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1961-03-29 第38回国会 参議院 決算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月二十九日(水曜日)    午前十時三十三分開会    ——————————   委員の異動 三月二十八日委員大森創造辞任につ き、その補欠として藤田藤太郎君を議 長において指名した。 本日委員藤田藤太郎辞任につき、そ の補欠として大森創造君を議長におい て指名した。    ——————————  出席者は左の通り。    委員長     佐藤 芳男君    理 事            岡村文四郎君            谷口 慶吉君            仲原 善一君            野上  進君            相澤 重明君            石田 次男君    委 員            木内 四郎君            田中 清一君            野本 品吉君            谷村 貞治君            大森 創造君            北村  暢君            木下 友敬君            武内 五郎君            千葉千代世君            山田 節男君            奥 むめお君            常岡 一郎君   国務大臣    労 働 大 臣 石田 博英君   政府委員    労働政務次官  柴田  栄君    労働大臣官房長 三治 重信君    労働大臣官房    会計課長    和田 勝美君    労働省労政局長 冨樫 総一君   説明員    労働省労働基準    局監督課長   上原誠之輔君    労働省労働基準    局労災補償部長 村上 茂利君    労働省職業安定    局失業保険課長 鈴木 健二君    労働省職業安定    局失業対策部長 松永 正男君    労働省職業安定    局職業訓練部管    理課長     中田 定士君    会計検査院事務    総局第三局長  白木 康進君    ——————————   本日の会議に付した案件 ○昭和三十三年度一般会計歳入歳出決  算(第三十四回国会内閣提出) ○昭和三十三年度特別会計歳入歳出決  算(第三十四回国会内閣提出) ○昭和三十三年度国税収納金整理資金  受払計算書(第三十四回国会内閣提  出) ○昭和三十三年度政府関係機関決算書  (第三十四回国会内閣提出)    ——————————
  2. 佐藤芳男

    委員長佐藤芳男君) これより決算委員会開会いたします。  昭和三十三年度一般会計歳入歳出決算昭和三十三年度特別会計歳入歳出決算昭和三十三年度国税収納金整理資金受払計算書昭和三十三年度政府関係機関決算書を議題といたします。本日は労働省の部の審査を行ないます。念のため申し上げますが、労働省関係不当事項は、検査報告第三百二号から第三百三十二号まででございます。まず会計検査院から説明を求めます。
  3. 白木康進

    説明員白木康進君) 概要を申し上げます。   三十三年度一般会計及び各特別会計に区分して掲記してございますが、まず一般会計について申し上げます。  一般会計でここに掲げておりますのは失業対策事業費補助金に関するものでございまして、そのうち就労していない者に支払った賃金補助対象とするなど経理に当を得ないもの、これが二十三件。同じく失業対策事業計画が当を得なかったために不経済となっているものが四件ございまして、なおそのほかに政府職員等失業者退職手当支給に関するもの一件でございます。失業対策事業費補助金労働省所管決算額の半ばを占めております関係もありまして、私どもでも特に重点的に毎年検査を実施しておりますが、失業対策事業と申しますものは、御承知通り制度的にもあるいは運用上にもいろいろ問題がございまして、労働省及び都道府県市町村等事業主体におかれましても、その適正な運営には特に御配慮願っておるわけでございますが、何分にもいろいろ問題が多いために、私ども検査の結果でもなお相当数の不当な事例指摘しておりますことは、これは遺憾に存じておるわけでございます。経理に関するものはここに掲げておりますように、就労していない者に賃金を支払っておるという事態、これを国庫補助対象としておるものでございまして、就労していないという事態につきましても、全く事業に従事しない者に面着払い等によって賃金を支払う。あるいは継続的に職場を離脱したりあるいは半日程度就労しかやっていない、あるいは県によりましてはあらかじめ就労時間を短縮しておりながら、法令による既定の一日分の賃金を支払っておる、こういうことでございまして、私どもといたしましても、この法律の定める制度本来の建前はやはりくずすべきではないと、こういう見地からあえてここに多数の事例指摘しておるわけでございます。一々内容は省略させていただきます。  次に失業対策事業を実施します場合に、事業主体がその事業計画をあやまったり、あるいはその対策が適当でなかったというようなことのために、事業費が不経済の結果となってという事例は従来からやはり相当ございまして、三十三年度においてもここにそのおもなるもの四件を掲げております。申すまでもなく、この失対事業も単に失業者賃金を取得させるということだけが目的ではなくて、やはり公共事業の一環として事業効果というものは当然包蔵されるものと考えておりますが、実際に事業計画し、あるいは施行するのは同じく各府県等公共事業担当機関でございますが、どうもこの失対事業というものはそういう点で不十分な点が少なくないようであります。  たとえて申しますと、三百二十五号、千葉県の船形港丸山線道路改良事業のように、波打ちぎわの海岸道路でありながら練り積みにもせず、あるいはコンクリートの根入れ等もしない。単にから石積みでわずかな砂利勾配等で実施するなど、一般公共事業と比べれば非常に設計が不十分である。そのためにその一部がすでに崩壊して道路としての効用を果たしていないというような事例、あるいは次の石川県の犀川河床整備工事事業におきまするような、上、下流にわたってぐり石砂利等が堆積しておって、その一部分を掘さくしても流水等によって再度埋没するのは、これはもう通常考えられるような事態でございますが、にもかかわらず他に適当な失対事業を起こすというような配慮もなく実施したために、流水によって埋没して事業効果を失っておる、こういった事例でございます。なおこの点はその後の私ども検査では相当に改良されておるように見受けております。  最後に政府職員等失業者退職手当関係でございますが、これは御承知のように六カ月以上を勤務して退職した国家公務員である職員が、退職後一年内に失業しておる場合には、すでに一般退職手当を受給した者であっても、法律によって所定の基準で算定した失業保険金との差額をさらに支給を受けることができると、こういう制度でございまして、これを公共職業安定所支給しておるわけでございますが、後に申し上げます失業保険金給付の場合と同様に、季節的に職を離れて再度就職する、しかもなお引き続いてこの退職手当支給を受けているというのはちょっと工合悪いのであります、再就職しながら失業保険失業者退職手当支給を受けておると、こういう事態がありはしないかということで、私どもで比較的に検査のやりやすい営林署につきまして検査を実施したわけでございますが、その結果は、職業安定所失業者退職手当受給者名簿、あるいは営林署勤務簿、こういったものを拝借して照合検査しましたところ、その本人が届け出を怠っておるものに対して調査不十分のままにとの退職手当支給を行なっておると、こういう事態があったわけでございます。  次に特別会計関係は、これも例年保険料徴収あるいは保険給付について指摘しておりますが、まず労災保険関係から申しますと、この会計保険給付につきましては、その後の検査相当労働省あるいは各官署において改善に努力されまして不当の事態が少なくなっております。ここに掲げておりますのは保険料徴収関係だけでございまして、これは私どもとしましては、県の失業保険保険料徴収を担当しております部門で、各事業主について調査した賃金台帳、そういったものをおもな参考資料としまして検査を実施しているわけでございますが、ここに掲げておりますようななお相当徴収不足指摘しております。なおこれらはいずれも労働省において徴収決定措置が講ぜられております。失業保険関係につきましては、なおこの失業保険金給付が適正でないものが相当ございまして、これは失業保険金受給者が再就職をした後にその届出を怠っている者に、なお引き続き失業保険金支払いをしている事例でございます。これは主として職業安定所間で、失業者就職状況を相互通報することになっているわけでございますが、これが十分に行なわれていないようなところにこういう過誤が起こっているように見受けております。失業保険料につきましては労災保険の場合と同様に、種々の事業主調査資料等参考にしまして、大体従来と同程度検査を実施しておりますが、やや改善の跡も見受けられるわけでございますけれども、なお私どもで調査した事業所の約一一%について約二千万円程度徴収不足指摘しております。これもいずれもその後徴収決定をなされているように承知しております。以上簡単でございますが説明を終わります。
  4. 佐藤芳男

    委員長佐藤芳男君) 次に労働省より説明を求めます。
  5. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 昭和三十三年度労働省所管決算のうち、一般会計歳出決算につきましてその概要を御説明いたします。  歳出予算現額は三百八十七億一千六百二十五万九千円でありまして、支出済み歳出額は三百八十六億三千八百四十二万五千円、翌年度繰越額は二百二十万円、不用額は七千五百六十三万三千円であります。  歳出予算現額の内訳は、歳出予算額三百八十四億七千五百七十六万六千円、前年度繰越額二千二百九十四万四千円、予備費使用額二億一千七百五十四万九千円でありまして、前年度から繰り越した額は青少年ホーム身体障害者職業訓練所及び一般職業訓練所施設設置費にかかるものであり、予備費使用額職業訓練費政府職員等失業者退職手当職業官署及び労働省施設災害復旧費に要した経費であります。  支出済歳出額のおもなものは失業対策費でありまして、緊急失業対策法に基づく失業対策事業費補助特別失業対策事業費及び失業保険法に基づく失業保険費負担金、並びに国家公務員退職手当法に基づく政府職員等失業者退職手当に要した経費であります。これらの経費のうち失業対策事業費補助事業実績は、事業主体数が、一千百三十、事業種目別事業数二千六百九十五でありまして、失業者吸収人員は一日平均二十一万二千三百六十六人であります。政府職員等失業者退職手当支給人員は十五万六千人であります。  翌年度繰越額職業訓練費補助金施設費にかかるものであり、不用額のおもなものは失業対策事業費補助職業官署労働本省及び労働保護官署の各項に属する経費でありますが、失業対策事業費補助につきましては、事業主体である地方公共団体において予算措置が講ぜられなかったためであります。  次に労働者災害補償保険特別会計決算について御説明いたします。  昭和三十三年度歳入予算額は三百十六億四千四百六十九万六千円でありまして、収納済歳入額は三百四十億七千二百十五万九千円であり、差し引き二十四億二千七百四十六万三千円の増収となっております。そのおもな理由は、土木建築事業工事量増加等により保険料収入増加したため、及び前年度よりの支払備金受け入れが多かったためであります。  歳出予算現額は三百十六億六千九百十二万円でありまして、このうち予備費使用額は三億一千七百三十六万二千円で、これは保険料精算返還金並びにけい肺及び外傷性せき髄障害療養等に関する臨時措置法の施行に伴う療養給付等支出に要した経費であります。  支出済歳出額は二百六十五億二千百七十六万三千円でありまして、そのおもなものは保険費であります。昭和三十三年度末における労災保険適用事業場数は七十万であって、労働者数は一千三百一万一千人であり、昭和三十二年度に比較してそれぞれ六・三%、六・六%の増加を示しております。また災害補償費支給につきましては総件数が二百二十二万五千件で、支給金額は二百二十三億七千三百万一千円であり、昭和三十三年度において新しく補償費支払いを受けたものは七十万六千人であります。  不用額は五十一億四千七百三十五万六千円でありまして、これは予備費を使用すること等が少なかったためであります。  次いで失業保険特別会計について御説明いたします。  昭和三十三年度歳入予算額は四百九十五億九千二百六十一万四千円であって、収納済歳入額は五百二十二億二千五百九十七万九千円であり、差し引き二十六億三千三百三十六万五千円の増収となっております。そのおもな理由は、被保険者増加率が見込みより多かったたため、及び前々年度国庫負担金受け入れ不足額が本年度において一般会計から補てんされたためであります。  歳出予算現額は四百九十六億五千八百七十万二千円でありまして、このうち予備費使用額は百十三億八千百九十九万四千円で、そのおもなものは給付件数増加等に伴う保険給付に要した経費であります。  支出済み歳出額は四百五十五億三千八百五十七万七千円でありまして、そのおもなものは保険金であります。  昭和三十三年度末における失業保険適用事業所数は三十万八千で前年度に比較して八%の増加であります。  被保険者数は、一般失業保険一千四十万人日雇失業保険五十八万七千人でありまして、それぞれ前年度に比べ六%、四%の増加を示しております。  失業保険金給付状況は、四百十九億六千百四十二万二千円であって、月平均受給者人員は、一般失業保険四十六万八千人日雇失業保険十四万九千人であります。  不用額は四十一億二千十二万四千円でありまして、これは予備費を使用すること等が少なかったためであります。  以上をもちまして労働省所管昭和三十三年度決算説明を終わりますが、なお、昭和三十三年度決算検査報告において掲記されました事項につきましては、会計検査院の御指摘通りでありましてまことに遺憾に存ずる次第であります。指摘事項につきましては鋭意改善に努力いたし、かかる御指摘を受けることのないよう努力いたす所存であります。
  6. 佐藤芳男

    委員長佐藤芳男君) それではこれより質疑を行ないます。御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  7. 大森創造

    大森創造君 まずお伺いいたしますが、労働基準監督官というものが現状ではほんとうにその実質を成していないというふうに私は考えるわけなんですが、大体東京都内労働基準監督官労災監督官を除きますが、人数どのくらいでございますか。本局と十七支所ですか、その合計何人ぐらいになりますか。
  8. 和田勝美

    政府委員和田勝美君) 手元東京だけの資料を持ち合わせておりませんので早速調べまして御報告いたします。
  9. 大森創造

    大森創造君 きょう中にできますか。
  10. 和田勝美

    政府委員和田勝美君) はあ、できます。
  11. 大森創造

    大森創造君 それでは一人当たりの事業所、どのくらいになるか、一緒にお調べ願いたいと思います。それはもちろん届出のあった事業所もございますが、届出のない事業所について調べることできますか。
  12. 和田勝美

    政府委員和田勝美君) 基準局において把握いたしておりますものはわかりますが、それ以外はちょっと資料がございませんのでお知らせ申し上げできないと思います。
  13. 大森創造

    大森創造君 この基準監督官が見る事業所、私の想像ではおそらく一千件以上になっていると思います、その場合に何か機動力ございますか。
  14. 和田勝美

    政府委員和田勝美君) 乗用車、オートバイ、バイク、自転車等配置いたしております。
  15. 大森創造

    大森創造君 台数は幾らになりますか。どこに何台ございますか。
  16. 和田勝美

    政府委員和田勝美君) 各所別資料手元に用意しておりませんのでこれも後刻お知らせをいたしたいと思います。
  17. 大森創造

    大森創造君 それでは監督官の年間の旅費の額を一つ。それではその機動力の方も事業所の数の方もあとでお調べ願うとして次の質問をいたします。
  18. 佐藤芳男

    委員長佐藤芳男君) なおこの際私から委員各位に申し上げたいと思いますが、大臣は他の会議都合上本会議開会までという申し出がございますので、その御希望に沿いたいと考えております。できるだけ大臣一つ質問を集中していただきたいと思います。
  19. 和田勝美

    政府委員和田勝美君) 三十三年度決算額におきます労働省保護官署旅費を申し上げます。職員旅費が千四百九十万二千円、監督旅費が三千七百六万八千円、検査検定旅費が四百二十五万一千円、監察旅費が七十四万、以上でございます。これは地方基準局監督署の分でございます。
  20. 大森創造

    大森創造君 その項についての質問あとにして大臣にお伺いいたします。今、事業所倒産破産などが非常に多い、その場合に賃金が保障されない。その労働者の方は賃金先取り特権はございまするけれども、その実質が生かされていないのが現状だろうと思います。このことについて何か対策がございますか。
  21. 石田博英

    国務大臣石田博英君) ただいま御指摘のような場合における賃金債権確保につきましては、実は私が前に労働省におりましたときから法務省その他との折衝を続けているわけでありますが、立法的にいろいろむずかしい問題がございます。御承知のごとく、そういう場合における債権の第一順位は国税であり、引き続いて担保を設定されました債権であります。それに優先せしめるのが労働省立場として正当であると考えるのでありますが、その私ども立場と、それから大蔵省及び担保を設定された債権確保を守る立場との調整が非常に困難でございます。しかし、これはぜひとも処理されなければならない問題と考えまして、立法的に調整がつかない場合におきましては、何かそれに代わる実効ある手段、たとえば保険制度のようなものを創設するように一面において各省と意見調整を継続いたしますとともに研究中でございます。
  22. 大森創造

    大森創造君 大臣もお認めのように現在では賃金は保護されておりません。しかも非常に倒産破産が多い、経営不振も多い。その場合に保険法でなく、私の考えではもっと強いものにするために労働基準法を改正する、ないし特別法を設定するという気持はございませんか。
  23. 石田博英

    国務大臣石田博英君) そういう方法をとってみましても、実質的にその立法的措置だけでは現実の金がつかめないわけでありますから、その現実の金をつかめる方法をやはり研究をしなければならないのじゃないかと存じます。中小企業退職金共済制度ども、そういう研究と申しますか、そういう点の研究から得た一つの結論でありますが、これは退職金でありまして、先に提供された労働に対する債権確保ということにはならないわけであります。ただいま御指摘問題等も含めまして、賃金債権確保についての実効ある具体策研究いたさせているところでございます。
  24. 大森創造

    大森創造君 それではもう一つ別な問題に移りますが、一昨年か昨年の春に新聞に出ました問題で、京都園部監督署、それから三重の津の監督署というところで労災保険不正受給が行なわれたという事実を御存じですか。
  25. 石田博英

    国務大臣石田博英君) あったそうでございますが詳しくは私は存じませんので、労災部長からお答えをいたします。
  26. 村上茂利

    説明員村上茂利君) ただいまの御質問はたとえば山奥の林道工事等労働に従事します労働者が共謀いたしまして、みずから指を自損するというような行為を行ないまして、医者に参りまして業務上の負傷であるという診断書をもらい、監督署に参りまして医療費並び傷害補償費の請求をした、こういう組織的にございました事件を私ども把握いたしましていろいろ調査いたしましたところ、京都園部監督署におきましてその事件にかかわりのある職員が一名いることが発見されたのでございます。その職員につきましては送検措置がとられまして、目下法のさばきを受けているところでございますが、何分にも京都、三重県等にまたがりますところの組織的な非常に巧妙な保険金詐取事件でございますので、労働省といたしましても単に京都などという一局に限らず、関係あると見られますところの数府県にまたがります労働基準監督機関をそれぞれ督励いたしまして、そのような事件が起こりませんようにその後徹底的に調査し、かつそういった事件が起こらないように万全を期している次第でございます。
  27. 大森創造

    大森創造君 大臣に対する質問はなくてそれ以外の質問がありますので、この際私は一たん打ち切って大臣に対する質問のある方にお願いして、それが終わってから私の質問を続けたいと思います。
  28. 木下友敬

    木下友敬君 先に局長にお尋ねしますが、失業対策事業費補助金経理当を得ないものということについてのあなたの説明を聞いていると、「三十四年中に全国一、一六二事業主体のうち約四〇%に当たる北海道ほか三一都府県、四三七市町村計四六九事業主体について国庫補助金経理状況を実地に検査したところ、前年度同様補助対象として算入してはならない経費、すなわち就労していない者に支払った賃金または認証外事業に使用した賃金等」そういう不当の事実があるということを言っておられます。言葉を聞いておりますと、これは昨年も一昨年もずっとその種の間違いが繰り返し起こされているというように私も存じているし、あなたの言葉の中にも法律建前上、非常にたくさんな事例をあえてあげたんだというような感じを受けたんですよ。何かこれはやむを得なくて、法律に違反したんだからあげたんだけれどもほんとうは何か失対事業ではこういうような違反はあり得ることだ、ある程度まではやむを得ないような状況があるんじゃないかというようなことを会計検査院は考えておるんじゃないか。非常にきびしさが足りなかったような気がします。
  29. 白木康進

