○
政府委員(
安田善一郎君)
委員長の御指示に従いまして、まず
畜産物の
価格安定等に関する
法律案につきまして若干補足説明を申し上げます。
まず、全体の構成について申しますと、本則と附則とからなっておりまして、本則は、総則、安定
価格等、
畜産物価格審議会、畜産振興事業団、雑則及び罰則の六章からなっております。
まず、本則におきましては、第一章ではこの
法律案の
目的と
価格安定
措置の
対象となる
畜産物についての定義を規定し、第二章ではこの
法律案による
畜産物の
価格安定
措置を行なう場合の基準となる安定
価格の設定、安定
価格の実現に資するための
農林大臣または都道府県知事の
措置並びに生産者団体または乳業者による
措置について規定しております。
第三章におきましては、安定
価格に関する重要事項を調査審議するものとしての
畜産物価格審議会について規定を設けております。第四章におきましては、この
法律案を施行するために必要な畜産振興事業団の設置、組織、業務、運営等について規定を設けております。
第五章及び第六章は、この
法律案を施行するために必要な雑則及び罰則についての規定であります。附則におきましては、畜産振興事業団の設立、酪農振興基金の解散並びにその権利及び義務の引き継ぎその他この
法律案の施行のため必要な経過
措置、関連
法律の一部改正等について規定を設けております。
次に、各条項について御説明申し上げます。
まず、第一条では、この
法律案全体の
目的を述べております。この
法律案の直接の
目的といたしましては、「主要な
畜産物の
価格の安定を図る」ことと「乳業者等の
経営に必要な
資金の調達を円滑にする」ことの
二つがあるのであります。この
二つの
措置によりまして、「畜産及びその関連
産業の健全な発達を促進し」、あわせて「国民の食
生活の改善に資する」ことがこの
法律案の窮極の
目的であります。
畜産物の
価格につきましては、従来とも外貨割当
制度による輸入の調整、牛乳乳製品の
価格指導、学校給食への供給、肉畜の出荷調整事業等の
措置によって極力その安定をはかって参りましたが、これらの
措置では必ずしも十分ではなく、最近における
畜産物の需要の増大に対応するための国内生産体制を確立するためには、一段とこの面の
措置を強化する必要があると存ずるのであります。
また、従来酪農振興基金の行なってまいりました乳業者等に対する債務保証業務につきましても、同基金の発足当時とは牛乳乳製品の需給事情も異なりまして、
〔理事櫻井志郎君退席、
委員長着席〕
むしろ今後は、著しい生産の増大が期待されます牛乳乳製品の処理製造のための設備の新設または
改良のため必要な
資金の借り入れについての保証のウエイトが大きくなるものと考えられるのであります。
このような
措置を講ずることによりまして、
農業の一環としての畜産の健全な発達をはかり、
農業経営の
合理化及び
農業所得の増大に資し、さらに畜産の関連
産業の発達をも促進しようとするものであります。なお、このような
目的にあわせまして、最近における国民食
生活の
高度化の方向に沿いまして、栄養価の高い
畜産物を多量に、しかも安定した
価格で消費者に提供し、その食
生活の改善に資しようとするものであります。
次に、第二条におきましては、この
法律による
価格安定
措置の直接
対象となる
畜産物について定義をいたしております。すなわち、この
法律案におきましては、その畜産における地位、国民の食
生活に占める役割、
価格安定
措置からみました効率、適応性等を考慮しまして、さしあたり指定乳製品としましてはバター及び脱脂粉乳を、指定食肉としましては豚肉を
対象といたしております。なお、乳製品の原料乳につきましては、乳製品の操作等を通じてその
価格の安定をはかろうといたしておりますので、ここでその定義をいたしているのであります。
その他の乳製品や食肉につきましては、必要な事態に応じまして
政令で品目の追加ができるよう規定いたしております。
次の第三条は、この
法律による
価格安定
措置を講ずるに際しましてその基準となります安定
価格の設定について規定いたしております。
すなわち、第一項は、
農林大臣は、毎会計年度、その開始前に、原料乳、指定乳製品及び指定食肉につきまして、その範囲内に
価格を安定させようとするそれぞれの
価格安定帯の下位の
価格を定めることとし、これを安定下位
価格と呼ぶことといたしております。次に、同じような
考え方で指定乳製品及び指定食肉について安定上位
価格を定めることといたしております。原料乳につきましては、この
法律案におきましては、直接その安定上位
価格を目標とする
措置はとっておりませず、指定乳製品の安定上位
価格を通じて間接的に規制される仕組みとなっておりますので、原料乳につきましては、安定上位
価格は定めないことといたしております。
第二項は、安定
価格をいかなる段階におけるものとして決定するかについて規定いたしております。すなわち、原料乳及び指定乳製品におきましては生産者の販売
価格といたしております。原料乳の生産者販売
価格は、原料の受け渡し場所によりまして、現実の取引におきましては種々の段階のものがあり得るのでありますが、生乳の生産者団体による共販体制の方向、指定乳製品の安定
価格との関連等を考慮しまして指定乳製品の製造所渡し
価格として決定する予定であります。また、指定乳製品の生産者の販売
価格につきましては、
価格安定
措置の効果の観点から見まして、指定乳製品の生産者を直接の
対象といたしておりますので、いわゆるメーカーの工場出し値について定めることとしているのであります。
次に、指定食肉につきましては、その大量の取引が現に行なわれ、また、その
価格形成についても適正な
措置がとられていると認められておりますところの中央卸売市場における
価格について定めることといたしているのであります。
第三項におきましては、安定下位
価格及び安定上位
価格の機能ないしは意義について規定しているのであります。すなわち、安定下位
価格は、その
価格を下って原料乳、指定乳製品及び指定食肉が低落することを防止することを
目的として定めるものであり、安定上位
価格はその額をこえて指定乳製品及び指定食肉の
価格が騰貴することとを防止することを
目的として定めるものといたしているのであります。
第四項におきましては、安定
価格の決定に際して考慮すべき事項を規定しております。安定
価格の決定に際しましては、原料乳や指定食肉にかかる肉畜の生産者、指定乳製品の製造業者及び消費者の立場をそれぞれ考慮し、今後の成長
産業として期待される畜産及びその関連
産業の合理的発達の
条件となり得るような
価格でなければならないと存じます。そのためには、原料乳、指定乳製品及び指定食肉の生産
条件、すなわち
生産費、販売
価格の水準、その変動
状況、生産規模、
合理化の可能性等及びその需給事情、その他一般の経済事情を総合的に考慮いたしまして、それらの生産及び消費が安定的に発達し得るような水準で定める意図であります。なお、安定
価格の決定に当たりましては、広く利害
関係者及び学識経験者からなります
