運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1961-05-29 第38回国会 参議院 農林水産委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十九日(月曜日)    午前十時二十九分開会   —————————————   委員異動 本日委員高橋進太郎辞任につき、そ の補欠として高橋衛君を議長において 指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤野 繁雄君    理事            秋山俊一郎君            櫻井 志郎君            亀田 得治君            東   隆君    委員            石谷 憲男君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            河野 謙三君            重政 庸徳君            田中 啓一君            高橋  衞君            仲原 善一君            堀本 宜実君            阿部 竹松君            大河原一次君            北村  暢君            清澤 俊英君            小林 孝平君            安田 敏雄君            棚橋 小虎君            千田  正君            杉山 昌作君   衆議院議員    農林水産委員長 坂田 英一君   国務大臣    農 林 大 臣    周東 英雄君   政府委員    農林政務次官  井原 岸高君    農林大臣官房長 昌谷  孝君    農林大臣官房審    議官      大沢  融君    農林省農地局長 伊東 正義君    農林省蚕糸局長 立川 宗保君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   説明員    農林省農地局愛    知用水公団監理    官       大山 一生君    農林省振興局参    事官      橘  武夫君    農林省畜産局参    事官      花園 一郎君   参考人     愛知用水公団     総裁     浜口 雄彦君     愛知用水公団     理事     伊藤  佐君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○急傾斜地帯農業振興臨時措置法等の  一部を改正する法律案衆議院提  出) ○愛知用水公団法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付) ○参考人出席要求に関する件 ○農業基本法案内閣提出衆議院送  付) ○農業基本法案天田勝正君外二名発  議) ○農業基本法案衆議院送付予備審  査)   —————————————
  2. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  委員異動について報告いたします。  本日、高橋進太郎君が辞任、その補欠として高橋衞君が選任されました。   —————————————
  3. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 急傾斜地帯農業振興臨時措置法等の一部を改正する法律案(衆第四六号)を議題といたします。  本案は去る五月十八日予備審査のため付託され、同十九日衆議院より提出せられました。まず本案提案理由説明を願います。
  4. 坂田英一

    衆議院議員坂田英一君) ただいま議題となりました急傾斜地帯農業振興臨時措置法等の一部を改正する法律案提案理由を御説明申し上げます。  御承知のように、急傾斜地帯農業振興臨時措置法湿田単作地域農業改良促進法海岸砂地地帯農業振興臨時措置法及び畑地農業改良促進法の対象となります地帯は、地形が急峻であるとか、農地が常時湿潤であるとか、潮風または飛砂による災害をうけるとか、あるいは、しばしば旱害を受ける等、自然的条件に恵まれず、農業生産力が著しく劣っている地帯でありまして、その面積は、急傾斜地帯については約四十二万町歩湿田単作地域については約四十六万町歩海岸砂地地帯については約二十四万町歩畑地地域については約六十万町歩に達しているのであります。  これらの地帯自然的条件を克服し、農業生産力を高め、農業経営安定向上をはかるため、昭和二十七年五月に急傾斜法が、また同年十二月に湿田単作法制定され、引き続き、翌二十八年三月には海岸砂地法が、また同年八月には畑地法制定を見たのでありまして、自来今日に至るまで、これらの法律により、これら地帯農業生産基盤の整備をはかるため、農業振興計画等に基づき、土地改良事業中心として、農地保全事業海岸砂地造林事業等が実施されて参ったのでありまして、これらの法律施行以来、実施されました対策事業の総額は、昭和三十六年度実施予定事業を含め、急傾斜地帯については事業費で約七十七億円、国費で約三十二億円であり、湿田単作地域については事業費で約二百二億円、国費で約七十三億円、海岸砂地地帯については事業費で約五十四億円、国費で約二十六億円、畑地地域については事業費で約三十五億円、国費で約十五億円に上り、相当の成果を上げて参っているのであります。  しかしながら、これら対策事業進捗状況を見ますと、これらの法律制定当初計画されました振興計画等に対し、遺憾ながら相当のおくれを示し、急傾斜地帯については三七パーセント、湿田単作地域については五四パーセント、海岸砂地地帯については三五パーセント、畑地地域については三九パーセントという状況であります。  しかるに、これらの法律昭和三十七年三月三十一日限りで失効することとなっており、この機会に、さらに高い次元の上に立って、これらの法律を統合する地域立法を行なうべきであるとの意見もありますが、当面、とりあえずこの際、これらの法律有効期限を四カ年間延長いたしまして、引き続き事業の一そうの推進をはかり、これら法律制定の所期の目的を達成するに遺憾なきを期すべく、ここに本案を提出した次第でございます。  なお、有効期限延長期間を四カ年といたしました理由は、昨年五カ年の延長を行ないました積雪寒冷単作地帯振興臨時措置法有効期限にその終期を一致せしめまして、特殊地域農業振興のための統合立法の策定に対処しようとの考えに基づくものであることを申し添えておく次第であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いする次第であります。
  5. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 以上で本案提案理由説明は終わりました。については、本日はこの程度にいたします。   —————————————
  6. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 愛知用水公団法の一部を改正する法律案(閣法第一四〇号、衆議院送付)を議題といたします。  本案は去る三月九日提案理由説明を、四月四日補足説明をそれぞれ聴取いたしました。また、五月十八日衆議院より送付され本委員会に付託されました。   —————————————
  7. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) この際、お諮りいたします。この法律案審査のため必要な愛知用水公団関係役職員参考人としての出席については、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 御異議ないと認めます。よってさよう決定いたしました。
  9. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) それでは本案に対する質疑を行ないます。  御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。  速記とめて。   〔速記中止
  10. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記つけて。
  11. 北村暢

    北村暢君 それではまず、愛知用水の、牧尾ダム竣工式も終わられて、いよいよ待望の水が流れるわけですが、これの当初計画と、それから工事竣工にあたっての事業計画資金面等について、どのような状況になっておるか、これをまずお伺いいたしたいと思うのですが。
  12. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 愛知用水事業事業計画の御質問でございますが、三十年に実施計画を作りまして縦覧公告をいたしました。今回はこの二月に基本計画並びに事業実施計画変更をしたわけでございます。これも縦覧公告をしまして決定いたしております。  概略申し上げますと、受益面積につきまして、実施計画のときには三万三千町歩という受益面積を考えておりましたが、その後いろいろな事情、と申しますのは三万三千をとりましたときのとり方と、今度のとり方計算方法等の違いもございますが、そのほかに水路の位置が変わりまして水がかからなくなった、あるいは受益地から若干除外する、あるいは未墾地買収関係で減りまして、いろいろな要素がございますが、受益面積が三万三千から三万になっておることが一つの変わった点でございます。またその面積の中でも、あの辺の農民の方々の要望で、当初よりも水田がふえておりますことが、若干前と内容的に面積が違いますほかに、開田希望が前より多くなっておるのが違っております。  それから水の計算でございますが、これも従来は農業につきましては一億一千二百万トンの補給用水量という計画をいたしておりましたが、これが約一億四千百万トンにふえております。これは先ほど申し上げましたように、開田増加ということと、畑灌期間延長、従来は八月三十一日で灌漑期間を終わりましたが、これを九月十五日まで延ばすというような灌漑期間の延長がございます。もう一つは、畑灌のロスというような関係農業用水補給水量が一億一千二百万トンから一億四千百万トンにふえております。工業用水上水等につきましては、そのままにいたしております。  それから事業費の点でございますが、これは総事業費事業実施計画では三百三十一億ということになっておりましたが、これもたしか資料でお届けしたことがあると思うのでございますが、その後のいろんな事情によりまして、これが四百二十三億というふうに事業費が約九十億ふえております。これが農民負担との関係になるわけでありますが、事業費としましては今申し上げました九十億ふえております。大体堰堤、幹線水路支線水路あるいは用地補償費というようなものがふえておりますおもなものでございます。幹線でございますと、路線をだいぶ山寄りに持っていく、用地取得関係というような関係で本年度そういう金のかかる工事がふえたということがございまして、約九十億ふえております。これが事業費増加でございます。  それに対しまして資金調達計画は、従来は国庫が八十六億、世銀が二十四億八千、見返り資金が六十八億、運用部資金が百八十億というような資金調達を考えておりましたが、国庫が八十億、世銀が減りまして十七億、見返り資金がそのかわりふえまして百二十億、運用部資金が二百二十億、これは概数でございますが、そういうふうな資金調達計画になっておるわけでございます。それで先ほどの事業計画からいきますと、負担区分農業が実はだいぶふえるわけでございますが、その点につきまして実はいろいろな措置をとりまして、農民負担に上がらぬようにというようなことをしたわけでございます。従来の負担区分三百三十一億のときでございますが、これは建設利息等を入れますと農業で二百七十八億、電力で二十一億、水道が四十億というような負担になるのでございますが、今度事業費がふえました関係で、国庫が亘一千五億が百八十六億にふえております。それから県が八十余億、農民は九十億、さっき二百七十八億と申し上げました中で、農民は九十九億だったのでございますが、農民負担としましては九十一億というふうに、面積も減りましたので、従来より減らしまして農業関係が三百五十九億、それに電力が二十三億、水道が五十三億というような負担にいたしております。それを前提にしてやりますと、農民負担は三百三十一億のときに大体総償還が四万三千二十五円というものをはじいておきましたが、このたびも事業費は九十億上がりましたが、これは先ほど申し上げましたように、農民負担が、従来九十九億を九十億に下げたということ、これは県が相当負担したという形になりますが、そういうことをやりまして、従来四万三千二十五円を四万三千二十八円でございますので、大体従来と同額程度の反当総償還に押えたということでございます。従来果樹園等に国、県の補助が出ていませんものを、国も県も果樹園のものの負担をするというようなことを考えまして、また、開田開畑につきまして、従来県は負担しておりませんものを、国、県、農民、全部で負担するというような負担方法も若干変えまして、事業費は上がりましたが、農民負担については従来通りの線を、平均の反当償還でございますが、維持していくというようなことをやったわけでございます。大体先般の基本計画実施計画を改訂しましたときの改訂の内容は以上のようなものでございます。
  13. 北村暢

    北村暢君 ただいまの愛知用水事業計画変更に伴ういろいろな点について説明があったのでございますが、これについて、まず資金調達の面で今ちょっと説明がございましたが、調達計画国庫補助の分、あるいは世銀余剰農産物見返り資金資金運用部資金の中で世銀に対する借入金については、これは返還はどのようになるでしょうか。
  14. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 世銀償還条件でございますが、利子は年利五分七厘三毛でございます。三十六年の五月まで、今年の五月までが据置期間でございまして、据置期間満了後は世銀が作ります償還計画表、これは十六年でございますが、十六年賦でこれを払っていくという償還条件になっております。
  15. 北村暢

    北村暢君 この資金調達の中で余剰農産物見返り資金、これの当初計画と先ほどちょっと説明がありましたが、聞き漏らしましたが、変更はなかったのでしょうか、ちょっと聞き漏らしましたのでもう一度。
  16. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 見返り資金は当初は六十七億九千でございますから約六十八億という借入計画になっております。その後四百二十三億ということをやりました場合の借入計画は百二十二億というふうに見返り資金はふえております。これは利子が四分というような比較的有利な利子になっております。これは事業費がふえましても、なるべく償還金をふやさぬということのために見返り資金増額借入金増額をはかったような次第でございます。
  17. 北村暢

    北村暢君 それで次にお伺いするのは、事業負担区分について先ほどの説明によれば事業費がかさんだ、当初計画よりもふえたが、農村の受益者については負担額がまあほとんどふえない、こういうことのようでございましたが、それで大体大分苦労されたようですが、当初の計画よりも水田が若干ふえた、こういうことのようでございますが、これは開田がどのような形でふえたのでしょうか、それとその従来の休閑のものと、それから畑地開田をしたもの、山林の開田のもの、こういうように分かれておったようですが、一体水田開田のふえた分はどういうところがふえたのでしょうか。
  18. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 従来の実施計画では開田は二百七十町ばかりの計画でございます。これが二千五百六十九町というふうにふえております。二千五百七十町ばかりでございます。これは実はこの計画変更いたします場合に土地改良区、県等を通じまして実は農民希望をいろいろ聞いたのでございます。その場合に従来よりも今申し上げましたようにふえたのでございますが、そのうちで畑からのいわゆる地目変換は約千九百九十でございますから、約二千が畑からの地目変換未墾地よりの純粋の開田は約五百七十町というような内訳になります。
  19. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、当初の畑地灌漑という考え方のものが約二千町歩水田になったというこういうことのようですが、これは農民希望ということのようですが、これは聞くところによるというと、当初の計画ではこの畑地灌漑によって果樹地帯を作るとかいうような計画もあるということを聞いておったのですが、この農民希望ということで開田を多くしたということは、この愛知用水の当初の目的というもの、これと非常に変わっているのじゃないか、要するに愛知用水が当初始まったときにはやはり食糧増産政策であったから、どちらかといえば水田開田するというのが農民希望であったんじゃないかと思うのです。従って、まあ完成間際になって参りますというと、いわゆる農政の曲がりかどということで開田ということはかえって好ましくない。畑地灌漑ということの方がやはり力を入れていくべきでないか、こういうふうな考え方が出てきておったはずです。それにもかかわらず水田予定よりも増加しなければならない、こういうことはちょっと理解できないのでありますが、これが今後のこの種の公団農地開発というものとも関連して、大へんこれは重要な問題じゃないかと思うのです。それに対して、単に農民希望によって計画変更されたということではちょっと理解できないようなんですが、やはり農民畑地灌漑というよりも水田というものをやはり魅力といいますか、そういうものを持っているということを表現しているんじゃないかと思う。そういう点からいって、これはどういうふうにお感じになっているか、その点一つお伺いしておきたいと思います。
  20. 藤野繁雄

    委員長藤野繁君) 北村さん、愛知用水伊藤理事が見えましたから。
  21. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今御指摘の点でございますが、確かに開田が二千二、三百町ふえておるのは事実でございます。それから畑灌の中では実は樹園地関係で、あそこはおもにミカンでございますが、樹園地関係は当初の二千七百が四千五百というふうにふえております。一般の畑灌普通畑が一万三千が七千になるというような実は減り方をしているわけでございます。ただ総計いたしますと、先ほどのまあ三千町という現状がございますので、それも畑地がだいぶこの計画の中から落ちたということもあろうかと思いますが、先生の御指摘のような開田の増があることは確かでございます。私ども先生のおっしゃる通り、実はなるべくこの地帯では開田でなくて樹園地増加とか、そういうものに持っていきたかったことは、そういうつもりであったのでございますが、実は農民要望はここに二千五百六十九と申しましたが、実はもっと開田してほしいという要望がございましたことは確かでございます。私どもの方といたしましては、先生のおっしゃいますように、今後の問題もあり、水の量の関係にすぐ響いて参ります問題でございますので、なるべく開田を少なくするようにと押えましても、実はこういう数字になりましたことは現実の姿でございます。私どもとしては今後の運営の姿としては、これは開田となりましても最近の田畑輪換というようなことが非常にまた営農の形として奨励されて参っておりますので、これがまたずっと長く開田のままでいくというふうに私考えませんが、なるべく水の量、今後の運営の形としてはこれでずっと十年、十五年いくのだということじゃなくて、やはり今後営農指導をやりまして畑灌といいますか、そちらの方へもっと重点的に持っていきたいと思います。ただ計画を従来より進めて参りました関係上、この段階で全部開田はいかぬといって押えてしまうことも、計画達成上無理がございましたので、ある程度要望よりは減らしたのでございますが、現実は今のような姿になりましたが、この将来の営農の形としましては、私どもはなるべくもうかる農業といいますか、そういうふうに持っていくために、田畑輪換とか、そういうふうにこれも指導していったらいいのじゃないかというように、今後の問題として考えております。
  22. 北村暢

    北村暢君 この問題は今後の、今審議している基本法との関連においても、私は重要な問題である。当初の約十倍になんなんとする開田が行なわれた、このことは、やはり非常に大きく水田農民魅力というものがある。これはそういうことが現われている実例じゃないか、このように考えるのです。そうでありますから、なかなかこれはやはり農林事務当局が当初考えたようなことが、なかなか農民にはすなおに受け取れない。現在の農業あり方そのものが、なかなかまだこの近代的な、しかも世紀の大事業が行なわれて、営農計画がそのように大きく変更を見なければならない部面が出たということは、これは今後の豊川の問題なり何なりについて、これはやはり私は非常に考えさせられる点があるのではないか。従って今後の計画においても相当やはり地元の農民の意思というものを十分反映した中でこれらの計画がなされるべきでなかったか、このような感じがいたします。従って、この点については、私は、一つ今後の問題として十分考えてもらわなければならない問題じゃないか、このように思います。  それから次にお伺いいたしたいのは、従来の国営事業との比較において、ダム並びに水路管理、あるいはポンプ・アップの電気代等管理費負担でありますが、これは年間十アール当たり六百円ないし六百八十円、こういうことのようでございますが、これは従来の国営事業と比較してどういうことになっているのでしょうか。この点を伺っておきたい。
  23. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 従来の国営事業でやっておりますのは、県営団体営まで実は入れませんで管理費を出しているのがございます。百円ないし二百円というのがかなりございます、新しいものにつきましては。これは国営ダム、それから水路管理費でございますが、県営団体営は入れておりません。それに比較いたしまして、愛知用水の場合でございますが、おそらく二百五十円くらいになるんじゃなかろうか、国営だけで言いますと、そういうふうにみております。これに対しましては、私の方も補助金等も考えておりますが、全部、団体営まで入れますと、先生のおっしゃいますような管理の費用になるんじゃないか。普通よりも若干は高いくらいのところに国営地区としてはなるかもしれません。
  24. 北村暢

    北村暢君 昨日あたりの新聞によると、この愛知用水は、確かに水がない所に水が来たのでありますから、その効果は十分知りつつも、今申した管理費負担あるいは賦課金、こういうものの関係からして、水はほしいが辞退しなければならない、こういう者が相当出てくるんじゃないか。七、八千出てくるんじゃないかということが新聞で伝えられているのですが、一体、計画当初の受益者というものが、予定しておった農家というものが辞退するというようなことは、今後大体起こらない見通しなんでしょうか。
  25. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今先生の御質問の点でございますが、面積で三万三千が三万ということになったわけでございますが、これは先ほど申し上げましたいろいろな理由があったわけでございます。で、今後の問題でございますが、私どもの方といたしましては、これは農民の反当負担の問題にも大きな影響をするわけでございます。受益面積からはずれるということは、残った人につきまして大きな負担の問題にもなりますし、また水の配分の問題とも非常な関係を持って参ります。これはよく話し合いをしまして、これは県が中心になってやってもらいたいと思っておりますが、今後の営農問題等を話し合いまして、そう大きな変動が起きませんようにという指導をして参りたい。三万三千が三万になりましたことで、かなり変化がございましたので、これ以上、あまり大きな変化がないようにという実は指導をいたしたいというふうに思っております。
  26. 北村暢

    北村暢君 その点、当初の計画より三千ばかり減るということですが、逆に水の分は先ほど説明がありましたように、当初一億一千万トン、これが約三千万トンくらいふえる、これは水田開田が多くなった結果だ、こういうことのようですから、水の方はふえる、受益者負担する面積は減る、こういうことでは、当初の計画からして受益者負担が変わらない。農家負担分が変わらない。これはどこかにしわ寄せになっているのか、どういう計算でうまくいくのかしれませんが、これはちょっと常識的に考えると、水はふえるし、受益面積が減るということになると、どうしても計算が合わなくなってくるじゃないかと思うのです。ところが受益者負担は同じだ。先ほど説明ありましたように、県の負担がふえるというようなこともあると思うのですが、そうすると、やはりこの愛知用水世紀の大工事が、やはり非常にどこかに無理をかけているのじゃないか。こういうような感じがするわけです。そういう無理がいって当初計画からはずれたようなところは、やはり国でこれを見るべきじゃないかというような感じがしますがね。これについてそこら辺の点の説明をもう少しわかるようにしていただきたいと思います。
  27. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今御質問の点でございますが、面積が減って水の量がふえたのだから負担は多くなっているのじゃないかというお話でございますが、単純に計算しますと、その通りなんでございます。それで、私どもとしましては、当初反当総償還額四万三千円ということでやりましたので、これは事業費が九十億ふえましても、四万三千円といいますのはかなりな負担になりますことはたしかでございますので、これはふやしたくないということで、先ほど申し上げましたように、県でかなりの特別負担というような形をしてもらっております。それから国も、実は従来建設利息等につきましては、一応国は持たぬような役所間の覚書でやっておりましたものを、国が建設利息を持ちますとか、あるいは果樹園につきまして国は補助はしないという形をとっておりましたものを、果樹園につきましても国は二割の補助をするというようなことで、国も従来負担しなくてよかったものにつきまして負担をするというような形になりまして、先ほど申し上げましたように、百三十五億が百八十六億ぐらいな数字になっておるわけでございます。それから県でございますが、県は、これは十数億になろうかと思いますが、これも特別負担をいたしまして、従来果樹園について負担をしておりませんものを、県が五割負担する、あるいは開田開畑につきまして、これは従来は国と農民だけでございましたものを、県も六分の一持ちますというようなことをやりまして、従来負担しないということになっておりましたものを国、県で負担するというようなことをいたしまして、先ほど申し上げましたような四万三千円ベースにしていこうというふうな操作をしたわけでございます。
  28. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 浜口総裁がただいま見えました。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止
  29. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記を始めて。  暫時休憩いたします。    午前十一時十一分休憩    ————・————    午前十一時三十八分開会
  30. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会を再会いたします。  休憩前に引き続き、愛知用水公団法の一部を改正する法律案に対する質疑を行ないます。
  31. 北村暢

    北村暢君 それじゃ、続いて質問をいたしますが、愛知用水の総裁でも理事でもよろしゅうございますが、先ほど、計画変更になりまして、受益地面積変更があったということのようですが、そういう説明でありましたが、さらに、水の代金を徴収する、いわゆる賦課金を徴収する段階になって、水を辞退する農家が出てくるのじゃないか、こういうことが言われておるのですが、そういうことは現在のところないのですか。新聞にはそういうようなことが起こるのじゃないかということが出ているわけですが、その心配はございませんか。
  32. 伊藤佐

