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1961-05-16 第38回国会 参議院 法務委員会 第14号
公式Web版
会議録情報
0
昭和
三十六年五月十六日(火曜日) 午前十時四十五分開会
—————————————
委員
の
異動
本日
委員松本治一郎
君
辞任
につき、そ の補欠として
戸叶武
君を議長において 指名した。
—————————————
出席者
は左の
通り
。
委員長
松村
秀逸
君 理 事
井川
伊平
君 大川 光三君 委 員
青田源太郎
君 木島 義夫君 後藤 義隆君 松澤 兼人君 赤松 常子君 市川 房枝君 辻
武壽
君
委員外議員
棚橋
小虎君
政府委員
法務省司法法制
調査部長
津田
実君
最高裁判所長官代理者
事務総局事務次
長
内藤
頼博
君
事務総局総務局
第一
課長
長井
澄君
事務局側
常任委員会専門
員 西村 高兄君
—————————————
本日の
会議
に付した案件 ○
会社更生法
の一部を
改正
する
法律案
(
向井長年
君外三名
発議
) ○
労働関係訴訟
における
労働組合
の当
事者適格
に関する
法律案
(
棚橋
小虎 君外二名
発議
) ○
訴訟費用等臨時措置法
の一部を
改正
する
法律案
(
内閣提出
、衆議院送 付)
—————————————
松村秀逸
1
○
委員長
(
松村秀逸
君) ただいまから
法務委員会
を開会いたします。
会社更生法
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
といたします。
本法
案について、
発議者
から
提案理由
の
説明
を聴取いたします。
棚橋小虎
2
○
委員外議員
(
棚橋
小虎君)
提案者
を代表して、
会社更生法
の一部
改生案
の
提案
につきまして、その
理由
を
説明
いたします。
会社更生法
は、窮境にあるが再建の見込みのある株式
会社
について、
債権者
、株主その他の
利害関係人
の
利害
を調整しつつ、その
事業
の
維持更生
をはかることを
目的
としております。
本法
におきましては、第百二条によって、
会社
に対して
更生手続開始
前の
原因
に基づいて生じた財産上の
請求権
は、
更生債権
と
規定
しております。この
更生債権
のうちには、
本法
第百十九条によって、特に
共益債権
として、
更生手続開始
前六カ月間の、
会社
の
使用人
の
給料
、並びに
更生手続
前の
原因
に基づいて生じた
会社
の
使用人
の預かり金及び
身元保証金
の
返済請求権
を含むことを
規定
しております。 今回、
本法
について
改正
を
提案
する点は、第一に、この
共益債権
の
範囲
内の
一定範囲
の
下請代金
を含め、第二に、
会社
の
使用人
の
退職手当
として従来から
共益債権
に入るものと認められていた
範囲
を拡大する点にあります。 第一の
改正点
は、
下請事業者
の
従業員
の
生活擁護
に資するため、
下請代金支払遅延等防止法
に
規定
する
下請事業者
が親
会社
から
支払い
を受けるべき同
法規定
の
下請代金
であって、その
支払い
時期が
更生手続開始
前三月内であるものを、
共益債権
として認める点であります。現在、
下請代金支払遅延等防止法
によりまして親
事業者
の
下請事業者
に対する取引の
公正化
と、
下請事業者
の
保護
がはかられているのでありますから、国の
法律
として、
会社更生法
におきましても、
下請代金
の
保護
に当たるのは当然なのであります。この
改正
によりまして、
下請事業者
である
中小企業者
、並びに、そこで働いている
従業員
の
賃金
が正当に
保護
されるのでありまして、この
改正
はぜひとも必要なのであります。 第二の
改正点
は、
更生手続開始
前の
原因
に基づいて生じた
会社
の
使用人
の
退職手当
について、その一部を
共益債権
として
請求
することができるようにしたことであります。すなわち、 (イ)
会社
の
使用人
が
更生手続開始
前に
退職
したときは、その
退職手当
の額を
共益債権
として
請求
することができるようにいたしました。ただ、この場合におきましても、その額が
退職
当時の
給料
の
月額
の六倍に
相当
する額をこえるときは、そのこえる額を除くことといたしました。 (ロ)
会社
の
使用人
で
更生手続開始
後引き続き
会社
の
使用人
であった者が
退職
した場合において、その者の受け得る
更生手続開始
後の
会社
における
在職期間
にかかる
退職手当
の額が、
退職
当時の
給料
の
月額
の六倍に
相当
する額に満たないときは、その