畜産物価格審議会の意見を聞いて適正に決定いたすよう、第五項において定めております。
第六項におきましては、このようにして定められた安定
価格は、公表することといたしまして、生産者に対しては、当該年度における計画的生産の基礎とし、消費者にとりましても、その食
生活について安定感を与えることを期待しているのであります。
次に、第四条でありますが、この条におきましては、当該年度における安定
価格の決定後、物価その他の経済事情に著しい変動を生じた場合にはこれを改訂しうることとし、安定
価格の適正を維持しようといたしております。この場合におきましても、
畜産物価格審議会の意見を聞くとともに、改訂された安定
価格についてもこれを公表することといたしております。
次に、第五条についてでありますが、この条は、
農林大臣または都道府県知事の原料乳の
価格に関する勧告の規定であります。原料乳の
価格維持につきましては、原料乳を直接に畜産振興事業団の買い入れ
対象とせず、第四十三条第一号の規定を働かせ、指定乳製品の買い上げを通じて間接的に維持する仕組みとしております
関係上、乳業者が原料乳の生産者に対し、安定下位
価格に達しない
価格を支払っておりますような場合には、
農林大臣または都道府県知事は、当該乳業者に対して、その支払
価格を少なくとも安定下位
価格に達するまで引き上げるべき旨の勧告をすることができることといたしまして、原料乳の安定下位
価格の維持をはかろうとするものであります。第二項におきましては、この勧告をしたときは、その旨を公表できることとしまして一般世論に訴えてその実現を期することといたしております。
次の第六条の規定は、生乳生産者団体、乳業者、指定食肉の生産者団体の行なう指定乳製品または指定食肉に関する自主的調整事業に関する規定であります。
第一項は、生乳生産者団体が、原料乳の
価格が著しく低落しまたは低落するおそれがあると認められる場合に、その
価格を回復しまたは維持するために、その構成員の生産する原料乳を原料とする指定乳製品の生産に関する計画を定め、
農林大臣の認定を受けることができることとしております。生乳生産者団体の生産に関する計画におきましては、生乳生産者団体が、自己所有の
施設によって指定乳製品を生産する場合のみならず、他の乳業者に委託して生産する場合をも
対象といたしまして、このようにして生産された指定乳製品は、第三十九条の規定により畜産振興事業団に売り渡すこともでき、または第六条第二項の規定による保管または販売の計画の
対象とすることもできることといたしております。この生産の委託につきましては、第三十八条第一項第三号の規定によりまして畜産振興事業団がそのあっせんを行なうことができることとし、畜産振興事業団があっせんしてもなお乳業者が、正当な理由がないのにその生産の委託に応じないときは、第六条第五項の規定によりまして、その生乳生産者団体の申出によって、当該乳業者に対し、その委託に応ずべき旨を指示することができることとして、その生産計画の実行性を補強いたしているのであります。
第二項におきましては、指定乳製品の
価格が著しく低落しまたは低落するおそれがあると認められる場合には、この項の各号に規定する乳業者、生乳生産者団体等が、みずからもしくは他に委託して生産しまたはその構成員の生産する指定乳製品について、自主的に保管しまたは販売することについて計画を作成し、
農林大臣の認定を受けることができることといたしております。この計画につきましては、第三十八条第一項第四号の規定によりまして、畜産振興事業団が、その計画実施に要する
経費につきまして
助成ができることとしているのであります。この規定は、従来酪農振興法第二十四条の四にありました乳製品の保管計画についての規定を、この
法律案による
価格安定
措置と調整したうえで取り入れ、従来の国の
助成も、
価格安定
措置ということで畜産振興事業団の業務に一元化したものであります。
第三項の規定は、第二項と同
趣旨によりまして、指定食肉の保管または販売に関する計画について規定したものであります。この計画につきましても、畜産振興事業団が、その実施に要する
経費について
助成いたすこととしておりますことは同様であります。
第四項の規定は、以上三つの計画についての
農林大臣の認定についての規定であります。その認定基準につきましては農林省令で定めることといたしております。この認定と安定下位
価格との
関係について申し上げますと、畜産振興事業団の買入
措置によってもなおその
価格が安定下位
価格を下回る場合はもちろん、安定下位
価格に至らない段階におきましても、安定下位
価格にまで低落するのを防止するために、または
価格に急激な落差を生ぜしめないようにその
価格を平準化することを
目的とする場合も含むことを予定いたしております。
第五項の規定は、生乳生産者団体の指定乳製品の生産に関する計画の実施につきまして、
農林大臣が乳業者に対し委託に応ずべき旨の指示をすることができる旨の規定でありますが、この規定につきましては、第一項について御説明いたしました際にもすでに申し述べたところであります。
第六項の規定は、第一項から第三項までの計画は、畜産振興事業団の業務と関連がありますので、
農林大臣が認定しようとする場合は、畜産振興事業団の意見を聞くことといたしておるのであります。
次に、第三章は、
畜産物価格審議会に関する規定であります。
安定
価格は、広く学識経験者の意見を聞いて決定することが適正であると考えまして、この審議会を設けることといたしたのであります。
まず、第七条から第九条までにおいて、その設置及び権限、組織並びに会長について規定いたしております。
第十条は部会の規定でありますが、これは安定
価格が、原料乳及び指定乳製品と指定食肉との
二つの大きな分野に分れますので、場合によっては審議会を分けて審議することが適当と考えて、部会を設けることができることといたしておるのであります。
次の第四章は、畜産振興事業団について規定いたしております。
第十二条は、畜産振興事業団の
目的に関する規定でありまして、同事業団は、「主要な
畜産物の
価格の安定及び乳業者等の
経営に要する
資金の調達の円滑化に必要な業務を行なう」こととして、この
法律案に規定する
措置の重要部分を担当する旨を定めているのであります。
第十三条から第十五条までは、法人格、事務所及び定款に関する規定であります。
第十六条は、事業団の
資本金に関する規定であります。事業団の
資本金のうち
政府出
資金は十億円といたしておりますが、これは、附則第四条第一項の規定によりまして、事業団の設立に際して
政府が出資する五億円と、附則第六条第一項及び第二項の規定によりまして事業団が酪農振興基金から
政府出
資金として引き継ぐ五億円との合計額であります。
資本金としましては、このほかに酪農振興基金から引き継ぐ
政府以外の者の出
資金と、事業団の成立後に
政府以外の者が事業団に出資する金額が加わることになるのであります。
この
資本金のうち、酪農振興基金から引き継いだ
政府出
資金五億円と
政府以外の者の出