    説明員白木康進君) お答え申し上げます。私の説明をそういうふうにお受け取りになったとすれば、これは多少説明が不十分であったと思いますが、私が申し上げましたのは、この失対事業経理の面で、就労しない者に支払った賃金補助対象に含めておったという状態は、ここ数年来継続してあるわけであります。私どももこの面は先ほど申し上げましたように決算額その他とも勘案いたしまして、特に重点を置いて検査をしておるわけでございます。ここで私が法律に定める制度建前をくずさないということのために、あえてここに多数を指摘したと申し上げましたのは、今おっしゃいましたようなことではなくて、労働省あるいは事業主体において、たびたび私の方で検査報告に例年掲げておりますから、十分に私どもの意向もくみ取ってもらいまして種々努力をしておられますけれども、なおこういう事態が起こっておると、そういう点を私ども考えて申しておるわけでございまして、やはり法令の規定に違反した補助金経理というものについては、私どもとしてはこれは当然国会に報告すべき事態と、こういうふうに考えております。
  30. 木下友敬

    木下友敬君 そこでそういう毎年繰り返されて同じ事犯が起こってくるのは何か欠陥があるのです。何か大臣としてもこれは法律の方に多少無理があって、もう少し緩和しなければならぬという点はございませんか、御希望はないかということです。
  31. 石田博英

    国務大臣石田博英君) これは失業対策事業の性格、内容というものは非常に特殊なものでありまして、その中にいろんな問題を含んでおるわけであります。その立場によってみればある意味では欠点だらけということも言えると思うのでありますが、また実際現在この事業に従事しておる人たちの実情というものの側から考えていけば、そういう側からものを見て参りますると無理からぬ点もあると存じます。しかし実際に就労していない者に賃金を支払うとか、あるいは規定された就労時間を故意に短縮して、まあいわば失業対策事業一つの目標である、やはり国費を使ってやっておるのでありますから、その効果を上げるという方を故意に無視して給付の方だけに重点を置くというやり方も、この事業の本質をやはり乱るものでございますから、私どもの方といたしましては御指摘を受けました点についてはやはり誤りなきを期しつつ、失業保険事業の実際面と調和さしていく行政指導上の努力を続けるという立場でございます。
  32. 木下友敬

    木下友敬君 そういう立場をとられるのが今の法律のもとでは至当のことでしょうけれども、これは毎年々々繰り返しておる。どこかをちょっと調子を変えてやらぬと事案は毎年続く、おそらく三十四年度も三十五年度も三十六年度も、これはどんなに大臣が行政指導をされましても、起こってこないと言えないでしょう。どうかすれば、同じ割合に会計検査院検査をするならば、数は減ってこないかもわからぬとさえ思うのです。そうすると、何かそこに大臣の力でここを改正すればいいということがあるはずです。それをお考えになっていないはずはないと思うから、そのキー・ポイントを説明して下さい。
  33. 石田博英

    国務大臣石田博英君) それは私どもも、同種類の違反が重なるということについては、それは行政上の指導の欠陥とか、あるいはそれをあずかっておりまする者の責任とかということだけで処理できない問題がやはりあるだろうと思います。そういうものについては私どもも逐次改良の努力をしていかなければならぬと思うのですが、問題はその性質でありまして、特に御指摘を受けましたような架空人員で支払うというような問題、あるいは時間を故意に短縮するというような問題は、やはりどうも一定の建前というものをくずすと全部がくずれてしまいます。従って、問題によりけりでございますが、確かに同じようなことが重なるということは、私は、木下さん御指摘のようなものが背景にあり、それを根本的にあるいは法律上で改めていかなければならないと思っておるわけでありますが、ただいまそれについて具体的な御返事を申し上げるところまで結論が参っていないのでございますので、その点を御了承いただきたいと存じます。
  34. 佐藤芳男

    委員長佐藤芳男君) ただいま本会議の予鈴が鳴っております。本会議は十五分から開会される予定でございますので、休憩をいたしたいと存じます。なお、午後は一時より再開いたしたいと思います。本会議の所要時間は約三十五分の予定でございますから、午後一時再開ということに御了承願いたいと存じます。  暫時休憩いたします。    午前十一時十三分休憩    ————・————    午後一時二十五分開会
  35. 佐藤芳男

    委員長佐藤芳男君) これより委員会を再開いたします。
  36. 木下友敬

    木下友敬君 それではさっきの続きを少しお尋ねしたいのですが、会計検査院の第三局長に。毎年引き続いてこういう不当な事犯が起こってくるということについて、会計検査院はどういうお考えですか。たとえばそれは非常に労働省の行政指導が悪いのだ、ほかの省に比べて特にその方面が悪いのだというようにお考えになっていますか。何かほかに原因があるというふうなことをお考えになっていますか。
  37. 白木康進

    説明員白木康進君) 失対事業補助金経理について毎年同じような事態を繰り返し起こしておりますことにつきましては、午前の席でも申し上げたと思いますが、やはり制度的に、あるいは運用上いろいろ実際の問題として理屈通りに簡単にいかない面もあるのではないか、こういうふうに考えておりますが、特に労働省の方の各事業主体等に対する指導その他が非常に不十分であるというふうには必ずしも考えておりません。
  38. 木下友敬

    木下友敬君 それで必ずしも行政指導が悪いとは考えていないとすれば、何か原因があるだろうということをお考えになりませんか。
  39. 白木康進

    説明員白木康進君) この失対事業において就労しない者に対して賃金を払っている、そのことの原因としましては、私ども毎年の検査でいろんな事態を聞いておるのでありますが、まあ原因によりましては失対事業賃金が必ずしも十分でないというようなことのために、失業労務者が失対事業だけではやっていけない、ほかの方の仕事もやらなくちゃならぬというようなことで、多少勤務時間が短くなるような事態もあるとか、あるいはまあそういったいろいろな問題から、やはりこれはほかの職場と同じように組合活動等もあるわけでございますから、そういったもので非常にはっきりした職場離脱というようなこともあるでありましょうし、事業主体としましても失業労務者の救済というような面については、単に法律規則の制度の面ばかりでなくて、実際問題として種々配慮しておられると思うのでありますが、やはり先ほど申し上げましたように、この制度建前が必ずしも失業労務者の立場から見ても完璧ではないというようなことから、こういった事態が起こってくる。そこで事業主体がいろいろやられることは、失業の発生の状況その他によっても事情は変わってくるわけでございますから、事業主体によっていろいろ変わった措置をとられることも、場合によってはあるいは差しつかえのない場合もあるのかと思いますけれども、やはり労働省として全般的の立場から見る場合には、例外的な措置はなるべくとらない、もしどうしても必要があれば事業主体の単独事業としてやってもらわなければいかぬ場合もあるのではないか。こういった意味で特にこういった事態を掲げているわけでございます。
  40. 木下友敬

    木下友敬君 今のお答えの中から、お答えの中のほんの一部ですが、私も心配していたことですが、日雇い労働者賃金、これが必ずしも十分でないのではないかということを会計検査院の方にも認識してもらいたいと思って回りくどく今まで言ったのです。幸いにしてあなたがそこへ言及されたから、これは大きな問題として、日雇い労働者賃金ということには労働省も考えを新たにしていただかねばならないと、こう思うのですが、三十六年度からは幾らか賃金が上がることになっているようでございます。三十五年度平均の三百三十四円から三百八十五円に上がったということを聞いたのですが、私はおそらくこれでも約一カ月の就労日数を二一・五とした場合に、一カ月の収入はまだ一家をささえるには非常に不十分であるから、これではまだまだ明年度はあなたが会計検査をされても、今のような事犯は決してふえるとも減ってこないと思う。と申しますのは、それぐらい賃金を増しても物価の値上がりというものが現実にあっていますから、決して収入が上がったからといってその人の暮らしがよくなるわけではないと思うので、この辺の収入とそれから今ここに問題となっておる不当な事犯とが、やはり明年も繰り返されてくるとすると、根本的にこの問題を考えてもらわなければならぬと、こういうふうに思うのです。そこで柴田政務次官ですがね、私午前中から質問しておりますのはこういうわけなんですよ。会計検査院のこの報告を見ますと、労働時間が短いのに長く働いたようにして給料を払った、あるいは働かない者に働いたようにして払ったという事犯がたくさんあるわけなんです。そうして会計検査院としても、こんなにたくさんの例をあげるのはどうもあげにくいがといったような、まあ何か理由があってこういうふうな事犯が起こるのだからというような、多少同情の眼をもって労働省を見ておられるような気がするのです。というのは結局今の問題が起こったように、賃金が安いから暮らせないのを実際に見ておれば、何とかして少しでも給料を払ってやろうということで、労働時間の短いのも長いようにして払ったという、一面その行政の衝に当たっている人に同情の眼をもって会計検査院会計報告をしておられると、こうとったのです。そして本年度は日雇い労働者賃金は少し上がるようでございますけれども、これでは今申しましたように物価が上がっているのですからまだ足りないから、これは将来ともずっとこの賃金全面においては上げていただかねばならないし、あるいはこの二一・五の就労日数というものをさらに一つ考えてもらうということでなければいけないと、私こう思うのですが、この際次官の御所見を伺っておきたいと思います。
  41. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) 御指摘の点に関しましては、労働省といたしましても非常に苦慮いたしておる点でございまするが、御承知通り、失対事業と申しまする場合に、経済成長が今日のような大きな幅を持っておるにもかかわらず、いろいろな事情によってどうしても失対対象から抜け切れないという方たちに対しましては、御承知のように、長らく最低生活を保持するということもむずかしい問題があるということから、かような事態が起こって参ったということは御指摘通りでございまするが、これに関連いたしましては、一面において生活保護という社会保障の政策との関連と申しますかバランスの問題等もございますし、労働省といたしましては、さらに非常に現在、求人が多くなっておりまする際に、もっと正当な労働によって、よりよい賃金を得ていただくようなチャンスを多く持っていただきながら、一面において、どうしても救われない方たちに、働いて生活の基盤を確保していただくという両面を考えて、御指摘のように、将来とも生活基盤の確保のためには、失対事業賃金を増す方向には労働省としては全面的に努力はいたして参らなければならぬと思っておりまするが、まあ最近特にやかましい労働関係者の技能の向上、従って技能訓練等との関係を組み合わせまして、両面から働ける立場の皆様方に生活の安定した基礎を作らして参るという一面、御指摘の点については、今後も一そう努力いたさなければならぬ、かように考えておる次第であります。
  42. 木下友敬

    木下友敬君 今、将来ともこれを改善していくというお考えということを聞きまして、その点私も敬意を表しておきますが、もう一つ問題がございますのは、一度日雇い労務者になるとなかなか足が抜けないという事実ですね。これはもう特に六大都市ではその傾向が著しいようでございますが、全国平均でも三年九カ月、あるいは六都市では四年五カ月、またその他の地域では三年六カ月とかいうように、一度日雇い労務者になるとそこから抜けていけない。六年以上も日雇い労働者を続けておるというのは、六大都市では婦人の方が四〇・三%、男子の方が三〇・八%、平均三三・五%というぐらいで、どうもそこに定着してしまうという傾向があるようでございます。これは好ましからざる傾向でございまして、今あなたの言われたように、技能を訓練していくというようなことがほんとうにできるものなら、それでほかのところに相当の技能を持った人ならば、日雇いでないほかの労務者としてそこから転換していくということができるだろうと思う。やはりここに、どういうことですか、住みよいと申しますか、まあまあといっているのか、どっちにしても、もし住みよいとすれば、労務管理が非常にルーズであると思います。年をとってからほかに行くよりも、ここにおれば細々でも食っていけるからというような感じを与えるということも考えられるわけであります。私はこの六年以上というような人が、しかも老齢ですね、こういう事態が長く続くということは、あまり好ましいことではないと思うのですが、その点どうですか。何かこれを転換して、日雇い労働者として年限が非常に短いということが非常に好ましいと私は思うのですが、次官はどういうふうにお考えでしょうか。
  43. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) 一般的に考えますれば、御指摘通りだと思いまするし、先ほども申し上げましたように、事業の拡大に伴いまして非常に求人が多くなっておるときに、失対適格者が減らない、減らないどころか多少ふえて参るというようなことにつきましては、根本的にもっと掘り下げて検討しなければならぬ面がたくさんあるとは思いますが、現在でも失対関係の方たちの平均年令が四十数才ぐらいになっておるわけでございまして、その中でも中高年令層の方に対しましてもさらに適正な技能訓練をいたしまして、さらによりよい労働環境にたえていただく方法もある程度はあると思いますが、ふえて参りまする傾向といたしましては、一面において若い層の労働力を非常に強く要請される反面、高齢の方たちがやはり職を失なってくるという幾らかの傾向があるわけでございます。多くの場合に、これは先ほども申し上げましたように、生活保護とは関連いたしまするが、人の本能的な希望といいますか、助けられるよりは自分で働いていきたいという希望が非常に強いわけでございますから、どうしてもある程度安住するという気持も多少あるかもしれませんが、やはり働いて生活の基礎を持っていきたいという方たちには、仕事の分量、内容等よりも社会保障の考え方を相当加味してでもこの制度を活用し、また合理化して参らなければならぬという、両面がありはしないかと考えられますので、一面において中高年令層の方たちに対しましても、従来にも増して、非常に人手が不足して参りまするので、各自に適職を見つけまして、技能訓練を強化しながら、ただいま御指摘のように、向上心を失って非常に低い困難なところでも安住するというような気風を打破して参らなければならぬ。こう思っておりますが、実際問題として多少そういう傾向もないとは言い切れないと思うので、適格者で十年以上になるような方たちもだいぶ出ておるということでございますから、今後もう少しいい環境を手近に切り開いて参るということを、あわせて御期待に沿うような方向に努力をして参りたいと考えております。
  44. 木下友敬

    木下友敬君 ちょうど次官が言われた通りに、日雇い労働者を失対の事業に使っておるというのは、これは職を与えてはおるけれども、一面社会保障でなく、社会事業的な眼で見ておるのではないか。何かこの人たち希望を与えて、訓練を与えて、そしてほんとう労働者としての働きができ、それに相当した賃金がもらえるというような、向上さすというような意欲が行政面で、ないのじゃないか。エア・ポケットになっていて日雇い労働者というものをそこへたまりを作っておいて、そうして失業群をそのまま温存しておるというような感じがするのですよ。そうじゃなくてもっと積極的に、こういうものをほんとう労働者に仕立てていく、非常に年寄りであるとか、半ば病身の者であるというような者には、これはまた別の社会保障的の問題も起こってくるでしょうけれども、どらも本気でこの日雇い労働問題に取っ組んでおられないというような気がするのですが、どうでしょうか。そうとは言われないでしょうけれども、申し開きがあれば、その申し開きをしていただきたい。
  45. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) どうもこういう時代に、失業対策というような制度を温存したいという考え方は毛頭持っておらないというふうに了解いたしておりまするが、実際問題として非常にむずかしいのは、御指摘通り失対賃金では一家を支えていく生活はほとんど不可能に近いとはいいながら、やはり相当あてにしておられて割合に居心地がいいんだというような点も、完全にそんなことはないんだということを申し上げかねるところに、もうこれでいいんだということで、長くおると向上心も失ってしまうのだというような例がかなりあるような感じを受けるわけでございまして、せっかくこういう好況の時代に、安定したいい地位を確保していただきたいということで、決してなおざりにしているわけじゃなく、相当努力はいたしておりまするが、さらに賃金の決定、あるいは訓練の強化等々を通じて、皆さんのうち最後の場合にどうしてもこの制度で救って参らなければならぬものは、どうしてもある程度は残ると思いまするが、傾向として安定した方向に、もっと高いスピードで転換していただけるような最大の努力をいたそうと、いろいろ計画はいたしておりまする点を御了承いただきたいと思うわけでございまして、決してこの制度があるから、労働省はこの制度に隠れて、いい気でいるのだというようなことは絶対にない、ということだけを一つ御了承願いたいと思います。
  46. 木下友敬

    木下友敬君 この日雇い労働者が仕事をしている状態を見ますと、あなたもごらんになったことがあると思いますが、家を出るときから子供をおんぶしてそうして仕事場に行って、仕事のさなかでも乳を飲ます、だけならいいが、子供を遊ばしておる。一般の他の労働の場合には見られない特殊な状態がある、この点についてどうお考えですか。
  47. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 未亡人なんかにおきましてやはりそういう事例がだいぶありますので、数年来私の方といたしまして、失業保険施設といたしまして、そういう失対で特に乳飲み子を抱えておられる方の保育所の施設、それを相当やっております。しかしこれは決して完全なものではございません。ただ現在の失対事業におきましてまだ社会保障が十分でないために、父親が病気で倒れた場合、母親とかその妻がかわって一家の生計を支えるために、失対事業に働かしてほしいという場合には、私の方の基準として入れることにしているわけです。そういう場合にそういう現象が見られるわけです。しかしおっしゃる通り就労秩序として、作業場のその働いている婦人のそばで、そういう子供が遊んでいるということは、そうしてそれがためにどうしても作業がおろそかになるというような客観的事実につきましては、就労秩序の維持、またその働く妻が安心して、子供のけがなんかを心配しながらでなくて、安心して働けるような処置は逐次とっていきたいと思います。しかし現在の状況では、   〔委員長退席、理事野本品吉君着席〕 私の方として失対事業の現在の社会保障の状態からして、そういう方々にも相当職場を与える、一般的な職場を与えるという意味において、収容していかなければならぬというふうに考えております。
  48. 木下友敬

    木下友敬君 子供を持って働いている人には、保育所のようなものを作っていかなければならぬ、ぜひ私はそうしてもらいたいと思う。もうこういう制度ができてから相当長くなりますから、早くそういうことをやるべきだと思う。でないと、それだけではございません、失対のやっている仕事を見ますと、非常にのろいという感じがするのです。と申しますのは、割合一般の方は、これは正直なことをいえば、どう見ているかというと、これは失対事業だからぐずぐずやっているのだ、こういうのです。その半面はどうかというと、これだけの給料で一生懸命働いたら腹が減って仕事はできぬわい。だからそこそこにちょうどその給料に合うただけの仕事をしているのではないかというのが、世の中の多くの人の見方じゃないですか。またあなた方としても、まあこういう日雇い労働者の失対事業だから、ほんとうの専門家の労働者が、あるいは道路工事とか、りっぱな、人夫がやっているようには、初めから期待していないというふうに思われるような状態が見られる、私はそれはあまり喜ぶべきことではないと思うのです。社会保障として、あるいは日雇い労働者の今の御婦人の方々の子供を預かってあげるというようなことを充実すると同時に、そういう意味において相当の給料をあげて、そうしてその給料に相当するだけの仕事もしてもらうという方向に持っていかなければならぬ。給料を不法に安くしているということは、あまり働かんでもいいというととの一つの現われのような気もするのです。この点はどういうふうにお考えになるか。
  49. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 御指摘の一部は、ことに東京都あたりは現在の状況を若干申し上げますと、ずっと数年来のことでございますが、そういういろいろの層と労働能力に各種の程度がありますものですから、東京都としては働く方々にABCDというような能力区分を安定所で作りまして、ABという部類の人は毎朝民間の就労の求人のあった場合にはそっちに紹介して、その民間紹介でできない人を失対のいわゆるAの現場、重作業の現場に出すわけです。そうしてCDの方々をおもに皆さん方がよく道端で見られるような道路清掃という部面に回わしている。だからあの方々だけが失対ではなくて、あとの半分以上は、皆さんが道端や普通のところでは見られない河川とか道路の工事、そっちの方にだいぶ行っておるわけです。とかく今のおっしゃられた部面は失対事業のうちの、われわれ東京都では三分の一の人数だと思っておりますが、それくらいの数の方々、大都会におきましては、そういう下層社会の方の一部がどうしてもそういう失対事業の部面に出て、そういうように滞留している。しかし一面東京都におきましては、失対事業というものを設けまして、みずから失対事業の事務所を設けまして、コンクリートの製造から、コンクリート舗道の舗装のやつから下水の工事、それから中学校、小学校のプールでもとの二、三年来二百近くも小学校、中学校のプールも失対労務者の手だけでやっている。そういう面は一般には見られない。校庭なんかの整備でも非常にたくさんやっている。そういう方々はみんな大体一般の作業というのですか、雑役や運送、そういう部面や相当高度の重作業に行かれる方であり、民間の就労と交互にやっておられる方であります。ただそういう方なら一般の常用に行ったらどうか、また行けそうなんですけれども、やはり多年日雇い労務者として、そういうふうに日々のかせぎをやっておられる方は、同じ重作業でもなかなか常用の方に行きたがらない。私がちょうど失対部長を三十三年のころやっておりましたが、日通や何かに頼みまして、常用化して、相当三十人くらい梱包の仕方なんかを訓練しまして、頼んで、日通の方もこれを常雇いで雇い入れましょうということで、われわれの方としては相当その方面にも手伝いに行ったこともあり、経験も特別一カ月ばかり訓練したわけですから、常用化されると思っておったのが、やはりそのうちで六割くらいまた常用からもとへ帰る、そういう一つの慣習も若干ある。それから港湾荷役なんかの方も、荷役運送は変化が非常に激しいわけです。ことに東京港は横浜、神戸、名古屋と違いまして、まだ港湾労務者としての技能も程度がなかなか統一されていない労務者が多いわけでありますが、   〔理事野本品吉君退席、委員長着   席〕 それも失対事業と港湾荷役と出入りしております。こういう方々もなかなか港湾荷役として、そういう昔からの港湾労務者としての体制に入りにくい状況の方があります。従ってかりに単に賃金が低いとか、就労能力がないというばかりでもないし、その仕事の作業によってそういうふうな環境に慣れて、従ってどうしても先ほど政務次官が言われましたように、やはり向上心と申しますか、そういう一定の定まった職種について、そうして何か技能をみがいて一定の定職を持っていくということについては、やはりこれは相当長年かかって組織的にやらなければならないわけなんですが、その間にわれわれの方とそういう労働者自身との空気が、現場においてなかなか一致しない。それから失対事業就労の監督が鈍いじゃないかという問題、これはもうわれわれの方は常々そう思って、決して昔の飯場制度みたいなものをやろうと、ゆめ思っておりませんけれども、やはり世の良識ある方々のいろいろ御注意をいただいて現場を見ると、やはりどうしても現場の監督という者の手薄は十分わかるわけであります。現在わずかの事務費で職員を置かしているわけでありますが、その現場の職員も直用でやります原則でありますので、この現場の職員が各府県市町村ともに臨時職員になっている。これを定員化するというのは、どうも理論上、失対事業が臨時的また毎年その就労ワクによって補助金がきまるというふうな関係から、県、市町村ともなかなか、その現場の監督をわれわれの方は補助職員補助監督と言っておりますが、そういう方々の身分もなかなか安定しない。また定員に入れる入れないの問題もあります。また定員にたとえ入れても、現在の予算から見ると、非常に低い給与になっている。この点はまず役所側として十分改善していかなくちゃならないというふうに思っております。
  50. 木下友敬