不足額
に
相当
する額を、
更生手続開始
前の
会社
における
在職期間
にかかる
退職手当
の額のうちから、
共益債権
として
請求
することができることといたしました。 右の
改正
は、いずれも
退職
当時より六カ月の
生活
を保障するに足る
退職手当
を
共益債権
として確保せんとするものでありまして、これも
本法
第百十九条後段に
規定
している
使用人
の
権利
の確保の精神と一貫する当然の
措置
であります。 なお、この二つの
改正案
は、いずれも公布の日より、
周知期間
として一カ月間を置いて施行するものとし、
経過規定
としては、この
改正案
の施行前にすでに
更生手続
を開始している
会社
には適用しません。 このように、
本法
の
改正点
は、いずれも
中小企業対策
並びに
労働者保護対策
として緊急必要な
措置
でありますから、どうか
本案
を
慎重審議
の上、賛成あらんことを希望いたします。
松村秀逸
3
○
委員長
(
松村秀逸
君)
本法
案に対する
質疑
は後日に譲ることといたします。
松村秀逸
4
○
委員長
(
松村秀逸
君) 次に、
労働関係訴訟
における
労働組合
の
当事者適格
に関する
法律案
を
議題
といたします。
発議者
より
提案理由
の
説明
を聴取いたします。
棚橋小虎
5
○
委員外議員
(
棚橋
小虎君) ただいま
議題
となりました
労働関係訴訟
における
労働組合
の
当事者適格
に関する
法律案
の
提案理由
を御
説明
いたします。
現行民事訴訟法
におきましては、
訴訟
上の
当事者
となる
適格
は、原則として
法律関係
の
実体
上の
主体
がこれを有することとなっております。従いまして、
賃金
の
請求
や解雇の
効力等
に関する
訴訟
につきましても、
当該法律関係
の
実体
上の
主体
である
個々
の
労働者
がそれぞれ
訴訟
の
当事者適格
を有するのあります。 しかしながら、同一事情のもとにある
企業
の
労働者
につきましては、これら
法律関係
は、大量的に発生するのが通例であり、そのような同種の大量な
法律関係
を
個々
の
労働者
がそれぞれ別個に
訴訟
上の
当事者
として実現しようとしますと、
訴訟手続
は著しく複雑となる上に、相手方及び
裁判所
の労力ははかり知れないものがあるのであります。その結果、
個々
の
訴訟
はもちろん、全体としての
訴訟
も著しく遅延することになるのであります。 かような場合に、
個々
の
組合員
たる
労働者
のために、
労働組合
にこれら
法律関係
の
訴訟
上の
当事者
となることができるようにしますことは、
当該組合員
たる
労働者
の
訴訟
上の
権利
の実現を全うすることができますとともに、
事件
の
訴訟経済
と
訴訟促進
をはかることができるのであります。なお、従来は、
労働組合
の
当事者適格
についての実定法上の根拠がないため、それに対して種々の見解があり、判例も否定、肯定の
立場
をとるものがほぼ同数に至っておるのであります。この際、これらを立法上統一化することも必要であると思うのであります。 以上のような
理由
によりまして、
労働契約
に基づく
労働関係
上の
権利義務
を
目的
とする
訴訟
について、
組合員
のために
労働組合
に
当事者適格
を付与することが妥当であると思いまして、この
法律案
を提出した次第であります。 以下この
法律案
の要点を御
説明
いたします。 まず第一に、この
法律案
で
当事者適格
を付与する
労働組合
は、
労働組合法
の
規定
に適合する
労働組合
、
公共企業体等労働関係法
の
規定
に適合する
公共企業体等
の
職員
に関する
労働組合
及び
地方公営企業労働関係法
の
職員
の
労働組合
とし、また、これら
労働組合
は、それぞれの規約に
当事者適格
についての
規定
を含んでいなければならないこととし、この
法律案
の適用を受ける
労働組合
の
範囲
を明確にいたしたのであります。 第二に、
労働組合
が、
労働契約
に基づく
労働関係
上の
権利義務
について、
組合員
のために
訴訟
を提起したときは、
当該組合員
は判決の確定するまでの間は、その
訴え
の全部または一部に反対である旨を申し出ることができることとし、
法律関係
の
実体
上の
主体
である
組合員個人
の
訴え
に対する意思を尊重する立前をとったのであります。 第三に、
組合員
の
訴訟承継
の
制度
を設けたことであります。
労働組合
が
労働契約
に基づく
労働関係
上の
権利義務
について
訴え
を提起しまたは
組合員
に対する
請求
について被告として
訴え
を提起されたときに、
当該組合員
がみずから
訴訟
