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高田なほ子君 このことだけに長い時間を取ろうとは
考えておりません。社会防衛の見地から、お気持ちはよくわかります。しかし、この種
立法は社会防衛、社会的な防衛の面だけを強調することは危険だろうと思う。なぜならば、この種
立法は個人的な
一つの自由を拘束する
内容を持っておるからであります。従って、これを
治安立法と呼んでいるのでありましょうが、そうであればあるほど、社会防衛とともに、私が反面
心配するこれらの
規制等の問題については相当しぼって、最小限度、しかもすべての
国民に明確にわかるようなものでなければならないという気持がいたしますが、その条件というものは、必ずしも本
法案では満足されてないような点から、
質問が残ったとか、疑問が解けないというようなうらみが少なくとも、
一つの政党にあるということについては、これは少しお
考えをいただかなければならない点だろうと私は
考えます。従って、こういう見地から、参議院の
法務委員会のここにそろっておりますわが党のメンバー、
占部、
亀田、
藤田、この方々がとにかくこの疑義というものについては十分にこれはたださなければならない非常な責任を持っておられるわけなんです。私はそういうような重い責任をみずから――負わせられたのでない、みずから感じて、冒頭
質問をしようとするときに、やれ
中間報告だ、やれ
質疑打ち切り、これは脅迫ですよ。これこそ
暴力です。(「そんなことだれも言わぬがな」と呼ぶ者あり)いや、お待ち下さい。そう言ったというのでない。もしそういうようなことが現実にあるとすれば、私はこれは悲しむべき
事態だと言うのです。だから、
衆議院の
提案者はそれは御満足だと言わなければならぬですよ、
提案者が不満足だなんて言ったらひっくり返ってしまいますから。それは不満足だと言っても、本会議は通ってしまったのですから、やっぱり言わなければならないでしょうよ、心で幾ら思ったって。そういうわけですから、十分なるこれは
審議を尽くさしてもらいたいという意味から、今この経過について
立案者にただしているわけなんです。
次に
お尋ねをいたしますが、去る昭和二十七年に
破防法が上程をせられました。本
法案はことごとく
破防法といって差しつかえない。第四条の罪の
規定、五条、六条のうち六条は削除せられました。五条、九条、これらを除いては 全文
破防法でございます。全文これことごとく
破防法である。この
破防法は
審議の
過程でいろいろ 私も当時議員になったばかりでございまして、大へんもの珍しく
法務委員会に傍聴を実はさしていただきました。当時さっぱり議員さん方の
質疑応答の
内容すらもわからない状態でございましたが、非常な熱烈な
質問が展開せられたわけです。今は自民党でいらっしゃる一松さんが、当時扇動という問題について堂々たる
法律家としての議論を展開された。私はいまだにそのことが深く印象に残っておる。かくして
破防法は二十七年の四月十七日に衆参両院ともに提出をされて、参議院は
予備審査をいたし、五月の十五日に
衆議院を通過したものを受領して本審査に入った。約一カ月余り参議院は
破防法について非常なる議論を展開された。六月の十九日に参議院
法務委員会は
破防法を否決いたしました。そしてこれが
修正になって、
結論として通ったわけでございますが、御
承知のように
破防法の
立案過程においても相当長時間の、これは正式機関を経ておると私は
承知しております。しかも、なおかつ三カ月の議論の中で参議院
法務委員会は
教唆、扇動の
文字をめぐって激しい議論が展開されて、否決というような形に至ったことを歴史的に私
どもは今思い起こすわけであります。このような歴史をたどった
破防法の全文が、今回の
政防法の
内容であり、
破防法の場合には、御
承知のように
内乱、
外患誘致、それらの予備、陰謀、
教唆、扇動、
殺人、放火、列車転覆、爆発物の所持というような非常な重大
犯罪がざっと並んでおるわけです。今回の
政防法は、
内乱、
外患誘致、放火、
殺人、爆発物の所持、列車転覆、そういうようなたぐいのものではない。
内容は
殺人傷害、
逮捕監禁、強要、そして
暴力行為の処罰法、それから首相官邸、
国会の議事堂の中に不法に乱入する
行為、こういうように……。
破防法の罪科は非常に常識的に見てこれは重い。今度の場合には、この
暴力、脅迫、
逮捕監禁というようなものも含まった
破防法と同様の罪科、それ以上の罪科を課しておる。しかもその上に六条が削除されてそして九条の届出制がさらに加わって、大へんな
内容のものになっている。そういうものなのに、かつての
破防法の
審議には三カ月を要している、しかるに今回は十五時間である。これでいかにこの異常な
事態に対処するために万やむを得なかったと言っても、
治安立法の
立法者としての態度と申しますか、御認識というものが、あまりにお急ぎになられたのではないかという、そういうきらいを実は持つわけなのであります。また同じように、最近この
治安立法の制定は、昭和二十七年の四月三日刑事訴訟法の一部
改正が
提案された。しかしこれはやっぱり中には問題が含まれて、緊急逮捕の件ですか、暴行罪や脅迫罪、これらを緊急逮捕という罪名に加えるというような
内容を持ったもので、
暴力関係の