資金は、すべて債務保証業務にかかるものとして、第四十八条の規定によりまして区分経理をすることといたしておりますので、
価格安定業務に属する
資本金といたしましては、さしあたり五億円でありますが、附則第十一条の規定によりまして当分の間債務保証業務の勘定からの繰入金をも財源とすることといたしております。なお、今後における
対象畜産物の生産の増大その他の事情に応じまして、当然事業団の
資本金につきましても増額を必要とするものと考えられますので、第二項におきまして、事業団は
資本金を増加することができるとし、第三項におきまして、その際は
政府が事業団に追加して出資ができることといたしておるのであります。
次に、第十七条から第二十一条までの規定は、債務保証業務にかかる
政府以外の者の出資に関する規定でありまして、従来の酪農振興基金における場合と同一の扱いといたしております。
第二十二条の登記に関する規定、第二十三条の名称の使用制限に関する規定及び第二十四条の民法の準用に関する規定は、同種団体に共通な例文であります。
次に、第二節は、役員等に関する規定であります。
第二十五条は、役員に関する規定でありまして、事業団の業務の重要性と多様性に対処するため、理事長一人、理事三人以内及び監事二人以内のほか副理事長一人を置くこととしております。なお、同条第二項の非常勤理事七人は、従来酪農振興基金において、
政府以外の者の出資との
関係等で置かれていたのを、事業団運営の事業団運営の適正化の観点から第三十条の兼職禁止の規制を加えて引き継いだものであります。これらの役員の任命は、第二十七条第一項におきまして、
農林大臣が行なうことといたしております。
次に、事業団の業務の
性格にかんがみまして、第三十条において、役員が営利事業に
関係することについて制限を設けるとともに、第三十四条におきまして役員及び職員の秘密保持義務を規定し、第三十五条において役員及び職員の刑法その他の罰則の適用上における公務員たる性質について規定しているのであります。
次に、第三十六条は、事業団の評議員会に関する規定であります。
これは、事業団の運営特に具体的な業務につきまして、それが適切に行なわれるように出資者及び学識経験者の意見を反映するためのものであります。
その評議員の任命は、第三十七条の規定によりまして、広く出資者、生産者、流通業者、消費者等の中から適正な者を
農林大臣が任命することといたしております。
次に、第三節は、事業団の業務に関する規定であります。
第三十八条は、事業団の業務の範囲を規定しております。第一項各号のうち第三号と第四号の業務につきましては、第六条の規定の説明に関連して申し上げたところでありますが、第一号及び第五号の業務につきましては、この条の第三項におきまして、第三十九条から第四十六条までに規定するところに従って行なうことといたしておるのであります。
第二項の需要増進に関する業務につきましては、従来酪農振興基金が飲用牛乳及び乳製品について行なっておりましたものに新たに食肉を加えて事業団の業務としたものであります。
次に、第三十九条は、事業団の行なう国内産の指定乳製品及び指定食肉の買い入れに関する規定であり、第一項は指定乳製品の、第二項は指定食肉の買い入れに関する規定であります。指定乳製品の方は、乳業者、乳業者の組織する
中小企業等協同組合または生乳生産者団体の申し込みによりまして、みずから生産しまたは他に委託して生産したものを安定下位
価格で買い入れることとし、指定食肉の方は、適正な
価格形成が行なわれる
制度となっております中央卸売市場においてその安定下位
価格で買い入れることといたしております。なお、当分の間は中央卸売市場以外の市場であって、
価格が公開性を有し、その形成も適正に行なわれていると認められるものにつきましては、
農林大臣が指定し、中央卸売市場と同様の取り扱いをいたすこととし、その旨を付則第十条で規定しております。
次に、第四十条は、輸入にかかる指定乳製品、指定食肉及びその他の食肉の買い入れにに関する規定であります。この
法律案による
価格安定
措置のねらいとしては、
原則として国内産による長期的需給均衡を目途といたしておりますが、一時的に国内産が不足し、指定乳製品または指定食肉の
価格が安定上位
価格をこえて騰貴しまたは騰貴するおそれがあると認められる場合において、事業団がその
価格の騰貴を抑制するために必要な数量の当該指定乳製品または当該指定食肉を保管していないときは、事業団は、
農林大臣の承認を受けて、必要な限度において、輸入業者の輸入した当該指定乳製品または当該指定食肉を買い入れ、第四十一条の規定により売り渡すことによって、
価格騰貴の抑制をはかっているのであります。なお、指定食肉の
価格騰貴の場合には、海外の市況等によりまして有効に指定食肉を輸入することが困難な場合には、これに代替する食肉で
政令で定めるもので輸入されたものを買い入れることができることといたしております。この
政令で定めるものとしましてはさしあたりは牛肉を考えております。
次に、第四十一条の規定は、
原則的な売り渡しに関する規定であります。指定乳製品または指定食肉の
価格が安定上位
価格をこえて騰貴しまたは騰貴するおそれがあると認められる場合は、事業団がその保管している指定乳製品または指定食肉を売り渡すことによってその
価格騰貴を抑制することといたしておるのであります。その売り渡し
方法といたしましては、指定乳製品につきましては安定上位
価格を基準とする一般競争入札の
方法により、指定食肉につきましては安定上位
価格を基準として中央卸売市場において売り渡す考えでありますが、場合によりましては、売り渡し品の用途、転売
価格等につき政策的に規制する等のため、随意契約その他の
方法によることが必要なことも考えられますので、そのような場合には
農林大臣の承認を受けて他の
方法によることができる旨をただし書で規定しております。
次に、第四十二条は、特別の事由がある場合における売り渡しに関する規定であります。事業団の保管数量が一定の数量をこえ、または保管期間が一定の期間をこえるに至ったような場合には、第四十一条の規定による売り渡しが困難なこともあり得ますので、そのような場合には、事業団の管理上の問題も考慮いたしまして、指定乳製品または指定食肉の
価格が安定上位
価格をこえて騰貴しまたは騰貴するおそれがあると認められない場合においても、
農林大臣の承認を受けて、原料乳及び指定乳製品または指定食肉の時価に悪影響を及ぼさないような
方法で売り渡しができることといたしております。
次の第四十三条の規定は、一定の理由があるときは、事業団は買い入れまたは売り渡しをしないこととし、
価格安定
措置の適正化を期しておるのであります。
次の第四十四条は、事業団が保管する指定乳製品または指定食肉の保管中における品質保持のため新しいものと交換ができることとするものであります。
次に、第四十五条は、乳業者等に対する債務の保証に関する規定であります。この規定は、従来酪農振興基金法第二十九条第一項に規定されており、それに基づいて酪農振興基金が行なっておりましたものをそのまま引き継いで規定いたしております。