    木下友敬君 今の運送業とかあるいは港湾関係荷役だった者がまた舞い戻ってくる、そういうことですが、あなたはそういう現象を説明しただけで、ではどうすればいいかということに心を砕いていただきたい。そこが一つもなくて、現在そういうふうになっているというだけでは、どうもいつまでたってもこの制度がよくなっていくということは伺われないわけですね、何かいい考えはないですか。私はやはりこういう働く人たちの味方として、この失対の人が働いておる状態を見て、どうもぐずぐずしてあまりいい仕事をしておらぬということだけを見たくないのです。なぜそうなっているかという、長年の習慣であまり一生懸命汗を流してやっていない、こういう初めからの原因ですね。それからそういう習慣になったということ、これは事実であって、特にもう労働者のかがみになるように一生懸命働いているということは言えないわけなんです。それを自他ともに私は許している状態じゃないかと思う。これはいけない。そこでそれを改めていくにはどうしたらいいかということを本気で考えていかなければならぬのと、今申したように、恒久的な仕事、常用化にせっかく持っていっても、また舞い戻ってくる。これは決してふるさとが楽しいから帰ってくるというのでないだろうと思う。何かそこに、あなた方も長いことこれをやっておられるから、どうすればこれを普通の労働者として仕上げていくかということについては、考えをまとめていかなければならぬと思うのですが、何かないですか。
  51. 松永正男

    説明員(松永正男君) ただいまの御質問の点でございますが、先ほど来御説明を申し上げましたように、失対就労者の平均年令も相当高くなって参りまして、まあ一口に申せば固定化の傾向にあるということは申し上げた通りでございます。ただ失対適格者総数について見ますと毎年平均して約三割くらいの出入りはあるわけでございます。ただこの内容を見てみますと、やはり失対の適格者になってから日の浅い者あるいは年令の比較的若い人たち、こういう方たちは比較的失対の適格者になっても、また民間の雇用に復帰していくということが非常に可能なわけでございまして、そういう人たちが多いわけでございますが、実際には三割ぐらい移動というものが毎年あるわけでございます。で、比較的年令層の高い方々につきましては、先ほど来御説明申し上げましたような、何と申しますか生活態度といいますか、慣習と申しますか、そういうようなものもございますし、また中・高年令層の就職が比較的困難であるというような事情もございまして、一般の民間雇用に復帰することがなかなか容易でないという事情はあるわけでございます。で、これに対しまして、従来とも常用化の促進ということで、各県安定所を通じまして、民間雇用への復帰ということを窓口を通じて推進をしてきておるわけでございますが、これとあわせまして、先ほど政務次官から申されました職業訓練というものも、従来たとえば正規の訓練でなしに比較的簡易な訓練を施して、それによって常用化の促進をはかるというようなことをやって参ったわけでございます。この実績等を見まして、やはり訓練といたしましては相当期間の長い、それから教育内容につきましてもしっかりしたものをやらないと、なかなかこれが推進ができないということも考えまして、昭和三十六年度におきましては、一つのテスト・ケースといたしまして、この日雇い労働者のための特別の訓練を行なう予算を計上いたしました。これは人数はわずかでございますけれども一般の炭鉱離職者等の訓練と同じように、期間といたしましては六カ月間訓練をする。その間におきます生活のために訓練手当を支給をいたしまして、その間訓練手当によって生活はできるようにいたしたいというような計画をもちまして、三十六年度に実施をいたしたいと考えております。なおまた現在国会に提出中の雇用促進事業団法の内容といたしまして、この事業団の事業として、日雇い労働者等が民間雇用に常用化されるという際の就職仕度金と申しますか、就職資金の貸付といったようなものも事業団の事業としてやりたいという計画をいたしております。もちろんこれらの施策によって十分であるというふうには考えておりませんが、専門のがっちりした訓練をやるということを独立の予算で計上をいたしましたのは初めてでございますし、今申し上げたしたような就職促進のための資金の貸付というような制度も相待ちまして、できるだけ常用化促進の方向を講じて参りたい、またこの実績によりまして、今後におきましてもさらにこれを強化していくというふうなことを考えておる次第であります。
  52. 木下友敬

    木下友敬君 無理に急いで常用化しろというわけでもなくて、日雇い労働者をしておってもその生活の安定が得られて、文化的な生活ができるというなら何も日通に行ったり、港湾に行ったりしなくても日雇い労働者でもいいのです。要は生活がどうであるかという問題だが、そうすれば三百八十五円というこの給与が少なくはないかという問題になってくると思う。   〔理事野本品吉君退席、委員長着   席〕 これがたとえば五百円になれば、そうして就労日数が二十五日とか二十六日になれば、名前は日雇い労働者であっても生活内容は変わってくると、こういうふうに考えられる。しかし今の労働省の行き方はそういうことは全然考えておらないで、やはり低い給与でそうして就労日数も二十日前後というところで動かさない。そういうお考えのもとにやっておられるから、この日雇い労働というシステムが一向進歩していかない、私はこう思う。これは一つ他の労働問題とあわせてもう少し、日雇い労働者というこの形が、今日の文明国の姿として、いつまでもこのまま温存しておいていいのかどうかということは本気で考えていかなくてはならない。世の中がだんだん文化的になって進んでいく反面に、一つの社会悪といいますか、こういうものはつきものだという考えでなくて、こういうものは一掃していくということに一つお考えを持っていってもらいたい。その中のまた具体的な一つの問題としては、さっきちょっと話題に出ました子供の保育所ということは急速にやって、あの姿はだれが見ても困る、これは楽しい姿ではない、子供をおんぶしてなおかつ仕事をせなければならぬ。しかし乳を飲ます時間がくればそれをしなければならない。これは当然そうしなければならぬ事情だからやむを得ないけれども、そうでなしに楽しく仕事をしてもらって、それを見る人もよく働いてもらっているという感じが起こるような状態が一日も早くくるように、これ以上の御尽力を願いたい、こう思うわけです。
  53. 大森創造

    大森創造君 午前中二、三の点を御質問いたしましたが、それはあとで御回答願うとして、また秩序立てないでなるべく簡単に、時間を節約する意味で能率的にやろうと思っておりますから、一つ間違いないようにそのつどの私の質問にお答えを願いたいと思います。  まず最初に、この参議院決算委員会調査室要求資料として、昭和三十三年度内部監査業務実績調、労働省。これは労働省で出しているのかどうか。それからもう一つは、この書類を、役所のことですから、順序に従って判を押す、目を通すということにしたのだろうと思いますが、だれがだれがといって具体的に名前をあげることができなければ役職だけでけっこうです。労働省の何課の係長とか、その次に課長補佐がどうで、大臣のところまで決裁で行ったのかどうか。その点をまず第一にお伺いいたします。  それからこの内容について申し上げますと、まず五ページ、ここの「注意を与えた事項概要」という項目のところの2、「署幹部の外部活動については局長又は、署長はその業務の内容について価値判断の上、その軽重緩急に従い自ら行うものと、次長、課長その他の職員に行はせるものとそれぞれ分担して行うことが効率的である。」という文章。私は頭が悪いせいか知らぬが、こういう文章はわからない。外部活動というのは一体具体的にどういうことをいうのか御説明願いたい。それから価値判断の上という言葉がどうも不明です。  その次に3の項、「重大災害については署は局に通報し局においては常にその状況を把握しておき司法事件給付制限等について不均衡のないよう留意すべきである。」というところです。これはあたりまえのようなことだけれどもわからない。「把握しておき司法事件給付制限等について不均衡のないよう」というのはどういう意味か。この文章ではこういうふうに私は解釈せざるを得ないのです。司法事件を各局各署のバランスを考慮してやるのか。たとえばこっちの地方で何か爆発事件ができたというと、そうして司法事件にする、これが甲とします。それから乙の地方では五つ爆発事件ができたという場合、これはこの文章によると、不均衡のないようにということは、Aの方が一つのある事件があった、Bの方が五つの事件があったにもかかわらず、均衡をとる意味において、こっちのBの方は一人しか検束しない。一つしか司法事件にしないというふうに、この文章のあやではとれます。あなた方はその内容についてはおわかりでしょうが、この文章を平明に解釈した場合、第三者的にみた場合には、私のような解釈になると思いますが、その点いかがですか。内部の事情、それを知っての解釈でなくて、この文章から受ける一つ解釈を、あとでお話し願いたいと思います。そういうことではたまらないと思うのです。実際事件の性質を純粋に考えて、司法事件とすべきかどうかをきめなければならないと思いますが、その点どうですか、この文章は。司法事件というものと給付制限などについて、不均衡のないよう、この文章を対照して一つあとでお答えを願います。  それからその次の七ページ、注意を与えられた事項概要について、何々の「教養訓練が必要である。」という「教養訓練」という意味はどういう意味か。それは私も文字は知っていますから、教養訓練と読むと、何となくわかるような気もしますが、どうも中身がよくわからない。そこで、途中はさみますが、一体この労働者と使用者がいた場合に、破産倒産になった場合、その場合に使用者を一体どこまで突きとめるのか。どこか行方不明になった場合にはどうするのか。転出先まで行って確かめて、事終われりとしているのか。さらにそれ以上追及するのかどうか。この点今のことと関係がないかもわかりませんが、ちょっと思い出しましたから、この点あわせてお答え願います。  それからその次に1、2、3、4、5、6、7とこうありますが、これは無内容。私が読んでみると無内容、あたりまえ。今さらこれは説明にならないと思う。そのうちの七番目の「努力目標について」というのは具体的にどういうことをいうのか。それから同じページの監査計画の項にこういうことがございます。「都道府県又は公共職業安定所における職業安定行政が国の定めた政策及び基準に合致して行われているかを査察検明すること」こういう「査察検明」するという言葉はないと思うのです。これは査察とどう違うのか、一つお答え願います。それから「その実施に当っては、行政運営の綜合的」その辺も一つお答え願います。  その次に、この方の書類はこれで終わりますから。午前中お聞きしたのは、一昨年の事件で、京都園部、綾部の近くの園部であった、労災保険の二重払い不正受給があったということをちょっと聞きました。このことを私が調べた範囲では、担当の医者と使用者とそれから監督官がぐるになって、そうして指をけがしたものと、一回園部監督署で保険の受給を受けている。そうして日がたってから三重県の津で同額支払いを受けている。不正受給です。これは監督官がぐるになっている。そこでお尋ねしたいのは、一体どういう経緯になっていたのか、この事件内容。使用者が医者をだまし、監督官をろうらくし、買収して、そうしてこういう事件になったのか。私の考えでは、確かに医者と監督官と使用者が相連絡して、この秘密を守るということになると、同種の事件が今後も起きないとは限らない。相当起きていると思う。この事件以外に内部監査によって判明したならばその事例をお示し願いたい。  それから会計検査院の方にお尋ねしますが、会計検査院でなくて、こちらの方にお尋ねいたしますが、一体このことは内部監査によって発見したのか、どういう事情でこの事件が明るみに出たのか、今後の参考になるからお答え願います。  さらにもう一つは、こういう事件がときどき私は起こっているだろうと思う。だけれども、これを起らせないような保証は一体どこにございますか。その問題はそれだけですが、会計検査院の方で指摘した事件は、不当事項として、失業対策事業補助金経理当を得ないもの三百二番から、こっちは終わりが三百三十二番ですから、引いて三十件ございます。一方労働省の方では、自己監査によるものを上げてございますが、会計検査院の方では一事項二十万円以上のものを上げるとこうなるということでございますが、労働省の方の自己監査は、一体二十万円以下のどの程度までの金額を押さえてやっているものか。それから労働省の自己監査の中に、会計検査院の方で指摘したこの三十の事件も当然含んでいるのか。自己監査によって発見できなかったものを検査院の方で指摘した事項はどこにあるか、まずそういう数項目についてお尋ねいたしまして、あとからまた質問続行いたします。
  54. 和田勝美

    政府委員和田勝美君) 私から最初の方の点についてお答え申し上げます。三十三年度内部監査業務実績調、労働省とございますのは、決算委員会の調査室の方から御指示のありました事項につきまして、労働省関係の部局でそれぞれとりまとめましたものを、会計課が総括的にとりまとめて資料としてお出しいたしたわけでございます。資料の中身、字句その他につきまして御指摘をいただき、大へん恐縮に存じておりますが、それぞれの御指摘のありました五ページは労働基準監督関係でございまして、基準局の監督の方で御説明申し上げます。五ページ、六ページがそれでございます。それから七ページにつきましては職業安定でございますので、職業安定局の方から御説明申し上げます。なおその七ページの中の1から9までにつきましては、注意した事項概要というのと、確かに御指摘のように合っておりませんで、こういう事項について注意を与えるこの中身は、それぞれさらにあるわけでございます。こういう事項について、その安定所において適当でなかったものについては注意を与える。こういうことでございますので、概要という見出しとその点がそろっておりませんことについては、私からおわびを申し上げたい。かように考えております。  なお午前中に御質問がございまして、後刻お答えを申し上げますと申し上げました東京基準局関係でございます。お答えを申し上げます。東京基準局内の監督官の数は合計で百五十五人でございます。適用事業場の数は十五万九千八百七事業場でございます。一人当たりの監督官事業場担当は算術的に計算をいたしますと千三十一になります。それから機動力でございますが、基準局内の東京基準局、局、署を通じまして乗用車三台、マスターライン・タイプの自動車が一台、オートバイが三台、自転車が二十四台、以上でございます。その面につきましては労災部長の方から申し上げます。
  55. 大森創造

    大森創造君 今から御答弁いただくわけですが、なるべく簡明にお願いいたします。
  56. 村上茂利

    説明員村上茂利君) 基準局関係につきまして労災補償の関係一般監督の問題がございますが、便宜上私からお答えさしていただきます。  御提出申し上げました資料の中で労働基準局関係がございますが、まず第一の外部活動について云々という点についての御指摘がございましたが、これはこの見出しが業務監査となっておりますように、業務監査をいたします場合にどのような事項につきだれが監査するのが適当であるか、案件によりましては局長なり次長みずから出かける場合もございますし、問題によりましては課長あるいは署長が行なう、いろいろあるわけでございます。この点はこの文章に書いてあります通りでございまして、最後の結びとして「次長、課長その他の職員に行なはせるものとそれぞれ分担して行うことが効率的である。」、こういうように事項についてだれがやるかというその分担を明確にせよということをここで述べておるわけであります。  それから三の重大災害については云云、こうなっておりますが、災害が発生いたしました場合に、その災害原因について使用者に故意または重大な過失があるかどうかということが常に問題になるわけでございますが、そのような問題は基準法の安全に関する規定違反という問題のみならず、一方においては労災保険法の第十九条に基づくところの給付制限という問題が生じて参ります。このような問題につきましては、一定のこの事故の程度によりまして、どの場合にはどのような処置をするという措置方法につきまして、これはある省、ある局によりまして軽重があるべき筋合いのものではございませんので、そういった、ものによりましては第一線の機関におきまして勝手に手心を加えてやってはいけない、そういう点につきましては法の施行に関する問題でございますから、厳格にいずれの地区におきましても統一した方針に基づいて行なわれるようにする必要がある、ということをここで述べておるわけであります。文章をお読みいただきまして何か手心を加えて悪いものを見過ごす、見のがすといったようなニュアンスに感ぜられるということでございますれば、文章の表現上はなはだ不適当と存じまして、その点については遺憾に存ずる次第でございます。御提出申し上げました資料については簡単でございますが、以上の通りでございます。  次に労災保険不正受給の問題について内容を明らかにせよという御質問がございましたが、御指摘の案件は、三重、和歌山、奈良、京都、大阪、滋賀等、非常に広範にわたりまして、第三国人が中心になりまして集団的に行ないました保険金不正受給の案件でございます。これは関係者が非常に多うございまして、送検された者三十八名、そのうちで起訴された者二十九名、逃亡中の者九名という非常な多数の者が関連しておりますが、その内容をかいつまんで申し上げますと、大体ブローカー的な者が中心になっておりまして、ふだん労働者が仕事がないといったようなときには宿をあっせんし、あるいは食事を与えるというような形で労働者と密接な関係を保持しておきます。そういった労働者を使嗾いたしまして、場合によってはみずからたとえば親指と人さし指が多いのでありますが、ほうちょうとか、なた、あるいは場合によりましては金づち等で指をみずからつぶす、あるいは人につぶさせまして、そして業務上の負傷であると偽わって監督署傷害補償費を請求するという案件でございまして、しかもたとえば三重県の山奥でけがをしたと称して京都の方に保険金をもらいにくる、あるいは京都の方でけがをした者が、相当長期間おいてから三重県に保険料をもらいにくる、傷害補償費をもらいにくる、こういうような案件でございます。しかしはたして切り傷か挫傷かといったような医学的な問題につきまして、医師が判断をいたしますとかなりな程度明らかになるんだそうでありますが、ところがこの診断を受けました医者は、労災保険の指定医以外の医者を利用することが多かった、そのようなことで、いわばブローカー的な者が労働者及び指定医以外の医師と結託をいたしまして保険金を詐取する、こういうことであったわけでございます。職員にかかわりがあって、職員がぐるになって行なったのではないかという御指摘がございましたが、この点につきましては、園部労働基準監督署におきまして職員が金品を受け取ったという案件がございます。そのような悪質な労働者でございますので、かなりな脅迫を伴ったものと私ども聞いておるのでありますが、いずれにいたしましても、そのような不正事件に加担いたしまして、心に迷いを生じて金品を受け取ったということは、多少の脅迫があったにせよこれは絶対に許すことができないことでございますので、この点については法に従いまして処断するということで私どももこの点の理非曲直を明らかにしたい、こういうことで処分をいたしたわけでございます。すでに第一審におきまして有罪と判決を受けました。これは刑は確定したのでございます。そのような非常に大規模な事件でございますので、労働省といたしましても緊急に防止対策を講ずる必要があるというふうに考えまして、昨年の八月に関係者を集めまして、具体的に指示をいたしますとともに、別に基準局長名の通達を発しまして、この種不正受給が絶対起こらないように厳重な指導監査をいたしておるような次第でございます。  それから次に、会計検査院で御指摘があったような調査漏れとかあるいは徴収漏れ以外に、労働省自体でやったのはどのくらいか、それから検査院の数字と重複しているのか、別なのかというような意味の御質問がございましたが、たとえば労災保険におきますところの補償費支払いの点から申し上げますと、労災保険におきましては昭和三十三年度の実地調査を行ないました、これは会計検査院検査とは別でございまして、自己調査を行ないました。補償費支払いにつきましては、約二五%の調査を行ないまして、請求額の一二%に当たります十七億三千六十余万円ばかりの不適正請求額を発見いたしまして是正した、こういうように自己監査を行ないまして、三十三年におきましては十七億三千万円、三十四年におきましては、十九億三千万円程度の不適正請求額を発見いたしまして是正いたしておるような次第でございます。
  57. 松永正男

