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1961-05-31 第38回国会 参議院 建設委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月三十一日(水曜日)    午前十時二十三分開会    ——————————   委員の異動 五月三十日委員小沢久太郎君辞任につ き、その補欠として井野碩哉君議長 において指名した。 本日委員井野碩哉君辞任につき、その 補欠として小沢久太郎君を議長におい て指名した。    ——————————  出席者は左の通り。    委員長     稲浦 鹿藏君    理事            田中 清一君            松野 孝一君            武藤 常介君            内村 清次君    委員            小沢久太郎君            小山邦太郎君            村松 久義君            米田 正文君            木下 友敬君            田中  一君            武内 五郎君            藤田  進君            田上 松衞君            小平 芳平君            村上 義一君   政府委員    建設省計画局長 關盛 吉雄君   事務局側    常任委員会専門    員       武井  篤君   参考人    京都大学法学部    教授      須貝 脩一君    弁護士     相磯まつ江君    全日本農民組合    連合会大阪府連    書記長     梅原  昭君    東京大学法学部    教授      加藤 一郎君    東京大学助教授 渡邊洋三郎君    神戸市長    原口忠次郎君    私鉄経営者協会    用地部会長   小山 久保君    電気事業連合会    専務理事    中川 哲郎君    電力建設協力会    会長      熊谷太三郎君    ——————————   本日の会議に付した案件 ○公共用地取得に関する特別措置法  案(内閣提出衆議院送付)    ——————————
  2. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ただいまから建設委員会を開会いたします。  公共用地取得に関する特別措置法案を議題といたします。本案につきまして、本日は参考人方々から御意見を聴取することにいたします。午前中御出席いただきます参考人は、京都大学教授須貝脩一君、弁護士相磯まつ江君、全日本農民組合連合会大阪府連書記長梅原昭君、以上の方々であります。  参考人方々におかれましては、御多忙中のところ本委員会の急な御依頼にもかかわりませず御出席下さいまして、まことにありがとうございます。どうぞ忌憚のない御意見をお聞かせ下さいますようお願いいたします。それではこれから御意見を伺いたいと思いますが、時間の関係上、お一人十五分程度にお願いいたしたいと思います。委員会の運びは、まず参考人方々から御意見の御開陳が全部終わりましてから、委員各位よりの質疑にお答えをしていただくことにいたしたいと存じます。  それでは初めに須貝参考人にお願いいたします。
  3. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) 特別措置法につきまして、御審議なさいますにつきましての御参考になるような問題点を、これから気づきました点だけを申し上げたいと思います。  まず第一に、これはまあ前置きでありますが、衆議院では十分審議を尽くすことはできないというような印象もわれわれは受けるのであります。参議院ではその点いつも専門的なまた詳細な審議を尽くされまして、いつも敬服しておる次第であります。で、そういう点から、私、まあ行政法をやっております関係上、この法案を読ましていただきまして、いろいろ気のついた点について申し上げたいと思います。  まず第一に、との土地収用法特別措置法関係について、両方関係に関する点でありますが、これはまあ土地収用法の改正ということではなしに、別の特別措置法ということで提案されておるようであります。で、この特別措置法を読んでみますと、収用法との関係につきましていろんな条文の規定がありまして、一つ土地収用法の第何条を適用しないというふうな不適用規定がある。特別措置法の中にそういう規定があります。また片方では、土地収用法の第何条を準用するというような規定があります。で、土地収用法の第何条は特別措置法の場合には適用しない、こういうことを特に別段の規定を設けて断わっておるという限りは、そういう規定がない限りは、これはもう一般法特別法関係で、この一般法が当然適用がある、こういう関係かと思いますと、また片方では、これこれの規定につきましては土地収用法の第何条を準用すると、こういうようなことが書いてございます。これはまあどういうことになりますか、こういう点もまず第一に御審議下さるとよろしいかと思います。  で、この特別措置法土地収用法との関係の問題としまして、第二に、特別措置法の場合にも事業準備という第一番の手続最初手続については土地収用法規定によることになっておるようであります。しかしこれもあとの方の特別措置法のいろんな規定を読んで参りますると、この事業準備についてもこの特例の必要がなかったのか。たとえば立ち入りを拒むというような問題が起こり得るというようなことですね。この場合にもやっぱり同じような必要があったのかもしらぬと思いますが、この点は特別の規定がないようであります。これも一つ問題点であります。  それから次の手続規定に入りまして、この事前PRということがございますが、事前PRにつきましてこれは義務づけておるわけでありますが、それじゃPRしなかった場合にどういう制裁があるのか、こういう点がまた問題になると思います。まあPR義務づけておるというような点は、これは今までの法律にはなかった点でありまして、まことにこれは、何といいますかめずらしい制度であろうと思います。  次に、特定公共事業認定申請書縦覧というようなところで、市町村長が行なわない場合に知事がこれを代行するというような規定があるようでありまして、これはそのあとの方にも、裁決申請書縦覧につきましても、市町村長がこれを行なわない場合に知事代行というような規定がございますが、これまた注意すべき点たるを失わないと思うのでありまして、御承知の通りに戦後の地方自治法では執行命令訴訟というような手続で、裁判所助けをかりないと、何といいますか、知事が、市町村長のこういう国家事務の点につきまして、結局強制ができない。こういうことになっておりまするが、この知事の代執行という規定は、これは戦前の制度にはあったようであります。かねがねこういう地方自治法を尊重する必要から設けられた。こういう職務執行命令訴訟による、そういう自治団体機関に対する国家による監督、こういう制度はこれは不便である。で、こういうような代執行代行というような制度を考えるべきだというような話が前々からあったように思います。これがこの法律に、特別措置法に初めてこういう点が出て参ったのではないかと思います。非常にこれは注意すべき点でありまして、やがてこれが突破口になって、こういう制度一般化される、その最初の例を設けているのではないか、というふうに考えられます点、これも問題点であります。  それから、特定公共事業認定という、この言葉でございます。特定というのは特に定められたと書いてありまするが、特定というのは普通の一般用法では、個別的に特定したというような意味で使っておりますので、しかしこの場合の意味はおそらくそうじゃないので、普通の用法とは違って特別の公共事業とか、あるいは緊急、緊要、重要の公共事業というような意味でありましょう。この特定公共事業というのは、これはどうも一般用法からいいますと、これは少し飛び離れておかしいような気がします。これは文字の使い方の問題でありますが、わざわざ誤解されるような字を使う必要もないわけでありまして、こういう点も問題点であろうと思います。  なお、ついでに文字の問題から見ていきますと、あとで対償という字が出て参ります。初めこれ読んだときに誤植ではないかと思ったのでありますが、そのあと何べんも出て参りますので、これは誤植でないということがわかりましたのです。反対の対という字と、そうして償うという字を書きまして対償、まあ対価の補償ということなんでしょうが、これも字引を引いてもおそらくないでしょうし、引いたわけではありませんが、おそらくこういう字はまだないでしょうし、こういう略語に類する新語は、これは初めて法律では使われたんじゃないかというような気がします。これは言葉の問題でありますが。  次にそういう特定公共事業認定につきましては、公共用地審議会の議を経るというような規定になっておりますが、特別措置法趣旨は、なるべく手続を迅速化する、スピードアップするということにあるようであります。そういう点からみなほかの場合には期限を切ってあるようでありますが、公共用地審議会の議を経るという場合に、これは期限を切る必要はない、おそらくそれは必要がないからでありましょう。中央の方のそういう審議会なり、あるいはそういう大臣の認定というようなものについては、これはそういう必要はないということでありましょう。こういう点もまた一つの問題かもしれません。  それから土地細目の公告、土地調書及び物件調書作成というようなところに参りまして、妨害された場合には特例があるということでありますが、普通の方法以外の他の方法調査をして、これを調べた限りで作成するというようなことのようであります。他の方法というのはどういうものか、これも問題になりましょう。ことにこういう土地の明細、物件の明細というようなものが、これこそ特定していないのにその後の手続が進められるものか、そういう点も問題となるかもしれない。それはどの程度のこういう調書作成を行なわせるか。そういう点の問題があろうと思います。これは差しつかえない……。  それから一番大事な緊急裁決というような制度に移ります。これが特別措置法の一番みそとも言うべき中心の制度でありましょうが、いろいろな新しい制度が出て参っておりまして、仮補償金を支払う、概算払いをする。それから補償裁決の場合の清算金につきましては過怠金を定めておる。強制執行を認めておる。こういうようなことで、今の土地収用法では事前にそういう補償金を支払ってからでなければ収用裁決が効力を生じないということで、これをこういうことで補償金の支払いを強制しておるわけで、それにかわる制度をこういうふうにしてやる。まことに注意すべき制度であります。この緊急裁決につきまして、仮住居の要求を認めるというような規定がございます。こういう点、どの程度具体的な裁決をするのか。ここではこの法律特別措置法の第二十三条の規定を読んでみまするといろいろ書いてございます。これも実際にあるものを目ざしてこういうような裁決をするのか、それともそうでないのか。その裁決が実行されない場合にはどうなるのか、そういう点、どうも私の読み方が疎漏であったせいか、はっきりわかりません。  それから緊急裁決に関しましては、収用委員会事前調査義務を課するということであります。これは従来の収用委員会制度では大体弁論主義みたいなもので、両方が出す資料、それに乗っかって審査ができたような感じを持っておりますが、今度の事前調査なんかをやる必要があるか、こういうことになりますと、これはいわば収用委員会職権調査をやるというようなことになって参りまして、これはやはり新しい制度であると思います。その他緊急裁決なり、補償裁決、こういう点でいろんな規定がありまして、これは収用委員会の仕事の負担が相当重くなるのじゃないかというふうに考えられます。これははたして現行収用委員会でこういうことを滞りなくやれるものか、またどの程度の生きた裁決ができるものか、担当義務を課する、収用委員会でやるわけであります。  それからそのあとの方の手続に移りまして、補償裁決の点で過怠金を定める、強制執行を認めるというような強制方法清算金の履行について認めて、おります。これは土地収用手続は大体民事訴訟手続によらず、裁判所助けをかりずに行政手続によっておるという点が一つの特徴になっておりますが、ここに至りましては、例の知事代行規定なんかの場合には、皆裁判所助けが要らないで知事が代執行をする、という行政手続一本の体制に切りかえておりますが、こっちの方になりますと行政手続によらずに民事訴訟手続裁判所助けをかりる、こういう方法になっております。こういう点もまた問題になる点であろうと思います。  それから最後に、任意協議による現物給付という制度が第四十六条、四十七条と並びましてあります。もう二、三分であります。現物給付要求があった場合に、その要求に応ずるように事業施行者努力義務を課する。それから生活再建対策ということにつきまして、その生活再建計画作成しまして、実施努力義務を負うものとするというような規定になっております。これまたそのあまり類を見ない新しい制度であるように拝見したのであります。こういう努力義務を怠ったらどうなるのか、制裁がないのか、だれがこういう努力義務を十分尽くしたかどうか判定するのか、そういう点でもこれは非常に法律上めずらしい規定であると思います。  要するにこの特別措置法結論として申しますと、これはこういう特定公共事業——名前はあまりよくないということを先ほど申し上げましたが、そういうものに関しましては特別措置を認めて手続を迅速化していく。これを急速に進めることができるようにしてある。そのかわりに収用される者の側の保護についても遺憾なきを期する。そうしまして、両方バランスを保たしめる。こういう趣旨であるように拝見したのでありますが、そういういわゆるあぶないバランス、これがはたしてどういうふうに保たれておるものか。ことに収用される方の者の側の保護に関するいろいろの規定、これを一つ逐一詳細に御審議願いましたならば、この法案がさらによいものとなって、これはおそらく決定されるということになろうと思います。そういう意味で御参考になる点を二、三申し上げたわけであります。
  4. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) 続いて相磯まつ江さんにお願いいたします。
  5. 相磯まつ江

    参考人相磯まつ江君) 私はこの法案についてまずあなたは賛成か不賛成かということを問われるならば、乏しい経験でありますけれども、自分が直接収用委員会に事件としてタッチしたそういう経験に基づいて、これは大へんな法律である、このようなことを現実収用委員会に当てはめて考えたらとんでもないことになるのじゃないか、ということをまず申し上げて反対の意向と、これから理由を申し上げたいと思います。  この法案は拝見いたしますと、もっぱら公共用地取得難というようなことを緩和して、そうして事業の円滑な施行をはかることを第一義的な目的としております。そうしてこれに伴って私権保護、すなわち損失の適正な補償の確保をはかることを一応考えてはおるようでありますけれども、それは第二義的なものに規定上なっております。土地収用法における二つの相対立した理念、すなわち公共福祉とそれから私権保護、これは双方矛盾なく合理的に組み合わされなければならないにもかかわらず、この法案を拝見いたしますと、公共福祉ということをまず前面に押し出しておって、そうして私権保護はぐっと後退させられておるという感を深くするのであります。いうまでもなく、土地収用法公共福祉、そういう名目のために私権が著しい制限を受けるわけであります。基本的人権として「現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない、永久の権利として信託された」——これは憲法の九十七条に書かれてある文句でありますが、その基本的人権として居住の自由、移転の自由、職業選択の自由というものが憲法二十二条に明定されておるわけでありますけれども、そうして財産権補償憲法二十九条に規定されておりますが、これらのこと、基本的人権土地収用法によってはなはだしく侵害されるということは事実であります。従って基本的人権制限ということは非常に慎重に、いやしくも私権の犠牲において公共事業が行なわれるということがないように十分考慮を払うべきであるということは、これは憲法上の当然の要請であるというべきで、この点について特別措置法法案はいささか考慮が欠けておるのじゃないかと思うのであります。  いうまでもなく、土地収用法あるいは本法案においては実際に収用する、強制力を発揮して裁決をなすという機関は、各都道府県収用委員会でありますが、その収用委員会が被収用者に対して有する強権力は、これはまさに命を預けたと言ってもいいくらい生殺与奪の権利ともいうべき強大なものであります。私は実際に収用される側の代理人としてこの収用委員会に立ちますと、まさに命までも取られるのじゃないか、全財産を持っていかれてさらに命までも取られるのじゃないか、という恐怖の観念にとらわれます。それは収用される者のひとしく感じるところであります。裁判所ではやはり非常に強大な権力を裁判官に与えておりますけれども、裁判——司法機関においてはその公正なる判断をするために、憲法上司法権独立裁判官の良心に従ってのみこれを行なうという、そういう憲法上、訴訟手続上のりっぱな保障がありますので、十分不公正な裁判が行なわれないようにして、そうしてそういう保障のもとにその強権が与えられておるのでありますけれども、一方翻って収用委員会に目を転じて見れば、収用委員会裁判官と同じように強大な権限は与えられておりますけれども、その反面に公正な判断を担保するための制度上の保障及び手続上の規定がほとんどありません。これは土地収用法を見ていただけばはっきりおわかりになることでございます。  現行土地収用法によります収用委員というのは、都道府県議会の同意を得て都道府県知事が任命することになっておりますが、この任命制度そのものが非常に疑問であると思います。このようにして任命された収用委員会委員は、一般的機構からしてそれは必然的な趨勢であると言ってもやむを得ないのじゃないかと思いますけれども、私権保護よりは、起業者事業執行にはなはだ熱心な者が多いのでありまして、収用委員会独立は、この法文上、収用委員会独立しているというお飾りの規定がありますけれども、その実態はほとんど独立していないと言っても過言ではないのであります。  私が、この皮膚を通して地方へ出張して感じ取って来た事実を申し上げます。そういう起業者となることが多い都道府県知事、必ず電源開発でも、つけかえ道路とかいうことになると、起業者知事になるのでありますけれども、そういう知事が、収用委員会収用委員各人を任命する、それが被収用者に対して裁決をするという、そういう奇妙な出発点に、まずここで問題があるのじゃないかということを指摘したいのであります。私が今やっておりますのは、福島県の収用委員会で、電源開発株式会社奥只見滝ダムというのを——奥只見にたくさんダムがありますけれども、その滝ダムというのを構築しておるのでありまして、そのために水没する者が二十八名ばかり、これが福島県の収用委員会にかけられて現在おるわけでございますけれども、収用委員会はその審理において実に非常に一方的な審理をしておる。そのために、被収用者が絶望的となっておりまして、七十、八十をこえた老人が、私は湖底に沈む、そんなにこの土地を持っていくというのだったら、一緒にうみへ沈むから殺して下さいということを、収用委員会の前ではっきり言っております。そして、全部そんなにして私たちの権利を認めてもらえないで、電発土地を取られるのだったらそのようにしてほしい、けっこうだというくらい、実に前途が暗たんとしておりますけれども、そういうふうになった原因というのは、これはほんの時間をいただいて、実例だけを申し上げてみたいと思うのでありますけれども、大体福島県の滝ダムにおきましては、県知事佐藤善一郎という者が中に入りまして、知事あっせん案というものを出しまして、八割方はそれで解決したわけであります。それで、あと残ったのが少しおったわけでありますけれども、それが裁決申請をされるについては、ほとんど協議も受けなかった、協議も受けなくて、そして県知事がかり——これは実例で、かりにじゃなくて実例を申し上げますと、その中の一人に矢澤ミサヲという者がありますけれども、電発側では、あなたのすべて土地物件家屋二百二十万九百七十八円で私の方に売って下さいということを書面で申し入れてきたという事実、それがすなわち知事あっせん案による平等な価格でありますけれども、それを裁決申請に持っていった場合に、幾らで買い取るといって収用委員会裁決したでありましょうか。実に三分の一にも満たない六十六万三千五百三十円、それだけでもって、これで十分な、土地収用法規定された正当な補償であるから、これでたくさんだといって申請したのであります。そのほかの者についても事は全く同じであります。  こういうけしからぬ、天下の電発ともあろうものが他の八割の者に対して、知事が中に入って解決した、補償した、しかも任意に交渉をする際に一は、それだけの金額でけっこうだからと言ってきたにもかかわらず、いざ土地収用委員会に今度裁決申請をする段になると、三分の一にも満たない額を申請してきた。それは電発には電発の言い分があるでありましょう。しかし、問題はそれを受けて立った収用委員会の態度であります。これが私は一番問題であると思う。  そこで、電発がいかに横暴であっても、収用委員会がきぜんとしてこれに対して正当な補償というものを出して下さればよろしいのでありますけれども、それが悲しいかな、福島県の収用委員会は、会長が、昭和三十五年、昨年のですね、十一月二十四日に、電発から裁決申請書が出されたのでありますけれども、会長は、雪が降らない前というのでしょう、間髪を入れず、その次の日かその次の日に、直ちに君島栄一外十三名、この名前もはっきりわかっておりますけれども、そういう福島県庁職員をして現場調査におもむかせたのであります。これは、建設省の訓令が、現に三十三年二月二日に出ておりますけれども、現場調査をするについては当事者に通知をするのが望ましい、そういうふうにしてくれというような指導をしているにもかかわらず、一切そういうようなことをやらない。そうして、いきなり収用される土地に十三人の者をおもむかせて、そうして勝手に調査をして、そうしてそれを調査額ということでもって調書を作らして、それを裁決資料としようとしているわけであります。そのことについて私が非常にその違法を責めますと、私は建設省令などというものは聞かないと、建設省の拘束を受けるものではないから、建設省にそういう通達があったとしても、私は私で独自の見解でやるのだからというようなことを申しておりまして、非常に悪い意味独立を用いておるというのが現実であります。  そうして、その結論をちょっと申し上げますが、その鑑定人——その県庁職員ですね、それが調査額と称して作成してきた金額、それを念のために一言だけここで言わせて下さい。それは、矢澤伊織という者の家屋があるのですが、電発では百五十七万七千六百二十五円と見積もって裁決申請したのでありますけれども、県庁職員が調べた金額は驚くなかれ、これは涙がなしには話せませんが、六十万九千四百九十円であります。これが県庁職員が調べた金額であります。また土蔵について見れば、これは約四十六万九千円に対して二十一万という非常に低い金額収用委員会が算出している。この不当さはだれが見ても明瞭であります。この福島県の収用委員会は、起業者のための土地強制取り上げ下請機関だというふうなことを言われておりますけれども、そんなことを言われてもやむを得ないほど、この福島県の収用委員会起業者の便宜のみを考えて、そうして被収用者に対してはちょうど罪を犯した刑事被告人のような態度で、そうしてこれを何でお前は調印しないというような調子でしかりつけて高飛車に押えつけて、そうしてこれを審理をしていると、そういうふうなのが収用委員会現実であります。それが生きた現実であるということであります。世にごね得などという言葉があって、ほんの一部の者が補償を余分に取ったことがジャーナリズムで盛んに宣伝されておりますけれども、奥只見のこのひどい収用の実態はこれとは全くうらはらであります。そうして、私の経験したこの収用の姿がほとんどの収用の姿と見て差しつかえないと思うのであります。ジャーナリズムはほんの一、二の者の、いわゆるごね得の記事をおもしろ半分に宣伝しておりますけれども、被収用者の九九%まではこの起業者のデマと宣伝とおどかしと分裂工作、そういうようなものによって千々にさいなまれてめちゃくちゃにされて、そうして村人が互いに相反目して秘密を守りながら、実に情けない姿で支離滅裂になって、そうして生活再建にはほど遠い補償金をもらって、うちをあけて土地を離れて、そうしてたちまちにしてその金を使い果たして転落していく、それが偽らない実態であります。  そうして、私はここで、収用委員会が一番強い権利を持っているのであるから、収用委員会をぜひもっと独立裁判所にも比すべき、もっと独立した、起業者の方に何でもべたつかないで、もっと公正な立場に立って、そうして両方の言い分を聞いて、そうしてお前の方は言い分がどうだというふうに、裁判官のような態度でしっかりした裁決をしてくれる、そういう収用委員会を作ることがまず前提条件である。もし現在のようなこういう収用委員会に、この法案によりますと緊急裁決という、まさにその当事者の言い分も聞かないで、これは問答無用の、私はそういう言葉を使いたいわけでありますけれども、問答無用の切り捨てごめん式の裁決になるわけでございます、何にも言い分聞かなくてもいいことになりますから。そういうことになりますと、非常に私権保護ということについてまことにおそろしい結果になると。現在の収用委員会にそういう武器を与えたならばこれはとんでもない。そうして、まさに私が今扱っているような、うみへ一緒に沈むと、そうしてみんなをのろって、私をこういうふうにして殺すなら殺してくれというふうな事態が、必ず近い将来に出現するのじゃないか。やっぱり、一寸の虫にも五分の魂と申しまして、農民には農民の魂があるわけでありまして、そうして一緒に殺すのならここで一緒に死にたいからというのがほんとうの気持でありますから、ぜひ無理のないところでそういう収用委員会のまず独立を確保するという方向で、法律を改正して、しかるのちにこの促進のためにそういういろいろな措置をとるのもけっこうかと思います。その前提条件をまずやっていただきたい。  まだ言いたいことがありますけれども、時間あと一分か二分いただいてよろしいでしょうか一。  それで実は県体的に私、実務家として考えまして、収用委員会に忌避の制度をぜひ認めてもらいたい。裁判官には忌避の制度、お前は不公平な裁判をするおそれがあるから忌避するということになれば、それから除かれるわけでありますけれども、収用委員会にはそういう制度がありませんから忌避の制度というものを認めてもらいたい。今、土地収用法の五十五条にそれに似たような制度がありますけれども、これは当事者の申し立て権がないので、そういう申し立て権を与えてもらいたいということが第一点。  それからもう一つ、今の収用法には当事者の意見を述べる権利がありますけれども、証拠調べをすることについては何も規定がない。それで一方的にこれは相当無理な証拠調べなども起業者の方がして、こちらが幾ら申請をしてもそれを全部却下してしまう、福島の場合にはそういうことが非常に多いのでございますけれども、そういう当事者に証拠調べについて権利を与えるという規定がないわけでありまして、それをぜひ与えてもらいたいということ。  そうしてもっと根本的には、知事がほとんど起業者になることが多いので、知事収用委員を任命するというその制度を、もう少し民主的にみんなの意見を反映するような収用委員を選出するという制度に変えていただきたい、ということをお願いし、それから先ほどの意見にもありましたが、私は、この法案で四十六条の現物給付規定と、それから四十七条の生活再建等のための措置、というこの二つの規定は非常に特異な規定でありますけれども、非常にいい規定であると思います。これをぜひ一般土地収用法に、一般といいますか、今の収用法にこういう規定を入れていただきたい。そうして特にダムなどで水没するものにはこういう規定がもう絶対必要でありまして、金を一時に持った者はすぐになくしてしまいます、金の使い方も知らないのですから。そうしてこじきになり果てるという実例を私は幾つも知っております。そういうことを見るたびにまことに涙が出るのでありまして、政府はどうしてこういうこじきになってしまうような哀れな百姓に金だけを与えて、そうしてこれをほうっておくのか。金を幾らかもらっても使い方を知らないのですから、そういうふうな実際に彼らが生きていけるだけの方策を講じるような方法と、そうして四十六条と四十七条は、これは何か道徳的規定のようなものでありますけれども、もう少しこれだけを法律義務らしく、こういうふうにしなければならないというふうな「事情の許す限り」とか「努めなければ」とかいうふうなあいまいな規定でなくて、もう少ししっかりした規定にしていただいて、そうしてぜひ哀れな収用される百姓について一番おもに私は申し上げたいわけでありますけれども、そういう者の保護をはかっていただきたいということをお願いしたいわけであります。
  6. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) 続いて梅原昭君にお願いいたします。
  7. 梅原昭

