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1961-05-11 第38回国会 参議院 農林水産委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月十一日(木曜日)    午前十時二十一分開会   —————————————   委員の異動 本日委員江田三郎君辞任につき、その 補欠として戸叶武君を議長において指 名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     藤野 繁雄君    理事            秋山俊一郎君            櫻井 志郎君            亀田 得治君            東   隆君            森 八三一君    委員            青田源太郎君            石谷 憲男君            植垣弥一郎君            岡村文四郎君            河野 謙三君            重政 庸徳君            田中 啓一君            高橋  衛君            仲原 善一君            堀本 宜実君            大河原一次君            北村  暢君            清澤 俊英君            小林 孝平君            戸叶  武君            棚橋 小虎君            北條 雋八君   委員外議員            天田 勝正君   衆議院議員            足鹿  覺君            北山 愛郎君            中澤 茂一君   国務大臣    内閣総理大臣  池田 勇人君    農 林 大 臣 周東 英雄君   政府委員    法制局長官   林  修三君    農林政務次官  井原 岸高君    農林大臣官房審    議官      大沢  融君    農林省農林経済    局長      坂村 吉正君    農林省農地局長 伊東 正義君    農林省畜産局長 安田善一郎君    食糧庁長官   須賀 賢二君   事務局側    常任委員会専門    員       安楽城敏男君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○農業基本法案内閣提出、衆議院送  付) ○農業基本法案天田勝正君外二名発  議) ○農業基本法案衆議院送付予備審  査)   —————————————
  2. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)、以上三案を一括議題といたします。  この際、主として農業基本法案(参第一三号)及び農業基本法案(衆第二号)(予)について質疑を行ないます。両案についての発議者の御出席は、天田勝正君、東隆君、北山愛郎君でございます。  それでは御質疑のおありの方は、順次御発言をお願いいたします。
  3. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 本日議題になっております民主社会党の御提案基本法案並びに日本社会党の御提案予備審査段階にあります基本法案について、若干質問をさしていただきます。  まず、民主社会党基本法案でありますが、過般御提案趣旨説明は承ったのでありますが、一応政府提案基本法案民主社会党基本法案の顕著なる相違点について、簡潔にもう一度、御説明をお願いいたしたいと思うのです。
  4. 天田勝正

    委員外議員天田勝正君) お答えいたします。御指摘のありましたように、先般の提案理由説明の際に、五つの点について、わが党の特徴点を申し上げたのでございますが、これを総括いたしますれば、この法案に取り組むまず態度が問題であると存じます。提案者でありますから、この際他党のものをとやこう申し上げたくないのでありますが、私、政府案を伺いますると、別段さような表現は使っておりませんけれども、全体を通じまして、これはいわゆる現状の手直しというふうにうかがえるのでございます。わが党はこれに対しまして、歴史的な今日の農業の、まずこうなった過程、またわが国近代工業国家としての育成歴史考えてみる場合に、この際国は、農業者に対して償いをしなければならない時期が到来したのである。こういう観点に立って、わが党の特徴点が出て参ったのであります。この観点からいたしまして、さきに申しましたように、第一には、国の責任ということを、全条に貫いたという点でございます。  第二は、明瞭に、言葉においても、政府案と違います。わが党はこの法案趣旨をば、計画性を貫いた。この計画性につきましては、いわゆる農業基本計画、これに基づく年度計画、そして主要農畜産物に対する長期生産計画、この三つにいたしたということと、基本計画の中におきまして、農業生産基盤整備拡充計画を第一にうたいまして、いわゆるその母体作りに力を入れたという点。  次には、農用地拡大を目ざしまして、いわゆる農用地造成計画、そして協同組織を大いに活用しなければ、やがて官僚統制の弊に陥る危険があると思うのでありまして、協同組織拡充計画、そして所得格差の解消を目ざすのが、元来この法案の目的でございますので、これはそのものずばりに表現いたした。こういうことがいえると存じます。  第三の特徴は、今申し上げた中にすでに入っておりますが、農業協同組合及びその他の農業従事者団体の役割をきわめて重視したということに尽きると存じます。しこうして、この農業協同組合と他の農業従事者団体関係でございますが、これは現状におきましては、確かにこの農業協同組合によりまして、その地域における農民の利益を代表し、うまくいっているところもありますけれども、むしろ近代化共同化のために、場所によりましてはこれが阻害になっているという事実を考えました場合に、私どもとしては近代化協同化に役立つ協同組織ならば、それが出荷であれ、あるいは生産であれ、あるいは養畜、いろいろな名称でありましても、これは法人格を与えて、国の施策の対象にすべきがしかるべきである、こういう考え方に立ってこの関連法律も用意している次第でございます。  第四番目は、何といたしましても、農業者の不利は、流通価格の点にあるのでございますから、そこでこの点についての整備に力をいたしたいということでございまして、すなわち、主要農畜産物については、現在米でとっておりまするような生産費及び所得補償の原則によることといたしまして、さらに他のすべての農畜産物をば、全部この方式でかぶせるというわけにはいきませんので、いうならば菜っぱの末まで、この生産費所得補償方式によるわけに参りませんから、そこで市場整備をする。そうして生産地市場につきましては、これは農業従事者の専管にするという考え方を明らかにし、消費地市場につきましては、生産者消費者が、それぞれ出資を伴わずして、運営に参加せしめる道を開くべきである。そうして公共性を強めなければならない。しかし望ましいことは、何としても生産者団体消費者団体とは、一つのパイプで直結するということがきわめて望ましいのでございますから、これを助長いたしますために、国営モデル市場を設けたい、こういうことであります。  第五の点は、これは特段政府案に書いてございませんが、おわかりの通り兼業零細僻地農業対策についてであります。これはわが国農業が、現実零細小農手労働、こういう状態でありますので、これを解消していく場合に、何としても零細農兼業農についての規定を、いかに基本法といえども設けるべきであるという考え方から、この規定をいたしたのでございます。詳しくはまたさらに御質問によりまして、法案について申し述べたいと存じますが、大体私が考えているところは、以上の相違点があると信じます。
  5. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 ただいま御説明にありました中に、主要農産物、これはどの程度にお考えになっておりますか。
  6. 天田勝正

    委員外議員天田勝正君) この点につきましては、現在直接統制及び間接統制を行なっておるものに加えまして、酪農製品それから枝肉、これらを加えて、この中に他のものを入れるか入れないか等につきましては、当然農政審議会の議によって主要農畜産物はきまるべきものであると、こういうふうに考えますけれども、私ども今予定しておるものは、これらでございます。
  7. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 現在主要農産物、あるいは現在という言葉が悪ければ、過去において主要農産物というふうに一般に考えられておったような農産物で、国民所得が急激に増加していく過程において食構造というものが相当変化して参ります。従いまして、需要が急激に減退していくというような種類の農産物、これらについては、どういうふうにお考えになっておりますか。
  8. 天田勝正

