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1961-05-31 第38回国会 参議院 農林水産委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月三十一日(水曜日)    午前十時十五分開会   —————————————   委員の異動 本日委員阿部竹松君及び小林孝平君辞 任につき、その補欠として戸叶武君及 び武内五郎君を議長において指名し た。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤野 繁雄君    理事            秋山俊一郎君            櫻井 志郎君            亀田 得治君            東   隆君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            石谷 憲男君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            河野 謙三君            重政 庸徳君            田中 啓一君            高橋  衛君            仲原 善一君            堀本 宜実君            大河原一次君            北村  暢君            清澤 俊英君            武内 五郎君            戸叶  武君            安田 敏雄君            棚橋 小虎君            千田  正君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    農林大臣    周東 英雄君    通商産業大臣  椎名悦三郎君   政府委員    法制局長官   林  修三君    法制局第三部長 吉國 一郎君    農林政務次官  井原 岸高君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    農林大臣官房審    議官      大澤  融君    通商産業省軽工    業局長     秋山 武夫君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    通商産業省通商    局次長     山本 重信君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農業基本法案内閣提出、衆議院送  付) ○農業基本法案天田勝正君外二名発  議) ○農業基本法案衆議院送付予備審  査)   —————————————
  2. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農業基本法案(閣法第四四号衆議院院送付)、 農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、以上三案を一括議題といたします。  この際、池田内閣総理大臣出席を得ましたので、総理大臣に対する質疑を行ないます。質疑要求委員の発言は委員長において順次指名いたします。亀田君。
  3. 亀田得治

    亀田得治君 社会党を代表して質問いたします。農基法についてはいろいろ問題点が多いわけですが、委員会における審議の経過にかんがみまして、特に総理から考え方を聞いておきたいという点等にしぼって一つお尋ねしたいと思います。農林大臣等の御意見はたびたび聞いてもおりますので、多少こまかいことにわたるかもしれませんが、しかし農民にとっては具体的に非常に関係の深い問題点でありますので、率直に総理考え方をただしておきたいと思います。  第一は、第一条の農業政策目標という点です。第一条には、他産業従事者均衡する生活目標とすると、こういうふうにうたっております。で、この点もたびたび委員会質疑いたしましたが、はっきりしない。他産業の中のどこをねらうのか、あるいはそう固定的には、言えないのであって、結局は全産業平均をとるのか、そのこと自体も明確にされておらないままなんです。わが党の江田委員農林大臣に確かめた際にも、結局は、いろんな考えはあるが、農政審議会においてきめられることになるだろう、こういうふうな意味のこともお答えになっておる。こういうことでは、肝心の法案の大事なねらいというものがはなはだぼけてくるわけでありまして、総理の見解をあらためて一つここでお聞きをしたいと思います。
  4. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、農業が他の産業均衡するということになれば、一般国民にはおわかりいただけると思います。で、あなたは、他の産業というのは工業をとるか、産業をとるか、あるいは労働階級をとるか、こういうのをあれでございますが、私は、工業商業も、そうして他の産業に従事しておる方々考え均衡するということでおわかりいただけると思います。
  5. 亀田得治

    亀田得治君 そういたしますと、他の産業の全体——その平均というと、また少し問題が集約されてきてお答えにくいかと思うのですが、他の産業全体、こういう理解ですか。
  6. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 他の産業全体といっても、全体の考えようがございます。たとえば工業所得商業所得は違います。それでは、それの平均かとこういいますが、こういう工業所得がこうだ、商業所得がこうだ、商業にいたしましても、金融業とかあるいは交通業とか、いろいろなものがございますから、そういうものの平均というのじゃございません。そういう個々の他の産業のあり方を見ながら、それと均衡するというのでございまするから、観念的で私はわかると思うのであります。
  7. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、これは後ほどお聞きいたす、たとえば法の第四条、そういったような運用にも非常に関係してくることですね。具体的にどこを目標にして均衡考えるかということ、だから、これはむずかしい問題でありましても、法案を出した以上はやはりもう少しはっきりさせてもらわないといかぬと思う。  で、先ほどもちょっと申し上げましたように、またここに議事録もあるわけですが、農林大臣が、結局はそういうふうなことは農政審議会等で議論されてきまるのじゃないか、こういうふうなこともおっしゃっているわけですが、そういうことになりますと、大事な目標というものについて提案者なりあるいは立法者である国会があまり明確にしないままに、そのほかの機関が具体的にはきめていると、こういうことにもなりかねないわけですね。農政審議会目標のきめ方いかんによっては、がらっとこう変わってくるわけなんです、様相が。非常に高いところに目標をきめれば、それだけ国家の義務などはふえてくる、低いところをねらえば現在とは大して変わらない、こういうことにもなるわけなんです。非常に大きな、あと運用全体に影響が出てくるわけなんです。そういう意味でお聞きするわけですが、この農政審議会にそういうことを判断させるおつもりなんでしょうか、具体的には。
  8. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 法案の第一条にありまする他の産業との均衡ということは、これは良識がきめるものでございます。農政審議会方々良識をお持ちになっております。そうして、それから出た判断につきましても、国会政府方々良識をもってきめるのであります。私は、法案としてはこれでおわかりいただけると思っております。
  9. 亀田得治

    亀田得治君 まあ法案の書き方はこれでいいのかもしれませんが、たとえばその説明として、社会党案の場合であれば三十人規模以上の勤労者生活、こういうふうにはっきりと説明をいたしております。そうすると、それに対するこの生活水準というものは、すでに統計上明らかに出ておるわけですから、だからこういう水準をねらうのだな、こういうことがわかるわけですね。やはりもう少しこれははっきりとして目標というものを御説明願わないと、どこにきめてもこの第一条違反にはならないと。まあどこにきめてもというのは、これは極端な言い方ですが、そういうおそれが出てきませんか。そうして絶えず農政審議会自身が、この他産業との均衡目標をどこに置くか、こういうことで議論が沸騰することにもなりかねない。私は、そんなものじゃなしに、農政審議会というのは、これは行政機関の下部の機関ですから、やはり目標自体立法者が明確にきめて、その範囲内で農政審議会仕事をしていくと、あるいはその後の農林省の仕事もそのワク内でやっていくと、これが、私は基本法を作る以上はそうあるべきものだと思う。それは前回の質疑でも、本日のお答えでも、この点がはなはだ不明確なわけでありますが、時間の都合もありますので、この程度にいたしておきます。  それから、もう一つは、ここに他産業従事者生活均衡をさせる、こういう表現を用いられておる。ここにも私たち若干疑義を持つわけです。社会党案では、他産業従事者生活同一水準、こういう表現を用いているわけですね。同一水準というふうにした方がはっきりしていいんじゃありませんか。
  10. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 他産業均衡ということは、三十人以上の工場、職場における労務者の平均と、こういうふうにお考えになりますと、これは少し片寄り過ぎているんじゃございませんか。私は、農業というものを自立農業ということになれば、中小企業の小規模な人ともやはり均衡をとらなけばならない。そういうものと、特定のものと均衡をとるということは、私は農家のためにもよくないし、政治としてなかなかむずかしいんじゃないかと思います。こういうことは法律ができ、その全体の運用によって良識で私はきめていくのが一番妥当な方法である。フィックスした、きまったものに物事を寄せようというのはなかなかむずかしい。全体の状況を見て均衡をとるということが政治だと思います。
  11. 亀田得治

    亀田得治君 いや、あと問いですね。均衡という言葉じゃなしに、同一水準と、目標である以上はそこを明確にすべきじゃないか。
  12. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) あとの御質問に対しても、今のお答えで私は答えになっておると思います。同一水準ということと均衡ということとは、先ほど答弁した通り、ぴしゃっと一緒という意味じゃなしに、大体良識均衡がとれたということが目標でいいと思います。
  13. 亀田得治

    亀田得治君 しかし、これは目標ですからね。目標ですから、相当私たちの理想的な高い線というものを打ち出していいわけですね。非常にかけ離れたものを出すなら、これは別ですが。それから三十人規模というのも、これは決してわれわれとして固定的に考えているわけじゃないのです。その程度生活内容と、こういうことでありまして、内容が同じであれば、ほかの基準を持ってきてもこれは差しつかえないわけです。少なくとも、その程度生活に引き上げるんだということがはっきりしなければ、基本法じゃないんじゃないか。そういう意味で申し上げているので、多少そこに総理の方も誤解があるようですから、説明いたしておきますが、そこで、同一水準と書かなくても均衡でいいと言われますが、しかし、この均衡という言葉の中には、同一までいかなくても、両者の格差を縮めていく、あるいは格差の拡大が進行することをとめる、そういうふうな消極的な意味も含まっているんじゃありませんか。
  14. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 御質問の点がはっきりいたしませんが、同一水準ということと均衡ということとは、私はあまり変わりないと思います。均衡という方が一番あらゆる場合に合うのではないか、こう考えております。
  15. 亀田得治

    亀田得治君 同一水準と同じ意味だというふうに言われているようですから、それで一つ大体了承いたしておきます。  それから、先に進みますが、第四条と第七条の関係について若干念を押しておきたいと思うのです。第七条によりますと、政府は毎年国会農業の動向を考慮して講じようとする施策——今後の施策ですね、これを明らかにした文書を出す。こういうことになっておりますが、この明らかにされた施策というものは、当然第四条財政上の措置、これが当然なされる。こういうふうに私たちは第四条意味を理解したいわけですが、第七条で施策を明らかにしたけれども、財政上の措置は全部やるかやらぬかわからないと、こういうことでは、第四条を特に置いた意味がなくなる。この点はどういうふうに理解したらいいでしょうか。
  16. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農業基本法の最も重要な点は第四条、第七条——もちろん第一条もございます。第四条におきましては、農業に対しましていろいろ法制上、財政上の措置をとらなければならないと、こうやっております。その基本はどこに置くかというふうになりますと、第七条の規定によりまして、いろいろ過去の実績、将来の見通し、勧告と申しますか、意見が出る、その意見によりまして法制上、財政上の措置をとろうと、そのとる程度の問題につきましては、政府考えがございましょうし、また国会におきましても論議の的になると思います。
  17. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、第七条と第四条とは、若干こう具体的な措置としては、今「程度」とおっしゃいましたが、具体的な措置としては、幾らか開きができる場合が予想されるのですか。そういう場合には、普通はたとえば予算の許す範囲内とか、そういったような条件が普通はつく。これはついておらない。無条件なんです。しかも、財政上の措置を講じなければならないと、こうはっきり書いておるわけですから、そういう七条と四条の間にギャップができるということでは、多少四条の文面に合わないのじゃないかと思うのですが、どうでしょうか。
  18. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) そんなことはないと思います。第七条の規定によりまして、過去の農業実績等に、将来こうあるべきだという意見が出るわけであります。そういう意見につきまして、法制上、財政上の措置をとる。そうすると、その意見通り予算を組まなければならないかという問題がございます。予算ばかりじゃございません。教育問題もありましょうし、金融問題もありましょう。そういう意見を聞いて、そうしてそれに基づいて法制上、財政上の措置をとればいいのであって、私は何もそこに変わったことはないと思います。
  19. 亀田得治

    亀田得治君 それじゃ、第七条の文書によりますと、一定の財政措置を当然伴ってくる、こういうことが書かれておる場合には、これは当然第四条によってそれは予算化等されるわけですね。
  20. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) それは第七条の規定によりまして、政府がこういうことでいきたいと言えば、それにあれしまして財政上、法制上の措置をとることに相なるのであります。
  21. 亀田得治

    亀田得治君 それから、第四条の第二項の金融措置ですね、この点も第一項と考え方としては同じことになるのだと思いますが、具体的には、農業金融についての金利の問題とか、あるいは償還方法の問題とか、あるいは農協の膨大な預金の利用の問題とか、いろいろ問題を抱えておる。これはもうすでに抱えておるわけですね。質疑過程でも、これはもう明らかになっておる。だから、こういう問題については、どういうふうに今後具体的に措置をとられようと総理はお考えになっておるか。この前、江田書記長質問のときだったと思いますが相当思い切ったことをなさるようなこともちょっと言われましたが、もう少し具体的に、農協資金利用方法の問題なり、そういう点について構想を承りたいと思います。
  22. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいまでも、農協資金使い方等につきましては、政府もある程度、三百億円とかですか、予定してやっております。今後さらに、農業基本法に基づきましていろいろ施策をやっていく場合におきましては、うまく農業がどんどん進んでいくような金融上の措置は、相当たくさん出てくると思います。金利も相当下げなきゃなりますまい。またワクも相当とらなきゃなりますまい。いろんな点がございまするが、われわれが農業に対して非常な関心を持っておるということは、農業基本法の制定でもおわかりの通り、私はこの気持を農民やあるいは一般国民は知っておられると思います。その場にあたりまして、十分なと申しますると、また言葉程度が行き過ぎるということがありましょう、まあできるだけの措置はとる考えでおるのであります。
  23. 亀田得治

    亀田得治君 七条、四条はその程度にいたしまして、第八条ですね、ここには、重要な農産物について政府は需要、生産長期見通しを立てると、こういうことになっております。そこで、お聞きしたいのは、政府の立てた長期見通し、それが狂う場合が相当ある。そういう場合における政府責任ですね、そういう点については何も書かれておらぬわけですが、どういうふうなお考えでしょう。
  24. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 政府といたしましては、農民とともに、その農業がうまく伸びていくように、そうして生産価格が安定するように、ともどもに知恵をしぼり合っていくわけでございます。従って、政府としてはあらゆる調査をもとにいたしまして、こうなるだろうと、こうやっていくわけです。しかし、経済事象は必ずしも政府見通し通りいかぬ、農家が非常にそのために損をしたという場合には、やはり政府としてはある程度それが善後策を講じなきゃならぬことは、私は政府として、当然なことだと思います。それならば、どれだけの損をどれだけ政府農民が分け合うかという問題につきましては、やはりその事態に沿うて政府責任農家責任等々いろんな場合を考えまして、善後策を講ずるということは、過去におきましてもそういう例はございます。また、今後はこのことによってやるのでございまするから、政府としては誤りのなきようにしていくと同時に、もし万一誤った場合におきましては、これが善後策皆さん方と相談いたしまして適当な措置をとることは、私は政治として当然なことであろうと考えます。
  25. 亀田得治

    亀田得治君 ある程度善後策ということじゃなしに、やはりそれは政府責任を持ってこのかかった迷惑は取り除くと、こういうことをはっきりすべきなんじゃないかと思うのですね。そういう責任をこの第八条の長期見通しにくっつけることによって、長期見通し自体もやはりこれは慎重に科学的に検討されると思うのです。起きた結果についてある程度善後措置を講ずるというような程度では、やはりその長期見通し作業自体に対する取っ組み方ですね、ここにやはり問題が出てくると思う。長期見通しをお立てになる以上は、皆さんとしては農民にこの方針を理解してもらって、その方向で進んでほしいと、こういうことなんでしょう。そういうわけなのであれば、農民がそれを信用しなきゃだめなんだ。だから、みずから責任を持つという強い態度を出すことによって、作業ももっと深まると思うのです。農民自体長期見通しというものを非常にやはり大事にしていくと思うのです。そうしませんと、こりゃもうたびたび言われるのですが、政府が何か言ったって、大体それと逆のことをやっていれば間違いないだろう、そんなことが言われるなんていうことは大へんな問題なんです。そういうことをなくするには、やはり画期的の法案を作って新しい農村を作るんだというのなら、皆さんの方でも責任を持つ、こういうことをはっきり言明された方が私は政府のためにも非常にいいと思うのですが、どうなんでしょう。
  26. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私は、政府国民と一体でございます。これは相対立するような考え方では私はよくないと思う。先ほど申し上げましたように、そういう見通しにつきましては、農民とともに政府は慎重な態度見通しをつけます。そうしてそれに協力をしていただいて、そうしてうまくやっていく。万一そういうふうになっても、経済のことでございますから、非常な迷惑をかけるというような場合におきましては、これはもう政治責任として当然のことではございますまいか。それを、農民に損をかけました、政府がすぐそれを責任を持ちますというふうなことを書くのは、私はあまりに政治的でないと思う。こういう条文がなくても、昔中小企業の機屋さんの問題等につきまして政府はやっておる。政治というのはそういうものだと私は考える。従いまして今度のように法律規定を設けまして、見通しを立てて、そうして農民とともにやっていくときに、それに不慮の損失が起こったという場合においては、書いても書かなくても、善後策を講ずるのは当然のことだと私は考えておるのであります。
  27. 亀田得治

    亀田得治君 こういう長期見通しに関連して、たとえば生産なり出荷計画化、こういうことが必要なんじゃないか。生産なり出荷ですね、これを計画化していく。政府の現在の考えでは、それは農民自体あるいは農民団体が自主的におやりになることだ、こういう考えのようですが、今までの質疑過程では、政府の方はともかく長期見通しだけ立てて置く、あと皆さんの方でそれを参考にしていく、自主的に対処してほしい、こういう考え方のようですが、その考え方を少し改めないと、実際はうまくいかぬのじゃないかというふうに私たち感ずるのですが、それで、つまり、政府長期見通しを立てれば、その立てた長期見通しがスムーズに進むように、やはり生産出荷についてももう少し関与していく、これは農民なり農民団体自主性を壊さない程度ということももちろん前提条件ですが、そういう考え方にもう少し入っていきませんと、これはどうにも問題のスムーズな処理というものは、私はできないのじゃないかと思うのですが、その点非常に消極的なんですね、今まで、いろいろお聞きしても。そういうふうに考え方を、いわゆる戦時中の作付統制とかそういう意味で私申し上げる意味じゃないのですが、長期見通しが具体的な結果としてずっと進むように、生産出荷についてももう少し政府が乗り出していく、こういうかまえというものはとっていいんじゃないかと思うのですが、それはどうでしょう。
  28. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これは社会党さんの方々とわれわれの考え方の違うところでございます。これは、私は、建前としては長期見通しを立てりまて、そうして国が、第九条に書いてありますように、いろいろ指導をいたしております。しかし、だれがやるかといったら、これは農民並びに農民団体の人で自主的におやりになる。ただ、やってみて、輸入関係とか、資材の関係とか、いろんな点で国がそれに対しまして指導その他はやりますけれども、建前農民が、農民団体がおやりになるのであります。われわれはそういう道作りをする、そうしていい方向に向けるように長期計画を立てるのであります。これを国がどこまで介入すべしという問題は、これは程度問題で、状況によっていろいろ差は出て参りましょう。そうしてまた、非常に、先ほどのお話のように、その計画がそごしたというときにはいろいろ国がめんどうを見なければならぬ点もあると思います。しかし、これはそごしたことを頭に置いて全体の統制やあるいは政府生産に口ばしをどんどん入れていくということは、私は民主的なやり方ではないと思います。
  29. 亀田得治