    説明員(松永正男君) ただいま御指摘の七ページでございますが、七ページの左の方にございます「査察検明」という言葉でございます。これは事実を調べて明らかにするという意味でございまして、用語としてはやや常用語ではございませんが、監察事務につきましてはこういう言葉を監察実施要領にも使っておりますので、そういう意味でございます。  それから教養訓練の促進についてでございますが、これは安定所窓口におきまして、たとえば求人業務あるいは紹介業務等をいたしておりますが、それぞれにつきまして労働省でも教養訓練の計画を立ててやっておりますが、各県ごと、各安定所ごとにおきまして、それぞれ県は管下の安定所について職員の教養訓練を行なうというような体制をとっておりますので、その計画実施状況等につきましてこれを促進するという意味でございます。  それから努力目標につきましては、これは求人とか紹介とかあるいは求人開拓の業務とかというような業務それぞれにつきまして、たとえば求人に対する充足率を努力目標といたしまして、現状八〇%であるのをたとえば九〇%に上げる、一〇〇%に上げるといったような目標をそれぞれ各安定所において立てる、また就職率等につきましても求職者対就職数の就職率を向上するといったような目標をそれぞれ立てさせまして、その目標を達成することに努力をするという計画を、それぞれ各所ごとにやっておるわけでございます。これにつきまして調査をするということでございます。
  58. 大森創造

    大森創造君 わかりました。この書類が先ほどお伺いしたのに一つ抜けておりますので、これは一体大臣までごらんになったのか、あるいはどなたがごらんになったのか。これはめくら判を押したのでしょう、おそらく。これをどなたかが克明に目を通されたならば、こういう文章はあまりできないと思うのだ、私は公平に見てですよ。それから今お答えになったのはどなたですか、「司法事件給付制限等について不均衡のないよう留意すべきである。」私の問いは、一般的にこの文章をすなおに見た場合に、私が解釈するようにとられるのではないかということをお尋ねしました。そうするとそういうふうにとられるならばそれは誤解ですという御答弁をされている。とられるというのじゃなくて、一般的にそれはそういう私が申し上げたように解釈をするのが普通です。これが労働省という権威のある、石田労働大臣監督下の、しかも司法警察権を持っている天下の労働省の文章とは思えない。これは点数をつけたら二十点。この文章はやはりよくできているとお思いになりますか。この点どなたか責任のある方からお答えを願いたい。  それからもう一つ監督官百五十五人、事業所が十五万九千八百七件ということでございますが、一人当たり平均すると一千三十一ということでございますが、一体こういうことだと一週間のうちに四日ぐらいしか私は外部に出られないと思います。受付事務というか窓口事務はべらぼうに多いものですから、監督署というところは。四日出られないでしょう、おそらく。たとえば平均一週間のうちに外部に出られる日にちは三日か二日だろう、しかも一日オートバイとかなんとかで——三台ですから、三台というのはどこにあるのですか、一体これは。私が調べたところによると全然ない、オートバイは。それからもう一つ百五十五人の監督官のうち、課長やらあるいは年中署内にとどまっていなければならない監督官の数は相当ある、そうすると現場にちょいちょい電車に乗って歩いて、実際に現場を監督する監督官の数というのは七十人か八十人にしかならないと思う。そうすると、一月にどのくらいの事業所を歩けることになるか、これを一つ東京都内でけっこうですから、十七署、これをお示し願いたい。何と御答弁になるかわからないが、おそらく実質何にもやっていないということですよ。司法警察権なんというのは発動された事例は今までこの一年間にあるかどうか、そういう監督官というものに司法警察権をつけるということは、実際上は無意味じゃないか。機動力についてもどこにあるか私は知らない、いつ購入してなんというオートバイを買ったか、一つそういうことをお答え願いたいと思います。
  59. 和田勝美

    政府委員和田勝美君) 御提出申し上げました資料の責任は私でございますので、文面その他につきましていろいろの御指摘をいただきましたが、非常にできの悪い資料を提出いたしましたことをおわび申し上げます。  なお先ほどの答弁の中で誤解とかなんとかという言葉がございました点につきましては、この文章自身から申し上げますと、先生のお読みになる通りでございますが、意のあるところは先ほど申し上げたこういうところで承りますので、その点を御了承いただきたいと思います。  なお東京基準局管内のこまかい問題についていろいろ御質問ございましたので、監督課長から御説明申し上げたいと思います。
  60. 上原誠之輔

    説明員上原誠之輔君) 東京基準局の管内における監督の実施状況についての御質問があったわけでございます。  その前に全国的な状況を簡単にお話申し上げますと、適用事業場数といたしましては約百三十六万程度ございます。この適用事業場は、もとより商店等の私企業的な企業を含んでいるわけでございます。これに対しまして三十四年度中の実施状況は、監督の件数が二十四万事業場、こういうことに相なっておる次第でございます。  東京の場合におきましては、お話の通り適用事業場数といたしましては十六万に近い数があるわけであります。この適用事業場の中には、もちろん先ほど申し上げました商店だとかあるいは卸し、小売というようなサービス業が相当多数含まれておるわけであります。この中で工業的な企業が六万七千八百九十四事業場に相なっております。それに対しまして御指摘通り百五十五名の監督官をもちまして、基準法に基づく監督を実施いたしておるわけでございます。もとより適用事業場の数からいたしまして、監督官の数が非常に少ないわけでございまして、算術計算で申しますと、一人当たりの監督件数というものは勢い多くなるわけでございます。で私どもといたしましては人員の面につきましても、あるいは予算の面につきましてもかなりの制約がございますので、監督の方法といたしましては、個別企業に対しまして個々に出向いていって監督をする、これも非常に大事な仕事でございます。そのほかに業種なり、業者の組織というものを利用いたしまして、集団指導というような方法で、できるだけ全体の事業主が、労働基準法につきましての認識あるいは順法意欲を振起いたしますように、いろいろな方法法律的な監督をやっておるような状況でございます。
  61. 大森創造

    大森創造君 先ほどの御答弁で、意のあるところを一つ……、そういうことは私はなってないと思う。新聞でもラジオでも一切の文書が、実はこういう意があるんだけれども、そう解釈するあなたの方が間違いですというのは、よほど労働省心臓が強い。それはまずいことだと思います。とにかく参議院を軽視しておりますよ、こういう文章。そしてこいつが素通りしたら参議院の権威にかかわりますよ。大体これをずっとパスしていったお役所の仕事というのは相当ルーズじゃないかと思います。言うても仕方ありませんから、意のあるところなどということで抗弁なさらないように、このことについては以後改められるようにお願いいたします。よろしゅうございますね。それから機動力のお話が出ましたけれども、これは実質それほどないと思います。私はかかってないと思う。お答えにならなかったのですが、三台とか五台とかいうオートバイがどこにあってどうだというようなことは、おそらくこれはこれまで実際ないんじゃないかというような感じがいたしますけれども、もう一回その点を御答弁願いたい。  それから、時間を節約しなければなりませんから、あとどんどん質問がよけいあるようでございますからはしょって申し上げますが、私の申し上げたことは、要するに労働基準監督官などという名称だけ付しておいてその体様をなさない。その中身がないということ。今の基準監督課長のお答えはどうもわからないところがありました、声が小さくて。しかしどうも私は実質的な仕事はしてないんじゃないか、窓口営業じゃないかというふうに思います。一週間のうちに三日は出られないでしよう、二日くらいしか出られない。せいぜい歩いて都電に乗って五十円、旅費五十円くらいかかって、事業所をぽっくりぽっくり歩いて一軒か二軒しか歩けない。試みにその辺の事業所へ行ってみて、労働基準監督官来たことありますかと二十軒ばかり聞いた。来たことございませんと言った、どっこも。おそらくこれは申告のない、届出のない事業所を含めますと、さっき数字をお述べになりましたようですが、数万軒で、これは十年間に一回も行けないでしょう。ただ申告があったものをこう何となくやっている。爆発事故などがあった場合にはその現場にいかなきゃならぬということ、そこへ行って安全度はどうかというようなことをやって、これを検索するということがたまに一つか二つある。石田労政というものはファイン・プレイをやりますが、三池の争議についてどうだとか、公労協のことについてどうだとかとめ男の役目をやりますが、労働行政の実質というのはここにある。ここがまるきり抜けていると思う。今御答弁になられた方々は意のあるところずいぶんおわかりだと思う。労働行政の実質をなしてない。体をなしてない。それで官庁用語で、この点を文書のような御答弁をのらくらのらくら繰り返している。そうするとそれでパスするということではいけないと思います。幾ら言っても始まりませんから、そのことについてはその程度にとどめますが、一つこの失業保険保険金で余裕金というのはどのくらいあるか、これをお答え願いたい。
  62. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 昭和三十四年度末で約七百八十億ございます。
  63. 大森創造

    大森創造君 これは九百億から千億くらいになってやしませんか。
  64. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 三十五年度末、すなわち三十六年度を迎えるときに九百四十四億になります。
  65. 大森創造

    大森創造君 どうしてそんなに余裕金が出てきたんですか。大体私の勘では百六、七十億の余裕金があれば運営はできると思います。その原因は何ですか。
  66. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 失業保険創設以来大体順調に進みまして、昭和二十九年に十億程度の赤字が出た以外は毎年若干ずつの余裕金が出てきたわけでございます。三十二年度以降は大体百二十億程度の余裕金が出て参っておるわけでございます。その原因は、三十二年度以降は経済状況一般的に好況でございまして、被保険者増加賃金は予定よりも上昇する、失業者は予想に比べまして減少傾向をたどっているというところで、その蓄積が九百四十四億というふうになったわけでございます。
  67. 大森創造

    大森創造君 そうすると、その余裕金はどういうふうに利用、運営いたしますか。
  68. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 余裕金は法律をもちまして運用部資金に積立金として預託するという建前をとっておりますので、全額運用部資金に預託いたしております。
  69. 大森創造

    大森創造君 そうすると、その利子をさっきお話がありました労働雇用促進事業団ですか、この方に三十億使って、さらに事務費に三十億使っている。六十億年六分、そういうことで利子を利用をしておりますが、この元金の方は利用していないのじゃないですか。
  70. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 元金の方は運用部資金の運用の一般原則に従って、民生の安定に関する費用、産業の方に関する費用、こういうものに充てられておるわけでございます。
  71. 大森創造

    大森創造君 新たな問題を一つお尋ねして質問を終わりますが、今の時勢からいって、所得倍増とかいろいろ景気のいいことを言っておりますが、実際は非常に事業場が不安定であって、そうして解雇される労働者も非常に多い。その場合に民法ではどうなっておるかわかりませんが、とにかく基準法によっては厳格に、正当な理由がなければ解雇できないということになっておる。これが使用者の方から権利の乱用をされている、現状はそうだと思います。そこで何か労働者を守るための社会法としての基準法をより完全ならしめるような、具体的な方法を考えるべき時期だろうと思っておりますが、その点についていかがお考えですか。
  72. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 御質問の趣旨がよくわかりませんけれども、われわれの方として、雇用労働者につきまして、労働省としてはおもにその保護に当たっているわけなんですが、別に現在取り立てて特にこの点が非常に制度として欠陥があるから、これを特に改めるようにというふうなことにつきまして、午前中に大臣が申し上げました以外のことにつきましては、現在一般的な研究は行なっておりますが、特にここで御答弁申し上げられるまでの案は得ておりません。
  73. 大森創造

    大森創造君 質問の趣旨がよくわからないというのですが、もう一回申し上げますが、労使は契約によって仕事についている。民法によると、二週間前までに予告すれば契約は解除できる。労働基準法によれば一カ月くらい前に予告をして、そうして一カ月の平均賃金を与えれば解雇されるということ、これについては不当な解雇がずいぶん行なわれているから、それを禁止するようなはっきりしたものを基準法できめたらどうだ。その場合の不当なという意味はその都度のケースで裁判所で判断するようなことにしたらどうかという一つの積極的な提案のつもりで私は言っておる。そのことのお答えを一つ願うと同時に、さっき申し上げました労働基準監督官というのは、皆さん方の御答弁にかかわらず、先ほど私がるる申し上げたような実情である。これは監督官一人当たりの事業量がべらぼうに多い。これは申告されないものを入れると捕捉しがたい数字だと思う。そして基準法ではりっぱなことをうたっている。その間に、はさまってきりきり舞いしているのが労働基準監督官である。こういう事実には相違ないのでありますから、これに対する対策として人員をふやす、あるいは待遇をよくするか、いずれにせよその労働基準法というものは、新しい法律でありますから、これをしっかり守っていくような気がまえが必要であるというふうに思いますが、一体定員をふやす作業を今後やるつもりか。今度の予算はきまっちゃったからどうにもならないということなら今後人員をふやす、あるいは待遇をよくすると、こういう方面に格段の努力をしなければだめだということを申し上げておきます。それについてのお答えも一つ二つございましたが、要するに、監督官のオーバーワークであって仕事の内容が全然ない。それに対する対策いかん。先ほど申し上げた点と二点にわたって申し上げて、私の質問を終わります。
  74. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 第一点の方の不当解雇の問題につきましては、現在のところわれわれ労働省として、特別な立法を研究するとか、また特別な施策が緊急に必要であるというふうには考えておりません。御趣旨の点につきましては今後とも研究して参りたいと思います。  第二点の監督官の問題につきましては、われわれ事務当局としては常にその現在の経済の発展の状況からいって、監督官の増員を強く要望しておるわけなんですが、毎年この人員増加につきましては非常な制約があったわけです。しかし今年に入りまして従来そういうふうな問題で、臨時的な雇用員としてしか認められていなかったのを全部定員にふりかえるようになりまして、絶対のその自然人としての数は増加できませんが、身分の扱いとして従来補助職員なり臨時の者が今度は一般の公務員としての資格を得て、今後とも待遇を改善していける立場にあると思うのです。ただ監督官の数はそれに伴って急激に増加さすというわけには今年は参りませんでしたが、今後とも十分努力していきたいと思います。従ってそのかわりと申し上げては悪いわけなんですが、それと同時に、われわれの方としては、常にやはり監督官の働きやすいように予算的な措置は逐次とっておりますが、いずれにしても事務費関係は事務折衝の段階で、大体終わるのが多くて、なかなか思うにまかせませんが、われわれとしては毎年逐次数パーセントずつは増加さしているというふうに思っております。従って現状におきましては、先ほど監督課長からも申し上げましたように、やはり現在の諸産業の中にも特に基準法上欠陥の多い業種または地域につきまして、特別重点的な監督をして責めをはたしているような次第でございますので、御指摘の点につきましては今後予算上、人員、定員上できる限りの努力をやっていきたいと思います。
  75. 大森創造

    大森創造君 最後に申し上げますが、一つ石田労働大臣にお伝え願いたいと思う。問題は、いろいろ御答弁ございましたけれども労働基準法というものが現実に守られていない。これはもうほんとうに守られていない。そこで現状ではまるっきり労働者並びに監督署の方が受身になりまして、使用者の方の自主的な基準法順守を期待するというのがほんとうの答弁じゃないか。せいぜい心臓が強くてもその程度しか答弁ができない内容だろうと思う。使用者の自主的な順守を期待するという程度だろうと思う。こうなると労働省基準局、あってもなくてもいいものになってしまうので、行政的な無能力になり、自主的にやらないそういう使用者は得をしている。正直な使用者はばかを見るという結果になると私は思う。あなた方の答弁とはだいぶ違いますが、私は皆さん方、胸の中では私の意のあるところを御了解願って一つ労働大臣によくお話願いたい。ここで幾ら問答を繰り返しても前進しませんから、ここでこういう変な文書を出して参議院の方は通ると、あとは何でもよろしいということでなく、また来年の決算委員会があるのですから、私は決算委員を二、三年やってるつもりですから、来年までにはがっちりと定員を確保するなりして基準法を守れるように、基準法を捨てるつもりはないのでしょうから、それなら一つ実績をあげるように、私は思いのたけをしゃべりましたから、しゃべったのが効果のあるように一つお願いしまして、以上で終わります。
  76. 山田節男

    ○山田節男君 失業保険特別会計について一つ質問いたしたいと思う。この失業保険法を作るときに、われわれ立法者の立場で一番おそれたことは、失業ということ自体の定義と、それから第二は失業保険給付の問題これによって幾多の不正な事件が起こりやすい、いわくがあり、また諸外国のそういう方面に対して失業保険の実施にあたって一番困ってるところなので、そこに法的措置をどういうふうにするかということに、この法律を作る場合に非常に実はわれわれ苦労しまして、諸外国の立法例等調査して、当時占領軍政下にありましたので、占領軍政、GHQの方面と、実はこの案をまとめてこういう法律になったのですが、これが実施以来、毎年会計検査決算報告において、失業保険特別会計における不当事項、あるいは、是正させた事項とか、批難指摘される事項が毎年たえない。この事実に対して私は若干労働省の過去の経験にかんがみて、どうしたらいいのかという点について実はお伺いしたいと思うのであります。  そこでこの昭和三十三年度会計検査院決算報告を見ましても、労働省の項目の中に、はたせるかな、やはり失業保険特別会計に関する不当事項並びに不正事項がここに列挙されておるわけであります。そこで私お伺いしたいのは、三十三年度におきましても約五百億円の、これは保険収入その他を入れますと五百二十三億に近い歳入になってるわけですが、これに対する監察機構、これは私は詳しく知りませんけれども失業保険の監察の規定であるとか、あるいは労働省自体の中におけるいろいろ分業的な失業保険に関する監察の規定もあり、監察官もおったのでありますけれども、たとえばここに会計検査院が列挙している三百三十一号の中にある「保険給付の適正を欠いたもの」並びに三百三十二号の「失業保険保険料等の徴収不足を是正させたもの」これらは全く先ほど申し上げたように、失業保険行政におきまして一番陥りやすい欠陥と申しますか弱点でありますが、こういうことに対して会計検査院は、たとえば「保険給付の適正を欠いたもの」として、全国の六百八十カ所ある公共職業安定所の中でその二割に当たる百三十七カ所を調べて、その百三十七カ所の安定所で扱っておる失業保険受給者六万一千四百五十九人、その中で批難事項としてあげられている金額としまして約一千万円。こういうのがあげられておるのですが、これを見ましても約二割の職場を見て一千万円、そうするとこれは百パーセントと見たとすれば、目の子勘定で五千万円は少なくともこういうことがあるのじゃないか。こういう憶測が立つわけです。ことにこの労働省の職業安定局としまして、こういう失業保険の監察官規程というものがございますけれども会計検査院の調べたこの事例を見まして、労働省自体がこの失業保険特別会計の内部監査等におきまして、このたとえば保険給付の適正を欠いたものというのが一体どのくらいあるか。この点もし御調査があるならばそれをお示し願いたい。
  77. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 御指摘保険給付の適正を欠いたものというので、毎年会計検査院から指摘されるわけでございますが、本件に関しましては、失業保険の運営につきまして、私どもきわめて重要なものだと考えて地方に対しましても現在厳格な指導を行なっておるわけでございます。特に不正事項の未然防止と早期発見に努めると同時に、公共職業安定所ごとに受給資格者名簿と被保険者資格取得名簿との照合を行なう。自己管内だけでなくて、他安定所との照合を行なうということと、また調査官というものを全国に百十九名置いておりますが、三十六年度におきましてもこれを若干増加いたしまして、その活動と相待ちましてこういうものを未然に防止する、また防止し切れなかったものにつきましては早期に発見する。こういう措置を現在まで講じてきておるところでございます。その内部監査におきまして、三十三年度におきまして不正受給の発見件数は二万一千六百十件で、金額にいたしまして一億七千三百九十六万二千円、三十五年度ではございませんが、三十四年度におきましては件数におきまして二万七百五十件、金額で申しますると一億七千九百五十四万四千円、こういうふうになっております。さらに事前に発見いたしまして不正受給を未然に防止した額が、三十四年におきまして二億五千八百四十七万七千円、こういうふうな状況に相なっております。
  78. 山田節男

