○岩間正男君 私は、日本共産党を代表しまして、本
法案に反対するものであります。
反対の
理由はいろいろありますが、左の数点をあげることができると思う。
第一に、本
法案のねらいであります。本
法案は、所得倍増計画に必要な
科学技術者を養成するというようなことを言っております。しかし、所得倍増計画というものは一体何なんだ、だれのための一体所得倍増計画か、この性格をはっきりわれわれはここで明らかにする必要があると思う。
池田内閣の所得倍増計画は実行して半年、すでに大きく動揺し、また、大衆の非常な嫌悪を買っているのが実情だと私は思います。これは言うまでもなく、所得倍増の名によるところの日米独占資本の要求に合致する、そのような産業経済体制を急速に確立しよう、そのために、国家資金を初めとしまして、民間資金、さらにアメリカの資金をも日本の産業に投入しようとするところの計画であります。この計画の中には、さらに軍需生産を目ざしたところの産業基盤の確立という名による、実はそのような体制を作り上げる、いわば安保体制の一環としての経済政策であるという点が明白であると思うのであります。私は、この点では、安保条約、自民党が単独に強行しました安保条約の具体的な形がここに出ているということを
指摘せざるを得ないのです。安保条約第二条には日米経済
協力ということをうたっています。その中ではいろいろな技術面の提携とか、問題があると思いますが、私はその中で資本輸出の問題が非常に重要な問題だと思う。たとえば今年度、国鉄総裁が最近渡米して三百億のアメリカの資金を東海道新線のために仰いだとか、その他等々の事実というものは明白だと思う。そういう条件の中でなぜアメリカの資本が日本に入りたがるか、その条件の中にはっきり
指摘することのできるのは、日本の低賃金の問題、安い労働賃金、アメリカの労務者の十分の一から九分の一という安い労働賃金が、何よりも独占利潤を追求するこれらのアメリカの資本家たちのこれは一つの大きな垂涎の的になっています。こういう
関係から、アメリカ資本を導入する条件として、日本の技術革新、これに伴うところの低賃金の問題が明白に出されております。このような要求に即応するための安い労働力を作るということが、いわばいわゆる所得倍増計画に必要な技術者を養成するという名目で出されてきておるのが最近の
荒木文政の一連の反動立法のあり方であります。私はこの点を明確に
指摘しなきゃならぬ。従って、当然この
法案は今大きな問題になっておる
工業高校の創設の問題と同時的に並行して
審議されなくちゃならなかったのでありますが、衆議院
段階でこれがばらばらに切り離され当院に送ってこられた。ここにも大体この性格に対する認識の欠如があったと思います。こういうような形で安い労働力を養成する、そのためにはやはり安上がりの施設をもってまかなわなくちゃならない、こういう形で、いわば戦前の臨時
教員養成所よりももっと質の悪いような格好、おもやにひさしをかけるというような格好、そしてこれに対する設備、あるいは
教員の配置、その他、たとえば生徒の支給を最初に
予定された七千を切るというような、いろいろな非常に安上がりのやり方でこの
教員養成を強行しようとしています。私はこのようなやり方というものは、根本的に、第二の点の反対の論の論拠になりますところの、日本の
教育体系を根本からゆるがせ、混乱させる、こういう重大な問題を持っておると思うのであります。私はこの見えすいたやり方に対してまず反対するものです。
第二の反対点、これは言うまでもなく、しばしば本
委員会に
おいても
指摘されたところでありますから、簡単に申し上げたいと思いますが、第一に、人格陶冶が非常に不可能になる。全人的な人間形成というものが非常にこれは阻害される。かたわになる。そして実は
科学技術者を養成するというようなことを言っていますけれども、そういうような高次な目的には全然これでは合致しないのです。全くオートメーション化された
機械に従属するところのこれはかたわの技術工を提供する。そしてそのための
教員を養成するという格好に陥らざるを得ない。それからしばしば
指摘されました、
教員養成の今までとって参りました日本
教育の体系というものは根本からくずれてしまう。さらにその犠牲が
大学にも及んでくる。こういうような事態が十分にこれは想像されるのでありまして、その点からくるところの
教育の混乱、体系の破壊というものはこれは避けられない。こういう点をまず明白にしなければならないと思うのです。
第三の問題は、これによって
教育の質的低下が非常に行なわれてくる、こういう事態であります。これは先ほどの第一の中でも述べたところでありますけれども、とてもこれはこういうやり方で質の高い技術者を養成するなどということは望んでも得られない
状態です。政府は苦しい
答弁の中で、苦しまぎれにこういう
答弁をしている。四年かかるところを三年でやるのだ。それはできる、しかし、できるんだということは、これは精神力でありまして、戦争前時代の