    参考人梅原昭君) この特別措置法の問題が、公共用地取得というところから出発をしているわけでありますから、実際に公共用地取得するにあたって、何が一番問題になっているかというその問題について、具体的な実例に即しながら私の意見を申し上げてみたいと思います。  第一番目の問題として事業計画の問題であります。今度の特別措置法におきましても、その基本を流れる考え方になっておりますのは、補償方法が正当に行なわれるならば、損失を与えることはあり得ないのだ、ということが前提になっているようであります。つまり金銭補償だけでは問題があるかもしらぬけれども、その他の方法も加えて補償方法が適切に行なわれるならば、収用される者に対して損失を与えるということはあり得ないのだという考え方を前提にして、いろいろ方策を考えているようでありますけれども、幾つかの具体的な例を見て参りますと、補償方法を幾ら考えてみたところでどうにもならない。それによってはいわゆる正当な補償と申しますか、収用される以前と収用された後も同じ、あるいはそれ以上の生活水準を保つという法の精神が守られない、そういうふうな場合もあり得るのだということを申し上げてみたいと思います。  一つの例といたしまして、大阪の北部の丘陵地帯を開発いたしまして、現在ニュー・タウン計画ということで、一大住宅都市を作り上げるという計画を大阪府が立てております。これは約三百数十万坪の膨大な山林や農地を大阪府が買収をいたしまして、そこに数万戸の住宅を建てようという計画を立てているわけでありますが、その三百数十万坪の土地の中で、山林であるとか原野であるとか、あるいは農地の中でも収穫の悪い農地であるとか、そういうものを合わせまして約八割程度土地は買収がついたわけであります。ところが残りの二割、つまり優秀な生産性の高い果樹地帯でありますけれども、そういうところの農民は、これを手離したらわしらの生活は上がったりだ、ということで反対をしております。補償金を上げてくれとか、あるいは就職をあっせんさしてくれとかいうことではなしに、反対だという運動を今やっております。  それで、なぜそれでは補償金要求したり、あるいは就職なりあるいはかえ地なりというものを要求しないのかということでありますが、大阪のあたりでは比較的労働市場もあるわけでありまして、就職その他仕事の転換がほかのところに比べますとやりやすいわけでありますが、それでも実際問題としては、自分の持っている農地の全部あるいはほとんど全部を奪われた場合に、ほかの職業には実際問題としては転換できない。この補償の問題については後ほどまた申し上げるつもりでおりますが、土地の一部を取られる、買収されるということであれば何とか金をもらう、あるいはほかの方法で措置が講ぜられるわけでありますが、土地の全部あるいはほとんど全部が取られるというようなことになりますと、大阪のようなところでさえもそれは簡単に転換はできるものではないということを、現実に知っているからであります。知っているということは、今まで土地を売った人たちの模様を見ておりまして、その人たちのもらった金額が二、三年の間にほとんど全部なくなっておる。あるいは就職をあっせんしてもらったところも、あっせんしてもらった先が臨時工であったというふうな例ばかりを見ているために、今申し上げたような反対だという方向に変わってきておるわけであります。でありますから、山の中に行きますとその事情はさらに一そう激しくなるわけでありまして、私の知っている例を申し上げますと、滋賀県の山の中で、これは農林省が国営事業としてやっている愛知川ダムという灌漑用のダムがございます。この場合には三つの部落の百数十戸の農民が十年来——昭和二十五、六年ごろから反対運動をやっております。で、ここの場合に反対をしております理由は、人家が水没される、それでわしらは祖先伝来、山の中で暮らし山の木を相手にし、またたんぼを相手にして暮らしをしてきた。これを幾ら金をもらったところで町の中に出ていって生活ができるはずがない。現にそこの三つの部落の中にも若干土地を売った者がいるわけでありますが、その土地を売った者は戦争中その山の中に疎開をしてきた者であるとか、あるいは最近、山林労働者としてその中に住み込んできた者であるとか、いわゆるそういう何といいますか、しりの軽い人たちが土地を売っただけでありまして、そのほかの、祖先伝来土地を持っておる者というものは、一致結束をして反対運動をやっておるという状況であります。そこでそのいわゆるしりの軽い人たちが土地を売った、あるいは家を売った金をもらって、その結果はどうなっておるかといいますと、やはり二、三年たたないうちに町に出まして、金に窮したためでしょうか、どろぼうをやって刑務所入りをしているという者がすでに二、三出ているわけであります。こういう土地を手放した結果が刑務所入りだということを、やはりその山の中の人たちはその耳で聞いて知っておるわけでありますから、やはり土地を手放したら幾ら金をもらったところでどうにもならぬぞという気持をますます深めているわけであります。そこで農林省の方としましても、開拓地を造成するからそこへ村ごと移って住まないかというふうな案を出しておりますけれども、開拓地といいましても、戦争中あるいは戦争直後の開拓事情が如実に示しておりますように、開拓民がどんなに苦労するものかということをやはり知っておりますので、この問題も進んでいないわけであります。  こういうふうに見て参りますと、千里山のニュー・タウンの場合におきましても、あるいは滋賀県の愛知川ダムの場合におきましても、農地なり、主として農地が中心になるわけですが、そういうものの全部、あるいはほとんど全部が取られる、あるいは場合によりますと家まで引っ越さなくちゃならぬ、それを機会として職業の転換をはからなければならぬという場合には、金をもらう、何をもらうということでは、今までと同じような生活水準を保つことが、実際問題として、特に今の社会情勢下におきましては非常にむずかしいのだ、そういう場合があり得るのだということを申し上げたいわけであります。  それではそういう場合にどうすればいいのかといいますと、先ほど申し上げました千里山のニュー・タウンの場合には、さっきも言いましたように、約八割近くまでが土地が買収済みなんでありますけれども、住宅を作るわけですから、無理に反対を押し切ってまで全部買収しなくても、その八割程度のところで仕事ができぬわけではないのでありますけれども、お役所というところは面子にとらわれるせいでありますか、どうしても全部を買収したいということで、そのために問題が起きておるわけであります。また愛知川ダムの場合でありましても、農民の方は単に絶対反対だと言っているわけではなくて、場所をもう少し上流の方へ持っていってくれ、そうすると人家も水没しないで済む、ところがもちろん工事費は若干高くつくとか、あるいは少々不便であるとかそういう問題は起こるだろうけれども、しかしわしらのことを全く無視してやるというならともかく、わしらの利益もあわせて考えてくれるというならば、多少は不便になっても、それによって効果が全くないというのではありませんから、若干経済効率は落ちても別なところで、できるならばそちらでやってもらえないかということを主張しているわけでありますが、なかなか農林省との間の話がまとまらぬわけであります。  そこでこの問題について私の申し上げたいのは、場合によっては補償方法を幾ら考えてみてもどうにもならぬ場合が、場合によってはあるのだから、そういう場合に、もしも事業計画を変更することによって、多少は経済的な効率が落ちましても、それによって当初の目的がほぼ達成されるというふうな場合には、最初事業計画を固執すべきではないのだ、それを固執すると、土地収用法でいうところのいわゆる公共の利益と私有財産との間の調整をはかるのではなくて、かつてのような単純なる公益第一主義に陥ってしまう、そういうことを申し上げたいわけであります。  第二の問題は補償の問題であります。この特別措置法でも、補償方法を単に金銭補償だけでなくて、それ以外の補償をあわせて考える必要があるということをだいぶ強調しているようでありまして、それがこの特別措置法一つの特徴であろうかとも思いますが、その辺が実際問題としてどういうふうになっていくだろうかということを考えてみたいと思います。今の収用法におきましても御承知のようにかえ地を与えるとか、あるいは耕地、宅地を造成するというふうなことをすることができる、というふうなことが規定をされておるわけでありますが、実際問題としてはそういうふうにかえ地を与える、あるいは耕地、宅地を造成するというふうなことはほとんど実行されておりません。なぜ実行されないかといいますと、事業が小さなときはまだそうでもないのでありますが、大規模な事業になりますと、一人の者にかえ地を与えてほかの者にかえ地を与えぬという一わけにはいかぬのではないか、というふうな起業者側の考えもありまして、実際問題としては、今申し上げたような金銭以外の補償がされるということはほとんどありません。それで大規模な事業がされます場合には、大てい起業者となる者の社会的な地位が高いのでありますから、たとえば就職の問題にしましてもその他の問題にしましても、努力をすればできないことはないという場合が多いのでありますが、しかし実際問題としては、金銭以外の補償というのを極度にきらいまして、どういうふうな場合に補償が行なわれるかといいますと、長い間、しかも相当根強い反対運動が行なわれまして、どうにもこうにもかえ地をやらないことにはおさまりがつかぬ、あるいは就職をあっせんしてやらないことにはおさまりがつかぬ、そういうふうな場合に限ってだけ金銭以外の補償が行なわれるというのが実際の姿であります。それで先ほど申し上げました千里山ニュー・タウンの場合におきましても、最初は金で補償をもらった人がおります。しかし金で補償をもらったんではどうにもならぬということで、その次の時期になりますと、就職をあっせんしてくれということを地元の農民が申し出ております。就職をあっせんしてくれということを言われて、その結果大阪府は就職のあっせんを始めました。しかし就職をあっせんしてくれたその先がどんなところであったかといいますと、三十を越して女房子供もかかえておるといういい若い者の行った先が、何と一カ月の月収が残業を含めて一万二、三千円であります。女房子供をかかえて残業まで含めて一万二、三千円の収入しかないわけであります。それが例外ではなしにほとんど全部がそういうような就職しかさせてもらえなかったわけであります。ニュー・タウンの問題に限らず大規模な工場誘致等があります場合に、最近では農民は単に金を上げろということは言いませんで、自分の息子の就職をあっせんしてくれということを真剣に申します。しかし、そうして就職をあっせんしてもらった先は、今申し上げましたような臨時工であるとかあるいは雑役夫であるとか、ほとんど全部がそういうものでありまして、収入も今申し上げたような程度のものしか出されておらないのであります。  こういうようなことをだんだん見て参りますと、今の収用法規定されておる替地の問題にしても実現されておらない。ということになりますと、収用法規定があっても、その精神が実行されないということになりますと、単に言葉の表現を変えただけで、今の現実がはたして解決をされるのかという問題が出て参るわけであります。特に今のような社会情勢で、御承知のように農業基本法におきましても、離農の促進については非常に熱心でありますけれども、離農をする農民ははたしてどこへ行くのかという問題については、適切な措置は何もとられていないというのが、農業基本法についての一つの批判になっているわけであります。そのような重大な社会情勢を背景にした離農問題というのを、との特別措置法の何々することができる、あるいは何々努力しなければならないというような規定で、今申し上げたような問題がはたして解決つくのであろうかという点を、しみじみと感ぜざるを得ないわけであります。  もう一つ補償の中の金銭補償の問題について一、二意見を申し上げたいと思います。先ほどからちょっと話も出ておりますが、いわゆるごね得というふうなことが言われるわけでありますが、いろいろ具体的な事実を見て参りますと、補償金問題でどういうふうな点が問題になるのかといいますと、たとえば、これは一々実例があるわけでありますが、登記面積と実面積との間で開きが非常に多い。これは山の中の場合なんか非常に多いわけでありますが、そういう場合に実面積で買収をしないで、登記面積で買収しようとするというふうなところから問題が出て参ることがあります。  それから小作地の場合にはその地方の習慣としまして、地主小作の間で土地がつぶれる場合には、どういうふうに分けるという取り分比率というのがほぼきまっておりますのに、その習慣を守らないで地主の方にだけ金を渡してしまう。それが小作人との問題は地主の責任において解決しろ、こういうふうなやり方が非常に多いわけでありまして、そのために地主は土地を売ったけれども、小作人はその土地でがんばるというような場合が出てくるわけであります。  それと土地の評価にいたしましても、評価の方法はいろいろあるわけでありますが、少なくともその地方の農民にとって、どうやってこういう評価額が出てきたのか、理解に苦しむような評価をする。周辺の土地の売買実例等を基礎にするというふうなことでなしに、何か理解のつかぬ評価方法ではかってくるというところにも一つの問題が出て参ります。  またいろいろな事情によりまして、用地の買収が長引きます場合に、長引いておる間にだんだん土地の値段が上がって参ります。そうすると起業者の側といたしましては、前に売ってくれたものとのバランスをはからなければならないというふうな理由がありまして、そのために依然として前の安いときの土地価格を固執する。そのために土地を売るのがおくれた者は、なおさら売れなくなってくるというふうな問題で、この辺の問題は収用法でそのときの時価だと、裁決の時価だということがはっきりしておるわけでありますが、収用委員会に持ち込まれる以前の問題でそういうことが解決されないために、以前の安い土地価格を起業者が固執するために紛争が起きるという、今申し上げたようなそういうような場合が非常に多いのでありまして、よく農民がごねるためになかなか土地取得ができないんだということもいわれておりますが、実際問題としては、今私が申し上げたような起業者側の無理解と申しますか、そういうようなことによって、そのために用地買収が長引くということの例の方がはるかに多いわけであります。  いろいろ補償の問題なり、あるいは事業計画の問題について述べましたけれども、結論的に申し上げたいことは、公共用地取得難ということは、もちろんいろいろ原因はあるだろうけれども、結局のところ起業者側の第一義的な責任としては、起業者側において収用法法律の明文は破らないけれども、少なくとも収用法の精神を破ったような取り扱いをするという、そういう場合が非常に多い。そのために公共用地取得難という問題が実際問題としては発生してくるのでありますから、収用法の精神を守らせるということが第一義的な問題でありまして、そういう問題を解決しないでおいて、補償問題を単に表現の、言葉のあやによって、いかにも補償問題が今までよりも前進するような形を見せ、そうして正身のところは収用の手続を簡略化するというようなところに重点を置くような、そのような方法ではほんとうの解決方法にはならないということを申し上げたいわけであります。
  8. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ありがとうございました。  参考人の方にちょっとお断り申し上げますが、本会議が始まりましたので、補正予算の日程だけ本会議に出席いたしたいと思うのでありますが、恐縮でありますが、しばらく休憩をいたしておきます。大体補正予算はほぼ十五分くらいかかると思います。一つよろしくお願いいたします。  それでは暫時休憩いたします。    午前十一時二十四分休憩    ————————    午前十一時三十九分開会
  9. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) 休憩前に引き続いて会議を開きます。  参考人の方からの御意見が一応終わりましたので、これから参考人の方に対して質疑に入ります。  質疑の方は、順次御発言を願います。
  10. 田上松衞

    ○田上松衞君 須貝先生にちょっとお聞きしたいと思うのです。それは先生の御発言に対する問題ではなくして、あとの相磯さんの御発言に対しましてどうお感じになるかという点についてなんです。その場合、学者と実務家とのそれぞれの立場がありますので、ものの見方、考え方というのが若干違うということはもちろん当然でありまするけれども、基本的な問題であることのために、あえてこの場合にお聞きしておいた方が適切だろう、こう考えますので、まず実務家としての相磯弁護士のお話の中では、今回の特例法に対してはどう思うんだということになるならば、これはまっこうから反対だという答えを出したいんだというのが当初の一貫したお話のようでした。その根拠はどこであるかということについては、公共福祉を前面に押し出して、私権の尊重を著しく後退せしめておる。すなわち憲法の二十二条を引っぱってみても、二十九条を引っぱってみても、常に私権というものが先に立たなければならぬはずであるのに、これが著しく後退せしめられておるという点について、まず、憲法に必ずしも違反だとはおっしゃらなかったけれども、大きくその点について不満足であるという御趣旨だったと私は拝聴したわけなんです。もし私の聞きようが間違いがありましたならば、あとで相磯さんに御訂正願えばそれでいいのですが、大体そういう御意見だったと思います。それで私の個人の私見を申し上げますならば、私はそのお考えはどうだろうと実は考えるわけなんです。新しい憲法が求めておりまするもの、これは私権の尊重、人権の尊重ももちろん大きな柱ではございまするけれども、この場合におきまする私権財産権に限って申し上げまする場合においては、それはやはり公共福祉に反しない限りにおいてなさるべきであって、この場合に考える問題は、私は公共福祉というものが少なくとも優先だとだけには申し上げませんけれども、私権あとにつくんだという考え方ではどうだろうかという疑問を持つわけなんです。ここで相磯さんにお聞きいたしますと、意見の対立を来たすことを心配いたしまするから、法学者としての須貝先生にお考えをお聞きすることがどうだろうか、私どもこの考え方がやはりこれを具体的にやっていくためには大きな参考になるかと、こう考えますのでお聞きするわけなんです。どうぞお教えをいただきたいと考えます。
  11. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) 公共福祉と、それから財産権というような両者の関係に関する御質問であったと拝聴いたしました。確かにこの土地収用法という制度では、憲法規定財産権保障しておりますけれども、しかし公共福祉のためにやむことを得ない場合には、それが正当なる補償を払いまして、これが犠牲に供せられることがある、こういうことであろうと思います。土地収用という制度は、財産権にとっては一番大きな干渉でありまして、その点につきましては、もう特別措置法に限らず、土地収用法そのものがそういうような建前の上に立っている。それで、それをなるべく財産権というものに対して、たとえば土地は奪われるけれども、それのかわりに十分な補償を与えるということで、それにかわるものを与えて、前後を通じて損害がないというようなふうにしまして、その間の調整をしておるということであろうと思います。で、どちらが先、どちらがあとということではなしに、これは両者を何とかして調和せしめてやっていこうというのが、こういう土地収用制度の苦心の存するところであろうと感じておる次第であります。これでお答えになりますか。
  12. 田上松衞

    ○田上松衞君 私がお伺いしています点は、公共福祉私権保護、あるいは尊重といいますか、これとの位置づけですね、それを先生はどうお考えになるだろうか、そのことをお聞きすればいいのです。
  13. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) 公共福祉とそういう私権という問題につきましては、これは今の憲法では、基本的なそういう財産権その他の人権というものを、手厚く保障しておるということでありまして、しかも前の時代から、国家が始まって以来ずっとどこの国でも、どの時代を通じましても、ずっとやって参りました土地収用という制度、これは公共福祉といいますと、何か戦争中の国策の必要のためには、個人の利益は踏みにじってもかまわない、そういう理解をされるおそれがありますが、この新憲法の場合の公共福祉というのは、結局多数人の幸福、やはり個人の幸福を積み重ねたもの、それと一人の個人、それとの関係、結局そういう関係になるだろうと思います。で、その関係はやはりその一人の不便、犠牲を足しまして、これを加えまして、そうして多数人の幸福をはかる必要がある、そういう場合に限って、その財産権補償ということが空文に帰しないように十分な補償を与え、厚い保護を与えて、そうしましてこれの財産権を奪う、別な形でこれを償う。なぜかと言えば、それは多数の人がそれによって利益を受けるのであるから、従って、この多数の人、納税者が納めておるところの税による国家事業であれば、税金というようなものによりまして国家公共団体がこれを補償する。あるいはほかの私企業者の場合であれば、この私企業者が本来普通の市場価格を払いまして取得せんならぬところでありますから、これだけは少なくとも支払う。そういうようなことでありまして、そこで調整をとって参る、こういう制度であろうと思うのでありまして、どちらが先、どちらがあと、どちらが一番、どちらが二番ということでないと返答にならぬということでありましょうが、そういう御質問であろうかと思うのでありますが、そういう答えはできないのじゃないかと考えておる次第でございます。
  14. 田中一

    田中一君 須貝先生にまず伺いますが、あなたは昭和二十六年に当委員会においで願ったときには、新しい法律に対しては、これは非常に賛成であるという御意見を率直に冒頭に述べておられるのです。それから陳述を伺ったのでございます。今回の場合にはそれらの点は触れておらないのです。いろいろ字句の問題、その他については御意見がありましたけれども、これでいいのかという点については、結論的なものは伺っておりませんけれども、どちらの範疇に入れようとなさっておりますか。と言うことは、もう少し申し上げた方がいいかもしれません。私の見解としては、こういう疑問が起きないかと思うのです。冒頭に先生がおっしゃったように、収用法特別措置法との関係というものは不明確だということ、それから、なぜこれを二つに分けたのかという点は一応御指摘になったと思うのです。不明確ということは言い過ぎだったかもしれませんけれども、本法、土地収用法でかかる改正がなさるべきではなかったろうかという御疑問はなかったかということです。従って、その点はどちらをおとりになりますか。本法、土地収用法の改正によってこれはなし得るのではないか、あるいは土地収用法によってはなし得ないのだというような御見解か、それをまず最初に伺っておきます。
  15. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) 昭和二十六年の土地収用法審議されましたときにも、ここで証言いたしまして、その際にはこの以前の、その前の旧法と比べまして新法が非常に民主的になっておる点が少なくなかったものでありますから、旧法と比較いたしましてよくなっておるという意味で賛成の冒頭陳述をいたしました。そういう点からいたしまして、しかし、この特別措置法というものがやはりそれだけの必要があって立案されたというふうに理解しております。それで、この土地収用法を改正することによって、こういう特別措置法のようなこういうような内容を盛り込むことができなかったであろうか、そういう点は私も最初に疑問を持ちまして考えてみましたのですが、この土地収用法の緊急使用ですか、そのようなところにこれが該当、これにかわる制度としてこれが出て参ったというようなことらしいのですが、まあ読んでみますと、なるほど土地収用法の緊急使用というのは不便な点が多々ある。それでいって緊急裁決というようなことでやった方が、かえってこの私権保護もできるのじゃないか、こういうような点もあるようでありまするし、まあ特別措置法という形で出て参った以上は、それは特別措置法という名前は、もうあまりほかの立法の場合でもあまり歓迎されておりませんし、いやな感じがつきまとうのでありますが、しかし、この土地収用法の改正をやろうということになりますと、これは非常な大がかりな、全部、精神から考え直す、そして手続のこまかい点に及んでいく、こういうような改正になりますでしょうし、また先ほどから他の方の質問で問題になっておりましたように、損失補償のいろんな基準をどういうふうに合理的に定めていくのか、そういうような点も解決されなければならぬ問題でありますし、またこのいろんなそういう重要な改正が全面にわたって行なわれなければならぬというようなことになりまして、まあ時間の関係からおそらく特別措置をどうしても緊急に必要とするというような事情があったとすれば、こういう特別法を制定しまして、これが提案されたというのも理由があることだと考えられます。ただこういう特別措置法が出てきました以上は、その母法であるところの土地収用法との関係なり、それから土地収用法のいろんな手続制度等、これと比較されまして、そうして、ことに、この特別措置法でいろいろこの規定がございますが、これが実際にどういうふうに働くものか、何か電気器具をひやかすようで工合が、たとえが悪うございますが、これのからくり、しかけがどういうふうになっておるか、この御審議の際には、これをいろいろ動かして、ためしに当たって、これを動かしてごらんになりまして、この不合理な点がないのか、そういう点をよく御審議なさって、そうして、これが幾分でもさらによいものになるように私は希望しておる次第であります。
  16. 田中一

    田中一君 これは先生の学説なり考え方が変わったものと思っておりません。そこでこの旧法から新法に移る場合の先生の御意見のうち、第一に非常によいと言っている点は、私権保護ということが明らかになっているということ、これは非常に大きく先生は評価なすっていらっしゃったのです。それから第二の問題は、この地方分権的な行政法の面から、都道府県知事に権限があるということを先生は非常にここで強く強張されておるのです。そこで第一の今の問題の私権保護ということが大きく浮かび上がってきているという点が、今回のこの特別措置によって私権の、先ほど相磯参考人も言っているように私権が後退しているのではないかという印象はお受けになりませんか。
  17. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) それは確かにこういう手続を迅速化するために、私権の後退という印象はどうしても否定することができないと思いますので、土地収用法の不便な手続で長い時間をかけて引っ張って解決がなかなかなされない、そういうのはやはりそれだけのいろんないきさつがありまして、なかなかスムーズには運ばない。そういうことがあるのであろうと思いますが、この特別措置法ではこういう地元の集団的な反対とか、そういうものとまつ正面からぶつかることを避けて、それをぐるっと横を回りまして、そうして、とにかくゴールに突進するというような感じを受けまして、それでこの緊急裁決収用裁決だけは早く片づけてしまう、それで補償裁決の方はあと回し、もちろん概算払いということでそこはうまく均衡をとる、こういうような制度になっておりますので、そういう点からしまして、これは確かに早くこの財産権を奪われるという点からすれば、これはまあ収用法と比べて大きく私権が後退しておるということは、これは否定できないというふうに考える次第であります。
  18. 田中一