    参考人伊藤佐君) 事務的の問題でもございますので、私伊藤でございますが、私から便宜お答えいたします。  ただいまの御質問でございますが、御承知のように、名古屋を中心にいたしまして最近目ざましいどんどん工業の発展あるいは市街地の発展というものがございますので、そういったような傾向からいたしまして、ただいま先生のおっしゃいましたようなことは、私は今後起こり得ることであると存じます。ただいまのところ、しかし、どのくらいの程度でどうであるということは、ただいま見当がつきませんでございます。
  33. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、農業用水は辞退者が出て減るが、名古屋の南の臨海地帯工業用水がふえる、こういうことになるのですか。
  34. 伊藤佐

    参考人伊藤佐君) そういう事態と申しますか、がくれば、勢い工業用水の需要というものは現状におきましても、これは今後ますますふえるわけでございます。直接関係は、まあ何とも申せませんのでございますが、今後工業用水がふえるということは、愛知用水関係あるなしにかかわらずございます。
  35. 北村暢

    北村暢君 ただいまの御答弁ではちょっとはっきりしませんけれども、私はこれは臨海地帯の工業の発展に伴って、愛知用水受益地区の農民が水を辞退するようなこともあり得るということですから、それは最近の工業の発展に伴って離農をするとか、何とか、そういうようなことで減るということなんですか、どうなんでしょう。
  36. 伊藤佐

    参考人伊藤佐君) いろいろ原因はございますけれども、大別いたしまして、今先生のおっしゃいましたような、従来の農業地が工業地帯に変わる、工場用地に変わるといったような点、それからまた市街の膨張に伴いまして住宅地化するといったような点、この二つが大きなものじゃないかと思われます。
  37. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、これは当初の計画で農用地の造成と宅地の造成ではだいぶ変わってしまうじゃないか、価格の問題においても違うんじゃないかと思うのですが、この点はせっかく農用地として開発した、しかも、それが国の相当補助金等によって農地として開発したものが遠からずして工業地になっていく、工場敷地になるあるいは住宅地になる、転換する、ということになりますというと、これはその関係はどういうふうになりましょうか。そういうことが起こらないとは限らない、今のところでそういうことになるとも断言できないでしょうけれども、そういう傾向がないとは言えない、あるようなふうにも受け取れるのですが、その場合、賦課金等についてもこれは相当長い年限かけて返還をしていくはずでございますから、そういう場合、一体どういうふうな取り扱いになるのか、この点一つ農地局長から……。
  38. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今先生おっしゃいましたように、農業用水でやる場合と工業用水なり、上水道でやる場合には、国の補助なり、県の補助なりが大いに違います。特に上水道の場合になりますと、あまり補助がなくて、一立米で二十何円というような水の値段になるわけであります。それで今先生の御質問のように、農業用水工業用水になり、都市用水になるとき、その土地が、農地から工業地になったから、その場合には農業関係負担金をそれだけ払ってしまえばその水は自由に工業用水、上水道等に使えるかという点になりますと、先ほど申し上げましたように、国の補助なり、県の補助なりの考え方が違いますから、水をほかへ売るという場合には、私は一回公団に、受益地が減ることによってほかの農民が過重な負担を持つということは困りますから、少なくともほかに転換する場合には、その農地農地として賦課金を払うべきものはこれは払ってもらうということで、ほかの農民に過重負担にならぬように考える。その上にその水を工業用水なり上水道に使う場合には、これはやはり公団が中に入りまして、従来の農業用水に使ったと同じ値段で、賦課金でそういう水を供給するということは私はこれはおかしいのじゃないかと思いますので、その水につきましては、工業用水であれば工業用水として一トン幾らというような形で売るということになりますか、あるいはアロケートの方で、工業用水なら工業用水としての持ち分をもっと持ってもらうという形になるように公団を中に入れて、農業用水なら農業用水の水をそのままの負担金でほかに使ってしまうということはおかしいから、そこの調整は公団を中に入れてやろうというふうに考えております。
  39. 北村暢

    北村暢君 私のお伺いしているのは、実は辞退者が出るというのは、農業用水として使う場合に、その負担に、農業の生産を行なう場合に負担にたえなくて水を辞退するという、そういうふうなことかと、こう思っておったら、そうじゃなしに、せっかく農用地として開発して水が行くようになった。その農用地として開発したところが工業地帯になってしまった、あるいは住宅になってしまった、こういうことになれば、やはり当初の計画が誤りじゃなかったか。そういうところへ農業用水が行くように施設をするわけでしょう。それが住宅地になったり工業用地になっちまったりするというと、これはちょっと当初の目的とはなはだしく変わってしまうことになる。その面積が何千町歩もあるということになってくると、これは当初の計画が非常にずさんであった、こういう結果になるのじゃないかと思う。それで、先ほど来何千町歩もそういうものが出てくるということになると、これはちょっと工合悪いことじゃないか。ということは、今まで水のないところだったのですから、それが農業用水にしてもとにかく水が行っているわけです。そうすると、それが直ちに上水道に変わることは、農業用水が変わるとは考えられませんけれども、何か集団でそういうふうになれば、土地の転換をするとするならば、これは何か使用目的が変わるのでしょう。それが結局農地開発ということでやったものが、不当に安い水を使うということになれば、不当な利益を得るじゃないかという感じがするものですから、それがあらためてそういう転換をした場合に、農業用水でなしに上水道なりあるいは工業用水として計算をし直す。従って、愛知用水にそれだけ何といいますか、収入としてよけい入ってくるようになる。これならばこの不当にやったということにはならないだろうと思うのですが、そこら辺のところを実はお伺いしたわけなんです。
  40. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 先ほど申し上げましたように、三万三千が三万になりましたので、これから先生のおっしゃるようなことは絶無とは申し上げかねますが、なるべく私の方の指導としましては、そう大きな変更がないように指導はするつもりでおります。ただ、先生のおっしゃいましたような場合に、農業用水として国、県が相当金をつぎ込んで安く作ったものを、工業用水なり上水道にそのまま農民と同じ負担金、同じ程度賦課金を払うことによって自由に使えるのだということにはなりませんように、これは公団を入れまして、先ほども申し上げましたように、アロケートの操作をしますか、工業用水として一トン幾らというようなことにしまして、公団に入れるようにしますか、その点は今後検討しまして、先生がおっしゃいましたように、農業用水としてせっかく作ったものが自由にほかの方にいって、ほかの用途で使われて、ほかの用途の方が不当な利益にならぬというような措置はいたしたいというふうに考えております。
  41. 北村暢

    北村暢君 それでは次にお伺いいたしますが、この畑灌の場合、これは非常な夢を持って実験農場等も設けて、その効果を期待するということでやられたようでございますが、その実施の状況はどうなっているのでしょうか。特にこれだけの大事業を行なったのでありますから、その受益地における農業経営の形というものが現在の農政の曲がり角へ来たといわれておるこの状況に合うような形の農業経営の構造等についても考えられてきたのじゃないかと思うのですが、この実験農場等の行ないました効果並びにその自立経営農家というようなものの育成との関係において、ここにおける営農の形というものはどのように変わったのか、この点一つ説明いただきたいと思うのです。
  42. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 実験農場を作りましたのは、実験農場といいますか、農林省では試験場に東海近畿栽培第二部というのをあすこの東郷調整池のそばに作りまして、これは畑灌だけの試験を試験場がやっております。それから公団でも実は方々に試験場を作っておりましたが、これはどちらかといいますと、畑灌の物理的な水のかけ方とか、そういうことを中心にやりましたので、特に営農に結びつくというようなことはいたしませんでした。それから県が国の補助をもらいまして七カ所、県単で三カ所、加えまして十カ所、これは展示圃的なものを、一カ所一町歩でございますが、十軒くらいの農家でやってみるということで、実験農場といいますか、展示圃を十カ所作ってやっております。これは昨年はかなり、今数量的にちょっと覚えておりませんが、かなりの成績を上げまして、近所の人に目で見せるというようなことで効果を上げたということを聞いております。今後の営農の形としましては、今申し上げました国の試験場、それから県の試験場もございますので、それと普及員をここに、全国に比較しましても濃密指導といいますか、普及員を増置いたしておりますので、そういう体系で営農指導をやっていこうと思っております。今度の計画変更いたしました際も、作物等につきましては、さっきの水稲がふえたことは、これはたしかでございますが、そのほかに特にふやしましたのは、飼料作物と果樹でございます。今よくいわれております選択的拡大といいますか、ここでふえるものとしまして酪農が市乳として相当ここで伸びるんじゃないかということで、飼料作物は前には全然入っておりませんでしたが、これをかなりの面積千五、六百町歩を飼料作物に充てる、あるいは果樹園に三千町歩足らず充てますとかというようなことをしまして、従来よりもそういう作物に重点を置いて計画を立てましたことはたしかでございます。先生のおっしゃいました構造改善、特にたとえば農地保有がどういうふうになっているかということにつきましては、実はまだこの地帯でこういう共同経営をやりますとかいうような形をきめまして、実は指導はしておりません。指導はいたしておりませんが、こういう畑灌というようなものが、ここは数千町歩が行なわれますと、畑灌をやりますには、ある程度農地の集団化をする必要がございます。またその集団化された中では同じ種類の作物を植えませんと、おのおの別の作物ですと、用水量も変わって参りますので、農地の集団化なり、あるいはその中で同じ作物を植えていくというような、この程度の実質的な統制といいますか、調整といいますか、そういうものが当然行なわれませんと、畑灌の効果が上がりませんので、今後はそういう形のものになりますれば、あるいはまた一部の共同経営というような形も出てくるのじゃなかろうかというふうに考えておりますが、今のところこういう形のものでいくのだというところまできめて指導はいたしておりません。しかし、今申し上げましたような畑灌の効果としまして、農地の集団化とか、作物を単一にしていくということは当然起こるだろうというふうに考えております。
  43. 北村暢

    北村暢君 次にお伺いしたいのは、まだこれは水が行かないのですから、受益者負担の徴収というようなことは起こっていないのじゃないかと思うのですが、起こっていないのですか、これは。
  44. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) まだ現実には起こっておりません。
  45. 北村暢

    北村暢君 それじゃ次にお伺いいたしますが、世銀借款の今後の見通しはどのようになっておりますか。というのは、愛知用水の経験で、世銀側からする愛知用水の見方、今後のこういうこの種の事業に対する融資という問題についてどのような評価があったのでしょうか。というのは、この世銀借款は外国機械の輸入量というものとだいぶ関係を持って、一定の機械の輸入に付随して世銀の借款を認める、こういうようなことになっておったのじゃないかと思うのですが、そういうような関係からいって、今後の見通しというものはどのようになるのか、お伺いしたい。
  46. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 私からお答えしますが、足りぬところは公団の方からまたお答えさしていただきます。世銀借款は当初七百万ドルということでスタートいたしましたが、その後そうたくさん要らぬということで、現在の姿は、機械が二百五十六万ドル、技術援助、エリックフロアーの関係でございますが百五十四万ドル、畑灌関係指導で四万ドル、利息が七十六万ドルで四百九十万ドル、十七億六千四百万程度になっております。残っておりますのは約十二万ドルくらいでございまして、現在たしか九人くらいのエリックフロアーの技術者が残っております。これは今年の十二月で全部切れます。でありますので、当初よりはだいぶ借款が減っておるわけでございます。この種の事業に、今後の問題としてやはりこういう技術援助を受けるかどうかの問題でございますが、これは豊川水利事業を引き継いで行なうことを目的とする今、御審議の法律がもし通りますればやるわけでございまするが、現在のところでは、今後またこういう借款をしなければ、あるいは機械の面、技術の面でどうしても困るということは、私はないだろう。機械も国産が相当進んでおりますし、技術の点でも、現在の公団で十分いろいろな外国の技術を修得されましたので、今後の農業関係の開発事業として特別技術的な問題、あるいは機械の問題で借款をしなくてもいいのじゃなかろうかというふうに現在は考えております。
  47. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、大体愛知用水が完成して超大型の機械が相当入ったわけですが、これの大体の概略の内容を知らしていただきたい。というのは、これはやはり使うというと、どのくらいの稼働日数で使用不能になるものか、廃棄になるものか。使用した機械が今後の使用にたえ得るのか、どんなような状況になっておるのか、これをちょっと知らせていただきたい。
  48. 大山一生

    説明員(大山一生君) 便宜私から述べさしていただきます。先ほど局長が申し上げましたように、機械を購入した内容といたしましては、外国産機械と、国内産機械と両方あるわけでございます。機械といたしましては、十三億の購入をいたしたわけでございますが、これが償却されましてわれわれが現在の工程表に基づいて稼働いたしております結果といたしまして、三億程度の残存価額が残る、こういうふうに考えております。  それから機械の種類として申し上げますと、外国製の機械といたしましては、パワー・ショベル、これが三台でございます。それからダンプ・ホーラーが十六台、ブルドーザー、これは二十トンでございますが、これが十五台、モーター・スクレパーが七台、キャリオール・スクレパーが三台、タイヤ・ローラーが一台、グラウト三台、こういうふうな内容になります。それからついでに国内産で購入しておりますのを申し上げますと、パワー・ショベルが二台、これは小さいやつでありますが、それからダンプ・トラックが四台、ブルドーザー、モーター・スクレパー、これが各一台、それからトラック・クレーンとか、スロープ・フォーム、こういう内容になっております。
  49. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、この機械は、償却しまして三億くらいが残っておるということになると、今後はかりに豊川に引き継がれてやるということになると、大部分償却した機械を使って工事をやる、こういうことになるのですか。また豊川の仕事をやるためには相当新しい機械を入れてやらなければならない。そこら辺の関係はどうなりましょう。
  50. 大山一生

    説明員(大山一生君) 現在の残存価額約三億と申し上げましたが、これにたとえば豊川で使います場合には定期整備をいたします。そうしまして大体元のような格好にいたしましてそれを使用する、こういう格好になって参ります。豊川が今度公団でやりますことになりました場合に、今度豊川でやるのを何年計画でやるかというような問題と関連させまして、機械の使用計画を作っております。その機械の使用計画の結果さらに必要であるとなりました場合には、それを業者持ちにするか、あるいは公団で買うかというような問題はあるいは出て参るかもしれませんが、かりに公団が貸与するということになりましても、外国産の機械をさらに購入するということは必要ないのじゃなかろうかというふうに考えております。しかし、何分にも技術的な分野になりますので、技術者の意見をよく聞いてみないとわからないと思います。
  51. 北村暢

    北村暢君 それでは次にお伺いをいたしたいのは、豊川の事業を引き継ぐということになるわけでございますが、これは当初愛知用水というのは、愛知用水で一応の仕事は終わるという考え方であったろうと思いますが、それが豊川の事業を引き継ぐということに至ったのは、まあどちらかといえば私は何かやはり相当大型機械を使ってやるんですから、こういう大型機械に適当な工事というものはそうざらにはないわけですね。従って、これはやはり愛知用水が終わるころには相当候補地というものが計画的に探されてなければならなかったのじゃないかと、このように思うのです。ところが、豊川の事業もわずか始めてからこれは二、三年しかたってないように思うんですけれども、どうしてこの国営事業というものを一応やめて愛知用水に引き継がなければならなかったのか。現在すでに法案として出てきている水資源公団愛知用水は将来合併をするということは、ほとんどまあわかっておるわけなんですが、そういうような点で考慮して計画がなされなかったものじゃないか、こういうふうに思うんです。従ってお伺いしたいのは、国営事業としてやはり始めてわずか二、三年やって、残事業三分の二ぐらい残っているのを愛知用水が引き継ぐ。これはいかにも何か無計画なような感じがするんですがね。この点はやはり引き継ぐということになれば、これは相当やはり規模が違うんでありますから混乱もするんじゃないかと思うのです。そういう点で、どうしてそういういきさつになったのか。この点ちょっと説明をしていただきたいと思うのです。
  52. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) 今おっしゃいました豊川は、実は昭和二十四年から手をつけております。十数年になっておりますが、たしか五十億ぐらいのところでございます。経過でございますが、農林省では実は昨年の春でございますか、今後農業用水として相当加工する必要があります地域で、なおかつ工業用水なり都市用水なりもまた非常に要望される地域というようなところにつきましては、これは水の開発なり管理なりにつきまして一貫してやる必要があるんじゃなかろうかというようなことから、実は水資源の開発の問題としまして全国的な公団を考えまして、そのときには木曽川の水系、これは実は今私の方でいろいろ調査をしております濃尾第二というのが木曽川にございますが、その事業、あるいは豊川事業、あるいは利根川につきまして今後上水道あるいは公共用水と競合します見沼台の問題、あるいは印旛沼の問題、それからこれは特殊な問題でございますが、八郎潟の建設が終わりましたあとで、あの地域の建設計画をやりますのは、これは相当今までの国とか県とかの計画ではむずかしいのじゃなかろうか。公団というのでやるのがいいんじゃなかろうかという考え方で八郎潟。それから後進地域の総合開発という意味を含めまして西津軽の、土地の干拓、開発等を含めました西津軽の開拓というようなところを仕事の対象といたしまして、全国的な公団を作って農業用水の開発を完了しようということを考えたわけでございます。たまたま愛知用水事業は三十五年でほぼ完了いたしますので、ここでの経験を積まれた人々、あるいは残ります機械等も活用いたしますれば一挙両得ではなかろうかというような考え方で案を作ったわけであります。ところが、たまたま御承知のように建設、厚生、通産等におきましても水資源の開発なり管理の問題につきまして公団という案が出まして、いろいろその間に話し合い調整等が行なわれたのでございますが、三十六年度の予算を作ります際にはまだその話し合いがつきませんで、農林省の要求の中でさしあたりすぐに愛知用水の人が行ってやれますような仕事として考えられるところは豊川じゃないか。また、これがたとえば利根川の方にでもなりますれば全国的な公団との関係も出て参りますが、豊川でございますればほとんど愛知県でございますし、愛知用水法の一部改正ということで、ちょうど仕事の内容から言いましてあすこも三十トン断面の実は水路を作るわけでございます。そして、知多半島の先まで、あるいは蒲郡の方まで水路を持っていくということで、ちょうど愛知用水が金山から幹線水路百二十キロを引いておりますのと、今後残っております水路の断面延長等もほぼ同じなんでございます。ちょうど似た仕事で適当でございますので、まずここに愛知用水工事で手の浮いてくる人々を収容しまして、その上で公団という形で豊川を開発していったらどうだろう。今申し上げましたように、十数年実はやっているのでございますが、なかなかこれはまあ全般的な予算の関係もございますが、特に飛び抜けて国営の中でも大きい事業でございますので、進度がはかばかしくないということで、今後公団という方式で資金の手当をいたしまして東三河地帯の総合開発を早期にやり遂げたいということで豊川を実は入れたわけでございます。私どもとしましては、国営事業というものを全部公団でやっていくという考え方ではございませんで、今申し述べましたように、今後水資源開発公団というものがもしできますれば、これはやはり特定な水系をやっていくだろうと思います。利根川でありますとか、木曽とか、淀とか、筑後川という限定された水系で工事をやるんじゃなかろうかというふうに予想されますが、そこの際の多目的事業については公団でやる。それ以外は、これは従来通り、特定土地改良特別会計で国営土地改良をやっていくというような考え方でおるわけでございます。
  53. 北村暢

    北村暢君 私は水資源開発公団と関連しての質問をいたしたいと思っておったんですが、時間がございませんから、この豊川の問題について一、二点だけお伺いして、きょうは質疑を打ち切りたいと思うんですが、この豊川の私の先ほどの二、三年と言ったのはだいぶ違うようですが、残りが三分の二くらい残っているわけですね。それが今度は愛知用水が引き継ぐということになりますと、国営県営団体営事業公団が系統的に事業をやる。しかも、工事のスピード・アップをする。非常な変わり方をするわけです。従って、従来の事業計画等についても根本的な改訂をしなけりゃならぬ。いわゆる事業基本計画も、この法律が通れば直ちにとりかからなけりゃならない。このようなことになるわけでございますが、大体この事業実施計画基本計画、こういうもののあらましでもいいから、この次までに一つわかるようにしていただきたい。  それからもう一つは、国はそのまま引き継ぐからいいわけですが、県の場合は、法律によって県と協議をしてきめる。県営事業を引き継ぐか引き継がないかという問題も出てくるわけでございますが、愛知用水と同じように従来の国営事業でやっていたものと非常な条件が変わるわけですから、受益者負担というようなものについても変わってくるのじゃないか、まあこのように思いまするので、実際に受益地区の地元民なり何なりというものにやはり相当納得がいっていないというと、事業そのものは非常にスピーディになりますけれども愛知用水等の実施の経過から見ても、用地の補償の問題なり何なりで非常に手間をとったという経験なんかもあるわけでありますから、こういう問題についてどのような形でスムーズに引き継がれるのか。この点について一つ資料で出していただきたい。  それから、愛知用水から豊川に切りかわった場合に、公団の人員、それから従来国営事業として実施をしておった人員、これがどのように変わっていくのか。この場合、従業員の整理その他配置転換というようなものでだいぶ前から苦労されてやっておったようでございますけれども、これがどのように解決をしたのか。大体問題なくいったように思いますが、どのように解決されたのか。まだ問題は残っていないのかどうなのか。こういう点について一つお尋ねいたします。
  54. 伊東正義

