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説明員(白木
康進君) 三十三年度の
建設省所管の不当事項のあらましを申し上げます。
三十三年度の検査
報告に掲げておりますのは、いずれも道路、河川その他の公共施設の工事の
関係でございまして、内訳を申しますと、
地方建設局の直轄工事が一件、それから
地方公共団体が施行した補助工事が事項にしまして十万円以上十七、件数にしまして十一件、それから災害
復旧事業費の査定額を早期検査によりまして減額させたもの一件、合計十三件であります。
直轄工事につきましては、ここ数年来検査
報告に掲記された事項が一件もございませんが、三十三年度におきましては、
北陸地方建設局が富山県の立山山麓瀬戸蔵地先に施行しました砂防堰堤につきまして施工法が適当でなかったために、約六カ年にわたって四千数百万円の工事費を使用しましたダムが崩壊あるいは傾斜いたしまして、五千数百万円をもって再施工するのやむなきに至ったという
関係が一件ございます。本件は砂防堰堤でございまして、御
承知のように、水力発電のダムなどと
違いまして、通常、基礎が岩盤につかない設計となっておるのが普通でありまして、その
関係から、堰堤の落差による前面の下流部の洗掘を防止するために副堰堤あるいは水たたきを施工するというのが、砂防堰堤の通常の工法となっております。本件の堰堤も、そういう設計になっておりますが、当局におきまして、この副堰堤と申しましても、やはり本堤と同じく二百メートルに及ぶ長大な堰堤でございまして、その基礎掘さくの経費が、本堤が立ち上がったあとに、下流部が洗掘されてから施工すれば、その掘さく費が相当節減できる、これは当局の
説明によると、百五十万ないし二百万円の工事費が節約できるというようなことで、本堤は約六カ年かかって施工されておりますが、大体本堤が立ち上がった後にこれを施工し、完成後二年で副堰堤ができし上がる、こういう計画で施工されたものであります。
ところが、三十四年の、つまり、完成しました直後でありますところの三十四年七月に、毎秒千三百立米の出水によりまして、堰堤の半ばが倒壊または傾斜して再施工のやむなきに至ったわけでご、ざいます。
本院におきまして、この工事の施行の工費について検討しました結果、先ほど申し上げましたように、本堤が岩盤につかない、つまり、土砂の上に、いわば浮いておるところの堰堤である。それから、本件の施工個所が、常願寺川とその支川の称名川という二川が合流しまして川幅が非常に広く、河床の勾配も相当大きいところでございまして、計画流量は毎秒千八百立米となっておるわけでございますが、こういった現地の
状況から見まして、この堰堤を築造する際の河床の洗掘については、特に注意を要する個所ではないか、他の砂防堰堤に比べましても、相当にそういう点を特に考慮する必要があったのではないか。逆に申し上げますと、先ほど申し上げました本堤が立ち上がった後に副堰堤を施工することによる掘さく費用の節約というようなことは、もちろん、これは当局としてお考えになったのは、まことにごもっともでございますけれ
ども、ただいまのような条件を考えますと、この
判断が多少甘くはなかったか、むしろ、この
程度の規模の工事を施行する場合には、やはり通常、
建設省がおやりになっ
ているような本堤と副堰堤の同時施工というような通常の工法によられることが相当ではなかったかというふうに考えまして、本案を提案しておるわけでございます。
なお、この出水でございますが、三十四年七月の千三百立米という出水は、もちろん、これは相当の大規模な出水でございまして、降雨量の平均率と申しますか、そういう観点から見ますと、
建設省の計算でも、二十五年か三十年に一ぺんぐらいの出水である。従って、これは希有の災害であるという点は、私
どももさように考えておるわけでございますけれ
ども、先ほど申し上げましたように、ここは計画流量として千八百立米、現地の
状況から見ましても、相当工事の施行には他の場合以上に留意を要するというような点から、この出水が不可抗力によるものというふうには必ずしも考えておらないわけでございます。
次に、補助工事の
関係でございますが、三十三年度に掲記しておりますものは合計十一件でございまして、前年度に比べまして、多少減少しております。これは三十三年度におきましては、三十三年度の
