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1961-04-03 第38回国会 参議院 運輸委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月三日(月曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     三木與吉郎君    理事      天埜 良吉君            金丸 冨夫君            村上 春藏君            大倉 精一君    委員            井野 碩哉君            重宗 雄三君            谷口 慶吉君            鳥畠徳次郎君            野上  進君            平島 敏夫君            小酒井義男君            重盛 壽治君            中村 順造君            大和 与一君            片岡 文重君            白木義一郎君            加賀山之雄君   政府委員    運輸省鉄道監督    局国有鉄道部長 広瀬 真一君   事務局側    常任委員会専門    員       古谷 善亮君   公述人    中央大学教授  細野日出男君    武蔵大学教授  蔵園  進君    鉄道貨物協    会理事長    大槻 丈夫君    全日本金属鉱山    労働組合連合会    中央執行委員長 原口 幸隆君    日本観光協会副    会長      平山  孝君   —————————————   本日の会議に付した案件 ○国有鉄道運賃法の一部を改正する法  律案内閣提出衆議院送付)   —————————————
  2. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) これより運輸委員会公聴会を開会いたします。国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案について公述人方々より御意見を拝聴いたしたいと存じます。  この際、公述人方々にごあいさつ申し上げます。  本日は御多忙のところ公述人として御出席いただき、まことにありがとうございました。公述にあたりましては皆様方の忌憚のない御意見を承りたいと存じます。なお、御発言はお一人二十分間以内でお述べを願い、各公述人発言が終わったのち、委員の方より質疑があると存じますので御承知願います。  それでは細野君より御発言を願いま下す。
  3. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 中央大学教授細野日出男でございます。  私はまず第一に結論を申し上げます。大局的には今回の運賃改正法案は、私の専攻いたします公益事業料金原理立場並びに国民経済基盤の調整、それから経済の二重構造の是正という立場から賛成申し上げます。  次に、理由を幾つかに分けて申し上げたいと思います。国鉄輸送力の増強とサービス改善最大の使命であり、また急務であると考えます。日本経済並びに社会発展テンポは非常に早いのでありまして、輸送需要の伸びは実に著しいのであります。そうして所得倍増というような十カ年にわたる長期計画が策定されまして、ますますこの需要増の情勢ははっきりしてくるわけであります。ところが国有鉄道輸送力現況は、国民が毎日経験しておりますように、旅客輸送におきましては通勤輸送混雑はもとより、また長距離旅行におきましても、急行券特急券、あるいは座席指定券寝台券のようなものは、ほとんど二週間前に手配しても手に入らないような状況であります。非常な混雑を続けております。また貨物の方は一日に二百万トンといったような駅頭滞貨を毎日繰り返しというような実情にあるのでございまして、これは輸送力が極端に逼迫しておるということを現わしておるものであります。新五カ年計画はこれを解消するために立てられたわけでありますが、私の見解をもってすれば、この九千七百五十億円というものでも、所得倍増計画の前半年の分に対応するものとしましても足らないくらいではないかと考えます。東海道新幹線のごときは、最も急務中の急務であると考えます。中には東海道新幹線ぜいたく視という議論、あるいは国民感情があるかのようでありますが、実はこれは最も国の最大幹線であって、これが現在の複線では全く行き詰まっておる、これを新しく線路を増加するということになれば、必然最新技術を利用した今回の新幹線計画になるのでありまして、これが決してぜいたくということではなくて、むしろ新しい鉄道必然の姿というものになるのだと考えます。こういうものを至急やる必要があると思います。  次に第二に申し上げますことは、国鉄資金源のあり力という問題であります。これは端的にいえば、益金がある程度必要であるということを申し上げたい、国鉄資金源は、国営企業でありますからして、一般借り入れ資本をもって行なわれます。で、減価償却費というものがこれが自己資金としてございまして、これがいわゆる取りかえ償却や取りかえ改良的な面に使われるのが原則である。借り入れ資本は、収益力を伴う、つまり利子減価償却費の負掛にたえるというものに対しては、借り入れ資本でもってやっていくことが当然であると考えます。これは企業原則からでございます。しかし、国鉄の改良と事業のうちには、収支の償わないものが多々あるのであります。これは、サービス改善ということは必然にそういう面を伴うのでありまして、通勤輸送改善のごとき、そのいい例であると思うのでありますが、こういうものに対してはやはり利子負担のかからないような資金が必要である、これがすなわち益金ということになるわけであります。また、地方新線赤字がしばしば問題となります。こういうものは、新線建設でありましても、実は採算に乗らない。こういうものを外部資本偏り入れに頼りますというと、財政を悪化するということになりますので、これもできれば益金でもって支弁する方がよろしいのであります。しかし、益金資金として使うということは、これは実は過去の利用者——運賃負担してくれた人に対して、サービス改善によって還元するという意味を持っておるのでありますからして、新線建設益金を回すということはサービス還元ということには必ずしもならないという点から見ますと、これはやはり新資本が必要であり、借り入れ資本が必要である。しかしこれは、むしろ利子の伴わない国家出資といったようなもの、あるいは国家利子補給というようなことが必要であると思うのであります。今回は三億円程度利下補給が認められたようでありますが、これは私はけっこうな端緒を得たものだと思います。ただし、国家利子補給をするからといって、多々ますます赤字線建設といったような方にいくということは、これは国民資金あり方という点から見ましても、利用程度の悪いものに資金を投入するということが望ましくないという立場から、賛成することはできかねるのであります。それから、国鉄益金ということを最も端的に表おしますものは、常業係数という数字であります。現在の国鉄常業係数というものの出し方は、営業収入に対して利子を含んだ営業費のパーセンテージでありますが、戦前は七〇%前後であった。ところが戦後は一〇〇%をこえております。最近の三年間ほどは一〇〇%を割ったのでありますが、しかし、三十二年の九五%、三十三年、四年は九九%何がしで、ほとんど赤字すれすれの状態にあるのでありまして、これは決して国鉄財政の健全なあり方ではない。営業係数という点から申しますと、私は八五%程度になることが国鉄財政の健全な行き方、従って、見込み運賃収入という点から申しますと、大体六百億円前後の益金が上がるということが、国鉄健全財政を続けて発展していくために必要な程度ではないかと考えております。今回は四百八十六億円の増収ということが打ち出されておるようでありますが、これで長期自給していくということに対しては、私は多少の懸念を持っておるものであります。  次に、国鉄財政難の原因としていろいろなことが考えられますが、能率が問題であるか、つまり、非能率なのであるか、あるいは運賃水準が過低位であるのか、低過ぎるのであるか、この二つが問題になると思います。で、個々の計数につきましては、国鉄経営にはいろいろ批判されるべき点であると思いますが、全体的な立場から見ますと、世界主要国と比べてみまして、一キロ当たりあるいは一人当たり輸送量——人トンキロというようなものから申しますと、国鉄世界有数の高能率の域に達しておると言えると思います。また、国鉄自身累年比較から見ましても、過去十年間において非常にこれは能率向上しておると見ていいと思うのであります。従って能率の面よりは、能率に対しては国鉄も大いに努力してもらわなければならないのでありますが、しかし財政難の主因は、これは運賃水準の過低位、低過ぎるということにあります。これは物価指数比較において最も端的に表われるのであります。しかし運賃水準が今の状態でありましても、いわゆる赤字公共負担と称されるものがそれほど多くなければ、それでもやれるはずであります。ところが公共負担と称されるところの地方赤字線が非常に多いということ、それから貨物旅客等につきまして社会政策経済政策、あるいは文化政策というような立場から、割引が非常に大きく強制されているというものが多い、この多いことが、これが今の運賃水準では負担し切れないという問題になってくるのだと思うのであります。公共負担負担力のある利用者階層負担するかあるいは国家負担とするかという、この二つの行き方、またその両方を使う、ともにやるということがあるわけでありますが、従来伝統的に公共負担独立採算の範囲内、すなわち負担力のある地域、あるいは階層負担において公共負担が行なわれているというのが現況でございます。これに対しては、公共負担公共負担であるからして、国家もしくは公共団体負担せよという議論がしばしば行なわれます。これは確かに一部その通りだと思いますが、国家財政の事情というものが、なかなかこれを優先順位に置いてくれない。これは実は国家財政逼迫ということがあるのだと思いますが、一つは長年の伝統であります。この伝統を破るということがなかなかできない。結局それは負担力のある階層負担させるということが、従来ずっと行なわれてきておったのでありますが、これに対してはやはり限界があるということを考えなければならない。つまり定期券客というものは、お客の頭数から見れば六割五分を占めている。輸送量から申しましても四割六分を占める。ところが収入の方では一割七分にしかならない。つまり国鉄の非常に重要な業務構であるものが、大きな公共負担になっているということに、非常な問題があると思います。貨物につきましても、特別等級貨物あるいは特別割引といったものに、そういう面があると思うのであります。この黒字部門赤字部門負担するということに対しては、完全独占のもとにおきましても、絶対的な限界があるわけでありますが、近ごろのように運輸機関競争がだんだん激化して参りますと、競争の面から、黒字のものの運賃をもっと上げて赤字のものの赤字を吸収するというようなことが困難になってくる、そこに限界があるのであります。そのことを考えて運賃を決定しなければならないと思うのであります。公益事業料金原理立場から申し上げますと、国家国鉄その他の公益聖業運賃料金を決定し、もしくは認可するということの目的はどこにあるかという根本的な問題でありますが、これは独立であるところの事業に対して、価格自由放任はできない、これは国家が定めもしくは認可する、それは利用公衆保護というところに第一の理由があるわけであります。ところが利用公衆保護の方に重点がいき過ぎますと、実は利用公衆保護というのは、安いということのほかにサービスの確保もしくはサービス向上——独占でありますからして、サービス向上ということを積極的にやらなければ、自由競争ではサービス向上は行なわれますが、独占下においてはほうっておけばなかなか行なわれない、そのサービス向上をさせるということも、これもまた利用公衆利益になるのであります。運賃が安いということだけが利益なのではなくして、サービス水準維持向上ということもまた利用公衆利益であります。ところがこの後者をやらせますためには、企業財政が健全でなければ、つまり資金吸収力というものがなければいけないということであります。ですから近ごろの公益事業立法は、ことごとく一方において企業の健全なる発達ということと、一方において消費者利用者利益ということの二つをあげておるのであります。この二つを調和させるということが、これが調和両立させるということが、これが公益事業料金決定政府の任務だと思うのであります。ところが過去、戦後の状態におきましては、運賃料金を安くしておくということに重点が置かれまして、サービス向上あるいはサービス水準維持向上という面の方がなおざりになる、これは結局料金が安かろう悪かろうというような結果を招きまして、安いものは悪いということを招きまして、国鉄を初め各種公益事業のいわば拡張再生産が困難になって、輸送力不足だとか、電力不足だとかといったような、そういう問題を引き起こしておるわけであります。ですから私はやはり根本原理に立ちまして、この両者を両立させるような料金政策を、政府国会において確立されるということを望む次第であります。この観点からも、今回の運賃引き上げは是認せざるを得ないのであります。  それから国鉄運賃法第一条におきましては、第二号に「原価を償うこと。」という条項をあげております。これはいわゆる公正合理化料金原則をうたったものだとは思いますが、しかし原価とは何ぞやということがきめてないということがすこぶる問題である。その原価の中に構成資本報酬的なものを含むということなのでありますが、それがはっきり打ち出されていない国営事業の場合には、構成資本報酬はいわゆる益金についてとう考えていくかという問題が民営事業の場合と違って参りますが、どうしてもこれは国営事業の場合でも益金が必要なのであります。それはサービス改善のために必要なのであります。また経営の安定のために必要なんであります。ただその程度民営よりもずっと少なくてよろしいということなのであります。そういう点から見まして、運賃法はもっと原理原則的なものを詳細に規定される必要があると考えるのであります。なお、このいわゆる総括原価というものを各個の運賃料金に配賦して、運賃料金を決定しますときに、いわゆる差別価格の理論というものをもって、負担能力のあるものには高い運賃負担力の少ないものには安い運賃をという社会政策経済政策文化政策的な政策が織り込まれるわけでありますが、これに限界があることは先ほど申し上げた通りであります。  最後に、国民経済基盤再建、あるいは経済軍構造の解消という立場から一言申し上げたいと存じます。戦後公益事業料金に対する政府政策というものが、できるだけ安くということを強調し過ぎたあまり、公益事業というものが、実は非常に企業的に採算困難の状態に陥っている、他の一般自由企業に比べまして非常に悪い状態、つまり企業格差が大きくなっております。これがいわゆる二重構造の問題なんでありますが、いろいろな二重構造がございますけれども、しかし公益事業に対する二壁構造というものは、これは政府の直接責任である。料金そのもの政府がきめる、あるいは認可するということをやってきているからであります。この点につきまして、もう時間がございませんので、あまり詳しい数字を申し上げられませんけれども、国鉄の総資本に対する純益の割合、いわゆる総資本利益率というものは、三十二年度〇・九七%、一%以下であります。三十三年は〇・四二%、三十四年に至っては実に〇・一三%にしかすぎない。ところが全産業については、これは株式会社であると思いますが、見ますと、三十二年度下期五・五八%ないし四・一三%、それから三十三年度はちょっと下がっておりますが、三十四年になりますと平均が四・三一%、五・三三%というふうになっておりまして、平均と比べまして国鉄が三十二年は五分の一の収益であります。三十三年は八分の一、三十四年は実に三十八分の一といったような低い収益率でございます。国営自由民間企業との間に相当の格差があることは当然でありますけれども、これは大き過ぎる、これは結局端的に申しますと、国鉄の安い運賃を使っているところの一般企業は、非常に利益を上げているということであります。このままこれをのばしていかれるということになりますと、つまり安いものはますます帯しく、従って資金が奥まりにくい、高いものはますます発展し、ますます輸送需要を起こし、あるいは過剰投資というような問題さえも起こすというようなことになって参ります。ですから経済基盤を再建するということは、高過ぎるものは下げ、低過ぎるものは上げるという物価体系均衡をはかるということでありまして、この点につきまして国有鉄道運賃は低過ぎるものの方の部類に属し、これを引き上げることによって均衡をはからせるということが必要であると思うのであります。  なお、運賃を上げれば国民生活に非常に影響がある、あるいは物価影響があるということが心配されますが、これはもちろん、上げれば影響があることは確実であります。影響がないということは言えない。しかしながら、いかに影響がありましても、結局国民経済長期発展をはかるためには、経済基盤を均斉にする、二重構造を解消するということが必要である。このことは端的に申し上げますと、高過ぎるものの方が、超過利益的な利益を引き下げて、鉄道貨物運賃あるいは旅客運賃引き上げを吸収する。家庭生活においては、個人生活におきましては、やはり個人消費の膨脹してきている面を削って、吸収するということをしなければならない。それを何もやらないでおいて、すべて運賃をアフィックスする、つけ加えたものにするということであれば、これはもちろん困るということは当然であります。そうではなくて、高過ぎるものの方、あるいは使い過ぎるものの方でもって、これを吸収するということをやるように政府は、並びに国会におかれては、一つ国民に対して十分の心がけを持つように説得をしていただきたいと思うのであります。国民——民主国家国民主権者であります、主権者であるところの国民というものは、自分の足代、あるいは自分の荷物の運び賃というものをみんな払うのはいやだ、だれかがおれの分を払ってくれというような態度は、これは自主独立国民とは言えない。自分のために買ったものは自分が払うという覚悟を持ってもらう。それのできない気の毒な人たちというものに対しては、社会保障政策というものでもって臨むということが、これが本則であると思うのであります。  運賃法の各条につきましても一言申し上げたかったのでありますが、時間が参りました。  運賃法の第三条の普通運賃につきましては、これは私の考えとしては、やむを得ない方の賛成であります。  急行料金寝台料金を上げなかったことは、これは賛成であります。二等寝台の税金が免除になったことも非常に賛成であります。  通行税を、一等運賃におきまして通行税二割がそのままであって、しかしそれを全体の二倍にするために本運賃の方を一・六六倍にするということは、苦肉の策でありますけれども、これは私は通行税を二割というような高いものから一割程度に減らすことの方がむしろ望ましいと思うのでありますが、しかしこれはやはり賛成いたします。  それから定期券運賃につきましては、これは法律案以外の問題でございますが、先ほどから申し上げましたように、私は直接費程度はカバーするというところに上げることが長期計画としては望ましい——今度はそこまで行っていないのでありますが、望ましいと思うのであります。  それから貨物運賃は大体一五%程度引き上げのようでありますが、これはスライド的な引き上げでありまして、全面的に賛成いたします。  私としましては、この引き上げでもって今後五年あるいはそれ以上の長期運賃安定が行なわれることを非常に望むものでありますけれども、しかしながら貨物運賃定期運賃についてはある程度の危惧を残しておるものであります。  公述を終わります。
  4. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ありがとうございました。   —————————————
  5. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 次に、蔵園君にお願いいたします。
  6. 蔵園進

    公述人蔵園進君) 武蔵大学蔵園であります。  私、結論的に最初申しますと、私は今回の運賃値上げにつきまして反対いたします。その反対理由というものを私は四点ばかりについてこれからここで述べておきたいと思います。  まず第一点、それは今回の運賃値上げがそもそも資本を調達するというような観点においてなされているということであります。で、それは原価の問題ではなくして、むしろ利益金をその中から生み出そうというような観点からなされている。なるほど、現在の国鉄輸送逼迫しておる点につきましては私もそれを認めるわけでありますけれども、そのような逼迫運賃で解決するということは、私はそういうことは間違いではなかろうか。それはむしろ政府が出資するなり、または借入金で行なうということが正しいのではないかと考えるわけであります。今回の提案理由の中に、採算に乗らないから借入金によるべきではないというような理由が述べられておるわけでありますけれども、採算に乗らないということ、それはどういう……採算に乗らないということと、借入金によるべきでないということは、これは論理的には合わない。つまり国鉄借入金によるべきでないということ、それはなぜそのような借入金によらないで運賃によるのか、あるいは借入金というものをなぜやってはいけないかというような理由としては非常に薄弱であると思うわけであります。つまり国鉄が、一企業といたしまして採算に乗らないものを、なぜそれでは建設しなければならないのかというような点もありまするし、また採算に乗らないなら、政府出資によってもいいのではないかということもあるわけであります。そうして新しい設備の投下ということは、これは現在の運賃法におきまして原価を償うに足るものというようなことから申しましても、その原価の内容の規定が不備であるというふうに申しましても、この運賃法規定された原価というものは、あくまでも原価なのであって、決して剰余金を含むような、利潤を含むような、そのような意味での原価ではなかったのではないか。それが立法の精神ではなかったか、そういうふうに考えるわけであります。従って新規設備のための資本の調達を原価の中に算入いたしまして運賃を合理化するということは、私は反対であるわけであります。剰余金は、会社などの場合、私企業の場合を申しますならば、利益金はこれはもちろん価格の中から生み出されるわけであります。国鉄でいうならば運賃の中から生み出さるべきでありましょう。しかしながら公企業の場合、特に公益事業の場合、低運賃政策というような観点から、または一般公衆に対する影響ということから考えますと、剰余金を生み出すということは、これは運賃規定原則にはやはり反すると思うわけであります。もし、たとえばこれを値上げしたと、こういたすならば、利用者建設費負担するということになりまするし、同時に減価償却の費用をも負担するというようなことになりはしないか。つまり二重の負担をしなければならないのではないかというおそれもあるわけであります。これが反対いたしまする第一点でございます。  それから第二点は、現在、国鉄黒字である、にもかかわらず、なぜ運賃値上げをやらなければならないのか、私にはその理由がよくわからないわけであります。なるほど黒字というものはそれほど大きくもないし、また今後いつまでも続くというようなものではないかもしれないわけであります。しかし現実にそのような黒字を出しておる団体において、なぜあわてて運賃を値上げしなければならないのか、私には理解できないわけであります。そればかりではなくして、原価主義ということを貫くとするならば、貨物と旅客との間に大きな開きがあるわけであります。つまりお客さんの場合には非常に多くの利益をあげておる。現実にすでにあげておる。しかし貨物の場合には赤字である。かように貨物と旅客との不均衡という問題は全然今回の場合は考慮していないといって差しつかえないのではなかろうか。それだけではなくして、いろいろな経理の内容について、新聞などで見ますと、いろいろな点が指摘されておるようでありますが、たとえば預託金制度というものがある。これは国鉄の監査報告書によりますと、預託金が現在四十億ばかりある。しかも一日平均国鉄の残高は百五十何億がある。そういう預託金の四十億については無利子である。百十何億につきましては、これは金利が、わずか年利でいたしますと二、三%しかつかない。このような状態でありながら、なおかつ多くの資金を借りなければならない。しかもそれは預金部資金を利用いたしましたとしても、六・五%ばかりの金利を払わなければならない。片方ではそのような金がありながら、なお片方ではそのような高い金利の金を借りなければならないというような、こういうような預託金制度というようなものも、やはり今後解決しなければならぬものではないか。そういうものばかりではなくして、たとえば地下鉄に出資をしておる、この地下鉄への出資というようなことが国鉄にとって必要であるか、このような一つの、いわばこれはごくありふれたものではありましょうけれども、そのような経理上のいろいろな操作というものが、完全に行なわれていないという点が第二点なのであります。そのような完全な経理上の処置をした上でなければ、運賃の問題を軽々しく論ずべきではないというのが第二点なのであります。  それから第三点といたしまして、私はやはり公共負担ということは、これは国家で補償するべきではなかろうかというふうに考えておるわけであります。今回の国鉄の資料によりますと、五百二十五億の公共負担がある。そうして三十六年度の運賃値上げによる増収見込みが大体五百億足らずということが見込まれているようであります。もしこの公共負担というものを、国家が補償いたしますならば、今回の運賃値上げの問題は起こらなかったであろうというふうに考えるわけであります。ではなぜ公共負担というものを国家が補償するのが当たり前であるかというふうに考えるかというと、これは国鉄に対しまして独立採算制を強制しているわけであります。しかも、なおかつこのような負担を一企業に負わせるということは、これは国家政策によるのではなかろうか、そのような国家政策に対して一企業体がその負担を負うということは、これは不当ではなかろうか、こういうふうに考えるわけであります。つまり公共性ということを非常に強くうたうことによって、一切の犠牲を国鉄に負わせるということはこれは必要ではない、そのようなことはやるべきではないというふうに考えるわけであります。そればかりではなくして、税金の問題だってあるわけであります。片方では税金を、固定資産税だ、通行税だといろいろな名前で税金をとっておるわけでありますが、そのような税金にいたしましても、国家事業がこのように行き詰っている博期に、このような税金を国鉄に負わせるということは、これはいい政策とは言えない、こういうふうに考えるわけであります。  それから第四点といたしまして、総合的な交通政策というものが確立されておらなければならない。にもかかわらず、そのような総合的な交通政策が確立されておらないがゆえに、いろいろな問題が起こっておるわけでありまするし、同時に運賃値上げも、そのようなところにも根ざしているわけであります。従ってそういう点では総合的な交通政策を早く樹立した上で、この問題に取り組むべきであるというのが第四としての私の意見であるわけであります。たとえば新線建設というようなことをいうわけでありますが、そのような新線建設につきまして現状はどうかというと、国鉄当局は企業意識というものが非常に強く前面に出ておるわけであります。そればかりではなくして、同時にいろいろな政治的な配慮から、新線建設しなければならないというようなこともあるように承っておるわけであります。これは非常に矛盾したものなんであります。当局といたしましては、一方では企業意識に燃えながら、やはり新線建設をしなければならない。同時に他方では企業意識ではなくして、政治的な配慮のもとに新線建設しなければならない、このような矛盾した状態に置かれている。従ってそういうような矛盾した状態を一日も早く解決しなければならない。そのためにそういう、たとえば地方を開発するために鉄道が必要であるということ、同時に地方を開発するための道路が必要であるということ。しからば道路と鉄道とどちらを優先させるべきであるか、このような点についても十分な検討がなされていないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。そのような点から申しますと、自動車と道路、ないしは海運あるいは航空というようないろいろな問題を総合的に交通政策として樹立して、その上でなければ今回の運賃問題を考えることはできない。でなければ道路も建設され、鉄道建設されるというような二重投資というようなことが行なわれるし、また鉄道建設したといたしましても、それは明らかに赤字線である。黒字にはならない。しかもそれに対しては国家による何らの補償も与えられない。いたずらに国鉄ばかりがその犠牲を負わなければならないし、同時にその犠牲が利用者負担が転嫁される、こういうような状態になるのではないか。そういうことをおそれるわけであります。  以上四つの点につきまして、私は今回の運賃値上げにつきましては反対なのでありますが、まあ要するに現在の所得倍増計画というものに、このような運賃値上げということは、やはり相反した政策ではなかろうか。値上がりムードと申しますか、そういうものが現実に常に起こりつつある。今回の値上げが物価への影響がないということは言い得ないし、しかも物価への影響は、いろいろ独占的な商品とか、そうでないものとかというような、物によりましてそれぞれ物価影響の与え方が違うでありましょうし、またいろいろのお客さんの場合から言うならば、これは旅客運賃は明らかに負担が増加になるわけであります。山手線の短縮キロというものも廃止されるとか、しないとかというようなことを聞くわけでありますけれども、そういうような都市交通、都市でお客さんの最も多いところで、一番収益を上げようというような運賃の値上げのやり方というものは、これは明らかに一般大衆の負担ということ、負担を増大するわけでありまするし、現在行なわれておりまする所得倍増計画というものに違反するのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  まあ、現在の国鉄が置かれている状態というのは、考えて見ますれば、それは国家の責任であったはずであります。つまり戦時中の非常に大きな犠牲というものが今日まで残されているわけでありまして、そういう残された犠牲というものを、いつまでも国家が放置するばかりではなくして、いろいろな税金を課することによって、企業性というものを生かすことができないというような点から申しましても、このような問題の解決なしに運賃の問題を議論することは私は賛成いたしかねるわけであります。  公述を終わります。
  7. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ありがとうございました。   —————————————
  8. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 次に、平山君にお願いいたします。
  9. 平山孝