    委員外議員天田勝正君) 御指摘の点は、おそらくただいま需要が減退しつつあります麦類等をさされておるんではないかと察知いたします。麦類等につきましては、もちろん、これが十年後、二十年後ということになりますれば、今日の重要性は薄れて参ることは自然であろうと存じます。しかし、今現在これを入れないということになりますると、代替所得が十分確保されないうちにこれらが保証されないという結果になりまして、いわゆる農民生活を保持する道でございませんから、これは、それぞれ、先ほども申し上げましたように、他の代替物によって十分農民生活が保証されるという見きわめがつきましたならば、これは農政審議会によってはずしていく、こういう順序がしかるべきであろうと存じます。
  9. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 あとでまた民社案について質問さしていただくかと存じますが、次に、社会党案に対して質問さしていただきます。  社会党基本法案提案理由の第一に、こういうふうにお書きになっておられるのであります。「政府案は、農業資本主義自由経済の中に組み入れ、独占資本中心経済成長計画農業及び農民を従属せしめようとする基本法であり、」、こういうふうにうたっておられるのですが、このところについて、もう少し詳細に御説明いただきたいと思います。なお、その中で「独占資本」と、こう言っていらっしゃる独占資本に対する見解も、あわせて詳しく御説明願いたいと思います。
  10. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 社会党提案理由説明の際に、政府案に対する一般的なわれわれの印象として、全体的に受け取った印象をそのように申し上げたわけであります。それは、この政府案表現の中に、他の産業発展に即応してというような言葉がたしか第八条にございます。従って、農業自体発展というよりは、他の第二次、第三次産業発展に即応してそして、農業自体政策考えていく、あり方を考えていくというようなふうにも表現されておりますが、さらに、たとえばわれわれの社会党の案が、今後の農業の新しい道を作る際に、国の責任として一つ政策方向づけをしていこうと、こういう点を第二条ではっきりとうたっておるわけでありますが、政府案におきましては、長期農業計一画、農業生産見通しというようなことで、いわゆる農業経済の活動というものをやはり自由経済方向に持っていこう、こういう基本的な考え方がその辺にも現われておると思うのでございます。これは、戦争中からの一つの流れでございましょうけれども、少なくとも戦後における政府農業政策保護政策という考え方特徴的である、強く出ておると、こういうふうに考えるわけでございます。ところが、今度の政府案におきましては、むしろいわゆる統制的なものをはずしていって、そうして自由経済の中に農業を置いて、農業経営もいわゆる企業としての経営、そういう性格を持たせようと、こういうようなところに農業全体の保護政策後退が示されておりますし、また、今の資本主義経済の中に農業を組み入れる、こういう考え方が、これはこの政府案のみならず、委員会を通じましての総理あるいは農林大臣等の答弁の中にもそういう点がはっきりうかがえるわけであります。さらに、価格政策につきましても、私どもはこれは農民にとっては非常に重大な直接的な影響を持っておる問題でありますから、できるだけ政府価格政策というものが具体的に農民がわかるようにしなきやならんと、こういう考えで作られておりますが、政府案におきましては、価格安定の政策条項を見ますというと、非常に抽象的で、どこが中心なのか、前へ向いておるのかあとへ下がっておるのか少しもわからない。あるいは、生産政策につきましても、選択的な拡大ということで、これじゃ農民もわからないと思うのであります。一体、今後選択的にどういう農産物が奨励をされ発展をするのかということは、この政府基本法の中では抽象的にしか書いておらない。また、新しい価格政策言葉としては、例の需給均衡考え方が新しく入っておるわけであります。これは従来なかった価格政策考え方でありまして、むしろ政府案のいわゆる新しい農業政策、新しい農業の道というものは、価格政策においてはいわゆる需給均衡価格需要のふえるものは価格的にも有利な格好にしておくが、需要の減るようなものにつきましては、むしろ価格政策によって生産を押えていくというようないわゆる成り行き価格によって、それに追随をした価格支持政策をとっている。こういうふうな点にも、やはり保護政策というものの従来の変更が見られますし、全体の資本主義経済の中に農業経済を置こうという考え方があるわけであります。そうして、私ども社会党案の前文の中に書いておりますように、現在日本農業が置かれております困難な事情原因になっているものは、一つ歴史的な事情がある。これは民社の案にもそういう趣旨が書かれておりますが、やはり長い間の農民搾取歴史というものが、今日の農業土地条件その他の立ちおくれの根本原因になっているという認識、もう一つは、農業それ自体が、しかも日本のような非常に過小農のような形で、資本主義経済の中におきましては、とても競争に太刀打ちができないということで、むしろ政策の重点というものは、農業資本主義経済の中にはめ込むのじゃなくて、農業資本主義圧迫から守るというところに基本考え方が置かれておるおわけであります。しかも、外国の例を見ましても、農業それ自体の中に資本主義が浸透して、いわゆる資本主義的な農業生産農業経済というものがそういう過程を経た国もあるわけであります。ところが、日本のようにすでに経済中心というものが、それぞれの業種において少数の大企業によって実権を握られておるというようないわゆる独占資本段階におきましては、ちょうど農業経営は、中小企業経営と同じように、資本三義的な発展をそれ自体遂げることはできない。むしろ資本主義経済の中にはめ込まれるというと、独占の力によって、いろいろな圧迫を受けるのだと、こういう考え方でございます。これは日本の現在の資本主義経済が、独占段階になっておるというような、いろいろな批評は、いろいろな角度から言えるかと思うのでありますけれども、私は、ここに詳細な資料は持っておりませんが、しかし、少なくとも、工業生産ども、主要な商品につきましては、まあ、大ていの主要な商品は、ごく少数の、十なり、あるいは五つなり、少数企業がその生産の大部分を握っている。あるいは少数の大企業法人企業固定資産相当部分を持っておる。いわゆる生産集中、あるいは資本集中というものが相当高度に達しておるというのが、われわれの見方でございます。そういうような資本集中あるいは生産集中というものが、いろいろな形で、経済流通過程の中で、生産関係の中で、やはり日本経済を根本的に支配しているのだということがわれわれの見解でありまして、そういう中に、すでに日本農業はいろいろな、価格関係においても、流通関係においても、そういう独占資本経済から圧迫を受けておる、こういうふうに認識をしておるわけでありますが、政府案は、先ほど申し上げたように、われわれの見解である資本主義圧迫から農業を守っていかなければ農業経営は立たないという考え方基本的に違っておりまして、むしろ、従来の保護政策というものを後退をさして、それを緩和して、そして自由経済の中にはめ込んでいこうというのが、政府案に流れる基本的な考え方だと、これは非常に危険である、こう感じてさように申し上げた次第であります。
  11. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 北山さんの今のお話は、結論的には、日本産業構造の中で、農業を分離して考える、またその手段としては保護育成という手段によって分離して考えると、こういうふうに聞き取れたのでありますが、もしその聞き方が間違いでありましたら、あわせて御説明を願います。
  12. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) それは分離して考えるのでなくして、むしろ非常に密接な関連があるという角度から、われわれは日本農業を見ておるわけであります。もしも、農業が独立をして、ある姿であるならば、われわれは政府案についてかようなことは申し上げないと思うのですが、すでに、現実に、今の保護政策のもとにおきましても、いろいろな独占資本体制の中で、農業がじりじりと苦しんでおると、ところが政府案が、それをさらに資本主義経済の中へはめ込んで、農業の困難を増そうということでありますから、両者のむしろ密接な関係を認めながら、農業についてものを考えていく、こういうふうに私ども考えておるわけであります。
  13. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 どうも、その点の説明は、私にははっきり受け取れないのであります。諸外国産業発達過程を見ましても、あるいはその中における農業発達過程を見ましても、国民経済発展という中で、産業の一環である農業というものがそれと不離不即の形において変化していくというのが、これは当然の姿かと思います。独占資本中心主義経済高度成長の中で、あるいは政府提案はその中に農業農政を埋没させるのだというふうにお取りになっているようですが、きょうは、政府案議題になっておりませんから、私は、政府案については述べませんが、その考え方については、まず出発点に根本的な相違がある。そこで、あなたの方の案で見ますと、現在の農業就業人口は約千四百万、もう少しこまかくいってもいいのですが、大まかにいって、千四百万、その農業就業人口は、おおむね固定していくのだ、こういう考え方に取れるのですが、いかがですか。
  14. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 農業就業人口につきましては、いわゆる非常に、一年の間に六十日未満とかいうような短時間の就業者、そういうものを加えますと、それも五百万ございますから、実際に農業就業する人口は、広く見るならば相当多いのじゃないかというふうにも考えております。しかし、政府のいろいろな資料によりますと、千四百五十万ぐらいであります。その程度に見られている。私どもは、社会党の案では、農業就業人口をくぎづけにする、こういう基本的な態度ではないのであります。ここでは農業基本法農業政策部面について、われわれは政策を出しているわけでありますが、農業政策だけを隔離して、今ちょっとお話の中に誤解があったと思うのでありますが、農業政策だけを隔離した政策をとろう、こういうものではなくて、御承知の通り社会党はすでに一つ見通しの案でございまして、これからさらに検討を要するものではありましても、長期政治経済計画というものを持ちまして、そしてその中で、もちろん第二次、第三次産業の大幅な発展というものを見て、そして全体の経済発展政策見通しというものを立てているわけであります。その中で、もちろん農業は位置づけられる、こういう見解でありますが、ここではそのうちの、いわゆる農業基本法でありますから、農業政策の分野でものを考えているわけであります。従って、私どもがよその第二次、第三次産業発展に伴って自然に農村から流出する就業人口というものが従来大体において二十五万ぐらい平均ある。こういう事実、これを否定するものでもありませんし、また、それがよくないというふうな見解ではないわけであります。ただ、政府案は、それを基礎にして、いわゆる構造政策を立てている、農業就業人口が流れるということと農家戸数を減らすということを同じに考えていらっしゃるのではないか、これは大きな政府案の間違いでありまして、私どもは、就業人口の減ること、よその、他産業に移動するということ自体を否定して、これを社会党の案ではみな農業の中で物事を考えているのじゃない。ただ、政府案のように、それだからといって、農家戸数を減らしたり、あるいはそれを、就業人口が減るのを機会にして、そうしていわゆる自立経営という大きな経営育成していく、他方においては、非自立経営というものを作って、それが離農せざるを得ないような方向に持っていくという、そういう構造政策的なものがむしろ実態に合わないだけではなくて、農民を苦しめるものだ。いわゆる農家経営農家戸数というものと農業就業人口一体にして、同じように考えているところに問題があるのだということを申し上げているわけであります。  それから、もし政府案がそういう離農政策をとっていこう、農家経営の単位というものを減らしていこう、こういう考えであるならば、これはすでに国民経済白書なり、あるいは基本問題調査会でも言っておりますように、よその産業農業をやめて転業できるような条件を作る、そのためには、他産業の受け入れの雇用条件なり、賃金体系なり、そういうものを改めるとか、あるいは今のようなおそまつな社会保障ではなくて、もっと老後の生活が安定できるような国民年金を作るとか、あるいは最低賃金制を拡充するとか、そういうふうな措置をとるのが正しいのでありまして、そういう措置をとらないで農業内部において移動を円滑化、容易にしようというような政策をとろうとするから、それが結局農民の首切りということにならざるを得ないのじゃないか、こういう点を申し上げているわけであります。私どもが大体八年なり、あるいは十年なりの農業発展見通しというものの作業は、非常に乏しい資料の中からいろいろいたしておりますが、その中におきましても、自然に他の産業に流出するということは、一応認める。しかし、農業それ自体は、日本農業というものは、まだまだ発展性があるのだから、その農業発展を制約をしておるいろいろな条件を、政府責任でもって除去してやるということによって農業発展をさせて、そしてできるだけ農業内部における就業機会というものをふやしていこう、これは農業政策でありますから、農業内部においてでき得る限りのことをやっていこうというのが、われわれの基本法でありまして、全然よその産業にたよらないとか、よその産業農業人口を流出をさせないで、認めないで、そして農業だけの中で問題を解決していこうという考え方ではない。ここでは、ただ、農業政策部面お話をして、また政策を出しているわけであります。その他の一般的な政治経済政策というものは、これは、党としても、別に政策なり計画を作っておるわけであります。  ただ、私ども政府案で心配になりますのは、政府案は、やはりその基礎所得倍増なり経済高度成長というものを前提にして、それに依存している。これは、基本問題調査会の答申の中にも、高度な、七・二%とかいうような経済成長があるのだということを前提にして対策を作っておりますが、そういう考え方政府案の中にあるのです。ところが、この所得倍増政策なり経済成長策なるものが、私ども見通しでは、政府がいうように安易なものではない。楽観できるものではない。これは、ことしの国際収支なりいろいろな複雑な国際環境なり、あるいはアメリカの経済なり、そういうものによって、決して、十年なら十年という安定した経済成長が今のままの姿でいくだろうということは、私どもは信頼できないわけであります。従って、私どもとしては、やはり農業内部における政府政策の努力というものに中心を置いて基本法考えるべきである。もちろん、それ以外の、第二次、第三次産業発展なりあるいは海外との貿易なりそういうものは、それは発展さしていくということにもちろん賛成であります。それだけ経済全体としてふえていくことは、社会党決して反対するものではないわけです。ただ、そういう基本的な考え方で、ここでは農業内部で、われわれが、欠けておった点、それから農業発展性を抑えておった点を、新しい基本法によって解決をして、農業発展をさしていこう、こういう積極的な考え方を盛り込んでおるわけであります。
  15. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 どうも北山さんは答弁がうま過ぎて、話の焦点が少し私の質問からずってしまうおそれがあるのでありますが、政府案がここでは審議の対象ではないのですから、社会党案についてできるだけ御説明集中していただきたいと思います。  社会党説明のたとえばパンフレットを見ますと、自然の減少の姿を拒否するものではないのだというふうに今北山さんがおっしゃいますけれども社会党の案としては、やはり千四百万という農業就業人口は十年後も継続されるのだというふうで説明をなすっていらっしゃいます。そこで、現在、これはもうあなたに私が申し上げるまでもなく非常に詳しく御承知のところでありますけれども農家の子弟というものが、おおむね約八十万程度ですか、毎年社会に出て行く。そのうち四十万程度農業に残ると仮定すれば、現在の農業就業人口は、あまり変動はない。つまり千四百三十万程度というものが、増加もしない減りもしない、こういう形がおおむね継続されるのだ、こういうふうに統計では言っております。ところが現状では、農家の子弟が、新しいゼネレーションの人たちが、四十万程度は残らないで、十七万、ごく最近では、あるいは十三、四万程度しか残らないのです。こういう現象が農業就業人口を老化させ、婦人に重点が移行し、そうして農業就業人口がおおむね三十万程度、その前後減っていく最大の要因をなしておる、こういうふうに私は理解をしておるわけです。そうだとするならば、農家の子弟のうちの六十万以上というものが、農業以外の産業、二次産業、三次産業に流動していく。そういう現状を、先ほどあなた方の提案説明の第一に掲げられておる。独占資本中心主義の高度経済成長の中に農業を埋没させるのであるという議論と、現在農家の子弟が六十万以上も二次産業、三次産業、あなた方の言葉で言えば、独占資本の中に吸収され、埋没していく、そういうことについてはどういうふうにお考えですか。
  16. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 現在の農村の、ことに若い労働力が非常に激しく他の産業に流れて行くという現状、これは私どもとしては、まあ政府の立場からするならば非常に健康な傾向だというふうにお考えになるかもしれませんけれども、これはしかし、一面におきましては、産業の都市集中なり、あるいはそこから産業間の、地方の中小企業なり、大企業中小企業の間、あるいは地域的な格差、あるいはその賃金の格差というような、いろいろな格差を背景とし、またそれを実証しているのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。  で、なるほど若い人口は農村から出て行きますけれども、しかし、これが東京に参りましても、その勤め先というのは、大半は臨時工とか、あるいは昨年の東京都の労働局の調査によりましても、中学校卒業着の調査を見ると、八八%は三十人未満の事業所であります。しかも五人未満が四六%くらい、半分くらいが五人未満という零細企業であります。しかもその労働条件というのは、住み込みで大体三千円くらい、こういうふうな非常に悪い条件のもとに、それも、そういう悪条件も押して、若い労働力が中学校、高等学校卒業程度の人たちが都市へ集まってくる。このことは、私どもから政策的に考えるならば、そういうような中小企業の、あるいは他産業でも、いわゆる小さな企業の労働条件というものをよくしなければならないという一つの問題と同時に、そういう若い人たちが、むしろ農村にいるよりももっときびしい、過酷な労働条件でも、村を捨てて、農村を捨てて町になぜ出てくるのか。いわゆる農業に夢を失っておる。こういうふうな両面の問題を考えてむしろ対策を立てなければならない。そのままでほうっておけないような事態だというふうに考えるわけであります。従いまして、私どもは農地を造成して、しかも経営というものを近代化して、農業発展性と将来性というものを与えるということによって、そういう非常な悪条件のもとにでも、都市の零細企業で労働力をすり減らす、若さをすり減らすような青年たちのある部分が、農業に期待を持って、夢を持って、農村の中で従事をするというような事態も作りたい。また他の産業に移って行く人でも、その労働条件が今申し上げたような、きわめて前近代的というか、むちゃくちゃな悪い労働条件であるものを、これを改善するということもしなければならない。ですから、私どもはこの産業間の格差というものは、ただ農業と他産業との格差というだけではなくて、他の第二次産業、第三次産業の中に非常にものすごい傾斜、格差があるわけであります。その格差、いわゆる二重構造というものをなくしていくということもあわせてやっていかなければならぬのであって、農業だけが不利であって、第二次産業、第三次産業だからすべていいのだ、そこに従事する者の労働条件はいいのだという、こういうふうには言えないわけであります。御承知のように、政府資料によりましても、農業県等における、大体農業と同じような形態の五人未満等の小さな零細企業における労務者の労賃というものは、むしろ普通の通常の農業従事者の賃金より低いくらいである、労働時間でいうならば、片方は一時間三十円、片方は一時間五十円、むしろ他産業の方が労働条件が悪い、そういうふうな他産業と非常に格差が開いておる、その格差を是正するということも並行してやっていくのだ、こういうことを政策的にはその事実から考えさせられるわけでありまして、私どもは他産業にそんなにたくさんの若い労働力がどんどん流れていくから、その事態は健康な事態でそのまま是認すべきだというふうにに考えられないということであります。しかも今申し上げましたように、経済の状況というものは、今の自由主義の経済でありますから、しかも国際的にも資本主義というものがいろいろな困難にぶつかっておる。そういう事態の中では、この長い間、戦後は比較的世界的に見ても日本資本主義も高度な成長を遂げましたけれども、しかし、その矛盾というものはやはりいろいろな形で追ってきておるわけでありまして、この今までの経済成長、ことに第二次産業、第三次産業成長というものを健康な姿として、永続的な姿としてことに信頼感をおきかねる、そういうところに私どもが今度の農業基本法社会党の立場から作り上げるという根本的な考え方が出てくるわけでありまして、また政府案に対しても、そのような毎度から批判を申し上げているわけであります。
  17. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 農業に入っていかない、他産業に入っていくという現象を、そのまま農村を離れて都市に集中する、こういうふうに定義づけられるところに考え方の若干の、失礼な言い分ですが間違いがあるのじゃないか、他産業に従事するということで直ちにそれは農村を離脱していくのだ、こういうお話のようでありますが、そういう現象ではないということをまずこれは確認をしておいてもらいたいと思います。それから他産業のあり方というものが、私は現在健康なあり方だという前提で申しておるのではさらさらございません。政府所得倍増計画、これはいつもあなた方の方でも問題にされますが、私どももあれが閣議決定になろうかという前に、あまりにも産業間の格差、あるいは同じ産業の中自体に、たとえば大企業中小企業間の労働の生産性、従ってその所得の格差、あるいは四大工業地帯とそれのベルト地帯の開発ということに重点を指向しておること等について、もっと高度の、所得格差の解消という高度の政治的な考え方から、あの所得倍増計画というものは大幅な修正を要するのだということも言い、またそのことを含みとした付帯条件付な閣議決定という形にもなっておることは、御承知の通りでありますが、この他産業の中の所得格差という問題については、これは当然その中において、あるいは中小企業の中において、その中における政策で解消していくべき問題であって、そちらに流動していくことが、すなわち非常に不健康な形だと、こうきめつけることについての考え方は、私はとりにくいのであります。それからまた、そうして流動していくことが不健康なんだ、農業所得というものを上げていけば、そういうふうな流動というものがなくなるのだ、こういう御見解のようですが、そうした過剰労働を農業の中に包含しつつ農業所得を上げていくという考え方、それについてもう少し具体的な御説明をお願いします。
  18. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) ちょっと申し忘れましたが、先ほどの十年後における千四百万の問題です。これは社会党資料の中でもそれを説明してございますけれども、その千四百万のうちで約二百万くらいは農業関連をした加工その他の関連産業の従事者になるであろう、こういうことをここに書いてあるわけであります。だから直接の農業に全部千四百万が従事するという説明にはなっておらないわけであります。ただ特にそういうような二百万の加工産業といいますか、関連産業就業人口というものを特に述べましたのは、それはこれからの農業発展の重点といいますか、生産が特にふえるということは、政府案においても政府考えもそうだろうが、やはり加工度の高いものがふえるわけであります。従いまして私どもはそういう加工産業、加工業というものを今のように他の企業資本の手によって加工をされて、農民はただ原料の生産者にとどまるという形ではなくて、農民の手によって加工その他の関連産業も大きく育成していこう、こういう点に重点が置かれておりますので、そこでその千四百万の中には、そういう部門も含めて考えておるのであります。純粋な意味で加工産業が第二次産業だというふうに分類をされるならば、それは大体本来の今言っている千四百数十万に対応するものとして二百万くらいの結果になろうかと思うのであります。いずれにしても他の産業に移動していくという事態をわれわれは否定するのではないのです。ただ、今のような格好でたくさんの若い労働力が他の産業にいくから、それでいいんじゃないかというように私ども政府態度が見える。しかも、経済高度成長をすれば、その間の、その過程において経済の格差、二重構造は解消するんだということは、昨日池田総理もこの席から言っておるのであります。しかし、現実には高度成長、必ずしも産業なり企業所得の格差を解消する、縮めていくものではなくて、むしろ広げていくものではないかというふうなことを経済企画庁が最近の作業においてもそういうことを指摘して、むしろあらためて格差を解消するような政策が必要であるということを指摘しておるわけです。ですから私どもは先ほど申し上げたような施策を他の産業、たとえば中小企業なり零細企業におけるその企業を助成するという政策なり、あるいはその中に働いておる中小企業の労働者の地位というか、労働条件をよくするという政策なりそういうものをやらないで、ほとんどやらないでおいて、よその産業に農村の過剰人口が流れていくんだからいいんだというふうにしか私どもは見えない。そういう点はいかぬのではないか、そのまま放置しておいてはいかぬのではないか、こういう角度から申し上げておるのであります。従って私どもは健康な形でよその産業に農村の労働力というものが流れていき、またその行き方は受け入れの方の側の条件もよくしていくというような格好で初めて、それがまたはね返って農業所得あるいは農民の地位の向上というものにはね返ってくるのではないか、今のようなままで、よその産業における労働条件を現在の悪いままで、農村から余剰な人口が移動するようにこれを助長するような政策をとるならば、どういう結果になるかといえば、それはお話のように兼業農家がふえて、片足を農業に突っ込み、片足は非常に安い労働賃金で働くということであって、それこそ独占資本が喜ぶ低賃金労働者が農村からどんどん出ていく。こういう独占資本にとっては歓迎すべき事態が、今のままでいくならば出てくるわけです。そういうふうにしか見えないから、そこで今度の政府農業基本法ども、結局独占資本が要求する安い農産物、安い労働力というものを供給源として農村を考えておる、こういうような結果になってくるのではないかと、こう申し上げておるわけです。
  19. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 北山さんの御説明を聞いておると、あなたの個人的な杞憂を、将来に対する動かさざる、もしくは動かし得ざる方針だという前提に立って御議論あるいは御信念を固めておられるようでありますが、現在の二次産業、三次産業、特に中小企業と大企業の中の労働者の所得格差、これを解消しなければならぬということは、これは池田内閣でもはっきり打ち出しておるところであります。現在のいわば中小企業対策と、非常に不十分なそのことを不動の事実というふうに定義づけておいて、そこで農業から流動していくことが不健康だ、こういうふうにきめつけておられるように私は受け取るのでありますが、もしそうでなかったらそうでない点をお示しいただきたい。
  20. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) この問題は実はきのうきょう始まったことじゃなくて、数年前から国会の中で所得格差なり、あるいは企業間の格差なり、あるいは産業問の格差なり、そういうものが開いてくるということをわれわれ口をすっぱくして、私だけじゃなくて政府に申し上げておるわけであります。たしか去年の国会においても池田さんにお話をしたところが、それは賃金をきめる、賃金を上げるというようなことは、これは労使間できめることだ、こういうようなお話なんです。労使間の力関係できまるのであって、それじゃ最低賃金法なんて要らないじゃないかというようなお話をしたわけなんですが、しかし、少なくとも経済白書には今私が申し上げたようなことを指摘しているんですよ。私の個人的な主観じゃないのです。農村の過剰人口、そしてその兼業農家、これらがふえてきておる、これをこの農家こそ減らしていわゆる離農を奨励するというためには、去年の三十五年度の経済白書の中にはっきり条件が三つ書いてある。最初に書いてあるのは、要するに受け入れ側の雇用条件というものをよくするということなんです。労働賃金なり、あるいは最低賃金制なりそういうものをよくするということなんです。もう一つ社会保障制度をよくするということ、そしてあとにはその農業内部における土地の移動なり、そういうふうな経営の構造改善というものを制約しておるいろんな農業内部の問題を解決すべきである、こういうことを昨年の経済白書にもはっきり書いておるのです。ところが、政府の施策を見ると、最低賃金法にも手もつけない、少なくともケネディが今度やろうとしておるような一時間一ドル三十五セントに上げるんだ、それぐらいのことはやっていく、あるいは国民年金についての社会党提案しているようなものに近いものをやっていく、七十才以上月に千円なんていうようなそんなけちな国民年金じゃなくて、もっと老後の暮らしを保障して、年を取った人が無理に働かなくてもいいような国民年金社会保障をやっていくと、こういうことをやってくれるならば、私は何も申し上げないのです。しかし、そういうことは何年も前から何べん要求してもやらないで、そして今度の基本法の中には土地の移動を円滑にするとか、あるいは自創資金についても取得資金を多くふやして、自立資金の方はあまり貸さないようにするとか、要するに兼業農家、零細農家が農村からいびり出されるような点だけが政策として取り上げられるから、私どもは申し上げておるんで、私は主観的に申し上げているんではない、いろんな政府の企画庁なり、あるいはその他のいろんな資料あるいは学者の意見、そういうものを総合して考えると、そういう結論になってくるわけです。もしも池田さんがこの国会に、まあケネディのまねをしてでも一つ最低賃金を八千円にするとか、そういうものをやって受け入れ側の雇用条件をよくするんだ、こういう政策でも出してくれるんなら、私はこんなことは申し上げないのです。
  21. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 どうも議論が筋違いになっておる感が若干あるんですが、あなたのおっしゃることは。それじゃ突き詰めますと、企業間の労働者の所得格差の解消ということも現在の時点ではなしにですよ、もちろん農業構造の改善ということも長期にわたって行なわれることでありますから、片っ方の方の将来にわたってそうした格差の解消ということは絶望的なんだ、あるいは社会保障の充実ということも絶望的なんだ、だから自分はこう言うんだ、こういうことでございましょう。現在の時点を私は議論をしておるのではありません。何度も申し上げるように、現在の時点において大企業中小企業、小企業の勤労者の所得の格差が非常に大きいことは、私ども十分認めております。これはあらゆる努力をして解消していかなければならない大きな問題点の一つだと思います。また社会保障の充実ということもこれは当然だと思います。そういうことに対して望みがないから、だからこうだ、こういうふうにおっしゃるのでしょうか。
  22. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) それは将来全然望みがないと私は申し上げているわけじゃないのです。ただ池田内閣が、あるいは自民党の政府が、われわれが希望しているものを、しかも今希望しているのじゃなくて、もう長い間希望していることを実行してもらわないと、その望みを失ってしまうのじゃないか、私だけじゃなくて零細企業なり、あるいは非常に悪い条件のもとに働いている農民、そういう人たちは希望を失ってしまうのじゃないか、こういうわけであります。従ってここでは基本法が出てきているならば、それならばそういう問題を現実にあなたもお認めになっているような、経済成長するけれども企業の格差なり所得格差はますます開いていくのだ。こういう認識のもとに、政府、自民党がそれに対応するような政策をどんどん出していただく、これが必要なんであります。それを出していただかないで、将来その希望は絶望的なのかとおっしゃられても、私はちょっとお答えに困るわけなんですが、願わくば希望を失わせないようにしていただきたい、こう思うわけであります。
  23. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 千四百万の農業就業人口を一応保存して、補足的に御説明がありました農業者による農業生産物の高度の加工段階で約二百万人がどうこうということは、これはもちろんあなたのパンフレットに書いてありますので、私どもは承知いたしております。同じような考え方は、政府提案法案においても、農村における農産物の高度加工ということは、これは同じように取り上げているのであります。私はその点は一応荒っぽく言って、パーパーとして問題からはずして申しますが、あなたの方の考え方としては、大まかの内容を申し上げますならば、十年間に草地造成二百万町歩、それから開拓という言葉でありましたが、三百万町歩の開拓をやって、それで農業就業人口は減らさないけれども、今の約六百万町歩を九百万町歩にふやして、それで経営払大をはかっていくのだ、大まかに申し上げてこうした構想をお持ちになっております。そこでお考えになっている三百万町歩の開拓の構想というものを、もう少し詳しくお聞かせ願いたいと思います。
  24. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 初めにお断わりをいたしておきますけれども社会党は残念ながら政権を持っておらないので、農林省その他の政府機関を駆使して、その調査資料を集めるというわけには参りません。従いまして私どもは、農林省の出しておりますところのいろいろな資料なり、そういうものを基礎にして、そうしてそういう大体の目安をつけたわけであります。私どものいろいろな三百万ヘクタールということは、まず第一には政府の数年前出しました農地行政白書によりましても、従来のような開拓方式を使っても、二百十万ヘクタールぐらい開拓はできるのだ、その開拓の方式を改めて、草地の開拓ということの方式をとるとしたならば、もっともっと農用地拡大ができるのだということを、農地行政白書に書いてあるわけです。それからまた、外国に比較いたしましても申し上げるまでもなくて、日本農用地の全体の面積に対する比率というものは二〇%以下でありまして、非常に低いわけです。まあ文明国といいますか、先進国に比べますというと、こんな低い農用地の利用をやっておる国はほかにはないようです。ソ連のような広大な、非常に条件の悪いところを持っておるところでも二六%くらい、中国は約三〇%、インドが五一%というふうに、ヨーロッパの国々はもちろん五〇%以上、非常に高い農用地の率を持っております。こういうところに比べまして、日本が二〇%、三〇%程度に引き上げるということは決して無理でもないし、また従来の土地の制度というものが農用地拡大というものをじゃましておったのではないか、私どもはかように考えておるわけであります。ことに明治の間に、例の官民有地の区分なんかやりまして、農民が利用しておった山林原野を囲い込んで、そうして国有地にしてしまう。もしもそういうことがなければ、もっともっと農業というものが山地の上に上がっていったのではないかというふうに思われます。その他、いろいろな原因があると思います。日本農業が米作りを中心にして、米を作ることを即農業だというふうに片寄っておった、そういうところにも問題があると思います。また、農業というものが、いわゆる為政者が年貢米を取るということの対象として農業考えて、農民生活するための農業としては考えられていなかった、こういう点にも問題があったと思います。そういうふうなことを総合いたしますというと、決して私ども二百万ヘクタール、これを開発するということは無理ではないと思いますし、また政府でも言っておりますように、これから畜産、果樹を大幅に発展をさせるという以上は、草地とかあるいは畑というものを、面積をふやさなければならぬわけであります。私どもはそういうふうな、まあいわば非常に農林省の大ざっぱな資料基礎にして一つの目標を申し上げておるわけであります。しかし、それは可能であるという確信を持っておるわけであります。
  25. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 北山さんにお願いを再度申し上げますが、今お答えになりましたようなことを私は御質問したのではないのです。三百万町歩の開拓計画というものを、具体的にどういうふうにお考えになっておられますかということをお尋ね申し上げたわけです。三百万町歩の開拓の可能性云々については、私は別に意見を持っておりますが、この際は私の意見は申し上げませんけれども、あなたの方でそうした計画を十年間にやるのだと、こうお答えになって、はっきりパンフレット等にも常々とお示しになっておる。従って、具体性をお持ちになっておると思うのですが、その具体性について簡潔にお話しいただきたいと思います。
  26. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) それはあの説明にもございますように、三分の二、二百万ヘクタールは草地でございます。百万ヘクタールは畑でございます。それを具体的に一体どういう形で、どういうふうにこれを割出といいますか、地区ごとに具体的な計画を持っておるかといえば、それは先ほど最初に申し上げたように、農林省でもそれだけの山林、原町の調査をしておらないわけですから、政府がしておらないことを社会党ができるわけがないのです。従いまして、大体の目安は今申し上げたような基礎からいって、これを地域的に具体的に当てはめていくという作業は、今後やるべきもの、こういうふうに考えておるわけです。
  27. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 どうもはなはだ私、その点は失礼ですが遺憾に思うのです。あなたの方でお立てになっておるこれは最大の柱なんです。もちろん政府計画も、開拓をできるだけ推進するという計画にはなっております。若干消極的な考え方もありましたので、私どもとしては、もっともっと積極的に考えなければいかぬということを政府にも督促しておるのですが、あなたの方の三百万町歩の計画は、ただいまどうも微力でできないんだ、こういうお話があったのですが、微力でできないものをどうして一番大きな柱にお立てになったか。
  28. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 失礼でございますけれども、これは常識で考えたってわかるわけです。われわれがいろいろな政策を立てる場合、それを数字的に立てる場合には、国の調査資料なり、そういうものを基礎として出すわけであります。ところが御承知の通り日本ではまだ山林原町の実測調査をしておらぬのですから、自治省の管轄をする土地台帳の民有林の面積を見ると七百三十万町歩、農林省の統計は千三百万町歩、そんな大きな食い違いがあるわけです、政府資料の中に。ですからわれわれが立てたいと思いましても、自分たちの社会党が山林の実測をやれないことは、当然の話でありまして、むしろ今まで政府が当然やっておるべき基礎的なそういう調査をやっておれば、私どもはたちどころにそういう計画ができたわけです。従ってそういうことをやるために、この社会党基本法の中に、特に土地利用の高度化という方法の原則を立てておるわけです。いわゆる国土調査というものを徹底的にやって、そうして土地の現況を把握して、どういうふうに利用すべきかという分類調査をやってそうして利用区分と利用計画を立てるべきだ、そういうことからして、基本法一つの柱として、そうして農用地に転換すべきものについては、これこれ云々だという方法は掲げておるわけです。資料として言わなければ社会党が微力だといわれればそれまででありますけれども、それは日本政府が今までやっておらなかった、それが悪いのです。これは櫻井さん御承知の通りなんです。私どもは先ほど申し上げたように、しからば全然荒唐無稽なものかということになれば、農地行政白書なり、あるいは開拓局、農地局の方から出したいろいろな資料なり、そういうものを大体において推定して、その基礎の上に、こういう数字を出しておるわけであります、しかも、これはあのスイスのような山ばかりの国ですらも、五一%も五二%も農地用地を持っている。従って決して無理な数字ではないわけです。何も三百万ヘクタールびた一町も欠けてはいかぬとかいうようなことを言っておるわけではない。一つの目標の数字であり、しかも無理のない数字である。その他の耕地でも拡大できるのだし、また拡大しなければならないということを申し上げておるわけであります。実際の具体的な政策は、今後これは政府もやってもらいたいと私は思うのです。
  29. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 政府資料の不十分については、私も十分承知をしているのです。ただあなた方の御提案で、最初に政府案を御批判になり、それからあなた方の考え方をお述べになって、第一点に、この三百万町歩の開拓の問題を打ち出していらっしゃる。以下わが党の基本法の内容について主要な点を説明いたします、といって、第一番の書き出しが、三百万町歩の開拓になっているわけです。あなた方の提案の一番重要な、最大の柱です、こういうことが言えるかと思うのであります。この三百万町歩の開拓予定地が、かりにあるものという前提、あるかどうかという別の議論にいたしまして、その前提をとるにいたしましても、その土地の分布というものは、六百万戸の農家の隣にあるのではない、これが厳然たる事実でございます。隣にあるものもございます。しかし主要なる開拓予定地と目されるものは、高冷地であり、あるいは北海道であり、あるいは青森であり、東北地方でございます。一番問題になります零細経営をやっておる、たとえば中国地方、四国地方、これらの地域においては、開招予定地というものは非常に少なくしか残っておりません。従ってあなた方の開拓予定三百万町歩の開拓予定というものを実際に十年間に遂行していくといたしますならば、それに伴って大規模の農家の、あるいは農業従事者の移住、こういう前提が伴わなければ、この開拓をやっていくことができない、こういう私は見解を持っておるのですが、あなたの方の御見解はいかがですか。
  30. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) その点は先ほど申し上げたように、私どもは、農業内部の問題を農業自体の中で問題を考えているのでないことを私は申しました。ただそのねらいというのは、なぜ農用地を造成するかといえば、それは経営規模の拡大なんです。経営規模の拡大には、やはり当然農用地の造成は当然その程度のものはやるべし、それと同時にそれだけじゃないのです。それが最重要の柱だとおっしゃいましたけれども、これは経営規模の拡大、個々の経営の規模の拡大でありますから、それが政府案においては例の自立経営育成という形であり、社会党案においては共同化方式というもので経営規模の拡大をはかろうとしておる。そこが非常に違うわけなんです。政府案自立経営育成について当然二町歩にしろ、二町五反にしろ、既存の農地の横の移動をしなければならぬでしょう。これはきのうもここで質問されて、明確な答弁を政府ができなかった点であります。私も衆議院でやりました。どの程度のものを移動するかということが全然明確になっておらないのです。しかし少なくとも所得倍増計画の中に一応の指標が、政府の企画庁が作ったはっきりとした指標が、数字があるわけなんです。二町五反として百万戸の自立農家育成ということが十年後に行なわれますならば、百万なりあるいは百五十万ヘクタールなり、農地の移動が当然起こってくる。ところがそれはただで、無償で横に移動するわけじゃないのですから、金がかかるわけです。自立経営農家がそれだけの金を払う。一反歩百五十万あるいは二百万とすれば、数兆円の金が要るわけです。農地の移動のために一体数兆円の金を使おうという形において構造改善をやろうというのが政府案であり、社会党案においては、そのような農地移動をやらないで、農地の移動のためにむだな農業投資といいますか、ほんとうの意味の投資じゃないのですが、地代の先払いみたいの金を農民に何兆円も負担させないで、むしろ農用地を造成していく方が、より経営規模の拡大には役立つのだし、また個々の経営から見ても、むだな商い農地を買わない、そういうむだな金を使わせないで済むのだ、そういう形における合理的の経営規模の拡大方式というものが共同経営だ、こういうふうな点が非常に違うわけなんです。ですから、単に農地の造成だけによって経営規模の拡大というのじゃなくて、経営規模の拡大一つの大きな別の柱というものは、やはり共同化という形において農地の横の移動というようなむだなことをしないで、規模の拡大をはかっていく、合理化をはかっていくということなんです。それでそういうことを総合的にお考えになるならば、確かに新農地の造成の地域というものは片寄っていくでありましょう。北海道とか、東北とか、あるいは南九州とか、そういうところに主として新しい農地ができてくるでありましょう。しかしその他の地域にも全然ないとは言えないわけです。またそういうところはそういうところで、他産業との関係もあるし、またいわゆる共同経営の形における規模の拡大がありますから、必ずしも地元増反なり、あるいはよそに移住しなければいけないというようなふうにも機械的に私ども考えておらない、こういうふうに私ども考えておるわけです。
  31. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 どうも明確でないのですが、大規模の三百万町歩の開拓というものを、ほんとうに農業経営の中にとけ込ましていくという前提をとるならば、大規模の大集団の移住計画が伴わなければ、これはできません。この点について私は失礼ですが、あなたよりよく存じております。ですから、その点をあなた方はどういうふうにお考えになるか。
  32. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) ですから、北海道のような、これは言うまでもないことなんですが、大規模な農地の造成のできるような地域には、それはよその方からまとまった集団の入植といいますか、そういう形が行なわれることは従来もやったことでありますし、そういうことがあり得るのだ。しかし、そういう方法によるしか規模の拡大はできないのだというふうには考えない。別の問題がそこにあるのだということを差し加えて申し上げたわけなんです。
  33. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 別の問題があるということは、これは当たりまえのことであります。私はこの問題についてあるいは別の機会にもう少しお尋ね申し上げるかもしれませんが、きょうはこの程度にいたしておきます。  そこで、あなた方の特徴の最後でございます共同経営の問題でありますが、いろいろお尋ねしたいのでありますけれども、私は自分で予定しておりました時間をはるかに超過してしまって、あとの御質問の方に申しわけないのでありますが、十条の二項に、国は農業経営共同化を促進するため全額国庫負担で農地造成、土地改良、集団化等をやらねばならない、こういう意味合いのことをお書きになっていらっしゃいます。これを逆に解せば、あなた方の御提案法案のいずこにも家族経営という言葉を私は見出し得ないのであります。共同経営のものだけに全額国庫負担であるいは土地改良、あるいは農地の集団化等をやっていくのだ、こういうふうになります。従って、自立経営農家ということは別にいたしまして、家族経常の農家に対しては一切の国の財政援助等はしない、こういうふうに法案ではっきり読み取れるのでありますが、その点についてはいかがですか。
  34. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) そういうふうなお話しのような誤解があるわけであります。ここでお読みになればわかる通り、「わが国農業における過小農経営を克服するため、」と書いてある。ですから私どもとしては、現在のような家族経営、これを政府案のように、多少大きくして、一部の自立経営と非自立経営に分解させるような形における過小農経営の解消ではなくして、いわゆる共同化という方式による克服の形を強調しているわけであります。そうして、そのためには共同化がその関係農民の利益になるように、単にイデオロギーじゃないんですから、共同化した場合に、確かにそれが個々の農民の、共同化に参加をした農民の利益になるようなことを保障するという必要がある。そこでそれに関連した今の農地の集団化であるとか、あるいは土地改良であるとか、そういうような問題については国が全部負担をするのだ、それ以外に共同化に伴う共同化資金であるとか、あるいは機械であるとか、いろいろなめんどうを共同化の方でみていこう、こういうわけであります。大体の政策方向としてここでは要するに零細農を克服する一つ政策の重点としてそういう方向を強調しているわけであります。全体を通じてそれならば現在の家族経営は全然無視するのかというふうに裏からお取りになれば、これは誤解になると私は思うのであります。これはその他の点につきましても、一体この社会党基本法の全体としては、この農民生活を守っていくという基本線があるのであります。しかも、それは国が責任をもってやるということをはっきり原則的にうたっているのであります。土地条件につきましても、そういう見解から土地利用の高度化につきましては「国は、農用地拡大農用地土地条件整備に努めなければならない。」というふうに第八条にも言っておりますし、全体を通じての考え方は、国が責任をもってそれらのことをやるのだ。ただ、ここでは将来における経営構造を、今のような零細経営じゃなくて、もっと合理的な規模の拡大という政策の指向点、重点というものはやはり共同化という道だ、それを今のような形で援助していくのだ、こういうふうに一つお読み取り願いたいのであります。政府案についても、私どもは、もしもこれが全体の家族経営、今の経営が五反歩であろうが、一町歩であろうが、一町五反であろうが、それはそれぞれにおいてその自立を援助していくのだという意味の自立経営育成といいますか、助成であるならば、私どもはこれは賛成なのです。ただ政府案のいわゆる自立経営、自立家族経営育成というものが一定のモデルといいますか、規模のものを言っているのです。そして、それをふやしていこう。その反面では、非自立経営というのができてきて、これは農業をやめてもらおう、こういう意味の自立経営育成という構造政策であるから、むしろ賛成ができないわけです。むしろ逆なんです。
  35. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 どうも御答弁、私ははっきり理解できないのです。共同経営、そして共同経営の面でこういう種類の仕事をやる。そのためには全額国庫負担でやるのだ。こうきめつけておられて、それ以外のことは一切おっしゃっておらない。おっしゃっておらないから、一方においては衆議院の質疑段階において、あるいは共同経営は強制するものではないのだ、いわゆる家族経営も認めていくのだというふうに御説明になっておるように、私はたしか読んだと思うのでありますけれども農業育成していくその段階において、共同経営だけを取り上げて、これこれのものをやるについては全額国庫負担、こう書いておられるから、共同経営の範疇に属せざる家族経営農業というものについては一切援助をしない、こうあなた方の法案で読み取れるのは、私はちっとも曲解ではないと思うのです。その点はいかがでしょうか。
  36. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) これは政府案の審議の際にも、政府も同じようなことを言っております。たとえば特に政府案には書いてないけれども、これはもう今までやってきたことだし、当然のことだという御説明をなさっている部分が相当あるわけです。私ども政府のそういうまねをするわけではございませんけれども、ここでは今申し上げた通りに、家族経営という現実のものを私どもは否定をして、これをいじめていこうというのではなくて、むしろ家族経営という現在の形が農民自身にとっても決してそれがそのままの形では生活の向上、あるいは所得の向上というのはできないので、これを合理的な経営にしていくのには、共同化方向に指導していくというか促進していくということが、すなわち今家族経営におかれておる人もその生活が豊かになれる道だと、こういう意味で言っているわけです。むしろ政府案の方が自立経営と言いながら、あるモデルにつきましては自立経営として育成する。それ以外のものは完全非自立経営とか、あるいは兼業農家ということで分解されるように考えている。その方が私はおかしいのではないか、こういうふうに思うわけであります。むしろ、現在の経営の形としての家族経営という形は、それはもちろん援助していくのだけれども農民自身から見ても経営の形としては、その政策として農民自身にとっても決して幸福になれる道ではないのだ。行き詰まっているのです、現実に、家族経営は。ですから、新しい道を農業は求めているわけです。その求める目標というものを、方向というものを、ここには強調しているわけです。そういうふうにもしも誤解される点がございましたならば、誤解をしないように、正しい解釈をしていただきたいと思うのであります。
  37. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 どうも正しく解釈せいという強要のように受け取れるのですが、どうもあなた方の法文では私は正当に解釈してそうは受け取れないのです。  そこで最後に一点伺いますが、現在主として共産圏国家において、これはいろいろの形ではありますけれども、共同経営がはっきりとられております。そこで、共同経営一色に塗りつぶしていない共産圏国家においても、農業生産の増大という点において、非常に不振であるということが私どもいろいろな報道機関、いろいろな書物で読んでおります。あるいは中共において、あるいはソ連において、あるいは東欧諸国家において、この共同経営中心とした各国家群における農業生産の増大の不振という問題と、自由主義国家群における農業生産のある意味では増大し過ぎるがゆえの農政上の大きな問題、その問題は別といたしまして、共同経営国家群における農業生産の不振についての、その原因について、どういうふうにお考えになっておるか、お聞かせいただきたい。
  38. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) その前に先ほどちょっと申し忘れましたので加えておきますが、私どもがいわゆる共同経営といいますか、共同組織あるいは生産組合というもの以外の個々の農民について考えておるという一つのあれは、たとえば「土地利用の高度化」の第二項に、いわゆる国有林の開放などにつきましても、農民または農業生産組合、その他の農民団体に対して売り渡し、もしくは貸付をするということで、生産組合なり共同化されたものにこれだけの援助をするという趣旨でもって、一般農民というものもそこに認めてきておるということも一つの例として御記憶願いたいと思うのであります。  それから今の共産圏といいますか、あるいは中国やソ連などの農業の不振、こういうことを申されたわけであります。これも実は政府その他の出しますいろいろな資料につきましても、世界各国の農業統計がどうも自由諸国家群の方の統計だけが出て、共産圏といいますか、ソ連なり中国の方の統計がさっぱり出ていない。私どもおかしいと思っても、実はそういう資料を探すのに非常に骨を折るわけです。ですから私どもは国連とかそういうところの資料なり、そういうものを見まするというと、全体的に見て中国なりソ連なりの農業は、共同化過程を経て、途中のいろいろな困難はあったけれども、やはり大きくいうならば非常に伸びておるというふうな資料が非常に統計として出ておる。一時的には一進一退はあります。いろいろ困難はありますけれども、ソ連にしても農業労働の生産性は、戦前に比べて四倍になっている。あるいは穀類は四倍になったというふうに生産そのものも上がってきておる。それから中国についても革命当時の一九四九年は、穀類の生産というものは一億一千三百万トン、これが一九五八年には三億トン以上になり、非常に急激な発展ですね。大きく長い期間、そういう期間をとってみるというと、そういう何倍にも農業生産が上がっておるという数字が、いろいろな統計に出てきておるわけであります。ただ、途中においていろいろな問題があって生産が落ちたり、あるいは災害を受けたり、それから戦争があったり、そういうふうないろいろな困難な過程は経ておりますけれども、私どもの総体から見るいろいろな統計資料、しかも乏しい統計資料から見た数字から見て、共同経営であるがために資本主義農業に比べて発展の度合が落ちるというふうな証拠はない。むしろ数字的に見ると、今申し上げたような中国においては非常に短い期間に農業生産が非常な発展を遂げておる。もちろん昨年の大きな災害のために、大体昨年の生産が一億七千万トンくらいにいったのじゃないか、こういわれておりますが、それにしてもそういうふうな共同化なり、あるいは新しい生産方式のもとに行なわれた発展というものがなかったならばこの災害というものは、もっともっとひどい状態になったのではないかと、こう思うわけであります。しかも、私どもはそういうことを見る場合に、単に農業生産額がふえるとかふえないとか、そういうことも問題でありますが、しかし、私どもはそこに働いておる農民、労働者、こういう人たちの生活一体よくなったか悪くなったか、こういう点に重点を置いて考えてみなければならぬ。そういうことになれば、少なくとも革命前における中国の農民の姿はどうであったか、現在の中国の農民生活の実態はどうかということは、これは私が申すまでもなく瞭然として明らかであろう。年を取っても老後の生活は保障されておる。病気になっても無料で医者にかかれるというようなことは、絶対に昔はなかったわけですから、こういう農民生活が向上しておる、こういうような事実、まあいろいろな点から見まして、決して共同化であるがために資本主義的な農業に比べておくれをとっておるなどというようなことは、私はいろんな資料から見てそういう結論は出て参らない、こう思われるわけであります。
  39. 櫻井志郎

