで作ってやった自衛隊を使わないのか、こういうふうなおしかりもあったのじゃないか。こういうような態勢の中で、あなたたちがこれを治安出動の名において基本化しているというのが今日の実情じゃないですか。私は、まず第一に、この対象にされている対象を見ただけでもこれは大へんだと思う。このような形でこの草案が行なわれるということは、これは大へんです。しかも、言うことを聞かなければ銃を発射する、催涙ガスをかける、こういうことでは、まことにこれは問題にならないと、こう考えるのであります。  時間の関係から、第二にこの制圧の問題であります。制圧はどのようにして行なわれるか、いかなる部隊があるか。まず第一に主動部隊、これは連隊から分隊まで、小銃編成部隊、機関銃を含む、特車・装甲車部隊、航空部隊、空挺部隊、落下傘部隊を含む、化学部隊、これは催涙ガス、煙幕等、こういうような部隊が、これが治安行動のために出動することになっている。この点は、警察庁長官、認められますか。
  204. 小林英三

    ○小林英三君 委員長議事進行。私も先ほど申し上げました。一松君も阿具根君もおっしゃっておられたようです。今、草案という問題は、防衛庁当局の担当は認めていないのです。草案であるかどうかわからぬと言っている。それを岩間君は草案として質問されておる。防衛庁の任務についてばく然と御質問になるのはけっこうであります。委員長は、草案であるかないかわからないものを草案のように質問させるということは矛盾している。委員長、注意していただきたい。神聖なる予算委員会で……。
  205. 阿具根登

    ○阿具根登君 委員長議事運営になりますと、これが草案じゃないとおっしゃるならば、休憩して、理事会を開いて、理事会で草案出してもらいたい。そうしなければ、草案であるか草案でないかわからぬことになるわけなんです。草案でないとおっしゃるならば、草案があるはずだから、それをわれわれに見せてもらいたいということを言っておるのです。その上で、草案でなかったら、そういう質問はやめてもらい、草案だったら、当然これは答弁しなければいかん。これがはっきりしていないじゃないかと言うのです。
  206. 大谷贇雄

    大谷贇雄君 議事進行。今の御提案でありますが、一体、先ほど一松先生からお話しのように、どこから入手したものか。何が何だか、やみの中から出たものか何だかわからぬ。そういうものを土台にしての質問、これを委員長は草案云々ということでありましたが、そんなそそうなことを言ってもらっては困る。これは委員長、お取り消しを願いたい。そうして岩間君の質問に対しては、先ほど防衛庁長官は、そういうものはない、知らぬと、はっきり言っておるのだから、従って、その防衛庁長官の言葉を信頼をしていくことが当然の委員長の御処置であって、それを委員長が草案云々なんという、そそうなことを言ってもらっては因る。私は従って、今、理事会を開いたらというお話でありますが、そういう架空な、やみから出てきたか、どこから入手したかわからぬようなものについて、ここで岩間君が論議をされ、質問をされる、それに対しては、防衛庁長官は知らぬと言っているじゃないですか。そういうことの理事会を開く理由は私はないと思います。
  207. 梶原茂嘉

    ○梶原茂嘉君 議事進行で発言したいと思います。岩間委員は岩間委員としての考えに基づいて質問をされていると思います。草案をどう判断されておるか、これは岩間君の考えに待つほかないと思います。防衛庁長官が長官の立場において言われたことも、その通りであると思います。しかし、今質問されておりまする事柄は、それから、それに対する政府からの答弁は、草案には関係はありましょうけれども、本質的には、むしろ自衛隊の治安出動に関する事柄が対象であるように思います。従いまして、岩間君がそういう趣旨で、自衛隊の国内治安出動の本質に関連しての質問を継続され、それに対して長官が答弁されていく、私はこれでいいと思うのであります。どうぞ議事の進行を願いたいと思います。
  208. 館哲二

    委員長館哲二君) 委員長は、この草案に基づきまして、防衛庁の方とは別にお話ししておりません。しかし、今ちょうど、梶原委員のお話のありましたように、岩間君が岩間君としての、自衛隊の活動の問題について、これをもとにして意見をお述べになっているので、それは岩間君の御意見をお述べになっていると私は聞いて、それに対する防衛庁長官の立場から御答弁があるということでいいんじゃないかと思っております。
  209. 阿具根登