    公述人(平山孝君) 平山でございます。運賃値上げに関しまして私の見解を申し述べたいと思います。  運賃が値上がりする、これはおそらくだれも賛成するものがないだろうと思うのであります。とうふが一円上がったとか、あるいはまたふろ代が上がったとか言いまして、これを賛成する者はおそらくだれもおらぬだろうと思います。必ずしぶい顔するにきまっているのでございます。いわんや鉄道運賃が値上がりするということについて、それは非常にけっこうだというものは、ほとんどなかろうと思うのであります。ただしかしながら、一方考えて見ますると、たとえば中央線のラッシュ・アワーに乗って見ます。殺人的な混雑でございます。また土曜日の晩など、上野の駅、あるいは新宿の駅に参りますと、コンクリートの上に長蛇の列をなして列車に乗るものが待っております。汽車に乗る時間よりも待っている時間の方が長いというような状態でございます。さらにまた、貨物等におきましても、せっかく豊漁でありましたものが、貨車が回らぬために魚が腐ってしまう、あるいは野菜を川へ捨ててしまうというようなこともまま聞くのでございます。また沿線におきましては、非常に大きな滞貨があって、そしてそれが貨車が回らないというようなことを見たり聞いたりするのでございます。こういうことを考えまして、一体、これは何とかならぬものかと、これだけの混雑あるいは貨車が回らない、あるいは野菜が腐る、魚が腐る、何とかこれはならぬものだろうかということで、鉄道の現状を冷静に見てみますると、日本の鉄道というものは、非常に施設が悪い。たとえば現在の国有鉄道が二万キロございまするが、そのうち複線はわずか一三%しかない。これをほかの国の例で見ますると、英国などは六五%が複線になっております。それからまた、欧州のいろいろの国を見ましても、大体四〇%以上というものは複線になっております。ところが日本はわずか一三%しか複線になっていない。これでは輸送がなかなかうまくいかないということは、これは当然であろうと思うのであります。また貨車関係にいたしましても、戦争中に、鉄道は側線なんというと赤さびのレールを置いているが、あんなものはみんな取ってしまえというような話もあったようであります。よく見ますると、日本の鉄道ぐらい側線が少ない鉄道というものはないわけです。従いまして、貨車回りが非常に悪い、それをわきから見ますると、あんなむだなものは取っちゃった方がよかろうというようにも考えられるのでありますが、決してそういうものではないのであります。また踏切等を見ましても、非常にたくさんの踏切がございまするが、これはみな平面交差、必ずそこに事故が起きる、そういうようなわけでございまして、鉄道の施設というものを見ますると、ほかの国に比べましても著しく劣っておる。そういう劣った施設でもって輸送をやる日本の国有鉄道は、能率がいいというのですが、能率がいいというのは、むしろ何といいますか、施設が悪いものですから、無理々々に使っておって、それがばかにいいように思われるが、決してこんなものは誇りにも何にもならないと思うのであります。  そういうことを考えてみますと、一体、こういうような鉄道状態にどうしてなってしまったのだろうかということを考えてみますると、結局は、鉄道財政がうまくいっておらぬということが根本ではないかと私は考えるのでございます。なぜ鉄道がそんな状態になってしまったか、これは、特に悪くなりましたのは戦争後でございます、これは、戦災によりまして、ずいぶん鉄道も痛めつけられましたが、そればかりでなくして、戦争後におきましては、新しい輸送機関がどんどん出てきた。いわゆる鉄道の独占時代というものはもうすでに過ぎ去ってしまっている。飛行機とか自動車というようなものが続々と現われましたからして、鉄道の独占時代は過ぎ去ってしまったということが一つと、それからもう一つは、やはり運賃の問題であろうと思うのであります。私も、昔鉄道におりましたが、そのころ鉄道運賃というのは、一キロ当たり一銭五厘六毛四糸、こういうのがずっと長く続いたわけでございます。そのころはがきは御承知のように一銭五厘でございました。はがきが一銭五厘で、鉄道運賃は一銭五厘六毛四糸、鉄道の一キロ当たりの方が少し高かったのであります。そのはがきが現在どうであるかと申しますと、皆さん御承知の通り五円でございます。ちょうど三百三十三倍になっている。ところが鉄連の方はどうかと申しますと、一銭五厘六毛四糸からいいますと、はがきよりちょっと高かったのでありますが、それがどうかというと、わずかに百五十四倍、一円何がしであります。また、学生定期に至っては、わずかに九十一倍、百倍になっておらないのであります。物価の方が大体三百倍、学生定期は九十一倍、それから普通の旅客運賃でも百五十四倍、貨物は百九十一倍、こういったようなわけでございまして、著しく鉄道運賃は低い。新聞などでは必ず鉄道運賃値上げといって反対いたしますが、新聞などは三百八十四倍になっている。鉄道等に比べますと非常な差でございます。そういうような状態鉄道をおいておいで、そうして片方において輸送力をつけろつけろ、何をしているかというように非難をするということは、問題ではなかろうかと考えるのでございます。それから貨物でもそういうことがいわれると思うのでありますが、先日私の友だちが大阪で印刷機械を買いまして、そうしてそれを東京まで持ってくる。相当重いものでありまするから、これは当然貨車で持ってきたのだろうと思って聞いてみますると、これは自動車で持ってきた。どうして自動車で持ってきたかといいますると、御承知のように、貨物というものは、それを運びます場合に、荷作りをしなければならぬ。あるいはそれを貨車に積み込み、積みおろす、それからさらに前後に小運送がある、そういったようなものをみんなひっくるめまして、そうしてこれがいわゆる消費者が実際に運搬に払う金なんであります。その中で鉄道はまん中のごくうまみのない、ほんとうにうまみのありますのは両わきでありましょうが、まん中のごくうまみのないところだけをやっているわけであります。従いまして、物を送る方の立場から考えますると、この全体、いわゆる輸送に払う金が問題なんであります。その全体をわれわれは輸送の費用と考えているのでありますが、従いまして、貨物運賃が上がると申しますると、一割五分上がるといいますと、その全体が一割五分上がるような錯覚にとらわれてしまうのであります。そこでこれは大へんだというような考え方になると思うのでありますが、実際は、これは鉄道へ行きまして聞きましたが、お米が一キロ当たり七十五円、その中で鉄道運賃はどのくらいかといいますと、八十四銭、今度値上がりしまして、十三銭それに足しますが、それでも一円にならない。七十五円のうちの一円以下であるというようなことなんですが、それが非常に物価影響する、値上がりをするのだということで、みな心配をするわけでございまするが、実際問題といたしましては、そういうような状態でございまするので、今まで数回運賃値上げをやりましたが、ほとんど物価には影響していないというような事実がこれを示しておるのでございます。  私考えまするに、むしろ運賃というものは、ある程度はやはり物価が値上がりし、いろいろのものが値上がりをいたしまして、そうしまするとやはりそれにつれてある程度は上げまして、そして輸送力をつけるということの方がはるかに大事なんではなかろうか。運賃の問題よりも、たとえば先日来雪でもって貨車がとまったというようなことになりますると、その地方の魚とか野菜というものは一挙に四倍、五倍と値上がりしてしまいます。運賃の問題よりも、むしろ一番大きな問題は、輸送力ということが一番大きな問題ではなかろうかと、かように考えるのであります。ただ現在の国有鉄道が、先ほど申しましたように、施設が非常に悪い、従いまして輸送力がつかない、従って殺人的な輸送が行なわれるというふうなことは、根本はどこにあるかと申しますると、大体運賃を値上げするということについて皆腹からは賛成をしたい。いやな気持がする。そのいやなことをやるのがいやさに、運賃はなるべく据え置きをする。定期のごときものは、今まででも運賃値上げをしても、これは据え置きだ据え置きだというので九十何パーセントの割り引きというようなことが起こってしまうのでありまして、そのいやなことをやらないがために、知らないうちに輸送力はどんどん低下しておる。つまり現在の人がいやなことをやるのがいやさに、それがわれわれの子孫に対して非常な不幸をもたらしておる。子孫に対しまして非常な輸送力不足の交通機関を提供しておるというようになってきておるのではないかと思うのであります。今後この輸送機関を整備していくということは、現在の者の務めではなかろうかと私は考えるのでございます。  それから今度は一、二、三等がなくなりまして、一等と二等になりました。大へんけっこうなことだと思うのでありますが、この一等というものを特権階級、あるいはぜいたくな者が利用するんだというような考え方は、私賛成いたしかねるのであります。私は、一等の運賃というものは二等のせいぜい五割増し以内、こういうことで、老人でも、子供でも、あるいは病人、そういったような者が、少し楽に旅行をしようと思えば一等に乗ると、いわゆる一等を大衆化するということが必要ではなかろうかと思うのであります。一等を特殊の特権階級だけが乗るような考え方は、これは間違っておるのではなかろうかと、ことに一等と申しましてもいろいろございまして、たとえば地方の一等、これは昔の二等でございますが、ただ箱に青く塗っただけでございまして、大した設備はない。東海道線の一等と地方の一等というものは、これは大へんな差でございます。その地方の一等が二等の一倍というようなことはおかしいと思うんです。これはせいぜい五割増し程度のもので、そして少し金を出せばだれでも乗れると、病人とか老人とかいうものはこの一等に乗るんだというようなふうに一等を大衆化する必要があるんではないか。従って地方の一等というものと東海道の一等とはだいぶ違いまするが、東海道の一等につきましては、これは相当ぜいたくな設備があるのでありまするから、これは持別な料金をとればいいのでありますが、地方の一等はせいぜい二等の五割増し程度のものがいいんではなかろうかと、こう私は考えるのであります。特にそれに対して通行税をつけるというのは、私はもってのほかだと思うのであります。通行税のごときは、戦争中みんな旅行してはいかぬというので、これを禁止するような意味の税金、いわゆる戦争中の税金でございまして、これを鉄道の一等に通行税をつけるというふうなことは、これは非常に時代錯誤ではなかろうか。ことに飛行機の通行税が一割で、鉄道通行税が二割というようなことは非常な矛盾ではなかろうかと私は考えるのでございます。  それから建設線でございまするが、建設線につきましてはずいぶん非難がございます。ことに新しく建設をいたします場合に、それに沿いまして道路がある、そこには自動車が一ぱい通っておる、それにもかかわらず建設線をやる。なぜ地元の方がそれを喜ぶかと申しますると、結局鉄道ができますると、非常に安い運賃、ことに定期というものは非常に安いのでありまするから、定期客だけがその建設線を利用する。朝と晩との定期客だけが乗りまして、あとはこの沿線にあるバスにみんな乗っていく。鉄道採算が合いませんから、なるべく運転回数は少なくする。従ってますますバスの方が繁盛する。ただ朝晩の学生その他はこれに乗りますると非常に安いのでそれに乗る、こういうようなことになるのでありますが、しかしもともと各地方には自動車に対する反感というものが相当にあるのじゃないかと思うのであります。それはでこぼこな道にほこりを立てて、そうして雨が降りますると、泥をひっかける。とにかく各地方にとってはいやな感情を自動車に対しては持っているのじゃないか。これは今の道路が悪いので、その道路の悪いところへ走らせまするから、自動車に対しては非常に悪感情を持っている。それがために鉄道をぜひ建設してくれというようなことになるわけでありまするが、私は考えまするに、鉄道には省営バスというものがあるのでありまするから、この省営バスのおい立ちが、もともと建設線の先行ということになっておったのであります。鉄道にます建設する前に自動車をやらせる、その条件としては、道をぺーヴして、そうしてそれに自動車を走らせる、こういたしますると、おそらく地方ではあまり鉄道新線というものを希望しなくなるのではなかろうか。それともう一つは、そのバスによりまして学生、定期等の者は非常に安くするということをやりまするならば、建設線の問題も解決するのではなかろうかという感じがいたすのであります。  で、結論として申し上げまするが、要するに鉄道の独占時代というものはすでに去っておるのであります。ほかの交通機関に鉄道は非常にいいお客といい貨物というものは奪われております。結局鉄道に乗るものは何かと申しますると、定期のお客とそうして運賃があまりとれない安い貨物だけが鉄道に乗る、こういったような状態になるのでありまして、これはどうしても何とかして徐々に解決をいたしていかなければならぬのではなかろうか。ことにほかの交通機関が、あるいは港湾にいたしましても、あるいは道路にいたしましても、あるいは飛行場にいたしましても、これはほとんどみな国でもって金を出している。鉄道は全部自前でもってこれをやらなければならぬ。しかも運賃は先ほど申しましたようにわずかに百五十倍あるいは百六十倍というような状態である。それがひいては鉄道輸送力というものを非常に悪くしておる。輸送力を悪くしておるということは、結局は日本の経済を非常に阻害しておるということになるのでありまして、私は運賃の問題よりもむしろ輸送力をどうやったらつけられるかということをまず考えなければならぬと思うのであります。理論といたしましては、こういうものは政府負担すべきものである、一般会計が出すべきものである、あるいは公共負担は全部政府がやるべきであるというようなことはずいぶんいわれております。新建設線もこれは政府でやらなければなら心というようにいわれておりまするが、実際は親元の政府があまり金持でないものでありますから、結局独立採算制を鉄道におっつけるということになるのでありまして、やはり鉄道鉄道としてある程度運賃値上げを認めて、そうして輸送力を少しでも大きくするということが私はぜひとも必要であり、またそれがわれわれの子孫に対する務めであろうと私は考えるのであります。  私の公述を終わります。
  10. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ありがとうございました。   —————————————
  11. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 次に、原口君にお願いをいたします。
  12. 原口幸隆

    公述人(原口幸隆君) 私は金属鉱山の労働組合の原口と申します。働くものの立場から今回の運賃値上げからくるわれわれの労働環境あるいは生活実態というものに対する影響がどういうふうに現われてくるかというような点から述べさせていただきたいと思います。  結論から申し上げますれば、国鉄における公共負担は国が補償すべきであるというふうに考えております。この運賃の値上げという影響が一体どういうところに一番多くかかってくるのかというところが問題だろうと思うわけです。それは低所得者あるいは中小企業人たちあるいは日の当たらない産業というようなところに、このしわ寄せが一番かかっていくというところに大きな問題があるというふうに考えます。失業者あるいは潜在失業者を含めて約一千万というふうにわれわれは考えておりますけれども、そういう属に運賃の値上がりというものが響く度合いというものは一般方々が考えておられるよりももっと深刻なものがあるわけです。たとえば通勤の定期にいたしましても、二十キロで現在一カ月八百十円になっておりますが、これが今度千三百四十円に上がるかもしれない。もしこれが実現されるとするならば五百三十円の値上がりでありまして、六五%という大きな値上がりを示すわけです。こういうことが低所得者に対してどれだけ大きな影響を与えるかという点については、やはり運賃一般的なものとして考えないで、社会の暗い層、弱い層というものを保護育成するという立場で、産業全体の政策としてこの運賃の問題をとり上げていただきたいというように考えるわけです。すでにわれわれの生活費というものも昨年一カ年の間に標準世帯で約四千円の物価値上がりからくる生計費が上がっておるわけです。それに今度の国鉄運賃値上げということによってさらに大きな影響を受ける。これが電気、ガス、水道あるいは食料品というふうに至るまで値上げの大きな要因になる可能性が強いということを考えた場合に、やはり運賃の問題については特に重大な影響を受ける低所得者、勤労者層の実態というものを考慮された上で判断をしていただきたい。さらに中小企業あるいは貿易の自由化に備えての各産業の格差というものが現在生じつつありますけれども、日の当たらない産業というものは、あとで申し上げますような例から申し上げて、非常に重大な影響を受けようとしておるわけであります。たとえば私の属しております金属鉱業を例にとりますと、貿易自由化に備えて、今の状態では金属鉱山は外国の鋼に競争することができないというような残念な状態におかれているわけです。それで今のままの政府の鉱業政策、あるいは会社の方針というものが放任されるならば、国内鉱山は二〇%から四〇%を休廃山しなければならないのではないかというふうに見通しをされております。そうして今度の運賃値上げによって金属鉱山のふえる運賃負担額というものは、約十一億に上ります。この大半は中小鉱山、鉱石を売って成り立っておる売鉱鉱山が大半これをかぶるわけです。しかもこの中小鉱山の出しておるたとえば硫化鉱を例にとりますと、非常に鉱石としては重たい。ところが品位は非常に少ない。その重たいのを遠距離に運ぶということからくる負担増というものは非常に大きなものがあるわけです。数字を一例を上げてみますると、硫化鉱の出る鉱山では、鉱石の価格がトン当たり千九百八十四円に現在なっておりますが、この中で運賃が千四百十八円という比率になっておりますので七一%の比率になっておりますが、さらに今回の値上げによって千六百五十三円、八三%というような比率になります。そうすると鉱石の値段の大部分は運賃による。しかも買いたたかれておるというような関係から、鉱石は工場渡しになっておりますから、運賃はあくまでも中小鉱山、売鉱鉱山の負担になる。もしこういう売鉱鉱山の鉱石の運賃の問題が、今の計画通りに実施されるならば、われわれの働いております職場、山の損失自体が、労働組合という立場からみても非常に危い状態がはっきりと予想されるわけでありまして、貿易の自由化に備えて、国内の資源というものを十分に保護育成しなければならない段階であるにかかわらず、これが逆な方向で弱い山等においてはこういったことがきっかけとなって休廃山になる可能性を非常に持っておるという現状を、こういう運賃の値上げの深刻な影響性というものについて御認識をいただきたいというように思うわけです。さらに同じ地下産業の石炭においても同様なことがいえるわけです。御承知のように、昭和三十八年までに、石炭はトン当たり千二百円を下げなければなりません。コストを下げなければならない。さらに能率を一四・五トンから二六・二トンに上げなければならない。そのためには石炭の労働者が十三万人の解雇が必要だということが政府の方でも明らかに言われております。で、このことは現実に石炭の労働者に対して首切り、賃下げ、労働強化という形で現われておるわけでありまして、すでにこの二年間で百五十の中小鉱山が休山をいたしております。そうして五万人の労働者が職を離れてしまった。いわゆる炭鉱地帯においては黒い飢餓地帯というものを現出しておるわけです。しかもその背景によって上清炭鉱あるいは大辻炭鉱というような大きな災害も同時に現われておるというような深刻な現状にかかわらず、今度の運賃の値上げによる約三十億の負担がここにまた重なってくる。こういう状態では重要な国の基礎産業である石炭産業というものは大きな脅威にさらされるわけであり、そこに働いておる労働者は全く前途に対する希望というものを見失うし、社会不安を起こし、大きな政治的な問題にもなると考えられるわけです。そういうような状態の中でこの運賃がどういう影響を与えていくのかというような産業全体としての政策面の御配慮がぜひ必要であるというふうに考えます。  それから国鉄運賃値上げについて私はおそらく国民も疑問を持っておると思いますが、国鉄労働組合、あるいは私鉄の労働者、あるいは国鉄の動力車労働組合、あるいは都市交通の労働組合というような交通関係の労働者がこれに対して反対をしているという事実であります。特に国鉄の内部を知悉しているはずの国鉄従業員をもって構成をする労働組合がこれに対してはっきり反対をしているということは、私は重大に考えていただきたいというように思います。それは組合だから反対をするというような理解ではなしに、自分の職場をよく知っておる労働者がこの運賃値上げについてこぞって強い反対を行なっているという事実を私は重大に考えたいというように思います。そしてまたこういう疑問を国民の前に当局がもっともっと慎重な態度をもって明らかにすべきであるというように考えます。というのは、やはりその当事者が、大多数の国鉄従業員が反対をしておるというような問題を強行してしまうということは、私は非常に問題があるというように考えます。私は、昨年のILO総会に出席をいたしましたけれども、そこで一つの勧告ができております。公の機関と労使の協力関係を促進をしていこうという意味の勧告が正式にILOの勧告として決定をされたわけですけれども、私は、はたしてこの運賃の値上げの案ができるまでに、公の機関、つまり当局や政府と労働組合との間に十分な話し合いがなされなかったのではなかろうかという疑問を抱きます。貿易自由化を控えての日本の国際的立場からいっても、ILOというものの精神は十分に今後生かしていかなければならないと考えますが、そういう労使の協力関係を進めておる、そういう精神からいっても、私はもっともっと当局がこの運賃の問題で労働組合並びに先ほど申し上げたような深刻な影響を受ける産業というようなものをあわせ考え、大局的な産業政策の上からこの問題を判断をしていただきたいということをお願いいたしまして公述を終わります。
  13. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ありがとうございました。   —————————————
  14. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 次に、大槻君にお願いをいたします。
  15. 大槻丈夫

    公述人(大槻丈夫君) 私、鉄道貨物協会の大槻でございます。  先に結論を申しますと、一つ国鉄の新しい五ヵ年計画はぜひとも完遂してもらいたいということが一つ。このために必要な原資の一部を運賃値上げに頼ることもやむを得ないと思いますが、ただその幅はできるだけ縮小したものにしてもらいたい。以上の二点でございます。  この内容につきまして簡単に意見を申し上げたいと思います。申すまでもなく、輸送というものは本来経済発展の先駆と申しますか、少なくとも経済の発展というものが輸送ということを頭に置かなくてもできるぐらいなスムーズな力を持つということが本来であろうと思うのでありまするが、わが国の国鉄輸送の事情をみますると、すでに皆様方も御承知のように戦後は常に経済の発展におくれまして、先駆どころか逆にその足を引っ張っておるといったような事情でございます。従って、私たち荷主団体といたしましての貨物協会におきましては、創立以来十年になりまするが、絶えず輸送力の増強、貨物輸送力の増強ということを熱望し続けてきたわけでございます。今回の国鉄の五ヵ年計画の内容を拝見いたしますると、必ずしも今後の経済の伸びに対して十分であろうとは思いません。この点はいろいろの見方があることと思いまするが、われわれそういうような十分ではないのじゃないかという感じを受けるわけでありまするが、現在のこうした輸送逼迫の状況を打開するということと、それから所得倍増計画に伴う経済の成長、それによる輸送需要の増大に対処していんというためには、やはりこれを最小限度のものとしてぜひ完遂するように努力してもらわなければならぬ、かように考える次第でございます。そうして、この計画に要する資金の内容をみますると、年額で約二千億円、五ヵ年計画で一兆円という計画のように聞いておりまするが、現在の進行中の五ヵ年計画が六千億円の資金、これが獲得されなかったと、十分に確保できなかったということのために、非常にその進捗がおくれておるといったような実情と考え合わせますときに、この一兆円ということはなかなか容易なことではないと、かように考えるのであります。その方法といたしましては、まず公社債を含めての借入金の問題でありますとか、国鉄の積極、消極面面にわたる経営の合理化でありますとか、あるいは公共的な要請に基づく負担に対して国としてどう考えるかといったようないろいろの問題があると思いまするが、大づかみに申しまして、最後にその一部が運賃値上げに求められるということもやむを得ないと考えるわけでありまして、ただその場合にこういった点について検討をしていただきたいと思う次第でございます。  その一つは、先ほど来からも話されておりまするが、ローカルの新線建設の問題でございますが、これが必要であるかどうか。またどうしてもやらなければならぬものかといったことにつつきましては、いろいろ判断といいますか、議論の分れるところと思うのでありますが、少なくとも運賃を上げてまでも、現在ある線路を増強していかなければならない、現在の輸送力を増すためには運賃を値上げしてまで考えなくちゃならないといった段階におきましては、おのずからその緩急といいますか、軽重といいますか、これは明らかなことであると思うわけでございます。  第二点は、いわゆる赤字路線と言われております地方のローカル線の整理なり合理化の問題でございますが、輸送手段は多々ますます弁ずるということは、これは利用者側から言えば言えることと思うのでありますが、自動車が発達してきました今日、その地方輸送力が、輸送需要が自動車によってまかない得る、あるいは逆に言いますれば、それに並行している鉄道があくびをしかねないような状況にあるといったようなところでは、やはり広い国民経済的な観点から積極的な合理化が行なわれるべきである。そうしてそういった線区の赤字というものをできるだけ縮小していくべき方策をとられたい、かように思うわけでございます。  次には、定期を初めとしますいろいろな運賃割引の問題でありますが、これらの問題につきましては、いろいろな沿革的な問題等もあるので、一がいに言いかねる点もございますが、これは考え方によりますれば、他の旅客、貨物負担において割り引きされておるということも言えるのでありまして、特に高率なもの等につきましては、すみやかに是正する方向で検討さるべきじゃないか、かように思うわけでございます。  おもな三点について申し述べたわけでありますが、これらの問題につきましては、もちろん大きな問題でもあり、またいろいろな経緯もある問題でありますので、一挙に解決できる問題とは私も思いません。漸進的に是正していかなければならぬと思うのでありますが、こういった点も十分横付されまして、将来の設備増強の資金を、原資という面もあわせ考えまして御検討をわずらわしたい、かようにお願いする次第であります。  以上、申し述べました考え方は、先ほどに戻りまして、結局私たち荷主側の立場といたしまして、決して運賃値上げを積極的に希望するものではありませんが、輸送力の不足、そのために常時苦しんでおる、多少の値上げによる不利益よりむしろ輸送力の不足のために常時こうむっておる不利益の方が大きい、そういった観点に立ちまして、その輸送力の増強ということが第一の願望でありますので、そのために必要とありますれば最小限度の値上げはやむを得ないという立場に立つのでありますが、ただそういった観点から値上げをされる場合について次の点を要望しておきたいと思うわけであります。  新しい五ヵ年計画は、国鉄の責任だけでなくて、政府においても十分の責任をもってやるように考えてもらいたいという点でございます、あたりまえのことでございまするが、現在の五ヵ年計画の推移を見てみますと、何となく最初は計画と予算のつじつまが合えば、あとは国鉄まかせに考えておるのじゃないか。あるいは誤解かもしれませんが、そういうような感じがいたします。大体第二年日ごろにすでに計画の狂いというものがおぼろげながらわれわれにもわかったような気がするのでありますが、それに対して適切な措置が打たれなかったというふうに思われるのでありまして、輸送力の増強を政府の公約と信じてこの前の運賃値上げ負担にも甘んじた荷主側の考え方といたしましては、その点はなはだ割り切れない気持が強いのでありまして、今回の場合には、ぜひ政府国鉄一体となって責任をもって完遂を期せられたといことでございます。  第二点は、この計画の実施機関中には再び運賃の値上げをさえるようなことのないようにお願いをいたしたい。これは運賃値上げも含めての資金源を考えられて遂行されるわけでございまして、当然のことかとは思いまするが、現在の五ヵ年計画の例等とも考え合わせまして、特にこの際要望しておきたいと考えるのであります。  第三は、私たち貨物輸送立場に立ちまするので、どうも貨物輸送が従来旅客輸送に比べて増強、改善サービス向上といったことがおくれておるように思いますので、どうか特に今後は貨車の増備ということを重点に置かれまして、貨物輸送力の増強にも格段の努力をはかっていかれたい、かように希望する次第でございます。  以上をもちまして私の公述を終わります。   —————————————
  16. 片岡文重