次に、第四十六条の規定は、事業団の業務の委託に関する規定であります。事業団の業務に
関係する地域が全国にわたりますが、その業務の性質上継続的ではありませんので、全部を事業団が直接処理することが困難でありまたは
経費がかかり過ぎるというような場合には、買い入れ、交換、売り渡し及び債務の保証の決定を除き、実務的な処理を他の適当な者に委託できることといたしておるのであります。
次は、第四十七条の業務
方法書に関する規定でありますが、業務
方法書の記載事項は細目にわたりますので農林省令で定めることといたしております。また、業務
方法書の作成は、付則第三条第二項の規定により事業団設立の際にすることとなっておりますので、この条の第二項及び第三項におきましては、その変更に関する事項について規定しておるのであります。
次に、事業団の財務及び会計について申し上げます。
第一に、第四十八条におきまして、債務保証業務について特別の勘定を設けることといたしました。さきに申し上げましたようにこの事業団は、
一つには
畜産物の売買業務を、もう一方ではいわば
金融業務でありまする債務保証業務を行なうこととされているのであります。従いまして、この両業務の経理を区分して整理いたしましておのおのの業務の損益が明確に把握できるようにする必要がありますので、債務保証業務にかかる経理を他の業務のそれから区分するという形をとることといたしております。
政府がすでに酪農振興基金に対し出資いたしております五億円と酪農振興基金が解散されるときまでに
政府以外の者から出資されると見られる約二億円弱合計七億円弱の金額及び事業団設立後
政府以外の者から出資される金額は、この特別の勘定においてその取り扱いが行なわれることとなるのであります。
第四十九条から第五十七条までは、他の同種の団体に準じまして事業年度、
収支予算、事業計画、
資金計画、決算、損益の処理、借入金、予裕金の運用、役職員の給与、退職手当の支給等について必要な事項を規定しております。
次に、第五十八条と第五十九条は、事業団に対する
農林大臣の監督について規定しております。すなわち、第五十八条第一項は、事業団は
農林大臣が監督するということを明記いたしまして、同条第二項により
農林大臣は、この
法律案を施行するために必要があると認めるときは、事業団に対して業務上必要な命令を発することができることといたしました。
第五十九条は、他の同種の団体に準じまして、
農林大臣の報告徴収、立入検査の権限を規定しております。
第六節の補則は、事業団の出資者に対する通知または催告の必要手続、定款等の書類の備付け及び閲覧、解散等についての出資者の地位に関して規定いたしております。
第六十三条は、
農林大臣が指定乳製品の生産等に関する計画を認定する場合の基準を定める場合、事業団の定款や業務
方法書の変更認可をする場合、
収支予算や事業計画の認可をする場合等には大蔵大臣と協議しなければならないという規定であります。
次に、第六十四条は、
農林大臣が、この
法律案によりまして
畜産物の
価格安定に関する各種の
措置を実施いたして参ります場合に必要とされる
生産費、輸入
価格、在庫量等の調査を可能とするための報告徴収及び立入検査の権限を規定しております。この規定は、他の
価格安定法、需給調整法等に準じた規定であります。
第六十五条から第六十九条までは、罰則の規定であります。
最後に、付則におきましては、第一にこの
法律案の施行日を
原則として公布の日とすること、第二に畜産振興事業団を設立して、酪農振興基金を解散し、その一切の権利及び義務を事業団が承継すること、第三に酪農振興基金法を廃止すること、第四に事業団について同種団体に準じた税制上の優遇
措置を講ずること、第五にこの事業団の業務を行政管理庁の調査の
対象とすること、第六に酪農振興法第二十四条の四の国内産の乳製品の保管の規定を削除すること等をおもな内容としております。
以上が
畜産物の
価格安定等に関する
法律案の概要でございます。
次に、
家畜商法の一部を改正する
法律案につきまして、若干補足説明を申し上げます。
まず、改正の主要点につきましては、(一)
家畜の取引の業務に関する講習会の受講終了を免許の要件にしたこと、(二)
家畜商の営業保証金の供託についての
制度を設けたこと、(三)
家畜商に
家畜の取引に関する帳簿の備付及びこれについての立入検査に関する規定を設けたことの三点であり、その他の改正点はこれらの事項を関連して、免許の資格要件、取消要件等につき、必要な規定の整備を行なったことであります。以下これらの改正の主要点について御説明申し上げます。
まず第一点は、
家畜の取引の業務に関する講習会に関する
制度についてであります。現行法では、
家畜商に簡単な免許
制度を実施し、その結果現在のところ約七万人の
家畜商につき免許が行なわれております。若干の免許手数料(使用人がいない場合は五百円、使用人がいる場合には千円以内)さえ納入して申請すれば、禁治産者、準禁治産者、禁錮以上の刑に処せられその執行を終わった日から二年を経過しない者等でなければだれでも免許を与えられることになっており、この結果、
家畜の資質、
家畜の衛生、
家畜の伝染病、
家畜取引の
関係法令を初め
家畜の取引の業務に必要な知識をほとんど持たない者であっても、
家畜商の免許を与えられて営業できることとなり、取引に関する事故や紛争を起こす場合もあって、このことが
家畜商個人またひいては
家畜商業界の地位をおのずから低めている実情でもありました。そこで今回の改正に際しては、講習会に関する
制度を設け
家畜商の資質の向上をはかることにいたした次第であります。すなわち、第三条第二項の免許の資格についての現行規定を改正し、
農林大臣の指定する者(畜産
関係の大学、または全国を区域とする法人で
家畜の取引の改善をその
目的中に含むものであって講習会の開催能力を持つと認められるもの。)が行なうかまたは都道府県知事が行なう
家畜の取引の業務に関し必要な知識を修得させることを
目的とする講習会の課程を修了した者またはその者を使用人その他の従業者として置く者に対してでなければ、
家畜商の免許を与えないこととしたことであります。
第二にこの免許資格の整備と関連して免許申請者の保護を、はかるため第四条の二の規定を新たに設け、都道府県知事に
原則として毎年一回を常例として講習会を開催しなければならないこと、ただし、
農林大臣が指定した者が行なった場合には都道府県知事は必ずしも行なわなくてもよいこととし、また講習会を開催した者はその講習会の課程を修了した者に対し修了証明書を交付しなければたらないことといたしたことであります。
第三に講習会の受講修了を免許の要件としたことの主旨が実際の取引を行なう者の資質の向上をはかることにあり、従って、免許を受ける
家畜商のみでなく、取引の業務に従事する従業員にも受講修了をさせる必要にかんがみ、第十条に第二項及び第三項を新設し、
家畜商に対し、受講修了をしていない者をその取引の業務(農林省令で定める取引契約の締結等の行為)に従事させてはならない義務を課するとともに、講習会の受講修了をしていない