    政府委員伊東正義君) あとの方から申し上げますが、今度豊川事業を引き継ぐことによりました人員の関係でございますが、豊川の国営事業と豊橋の開拓関係で約百三十人の国の職員がおります。これは定員内その他常勤等含めてでございますが、この人たちにつきましては、私どもは、極力諸君の希望をいれるから、たとえば、公団へ行きたいとか、あるいは本省に行きたいとか、あるいは名古屋の事務局に行きたいとか、どこの事業所に行きたいという希望を出してほしいということを言いまして、これは全員出してもらっております。一、二まだ解決しない人がありますが、これにつきましてはほとんど大部分希望をかなえられるというようなことになるだろうと思っております。ただ、まだ現実に引き継ぎが動いておりませんので、全部こう終わりましたとは申し上げかねますが、国の職員につきましては大部分はもう希望通りになるというふうに私は思っております。また、そういうふうにしたいというふうに考えています。  それから公団の方の関係でございますが、これは三十五年末が七百七十人という人がおられたわけでございますが、これが三十六年度末、来年の三月までには五百三十人という定員になっております。二百四十人ばかり定員が減ることになります。これは五百三十人は東郷調整池を作る人でございますとか、できました施設を管理する人とか、あるいは豊川の仕事をする人を入れまして五百三十人でございますので、二百四十人ぐらいの違いがございます。そのほかに豊川から公団に行くという人もございましょうから、大体二百八十人ぐらいという職員の人を目標にしまして公団と私の方で国なり県なりあるいは一般の民間の会社なりというところに再就職のお世話をしましょうということで、公団と私の方で連絡をしてやっております。実は現在まで四十数名の人が国に帰りましたり県に行ったりあるいは一般の会社に就職したりというようなことをやっております。それで私の方といたしましても公団の人の再就職の問題につきましては、これは公団と一緒に責任を持ちまして一つこれは解決したい。あるいは水資源の公団が将来できまして、三十七年度以降から仕事をするというような場合には、また愛知用水公団でやめた人の中でも希望があれば優先的にまた考えるというような、いろいろな方法をとりまして、何とかこの問題は円満に解決したいというふうに考えております。  それから、資料の御要求でございましたが、なるべくこういう順序を踏んで引き継ぎはこうなりましたということをはっきりしたものを出したいと思います。ただ基本計画実施計画でございますが、これは実は水の量、水量計算の問題でございますとか、あるいは工業用水あるいは上水道に幾らやるかということで、アロケートを幾らするかというようなことが実はまだ解決いたしておりません。これは早急にやる必要がございますが、まだそういう問題が残っておりますので、基本計画としてある程度固まってこうだと申し上げる、二、三日中にそういう資料を出すまでには私は至らぬだろうと実は思います。実施計画はその後でございまして、これは公団の方も今、来月末の通水を控えてもう忙殺されておられますような関係で、まだ実施計画というようなことまで至っておりません。これは基本計画を国が作りまして、それに基づいて公団が作られるわけでございますので、これも若干先生の御期待のようなものは、実施計画については特にむずかしいのじゃないかというふうに思いますが、現時点でできる限りの資料を作りまして近いうちにお配りいたしたいと思います。
  55. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 本案については、本日はこの程度とし、午後は一時半から再開いたします。  それでは休憩いたします。    午後零時二十三分休憩    ————・————    午後一時四十八分開会
  56. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、以上三案を一括議題として質疑を行ないます。  御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いします。
  57. 清澤俊英

    清澤俊英君 まず初めにお伺いしたいことは、先般私が質問いたしましたことなんですが、八条、九条に関する問題ですが、これの報告に対する要綱をちょうだいしておりますが、その後八条の問題について報告の責任を政府はとるかとらないか、こういう問題でだいぶこれが問題になりましたですね。それで責任はとらないが何らかの処置をとると、こういう大沢さんの話と、それから小林君は、あなたがラジオの放送において対談かなどにおいて、もし見通し等に誤りがあれば責任を持つと、こういう御発言をなさった。こういうことで、たしかこれは小林君によってまだ保留してあると思うのですが、そこでちょうだいしました資料を見ますと、どういうわけでそういう問題が出てくるか、ちょっとわしにはわからなくなってきましたことは、そういう見通しというものはいろいろ出しますが、しかし需給の見通しはするが、それに対しては農民農業事業者の生産物の選択に役立たせる、こうなっておる、選択は事業者自身がやることなんですがね。そうすると、ああいう議論が起きたのは、どこから起きたのか、私はよう要領わからないし、大沢さんがそれに対していろいろ言うておられることは、どこからああいうまあわき道、私から言わしめればわき道にそれた議論が出てきたのか、その点明らかにしていただきたい。
  58. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 御疑問の通りだと私は思うのですが、非常に極端な場合を考えてみたならば、こういう場合があるかと思います。たとえば政府が需要の見通しをすると、それから生産見通しをする、その見通し通りの生産が行なわれたにもかかわらず、非常に値くずれをしたというような場合は、あるいはそういう問題が出てくるということがあり得るかとも思いますけれども、一般的には清澤先生おっしゃる通りに、政府は需要の見通し、生産の見通しをいたしまして、それを見て農業従事者の方は自己の判断である物を作り、ある物を作らないということをされると思いますので、本来ならばそういう問題がないということも言えると思います。
  59. 清澤俊英

    清澤俊英君 その問題につきましては、あとで関連でいずれ出ますから、そこでいま一度お説に対しては反復して少しお伺いしてみたいと思います。この問題はそれで一応打ち切ります。  次に、今あなたのお話では、価格がくずれたとか、いろいろなことがある、こう言われた、これを見ますと、大事な価格問題は一つも出ていないですね。価格の見通しというものは、また容易にそれを見通せないと思うのでありますが、そういう値くずれで責任を負わなければならないというようなことはどこから出てくるのでしょうか。これを見ますと、どうも価格というものははっきり出ておらぬようです。
  60. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 生産見通しをいたします場合に価格をどういうように取り扱うかというお話だと思いますけれども、これは将来の価格を見通して生産の見通しを立てるというような方法もあろうかと思いますが、当面考えておりますのは、倍増計画あるいは基本問題調査会の答申ということでやりましたように、一応価格は一定ということでの見通しをするということになろうかと思います。
  61. 清澤俊英

    清澤俊英君 その問題はまたあとで、それだけお聞きしておいて、またいずれ関連でお伺いしなければならぬと思います。  次に、農林大臣でないと工合が悪いと思うのですが、二条の第一の中にある文句ですが、「農産物の生産の合理化等農業生産の選択的拡大を図ること。」というのと、どっかにもう一つの言葉で、農業の近代化と合理化をはかるという言葉があったと思ったのですが、何条だったか、関係条章を忘れましたが、この「合理化」と「近代化」という文字の使い分けですね、これは当然分かれておると思うのですが、「合理化」と「近代化」ということに対する区別を一つお願いしたいと思います。
  62. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 第二条の一項の第一号にございます、「外国産農産物と競争関係にある農産物の生産の合理化」という「生産の合理化」の意味でございますが、これは生産性を上げて生産コストを下げるというようなことも、合理化でありましょうし、あるいはまた外国農産物に対して、競争関係があり、対抗し得るものはこれを伸ばしていくと、あるいはまた生産地形成をして合理化をするとかいうようなことを、まあ合理化と、こう言っております。それからあとの方の、農業経営の近代化、これは第二条の一項の三号にございますけれども、ここで「農業経営の規模の拡大、農地の集団化、家畜の導入、機械化その他農地保有の合理化及び農業経営の近代化」と、こう書いてございますが、農業経営の規模を拡大して、機械等の資本導入を十分備えた生産性の高い経営にするということを農業経営の近代化といっておるわけであります。そういうことでございます。
  63. 清澤俊英

    清澤俊英君 それで、私は今のお話からいきましても、合理化の中へ近代化が入るのじゃないかと思う。中へも近代化というものは入れて考えてよろしいと、こう思っておる。だがしかし言われる通り合理化と近代化というものは全然意味合いが違う、こう解釈しておるのですが、どうなんです。私はまあいろいろ言われるけれども、合理化とは選択拡大等にいわれているいわゆる生産調整を意味しており、近代化は生産上の手段を意味しておるのだと、こう解しておるのですが、その点はどうなんです。
  64. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 第二条の第一項第一号でいっておりますことは、農業生産の選択的拡大と生産性の向上をするということで、生産関係のことをいっておりますが、第三号でいっておりますのは、そうした農業の生産の選択的拡大、それから生産性の向上ということをやる場合のにない手としての農業経営の問題をいっておるわけで、その農業経営が近代化する必要があるということをここで扱ってそういうふうにいっておるわけであります。
  65. 清澤俊英

    清澤俊英君 だから二条の場合を考えます場合にも、生産性を向上していくという近代化を行なっていくについても、結局すれば、生産拡大には生産の調整が要るでしょう。選択拡大ですから地域的の調整も見なければならん。農業内調整もあれば、いろいろ五項目か六項目の調整項目があるでしょう。そういう調整を意味して合理化等を考えて、その上でいわゆる生産性の手段の近代化をうたってあるのじゃないかと、こう私は言うておる、そうお聞きしておるのです。あまりめんどうなことを言わないで、ちっとは勉強しておるつもりですから、もっと簡単に言っていただいた方がわかりがいいですよ。
  66. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 第二条一項一号の「生産の合理化」というのは、農業生産の選択的拡大の一つの内容として例示がしてあるわけでございます。そういう意味で選択的拡大をはかる農業のにない手は、しからばどういうものかということの観点から、第三号は「農業経営の近代化」と、こういうふうに考え方を書いておるわけでございます。
  67. 清澤俊英

    清澤俊英君 それじゃ私の言うこととどこか別のところがありますか。
  68. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 先生の言われる意味が必ずしも私ははっきりとれないものですから、私の方での考え方をそういうふうに申し上げて、そういうことでよろしいというならば、先生の御意見と一緒じゃないかと、こう思います。(「名質問と名答弁だ」と呼ぶ者あり)
  69. 清澤俊英

    清澤俊英君 いま一つ、同じことを繰り返したってしょうがありませんから、これでやめますが、そこでお伺いしたいのは、第九条だかと思いますが、九条にいって今の問題がちょっと引っかかってくるんじゃないかと思います。第九条に参りますと、「国は、農業生産の選択的拡大、農業の生産性の向上及び農業総生産の増大を図るため、前条第一項の」云々と、こうなっているのですが、総生産というものと選択的拡大と合理化と近代的な生産性の向上ということは、施設による生産性の向上ということは一致しないものじゃないかと、こう思っている。それがここにも「農業総生産の増大を図るため、」云々と、こうある。これはいろいろ答申等を調べてみますと、そういうふうには書いてないように思いますので、一応御質問しておきたいと思う。これ、どうその点と一致しているのか、選択的拡大。私は、だから、選択的拡大をやっていくためには、農業生産の合理化というものが考えられる。合理化の上に立って近代的生産手段をやっていくんだ、こういうふうに解しているので、そうしますと、ここに出ました九条の「選択的拡大」、「農業の生産性の向上」、これはわかっています。「農業総生産の増大を図るため、」ということは、選択的拡大とどうなる。選択的拡大ということは、あなたの御説明通り、減る物もあればふえる物もある、あるいはこのままの価格では拡大していかない品物もある。あるいは同じ生産性を上げるということよりも、コストを下げて外国品と競争するというような場面が出てくる。いろいろなそこに場面が出てくると思う。それらを調整して、それに対応する選択的拡大を近代的な農業整備をもってこれに追いつく、だから総生産を上げるということじゃない、こうわれわれも解釈しておるし、また、答申等におきましても、そういう解釈は出ているのであります。それから農業基本法で一番骨を折ったと思われる、小倉君が最近何かの新聞でちょっと書いたやつを見ますと、市場の変化に応じて合理化をはかれという、こういうものを書いていましたね。それを見ましても、こういうことを言うているのです。農業生産を拡大しようとするものである、従って、それは総花的増産や、自給度の向上とは異なった観念である。従いまして、総生産ということは否定してある。それから基本法の中の答申といいますか、何ですか、あの中にも、私の持っているやつでは、やはりその点を、まあちょっと触れているようでありますが、二十三ページには——これは前の方に一つあるのですが、「国民経済における役割と調和させつつ実現するためには、生産性の向上が重要であることはいうまでもない。食糧その他の農産物の単なる増産ということは、少なくとも今日では、対策の基本的方向たりえないであろう。」、こういうふうに書いてある。だから、ただ単なる生産の増大ということは考えておらない。それからその次の場面に出て参りますのは、「国内需要のうち輸入に依存する割合が高いか、または農業総産出額に占める割合が低くしかも国際的に割高な農産物については、増産よりもコストの低下を図る(たとえば小麦、大豆となたね)。」、こういうような物にはやはり生産を縮小していかなければならぬという考え方が盛られておる。しかし、選択的拡大ということ自身が、否定的にそうなって、ただ、むやみやたらに生産を上げていくということじゃないのであります。さらに、ここに九条に、「選択的拡大」とはっきり書いて、「農業の生産性の向上及び農業総生産の増大を図るため、」と、こうある。わしにはわからぬ。
  70. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 御質問の意味は、第二条の第一号と第二号にも関係があると私、思うのでありますが、第二条の第一号で「選択的拡大を図る」と申しますことは、拡大のはかり方をどうするかということを述べているわけで、第二号には、選択的拡大の方向で生産性を上げ、「生産性の向上及び農業総生産の増大を図ること。」、かように書いてございますけれども、ただいま御指摘のように、個々の農産物についてどの物も、すべてをふやすのだ、総花的にふやすのだというような方向ではないわけです、選択的拡大というのは。しかし、需要に見合った物をふやしていく、しかし、需要のない物は減らしていく、しかし、農業総生産全体としては拡大をしていくのだ、そういう意味で選択的拡大、生産性の向上、そういうことによって総生産は拡大をするのだ、増大をするのだという趣旨が第九条にも述べられておるわけであります。
  71. 清澤俊英

    清澤俊英君 どうもわからないな。ややこしい文字がちょいちょい使ってあるので、全くわれわれのような頭の悪い者が解釈していくのにはとまどっちゃう。選択的拡大、農業生産性の向上、これで済むのだと思うのです。それをわざわざ「農業総生産の増大を図るため、前条第一項の長期見通しを参酌して、農業生産の基盤」、こういう文字を使っておられる。それからまた、あなたのくれられた「需給調整見通し」の中にもやはり「総生産の拡大」、こういう文字が使ってある。あなたの今おっしゃったことは、どうもわざわざめんどうなことを書いてそうしてなにせられるが、書いて、どうもまぎらわしいものが多いと思うのですが、これはあなたがしたわけじゃないけれども、そういうことが非常に多いのですよ。だから、これは総花的の増産ではなくして、選択的拡大をやった、その上に立って増産をしていく、こういうことになるのですか、そう解釈していいのですか。
  72. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 大体そういうことだと思いますが、具体的に、具体的にと申しますか、例をあげて申しますならば、農業総生産として、その中のたとえば麦、大麦、裸麦というようなものは今後生産額が減っていく。しかし畜産物というようなものは非常に生産額が伸びる。ある中で減るものもあるけれども、ふえるものもある。しかし農業総生産として、トータルとしてはふえていくんだ。たとえば倍増計画の数字をごらんになれば、あの中で麦は減る、しかし畜産はふえる、米は多少ふえる、しかし全体としては生産額は五割程度のものがふえるというようなことになっておるわけですが、そういうことが選択的拡大によって総生産も増大するのだということを意味すると、こう思います。
  73. 亀田得治

    ○亀田得治君 ちょっと関連して。今の倍増計画のその数字をおっしゃったわけですが、その点の考え方は、大体農林省も一緒ですか。
  74. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 倍増計画の生産見通し、これが一応あるわけですけれども、農林省は基本法通りました暁、第八条によって需要生産の見通しをやるわけであります。私申し上げたのは、おわかりやすい例になりはしないかという意味で、たとえばあるものは中で減るんだけれども、あるものはふえる、全体としては五割増しになるというような一つの例として申し上げたので、倍増計画が即今後私どもが農林省の見通しをやる場合、あのものになるということではございません。
  75. 亀田得治

    ○亀田得治君 もちろん、農林省としては本法ができた後に新しい立場で見通しを立てるわけですが、倍増計画のあの数字も、やはり農業関係の専門家の諸君が検討した結果出したわけですから、私は何もその一分一厘間違いないかといったようなことを申し上げているわけじゃないのでして、大体あの生産の見通しというものは、是認されていいのかどうかという大まかな気持で聞いているのですがね。
  76. 大沢融

    政府委員(大沢融君) あのままの数字を是認するしないは別といたしまして、今後見通しを立てる場合に有力な参考ということにはなろうかと思います。
  77. 清澤俊英

    清澤俊英君 ちょうど今また見通しの問題に入りましたから、見通しについてちょっとこの際疑問の点をお伺いしていきますが、これからの選択拡大を中心にした需給の見通し、それから生産構造の見通しというようなものをやります際に、この基本問題調査会の問題と基本対策というものにも、あるいは企画庁の農業近代化小委員会の問題点の指摘にも出ておらない最近傾向が出てきたと思うんですが、その点についてどうお考えになるか。ということは、農業内部の格差、農業内部のいろいろな食い違いというのでなくして、最近農業の経営の中に完全なる資本体系の企業体系が入ってきているのです。こういうものがぼつぼつわれわれの目へ入ってきておる。新聞で始終見ます。こういう見通しと、これの将来の発展と見通しは、まあ今言われておるのは養豚の工業化であるとか、もう豚を飼うなどは農業ではないんだ、あれは工業なんだ。鶏なども工業なんだ。しかも飼料から独占的な建前をとって、生産業者が陸に上がってそして大資本を通して養鶏を始める、飼料と結んでですよ。あるいは養豚がそういう形でもって大資本と結んでどんどんと入ってくる、工業化される、こういう場合に非常に今養鶏熱というようなものは相当の一千羽養鶏とか、三千羽養鶏とか、二万羽養鶏とかいうことで農村の中に急激に進展をしているとき、こういうものがどんどんと出てきた場合に将来どうなるのであるか。こういうものはまあおそらくこの農業問題の基本問題を検討しておられたときは、まだそう大きく問題化されなかったと思うんですが、だからそれに対しては触れている人はない。それと、そういう形が出てくると同時に、これは早晩農産物の加工、水産物の加工等がそういった形でまあ出てきます、おそらくは相当の力で出てくると思います。そうした場合にこの間も大臣が答弁しておられたが、これから農村には農民をして、あるいは農協をして加工工場を作るんだ、こういうようなことを言っておられた。この詳しいことについてはまあ北村君がいろいろ資料をもって調べておられますから、あまり詳しいことは私は申しませんが、私の感覚からしたならば、こういうものが出て参りました今日においては、そういう考え方について一つ徹底的にメスを入れて考えてみる必要があるのじゃないか。これはいずれ価格問題に触れた流通の際にも、私は流通機構に対して一応考えてみたいと思うんですが、流通機構におきましても、価格問題を中心にした流通機構も価格対策としてはいろいろありましょう。ありましょう中で、市場構造の問題、流通構造の問題、これは市場構造即流通構造かもしれないが、最近はそういう形をとらない。だんだんと加工業を中心にした系列化が進んでいる。もう市場の役は要りませんよ、系列化ということになれば。大資本が自分の資本を中心にして仲買いから末端、小売そういうものを系列化していくというようなものが出てきて参りましたとき、はたして小さいカン詰工場を作ってみたり、小さいところの乳製品の加工工場を作ってみたり、ソーセージや、ハムを作ってみたところが、これらはもうとうてい販売機構において太刀打ちできる道具じゃない。この間も東君が総理大臣に質問しました。農民一つ、ビールを作らせたらどうだろう、こう言いますと、私は酒屋なんだからビールのことはよくわかっています。それは危険だからやめなさい。五十億や百億の金じゃできないんだからそれは一つやめたらよかろう、なかなかビール一つ作ってそれを売るということになったらもう大へんなものなんだからおやめなさい、こう言っておられる。これはビールなんというものが徹底的に一つの系列販売になって猛烈な戦いをしている。酒で長い伝統を持ち、名高い宝味醂などが系列化された販売機関を持っておっても、ビールを始めてなかなかうまくいかない。これだけの中へ簡単に工場分散の農民加工工場を作るとか、あるいはそういう情勢を少しも考えないで、さあ鶏をやれ、これは畜産の四倍か、三倍だからそういうものをやれ。豚を飼え、こういってみましても、この見通しによりましては、また再び大きな農民に犠牲を払わせるのじゃないかと思われる。こういうことについてどうお考えになっているか。最近の傾向について。
  78. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 一つは、身通しを誤まらないようにしなければならないということだと思いますけれども、大資本の進出と申しますか、資本が農村へ進出する問題につきましては、これはまあしばしばお話が出て、今のお話のように、総理のお話もございましたし、あるいはまた農林大臣のお話もあったのでございますけれども、結局資本が出て来て農村に落ちるべき利益をそれがさらってしまうということが一番問題になるわけでございますから、基本法の十二条にもございますように、協同組合が出資をするとかその他の方法によって参加をするというような考え方を出しておりますが、結局この問題はたとえば原料を買いたたかれないようにするというような、いわば協同組合側、農村側でそういうものに対抗するような力もうけていくということが一番大切なことになってくると思うのでありますが、そうした方向でいろいろ対処をし、さらにまあ事態の発展によっては、何らかの新しい措置も検討してかからなければならないということではないかというふうに思います。しばしばお話が出て大臣等からお答えがあった問題でありますが、そういうふうに考えます。
  79. 清澤俊英

    清澤俊英君 いや、ね、この法案の中にもあるでしょう、農産加工の推進というようなことはね、何条かにちゃんと。これは中間マージンが高過ぎるとか、取られ過ぎるとか、あるいは自分のものを加工してなるべく多くの利益が手元に残ると、こういう考え方はもう一般的な通俗的な考え方です。しかしながら、それはもう過去幾度も繰り返されて、今日のごとく大きな商業的な資本あるいは、もう独占的な資本までが乗り出してきておらない時期においてもなかなかその商売の筋というのですか、販売網というのですか、いろいろそういうものに農民がやることには欠けるところがあって、そして方々で失敗しているのだ。まあ私は、新潟県などでも幾つでも失敗してきておる。きょうちょっと新聞見ますと、新発田にありますところのカン詰工場で、これは山形県下の、山形のN食品が新発田市付近の果樹園地帯を目標としてサクランボのカン詰をやる。これはおそらくは山形のサクランボで、もう相当の販売網を持ち、そしていろいろな経験を経た商人が乗り込んで来るのだからこれは成功するだろう。ところが、新しい工場かと思って見ましたら、これを農民がやって失敗している。これを買ってやっている。堀ノ内のカン詰工場がやはりそうなんです。牛乳を中心とした工場がやはりそうだ。きょうは植垣さんがおられませんからいいようなもんですが、何としましても、これは乳製品なんかやりましても、森永や明治とタイ・アップしませんければ、とうていやっていかれない。乳がちょっと余ったときにはどうにもできない。このときには何ともしようがない。こういうようなことで、しまいには明治や森永と手を握らなければならない。あるいは名古屋精糖を中心にする協同乳業かあるいは雪印か、こういったような三大ミルクを中心にした、もう独占がはっきりと成立しているのです。そういう中でいたずらに、いたずらと私は言いたいのだ。戒めてこれを、まあそういうことをやってもなかなか今めんどうだからといって、戒めてやるか、それに対応した形をもっととらせる建前を考えていくか、そしてそこへ誘導していくためには、相当の財政投資でもやって補助育成をしてこれに対応していくものを作っていくか何か考えなければならないと思うのだ。こういう点に対してごく簡単に、この間うちから……、だから農林大臣いなければ応答できない。
  80. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) いや、今すぐ来る。
  81. 清澤俊英