    櫻井志郎君 どうも今の問題について私は反論をしたいのでありますが、きょうはこれで質問を打ち切ります。
  40. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  41. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記つけて。  この際、委員の異動について御報告いたします。本日江田三郎君が辞任され、その補欠として戸叶武君が選任されました。  午前は、この程度にし、午後は一時半から再開いたします。休憩いたします。    午前十一時五十三分休憩    ————・————    午後一時四十三分開会
  42. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会を再開いたします。  午前に引き続いて農業基本法案(閣法第四四号、衆議院送付)、農業基本法案(参第一三号)、農業基本法案(衆第二号、予備審査)以上三案を一括議題とし、主として農業基本法案(参第一三号)及び農業基本法案(衆第二号)についての質疑を続行いたします。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  43. 仲原善一

    ○仲原善一君 ただいま議題となっております農業基本法案につきまして、特に最初に社会党提案の分につきまして二、三の点についてお伺いいたしたいと存じます。  まず、第一は法案の前文になっております、この前文に貫ぬかれておりまする考え方、そういうものについて若干お尋ねしてみたいと思うのでございますが、現状認識においてこれは各党各様でございますが、特に、社会党の前文について私が疑問に思いますのは、もちろん農業所得の格差、これが他の産業に比べて非常に大きいのだ、その格差があるという現状認識については、同様でございますけれども、その原因ということにつきまして非常にここに相違があるわけでございまして、社会党の方のお考えでは、現在のこの格差、農業と他産業とのはなはだしい格差というのは、これは農民を支配しておる支配層、いわゆる政治をやった人たちの歴史的な事実から見ても、そこに非常に原因があるのだ、一種の階級国家観と申しますか、階級史観と申しますか、搾取する者とされる者というふうな立場でこれを解明する、そういう理解の仕方をしておられます。そのために非常な格差が出ているのだ、これが非常に前面に出ております。きのうの江田書記長の総理大臣に対する質問を通じても、その点がはっきりうかがわれるわけでございますが、この点私は必ずしもそうではないのだ、これは農業の持つ本質、特質から格差が出るのだという考え方を実は持っております。これは他の産業、第二次産業、第三次産業等特に鉱工業におきましては惜しげなく労力、資材そういうものをつぎ込んで、そうして三交代も四交代もやって操業を続けるならば、これは幾らでも生産が増強できる、そういう無機的な生産でございますけれども農業は本質上これは有機的な生産でございます。植物を育成したりあるいは家畜を飼育したり、そういう過程において本質的にやはり他産業生産様式が異なっておる。いわゆる土地方式と申しますか、収穫漸減の方式に支配されて、農業というものは投じただけの、倍の資材を投ずれば倍の収益が上がるというものでなしに、これは順次その収益、収穫というものは減少してくる。投下した資本に対して減少してくるという本質的な農業のあり方、ここに大きな原因があると私は思うわけでございます。その点は、たとい政治形態の違うあるいはソ連圏の共産主義の国におきましても、資本主義の国におきましても、これは共通の問題でございまして、必ずしも支配者が被支配者を搾取したためだということでなしに、農業本来の本質から、この格差というものが生まれてくるというふうに私は理解するわけでございます。その点について、社会党の御提案趣旨はあまりにも公式的と申しますか、偏狭と申しますか、支配者の搾取によって格差ができたということに終始しているように思いますが、その点のお考えをもう少し、私の考えが間違っておるのか、その点の理解を深めたいと思いますので、御説明いただきたいと思います。
  44. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 私どもの前文の中にあります趣旨は、午前に申し上げたように、日本農業発展を阻害をされ、また現在その発展のじゃまになっておると申しますか、農業発展をじゃまをしている事情を非常に特徴的に申し上げたわけであります。確かに農業生産条件その他自然的な条件のために、他の第二次産業あるいは第三次産業というものに比べて、いろいろな自然的な制約を受けておるという事実については、もちろん私どももその事情を認めるものであります。しかし、農業それ自体も、やはり大規模な資本家的な経営が、国によりましては成り立ったわけでありますし、また日本でそれがよその産業のような資本主義的な発展という過程がなされなかったということについては、やはりそこに歴史的な過小農経営、これを制約したところの政治的な背景というものがそこにあって、やはりそういう政治的な背景があったために、家族的な小さな経営が維持されるような条件のもとに置かれておったから、そういうような事情から、資本主義的な発展といいますかが農業に及ぶことができなかった、そういう角度からも物が言えると思うのであります。  また、私ども観点は、やはりあくまでも農民という観点が非常に強いのでありまして、単に農業とその他の製造工業というふうに、産業産業としての比較じゃなくて、やはり農民というものの立場から見ますならば、単に産業としての何といいますか、劣勢といいますか、あるいはその条件の不利というだけではなくて、いわゆる農民生産労働に従っておる農民というものをいろいろな形で圧迫している事情というものを重視せざるを得ないわけであります。ですから同じような意味で、これはよその第二次産業、第三次産業がかりに大きく発展しているとしましても、それを労働者、勤労者という立場から見るならば、必ずしもそこに働いておる人たちがその製造工業、第二次、第三次産業発展しておるような形においては、効果というものを労働者の側から受けていない、むしろ自分たちが搾取をされるその結果その産業発展しておる、成長しておる、いわゆる資本主義の中ではそうなんです。ですからそういうただ産業産業との比較論争だけではなしに、働く農民という立場から見るならば、いろいろな形で農民に対する圧迫というものが加わってきておる。もちろん農業それ自体発展そのものにも大きな圧迫も加わってきておりますが、それと同時に働く生産農民という立場から見て、いろいろな階級的と申しますか、よその政治的、あるいは経済的に、あるいは社会的にいろいろな圧迫が加わってくるんだという事情を強調せざるを得ない、こういうふうな立場から申し上げておるわけであります。
  45. 仲原善一

    ○仲原善一君 ただいまの御答弁でともかくも農業生産のあり方が、ほかの産業と違っておるという点の認識は、同調してもらったように思いますので、その点はそれで私の希望と申しますか、望みは達したわけでございます。  ところで、農業の形態の問題でございますが、その点についてお伺いしておきたいのは、社会党でお考えになっておるいわゆる農業のあり方というものは、資本主義の社会では実現できぬという前提でお考えになっておりますかどうか。資本主義を否認したその上でなければ、この社会党でお考えになっている農業基本法考え方は実現しないかどうか、その点をお伺いいたします。
  46. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 社会党が社会主義の実現を目標にしていろいろな活動をしておる政党であるということは、これは当然でございます。しかし、今度社会党提案しました農業基本法案は、資本主義を制度として全面的に改めた上でなければ、実行できないような政策ではないわけであります。やはり現在の全体としては資本主義、しかも独占資本がいばっておる、支配しておるような形、こういう形の中でいかにして農民の立場を守り、また農業をよその圧迫を排除して、そうして発展をさせるかという立場から、これが作られておるわけであります。従いまして現在の資本主義制度を根底からこれを一変するということが前提ではなくて、むしろ現状というものをある程度認めて、しかも現在の憲法その他諸制度のワクの中でなし得ること、そうしてそれが一面いわゆる独占の規制になり、農業を守ってやる、こういうような立場から作られておるわけであります。従って、これは衆議院でも申しましたけれども、理論的に言えば、社会党基本法にあるどの条項といえども、現在の自民党の政府で、理論的に不可能なことではないというふうに考えているわけであります。ただし、その立場が現在の独占資本の利益を守るという立場に立てば、それをやりたくない、自分の利益の意図に反するというだけの話でありまして、理論的には可能だと、こういうふうな立場から作られているわけであります。
  47. 仲原善一

    ○仲原善一君 まあ現状をもとにしてのお考えの点もよくわかりましたが、ただ比較論といたしまして、社会主義社会の実現のあった場合の農業のあり方というものと、現状農業というものと比較、考慮をして、理想的な形はあくまで社会主義を実現した上のものである、そういう理想をお持ちであるかどうか、その点をお伺いいたします。
  48. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 社会党が政権を取って、そうしてわれわれが諸制度を民主的に改革をして、社会主義の方向へ持っていくということが可能になれば、そういう段階においては、このような農業政策、このような方向における農業政策というものは十分に、完全にその目的とするところが実現できると思うのであります。ただし今の段階においても、これはどの条項をごらんになってもわかる通り、決して今の経済の原則なり、政治の制度、そういうものからはずれたものは一つもないわけです。それはこれによってある程度その行動の自由といいますか、自由を制約されるものも出てくるでありましょう。たとえば農業所得率を高めるための経費を軽減するために、農業用の資材はできるだけ安くこれを配給するようにしなければならぬ、供給するようにしなければならぬということがございまして、そのためには肥料とか、電力とか、あるいは家畜の飼料とか、そういうものを生産、販売する事業について、ある程度規制を加えるということがございますから、そういうふうな面において不利をこうむるといいますか、そういう産業は、また企業はあるのでございましょうが、しかしそれはそういうこと自体は決して現在でも不可能ではないし、そういうことによって初めて農民所得が高められ、またそういうことが必要だと、農民所得を高めようとするならば、そういうことが必要だと、まあ一例を申し上げればそのように考えているわけであります。
  49. 仲原善一

