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衆議院議員(
八木一男君) 私は、
日本社会党を代表いたしまして、わが
党提出の
国民年金法案、
国民年金法の施行及び
国民年金と他の
年金との
調整等に関する
法律案、
国民年金の
積立金の運用に関する
法律案の三案について、一括して、提案の理由、趣旨並びにその
内容の大綱を御
説明申し上げたいと存じます。
この三
法案は、
大蔵委員会に付託されております
一般国民年金税法案、
労働者年金税法案、
国民年金特別会計法案と一体不可分の
関係にありますので、御
説明中、他の三
法案にも及びますことをあらかじめ御了承おき願いたいと思います。
申し述べるまでもなく、現在の
国民年金法は、昭和三十四年、第三十一国会において成立し、同年十一月一日施行、昨年三月三日より、その無
拠出部分、すなわち
福祉年金の
支給が、開始され、本年四月一日よりその
拠出年金の
部分の、
保険料徴収が予定されております。
そのうち、
福祉年金につきましては、きわめて、不十分であり、
給付要件等に、相当、不合理な点もありますけれども、とにもかくにも、今まで、
年金制度に
関係のなかった老人、
母子家庭、
障害者に
年金が
支給され、これらの人達の生活を幾分でも明るいものにしたことは一つの大きな前進というべきでありましょう。このことは
国民の要望にこたえ、
自民党内閣よりも先に、何回も、
国民年金法案を提出して、無
拠出年金制度発足の原動力となったわが
日本社会党の喜びとするところでありまして、われわれはさらにこの
制度を急速に飛躍的に改善すべきものと考える次第であります。これに反して、
拠出年金制度に関して、
現行法は、はなはだしく不十分であるばかりでなく、その
組み立てば、きわめて不合理であり、
社会保障の名にそむくものでありますがゆえにわが党は
審議当時、これを強く指摘し、その意味をもって
政府案に反対したのであります。この
拠出年金の
保険料徴収の時期が近づくに従って、
国民各層から強烈な批判が燃え上がり、
拠出年金制の
抜本的改正、その
改正の実現までの
拠出制実施延期等の声は、ほうはいとして、全国に高まるに至ったことは、各位の御承知の通りであります。
この世論に、ろうばいした
政府は、幾ばくの
改正意図を発表いたしておりますが、その
内容は、
改正を要する本質的な点には、全々触れておらず、
死亡一時
金等給付金額増加も総体から見ますれば九牛の一毛にしかすぎない僅少なものでありますために、
政府の行なわんとする
拠出年金制に対する批判の声は、ますます高まり、厚生省の高圧的なやり方をもってする必死の努力にかかわらず、その登録は本年二月十五日現在全国で七三%、特に東京、
大阪等の六大都市においてはわずかに平均三〇%前後の状態であります。
元来、
国民の大きな期待と、完全な理解のもとにその協力を得て発足すべき
国民年金制度において、このような状態の発生したことは全く
現行拠出制年金の重大な欠陥によるものでありまして、それを根本的に是正するためにわが党は、本
国民年金関係の六法を提出したわけであります。
従って、提出の具体的な理由を御
説明申し上げるためには、
現行法、特に、
拠出年金制の
欠点を指摘することが最も必要と存じますので、以下要約して申し述べて見たいと存じます。
まず第一に、
現行拠出年金制の最大の
欠点は、その
組み立てが
社会保険主義で貫かれ、
社会保障の精神と全く相反する点がある事であります。
その一は、
定額保険料主義であります。このために、
保険料は大衆にとって割高に相なります。
その二は、
年金支給額が、
拠出期間比例制によっていることであります。このような
制度では、割高な
保険料を納入することの困難な、すなわち、
年金をより必要とする
国民大衆はきわめてわずかしか
年金の
支給を受けられないことに相なります。
その三は、
老齢年金受給資格がきわめてきびしいことであります。通常の場合二十五年間、
免除適用を受けた人でも十年間の
保険料実際納入がなければ
年金を
支給されないことになっており、これでは
年金保険料納入が最も困難な、そして、
年金を最も必要とする人に
年金が
支給されないことに相なります。
その四は、
受給資格に達しない人々に対する
保険料返還制度、今回の
政府改正案では、
特別年金という
期限付減額年金制度となっておりますが、いずれにいたしましてもそれらの
制度の
要件は最もきびしく、大
部分の人が、その
適用を受けられないことであります。
保険料納入期間と、
免除期間の
