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国務大臣(
椎名悦三郎君) 昨日の経済閣僚懇談会は、定例的のものでありまして、主として経済企画庁から、最近の経済の情勢というものを報告を受けて、それに対し
考え方を——大体観察の仕方、それをまあみんなで認めたというのが主たる問題でございました。ただ、それに関連して、懇談的に最近の国際収支の
状況を、あまり芳しくないというような点から話がだんだん進みまして、そして設備拡張の問題等も話が出たわけであります。で、過剰設備、つまりその何と申しますか、業界によっては、早く自分の分野を広げて確定しておきたい、それをみんなに認めてもらって、そして縄張りをきめておきたいというような
考え方から、設備拡張競争といったような気負い立った気分が業界にあることは、これはどうも否定できないと思うのでありますが、そうかといって、資金の裏づけ等がこれに伴わなければ、ただむやみにその希望
計画を出してみたことろで、これは実現するものでも何でもない。過剰設備になりはしないかという懸念を抱くには、私は、早い。ただ各企業の希望
計画を見て、それでびっくりするというようなことは、これはもう風声鶴唳であるというふうに、私は日ごろ
考えておるのでありまして、この標本ともいうべきものは、大体鉄鋼
関係でどれくらいの各企業が
計画を持っておるかという、あるいは
考え方を持っておるかということを、通産省の担当局でこれを徴してみた、代表約三十社、これが八−九割の生産を占めるわけでございますが、四十年までの希望
計画をとってみた、それが相当な規模になるのでございまして、これに一〇%か一四、五%をかけると、全体の日本の鉄鋼生産の設備が大体予想される。そうすると、もう四十五年の最終段階における設備とほとんど同じ、あるいはそれをオーバーするような数字が出たものでありますから、これは
一つの話題になり、騒ぎの種になったわけであります。それはただ希望
計画にすぎない。それで
現実に三十六年度においてどういう今度は具体的な実施
計画を持っておるかという点になりますと、そう騒ぐほどのものはないのでございます。しかし、それも通産省の方に調整をしてもらいたいということを申し出ておるのでございますから、すでに設備過剰というようなことのないように指導をしておるという段階でございます。私は、別にこの問題を何か日銀の総裁と対抗的に争ったようなふうに伝えられておりますけれ
ども、そういう真相ではない。それで設備拡張も少し半年ぐらいずつずらしていくと、一ぺんにこれは集まって、そうしてそれが国際収支に一度に影響を与えるということがないように多少なぞえにずらしていった方がいいのじゃないかという
意見もありましたから、それもいいだろう、いずれにしても、ただ国際収支が黒字だ黒字だといって黒字を楽しんでおるということは、それは空虚な楽しみであって、もう貿易が自由化すると一ころに参るようにちゃんとなっているのがある。だから、それをどこをどうすればいいかということは、ちゃんとわかっておって、その合理化投資ということは絶対に必要なんだ。だから、国際収支の黒字をただ空虚な楽しみにふけるということはこの際
考え直さなければならぬ。そうしてほんとうに産業の実態というものを強化して、そうしてさあ来いという態勢になって初めて日本の産業というものは、自由化した後においても健全に発達する、そういうことを忘れてただ黒字だ黒字だでやっていることは
意味がないということを、私はことごとに強調しており、きのうもそういう所見を申し述べたわけであります。そういう
実情でございます。