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1961-03-01 第38回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月一日(水曜日)    午前十時三十分開議  出席分科員    主査 相川 勝六君       赤城 宗徳君    江崎 真澄君       保科善四郎君    前田 正男君       岡  良一君    木原津與志君       河野  密君    横路 節雄君    兼務 川俣 清音君 兼務 田中織之進君    兼務 永井勝次郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         国 務 大 臣 池田正之輔君         国 務 大 臣 小澤佐重喜君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         総理府事務官         (北海道開発庁         総務監理官)  木村 三男君         総理府事務官         (北海道開発庁         主幹)     角  政也君         防衛庁参事官         (長官官房長) 加藤 陽三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  小野  裕君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君         調達庁長官   丸山  佶君         調達庁次長   眞子 博次君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         総理府事務官         (調達庁総務部         会計課長)   鐘江 士郎君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     柏原益太郎君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房会計課         長)      丸居 幹一君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    久田 太郎君         総理府事務官         (科学技術庁振         興局長)    原田  久君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         総理府事務官         (科学技術庁資         源局長)    黒澤 俊一君         外務事務官         (国際連合局         長)      鶴岡 千仭君         大蔵事務官         (大臣官房長) 宮川新一郎君         大蔵事務官         (大臣官房会計         課長)     磯江 重泰君         大蔵事務官         (主計局次長) 谷村  裕君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         大蔵事務官         (銀行局長)  石野 信一君         農林事務官         (振興局長)  齋藤  誠君  分科員外出席者         総理府技官         (北海道開発庁         農林水産課長) 青山  俊君         防衛庁書記官         (経理局会計課         長)      赤羽  桂君         外務事務官         (国際連合局科         学課長)    栗野  鳳君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    吉岡 英一君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    泉 美之松君         大蔵事務官         (主計官)   瀬戸山孝一君         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         自治事務官         (税務局固定資         産税課長)   荻原 幸雄君         大蔵事務官         (国税庁直税部         長)      白石 正雄君     ――――――――――――― 三月一日  分科員河野密君及び佐々木良作委員辞任につ  き、その補欠として小林進君及び春日一幸君が  委員長指名分科員に選任された。 同日  分科員小林進委員辞任につき、その補欠とし  て河野密君が委員長指名分科員に選任され  た。 同日  第二分科員田中織之進君、第三分科員川俣清音  君及び永井勝次郎君が本分科兼務となった。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算皇室費国会、  裁判所会計検査院内閣総理府経済企画  庁を除く)、法務省及び大蔵省所管  昭和三十六年度特別会計予算大蔵省所管  昭和三十六年度政府関係機関予算大蔵省所管      ――――◇―――――
  2. 相川勝六

    相川主査 これより第一分科会を開会いたします。  昭和三十六年度一般会計予算中、皇室費国会裁判所会計検査院内閣経済企画庁を除く総理府法務省及び大蔵省所管昭和三十六年度特別会計予算中、大蔵省所管昭和三十六年度政府関係機関予算中、大蔵省所管を議題といたします。  質疑を続行いたします。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井分科員 最初に、公取関係についてお尋ねをしたいと思います。  独禁法の厳とした経済憲法があるにもかかわらず、最近の傾向としては、次々に独禁法をゆるめる法律が出されており、また、今後もその関係法律案が予定されておるという状況でありますが、独禁法基本がどのようにくずれ、また、くずれようとしているかということについて、率直に実情をお示し願いたいと思います。
  4. 坂根哲夫

    坂根政府委員 お答えいたします。  独占禁止法適用除外法が出てくるという建前で、独占禁止法運用といいますか、独占禁止法が緩和されるという工合にお考えになっての御質問のように拝見いたしますが、独禁法自体は、永井先生承知のように、昭和三十三年に独禁法審議会の結論を得まして、改正法案を得まして出しましたけれども、これは廃案になりまして、独禁法自体基本原則は、私はちっともゆるんでおらない、こう考えております。ただ、特定の産業において、特定の事情のもとに、臨時的にどうしてもある程度独禁法適用を緩和するといいますか、除外していくということが必要な問題が起きて参りますつど、その主管官庁公正取引委員会と協議いたしまして、そして独禁法趣旨が十分通るように、たとえば関連事業所に迷惑をかけないという消極的要件を十分しぼるようにいたしまして、その適用除外法規を認めている現状でございます。
  5. 永井勝次郎

    永井分科員 それならば、具体的にお尋ねいたしますが、横田委員長の時代に、中小企業団体法、これが本会議にかかりました場合も、長官は、これは了承しがたい、公取委員自身が、これは独禁法精神をはなはだしく害するものだ、立法精神を侵すものだ、こういうことを本会議でも何でも言っているじゃありませんか。そういうものがしゃにむに強行されておるという現実に目をおおっておられる。これはどうでしょう。
  6. 坂根哲夫

    坂根政府委員 ただいまの御設定の問題は、確かに中小企業団体組織法のときは、強制加入をめぐりまして、公正取引委員会として、その事務折衝においては、最後まで了承しがたいということを事務的にも申し上げ、横田前前委員長国会でもそういう発言をされたことは、私も記憶しております。しかし、その後の適用除外法運用につきましては、大体所管省公取との見解の一致したものを出しておる、こういう工合に私は考えております。
  7. 永井勝次郎

    永井分科員 それならば、独禁法が厳として精神を侵されておらない、立法精神を阻害されておらない、さらに、その運用の上において、完全かつ十分な形においてこれが運営されておる、こういうふうにお考えでありますか。
  8. 坂根哲夫

    坂根政府委員 ただいまの問題は、私どもといたしましては、法律建前上できるだけのことはいたしておるつもりでございますけれども、それは見方によりますと、少し勇気が足らぬのではないか、いろいろな問題もあろうかと思いますが、現行法建前上は、私どもとしては万全を尽くしてやっておるつもりでございます。
  9. 永井勝次郎

    永井分科員 これは、現在の公取陣容なり公取所属の職員の人々の、一人一人の諦観的な考えでこれを評価するのではなくて、経済全体の中における独禁法としての法律の中における地位、及びその地位に基づいた運営としての公取活動状況、こういうものを客観的に評価しなければいけないわけです。私どもとしてはという、そういう前提条件なんか無用だと思うのです。私は、あなたの主観を聞いておるのではない。独禁法公取あり方が十分な形においてなされておるのか、これで十分だとお脅えになるのか、こういうことを聞いております。客観的な評価をしていただきたい。
  10. 坂根哲夫

    坂根政府委員 客観的に評価する問題は、私は、この独禁法体系が、もちろん、独禁法が成立いたしました当時の型でそのまま存続しておるとは考えません。あるいは客観的に見てもそうであろうかと存ずるのであります。しかし、独禁法体系自体が完全であるかどうかということにつきましては、先生はそうおっしゃいますが、まあ、私としては、完全というより、公取に職を奉じておる者は、現行法のワクの中で責任を果たすべく努力をしておる、こうお答えすることになろうかと存じております。
  11. 永井勝次郎

    永井分科員 今、公取委員構成人的条件調べますと、ほとんど各省のひもつきが出張ってきておる、あるいは独占資本利益代表的な形において選ばれてきておる。こういう人的関係から見たって、けつにどういうひもがついているかということは、はっきりわかっているじゃないですか、どうですか。
  12. 坂根哲夫

    坂根政府委員 委員構成は、永井先生御指摘のように、大蔵省出身の方、通産省御出身の方、あるいは元内務省御出身の方、それから裁判所関係の方というように、それぞれの出身場所はございましょうが、しかし、それはもとおいでになった場所でございまして、私は、現在の委員は、委員会としては独占禁止法趣旨によって運営を行なっておられる、こう確信しております。
  13. 永井勝次郎

    永井分科員 私が今お尋ねしているのは、公取現状を科学的に分析し、そうして、その足らないものは、これからこれに付加し、補正して、正しいあり方姿勢を正さなければならない、その前提条件として吟味しておるわけです。でありますから、よそ行きに、ただ答弁のための答弁という必要はない。公取内部が、こういうひもつき人事で、公取の中の仕事をするというよりは、うしろを向いて、自分の出身ひもの方面の意向を体して、いかに公取の中で動こうか、こういうことで動いておることが、公取運営の上に一番悪い影響がある。この人的構成では十分な機能を発揮できないというのが、内部から出ている問題ではないですか。それをその責任者として、これは与党であれ、野党であれ、こういう問題ではなくて、公取というのは、もっと中立性を持った、もっと正しい姿勢においてやらなければならぬというときに、これを吟味しようというときに、そういうよそ行き答弁では私は納得できません。あなたの立場としてはなかなか言いにくいかもしれないけれども、これで十分だと考えるか、もっと公取中立性あるいは厳正な立場で職務が執行できるような形が必要とお考えになるかどうか、こういうことです。そうでなければ――本年度の予算の中でも、一課を設けて人員を増加したい、こういうことですが、現在の活動で不十分だという考えで、この程度のことは政府与党でさえ考えて、政府から提案されておる。われわれは、これではまだ不十分だから、もっとこれを強化しなければならぬという考え方に立っておるわけです。ですから、もっと率直に御答弁を願いたい。それとともに、独禁法があるにもかかわらず、過度独占方向へどんどん運んでおると思う。それから実際において、今潜在カルテルが相当にあると思う。こんなにたくさん潜在カルテルが組まれておるのに、これを正しくするのには現在の陣容ではもう不十分だ、私はこう思うわけです。そういう点において、公取に期待することと、それから実際に外に起こっておることは、それと逆な方向に動いておる。その逆な方向に動いておるものをチェックしなければならない公取陣容が不十分であるし、質的にも量的にも不十分である結果、十分な活動ができない、これを児のがさざるを得ないというのが、公取現状だと思います。そこで、これを強化しなければならないのではないかという考え方、それから、そういう一つの角度から再検討を要する段階にきておる、こういうふうに考えるがゆえに聞いておるわけです。もっと率直に答弁していただきたい。
  14. 坂根哲夫

    坂根政府委員 ただいまのお話は、二点に分かれておるかと思います。  第一点は、公取全体の機構弱体ではないかということでございますが、この点は、私どもはそれをほんとうに真剣に考えておりますから、今度の予算案の作成についても、いろいろ大蔵事務当局にお願いしました結果、今お手元で御審議になっております一課新設が、一応大蔵省といいますか、政府で認めていただいた予算・案でございます。これでは私ども不十分でございますが、一応そういう査定を受けております。  第二点は、カルテル活動が潜在化し、いろいろ問題があるのじゃないか、独占資本方向に向いておるのじゃないかということは、経済現実においてはそうであろかと思いますが、第一の公取弱体という点から――カルテル自体というものがなかなか頭を出してこないという問題、さらには独占禁止法で規定しておるところのカルテル規定といいますか、そういう法的限界を越えて、あるいは社会的、経済的にはカルテルと思われるようなものが動いておるというところに、いろいろ捕捉しがたいといいますか、むずかしい、つかみがたい問題があるのでございまして、非常に努力はしておりますが、第一の機構弱体化というような点から、今永井先生からいろいろ御批判を受けておる点が現われておろうかと考えております。
  15. 永井勝次郎

    永井分科員 所得倍増計画が進むその第一年目において、すでに経済界には大きな独占への方向が動いておる。また、物価関係におきましても、政府がどのような弁解をしようと、現実値上がりムードというものは大きな動きをしておる。生産性が上がれば物価が下がると言っているが、独占物資関係における諸価格というものは、生産性が倍に上がっても、実際には値段は下がっておらない。これは弱い方へしわ寄せがきている。あるいは親企業下請関係を見ても、支払いについての立法がどうなされようと、現実には、やはりあなた方の手形の済度は二百日だの、二百五十日だのというふうに、一年に一回払い、こういうことが現実に行なわれている。こういうものに目をおおうて、そうして、どうだ、こうだと一生懸命で言っている。現在独禁法があるので、仕方がないから、公取を置いてある。しかし、公取機能を十分に発揮させない、盲腸的存在にしている、半身不随のような人的あるいは質的構成にして、ただ、こういうものを置いてありますという弁解のために、見せもののために、公取があるのだ、実際には機能はほとんど果たしていないのだ、こういうことは、下請問題一つをとってみても、現実ははっきりしておるのじゃないですか。ですから、この独占状態がどういうふうに動いているか、あなたのところでお調べになったものがあると思うが、われわれの手元にあるものでは、これがだんだん強化される方向にある。これをどう考えられるか。それからまた、国会にかかりましても、一度これを分割したにかかわらず、また再び元の過度独占状態へ動かすような事柄が、どんどんなされておる。そうして、法律を作っても、下請その他の方に、てんでこれが実行されていない。そこで、独占方向にはこういうふうに向いている、あるいは実際の運営の面ではこれこれの問題があるのだ、それから現在の問題については、問題はここにあるのだというように、あなたの方でお調べにな。た諸点を、抽象的でなしに、具体的にこの三つの点に分けて、一つおもだったところをお示し願いたい。
  16. 坂根哲夫

    坂根政府委員 ただいまの御質問の、まず、独占への傾向という問題でございますが、これはおもだったところと申しましても、今ここで具体的にいろいろお話する材料を持ってきておりませんけれども、ただ、独禁法でいうところの私的独占への傾向に向かっておるのか、その辺は法律的分析を要する問題であろうと思います。ただし、先生のおっしゃることは、たとえば旧財閥資本中心とするところの企業集団化動き、あるいはまた石油化学中心とするところのコンビナートの動き、こういうものは、いわゆる一つ企業グループという、企業巨体化方向に向かっておることは事実であろうと思います。従って、こういう問題については、私ども経済部調査課で、現にいろいろ問題を取り上げて検討しておりますから、そのうちその検討の結果を御報告いたすことができるかと存じます。  それから第二の、現在所得倍増に伴って、物価関係が非常に上がっている、これについて公取はどういう措置をとっているか、こういう問題でございますが、私どもとしての基本的姿勢は、大企業なら大企業で、カルテル価格で、もし価格つり上げなり価格の膠着が行なわれるとすれば、これは独禁法で十分に規定しなければならないと思います。さらに、最近の消費者物価値上がりの問題につきましては、私どもが、現在理容関係は三件、クリーニング一件、めん類三件、パン類二件、小麦粉一件、すし二件、こういうものをいろいろ昨年来調査しておりまして、このうち、違反事実が認められなかったものが、理容一件、めん類一件の一件でございまして、次に、公取で調査しているプロセスにおいて、違反事実が消滅したというような件数が、理容関係で一件、めん類二件、すし二件のこの五件でありまして、目下調査しておるのは、理容一件、クリーニング一件、パン類二件、小麦粉一件、こういうことになっております。このうち、サービス業理容業あるいはクリーニング業につきましては、御承知のように、環境衛生適正化法調整規定を実施し得ることになっております。中央の適正化基準ができまして、現に東京都では、東京都の環境衛生審議会において、理容の点は標準値段をきめて参りました。こういう点がございますから、そういう関係をにらみ合わせながら、これは慎重に取り扱っています。あとパン二件、小麦粉一件がございますが、パンの場合は、協同組合価格協定のようでありまして、協同組合価格協定は、御承知のように、二十四条のただし書きにおきます不当価格つり上げになるかどうか、こういうような点を検討しております。こういう工合にいたしまして、私ども法律上乗り出し得る範囲におきましては、今消費者物価の問題も、こういう点で努力をいたしております。  以上が最近公取でやっておりますもので、御質問趣旨によってお答えいたした次第であります。
  17. 永井勝次郎

    永井分科員 今あげた例なんかも、小者ばかりあげておるのです。小さいところ、力のないところばかり、弱いものいじめをやっておるのです。そうして、これだけやっていますよ、こういうことを示すためなんです。ほんとう潜在カルテルの形でやっておる、あるいは大っぴらにいろいろやっておる――例をあげろというなら、私は幾らでもあげられる。そういうものについては目をおおうておる。おそろしくて手を触れられない。触れようとすれば、すぐ情報がそっちの方に漏れる。もうひもつき人事で、いろいろ利益代表がいるのですから、その利益代表からすぐ情報がいくし、動きがわかるから、寄ってたかって政治的、経済的につぶされてしまう。ですから、どういうことをやっているかというと、クリーニングがどうだ、うどんがどうだ、床屋がどうだ、そんな小者いじめばかりやっている。問題は、そんなところにないのです。昨年、一体公取がありながら、審決をしたものが幾つあるのです。昨年何をやりましたか。報告してもらいたい。
  18. 坂根哲夫

    坂根政府委員 ただいまお示しの問題は、今審決の内容を持ってきておりませんが、数字をあげますと、昭和三十四年の四月から昭和三十五年の三月までに審査をしたものは五十八件、それから審査未了として三十五年四月以降に繰り越したものが三十六件、審査終了したものが二十七件でありまして、その内訳は、今先生のおっしゃいましたように、審決をしたものが二件、これはたしか勧告審決でございます。それから不問処分が二十件、その不問処分の二十件というのは、証拠が十分でないというものが二件、それから調べておるうちに違反事実が消滅したというものが十八件でございます。それで、審決の今の二件はちょっと今手元にございませんから、またあとでお調べして申し上げます。
  19. 永井勝次郎

    永井分科員 三十五年は勧告審決は一件しかないでしょう。
  20. 坂根哲夫

    坂根政府委員 三十五年は一件でございます。
  21. 永井勝次郎

    永井分科員 去年、これだけの問題がいろいろ現実に起こって動いておる実態の中で、勧告審決が一件だなんて、何をしておるのかとわれわれは言いたいわけです。実際はやれないのです。だから、その点は公取お気の毒だと思うのです。もっと公取しっかりやれ、われわれは国会けつをたたいておるのに、はっきりものが言えないなんておかしいと思うんですね。たとえば、上位一社でどのくらいの独占状態にあるか、あるいは三社、三社でどのくらいの独占度になっているのか、こういうものはあなたの方でちゃんとやる、こういうことだけは紙上でできることはやる、しかし、これがさらに系列を作ってどんどん独占度を高めていく、そういう方向にはもう手が出ない、こういうことじゃいかぬと思うのです。もっと私は、公取については――現在の所得倍増計画というのは、結局独占資本強化財政関係でもそれを中心に行なわれる、あるいは投融資においてもこれが集中的に行なわれる、あるいは金利を引き下げたということによって、貸し出しはどうしてもシビアになる。シビアになっていけば、金融の安全ということで、かえって融資対象が広がらないで、上位のところに集中していく方向をとる。そこへ持ってきて、公取小者ばかりをいじめて、大きいところは、やけどをしないように、さわらないように、潜在的な形においてこれをどんどんなしておる。私は、池田総理にも、総括質問のときに尋ねたのですが、八幡製鉄の副社長の稲山さんは、公然と五つの感謝の言葉を述べて、そうして一つは、独禁法があるにかかわらず、いろいろな恩典を受けておるのに感謝する、こうまで公取ばかにされて、おめおめと盲腸的存在に甘んじて、独占資本の方からばかにされておるような状態では、私は、経済姿勢を、もっと国民生活に直結した問題において、これが正されるということはできないと思う。一切のものが  税金の関係を見たって、直接税、間接税を見たって、あるいは租税特別措置法を見たって、みんな独占資本強化のために、一切のものが奉仕されておる。こういう中で、国民大衆は、物価対策についても、独禁法をもっともっと強化するように、公取がもっとしゃんとしてもらうように、願いをそこにかけておるわけです。われわれも、弱体盲腸的存在であるが、この盲腸を、もっとしっかりした、腸の機能の幾分かはになうくらいな、大衆の栄養の上に幾らかでも役立ててもらいたいものだという願いをかけて、これはけつをたたいておるのです。もっとしっかりしてもらいたいと思うのです。委員長がいませんから、私はもっと言いたいことがありますけれども、時間もありませんから、省略いたしますが、とにかく国民生活保護の立場において、あるいは消費者が生活防衛のためにどのように今苦悩し、そうして、ほのかなろうそくの光のようなものを公取に見出そうとしておるかという、その期待にそむかないように、しっかりやってもらいたいと思います。  それでは、北海道開発庁長官にお尋ねいたしますが、三十六年度予算の編成過程において、いろいろなことがありました。道負担分が、公共事業の関係において増強されるような考え方もあったり、いろいろ折衝がありまして、一応落ちついたわけでありますが、本年度の予算折衝過程における実際の経過、どういう経過で、どういう話し合いで、また、どういう理論闘争の中で、こういうふうに落ちついたのか、落ちつくまでのプロセスを具体的に一つお示しを願いたい。
  22. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 お答えいたします。  おそらく一割負担の問題は、北海道道民も内地並みによろしいんではないかという考え方を持っております。しかし、それはまだまだいかないのだという理由で、これは二、三回かかってようやく負担なしにきめたわけであります。この負担のないのは、来年になって負担をするとかなんとかいうことは一切抜いて、無条件でこの負担がないように、従前通りやったわけであります。従いまして、今後、尾を引くことはないと思っております。
  23. 永井勝次郎

    永井分科員 おそらく、予算編成において、三十六年度ほど楽な条件というものはないと思うのです。自然増、その他政府が好況の中に恵まれて増収がうんとある。財源を豊富に持っておる。そういう財源豊富な条件の中で、北海道の負担分一割増というようなことが出てくるということは、金が足りなくてそうしたということよりは、そういう問題が出る理論的背景があったのではないか、なければ、こういうものはただ出てくるわけはないと思うのです。その一割負担増強という、その基礎になる北海道開発に対する理論的な背景というものは、どういうふうに分析され、どういうふうに把握されておりますか、その点を伺いたい。
  24. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 お答えしますが、これはさっきも一言言った通り、内地並みに負担の均衡をはかるという、もうはかってもいいのだというような観点から出たのであって、その負担を均衡するというような問題は一般原則でございますから、そこで、その原則に従ってこれをやることがよろしいのだという意図しか考えられないのであります。そのほか、別に大蔵大臣からどういう意図だなんということは聞きませんから、当然そういうつもりでおりました。
  25. 永井勝次郎

    永井分科員 北海道総合開発計画推進は、開発庁といたしましては、今までの五ヵ年計画のワク内で、その通り推進していく、こういうお考えに立っておられるのですか。
  26. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 お答えします。  この問題は、まだ確定づけてはおりませんけれども、要するに、私の考えとしては、あと第二次五ヵ年計画が六年、七年とございますけれども、これを修正しないで、所得倍増計画とは別途に計画を立てていくことがよろしいのではないか。しかし、その二つの計画を立てることによって、たとえば二次計画の方に矛盾する点がありますれば、その点は修正するということにしていく、一応私はそういうふうに考えております。
  27. 永井勝次郎

    永井分科員 そういたしますと、従来の五ヵ年計画、それを軸として、それに所得倍増計画というものをもう一つ作って、この二つを抱き合わせで今後やっていく、こういうお考えですか。
  28. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 そうです。
  29. 永井勝次郎

    永井分科員 そういたしますと、五ヵ年計画において、所得倍増計画を進める上においてまずくなってきた点、それはどういう点であるか。それから、それを補正する役割を果たす、所得倍増計画に基づく新しい計画というのは、具体的にどういうものであるか。この二つについて、一つその性格と具体的な内容をお示し願いたい。
  30. 木村三男

    木村(三)政府委員 お答えいたします。  所得倍増計画と、ただいま進行中の北海道総合開発計画とを比較いたして、どういう点が違ってきているか、修正を要するかというような点を、率直に申しますと、計画の規模が前よりも大きくなった、つまり、前の新長期計画時代の計画を頭に置いて北海道の五ヵ年計画を作りましたが、今度の所得倍増計画によりますと、成長の度合いも大きくなって参りまして、要するに、入れものが大きくなった。それとただいまの計画とを対比いたします場合には、道路、港湾その他の事業計画というものが、従来の計画では足りなくなって、さらに幅を大きくする必要があるということで、一方におきましては、道路整備計画の改定というものが議題にされまして、また、港湾についても同様なことが議題にされましたが、いずれも、そういった公共投資部門において、ワクを広げて参らなければならないということであります。これを具体的に予算化する場合に、三十六年度は、ただいま予算審議中でありますけれども、これは新しい計画を盛り込みまして、大きくいたしまして、三十七年度につきましても同様なことをやっていきたい、それから、こういった意味で、さらにまた、将来の見通しをつけます場合には、私どもの五ヵ年計画を修正なしでいくということはいろいろ疑問もありますけれども昭和四十五年くらいまでの見通しを今つけておりまして、それとも関連さして、来たるべきものをどういうふうに運用していくかということを検討中であります。それから内容的に考えますと、農業部門などにつきましては、所得倍増計画の内容を見ますと、方向転換が予定されております。それからまた、格差の問題が出て参りまして、地域間の格差とか、業種間の格差をどういうふうに詰めていくか、そういう格差の問題を考慮に入れて、計画を具体的に調整していかなければならないという新しい任務が出て参りまして、要約いたしますると、ワクの問題と内容を総合調整して推進する場合に、そういった格差解消の問題などについても、所得倍増の構想を十分取り入れていかなければならないということを考えております。
  31. 永井勝次郎

    永井分科員 そういたしますと、従来あった五ヵ年計画の補正の性格というのは、規模の違いだ、予算の金額の相違だ、量の問題だけで、質的には変わっていない、こういうふうに了承してよろしいわけでありますか。たとえば港湾なんかは、従来は一応あっちもこっちも手がけているだけで、従来の予算の額をもってすれば、十五年で完成するのか二十年で完成するのかわからない、その間に災害が起こって、またこれに金をつぎ込んでいかなければならぬという、非常に不経済なやり方をしたのだが、今度は予算が多くなったからこの完成度を早める、こういう一つの、金額のワクが多くなったから完成度が早くなった、こういう程度のものでありますかどうですか。五ヵ年計画における三十六年度の予算の性格をはっきりさせる必要上、この点を明確にしていただきたい。
  32. 木村三男

    木村(三)政府委員 お答えいたします。  先ほどの説明でちょっと不十分であった点がございます。量の問題は御了解願ったと思いますが、質的な面になりましても、やはり所得倍増の構想を頭に入れまして、今後予算なり施策なりをやっていく場合には、質的な面におきましても、ただ、完成年度が早くなるということではなくて、格差是正の問題、あるいは新しい方向への農業の進め方などにつきまして、考え直さなければならない点がありますので、方向づけの問題あるいはその工業立地の問題などにつきまして、そういう面とからみ合わせて、港湾道路、漁港というものを、産業立地あるいは所得格差の是正という見地から、内容的にも、運用上の相互調整を加えて参らなければならないという必要を痛感いたしておる次第でございます。
  33. 永井勝次郎

    永井分科員 今のお話は、五ヵ年計画を補正する役割、まあ所得倍増計画に基づく推進の一つのコースとして、五ヵ年計画と違った計画を立てる、その二本立でいくという、もう一つの方の計画ではないのですか。五ヵ年計画の中における問題は、予算のワクが大きくなったということだけのように聞いたのですが、その点をさらにお伺いするのと、もう一つは、そういたしますと、具体的には、五ヵ年計画で進めてきた港湾、道路その他の公共事業関係では、財政投資を傾斜させていく、あるところに重点を置いていく。そうして、こちらの方は、手がけてあるけれども要らなくなったから整理する、あるいはこれはずっとあと回しでよろしい、こういうような一つの財政投資の傾斜計画が内容としてある、こういうものなのか。抽象的でなく、もう少し具体的に、五ヵ年計画のワクの中における問題と、その外における新しい所得倍増計画に基づく一つ計画、こういうように分けまして、どこまでがミックスするのか、どこまでが二本立でいくのか。そして、もし新計画を立てるとすれば、どういう作業で、どのくらいの目標でそういうことをお進めになるのかということをお示し願いたいと思います。
  34. 木村三男

    木村(三)政府委員 五ヵ年計画は、永井先生承知の通り、内容的に見ますと、元来弾力性のある計画になっておりまして、その前文にも、情勢の変化に応じて弾力的に運営するのが建前であるということになっておりますので、今までもそういう点は考慮しつつやって参りまして、ぎしぎしに詰まったものでありませんので、ある程度の変更というものはこなせるような仕組みになっております。ところが、所得倍増計画ができて、だいぶ情勢が変わってきたということになりますと、前の方の弾力的運営というもののほかに、これに応じた実施計画のようなものを作って、さらに内容を詰めていかなければならない。これが別な計画といいますと別な計画にもなるのでありますけれども、性質は、実施計画のようなものを作って、内容的にいろいろ詰めて合理的にしていきたい、これは行政部内の計画として持たなければならないということを申し上げたいのであります。そこで、今度は、格の高い新五ヵ年計画とでも申しますか、新計画の問題は、そういう実施計画ではいけないのでありまして、先ほどちょっと触れましたけれども昭和四十五年くらいのところまで見通ししまして、できるならば前期、後期くらいに分けまして、それに関連して道路の計画とか、港湾、漁港の計画などを入れまして、それから北海道、内地の経済的なつながりはどうなるか、交通利用体系はどうなるかというようなものをいろいろやりますには、やはり半年くらいの作業期間が要るのじゃなかろうかと事務的には考えております。それを、今後続々と出て参りますところの農業の計画やなんかとも関連させて、合理的なものにしますためには、どうしても十二月くらいまでは事務的にかかるのじゃなかろうか。その前に三十七年度予算の要求という問題がありますので、その中間過程におきましては、どうしても今申し上げましたような計画の前提となる実施計画のようなものを固めまして、それで最終年度の予算には臨みたい、こういうふうに、計画、実施計画、長期見通し、そういうものをミックスさせまして準備をいたしたいと考えております。
  35. 永井勝次郎

    永井分科員 ややわかって参りましたが、公共事業といってもこれは基礎的なものでありますから、それを土台といたしまして、その上の設計というものが構想になければならないわけだろうと思います。そういたしますと、将来の北海道の青写真というものを大体頭の中に構成して描いて、そうして道路はこう、港湾はこう、河川はこう、あるいは工場配置はこう、こういうようないろいろなファクターがそこに出てこなければならないと思うのでありますが、そういたしますと、具体的な一つの作業の運びとしては十二月ころまでかかるでありましょうけれども一つの問題点として取り上げている新しい計画一つの構想は、どういう問題とどういう問題を特に考えているのか。たとえば農業の関係で言えば、農業の方向転換が行なわれるというだけではなく、具体的にはどういうふうになるのか。あるいは地域格差をなくすのだ、こう抽象的に言いましても、具体的に現地におろして、どういうふうな格差、業種間の格差があり、こういうものの是正は、北海道の場合は、どういうふうな点がほかの地域とも異なり、また、立地諸条件がどういうふうに変わっているから、この点はこういうふうに考えなければいかぬというものをもう少し伺わないと、これに対する私の質問が出て参らないので、その点、農業の転換というのはどういう方向なんだ、地域格差、業種間格差というものは、北海道の場合、現地におろして何が問題になり、どういうふうな形の青写真が構想されているか、これを一つ伺いたいと思います。
  36. 木村三男

    木村(三)政府委員 次の計画考えます際に、特にどういう点に重点を置かなければならないかという点につきましては、開発審議会という機構もございます。それから道庁にもそういう仕組みの機構がございまして、学識経験者の意向も聞かなければ最後的な方向づけはできないのでありますけれども、事務的に考えましてこうだろうと思われる点を申し上げますと、農業関係におきましては、北海道において問題になります点は、米作をこれ以上進めることはどうだろうか、限度があるのじゃなかろうかということが一つ問題になります。それでは、どういう点が伸びて参りますかというと、北海道の特殊事情を生かしまして、草地農業、酪農、畜産、こういったものを組み合わせまして、畑作振興という面にもう少し強い施策を打たなければならないというようなことが、頭に浮ぶのであります。その条件として、土地改良なりその他の施策をどういうふうに結びつけていくかというのが、一つの大きな農業の問題だろうと思います。こまかい点までは申し切れないのでありますが、大体の方向としては、事務的にそういう点を生かしていくべきだろうと思います。  それから、農業と他産業との所得格差の是正、これはなかなかむずかしい問題かと思いますけれども政府部内にもそういった審議会のようなものができますので、それとも連絡をとりながら、要するに、方向といたしましては、入植者の営農安定とかあるいは既存農家の所得の上がるような施策を、公共事業面あるいは非公共事業面で行なっていかなければならない。所得の向上というものが考えられるわけです。それからまた、北海道内には、中央部は比較的条件がいいのでありますけれども、道の東とかあるいは北の方、これは地理的に見まして格差が非常に大きい。こういう条件をどういうふうに開発していくかということになりますと、農業だけではいけないのでありまして、工業を立地させる、そのためには工業開発の拠点を作っていく。そして、土地、水、道路、港湾といったようなものを整備して、工業の分散をはかるということによりまして、道内の地域あるいは産業開発格差是正というものにつきまして、問題をさらに緻密な、きめこまかいことをやってていかなければならないというようなことが考えられます。まだいろいろございますが、そういったところが、事務的に考えまして、今後の計画考える場合の柱になるのじゃ、なかろうかというふうに考えます。
  37. 永井勝次郎

    永井分科員 振興局長が見えていないようでありますから、農業の問題はあとにして、私は、工業を誘致する、あるいは今後の工業の地域分散におけるあり方というのは、やはり関連産業等を集中したコンビナート的なものが設計されなければならないと思います。そこで、その工場を誘致する経済的な諸条件というものがやはり整備されなければ、おいでおいでと幾ら手で招いたって、これは来るものではない。経済的に成立する諸条件がないと来ないと思う。そういたしますと、やはりそこには電力料金の問題がある、あるいは労力の問題がある、あるいは市場その他の関連もある、運賃その他の問題もあるというふうに、いろいろな経済的なファクターがあるわけです。そういうものをやはり整備して、工場が経済的に、立地条件に適応した、ような基礎条件を整備することが、今後における開発庁の一つの大きな方向でなければならぬと思うのであります。ただ、道路を作ればいい、港湾を作ればいい、おれの方の仕事はこれだけだからというのではなくて、そういうものとマッチしていく方向でなければいけないと思うのです。現在工場分散といい、あるいは北海道の中における農民の転換といい、いろいろな問題があるにいたしましても、削る方だけははっきりしているが、それを向ける方の、受け入れの方はまだ不明確であるというような関係が、相関的に、有機的に動いておらないというのが一つの問題点だろうと思いますが、この工場立地について、土地、水、そういう関係だけでなく、今言ったような諸問題について、どのように全国的なレベルにこれを引き上げていき、そういうレベルの条件を整備するかということについて、どのようにお考えでありますか、伺いたい。
  38. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 これは、何と、言いましても、電力、水、こうした資源が必要なんでありまして、そうしますのには、やはり札幌、室蘭とか、その地方に対しまして、こういう目的で工場を建てるということの方針をきめることが必要だと思います。この方針をきめるのは、今政府検討しておりますが、低開発工業地帯の促進法という法律が出まして、その法律によって計画が立ちますれば、それに基づいて道路、港湾、交通、水資源というふうに考えていきたい、こう思っております。
  39. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣に伺いますが、われわれ、所得倍増計画の中におけるいろいろな経済構想というものを見詰めて参りますと、これはわれわれの考えているような一つのブランではないのだ、プランではなくて。ポリシーかというと、ポリシーでもないのだ、何かえたいの知れないものだ、そうして、こういうことをただ期待しているのだ、自由主義経済なのだから、お前の工場はここに作れ、こういうようなわけにはいかないのだ、こういうことになりますと、自由主義経済の中で企業の自発的な意欲を刺激していくというためには、今言った電力であるとか、土地の条件であるとか、水であるとか、工業立地の諸条件というものを自由競争の中でしのいでいけるというような条件整備をしないと、これは何ぼ手を合わせて神にお祈りしたって、工場なんか出てくるものじゃない、そういうことを期待したって出てくるものじゃない。でありますから、大臣は、中央にそういう計画があるとか言ったって、国が計画的に配置するものとは違うのですから、そういう段階では、非常に計画だ、計画だ、今にも来そうに思うのですが、そうではなくて、その先は自由主義経済なんだから企業考えるだろう、こういうことになるわけです。ですから、それには今の電力の問題とか、運賃の問題とか、労力の問題とか、非常にあるわけです。こういう問題をどういうふうに整備されるのか、この点を伺いたいと思います。
  40. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 その問題ですが、低開発工業地帯促進法という法律を今政府検討しておるのであります。これが後日御審議を願うことになりますと、その審議会において、そうした問題が審議されることになります。そうして、それまでの間は、大体において、北海道ならば札幌、小樽、室蘭、釧路というような方面をまず工場地帯にしたいというような、ばくとした構想は持っております。従って、その構想に基づいて、道路、港湾、交通というものが整備されていくのでありますけれども、具体的な問題は、法律が出ましてから決定することになっております。
  41. 永井勝次郎