    田中一君 第二の問題ですが、先生がやはり御指摘になっておったのは、この知事代行するという問題です。この新しい土地収用法の制定のときには、先生これを大きく評価しておってこれでいいんだと・ここに初めて日本の民主的な地方分権としての趣旨が徹するというような御趣旨の御陳述があったのです。それと今回の知事代行というような問題を比較しまして、これまた民主的な憲法の精神、今日の新憲法の精神からみて後退しておるのではないかという印象をお受けになりませんか。
  19. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) その点でございますが、確かにそういうことでございましょうと思います。で、との土地収用法の場合でも、その他の地方自治法の場合でも、この地方自治ということを完全に法律の建前の上では認めておる。実際にはほかの点からその通りにはいっていないということもありまするが、しかし、少なくとも法律規定の上では、この憲法規定とマッチするように巧みにこの地方自治を生かして作られておったと思うのであります。地方自治というのは、結局中央の、この地元から離れた、もう地元民の感情というようなものは、じかに肌に感ぜられない人々がいろいろな大事なことをきめる、これがいけないというのが地方自治の根本の考え方でございまして、そういう点からしますと、これは何といいますか・地方自治法で認めておる職務執行命令訴訟といったような厄介な、裁判所にまで助けを借りて府県知事市町村長を監督せなければならぬ、そういうような規定まで設けられましてやっておるのもそのためであろうと思いますのですが、今度はこの知事がそれをもう通り抜けまして、そういうめんどうなことはせずに代執行ということでやっていきまして、これは確かに、地元のそういう何といいますか、政治意識といいますか、そういうものがそこであっさり肩透かしを食うことになりまして、これはまあ特別措置法というのは、あくまで中央に公共用地審議会というのがございますけれども、これは東京ですわって会議をされる人々でありまして、こういう人がこの地元のそういう、なまな、いろんな感情の動きというようなものは、じかにわかるはずはないのであります。そういうところで幾らそれの議を経ましても、まあどういうことになりまするか、やはりそういう認定が行なわれまして、そうしてどしどしこの緊急裁決まで進んでいく、こういうことでございまするから、これはもう中央に重きをおいて執行するという制度になって参っておるという点で、確かにその地方自治といいますか、地元の意思というものを尊重するという考え方は後退しておると考えます。
  20. 田中一

    田中一君 第三に伺いたいのは、先生は土地収用法の陳述のときに、こうおっしゃっております。手続が非常に民主化されておる、慎重になっておる。従って、これは非常に新憲法のもとに妥当な手続方法である、こういう工合に先生はお認めになっていらっしゃいます。ところが、今回のこの特別措置法は、手続の簡素化ということが主眼になっておるわけです。これももし今までの現行法の手続が非常に民主化され、慎重になって、そして私権を十分に、私権収奪というものを十分納得の上に立とうという時間的な余地があるけれども、今度の場合には緊急収用というもの、非常に手続そのものが何らの訴願その他の現行土地収用法にあるがごときものでなくして、手続の簡素化ということを目標にしている以上、やはりこの点も現行土地収用法から見ます場合には、私権という立場から、国民の立場から見た場合には、これはやはり相当国民の権利というものが後退しているようにお認めになりませんか。印象だけでけっこうです、そういう印象をお受けになりませんか。
  21. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) 手続をまあ簡素化といいますか、むしろ手続をスピードアップしておると、時間的にこれは早く進捗するように仕組みができておると、こういう点はなるほどこれは結局財産権を奪われる時期が早くなりまするので、それでそういう点からしまして、さっき申した通りに、私権が早く奪われると、こういうことになりまするので、どうしてもこの特別措置法はきつい措置であるという印象は、これは正確なものであろうと思います。ただ、それをバランスするためにいろんな手厚い保護をここに規定してある。それでそれが額面通りに受け取っていいものであるかどうか、またそれがなるべく法律通りに正確にこれが実施されるように、そういう点をしっかり御審議願いましたならば、この特別措置というものが一そう合理的なものになるであろうと考える次第であります。
  22. 田中一

    田中一君 須貝先生並びに相磯さん、それから梅原さんも、四十六条、四十七条の現物給付、または生活再建等のための措置等を非常に評価されております。私は、これは精神規定にすぎないのです、これは現行法の八十二条で十分に同じことが明文化されているのです。これはどこまでもやはり精神規定なんです。あえてここに現物給付なり、生活再建等のための措置という言葉を、文字を表わしたにすぎないのであって、これらの条件というものは、現行土地収用法八十二条で、はっきりと、収用委員会がそれを認めるならば、これを知事なり何なり事業主体に対して十分にこうやれということの、強制までいっておりませんけれども、できるようになっております。「前項の規定による申請があった場合において、収用委員会は、その申請を相当と認めるときは、国又は地方公共団体に対し、替地として相当と認めるものの譲渡を勧告することができる。」とこういう工合になっております。現物支給というもの、現物換地、現物補償ということを勧告することができるようになっております。これは何ら変わっておりません。四十六条、四十七条は、現行法としてもあるということです。ただ、全体の法体系から強いものをやわらげるためにここに抽出して、ここに具体的にこれをまとめて示した、これは強制されるならばいざ知らずやはり精神規定にすぎない。こういう点については先生どういう工合にお考えになりますか。
  23. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) この今御指摘になりました点、これは八十一条でしたか八十二条でしたか、八十二条のようなこれはかえ地のことしか言うていないと、それをまあ現物給付の種類をさらに広げまして書いておる、それからこういういろんな生活再建対策、このようなことを書いておる、こういう点で、やはり中央で法律を作られる場合にいかほど規定をなさいましても、実際第一線の現地でこれが運用される、適用されるという場合にはその通りにはなかなか参らぬものでありまして、もうよほど、かんで含めるようにここは書いておかなければ、実際には行なわれにくいということがあります。私は京都のようないなかに住んでおります関係上、いろんなことについてそういう感じを深くするのであります。そこでそういう意味におきまして、今度の特別措置法では非常にこういう点が詳しく書いてある、こういう点。それからまたその範囲を広げた、新しいアイデアを出してきた、指導理念を打ち出してきたというような点は、これは確かに進歩であると思われまするし、しかしただそれが法律としまして、こういうふうに義務を課しておるという以上は、これは何らか義務の履行を監視するような仕組みがあってしかるべきだ、と私は考えるものでありますから、それで先ほど報告のときにああいうことを申し上げました。
  24. 田中一

    田中一君 そこで、この特別措置法は、現行土地収用法に比較してよいところと悪いところとある。従って十分にその点を先生が御指摘になった点をわれわれが指摘して、その実際の運用というものに対してはあやまちなきようにすれば賛成なのですか、反対なのですか、先生の態度は。
  25. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) これはやはり、今の土地収用法ではどうしてもいけないという必要があって、おそらくこういうような立案がなされておると思いますので、こういうような特別措置法の必要を根こそぎ否定するということはできないと私は考えます。ただこれが民主的に運用されまして、そしてこれがむしろ模範となりまして、今度は土地収用法が全部改正されまして、この特別措置法の十分なこういう規定というようなものを、土地収用法にも及ぼしまして、この特別措置法のいい点は、これが土地収用法、前の法律の全部にこれを均霑するというようなことにならなければいかぬと考える次第であります。
  26. 田中一

    田中一君 土地収用法の前段に、むろんこれは事業を行なう場合の計画の中に立ち入りその他のいろんな問題があります。これは現行土地収用法そのままを使っておるらしいです。しかし一体、私はこういう議論を今まで言ってきたのですがね。とにかくこの収用委員会にかけるというような前に、あっせん委員なんというものを途中で法律を改正して加えたりなんかして、話し合いの場をもって話し合いで買収交渉していこう、という議論が生じやすいわけなんですよ。今日まで全面的に一つ事業収用委員会の裁定に待って、ものをきめた例がないのです。十年間この法律施行されながら、一ぺんでも一つ事業を全面的に収用委員会にかけて採決を得たという例がないのです。その事前にあるのは何かと申しますと買収交渉なのです。私はもう数年来、事ここに至っては、日本の政府の政策というものが、ことごとく地価を上げるような政策をとっている以上、これはどうしても一事業を全面的に初めからかけて買収交渉をしないで、事業の重要性あるいは緊要性、公益性というものを徹底的に理解してもらって、理解し得ない場合には初めから収用委員会の裁定に待って事業を行なえ、それが五年かかろうが十年かかろうが、少なくとも今まで五年ぐらいかかるでしょう。相磯さんみたいな優秀な弁護士がおって知恵をつければ、一字の違いでもこれは訴訟になるんですから。しかしどうしてそこまで国民を追い込んだかというのです。ある学者に言わせれば、これは国民が言うことを聞かぬからこれをかけるのだ、これは伝家の宝刀であるというような認識を持っておる方々もあります。話し合い、買収交渉によって解決されるなら別に問題はございません。ことにマスコミ等が盛んにごね得という言葉を使っておる。どこにごね得があるかということなんです。自分の持っておる土地を売ってくれというんですから、十万円で売ってくれ、私は百万円でなければいやです、当然です、単なるフェア行為です、それはごね得でも何でもありません。当然自分が持っておる財産に対する自分の評価です。買うやつは、やつという言葉はいけなかったら取り消しますが、事業の主体というものは特に公共事業である限りは、私企業にいたしましても一応の採算ベースというものを持っております。特に公共団体の場合には予算を持っておる、予算の壁を背負いながら折衝したってこれはそううまくいくものではない、限度があるのですから。特に反面土地に対しましては、地価というものは上げるような政策をとっておる。空な景気をあおるような政策をとっておる以上、当然これは選ぶべき収益というものを考えながら評価するわけです。その場合に選ぶべき収益というものを何年に押さえるか、長くとも五年くらいしか押さえておりません。その本人は父祖伝来の土地を持ってやっておれば、永久にそこでもって生産し収入があるにかかわらず、この補償にしたって最高五年程度です、買収交渉をしたって。ここに無理があるんじゃないか。しかしこの公益性というものを考えた場合には、一つ事業でいいから全面的にこれをかけてやってごらんなさい。そうして買収交渉の場合をごね得と言う、とんでもない話ですよ。そういう言葉を作ったのは、私は新聞記者が作ったのではないと思うのですよ。権力を持っておる国なり地方公共団体の権力者なりがそういう言葉をはやらし、そういう印象を国民全部に考えたものだと思うのですよ。まして公益事業というものは特定の一人が不幸な目というか、自分の財産権を収奪されて大ぜいのためにこれを用いるんですから、不確定な大ぜいというものはこの言葉に迷わされます。社会党の田中一のやつがここでがんばっておるから、どうもこの団地は、この区域は承知せんと言うんです。僕が指導してそういう争いをやっておる場合はですね、大ぜいの怨嗟の的になるのはこの私なんです。またその地元の一人なんです。こういうことを考えます場合にやはり本人が買収交渉をしないで、一応全部を収用委員会、第三者の手による、はっきりと収用委員会というものはあるんです。この制度その他については今、相磯さん、梅原さんが御指摘になったように、この任命、構成等についてはいろいろな問題がありますけれども、一応公正な第三者というものがあるんです。この機関にかけてきめなさい、買収交渉をやりなさい。こういう方法をとるべきじゃないかということを申し上げておるんですが、一体その土地収用法というものは、どうしても買収交渉に応じない者に対してこれを適用しようとするのか、するのが正しい運用なのか。あるいは道路にいたしましても計画の起点、着点、出発点と終点がなければ道路の活用がないんです。途中に一戸でも來雑物があるならば、これは道路にはならないのですよ。従ってその場合には全面的にそれを収用委員会に預けてその公正な判定に待ってした方がいいのか、法の運用、法の精神というようなその二つのどちらにあるのか、一つこれは伺っておきたい。
  27. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) 土地収用法制度は、これはやはりこういうような強制買収といいますか、こういうことはどうしても権力を発動させるものでありまして、そういうことはやはり軽々しく使うべきものではない、とにかく納得づくで、話し合いで契約で、たとえごね得とか何とかというようなことがあっても、それは支障のないことで、当然のことであります。経済的な力関係できまることなんですから、これはもう穏便裏に、平穏裏にそういう交渉が進むということが一番理想なんです。土地収用法というのはどうしてもしようがない場合にやはり発動するのだ。そういう考えが基礎になっておる、それが基本精神であると思われます。ただ特別措置法になって参りますと、これは非常に切れる、伝家の宝刀にしましても切れ味が非常によろしいのですから、これは便利であるからもうなるべくこれによってやっていくというようなことになるかもしれません。そうなりますと、これはいよいよ法律特別措置法を完全なものにしておかなければ、それはとんでもないいろいろな乱用欠陥をさらけ出す、こういうことになりまするので、これから一つそういう点の御審議をよろしくお願いしたいと思います。
  28. 田中一

    田中一君 もう一点だけ伺っておきます。今膨大な資料要求しております。この第二条に規定しておりますところの、特定公共事業というものの種類がここに八種類ぐらいございます。これらの事業主体というものは、なぜこの特別措置法に織り込まなければならなかったかというものを何も持っていないのです。現在までどうしてきたかというと、私は特別措置法全部をいいとは申し上げませんが、しなければならぬものも、事業もあるということは認めます。この取り方の問題は別でございます。取らなければならない事業はあるのだということは、これは否定するものじゃないのです。取らなければならないのだという事業というものを否定しない限り、ではどうして、今までどういう困難がある、どういう重要度、緊要度、その公共事業のどういう欠陥があったからこうするのだ、ということの資料というものを要求しているわけです。それをはっきり、われわれが国民とともにその内容を、よって来たったところ、こう押し込まれたところの事態というものを知るにはその資料が必要である。なかなか出て参りません。そこで相当この中には便乗されているものがあるということと、先生は実態を御存じないから、またどの事業がそれに該当するかということはおわかりにならぬと思いますけれども、そうしたものが、たとえば、公共用地取得に関する調査会というものを、建設大臣が、昨年の安保国会の最中に自民党さんだけ単独審議をして通したのがあるのでございます。そうして、先生のお手元にあると思いますが答申書が出た。答申にはそれらの資料というものは何ら含まれておらなかった。これも要求しております、調査会に出した資料をお出し願いたいと。先生も先ほどから言っているように、どうも公共用地取得が国難だということはおぼろげながら、おぼろげながらというか、新聞その他等をもって困難であろうということをマスコミ等からしみ込まされております。私の場合には、とにかく判決例を全部公開せよということを、判決例ですよ、採決例ですね、それからもう一つ補償の基準というものを立法化せよ。これだけの、三十幾つでしたかな、収用法にあるところの公共事業として認定されておるところのものは、この事業主体というものは補償の基準を持っておりません。少数は持っております。大部分は持っておらないのです。弱い者をだます、とにかく取るものは取るのだということなんです。私はこういう法律が出る以上、これを円満に実施するには、どうしても法律によって補償基準というものを一応設けて、あとは数字をはめ込めばいいわけなんですから、そういうものがなくちゃならないというようなお考えはございませんか。私はそれを主張しておるのです。
  29. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) その二つの点のお話でありまして、両方とも大賛成でありまして、一体、こういう立法をされるという場合には、それに詳しい事実調査が先行すべきものでありまして、どういう弊害があるから、どういう現行法には欠陥があるから、その実例はこういうことである、統計はこうであるから、そうしてこういう公共事業というものの必要はこういう実態であるから、それでしかるがゆえにこの法案を出すのだと、この法案はそれの結論でありまして、そういう事実調査が先行しなければならぬ、これは裁判の場合でいえばそういう事件の調査みたいなものであります。この法案は判決みたいなものなんでありまするから、そういう点が必ず行なわれなければならぬということは大賛成であります。  それから第二点の、そういう補償基準をそういうふうに法律化しなければならない、こういう点も確かにそうでありまして、一体、日本の立法というのは法律では割合簡単にきめておきまして、そうして実際は役所の方でいろいろな訓令なり通達なりで基準をきめる、そういうようなことでやって参りまして、そうしてそれが少しも怪しまれておらないということでありまするが、これはまあおいおいわが国の場合もそういう場合には外国式に、やはりそういう長年のいろいろな行政上のやり方で、合理的であるということになったものがあれば、これをどしどし法律に織り込んで規定をしていきまして、そうしてこの収用委員会などが採決をするという場合、それがこの地方収用委員会の中には、今この弁護士の方、相磯さんも御指摘になりましたように、必ずしもうまくいっていない場合もあるのでありますから、そういう場合には、法律の基準を詳しくきめておくということが望ましいという点も大賛成であります。
  30. 田中一

    田中一君 これは相磯さんと梅原さんにお伺いしますがね、今のお二人の陳述を伺っておりまして、この法律の行き方については相磯さんは反対だと。それから梅原さんは反対だというようなはっきりした御発言はなかったように思うのですが、そこで、この法律の内容に全面的に反対なのか、こうしたような事業が緊急性ある、緊急収用しなければならぬというような事業があるということはお認めになっていらっしゃるのですか。そうして、それに対する土地収用法の原則であるところの金銭補償というものが、四十六条というような形の現物補償的なものになればいいとおっしゃるのですか、それは……。被収用者が、これなら納得するであろうという見地から、それをやってくれということをおっしゃっているのか。その点一つお二方から伺いたいと思うのです。
  31. 相磯まつ江

    参考人相磯まつ江君) 私も二条の何号か、八号まであるわけですけれども、何か政令で、もっと詳しくきめるということになっておるようですけれども、その中の初めの方、一号、二号、三号、四号あたりまでは道路とか空港、駅前広場とかということは、これはある程度やむを得ないのじゃないかという、これはこれこそ公共福祉という言葉の優先——優先といいますか、私権の方が十分された上で、これはやむを得ないのじゃないかという、そういう常識的なことは考えております。ただ、あとの五、六、七、八は今、田中先生がおっしゃったのですけれども、これは文字通り便乗じゃないか。特にこの電気事業、七号の発電とか送電変電施設等のものについては、これはもう非常な弊害を伴うもので、大体営利事業じゃないでしょうか。株式会社になっておりまして、電発会社も国策会社ということでございますけれども、株式会社であることは間違いないわけで、そういう営利事業に、こういう切れ味のいい緊急裁決というような、伝家の宝刀を抜かれるということは、これは非常に反対であります。その一号から四号くらいまでに、それに十分、四十六条、四十七条の、こういう非常にこれはいい傾向の立法だと思っておりますわけで、こういうことを、ざるみたいに、ただ精神規定ということをおっしゃっていますけれども、われわれが見ても非常に水が漏るわけでありまして、これはやらなくてもどういう制裁もないし、まるきり「事情の許す限り」とか「相当であると認められるとき」は、あれは相当であると認めなかったといえばそれきり済むような、そういうような規定の仕方自体非常に不可解でありまして、こういう規定はやはりきちっと、法律に精神規定というものも多少の意味はあるでしょうけれども、法律でありますから法律らしく権利義務というものをしっかり規定して、義務という形に高めて、これを行なわなかった場合にはこういうような制裁を課するというようなことまで、きっちりきめて私権保護してやるというふうにすれば、緊急裁決というふうな、問答無用でいきなりやるわけですけれども、そういうようなことは、ある程度、事情によってでございますけれども、やむを得ない場合もあるということは認めざるを得ない。
  32. 梅原昭

    参考人梅原昭君) 収用法の第一条にも、公共の利益と私有財産の調整をはかるのだ、ということを大前提として規定しておりながら、なかなかいろいろな問題が発生するということは、調整の仕方に問題があるのではないかと思うのです。そこで先ほど申し上げましたことを提案の形で要約をして参りますと、こういうふうなことが実際問題として必要なんではないかというふうに考えます。一つは当初の事業計画を立てた、しかしその計画を全面的に遂行しようとする場合には、正当な補償を与えることが、どうしても事実上できないということが発生した場合には、ほかの方法、ほかの計画に変更することによって、正当な補償、つまり公共の利益と私有財産との調整をはかれるということが起きた場合には、当初の計画よりも若干効率が悪くともそれによってやっていけるという場合には、事業計画を変更すべきだという点をはっきり規定すべきである、というふうに一つ考えます。  それともう一つ補償の問題については、金銭補償よりもむしろそれ以外の点を重視しなければならぬというふうに考えるわけでありますが、今の規定のようなざる法ではなしに、もっと具体的に規定する必要があるのではないか。たとえばかえ地の問題につきましては、土地の全部あるいはほとんど全部を取られるという場合には、それ相当のかえ地を出さなければならぬということを、起業者にたとえば義務づけるというふうなのが、一つ方法であろうかと思います。また就職にしましてもそう簡単にできるわけではありませんから、合理的な労働条件を持った就職をあっせんしなければならない。その合理的という場合に、さらに具体的にいいますと、今までの生活水準以上のものを、永久に——永久にというのは、就職したあと簡単に一カ月か二カ月で首を切られる、臨時工だからすぐやめてくれというふうなことではなしに、永続的に今まで以上の収入が与えられるような、そういう合理的な労働条件を持った職場をあっせんしなければならないというふうに、明確に規定するというふうなことが一番必要なのではないかと思います。そうしてそのような点さえはっきりいたすならば、緊急裁決であるとか、あるいは市町村長がいうことをきかない場合にはどうするという、そういうふうな問題を規定しなくても、事実上ほとんど全部のものは解決がつく。その辺の問題がはっきりしていないために、今までの紛争が起きているわけでありますから、そういう規定こそが一番大事なのではないかというふうに考える次第であります。従って、先ほど田中さん、との特別措置法の現物補償といいますか、金銭以外の補償の面を、私が非常に評価したという印象を受けられたようですが、そういうふうに受け取られたとしたら、私の言い方がまずかったかと思うのですが、ここで規定をしておりますのは、収用法規定をしてありますことを、ただ言葉の言い回しを変えたというだけにしかすぎないわけであります。今までの収用法規定されていることは十分できている。しかしどうもそこから先のことが十分にできないから、一つ新しい法律を作ろうじゃないか、これなら話はわかるわけであります。実際問題としては、土地収用法規定されている金銭以外の補償の問題というのが、ほとんど何といいますか、精神規定といいますか、それだけに終わってしまって、実際上はほとんど適用されておらない。そのために紛争が起きている。そういう状態をそのままに残しておいて、収用法規定されていることすら十分できていないのに、ただその範囲を広げるということだけで、果してほんとうの解決になるだろうか。新しい法律を作る前に、せめて土地収用法規定されていることであれば、その程度のことはまずもって完全に実施されるように、具体化することが先決問題ではないか。そういうことがされない限り、このような強権をもって敏速に土地収用をする、ということを最大のねらいにする、そういうような特別措置法に対しては、反対であるということを言わざるを得ないわけです。
  33. 田中一

    田中一君 そこで梅原さんね、愛知川ダムのことをあなたおっしゃいましたね。計画変更ということは、なかなか私も実際、実地を見て困難に思うのだが、ダム・サイトの起点というものは、それだけの条件がなくちゃ変更ができないということなんですよ。だから、これは技術的な面でもって、見ていてわかるのですがね。そういうダム・サイトを作るのにちょうどいいような岩盤があればいいけれども、ない場合には相当大規模な補償問題が起きるようなものも、あえてしなければならぬ場合があるということは、御承知願っていただきたいと思うのです。  それからもう一つね、千里山の団地の問題ね、私はもう宅地なんていうものは、たとえば果樹園があってよろしい、山林があってよろしい、原野があってよろしい、湖沼があってよろしい。そういうものこそほんとうの住宅政策ですね。住宅環境というものの整備なんです。何もコンクリートで全部舗装をすればいいということでなくて、果樹園が残っていれば、果樹園の二割ぐらい置くのが一番正しい住宅政策です。その場合ただ他の土地の所有者が、あれだけどうして残されるのだろうと、この比較される場合に、どちらが有利かということになったり、あるいは今の政治、行政のあり方が悪いから、ひがんだり何かして問題が起きるから、全部一緒に買ってしまえということになるのであって、私どもは一つばかりたんぼがあったってかまわないと思うのです。また山がなくちゃいかぬと思うのです。宅地なんかの問題は、だからそういう意味で、計画変更ということは、これはあり得ると思うのです。これは一つ大いに千里山の問題は勉強になりました。そういうことならいろいろ考えようがある。きょうは住宅局長来ておりませんけれども、住宅団地としては何もかにも平坦なものにするという考え方は間違いだと思うのです。  いや、ありがとうございました。
  34. 内村清次

    ○内村清次君 相磯参考人に伺います。参考人の口述は、今回提出されております特別法に対して反対だ、こういう前提のもとで、その理由としては公共福祉の問題が非常に前面に出過ぎて、私権保護というものが後退をしたのだ、私権の問題については住居移転の問題、それから職業自由の問題、それからまた財産権保護の問題も非常に後退したのだ、こういった前提のもとに現在の事業者が非常に不当な補償を持ってくる。さらにまた公正なるべき収用委員会自体が非常にまたそれ以上に不当な対価を提示してくる。だからして、参考人のお話ではまず一つ収用委員会の構成と組織、任命権、こういう問題を一つ変えて、もう少し公正な収用委員会にしたらどうかというお話ですね。そのための実例をお話になったわけですが、この実例の点につきましては、私といたしましてもそういう問題について国の方で知っていることがございますので——熊本県でございますが、同感の点がたくさんあるわけでございます。また収用委員会の点についても同感の点がたくさんございます。  それで、問題は参考人は現在の土地収用法、それの中の収容委員会というものについて、知事が任命権者というのは、これは公共事業をやっている人が任命するということはおかしいじゃないか、たとえ議会の同意云々ということがあるにしてもおかしいじゃないかというようなこと。それからまた収用委員会の人選の問題ですね。こういう問題にもう少し気をつけたらどうかというようなお話で、これを改正をする前提としなさいという御意見ですね。  それから、もう一つは今回の法律案の中に、四十六条、四十七条の問題ですが、これがまあ保護規定というものが相当あるのだから、この規定はいい、しかし精神規定である、もう少し義務規定をはっきりしなさい、こういう御意見ですね。そういったことを総合的に考えてみますと、現在の収用法を改正をしていったならば、それでいいじゃないかというようなことにも聞き取れますが、その点はどうでございますか、この点が一つと。  それからさらに特別法の中に現在の土地収用法では、事業認定から土地細目の公告の期間が三年間ですね。それから土地細目の公告から裁決の申請までが一年以内、こういった現在の土地収用法が今回特別措置法特定公共事業認定から土地細目の公告まで一年以内。それから土地細目の公告から裁決申請までが六カ月以内と、こういうふうに非常に短縮されてきておりますが、こういった手続の問題に対してどういうふうなお考えを持っておられるか。この二点を一つ口述していただきたいと思います。
  35. 相磯まつ江

