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政府委員(
稗田治君) 従来のこの
耐火建築促進法におきましては、十二条のところに、「
防火建築帯の区域内において、その全部又は一部につき、当該
地方公共団体の長が特に緊急に
防火建築帯を
造成する必要があると認める場合において、」というので
強制的に
造成ができるようになっておるわけでございますが、その違いを申しますと、今回の
防災建築街区
造成法案との違いは、従来の
耐火建築促進法におきましては、
土地を
強制使用するということになっておったわけでございます。従いまして、
強制使用されて、
所有権だけを残されても非常に不
利益でございましたので、その場合には、
土地所有者は、逆に
土地を収用してくれという請求ができることになっておったわけでございます。その点につきましては、
防災建築街区
造成法案におきましては、非常に
都市の枢要な
地区でございまして、地価の高いところでございますので、その
土地を
強制使用するというよりは、むしろ買い取るべきであるというので、
土地を収用するということにしたわけでございます。
それから
耐火建築促進法におきましては、
地方公共団体が、緊急に
造成する必要がある場合におきまして、
強制的に執行いたします場合にも、限定されておりまして、その限定の仕方は、
関係権利者が、それぞれ三分の二以上の
申し出が、その限定された条件であったわけでございます。三分の二、これが
土地所有者の三分の二、
借地権者の三分の二、それから
借家権者の三分の二と、それぞれの三分の二というようなことになっておったわけでございますが、今回の
法案におきまして、は、
関係権利者の総数の三分の二というように改めたわけでございます。
で、これはたとえて申しますと、
都市の相当枢要な
地区で行なわれまして、
借地権あるいは
土地所有者というものの数は、相当ございまして、場合によれば、
借家権者が、たった一人というような場合もあるわけでございますが、そういうような場合に、その一人の人が反対をすれば、それぞれの三分の二という要件が満たされなかったわけでございます。それを今回は、
関係権利者総数の三分の二というように、実際に運用できるように
改正を考えたわけでございます。
それからなお、
耐火建築促進法におきましては、
地域的には、その他の付加されました条件はなかったのでございますが、今回のこの
防災建築街区
造成法におきまして、
地方公共団体が
強制的に執行できます場合には、場所的にも
制限がございまして、五十五条の一項の後段の方にございますが、まず、そこに建っております
建築物が適合しない、
防火地域内なり
災害危険区域の
規定に適合しないという
建築物の総数が、戸数の四分の三以上ある。なお、
建築物が密集しているために
災害の発生のおそれが著しいということが、
一つの
地区的な条件でございまして、それに二号といたしまして、当該区域内にある居住専用の
建築物の
建築面積が当該区域内にある
建築物の
建築面積の合計の四分の一以下であるというような条件がついておるわけでございます。なお、また、三号といたしましては、「
防災建築街区
造成事業の完成が、当該
都市における
災害の
防止及び
都市機能の
向上に著しく貢献するものであること。」という抽象的な考えがなお付加されておるわけでございますが、具体的には、ただいま申し上げましたように、まあ二号が、一番
関係が強いかと思うのでございますが、
建築物のうち四分の一以下が住居専用の住宅の
建築面積であるという
制限がついておるわけでございます。
次に、従来の
耐火建築促進法におきましては、
地方公共団体が
施行する場合には、補償金の担保の提供ということが必要であったわけでございます。従いまして、
地方公共団体は一時、金を二重に準備する必要があったわけでございますが、今回の
法案におきましては、補償金の担保の提供は不要というように改めたわけでございます。
次に、
強制的に執行した場合のあとの補償の
方法でございますが、これが従来の
耐火建築促進法におきましては、一部の権利者につきましては、非常に不利になっておったわけでございますが、それを今回、
市街地改造法の準用によりまして
合理化いたしたわけでございます。
具体的に申しますと、もとの
耐火建築促進法におきましては、旧
土地所有者というのは、新たな
建築物の一部の
所有権及びその
敷地の賃借権または新たな
建築物の一部の賃借権を取得するということになっておりまして、また、旧
借地権者は、新たな
建築物の一部の賃借権を取得するというようになっておるわけでございます。それから旧
借家権者は、新たな
建築物の一部の転借権または賃借権を取得する、こういうことになっておったわけでございますが、今回の
法案におきましては、旧
土地所有者は、新たな
建築物の一部及びその
敷地の共有持分を取得する、また、旧
借地権者は同様に、新たな
建築物の一部及びその
敷地の共有持分を取得する、また、旧
借家権者は新たな
建築物の一部の
借家権を取得する、こういうように、
市街地改造法にならいまして補償を講ずるわけでございます。
借地権者の場合が、従来は借地して
建物を持っておった人でも、新しくできました
防災建築物の一部の賃借権を取得するはかなかったわけでございますが、今回は、やはりできました
建築物の一部及びその
敷地の共有持分、
所有権も取得できるように変わった点が非常な相違でございます。