    ○阿具根登君 それはそれでいいんです。梶原委員あるいは委員長の発言、それはそれでよろしいのです。しかし、防衛庁には草案があるということをはっきり言われておる。これが違う違わぬは別問題です。どこから入手したか、しないかということは別問題です。自衛隊にある草案を提出してもらいたい。
  210. 館哲二

    委員長館哲二君) それは後刻理事会を開いて御相談をすることにいたしたいと思います。岩間君、質疑を願います。
  211. 阿具根登

    ○阿具根登君 それで質問は続けてもらってもいいんですが、きょう、もうこの問題だけで三十分以上論争している。ほんとうに誠意があるなら、自衛隊からとってきても間に合う。これがあるのだったら間に合うはずです、草案があるのだったら。だからおかしいじゃないか、みんな疑惑を持っておる。それを与党の皆さんは、進めたいからそう言うけれども、これは疑惑のままじゃいかぬです。正しいとか、正しくないとかやるべきなんです。審議すべきなんです。それならば、この時間になぜ持ってこないか、持ってこれぬということはあり得るのだけれども、そういうふうになるでしょう。だから、そういう点は、岩間君の質問質問で今進めるとおっしゃるのですから、それは進めてもらってもけっこうだと私は思う。しかし、この草案があると言っておられるし、こういうのが出てきたという現実から、その草案を出してもらいたい。これを取り上げていただきたい。
  212. 中野文門

    中野文門君 ただいまの阿具根さんの発言でございますが、先ほど草案の提出を求められた質問者に対しまして、防衛庁長官は、委員会の成規の要求があればということを御答弁になっておったようでございます。でありまするので、この草案を委員会の成規の手続によって本委員会提出を求めるか、求めないかということは、適当な、なるべくすみやかな機会の理事会において検討をして、その結果に私は従うべきだろうと、かように思います。  さらに、付言をいたしまするが、岩間君の発言は、先ほど来、委員長も申されましたように、自衛隊の活動自体に対して、それが草案であろうがなかろうが、その内容についての質問を、私は引き続き御継続に相なって、草案の提出を成規に求める、求めぬの問題は、後刻理事会において協議をいたすように取り計らい願いたいと思います。
  213. 阿具根登

    ○阿具根登君 お忘れになっておると思うのですけれども、岩間君が言われる通り、この要求は理事会で正式になされたのです。そうして理事会で認めて要求したのです。私らもこういうものであるとは思わなかった。しかし、岩間君が草案を要求したのは事実です。理事会で認めたのも事実です。だから理事会で正式な手続を通じて委員長から要求してあるはずです。それが出ておらないのです。だから僕は言っているのです。だから、今ここで出すの出さぬの言うのではなくて、出さねばならないようにきまっておるのです。
  214. 千田正

    ○千田正君 議事進行。二、三分ここで休憩して、委員長の席のところに理事の諸君だけ集まっていただいて取り扱いについてやっていただきたい。その方が早いんじゃないですか。
  215. 館哲二

    委員長館哲二君) いかがですか。
  216. 中野文門

    中野文門君 阿具根君の御発言によりますと、理事会においてこれを要求したのだ。理事会において要求した資料は、発言者におきましては、岩間君におきましては、不満足であるかもしれないけれども、一応出ております。さらに具体的なただいま問題になっておりまするその資料の提出につきましては、理事会の段階における一つの結論というものと、このように論議をされまして、その資料を委員会において正式に提出を求める、求めぬということは、おのずからその取り扱いの上に私は相違があることは、これは当然であろうと思います。理事会が一応の線、正確に私が判断いたしまするならば、理事会のその話し合いというものは、これはこのような議論を逸して判断をいたしますというと、正規な委員会において私は決定をなされて手続さるべきのが当然な筋であろうと思いますので、いずれにいたしましても、本問題は、私は円満に後刻理事会において協議をされることが通常上よろしい、かように判断をいたしまするので、さようお取り計らい願いたいと思います。
  217. 館哲二