    参考人相磯まつ江君) お答え申し上げます。ただいまの御質問で、第一点、現在行なわれております土地収用法を改正すれば十分ではないか、結論としてそのように考えております。須貝先生もそのような意見を述べられたわけでありますけれども、現在の土地収用法である程度まかなえるし、多少その手続的に緊急な事業は、どうしても道路とか空港のような国際的な問題もあり、そういう非常に公共事業というものについては、緊急収用というふうな規定があるわけでありまして、そういうようなものを改善することによって十分で、わざわざこういう屋上屋を架する特別措置法のようなものを作って、そうして母法とそれから特別法との関係がまたいろいろ問題が起こりますし複雑になります。それから特に特定事業だけをこういう形で推し進めるということについては、それだけの必要はないのではないか。現在の土地収用法を改善することによって十分その目的を達成されるのではないかという意見でございます。  それから第二点でございますが、手続の問題につきましては、三年が一年とか、それから一年が六カ月ですか——二年でしたか、そういう非常に短い期間で手続が済むような、そういうことを強制するような規定になっております。それに今度の特別措置法の問題でございますけれども、ある程度そういう必要がある超特別な公共事業というものも、先ほど申し上げたように私としても認めざるを得ないというものがあるわけでございまして、そういうものについては、やはりこの土地収用法をそれに多少手を加えることによって十分まかなっていけるのではないか。具体的にそれをどのくらいにしたらいいかということまでは考えておりませんけれども、一応それで十分まかなえるし、その方が法律体系としてもすっきりいたしますし、混乱も発生しないのではないか、そのように考えております。
  36. 米田正文

    ○米田正文君 私は須貝教授に一、二基本的な問題としてお伺いしたい。  今の土地収用法では、裁決をする前に前払い制が原則になっているわけです。それで今度はそれが緊急裁決をするために概算払いとか仮払いとか、そういう仮補償裁決をもしよう、そこが非常に今度変わった点であって、それを一部には憲法にいう公正な補償といいますか、そういう仮補償というような形で的確に満足せしめ得るのか、という点に一部の違憲論をなす者の一つの考え方があるのです。で、先生は大体それを認めての意見ではない、という立場に立ってのさっきからお話をしておりましたけれども、だめ押しのようなことになるのですが、それについてのお考えをお聞きしたい。
  37. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) その点は時間もなかったものでありますから、憲法論議は大へんこれは時間をとりますので省略しました。今御質問のありました点は、これは憲法には、正当な補償と書いてあります。正当な補償についての読み方はいろいろございますけれども、これは十分にして完全な補償というような意味であろうと思いますし、しかし十分でかつ完全なものでなければならぬけれども、あまり高い値を吹っかけましてべらぼうに高い価格を支払う必要はない、そういう意味での正当な補償・こういう意味であろうと思っております。そういう点からいいますと、やはり前払いにするかどうかという、そういう近ごろのはやりの言葉で言えばタイミングの問題も、やはり正当な補償ということの一つの内容をなしておると思います。それでありまするけれども、今度の場合はまあ前払いということにはなっていないけれども、ほとんど前払いと実質上同じようなことにしておる、つまり概算払いといいますか、仮補償金を払う、そしてあとから清算をする、そうしまして利息を付する、ちょうどもう何といいますか緊急裁決のときに、もうすでに何といいますか前払いが行なわれたのと同じような状態にこれを置くということでありまして、まあ前の土地収用法の場合にはそういう点補償金を支払わなければ、収用裁決は効果を発生しないというようなことで、補償金の履行を強制しておったわけでありますが、その点はこれはまた利息、過怠金なんかにつきましては強制執行を認めるということで、この強制の手段を認めてこれにかわるものを作っておる、だから前払いではないけれども前払いの代用品である。そういうことがある以上はこれは決して違反にはならない。こういうふうに考えておりますので議論を省略いたしました。
  38. 米田正文

    ○米田正文君 まあだんだん最近のように国の経済が発展をしていくと、こういう公共のために使うという要求がだんだん多くなってきておる。そこでまあ土地収用法特別措置法、あるいは全面改正というような問題が起きてくるわけですが、これは私は、世界各国の現状から見て各国ともそういう情勢にだんだんなってきておるのじゃないか。まあ特に自由主義国家群においてでありますが、社会主義国家なりにおいてはこれは非常に強い公権力が働いておりますから、これはほとんど問題にならぬので、たとえばまあソビエトのごときは全部国有ですから問題ないようになっておるのですが、各国とも非常に社会性が強くなってきて、そういうために公共性を非常に強調するようになってきておるというのが世界的な傾向だと思うのです。よくイギリスあたりでも工場配置法のごとく、非常な公権力を産業大臣に与えておるような法律も出ております。そういう点で世界的な傾向——これはまあ自由主義国家群において、最近そういう土地の収用についての傾向は一体どういうふうになりつつあるか、私、実はそういう点勉強していないものですから一つお伺いをしておきたいと思います。
  39. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) そういう点はまあ今、私有財産制をとっていない、別な体制をとっておる国の場合やら、あるいは社会主義で大体やっておるイギリスのごとき例、あるいはほかのヨーロッパの国でもファシズムの時代を経過しましてそういう洗礼を受けた、また古くは警察国家の伝統が根強くあると、そういうような国では、そういう公共事業のために文句なしに強権を発動して取る、そういうようなことはあるかもしれませんが、やはり日本が戦後まあ非常に影響を受けているアメリカなんかでは、やはり昔の通りの旧態依然たる土地収用制度でやっておるのではないかと思います。全体の傾向というのはどこをつかまえてどういうふうに言うのかむずかしいと思いますが、アメリカの雑誌なんかを見ますと、やはり高速道路を作る、ところがそこの土地の所有者が鉄砲をかまえて寄らば撃つぞというので寄せつけぬというので、大へんてこずる話なんかおもしろおかしく詳しく書いてあったのを読んだことがありますけれども、やはりそういう問題がありましてあれなんですが、アメリカの場合なんか裁判所が全部やるものですから、裁判所というものは非常に信用のあるところになっているものですから、それで割合にうまくいくのかもしれませんが、まあどういうことになっているのか、ヨーロッパの国はどしどしそういう公共事業を推進してやっている。それからイギリスもそうである。しかしアメリカはそういう点、以前の制度をくずさずにいる。こういうような印象を持っておりまして、世界の大勢というようなことはどうもあまり研究しておりませんので、はっきりしたことはわかりません。
  40. 田上松衞

    ○田上松衞君 参考人方々も非常にお急ぎでもあるでしょうし、こっちの方も次の日程の関係から急いでおるようです。それで言うまでもなく、参考人の御意見というものは、私どもがこの法案をどう審議結論を出すかという上に、非常に大事な関係を持つと実はこう考えておるわけですよ。従って、十分御意見をお聞きしたいのですけれども、先申し上げたような事情ですからそれは避けます。ただ一点だけしぼってこのことだけはぜひお聞きしておかなければならぬと思うのですが、さっき田中委員梅原さん及び相磯さんの御発言に対して、補償問題については非常に高くこれを評価しているようであるが、というようなことだったわけです。私はこの受け取り方が実は違うので、そうでなしに、との問題についてはお三人とも、須貝先生も加えて大体一致した意見のように私は承ったわけなんです。これを確認しておきたいと思います。須貝先生の場合では、任意協議による現物給付等の問題についても、ただその努力義務を負うというようなことにしておるのだが、その努力を怠ったという場合においては一体どうするかという規定すらないじゃないか、こういう面について真剣に一つ取り組んでいかなければいけないのじゃないかというような方針のように、そういう用語でもって補償問題を高くは評価してはおられないと私はこう受け取ったわけなんです。  それから相磯さんの場合もむしろそのことの問題よりか、実務についているところのいわゆる地方収用委員会というようなものを完全なものに仕上げなければ、言葉をかえて言うならば、それの独立、確保という点を考えていかなければ何にもならないのじゃないかということですけれども、私権保護のためにはむしろ収用委員会に対して忌避の制度すら希望したいのだ、あるいはさっき内村さんから言われましたように、知事収用委員を任命するというようなことも改めなければいけぬじゃなかろうかというようなこと。結局結論を出しますならば、この問題についてもやはり義務づけがないのであって、そんなことに対してあまり期待が持てないのだという点のように伺われて、あまり評価はしておられないのだ、私はこう承ったのであります。  さらに今お帰りになってしまったけれども、梅原さんの場合でも、そういうようなことに頼るよりか、むしろ別個の立場において、事業計画の変更等ということでやっていけばいいのじゃないかという表現で、問題は、今のこういう補償問題を実際に扱っていきまする者に対しても、むしろその精神を守っていくことが第一義的だという表現の言葉をお使いになって、これもあまり評価しておられない。結局お三人の気持は、縮めていきますならば一致いたしまして、これらに頼ってただ補償を十分にしさえするならば私権保護というものは達成できるんだから、特別措置法というものはいいものだと考えることは甘過ぎるぞという、警告的な御意見がその底にひそんでおると私は認識したんですが、そう受け取ってお差しつかえございませんかどうか。私はむしろそう認識したいと、こう考えておるわけなんです。もしこれ、認識の仕方によって、それは違うんだということになりますると、考え方がおのずから変わっていかなきゃならぬ。私はどこまでも参考人方々の御意見を高度に尊重することが、口述をお願い申し上げた趣旨でなければならぬのであって、そういうふうに理解しておるわけなんです。これについて、私の認識をはっきりしていただくためにお答えいただいておきたいと思います。
  41. 須貝脩一

    参考人須貝脩一君) 確かに今おっしゃったような意味も含めてお話を申し上げた、それは確かでございます。しかし私のはもう一つ積極的に、そういうような規定もある、それを十分生かして規定したならば、これは土地収用制度の模範ともなるべきものであるから、そういう意味でこの特別措置法が案外将来一般化されて、ほかの場合にも及ぼされるという可能性も含んでおるわけで、そういう意味一つこの参議院で十分御審議の上、さらにみがきをかけてこういう規定をりっぱなものにするように、法律らしい義務づけ規定にするように、そういう点の御審議をお願いしたいものだという意味で申し上げたのであります。
  42. 相磯まつ江

    参考人相磯まつ江君) ただいまのお言葉は私が申し上げた趣旨と同じでございます。私も特別にこういう法案を用意しないで、現在の土地収用法の改正で、特に道路とか空港などの非常に公共性の高いものについては、ある程度緊急に手続を進めなければならない事情も認めるにやぶさかではございません。ですから、四十六条、七条のような規定法律上の義務として立法化された上で、そうして、そういうきわめて緊急を要する——あとの五号以下については、私は反対でございます。それは便乗的な事業じゃないかと思いますので、そういうものはやめていただいて、ほんとうに緊急性を要するものだけを特別法でなくて、土地収用法の中に織り込まれて、そして規定をしていただければ、その方がいいじゃないか、こういう趣旨でございます。
  43. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) これにて午前中の参考人の御意見に対する質疑は終わりたいと存じます。  参考人の方におかれましては、長時間にわたりまして貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  それでは午後一時四十分まで休憩いたします。    午後一時四分休憩    ————————    午後一時五十四分開会
  44. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ただいまから建設委員会を再開いたします。  公共用地取得に関する特別措置法案につきまして、午前に引き続き参考人方々から御意見を聴取することにいたします。御出席いただきました参考人は、東京大学法学部教授加藤一郎君、東京大学助教授渡邊洋三郎君、神戸市長原口忠次郎君、私鉄経営者協会用地部会長小山久保君、電気事業連合会専務理事中川哲郎君の方々でありますが、熊谷参考人は用務のため若干出席がおくれるとのことでありますから、御了承願います。  参考人方々におかれましては、御多忙中のところ、本委員会の急な御依頼にもかかわりませず御出席下さいまして、まことにありがとうございます。どうぞ忌憚のない御意見をお聞かせ下さるようお願いいたします。それでは、これより御意見を伺いたいと思いますが、時間の関係上お一人十五分程度にして願いたいと存じます。委員会の運びは、まず参考人の方から御意見の開陳が全部終わりましてから、委員各位から質問いたしますから、これにお答えいただくことにいたしたいと存じます。それではまず渡邊参考人からお願いいたします。
  45. 渡邊洋三郎