の追行を欲するときは、その
訴訟
の
係属
中、
当該訴訟
の
承継
を
裁判所
に申し出ることができることとし、この申し出がありますと、
当該組合員
に係る
請求
についての
訴訟
は、
組合員
に
承継
させることとしたのであります。 第四に、
個々
の
組合員
が
労働契約
に基づく
労働関係
上の
権利義務
を
目的
とする
訴訟
の
当事者
である場合において、
当事者適格
を有する
労働組合
は、
当該組合員
の同意を得て、その
訴訟
の
係属
中
当該訴訟
を
承継
することができることとし、
当該組合員
の
訴訟
追行上の便宜をはかることにしたのであります。 そのほか、これら
訴訟手続
の
特殊性
にかんがみまして、それぞれ必要な
規定
を設けたのであります。 以上がこの
法律案
の
提案理由
及び大要であります。何とぞ、慎重御
審議
の上、すみやかにご可決あらんことをお願いいたします。
松村秀逸
6
○
委員長
(
松村秀逸
君)
本案
に対する
質疑
も後日に譲ることとし、
本案
の
審議
は、本日はこの
程度
にとどめます。
—————————————
松村秀逸
7
○
委員長
(
松村秀逸
君) この際、の
異動
について御報告いたします。 五月十六日付、
松本治一郎
君が
辞任
、
戸叶武
君が選任。以上であります。
—————————————
松村秀逸
8
○
委員長
(
松村秀逸
君) 次に
訴訟費用等臨時措置法
の一部を
改正
する
法律案
を
議題
といたします。 前回に引き続き
質疑
を行ないます。ただいま
出席
の
政府側
は、
最高裁内藤事務次長
、
長井
第一
課長
、
法務省津田司法法制調査部長
であります。御
質疑
のある方は順次御発言を願います。
井川伊平
9
○
井川伊平
君
本法
案に対しましては、先般の本
委員会
におきまして、いろいろと
質問
をいたし、お答えをちょうだいしたわけでありますが、その際、御
質問
をいたしておりません一、二の事項につきまして、これから
質問
をいたしたいと存じます。
執行吏
の
制度
については、従来よりいろいろの論議がかわされているところでありますが、これが
改正
につき、いかなる
考慮
がなされているか、
改正作業
の方向と、その
進行状態
について伺います。また、
改正作業
が現在進捗していないとすれば、その
理由
はどういうわけであるかを承ります。
津田実
10
○
政府委員
(
津田実
君) 御
承知
のように現在の
執行吏制度
は、明治二十三年に制定されました旧
裁判所構成法
及び
執達吏規則
によってその基礎が
定め
られておりまして、その後ほとんど実質的な
改正
は加えられずに今日に及んでおります。時代の変遷と、また各分野における
法律制度
の改革によりまして、今日実情に適さない部分が少なくないことはすでに各
方面
から
指摘
されておりまして、この
制度
の
改善
の要望がなされていることは御
承知
の
通り
でございます。 そこで
政府
におきましては、つとにこの
制度
の
検討
に着手しておりまして、
裁判所
、検察庁、
弁護士会
、
学界等
の各
方面
から
改善意見
を徴しまして、
執行吏制度
の運用に関する
調査
を行ない、また、各国への
法制
の
研究
も行なう等のことをいたして
調査研究
を進めて参ったのであります。また、それと同時に、
昭和
二十九年七月に、法務大臣から
法制審議会
に対しまして、
執行吏制度
の
改善
に関する諮問が発せられまして、
法制審議会
においては
強制執行制度部会同小委員会
が設けられまして、同時に諮問されました
強制執行
及び
競売
に関する
改善
の問題とともに
調査審議
を続けているのでありますが、
何分
にも
何分
にも、
執行吏制度
をいかにするかの問題は、
強制執行
及び
競売
の
基本構造
の問題と、
裁判所
の組織の問題と一体をなすきわめて困難な問題でありますため、いまだその
結論
を得るには至っておりません。しかしながら、この問題は早急に
解決
を要するものでありますから、
法務省
といたしましては、
法制審議会
の
審議
の下
準備
のための
会議
をひんぱんに開催しております。ことに
昭和
三十四年以降は、
法務省
、最高
裁判所
、
学界等
の
関係者
の間に、ほとんど毎週一回以上の
会議
を開催し、もっぱら問題を、
執行機関
の
構成
、
権限
、
執行処分
に対する不服申し立て等に関する
改正
、及び、これらと直接の
関連
を持つ
強制執行
、
競売手続
の
改正
にしぼって鋭意
作業
を進めているわけでありまして、遠からず
結論
を得ることができるかと
考え
ております。で、
政府
といたしましては、できる限りすみやかに
成案
を得ました上、所要の