    ○山田節男君 この失業保険給付資格を認定するということ、すなわち先ほど申し上げましたように失業者であるかどうか、ここでいう失業者という認定の問題ですが、これにまつわる不正と申しますか、虚偽の申告あるいは職業安定所における査定の誤り、それから再就職をしておりながら失業保険給付を受けているということが摘発された、こういう私は大体二つのカテゴリーの失業保険給付に関しての何と申しますか、不正が起こりやすいんですけれども、今述べられた三十三年度あるいは三十四年度でよろしゅうございますから、こういう二つのカテゴリーに分けて、摘発あるいは未然防止という、そういうふうに区別した数字がわかっておりますか。
  79. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 失業保険不正受給と申しますのは、大体賃金をごまかしておるというふうな性質のもの、再就職をしながら失業しておると装って失業保険金を取りに来るというケースのもの、また架空の事業所を作って失業保険を取りに来るもの、こういうような性質に分れるのでございますが、その性質ごとに発見の件数を取っておりませんけれども、安定所の窓口で発見いたしましたものが今申しました二万七百五十件のうちの七・三%、安定所職員による特別調査によって発見いたしましたものが七六・二%部外者の通報によりまして発見いたしましたものが一六・三%、こういうふうな数字になっております。
  80. 山田節男

    ○山田節男君 そのほかにこれは事実私、そういう事例を聞いたこともありますが、その関係と思いますが、たとえば失業保険給付について、事業主と被保険者と結託して、ここに架空の工場、事業場を開いているのでありますけれども事業主労働者との結託による不正の摘発されたような事実が何件くらいありますか。
  81. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 件数ははっきりここに覚えておりませんが、最近におきましても大きな事件といたしまして二件ほどありましたのを記憶いたしております。
  82. 山田節男

    ○山田節男君 これは慈善事業あるいは社会保障の制度におきまして、健康保険といわず失業保険といわず労災保険といわず、一番陥りやすいことは、こういう保険給付において、その行政あるいは給付を受ける者のモラルが非常に下がるということは、あるいはそういう誘惑があるということは世界共通の事実です。これをいかにチェックするかというととはこれまた行政的に非常に困難な問題であるけれども、これは一に被保険者、すなわち国民全般のモラル・スタンダードと申しますか、道徳的な標準のいかんによるのであります。会計検査院並びに労働省自体の監査によってこれほどの事実が、氷山の一角としてここに現われておる事情をわれわれ見るにつけましても、全体から申しまして、莫大なそういう不当な支出があり、不正な給付を受けておるということは、これは私は想像して余りあると思うのです。そこでこういうことをいかにチェックするかということについて、何か今日の労働省とかあるいは職業安定局が失業保険を管掌する局として、こういう不正、不当な事項が起こらないようにすることは、今日の監察制度あるいは監察官規程をもって過去の経験から見て、これで徹底し得るという自信があるのかどうか、なければ何かの形で、外国の事例もあるんですから、もし日本が不幸にして欧米の国民とは、こういうものについて非常に道義的基準が低いとすれば、これはもう少し厳格にしなければならなくなる、こういうことも考えられると思う。そういう点から一体労働省はこういう点について、現状で満足しておるのか、あるいは改善して、こういうようにすべきじゃないかというような何か具体的なお考えがあれば承りたい。
  83. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 不正受給の防止に関しましては、先ほど申し上げましたように、やはり再就職をしながら失業者を装って支給を受けるという件数金額が一番多いわけでございますが、それに対しましては先ほど申し上げましたように、資格取得者と被保険者の名簿の照合ということを、さらに厳格に各安定所で一そう緊密な連絡をとって実施していくという方法でこの問題は解決いたしたい。同時に現在不正受給を発見する調査官を百十九名置いて、安定所におきましてその仕事に当たっておるわけでございますが、先ほど申しました不正受給発見件数による三十四年度の金額一億七千九百万円のうち、給付調査官によって発見されたものが一億一千九百万円、こういう金額に上っておる関係もございまして、この給付調査官の活動をさらに一そう活発化する、必要によりましてはこの人数も増加していきたい、こういうふうに考えております。また架空事務所、あるいは賃金の水増し、こういうふうな問題に対処いたしましては、資格の取得その他の手続の場合に、事業所の所在地、電話、そういうものを的確にとらえて、あやしいものにつきましては現地調査をする、あるいは監察官を派遣して実態を調べさす。まあ、こうした件数を皆無にするということはなかなか不可能なことと存じますけれども、できるだけの知恵と活動をしぼりまして、こういうものをできるだけ少なくいたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  84. 山田節男

    ○山田節男君 まあ、調査官を動員するというのも、今日の効果から見てこれも一つのアイデアでしょう。しかしこれはもう少し、たとえば会計検査院保険給付の不適正についての指摘をしている中に、やはりこの事業場についての調査が不十分だということをあげているのです。これはまあ他の社会保険も部分的にはそういうことも考えられると思いますが、労働組合というものに、事業主というものより、労働組合に失業保険給付行政について協力をさせるということが、一番実態がよくわかるのじゃないか。これは英国におきまして、失業保険給付に関する事務所が労働組合の隣りにあるという例もあるのです。これは最も失業保険者に対して適切なしかもインチキの起こらない方法である。こういうような点からいいますと、何といいましても、やはり労働組合というものがしつかりしておればこれは一番よく知っておるのです、事業主よりも。ですから日本にも労働組合が相当発達してきまして、単なる争議を使命とする労働組合というものは自然になくなってきました。やはり質実な実際的な労働組合が占めるということになれば、これは争議屋の集団じゃない。そういうことになりますると、今日の労働組合の全部がそうとは言いませんけれども、かなり堅実な基礎を持ち、堅実な職員を持ってやっている組合に対しましては、こういう面において現状でまかすことができましょう。しかし、労働組合の協力を求めるという建前立場を確立していくということにおきまして、日を経るに従ってそういうような理解と協力が密接になってくれば、この宿命的な不正の給付であるとか、あるいは調書につきましても不正事項が防げるということになるのじゃないかと思いますが、労働省としてこういう点について何らかの御所見があるかどうか、これを一つ承っておきたい。
  85. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 先生、ただいまの御指摘のお考えはごもっともなことと存じます。ただいま申し上げませんでしたけれども、従来ともそういうことを考え、また一部実行しておるのでございます。ただ、その不正受給の多いのは、工場的な一般の工場よりは、やはり土木建築事業等、事業場も非常に離れておる組合とか、強固な組合がないというようなところに割りと多いわけでございまして、そういうものに対して今先生の御指摘のようなアイデアを生かして、今後この運営の適正をはかって参りたい、こういうふうに考えております。
  86. 山田節男

    ○山田節男君 私、時間がございませんが最後につけ加えておきます。今、私そういうことを申し上げて一部実行しておられるといわれるのですが、たとえばこの労働省の訓令で失業保険の監査規程というものがございます。なるほどこういう事項はこれは絶対に必要なことですが、先ほど来労働省もいわれ、また私も指摘しましたように、これは単に官僚主義で監査的なことをしたのでは、やはり知能犯みたいなのがますますふえてくるのですから、あくまでもこれは道義的な方面を強調して、いかにこの失業保険行政というか、しかもこれほど多額な金を扱うのですから、しかも、各被保険者の零細な保険金徴収しておるのですから、現行の失業保険監査官規程を土台としまする、特に失業保険のこの行政につきましては、もっと——私は決して厳罰主義でいけという意味じゃないのです。いわゆる正直者がばかをみるということが、ことにこの事件において数多く発生するというということなんです。今は非常にこの保険の積立金もあり余裕金もあると言いますけれども、しかし、これはやはり墓穴を掘ることになる。ですから、幸い今日失業保険行政が、われわれこの立法当時非常に憂えた失業保険の赤字ということが、今日その憂えがなくなったということは、これは私ども非常に御同慶にたてません。たえないが、しかし、いつまでもこういうことは考えられない。いつ不況時がくるか。ことに今日の池田内閣の物価倍増政策のようなことになってしまうと、これはもう私は一千億の基金があっても、余裕金があっても、これは一年、二年足らずして挫折するかもしれない。ですから外国の諸例を見ましても、一番失敗するのは社会保険、ことに失業保険の基金です。ですからこの点は一つ、年々改善しておられると思いますけれども、私は理想としては、いかに監査官が、調査官が権限をもってやりましても、やはり裏をかく知恵は幾らでも出てくるのですから、そして官としてはやはり労働組合等に協力を求め、今おっしゃったような土建事業の方面は手が及ばないと言われますけれども、これもやはり組織によりましては活用できるのです。ですからそういう点から、三十五年までは知りませんけれども、今後三十六年度以降におきましては、こういったような毎年出てくる失業保険給付に関する会計検査の批難事項が起こらないように、格段の一つ御努力をお願いしまして、私の質問を打ち切ります。
  87. 北村暢

    ○北村暢君 私は、だいぶ時間を急いでおるようですし、私も急ぎますもので簡単に御質問いたしますが、まず第一点でお伺いしたいのは、職業訓練の問題でございますが、昨年の予算において、農山村における職業訓練ということで、特に農林省と労働省との間で話し合いができて、職業訓練所というものを特に設けたはずでありますが、その実施の経過についてどのような成果が上がったのか、どらなのか、これに対する経過を一つお伺いいたしたい。  それから、三十六年度の——これはまあ決算じゃなく非常に恐縮でございますけれども、三十六年度における職業訓練の問題については、雇用促進事業団というようなものを設けて、職業訓練の施策として、一つ新しい施策を考えているようでございますが、これが一体、この池田内閣の出しております、農村人口の都市への移動ということに抵抗が非常に強くなっておりますが、その関連において、一体職業訓練の方向というものがどのように考えておられるか、この二点です。そういう積極的な職業訓練、就労期間の拡大、こういう面と関連をして、消極面である失業対策の問題についてお伺いをいたしたいと思いますが、現在、農業基本法は国会で審議中でございますが、これによりますと、またこれに関連する農地法の改正等が行なわれまして、農業は今までの自作農主義というものを乗りこえて、今後は自作農主義ということから脱皮をして、いわゆる農業法人というものが認められる、こういうことになって参りますと、の面においても雇用労働というものが相当出てくる可能性がある。また将来において農業の発展する方向というものが果樹、畜産、こういう面における生産と、こういうことに発展していくということになりますと、当然ここで雇用労働という問題が出てき、さらに協業化という問題が出てきて、また農業協同組合も今後は生産農業共同組合、こういう方向に発展しようとしておるわけであります。そういう面からいきますと、農業の経営の規模の拡大に伴います雇用労働というものが当然出てくるのでありますが、現行の失業保険法第六条の第一号の各項によりまして、失業保険は農林業、水産業には適用しないことになっておりますが、これは非常に実情に沿わない状態になってくる、このように考えるわけでございます。しかもこれに対する要望は非常に強いのでありまして、特に北海道等における農業労働、雇用労働を要求している地方、これは北海道の道議会においてもすでに決議をして、そうして地方自治法の定めるところにより国会にも陳情がきている。こういう実態もあるわけです。しかも北海道ばかりでなしに、今申したような農業の発展の方向から行けば、当然この問題が解決されなければならない段階にくるのではないか、このように思うわけです。それから実態としては民有林関係、これは林業関係でございまするが、民有林の林業労働者については失業保険というものが適用されておらない、国有林の林業労働者に対しては、これは国営事業としての退職金支給もあり、さらに日雇いの失業保険ですか、これも適用になっておるのでございます。実際に林業面における雇用労働というものを見ます場合においては、国有林と民有林とを比較いたしまして、大した労働の実態において差がないにもかかわらず、国有林は失業保険の適用がある、民有林についてはない、こういう非常に労働の実態から言えば、同じような形でありながら適用されておらないという事例、こういうものからいたしましても、民有林関係の山林労働者に対しても、失業保険法を適用せよという要望が非常に強く出てきていることは、労働省でも御存じであろうと思うのです。そういうような点からいたしまして伺いたいのは、ただいまいろいろ同僚議員の説明からいたしましても、失業保険特別会計経理内容というものは、一千億円になんなんとする余裕金というものができて、預金部資金に積み立てをしている。こういうような実態の中で、私はこの農業雇用労働者に対しても、失業保険法というものを適用すべきである。当然農業基本法の改正と関連して、この問題は考えられるべきでなかったと思うのですが、労働省としては一体農林省なりあるいはこの農業の基本問題調査会等から協議を受けたことがあるのかないのか、またこういう問題について労働省としては検討をしたことがあるのかないのか、あるいは将来において考える余地があるのかないのか、この点をお伺いいたしたい。
  88. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 失業保険に関しましてお答え申し上げます。  農林業につきましては、先生御指摘通り、現在失業保険の適用をしておりません。しかしこれは制度的に申しますと、農林業は失業保険法律上、制度上適用をしてはいけないという建前にはなっていないわけでございまして、御承知のように失業保険は、強制適用と任意包括適用とこの二つありまして、農林業の任意包括加入は一応適用できる筋道になっているわけでございます。現在まで任意包括加入は、御承知通り申請がありまして、監督署の許可があった場合にはじめて被保険者となるわけでございますが、現在までわれわれの方といたしまして、これを許可しない方針で今日まで至っているわけであります。  その理由といたしましては、農林業におきましては、ほかの一般の産業と違いまして、雇用形態あるいは賃金形態というものが非常に不明確でございまして、いわゆる失業保険制度になじまないということと、もう一つは、毎年反復される失業である。従って予見された失業であるというような本質論、失業保険というものがそういうものまでめんどうみる筋合いのものであるかどうかというような本質論と二つから考えまして、現在まで消極的な態度をとってきているわけでございます。  しかしながら、昨今、農林業における雇用形態、賃金形態というものも漸次明確化しつつありますと同時に、やはり先ほど先生御指摘のような一般的な傾向からいたしまして失業保険に入れる必要があるのではないか。われわれも考えておりますし、全国からの要望もございますので、私どもといたしましては、現在入れた場合にどういうふうな不合理が起こるか。またどういうふうな保険財政に影響を及ぼすか。入れるとした場合には特にああいう業態でございますので、どういう格好で入れることがそのような不均衡を生ぜずに被保険者としての適正な格好で入れられるかというようなことにつきまして、目下検討を加え、大体被保険者として入れたいという線で検討を加えている次第でございます。
  89. 中田定士

    説明員(中田定士君) 職業訓練の二つの問題について御説明申し上げます。  職業訓練施設は、一般の職業訓練所と、それから少し高度になりますが、総合職業訓練所、そのほかに身体障害者の特殊な人を対象とした訓練所、大体三通りございます。  これは公共の施設でございますが、現在一般職業訓練所は、三十六年度におきましては二百九十四カ所、三十五年度におきましては二百七十七カ所、全国にございます。三十六年度の訓練人員は四万二千百七十人でございまして、総合職業訓練所は三十六年度におきましては四十二カ所を開設いたすことになっておりまして一万七千六十五人の定員でございます。そのほか身体障害者が千百八十人ございまして、それらのものをすべて合わせますと、公共の訓練におきましては、三十六年度は六万五百四十五人の訓練定員になっております。このうちに特に対策として考えられておりますのは、昭和三十六年度におきましては十八カ所の訓練所を新設いたしまして、主として農村の二、三男をこれに収容するということになっております。その定員は十八カ所で千四百四十人でございます。三十五年度におきましては十四カ所、先ほど御指摘ございましたが、十四カ所で千二百二十人の特別の訓練施設を作ることになっております。三十六年度はまだ計画中でございますが、三十五年度につきましてはすでに計画を終わりまして施設を一部完備、整備されまして事業が開始されております。十四カ所の設置個所につきましては、主として農村と都市とを結んだ中間都市に設置する、こういう考え方で、農林省の農政課、水産庁の漁政課等々と連絡をとりまして、具体的に場所を決定しております。三十六年度におきましても、大体同様の方針で、それぞれ関係のところと打ち合わせをして設置をいたしたいというふうに考えております。三十五年度公共訓練の訓練総定員五万六千人のうち、現在大体半数程度が農村の二、三男が入っております。先ほど申し上げました三十五年度の十四カ所、三十六年度の十八カ所も含めてでございますけれども、三十五年度におきましては六万五百四十五人の大体半数程度が農村の二、三男でございます。特別の対策としましては、先ほど申し上げました十四カ所、十八カ所だけでございます。その他は既存のところに逐次収容をして訓練をする、こういう計画を立てております。  それから次に雇用促進事業団に総合職業訓練所を移管いたしまして運営する問題でございますが、雇用促進事業団への移管前、現在労働福祉事業団でこれをやっておりました。今国会に提出されております雇用促進事業団法案を通過させていただきますならば、この雇用促進事業団の方でやることになりますが、この事業の運営につきましては、さらに農村の二、三男でありますとか、余剰の労働力でありますとかそういうような方々を収容して、重点的にやろうという計画でございますが、まだ具体的にこの総合訓練所の中にどの程度どのようにやるかという点については計画は立っておりません。雇用促進事業団の運営にかかります総合訓練所の全体の計画といたしましては五十カ所ございます。定員は約二万三千人になる予定でございます。
  90. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) ただいま北村委員の御指摘の、農林業あるいは水産業に対しまする労務関係失業保険適用の問題につきましては、従来の経過はすでに御承知だと存じますが、基本法の制定あるいは現状からいたします全体的な就労再配置等から考えますと、農業につきましても協業化が促進される、また共同事業というものも行なわれてくるということになりますと、農業関係についても、農業労働者という階層がはっきりと専業化して生まれるということも考えられまするし、従いまして、新しい方向としてこの面は取り上げまして、これに対処するべく検討を進めなければならぬということになっております。なお、林業関係、特に民有林関係の林業労務に関しましては、従来地方別に、いわゆる季節的な労務というものの繰り返しであって、非常に規模が複雑で捕捉しにくいというととで実は適用をしなかったわけですが、これも就業人口の再配分、能率化等々考えますると、事業計画化に伴って専業化して参らなければならぬということになろうと思われまするので、水産業等においても、沿岸漁業の集約化と並行いたしまして、やはり専業化の方向に進むことに対処して、これらの制度の適用を、組織とあわせて考えて参らなければならぬということは、労働省でも十分考えて対処いたして参る考え方でございます。
  91. 北村暢