    永井分科員 そうすると、今大臣のお答えになりました、そういうものが出ると具体的になってくるのだということになると、それまでの道路であるとか、そういうもののなには単に目先だけのことで、まあ目先まっ暗で、そういうものが出てくれば何とかはっきりしてくるだろう、それまではまあこういうふうにしてやっていこう、こういうつなぎのいろいろな事業なんですが、そういうものも見通しつつ、たとえば委員会があって、そういう法律が出たって、急に経済的な問題が動いてくるわけじゃないのですから、そういうものの構想も含めながら、やはり道路というものはこういう構想の上に立ってこうやる、こういうものでなければ、非常に不安なものになると思うのです。その点について、いかがですか。
  42. 木村三男

    木村(三)政府委員 お答えいたします。  問題を二つに分けてお答えいたしますと、ただいまの計画推進、調整はどうやっているかというのが一つの問題でございます。道路は道路、港湾は港湾と勝手にいったのではいけないのでないかという御指摘は、まことにその通りでございまして、幸いに、ほかの役所と違いまして、北海道開発庁の出先機関でありますところの北海道開発局は、建設省関係の仕事も、運輸省関係の仕事も、農林省関係の仕事も、全部同じ局長のもとでやれる機構になっております。そこで、道路の個所づけをいたします場合も、港湾の改修をやります場合も、お互いに連絡をとって、総合的に事が運ぶように私どもも指導し、局もその方針に従ってやっておるわけであります。ただ、今までの経験から見ますと、それが百パーセント合理的にいっているかどうかという点につきましては、私も確信を持って申し上げられないのでありますけれども、御注意のような線をさらに深めまして、そういった面を生かして参りたいと考えております。  それから、工場誘致関係につきまして、どういうことを考え、どういうことをやっているかということでありますが、現在の段階におきましては、たとえば室蘭、苫小牧方面に企業が進出しようと思っても、データがなくてはいけない。どういう土地がどのくらいで入手できるであろうか、水の関係はどうなっているかということで、土地の関係、水の関係などにつきまして毎年調査をいたします。それをできるだけ世間に周知させるように努めておるのでありますが、これも百パーセントまで効果が上がっているかと申しますと、そこまで行っていないので、今後大いにやっていかなければならない。それからまた、工場が来る場合に、北海道としてはどういう措置をやっておるかと申しますと、北海道東北開発公庫というものがございまして、特別な金融機関でありますものですから、資金の面もやはりめんどうが見られる。こういったものをコンビネートしまして今のところでは進めておりますが、先ほど大臣から申しました低開発地の開発促進の法体系は、所管は別でございますけれども、内容を見ますと、それではいけないような部面が出て参りまして、つまり税金を負けてやるとか、固定資産税の関係についてどうするとかいうような、さらに税制、金融上の面まで盛り込んだような、つまり深みのあるような法体系となっておりますので、それができますれば、さらにこの施策が強く行なえることになる、こういう意味に御了解下さればけっこうであります。
  43. 永井勝次郎

    永井分科員 工業誘致のいろいろな問題については、今までは原料に指向した工業が起こったわけです。太材のあるところにパルフとか製材工場、ビートやバレイショのあるところにビート工場や澱粉工場、水帳のあるところに水瀧加工、こういう特殊な条件のワク内でのみ経済的な成立条件があったわけでありますけれども、今後はそれだけでは不十分だ。国の方向は重化学工業が重点でありますから、重化学工業を誘致するということになりますと、やはりコンビナート方式、そういうものになりますと、港湾にいたしましても、道路にいたしましても、あるいは動力の配置にいたしましても、そういうことを指向しながらそういう方向へ持っていく開発計画というものがやはり予定されていかなければ、非常にむだが多くなってくる、こう思うのです。その点において、四十一五年度までを一つの目標として展望をしてやるということでありますから、そういたしますと、まだ具体的にはわからないでしょうが、大体どういう工場の成立の一つの見取図というものが今日考えられるのでありましょうか、その点を一つ伺いたいと思います。
  44. 木村三男

    木村(三)政府委員 四十五年までの見通しはまだ固まっておりません。具体的にどういう工場が来るかというところまでの見番はつけておりませんけれども、たとえば苫小牧、室蘭あるいは釧路方面におきましては、近代的な産業、つまり鉄、石油等の工業が興り、工場などが新しく増設されるというようなことも頭に入れて、その辺の条件を整備しなければならぬという、ふうに考えております。
  45. 永井勝次郎

    永井分科員 重化学工業なり、いろいろな諸工業を今後興さなければならないという展望からいたしますと、電力の問題とか、運賃の問題というものは今から相当考えていかなければならない。開発庁自体の問題ではありませんけれども、開発庁としては、こういう動きに対しては無関心ではいられないだろうと思うのですが、この運賃の値上げの問題及び電力料金値上げというものは、やがて間もなくやってくるだろうと思う。そういうものがやって参りますし、それから公共事業というものが非常に急激にふえて参ります。そういたしますと、季節的には労力が競合して北海道の地域は、労力が地域的には非常に不足になり、あるいは賃金が高いといういろいろな条件がありますが、こういう関係の条件整備についてはどのようなお考えを持っておられますか、伺いたいと思います。
  46. 木村三男

    木村(三)政府委員 観点といたしましては、ただいま御指摘いただいたようなところをどういうふうに解決していくか、就業の問題、産業の関連の問題、それにからんで道路、港湾の整備をどういうふうにやっていくか、それからエネルギーは、どうするかというような各部門から作業を進めていかなければならないのでありますけれども、まだ具体的なものはつかんでおりません方向といたしましては、そういたあらゆる角度から、あらゆる部門に分けて総合した見通しを立てたいという段階でございますので、ただいまのところ、ちょっと明確なことは申し上げかねるのであります。
  47. 永井勝次郎

    永井分科員 道路の問題等も幹線車でおやりになっているようでありますが、本年度の予算にも現われたように、第一、第二の国道関係は相当に伸びて参りますけれども、道道であるとか、あるいは市町村道、こういった関係は逆に反比例的に弱まってきているのではないか。今後の、たとえば農業の面にいたしましても、酪農業をやるということになりますと、まず集乳のための道路整備が必要だ。こういうふうに、末端の方にずっと毛細管的に道路が整備されなければ、産業自体が麻痺状態になる。これは緯線がよくなっていくと、時間的にタイムリーな問題がそこに出て参るのでしょうけれども、その関係を開発庁の方では総合的にどういうふうにお考えになり、どのように調整し、そうしてこれを補っていこうとお考えになっているのか、その点を伺いたいと思います。
  48. 木村三男

    木村(三)政府委員 直轄道路と補助道路との振り合いを見ますと、形としては、若干国道の方が伸びて、地方道の方の金額があまり進んでいないという形になっておりますが、考え方としましては、ただ、いま御指摘になりました酪農道路とか、それから林産物の関係の開発道路、あるいは鉱山道路というようなもので、開発上必要なものは、直轄で国がやるということになっておりますので、国の方が受け持つということで、形の上では、直轄の方に重点がかかっているようでありますけれども、内容といたしましては、大事なところは直営、直轄でやるのだ、国がやるのだということになっておりまして、酪農関係の道路、それから鉱山関係、ただいま申し上げましたような開発道につきましては、新規の線も予定いたしまして、さらに拡充して参りたいと考えております。
  49. 永井勝次郎

    永井分科員 北海道の総合開発計画を立案する上に立ちまして、私は、国の方で動いておる方向というのは、九州の方の開発であるとか、北陸の方の開発であるとか、四国開発であるとか、こういった地方開発と、北海道の開発と同じレベルで考えておるのではないか、そういう地方総合開発計画と同じ位置において北海道の総合開発というものが考えられておるのじゃないか、そこにおいて北海道総合開発の性格がどうなっていくかという一つの質的転換の時期に当面している、こう考えるわけです。そういう一つ考え方が土台となって、たとえば道路その他の公共事業に関して、一割の地元負担の増という、内地並みにこれを地ならししていくという方向が出てきている。ただ予算の数字をいじる過程から、一割負担せよ、こういうものが出てきたのではなくて、基本的にはそういう考え方が動いて、そしてその具体的な表現として一割負担増というものが出てきた、われわれはこう考えるのであります。大臣のように、これは非常に安易なもので、ことしだけのことで、将来はもうこういうことはないのだということではなくて、小出しに、毎年こういう問題が予算編成期には必ず出てきて、そうしてこれはだんだんになしくずしにその方向に持っていかれるのじゃないか。そこで、北海道の総合開発としては、そうした内地の方の地域開発とは質的に違うのだという性格と、そういう構想と、そういう理論武装というものが今日必要に迫られておるのじゃないか、こういうふうに考えるわけであります。その点についてはどうお考えでありますか。私は、同じレベル、同じ位置において北海道の総合開発を考えられるということは、とんでもない間違いだと思うんです。大臣は東北出身でありますから、そういう点から見ると北海道は少しよ過ぎるぞというふうにお考えかもしれませんけれども、これはやはり大臣は政治家として、国全体の国政の掌理の上から地域の問題を考えられ、その上に立って北海道のあるべき姿というものを、現状をよく分析され、また北海道開発の伝統というものを考え、また将来を展望した場合には、私は、地域開発と同じような形の位置はどこからも出てこないと思うのです。その点に対して大臣はどうお考えになり、そういう理論武装についてどのようにお考えになっておるか、伺いたいと思います。
  50. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 先ほども申し上げました通り、北海道の負担を多くするという問題は、単に来年度だけのことを言ったのでありまして、それは大蔵省の方でそういう理論の上に立っておるのかもしれません、しかし、私としては、北海道は開発が他の四つのあれよりもおくれておりますので、ずっと重点的にこれを施行していくところに初めて効果が現われるのでありまして、北海道と他の東北、関東、九州等同じにやるという考えは毛頭持っておりません。であるからこそ、本年度の予算編成に対しましても、一割の問題は極力努力して参った次第であります。
  51. 永井勝次郎

    永井分科員 ただ、一割をはね返したという折衝の問題ではなくて、そういう問題が出てくる土台をもっと分析し掘り下げて考えていかなければならないのではないか。ただ、一割はね返してそれで済んだという問題ではなくて、これは一つの露頭が出てきたというような理解の上に立って、次に来たるべきいろんな問題について、今の時期に理論武装なりあるいはもっと計画を確立して、これを閣議決定なら閣議決定の事項に持ち込んで、北海道開発の方向というものを、土台をもっとちゃんと据えてその方向づけを確立していく、その時期が今ではないか。今の時期を過ごすと、非常にむずかしくなるのではないか。所得倍増計画の第一年次において、このことを果たさなければならないのではないかというふうに考えるが、その点についていかがですか。
  52. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 北海道に関しましては、人口の問題からしても、まだまだ住むだけの余裕がありますので、そうした意味から、開発をもっともっとしなければならぬ。従って、来年度所得倍増計画が実施せられる際には、もちろん、お話のように、十年なり十五年なりを目途としてそうした基礎を築いていかなければならぬと思います。
  53. 永井勝次郎

    永井分科員 振興局長がお見えになりましたから伺いますが、先ほどちょっと北海道農業の将来の問題について若干の質疑をいたしたのであります。農林省では、北海道農業の将来の展望をどういうふうに設計されておられるのか、また、北海道農業について、この点が長所だ、この点が短所だというように、どのように現状を把握されているのか、その点について伺いたいと思います。
  54. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お答えいたします。きわめて広範な御質問でありますが、考えておりますごく要点だけを申し上げたいと思います。  北海道は、内地と異なりまして、いろいろな地理的条件から、有利な点もあり、また不利な点もあると思われます。有利な点について考えてみますると、御承知のように、内地における農家の経営面積と、北海道における今後の開拓の状況を含めました農家の一戸当たりの経営面積を考えてみますと、この部面における土地の制約というものがずいぶん内地とは違っているわけでございます。そういう意味から、従来、北海道農業につきましては、ある部分におきましては、非常に技術的な面において発達している部分があるわけでございます。たとえば、畑作の部分について考えてみますならば、すでに相当の面積を持っている、二戸当たり十町歩平均を持っている北海道におきましては、早くから畑作について輪作の形態の導入とか、あるいはそれに伴いまして、当然のことながら、家畜の導入が早くから見られる。また同時に、歴史的に見ましても、北海道におきましては、今いわれているいわゆる農業機械化という部面におきましても早くから導入が見られたわけでございまして、こういう面から見ますと、内地の今後の畑作経営を考えていきます場合に、北海道における、そういう従来の実績なり経験なりというものが役立っているものも相当あると思われるのであります。しかしながら、他面、北海道は、気象条件から申しまして非常に寒冷地である。その上に、入植以来今日までの経過を見ますと、土壌がやや劣悪といいますか、荒廃しているという点もあるのではなかろうかと考えられるのであります。従って、この部面につきましては、御承知のように、一昨年でございますか、寒冷地畑作農業についての特別の資金融通措置というものを講ずることにいたしまして、寒冷地に適応したような特別な対策をして、一般的な水準まで引き上げるような措置を講ずるというふうなことにいたしたわけであります。つまりこの部面におきましては、一般的な条件があるにかかわらず、気象の制約、あるいは経営の制約、あるいは寒冷気象からくる作物の制約、こういった面につきましての不利な面もあるということができるかと思うのであります。  きわめて概略的なことを申し上げて恐縮でございますが、大まかにはこのように考えております。
  55. 永井勝次郎

    永井分科員 今、振興局長は、北海道の気象条件、土壌の条件が非常に不利だ、こういうふうなお答えがあったのですが、日本の国の農業の中心をなしている農林省が、振興局長が、ことにその耕種肥培関係中心的な役割を果たすその当局が、こんな考えを持っておるということに私は驚くのです。こういう条件は不利な条件ではなくて、北海道の有利な条件なんです。その有利な条件を、常識的に、寒いから生産性が低いのだ、こういう従来の間違った考えに土台を置いて北海道農業を考えているところに問題があると私は思う。御承知のように、北海道は北に位していますから、五月から九月にわたるこの期間というのは非常に口が長い。日が長いということは、それだけ日照時間が多いということです。それから北海道は雨の少ない地帯です。雨の少ない地帯であるということは、それだけ日照時間が多いということです。それから温度が低い。雨が少ないから、空気が非常に乾燥している。空気が非常に乾燥していますから、作物の生育としては、地中から水分を吸い上げる、そうして葉の方からどんどん出す、こういう同化作用というものが大きく活発に動いていくわけです。一日のうちでも、日中は暖かいけれども、夜は涼しくなる、こういうことで、夜分余分な作物の栄養の消耗ということがない、これは非常に有利な条件だ。それから、春から夏の間は暖かいけれども、秋はずっと涼しくなる、こういうことで結実を促進していくという条件、あるいは、北の方にありますから、光線の波長が長い、光の波長が長いということは、作物の澱粉を結成していく上の栄養生育上において非常に有利な条件である。それから台風地帯ではない。非常にそよそよとした風が吹く。そよそよとした風が吹くということはどういうことかといえば、濃度の高い炭酸ガスを作物に送る、こういういろいろな有利な条件、決して寒いから生産性が低いのではなくて、非常に北に寄っていますから、日中が非常に長い、こういうところに作物の生育上の有利な条件がある。不利ではなくて、逆なんですよ。ただ、九州から何から同じような稲を作ろうとするから、ここに間違いが起こる。その点から言えば不利だということがありましょうけれども、しかし、寒冷地向きの米の品種ができてからは、味はまずいかもしれないけれども、南の方よりずっと反当収量は高い。従って、畑作関係だって、もっと深土耕をやるとか、あるいは土地改良をやるとか、寒冷地に適当した農業経営を確立すれば、南方よりはずっと有利な条件がある。それを農林省の中心である振興局長が、これは不利な条件だと、不利な条件に考えているというところに重大な問題がある。そこに入植者を減らすとか、自分たちの非常に投げぱなしな入植計画、開拓計画によって失敗したのをおおうために、これを気候の条件に責任をなすりつけてやっておる。私はここに問題があると思うのです。私は専門家でありますから、もちろん、いろいろな問題は検討しておる。不利な条件ではなくて、私は有利な条件だと思う。この有利な条件を正しく生かすための耕種肥培なり経営の方針が確立していないために失敗がある、間違いがそこにある、こう思うのです。この点についてはいかがです。
  56. 相川勝六

    相川主査 永井さんにお願いしておきますが、なるべく簡潔に一つやって下さい。
  57. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま先生がいろいろお話になりましたが、北海道農業についてきわめて練達な先生でございますので、傾聴しておったわけでございますが、私が申し上げましたのは、寒冷地ということによって、もちろん一般的な不利な条件もあれば、同時に、寒冷地なるがゆえにその特色を生かして有利にするという点があることを申し上げたわけでございまして、たとえば、北海道でありますと、何と言っても気候的な制約で作物は一年一作である。ところが、年じゅう太陽熱の当たっておる地帯におきましては、二作なり三作なりができるという意味におきましての有利、不利を申し上げたわけでございまして、たとえば作物につきまして、それぞれの特色から、つまり、葉面から吸収する太陽熱によって全体の収量が制約されるというような作物につきましては、これは温暖の方がいいわけでございまして、水稲であるとか、あるいはくだものとかいうものについてはそうだろうと思うのですが、しかし、寒冷であって同時に非常に乾燥しておるというような作物、たとえばテンサイのような作物につきましては、寒冷地の方がかえってその特色を生かしていくことができるわけでございまして、今、先生のお話になりましたようないろいろの技術的条件は、まさに寒冷地作物としての有利性の条件をお述べになったと私は思うのであります。そういう意味で、結局、これはいかなる作物をいかなる技術的な方法によって導入するかということによって、死にも生きもするということになるわけであります。農林省といたしましては、十勝におきましては、畑作部を設けまして鋭意そういう面についての努力をいたしておるわけでございます。
  58. 永井勝次郎

    永井分科員 先ほど、開発庁でも、北海道農業はこれから転換の方向へいくのだ、水稲から畑作へ、畑作経営の内容が酪農へと、こういう限りにおいてはけっこうでありますけれども、そうではなくて、もっとこれを何して、開拓はもう打ち切りなんだ、こういう不利な条件のところへ金をかけてやるべきではないという観点に立ちますと、大きな間違いである。開拓は、もっと合理的な科学的な基礎に立ってやれば、もっともっと伸びる。私はソ連に二回参って視察して参りましたけれども、、イルクーツクあたりは、九月の二十日前後は雪が降っておるのです。そういうところで、デントコーンなんかは、北海道よりもずっと背も高くなりますし、結実もちゃんとできておる。これはやはり品種を改良して、アメリカから入れる、ソ連の在来のものを入れる、そして一大雑種を作ってやりますから、ああいうような大きな伸び方をするのです。日本の農業というのは、金をかけないで、ただ口先でああだ、こうだとひねり回して、具体的には試験研究というものをろくにやっていない。そうして大豆の自由化だというと、あわてて、さあこれから白芽の大豆を作るのだという。ビートでも、暖地ビートなんか、ろくに何も試験研究ができていない。技術的な基礎ができていないのに暖地ビートなんということをやるから、失敗を繰り返す。農林省がみずからやるべきことをやらないから、失敗しておるのです。でありますから、私は、北海道の農業というものが、今後は畑作に重点を置いていくということになりますれば、これはやはり国際的な競争の舞台において戦っていかなければいけない。麦にいたしましても、大豆にいたしましても、ビートにいたしましても、バレイショにしても、みんなこれは国際的な作物です。さらには酪農、畜産の関係でいきますと、牛にいたしましても、豚にしても、鶏にいたしましても、これはやはり国際的な舞台において競争していかなければならない。そういうことを考えますと、農林省の北海道農業に対する考え方というものが、今日のような間違った考えの土台の上にあることが、私は一番北海道農業を失敗させる原因である、ゆがめてしまっておる原因であると思う。どうしたって土壌を深耕しなければならないというなら、機械化していかなければならない。畜力なんかだけではだめです。あるいは畜産をやるというなら、これは振興局長が指導しているように、多頭飼育でなければコストは下がりません。機械化しなければならない、あるいは多頭飼育でなければならない、こういう方向というものを北海道農業にとらせるならば、これはどうしたって、農林省の言葉でいえば協業でしょう。あるいはわれわれの言葉でいえば、共同化の方向にいかなければ、これは成り立つものではありません。そういう前提に立ってすれば、既存の農業については、こういう掘り下げた質的な一つの経営へ、きめのこまかな方向へ進まなければいけないし、開拓なんか、もっと勇気を出してどんどんやるべきです。イギリスなんかは、土地の造成のために大きな金をつぎ込んでいます。大きな金をつぎ込んでいるが、経済的に十分に成り立っておるのだ。一たん作った土地というものは、耕地というものは、イギリスの国の歴史が続く限り、今後何千年でも、何万年でも、これが一つの食糧生産の上に活用できるのだから、投入した金が一時的に高くついても、こんなものは安いものなんだ、こういう考え方に立って、これはやっておるのです。北海道の農業を投げっぱなしにして、失敗したからもうだめだ、こういう考え方というものは、私はとらないのです。この点どうでしょう。
  59. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 お話まことにごもっともでございまして、いよいよもって地域々々に応じた技術対策を講ずるということが今後とも一そう必要になってくると思うのであります。その場合に、作物の発展の過程といいますか、あるいは寒冷地に適応する作物の導入といいますか、そういう点を考えてみますと、やはり寒冷地におきましては、禾本科の作物よりも、耨耕作物にだんだん重点が移っていくだろうというようなことが考えられるわけであります。そうしますれば、今お話になりましたような深耕、そのためには機械化、さらに必要な堆肥源としての家畜の導入、これらは一そう進展していかなければならぬというふうに考えるのであります。そうなりますと、今後の農業経営といたしましては、やはりおのずから資本の投資が必要になってくる。これは当然のことだろうと思うのであります。パイロット・ファームにおきましての一戸当たりの規模からいいまして、あるいは寒冷地の畑作振興の特別資金を考えました場合における二戸当たりの資金額から見ましても、相当のインヴェストメントが必要になってくると思うのであります。これは当然のことでありまして、こういうことと相並行いたしまして、農業の発展を北海道についても考えていきたい、こういうことに農林省でも考えておるわけであります。
  60. 永井勝次郎

    永井分科員 大臣お聞きのように、私は、北海道農業の将来というものは、これは決して悲観すべきものでない。こういうふうになってきたらだめなんだというような考え方に立って北海道農業というものを見ることは間違いである。非常に有利な条件をほったらかして、この有利な条件を生かさないで、違った不利な条件でこれをやろうとするところに問題がある。  それから、試験研究の限りにおいては、畑作の関係においても、反収をずっと増強する条件と、十ヵ年の将来にはこれだけ上げることができるのだという、こういう一つの目標が技術的に成り立っているのです。ただ、それに投入する金なり何なり、それに適応した経営というものが不十分なためにいろいろな失敗がある、この力を伸ばしきれないでいる。でありますから、既存農家については、今言ったような機械化の方向、それから多頭飼育の方向、それには協業なり共同経営という方向をどうしてもとっていかなければならぬ。開拓はもうだめなんだから、全国でことしは一千戸という、こんな貧弱な消極的な方向ではなくて、やはりもっと積極的に北海道の開拓というものをやらなければいかぬ。その開拓も、従来の根釧原野にやっているような、パイロット・ファームならこの形態でいいのだというような、あんな形ではなくて――あれは開墾までは機械でやって、開墾が済んでしまったら、あとは手でやるというようなことをやりますから、労力不足によってあれが十分に生かされない。機械開墾をしたあとは、既墾地の経営はやはり機械でやっていくのだという態勢をとらなければならぬし、畜産関係、乳牛なんか、やはり多頭飼育をやらなければいけない。そうすれば、どうしたってこのあとも共同化をやらなければならぬ。共同化をやるといったら、住宅やなんかは密集させる。畜舎なんかも、お互いの棟を変えて、一つに作って、そうして別々にやっていっても、いつでも共同化の方向に金をかけないで移行できるのだという基礎整備をしてやらなければいかぬ、開拓なんかももっと私はやるべきだと、こういうふうに思うのです。  主査から、盛んに簡単に簡単にと言われますが、私は、北海道の総合開発計画については、もっと理論武装をして、内地の方の地域開発とは質的に違うのだ、そして、未開発資源はたくさんあるし、今までの内地のように何千年の歴史ではなくて、百年前後の歴史よりないので、今後大いにやらなければならぬところが多いのだということ、それから道路その他についても、地元負担で内地並みにやるというようなことはとんでもない間違いである。非常に大きな地域において、人口が希薄なところでその負担をするなんといったら、とてもこれはやり切れるものではない。そういう事柄を、私は現実に――大臣はせっかく北海道の開発庁長官になられたのでありますから、ことに東北におけるあなた方の先輩がみな北海道に来ておるわけですし、それから北の方に位するということで、理解の条件というものも、非常に吸い取り紙で吸うように、北海道の状況というものを大臣は吸収されることと思います。そういう立場に立って、今までのように古い方にばかり目を向けて、そして新しい分野を開拓するという積極性に欠けている農林省のけつをたたいて、そして開拓の関係は、既存農家の合理的な経営に踏み切るとともに、あるいは工場誘致については、電力料金とか運賃とか、こういった関係における条件をくずしておいて、工場だけ呼ぶんだとかけ声をかけたって、これはくるものではありません。工場の立地諸条件の成立するような経済条件を整備する、そして、一切の事柄が総合されて道民の生活を向上させるのだ、豊かにするのだ、楽土を作るのだ、こういうことでなければ、北海道の開発は、中央から資本を持っていってもうけて、これをふんだくって中央へ収奪するのだというような、今の池田内閣のやっているような方向に対しては、あなたは、北海道の開発庁長官として、これを修正させる責任があなたにあると私は思う。それが道民全体の生活をあなたにかけて期待しているゆえんだと思うのです。そう長くはないかもしれませんけれども、その短い中において、少なくも、小澤長官の時代にはこれだけの問題にこれだけ努力したという一つの実績を上げて、あなたの時代にできなかったことは、次の大臣にはっきりと事務引き継ぎさせて、そうして、あと一つ、党内における実力君ですから、大いにがんばっていただきたい、こう思いますが、所見を伺います。
  61. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 いよいよ広範な知識を拝聴しまして、今後施策を講ずるときの参考に供して、よくやるつもりであります。
  62. 相川勝六

    相川主査 横路節雄君。
  63. 横路節雄

    ○横路分科員 最初に、大蔵省の宮崎主計官にお尋ねしたい。来ていらっしゃいますか。  今、永井委員からも開発庁の長官にお尋ねをしたわけですが、先に聞いておきたいのは、ことしの北海道開発予算について、当初大蔵省から出された原案の中に、いまだかつてない案が出たわけです。それは、公共事業について一割は地元負担だ、こういうことが出ております。当初、大蔵省が北海道開発予算について、公共事業については一割は地元負担なんだ、こういうような考えを出されてきたのは、北海道開発について、大蔵省としては、従前と変わった考え方予算編成に臨んだのではないかと思うわけです。この一割の地元負担ということは、北海道の開発というものがどういうように進んでいると考えられたのか、その点、まず主計官にお尋ねしておきます。
  64. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 お答え申し上げます。  北海道開発事業予算につきまして、予算編成過程における議論でございますが、結果的には御承知の通りで、従来通りの負担率で事業を実施するという結果になっておりますので、それに至ります経過についてあまりくだくだしく申し上げることはいかがかと思いますけれども、御質問でもありますので、私どもの事務的に考えました問題を申し上げます。  御承知の通り、北海道開発につきましては、戦前明治二年から長い歴史を持った事業でございます。戦前においても、北海道開拓につきましては第一過程、第二過程というような過程を経まして、そしてまた、戦後の北海道開発庁の設置により新しい開発事業が出発したわけであります。最近になりまして、御承知のように、北海道開発につきましてはいろいろの一面からいろいろの意見が出ております。私ども予算を担当いたします関係上、そういったものを勉強いたしておりますが、特に三十六年度につきましては、御承知の通り、全国の地域につきまして後進県の補助率を調整しよう、引き上げようというような問題が政府の方針としてきまっておったわけでございます。そういった契機にあたりまして、北海道の開発段階というのが、一体内地の各後進県というものと比較してどうであろう、こういうようなことを私どもとしては検討いたしたわけでございますが、御承知の通り北海道の現在の段階と申しますのは、これはいろいろの見方があると思いますけれども、今回の後進県の国庫負担率調整にあたって指標としました財政力指数であるとか、あるいは一人当たりの県民所得であるとか、あるいは第一次、第三次、第三次の産業構造というような面から見ますと、いずれにいたしましても中心上位、あるいは中心県程度に位するということは普通いわれておることでありますし、指標的にもそういうことが出るわけであります。そういう段階から見まして、第二次北海道総合開発五カ年計画も従来の考え方とは相当構想を異にいたしまして、工業開発を中心とした、いわば中心的な計画と申しますか、従来の初歩的な総合開発計画とは様相が非常に異なったものになってきているわけであります。そういう点をいろいろ考えてみますと、この際、北海道の開発事業に対する国庫負担率の特例というものについても再検討していいのではなかろうか、こういうふうに私ども考えたわけであります、特に全額国庫負担によってやっております開発事業につきましては、いろいろの面で従来も議論がございました。もちろん、一割国庫負担というものを三十六年度から全面的にやってしまえということは、道の財政問題もございますので、私どももそれほどのことをやるのは無理というふうに考えておりましたけれども、そういった意味で、この際特例負担率についても、内地の後進県というものとの比較、権衡においてもう一ぺん検討してはどうかというような考え方も持ったわけでございますが、御承知の通り、現在、第二次五カ年計画も進行中の段階でございますし、また、そういった形のことを急にやるということは非常に大きな問題でもございますので、私どもといたしましても、三十六年度はそういうことをやらないという方針に従って予算の計上が行なわれたのでございます。
  65. 横路節雄

    ○横路分科員 今の点は、非常にこれらの北海道開発の重要な問題で、今あなたから御指摘のように、私たちも三十六年度予算の中では、大蔵省原案で出た一割の地元負担というのは、おそらくもとへ戻るだろう、そういう政治的な配慮等もあるし、これが実施されれば、三十六年度一年間だけでも、地元負担というのは約二十億になるわけです。そうすると、二十億の地元負担というのがいかに地方財政に影響を及ぼすかということは大蔵当局でもわかるのだから、これはおそらく原案としては出たけれども、最終的にはもとへ戻るだろう、全額国庫でやるようになるだろう、しかし、三十七年度以降についてはどうなるのか、こういう点については、われわれ将来の問題として非常に大きいと考えておるわけであります。今、あなたの御説明で、やはりわれわれが心配しておるように、三十七年度以降については、また一割の地元負担というのが出てきやしないか、こう思うわけです。この点は、三十七年度の予算の中でまた考えてみなければならない、こういうわけですか。三十六年度だけは、いきなり一ぺんにやろうとしても、地元に対して約二十億の負担になるから、まず当初は大蔵省の原案として出してみたけれども、引っ込めた、しかし、これは根っこは残して引っ込めたのですよ、三十七年度はもう一ぺん出すんですよ、そのときは、そう簡単にわれわれとしては、いわゆる低開発地域全体の開発から考えて、北海道の全額国庫負担というわけにはいきませんぞ、こういうわけですか。その点、なかなか三十七年度の予算編成というのは、これは次の開発計画との関連で大事な点ですから、開発庁長官にはあとでお尋ねをいたしますけれども、もう一ぺん三十七年度におけるあなたたちの考えはどうなっておるか承りたい。
  66. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 お答え申し上げます。三十七年度の予算の問題は、これから全体としての編成方針なり何なりが議論になって参るわけでありますので、そのときにどうするかということを申し上げることはいかがかと思いますが、先ほど申しましたような考え方もございますので、これから十分検討して参りたい、こういうふうに考えております。
  67. 横路節雄