    ○片岡文重君 本日の公述人の一人である阿部静江君が急病のため時間までに出席ができないというので、公述意見を後刻文書として提出することをお許しいただきたいという申し出でがありましたので、当委員会において委員長からお諮りをいただき、できまするならば、その意見を会議録に収録していただくようにお願いいたしたいと思います。動議として、委員長にお取り計らいをお願いいたします。
  17. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  18. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記を始めて。  ただいまの片岡君の動議の通り、会議録に掲載することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  20. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 速記を始めて下さい。  以上をもって、公述人の御意見の開陳は終わりました。   —————————————
  21. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 平山公述人の御都合によりまして、この際、平山公述人に対する御質疑を先にやっていただくことにいたします。
  22. 大倉精一

    ○大倉精一君 平山先生に私から二、三御意見を拝聴したいと思います。御意見の中に、たとえば大阪から印刷機械をもってきたときに、鉄道ではなくてトラックでもってきた。それはいわゆる荷作りとかあるいは集配、積みおろしの繁雑でなくて、非常に簡便でありかつ云々ということがございましたが、そうなってくると、非常に将来の問題として、たとえば新線建設なりあるいは設備の増強に関しまして、道路と鉄道という非常に大きな問題が出てくると思うのですね。そういう場合において、私ども委員会でも、しばしば、そういう意見も戦かわしておるのだけれども、どうも今の政府政策として、鉄道と道路に対する一貫した思想なりなんなりがない、こういうところに今日輸送の混乱の原因も一つあると思うのですが、私はそういう点からいきましても、やはりこれからの道路と鉄道の役割というものは、従前とは非常な大きな変化があるのではないか、こういうことを考えておるのですが、こういう点についての御意見をお聞かせいただきたいということと、もう一つは、幸い観光関係をおやりになっておりますが、今度御承知のように、国鉄運賃は上げるが、その他の公共料金はストップをするという、こういう閣議の決定がございました。これに基づきまして、もしそういう工合に実施をされますというと、国鉄運賃は非常に高くなって、そうして電車やバスの運賃が安くなって、そこにいわゆる変則的な現象が起こるのではないかという質問をいたしましたところが、当局の方では国鉄運賃は安いのだから上げていく、またその他の公共料金をストップしても影響がないのだというお話がありました。ところがたまたまきのうの毎日新聞を見ますというと、現実に東京−日光間の運賃比較検討してみますというと、東武線の方が非常に安くなるのですね、国鉄の方が東武線より九十円高くなる。この例、それからずっと表がございますけれども、これを利用する人がほとんど観光客である、こういう点から国鉄運賃値上げ、それからその他の公共料金のストップという、こういう関係が観光客のこれからの何と申しますか、利用度といいますか、そういうものに対しての変化があるのじゃないか、こういうことを考えるのですが、御所見を承っておきたいと思うのです。
  23. 平山孝

    公述人(平山孝君) ただいまお説の通り、今後は鉄道と道路との関係というものは、これはよほど考えて、いわゆるこれがおそらくは交通政策であろうと思うのでありますが、この点をよほど考える必要があろうと私も考えております。ことに貨物輸送等につきましては、最近はなかなかコンテナでありますとか、あるいはまた外国では貨車そのものをそのまま自動車に積んで持っていくというようなこともあるようでございますが、その道路と鉄道とのコンビネーションというものを非常によくやるということが今後は必要であろうと思うのでありまして、それがいわゆる私は交通政策ではなかろうかと実は考えておるのでございます。  それからまた第二点の、観光客に対する運賃の問題でございまするが、最近は鉄道の方の団体旅客というものがどんどん減りまして、そうしてほとんど自動車の方に移っておるという話でございまするが、これはおそらく自動車というものが非常に小単位にまとまって、しかも自分のうちから目的地まで乗りかえせずに行けるというようなことで、自動車の方の観光自動車というものが非常に発達したのであろうと思っておりますが、しかしやはり運賃というものは、同じ便利さでありますればどうしても安い方にいくのが当然でございまして、競争線を申しますか、並行線と申しますか、そういう場合におきましては、やはりお客が片寄っているということもございまするので、ただいまの日光の例のような場合は、あるいはしかし東武の方に片寄ってしまってもどうも困るだろうと思うのでありますし、国鉄に片寄っても困ると思われますので、そういう場合には、適当な営業政策と申しますか、あるいは営業割引と申しますか、そういうことをやる必要があるのではないかと私考えております。
  24. 大倉精一

    ○大倉精一君 そこで今政府公共料金は当分上げないと言われますけれども、国民の皆さんは、それは国会のあるうちはうるさいから上げずにおいて、国会が終わったら上げるのじゃないかという、こういう心配を国民はしておるのですが、政府は当分の間上げないというけれども、当分の間ということを聞きますと、政府は値上げムードが終わるまで云々ということで、さっぱりわからないのですが、今のお話によりますと、並行線なりあるいはそれと関連する私鉄、バスについては上げなければならんという、そういう必然的な結果になるのじゃないかと考えるのですが、いかがですか。
  25. 平山孝

    公述人(平山孝君) 私は東武の方が上がりますかどうか、あまりわかりませんが、しかしそういう場合におきましては、東武の方を上げるというより、むしろ鉄道の方が営業割引で適当な調整をとるのがいいのではないか、つまり鉄道の方を下げたらいいのじゃないか、かように考えております。
  26. 大倉精一

    ○大倉精一君 話は議論してはいけませんが、結局運賃は値上げしない方がいいということになるのですが、われわれ心配しているのは、各皆様方がおっしゃいますように、鉄道建設なり輸送力の増強ということは大いに必要でありますけれども、決してこれに反対しておるわけじゃないですが、やり方あるいはお金の調達の仕方、こういうことにいろいろ疑問を持っておるわけなんです。と同時に、現在のような物価の情勢なりあるいは政府の施策からいいまして、物価並びに国民生活に及ぼす影響の非常に大きいということを心配して、いろいろ議論をしておるわけでありますけれども、結局は、今割引すればいいということで、何か運賃値上げをしない方がいいということになるのですが、そういう点が心配をされますが、おそらく従来、特に国鉄が上がれば私鉄は右へならい、こうならなければバランスがとれないと、こういうことでありましたので、私どもは政府がそういっておりますけれども、いずれは私鉄もバスも運賃を値上げをするし、それがいわゆる物価影響する、これは心理的にも影響します。何パーセント何パーセントじゃなくて、いわゆる心理的な、社会的ないろいろな影響から、所得倍増前に物価の方が先へ上がっていくのじゃないか、こういう心配をしてお伺いしたわけであります。どうもありがとうございました。
  27. 大和与一

    ○大和与一君 鉄道の先輩としてりっぱな御意見を承ったわけですが、一つだけ合点のいかぬところがあるのです。子孫のために美田を買うということは学校で習ったことはあるけれども、子孫のために運賃を上げる、こういう珍説はきょう初めて承ったわけであります。それで、御意見の中に、物価が上がったらそれに見合って上げなくちゃいかぬ、こういう御意見であったと思います。ところが、私は反対ですけれども、経済企画庁長官の話によりますと、小売物価は上がっておるけれども卸売物価はあまり上がっていない、こう言うのですね。われわれはむろん国鉄運賃の値上げが値上げムードを作って、非常に他の物価の値上がりに先行する、それが国民経済国民生活に非常な不安をもたらす、こういう建前から反対をしておるわけであります。そうすると、今お話のあったのは、ほかの物価がみな上がってきたらしようがない、国鉄運賃もそれに見合って上げてもいいではないか、こういう御意見のように承ったのですけれども、そうならば現在国鉄運賃を値上げすることは適当でないと、こういう理詰めな結論になるような気がするのですが、その点聞き違いか、あるいはあなたの言い方が足りないのか、もう少し聞かしていただきたい。私は、今適当でないというふうに、あなたの御意見から判断すると結論づけられるのだけれども、それはどうなのか。
  28. 平山孝

    公述人(平山孝君) 私はそう思うのでありますが、運賃値上げというものは、いつでも鉄道運賃が値上げいたしますると、ただいま仰せになりましたように、心理的にもそれからそのほかにも響きが非常に大きいということは、これはたしかだと思うのでありますが、そういうことがあるために、どうも運賃というものは最後の最後まで押えてきておって、どうにもならぬから少し上げようじゃないかという話に私はなるのだと思うのであります。従って、だれも運賃値上げというのはあまり腹の中では賛成でないものですから、運賃値上げというのは最後の最後まで押えられる。そうしてそれがあとになりますると、輸送力不足というような結果になって、ますますあとからくるものは殺人的な輸送に巻き込まれる、ますます不便をするということになるのではなかろうかと思うのであります。私も現職時代に——昭和二十一年くらいでございまするが、進駐軍の方へ行きまして、ここで一割上げといてもらえれば、そうすれば暫く大丈夫だ、しかしここで一割上げないでおきますと、半年くらい先になりますと、おそらく三割上げなきゃなりませんよということを進駐軍に言ったことがあるのでございますが、そのときに進駐軍では、そのあとでもって、今なら一割それからあと一年たつなら三割になる、その二割は一般会計から出してやるから、それでいいじゃないかというので、一年ほど延ばされたことがあるのでございますが、あんまり最後の最後まで押えていきますると、少しぐらいの値上げではどうにも追っつかぬというようなことになるんじゃなかろうか。運賃値上げというものはだれも好きこのんでやるものはないもんですから、結局は苦しまぎれになってやっていく。そこで鉄道運賃の倍率というものが物価やあるいは所得やそのほかのものに比べて非常に低いというのは、結局そういうところから出てきておるんじゃなかろうか、こう思うのでございまして、私は物価が三百倍になっておる、あるいは公務員の所得が三百八十倍になっておる、だから鉄道運賃も郵便並みに三百まで上げてもいいんじゃないかということではないのであります。鉄道運賃は上げないに越したことはない〜思うのであります。ことに一銭五厘六毛の運賃というものは非常に長く続きまして、おそらく二十何年一銭五厘六毛で鉄道はあったと思うのでありますが、そのころは鉄道が独占をしておりましたから、いわゆる安い貨物のほかに高い貨物もみな鉄道へ来た。それからお客さんも優等客がみな鉄道へ来たという時代であったのでありますが、終戦後はもうそういう時代を去ってしまいまして、結局安い貨物と定期のお客だけが残るというようなことになりますると、むろん鉄道運賃というものは物価が三百倍になったからといってそれに応じて当然上げていいんだとは私考えておらないのでありますが、なるべく値上がり率は低くして、そして影響を少なくして、運賃を事情に応じて上げるのがいいんではなかろうか、そういう考え方でございます。
  29. 中村順造

    ○中村順造君 平山先生に一、二お尋ねいたしますが、今最後の御説明で私は先ほど来はがきとの比較で、何か一般が三百倍になっておればまた鉄道運賃もそれに見合うのがいいじゃないか、こういうふうに聞こえたわけなんですが、今説明がありましたので、その点は私は運賃値上げをするにしても、いわば最小限度にとどめる、これはだれもが望んでおらないことだがと、こうお話がございましたから、その点は理解ができましたが、先ほど大和委員からお話がありました子孫のためにりっぱな鉄道を残しておけと、こういうことで、この点も私どもの考え方では、今日までいろいろ議論いたしました中で、やはりそういう余裕が今の日本の国民階層の中にあるかどうか。子孫のためにりっぱなものを残すということなら、これは考え方としては別に反対するものはありませんけれども、今の日本の実情から見て、先ほど原口君からも意見の開陳がありましたけれども、特に一千万に及ぶ低所得階層、こういうものが現実にある今日の社会で、むしろ今日よりりっぱなものを私どもはただ気持の上からとして将来に残す、それだけに運賃の値上げを認めていくと、こういうことは私はどうかと思う、私の理解の違う点があるかもしれませんけれども。それからそれ以前の問題として、やはり運賃そのもの、体系の問題になろうかと思いますけれども、いわれておるところの、大衆から収奪をしてそうして大資本、大産業に奉仕をするような仕組みになる。こういうことが現在の、現行の運賃、あるいはこの改定をされる運賃の中でも、そういうことを言おうとすれば言い得るだけの余地はこの中にあると思う。ここで今問題になっておるのは、よくいわれております三十四年度の国鉄の実績ですが、旅客運賃では一二%黒字になっておる。貨物では逆に七%赤字だ。こういう面をやはり子孫のためにりっぱな鉄道を残すという、その考え方以前の問題としてこういう問題があるんじゃないかというふうに、今日の議論の中では言われておるわけです。こういう点を一体どのようにお考えになっておるか。  それからやや具体的になりますが、最後にもう一点お尋ねいたしますが、側線を作ったらというような表現もございましたけれども、たくさん作って、そうして貨車回りをよくする、こういう非常に国鉄の先輩として貴重な御意見があったようでありますけれども、その御意見と今日国鉄がやっておる集約輸送という名前をつけまして貨車回りをよくするために、逆に側線はどんどん撤去していく、こういうことが現実にやられようとしておる。そういたしますと、平山先生の従来の御経験と、今から国鉄がやろうとする考え方とは若干違っておるような私は印象を受けたのですが、この点に対しまして一つお教えをいただければと考えまして質問したわけであります。
  30. 平山孝

    公述人(平山孝君) 私そう思うのでありますが、子孫のためにいい鉄道を残すというのじゃなくして、今のような殺人的な、たとえば中央線のラッシュなんかにわれわれの子孫をどうもああいう苦労は見せたくないというようなむしろ感じでございまして、ここで鉄道に少し活を入れませんと、ただいまの中央線などの殺人的なラッシュがもっともっとひどくなるのじゃなかろうか。非常にいい鉄道を子孫のために残すというよりも、あれよりもっとひどいものを子孫のために残すことは、これは問題じゃなかろうか、こういう考え方なんでございます。  それから側線の問題等につきましては、私はそっちの方の専門でございませんからはっきりいたしませんが、集約輸送等によりまして側線が取れれば、これはもう申し分ないと思うのでありますが、しかし先ほど申しましたように、今の国有鉄道というのはわずかに一三%しか複線がない。こういうことになりますると、貨車の輸送なども相当な側線がないと、急な輸送、ことに私がおりましたのは戦争中まででございますから、あのころには特に急速に輸送しなければならぬというようなものがあったわけでございますが、そういったようなものは、そういうものがないとできないということで申し上げましたので、側線の例は、つまり鉄道はあまり余裕のある輸送をやっておらぬという例に申し上げたわけでございます。
  31. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 大体幾つか意見が出ましたが、私は平山さんは非常に正直なことをおっしゃっていただいたと思う。ほんとうは上げたくはないのだ、けれども、幾らか上げなければやれないだろうというところは私は本心ではなかろうか。私どもはほんとうは上げたくはないのだということは、単なる国鉄経営全般だけでなくて、日本経済の伸びが、上げてそれについていけるような状態にあり得るかどうかというと、より悪い影響がそっちこっちにあるのではなかろうか。私どもは国鉄の内部の関係、国鉄の運営だけを考える場合には、あるいは考えなければならぬのじゃないかということは当然この値上げの中で考えられることです。しかしいわゆる物価の値上がりムードといいますか、こういうものを考え、これに準じて日本の経済の伸びが並行できるかというと、そういう状態ではない。いわばいわゆる所程倍増というものを打ち出したりあるいは特定のものの給与の引き上げを大幅にやったり——国会議員であるとか地方議員であるとか、そういうものを大幅にやったり、さらに国鉄運賃引き上げられるということになると、私は経済全般に悪影響を及ぼすのではないか、そういう意味合いから国鉄運賃、いわゆる公共料金の値上げというものは当分の間ストップして、その間に所得倍増政策というものが行なわれ、それに見合っていくというところにたとえば来年から値上げをしていくということもこれも可能でなかろうか。そういう意味合いから十分慎重に検討しなければならぬのではなかろうかということをこの審議の中でも申し上げたことがあるのです。あなた方のお話を聞いておっても、やはり私は殺人的なあの中央線——東京を中心とする周辺の混雑の問題の値上げによっての解決はやはり困難じゃなかろうか。そしてまた、そっちこっちにできる交通地獄、特に踏切の改修、こういうようなものは当然立体的な踏切にしなければならぬ、交差点にしなければならぬ。そこまでこの程度の、率直に言って、値上げによって、乗客料金貨物料金の値上げによって、国鉄の運営がなし縛るかどうかということを考えたら、私はいかぬではないか。私は値上げに賛成するものではありません。いわゆる当面を糊塗するために、若干の値上げをしていくと、たとえば五ヵ年計画を立って、これはあとで、大槻さんにも細野さんにも関係のあることだと思いますが、御質問申し上げますが、そんなことによって私は五ヵ年計画を完遂できるとは考えられないんです。むしろそれより先に、今申しますように、一応物を押える、物価の値上がりを押えていく大きな役割をする国鉄の値上げが当分ストップをして——大臣に聞くとこういうことを言うのです。国鉄運賃の値上げはやむを得ないと存じます。そしてあらゆる物価にそれでは影響するのはどれくらいだ、まあ一%くらいであります。これは国鉄の値上げからだけの話でありましょうが、物に影響するのが一%であって、いわんやその他卸売物価は中には値下がりしたものもあるんだと、こういう説明をしておりますが、これは論外だと私は思うんですが、そういういろんなことを考えて参りますると、あなた方が御期待するように、国鉄がこの中でせっかく値上げをした。しかし実際には従来通りにようやく過ごしていくだけにすぎない。ということは、今申しますように、おそらくはこの所得倍増という計画で、国鉄運賃が値上がりしたということ、各階級議員の給料が引き上げられたというようなこと、いろんな影響からいきますならば、当然資材の値上げ、人件費の値上げというような問題が一緒に並行して、より急速度に上がってくるんですね。そうすると、その方を償うのに急であって、あなた方の考えていただくような根本的な問題を解決することができないという状態になります。そこで私どもは困難ではあろうけれども、それは国の予算にも限度があるが、出し得る人間はないことはない。もう一つ、これだけ公共性のあるものは、これは平山さん従来国鉄におられたから私一つお聞きしたいんだが、妙な理屈になるかもしれませんが、何度も私が言っておるが、国鉄が戦争中非常に国家に貢献した最大のもので、輸送力の増強で戦争に貢献したという、これは最大のものである。その後、それでは国鉄は国からいわゆる補助金をもらって、戦争による被害に対して援助をしてやろうということが一体何かあったか、そういう交渉をしたかといったら非常に不明確でございます。幸いあなたが国鉄におったとするなら、そういうことをお考えになったことがあるとすれば、それは矛盾した考え方であるのかどうか、そういうのも一つ御参考に、今言ったような角度で一つあなたの御意見を一言私お伺いしておきたいと思います。
  32. 平山孝

    公述人(平山孝君) 私、正直に申し上げますと、今回程度運賃値上げで、たとえば中央線のラッシュが著しく改良されたとか、そのほかの踏切がよくなったとか、そこまで、形に出るほどはとてもいかないんじゃないかと私は思っているんでございますが、しかし、今より悪くならぬ程度には持っていけるんじゃないかと思うんですが、今のままで置いておいたら、さらにさらに悪くなるんじゃなかろうか、というような感じがするんでございます。  それから私、終戦当時に鉄道一般会計に、あるいは政府に対して何か回復について援助を求めたかというお話がございましたが、とてもそのころは、政府自体も貧乏でございまして、鉄道がそんなことを言っても全然問題にされませんので、そういう事実はございませんでございました。ただしかし、先ほどもちょっと申し上げましたように、この際運賃を値上げするのは困るから、それは政府でもってその分だけのものは出してやるというようなのは、これは進駐軍がやってくれたことはございますけれども、それ以外ではございません。  それから先ほどちょっと申しおくれましたが、貨物の点ですが、貨物赤字になっておって一般旅客が黒字になっておる。つまり普通客は相当黒字なんでございますね、定期客は赤字だと、それから貨物赤字だということなんでございますが、これからはやはり、とにかくとんとんでいきませんと、その貨物赤字までを旅客に持たせるとかいうことは、どうもこれは不合理なんじゃなかろうか。いわゆるさっき細野先生からも原価主義の問題のお話がございましたが、やはり原価を償う程度のものは支出できるようにしませんと、結局輸送というものがゆがめられてくるんじゃなかろうか、こういうふうに私考えておるのでございます。
  33. 片岡文重

    ○片岡文重君 平山さんは国鉄経理の権威者でいらっしゃいますから、そういう点で一つ二つ教えをいただきたいんですけれども、一つ国有鉄道法が改正をされまして、現行国鉄法では、黒字になった場合には一般会計に繰り入れますが、赤字になった場合についての対策というものが、借入金以外の点については何ら述べられておりません。で、かつては赤字になった場合には国庫からこれを補てんするということになっておりました。その当時は固定資産税もかけられておりませんでした。しかるに今日では固定資産税等の公租公課は課せられておるのに、しかも先ほどお話にありましたように、独占企業ではもうなくなってきておる。激烈な競争企業の中にあって、非常な不利な状況に置かれておって、むしろ赤字の心配のなかったときには赤字の処理が法定されておる。赤字の心配ができてきたときになって、かってなかった負担が課せられて、しかもその赤字による対策というものはなされておらない。こういうやり方は、はたして国鉄をよくしていくためによろしいものかどうか。少なくとも今日の混雑緩和のためにこれが役立っているとは思われませんけれども、どういうことになるのであるか、それが一つ。  それから公共負担について、これも先ほど来細野先生その他の方々からもお話がございましたが、何としても多過ぎるのではないか、特に諸外国ではもう公共性というものには、そう多く国鉄負担をさせておらない。しかるに国鉄は依然として独算制と公共性をほどほどにと、しごくあいまいな言葉でやっておりますけれども、独算制という経営の面についての責任はきわめて重く国鉄総裁にかけておりますけれども、公共負担ということについての政府の責任というのはほとんど一顧もしておらない。その行き詰まりをすぐに運賃改定に求める。こういうやり方について、もっと国鉄立場というものを、口先だけでなしに、国鉄当局並びに政府は現状、つまり国鉄の現在置かれておる企業立場というものをしっかりと把握し認識すべきではないか、口先ではもう独占企業じゃなくなりましたと言っておりますけれども、やっておるところを見ると、一つもそういう具体的な施策は見えておらない。こういう点について私ども非常に遺憾だと思うのですけれども、平山さんとしてはどうお考えになりますか、教えていただきたい。
  34. 平山孝

    公述人(平山孝君) 私、鉄道の経理をやっておりましたころは、非常にいい時代でありまして、先ほども申しましたように、運賃は一銭五厘でもって据え置かれまするし、それから公共負担はほとんどみな鉄道が持っておりまして、その上になお一般会計が因ると臨時軍事費に鉄道から金を出しておったような非常にいい時代でございました。しかし大体戦争が始まりましてからは、相当まだそういういい時代がございましたが、そのころもうすでに今後は自動車との競争が出てくるというので、私がおりましたころに一般会計に納める金のほかに、なお余裕金があった場合は、従来の鉄道のそういうことに備えてというんで、平衡資金というようなものを置きまして、そしてその中に入れて、将来の鉄道の改良に備えようということまでやった時代があるのでございますが、終戦後は戦災でひどく痛めつけられた上に、道路が急速に発達し、自動車が発達したというので、鉄道というものはそういう余裕がなくなったわけでございますんで、私はお説の、今おっしゃいました通り、固定資産税を課するとか、あるいは通行税をやるとか、そういったようなものはなるべく免除をし、それからまた、公共負担はなるべく一般会計負担にして、そしてもう少し鉄道輸送力増強にある程度の金が使えまするように、これは会社でも減価償却がありまして、そしてそれによってある程度改良をやっている。昔の鉄道は、ちょうど益金でもって改良は全部やっておりまして、鉄道の新線建設だけを公債でやっておったわけでございますが、鉄道の改良まで、改良と申しますのは、一種のもうやむを得ざる支出、取りかえでございますから、当然出さなければならぬ金なんでございまして、これまでも借入金でやったら鉄道財政というものが非常に危殆に瀕すると思うのです。昔のようにやはり改良資金というようなもの、補充資金というようなもの、こういうものはやはり益金でいかなければいけないんじゃなかろうか。しかし今の鉄道ではそれだけの余裕がございませんから、従いまして税金の免除、これはまあ公共的な特別な法人についてはやっているんでございますから、そういうものはなるべく免除をし、それからまた公共的なものはなるべく一般会計負担で、鉄道輸送に全力があげられるようにしてやる必要があるんではないかと、かように考えております。
  35. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に平山公述人に対する御質疑はございませんか。
  36. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 言葉じりをとらえるわけではございませんから、気を悪くしないで聞いていただきたいと思います。もう今になればいい、当時は私は工合が悪かったと思うのですが、臨時甲賀費なんかの寄贈というか、出したのはいつごろどのくらいお出しになったか、きょうここでお答えになれればいいし、お答えが工合が悪ければ、あとで書面でお知らせ願いたいと思います。
  37. 平山孝