    参考人渡邊洋三郎君) 東京大学の渡邊です。私は専門は行政法ではございませんので、行政関係のことはよくわかりませんけれども、民法をやっております一人としまして、特に私権保護の問題に関連してお話したいと思います。  今度の法案は全体としまして、かなり立法者が苦心して作られた跡が見えるような気がするわけでありますけれども、こまかい点になりますと、幾つかの疑問の点があるわけです。今度の法案は、第一条にも書かれてありますように、一方では本来の、事業の円滑な遂行という目的と、他方で、損失の適正な補償を確保するという両方の目的が根本的に掲げられているわけであります。それで前者の目的の方はすなわち、事業の円滑な遂行という点につきましては、今度の法案が通過すれば、大体この目的を達することができるのではないだろうかというふうな気がいたします。それに反しましてあとの方の、損失の適正な補償という点につきましては、なお問題が残るような気がするわけであります。その点につきまして簡単に二、三の点だけ触れておきたいと思います。  申すまでもなく、公共福祉のために特定の個人が犠牲をしいられるわけでありますから、犠牲者の損失は、それが不当なものでない限り、最善の努力でこれを償ってあげるというのが正しい国の行政だと私は考えております。そういう点から考えまして、土地提供者の補償には、十分過ぎるぐらいの配慮があってもいいだろうと思うわけでありますけれども、現在の土地収用法及びその解釈には幾つかの不備がございます。この点につきまして、今度の法案がどの程度よくなるかということでございます。  第一に、これは憲法問題でもありますが、相当な価格の補償と申しますのは、土地収用に関しましては、やはり完全な補償、すべての損失をカバーできる完全な補償でなければならないと思います。しかし、もちろんよく言われますような、たとえばごね得その他で特別な利益を与える必要は全くないわけでありますけれども、正当な要求である限り、完全な補償をしなければならない、というのが現在の土地収用法の建前でもあると思います。ところで現在の土地収用法は七十条で、金銭補償の原則を掲げているわけでありまして、もちろん現在の土地収用法でも現物補償規定はおかれているわけであります。しかし、どちらかというと現物補償規定の方が例外的でありまして、またその規定も非常に不十分であります。たとえばかえ地の要求などにいたしましてもそれが相当であると認められるとき、あるいは起業者がかえ地を提供し得る可能性があるようなときに、現物補償をするわけでありまして、必ずしも十分ではないという気がするわけであります。しかしながら、今日土地はますます金銭では買えないものになっております。従って、金だけもらいましても行く先がなかなか見つからないというようなことで、困った人も現に相当いるわけでありまして、あるいはまた金だけもらって転業して失敗したり、あるいはいわゆる補償ブームに乗って湯水のごとく金を使って没落したり、これは個人的にも悪いと言えば悪いのですけれども、やはり金銭補償という制度の中に問題があるような気がするわけです。やはり収用前の現状をそのまま維持していく、収用前の生活状況をできれば収用後もそのまま再現できるというのが望ましいと思うわけでありまして、そのためには私は一般的に言って現物補償の方をむしろ重要視して、あるいはそれが原則であるというぐらいに考えてもよいくらいではないかというふうに考えるわけであります。その点につきまして、今度の法案では現在の土地収用法に比べまして、現物補償規定をより整備して詳しくしております。内容は御存じのことと思いますので省略いたしますけれども、その点では現行法よりも一そう整備しておりますので、確かに一歩前進したという感じがするわけであります。しかしこれでも、私の感じですけれども、まだかなり不十分だというふうな気がするわけであります。たとえば四十六条の規定あたりですと、やはり現物——これは狭義の場合にも当てはまるわけですけれども、現物に対する要求があった場合に、それが相当であると認められるときには「事情の許す限り、その要求に応ずるよう努めなければならない」というようなかなりばく然とした書き方でございまして、事情の許す限りとか、単に努力しなければならないとかというふうな書き方は、抜け穴的なところがあるかとも思うわけであります。私はむしろこういうところは、被収用者が現物補償要求した場合には、事業者の方でその要求に応じなければならないというふうに、はっきり義務規定を明記すべきだというふうに考えるわけであります。その行き先などがはっきりきまらなくても、事業を急ぐのだから金を持ってどこかへ行ってくれというのでは非常に困るのでありまして、やっぱり収用者の方で現在の土地にかわる別な土地を見つけてやる、それまではこっちでは追い出さないというような原則をはっきりさせた方がいいのだろうと思います。これはもちろん事業者だけでは決してできることではないわけでありまして、ただ国なり自治体なりが責任をもってかえ地の提供、その他に協力することにすれば、たとえば現在でも相当膨大な国有地とか、自治体の所有管理している土地現実にあるわけですし、行政当局と事業者とが一体となって土地提供者の生活を、ほんとうにまじめに考えてやるならばできないことではないだろうというふうに考えるわけであります。で、その点に関連しまして、四十七条の規定の場合にも、やはりせっかく生活再建計画というものを作りまして、その実現に努力するといういい方向が出ているわけでありますけれども、この点もやはり最後の、国と地方公共団体のところは「法令及び予算の範囲内において、事情の許す限り」やっぱり「実施に努めなければならない」という、これもやはりはなはだばく然とした具体的な保障のない規定のような感じがするわけで、やはり被収用者の側から言えば不安を感じるだろうと思うわけであります。私の個人的考えでは、やはりこの点の規定も、生活再建の計画に国、地方公共団体は協力しなければならないという協力義務ぐらいを、強く書いてもいいのではないかと思います。  それから第三番目の問題といたしまして、現行法の解釈では、通常受ける損失の中に、精神上の損失は含まれないというふうに解釈されているわけであります。しかし私は、自己の責任がなくて損害を受けたという点につきましては、損害賠償の場合も損失の補償の場合にも、本質的に違いはないのではないかというふうに考えます。従って、他人の不法行為で損失を受けた者は精神的損害を払ってもらえるのに、公共福祉のために犠牲にさせられた者は精神的損害を払ってもらえない、というのは片手落ちな感じがするわけでありまして、これは前から考えていた点でありますけれども、特に日本人の場合には祖先代々の土地に対する執着というものは強いものでありますから、そこを出て行かなければならないということはかなり大きな精神的打撃になるわけです。従ってその精神的打撃につきましても、法律の上で多少はっきりすべきだというふうに前から考えていたわけです。今日たとえば電源開発の水没補償などにつきましては、昭和二十八年四月の閣議了解の要綱では、謝金というふうな名目で精神的損害の補償を認めているわけでありますけれども、法律規定しておりませんので、はっきりとした権利とはなっていないわけであります。で、今度の法案が、せっかく一方で土地の提供者に対して適正な補償を従来よりもより多く考えてやろう、というふうな意図を含んでいるわけでありますから、そういう点につきましてもこの際規定した方がよかったのではないかというふうに感じるわけであります。  それから最後の点でありますけれども、金銭補償の場合に、土地の価格をいつの時期で算定して押さえるかということにつきまして、今度の法案では緊急裁決のときの時価で押さえるということになるはずだと思います。従って、緊急裁決から補償裁決のときまでの値上がりするような分は考慮されていない。この点は法定利息の分だけをそれにかえて考慮するというふうな規定になっております。これは確かに理論的あるいは学問的に考えれば筋としてはその通りであると思います。しかし現実の問題として考えますと、やはり問題が残るのではないかというふうな懸念がちょっといたします。実際には、収用によりまして付近の土地などが値上がりしていくような場合は不公平なことになるのではないか。それから、あるいは今度の法案でも、残地の収用に関する補償の場合には、これはあとからということもありますから、補償裁決の時期の時価できめるようになっておりますけれども、残地補償の場合とこの点がバランスがくずれてくるというふうな気もするわけでありまして、これは私も結論はわかりませんけれども、何かもう少し問題として残っているのではないかという意味で、問題だけは出しておきたいと思います。  以上、私の主として補償の問題に限定しまして感じましたことは以上のような点でありまして、結論的に申しまして、一方において事業を円滑に進めていくためにいろんな措置を講じるということとあわせて、もう少し補償の問題も整備した方がよかったのではないかというふうな結論でございます。
  46. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ありがとうございました。続いて東京大学の加藤教授にお願いいたします。
  47. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) 加藤でございます。私の専門は民法でございまして、ちょっとこの法律とは場違いのような感じもいたしますが、補償問題となりますと民法にも関係がございますし、財産権の問題でありますので関心は前から持っておりました。このたび公共用地取得に関する調査会が設けられましたときに委員に入りまして、答申案を作ったりするのをお手伝いした関係もあって一応意見を述べさしていただきます。  で、全体のこの法律の建前のようなことを申し上げてみたいと思うのですが、審議会の議論におきましても、たとえば現在の土地収用法でうまくいかないのは、起業者側の運用が悪いのではないかという意見もかなりあったように思います。私自身も従来の公共用地取得がいろいろ困難にぶつかってきているということは、起業者側に反省すべき点が相当多いのではないかと思っているわけであります。いろいろな例を私も見聞したことがございますが、たとえばダム補償あるいは道路の補償などにおきまして、初めは比較的安く値切っておいて相手ががんばればだんだん値段をつり上げていく。ことに最後になって非常に急ぐ段階になりますと、ぽんと金を出してそれで解決する。あるいは場合によってはボスを使って反対側の切りくずし運動をやる。それによって被収用者側の方ではいろいろ疑心暗鬼が生じまして、向こうがよけいもらっているのではないかというようなことでお互いに牽制し合ってなかなかうまく進まない。やり方としては、最後には伝家の宝刀として土地収用法を使えばよろしいわけですけれども、これもそういう状況のもとで使うことは非常に困難でありまして、伝家の宝刀といいながらなかなか実際には抜きにくいので、いよいよ最後になってせっぱ詰まって事業認定を申請してくる。そうしますと、それから始めますから結局期間が非常におくれてしまうというようないろいろな悪循環がございまして、そういう点をまず改めることが必要だということは私も痛感いたしております。ことに最近では地価の値上がりがはなはだしいものですから、かりに一年前に適正な補償をもらいましても、あと一年がんばっていた人の方がよけい金をもらう。これは前に金をもらった人はその金でよその土地を買っておられるはずですから、値上がり率は同じだとすればそう損はしないわけですけれども、目に見えて金額に違いがあるものですから、その点の不信感というものが非常に大きくなる。これも事業を非常に早く短期間にやっておればそういう不都合は目立たないのですけれども、ずるずるとやっているためにそういう点の不都合も目立ってまたそれが障害になるというようなことがいろいろございます。  それでまず運用を改めるということが第一に必要だろう。で、調査会の答申の中にも最初に運用の改善ということをうたっているわけでありますが、しかしそれでは運用の改善だけで、はたしてこの問題が解決できるかと申しますと、それは今までのやり方を責めるのも責めなければならないと思いますが、しかし今日の情勢においてそれではやはり問題が解決しないところにきているのではないだろうか。やはり何らかの法律的な改正が必要だろうというように私も思うのでございます。  そこで、今度は第二の問題といたしまして、法律を改正するとすれば土地収用法一般法の改正でいくか、それとも何か特別にいわゆる公共性、緊急性の高い事業について特別措置を設けるかという二つの分かれ道になるわけであります。この点は最初からどちらというふうにきまっていたわけではないと思うのですが、考えておりますと、土地収用法というのは戦後相当慎重に検討して作った法律でありまして、一般適用するにはこれでそう不都合な点というものはない。ことに戦前に比べますと、相当私権保護という点にも重点を置いておりまして、これを今急に急いで変えることには相当問題があるのではないか。他面におきまして現在何らかの措置が必要であると考えられておりますものは、主として交通関係の道路、鉄道等を中心といたしまして、主として基幹産業的なあるいは国土計画の中心となるような事業についてでありまして、そういうものについて特則を設ければそれで一応現在の役には立つのではないだろうか。そういう考えから一応特別立法でいくという態度が審議会ではとられたわけでありまして、私もそういう行き方の方が適切であるというふうに考えております。  そこで、今度は第三の問題といたしまして、その特別措置の内容というものは何か、その適用事業の範囲をどうしぼるかという問題になるのであります。で、事業の範囲と特別措置の内容とは相関関係になっておりまして、まあ特別措置の内容を強いものにすれば事業の範囲はごく限定しなければならない。逆にそう強いものでなければ事業の範囲は若干広くしてもいいということはあると思います。しかし、事柄の考え方といたしまして、やはり特別措置を作るとすれば、これは土地収用法の特則でありますから、できるだけ適用事業の範囲は狭くしぼるということが適切だろうと思われるのであります。そこで、この法律ではまず土地収用法適用事業の中から特別に公共性、緊急性の強いものを抜き出しまして、まあそれが答申では数が六つあったのですが、あとで電話が追加されましたけれども、ともかく事業の範囲をそういうふうにしてしぼる。さらにそこでしぼられた事業についても、それに当然にこの特別措置適用するのではなくて、審議会によってこの具体的な問題に特別措置適用するかどうかということを、もう一度事業認定という形でしぼりをかけまして、いわば二重のしぼりでそれを限定するという態度がとられたわけであります。まあその列挙された事業の内容を見ますと、交通関係の道路、鉄道、空港、それから都市の交通というようなものが中心になっております。そのほかダムであるとか、まあ治水関係、電気というような、国の基本的な国土計画あるいは産業に関する部門が入っております。さらにもう一つの観点といたしましては、大都市の問題が今日緊急でありますが、まあその大都市の交通、電話等ということで、大都市というしぼりも一つかかっております。それを全体を通じて見ますと、いわばもう幹線的な、一番基本になる大もとのところにこれを適用しよう。たとえば国道にいたしましても、一級国道と二級国道は幅員九メートル以上というふうにこまかく考えて答申ができておりますが、そういう幹線的なものに限るという観点がまた入っております。そういうわけで、私としましては、今日特別措置を作るとすれば、この程度のしぼりをかけてやるのが最も適当だというふうに考えているわけであります。  次に、適用される特別措置の内容でございますが、これはただいま渡邊さんからもかなり詳しくお話があったと思いますが、その中で一番問題になりそうなものは、いわゆる緊急裁決による特別収用という制度であります。これは従来の土地収用法におきましても緊急使用という形の特例が設けられていたのでありまして、それをさらに強くするのはどうかという意見もあり得ると思います。しかし今までの緊急使用の制度は、制度としてはかなり不完全でありまして、第一には要件がかなりしぼられていて簡単には動かない。それから第二にはこの緊急使用で認められるのは使用権でありまして所有権は移転しないのでありますが、はたして、たとえば使用権だけで、ダムができたときに、ダムの湛水——ダムに水をためるところまでできるかどうか。そういう原状回復の不能なことまでできるかどうかは相当問題であります。ただ実際にはそれを現在行なっておりますので、特別使用という形で実際には所有権を移したのと同じような結果を、似たような結果を認めているのであります。  さらに第三に、その補償としましては、一応原則として使用料しか払わなくていいわけでありますが、もし請求があれば起業者の見積った補償額を支払えということになっておりまして、それが適正な額であるかどうかには保証がないのであります。で、この緊急使用の制度でこの所有権移転をしたのと似たような結果を認めるということは、どうも制度として少し不自然でありますので、むしろこれははっきり所有権を移すということにいたしまして、そうして補償はむしろ収用委員会ではっきり適正な仮補償を定めそれを支払う、そうして出て行く人には仮住居の提供をする、そうして要件としましてはこの適用事業が緊急性、公共性の高いものでありますから、そう要件はしぼらなくていい、そういう形で緊急裁決による特別収用という制度声設けたわけであります。  この点は、補償の前払いを憲法要求しているのじゃないかという、違憲でないかという問題はございますが、御承知のように、前にこれは米の供出代金につきましてあと払いでも違憲でない、という最高裁判所の判決が出ております。そうして事柄といたしましても憲法の二十九条三項は別に前払いあるいは同時払いを要求はしていないだろう、そうしてその支払い時期と金額など全体を比べ、全体を総合してみて正当な補償になればいいというふうに判決も言っているし、学者も考えておる人が多いように思われます。ただ最高裁の判決は補償の支払いがおくれても別に特にプラスを払わなくていい、利息的なものは払わなくていいというように言っておりまして、著しくおくれた場合だけ何か考慮する必要があるというのでありますが、これは事柄としては少しでもおくれればやはりプラス的なものを払う、利息的なものを払うというのが正当だと考えられます。そこで今度の法律ではその点に年六分という、普通の民法の法定利息の年五分より一分高い商事利息と同率になっておりますが、年六分の利息をつける。これはつまり支払い不足の差額についてそういう扱いをしております。そういうわけで補償額自体が収用委員会の見積り仮補償ですから、そう差額が大きいことはないので、実質的にはほんとうの補償額に相当するようなものが支払われるだろう。かりに少なくともそれには利息がつけられるし、また緊急裁決から最後の補償裁決までの間に、これは期間ははっきりきめてなかったと思いますが、現在の特別収用の場合の六カ月というのよりもおそらくは実際に短くなるでしょう。そういうことになりますと、その間の土地の値上がりというのも大したものではないだろうと思うので、私は緊急裁決のときの価格で補償をしてもいいのではないかというように考えております。ただ実際問題といたしますと、値上がり分がそう大したものではなくても、しばらくたちますと周囲の補償されなかった土地はどんどん値上がりしていく、補償された人は前の価格で金を受け取ってそれを持ってどっかへ行くということになるので、何かアンバランスができるようにも考えられますが、まあ理論的に考えれば金をもらった人はそれでほかの土地を買うなり、投資をするなり、あるいは自分の事業をするなりしてそれはそれで生かすわけでありますから、理論的に言えばその間に不均衡は生じないということになるわけであります。そのほかこの法律あと手続を短縮するということをかなり努めておりますが、その反面としまして現物給付、生活再建、これは必ずしも十分とは言えない点があると思いますが、そういう配慮も若干いたしております。  なおこの法律ではさらに問題として残された点もいろいろあると思うのでありまして、たとえば補償基準の問題などは重要な問題であります。現在補償基準はそれぞれの官庁ごとに別の基準を作ってやっている。あすこでやった分よりこっちの方が安いという不つり合いの問題も出ております。これは必ずしもこの法律と同時にきめなければならないということはないと思うのでありまして、土地収用法でも一応の補償規定を置いておりますから、あとは具体的な細則的な基準を設ける。これもそれぞれの土地によって事情が違いますから、適用の仕方がそろばんではじくように、必ずしもそれに当てはめればすぐに金額が出てくるというものではないと思われますけれども、ともかく補償基準の適正な統一したものを作るということは、今後の課題として残されているように思われます。さらにその補償基準を適用する場合に、たとえば評価委員会というようなものを作りまして、こういう特別な事業についての補償を払う場合には、そこを通して適正な価格で交渉する、そうしてあとは向こうがごねてもそれを吊り上げないというような措置もこれは実際の運用として必要になるかと思いますし、評価委員会というような制度土地収用法の問題として今後検討する必要があるように思われます。そのほか、たとえば行政機構の問題、あるいは許認可の調整の問題なども今まで十分なされておりませんので、これはいろいろネックがあるとは思いますけれども、今後さらに検討を進めるべき問題だと思います。  そういうわけで、私としましては、一応この法律は今日の要求に沿うものであり、しかもその内容はかなりしぼって、ほんとうに必要なものだけに限って被収用者に不当な圧迫を加えないように配慮しておるというふうに考えまして、今後の措置はいろいろ残されておると思いますが、一応賛成したいと存じます。
  48. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) 続いて神戸市の原口忠次郎さんにお願いいたします。
  49. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) 私は神戸市長原口忠次郎でございます。目下御審議中の法案につきまして私見を述べさせていただきます。  戦後における国民経済の伸展に伴いまして、公共事業及び公益事業は年々膨張しておりまして、これを国家予算並びに地方公共団体の予算において見ましても著しく現われているのでございます。また現在の経済情勢からしまして、国内産業はますます発達する傾向にございますので、これらのためには限られた狭い国土を最も合理的に利用することが必要になってくるのでございまして、公共事業に必要な用地の確保と、国内産業発達に伴います用地の需要等が相待って、公共用地取得することが次第に困難となっていることはすでに御承知のことと存じます。  政府におかれましては、この事態に対処するため早急に適切な措置を講ずる必要があると認識せられまして、昨年七月建設省公共用地取得制度調査会を設置し、その具体的な改善案を諮問の上、今般、公共用地取得に関する法案を立案せられまして、今次の国会に提案されましたことは、まことに時機に即した措置であると信じまして敬意を表するものでございます。  昨年七月に公共用地取得制度調査会が設置せられますと、各種団体からいろいろの要望が行なわれたことを私は仄聞しております。その要望の大要について申し上げますと、政府機関及び公団等のいわば政府関係機関の要望といたしましては、現行土地収用法の改正強化ないしは特別措置法の立法化という傾向でございまして、また地方公共団体の要望といたしましては、現行土地収用法の改正も必要でございますけれども、公共用地取得に関するほかの諸制度の改正も強く要望していたと、記憶しております。  もっとも公共事業の用地取得方法としましては、まず民事上の売買による取得と、収用法協議成立による取得、あるいは裁決による取得という法律手続上の方法はございますが、収用法による裁決取得は、御存じの通り、私有財産制度の原則に対しまして重要な制限を加えるというような意味を持っているのと同時に、行政上の公益追求という観点から申しますと、公益事業遂行のための手段たる性格を持っているものでありまして、その適用につきましては、公正かつ慎重な態度が要求されているのは当然であると考えております。しかしながら収用法の発動につきましては慎重を期するのあまり、年々増大して参ります公共用地取得に支障を来たしましては、国民全体の福祉増進という公益事業が何ら進捗せずに終わるのではないか。これを調和する方法といたしまして、極力公共用地取得については当事者間で任意にかつ容易に取得することができるように、現行の諸制度を完備することが私は急務であると考えられるのであります。この制度の改善整備と並行いたしまして、当事者間で任意にかつ容易に取得することができない場合に、現行収用法の改正の実現ができるならば、現在の窮状を打開することができるのではないかと私どもは信じております。そこで私は当事者間において任意取得することができる諸制度の改善方法につきましては、後ほどに申し述べたいと存じますが、まず収用法の改正問題につきまして申し上げたいと存じます。  昨年七月公共用地取得制度調査会が設置せられまして、同調査会に対する各団体から要望されました意見で、収用法の改正に関する問題点としては、一口に申しますと、収用法規定する所定の手続に要する期間をできるだけ短縮して、早急に収用の効果を確保したいということであったと存じます。また昨年十月五日、横浜市、名古屋市、京都市、大阪市、神戸市の五大都市が連名で公共用地取得制度調査会に対しまして収用法の改正につき要望いたしましたが、その内容を今ここに示されています特別措置法案と比較いたしまして申し述べたいと存じます。  われわれ都市が要望いたしましたのは、現行収用法それ自体の改正でございまして、特別措置法という特別法の立法化は期待していなかったのでございます。と申しますのは、地方公共団体における公共事業特別措置法に限定された事業のみではございませんで、住宅を初め学校、衛生、消防施設等いろいろの事業がございまして、年々増加して参ります人口に対応しますためには、早急に事業用地を取得する必要に迫られているのでございますけれども、前に述べましたようなことで、その用地の取得に障害を来たしまして事業予算をやむを得ず次年度へ繰り越しているという現状でございます。ところがただいま提案されております特別措置法案につきましては、特定公共事業についてのみ事業の円滑な遂行と、これに伴う損失の適正な補償の確保という意味で立法化されているようでございますが、現行土地収用法制定の沿革における必要性と緊急性から考え、また現在の公共用地取得事情に照らしまして、ただ単に特定公共事業のみに限定することなく、現行収用法適用事業全般についても、事業の円滑な遂行とこれに伴う損失の適正な補償を確保する必要があると考えておるのでございます。  次に収用の手続上の問題でございますが、収用委員会は、特定公共事業にかかる収用または使用の裁決が遅延することによって、特定公共事業施行に支障を及ぼすおそれがある場合において、起業者の申し立てがあったときは緊急裁決をすることができることになっておりますが、収用の裁決が遅延するという抽象的な表現の解釈につきましては、いろいろとむずかしい点が生ずるのでございます。たとえば収用委員会裁決の申請があった後、一カ月ないし二カ月を経過してもまだ収用委員会裁決を行なわないときに、起業者緊急裁決の申し立てができるというようにし、収用委員会裁決遅延ということを客観的に明確に示すとともに、収用委員会審議を促進するようにしていただきたいのでございます。  第三には、現行収用法及び特別措置法案におきましても、収用または使用することができる権利には、いわゆる借家権及び不法占拠による占有権は、適用外に置かれているのでございますが、その理由としては、おそらく占有権は形式上においては権利ではあるが、実体的な内容を有する、たとえば土地の賃貸借あるいは使用貸借地上権のような、いわゆる本権と異なっているから、収用または使用の対象とならない、こういう解釈によっているのではなかろうかと思われるのでございます。もっとも現行収用法上において、土地または土地の貸借権及び使用貸借権、地上権等を収用すれば、収用法規定に基づき土地所有者がその土地起業者に引き渡すときに、これらの占有権を解決することができるものであるという解釈のもとに、直接には規定されていないのであると考えますが、法律解釈論はともかくといたしまして、もし占有者がその占有の権利を主張するときには、起業者土地の地上権、使用貸借権賃借権等の権利不存在の確認訴訟を提起いたしまして、その判決を得てからでなければ強制執行をすることができない。かように訴訟の判決を得ることを要するものであるということでございますと、それに相当の期間を要しまして、せっかく緊急裁決という制度により裁決を得ても、完全な引き渡しを受けることができないという事態に直面することになるのでございますから、借家権不法占拠による占有権についても、収用または使用の対償の権利にせられたいと考えているのでございます。  第四番目に土地区画整理法による区画整理施行中の仮換地、土地改良法による土地改良事業施行中の保留地につきましては、収用法適用するにあたりまして、その所有権を把握するのにいろいろな疑義がございまして、現行土地区画整理等との間に調整する規定がございませんので、たとえば仮換地及び保留地を使用している者を、その土地の所有者とみなすような明文を設けられ、もっとその事務の簡素化をはかられたいのでございます。  第五には、損失補償額を算定する時期については、現行収用法及び特別措置法におきましても何らの規定がございませんが、その額を算出するにあたりましては裁決時の価格によることなく、事業認定の時期における価格によられるよう、法文を明確にせられたいのでございます。と申しますのは、収用法による用地の取得は、任意の売買協議が不調に終わってから、その相手方に対し収用手続をとるのでございますが、任意の売買協議に応じて売却した者と、裁決により補償金を得た者との間に、期間経過による価格の相違が生ずるようでは、任意の売買協議により土地を提供した者、すなわち公益事業に対し率先して協力した者はいわゆる損をする、俗にいう正直者のばか損というような、事業の協力者に不信の感をあるいは抱かせるのではないかというようなことがないように、公共用地取得における価格の公正という観点で考慮されたいのでございます。  第六に、公共用地取得にあたりまして最も問題となる点は、その用地の価格でございます。現在その価格を算定する土地の適正評価のきめ手となる基礎がございませんので、固定資産税評価額、民間の評価機関による評価、当該都市の近傍類地の売買実例等を参考としている実情でございまして、種々の価格が流布されて価格決定に困難を加えているのでございますから、公的な評価機関を常設いたしまして、価格の算定にもっぱら当たらせる、また収用委員会はその評価機関意見を尊重して、補償額を決定するようにせられたいのでございます。  次に第七番目に、現在公共事業起業者は多々ございまして、たとえば神戸市内におきましても、本市のほか建設省、郵政省、兵庫県、日本国有鉄道、電電公社、住宅公団のように数多くございますから、これら各起業者がその公共用地取得に用いておる補償基準は、それぞれ異なっているのでありますから、公共事業施行につきまして多くの不都合を生じているのでございます。よって国家的な見地から統一的な補償基準を策定せられまして、もってこれら国、地方公共団体、公社等の起業者は統一的な基準を用いるよう要望いたしたいのでございます。  特別措置法案によりますと、特定公共事業に必要な土地建物等を提供する者が、その対償として現物の給付の要求をしたとき、または土地等を提供することによって生活の基礎を失うような者に対しては、現物等の給付のほか、そのあっせんを行なうことになっているのでありますが、現在のように住居の入手につきましては、高額な資金を要する事情のもとにおきまして、これらの者に対しまして、住宅金融公庫による住宅建設資金の融資の希望がございますれば、優先的にその金額を融資するとか、あるいは日本住宅公団の住宅、または公営住宅等に優先的に入居することができるように、また事情によりましてはその使用料を減額することができるような措置等を講ぜられたいのでございます。以上の通り収用法に関しましての改正要望点を申し上げました。  次に、収用法以前において、収用の取得を容易に促進することができるよう諸制度の改善点について二、三申し上げてみたいと思います。  第一は、譲渡所得税の減免措置でございます。公共用地取得交渉にあたりまして、買収価格に次いで用地売却に対する所得の課税に関する諸問題が、大きな比重を占めておるのであります。昭和三十四年四月一日の租税特別措置法の改正以前におきましては、収用法適用事業のため、土地を提供する場合の土地譲渡者には、資産再評価税のみが課税されておったのでございますが、租税特別措置法の改正以後におきましては、譲渡所得税を課せられることとなりました結果、公共事業用地として買収する価格が安いことと、課税額の増加と相まって、民間における売買よりむしろ不利な条件となっている現状でございます。従いまして、現行制度の税法につきまして、収用法適用事業用地を取得したときは、すべてこの特例適用を受けることができるようにするとともに、土地譲渡者に対しまして課税するとき、その者の所得と分離して課税するものとし、なお現行の税率を大幅に減免されたいのでございます。また土地譲渡者から代替地の提供を要請され、起業者がその代替地を買収する場合において、その代替地を提供する者に対しても、同様に租税特別措置法適用を受けられるようにせられることを望んでおります。  第二番目には、農地法による農地転用の許可事務でございます。現在都市において公共事業用地を取得するにあたりまして、その市域内の農地を転用して使用する場合が非常に多いのでございますが、現行法令上転用許可手続につきまして非常に多くの日数を要し、事業の遂行を妨げているのでございます。都市内の農地につきましては、現在漸次市街地化している傾向にございまして、都市形態から申しましても、農村の農地と異なっている点がございまして、また都市内における農地につきましては、それに接続する市街地と一体的に公共事業の計画が施行されるのでありますから、その農地転用についての制約も農村のそれとはおのずから異なっていることがあると考えられております。従いまして、都市が公共事業のため農地を転用して使用する場合には、その許可事務を府県と同様な取り扱いをするように、法令を改正せられることを私どもは希望いたしております。  なお、最後に要望いたしたい点は、最近土地に対する需要量が増大いたしまして、また他方適地の相対的な減少と投機による仮需要の激増によりまして、地価はますます上昇する傾向にございます。ことに都市におきまする市街地につきましては、その傾向が非常にはなはだしく、最近一年間における地価の上昇率は三〇%からはなはだしいのは五〇%以上になっている傾向でございます。従いまして、そのために公共用地取得はますます困難でございます。  どうか各位におかれましては、このような実情をよく御賢察下さいまして、私がただいま申し上げましたようなことは、これは全国の都市の各市長の願いでございます。どうぞよろしく御賢察のほどをお願い申し上げまして、私の私見を終わります。
  50. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ありがとうございました。  続いて、私鉄経営者協会用地部会長小山さんにお願いいたします。小山参考人
  51. 小山久保

    参考人小山久保君) 私は私鉄経営者協会用地部会長小山でございます。  今回政府が国会に提案いたしました、公共用地取得に関する特別措置法案は、公共的施設の整備に必要な用地の確保と利用の高度化を目的とする趣旨であります。私どもといたしましては、本法の実現に非常な期待を持っておるものでございます。御承知のように、私鉄は国鉄と連絡直通いたしまして、重要なる輸送を分担しておる公共事業でございます。最近都市の膨張が著しく、通勤通学の輸送需要はますます増大いたしまして、これに対応する輸送力の増強が強く要望されているところであります。そこで私ども私鉄は、これにこたえまして、かねてから長期計画を立てまして、車両の増備はもちろん、地下鉄網の早期完成、都心乗り入れの促進、ホームの延長、側線の敷設、変電所の増設、踏切の整備、さらに新線の建設、施設の整備充実に努めているものでございます。従いまして、これに伴う鉄道用地の早期取得と確保が絶対の要件となっているのでございます。このような次第でありまして、少なくとも都市交通におきましては、本法が一日も早く適用できますよう要望する次第でございます。  用地買収交渉の進展しない事例といたしましては、京成電鉄の押上線立石駅ホーム延長に伴う用地、東武鉄道北千住駅地下鉄二号線乗り入れに伴う用地、帝都高速度交通営団荻窪駅付近の用地、同じく南阿佐ケ谷駅出入口用地、京阪電気鉄道の寝屋川市都市計画実施に伴う、寝屋川駅移転に伴う用地買収等がございます。一例をあげますと、京成電鉄の立石駅は、東京都特別都市計画高速度鉄道網のうち、地下鉄第一号線の一部開通によりまして、押上駅より現在すでに乗り入れを実施しておるのでありますが、現在駅は三両連結の電車しかとまれないのでありまして、全線開通までには八両がとまれるようにホームの延長計画をいたしまして、用地の買収交渉を昭和三十四年九月から開始いたしまして、地下鉄開通の三十五年十一月を目標にいたしまして交渉を続けていたのでありますが、地元関係者二十七名は対策協議会を結成いたしまして強い反対を続けておったのであります。そしてなかなからちがあきませんので、やむを得ず三十五年三月事業認定を申請いたしました。それが満一カ年の後、ことしの三十六年四月認定がおりました。現在買収済みは九名、買収見込みの人は五名、まだ未定の人が十三名となっておるのでございます。このようにして遅々としていたのでは、現在の土地収用法のみに依存しておったのではなかなか開通に間に合わなくなるのでありますけれども、今大手十二社が都心乗り入れということを計画しておる今日、全国私鉄鉄道用地委員会でもこれを問題にいたしまして、適正な補償をなして、強力な措置を講ぜられることを切望している次第であります。
  52. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ありがとうございました。  続いて電気事業連合会専務理事の中川さんにお願いいたします。
  53. 中川哲郎

    参考人(中川哲郎君) 最近におきまする電気の需用の伸びの状況でございますが、昨三十五年度は前年に対しまして一八%という異常な伸びを示しているのであります。一昨年の三十四年度は一七%でございまして、二年間引き続きまして電力の需用の増加が、今までにない大きな率を示している状況でございます。これを欧米諸国におきまする需用の伸びと比較いたしますと、約二倍から三倍程度も大きい割合でございます。電気事業者といたしましては、過去におきまして電源開発には相当の努力を傾注して参ってきたのでございますが、最近のこの需用増加のもとでは、供給力の増加よりは需用の増加がはるかに大幅な状況を示しているのでございまして、結局三十五、六と需給のアンバランスという状態が非常に懸念いたされております。こういうような状況でございますので、私どもとしましては電源開発計画を改定いたしまして、電源開発を急速に推進することといたしました。電源の開発並びに関連施設の建設にあたりましては、電力業界といたしましても、多年の研究と経験によりまして、技術的には非常に著しい進歩を遂げております。また合理化も進められて参っている次第でございますが、この間に問題となります点は、用地の取得問題でございまして、これが迅速かつ円滑な電源開発を阻害いたしまする最大の隘路となっております。この隘路を打開いたしまするためには、不当な理由によりまする買収の拒否、あるいは補償費の不当な引き上げというような事態を防止いたしまして、急速にかつできるだけ低コストで電源の開発等を実施し得るような、制度的ないろいろな改善が必要であると存じます。昨年政府におきまして、公共用地取得制度調査会が設置せられまして、学識経験者多数を加えまして慎重審議の上、答申がありまして今回の立法措置と相なったわけであります。もちろん用地取得問題は、非常に幅が広いものでございまいすから、今回の立法ではそのうちの用地取得の迅速化という点を中心にして、特に公益性及び緊急性の高い事業につきまして、法的措置を講ぜられたのでありまして、本法案に対しましては私どもとしては原則的に賛成をいたすものでございます。  この法案の個々の内容について、若干意見を申し上げたいと存じます。公共用地取得につきまして現在土地収用法がございますが、事業の遂行のための公共用地取得を迅速かつ円滑に推進いたします上において、なお十分でない点がございます。この法案におきましては、従来補償問題解決に関しまして、種々隘路となっておりました諸点を大幅に改善を見ている次第でございまして、第一点といたしまして、法案の第九条におきまして、特定公共事業認定申請書縦覧を当該市町村長が怠った場合におきまして、起業地を管轄する都道府県知事は、起業者の申請によりまして、当該市町村長にかわってその手続を行ない得るといたしております。  それから第二点として、第十五条におきましても土地調書及び物件調書作成にあたりまして、立ち入りの拒否、妨害等によりまして、土地収用法三十五条一項の規定による測量または調査をすることが非常に困難であります場合は、他の方法によって知ることができる程度でこれらの調書作成すればよいということにいたされております。  また第三点といたしまして、法案の十八条におきまして、裁決申請書縦覧の場合におきましても、当該市町村長にかわって都道府県知事がその手続を行ない得るというふうにいたされております。  こういう三点につきましては、従来電気事業者が土地収用手続を進めます上におきまして、しばしば問題にされて、いろいろな点を見てきたのでありまして、この隘路が本法の適用によりまして解決されることは非常に好ましいと思われます。  一例を申し上げますると、関西電力の南大阪変電所の建設にあたりまして、これは電源開発会社の木津川の電源を受けまして、大阪へ流す変電所でございまするが、これの事業認定申請が地方公共団体におきまして百五十日間縦覧がおくれた場合もございました。そのために送電線を受けます変電所の準備がおくれまして、約六カ月の間受電が遅延した、こういう事例もございます。  それから法案の改善点として特にとり上げて申し上げたい点は、第二十条におきまして、現行土地収用法上の緊急使用制度にかえまして、緊急裁決制度を設けられたことでございまして、これは現在の緊急使用制度が、使用期間が六カ月と限定されておりまして、この六カ月の間に収用裁決を行ない得る見通しがない場合は、事実上この緊急使用の制度が許可され得ない事情にございます。従いまして、本来その目的といたします公共事業施行の遅延防止という面におきまして、ほとんど実効を示していなかったのでございます。本法案第二十条におきまして、概算見積り補償金の支払いあるいは担保を提供することによりまして、緊急使用あるいは収用ということができるようになりましたことは、一方におきまして私有財産権保護に万全を期しております反面、公共事業の円滑な遂行をはからしめる上におきましては、この法案の最上の改善点であろうかと存じます。  さらにつけ加えて申し上げたいのは、この法案の付則におきまして新たに公共用地審議会制度を設けまして、昭和三十七年の三月三十一日までの間に限りまして、建設大臣の諮問に応じ、公共用地取得制度に関する重要事項を調査審議するということに相なっております。  私どもは公共用地取得問題としては、さらに幾多の残された問題があると存じます。特に電気事業といたしましては一般補償あるいは公共施設等に対する補償、こういうものにつきまして明確な補償基準を設定していただきたいのでございます。公共用地審議会がこういった基準問題等につきましても、今後検討せられることを大いに期待いたしたいと存じます。  以上申し上げました点は、結論的に申しますと、本法案現行土地収用法上の問題を大幅に改善していることについて、本法案に対しまして替意を表するものでございまして、電気事業としまして、今後電源の開発あるいは関連重要施設の建設の推進に非常に寄与されるところが大きいと確信いたします。
  54. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ありがとうございました。  続いて電力建設協力会会長の熊谷さんにお願いします。
  55. 熊谷太三郎