    ○仲原善一君 現状をもとにして順次社会主義政権の実現というふうな構想をお持ちであるように拝聴したのでございますが、私はこの前文について特に申し上げておきたいのは階級間、あるいはそういう何と申しますか支配者、非支配者の立場の認識をもとにして出発するということを、私どもはそこは非常に理解しがたい点でございまして、これはやはり農業の本質という点、特に気候に支配される農業、そういう点を重点に考えねばならぬということをとても考えておりますので、その点だけを申し上げておきます。  それからその次に、農地制度の問題について社会党のお考え方をお伺いしたいと思います。いずれの国でも農地制度、特に農業土地制度というものは、農政の基盤でも、基本でもありますし、その国の経済なり、あるいはその政治のあり方をきめていく大きな背骨になる問題であろうかと考えます。自由主義諸国は、御存じの通りに土地の私有権、所有権を認めて、そこに創意工夫をもって自由をもとにしての経済活動が行なわれております。またソ連圏におきましては、コルホーズなり、ソホーズなり、そういった集団経営中心に支配的になっております。また少し前の話ではございますけれども、全体主義ナチス・ドイツが支配しておりましたときの土地制度は、これは世襲農地法でございまして、これが民族と土地とを結びつける一番大きな農政の根幹であり、ナチス政策の背骨であったわけでございますが、まあこれは一子相続をもとにして農地を登録いたしまして、この農地の面積は大体経済の変動、景気不景気に耐えて、いかなる不景気が来ても、その農地を持っておれば十分に生計ができるという農地を、これを登録いたしまして、世襲農地として登録して、さらには一子相続という制度、その相続をできる人は、純血、いわゆる純粋のドイツ人でなければならぬと、ユダヤ人はこれによって排斥するというような、そういう一つの大きな政策で、まあよかれあしかれ全体主義の農地制度ができ上がっておったわけでございます。まあそういうふうに各国、政治経済のあり方によって農地制度というものは非常な根本的な相違がそこに出てくるわけでございますが、社会党の今度お考えになっておる農業基本法の土地所有の形態、あるいはこの土地の耕作のあり方と特に所有権制度をめぐって、どういうお考えを持っておられるのか、社会主義政権であれば、これは重要産業は国有にするとか、社会化するとか、土地は国有、公有するとか、これは一つの常識になっておりますけれども、まあ先ほどのお話で、現状をもとにしていろいろ考えるんだというお話でもございますから、そこに多少の弾力性はあろうかと思いますけれども社会党基本法の九条でございますか、まあ原則として、これは九条でございます。「農地の所有形態」という項で、「農地は、これを耕作する者に所有せしめることを原則とし、」ということになっております。そうしてその次に、「農地に関する権利は、自主的に共同的保有に移行させるように指導するものとする。」このあとの方の文章でございます。やはりこの現状、耕作する者に所有せしめるという現状は原則として認めるけれども、将来はこれは自主的に共同的保有に持っていくんだという思想がそこに出ております。この辺が何かぼやかされておりまして、ほんとうの社会主義政権と申しますか、計画経済を強力に主張されておる社会党のお考え方と、自由主義経済で所有権をもとにするこの考え方と、その辺何か明確を欠く点がございますが、ほんとうの真意はどうでありますのか。特にその土地所有の形態、農地制度のあり方、これは将来どういうふうにお考えになっておるのか。現状の私有権、所有権というものをもとにして支配的にやっていくということであれば、それはいいでありましょうし、そうでなくって、順次これは共有的な方向に持っていこうと、現在これを表面に出すと多少農村の共感を得がたいから、まあ一応はちょっと現状をもとにしたような格好にしておいて、社会主義政権ができたならばいわゆる集団農場、共有形態に持っていくという、そういう含みなのか、その辺をもっとはっきり一つ説明を願いたいと思います。
  50. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 農地の所有形態につきましては、お話しの通り、第九条にその原則があるわけであります。これは何も含みがあるというわけではなくて、その前段におきましては、農地はそれを耕作する者が持つんだと、これが原則なんです。ただ、その耕作する者というのは、個人の場合もありますし、また耕作する者が共同で持つ場合もあるわけです。狭い意味の自作農でありますというと、そこには個人の農家というふうな考え方が必ずくっついておるわけですが、われわれとしては耕作者が、耕作する者が個人、または耕作する者が共同で持つというふうな形も含めた上で、いずれにしても耕作をする人たちが持っておるんだという原則です。そうしてその中で漸次自主的に共同的な保有に移行するように指導するのだということで、あくまでその自由な意思に基づいてやるように指導するのだ、こういう建前をとっておるわけでございます。これは言うまでもなく、土地の所有欲といいますか、というものは、やはり一つ歴史的なものでございまして、必ずしも、人間の頭のことでありますから、何千年、何万年にわたって変わらざるものでは私どもはないと思っております。やはり現在の土地の所有欲なり、あるいは所有権というふうな制度というものは、やはり歴史的な背景なり理由なりを持ってきているのだ、こういうふうに思います。従いまして農民の方々が、実際にはその頭の中で所有欲を持たないでも十分に耕作する権利が保障されるような段階がもし来ますならば、そういうふうにみんなの頭が切りかわってきますならば、そのときにはまた制度としてもかわれるのじゃないか、こういうふうにも考えておるわけであります。そこで、いずれにしましても、この農地そのものに対する基本的な考え、いわゆる農業における農地の考えについては、私どもはこれがいわゆる金のかかる、地代が高いようなものであっては、どんな、それが資本主義であろうと、あるいは社会主義であろうと、これは農業としては非常に不利であり、成り立たないのじゃないかと、こういうふうに考えるわけであります。いわゆる土地の資本、投下資本の利子あるいは地代というようなものが高ければ、先ほどもお話しがあったように、農業生産というものはほかの産業と違いまして回転率が非常に低いわけでありますし、一年に一回とか二回とか、そういうふうに回転率が低いわけでありますから、その半面で、その土地に対する地代というものが皆無になり、ゼロになれば、やっとバランスがとれるといいますか、そういうことが可能なわけでありまして、自然の土地、あるいはこれに伴った土、土壌やあるいは太陽の熱とか、そういうものから生まれてくる生産力、これを高い金を出して、高い地代を払ってやるのでは、これはどんな経営でも、どんな形でも農業経営というものは成り立たないのじゃないか、非常に不利じゃないか、こういうふうに考えるわけであります。従って、過去におきましても、農業資本主義的に経営させようという主張者の人たちは、土地は国有にしろ、土地を国有にしておいて、そうしてその上で資本家的な農業を建設をしようという意見の人も過去においてはあったわけであります。そういうその根本の考え方というものは、やはり高い地代を払ってはならない、高い土地を購入しては農業経営は成り立たない、そういう基本的な考えだろうと思うのであります。従って、私どもが共同経営なり共同化というものを促進しようというのは、単にそのイデオロギーではなくて、経済合理性から見ても、土地を横に移動さして、売買をさして、高い資本の投下をさして、その利子負担を農家にかける、いわばその場合の資本投資というのは、純粋の意味の資本投下ではなくて、いわゆる土地改良みたいな投下ではなくて、むしろ将来払うべき地代の前払いの性質を持っておるわけであります。そういうものを払わしたのでは、これは合理的な経営ができないのだ。ですからそういうふうな高い土地にしないで、しかも経営の規模を拡大していく形というのは何かといえばそれは共同経営なんです。しかも、それは資本経営のように資本家と労働者の格好でなく、農民が労働者にならないで、耕作する人たちが一緒に協力して経営規模を大きくして、しかも土地の負担がかからないで済むというような形、こういう経営が合理的ではないか、そういう方向へ持っていこうというのが、私どもの農地に関する基本的な考え、そういう原則、そういう形に持っていきたいということでありまして、社会党だから必ず土地国有なんだというしゃくし定木な考え方は持っておらないわけであります。
  51. 仲原善一

    ○仲原善一君 まあただいまの土地所有の関係について非常に弾力性のある、幅のあるお考えのようでございまして、これは個人の所有ということでなしに、共同でも持てる意味の所有だというお考えのようでございますが、まあしかし社会党という立場で個人の所有権というものを十分納得の上で認めていらっしゃるということであれば、あえて異を立てて共有に持っていくような最後のこの九条の末尾にあるようなこの言葉はそう重要性がない、必要はないじゃないかという気さえ、まあ実はいたします。この土地所有の問題、共同経営の問題、これは非常に論争のあるところでございますが、まあ私は共同経営にはある一定の限界がある。日本全体の農村を共同経営に持っていくようなそういうラディカルなことは、これは不可能なことでもありますし、これは決して生産力を上げたり、あるいは日本経済発展させるゆえんではない。そこにおのずから限界があると考えます。政府提案のこの土地の所有の問題についても共同の問題、協業の問題については協力する点もございまして、これは農業法人等にその現われが出ておりますが、これは農業法人をやめてしまった場合には、再びその農地は個人に帰るという、そういう建前の農民自身の意思を尊重して、共同経営なり協業経営はやるけれども、それがおしまいになれば、再び自作農いわゆるファミリー・ランドに帰ってくるという前提であるのでございますけれども、まあ社会党案のこの九条を読んでみますと、一たびそういう形に持っていけばだんだんこれは共有を強化していこうというふうに受け取れやすいのでございまして、その点、若干の疑問は持っておりますが、ただいまの御説明で私有権というものを十分尊重していくんだということでございます。共同経営も、従ってこれはお考え通りに、この自民党あるいは政府の自立農家というものとの関連社会党で特に異を立てられてこの共同経営でおしなべていくということでもなさそうにも考えますが、その点、もう一度よく御説明をいただきたいと思います。自立農家とこの共同経営とのあり方、進め方、指導の仕方、そのウエートの置き方、そういうものについて社会党のお考え方をもう一度お伺いいたします。
  52. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) これは午前も申し上げたわけであります。で、私どもは現在の家族経営の形を、これはけしからぬからやめろというように、その家族経営の形の経営をいじめていくという考え方ではもちろんないわけであります。むしろ、経営の形として今のような小さな家族経営では農民自身が困るし、また農業発展もない。従って経営の規模を拡大をしていき、しかも耕作者がその耕作する土地から離れないようにしていく形、その形は現在の家族経営発展する形としての共同化方向、こういう基本線であります。政府の案の中にもやはり協業という問題があり、同じではないかということでありますが、どこが違うかと申しますというと、政府の案は、自立経営、今の家族経営をそれ自体としてそのまま認めて援助していこうという考え方ではないのです。御承知のように、政府案自立経営育成という政策は、ある規模の、いわゆる正常な家族構成のもので、たとえば家族従事者が三人、そして諸収入が百万とか、大体一つの形の規模のものをこれが自立経営である、そういう経営の数をふやしていくんだ、そのためには反面ではそれになれないところの非自立経営というものができていく、それが農業からはみ出していくんだ、こういう考え方であります。で、私どもはそういうことはとらない。非常にその点が基本的に違うわけであります。間違っておると思うのです。いろいろな点からも間違っていると思いますが、その点が非常に違う。  それからもう一点違うということは、政府の案では、なるほど協業という一つの制度として認めておる、そういう形を認めておる。しかし、それは政府側の答弁にありますように、あくまで自立経営育成するのが本筋であって、補足的に協業という形を認める、補充的に認めていくという点ははっきりしている。従ってそういう協業という制度を作り、生産組合とかそういうものも認めていく。認めていくけれども、積極的にそういう共同化を援助していくという施策がないわけであります。われわれとしてはこういう生産組合という制度があり、あるいは共同化の組織もある、それを農民の方方は自由におやりなさいというのでは、なかなか今日の家族経営をやっている農民たちが食いつけないと思うのです。よほど積極的な考えの進んだ人たちは、社会党が指導しなくてももうすでに相当な共同化を進めておりますけれども、しかし農民全体としては、そういう制度が与えられたというだけではこれはやり得ない。そこで私どもは、現実共同化をすればどういう形になるのか、営農設計はどうなるのか、あるいは共同化資金はどうなるのかというふうな、営農設計の指導をやったり、午前中も申し上げたようないろんな援助、助成をやって、そうして共同化をやれば必ずみんなが利益になるのだ、こういうことを実証する、その原則をこの基本法に書いてあるという点が非常に違うわけであります。ただ、生産組合ができるとか、あるいは共同化ができるというような制度を与えて、そうしてあとは自発的に農家の人たちがやれというのではなくして、むしろそれを強制するのではなくして、それを育成し、助成していくという積極的な面が社会党案にはあるわけです。その点が基本的に違う、こういうふうに考えております。
  53. 仲原善一

    ○仲原善一君 まあ、共同化の問題についてはいろいろ意見があると思いますが、午前中もわが党の櫻井委員からの質問、特に共産圏の農業生産のあり方についての質問があった際に、御答弁もあって、それはよく承っておりましたが、私も実は三週間ほど前にベルリンに参りまして、東ベルリンも許可を得て見て参りました。もちろん、西ベルリンも見て参りまして、そこでいろいろなことを見聞して参りましたけれども一つは土地制度、いわゆる最も共同化の進んだ徹底した典型的なコルホーズのあり方についての批判を実は聞いてきております。数字については午前中もお話のありました通りに、なかなか正確な発表はありませんので、これを察知することはなかなか困難でございますけれども現実の問題として自由主義諸国とソ連圏、いわゆる社会主義経済の一番徹底したソ連圏との境界を見て参りまして、実はこういうことを聞いて参ったわけでございます。これは特に東独の農業、これはやはりコルホーズが支配的になっております。そこの農民が最近東ベルリンに逃げて、さらに西ベルリンに逃亡して、そうして西独の方に送られていく、この数が非常に多いわけでございまして、そういう者を含めて一日五百人、多い日は千人だそうでございますが、年間通じて約二十万、東独関係から西ベルリン、さらに西ドイツに逃亡してくる人が多いのであります。特にその五〇%までは三十五才以下の青年であるという話も聞いております。特に最近目に立って参りましたのは、一番逃亡しにくい農家、これは農地を持っております。農地にくぎづけになっております。家屋もあります。そういう人たちがリュックサック一つで逃亡して来るという数が非常にふえてきている、こういう実態、これは全体の数字をそれによって推定することはもちろんできませんけれども一つの斯面としてそういうことを痛感してきているわけでございます。が、やはりこの農地制度いわゆる共有あるいは共同組織というものの一番典型的な、最終的な段階のそういう農地制度そのものが、非常に農業生産力をある意味で阻害している。自由主義諸国の生産力に比較して、なかなか発展がむずかしい。その発展のむずかしいためにマレンコフもやめた。最近はまたフルシチョフも各コルホーズを見て回っておる。そういう状態を見てきまして、私はやはり農地制度、いわゆるその農地制度の共有というものに、ある一定の限界というものがあるのじゃなかろうかということを痛感しておりますので、この際、私見を述べながら社会党のお考えになっておる自主的に共有的な方へ持っていくという考え方についての批判と申し上げては少し口はばったいのでございますが、そういうことを申し上げておきたいと思うわけであります。その点について重ねていわゆる最も典型的なソホーズなりコルホーズなり、あるいは合作社の農地制度のあり方というものが一番人類社会で理想的なものであるかどうか、そういう点についての御見解を承っておきたいと思います。
  54. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) われわれの農業基本法は、これはやはり日本農業基本法でありますから、日本の農村なり、あるいは日本農民の実態を基礎にして考えていかなければならんと、そういう考え方であります。その中国やあるいはソ連、東独などのいろんな集団化の経過、こういうものも私の方は十分これは参考にしていきたいと思うわけであります。そしてその中にもお話がありましたようなやはりいろいろな制度の改変というものが行なわれ、共同化なら共同化、集団化が進み過ぎた、行き過ぎたような場合においては、それに対する手直しが行なわれる。おそらくソ連におけるMTSが二、三年前にRTSに切りかわっていく、あるいは政治制度の中でも地方分権がいわゆる自由化と申しますか、地方分権が広がっていくというようないろんな改革が絶えず行なわれておるようであります。ですから、そういうことは十分に参考にしていきたいと思うわけであります。ただ共通してこの外国のいろんな例を見て私どもが感じましたのは、共同化というものは決して強制的にやったのでは成功しない。これはエンゲルスもそういうことを言っておりますけれども、十分に農民の納得を得て、そして自主的に進めるという慎重なことをやらなければいけないというふうに痛感をしておるわけであります。従って、そういうふうな考え方からして、そういう考え方で私ども基本法の中における共同化というものは作られておる、そう思っております。ただしかし、どの国でもどの制度でもいい面と悪い面とありますから、私どもは中国なりソ連なりのいい面はいい面としてこれは認めざるを得ないわけであります。認めるべきであります。また、一方の資本主義の中における農業がうまくいっているかということになれば、これはなかなかまたいっていないわけでありまして、アメリカにおける、最近ケネディが農業教書を出しましたけれども、その中では生産性を上げるということで、アメリカの農業生産力といいますか、生産性は非常な上昇を見た。また農業就業人口も非常な激減をした。しかし、それならば農家所得はふえたかと申しますというと、所得は減っているということを率直にケネディ大統領が農業教書の中で言っておるわけでありますし、また、その巨大なアメリカの農業生産の中でも百五十万の零細農家が置いてきぼりになっておるというような問題がございます。ですから、いろいろとそういう外国の例などを十分に参考にし、どの国でもいいものはいいとし、悪いものは悪いとして、日本の制度の中に取り入れていくと、こういう基本的な考えを私どもは持っておるということを御了承願いたいと思います。
  55. 仲原善一

    ○仲原善一君 まあ、ただいまの御答弁で農民に強制はしないのだ、これは自主的にその点は意思を尊重してやるというお考えで、これはわれわれ自由民主党の協業化とこの点大して相違ない点が明らかになりましたので、その点は了解いたしますが、なお、その次に青写真の問題がよく言われております。これは計画経済を主張されております社会党なり民社党におきましては当然この青写真、今後十年先の農村の青写真というものがはっきりとあるべきはずであります。政府の方は御存じの通りに、これは自由経済の建前でございまして、きのうも総理の答弁にありました通りに、これは長期見通し程度でございますけれども、青写真というものが計画経済には当然あるべきでありますので、その点これは民社も含めてどういう青写真をお持ちになっておるのか、どういう農業経営形態を持つのか、何人ぐらいの、これは午前中も若干ありまして、千四百万という話もございましたが、まあどういう経営をやらせるのか、この一つ農業いわゆる今後十年先の農業の青写真というものを御明示をいただきたい。かように考えます。
  56. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) 私ども社会党基本法案を出すにあたりまして、いろいろ一つの試算をいたしまして、長期農業発展計画と、見通し計画というものを案として一応作ったものがございます。ただ実際に、この私どもの実際に権威のあると申しますか、実行する農業計画というものは、そういうふうな格好で、われわれの基本法の中にありますような長期農業計画生産なり、需給なり、そういう計画の作成の過程で、最終的には作らるべきものだと、こういう見解、この原則を私ども基本法の中には入れておるわけであります。まあ、政府の方では自由経済だから計画は作らぬ、作らぬと言いながらいろいろな防衛力の増強計画であるとか、道路の計画であるとかいろいろやっておられるようであります。また、所得倍増計画もありますが、それは文字通りにその数字の通りに実行しないまでも、少なくとも一つの指針、方向としてそれをめどにしていわゆる経済成長なり、倍増なり、成長率なり、そういうものを天下にお話になっておると、私ども考えるわけであります。私どもの現在野党としての社会党が作ります計画というものも一つ見通しとしての可能性といいますか、いろんな試算を積み重ねておるわけであります。ですからまだその最終的に、これが決定版だということにはなっておらない。またこの前の党の大会に出しました長期政治経済計画というものがございます。それも党の大会で論議の結果一応の採択をみたわけでありますが、これも結局その内容につきましては、さらにいろいろ各方面の意見を聞き、直すべきものは直して、その政策を完成するという過程に持っていく、私ども政策というものはわれわれ社会党政策というものはそういういわゆる成長発展する政策だというふうに考えるわけであります。それでその作業の中で、いわゆる将来の就業人口というような点につきましても、一応の試算は午前申し上げた通りやったわけであります。それから、なぜこういうふうな格好になるかと申しますというと、実を言うと日本経済発展成長計画といいますか、発展計画、これにつきましては、単に成長率が何パーセントだというだけではなくて、私どもとしては今の経済の制度、いろんな機構というものをやはりわれわれが必要とされるように改変をしていくということ、あるいはまた今のようにアメリカに依存するような市場構造、貿易構造というものを変えて、中国との国交を打開して貿易を拡大していくというようなこと、そういういろいろな前提条件があるわけであります。そういうものが満たされて初めて可能性が、われわれが青写真が描き得る。でありますからいろいろそういう不確定因子がございますので、そこでその国内だけで私どもは数字をいじくれば結果が出るというわけには参りませんので、いろいろそういうふうな不確定因子、要素というものが計画の中に入っておる、それをさらに仕上げて参る、こういうことになっておるわけでありまして、農業基本法におきましては、当然われわれとしては長期農業計画は作るべきである。そうでないというと、一体日本農民はどういうふうな見通しなり、どういうめどでもって政府農業政策をやってくれるかという信頼がないわけです。政府の案のように、単に長期見通しということであって、しかもそれが狂えば、そのつど変更されるということであれば、これは非常に危険なことでありまして、むしろ見通しがない方があるいはいいのかもしれぬ、こういうふうに思われるわけであります。公聴会の際にも意見がありましたが、もし政府が需給関係における来年、再来年の見通しを立てて、これが成長財だというので、農民がこれを増産して、いわゆる豊作貧乏になって、値下がりをして損をしたという場合に、一体政府が補償してくれるのかどうか、補償してもらいたい、こういう意見すらも地方の聴聞会では出たわけであります。従いまして私どもは、中途半端な農業観測、長期見通しというものは、むしろ農民にとっては有害ではないか、そういうふうにすら考えるので、やはり長期見通しを立てる以上は、これをいろいろな角度から政策的にその実行を裏打ちするような計画的な施策を推進していかなければならぬ、こういうふうに考えるわけでありまして、そういう点で計画というものを私どもは重視しています。ただ、これはいわゆる経済のいろいろな機構なり、あるいは産業の中枢を全部握って、全体的に計画経済を実行するという段階ではないわけでありますから、その程度一つ計画性というものについては限界がございますけれども、少なくとも、農業みたいな長期見通しを持たなければいろいろな生産の準備というものがやりにくいようなものについては、やはり政府というものが、長期見通しではなくて、むしろ計画を作って、それを裏打ちするような政策をはっきり明示して目標を明らかにする、こういう必要があろうかと思います。単にそれは、片方は自由主義だから計画はなくてもいいんだ、片方は社会主義だから計画が必要なんだと、そういうものじゃないと思うのですね。農業そのものに対する少なくとも農業政策をやって基本法を作るという以上は、そういう計画性が必要だと、こういう建前でおるわけであります。
  57. 天田勝正