    ○北村暢君 ただいまの答弁で私は職業訓練の問題、あるいは失業保険問題等について事情はわかりましたが、これはすでに基本法案が国会に出ているのでありますから、これと並行して、やはり問題は早急に解決されるべき問題である。しかも農業、林業等においても、近代化のために専業化して参りますと同時に、雇用労働というものがふえてくる。今までの認識に立っての農林業の見方では、これは実情に沿わなくなってくるということは、政務次官もお認めのようでございますから、早急にこれを一つ労働省でも対策を講じていただきたいということを要望申し上げておきます。  それからもう一つこれと関連をいたしまして、僻地における失業保険受給者というものが、最近工業の分散配置、その他の農業労働者の、今申したような受給者で、僻地にまで失業保険を受給する者が出てくるという実態がございます。これは私直接見て来た例として、屋久島についていえば離島であって非常にへんぴな所でございますが、ここの失業保険給付を受給する場合に、支給を受けるのが大体十日以上おくれる。こういう問題が起こっております。それは種子島に何か出張所がございまして、それから村役場を通じ屋久島に渡って来る。これが船が欠航するということになると十日から二十日おくれる。労働者は二十日間食わないでいるわけにはいかないので非常に大きな問題になるわけであります。これらの問題については、今後農業の受給者というものも考えるようになって参りますと、この失業保険受給者に対する便というものをもう少し親切に考える必要があるのじゃないか。屋久島のような離島の所でも、今産業開発、電源開発で、あるいはその電源をもととする離島振興の関係で工場が相当できつつあります。そして失業保険受給者も出てきている。今までは全然行政の対象にならなかったところです。ならなかったところが最近ではそういう行政の対象になるので、これに対してそういう工場の分散配置という池田内閣の何か考え方からいっても、この種の行政の考え方というものを私は改めなければならないと思う。もっともこの事務費が非常に大きくなって、保険財政を圧迫するようではもちろんいけないのでありますけれども、しかしながら実際問題として、労働者保険料支給を受ける場合に非常に不便をしている。これはもう非常にたくさんある例なんです。わざわざ失業保険を一週間に一ぺんか二週間に一ぺんもらいに行くために、バス代、汽車賃をかけてひどいところになると宿泊しなければならない。こういうことになればもらった失業保険がさっぱり役に立たないという実例があり、営林署関係等においてはこれの受給の仕方について改善も加えておるようでございますけれども、今後都市にだけこの失業保険は非常に便利な形になってくるのですけれども、そういう例があるということを、一つ私は屋久島の例を取り上げましたけれども、これは実際問題としてその日その日失業保険金をもらう人は、その保険金だけが生活のかてなんです。それが二十日間もらえないということになると大へんなことになるのです。そういう面の配慮というものがどうしても事務的にいってできないと言うのですね。結局おくれてもらっておる。それに対して方法なし、こう言っているのです。こういう点について実情を調査されて、そういう面のことのないようなあたたかい、やはりこれはもう失業保険なんというのはほんとうに庶民の、食うに困っている人の施策なんですから、あたたかい施策というものがされるべきだと思う。これが役所仕事であってどうしても判こがなければ渡せないということで、実際の事務取り扱い者が、船が出なければ、特に屋久島なんというのは、一週間も二週間も船が通わない場合が出てくるわけですね。そうすると食わないでいなければならないということが起こってくるわけです。こういう点について私は実際に見てきた例を取り上げて言っているわけですが、一つあたたかい行政をやっていただきたい、このことをお願いしておきます。
  92. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) ただいま御指摘の遠隔地の失業保険料給付でございますが、被保険者立場から見れば市町村のどこでももらえる、こういう格好にすれば一番いいわけでございますけれども、御存じのように、失業保険制度はあくまで失業の認定という前提に立っておるわけでございまして、失業の認定はやはり安定所の職員がやる、こういう建前になっておりますので、もう総括的に市町村に御一任申し上げるというわけにはなかなか参らない。それかといって、根本的には全国の安定所組織網が村々のすみずみまで行き渡っておれば、こういう問題は起こらないわけでありますけれども、安定所の数というものもおのずから限度があるわけでございます。今後安定所の組織につきましては、分室、出張所等をできるだけたくさん作って、こういう便に供するとともに、それで足りないところは、地方公共団体等の御協力を得て出張員を置いて、そういうものをふやしましてそういう不便を除きたい。もう現に現在でも、今御指摘のような面もあろうかと思いますが、従来は社会も混乱しておりましたし、扱っておる金に問題が起こってはいけませんので、こういう出張認定、巡回相談というものは非常に厳格に押さえて参ったわけでございますけれども、   〔委員長退席、理事相澤重明君着   席〕 最近では地方から一定の保険金が完全に支給されるという目安がつけば、これを許可する方針をとっておるわけでございますが、今後とも公共団体の協力を得て、できるだけ御便宜をはかりたい、こういうふうに考えております。
  93. 野本品吉

    ○野本品吉君 いろいろ聞きたいことがありますが、時間もだんだん過ぎてきておりますから、私は指摘事項につきまして御質問をいたしたいと思います。具体的な問題に入ります前に、検査院と労働省の方にお伺いしたいのですが、本日の委員会におきまして、主として論議の中心になりましたのは、失業対策に対する補助金の使用の問題、及び失業保険等であります。私は失業対策に対する補助金の問題について主としてお伺いいたします。ここで一番問題になりましたのは、就労しない者に補助金を支払っておる、そのことであるように思っております。そこで会計検査院の方に私はお伺いしたいのですが、あなた方が地方へお出かけになって、この問題についてこれを指摘しましたときに、地方のこの仕事をやっておる人たちはどのように弁明し、どのように応答しておるか。
  94. 白木康進

    説明員白木康進君) この就労しない者に対する賃金支払い事態は、先ほどから申し上げておりますように、   〔理事相澤重明君退席、委員長着   席〕 いろいろな事態があるのでございまして、事業主体によって、また各種の理由によっていろいろその説明も違うわけでありますが、まあわれわれの方へ特にこういった指摘の仕方、われわれの考え方が実情に沿わない、そういうような、何といいますか、批判を受けたことはあまりないようでございます。やはり事情はともかくとして、法令基準に違反した措置であって、補助金は当然返納措置を講ずるというようなことで、具体的な事由はいろいろございますが、ここで一々特に申し上げることはないと思います。
  95. 野本品吉

    ○野本品吉君 ちょっと私まだ飲み込めないのですが、全部答えてくれとは要求いたしておりません。しかし会計検査院で行って調べた場合に、こういうわけなのだからこうせざるを得なかったのだというようなことが言われているのではないか、その具体的な一、二の例でけっこうですから。
  96. 白木康進

    説明員白木康進君) たとえて申しますと、私どもで失対事業補助金経理が同じ事業主体について何べん言ってもなかなかよくならない、そういうところがあるわけでございますが、そういうところでは、やはり日雇い労務者の方の一般の要求が非常に強い。それはたとえば労働省で定められました年末年始の手当、そういうものにさらに追加要求があるとか、あるいは労務者の条件によって、まあある程度職場の離脱を認めてもらいたいという要求があるとか、そういう場合に、これは事業主体によりまして、その要求の強弱、これは多々あろうと思いますが、今のように何べんも私ども指摘しても、なかなかよくならないというようなところでは、特に何と申しますか、そういう要求が強くて、事業主体の側でも何とか事態改善したいと思うけれども、なかなか思うようにいかぬ、こういう例はございます。
  97. 野本品吉

    ○野本品吉君 それから、具体的にはあとで私申しますが、今度は労働省の方にお伺いしたいのですが、指摘を受けました場合に、その当該機関、あるいは担当官に対しまして、それぞれの注意なりあるいは適当な措置が講ぜられていると思うのですが、今のような私が問題にしておりますようなことについては、どういう措置がとられておるか。
  98. 松永正男

    説明員(松永正男君) ただいまの御指摘就労しないのに賃金を払ったとか、あるいは短時間の就労をしたのに一日分の賃金を払ったというようなケースにつきましては、検査院から御説明がございましたように、いろいろなケースがございます。日雇い労働者の組合との関係におきまして、陳情が非常にきつかったために、これに対してやむを得ず払ったというような例も今出ましたが、たとえば失対事業として認証をされております事業以外の事業労働者を使用をした、その者に賃金を払ったというような場合、この認証されたもの以外の事業につきましても、たとえば事業そのものが公共的な性格でなくて、そもそも失対事業に適さないというような仕事をした例もございますし、また事業そのものは失対事業たり得るものであるけれども認証された工事ではない、これは初めから計画をして認証を受ければ失対事業に適する事業である、そこのところを明確にせずに、事業計画に盛られました事業以外の事業に使用したというような例もございます。これらにつきましては、会計検査の結果指摘されました場合に、われわれとしましては直ちに実情も調査をいたしますし、関係事業主体説明も求めその理由も明らかにいたす、今後の対策につきましてもいろいろ相談にのる、あるいは指導するというようなことをいたしておりますが、ここに指摘をされました事項は、いずれも会計検査院の御指摘通り事態でございまして、これは補助金につきましても返還をすべきであるというふうにわれわれとしても認めまして、これにつきましては、すでに補助金返還の措置を、全ケースにつきまして完了をいたしておる次第でございます。
  99. 野本品吉

    ○野本品吉君 それでは私は具体的に伺っていきたい。それは私は実は去年、おととし、ことしの検査報告をずっとここで見た。そうするとどうしても黙っておれないことがここに発見された。それは福岡県の例、私が黙っておれぬというのは、同じ場所で同じ事案が昭和二十九年から三十四年まで六年にわたって、繰り返し繰り返し行なわれているというこの事実です。具体的に申します。二十九年度におきまして福岡県と大牟田市、三十年度において同じく、福岡県と福岡市、三十一年度において福岡県と福岡市、三十二年度において福岡県、福岡市、大牟田市、直方市、八幡市、三十三年度において同じく福岡県、福岡市、大牟田市、直方市、八幡市、三十四年度において福岡県、福岡市、六年にわたって同じ事案が同じ場所において指摘されている、これはどう考えますか。私はこの事実を見て、会計検査院指摘というものがいかに微力であり、無効であるかということを考えまして、悲しんだり憤ったり実はしているわけです。そこで労働省の方にお伺いしたい。それでは二十九年度の福岡県と大牟田市の指摘事項について同じく返還命令を出したのですか。
  100. 松永正男

    説明員(松永正男君) 二十九年度の分につきましては返還命令を出しまして、全額返還をさせているはずでございます。
  101. 野本品吉

    ○野本品吉君 それではその後三十年度、三十一年度、三十二度に対しても同様の措置がとられているわけですか。
  102. 松永正男

    説明員(松永正男君) その後の年度につきましても同様の措置がとられております。
  103. 野本品吉

    ○野本品吉君 返還されておりますか。
  104. 松永正男

    説明員(松永正男君) 返還されております。
  105. 野本品吉

    ○野本品吉君 これは一体どういうことなんでしょうかね。労働省検査院はこの事実をどういうふうに解釈されますか。
  106. 松永正男

    説明員(松永正男君) 現在失業対策を実施いたしております事業主体は千以上でございますが、その中で繰り返し同じような指摘を受けておりますのは、ただいま御指摘になりました福岡県につきましては、福岡県及び福岡県下の福岡市、大牟田市等が非常に著しい例でございます。昨年の決算委員会におきましても、この点特に本委員会において強く指摘されました点でございます。この賃金支払いの問題につきましては、就労者の実態、あるいはこの事業主体の管理監督の体制等に、それぞれ事業主体によっていろいろの違いがございますが、福岡県に対しましては労働省といたしましても再三の指摘事項でございますので、強くいろいろの面において指導をいたしているところでございますが、残念ながらこのように三十三年度におきましてもまた指摘されたということは、われわれといたしましてはまことに遺憾でありますとともに申しわけないことでございます。なおこれは今後将来どうなるかということでございますが、三十四年度におきましてはここで指摘をされました大牟田及び直方市につきましては、指導の結果是正をされたと考えられます点は、三十四年度におきましては同じく検査がされたのでございますが、大牟田市及び直方市につきましては指摘事項がなかった、その意味におきましては是正されたというふうに考えるのでございますが、従来の実績と申しますかこういう面からみまして、このような何と申しますか重ねての事実がございますので、われわれといたしましてもなおさらに指導監督を厳にいたしまして、できるだけ早くこういう事態改善されるように、努力をいたしたいと考えている次第でございます。
  107. 野本品吉

    ○野本品吉君 それではさらに伺いますが、そうすると、他の市の問題は別として福岡県は毎年なんですね。そこで二十九年度以降会計検査院指摘に従って、労働省が不当支出に対して返還の命令を出した、返した、返したのですね。さらにその点はっきりさしておきたいと思います。
  108. 松永正男

    説明員(松永正男君) はい。
  109. 野本品吉

    ○野本品吉君 返したとしますと福岡県というものはこういう仕事のやり方、こういう補助金支出というものは不正であり、不当であり違法であるということを認めておるわけですね、どうですか。
  110. 松永正男

    説明員(松永正男君) 従来各年次にわたりまして指摘を受けました金額につきましては、全額返還をいたしております。従いまして、福岡県といたしましてこの経理が不当であるということは認めておるわけでございます。
  111. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は問題はそこにあると思う。違法であり、不正であり、不当であるということを認めつつ、これを繰り返しておる、これはもういろいろな事情があってこういう問題が慢性化しておるなどというのんきなことを言っておられない。不当、違法、不正を生じつつ、あえてしておるというところに大きな問題があろうと思います。そこで私はこの点については当委員会の権威においてもこの事実を見逃がすことは許されないと思います。  そこで私はお伺いしたい。それは、補助金の交付から完結処理に至るまでにこの仕事は下から上まで、また上から下へどういう事務的な段階を経て処理されてきているか、それをはっきり御答弁願いたいと思います。
  112. 松永正男

    説明員(松永正男君) 失業対策事業費補助金につきましては、まず失業対策事業事業計画を各事業主体において立てるわけでございます。これに基づきましてこの事業計画労働省におきまして審査をいたしまして、その審査の結果適当と認めましたものにつきましては、補助金支給の決定をいたすわけでございます。従いまして補助金につきましては各事業主体から補助金交付の申請書を提出をいたしまして、これを審査をいたしまして労働省において交付の決定をいたすという手続をとっております。
  113. 野本品吉

    ○野本品吉君 そこで年々事業主体から事業計画を立てて労働省に向って補助金の交付申請をする。で労働省はその書類に基づいて審査をして補助金の交付をする。そういうことを年々やっておるときに、六年も八年も同じ事案を同じ場所で起こしておるときに、交付に先立って再びかような事態を起すことは、まかりならんということを言っておりますか。
  114. 松永正男

    説明員(松永正男君) 会計検査院指摘をされまして、補助金を返還を命じました事例につきましてはその都度厳重な注意を与えておりますが、同時に補助金決定の際に特に福岡県等におきましては、失業者相当数出ている県でございまして、全国の中で失業対策事業費を使用いたす額も非常に大きなウエートを占めておりますので、この点につきましては補助金の交付の際はもちろん、その後におきましても機会があるごとにこういう問題について厳重な注意を怠っていないのが実情でございます。ただ現実の問題といたしまして、繰り返しこのような事態が発生しておるということにつきましては、やはりわれわれといたしまして事業の監査なりあるいは指導なりの面で不十分な点があった、ということは言わざるを得ないと存じますので、今後の中央の監察の重点といたしましても、従来にも増してさらに実地監査等において、これらの県あるいは事業主体に重点を指向して、運営して参るということにいたしたいと考えます。
  115. 野本品吉

    ○野本品吉君 福岡県がいろいろ失業者の数が多いと、それは私も知っております。多ければ多いように適切な事業計画して、そうして労働省としてはそれに応ずるだけの、その事業量に応じた相当金額の補助金を出すのはこれはあたりまえだ。問題は補助金の額の多い少ないの問題じゃない、たくさんやったってやはり筋違いなこういうことを年々承知の上で繰り返しておるというところが問題だ、ということを私は言っておるわけだ。数が多いから補助金を云々と——額を多くするということはこれはもう当然なことだと思う。あなた方が補助金の交付を承認しますときに、今までこういう事例があって問題になっておるんだから、この点だけには特に注意してくれということを県に対して注意してありますか。
  116. 松永正男

    説明員(松永正男君) 先ほども申し上げましたようにその点は繰り返し注意をいたしております。
  117. 野本品吉

    ○野本品吉君 それであなた方に注意された人は、どういう県におけるどういう役職のどういう人ですか。
  118. 松永正男

    説明員(松永正男君) 労働省と県とのいろいろな事務打ち合わせにつきましては、主として参りますのが職業安定課長でございます。で職業安定課長が一番頻度が多いわけでございますが、そのほかに労働部長も重要な問題の際には連絡に参ります。それから事務的な打ち合わせでは、職業安定課の係長あるいは係員といったものも連絡に参ります。こういう人たちにつきまして全部の人たちに注意をいたしております。
  119. 野本品吉

    ○野本品吉君 それでは、あなた方と話し合い、あなた方から注意を受けた労働課長が、二十九年から今までおったとは思いませんが、二十九年以降の労働課長と労働部長の名前をここで言ってもらいたい。
  120. 松永正男

    説明員(松永正男君) 今直ちに全部をちょっと正確には記憶いたしておりませんが、労働部長は現在の労働部長で、二十九年ころから見ますと三人目であると記憶しております。それから職業安定課長は……。
  121. 野本品吉

    ○野本品吉君 はい、いいですよ。
  122. 松永正男

    説明員(松永正男君) ただいま記憶しておりますところでは二十九年当時から見ますと、四人目くらいになると思います。
  123. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は労働省に対して二十九年以降の労働課長の名前と、二十九年以降の安定課長の名前と労働部長の名前を後刻書類で出していただきたい。なおこのことは同時に安定課長あるいは労働部長を通じて、当然福岡県知事にその旨が通じられておるはずだと思う。通じられておると思いますか思いませんか。
  124. 松永正男

    説明員(松永正男君) 当然通じておると思いますし、先ほど申し落しましたが知事さん自体にも御注意申し上げたことがあります。私の方から直接申し上げたことがございます。
  125. 野本品吉

    ○野本品吉君 そういたしますとこの問題については、会計検査院指摘に基づいていろいろと労働省では注意あるいは指導を与えておる。そうしてそれはそのときそのときの安定課長、労働部長それから知事にもその注意がされておる、こういうこと。それで間違いありませんね。
  126. 松永正男

    説明員(松永正男君) ただいま申し上げた通りでございます。
  127. 野本品吉

    ○野本品吉君 で、今まで承ったところを通しまして率直に私の印象を申しますと、福岡県に関する限り労働省労働行政の能力というか権限というか、そういうものが及んでおらぬ。こういうふうに判定せざるを得ない。この点についてどうお考えになりますか。
  128. 松永正男

    説明員(松永正男君) この件に関しましてはまことに遺憾でございますが、先生御指摘のような事態があるといわざるを得ないと思います。
  129. 野本品吉

    ○野本品吉君 政務次官、一体この事態どうお考えですか。
  130. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) 私も初めてこの事実を知らされたようなことでございまして、全く驚いている次第でございますが、国の行政が国の政策と予算を通じて、しかもその権威が行なわれないということはきわめて重大なことだと考えます。従いまして、御指摘の点に関しましては将来再びかような事態を起こさないよう、省としても積極的に適切な措置をぜひ講じたい。かように考えております。
  131. 野本品吉

    ○野本品吉君 私はかつてこの決算委員会補助金の適正化法を作らなければいかぬということを、この決算委員会で皆さん結論を出してそして法律を作った一人。同一の河川か二つの河川のごとく申請されて補助金の二重取りをするとか、沈まない船を、昔沈んだ船の写真を持ってきて補助金を取るとか、そういう事態が頻発しておりましたのでこれは大へんだ、金の問題よりも日本の行政というものがこういうふうにいいかげんに行なわれることは、これは見るに忍びないというのでできましたのが補助金適正化法であると考えて、今福岡県の繰り返し繰り返しかような事態が起こっておるのを発見しましたときに、かつての本委員会における補助金の適正化法制定当時のことを思い出しまして、実は非常に残念に思っておる。  そこで私は労働省にお伺いしたい。失業対策補助事業というものは補助金適正化法の適用対象になるかならぬか。
  132. 松永正男