    参考人熊谷太三郎君) 私はただいま御紹介にあずかりました社団法人電力建設協力会会長の熊谷でございます。協力会の立場から、今回の特別措置法案につきまして、少しばかり意見を述べさせていただきたいと思います。  まず、率直に結論から申し上げますと、私どもは本法案に対しまして全面的に賛成の意を表しますとともに、一日も早くその成立を期待するものでございます。以下その理由につきまして簡単に申し述べたいと存じます。  御承知かと存じますが、わが電力建設協力会は、電源開発の建設工事を受注いたします業者で組織いたしております団体でありまして、建設工事を通じてわが国の電源開発に寄与しようという趣旨のもとに創立され、すでに十年の歳月を経て今日に至っておるのでございますが、その間、私どもの受注いたしました重要な電源開発工事は、件数にして約八百五十件、金額にいたしまして約四千億円に達しておる実情でございます。ところで、これらの工事を実際に施工するにあたりまして、当面いたして参りました最も困難な問題の一つは、往々にして用地問題の解決が非常におくれたという点でございます。申すまでもなく、用地問題は、本来は発注者側において解決さるべきものでありまして、われわれ受注者には一応はほとんど関係はないはずのものではございますが、実際におきましては必ずしもその理論通りには参りませず、この用地問題の未解決のためにどれほど損害をこうむったか、はかり知れないものがあるのであります。と申しますのは、発注者におかれましては、用地またはその補償に関しましては種々の困難な経由を経られました後、常識的に考えられまして、もはや工事に着手しても差しつかえないという見通しを立てられ、そのもとに工事を発注され、それをわれわれが受注して工事に着手するということに相なるわけでございますが、いざ工事に取りかかってみますと、このような常識が常識通りに参りませず、用地問題が意外に難航する場合が少なくございません。さればといいまして、その場合それに相応いたしまするだけの工期の延長でありますとか、あるいは用地問題が解決いたしません間、いわゆる手待ちという問題が起きますが、その手待ちによります工事費の増額等は実際望んで得られないことでありまして、なかなかそういうものは認めてもらうわけにはいかぬのでございます。すなわち言いかえますと、用地問題の解決の遅延は、結局におきましてわれわれ受注者にいわゆるしわ寄せをされる場合が非常に多いのでありまして、そのための損失、犠牲がばく大な額に上がっているのでございます。このような次第でございますので、これらの弊にかんがみまして、われわれ協力会におきましては、この問題の対策といたしまして、あるいは土地収用法の改正及び合理的補償基準の設定等の点について、しばしば政府、議会等に従来とも陳情いたして参った次第であります。あるいはまた電源開発関係の発注者側と懇談会を開催いたしまして、この問題を協議いたしましたり、または同僚団体でありますエネルギー経済研究所並びに社団法人土木工業協会等と共同いたしまして、その解決策を研究いたしましたり、種々今日まで努力を続けて参った次第でございまして、幸いにしてこの私どもの多年にわたる要請が認められ、今回この法案の提案をみるに至りましたことは、衷心より私どもといたしましては喜んでいる次第であります。従って、この法案の個々の条文に関しましては、いろいろこまかい点につきましてはそれぞれの専門家の御意見があるかもしれませんが、大筋といたしましては、双手を上げて賛成申し上げる次第でございます。  さらに本法案の内容を拝見いたしますると、大いに意を強くいたします点が三点ございます。第一は、公益優先の原則がはっきり示されている点であり、第二は、被収用者に対する国家補償の点が非常に明確徹底化されている点であり、第三は、本法案土地収用の処理をきわめて時宜に適したようにスピード化されている点でございます。これらの点におきましては、広く一般的な国民的な見地から考えましても、まことに時宜に適した名案であるといわねばならないと存じております。  私どもといたしましては、当初から申し述べましたように、一日も早くその成立をみることを念願いたしますとともに、あわせてその実施にあたりましては、いろいろ細部の点としましてその運用よろしきを得まして、その趣旨が十分に貫徹されますことを切望いたしてやまない次第でございます。  大へん簡単でございますが、以上申し述べまして私の意見といたします。
  56. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ありがとうございました。  以上をもちまして参考人の方からの意見の御開陳は一応終了いたしました。  これより参考人の御意見に対して質疑を行ないたいと思います。御質疑の方は順次御発言願います。
  57. 田中一

    田中一君 加藤先生にお伺いいたしますが、あなたは公共用地取得制度調査会に参画しておられるということを知らなかったものですから、これはそうであったならばきょうの参考人ともどもお見えになるのは不適格であったのじゃないか、こう思うのです。これは私の考えでございます。  そこでお伺いいたしますが、この第二条の事業の、特別公共事業の中に災害復旧並びにこれに関連する改良事業ですね、含まれなかったという理由はどこにありましたか。これはちょっと失礼になるかもわかりませんが、知っている仲間として一つお許し願いたいのです。この答申案を作るときに、災害復旧並びにこれに関連する改良事業が特別公共事業として認定されなかった理由ですね、緊急性がないという理由、であったのかどうか、伺っておきたいのです。第二条の第一項から第八項までありますが、その中に治山治水はございます。しかし災害復旧並びにこれに関連する改良事業というものは、事業として指定されないようになっているんです。
  58. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) 最初に不適格というようなお話でございましたが、私は呼ばれたから参ったんで、ことでそういうお話を伺うことはちょっと意外でございます。(「適格ですよ」と呼ぶ者あり)しかし衆議院の方でも田上さんが出ておられまして、そういう適格、不適格ということがきまっておりますならば、これから私、伺いませんですが、(「そうじゃなかったんです」と呼ぶ者あり)今の災害復旧事業は私は詳しくは存じませんので、適当なお答えになるかどうかわかりませんが、土地収用法適用事業の中に上がっておりますんでしょうか。どうも土地収用法にも直接災害復旧事業というのは上がってないような気がするのでございますが、そもそもこの特定公共事業は、土地収用法の中で特に緊急性、公共性が高いものを抜き出すという大体の建前できておりますので、土地収用法の中に、非常災害の場合に土地の収用の規定はございますけれども、適用事業としては上がっていないんでないかと思いますが、そういうことで治山治水というようなことが入ってくれば、その中で必要なものはある程度入るということではないかと思います。
  59. 田中一

    田中一君 論議はされましたか、関連する事業として。
  60. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) それについては論議しなかったように思いますが。
  61. 田中一

    田中一君 それからこの前提として、今後この法律に指定された事業を行なう場合には、全部この特別措置法によって行なうというのが前提に立っておりましたか。それともあるいはその前に話し合いですね、買収交渉をするんだということが前提にあって、この答申が持たれたものですか。
  62. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) その点は今までといき方は変わらないつもりでございまして、まずそれは誠心誠意初めに、事前にいろいろ交渉して、どうしてもいかない場合に初めてこれを適用する、という考え方でできていると思います。
  63. 田中一

    田中一君 初めから全部の事業をこの特別措置法適用していくという考え方には、どこかに非常な大きな困難あるいは間違い、あるいは理論的な不的確さというものがあるために用いないんですか。
  64. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) その点は、私個人の意見といたしましては、一応なるべく広く網をかける、と言ってはおかしいですが、網をかけて、初めから適用事業の中で処理をしていく、というようないき方が望ましいのではないか、という考えを持っておりましたが、この法案のいき方はそうではないように思います。実際に法律適用するということになりますと、やはり強制権を発動するという形になるものですから、あとの問題がどうしても動かなくなった段階に初めて出てくるという形に、どうしても技術的にならざるを得ない点があるように思われます。
  65. 田中一

    田中一君 これはもう一ぺん加藤さんに伺うのですが、原口参考人からもいろいろお話があったように、御要望があったように、どの時点で価格をきめるかということです。たとえば道路にしても、出発点と終着点があるわけなんです。その場合一カ所あるいは二カ所が買収が終わらぬと、これは道路・の機能を果たせないことが多いわけですね。そこでそういう場合、全部かけてしまったらどうであるかというような考え方は、これは加藤先生自身ではお持ちになったことはございますか。ということは、全部の事業区域というものに対してこの法律をもって網をかけるということです、この法律の。今度作った答申案ではそういうことは考えておらなかった、抵抗というか、反対が多いときには、それだけを抜き出して法律適用させるという考えに立っておったというお話でありますが、あなた個人のお考えとして、全部一網かけてしまった方が、その法律の目的を達するのに早いのじゃないかというふうな気もするのですが、その点どうですか。
  66. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) その点私は網をかけるといってはあるいは不適当かもしれませんが、先ほどほかの参考人の方がおっしゃいましたように、網をかけたそのときの価格で買収しろという意味では私はないのでありまして、つまり初めに適用ということをはっきりきめていれば、あとがスムースにいくだろう、これは現在たとえば問題がこじれてから収用法にかけるものですから、そのかけるときに、また摩擦が起こってごたごたする、そうしてそこからまた手続を始めるものですから、どうしても事業がおくれがちという結果になるので、初めから適用事業というものをはっきりきめて、そのワクの中で処理していけば、よけいなトラブルとか遅延がないだろうという意味で申し上げたのであります。やはり補償の価格は収用のきまったとき、ここで言いますと緊急採決のときということにしませんと、つまりその前、それまでに金をもらっていないわけですし、また任意交渉に応じないということも、現在の法律の中で許される合法的な処理の仕方でありますから、やはり収用がはっきりきまるときまでは、価格は前の価格によるということはできないのじゃないか、こういうふうに思っております。
  67. 田中一

    田中一君 そうすると結局今までの東京の高速道路の例をみましても、まあシラミつぶしに一人ずつ一人ずつつぶしていっているわけです、実際に。いよいよだめになった場合にはその部分だけ収用法適用して収用しようということになるのです。そうなりますとどうしても今の時価主義と申しますか、緊急裁決があったという場合、その場合の価格というものは、前の価格よりも時間的にズレがあれば、これはむろん価格の差異はあるわけなんですね、従ってその抵抗が強いから、部分的に適用しようという場合には、どうしても価格の差というものは当然起こってくるわけなんですよ、現に現行法で、現行法を裏として土地の買収をやっている場合でも、おのおのみんな違うのです、価格は。どうしても早く承知した方が低いところへ来るのです、これは時間的にもそうなるわけです。これをそういうことのないようにするには、いわゆるあなたが先ほどおっしゃっているような不信感、これが一つ二つと個別爆撃を加えて買収していく場合に、そういうものは明らかに不信感がますます増大してくるわけなんです。そうするとどこまで行っても不信感というものはぬぐい切れなくなってくると、最後にがんばった者が得をするというような形にならざるを得ない、今のお話の緊急裁決の時期の価格ということになりますと。私はそれでいいと思う、それでいいと思うのですが、それならば全事業区域に対して一網にかけてしまって、初めから全部用地費というもので買い取ってしまう、買い取ってしまってから後に仕事を行なっていくということになりますと、今、熊谷参考人が言っておるように、その仕事をする方の側でとんでもない損害を受けないで済むということになるのです。そういう方法が現在もこの土地収用法全体に対する、これはこの法律だけでなくて、土地収用法に対する考え方としてはどちらが正しいのでしょうか、一網かけてしまってから、用地を取得してから仕事を始めるという方が、そのかわり事業全部をこの土地収用法にかけるわけです。いろいろ学者の中で意見のあるということはそうですが、それは先生どうお考えになりますか。
  68. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) 今おっしゃったのはいろいろな問題を含んでおります。ちょっと問題が幾つかになるように思いますが、まあ私の考えとしましては個別的な交渉を、やはり、やらないわけにはいかないので、もしやるならば少し早目からやって、全体の時期をなるべくそろえて、その間に外観の不つり合いがないようにするのだというような措置が必要だと思うのですが、しかし実際に取得の時期が違うということはある程度やむを得ないのじゃないか。そうしてそれがつまり合理的な地価の値上がりの範囲内ならば、これもまたやむを得ないというように思っているわけです。ただ、その中には、地価の値上がりだけじゃなくていわゆるごね得というのも含まれているので、そこの区別がむずかしいと思うのですけれども、そのごね得を防ぐためにはたとえば評価基準をはっきり作って、それを容易に動かさない、初めからやはり相当な額を出して交渉するというような方法も必要だと思うのです。それからまたあとの不均衡を改めるためには、取得の時期をなるべくそろえて、また非常な不均衡があった場合には、あとから追加払いをするというようなことを考えておられる方もあるようですが、この点はちょっとなかなか認めるのはむずかしいと思いますけれども、いろいろな多角的な方法が必要だと思うので、ただ全部に一時に網をかけて土地収用法でやるということは、手続的にも相当大へんなことでありますし、実際には非常にやりにくいのじゃないかというふうに思っております。
  69. 田中一

    田中一君 ことに公共事業公共性ある私企業は割合に弾力性ある方法をとっておりますけれども、年次計画の予算のうちの用地費というものが確定しているわけですね。そのワク内でものをやろうという場合には非常に困難が伴うわけです。これはもう用地の買収に携わっておる人たちの問題じゃなくて、その事業に対する用地費支出の時期、それから予算上の制約といいますか、がいつも問題になるわけですよ。本年度の当国会の予算委員会でもこれは相当大蔵大臣も言っておるのです。国が直接用地を取得しようという場合の大体の用地の量、それから予算的な規模はわかっているわけなんですよ。全部ひとまとめにして用地だけとにかく買ってしまう、というようなことにならないものかということを提案しているのです。ことに今、先生おっしゃっているように、ごね得なんということを言っておりますが、これは、先生、国民に対してはそういう言葉はありようがないのです。確かに、自分が買収交渉に応じないという態度は、これは売りたくないから応じないのです。それをごね得なんという言葉で表現されると、はなはだそれはおもしろくないと思うのです。これがこの現行土地収用法あるいはこの特別措置法によって、きまったものに対してごねてまたふやすというのじゃなくて、単なる私契約的な買収交渉で自分の方は百万円の予算しかないから、百万円で売ってくれと言うのに、こちらはとんでもない、二百万円でなければ売りませんよと言うのは、これはごね得じゃない。これは当然なんですよ、売りたくないのだと言うのは。それを新聞等でごね得という言葉を見ますけれども、これは失敬な話だと思うのですよ。何らかの方法でこれを余分に取ってやろうというのじゃなくて——そういう人もいるかもしれません、そういう人がいてもそれは正しいことなんです。売ってくれ、売りませんということなんです。百万円じゃなくて二百万円で売りましょうということは、ごねているのじゃなくて予想される利益を考えるから言うわけです。自分の持っている土地なら土地の価格というのは将来こうなるだろうという予想があるから要求するのであって、これは山の中の土地をやたらにどうこうということは割合に少ないのですよ。ごね得なんというのは僕はあり得ないと思うのですよ。そういうことは当然、自分の持っている権利を放すわけですから……。その点はどうなんです。ごね得の要素があった場合にはどうだとおっしゃるのですか。いけないと言うのですか。
  70. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) まあ私はごね得というのもあると思っておりますが、つまり本人の主観的意思はどうか、これはわかりませんけれども、結果的に見て、ごねたために事業者の方の側で非常に急いで、よけい金を払うという場合もあり得ると思うのです。普通言われるほどはないかもしれません。そのごね得ということは、これは取られる方が悪い、というより私は起業者側のやり方に非常に欠陥があったというふうに思っておりますので、起業者のやり方を、前から申し上げておりますように、いろいろ改める、特にそのためにはいろいろ例を聞いてみますと、たとえば道路の買収交渉でも、時価一万円くらいするところを二千円くらいから始めるというような例を人から聞いたようなことがあります。だんだんそれが上がっていくというような例があるわけですね。ですからやはり初めから適正な評価をするような機関——評価委員というか、評価委員会というかそういうようなものを作って、そこで、さっき網をかけるという話がございましたが、そういう形で網をかけるといいますか、全部そこを通ってこなければこういう事業はやらないのだというようなことも、将来考えていく必要があるのじゃないか。そういういろいろな面から現在の不適正なやり方を正していくように、運用の面からも制度の面からも今後考えていく必要があるのじゃないかというふうに思っております。
  71. 田中一

    田中一君 この答申案にも書いてありますが、補償基準がないために非常な不安感があるわけです。私ども補償基準を作れ、それも法律で作れということを要求しておるのですが、これは答申案では将来の問題として残してありますけれども、評価鑑定制度、それから補償基準というものを、当然これは並行して持たなければならぬのじゃないかと思うのです。持たない場合には、やはり相当な国民のこの法律に対する不信感、いわゆる行政権に対する不信感が増大するのじゃないかと思うのです。いろいろ政府に資料要求して、一体、今回の指定される特定公共事業事業者の、現在、内規程度のものでもかまいませんから、補償基準を持っておるか調べてみても持っていないところが多いのです。そうすると、そういうものを法律できめておけばごね得が不可能になる。ごね得というよりも、その基準によって、自分のふところ勘定ができるわけなんです。何も、幾らで買うのか、その価格というものがどういう要素を持っておるかわからぬで買い取りにくるから、幾らでも高い、自分の十分の値段を言おうとする場合があるのです。これはまあ、答申書に対する質問でも……あなた、おればかりの意見じゃないと言われればそれきりですけれども、なぜ評価鑑定制度なり、あるいは補償基準なりというものを明定しなかったか。明定した方がいい。先生、先ほどは、これはまあこの法律案と一緒になってしないでも、あとからやってもいいものだけれども……という御発言がありましたけれども、私は一緒に出すべきだと思う。そこに信頼感が生まれると思う。一応の被収用者の腹勘定はおのおの自分で持たれると思うのです。その点は、どうしてこれはあとに残して——回していいというお考えになったのか、伺っておきたいと思います。
  72. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) 今の、評価基準の問題は、それは一緒にできれば、それにこしたことはないと私も思いますが、今まで土地収用法でやってきた場合にも、評価基準というものは、そう法律の表になくて今までやってきておりまして、今度の法案は、収用法特例として、その手続面を改めるという点に中心が置かれておるので、評価基準はそのままになっておるわけです。それは私、調査会の代表でも何でもございません、私、個人でございまするが、調査会ができまして動き始めたのは昨年の夏でございまして、ことしの三月までしか設置期間がなかったわけです。その間に答申を作って、何か法律のもとみたいなものを考えなければならぬということになりましたので、どうしてもまずこちらをやらなければならないという時間的な制約があって、それが補償基準のおくれた最大の理由じゃないかと思います。  それから、補償基準といいましても、やはり数式に表われるような確実なものは——確実にまた画一的にきまるようなものは、どうしても作れないと思うので、やはりある程度の抽象的な表現というものが、その中に入ってこざるを得ないだろう、また、今度は、かような具体的なものになりますと、営業補償を五年分やれとかいうことになりますと、はたして法律に書くべきものか、それとも法律には大綱を書いて、あとは、ほかのその下のものに、そういうこまかい基準はまかせるようにするのか、その辺の技術的な問題はあろうかと思いますが、ともかく、今まで補償基準の統一ということはなかなかできないわけです。たとえば水没補償につきましても、閣議了解というような妙なものがございまして、それも方々、別にできていて、なかなか統一できない。それを統一するというのは、そうすぐにはできない問題だと思いますので、やむを得ず、これだけ先にやって、あと補償基準は、今後なるべくすみやかに統一した適正なものを作るということより方法がないのじゃないかというふうに考えます。
  73. 田中一

    田中一君 そうしますと、答申が三月末までに出すというのだから、それは間に合わなかったということなんでしょうね。
  74. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) そしてこの問題は、やはり急を要することで、ともかく土地収用法でもって、今まで少なくともやっておりますのですから、それを同じやり方で、ただ、手続を改善し、若干その反面として、被収用者の非常に困る点も改善すると、応急の緊急措置を作ったということになるかと思います。
  75. 田中一

    田中一君 これは渡邊先生にも一緒にお伺いしますが、今回の特別措置法は、土地収用法と比較いたしまして、渡邊先生が言っているように、一歩前進の面と、一歩後退の面と、二つあるのじゃないかというような気がするわけなんです。というのは、たしか渡邊先生だと思いましたが、事業を行なうのには、とにかく前進であろうけれども、現在の現行土地収用法から比較すると、補償の面だけは、これは後退しているのじゃないかというような気が私はするのです。それで、両先生の御見解を伺いたいとおもうのです。
  76. 渡邊洋三郎

    参考人渡邊洋三郎君) 私がさっき言ったのは、そういう意味で言ったのではないので、補償の面も、それだけ切り離していけば、やはり今の土地収用法よりは配慮している。現物補償の面とか、生活再建の問題とか、この点は、やはり一歩前進しているのじゃないか。ただ、他方で土地を収用していくという強力な政策の進展と、比較的に見合った場合には、もう少し、補償の問題を大きくクローズアップして取り上げた方が望ましかったのじゃないかということを、その面で強調してお話ししたわけです。  ですから、条件付賛成、条件付反対ということになるので、私の個人的意見としては、この法案に全面的に賛成とも、全面的に反対とも言えないということです。
  77. 田中一

    田中一君 加藤先生、この前、土地収用法の一部改正のときに、参考人としておいで願ったことはございましたかな。
  78. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) ございません。
  79. 田中一

    田中一君 そうでしたか。けさ京大の須貝教授にきていただいて、いろいろ伺ったのです。そうして私は、この現行土地収用法から比較すると、公益の面の方が、少し高く評価されるというか、優先されているというような印象を受けるのですが、どうでしょう。これで現在の国民の権利というものは、ちょうど公益とバランスとれているとお考えになりますか。
  80. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) その国民の権利という場合には、手続面の権利と、それから補償の内容という面の権利と、二つ分けて考える必要があるのじゃないかと思いますが、この法律は、手続面では、確かに、手続を簡易化したり、あるいは期間を短縮したりいたしまして、そういう面の、これを国民の権利保障というならば、その点は確かに起業者の方が強くなっております。これはしかし、その事業が緊急性、公共性が特に高いものということでありますので、その手続面では、国民の権利という面が相対的に土地収用法の場合よりも、少し権利保障が少なくなるということも、これはやむを得ないのではないか。やはり一番大切なのは、中身の方の、内容の補償でありまして、その点は、これで必ずしも完全とはいえないかもしれませんが、たとえば、仮住居、現物補償、生活再建という点になると、少なくとも土地収用法よりは配慮しているという点で、私は実質的に見れば、これでいいのではないかというふうに思っております。
  81. 田中一

    田中一君 この法律が成立しますと、被収用者は、現行法よりも早く、とにかく先に取られてしまうのですから、これはもう買収に応じようという気持の方が強くなるが、あるいは、このためにますます硬化して、やるまでやるぞということになるか、どちらになるとお認めになっておりましたか。
  82. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) 私は、この法律は、必ずしも起業者だけの権利を強めたわけではなくて、たとえば事業を始める前に、十分な事業についての説明の、あるいは周知というようなことを十分やる、今これはやっておられる方も一部にはあるようですが、必ずしも十分なされているとはいえない。それからあと緊急裁決の場合も、従来の緊急収用ならば、収用して追い出すだけで、あとは何も配慮していないわけです。今度の方では、仮住居を、ともかく提供するということにしたといっておりますし、そういう点で私は実質的に相当配慮しているのではないか、その点で、住民の方々の協力も、やはり前よりは得やすくなるのではないか、何か強権をすぐ振り回すように聞えますけれども、そうではなくて、やはり緊急裁決というのは、そうやたらに使うのではなくて、よく道路ができ上がっているのに、一軒だけ家が残っていてどうしても動かないというようなのを、たまに見ることがございますが、そういうやはりよくよくの場合に使うのではないだろうかというふうに思っております。ですから、これで抵抗がふえるというふうには考えておりません。
  83. 田中一