    委員外議員天田勝正君) 御質問の青写真という問題でございますが、これは内容は二つあろうと存じます。一つは、民社党の考えておる施策の青写真はどういうことかということ、それを実施した結果、農民生活がどうなるかということ、この二つの青写真を指されたものと私はお伺いいたしたわけでございます。  そこで、簡潔にまず施策の方から申し上げますけれども、わが党は、その財政金融措置におきまして、午前中御説明申し上げました耕地の造成は百三万町歩と推定をいたし、これを八千億、草地が百五十万町歩、これが二千七百億円、土地改良が二百万町歩、これが二千億円、生産基盤の整備を重視すると申し上げましたが、この土地改良や草地の造成のほかに、道路、水路等の生産基盤に五千億円、農業技術センター四百六十カ所と私どもは予定いたしますが、これを四百六十億、国営のモデル市場は、六大都市に二十カ所設置するといたしまして六十億、市場整備、これは生産地市場消費地市場でありますが、合わせて八百十億円ということになります。  それからかねがね申し上げております組合貿易の推進でありますが、これは組合と型のままにいたしますか、組合によりまして貿易公社を作らせる、こういう私ども基本的な構想を持っておるのでありますが、これの二分の一出資の百五十億円と、それの補助の百五十億円、合わせて三百億円、それから輸出の振興につきましては、私どもは正誤表で皆さんの手元で訂正していただきましたが、特殊貨物輸送船の建造等輸送の合理化、こういう言葉を法文の中で用いまして、この点を明らかにしたのでありますが、これに七十五億円、それから環境整備、立地条件整備、これはその内容からいたしまして当初につぎ込まなければならないと考え、五カ年間一千億、価格安定の資金というものに五百億円、その他関連法律をさっきも申しましたように三十用意をいたしましたので、今申し上げました点を除きまするもろもろの補助、これを五百億円予定をいたしました。そうして合わせて二兆一千四百五億円ということに相なるのであります。  融資の関係でありますが、これはあるいは前に説明申し上げたことがあるかと存じますが、農業近代化資金法、こういう法律の裏づけによりまして、年間三千億円ずつ三兆円、その扱いは農林漁業金融公庫の別建勘定にする、こういう考え方であります。それからいわゆる農地銀行、農地信託基金の制度でありますが、これもまた当初でなければ役立ちませんので、最初の五カ年に五千億円、その他の関連法律による融資、これを二百億円と見込みまして三兆五千二百億円、こういうものを出しました。  それから、それじゃその耕地や草地を作るというが、それが夢物語りのようなものであっては困る、こういう御心配もあろうかと存じますから、その点だけについて申し上げますと次のごとくでございます。二十二年の農林省の調査は、御案内の通り農業地適地五百五十万町歩という数字を出しておるわけでありますが、私これをただしましたところが、確かにそういう数字であるけれども、それは入手困難であるかいなかは問わないで、単に物理的に適地であるという調査である、こういうことでございます。でありまするから、それが全部適地ではないのであるというお答えをしておられるのだろうと存じますけれども、しかし少なくともその半分くらいは、私は入手可能なものであろうと判断をするのは、そう無理ではないと存じます。幸いそれに近い数字が、別の調査にございます。すなわち二十八年、都道府県に依頼いたしまして調査をし、そうして二十八年でありますから、二十九年度以降において耕地として開発する適地、こういうものを調べ上げましたところが、七十二万七千町歩だそうであります。しかしてすでにこのときに国が開発すべきものとして買い上げておりましたものが、百三十八万一千町歩でございます。そういたしますると、これを合わせただけでも二百十一万八千町歩でございます。そうしてこの二百十一万八千町歩のうち三十五年まで一応開拓に手をつけたものが、百五万八千町歩でございますから、残ったところが少なくとも百六万町歩は確かにある、こういうことに相なろうと存じます。さらにまたこの手をつけた百八万一千町歩でございますが、これは全部開発済みではないのでございまして、このうちすでに農民の手に配分いたしましたものは四十九万九千百町歩に実はすぎないのであります。しかし、これは単純にその百万町歩から四十九万町歩を引いた残りがまだ残っておるという意味ではございませんで、耕地に作る場合は草地と違いまして、平均、耕地と付属施設との面積比は六対四でございます。でありますから、百万町歩の耕地を作るというならば、当然開発面積というものは百六十六万町歩用意をしなければ百万町歩の耕地はできない、こういう結果になりますが、そこでこの百五万八千町歩を全部農民の手に渡すとしてその可能性は何町歩あるかといえば、六十三万四千八百町歩あるのであります。でありますから、まだ配分残りの分が耕地に直しても十三万五千七百町歩は残っておる。従ってこれに見合う開発適地が二十二万六千町歩残っておる。こういうことに相なります。この数字からしても、これはかなり、県が申告したものでございますから、内輪に私は見積もった数字であろうと存じます。そう見まするならば、ここにわれわれがかねてこの農基法とは別個に、八カ年計画において百五十万町歩ということを明らかにしておるのでありますが、百五十万町歩の開拓ということは、決して無理のない数字である、こういうふうに考えます。百五十万町歩を開発すると、耕地がその六割といたしまして九十万町歩、そうしてさきに申し上げました、いまだ手をつけながらこれが耕地化しておらないという分が十三万五千町歩ありますから、合わせて百三万町歩になる、こういう計算であります。  なおまた草地の点も申し上げますと長くなりますから簡潔に申し上げますが、この方も公有、市町村有、財産区有、それから原野にしても国有、公有そうして私有こういうものを合わせますと、すでに百五十九万九千二百五十町歩あるのであります。でありまするからここに百五十万町歩の草地造成という数字を出すのは、必ずしも私ども政権を取らなくても、どなたでもやろうとすればできる数字である、こういうことだけ申し上げることはできると思います。  そこで質問が大へん長い答弁を要する質問でありますからお許しをいただきまして、こういうことをやりました結果、どれほど農家生産が上がり、生産が上がればいわゆる市場整備主要農畜産物についての所得補償、こういうものを行なった結果、おのずから生活が上がってくるのでありますから、その基礎であります生産の方は、私どもの方は概略次のごとく見積もっております。三十五年の乳用牛の総数が八十二万三千五百頭でございます。大体乳牛の総数のうちコンスタントならばその半分が搾乳牛と見込めるのであります。しかし、わが国の実績は不妊牛などが多いために、大体今までの実績は四四%しか見ることができないのでございます。これは何としても農林省自体が穀物中心でありまして、あまりそれ以外の畜産等に力を入れない結果だと私は思うのでありますが、いずれにいたしましても、これは過去の実績の伸びは一八%まであったのでありますから、農基法を作り、関連法律整備し、さっき申しました投資、融資これらを行ないますならば、それ以上に見るということは当然だろうと存じます。私どもはこれを固く二〇%に見たのでありますが、そういたしますると約十万頭の乳用牛が確保できる。これも搾乳も年間二十八石、これは普通パーセントさえよければ三十二石ぐらいなのでありますが、まあ八升ぐらいしか出ないものと見ましても六千七百二十万石の生産は可能でありますし、そのときの国の人口政府の推定で一億二百二十一万六千人だと、こういうのでありますから、これで割りますと一日少なくとも一合八勺の牛乳は確保できる、こういうふうに考えております。  土地の説明は省きまして、養鶏については再々申し上げますけれども、これはやはり養鶏と豚というものが一番伸ばしやすものでありますが、これは十年後におきましては五百四十三億七千九百万個の卵の生産が可能である、その産卵率は五四%に見込んでそうである。もちろん今までの実績はこれ以上のこともあるということを付言いたしておきますが、こういうところから現在の六・一倍になし得る肉鶏の方も申し上げたいのでありますが、どうもおあきになった方もあるようでありますから、あと質問がありますれば申し上げることにして省略いたします。  馬は減りますし、ヤギ、綿羊こういうものは政府は三倍などと言っているようでありますけれども、肉牛など当然貿易の自由化が実施されますならば、一番打撃を受けるのに、どういうわけでこれがふえているという計算なのかという理解に苦しみますが、私どもはまあ横ばいであろう、こう申しているのであります。数字ももちろんそれぞれあります。そこでそれじゃ最終これらの一番所得が上がるであろうという食肉等を合計いたしますと、現在の三・七倍は供給できる、こういうふうに私どもは数字をはじいております。従いまして、大体確かに現在の製造工業等の伸びも、ときによれば一七%も伸びるという状態で他産業が伸びていくのでありますれば、これはとても農業者所得がどんどん伸びましても、なかなかこれと肩を並べるというわけにはいきませんけれども、われわれは他の産業もそう今の伸びの状態ではいき得ない。まあ現在でもいろいろな条件が他に出てきている。こういうことを考えますれば、こうした計画は、青写真によってやや他産業の従事者と均衡のとれる所得が得られることになるであろう、こう推定をいたしておるものであります。
  58. 仲原善一

    ○仲原善一君 まあ青写真についてるる御説明をいただきました。特に社会党の方では端的に申しますとまだ未完成だと、これから完成するのだというような御答弁でございまして、あわせて政府の方で作ったらどうだというお話でございましたが、これは社会党基本法の青写真を政府が作るわけにも参らぬと思いますので、これは社会党の方で青写真を、聞いた趣旨に従って、よく御研究願いたいと思います。最後に青写真の問題に関連して社会党の方へお伺いしておきたいのは、農業就業人口を今後十カ年先に一千四百万人を確保しておるのだ、そのうち二百万人は大体関連の加工業に従事するというような構想はございましたが、この両方合せて一千四百万という人口就業人口のこれはおそらく三割以上になろうかと考えます。世界の先進国の発展経済発展の状況あるいはその推移をよく見ましても、だんだん経済発展し、国の経済力がふえて参るに従って農業就業人口というのはだんだん減って参っております。御存じの通りにイギリスでは五%とか申しております。アメリカでは一二%とか申しております。フランスでも二五%とか申しておりますが、そういうふうに先進国は農業就業人口の占める割合というのは、相当低いわけでございます。社会党も今お話しの一千四百万人という、この三割以上の農業就業人口をずっとこれは引きとめて、その比率を高めてもっておかねばならぬのかどうか。これはある意味で、国全体の経済発展にブレーキをかけるというような格好になりはすまいかという心配、懸念を私は持っております。そこで、この一千四百万人、農業就業人口の比率、これがだんだん低下するという一つの趨勢に対して、逆行するものではないかという、無理に縛りつけておくという、そういう考え方が、何か日本経済全体の発展のための隘路になりはしないかという心配がございますので、その点の解明をお願い申し上げて、質問を終わります。
  59. 北山愛郎

    衆議院議員北山愛郎君) これは午前も申し上げましたが、私ども人口を農村に縛りつけるという考え方ではないわけであります。ただ、できるだけ農業部面の中で、おくれている面を発展をさして、そしてその中で、量的にも質的にも、農業の雇用の吸収度をやはり高めていくという、せいいっぱいの努力をしようという、そういう気持を表わしたものであります。今お話のように、先進国といいますか、いわゆる先進資本主義の国は、確かに第一次産業就業人口は、非常に減っているわけであります。アメリカなども、一〇%程度に減っているようでありますが、しかしそれならばそこに困難がないかと申しますと、やはりあるわけであります。これは第一次産業、第二次産業、第二次産業、特にこの第三次産業にも、いろいろ問題があろうかと思うのであります。また第二次産業等が、いわゆるオートメーション化いたしまして、正規の労働力のあまり雇用度が高くならない。雇用吸収力が低くなってくるというような現実の問題も、すでに現われて、アメリカ等では、いわゆるオートメーションからくるところの失業者というものがあって、農村の中に、かりに失業者がなくても、他産業の中に何百万もの、五百万以上の失業者が停滞をして、非常にそういう慢性的な失業状態、これに苦しんでいるわけであります。西ヨーロッパ等におきましては、まだそういう事態がないようでありますけれども、そういう点を考えますというと、私は単に第一次産業農業人口が減って、第二次産業、第三次産業方向へ移動していけば、それで進歩、発展の形になるのだと、簡単にそう言えないのじゃないか、ことに資本主義の場合。これを社会主義の方で申しますと、ソ連の場合におきましては、相当な高度な工業国でありながら、工業の発展もありながら、しかも農業就業人口は、たしか三割以上であります。相当に高い。そういうふうないろいろな問題がございますので、われわれとしては、簡単に資本主義の先進国の産業構成なり、雇用構成が、そのまま傾向として正しいものだ、それについていきさえすれば万事オーケーだと、単純には考えられない。ここにはまだ未解決の問題があろうと思います。これは単に農業だけの問題ではなくて、他の製造工業なり、第二次産業なり、第三次産業自体の中にもある。第三次産業一つ産業であり、しかも販売業にしろ、あるいはサービス業にしろ、そういうものは一つの社会的な価値を生んでいるというふうにも思いますが、しかし第三次産業の中でも、必ずしも生産的なものではなくて、単に株の売買をするとか、あるいは土地のブローカーをするとか、そういうような、社会的に見ても必ずしもプラスになっておらないような部面が、案外資本主義の中では、もうけが多いというだけで発展していく。こういうふうな問題についても、必ずしも私は、ただすなおにそのまま受け取っていいものではないのじゃないか、こう考えているわけでありまして、それらの点につきましては、必ずしも三〇%を固執するわけではございません。ございませんけれども、そういう点ともあわせて、しかも第二次産業等のやはり機械化、合理化をされた、オートメーション化した、自動化したその雇用吸収力というものを、あわせて検討したい。他面は、私どもは、農業部面で、できるだけのやはり生産労働、しかもその労働がその生活を、他の産業に従事する者に匹敵するだけの所得を持っている、そういうふうな農民あるいは農家経営というものを作り上げる。ここに問題が置かれているわけでありまして、お話の点は、私どもはなお検討すべき問題であって、必ずしも結論がきまったという問題ではないのではないか、こう考えているわけであります。
  60. 仲原善一

    ○仲原善一君 ただいまの御説明で、大体了解いたしましたが、これは資本主義国たると社会主義国たるとを問わず、やはり産業発展し、いろいろ文化生活が高まってくるに従って、農業に従事する就業人口というものは、非常に多い割合からだんだん減ってくるというのが、これは原則であるかと考えます。そうして農業生産性も高め、絶対の農業生産額というものも高めて、文化的な生活ができるという、就業人口は少なくとも、それが間に合うほかの産業で大いに活躍するというのが、望ましい形であろうかと思いますので、ただいまのお話で、これは十分検討をする問題だというお答えでございますので、これで私の質問は終わりといたします。
  61. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) それでは各発議者に対する質疑は、本日はこの程度にいたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  62. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 速記をつけて。  暫時休憩をいたします。    午後二時五十八分休憩    ————・————    午後三時十二分開会
  63. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) 委員会を再開いたします。  きのうに引き続き総理大臣に対する質疑を行ないます。  質疑の要求の委員の発言は、委員長において順次指名いたします。森君。
  64. 森八三一

    ○森八三一君 本法の制定にあたりまして、その前文に、農業従事者が健康で文化的な生活ができるようにするということは国民の責務であるということをきっぱり法律に明らかにされたということは、今までの多くの立法にはその例を見ないところでありまして、今まで農業従事者が果たして参りました幾多の功績、さらにその農業従事者現状等を考えますと、ここまで勇敢に言い切られたということについては、一応敬意を表するわけであります。そこでそのことを達成する具体的なものとしては、所得を増大せしめまして、他の人々との所得の均衡をはかって、そういうような健康的な文化的な生活が導き出されるということを意図されておると私は承知をしておる。ところが、きのうからのいろいろ質疑を通しましても、またこの提案されておりまする政府の原案を拝見いたしましても、そのことの目標が必ずしも明確ではないと思うのです。と申し上げまするのは、法律の前文には、「他の国民各層と均衡する」と、こういう尺度を示していらっしゃいます。それから総則の第一条には「他産業従事者と均衡する」、こういうように表現をされておるわけです。抽象的にはよく理解はできまするが、この法律用語として前段の方には、他の国民各層との均衡をとる、国民各層というものと他の産業従事者というものとは、私はイコールではないと思う。きのうも総理の御答弁を聞いておりますると、前段の方の、国民各層との均衡をとるということを中心にお答え願ったと私は承知しております。農林大臣は、他産業従事者という方に重点を置いて述べられておる。さらに企画庁長官等は、他の機会にこういうような問題についてお尋ねをいたしました場合には、他の産業従事者という中でも、都市勤労者というようなものを対象に説明をされておるというように、政府御当局の説明が法律の上でも二様に表現されておるし、御説明にもいろいろ変わった説明を承っておるわけであります。形式的なことのようではありまするが、国民各層というものと他産業の従事者というものと、あるいは都市勤労者、都市勤労者と申しましても、もちろん都市の製造工業に従事をするということであろうと私は承知をいたしておりまするが、全面的な産業従事者、製造工業に従事する者、その間には所得と申しましても、非常な差があろうと思うのであります。一体どの辺のところをねらいとして均衡をとろうと考えていらっしゃるのか、法律用語にもいろいろ使い分けがされておりますので、こういう点を調べて参りますると、農民諸君としては非常に言い切っていらっしゃいます点には共感を覚えておると思いますが、中身に入りますと、さあどうなるんだ、こういうような疑念を持つと思うわけであります。この点を総理から明確にお答えをいただきたいと思います。
  65. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 目標に掲げておりますので、私は質問者に対する答えが、ニュアンスでいろいろ他産業となったり国民各層となったり、いろいろあるのでございまするが、根本の考え方は私は他の階層、階層と申しますと横に割ったように見えますが、縦に言えば他の産業、横でいけば各層ということになるのでございます。全体が平均したように努める、平均になるように努めると、こう考えていただけたらいいと思うのであります。ただ都市の産業労働者と限るべきでないことは、これは確かでございます。その他におきましては、御質問に答えて他の産業と言ってもよろしゅうございますし、また他の職業階層と言ってもよろしいのでございますが、法文には他の産業とこうなっておりますが、他の産業と御理解いただいてもよろしいのでございます。
  66. 森八三一

    ○森八三一君 私の申し上げましたように、この法律の意図している抽象的なものは、よくわかります。わかりますが、法律用語として「国民各階層」という表現がされました場合のその所得の平均というものと、他の産業従事者の所得の平均というものとの間には、具体的な数字においては相当な差が私はあろうと思うのです。今ここに国民各層の全体の所得が、最近年次で幾らあるか、産業に従事しているという者だけの平均所得がどうだとかという数字は持っておりませんから、今具体的に私はそれを例示してお伺いすることはできませんが、少なくとも国民各階層の所得というものと、他産業の従事者の所得というものとの間には、具体的に数字になりますると、私は相当の差があると思うのです。どっちの方をねらいとされるか、総理の今お答えになりました国民全体の平均的な生活が維持できるようにということは、抽象的には私わかります。わかりますが、法律用語として二つ使っていらっしゃいますから、同じ一つの法律の中で、こういう使い分けがなされているところに、一つ問題がある。その点は明確にしておいてもらわぬというと、あとでこれはまた生産物の価格を安定するというような場合にも、これは必ずしも政府の御当局は米については現在昭和三十五年産米からいわゆる生産費所得補償方式というものを採用されておりますが、その他の重要農産物については、現行方式でいろいろ支持されておるものもございますが、そういうものにつきましては、必ずしもそういうような方式はとられておらない、今後重要農産物価格安定ということが法律の十一条にもございますので、そういうことを具体的に取り進めて参ります場合の尺度としてこの所得の定義といいますか、どこを目安にするかという問題は、将来論争の中心になってくると思います。でございますので、この機会に、このことを明確にしておきませんと、あとで他の条文を審査する際に非常な狂いを生じてくると思いますので、この二つに使いわけをしていらっしやる考え方というものについて統一のあるお答えをいただきたい、抽象的にはよくわかっております。
  67. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 前文には政治的な考え方の全般のことを私は前文で言っておるものと考えますが、第一条につきましては、農業というものを中心としておりますから、前文も農業でありますが、考え方は前文は全体を含めて言っております。そこで、今度は第一条から農業ということを中心にして言っておりますので他の産業と書いたのだ、前文の各層という意味も、他の産業という意味も私は同じようにお考えいただいてけっこうだと思います。
  68. 森八三一

    ○森八三一君 くどいようですが、そうしますと前文の方では、一応総括的な、抽象的な気持を表現した。そうして今後この法律が運営される場合においては、対象としては第一章の総則以下各条章に規定されている規定が適用されるのだ、こういうふうに了解してよろしいような御答弁と承りますが、それでよろしうございますか。
  69. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大体そうお考え願ってけっこうだと思います。
  70. 森八三一

    ○森八三一君 さらに、この法律を審査していきます上において、基本的な問題として昨日もいろいろ論議がございました農業構造の問題と申しまするか、いわゆる自立経営ということと共同経営ということと二つの問題があります。これも今後十分本法を全きものに仕上げて参りますためには、この際に明確にしておかなければならぬと思うのですが、昨日の総理の御答弁では、必ずしも共同経営ということと自立経営ということとはイコールではない、非常にその間に基本的な考え方相違がある、こういうふうに明確にお話しになっておる。ところが、農林大臣の話は、自立経営といえどもその農業の進行の過程において必要とする部門については共同化、協業化を進めていくのだ、共同化ということを主張しておられる諸君の側に立っても同様の考えのように承知をしておる。だから共同経営ということも、自立経営ということも、結局期するところは同じところに落ちついてくるのだ、こういうようなお答えがあったかのごとくに私は受け取ったのであります。これは理念的に非常に違うと思います。その違うのが結局一緒になるのだということになりますと、非常に問題が混迷してくると思う、その点をもう少し明確にしていただきたい、こう思います。
  71. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その点は総理の御答弁と私のと違っていないと思います。私どもの方の政府案におきましては、とにかく家族経営自立経営農家というものを中心とするのが原則である。しこうしてその家族経営というものの経営の途中におきまして、必要のある場合において、これをさらに相補ってより高い生産性を上げ、生産拡大をはかる上において共同していくということはあり得る。しかし、今私ども考えておるのは、所有権の、田畑その他機械器具、家畜の所有権を生産方式として、農家が自分で土地を持つということから離れて形式的に法人の労働者の形になって動くことについては、これは原則としてとらない。社会党の方の案はその方が原則になって、むしろ生産法人全部に農民を入れるということでなければいけないというような主張であります。その点は私どもと違っておる、このことを総理は言っておられました。
  72. 森八三一

    ○森八三一君 共同化ということと共同経営化と申しますか、そのことと自立経営化と申しますか、自立経営育成と申しますか、ということは、結果的にはある場合に同じような行動が出てくるということはあるといたしましても、根本的理念としては、基本的に私は対立しているというように理解しているわけであります。そういうように受け取って、今三法が一緒に審査されておるのですから、明確に区分をして審議をして参りませんと、自立経営といえども、その進行の過程では要するに共同化はあるのだ、共同化の場合も要する場合には個人経営というものを認めていくのだ、何だか一緒になってくるから、結局同じじゃないかといったような感じがきのうの御答弁では私は受け取れた。少なくとも基本観念として違うのだということを、明確にされなければならないと思いますが、いかがでしょうか。
  73. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 根本の思想と申しますか、考え方には、お話しのような相違があるかもしれません。形式的には社会党の方でもこれは強制的にやるのではないのだ、われわれはあくまで農家の方に勧奨して法人にするのだとおっしゃいますから、どうしてもならぬのがここに出るでしょうが、形として全部の農家が法人化されるという考え方です。その点においては、私どもの自立家族経営農家中心にしていくのと根本的に違うわけであります。
  74. 森八三一

    ○森八三一君 それから第二章の生産という規定の中に、農業生産を総体的に拡大していくのだということがうたわれてはおります。おりますが、その総体的に拡大をしていくという終局のねらいというものがここには出ていない。私は三月の一日、本法が付議されました最初の日に、本会議でもこの点を明確にすべきでないか、今後農業生産のねらいといたしましては、それが食糧であろうと工業原料でございましょうと、国民が要求するものにつきましては、それを国内で自給をするということが終局の目的でなければならない。そのために、現状におきましては、コストが非常に違いますので、外国輸入品との関係が非常にデリケートであります。ありますが、この法律の施行に伴いまして、そういうような諸般の隘路を打開しながら、生産性の向上をはかりまして、外国生産物とも十分均衡がとれるような状態を作っていかなければならない。終局の目的としては、国内生産の自給を確保するということを明確にすべきだと思う。そこで、法律の用語としては、総体的な、総生産拡大をはかる、こういう表現でありますが、その表現は国内自給度を確保するということをその総生産を増大するという表現が意味している、こういうように理解してよろしいかどうか。
  75. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) その点は、私どもはあくまでも国内における農家生産に待ち、農家所得を増大していく上からいいまして、当然にやり方は生産性の向上をはかり、いろいろな手段に訴えますが、かつ合理的に国内における自給度を増していくということについては、私は御意見の通りだと思う。ただ往々にして、国内で何でもかんでも、どんなことがあっても、採算に引き合わなくても、これは理論的にまたいろいろ科学的に研究した上でも無理だという場合でも、自給するというふうな、往々に、かつての戦争中にとられた政策のように間違いを起こしやすい。この点は警戒しなければなりませんけれども、私は、あくまでも、国内の生産生産性を高め、合理性のあるコスト・ダウンをされつつ外国と競争し得るような形に内地の生産を引き上げていって、もって、総生産をあげて、できる限り、国内の農家によって国内の必需品をまかなうということは、考え方基本においては御指摘通りであります。
  76. 森八三一