改善
を行ないたいというふうに
考え
ておるのが
現状
でございます。
井川伊平
11
○
井川伊平
君 大体の要領はわかりましたが、
執行吏
の
地位
というものにつきましては、現在のままでよろしいという
考え
か。あるいは、そうではなしに、
一般
の
公務員
としての
取り扱い
をする
給料制度
にすべきであるか、こういう点についてはどうお
考え
になっておりますか。
津田実
12
○
政府委員
(
津田実
君) ただいまも申し上げました
通り
、現在、
法制審議会
において
審議
を進められておりますと同時に、
政府
におきましても、その下
準備
の
作業
をいたしておるのでありますが、いまだ
結論
というものは得ておりません。で、御
指摘
の
執行吏
の
執行機関
としての
地位
をどのようにするのが適当であるか。現在のように、
執行
の区分に応じまして
執行裁判所
と
執行吏
とをそれぞれ独立の
執行機関
とする二本立の
制度
を維持すべきか、あるいは、
執行
の
権限
を
裁判所
の
執行官
あるいは
裁判所
に置く
執行局
に一元的に集中すべきか、また、
執行
の
椎限
を
執行裁判所
に一元的に集中し、
執行吏
または
執行官
はその
補助機関
とすべきかというような問題があるわけでございますが、いずれの問題につきましても、いろいろ
問題点
がたくさんありまして、現在の
状態
においては、まだどのような
地位
にすべきかということについては
成案
を得ていないわけでございます。
井川伊平
13
○
井川伊平
君 結局、
地位
にも
関係
がありますが、現在
執行吏
はどのくらいの
収入
を持っておるか。
一般
の
官公吏並み
の
収入
と比べてみた場合にどうなるかという点をお伺いするのであります。 なお、それに
関連
をいたしまして、現在の
執行吏
は、多くは
裁判所
の
書記官等
を勤めた方が多いようであって、その結果、そういう
方面
の
恩給
をもらいながら
執行吏
をやっておる。従って、
執行吏
の
手数料
のほかに、
恩給
の
収入
がある、こういうような
現状
でもあるようでありますが、それらの
収入関係
についてお伺いいたしたい。 なお、これの
地位
を
一般官公吏
の
取り扱い
にするということになりますると、その
収入
の面が非常にけた落ちになってしまう。というのは、現在の
手数料
よりも少ない俸給になり、そのほかに、今までもらっておるところの
恩給
ももらえなくなる、こういうことになるのではないか。そういうことについて、現在の
執行吏
はどういうようなことを
考え
、かつ陳情しておるか。 もう
一つ
考え
ることは
年令
の問題でありますが、現在
執行吏
は
一般
の
官公吏並み
ではありませんために、
定員法
が
官公吏
のようなふうにしかれていないために、
相当
老齢
の方がやっておる事実もあるが、これを
改正
して
一般官公吏
ということに
取り扱い
をかえていくということになると、
年令
の点で非常に現在の
執行吏
というものが、何と言いますか、失業せねばならぬというようなふうに追い込まれるのではないか。あるいはそういうような
年令
に達しておる
執行吏
でありましても、十分に
執行
の
目的
を達しておる。さらに進んで言えば、若い
官公吏
である
執行吏
というのであるのよりも、年をとった、
老齢
になっておる、経験豊かな
執行吏
の方が
執行
の際に非常に成果を上げておる、こういう事実があるかどうか等に関してお伺いいたしたいと思います。
内藤頼博
14
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) まず
執行吏
の
収入
の
程度
でございますが、調べたところによりますれば、
金額
はいろいろになっております。地域において違いますし、人によって違うようでございますが、最も多い人で
年収
二百万をこえる人もおるわけでございます。しかしまた一方に、非常に
収入
の少ない人もございまして、
年収
十四万二千円に満たない場合には、
国庫
の
補助
を受けるわけでございますけれ
ども
、その支給を受けておる
人たち
も十数名おるわけでございます。
平均
いたしますと、その
手数料収入
が一人
平均年間
五十八万九千円ばかりになります。なお
手数料
のほかに、
旅費
であるとか
宿泊料
であるとか、そういった一切の
収入
を含めまして、一人
平均年間
百万円
余り
になります。もっとも、ただいま申しました百万円
余り
の一人
平均年間
の
収入
は、これは
収入
だけでございまして、このほかに、これに伴うところの
支出
があるわけでございまして、これが純粋の
収入
になるわけではございません。
支出