    田中一君 先ほど原口参考人の話の中に、原口さん早口で言うから、書こうにも書けなかったのですが、いろいろな問題があったと思うけれども、これはいずれ議事録ができましたら拝見しますが、今まで東京、大阪で土地の収用と申しますか、公共事業を行なう場合に、一般国民よりも一番抵抗が強くて難くせつけるのは国並びに公共団体、これが一番ごねるそうです。これはがんとして応じないそうです。市有地、国有地、これを何とかしてくれという場合には、実に抵抗が強い、これは現に事実を聞いたのです。原口さんは、地方公共団体の代表として、きょうおいで願ったわけですけれども、あなたばかりに言っているわけではございません。首都高速道路公団の理事長の神崎さんが嘆いております。国または公共団体の抵抗が強くて、どうにもならぬというのです。国民の方はそろばん勘定でもって、大体話はつくけれども、てこでも動かぬということだそうです。どうです。神戸市は、そういうようなことはございませんか。  それからまた、一緒に共同歩調で、これらの促進に御協力なさっていらっしゃるところの五つの大都市では、そういうことはありませんか。
  84. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) お答えいたしますが、ただいまの御質問、実は意外に思っております。国または公共団体が一番ごねているという、私おそらくそれは、たとえば砂防指定地を解除してもらってやるというような場合に手続ができぬとか何とか、そういうような何か手続の問題じゃないかと思います。  国または公共団体がごねるという理由が私は全然ございませず、私がこの土地収用法で、収用法にかけてやったというのも、実は五年に一件ぐらいしか現在ございません。こういうふうに神戸市内でやっております公共事業の用地の取得につきましては、できるだけもう話し合いでいく、収用法にかけるというのは最後の最後だ。これは収用法にかけましても、現在の状態でございますと、かえって長くかかるわけであります。従いまして、予算は繰り越さなければならない。繰り越せば、もう市会で、いつもやかましく言われますし、できるだけ繰り越さぬように、その年度その年度でやっておりますから、私どもは、できるだけ用地は話し合いで進めていく、こういうことでやっております。  従いまして私どもは、五大都市の市長会議を持っておりますが、今御指摘のようなこと、初めてでございます。聞いたことはございません。
  85. 田中一

    田中一君 この特定公共事業以外にも、これらの金銭補償以外の物品、現物補償ですね。現物補償してくれという御要望がさっきあったように思いますが、これは非常に私どもいいと思いますが、そこでこの問題で加藤先生は、なぜ特定公共事業だけが現物補償という形をとろうとするお考えになったか。従ってこの制度が、現行法でも、収用委員が国または公共団体に、それを要求することができるようになっておりますけれども、この答申案あるいは法律案では、そこまでの話し合いは出なかったものですか。そうしてなぜ特定公共事業だけが現物補償という形、あるいは生活再建の補償をするということになったのか、ちょっと伺っておきたいと思うのです。
  86. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) これは審議会でどうということは、私は審議会の代表ではございませんが、私個人の考えを申し述べさしていただきますが、将来の問題としましては、やはり現物給付とかあるいは生活再建というものを広く認める方向に私も向かうべきだと思います。  ただ収用につきましても、いろいろな、たとえば場合によっては、一軒だけ収用する場合もございますし、また非常に大量の場合もある。この特定公共事業の場合には、公共性、緊急性が高いということのほかに、やはり相当大規模な、広範囲にわたるものに影響を与えられるという問題があると思います。そこで、そういう場合には、まとめてと言ったらおかしいかもしれませんけれども、やはり広くそういう大勢の人に影響することならば、それだけ手厚い措置を講じておかなければならないという考え方で、特にここに規定が置かれたのではないかと思うのですが、こういう考え方は、土地収用法の方にも、これをどの程度まで持っていくか。問題としても、やはり将来押し及ぼしていくべきではないか。ただ土地収用法の改正は今後さらに検討すべき点もあるかと思いますが、またこの法律ができれば、この法律との関連で検討すべき点がいろいろやはり出てくるように思いますけれども、それはさっきの補償基準なんかの問題とあわせて、一応将来の問題についても、これは特定公共事業の特色を作るということで出てきたものですから、ここだけに現在はあるようでございますが、土地収用法の方にも、若干関連規定がございますけれども、これも十分ではない。これは将来やはり検討すべき問題ではないかというふうに考えております。
  87. 田上松衞

    ○田上松衞君 お聞きの通り、加藤先生、渡邊先生、非常にお急ぎのようです。ほかの人にも関係することですから、率直に、質問に入る前に申し上げておきますが、加藤先生は、この問題に初めから関係されたお立場であるので、この法を見るときに、これはまずいのだというようなことは言えないはず。これはもちろんのことです。あとの方の、小山さんあるいは中川さん、熊谷さん、これらの方々及び神戸市長を加えてですが、半分は、これは起業者側の立場に立つ方でございますから、ほとんどべたぼめにほめておられる。これはいい悪いは別として、無理もないことだ、だから別に意見を聞こうとも考えておりません。わずかに触れられた補償の適正の問題、すなわち正当にしなければならぬという問題は、半分がその立場に立ち、半分は被収用者に対するところの思いやりからの程度だったと、失礼ですけれども直言いたしたい。これらの方々には質問はよしたいと思います。渡邊先生の場合は、さすがにこれは民法学者としての立場から、主として私権についての問題にしぼられて言われたのでありまして、必ずしもこれはべたぼめということじゃなしに、むしろ大きな注目すべき点を打ち出していただいたということなんです。  こういうような感じですので、この問題にしぼって、まず、加藤先生にお伺いしておくわけなんですが、非常に強調された点で、特定事業適用対象のしぼり方ですね、非常に注意したとおっしゃったわけなんです。ところが、実際との案を見てみますると、そのしぼり方について、私どもと意見が違う点があるわけなんです。  私どもは、しぼり方は言うまでもなく、あくまでこれは公共性の高いもの、あるいは緊急度の強いもの、そのほかにもあります。広い範囲という、つけ加えがございますけれども、ともかく重点は、そこに置いてしぼるべきである、こう考えておるのでございまするけれども、どうもこの案を作られることに参画されました先生の立場といたしましての特定公共事業の中で見ますると、一、二、三はお話の通りでしょう、非常にけっこうだ、そうしなければならぬと思いますけれども、四も一部ですけれども、この四に特に触れるわけですが、そこで、ここに「都の特別区の存する区域又は人口五十万以上の市の区域における交通の混雑を緩和するため整備することを要する道路、駅前広場、鉄道又は軌道で政令で定める」云々と書いてありますけれども、私は何も五十万以上の大都市だけが、この中の公共性の高いもの、緊急性の強いものということに当てはまるものじゃないはずだ、こう考えるわけです。どうしてここに五十万以上と特にされたのか、五十万以上という人口を持っておりますのは、日本では現在九つしかないはずですね、東京都を加えました六大都市及び札幌、長崎、福岡ですか、それ以外にはないわけでございまして、現在は五十万でないといたしましても、もう少しで五十万に達するものが出てくるわけなんですよ、明らかなんです。東京都の人口をどうするかという別な面から考えてみましても、いろいろ今問題になっておりますが、直ちにこれが五、六十万にふえていくととろはあるはずなんです。  この法でいきますと、五十万になるまでは措置しないで、それを待って措置しようとする。裏から言えば、こんなことにしかならぬのでありまして、どうも公共性の高い、緊急性の強いものという点から見るしぼり方とは、少し離れてしまうのではないか、こういうような工合に考えるわけです。  ついでですから申し上げますと、その次の五、六、七、さらにはこの八に付随するいろいろな施設、こういうようなものについては、むしろ多くいわゆる営利的な仕事、私企業的仕事というものが多分に強いのでございまして、公共性の高いものと、私どもは直ちに肯定することができない、こう考えておるのでございますが、これに対するお考えが聞きたい。これが一点。  まとめて申し上げます。第二点は、被収用者にこたえるところの生活再建計画の問題及び現物給付、法で言うならば四十六条及び四十七条ですか、この点渡邊先生もさっき指摘されたように、非常に私ども同感であり敬意を表しておるわけですが、なるほど形の上では、いろいろ四十六条においても現物給付について何かこう被収用者のためにやったようにしてあります。四十七条の生活再建措置についてもその通りですけれども、両方ともまあ、努めなければならんとか、あるいは「予算の範囲内」とか、「事情の許す限り、」とか、渡邊先生の言葉をそのまま借りて用いましても、そういうような抜け穴式なことであって、ここに的確な義務づけというものがされていない、こういう感じがするのですが、ここに、その点について何かこれを義務づけることについての一つ御配慮が欠けておるのではないか。これはこの立案に参画されたお立場からお気持を聞いておけばいいと思います。  第三点には、田中さんもさっき指摘しておられた点ですが、もう少しわかりやすく願いたいのです。加藤先生の方は、ずいぶん補償基準を十分、これを統一、画一する必要は感じておる。事業においては、それはすべきだということです。その点はよくわかるのですけれども、その前の問題といたしまして、その基礎をなしております問題といたしまして、土地評価基準というものが、現在の日本の状態ではないのじゃないかということですよ。こういうものをどこにお求めになろうと考えておられるか。この点をもっと明確に一つお答えいただきたいと思います。  以上、三点についてお伺い申し上げます。
  88. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) 最初に、私が立案に参画したということで、この法案に不利なことは言わないだろうというお話がございましたが、そういうことは決してございませんで、私は、これはいいと思って賛成をしたわけでございますが、気に入らない点は、もしあれば、幾らでも申すつもりでおりますから、・その点は、御心配のないようにお願いしたいと思います。  最初事業の範囲の点でございます・が、今おっしゃいましたように、二つ問題がございまして、一つは大都市というのは五十万で限ったのは、どういうことかということでございます。これは考え方は、いろいろあり得ると思いますので、たとえば三十万で切るとか二十万で切るとかという考え方もあると思うのでありまして、これはやはり、どこかで切らなければならん問題だと思うのです。そのほか道路など、必要な部分は一号の国道、一、二級国道という中に入ってくるものがありますが、それ以外のものは、何か限定をして適用しなければならない。そうしますと、五十万がいいか、三十万がいいかということになりますが、さしあたって現在特に問題になっているのは、やはり五十方以上程度の大都市ということではないだろうか、そういうふうに考えておりまして、一応五十万ということに私も賛成をしたわけでございます。  それから事業の範囲についての第二の点は、五号から七号あたりの中に必ずしも公共的でないものが含まれているのではないかというお話だったと思いますが、この中には、私企業で行なわれるたとえば電気事業のようなものも含まれておりますけれども、しかしやはり電気事業についても一種の公益事業公共性を持った事業ということは言えるのでありまして、やはりその七号で入っておりますのも、これはその中で、きわめて幹線的な部分の送電線のようなもの、あるいは発電所というようなものでございますが、そういう非常に幹線に限定をしておきますれば、やはり公共性、緊急性の高いということになるのではないか。まあこれは大都市ということとも若干関連もいたしますが、そういうふうに考えて、私はこれでいいのではないかと一応思っております。  それから、第二の御質問は四十六条、四十七条が義務を何も定めていないという点でございます。これは、そういう点で幾分作文的であり、必ずしもたよりにならないという感じがするのでありますが、これだけ入れることでも、やはりなかなか大へんでございまして、つまり今までこういうものがあまり入っておりませんので、私は徐々に、こういうものを入れていって、だんだんそういう方向へ向こう機運を作っていくほかはないのではないか。どうも企業者の方も、あるいは地方公共団体などでも、こういう問題になると、これは実際、なかなかやることはむずかしい点もございますけれども、どうしても逃げ腰になりがちでありまして、なかなかうまくまとめることはむずかしいように思われます。とりあえずと言っては、あるいはいけないかもしれませんが、こういう規定を置いて、少なくともそういう方向への協力態勢をとっていくというところからやっていかなければならない、今のところ、一種の妥協の産物かもしれませんけれども、こういうところで一応、がまんをしていくほかはないのではないかという感じがいたします。  それから第三の土地の評価基準でございますが、この土地の評価は、経済学の問題になるか何になるか、ちょっと私の専門外でございますので、的確なお答えができないのでありますが、ただ、やはり評価基準の中の一つとして、土地の評価基準をはっきり考えておく必要があるということだけしか私には申し上げられません。
  89. 藤田進

    ○藤田進君 加藤教授に二点お伺いしますが、第一点は、電話が入ってきたということに対する御所見。それから第二の点、評価基準については、今御答弁で重ねてお伺いすることがむしろどうかと思うのでありますけれども、やはり長い審議会等で御議論になっているので、他の委員等のいろいろ御主張なりがありますれば、そういったものを加味してお教えいただきたいのですが、実際問題として、売手と買手の関係において、たとえば交通機関の諸般の施設の場合、あるいは電源開発のような場合に、その施設の利用価値といったような面からも問題があろうかと思うし、たとえば農業をするために田畑を買うという場合と、そうでない場合では、かなり価格にも大きな格差が出てきているように思うのですね。また反面今の土地収用法の近傍価格によるというようなばく然たるものですが、しかし、これは施設前の現場の価格という場合、あるいはたまたま、かりに私鉄なり国鉄に例をとると、たまたま駅舎になる、その敷地が取られて、その近所には自分の土地はない、たまたま駅舎の敷地に取られない人が、ちょうど駅の正面に相当な広大な土地を持つことになるといったようなこともありましょう。それから国鉄なり施設自体としては、道中の土地は、なるべく切り盛りを道路工事としてしないようなところが一番いいでしょうけれども、必ずしもその施工の経費いかんによって、土地の評価がきまってこないですね。実際問題として、電源における上流のように水深が一メーターぐらいのところの土地は利用価値からいえば安い、堰堤付近ならば水深も百五十メーターもあるのだから、かなり貯水容量があるし、これは利用価値があるというようなことも出てくるでしょう。売手の方と買手の方の関係、なかなか基準というものもむずかしいけれども、何らかのものがないと、私ども当委員会ではなくて、予算委員会、商工委員会でかなりごてついたところを数々見て参りましたが、確かに言われていたように、国鉄は帯のように買いますが、国鉄はずいぶん高く買ってくれた。だから今度はあれ以上だと、地価も上がっているというようなことになり、他面また、同じ事業で同じ年度であっても、早いおそい、まあすなおに了解した方が、ばかを見たというようなことも実際にあるんです。  そういうような中で、評価基準を考える場合に、その評価基準要綱といったものを、どんなものが一応考えられるべきものだろうと、こう思うんです。これに関連して——これは第二の質問ですが、関連して、私どもは実際評価する場合に、かりに耕地であれば、取られて残地では農業経営ができないと、たまたま家は、かりに電源の場合、水没しないのだし、残るけれども、農業ができないという実に気の毒な人もある。反面またそうでなく、ごくわずかに土地はかかる、ないしかからないけれども、家屋だけがかかってくる、こういう、また補償目当てといいますか、これは、工事が始まる、また補償の話もそろそろやってくるだろうという時期には、全国的とも申しませんが、わざわざかりに坪五百円か何ぼで荒い板くずを買ってきて、宅地面積やそれから建坪面積をふやして、そうして、坪千円なり五百円でも補償のときには二万円ぐらいもらえるそうだ、極端なのは、分家という名目ですが、同一人だと思うんです。私は現地を見てきましたがね、十二戸ばかりバラックで、ちょうど水没する堰堤のすぐ上流にずらり建てまして、ときどき来て煙を出す。これ二戸十万円くれという調子ですね。それから同じ個所で見てきたのですが、堤提のちょうど地点で横穴を掘っている、二人ぐらい。あれは何かというと、鉱業権の設定をしているんだ。これに一億円の補償を出せというような、これはもう、どう見ても補償目当てだけとしか思われないものがある。しかし実際問題として民法上これを処理するということになると、なかなか期間もかかるでしょうし、従って、これらの補償等について、現行法上あるいは立法上、何かいいものはないものだろうか。この特別措置法を待つまでもなく、そういう者に対する補償というような問題は、どうすべきであるか。お説のように特別措置法も、最後の一線として、これをもって執行なさるということであるとすれば、今申し上げたような問題は依然として残るということになろうかと思うんです。時間がないので、それらの点について一つ御所見を承りたい。
  90. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) 第一に電話が追加された点でございますが、これは調査会で考えましたときには、電話は、そう規模も大きくないし、普通の収用法でも取れるだろうと思って入れなかったわけでありまして、まあ私としては入れる必要がなかったのではないかと今もって考えておりますが、入れるという意見としては、やはり大都市に関するいろんな事業の中には、電話ということもぜひ必要だという御意見もあったのだと思いますので、そういう意見も考えられるわけですが、私個人としては入れなくてよかったのではないかと思っております。  それから第二の評価基準の点でございますが、これはどうも、さっき申しましたように専門でないのでございますけれども、その評価基準の中の第一の周囲の土地を持っていた者が値上がりして得をしているのに、取られた方はそのままになっているという点の不つり合いなんですが、これはどうも、ある程度やむを得ないことではないだろうか。むしろ取られた方が損をしているわけではなくて、取られた方は時価通りで売っていて、回りの方が得をしている、相対的に損をしたという形になるわけでありまして、これは偶然の事情で、そこが収用にかかったということ、それから、ほかがかからなくて非常に発展したということで、これはある程度やむを得ない。まあ制度としては、それによって利益を得た者から負担金を取るというような制度がありますけれども、これは実際にはなかなか取りにくいので、そのままになっておりますが、もし負担の均衡をはかるとすれば、何か負担金というような形を、もう少し合理化をして取りやすくするというようにでもするよりほかないんじゃないかと考えております。  それから第二の補償基準——補償目当ての、いろいろ家などを建てている例が、私もよく見るわけですが、この点は先ほどちょっと触れました、最初に網をかけるという問題と関連をするんで、現在は土地細目の公告をしたあとは、現状変更の禁止ということがあるわけでありますが、土地細目の公告までいくには、最後の段階にどうしてもなってしまうので、その前に建てたものは結局補償をむしり取るというような形に、どうしてもなってくるんで、この点は将来の問題として、やはり何らか考える必要があるんじゃないだろうかと思っております。
  91. 米田正文

    ○米田正文君 私は、一点だけお聞きしたいんですけれども、今度調査会から答申の建議が出ましたが、その中で、土地収用委員会の問題がありますね、委員会の強化をしろという趣旨。これは、今度の特別措置法が公布されますと、緊急裁決というような事務をやるようになるという点で、強化しなければならぬという趣旨をお書きになっているんだろうと思いますが、それでこの内容は、収用委員会に専任事務局を置いて、経費を国がここに一部負担しろというようなことが書いてありますが、いずれにしても、経費をことしの予算でつけてないんですけれども、実際問題としては、各都道府県で収用委員会の事務局の機能を、増強強化をやるだろうと思う、やらざるを得ないと思うのですが、行政措置を建設省はやっておそらく強化すると思うのですが、私が聞きたいのは、そういう現行制度収用委員会、七人委員会がありますね、その委員会の性格論が論議をされなかったかどうか、されたらどういう趣旨で性格論が論議されたろうかということをお聞きしたい。
  92. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) その性格論については、根本的な議論はしておりません。これは特別措置ばかりの問題ではなくて、土地収用法一般の問題でありますので、将来また検討する必要があるかもしれません。現在のところは、今まで通りという考えで、ただ事務局を強化するというような考え方でございました。
  93. 田中一

    田中一君 この答申のうち、この7です。ちょっと読んでみますと、「現地調査を妨げた場合の裁決」「裁決申請書に添付された土地調書又は物件調書が4により作成されたものであるため、収用委員会が現地調査をする場合において、土地所有者又は関係人がこれを拒み、又は妨げたときはその土地所有者又は関係人は、その土地調書又は物件調書に基づいて行なわれた裁決によって受ける不利益については、争うことができないものとすること。」と、これは旧法では、どうなっていて、この問題は、どういう工合に解釈しているんですか。
  94. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) これは答申の中には置きましたが、法制化の段階で落ちまして、この立法がやり方が非常にむずかしくて、いろいろ疑義が出て参りまして、やはり国民の権利の上から望ましくないんじゃないかという意見もございましたので、この形では落ちております。
  95. 田中一

    田中一君 そこで、本法の第十五条ですが、「他の方法により知ることができる」、これはどういうことを想定されておったのか、調査会ではどうでしたか、どういうことを想定されておったんでしょうか。
  96. 加藤一郎

    参考人(加藤一郎君) これは、その答申案の中にあるものが、若干形を変えて入ってきているわけでございますが、これは私は、答申案のところまでしか関係しておりませんで、あとのことはよく存じませんですが、かなり答申案よりは緩和されているということであります。
  97. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ほかに御質疑はございませんか。  それでは加藤、渡邊両先生まことにありがとうございました。
  98. 田中一

    田中一君 熊谷さん、電気事業連合会の中川さん、お二人に伺うのですが、契約約款というものは、どういうことになっておるのですか。先ほど熊谷参考人から言われたところの用地の取得が困難なときに、その損害というものは、だれが持つようになっていますか、契約では。それは不可抗力ですか。あるいは起業者側の方で、不十分なことだという認定をするわけですか。それとも、当然これは施行者が持つんだということになっておりますか、契約の上では。
  99. 熊谷太三郎

    参考人熊谷太三郎君) 御承知かもしれませんが、大体現在の請負契約におきましては、重大な受注者の責めに帰すべからざると申しますか、そういう重大な点については、発注者において考慮してやるというような意味の条項が、いろいろ場合によって形は違いますが、ございます。ですが、そういう用地の問題の遅延といった場合には、非常に大きな場合と個々の小さい場合と、いろいろございますから、一がいに、それに当てはめるということはできないことはお考えになる通りだと思います。  そうすると、多くの場合やはり売手と買手といったような関係でございますから、まあわずかばかりのことを強く主張するというようなことが、現在の状態におきましては、全体的に考えて、不利といいますか、そういった事態が多いわけでございまして、これはあまりいい言葉でありませんが、まあ泣き寝入りといったことに、その個々の事態に関しまする限りは多い。泣き寝入りという言葉は適当じゃございませんが、やはりそれぐらいのことなら、一応がまんしよう、がまんしなければならないといったような場合が非常に多いということを先ほど申し上げたつもりであります。
  100. 田中一

    田中一君 中川さん、どうですか、そんな問題は、契約の相手方の泣き寝入りでもって、ものが処理されるべき問題でないと思うのですがね。そういう点は何か連合会として、事務当局として重大な問題だと思うのですよ。これは今までたくさん私は例を知っておりますがね。そういう場合には、それでいいんだと、そんなことを言って、ぐずぐず言うなら今度は指名しないぞ、こういうことなんですか。
  101. 中川哲郎

    参考人(中川哲郎君) 今の電気施設関係の用地関係に伴いまして、この補償の措置は——用地の取得の措置は電気事業者がやるわけでありまして、その結果、請負に付しました、たとえば発電工事、あるいは道路工事等が遅延した場合の損害補償というお話があったわけであります。遅延いたしました場合の損害というものは、起業者であります電気事業者が一番多いわけであります。請負がこれに伴って工事額の計算その他について影響を受ける。これは不可抗力、いわば起業者側の、用地取得側の理由によるのでありますから、その点の結果は、原則的に請負会社に帰属しないというのが本筋だと思います。  ただ問題は、非常に遅延の度合いが大きくて、請負工事額の計算その他にきわめて大きい影響を与えたという問題だと思います。そういう場合は、ある程度はのんでいただくのが実例だと思いますが、問題は、その額の内容いかんということになりますから、勢い起業者と請負業者との間の話し合いによって問題を解決されていると思います。非常に大きな負担を、無理やりにお願いしているというふうには、私今考えませんけれども、もしそういうような場合がございましたら、またあらためまして電気事業連合会としても、この問題を取り上げまして検討いたすつもりであります。
  102. 田中一

    田中一君 中川さんとそれから小山さん、用地補償の基準ですね、そんなものをお持ちならば、いただけたら幸いだと思いますが、どうでしょう。
  103. 小山久保

    参考人小山久保君) 基準というものは別段——まあ常識になっているのですね。各社皆持っていないと思うのです。ただ、持っていないけれども実際は行なっている。規定にしていないだけで、担当者のまあエキスパートがおりますから。大体土地などについては課税機関の評価額がありますので、それの大体十倍から十五倍というのが常識になっております。ですから、税金の対象額でありますね、それの十倍くらいが普通の時価であります。それから十五倍くらいで、どうしても売るというところは、話し合いにいたしております。  ところが、そのほかに、いろいろ補償はありますけれども、建物は、大体見ればわかりますから、五万円の建物とか十万円の建物とかいうことがわかりますから、それに多少、二割くらいかけて話をしているような形であります。それからその他補償は、いろいろ大体同じような形でいっていると思います。あまり甲乙はないと思うのですが、高速度交通営団さんが一番詳しくやっているようですけれども、大体大同小異です、見ておりますと。
  104. 田中一