    委員長館哲二君) これにつきましては……。
  218. 阿具根登

    ○阿具根登君 これは重大なことです。理事会がそういうことであるならば、本委員会の始まる当初に私は中野君から、君は社会党の代表として理事会で発言したため云々と、ここでこっぴどくしかられておるのです。これは理事会において結論を出さなかったということは反省すべきなんです。皆さんが反省すべきです。それを理事会できめておったのを、なお委員会でもう一回やり直すんだと言われるなら、今後の理事会に対して私らは責任負えません。今の発言は取り消してもらいたい。
  219. 館哲二

    委員長館哲二君) ちょっと委員長から申し上げます。これは岩間君から資料要求の書類が出まして、理事会に実はまだかかっておらなかったのを取り次いだだけなんです、これは。
  220. 阿具根登

    ○阿具根登君 またそういうことをおっしゃる。
  221. 館哲二

    委員長館哲二君) それで、先ほど委員長が申し上げました通りに、理事会で一応相談をして決定をしたいということを最初に申し上げました。それによって進行したいと思います。岩間君発言をしていただきたい。
  222. 阿具根登

    ○阿具根登君 そういうように一方的にきめてしまえばそうなるんですよ。実際あすこで室長が出したあのものをみな検討して、それぞれ必要な資料はございませんとか……。
  223. 館哲二

    委員長館哲二君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  224. 館哲二

    委員長館哲二君) 速記を始めて。暫時休憩します。    午後四時五十九分休憩    ————————    午後五時五分開会
  225. 館哲二

    委員長館哲二君) 休憩前に引き続いて、委員会を開きます。
  226. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はこの審議権は、あくまでこれは守らなければならぬと思いますし、それでこれは継続をするわけでありますけれども、当然これは政府答弁は、私の質問に対しまして、これはそうでなければそうでないと、はっきり否定する、そうならそうと肯定する、こういう態度でなければならぬ。ところが何ともかんとも言えない。しかもここに草案を持ってきていないで審議できますか。審議をやるといっても、何を対象にしてやりますか。先ほどの政府委員では、何もわからないと言っておりますが、これはどうしますか、防衛庁長官にお伺いしたい。
  227. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) あなたがいわゆる草案とおっしゃいますものを、そこで持っておられるようでありますが、それ自体、私は何ら関知しているものではありません。また防衛庁で、かりにそういうものが草案としてありましても、これは部局の内部のものであって、私どもが決裁したものでもない。防衛庁全体で意思決定していない。従ってそれを御審議の対象にするということは、私は御答弁できぬが、一般論として、あなたが御質問される部分においては、私は先ほどから答弁しているのであります。
  228. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは、重大な問題だと思うのです。中身を見ればわかる。これだけ重大な問題が、防衛庁の庁議にかけないなどということできめられたとしたら、日本の今後はどうなるか。重大な問題です。  私はそういう意味で、中身について質問しますから、これに対して明確に答弁をしてもらいたい。事実、あるのか、ないのか。たとえばこの中の制圧の中で、「執銃行進により示威を行なう場合」、これは「制圧隊形をとり、銃剣の矢ぶすまをつくって行なう行進は、指揮官が暴徒に接近し波乱を惹起しない確信のある場合にのみ実施する。」、その次には、さらに「特車・装甲車による示威」、こういうものも、はっきりこれは規定されております。さらにそれだけではありません。航空機による示威行動、この一節を読み上げますというと、「航空機による示威においては、特に航空自衛隊の航空機の編成、低空飛行等を軍骨反復するときは効果が大きい。」、「空挺降下は、暴徒に与える心理的効果が大きい。」、こういうようなことを、これは書いております。さらに直接制圧のやり方でありますが、「直接制圧にあたっては、事前に必要な広報・警告を行ない、放水・発煙等により暴徒を制圧し、間合いを保持して前進する。この間状況により催涙ガスを使用し、一部暴徒の引抜き等を行なう。なお、射撃、刺突は通常最後の手段として行なう。」、それから、そういうような問題と、さらにヘリコプター等をもってするガスの散布、こういう問題。それから放水・煙・催涙ガス等の使用についてのいろいろな注意。それから「軽易な装備を有する暴徒の制圧」、これはその制圧のやり方については、「状況により狙撃下等の射撃により妨害を排除する。」、こういうような、直接これは射撃をして、ねらい撃ちをする射撃兵を使う、こういうような軍隊行動まで、はっきり規定されておるのであります。私はこの問題をこれは詳細読みますというと、大へんでありますけれども、今の制圧の問題だけでも、実に重大な問題があります。こういう点について一体、はっきりこの事実を否定するのか。するのならする立場に立って、こういう事態を、草案の中にはないのだ。こういうことを明確にしてもらいたいと思います。しかしあなたは、庁議にかからないのだから責任はないのだ、草案の段階だと言って、このようなものを、これは実際部隊に流し、そしてそれによって実際に訓練を行なっておる。こういう事態に対して、防衛庁長官としては、どういう態度をとるか。はっきり答弁してもらいたい。
  229. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) あなたのお持ちになっておられるものは、あなたが、どういうふうにして草案と称しておられるか、私にはわかりません。ただ自衛隊は、御承知通り、自衛隊法による任務によって、直接侵略の防衛と間接侵略その他の場合における治安維持をやる、これだけの任務上においての、いろいろ従来も訓練もしたでありましょうし、今後も基準を考えていかなければならぬ。このように答弁いたします。
  230. 岩間正男