    亀田得治君 まあ実際にやることについては、必ずしもそんなにこう違ってくるとも考えないんですが、しかし、とりようによっては、非常にこう性格が違うような感じもする問題ですが、しかし、政府のようなやり方では、これはもう、少し実際におやりになっても、なかなか私はうまくいかぬと思うんです。そのうちに、結局そういうことなら、長期見通しなんか立てない方がいい。だんだんこれは後退してくると思うんです。これは一つ問題点として出しておきます。  それから、次に、価格政策の問題に触れたいと思うんです。これは法案の第十一条で扱っている問題でありますが、まあこの法案でいろいろ問題はありますが、その中でも、価格政策のあいまいさ、こういう点が一番問題であろうと思います。これは私たちがただ理屈として申し上げているだけじゃなしに、参議院においては地方聴聞会をやりまして、そうして普通の聴聞会やり方とは違って、耕作農民自体の御意見を聞こう、こういう新しい方式で、そうしてこれも農業県に出かけてその聴聞会をやったわけなんです。いろいろの御意見があります。政府案賛成、反対、いろいろありますが、賛成農民の方でありましても、この価格政策の問題では非常にやはり心配している。これはもうほとんど共通したやはり意見、批判なんですね。そういう立場から、たとえばこの第十一条の第一項、価格をきめる要件として「生産事情需給事情、物価その他の経済事情を考慮して」云々と、こういうことが明記されているわけですね。この中で、たとえば生産事情ですね、生産事情という中には生産費は含むのかと、こういう問いに対して、農林大臣は、それは当然生産費生産事情の中の一つだ、こういうふうに委員会お答えになっているわけなんです。そこで、そういう当然含むんだということであれば、ここに明確に明記したらどうかということを私たち申し上げたいわけなんです。これはわれわれだけがわかっていいんじゃなしに、農民自体にわかりやすくする必要があるわけですね。当然含むんだといいましても、そういう点についてやはり危惧を持っているんです。これはもう聴聞会でほとんどこう出ている意見なんです。だから、「生産費など生産事情」、上の方にちょっとこういう字句を挿入すれば、非常にこうわかりやすくなるわけですね。それくらいのことは考えていいと思うのですが、これは総理大臣の御見解はどうでしょう。
  30. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 十一条第一項の「生産事情」、私はもちろん、この生産費というのが生産条件生産事情の重要な部面だと考えております。これはそうとるのが当然であります。「生産費その他生産事情」と、こう書かなくても、これは生産事情の相当部分は生産費のことと私は了知しております。
  31. 亀田得治

    亀田得治君 いや、私の申し上げるのは、それをわかりやすくしたらどうか、そういう意味で申し上げておるわけです。ここのたとえば三番目に書いてある「物価その他の経済事情」、これだって一つの物価というのは例示的な書き方として書いてあるわけですね。この方がやはりわかりいいですよ。だから、農民としては、三番目のところですね、「生産事情需給事情、物価その他の経済事情」、これを「経済事情」とだけ書いてあったら、やはりいろいろ物価の関係はどうなるとか、当然問題が出てくる。その際に物価は当然経済事情に入ると、こうおっしゃっても、やはり法文としては明らかにしておいた方がいいわけです。農民はやはり生産費ということを非常にやかましく言っておるわけですから、それほどはっきり当然含むものであれば、書いてもいいわけですね。これはまあ議論になりますから、この程度にしておきますが、まあ総理もこれは生産費を当然含むのだと、こういうことを明らかにされましたから、一応その点だけは中身としては了承しておきます。  もう一つ、同じことが所得という問題についても言えるわけでして、政府のこの基本法の中でも、農民の所得の増大とか、所得の確保、こういったような用語を三カ所で使っております。だから、農民の所得の確保というものを無視しておると私はもちろん申し上げるわけじゃないのです。しかし、その所得の確保のための手段といいますか、それはやはり農産物を売り払って得る代金による収入、これが所得確保の一番の重点ですね。だから、所得確保ということをほかのところで三カ所もこの法案がせっかく述べておりながら、肝心のこの物価問題を扱い、農産物価格を扱う第十一条の第一項でそのことを抜かすということは、ちょっとふに落ちないわけなんです。これも当然、しからば所得の確保をどういう水準で確保するのかといったような問題等もあるでしょうが、所得の確保自体は、総理大臣もこれは無視されないのだろうと思いますから、こういう点も農民がやはり非常に危惧を表明しておる点なのでして、やはりここに明らかに入れた方が好ましいのじゃないかと思うのですが、どうでしょう。
  32. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 私はけさの六時過ぎのあの「私たち言葉」というラジオ放送を聞きましたが、農民がこの価格ということにつきまして非常に関心を持っておるということは私も承知いたしております。そこで、この第十一条の一項というのは、価格のきめ方を言っておるのであります。そうして、それを第二項が受けまして、「農業所得の確保」というふうになっておるのであります。法文の建前としては、形式上私はこれが一番いい。実際的の所得の確保という全体的な問題は、法の全部に流れておる思想でございます。ここで「所得の確保」というようなことは、これは条文としてよくないと私は考えております。
  33. 亀田得治

    亀田得治君 条文としてよくないとおっしゃいますけれども、それは経済問題について総理ははなはだくろうとですから、何かそういう特別な専門的な立場からおっしゃるのかどうか知りませんが、私たち農民が望んでおる、また農民の理解のしやすいようなものであるのがほんとうである、こういう立場から申し上げておるので、所得の確保を無視されないのであれば、書いたって差しつかえないじゃないか。そういうことを書くことは、価格決定の要員として理論的に間違いなんだと、そういうことでもあるのでしょうか。
  34. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 条文の書き方といたしまして、十一条第一項というものは、「その価格の安定を図るため必要な施策を講ずる」と、価格の安定ということを言っておるのであります。だから、この条文の十一条の一項ということは、今の生産事情需給事情、物価その他の経済事情を考慮して価格の安定をはかるということであって、ここからは所得の確保というのは、これでは出てこない。価格の安定というところへ持っていって「所得の確保」と同じ項で入れるということは、条文の形式上私はとらない。所得の確保ということはこの前の「価格の安定」で、二項にも所得の確保ということのために、いろんな措置を講ずると、こう書いておるのでございますから、条文全体をずっと見まして、この条文のこの条項は何をさしているのだと考えた場合に、「価格の安定」ということを入れておるのですから、ここへ持ってきて「所得の確保」ということを入れることは、私は条文の書き方として妥当でないと思います。
  35. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ちょっと補足いたしますが、総理お答えをいたしておりますのは、十一条にはむしろ所得の確保ということを書かない方がいいと、こういうことであります。それを所得の確保は、価格の問題だけで所得が確保されるのでなくて、所得を確保するためには生産性の向上とか、あるいは技術の向上、近代化というようなもの、あらゆるものを含んで所得が増加されることになる。そこで、価格だけで所得の確保がはかられるの外なくて、こういう考えでこれは一応入れておりません。従って、二項の方によってむしろの価格状況というものはこうなってこう来たが、それではたして所得が確保されたかどうか、あるいは生産性が伸びた、あるいは取引の流通は合理化されておるだろうかということを二項でさらに検討するようなところに持ってきて書いてありますが、そういうふうな書き分けをしておるわけであります。特に繰り返して、所得の確保というのが価格だけできまるのじゃなくて、所得確保はほかのあらゆるものが総合的に考えられて所得確保ということが考えられてしかるべきだろうということで、ここにこういうふうに書かれております。
  36. 亀田得治

    亀田得治君 これはどうも納得いきませんね。その程度のことなら、多少重複したって、農民にわかりいいように書くということが基本である以上は、私は当然だと思うのです。同じことを繰り返しても仕方ありませんから……。そしてこれは各農民からたびたび出ておる御議論なんです。で、私がこういうことを申し上げる一つの理由は、所得の確保というものができておらないのですね、農産物価格において必ずしも。それは農産物価格だけで所得の確保をするわけじゃありませんが、はなはだしく所得というものが無視された価格というものによってあるわけなんです。だから、その点をしつこく申し上げるわけなんです。たとえば、一番その代表的なものは酪農ですね。これは農林省からいただいたこの資料によりましても、酪農家の一日当たりの賃金、これがきわめて低いわけですね。で、そういう現状に対する不満というものを無視しておるのですね、これは。この三十一年の統計ですと、平均して二百四円、一日、酪農家の家族労働報酬が。それから三十二年が二百十二円、三十三年が、これはまあ特別な年だったわけでしょうが、九十円にしかなっていないわけですね。こんな統計を皆さん自身が私たちに渡しておるわけです。それからもう一つは、そういう安い労働報酬しか得られておらない、ところが、他方、農民は牛乳を安く庭先相場で売っておりますが、町の中では約三倍ですね。年によって多少のでこぼこはありますが、約三倍です。だから、こういう状態に対する不満があるのです。だから、池田さん、その第十一条の書き方の問題は、まあ一応理屈のやりとりになりますから控えますが、今私が申し上げたような状態ですね。そんな低い一日の労働報酬、そうしてまた庭先相場の三倍もするような価格で一方では処理されておる。こういう状態に対して、総理はこういうことがそれでいいとはお考えになっていないでしょうが、どういうふうにお考えでしょう。
  37. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) お話の通りのような実情を私は考えまして、今後酪農に対しましても十分力を入れていかなければならぬ。そこで、生産事情、あるいは需給の状況、流通関係等を考えていきたいと思っておるのであります。何と申しましても、国民の嗜好が脂肪、蛋白質の方に向かっておるおりからでございますから、最もこの方面に力を入れていきたいと考えております。
  38. 亀田得治

    亀田得治君 それは、力を入れてもらうのはけっこうですが、酪農民にとっては具体的なんですね。農民の方が、ちょっと町へ映画でも見に来て牛乳いただくと、自分たちが売ったものが三倍になっておる。これはもう痛切なんですね、こういう不満は。で、池田さんは、経済の普通の常識からいって、こういう三倍もの値開きがある、こういうことはちょっとおかしいというふうにお考えなんでしょうか。どの程度がこれは正当なんでしょうか。具体的に、こういう問題は、目標を出してもらわないと。
  39. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 価格の決定は需給でございまするが、牛乳のような品物につきましては、ほかの繊維品とかああいうものとはこれはおのずから事情が違います。どの程度に差があるのがいいかということは、やはり生産、消費の事情から来ることであり、流通の、流通機構の問題等があるのであります。従いまして、やはり増産と同時に、その消費に向かう流通の過程におきましても、いろいろ私は今後検討すべきことがあると思います。
  40. 亀田得治

    亀田得治君 私のお聞きするのは、具体的に牛乳のことを聞いているわけです。四円何がし、五円何がしというものが、町で十四円とか十三円とか、こういうことで、毎年ずっと処理されておる。これはこのままで私はいかぬと思うのです。どういう具体的なしからば線がほぼ正しいというふうにお考えになっているのか、そこの考えを聞かしてほしい。そういうふうにもっていくためには、いろいろのやり方があろうと思いますが、とにかくねらいどころだけを、これははっきりしてもらいませんと……。
  41. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) これは亀田さん御指摘のように、酪農問題について、その乳の売られ方というものにつきまして、私は各地方においても非常に事情が違う。北海道で売られておる乳、東京近郊で売られておる乳、大阪近郊で売られておる乳、これみなそれぞれ違っております。私は、あなたの御指摘のように、あまりにも農民から渡されている価格が、四円五十銭、あるいは五円十銭というように違っております。それで渡しているが、それがあるいは違って、十三円に売られ、十五円、ときには十六円というところもあるようであります。こういう間の開きを見て、非常に不当不満を持たれるということは、私は必ずしも否定はいたしません。しかし、その間の問題について、どういう形に流通機構を変えていくか、また中間経費を省いて、しかも生産者と消費者との間にともに有利な形に持っていくことにはどうしたらいいかということについては、これは相当私は複雑な関係を切り開いて検討する必要があると考えております。そういう点は、今何ぼがいいかということは、ちょっとすぐには私は言い得ないと思いますが、少なくともここには農家から受け取った乳を消毒し、あるいは加工し、びん詰めにして売る。またそれを配達する人間の賃金というような、いろいろなものがからんでおります。そういう面をいかなる形に考えていくかということについては、私は検討して、乳の取引形態を考えていきたいと思います。  それから、先ほど御指摘の、非常に労働報酬が少ないということで、これは私は、かなり今日少数飼育で、そうしてやっている点にもいろいろ問題がある。ある程度多頭飼育になりつつ、そして同じ労働をかけつつ、生産性を高いものにしていくという方向へ持っていくことも、私は農家の利益を上げることだと思います。現在の形のままにしておいて、どうしたらいいかという議論はいけないので、今の飼育の形それ自体においても農家は不利になっている。こういう点をどう考えるかということを考えていかなければ、いかなる経営形態においても、いかなる損な経常をしておっても、その価格だけを上げていけばいいという、こういう考え方では私はいけないのだと思います。しかし、いずれにいたしましても酪農を奨励する以上、その乳価の維持、酪農農家の利益の向上については、さらにあらゆる面を考えて、私どもは決定していきたいと、かように考えております。
  42. 亀田得治

    亀田得治君 時間が限られているものですから、農林大臣お答えは、一つできるだけ簡潔にお願いしたいと思います。  しからば、次にちょっと進むことにいたします。構造問題に移りたいと思います。政府はこの十五条の自立経営の育成、こういう点を第一義的に考えておられるようです。ところで、自立経営をたくさん作っていくためには、当然この農地の相当移動というものが予想されるわけです。いろいろな所得倍増計画にもその数字が出ておりますが、その数字には私は別にとらわれて申し上げるわけじゃない。ともかく相当程度の農地の移動、こういうものは当然考えられる。ところが、現状では、開拓政策等の関係から見ましても、結局はそれを買い取るという格好がその中心にやはりなるわけなんですね。で、その際に当然この農地の価格ですね、これはもう大問題なんです。で、将来この農地価格というものに対する見通しですね、総理はどういうふうにお持ちになっているのですか。
  43. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 価格見通しということは、なかなかむずかしい問題だと思います。これは農業全体のこと、そうして経済全体のことから来るので、農地の価格も、これは大都会付近とかあるいは地方、いろいろ千差万別だと思います。私は、過去一、二年の間の相当の価格の上昇があった。これは都会地付近のことであります。そのムードが地方にも行っていると思いますが、しかし、地方の方は必ずしもこの農地の価格というものはそう上昇しているとも考えられません。ここ一、二年の間で、これは日本の農業のあり方、そうして農民の売る人、買う人の間においてきまることであります。見通しといたしましては、私はさあっと上がってくるというような見通しを持っておりません。
  44. 亀田得治

    亀田得治君 これは地方に行きましても、私たちが農林省からいただいたこういう不動産研究所の資料などとは比較にならぬ上がり方をしておるところがたくさんある、地方でも。都会付近の農地の価格なんというものは、この資料に載っているようなこんな基準から、はるかにそれておる。これは農耕を目的としておる、農耕目的ということを前提に移動されるものであってもです。だから、これは例外的にどっかでもち合い、あるいはほんとうの例外で下がるところがあるといったようなことなんかが若干あるかもしれませんが、全体の趨勢としては、私はまだまたやっぱり相当上がっていく、こういう感じを持っておるのですが、そこで、なぜそういうことを申し上げるかと申しますと、資料によりましても、二十八年と三十五年で三倍になっておるわけですね、農地価格が。私は二十八年と三十五年をとっておる。というのは、二十四、五年などは統制撤廃等の関係で急に上がっているわけですね。だから、その前のやつをとるわけにいかないから、二十八年のやつを一応とってみたんですが、三十五年と比較すると三倍なんですね。大へんな値上がりなんです。それで、最近は若干にぶっておる点も見受けられますが、必ずしもそうじやない。三倍ということに比較すると、多少にぶっておるという意味であって、これが下がっていくというような傾向には絶対ないわけですね。先ほどちょっとお答えがあったんですが、私はそういうふうにはっきり確信しておるのですが、間違いでしょうか。
  45. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 思惑が入りまする大都会付近の農地は、これはあなたのおっしゃる通りでございます。農業を永続的にやっていこうという場面におきましての価格は、私はそう何倍ということにはならないと思います。昭和二十八年と比べて、三十五年ですかが、三倍だ。その歩みは、私は昭和二十四、五年でしたか、撤廃いたしました農地の分は当初上がらず、全体の経済の伸びが二十八、九年ごろから三十三、四年にぐっと上がっていったので、今後今までのような調子には、今後私はそう倍とか三倍とかいうふうなことは起こらないと思います。
  46. 亀田得治

    亀田得治君 二十八年はもう上がってしまった後の数字なんで、それに対してなおかつ三倍になっているわけなんですから、これはよほど検討してもらわないといけない。自立経営なんといったって、そういう面から行き詰まってしまう。それで、もう一つは、総理はやはり農地の価格というのは農業経営という立場から自然に落ちつくところへ落ちつくと、そんないつまでも農業経営を無視してべらぼうにいくものじゃない、経済の法則として、というふうなお考えのようですが、何かそういう考えからおっしゃったわけでしょうか。
  47. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農地を農地としてずっと続いて使用する場合には、おのずからそこに経済の原則が働いてくる、こういう考え方でございます。
  48. 亀田得治

    亀田得治君 ところが、それは農業をいろいろなほかの事情から切り離して見過ぎるのですね。ともかく現在の農地価格というものは、そんな農業の収益の換算というような立場からは絶対に出てこない価格なんです。だから、これは農業外の原因があるのです。それがずっと、そんな都会地だけじゃないんですよ。どこの農村に行っても、そういう農業外の原因というものがずっと農地価格というものに入り込んできている。それはやはり分析して見当をつけてもらわないと、この点で大きな狂いが来る。  それは何かというと、一つは、ともかく人口が毎年ふえることです。それからもう一つは、工場がふえる。もう一つは、公共事業がどんどんふえる。代表的にこの三つ申し上げても、これがみな影響していっているわけですね。しかも、今度の基本法によりますと、工場を地方に分散しようというわけでしょう。これもそういう今までの農業外の原因というのをやはり刺激していくわけです。農林大臣は、なるべくたんぼをつぶさぬようなところへもっていくのだということをおっしゃるけれども、なかなかそう計画通りいくものでもないでしょうし、少なくとも今までよりは、それはやはり農地価格に影響するプラスの原因になっていくわけなんです。そういう点をよく検討されませんと、農地価格の動きというものは私は理解できないと思いますね。そういう点は、総理はどういうふうにお考えになっているでしょうか。お前の言うのは、そんなことは経済を知らないものだというような扱い方かどうか、ちょっと聞いておかぬと。
  49. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 大都会付近と、こう言っておりますことも、人口増加と工場なり宅地等できまるわけです。だから、農地を農地として将来ずっと使っていくという場合におきましては、これは私はそこにおのずから経済の原則が働いてくる。しかして、所得倍増計画で地方に工場を分散するという場合の農地の上がり方というものは、これは農業として経営する場合のあれじゃない。そういうものが影響してくることはもちろん認めます。認めますが、それによって農業経営に支障が、経営が成り立たぬというふうな——農業としての土地というものは、そう上がるものじゃございません。工場になる場合につきましては、これはある程度上がるでしょう。それから、宅地になる場合におきましては、工場ほどには上がらない、私はこう考えているのであります。
  50. 亀田得治

    亀田得治君 じゃ、ちょっと休憩になるようですが、ともかく総理は、やはり経済問題は非常な専門家でしょうが、しかし、その中で農の関係はちょっと少し薄いようですね。
  51. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 暫時休憩いたします。    午前十一時十八分休憩    ————————    午前十一時四十二分開会
  52. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君)委員会を再会いたします。  委員の異動について報告いたします。阿部竹松君が辞任、その補欠として戸叶武君が選任されました。   —————————————
  53. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 休憩前に引き続き、農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、以上三案を一括議題とし、内閣総理大臣に対する質疑を続行いたします。
  54. 亀田得治