    ○横路分科員 おそらく、大蔵省の方で、北海道は後進地域ではない、いわゆる中心上位地域だと言う、そういう点の資料は、私も実はこの間資料をもらったのです。経済企画庁調整局の民生雇用課で出しました「国民生活の地域別分析、生活水準の地域差と人口流動」という昭和三十四年八月に出したもの、これは先般経済企画庁からたった一冊しか残っていないというのを借りて見たのですが、今あなたから御指摘の点は、あの中にある第一表、この表の中に十三地域に分けて、地域別一人当たりの所得比較というので、全国平均を一〇〇として、南関東は一四八・六だ、近畿は一二七・〇だ、東海は一一二・四だ、北海道は九九・二になっておる。だから、一人当たりの所得比較からいけば、十三地域で四番になっておるではないか、こういうことではないかと思うのです。ところが、この所得が多いということは、これは生活程度が上がっておるということとは違うのです。あなた御承知のように、北海道に行けば寒いから石炭をたいているわけです。だから、一般の公務員や勤労者に石炭手当というのがあるわけです。それから御承知のように、石炭手当ばかりでなしに、そのほかに被服費その他がかかるから寒冷地給というのがある、そういうものがあるわけだ。たとえば、北海道の農民にしても、なるほど総体の所得は多いですよ。しかし、それは耕地面積の単位が違うわけです。一人で三十町歩までやっていいわけですから。そういうもので、北海道は十三地域における一人当たりの所得が、後進地域ではなくて、上がっているのだ。十三に分けると四番目になっておるから、もういいじゃないかというのは、北海道の寒冷積雪地帯というものの特殊性について、どうもその点大蔵当局の判断というのは、そういうような機械的なものからだけではいけないのではないか、こう思うわけです。そうすると、きっとあなたの方で今度は、いや、それは違う、いわゆる平均額による所得じゃない、おれの方は実質生活水準に基づいてやったのだ、こういうことになりましょうけれども、この点、私は、来年度、三十七年度予算の編成というのは、今からやはり問題点があると思うわけです。どうもこれは、今あなたが言っているように引っ込んだように思えないわけです。北海道における寒冷積雪地帯の所得というものを、ただそういう平均から割り出して、それで言えるかどうか、この点はどうですか。
  68. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 ただいま御指摘の一人当たり所得水準の点でいきますと、先生御指摘のように、企画庁の資料によりましても、全国十三地域の四番目ということになっておるわけでございます。それだけから北海道がすでに開発段階において先進地域であるというような議論は、私もできないと思います。それ以外にも、おそらくこれはお手元にお持ちになっておられると思いますが、経済企画庁の国民生活水準から見た所得水準の見方、これは七番目くらいになっております。それから産業構造でいって四番目程度、いろいろな点から考えて、いずれにしても、北海道の現段階が南九州とか山陰とか、あるいは北陸の一部というようなところよりも、後進性という関係から見れば高いのじゃないかということは、まず認められていいのじゃないかと考えております。しかし、一方、北海道の開発事業というものは、現在までもそうでありますが、今後もなお大きな投資をしなければならない、それは計画上もはっきりいたしておりますし、また、今後計画される面もあると思います。ただいま問題になりました負担率の問題は、そういった先進、後進という問題以外に、地方公共団体の財政力の問題等もございますから、そういう面で、むしろ北海道というものは、やはり相当高い負担率を適用しなければならぬという事態になると私ども考えております。いずれにいたしましても、そういう問題につきましては、今後相当長期にわたって見通しをつけて、また、財政力についての判断というものも十分いたした上で考えて参りませんと、議論が残るかと思います。また、一部の負担率だけをちょっと動かすというやり方も、私どもも、実はそれを今度考えてみたのでありますが、はなはだもって、どうもやり方としては中途半端であるということも考えざるを得ません。後進地域全般の問題に関連して、公共事業の負担率そのものをいろいろ検討し直すべきだという声もございますから、そういった点もあわせて、相当広く、こと北海道ということのみならず、今回、いずれ後進地域に対する政府の案というものがきまると思いますが、さらにこの問題は、私としては十分検討を続けていかなければいかぬというふうに考えで、おるわけでございます。
  69. 横路節雄

    ○横路分科員 主計官にお尋ねしますが、北海道というと、東北大県に新潟を合わせただけあるのです。四国と九州を合わせただけあるんです。今のあなたの方でやる低開発地域という場合には、たとえば、九州開発といっても、福岡を中心にした北九州じゃないのですよ、やはり主力は鹿児島だとか、宮崎だとか、大分だとか、熊本というようなところになるのでしょう。そうすると、北海道開発といっても、今あなたが指摘をしたし、私も今ここに資料を持っていますが、平均所得は、寒冷積雪地帯でいろいろの手当で給与がかさばって、四位だ、実質生活水準は大体七番目ぐらいだという統計は出ていく。しかし、大体北海道の開発というのは、札幌を中心にしてはなるほど開発されている。札幌から苫小牧、室蘭にかけて、この地帯の人口というものは、私も詳しくは計算してはおりませんが、相当大きな人口密度になっている。ところが、たとえば、北海道の東地域であるとか、北海道の北の地域であるとか、一番最初に開けた北海道の南の地域というのは、今度あなたの方で低開発地域についてのいろいろな法案を出されるが、そのうちの、たとえば東北の一部の地方であるとか、あるいは九州の一番おくれた一部の地方であるとか、それよりはもっとおくれているわけです。そういう地域は、北海道という四国、九州を合わせただけの面積、東北六県に新潟を合わせただけの面積のあるものを平均をしておいて、そうして、いわゆる所得水準が上がったから今度は地元にやって、もらいますよと言うても、あれだけの膨大な北海道において、一律にそういうことが一体できるものでしょうか。なるほど、北海道の行政区域は、北海道という一つのもので四国、九州合わせただけある。しかし、その中における地域の開発というものには非常に高低がある。一番おくれているところは、おそらく本土において一番低い地域よりももっとおくれているわけです。それを全部一本にして北海道開発をやる、大体中ぐらいにいったであろうから、この際一つ地元負担はしてもらわなければならぬ、ことしは気の毒だけれどもというようなことは、北海道の実情をあなたは担当の主計官として実際に見ているでしょうが、そういう点についてどう思いますか。ただ平均を出して、それで広大な地域について大体所得が上がっておるからいいというのではなしに、そういう広大な地域における地域格差というものをどう考えておるか、その点について伺いたい。
  70. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 お答え申し上げます。  御指摘の通り、北海道は非常に広大でございますので、その中において、開発の進度が非常におくれたところと高いところとあることは、御指摘の通りであると思います。ただ、問題は、公共事業の負担というような議論をいたします場合に、相手になるのは北海道でありまして、これが全体としての北海道の事業を促進しておる、あるいはそれに対して負担なり何なりやっておるという次第でございますので、やはり負担というような問題を考えます場合には、道という平均の数字でやらざるを得ないということは、これはやむを得ないかと思います。今回の全国の後進地県の場合でも同種の問題はあるわけでございまして、極端な例を申し上げますと、関東にしましても、あるいは北九州にしましても、北海道の僻地ほどではないかもしれませんけれども、同様の問題が生ずることと思います。しかし、これは県というものの負担、それをどう調整するかというような考え方で参ります限りは、やはり平均的なところでつかまえていくということが妥当なんじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  71. 横路節雄

    ○横路分科員 開発庁長官どうですか。今の大蔵省主計官考えは、開発庁長官として、北海道全部ならして、平均値をとって、平均値が高いからということで、ことし出たような予算措置が再び来年度出てくる危険性がある。私が先ほどから言っているように、四国と九州を合わせただけの広大な地域で、あれだけの地域格差があるのに、単に平均値だけをとって、そうして北海道開発に対して財政的な負担を来年度以降に持ち越してきているような気がするのですが、長官としてはどうお考えですか。
  72. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 お答えしますが、この問題は、私が水田君と話したときには、来年に残すということは言わなかったのです。それですから、私は今年で済んだつもりでおりますが、しかし、主計官がそういう考えを持っておればやることと思うのです。それでありますから、そのときには強い政治力で押すよりほかないと思います。
  73. 横路節雄

    ○横路分科員 長官、これはわれわれ非常に危険を感じているのです。主計官に今の問題と関連して一つ聞いておきたいのですが、羽幌の多目的ダムについては、新規であるならば一割五分の地元負担にしようとした。初め原案はそう出てきた。ところが、今長官からお話しのように、いろいろ大蔵大臣との折衝の過程で、羽幌の多目的ダムについては、これはやはり全額国庫負担にする。ただし、負担にしたときの――われわれが聞いているところでは、これは新規事業ではないですよ、これは前からの継続事業ですよ、こういう格好で、あなたの方は、前々の継続事業だから、これを全額国庫負担ということにしたように聞いているわけです。継続事業だということと新規の事業だということでは、将来に非常に問題があるわけです。この点は、羽幌のいわゆる多目的ダムについて全額国庫負担というときにおきめになったわけなんだが、それは新規としてやるのか、継続ということにしてやるのか。継続ということになれば、これから出てくる新規については、一割五分は考えてもらいますよということになりそうなので、その点はどうなっているんですか。
  74. 木村三男

    木村(三)政府委員 羽幌ダムの問題でございますが、継続といたしまして負担なしということになっております。
  75. 横路節雄

    ○横路分科員 そこが問題なんです。従前通りの継続だから負担なし、しかし、それが新規というのであれば、一割五分の地元負担ということが出てくるのではないか、これが問題なんです。主計官、どうなんですか。あなたの方としては、新規の多目的ダムについては、われわれとしては財政上のいろいろな問題から、一割五分は地元負担にしてもらう、こういう方針なのか、それとも、継続も新規も問わず、全額国庫負担というのか、一つ主計官に聞いておきます。
  76. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 ただいま御指摘の羽幌ダムは、土地改良の灌漑用のダムでございまして、私、直接担当いたしておりませんけれども、ただ、今議論になっておりますいわゆる負担問題といたしましては、土地改良関係は、全然別途の会計であるというふうに私ども考えております。と申しますのは、御承知のように、北海道の直轄開発事業は、継続といたしまして全額国庫負担でやっておるわけでありますけれども、農業につきましては、御承知のように、直轄の明渠排水というようなものにつきましても、従来から負担をしてもらっておるわけであります。これは公共団体の負担という面に着目するよりも、むしろその事業の有利性、そういった点から見まして、やはり一部は、土地改良事業でございますので、農民に負担をしていただくという趣旨であろうかと考えております。今後新規について、こういったダムについてどう取り扱うかということにつきましては、私、担当でございませんので明確な答弁をいたしかねますが、そういう意味で、今私が申し上げました一般的な開発事業と道の負担に当然なる開発事業というものと、考え方を変えておるという点はございます。
  77. 横路節雄

    ○横路分科員 私の多目的ダムというのは間違いで、農業ダムです。これは今主計官が言われたように、受益者に負担をしてもらうんだ、だから一割五分の負担、羽幌については、従前の継続だから全額国庫負担だが、これからの農業ダムについては一割五分だという危険性が将来残っている、こういう点、はっきりしたわけですね。今の一部負担あるいは農業ダムについての一割五分は、ことしはもとへ戻すが、三十七年度以降では北海道開発に非常に暗い影を残すのじゃないかと思ったので、この点は、将来とも一つ開発庁長官努力してもらわなければなりませんが、ここで一つ、ことしの北海道開発の中で、今なお問題になっております南富良野で、水没問題が起きておりますいわゆる金山ダムの問題について伺います。  これは一つ長官に、最初に私、地元の新聞で申し上げたいのですが、この「金山ダム建設に伴い、水没地などの補償の話し合いが十五日午前十時から南富良野村役場で開かれた。開発局からは長谷官房長、高瀬石狩川総合調査事務所長らが、また、地元からは新田村長、村議会金山ダム対策委員会、同対策協議会員ら三十五人が出席、まず長谷官房長から、金山ダム建設事業の三十六年度予算内示額が予想に反して一億円しかつかなかったいきさつと、この一億円が政治的に金山ダム建設を中止しないという意思の表示ではあるが、期待に沿えず申しわけないと、開発庁の予算に対する見方が甘かったことを陳謝、今後の協力を求めて話し合いに入った。」こうなっておる。これは非常に見方が甘かったというのです。  この経過については、いろいろ資料があるわけですが、三十五年の八月中旬、開発局から補償基準が示され、村及び関係者の了承を求められた。その際説明された一つというのは、まず第一点は、補償基準を妥結して新年度の予算確保に持ち込めば、事態を円滑に処理すること可能の予算がつくと言い切った。第二番目は、新年度直ちに支払いでき得るものは、水没者の立ちのき先をいろいろ探す旅費と、所有権を国へ移転することによる宅地代金、それから耕地代金を支払いする。第三点は、実際の立ちのきを必要とするのは昭和三十九年末でよろしい。その間国有地となった土地の利用は無条件でこれを認める、従って、三十七年、三十八年、三十九年の三カ年間国有地を年貢なし、公課なしで使用ができる、三カ年間そのような利用が許容されることは、見方によれば、事実上土地代金が前払いされたことになり、この間の金利を計算しても相当額に達するものであることが強調され、補償を受ける関係者も、局側の提示価額と関係者の主張する価額の開きを納得するに至った重要な点であった。そこで、新年度からは妥結した基準を基本として個人折衝を開始し、その八〇%以上の個人折衝が進捗したら補償金の支払いを開始する。支払いを受けるべきもの約五億円。この条件によりその八〇%が初年度に支払いを受けるとすれば、少なくとも四億円の予算が絶対必要になり、個人折衝が順調に進めば五億円は要る。――宮崎さんもこれはよく聞いてもらいたいのです。――以上の条件で話し合いを積み重ねて、十二月初旬基準が現地で妥結されたわけです。ところが、三十六年度予算は、その額の過不足よりも、この計画を採択するかどうかに論議が集中して、やっと一億になった。これは長官、一体一億でこの問題が解決できるのでしょうか。現地ではこう言っているのです。どうも一億という金は、なるほど長官の政治力によって大蔵大臣との間で一億持ってきたが、これは現地の者にまあまあということで、金山ダムについてはやる意思がないのではないか、こういうことを心配しておる。これは水没地帯ですし、相当問題がある。もうすでに相当金を使っているわけです、個人個人にすれば。まず、この間の経緯ですね、当然これは五億でよろしいと開発局が言って基準を示して、水没する諸君との間に妥結をして、そして開発局も、それならというわけで、開発庁を通してやったら一億になってしまったということで、非常に問題を残しているわけだが、この点はどういった経過をたどったのか、長官から一つ伺いたい。
  78. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 これはなかなかむずかしかったのでありますが、しかし、最終的には、多目的ダムである、すなわち、災害の防除と農業利水、電力との多目的ダムであるという点をよく理解してもらって、金は、ごく少数で一番最終の段階に行ったもので、一億になったのですが、公共事業としてはやるというつもりでこれは計上しておったのですから、この次の、来年度の予算においては大丈夫なつもりでおります。
  79. 横路節雄

    ○横路分科員 その一億というのは、ことし何に使うのですか。
  80. 木村三男

    木村(三)政府委員 一億の使途につきまして実施計画を作成中でございますが、補償を優先いたして考える。若干の事務経費もございますけれども、補償を一応優先させまして、その方に向けております。
  81. 横路節雄

    ○横路分科員 監理官、去年の暮れに補償は五億ということだった。それを一億では、どういうように払うのですか。五分の一ずつ払ってやるのですか。これはどうするのです。
  82. 木村三男

    木村(三)政府委員 予定額としましては、土地代金が大体四億程度になります。そして、この用地の買収の仕方は、予算に応じてやるというのが政府の方式なんでございますが、事業は経過的に進めて参りまして、三十七年、三十八年と続くわけでございます。まず、三十六年度として考えますならば、一億の事業でございますけれども、これは金額も、理想的にいえば当初よりも少ないということになりますので、今申し上げましたように、土地代を払える限り払う、あとは、次年度以降に計画は進めていくということに相なるわけであります。
  83. 横路節雄

    ○横路分科員 今あなたは、土地代金だけで四億かかると言ったわけでしょう。で、この一億については事務費も少し見込んでいるのでしょう。一億まるまる使えるわけではないのですが、四億の土地代金がかかるのに、一億を切ったものではどういうようにしてやるのですか。ならしてみんなに分けるのか、総体的な地点で、何戸なら何戸についてやる、こういうことで仕事をやるのか。一体その点のことはどういうようになさるのですか。私どもは、金山ダムについては積極的におやりなさいということなんですよ。今聞いているのは、何も金山ダムはつぶした方がいいというのじゃないですよ。せっかく去年の暮れに、現地の住民と開発局と話し合って、基準について妥結した。今あなたに聞くと、土地代金が四億かかるのにことし一億、それは事務費も含んでいるというのなら、どういうようにして現地の住民諸君を納得させるのか、それを一つここで、抽象的にでなしに、具体的に話してもらいたいと思うのです。
  84. 木村三男

    木村(三)政府委員 この一億円の支払い方、優先順位。関係者が二百三十何名ございますが、事情によって早く移転したいという者もございますし、まだ移転先の方はきまっていないとか、個人的な事情もございます。そういったことを具体的に代表者なり、対策委員会というのが向こうにございますけれども、よく話し合いまして、それで支払い方法をきめたいというので、先ほどの新聞にも出ておりましたように、去年官房長以下が現地側といろいろ折衝をしておりまして、それによって一億の支払い方について、どういうふうにやっていくかということを現地でよく打ち合わせて、それに従っていくということにいたしております。
  85. 横路節雄

    ○横路分科員 これは問題が二つあるのです。一つは、政府の方は本気になってやらないのではないか。ことし、これは九億を使わなければならなかったわけですね、補償だけで。土地代金四億、その他を入れて五億ですから……。それが、土地代金でも四億かかるのを一億組んでいるのは、今まで大蔵省長官の顔だけ立てたのではないか、そしてやらないのだ、この点が、確たる補償がないということが一つ。第二の点は、今監理官からお話しのように、土地代金四億、その他を入れて五億というのは、ことし、三十六年度の予算で全部払いますよということだった。それが今お話しのように、ことし一億であれば、三十七年度予算、三十八年度予算と、こういうふうに送られていくんだから、そうすれば、当然去年の十二月に示された補償の基準というのは修正してもらわなければならぬ。この二点なんです。おわかりでしょうかね。第一点は、やらないのでないかという将来に対する不安がある。だからここで、やるのだということが明確にならなければならぬ。それから、十二月に三十六年度予算で全部払いますと約束したものが、監理官の言うように、三十七年度の予算、三十八年度と、こうまたがっていくのですから、当然その間には物価も上がるでしょうし、その他もあることだから、従って、その補償基準については修正してもらわなければならぬ、こういうことが第二点なんです。長官、どうでしょうか。
  86. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 最初、お話しのように、十億以上のものを要求してあったのです。それで、先ほど話したような経緯で一億しかとれませんから、その一億の問題は、地元の人とよく相談しまして、そうして、一番急を要する点からそれを実行していきたいと思っています。そうして、継続してやるんだということを何らかの方式ではっきりしたいと思っております。
  87. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、今の長官のお話で、継続してやるということを何らかの方式で明確にしたい、こういうわけです。どうもこういうときに、長官答弁あと主計官に聞くのはちょっとおかしいのですが、しかし、本来からいけば、主計局長か大蔵大臣に来てもらって、答弁してもらうのがいいと思うけれども、あなた一つかわって――なかなか主計局の方の抵抗が激しい、こういうようにわれわれ聞いている。政治的にどこかで妥協しても十億くらいかかるものが、結局一億しかきまらない。それは大蔵省側における主計官諸君の抵抗が相当強い。北海道においては、いわゆる土地改良その他によって米の収穫を上げる必要はないんじゃないか、こういう意見もあるだろうと思うのですね。そこで、あなたは、代表してと言うと悪いけれども、担当の主計官だから、一つこれは、今継続してやるということを何らかの方式できちっと定めたいというんだが、この点、一体主計局側の意向はどうなんですか。
  88. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 はなはだ恐縮でございますが、御承知の通りに、特定多目的ダムとして着工いたすということにきまったわけでございますので、おそくも昭和三十六年度中に、特定多目的ダム法第四条によりまして、基本計画が決定されることになると思います。これは建設大臣が原案を作成いたしまして、関係各省と協議の上で決定するということでございます。この基本計画が決定になりますれば、これは政府としての決定でございますが、これをもってこのダムをやるということがはっきりきまった、こういうふうになるわけでございます。もちろん、大蔵省もこの協議にあずかりまして、私もいろいろ意見もありますけれども、そういう段取りに進めていくということについては、私ども了承いたしておるわけでございます。
  89. 横路節雄

    ○横路分科員 今、具体的にだんだん話が出てきたわけですね。今あなたの話で、これは多目的ダムとしての基本計画がきちっときまれば、それでこの問題は本格的に取り組む、ということになれば、まだきまってないわけですな。これは長官どうですか、今の主計官のお話のように、多目的ダムとしての基本計画がきまったときに初めて本ぎまりになるわけです。だから、なるほど、現地の住民の諸君が、ほんとうにきまるのかどうかなという心配というものは無理がない。これは非常に問題ですよ。
  90. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 説明が不十分でございましたので、補足をいたします。多目的ダム法に基づきます基本計画と申しますのは、事業の着工の前に決定するのが通常の手続でございます。しかし、御承知のように、いろいろダムにつきましては計画策定上問題が生ずることがございますので、従来とも、着工予算が認められたあと基本計画がきめられておるというのが普通でございます。建設省の方でも今作業をしておると思いますから、できるだけ早くこの決定に持ち込むのではないか、こういうふうに私ども考えております。
  91. 横路節雄

    ○横路分科員 それでは、長官に、国務大臣として今のお話の点をここで明確にしてもらえれば、現地の諸君も、なるほど、それでは本ぎまりになるだろう――非常に不安なんですから、大臣としてここで責任を持ってそのことについて御答弁いただきたい。
  92. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 基本計画を建設省でやる、やらないということは知りませんが、とにかく、私と水田君と話したときには、事業として必ず今年度からやる、ただし、金額は一億でがまんをしてくれという話ですから、はっきりこの問題はやっていけると思っております。
  93. 横路節雄

    ○横路分科員 長官、私が聞いているのは、今、主計官の方から、本来から言えば、事業の前にこの多目的ダムとしての基本計画を決定して、それから予算を組むのがほんとうだけれども、しかし、今までいろいろな点で予算をつけておいて、それから決定するのだ、決定して初めて本ぎまりだ、こう言うから、そこで、今まだ決定をしてないのですから――予算は一億、これがことし九億とか十億組んであれば、だれも言わないのです。一億だから心配をしているのです。だから、私が今あなたにお尋ねをしておるのは、建設大臣が決定をするこの多目的ダムの基本計画というものについては、小澤さんも、長官として責任を持ってやります、責任を持って建設大臣と折衝して決定をさせます、こうおっしゃっていただけば、なるほど、それは本ぎまりになる。大臣が責任を持ってやるということがはっきりするわけです。その点、今のお答弁の、水田大蔵大臣と話をして一億もらったのだという話だけでは、それがきちっときまるということにはならないわけです。ですから、その点について御答弁をいただきたいと思います。
  94. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 それは、今話した通り、基本計画は必ずやるという前提でもらったのですから、基本計画は事務的の一つの仕事でございますから、これは急いでやることにします。
  95. 横路節雄

    ○横路分科員 責任を持ってやりますね。その点はっきり……。
  96. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 責任を持ってやります。
  97. 横路節雄

    ○横路分科員 次に、監理官、第二点は、重ねて言いますが、十二月末で五億、こういうようにきめてお互いに妥結した。しかし、ことしは一億だ。あなたが言ったように、三十七年度、三十八年度まで延びているわけだから、そうならば、当然この問題については修正しなければならぬ。そうでしょう。私の言う話はおわかりでしょう。その点はどうですか。
  98. 木村三男

    木村(三)政府委員 昨年十二月末、開発局で予定しておりました事情と予算がずれるというようなことで、時期的な差が出て参りまして、適正価領の補償ということでございますので、それによって変わり得る要素が出てくるだろう、その辺をどういうふうに話をまとめるかというのが、今後の局なりあるいは出先機関の仕事でございますので、その辺を含めましてさらにまた話し合いを続けたいというふうに考えます。
  99. 横路節雄

    ○横路分科員 今、監理官の話は、当然変わり得る要素を含んでいるのだ。だれが考えたってそうです。だから、その点についてはさらに現地でよく話し合いをしたい、こういうわけですね。このことだけもう一ぺん言っていただきたい。長官の方がいいですな。
  100. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 その話は現地と打ち合わせた上で当然やることになっております。
  101. 横路節雄

    ○横路分科員 それでは、一つだけ長官に申し上げて私は終わりますが、実はこの問題――どうせ政府は補正予算を組みますよ。長官御存じのように、三十五年度の税の自然増収は、第二次補正まで組んだのに、さらに六百億ある、こういうことは大体常識になった。三十五年度の税の自然増収の残りが六百億円、さらに、三十六年度は、政府が認めている税の自然増収よりは、今だれが考えても大体一千億から一千二百億円はふえる。だから、大臣御承知のように、今いわゆる医療費問題で与党の方が医師会の方と話をして、補正予算でやろう、こういう折衝をしているわけです。これは財源がなければできないけれども、三十五年度で六百億、三十六年度でとにかく千億から千二百億出ることは明らかなんです。そこで、私は特にこの際大臣に決意を促しておきたいのは、当然これは補正予算が出るのだから、そうすれば、この問題を積極的にやる以上は、三十七年、三十八年にまたがって補償についての修正問題をいろいろ考えるよりは、この際、次の来たるべき補正のときに残りの補償についての予算をきちっと計上して、全面的に三十六年度の年度内に解決することの方が私は正しいと思う。必ず補正予算を組みますよ。医療費の問題だけでもすでに与党の方は医師会の方と話をつけているわけです。この点どうですか。その点だけ一つ長官の決意を促しておきたい。
  102. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 でき得ることならばそうしたいと思いますが、まあ予算の時期になってこなければなりませんから、それまでは組むということをはっきり言うことはできませんけれども努力します。
  103. 横路節雄

    ○横路分科員 長官、この問題は、水没する約二百四十戸近くの人からすると、将来非常に不安な問題をかかえているわけですから、これは長官ばかりでなしに、担当の宮崎主計官一つ主計局の方もあわせて、この問題は、水没という将来の不安をかかえて三年度にまたがるということなしに、これはことし当然組まるべき補正予算の中で一挙に解決をして、現地の諸君が安心して他に転業なり、他の耕作地に移れるようにして、計画が順調に進むようにしていただきたいと思います。  以上で終わります。
  104. 相川勝六

    相川主査 午後二時より再開することとして、暫時休憩します。    午後一時休憩      ――――◇―――――    午後二時九分開議
  105. 相川勝六

    相川主査 休憩に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。岡良一君。
  106. 岡良一

    ○岡分科員 私は、本年度予算の科学振興費に関連して、科学技術行政全般にわたり、若干の御質疑を申し上げたいと存じます。  まず最初に、これは長官に御所信を求めます。池田内閣は、組閣の当初、また、施政方針の演説等においても、科学技術の振興を公約としてうたわれました。ところが、本年度におけるこの科学技術振興費を見ましても、前年度に比べての増はまことに僅少でございまして、昨年度の総予算に対する本年度の予算の伸びにも劣っております。また、総予算の中における比率におきましても劣っております。こういうわけで、科学技術振興に対する熱意は一向私は見出すことができない。これでは、せっかくの科学技術振興の表看板も、いわば看板に大いに偽りがあるといわざるを得ないのでございます。この点について、まず長官の御所信を承りたいと思います。
  107. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お答え申し上げます。  御承知のように、科学技術の予算がパーセンテージからいっても大したものじゃないということはお説の通りであります。しかし、岡委員も御承知のように、今度の予算面で現われたものは、今までなかった新しいものが相当に芽を吹いて出ております。これを御承認いただけるだろうと思います。  それから、基本的には、岡委員のように科学上の問題に対して非常に御理解と御協力をいただいている方も大へんおられますけれども、全般として見まして、わが国の政界あるいは民間にいたしましても、科学に対する認識が足りないのではないか、はなはだ私も遺憾に思います。従って、これらの啓蒙あるいはPR、そういう点から基本的に建て直していかなければ、日本の科学というものはそう簡単にいけるものじゃない、そこに私は現在非常な悩みを持っております。ことに今度の予算編成にあたりましては、御承知のように、途中から私就任いたしましたために、そのときはすでに時がおくれておって、私なりに若干の考えがないわけでもございませんけれども、十分に予算の上に盛られなかったことは大へん私も遺憾に思っております。
  108. 岡良一

    ○岡分科員 新しい問題を取り上げられたことはけっこうでございます。しかし、それにしても、他の国々の総予算に占める科学技術関係費用の比率というものから見れば、日本のそれは三分の一なり、二分の一なり、四分の一というような数字を、科学技術庁の方の資料から私どもは拝見をいたしておるわけです。この点、何と申しましても科学技術に対する熱意のほどというものは、私は納得いたしかねます。特に科学技術の振興ということは、単に科学技術を振興させるという、そういう狭い分野の問題ではなくて、いわば自然界に存在しているもろもろの法則を人間の知恵の力が見出し、これを経済の繁栄なり、また、国民の福祉のために役立てる、現代における科学技術予算というものは、そういう意味の投資であるという観念が大体一般的でございます。そういう観点から、たとえば、科学技術会議にいたしましても、国民総所得の二%程度は科学研究投資に国が費すべきだ、こういうことをうたっておる。ところが、本年度における科学技術振興費は、二%はおろか、〇・三%にも満たない。こういうテンポでは、とてもとてもどんどん日進月歩の勢いで進んでいる諸外国の科学技術の振興に対しては追いつけるものではない。このことを私は憂えておるものでございます。重ねて科学技術振興に対する、また、来年度の予算についての大臣の御所信を承りたいと思います。
  109. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 ただいま岡委員からお話しの数字の中で、欧米先進国は大体二%とおっしゃいましたけれども、それには御承知のように民間のも入っているはずなんです。わが国の科学技術庁の予算が〇・三%とおっしゃいましたが、民間を含めて〇・九%であります。ですけれども、諸外国の二%に比較すれば、はるかに低いことはお説の通りであります。これは、やはりその国の国柄といいますか、過去の蓄積なり伝統なり、そういうようなものがございます。従って、これからのわが国の科学技術の振興をはかるためには、まずもって、その基盤から打ち立てていかなければならぬ。そうなりますと、科学教育、それから、先ほど申しましたような国民の理解、そういうものを総合して、その上に打ち立てなければならぬ、かように考えます。  なお、重ねて申し上げますが、今年度の予算におきましては御指摘の通りでございますけれども、たとえば、あの中で特にお気づきだと思いますが、新技術開発事業団というものを新しく発足した、それから理化学研究所の問題、これは御承知のように、何といってもわが日本における科学の一つの殿堂であります。これが終戦後いろいろな経緯を経まして、この大事な研究機関が十分な能力を発揮することができなかったのが今までの姿でございます。従って、これを他に移転をいたしまして、十分な研究設備をこれからつけていってやりたい、その移転に要する予算も盛り込んでおります。その他いろいろな面で新しい芽ばえが出ております。こういうものは、来年度の予算から十分ふやしていける予算でございますから、まだ申し上げますとたくさんありますけれども、そういったようなものもこれから十分にやっていけば、現在の予算よりもはるかに大きくなっていくだろうという期待を持ち、また、そうしなければならぬ、私はそう思っております。
  110. 岡良一

    ○岡分科員 この理化学研究所あるいは新技術開発事業団につきましては、まだまだこれでは足りません。そのことはあとでも触れたいと思います。  私が二%と申しましたのは、科学技術会議の答申です。答申案では、少なくとも研究投資は国民所得の二%でなければならぬ、少なくともそれをめどとすべきだということをうたっておるわけです。科学技術会議は、何といいましても、事実上その中心は科学技術庁の長官である。ところが、技術会議が二%をうたっておるが、政府予算だけについて見れば〇・三%を下回っておる。民間の研究投資がたとえどれだけあろうとも、私は、政府の研究投資も含めて、本年度一千億は上回らないと思う。そうしてみれば、国民所得に対する比率はやはり一%を下回るわけですね。そういうような状態では、科学技術庁長官としても、せっかく設けられた科学技術会議の答申に対しても無責任のそしりは免れがたいのではないか、こういうことを私は申し上げておるわけでございます。もちろん、長官は御就任早々のことでもあり、予算折衝はその事前にございましたので、あながち、このことについて私はあなたの責任をかれこれ追及しようとは思いませんが、科学技術会議は、われわれの科学技術振興特別委員会の決議によって持たれたものであります。従って、その結論というものに対しては十二分な尊重をしていただけるかどうか、その点だけを重ねてお伺いいたしたいと思います。
  111. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 科学技術会議というものは、わが国における最高の機関でございますから、十分にこの意思を尊重し、また、その今後の活躍に期待し、そうしていきたい、かように思っております。
  112. 岡良一

    ○岡分科員 科学技術会議の答申の趣旨というものは、いろいろ批判もありまするが、少なくとも、研究投資は国民所得の二%、この程度の予算措置を国としてぜひ一つやってもらわなくては、私は、日本の科学技術の振興はますますおくれるのではないかと思います。現に国際連合なんかで、これは一九五八年のリポートでございますが、日本の国は経済成長が列国に比べて非常に進んでおる進んでおるというが、あのリポートを見ると、共産圏以外の工業発展の各国の状態を四つのグループに分けておる。その中で、日本は第三位のグループに入っておる。ポルトガル、アルゼンチン、メキシコ、チリ、これと同じなんです。ということは、国連のリポートでは、技術というものが、みずから育てた技術によって発展をしておるかどうかということを判断の基礎にしている。そうしますと、日本の経済成長が一六%を上回っておる、自由主義諸国の中では一位だといっても、やはり公正な国際的な批判は、技術の後進国として第三のランキングの中に、メキシコや、ポルトガルや、チリや、アルゼンチンと一緒に並べられておるという事実を、われわれはやはり十分学びとらなければならぬと思います。そういう点からも、国産技術を育て、その基礎となる国産科学技術の振興についてはよほどの御努力を私は強く要望するわけです。  もう一つ予算が少ない多いということは別の問題といたしましても、この予算が、この科学技術振興費の説明を見ましても、非常に非効率的に使われておるのです。原子力についていえば、この原子力関係予算が、あるいは科学技術庁の金属材料技術研究所、あるいは工業技術院の電気試験所、運輸省の運輸技術研究所などと、非常に分散して使われておる。これはガン一つをとらえてみても、厚生省ではがんセンターを作る、また、科学技術庁では放射線の総合医学研究所を作るというようになっておる。宇宙開発の問題についても、郵政省では。ハラボラを作って通信衛星の研究の第一歩に取りかかる、そうすると、また科学技術庁の方でも若干の予算を計上するというように、たださえ少ない学者たち、たださえ乏しい施設、しかもたださえわずかな資金、これが一個の目的に統一されて計画的に予算が使用されない。非常に分散をされておる。人が分散をし、施設が分散をし、従って、これに伴う予算が分散する。これはせっかくの国民の税金の使用としても、また、おくれた科学技術振興の乏しい予算を活用するという立場から見ても、私は、これは非常に非効率的な行き方だと思う。この点について、大臣としては今後どうすればいいかということについて御所信があれば承りたい。
  113. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お答えいたします。  岡委員の前段のお話の、日本の科学技術が外国依存度が高いためにランキングが第三位になっておる、これは残念ながら、御承知のように、戦争後、日本の空白時代がありましたために、現在では外国の技術に依存しておる度が非常に強い。これはわれわれとしても非常に残念なことでございます。しかし、幸いなことには、たとえそれが外国から入れられた技術でありましても、これをある程度こなし得る力があった。過去に日本の科学技術の累積、あるいは学問の累積、明治以来の累積がありまして、そのためにこれをどうやらこなして産業経済の発展の上に寄与したというこの事実もお認めいただけるだろうと思う。しかし、今の形が決していいことではないので、従って、みずからの手で開発していく、その方向に進めなければならぬことは言うまでもございません。  それから、今の研究機関が各省にまたがって、ばらばらになっておるということは、その通りでございまして、この姿は、まことに不自然な、遺憾なことだと思っております。しかし、御承知のように、そういうものを取りまとめて一本にするとか、あるいは二本にするとかいうことも考えられぬことでもないのでありますが、各役所にはそれぞれ非常に悪いセクショナリズムがありまして、このセクショナリズムを打ち破って、何とか自然の姿で一本にして、合理的にこれをやっていかなければならぬということは当然でありますから、そこで今私が考えておりますことは、せっかく科学技術会議もございますから、ここで一つ検討してもらって、せめて研究機関の一体化というものを一つ進めてみたい、かように考えております。
  114. 岡良一