家畜商は、みずから
家畜の取引行為を行なってはならないことといたしたことであります。なお、この講習会につきましては、付則第三項で既存の業者は、一年以内に受講修了をし、その受講修了をした証明書を添えて免許を申請し直さなければならないこととなっており、またこれと関連して付則第五項で都道府県知事に法施行後十月以内に講習会を開催すべき義務が課せられております。なお、この講習会につきましては、都道府県において条例で一定額の手数料(おおむね五百円以内)をとって行なうこととなりますが、この講習会の実施
方法については政省令でその細目を定めて、その公正円滑な実施を期することとなっております。
右政省令では、おおむね講習会課程(
家畜伝染病の種類、見分け方、
家畜の疫病の見分仕方、
家畜の品種、損徴、
家畜衛生、
家畜取引等についての
関係法令等)日数、場所、開催
方法、修了までの課程、証書の交付の
方法等を規定する方針であります。
次に主要な改正点の第二は、
家畜商の営業保証金の供託に関する
制度についてであります。
家畜商の知識の欠除に基づく
家畜取引上の事故または紛争につきましては、講習会に関する
制度を実施することにより、その減少をはかることが可能でありますが、一部の
家畜商が取引についての知識を有しながら他人に迷惑をかける場合もあり、この点講習会の実施のみでは十分ではないので、
家畜商の信用能力を最小限度において補完して
家畜の取引の安全を確保するとともに、事故が生じた場合には、
家畜商の取引の相手方の債権の保護をはかることを
目的として営業保証金の供託に関する
制度を設けたことであります。従って、講習会に関する
制度と営業保証金の供託に関する
制度とをあわせ活用して
家畜の取引の公正を確保し、
家畜商の地位の向上をはかることといたしたわけであります。営業保証金に関する規定は第十条の二から第十条の七までと付則に若干ございます。
まず、第十条の二は、
家畜商の供託義務、供託をした旨の都道府県知事に対する届け出義務、届け出以前の営業開始の禁止について規定しております。供託をする場合の具体的な手続等につきましては、別途供託法等の
関係法令で定められているところであります。
第十条の三におきましては、営業保証金の額につきまして、その
家畜商の取引の業務に従事する者の数が(免許を受けている者がみずからも取引の業務に従事するときは、その者をも含めて)一人であるときには二万円とし、一人をこえる場合には一人増加するごとに一万円をこれに加えた額とする旨を規定いたしております。供託すべき営業保証金はこの第十条の三第二項において、現金に限定することなく、国債、地方債等の有価証券でもこれに充て得ることを定めております。この有価証券による供託を認めているのは、供託者の便宜を考えたからであり、この場合、営業保証金に充てることのできる有価証券の価額は、その種類によっては流通性換金性等から見てその証券の額面金額全額がそのままの額として受け入れられない場合もあるので、農林省令で定める一定割合を乗じて得た額として取り扱うよう考えております。
第十条の四におきましては、営業保証金の還付について規定されております。営業保証金の還付とは、供託した営業保証金により
家畜の取引上その債権を有する者が取引上の弁済を受けることをいうわけでございますが、本条はこの還付について、請求権者、請求のできる事由等を規定しているわけであります。この場合請求権者は、
家畜商と
家畜の取引契約を締結した相手方であり、請求の事由は、
家畜の取引により債権を生じたことでありますが、この
法律の施行前に行なわれた
家畜の取引契約により生じた債権につきましては、これを
対象とすることは実際の取引に相当の混乱を来たすおそれがあるので、付則第十二項で
対象から除外しております。なお、還付の際の請求
方法等については、還付を受けようとする者が還付請求書に一定の添付書類を付して供託所に提出をすることになっておりますが、その詳細につきましては、別途供託
関係の法令で定められているほか省令で定めることとなっております。
次に第十条の五におきましては、営業保証金の不足額について、
家畜商の供託義務を規定しております。この供託義務が生ずる場合として法は従業者数を増加したため追加して供託する必要が生じた場合及び供託金が還付されたため、その還付された額を補てんして供託する必要が生じた場合をあげております。
次に第十条の六におきましては、営業保証金の保管替えについて規定しております。供託を行なう際住所地のもよりの供託所が管轄の供託所となりますが、管轄の供託所は一たん決定した後は変わらないので、
家畜商が住所を移転した場合には、
家畜商の取引の相手方の還付請求または
家畜商の取り戻し請求は、移転前の住所地のもよりの供託所となり不便であるので、営業保証金の保管がえを行ない管轄の供託所を変更できるようにした次第であります。この保管がえは手続上の
関係から、現金のみにしか認められておらず、有価証券の保管がえは認められておりません。従って有価証券による供託を行なっているときには、移転後の住所地のもよりの供託所に新たに供託を行なった後、移転前の住所地のもよりの供託所から供託金の取り戻しを行なわねばならないことになります。
最後に第十条の七におきまして営業保証金の取り戻しにつき規定しております。取り戻しとは、供託者が供託所から営業保証金の払い戻しを受けることをいうわけでありますが、本条は取り戻しのできる場合として (一)
家畜商名簿の登録が消除されたとき、(二)
家畜商がその従業員を減らしたため供託金の額が営業保証金についての法定額をこえることとなったとき、(三)住所地を移転したため新たに供託を行なったときを掲げ、このそれぞれにつき、取り戻し権者、取り戻すことのできる額を規定しております。
なお、この取り戻しを行なう手続については、この条の第四項以下で当該営業保証金の還付請求権者を保護するために、取り戻しをしようとする者に還付請求権者の存否を確かめるための公告する義務を課しているほか、供託
関係の法令またはこの
法律に基づく省令で定められることになっております。
以上が営業保証金に関する規定の概要であります。
このほか、付則第八項から第十一項までにおきまして、既存業者についての供託義務、供託した旨の届け出義務、その届け出がない場合の免許の取り消しについて規定しております。この場合、既存業者は、改正法に基づく免許を一年以内に受け、その免許を受けた後、農林省令で定める一定期間(一月
程度)以内に営業保証金の供託を行なうことになっております。
改正点の第三は、
家畜取引に関する帳簿の備付及びその検査についてであります。現行
家畜商法では第七条において、免許
制度の適正な運用をはかるため、正当な事由がなくて一年以上
家畜の取引を行なわない者には、免許の取り消し等の
措置がとれることになっておりますが、この場合現行法では
家畜商が取引を行なったかどうかを確認する
方法がなく、法の適正な運用が支障を受けていたと考えられ、また今回の改正で講習会の受講修了以外の者を
家畜の取引の業務に従事させてはならないこととなり、取引の