    亀田得治君 あと二十九分しかありませんので、簡単に一つ問題を要約してお伺いすることにしたいと思います。なるべく一つ中身のあるので簡潔……。  まず、この所得倍増計画に私もそうとらわれるわけではありませんが、まあかりにこの構造改革の問題として、倍増計画では二町五反と、こういう自立経営を考えている。また、基本問題調査会の答申によりますと、表現は多少あいまいでありますが、まあ二町前後のとこらを考えているようです。もちろん、この面積自体にも何も私はとらわれて考えているわけではありませんが、ともかく今考えている程度の自立経営の大きさでは、もうしばらくたつと、もうすでにそれは経営単位としては小さ過ぎる、時代おくれだ、こういうことに私は必ずなると思うが、この点、総理はどういうふうにお考えですか。
  55. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) これはドイツ、フランスの例を見ましても、六、七町、七、八町、われわれはそうありたいと思いますが、地形その他いろいろな関係もございまして、一がいにそういうふうなわけにいきません。お話の通り、いろいろ事情も違っておりましょうが、少なくとも、しかし相当程度規模を持たなければならぬことは確かであります。で、私は徐々にできるだけ早い機会に二町五反歩あるいは三町、まあ果樹なんかであればそこまで、要らぬかもしれませんが、規模の拡大ということはぜひやらなければならぬ問題と考えております。
  56. 亀田得治

    亀田得治君 その点の考え方は御同意願ったようでありますから、それでいいわけですが、ところが、そういうしばらくすると間に合わなくなるのじゃないかと思われるような程度の自立経営を作るのにも、これはなかなか農地価格等の関係で大へんなんですね。これはもう農民自体にやらすといっても、なかなか政府がお考えになるようにはいかない。そこで、私たちもこの経営規模の拡大、経営単位をもっと大きくして、そうして農業経営、農作業というものが近代化されても十分その中で労働が消化されていくと、こういう格好をとるには、どうしてももっと大きいものを今から予測しておかなければならない。そのために私たちが開拓と経営の共同化ということを実はやかましく言っているわけなんです。これならば、開拓はもちろんこれは政府にやってもらうわけなんです。それから、経営の共同化は、これは農民が農地を出資して作っていくわけですから、実際の現金の動きというものは、必ずしも要らないのです。だから、この点に、何も自立経営が総理大臣だって目的じゃないでしょう。やはりりっぱな職場、りっぱな経営単位というものを作って、そうして能率を上げていこう、これが目的のはずですからね。従って、自立経営にとらわれ過ぎておるような今までの考え方は、やはりここでちょっと清算してもらわないといかぬのじゃないか。そうして新しい農村の造成、共同化の問題、これをもう少しそういう角度から取っ組んでほしいわけでして、そこで第一にお聞きしたいのは、社会党では三百万町歩の開墾を主張している。これは総理は可能だと考えますか、技術的に。
  57. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 技術的に可能かもわかりませんが、それが経済的にどうかという問題を考えねばいけません。また、地理的にどうかということも考えなければならぬと思います。われわれは開拓、開墾、干拓ということを全然否定するわけじゃございません。これがあくまで経済的に行なわれることをわれわれは考えておるのでございます。
  58. 亀田得治

    亀田得治君 まあ技術的に可能であることは、ややお認めになるようなことですから、それだけでいいのです。そうすればあとはもう国の決意一つなわけですから、それはもうわれわれとしても、何も全国一律にこんなことをやろうとは考えているわけじゃない。やはり東日本とか、そういったようなところが重点になってくるわけでしょうし、それからその地域性というようなものを何も考えないで、むやみに押しまくっていくと、そんなものじゃこれは当然ないわけです。ただ、全体の耕地面積の比率なり、また過去の、多少ずさんな問題のある調査のようでありますが、役所自身がおやりになった調査等から見ても、この程度は技術的に可能だということで考えているわけですから、十分これも一つの検討をしてもらいたいと思います。  それから、もう一つですね、開拓問題はじゃその程度にいたしまして、共同化の問題ですね、これはだいぶ質疑過程ではわれわれの受け取る感じというものが違ってきた。初めはどうも自立経営というものにえらい力こぶを入れておられたようですが、だんだんやってくるうちに、それもその辺のニュアンスがだいぶ違ってきた。それはあとからでもお気づきになればけっこうなことですから、いいわけですが、それであれば、この法案ですね、法案では、この共同化の問題については何かちょっと、それは農民が好きならおやりになったらいいんだ、農民がおやりになる場合においては国としてはお手伝いしましよう、こういう消極的な書き方になっておる。法案作成の過程からいいましても、当初はこれは促進と書いてあったはずです。私はやはり、共同であるとか自立であるとかいうこと自体は、これは実際の手段の問題でして、大した問題ではないと思う、経営拡大の問題なんですから。そういう点から考えますと、これはやはりこういう消極的な表現でなしに、もっと積極的に取り組むようなかまえというものを出すのが私は正しいと思うのですが、どうでしょう。
  59. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 自立経営とか兼業というものは手段の問題だとおっしゃいますが、これは目的はわかっておる。政治上の問題は、手段の問題が私は非常に重要な問題で、手段だからといって、これをないがしろにするものではない。農業をよくしていこうということは、あなた方と同じことなのです。ただ、手段の問題が問題なんです。そうお考えを願いたいと思います。  で、私は何も共同経営というものを否定するものではございません。これは農民がそういうようにやった方がいいとおっしゃれば、今のような農基法がなくとも、ところどころで共同経営をしておる事例がある。佐賀県なんかはかなり成功しておるようですが、それでなかなかむずかしいところもございます。そうして農業のあり方といたしましては、私はやはり家族農業を主にしていくのが建前としては適当だと。ただ、家族農業だけでもいかぬというときには、共同経営もおやりになったらどうか。とめるものじゃない。必要に応じては私はこれを助成していくといいますか、推進していくといいますか、そういうことでやっていいと思います。
  60. 亀田得治

    亀田得治君 家族経営を自立経営に直し、育成していくといいましても、これはなかなか、先ほどから申し上げたような事情で、やっぱしはかばかしくいかないですよ。それから、私も若干この法案審議過程で少し勉強さしてもらったわけですが、これと同じような問題は西欧の資本主義国にもある。あるけれども、そこでは家族経営自体の育成の目標規模というものが相当高いわけなんですね。だから、必ずしもこの経営の共同化というものをそんなにやかましく言わなくとも、問題の処理の仕方というものは相当ある感じがするのです。だから、日本のような場合には家族経営を自立経営にしかもそれが目標がちょっと、そのうち間に合わぬかもしれないというおそれもあるわけでありますから。私の共同化というものを、やっぱり相当政府もこの共同といったようなものは、何かこうコルホーズのまねだとか、そんなような考えが腹の中に多少あるんじゃないですか。演説なんかでそういうことをおっしゃる自民党の方もあられるようですから。この間、大沢審議官などは、社会党の共同化の共は共産主義の共だと失言して、非常にしかられておるわけなんです。しかし、それは失言かもしれませんけれども、皆さんはそういうとらわれた考えを持っているのではないだろうか。だから、そういう考えをやはり払拭して考えてもらいますと、この辺の社会党の主張というものはすなおに受け取ってもらえると思うのですがね。何かそういう古い観念にとらわれたものがあるのじゃないでしょうか。総理の気持を一つ聞いておきたい。
  61. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この第一次産業というものは、第二次、第三次産業とは違いまして、なかなか労力だけというものではいかない。自然的条件、土地に付着したいろいろな条件がございまして、共同化にはなかなかむずかしい業種でございます、第一次産業というものは。しかし、第一次産業でも水産業のようなものは、資本が相当入りますから共同ということも相当できますが、農業ということにつきましては、私はこの共同化ということはなかなか、産業の中で一番むずかしいのじゃないかと思う。何もコルホーズとか中共のあれをとやかく私は言うわけじゃございませんが、人数の自由、平和という大きいところからいいますと、あるいは個人の気持というものが相当入ってくるものですから、私は建前としては家族経営、そうして足らざるところは共同ということでいくべきだと思います。
  62. 亀田得治

    亀田得治君 まあもう四、五年しますと、なるほど亀田君の言う通りだったということが大体わかってくると思いますから、きょうはこの程度にしておきます。  最後に、私は、兼業農家に対する対策、これを一つ確かめておきたいのです。これは兼業農家というものは、農業生産性という面から見たら好ましいものではないということは、これはまあはっきりしておるわけですが、それがあるわけでして、しかも、あるどころじゃなしに——いろいろな原因があるわけですが、統計上はむしろふえる、そういう状態ですね。だから、この対策というものは非常に重要だと思うのです。  第一点として聞きたいのは、初めはどうも自立経営農家、あるいはそれに近いような農家、そういうところに農政の重点を今後は指向していくのだというふうにどうもお考えになっておったようですが、そうすると、兼業農家というものを首を切るのかというふうな問題等が出て参りまして、その過程でこれもだいぶお答えの仕方が変わってきたわけなんです。兼業農家農業の面では、その部分としてはまま子扱いはしない、こう農林大臣等もおっしゃっておる。総理も同じことですか。
  63. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) やはり政策を立てます場合におきましては、実態の推移を考えなければならない。第一種兼業、第二種兼業のあり方、その兼業の所得の割合等々から考えまして、私は第一種兼業、第二種兼業は相当出てくると。そして第二種兼業というものを農家というかどうかという問題から、今の六割の問題が出てくるわけなのです。私は農業の実態は、あの当時も言っておりますように、日曜農家というものもドイツにあるわけです。だから、自立農家を育成すると同時に、相当数に及ぶ第一種、第二種の兼業農家ということにつきましても、農林省としては考えなければならぬことは当然でございます。
  64. 亀田得治

    亀田得治君 そうすると、考えていかれるわけですね。ところが、実際はそうはなっていないのです。いろいろありますがね、一つだけちょっと申し上げて、これはやはり農林大臣じゃないと答えにくいのじゃないかと思うのですが、これはまだ委員会農林大臣にも聞いておりませんから、この場所でちょっと聞いておきますが、正月の四日に各知事あてに、農林省三局長の名前で「自作農維持創設資金融通に関する事務処理について」というのを出しておる。これによりますと、明らかに自立経営の育成維持に寄与するかどうかと、こういう観点から今後はこの資金を扱うのだ、こうはっきり明記されておる。で、そうなりますと、この資金は、今までは昭和三十年以来ずっと中農以上ははずされていて、それ以下のものに対する資金として非常にこれは喜ばれておったけなんです。いろいろな説明予算説明のときに若干ありましたけれども、実際問題としては、この大事な資金というものが大きな農家の方だけに使われていくという結果に、これはこの通達からいきますと結局なるのです、これは絶対に。特にこの相続資金なんかは、専業または専業に準ずる経営の縮小を来たすような場合、そういう場合だけに貸すと、こういうふうに相続なんかの場合には非常にはっきりしている。これでいきますと、小さな百姓の農地なんかは、相続によって、均分相続で分割されたって仕方がない、こういう意味にもこれはとれるわけですね。だから、いろいろなうまいことを、小さい方にも回すんだというようなことを予算説明の際には言われておりましたが、実際の事務処理規定は、これは全く違う。これは中小農に対する非常な、これは何といいますか、既得権といっては多少言葉に語弊があるかもしれませんが、何ですね、農政上非常に大きなまま子扱いを小さいものにする、これが一番大きな見本です。農林大臣、これどう考えますか。この通達、あなたはよくごらんになったんですか、出すまでに。
  65. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 見ておりますが、通達は見ております。それは創設資金と維持資金と書き分けておりまして、維持資金については、その小さい農家はもちろん入る、融通するということは当然であります。それからさらに、これが運用にありましては、たびたび国会においても述べておりますように、できれば小さい現在所有反別のものをよけいにするようにして、自立農家の基盤を大きくするということが一つ目標であります。小さい農家が負債等によってこれを手放なければいかぬということになってはいけませんので、維持資金を出し、しかも、維持資金、創設資金ワクの分け方についても、指示はいたしておりますが、その間において彼比流用して遺憾のないように処置するということを、たびたび申しておるようなわけであります。
  66. 亀田得治

    亀田得治君 その答弁はとても、この通達からいうと、そのまま受け取れないと、そのまま受け取れない。この通達のこまかい、この意味はどうかとか、これはどうかとか、そういうことを言い出したら、これは時間がありませんから、これはいずれまた、自創資金等に関する法案等もあるからお聞きしますが、ともかく、表向きは兼業農家を大事にしていくんだとおっしゃっておりながら、具体的な処置というものは、こういうことにちゃんと現われておる。だから、みんなが心配するわけです。  それから、もう一つは、この兼業農家の離農対策ですね。これはこの基本法によっても職業訓練とかいろいろなことを書いておりまして、まあそういうこともけっこうなことでしょうが、しかし、根本的な問題があるわけですね。それよりも、その先に、これはよくいわれておる経済の二重構造、この問題にほんとうにこうメスを入れて直していく。臨時工、社外工、日雇い、こういう人たちがその二重構造の中でも一番の底辺でしょう。農村のまあ子弟は別としまして、新しく学校を率業していくような人は別として、この離農対策、自立経営を一方で育成したいという関係から来る離農対策というものは、結局、中年以上の農民なんです。ところが、こういう人たちを待ち受けておるものは、今申し上げたような最低辺なんですね。これをどうするかという問題、これは最低賃金法の問題等もあるでしょうし、この問題は徐々に直していくのだとかいうようなことを総理はおっしゃるようですが、そんな徐々ぐらいじゃだめです。よほどこれは思い切ったかたい決意で臨まれなければ、経営者のいろいろな力、影響なども強いでしょうし、どういうふうにこれはお考えでしょうか。
  67. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) この点につきましては、われわれ十分今後強力の施策をとっていかなければなぬと思います。たとえば先般の三井争議で指名解雇の人を職業訓練をいたしますと、ほとんど百パーセント就職がきまったようであります。その通りにいくかいかぬかわかりませんが、職業紹介、職業訓練、ことに訓練の方に力を入れまして、離農者に対しましては、私は相当の強い施策を講じていきたいと考えております。
  68. 亀田得治

    亀田得治君 三井三池の方は今おっしゃいましたが、きのうも労働大臣からその間の事情は阿部委員質問によって詳しく聞きましたが、ところが、就職された人の賃金なども非常に安いわけですね。大へんなんですよ。ほんとうはそんなところへ行きたくないでしょうが、ほかへ行く場所がない。いろいろな事情もからんで、そういうふうになっておるわけです。ともかく、人間はどこかへ就職しなければならぬのですから、落ちついたらいいというものじゃないと思う。非常な、こう待遇上の格差があるわけですね、農村の中年の離職者を待ち受けておる職場というものは。これはもう同時にどういうふうに処理するのかということを一緒に出しませんと、これはやはり首切りになるのですよ、結果においては。総理大臣は、何かこの法律農民の切り捨て政策だとか、こういうふうなことを私たちが言いますと、そんな言葉づかいは使わぬようにしてくれ、決して切り捨じゃなしに切り上げなんだ、こういうことを衆議院でおっしゃっておる。これは言葉の、私たち、やりとりをしておるのじゃないのでして、切り捨てになるか、切り上げになるかということは、現実にやはり示してもらわないといけない。自創資金運用の仕方をこういうふうに大幅に変えていく。第一、自創資金なんというものは、これはほんとうに困っておる立場の人に作ったのでしょう。昭和三十年、提案理由もみんなはっきりしておる。こんな大幅な転換をするのなら、あるいは法律自体を変えてかからなければできないはずだと思う。実際はそれを、そんなこともしないで、通達一本でこんなことを大幅に変えていく。とんでもない話ですよ。自作農です。それから待ち受けておる方——今のような程度お答えじゃ、これはいびり出しですよ。だから、私たちは切り捨てだ、首切りだ、こう言うわけでして、決してそんな、ことさらに誹謗して申し上げておるわけじゃない。まあこの点を特に一つ、なぜ、われわれが首切り、こう言うておるかという点、この点を一つ申し上げておきまして、時間も参りましたから、一応私の質問をこれで終わります。
  69. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 暫時休憩いたします。午後は零時三十分から再開いたします。    午後零時九分休憩    ————————    午後零時三十九分開会
  70. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、 農業基本法案(参第一三号)、 農業基本法案(衆第二号、予備審査)を一括議題とし、池田内閣総理大臣に対する質疑を続行いたします。
  71. 東隆

    ○東隆君 私は、農業基本法は宣言立法だと、こういうふうに考えておるのであります。そこで、この法律は関連法律が実現をされなければ効果を発揮しないと、こういうふうに考えます。今の国会の情勢から考えて参りまして、延長国会はできないのでありますから、相当な法案が継続審議あるいはその他の形で残されるのでないか、こういうふうに考えます。従って、早期に臨時国会を開催してそれらの法案をやはり上げなければ、私は所期の効果を上げないと思うんです。ことに、政府農業基本法のPRについては非常に熱心におやりになったんでありますから、従って、当初においては関連法案その他を完全に通過させる心意気であったろうと、こういうふうに考えておりますが、今の情勢から考えて、私は相当困難なものがある、こういうふうに予想いたします。従って、これに対してどういうようなお考えであるか、それを伺いたい。私は、このままでもし推移をすると、国民をぬか喜びさせてそうして実を与えない非常に乱暴なことになるんじゃないかと、こうおそれますんで、この点一つ総理の所懐をお聞きいたします。
  72. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) ただいま国会に提案して審議中のものはほとんど全部私は通過を期待いたしておりますので、御心配の点はなかろうかと思います。
  73. 東隆

    ○東隆君 総理が確信を持ってそういうお答えでありますが、しかし、今の情勢から、いろいろ新聞その他に出ておることから想像いたしましても、相当な困難があるのでありますから、やはり国民に答える意味において私はもっと誠意のある言葉が必要ではないか、こういうふうに考えるわけです。
  74. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 国会に提案して審議中のものでございますから、通過を期待することは当然であり、また、それが誠意のある答えだと私は考えております。
  75. 東隆

    ○東隆君 この問題、総理はなかなかやはり高姿勢でありますけれども、この問題はこの程度にいたします。私は、当然誠意がもし首相にあるならば、臨時国会を早期に開催すべきものである、こういうふうに考えます。  そこで、農業基本法が成立をした暁において、私は、政府はPRの方面にはだいぶ力を注いだのでありますけれども、農業基本法を推進する体制というものが政府にできておらないと、こう考えます。もっと私はこの農業基本法を推進するための機構が整備されなければならぬと、このように考えるわけであります。河野農相の時代に、新農村建設運動、そういうようなものが展開されたのであります。そのときに言った言葉を実はいろいろ記憶をいたしておりますけれども、私は、それを少し拡大してそうしてやったのがこの農業基本法のように考えられてなりません。しかし、あれはやはり政府において機構その他を一つも整備をしないでああいうようなことをお始めになったんで、私は効果が上がらなかったんであろうと思います。私は、昭和の初頭に農林大臣金融課長をやられておった時分に、経済更生運動、あの運動を全国的に時の斉藤実首相が音頭をとって、そうして自力更生の旗じるしでもって始めたあのときのことを思い出すわけであります。非常に整備した体制でもってあの当時の運動を進めておるわけであります。私は、今回の場合においても、あの程度よりも以上のものを作り上げていかなければほんとうのものにならないと、こういうふうに考えます。かけ声だけでは問題にならないので、私は実際のものをやはり政府がつくり上げることが必要だろうと、こう思うのでありますが、これに対する構想をお聞かせ願いたいと思います。
  76. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農業基本法は、お話のように、農業憲法と申しますか、これをもとにいたしまして今後いろいろ施策をしていかなければなりません。そうしてまた、今までの機構につきましても再検討を加えなきゃならぬと思います。従いまして、農業基本法につきまして本国会でいろいろ議論せられましたところを十分頭に置きまして、農林省の機構につきましても今後考えていくし、また基本法の精神を具体的に行なうためのいろいろな施策あるいは立法等も要ると思います。順次今後整備していきたいと考えております。
  77. 東隆