につきましては、
執行吏
の役場の
維持費
であるとか、出張の
旅費
であるとか
宿泊費
であるとか等、負担すべき
費用
が出るわけでございます。その
支出
につきましては、現在、正確の数字をつかんでおりませんので、これはただいま照会いたしまして、
実態
を
調査
しておる
段階
でございます。 それから
恩給
でございますが、
恩給
は
執行吏
をやはり十七年
在職
することによりまして、十四万二千円の
国庫補助額
を
基本
といたしまして
恩給金額
が
定め
られるわけでございます。十七年未満が
退職
いたします場合には、
一般公務員
のような一時
恩給
は支給されません。従って、十七年
在職
しなければ年金はないわけでございます。
執行吏
の中には、ただいま御
指摘
もございましたように、
書記官
の前歴のあるものが
相当
ございます。それはいずれも
書記官
の
恩給
にあわせて支給されるわけでございます。現在、
執行吏
を
退職
いたしまして
恩給
を受けておるものは約八十人ぐらいあります。
書記官
をやめまして
執行吏
になりまして、
執行吏
の
在職
中に
書記官
の
恩給
を受ける問題でございますが、これは
一定額
以上の
収入
を得ますと
恩給
がとめられるわけでございまして、これは
執行吏
の
収入
の少ない
人たち
だけが
書記官
の
恩給
を受けておるわけでございます。
年令
につきましては、確かに
執行吏
の中に
相当
高い
年令
の
人たち
もおるわけであります。中には七十才をこえて
執行吏
をしておる
人たち
も若干おるわけでございますけれ
ども
、
定年
の問題は、将来の、これも
執行吏
の
地位
をどう
定め
るかによることでございますが、もし将来
公務員
に
定年制
がしかれるような場合に、
執行吏
の
地位
が
一般公務員
と同じような
地位
になるとすれば、
定年
について、
執行吏
について特段の
定め
をする必要があるかどうか。これは必ずしも特段の
定め
が必要であるとも
考え
られないのでございます。確かに、ただいまお述べになりましたように、
年令
が高いために、その
仕事
になれて、能率を上げておるという面もございましょうけれ
ども
、将来の新しく予想されます
制度
のもとにおける
執行吏
の職務といたしましては、必ずしも
年令
にそういった違いがなければならないとも
考え
られないのでございます。そういった場合に、現在の
年令
の高い
執行吏
をどうするかということになりますが、そういう点までのまだ
検討
は経ておりません。もちろん、これは十分に
検討
すべき問題で、何らかの
経過的措置
は必要だと
考え
られますが、まだそこまでの
検討
はいたしておらない
段階
であります。
井川伊平
15
○
井川伊平
君 さらにお伺いいたしますが、
執行吏
の
事務
、
仕事
が非常に停滞して困る。そのために
依頼者
が迷惑する、こういう事実が
相当
あるように思いますが、さような事実があるかないか、あるとすれば、どういう面にあるか。
内藤頼博
16
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) 私
ども
若干そういうことを耳にいたさないわけではないのでございますけれ
ども
、多くの場合、それは大
都会
などにおいてそういう事態が起きるものと存じますが、やはり
執行吏
の数が比較的少なくて、
相当
一人の
負担件数
が多いためにそういうことが起きるというふうに感じられるのであります。
井川伊平
17
○
井川伊平
君 お説の
通り
だと存じますが、大
都会
では
執行吏
の
収入
というものが非常に多い。
平均
をすれば先ほどの
お話し
のようになりましょうが、大
都会
の
執行吏
の
収入
は非常に多い。そうして
仕事
はつかえておる。なぜ
人員
の増をはからないか、こういうことです。
人員増
をはかれば一方の人の
収入
は減るであろうけれ
ども
、
債権者
の
立場
で申しますと、非常に助かることになります。なぜ大
都会
あるいは
事件
の非常に多い所で
増員
の計画を実行しないか、この
経過
をお伺いいたします。
内藤頼博
18
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君)
執行吏
の数に
不足
がございましても、やはり
執行吏
の
収入
の面も
考え
なければなりませんので、まあ必ずしも期待できるようなだけの充足ができないような
現状
でございます。しかしこれにつきましては、
執行吏
の実際の
収入支出
の
状況
を
調査
いたしまして、そういった問題の
解決
をしたいと存じます。ただいま申しましたように、現在
執行吏
のそういった