    清澤俊英君 農林大臣はその問題につきましては、非常にそういうものができることが好ましい状態であるというがごとき説明をしておられる。あるいは農村に順応して農協等をしてそういう加工業に従事せしめることが農村加工として一つの工業分散の方法であると考えておられるようである。私はこれはもうよほど十分な企画のもとに検討をしていただかなかったならば、重大問題をこれからまた先起こさせると思うのです。特にまあ農協のもう向こう側には大幹部諸君がずっと並んでおられるが、いわゆるこの間の農協の整備問題が出たとき、大体当たってみると、工場経営の失敗のあとが多いのです。成功したものはごくわずかです。成功の率よりも失敗の率の方が多い、そしてこげつき資産を出しておる。こういう点に対して私は率直に研究が足らぬなら足らぬ、率直にやはりそれは話してもらわなければならぬ。ああでもないこうでもないといって弁明だけが中心でやられたら、こんなに一生懸命出してわれわれは研究してきて話する必要はないのだ。あなたの弁解を聞いているのではないのだから、よりよくしたいと思って聞いているのだから。
  82. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 従来、小規模な農産加工であるというようなものが組合の形ではあまりうまくいかなかったということの点には、いろいろ問題があろうかと思いますけれども、組合で機動的な動きができない、あるいはまた技術ですとか販路ですとか、あるいは資本不足とかいうような問題があったらと思います。そこで従来農産加工というようなことを考えます場合にも、従来のような同じような形を繰り返えして失敗の歴史を繰り返すというようなことは慎しむべきことだと思います。そういう意味で、たとえば全販連等で共同出資をして大きなカン詰工場を作るというふうな話があるようでありますけれども、そうした大きな形で資本参加もし、あるいは役員も送り込む、あるいは原料供給の面で長期的に結びつくというような形で従来の共同組合でやった農産物加工というような失敗の歴史を繰り返すことなく、そういうことをやった利益は農村にも確保できるようにという新しい方向でいろいろ物事を考えなければならない、こういうふうに思います。
  83. 清澤俊英

    清澤俊英君 これは農林大臣にもちょっとお聞きしますから、これはやめます。  その次に農業近代化というて、近代化、近代化といわれるが、近代化という言葉を私どもはおもてから取る場合には機械をいろいろ使ったり、あるいは農業整備を、技術整備をやって生産の向上を考えてみたり、あるいは農業基盤の整備等を徹底的にやって生産基盤を固めていったり、こういうようなことを意識的に行なっていく、こういうふうにとられておりますが、それ自体はほんとうの目的はどこにあるだろうか、こうまずお伺いしたいのです。その目的はどこにあるだろうか、近代化するという目的はどこにあるだろうか、機械を使うことだけじゃないのだ私はそう思う。近代的な学術、技術等をただ取り入れるだけのことじゃないんだ。そこには近代化の目的というものが明確に私は表われなければならない、こう考えるのでありますが、その目的は何ですか、近代化の目的は。
  84. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 第二条の第三号にございます農業経営の近代化、その近代化の目標は何かということ、意味は何かという……。
  85. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうでございます。
  86. 大沢融

    政府委員(大沢融君) そういうことだと思いますが、今後選択的拡大の方向で生産性も伸ばし、さらに総生産も拡大をしていく、そういう方向で農業が動く場合にその農業をになう経営が今までのように、たとえば規模が小さいあるいは農地も分散して極端な場合には非常にたくさんの所に分散して散在している、あるいはまた農村に滞留している過剰労力が非常な過当な形で労働力がつぎ込まれている。あるいはまた機械化も十分でないというような経営であってはならないわけで、そういうような点を改めて近代化をして、近代的な経営で新しい農業をになわせなければいけない。こういう意味で農業経営は近代化をしなければいけないということを考えておるわけでございます。
  87. 清澤俊英

    清澤俊英君 そうすると、それを言いかえますとね、農業近代化の主要なる目的というか、ほんとの目的は現在の零細な農業中心とする要素を克服して、今日の農業構造を変えて、そうして改革して現状を打破するということですね。現在の経営形態を打破していく、そうして別の体系に入って、その近代化されたことによって生産は増大する、所得は増大してくる、あるいは余った人間は他へ出ていく、あるいは次の生産の労働力を高めていく、高めるためには次の生産を、余った労力でまた別のものを始めるとか、こういったようなことをやることと、同時に私は第二条にやはり関連すると思うが、農村における、あしたに星をいただき、ですか、夕べに月を踏んで帰る、などというあのばかな労働状態をもやめて、正当な、労働者が楽しめる労働時間で事が運べるところの近代的な農民に、いわゆる農業従業者になり得る姿が私は近代化の主要点だと思いますが、あなたのおっしゃることとさらに変わりはないと思うのですが、どうなんですか、それで差しつかえないでしょう。
  88. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 経営も拡大し、あるいは機械化をする、家畜も導入するというようなことをやり、一方土地につきましても、今の零細土地保有を直して農地の集団化というようなことをやって、いわゆる構造、いわゆると申しますか、ここに書いてある構造改善をやるわけです。そういうふうにした場合の農業のにない手は、おっしゃるように他産業の従事者と均衡のとれた生活ができるような所得も確保できるという農業経営になろうかと思います。
  89. 清澤俊英

    清澤俊英君 ここでちょっと問題の、ここに出てきますことは、この法案の中心にした考え方である自立農家の育成という問題ではないかと思うのです。はたして自立農家を育成することによってそういう発展が次から次へとやっていけるかどうか、これは非常に私は問題だと思うのです。今のままにおきましても、農業はまあ固定的な前時代的な生産体系をとっているのですから、それを近代化していきましても二町五反くらいの農業経営であっては、そこでまた頭がつかえていくのではないかと思う、この点はどうですか。
  90. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 自立経営によって生産性は上がらないじゃないかという御質問かと思いますけれども、私どもは自立経営も、この間もお話がございましたように、二町五反というような固定的には考えておりませんし、また他産業の発展の状況によって弾力的にどういう規模のものかということでなければならないと思いますが、それだけでなくさらにそうしたものが個々の経営は独立でありましても、協業によりまして、たとえばこの間もお話申し上げましたが、大きなトラクターを共同に買って、それで耕耘もするというようなことで、生産性もさらに高め、所得もさらに増大ができるということであろうと思います。
  91. 清澤俊英

    清澤俊英君 それは一町歩でやりますよりは三町五反という一つの天然資源を持ちますれば、これはあなたの言われるようなことは、あるいは一応はできるだろうけれども、それはある程度までいったら手一ぱいになるんじゃないかと思う。発展性はそこで終わりじゃないか。農業の発展はそんなものではない。もっとずっと上までいかなければならぬのです。だから私は農業の近代化ということを考える場合には、まず資本主義時代なんだから、われわれ場合によりましたら農業の企業化までも考えていいと思う。現に先ほども問題にしました通り、もう農業の中に企業化が入ってきた、一歩を踏み出してきた。企業化が入ってきたでしょう。大資本を通して、そして鶏に十何億をかける、豚を飼うのに十何億かけるというような企業化が進んでおる。これは資本だけの投資であって、自分が経営するのでなく、豚を飼うのではなく、農業を営むのではない。こういうものと特約をやったり、あるいは人を使ったりして一つの企業体系に入っているものも出てきておるのだから、そのとき二町五反やそこらで足踏みができるかできないか。もう一歩進んでいくには、私はやはり日本の農業自体の特質としてそういう企業化ができなければやむを得ない、共同というような方向を進めてもっと高度に進み得る道を開かせることが私はあたりまえじゃないかと思う。だからやはりこの答申の中にも、もうここまできた以上は、自由にいかした方がいいじゃないかという、土地問題あたりに対しても議論が出たと思いますが、今のような制約的な自作農などはやめてしまって、もう自由にしたらいいじゃないかというような議論も出たと書いてあります。これはほんとうの資本主義下における近代化ということになれば、資本主義構造に進んでいくことがあたりまえの話だと思う。それでは日本の現在の農業としてこれは私は成立しないと思うし、一大混乱に入ると思う。従いまして、われわれといえどもそういうことは考えておりません。そうしてみますならば自作農を中心とする限られたある限度までいって、二町五反でもってそんな耕耘機などを使いますか。頭打ちしてしまうのだ。こういうことができないその体系がはたしていいのか悪いのか。私はそういう形でもって一体一つこの農基法の精神と矛盾を来たしておるのは、この法律の一番矛盾を来たしておるのはこの二町五反の自営農家の育成だと思うのです。私は何もそれを悪いとは言うておりませんよ。今すぐそんなことをやれと言っても、それはできるものではありませんから、それをまっこうから否定はしておりませんが、考え方としては、そこで足踏みすることが誤まりであって、もう一歩先の指導をしていかなければならないのじゃないか、こう思うのですが、その点どうなんですか。
  92. 大沢融

    政府委員(大沢融君) おっしゃるように、二町五反ということが、かりに自立経営の目標でありましても、そこで足踏みをするわけでは決してございません。それは基本法にもございますように、協業の形で大規模と同じようなやり方、生産性を上げる方法があるわけでございまして、そういうことで、さらに発展をさしていくということでありましょうし、さらに自立経営の規模というものも、また農地法で考えておりまする自家労力、家族労力を根幹としてやり得る規模というものも、技術の発展等によってはもっと大きなものになりましょうし、また他産業の発展に従って他産業の従事者の生活が向上すれば、それに均衡のとれるような規模にさらに持っていかなければならないという意味でも、自立経営の規模は、二町五反というようなことじゃなくて、もっと大きなものとなるということも予想されますし、それだけじゃなくて、さらに協業という形で発展ができるわけです。
  93. 清澤俊英

    清澤俊英君 いずれそう言われるに違いないと思いますけれども、この法案自身の雰囲気から見ますると、自作農が中心なんだと、だれもそう言っているのです。政府案としては、自民党案としては、自作農の自立農家の確立を中心にしているし、社会党案としては、共同経営を中心にして出している、こういう批判になっています。これはまあ世間一般の批判としましても、自立経営というものが将来の農業の発展に対して一つの矛盾を来たしておるのだ、ここが大きなミスだと、こう言っております。社会党の言う共同経営は、今すぐできないのだと、これもあまり理想に走り過ぎているのだと、こう世間は批判している。しかしながら、われわれとしましても、社会党としても、あすすぐ全部それができると言っているのじゃないのです。これが将来の正当なる発展の方向を示めしているのだ、こういう形でやることが正しいのだ、こういう筋を出しているのであって、筋の出し方が違っているのじゃないかと、こう私はお伺いしているのです。農林大臣にこの点を一つお伺いします。
  94. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ただいま大沢審議官からお答えしておった通りでありまして、どうも話が食い違っているようなんですけれども、あなたのお話でありますると、二町五反では将来まただめになるんじゃないか、家族経営、自立経営農家というものでは、二町五反で先どまりになりはしないかというお話しですけれども、私どもが再三ここで申し上げておりますように、自立経営を中心として家族経営でやることが、現在少なくとも大部分の農家一つ希望である。それに対して、一つの目標がここに二町五反でできておりますが、かりにこれが一つできたとして、このものは別々に経営をやらなければならぬということは、一つも言っていないのです。あくまでも、さらに機械の共同利用ということによって、その設例に出てくる二町五反の農家が十人集まれば二十五町歩です。そういうふうな集まった協同組合なりが、トラクターを共同に持って、そうして耕耘については共同していく、またそれらの協同組合が生産物の加工工場を持ってやっていくということに対しては、相当大きな仕事ができていくのじゃなかろうか。これは現実にそういう姿が随所に見られております。それが全部どこもいけるとは思いませんけれども、すでにそういう姿が出ておりまするし、またそういうふうな形をさらに一歩進めて、田畑、あるいは機械、家畜等を法人の共有に移すという共同経営の姿までいくということがいいというならば、それらは個々の農家希望によって動いていったらよかろうというふうに思うのです。私どもは、全部それにやるのが理想であるから、全部それにやれということの理想をとらずに、まず第一着手としては、個々の農家が自立し得る形に家族経営でもってやれるという形で進めていき、それに対して近代化する、あるいは高度の技術を使う農業に進めていこう。その進めていく手段として、場合によれば、個々の農家が機械を持ってやる場合もありましょうし、あるいは共有して互いに使い合ってやっていくという場面がありましょうし、これは繰り返しますが、先ほど来申し上げておりまするように、共同の加工工場を持って、商品価値を増大して売るということもできるのですから、決して二町五反で先どまりになるとは考えないわけです。
  95. 清澤俊英

    清澤俊英君 それは考えてみたってだめなことです。二町五反では、一つの固定生産ですからね。二町五反では、これはおさまりがつかぬのです。次の段階に入っていく。そこで問題になりまするのは、この間からいろいろそれを緩和するための信託問題、農地の一部買い上げというようなことも言われておりますが、その中で問題として私は考えてみたいことは、われわれは長い間農民運動をしております際に、農民のひょうたん生活というようなことを言うのです。そういうことを、あなた方考えたことがあるかどうか知らぬけれども、これは農業経営上に非常な重要性を持つのです。昔の藩主の搾取にあってきた時代でも、ことにこのひょうたん生活というものが影響してくるのです。それは、固定せられたる経営面積と、その家族成員の問題になるわけです。耕地は不変であって、変わりがありません。それを耕作していく自立経営農家の労働構成というものは、これはしじゅう変わっているのです。その変わり方に一つの定率ともみるものがありまして、その定率をさして、農民のひょうたん生活というのです。定率というのは、どういうのかというと、かりに私ぐらいの年配のものがあったとすれば、そうするとせがれは五十ぐらいです。私や藤野さんだというと、五十近くのせがれがある。孫はもう三十近くになっている。まごまごいたしますと、私や藤野さんはろくに百姓はできない。病気をやったり、おだぶつになったり、いろいろなことをやっていきます。わしらまだ大丈夫かもしらぬけれども、大体の形はそういう形になっていく。そうして、その間において、今の主人の弟であるとか、あるいは娘なども嫁にやったりして、非常に金を使っている。借金を残している。ところが、おやじも五十くらいになると、そろそろ百パーセントの労働ができない。そうなると、三十ぐらいの者が中心になっていく。これから手の指を並べたような子供がずっと並んできている。四、五年もたちますと、これが一番食い盛りになってくる。働かせるのにはまだ四、五年の手間がかかる。こういう時期には、もう農村の家庭というものは最も窮迫したる形に入ってくる。それが五年か七年たちますと、われわれのような者はみんな片づいてしまう。おやじも片づいてしまうと、今指を並べて困った手合いは、初めから労働に従事せられる完全な清新はつらつたる大鵬や柏戸のようなやつがばかばか出てくる。こうなってくると、その農業経営というものはふくらんでくる。ふくらんだり縮んだり、縮んだりふくらんだりする形を持つ。こういう形の際に、昔ならこれはある程度まで私は維持できたと思うのです。非常に低い生産性であったし、激しい経済の中にもまれておらなかったが、今日のような生産手段が近代化されて、機械は使う、その機械も三年か四年たったら次の新しい機械ができ上がる、こういう問題が出てくる、農薬なども出てくる、肥料もだんだん変わってくる、こういったふうに投資がだんだん激しくなり、また技術なども高度に出てくる、土地の改良もしなければならない、負担金はうんと借金を残していかなければならぬ、こういうところでそういうつぼんだ形になりましたときは、私はもう自立農家というものはもたないのじゃないかと思う。私はこの選挙に古い友人のところに頭を下げに行きました、正直に言いますがね。ところが、選挙が済んで十一月の下旬にそこのうちに行きましたら、おばあさんとお嫁さんと十六になる中学校だか高校の一年だかの子供が畳を上げて米作りをしていた。それだから、これは何という騒ぎをしているのだと聞きますと、おやじはあなたが知っている通りもう七、八年前に死にました、これは十六の子供から見れば、おじいさんですよ、またその大事なせがれさんがことしの春死にました。それでだれもおらぬから、ことしは近所隣りから手助けを受けてようやくここで米を見ることができましたが、手おくれになってこの通りです。私はそのときつくづく思いました。来年はだめだろう、そうしてこれほど激しい今の農耕に従事しているとき、これはこのままで二、三年いったら必ず没落しちゃうのじゃないか、追いつかないのじゃないか、昔なら何とかもっていくけれども、と、こういう感じを深くしているのです。だから、自立経営というものを考えてみますときに、そうあなた方が考えるような簡単なものではなかなかいかないと思うのです、これが一つです。  それからその二つには、まあだんだんとそういう機械なども使って手もすくのだから、豚を飼ったらよかろうとか、鶏を飼ったらよかろうとか、牛を飼ったらよかろうとか、いろいろなことを考えられて、多角経営的な生産体系をとるようなことをいろいろ言われる。言われるけれども農繁期になれば人手が足らない、こういう時期が何べんもあるのです。だから、一年を通じて、家族経営でありましたならば、他の多角経営をやっていく労力の調整というものができません。一番重大なのは、私は、その労力を調整して、そうして農閑期といえどもこれを余らして多角経営に入っていくという形をとるには、共同経営が最もふさわしい形であると、こう私は考える、これが第二番目です。  第三番目には、これは一番問題になりますのは、そういった形がいいのだ、しかもそれどころではなく、これからの農業生産を進めるには、もう一軒ではだめだという考え方が強くなっているのです。これは北陸農業の方向というので、北陸三県か四県でいろいろ相談せられたらしいのですが、そこで出た結論というのは、もうブロック的な、五県とか大県が中心になって、そうして計画的な生産体系を立てるだけの大きな規模を持たなければならぬこれぐらいの形になっているときに、どうも自立経営というようなことで、それが中心になって将来行くのであるならば、もうそこまで来ているにかかわらず、そんなことを言うているのはおかしいじゃないか、これが第三点です。  それから第四点としましては、これにも指摘してありますが、そういうことをやっていく場合、一番困りますのは、農民の意識が低くあって、そうして生産外に土地の所有欲というものを持っていて、生産というものとはずれた別な執着を土地に持っている。だから、農民が土地がほしいということは、生産の手段のために土地がほしいということと、また別の目的を持って土地がほしい。これは長い歴史の過程におけるところの、農民が土地を持たないで、小作人として、あるいは農奴として、もうたたかれてたたかれた潜在意識がまだ残っているのだと思う。私が農民運動に入ったのは、自分の最も信頼する小作人がたまたま自分の親類に行きましたときに、その小作人が受けた侮辱であります。この小作人は、非常な忠実な、まじめな、よい、私としてはもう小作人とかなんとかという考えじゃない、出入りの大工さんということは極端ですが、それがたまたま少し酒に酔いまして口が過ぎた。そうしますると、何か村の区長か何かをやっている人が、何だ貴様居敷下も持たないでなまいきなことを言うなと頭からたたいてしまった。これが土地を持たない農民の悲哀です。こういうようなものがからんで、そうして土地に非常な間違った執着を持って今日おる際に、自作農を、自立農家を作るのだ、それを中核として、その次に彼らが考える次の段階に行くことが正しいのだと、それじゃこのテンポの早い現代の農業生産体系の変革期に私は間に合わないと思うが、大臣どうなんですか。私はやはり、最高の目標を掲げて指導誘掖をして行かれるのが、役所の、あるいは農林省の持たれる一番の役目じゃないかと思うが、役目が逆になっているのではないかと思われる。
  96. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) いろいろと実際についての御意見でありますが、まだ私はその時期でないと思います。というのは、私は、所により、地方により、あるいは業態内容によって、農業者が家族経営をやっておって、それをまた発展させるために、さらに協同組織による機械の共同その他によってより高い生産性を上げ、より高い生産をふやすということにするについては、これはちっとも異議はないのですよ。これははっきりと申し上げて、奨励もし、進めていき、それに対する財政金融措置もつけていこうとしている。さらに、先ほども言っているように、かりに二町五反の人が十人集まり、そうしてたんぼなんかを共有の形にして、そして自分らは形式的な労働者の形になって法人の田を作るというようなことになる。これは希望になってくれば、私はそれを助長していいと思う。ただ問題は、私はあなた方と同じように、実際家の話も聞き、実際に農村の事情も聞き、若い人の話を聞いております。この間も、4Hクラブの青年が全国から集まった話も聞いたが、その徹底した農業経営にまで至る問題については、よほど時期を考えなければいけない。いかなる分配方法をとるのか。ただ土地を合わせて、そして所有権あるいは使用権を法人に持たせて労働してやるというけれども、それは全部、土地を多く出した人も、少なく出した人も、できたものを頭から分配するのは、非常に少なく出した人はよくなりますけれども、そうはいかぬです。またそれに対して、土地の生産性の違いもありましょう。こういうふうな場合に、なかなかそこらの問題は、急に所有権なり使用権を移して共同経営まで入るということは、よほど考えて時期を待たなければならぬという、実際の運動をしているのを聞いております。  それから、お話しのように、頭から今の日本の農家というものは自立経営、家族経営では成り立たぬのだと言ってきめつけてしまうことも、私はこれはおかしいと思うのであって、そういう農家が、この間も申したように、八反を二人でやっておって百五十万円の粗収入を上げているというのは、面積だけでなくて、農業経営の実態というものが、清澤さんのお話しのように、牧場等を、共同入会の牧草地をこしらえたり何かして、一部を持ってるけれども、そういうことのほかに機械の利用、畜産の取り入れというようなことによってそういう実際の効果を上げてるんですからね。私一がいに両方きめつけてしまうのでも、私どもは今の段階において日本の農業者というものは、やはりあなたのお話しのような土地を離したがらないんだ、土地を持ちたいんだという話で、あるところでは耕作では自分の今までの土地でやっていって、これからふやす土地あるいは牧野なんかは共同で持ってやっていく、もとから持ってる土地は自分で耕したいという希望もあるのですね。だからそういうふうないろいろな希望に沿うて、協同組織による行き方なり、あるいは共同経営にまでいくのなり、それは進めていったらいいと思うのです。これはあくまで頭から綱をかぶせて全部を共同経営にすることが正しいんだ、こういうふうにきめてかかるのはまだ早いと私は思います。
  97. 清澤俊英