    説明員(松永正男君) 補助金適正化法の適用になっております。
  133. 野本品吉

    ○野本品吉君 私は今福岡県の問題を直ちに補助金適正化法の適用対象として取り上げようというような、取り上げるかどうかということは別の機会に改めて十分研究をし、考えて論議をしたいと思っておりますが、とにもかくにもかような事態を毎年々々繰り返しているというところには、率直に申しますと労働省労働行政、労働の監督行政、指導行政の上においても大いに考えてもらわなくちゃならぬことがありますし、こういう事態を繰り返し繰り返し起こしておる事業主体の責任は最も大きい。そして鋭く追及されなければならぬと、私はこう考えておる。労働省が今まで親切に御指摘なさっていたと思いますけれども承知の上で繰り返し繰り返しかようなことをあえてする者に対しては、もう親切な手を伸ばす、あたたかい行政指導を加える限界をこえておる。こう思う。この点についてどう考えますか。
  134. 松永正男

    説明員(松永正男君) 福岡県の問題につきましては、確かに御指摘のごとく繰り返し同種の指摘を受けておりますので、事態といたしましては非常に悪い、悪質な事態であるというふうに考えざるを得ないと思うのでございます。現在炭鉱問題等がございまして福岡県自体が非常に行政面において繁忙を加えておりまして、県の土木関係におきましても失対事業の量、それから公共事業の量等が非常にふえてきておることは事実でございます。その半面、かつては富裕県でありました福岡が現在は非常に財政難に陥っているという面もございまして、これを取り扱う人員等の面でも、必ずしも事業を適正に執行していく面におきまして、十分であるというふうにはみられない部面もございます。しかしながら出て参りました結果はやはり厳然とした事実でございますので、先生の御指摘はいうまでもなくわれわれ自身といたしましても、福岡県に対する指導監督ということにつきまして、もちろん発生いたしました失業者の救済ということは、失業者の側からみますればこれは生活の問題でございますので、必要なる失業対策事業のワクというものについては、十分の配慮を加えなければならないことはいうまでもないのでございますが、同時に予算の執行、経理事業の運営という面につきまして、先ほど御指摘になりましたあたたかい配慮と申しますか、そういう面のみでなしにやはりきびしい線を貫いて今後対処して参りたいと考えております。なお、この点につきましては本委員会において重ねて御指摘を受け、強い御叱正を受けたということにつきまして、直ちに福岡県の当局にもあらためてまた連絡をいたしまして、反省を促すという措置を講じたいと考えております。
  135. 野本品吉

    ○野本品吉君 私はここではっきりと、お互いに頭を混乱させて考えてはいけないと思う。それは福岡県が特殊事情に置かれておる県であることはよく私も知っております。従って労働行政の面において、その仕事の事業量が多く様相が複雑であり、そしていろいろめんどうな点のあることについては十分承知しておりますが、しかしそういう福岡県の置かれております諸般の情勢に対する同情とか理解とかというものと、行政の折り目をつける、筋を通すということとは全然別個なんです。福岡県の置かれておる労働情勢がこうであるから、だから福岡県にできるだけ失対事業補助金をたくさんやることもいいでしょう。その他いろいろな面で便宜をはかってやるということは、これはもう当然政治として考えなければならぬことだ。しかし、それと、国の予算によって交付された補助金を、どういうふうに使ってもかまわぬという、そのこととは別ですよ。これは今までの会計検査院の方の言葉の中にも、それから労働省の方の言葉の中にも、私はややもするとそれを混同しているきらいがあるという印象を受ける。県の情勢が複雑であり多様であり困難である。それに対する理解ある協力、それと別に法律で定められ、あるいは行政の面でいろいろ指導されて、かくあるべきであるというそのあるべき線というものを混同して考えると、行政というものが折り目がつかなくなってくる、福岡県の問題に対しても私は無理に福岡県をどうこうというのじゃありませんけれども、そこに問題があるように思うのです。さらにお伺いしたい。年々こういうことがあり、それからして中央からもこの点についていろいろと指導があり、指示があったであろう現地の労政当局は一体何をしておりますか。……もう一度言いましょう。こういうことなんですよ。まあ会計検査院から指摘されていることを福岡県の現地の労政当局は知っているわけですね。そうでしょう。それから本省からそれに対してそれぞれの関係機関、あるいは担当者に注意を与えていることも知っているわけです。出先の労働省の労政担当の機関は一体何をしているか、このことについての現地の状況等についてあなた方に報告あるいはその他の形で連絡し、そして打ち合わせをしているというよらな事実はありますか。
  136. 松永正男

    説明員(松永正男君) 失業対策事業の実施につきましては、労働省の系統といたしましては県に職業安定課がございます。これは労働部の中にございます。それから出先といたしまして安定所がございます。事業の実施といたしましては県営事業市町村事業と二つあるわけでございます。で、県営事業につきましては土木の関係の主管部課においてこれを扱っておるわけでございます、事業主体といたしまして。それから市町村営につきましては市町村営のそれぞれの土木担当のところで扱っておるわけでございます。で、労働省の出先といたしましては、労働部の職業安定課が労働省の指揮を受けましてこれらの事業の監督指導をやっておるわけでございますが、実際に担当をして事業として行ないますのは土木の関係の主管部局でやっておるわけでございます。従いまして県の労働部職業安定課におきましては、労働省の旨を受けまして土木部とよく連絡をいたしまして、これらの事態について改善をする努力を毎回重ねておるわけでございます。ただいまの御質問は労政当局というお言葉でございましたが、出先のこの関係機関といたしましては、県では労働部職業安定課と、そのさらに出先は安定所ということになるわけでございます。
  137. 野本品吉

    ○野本品吉君 福岡県のことにつきましては大体以上で終えまして、次に福岡市も三十年度、三十一年度、三十二年度、三十三年度、三十四年度の五カ年にわたって県と同じようなことが繰り返されておる。これに対してもお伺いしたいことは、県についてお伺いしたいことと同じでありますから繰り返しては申しません。それからして大牟田市が三十二年度指摘され、三十三年度指摘されておる。こういうふうに見て参りますと、単にこれは福岡県だけのものでなしに、県がやっているように、これをまあ右へならえしたというか、見ならっているというかしらぬが、連続この事案を発生させておる事業主体である幾つかの市もまたしかり、というふうに上れわれは推定せざるを得ない。これらのことについて労働省に行ってもその他の機関に行っても、ああいう事実を見のがしておるということでは、これは非常に困ったことになるというふうに私は考えるのです。私は失業対策補助金が多い少ないとかいうことは別に問題にしておりません。必要なところにはうんと出してやるのがあたりまえです。ただしそれが適正に使用されておるか、おらぬかということについては、われわれ深い関心を持たざるを得ない。私が言うまでもなしに、国の予算はある一つの政策目標を掲げて、その政策を実現するために国民の血税をもって組まれておる予算です。一つの目的の実現のために払われた国民の血税をその目的外に使用して、あるいはその目的の実現を阻害するような点に使われるということは、これは国民の名において許すわけにいかない、私はいまだかつてかような激烈な議論をしたことはありません。ありませんけれどもあえてかようなことを申すのは、その国民を代表する国会がこれを黙って見ているわけにいかぬ、また国会において財政処理が適正に行なわれておるか、おらないかということを監視し、間違いのないようにすることを任務として常置されておるわれわれの決算委員会は、これを断じて黙視するわけにはいかない、私はまた適当な機会にさらに研究をいたしまして自分としても考えまして、かような事態を少なくも日本からなくしたい、そういう意味で皆さんとまた話し合う機会を持ちたいと考えておりますが、きょうは実は石田大臣のおるところで私はこの質問をし、大臣に十分の関心を持っていただき、考慮を払っていただきたいと思っておったのですが、幸いに同僚の政務次官の方が見えられておりますから、あえてここで質問申し上げるわけですが、労働省におきましてもぜひ、われわれにかくそうとか、形を整えて一時を糊塗する、弥縫する、そういう考えでなしに、さらに事態につきまして慎重な御検討を願いまして、そして労政を担当しております労働省と、われわれ国会におる者とが協力しまして、かような事態を日本の国内から払拭するための御協力をいただきたいと思うのです。ややもいたしますと、役所の諸君は、特に決算委員会というところは文句をつけるやかましいところでありますものですから、器用に答弁しその場を間に合わせればいいということに自然になりがちであろうと思います。しかし事がこの種の問題につきましては、私どもも遠慮なく申しますし、それからして役所の方々も真相をわれわれの前に発表され、共通な現実に対する、共通な理解の上にお互いが力を合わせて問題解決に当たりたい、かように私は考えるわけです。今後ともその方向で御尽力をいただきたいと思うのですが、このことをぜひ事務当局の方だけでなしに、大臣にもお伝えいただきたい、政務次官の御答弁をいただきます。
  138. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) 御指摘の問題は先刻も申し上げました通り、私自身も初めて承りまして、国の行政の姿として実に遺憾しごくなことだとつくづく感じております。いろいろ現状におきまして困難な幾多の事情もあるかもしれませんが、いずれにいたしましても法を守らず、しかも悪質にかようなことが繰り返されてしめしがつかないというような行政執行があるということ自体は、断じて許されないことだと存じます。行政的に措置をいたすということで可能かどうか、もっと全体の行政機構の中においてこれが正されなければならないか、その辺に関しましては、私もまた大きな決意を持ってこれが解明と対策を考えたいと存じまするし、御趣旨につきましては大臣にも率直に報告をいたしまして、相ともに責任のある、行政の姿を正すようにいたしたいと存じまするが、さらに皆様方のお力をお借りいたすことが非常に多いのではないかと考えますので、よろしくお願い申し上げます。
  139. 野本品吉

    ○野本品吉君 最後に委員長にお願いいたします。私は先ほど補助金の適正化法を作りますときの当委員会を思い起こしたのでありますが、目にあまる不正、不当なことをいたしましたその責任者を当委員会に出席を求めまして、事情を聴取したことがあります。本日のこの問題につきましては直ちにそれをここで要求はいたしませんが、適当な機会に委員長及び理事打合会において、この跡仕末をどうするかについての御考慮をわずらわしたいということを希望いたしておきます。
  140. 佐藤芳男

    委員長佐藤芳男君) 野本委員にお答え申し上げます。私は野本委員質疑並びに労働省の方々の御答弁等をいさい拝聴いたしておりまして、委員長といたしましてもまことに遺憾にたえない、すでに労働行政の一角がくずされておることは遺憾禁ずるあたわざるものがあります。従いまして、私はこれに重大な関心を持つものでございます。先刻政務次官の御答弁の中に、適切に措置をとるというお言葉がございました。私は今直ちにその具体案につきまして問うところではございませんけれども、少なくともその適切なる措置一つとして、福岡県知事を労働省において招致されて、そこで相当強い態度で臨まれるべきであると私は考えます。なおまた、本委員会といたしましては、ただいま野本委員の私に対する御提議によりまして、やはり重大な関心をもってこれに対処すべく、いずれ委員長、理事打合会に私からお諮りをしなければならぬと、かように決意をいたしておった次第でございまするので、野本委員のただいまの委員長に対する御要望に対しましては、そうした意味をもちまして善処いたすことをここに明らかに申し上げてお答えといたしておきます。
  141. 千葉千代世

    千葉千代世君 関連。今の不当な事項に対しては福岡が非常に多くて根が深いように伺いましたけれども、その他の県でこれに次ぐものがございましたら明らかにしていただきたいと思います。
  142. 松永正男

    説明員(松永正男君) 先ほども説明申し上げましたように、事業主体が全部で三士二年度におきましては千十七ございます。そこで、この多数の事業主体の中で重ねて指摘をされたというものもございますし、初めて指摘をされたというものもございます。しかし、福岡のように連続して数年指摘を受けたというようなものは現在のところございません。なお、指摘をされました事項につきまして、その後の会計検査院の御指示、あるいはわれわれの監督指導等によりまして、三十三年度におきまして指摘された中におきましても、すでに昨年、今年等を通じて事態を著しく改善をした事業主体もございます。特に重ねて数年連続というような事例はほかにはないと思います。
  143. 武内五郎

    ○武内五郎君 私質問したいと考えておりましたことは大体北村君、山田君から出ておりますので、その点は端折りまして、二、三質問したいと考えます。先ほど失業対策部長から、保険関係給付についてのいろいろな不正な擬装の点が、こういう点、こういう点というふうに三点ほど指摘されております。その中でたとえば再就職をやっておりながら失業保険をもらっておる、あるいは架空な事業所で失業登録をやっておる、あるいはまた事業主労働者との結託のもとに失業登録をやっておる、というような数点にわたってお答えがあったわけでありますが、こういうことはどういうことですかな。擬装退職と申しまするか、退職したことを擬装して失業登録をやっておるような事例を、あなた方が把握されておるかどうかお伺いしたい。
  144. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) ただいまお話の中で、先にお答えさしていただきますが、先ほど申し上げましたのは、労働組合と結託して不正を云々というようなことを申し上げたわけではございませんで、先ほどの先生の御指摘で、そういうことの不正を防ぐために労働組合と協力してはどうかと……。
  145. 武内五郎

    ○武内五郎君 いやそうじゃなくて、事業主労働者、この結託に基づいて不正なことをやっておる、こういう点をあなた方が指摘された。そこで私の聞きたいところは、退職したということを擬装しておる、こういうことをあなた方が把握しておるかどうか、これを伺いたい。
  146. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 失業保険支給する場合には、事業主から離職証明書というものを安定所に出してもらうわけでございますが、実際に離職をしないにもかかわらず、その離職証明書というものを事業主が発行いたしまして、失業保険を受けるという事例が非常に多く見受けられるということは事実でございます。
  147. 武内五郎

    ○武内五郎君 そこでさらにお伺いしたいのですが、たとえば北陸地方のような積雪地帯、特にそういう地方における陸運関係、あるいはそれに類した冬季間事業が思うようにいかないような事業体において、業者が就労者の首を切ったということにして、数カ月間失業手当をもらわしている事例がかなりあると思う。これは先年新潟県で交通事業でストライキが起きた。労働者の冬季間手当の問題でストライキが起きたことがあります。その問題がきっかけになって、年々運転手や助手を馘首したということにして失業手当を受けている。そうして春になって車が動くようになってから再採用をしたんだ、こういうことをやっておったのは、これは私はその交通業者一件ではないと思う。かなりたくさんあるじゃないかと思う。そういうような事例があるのですが、私はこれは擬装退職だと思う。擬装した馘首だと思う。これについてあなた方はどう考えるか。
  148. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 擬装解雇であるか正規の解雇であるかの判定は、なかなかむずかしい面もあるわけでございますが、私どもといたしましては、いわゆる正規の解雇の場合には退職金等についての通算が行なわれているかどうか、解雇諸手当が支払われているかどうか、あるいは他の社会保険について、解雇の手続をとっているかどうかというふうないろんな状況を調べまして、擬装解雇であるかそうでないかを判定いたしまして、擬装解雇で、そういうものが整っていない、他の社会保険においてはずっと継続しているというふうな場合に、もし間違って保険金支給している場合には、これに対して返還請求を出しております。
  149. 武内五郎

    ○武内五郎君 そこで、先ほど松永失対部長のお話の中にあったと思うのですが、失対事業でこの認定を受ける者が予見される失業、こういうようなものについての事業は、これは認定することについてはかなり消極的な態度をとって臨むというお話が、かなりその認定しないという意味の中に含まれておる。私はそういうような、今の私が申し上げた積雪地帯におけるそういう事業というものは、すでに年々これは長い間行なわれてきておる。労働者は好むと好まざるとにかかわらず、冬季間は失業状態にある。失業保険法の第三条には失業というものの定義が明らかにせられておるわけです。働く意思を持っており、しかも働く能力を持っておりながら、職業につくことができない状態をこれ失業だと、こう言うのです。   〔委員長退席、理事谷口慶吉君着   席〕 そうなってくるとすれば、しかも年々そういうふうな地方事業体でこれを習慣的に馘首する。労働者がそれまでは労働組合というものを持たなかったから抵抗の力がなかった。労働組合ができて冬季間の手当要求から端を発してストライキに入って、そういう事態が明らかになってきたのであります。そういうふうなことはすでに予見されておるはずなんである。従って、これは私は同じ者を、しかも春になって融雪後また再採用をやる。これはちゃんと打ち合わせをやっておるのです、今までは。労働者が泣き寝入りをしておったのです。そういうようなことが私はかなりたくさんあると思うのですが、これは法に盲点があるのか。従ってそういう盲点があるならば、法を改正する必要があるのか。また現地の監督者がきわめて現地に即した考え方で、寛大な処置をとっておるのか、そういう点を実は非常に疑問を持っておるのですが、お伺いします。
  150. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) ただいまお話のあった点は、特に積雪地帯における陸運関係労働者の件でございますが、ちょっと誤解を招きましたので申し上げまするけれども、先ほど申し上げましたのは農林漁業関係について申し上げたわけでございまして、陸運関係失業保険は強制適用になっております。農林漁業は先ほど申し上げましたように強制適用にはなっていないわけでございます。それだけ違いがあるわけでございまするが、そういうことで、陸運労働者がたとえ季節的にしろ実際に失業になったという場合には、法律建前失業保険は適用され、従って資格を満たしておれば、失業保険金給付になるということになるわけでございます。この建前そのものは私は正しいと思うわけでございまするが、結局擬装解雇であるか正規の解雇であるかということを的確に判断する行政能力ということをつけることが、この問題に対する解決の方法じゃないか、こういうふうに考えております。
  151. 武内五郎

    ○武内五郎君 あなたその御答弁はそれは通り一ぺんです。私の聞きたいのは、そういう事業主が、働きたい意思と能力を持っている労働者を冬季間首を切る、事業所を閉鎖しておるのではなくて冬季間首を切って、しかもそれで労働者の生活は失業保険でまかなわせるという、失業保険依存の考え方に立っている。それが妥当であるかどうかということをお聞きしたい。もしそれが妥当でないとするならば、法のどこかに欠陥がある、取り扱いのどこかに欠陥がある。そういうことについてのお考えをお聞きしたい。
  152. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 先ほどからのそうした問題につきましては、これは失業ではないのでその間休業手当を払って雇用を継続していくべきではないか、またそうした方が筋ではないかというふうに私ども考えておりますけれども、先ほど申しましたように解雇としてのすべての条件を満たしておる、今申しましたように社会保険もその場で切れる、あるいは解雇手当も解雇予告もちゃんとしてある、解雇予告をしない場合には予告手当を支払っておる、こういう解雇としての条件がすべて完備されておる場合には、失業保険として、失業保険金支給できませんということはできない性質のものだと考えております。
  153. 武内五郎

    ○武内五郎君 だからそれは書類上完備している、その就業者名簿が完備しているとかいうことで、実態を把握し得ないというあなたの考え方、私はそういうことはだれだってできる、書類を完備して私のところはこういうふうにして馘首いたしました、解雇いたしました、こういっておればそれで通るだろう。私は先ほど野本先生からのきわめて厳粛な御意見を承って、まことに身の引き締まる思いをしたのであります。こういう事業について、こういう失対事業または失業保険を、そういうような考え方で悪用しようとする事業体というものがかなりあるのであります。私はそれをお伺いしたい。
  154. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) ただいま御指摘通り失業保険を悪用しようという傾向は全国に非常に強いわけでございまして、特に御指摘通り季節的労務についてはそういう傾向が非常に強いわけであります。従って、私どもは予算を重点的に配分いたしまして、そういうふうに悪用されることがないように十分調査ができるようにいたしておりますし、そういう点は解雇を装って実際に解雇していないという者に対しましては、厳格に十分調査をいたしましてそういう者に対しては失業保険支給しない、こういうふうな基本的態度で臨んでおる次第であります。
  155. 武内五郎