合計年数が三十年に満たない人の
保険料は、この
制度の
適用がなくすなわちかけ捨てになることであります。
政府は、掛け捨て反対の世論にびっくりして、
死亡時の掛け捨てには、
死亡一時金という、一時しのぎの
制度を作ることによって、批判を避けようとしておりますが、最も過酷な生存時の掛け捨てについては、本質的な対処をしようとしておらないわけでありまして、この点は、まさに、
社会保障の名において、生活困難な大衆から収奪をするものであります。
その五は、
現行法の
免除制度が、
対象者にとって実効がほとんどないことであります。
政府は、
国民の批判に対して、
免除制度をかくれみのに使っておりますが、この
免除は実に無意味なものであります。元来
免除を考えた場合、
免除が、
保険料実際納入と同じ効果を持つものでなければ意味がないのでありますが、
現行法の
免除は、そうではなく、
保険料を実際に納入した場合のように、
老齢年金額を増大する要因にはならないのでありまして、従って、
免除を受けましても
保険料強制徴収を受けないというだけのことであり、貧困な
国民大衆がその
部分だけ
年金制度から締め出されるということに相なるだけであります。さらに、ひどいことは、この
免除期間には、
国庫支出がされないことであります。具体的に考えてみますれば、六十五才、月、三千五百円の場合、そのうちの三分の一、すなわち月一千百六十六円の原資は
一般会計から
国庫負担として出るわけでありまして、
保険料実際収納可能な、
中間層以上の人はこの
国庫負担を自分のものとすることができますが、最もこれを必要とする人々には
国庫支出分も
支給されないという結果になります。
社会保障の一つの大きな柱である
年金に対する
国庫支出は
所得再配分という性質を持つべきものでありますが、この場合それとは全く逆な作用をするわけであり、金持の
土持ちに用いられることに相成っているのであります。
以上五点を要約して考えれば、
現行拠出年金制は、なき、
浅沼委員長がなくなられる寸前まで
国民に訴えられたように
保険制度として
組み立てられているのであって、
社会保障では断じてないのであります。
社会保障なら、その
給付を必要とする人に、必ずその必要の度合いに対応する
給付がなされなければなりません。
保険料納入困難なすなわち
年金が特に必要な人の
年金が減り、
支給がなくなるのでは
社会保障ではないのであります。それらの人が
年金の
支給を受けたいがために、苦労して納めた貴重な
保険料が、わずかのところで息が切れて、
要件に達しないばかりに、
政府に没収されたり、大切な
国庫支出が、
所得再配分の逆になったりする
欠点は収奪であり、金持の
土持ち政策であって、断じて許すことのできないものであります。このように、
組み立てが全く不合理である点が、
現行拠出年金制度の最大の
欠点でありますが、それ以外にも大きな
欠点が、枚挙にいとまがないのであります。
第二に、指摘しなければならないことは、
年金額があまりにも僅少であることであります。月三千五百円というのは、
現行制度立案当時の
生活保護基準一人分を大体の基準とし、わが国の
経済成長をきわめて過少に、すなわち年率二%と見、さらに大事をとって
年金額は、一・五%ずつ増大すべきものとして計算して四十年後に三千五百円という金額を設定したわけであります。その
金額実施がさらに五年延ばされて
国民が四十年間
保険料を納めて、四十五年後に現在の
生活保護を受けている人々と同じような意味の生活がやっと保障をされるというのでありますから、全く
所得保障の名に値しないことは明らかであります。
経済成長九%を豪語する
池田内閣としては、後日
年金額を改訂するというような逃げ言葉は許されないのであって、この
目標年金額は、ただいま直ちに改訂されなければならないと信ずるものであります。
第三の点は、
老齢年金開始時期のおそ過ぎることであります。六十五才という
開始年令では、生活が困難で苦労した人の場合残念ながら早く年をとり、長生をする人が比較的少ないことから見て適切ではありません。もちろんそのような状態は急速に是正されなければなりませんが、そのころには、各産業とも
オートメーション化が進んで年配の人はある程度で
生産点を若い人に譲ってもらわなくてはならないし、従って、六十才ぐらいは完全な
老齢保障が必要な時代がくるわけであり峯す。これらの両面からして、六十五才開始は断じて不適であり、六十才開始にいたすべきであります。
第四は、
貨幣価値変動に対する処置、すなわち、
スライド規定があいまいな点であります。戦後のインフレの苦い経験を持つ