    ○岡分科員 とにかく、現在の新しい技術というものは、理学にも工学にも、化学にも生物学にも、全部の分野にわたって深い基礎研究から積み上げられてきて、そこに新しい技術が生まれてくる。ところが、それは旧態依然たる官庁の割拠主義で、しかも、国立機関でありながら、どちらかといえば、主任なり主宰者の勝手な研究をやっておる事例がずいぶんある。少なくとも、国立研究機関は、国の策定した目標に向かって、施設と人の力と資金を動員して、その国の策定した目的をやるべきだが、これが全然なされていない。そして予算が分断され、人がそれぞれ分割をされ、施設は金がないからチャチな施設だけを置くというような状態にある。科学技術会議も、この研究体制を総合化しろ、一元化しろということは答申にうたってあるわけです。だから、各省庁にまたがっておる現在の国立試験研究機関の中で、行政上やむを得ない試験、検定、検査というものは仕方がないでしょう、しかし、ほかのものは一本にしてしまう、そして国の策定した研究目標のために、年次的な計画を追うて積み上げながら、できるだけ早くその成果を確保する、こういう方向にすみやかに行くべきだと思う。まず、この現状を打破するかできないかということが、日本の今後における科学技術振興の重要なかぎの一つだと思う。これを、ぜひ池田長官の御在任中においてその方向に大きく積極的な手を打たれるかどうか、この点、一つ御所信を承りたい。
  115. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 日本の研究機関が個人の学者を中心にした、いわゆる研究室グルーブといったようなものから発足しておることは御承知の通りであります。そうした形が今もって若干残っておるような感じもいたします。その点になりますと、全体主義国家などは、いわゆる共同研究――これは何も全体主義国家ばかりではございませんけれども、この体制こそは将来の大きな科学技術の発展の上に、また、研究の上に、ぜひとも必要なんじゃないか、私も強く感じております。  同時に、今の研究機関の一体化というものにつきましては、率直に申し上げまして、大臣の任期というものが、公団や何かの理事長のように三年とか五年とかいう任期があるものなら、はっきりされておるなら、おのずからやりようもありますけれども、今の大臣なんかは、いつ首になるかわからぬような大臣が、あれもやりたい、これもやりたいといってもできることではない。従って、私は、自分の在任中――これが何カ月あるか何年間あるか知りませんが、そういうこともおのずから考慮に入れながら、今岡委員のおっしゃったような、いわゆる研究機関の一体化というようなものを、何とか方向だけでも定めたい、それには今の科学技術会議の方々の協力を得て、もっと具体的な案もここで練ってもらって、その上で一つ取り組んで参りたい、かように考えておる次第でございます。
  116. 岡良一

    ○岡分科員 せっかく科学技術会議が答申をしておる基本的な原則の一つなんです。だから、問題は、それをどう具体化し、その第一歩を踏み出すか、任期なんという心細いことを言わないで、それは一つの使命として、はっきりやります、こう言われるのが本来の池田さんのお姿じゃないかと思う。  それから、特に私は、これだけはぜひ一つ今からでもやってもらいたいと思う。それは、科学技術情報センター、それから特許庁、今度は予算書を見ると、国会図書館でも一億四百万を科学技術の図書購入費に充てております。ところが、それは大枚のお金を出して、あるいは特許の資料を集める、外国の雑誌を集める、その他リポートを集める、その数量というものは莫大なものなんです。科学技術情報センターも二〇%ほど余分に資料を買うというようなことも書いてある。国会図書館も一億四百万、特許庁も相当なものです。とにかく何百万部というものが、二、三年前の特許庁の資料なんというものは国別に整理してあるだけなんだ。だから、日本の民間の研究者が一生懸命研究して、さてこれの特許願いを出すと、もう外国にすでに特許権をとられてしまっている。せっかくの努力が水のあわになるという、笑えない悲劇がよくあるのです。でありますから、これは何といいましても、科学技術振興の大きな前提は、内外のあらゆる文献を利用したい人たちに対して、すみやかに利便を提供できる、いつでも自由に利用できるようなフリーな計らいをしてやる、これなら今からでもできることだと思う。せっかくここに国会図書館の大きなものができようとしておる。せめて文献くらいはあそこに全部集める、国別にただ番号札をつけておくということだけにしないで、やはりちゃんと専門分野別なり、あるいは会社別なり、あるいはアルファベット別にするのもいいでしょう、そういうふうにちゃんと整理して、どこからでもこれを見たい、調べたいという人には、手っ取り早くその利便が供されるようなことくらいはぜひやるべきだと私は思う。これなら、あなたがやろうといってがんばってやれば、やれないことじゃないと思う。せめて、これくらいは今度は一つやってもらいたいと私は思う。いかがですか。
  117. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 ただいまの御説ごもっともで、科学技術庁で扱っております科学技術情報センター、岡委員もごらんになったと思いますが、これは特殊な使命を持って、今岡君から仰せられたように、外国ですでに特許の出ているのを知らないで、一生懸命こつこつと初歩から研究しているというようなむだもある、そういうむだをなからしめるために、また、研究を助長せしめるために、諸外国のそうした専門の雑誌やあるいはリポート、いろいろなものを取り寄せまして、これを公開し、また、これを集約したものをリポートとして民間各方面に配布いたしておるのが科学技術情報センターであります。ところが、今の特許庁は、いわゆる特許に関するだけの資料を集めて、その分に使っておる。私どもの方は、それをさらに民間にリポートを出す、そこに使命の相違があるわけであります。それから国会図書館は、なるほどりっぱなものができて、たくさんの資料を持っておられますけれども、私どももこうして見ておって、内部の詳しいことはわかりませんが、いたずらに死蔵されているような形が私には見える。これは私の見方が違っておるかもしれませんけれども、そこで、そういう国会図書館のような性格のところにこういうものを集めるのが一体いいのか、それともまた、別個に、私どものやっております科学技術庁の情報センターというような形とはおのずからその使命なり目的が違うのじゃないか、そこに特殊性があるというふうに私は考えております。しかし、今の姿がそのまま並行していっていいかどうかということについては、なお研究の余地があると思いますので、それらにつきましては、委員各位の御意見等も十分に聞いて検討していきたい、かように考えております。
  118. 岡良一

    ○岡分科員 それは大臣、よく御存じないのじゃないかと思う。特許の資料でも、すでに国会図書館には三十五年末現在で十六万ある。それから技術情報センターには六万三千くらいある。特許庁には、これまたずいぶん長い間に七百万くらいある。だから、特許の資料はめいめいみんなが集めているんですよ。しかも、特許庁の場合は、もう二、三年前には、ただ国別にして番号をつけただけであって、これではなかなか民間の研究者としては自分の意にかなう文献を見出すことはできませんよ。だから、こういうものは、特許資料だけでもこうして六万、十六万というふうに持っておるけれども、これをさっき申しましたように、ちゃんと整理して、国別あるいは専門分野別、あるいは会社別に整理するとか、縦横に整理すれば、かりにあなたなり私が、あるいは研究者がこれを見たいというときには、一カ所に行けば用が足りる。そこまで門戸を開放しなければ、ただ幾つも機関を作っても、結局はせっかくの資料というものが死蔵されるのじゃありませんか。任務は同じなんですよ。内外の情報というものをできるだけ国民の利便に供する、それが科学技術振興のための大きな武器ではないか。そういうことでわれわれは科学技術情報センターというものを作ったのです。国会図書館も、その名前と権威に恥じないように資料や文献を集められればいい。その集められた資料が、民間の研究者なり学者なりが見たいときには行って、自分の要求するいろいろな索引があるでしょうから、その索引によって見ればちゃんと手に入る、こういうくらいのことは当然やるべきことなんです。だから、今それを一つにしろとは言いませんが、それくらいな整理はやってほしい。通産省の特許庁と相談してあなた方がやり、国会図書館とも相談してやって、せっかく新しくここに国会図書館ができるのだから、ここに文献を一括して、そうして、広く研究調査をしたいという人の利便に開放する、これくらいなことは今からでも私は当然やるべきことだと思います。
  119. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お答えいたします。  特許庁や国会図書館に数あっても驚かないんですよ。日進月歩でありますから、古い大して値打ちのないものもどんどん出る。数だけでは私の方は少ないけれども、むしろ実用に達しておるのじゃないか、かように考えております。と同時に、これは岡委員はすでに御承知のはずですが、他の方々もありますので、御参考までに申し上げますけれども、科学技術情報センターでやっておりますのは、昨年度までは、外国のそういう専門雑誌やリポートというものが大体二千五百種類入っております。三十六年度からは、約三千種類を今度の予算でふやすことにいたしております。その中から拾いまして、外国特許の情報も民間に流しております。また、御承知のように、IBMのカードの整理の機械がございまして、この設備は、おそらく科学情報センターだけじゃないかと思いますが、それがございまして、その研究者が希望する課題なり、あるいは学者の名前、岡さんなら岡さんが書いた論文はどんなのがあるかといえば、立ちどころに十でも二十でも何分間かの間に出てくるような設備ができております。それで、民間からもどんどんおいで下されば、いつでも親切にこれを提供し、また、そういう速報も、御要求があればどこへでも出すような仕組みになっておることも、これは岡さんは御承知だと思いますけれども、他の方もおられますので、あえて申し上げました。
  120. 岡良一

    ○岡分科員 しかし、そういうあなたのお心がけが私はどうもよくないと思う。雑誌でいえば、たとえば特許庁だって、雑誌は七百二十八種とっておりますよ。科学技術情報センターは二千五百四十三種、それから国会図書館も三千種類とっておる。これは一体みな連絡してとっておりますか。同じものが重なっておりませんか。そういう連絡をあなた方は持っておりますか。ないでしょう。そんなものはあり得るはずはない。おれのところはおれのところで、とにかくこういう施設を持って、これだけのものを持つという、そういう割拠主義ではいかぬと思う。だから、せっかく外国の貴重な文献を買うのに費される、雑誌を買うのに費されるならば、雑誌は、同じものを買う必要はないのだから、みな別々にどれが必要だということを相談して重点的に買われる、そうしてそれを全部集めておいて研究者の利便に供する、窓口を一つにする、それぐらいのことは常識上できませんか。ただ、科学技術情報センターだけはこういう施設があって、雑誌の数が多い、そういうことを言っておると、いつまでたっても、こういう情報の交換とか交流というものが一本化できない。やはりこれはぜひ私が申し上げておるような方向にすべきものではないかと思います。
  121. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お説のように、重複している面もあると思います。また、そういう必要も実際問題としてある面もあるのじゃないか、むだもあるかもしれません、こういう点はなお研究の余地があると思います。ただ、私が申し上げたいのは、今の特許に関するような問題につきましては、私の方が陣容も整い、手も多いし、機械設備もいいので、そういう意味で、私の方の情報センターから特許庁の方に資料を流しておるという事実は、御了承願いたいと思います。
  122. 岡良一

    ○岡分科員 情報センターのお話がありましたが、あれはなるほど私ども手元にいただいておりますが、あれは月に一回出しておるのですか、一体あれは何部印刷して出しておられるのですか。
  123. 久田太郎

    ○久田政府委員 お答え申し上げます。  情報センターで発行いたしております文献速報と申しますのは、半月刊でございまして、それぞれ分野によって違いますが、約七千五百部ぐらいを発刊いたしております。なお、そのほかに、ただいま問題の特許関係につきましては、特に外国特許の速報というものを出しております。これを一般に提供しておりますほかに、ただいま長官からお話がありましたように、国内特許につきまして、これをIBMカード化しまして、これを一般に提供するほか、特許庁とも連絡しまして、特許審査に役立てるような方策も今考えております。
  124. 岡良一

    ○岡分科員 そこで、今のその特許庁と連絡する、協力するという態勢を、国会図書館も含めてやればいいわけです。大体七千五百の半月報では私は足らぬと思う。しかも、同じ雑誌をとっているところがあるかもしれない。これはわからないのです。自分のところの窓口だけでやるというようなことでは、やはりこれはほんとうの意味の情報の交換、交流ということには役立たぬと思う。これはもう一息のことなんです。役所を一本にしてしまえと私は言うのではないですけれども、いつも国会の行き来に見るあの大きな国会図書館ができるにつけて、日本における科学技術情報の文献はこの一堂に集まっておる、そこへ行けば、それを研究したい人、調査したい人は、直ちにその利便が供与されるのだ、こういう態勢を作るには、これはお話し合いでできる、ぜひ一つこれは努力してもらいたい。どうですか。
  125. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 十分に研究いたしまして、御意思に沿うようにいたしたいと思っております。
  126. 岡良一

    ○岡分科員 ただ一時のことじゃなく、ほんとうにこれくらいのことは、まじめな研究者のために、私はやってもらいたいと思う。大きな会社へいけば翻訳者はみなおりますから、外国文献でも自分の手にとって読む者もおるし、また借りてきて読めますけれども、小さいところに行くと、なかなかそうもいかない。そういうところにまたまじめな研究者もおるのですから、やはり国の持っておる文献というものは、できるだけそういう諸君にも役立てるようにしてやってもらいたい。  それから、先ほどの長官の御意見、これも私は若干納得しがたい。それは、外国の技術を日本へ導入する、ところが、日本はそれを非常にうまく利用できる。なるほど、日本人はもう何十年来物まねは上手だと思う。ところが、最近の新しい技術というものは、まねじゃ済まされない。それほど、深い基礎研究から積み上げられてきた結論ですから。一例を申し上げますと、たとえばナフサからポリエチレンを作る、この高分子化学というものは日本にはない。だから、仕方がないものだから、日本の石油化学工業八社は、別々に違った外国の大きなメーカーから技術導入をしておる。けれども、ナフサからエチレン、エチレンからポリエチレンヘという基礎研究がないのですよ。だから、今度はナフサから出てくる四割捨てておったポリプロピレンをどうするか、ポリプロピレンに対する活用方法というものは、日本には技術的な基礎がない。だから、住友や、あるいは三井や三菱などがミラノへ参りまして、モンティカティニから高いロイアルティを払って買っておる。だから、現在の新しい技術というものは、外国の技術を導入しても、それは一代限りだ。なるほど、花は開くかもしれないけれども、実は結ばない。基礎研究がないから。だから、どうしても、基礎研究から積み上げなければならぬ。安易に外国の技術を入れるということは、いつまでたっても、日本は技術的な後進国にならざるを得ない。学術会議の文献なんか見ると、これではますます日本は技術的な後進国になるだろうとさえも憂えておる。そういう意味で、この外国技術の導入に対しては、やはり日本の科学技術振興計画の路線とにらみ合わせて、ある程度コントロールする必要があるのではないか。ただ産業界が利益のまにまに外国技術を導入しようとする、それをそのまま放任しておる、外国技術導入の自由競争をそのままに放任しておるということでは、どうしても日本における基礎科単というものの振興はいつまでたっても望めない。この点について長官として何かお考えがないか、それをお聞きしたい。
  127. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 これは、御承知のように、言うはやすく、実際に実行に移すという段階になりますと、なかなかむずかしい問題でございます。しかし、だからといって、現在の姿をそのままわれわれは認めているわけではない。当然みずからの力によって開発していくという、あなたのおっしゃった、今の基礎研究からということになってきますと、当然にこれはいわゆる教育の面からということにもなり、従って、今の日本の文部省のやっております文教政策に私は若干不満な点もございます。今ここで申し上げる段階でございませんが、そういうものともにらみ合わせながら、十分に文教当局とも話し合いをして、これから基本的な施策を練っていきたい、かように考えております。
  128. 岡良一

    ○岡分科員 最近、新聞を見ますと、盛んに技術導入の競合がいよいよ行なわれようとしている傾向が非常に顕著なんです。たとえば原子力の分野でも、原子力産業会社が四つか五つか現に発足している。一体、原子力関係のわが国に対する特許申請は、どういう分野において、どの程度ありますか。それから、日本の導入を申請しているもの、あるいはすでに許可しているもの、それはどのくらいありますか。これもごく大づかみに、われわしろうとにわかるような程度に、われわれとして納得のいけるように説明して下さい。
  129. 杠文吉

    ○杠政府委員 実は資料を手元に持ち合わせておりませんので、正確なことをお答えできませんから、資料によって後ほど御説明いたします。
  130. 岡良一

    ○岡分科員 まああとでもけっこうでございます。ただ、新しい学問の分野でもあり、同時にまた新しい産業でもある。ところが、私の懇意なやはり原子力関係の専門家の嘆きを私も先般聞いたんです。このままでいくと、もう日本の原子力開発というものは全く外国の特許におおわれてしまうじゃないか、これはどうしたらいいんだろうということで、この方は真剣に嘆いておられました。でありまするから、技術導入を外貨審議会へ申請をしてくる、通産省がオーケーという。ところが、こちらの次官も外貨審議会の審議に加わるわけでしょう。だから、科学技術庁としての意見があって私はいいと思う。科学技術庁としては、技術導入を許可していいかどうかということは、日本の科学技術振興という日本の自主的な立場から判断をしたときに、これは入れるか入れないかという判断があっても私はいいと思う。一例を申しますると、あのモンティカティニ参りをしたポリプロピレン、三井と三菱と住友が技術を入れました。しかし、日本のある別なソーダ会社では、もう一息でポリプロピレンを自分の研究室でやっているのですよ。だけど入れちまうものですから、結局それはそれでおじゃんになっちゃう、こういう実例があるわけです。だから、やはり日本の科学技術振興の大きな目標のもとに、ただ安易について通産省の立場、産業界の立場から入れようとする技術導入についても、日本の自主的な科学技術振興の立場からこれをコントロールするだけの発言権はあってもいいと私は思う。そのために、科学技術庁の事務次官が外貨審議会に出ている以上は、当然その任務はあっていいと思うが、どうでしょう。
  131. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 ただいまの御発言ごもっともで、当然、科学技術庁の次官としてはそこに出席して発言をしておるはずであり、また、コントロールしなければならぬはずでございます。しかし、その場合、やはり問題は個々の問題として、いわゆるケース・バイ・ケースで、そのつどこれは考えられなければならぬ問題でございまして、今後十分に岡委員の言われたことを注意しながらやっていきたい、かように考えております。
  132. 岡良一

    ○岡分科員 とにかく、通り一ぺんな御答弁でございますが、やはりこれも非常にやりがたいことは私もわかっているのです。やりがたいことではあるが、しかし、これはやはり科学技術庁としては、その研究の目標を立て、年次計画を持つくらいの、科学技術振興についての基本的なルート、コースというものを持つべきだと思う。そうすれば、単に事務次官が行かれてあなたに報告をするというのじゃなくて、そのコースにおいて、これを入れることがいいか悪いかという判断を当然持たなければならぬ。そういうような機構をやはり科学技術庁は持つ、そうして科学技術庁の立場から、これを入れることが日本の科学技術の振興に役立つかとうかという判断――ただメーカーや業者の利益のために役立つかどうかという判断じゃなくて、日本の科学技術振興のために役立つかどうかという判断をやはりはっきりと下し、その立場から外貨審議会において大いに発言をしていただく、せめてこれくらいなことは当然な任務であり、責任である。私は、通り一ぺんな大臣の御説明でございますが、これでは満足ができない。そのことについては、科学技術庁としても、科学技術庁としての独自の判断を持ち得るように今後はぜひ一つしていただかなければならぬ。そのことは、私はあなたのひざ元で生きた例があると思う。それはあの半均質炉、これは外国にも同じ似たようなものもありますが、しかし、やはり日本人のアイデアから出発したものです。あの半均質炉が着々として実績を上げておると僕は思う。そうしてもうやがてこれがものになる可能性もだんだん見えてきた。日本人のアイデアで、日本人の設計で、若干の燃料をもらったとしても、進められておるものが着々実を結んでおることは、日本人の科学者の力というものを信頼してもいいと思う。だが、CP5は、外国の設計で、飛びついてもらう。ところが、これが国会で問題となるような醜態を演じておる。だから私は、これはいいお手本だ、もっと日本の科学者の実力を信じ、そうしてこれを育て伸ばして、りっぱな技術を生み出していくように育てることが、科学技術庁の大きな責任だと思う。そういう立場から、安易につく外国技術の全く自由な導入ということについては、今後、科学技術庁という立場から、よほどこれはコントロールしていただきたいということを私は強くお願いをしておきます。  それから、先ほどおっしゃいました理化学研究所、それから新技術開発機関ですか、とにかく基礎研究は、私もきのう文部大臣にいろいろ御所見を承って、今後一生懸命やる。次は応用化、工業化の試験をやる、次には技術として開発する、この結び目が今日本でもやっと少し芽を出してきた。今度理化学研究所も少し広いところへ移る。口の悪い人は、化けもの屋敷と言っておる人がある。これは口の悪い人でございますから、研究所の方もきげんを悪くしてもらっては困りますが、気の毒な状態です。これがどうやら広いところへいく。技術開発機関もまたずいぶん予算を削られたようだが、少し芽を出そうとしておる。基礎研究をやり、次に応用化なり工業化の試験研究機関というものを今後実力を備えたものを作り、そうして新技術開発をやる、これが一貫的に運営をされ、しかも日本の場合は急ピッチでどんどん押し上げていかなければならぬ。そういう意味で、理化学研究所の今度のわずかの規模の拡大ということでは、なかなか私の希望するような姿ではないと私は思う。この点、今大臣は非常に自画自賛をしておられたようでございますが、いかがでございますか。
  133. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 理化学研究所の問題の前に、御指摘がありました新しい技術導入にあたって、単に業者やあるいはメーカーというような人たちの個人的な利益追求という面を厳重に注意してやれという御趣旨だと思いますが、私も同感であります。従って、これからも、今までもそうでありましたが、事務次官が会議に出ます前には、庁内で十分検討いたして、これを輸入することが妥当であるかどうかということも十分検討した上で、わが庁としての意見をそこへ出て開陳することになっております。  それから理化学研究所の問題につきましては、御承知のように、現在、あそこの敷地がわずかに七千坪しかございません。今度は約十万坪の土地を目標にしまして、これを獲得する大体の目安がつきましたので、そこへ移しまして、そうしてそこに十分な研究の環境を作り、設備もより拡充いたしまして、ここではほんとうに科学の殿堂といったようなものを作り上げ、基礎的な研究をやってもらう、かように考えております。
  134. 岡良一

    ○岡分科員 新技術開発機関のことは、いずれまたいろいろお伺いする機会もございましょうが、この理化学研究所は、われわれも、われわれの同僚も、また政府長官の前々任者あたりが、非常な力こぶを入れておられた。その当時の構想では、十万坪くらいじゃ足りない、厚木へ行こうじゃないか、あそこには相当優秀な旋盤の工場がある、だから米軍が撤退したら、そこへ持っていこうじゃないか、そして政府関係の研究機関の中で、研究部門なんかはここに一つ集中的に集めるというように、非常に規模の大きなもの、そして徹底させるもの、しかも、その体系としては統一されたものを作ろうじゃないか、こういう意見が政府側からも出ておった。われわれからも出ておった。くしくもそれが一致した時代もあった。だから、これらはどれだけかかるかわかりません。とにかく、昭和の初年、学校をわれわれが出た時分には、理化学研究所といえば、これは自然科学を研究したものにとってはメッカだった。それが今はまことに荒れ果てておる。だから、これを強大なものにしよう、こういう意見がある。十万坪くらいというようなことじゃ、とてもとてものことである。そういう面積の狭小のものではない。私は、これは少なくとも五年計画ぐらいで、試験研究機関の統合と並行的に、ここにやはり応用化試験、工業化試験の大きなインスティチュートを作る、このくらいの構想は私はあってしかるべきだと思います。十万坪に少し広げましたぐらいでは、理化学研究所の使命にかんがみて、満足さるべきではないと私は思う。この点いかがでしょうか。
  135. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お説の通り、これは多々ますます弁ずるのであって、しかし、最初からできない相談をしてもできないことなんで、とりあえず十万坪でがまんしてもらって、ここでやっていく。それが急速に足りなくなるような事態が起これば、これはまことにけっこうなことなんで、そういうふうな事態がすみやかにきて、そうしてさらにより大きなところへ移って、より大きな完備した研究機関を持つような方向にいきたい、かように考えております。
  136. 岡良一

    ○岡分科員 局長の諸君も、いろいろ御意見があったら、一つ言って下さい。池田さんも非常に遠慮がちな御答弁のようでございますが、あなた方の若い意欲にあふれた御見解を、この際大いに述べていただきたい。  それから、特別研究促進調整費というのがございますが、この重点研究というのは、本年度はどういうものになっているのですか。
  137. 原田久

    ○原田(久)政府委員 岡委員も御承知のように、昨年初めて特別研究促進調整費がつきました。金額は一億円、初年度のととでもあり、また、科学技術会議の第二号答申で六つの項目が指定され、ガン、台風防災、電子、宇宙、海洋、核融合等でございますが、その六つの問題を中心にいたしまして、昨年はそれぞれ促進調整費を計上いたした次第でございます。三十六年度におきましては一億三千万円つきました。この際、どういう項目に特別研究促進調整費を使うかという考え方でございますが、基本的には、予算編成期において予測できないというような課題で、しかも、緊急に解決を要するという課題で、しかも、国家的に総合的にやらなければならぬという課題に集中して参りたい。昨年と同じような六項目になるか、あるいはそれ以外になるかということは、まだきまっておらない次第でございます。
  138. 岡良一

    ○岡分科員 ここでも、私は、さっき申し上げた点が、やはり大いに検討の余地があると思うのです。この重点研究の電子が、予算面では通産省にもいっておれば、郵政省にもいっておる。宇宙もそうである。それからガンにしても、厚生省のがんセンター、科学技術庁もガンは重点だといって、これは医学総合研究所のようなものを作っているということなんですね。これは重点研究をしておるけれども、従来は重点的にやられておらぬ。政府としては一体になっておらぬ、分散をしておるということなんです。そこで、特にこの海洋というのは、何を具体的にどういう目標でやられるのですか。
  139. 原田久

    ○原田(久)政府委員 海洋の特別研究といたしましては、昭和三十七年にインド洋で国際観測が行なわれます。それまでに、わが国といたしましても協力態勢を進める意味におきまして、深海の測定装置につきましては、三十五年度から早くそういう測定器等について新しい測定器を研究しておかないと、インド洋の共同観測に十分間に合わないという緊急性もございます。それをいたしたい。  それからいま一つ、わが国の日本列島に沿ってあります日本海溝でございます。あそこもよく調べる必要がある。深海の調査をしたいということも、早く手をつける必要があろうというようなことで、そういった観測関係中心にしました研究に着手していきたいということで、やっておる次第でございます。
  140. 岡良一

    ○岡分科員 エネルギー問題は、やはり経済成長に伴う不可欠な大事なファクターでございますが、地熱とか、あるいは太陽熱とか、あるいは潮の満ち引きの関係の利用によるエネルギー、こういうエネルギーに対する、総合的な未利用エネルギー資源に対する研究開発、これはやはり私は大事なことだと思うが、これは原田君あたり、あるいは計画局あたりで、何か研究しておられないですか。そういうものを重点目標にしていくことは必要だと思うのですが……。
  141. 久田太郎

    ○久田政府委員 未利用エネルギーの問題は、今世界的にも非常に注目されておりまして、近くこれにつきまして国連でも国際会議を開くという状態になっておりますが、私どもにおきましても、まず、資源調査会を中心にエネルギー問題を検討いたしております。なお、地熱利用の問題につきましては、調査会、研究会等を通じて、いろいろなこれの知識の浸透普及をはかるとともに、太陽エネルギーにつきましても、学会のこういった分科会等に科学技術庁から参加しまして、これらの方面の技術の開発に協力いたしておる次第でございます。
  142. 岡良一

    ○岡分科員 科学技術庁としては、なるほど電子とか、宇宙とか、原子力とか、こういうアップ・ツー・デートな問題、これも一応はおつき合いをしてやらなければならぬ、また、やるべきものもたくさんありますが、同時に、わが国の国土に即したもの、国民の利便に直接関係するもの、卑近な例をいえば、今都市計画で一番悩んでおる屎尿をどうして資源化するかという研究ぐらいは真剣にやっていいのです。そういう意味で、一昨年の本会議で、なくなった浅沼書記長が、党代表で岸総理に、ちょうど伊勢湾台風にちなんで質問した。台風に対する科学的な研究と科学的な対策を立てるべきだ、総合対策を立てろ、当時岸さんは、わかりましたという御返事だった。天災は忘れた時分にくるというが、予算を見ると、科学技術庁に三十万円くらいしか載っていない。こんなことではいかぬと思うのです。台風に対する総合的な調査研究対策の樹立、私は、こういう問題はぜひ科学技術庁が取り上げるべきだと思う。こういう点を一つ、池田さんの第一着手としてぜひこれをやるべきではないかと思うのですが、いかがでしょう。
  143. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 何しろ科学の分野は広過ぎるので、どこから手をつけていいか、率直に申し上げまして、実は戸惑いするような状態であります。今岡委員が指摘されましたそれらの問題も、当然やりたい、また、やらなければならない課題であります。そこで、国家財政なり予算と見合いながら当然やらなければいけませんが、といって、これは放置するわけにはいきませんし、冒頭でおしかりを受けたように、とにかく来年度の予算が足りないじゃないか、まことにその通りで、今申されましたような面につきましても、着々とこれから実行に移すような方向に進めたい、努力をしたい、かように考えます。
  144. 岡良一

    ○岡分科員 この台風を中心とする日本の天災に対する科学的な対策を立てろということは、委員会でも決議をしている。特に台風のごときは、国際的な協力のもとに、はっきりと台風の実体をつかんで、予報も正確にすべきであるというようなことまでも、決議案でしてあるわけです。ところが、この予算を見ると、三十一万円、それだけですか、一つこの点説明してもらいましょう。
  145. 原田久

    ○原田(久)政府委員 お答え申し上げます。  三十一万円という数字が出たそうでございますが、おくれて参りましたので、その根拠はわかりませんが、台風防災に関しましては、昨年の伊勢湾台風の経験にかんがみまして、御承知のように、科学技術庁に臨時台風防災科学対策委員会を設けまして、関係各方面の御意見を徴していろいろ案を練り、そういった案の一環といたしまして、昨年、すなわち、三十五年度におきましては、先刻御説明しました特別研究促進調整費で、運輸省、建設省、農林省等、関係各省の御協力をいただき、東京湾を中心に、かりに伊勢湾台風のような大きな台風が東京湾を襲った場合、どうなるかということを考えますと、非常な被害が想定される。ところが、現在までの体制でいきますと、各現象、そういった高潮などが現われましたときの現象は、あとから調べていくというような結果しか得られない。それでは、東京湾に高潮が参ったときに、それだけの事前対策ということができないじゃないかということから、いろいろ研究を進めまして、東京湾の入口に特別な海底電線などを布設いたしまして、観測施設も設けて、あそこに流入して参ります高潮が、ある現象をもって起こって参りますと、何時間後に東京湾全域にどういうふうな水位の変化が出てくるか、あるいは河川などが東京湾に流入しておりますが、それがどこまで高潮の影響がさかのぼって及ぶかというようなことを、事前に把握するような研究をすべきであるという観点から、特別研究促進費でそういう対策を打ち立てられるような研究にすでに着手した次第でございます。昨年度のことであります。  それから台風防災関係予算でございますが、これは関係するものは北海道開発庁、農林省、運輸省、建設省、科学技術庁はもちろんでございますが、文部省も入れまして、昨年に比べまして二千三百万円ほど増額いたしております。そういった台風防災関係予算は、総額で一億二千三百万円、こういうような内容になっております。その内訳になりますと、大へんこまかくなりますし、研究成果も多方面に広がっておりますので、ここで御説明は省略させていただきますが、予算総額について言いますと、そういうようなことになっております。
  146. 岡良一

    ○岡分科員 とにかく一度大災害を起こすと、それこそ何千億という大きな災害を起こす。しかも、どんどん太平洋岸に大きな工業が密集していく。大きな溶鉱炉ができる。さてまたその廃ガスと硫安というコンビナートができる。石油化学工業はどんどん水が要る。そうしてまた、地盤が沈下するというような状態で、科学技術が進んで経済成長が発展をしてくれば、またそこに一つの大きなマイナスの条件が生まれてくる。これが一たび台風だ、災害だということになると、そこに大きな被害が起こってくるというような悪循環を繰り返す。だから、これはやはり科学技術振興を任務にするお役所の中心的な使命だと私は思うのです。なるほど、運輸省あたりの予算は、台風については予報を早くしようというようなことで、去年からことしにかけてはかなりの予算もついておるようです。しかし、予報を早くしてみたところで、それでは問題はやはり済まない。これはやはり地質学も、気象学も、おそらく水や風の力の力学的な研究も要るでしょうし、また、それらを総合した科学的な対策を立てる、こういうものは、役所にいろいろ予算をつけてやらしめるというのではなく、科学技術庁がやはりその中心になって、総合的な対策――総合というのは、これは近代科学の原則なんですね。だから、そういう対策を科学技術庁が中心になって立てる。科学技術庁は、おそらく私は、一番その関係予算が少ないのではないかと思うのですが、いずれにしても、技術庁がイニシアチブをとっておらない。予算はついたが、気象庁は気象庁でそういう意味の調査研究だけやっている。これはもっとほんとうの防災科学の確立と、それに基づく防災建設工事をやる、こういうところまでの基礎的な、総合的な施策を技術庁がやるべきだと思う。大臣、どうなんですか。
  147. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 日本は不幸にして、おそらく私の承知しておるところでは、世界最大の災害国だと考えております。世界各国の予算を見ましても、毎年々々災害復旧費といったような予算予算面に出しておるような国は、あまり私聞かないのでありますが、事ほどさように、日本は今日まで災害にさいなまれてきた。公共事業予算その他あるいは個人の損失等を入れますと、時によりますと、毎年々々数千億もそれによって失われておるということは、岡委員承知の通りでございます。にもかかわらず、これに対する対策というものはあまり打ち立てられていなかった。従って、科学技術庁が中心になって十分にやるべきであるという御説はごもっともでございますが、何しろ今までが今まででございまして、これから新しいそういった強い構想を打ち出していかなければならぬことは当然であります。ただ、微力でありまして、なかなかそこまで急にはいきかねるであろう。そこで、どうぞ一つ、これは党派を越えて委員の皆さんからも御協力願って、そういう方向に進めたい、かように考えております。
  148. 岡良一

    ○岡分科員 私がさっきから申し上げていることは、とにかくうしろを見ちゃいかぬ、手おくれだから、前を向け、少しぐらいかけ出せと言っている。ところが、長官うしろを向いてものを言っておられる。これはやはり前向きの姿勢でかけ出すぐらいの意気込み――大体僕は、池田正之輔さんという方のお人柄はそういう方だと思っておったけれども、大臣になられたらいやにうしろ向きの姿勢で、私はそういう点を非常に残念に思っております。  それから、科学技術外交という問題でありますが、一時はアトミック・ディプロマシー、原子力外交なんという言葉があったくらい、科学技術外交というものが、国際政治においては非常に大きな役割をしておる。これはもう私から申し上げるまでもないと思う。そこで、日本の現在の科学技術外交のあり方は、これでいいかどうかということなのです。まず、現在の在外公館のああいうスタッフで、一体科学技術外交はできるのか、この点をお伺いしたい。
  149. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 私どもも決してこれで十分とは考えておらないのでございますが、またおしかりを受ける、若いくせに、なっておらぬということになるかもしれないのですけれども、だんだんに充実する方向に向かいたいという考えでございます。ことしはモスクワに一カ所ということで、だんだんにふやしております。原子力外交と申しますと、いろいろ国連を中心とするものもございますし、バイラテラルで各国に対するものもございますが、国連の方面におきましては、御承知の宇宙の問題とか、原子核の爆発に伴う弊害、損害を調べていくというようなこともありますし、核の損害をなるべく少なくする、それから地震、津波その他、そういうものからの損害を少なくするとか、先ほどお話に出ました地熱や太陽熱を利用するもの、いろいろのことが問題になっておりまして、これに対しましては、常駐ではございませんけれども、そのときどきの必要に応じて専門家に御出席を願っておるような次第でございますが、手前みそみたいですけれども、先ほど先生の御指摘がありましたように、日本の科学者は優秀であります関係上、日本といたしましては、この面でかなりの尊敬をかち得ていることを申し上げたいと思います。
  150. 岡良一