    清澤俊英君 これはまあ早いかおそいかという見通しの違いですね。だがあなたの言われるように非常に、大臣が言われるように部分的には成功しているのもあるかもしれない。しかし大部分の傾向としては、二町五反くらいの耕作をやりましても、なかなかうまくやれぬのが多いんです。最近こういう言葉が今はやっております。耕耘機などというものは、これは製造者の、いわゆる農機具者の耕耘機であって、農民から見れば、これは不幸運機だこれを買ったためにたんぼ一反売りましたなんてのができてくる。これは先々週の朝日ジャーナルをちょっと見ますと、ジャーナルが方々の農業経営の何を出しております。山形県で模範青年が三人ばかり寄って書いておりますが、とても三町ではこういう農機具の利子だけでも払いきれない、こういうことで三人で共同してやりましたが、前に言いました年寄りたちの土地の所有欲でついにうまくいかぬだった、こういう例も出ております。だからそういう状態ですからね、正しい、いいということならば、それを中心に打ち出されるのがほんとうの指導をすべきである。それを何も自立経営に持っていって、そこで頭打ちに気がついてからその次の段階に入るというような、これは農民に犠牲をしていることじゃないかと思うんだ。私はどうもその打ち出し方が気にいらぬと思う。こういう質問なんだ。
  98. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 今のあなたの言われたこと、私はちゃんと聞いてるんですよ。埼玉県でも一人々々耕耘機持っていて耕耘機貧乏やってますから、もっと安い金融して下さいというようなことで、そこで一人々々が持たないで、それでは五、六人あるいは農業協同組合の共同施設でもって使うように進めないかと、こう言ってるわけです。だから今お話しの点は、山形のそれは知りませんけれども、そういう場合に耕耘機を共同で持って、そして設備の共同利用ということで使っているのたくさんありますよ。だから自分に持つよりは、非常に負担は少なくて耕耘はりっぱに農業生産を上げてる例をたくさん知ってます。だからあなたの言われる共同経営まで持っていって、たんぼを法人に出して、自分の所有権を離してやっていくことまでいかぬでもできるじゃないかと、こう言うのですよ。そこで共同経営、共同経営というのはごっちゃにされてるけれども、私らはそういう前段における、耕耘機をみな共同で設備利用として持って使い合っている例はたくさん知ってる。それでうまくいってる。それを何もたんぼの所有権まで移していかなきゃ、いわゆる共同経営というならできないんだ、こういうふうには僕は考えないんですがね。たくさんの実例を知ってるんだが、そこのところは何か食い違ってるように思うのですよ。
  99. 清澤俊英

    清澤俊英君 大体食い違っていますね。大きな食い違いするのは、大体社会党は何か所有権も何もずっと出してしまうというように考えておられるけれども、ちょっとこの方を見てもらいたいな。社会党の農業生産組合法をごらん下されば、土地は所有権としてこれを投資に入れております。そうして私はこれは反対しているのだ、私は党に反対している。はっきり言います。だから党で作ったものには服従していきますが、私は個人としては反対しているのだ。執着に立っているのだということは、その投資に対して五分の利益配当をここにつけてある。これは間違いだ。こういうものはつけるべきでない、こういう私は議論を持っている。だけれど、何も個人の所有権までを全部否定もしておりません。否定はしておりませんが、その議論はあまり長くなりますから、そこのところはやめますが、そういう食い違いがあったら、これはなかなか解決しないのです。だから私の言うのは、ここの体系を言うているのじゃなくて、将来の農業の構成上の見通しとしては、自立経営というようなことよりも、もっと協業体を、これはあなたの方に一つ譲歩して、協業体をもっと進めて、こういくべきだ。こういう形がとられるならば、考え方によっては何も耕地の代償は要らないのです。利益というものを考えない以上は、耕地の代償は要らないのです。ということは、耕地をよけい出そうと少なく出しましょうと、自立経営でありましたならば、先ほどから私が言います通り、多角経営に限度がありますよ。これを投資しましたところの耕地というものの面積の差というものをなしにして、その上に立って全部が持ちます労働力を調整してこれをやって参りますならば、二町五反でできない一つの多角経営が重ねて作られるのだ、一つでも二つでもできる。こういうものを考えて参りますならば、私は何も耕地というようなものにそうこだわることは要らない。だから、旧来の観念があるから、所有権というものだけは確立しておいたらいいじゃないか、これは社会党の基本的な組み立て方です。私の言うのは、何も変わっていない。私の言うのは、こういう時代に自立経営をいろいろめんどうをして、これで一応農業のいろいろの今度の問題になりました所得格差なり、生産の格差なり、いろいろなものをそれで直していく、こういう考え方ではなく、いま一歩進んだものを明示して、いろいろなまだそこへいくにはめんどうがありますから、地域誘導していかなければならない、これが本筋じゃないか、こう言っているのです。これを私が一番痛切に感じましたときは、ここに秋山さんがおられる。秋山さんと一緒に三十何年度かの水害のとき、山形県に行きまして、天童市で畑地の交換分合が成功して、そうしてここいら一つのリンゴ、モモですが、こういったものを、共同経営をやっていまして、そうして非常に整備したる防虫施設などを持って、袋かけもやらないで、非常に頭がいいとみえまして、売り出しの製品ですね、これらが、一番くだもののないときのリンゴをねらって早リンゴ、私らが行ったときは八月のちょっと末くらいだったが、もう青いリンゴが出ていた。これは子供が待っていて買う。こんなまずいものを、一番売れ行きがいい。いろんな人が作る品物をたくさん作るよりは売れ行きのいいのがいいといってやっている。頭がいい。それで私が行きましたときに、いろいろ聞いてきたので感心したのは、土地交換分合を始めますと五カ年かかったと言う。あなた方の方でよく御存じだと思うのです。けれど言わしてもらいます。御迷惑でも一つ聞いていただきたい。何といっても、農民はこれは承諾しないという。それを進めようとしない。仕方がない、村の指導者とそれからこれを進めていこうという中心になる人が腐心の結果、学校の先生を仲間に入れた。そうして土地の交換分合をして共同生産の経営の利潤を、幻灯でもって子供に教え込んだ。四カ年間。それがだんだん大きくなりますと、親に向かって、こんな昔通りの、お前たちはそんな百姓をしているならおれは東京へ行く。ああやってだれかさんや村長さんの言う通りに、交換分合をしてみなやってくれるならば、おれはくにに残るんだ。この子供の発言力がしまいに勝って、そうして五カ年がかりで交換した。あんなにめんどうな桑畑とリンゴ畑の交換ですからね、これはなまやさしいものではないと思っとった。だからそれほどの準備と努力が要る。ただ、共同、協業というようなことは準備と努力が要ります。それを、まあ、農民がだんだんそういうような形になってきたらおのずからそういう形にいくとか、こういうことの道を開いてあるんだとかということでなく、もっと積極的に私は打ち出すのだ。この法案は初めから大臣が言われているでしょう。この法案は農業のこれからのあり方の方向を示すんだ、いわゆる憲法なんだから、その方向を示すとき、なぜにそういう打ち出し方をしないで、自立農家というようなものを中心に打ち出してあるのかというのが私のふに落ちないところなんです。
  100. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) いや、どうもふに落ちぬとおっしゃいますけれども、私どもの言うていることをよく聞いていただけば、ふに落ちて下さると思うのですよ。私どもは、ちょうどこれは法律の書き方ですけれども、家族経営、自立農経営というものを進めていくということは、いわゆる共同経営といいますか、あるいは今の協同組織による共同化というようなものを全部否定しているかのごとくにとられるのですが、そうじゃありません。これは、もう私ども産業組合運動等に若いときから従事しておりましてよくわかっておるのであって、個々の農家がたんぼを持って農業を営むが、あるいは機械設備を、共同利用の設備をして協同組合においてこれをかわるがわる使うという形の協同組織によるやつはどんどんやってよろしい。それがためには、いろいろな制度を私も関与して作り出したこともあります。だから、そのことを私は大前提として、もう当然の処置だと考えておりますよ。問題になるのは、その土地なり家畜なり機械というものを、自分々々の所有から離して、あるいは使用権を他の法人に設定させて、自分らが一つの法人の中の所有者となって動くという形は、これは地方々々によっていろいろ事情も違いましょうし、また、農民の先ほど申したようなこともあります。これはある時期がかかる。ことに、清澤さんの今おっしゃる通り、これはなかなか時期のかかるむずかしい問題で、これは急いではならぬけれども、そういうことにだんだん機運が熟し、やりたいというときには政府は助長もするし、もちろん、子供がようやく歩き出すときに、ここまでいらっしゃいというふうに母親が言うのと、子供の行こうというのとが一致して歩き出す。そういう意味においては、ものによってわれわれはモデル農場なんかを設置して、どういう形のものが一体協業経営としてやられるのか、共同経営というふうなことも研究はするわけです。だからそういう点は、農業者の希望あるいは意思と政府の誘導というものによって進んでいく場合もあると思うのですよ。それを方針として、全部、将来はたんぼも何もみんな共同所有に移してやるのだという原則は、私ども立てる必要はないと思うのですね。そこに社会党さんの方と大きな違いがございます。社会党さんの方も、強制力は決してお持ちになるわけじゃないのですけれども、九条の書き方からすると、原則として共同的保有に全部の土地を移すとなっておりますから、これはその方が原則でございましょう。それはどうもわれわれの考えとは違っているのであって、まず個人々々の経営体を残すのであるが、共同組織による設備の利用等によってよりよき生産に発展させる、生産性を上げる。ことに機械化、共同化、技術の高度化というものを取り上げるためには、一人でやってもいけないものだし、これを共同設備として共同利用する。先ほどちょっとリンゴの話が出て、これを共同で害虫駆除、防除をやるという問題は、一軒が勝手にやってもだめです。これは全部が共同防除をやるということは、当然やっていくべきであって、これはどんどん進めて参ります。しかし、今言ったように所有権を移すという段階までいくのは、これは私は希望によってだんだん出てくるので、これは全体的にできない面がたくさんあると思うのですよ。
  101. 清澤俊英

    清澤俊英君 まだお伺いしたいことはありますけれども、もう時間が来たらしいですから、一つ二つちょっと聞いてほかに回したいと思います。それで、これは先ほど大沢さんとのあれで大臣に聞くと言うた農業構造の問題は、明日一つお伺いしたいと思います。よく大沢さんから聞いてきて下さい。  ただ、いま一つちょっとお伺いしておきたいのは、第四条を見ますと、ちょっと、私はこれは非常に重要なものじゃないかと、こう思いますので、簡単に私の意見だけを申し上げて、結論を得て、それでやめたいと思いますが、四条に「政府は、第二条第一項の施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」こうなっておるのですよ。これは前の政府案か何かには、年次計画に対して予算をつけなければならない、こういうふうに一次案か何かには出ておったと思います、選挙の最中。ところが選挙中に見ましたので私の切り抜きには出ていないでまことに残念に思っておりますが、それに対して大蔵省は非常に脅威を感じた、脅威を感じて、そうしていろいろその点の修正をしたのだ、こういうことで農業基本法はだいぶ提出がおくれるであろう、こういう新聞記事を見たのです。そうして、今ここで見ますと、法制上の措置を講じなければならない。うまく書いてあるとこう私は思う。それでお伺いしますが、施策を実施するための財政上の措置とは予算を計上することと私は解釈しておるのであります。そこで、第二条で、国は、次に掲げる事項につき、必要な施策を講じなければならぬと、施策を義務づけております。それから第六条に、この義務づけた結果に対して、政府が行なった施策に関する報告を提出しなければならないと、報告の責任を出している。これは第六条に文章になっておりますが、今度は、「政府は、毎年、国会に、農業の動向及び政府が農業に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。」「前項の報告には、農業の生産性及び農業従事者の生活水準の動向並びにこれらについての政府の所見が含まれていなければならない。」とあって、第七条が「政府は、毎年、国会に、前条第一項の報告に係る農業の動向を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を提出しなければならない。」、「講じようとする施策」とは、これは農業計画だろうと思う。その計画に対しましては、ずっとこれは一条から続いてきておるのでありまするから、この四条の規定はここに出ておりますが、これでこう参りますると、第一項の施策に対する財政上の措置を講じなければならない、いわゆる予算を組まなければならない、こう私は解釈しているのでありますが、これはどうなんでしょう。
  102. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それは第七条のは、将来に向かっての講じようとする施策でございますから、それに開通して予算的措置を講じなければならぬものもありましょうし、法制的措置を講ずるというものもありましょう。予算を必要とするものか、あるいは法制を必要とするものか、あるいは金融措置でよいものであるか、これはそれぞれ違って参りますけれども、これは予算措置だけに限らないと思います。
  103. 清澤俊英

    清澤俊英君 それはそうでしょう。これはそうすると、法制上は法制上でよろしいですな、法制上は法制上の措置をしてやる。それから計画を立ててそれを国会に提出して、それに対しては予算措置を講ずる、こう解釈してよろしいですな。
  104. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 予算を必要とするものについては。
  105. 清澤俊英

    清澤俊英君 あすは大蔵大臣にこの点はもう一度よく突き詰めて、くにのみやげにせぬならぬ。  いま一つ、あとは簡単ですから言いますが、明日また重ねてお伺いするようになるかもしれませんが、まあこうやって生産の向上をはかるとか、所得の増大をするとかいいますことも、問題はやはり価格に大きな重点があると思うのです。その価格のためには、政府としては今市場問題に介入せられていろいろな措置を講じようとしておられる。あるいは関税の問題とか、補給金の問題とか、支持価格の問題とか、支持価格に対する事業団等の持ち方に対しては異論も持っておりますが、そういうようないろいろの施策をしておられる。その施策の中には、これは何条かにありまする通り、市場流通構造の問題が取り上げられております。そこで今一番、これは近く中央市場法が出て参りますから、その際にいろいろお伺いは詳しくしますが、きょうは簡単でよろしいが、その市場なるものが、いろいろの変革を経まして、そうして最近においては市場内におけるものの流通の方式がだんだんと一つの系列化されておる、系列化された大きな流れを持っておる。だから市場本来の形でなくて、別な形で流通の問題が出てきておる。こういう問題が出ておるのですが、こういうようなものに対処して一体どうお考えになっておるのかということと、明日お伺いする農業の中に企業体ができ上がったと、こういう議論なんです。私は、現在言われる通り鶏を飼うことは、農業でなくてあれは養鶏工業なんだ、養豚工業なんだ、こういう企業投資の形が出てきておる。それに対して、この間からのお話を聞いていると、農林大臣などはだいぶそれを歓迎して育成するようなお話を伺っておりますので、こういう広い消費構造の変革とでも申しましょうか、それに伴って流通の機構もそういうふうに形が変わってきている、どんどん系列化してきている、生産体系もそれを中心にして大資本の進出が目ざましい形で出てきている。蔬菜やそんなものぐらいが、少しぐらい中央市場でやられたからといって大した問題でないと思う。それは大臣の言われる通りで片がつくと思う。こういう大きな日本の経済構造の中で出てきた変革に対して、どう処理せられるか、これはおそらくこの基本法を作るための調査会等の時分には、まだ出てきていない、表面化されない傾向でした。われわれは前からそれを認めておりますが、そういう傾向が見えておったが、最近においてはそれがはなはだしい勢いで進展しつつある状態であります。これについて大臣はどうお考えになりますか。
  106. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これはいつかどなたかのお尋ねに対してお答えをしておりますが、まず私どもは一がいにそういうものが農業者を搾取するということばかりではないのでありまして、ある程度農産物の需要の増大を刺激しておるということも考えられます。しかし、私どもはそういうものがだんだんと広まって農業者のやる部分まで侵されるということに対しては、これは守らなければなりませんので、そういうものにつきましては、私どもは原則として農業者の団体による生産物の加工、販売、出荷というものを強めていきたいという考えであり、さらに進んでは、それが単なる単位農業協同組合の力だけではいけないならば、農業協同組合の連合会によって大きな加工工場を作り、出荷をやっていくというところまで進めることが必要でありましょう。さらに進んでは、農業協同組合と他の方面との共同出資による力の強い経営体を作って、それで加工なり、販売なりをやらせるというところまで進んでいく必要がありましょう。私は農業者の立場を強めることについては、これから積極的なことをやりたいと思いますが、清澤さんもいろいろなところでごらんになっておるところもありましょうが、弊害ばかりでなくて、むしろこの前も申しました岩手県等におきましては、農業協同組合の共同出資による畜産公社というようなものができて、農民の飼育した豚なり、牛なり、鶏を共同出荷体制に持っていって、そうして中間機関に搾取せられぬように売ろうという体制もできております。ここらは一面に悪い面だけ見ないで、むしろいい面は農業者の利益になるように活動するということは必要なんであって、一がいに資本家が出てきて農業を圧迫するというような片寄った見方によらずして、進んでは彼らの持つ金を農村に利用して、農家が利益する方向に持っていくことも一つの方向ではないか、私はそこらにはむずかしさがあるかもしれないけれどもそういうことが考えられる。現実において私ははっきり申しますけれども、これはぜひごらんになっていただきたいと思うのは、埼玉県における食肉加工工場の例のごときであります。その工場の設備は農林中央金庫の金が二億出ております。そのかわり県下における豚の生産飼育を引き取ってハムにする、しかもその工場においてだんだんふえていく従業員は、やはりその近くの農村における子弟を使う。同時に畜産技術指導に関する講習所のようなものを持ち、加工に関する技術の習得をさせようということを目途としております。私は相互扶助というものは、農業者だけの間における相互扶助にあらずして、農業者と農業外との間における相互扶助という考え方があってしかるべきものだと、こういうふうに考えております。
  107. 清澤俊英

    清澤俊英君 私の質問を終わりますが、今の問題は先ほど大沢さんのときに残しましたのに含めまして明日継続してやらしていただきます。
  108. 亀田得治

    ○亀田得治君 大臣の今の最終の答弁ですが、農業者が農業者以外との相互扶助の関係があっていい、理論的には、抽象的には言えるんですが、なかなかうまくいかないんでしてね、いい例もあるんでしょうが。だから私はやはり一般的に言って農産物の加工工業などについては何といいますか、ほかのものがそれをできない職業の分野として、規定の仕方は工夫が要ると思いますが、何かそういうことをして農民の職業の分野というものはやはり法律的にも守る、こういうことも多少考えないといかぬのじゃないかというような感じを持っておるのですがね。それは行き過ぎでしょうか、法律でそういうことをするのは。
  109. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 少し私はどうかと思いますな。私はむしろ農産物の加工及びその販売ということは、農業者がみずからの力で強くなって協同組合を作り、また協同組合の連合会を作ってやっていくということの積極性を持ってもらいたい。農産物の加工は農業者以外にやってはならぬということは、私はそれは少し行き過ぎだと思う。ことにあなた方の一番心配される中小業者なり日本の人口、それが各あれにまたがってる人間の生活というものに関して、それは私はある種の分業的なものは出てくる。これは非常に人間が少なくてほかの者は全部ほかの仕事がやれるが、農業者だけは農産物の加工から販売から全部するということにして、一切他の人は関与を許さぬという法律を作るということは、私は憲法にも触れるのじゃないかと思うのです。
  110. 亀田得治

    ○亀田得治君 一切と言っちゃ窮屈な感じがするわけですが、やはり農業者がその面で多少ほかの諸君よりも働きいいような、活動しやすいような、やはりそういうことは法制上をも考えて差しつかえないのじゃないかということを言ってるのです。そんなきちっと……。
  111. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それはむしろ積極的にやらなくちゃならぬという形じゃなくて、農業者の組織する農業協同組合の行なう加工工業等に対しては融資の道が開かれたり、あるいは財政的な措置が講ぜられるということで保護助長していくことは私は必要だと思います。ことに、この間あなた方の方で酪農関係に出す資金について、農業者または農業団体の出資が五〇%以上なければ、ほかの方の面から出資した会社等には農林漁業金融公庫の金は融資ができないというような制限をもって保護しておるわけです。私はそういうことはいいと思う。絶対ほかの者は関与できぬというのは憲法違反だと思うし、またそういうことをやらなければ農業者が立ち上がれないということじゃいけないので、もっともっと政府はそれに保護助長は加えるが、みずから自分らの作ったものの付加価値を造成して商品価値を上げようということに対して団結するということは、私は必要だと思う。これは精神的な指導がある。その上に立ってすべて日本人は相互協助ということで進んでいくことが一つ考え方だと思う。
  112. 北村暢

    北村暢君 私は第二条の第一項の第一号のこの「農業生産の選択的拡大」の問題、並びに第二章からの農業生産のいわゆる生産政策についてお伺いいたしたいと思うのですが、まず資料要求に対して出て参りました「農産物の需要と生産の長期見通し作成要領試案」という資料が出て参ったのでございますが、これを見ますというと、「需要の長期見通しを行なう主要農産物の品目は、おおむね次のとおりとする。」ということで、米、小麦、大、裸麦、カンショその他が掲げられているわけでございます。そこで、第二条の第一項の第一号により「需要が増加する農産物の生産の増進、需要が減少する農産物の生産の転換、外国産農産物と競争関係にある農産物の生産の合理化等農業生産の選択的拡大を図ること。」こういうことになっているのですが、一体ここに掲げられました主要農産物の品目のどれがこの三つの生産を増進するもの、生産を転換するもの、あるいは外国藤農産物との競争関係になって合理化をしていくもの、こういうふうに分けられるのか、この点をまずお伺いいたしたいと思います。
  113. 大沢融