    田中一君 電気の方も私鉄の方も、何ですか、今までは割合スムーズに用地の問題は解決されたということですか。
  105. 小山久保

    参考人小山久保君) 解決しております。
  106. 田中一

    田中一君 それじゃこのお二方の方は、適用から除外した方が幸いだと思いますが、その点はどうですか。
  107. 中川哲郎

    参考人(中川哲郎君) まだ私は申し上げなかったのでありますが、電源開発関係につきましては、補償の具体的額の算定——何を基準にすべきか、これは数年前から大問題でございまして、いろいろ水没補償につきまして問題があちこち多いわけであります。  従いまして、電源開発促進法というのが政府で作られましたことと前後いたしまして、補償の基準を作る必要があるというので、先ほどもお話が出ましたように、水没補償要綱というものを閣議了解できめられているのでありまして、まあその準則のようなものは一応できているわけでございます。ただこれについては、その後いろいろ事情も変わって参ってきておりまするし、電気事業者としても、もう少し深いものを研究する必要があるということを感じておったのですが、現在通産省におきまして補償問題研究会という組織を作っておられまして、そこで検討されているわけであります。従って、漸次整備した準則を作って参るということになっていると思います。  また、現在補償問題が、きわめて容易に問題がなくいっているのかというお話でございましたが、決してさようななまやさしい問題じゃないということは、先ほども御説明申し上げたわけでありまして、補償基準を明確にしたいということは、これは補償を公正にする意味からも、われわれとしても切望するところでございますし、また非常に高い不当な額をふっかけられる場合もございますし、何が妥当かという基準を作ることが、この法案に基づいて新しくできます審議会の仕事として、ぜひお取り上げいただきたいと思うわけであります。
  108. 小山久保

    参考人小山久保君) 今、何か非常にうまくいっているようなお話なんですけれども、実はこれが一番問題なんであります。(田中一君「うまくいっていると言ったじゃないですか」と述ぶ)いやそれは、私の方で提示しているのがそのくらいであって、ただ、ひっかかった人は、私たちは犠牲者だということを言って、それのまず五倍から十倍を要求しているのが実情であります。だから、私鉄としては、補償ということは、非常に困難な形になっておりまして、今まではよかったんですけれども、大きな都市ですと、どうしてもむずかしくなる。最近千葉なども起こっております。この五十万以上などというのは、千葉市などは、おかしいじゃないかというような県当局の話もありまして、この法律が通ったらすぐ続いて、五十万以上を直してもらうということを陳情するような用意があるそうでございますから、これは、おとといですか、きのうですか、私、県の部長さんに会ったら、言っていました。とにかく、このまま通ってから、続いてやってもらう。まだ何にもできないうちに、それを動かされると、元も子もなくなっちゃうといけないからと言いました。(「これまだ直す余裕がありますよ」と呼ぶ者あり)主要都市としてもらいたいという意見がありましたから、つけ加えておきたいと思います。
  109. 田中一

    田中一君 じゃ、なんですか、両団体ともに、補償基準というものはないけれども、これから作るというのですか。今まで、なくても円満に買収されたというようなことが事実だと思うのですよ。逆に今度は、土地収用法適用して収用した個所は、どのくらいあります、今までに、過去十カ年間に。
  110. 小山久保

    参考人小山久保君) 私の方は、今二カ所です。
  111. 田中一

    田中一君 十年間で二カ所ですか。
  112. 小山久保

    参考人小山久保君) 二カ所です。
  113. 中川哲郎

    参考人(中川哲郎君) 補償基準につきましては、先ほど申し上げましたように、現に、政令で、あるわけでございまして、さらにそれをいろいろ改定を政府側で考えておられるわけですが、これは、建設当局を通じてこの委員会に、補償基準をお出しいただくものというふうに、今了承しております。  それから、土地収用法適用の件数はどうかというお尋ねでございますが、土地収用法に基づいて事業認定をしていただいた件数は、百十件だと思います。なお、収用法に基づく裁決でございますか、これは、九電力会社では九件でございます。
  114. 田中一

    田中一君 それ、委員長から——私から言っちゃなんですから、私鉄の方の二件と、それから電力の方の、電気事業の方の九件の、裁決になった裁決書ですね。それと、それから、その経緯ですね。それを一つ資料として、もしできるならば、当委員会に提出していただきたいと思うのですが、聞いてみて下さい、委員長の方から。
  115. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) 資料、作れますか。
  116. 中川哲郎

    参考人(中川哲郎君) 概要でございますれば、まとめまして、お出しできると思いますが、裁決書の写しを全部そろえるわけでございますか。内容を摘録さしていただきます……。
  117. 田中一

    田中一君 向こうの要求がありますね。それから委員会の、どういう形の委員会が持たれたか。どこでやったか、裁決が出されたか。
  118. 小山久保

    参考人小山久保君) 二件と言ったのは、私の方の会社だけでございます。ですから、私鉄全部ですと、相当な件数になると思います。これを全部調べるということは、相当の時日がかかると思います。
  119. 田中一

    田中一君 ゆっくりでもかまわないですよ。どうですか。二件でもいいです。
  120. 小山久保

    参考人小山久保君) 私の方は二件です。二件は、それはすぐ……。
  121. 田中一

    田中一君 どこですか。
  122. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) 京成電鉄。
  123. 田中一

    田中一君 そこで、熊谷さん、そうした先ほどあなたが指摘したような慣行があるということは、これはなんですか、そのために、契約設計変更、あるいは期間の延長とかということが、恩恵的に向こうからもたらされるものですか。折衝した上で妥結するのですか。今までどうなんです。それは、そういう場合には、あなたの方で要求する満足なものをくれるのですか。むろんあなたの方で手待ちした場合には、何千人かの労働者が、そこで飯を食っているでしょう。それらのものは、全部起業者の方で見てくれるということが今までの慣行なんですか。
  124. 熊谷太三郎

    参考人熊谷太三郎君) それは、いろいろな場合がございまして、電源開発の工事だけの場合でございましても、会社によって違う場合もありますし、それから手持ちの程度でございますとか、あるいはまたおくれた期間の長短の問題もありますし、それから、おくれている割合に、そう工期に影響が少ないといった場合もありまして、一言にして申し上げれば千差万別ですから、今こうだということを、はっきり一言で申し上げるということはできないと思います。  ただ、全体的に見まして、どうしてもやはりそういうことがあれば不利だと、たとえば多くの場合、十カ月おくれたから、十カ月の延伸を認めていただくということは無理だろうと、いろいろな理由、いろいろな理屈の上から、できるだけそれが短縮させられるといった場合が多い。しかし、それは理屈で言われるわけですから、さっき申しましたように、やはり売り手と買い手の理屈では、これはもう請負だけでありません。どんな場合も、あらゆる場合が、そうでございましょうが、どうしても不利になってくる、売り手の方には。といったような、きわめて概括的な状態を、今申し上げているわけですから、そのように一つ、御了承願いたいと思います。
  125. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ほかに御発言ございませんか。
  126. 藤田進

    ○藤田進君 原口さんにお伺いいたしたいのですが、この特別措置法が成立し、施行になりますれば、どういう作用になるだろうかという点が、私どもとしては心配でもある点であります。それはお説の、過去御在任中に、五カ年で二件でしたか、何か土地収用法自体もあまりかけないで、自主交渉で解決をしてきたと。その理由は、収用法適用にするよりも、むしろその方が早いということのようでありました。  しかし今度の特別措置法でいっても、やはりかなりな時間はかかると——私は、短縮はされておりますけれども、思うのでありますが、ただこの立法の連鎖反応として、要するに、用地が買収ないし補償がやりやすくなるということは、まあ言えるのではないだろうか。そのやりやすくなるのでは、具体的に内容というものが安く買えるようになる。それから時間的にも短縮をされるということになるかとも思われます。しかし、繰り越し措置をすれば、それぞれ地方行政自治体としては、議会の承認等で、なかなかめんどうだということでもありましたが、しかし、当該年度内に、この特別措置法で、はたして解決するかどうかは、これまた疑問のように思うのです。いろいろお述べになりましたが、結論的に、この特別措置法が、旧法に一部は代替して施行になった場合に、もっと率直な点としては、地方自治体とされては、どういうふうに、どの点が、ほんとうに魅力があるのかどうか、これが第一点でございます。  それから、第二点は、田中委員からも指摘されて、お答えの方は、少し質疑の内容よりは違ったように、私は聞き違いか、思ったんですが、地方自治体自身が持っている諸権利ですね、これに対する補償とか許認可とかいったようなことは、とても、最近目に余るものがあるように思う、神戸市じゃありません。私は不勉強で、原口さん市長のもとで、そういうことはあり得ないと思うのであります。たとえば、電源開発の現地を見に行きましても、りっぱなものができることは、これはいいことで、全国それにそろえたらよかろう。けれども、かなり富裕自治体でもやっていないような堰堤下流に村役場ができて、環境と全く不つり合いのようなものができてみたり、あるいは学校が建て変わってみたり、これもけっこうなことですが程度によると思うのです。  これが地方自治体において、私も現在ぶつかっている問題でありますが、何々企業を誘致するということになれば、その設備投資資金、半分は地方自治体が心配して負担してくれとか、そんなことを引き受けながらやる、ところが、公共企業等が自治体に協力をお願いにいった場合の状態を見ると、いわゆる公共補償に大へんな手をやいている。われわれが見て、同じような国民の側から見ればそうでしょうが、利益照応の原則ということがよくいわれますが、そういった面から見ますと、たとえば神戸市にはないでしょうが、兵庫県には若干あるかと思いますが、たとえばかりに三メートルぐらい、地図の上だけ載っているような県道があるのに、たまたま電源開発すると、これに六メートルの道路を相当長区間にわたって六キロなり十キロというものをつけさせ、それがために、今の開発自体をとりやめようかと……。これはまた、国鉄路線が既設路線があれば、これまた膨大なことをいってくるというような状態が、相当出てきておると思うのです。それやらなきゃ、水利権を認可をしないとか、するとか、いろんな人たちが中に入ったりというのも、少しこれは問題があろうかと思う。これはまあこの特別措置法で、はたしてそのようなものが入るか入らないかも疑問がありますけれども、当該神戸市長の傘下には、管轄下にはないとしても、事実あるとすれば、私はもう少し妥当な線で解決されるべきじゃないだろうか、個人間でも、まあ頼んで嫁さんもらうときと、押しかけてくる嫁さんでは、結納の額も違うかもしれないけれども、まあそこらは適当なところがあるだろうと思うのですね。この二点につきまして、一つお伺いしたい。
  127. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) ただいまの御指摘の点につきまして、第一点の率直にいって、この特別措置法の魅力と申しますか、そういう点は、どこだという御質問だと存じますが、やはり公共用地取得いたしますときに、これは変な言葉でございますけれども、私どもが公共事業用地を取得すると、それは最後には土地収用法にいくのだということは、土地収用法があるから、最後にはこれができるのだという一つのよりどころでございます。それが今度特別措置法が出まして、さらに収用法でいけば非常に期間がかかるけれども、この特別措置法でいけば、さらに短くて早く持っていけると、こういうことになると思います。従いまして、そういう点において早く土地取得できると、こういうことが一つ魅力な点になると思います。  しかし私が先ほど申し上げましたように、こういう法律があったから、必ずこの法律適用するんじゃなくて、お互いに話し合いまして、そしていくことが一番望ましいことだと私は考えております。従いまして、私の過去におきましては、神戸市内では一件収用法にかけたのがございます。できるだけ収用法というようなものにかけますと、いろいろな手続、ことに公共団体で、そういうことをやりますと、いろいろな手続が要るわけです。そういう手続は、非常に繁雑でございますし、できるだけ避けたい、こういうことで考えておりましたが、しかしやはり今までの土地収用法だけでは困るから、いろいろな点が除かれていきますと、早く土地が得られる、こういう点において、私はさっき申し上げましたいろいろな点がございますけれども、結局は、究極においては早くやられると、こういうことだと思います。非常に漠然とした答弁で恐縮でございますけれども、私はそういうふうに考えております。  それから第二点の公共団体がかえって土地取得反対な行動をとっておるきらいがあるのではないか、こういう御指摘でございますが、いろいろ御指摘の内容を伺いますと、私は、あるいはそういうようなことがあるかなあという感じもいたします。それは、たとえば今まで県道で、県が管理しております山の中の県道が幅が狭くてよかったのが、今度電源開発で大きな自動車が通りますから、施行者が道路を、運搬しなきゃならぬ、そうすると県道だから、ほんとうは県がやればいいわけなんですけれども、その目的は、やはり施行者がダムやその他を作るためにいろいろな材料を運搬するから、自分でやっぱりそれを幾らかお作りになるのじゃないか、そういうことだろうと存じます。しかし、それは県が強要するとか、あるいは道路の管理者が強要するということではなくて、やはり企業者と話し合いまして、県も地方公共団体も、予算ですべてやっておりますことでございますので、急にその予算がないと、そういう場合には、仕事を急ぐ場合には、やはり企業者の方で、自分で道路を修理してやられると、しかしそれがあとで、県が強要したようなことをいわれたり何かするような場合があるので、こういうふうな感じでございます。私は、そういうふうな経験がございませんから、そういうふうな感じ……。  それから一つの例として、ダムを作った上の町村で、役場がりっぱになったというようなことでございますけれども、これは私は、やはり何といいますか、非常に補償が多いために、その村民が裕福になったと、従って、その辺ははっきり私わかりませんけれども、村役場の収入が多くなったと、そして裕福になったというようなことであって、そういうふうにするために、裕福な庁舎をたとえば作るとか何かやるために、反対したとかなんとかというようなことは当然ないことじゃないかというふうに考えられます。国並びに公共団体が、かえってその用地の取得反対していると——ほんとうに私は、初めてきょうお伺いしました。そういうふうな例は、私今日まで聞いたことはございません。  ただ、さっき申し上げましたように、いろいろ指定地がございます。たとえば山林なんか、国立公園の中のところで、道路一本つけるにも非常にやかましい手続が要ります。これはやはり国有林で国立公園でございますと、そこへ道路を作るのでも、なかなか許可が要る。従いまして、そういうような点がいわれているのじゃないかと存じます。市が持っております土地の売却なんかの評価は、もうこれは、国有土地は大蔵省、それから私どもの方で持っております土地は、公共用地には、どんどん提供いたしておりますから、決して、いろいろな場合に反対するようなことはいたしておりません。むしろ私どもは、たとえば住宅公団、あるいはいろいろな施設を神戸市内で作ってもらうことが、神戸市の繁栄であると、そういうふうに考えておりますから、私どもが持っておりますたとえば私有地の山とか、そういうものは、どんどん協力いたしまして、そうして道路公団の敷地を造成する、そういうふうなことをやっておりまして、全く御指摘の点と、私どもは反対でございます。  従いまして、私は以上のように感じておりますが、なお私の知らない点がございましたら、今後よく調査してみたいと思います。
  128. 藤田進

    ○藤田進君 いや、原口さんのところには、私もなかろうと思うのです。だから申し上げると、悪知恵を授けるようでいけませんからあまり申し上げませんが、たまたま工事用道路として作るのだから、あとをよこせというのではなくて、堰堤などの場合は、左岸、右岸に県道がある。工事用は左岸の方だが、右岸の方もついでにやってくれ、そうでないと、なかなか認可しないぞという実例がある。それから村民なり、その当該町村の所得がふえたから、自然徴税上も裕福になったというのではなくて、電源開発の場合などは、それが条件で学校を建てかえるのだ、役場をどうするのだ、それが条件でやっている。ひどいのになると、あとから組の方が工事に入ったら、今度は、組の方がこれをやってくれ——これは神戸でありませんから——そういうことを例にして御要求にならないということでもあるようでありますから、一、二申し上げたわけで、かなり目に余るものが実はあるので、何も私有地、国有地について、その価格をつり上げたというものでなくて、いわば便乗している、こういう点は、あるように思われます。それは電気会社なり、私鉄なり、国鉄等の間だけでとどまれば、何をかいわんやでありますが、結局はやはり消費者、利用者が負担していることになるのです。その点は、私は非常に問題があるだろうという点を、公共企業、特に地方自治体としての今日有力な市長をされておるから相当知っておられようし、所感もあることと思って、実はお伺いをいたしました次第であります。
  129. 田中一

    田中一君 最後に、私は原口さんに伺いたいと思ったのですが、本法の第九条です。「(特定公共事業認定申請書縦覧)」これで、あなたの今まで持っておったところのものが、都道府県知事が、市町村長にかわって手続を行なうことができるようになるわけなんです。  これは砂川事件を契機として、おそらく政府としても非常に苦慮した結果、こういう方法をとったものと思いますけれども、少くともこれはたとえば昭和二十二年に地方自治法が制定されたときに、いろいろ論議された問題であります。従って、こうした措置が中央集権的なにおいが濃くなってくるという点でございます。地方自治の立法の精神にもとるか、もとらないかという問題は別としても、地方自治権というものが後退しているということはいなめないと思います。その当該地域の利害得失あるいは価値、あらゆる面は、当該地区の市町村長が一番熟知しておるわけなんです。従って利害は、市町村長は、自分の行政区域内におけるところの国民と市民と、一番切っても切れない関係にあるべきはずのものが、都道府県知事が、当然あなたのする権利義務というものを代行するということは、少くとも市長であるところの原口さんとしては、これに対して賛成であるとは言えるものではなかろうと思います。ただ他の条文等が、あなた自身が市長として公共事業を行なう場合便利であるというふうなことに幻惑されて、この地方自治の本旨というものから見た場合には、おそらくこの点だけはせめて、あなたはわれわれが支持しておったところの原口さんですから、これは反対であるというような意思表示がなされるべきだったと思いますが、先ほどずっと早口でお読みになったものの中にはなかったように思います。  これは最後に、あなたに伺いたいと思ったのですが、どうお考えになります。
  130. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) 概念的に申し上げまして、市町村長の権限を知事に委譲するとか、それから国に取られる、こういうようなことには、ちっとも賛成はいたしておりません。しかし、この条文を見ますと、やはり二週間を経過しても、なお準用をしないとか、そういうような過程がございまして、そういうようなことをやらぬという点に、私は何か国民の利益に反するようなことになるのじゃないか。それだから、県がそういうことを代行する。こういう規定だろうと考えております。  従って、私は市町村長の権限を委譲するというだけでなくて、二週間を経過してもやらないというような条件がついておりますので、別に御指摘のようには考えておらないのであります。それでそれが、こういうようなことでやはり公共性の非常に強い土地の獲得ができて、起業者も、社会的に公共に寄与する。こういうことになれば、私はいいんじゃないか。こういうふうに考えます。
  131. 田中一

    田中一君 市長さんは、市民の信頼のもとに市長になっていらっしゃるものと思うんです。市民の大部分がそれらの裁決等に対して反対の場合には、市長さんは、やはり大部分というか、過半数ですね、過半数で当選しますから、その場合には、やはりあなたが二週間の期間市民に対して、これで納得せいというような意味の説得をして行なうということになるのか。私は一週間でも二週間でも、そんなことは時間の問題じゃないと思うんですよ。少なくとも地方自治法があり、この二十二年の地方自治法の制定のときには、政府委員は、はっきりとその地方自治体の本旨というものを非常に民主的に報告されておった。これはまあ日本人の創意で作ったものではないが、占領軍が作らしたものだということが言えるかもしれませんが、少なくとも今日の地方自治体の自主性というものは、このときできたわけですよ。それが少なくともこの法律によって、権限が後退する、自主性が後退するということは否定できないんです。これはね、確かに砂川事件以来、砂川事件に業をにやしたところの政府が、こうしてこういう条文を織り込んだものなんです。まあせめても——砂川事件というのは、御承知のように憲法違反であるという伊達判決もございました。この法律が、アメリカ駐留軍の事業にまで及ばないことに、せめてものこの法律を作った担当者の良心的な点があると思うんです。アメリカ駐留軍のああした砂川事件、いわゆる憲法違反であるという疑いのあるような飛行場の拡張、あるいは射撃場の設定等の問題については、これは国民的な立場でもって反対した場合、原口さんならば率先して、おそらく砂川の村長と同じように、そういう場合には、あなたはほんとうに紫の旗ぐらいは掲げて反対するのだろうと思います。今度の場合には、そういうものは入っておりません。駐留軍関係のものには、一つもこれは触れておらない。あえてあの砂川事件以来、それらを想定して、そういう条文を入れるというようなことは、私はどこまでも、これは自治法違反とまで言えないまでも、地方自治の後退であるということを言わなきゃならぬと思うんです。時限の問題じゃない。原口市長さんは、一つこの点は率直に、何も弁明することは必要ございません。この点は、反対なら反対であるということをおっしゃっていただきたい。そういうことは、現行地方自治法にのっとって、あなたはその行政をやっていらっしゃる、市長として。その点だけは、一つ明確に御意見を述べていただいて、そうしていただきたいと思うんですが、どうでしょうか。  こういうことを原口さんに申し上げるのは、私、大先輩に対して申しわけないと思うんですけれども、この点は、非常に重要でございます。実はそれで、市長にもおいで願ったというようなわけでありますから、その点は、まあ五大市長との話し合いの代表として見えたということであれば、それは話し合いをしておらぬから、おれだけの意見は言えぬということかもしれないけれども、せめて原口さん御自身だけの御見解として、この点だけは、率直に述べていただきたいと思うのです。これでいいということは、おそらくおっしゃるまいと思うのです。どうでしょう、もう一ぺん、よく法文をお読み下さって、随行の諸君によく聞かれて答弁して下さい。  それから今、原口さんに質問していますが、熊谷さんにも、熊谷さんは福井市長を何期もお勤めになった方ですから、熊谷さんに、この点一つ、どういう御意見か伺っておきます。
  132. 熊谷太三郎

    参考人熊谷太三郎君) 市長をやめましてから、だいぶ長くなりますので、こういう問題につきましては、私としてはもう何とも御意見を申し上げるような点もございません。
  133. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) ただいまの御指摘の点でございますが、これは手続の簡素化であって、こういうことが言われております。市長、村長が事業認定裁決申請書縦覧を拒否した場合、知事代行できるようになっている、これは国の事務であり、この程度なら、地方自治権の侵害にはならないと思う、こういうふうな学者の意見がございます。  従いまして、私はさっき申し上げましたように、自治権の侵害とは考えていないということをさっき申し上げたのでございます。
  134. 田中一

    田中一君 私も自治権の侵害とまでは言わない。しかしながら少くとも地方自治の、この立法の精神からは後退であろうということを申し上げているのですが、まあこれ以上、私の気に入る御答弁を強要はいたしません。ありがとうございました。
  135. 田上松衞

    ○田上松衞君 原口さんに、一点だけただしておきたい点があるのです。もし、あなたの口述を私が聞き間違いであったとするならば、私の質問は取り消してしまうのですが、も私のお聞きした点は、法の適用範囲ですが、もっと対象を拡大したらどうだというふうに聞こえたのですが、その中で言われたのは借地権、借家権あるいは土地区画整理事業施行による保有地まで、これを当てはめるように希望すると、こう言われた。そして最後に、これは五大市のおのおのの協議し合った事項であると、繰り返して言われたと承ったのですが、それは違っているのですか、どうですか。あなたは、そうおっしゃったように聞いたのですが。
  136. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) 御指摘になった通りでございます。
  137. 田上松衞

    ○田上松衞君 そうすると、借地権、借家権の問題は非常に複雑ですから、これは別に意図がおありだろうと思いますからいいですけれども、あと土地区画整理事業によるところの保有地、これは大きな問題ですよ。これについて、今のような意見を言われておったら大へんですから、これこそ、一番重大な、自治権侵害のおそれを感ずる一番大きな点になる。しかも、これが一個の、原口市長さん一個の個人の御意見なら、ただ、あなたの御意見だろうということでいいけれども、私も実は横浜市の出身ですが、横浜の市長も、そういう考えをもってやったということになると、大へんな問題です。この点を明らかにしておいていただきたい。
  138. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) 三十五年十月五日に公共用地取得制度改善に関する要望書というものを横浜、名古屋、京都、大阪、神戸市で出しております。その中で、やはり私の申し上げたようなこと——土地収用法による手続を合理的に改善されたい、こういう要望の中で説明しまして、そうして一、二、三とずっと項目をあげまして、七番目に、土地区画事業では裁決の申請に先立って建設大臣の裁定を受けなければならないのであるが、これを損失補償と同じく収用委員会で裁定せられるようにせられたいということをうたっております。従いまして、私が先ほど申し上げましたのは、これは計画事業でも、こういうふうにされることを私どもは五大市として要望しておりますということを申し上げたわけであります。
  139. 田上松衞

    ○田上松衞君 非常にそのことは誤解を生むのです。確かにあなたは前提として五大市が要望したのは、決して今日の特別措置法の成立を望んだのじゃなくて、それよりか前の土地収用法の改正を望んだのだ、こう前提されて言われて、そうして今お話になったようなことを言われたわけですけれども、その中で、私が重大視する点は、土地区画整理事業施行によって生み出されたところの保有地というものは、この一点を、今度の特別措置法の対象としたいということになりますと、これは大へんだということです、それは、根本に関する問題になりますから。
  140. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) 説明が足らない点が、あるいはあるかもわからぬと思いますけれども、五大市で要望いたしましたその前の六項に土地区画整理及び土地改良事業施行中の仮換地及び保留地についても収用できることを明確にせられたいということを言っている、これは要望を出したということでございます。
  141. 田上松衞

    ○田上松衞君 保有地ですか保留地ですか。
  142. 原口忠次郎

    参考人原口忠次郎君) 仮換地及び保留地でございます。
  143. 田上松衞

    ○田上松衞君 よろしい。それならわかる。
  144. 稲浦鹿藏

    委員長稲浦鹿藏君) ほかに御意見もないようでございますから、これにて、参考人の方の意見に対する質疑は終えたいと思います。  参考人の各位におかれては、貴重な御意見などをお聞かせ下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日は、これにて散会いたします。    午後四時五十九分散会