    ○東隆君 私は、今の総理お答えは、農業基本法さえ通ればいいんでないかと、こんなような一応気がしてならないのであります。農業基本法を通した以上は、首相が陣頭に立ってそれを進めるんだと、こういう体制をつくり上げていかなければ私は国民は感奮して仕事をやらぬと、こういうふうに考えるわけであります。そういうような意味で、私は今すぐとは申しませんけれども、関連立法その他が当然、通れば、そのときにはもう完全に体制ができ上がっていなきゃならん。そういうふうに考えますと、私は、今度の国会においてはそれができないとしても、臨時国会までにはそういう体制を作り上げてそうして進むべきでないかと、こういうふうに考えますが、この点はどうですか。
  78. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 臨時国会を既定の事実としてお話しのようでございますが、私は今それを開く開かないはきめておりません。いずれにいたしましても、農業基本法通過後におきましては、これに基づいてあらゆる行政的あるいは立法的施策につきまして歩を進めていきたいと考えます。
  79. 東隆

    ○東隆君 時間がなくなりますから別の問題に入りますが、私は、今の農村における組織というものは非常に弱くなっておると思う。ことに農業協同組合が合併の促進その他が進められておりますけれども、しかし、その協同組合の部内における組織というものは非常に弱くなって、そうして協同組合その他の団体仕事をするにおいても、一致した仕事あるいは共同体制のもとにやる仕事、そういうようなものが非常に進めづらい形になっておると思う。私はこれは戦後における非常に大きな問題でないかと、こういうように考えております。そこで、どうしても農村の組織化を進めていかなければこの農業基本法によるところの成果は上がってこないと、こういうふうに考えますが、この点はどういうふうにお考えですか。
  80. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 時代の変わるにつれまして、農村の組織強化につきましていろいろ行なわなきゃならぬことは多いと思います。それにつきましても、従来の農業協同組合の組織拡大、そうしてまたこれが生産方面へも力を伸ばしていくよう、あらゆる面からこれの拡大強化をはかっていきたいと考えております。
  81. 東隆

    ○東隆君 私は農業協同組合の拡大強化、拡大充実というのですか、そういうものをやる場合に、今の個人の農業者の加入の状態のもとにおける農業協同組合では、なかなか仕事ができないと思うのです。ことに、これが大きくなればなるほど仕事ができづらくなると思うのです。従って、産業組合時代にあったような簡易法人の農業実行組合のようなものが当然生まれてきて、部落内をまとめ、そうしてそれを農業協同組合の部内に置く、そういうようなことによって農村の組織化を進めていかなければ、私はほんとうの仕事はできないと思うのです。この点は単に拡大というようなことでなくて、内部の充実、これをやらなければ問題にならぬ、仕事ができないと思う。そういう意味でお伺いをしておるのでありまして、総理お答えは協同組合を拡大するので、合併その他によってやるのですから、形だけできても問題にならないので、中身をどういうふうにして強化、拡充をするか、こういう問題なんです。私は答えを申し上げておるのですが、簡易法人のようなものをお作りになる御意思がございますか。
  82. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) この点については、私からお答えいたします。従来の産業組合時代における部落実行組合というようなものを作って産業組合に加入をした実例に徴して、今後やはり同様な意味のものを作ったらどうかというお話であります。この点については、ただいま、今日の町村等の非常に広い地域における農業協同組合のあり方と関連いたしまして、部落協同組合的なものが、さらに下部組織としてどういう役割を果たし、どういうふうに持っていったらいいのか、必要性があるのかどうかということを検討の上、これについての成案を得たいと目下考究中でございます。
  83. 東隆

    ○東隆君 法律の第五条とそれから第二十四条のところに「農業に関する団体」と、こういう字句が出ておるのであります。それでこの第五条の「農業に関する団体」、それから第二十四条の「農業に関する団体」、この中身を実は具体的に承知をいたしたいわけであります。これは首相からお答えを願うわけには参りませんので、適当にお答えを願いたいと思います。
  84. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) この農業団体の中には、もとよりただいま申しましたように、農業協同組合の系統団体、さらに農業会、またその他のこれに準ずる法人格を有すると有せざるとを問わず農業団体も入って、それはいかなる形でいかなる方法でどういうふうに持っていったらいいか、それをどういうふうに整理したらいいかということを含めて考えていきたいと思っております。
  85. 東隆

    ○東隆君 そうすると、二十四条と五条のところの「農業に関する団体」は同一の中身のものと、こう理解してようございますか。
  86. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 同様にお考えをいただいてけっこうであります。
  87. 東隆

    ○東隆君 法的にできたもの、あるいはそれ以外の申し合わせのものもお考えのようでありますが、申し合わせでもってできた団体、あるいは準ずるもの、そういうようなものは一体どういうものをおさしですか。例を一つ二、三おあげを願いたい。
  88. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) これには民法上の規定に基づいての申し合わせ組合といいますか、こういうふうな形で出ておる農業団体がございます。これは養蚕関係にもございますし、畜産関係にもあるというようないろいろな団体がありますので、今後としてはどういう形でそれを統合し、どういう形に中心として活用するのかというようなことが広い視野の上に立って考えられなければならぬ、こういうように考えております。
  89. 東隆

    ○東隆君 農民の団結権あるいは団体交渉権を実は持つような組織をこれは法律でもって認められなければなりませんけれども、しかし申し合わせでそれに近いようなものを私やはり農業関係する団体だとこういうように考えますが、これを指導、誘掖されるお考えがございますか。
  90. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) たとえばビール麦の売買等に関しまして、ビール会社と農業協同組合との間に価格の販売協定等ができておる、そういう場合において団体的に交渉をなさるという実例がございます、こういう点は正しい動き方については助長してけっこうだと思います。ただ、私は団体交渉というものがいわゆる労使の間における、その一つの法人なら法人の中における労使関係における団体交渉権とかいうようなものは、ちょっと農業団体によっては今後どういう形になりましても想像がつかないのであります。これは恐縮でありますが、社会党案によりまして見ますると、同じく農民団体交渉権を認める規定がありますが、これはあるいは指導的にも全部の農業団体を大体法人化してゆくということでありますから、そういたしますと形式的に農業従事者、労働者の形で動きますから、経営者と執行部との間における何か交渉があるのかと思いますけれども、現在の状況におきましては、ただいま申しましたような農業協同組合がビール会社と特約契約をいたして販売協定をいたすというような場合において、団体的に価格の交渉をなさるというような事態は事実によってやられてけっこうでありますし、正しい動き方については私どもは大いにこれを助長していってけっこうだと思います。
  91. 東隆

    ○東隆君 私は自由な農民農業団体を作って、そして町村あるいは農業協同組合あるいは地方公共団体その他関係のものにいろいろ交渉をする、話し合いをする、こういうようなことは私は当然認められて差し支えないもんだと思う。従ってそういうような団体はこれは端的に言えば農民組合であるとか、あるいは農民の連盟であるとか、その他の名前で呼ばれておりますけれども、こういうようなものに対する自主的な活動を助長されるかどうか、それを旨とすると、こうお書きになっておるんですから、そういう点をどういうふうにけじめをおつけになるか。私はこの法文からゆくと、どうも法律でもってできたものだけを対象にされておるんでないか、こんなような気がいたしますので、その点をどういうふうにけじめをつけておられるか、それをお伺いいたしたいんです。
  92. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 基本法に書いてありまする範囲におきましては、もとより主として経済問題を中心に考えておりますが、当然いろいろ経済問題以外に関係する事項が第二条第一項第八号等にございます。そういう意味合いにおいて、できる限り農業団体として、現在法人格を有するものも有しないものも、正しい意味において動いておる農業団体のあり方について検討し、それがよりよき農業者の発展に寄与するものであるならば、これらを助長することも別に私は異議はございません。
  93. 東隆

    ○東隆君 農業災害補償法による農業共済組合、これは協同の組織と読んでようございましょうか。農家の協同の組織と。
  94. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御意見通りでけっこうでございます。
  95. 東隆

    ○東隆君 土地改良区は、これは農業の協同組織と読んでようございましょうか。
  96. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 当然私どもは考えております。
  97. 東隆

    ○東隆君 先ほど農林大臣は、この農業基本法におけるところの農業関係する団体は、経済の方面が主にあるこういうふうにお話しになりました。従って私はこの第二十四条は別といたしまして、第五条は、これは農業従事者の協同の組織と、こういうふうに表明をされた方が、私ははっきりするんじゃないか。これを非常に広範な規定をされておるために、はっきりしない節がたくさんあると思う。私はこの第五条は、農業に関する団体というのは、農業従事者の協同の組織と自主的な活動を助長すると、こういうふうに読みかえるべきじゃないかと、こういう考え方を持っておるわけであります。そういうふうに読みかえ、今の農林大臣お答えですと、そういうふうにも取れるわけです。これは基本法においては経済を中心にしたところの問題だと、こういうふうにも言われたんですが、そういうような意味に取った方がいいんではないかと、こう考えるわけですが、その点はどうですか。
  98. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私が先ほど申しました、多少言葉が足りませんで誤解を招くといけませんが、私は経済の向上発展に関する指導あるいは中心になって農家を向上させるというようなものが大体中心になって考えられるが、他のものも相当今度は考えておると、こういうことを申し上げたのであります。その後の団体自体経済行為を行なうという意味ではなくて、指導的な立場も入るわけですね。しかし、その目標は大体農民経済行為、経済活動というものを助長し、それから向上せしめることを目的とすることが相当大きな部分を占めて、その他の関係おいての生活環境というものを向上する中には、あるいは経済関係のみにも限っておりませんが、それらのものも指導することももちろん入るわけであります。従ってこの中にはあなたの御指摘の五条の中には、農業協同組合のごときそれ自体経済行為を行なっておるものもありまするが、片っ方農業委員会のごときむしろ経済行為自体はみずからやらずに、技術指導その他に関して指導的立場をとっておるものというものもあるわけであります。
  99. 東隆

    ○東隆君 私は第五条のところで政治的ないろいろの方面をやる農業団体、そういうようなものは排除される、それから行政的な仕事をやっている、どちらかというと農業委員会系統、こういうようなものをかりに排除をいたしますと、残ったものは農家の協同の組織以外にはないではないか、こういうふうな気がするのであります。従って第五条の説明ははっきりとそういう線をお出しになった方がいいのじゃないか、こういう気がいたしますので、この点もう一度お答えを願いたい。
  100. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 第五条に書いてある「農業に関する団体」は、農業協同組合等の経済行為を行なう団体だけではないという意味を先ほどから申し上げたのです。
  101. 東隆

    ○東隆君 あと時間がございませんから、もう一つお伺いをしますが、農政審議会の問題であります。政府の案でありますと委員数は十五名でありますが、十五名にされた理由、根拠、これを一つ明らかにしていただきたい。
  102. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 委員の員数でございますが、私は大体十五名程度でいいのじゃないか、あまり多くなりましてもあれでございますし、また少なくても調査、結論に対して支障を生ずる、大体十五人ぐらい、しかもこれは農業関係しておられる学識経験者、また農民代表というような方面から選びたいと思っております。
  103. 東隆

    ○東隆君 私は学識経験者、それから農民の代表と、こういうお話しでありますが、農業従事者を出してほしい、こういう要請は各地方の聴聞会、衆議院の方なんかにもだいぶ表われて、そこで従って農業の従事者の代表をやはり参加させる必要があるのじゃないか、ことに、日本の国は南北に長い国でありますから、私は農業基本法の中にも地域性を相当主張をされているのでありますから、ブロックからやはり代表をかりに出すとすると、九ブロックあるとすると九人出るわけです。そういうふうに考えて参りますると、この十五人の数ではまかなえないことになるのじゃないか、そんなふうに考えますが、私はもう少しこれを拡大をして、そうして名実伴うものを作り上げる必要があるのじゃないか、まず構成人員でそういうふうな考え方を持っているわけであります。  その次に、私はこの審議会の仕事でありますが、諮問に答えることと、それから意見を述べる、こういうことになっておりますが、私はこの意見を述べることを得ということと、それから私どもが言っている建議をすること、この問題には私はだいぶ違いがあると思う。それで農政審議会を非常に力の強いものにして、そうして政府施策に対して非常に大きな影響を与えるような組織を作るならば、私はただ意見を述べるだけ、こんなようなことであるとか、あるいは諮問に答える、こういう程度では私はほんとうの総力をあげた形にはならない、それでやはり建議をして、そうして十分にそれを国会に反映をさせる、そこまでもっていかなければならぬと思うのでありますが、こういう点で非常に消極的な表現をされているのでありますが、それは何か理由があるのですか。
  104. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) この意見を述べることができるということは、当然建議をなすことができるわけであります。それからして私どもは広く考えております。
  105. 東隆

    ○東隆君 それからもう一つ疑問に思っておるのは、任期を実は書かれておりません。あるいは政令でもって規定をされるのかもしれませんけれども、私は、明らかに任期を書いて、そしてその間十分に仕事ができるような態勢を作ることが必要だろうと思う。それでもし任期がなくて、政府の意向でもって人のさしかえをやる、こんなようなことになっても私は思わしくない、こういうような考え方を持つわけであります。従ってこれはどういうふうなお考えでありますか。政令の方でもって規定をされるとすれば、任期は何年くらいにされるか、それもお答えを願いたい。
  106. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) お尋ねの点は、第三十条によって政令で規定をするつもりであります。大体今考えておりますのは、二年くらいを任期と考えております。
  107. 東隆

    ○東隆君 時間がないようでありますから、また別な機会に譲ります。
  108. 千田正

    ○千田正君 私が総理にお尋ねいたしますのは、先般もお尋ねはいたしましたけれども、今日に至る間において、各地方に農民の声を実際に聞いて参りましたので、その聞いた農民の声のうちに集約いたしまて、われわれもふに落ちない点もありますので、その点をお尋ねをいたします。この農業基本法の前文にありますところのこの対象として、日本の海岸におけるところの沿岸漁民、御承知の通り、沿岸漁民のほとんど大部分は農漁民であります。農地をいささか所有し、かつまた零細なる漁業をやっておる、この沿岸漁民に対する対策、並びに山岳地帯におきましてはほとんど大部分は、私の県などは、国有林が大部分であります。さらに大きな山林の地主、農地解放では、この山林の所有者は、農地解放からのけてありますので、山林の地主が大部分、そういう山岳地帯におきますところの、農業とはいいましても、ネコのひたいみたいな小さな畑を作りながら、辛うじて野菜あるいは食糧の一端をまかないつつ、山林の伐採事業、薪炭事業等に従事している者、これもやはり農民として、農林省あたりとしては考えておられると思いますが、こうした零細な農漁民、また耕すに十分なる土地を持たないこうした山間におけるところの小農民に対する対策の対象として、この農業基本法は十分に意を尽くしているかというと、われわれはそうとも考えられません。この農業基本法の及ぼす範囲というものは、そうした零細農漁民や、零細山間農民にも及ぼすかどうか、この点をもう一度はっきりとお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  109. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 便宜私からお答え申し上げますが、お尋ねの山村における農業兼林業と申しますか、あるいに林業労働に従事して所得を得ておるという問題についてもう少し対策はという問題であります。これは非常にむずかしい問題でありますが、私どもは基本法制定におきましては、地方別、地方によって異なるでありましょうけれども、でき得れば国有林の経営等に関しまして、今までの経営方式と違った型で、栽培林業というような形に向ける。あるいは樹種転換による植林栽培林業というようなものと関連いたしまして、その方によって、従来から労働関係の少ない地方には労働を考えるということも一つ考えでありますし、また場所によりましては、国有林等の使用権の設定を認めたり、あるいは可能な限りにおきましては、払い下げ等の問題を考えつつ、またそれが部落にまとめて使用権の設定をする等考えまして、混牧林業というのができればそういう方法、いろいろの点について施策を今後に待っておるわけであります。非常にこれはむずかしい問題で、そういうことが全面的にできるかということになると、できる部面とできない地方とがあると思います。これはもっと力を入れて研究を進めていきたいと思っております。
  110. 千田正

    ○千田正君 この農漁民の対策に対しては、農民に対しましては、ただいまわれわれが審議しておりますところのいわゆる農業基本法という農業の憲章のようなものをわれわれは現在審議しております。これとうらはらの漁業に対する基本法、あるいは政府の言うところの沿岸漁業の振興法というものに、そうした農漁民としての零細な人たちを救うような、あるいは生活を立てていけるような点を盛るかどうかという点ですね。ただいま社会党においても提案されておるようでありますが、政府としましては、この農民に対しては一つの筋が通ってきたが、一方漁民に対してはどういう裏づしけをしてくれるかということは、また農業と漁民を兼ねておる人たちが非常な期待と、またそれに対する要望を持っておるわけであります。これに対しては、政府としてどう考えておるか。
  111. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) ごもっともなお尋ねであります。沿岸漁業者等に対する対策に関する法案というものはちょっとおくれておりまして、いろいろの点で今国会には間に合わぬような状況になりましたが、この国会終了後、直ちに漁業に関する基本的な法制を立てるべく、直ちに取っ組むつもりでありまして、これは沿岸漁業者というもののみならず、これを振興させていくについての他の漁業の、沿岸、沖合いというような関係との漁業調整とか、あるいは沿岸について従来と変わった形における海岸の保全といいますか、こういう問題は、御承知の通り三月の二十八日に答申ありました漁業権制度の改正に関する答申が出ております。この漁業制度というものを確立することと並行いたしまして、それらを織り込んだ形において、新しい漁業対策に関する法制を定めたいと思思っております。
  112. 千田正

    ○千田正君 先般の質問のときは、農林大臣から相続問題については、次の機会において考えるというお答えをいただいたのですが、この間聴聞会に行きまして、農民諸君の声もやはり相続の問題については非常な関心を持っております。そこで、特にこれは総理大臣から伺いたいのですが、相続については一子相続をやってもらうのはけっこうなことであるが、相続税は非常に高いから、これの税金をかけられたのでは。せっかく遺産を相続しても税金に負けてしまって、そしてせっかく取得した農地をある程度手放さなければ、父租伝来の農地を確保できないということになる。そこで早く言えば、相続税をもう少し減額してもらえないか、同時に固定資産税も非常に高い。他産業における人たちが持っておる家屋であるとか、土地とかいう面からいうと相当の収入を得ておるので、ある程度そう苦痛ではないかもしれないけれども、農民の場合には、ことに単作地帯におけるところの農民としましては、米麦以外に収入の道がないのに、固定資産税はほかの産業とそう大差がないような形で徴収されることはやりきれないので、この辺のことは今度の際に改正してもらいたい、こういう強い要望があったのでありますが、これは総理大臣から特にこの件について考慮するつもりはないかどうか、お尋ねしたいと思います。
  113. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農業関係の相続の問題でございますが、これはなるべく分割しないように経営する、一体として行なうような方向に進んでいきたいと思います。  それから、農地の相続に対しまして、相続税が高いというのがあるかもわかりません。私は普通の農家ですと、そう高い相続税をお納めになる場合が少ないのではないか、五町も十町も持っておれば別でございますが、一般の一町程度のものでそう高いというふうなことはないと思います。しかし、方向といたしましては零細農業方々が相続税を納めるということは、これはいい話ではないので、免税点につきましては、私は今の地価の状況等から免税範囲を広げることは考えていかなくてはならぬと思います。  それから、固定資産税の問題につきましても、これは賃貸価格のときに相当単作地は二毛作と違って、基本の賃貸価格ということで考えておると思いますので、そう不公平はないでのはないかと思っております。何分にも今地方の方になっております。そうしてこの税率なんか大体一律でございますが、ある程度かげんするようになっております。固定資産税につきましてそう不公平がないのじゃないかと思っております。
  114. 千田正