    政府委員(大沢融君) そういうことをこそ需要の見通し、生産の見通しという作業で私どもやるわけでございますから、今ここでどれが法文のどの分に当たるか、どの作物が法文のどれに当たるかということを的確に申し上げることは、まだ結論を出してない問題でもありますので困難なことだと思いますが、たとえば畜産というようなものは所得弾性値、これはいろいろな取り方があって、これ自体にも問題があるのですけれども、需要が増加する農産物ということになりましょうし、今法案を出して御審議を願っておる麦、大麦、裸麦というようなものは、需要が減少する農産物ということにもなろうと思います。たとえばここで言う「外国産農産物と競争関係にある農産物」たとえば繭でありますとか、あるいは大豆でありますとかいうようなものはそれに当たると思います。
  114. 北村暢

    北村暢君 今、大沢審議官が的確なことは申し上げられないがということでお答えになられましたが、今日農政の曲がりかどに来て、米麦中心農業生産を転換する、こういう考え方は、基本問題の論議の中においても、あるいは所得倍増計画の中においても相当これは検討を加えた、しかも従来の経過から勘案し、さらにそれを意欲的な政策をやればどのようになるとか、それを調整をしてどの程度になるか、こういうようなものを出したはずでございます。従ってこれは今後の農政の曲がりかどに来たという場合における生産政策としては、非常に重要なことだろうと思うのです。従って第二条のように選択的拡大というものをあのような抽象的なことで書いたんではわからないと、もっと具体的に書くべきである、こういう意見も実はあるわけです。そうでないというと、長期の見通しというものを公表することにはなっておりますけれども、そういう農業政策の、生産政策の骨子となるものが、やはり法文の中にうたえないとすれば、この法律を出す段階において相当程度審議検討が加えられて、この見通しの要領等は出されましたけれども、それに出す案くらいは、これは出されるべきでなかったか。このように思うんです。この問題についてくどくど申し上げましても、私はこれは時間がかかりますから、そういうことはもう省略いたしまして、所得倍増計画並びに基本問題調査会の答申案に基づく主要農産物の所得弾性値並びに今後の需要の見通し、生産の見通しというものが出ているのでありますから、これらについて一つ大臣の見解を具体的にお伺いいたしたいと思います。  まず答申案に基づきます主要農産物の生産の内訳の見通し、作付面積、反収、生産量、こういうのがこの答申案の資料の百八十三ページに出ておるわけでございます。これについて、その前のところで農業政策の見通しということで、耕種農業については三十三年が八三・三%、それが四十四年において六九・七%に持っていこう。それから畜産が一四・六%を二八・八%に持っていこう。養蚕が二・一を一・五。それから総生産額では大体一致するようなパーセント、これは一〇〇%というのは内部比だと思いますが、伸び率としては年率三%で二二八・六%に持っていこう、こういう一応の見通しを立てている。これはでたらめに立てたものではなくして、相当慎重に検討を加えたものだろうと思います。こういう意味から言っても、この点から言っても、今大沢審議官が言われた、畜産は成長財である、大、裸麦はこれは作付転換、減産していくものである、大豆、繭等は外国産のものと競合するようだ、こういうようなことだったが、こういう点から言っても大体明瞭に出ていると思うんです。でありますから、こういう今後の生産の大本については、やはり長期見通しというのはこの法案が通ってから出すんだから、これは農政審議会の議を経てやるわけだから、今のところは何もわからないのだ、これでは審議にならない。そういうことでなしにもう少しはっきりした、基本法制定する意義というものは、その生産政策の中にもはっきり現われているわけですから、そういう点をやはり明確にすべきじゃないか。このくらいのことは大臣としても言って差しつかえないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  115. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 農業基本調査会の答申は、これは一つの資料であります。だからその点は北村さんがこれは一つの資料としてお伺いになるならば私も差しつかえありません。ただしかし農業基本法制定の後は、さらにこの一つ一つについて一応の目安がありますが、これは二条関係はさらに二章における生産の項におきましてそれぞれ一つ一つに対してある程度の見通しを立てていきます。いろいろさらにこの中でも再検討を加える必要があるものもあろうと思うのでありまして、その意味において大沢審議官は先ほどお答えしたと思います。これが鉄則になって一つも変わらぬものでもなかろうと私は思いますが、一応の資料としてこれは参考に十分にいたし、これをもとにしてやはり考えていくことは考えていきますが、一つ一つの品物については再検討し、修正さるべき部面もあると私は考えます。
  116. 北村暢

    北村暢君 そういうことでなしに、もう少し今後の農政の生産政策の大本についてやはり農林大臣としてははっきりすべきではないかと思うのです。これははっきりできませんか。というのは、米については今後作付面積というものは逆に減っていく、そうして反収を上げて大体総生産では一一%ぐらいまで持っていく、こういう見通しを立てているわけなんですが、一体そういう米についてはどんどん今後も作っていく、無制限に作っていく、どんどんと奨励していくのだと、こういうことにはならないのではないか。特に食生活の変化によって所得弾性値なりその他によって、需要の見通しというものは出ておるのですから、そういう点について、やはり生産について意思というものをはっきりさせるべきではないか。それはできないでしょうか。全然この基本問題のやつは参考として、むしろ傾向すらも参考だということですというと、これでいろいろ質問しても意味ないことになってしまうのではないか。どういうことですか。そういう点についてもはっきり言えないとおっしゃられるのでしょうか。
  117. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 今米の問題についてのお尋ねでありますが、この点はこの委員会においても一度私は触れております。それから予算委員会においても触れております。これは今後まだ人口の増加に伴って絶対数量はある程度ふえますけれども、一人当たりの消費量は減ってきておる現況であります。そこにおのずから限度があるかと思うのでありまして、それは今北村さんもお話しのような、でき得る限り土地の有効利用によって狭い面積でできるだけ、現在人口の増等で絶対量のふえる数量をこれを確保し、生産を上げつつ、他の土地はさらに需要の伸びる生産物を作って、総計的に所得の増をはかるということが農政としてはとらるべき方向である、かように考えております。
  118. 北村暢

    北村暢君 そこで、それじゃ私は考え方について一つ一つお伺いしていきたいと思いますが、まず米については、先ほど言ったように、今後一割程度しか増産をしない。大麦、裸麦については減産をしていく。カンショ、イモ類等については大体現状維持のようで、バレイショは若干増産をする。それから大豆等については合理化の措置をとる。これは合理化の措置をとるということはよく現われております。というのは、作付面積は非常に減っておりますけれども、生産量は大体四十四年でも同じ、まあこういうことでございますから、面積は七三%くらいにして、生産は一〇〇%でいくと、こういうことがはっきり出ているようです。それからトウモロコシは大体現状維持、それから蔬菜は約一〇%の増、それから果樹については、これは一五九%ですから、一六〇%ぐらいに作付面積はしていく、生産量は約二〇〇%、まあこういう。それからテンサイについては作付面積で約三〇〇%、生産量で三三四%、こういう。それから飼料作物は作付面積が非常にふえて、約二〇〇%と出ております。それからそのほかの畜産関係については大体三割増、まあこういうようなことがいわれているわけです。従って、この今後の構造政策なり生産政策なりに合った行き方というのは、やはり畜産を成長財として奨励をしていく、育成をしていく、まあこういうこと。それから果樹、テンサイ、こういうものを成長財として見ておるわけでございます。ところが、この案を見ましても、所得倍増計画考え方の中においても、経済の合理性というものを非常に尊重して、資源の適正配分をやっていく、これは当然のこととして考えられる。従って、倍増計画においても同じような推計をしているわけですが、小麦などは輸入する方向に重点を置いていくんだ、こういうことで、小麦等については需要が相当あるのでありますけれども、これは輸入によっていくんだということで、生産は作付面積においても減らしている。それから生産軍についても減らすような方向で見ているわけでございます。そうしますと、ここで私は一貫した考え方としてお伺いいたしたいのは、考え方の中に、輸入した方が安いものについては、国内生産を無理して増産することなく輸入によってやっていくんだと、こういう考え方が出てきているんじゃないか、このように思いますが、特に小麦等についてどのような考え方を持っておるのでしょうか。
  119. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これは、私、本委員会でも予算委員会でもお話しておりますように、でき得る限りは小麦も国産化することが必要であろう、こういう考えを持っております。そこで、その意味において、私が先ほど農業基本問題調査会等における答申の内容については修正する部分もありますと申しましたのは、小麦については大きな修正を加えたいと思っております。従来、小麦につきまして、北村さんが言うように、ハード小麦は日本の気候に適さないということで、少したじろいでおります。しかし、ソフトの方は日本でできまするし、パン用の小麦としてハードが使われますけれども、ソフトをフランス式のパンにこしらえることも考えられないか。これは非常に設備がかかるので急にいきませんが、しかしソフトの関係は、うどんだとかマカロニあたりの問題までも、日本産を使わないで輸入でいくというのはおかしいのじゃないか。ことに小麦については約二百万トンの輸入のうち八十万トンがソフトです。少なくとも目安をそこに置くとソフト小麦くらいは国内でやれるのじゃなかろうかということで、ハード、ソフト共に試験研究を続けてさような形をとることと、ソフトについては早く転換ができるのじゃなかろうかということで、この点はでき得る限り国産化をすることが外貨の支払いを倹約し、そうして農家の所得を増加することになるから、そういうことでこの点は少し修正をいたしたいと思っております。
  120. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、小麦については、この基本問題調査会の答申案の考え方というものを修正していきたいということがわかりましたが……
  121. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) いや、私は、今、小麦についてお尋ねだからそう申し上げたのですが、このほかにもやはり再検討をいたす点は私はあると思います。
  122. 北村暢

    北村暢君 そうだと思ってお伺いするわけなんです。それで、そうしますと、先ほど私のお伺いしたのは、大、裸麦は、今後まあ麦対策として出ている法案から見ても作付転換をしていく、これは政府の意思としてははっきりしている。その場合、飼料化ということを考えていくということも出ているのですが、これは、大、裸麦については今後の飼料としての輸入ということについてはあまり考えておらないようでございますが、これは今後の輸入というごとは考えられないのかどうなのか、この点についてお伺いいたします。
  123. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 大、裸につきましても、今、食糧としての需要がどんどん減っていますけれども、この需要をほかの面に拡大する方法はないかということで大、裸の飼料化という問題も考えております、研究は。しかしそれはよほど大、裸の生産コストといいますか、合理化した生産態勢をとって下げない限りは、今のままで飼料に使ったらだいぶまた安くやらなければ動かぬという格好になります。そこで大、裸を飼料に使うということについては、同時にやはり大、裸というものがずっと一部減反しますが、残って参ります。その点については食糧としての需要が一部まだありましょうけれども、他面、飼料として一体使うのにどれだけどういう形で使う。それに対して、生産費をどれだけ下げられるかというような、合理化の方向へ向かっての研究を進めて参りたいと思っております。これがだんだんといけば、外国産の大、裸を、飼料として、安いから入れるということも、私はできれば差し控えるのが当然だと思いますけれども、そこまで大、裸の関係だけでは、すぐにはむずかしいと思います。
  124. 北村暢

    北村暢君 そこでお伺いいたしますが、答申案のこの見通しによりますというと、米と麦類とで大体四十万町歩ぐらいの作付面積を減らそう、こういうことが出ているのですが、これはこれを検討せられて、一体この米、麦等で作付を減らしたものは、どのようなところでふやそうとしているのですか、総体的にいって。作付面積は三十三年の基準が八百二十万町歩、ところが四十四年では八百万町歩ということで、二十万町歩作付面積で減らして考えておるわけでございます。その中でも米と麦とで、そのほか大きく減っているのでは、菜種あるいは桑その他というところでもって、四、五十万町歩減らそう、こういうことになっている。従ってここによく現われているのは、耕種部面においては、耕作農業の方では、この生産は減らしていくのだ、こういうことがはっきり出ておるのですが、一体こういう減らしていくということと、農業の総生産を上げるということ、それから農家の生産規模を拡大をして自立経営に持っていく。従って農業地も、一戸の所有面積も拡大していこう、こういうような政策をとろうとしているのですが、この作付面積からいきますというと、減るというようなことが出てきている。これはもちろん生産性ということを重要視いたしますから、反収の増加で補うということになれば、そういうふうなことかと思いますが、この点が私は、相当、答申案は大胆に、今後の農業の生産の転換をはかろうとしている意欲が感ぜられるのですが、こういうことが一つ現実に今後の基本法が通った後における日本農業の耕種農業というものの行き方について、そういうような答申の方向でいかれるという御方針をとられるのかどうか、この点を一つお伺いいたしたい。
  125. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 基本問題調査会の答申でいっておりますことは、今北村先生指摘のように、米麦というようなものの作付面積が減りまして、果樹あるいは飼料作物というようなものがふえます。総体としましては、果樹のような一年に二度作付するというようなことができないものがふえますので、この計算では、総作付面積は多少、基準年次に比べまして十年後の見通しというのは減るというふうな形になっております。こうしたようなことを基本問題調査会の答申で言い、さらにまた倍増計画の方でも、大体同じようなことでいっておりますけれども、先ほど大臣からお話があったように、麦の問題にいたしましても、あるいはまたこれを作ります農産物の所得弾性値をどういうふうにとるかというようなこととも関連しまして、法律通りました上は、再度検討して、より真実に近い見通しをしたい、こういうふうに思っております。
  126. 北村暢

    北村暢君 私はまだ疑問に思うことは、麦類については、現在の価格制度という面からいって減産というのですが、畜産に関して今後伸びる、あるいはテンサイについて成長財として伸びる、こういう点について若干疑問に思うのです。小麦や大麦にしても、外国の農産物との競合、いわゆる小麦で外国の小麦と競争するということになれば、これは非常にコスト高になっていることは事実です。ところが、このテンサイを例にとりまして、それじゃ将来貿易自由化が行なわれて、現在の砂糖消費税というもののような保護が行なわれなければ、これも砂糖との競合の問題からいえば、非常に劣等財じゃないか。にかかわらず、これは成長財として今後増産をするということになっておる。それから、畜産にしても、酪農製品ばかりでなしに、畜産それ自体にしても、これは今貿易自由化になれば、とたんに競争できないような状態、これもなお成長財として増産していこう、こういう考え方に立っているようですが、この考え方が、小麦は日本の農産物はほとんど全部そうですが、零細経営の中における農産物というものが、国際農業と太刀打ちできないことは明らかです。そういう中で、何ゆえ畜産、果樹、テンサイを成長財とするのか。こういう疑問があるのですが、この点について一つ私の疑問を晴らすように一つお答えを願いたいと思う。
  127. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 畜産、小麦あるいは、大、裸麦等について見ますと、明らかに所得のふえる割合ほど需要が伸びない、むしろ所得がふえるに従って需要が減るというような傾向があるわけなんです。それからまた、穀類の消費というようなことを世界的に見ましても、たとえばこの表の中に入ったかと思いますけれども、ある程度の所得ということになりますと、かえって穀類の消費、澱粉質、食糧の消費が減ってくるということが明らかに見られると思うのです。それに反しまして、逆に畜産物というようなものは、わが国の所得の増加の割合から見ましても、明らかに肉類あるいは牛乳というようなものはふえるわけです。あるいは砂糖またしかりだと思いますが、そういう意味で麦類と、砂糖あるいは砂糖の原料であるテンサイというようなものと畜産物というのは、別の取り扱いをしなきゃならぬということにもなろうと思います。特にテンサイなどにつきましては、先生ごらんになられて御承知だと思いますが、各国ともいわば高率関税を課して国内産業を保護しているということで、わが国のもこれから伸ばしていけば、海外との競争ができないというような作物じゃないわけです。あるいはまた畜産物等につきましても、これも酪農品はともかくも、市乳というような点については、ほかの国とそう大きな開きはないというようなこともあるわけです。先ほどの麦と砂糖、畜産というようなものについても、消費の傾向、需要の傾向というようなことを大きく読みとれば、やはり別の扱いをして、畜産物は、第二条でいっております選択的拡大の中の需要が増加する農産物という取り扱いになりましょうし、大、裸等は、需要が減少する農産物という取り扱いになるということじゃないかと思います。
  128. 北村暢

    北村暢君 そこで、一つテンサイについてお尋ねいたしますが、テンサイについてはなるほど諸外国でも保護をして増産をやっております。現実にテンサイだけでやっておるところもあるわけですが、昨年度は例外的でしょうけれども、作付面積は順調に進んで拡大していっているが、反収が非常に落ちた、昨年はそういうことが明確に出たわけです。作付面積が非常にふえて生産は昨年よりもずっと落ちた、こういう形がはっきり出ました。それと、現在試作中の暖地ビートというものについてこれを奨励していくのだという考え方もあるようですが、このテンサイに対する考え方は、この答申案の考えられた当時と現在でもなおかつ変わらないのかどうか、成長財としてやはり見ていくことに変わりないのかどうか、この点について一つお答えいただきたい。
  129. 橘武夫

    説明員(橘武夫君) テンサイにつきましては、昨年今お尋ねのありましたように反収が落ちております。それは北海道における作付時期における気象条件がちょうどその成長時期に悪かったというようなことが大きく原因しておると思いますが、暖地のビートにつきましても、ここ数年来試作なり研究の段階が何年か続いてきておるわけでございますが、その暖地の中の気象条件あるいは土地の条件などによりまして、あるところについてはほぼその生産の安定なり、生産性の伸びについての見通しを得まして、逐次研究の段階を脱して、試作、さらにその面積をふやしていくという段階に入っているところもございまして、ビートはまた全体の作物の体系の中で御承知の通り輪作体系の中の一環として取り入れられる作物でございまして、そういうほかの作物との結びつきによって作物体系が合理化される、あるいは土地の地力の面につきましてもいろいろなプラスの影響があるという点から考えてみましても、全体としてやはり今後いろいろな条件が変わりましょうけれども、今後大いに期待される成長すべき作物として取り上げてしかるべきものではないかというふうに考えております。
  130. 北村暢

    北村暢君 このテンサイは前に岡村先生も触れられて、やりようによっては連作もできるのだ、こう言っておりますが、農林省の指導方針としては七年か八年に一ぺん輪作できる、こういうような方向でいこう、五、六年ですね、それから七、八年ということで輪作を考えておる。そうすれば、これは相当広大な面積がないというと、このテンサイというやつはうまくいかない。暖地ビートの場合、北海道ならいざしらず、暖地ビートにそれだけの余裕をもって輪作形態でやっていけるか、これは酪農ともつながっているわけですが、非常に危険があるんじゃないかという感じがいたしておるのです。実際にテンサイをやるにしても、やはり地域でもって、集荷地域というものが一定規模の工場において一定の集荷がなければこれは成り立たないわけですから、現在の非常な保護を受けた中でも、簡単には成り立たない。そういうものじゃないかと思うのです。でありますから、それにもかかわらず、なおかつテンサイというものを成長財として見ていくということになれば、これは相当程度ですね、私は将来にわたって保護政策というものを続けていかなければならないじゃないか、このように思います。そうすれば、この生産性という問題と関連をして、一体このテンサイというものは特に暖地ビートの場合、成長財として見ることができるかどうか。これは大臣いかがでしょうか。相当程度将来においてもこの保護政策をとって、そうして暖地ビートについても心配なく生産者が作付をやっていっていい、こういうふうに見ていいでしょうか。
  131. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) テンサイに関しましては、先ほど係の方からお答えいたしましたように、何としても現在百三十万トン近くのものを輸入しておるんです、お砂糖を。その意味においてはすでに消費嗜好に関して試験済みのテンサイ糖は一番国内生産を上げるについてふさわしいものと思っております。そこで、今後におきましても御指摘のように、テンサイに関しては相当にこれに対して保護を加えていきたいと思っておりますが、御指摘の暖地ビートに関しましても、それは地域的にこの原料大根の供給地が交錯輸送になったり取り合いになったりして損しないように、無理がないような形に工場の設置等を認めていく必要があるんじゃなかろうか。そうしてそこに指導を加えつつ伸ばしていくというのでなければ、やれテンサイ糖がいいからということで、あっちもこっちも原料大根のことを考えずに工場が設置されていって、原料が奪い合いになるということでは困るのであります。目下そういうことに関して、暖地ビートに関しては慎重な研究をいたしておりまして、成案を得次第方向を打ち出して、それに沿うて暖地ビートをどう扱うかということをはっきりときめたいと思っております。もちろん保護を加える意味において、たとえばテンサイ振興法等の関係をどういうふうに暖地ビートを取り入れるかというような問題なり、あれは期限がやがて切れるんでありますが、それをどういうふうに延長する必要があるかないかというようなことをきめるについて目下研究を進めております。
  132. 北村暢

    北村暢君 これはですね、この基本問題のとちょっとはずれますが、テンサイの問題が出ましたから大臣に伺っておきたいと思いますが、この甘味資源十カ年計画に基づく北海道のビートの作付計画、工場の建設等とからんで、いまだにこれは決定できない、決定したのかもしれませんが最近まだ聞いておらない、決定したと。これはですね、いろいろまあ政治的に事が運ばれて非常に歴代の大臣、これは決定しかねている問題なんですね。それで大体きまってないというとですね、これは作付に支障を来たす。集荷区域等についても問題があるわけでございますが、これは一体成長財だというこのテンサイの従来ある生産計画がなおかつ決定できないで、工場の割当ができないでいる。こういうことはですね、せっかくのこの生産というものが非常に曲げられて農民が迷惑するのじゃないか、こういうふうに思うのでございますが、一体、この北海道のビートの作付に、また工場の建設との関連の問題は、基本法と全然関係ないわけではないと思うのですが、一体、どのように解決されようとしておるのか。いつごろ解決されるのか。この点一つ、ついででございますからお伺いしておきたいと思います。
  133. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 今日まで工場の決定がおくれているというお話ですが、これはいろいろ事情もあったんでしょうが、やはりその点は、原料となるべきテンサイ糖の必要量の生産が上がってこないと、それは工場も設置できませんね。従来ある工場の原料の大根を取り合いをしちゃいかぬ。そこで、ある程度の増産計画が立てられてきておったので、それで、今日から見ますれば、来年あたりくらいから、工場を認めても、それに対する原料大根がほかの方をあまり侵害しないでいけるというような時期に達したようであります。それで、ただいま北海道庁知事、これは北海道農政というものを中心にして考えておるわけでありまするし、片や、日本の国としても、甘味資源の自給度を向上するという意味から、計画を進めておりまするので、その間におきまして、よく北海道庁知事等の意見も聞いて、近く最後の決定をいたしたいと思います。その際には、私は、できれば年次計画的に工場の設置を認めつつ、そうして、その地域における、その工場の集荷して製造に向けるべき原料砂糖大根の増産というものをはからせて、そうして経済的な最小必要量ができる年次を目ざして開始をさせるというような年次計画を立てて決定するのが妥当ではないかと、かように今考えております。
  134. 北村暢