    ○岡分科員 それでは、これまではワシントン、ロンドン、パリ、ボンでしたか、それが今度はモスクワにふえた、そういうことですね。科学アタッシェは各大使館一名ですね。
  151. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 ワシントンだけは二名、ほかは一名でございます。
  152. 岡良一

    ○岡分科員 そのワシントンの、私が実地について見た事実なんですが、英国は百二十七名おるのです。これは科学アタッシェだけではない。ニューヨークに、商務官とでもいうようなコマーシャル・アタッシェですが、兼ねて、しかも、相当科学技術的な教養を持った人たちが一つになっておる。これは一人の人間では、いかに彼が天才であろうとも、アメリカにおけるあらゆる科学技術の分野における必要なる文献を日本に伝えるとか、場合によれば、日本の科学技術に関する外交交渉についてのアドバイスをするとかいうことは、できるものではないと思う。それは人間の能力には限度がありますから、とてもできるものではない。だから相当多くの人間を要する。ところが、たった一名や二名では、やれるものではないのです。これは科学技術庁から外務省へ出向しておるのでしょう。もう少しちゃんと必要な人員を充足していかないと、あれではできるものではありません。ないどころか、だんだんと他の国との間における国際的な情報の交流なり入手において、ますます懸隔が出てくる心配があるのです。まだまだ充足すべきだ、とてもとても、こういうことでは、まず私は、スタッフの問題、頭数が足りないと思う。こういうことは、これでいいと思われますか。
  153. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 御指摘のように、日本の科学アタッシェが今度の予算で一名だけソビエトに出向することになりまして、それで足りないことは申すまでもございません。また、私どもが海外を旅行した場合に、それらの人たちはどういう仕事をしているか、また、どんなにやりにくい思いをしてやっておるかということも、実情を聞いております。また、そう言うとうしろ向きだといっておしかりを受けるかもしれませんけれども、とにかく、徐々にではありますけれども、今岡委員から指摘されましたような方向に進みたいと考えております。また、その一つの方法として、今ここで申し上げることははなはだ適当でないかもしれませんけれども、今後、外務省とわが科学技術庁との関係をより密接にしていきたいというような方向で、若干の人事等も進めていきたいと考えております。
  154. 岡良一

    ○岡分科員 外務省に出向された、科学アタッシェとわれわれが言っておるあの諸君の身分は何ですか。何等書記官とか何かあるのですか。
  155. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 今だれがどうという一々の場合を覚えておりませんが、大体は一等書記官程度でございます。
  156. 岡良一

    ○岡分科員 それから長官の言われた点、私は実にそうあるべきだと思う。科学技術庁と外務省の間にほんとうにしっかりした連絡があるのかどうか、あるいは出先の外交官の諸君が、においてどういう論議がされておるかということをはっきり把握されて、その線でやっておるのかどうかというと、しばしばズレがある。これではおもしろくない。原子力外交なら原子力外交において、日本の原子力委員会の意向がそのまますっと出先に通らなければならない。ここにズレがある。一方は公使で、一方は一等書記官というような身分的な差があって、出先でどうしても遠慮するというような格好があって、どうもうまくいかぬというような事例があるのです。外務省と科学技術庁と、第三国に対する科学技術関係の協力関係なり協定を結ぶというようなことについて、連絡をどういうようにもっと緊密にしようと思うか、具体的な方針があれば承りたい。
  157. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 ただいま御指摘のような問題は、すべて外務省を通じて、実はやっているような状態であります。しかし、率直に申し上げまして、日本の外務省の外交官、官僚といいますか、見ておりますと、これは必ずしも当を得てないと思う。ことに、最近の国際情勢に処しては、外務省の諸君も、大いに頭を切りかえてやってもらわぬとやっていけない、さように思っております。たとえば、かつては外務官僚というものは、経済関係にタッチすることをいさぎよしとしなかったというような風潮があった。それではいけない。最近においては、政府においても、いわゆる経済外交ということを強く主張するようになったのもその一つであります。従って、そういう方向にこれからも向かわなければならぬし、外務省の出先の方々もそういうふうな方向で協力してもらいたい、これは私は国務大臣としてあえて申し上げます。
  158. 岡良一

    ○岡分科員 その点、よほど外務省も気をつけてもらいたいと思うのです。現に、今から三、四年前でしたが、アメリカとの動力協定の問題、あのときに、国会では、使用済み燃料をそのままアメリカに引き渡す、これはプルトニウムを抽出すれば、そのまま原爆とかあるいは水爆の原料になる。それでは、日本は平和利用の名前において原子力協定をやったが、事実はアメリカの原爆の下請をやるにすぎないじゃないか、だから日本が引き渡した使用済み燃料は、絶対に軍事目的には使わないという一札をこの条約に入れろというのが、われわれの強い主張だったのです。しかしながら、なかなかそうはいかぬ、アメリカの方がそれを承知しないという話だった。ところが、その年の秋に、自民党の方と私たちが同道して、ワシントンの郊外のジャーマンタウンで原子力委員会のフローベルグ氏に会った。日本の国会でこういう意見が出ておる、われわれは原爆の唯一最大の犠牲国なんだ、だから国民感情としても、この一札だけははっきりしてくれという話をフローベルグさんにわれわれ与野党の代表が在名で申し上げた。そうすると、初耳だ、それならば次の週には必ずやりましょうというので、議定書でございましたが、その旨を一札くれたことがある。こういう重大な問題について、日本の外務省の諸君は何も言っておらない。だから、出先の外務省の諸君は、やはり従来の外交のやり方ではない、もっと科学的な――こういう合理的な問題を取り扱う外交のあり方としては、カクテルパーティやダンスパーティのようなものではない、もっと合理的な外交を、世論あるいは日本の原子力平和利用の開発の技術的なものをはっきりにらんで、そして交渉する、これが足らぬということを私はそのとき痛感しました。でありますから、日本の科学技術の協力に関して、今後もいろいろと諸外国との間の折衝が私はあろうと思うが、これには、日本の科学技術を振興さぜるためにはいかにあるべきかという基本線をしっかり握って、そして、これは科学の問題だからかけ引きは要らぬ、堂々と主張すべきものは主張する、こういう態度でぜひ一つ進めていただきたいと思います。  それから、これは国連局長にお伺いいたしますが、最近、新聞で見ると、国際原子力機関の理事会でございますか、例の保障措置の問題について、だんだんと原子力機関としての考え方が固まってきたというふうに出ていますが、どの程度まで進んでおりますか。
  159. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 お答え申し上げます。  憲章の十二条に規定してあります施設、燃料その他のものに対する保障措置の細則が一応きまったわけでございます。その規則は、二年間試験的にやってみて、二年たったならば、もう一ぺん適当な修正あるいは追加をして完全にしよう、こういう考えでございます。
  160. 岡良一

    ○岡分科員 そうすると、その保障措置というのは、現在、たとえば日本なら日本が英国と結んでいる双務協定がある。これを国際原子力機関との協定に移しかえる場合における政府側との規定でございますか。
  161. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 その問題につきましては、あらためてアメリカあるいはカナダ等、関係のところと、どういうふうに実施していくかということについて話し合いをした上で、実行されることになる手はずでございます。
  162. 岡良一

    ○岡分科員 国際原子力機関がアメリカと相談するのですか。
  163. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 いいえ、日本がアメリカあるいはカナダと相談いたしまして、そして国際原子力機関に保障措置の実施を移管するわけでございますので、何にどういうふうにやるかといったようなことを、今の憲章の十二条はその細則の範囲内できめて、原子力機関の方から実施措置を実行してもらうという段取りになると思っております。
  164. 岡良一

    ○岡分科員 あの協定正文にもはっきりあるように、国際原子力機関が保障措置をし得るようになれば、この協定は移しかえるということがはっきりしておるわけでしょう。そう何もアメリカやカナダに相談することはないので、日本がまず決意するかしないかが第一番のやることじゃないですか。
  165. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 その点は、もうきまっております。私の今申しましたのは、ごくこまかいことでございます。
  166. 岡良一

    ○岡分科員 それでは、これは原子力委員長としても、外務省としても御所見を伺いたいのです。国際原子力機関では、いよいよ保障措置の案も固まったので、日本としては米英との間における動力協定、カナダとの間における双務協定は、国際原子力機関の保障措置にゆだねるという方針のもとにこれを移しかえるという方針であるかどうか、この点をはっきりお伺いいたします。
  167. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 お答え申し上げます。その通りでございます。
  168. 岡良一

    ○岡分科員 これも、国会で協定の審議があったときにいろいろ問題の出た点でございますので、やはり国連強化という立場からも、国際原子力機関を育てるという、そういう方向にすみやかに進めるように御努力を願いたいと思います。  それから、国際原子力機関では、原子力の災害補償に関する国際的な保険問題を検討しておられましたが、あれは結論が出ましたか。
  169. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 お答え申し上げます。  まだ出ておりませんが、案がございまして、たしか五月ごろから憲章参加国の一部が寄り集まりましてこれを研究し、その結果どうなりますか、今から予断は許されませんけれども、そう遠くない将来において成案が出るのではないかというふうに考えております。
  170. 岡良一

    ○岡分科員 それから、国際原子力機関は、憲章で低開発国における原子力の研究開発、平和利用を推進するということが書いてある。そこで、アジアにおける国際原子力機関憲章にうたわれた援助をいかにして受けるかという点について、国産炉については天然ウランを機関を通じてもらった。しかし、いち早く三トンいただいたけれども、残りの分はカナダからもらうとか、いろいろあれこれされておるようだが、国際原子力機関憲章に基づいて、低開発地域であるアジアなりアフリカに対して、この原子力の平和利用の推進について具体的な構想をお持ちでありますか。
  171. 鶴岡千仭

    ○鶴岡政府委員 お答え申し上げます。  ラジオ・アイソトープにつきましては、ゼミナールを日本で開催いたしまして、去年もことしも十数名の外国人が参っております。これは東南アジアの人々が主力であります。また、この秋くらいになるかと思いますが、放射能からのプロテクションの問題について、同じような構想で企てをいたしたいという考えております。
  172. 岡良一

    ○岡分科員 ゼミナールはあちこちでよく行なわれておりますし、これもまたけっこうなことではございますけれども、そういう任意的な、随時的なものではなくて、もう少し恒常的な原子力センターというようなものを作る必要があると思います。マニラに作ろうという計画も打ち絶えてしまいました。私は、先般カイロでアラブ連合の原子力委員会の諸君に会ったわけです。それから、ボンベイでインドの原子力委員会の諸君にも会いました、たまたまこの話が出ましたところが、やはりこれらの国々の諸君は、非常な熱意を持っておる。インドは、原子力センターをトロンベイと東海村あたりということを言っておる。ところがビルマに行っても、タイに行っても、パキスタンに行っても原子力委員会というものはあるのです。おそらく、これは賛成すると思うのです。ですから、原子力の低開発国における開発は、東海村で何もかもやる、トロンベイで何もかもやるというものではなく、それぞれの分野に分かれてもっと国際的な協力があっていいと思うのです。この問題で、私は、先般国際原子力機関の事務局長のスターリング・コール氏に会った。コール氏も、直接に出資はできない、しかし、資金の援助、あっせんをやろうじゃないか、技術の提供、情報の提供もやろうと言っていた。だから、そういう希望がアジア地域にあるならば、中南米でもやったのだから、今度は原子力大学をアジアで作ってもいいというところまでいくと思うのです。だから、そういう任意的な、随意的なゼミナールではなく、トロンベイと東海村あたりをアジア地域における国際協力の基点として、そうして、そういう低開発地域に対して日本が一つの大きな柱となってアジアにおける原子力の平和利用の開発に進んでいく、私は、こういう方向も今後の原子力開発の一つの構想として当然適当なことであろうと思うのです。これは原子力委員会委員長としてもどうお考えになるか、また、外務省のお考えもあわせてお聞かせ願えればけっこうです。
  173. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 お答え申し上げます。  これは、やはり多数国家の御意見を十分に聞いて、こっちだけがどうと言ってもできないことだし、今あなたの話を聞きますと、非常に熱心な国がある。私も若干は承知いたしておりますが、いずれにいたしましても、この問題は、現に一つの流れとしてそういう方向に行っておることは事実なんで、これは当然そこへ行くべきだ、そういう方向に進めなければならぬ、かように考えております。
  174. 岡良一

    ○岡分科員 このことは、私は、当時の藤山外相にも直ちに報告しておいたのです。これはプライベイトな話なんだから、外務省としても出先を通じて公式に意向を打診してくれないか、そうして、東海村をアジアにおける原子力大学というようなものにまで育て上げていくというふうな形、おくれたアジアの国々における原子力関係の協力関係を作っていくという立場で、ぜひ一つ外務省にということを申し上げてあるのです。これは十分に可能性があるので、ただ政府がやるかやらないかということですね。これは、やはり原子力委員会としてもぜひ外務省と御協議を願って、国際原子力機関のバックアップのもとに、このおくれた地域において――すでに南米にはできておるのです、やはりこの原子力のセンターを作る、そういう御努力を願いたいと思います。特にこれは中共が入るか入らないかということが非常に問題になろうと思います。中共が原爆を持つか持たないかということも問題になっておりますが、でき得べくんぱ、やはり中共の科学者も――共産圏の十二カ国のドブナの共同研究所には、年に相当数の若い諸君が行っております。そして帰ってきて、現に北京郊外の原子炉の運転をやっておる。資源もありまするし、やはり中共も加えて、まじめな、真剣なアジアの原子力科学者の原子力平和利用の会議を持つということですね。これは原爆がどうだこうだと言わないで、科学者の努力を平和の方向に持っていくという点においても、日本はイニシアチブをとるくらいの決意があってもいいと思う。こういう点について、単に国内の原子力開発だけでなく、原子力の平和利用という基本法の精神を、もっと対外的にも国際的にもこれを敷衍していくという、そういう積極的な立場をぜひとってもらいたい。  そろそろ結論に入りたいと思いますが、その前に、恐縮ですが、池田長官に少し痛いことを申し上げたい。実は予算委員会でのことだから、予算委員会でけりをつけておきたいと思うのですが、この間の堂森君に対する御答弁に関連してです。原子力開発新計画の中で、十年間は研究開発の時代だ、そこで百万キロワットの原子力発電をやるということがうたってある。研究開発であるのに百万キロ、とすれば、十五万キロなり、もっと大規模なものを一基か四基入れて実用の原子力発電をやるというのは矛盾しはしないかということを堂森君は聞いたのですね。これに対するあなたの御答弁、これは速記録の通りなんですが、百万キロは民間の会社がやると言うから、それでよかろうということできめた、こうあなたは言っておられるのですね。そうなんですか。
  175. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 これは、民間もそういう非常な熱意を持ってやっておられますし、やり得る可能性もあるのだ、これは専門家の意見でありますので、それなら実際に――もちろん、スタンダードな研究は必要でありますけれども、それだけではできないので、実際やはりそういう開発もやりながら研究していかなければならぬことは御承知の通りです。そういう意味において、百万キロ程度を目標にして民間側が主体となってやっていこう、これは私は正しい行き方ではなかろうか、かように考えておるわけであります。
  176. 岡良一

    ○岡分科員 しかし、速記録のあなたのこの御答弁では、民間の会社がやると言うから、それでよかろうということできめているのですよ。だから、よくなかったら、これは民間会社が悪いというあなたの論法が、ここでもまた出てくるわけだ。CP5が今へどもどしている。あれはたくさんの学者がよかろうということで置いたんだ、ということで、原子力委員会責任というものが出てこない。原子力委員会は、先般申し上げた通り、原子力の開発計画について企画し、審議し、決定するわけだ。審議の過程で民間の産業界の意見も聞かれればいい、あるいは学界の意見も聞かれる、しかし、審議の過程で聞かれても、決定するのは原子力委員会ですね。ところが、これは民間がよかろうと言うからきめたというと、ともすれば、責任というものが非常にあいまいだ。私は、言葉じりをとらえたくはないのですけれども、CP5といい、動力炉といい、学者がよかろうと言うた、民間がよかろうと言うたということでは、原子力委員会の権威というものは私はないと思うのですよ。そうじゃありませんでしょうか。
  177. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 どうも私はくせがありまして、なるべく簡単に、時間をかけないで申し上げた方がよかろうと思いまして、さような簡単な言葉を使ったために大へん誤解を招いていると思いますけれども、当然にそれは科学者の意見も尊重し、また、民間側の意見も十分に聞いて、その最終的な責任は当然に原子力委員会にあることは申すまでもないことでございます。そういう基礎の上に立って判断をしてやる、こういうことでございます。
  178. 岡良一

    ○岡分科員 いずれにいたしましても、この原子力の研究開発を進めるということになれば、現在の政府立場としては、学界の意見も聞き、また、産業界の意見も聞く。しかし、いずれかに片寄らないで、双方の意見を聞きながら、最終的な判断は原子力委員会責任において決定する、こう線をすっきり貫いてもらいたい。それを、あちらへ傾いてみたり、こちらへ傾いてみたりということでは、ほんとうにしっかりとした学界と産業界のレールの上に、原子力委員会の路線というものが築かれない。しかし、権威者は原子力委員会だということですね。これは深くは申しませんが、原子力委員会の権威と責任というものをしっかり守っていかなければならぬということを申し上げておきます。  そこで、私は、一つの矛盾をこれに関連して感ずるのです。原子力開発計画は、いずれまたの機会にゆっくり当局の御所信を聞きたいと思いますが、この百万キロについて矛盾を感ずるのです。原子力発電は、特に燃料の問題がある。新鋭火力のごときはコストが安くなる。だから、当初は昭和五十年までの十五カ年の間に七百六十万キロワットをやる計画だった。ところが、外国の事情を見ておると、みなスロー・ダウンしている。だから、これはなかなか経済性が伴わない、安全性においても問題がある。これを二重、三重に安全装置をつければ、ますますコストが高くなるということから、研究開発ということにされておる。なぜ、みすみすコストが高くなることを知りながら、百万キロものこういう大規模な実用発電をやられるか。これは少し矛盾じゃないかと思うのです。この点いかがでしょうか。
  179. 杠文吉

    ○杠政府委員 お答えいたしますが、百万キロは実用規模とは申しますけれども、やはり研究と一体となった計画でございまして、従いまして、経済性が第一であるというような見地には立っておりません。すなわち、後期十年間には、計画によりますと、六百万から八百五十万キロワットの開発ということを計画しておるのですが、そのためのワン・ステップであるというふうな考え方でおります。
  180. 岡良一

    ○岡分科員 それじゃ一体、具体的に、コールダーホールは一キロワットどれくらいですか。それから、PWRなり軽水型は、現在アメリカで一キロワット幾らなんですか。それから、日本での最近の新鋭火力は一キロワット幾らなんですか。
  181. 杠文吉

    ○杠政府委員 お答えいたします。  コールダーホール型の改良型の炉でございますが、これは現在東海村で建設中のものにおきまして初年度四円九十九銭という計算になっておりまして、長期的にこれを見ますと、四円前後になるという計算でございます。また、アメリカのドレスデンの発電所が現在動いておりますが、その電気出力十八万キロワット、すなわち、日本のコールダーホールとほぼ匹敵する規模のものでございますが、この発電単価は二円七十銭ぐらいではないかと確定されております。まだ正確な数字を把握いたしておりませんけれども、論文の発行によりますと、今申し上げましたように、二円七十銭ぐらいだということに相なっております。
  182. 岡良一

    ○岡分科員 最近の新鋭火力は……。
  183. 杠文吉

    ○杠政府委員 新鋭火力と申しましてもいろいろだろうと思うのでございますが、私の方で承知しているもの、すなわち、御承知の通り通産省の公益事業局でやっておりますけれども、私の方で承知しているところによりますと、三円五十銭前後ではなかろうかというふうなことでございます。これは正確な数字は通産省の方で持っておられるでしょうけれども、私の方では、そういうことであります。
  184. 岡良一

    ○岡分科員 コールダーホールの一キロワットの建設単価は幾らになりますか。これは日本と英国とで……。
  185. 杠文吉

    ○杠政府委員 手元に残念ながら資料を持ち合わせておりませんので、資料をもって後日お答えいたします。
  186. 岡良一

    ○岡分科員 アメリカでは、当初AECがシッビングポートで初めてやった実用規模に近い原子力発電は、そんな安いものじゃなかったらしい。私は、その当時の資料を見ておりませんけれども、坂井記者とかの報告によりますと、高いものです。ドレスデンも、私は現地へ行って見ておるのですが、そう安いものではなかったように私は思うのです。というのは、そういう状態だから、もう一昨年あたりから、アメリカとしては原子力発電はもう一ぺん白紙還元して、八つのプロト・タイプからもう一ぺん経済性、技術の問題を検討し直そうという方向にいっているでしょう。それから、英国の場合も、やはり一九六五年までの六百万キロワットですか、これを少しスロー・ダウンして、計画年次をおくらせている。しかも、これは低濃縮ウランに変えるべきではないかという意見も、英国の国会あたりでは相当表向きに出ておるというような状態です。そういうような各国の動きを見ますと、この経済性というものが、一キロワット幾らでできるか、高いか安いかということは、日本の場合、アメリカの場合、英国の場合、相対的なものでございますから、必ずしもそれが安いとか高いとかいうことは、なかなかいえないと思う。それから、コールダーホールの建設単価は、これは日本でも幾重にも安全装置をつけたから高くなっておりましょうが、少なくとも、私の調べた数字では――これは間違っておったら訂正をいたしますから、あなたの方でもお調べ下さい。英国では一キロワットの建設単価は八万円ぐらいです。日本では十八万円についておる。日本で十八万円というのは間違いない。そういうわけで、持ってくると、何やらかにやらで非常に高いものにつく。しかも、これがやはり一キロワットの電力料に響く。だから、私は、日本において百万キロワット実用規模でやるということは非常に危険なことではないかと思う。百万キロにしたって、これは水力ではないのだから、ベース・ロードで運転していかなければならない。これが電力料が高くなったら、一体だれが負担するのかという問題も起こるだろう。だから、百万キロ実用規模の動力炉を運転するのだという計画は、少し早計ではないかと私は思う。そうじゃないですか、どうなんですか。
  187. 杠文吉

    ○杠政府委員 お答えいたします。  私たちは早計だとは考えておりません。と申しますのは、現在百万キロの計画を立てて、それを実行いたしまして、その暁において、すなわち、後期十年間のころには、おそらくは、先ほどいろいろお話がございました日本における建設単価の割高でございますとか、そういう問題も、技術的に相当解決されていくのではなかろうかというような見込みを持っておりまして、おそらくは、新鋭火力ととんとんに渡り合えるようになるのではなかろうか。そのために、前期十年間において百万キロワット発電の経験を、もしも持たなかったといたしますならば、そのときには、おそらくは、新鋭火力に太刀打ちできるような技術上の開発もできなかろうというふうに考えております。
  188. 岡良一

    ○岡分科員 どうしてそういう推定が成り立つのですか。国際的に見たって、原子力発電というものは、だんだんとやってみたら、経済的にはどうも割が合わぬぞ、一方においては、他のエネルギー資源、化石燃料がどんどん出てくるぞ、しかも、新鋭火力の技術的な発展もだんだんと高まってくる、だから、もう一度やり直そうという段階にきておるのでしょう。まだやってもみない日本が、そのころには匹敵するだろうという推定の根拠は、一体どこにあるのですか。最初そういうこと・で出発したのでしょう。昭和五十年までの間に七百五十万キロワットやります、昭和三十八年から毎年一基あるいは二基やるのだというのが、当初のあなた方の原子力発電の長期計画だった。ところが、外国の様子を見たら、経済的にも、いろいろな事情から一般の新鋭火力の発展になかなか追いつけないというので、スロー・ダウンしてきたわけです。だから、これが、先ほど池田さんの言われたように、百万キロは民間の会社がやるというから、それでよかろうといってやることにきめたのなら、これは何をか言わんやですよ。しかし、原子力委員会の権威ある判断としては、百万キロの実用規模の炉を設置しても、そのころはコストが安くなりますということは、いつどうしてわかる。十年間ということになると、あと三年か四年の間には一基や二基の建設をやらなければならぬ。そうすれば、十年というけれども、もうインターバルというものは、もう五年か六年しかありません。その間に、現在の国際情勢の推移から見て、はたして原子力発電が新鋭火力より安くなるという確証が必ず得られるというふうにあなた方が断定されるのは危険じゃございませんか。まず、その点が一点ですね。  それから、新聞を見ると、原電会社では関西に二号炉を作る。軽水型でいこうということも出ておる。その前の新聞を見ると、福島県下で、東電が、これも軽水型でやりたい、調査団を出そうというのでしょう。そうしますと、軽水型なら、動力試験炉を作ろうというのでしょう。だから、これによって運転の経験も得られれば、いろいろその他の経験を学ぶことは十分にできるのじゃないか、何も試験炉以上に、その二倍か三倍のものをやらなければ運転の技術は学べないということもないじゃありませんか、常識から考えてみても。だから、この百万キロをやるということは少し――これは私はやるなというのじゃないけれども、もう少し、やはり原子力委員会としては念入りな検討が必要なんだと思うのですが、どうなんですか。
  189. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 ただいま御指摘のように、これはいわゆる長期計画でございまして、一つの目標を持たなければ、こういうことはやっていけないのであります。従って、その目標に向かってわれわれは努力をするということが一つ考え方だと思います。従って、これからの百万キロのそれぞれの、いわゆるケース・バイ・ケースでどう扱っていくかということは、今御指摘のように、私どもとしては十分慎重にやっていきたい。ただ、御参考までに申し上げますと、言うまでもないことでございますけれども、技術の面におきましては、あくまでも、私どもは学者なり、専門家の意見を尊重する。そろばんの点になりますと、業界の人は――そう言っちゃ失礼でありますけれども、なかなかたくましいものでありまして、われわれの方にも接する者がございますから、それらの意見をそのまま取り入れるというわけにはいきませんけれども、そろばんの方はその方の人たちの意見を十分参考にしながら、これからもケース・バイ・ケースで慎重に検討してやって参りたいと考えております。
  190. 岡良一

    ○岡分科員 こういう問題の一つの矛盾というものは、やはりまじめな学者の意見、また、業界の意見に十分耳を傾けながら、最終的には原子力委員会が公正に判断をし、結論を出させるという、その態度の慎重さが私は足りないのじゃないかと思うのです。ここから、日本の原子力政策にしても、ひいては科学技術政策の大きな矛盾と混乱が起こっている。私は、この際特に提唱もし、また、御所見を承りたいのですが、科学技術振興の基本法を作らなければいかぬということなんです。これは前々から、大臣も作りますということはよく言っておられるけれども、いまだ着手されておらない。他の国々の科学技術は、この間池田総理がいみじくも申されたように、これは国防の養成ということで推進をされたことはいなめない。日本もかつてそういう時代がありました。しかし、もはや日本はいかにじたばたしたところで、国防の養成で科学技術は振興し得ない状態だ。何を推進力とするか、私は、まず原子力というものをしっかりしたレールの上に乗せて、この基本法を作って、これを踏みはずさないで科学技術の振興を進めなければならぬという、大きな基礎的な基本法を作る必要があるということなんです。代々の長官は、作りますと言っておられるけれども、いまだに実現しておらない。科学技術会議も、この間この基本法の必要性を主張しておったようでございますが、これは池田長官いかがでございますか。
  191. 池田正之輔

    ○池田(正)国務大臣 これは、西村防衛庁長官もおられますけれども、防衛庁に押されてさようなことをやるような姿は、これは断じてとるべきではないということは、申すまでもないのであります。従って、今の基本法の問題につきましては、だれが考えても、そういうものが必要だということは考えておりますが、さて、具体的にどうするかということにつきまして、現在なお科学技術会議でさらに詳細に検討を進めまして、その上に立ってこれを実施したい、かように考えております。
  192. 岡良一

    ○岡分科員 最後に、基本法について御要望申し上げたいと思うのですが、科学技術会議は、基本法を作れ、法とは大体こういう内容のものだ、ということをその答申に書いておるのです。だから、科学技術会議に何も相談する必要はない。あとは、それを具体化するかしないかは政府責任です。あなたの責任です。科学技術会議に今さら持って帰る必要は何もない。だから、そういううしろ向きなことを言わないで、前向きに、政府として会議の答申を尊重する。そこで、日本の科学技術の振興というものが、あくまでも憲法の理念に基づき、平和の目的だということは、どうしてもはっきりうたうべきだと思う。それから、先ほどるる申し述べましたように、外国の技術に依存する弊風というものがあって、やはり自主的な科学技術の振興をはかるべきだという原則の上に立っておらぬ。と同時に、現在の状態そのままでは、中小企業との格差というものは技術的にも設備的にも広がらざるを得ない。日本の産業構造にそういう悪影響を与えないという点を、基本法の中に私ははっきり書くべきだと思う。そのほか、そういう点を含めて、ほんとうに日本の科学技術振興にすべての国民が協力し得るような大きな目標を掲げた基本法を、ぜひ一つあなたの在任中に、あるいは本国会中にでも出してもらいたい。このことを私は強く要望して、私の質問を終わります。
  193. 相川勝六

    相川主査 横路節雄君。   〔主査退席、保科主査代理着席〕
  194. 横路節雄

    ○横路分科員 最初に、西村防衛庁長官にお尋ねをしますが、去年の五月十八日です。当時問題になっておりました沖繩の第三海兵隊が北富士、東富士の演習場にやってきて演習しようとした、現地の住民の間で非常に問題が起こりまして、この場所で開かれた安保特別委員会で私がお尋ねをしましたところ、丸山さんの方から、三十四年の七月二十一日の合同委員会で返還要求書を出した、その後、現在に至るまで一生懸命努力しておるが、その後実現しない、こういう話でした。ところが、たしか昨年、江崎長官のときに同じように演習問題が起きて、農民諸君のすわり込みが始まるというので、当時、江崎防衛庁長官は、現地の農民に対して、必ず責任を持って返還させる、こういうことで農民諸君のすわり込みも中止をしたという経緯があるわけですが、その後この問題はどうなっておるのか、これを一つ西村長官の方からお答えをいただきたい。
  195. 西村直己

    ○西村国務大臣 私、就任いたしまして、その間の事情を引き継いでおります。従いまして、富士演習場の返還の問題については、その努力を続けて参りたいというのが、まず私の考え方であります。もちろん、その返還は自衛隊に返還する、こういうのが大体の内容であります。  それから、その経過でございますが、経過につきましては、調達庁におきまして合同委員会等の小委員会といいますか、専門委員会を通して折衝を続けておるのであります。なお、私といたしましても、その間に、さらにできる限りの努力をいたしておる次第でございます。
  196. 横路節雄

    ○横路分科員 今の防衛庁長官のお答えでは抽象的でよくわからぬのですが、四年の七月二十五日に返還要求をしたあと、一体合同委員会ごとに出しているのか、どうなっているのか、その経緯を一つ話をしていただきたいと思います。
  197. 丸山佶

    ○丸山政府委員 富士演習場の問題に関しましては、三十三年ごろと思いますが、あそこにおりました米軍が沖繩に引き揚げてきました。これは御承知の、いわゆる岸・アイク声明に基づく陸上戦闘部隊の大きな移動、こういう事態から、あそこには米軍の駐在というものがなくなりました事情もあり、従いまして、これは返還を必要とする事態であるということで、返還折衝をいたして参りました。その交渉が、こちらの要望のような趣旨になかなか参りませんでしたが、昨年の八月、今度は御承知の北富士の方で格別なる事態が起きまして、これに沿うためにも、すみやかに返還をしてもらって、後の事態の改善に資することが必要であるということで、あらためて静岡県側のいわゆる東、山梨県側の北というものを合わせまして返還要求をいたしました。これにつきまして、できるだけすみやかに、かつ妥当な線を出すために、合同委員会の中の施設特別委員会でここの返還あるいは提供という問題を協議したのでございますが、その施設特別委員会の中に、格別に富士に関する特別の小委員会というものを日米双方のメンバーをもって構成いたしまして、累次この問題の討議を進めて参っておるのでございます。現在に至るまで、そのひんぱんなる会議あるいは現地調査の結果にもかかわらず、実現に至っていない事情と申しますのは、ただいま西村大臣からもお話がございましたように、この返還の内容と申しますか、意義と申しますか、これは現在米軍の演習場になっておりますものを日本側に返還せしめるが、その返還のあとは自衛隊の演習場にする、その上で、米軍の必要とする期間は米軍にも演習を許す、こういう内容でございます。これに関しまして、東及び北ともに、周辺の都市あるいは農民から、農村再建に関する必要、あるいは北の山梨県側では、特に観光の問題というようなことでいろいろ要望もありますし、補償等の問題についても格別なる要望もございます。従いまして、この問題の解決のためには、自衛隊の演習に基づく要請、米軍の演習に基づく要請、並びに地元の農村再建整備と申しますか、周辺環境整備の問題、あるいは観光に関する種々なる問題、これらの三者の要請、要望というものを十分に調整したものにしないと、この解決ができないものと私は考えておる次第でございます。従いまして、それらの事情の調整のために始終腐心をいたしておりますが、いまだに実は解決の結論には達していないのが現状でございます。
  198. 横路節雄

    ○横路分科員 三十五年は米軍は何日岡、それから兵力はどの程度来て使用したのですか。
  199. 丸山佶

    ○丸山政府委員 まことに恐縮でございますが、それに関する正確な資料を持って参りませんので、すぐ調べさして、後ほど答えさしていただきます。
  200. 横路節雄

    ○横路分科員 あの広大な演習場を米軍が一年間に何日使ったか、兵力はどれだけ来て使ったかということは、あなたの方でその返還要求の交渉をなさるときに非常に大事な点ですから、これはぜひお調べになってお答えいただきたい。  それでは、返還交渉が難渋をきわめているというのは、米市側にその原因があるのですか。米軍は、返しますよ、しかし、自衛隊でお使いなさい、私どもには必要なときに貸して下さい、こういうように米軍は了承しているのだけれども、地元の方は、いわゆる農村再建のためにといいますか、所得倍増等の問題もあるだろうが、その間に観光の問題もあって、地元の農民はだめですと言っているのか、それとも、米軍の方が、それではうまくありませんと言っているのか、あなたの御苦労のほどはよくわかるのですが、一番のガンになっているのはそこなんです。米軍はよろしゅうございますと言っているのですか。その点はどうなんですか。
  201. 丸山佶