発言を思わせます。それに対する保障があるかというと、これはあり得ない。四年かかるが、三年で養うためには、もっと優秀な設備あるいはこれは先生を求めなければならないわけです。ところがそういう先生は保障されるかというと保障される
方法はない。現在第一級のこれはそのような教師というものは現在の
大学にほとんど吸収しているのです。そういう点から
考えまして、これは全くのでたらめの言い分と言わざるを得ないのであります。こういう点から今後起こってくるところのいろいろな
教育に対する質的低下が憂えられます。
さらに、もう一つ問題にしたいのは、これも第一の問題と関連して参りますが、大企業が最近しばしば
工業高校を食っているという事実があります。ことに定時制の場合そうであります。たとえば神戸
高校の例でありますが、これは夜間の定時制ですが、阪神内燃機に働いている者でなければほとんど通学ができない。そうして
学校の運営権というものは全くもう阪神内燃機がこれを握っているという実情があります。沼津
工業高校がそうですが、これは芝浦
電気が全く
発言権を持っている。そうしてそういう中でだんだんと大企業に公立の
学校が従属するというような形が出ています。そういうところから企業内訓練所と
工業高校が非常に類似してきている。こんな形がこの
教育体制の中に現われているのでありますけれども、そういうような形を固定化するという形でこのような
法案がこれは作用してくるということが
考えられます。私は以上のような点を
指摘したのでありますが、その結果予想される欠陥として第四に次の問題をここで個条書に
指摘しておきたいと思います。
それは第一に、基礎研究と応用研究、開発研究の正しいバランスをくずしてしまう。そうして基礎研究がそのために衰弱する。こういう事態が起こる。第二には、独占資本に買い取られた科学における研究管理は、研究者の創意を殺し、科学にとって必要な自由なる民主的な雰囲気を奪ってしまうというような点、これは最近起こっている研究テーマを指定するとか、あるいは統制であるとか、こういう事態がひんぴんとして発生しているのでありますが、こういう事態がおそらく今度の処置でもっとこれは促進される。第三に、科学者が経営者の独占に支配され、研究の成果が、自由なるその発表が秘密主義によって妨げられ、情報の自由な交換が許されないというような事態が起こってくる。第四には、景気局面が下降すれば、研究投資がまっ先に削られ、計画的な科学研究の発展をこのために保障し得ないという事態が起こるのじゃないか。これは私の
質問に対して、一昨晩、
荒木文相は経済の変動は浮き沈みがある、こういうことを言ったのでありますが、これは世界的な景気の最近の経済
状況から
考えてみて、こういう事態に直面しないという保障は、ここ数カ年どころじゃない、これはここ一両年の間に当面しないという保障はないのでありますから、なおさらであります。第五には、人間の才能を法外に浪費して、軍事科学研究など科学の発展の大道からそれた分野に膨大な科学者が投入される、こういう事態が当然これは起こることは、安保体制下における現在の
池田内閣における軍需生産の育成、それに対して私はこの前予算
委員会で明らかにしたのでありますけれども、そういう面から
考えましても、そういう方向にこれは性格的に位置づけられてくる。私は以上のような、今後起こるであろうという事態、これはまことに日本の民主的な
教育の発展、平和的な
教育の発展のためには嘆かわしい問題です。このような事態を引き起こす要因をこの
法案は、あるいはこの
法案を突破口として、今後日本の
教育の中に大幅に侵入してくるこの事態を憂えざるを得ないのであります。
以上あげましたように、私はこの点から
考えてみまして、この
法案に賛成することはできないのであります。この
法案は撤回されて、十分
検討されなければならない。現に先ほどの野本
委員の討論の中で、いろいろな点で不備を認めておられる。
文部大臣も認めておられる。科学技術庁長官のごときはもっとこれをあしざまにののしっておられるところの
法案です。このような確信のない
法案を当
委員会に出して、そうして多数を頼んでこれを押し通すということは、これは許される
状態ではないと思う。しかも、こういうものを出しても、しばしば問題になりましたように、はたしてこれは科学
教員を保有することができるかどうか。これに対する何らの保証もないという点、これに対する
文部大臣の
答弁は全く神頼みにすぎなかったという点、こういう点を
考えるとき、何のためにこのような
法案を出すのかわからないということを私は
考えるのであります。そうして、しかもこのような全く安易な、行き当たりばったりな、そうして背後の強大な勢力に奉仕するところの
法案によって日本の科学はどうなるかということを最後に私は申し上げたい。これは全く世界の科学技術から立ちおくれてしまうだろうと思うのです。御承知のように世界の方向は……。