国民は、
現行法のようなあいまいな
スライド規定では、安心して
拠出年金制に協力できないのはむしろ当然であります。
第五は、
障害年金及び
母子、遺児、
寡婦年金等の
年金の
内容のきわめて貧弱なこととその
適用要件が過酷きわまることであります。
死亡時のかけ捨てに対して
政府が
死亡一時
金制度を作ろうとすることは、ないよりはましでありますが、元来
死亡時掛け捨て論は、
現行法の
遺族年金の不完全、不十分なことからきた議論であり、
遺族関係の
年金について根本的に
改正をしないところに大きな怠慢があります。
第六は、
通算制であります。
政府は今回、
通算年金通則法、
通算年金制度を創設するため、
関係法律の一部を
改正する
法律案を提出して、この問題を解決しようといたしております。この
改正点は、
自民党政府としては比較的努力したところが認められまするが、完全なものとは断じて言い得ないのであります。以上二法を施行した場合でも、
公共企業体共済組合二十年
拠出の人の場合の
年金額が、標準の人であれば年十四万四千円であるのに対しまして、同十九年と
厚生年金保険一年とが通算された場合、
期間は同じ二十年で約六万四千円の少額であります。同十九年と
国民年金六年とが通算された場合、合計二十五年間納入されているのに、その
年金額はわずか六万九千円ということであります。
このような点から見ますれば、途中
職業転換の人の利益が大きく侵害されることは一目瞭然でありましょう。
第七は、
積立金運用の問題であります。
社会保障制度審議会、
国民年金審議会の答申を無視し、
特別勘定を作ろうとしないのみか、
厚生年金の新しい
積立金を合わせて二五%は還元するという宣伝をしながら、
福祉資金に直接に用いられるものは、それよりはるかに少なく、被
保険者団体に還元されるものは話しにならないほどの少額であります。これに反して資金の大
部分は依然として大資本に、特に、軍需に
関係ある産業に融資されているのでありまして、このような
政府の態度は全く
国民を愚弄したものと言わなくてはなりません。
現行拠出制には、以上のように、枚挙にいとまがないほどの
欠点があり、
政府の数点の
改正点も、その本質的な
欠点を補い得るものではありません。
これに対してわが
日本社会党の
国民年金関係の六
法案は、以上の
現行法拠出制の
欠点を一切解決し、全
国民に期待を持って迎えられる
内容を持つものであります。無
拠出年金においても
現行法の
欠点をなくし、その
給付を飛躍的に増大する
内容を持つものであることを、正しく御理解いただきたいのであります。
以下わが党六
法案の
内容について簡潔に御
説明を申し述べたいと存じます。
本案の
内容は、大別して、
特別国民年金と
普通国民年金の二つの
部分で構成されております。
特別国民年金はいわゆる無
拠出年金であり、
現行法の
福祉年金に相当し、
普通国民年金はいわゆる
拠出年金でありますが、
労働者の
年金制度を含んでおりますることが
現行法との大きな相違であります。
まず最初に、
特別国民年金の方から御
説明申し上げます。
これは、さらに
養老年金、
母子年金、
身体障害者年金の三
制度に分かれており、おのおの
現行法の
老齢、
母子、
障害の三
福祉年金制度に対応したものであります。
養老年金は、本人の年収十三万円以下の老人に
支給されるものでありまして、六十才から年一万二千円、六十五才から年二万四千円、七十才から年三万六千円を
支給することを基本といたしております。ただし、七十才未満の老人には年収三十六万円未満の家庭の場合に、七十才以上の老人の場合には年収五十万円未満の家庭の場合に
支給することとし、そのうち、
世帯収入の少ない方に
基本額を、多い方にその半額を
支給することと相なっております。
基本額で
現行法と比較してみますると、六十九才現在で、
現行法では
支給額ゼロであるのに対しまして、本法条では通計十八万円となるわけであります。七十二才現在の比較では、
現行法三万六千円、本
法案二十八万八千円と、大きな開きがあることを御理解いただきたく存ずるものでございます。
母子年金は、年収十二万円未満の
母子世帯に年三万六千円、
多子加算は一人当たり年七千二百円とし、年収十八万円未満の
世帯にはそれぞれの半額を
支給することにいたしておりまして、もちろん、準
母子家庭、
生別母子家庭にも
支給いたすわけでございます。
現行法と本法との違いは、まず、
現行法に対し本
法案が、
年金額及び加算額が三倍であること、第二に、
現行法では、子供が十六才をこえれば
適用要件がないことになっておりまするが、本
