○岩間正男君 私は、
日本共産党を代表いたしまして、ただいま
議題となりました、
日本育英会法の一部を改正する
法律案並びにこれに対する修正案に対しまして反対するものであります。
まず、修正案から申し上げますというと、社会党の皆さんが
免除規定を拡大する、
高等学校、さらに
中学校まで拡大する、そのような
努力をされたことに対しましては非常に多とするものであります。しかしながら、この法案の最もねらいであるところの、いわば滞納の取り立てを強化する、いわば借金取り立て法案とも申すべきこの法案の本質においては変わりはない、従いまして、残念ながらこの修正案には反対するものであります。
次に、法案の反対理由を申し述べたいと思うのでありますが、第一に、この
日本の
育英会制度そのものの根本的改訂を迫られておる時節にもうすでに到来しておると思うのであります。中教審の答申案によりましても、
貸与よりは
給与が望ましい、こういうことを明白にうたっておるのであります。ところが、この中教審の答申のこのような基本的な、しかも
現状に合ったところの
趣旨はほとんど考慮されていない。何ら法案には生かされていない。そうして滞納を、これを取り立てるべきだという一面だけが、この法案に生かされて、このように審議会の答申そのものは
政府の都合のいいところだけを取り上げて、他の最も重要な面というものをこれはごまかしてしまうというやり方では、審議会そのものの
趣旨とも私は反すると思うのであります。こういうような
意味において、私はこの法案というものは全面的な改訂が望ましいにもかかわらず、そのようなことがされていないという点について第一にこの法案の性格が明確であると思うのであります。私はこのような
意味においてまず第一の理由として反対せざるを得ないのであります。
第二に、この法案は、先ほど申し上げましたように、いわば借金を取り立てることを強行する、そのための態勢を強化する、こういう形になっておるのであります。むろん先ほど野本
委員が述べられましたように、これは後輩に対する恩恵を、
現状のように滞納が多いことによってその恩典を削減するものだという、そういう
趣旨、それを表面に——それたけを
考えるならそうです。しかし、私たちが
考えてみますときに、このたびのこの法案ができたときのそもそものこれは動機となったものは、池田総理が第二次内閣を作った当初だと思いますが、この
育英資金の滞納が非常に多い、これは
返還を
要求するために
措置をとらなければいかぬ、このような精神によって貫かれておると思う。ところが実際全般の
国家施政、
国家の財政計画から、われわれはこの中におけるところの
教育の機会均等、ことに貧困者層の恵まれない層に対するところの
教育の機会均等という立場から
考えるときに、このような局部的な問題について非常に強調することは私は当たらないと思う。と言いますのは、
日本の終戦後の歴代内閣がそうでありますけれ
ども、ことに開銀、輸銀を通じて大独占資本に一体どれだけの今まで投融資をしてきたか、そうしてその回収されないものはどうかというと膨大なものです。これがはたして厳正な形でこの取り立てが実施されておるかというと、これはそういう形にはなっていないと思う。ところが、わずかに二十一億の、いわば
国家財政の千分の一の滞納を取り立てることに、わざわざこのような法案をこれは
出してきておるのであります。私はここに
一つの問題があると思う。単にこれはもちろん
行政だけの狭いワク内で
考えるべきじゃない、
国家の
行政全般の中におけるバランスにおいてこの問題ははっきり
検討されるべきであるのであります。性格は明白ではないか、そういう点から
考えまして、さらにその次に問題にいたしたいのは、現在取り立ての対象になっているところの
大学卒業生あるいは
高等学校卒業生、いわゆる
育英資金の
貸与を受けている学生諸君の初任給の問題であります。この初任給は御承知のようにはなはだ低いと言わざるを得ない。私は初任給を十分に引き上げ、最低生活の保障というものが十分にできている、そういう中では、私はこのような事態というものはこれは激減するものだと
考えるのであります。ところが、初任給は非常に低くて、しかも
育英資金のこれはワクがあるわけでありまして、私はこういう点から
考えて、青少年の生活状態から
考えて、このような法案というものは直ちにこの
現状に合ったと、こういうふうには
考えることができないと思うのです。
ことに、私はさらに問題にしたいのは、この法案の適用でありますけれ
ども、この適用に当たって、実は貧困者層の就学不能の
人たちの問題を解決するところに
国家の施策のあたたかい手が伸びていくことが非常に喜ばれると思う。ところが御承知のように、生活保護法の適用を受けておる数は百六十万をこえております。ボーダー・ラインを加えるならば実に一千万をこえておる。これに対して特別奨学制をとって、
高等学校で八千人、
大学で一万二千人の
措置をやったというような表現でありますけれ
ども、
現状において生活保護を受けておる
人たちは、
自分の子弟を、その子弟がどんなに優秀で
高等学校にやりたいと思っても、
高等学校に入学の受験をして、そうしてこれをパスしましても、
高等学校に入れば生活保護を切り捨てる、こういうような苛酷な条件があるのであります。この問題を全面的にわれわれは
検討するということが、現在の
教育文政の中においては
教育の機会均等を真に机上の文句にしないためには非常に重大な問題だと思うのでありますが、特別奨学制の問題では、ほとんど名目的な問題で根本的なこのような問題を解決することはできないのでありますが、この具体的な現われは、
高等学校において全日制の
制度に対しては三%の適用、しかし貧しい階級の定時制の
子供に対しては二%の適用、こういう格好になっております。数が定時制の場合には全日制の三分の一にも満たないのでありますから、絶対数においては十分の一にも達しない、こういうような事態が起こっているのでありまして、真に
日本の
教育の
現状、国民生活の
現状から
考えるならば、
教育の機会均等を正すための
努力をこの
育英会法案でやるとするならば、この点について相当格段の
努力を私はしなければならぬと
考えるのであります。こういうような
意味におきまして、この法案の持っている性格はまさに恩恵的、これは
貸与、この基本線においてはほとんど変わりはないのであります。これを諸外国の例に比べてみるならば、なるほど資本主義の世界におきましては、たとえば米国の全学生の二五%、あるいはフランスにおけるこれは二二・三%、それから西ドイツにおける二三・七%、これは
育英会からもらった資料でありますけれ
ども、こういうことになっておる。しかし社会主義国の体制を見ますというと、ソビエトはこれは全学生の約八〇%、それから中華人民共和国は八〇%、チェコスロバキアは六二%、朝鮮人民民主主義共和国のごときは大部分の学生がこのような適用を受けておる。これは
貸与でなくて
給与です。ここにもう
教育に対する熱意、そうして
教育制度の階級的な性格というものが私は明白に出ていると思うのであります。こういう点から
考えて、この
育英会法案に対しまして私たちは賛成することができないのでありまして、私は一番大きなねらいであるところのこのような滞納金取り立て、これを中心とする法案、しかも罰則まで適用しようとしている。しかもこの罰則は
法律によって定めるところでなくて、実は省令によって決定するということになって、この正体は不明であります。私はこのことが及ぼすところの青少年に対する
教育的影響を
考えるときに、なおさらこの法案には賛成することができないのであります。こういう点から、
日本共産党といたしまして、この法案に反対の意見を表明する次第であります。