    ○千田正君 もちろん、政府としてはそういう御答弁でありましょうが、かりに、そういう価格において不公平であるというふうなことがあるならば、もちろん是正して下さると思うのですが、この点はよく考えていただきたいという点。  それから、もう一つ総理大臣にお伺いしたいのですが、先般も途中でしり切れトンボになりましたが、今度の所得倍増計画におきまして、十カ年計画の最終年度の貿易において農産物の輸入は大体三千二百億、こういうふうに踏んでおられるようでありますが、この間、聴問会において、特に業種の問題について一番心配しておるのは、農林省の政策によって戦後における開拓農民並びに国営開拓地に入った諸君は酪農に切りかえた。切りかえたところが、どうも最近は飼料その他によって十分な収入が得られない。一方においては他国から酪農製品が入ってくるおそれがある、そういう不安にかられつつ今農作しておるのだが、政府のお考えの十年計画の最終においては、三千二百億というふうな膨大な農産物が国内に入ってくるとするならば、特にそのうちの業種の大宗としていわゆる酪農製品等が入ってくるのではないか、非常にそれをおそれておる。それでただいまの段階においてはどのくらいの農業関係の物資が入ってきておるのか、そのうちの業種において国内において一応競合しないように指導していかなければならないような業種というもののおもなるものは何かという点を明示していただきたいと思うのであります。
  115. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御心配の点はよくわかりますが、今度の一つの、農業基本法制定後における生産指導というものに入っている成長農産物というものについては、でき得る限り国内生産に持っていくわけであります。ただいま御指導の三千何億というものは輸入農産物の数量でありますが、これらは、伸ばそうというものの考えの中にはあまり入っておりません。また今お話になっている酪農製品、これは除いております。なお、こまかい品目別数等につきましては係からお話し申し上げますが、これはあくまでも一応の目安でございまして、さらに法律制定後再検討して堅実なものに組み立てたいと思っております。
  116. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 倍増計画で将来輸入するであろうというものは麦類、それからトウモロコシあるいは大豆、砂糖、その中で大きなものは砂糖、トウモロコシといったようなものでございます。
  117. 千田正

    ○千田正君 そのうちで特に私のお伺いしたいのは、大豆は従来開拓地におけるところの一つの大きな収入の元をなしていた。先年来、今大豆の生産に対しては農林省としては頭を痛めて品評の改良、乾燥とかいろいろな政策をとっておられます。おられますが、十分外国品と太刀打ちができない。太刀打ちはできないが、あれをまた除いては、開拓農民はやりきれないのでありまして、これはやはり農林政策のうちで、特にそういう問題が、外国から入るものと競合するものには保護政策をとっていただきたい。  次にお尋ねしますのは、総理大臣にお伺いしますが、今自由貿易についていろいろ農産物について聞きました。しかし、東南アジア及び豪州あるいはニュージーランド等の日本を取り巻くところの周辺の国との間の貿易が将来伸展するとするならば、相当これは農産物の貿易というものが貿易の重点になるのではないか。日本においては或る程度繊維品であるとか、鉄鋼品であるとかを出す一つの対象としてアジア、アフリカのような後進国もありましょうが、また酪農等においては、世界一、二を争うような豪州とかニュージーランドというような、そういうところとの貿易が今後伸展することにつれて、やはり農産物その他のものを買い付けなければ日本の商品を買い入れないというような貿易上の問題、ガット加入をめぐってのいろいろな問願等があるのでありますが、そういう点には何ら危惧する必要なく、今農林大臣のをっしゃったような、国内においては保護政策を十分とり得ると、こういう点は間違いないのでございましょうか。
  118. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 東南アジアの開発につきまして、お話しのように第一次産品につきましての交流をはかることが私はもういたし方のない。しかし第一次産品におきましても、いろいろ工業原料もあります、食糧もございます。私は工業原料につきましては、先進国との間の交流ははかり得られます。そうして食糧の点になりますと、わが国におきましては、御承知の通りもう米は自給できる程度に至った。そうしますと、食糧の問題は東南アジアだけで解決するようにしなければならない。こういう問題になりますと、東南アジア自体で食糧の余っているところと足りないところとある。だから私は、いつかライス・バンクというものを考えた。日本に持ってくるよりも、過剰の国から不足の国に持っていって、そうして民度の上がるようにしたらいい、私はこういうような方向で今後考えていかなければならぬ問題だと思う。だから、食糧の東南アジアにおける増産は、東南アジア自体でまかない得るのではないか。それからまた、飼料その他につきましては、わが国としては地形上そう飼料をたくさんふやすわけにはいきませんから、こういう面につきましてトウモロコシとか、ああいう飼料関係のものを東南アジアから入れる。今必ずしも東南アジアばかりではございませんが、そういうことを努めて、低開発国との交流につきまして、食糧、食糧以外のもの、飼料等々に、もっときめのこまかいことで東南アジアの開発をしていく。で、彼らは十分食糧が足りているわけじゃございません。民度を上げることによって、東南アジア内での有無相通ずるという方向でやっていくべきじゃないかと考えておるのでございます。
  119. 千田正

    ○千田正君 これは農林大臣にお伺いする方がいいかもしれませんが、今度のいわゆる農地の獲得の問題について、非常に、何といいますか、土地を持たない農民の人たちが心配しているのは、いわゆる小作をやっておる人たちが心配をしておることは、法人化によって、どうも自分らの権利が失われるのじゃないか、力が失われるのじゃないかということと、もう一つは、たとえば不在地主等が持っている土地は農協に委託して、農協にまかせる。そうすると、農協は、今まで自分らが作っていたのだが、ほかのもっと優秀なにない手の方にその土地を貸し付けるのじゃないか、現実に自分らが作っておるところが手から離れていって、自分は所有主じゃないのだから、その土地がよそへ回るのじゃないか、こういうような危惧を持っておる点があるのですね。法人化並びに土地の委託というようなことに対しては、もっと明確にお答えをいただいた方が、私は、農民諸君にお話しするときでもはっきりするのじゃないかと思いますが、その点はどうなんですか。
  120. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) その点は、私どもは、法人化というものをやって、個人の所有をためさせるということを促進するとか、あるいはそれを積極的にということは今言っておらない。あくまでも、やはり、家族経営で自立農家を作ることが目的だ。しかし家族経営といたしましても、御指摘のように、小さい面積を作っておる人もありましょう。それだけではいけませんので、その人たちが土地を獲得するについて、今日までも、一ぺんにたくさんの土地を獲得するのじゃなくして、一反ずつくらい、増反といいますか、買い増しをする。そういう形でいっておるということに対しては今までも助成に努力してきましたが、そういうことなんかも助けるために、今土地を離れてよそへ行くが、急いでこれを売るということになると、売る方もなかなか買い手が見つからぬ。それを信託的に農協に預けておいて、そうして適当な、そういう買いたいという人に分けて売る、あるいは、まとめて売るというようなことをさせる。ある場合にはそれを使わせて、使用権の設定をさせておいて、買い手を待つというような方法、いろいろ農村内の事情に即した形で適正な方向をとらせることについては、やはり農業者の団体である農業協同組合がいいという形をこしらえようと思っておるわけであります。むしろ、そういう心配の方は、小さい農家にも内容をよく御存じをいただけば安心をしていただけるし、もっとこれを活用してもらいたい、こういうふうに思うのであります。
  121. 千田正

    ○千田正君 農村におけるところの青年諸君がどんどん中央に出てくる。農村のにない手が年寄りやあるいは婦人にかわってきつつある。一番、農村におるところの青年諸君として困ることは、嫁に来る人がなくなりつつある。だから、自分らも、農村に残っていても希望が持てないのだ。こういうことを最近盛んに言い出しております。そうして農業高等学校のようなところには、定員さえも入ってこない。そういうわけで農村に残って、政府考えるようにやる、ほんとうに専業農家としての中堅をになうような青年諸君が農村にはもう残っていないのだ。農業高校学校を出ていても、どうしても農村に残れというても残る者がわずかしかなくて、ほとんど大部分は都会へ、都会へと出て行く。そうなると、せっかく政府農業基本法を作りまして、専業農家の優秀な者に農業の真髄を伝えようという、この基本法の効果がはたして上がるかどうか。こういう点からいいますと、やはり農村の教育というもの、そうしておくれておるところの社会教育その他関連しまして、総合的な、農村に残ってもわれわれは希望を生かしていけるのだ、生命を農村にかけるのだというような、そうした気魄を持たせるような教育が同時に進まなかったならば、農業基本法が効果が十分に達成せられないじゃないか、こう思いますが、農業及び農村におけるところの教育、その点に対して特段に力を注いでもらいたいと思いますが、総理大臣としては、この問題について、どうお考えになりますか。
  122. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 全く同感でございまして、そういう事態に対処するために農業基本法を設け、そうしてこれと関連して農村関係の教育、社会教育その他全般にわたって根本的な強烈な施策をしていこうということがわれわれの考えであるのであります。
  123. 千田正

    ○千田正君 最後に一点だけお尋ねします。先般来、これが聴問会等におきましても、どの陳述者も一せいに言う二つの問題がここにあります。それには農業災害補償法を改正してもらいたい。そうして農民の負担が現在のやり方においては相当荷が重い。そうでなく、もう少し国のあたたかい手で、農業災害等に対する補償の問題は考えていただきたい、こういう問題です。もう一つは、この前もお尋ねいたしましたが、農業近代化資金の利子が高い。七分五厘という利子では、とうてい農民が背負い切れない。どうしても五分以下にして、三十年ないし四十年という長期資金を出してもらうのでなければ、せっかく名案であっても、画龍点睛を欠くのおそれがある。ほかの産業に対しては五分以下で出しておる政府の低利資金もあるはずである。農民がこの際特にお願いしたいのは、この利子の五分以下ということと、長期貸付という点について政府として考えを新たにしてもらいたい、こういう希望が聴問会の席上で、いずれも農民の声としての結論として出されておりますが、これに対しては、総理大臣並びに農林大臣から、どうお考えになりますか、お伺いいたしたい。
  124. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 農業災害補償につきましては、法案の御審議を願って、よほど改善されたと思います。それから金利につきましても、大勢は低金利の方に向かっていっております。特に今後農業の根本的改革をやっていこうという点につきましては、できるだけ金利の低い方が望ましいのであります。政府といたしましても、事態に応じて善処する考えでおります。
  125. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 農業災害補償制度につきましては、少しおくれまして、まことに恐縮でありますが、提案をいたしたのでありますが、この内容といたしましては、もう農業者の今までの御不満の点、あるいは希望の点を大部分取り入れて法案を作っております。従って、負担が重いということでありますが、掛金のみならず、賦課金ですね、そういうものについては、今度は事務費、人件費等、国の全額負担になっております。またせっかくかけても、もらう共済金がえらい少ないということがありますが、今度の制度では倍額に近く引き上げることになっております。また、常に今までは連合会が中心になっておりましたけれども、通常災害におきましては単位町村が中心になりまして、掛金というものはどういう形で動いておるか、どういう形で残されておるかというようなこともはっきりわかるようになると同時に、町村単位の共済組合が全責任を持つというような形をとっております。また従来多くの方が一律に強制加入というようなものになっておりましたが、今度はこれはある程度任意加入の範囲を広げましたし、ことにそれは保険の対象となるべき災害のものについても、これを自由に選択ができるような形にするとかいうような点、十分ほとんど希望をいれて作ったのであります。ただ、建物共済をどうするかという問題が残っております。これは近く九月ごろまでに農林省の中におきましては懇談会を置きたい、建物共済の一元化に関する懇談会を作りまして成案を得たい、こうなりますと大体皆さんの希望がいれられるのじゃなかろうかと考えております。おくれましたけれども、提案御審議を願いたいと思っております。
  126. 森八三一

    ○森八三一君 時間がありませんので、端的に二、三お尋ねをいたしたいと思います。  この法律関係農業従事者が一番関心を寄せている問題は、何と申しましても価格政策価格安定の問題だろうと思うのです。この委員会審議を始めましてから、この問題は毎日のように質疑が繰り返されておるということから見ましても、この問題が一番重要であるということがうかがえると思うわけであります。きょう午前中亀田委員質問に対しまして、他の産業者と農業従事者の所得を均衡せしめるというような表現をいたしておりますることは同一水準にまで持ってゆくということと考えてよろしいという総理の御答弁、それから長期見通しに立ちまして選択的な拡大の方向を取り進めてゆくが、その場合に動いておる経済のことでありまするから、その見通しは蹉秩を生ずるような場合がないとは保障し得ない、そういうような場合に関係農民の諸君に不測の損害を与えることがあってはならぬので、そういうような場合には善処をするということは、法律の明文がなくても政府としては当然なことであるというような相当明確なお答えがありました。私も具体的な取り運びの対策といたしましては、そういう趣旨をひっくるめますれば、重要農産物に対する価格の安定についての具体的な対策としては、いわゆる生産費・所得補償方式をとるべきである、こう思いますが、このことはまた議論になりますので、並行線になりますのできょうは申し上げません。そこで具体的にお伺いしたいことは、そういうように非常に明確にお答えは願っておりまするが、現に政府のおやりになっておる具体的な農政の動きを見ておりますると、農民諸君が非常に心配をしておると思うのです。そういう心配がこの価格政策についていろいろと疑惑を生んだり、心配をもたらしておると思う。その一例は大麦の対策の問題です。これは現在は食糧管理法によって律せられておるわけでありますが、そういう法律の明文がございますので、農民諸君といたしましては、昨年の十月なり十一月にまきつけをしたというのが事実であります。ところが、そういうまきつけをして、当然現在生きておる法律によって措置されるであろうと思っておりましたところへ、その後別の対策が講ぜられる、そのことが農民所得については非常な影響を持ってくる、こういうことが現実の問題として起きておる。それからこれは農業には面接関係ございませんけれども、最近韓国のノリを一億枚輸入を決定されたということであります。現に今年の国内における生産事情は約四十億枚の生産ができるという見通しである。国内の消費を考えましても五億枚程度は現に過剰のストックがある、そのために生産価格は昨年の同期に比べまして三割五分から四〇%近く下がっておる。ただ流通機構が非常に不完全でありますために、消費者価格は下がっておらぬ、これが現実であります。そういうように生産が非常にふえて過剰滞貨があるというときに、なおかつ不必要なものを輸入をするということが具体的に措置されておる。こういう現実を見ますると、いろいろ御答弁をちょうだいいたしましても、農民としては非常に心配だ、こういう感じを持つと思うんです。これらの一連のものを考えまして、この価格安定対策の具体的な取り運びについては、どうおやりになるのか、どうされるのか。ほんとうにこれは真剣な問題だと思いますので、具体的にお答えをいただきたい、こう思うのであります。
  127. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 御心配の点よくわかりますが、私どもそれがゆえに真剣に取り組んでおるわけであります。ことに私は大、裸につきましては、議論の余地のないほど農家方々もこのまま生産を続けてゆくことはどうかということは、皆さんよく了解していただいております。と申しますことは、食糧としての需要がここ三年ばかり減るばかりです。その減るというものに対してやはり需要が伸びる、作れば売れるという、これは自由ですね、売れるというものを作っていただいて利益を上げてもらうという形に持ってゆくことが、これがほんとうに親切な農政だと思うんです。ただ売れなくても作って、それは政府が全部買い上げてくれるからいいんだという考え方は、やはり農政のほんとうの親切な行き方でない、こう思います。そこでここに大、裸の作付転換ということがはなはだ大きな問題ですが、取り上げたわけです。従ってやはり経過的にはこれを保護し、損にならぬようにできるだけやってゆくけれども、やはり将来に向かってはだんだん減らしていただく、そうして売れるものを作っていただく、さらにもちろん大、裸につきましても食糧としての需要以外に他の方面への、たとえばもっと有効な飼料への転換ということができればそれいい。しかし飼料として売る場合には、食糧としてかって売られたよりも価格が安い。これも価格政策によって売れても売れぬでも高い価格で買うということにしておくということはかえって不親切で、そのものを価格が高いから作ろう、しかしそれは売れない、それなら国家が損をして買えばいいじゃないかということになると、私は農政の行き方でないと思う。そういうように思うので転換されたわけです。要は昨年の秋に植えつけた麦というものは、そういうこともまだ出てこないときに植えたんだから、その生産される三十六年産の大、裸について特別な措置考えたらということならばよくわかるんです。今度方向の転換はございますけれども、三十六年夏に生産される大、裸についての措置は特に考慮して考えておるわけであります。  それから第二点の韓国ノリの問題でありますが、これは私ども非常に心配をいたしておりますが、この今日における国内の生産者のノリ価格の下落というものは、これはまことに所得倍増どころじゃない、実はわれわれも非常に驚いておるのでありますが、この二カ年の間に五割強の増産であります、大体去年にして十三億枚の増であります。そういう事柄に対して私どもは遺憾の点は、やはり増産されたものの販売の体制をどうするか、どうもかなりおくれた販売体制をとっておりますね、取引を個々に結んでやる、むしろこれは大阪市場なり東京市場なり進出してせり売りして売るような体制をとったらどうかというその辺も、取引関係におきましても考えさしておりますし、ともかくもできたとすれば、これを流通過程から締め出しておいて保管するについて必要な低利資金等も世話しようというようなことをやってゆくということが一つ。そうしてある程度価格は消費者価格というものが現実に低くなるのが当然だと思うが、なぜならないのかということを、私どもいろいろ検討させておるんですけれども、ある程度下げるということが原料が下がっておるとすれば、これを下げさせて消費をふやすということが、これに対処する大きな道だと思います。これらの点について急激にふえたものですから、ちょっと手が回らなかったというのが、ざっくばらんな現在の状態だと思います。これらのものにつきましては、国内のノリについても当然やらなければならぬ問題でありましたので、これは韓国ノリの一億の数に影響あるなしにかかわらず、当然国内の生産数量の増によって起こった問題であります。だからこの際において一枚も入れなければいいじゃないかという議論になりますが、これは国際関係の問題があります。従来参議院でも御決議をいただいておりまして、大体一億枚の範囲内ということでありますので、いろいろ要望はありますが、一応この数字の通りにしておく。しかし、これは内地のノリを含めて生産販売の機構、取引機構、消費者に対する需要の増というものをはかるにたる各種の施策を講じた後において、必要ならばそれ以上考えてもいいが、一応国際間のことを考えつつ一億枚以上は買わないというような形の処置をとろうとしておるわけであまりす。
  128. 森八三一