法案では、二十才に達するまでは
要件たり得ること、並びに、
現行法では、
所得制限が約十三万円であるのに対し、本
法案では十八万円でありまして、その制限が緩和されていることであります。わが党案の
内容が心あたたかいものであることを御理解いただけるものと信ずるものでございます。
身体障害者年金は、年収十二万円未満の
身体障害者に対し、一級の場合は年四万八千円、二級の場合は年三万六千円、三級の場合は年二万四千円、配偶者並びに子女に対して
支給される加算は、等級にかかわらず、家族一名につき年七千二百円ずつ
支給することに相なっており、年収十八万円未満の
障害者にはそれぞれその半額を
支給することに相なっております。
現行法は
障害者に最も冷酷であり、二、三級
障害には
支給せず、内科
障害の場合は一級でも
適用しておりません。家族加算もございません。
所得制限がきつ過ぎます。これらの
欠点を多分に持っているわけでありまするが、この
欠点をすべて本
法案で解消しようとするものでありまして、
支給金額より見ても大きな違いがあるのであります。すなわち、一級
障害、家族三人の場合、
現行法では年一万八千円、本
法案では年六万九千六百円に相なるわけでありまして、その間に大きな差がありますことを御理解いただきたいと存じます。
——————————
以上で
特別国民年金の御
説明を終わり、次に、
普通国民年金、すなわち、
拠出年金について申し上げます。
この
制度は、一般
国民年金と
労働者年金に大別され、それぞれ
老齢年金、
障害年金、
遺族年金の
給付がございます。主として
老齢年金給付につき御
説明を申し上げることとし、まず、一般
国民年金より申し上げます。
——————————
この
制度は、すべての自営業者、無職者に
適用されるものであり、言いかえれば、
労働者本人以外の全
国民が対象となるものでありまして、その
対象者は、現行
国民年金法の
対象者と大体において見合うものであります。
年金額は全部一律で、
制度が完成した場合は六十才から年八万四千円であります。この六十才開始、年八万四千円は、
現行法の六十五才開始、年最高四万二千円とは、金額から見て大きな開きがあるのでございまして、かりに六十四才現在で比較すると、
現行法ゼロ、本
法案通計四十二万円であります。六十七才現在では、
現行法最高十二万六千円、本
法案一律六十七万二千円と、数十万円の違いがあることを明らかにいたしておきたいと存じます。六十才開始を基本といたしてございまするが、この場合、もし本人が六十才より早く、また、おそくから
支給を受けたいと希望する場合、五十五才から六十五才までの間において、希望の年からそれぞれ減額あるいは増額した
年金を
支給することができることにいたしてございます。国は、この八万四千円の
年金給付の五割を一般財源から負担し、支払いの年に特別会計に払い込みます。また、別に、特別会計で積み立てておくため、
対象者の属する
世帯より一般
国民年金税を徴収いたします。
拠出期間は二十才から五十四才までの三十五年間、税額は大体一名平均月百六十六円に相なる計算であります。
国民健康保険税の場合と似た方法で、均等割五、
所得割三、資産割二という割合で徴収することになっておりますので、収入、資産の少ない人は、ずいぶんと安くなる見込みであり、さらに、納入困難あいは不可能の人については減額あるいは
免除をすることにいたしております。
免除は、五人家族の場合において、月収一万七千円、すなわち年収二十万四千円以下の場合
適用することにいたしておりまして、
現行法で
政府が考えておりまするものよりは、はるかに範囲が広いのであります。減額の範囲は、五人家族の場合、月収二万二千円、年収二十六万四千円以下の場合であり、これまた相当の該当者が見込まれております。特に申し上げておかなければならないことは、何回減免を受けた人でも、極端な場合は全
期間免除適用を受けて一円も
年金税を納めていない人でも、六十才になれば、他の人と同じ金額の
年金が無条件で
支給されるということであります。このように、
所得比例の
年金税、完全な減免
制度によって、現在のような
拠出年金制度に対する疑惑、批判、反対の根拠の主要な
部分が解消されるものと信ずるものであります。
障害年金の場合は、一級、年八万四千円、二級、年六万三千円、三級、年四万二千円が
基本額でありまして、
現行法よりはるかに多額でありまするとともに、
現行法と違って、内科
障害にも
支給するわけであり、
現行法のように、
給付を受けるには三年以上の
保険料納入後の原因によるものでなければならないというような過酷な