従事者を確認する必要があることとなったので、免許
制度の適正化をはかるためには、
家畜商に帳簿の備付を義務づけ、これに一定事項の記載を義務づけることといたしたのであります。すなわち、第十一条の二の規定を新設し、
家畜商に、事業所ごとに帳簿を備え付け、これに取引のあったつど、その年月日及び場所、その取引頭数、取引に従事した使用人氏名等を記載させるとともに、第十一条の三の規定を新たに設け、都道府県知事に対して、その職員に
家畜商の事業所に立ち入り、帳簿書類を検査させる権限を認めることとしたのであります。
以上が改正の主要点についての簡単な説明でございますが、以上の主要な改正点に伴い必要となった関連の改正点が若干ございますので、以下これにつき簡単に御説明申し上げます。
第一には、第一条の
目的の変更でございます。まず、免許
制度と並び営業保証金についての新たな規定を明記するとともに、これらの
制度の
目的に関しその
趣旨を明らかにすることといたしました。第二には、第三条第二項の免許資格の改正に伴い、第四条の免許を与えない者についての該当要件を拡充し、現行法では
家畜商が禁治産者等に該当する場合をあげているのに対して、これに(一)講習会の受講修了者が一人もいない
家畜取引
関係の事業所を有する者、(二)講習会の受講修了者を置いているが、そのすベてが禁治産者等現行法の免許を与えない者に該当する
家畜取引
関係の事業所を有する者を加えたことであります。第三には、第六条の免許証の交付に関し、改正前には、その交付数についての規定がなく、農林省令で
家畜商に対して正本一通を、
家畜の取引に従事する使用人があると手は、その数に応じて副本を交付することになっておりました。しかし、第十一条において
家畜商の免許証の呈示義務があるので、これとの
関係から
法律上も
家畜の取引の業務に従事する者がそれぞれ免許証を所持し、取引の相手方の呈示要求に応じ得るようにしておくことが適業であり、従って、
家畜商に対してその取引の業務に従事する者の数に応じて免許証を交付するよう法を改めた次第であります。第四には、各改正
趣旨点に関連して、第七条の免許の取り消し及び業務の停止事由を拡充したことであります。すなわち、従来は、
家畜商が「免許を与えない場合」に該当するとき等がこれに当たっていたわけでありますが、今回は(一)この「免許を与えない場合」それ自体が拡充されたため、これに伴い免許の取り消し等の事由が追加されたこと、(二)取引の業務に従事する使用人として講習会の受講修了者を置いている者が当該使用人を置かなくなったとき、(三)
家畜商が帳簿の備付または記載義務に違反したとき、(四)
家畜商が講習会の受講者以外の者を
家畜の取引業務に従事させたとき、または講習会の受講修了者でない
家畜商がみずから取引行為を行なったとき、(五)
家畜商が営業保証金の供託またはその不足額の供託義務に違反したときの(二)から(五)までのそれぞれの場合を免許の取り消し等の事由に加えたことであります。
以上のほか、右諸改正に伴う字句の整理、条文の整理、罰則の整理等であります。
次に、
家畜改良増殖法の一部を改正する
法律案につきまして、補足説明を申し上げます。
まず本則におきましては、第一に、わが国における畜産の発展、その
農業に占める地位の向上及び必要性に対処するとともに、最近におきまする畜産
技術の進歩等に応じまして、
家畜の
改良増殖を一段と計画的かつ効率的に実施して畜産の振興をはかるとともに、あわせて
農業経営の改善に資する
趣旨を明らかにするため、
目的に所要の改正を加え、第二に、
家畜の
改良増殖に有効な事項を極力総合的にかつ体系的に促進することとし、その実施に際しては
農業経営に
家畜の
改良増殖の成果である優良な資質の
家畜が適正かつ円滑に
導入されることになるように努める旨の規定を設けることといたしました。第三は、
家畜の
改良増殖を計画的に行なう
趣旨で、
家畜改良増殖目標の公表、都道府県
家畜改良増殖計画の作成等に関する規定を新たに設けることといたしたのであります。
第四には、凍結精液の利用の実用化に伴い種畜及び
家畜人工授精に関する規定を補正して整備することといたしております。第五には、新たに
家畜登録に関する規定を設けることとしました。すなわちこれは
家畜登録事業の公正な運営を確保するため、
家畜登録事業についてその登録規程を
農林大臣の承認制とするとともに、その業務について援助し監督すること等の規定を設けることといたしました。第六には、新たに
家畜の
改良増殖に関する重要事項を調査審議するものとして、農林省に
家畜改良増殖審議会を設置運営することにしたのであります。第七には、この
法律案を施行するために必要な雑則及び罰則について所要の規定を設けております。なお、付則におきましては、
家畜登録事業について、その登録規程が
農林大臣の承認制となることに関し、その他この
法律の施行のため必要な経過
措置、関連
法律の一部改正について規定を設けております。
次におもな改正規定について逐条説明を申し上げます。
第一条は、すでに申し上げました本法の
目的に関しまして改正
法律案の全体に着目しまして所要の改正をしたのであります。
第二条は、
家畜の
改良増殖を促進する義務と
家畜の
改良増殖が
農業経営改善に資し、
農業者にその成果を得しめるための
家畜の
導入等に対する
措置に関する規定であります。すなわち、第一項におきましては、現行法でも国及び都道府県は
家畜改良増殖に有効な事項を促進することといたしておりますが、この改正
法律案におきましては、その
趣旨を包括的にそのまま引き継ぐとともに、
家畜の
改良増殖の促進事項のうち、その重要事項を極力具体的にまた体系的に法文化してこれを明確に確保することといたしました。従って従来の「第二章以下に規定する事項以外であっても」を削除することといたしました。第二項につきましては、国及び都道府県が
家畜の
改良増殖に関する各種の施策を進めていく際に
家畜の
導入をいかに円滑に進めていくかについて規定いたしております。すなわち、新たに国及び都道府県は
家畜の
改良増殖上必要な各種の施策を講ずるにあたっては、
改良増殖の成果である優良な資質の
家畜が
農業経営に適正かつ円滑に
導入されるように努めるとともに、
家畜を取り入れた
農業経営の発展に資するよう努めるべき旨の規定を設けることとしたのであります。しかして優良な資質の
家畜が
農業経営に取り入れられ、この飼育が行なわれる場合、これらの
家畜がわが国の畜産
経営の発展の方向に即した形でその優良な資質が十分活用されるのでなければならないのは当然なことでありまして、これが
措置を円滑に実施するために
家畜を
導入するにあたっては
農林大臣が定める「有畜
農家育成基準に準拠」することとしたのであります。第三項につきましては、有畜
農家育成基準の内容等についての規定であります。有畜
農家育成基準とは、現在及び将来のわが国
農業における畜産発展の動向及び施策に照らしまして
家畜の
改良増殖の目標及び
農業経営の現状及び将来の発展方向並びに
家畜の
改良増殖の成果を考慮いたしまして、