    公述人(平山孝君) 正確な数字を覚えておりません。むろんこれは鉄道当局の方がよく御存じじゃなかろうかと思うのでございます。
  38. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 その時と金額と、概略でけっこうでございますからお願いします。
  39. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 休憩いたします。    午後零時三十五分休憩    ————————    午後一時四十分開会
  40. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) ただいまより公聴会を再開いたします。  公述人方々に対する質疑を続行いたします。
  41. 大倉精一

    ○大倉精一君 細野先生にお伺いしたいと思いますが、先ほどの御意見の中で公共性と企業性との調和をはかる、これが一つ運賃の要素である、こういうお話があったように思うのですけれども、最近には公共性とそれから企業性の調和ということを何かこうはやり言葉といいますか、そういう表現が方々で使われておりまするけれども、実際問題として公共性と企業性というものの調和ということがしかくさようにたやすいものであるかどうかということは、私は非常にむずかしいと思うのですね。たとえばこの前の委員会におきましても、国鉄総裁から、両者の調整は非常にむずかしいという表現がありましたが、具体的な問題にぶつかって考える場合に、はたして公共性と企業性というものは調和ができるかどうかという問題点と、それから現在ではむしろ国鉄に関する限りは、公共性というよりも企業性というものを非常に強く強調をされているのではないか、こういうまあ感じがするのです。特に国鉄におけるところの企業性というのは一体どういうことを意味するのか。つまり益金というお話もありましたが、収益をたくさん上げるということが企業性ということであるのか。あるいはそうじゃなくて、国有鉄道はやはりまあこれは企業体ですから、これが一般のいわゆる電話とか、あるいは郵便等と違って、貨物あるいは旅客という、景気の変動によって左右される、そういう企業の性質を持っている。こういうことから企業体というそういう表現を使っているのか、こういうことを考えると、非常に公共性と企業性との調和というのが複雑になって参ると思いますけれども、こういう意味において、一つ先生のお考えを承りたいと思います。
  42. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 公共性と企業性とは通俗的には背反するというふうに考えられているわけでありますが、しかしながら、私は先ほど公営企業料金の決定について政府の役割は何だということを申し上げましたときに、企業の健全なる発達ということと、それから利用公衆の公正なる利益、この二つならば調和、両立するということを申し上げたのであります。この利用者利益というものが、もしいわば欲ばりな、勝手な利益を主張するものであるならば、これは企業の健全なる発達とは両立しないということになります。つまりかかっているのはわかるけれども、おれは払うのはいやだ、だから値上げには反対であるというようなことでは、これは企業の健全なる発達、すなわち企業性というものと公共性とは両立しない。そこで私は国家公共団体の公営企業料金に対する任務というものは、企業の健全なる発達というものと、それから利用公衆の公正なる利益、合理的であって無理のないところのジャストでフェアな利益を守るということであるならば、これは両立するのであるということ、そうでなければ、政府はとうていこの公営企業料金の決定の任務を果たせないということになります。つまり安い方がいいということでもって安く抑えつけるということであれば、企業の健全なる発達はできない。企業の健全なる発達ということは、いわば社会経済の発展に連れて、鉄道その他の公営企業に対する需要が増大いたしまするし、また質の向上必然に求められるわけです。それをやるためにはどうしても資金が必要である。民営企業の場合には、この資金というものは、やはりある程度の報酬率があるということでなければ集まらないわけであります。ですから健全なる企業の発達と公正なる使用者の利益というものが両立するという点は、必要なる資金を吸収するに足る最低限度の資本報酬を含むコスト、これを料金原価総括原価とするということが、いわゆる公正、合理料金原則のごく簡単な表現の仕方なわけであります。ただその場合でも、利用者利益というものの中に、支払い能力が非常に足らない、低いけれども利用させてやらなければならないというものがあるわけでありまして、こういうものに対して、これは最低限度の必要な公共負担ということになるわけでありますが、これを負担するのは、従来資本主義体系における企業経営におまましては、独立採算ということを建前にしておりまして、それは負担力の強いものに負担させる、負担力の低いもののための赤字負担力の強いものに負担させるということでもって、黒字赤字がとんとんになって必要なる資金を吸収するに足るだけの利益が残るという行き方でいく。国有鉄道が明治四十年の特別会計以来昭和十九年まで、いわばそういう行き方でもって公共負担をやりながら、一般賃金水準が今から見れば比較的高かったわけでありますが、その高かったということにおきまして、割引的な運賃赤字黒字的な旅客、貨物収入でカバーして、なおかつサービス改善資金を生み出すだけの剰余金利益金を生んできた。国鉄が自己資本をほとんどゼロに近いものからスタートいたしまして、昭和十二、三年ごろには自己資本の方が借り入れ資本よりも多くなったというような実績をかせいでおったわけであります。戦後は国鉄はそれが消えてしまったわけでありまして、黒字でもって公共負担赤字をカバーできないという状態が続いておった。これが公共負担が多過ぎるという見方もできますし、運賃水準が低過ぎるという見方もできるわけであります。しかしながら、国鉄ではありませんが、同じ国営の大企業であるところの電電公社、電磁公社の最近の実績というものは、完全にこれは巨大な益金をあげ、三十四年度には五百十四億の益金をあげる。特にさらに電話を引くには電話債券を負担させるという大きな行き方がありまして、非常に大きな発展をしておるわけです。最近の日本の企業において一番発展のテンポの早いものは電電公社の事業だと思います。この電電と国鉄と比べてみます場合に、あまりに差がひどいということは、私はやはり国鉄運賃に対する戦後の運賃の抑えつけ方というものの度がひどかったということがこの結果を生んでいると考えるわけであります。
  43. 大倉精一

    ○大倉精一君 そこで私は、その企業の健全なる発達ということなのでありますが、これはむろん私企業と違いますので、公共企業体における健全なる発達という中身はどういうことかというところに一つ問題点があるのですが、その前に、私が冒頭お尋ねしたように、企業性と公共性を調和させるということは、政府にそういう決意がなければこれはできないと私は思うのですね、政府に決意がなければ。運賃料金決定の要素としましても、いわゆる公共企業体である以上は、先ほどおっしゃったように企業の健全なる発達、公正なる利用者利益、これ以外に多分に私は政治的な配慮が必要だと思うのです、公共性という意味におきましては。たとえばこの運賃料金の値上げというものを、何もわれわれは未来永劫にやってはいけない、こういうことを言っておるのではないのでありまして、現在のこういう情勢のもとにおける国鉄運賃の値上げというものは、これはいろいろ矛盾した、あるいはまた一貫性のない、あるいはまた内容的にも検討しなければならぬ非常に重大な要素があるのではないか、こういうことを申し上げておる。  そこで、たとえば先ほどもちょっと平山さんにお伺いしたのですけれども、一方においては、いわゆる物価並びに国民生活に対しまして非常に大きな影響があるからという、こういう理由のもとに公共料金の値上げをストップをする、こういう政治的な配慮が行なわれておる。ところが国鉄運賃に対しましては、これはあたかも物価には影響がない、あるいは生活には影響がないというような考えのもとにこれだけは独走している。こういうところにも一貫した政策がないというところに、私は非常に疑問を持つわけです。はたして、その他の公共料金というものが物価並びに国民生活影響があるから当分の間ストップするというのであれば、当然これは国鉄運賃料金につきましてもそういう配慮があってしかるべきものである。これがいわゆる公共性と企業性の調和するものであると思うのですね。それがためには、そういう政策をとるところの政府においてそういう決意がなければ、公共性と企業性の調和はできない。これを国鉄だけに公共性と企業性の調和をせよといったって、これは無理だと私は思うのですよ。で、現在そういう混乱が起こっておるのは、政府にそういう決意がないというところからそういう混乱が起こっておるのではないかと思うのです。従って、いわゆる新規建設五ヵ年計画というものは、われわれはそれに決して反対するものではありません。大いに建設をしてもらわなければなりませんが、それにはやはり他の方法を考える。たとえば今度のこの仲裁裁定等によりまして二百億円の原資が要る。これに対しましても、政府は五ヵ年計画を変更することはない、原資は別途に考慮をする、こういう決意をしておりますという運輸大臣の答弁もありました。そういうところから見ますというと、この国鉄運賃に対しましても、その他の公共料金と同じようにそういう政治的な配慮が加えられる、これがいわゆる公共性と企業性の調和というものである、こう私は考えておるのですが、これは間違いでありましょうか、一つお伺いしたいと思うのです。
  44. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 政府に一貫した政策ないし決意というものが必要であるということには全く御同感申し上げます。しかし、従来戦後の政府——主としてこれは保守政党の党首の交代はずいぶんございましたが、保守政党で一貫した政策がほぼ持たれてきておったわけでありますけれども、公共料金引き上げということが、これは政府の認可権を持っているところの、制定権を持っておるところのほとんど唯一の物価である。そこへこの低物価政策の要求というものをしわ寄せしたということ、これが今日の企業格差の二軍構造を生んでおるのでありまして、全くおくれおくれて、常に物価水準に比べますと格段に低い格差を持ってしか値上げを認めてこなかった。これは一貫した政策のように見えます。そういう状態において公共性と企業性とを調和させようとしても、これは結局できないということが、今日の供給不足あるいはサービスの低下ということを来たしているのだと思います。ところが、電話料金だけはこれが違いまして、二十八年のときの値上げに改良費込みの料金を認めたということが、今日の電話事業の大々的な発達を来たしておる重要な原因だと思うわけであります。  それから質問の……。
  45. 大倉精一

    ○大倉精一君 私の質問は、これはたとえば、その他の公共料金を当分ストップするということであれば、同じく、あるいはそれ以上に物価あるいは国民生活影響する国鉄運賃も、同様の政治的な配慮があってしかるべきではないか、こういう質問であります。  それに関連いたしまして今電話料金のお話がありましたけれども、私は電話料金物価に及ぼす度合いと、それから運賃料金というものが物価に及ぼす度合いとは、おのずから違うと思う。今お話があったように、今までの国鉄運賃というものは、政府の低物価政策のために低い運賃で押えられてきた、これは事実だと思う。それはとりもなおさず、これは国鉄運賃というものがさように物価影響があるという証拠である。でありますから、これも大きな公共性というものを要求されているわけでございまして、それがためにそのサービスが低下したのだ、それがいけないということであれば、それは国鉄の責任ではない、政府の責任である。政府の低物価政策と合わせた低運賃政策をとったとするならば、しかも、それによって、独算性を要求するならば、その部分は政府は当然責任を持ってしかるべきである。それが政府に責任がない、決意がないために、公共性と企業性の調和ができない。こういうように私は考えるのです。従って、電話料金運賃とは物価あるいは国民生活に及ぼす影響というものは、全然これは同一視すべきものではない、こう私は考えている。でありますから、先ほどのその他の公共料金という問題と今の問題とからみ合わせて御意見を承りたいと思います。
  46. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 電話料金物価影響しないというのは、実はこれは錯覚だと思う。
  47. 大倉精一

    ○大倉精一君 いや、程度の問題です。
  48. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 金額から申しますと、電話料金収入は千八百億に達しております。国有鉄道旅客運賃とほぼ似たような金額、貨物運賃よりも大きい。ただ、これをどこへ配付するかということが、場所があまり直接的に見つからないということのために、あまり物価を刺激するような感覚を持っていない。今までの電話というものが、相当金持でなければ電話が取れないというような事情もこれはあったかと思いますけれども、しかし、絶対金額からいえば、国民経済において電話料金というものが国民経済物価に響かないはずはない、非常に大きな金領になるわけであります。また、公共割引といったようなものが、実は電話の方には非常にない。学生は定期にあるいは学割に対して強烈な割引の要求を、値上げをする場合は反対をいたします。しかし公衆電話料金を、学生だから五円にしろということを絶対に言ったことはない。また電話を国会議員さんがただで使われるということはない、優先的に引くということはありましょうけれども、そういうことはないわけです。つまり電話事業というものの伝統的な、公共負掛をあまりやらないで済むという伝統的な利益がありまして、そこへ持ってきて、改良費込みの料金改定をし、しかも技術革新が非常に進んでおりますから、電話は画期的な発展をしている。国鉄はそこへいきますと、公共負担というものが、非常に目に見えるといいますか、運賃引き上げというものがすぐに生活費に響く、あるいは貨物の値段に響くというような、持っていきどころがあるというようなものでありますから、心理的に非常に響く。しかしながら、値上げの総額というものからいえば、これは国民所得あるいは国民経済に響かないはずはない。同じくらい、あるいはむしろ電話料金の方が近ごろでは——国鉄の半分的事業でありましたものが、もう三分の二的事業に変わってきております。さらに今の情勢でいけば、国鉄を追い抜くのではないかと思われるような投資計画を立てておる。電話一千五十万個計画というような計画も立てておるわけであります。私は実は読売新聞の三月十四日にちょっと書いたのでありますが、私は公共料金ストップという政策それ自身に反対なのでありまして、企業格差を解消し、経済の地ならしをして、その上に大きな経済発展計画を立てなければ、貿易自由化ということがどんどん進んでいるときに、竹馬経済のままではいけないんじゃないか、その竹馬的経済基盤の上に新しく膨張する計画を立てるということは、これが将来災いを残す、将来直せない、直すことがますますむずかしくなるという問題と、それから直接費をも償わないといったような公共割引的なものがありますと、安いものは売れるという原理が働きます。従って、安いものはどんどんふえていく、直接費をも償わないということになりますと、これは直接赤字になっていく。この赤字がふえていけば、ますますもって、公共負担を税金で出せということになるならば、国家の補助金はふえていくということになるわけでありますし、それから負担力のある一般の旅客、荷主に負担させろということであれば、その方の運賃を上げなければならない。ところが、これは競争でもって壁があるというところに限界があるということを申し上げたいわけであります。ですから、私は実は公共料金をストップすれば、それで仕事が済んだんじゃない。それはくさいものにふたをしただけであって、それはその他の公共事業は発展ができないままでいくのだということですからして、くさいものにふたをして、耳に栓をかって、知らない顔をしているということでは、問題はちっとも解決をしないのであるということを申し上げたいわけです。
  49. 大倉精一

    ○大倉精一君 大へん貴重な意見を伺いましたが、お互いに意見の相違というものはありまして、たとえば運賃と電話料金との関係につきまして、どうも私は若干意見を異にしているのですけれども、やはり運賃というものは、たとえば毎日、ニコヨン諸君といいまずか、失礼な言い方かもしれませんが、そういう人でも、運賃が上がったからしゃくにさわるから歩いていってやれというわけにはいかぬ。やはり十円区間が二十円になっても乗らなければならぬ。言うならば経済の膨張以前にそういう負担が多くなっていく。しかも、そういうボーダー・ラインというものは一千万人もおる。そういうことを考えますと、なかなか学問的には削り切れぬものが私はあると思う。でありますから、本来ならば自由競争でありますところの公共料金、公益料金というものが認可料金ということになって、国家がそれに干渉するということになってくると私は思う。でありまするから、今のお話でいくと、その他のたとえば地方鉄道、軌道、バスの料金は当分ストップだ。私は値上げに賛成するものじゃありませんよ、ストップだということになれば、片っ方の方で国鉄運賃を上げて値上げムードを作っておいて、その間において、そういう民間企業の部面に対してはストップをして、いわゆる政策の犠牲にする、政策負担を民間企業に負わせる、そういうような政策自体が私は一貫していないと思うのですね。あるいは先ほど公正なる利益あるいは平等なる利用者負担ということを言われましたけれども、現に私は一貫していないものがあると思うのです。たとえば赤字新線建設した場合におきましては、総裁達しで、その赤字新線に対しましては特別営業キロを設定しておるはずです。これあたりも、国鉄当局に言わせますというと、この線が赤字だ、この線が黒字だといって、線区別に赤字黒字を分類すべきものじゃない、こういう論議を展開されておるかと思うと、反面におきまして、この線が赤字だから特別の営業キロで特別の運賃をとるのだと、こう言う。この間に何ら一貫した運賃政策物価政策がない。こういうところに混乱があると思うのですね。今あなたのおっしゃったように、確かに竹馬経済で、上げるべきものを上げずにいって、けしからぬ、これは反対だとおっしゃるけれども、そういう理屈もあるかもしらぬけれども、二曲にやはり国民生活なり物価なり、その他の産業政策なんという広範なる政策全般の見地から、運賃料金というものを見る場合におきましては、いろいろ政治的な配慮が必要だと思うのですね。それが、あっちではこういう配慮、こっちではこういう配慮という、そういうちぐはぐな配慮というところに一貫したものがない。さらに進んで運賃の平等性、公正性というものが現実にそこなわれておる、こういうところがあるのではないかと思うのですね。  先ほども私が平山さんにお尋ね申し上げたところが、いわゆる電車やバスの運賃料金を上げずにおけば、国鉄の力からその面は割引か何かしてもらうよりは仕方がない、こういうようにおっしゃったのですけれども、これあたりも、すでにその辺から公平の原則というものが薄れておる。こういうことで、今の政府のやっておいでになることはどうも一貫したものがない。そこからさらに波乱が起こり、さらにいろいろなムードというものが起こり、あるいは心理的にいって重大な影響が出てくるのではないか。そういうところに今度の運賃値上げが非常に大きな問題になっておるのです。この前の運賃値上げにおきましては、一割三分か上がったときに一向に卸売物価影響しない、こういうことを言っておられますけれども、この前の社会一般の情勢なり、あるいは物価事情なり、あるいはそういう経済事情なりというものと今日とは非常に私は違っておると思う。この前こうであったから今度もこうであるということは、私ども言えないと思う。でありまするから、どうも今度の場合における国鉄運賃値上げというものは一貫した思想統一がない。こういうところに大きな問題があると思うのですが、もう一回、先生の御所見を伺っておきたいと思います。
  50. 細野日出男

    公述人細野日出男君) おっしゃる通り、一貫した政策がない、場当たり的な傾向があるということはある程度私もそうだと思います。しかし、三十二年の値上げのときに比べて、今度の方が一般社会経済情勢が悪いということはない。むしろずっとよくなった。国民所得は非常にふえております。一部にはやはり困っている企業もありますし、また困っている国民もいる。一千万人というような数字をあげられておるようでありますが、その程度は困っている人がいるかもしれません。しかし、あとの八千万人というものは相当生活程度向上している。その所得が向上しているという位置において、もっと交通関係のサービスをよくするということのための支出をするという能力はないわけではない。ところが、その一千万人とか、石炭といったような、いわば非常に工合の悪い状態にある産業を目安にして、そこを標準にして運賃料金をきめますと、それよりずっといい階層にあるところの企業個人にかかっていく分も、困っている人たちに均霑して、払わないで済でしまうということになる。これがいわば企業運賃制度、料金制度というものの均一制、つまり悪平等というところからくる避けがたい欠点であります。ですから、私なぞは、むしろ徹底して、困っている人、因っている産業に対しては国家が直接的に社会保障もしくは産業補助という政策をもって臨むべきであって、企業負担にするということは、ややもすれば悪平等を来たす。それは結局、払える人からもとらないということによって、発達させなければならない鉄道事業の発達を阻害するという結果になるということを私は申し上げたいのであります。  それから困っている人たちというものが大ぜいおることは事実でありますけれども、しかし、実はちょっと調べてみますと、困っている人たちでも、どこまで生活の合理化をやってなおかつ困っているかということになると、これは一千万人よりは減るんじゃないか。といいますのは、実はちょっと調べてみましたのですが、競輪だけでも三十四年の売り上げが六百六十九億ある。ところが三十五年にはそれが八百二十八億にふえておる。四千百二十日間競輪の興行がありまして、千八百八十六万人という大ぜいのものが競輪に行って、そういう金を使っている。これはささやかなる娯楽だという見解が競輪界の方からは出ておりますけれども、これはもう競輪に対しては世論の良識は反対なんでありますが、この反対をしり目にかけてこんなにふえておる。八百二十八億円という大きな支出がされておる。競馬に対しは六百七億、パチンコは千億円をこえておる。この数字は的確なものをうかめておりませんが、相当ある。お酒というものは税金だけで二千二百二十五億円という税金があがっておる。ですから酒の値段を入れますれば三千億以上飲んでおる。これはどんどんふえておる。たばこもふえておる。そういう消費がふえておりまして、酒やたばこはある程度慰安として仕方がないといたしましても、競輪や競馬といったようなことをやって家族を泣かせながら困っておる、それで運賃が払えないというような人たちは、競輪、競馬のようなものをやめてもらうということの方が先決、減らしてもらうことの方が先決、そのしりを国鉄へ持ってくるということはおもしろくない、そういうふうに考えるわけでありまして、妙な例でございます。  それから一般生活程度が上がってきておるということは、家庭電気器具の売れ行き一つ見ましてもわかりますが、二十八年に一台もなかったテレビが、三十四年度におきまして二百八十七万台生産している。合計六百万台といっております。電気冷蔵庫の普及率もどんどん伸びておる。家庭電気会社はどこも大へんなブームで、収益率も自己資本に対して四割から八割というような大きな収益を上げるというような状態である。こういったようなものを見ましても、国民がこういう方面のものの生活の合理化をやり、あるいはぜいたくを多少控えるということによって、必要なる国有鉄道建設改良の資金を生み出すための値上げぐらいは何とか消化できるというのが、私の考えの根本でございます。
  51. 大倉精一

    ○大倉精一君 これはまああとの質問者が控えておりますので、私はこの程度でやめますけれども、確かにテレビもふえました、あるいは「こだま」に乗る人もふえました。あるいは映画館もりっぱになり、ホテルもりっぱになり、ビルディングもりっぱになりました。なりましたが、依然として一千万人は一千万人、先ほど二重構造とおっしゃいましたけれども、一千万人といえば、日本の人口九千万人、九人に一人でありまして、われわれ政治家としましては、やはりこういう人をどうするかというところに思いが当たるものですから、いろいろ意見の相違が出るだろうと思います。競輪は私行ったことありませんけれども、聞くところによると、ほかに手段方法がないから、競輪場で一つもうけようという人がずいぶんあるようでありまして、ここにもやはり低所得階層の苦悩の色が現われておる。パチンコに出入りする人でも、私前を通りますと、なるほどこれは生活の苦悩をしておる人が来ておるように、服装から見ればそう思うのでありますが、こういう売り上げが多くなったということは、半面私はそういう世の中の苦悩が多くなったのじゃないかという気もするのです。ですから、運賃問題につきましては、一般物価と違った要素もありまして、であるがゆえに、政府としても公共料金ストップ、これは物価並びに国民生活影響があるからということをみずから認めておやりになっておるのです。運賃というものを私はもう少し学問的でなくて、政治的にやはり見る必要がある、かように考えておるわけなんです。でありまするから、まあ、私は今この場合、この段階におきまして、たとえば一三%値上げしたときの情勢とあまり変わってない。よくなっておるとおっしゃいましたけれども、なるほど景気はよくなっておるかもしれませんけれども、しかし物価とかあるいは国民生活の、今言ったような低所得階層国民生活なり何なりという、そういうような関係からいきますというと、相当その当時とは違った要素があるから、私はこの際、この場合には、国鉄運賃の値上げというものは適当ではない。やはり建設は他の方法を考慮すべきであるという考えを持っておりますが、これはお互いに意見の相違でありまして、大へんいろいろ貴重な意見を伺いまして参考になりました。ありがとうございました。
  52. 片岡文重