    ○岩間正男君 自衛隊法のどういう根拠によるか、言ってください。
  231. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) 自衛隊法には、「(命令による治安出動)」におきましては、「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができない……」ときに出動すると、こうなっておりますが、この任務の遂行であります。
  232. 岩間正男

    ○岩間正男君 その内容については規定されていないですね、具体的な細目です。しかも、これはほんとうに主権者としての日本の国民の人命に関する問題で、こういうものを軽々しく、そういう……これは法案の逸脱ですよ。しかも警職法との関連がある。これは警職法の範囲を越えないということになっておる。まことに警職法の範囲をはるかに越えている。催涙ガスから刺殺もする。矢ぶすまを作る。こういうふうなやり方に対して、自衛隊法の範囲だと言えますか。これは大へんな暴言だと思います。もう一回お聞きします。
  233. 西村直己

    国務大臣(西村直己君) あなたがおっしゃいますのは、あなた自体のお持ちになっておる草案によって言っておられるのでありまして、私どもは、あくまでも自衛隊法に基づいて行動する。こういう考えです。
  234. 岩間正男

    ○岩間正男君 それでは、あなたの部隊に流している草案を全部破棄しますか。そうすれば、そういうことになります。こういうことに、ここで答弁した限りは、はっきりしなさい。あなたの草案全部解消しなさい。それならはっきりわかる。あなた、これはやれないでしょう。これをはっきり何して下さい。そういうことがないということを言い切れますか。言い得ないで、そういうことを言っても始まらないと思います。  そこで、次に続きますが、私は今度は、自衛隊は、情報をとってるのは、何を対象にして情報をとってるかというと、「政治・社会・経済・交遊・通信等を重視し、特に地域内の政党・組織団体・外国人等の組織、勢力、従来及び現在の活動状況、世論、社会情勢、経済」の特性等を考慮する。」こういうふうな点で、全部対象になって情報がとられている。それから住民等の状況については、「暴徒に好意を有するか、又は中立的立場にあるか、その程度・規模はどうか、また指導的立場にある者は誰か、」そういう住民の情勢、「また暴徒に関するもののほか、一般住民に関する情報資料の収集に着意する。」それから「特殊な手段による収集については、通常上級部隊において作成される計画に基づいて実施する。」そういう情報、資料の処理、この処理の仕方なんかでも、これは実に重大な問題が含まれております。こういうような問題を総合して考えますときに、私は、これは全く治安出動の名によって、実は警察でさえも行なっていないような、これはスパイ活動が行なわれている。これは全く昔の憲兵の復活じゃないか。こういう形で、しかもそれに、日常自衛隊には協力しなければならない。それから、いろいろな協力機関を設けて、それに協力さして、これはやってるのであります。  これも時間の関係から、詳細を申し上げませんが、先ほど委員長が、速記録に全部記載していただくことになっておりますから、これで明らかにしたいと思います。
  235. 館哲二