実態
につきましての
調査
をいたしているわけでございます。
井川伊平
19
○
井川伊平
君 今の
お話し
は、私は逆でないかと思うのです。あの
制度
は、
国民
のうちの、
権利
を持っておる者の
権利
の
伸張
の
一つ
の
機関
としてあるものである、それが
仕事
がつかえて十分に
権利
の
伸張
ができない、こういう場合において、その
執行
の
機関
の人をふやせばその
目的
は達するのにかかわりませず、
収入
の面に重点を置いて
考え
るから、その
機関
をふやし、
執行吏
をふやしていかないのだということになりますと、
執行吏
の
生活
が主になって、
国民
の
権利
の行使の方が従になるようなことに
考え
られるが、これはどういうものでありましょうかな。
内藤頼博
20
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) ただいま申し上げましたのは、
執行吏
の
収入
を主として
考え
るためにではございません。
執行吏
の執務全体についてのやはり
調査
をいたしました上で、そういう
措置
を
考え
るということを申したわけでございます。現在実際におくれます場合に、
事件
の困難であるとか、それからあるいはいろいろなそういう
状況
もございますので、そういった
実態
を十分
調査
いたしました上で
考慮
いたしたいということを申し上げたわけであります。
井川伊平
21
○
井川伊平
君
事件
の数多くして
渋滞
しておる事実は、年久しいものがある。ゆえに、今
研究
してから問題とするというのは少しおそすぎるように思う。今日まで投げておいたということが、やはり
国民
の
権利
の
伸張
という点について十分の
考慮
が払われていない結果でないかと私は思いますが、別の言葉でいえば、少し怠慢のように
考え
ますが、いかがです。
内藤頼博
22
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君)
執行吏
の
仕事
の実際にはいろいろ問題がございまして、確かに御
指摘
のような欠陥があることも、その
通り
だと存じますけれ
ども
、
執行吏制度
が、先ほど
政府
の方からも御
説明
がございましたように、いろいろな問題、批判があるのでありますが、やはりそういった問題が
根本
的にあるわけであります。従いまして、やはり結局は
執行機関制度
を
考え
なければならぬのも、そういった
理由
があるわけでございまして、直ちに人をふやすだけで
措置
ができるような問題でもない、いろいろな複雑な問題がそこにあると
考え
ておるわけでございます。
井川伊平
23
○
井川伊平
君 そういたしますと、
基本
的な、抜本的な
改正
を将来に行なおうと
考え
ておると、それには月日も要することでありましょうが、その前において、現在
渋滞
しておるところの
事務
に
一つ
の流れを通すために
執行吏
を
増員
するという
考え
は毛頭ないというおつもりですか。
内藤頼博
24
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君)
増員
の
考え
は毛頭ないという趣旨ではございませんけれ
ども
、私
ども
といたしまして、やはり
執行制度
の
根本
に
考慮
を加えまして、そういった上で抜本的な
解決
をしたいというのが私
ども
の
基本
的な
考え
でございます。
井川伊平
25
○
井川伊平
君
事務渋滞
のために迷惑をしておるから何とか
措置
をしてほしいということは、
全国
の各
弁護士
の
連合会
、これは
日本全国
に七、八カ所あろうと存じますが、そういう
連合会
が、毎年のように何か決議をいたしまして陳情している事実がありませんか。
内藤頼博
26
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) そういった事実はないと存じますが、
事務
の
渋滞
につきましては、ただいま申し上げましたように、
根本
的は
解決
が
一つ
と、それからもう
一つ
は、やはり日常の
執行吏
の執務につきまして、さらにそういうことがないように努めたいということは
考え
ているわけでございます。先ほど申し上げましたのは、
基本
的な
解決
は、どうしてもやはり
制度
の
改正
をいたさなければならないということを申し上げたわけでございますけれ
ども
、しかし、それまでに、やはり
裁判所
としてそういった
事務
の
渋滞
につきましては、できるだけ
措置
をしたいというふうに
考え
ております。
井川伊平
27
○
井川伊平
君
根本
的な
改正