    北村暢君 この点は歴代農林大臣苦労しておるわけですが、まあ一番あまり関係のない周東農林大臣、あなたやめないうちにこれを解決していかないと、どうも残されたら、あとの大臣また困るようですからね。一つこれは、大臣のこの任期の間に、これはなるべく早い機会にやはり決定をしていただきたい。特に要望をしておきます。非常に大臣が適切なようでございますから、あまりあちこちにかかわりのない大臣だから、そういうことで、一つこの問題は、御要望しておきます。  わき道へそれて非常に恐縮でございましたが、次にお伺いいたしたいのは、同じ成長財の畜産の問題でございますが、畜産の見通しについて、特にこの畜産の見通しについての考え方でございますが、三十六年度の、畜産局の提出されました資料によりますというと、乳牛で九十四万八千頭、和牛が二百三十五万七千頭、馬が六十三万五千頭、豚が二百七十万頭、綿羊八十二万六千頭ですか、ヤギが五十六万一千頭、鶏が七千九百四十五万二千羽というのですか、そういうことで出ておるのですが、一体この三十六年度の数字というものは、答申で考えられました伸び率、まあ答申は、三十三年度を基準にして四十四年の見通しをとっておるわけですが、この三十六年度の伸びというものは、大体答申の見通しと符合しておるのかどうなのか。これを一つお伺いいたしたいと思います。
  135. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) ただいま家畜別に一応お手元に提出いたしました数字があるわけでございますが、これは、一応この二月一日現在での統計調査部が作っております、調査しております現況の数字が、若干違って出て参ると思います。しかし、ただいまお手元に出ております数字は、当然四十五年目標の十カ年計画の年次別計画の上におきましては、一応それが毎年平均的に見ました場合の平均伸び率とお考えいただきたいと思います。
  136. 北村暢

    北村暢君 そうしますと、最近畜産局は飼料についての緊急臨時措置をとったわけでございますが、こういうこの平均の伸び率で来ておるのにもかかわらず、緊急の飼料対策をとらなければならなかったというのは、一体どういう理由なんですか。
  137. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) 御存じの通り、飼料と申しますと、いろいろ関係農産物の副産物的なものが非常にウェートが大きいわけでございまして、たとえば食糧用小麦が国内で製粉されます場合に、ふすまがどの程度とれるか、あるいはまたは食用大豆油等が、植物油が搾油されます場合に、油かすがどの程度とれるか。これはそれぞれの食糧面の需給計画に乗っかった数字がございまして、それを取り入れまして飼料全体の供給可能量ということを押えておるわけでございますが、一応年次別計画を実行いたしまして、年度の最終に参りますと、その年の食糧、たとえば年度初めに年間二百六十万トンであろうと思っておったのが、二百四十八万トンどまりになったり、そういうふうな食糧計画上の一応の計画関係との数字の違いが出て参りますと、当然それから出ます製粉の余りでありますふすまのようなものは、若干数字に違いが出て参るわけであります。これは、現実に食糧庁の売却の実績が上がって参りますのが少しずつ月おくれになりますので、その意味で、この一月以降の数字につきましては、やはり食糧庁の売却の数字は実績より若干下回ったという実績がございますのと、それからもう一つは、最近配合飼料工場というものが非常にたくさんできまして、今まではそれのランニング・ストックを一応月別に一カ月半分を一定量に想定しておりましたが、つまり工場の数がふえまして、操業量が上がりますと、それに応じた月別のランニング・ストックが上がってくるわけでございます。ということは、要するに工場在庫量が、ストック日数としては大体四十五日分が経済効率でございまして、それは動きませんですが、一応工場在庫というものの実数が多少増加して参る。これがやはり年度末に一応のしわが出て参ったように考えますが、全体として見ますと、やはり食糧庁のたとえば食糧売却小麦が予定より少なかった。その分からとれるふすまも、従って予定より少なく生産されておったというようなものの穴埋めがふすまについては感じられるわけであります。それから大豆かすにつきましては、国内生産大豆の関係におきまして、輸入大豆かすというものの輸入が、実は輸入大豆の輸入がしばらくいろいろな関係で手おくれがございまして、二月、三月におきましては若干かす類が、輸入港別に見ますると最近払底をいたしておりますというような、個別的にはそれぞれ違った理由があるわけでございますが、一応緊急対策実施によりまして、当面の穴は一応埋まったという感じがいたすわけであります。最近の他のえさ関係の各種の飼料はすべて、多いものは一五%ぐらいまでの値下がりをすでに示して参っておるわけであります。
  138. 北村暢

    北村暢君 今、参事官説明ですというと、えさは緊急対策によって値下がりをしてきたということのようでございますが、現在この飼料問題は、今緊急措置をとったから下がったというようななまやさしい問題ではないと思うのです、私は。御存じのように、食糧の麦すらえさに回されなければならなかったああいう事態からいたしましても、現在の飼料の値の動きというものについてじりじり上がっていることは、お宅からいただいた資料にもはっきり出ている。従って飼料というものが、今後における畜産の成長財としての私は非常に大きな重要な意義を持ってくるわけだと思うのです。まあ飼料の心配をせずに畜産を奨励しても、これは当然農民が犠牲をこうむる、こういう結果にならざるを得ない。そこで飼料の需給計画でございますが、これについては現在の飼料需給安定法によるというと、輸入飼料についてだけこれは取り扱うことになっておるわけです。一体この輸入飼料の問題だけで今後の飼料行政というものが安定していくと、こういうふうにお考えになっておるのですか。
  139. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) ただいまの御質問でございますが、私が先ほど申しました線は家畜の伸び率、飼料そのものは飼料需給計画を一応前提にして盛り込んでおるということを落としたわけでございます。そういうわけで家畜の伸び率については、飼料需給計画で見ておったということが前提になっておる。将来に向かってそれでは現在のようなやり方でもっていけるのか、実は最近外国人の専門家が参りまして、いろいろ最後的に意見を聞きますと、日本の畜産を制するものはやはり飼料問題であろうというのが異口同音の結論でございまして、その意味では御指摘通りだと思います。将来に向かってそれでは輸入飼料だけにたよっていくのかどうかということにつきましては、当然現在畜産問題ということ限りにおきまして、これは非常に将来に向かっては家畜の種類の伸び方で数字が違うわけでございますが、あるいは八百七十万トンという所要量が出て参ったり、これは年間所要量でございますが、ある場合には五百五、六十万トンという数字が出てくるわけであります。これは現在の実態からいいましても、非常な大幅な伸びになるわけでございます。その意味では、やはり国内でできるだけ飼料を自給するという線を、既耕地における麦類あるいはこれはちょっと言葉が過ぎるかもしれませんが、水田等の飼料作物の導入といった既耕地への飼料作物の導入と、もう一つは草地の牧草改良、または牧草の収穫を上げる、こういった二面の線をできるだけ強力に実施いたすことが国内の自給態勢の確立上必要であろうかと思います。従いまして、飼料需給安定法につきましては、現在本年中にということで課長以下を督励して、私一応草案を作りまして原案をいろいろ作成さしておりますけれども、やはり単に輸入飼料だけでなくて、国内の飼料についても何らかの法的な措置が及び得るような広範な飼料法というようなものへ組みかえていくことも必要なんじゃないか、これは一参事官としてはなはだおこがましい段階でございますので、一応説明の許される範囲で申し上げておきますが、そのように現在準備中でございます。
  140. 北村暢

    北村暢君 そこで今飼料の問題について花園参事官がおっしゃる通り、どうも輸入飼料についても非常に見通しについて差が出てくる、八百万トンというかと思うと五百万トンという。ところが、そういうような見方の差が出てくるのだから、こういうことになるのかもしれませんけれども、この基本問題調査会の答申案によりますというと、国内生産の飼料の見通し、それから輸入の見通し、こういうものが出ておるのでございます。それと、先日畜産局からもらったこの国内の濃厚飼料の需給計画、こういうものと非常な数字の差があるわけであります。で、私これを検討してみるというと、非常にびっくりするくらいなんですが、まあ答申案の方は三十三年と四十四年をとっておりますが、いただいた資料は三十五年——四十五年をとっているわけであります。そのうち、この国内飼料の供給計画を見ますというと、三十五年度で五百八十一万トン、そうして四十五年に八百五十一万トン供給する、これは国内産の濃厚飼料。これに対して答申案の方は、国内産が五百五十六万トン、これは大体三十五年とやや似た数字でございます。ところが四十四年と四十五年ですが、これは四十四年で一千万トン——一千二十二万トンを生産するということになっているのですが、この前いただいた資料によるというと、八百五十一万トン、それで約百五十万トンの差の出る資料が出ております。輸入の方によるというと、まだこれが激しいのでありまして、輸入の数字からいくと、答申案の方は三十三年が百二十万トン、それが四十四年で二百五十六万トンです。ところがいただいた資料によると、三十五年が百八十九万トン、これはまあだいぶふえております。それから四十五年になりますというと、これが五百五十五万トンということに出ている、一方は二百五十六万トン、こうなるというと、約三百万トンの開きが出ておる。こういう資料は、同じ、おそらく畜産局がこの基本問題のときにも資料を提供しておるのじゃないかと思うのですが、こういう開きが出てくる。開きがあるばかりでなしに、これは一つ大臣にお伺いいたしたいのですが、国内の飼料の供給計画において、十五年後にはわずかに国内生産では一四六%であります。ところが輸入飼料については、これが二九四%——約三〇〇%輸入する、こういうことが出ておるわけございます。従ってこれによって見ますというと、この需給計画からいって、私はこの飼料の大部分というものは、大部分といいますか、もちろん国内飼料の方が絶対量は多いわけですが、今後大きく飼料というものは輸入に依存していくのだ、こういうことがこの資料によって出ているのじゃないかと思うのです。このことは私非常に重大だと思うのですが、今後の成長財としての畜産を振興していく上においては、これは私は飼料が安いということが絶対の要件だと思うのです。これは何といっても畜産というのはいわば農業でいえば企業的なんです。非常に大きな多額の投資をしなければならない。そうすると家畜を養う方からすれば、これは飼料を安く買うということがもうかる前提なんです。従ってここで私はこの飼料というものが、国内生産の農民の作る飼料ではなくして、輸入の飼料にたよろう、こういう傾向というものは、私はやはり畜産を伸ばす意味において適当でないじゃないか、このように思うのですが、これの点について一体どのような考え方を持っておられるのか。
  141. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ごもっともなお尋ねで、私ただいま、あとから出た資料の説明をよく聞いていなかったのははなはだ恐縮でありますが、私は衆議院予算委員会においてと、それから衆議院農林水産委員会におきまして、この問題について答弁いたしておりますので、速記録をごらんいただけばわかりますが、私は将来の飼料政策というものに対する考え方を述べております。それはあくまでできる限り自給度を高めていきたい。そしてこれは飼われるべき畜類の種類別に必要とする飼料の今度は飼料別に、一体国内において自給し得るものは何か。その前に、その種類別に将来の需給の見通しを立てて、そのうちできる限り国内で自給し得るものは何か。しかも、その自給の内容がまた二つに分けられて、農家が自己のたんぼで飼料作物を植えていくという自給と、国内の生産によって、自分は作らぬけれども購入飼料として買うが、それは国内製品であるというようなものと二つに分けて、一体国内の自給度はどこまでいくのかということをきめる。そしてどうしてもいけない部分はこれを外国の輸入に仰ぐ。輸入については種類別にどうしてもいけないもの、それについてあまり時期的に問題を起こさぬように平均的に輸入計画を立てる必要があろうと、こういうふうなことを考えているということを話したのであります。それにつきましては、飼料だけがどんどん将来輸入金額の相当大きな部分を占めていくということは、あまり格好よくないから、これはやはりできる限り国内で自給ができれば、その方をとっていくのだ。ただ一番問題は、食糧と飼料との関係がなかなか農家としてはむずかしい点があって、飼料作物を作って、それが外へ売った方が高く売れて、それで買ったがいいというようなことも考えられておるのが過去の実情であったようですから、そこら辺はよほど啓発、宣伝が必要でありますが、そういうことも考えてやる必要があろう。それから問題は一番フィッシュ・ミールです。フィッシュ・ミールの将来における需要増は大へんなものらしいのですが、これが水産関係の団体に責任数量を堅実な内訳の形で出してもらいたい。どうも外から買うというとけしからぬといってとめられるけれども、さあ、それは何ぼ出すかというと、なかなかこれは責任は持てない。無理もないのです。これが何がしかとれると思ってとれないと、約束しても出せないということでありましょうから、それはたとえば百万トンは内地でとれると仮定したときには、それはあぶないから堅実に七十万トンくらい出せるという責任数量を持って出してもらわぬと畜産計画は立たぬのじゃないか。それだけの協力をしてもらうような形をとって、そうして種類別に国内需給はどういう形になるかということを立て、どうしても今直ちにはいかぬが、将来は自給できるが今はいかぬというものと、将来とも無理だというものがもしあるとすれば、それは何かというふうに分けて輸入計画を立てていったらどうかという考え方でおります。この点は業界と二回ほど話したのです。その関係から必要があれば、飼料需給安定法等のことを、それらに関係する法制度が必要があれば考えていく必要があろう、こういうことを考えておるということを申したのです。ただいま御指摘の資料を注意して両方比較して見ておらぬので、だいぶ開きがあるので私はびっくりしております。何かそれには畜産局として考えておることがあるようでありまして、ちょっとその点を説明さしていただきます。
  142. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) ただいまの大臣の御説明を補足いたしますが、ただいまの北村先生の御質問の数字は濃厚飼料に関する限りだけでございます。それで、実は粗飼料につきまして、これを急激に増加させることが飼料作物への転換その他を通じて、今後なすべき問題であるということは、私ちょっと触れたのでありまして、その点につきまして、四千七百万トンの現在の粗飼料の国内需給が約一億トンに近いものに上がるように努力するというのは、これは非常に国土利用上は相当な力の要ることでございますが、そのように努力いたすわけでございます。同時に輸入につきましては、いろいろ説がありますが、一応畜産局といたしまして、いわゆる言葉がちょっと常識的な使い方になりますが、輸入濃厚飼料というものにつきましては、一応五百五十五万トンという今北村先生が言われたような数字を算定いたしておるのであります。これにつきましては、一応所得倍増なり、それに応ずる、畜産物、消費の実態に応ずる所要の濃厚飼料というものから見ますと、それは家畜別にはまだ相当問題がございますけれども、そういったものを一応の目標にいたしておるわけでございます。この点については、やはり十年後の問題として今後もう少し年次別にしっかり固めていかなければならぬ問題であろうかと考える次第であります。
  143. 北村暢

    北村暢君 今、大臣のおっしゃったフィッシュ・ミールなんかも、答申案は四十四年は輸入しないことになっているのです。ゼロなんです。ところが、この所得倍増計画のもらった資料によると、フィッシュ・ミールの方はこれは大へんな輸入をするのですがね。三十五年で二万八千トン輸入しておるやつを、四十五年には十五万トン八三三%ふえるということになっておるのですよ。だから答申案ではゼロなんです。それから所得倍増計画の畜産局の資料だと八三三%ですよ。とんでもないことになっておるのです。だから、これは私は畜産局の飼料の問題はまさしくむずかしいですよ。ですから、この所得倍増計画の方にも、飼料の問題は実は載っていないわけです。これは予算委員会で一回やったことがあるのです。載ってないのです。あの当時おそらく間に合わなかったのだろうと思うのですが、この所得倍増計画に合わして作った三十六年三月一日付で作っておるわけですね、この文書は。それが今言った数字で答申案と非常な差があるわけです。でありますから、おそらくこれは私は飼料というものは混迷しているのじゃないかという、右往左往されておるのではないかというようなことをはっきり物語っているのじゃないかと思うのです。そういう点からいって、私はこの畜産というものについて、この飼料問題というのは非常にむずかしいし、また畜産が伸びるということにおいて、今後この飼料問題というのはきわめて重大で、それが今日まで非常になおざりにされてきたということは、私はもうこれは否定できない事実だと思います。でありますから、この点について私はやはり今日、養鶏を振興し、養豚を振興しようとしても、飼料の問題は一体どうなるのか。安くなるのか、高くなるのか、これは大問題です。しかも、今後における構造改革によって、今までの片手間に、副業的に養豚をやったり、養鶏をやったりするわけじゃない。何十頭、何千羽ということで専業的にやる。これは値段の上がる下がる、まあ価格政策の問題もあるわけですが、これは死活問題ですよ。一歩誤れば大へんなことになる。今までの副業で農業をやりながら、畜産の方は片手間にやるというのだったら、飼料はいいかげん高くなっても、値段は上がったって下がったって農家経済に決定的な要素というものはなかったが、今後構造改善をして、畜産を奨励していくという考え方からすれば、これはきわめて重大な問題ですよ。ところが、今申したような形になっておるので、この点は、一つ政府は今後の最も有望な成長財である畜産というものについて、これは農民に——私は基本法ができたから、畜産は成長財だからやれということは、この基本法が通ったからといって、簡単にできない問題じゃないか。非常に大きな不安を持っておるのじゃないか、こういうことが言えると思うのです。でありますから、この点は、一つ大臣も——これはまあ安田局長でもいれば名答弁でどのくらいごまかされるかわかりませんが、(笑声)私の調べた範囲で言うと、どうもこれは納得できない資料です。ですから、この点は一つ大臣も心していただきたいと思います。
  144. 清澤俊英

    清澤俊英君 この点だけ関連して。畜産局としてもみずから混迷に入っているのじゃないかと思うが、われわれが知っている範囲では、最近まで畜産の振興は自給飼料の確立だ、こういう形を強く打ち出しておられますが、さて自給飼料を何でやるかということになりますと、牧草地帯の拡大ということになる。これらをやるために、三十五年には実際の、そういう地域のものを、どうこれを調整して、そういうものを作っていくかというので、たしか五百五十万もの予算を組んでおるが、そういうものが私は一つの山へ乗り上げて、なかなかそういうことをやろうと思ってもやれない、こういうような重大な場面にぶつかったのが、この混迷を来たす中心になったのじゃないかと思う。私はそう思っております。だから、われわれが三合牛乳を唱え、あるいは共同経営を唱える、そのうしろには、三百万町歩云々というようなことを言っておりますが、うしろにはそういった自給飼料等の拡大が相当見込まれる、牧草地なり、開墾地は三分の二以上見込んでおるのであります。これはこの間も、だれかの質問で三分の二をもくろんでおるのであります。それをやれば今の問題は解決します。今のままの形でやるとしましても、なかなかできないので、私は畜産局としても、いろいろ苦労はしておるが、そこで突き当たったので、飼料計画というものを変更したのじゃないか、こういうふうに考えられる。その点は一つ安田君でも来たらうまいことを言うかもしれませんが、(笑声)私はそれが中心だと思います。
  145. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 私は飼料対策というものは畜産政策を行なう上に一番重要だと思っておりますので、飼料審議会においても、私は所信を述べましたし、国会においても二回ほど述べておる。すべて飼料問題については集中して対策を立てることにしております。それには農林省の関係官としては、農地局、水産庁、畜産局という間にも相互連関をとって立てさせる、立てろということを考えております。それは今の飼料の問題を私はどういうふうにしていたかよく知りませんが、三月と言われましたが、フィッシュ・ミールというのは一番問題なんですよ。北村さんの御指摘のフィッシュ・ミールは、実は国内の生産においては飼料用フィッシュ・ミールというものが今まで出そうとなかなかしなかった。ところが、それは多くの場合においてなかなか足らぬから、この前何トンか輸入したんですが、そうすると、輸入した瞬間に今度は国内が騒ぎ出すというようなことです。そこで、先ほど言ったように、今後のほんとうの飼料計画を立てる中においてフィッシュ・ミールの地位というものは重要なんだから、全国漁業組合連合会というか、全漁連というか、各所属組合を通じて一体どれだけ責任を持てるかということを出してくれ、しかし、それはいつも責任を持たせるということはいかぬ、それは魚価に影響することもあろうから。それだから、内輪でもいいから出してくれないと国内における自給計画は立たないのですよ。そして外から買うということでは非常に沿岸業者に対しても私は済まぬと思う。だから、ほんとうに国内のイワシ、サンマというようなものをフィッシュ・ミールとして飼料に持っていくについてどういうふうな形でこれを指導し、これを奨励していくか。それに対してどれだけ責任を持たせるかということをきめていかせることも飼料対策なり、フィッシュ・ミール対策の一つの行き方だと思う。そういうことを立てさせるという方向に向かっていく。そしてなおかつ国内での自給度の上から足らぬという分を外から入れたらどうか、その計画を立てたらどうかという話をしているわけです。おそらく三月ごろですから、まだ国内の全漁連等なかなかむずかしい問題だからなかなか責任を持ってはっきり答弁ができなかったかと思うのでして、いろいろの事情でそういう数字が出たのでしょうが、かなり最近の畜産飼料におけるフィッシュ・ミールの地位は高いのです。そしてフィッシュ・ミールは、国内産で足らない分は相当入れなければならぬのではないかと思っております。  それから今の草地の問題はたびたび私が言っておるように、先ほどもちゃんと言っておりますが、国内自給の中には農家がみずから草地あるいは牧野というものを改良して持って、そしてそのたんぼに他の農耕種を植えるというものを含めて自給自足するほんとうの意味と、それから自分は作らないが、外から国内生産品を買うものとを合わせて国内自給ということを私は言っている。こう申しております。そういうものが品目的計画を立てられて、それに必要なる牧野草地の改良は私ども次の段階では計画的に立てていこうと思っております。いずれにいたしましても飼料というものは総合的に、これを農林省の役所で言えば畜産、水産、それから農地局というようなものが一体になってこれが生産の計画に協力させて、的確な数字を出さしていく覚悟でございます。
  146. 北村暢