    ○森八三一君 今の農林大臣お答えでは、私は農民諸君の不安を満足させるわけにはいかぬと思うのです。と申しますのは私も消費のないものを作って、政府に買ってちょうだいというようなむちゃを申し上げておるのではないのです。現に存在しておる法律に準拠して、まきつけてしまったあとで、そのものの措置を別途に考えよう、そのことが農民経済に非常に損害を与えるというようなことがあってはならない。三十七年産をおっしゃるならわかるんです。三十六年産はすでに対策の出る前にまきつけてしまったんですから、そういうものをおやりになると、今後選択的拡大だとか、長期見通しだとかずっとお述べになっても、その方針に従ってやった次から次へと別途の対策が出てくるということでは、これは安心しておれない取り組んでいけないというところに問題がある。ですから大麦の対策については三十七年度からやる、三十六年度はもうすでに済んだことだから、現行の食管法によってやっていく、こうはっきりおっしゃるなら何も私は申し上げることないんです。  それから韓国ノリにいたしましても、貿易の自由化にこれは関連している問題なんですね。ですから外交上の心要だとか、あるいは国産品の輸出を伸ばすために、一部のものを輸入するというならわかるんです。そのことがいかぬということじゃなしに四十億もとれて、そうして生産価格は四割から下がっておるというときに、過剰の五億枚もあるところへ、またその生産価格を引き下げるような、悪影響をもたらす一億も入れるということはおかしいんじゃないか。入れるならそれに対する国内生産者に何らかの施策を講ずるという対策があってしかるべきじゃないか。それなしにおやりになるというと、今後他の農産物についても外交上の必要だとか、あるいは貿易伸展上の必要だといって輸入をしては、そのしわ寄せが農民にかかってしまう。これではたまったものではない、そこに問題があるんですから。  私は大、裸の問題にいたしましても、今度の対策がいかぬというのじゃないんです。三十六年度はそういう対策のワクの外において、三十七年からこうするとおっしゃるなら、これからまかれるんですからこれははっきりする。そういうように親切なことをやってもらわぬと困る。  韓国ノリの問題にいたしましても、お入れになるならいいんです、いいが現に四割も下がっておるんですからこれは大臣問題です。その上またそれに拍車を加えるようなことは、不必要なものを輸入する必要はないんじゃないか。もし外交上必要であるとすれば、それに対する漁民の不利を穴埋めする対策というものが、並行的にとられて初めて親切な行政ということになるんじゃないか。それがちぐはぐになっているから、基本法ができて一体どうなるか。貿易自由化かってにやってしまった、安定対策といっても次から次へと不安定対策になってしまうんじゃないか、こういう心配があるので、それをそうはなりませんぞと言ってはっきりしていただけばいい、こういうことなんです。
  129. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 大、裸については、ただいま私が申し上げたわけであります。三十五年まきつけの三十六年夏作の大、裸については、別の処置を考えるがよろしい、これはあなたのお話によれば、食管法をかえなくてもいいとおっしゃるのかもしれない。しかし三十七年産の麦、この秋の麦の対策を進めますについても、やはり別途にあらかじめ早く制定しておかなければいけません。そういう問題は、奨励金とあわせていろいろなことを書きたいので、食管法の中には書きにくいのです。そこであれを抜き出して、三十七年大、裸に対処するものをきょうからこの国会で制定さしておかないと、この秋のまきつけ前の指導ができないということです。その際におきまして、三十六年夏産の大、裸をどうするかということも、あちらの方で規定したわけでありまして、これについては十分考慮して参るつもりであります。  それからノリにつきましては、御心配の点は、私も今申しました通り、これはただ韓国ノリの問題だけでなくて、すでに五億も貯蔵されている問題も頭に入れつつ、対策を今具体的に立てさしております。
  130. 森八三一

    ○森八三一君 そうしますと、三十五年にまきつけました三十六年産の大、裸麦につきましては、その措置は従来の食管法によってやる、三十七年からあらためて臨時措置法を発動するんだ、こういうように私は了承していいような御答弁のように伺ったのです。もしそうでないとするならば、それはやはりおかしいということになる。それから韓国ノリの問題につきましては、これは何も基本法の直接の問題でございませんから、貿易自由化に関連して、心配している一例として申し上げましたので、含めてその善後措置考えていただけるということでありますれば、それはけっこうだと思いますが、大麦の問題はそれでよろしゅうございますか。
  131. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) この点は大、裸麦がすぐ、法制の御審議をいずれいただくわけになって参りますが、この点に関しましても、的確に作付転換ということは、去年言い出しておらぬようですけれども、法制的にはどうか知りませんけれども、指導をして、現下の状況下における大、裸の消費減ということは、これは考えて、一体どうするかということについて、ある程度の実際的の指導をしているわけです。そこでそれをやっておりましても、それは隠れた問題であります。法制を制定いたしますについても、十分考慮しておりまするが、ただいつまでも同じ型でいかないでもいいんではないか。多少の差をつけておりますような条文になっております。いずれ御審議をいただきたいと思います。私どもはその点はやはり一面には政府も努力するけれども、やはりこういう問題については、農家の方の深い理解の上に協力を得ていかなければ、全部政府にまかせて、一たんこうきめたら全部それは政府施策でまかなわれるべきものだという考え方の上に立脚してやって参りますと、これは誤りを生ずると思うのであります。これは十分の理解を求めつつ参りたいと思っております。  それから韓国ノリについては、今私から申し上げたように、十分これは考えて参りたいと思います。
  132. 森八三一

    ○森八三一君 くどくどは申し上げませんが、三十六年産の大、裸麦については、これは私はいろいろ消費の減退等が予見されておりましたから、農民といたしましても、相当これは作付面積は減っていると思います。その上追い打ちをかけるような価格上の対策というものがあってはならぬ、三十七年度からである、これはいずれ法案の審査で十分申し上げますが、この点は十分一つ善処を願いませんというと、基本法全体について農民がまた非常な不安を持つと思いますので、御考慮を願いたいと思います。  それから総理一つお伺いしたいのですが、本法が制定されるという、動き出すということになりますると、何と申しましても農業経営が近代化、合理化しなければならぬ。それには農業教育というものは、非常に重き使命を持っていく。先刻総理からその通りだという、千田委員の御質問お答えがありましたが、その場合に現在の教育の制度というものが、非常に型にはまった画一的な、形式的なものではないかと思うのです。ですから、高等学校なら高等学校を卒業して、二年間なら二年間うちで実際百姓をやった、その人が今度大学へ入りたいというような場合には、一般の課程じゃなしに、その大学の内部における専門的な部分だけを学ぶというような、特別な一つの制度というものを開くべきじゃないか。あるいは高等学校の場合におきましても、中学校卒業して、うちで二年、三年やっておった。その人が今度高等学校入るという場合にも、そういう道を開いてやって、三年なり四年なり、やはり一定期間くぎづけの教育をやる、そこでは直接農業経営に必要じゃない仕事までも全部教わるということじゃなしに、必要とする部分だけを学び得るような課程というものを作ってあげるということが、ほんとうに有為な青少年が農業経営に直接占めていくというためには、一番ふさわしい問題だろうと思いますが、現在の教育制度が画一的になっておりますので、そういうことが非常に困難だと思うのです。そういう道をお開きになる必要があると思うが、いかがでございましょう。
  133. 池田勇人

    国務大臣池田勇人君) 教育というものが、産業経済の実態に沿うようにマッチしていかなければならないということは当然のことだと思います。私は森さんのお考えまことに適切でありまして、今後そういうふうな方向で進んでいくべきだと思います。
  134. 森八三一

    ○森八三一君 最後に、いろいろ団体の問題が法律に出ておりますが、いかにも農村の内部には法律に基づきます団体法律に基づきません団体、きわめて乱雑に簇生をしておると思うのです。それが悪い言葉で言うと、団体の幹部といいますか、ボスといいますか、そういう人のために存在をしておる、と言っては少し言い過ぎかもしれませんけれども、そういうようなことがあって、お互いにほんとうの農民の理解ということでなしに、団体の利己主義的なことで動いているという事実が相当あると思うのです。でございますから、この際、相当思い切った農業団体の整理統合をもう一ぺんやったらどうか。極端に申し上げますならば、協同組合の関係の中央会、あるいは農業会議、委員会、そういうもの、あるいは農災関係の中央の指導機関というものを一つまとめてしまって、ほんとうに農民のよるべき指導機関というものを作るということは、これは一つの例でございますけれども、それまで踏み切っていきませんと、この立法ができましても、また団体側の摩擦で、ああでもない、こうでもないと言って、農民の不利を承知しながら、団体の利益のために争っている、こういうことが絶えない。それが農民の自主的判断によってできたという、形式はそうですけれども、実際はそうではないのです。これは一つ考え願えませんでしょうか。農民団体のほんとうに抜本的な再編成、これが私はほんとうに魂を入れる道だと思うのです。
  135. 周東英雄

    国務大臣(周東英雄君) 私は御趣旨まことにごもっともだと思います。私もかなりこれに対して共鳴する点があるのです。しかし、これはなかなか困難な問題です。相当これは研究をしなければなりませんが、多少時間がかかると思いますが、よく研究いたしたいと思います。
  136. 森八三一

    ○森八三一君 農業基本法全体の運営がなまやさしい問題でないのです。これは非常にむずかしい問題なんで、そのむずかしい問題をやろうといって、ここに宣言されたのですから、その効果を上げるために、むずかしいことに取り組むちゅうちょをされてはならぬと私は思うのです。これはほんとうに一つ私ども十分協力いたしたいと思うのです。取り組んでいただきたいという希望を申し上げまして、総理が二時から御都合がおありだそうですから、質問を終わります。
  137. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) それでは、暫時休憩いたします。    午後二時三分休憩    ————————    午後二時八分開会
  138. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会を再開いたします。  この際、委員の外勤について報告いたします。小林孝平君が辞任、その補欠として、武内五郎君が選任されました。   —————————————
  139. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 休憩前に引き続き、農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、 以上三案を一括議題として、質疑を行ないます。椎名通産大臣が出席しておられます。同大臣に対し御質疑がおありの方は、順次御発言をお願いします。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 議事進行。これはいろんな相当確実なうわさでありますが、何かきょうの委員会の進行の途中で質疑の打ち切りの動議を出す、こういうことを私たち聞いております。委員長もおそらくこれは御存じだろうと思う。はたしてそういうことになっておるのかどうか明らかにしてほしい。先ほどから、開会前から何か少し変な怒号まで飛ばしておるわけですが、農林水産委員会がこの農基法審議を、実にこうむずかしいところをよく話し合いを続けてやってきたと確信をしておる。にもかかわらず一ぺんの正式の相談もなしに質疑の打ち切りを出す、こういうことは私はおかしいと思います。どうしてもそういうことをされるのなら理事会を開いてほしい。それは決裂はするかもしれぬでしょう。理事会も開かないで今までの運営の経過から見て、そういうことは私は許されぬと思う。  それから社会党の方では特にこういう重要法案について、中央公聴会を省略するということは了承できない。これは何回も申し上げてあるはずです。これは途中桜井理事からこういう方式で、どうか、非公式の話がちょっとありましたが、そういうちょっと格好だけつけるという意味じゃなしに、開くのならやはり一日きちっと各党の推薦したものに来てもらってやる、こういうことでなければそれはおかしいのです。だからそういう問題等についても結末をつけないままに、さあやろうさあやろう、こんなことは私はおかしいと思います。だから通産大臣の質疑の途中でそういうことをされるということを私たち知った以上は、こんなことを簡単にああそうですかというわけには、私は今までやってきた理事の良心としてこれはできない。だからすぐそういう事態にあるのなら、委員長としては、結果は別ですよ、理事会を開いてこういう空気になっているのだがどうか、なぜそれが一言野党のわれわれに対して言えないのです。それをやってもらいたい、要求します。
  141. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまの亀田君の御発言に対しては、午前宣言いたしましたように、予定のお方の質疑を行なって、質疑の途中にいろいろの問題があるとは承知しておりません。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 承知しておらぬということですか。それでは通産大臣に対する質問が終わったあとに、理事会をお開きになりますか。私はそういうことを計画されていて、そのときの場所になって、私もこういう性格ですから、そんな変なことをされちゃおかしい。だから通産大臣の質問が終わったあとで理事会をお開きになって、そういう空気があるのならある、われわれに正式にこれは諮ってみて下さい、理事会に。それをあなたはお約束してもらえるのなら一つ質疑に入ってもらったらいいと思う。そこをはっきりしておいて下さい。
  143. 北村暢

    ○北村暢君 議事進行。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 今のやつ、ちょっと委員長はっきりして下さい。
  145. 千田正

    ○千田正君 ただいま社会党亀田理事から議事進行でお尋ねありましたが、私も一言お聞きしたいのです。それは今までの過程におきましては、社会党さんからは一日公聴会を開きたい、こういう要望がありましたが、森委員の試案に基づいて一応の進行をしようじゃないか、こういうお話し合いになっております。その間において社会党の要望もいれて、それなら半日でもいいから公述人を呼んで、あるいは参考人を呼んで話を聞こうじゃないか、この申し入れは自民党の桜井理事から社会党の理事に申し入れた、ところがそれは拒否されたようであります。その後の進行は、理事会においては、今の段階においては、本日通産大臣に対する質問はきょうは終わる、きょうは一応通産大臣の質問は終わるというところまでしかわれわれ理事としては承知しておりませんので、今の亀田理事からの理事会を開いてくれという要求に対して、十分に一つ御相談の上、ここでお答えを願いたいと思います。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 委員長、ちょっとあなたはおかしいですよ。与党の方の理事の顔ばかりごらんになるけれども、あなた国会委員長ですからね。私は何もそんなわからぬ話し申し上げておるつもりはないのですよ。これは当然なことなんですから、そんなこと。私たち相当はっきりしたうわさを聞いていて、黙ってあなたこんなことに応ぜられるわけがないのですから、理事と何か約束されているんですか、与党の理事と。
  147. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) そんな約束はしていない。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 そんならば、ざっくばらんに理事会を開いて相談をかけて下さい、正式に。
  149. 北村暢

    ○北村暢君 委員長、私は亀田理事から意思表示がなされているように、この質疑打ち切りの動議を出して、そして強行する、こういうようなことは私は従来の農林水産委員会ではやっておりませんね。そういうことがわれわれの耳に入るくらいであるから、与党の委員長だって知らないとは言っておりますけれども、私は知らないでは済まされない。従ってあなたが知らないというんだったら、委員長としてそれじゃこの通産大臣の質問をやっている間に質疑打ち切りなんということはやらないのだ。その後において理事会等において議事の取り扱いについて協議をするということをはっきり言っていただきたいと思う。これはそういうことを聞いたからには、私どもとしてもわざわざ混乱させるためにそういうことをやるべきでないと思うのです私は。それに私たちが今までの経過からいって、理事会で話してきたことに、それは与野党であるから話つかないこともあるでしょう。あってもそれは話がつかないなりにおいて、その後においての処置というものについてお互いにあるでしょうから、その後の処置についても、私どもはやはり良識をもって対処したい。努力するつもりは十分持っているわけなんです。ですから、もしそういう意図があるということがわかっておられるなら……。わかっておられないということですから、一つ自民党さんの方にも確かめていただいて、そうして、そういうことは、非礼なことはやらない。こういうことで了解が成立するならばやってもいい。ただ問題は、私はそればかりでなしに、今両党間の責任者の話し合いでもって全部ストップしている。そうして、やっておるのは建設委員会だけで、これは参考人を呼んでいるから例外的にやっている。こういう状態にある中で、この委員会が継続されている、このこと自体についても私は問題があると思うのですけれども、それはこの農林水産委員会に関する限りそのことがわからないでやっておったというから、それならば、まあこれはわからないものを、わかれったってしょうがないのだから、これは開かれているようですから、開かれておるならば、それならば一つ私はこのことをはっきりさしてから、いずれやるにしても、やらないにしてもきめていただきたい。私は決してむちゃなわけのわからないことはしないというつもりでおりますから、どうですか。
  150. 千田正

    ○千田正君 議事進行。速記をとめて、今通産大臣の質問に入る前に話し合いをするかどうか、一応あれしたらどうですか、円満にやって下さい。
  151. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  152. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記をつけて。
  153. 森八三一

    ○森八三一君 先刻亀田委員の御発言もごもっともと思いますので、通産大臣に対する質疑が終わりましたら、休憩をして、直ちに理事会を開くようお運びを願いたいと思います。
  154. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまの森君の動議に御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  155. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) それではさよう決定しました。   —————————————
  156. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) それでは、質疑をしていただくことにいたします。
  157. 東隆

    ○東隆君 私は通産大臣に質問をいたしますが、農業基本法によって、農業従事者の生活あるいは所得を他産業の従事者と均衡のとれるようにするためには、私は農業者は単なる原料の生産者になってはならないと思うわけであります。従ってこれを共同の力によって販売をする、あるいは加工をする、また農業生産資材を購入するにしても、私は、農業従事者の協同の組織を活用することによって、所期の目的を達することができると、このように考えるわけであります。従って、この問題は非常に強く主張をされておる、農業基本法を中心にして質問をいたしましても、この点については非常に力強くこれを支持するような答弁もいただいておるわけです。ところが、農業協同組合によるところの販売また購売事業、こういうようなものが、これは通産大臣の管下にあるところの商工業者との販売あるいは購買事業、そういうようなものと非常に似通っているのでありますが、非常に反発をするおそれが多分にあるわけであります。私は将来ますます反発をするおそれがあるのでないか、こんなような予想もいたします。従ってこの際、通産大臣は、この協同組合による販売、購買の事業、また購買加工あるいは加工販売、これとの関連等において、どういうようなお考えをお持ちであるか、私はこの際お聞きいたしたいのであります。
  158. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 農村の共同事業として、農業協同組合が農産物の共同販売、あるいはまた農業に必要な資材の共同購入をやっておられることは、これは長い間のしきたりでございまして、もはやきわめて定型化した事柄であるとわれわれは考えているのであります。ただその間に、一般の通産省所管の中小商業者との関係において、間々利害の相反するような事態も起こるということがあるのでありますが、そういったような問題の調整に関しましては、その具体的な問題について個別的に調整解決をして参っておるのでありますが、今後におきましても、従来のやりきたりと同じように具体的な事態に即して問題の解決をはかって参りたい、かように考えておる次第であります。
  159. 東隆

    ○東隆君 協同組合による購売あるいは販売事業、これと商業者による販売事業、これは私は主体は非常に違っておりますけれども、一つの商行為と、こういうふうに見ても差しつかえないと思います。従って、広義の意味で通産大臣は協同組合がやるところの販売事業、あるいは購売事業も自分の領域の仕事だと、こういうふうなお考えをお持ちになることはできませんか。
  160. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そうは考えておりません。農業協同組合の行なわれる商行為、この問題はあくまでこれは所管を異にしたものである、こう考えております。
  161. 東隆

    ○東隆君 私は通産大臣がお考えになっておるのは、少し偏狭なお考えでないかと思う。そういうような立場でお仕事をされると、協同組合がやるような仕事に対して圧迫をするとか、あるいはチェックをすとか、そういうような態度が出てくるのじゃないかと思う。それでたとえば貿易を中心にして輸出の協同組合がある、その他いろいろな中小企業者等の協同組合ができておる、そういうようなものは、これはみんな同じ協同組合の概念で考うべきものであります。それらの協同組合自体は利潤の追求をやらないのです。あくまでそれの構成員の利益のために協同組合を作っておるはずであります。従ってそれがやるところの仕事に対して、商業あるいは貿易の方面は自分の管轄であるけれども、農業協同組合がやるところの商行為は、これは自分の関係していないことだと、こういうふうになりますると、農産物を最後まで、輸出までやろうと、こういう考え方を持っておるところの農民はどういうことになるかというと、最後の貿易の場合においても通産大臣は、これは農業協同組合の系統によって貿易をするのだから、これは自分たち関係しておるものでないと、こう言って排除をされるおそれがある。そういうふうになりませんか。従って、農産物にしても、それから農業生産資材にしても、おおよそ配給その他のことに関連をするものは、私は通産大臣はこれは同じ自分たち関係仕事だと、こういうふうにお考えになるのがこれが適正な考え方でないかと、こういうふうに考えるのですが、この点はどうでしょう。
  162. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 実は私は前に商工省の役人をしておりました。そのときに農林省との事務調整をやったのであります。その当時は、何でも商業は商工省という管轄の区分がございました。従って畑でものが実っているうちはこれは農林省、それが一たび商品になる瞬間から通産省の、まあその当時商工省、商工省の所管になる。でありますから、雑穀商も米穀商ももうすべてその所管は商工大臣ということになっておったのであります。それでは、だんだん準戦時体制から戦時体制に移る時期でございましたが、力強く戦時経済というものを掌握して、食糧問題はあくまで農林大臣、こういうふうな行政の力強い責任分野というものが出てこない、こういうことで生産から消費に至るまでこれはもう農林省、そういうふうに所管の調整をいたしたのでございます。ただいまはそういうような大体区分になっておると考えるのでありますが、従いまして、農産物の商業部門をもっぱらつかさどる協同組合のあらゆる協同行為というものは、これはもう当然農林大臣の所管、ただし一般の中小商業の問題、そのものの商売ということを離れて中小商業という一つの形態の行政は依然として通産省にあるものとして現在やっておるわけでございますが、その協同組合の商行為等につきましては、これは農林大臣というふうに私どもは了解しております。ただ輸出の貿易の部面になりますると、これは官制ですでにきまっているように、通産省にすべての海外貿易の事務を統一しておると、こういう関係でこの問題は通産省の通商局に統一しておる、そういう関係から、これはその内容のいかんにかかわらず所管する。しかしながら、やはり依然として農産物の貿易等につきましては、農林大臣と協議形態で行なう、こういう形になっております。
  163. 東隆