を行なうという御希望はあるようでありますが、それは非常な遠い将来という意味でございますか。あるいは今すぐというわけではないけれ
ども
、およそ近い機会においてという御趣旨でありますか、承っておきましょう。
内藤頼博
28
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) ただいま
政府
の方からお答えがございましたように
法制審議会
で
検討
中であり、早晩その
結論
が得られるものと期待するというふうなお答えがございましたけれ
ども
、私
ども
として同様に期待しているわけでございます。
井川伊平
29
○
井川伊平
君 もう一点お伺いしておきますが、現在の
執行吏
の方々から、現在きめられておるところの
手数料
でございますが、これが少し安過ぎると、非常な古い時代にこしらえた率であって安過ぎると、これを値上げしてほしいというような、いろいろ陳情等があるのではないか、陳情はなくても、そういう点をお気づきであるのではないか、こういうことを
一つ
お伺いいたします。
内藤頼博
30
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君)
執行吏
の
方面
から、ただいま
お話し
のございましたような希望がございますことは、私
ども
も聞いている次第でございます。この点につきましては、私
ども
もやはり
手数料
の
相当
の
改正
ということが必要であろうとは存じておりますわけでございますけれ
ども
、それにつきまして、十分の資料を整えまして
結論
を得たいと存じております。先ほど申し上げましたように、
執行吏
の執務の
実態
につきまして、まだ
調査
が十分に済んでおりません。ただいまその
実態
を
調査
いたしております。これも
結論
を得まして、いずれかの
措置
をとりたいというふうに
考え
ております。
井川伊平
31
○
井川伊平
君
研究
をして
結論
を得たいという
お話し
はわかりますが、そういう問題は、さしあたって最近の問題じゃない。いわば非常に古くから続いている問題だから、今までなおざりにして全然顧みないというのが真相でないかと思うのでありますが、もう少し熱意を持って真剣にお
考え
になりますれば、そういう古い問題がそのままになっておるはずがないと思うのでありますが、御
研究
になって、真剣に、
根本
的な
改正
はさることながら、さしあたってのこうした問題がもし不十分なものがあるとするならば、そういう問題に是正を加える、そうすれば、非常に
執行吏
の
収入
がふえるということになれば、人を増しましても、十分に
執行吏
のい方々の
生活
でき、そうして
権利
者の
権利
の擁護にも欠くことがなくなると存じますが、こういう問題を、
基本
的な問題の
解決
まで投げておくというのじゃなしに、もう少し何とか
考え
ようはございませんか。
内藤頼博
32
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君)
手数料
の
改正
の点は、確かに
基本
的な
改正
を待つまでもなく、その間の
措置
として当然しなければならないというふうに
考え
ております。ただ、これにつきましては、一体どういう
程度
の
手数料
が適正であるかということを
検討
しなければならないのでありますが、
手数料
は究極的には債務者のいわば負担になるわけでございますし、各
方面
の
執行吏
の
実態
を
調査
いたしまして、さらに各
方面
の意見を徴してその
結論
を得たいというふうに
考え
ているわけであります。
井川伊平
33
○
井川伊平
君 最後にもう一点お伺いいたしておきますが、
執行吏
の
手数料
が一定の
金額
に達しないときは国が補償しておりますね。補償をしているのはごく少数の人であるようでありますが、この補償をする
金額
及びその
金額
の割り出しの基礎は、これは何から出ているか、お伺いいたしておきます。
内藤頼博
34
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) これは先ほど申し上げましたように、現在十四万二千円ということになっております。これに
手数料収入
が満たないものは
国庫
の
補助
を受けるようになっているわけでございます。これが基準でございます。これは三十五年の十月からその
金額
になったわけでございます。この基準をきめます標準と申しますか、見合うものは、やはり
公務員
の俸給でございまして、八等六号に見合っているわけでございます。従いまして、昨年の十月にベース・アップがありましたのに伴いまして、この
国庫
補助
の基準額もやはり増額になったわけでございます。
松村秀逸
35
○
委員長
(
松村秀逸