要件は一切ないことを明らかにいたしておきます。
遺族年金は
老齢年金の半額、すなわち、基本実額は四万二千円、子供一名につき一万四千四百円の加算をつけることに相なっております。
現行法の
母子年金よりはるかに多いのであります。また、
現行法では、
遺児年金は
母子年金より
年金額がはるかに少なく、寡婦
年金は
適用要件がはなはだしく過酷でございますが、本
法案では、それらの遺族がみな
母子と同様の
給付を受けるわけであり、さらに、男性の遺族にも
支給の道を開いているわけでございます。
以上、一般
国民年金全般についてさらに申し上げておきたいことは、
年金額に課税がないこと、並びに
年金額が、消費者物価または生計費のいずれか一方の一〇%以上の変動の際に、それに応じて必ず改定されることであります。
現行法第四条の規定がはなはだしくあいまいでございまするが、本
法案のごとく、はっきりと規定してこそ、
国民は信頼して
拠出年金制度に協力してくれるであろうと、かたく信ずるものでございます。
——————————
次に、
労働者年金について申し上げます。
本
制度は、あらゆる職種の
労働者本人に
適用せられるものであって、五人未満の事業所の
労働者、日雇い
労働者、山林
労働者等にも
適用されます。
老齢年金は六十才から
支給されることが原則でありまするが、炭鉱
労働者、船員、機関車
労働者等は五十五才開始といたしておりますことは、現行
厚生年金保険と同様でございます。
老齢年金額は、
制度が完成された場合、一般
国民年金と同額の八万四千円を
基本額といたしまして、それに標準報酬額に比例した金額が付加されます。その金額は、現在の賃金水準では平均年六万三千円になる計算でありまして、合計平均年十四万七千円に相なります。従って、将来賃金水準が上がった場合には、この平均額が上昇いたします。
労働者年金法案に規定されております
労働者年金税は、もちろん標準報酬の高低に従って定められております。一般
国民年金の場合より
年金額が多いのでありますから、
年金税はある程度高くなりますが、この場合、使用者が半分以上負担することに相なっておりますので、
労働者負担はあまり重くなく、平均して月二百円程度でございます。低賃金
労働者の負担は、標準報酬が少ないために、右の平均よりはるかに少額になることは当然でございます。
国庫負担については、実質上一般
国民年金と同額程度が確保されるようになっており、その他、
拠出期間、繰り上げ減額
年金、繰り下げ増額
年金制度、非課税及びスライド、
免除、また
障害、遺族
給付については、一般
国民年金と同様の
内容あるいは仕組みになっております。そのほか、特に申し上げておかなければならないことは、通算方法について完全な方法がとられることであります。本
国民年金法内の両
制度間はもちろん、既存の
年金との通算の場合も、途中の
職業転換、
制度転換によって、一切損をしない仕組みになっておることを明らかにしておきます。
以上、一般
国民、
労働者、両
年金制度について申し上げましたが、そのおのおのの
年金税は、減免に対する国庫補てん分を加えまして、厚生大臣の管理する
国民年金特別会計において積み立てることに相なっております。この
積立金は、当然
受給資格者のものであるとの観点に割り切って、その運用の方法を定めてございます。すなわち、
積立金のうち相当の
部分を福祉施設建設等のために運用することとし、その中で
受給資格者の団体に対して貸し付ける道を大きく開くことにいたしてございます。残部は、全部の予定利率六分を維持するために、資金運用部に七分で貸し付けることにいたしておりまして、必要な資金運用部資金法の
改正もこの中に入ってございます。資金運用部のこの資金の運用につきましても、
国民の福祉に役立つ方面に用いるべき旨の規制を加えることにいたしておるわけでありまして、軍需産業資金に用いられるようなことは断じていたさせないのでございます。実際の運用については、
国民年金積立金運用審議会において
審議決定した方向に従い、厚生大臣が行なうことにいたしてございまして、この
審議会の構成は、一般
国民年金、
労働者年金の
受給資格者の代表おのおの五名、学識経験者五名、官庁代表三名という、使用主代表を加えない画期的な構成にいたしてございます。
以上が本
国民年金制度の
内容の大綱でございます。本法の施行期日は昭和三十六年四月一日、
年金の支払い開始及び
年金税の徴収開始は同年十月一日からでございます。
国民年金法施行に要する
一般会計よりの経費は、平年計算にいたしまして、その第一年度約二千百二十四億円であり、その内訳は、