    ○東隆君 私は農林省と通産省の所管争いというようなことをほじくり出すつもりはないのでありますけれども、しかし、農業者が自己の生産したものを協同組織を通して販売をし、また必要な農業生産資材を購入をする、これは私は明らかに一つの商行為だろうと思う。ただ、協同組合は協同組合自体が利潤の追求をやらないというだけの話で、その行為は同じ行為だろうと思う。従ってこの全般の商品の移動というようなもの、そういうようなものについて、通産大臣は同じような考え方でもって臨む必要があるんではないか。それで、協同組合がやるのだからおれは知らないのだ、こんなような考え方、あるいはもう少し疎外をするような考え方、そんな考え方になると、私は問題が非常に大きいと思う。これは将来、農業協同組合を中心にして大きく販売の統制であるとか、その他の問題が起きてくると思う。そうすると、事はことごとに通産大臣の管下にある商業者との間の争いになってくるのですから、従って調節をするのに二つの省でもってこれを調節するというのではなくて、そういうようなものはこれは通産省の中でもって調節をする、こういうような考え方の方が私はまとまっているじゃないか、こう考えるのです。この点はどうですか。ことに農業生産資材の方は、これは商人の側から、あるいは生産者の側から逆に農業者の方に流れて農産物の方は逆な形をとっているのですから、この関係は私はきわめて微妙なものがあるので、この関係をそう通産大臣と農林大臣とで分ける、截然と区別をしてやるべき筋合いのものでないと私は考える。ことに今の貿易の問題なんかにしても、貿易だけはこれは自分の方でもってイニシャティブをとってやるのだ、こういうふうなお考えも私は問題があろうと思う。この点何かもう少し割り切った考え方があってしかるべきだと、こう考えるわけでありまして、今までのお答えからでは、どうも将来問題が起きたときには、具体的な問題について調整をするのだという。私どもとすれば、生産者としての農民が自分たちの利益を少しでも多く得るために協同の組織を確保する、その仕事がじゃまをされるというのでは、これは問題だろうと思う。だからこの点は一つ十分お考えになる必要があろうと、こう思いますが、もう一度その点について通産大臣のお考えをお聞きしておきたい。
  164. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) たとえば製薬の事業は厚生大臣が所管しており、製薬会社の監督と、それからまた引き続いて薬事法の行政、これらは厚生大臣の方でやっております。ただ、薬事法が中小商業という一つの形態をとっておる。その中小商業という階層の中に含まれておる関係上、中小商業の行政は通産大臣がやっております。やっておりますけれども、今度は取り扱う者を主として考えて薬品の商売、そういうことになると厚生大臣の方の所管、こういうことになっておるのであります。それと同じように、今農協の問題を離れて米雑穀小売商業者が営んでおる。その米雑穀商という立場においては、あくまで農林大臣の所管に入れておる。それが商売の規模から中小商業者という一つの行政のカテゴリーがあるのであります、これは御存じの通り。それは通産大臣が主管する、こういうことになっておるのであります。で、今協同組合の場合におきましては、その協同組合のすべての監督、組織上の監督はもちろん農林大臣、その中身の問題も農林行政の中に含まれておるのでございまして、これは農林大臣の所管、こう心得ておるのであります。ただ、それが世の中の事象はそう簡単ではございませんで、ときとして通商産業省の所管の問題といろいろ接触あるいは入り乱れることもございます。そういった場合には、両省共管という形でやっておるのでありまして、実際の問題としては、どっちの所管ということにしましても、なかなかむずかしい問題がよく出てくるのであります。たとえばただいまのような区分けに一応従っておきまして、そして何か重要な困難な問題がありますれば、具体的にその問題の解決に両省共同して当たるといったような建前をとってきておる次第であります。
  165. 東隆

    ○東隆君 私はコー・オペラティブの商業、協同組合とそれから利潤を追求する普通の商業者の商業、この二つがこれは将来も非常に起きてくると思います。その際私は協同組合の商業と、それから普通の商業との間でもちろん区別はございますけれども、それを両方お扱いになるのがこれはほんとうじゃないですか、その利潤を追及する方面のものばかりお扱いになるのじゃなくて、利潤を追及しない協同組合によるところの商業、これをやはり広範な範囲でもってお考えになる必要があるんじゃないか、ことに中小企業者等の協同組合の分は通産省の方でお扱いになっておる。そういうような点を考えると、私はもう少し範囲を拡げてお考えになって、そして協同組合によるものを助長するという方が、ほんとうの生産者にとっても、消費者にとっても私はこれが正しいやり方であると、こういうように考えますので、こういう点をやはり大きな目で通産省がみるべきじゃないか、こういうのが私の言い分なんです。こういう点について、今通産大臣のお答えは、あくまで農林省の方に委せる、こういうお考えなんですけれども、私は商業というものは二つあるのだ、こうお考えになって、そうしてそれを通産省の方でお考えになる必要があるんじゃないか、こういうことを言っておるのです。だから通産大臣の管轄する仕事をもう少し広げたらどうかということを言っておるので、このことについてどう考えるかということを聞いておるのです。
  166. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どっちにしましても、割り切れないものが出てくるのです。戦時、食糧の忙しい時代に米の値段が高い、あるいは薬が間に合わぬとか、といったようなことで、畑の方はもう取り扱っておる農林省の方に行って聞くと、おれの方は十分出したつもりだ、そして生産者の値段として仕切った値段はこれだ。あとは消費者の値段はおれの管轄じゃない、向こうに行って聞け、こういったようなふうに、まるで食糧問題というものがぶつ切れになってしまって、どうにもこうにも、これを一貫して取り扱うところの責任大臣がないために、非常などうも混乱をした。物の豊富なときはようございます。だんだんものが不足になってやかましくなると、こういう行政ではとても一日もやっていけるものじゃないというので、事務調整を行ないまして、食糧に関しては一貫して配給まで一省、つまり農林省がこれを掌握する、こういう形にしたのでございます。でありますから、ゴムまりを突くように、こっちを突けば向こうの方がふくらんでくる。向こうを突けばこっちの方がふくらんでくるようなもので、所管の問題はむずかしいのでありありますが、昔のことをわれわれが考えると、今の方が一応整っておるのじゃないか。今は御心配のような点につきましては、また同じ閣僚として十分に協議をいたしまして、一致した行動をとるということにしていったならいいのではないかと、かように考えるわけであります。
  167. 東隆

    ○東隆君 私は通産省の力で協同組合によるところの商業、そういうようなものも一つ含めて、大らかな考え方で協同組合がやるところの仕事、これを助長をしていくじゃまをしないで、じゃまをするようなことがあった場合には、それを押えて、そうして協同組合によるところの商業というものを大きく伸ばしていくような考え方に立つべきでないかと、こういう考え方なんです。これは、私は、通産大臣としても反対をする理由はないと思うんですが、この点はどうですか。
  168. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その点につきましては、全く御同感でございます。やはり農民生産物は、これは個別的に取り扱うと、やっぱり非常に経済上利がありますから、協同組合組織によってこいつを堂々と主張すべき利益は主張して伸ばしていくということは、これはもうそのお考えには全く同感でございます。でございますから、われわれは、所管であるからそれを利害の相反する一般の商人の商行為を特にひいきして、そして農村の協同組合による行為を圧迫しようなんという考え方一つも持っておりませんで、われわれはできるだけそういう点につきましては、正確な認識を持ちまして所管の行政を行なって参りたい、かように考えております。
  169. 千田正

    ○千田正君 委員長、私質問に先だちまして申し上げておきますが、私の質問一つ社会党の諸君も出て質問していただくように慫慂していただきたい。来られましたら、いつでも私やめますから、質問中であってもけっしてさしつかえない。おいでになりましたら社会党にお譲りしますから、どんどん来られるように一つお勧め願いたいと思います。  私の質問は、貿易の自由化の問題並びに所得倍増計画によって、十年後において約三千三百億の農産物を輸入する、こういう政策を池田内閣はとろうというのであります。先般も池田総理大臣並びに周東農林大臣にお尋ねいたしましたが、大体その方向に向かっていくと、こういうお話でありますが、現段階においてどれだけ一体農産物を輸入しておられるのか、それから三千三百億というのは、どういう計画のもとに、そういう倍増計画としましてもどのようなものを主体として十年後に三千三百億ないし三千二百億というような膨大な農産物を入れられるか、この点についてお尋ねいたします。
  170. 山本重信

    説明員(山本重信君) 数字の御質問でございますので、私からお答え申し上げます。所得倍増計画の数字作成につきましては、経済企画庁が中心になりまして作業をされましたので、通産省といたしましては特に必ずしも十分深くタッチをしていなかったのでございますが、簡単にそのときの数字を申し上げてみますと所得倍増計画の策定にあたりましては、基準年次、これは昭和三十一年から三十三年までの平均をとっておりますが、この基準年次の数字に対して、目標年度つまり昭和四十五年度の数字を出しておるわけでございます。農水産物関係につきましてはあまり詳細な内訳はございませんのですが、食糧と農林原材料を合わせまして基準年次で七億八千三百万ドルという数字がございました。それに対して、昭和四十五年度にはそれが十四億三百万ドルという数字になる計画に一応なっております。この増加率は七九%でございまして、基準年次に対して一七九%になる数字になっております。これは、全体の輸入の増加率と比較いたしてみますと、こういうことになります。全体の輸入量は、昭和三十一年から三十三年の平均つまり基準年次の数字が三十一億二千六百万ドルでございまして、それに対して目標年度の数字は九十八億九千百万ドルになっておりまして、その比率は三一六%つまり三倍強になるわけでございます。全体の輸入量が三倍強ふえます中で、農林水産物の比重は下がつて参るわけであります。なお、今申し上げました中の内訳につきましては、これは作業の段階でいろいろな数字が出たようでございますけれども、最終的に幾らというふうに確定した数字は、そこまでの詳細はできておらないようでございます。
  171. 千田正

    ○千田正君 四十五年度には一七九%、約倍近いのでありますが、それで、ちょうど大澤審議官が見えておりまするからお伺いしますが、現在の貿易総額の中に農林水産物がどれだけ占めておるのかということ、輸入ですね。それから十年後における一七九%というものは全日本の農産物の生産額に対して何%に当るか、この点です。そうしてそのうち最も競合する面である、貿易自由化によって入ってくるために農民に与える影響の最も大きい種類は何か。この点を大澤審議官からお答えをいただきたい。
  172. 大澤融

    政府委員(大澤融君) 貿易の中で農林水産物資が占める割合でございますけれども、これは三十四年で一六・六%でございます。それから倍増計画で先ほども予算委員室で申し上げましたところについて申し上げますと、基準年次で三十三年の価格にいたしまして約一八%、これが四十五年、十年後は八%程度になるということでございます。それから、先ほども申し上げましたように四十五年で価格にいたしまして約三千二百億でございますから、国内での農業生産は約二兆二千億ぐらいでございますから、十五%ぐらい、大ざっぱな計算でございますが、程度になる。正確に後ほど計算いたしますが、そんなことになるのじゃないかと思います。
  173. 千田正

    ○千田正君 先ほども総理大臣にお尋ねした点のうちで特に貿易に関して通産大臣にお伺いいたしますが、アジア、アフリカあるいは濠洲、ニュージーランド、こういうふうに日本の最も将来の貿易の対象になる国々から輸入するというものは、大体においてこうした農業生産物だろうと思うのであります。それにこちらから輸出するというものは、いわゆる商工業生産から出てきたもの、こういうもののお取引になると思いますが、この取引において、農林大臣としましては国内の農業というものに対しての圧迫にならないように保護政策をとりたい。たとえば関税の引き上げであるとか、あるいは国内におけるところの物価に対する農業生産物の価格の安定政策であるとか、いろいろな案を農林大臣としては持っておるようでありますが、現実の問題としまして一つの例をあげますと、この間も水産業のうちの浅海漁業者であるところのノリ、カキの漁業者からは韓国のノリを入れてもらっては困る。ああいうものが入るというと、国内におけるところの零細な漁民が苦しい、だからこれをぜひ拒否してもらいたいという陳情が当委員会等に対して猛烈に起きてきておるのであります。ところが、一方においては韓国との間に国交が回復し、そしてその裏づけとして貿易する場合においては、やむを得ずとにかく韓国のノリを入れなければならないのじゃないか、これは通産省の見解のようであります。そのような国の政策の上において、一方においては保護政策をとらなくちゃならない、一方においては輸出振興というような一つの政策をとっていかなくちゃならない、あるいは外交というような手段に訴えなければならない、いろいろな問題が錯綜してきておる間に予盾が生じてくるおそれがあるのでありますが、将来の倍増計画に伴うところの貿易自由化と国内の農業生産というものに対して矛盾が生じないというふうに通産大臣はお考えでありますかどうか。あるいはそれに対して十分なる対策を具体的にお持ちであるかどうかという点についてお尋ねいたします。
  174. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御指摘の通り国際的にあるいは外交の面あるいは経済外交の面から自由化が迫られておる。しかし、国内産業の育成という点からいうと、もし自由化すればたちまち海外からの輸入品によって国内の産業というものがほとんど窒息状態になる、こういったような予盾は相当にわれわれは予見されるのでございます。ことに問題の多いのは原始産業、すなわち農産物、それから鉱産物の一部、そういうものに非常に感ぜられるのでありますが、さてこれに対してどういうふうな対策を立てるかということでございます。一方貿易の自由化をしてそうして国際経済にどんどん乗り出して規模を拡大するという必要性もあるし、また、そのためには、外国の製品に対していつまでも門戸を閉ざしておるというわけにはいかぬ、こういう状況でございますが、そうかといって国内の産業をみすみす犠牲にするというわけには参りません。あるいは関税政策をとり、あるいはその他の方法によって、当該産業の国際競争力というものを十分につけて、そうしてこれならば大丈夫というところで、初めて自由化するという手順を考えざるを得ないのでございます。しかしこちらの都合のいいことばかりをはたして選べるかどうかということに、これはよほど問題でございますけれども、しかし、大体において農産物などは先進国であろうと、後進国であろうと、これは多分に人為的な問題を越えたところにいろいろな条件が、天然の条件が働くのでございますから、簡単にどの国でもこれを開放するということではないようであります。従って、農産物等につきましては、できるだけ国際的な了解を得て、そうして十分にこれに耐えるというときまでは自由化しない、しかも便々として長引かせるわけにはいきませんから、できるだけ早くこの種の強化策、体質改善を行なって、そうしてその完成したものから自由化するという方針で参りたいと思うのであります。
  175. 千田正

