○
政府委員(
大沢一郎君) 日本国憲法の施行に伴いまして、刑事法制が
改正を見たわけでございまして、その一環といたしまして、戦後いち早く
昭和二十二年に監獄法の
改正の
作業が法務官において企図せられたのでございますが、当時の占領軍当局の示唆もございまして、特に今直ちに監獄法の
改正を要すべき点はないというような立場から、
改正の
作業が一時中断した次第でございます。特に監獄法はいわゆる
行政法でございまして、運用によって十分まかなえると、新憲法下におきましても運用いかんによってはまかなえるというような建前から、直ちに法の
改正まで必要なしというような意見もございまして、一時中断したわけでございますが、御承知のように現行監獄法は明治四十一年制定の非常に古い
法律でございまして、表現形式等におきましても、必ずしも適正とは申しがたく、また特に第二次世界大戦後におきまする矯正思潮及び矯正技術のめざましい発展と、戦後におきまする憲法、刑事訴訟法等の
改正に相応した根本的
改正の要望がありましたほか、刑法
改正の気運もございますので、監獄法も新たな構想のもとに全面
改正の検討に乗り出しまして、
昭和二十八年
矯正局におきまして
改正の準備に着手しておるのでございます。そうして
昭和二十九年にこの準備
作業に専念する矯正法規室を
矯正局に置きまして、各国の
立法例また省内
関係者の意見、全国
刑務所長等の意見等も総合いたしまして、
昭和三十二年七月に一応監獄法
改正要綱仮草案なるものを作成いたした次第でございます。ところが、なお十分な検討を加える必要があるということになりまして、
昭和三十二年末に監獄法の
改正を担当する特別顧問が
法務省に置かれまして、そうして海外における
矯正施設の詳細な実情の視察等をしていただきましたその結果等にかんがみまして、さらに新たな構想で立て直すということになりまして、
昭和三十三年度末から省内
関係部局、検察庁
矯正施設の
関係者等を
委員とする監獄法
改正準備会を設けまして審議を続けておる次第でございます。ただいままでに四十八回の会議を経まして、通則の基本的
事項の審議を終えまして、今後未決拘禁と行刑上特に問題となる
事項につきまして検討を加えつつある状況で、この審議会におきます審議の結果に基づきまして
改正案を作りまして、さらに法制審議会等への諮問を経て国会に
提出するという段取りになるわけでございますが、まだ現在の状況では、
相当の日時を要するのじゃないか、かように考えておる次第でございます。鋭意努力いたしまして、できる限りすみやかに
法案の作成を終わりたいと考えてはおりますが、何分にも先ほど申しましたように、今直ちに
改正しなければ困るというような条章がございませんので、やはり
改正の方向が、全面的に見直すというような、新しい矯正思潮を持ったものにしようというような欲も手伝いまして、非常に審議が熱心でありますだけに長引いているわけでございます。
大体以上のような経過で、われわれといたしましても、なるべく早く成案を得たいと努力している次第でございます。