    ○丸山政府委員 ただいま三方面の要請、要望の調整と申し上げましたが、おのおのにその事情がございます。これをもっと具体的に申し上げれば、演習区域の問題については、地元側とすれば、もう少し周辺を縮めてもいいんじゃないか、こういうような要望がございます。これに対しまして、自衛隊また米軍の方では、演習の区域としてはこれ以上縮小することは困難である、こういう区域に関する一つの調整問題がございます。第二といたしましては、演習の期間の問題でございますが、自衛隊としては、これこれこういう時期、こういう日数を演習したい、米軍は、このようなふうに自分が要請したら、このようにしてもらいたい、こういう要請があります。これに関しまして、地元としては、その裏返しと申しますか、演習しない日には自分たちは立ち入りができるのであるから、その立ち入りをなるべくふやしてもらいたい、あるいはその時期はいついつにしてもらいたい、また、観光と申しましたのは、ある観光シーズンにおきましては演習をやらないでほしい、こういうような期間、期日の問題の調整があります。第三には、なお、使用条件と申しますか、そういう区域、期間以外にも、ある場所においては、たとえ演習が行なわれようとも、こういう林道、あるいはこういう地域の通行なり、これこれの作業なりは制限しない、いや、やはりこれは制限しなければいかぬ、このような三者間の意向あるいは要請に基づく調整がなかなかむずかしい問題であると思う次第であります。
  202. 柏原益太郎

    ○柏原政府委員 お答えいたします。  三十四年度が、日数にしまして八十七日でございます。三十五年度は、手元の資料が四月から十二月までの資料しか持ち合わせがございませんが、この間の日数が百三十日でございます。それから定員数は、そのつど増減がございますが、大体千五百から最高のときで二千五百くらい、これも延べ人員で一応数字を申し上げておきます。
  203. 横路節雄

    ○横路分科員 調達庁長官、これは去年は百三十日も使っていますか。百三十日というと、三十日であれしますと約四カ月ですよ。そんなに使用していますか。百三十日、間違いございませんか。
  204. 丸山佶

    ○丸山政府委員 私の知る限りでも、去年は相当使いました。おととし、さきおととしよりははるかにひんぱんでございました。今部長が申し上げたのは、統計数字でございますから、間違いないと思います。
  205. 横路節雄

    ○横路分科員 私ども考えておったのは、去年あなたの答弁を速記録で見ましても、「私たちは、これはすでに常時演習場として必要のないものであるから返還をすべきである、」こういうように考えて、三十四年の七月二十五日に合同委員会に返還要求を出した。返還要求は返してくれということですね。ところが、今度自衛隊には返してもらうんだ、しかし、あなたの方でお使いになるときはどうぞお使い下さい、こういうことであると、現地の農民にすればそう変化はないじゃないですか。現地の農民側の演習をやめてくれということは、米軍は沖繩に行ったんだから、あなたの方でお使いになるのはやめて下さい、こういうことなんで、その返還について、自衛隊には返還になったが、しかし、米軍はどうぞお使いになって下さいというのは、農民側の意向とは違いませんか。西村さん、どうですか。江崎前長官が中に立って、返還要求します、だからすわり込みをやめて下さい、こう言って、政治的に解決したときの考えは、これは返還してもらうのでしょう。米軍は沖繩に行っているのだから、返還をしてもらった以上は、使っていただかないのです。そういうようにわれわれは努力しますから、一つすわり込み等はやめて下さい、こういうようにわれわれは了解しておるのですが、その了解は違っておりましたか。
  206. 西村直己

    ○西村国務大臣 返還という意味は、自衛隊に返還を受ける、その間において、国内の農民その他との調節ははかって参る、こういう返還でございますから、自衛隊に返還を受ける、こういう意味でございます。
  207. 横路節雄

    ○横路分科員 長官、それでいいのですけれども、私の聞いているのは、自衛隊に返還になったけれども、今度は自衛隊の演習場を米軍に使わせる、そういう考えで返還を要求したのでなく、現地の農民が納得した、いわゆる去年の八月の江崎前長官のあっせんがあったわけですが、私は、自衛隊に返還ということは、それはそれなりでいい。しかし、現地の農民が、米軍の演習は困るんだ、こう言って、すわり込みをやることをやめさせようという、そのときの前防衛庁長官のあっせんというものは、返還さしてもらうんだから、われわれはあっせんに努力するから、取りあえずやめてくれということであったと思うので、返還はさしてもらいましょう、しかし、米軍に来て使ってもらいましょうということであれば、どこが違うのでしょうかね。
  208. 丸山佶

    ○丸山政府委員 西村大臣の御就任の前からの事情もございますので、私からかわって申し上げますが、一番最初申し上げましたように、この返還の内容または意義等特に申し上げておきましたのは、その御質問に対するものと考えておりますが、政府としましての返還は、日本側に返還を受けて自衛隊の演習場にするが、その間においてのある一定期間は、やはりアメリカにも演習をさせるのである、こういう内容のものでございます。これに対して地元関係におきましては、もちろん、正式にこれについて全員全面的に賛成、承認という、格別なる文書のようなものまでをもって確認しておるわけではございませんが、防衛庁並びに調達庁が、両県の知事を通じ、地元関係地等にもそのお話を申し上げておりました。それに対して地元は御了解が得られておる、かように私は考えております。   〔保科主査代理退席、主査着席〕
  209. 横路節雄

    ○横路分科員 これは長官、私ちょっとこの点了解できないのですが、米軍に施設・区域を提供することは、安保条約並びに地位協定できまっておるが、自衛隊が使用しておるものについて米軍が共同使用するということは、これは何できまっているのですか。いいですか。安保条約並びに地位協定で、米軍が使用する施設・区域については提供することになっている。向こうが要求すれば、それは合同委員会でやらなければならぬが、自衛隊に返還になってしまったものについて、今度米軍に使用させるということは、それは何に基づいてやるのでしょうか、それを一つお知らせいただきたい。
  210. 丸山佶

    ○丸山政府委員 米軍の演習は、実際として、そこに常時駐留するものでなくて、ある期間来てやるだけであるという、こういう実情に基づくもの、これらをどうするか。これに関する地位協定または前の行政協定も同じ文言になっていると思いますが、第二条の四項の(b)「合衆国軍隊が一定の期間を限って使用すべき施設及び区域に関しては、合同委員会は、」云々、この条項がございますので、この条項によるところのものにしよう、こういう考えでございます。
  211. 横路節雄

    ○横路分科員 そうすると、一ぺん合同委員会で返還してもらって、そうしてそれは米軍に提供した施設・区域ではない、返してもらう。今度向こうから来たとき使わしてくれ、こういう申し入れがあった。そうすると、今お話の地位協定の第二条――今ここに私持っておりませんが、第四項の(b)項で、合同委員会にかけてそして使わせる、こういうわけですね。そうすると、手続としては、返してもらった。そこで、日米合同委員会にかけたときに、農民の方から困りますといういろいろな運動があるのだから、今度合同委員会のときには、一ぺん返してもらってこちらのものになったのだから、どうもそれはうまくないですということは言えますね。長官、どうですか、言えますね。
  212. 丸山佶

    ○丸山政府委員 一たん完全なる返還を受けまして、あらためて向こうからそういう申し入れがある。これについてこちら側が同意を与えない、こういうことは理論的には可能なわけでございます。しかし、実際問題は、先ほどのような趣旨のもとの返還交渉でございますので、これはそういう工合に画然と手続を区切ってやるようなことで解決を見ることは、おそらく困難であろうと思います。
  213. 横路節雄

    ○横路分科員 あとの問題がありますから、この問題は、私から意見だけ述べておきますが、これは私は根本的な解決にならないと思います。また同じ問題が起きます。やはり去年、安保特別委員会でこの問題を取り上げて、丸山調達庁長官が私に答弁しておる速記を見ると、これは演習場を返還してもらうのだ。返還してもらうということは、それは米軍に使用してもらわないということなのだ、一ぺん返った以上は、あらためて日米の合同委員会にかけたときには、やはり一たん返還になったのだから、それは困ります、農民のためにも全体の観光のためにも困りますと、こういう点は一つ私は明確にしないと、形式的には返してもらったが、その中で、実際には承諾して、合わせて一つにしておいて、形式的には返ったが、実際には使ってもらうというようなやり方では、どうも自主性がない、こういうふうに思うのですが、この問題については、実はもっとお尋ねしたいと思いますが、時間もかかりますし、他にもお尋ねしたいので、この程度にしておきます。  次に、西村防衛庁長官にお尋ねしたいのですが、ことし初め、予算折衝の過程で、私もあなたのところへお伺いしましたが、名古屋の調達局を廃止するというので、当時百十五名の定員減の問題が出た。これはあなたもいろいろ大蔵省との間に解決の努力をなすって、名古屋の調達局は残すことにした。しかし、たしか七十五名の定員減になったわけです。この問題を私があなたにきょうお尋ねをするのは、調達庁並びに各地にある調達局というものは、一体どうするのか。実は私ども、この間の予算過程において、名古屋調達局の廃止をめぐって、それぞれの職員の諸君に会っても、非常に身分上に不安を感じているわけです。どうなるんだろ、このままでうかうかと調達庁などに勤めておられぬ、調達局などに勤めておられぬ、こういうことなのですが、この点については、調達業務ということとあわせて、調達庁、特に各地域における調達局、それのまたそれぞれの関係の事務所というものについて、どういうようにお考えになっておるのか、これは身分上の不安を一掃するという意味からいっても、ぜひ一つあなたの所信を承りたいと思います。
  214. 西村直己

    ○西村国務大臣 私は、安保体制を結んでおる以上は、基地提供の義務があります。従って、われわれは、義務についてはやるべきことはやるし、主張すべきことについてはまたこちらが主張する、そういうはっきりした態勢をなるべくとって参りたい、そういう見地から、調達業務は非常に大事だと思います。特に調達庁の中には、基地提供という防衛業務があるわけであります。防衛庁にも同じような業務があります。従って、実質的に関連し、かつ、性格の似たものもたくさんあるわけでありまして、私といたしましては、やはりこれは防衛庁の中に何らかの形で入れて参る、こういうことに努力すべきではないか、また、努力したい、こういう考えでございます。さしあたって、それらをいつごろまでの目標にしたいかといいますと、今年度はすでに御存じの通りに、予算編成等も一応済んでおりますので、でき得ますれば、来年度を目標にして参りたい。それから同時に、従って、当面それらの末端機関であるものも、時と場合によれば、防衛庁の出店とどういう形になっているかということは一応考えられますから、それらを調整しながら、末端機関というものを考えて参りたいというのが私の考えであります。従いまして、今年度におきましても、できるだけ整理人員等は前年度並み程度に圧縮したということは、横路君御存じの通りであります。
  215. 横路節雄

    ○横路分科員 長官、この間この分科会で、本年度の防衛庁の十三個師団の拡充問題を聞いておりますと、ことしは民生との関係、一般住民との関係で、施設部隊を増強したというのか、ふやしたという問題がございまして、私も予算書を繰ってみましたところが、いわゆる防音工事について、防衛庁の方は六億幾ら組んである。調達庁の方も組んである。片一方の調達庁の方はもちろん米軍のジェット戦闘機、それから防衛庁の方は航空自衛隊のジェット戦闘機であることは間違いないと思いますけれども、調達庁というものは、いわゆる主管大臣は防衛庁の長官だ。こういう関係であるならば、防衛庁というのは軍のわけだから、もう少し軍自体のそういう点に主力を置いて、施設だとかそういうものについては、主管大臣が同じ防衛庁長官なのだから――なるほど米軍関係の調達業務ということが調達庁であることは間違いないが、しかし、ことさらにやれ防音工事だ、陸上自衛隊に伴うところの被害、そのための特別な防災工事、そういうもののための施設部隊、何か屋上屋といいますか、もちろん、画然と仕事は分けられてあるけれども、しかし、防衛庁の長官が主管大臣なのに、そうやってこの仕事を、特に十三個師団の中で、一般住民との関係で施設部隊をふやした、そういう部隊をふやしながら、費用をふやしながらいくということは、どうも私は、いわゆる行政という立場からいって、もう少しすっきりした方がいいのじゃないかと思う。この予算書を見て、私ども、何と同じようなものを両方に分けて組んであるのだろう、とりわけ、十三個師団で施設部隊もどんどんふやしていく。しかし、私は、防衛庁の人がこれから防災工事だとか何とかやるのに、今まで手がけた調達庁その他の諸君と比べて、そう別にうまいわけでもないだろうと思う。これから施設部隊を作ってやっていく、これは、たしかこの間の三十四年度の会計検査院の批難事項の中にも出ておったと思います。専門家じゃないのだから、防衛というのは、軍に対しては専門家なのだから、専門家は専門家としてやって、そういうことはそういうことで分けたらどういうものでしょうか。もちろん、自衛隊と米軍という違いはありますけれども、どうですか、長官
  216. 西村直己

    ○西村国務大臣 私といたしましても、将来の防衛庁のあり方については構想を持っております。たとえば、おっしゃる通り、騒音防止なら騒音防止というものを考えましても、関連する部分がある。共同で使用しているような場合においては、調達庁というものと一本化してもいいような面も事実あるのじゃないか。そこで、できるならば防衛庁の内局なら内局にも、一つの基地行政というか、そういうようなものを提供する施設局的なものが一つあってしかるべきだ。それから末端における施設部隊は現業で、しかも、これはどちらかというと、民生安定は部外工事でございます。自衛隊外の仕事がかなりあります。たとえば災害救助あるいは建設。事務の方につきましては、末端におきましては、調達庁的なものと、それから防衛庁にも多少建本の系統の事務系統があります。これらの調整は、私は、すべきではないか、こういうことは深く考えておるわけであります。
  217. 横路節雄

    ○横路分科員 この点は、今長官が言われた通りに、一つ行政機関として十分検討する必要があると思います。  次に、連合国占領軍等の行為による被害者等に対する給付金の支給に関する法律案、これは予算書の中にも出ているわけですが、一日百五十円として千日分を組んで十五万円、そのうちから今まで支払った分を差し引いて渡す、こういうわけですね。まず、私が長官にお尋ねをいたしたいのは、この給付対象になる人員は一体何人か、そのうちの死亡者はどれだけいるのか、総額はどれだけになるのか、ことしの予算にはどれだけ組んであるのか、このことをまず最初にお尋ねしたい。
  218. 丸山佶

    ○丸山政府委員 この事項は、調達庁で所管いたしておりますので、私からお答えいたします。  この対象となる被害件数は、今まで判明しておるところ、およそ約九千余件でございます。そのうちの死亡は三千九百余件ございます。これに対しまして、死亡者に十五万円という基準を設けまして、およその見通しのもとに算定いたしますと、総額で約五億二千万ほどの支給金を要する、そのうちの四〇%を本年度において処理するというために、一億八百万というものが三十六年度の予算要求額になるのであります。
  219. 横路節雄

    ○横路分科員 この百五十円というのは、またずいぶん少ないものですね。一日百五十円の千日分十五万円、これはどういうのですか。あまりにもひどいじゃないですか。丸山さん、どうなんです。今ごろ一日百五十円なんというのは、どこにあるのでしょう。
  220. 丸山佶

    ○丸山政府委員 十五万円という金を、実は遺族給付金として適当と認めたものでございます。この十五万円が適当であるやいなやに関しましては、いろいろ検討を加え、研究の結果でございまして、一つには、占領が終わり、平和条約発行後に、米軍の行為による補償措置がどうなっておるか。これは御承知の通り、行政協定十八条、民事特別法等との関係から、その後調達庁が基準を設けたのでございますが、二十万円を最低といたしております。これに反しまして、同じくちょうど占領期間に当たるような時期において、いろいろの救済救護法による死亡者に対する給付金のものがございます。たとえば戦傷病者戦没者遺族等援護法の中に、軍属として戦後に戦病死した方の場合、あるいは満州開拓団の戦後の死亡者に対する救済措置の場合、または動員学徒の工場爆破等による死亡者等、これらに関して、先ほど申し上げました法律が、二十七年法律第百二十七号として先ほどの題名で出ておりまして、これに対する遺族の弔慰金あるいは給付金というものを見ますと、五万円程度になっております。また、抑留者の死亡に対する措置といたしまして、引揚者給付金等支給法というものが、昭和三十二年法律第百九号というので出ておりますが、遺族給付に関しましては、十八才以上二万八千円、十八才未満一万五千円、これを十年以内償還の年六分利付の記名国債で交付する、こういうふうな、これに類すると思われるようなものに関しまして、いろいろの法律措置がございます。従いまして、今回の調達庁の所管で提案するという法律の中における遺族給付金に関しましても、これらのものを参照するとともに、平和条約発行後米軍の行為に原因して死亡したものの二十万円と見合わせまして、いろいろの方面の議論を重ねまして、十五万円を適当と考えました。
  221. 横路節雄

    ○横路分科員 ずいぶん苦しい十五万円だったですね。主計局次長の谷村さん、おりますか。算定された主計官が、病気で今入院されているそうですから、谷村さんに、一つその算定の基礎について、私これからお尋ねしたい。  今調達庁の長官から、引揚者に対する交付公債で、十八才から何才かまでは二万八千円と、これは丸山さんもちょっと引き合いに出すのにはあまりにも苦しい引き合いを出した。これは占領軍の暴行によって殺されたわけですよ。まず、この九千人のうちの三千九百十人というのは、事故その他過失によって――軍の正当な行動によって死んだものについては払わないのですからね。これはそうじゃないのですよ。いわゆる占領軍の不法な暴力行為によって殺されたり、ひき殺されたりした者です。そこで、谷村さんにお尋ねしますが、今長官から答弁もあって、私も聞いておったのですが、まず、二十七年の四月二十八日以降、いわゆる講和条約発効と同時に、一人二百円の千日分を払った、こう言っているのですが、この二百円というのは、収入のない者の日額を定めたわけですね。ところが、ここにある三千九百十人というものは、無収入の者ではなしに、それぞれ生計を立てていた者が多いわけです。そこで、二十七年の五月に、収入のない者の日額を二百円として、それのいわゆる千日分というので二十万円を払ったが、しかし、三十一年の十月ですか、法律改正をやって、それを三百円にしたわけですね。とりわけ、先ほど長官からお話がありました行政協定第十八条の点からいけば、それぞれ働いておる者については、全産業の労働者の一日の賃金は平均五百七十七円ということで、それから算定をしていって、行政協定第十八条に基づいて四面八十円という計算をしたわけですね。ですから、この点については、今二十万という話であったが、これは二十万円から最高百万くらいまで払っておるでしょう。そこで、これは概算ですが、中間をとって、今の行政協定第十八条の実績に基づいての点からいっても、大体平均四十八万から五十万ということになる。ところが、この百五十円という算定は、おそらくこれも収入のない者という立場に立って、一日百五十円の千日分とやったと思う。そこで、この三千九百十人はみんな収入のない者ですか、そうじゃないでしょう。そうすれば、二十七年五月に収入のない者を一日二百円、三十一年の十月かに三百円にしておいて、その間に行政協定第十八条に基づいて、全産業一日の平均賃金五百七十七円から四百八十円と算定して、大体平均四十八万ないし五十万というものを支給しておるのに、これは何で十五万なんですか、何で一日百五十円なんですか、どういう基礎なんですか。長官もだいぶ苦しいので、引揚者の交付公債一人二万八千円なんという、生きて帰った者を引き合いに出しておるが、これは暴力によって殺されたものなんです。どうしてこういう、われわれから見ると、納得のできないような算定をしたのですか。
  222. 谷村裕

    ○谷村政府委員 お答え申し上げます。  いろいろ例をおあげになりましたが、占領期間中の占領軍による人身被害の不均衡是正、今までもいろいろの意味で措置をとって参りましたが、どうしても不均衡がある。これは何とかしてそこを直してやらなければいかぬじゃないかという声が出て参りまして、検討して参りました。その内容の一番問題になりますのは、やはり終戦直後と申しますか、いわゆる第一期間くらいのところでありますが、ほぼ九千人のうち約四千人くらいでありますが、そこらが非常にお気の毒な状態にあるというので、こういう問題が起きたと思います。事故の内容とか、今いろいろお言葉がありましたが、必ずしも不法な暴力行為等によって行なわれたとかいうことが全部ではなくて、いろいろな事故の形態、内容がございますし、本人の過失の問題とか、あるいは相手方がどういう形で行なわれたかといういろいろな問題がそこにあって、しかもそれはもう十数年前だというふうなことでございます。そこで、実は今、政府といたしましては、もうここに提案しているようなことでございますから、大蔵省、お前はどう思って作ったかとか、調達庁長官は苦しかろうとかいうお言葉でございますけれども、ただいまここで二人並んでおりましても、お互いに別にもう苦しくないので、一緒になって話をきめておるわけであります。あまり中味でああ思った、こう思ったということを御説明するのもいかがかと思うのでございますけれども、結局、今お尋ねの点でポイントになりますのは、私ども御説明申し上げているように、占領期間経過後において二十万というのが最低になっている、それを前提にして、それから七割五分くらい下げた十五万というのをとったのは何だ、いろいろ収入を持っておる者、これを全部みそもくそも一緒にやっておるのはどういうわけだという点が、おそらくポイントになるかと思います。その点につきまして、実は私どもの方は、いろいろ折衝の過程におきましては、賃金を逆にスライドさせて、逆スライドでございますが、物価水準にいたしまして当時の賃金がこのくらいであったとして逆算してやってみたらどうかとか、いろいろな計算をしてみました。ところが、賃金の方で逆スライドなどをいたしてみますと、かえってまた、一番お気の毒だと思われます約四千人くらいの方、占領直後の期間において不幸な目におあいになった方にどうしてもうまい救い方ができない、といって、それでは賃金のベースを逆に何か適当な仮定を置いて考えられるかといいますと、これもはなはだ最低になる。結局、双方で話し合って、調達庁の方でもそういう案を考えられたわけでありますが、占領直後の二十万という最低の線を基礎として、今までいろいろな見方をしておったものを、どういうような状況にあった方でも全部そこまで引き上げて、そこへならそう、こういう考え方になったわけであります。一つ一つのことについて、さほどこまかくいろいろなポイントを見ておるわけではありませんで、過失であったろうとか、相手方がどういうような状況で何をしたのであろうとかいうことまで、いろいろこまかくそこに差をつけて見るというふうなこともございません。占領中と占領後では、いろいろ見舞金と申しますか、給付金を出します立場考え方も若干変わっておるようでございます。それらを勘案いたしまして、今、丸山長官が、当時の引揚者の方とかおっしゃいましたが、たとえば満州で抑留中に死亡された方に対して措置してこられたそのどれよりも悪くはない、むしろそれの倍以上にはなるというくらいの割合で、率直に申しまして、私どもとしてはかなり思い切った線まで引き上げて、この際過去において不均衡があったのを是正いたしたい、こう思ったわけであります。
  223. 横路節雄

    ○横路分科員 今あなたからお答えをいただいたことは、この法律案で私も承知しておるのですよ。それはどういうことかというと、給付金は、被害者の死亡、負傷または疾病が次のいずれかに該当するときは支給しないものとするとあって、第一番目に、被害者または第三者の故意または重過失に起因するときは払わない、第二番目には、連合国占領軍の正当な行為または無過失行為に起因するときは払わない、こういうことは私も承知しておるのですよ。だから、それは連合軍の過失でなければ払わないのですから、やはり過失ですよ。そこで、いわゆる講和条約発効後においては、今あなたから御説明があったように、最低は、無収入な者について日額二百円として千日分払った。しかしまた、それぞれの人において、今私から指摘したように、全産業別の一日の賃金というものが五百七十七円ということから算定して、四百八十円というものもまた算定の基礎になる。千日分出したということになると、それが四十八万ということになる。あなたは今引き上げたのだ、引き上げたのだとおっしゃるけれども、全然収入のなかった、最低の、一日二百円の人の千日分の二十万の七五%の十五万、そこまで引き上げたのだ、そこはなるほどわかりますよ。収入のなかった人はそこまで引き上げればいい。それならば、講和条約発効後においてそういうように収入のあった者について、先ほど言ったように、全産業の一日の平均賃金からはじいて出してきた、こういうようなものについては、当然今度考えてしかるべきじゃないか。日額二百円というものに近づけるための七五%ということになれば、あなたの計算方式からいけば、四百八十円の千日分の四十八万の七五%という、そういう人も当然出てこなければならない。また、この間にはおそらく百万くらいもらった人もあるでしょう。それの七五%の七十五万という人も出てこなければならぬのに、全部収入のない人の二十万のところに寄せて、七五%の十五万でやったということは、これはどう考えても妥当ではないのじゃないですか。
  224. 谷村裕

    ○谷村政府委員 お答えいたします。いろいろな考え方があるかと思いますが、先ほど触れましたように、占領期間経過後におきます人身被害に対します措置というものは、たとえば公務外の被害というような場合には、先方が直接本人との間でやって、国がやらないというような建前になっておりますとか、あるいは過失の問題でも割合に厳格に扱っているとか、いわば占領期間が済んだあとは扱いが非常にはっきりとしているわけなんです。実は、占領中は、私もずっと古い昔のことを自分でやっておったわけではございませんから、もちろん、人から聞いての話でございますが、まあお気の毒だからというので、あとからあとからだんだんに訂正しながら、そのときの事情その他も、それほど厳格ではないにしても、見てやっておったというように聞いております。そこで、結局、どこまでどうしたらいいかという、程度の問題だと思いますが、過去においてお気の毒な目にあわれた方の、しかもわれわれとしてこの際一番しなければならぬと思っている人数のところが、実は十五年以上も前の話でありますが、そこのところの扱いをします際に、たとえば、占領直後の賃金等をベースにいたしまして、それを直ちに使ってやるということでなく、もしそのころにさかのぼってやるのであれば、先ほど申し上げましたようなスライドをするのがやはり筋であるというふうな問題になって参りますので、結局、この問題は、最後的には、一つの線を作ってそうしてそこでおさめる、あまりこまかい計算などをして過去にさかのぼらせるというのでなしに処理するというやり方の方が適当であろう、こういう判断になったわけでございます。
  225. 横路節雄

    ○横路分科員 主計局次長の話の、収入のなかった者の日額二百円、これは二十七年五月ですね。三十一年の十月は三百円にしたわけです。二十七年五月、講和条約発効と同時の、収入のない者の日額二百円の千日分の二十万、そこで七割五分として、十五万に寄せる、それはそれなりにあなたの説明で筋が通るでしょう。そこまでのところはあなたの説明なりに筋が通ると私も思うのです。しかし、現に働いている人については、さっきも長官が言ったように、行政協定十八条の中で――それは今収入のない人のことです。その間については、やはり全産業労働者の平均賃金を出して、そしてそれから千日分というものを出して、平均はそれだけでも、それぞれによって出しているわけです。だから、あなたが収入のない者の一日二百円の千日分のところに寄せたというそこの合理性は、私はあなたの説明を聞いて、そうであろうと思います。しかし、収入のあった者については、これは標準にならないですよ。収入のなかった者については、なるほど、あなたの説明なりがやはり一応の目安になると私は思います。しかし、収入のあった者については、あなたの説明はどうも少し牽強付会というか、こじつけになりはせぬですか。
  226. 谷村裕

    ○谷村政府委員 いろいろお話ございますが、そもそも、占領期間中に被害を受けられた方々に対して国が何らかの意味でお見舞金を差し上げておった、それをどう理解するかということであろうと思います。まあ平均賃金等の千日分を補償するというような考え方に立てば、有就業者と無就業者と区別して、そこの間にはまた、どの程度の賃金をとっておったか等々まで調べて、過去においてどのくらいの賃金ということが妥当であるかというふうな考え方をもって見るという行き方もございましょうが、実はそういうことで過去の不均衡是正ということをやれば、先ほど私が申した通り、かえって不均衡是正にならない場合もあるというふうに申し上げたわけでございます。それはまた、物価スライドをどう見るかということにもよりますが、しかし、一般的に当時の賃金を物価スライドで逆算いたしますと、そういう問題も起こってくると思います。そこで、私ども考え方は、占領中におけるこういう人身被害に対する見舞金というものは、いわばそのときの生業補償、収入の何日分かを補償するという考え方でこの際不均衡是正をするのではなくて、せめて戦後において最低の線と見られたところまでは十五年さかのぼって、しかし、そこで物価の問題を抜きにして、非常にお気の毒な見舞金でしかなかったものをこの際是正しましょう、そういう考え方になるわけであります。いわば過去における見舞金の是正と申しますか、それの考え方の問題だと思います。
  227. 横路節雄

    ○横路分科員 これは今ここで私が重ねて何回も質問したからといって、主計局次長が、ああそうですか、それじゃどうもうまくないから、直しましょうと言えるものでもないと思うのです。しかし、これは先ほどから私が指摘しているように、平和条約発効後の被害者に対する補償金の平均というのは四十八万円ですよ。それが今度全部十五万円に押えられている。しかも前に払っておる金額を差し引く、こういうわけです。これもまあ何と親心のないやり方かと思うのです。差し引くというのですから、私はそう思います。しかも、この被害者については、われわれの近しい人の中にもあるわけですが、たとえば頭をなぐられて、そのために精神異常を来たして、いまだ回復をしていない、だから生業にもつけない。これはもう全く一家の支柱を失った、それ以上の悲惨なことだ。私は国会に出る前から、こういう人々から、何とかならないものだろうかという要請を何べんも受けた。何べんもありますから、今回とにかくこういう法律案を出すようになったということは前進だと私は思うのです。しかし、先ほど言ったように、平和条約発効後の補償金の平均の額が四十八万円なのに、今度は二十七年五月のときの収入のない者の日額二百円、その千日分二十万円の七五%に全部押えたというところに問題があると私は思うのであります。主計局次長は、もちろん予算を出し、法律案を出した以上は、政府部内で十分意見の検討をされて出されたに違いないと思います。しかし、これに一体みんなが納得しておるかどうかという問題ですよ。時間もだいぶ過ぎて、私の持ち暗闘も過ぎましたから、これでやめますが、この問題は、法律案としては内閣委員会で扱うわけですから、従って内閣委員会ではこの法律案についてはもっと時間をかけると思います。従って、今私から指摘したことは、前の平和条約発効後における取り扱いから考えましても、これは実に不公平であるというふうにわれわれは考えておるし、これではとても被害者に対する補償という立場にはならないと私は思います。しかし、この点は内閣委員会でさらに十分議論をするようにいたしたいと思います。  それから丸山長官一つ伺いますが、この予算書の中に、飛行場周辺の集団移転費というものがありますね。これはどこで何戸移転するわけですか。実は一つお聞きしておきたいの・は、F104Jがいよいよ三十七年度から大量に生産されて配置されて参りますと、相当な爆音によって飛行場周辺の者は集団移転をしなければならない状態が必ず私は出てくると思います。きのうもお聞きしたように、爆音は大体最低三倍です。これは一体どこの飛行場で何戸移転するのですか、それだけ聞いておきます。
  228. 丸山佶

    ○丸山政府委員 集団移転関係予算は、厚木の飛行場の周辺のもので三十四戸を予定しております。
  229. 横路節雄

    ○横路分科員 それはどの程度の爆音のために被害が出て移転しなければならないのか。そこで、集団移転費を出しておるのですが、爆音についてどれだけの測定をして、これはなるほど集団移転をさせなければならぬということにしたのか、これは将来の問題と非常に関係がありますから、ぜひお尋ねしておきたいと思います。
  230. 丸山佶

    ○丸山政府委員 飛行場の周辺の集団移紙の問題に関しましては、実は爆音のみならず、飛行機によるところの危険、事故発生、こういうものを除去することに大きな眼目を置いておるのであります。たしか飛行場の進入路の直下に当たるもので千メートル以内を標準にしておると思います。
  231. 横路節雄

    ○横路分科員 もう一つお尋ねしておきますが、これは二戸幾らの補償ですか。この予算には五千百六十九万七千円となっておりますが、これは二戸当たり幾らになっておりますか。
  232. 鐘江士郎

    鐘江政府委員 お答えいたします。  一戸当たり百五十万であります。
  233. 横路節雄

    ○横路分科員 今の厚木の飛行場の大体コースの下に当たるところで百何十万かの補償をするということになりますと、これはいよいよもって――きのう防衛局長から話のあったF104Jがいよいよ配置がきまってくると、今でも、たとえば北海道の恵庭の演習場では、射的に向かって出るときには、今のF86Fでも協定で飛んではならないことになっておる。九十フォン以上はいけないことになっておる。それがF104Jになりますと、入るときにはそれの三倍とすると、音は当然二百七十から三百フォンは出るでしょう。そうすれば、当然問題は次から次へと起きてくる。そういう点で私は申し上げたわけです。  最後に調達庁長官並びに大蔵省に申し上げておきますが、先ほど言った被害者に対する補償の法律案は、このままの形では内閣委員会ではなかなか容易でない、私たちも、これは内閣委員会で、少なくとも平和条約発効のときの被害者に対する補償と同じような程度にぜひこの法律案は修正しなければならぬ、こういうように考えています。  以上で終わります、
  234. 相川勝六

  235. 川俣清音

    川俣分科員 防衛庁と調達庁にお尋ねするわけですが、まず防衛庁にお尋ねしたいのです。  私、二点にしぼりますが、一点は、防衛庁の国有資産所在市町村交付金、約二千五百二十五万二千円だと思うのですが、これを建物と土地とに分けて御説明願いたい。  もう一つは、諸謝金と申しますか、謝礼金約三千万円あるわけですけれども、この内容を一つ御説明願いたいと思います。
  236. 西村直己

    ○西村国務大臣 私の手元にある市町村交付金で、防衛庁に国有資産所在市町村交付金として計上しているのが、ずっと年度別で申しますと、三十三年度が千四百五十五万円、昭和三十四年度が二千二百六十四万円、三十五年度が二千六戸十九万円、三十六年度が三千五百二十五万円、こういう数字になっております。
  237. 川俣清音

    川俣分科員 建物と土地との内訳は……。
  238. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま長官からお答えをいたしました数字は、主として防衛庁で使っておりまする公務員宿舎の敷地についての交付金でございます。
  239. 川俣清音

    川俣分科員 謝礼金の方は。
  240. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 諸謝金という目がございますが、これは各幕に種々の学校がございます。その学校におきましていろいろ部外講師を呼びます謝金でありますとか、あるいは学校のみならず、内閣の部局機関等におきまして、種々の問題につきましてわれわれが講師を呼んで講演などを聞くというとき、その支払いの謝金などで、種々の内容を含んでおります。
  241. 川俣清音