    ○千田正君 私はこれで、もう一問だけお伺いしてやめますが、たとえば農産物のうちで生糸のような問題は、先般国際市場におけるところの価格の変動によって国内の生産が相当抑圧されまして、そうして桑園等は一応圧縮された。圧縮されたとたんに今度は生糸の値段が上がり繭の値段が上がるこういうふうに国際市場の影響をしょっちゅう受けて農民がびくびくしながら、安定した営農をやっていけない。こういうことが過去にあったのでありますが、今後やはり貿易をやるという面においては十分に国内の産業との接触する面において、ただもうければいいのだという意味ではなしに、日本の国力の充実を考えて、通産大臣にしましても十分に農林大臣との間に問題の調整をやっていっていただきたい。この点を要望いたしまして、社会党の諸君がすみやかに御出席いただいて、運営が円滑にいきますよう委員長にお願いして、一応私はこれで質問を終わりたいと思います。
  176. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記をとめて。    〔速記中止〕
  177. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記をつけて。通産大臣は三時半までであったのでありますが、特別に四時までお願いしておきましたから、四時には終了するようにお願いいたします。
  178. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 通産大臣にお聞きしたいのですけれども、私はすわったままでやりますから答弁もすわったままでけっこうでございます。  実は、農業基本法が制定されるということで、選挙中与党側の候補者は、結局この問題に対してはよく農村において、農村からはみ出るところの農民にとっては就職の先といたしまして工場を地方へ分散させるからということで、相当選挙民から関心を得ておるわけなんです。ところが、今日の地方へ工場を分散しておる姿というのはきわめて無統制であって、非常に地方の農民はそういう分散によって被害を受けておるわけなんです。特にそういうことのために非常に農耕地が転用されておるということで非常な暴騰を来たしておる。あるいはまた、工場が分散いたしましても、そこに働く人たちの労働賃金というものはきわめて低い、悪い条件にあるという姿があるわけなんです。こういうような状態だというと、現在非常に収入が少ない、農村の人たちが、そちらの方におそらく就職いたしましても、非常に賃金が安いために、少しも生活が向上しないというような現象が非常にあるわけなんです。そういうことになりますというと、単に農村からはみ出た人たちがそこに就職いたしましても、結局それは都市と農村におけるところの所得を均衡するゆえんにもならないし、生活を向上するゆえんにもならないという形があちらこちらに見られる。こういうようなことであっては、何らそこに農村に対するところの振興策、特に農民に対するところのいわゆる生活向上の対策にはならない。こういう点があるわけなんですけれども、この点についてどういうような考えを持っているか、お聞きしたいと思います。
  179. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 地域格差それから農業、非農業格差是正のために、それからまた行き詰まった先進地方の工業地帯の現状を打開するためにも、工場の地方分散はきわめて望ましいのでございます。  それで、いよいよ倍増計画に従って三十六年度からこれを実行しようということになっておりますけれども、ただいまのところ、地方分散計画というものがまだ準備調整中でございまして、その緒についておらない、問題はこれからというのでございます。で、通産省といたしましては、二、三年前から工場の立地調査、その調査を行なっておるのであります。それで、各地方の希望に応じて国から補助を出す、そうして調査項目を提示して、その項目に従って調査をした結果、通産省にその台帳を備えて、そうして地方分散、地方進出の希望者に対して、きわめて貴重な参考資料を提供しておるという状況でありますが、この国会に間に合うかどうか、私は心配しておるのでありますが、自治省、建設省等でも、あるいは地方基幹都市であるとか、いわく何といったようなことで考えておられるようでありますが、当省としては、工業配置計画、地方にいかなる工業をどういうふうに配置するかというような問題を実行に移すという実は腹案を持っておるのでありますが、とにかく問題は今後にあるのでございまして、今お話がございました、無統制のままで地方進出を試みて、そうして勝手に安い賃金で農村の子弟を引きつけるようなことをやっておるというような状況は、計画的に施策が実行されるに従って、さような弊害は是正されるものと考えております。
  180. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 私が心配するのは、この農業基本法、特に政府案が通ったという仮定に立つならば、必然的に自立経営農家を中心にして農業の発展を期待するわけなんですから、当然そこに所得倍増計画見通しからいきましても、いわば離農する人たちが相当出てこなければならぬわけなんで、そういういわゆる離農の対策に対して、現在工場が地方へ分散するということに何か依存しているではないかというようにとられるわけです。とこわが、実際資本主義経済の中で、工場が地方へ分散した際におきましては、もちろんその地方へ行くのは、これは重工業がおそらく石炭そのほかの燃料の関係で分散することはないだろうと思います。おそらく軽工業というようなものが地方へ行くということになる。しかも、そういう工場が行った場合においては、地方へ行けば、その土地で製造して、その土地で消費させられるというもののほかは、また逆に都市を中心とした方の市場へその製造したものが流れてくるということになりますと、非常に通信、運搬費というものに経費を食われてくる。こういうような形で、地方へ工場が進出しても、利潤がないという結果になれば、勢いそこに何を求めるかということになると、労働賃金を非常に安くするか、あるいはまた土地の無償提供を、地方公共団体のあっせんによって、いわゆる工場を誘致すれば、その土地が盛んになるのだというような幻想の中から、いわゆる無償提供のような形で土地を得るか、あるいはまた固定資産税その他に対するところの税の免除を依頼するか、こういういろいろな諸経費を削っていく。特に労働賞金については、農村の今までの低い所得、その所得に対して、それをわずかに上回るか、それと同程度の賃金しか与えていかない。そういうことでないと、工場というものは成り立たない。そういう点から言って、現在におけるところの工場分散というものは、結局農村と都市とのいわゆる所得を均衡させるという意味には少しもなっていないじゃないかと、こういうような現実が現在あるわけです。従って、私はそういうことを心配するからこそ聞くわけなんです。それは、この基本法が、いわゆる中農以下の人たちには、簡潔に言えば、きわめて冷淡な法律になるではないかという危惧感を持っているから、その工場分散の問題と、いわゆる他産業の問題と関連して、私は心配のあまり申し上げたわけなんです。従って、そういう問題については、目下考究中だと言いますけれりも、今後とも十分一つ対処してもらいたいと思うわけなんですが、この点についてもう一度、一つ具体的にお答えいただきたいと思います。
  181. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今、四大工業地帯においても、いろいろまた程度がございますけれども、もう相当行き詰まって、交通、運輸の関係、それから寄宿舎の関係、その他いろいろの問題について行き詰まっておるのでありまして、もし地方に、運輸、交通、通信その他の便益さえあれば、今日の状況から言いますと、少しぐらい中心地を離れても、私は喜んで工場は地方に進出するものと考えております。ただ、現在においては、ごく手軽な工場が地方に行って、今御指摘のような問題をかもしておるものと考えるのであります。しかし、人格的な地方移動というようなことになりますというと、ただ低賃金をねらって云々というようなことは、それはもうきわめて甘過ぎる考えであって、そんなことは相当の工業にとってはほとんど問題にならない。やはり払うべきものは払う、そうしてほんとうに立地条件のいい所に行って、落ちついて工場を経営しようというのでございますから、今の御指摘のような状態は、間々こまかい工場の進出等についてはあるかもしれませんけれども、本的な地方進出計画がもし実行される段階になりますれば、私はそういう問題はほとんど消えてしまうのではないか、かように考えておるわけでございます。問題は、要するに工業のほんとうの基盤を早くどこにそれを建設するかということがかかって問題のかぎである、かように考えておる次第でございます。
  182. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 まあ、工場の分散計画については、十分慎重に今後の計画を立てるということでございますから、またいずれ機会を譲りまして質問することにいたしまして、次にお聞きしたいのは、きのうもちょっと労働大臣にお聞きしたわけなんですけれども、貿易の自由化に対する問題でございますが、通産省の産業関連調査、あるいは通産省の電力中央研究所のいわゆる貿易自由化と産業構造の調査というような問題の報告書によりましても、貿易の自由化によって、相当産業構造に変革を来たして、労働条件が悪化するのではないか、あるいは雇用が不安定になるではないかという予測があるわけなんです。そういうような状況が将来展開されるとしますというと、いわゆる第二次産業あるいは第三次産業に流れるところの農村失業者といいますか、そういう人たちの雇用に重大な影響が出てくるのではないか、こういうように考えますが、もし私の言うようなことが想定されるとするならば、これに対しましての通産省のお考えはどういうように考えておりますか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  183. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 貿易の自由化は、御承知の通り、昨年の六月に計画を立てまして、そして逐次自由化を実行いたしまして、大体まあ三年くらいの間には八割程度は実行する。なお、これに石炭、石油を加えるということになれば九〇%になって、まあこれならば大体国際的にも通るのではないか、こういうふうに考えて、ただいま着々実行して参っております。それで今まで実行したものにつきましては、十分に国際的の競争力も相当出てきておる。また海外の製品が入ってきても、十分にこれをはね返すだけの力を持っておるものが大部分でございますから、問題はなかったのであります。この四月から原綿、原毛を自由化いたしまして、それから鋼材も第一・四半期において完全に自由化するということになっております。ここまではいいとして、その以後においていろいろ問題のあるものがあるのであります。まだ十分に国際競争力が備わっておらない、従って自由化した場合には、外国品との競争に太刀打ちができない。従って、場合によっては倒産するものがあるかもしれない。そうなれば雇用条件の悪化どころじゃない。もうみな離職者が大量に出るというようなことになりかねないものもあるのでございます。でございますから、問題は、目的は自由化のための自由化にあるのではなくて、結局国際貿易の範囲を拡大して日本の繁栄を来たそうというのがわれわれのねらいでありますから、それに反するようなことは、これはもうやめなければならない。しかし、そうかといって、これは国際的なおつき合い上、日本だけが自由化しないで、そして自分の品物は海外に出てあばれほうだい、外国製品には門戸を閉ざして、入ってきてもらっては困る、こういう勝手なことはどうしてもできないのでございますから、とにかく急いで国際競争力をつけ、体質を強化いたしまして、そして自由化の場合に困らないという態勢を急いで作らなければならない、かように考えておるわけでございますから、これだけの用意をもってすれば、貿易自由化、すなわち労働条件の悪化、あるいは雇用低下というようなことにはならない、かように考えております。
  184. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 大臣がおられるのは四時までですから、そのつもりでやって下さい。
  185. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 それでは簡単に。実は大企業のように終身勤務制のあるところだとか、あるいは年功序列型の賃金制のところには、農村の中高年層は、現在も就職できないわけです。あるいはかりに就職しても、臨時工であるとか社外工というようないわゆる境遇にあるわけです。ところが大部分の農村の、そういう現在の営農でも食っていけないような農家のあるじとか、長男とかいうような人たちが、兼業農家としてよそに勤めているのは、大てい中小企業の層が多いわけです。その中小企業の層は、貿易の自由化によっては一番大きな打撃を受けるだろうという見通しがあるわけです。そうするというと、貿易の自由化によって耐え得られるところの大企業はともかくといたしまして、その対抗でき得ないところの中小企業者というものは、あるいは倒産の率、あるいはその他の崩壊の率が非常に多くなってくるというと、今度は今日のいわゆる全体的な雇用条件の中では、農村の人たちが行って就職するという場がない。そういうことになりますというと、農業基本法にうたうところの、いわゆる構造改善というものが、そういう面から大きな破綻が出てくるのではないかということにもなるかもしれない。さらに、将来農村というものには大きな失業者が出てくるのではないかということが想定されるわけなのです。ですから、必ずしも大臣のおっしゃるように、企業は、貿易の自由化についても強化していくから、雇用条件に心配はないのだというような答弁は、私は、大企業については言えるけれども、中小企業については言えないのではないか。そういう影響によって、農村に非常に大きな失業者たちがかえって増大してくるのではないかということが心配されるから、お聞き申し上げたわけでございます。
  186. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一般にそういうふうに考えられているかもしれませんが、中小企業必ずしも自由化はこわくない、大企業必ずしもこわくはない、大企業がむしろいちころでやられるかもしれぬというようなものがなくはない。こういうことを言うと、少し世の中を刺激することになるかもしれませんが、決して企業の大小ではないと思います。それから中小企業については、ある地方に中小企業の金属関係の集団が地方産業としてどうやらこうやら今まで命脈を保っているのがございましたが、部品を作っておるところでございます。最近海外の方からしきりに引き合いがくる、いわゆる日本人が器用で、そうして割合にこれは労働強化というような観念につながるようなものでなしに、賃金が安くていいものができる。それを海外の方で一つ部品を日本の中小企業に注文しようというような傾向がちょいちょい現われてきているのであります。でありますから、必ずしも中小企業が自由化に弱くて、大企業が強いというようなことは、私は一がいに言えないと思うのであります。かなり大企業で、今のような状況に放置しておけば危険なものが相当ございます。
  187. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 この問題はまたあとにいたしますが、今の労働力の切り売りのようなお話があったわけですけれども、そういう形は、戦前のいわゆる日本の産業の特質なんですから、私としては今の答弁では納得できませんが、もう一つ聞きたいのは、いろいろ最近の物価値上げの中で、国鉄運賃が上がってきましたし、予想されるところでは電力が、九州電力は上がりましたが、その他の電力も、東京電力を初め、大体七月ごろから九月ごろには一斉に値上げになるという見通しを聞いております。また、これは原価計算主義でございますから、申請が出ますというと、通産省も認可しなければならないという立場もあるでしょうと思います。電力の値上げというものは、はっきりと当分の間はという言葉政府は使っておりますが、上がるということは必至でございますか。その点をちょっとお聞きしたい。
  188. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 電力の値上げ問題ですが、ただいま問題になっているのは、東京電力でございます。閣議の方針に従って当分の間値上しない、こういう方針は堅持して参りたいと思います。ただしかし値上げしないからといって、事実の認識を曲げるわけには参りません。相当にこれは経理状態は捨てて置けぬというようなものは、今のところは東京電力だけでございます。ほかに当分の間値上げの必要は、当分の間の当分ではありません、ここ数年の間、他の電力会社においては値上げの必要はない状況でございます。
  189. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 電力の値上げは、いずれ東電のは上げて、他の電力会社は当分の間上げない、数年間上げないというようなお話もありますが、そうもいかないだろうと思いますけれども、私の次にお聞きしたいのは、農業の発展を期待する大きな問題としては、農村の電化、機械化ということが重要な問題になってきておるわけでございます。ところが、従前農事用の電力の確保という問題と農事用の電力料金という問題については、あまり大した恩典がないわけです。特にこれからは電力を普遍的に農村へ導入していかないというと、これはなかなか大へんなことになってしまうわけなんで、そういう意味合いからいって、従来農林省あたりで山村僻地の電気導入をやっておりますが、これは今年も一億八千万ぐらいあるらしいですが、問題はただ電灯だけを導入しただけでは、農村の全般的な生産というものは向上しないわけです。従って、動力の方に、農林省はもちろん力を入れてもらうわけでございますけれども、要するに、農事用電力を確保する上において、将来電気料金が値上げされる場合においても、農事用電力には特別の考慮を払っていかなければならないだろうというように考えております。政府の言うように、まだ農業を一人立ちにしていわゆる近代化するということはなかなか骨が折れる。ある程度は保証政策を加えていかなければならぬ、こういう問題を考えましたときには、たえず電力の需要の趨勢から考えて、農事用の電力というものについては十分な考慮を払わなければならないだろうということを感じておるわけなんです。こういう点についての見通しについてのお考えをお聞きしたいと思います。
  190. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 農業用電力の問題について申しますと、灌漑排水用の電力、脱穀調製用等の電力でございますが、概して豊水期にこれを使用されるものでございますので、従来も一般よりも割安になっておると考えております。なお、この点につきましては、お話しの点もございますので、なお一そう負担の軽減につきまして考究したいと考えます。
  191. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) さっきも申し上げたように、大臣は四時までですからそのつもりでお願いいたします。
  192. 北村暢

    ○北村暢君 第十二条の「農業資材の生産の事業の発達改善等必要な施策を講ずるものとする。」ということが出ておりますが、農業資材の生産の事業の発達改善ということについて、これは項目で何々々というふうに、こういうように簡単に一つお答えを願いたい。
  193. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 農業資材と申しますと、まあたくさんございましょうが、おもなるものとしては、肥料、それから農機具だと考えております。
  194. 北村暢

    ○北村暢君 おっしゃる通り農機具、肥料、この問題がございますが、そのほかにも農業の今後の発展において、いわゆるビニール・ハウスの問題、これは工業者が、ビニール・ハウスは農民から考えたよりも、かえって工業者がこれを宣伝したということで、今日の発達をしているというようないろいろな問題があるわけですが、今申したように、主たるものはやはり肥料と農機具であろうと思います。そこで、肥料の問題についてお尋ねいたしますが、時間がございませんので問題を限りましてお尋ねいたします。まず日本の硫安輸出会社の赤字百十五億、この赤字が現在までどのように変化いたしましたか、この点簡単にお答え願いたい。
  195. 秋山武夫

    政府委員秋山武夫君) 日本硫安輸出株式会社の過去におきます赤字は、三十四肥料年度では百十四億ということになっております。三十五肥料年度末におきましては約百六十五億円の見込みでございます。まだ最終的決算がきまっておりません。
  196. 北村暢

    ○北村暢君 通産大臣にお伺いしますが、この輸出会社の赤字は今発表があったように、一年で約五十億ふえております。これの対策はどのように考えておられますか。
  197. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 税制の面からこれを軽減することにつきましては、すでに国会において御審議を経てその方法は確定しております。これは一部分でございまして、もし全体を処理するということになりますれば、また別に対策を考える必要があるかと存じますが、まだその方法につきましては、結論を得ておらぬ状態であります。
  198. 北村暢

    ○北村暢君 ほうっておけば赤字は累積する一方です。税法の特別措置というものを考えておられるようですが、それでは問題の解決には私はならないと思います。従って今それを検討中ということでございますが、一体これらの問題を含めて肥料審議会は今までほとんど昨年の暮れから開かれない形にありますが、結論を得て肥料審議会はいつお開きになりますか。
  199. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 遺憾の状況のままに経過しておりますが、六月の下旬までには成案を得て審議会にかけたいと思っております。
  200. 北村暢

    ○北村暢君 この輸出会社の赤字は、私は農民に転嫁することは許されないと思います。そうでなくても輸出価格よりもはるかに高い価格で国内の農民は肥料を買っておるのでありますから、これ以上農民に転嫁することは許されないと思います。方針はどうですか。
  201. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もちろん、そういう方針で安い肥料を供給するというところに主眼を置いて、われわれも肥料の生産に対する行政を行なっておるのであります。それでただいま御承知の通り極力この合理化を急いでこれを推進しておる状況であります。それでここに一つ考えなければならぬことは、合理化によって相当生産費のコスト・ダウンした、その一部につきましては今後とも合理化をスムーズに推進する意味におきまして、その一部を生産者にこれを還元して、そうして終局においてはいち早く合理化を完成し、そうして農民の負担を軽減し、これを安定せしめるということが必要である、かように考えております。
  202. 北村暢

    ○北村暢君 この赤字は農民に転嫁しないことをはっきりさして、合理化に進めていきたい、こういうことでございますから、その点は一応了解しますが、その合理化の方法について今日の鉄鋼あるいは石油化学との総合コンビナートの方法によっていけば、非常な価格の低下をきたすということが言われております。ところがこの鉄鋼、石油化学を取り入れますというと、既設の硫安工業は壊滅する、こういうことからあえてこの方法をとらないという形になってきておりますが、今後の合理化ということは、一体このガス源の転換、廃ガスの利用、こういうことを含めて硫安の価格低下のために合理化を考えておるのかどうか、この点お答え願います。
  203. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 鉄鋼あるいは石油化学、これらとの連関においてこれを全部取り入れまして合理化を考えておるのであります。でございますから、ただいまの肥料価格が五十数ドルしておるものを大体十ドル見当引き下げるという目標のもとに合理化を推進している次第であります。
  204. 北村暢

    ○北村暢君 その程度の引き下げでは、まだ引き下げ得る可能性は私はあると思いますが、これは一気にいかない問題ではもちろんあるとは考えます。考えますが、今これは肥料審議会等においても私は問題としてやりたいと思いますけれども、一応答弁は了解しておきます。  そこで、もう約束の時間が過ぎましたので、もう一点だけお伺いいたしておきますが、アメリカのドル防衛の対策として、米国の国際協力局から対外経済援助資金の域外調達を禁止する、この通知が出まして、これが硫安の輸出において台湾、南鮮等における問題に波及するのじゃないか、影響するのでないか、ころいう心配があったのでありますけれども、この影響は一体どのようになったか。
  205. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もしそういうことになりますと、硫安の輸出に三分の一程度の影響を受けるのじゃないかと考えられますので、これは重大な問題であります。さような影響のこないような対策を今講じておる状況であります。
  206. 北村暢

    ○北村暢君 そのような三分の一くらいの影響があるから、そのような影響のないように講じておるというのは、具体的にどういうことをやっておられますか。
  207. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 大体アメリカの硫安の価格は日本と比較して相当コストが安くない、距離も離れておりますので、フレートも相当かかる、こういうような状況でございますので、それらを一つよりどころとしてアメリカの当局に折衝しておる、こういう状況でございます。
  208. 北村暢

    ○北村暢君 この問題については、大臣おわかりになっていないようです。今の答弁は全く私はピントがはずれていると思う。これはそういうことにはならないのです。そんなことじゃないのです、問題は。でありますから、これは今聞いても……。
  209. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) なお担当局長から申し上げます。
  210. 秋山武夫

    政府委員秋山武夫君) 肥料に関しましてのICA資金の問題でございます。これは非常に大きな割合を占めております。私どもといたしましても、何とかしてその悪影響を防ぐ方法考えなければならないということで、一つはアメリカのICA当局に対して働きかけをする、これは単に政府間の折衝という形のみならず、民間を通して折衝をしたいということで今現に始めております。もう一つは、他の地域に市場を求めるという考え方でございます。御承知のように、東南アジア方面におきましても非常に需要自体は強いわけでございますが、外貨が非常に不足しているようなことで買い切れないという問題もございますので、それらも一緒に合わせまして、何らか日本の硫安なり、肥料を買ってもらうという方法考えなければならないということで、今具体策を検討しているということでございます。
  211. 北村暢

    ○北村暢君 これで私の質問は、時間がきましたから終わりたいと思いますけれども、こういう重要な問題について、私は、担当局長でなければ、大臣が答弁できないようでは、これはおかしな話なんで、これは今大問題なんですよ、アメリカとのドル防衛の問題との関連において。何のために通産大臣を置いているかわからないじゃないですか。その勉強の足りないもはなはだしい。怒ってもしょうがないけれども。とにかくこれは今話が局長からありましたが、東南アジアその他の問題ももちろんありましょう。それから外貨の問題もありましょう。しかし、もう一つ大きな問題は、やはり中共貿易との関係でこの販路というものは相当開けると思うんです。こういう問題も一つの真剣に取っ組むべきじゃないか。これは意見でありますから、答弁要りません。しかしながら、このICAの問題については、せっかく総理もアメリカへ行くんでありますから、この際ですね、やはり見通しというものをはっきりさしてくるべきでないか、このように考えますので、担当大臣である大臣がさっぱり何のことかわからないようでは、これはお話しになりませんので、これは一つよく検討して善処をさるべきじゃないか、このように思います。  もう時間が過ぎなしたから、私の質問はこれで終わります。
  212. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ここでしばらく休憩いたします。    午後四時九分休憩    ————————    午後五時十六分開会
  213. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続いて農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、 農業基本法案(衆第二号、予備審査)、 以上三案を一括議題といたします。
  214. 河野謙三

    ○河野謙三君 議事進行。この際、内閣提出農業基本法案質疑打ち切りの動議を提出いたします。   〔「賛成」と呼ぶ者あり〕
  215. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまの動議を採決いたします。動議に賛成の方は起立を願います。   〔賛成者起立〕
  216. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 多数と認めます。動議は可決されました。内閣提出農業基本法案に対する質疑は終局することに決しました。  これをもって散会いたします。    午後五時十七分散会    ————————