    ○片岡文重君 細野先生にちょっとお伺いしたいのですが、これは、できますれば蔵園先生にも一つ御教示いただきたいのですが、国鉄経営についてどういうふうにごらんになっておるかということであります。いろいろと御高説を伺っておりまして、筋として、賛否は別として、筋としての御高説はよくわかりましたが、国鉄経営内容といいますか、経営の方針、努力というものについての御意見をさらにお伺いしたいのでありまして、というのは、戦前はたとえば鉄道省時代においては、いわゆる鉄道大臣というものは場合によっては副総理格の待遇を受けておる。任期も半年とか一年とかいう短期ではなくて、相当長期にわたって積極的に国鉄育成の努力をされたように私どもは見ております。ところが最近においては、早ければ三カ月か五カ月、長くでも八カ月、一年という大臣はほとんどない。そうして国鉄の事務当局と政府とのまさにメッセンジャーボーイくらいしか、言葉が少し過ぎるかもしれませんけれども、やっておらないんじゃないか。国鉄の内容なんたるかも知らないで、就任早々すぐに運賃値上げに奔走をする、これが今日の政府のというか、大臣のやり方である。こんなことで国民が、はあ、そうですかというわけには、これは参らぬと思うのです。やはりその所管大臣がまず国鉄の内容を知悉して、初めて、ここに運賃を値上げするとか、押えるとか下げるとか、いろいろ、まあ下げることはないでしょうけれども、とにかくそういう確固たる信念に基づいた意見によって運営されてこそ国民は納得すると思うのです。従って、政府としても国鉄に対する熱意というものはそれだけない。内容がわからぬのですから熱の入れようがない、これが一つ考えられる。この点についてどうお考えになられますか、お伺いしたい。  それからもう一つは、国鉄当局はもっと私は経営を積極化すべきではないか。競争の激しい企業形態の中に今日置かれておるのですから、国鉄として旅客にあるいは貨物に、そうしてやった方が便利だ、利益だと考えるような施策については、どんどん積極的に乗り出すべきではないか。といって別にホテルを作れとかデパートを作れなどという、民営企業とあえて競争をしてまで、あるいは民営企業を圧迫をしてまでやれというのではありませんけれども、そういうことをしなくとも、いろいろと積極的な考え方を持てば、私はできる道はたくさんあると思うのです。  たとえば、これはほんの思いつきですけれども、今では長野あたりから千葉県房総半島の突端までバスで遊びにくるわけです。道路も御承知のようによくないわけですから、長野あたりからバスで房総半島を一周するということになれば相当疲れる。ところがこれは国鉄に頼むと、まず上野で乗りかえて、秋葉原で乗りかえて、千葉で乗りかえる。そうしてまた館山か千倉あたりで乗りかえなければ海岸に出られない、こういうことで、やむを得ずバスに乗る。ところがこれを国鉄の長野駅から増車をするなり、一本列車を立てて、上野、秋葉原で乗りかえしないように、金町を通すなり成田を回すなり、幾らでも乗りかえなしで来れる。そうして館山あたりで国営バスに乗せて、ゆっくり海岸を見せるということもできるわけです。ところが、これは車がない、線路容量がない、客車が足らないということで、そういう車両増備をやろうとはしない。まあできないのかもしれません。——これはほんの一例です。そういうことで積極的に改善の手を打とうとしない。銚子にせっかく秋サバがたくさんあがった。ところがこのサバの需要地は、一番ほしいのは大阪である。大阪へ送るのに、銚子で水揚げされたサバは小田原にバスで運んで、小田原から冷蔵車で、国鉄輸送される。まさにこれは国鉄経営者としては非常に恥ずかしいことではないかと思うのです、こういうやり方は。だがそれを打開しようという熱意がない。こういうことでもっと、私は消費者負担をかける前に、国鉄として、また政府として、この国鉄経営について考うべきではないかというふうに考えられますが、そういう点について一つ忌憚のない御意見をお聞かせいただければと思うのであります。ことにこの臨港貨物とか短期連絡等については私はもっともっと考うべきだと思うのです。それが一つ。  それからもう一つは、これはまあ全般の交通政策影響するのですが、たとえば私鉄とか住宅公団、土地会社等が勝手に土地を物色をして、勝手に住宅団地あるいは工場誘致をいたします。そうしてこれに関係する旅客、貨物輸送等について、私鉄が負担をできるところはけっこうですが、たとえば住宅団地の場合に、私鉄沿線で団地が造成されて、そこから都心に通勤をされるような場合には、たとえば新宿とか渋谷とか池袋、上野等にその私鉄が入ってくる。そこから先はもう一切私鉄としては責任を持たない。それが全部国鉄の中に流し込まれてくるわけです。こういう、交通政策としては何ら秩序のとれたやり方がなされておらないし、政府も考えておらない。これに対して、たとえば都市交通対策委員会とか、あるいは首都圏整備委員会の中の交通対策部門であるとか、あるいはその他いろいろと交通に関する委員会を作っておるようであります。ところが、これがみなそれぞれ勝手な方向を向いてやっておられる。首都圏なら首部圏全体を通して総合的に計画を立てて、そうしてしかもこれを、私鉄も東京都も、あるいは大阪の場合は、京阪神でも、大阪府でも、そういう国営であるとか私営であるとかを問わず、一切を総合的に調整し得るような秩序だった交通政策を私は立てるべきではないか、そういう努力が政府としてなされておらない。こういう無秩序な交通状態によって引き起こされる殺人的な混雑というものが、これまた国鉄の責任として追及をされねばならない。こういうやり方は、今後ますます私はひどくなるであろうと思うのですが、これらに対して現状のままでよろしいのかどうか、もっと私は秩序だった交通政策を立てて、そうして混雑緩和が、運賃だけではなしに、政策の面からそれが緩和されてくる、少なくとも今日以上に激しくなっていくようなことのないようにすべきではないかというふうに考えるのですが、私どもしろうと意見——これはほんのしろうと意見であるかどうか、一つ両先生から御忌憚のない御教示を願いたいと思っております。
  53. 細野日出男

    公述人細野日出男君) ただいま片岡議員からお話のございました交通行政、運輸行政の主管大臣というものの任期が非常に短いということは、これは私もほんとうに困ったことだと思います。戦後十五年間に、私勘定してみますと二十四人大臣がかわっておられる。そういった最高責任者がそんなに短期——平均八カ月ぐらいでありますか、一番長い方でも一年ぐらいというようなことでは、やはり十分に総合的交通政策を立てるということもできませんし、国有鉄道に対して指導監督というようなこともなかなか行なえないのではないか。国有鉄道はせっかく公共企業体になりましたが、これは公共企業体というものは、政府の行政機関から分かれて、独立した国の企業体として専念するということが立場であるのでありますが、実は国会との関係、政府との関係等は、すべて運輸大臣を通じて行なわれるという建前になっているはずであります。ところが、実際はなかなかそうはならない。国鉄総裁も副総裁も常務理事も、国会には期間中常駐していなければなかなか法案も通らないというような、こういうことでは、せっかくの総裁、副総裁、常務理事というような、経営に専念すべき人たちがエネルギーをその方に非常にたくさんさかれてしまうということでありまして、こういったようなことは、やはり運輸大臣がもっと責任を持って、政府関係、国会関係のことはやっていかれるべきではないかと思うのであります。総理大臣はかわらないのに、各省大臣がしばしばかわるというような戦後の慣行は、これは何とか改めていただかないと、大臣が最高行政の責任者としての機能が弱くなるということは、まさに片岡議員のおっしゃる通りだろうと思います。  それから国鉄経営あり方というものにつきましては、私はまあいろいろ考え方もございますが、やはりこれについては国有鉄道の方ですでに三十年ですか、国鉄経営調査会の答申が出ております。それから去年も日本国有鉄道諮問委員会の国鉄経営改善方法に関する意見書というようなのが、大部の調査報告ができておりまして、私はこれらの報告書に言われているところは、国鉄として忠実にやっていってしかるべきものだと考えております。  それから住宅、工場、団地といったようなところが、勝手に土地を選び、そうして交通機関があとからついていかなければならないような問題は、これは国の土地政策が皆無に近いというところに最も大きな原因がある。都市交通、首都交通の問題は、ことに私ども学者だけの研究会をこしらえまして、過去三年ほど取り組みましたが、やはり東京におきましては、少なくも交通企業の大統合ということを断行しなければ、根本的な問題の解決はないという考え方を持っておりまして、その報告書を出し、またいかなる方法でもって大統合をやるか、いかなる形の大統合体をこしらえるかというようなことも、法律の準案みたいなものまで学者グループだけでこしらえてみておるような次第であります。やはり、実はこの問題につきましては、首都交通の問題については、国有鉄道の任務が非常に重いということになっておりますが、国鉄の全国的な輸送という任務に対して、都市交通というものが同時的に行なわれておる。これが実は都市交通が国鉄にとっては非常な電荷になってきている。ことに財政的な見地から新投資をしなければならないという立場から申しますと、大きな負担になってきております。こういう点から言いましても、私はこの問題は政府当局、国会の当局においても真剣に御研究になっていただく必要がある問題だと思っております。
  54. 蔵園進

    公述人蔵園進君) ただいまの御質問三点につきまして、私の意見というものを申し上げます。  まず、第一点の国鉄経営、つまり大臣の問題でありますが、これはまあ御質問の御趣旨、それから細野先生のお話の通りであります。私もそのように考えております。  それから第二の点、積極的なサービスの問題でありますが、この点は、まあ大いにサービスをよくしていただきたい、これはわれわれ国民みなそのように考えておりまするし、国鉄当局にとってもその点についてはかなり努力されておられるのではないかとも思いますが、この点につきましては、私は二つ問題があると思っております。つまり第一は、事務的な面においてサービスを非常によくしていただくという点、それから第二は、本来の意味サービスということではなしに、むしろ積極的に大いに新しい線路を建設して、それによってサービスをやっていこうじゃないかというようなことなのでありますが、この第二の、大いに新しい新線建設などをやってサービスをよくしていこうじゃないか、あるいは自動車との競争上、どうしてもここに鉄道を敷かなければならないというような面における新規投資の面におけるサービスにつきましては、これは私述べましたように慎重にやっていただきたい。でなければ、これはいたずらに競争をするという観点だけから行ないますと、いたずらに自動車や船などと問題が起こりまして、国民経済的には二重投資というような問題が起こるわけでありますから、この点についてはぜひ慎重に扱っていただきたい、こういう意見であります。  それから第三番目に、非常に方々で私鉄や住宅公団などがいろいろなことをやって、そのために交通政策があとから追っかけていくというよう々交通問題が起こってくるというようなお話でございましたが、これは細野先生と同じように全く同感でありまして、このような事態を一日も早くなくしていただきたい。それは都市交通の問題であるばかりでなくして、日本の産業発展の問題でもあろうと思うわけであります。従って、こういう問題につきましては、現在の場合で申しますと、これはわれわれが幾らこのようなことを要望しても、どうにもならない点でありまして、これは皆さんの方で大いに実は考えていただきたいし、それから、そのために、現在の行政機構というものが、私は交通政策をそういうような観点で、総合的な観点で行なうような行政機構になっていないのではないかということを補足さしていただきたいと思うわけであります。  つまり、私鉄の問題にいたしましても、国鉄の問題にいたしましても、それから通路の問題にいたしましても、あるいは土地政策の問題にいたしましても、それから下水だ、それから水道だ、ガスだと、いろいろな点から申しましても、それらのいろいろな所管がそれぞれ違っておりまして、なかなか思うようにいかない。で、首都圏の問題がずいぶん積極的に取り上げられているようでありますけれども、それにもかかわらず、なおかつ問題が少しも解決されないということのうしろには、私はそのような政策を強力に遂行していくだけの行政的な機関というものがないのではないか、足りないのではないか、そういうように考えているわけであります。
  55. 片岡文重

    ○片岡文重君 私の質問が悪かったと思いますが、その積極的なサービス向上というのは、今日の新線建設等をさしているのではなくて、すでに既存のレールの上にもっと積極的な考えを出して、たとえば車両増するとか、あるいはその車両の使用方法について、運用について考えるとか、それから当然国鉄がやらなければならないような臨港貨物の収集とか、そういう点で、つまり民間との二軍投資になるのではなくて、国鉄自体が当然し、さらに国鉄によって行なわれることの方が肉月経済利益になると、こういう問題がまだまだあるのではないか、それに対する努力が、政府もちろん、国鉄当局も足らないのではないか。というのは、今までの国鉄経営の姿を見ておりますと、たとえば諮問委員会の答申等に忠実に従っていこうとされる、その努力はけっこうですけれども、その努力というものが、ややともすると経営の合理化であり、あるいはその経費の節約ということに向けられるわけです。つまり一言で言えば、非常に努力が消極的に向けられておる、経営に対して消極的に考えられる。そうではなくて、もっとその経営を積極化して、広げて考えたらどうか、こう思うのですけれども、どうもその点が足らないのではないかと思われる。この点一つおそれ入りますが、もう一度蔵園先生の御意見を伺いたいと思います。
  56. 蔵園進

    公述人蔵園進君) 私ただいま御質問の趣旨をサービスという点だけで、そのサービスの内容が二つあるというふうに申し上げましたが、御質問の議員さんのお話ですと、私の言った二つ意味ではなくして、一つ意味でございました。その点につきましては、これは全く私も同感でございまして、ただ単に合理化ということを国鉄内部にばかり目を向けて、つまり従業員の問題だとか、あるいは労働条件の問題だとか、そういうような点だけに目を向けてサービスということを言うのは、これはいささか的はずれではないか、むしろ積極的に外に向かってのサービスという点でございまして、この点では私全く同感でございます。
  57. 片岡文重

    ○片岡文重君 大槻さんに一つお伺いしたいのですが、先ほど平山さんからでしたが、側線が非常に少ないという話が出ておりますけれども、側線の少ないということも全く平山さんのおっしゃった遮りである。同時に専用線の延長も私は少な過ぎるのじゃないか。これに対して専用線を作りたい、国鉄で側線ができないのなら、会社として専用線をもっと設けたい、こういう希望が相当あるようですけれども、これに対して、今の国鉄の専用線規定は少しやかまし過ぎるのではないか。もっとオープンにというか、ラフに考えたらどうか。たとえば、国鉄の駅から工場地帯の奥の方にある工場が専用線を設けたいという場合に、その専用線を作りたいという会社が三つも四つも、あるいはもっとあったような場合に、共用する線がどうしてもできてくるわけです。そうすると、やはり私企業ですから、利潤追求の面からいって共用する部分の負担などということは好まない。その幹になるところから自分の工場へ来る分だけは引き受けるけれども、その幹になる分については、国鉄までの幹になる部分については出したがらない。かりに会社同士で出すと、今度はその代表者といいますか、管理者が問題になってくるというようなことで、なかなか今の国鉄ではそれが思うようにいかないという話を聞いております。で、貨物関係についての権威であられる大槻さんの一つその点でお考えを聞きたいんですが、もっと、今の積極経営ということにも関するのですけれども、そういう面は少し乱暴すぎるくらいに民間の便益をはかってやって、そして貨物等をどんどん吸収する。もっとも原価を割っているような貨物をどんどん吸収したのでは、ますますもって、これは赤字をかせぐことになりますから、それでは困りますけれども、やはりそういうことではなしに、経営の面においてプラスになるというのであるなら、あまりやかましいことを言わないで、積極的に吸収をしていくという方向をとったらいいのではないかと、こう思うのですけれども、そういう点について大槻さんどうお考えですか。
  58. 大槻丈夫

    公述人(大槻丈夫君) 最初の側線の話は、これは貨車の運用をいかにスムーズにするかということのにらみ合わせで、多くしたり少なくしたり、それぞれの場所によっての考慮があるだろうと思うんですが、そういった配車の面からの考え方によってきまっていくんではないかと思います。第二の専用線の問題につきましては、私たち全く同感でございまして、一昨年でございましたか、それまで協会としましてもいろいろ検討いたしまして、国鉄当局に常時要請をいたしまして、一昨年だったか、一昨々年でしたか、専用線規程はだいぶん緩和されましてよくなっているはずなんでございますが、しかしまだまだ十分とはいえない。ことに、これは両方の立場でございますが、先ほどの話の積極的経営の合理化といった面にもかかると思うんですが、専用線を引くという貨物は、これはもうほとんど、なんでございますね、ほかの競争からは逃げないというか、鉄道の一番固定したお得意さんになるわけなんですから、そういったような、まあ利益といっちゃ語弊がありますが、国鉄経営立場から見て、そういった固定したお得意さんを少しでも多くするようにという観点に立てば、必ずしもその専用線の敷設の関係だとか、あるいは保守の費用だとか、あるいはその中の料金の問題であるとか、そういったことをさらに緩和する、総合的に考えて、企業的に見ても、さらに緩和する余地はあり得るんじゃないかというように思います。さらにその専用線政策という点については、もっとどんどんそういったことが大きい工場なり鉱山その他でできていくように施策してもらいたいと、全く同感の意見でございます。
  59. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 先刻来それぞれ大へんお忙しい方が長時間にわたっていろいろと質疑応答が重ねられましたので、私、時間もないようでありますから、簡単に一つ二つ原口先生にお尋ねをいたしたい、かように考えるわけであります。  先刻原口先生のお答えの中で、どうしても料金引き上げには反対だ、しかも、われわれ労働者は一人当たり四千円からの負担の加重になる、こういうような結論のように聞いたのですが、原口さんは何といっても労働組合の委員長ということで、一千万人労働者の代表の方である、もちろん大衆のほんとうの代表者である、こういうような気持から私はお尋ねを申し上げたいと思うのでありますが、私の考えるところをこの際ちょっと申し上げまして、そしてお答えを願いたいと思うのは、私現在の運賃の値上げというのは、当然国鉄の近代化、いわゆるまた経済の成長という点にスライドしてそれらの施設をするということだけには、おそらくこれはどなたも異議のないことであろう、こういうふうに考えておる一人でありまして、先刻のラジオを聞いておりましても、毎年々々世界の人口が四千五百万ないし五千万ずつ増加するということをニュースでいっておりましたが、わが国の人口もそれと例外でなく、毎年々々相当の人口も増加するというふうなことから考えて参りますると、何といってもこの輸送という面はすべての産業の基幹である、こういう点から今日の国有鉄道の使命があろう。まあ高度な公共性を持っておるということになりましょうが、一面またこの企業性というものも十分生かしていかなければ、公共性一本で、そして経営が合理化される、経営が悪かったのを全部国民に転嫁されて、そうして政府負担する赤字の補てんをするというようなことでは、これははなはだ経営としてはゼロであろうと思います。そういう意味におきまして、三聖構造といいますか、公共性とまた企業性とのうまい一つのコントロールといいますか、ミックスによってそれを調整しているのが、今の日本の国有鉄道の妙味ではないか、そういうシステムになっていると私は思います。それでこの問題がいいか悪いかということは、これは別問題であろうと思います。これはいずれ後日そういうことを国会なりまた皆さん方のお知恵を拝借する場合もありましょうが、さっきのお話では、ともかく四千円からの負担が加重になるから反対だと言われますが、現在の国鉄経営、運営の面におきまして、私二、三多少与党という立場でありますけれども、率直に申し上げたいと思うのは、一昨年、昨年、あるいは本年もこれからでありますが、鮮魚の問題にしましても、冷凍車が足らぬために、途中で何十トンという鮮度の高い鮮魚が腐ってしまうというようなこと、あるいはまた、今度の雪害によって、国鉄の施設が満点でなかったというために、三日で解決する問題が一カ月もかかって、多数の人命を失うとか、また食糧輸送、それらに対しても大きな障害となっておったということ。最近私夜行列車に一回乗りましたが、何か夜中に非常に煤煙がどんどん入って参りますので、ボーイに聞きましたところ、ただいまトンネルに入っておりますということで、全くナンセンスものでありまして、いやしくも国鉄経営する上において、トンネルに入ったから煤煙が云々ということは、これは理由にならぬと私は思います。こういうこと、いずれを列挙いたしましても、結局国鉄に相当の大幅の投資をして、そうして施設を拡充する、また合理化するという必要のあるということは、これはもうだれが見ましても当然のことだと私は考えます。こういう意味におきまして、この今度の引き上げに対してはやむを得ず賛成すべきものだという考えを持っている私でありますが、先ほどの原口先生の四千円という問題につきまして、理屈でお尋ねするわけではありませんけれども、さっき通勤定期の問題ちょっとお述べになったのでありますが、二百キロで八百十円が千三百四十円となる、そうすると五百三十円の値上がりになるという、ごく大幅な値上がりのような御意見があったようでありますが、これと同じところでありませんが、やや似たところで東京−川崎、これを比較しますと、さっきのお話のように、二百キロで八百十円というのが、これが百八十二キロでありまして、やや似ております。それで七百九十円が九百十円となるのでありまして、百二十円しか値上がりにならぬということであります。われわれからいえば、百二十円といえども、あるいは五十円といえとも決して賛成——値上がりのみの面を見れば賛成するものではありませんが、先のお話のものとは相当大きい、四百円からの食い違いがあるようであります。これを別にあえて責めるわけでも何でもありません。ただ先ほど四千円というお話がありましたので、四千円というものは相当大幅の負担だなと私は考えたので、これは一応調査してみたところがそういう結果になっておりますので、今の点もお含み下さって、先刻冒頭私が申し上げたように、国鉄の性格から見て、またこの二面経営から見まして、どうしても国鉄の施設の改善をやり、また輸送を高めることによって、所得の倍増の裏づけとなる、また物価が安定するから、かえって逆なはね返りが大衆にくるのじゃないか、こう考えますが、この点についてはどういうお考えでございましょうか、率直に。理屈の問題じゃないと思います。
  60. 原口幸隆

    公述人(原口幸隆君) 四千円と申し上げたのは、国鉄運賃値上げ以前の問題で、ここ二年の間にわれわれの生計費というものが、諸物価の値上がりで、標準家族で約四千円上がっている。従って、これから国鉄運賃が上がれば、さらに生計費の中に占める割合がふえていく、負担が。従って、国鉄運賃を中心にしてほかの物価がさらに上がっていくとすれば、また、いく可能性もありますから、非常に大きな負担になる可能性を持っているという点をお話し申し上げたわけです。  それで私は二十キロ、八百十円という例を申し上げたのですけれども、結局、今国鉄という公共性の企業体であればあるほど、われわれとしては、国鉄自体の中で改善すべきこと、あるいは乗客のためにもっと合理的に改めてほしい点はどんどんやってもらいたいというふうに思います。そのやる際に、その負掛を受益者である国民負担をさせていく、大衆負担を求めていくということは反対だということを申し上げているわけで、結局、公共負担は国の補償でやってほしいというのが結論であります。先ほど来の議論の中で、お話の中で、一千万の低所得者、そういった人たちが、さらに苦しい状態に追い込まれることによって、どういうような影響がくるのか、あるいは日の当たらない産業に対する影響というものが実際にどういうふうに出てくるのかということになれば、国鉄の繁栄ということが多くの大衆や産業の直ちに疲弊々もたらす、あるいは社会不安をもたらすということを大局的に見る場合には、おのずからそこに別な政策というものが当然出てこなければならないというように考えております。強い者だけが残って弱い層は切って捨てるのだというようなのが政府の、政治の主であればやむを得ませんけれども、今度の国会の中でも、政府の方であげられておりますことは、所得倍増ということで膨大な設備投資が行なわれて、その出てきた生産量というものは、輸出には一五%ぐらいしかいかないのだ、あとは国内でそれを消化していくのだ、しかも、国内消化のうちの六%は健全なる勤労者層の個人の購買力によって消化をしていくのだというような言明がされました。そういう言明をほんとうに実施するためには、この際、一番低い層、被害を受ける層に対する配慮というものが非常に重要になってくるのではないかというように考えておる次第であります。
  61. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 その点は一応了解できる点もあるわけなんですが、あなたのお考えでいきますと、運賃値上げしないで、政府なり国がやはり補償すべきものだ、こういう御理論のように思いますが、国がやるということは、すなわち、一応国民負担するということで、全体の負担をするということで、そういうことは、やはり大衆が負担するという制度であって、今のような運賃に一部転嫁するということは、受益者といいますか、利用者といいますか、それに一つの線を引いての負担であって、大衆が乗らない人は何らこれに対しては負担をする必要がないというような、一つの二重経営になる。こういうことで二つ比較しましたときに、大衆に転嫁するというお言葉の中に、さらにそれを国が補償する、百パーセントまるがかえに補償するということは、経営の合理化とか、あるいはまた経営努力というものを無視して、そうして赤伊が出れば全部国民負担をさしてやろうという補償に通ずるというように考えられますが、そのはいかがでしょうか。
  62. 原口幸隆

    公述人(原口幸隆君) 結局、国が補償するということは、国民全体の税金によってまかなっていくわけですから、当然、国の予算の分配の問題に帰着するだろうと思うわけです。従って、適正な予算の分配という点で私は処理できるのではないかというように、結論的には考えております。なお、午前中の公述でも申し上げましたように、国鉄従業員の大部分をもって構成しておる労働組合が、運賃値上げをしなくても、こういう方法でやればできるのではないかという具体的な案を持っておるわけです。われわれとしては、やはり国鉄の事情を知悉しておる、そういう人たち意見というものをやはり政府なり当局なりが十分に聞かれて、そうして結論へ持っていくということが、私は非常に大切なことではないだろうかというように考えております。
  63. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 最後にちょっとお尋ねしますが、結論的に、そうすれば、あなたは公共性と企業性との二重構造経営がいいというお考えですか。公共一本で行った方がいいというお考えなんですか、簡単に。私はこれで終わります。
  64. 原口幸隆

    公述人(原口幸隆君) やはり国鉄という性格、使命からいって、これは企業体に本質があるのではなしに、公共性というものにやはり本質があるのではないかというふうに考えております。
  65. 谷口慶吉

    ○谷口慶吉君 関連して。原口先生、私、ちょっと一点だけ、実は割り切れないものを感じておりますからお尋ね申し上げるのですが、自分の身分を申し上げてどうかと思いますけれども、私は鹿児島県の農協の会長をいたしております。ただ、国鉄公共性と企業性という問題について、当然四百八十六億円に当たる今度の運賃改定の金紙は、国家が何かの形でこれをば負担すべきであるという、こういう御議論が非常に多いのですよ。ところが、国家負担するということになれば、先ほどもおっしゃったように、これは国民の税金で負担するということにならざるを得ないことはお認めになっておられるのですが、その際に、まあたとえば、国民が納める税金にもさまざまでございます。所得税もあり法人税もあり、あるいはたばこの益金が千三百五十億ぐらい一般会計に入っております。なおまた、先ほど細野先生が言われましたように、酒税が二千四百億もある。これはほんとうに大衆の課税になっておるのですが、汽車を利用しない人も負担してもいいんだという議論がどうしても私には出てこないのですが、その辺はどうなんですか。
  66. 原口幸隆