    川俣分科員 諸謝金についてはあとで内訳をほしいと思いますが、防衛庁長官にお尋ねしたいのは、御承知のように、固定資産税が評価がえをいたしまして今度から上がるわけです。官庁の建物及び土地の固定資産税に当たる部分を交付金として所在市町村に支払われるわけですが、この評価が各官庁とも台帳価額でやっておって、非常にまちまちなんです。そのまちまちだということは、おそらく当時の取得価額ということになるのだろうと思うのですが、それによって所在市町村に対して払われる交付金が、付近の固定資産税とあまりにも大きな開きがありますと、官庁なるがゆえに特権を持っているという印象を与える。ある省は付近並みだし、ある省はいろいろ大きな違いを持っておるということは妥当じゃないと思うのです。こういう点について検討をせられたことがあるのかないのか。昔からの台帳だということで漫然とやっておられるのじゃないかと思うのですが、この点どうですか。
  242. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたのは、官舎等、国または地方公共団体以外に使用する土地でございまして、いわゆる基地交付金と申しますのは、防衛庁で申し上げますと、演習場でありますとか、飛行場でありますとか、あるいは燃料庫、弾薬庫、そういうようなもので土地を使用いたしておりますその市町村に交付金を出している、こういうことであります。これが年額十億円の予算になっております。ただいまのお話は、おそらくその土地の評価額と思いますが、御承知のように、国有財産台帳によります評価額は、五年に一回ずつ評価改定をいたしております。従って、かりに今年やりますと、あり五年はそのままでずっといってしまうというようなことで、このごろ地価が相当急激に上がっております関係上、ただいま御指摘に相なりましたような、一般の地価と、それから国有財産台帳に記載してございます地価とは相当食い違いが起きてくるということは事実でございます。それで、ちょうど本年の三月三十一日がその五年目の国有財産の台帳価額の改定時期に当たっておりますので、おそらく来年度三十六年度におきましてはそういう矛盾を是正できるのではないかというふうに考えております。
  243. 川俣清音

    川俣分科員 そういたしますと、三十六年三月三十一日で評価がえをするわけですが、それに基づいて交付金が支払われる。そうすると、今の二千五百三十五万二千円は旧価額のものですか。基地の交付金は約十億だそうですか、これも評価がえをしない金額ですか。
  244. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 お答えいたします。  ただいまの二千五百二十五万二千円と、それから例の十億円でございますが、これは三十六年度の予算で要求いたしておる金額でございまして、これを支払う時期までには改定ができるものと信じております。それから、なお、事務的に若干のおくれがございましても、三月三十一日現在で評価改定をいたしますので、その評価が非常にアンバランスとなっておる場合には、事後に支払い額の訂正ができるというふうに信じております。
  245. 川俣清音

    川俣分科員 どうも説明が十分じゃないのですが、三十六年度は評価がえをした交付金額として予算請求をしておられるのかどうか。
  246. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまの三十六年度の予算に要求いたしておりますのは、旧評価額による要求でございまして、三十七年度以降が新評価額による要求に相なります。
  247. 川俣清音

    川俣分科員 三月三十一日で評価がえをするのですから、大蔵省の方針、自治省の方針に基づいて、各町村では三十六年度から固定資産税が上がるわけですね。それに見合って、所在市町村の交付金も、ある省によりましては、すでに三十六年度を見越して交付金額をふやしておるところもあるようです。防衛庁は三十七年から支払われるという予算要求でございますか。実際もう三十六年度から改定されたものに基づいて支払わなければならない義務が生ずるのじゃないですか。
  248. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の第二条には、「毎年度、当該年度の初日の属する年の前年の三月三十一日現在において所有する固定資産で」云々とございまして、どこかの省で新しい評価によって算出をしておるというただいまのお話のようでございますが、新しい評価額というものはまだ出ておりません。事務的にもはっきりしたものをつかんでおりませんので、やむを得ず前年度の三月三十一日ということにならざるを得ないわけでございます。
  249. 川俣清音

    川俣分科員 法律に基づいて前年――前年というのは、暦年でなく、会計年度をさすのでしょう。そうすると、三十六年の三月三十一日というと、前年になるんですね。だから、前年度の末で、いわゆる三月三十一日の評価がえした額をもって、三十六年度――暦年でいけば三十六年でしょうけれども、会計年度でいくと、前年度、三十五年度の末の三月三十一日ということでしょう。暦年でいけば三十六年ですけれども、会計年度でいけば、三十五年の最終、すなわち三月三十一日、そこで評価がえしたものは、三十六年度から支払う義務が生ずるのではないでしょうか。
  250. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまの法律によりますと、三十六年度ならば、三十五年の三月三十一日現在の評価額によって交付する、こういうことに読めるかと思います。
  251. 川俣清音

    川俣分科員 林野庁の予算の中に、やはり国有資産所在市町村交付金がございますが、たしか一・八くらい値上がりになるだろう、評価がえになるだろうということで、増額になっておるように見受ける。そうすると、これはあやまちだ、こういうことになりますか。
  252. 谷村裕

    ○谷村政府委員 主計局次長の谷村でございますが、実は主計局でいろいろ各省各庁の予算要求がございました際に、この国有資産の交付金の方は統一的に見ているつもりでございます。そこで、もし、御指摘のように、ある庁はすでに見込み、ある庁は見込んでいないというばらばらが――私どもとしては、ないと思っておりますが、今お話のようなことがあるかどうか、それをもう一ぺん当たらしていただきたく思います。私は実はその方を担当しておりませんから、もし今おっしゃいましたようなことであれば、それはなぜそうなっておるのか、御説明ができることだと思いますから、かすに時間をもってして若干調べさしていただきたいと思います。  それから御疑念がございました、いつ現在の価格でもって計算をしておるのかということにつきましても、法律上のはっきりとした御説明をさせていただきたいと思いますが、ただいまちょっと私資料その他を持ち合わせないものでございますから、別の機会にさしていただきたいと思います。
  253. 川俣清音

    川俣分科員 別な機会といいましても、予算審議は四日で終わる予定になっておるのですから、その中で説明していただかないと、日にちが延びることを御承知願わなければならぬと思うのです。  そこで、次長が見えておられますからお尋ねするのですが、評価額は台帳価格になっている。台帳価格は、取得価格ですか、時価に直した台帳価格ですか。取得価格で台帳に載っておると思うのですが、あなた方は各省の査定をしておられるのだから、根拠が明らかになっておるはずだと思う。法律上は台帳価格なんですね。台帳価格が取得価格のようなんです。
  254. 谷村裕

    ○谷村政府委員 とっさの御質問で、はなはだ申しわけございませんが、いろいろやっておりましたときに、一つ一つの台帳価格の根拠が何であったかということを実は記憶いたしておりません。いろいろ国有財産の建前といたしましてどういうものにはどういう価格のつけ方をするという一つのやり方がきまっております。それは大蔵省の国有財産の方を所管しております管財局の方でやっておりますが、実は私、詳細に記憶しておりませんので、責任を持ってお答えできませんから、これは何ならば明日でもこの席でお答え申し上げるようにいたしたいと思います。
  255. 荻原幸雄

    ○荻原説明員 お答え申し上げます。  先ほどお話のございました国有資産等所在市町村交付金の交付客体になります資産でございますが、これは国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律というものがございまして、この第二条で、当該年度の初日の属する年の前年の三月三十一日現在で押える、評価をそれでやるということに制度的になっておりまして、交付金の配られます対象は一年ずれるという形になっておるのでございます。従いまして、本年の三月三十一日に国有財産法の規定によります評価改定が行なわれますと、それに基づきましての交付金の額は、三十七年度分の交付金から適用になる、こういうことになるわけでございます。現在そういう制度をとっておるわけであります。  それから評価額として何が基礎になっておるかということでございますが、これは実際はそれぞれの所管省の仕事でございまして、私どもの所管でございませんので、お話し申し上げるのもどうかと思いますけれども、私どもの知っておる範囲で申し上げますと、一般の国有資産につきましては、これは原則として、購入にかかるものは購入価格、交換にかかるものは交換当時の評定価格、そのほかにも、物納にかかるものは収納価格というふうな規定がございまして、これを根拠に台帳に登録をいたしまして、五年ごとに三月三十一日の現況で評価の改定を行なうというのが、国有財産法の建前でございます。  それからなお、御質問にございました国有林野の関係は、国有財産法の適用除外の資産になっております。従いまして、五年ごとの評価改定というのは行なわれません。ただ、しかし、国有林野事業特別会計法施行令によりまして、もともとは取得のために要した農林大臣の定める直接及び間接費の合計額、こういうことで台帳へ載っているのでございますけれども、この価格が、一般物価の変動その他特殊の事由によりまして著しく不適当だというふうになりましたときは、農林大臣は改定ができる。従って、これは五年ごとという制限はございませんが、そういう必要を生すれば、農林大臣としてはそのつど改定ができるという建前になっておるわけでございます。
  256. 川俣清音

    川俣分科員 二点問題が出てきたわけです。一点は、前年という解釈が、暦年の前年と見るのか、会計年度の前年と見るのかという問題があるだろうと思います。これはいずれ法制局に検討させなければならぬ問題だと存じます。説明のように、台帳へ載せるときの買い入れ価格、または交換時のそのときの価格ということになっておる、それを五年ごとにスライドして何割か何%かやっておる。原簿の一番最初は取得価格だ、あるいは交換価格だ。従って、一定率をスライドして五年ごとに価格を上げていくことは認める。原簿に記入された当初からスライドしていっているのですけれども、必ずしも一律じゃないはずだ。ところが、大体一律に評価がえをしていっている。片一方の固定資産税は、今自治省の説明では、自治省は、三十六年度から固定資産税の評価がえをして、三十六年度から課税するのです。この法律ができた根拠は、いわゆる一般の固定資産税の値上がりに応じていこうということなんでしょう。固定資産税に見返りの交付金なんですね。必ずしも同額じゃないにしても、見返りなんです。一般の民有地については固定資産税を課税することができるけれども、国有地については課税することができないために、それに相当する分――相当というのは必ずしも同額という意味ではないでしょうが、相当する分を所在町村に交付していこうという考え方なんです。そうすると、一般の民有地は三十六年度から固定資産税が上がっておるのに、官庁なるがゆえに一年おくれなければならないという根拠がないじゃないか。そういう特権が法律上できているのだというのは、法律の方が適当じゃないんじゃないかというふうにお考えになりませんか。大蔵省なり自治省なり、三十七年度からやるのだというならば別です。三十六年度から一般固定資産税は一定率をかけて上げていこうというのです。三十六年度から実施するわけです。官庁だけが一年延びてもいいのだということはおかしいのじゃないですか。なぜ官庁だけがそれだけの特権を発揮できるのですか。法律は別にして、経済的な根拠がないじゃないですか。官庁だけが一年おくれていいのだ、そういう特権はどこから生ずるのですか。一般の経済常識からいって合わないのじゃないですか。自治省から答弁を願います。
  257. 荻原幸雄

    ○荻原説明員 お答え申し上げます。  この制度は昭和三十一年からできておるわけでございますが、できましたときに、やはりそういった点がいろいろと議論の対象にはなったようであります。ただ、実際問題といたしまして、三月三十一日の価額がきまりますのも、それぞれ各省庁におかれましての出先の担当部局の方で当日現在で評価をする、そしてその報告等が大蔵大臣へ参りますのは九月三十日であったかと思います。そういうことで、予算措置その他を考えます場合に、そういう期間がかかりますので、交付金を交付します場合、もちろん予算措置がないと交付できませんので、その辺の事務的と申しますか、技術的と申しますか、そういうところでやむを得ず現在のような制度になっておる、こういうことでございます。
  258. 川俣清音

    川俣分科員 一般の国民から見ると、なぜ官庁だけが一年おくれなければならぬのかという疑問は当然だと思う。法律がそうなっているからというだけでは、満足しないと思う。では、法律を直したらどうかという問題が出てくる。一般の方は、町村財政の上からいって上げなければならないということで、三十六年度から増税するわけです。官庁の分だけが増税の対象にならないということは、何としても納得いかないじゃないですか。西村長官、どうです。直接あなたの方だけじゃないですけれども、ほかの方、一般の民間は三十六年度から固定資産税の増税をするのだ、官庁だけは一年おくれてやる特権を持っているのだということは、法律的根拠があるといいながら、何といいましても今日の日進月歩の激しい経済の移り変わりの中において、官庁だけは一年あとでいいのだということは、これはなかなか納得いかないのじゃないかと思う。
  259. 荻原幸雄

    ○荻原説明員 御質問の御趣旨はごもっともでございます。ただ、先ほども申し上げましたけれども、交付金を交付いたします場合には、予算措置が必ず要る。当該年ということにいたしますと、通常予算を計上いたしますから、まだ確定いたしておらぬということで、どうしても不確定の要素で組むという問題が出て参ります。過不足等が将来も生ずるという場合にいろいろ厄介な問題が出てくるということで、やむを得ず今のような制度になっているわけでございます。一般的に申しまして、将来の一つの研究課題ではあろうかと存じますが、ただいますぐこれを改正し得るかといいますと、相当な研究をして、いろいろな手続その他も考えて参りませんと、もっぱら先ほど申し上げましたような理由が事務的あるいは技術的にございますので、研究はしてみたいと思いますが、趣旨がそういう趣旨でございますので、ただ考え方方向と申しますか、そういうことについては、直ちには申し上げかねます。
  260. 川俣清音

    川俣分科員 これは防衛庁の問題ではなくなってきたような気がいたしますが、民間の方は突然増税をしてもいいのだが、官庁の方はいろいろな手続があるからそれはできないのだということで一般の人は納得しますか。おれの方は手続がやかましい、うるさいので、一年待たなければならぬ、お前の方は、国民の方は、突然であろうと、文句を言うな、簡単に説明すれば、こういう形でしょう。そうじゃないですか。自治省は各町村に対していろいろな指導もされておるわけですから、その方は即刻に、三十六年度は、突然でもやれ、こういうことでしょう。固定資産税を上げるというのですから、これは三十七年度からやるのだからというので用意させるのは別にして、自治省は、これだって、あなたの方で各府県に平均を与えて、県はまた町村に平均価格を指示して、下から盛り上がってこなければ出てこない。ほんとうは一年ぐらい、半年ぐらいかかるでしょう。その方は簡単に三十六年度から実行するのだ、官庁だけは簡単にいかぬ、これはむしろ地方の方こそ簡単にはいかないのじゃないですか。県の方では平均して、町村に指示するわけでしょう。あなた方は平均に指示するわけです。これをどういうふうに平均して割り当てるかという作業があるわけです。町村はまた平均を受けた割当を、各部落というか、各字ごとにというか、各地別にまた分けなければならぬ。平均が出てこなければならぬ。平均を押えていかなければならない。大へんな手数なんです。それは簡単だが、おれの方だけはむずかしいものだという説明は、これは納得できないじゃないですか、自治省がわざわざ出てこられたからには、何とか責任ある答弁をしなければいかぬ。これは防衛庁の責任じゃないようだから、防衛庁も漫然として――国民の支持を受けなければならぬというわけで西村さんは大いに苦労しているわけですが、こういう点から支持を受けられないようになったのでは、なかなかうまくいかないのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  261. 荻原幸雄

    ○荻原説明員 一般の固定資産税との関連におきましていかにも不合理じゃないか、こういう御趣旨でございます。そういう点は確かにあろうかと思います。また、固定資産税そのものにおきましても、そういう時価の移り変わりに直ちに追いついていくということについては、納税者の税負担の安定という点からも不工合でございますが、御承知のように、これは三年据え置きという制度をとっております。三十六年度はたまたま評価がえの年に当たりまして、この前は三十三年度であったわけでございます。そういうことで、固定資産税の方も、納税者の立場からの税負担の不安定性というものをできるだけ排除するということで、そういう努力をいたしておるわけでございます。だから、この場合はこれでいいのだ、直ちにそれは理論的には結びつきませんけれども、先ほど申し上げましたような理由でございますので、今後の研究課題としては十分検討したいと思います。  それから、ちょっとつけ加えさしていただきますと、一般の国有資産所在市町村交付金とまぎらわしい名前のものに国有提供施設等所在市町村助成交付金というのがございます。こちらの方は俗に基地交付金と申しておりますが、基地交付金の方は、総額が毎年度予算の定める範囲内、こういうことになっておりまして、価格と直ちに基準が結びついておりませんので、先ほど申し上げたような技術的な不便というものもございませんので、こちらの方は当該年の三月三十一日という価格で按分配分することになっております。
  262. 川俣清音

    川俣分科員 それで防衛庁長官にお尋ねします。私どもは、農村の問題から見て防衛庁の意見を聞かなければならぬ点があるわけです。ことしの貿易で、大蔵大臣の説明によると、二兆六千億程度の輸入であろう、こういうことでございますが、最近の政府の宣伝によりまして、急激な膨張から、おそらく二兆八千万億とか九千億の輸入になるのではないか、こう思われるわけであります。そうして参りますと、貿易の赤字が出て参りますと、いろいろ防衛庁に対するアメリカの援助も、あるいは防衛力の増強につきましても、思うような計画ができないのじゃないかというふうに思われるわけです。そこで防衛庁としては、そういう点について無関心ではおれないのじゃないかと思うのですが、主管大臣としての西村さんは見通しとしてどういうふうに思っておられるか、この点だけお尋ねいたします。
  263. 西村直己

    ○西村国務大臣 御質問は、ドル防衛を中心としてのアメリカの軍事援助に対する見通し、わが国の貿易推移に対する見通しいかん、こういうふうに承りましたが、ドル防衛そのものは、直接的には、日本の国防費と申しますか、防衛力の費用、経費というものには関係しておりません。従来は域外調達で、船なら船を日本でドルを使って作ってくれた時代もございます。最近はそういう形の援助はなくなり、あとは当面まだ続いて残っておりますものが、アメリカの現有の装備品をくれるという無償援助でございます。これはドルを直接アメリカが使うのではなくて、物をくれる、間接的にはアメリカの財政支出に関係を持ちますけれども、直接的にはドルの防衛に関係がございません。  いま一つは経費分担で、有償援助の中の一つの形でございますが、経費を分担して日本から逆に多少ドルを払い、あるいは日本の国内で円を払って日本が負担をするというような、経費をお互い同士が分担をする、これも、アメリカで物を作って経費を持ってくれる場合には、ドルは海外には出ませんから、ドル防衛には直接関係がございません。ただ、アメリカの財政支出から見ますと、やはり間接的には影響があるという面から、私どもといたしまして、まず無償援助が減るか減らぬか、こういう問題は、無償援助は、ドル防衛以前から毎年漸次減ってきております。多いときには七百億ドル、最近では減って参りまして、昭和三十六年度の一応期待しております見通しは、二百十六億ぐらいを一応期待して国防のあり方についていろいろ計算をいたしております。従って、無償援助の方はそれほどの影響はない。ただ、有償の方は少しずつ経費分担が変わりつつございます。しかし、全体から申しまして、日本の国の中におけるアメリカのいわゆる軍事援助費というもののパーセンテージと申しますか、割合はそう大きな部分でございません。ですから、むしろアメリカの軍事援助が急激に切られるならば、やはりそれだけの分はありますが、徐々に減って参ります分は、当然わが国の方で工夫いたし、また国力なり国情、また財政力に応じて補完をして参りたい。従って、長期の見通しも必要であるといわれるので、次の五年間ぐらいの長期の防衛力整備の計画も、現在部内におきましては検討中であるというのが現状でございます。
  264. 川俣清音

    川俣分科員 大臣はお忙しいようでありますから、私は結論的に申し上げますが、これはわれわれがときどき言っていることであるし、他の委員の諸君も申し上げたと思うのですが、武力攻勢であるとか、武力による国土の防衛とかいうことよりも、最近のアメリカの状態から見ましても、経済攻撃であるとか、あるいは経済防衛ということがだんだん重要になってくるのではないか、そういう動きの中で、武力による防衛政策を考えていくことがだんだんと窮屈になるのじゃないか、特に対アメリカとの貿易で赤字が出て参りますと、既定の計画が、あなた方いかに考えられましても、あるいは国防会議でいろいろなことを計画されましても、そこに大きな制約が加わってくるのじゃないかということを検討されたかどうかというのが、われわれの結論的な質問なんです。
  265. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん、アメリカの軍事援助が漸減をいたしますと同時に、日本としてはいろいろな更新を――古いものを新しいものに切りかえていくとか、あるいはさらに国力に応じた多少の漸増をとるとか、こういう観点から、アメリカの援助等の関係、同時に国内の他の部門とのバランス等、これらを絶えず考えつつ、しかもまた、部内におきましては、日本の国防のあり方についての陸海空三隊のバランスをどうとるか、こういうようなことを不断に検討はいたしておるのでございます。ただ、私といたしましては、国力が伸びるに従って自主防衛努力は必要最小限度は徐々にやはり漸増主義をとってやって参らなければならない、こういう考え方でございます。
  266. 川俣清音

    川俣分科員 これで終わります。
  267. 相川勝六

    相川主査 これにて、一応、内閣総理府所管についての質疑を終了いたしました。     ―――――――――――――
  268. 相川勝六

    相川主査 引き続き、大蔵省所管について質疑を行ないます。田中織之進君。
  269. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 大蔵省所管予算に関連をして若干の質疑をいたしたいと思うのであります。予算はすべて大蔵省で編成をしておるので、予算全部が大蔵省関係だといえば非常に間口が広くなるのでありますが、できるだけ大蔵省所管予算に関連して質問をすることにいたしたいと思います。  そこで、まず最初にお伺いいたしたいのは、三十六年度の財政投融資についてでございまするが、総額七千二百九十二億円で、前年度より千三百五十一億の増加を見ておることは、説明によって承知をいたしておるのでありますが、このうち、民間資金の活用予定の千二百三十七億というのは、どういう形で民間資金を活用されようとしておるのか、まず、その点をお伺いいたしたいと思います。
  270. 西原直廉

    ○西原政府委員 民間資金の分は、公募債または借入金でございまして、それが千二百億ということに相なります。千二百億のうち、一部は政府保証債等公募債を出しますし、たとえば住宅公団、それから石油資源開発会社につきましては民間の借入金ということになるわけであります。地方債につきまして、やはりこれも公募で出すのが一部ございます。
  271. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それでは、千二百億のうち、公募債による分が幾らで、借入金による分が幾らになるのですか。
  272. 西原直廉

    ○西原政府委員 政府保証債で出します分が八百四十二億、政府保証の借入金で出しますものが二百五億、地方債で出しますものが百八十五億、そのほか、公営企業金融公庫の自己資金というものがございまして、これが五億、総額で千二百三十七億、こういうことでございます。
  273. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 さらに、八百四十二億の公募債によって調達する分というのは、これは新たに公募債を出すという意味なんですか。それとも、従来の公募債の借りかえという形をとるのですか。
  274. 西原直廉

    ○西原政府委員 八百四十二億の公募債のうち、百四億が従来の分の借りかえでございます。
  275. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 毎年のように公募債の借りかえを行なうということは、これは一種の赤字公債の芽ばえのような――金額が百四億ということでありまするから、ことしの財政投融資の資金七千二百億に比べればわずかだということになると思うのですけれども、やはり毎年公募債の借りかえという形をとることは、その意味から見れば、新たに公債発行ということについては慎重な態度をとっておるとは言いながら、やはり毎年この程度の公募債の借りかえが慢性的になっておるという点は、考えなければならない問題ではないかと思うのですが、この点に対する大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  276. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 その公募債は短期のものでございませんで、期限七年というようなものでございますので、時期がくれば借りかえは可能であるというものの借りかえをやるわけでございまして、赤字公債という性格のものではございません。
  277. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それでは伺いますが、昭和三十五年度においての公募債の借りかえは幾らですか。三十二年ごろから三、四、五くらいの数字をあげていただきたいと思います。
  278. 西原直廉

    ○西原政府委員 三十五年度は百十五億でございます。三十五年以前はございません。
  279. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 三十五年度が百十五億で、三十六年度は百四億ということになるわけでございます。期日がきて借りかえに応ずるということであれば、それは別に赤字公債的な性格を持たないという大蔵大臣の答弁でありますけれども、こういう公募債の借りかえがすでに三十五年で百十五億、十億ばかり減っておりますが、本年度においてもこの借りかえを行なうというような形は、私はやはり赤字公債的な性格を、一部分ではあるけれども、持ってきておるものだと思うので、その意味で、こういうことについては私どもは賛成するわけにはいかないのであります。  そこで、この七千二百数十億の財政投融資について、それの用途別の分類がございますので、重ねてその点を聞こうとは思わないのであります。政府の方では、住宅、生活環境の整備、厚生関係、文教関係中小企業関係、農林漁業関係というものを六番までを出して、特に国民生活の安定に重点を指向しているということをあげておりますけれども中小企業関係を例にとりましても、三十五年の六百六十三億が、本年度八百七十八億で、約二百十億ばかりふえてきておりますが、日本の産業の中に占める中小企業と、予算の説明書の六十七ページの一番上にある基幹産業関係の本年度七百九十二億、こういうようなものは、ただ単に数字の上だけの比較では、私は見のがすわけにはいかない問題があると思うのです。その点は、後ほど、たとえば、こういう基幹産業方面への投資の窓口になっておる開銀あるいは輸銀等の貸し出し関係について、一、二の具体的な問題をお伺いいたしますけれども、やはりこういうような、どちらかといえば独占企業というものに財政投融資の、特に財政融資のある重点が置かれるということは、あなた方が言われるように今日日本経済が高度成長をたどっておるという段階においては、いわゆる国家資金、財政資金をもってこういう基幹産業に対して大きな部分の融資をやらなければならないというようなことについては、この際考え直すべき時期にきているのではないか。現に、あなた方の党でかつて大蔵大臣をやられた一萬田さんと、先般個人的なことでお目にかかった機会に、話がたまたま出て参りましたときに、もちろん従来のそういう基幹産業方面へ財政資金を流すということは、直ちには変えなければならぬということはないけれども、もう本年度あたりからはぼつぼつ資金調達を民間ベースに切りかえていくということにしなければいかぬ、その点から見て、中小企業方面あるいは農林漁業方面、こういうような方面にもっと財政資金が重点的に流れていくような施策を講ずる頭を出していい年ではないか、こういうようなお話が出たのであります。これは全く私ども同感するところでございました。そういう観点から大蔵大臣にお伺いしたいのでありますけれども、一方に、池田総理以下、あなた方はきわめて強気一点張りの経済成長論を振り回しておるのでありますが、そういうムードの中において、財政資金というものの振り向け先を、従来と変わらないような――中小企業に対する約二百億近い多少の増額は見られますけれども、そういう小手先の数字のごまかしではなしに、根本的に考え直す、その点から見て、基幹産業方面には、むしろ民間ベースで必要な資金を調達するというような方面で、金融政策について転換を考えるべき時期にきておるのではないかと私は思うのでありますが、この点についての大蔵大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
  280. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 お説の通りでございまして、日本の経済再建と産業の復興ということをやらなければならなかったときは、資本の蓄積がなかったために、基幹産業の立て直しについてはどうしても財政資金でこれをやらざるを得なかったというような事情があり、また、一部そういう事情によって開発銀行というようなものができたということにもなっておると思いますが、現在のような状態になってくれば、これはもう転換をしなければ――民間企業というものは民間資金にできるだけ依存させる、そうして国の財政資金というものはできるだけ公共的なものに使用すべきであるという方向転換は、すでに予算編成においては昨年から行なわれて、昨年も開発銀行の資金は少なくなっておりますが、今年もさらに基幹産業の面においても五十億以上の資金量を減らす、そうして開発銀行の地方の地域開発という方面への機能をもっと開発銀行に発揮させるというような構想で今度の財政投融資の計画はできておるわけでございまして、今後はそういう方向に持っていけると思います。電力にしても、電力債の消化が市中で非常に困難だというようなのは去年までの現象でございましたが、ことしになりますと、長期資金の調達ということもだんだん容易になってきた、そういう環境ができてきましたので、来年からは、こういう基幹産業といえども民間資金に依存できるという傾向が特に可能になってくるだろうと考えております。
  281. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 大蔵大臣が原則的に私どもと同じ考え方の上に立って、民間産業の所要資金は民間でできるだけ調達する方向へ向いて進むべきだ、すでに昨年あたりからそういう方面への配慮をされているということをお認めになったのであります。私は、その点に関連して、現在七千億から八千億の資金量が動かされておるといわれる投資信託関係が、はたして今私が申し上げ、また大蔵大臣も賛意を表されておる民間産業の民間による資金調達という方面、そういう意味の産業金融としての役割を果たしておるかどうかということについては、後ほど具体的な事例でお伺いをいたしたいと思うのでございますが、大蔵大臣は、今、特に開銀の関係につきましては、本年度においても、基幹産業への貸し出しは前年度よりも五十億減らした、このように申されるのでありますが、輸出振興の関係におきましては、昨年度よりは本年度は約二百十億の増額になっておるのであります。これは輸出入銀行等への出資というような関係から出てきておるのだと思うのでありますが、輸出入銀行の貸出先の関係を拝見いたしましても、開銀だけを基幹産業の関係というような意味で取り上げるわけにはいかない。多分に輸銀の関係で、輸出振興の名において出ておる関係というものが、私はやはり基幹産業との関連を持っておると思うのでございますが、その点については、大蔵大臣はどのようにお考えになっておりますか。本年度、特にアメリカのドル防衛に対処して、輸出競争が非常に深刻化される予想のもとに、すでに一月、二月の貿易じりは、われわれが心配したように、赤字に転じようというような情勢の中に、輸出振興に力を入れなければならぬという点は、私ども理解されます。しかし、輸銀が貸し出しておる貸出先の関係から見て、こういう方面への財政資金の投入が、直接輸出振興にどれだけの貢献をしておるかということについて、私は後ほど具体的な事例をあげて申し上げますけれども、はなはだ疑問とせざるを得ない面があるわけでございます。この点について、大蔵大臣はどのようにお考えになっておりますか。
  282. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 輸出を伸ばすためには、どうしても輸出金融の円滑化をはからなければなりませんが、特に現在では、プラント輸出というものを通じて安定した市場を確保するということが、輸出政策のうちでも重要な課題になっておるときでございますので、こういう要望に沿うための金融をする以上は、どうしてもプラント輸出という性格から見ましても、金融は大口化してくることはやむを得ませんし、また、金融先も、相当の大企業になってくるということは当然だろうと考えております。それらの資金を、それじゃ民間資金にたよる方向でいったらいいじゃないかということでございましょうが、輸出という性質上、この金融は、やはり国際競争の点もありますので、できるだけ国際水準の金利で金融することが望ましいと思います。そうすると、割高な日本の金利水準から見て、民間資金の導入というものは、コストの問題からいろいろむずかしいことがございますので、私どもは、できるだけこういう資金も民間資金によるべきだとは思いますが、それにはその資金が輸出金融に使えるような環境をまず作っていかなければなりませんし、これができない間は、やはり国の財政資金で見るということも、今のところはやむを得ない段階ではないかと考えております。
  283. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 輸出産業の特殊性は、私どももわからないではございません。しかし、たとえば財政資金を輸銀を通じて出しておる関係で――輸銀の貸し出しの残高の最高は、大蔵大臣御承知のようにアラスカパルプです。これは、私の手元には昨年十一月三十日現在の資料しかございませんけれども、実に百十八億六千八百万円という高額に達しておるのでありまして、このときの一億以上の貸し高の総計が一千百七十九億でありましたが、その一割に当たるものがアラスカパルプに貸し出されております。さらに、最近資料をいただいたところによりますると、これはまだ据置期間で、アラスカパルプは半年決算のようでありますけれども、すでに十五期くらい経過をいたしておるのでありまするが、一銭も返済をされておらない。こういう状況にあるのでありまするが、一体こういうことを、輸出入銀行の業務を監督する大蔵省当局が承知の上でやらせておるのかどうか、この際、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  284. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 アラスカパルプの問題につきましては、昭和三十一年二月十日の、わが国の森林資源事情を考えて化学繊維原料の安定的な供給源を確保するためにアラスカにおけるパルプ事業の推進に努める、そのために輸出入銀行の融資をするというような閣議了解事項がございまして、それに沿って今日までアラスカパルプ会社に対して融資をしたものでございまして、三十一年からずっと現在まで、累積した残額が百十八億六千八百万円になっております。返済期限は、三十八年十二月まで据え置くという条件付の融資でございましたので、一応現在までまだ返済されておらないということでございますが、三十八年十二月以後は逐次返済されることになっております。これは十分政府承知して、閣議了解に基づいた貸し出しであると思います。
  285. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 日本の国内の針葉樹資源がだんだん窮屈になって参っておる。周東農林大臣がお見えになっておりますが、最近における文化の向上に伴う紙パルプあるいは化繊等の関係からくるパルプ需要に対処するために、アラスカの無尽蔵といわれる木材資源を開発するためのこの種の機関が必要だということは、私も否定をいたしません。しかし、私どもとしてどうも納得のいきかねる点は、こういう形でアラスカパルプが輸銀から借り受けましたものが、関係会社に対するいわゆる投資、株式を所有するという形の分は三十二億、これは了解できないことはありません。しかし、問題の、三十五年九月決算期におきまして百四十億七千三百四十八万円という膨大な金額を輸銀から貸し出しを受けて、それに二十五億でありますか、自己資金の関係、その他保証債務が九十一億ございます。こういう関係のものは、一体輸出入銀行は、アラスカパルプまでは内容について監査することも可能だろうと思うのでありますけれども、そこから先の関係会社というものに対しましては、どこまで大蔵省の目なりあるいは輸銀の監査なり、そういうようなものが及ぶか、こういう点になりますると、やはりこの金は国民の血税なんですから、日本の針葉樹資源がだんだん枯渇していくのをカバーする意味で、アラスカの木材資源を活用するために国策としてこういう方針がきめられておるのだというものの、こういう金の転貸というか、そういう関係については、どうも私は国民が納得しないのではないかと思うのでありますが、この関係については、大蔵当局はどういうように把握されておるのか、承りたいと思います。
  286. 石野信一

    ○石野政府委員 ただいまの御質問は、輸銀からアラスカパルプに貸すのは、一応先ほどの閣議了解の趣旨もあるではないか、それが、関係会社にさらに金を回しているのじゃないか、それについて大蔵当局はどういうふうに把握をしておるか、それをどう考えるかという御質問の御趣旨だと思うのでありますけれども関係会社と申しますのは、この輸銀の関係の資金が回っておりますのは、アラスカ・ランバー・アンド・パルプ・カンパニーという、アラスカでの工場を建設、経営いたします会社でございまして、アラスカパルプに投資、金融をいたしますということは、この子会社を向こうに作りまして、その子会社で工場を建設して、そうして向こうで原木の払い下げを受けて、パルプを作って持ってくるという、一連の海外事業の全体の計画でございます。関係会社と申しましても、ただ普通に民間の一般の会社がやっておりますような貸付を、子会社にやるというような趣旨ではございませんで、このアラスカパルプを作って、これに輸銀の金を貸すということの計画そのものが、アラスカパルプという日本の会社が向こうですぐ事業をするのではなくて、その子会社に出資もし、貸付もして、そうしてそれに工場を作らせ、パルプを作らせる、そういう形を通じて全体の計画考える。従って、その計画を初めに考えた上で輸銀が融資をしておるということでございまして、具体的な融資につきましては、大蔵当局が具体的にこまかく干渉するということでなくて、むしろ輸銀にまかせるという態勢をとっておりますけれども、輸出入銀行が金を貸します場合には、そういう意味の一連の計画として考えておるわけでございます。従いまして、輸銀から現地を見に行くような場合にも、そういった子会社の方の事業についても見て参るということでございます。
  287. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そうすると、局長に伺いますが、このアラスカ・ランバー・アンド・パルプ・カンパニー、この子会社にアラスカパルプから貸し付けた金については、どの程度の利息をとっておるのですか。それは無利息ですか。
  288. 石野信一