    ○武内五郎君 それは厳粛に一つやっていただきたい。  それと同時に、うらはらの問題がある。これは失業保険をもらって生活しておる労働者が、生活費が足りないので焼きせんべいの行商をやって軽微な収入で生活費を補っておった者が、調査官か監督官かによって摘発され、おまえがうちで飯を食うことができないなら、くさい飯を食わしてやるぞといわれて首をくくった人があるのです。これは先ほどの問題と全くうらはらになる。もちろん私は法からいえば、失業者が収入のある仕事をやったりなんかすることは、失業手当を打ち切られることになるのでありますが、その労働者の基本的な収入が知られるということは、自分がそういうことをやったらくさい飯を食わされるのだというおそれがある。その労働者を死に導いてしまったという事例が実はあるのです。そういうふうなことは全く先ほどの悪用のまた同時にうらはらになってくると思う。こういうことについて、たとえば法というものを厳粛にお互いに守らなければならぬ、しかし同時に法にもあたたかい心を持たせにゃならぬ。あたたかい心を持たせなければならぬが、そこに実情に即した、緩急よろしきを得た施行の態度というものが必要じゃないか。その点について、たとえばどの程度まで失業者、その収入を補う他の仕事につくならどの程度のものならいいか。たとえば生活費の百分の七十の手当が入るが、百分の七十では生活はできない。そこであとの三〇%というものを補うためにせんべいやなんかを売って行商をやっておった者がある、そういう三〇%まではいいのか、あるいはどの程度までのその補う収入が認められるのか、これは黙認されるのか、また全然これをそういうことはやってはならぬということになっているか、どういうことになっているのですか。
  156. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 失業保険受給者が内職その他で失業期間中に収入を得た場合には、原則といたしましてこの失業保険金支給額からその得た収入額を差し引くという建前になっておりまするが、その引く額につきましては、「自己の労働によって収入を得るに至った場合において、その収入の一日分に相当する額から十円を控除した額と失業保険金の日額との合計額が、賃金日額の百分の八十に相当する額を超えないときは、失業保険金の日額」の全部を支給する、こえた場合には、超過額を失業保険金の日額から差し引いて支給する、そういうふうにやっております。
  157. 武内五郎

    ○武内五郎君 百分の八十をこえない程度ですか。
  158. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) そうでございます。
  159. 武内五郎

    ○武内五郎君 そういう点は、私はその百分の八十というものは、これははなはだ見当がつかぬと思うので、把握は困難だと思うのです。いずれにしましても、ふだんかりにその業についておって賃金をとっておるとしても、これは常に零細な金額だ。そこへ持ってきてそのまま失業するということについては、これはもう非常な大きな打撃なので、その点は私は法の適用についてそれこそ緩急よろしきを得るように、十分心がけていただきたいと思うのであります。その点をよく私は希望したいと思うのであります。  同時に、私はもう一つ、先ほどあなたが指摘された点であります。季節的な労働者が仕事を終えて国へ帰ってくると、やはり失業手当をもらう、保険をとる、そのことは同時に私はやはりあなたが指摘しておるように、法を悪用して業者がそういうふうなことをやっておるから、そういうふうなことになっておるのですが、同時に私は、これは日本の低賃金の非常な基礎になっていると思うのです。帰ればただ遊んでおって百分の七十だからもらえるのじゃないかということが、日本の労働者の低賃金の基礎になっておる。それらについて先ほどの積雪地帯におけるこの擬装された解雇、それからこういうふうに季節的な労働者の低賃金の防止等から考えまして、失業保険法についての改正の必要があるかどうか、そういう点を特にお伺いしておきたいと思うわけであります。
  160. 鈴木健二

    説明員(鈴木健二君) 現在における適用につきましては、ただいま申した通りでございまするが、失業保険におきまして日雇いと一般だけに区別して処理するという方法がいいのか、その間に有期的事業というものを一本考えたのがいいのか、いろいろ議論があるわけでございます。私どももその点に関しては内々検討をいたしておるわけでございまするが、一昨年社会保障との関連において社会保障制度審議会に、根本問題についてどういうふうにしたらいいか、ということを御諮問申し上げておるわけでございまして、そういうふうな御意見も拝聴しながら他の重要問題とあわせてこの問題も検討していきたい、こういうふうに考えておる次第であります。
  161. 武内五郎

    ○武内五郎君 まあ特に私は、労働省労働者の搾取機関であってはならない。特に労働省所管のいろいろな法律は、労働者のそういう弱い立場を擁護するために作られてきておると考えるのでありますが、特に失業関係法律はそういう点で労働者の最も弱い点を擁護していかなければならぬと考えるのでありますが、私はいろいろ基本的な問題については、もう先ほどすでに出ておりますので、以上の一、二点を指摘して、特に労働省の今後の十分なあたたかい気持ちで労働者に対処するような、そうして労働者立場を守ってくれる施策を要望しておきますものであります。  以上をもちまして、私は終わります。
  162. 相澤重明

    ○相澤重明君 政務次官、先ほど鈴木課長が答弁をされた内容について少し問題点がある。   〔理事谷口慶吉君退席、委員長着   席〕 それは大森君なり北村君から質問の中に出た、失業保険料支払いについて、もらう者はそれで生活をしておる。しかし、遠隔地における、あるいは離島における失業者のこの支払いについて、認定の問題があるからどうしても早くできぬ、こういう話が先ほどあったのです。これは労働省の性格は何だとこういうことに私はなると思うのであります。そこがそもそも労働行政の一番足りない点ではないか。先ほど北村君は、二十日くらいもらえないのがある、こう言っておった。あとでもし疑問あれば速記録をもう一度調べ直して課長の言を私は追及してみたい。もしそうだとすれば、これは当決算委員会としては非常に重要な問題だと思う。ですから、労働者がいわゆる失業保険金で生活をしなければならぬ事態に追い込まれた場合には、できるだけこの法の不備の点があったならばそれを直すし、それから改善をするところがあれば改善をしていくという努力がなければならない。これは私は労働省の持つ使命だと思うのであります。そういう点について政務次官は一体どう考えるか。
  163. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) 御指摘通りだと私も考えております。きわめてまれな例としてまあ常識的に考えて大へんおくれるという例も絶無とはいえぬと思いますが、さようなことがあってはならないと考えておりまするし、まあこれは法の適用というよりも行政の形の問題等が大へん関係してくるのじゃないかと思っております。従いまして、認定の促進とかあるいは支払いに対する特殊の便法等については打つ手もあるそうでございますから、極力御趣旨の方向で不都合のないようにいたさせることを私もはっきりとお答えをいたしておきたいと思います。
  164. 相澤重明

    ○相澤重明君 次に福岡県の問題については、先ほど野本さんからお話のあった通り、いずれわれわれ委員長、理事打合会で方針を出したいと思います。それはそれとして、近時この炭鉱の災害が非常に多い。労働者の死亡する数、あるいは負傷する数が多い。そこでこの先ほどの質疑の中に出てきた、この基準監督署監督官の定数の問題と私は関係があると思うのです。一体労働省が、こういう災害が非常に多くなっておるのに現状のままでいいと思っておるのかどうか。それともこういう非常事態が起きた場合には、やはり本省からも現地へ行き、あるいはこの実情に沿うように監督官が適正な仕事ができるようにやるべきだと考えておるのかどうか。その点についてはもう政務次官でなければ答弁できないと思うから、政務次官答弁して下さい。
  165. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) 指導あるいは監督等の徹底によって、災害の防除あるいは災害に対しまする適切迅速な処置等に関しましては、御指摘のごとく、一般労働基準関係から申しましても、必ずしも十分であるとは申し上げかねると思います。従いまして、一面におきまして、監督体制を強化するという必要は認めておるわけでございまして、年々これが充足のために努力はいたしておりまするが、今日までなかなか満足するところまで行っていないということは率直に遺憾に存じまするが、さらに引き続いて最善の努力をいたしたいと思いますが、特に鉱山保安の関係につきましては、御承知通り通産省が直接の担当をいたしております。これと並行いたしまして、労働行政としてあるいは監督あるいは注意等々をいたしておるわけでございますが、まあ鉱山保安の関係につきましては、もちろん労働省といたしましても十分だとは申し上げかねるのでございまするが、実態的に鉱山保安の関係をも並行して整備するということを政府全体として考慮して、頻発いたしまする最近のおそるべき災害に対しましては迅速にこの対策を考えなければならぬ、かように考えております。
  166. 相澤重明

    ○相澤重明君 次に先ほどの答弁の中であった、第三国人の失業状況並びに失業保険金支給状況、こういう答弁を私聞きましたが、一昨年私どもも奈良県等の現地調査をしたときに問題になったのは、同和対策、いかに日本人に第三国の人たちも協力をしてもらうか、こういうことが非常に重要な問題として私ども決算委員会の現地調査をしたときに、実は感じておった。きょうは時間がないからその問題について労働省当局でも説明がなかなか簡単にはできぬと思うが、これは私は日本の国内における失業問題については、やはり労働省の最も中心的な問題として考えていかなければならぬ、その中に一つ今の同和対策の問題がある。指導方針の問題だと思うのです。ですから私ども決算委員会で調査をしたときにはこの第三国人のひとが、うちへ担当官が行っても入れないとか、あるいは文句を言って仕方がないとか、いろいろな話がありましたけれども、これはやはり労働省自体がそういう点を関係の県や市町村人たちによく指導をして、そうして問題を起こさないようにすべき点だと私は思う。従って今後、同和対策がどう行なわれておるかということは、私どもとしては非常に関心を持つ問題ですから、ぜひ努力をしてもらいたいと私は思う。これは要望です。  その次にお尋ねをしておきたいのは、最低賃金制の問題で石田労働大臣も大へん努力をしておると思うのですが、業者間協定というものが非常に進められておると思う。従って全国的に何団体何人、どのくらいの賃金、こういうようなことを一つ、きょうは時間がないから後刻資料で提出してもらいたい。  その次に、これは緊急の問題であるので、その前に一つだけやはり聞いておきたいのですが、病院ストが行なわれたことは皆さんが御承知通りです。ところがこの病院ストが実はあれは厚生省の関係である、こういう形で労働省がおったのではないかという印象を私どもは受ける、厚生省は、労働者の問題についてはあれは労働省の所管じゃないか、こういうふうにして関係委員会ではどうも答弁をされておるように思う。これは明らかに労働省はやはり労働者の問題については他省の所管といえども、これは国務大臣等は十分相談があってしかるべきだと私は思う。こういう点についてもし厚生省がこれは労働省の問題であるといって逃げるようであるならば、首根っこをつかまえて、そうしてやはり正しい争議のいわゆる解決のあり方を導いていく、これが労働者のサービス省としてのあり方だと私は思う。そういう点についてどう思うかということと、いま一つ緊急な問題としては日本航空の航空士、操縦士、機関士、この人たちが組合を作って、そうして現在のジェット機では労働時間が長いので、とても賃金と手当等の問題について妥結をしなければ乗れないと、こういうことを言っておる。それがもはや目前に迫っており、三十一日のストをやるかもしれない。こういう問題はもちろん労使の問題ではあるけれども、少なくとも国際線に飛ぶ飛行機、この場合には日本の一体労働行政というものはどう行なわれているか、こういう問題も国際的な信用の問題になってくる。ですから労使関係にわれわれは介入をせよということを言っているのではない。けれども少なくとも日本の信用を失わないように、いわゆる文化国家としての労働省のやはり正しい指導助言というものは私は必要ではないか、こら思うが、一体労働省はそういう労政をどう把握し、また関係者に対するそういう指導をやろうとしているか、このことについてはきわめて短時日の問題、緊急の問題だと私は思う。その点について政務次官から一つ御答弁をいただきたい。
  167. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) 病院関係の最近の労使の状況はまことに遺憾な状況にございまして、これは人間の生命にも関する問題でございますので、決してお話のごとく厚生省の所管であるから労働省は知らないなどという態度はとってはおりません。特に看護婦等の労働条件、あるいはこれに対しまする給与等に関しましては非常に過酷な点もございまするし、必ずしも十分な給与ではないということで、これに対しましてはもうすでに三十三年以降この業種について、基準監督の立場から事業主体に対しまして注意を喚起しながら、これが改善については努力をいたして参っておる次第でございます。かような事態に当面いたしました状況を見ておりますると、双方とも交渉過程において必ずしもなれない点が相当あるようでございまして、かえって不当な紛糾を生じておるような点も見受けられまするので、それらの点に関しましては労働省としては一面において事業主体を指導しつつ、これが適正な解決に対しまして側面的な指導をいたしておるという次第でございますが、当面争議に入っておりまする問題に関しましては、直接の介入を回避いたしておるという状況でございます。  さらに日航の問題に関しましては、これもまた非常に国際的にも大きな関係がございまするので、まあただいまでも労使双方で交渉を進められておりまするが、これに関しましては双方必ずしも誠意がないわけではないのでございまするが、むずかしい問題点も必ずしもないとは申し上げられないので、労働省といたしましては労働委員会にこれが公正な判断を求むべきであるということで指導はいたしております。最悪の場合には極力短期間に妥当な解決を見るために、労働委員会の公正な判断を求むべきではないか、かように考えましてそれぞれ連絡をいたしておるような次第でございます。
  168. 武内五郎

    ○武内五郎君 最低賃金の問題ですが、今相澤君から資料の提出を要求されたのですが、その前にこれをお伺いしておきたいのですが。労働省としては最低賃金についてどういうふうな指導をされているか、特に業者間協定で常軌を逸したような低賃金がとられておるのはもうたくさんあるのです。最近の例なんかで最近結ばれた、その協定されたもので三千七百円、こういうような、その社会的な条件や、全く人権を無視したような最低賃金が出されておる、こういうようなことについて一体労働省としてはどういうふうな指導をされているかどうか。
  169. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 最近におきまするその具体的な事例、存じておりませんが、現在におきましては業者間協定に基づく最低賃金におきましても、二百円未満のものを最低賃金としてきめるというふうなことはないようで、少なくとも二百円以上の部面、それから業者間協定に基づいて少しでも現行の賃金から相当上がるような体制で指導しているわけでございまして、一般にいわれているほど賃金の低いのを最低賃金としてきめているということはないと確信しております。で、あるいはお聞きになったのは、具体的の事例を私知りませんが、あるいはそれが業者間協定としては行なわれているかもわかりませんが、それを最低賃金としてきめるという場合には、さらに基準局におきましても審査し、しかも行政指導をして、なおかつそれが最低賃金法に基づく最低賃金として妥当かどうかということを判断した上で、最低賃金審議会の方へあげているわけでございます。従って、現在最低賃金としての解釈が二つあるわけなんで、業者間協定、すなわち協定すればそれがもう最低賃金というふうに思われる部面もあるし、それから、われわれがいうほんとうの最低賃金法に基づくやつは、業者間協定に基づいてきめた最低賃金が、最低賃金審議会を通ってそして法律に基づく最低賃金としてきめられた額と、その二種類まあ常識的にはあるといえるんじゃないかと思うんですが、われわれの方で現在いっている業者間協定に基づく最低賃金の指導というのは、相当、二百円をくだらない、できるだけそれが相当上回るような方面でいって、最低賃金が非常に不当な低い額で、それが右へならえされるような額が最低賃金としてきめられるようなことのないように指導しております。現在業者間協定に基づく適用としては、大体四十八万人程度でございます。
  170. 武内五郎

    ○武内五郎君 社会的な常軌を逸したような、私が質疑したような全くべらべうに低い賃金の場合には、労働省ではこれを認可するのですか。認可とかそういうような手続をとるんですか。またそれに対して、それは不当であるからもう一ぺん考慮しろとかいうような指導があるのですか。
  171. 三治重信

    政府委員(三治重信君) 業者間協定で、一般常識としてその賃金が、そういうようなところは非常に従来低いところだと思いますが、それがすぐ業者間協定したから地方基準局でそれを賃金審議会に出すということはなくて、賃金審議会に提出するまでには、やはり業者間協定の内容、また業者の気持、それから従来からの実態調査、それがどの程度上げられるのか、さらにそれが妥当なのかどうかということについては、相当行政指導し、また業者の言う言い分や資料をまたあらためて調査して指導体制を作った上で、最もそれがやはり最低賃金としてふさわしいというふうなある程度の客観的な認識を得た上で、最低賃金の審議会へかけている。それはまた、最低賃金審議会は、御存じのように、三者構成で各都道府県基準局に置かれているわけでして、またその行政措置として判断して、基準局長が最低賃金審議会へ出した部面が、全部そのまま無条件で通っているわけでもないわけですから、その通った部面につきましては、最初におきましてはやはり若干地方によっては全国的視野から見ると低いところもあったわけですが、最近においては経済の発展及び好況に伴いましてそういう部面は非常に少なくなって、ほとんどないと断言してもいいんじゃないかというふうに考えております。
  172. 相澤重明

    ○相澤重明君 政務次官、先ほどの日航の問題は、実は本会議が始まる前に石田労働大臣とも私も話して、これはできるだけ労働省としては国際的な信用を失墜するような問題にならぬように、まあ助言なりあるいは手続をとられた場合にはやはり措置をしてもらいたい。あなたもそういう努力をされるということを私も了承いたしますから。話に聞くと組合は四百時間の乗務を主張している。しかし経営者の方は九百時間以上ということだ。普通のプロペラ機の時代とジェット機の時代ではこれは全然労働問題は違う。私どもも国際的なそういういろいろな問題も見ておりますが、あまりにもかけ離れた問題であり、非常にまあ日本の信用の問題になると思います。そういう点は特に私は要望しておきます。  それから最後に大へん気の毒であるけれども、先ほど野本委員質問の問題は、いずれ後刻委員長、理事で打ち合わせはするけれども、二十九年以降指摘されて、失業対策部長は関係の部長なり課長に十分そのことは通告をしてある、こういうことであるが、それは文書によったものであろうと私は思うのであります。その文書を福岡県なり関係の市に出したのならばその文書を提出してもらいたい。何年何月にどういう文書を出したか。とれを当決算委員会に提出をしてもらいたい。その上に立って、私どもはこの労働行政というものがどう行なわれているかということを判断をしてみたいと思います。  それから政務次官いま一つ一番問題なのは、やはり労働省の首脳部の姿勢の問題です。これはここに並んでいる関係の部長、官房長は少なくとも労働省の最高スタッフとして大臣、政務次官に協力するという、こういう体制をとらなければならない。その場合にその姿勢がどうあるかということが、実は野本委員が大へん大きな声で、今までかつてない、まあ話をされたけれども、私はやはりそこに問題点があると思う。労働省がそうしたこの姿勢を正しくしないと、やはりこういう問題というものはなかなか私は解決しない、こう思う。従って決して諸君が悪いということを言っているのではなくして、そういう点何らかのやはり姿勢の問題で足りない点があるのではないか。それは一つその首脳部が大臣を交えてよく話し合ってどうしたらいいか、その対策を後刻発表してもらいたい。これは政務次官に特にきつく私からも申し上げておきたいと思います。政務次官いかがです。
  173. 柴田栄

    政府委員(柴田栄君) 御指摘事態に対しましては、何と言われてもまことに申しわけないことでございまして、これに対処する態度といたしまして決して十分であったということは申し上げられないと思います。従いまして、省の全体の責任といたしまして大臣を交えまして、これに対しては確固たる責任体制を確立いたしたいと存じますので、いろいろ具体的にまた話し合いが進みましたらお答えをいたしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
  174. 佐藤芳男

    委員長佐藤芳男君) ほかに御質疑はございませんか。——別に御発言もございませんければ、昭和三十三年度決算中、労働省関係についての質疑はこれをもって終了いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十九分散会