    公述人(原口幸隆君) やはり当然、予算の中で適正なる予算の配分ということで処理できるのではないかというふうに考えておりますが、国鉄に乗らない人に間接的に負担がかかるではないかというお話なんですけれども、やはりそのはわれわれは、たとえば、われわれの税金の中から自衛隊というものが作られておるわけですけれども、われわれにどういう関係になるのか、その辺も私個人として多分に疑問を持っておるわけなんで、いろいろ税金の使い方についてはそういった例がありますから一がいに言えないのじゃないかというふうに考えております。
  67. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 本日はお忙しいところ各先生方大へん有益な公述をいただきましてありがとうございます。私は参議院同志会に所属する加賀山と申します。  蔵園先生にお伺い申し上げたいのでございますが、先生が反対理由の第一にあげられた、とにかく資金の要ることはわかる、しかし資金調達の方法としてやることには反対だ、運賃値上げをやる、資金調達の方法としてやることは反対だとおっしゃって、これは政府の出資あるいは借入金によったらよかろう、こういうお話でございまして、私もその御所説はよくわかるのでございます。で、戦争中あるいは終戦後政府がもっと、先ほどから御議論が出ていましたように、鉄道のめんどうの見方が足りなかったということは一方にあると思いますけれども、しかし先生が言われた採算に乗らないものをなぜそういった資金を投入するのだというようなお言葉もあったように拝承いたしましたが、今度のこの国鉄の三十六年度の予定額を見ますると、一切がっさい含めて工事に使用いたします金額二千百二十億ということになっておりまして、そのうち国鉄収入からいわゆる自己資金としてその中に繰り入れるものが千百八億になっておるわけでございます。で、問題は、その中に今回の運賃増収によって現われる四百八十六億が含まれるわけでございますが、この中には収入は伴わないけれども、非常にどうしても国鉄として、いわゆる企業としてやらなければならぬ面が大部分が含まれておることは御承知の通りで、六百五十億程度のものが減価償却的な経費として入っておりますし、そのほかに公共対策と申しますか、これはあるいは踏切道をどうしてもこれは一般公共との関係でやらなければならぬ、これは収入はふえるわけではないのでございますけれども、その改善をしていかなければならぬ。あるいはいろいろな、信号、保安設備、これはそのいわゆる保安度、安全度の向上ということで、これも収入には関係ございませんが、安全確保の面からどうしても改善をしていかなければならぬ。あるいはまたサービス向上と申しますか、先ほどからお話が出ております通勤輸送にいたしましても、決してこの輸送力を高めることは、収入には返ってこないでも、ただサービスが高まって今より楽に通勤ができるということになるわけでございまして、そういう面の資金がどうしても私は見込まれる必要があると思うのでございます。そこで、そういう面をぜひとも今度の四百八十六億に期待したいというのが今度の趣旨と思うのでございまして、これを率然と、それじゃそれは必要なことは認めるから、借入金によったらよかろうということでございますが、国鉄の今までいわゆる負っておりまする債務は非常な金額に上っておりまして、三千億をこしておるわけでございまして、国鉄はその利払いだけでも年間二百二十億あるいは三十六年度から二百四十億、うなぎ上りに上って、これがまた非常な採算上の重圧になっている。これも先生御承知の通りだと思うのでございます。さような点から、全部もちろん運賃でまかなってやろういうのじゃないが、そのうちの大事な分をぜひとも、ことにそれが収入を伴わないというようなことであれば、これは借入金でやるのは、一般民間経営としても不健全なことでございますので、これを運賃に求める、それが非常な過度の値上がりならば、これは控えなければなりませんけれども、先ほどからお話が出ておりますように、非常な低位にもあることでございますし、さようなことから、やむにやまれず運賃値上げの案となったと私は承知いたすのでございますが、もう一度その点について御所見を承りたい。
  68. 蔵園進

    公述人蔵園進君) 私の意見を申し述べさしていただきます。資本の調達を、採算に乗らないものについてなおかつ借入金でやったらいいじゃないかというような御質問でございますが、私は資本の調達が採算に乗らないから借入金でやるという、こういう提案理由が私にはのみ込めなかったわけです。借入金でなければ、利子のつかない出資という考え方もあるはずなんであります。ですから、その点につきましては、私は借入金か、または出資ということを考えた意見を持っているわけでございます。具体的に申しますならば、たとえば踏切、先ほど御質問に出ました踏切の問題にいたしましても、この点につきましては、むしろ私の方からお伺いしたいくらいでありますけれども、現在の踏切の設備につきまして、どのような具体的な措置がとられておるかというような点、私はまあ不幸にして、または私自身が不勉強のせいかと思いますが、この点については少しも改善されているようなことを伺わないわけであります。たとえば建設省、それから地方公共自治体というようなものとの間の経費分担の問題、そのような点についてどのような処置をお考えになっておられるか、私にはよくわからない。そのような問題を残しながら、なおかつ踏切設備ということをやらんがために、金を運賃によって課するというのは、まだまだ問題の解決が少しも進んでおらないのに運賃値上げをやるという点において、私は疑問とせざるを得ないということを申し上げたわけであります。  それからまた、具体的な問題では、サービス向上、つまり緩和されるのではないかという点でありますが、通勤輸送が楽になって、この点について緩和されて、国鉄はさっぱり収入はあがらないのにサービスばかりよくした、それはどうしても運賃値上げによる以外にはないじゃないかということを御質問されたわけでありますけれども、私は現在の都市交通の問題にいたしましても、これは明らかに過去の累積がこのような結果をもたらしているのであって、一朝一夕にしてこういう問題が起こったわけではないのであります。従ってそういう意味では、ただ単に運賃を値上げすることだけによってこの問題を解決することは、ほんとうの解決にはならない。それよりもむしろ過去の累積であるということを中心にして、この問題の解決に取り組んでいただきたい、そういう気持から申し上げたわけであります。
  69. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 でございますから、過去の累積がこんなになってきておることは、これは事実でございしまよう。確かに先ほどからお話に出ておりますように、戦争中は比較的よくいっておって、一般会計に臨時軍事費として繰り入れたくらい、終戦後は、これは荒廃いたしましたけれども、インフレーションのために、なかなか運賃が追いついていかない。一番あとから国鉄運賃はしぶしぶ上げていただいたことが続いて、そしてそれらの間いつでもこの賃率は、国鉄が、これくらいまでしていただければということを申しましても、これはやはり低い方に押えられることは当然でございまして、低い方に押えられる。さようなことで、たとえば昭和二十三、四年から六、七年といったような時代には、われわれとして、どうしても八百億以上の工事費を注ぎ込まなければ国鉄の危ない施設の取りかえもできないということを主張いたしましたが、運賃自己資金がございませんために、政府のいわゆる予算として認められる、政府から予算として認められる金額は非常に減らされまして、五百億程度のものに抑えられておる。年々、つまり三百億くらいのものが資金として投入すれば、もっと早く老朽施設も取りかえられるだろうと思うのでございますけれども、そういう点でおくれてきた。これは先生が累積したということを言われるのはそのことだろうと思いますが、その通りでございます。そこで、今度の運賃が、一気にこれで何でもかんでも解決するということは、私どもも委員会の審議におきましても考えておりませんので、もちろん政府の今後国鉄に対する出資の問題であるとか、あるいはさっきお話のございました預託金制度の問題でありますとか、制度全般、会計制度にわたって、もっと国鉄企業体としてやっていくのにふさわしいような形をとってもらう。これは当然私は政府として考えるべきことであるというように要望しておるのでございますが、そればかりに頼りまして、今申しました運賃を今のままで放置いたしますということはどうしても、それだから運賃を上げないでいいじゃないかという御議論は、少し私は飛躍し過ぎているのじゃないかというように、大へん失礼でございますがお伺いするわけでございます。  それからもう一点、最後に述べられた、総合的な交通政策が確立するまでは運賃なんかいじるべきじゃないという御所見でございまして、これは私はどうも、ちょっと伺いまして、私としては理解ができない問題でございます。政府なり国としての総合的な交通政策がない。ことに、通路、港湾等を含めた政策が確立されてないことは、私ども常に感じておりまして、ぜひともこれはしなければならぬと思いますが、しかし、一方におきまして、このいわゆる交通政策以前の問題として、今日のように船あるいはトラック、バス、鉄道というふうに、いろいろの交通機関が競合しておりますると、まず運賃を適正なところに置く、そうしていわゆる輸送分野というものをその面から経済的に解決していくということはきわめて大事なことでございまして、一方の運賃が高過ぎて一方が安過ぎるということは、どうしても安い方へ流れて交通秩序を乱すことに相なるわけでございます。その面から交通政策を立てる上においてもきわめて支障になるのじゃないかと、先生の御説を批判するようなことを申し上げて大へん恐縮でございますけれども、私はさように理解をいたしますが、いかがでございましょうか。
  70. 蔵園進

    公述人蔵園進君) ただいまの御質問にお答えいたします。  まず第一の最初の点でございますが、現在の都市交通などの問題が過去の累積であるというふうに申しましたが、その点についてはまあお認めを願ったようでありますが、ただ、私がここでもうちょっと書いたかったことは、過去の累積であるということについて、国家が責任を負うべきであるということなのであります。従って、このような状態を来たしたということ、つまり、戦時中においてすでに国鉄が荒廃を始めた。ところが、戦後においてそれについて何ら適当な処置を政府として、国家としてその点について考慮してやらなかった、こういう点。しかも、なおかつ戦後は独算制というようなことを国鉄に押し着せたと。このような押し着せの中で、なおかついろいろな施策をやっていくということは、はなはだ困難であったであろうと思うわけであります。従って、そういうような点につきまして、ぜひ国家の方でやってもらいたい。しかも、これは運賃値上げのたびにこの点はすでに問題になっていることは、皆様御承知の通りだと思うわけであります。しかも、それが今に至ってなおかっこういう問題の解決が少しも進展していない。まあ、最近になってようやくそのような点についていろいろ議論されるようになりましたし、いろんな点で配慮されるようになったことは、われわれとしてはまあありがたいわけでありますけれども、しかし、いずれにしても、それがまだ基本的にそのような点についての配慮が不十分であるということなのであります。  それから、第二の御質問に移りますと、総合政策を確立した土でなければというふうに私は申しましたわけですが、それは要するに、二重投資をできるだけ避けなければならないという点があるわけであります。で、道路を作る、それから鉄道を作る。ところが、鉄道の方は朝晩二回しか通さない、道路の方は大いにバスをじゃんじゃん通すと、そういうようなことが行なわれておるのに、なおかつ新しい建設その他について、国鉄が自前でやっていかなければならないような状態をなくさなければ、この運賃の問題あるいは国鉄経営の問題がいつまでたっても解決しない。そのような問題の解決を先にやって、それまではそういうことをやって、なおかつこの運賃の問題を考えればいいのではないかという私の意見であります。しかもその場合、たび重なって、運賃値上げのたびにこういうことが言われながら、なおかつ運賃値上げが行なわれ、そのために経済界がかなり混乱するのではないか。それは運賃負担の仕方がいろいろ異なっているからであります。先ほどのことに関連して申しまするならば、あるいは運賃か税金かというようなことが言われたわけでありますけれども、私の考え方は、むしろ運賃か税金かというような考え方——運賃と税金とでは全然本質的に違うというふうに私は考えておりまするし、運賃の問題につきましては、これはできるならば安定した形でいつまでも継続的に、運賃はできるだけ変えない方がよろしいという意見なのであります。でなければ、日本のある一つ企業が投資する場合にいたしましても、一定の運賃を前提にして投資が行なわれるわけであります。しかも、運賃がたびたび変わるようなことがあるならば、企業といたしましては、これは非常に困った状態ではなかろうか、運賃というものはそれほどしばしば変えるべき筋合いのものではなかろうというふうな意見を持っているわけであります。それは、国民経済を発展させていく、ないしは一つ企業の興廃を決するような、そのような運賃改定というものは、当然やめなければならない、これが政策として当然のことではなかろうか。そういう意味で、いろいろな問題をかかえておりながら、なおかつ運賃値上げに踏み切ると、これはまた早晩、新しい運賃の問題を起こさなければならないような内容を持った運賃改定ではなかろうかということをおそれているわけであります。従って、国民経済を混乱させることではなしに、むしろ運賃というものをできるだけ安定した姿においていろいろな問題を解決することが先決ではないかと、こういうような意見でございます。
  71. 加賀山之雄

    ○加賀山之雄君 最後にもう一点だけお伺い申し上げて、これは細野先生にもしお答えがお願いできるなら伺いたいと思いますが、運賃の値上げ問題が起きますごとに起きます問題の一つとして、運賃引き上げがいわゆる物価を刺激して、物価引き上げはしないかという問題でございまして、これは当局が発表しております資料によれば、旅客、貨物とも、直接に影響する面は、パーセンテージとしては非常に高くはない、むしろ低いと、われわれが考える以上に低いということが考えられております。で、たとえば鉄道運賃というように大ざっぱに見られておる中に、大きな部分に、いわゆる荷作り、包装費というような問題があって、これは運賃なんかよりはるかに大きなウエート、パーセンテージを占めているというふうに私ども理解しておるのでございまして、運賃の値上げはそのまま物価にはねかえる面は非常に少ないんだということが言われるわけでございます。それよりはむしろ、今お話に出ております、これを財政投融資にそれじゃ回して、いわゆる借入金で、財政投融資として支出したらどうかという、まあこれは代案として考えられるのでございますが、むしろ景気を過熱したり、あるいは物価をつり上げることは、そのいわゆる投融資ならかまわないんだということも言えないので、この力の影響の方がむしろおそれなけりゃならぬのじゃないかというようにさえ言われておりますが、つまり、運賃値上がりによることと、これを借入金等で処理する、まあ財政投融資で片づけるということの比較考量の問題、これは私は程度問題だろうと思うのでございます。運賃もむやみに大きく急に上げれば、もちろん影響度は大きいでございましょうし、財政投融資についても同じようなことが言えると思いますが、それらの点について御所見が伺えれば大へんありがたいと思います。
  72. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 私も、加賀山議員のおっしゃることに同意見でございます。実は、低物価政策ということのために、過去において運賃その他の公益事業料金を低く押えてきた。ところが、それに対して見合うべき資金の供給を田がやらない。これを私は、一方的な低物価政策の押しつけということを申すわけでありますが、国家が通貨料金を安く据え置く、そのかわりにしかし財政投融資をするというならば、これはやはり投資不足は起こさないで済むわけであります。しかし、それをやらない、一方的に低物価政策をしわ寄せしたということが、今日の実態になっているのだと思います。  それから運賃引き上げれば、これは物価生活費に転嫁するということは、これはきわめてあたりまえのことでありまして、やはりそれは何がしかの影響を与えるにきまっておるのであります。しかしながら、従来のものをすべてそのままにしておいて、運賃引き上げだけをやれば、これは当然それだけ生活費が届くなったり、物価が高くなったりするということでありますが、必要なものならば上げなきゃならない。それに対しては、企業の面においては、超過利益というものを引き下げるということでもって、物価水準そのものは上げないで済むというところへいける。また生活費の方でもぜいたくなものは少し差し控えるということでもって吸収することができるということでもって、私は国民企業も、この上がるべき運賃、つまりサービス改善し、輸送力を増強しなければならないところの費用というものは吸収する努力をする。また政府もそれをさせるように思い切った説得力を発掘してもらわなければ困ると思うのでございます。実は生活費も企業もそのままであるという場合と違いまして、非常に発展的であり、国民所得が上がっておる。企業収益が上がっておるという状態でありますからして、これらのものは、運賃のこの程度引き上げというものは吸収して、全体としては物価レベルにそう大して影響がないような、心理的な影響がなかなか大きく言われるのでありますけれども、国民にその点をしてもらえば、それは要するにいいサービス、いいサービスを、よくなったサービスを買うのだ、それは原価が高くなっている、高くつくんだから、その原価分は負担するということに帰着するわけであります。財政投融資でやるか、運賃料金でやるかということが、物価水準全体に対してどういう影響を与えるかということは、財政投融資が国民貯蓄のうちから出されるか、あるいはインフレ的紙幣の増発といったようなことでもって行なわれるかということでもって、まあ物価に及ぼす影響は違ってくるわけでありますが、現段階におきましては、不換紙幣の増発によって財政投融資を行なうというようなことは行なわれておりませんし、また行なうつもりもないと信じますし、また、やってはいけないことだと思います。あまりお答えにならないかもしれませんが……。
  73. 白木義一郎

    白木義一郎君 私は皆さん方に一点だけ御意見を伺うことができたら伺っておきたいと思いますが、それは大衆の立場に立ちまして、先ごろから当委員会におきましても種々論議を尽くされております。また今日も有益なお話をたくさんいただきましてものの見方に両面があるんだ、いずれもそれぞれの利害得失の立場からの御研究あるいは御討論であったように伺って参りましたが、目先の問題といたしましては、すでに衆議院も通過いたしておりますし、それから予算も成立いたしまして、政府もがんとして所信を曲げずに、運賃改定に踏み切っているようでございますので、いずれ、残念ながら運賃は改定の必至の状態に立ち至っております。そこで、今日の混雑した運輸事情の中にはさまれて、乗客は非常に不安をもってこの問題の解決に目を向けているんじゃないかと思います。そこで国鉄総裁は、四十万職員に対しては子供か孫のような愛情をもって接してきておると言いながらも、その孫や子供の生活の問題について、いささかも積極的な気がまえを見せていなかったために、ついに職員はその生活向上のために、お客さんののど元を締めて、そうして汽車をストップさせても、おやじから生活費を巻き上げてみせる、このような行動に出たために、おやじもついに裁定に持ち込みまして、ここでベースアップが確立されたわけでありますが、国民としては、金がない金がない、こんなに混雑するのは、設備に投資をしなければならない、やむを得ず値上げをするのだといいながらも、ここで二百億の金を出さなければならない。そこで政府は五ヵ年計価を変更しなければならない、このような意見も出しておりますし、また総裁並びに副総裁は、あくまでも新五ヵ年計画は遂行していくのだ、その間には再び運賃改定はしない決意である、このような発表もしております。そこで乗客としては、運賃は上げられるわ、時として首を締められておどかされるわ、これではいつになっても国民としては浮かぶ瀬がない。どうしても改定をしなければならない情勢になった以上は、国民に対して、政府あるいはそれぞれの立場にある方々が、どう大衆に運賃改正を納得さしていくべきか、賛成方々も、消極的、やむを得ず運賃値上げ賛成する、せざるを得ない、このようなお気持の議論を伺って参りましたので、どうしても運輸大臣としては、運賃値上げサービスによって還元する、じゃそのサービスは一体何年たてばいいのか、何年乗客は運賃を投資したならばそのサービスを受けられるのか、こういうような不安も言葉にはならない現状ではございますが、不安をもって暮らさなければならないと思います。そこで近々の問題として運賃が改正されるならば、この広い影響のある運賃問題に対しまして、国民にいかようにしてがまんさせ、またいかようにしてそうならねばならないという、ごく感覚的な身近な説得といいますか、あるいは納得をさせる方法、そのような方法がもし御意見としてありましたならば、一言お伺いしておきたいと思う次第でございます。
  74. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 白木さんどなたに……。
  75. 白木義一郎

    白木義一郎君 なければけっこうです。
  76. 原口幸隆

    公述人(原口幸隆君) 国鉄の従業員の最近の仲裁裁定の話が出ましたけれども、実際は、公共性を持っておる国鉄の従業員の賃金というものは、民間というものは、民間の有力産業に比べると、今でも非常に低いわけです。従って今労働組合として、やはりこういう大切な生命に結びつくような仕事をしておる人たちは、特に保障されなければならないというように考えております。またこれは一つの具体的例ですけれども、今「こだま」に乗っておる運転士、これは優秀な運転士ですけれども、十九年勤続の人で、税を抜いた手取りが約二万二千円くらいです。こういうような状態で、激しい十河秒に一回のシグナルを見ながら仕事をしているわけでありまして、こういう実情をもっと国民の皆さんに知っていただきたいというように思います。さらに私の立場で申し上げれば、今度予定されておりますような国鉄運賃が実際に何の措置も施されずに実施される場合には、石炭産業、金属鉱山というような中において労使関係がさらに悪化をし、社会不安が出てくるということは必然だろうと思いますし、さらに国の基礎産業というものを政府が一体どういうふうに見ているのかということに対する重大なる疑問も出てくるというように考えておりまして、運賃の問題は、抽象的な国鉄の内部の問題というよりは、産業全体の中で消化をされて判断されていかないと非常に困るというように考えております。
  77. 白木義一郎

    白木義一郎君 乗客は、運賃の値上げがまた諸物価影響があるんじゃないかというような心配もしておりますし、また政府は、公共料金影響がないのだ、諸物価の値上げに対して影響はごく僅少だといいながらも、ついに公共料金のストップをかけなければならない、そういうような状態にあります。そこで私は、国鉄経営者としては、子供たちが、お客さんの首を締めながら小づかいをねだらなければならない以前に、もっと職員の生活というものに対して責任者はより以上の関心を持って、そして当たっていけば、もっと話し合いによって、この賃金問題もスムーズにやっていけるのじゃないかと思います。裁定まで持ち込んだのでは、払う方で、払ったつもりではいても、もらった職員の方としては、闘争してとったのだ、このような気持にならざるを得ないと思います。いずれも出す方は少ない方がいい、とる方は多い方がいいにきまっております。それから、今度は職員の方が総裁からベースアップを望む方法としても、お客さんに迷惑をかけるような取り方は、これは非常にまずいと思います。あくまでも利用者、乗客を職員の味方にしながら、おやじのすねをねらっていく、おやじは子供をかわいがりながら、子供が要求を出す前にごほうびをやっていく、子供の苦しい立場も察して、そしてみずから親たるべき者が職員の労苦をねぎらっていく、このような態度であれば、もっともっと国民に迷惑をかけずにこの問題が処理していけるのじゃないか、そういうような問題も、今後国民の不安として残っているわけで、国民に対して、運賃改定に際しまして、何らかの安心感、何らかの納得のいく所信の表明があればそれを伺っておきたい、このように思ってお伺いした次第でございます。
  78. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 公述人の方より別に御発言がないようでございます。この次は重盛君にお願いいたします。
  79. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 いろいろ御高見を拝聴したので、特に御質問申し上げることはないように考えますが、細野先生に一、二点、それから大槻さんに、立ったものですから、御両名にお願いしますが、私がお聞きしていると、大槻さんのお話からいくと、前段は、値上げすることも賛成であるけれども、できることなら値上げはしてもらわない方がいい。さらに後段において、いろいろな、率直に言うと条件をおつけになっておる。政府も十分責任を持ってやらなければならぬ。あるいは計画実施中には絶対値を上げてはならぬ。さらにまた、貨物輸送をするためには、これは貨車の増強をしろ——はっきりそのことが打ち出され、国鉄の現状からいくならば、あるいは反対の中にも賛成者が出てくるかもしれないけれども、私どもは冒頭から言うのは、国鉄のワクの中で考えても、そういうことは五ヵ年計画はうたっても不可能である。過去に実績を見まするならば、四カ年やって、その四カ年の中でまあ八〇%やらなければならぬのが六七%であったという、そうであったとしても、かなり国の経済状態、それから日本のあり方等からいくならば、当然八〇%はなし得たはずであるのができなかった。できなかった原因はどこにあるかというと、これは見通しの誤りでありまして、私どもの失敗でありました。このように総裁が答えた。ところが、今五ヵ年計画を始めて、白木議員の話ではないが、一方わずかな給与が引き上げるということだけれども、それを大へんたまげたことだという妙な感覚を持っておる。そういう中で、私は五ヵ年計画は非常に困難ではないか、困難だとするならば、あなたの御意見からいくならば、これは反対だということになろうかと思うのですが、その点おっしゃっていただけるような形でできるなら非常に幸いだと存じますが、私は非常に危惧を持ち、その他、先ほど来反対の方の公述の中にもあるように、ただ国鉄というワクの中でこの問題を処理してよいかどうかということが、一つ大きい問題になってくるのであります。そういう点をもう一つ考えて、私は大槻さんの場合は、引き上げをすることに賛成ではなくて、まあまあできそうもないことだけ並べているから、反対する方がいいんだというふうにちょっと聞えたのですが、あとでまた御意見は拝聴させていただきたいと思います。  細野先生ですが、細野先生の御意見の中には、非常にいろいろな幅の広い御意見があったのですが、ただ、その中で、私の聞き漏らしかどうか知りませんが、国鉄の現状、それから国鉄の運営のあり方というのは、私どもの言うように、公共負担というようなことを考えていいように考えられる。もちろん、この公共負担の問題では、まあ自民党の諸君が自分でやったもの、あなたの意見の中にもあった。自分がやったことについては、自分が使ったことについては当然支払うべきじゃないか。これは国鉄のワクというものの中で考えれば当然だと言い得るでありましょう。しかし政治全体から考えるならば、これはやっぱり、今おやじ論が出たが、おやじが働いて子供を食わしていくという場合もあるのであって、いわゆる税は納税負担によってやっぱり払われておるのでありますから、その一般的な納税負担によって払われておるものが、一千万に属するボーダーラインにおる諸君に若干の恩典がいっている。それが悪いという政治は私はあり得ないと考えるわけです。これは決して議論を吹っかけるわけじゃありませんから、お気にせぬように願います。  そういう点で、私は、そういう国全体の立場からほんとうにやるなら、もっと積極的にほんとうにこれでやり得ると考える、五ヵ年計画をやり得るのではなくて、当面引き上げなければならぬその中に、先生は御存じないでしょうが、私どもが議論した——議論というか、質問をすると運輸大臣はこういうことを言うのです。それはあなたお聞きになると大へんたまげる。公共料金引き上げというようなことは実はやりたくありませんと、経済企画庁長官も、全くこれは困ったことだと思っておりますと、こう言っておるのです。私は、先ほどちょっと平山さんに質問の中に触れたけれども、あらゆる物価の値上がりのムードというような原因は、所得倍増とか、あるいは特定議員の給与の引き上げとか、それからさらに、国鉄運賃引き上げというような経済混乱を引き起こす悪い要素が含まれておりはせぬか。それだから国鉄運賃引き上げというものは当面見送って、他の方法で考えたらどうだ。しかも国鉄経営ということに関しまして、さっきも触れたけれども、いいときにはどんどん使って、悪くなれば国鉄の使うものだけで今度はまかなえない、余ったときには国家の方に奉仕さしてやる、こういうふうに言われるが、国鉄がこういう事態になって、ほんとうに心配しているような事態に追い込まれたとするならば、やはり公共負担をやらせるのですから、公共負担をやらせる中には、なるほど自分の使った金は自分で払うということもあるかもしれませんけれども、未開発地を開発するときにも線路を敷かれたこともある。あるいは物資輸送のため、赤字を承知で敷かれている線路もあるのです。そういうものは必ずその人たち負担をしてやるということになれば、未開発地の開発にもならぬであろうし、また、特別の産業の振興の根幹にもならぬのではないかという理屈も出てくるわけでございます。そういう点等いろいろ考えると、国鉄の課税の免除、この点は先ほど電電公社と国鉄の例が出ましたし、これは先生十分御承知の土でおっしゃっているようですから、私ども御批判申し上げませんけれども、電電公社の立場国鉄立場では非常に違うわけでございますね。専売とか電電公社というものは、これは独自な営業を続けてやる、独自の立場でやり得る。国鉄には、私鉄あり都市交通あり、あらゆる競争機関がある。しかも公共性を持っておるというために多くの犠牲をしいられている。こういう環境の中にあるわけです。それはそういう施業の中にありながら、国鉄だけで独立採算制を一つ考えようというところに、大臣の答弁のむちゃなことが出てくる。それはどういう答弁をしたかというと、いわゆる経済の伸びにおいて、それを物価の上昇率に適応して、このくらい当然上げなければならぬということは、これはわからぬこともないかもしれませんが、そのときに、それじゃ一般のものはどうするかと言ったら、当分の間公共料金の値上げはストップすることは閣議で決定をいたしましたと言うのです。そうすると、国鉄は値上げはするけれども、たとえば都市交通、私鉄はほんとうに行き詰まっている。やっていけないというようなものに対してはこれはストップをする。大動脈の方は血は流したけれども、小脈の方は血は流れなくて、高血圧になってきてもかまわないんだ、こういう議論を振り回す。当分の間とは一体いつのことだ。まあ露骨に言えば私がやめるまでだということになるかもしれないけれども、そういう自分の在職中だけは責任を負うて国鉄運賃だけはやらしてくれないか、こういうことに聞こえるのです。そういうもろもろの情勢を考えれば、過去長い間の、いわゆるここであなたのお話しになるが、長い間の伝統国鉄経営、運営というものに対しては、現状では変えられない状態にあるやに考えられるということを仰せになったと思うのです。私はそこで、現状ではもはや国鉄の運営というものは、過去の姿より一歩前進せしあて、変えていかなければならない段階にきているのではないかというように考えるのでありまするが、その点先生のお考え方はどうか、私の聞き違いであったかもしらぬけれども、それが一点。  それからもう一つ、先ほど来いろいろな話から触れましたけれども、やっぱり自分で使ったのを自分で払っていくのはあたりまえじゃないかという御議論の中に、ただいま一、二の例を申し上げましたけれども、やっぱり赤字になる公共負担、そういう形、何らかの形も変えなければいかぬじゃないか、もっと率直に申しますならば、私はかりにこの値上げをのんだと仮定いたしましても、国鉄が言っているように、五ヵ年計画の完遂は非常に困難だ、現状維持がようやくではないか、結論から言いますならばこのように者えるものですから、せっかくおいでになったときに、いわゆるこの二点について御説明を願えれば幸いだと、かように考しえております。
  80. 大槻丈夫