    ○森八三一君 そこで、そういうような国内の生産で、もちろん経済原則なり、経済面に適合しないようなむちゃなことを申し上げておるのではございません。ございませんが、そういうような合理的な手段を通しまして、国内の需要を国内の生産でまかなうというようにいたしまするために、ここには、将来の需要の実勢等勘案いたしまして、選択的拡大ということが指向されておると思います。そこで、その選択的生産が指向されるということになりますと、その方向はどういう方向であるかということを示さなければならぬと思うのです。最近は、大体において、国民所得の増加に伴う生活水準の上昇によりまして、澱粉質の食糧から蛋白質、脂肪等の食糧に需要が変遷をしてきているということから、畜産が指向されるということで、御奨励になっておる。その場合にそういうような方向が行政上の指導として打ち出されるということになりますれば、当然、農民諸君としてはその方向に従いまして、国の施策に相応じて協力をしていくという態勢をとると思うのです。その場合に、必ずしも経済上のことでございまするから、そういうような見通し通りに国の需要というものが、必ずしも理論的にきちっとマッチするように動いていくというときばかりはなかろうと、そこで、食い違ったような場合に、もしこれを放置するということになりますれば、かつて農民諸君は、政府やその他の機関の奨励の裏をやった方がいいといったような、非常にへんてこな考え方を持ったときもございます。そういうことがまた再現するということになって、農業基本法は、どういうことを指向し、どういうことを指導奨励いたそうとも、それには耳をかさないという、政治に対する不信感がまた生まれてくる。今回のこの基本法の制定にあたりましては、再びそういうようなことを繰り返すことはならぬ。その場合に、そういう事態の発生した場合における対策はどうおとりになるのか。このことを明確にしておいていただきませんと、過去の実例あるいは経験等から考えまして、農民諸君といたしましては、必ずしも納得をして政府の施策に相協力をするという気持にはなりかねる場合もあろうと、それであっては困るのですから、その押えようを、どうお考えになっておるかを、明確にしていただきたいと思います。
  77. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ごもっともなお尋ねであります。従来ともすると、奨励をし、生産の増加を進めたものが、一年ならずして、これが逆の形になっておるようなこともなきにしもあらずでありまして、こういう点は、今度は、まず計画の上におきましては、ないような処置をとりたい。従来は、ともすると、たとえば農林省におきましても、各局がばらばらな立場で生産指導をやっておったという形でありますが、今度の場合におきましては、もう世間周知のごとく、大きな一面には、産業経済の伸びというものがあり、鉱工業、第二次産業、第三次産業成長が非常に高まって、そこに大きな労働移動というものが起きているという現実と、それからただいまお話しのように、食糧構造というものが生活程度の向上に従って、非常に変わってきておる。このことは、私は農家の方もよく知っていらっしゃると、それはこのままではいかないということも、私はだんだん承知されてきておる。そこで、政府としては、そういう立場に立って、将来、農家が植えて、あるいは生産をして、需要が伸びて、損をしないような形のものを作らしていく。それについて、御指摘のようななかなか困難な点はありましても、今日のような事態では、過去におけるようななまやさしい問題ではない形になっております。そういう点も認識を求めつつ、そして協力しつつ、その事態を認識させて、作物を転換させていこうと、こういうことです。  その次のお尋ねは、そういう場合において、多少従来と違った形でございますが、全体的な農業政策として、総合一貫して政府の各部門におきまして、単に農林省だけでなくて、あらゆる政策を総合的に立てて、今後一本の統一ある形に持っていこうというのでありますから、従来とは違った形で、えらい間違いが起こることのないようにしたいものだと思います。しかも、これらの計画、将来の見通しに立っての、需給の見通しに立っての生産計画なりその他というものは、毎年政府が公表いたします。しかも、その需給見通しに立っての農業の施策については、これは農政審議会において各方面の専門家の意見も聞きますし、当然また農業改良普及員等、また、農業団体を通じて農村の方々の意見を聞いて案を進めるつもりであります。しかも、それは毎年国会において批判されて、農政が一歩々々前進していくわけですから、そこに政府一つ指針を示す、農業者に対して真の理解を得て、ともどもにやっていくということですから、できる限りそういうあやまちの起こらないようにいたしたいと思います。それはできると思うのであります。しかし、最後におきまして、かくのごとくいたしましても、えらい大きな間違いが起こったということであれば、それらに対して、その具体的の場合においていかなる措置をとるかということは、別個に考えなければなりませんけれども政府が指導という立場にありましても、長期見通しの上に立って、その見通しを公表し、それによってやるが、そこに大きな狂いが出たとすれば、そのときによって、それに対して、あるいは価格に対して特別な処置をするというようなことにもなるかと思いますが、それは具体的の場合々々によって処置すべきものであると、かように考えます。
  78. 森八三一

    ○森八三一君 お話しのように、農政審議会政府のお持ちになっております長期見通しというものを基礎にして、十分審議されて、それがまた国会にも提出されまして、国会でも十分審議をされるというような、念には念を入れていくわけですから、私は間違いの起こることは万なかろうと、また、そういう間違いが起きるようなものであってはならぬと思うのです。がしかし、事は経済に関することですから、必ずしも予期する通りに物理的にきちんとものさしを当てはめるようなわけにいかぬことがあると思います。時によって、生産を抑制するというような場合も起き得ると思うのです。また、生産過剰のために思わざる損失をこうむる、それは当然長期見通しに立って政府の指導される計画の中であっても、そういう事態が起きないとは保証しがたいと思うのです。両面あろうと思う。両面に対しまして、何らかの手を尽くさなければ、尽くということを明確にしなければ、そういうような国の施策なりというものに農民がほんとうに心から協力していくという姿にはなりかねる。このことは、今までの経験に徴して私は明確に申されると思うのです。でございますから、この非常に転換期に立っている重大なときに、今後樹立されるでありましょうその年々の生産計画をスムーズに進行いたしますためには、そういう際の最後の押えというものをこうするのだということを明確にすることによって、そのことが完全に遂行されるという結果を導き出すであろうと私は思うのです。その押えなくしては、これはなかなか簡単に企図するような結論というものを完成するということは非常にむずかしいのじゃないか、こう思うのです。生産を抑制する場合にも、その抑制に対する対策がなければならぬ。あるいは、予期に反して生産が過剰に陥った場合においても、それに対する所得を保証する対策というものがなければなかなか納得しないと思うのです。その辺の責任と言っちゃ少し言い過ぎかもしれませんが、そういうことについて政府はかく考えるから、安心をしてその年々定められた生産計画に協力をしてほしいということにならなければならぬと思うが、そういう押えは、そのときどき考えるとおっしゃいますけれども、抽象的、包括的にもかくあるべきだということをおっしゃっておかなければ、これは納得できないと思いますが、どうでしょうか。
  79. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ただいまも申しましたように、まずそういうあやまちの出ないように慎重に措置を講じて進めていくつもりですが、御承知のように、経済の動きは、いろいろな原因によって変わる場合がございまして、その意味において各般の準備を進めて調査し、研究した結果であっても、そういう不測の損害が起こるというようなことがないとも限りません。しかし、それは私は具体的にそういう事態が出た場合において、国会等においてもそれが常に論議になるわけでありまして、従来とも具体的の場合に処して、必要な場合においては政府が出て、あるいは抑制の場合における助成をするというような場合も先例がございます。そういうふうな場合は、場合によってそれぞれ処置が違いましょうけれども見通しといいましても、まあその見通しに基づいて農家が自発的に誘導されてやっていかれるにしても、これが新しい農政方向として責任がある程度ないとは言えない。そういうふうなことは政府はしっかりした態度でもって指導する立場でありますから、それらの場合におきましては、具体的の場合にそれぞれ必要なる処置を講ずることが起こって参ると、かように考えております。
  80. 森八三一

    ○森八三一君 その具体的のそれぞれの場合に、国会その他の審議を経て結論が出されるであろうということでございまするが、その場合の基本的な考え方と申しまするか、理念的なものとしては、やはりそういうような政府の施策に協力をして生産にいそしんだ農民の諸君に対して、不測の損害を与えない。これをもっと端的に申しますれば、そういう協力をした農民諸君に対する少なくとも所得の補償は、これをやるんだと、その所得の補償額が幾らであるかということについては別問題であります。それはそのときどき研究してきめなければならぬと思いますが、そういう抽象的、包括的な表現というものはこの法律の出発のときに明確にしておくべきではなかろうかと、具体的な数字をどうこう申すのではございません。ございませんが、そういうような審議会の議を経、国会の議を経て政府が確定した方針というものを施策をして、それに準拠をして、忠実、まじめに政府の施策に協力したという農民が、事志と反して、万が一の場合にばかを見たという結果にはせぬぞということだけは言っておかなければおかしいんじゃないか。そのばかを見ぬという具体的な数額については、これはそのときどきの経済情勢がございましょうから、これは別個に審議をすべきと思いますが、抽象的には、そういう場合には御迷惑をかけないというだけのことは、抽象的に表現をなさるべきではないかと、こう思いますが、それはできませんでしょうか。
  81. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 森さんの御質問の点はわかるのでございまするが、あなたが想像せられるような事態になるかならぬかが問題だと思います。たとえば主食である米につきましては、これはああいうふうな直接統制でぴしゃっとやりまするから、補償をいたしております。しかし一般の野菜その他につきまして、今農政審議会におきまして野菜をこれだけ作るとか、野菜の方針はこうだとかということには、それはなかなかならないんじゃないか。で、あなたの御質問というのは、野菜をこれだけ作って、その野菜が売れなかったら政府が補償するかという具体的な御質問になると、私は答え得られぬと思うんです。問題は乳牛とか、あるいは、何と申しますか、豚とか、あるいは肉類、こういうものにつきまして、牛をどうしようか、豚をどうしようかという問題につきましては、これは野菜より割に楽にいくと思います。こういうものにつきましても、それじゃ豚を何頭輸入しょうとか、生まそうとかというふうなことを、農業の審議会で私はきめ得られるような状態になるかならぬかということは、今のところではなかなかむずかしいんじゃございますまいか、経済の実態というものから考えまして。だから、それは今後ずっと年を重ねてやっていく場合におきまして、たとえば乳牛をどれだけ外国から入れようと、そして国内でどれだけ増産させようと、こうあるべきじゃないかという基本はきめられますけれども需要その他の関係におきまして高低がございます。そのときに牛乳が非常によくできて、値下がりするという場合に、これを乳製品に製造するとか、あるいは豚が非常にふえて値段が下がったというときに、これを冷凍倉庫を置いて、そういう場合の調整をしようとか、いろんなことはこれは今後出てくる問題であり、農政審議会の問題。そういうことをすればすぐ結論の価格まで補償して安心するかどうかというところまで、米のような状態にやるのかとおっしゃったら、私はそうは今のところは御返事できません。で、経済の動きを見まして、各種類によって私は考えていかなければならぬ。たとえば三十六年度の予算におきましても、肉類とかあるいは豚類につきましては、相当の措置をいたしておりますが、鶏卵につきましてはそこまでいっておりません。鶏卵は今二割ぐらい下がっておりまするが、大体このままでいけるのではなかろうか、しかし鶏卵とか、あるいは鶏肉等が盛んにふえて参りまして、そうしてその価格の激変というようなことがあったら、豚や肉類のような施策を講じなければなりませんが、それは今後具体的生産の状況等と見合って考えていかなければならぬのではないか。しかし、少なくとも今の段階におきましては、今後選択的生産増強というものにつきまして、そういうことをやっていこうというスタートを今切るわけでございますが、スタートを切るなら価格保証まで、所得補償までしろという議論には私は少し組みし得られない。こういうような状況におきまして、一つスタートを切ってみましょう。そうしてそのつどそのつど可能な限りにおいて、可能な限りにおいて、しかもまた、自由主義経済のもとにおいていかなる措置をどの程度とるかという問題は、私は今後農業基本法をもととしたその後の法制的、財政的措置で考慮すべき問題だと考えておるのであります。それが、価格保証、所得補償までいかなければ農業基本法は安心できないというのでは、これはいたずらに百年河清を待つことになる。私といたしましては、この現状、曲がりかどに来たときには、こういう仕組みでスタートして、そうして具体的な問題が起こったならば、今までのように無制度で、単なる思いつきとは申しませんが、単なる観念の議論というだけでなく、系統的に、組織的に、計画的とは言葉が行き過ぎまするが、一つ考え方をきめて進むときに来ているのじゃないか、こう言うのでございます。
  82. 森八三一

    ○森八三一君 私も今ここで農畜産物のあらゆるものについてかくすべきであるというような、むちゃくちゃな議論を展開しておるつもりはございません。少なくとも成長部門として、選択拡大方向として、こういう方向に行くべきであるということを指導するという限りにおいては、それに対する裏づけというものを考えてやらなければいかぬのじゃないか。今そういう牛がどれだけだとか、豚がどれだけだとかいうことを考えるのは非常にむずかしいのじゃないかとおっしゃいましたけれども、これはぜひやってもらわんことには、えさの手当ができないと思うのです。大体長期見通しと申しまするか、あるいは短期でもいいんです。大体経済成長の速度からいたしまして、その年の国民生活水準はどの程度に上昇するであろうといたしますれば、過去における国内の大勢、あるいは国際的な推移というものの実績等々から勘案いたしまして、大体肉類は豚でどの程度、乳はどの程度という需要というものが策定をされなければおかしいと思う。そういうことが何にもなしには進まぬと思います。それが出てくれば、おおむね乳牛は何頭ぐらいということがきめられまして、そこで初めてえさが、農家の自給でまかない得る分はどうだと、国内で大体手当がつくのはどうだ、足りなければどれだけは国外から輸入をして、そうして畜産農家に対して安心をしてそのことにいそしんでほしいということが、初めて言えるわけでございますので、それが言えるという限りにおいては、大体の乳の生産量というものが策定されなければこれは出てこぬと思うのです。それが出てこない限りにおいては、もし不測にしてその乳が非常に多く生産されて、これは技術の増進あるいは品種の改良、いろいろありましょう。あるいはえさの、いいえさがよけい入ったということ等もございましょう。いろいろな条件が相重なりまして、予期いたしました生産数量よりもよけいふえたというときに、今お話しのように、それを乳製品に加工いたしまして、これを他日に備えるとか、あるいは冷蔵をして時期的な需給調節の資に供するとか、方法としてはいろいろあろうと思うのです。その場合生乳の生産者、精肉の生産者というものが冷蔵をする、原料に供給するわけですから、そのときには、大体常識で考えられまするその業に携わった人々の所得というものを保証してあげて、その人々が健康にして文化的な生活ができるという最低の水準というものぐらいは約束をしてやるという親切が、この法律には含まれておるような気がするのであります。非常にむずかしいことではございますが、その辺までいかなければおかしいのじゃないかという感じがしておるのですが。
  83. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 専門的に入りますと、私専門家でないから誤りがあるかもしれませんが、今申し上げましたように、乳牛を何ぼ輸入しようとか、あるいは国内において優良な乳牛をどれだけふやそうとかいうこと、こういうことは当然やらなければなりません。それからまた技術指導員におきましても、豚の増産はこのくらいにすべきだということはもちろんやるわけでありますが、しかし、今言ったように、乳製品にしなければならない、非常に価格が下がるというようなときには、やはり買い上げて乳製品にしておくとか、あるいは冷凍しておくとか、こういう措置がとられなければならない。これは豚あるいは肉類につきましてはそういうことを今考えております。しかし、鶏卵の方には今それを考えていない。私は名古屋に行まましたときに、その陳情を受けましてそのとき答えておきました。帰って、農林大臣に、この部分の陳情を受けてこう答えておいたが、何とかならぬか、農林大臣は、今のところはやらなくてもいい、もう少し情勢が変われば何とか考えなければならぬと農林大臣は答えられましたが、その通りでありまして、それが価格の激変とか、あるいは生産が減る、病気の流行、豚のコレラの流行で非常に減ったとかというような場合、いろいろなときに農家所得を補償する。たとえばイギリスで前からある程度やっておるようで、ございますが、そこまで今農業基本法考えるときに補償いたしますと言うことがいいか悪いか、国民全体から考えて、われわれ自由主義の経済をとっているときに、その補償をいたしますということ、その補償の限度なんかをきめるよりも、一ぺんこれで進んでみて、そうして事態に沿って、その価格の変動のないように、そうして所得がふえて増産に持っていくようにしようというのが今度の基本法であるのであります。これをやってみまして、農家の補償をしなければ農業基本法は意味をなさないという結論を出さずに、農家の補償をしなくても、農家所得が自然に上がっていくような体制をこれで整えましょう。そうして事情によっていろいろな施策があると思います。それはものによっては、米のようなことをしなければならぬ、あるいはアメリカの農業などの、何と申しますか、余剰農産物をよそにやらなければならぬということも、あるいは起こってくるかもわかりません。しかし今の場合は、自由主義経済のもとであらゆる知能をしぼって、あらゆる施策を講じて、減ったことを考えるというよりも、減らないように、そうして激減の起こらないような制度にするのが、今の私はとるべき施策である。それが補がないからといって、このものはだめだということは出てこないのじゃないかと思います。
  84. 森八三一

    ○森八三一君 私も繰り返して申し上げますように、しつこいのですけれども、そういう事態の起こることを期待するのではなしに、そういうことが起きちゃならぬと思うのです。しかし、事は経済の仕事で生きておるのですから、いつなんどきそういうことが起こるかもしれぬという心配を、農民諸君としては持つと思うのです。そこで最初に申し上げましたように、本法におきましては、農民の今までの功績をたたえて、そうして「農業従事者が他の国民各層と均衡する健康で文化的な生活を営むことができるようにすることは」、「公共の福祉を念願するわれら国民の責務」である、こういうようにはっきりいい切っていらっしゃるのですから、国民の責務なんですから、今総理が言われるのは、ほんとうに国民が承知をせぬでも、責務であると宣言した限りにおいては、政府の施策も思いつきではないはずなんです。農政審議会の議決を経て、国会の議決を経て、そうして初めて実践に移された。石橋をたたいて石橋を渡った、そのことがもし食い違ったというときに、それも菜っぱの末までやれというのではなしに、成長部門として育成していこうというときに、特にその力を入れておる重要農産物等については、その方法は、貯蔵する方法もありましょう、買い上げする方法もありましょう、いろいろな方法がありましょう。私は具体的の個々の問題をかれこれ言うのではありません。最後の結論として国民の責務であるというならば、その農民が健康にして文化的な生活を営み得る最小限度のものを何とかしてあげますよ、これくらいのことを言ったっていいんじゃないかという気がするのでございますが。
  85. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) この点は先ほどもお答えしておるのですがね。私は、長期見通しを立てて、それに沿うて指導をして参ります。見通しというのは、かなり幅のあるものだと思います。これははっきりしておる。具体的生産計画というようなものでない、きのうもちょっと触れましたが、過去における、需給の実績に基づいて、それを引き伸ばした一つのものはございましょうが、それで意欲的な、政治的な一つ見通しを立てる、範囲におきましては、かなり見通しというものは幅のあるものです。それに立って指導していきますが、あくまで私はそういう一つ見通しのもとに指導をしていき、あまり生産したものが需要と違わないように持っていくことが、第一に農民に対して親切なやり方と思うのです。そういたしまして、できたものはできるだけ取引等その他を考えると同時に、有利に販売さして、価格を安定さしていこう、あくまで生産した総量に、価格でかけたのが所得になるようにして、その所得を安定させるためには、そういう点も考えていこうということであります。従って私ども、もしそういうふうな場合でありましても、いろいろな経済の変動というものは、他からの影響でくることもあります。しかしどれだけのものが出たときにどうなるかということを、一律に何んでもかんでも政府考えますというわけにはいかぬでしょう。しかし、見通しとして幅のあるものであっても、これは国会等でも審議の上に出ておったものについて、その違いというもの、影響というものは、ものによって違うのであります。そういう場合には、当然政治的に何とか考慮を払わなければならぬということが起こるかもしれない。しかしそういう場合には、それぞれの場合において指貫をとっていったらいいんじゃないか、こう思う。その以前において、今御指摘のように、重要農産物、すなわちこれから成長していこうというものについては、何とか売れないときに買い上げたらどうかということは、今総理がお答えいたしましたように、これから伸ばそうとする畜産のごときは、豚とか、乳製品とか買い上げて、市場から数量を封鎖して価格の安定をはかろうという、すでに関係法案を出しておるのであります。こういう形で安定さして安心をさしていこう、価格安定をはかろうというすでに関係法案を出しておるのであります。こういう形で安定さして安心させていこう、順次そういう必要がありますれば、やって参りますし、また具体的な面は、変調の激しい違いが出たということがありますれば、それに対して具体的な措置をするということが具体的に考えられるであろうと思う。決してその点では何にも考えておらないわけではありません。これが法律になる場合でも、いかなる場合にも補償するとか何とかいうことを書くということは、少し私は無理だと思うのであります。
  86. 森八三一

    ○森八三一君 大体総理も君の気持はよくわかっておるよということで、非常にむずかしいからという御説明がございましたし、ただいま農林大臣も成長部門として指向されるような重要な農産物については、現在でもすでに乳、あるいは肉類等について事業団を作ってその対策考えておるというがごとくに、今後具体的なものにぶつかってそういう施策を国会とも相協力して進めていくのだから、今ここでしかつめらしく一々言わなくても、気持は十分呑み込んでもらっていいじゃないかということですから、抽象的、包括的にはそういうような施策が今後必要によって講ぜられるものであるから、農民諸君安心して進みなさいということに私は理解をいたします。  そこで、そういうようなことになりまする場合に、今具体的に畜産事業団の例が出たのですけれども、その場合に、さてそこで、具体的に政府が買い上げてその処置をしようとする場合、これがおそらくこの法律の十一条によって具体的にきまってくるのではないか、こう思うのであります。これではどうも必ずしも、前文に示されておりまするような他産業との所得を均衡せしめて、文化的な生活が営めるようにするのだという結論は、必ずしも導き出されないのではないかという心配を持つ。もっと端的に申しますと、この場合に米でとられておりまするような他産業の諸君の所得、つまり自家労働賃金の計算について、単位時間当たりの所得というものは均衡せしめるということが、この内容として盛り込まれてこそ、初めて前文の趣旨がほんとうに実現された、こういうことになるような気がするのでございますが、そうならなければおかしいのではないか。そういう意図でこの十一条は運営されていくのだと了解をしたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  87. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) お尋ねでありますが、私は一つ一つ農産物、それぞれ別々に、それぞれを他の産業生産物から出る所得との均衡ということでなくて、私は全体、総合的に考えられるべきものだと思うのです。しかしこの十一条の関係と、今畜産事業団と結びつけられましたが、その場合においていかなる形で買い上げるかということの関連としてのお尋ねと思います。そのことは当然豚肉を生産して大体流通過程に出て売られる場合における価格というものが、やはり生産事情なり、あるいは物価その他の事情で、おのずから私は妥当なところできめられていくべきであって、その際にこれが不当にそれが下落するという場合においては、市場からある数量を隔離して、そうして需給の調節をはかって価格の上がるのを待って売る。こういう形に私はしていくのが畜産事業団の使命だと思うのであります。従ってその際ただ他の方の産業と比べて、生産物と比べて、そうして需要とマッチする形において、価格だけが高くきめられても、これはむしろ売れないということになる。やはり私はその点は生産事情なり、物価その他取引事情を勘案して一つ妥当性というものが出てくる。しかもその生産事情の中には当然生産費というようなものがどのくらいかかるかということは考えられて、価格はおのずからきまっていく、またそういうふうに仕向けていくべきである。従ってその妥当な価格というものが非常な不合理な形に下落するという場合においては、政府は事業団によって積極的に買い上げて、この価格が上がるのを待つ、こういうことであります。
  88. 森八三一