内容を持ったものであったと私は
承知しておる。これまた
審議未了でございます。あけて三十三年の五月にあらためてこの刑訴法の一部
改正というものが
提案をされて、非常な慎重な
審議の末に、
衆議院並びに参議院においても本
法案で問題になっている私文書の毀棄あるいは器物毀棄罪を非親告罪としようとした
刑法二百六十三条、二百六十四条の
改正規定を削除するというような
修正までされた。非常に今日までわが国の
法律、いろいろの
刑法の歴史を見ると、絶えず慎重であり、絶えず細心の注意が行なわれてきておる。私はこれはもっともなことだと思う。民主国家であればあるほど人権が擁護されなければならない。アブノーマルな
事態があるからといって、このアブノーマルなものを削除しなければならないからといって、これらの慎重な手続が省略され、議員の
審議権が剥奪された中で十五時間の
審議でこれらのものが通っていくというこの姿こそ私は問題だろうと思う。私はわが国のこの
刑法の歴史というものは伝統としてこれは尊重しなければならないものだろうと思うのです。その伝統が破れている。破れた中で人権が守られるのか。
刑法のわが国の歴史は、私は学者じゃありませんから知りません。しかし、最近の
刑法改正に見、あるいは
破防法の制定に見ても、いずれもこれは非常なる注意が払われておる。議員は附帯決議をし、あぶないところは削除をしている。そういうような歴史というものは、お互いさまこれはここでもって思いを新たにして
考えてみるべきである。アブノーマルな
事態だから、そら
法律だ、そら縛れ、なるほど社会防衛の見地からそういうお気持はわかります。ほんとうにそれはわかります。わかりますが、なおかつわが国の
刑法の歴史、人権の尊重はしなければならない。
民主主義社会における
刑法の
改正等については、特に
議員立法である限りにおいては、議員の良識とわが国
刑法上史上の名誉にかけなければならないものがあるのではないでしょうか。私はこういうことを、みずからが未熟なるがゆえに、しかも私はこういう専門的な知識を持たないがゆえに、むしろこのわが国の
刑法の歴史の伝統というものに対してえりを正して、このようなことをあなた方、皆さん方に御反省をわずらわすことができないものであろうかということを、謙虚に実は申し述べておるようなわけでございます。私は地方行政において
門司先生の絶えざる熱心な御
審議の態度、議員の中でも非常に尊敬を申し上げておる。
門司先生の日ごろの慎重なる御態度から
考えたときに、少し
門司先生もあせり過ぎられたのではないだろうかというようなことで、私はむしろ
門司先生の名誉のために、これは少しおあせりになっておられたように思うというような形で、むしろ
門司先生の御
立場を弁解する側に回っているようなわけです。先生のことを知れば知るほどですね。
いろいろと申し上げましたが、私は
質問よりも何よりも、問題はこの基本的な態度、基本的な腹がまえというものなしにこの
法律を扱うことは非常に危険であるとみずからを戒めているがゆえに、先輩の
早川先生、あるいは
富田先生、あるいは
門司先生に向かってまことに非礼千万なことを数々申し上げたようでございますけれ
ども、これは民社党の
法律ではない、自民党の
法律ではない、
国民のための
法律である、こういうような観点に立って申し上げたわけであります。
次に
お尋ねを申し上げたいことは、これまたはなはだ申し上げにくい点でありますが、五月の十三日にこれを私拝見したわけですが、一般の
新聞紙上で拝見したのは多分
国会に提出された十七日より二、三日あとであったろうと思います。きょう
新聞の切り抜きを持って参りませんでしたが、どうも二、三日あとであったように思うわけです。私ものんきなものでございまして、実は三党の話し合いのときに、
富田先生から、社会党の先生方、少しこだわり過ぎている点もあるんじゃないですか、私
どもは全学連のようなのだけをこの
対象にするのだから、何も一般のものをどうこうというのではないのですからというので、実は私も拝見して、あっさりまあこの程度ならばそんなに
心配はないのじゃないかという実は率直な気持なんです。あのときそう思ったのです。あのとき、
富田先生のような温厚な人から御熱心に言われますから、はあ、なるほどな、しかし裁判所と
国会と首相官邸と三つ入っているのはおかしいなというように、きわめてさまつ的なようなことにかまけておりました。実はあまり意に介しなかった。
新聞を見たときも、詳細に見ましたが、
新聞を見たときにそうあまり感じなかった。そこで、これはつい最近でありますが、ある情報から伺いましたことは、これはほんとうでなければいいと思うのですが、自民党の方はこの
新聞発表をなさるのにあたって詳細なる法
解釈を差し控えてもらいたいということを注文せられたと伺っておりますが、これは非常に私は問題だろうと思う。これは誤解であってくれればいいと思っております。なぜならば、省略したところが一番問題点なんです。そういわれてみると、なるほどな、
新聞で省略してあるところが一番問題になっているからそういうことになっていますから、この
機会に、
新聞社にこの
法律の詳細な
説明は省略してほしいということをわざわざおつけたしになってお回しになったということを伺っておりますが、それはほんとうであるか、どの程度のものであるか、これを
お尋ねいたします。