家畜の飼養規模、
家畜導入にあたって考慮すべき立地
条件等について定めることといたしているのであります。
これまでのわが国の畜産
経営は、副業的な
経営が大部分を占めていたのでありますが、
畜産物に対する旺盛な需要に刺激され、一般的には自然的、経済的、社会的
条件により、
経営の形態等により多くの差がありますものの、従来の飼養規模に比べて多頭数飼養の有利性が次第に認識され、普及されつつある
状況であります。また、これと同時に適切な
農業生産の発展をはかり、
農業経営の
近代化等を中心とする
農業構造の改善のためには、合理的な畜産の
導入及び
経営の育成、発展を確立しまして畜産の振興がはかられることが、今後のわが国
農業の発展のため最も必要なことの
一つとして要請されているのは御
承知の
通りであります。有畜
農家育成基準を定める場合には、無畜
農家の有畜化を一段と適切に進めますと同時に、単なる副業的有畜
農業経営から多頭数飼養による主畜
経営またはこれに準ずる
経営に移行することが必要であると考えられます。従いまして国としても
農業者がこの基準に沿って従来よりも拡充した援助指導を行ないもって
家畜を取り入れた有畜
経営による
農業の発展を進めていくことを助長したいと考えておるわけであります。
次に第一章の二につきましては、
家畜の
改良増殖に関する目標、
家畜の
改良増殖計画等に関する
措置について規定しております。
第三条の二につきましては、
農林大臣の定める
家畜改良増殖目標の公表及びその目標の内容等に関する規定であります。今後におきまして畜産を適切に伸長して参ることは、まさに重点的な国策の
一つでありますので、今後の
家畜の
改良増殖を計画的、能率的に行なうための国の目標を重要な事項について定めますとともに、国民一般特に
農業者に理解と協力を求めるとともに、都道府県が
家畜改良増殖計画を立てるときのよりどころにしたいと考えている次第であります。第一項は、
改良増殖目標を定める
家畜は、牛、馬、綿羊、ヤギ、豚について定めることといたしまして、その他の
家畜につきましては、必要な事態に応じまして
政令で追加ができるように規定いたしております。
農林大臣は、
家畜改良増殖目標を定めたときは、これを公表することといたしておりますが、これは、国及び都道府県の
関係者のみならず種畜業者、
家畜の飼養者である
農業者等広く
関係者に周知徹底をはかり協力を得る必要があるためでございます。
なお、
家畜改良増殖目標を定める時期及び目標期間につきましては
政令で定めることといたしておりますが、たとえば五年ごとに十カ年先までの目標というように
家畜の性質、畜産
技術等を考え、かなり長期的なものとしてこれを立てる所存であります。第二項は、
家畜改良増殖目標の内容について規定しているのでありますが、
家畜改良増殖目標は、
家畜の種類ごとに
畜産物の需要の動向及び畜産
経営の発展の方向に即して産乳能力、産肉能力、体型、頭数あるいは耐暑性、耐寒性等地域性に応じた
家畜の特性等について定めることといたしておるのであります。第三項におきましては、
家畜改良増殖目標は、かなり長期にわたる
家畜の
改良増殖の基本方針を定めるものでありますから、学界、実際家を通じ、民間の有識者の意見を聞いて慎重を期するため、
家畜改良増殖審議会の意見を聞かなければならないことといたしております。
次に第三条の三は、都道府県知事の定める
家畜改良増殖計画に関して規定したものであります。すなわち第一項は、都道府県知事は
農林大臣の定める
家畜改良増殖目標を達成するため、各都道府県によりその実情に応じ、しかも
農林大臣の定めた
家畜改良増殖目標の方向に即応して
家畜改良増殖計画を定めることができることとしたものであります。第二項は、この計画に盛り込むべき必要な事項を定めたものであります。第一は都道府県としての
家畜改良増殖の目標でありまして、方向としましては、国の目標に即するものであると考えますが、その都道府県としての自然、経済、社会の事情が加味されるものと考えられます。第二は計画の期間で、国に準じて一応十カ年ぐらいを考えております。第三は種雄畜の配置、利用及び更新に関する事項であります。種畜というのは、現行法では、牛及び馬については種雄畜全部、牛、馬以外の綿羊、ヤギ及び豚については人工授精用のもののみをいうことに規定されている
関係もあり「種付け又は人工授精の用に供する
家畜の雄で、優良な血統能力及び体型を有するもの」といたしたのであります。第四は、都道府県の種畜場、民間の生産家の
施設等の生産
施設、
家畜人工授精所、
家畜人工授精を行なう種畜場等の
家畜人工授精
施設、その他有畜営農指導所、畜産基地農場、畜産試験場等の
家畜改良増殖
施設の
整備拡充計画に関してであり、第五は産乳または産肉等の能力検定事業の実施計画等に関してであり、第六は講習会、共進会等の開催または設置の方針、開催基準、計画等の記載を期待しており、第七は、以上のほか
関係試験研究の計画に基づく指導計画等についての事項を考えております。第三項は、都道府県知事は、
家畜改良増殖計画を定めようとするときは、畜産に関する専門的知識または経験を有する者の意見を聞かなければならないこととしてありまして、これは、大学
関係者、畜産及び
農業団体の
関係者、民間のブリーダー等が加わることを期待しているのであります。第四項は、
家畜改良増殖計画は、国の場合と同様、広く
関係者の理解とこれに基づく協力を期待しているものでありますので、その公表について規定しているのであります。
次に第三条の四につきましては、都道府県知事の定めた
家畜改良増殖計画の実施に必要な国の援助について規定しているのでありまして、都道府県に対しましては、国の所有する種畜の譲与、無償貸付または時価よりも低い対価による譲渡もしくは貸付、種畜の購入に要する
経費の補助、乳牛及び豚について行なう能力検定事業の実施に要する
経費の補助、畜産研修
施設の設置及び講習会開催に要する
経費の補助等の
助成措置を講ずる所存であります。
次に第一条の五につきましては、種畜に等級を付する場合、
家畜人工授精所に係養する種畜の規格を定める場合に
農林大臣または都道府県知事は、
家畜改良増殖目標またはこれに即して定められた
家畜改良増殖計画の
趣旨に沿ってその達成に資するものとなるように努めること並びにその他
家畜登録事業、
家畜改良増殖審議会等に関する各条項を運用するにあたっても、
改良増殖目標、もしくは
改良増殖計画の達成に資するように努むべきことを規定しているものであります。
次に第二章の種畜及び第三章の
家畜人工授精の規定の整備であります。これは、近年
家畜人工授精
技術が著しく進歩し精液を凍結して保存する
技術の研究が進み、わが国においてもこれが実用化の機運にありますが、昭和二十五年現行法を制定した当時は、このような
技術は想定されておらず、結果的には凍結精液の利用をはばむこととなるような規定がありますので、これを整備いたしたのであります。すなわち、第一にこの
法律で