養老年金約千三百三十億円、
母子年金約三百十六億円、
身体障害者年金約四十五億円、
国民年金税減免の補てん分約二百十億円、
普通国民年金の
障害並びに
遺族年金の
給付に関する国庫補助金、
労働者年金の使用主としての
国庫負担分等約百十億円、
年金支払いに要する事務費約六億円、
労働者、一般
国民、両
年金税法施行に要する経費約百二億円であります。以上の
国庫支出の大
部分が賦課方式でございますので、
国庫支出は自後逐年逓増をいたします。本
年金制度完成時、すなわち、四十年後には年約九千億円に達し、それ以上は大体増加を停止し、平準化されます。
以上のごとく、
国庫支出は相当の程度に達しますが、その最初の金額は、最近の財政状態から見て、
政府が
社会保障をほんとうに推進しようとするならば直ちに実現可能であり、後々の支出増も、財政上はいささかも心配のない程度であります。と申しますのは、各位の御理解のごとく、わが国の経済が逐年拡大し、国家財政もまたこれに従って拡大するからでございます。ただいま各党とも経済拡大に自信を持って、おのおのその成長率を発表いたしておるわけでございまするが、かりに、故意に各党の態度よりはるかに控え目に、すなわち、明治以降のわが国経済の成長率四%で考えてみますると、この率でわが国の経済が拡大すれば、四十年後には約五倍に相なりまして、同じ率以上で財政が拡大し得ることは当然でございますが、これも大事をとって同率と見て、約十兆の財政のワクが考えられるわけでありまして、相当の減税でワクがそれよりも縮まったといたしましても、九千億円くらいの程度の
国庫支出はきわめて容易なことでありまして、それが全
国民に対するものである限り、その支出は
国民に理解賛成されるものであると信ずる次第であります。
以上、大体の御
説明でございまするが、賢明なる同僚各位には、この
国民年金関係六
法案が、
国民から批判を受けておる
現行法の
欠点のすべてを解決し得る
内容を持ち、憲法第二十五条の精神をほんとうに実現することのできる
社会保障に徹した案であることを、しかも、
政府がほんとうに
社会保障を進める決意を持てば直ちに実行容易な案であることを、御理解いただけたと信ずるものでございます。それとともに、このような案であってこそ、
所得保障という本来の大切な目的を果たすとともに、他の重要な面に非常な好影響を与えるものであることも、あわせて御理解いただけると信じます。すなわち、本
制度を通じての
所得再配分によって、
国民生活の不均衡が相当程度是正され、これによって継続的な有効需要が確保されることによって、諸産業の振興安定に資するところ大なるものがあるわけでございます。このことは、雇用の増大と安定を招来するものでございますが、さらに、完全な
所得保障によって、不完全就労を減少し、労働力化率が低下するという、好ましい効果の面も加えまして、完全雇用への道を進めるものでございます。さらに、十分な
年金制度は、雇用労働力の新陳代謝を促進し、鉱工業生産力を増大せしめるとともに、農業、中小商工業の経営権を若き世代に移すことによって、その近代化、協同化への原動力となるわけであります。以上の諸点もあわせ御理解をいただきたいと存じます。
以上、きわめて簡単でございましたが、本六
法案に関する重要な点の大綱を御
説明申し上げた次第でございます。
最後に、心からお訴えを申し上げたいと存じます。すべての
国民は、よりよき
年金制度の確立を熱心に求めております。憲法は、健康で文化的な、ほんとうの
社会保障制度を推進する義務をわれわれに与えております。しこうして、老人、
身体障害者、
母子家庭等の生活上の苦労をなくし、他の
国民の将来の不安を解消することは、政治の当然進むべき方向であります。
社会保障は、社会保険というような半端な
制度でとどまるべきものでなく、ほんとうの意味で完成さるべきものと信じます。およそ、
社会保障を一回でも口にした政党や政治家は、現状を打開し、その飛躍的な前進をはからなければ、政治を担当する資格はないものと考えます。私たちは、このような考え方で、心身をすり減らしつつ努力を重ねて、あらゆる観点から徹底的に検討した結果、本六
法案を提案いたした次第でございます。与党の各位にも、一政党の立場を離れ、
現行法政府改正案にこだわることなくして、
国民の立場に立って、本六
法案を十分かつ急速に御
審議賜わりたいと存じます。しかる後、
衆議院より回付の後においては、参議院の各党派の皆様方が満場一致御可決下さいますことを、
国民の名において強く要望を申し上げまして、御
説明を終わる次第でございます。