    北村暢君 もう時間ですから、一、二点で終わりたいと思いますが、この畜産の問題は飼料の問題と同時に価格政策の問題について、これは非常に重要だということは、もう各委員指摘いたしましたから私はそれには触れませんが、今後のこの畜産振興にあたっての構造問題、これについて私一つお伺いいたしたいのですが、これはわが党の江田書記長も触れましたように、水田稲作に対する労働報酬と、それから酪農に対しての労働報酬、これが非常に大きな差がある。この問題を指摘しておりましたが、今度の倍増計画なりあるいは答申案によりましても、特に酪農について申し上げるのですが、現在の酪農の飼養頭数は、まあ二戸において大体一頭平均、五頭以上をやっておるものは、これはちょっと三十何年かわかりませんが、四十一万戸のうち約一・二%にしかなっておらない。そして、五頭くらい飼育しますというと、一口の労働報酬が九百万円くらいになる。まあ一、二頭では二百円とか三百円だ。まことに低い労働報酬である。これではいかに自立経営農家だとか何とか言ってみたところで問題にならない。ところが、今後におけるこの酪農、乳牛の増殖に見ましても、大体平均三頭くらいまでしかいかない、こういう状態にあるわけです。これを一体どのようにして生産性の高い構造に持っていくか。これは自立経営の営農類型等について考えている点があるようでございますけれども、従来、先ほど来からもしばしば言われている水田農家の二・五町歩の自立経営農家百万戸つくるということはしばしば出てきますけれども、この酪農家を一体どういう形でもって自立経営に持っていくかということは、多頭飼育なりあるいは主産地形成なりというような施策がいろいろ出ているようですけれども、これは非常にむずかしい問題だと思うんです。現実には一頭か二頭しか持っていないものが圧倒的多数ですから、これを一体どのようにするか。従って、これを合理的な生産性の高いものに持っていくとするならば、現在飼育しているものを、これを一頭だの二頭だのというのをやめさせてほかに持っていかなければ、絶対数に限りがあるのですから、これは問題があるのじゃないか、こういうふうに思うんです。従って、一体この成長財としての畜産奨励、特に酪農というものについてどのような考え方を持っておられるか、これを一つ説明いただきたい。
  147. 大沢融

    政府委員(大沢融君) 御指摘のように、少数飼育の場合に家族労働報酬として非常に少ないものしか割り当てられないというようなことについての数字は、お配りいたしました資料の中にもあるのでございますが、それを見ていただきましても、やはり多頭飼育——この資料では五頭以上のものが平均的に一本になっておりますけれども、まあ乳価の下がった三十三年は別でありますが、やはり五頭以上になりますと、平均的にはかなり高い家族労働報酬というものも出ております。従いまして、もちろん飼育時間というようなものも一頭当たり少ないというような関係が見られると思います。この前このことにつきまして主管局長からもお話がございましたけれども、資料的に生産費調査がまだなかなか十分な域に達していないというようなこともあろうかと思いますけれども、大きな傾向から見ればやはり多頭飼育というようなことだと思います。と同時に、まあ乳と結びついたと申しますか、えさを自給飼料部分をふやしていくというようなことなどから、何と申しますか、利益が上がるような形に持っていくというようなことが今後の畜産を伸ばすゆえんでもあると思います。もちろん基本法でいっております自立経営農家というもののタイプの中には、酪農中心のものもどういう形が類型としてはいいんだろうかというようなことも研究をして打ち出して参りたいと、こういうふうに考えております。
  148. 北村暢

    北村暢君 これは大沢審議官、そうおっしゃいますけれども、これはまあ大へんなむずかしい問題なんですよ。現実に今八十万頭かいる牛が、一頭か二頭くらいの、労働生産性からいけばきわめて低位な飼育の方法をやっている。従って、採算の面においてもこれはなかなかとれないような状態であるわけですね。これは圧倒的にそうなんだ。五頭以上というのは一・二%しか所有農家のうちにいないんですから、そうなれば、これは二・五ヘクタールの自立経営農家を作って水田をやっていけば、それ以外のものは、まあ自立経営に行くか、兼業に落ちるか、こういうことでもって分解していく。そのことが農家農民の首切りだと言われたと同じように、これはやはり考え方として合理的な経済的に成り立つ多頭飼育ということで行くならば、これは酪農のやっているものを現在の形でそのまま酪農戸数をふやしていったんでは、これは構造改善にはならないわけです。当然これは五頭でようやっと労働報酬が九百円か千円になる、こういうことなんですから、それ以下だったらもう不経済な飼育にきまっているわけです、現状においては。将来どうなるかわかりません。そういうような点からいけば、これは二・五ヘクタールの農家を作ることが農家の首切りだということだというと、当然酪農において酪農でなくなる、転換しなければならないもので、そうして集めない限り、絶対数において押えられるのですから、そういう問題が……(「絶対的じゃないよ」と呼ぶ者あり)何だ。(「牛は子供生むじゃないか」と呼ぶ者あり)
  149. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) おいおい、要らんことを言うていかん。
  150. 北村暢

    北村暢君 そういうことで、酪農家の自立経営ということについて相当やはりむずかしい今後の問題が起こるのでないか。先ほど大沢審議官の答弁では、自立経営農家ということを主張する政府として非常に施策としては抜けているのじゃないか。まあ今後どういうふうなりっぱな案を出されるかわかりませんけれども。非常にむずかしい問題だと思うんです。この点は今後の酪農を養成していくという点からいって一体構造政策の観点からいってどういう指導をされようとするのか。これは私は、畜産が成長財なるがゆえに、今後の酪農というものに非常に心配がある。特に構造政策を考えている点からいってですね。それでお伺いしているわけです。
  151. 花園一郎

    説明員(花園一郎君) ただいまの酪農関係乳用牛の経営をできるだけ集約的にして参ることについては御説の通りでございまして、ただ、今十年計画後における目標頭数おおむね二百七十万頭程度のものが実はこの二月現在でおおむね九十万頭程度でございますが、これを二倍に伸ばした場合に、これが自立経営農家としてどのように考えられるかということは、お説の通り五頭以上ないとなかなか乳牛飼養専業農家にはならぬということでございまして、これについてはまず専門的に牛飼いで生計を立てていこうというものについては、十年後で戸数でおおむね十万戸程度、これは五頭ないし八頭くらいの平均規模で全国的に散らばるということが一つの目標に掲げられるわけでございます。と同時に、この経過的自立経営と申しますか、十年後においてはまだ自立しておらぬが、その後においては自立になるのだというプロセス、過程的なものにつきましては、一応五万戸を想定しておりまして、これがおおむね三、四頭程度の飼育頭数を持ち得るようにありたい、かように考えます。それ以外におおむね五戸程度の構成員を持つ協業体にしまして、やはり二戸別にしますとその程度の数字になるのでございますが、協業体として平均規模頭数三十頭ないし四十頭を持つものを自立経営としては十年後に一五尺それから今の経過的な自立経営としては五千戸というふうに、専門的な農家というものは合計いたしますればおおむね二十五万戸くらいのものが、平均規模といたしましては、個人としては、経過的自立経営まで合わせまして最大六、七頭まで達するように持って参りたい、それ以外にこの畜産ばかりを専業にいたしませんで、やはり併業的に耕作農業もやっておるもの、こういう有畜営農的なものにつきましても、個人については経過的自立経営十五万戸、それから自立経営者十万戸、それから協業体につきましては、経過的なものは五千戸、それから自立協業いたしますものを五千戸というふうに、全体として二百七十万戸が、それぞれの段階、または過程的なものはございますが、一応そういうように、先生の言われます通りに、できるだけ多頭飼育の姿を実現させるように持って参りたい、これについては当然今言われました畜産主産地を中心にそういった農家を造成いたすように努力目標を置いておるわけであります。
  152. 北村暢

    北村暢君 これでやめますが、この主産地形成という問題と、従来の乳牛の分布の状態と、これはやはり相当政策的に指導といいますか、それをやらなければ、先般この集約酪農地域の指定の問題と関連して、あまりにも漫然とやってしまったような形で、そのこと自体が非常に非能率な形になっておる、従って主産地形成ということを政策的にやるということになれば、これはやはり相当指導をしないと、従来のような形では合理化できないのじゃないか、従って生産性も上がらないじゃないか、こういう感じがします。私はまあ質問はこれできょうは終わります。
  153. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 私はこの間大臣がいなかったので、はっきりしない点をお聞きしたいと思います。  この基本法の第一条と、それから第十五条は深い関連があると思うわけなんですよ。第一条には「他産業との生産性の格差が是正されるように農業の生産性が向上する」、という点と、それから「農業従事者が所得を増大して他産業従事者と均衡する生活を営む」というように、二重の目標を掲げておるわけなんですね。この目標を裏づけるためには、第十五条の家族経営を発展させるのだと、そしてその家族経営を発展させるには、また二つの性格をうたったところの「正常な構成の家族のうち」云々という問題と、「当該農業従事者が他産業従事者と」以下云々ということによって、そういう自立経営農家を育成させるのだと、こういうことがこの基本法の根本的ないわゆる精神であり、方針だろうと、こういうように解せるわけです。その通りでよろしゅうございますか。
  154. 大沢融

    政府委員(大沢融君) ちょっと御説明申し上げます。第一条でいっておりますこと、安田先生おっしゃる通り一つは、生産性の問題を目標に掲げ、一つは、生活の均衡ということを相並列して二つの目的を掲げておるわけであります。そこで、これらの問題を解決するために自立経営をいっておるんだと、こういうことでございますけれども、これらの目的を達成するためには、ただ自立経営、構造改善と、この自立経営の育成ということではなくて、生産対策、あるいは価格、流通対策、構造改善にありましても、自立経営の育成はもちろんのことながら、協業の助長というようなこと、万般の政策が相待って、第一条の今申された二つの目的を達する、こういうことになるわけでございます。従いまして自立経営というものは、そういう経営のにない手として、ほかの政策と相待って自立経営が育成されることによって、第一条の目的が達成されるんだというふうに御理解いただいておるならば、その通りだと思います。
  155. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 第一条の目的を達成するためには、第二条のいろいろな施策がある、しかし、その根本になる構造的な問題としては、第十五条、いわゆる家族経営というものが根本的に、いわゆる構造的な問題なんですよ、ですからそういう形態に農家を置くんだと、自立経営をそういうふうな工合に育成していくんだというふうにこれは解されるわけなんですね、そういうことなんですよ。政策は抜きにいたしましても。いわゆる営農の、将来における日本の農業営農の本体というもの、いわゆる構造というものは、この家族経営が中心的なものである、こういうことになるわけなんですね。
  156. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それはその通りです。
  157. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そうしますと、私はそういう第一条の目的を達成するために、いわゆる達成するために、生産性と、それから所得ないし生活が、そうしますと、家族経営によって達成されられるという一体保証があるかということが疑問になってくるわけです。生産性が上がれば直ちにそれが所得が上がるというようなことには、現在のいわゆる経済実情の中ではなかなか困難ではないかと、こういうように見られるわけです。というのは、なぜかと申しますと、結局もし家族経営というワクの中で他産業との生産性の格差を是正するのだという、そういうことは今日のいろいろな経済実情の中におきましてはきわめて困難ではないかというように感じておるわけです。こういう点についてどういうようにお考えになりますか。
  158. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 安田さんはえらく狭くお考えになるのですが、第四章第十五条は、農業構造に関して家族農業経営というものを近代化していこうということを書いてあるだけでありまして、この生産性を上げるとか、あるいは生活を均衡せしめるとかいうことに関連しては、それぞれに関連してこの目的を達成するについては二条以下に必要な施策が書いてあります。家族経営だけをやって、第一条の生産性を向上させるということをいっているわけではないのです。むしろ生産性を上げ、生活を均衡させるについて必要な施策というものは、第二条の各号に総論が書いてあり、そうして、それらをもう少し各章に、それぞれの章に価格についてどうするとか、流通についてはどうするとか、あるいは農業経営基盤の整備についてはどうするとかいうようなことをずっと書き上げておって、これらが総合的に立てられることによって生産性は向上し、生活の均衡を得せしめるということであると私は思っております。
  159. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 確かに協業の問題がうたってありますが、その協業ということはやはり家族経営を発展させるための一つの協業のようにこの条文を見るとあるわけなんです。ですから、やはり将来の政府で考えておるのは家族経営が中心であるということになって、その家族経営がいろいろの政府の施策であるとか、あるいはその他のまあ予算の裏づけであるとか、あるいはまたその協業とかによって健全な家族経営になる。しかし、そういう家族経営でもってはたして他産業に劣らないような農業はなり得るかということが問題になるわけです。もしおっしゃるようにそういうようないろいろの施策の中から健全な家族経営として一応成り立つ、他産業に生産性が劣らないというような家族経営であれば、何もそれは、農業がいわゆる企業としての性格を持って堂々とほかの中小企業と同じような工合に企業として成立するわけなんです。そういうように考えられてくるんです。もしかりに家族経営というワクの中に限りがある限り、協業の問題を家族経営を発展させるというような工合に持っていっても、はたして今の、特にいろいろの所得倍増計画を見ましても、農業に対しては将来において投資額が一兆円で、ほかのは十六兆ばかりと、こういうような比率を見ましても、あるいは政府の戦後におけるところの農業予算の推移の問題から見ましても、企業形態である他産業と家族経営を中心としたものがはたして生産性を同じくするような、均衡がとれるような方向へ格差を是正していくことが可能かという点に疑点があるわけです。
  160. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これはなかなか、こういう法律が通っていろいろの施策をしたからあしたからすぐに所得が倍になるというものじゃないです。そこには非常なむずかしさはありますが、しかし、少なくとも私どもが今後の農業経営のあり方において家族経営というものを中心としていくということが一つであり、それをやって参りますについても、   〔委員長退席、理事秋山俊一郎君着席〕 生産性を向上させ、他の産業従事者と均衡を得た生活を営むようにするためには、たとえば需要が伸びて作ったら売れるというようなものを作らせるというようなこと、あるいは外国と競争関係にあるものは、もっと生産を合理化して太刀打ちのできるようにして所得を獲得できるようにするとか、あるいは土地の改良その他、水の供給等に関して必要な施策に関して相当な施策を行なって、農業生産に関してより便宜を与えるとか、あるいは農地を集団化して経営を楽にして生産を上げるとか、あるいは作った生産物が合理的な流通をして、そして買いたたかれないよう強力な形に運用する、進んでは生産物を加工して付加価値を造成して商品として所得を上げさせるとか、あるいは農業資材等については先ほど御指摘がありましたが、なかなかむずかしい問題だか、畜産を奨励するについて、飼料というものをできるだけ安く豊富に供給するような計画を立てるについて、必要な施策を講ずるとかというようなことができて、この生産性の向上ができたり、ほかの所得を増大していけるというわけであります。家族経営それ自体をさして、それだけで生産性を向上させるということは言っていないのです。つまり問題は経営の形態においては、日本の農村としてはまず家族経営というものを中心として、それを強めていくことが一つであり、さらにそれをやるについては二条各号の施策を国が講じていこう、さらにそれが一つ一つの家族経営では少し生産を上げるについてやりにくい、むしろ設備の共同利用によって労力を省き、生産を上げるということでなければならぬというならば、従来からやっているように設備の共同利用、機械の共同利用というようなことをやらせていこう。また進んで先ほど出た畜産については牧野あるいは草地を共同に持って、そこに入り会って草をとり、家畜を放牧するというようなことをやりたいというならば、そういう方向に向かって、所によってはこれを指導、助長していけばいい、こういうことであって、何かそれだけで十五条一つで、一条と矛盾するようなお話は少し私は聞こえぬのではないかと、こう思います。
  161. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 農業がただいま大臣がおっしゃるように、そういうように非常に飛躍的な発展を遂げ得るというものならば、私に言わせれば、それは家族経営というワクの中でなくて、もっとほかに構造改善を考えなければならない。こういうような考える道も出てくる。農業自体が他産業に比して、そういうようないろいろの施策によって発展する、こういう前提に立てば、何も家族経営というワクの中で物事を考えないで、構造改善の方途というものをもっとほかに求むべきではないか、こういうような疑点が残るわけですね。
  162. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) だから基本を、日本の農村として最も適した家族経営というものを中心にしますが、それは協同組織による設備機械の共同利用にまでも進むことはけっこうであります。それはもちろん農業経営改善の上に立って当然やるべきことで、われわれは今日までやってきた。しかし、それはまだまだ予算とかないし金融措置で足りないところがございますので、今度は農業経営近代化資金というようなものを考えて、そういうものをどんどん出して、そして個人あるいは協同組織による設備を講じてやろうというようなところにはずんずんやっていこう、こういうわけです。   〔理事秋山俊一郎君退席、委員長着席〕
  163. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 そこで第一条に返りますが、こういう私の主張から申し上げますれば、むしろ第一条は所得であるとかあるいは生活が目標になって、むしろ生産性の向上ということは手段でなければならない、ところが、第一条は文の構成からいきますと、生産性を向上することが目的だ。そうじゃなくて、所得を増大させるために、生活を他産業と同じ水準にするためには、生産性というものを手段として向上させていくのだ、こういう法文の位置づけの方が正しいではないか、こういう点については、社会党案の第一条にはっきりうたってあるわけですよ。社会党においては、「農民の所得及び生活水準が他産業に従事する者のそれと同一水準」、同一水準といわなくても、そういう所得であるとか、生活の問題を目的にして、むしろ生産性向上ということは、それを達成する一つの手段だ、こういうように考えた方が正しいのではないか、こういうように思うわけです。ところが、政府案においては生産性の向上ということが目的になっているわけですね。そうしますと、生産性が向上してもはたして今の経済実情の中で所得や生活がその通りに他産業並みに向上していくということについては、少しく考え方がどうも政府案のように私としては納得できないような気がするのです。
  164. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) これはたびたび論戦になっておりますが、私どもは生産性の向上ということは、それは当然それによって生産が増大するということは、当然経過として出てくる、これは一つの目標であってよろしい。しかし、われわれが考えておるのは、農業従事者は所得だけの均衡ということだけでは足らぬのではないか、こう思っておるわけです。生活の均衡を得せしめるということを考えたのは、所得ももちろん増大していくということは、均衡を得せしめる一つの要因になる、主たる重要な。けれども、このほかに、生活環境を同じゅうしていくということが、生活を均衡させるということになるのじゃなかろうか、こういうのが私ども考え方であります。そこで第二条の一項八号はそれに関することが書いてあります。生活環境の整備だとか、あるいは交通、あるいは生活の改善というようないろいろなものが出て参るのはそのゆえんであって、こういうことが、都会とが、その他の方面とやはり均衡を得たところに生活するということが、生活を均衡せしめる一つの、また他の重要な要因であろうかと思います。
  165. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 これは私ども考え方が違うのですから、この辺にしておきまして、次にもう二点ばかりお聞きしたいのですが、この政府案の農業基本法案の中には、税法上のいわゆる問題がうたってないわけなんですよ。この税法上の問題を、将来農業が家族経営を中心にして飛躍的な発展をしていく、あるいは農地の信託制度等によって合名会社、合資会社、いわゆる農業生産法人が出る。そういう場合に、所得が増大してきますというと、いわゆる事業所得というような問題も出てくるだろうし、あるいは土地を取得しますと、財産取得という問題が出てくるわけです。そういうたとえば農地を取得する場合におきましても、非常に高いいわゆる価格で買いますというと、あとの生産が収益の問題で困難なる問題が非常に多いわけなんです。そういうようなときにおいて、税法上の特別の措置を講じてやらなければならぬという問題が出てくるわけです。この税法上の問題については、一体どこの項で処理していくのかお聞きしたいと思います。
  166. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) それは私どもが第四条を広く書いてあるゆえんでありまして、「政府は、第二条第一項の施策を実施するため必要な法制及び財政上の措置を講じなければならない。」この財政上の中に、予算措置、税法上の措置は入っております。
  167. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 どうも私としてはそれだけでは納得できないわけなんですけれども、むしろこれを率直に解しますというと、法制上とは、これからのいろいろな基本法に関連した法律上の問題があるわけです、施策としての。財政上の問題となりますと、これはやはり農民自体の税金の問題までも触れているようには考えられぬわけですね。これは地方農民の要求としては、まあ予約米の減税はやめても、今の事業所得に対するところの専従者控除をしろというような声もあるわけなんです。将来の税法から見ても、相当税法の問題は、税金の問題は重要なウエートを占めているのではないか考えますと、やはり政府案のように、この重大な問題はどこかの項へ入れておかないということは、私は手落ちじゃないかと思うのですがね。
  168. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その点は、議論になって、これを特に財政上と書いたのです。それでなくても十二条でもはっきりわかるのですね。二条の中においても、「その政策全般にわたり、必要な施策」というものは、これは減免税とかいうような問題が当然入ってきます。あるいは産投の措置もこの中に入っているわけです、必要な施策は。けれども、それをさらにこの第四条で、「第二条第一項の施策を実施するため必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない。」重ねてこれをはっきり書いた。それはそういう立法沿革ですけれども、ちゃんとそれははっきり通りましたら、コメンタールをはっきり書きます。
  169. 安田敏雄

    ○安田敏雄君 将来財政上の措置の中にそういう問題も考慮するというならば一応わかりますけれども、私としては、基本法の中にはやはり明確にうたうべきでなかったかということを主張しているわけなんです。
  170. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記をとめて。   〔速記中止
  171. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記を始めて。  本日はこの程度として散会いたします。    午後五時三十五分散会