家畜人工授精とは、牛、馬、綿羊、ヤギまたは豚の雄から精液を採取し、処理し及び雌に注入することをいうのでありますが、他方第四条第一項の規定により
家畜の雄は、
農林大臣が毎年定期に行なう検査を受け、種畜証明書の交付を受けているものでなければ、種付(
家畜人工授精を含む。)の用に供してはならないことになっております。この第四条第一項を解釈いたしますと、種畜でないものは、精液の採取の用に供してはならないことはもちろん、その精液を処理することも、雌へ注入することも禁止されることになりますので、種畜から採取した精液を凍結保存した場合、その種畜の死亡または廃用後その精液を雌に注入することは、すでに種畜でなくなっているものの精液を注入することになり、第四条第一項の規定に違反することになります。
そこで第四条第一項中「種付(
家畜人工授精を含む。)」を、「種付け又は
家畜人工授精の用に供する精液の採取」に改めるとともに、第五条及び第九条の規定を同様な
趣旨で改め、精液採取時に種畜であれば、精液注入時には、その種畜がすでに死亡、廃用等になっていてもその注入は違法ではないことを明らかにし、凍結精液の利用が円滑に行なわれることを期したものであります。
第二に、凍結精液等貯蔵精液を利用する場合には、雌畜に注入するときまでにかなりの時日を経過することもあり、また精液が幾人かの手を渡ることがありますので、現行の第九条第四項の種畜の飼養者は、その
家畜人工授精用精液の注入を受けた雌の飼養者に対し精液採取証明書を交付しなければならないという規定は、種畜飼養者に過重な義務を課することとなります。また現行法では、別に
家畜人工授精師が精液証明書、授精証明書を発行することになっておりますので、人工授精用精液の注入を受けた雌の飼養者に対する精液採取証明書の交付を種畜の飼養者に義務づけなくとも、
家畜人工授精の利用に支障はないものと思われます。従いまして、第九条第四項から「精液採取証明書」を削ることといたしました。ただし、
家畜人工授精師が、
家畜人工授精用精液を採取し、検査した後その場で雌の
家畜に注入する場合のことを考え、その注入を受けた雌の
家畜の所有者から精液の採取に関する証明書を要求されたときは、
家畜人工授精師は、正当な理由がなければ拒んではならないことを第十三条第四項として規定した次第であります。
第三章の二は、
家畜登録事業に関する規定であります。
家畜登録事業は、その運営よろしきを得れば、優良
家畜の作出、不良形質の淘汰等に役立ち、
家畜の改正にきわめて大きな役割を果たすものでありますので、これが今後の畜産の向かうべき方向に即して公正に運営されることを確保するために規制を加えることとしたのであります。
第三十二条の二の第一項におきまして、
家畜登録事業を行なおうとする者は、登録事業の実施に関する規定(「登録規程」という。)を定めて
農林大臣の承認を受けなければならないものといたしました。第二項は、登録規程において定めなければならない事項を掲げてあります。第一は登録する
家畜の種類であります。第二は登録の種類及び
方法でありますが、これは、登録にどのような段階を設け、いかなる
方法で登録するかは
改良を能率的に進める上に重要でありますので、これらについて記載せしめることとしたのであります。第三は、
審査の基準に関する事項であります。第一項でも触れておりますように登録は、
家畜を一定の基準で
審査をいたしましてその判定に基づいて行なうものでありますので、その基準が
家畜改良増殖の向かうべき方向に即し、適切なものでなければなりません。第四は、登録手数料であります。登録事業は、主として手数料
収入によって運営されておりますが、他面手数料が高過ぎる場合には、
家畜飼養者に過重な負担を課することとなりますので、これが適切な水準に定められる必要があるので、ここに掲げたのであります。第五は、
家畜登録簿に関する事項であります。
家畜登録簿は、
家畜登録の締めくくりであり、また基礎であるのみならず
家畜を交配し、あるいは
導入する際の重要な
資料であるので、これは適確に作成され、容易に利用できるものでなければならないと存ずる次第であります。第三項は、登録規定を変更する場合にも
農林大臣の承認を受けなければならない旨を定めております。第四項は、登録規程の承認及びその変更の承認の基準に関する規定であります。
家畜登録事業は、今後の
家畜改良増殖の方向に沿い、公正に運営されなければなりませんが、反面登録団体の
自主性を尊重する必要がありますので、その登録規程が
家畜改良増殖目標に即するものと認められない場合及び
家畜登録事業の公正な運営を行なうのに適切でない場合を除き承認をすることといたしました。第五項は、
家畜登録事業の廃止の場合の届け出に関する規定であります。
家畜登録事業を廃止しようとする場合、それまでの登録簿、その他の
関係資料の散逸を防止する必要があるため、あらかじめ
農林大臣にその旨届け出なければならないことといたしました。
次に三十二条の三は、
家畜登録事業の公正な運営を確保するための国の援助について規定しております。
第三十二条の四は、業務規程違反の場合の必要
措置命令に関する規定であります。
第三十二条の五は、法令違反の場合、
家畜登録機関に対し、業務の停止に関する規定であります。第二項は、
農林大臣が
家畜登録機関に対し業務の停止命令を行なう場合、これを公正に行なうための相当な予告期間をおくこととするとともに、処分にかかる者が意見を述べる等の機会を与えるための
措置等聴聞に関する
措置を規定したものであります。
第三章の三は、
家畜改良増殖審議会に関する規定であります。
家畜改良増殖目標を定め、また
家畜の
改良増殖に関する重要施策の企画、遂行にあたっては、広く学識経験者の意見を聞くことが適切であると考えまして、この審議会を設けることといたしたのであります。まず、第三十二条の六から第三十二条の九までにおきまして、その設置、権限、組織及び会長について規定いたしております。第三十二条の十は、部会の規定でありますが、これは、
家畜の種類ごとにその
改良増殖
技術は分化している面が少なくなく、また
改良増殖上の問題点も
家畜の種類ごとに異なる面がありますので、部会を設けることができることといたしております。次に第三十四条に一項を加えましたが、これは、さきに述べました
家畜登録事業の公正な運営をはかるため、
農林大臣の報告徴収権に関して規定したものであります。
第五章の罰則のうち第三十八条及び第四十条の規定を改めましたが、これは、新たにこの
法律に
家畜登録事業に関する規定等が加わったことに伴い所要の規定を加えたものであります。
最後に付則におきましては、第一にこの
法律の施行日を公布の日から九十日以内で
政令で定める日といたしました。付則第二項から第四項までの規定は、現在
家畜登録事業を行なっている者は、この改正法が施行されてから一年以内にその登録に関する規程につき
農林大臣の承認を得なければならないものとする等の経過
措置を定めたものであります。付則第五項は、
家畜改良増殖審議会の設置に伴う農林省設置法の改正に関する規定であります。
以上が
家畜改良増殖法の一部を改正する
法律案の概要でございます。