    公述人(大槻丈夫君) 最初の新しい五ヵ年計画の問題について、何だか大槻の言っていることが端的にわからぬじゃないかという意味のお話だったと思うのですが、私案は先ほど申し上げましたことは、私たち全国で会員約一万名ほどございまして、三十の支部を持って運営しているわけなんですが、大体全国の支部長が意見を持ち寄りまし、まとめました最大公約数の意見でございます。特殊の物資につきましては、影響度その他の面から多少の異論があるにいたしましても、全体といたしましては、どうしても現在の輸送力を少しでもふやしていくということが第一なんだという観点に立ちまして、最小限度の運賃値上げはやむを得ないというのは、これは一致した意見になっているわけでございます。で、実は、それでは今度の五ヵ年の新しい問題と過去の問題とはどうであろうかということを比較して見ますると、この前の運賃改定が三十二年に行なわれたのでありますが、この前の三十一年の十月、一番集中繁忙期の取っかかりで忙しくなって、また神武景気の盛り上がってきつつあるときでございますが、そのときの国鉄の月間輸送量が千五百五十万トンでございます。一日平均にいたしまして五十万トン、ことしの三月、これが三月というのは必ずしも年間で特に忙しいときではないわけでございますが、千七百八十万トンで、一日平均が五十七万トンという輸送力になっております。従ってこの五年間に、一日平均に対しまして五十万トンから五十七万トン、七万トンの増でございまして、一四%の力がついている、こういうことは言えると思うのでございます。今度の新五ヵ年計画では、三十四年基準にいたしまして一二一%の増ということを計画しておりますので、過去五年間にふえた量よりも相当上回った輸送力の増強が計画されているわけであります。私たちそれによって多少とも現状以上の改善がされるというふうに期待しておるわけなのでございます。ただ、先ほどちょっと申しましたのは、所得倍増計画による生産の伸びというものが、はたして輸送にどれだけ響いてくるかという問題によりまして、多少その間に一二一%というのが小さいじゃないかという危惧される面があるということを申し上げましたのでございますが、過去の実績に比べましては、相当大きい増強の計画になっていると承知しておるわけでございます。  それから給与の値上げ、その他情勢の変化等によって、この五ヵ年計画が完遂できないおそれがあるのじゃないかというお話のように承りましたが、これは私たちも実は二百億の給与の引き上げということになりますと、国鉄が今回の五ヵ年計画財政計画の中に、どれだけ人件費の増が盛り込んであるかという点を詳しくは承知いたしませんので何とも申し上げかねますが、もしそれが非常に大きく負担になるということになりますれば、その点では五ヵ年計画資金計画に狂いがくるのではないかという点は心配いたすわけでありますが、その点は新聞等によりますると、責任大臣の運輸大臣も国鉄総裁等も、必ずそれにひびを入れないで、ほかの方法で何とか講ずるというふうに答弁されておるように聞いておりますので、私たちそういった責任者の言葉を信頼していくより目下のところは手がないだろうと思っておりますし、ぜひそれを期待しておる次第でございます。  それから、公共負担と申しまするか、国鉄内部のワクだけで考えるのはどうかというお説があったように思うのでございますが、それはやはり裏から請えば、公共負担等の問題についての政府の考え方というような問題と関連するかと思うのでございますが、公共負担といいましても、これはだんだん内容によって種類が違うというふうに思っております。たとえば新らしいローカル新線のような問題につきましては、これは先ほど申しましたように、必ずしも今急いで作る必要はないのじゃなかろうか、もしどうしても必要だということになれば、そういった先がはっきり赤字と見えておるようなものにつきましては、これは国鉄企業負担ではなくして、ほかの方法で考えるのが適当ではないかというふうに思いますが、たとえば定期の割引の問題でありますとか、あるいは赤字線区の問題等の場合におきましては、それを考えるより公共負担を云々というような考え方を持つよりも、先にやはり利用者負担ということを考えてやっていくべきではないか、こういう工合に思っております。
  81. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 重盛委員の御質問で、時間がたってしまい、まして、どうもはっきりしなく申しわけないのでありますが、国鉄経営あり方に何か革新があってもいいじゃないかということでございますか。
  82. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 長い間の伝統国鉄経営がやられてきたが、そのワクの中でやはり今後ともこういう程度の値上げはやむを得ないのじゃないかとおっしゃられたけれども、そういういわゆる長い間の伝統というものを変えてもいい段階にもうきてはせぬか、もっと新しい角度から見る方がいい時期にきているということはございませんかということです。
  83. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 公共企業体というものをこしらえたということが、実は非常に大きな経営の革新であります。この公共企業体というものを本来の公共企業体であるように持っていくということが、実は私どもここ数年来主張してきておる点であります。それで公共企業体に独立分離したということが、それほど効果を上げていないという面がありますことは、ことに自主性の問題、自主性が足らなくて、いわば政治の関与が非常に多いという点、この点を改めるということは、私は非常に望ましいことだと考えます。それから、いわゆる前だれがけ精神というものが役人——官庁時代に比べましてよほどよくなってきたと思いますが、これはしかしまだまだ改善する余地がある。これは経営者、首脳部のみならず、従業員全体の問題であると思いますが、公衆にサービスする、これは文字通りパブリック・サーバントとしての積極的な前だれがけ精神を発揮してもらいたいということは、これは先ほども御論議がありました点でありますが、片岡さんでありましたか、国鉄はもっと積極的なサービスを、たとえば長野から千葉の房総半島の先まで直通列車くらい出せというように、こういう企業意欲、これは確かに民間に比べますと少い。広告といったようなことも、国鉄は民間の鉄道やバス事業等に比べれば、積極的にやるという気分が足らない。この点は確かにそうであると思いますが、最近はしかし、いわゆるマーケット・リサーチというような積極的な開発をやる部局もできましたし、東京ではそれほど目立ちませんが、地方に参りますと、地方の局や駅などでは、かなり、たとえば観光団体を募集するといったようなことに対する積極的な動きというものがあるように思います。しかし、輸送力が不足だということのために、積極的なそういうものが制約されているという面があるということも認めざるを得ないと思います。  それから、国鉄の従業員の賃金が上がるということのために、五ヵ年計画の完遂がむずかしいのではないかという御意見に対しましては、私は三十二年の値上げが、やはりその当時の五ヵ年計画の完遂を理由として上げられたわけでありますが、給与の引き上げと退職金の増加というようなことに関連しまして、それだけではなかったと思いますけれども、五ヵ年計画が、たびたび御指摘の通り、四カ年でもって三年ちょっと分くらいしかできなかったというように、できなかったという実績を持っているわけであります。その点から、今度の国鉄予算を実は拝見していないのでありますが、国鉄予算の中に人件費増というものをどれだけ見込んでおられるかという問題でありますけれども、二百億がまるまる四百八十六億円に食い込むということはまあない。それを食い込みましたら五ヵ年計画は全く御破算になってしまうと思いますが、これはある程度はきめられた予算のうちから捻出されるものということで、四百八十何億円というものは、ことしは五ヵ年計画の第一年次分の大体はできるのではないか、問題は来年以降ということでありますが、毎年のいわゆる昇給というものは、毎年の予算で見られるのでありますし、好況状態におきまして、輸送量も相当大幅にふえておる。三十五年度は計数を拝見しておりませんけれども、予定よりはだいぶ増収になるように思われますし、この状態でいけば、第一年度よりは、むしろ第二年次の方がいいのではないか。ただし、第二年次にまたベース・アップが行なわれますと、これは前と同じようなことになってしまうと思います。ベース・アップ、実は私は個人的には、国鉄、電電、郵政といった事業というもののベースを見ておりますと、やはり国鉄が仕事の割合、仕事の内容の割合には分が悪いと思う。やはり国鉄の賃金はもう少し、深夜勤務だとか、危険が多いとか、常に公衆と接触する面が多いといったようなことから見ましても、もう少し格差があっていいのではないか。ところが、これがどうしても、労働組合相互間の関係もありましょうが、大体平等的、非常にわずかな格差しかない。戦前はもっと大きな格差があったわけであります。その格差が縮まってしまっているという点におきましては、国鉄の労働組合の不満ということもよくわかるのであります。しかし、その労働者のベース・アップの資金利用者でなくて税金から出してくれということになると、どういう考え方なんであるか、労働者の労働の価値というものは何に付加されるか、サービスに付加される。そのサービスを、利用したものが、その労働の価値をさらにとるということが、これが筋道だと思いますからして、やはり労銀が上がれば、運賃が上がるということは当然のことだと思います。しかし、賃金というものを経済的に申しますと、賃金の上がり得るものは、労働の生産性の範囲内においてである。物価を上げないで賃金を上げるためには、労働の生産性の向上の範囲内においてである。で、労働の生産性の向上なくして賃金の引き上げがあれば、これはすでに物価騰貴になるということになるわけであります。  もう一つ、実は私も、近ごろつくづく考えるのでありますが、税金というものは、これはフロラータ価格である。つまりアド・バロレムと申しますか、従価価格であります。ですから、国民所得がふえますと、税金の収入はふえてきます。ですから、税金で給与を出してもらえる公務員の給与の引き上げは、これは比較的簡単である、値上げという問題なしに行なわれる。ところが、ものを売ったり、サービスを売ったりする方は、これは価格が物量価格であります。ですから、物量価格の方は、国民所得倍増というようなことでもって、給与をできるだけ平均的に上げるのだということになりますというと、値上げをしていかなければならないという問題が起こるところに問題がある。私は、そういう意味から、アドバロレム的な税金から、公益事業等の労働者の労銀というものも、税金的なものから出すということの根拠が出てくるのじゃないかということを近ごろいろいろ考えてみております。しかしまだ、これははっきり結論的に自信をもって申し上げるほど研究が積まれていない状態でございます。
  84. 重盛壽治

    ○重盛壽治君 私のお尋ねの仕方が悪かったかと存じますが、お答えをいただかなくてもいいのですが、私は、税金によって給与を支払えとか、それから税金によって、いろいろしろということは、特に給与に対しては申し上げていない。税金によってやってもいいのじゃないかという……。一部は、たとえば先ほど言うように、産業の発展のために新線を引かなければならぬとか、あるいは僻地開発というようなために引く、そういうときに、あなたのおっしゃった、いわゆる、自分で使ったものは自分で出すべきじゃないかと……出したくてもそれを出し得るだけの、もっと率直に言うならば、国鉄全体のワクからいって、現在のような値上がりなり何なりにあたって、そういうものができない現状だということを私は申し上げている。従って、そういうものに対して国庫負担とか何とかいうものは別に考える必要があるのじゃないかということです。まあそれはそれでよろしい。  それからもう一つ、給与が上がったために五ヵ年計画が困難ではないか、そういうふうにお聞き取りになったようでありますが、私は、そういうふうには申し上げていない。わずかばかりの給与が上がったくらいで、運輸大臣は非常に驚いておる。所得が倍増に——五ヵ年計画か、十カ年計画かしりませんけれども、所得は倍増になる。そうして大臣の給与は三〇%も三五%も上がっている。一番ほんとうに前線に働いている諸君の方は一〇%足らずだというようなときに、その一〇%が上がったと、仲裁裁定というものが、こんな高いものを出すのかと言って驚いておる。そんな感覚で、五ヵ年計画ができるのかというところをお聞きしたはずでありますけれども、そこらは私の聞き方が悪かったかどうかしりませんが、そういう意味であります。  従って当然、今、給与は所得倍増を唱え、自分の給与がかりに三〇%か三五%上がったとするならば、きわめて近いうちに、三〇%は引き上げられるくらいの感覚を持たなければならないでありましょう。それに準じて、あらゆる資材が値上がりをしてくる。そういう資材の値上がりは、国鉄じかにはね返らなくても、全般——あらゆるものが上がってきたことは、やはり国鉄工事の上にも、あらゆる部面に影響してくるのだから、そういうときに、率直に言って、それじゃ、それだけの値上げをしたということで、九九年計画が遂行できるか、私はできないのじゃないか、そういうふうに申し上げたのであります。答弁は聞かなくてもよろしゅうございます。その給与が上がるために、五ヵ年計画ができないのだ、そうお聞き取りになったのだと思いますが、ちょっと違いますので、一言申し上げておきます。
  85. 小酒井義男

    小酒井義男君 関連、細野さんに、今、重盛委員の質問にお答えになったことと関連して、ちょっと御意見を伺いたいと思うのでございますが、先ほどから、公共負担か受益者負担かというようなことで、それぞれ意見が出され、御答弁があったのを私聞いておって感じたことですが、たとえば国民所得が非常なレベルになってきて、そうして全体の国民の所得がふえてきた状態で、運賃が非常に低くて、それに携わっておる労働者の賃金なども非常に低い。こういうような状態のときですと、やはりある程度運賃を上げて、そうして一般国民均衡のとれるような給料に、こちらも引き上げていく。そうして輸送力の増加もしていく、こういう状態ができてくると思うのです。  ところが現実には、たとえば一部の大企業においては、相当高額の給与ベースであり、しかもその中で、通勤費は会社負担というようなところもある。ところが日本の産業の構造を見ますと、非常に中小企業が多くて、中小企業の労働者というものは賃金も非常に低い。そういうような状態の中で、しからば、運賃をどうして適当なものにきめて、格づけをしていくかということが、なかなか私はむずかしい問題じゃないかというふうに思うのです。そこで、受益者が負担するべきであって、税金の中からそれを出すのはおかしいという、こういう意見ですね。  私は、現在国税の中に、給与所得者が負担をしておる税負担というものは、相当なウエートを占めておる。しからば、その給与所得者の納めておる税金が、はたして納税者である給与所得者のために、どれだけ使われておるかということは、やはりいろいろ問題点があると思うのです。それをまあどれだけになるかということは、これは予算の分析をしてみぬと、結論的なことは言えませんが、現在の場合、私のばく然とした感覚では、給与所得者の納めておる税金が、給与所得者の生活に必要な面に、どれだけ使われておるかということになると、納めておるほど使われておらぬのじゃないかという、こういう私は印象を持っておるのです。そういう場合、低額の所得者である通勤者あるいは低額の所得者である通勤者の子弟の通学に使うというような運賃を、これはある程度低い線に押えていく。そのために企業体に負担がかかっていく、あるいはそういう通勤通学のために必要な輸送力増強をしていかなければならぬ、こういうような部分に対して予算を使っていくということは、これは決して問題にならぬという話でなしに、一つの方法として、政策として、そういうことが考えられてもいいのじゃないか、こういうように私は考えるのですが、細野先生、御意見があったら一つ承りたいのです。
  86. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 税金というものは、アットラージが原則でありまして、払ったから、それに対して対価的サービスをやるというものではない。目的税だけが使途を一応きめたものであると思います。おっしゃる通り、私どももずいぶん税金を取られております。大学の講師をしておりますと、月に三千円ぐらいもらいますけれども、税金に地方税を取られますと——千三百何十円取られますと、三千円のうち、手に実質的に入るのは六割まで入るか入らないかというぐらいひどいのです。通勤費も何も出やしません。それほどな重税なんでありますが、そのためにわれわれ一体、政府に何をしてもらっているかということは、実は一つも思いあたるものがない。地方税に至っては、ことに道路か下水でもよくなってくれれば身にしみて思いますが、それもほとんど行なおれないというようなわけでありまして、実に不満なんであります。それについてはやってもらいたいということは、たくさんあるわけでありますので、お説の通り通勤者が税金を納めて、その税金によって見返り的に通勤費くらいは持てとおっしゃるお気持も確かに一つの御意見であると思います。  しかし私は、結局企業というものが、税金に頼るということ、つまり親方日の丸思想的なものが入ってきますと、それによって企業能率が阻害される傾向をもっておる。つまり企業意欲を阻害するという面をもってくるということと、いま一つは、先ほど申し上げました直接費的なものもカバーしていないというような場合には、税金で補給しなければならないものがどんどんふえてきて、逐年累増してくるというようなこと、結局、現在でも私はちょっと調べてみたのでありますが、国民一人当たりの国税は戦争前、昭和十一年当時に比べますと、六百倍くらいになっております。これは、払わない人は払わないのでありますが、払っているものは非常に弔いものを払っておるということになるのでありまして、要するに政府が税金で払えということにもっていくということは、政府が打ち出の小づちを持っているかのような態度が、いろいろなところから税金で払え、税金で払えというのを誇ってくる。国鉄という企業赤字的な公共負担を税金で持つということの優先順位といったようなものが、国家財政の税金を配分する中で、どの辺にあるかということが、これが結局問題なんだと思うのであります。  納税者の立場としましては、目的税以外は実は直接反対給付のない税金でありますから、とられるということは非常な苦痛に感ずるわけであります。サービスを受けて運賃を払うということの苦痛よりは、ただでとられるという税金の感じの方がずっと苦痛がひどいわけでありまして、今は日本の国民経済において、税金としては、相当重いところへきておるというところから、これ以上、増税というような方向へもっていって、そういう公共負担がカバーされるのでなくして、何か政府の支出において、もっと合理化が行なわれて、それから生み出されるということならば、私は賛成できると思うのでございます。
  87. 中村順造