決算につきましては、狩野川
台風その他比較的大きな災害がございまして、その査定に対する早期検査をかなり大幅に実施いたしました
関係上、通常の検査が、多少浸透率が下がっておるというようなこともございますし、また
建設省並びに事業主体の御努力の結果、漸次改善された面もあろうかと思いますが、いずれにしましても件数は多少減っております。
このうち特に御
説明を要すると思いますのは、三百三十四号の災害
復旧工事の計画が当を得ないものという一件でございます。本件は山形県の最上郡大蔵村におきまして、村道の隧道が被災しましたのに対しまして、これは二十六年の災害でございますが、その
復旧工事の施行計画が当を得なかったというものでございます。この工事の
地区一帯は十数年前から地すべり地帯になっておりまして、県におきましても地すべり防止のための山腹工とか、あるいは床固工など農林省の方の認定を受けまして、地すべり
対策が従来からとられておる地域でございまして、またこの本件の隧道の被災の
状況から見まして、当局が設計の
判断の基準といたしました融雪期の漏水によるという単純なものとしてはちょっと受け取りがたい
状況にあったのではないか、本件は、
建設省におきましても机上査定ということになっておりますが、事業主体におきましても、もう少しこういった被災の
状況その他の
判断をしまして本格的な
調査、本格的なと申しますと語弊があると思いますが、もう少し突っ込んだ
調査をすることによって、この地すべりというものを当然考慮すべき
事態ではなかったかということでございます。ところが当局におきましては、一応これを漏水によるものとして、ある
程度の巻厚をふやすということで施行されたのでありますが、工事の着工直後におきましても、付近一帯に大地すべりが起きまして、その際にも明らかに地すべりの影響と思われる落盤がございましたけれ
ども依然と当初の計画
通りに施工し、完成直後に延長三十メートル余にわたる出入口一帯が大きな亀裂、崩壊というような
状況になりまして、災害
復旧工事としては考慮が足りなかったのではないか、どういう
関係でございます。
そのほかに、ここにあげておりますものは、河川の
関係、砂防も含んでおりますが、四件、道路
関係が五件、それから土
地区画整
理事業の清算の
関係が一件、その大要をあらまし申しますと、工事の施行の際のコンクリートの配合比が非常に悪いまま、監督不十分なためにそのまま工事を施行しておる、あるいは堰堤の築造にあたりまして、同じコンクリートの設計であるところを、中に玉石を詰めて外側をコンクリートで被覆する、いわゆるあんこの工事になっ
ているというような疎漏な工事、あるいは土砂の掘さくの場合の土石の切り取り量を過大に見積もったもの、あるいは捨土運搬費を過大に見積もったというような設計の過大、それから設計に対する工事の出来高が不足し
ているのに工事が設計
通りできたものとして処理し
ている、こういった
関係でございます。
なお三十三年度におきましては、従来から引き続き公共団体が施行します災害
復旧工事に対する
建設省の査定に対しまして、工事着工前に早期検査を実施いたしまして、その結果をここに掲げております。御
承知のように、すでに工事が完了後に現場に参りましても、二重査定は別にいたしましても、被災し
ていないようなものが被災個所と合わせて災害
復旧の対象になっ
ているとか、あるいは工事の運搬材料の処理を過大に見込むというような積算あるいは設計の過大といったものは、工事ができ上がった後は、その指摘が非常に困難でございまして、またでき上がったものを再施行するといういろいろな面の負担もございますので、この早期検査というものを毎年実施し
ているわけでございますが、三十三年度は、先ほど申し上げましたように、狩野川
台風その他の災害が比較的多かった年でもございまして、
例年より多く十四府県にわたりまして検査いたしまして、ここに掲げておりますような二重査定が二十八件、改良工事その他国庫負担を対象とするものが適当でないというものが五十二件、設計過大と認められるものが百九十四件、合計二百七十四件で、工事金額にしまして五千五百余万円、国庫負担金相当額にして四千二十余万円を
建設省において減額是正され
ているわけでございます。
以上、簡単でございますが
説明を終わります。