    ○森八三一君 その場合の考え方基礎をなす気持なんですが、それが前文、あるいは第一条に言われておりまするような目的を達成するのにふさわしい尺度でもって計られるものでなければならぬと私は思うのです。今ここでしからば具体的に幾らにせえということを申し上げるのでなくして、前文にそういうことが言われておるとすれば、その目的を達成するにふさわしい処置と申しまするか、対策というものが当然考えられる、そのことがやはり所得ということにつながっておるのですから、その生産者の自家労働賃金というものについて健康な生活が営めるという最低限度を保証するということをめどとして考えていく、しかしそれが不当にそのときの経済事情で違っておるというのならば、これは必ずしもその価格安定対策だけではいけません。そういう場合にはそういうものを補う別の法律を作るということもありましょう。しかし考え方としては、そういう考え方基礎にある、こういうことでなければならぬと思うのです。これは同感だと思うのですが、よろしゅうございますか。
  89. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 大体のお考えはよろしい。
  90. 森八三一

    ○森八三一君 それでは時間が来ましたので最後にお伺いいたしますが、第二条でしたか、「農業経営の規模の拡大」とこうあるのです。このことは当然やらなければならぬと思いますが、そこで農地の造成をするとかあると思うのでございますが、ずっと一連の質疑応答を聞いておりますというと、経済高度成長に伴いまして、現に年々農業生産労働人口は三十五万ないし四十万というものは他産業に吸収されている事実があるのだ。だから今後数年にして自立経営といいますか、二町何反かというところに必然的になっていくということも言われているかと思います。そこでそういうようなことで、既存の農地というものが今後自立農家として営農をしていこうとする人々に吸収されていくといいますか、そういう方向がなければならぬと思いますがね。もっと端的に例示いたしますれば、一町歩ずつを耕作している農家が二戸ある。その二戸が他の産業の方へ吸収されていって離農するという場合に、その農地一町歩というものが残るBの農家に合わさっていく。そこに初めて自立経営農家ということが、経営規模の拡大によって行なわれていくということになる。そういう姿というものを考えていらっしゃると思うのです。その場合に融資の対策だとか、あるいは金利の助成の対策等諸般の問題が考えられておると思いますが、私は現状のそういうような兼業農家がさらに脱落をして他産業に農地を放棄して出ていとうというような地点の多くの場所は、農地それ自体価格が非常に高騰しておる。そういうような非常に高い価格のものでは、とうていこれは融資を受けたというだけでは、農業生産の対象としては非常に不適格な存存であろうと思うのです。だから今後営農を通じて所得される農産物価格の大体の見通しから逆算をして、収益価格というものから農地価格というものが一応構想されなければ、これは問題にならないのではないかと思うのです。ところがその対策として信託制度等いろいろございますが、これは他日もっと深くお尋ねをいたしますが、そういうことから離れまして、農地を処分していこうとする場合に、その処分価格が現に高騰してしまって、とうてい農業の、生産対象の農地としては問題にならぬ、こういう事実が至るところにあるのです。それを一体どうなさるのか。私端的に言わしてもらうならば、そういう農地は国が買い上げて、収益還元の法則に従って換算をして、これを自立農家としていく人に供給する。もしそのものが将来目的をはずれて別の方に転用されるという場合には、これは国家がもう一ぺんそれを取り上げて別の方向へ国家の責任で処分をするというようなことを思い切ってやらなければ、なかなか二町五反歩なんという農家考えましても、草なんかはやしておいて売らぬ。もしそれを貸してしまえば大へんなことになる。あるいは信託で五年なり十年なり見ると大臣おっしゃいましても、そういう連中は処分したいときはいつでも処分するということになりますから、なかなか信託制度そのものにも応じてこない。国土は荒廃する、生産は上がらないということに私はなると思うのであります。でございますから、この貴重な国土というものを有効に運用してもらいますためには、この際思い切って収益価格というものから考えた適正価格で自立農家を作っていくという方向がとられてしかるべきではないか、非常に多くの国費を要すると思いますが、そのくらいの思い切った政治がなければならぬと思いますがいかがでしょう。
  91. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) ごもっともなお尋ねですが、まだ今日の段階で直ちに収益価格から換算した、土地を払い下げる前提として、国が高い農地を買い上げて渡たすというところまでは今決意はいたしておりませんが、しかし、土地造成並びに自立農家を相当な基盤を持たして育成していくことに関しましては、その土地取得に関して必要な資金的の問題なり制度という問題につきましては、ただいま慎重に研究中であることを申し上げておきます。
  92. 森八三一

    ○森八三一君 その農地の取得に対する資金等については、これは自作農創設資金のうちの維持の方は、なるべく減らして創設の方を重点にしていこうということも一つであろうと思うのです。その他にもいろいろ御考慮を願っておると思いますが、農地自体価格農業経営の対象としては問題にならぬ。三十万、五十万という農地を買って、そこへいかに成長部門といえども酪農をやり、草地にしていくということもいかぬと思うのです、実際問題として。それじゃ高級野菜を作るといたしましても、おのずから限度があると思うのです。温室栽培をやりましても、これも需要供給の関係から限界がある。そういう農地というものは買えません。それを今自作農創設資金を借りても買うという人々は、営農を目的にしてやっているのじゃなしに、それは他日、それが農地が工場牧地に転用される、あるいは他日の夢を描いて今農地として三十万円でも五十万円でも買っておられるということだと思うのです。そういう非常に不健全な姿では、いわゆる自立農家育成していくということとは非常に食い違ってきゃしないかと思うのです。ほんとうに自立農家としてまじめに農業生産にいそしんでいくという人のためには、何かそこに一つの問題がないと解決にならぬのじゃないか。ただ自立農家、自立農家と言いましても進行しないのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  93. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) この点につきましては、現在の農地の価格というものが、都会地に近いとかいろいろなところでは、特にそういう方面から上がっておる類地価格によって上がるということがあるようであります。しかし、一面におきましては今日逆に下がってくるところもあるわけであります。それは一律全国じゃありませんから、それでいいとは申しません。ことにまた、従来は上がってると申しましても、一反、二反のものは実際上移動して買っておるわけであります。しかし今後の問題としては、そういうふうな既耕地に対する移動の問題と、もう一つは畜産等に対して必要な牧野草地の造成等に対しては、必ずしも既耕地というものの移動だけを対象にせずに、目下研究いたしておりますのは、国有林野等の問題について適正な場所においては、これは払い下げとか、使用権の設定というところまで考えていくことが必要じゃなかろうか。こういうところにも新しい意味における、必ずしも工業地帯によって影響される農地の価格の値上がりで買えないという問題でなくして、考慮は払っていけるのではないかと思っております。いずれにいたしましても、御指摘の耕地の問題の移動に関しては、私ども今後の推移を見て十分に研究をいたしていきたいと思っております。
  94. 森八三一

    ○森八三一君 十分この問題に関心をもって御研究を願うということですから、すみやかにその結論が出ることを期待いたしますが、きょうも午前中に大専門家の櫻井先生が、社会党の三百万ヘクタール造成の問題に関していろいろお尋ねになりました。これはおのずから北海道等地域は限られておる。そういうところを開発して大集団の移動を考えるのかということが、かなり、これは速記録を読まぬと答弁も明確でありませんけれども、非常に答弁は不満であるということで櫻井先生は質問を打ち切っておられますが、私もそういう感じを持つのです。今お話しのように、草地をやるとか何とかおっしゃいましても、これは社会党の三百万ヘクタール造成と同じことをおっしゃってることになってしまうと思うのです。地域が限定されている。だからあらゆる地点にそういうことが適用されない。しかし今非常に兼業農家が脱落して生産を上げておらぬ。むしろ都市の近郊に近い、そういうところに自立農家を作っていかなければならぬのですね。その連中はよそにいってしまえというのでは変になってしまいますから、どうしてもそういう農家育成する。こういうことが政府の案であろうと思うのです。その点については賛成しておるのです。賛成しておるが、そのことをすみやかにやってもらわないと、この自立農家育成というものは、私はおそらく実行ができぬと思うのです。その場合新しい草地を作るとかなんかおっしゃいますけれども、それは櫻井大先生もおっしゃるように地域がきまっておるんですから、全国にそういうことはいかぬ。だから早急に結論を出していただきたい、こういうことを申し上げます。
  95. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 私はその点については、ただいま申し上げましたように十分に検討をいたしておるわけであります。ただ私は草地の問題に触れましたのは、ただばく然として三百万町歩をどうするということでなくて、明らかに地域的になるならぬということはおっしゃる通りであります。むしろ、私どもはいかなる地域にどういうふうに畜産を奨励し酪農をやらせていくか、その地域における国有林野等についての問題はどう考えたらいいかというふうな問題を各地域ごとに考えていきたい。そこで、私は総体的にわれわれの政府案としては何百万町歩ということは申しません。具体的の計画について、地域的に具体的に治山計画あるいは耕地計画というものの上に立って新しい農地の育成をし、草地の造成をいたします、こういうことを申し上げておるわけです。この点はあとでまた付加してさらに申し上げます。
  96. 森八三一