    ○中村順造君 税金の話がいろいろ出たのですが、これは先ほども話がありましたけれども、税金についてはいろいろ考え方もありますし、また具体的に従来の例もあると思うのですが、何か特別な公共的なもの、あるいはその他の問題について税金でと、こういう議論が繰り返されておりますが、これはあながち税金の面だけ取り上げて、ここで私はとやかく申し上げるつもりはございませんが、例から申しますと、民間の私企業である外航船舶あたりは、国鉄の約三倍の利子補給を昨年やっておりまして、またことしも、そういうことが提案をされるわけであります。それから飛行機なんか、日航あたりにも、相当多額の税金がつぎ込まれておりますから、利用者本位か、税金でまかなうのがあたりまえかという議論は、私はこの際、差し控えたいと思いますが、そこで細野先生にお伺いいたしますが、朝来、いろいろのことを私は伺いまして、私なりの、ここにメモをとっているわけでありますが、公聴会でございますから、そのための議論を私はする用意はもちろんございません。ただ私の納得のいかない点を、一々ここで質問をするということで、解明をするということになりますと、非常に時間が長くなりますので、私の納得のいかない点だけを申し上げて、あと一、二の質問をいたしたいと思います。  先生のお話の中で、冒頭に、二十分の時間でお話しされましたが、今回の国鉄運賃というものは、大局的には賛成であるという前提のもとに、国民経済基盤の調整だとか、二重構造の解消だとか、こういうお話がございましたけれども、私は非常にこれは何と申しますか、靴の底から足をかくすような気がいたしまして、この点については、時間の関係もございましたでしょうけれども、先生の御説明の範囲では、なかなか理解ができないわけであります、私の力の足らない点かもしれませんけれども。国鉄運賃を一五%程度上げて、そのことが国民経済基盤の調整に、一体どう影響するか。従来言われている日本の経済の二重構造は、非常に根深いものがあるけれども、これにどこまでの貢献をし得るかということにつきましては、多分に私は成果的に見ても疑問があると思う。こういう点、私はまだ、理解ができておりませんけれども、質問はいたしません。  それから問題の、この公共負担を、独立採算の範囲でやるべきだと言われた中で、また公共負担は、国家財政負担を認めるのが、従来のしきたりなり、あるいは伝統上そういうことが許されておらない、こういうお説もございましたけれども、この点も、まだあの程度の説明では、私はまだ理解をいたしておりません。  それから、まして先ほど質問の中でございましたが、原口全鉱委員長の説明に対する質問がなされまして、国民の低所得階層、これに対する影響というものが非常に深いのだという、こういう質問に対しまして、先生は競輪とか、パチンコだとか、いろんなそういうものが非常に繁盛しているから、それほどに深刻でないというお話もございましたけれども、私どもこの点に対しましては、そういう競輪、パチンコ、あるいは今はやっておりますような、何か、ありがたや節とか、そういうようなものの状態は、これは一つの日本が非常に頽廃的な風潮を帯びたものでありまして、これは非常に、よってきたるものは政治の貧困にある、こういうふうに考えているわけでありまして、こういうことが非常に流行し、はやっている、繁盛している、そういうことで、国民の暗い階層の、いわゆる低所得階層というものの不安が、あたかも薄らぎつつある、解消しつつある、こういうふうな理解には、私は容易にたてないのであります。——議論すれば長くたりますから、議論をいたしません。質問もいたしません。  それから冒頭のお話にありました通勤、通学輸送の緩和でありますが、これも非常に、運賃値上げをしなければ、なかなかそういうことが実現しないというふうな印象を、これは細野先生だけでなしに、他の平山先生からも、そういうお話がございましたけれども、これは全く私は、事実認識が違う点かと存じますけれども、国鉄当局が計算をして、三十六年度予算として出したものの中、通勤、通学輸送の緩和対策としては、百十三億という金を見積っているわけでありまして、あながち、これは通勤、通学の輸送混雑を緩和するのに、運賃値上げと直接結びつかなければならぬ、こういうことも理解をできないわけであります。  しかもこれは国鉄当局自身が出している予算の中から見まして、容易に私は、国民はこれは理解ができる点だと思います。  そこで、先生にお尋ねいたしますが、益金という言葉が盛んに朝の御説明の中では使われております。そこでまず、これはざっと私が申し上げるよりは、普通の質問の形で伺った方がいいと思いますが、国鉄経営に対しまして、この赤字経営だという、いろいろ評価がされておりますし、先ほど私申しましすように、旅客においては二一%程度黒字を示し、貨物において七%の赤字だ、現行、この赤字黒字で埋めて若干の黒字だと、こういうことが言われておるわけでありますが、こういう点について、国鉄の今の経営状態、経理内容から見て、先生の言われる益金というのは、どういう解釈を下したらいいのか、この点を一つ、まずお尋ねをして、あとの質問を行ないたいと思います。
  88. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 経済基盤の再調整とか、経済二重構造の解消とかいうことは、一体どういうことだと、あれだけでは足らぬ、理解ができぬということでございますが、二十分の時間に制約されまして、まことに言葉だけ出しまして、説明をいたしておりませんので、ごもっともなことかと思いますが、それは結局物価体系において非常に上がってるものと下がってるものがあります。企業で非常にいい成績を上げてるものと、極端に苦しい経営になっているものがある。いわゆる二重構造は、いろんな面にあるのでありまして、都市と地方農村とか、あるいは大企業と中小企業とか、あるいは公益事業一般自由企業というようなものに、いろいろな格差ができております。これはしかし大企業とか中小企業とかいうのは、政府の責任には、大局的には違いありませんけれども、直接的なものではない。自由経済機構のなしたところである。都市と農村にしましても、それは政府の直接的施策の結果だとは必ずしも言えない。  ところが、公益事業関係だけは、政府料金の認可権を持っている。ところが政党政治におきましては、公共事業群は、利用者は常に国民、市民全体でありまして、これは全部有権者であります。従って、政党政治的に、このような機関がこれらの料金を決定するというときには、どうしても投票というものに引かれる。この投票は必然、有権者であるところの公益事業利用者は値上げに反対でありますからして、必要な値上げも実は延ばす、ささない、あるいは程度を低く押えるというようなことに、政党政治においてはなりがちなのであります。実は戦後の数年間は、国民経済復興のために過去の固定資産を持っております公益事業群というものは、ある程度低いレベルに押えられましても、持ちこたえる力を持っておったわけであります。しかしながらこれは永久に、そういう態勢ではやれない。ですから、経済が復興してきて正常状態に戻るといったようなときには、公共事業群でも、一般自由企業群でも、ほぼ同レベルのところへきていなきゃ困る。同レベルといいましても、公益事業の方は、独占利益は許さない。適正資本報酬の範囲に抑えるということが原則でありますからして、もちろんある程度企業格差はつきます。けれども、そのかわり一方においては、安定性が強いというところから、この投資層を誘致することができるということでいくわけなんであります。  ところが、戦後、たび重なる国有鉄道運賃引き上げの問題でも、選挙を控えたら、これは絶対にできない。それは与党といえども、普通この国鉄運賃引き上げをやって得になる気づかいはない。野党はもちろん常に反対をされるわけであります。ですから、選挙を控えたら、もうこれはできないということのために、時間的なずれが出てきます。  こういうことなんでありまして、私は実は基本的には民主政治の非常に進んだイギリスやアメリカにおきましても、公益事業料金の決定は政党政府が直轄をしない。基本的な料金原則はきめるけれども、個々のケースは、独立規制委員会もしくは行政裁判所的なものにさせる。ちょうど労働者の賃金、公務員の賃金が公労委でもって裁定されるといったような、こういう格好になっているわけであります。これならば、国会によって信任されたそういう行政委員会、もしくは行政裁判所のようなところが、国会がきめられた基本的な原則に基づいて、また個々のケースを扱うということをやることの方が、これがスムーズである。アメリカもイギリスも、民主主義の本山の国でありますが、そういう行き方をやっているわけであります。日本においては、国有鉄道については財政法三条の施行によりまして、二十三年の四月から国会が議決されるということになりまして今日に至りましたが、どうしても政党政治におきましては、必要なる値上げも利用公衆反対である、それは有権者であるということに関連しまして、どうしても値上げしない。そのことが積もり積もりまして、今日の物価のアンバリンス、企業格差というものを起こしている。つまり、健全なる発展ができてないような料金に押えられておって、その上に一般自由企業社会生活が築かれてしまうということになりますと、これは、低い者は苦しいから上がりたいという運動を始終せざるを得ないということでありまして、物価がいつまでたっても安定するということにならないということであります。  ですから企業格差公益事業と自由企業との本来の程度格差のところまで直すということをやって、その上に経済の発展ということを築くということが望ましいということでありまして、国有鉄道運賃引き上げだけが、その効果を持つということではなく、もっと各種の公益事業群の料金も皆、それをやらなければいけないのだ、国有鉄道は、ただその重要なる一環を占めているという程度のことでございます。  それからパチンコだとか競輪その他とかの例を申し上げて、これは、私がいかにも一千万の低所得者たちが、皆それをやっていると言っておるかのような印象をお与えしたかもしれませんが、とにかく八百何十億円というものが使われているのであります。これは、いろいろな社会的な弊害を出しながら、なかなかいわゆるヴェステッドーインテレストー——既存の利益享受者の存在のためにやめられない、地方公共団体一つの財源であるということもありますが、実はこれに寄生して生活している人たちが大きな圧力団体となりまして、廃止させないというようなことがあるのだと思いますが、どうもこういうものは八百二十何億円といったような、これは三十四年度の数字であります。三十五年度は、またふえているだろうというふうに推定されるわけでありますが、こういったようなものは、低所得者階級の中でもって、暮らしが悪いのに、さらにそういうところに行って妻子を泣かしている者が非常に多い。つまりそれらの人たちは、生活の合理化をしなきゃならないのに、生活の合理化をやっていない。ですから国としては、そういったようなものを、もっと締めていくというような政策をとられることが必要であるという、これはみずから生活の合理化や企業の合理化をやっている昔のみが、国営企業に対して公共負担を要求する権利があるのじゃないか、今、そういう考えでおります。自分たちの方は野放しにしておいて、国営企業にだけ公共負担を強く要請するというようなことは、これはおかしいじゃないかという考え方であります。  それから通勤、通学輸送についてのなにがございましたが、これは実は通勤通学輸送は、車両の増備の程度、あるいは停車場の改良の程度ならば、国有鉄道では、東京地区におきましては、電車区間では、相当に益金を上げておりますから、それをほとんど投入してやっているわけであります。しかしながら、線路増設ということになりますと、この投資の金額が格段に違ってくるということになりますから、そこまでは国鉄当局がなかなか、それに対する資本利払いといったようなことの目安なしには、なかなか踏み切れないというのが実情じゃないかと思います。これは私鉄は、一そうその点は激しいわけであります。   それから益金の意義ということは、これは益金という言葉を比較的きらわれますけれども、私は国営もしくは公営の企業だからといって、益金という言葉を遠慮するということはおかしい。むしろ剰余金なんていうわけのわからない言葉を使うよりは、はっきり益金という字を使った方がいいと思うのでありますが、これは国営企業の場合におきましては、利益を上げること自身が目的ではない。配当をすることも、国家財政収入に入れることも目的ではない。これは国営公益事業の場合には、もっぱらそれはサービス改善資金にするということが目的であります。けれども、サービス改善資金としての必要の限度のものを一般資金市場から、必要なる借入資金を集めることができないということが、これが過去の実情であります。しかるに投資計画としては、増強計画としては、これだけのことはやらなければならないという場合に、その一般市場で集めることができない。これはことに大蔵省が、そういう借り入れ、鉄道債券の発行の統制をやっているわけです。その統制をやっているために、どうしても認めてもらえない、しかしやらなければならないというようなものは、これは運賃ベースに入れて益金としては自己資金を補給するということをやっていいのじゃないか。それぐらいは認めなければならないんじゃないか。  実は電力の方では、公爵電力事業につきましては、電力料金算定基準におきまして、公益興業は、自己資本に対して五%の益金を認めるということを明定いたしまして、そして再評価積立金に対しましては、その半分の二・五%を認めるということを、去年の三月、きめたのであります。それは地方公共団体の公営の電気事業でありますが、国営公益事業におきましても、一般民営よりは少ない、率が低くて、当然でありますけれども、やはりある程度の率までの益金を、資本報酬の中に——資本報酬ではありませんけれども、——一種の民営公益事業における資本報酬と同じように認めて、料金ベースに入れるということが必要である。電気とガスについては、すでに実行されておる一わけであります。その他のものでは、それが比較的まだ、原価を償うことといったような条件の出しっぱなしでありまして、はっきりしていないことが非常に問題なんだと思います。
  89. 中村順造

    ○中村順造君 大へんあれなんですが、私は冒頭、これは公聴会でございますから、私は議論をしたくはないのですが、何かお言葉の中では、必要な引き上げも野党的な立場で認めないというようなお話がございましたけれども、これはまあ必要であるかないかという認定は、党が独自の考え方で判断をするわけであります。今の政府、自民党は、これは必要であると認めても、私の所属しております日本社会党は、必要でないと、こういうような判断もできるわけであります。これは別に、ここで議論する対象になる問題じゃないと思いますが、そういうことを私はお尋ねしているわけじゃないのです。私の具体的にお尋ねをしたのは、まあ益金の問題でございますが、先生の御説明の中で総資本対純利益と、こういうお言葉がございまして、国鉄の場合は、一%にも満たないのだ、民間産業では大体五%程度は、大体あることになっておると、こういうお話がございましたから、先生は、いろいろ総合的な判断をされる前提として、まあ重ねてお尋ねをいたしますが、国鉄の総資本を、どのように評価をされておりますか。ことに利益というものを、純益金というものを、どこに認められておるのか、その点を私お尋ねしておるわけです。
  90. 細野日出男

    公述人細野日出男君) この一般企業の方の総資本収益率というものは、経済企画庁調査局編さんの経済要覧、一九六一年版の企業の業種別財務比率及び利益率というのからとっております。これは各種の企業について一々、三年間の上期、下期のものが出ております。  で、国鉄の場合、私がとりましたのは、実は総資本の分をとりました。この総資本の分というのは、これは国鉄の貸借対照表における資産の部の合計額、これを総資本といたしました。それに対して、その年度の純益金というものを分子にして出した数卓でございます。これが企画庁の方の数字と、これならばまあ、ほぼフルに対比できるのじゃないかと思って、自己資本に対する収益率を出した次第でありますが、これは、この企画庁の方の数字では出しておりません。  私は去年の九月期の個々の企業については、貸借対照表の公表があります資料につきまして、ある程度調べておりますが、これは自己資本収益というものは非常に高い。自己資本——つまり株式資本と、それから内部留保金、それから再評価積立金といったようなものがありますが、こういうような合計に対して、年率に直すと、四割から八割にも達するような企業が多い。これは東京株式市場上場のような大体大企業系統の会社でありますけれども、小さなものは、なかなか数字が手に入りません。小さなものはこれより、一般的にいえば、もちろん悪いと思います。しかし国有鉄道の場合は、自己資本に対する収益率というものは、自己資本は八十九億円の資本金と、内部留保の方は、ほとんど益金がありませんので大したものがないわけです。あとは再評価積立金、——電力料金的にいきますというと、再評価積立金に対しては、半分しか認めないという行き方でありますけれども、国鉄の場合、自己資本に対する収益率——まあ自己資本は、借り入れ資本が現在ずっと前の国鉄に比べれば、すっと割が少なくなっておりますからして、自己資本収益率に直せば、少しよくなります。しかしながら一般企業——自由企業の自己資本収益率は、もっとずっとよくなりますから、相変わらず格差は非常に大きいわけです。この格差が大きいということは、要するに国有企業の方では非常に資本効率の悪い、まあ安い、安くしか回っていないような、そういう料金を使って、実は民間自由企業は、非常にもうけを大きくしているということを意味するわけであります。まあそういうことが、いわば企業格差——それで、これは実は国有鉄道の場合は、そういうふうに資本効率が悪くても、資金は株式資本を集めるわけじゃない、財政投融資をしてもらったり、あるいは七分の鉄道債券でもって、国鉄という信用力、あるいは政府保証という信用でもって集めることができるという面が、これは民間の公益事業とは違う点でありますが、ところが、民間の公益事業、たとえば電気事業だとか私鉄だとかいったようなものは、そういうための格差が大きいと、資本が集まらないわけであります。自己資本は、なかなか集めることができない、他人資本ばかりによれば、企業資本構成が非常に不健全になるという非常に困る問題をかかえておりまして、そのために各企業の拡張意欲がなくなっていくという事実であります。私鉄と国鉄とは、実はある面においては競争をしておりますからして、運賃的にも、これはほぼ似たような体制をとらなければならないのだというところに問題点があると思うわけであります。
  91. 中村順造

    ○中村順造君 私は、非常に単純に質問をしたつもりでございますが、大体、先生がパーセンテージでお示しになりましたから、やはりその根拠になる数字をお尋ねしたわけです。特に、電気のことをいわれております。私は、国鉄の場合における益金を幾らとみるか、どの部門を益金とみられたのか、それから総資本を幾らと認定されて、そういう数字をはじかれたのか、こういう点をお尋ねしておるのです。
  92. 細野日出男

    公述人細野日出男君) この数字を申し上げますと、三十二年度は、総資本二兆三千百三十九億円、三十三年度は二兆三千七百二十一億円、三十四年度二兆四千六百七十四億円、当期利益金が、三十二年度二百二十六億円、三十三年度百一億円、三十四年度三十四億円、これは昭和三十四年度鉄道要覧によった数字であります。
  93. 中村順造

    ○中村順造君 ちょっと話が数字的になりまして恐縮ですが、そういたしますと、この総資産というものは、大体二兆円前後と算定をされておるわけですね。そこで、私は別なことをお尋ねをするわけですが、先生のお話の中にございました減価償却ですね、減価償却というものは、大体一般企業と比べて国鉄減価償却の率ですね、これは、昨年とことしと、だいぶ違っておりますが、この程度で適切であるかどうか、民間と比ベて——民間は、大体どのくらい減価償却をしておるか。  これは、いろいろ企業体によって違うと思いますけれども、類似の産業等で、先生からお示しいただければそれでけっこうだと思いますが、お尋ねいたします。
  94. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 民間では、これは法人税法でもって、コストとして認められる減価償却費というものはきまっております。ただ、それ以上にやっておりますところがかなりあります。また、これは日本の例ではまだないかもしれませんが、特に補助を必要とする事業については、ドイツあたりでは、海運に対しては非常に短期の減価償却を認めるというようなことをやりまして、これは結局、税金がかからないので、費用として落とせる、早く減価償却をやってしまって、外国との競争に勝たせよう、そういうことをやっております。  日本の国有鉄道減価償却費は、これは数年前行政管理庁から批判が出まして、私ども交通学会では、だいぶ討論したことがあるのでございますが、有形固定資産に対して、大体三十何年一回りぐらいのところでやっておられる。民間の率にほぼ近い。これは私より、国鉄当局の方がよく御存じでございますけれども、大体、民間の法人税法で一応きめておりますリストに近いところでやっておられるのだと思います。それで行政管理庁では高過ぎるという批評を一時したことがございますけれども、その点は、国鉄の大体従来のやり方が、そのまま行なわれておると思います。
  95. 中村順造

    ○中村順造君 私は、ここに持っておる資料では——先生の言われる益金ということが、まだ明確になっておりませんからあれなんですが、問題は、肉欲が運賃値上げを織り込んだ予算ですね、予算を見ましても、収入の分として四千七百十七億、こういうふうになって、大体運賃収入が四千五百三十三億だと思って、パーセンテージにして九六%ですか、大半を占めておる。それから経営費として三千二百四十億というものが、これは割合にして六九%ですか、こういうふうにして、あと小さいものが利子とか、あるいは債券の取り扱い処理費だとか、予備費だとかありますけれども、大体、こういう割合でいきますと、私は、こういうような理解を受けたわけです。先生の朝のお話で、大体その益金というものが、非常に先生のお説では、高く評価をされておる。いろいろの問題は、いわば益金で処理をせよと、こういうことがいわれて、しかも国鉄には益金がないのだ、だから運賃値上げに求めなければならぬと、端的にいって、必ずしもその通りではございませんでしたけれども、先生のお説は、そういうふうに受けとれるわけです。  ところが、国鉄の、これも三十六年度の予算でありますけれども、やはり四百八十六億という値上げの額を差し引いて議論しても、かなりそこに余裕があるというふうに数学的に見まして見えるわけです。しかも私お尋ねしておるのは、この一千百八億という、パーセンテージにして二三%、昨年は大体五百九十九億で一六%程度だと思いますが、私の計算では、こういう、いわば減価償却に見合うような措置として、工事勘定に繰り入れておる。こういたしますと、こういう事実から、予算の具体的な数字からみましても、金がないから、結局ものはやれないから、運賃値上げに求めるのだという議論は、この場合、国民の側としては納得できないのではないか、これは、いろいろ法律的にきめられた面もあるでありましょうし、また債券の余裕からも判断をされる場合もあると思う。しかしこういう調査でみますと、国鉄がいわれておるように、一千四年度におきましては、あるいは前年度におきましても赤字は出しておらない。赤字は出ておらないということは、若干の益金はあったと思う。しかもそれは国鉄自身の決算の報告によりましても、その中から私どもが判断をすれば、必要以上多額のいわゆる工事勘定の方に、多額の金を注ぎ込んでおる。来年の予算で見ましても、今申しましたように千百八億パーセンテージで、二三%という巨大なものを工事勘定に繰り入れる考え方をしておる。なお一般のいい方としては、国鉄には金がないから、五ヵ年計画はできない。だからこれを運賃値上げに求める、そこに、先生の御説明の中に入れて私は質問しておるわけですが、必ずしもそういうことになっておらぬのじゃないか、こういうふうに考えるわけですがね。  私これで質問を、あとまた同僚議員がいたしますから、やめますけれども、そういう点を一つ解明できれば、一般のいわゆる企業公共企業体でない企業体、あるいは社会通念的に見て、そういうものの考え方がいいのか悪いのか、具体的に数字を、私ここにお示ししたわけですから、それについて、一つ具体的な数字に触れて、パーセントでも何でもけっこうでございますから、そういう面で一つ、お答えをいただきたいと思います。
  96. 細野日出男

    公述人細野日出男君) 私も三十五年度は、実績がどうなるかわかっておりませんし、三十六年度の予算案も、実は、三十一日にここへ出るという話をいただきましてから、大阪方面に昨日まで旅行しておりましたので数字をいただいておりませんから、三十六年度の数字を拝見しておりませんので、今お示しをいただいた収入四千七百十七億円、そのうち運賃収入が四千五百五十三億円で、経費三千二百四十億円、営業経費は六十九%になるなら大したものだと思いますけれども、これは私、三千二百四十億円の中には、何が入っているのか、何が入っていないのかわかりませんので、この差額が純益になるのかどうか、私にはちょっと判定がつきません。あらためてこの予算の面の計数を拝見しないと、何とも申し上げられません。
  97. 中村順造

    ○中村順造君 昨年の予算、ことしの予算、まだ昨年のは出ておらない、一昨年のはわかっておるわけですが、三十六年度は、まだごらんになっておらぬということなら、具体的な数字をあげて大へん恐縮でございましたが、お答えをいただかなくともけっこうでございますが、私がお尋ねしたかったのは、四千七百十七億の損益勘定としてあげられた金額の中で、運賃収入が四千五百三十三億、それから経営費として三千三百四十億、六九%、その他としてあげられておる四千七百十七億から三千二百四十億を引いたものとして、どういうものがあげられておるかと申しますと、従来の借入金利子及び債務取り扱い諸費が二百四十九億、五%、それから予備費が八十億で二%、受託工事費が四十億で一%、残りの千百八億、二三%を全部資本勘定に繰り入れられておるが、こういうことを、私はバランスの上に立って、一般の民間企業なり——企業体といっても、それぞれたくさんありますけれども、そういうことが、常識的に見て、あるいは専門的に見て正しいかどうか、あまりに過大ではないか、しかも従来、しばしば主張されておるように、赤字だから、五ヵ年計画ができないんだとか、金がないからできないんだということでなくして、こういう内部操作があるがどうかということをお尋ねしたのでございますが、お答えがなくてもけっこうでございますが、今後、何かの機会でお聞かせいただければけっこうかと思います。
  98. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 大へん時間もおそくなったようでありますが、簡単に蔵園先生にちょっとお尋ね申し上げ、かたがた今後のわが国の輸送交通に対するわれわれの参考にもいたしたい、かように考えましてお尋ね申し上げるおけであります。どうかお答えは最も簡単に率直にお答えを願えればけっこうと思います。  先刻先生のお答え、また御意見の御発表になりましたときに、今度の運賃引き上げに対しては反対だ、こう承ったのであります。次に内容的には、採算のとれないような、不採算線の路線に対しては中止せよ、こういうふうに承ったと思うのであります。それから、金が足りなくて、国鉄の施設の改善新線建設ということが不可能であれば、借入金でまかなったらどうか、こういうふうにも聞いたように思うのであります。それからもう一つは、全額国庫で負担する、こういうような御意見があったように思いましたが、もし間違っておれば訂正をいたしますが、この点、重ねて一つお尋ねしておきたいと思います。
  99. 蔵園進

    公述人蔵園進君) 最初の不採算線の問題を、もう一度おっしゃっていただきたいと思いますが。
  100. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 不採算線に対しましては、いわゆる中止をしたらどうか、新線建設であるとか、それらを中止したらどうか、それでいいんじゃないかというような御意見であったように承りましたが、その点について。
  101. 蔵園進

    公述人蔵園進君) 確かに、私、不採算線につきましては中止すべきではないかという意見を持っております。理由は、先ほど申しましたように、道路、最近における自動車輸送の発達ということを考えにおいて、この問題を解決をした方がよろしかろうというような考え方を持っているのであります。  それから、第二の、借入金でやったらどうかということでございますが、これは私は、借入金だけではなくして、政府出資というようなことも言っているわけであります。なぜならば、借入金という場合には、金利の問題が当然起こってくるわけであります。ですから、できるだけ安い金を動かさなければならない。でき得べくんば、それは利子を払わないでいいような資金であるべきである。特に鉄道が国有化されたということ自身、すでに鉄道が、もうからないからであります。これは、そういう議論を御説明する時間的な余裕もないかと思いますので、省略させていただきます。私は、国有化されたこと自身が、すでにもうからないという前提の上で行なわれたのではなかろうかという一つ意見を持っているわけであります。  それから三番目の、全額国庫負担の件でございますが、これは、国庫負担を行なうべきである。しかし、もちろん独算制というような問題、それから、その他経営内容がルーズになるのではないかというようなおそれをなくした上でのことでありますけれども、いずれにいたしましても、国庫負担、それはずっと述べて参りましたところでありますから、私、確かに国庫負担すべきだという意見を持っておるのであります。
  102. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 そうすれば、ちょっともう一回重ねてお尋ね申し上げますが、採算のとれないところは、中止したらどうかという御意見でございますが、これはあまねく国民といたしましては、どんな山間僻地に参りましても、無医村があってはいかぬ。それでひとしく文化の恵みに浴さなければならないというような考え方から参りましても、いやしくも国有鉄道という名目のもとに経営する以上は、採算に合わないからということは、ちょっと、われわれは考えられないことでありますが、さようなふうに、先生のお言葉を借りますと、日本の国有鉄道の将来は、やはり公共性が従となって、そうして企業性が優先するというような行き方がいいというお考えでございますか。この点を一つお尋ねいたしたいと思います。  それから、さらに借入金の問題でありますが、これは今回、本年度も、多少の利子補給をやるようでございますが、この借入金政府出資というものは、これは大体、性格としては同じような性格であります。むしろわれわれは今後外国のように、国営でやるか、あるいは民営でやるかというようなことまで、将来考えなければならないというような事態に入っておるのではないかと思いますが、先刻の不採算路線の中止といい、また政府出資といい、これらをいろいろ総合して考えますというと、運賃引き上げ反対というものは、あまり現状に即さない御意見のように考えるのでありますが、いかがでありますか。
  103. 蔵園進

    公述人蔵園進君) 不採算線を中止することが、文化的な、また国民経済的な意味において、はなはだ不都合ではなかろうかという御質問でございますが、私はこの点につきましては、先ほど申しましたように、これは文化的な、ないし国民経済的なものを、決して無視して、いるわけではない。  と申しまするのは、輸送は何も国鉄だけではないわけであります。先ほど申しましたように、自動車によるということもあり縛ることでありまするし、特に国鉄が、どんどん運賃を上げていくとするならば、むしろ自動車の方が安くなりはしないかというような懸念すら持っているわけであります。従って、そういう点では、私は非常に現実を無視しているつもりはもちろんないわけであります。  それから第二点、借入金政府出資と同じではなかろうかという御意見だったと思いますが、私は、借入金の場合と政府出資の場合とは非常に異なって、借入金の場合には、利子負担しなければならないわけでありまするし、政府出資の場合は、そうはいえない。特に設備も、長期にわたって設備に投下される場合には、むしろ民間企業であるならば、当然資本によるべきである。これは、私がここで申すまでもないところであります。  と申しますのは、企業には、総じて危険というものが、非常にリスクというものが多いわけであります。従って、そのようなリスクを、やはり負担できるのは、それは資本でなければならないわけであります。で、従って今回の問題とからみまして、政府出資ということを申し上げて、そうしてまた借入金ないし政府出資というふうに申しておいたわけであります。
  104. 鳥畠徳次郎

    鳥畠徳次郎君 ただいまの蔵園先生の御答弁、けっこうでございました。  これで質問を終わりますが、原口先生にちょっとさっきのことで、これはお答えを願わなくてもいいです。いいですけれども、さっき「こだま」の乗務員の収入が、一カ月二万二千五百円だとおっしゃったように聞きましたが、それは、ただいま私、あまりに、あれだけの長距離をフル・スピードで走っている激職としましては、二万二千五百円の待遇は、あまりに少ないと考えましたので、直ちに調査をしてもらいましたところ、ちょっと違っておりますので、それだけお耳に入れておきたいと思います。さっきの二万二千五百円というのは、本給が二万二千百円でありまして、それに、いろいろの旅費とか、あるいはまた労務給というものがプラスいたしまして手取り三万一千四百円となっておるようでございます。それだけちょっと申し上げておきます。
  105. 三木與吉郎

    委員長三木與吉郎君) 他に御発言ございませんか。——それでは質疑は終了したと認めます。  公述人方々には、長時間にわたり、きわめて貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。  これをもって、公聴会を終了いたします。    午後五時二分散会    ————————