    委員長館哲二君) いや、委員長は別に、承知していません。諮って、と申しております。
  236. 岩間正男

    ○岩間正男君 さらにお聞きしたいのは、この出動は、自衛隊の下級幹部が勝手に判断してやる危険が十分あるんです。これは部隊出動の場合、発砲の場合と、この詳細な条文によれば明らかであります。火器の使用はなるべく下級指揮官において決定するが、やむを得ない場合には、現場の中隊長または小隊長が決定すると言っておりますが、おそらくやむを得ないという名によって、現場の指揮官が、こういうものをどんどん実行していく事態、こういうことが私は行なわれるのじゃないか、これは大へんなことになります。  こういう点を、われわれははっきりここで指摘し、そうしてこの草案の不当性について、断じてこれは敬服することはできないと思うのであります。
  237. 館哲二

    委員長館哲二君) 岩間君に申し上げます。持ち時間が終了をしておりますので、御了承願います。
  238. 岩間正男

    ○岩間正男君 さらに、この他機関との協力をうたっておるのでありますが、この協力関係の機関というのは、警察、公安調査庁、海上保安庁、検察庁、特別司法警察職員、入国管理機関、消防、それだけではございません。この他皇宮護衛官、国有鉄道の役職員で指名された者、監獄等の長、営林局署の職員で指名された者、公有林野の事務を担当する北海道吏員で指名された者、森林河川関係君で指名された者、そういう者を、その他ここで等々あげれば切りがございません。その他の、国の機関として協力機関になるのは、運輸、通産、郵政、建設、厚生、大蔵、地方公共団体は、都道府県及び市町村、公共企業体等の機関では、日本国有鉄道、日本電電公社、日本赤十字社、日本放送協会等、こういうものを全部これは協力させ、自衛隊を中心としまして、国民の身辺に対しまして、あらゆるこれは制圧を加えてくる、こうなるに違いないと思う、これは体制の変化ですよ。重大な問題ですよ。  こういう事態について池田総理大臣は、どう一体、お考えになっておられるのか、この点を一体、あなたは知らないとおっしゃったのでありまするけれども、このような草案を、このまま許していいのか、御答弁願いたいと思います。
  239. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、草案があること自体も知りません。ましてや内容のことにつきましては存じておりません。従って、これにつきましての答弁を差し控えます。
  240. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は総理答弁としては、まことにたよりがないです。それでは日本の国民は、とても安心していられないと思うのであります。私は、まだまだこの内容について詳細お聞きしたいのでありますが、最後に、この質問を終わるにあたって、特に念を押しておきたい。  以上、指摘した点だけから見ましても、この治安出動の要綱は、自衛隊を使って、平和と独立、民主主義と生活安定のため戦い抜いている労働階級を初め、日本国民を圧殺——自衛隊の武力をもって直接圧殺する目的もって作られたものであります。かつての日本帝国主義軍隊さえも計画しなかった、日本人が日本人を殺すという、この戦標すべき計画のもとに、日本国民は、その目から耳、毛穴まで押えられようとしております。  しかもここで、特に指摘せねばならないことは、このようなおそるべき非人道的な殺人計画が、国会の審議にもかけられず、憲法はもちろん警職法や自衛隊法にすら違反して実施されつつあることであります。国民の生命を奪い、基本的人権をとことんまで圧殺する、このような重大事項が、防衛庁と自衛隊の手によって、単なる施行細目として独善的、一方的に人民の頭に襲いかかろうとしているのであります。これは新安保体制下における軍国主義復活強化の姿をまざまざと見せるものです。このようなことが白昼公然と大手を振ってまかり通ることは断じて許されないと思います。政府はこの全貌を国会、国民の前に明らかにして、明らかに渡米みやげの一つであると思われるこの治安行動草案と、その実施計画を即時私は廃棄すべきであると思います。池田総理にはここではっきりそのことを明言さるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  241. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 日本国民が同胞でありながら、血で血を洗うということは絶対にないようにお互いが努力しなきゃならぬと思います。しこうして、私は見てもいたい、聞いてもいないものをアメリカに持っていくというふうな変な御想像はしていただかたいことを望みます。
  242. 館哲二

    委員長館哲二君) 岩間君の質疑時間は終了いたしました。  次回は明後日九日午前十時から開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十二分散会