君) ほかに御
質疑
はございませんか。
赤松常子
36
○赤松常子君 この参考賃料を拝見いたしまして、今さらのように証人の人々の日当の低いのにちょっと驚いたわけでございますが、今度増額されまして後、総額はどのくらいになるのでございますか。一人にはこの増額でございますが、総額はどのくらいの予算のワクをとってあるのでございますか。
内藤頼博
37
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) 証人日当の予算総額は二千四百万ばかりになります。
赤松常子
38
○赤松常子君 それで一人二百三十円のが三百円ということになるのですね。 それから、この前、あまり日当が少ないから証人の出頭がずいぶん少ないと伺いましたが、全
事件
の中で、そういう故障から
事件
が進まないというような割合はどのくらいあるのでございますか。
内藤頼博
39
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) 証人の出頭率であるとかあるいは不出頭の
原因
については、若干の
調査
もいたしておりますけれ
ども
、必ずしも証人の不出頭が日当が少ないためばかりと申せないいろいろの事情がそこにからみ合っているわけでございまして、それぞれの証人の都合があったり、あるいはいろんな事情からその人が出られないということで出ない場合が多いわけでございます。従いまして、その中で証人の日当が少ないために出ないという率については、ちょっと私
ども
も資料を整えかねているわけでございます。
赤松常子
40
○赤松常子君 そういう事例もあることはあるわけでございますね。
内藤頼博
41
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) まあ私
ども
むしろ常識として、やはり日当が多くなければ、どうしても証人出頭の率が悪いということは
考え
ているわけでございます。
赤松常子
42
○赤松常子君 そういう点、どのくらいあるかということも予想できませんでございますか。私は、非常にそれで
訴訟
が
渋滞
するということを、何んと情けないことだろうかと思うのでございますが、どのくらいございますのでしょう。
内藤頼博
43
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) ただいま申し上げましたように、日当が低いという
理由
で不出頭ということは、
実態
はなかなか突きとめられませんので——。ただ何と申しますか、
裁判所
から証人に呼ばれて、必ずしも喜んで出るような場でもないのに、しかも非常に日当が低いというのでは、これはなかなか出にくい、気持が自然にそうなるだろうということは推測されるわけであります。ただ、先ほど申し上げましたように、証人不出頭は、そこにいろいろ
原因
や要素が加わっておりますので、それも総合して
考え
なければならないというふうに
考え
ております。
赤松常子
44
○赤松常子君 そういう場合には、日当についての苦情と申しましょうか、意見というものが公に出たことはございませんでしょうか。 それからもう
一つ
。やはり証人にお出になる方々が
相当
収入
もある方があって、それを犠牲にしておいでになるというような場合、そういうことに対する不平とか、そういうような代償がほしいというような声も出たことはございませんでしょうか、 いかがでしょうか。
内藤頼博
45
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君)
一般
の批評としましては、確かに御
指摘
のように日当が低過ぎるということがいわれているわけでございます。これは私
ども
としましてもその点はそういうふうに
考え
るわけでございまして、年々予算も要求しているわけでございますけれ
ども
、ただ、
個々
の場合に、証人がそういう意味で不平を言うとかあるいは抗議するとかいうようなケースは聞いておりません。
赤松常子
46
○赤松常子君 その所得の多い方が何かこういう声をおあげになったことはございませんでしょうか。その犠牲にたえられないことを
理由
に、おっしゃったことはございませんか。
内藤頼博
47
○
最高裁判所長官代理者
(
内藤頼博
君) 具体的にそういうことは聞いておりません。
松村秀逸
48
○
委員長
(
松村秀逸
君) ほかに御
質疑
はこざいませんか。——なければ、本日の
質疑
はこの
程度
にとどめます。 ほかに御発言もなければ、次回は五月十八日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。 午前十一時二十五分散会 —————・—————