    ○森八三一君 抽象的によくわかるのですが、わかるけれども、私もしろうとでわからなかったのですが、午前中に専門家の櫻井先生の話を聞きまして、そういうことは抽象的には言えるけれども、具体的には地域が限定されてしまう。北海道を開発して、そこで自立農家を作るということならば、どっか大集団の移住を考えなければならぬ。今までも移住をやっていたからそれを拡充してやればいいじゃないか。東北方面に限ってということになると、大部分本州から四国地域というものは、そういうあれはほとんどないという専門家のお話なんです。全然ないということはおっしゃいませんが、きわめて微量である。そういうようなところを、いかにもあるかのごとくお話になってはいかぬ。そういう地域においては、今既存の耕地というものの離合集散と申しますか、配分をもう一ぺん考え、そういうところにこそ工業が進んでくるんですから、そういうところに吸収されてくる労働力もあり、余ってくる農地もある。それをうまく調整する。そのときに私が申し上げたことをやらなければ、これは実際問題は解明されない。私は自分の郷里に当てはめまして切々とそういうことを考えさせられるんです。いかに基本法が営農を拡充して自立農家を作るといいましても、それじゃ農地はどうしてくれるんだ。農地を買えない、農地を買おうとすれば、とうてい問題にならぬということでございますから、これは十分研究するということでありますから、これは早く結論が出まするようにその点は思い切って、これは第二次農地改革でありませんけれども、その辺まで一つ突っ込んでいただくということを期待いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
  97. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 農業基本法社会党案民社党案、政府案と三案上程されて慎重審議をされますることは、私はおそらく国会始まってと申し上げてよろしいほど、こういう機会農業問題が恵まれたことはないと思うのであります。農民といたしましても慎重に三つの青写真をいろいろな形から審議をされるということはまことに喜びにたえぬ、かように考えておるだろうと思うのでありますが、さてしかりといえども、他党だけの案についての批判だけに終始いたしまして、それがためにいたずらに農民に混乱を招かせるようなことがあっては私はよくない。さような意味から正しい理解を妨げない立場において若干こまかいことになるかと存じますが、明確にお答えを願って、大へん不安である農業経営を安心して農業経営をするんだというところへ持っていきまするためへの法制化でございますので、さようなつもりでお答えを願いたいと思います。  私はまず基本法について、基本法と予算について質問をいたしたいと存じますが、基本法農業憲章であると言われておりますが、一面宣言法であるという人もございます。また、予算法であるという一面も持っておると思うのであります。そこで、いかにりっぱな法案ができましょうとも、これに対しまする裏づけの予算というものが完全でなければ、私はこの法案は絵にかいたもちになる、こういうふうに理解をいたしておるのでございますが、今度のこのただいま提案されておりまする政府基本法案にいたしましても、政府責任というものは、実に私は重大であると思うのであります。なまやさしいものではなくて、今までかつてない重大な責任を負いますという覚悟のもとにこの法案が出されておるものであると信じまするし、またそうでなければなりません。そういう立場から考えてみますと、この基本法案が本年提案されるに及んで三十六年度の予算を振り返って考えてみますと、なるほど新しい方向を、窓口をあけたといいますか、芽を吹いたといいますか、そういう予算が三十六年度の予算においても若干見受けられるのであります。これはわれわれの大へん喜びとするところでございますが、しかし、一般予算で千八百七十三億余でございまして、これは増加は五百五十三億余円の増額でございますが、まだしかし、われわれのかねてからの悲願でございます一割には足らないのでございます。九・六%程度のものであろう、全体の予算から見ますとそういう指数であろう、こういうふうに思うのであります。そこで過去を振り返って一々申し上げる必要はないのでありますが、三十四年度におきましては、七%近くにこれが落ちて参りました。また三十五年、六年と向上をしておるのでございます。そこで私は今後のこの予算のつけ方、これは飛躍的な予算のつけ方といいますか、竿頭一歩を進めるのでなくて、竿頭百歩を進めるという立場に立たなければなりますまい。ドイツのグリーン・レポート、西ドイツの農業予算等の変遷を見ますと、戦前のこの法案の出まする、倍額が計上されるに至っておるということを聞いておるのでございます。もしそういうことでございまするならば、この際総理はこの基本法を提出するに、通過後においては明年後の施策万般において、確実に予算の増額をはかって農家の心配をなくするのだという強い固い信念の覚悟をお示しを願いたいものである、かように存じます。まずこの点からお伺いをいたしたいと思います。
  98. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 予算の使い方の問題でございまするが、これは何と申しましても、新しいりっぱな国を作るのには、どこに重点を置くかという問題と思います。私は、経済全般の発展をうながすための減税、また将来の発展をつちかうための公共投資、そして今お困りの方々が非常に多い、その苦しみがひどいというので社会保障制度の三本の柱でいったわけでございます。私はこの三本の柱はまだ、二、三年は続けていかなければならんと思います、今の状態から申し上げまするならば。そしてその後におきましては、私は、社会保障制度は続けて参りましょうが、何と申しますか、行政投資ということは四、五年たてばだんだん私はふえ方が少なくなる、減税の方も所得が非常に多くなればそれは額は多くなりますが、実質的の減税は割にゆるやかになる。何と申しましても、経済拡大をはかるためには、やはり国民の中の大部分を占めておる農業あるいは中小企業、そうしてまた大衆の生活をこれをよくしなければ、経済全般が伸ばんわけでありますから、そういうことから考えますと、私は社会保障あるいは農業関係中小企業関係に対しましては相当の力を入れていかなければいかん。それで農業の点につきまして今後は、今までは米麦中心農業でございましたが、今後はよほど方向転換して、米麦に入れた力を、果樹園芸、畜産と、こういう方面に私は重点的に施策を持っていかなければならぬ。こういう意味におきまして、その予算全体の額もさることでございますが、内容におきましてはよほど予算の使い方が変わってきて、そうして農業基本法の精神に沿った方向に向かっていくのではないかと、こう考えておるのでございます。何と申しましても、経済拡大によって予算規模も大きくなれば大きくなった規模のうち、どこに重点を置くかとなると、今の大衆のための施策、そうして将来のための基盤の造成、これが重要な柱になってくると思います。
  99. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 今までは国会においてもいろいろ農業施策というものについて論議がかわされ、要求が行なわれて参ったのでありますが、やはり国の財政全体から見渡して政策を組む前に、やはり金の、資金の問題、予算を計上することが不可能であるということにおいて、必要であると認めながらも、その政策あと回しになってきたと私は思っている。ところが、今回はこの基本法が通過いたしますと政策はでき上がったわけだ。政策ができ上がると、政策を実行するために、やはり予算の裏打ちが必要であるということにならなければならないはずでございます。今までは金がない、予算が乏しい、よくわかります。これは農業だけに全部をつぎ込むわけには参りません。全体を見渡していかなければならないのでありますが、しかし、この大責任を持って政策が通過をするのでありますから、それに対する裏打ちというものの予算というものを必ずつけるのであるという覚悟が大へん必要であり、当然なことだと私は思っております。ただいま総理の御決意を承りまして、十分とは申し上げませんが、満足をいたします。どうか一つ竿頭百歩を進めていただきまするように御覚悟を願いたいと思います。  そこで、この予算を編成するにあたって、一般会計で今後増大するであろう予算を計上されるのか、あるいは例をとっておそれ入りますが、土地改良特別会計というようなものがございますが、そういう基本法施行に対しまして特別ワクを設けて、それぞれの形において予算増額をはかっていかれようとするのか、これはただいまこの予算をこういう方向を聞きますることはどうかと存じまするが、およそ年次計画を定めて、そして順次これに予算をつけていかなければならぬ、そういう経過が起こってくるであろうと思うのでございますが、私はドイツあたりにおきまする例を見ますると、やはり基本法と言われまする問題のワクとしての予算というものが別ワクに計上されておるものがあるようであります。ただ一般の中でやるということになりますか、あるいは別ワクでこれをお取りになりますか、そういうことによって、午前中でございましたか、あるいは昨日でございましたか、今後の機構の改革等の問題にもおよそ及んでくると思うのでございます、御意見を承りたいと存じます。
  100. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 堀木委員お話しの通り農業基本法を制定いたしますと、第四条に規定してあります通りに、政府は必要な法制的、財政的措置をとらなければならぬ。そしてその結果を毎年実績予想ということを、国会で御審議願うということになって参りますので、以前とはよほど私は、何と申しますか、明るい事態が出てくる。また国民に納得がいくように、お互いに知恵をしぼって、それが農業伸展に益するような建前が出てくると思うのであります。そうして裏づけの予算はどうするかという、これが私は所得倍増を言い始めたもとでございます。早く経済高度成長さして、そういう自立農業とか、中小企業とか、あるいは社会保障方面に金をできるだけ出したい。これがいうなれば、私の所得倍増論の根拠でございますから、私は農業中小企業社会保障制度の拡充、もちろんこういうところに十分とは思いませんが、今まで考えておったような、予算がないからどうかということもよほど緩和できてきて、相当私は余裕が出るようになってこなければならぬと考えておるのであります。これが私の所得倍増論のもとである。しからば、一般会計でそうやってふえてくるが、農業育成につきましては、一般会計のその財源でやることを主とするか、あるいは特別会計によってやることを建前とするか、この問題につきましては、私は原則として一般会計からやるべきものでございます。特別会計で収入をはかっておりますが、これは債券を発行するとか、あるいは一般会計からの繰り入れよりほかないけれども、それ自体で十分に収入を上げるわけではございません。原則としてやっぱり一般会計でいくべきものだと思います。ただ、一般会計からの金が非常に少ない、しかし非常な要求がある、今の土地問題等につきまして。その場合に、一般会計からの繰り入れ以外に他の方法によるべきか、すなわち借入金あるいは公債によるべきか、それによるとすれば、またその額をしていかようにするかということは、そのときの経済情勢で考えるべきことであって、今までの日本の一般会計と特別会計との施策は、やはり原則として一般会計による、これでいっておるのでございます。私は今後におきましても、その方向でいくべきだと考えております。その場合に、一般会計の予算は、先ほど申し上げましたように、私は相当ふえてくると期待して、そして国民とともに、その方向に向かって行こうといたしておるのであります。
  101. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 古い言葉でありますが、いやな言葉でありまして、生かさず殺さずという言葉がございますが、えてしてそういうふうに考えられがちの農業者に対しまして、画期的な基本法によって、所得の均衡をはかり、他産業まで生活水準を引き上げていこうということは、まことにうれしいのでございます。従いまして、私は一般会計の中で、これは政府の予算編成の一つのワクもございましょう。あるいは従来の考え方もございましょう。でありますから、特別会計でなければならんときめ込むのではございませんが、少なくともこういう問題が画期的な状態として発足をするという立場に立っては、今までの考え方でなしに、特別な立場に立って予算の計上をはかるべきであるというふうに考えておりますので、さように今後御検討を願いたいと思います。  予算のみならず、私は次に資金の、融資の問題についても伺いたいと思うのでございますが、私は元来農業者に融資をするということ自体は、本質的には好まない。農家に借金をさして一体どうして払えるかという問題なんです。はなはだ時代錯誤のことを言うようでありますが、農業のいずれの部門が、今の制度によって金を借りて、いろいろ仕事がございましょう、米を作り麦を作り、あるいはその他菜種、あるいは畜産の問題いろいろございますが、それらは、金を借りて幾らの利子だったら引き合うのかということの調査をしたデータがございましたら、お知らせを願いたいと思いますが、おそらくなかろうと私は思う。そういうふうに、それらの農業者が、金を貸してやるから農業をやれと言って、それを貸していただくことはまことにけっこうでございます。今は借りなければなりませんよ。次には、貸してくれるということを言うのですから、これは貸していただきたいと思うのだが、しかし、そう無計画にこれを借りても、大へんなことが起こるのでございます。そこで、大へん金利は安くしかも長期でなければならんと思うのでございますが、今回融資をされる近代化資金というようなことにも触れて、これは例でございますが、一つ申し上げてみたいと存じます。国が一分、あるいは都道府県が一分で二分の利子補給をする。三百億円融資をする。これは将来その需要が増してくれば、おそらく金額というものは増額されるであろうと私は思います。そこで、七分五厘でございますが、この七分五厘は中央へその金が系統的に上がって参りますと、金利に二分の差額をつけましたときに、七分五厘という数字が出てくる。それが県を通り、中央までいく間に、農村の預金の中から、私は近代化資金として営農資金、興農資金として貸してやるべきであると思う。またそういうふうにお考えになっておったとは思います。ところが、これをやろうといたしますと、財務基準令というものがございまして、なかなか単農なり、あるいは県信用組合なり、県の信連なり順次上がって参りますためには、系統的にはその預金の何十パーセントを系統的な預金として預金をしなければならん、こういうことになるわけであります。余った金は、近代化資金として使っていいということになりますると、この財務基準令というものに問題が起こってくる、こういうふうに考えられるのでございますが、これはすみやかにこれと同時に改正をされる意思なのかどうかということを一つ承っておきたいと思います。
  102. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 当然財務基準令に対する改正をいたすつもりであります。
  103. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 次に、私は選択的拡大という問題でございますが、選択的拡大ということは、すでに多くの委員の方から御質問にもなり、解明もされましたから、私はこれ以上あまり深く質問をしようとは思わないのでございますが、わが国経済成長、すなわち日本経済が高度の発展を遂げて参りますと、国民生活の向上につれて消費構造といいますか、食糧消費の内容が変革をしてくる、変わってくるであろう、こういうふうに考えます。そこで、農業政策というもの、あるいは農業生産というものが釘づけになって、もう動かないというのではなく、これは私は選択的に拡大をしていかなければならない、こういうふうに考えます。でありますから、それは法案の中にあります、第二条の中にある選択的拡大ということには同感なのでありますが、ただ選択的拡大ということは、簡単なことでは押し進められない幾多の問題が潜在していると思うのでございます。何となれば、米、麦、イモ等の澱粉食糧というものは、だんだんと消費が減って参りまして、消費生活が変わって参りまして、そこで米はさしあたり今問題にするということはどうかと思いますので、私はここで米の問題は取り上げません。いずれお伺いする機会があろうかとも思いますが、またイモにつきましても、政府は澱粉によりまして酵素ブドウ糖転換については融資の政策なり、指導助長をはかっておられますから、この問題もいずれ後日に回すといたしまして、たとえば麦の問題でございます。麦の問題もこれはよくわかります。麦を転換していかなければならんということは当然でございまして、先般われわれ農家が売りましたところの裸麦が千八百円で払い下げる、二千四百円で売って千八百円、大麦が千八百円で売って千二百円で払い下げをやったのです。でありますから、転換をしなければならぬということはよくわかる。そこで選択的拡大、需給の伸びのある品種へ転換をしていくということはよくわかるのでありますが、しかし農業というものは、なかなかその方向が変わりにくいのであります。まことに卑近な例を言って恐縮で、御無礼でございますが、農業というぼろ船に池田船長、かじ取りの周東農林大臣おいでになるのだが、これは航行をしながら内部改造をし、エンジンの整備を行なって、そうして近代化農業へこぎつけなければならぬはずなのでありますが、そこで面かじ、取りかじを急にやると、引っくり返ってしまって、これは大へんむずかしい問題でございます。農業くらいむずかしい問題はないのであります。そこでこれらを考えてみましたときに、今わが国における澱粉食糧としての消費量は七五%程度、アメリカにおきましては二五%程度だと思っておりますが、この七五%がだんだん落ちて六〇になり、五〇になってくるでございましょう、十年、十五年後に。そうすると、その埋め合せとして何がいくのか、そのいくべきものがすなわち選択的拡大の畜産物でありますとか、あるいはテンサイ糖でありますとか、菜種、もっと詳しく申し上げまするならば、果樹、油脂というようなものになってくるであろうと思うのであります。これに転換をしていかなければならないのでありますが、そこで先ほど森委員からもこの点の御質問があったようでございますが、私は安心していけるという転換でなければいけないと思う。大へん麦という家が暗くなって、このブリッジを渡って畜産家帯へいくのだ、畜産の家にいくのだが、畜産のところに火がついているかどうか、安定した畜産という経営が将来行なわれるのであるかどうかという見通しというものに立たなければならない、こう思います。そこで、畜産におきましては乳と豚肉でございましょうが、これは事業団等を作られまして、そうして保存なりあるいは需給の調節をはかるという安定帯を設けて保護をしようということが出ておるようでございますが、まだまだ初歩でございまして、十分だとは申しませんが、考え方といたしまして私は賛成をいたします。非常にけっこうだと思う。しかし卵でありますとか、あるいは黒牛というものの肉がまだどうにもなっておりません。畜産というのは乳と豚肉だけではございませんので、農業経営全般から見ましても、今のような養鶏の伸びといったものは大したものでございます。今肥料と飼料とはおそらく同額の生産の金額であろうと思われるのでございまするが、それらの卵というものは非常な変動のあるものでございます。変動を見てしかる後にもし加えてよければ加えるのだというのでは少しおそ過ぎはしないか。今のうちに私は価格準備補償方式によってこれを農家に補償せいと申し上げはいたしません。安定帯を設けて、その安定帯の中で創意と工夫とによってどうしていくかということであるが、しかし精神的貧乏はしない。一生懸命やって創意と工夫とで努力はしてみたけれども、その基準価格よりも下へ下がったということがあり得るのであります。それが新しいそれらの産業に移っていこうとする人たちには一そうそういうことが不安でたまりません。それがためにはやはり鶏卵でありますとか、黒牛でありますというようなものにも、いろいろの施策のあることを知っております。知っておりますが、やはり安定帯というものを同様に設けてやるというお考え、そういう言明がありますと、農家は喜んで私はこの転換をし、あるいは選択的拡大といいますか、そういうものに協力を一そう強くやるであろう、これが不安であるからブリッジを渡っていくところのそれらの産業というものが大へん不安であるから心配である、こういうことがあります。それを一つ安心のできるように御説明を願いたいと思うのでございます。
  104. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 御意見であります。私どもも新しく需要の伸びる農産物に転換させるということについては、将来そのものが安定した価格で取引できて、農家に不利を与えないようにするということは、当然考えていかなければならないと思います。従って、例をおあげになりました畜産物につきましては、畜産事業団を作りまして、ことに従来高落の激しかった豚肉というものと乾製品、これは乳を保護するための乳製品に加工をするという形でございます。また、その意味におきましては、乳及び乳製品についての価格の安定をいたそうとする所信であります。ただ、今お話しの鶏卵はどうするか、ブロエラはどうするかということであります。これは鶏卵については私ども考えてみたんですが、今と同じような事業団において買い上げ、貯蔵することについてはちょっと不適当であります。今後いろいろ技術的にも研究していく必要があります。大体冷凍になるわけでありますが、これらはただ冷凍いたしますと、出したならば大量にまとまって消費しなければ、一たん冷蔵庫から出しますと、長く置けないという格好であります。従って、これらについては、鶏卵の需要増進ということが今後における大きな私は措置だと思うんですが、同時に鶏卵についての生産について実質的な調整というようなことも考える。幸いにして鶏卵を生み出す養鶏、孵化幼生というものがかなり調整のできるものだそうでありますが、そこにも一つの期待をおいておりますが、これでは消極的であります。むしろ積極的に卵を消費増大の方向に向けつつ考えていきたい。しかし、さらに技術的に研究もいたし、その措置について今後なお研究いたしたいと思いますが、むしろ今後の養鶏というものは、御指摘のようにブロエラになって、鶏の肉として売られる分が多くなって参ります。この方はやり方によっては貯蔵化もできるかと思います。今後事態に即して考えて参りたいと思います。私どもが転換させようとしている小麦については、やはり従来食管法によって保護されておりますし、テンサイについては今特別な買上げ措置をとっているというようなことで、大体今の目標とされているものについては、価格措置考えつつ処理をいたしているつもりでありますが、あくまでも、堀本さんの御指摘のように、転換を指導していくのでありますから、その方向へ転換していくためには、どうしても価格を安定して収入が極端に損を受けぬような制度も考えていくことが必要でありましょうから、今後それらの具体的な計画について必要なことが起これば善処いたして参るつもりであります。
  105. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 必要な措置をしなければならないときが起こったら必要な措置をするということでございますが、そのつどそれが政策を講ずる、これは当然なことではございますが、私はこれは時間が大へん少ないので、詳細に私見を申し上げることができませんことを遺憾に存じますが、鶏卵とても困難だ、なるほど乳や豚肉のように同一品種のものでありますならば、大へん簡単なのでございますが、鶏卵は足の早いものでありますから大へん困難だとは思いまするが、しかしやれないことはないと存じております。これは御研究を願いたい。  それから大麦、裸麦の転換のところで、小麦に転換するのだとおっしゃいますが、まことに小麦に転換することは、日本の輸入をいたしておりますものでありますから、小麦に転換するのはけっこうなんです。しかし、小麦に転換できないところがございます。たとえば関東七県のごときは寒くて、もう陸稲の種まきをきのう、きょう始めたであろうと思います。陸稲の方が間作になるわけでございまして、小麦のように長らく畑にありますものは、小麦に転換せよと言っても、あとのものが作れなくなっちゃう。でありますから、全体的な立場からもそうでございますが、そういう地域性、それには品種の問題、あるいは自然条件、あるいは価格の問題等考慮してきめなければならぬ問題がたくさんあろうかと存じますので、慎重に御検討をお願いしたい。いずれまたこの問題につきましては、御意見を聞く機会があろうかと存じます。  次の問題をお聞きしたいと存じますが、農産物需要農産物というものは、非常に弾力性が少ないのです。一割増産すれば半値になり、二割増産すればただになるという、これは古い言葉でございますが、野菜あたりはそういうことに私は当てはまると思う。そういう場合に貯蔵しておくわけには参りません。そこで作付統制、あるいは販売統制価格統制をするわけにも参りますまい。そういうことになりますと、やはりこの農産物の総需要が将来幾らあるかということをつかんで、総需要が幾らあることに対して、幾らどういう方法で供給するかというおよそのめどを立てなければなりません。それがためには、第八条に、長期見通しをして、そうして発表するのだ、こういうのですが、言葉は簡単でありますが、長期見通しをするということ自体が私が大へんなことだと思うのでございます。たとえば六条で、その動向を報告する、七条で施策を決定する、その施策は六条の過去の動向に従って施策を組むのである、そうして八条で、長期見通しをするのだ、こういうふうに述べておられますが、その過去の動向とは、およそ統計によらなければならぬと思いますが、統計になりますと、よほど早い統計を作りましても、ただいまの観点からいいまするならば、三十五年度の統計であろうかと思います。おそらく統計ということが仕上がって公表のできる統計は、三十四年度くらいでないとできないと思いますが、よしそれをもう一歩譲って、三十五年度の統計がかりにできたといたします。そうすると、三十七年度の施策を発表することになりますと、三十六年度を飛ばして、三十五年度の動向によって三十七年度の施策を組むのである。しかも文書でこれを公表する。そうなりますと、六年が一番飛びますが、これは現実の問題ですよ、何も理屈を言っているのでも何でもありません、そういう場合に、どういうふうにお考えになって動向を調査し、これが動向である、しかるがゆえにこの施策をするのであるということの根拠をおつかみになるのか。これは事務的なもののようではございますが、重大な問題でございますので、お聞きをいたしておきたいと思います。
  106. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 御指摘通り、従来の統計というものについては、どうも一年飛ばして一昨年の統計がもとになっておるようです。今度の農業基本法の制定において、すべての報告なり、施策というものが統計に基づくということになりますれば、これは統計に関しても、今いかなる形にどうするかという問題を検討をいたしておるわけでございます。できるだけ早くまとめて、そうして資料にいたしたいと思っております。  ただ、先ほどお話もありましたように、果実あるいは野菜というようなものは、非常に腐敗しやすいのでありますが、中でも特にひどい野菜、青果物、こういうものにつきましては、むしろ見通しに立って生産をするということについては、幸いにして今日六大都市、あるいは十大都市ですか、東京、大阪、横浜、神戸というようなところについては、年々における実際売られました野菜等の数量が、市場調査ではっきりしております。しかもその都市における年々の増加、需要の伸びというものの率が大体わかって参りました。なぜ今までこれが使われなかったろうかと思います。むしろそういう面からいいますと、これをもっと有効に活用して、その年に出る蔬菜の数量、あるいは青果物の数量というものは、年々このくらいあって、年々の伸びはこのくらいになっておる。しかもそこへ出てくるところの各府県の出荷団体、出荷者割りの数量も、大体わかっているようであります。こういう点ももっと高度に活用して、それこそ農業団体あるいは農業会といいますか、農業委員会といいますか、農業協同組合でありますか、これらが総合的に協力しつつ、縦に横に連絡しつつ、おのおのの県における生産を自治的に調整しつつ、しかも今度はでき上がったものを共同に出荷する、出荷を調整していくというようなことまでやることが、私は今後の一つの務めだと思う。これは私は、政府生産統制するという立場でなくても、これこそ農業団体なり地方庁というものが、そこまで協力的に一つ活動に持ってくるということが必要であり、これは非常に農業基本法においても団体の活動を求めております。これは最もやりやすいことであります。そういう方向で一番問題のある政策等についての処置を講じていくようにしたい。そのことは、ひいては全国の都市にも及ぼすことができれば、今度は逆にそれらの実態というものも、早くこれは市場調査でわかって参ります。その範囲に基づいての三年なり五年の見通しを立てることは楽ではないかと思う。他の農産物についても、いろいろ統計を整備したいと思います。その線に沿うて私どもはやっていきたいと思います。一応はっきりしておる問題について申し述べた次第であります。
  107. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 この問題は、言葉表現いたしますと、きわめてやさしいのでございますが、実行に移しますることくらいむずかしいものはないと思います。たとえば私は、あまりこの問題で突き詰めたお話を申し上げようとは思いませんが、農業に統計があるかということなんです。これは私も長い間、そういう仕事をして参りましたが、ほんとうに統計はないのですよ。ことにくだものなんというものは統計はございません。例を申し上げまするならば、ことしのミカンあたりは生食をする、なまで食うときが安くて、くずミカンで加工するときになって高いのです。それは、生産がどのくらいできるかということがはっきりわかっていないから、ああいう結果が起こってくるのです。長期見通しを発表することは、まことにけっこうなんだが、私は、書いておることを現実に履行するという立場になりますと、きわめて重い責任を持つと思う。この一つだけでも完全にやるということができまするならば、基本法としての価値は十分にあると私は思う。生産需要の問題を長期にわたって見通しをするのであります。需要構造、消費構造が変わったからここで変えますというて、しょっちゅう変わるべき性質のものでありましょうか。私は変わらないとは言いませんが、そう変わる長期見通しなら、立てないがいい。その根拠の正しいことを希望いたし、地域別あるいは専業別、兼業別あるいはまた組織別のそれぞれの統計が明確に出てこなければ、今後の仕事は成り立たないということを十分に御理解をいただかなければならぬと思うのであります。  もう一点、構造論について、時間が来たようでございますので、簡単に申し上げたいと存じますが、私がお伺いしょうと思う問題は、森委員からお伺いがごさいましたから、私は重ねて同じことは申し上げませんが、要約して申し上げまするならば、自立農家を作るということに、大へん大きくその役割を持っていくのは、やはり協同組合の信託の事業だとこう思う。これは貸したり売ったりするという仕事だと思うのであります。そこで売る場合には、農村から出ていって転職をする人でありますから、周囲の類地の値段くらいには買うてあげなければならぬ。公定価格で買うべきものじゃない、類地の相場で買うてあげなければならぬ。との価格ではたして生産して引き合いにかかるかどうかということが問題になる。そこで森先生もおっしゃったように、政府が一度買って、そしてそれを賃貸の形で出すなり、あるいは何らかの形でやられるということが一番いいことだと思っております。と思っておりますがそれができない。私は元来二重価格制をとるべきである、買うものと売るものとの間に価格が違っていくべきである、こういう意見を持っておりまして、それは森先生が先ほど御指摘になりまして、なかなか財政上困難であるということであります。これは私も財政的には非常に困難であろう、こう思うのでありますが、それならば低利、長期というところに今度はいくと思いますが、これはすみやかに一つ目下検討中だなんと言わないで、どれだけなら引き合いにかかるのかということを早く明示をしないと、大へんなことが起こってくる。これは私は要望として申し上げておきます。もうすでに御答弁になりましたから要望として申し上げておきます。  次に、私はこれもむずかしい問題でございましょうが、新卒、新しく出ました中学あるいは高等学校の卒業生が、大部分都市に地すべりのような形で流れ込んでいきます。あるいは流出といいますか、とにかく農村から流れ出ていくわけであります。そこで、今まで農村の人口の問題がいろいろな形で論議されておりますが、私は自立経営農家を目ざす若い人、筋金の入った合理的経営をする若い人、これを養成しなければならぬという問題が起こってくるのじゃないか。そこで第二条の末尾に教育ということが書いてございますが、教育するということはけっこうでありますが、教育ということは一体どういう立場でいかなる教育を施していくのかということを聞いておかなきゃならぬ。そういうことを明確にしないと、貧農切り捨てという問題が起こってくる。私は貧農切り上げにならなければこの問題はいけない、またそういうように思われると思うのでございます。そういう形からいきまするならば、もう全部、それとこれとは外題が違いますが、全部申し上げます。私は自立経営に持っていくということは理想であるが、いわゆる兼業農家というものもあり得るのだ、そういうこと、これはいろいろな統計で私は申し上げたいと思うのでありますが、時間がございません。そこで、総理もお帰りになるようでございますから、理想といたしましては、専業農家育成する、自立農家育成にいろいろと働きかけ、努力をし、そういう施策の充実をはかるべきであると思うのでありますが、兼業農家というものが今の場合が当分といいますか、相当あるいは永久になるか、むしろ兼業農自体が赤信号でなくして兼業農自体が青信号であるとも言えるように思われるのでございますが、御意見を承っておきたいと思います。なお農林大臣には、今の教育の問題についてお答えを願いたい、かように思います。
  108. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 初めの田畑の取得、自立農家、これは堀本委員あるいは先ほどの森委員私も同感でございます。これは御心配になりわれわれも心配している。しかしこのことは私はもともと経済原則でいくべきだと思います。ちょうど戦後におきます統制をしているときに、安定価格とか物価体系あるいは新物価体系と、いろんな施策を机上でやっておりまするが、私はそういうことをとりませんで、これはお互いの経済良識によってそれが取り引きが行なわれる、これが私は原則でなければならない。いかにも二重価格制とかなんとかいうことは、保護的に非常にいいようでありますが、私はどうしてもできぬときには別の措置を講じなければなりませんが、原則としてはやはり自由経済市場経済、これによって支配してきめていくべきものである。きまらぬ場合において政府がいかなる処置をとるかということでございまして、初めから二重価格とか、政府が買い上げてということは、私は非常にいいようでございますけれども経済の原則に沿わず、あと非常に悪い結果を及ぼすということは、ちょうど自由経済市場経済経済の根本であるがごとく私はこの主義でいきたいと思う。一応いかないときにはまた考えなければならない。そこで農林大臣に研究してもらいますが、この実態がどう動くかということがまずきまるべきだ。自分は自立農家としてやっていきたいのだ、自分はここを払っていきたいのだ、こういうことがその田畑の譲渡価格をきめる。こういうことがまず先じゃないかと思います。で田畑価格のきめようは、その時の情勢いろいろなことで変わってくると思っておるのでありますが、原則は私は自由経済の自由取引、それを醸成していくのに長期あるいは低利ということはこれは考えなければならん。  それから兼業農家、私はたびたび言っております通り自立経営農業育成していくのでございまするが、今の現状から申しましてそんなに手のひらを返すように自立農家がすぐできるわけのものではございません。だからどうしても兼業農家というものができ得ると思います。私は余談でございまするが、アデナウアー首相が参りました。そうして京都、大阪辺を旅行して農家へ行ってみたそうであります。日本農家は非常にいいじゃないか。農村の問題はないだろう。こういうことをアデナウアー自身が申します。それはあなたの行かれたところは兼業農家だからいい。いわゆるドイツの日曜農家ほどじゃないが兼業農家だからいい。われわれの困っておるのは兼業農家にもならんような、以下の小さい農家、これをどうするかというととが問題だ。それからまた兼業農家にしても、なお他の産業に比べるとまだ十分ではないのだ。こう言ってアデナウアーには申しましたが、私は兼業農家というものは育成するわけじゃございませんが、当然の結果としてはこれはやはり農業政策として考えなければならん問題だと思います。これが何と申しますか、経過的の問題でなしに、相当続いていくことを予期しなければならん。そういうことはまた一つの存在理由のあるいいことに属すると思っておるのであります。  それから教育の問題でございまするが、まあ堀本さんとは近くなんですが、私の中学の母校は昔から園芸科というものを置きまして、お互いにミカンを作ったりいろいろな果物をやっております。こういうようなことはやはり伸ばしていかなければならない。これは寒いところばかりではなしに、ああいう瀬戸内海沿岸におきましては、段々畑のところでは、大麦は作れんというところには何を持って行くか。こういうことになって参りますので、私は果樹園芸その他のいわゆる農村の子弟に専門的の農業知識を与えるということは必要なことであって、現にわれわれの国元ではやっておる。これをふやしていきたいという考えを持っておるのであります。
  109. 周東英雄

    ○国務大臣(周東英雄君) 教育問題についてのお尋ねでございますが、総理のお答えを多少補足いたします。ただいまお話しになったように、今後の農業というものは生産物に対しましても、選択して考えるということで変わって参ります。従って変わって参りまする農業を行なうにつきまして、それぞれ特殊な技術が必要である。また今後の農業生産性を高め所得を増加する上において、近代化その中には、技術の高度化、機械化という問題が入ってくる。機械の操縦その他いろいろな問題についても技術教育が必要だ。ことに今農村地帯にある農業高等学校というものの生徒が減って参る。こういう問題あるいは離農する青年を、どこまでも中堅となって残って農業を守ろうとする青年に対する教育という問題、すべてひっくるめましてただいま文部大臣といろいろと今後の問題を相談しておりまして、学校においては技術教育を大きく伸ばすための施設なり、または特に農村に残る農業青年に対するできれば月謝の減免というものがいかなる形においてか考えられないかというようなことも考えております。あるいは、そういう面は他にも影響のあります問題ですから、むしろそういう特殊なものにおいては、別個農林省の方からの補助というものはできないだろうかと、これは確定はいたしておりませんが、いずれにいたしましても、そういう面について、農業教育に対しての内容と、農村に残るこれらの青年に対する教育の方法をどうするかという問題について、ひとしく学校の制度とあわせて考えて参りたい、こう思っております。
  110. 堀本宜実

    ○堀本宜実君 もう終わるつもりでおりましたが、どうもちょっと、総理お話しになりましたこと、農林大臣のお話しになりましたこと、気にかかることがございますので、伺っておきたいと思うのでありますが、農業の高等学校をことし卒えられた人が、農村に残った人が一割、九〇%までが外へ、農業学校を出たのにもかかわらず出ておるのであります。でありますから、農業教育を振興するというだけでは、農業にはとどまらないという現象なのであります。暑くなれば、一枚ずつジュバンを、法律でなくても脱いでいく。寒うなれば、一枚ずつ羽織もひっかけていくという、自然に農業に密着するような姿に持っていかないといけないと思いますが、それには、文化の問題でありますとか、道路の問題でありますとか、あるいは教育の問題、農業自体その固有の教育をすることだけで、私は、農業者に筋金の入った教育の方法ではない、こういうふうに考えるのでございます。新卒は、まことに今申し上げましたような工合でございますが、たとえば、中年者の人が途中からエレベーターに乗ることができないのですね。新卒の人はちゃんとエレベーターが待っていて、行くべきところに行きますが、途中の人が、農家が減ってこない。人が減ってくるが農家が減らないという現象は、中年の人が途中から転業しても、乗って行けないというところに原因があろうかと思うのであります。農村の文化といいますか、そういう問題も広くお取り入れになって、技術の振興等をやっていかれるがよいのではなかろうかと私は思う。農業というものは企業でありましょう。一面労働者であります。しかし非常に複雑でございまして、技術者でございます。この三つの性格を持っておるのが農業者だと私は考えておりますが、そういう立場から考えてみますと、畜産振興だなんて言いましても、ほんとうに知らないのですね。はなはだ農民に対して御無礼なことを申し上げるようでありますが、ほんとうに知りません。一体経済地域でなければならないので、天地とともに行ずるなんという農本主義の時代は済んだ。いかにして経済を有効に展開するかということでなければならないはずだと私は思う。それには高度な技術というものが必要になってくる、かように存ずるのでございます。御答弁をいただいておると大へん長くなると思いますので、私は要望をいたしておきます。これで終わります。
  111. 藤野繁雄

    委員長藤野繁雄君) それでは、本日はこの程度で散会いたします。    午後五時十六分散会