    ○石野政府委員 七分の利息をとることになっております。
  289. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 これは外国で仕事をやる関係でありますから、今の局長の答弁のように、何かこういう子会社をこしらえて、そこで脱税あるいは脱法行為をやるのとは性質が違うという点なら了解はしますが、同時に、いただいた資料によりますと、この会社は役員がたくさんいるのですね。ずいぶん社外重役もおると思うのですが、このうち、会社からこれらの役員にどの程度の役員報酬が出ているんでしょう。これは委員会全部に配られているのですけれども、無給の人はありますか。
  290. 石野信一

    ○石野政府委員 今の報酬の関係は、輸銀の関係者も来ておられますから調べますが、非常にたくさんの顔ぶれが並んでおりますことは事実でございます。これは、先ほどの大臣のお話にもありましたように、化繊関係の原料を持ってくる、そこで、化繊関係がその原料を買って仕事をするということで全体の計画が動くことになっております関係で、その関係会社と申しますか、そういう意味の、原料関係の会社の社長といったような人がずらりと取締役に並んでおるわけであります。これで合計二十三名というようなことになっておりますけれども、このうちで、今調べましたところでは、有給役員は十一名でございますから、具体的に今私承知いたしておりませんけれども、こういうふうに名前だけ出している人は無給というふうに考えます。
  291. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 社外重役は無報酬であることが原則的な財界の事情も承知いたしておるのでありますけれども、先ほどの大臣の答弁にありましたように、返済金は三十八年までは据え置きだということになり、かつそういうことと見合って、別に決算表ができておるわけではないと思いますけれども、相当の繰り越し損失を持っている関係で、最近は、伐採した木材で処分した関係の売り上げというようなもので――この意味で、まだ内地には木材のままでは持ってこられないのでしょう。そこで、こういうパルプに加工して持ってくるという形になったと思うのですが、その間の事情はどうですか。
  292. 石野信一

    ○石野政府委員 原木の払い下げを受けるということになったわけでございますが、原木のまま持ってくるということは許されないわけでございます。お尋ねの通り、そういう意味で製品を輸入するということに相なっておるわけであります。
  293. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 原木のまま日本には持ってこないのですけれども、現地では原木のまま処分しても差しつかえないのじゃないですか。それでなければ、決算表における営業外利益というようなものが上がってくるのは、ちょっとおかしいのじゃないかと思うのですが、その点は私の勘違いでしょうか。
  294. 石野信一

    ○石野政府委員 製材をいたしまして、パルプとパルプを作る原料を作ります場合に、原木で払い下げを受けまして、すぐパルプの原材料として使う部分と、非常にいい材木で、製材に使える部分があるわけでございます。その部分は、製材としては持ってこられるわけです。
  295. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 私の申し上げ方が十分でなかったかもしれませんが、原木のままで日本へ持ってきたいという考えが、先方との話し合いでいれられなくて、パルプとして加工するということにせざるを得なかったのであります。この関係から見て、創立は、この会社はかなり――昨年の九月で十五期の決算期になっているわけですから、かなり古いわけです。古いわけですけれども、大蔵大臣お認めになるように、三十八年までは返済が据え置きで、まだ返済が開始されない。こういう関係からくれば、現在の段階において、日本のいわゆる輸入バルブについて、できるだけコストの安いものをアラスカで製造して内地へ持ってくるための、その意味から見れば、長期的な投資として長い目で見てもらわなければわからない、こういう点は、私はあなたたちの言い分がわからないではない。しかし、当面の輸出振興の問題には、この関係が役立っているとは私は思わないのです。三十八年度以後に収益を上げて返済をしてくるということが始まれば、そのときには輸出振興、実質的な意味における貿易じりの改善に一つの貢献をするんだということは認められますけれども、私はそういう点から見て、この会社のそういった内容というようなものもあまり国民は知りませんから、そういう点から見れば、輸出入銀行の一年間の、一億以上の大口貸し出しの一割にも当たるものをこの会社が受けている。私はほかの質問を申し上げたいと思いまするから、輸銀関係についてはそれ以上伺いませんけれども、たとえばアラビア石油の関係についても、約五十億近い金が出ておるようであります。この関係でも、きのうある私の、経済界におる友人が参りまして、やはり山下さんなんというものはけっこうなもんで、パリで遊んでおる。そういう資金、事業関係については、必ずしも一部株式新聞に書き立てるような、そういう内容のものではないということもわれわれの耳に入ってくるのであります。私はそういった観点から見まして、一番最初にお伺いをしましたように、言うてみれば、民間産業です、たとえばパルプ会社、アラスカパルプにすれば、日本の木材資源というものに深い関係もありましょうし、アラビア石油も、日本には原油が乏しいのでありまするから、私はこの事業が成功することを国民の一人として祈るにやぶさかではございません。しかし、やはりこういうものに、野放図ということではなくて、輸銀が相当精細な審査の上に貸し出しをやっておるということでありますけれども、アラビア石油には相当保守党系の政治家とのつながりを云々せられるような人たちが出てきているだけに、何千億、何兆という予算が組まれるけれども、それがどういうように扱われているのだろうかと、予算書を見る国民はひとしく疑問に思うのではないかと思う。その点から輸銀を一つの実例として私は伺ったわけでありまするが、たとえば開銀の関係については、具体的にはもう伺いませんけれども、確かに地方開発の資金を出されております。三十五年度は、九州、四国和歌山開発等の関係で七十億、それに百億ふえて百七十億になる。ところが、私の郷里もこの地方開発資金ワクで出てきておりますけれども、本社が東京にある会社が開銀の本社へ申し込んだら、これは一つ地方ワクでやってくれという。ある大きな観光バスの事業会社に対して一億五千万円。開銀の融資先のなには資本金一千万円以上ということになっているから、あなたたちは、地方開発という関係から見たらやはり――資本金一千万円の会社というものは、たとえば私の和歌山県を例にとりましても、数えるほどしかございません。だから、せっかく開銀の中へ地方開発資金というものを百七十億本年度は入れていただいたわけですけれども、開銀の貸付対象になる会社が、やはり資本金一千万円以上でなければならぬということになると、ほんとうは地方開発促進法に基づいてわれわれが伸ばしたい郷土産業というものは、開銀を通じての国家資金を受け入れる恩典にあずかれないんですね。観光ホテルを建てるために三億申し込んでおるということも聞きます。そういうことになると、ほんとうはやはり資本金一千万円以内で、少なくとも、中間をとっても五百万円程度のところにまでは、こうした地方開発の資金は貸し出されなければ、中小企業中心とする地方業産の振興ということに役立たないと思うのでありますが、この点は大蔵大臣いかがでしょうか。開銀の関係で、地方開発関係の貸し出しの対象は、特に地方開発に関する金は五百万円くらいまで下げるということ、それから、地方開発の資金ワクの中では、本社が東京にあって工場はそれぞれ現地にありましても、本社で調達できるというようなのが地方資金のワクなり百七十億の中へ割り込むというようなことは、遠慮してもらうべきではないかと私は思うのですが、この点について、開銀でそれができないということになりますと、たとえば商工組合中央金庫の関係であるとか、あるいは中小企業金融公庫の関係でちょうど開銀の中に地方開発資金のワクを設けたような考え方を、これは別に法律がなくても、私は運用でもできることではないかと思うのですが、必要あれば法律を変えてでもやっていただきたいというのが、地方の、特に低開発地域の希望だと思うのです。この点についてのお考えを伺いたいと思うのです。
  296. 石野信一

    ○石野政府委員 ちょっと技術的なことがございますので、私からお答えを申し上げますが、資本金一千万円以上でなければ貸さないという制限はございませんで、ただ、どの程度の金が要るかという意味で、開発銀行がアンケートをとりましたときに、一応一千万円以上の会社に質問書を出しておるということはございますが、一千万円以上の資本金でなければ貸さないということはないわけでございます。ただ、貸付金額が一千万円というようなことで、あるいは具体的な例がおありかどうか、これは具体的なお話でしたらまた伺わせていただきたいのでございますが、そういうことがございましたら、中小企業金融公庫との関係の調整の問題について、一千万円以下の方は、中小企業金融公庫の方が貸してやるというような関係があったかとは思いますが、そういうことでございます。
  297. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 その点は私もよく調べてみますけれども、開銀の地方開発資金のワクの関係は、やはり貸付対象が資本金一千万円以上でなければだめだ、従って、貸付額は少なくとも三千万円から以上だ、こういうようなこと、これは実際開銀がそういう措置をとっている。平田君という、私も知っているあなたたちの先輩がおるわけなんですから、聞いてもいいと思うのですけれども、そういう形で、少なくとも私どもの和歌山県の県庁などは、この関係の資金の申し込みというようなものにそういう線を引いておる、これは事実なんです。今銀行局長が言われたように、開銀の貸付対象が、資本金一千万円以上という限定はないのだということがはっきりすれば、その面からもこの資金の利用方面が広がって参りますし、また、貸付金額が少額のものでいいという場合には、局長もおっしゃられたように、商工中金とか中小企業金融公庫というような機関に相談する。しかし、その場合に、特に地方開発関係で、開銀にこのワクをこしらえたと同じような考え方の方針だけは意を通してもらわないと、なかなかそういう希望に沿う態勢は出てこないと思うのです。この点は、一つそういう処置をとっていただきたいことをお願いしたいのです。  そこで、これらのことに関連いたしますと、実はまだたくさん伺いたいことがあるのでありますが、特に最初にも申し上げましたように、今民間で、マネー・ビルと申しますか、そういう一つの旋風を巻き起こしている投資信託関係について、質問に入りたいと思うのであります。  その前に、もう一つだけ。これは大蔵省の直接の関係ではございませんが、産投から五億出資をいたします海外移住振興会社があります。大蔵省も当然監督の立場に立たなければならぬと思うのです。これは外務省の所管で、実は分科会が始まって二日目に第二分科会で私は伺ったのですが、そのときは資料が出てこなかったのです。それで、また業務内容に立ち入ると思うので伺わなかったのでありますが、この海外移住振興会社は、ここ二、三年は、最低五億から、多いときには十億くらい翌年度へ資金を繰り越しておるのです。従って、私は、たまたま昨年の決算期における、そういう繰越金がどういうところへ預けられているかということの資料をもらったところ、実にこの会社の所在地の新橋付近のほとんど全部の市中銀行に、一千五百万円から最高三千五百万円くらいまで金を預けております。ことに不可解なのは、東京短資株式会社という会社に、ちょうど三十五年三月三十一日現在で四億六千万円という預け入れをやっておるのです。これは移住会社として、移住地の開拓あるいは移民に対する費用の貸付等の関係を行なうのですけれども、どうも国内で何か金利かせぎをする、その金利も単純な形ではないのでありまして、損益計算書を見ると、貸付金の金利よりも、いわゆる受け取り雑利息というのが、多いときにはその倍額くらいあるのです。これも私は財政投融資の中に入る問題だと思うのです。内地で移民会社が仕事をやっておるわけではない。東京短資という会社は、何か公的な金融機関なんですか。そういうものに、昨年の決算期に四億六千万円、二月二十日現在で六千万円という金を預けています。こういうことを大蔵省が見のがしながら、ことしも外務省で計画を立てて、きたからということで、産投から五億これに出資するのですけれども、私は、こんなことを大蔵省が見のがしていたのでは一体どうなることかと心配するのですが、こういう点についてお調べになったことがありますか。
  298. 西原直廉

    ○西原政府委員 ただいまのところ、私ども、その点をできるだけ注意はいたしたのであります。お話のように、海外移住振興会社は、事業計画としては相当のものを持っておるわけでありますが、実際上の仕事がなかなか進捗いたしませんために、資金として現金は要らない。三十五年度も、当初実際の見込みといたしましては十億円出資をする予定になっておりますけれども、進行いたしませんので、五億だけ出資をいたしまして、五億は出資を取りやめるわけであります。そうして、その分を今度三十六年度にあらためて出資をする、そういう意味からいきますと、実際上三千六年度は新規に出すわけではない、三十五年度の分が残っておる、こういうことになるわけであります。
  299. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 その点も、実は私は第二分科会でやってわかっております。三十五年度から六年度へ繰り越しする資金も七億以上になるわけです。そこへ持って参りまして、産投から出る五億で、大まかな数字で十二億何がし、それと貸付金の回収というようなものが原資となって事業が進められる。相手のある、外国でやる仕事の関係もありますから、計画通りいかないことはわかります。しかし、くどくどしくあなたたちには申しませんけれども、新橋付近の銀行の支店にそういう金が預けてある。これはまた、どういう縁故でそういうところに預けたかということを調べてみる必要があると思うのです。こういう関係では、国民の税金を扱う大蔵当局として、一分注意をしてもらわなければとんでもないことになる。その点だけ申し上げまして、あと証券関係の問題の質問に入りたいと思います。  過日、本委員会の一般質問で、同僚横山君からもこの点についての質問があったわけでありますが、先ほども申し上げましたように、最近、投資信託ブームで、特に一月における公社債の信託などは、短時日の間に数十億の資金が調達されるということで、証券会社そのものがびっくりするような状況にあります。その関係から、大手の銀行は表面だって悲鳴をあげてはいませんけれども、地方銀行筋は、預金がすっかりそういう方面へ流れていくということで大蔵大臣にも陳情をいたしておるようでありますが、これに関連をいたしまして、最近、投資信託の宣伝が非常に誇大であるということがいわれるし、主税局長なり国税庁からお見えになっておれば伺いたいのでありますけれども、その宣伝広告の中には、公然と脱税を勧奨するようなものが見受けられるのであります。この点について、大蔵省としては、誇大広告に対するどういう規制たり、あるいは特に問題は、やはり二兆円という予算の執行の上から見ても、公然と脱税を勧奨するような宣伝は、これは大蔵省として、証券行政という見地だけでなくて、私は考えなければならぬ問題があると思うのでありますが、これについてはどういう処置をとられておるか、伺いたいと思うのであります。
  300. 西原直廉

    ○西原政府委員 ただいま証券業者が、一つは相当派手に広告宣伝をしておる、また、脱税を督励と申しますか、そういうような意味の宣伝もあるのではないかというお話もございました。証券業者の広告宣伝の規模とか内容が過当にわたることのないようにということにつきましては、私どもといたしましても、そういうふうに指導監督に留意して参ったのであります。昨年の五月、特に広告内容について脱税行為を示唆する、あるいは税法について誤解を生ぜしめるような記述が行なわれるようなことがございました。そこで、全証券業者にそういうことについて注意を喚起いたしまして、その後広告宣伝費の支出なんかにつきましても、また、手数料収入を大体五%以内というふうに指導いたしておりまして、こういうことについては、さらに十分注意の上に指導監督はいたしていく考えでおります。
  301. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 脱税関係の点については、国税庁なり主税局としてどういうように見ておられるか、お伺いをしたいと思います。
  302. 白石正雄

    ○白石説明員 証券会社関係につきまして、脱税を示唆、教唆するような事例がある、そういう誇大宣伝につきまして、どのように国税庁当局は行なっておるかという御質問でございますが、ただいま理財局長からお答え申し上げましたように、理財局関係から適宜指導監督をしていただきますと同時に、国税庁当局といたしましても、そのような関係会社につきましては、警告を発しておるという次第でございます。先日も、一証券会社が、やはり脱税の相談に応ずるような趣の新聞広告をしておることを承知いたしましたので、証券会社の担当者を出頭させまして警告をいたしましたところ、さっそく会社はその非をさとりまして、自後そのような広告を自粛するということをいたしております。
  303. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 昨年の五月の十三日ですか、理財局長名で通達が出ておることも私は承知をいたしております。これには、「業況の活発化に伴い、最近、証券業者のうちには、広告宣伝の規模及び内容が過当にわたるものがあると認められる。証券業者の投資勧誘を適正にする見地から、顧客の健全な投資態度をそこなうような広告宣伝を行なわないこと及び証券業者の収支の健全化を期するためその広告宣伝費の支出の節減を図ることについては、すでにしばしば通達」云々ということで、五%にきめられて、そういう指導をやっておるということであります。現在、こういう投資信託関係で出しておる広告宣伝費はどのくらいになりましょうか、大蔵省調べられたことがありますか。
  304. 西原直廉

    ○西原政府委員 現在、証券会社では、投資信託関係だけの広告宣伝費というふうにして区分経理をいたしておりませんので、その関係で、どのくらい出ておりますか、ちょっと私どもにはわからないわけであります。
  305. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それでは、一応四社の、いわゆる四大証券の関係の宣伝費は幾らになりましょうか。
  306. 西原直廉

    ○西原政府委員 いわゆる四社の広告宣伝費の総額は、三十四年九月期で二十六億円、それから三十五年九月期で三十億円であります。
  307. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 これが、先ほど西原局長の、言われた、大体募集費の五%程度という基準に当てはまるのでしょうか。
  308. 西原直廉

    ○西原政府委員 先ほど申し上げましたように、五%の規制は、期の途中でやりましたものですから、昨年の期の総額といたしましては、五%を少し上回る数字になるわけであります。
  309. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 いわゆる四大証券の関係だけで、今お述べになりましたように、三十五年九月期で三十億八千四百七十六万円という多額の宣伝費が使われておるのです。これは国税庁、御存じですか。この宣伝費については、広告会社等との関係から、一割五分の戻しというものが公然の秘密になっております。こういうような、割五分の戻しというものが、四大証券の関係でどういう取り扱いになっておるのか、税務当局から伺いたいと思います。
  310. 白石正雄

    ○白石説明員 交際費につきましては、租税特別措置法に特別の規定がございまして、一定の限度を越えたものにつきましては、これを否認することになっておりますので、そのような限度超過分につきましては課税をいたしております。
  311. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 今一番利殖の先端を歩んでいるという投資信託の関係につきましても、直税部長が述べられたように、租税特別措置法というものが、これはある意味から見れば、脱税の援護的な役割を果たしているということを、あなたは率直に認めたようなものだと思います。この一割五分の戻しというものは、三十億といたしましても、割五分で四億五千万円ですよ。従って、この多額のものが、これは戻しだからといって、もちろん会社の経理は通さないでしょう。そういうようなものが証券業界と政界との――その意味で野党なんかには関係ありません。時の政府と証券業界とのつながりが、金の面でつながっていく一つの原資がこの宣伝費の一割五分の戻しだということも、これは証券業界で言われておるのであります。私は、後ほどまた税金の問題については伺いますけれども、これはただでは――しかもその点については、直税部長は先ほどなにしましたが、これは二月二十日号の週刊公論の「サラリーマンの合法的脱税のすすめ」、これに対しましては、これは二十一日付の新聞でありますけれども、こういう脱税奨励は困るということで、国税庁がこの日の週刊誌や証券会社の印刷物に警告を出したという記事を私は持っております。しかし、もし中小企業者等がいろいろ苦しいやりくりの中から脱税でも行なおうものなら、若干のつけ落としでもしようものなら、税務当局、あなたたちの末端が、どういうような形で調査をやったり何かをしておるか。そして、こういう大きなところが抜けているじゃないですか。国税当局の重ねての答弁を求めます。
  312. 白石正雄

    ○白石説明員 先ほどの答弁は、私の思い違いで、誤りでございましたので訂正させていただきます。広告宣伝費につきましては、一般的には経費として落ちるわけでございます。私、交際費と思い違いいたしまして答弁いたしましたので、訂正させていただきます。  なお、リベートにつきましては、これは受け取った方につきまして雑収入として課税することになっております。なお、そのような関係につきまして、いろいろ漏れておるものがないかというお話でございまするが、私どもといたしましては、それらの課税漏れがないように、極力努力いたしましてやっておる次第でございます。
  313. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 この点につきましては、税務当局として正常なる方向へ持っていくためにも、やはり追及すべきところは追及してもらわなければならぬと思うのです。  なお伺いたい点がありますが、そのくらいにいたしまして、次に、投資信託の配当金に対する課税でございますが、五千円以上の分については一〇%ですか、源泉徴収でいたしますけれども、五千円に満たない部分に対する申告は、どういうようになっておるのでしょう。もちろん、この五千円に満たない部分は総合課税として残るだろうと思うのでありますが、その点はどういうように見ておられますか。
  314. 白石正雄

    ○白石説明員 お答えいたします。  源泉徴収につきましては、すべてについて源泉徴収いたしております。総合課税につきましては、これは申告に基づいて、申告納税をしていただくということになっておりまするので、納税者の皆様方の申告に待っております。資料の調査の結果、申告に誤りがありまする場合におきましては、税務署の方で調査をいたしまして、更正決定をするという手続に相なっております。
  315. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 いわゆる支払い調書不提出分ですね。その関係は申告に待たなければいかぬのですけれども、どの程度にまじめに申告しておると見られていますか。
  316. 白石正雄

    ○白石説明員 証券投資信託につきましては、無記名のものでございますので、従いまして、これにつきましては所得税法に規定がございまして、収益の分配をする場合におきまして、住所、氏名その他を告知しなければならない、告知を受けた後におきまして上支払者は収益の分配を支払い得るということに相なっております。従いまして、一応その告知が適正に行なわれますれば、税務当局といたしまして、これに基づいて課税を行なうということに相なるわけでございます。ただ、この点につきましては、率直に申し上げまして、相当架空の告知がなされているというのが現状でございます。従いまして、私どもといたしましては、真実の告知を確保するために、証券会社の協力を願いまして、告知書につきまして証券の記号、番号を記入していただく、こういうことにいたしまして、そうして其実の告知をしていただく、同時にまた、それが誤りである場合におきましては調査の手がかりとする、さように証券会社の方に協力を願っておりますので、いずれ今後におきましては真実の告知がなされるものと考えておる次第であります。
  317. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういう関係で、投資信託に入っているというか、この受益者であるということがはっきりした場合、投資信託に入ったその元本に対する課税はどういうようにお考えになっておるでしょうか。たとえば個人が家を建てるとか、あるいは家を買うとかいうような具体的な場合には、これはすぐ所轄の税務署は見のがしなくやってくるわけなんですが、一体配当所得というものがあるところには、その元本というものが当然なければならないわけなんです。その元本がどうして取得されたかということについてはこれはやはり税務当局として、どこまでそれを捕捉するかということについては、こうした形でいわゆる国民の蓄積というものを監視しなければならぬのでありますから、根こそぎそれを課税の対象にするということは事実上不可能であるし、また、考えなければならぬ問題があると思うのでありますけれども、現在すでに投資信託方面で動員せられておる資金は七千五百億から八千億だ、その意味で金融を扱う銀行方面が恐慌を来たすような発展ぶりの場合に、一体どういうように大蔵省としてはこの元本について見ておられるのですか。
  318. 白石正雄

    ○白石説明員 その元本がどのような所得源から生じてきたか、資金の出所がどのようなものであるかという御質問だろうと思うわけでございますが、率直に申し上げまして、なかなかこれはむずかしい問題であろうかと思います。家を建てたとか、そのほかいろいろ資金がどのような源泉から出てきたかを一応考えて、資金の形態と申しますか、財産の形態と申しますか、そういったものが現われた場合におきましては、それぞれ私どもといたしまして調査をすることにはいたしておる次第でございますが、率直に申しまして、その調査が満足なものに達しておるかどうかということにつきましては、疑いがあるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、調査の実情といたしまして、できる限り努力をいたしておるという次第でございます。投資信託関係につきまして、そういった元本関係の調査の結果、どのような所得の調査が出てきたかということにつきましては、実のところ、そういう種類の資料を持っておりませんし、また、そういう調査をいたしておりませんので、具体的なお答えはできないという状況であります。
  319. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 三十五年度は税の自然増収が非常に多額に上りまして、この間、四百四十億の第二補正が、財政法違反だといわれながら国会を通ってしまったのです。これが通ると、また六百億ぐらいまだ税金がとれるということもいわれます。そういう点も、やはり経済の高度成長というところから魅力でしょうけれども、やはり投資信託に八千億近い資金が動いておるという点ですね。この点に対して、やはり徴税当局、大蔵省当局が目を向けていかなければ、現実にはこれは投機的なもので、最近における公社債信託等の場合は、社債の発行等の条件を有利にするというような効能も認めまするけれども、こういう方面に動員された資金というものが、必ずしも健全なる産業金融として産業発展のために回転していくものだとは、私は現在の段階では見られないのでありますが、そういう点から見て、この投資信託に――もちろん、配当の面から押えていくということも必要でありますけれども、元本について、これはどこから出るかということについての疑問をあなたたちが持たないというのは、どうも理解できないのでありますが、その点はいかがですか。
  320. 白石正雄

    ○白石説明員 投資信託に流れる資金の源泉がどこにあるかということにつきましては、課税面から、もちろん調査すべきものだと私ども考えるわけでありますが、まあ、一般的に申しますれば、零細な資金も相当集まっておるものだと考えるわけでありまして、これは各種所得者の、いわば課税を受けた所得が相当流れておるものと一応考えておるわけであります。ただ、中におきまして、相当多額の資金が、それほどの所得のないと考えられるようなところにありました場合におきましては、それは一応課税の面から調査をいたしまして、はたしてそういった資金が課税を受けて出てきているものかどうかという調査をなすべきものだと考えておりまして、そのような面につきましては、それぞれ資料の収集なりその他につきまして極力努力をいたしておる次第でございます。
  321. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 まだ税金の関係あとにも出てくるわけでありますが、一応そのくらいにいたしまして、証券会社と投資信託会社とのいわゆる業務の分離の問題、これは、まあ一種の民法にいう双方代理だというような意見も出まして三十四年でしたか、分離が行なわれたのでありますが、この分離後の委託会社と販売会社の経営によって、従来の兼営時代の弊害ははたして除去せられたとお考えですか。その点についての当局の御見解を伺いたいと思います。
  322. 西原直廉

    ○西原政府委員 ただいまお話がございましたように、投資信託の委託と申しますか、投資信託事務と証券業の本業との関係、いろいろ問題がございます。それで昨年の四月に、初めて四大証券について投資信託会社ができた。なお、このほか、中くらいの証券会社におきましても、投資信託業務を兼営いたしておりますけれども、私どもの方針といたしましては、なるべく早く投信事務は分離してほしいということを言っております。昨年の四月に投信分離ができましたこの四大証券について、やはりいろいろお話がございましたような点で改善されてきている面が徐々に出て参っておると思いますけれども、御指摘のような点は、たとえば――株主が一体どうであるとか、役員がどうであるとかいうような点が相当あると思います。これは、もう全部分離し、別の人がすぐやるというのが将来の理想でございますけれども、当初からそういうことになりましても、いろいろな経験とかなんとかいう点で不都合もございますので、大体公正取引委員会の方とも相談いたしまして、分離後五年以内に完全な分離という形に持っていくということにしているわけでございます。
  323. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 これは後ほども触れますけれども、いわゆる内部でのころがし、あるいはバイカイというような関係で弊害が出てくると私は思う。その意味で、やはりこれは厳密に分離すべきだと思うのです。ところが、分離をしても、現在大蔵省なり、公正取引委員会が認めておるように、委託会社の全株を持つことを認めたのでは、私は、この分離をしなければならぬという弊害を除去することにはならないと思います。あなたたちは、そういう意味で委託会社の株式が特定の事業会社や個人に支配されてはいけないと言いながら、その親会社というか、これに全株を持つことを認めておるのでは、私は、弊害は少しも除去されないと思いますが、その点についてはいかがですか。
  324. 西原直廉

    ○西原政府委員 ただいま御質問がございましたような点も含めまして、五年以内にそういう株式なんかの分散をさせるということにしておるわけであります。
  325. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 五年以内ということでありますけれども、この証券協会から出た「目論見書に関する通ちょう及び示達に基づく広告宣伝に関する協会の自主規制基準」の中の三番目に、「リスクキャピタルであって、元本保証のないことについて次の事項を必らず記載するものとする。」ということで(イ)(ロ)(ハ)と出ておる。協会自体も通達を出しておりますけれども、やはり私は相当危険な要素を含んでおると思います。そういう意味で、これをこしらえてから五年以内というような、気の長い話では私はいけないと思います。原則として、委託会社の株式を特定の事業会社あるいは個人に独占させてはいけないという考え方から見れば、一〇〇%の委託会社の株式所有を認めるということは、五年間にそれを分散させるというような、ゆるいことではなくて、もっと直接的な処置を講じなければいけないと思います。その点はいかがでしょうか。
  326. 西原直廉

    ○西原政府委員 御趣旨は非常にごもっともであります。私どもとしては、五年後にというよりは、もし、いろいろな支障がなければ、できるだけ早く分散をさせるように努力いたしたい、そういうふうに考えております。
  327. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 証券会社、すなわち、親会社の圧力が、委託会社、販売会社と分離しても、やはり委託会社に及んでいくので、どうも委託会社が自主的に親会社の参謀本部の指揮、指導を離れて株式の運用に当たっておるというふうには受け取れないので、この点については、特に一つ考えをいただきたいと思うのであります。  さらに、最近、いわゆる証券会社による推奨株というのを新聞等でわれわれは見るわけですが、この証券会社は、山一にいたしましても、野村にしても、各社みな、とにかくやっておるわけなんですが、これをお客様に持たせるという点について無理が起こる。私もそういう場面にぶつかったこともありますし、そういうことについてのいろいろな陳情等を伺うのでありますが、この点は、ある意味から見れば、推奨株というのは、案外オーブンからはずした分、こういうものを結局はめ込んだのだ、こういうことも言われるのでありますが、この点については、理財局としては、推奨株という制度というか、各証券会社がやっていることについてはどういうような観察を行なっておるのでしょうか。
  328. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 ただいまの点、お答え申し上げます。  推奨株の販売方式というのが、かなりはでに行なわれまして問題になりましたことは一、二年前にございましたが、その際に行なわれましたことは、証券会社があらかじめ大量に株を仕入れておきまして、これをお客さんに多少時価よりも低い値段で売るというようなことが行なわれたようでございます。そういう場合には、おそらくバイカイに適当でないバイカイが行なわれることにもなりますので、そういう意味の推奨販売方式はやめるようにということをわれわれといたしましては指導をいたして参りました。バイカイ等につきましても、一昨年の暮れになりますか、バイカイの規制の強化をいたしまして、バイカイは必ず直近の値段でやらなけばならぬ、あるいは立ち会い終了後のバイカイのつけ出しは認めないということで、バイカイの規制の強化をして参ったわけでございます。ただ、最近、推奨と申しますか、注目と申しますか、証券会社が、この株はいい株ですというようなことを言っているものがあると思うのです。これは観念的に申しますと、投資顧問の面と申しますか、そういう面で、ある程度のアドバイスをするということはやっておると思うのでありますが、いわゆる従来の推奨株販売方式というものはなくなっておるように考えております。
  329. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 そういうように言われますけれども、私の手元にあるのは野村さんの関係で、業者の推奨株として、これは先月でありますけれども、日製鋼、同和鉱、久保田、山一さんが協和醗酵、冷蔵、窒素、日重工、日興さんが日水と小野田、こういうような形で推奨株というものが堂々と新聞に出ておる。そうして、それがやはり証券会社のいわゆる販売員というか、外交というものを通じてお客さんに勧める。今、吉岡財務官が言われたように、一昨年の暮れの暴落のときにはだいぶ問題になりましたけれども、ちょっとまたほとぼりがさめると、これが新聞に業者の推奨株として出るから、最近、やはりマネービルでどこそこの奥さんがなにしているということになると、あまり経済の知識の乏しい婦人連も、やはり四大証券などが推奨株だといって新聞にも堂々と出るものなら、という形で飛びついていく結果が、案外夫婦げんかの種になるというような事実もこれはあるわけなんですから、私は、そう財務官が言われるように楽観はできないと思うのです。  それから、バイカイの点については、私は、ある程度やむを得ないことだと思うのです。しかし、これを悪用していけば、正常な株価を形成することを阻害すると私は思うのです。具体的にそういう悪例になっているかどうかということについては、私もまだ調べておりませんけれども、たとえば、二月十一日に山一の第二オープンの信託が設立されるときに、御承知のように四千万株のバイカイが振られているのですね。大阪では一千万株ですか、四百六十六銘柄について。一体こういうようなことが――それは、まあ山一さんの実力をもってすれば可能ではないとは私は思いません。しかしながら、やはり相当高い価格で設定されたオープンを、七分ですかの配当金をするということになると、相当市場で株価をつり上げるための操作をやらなければならぬことになってくると私は思うのですが、この点については、やはりバイカイはやむを得ないという見解を、こういうような場合でも依然として持たれるのですか。
  330. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お尋ねのバイカイの問題に関連してお答え申し上げますが、ただいま御質問がありました、山一が最近第二オープンを設定いたしました際に、相当多量のバイカイをしたことは事実だと思うのであります。大きな投信を設定いたします場合には、相当多量の株式を組み入れることになると思うのでございますが、そういう場合に、その他の信託財産と申しますか、その他のユニットと申しますか、そういうユニットで持っております相当の株等を、バイカイによって新しい投信の中に組み入れるということが行なわれておるわけであります。そういう場合に、相当大量の売買でございますので、売り買い双方別々に、市場に大きく買いに出、あるいは売るというようなことをいたしますと、かえって不自然な株価の変動を招きますので、そういう意味では、今の市場価格で、正式に市場を通じてバイカイへ組み入れるということはやむを得ないことだというふうに考えているわけでございます。
  331. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 実は、この前大蔵委員会でありましたか、理財局長が、春日一幸君の投信による株価の安定の問題の質問に対して、こうお答えになっていますね。「過去大体四十七、八カ月でございますか、その間における統計から見ますと、株価の動きと逆に動いている、」この点は、今、財務官が言われた点と私は共通するように思うのであります。「つまり投信が逆に動いたという方面がたしか二十七回くらいかと思うのであります。そういう面からいきますと、過去の実績からいけば、むしろ安定的に動いているのじゃないか」こういう答弁をあなたはされているのであります。それに対しても、春日君は、それは事実と違う、こう言われておるのでありますが、問題は、たとえば、これは野村の第一回オープンです。東洋工業以下これは十六銘柄ですけれども、この関係で、やはり一カ月で十四億円の値上がりになっているのですね。最高三井不動産の値上がり分が二百六十二円ですか、それを最高にして軒並み上がって、逆に下がっておる関係は、武田薬品なりあるいはあと一社ぐらいだけで、ほとんど上がってきておるのです。最近の利回りが、これは春日君も指摘していますけれども、三分だといわれているときに、投信の関係で七分配当ができるという点は、数字のマジックだけでは現実には配当金は払えないので、そこにやはりいわゆるバイカイあるいはころがし――ユニットからユニットへ、あるいはユニットからオープンへ、またユニットから証券会社の手持ちへと、こういう形のころがしが行なわれている結果が、最近やはり投資信託に伴うところの株高というものに向いて推移してきているのではないか。これは現実の推移がそういうようになっていると見て、それを正常な方向へ持っていくということの努力が、今一番最初に私が申し上げた点で、こういう投資信託方面へ流れてくる資金を、健全な民間産業資金の方向へ持っていくために、あなたたちがとるべき処置ではないかと私は思うのでありますが、その点について重ねて御見解を伺いたいと思います。
  332. 西原直廉

    ○西原政府委員 先日大蔵委員会で御答弁申し上げましたのは、お話しの通りでございます。投資信託の組み入れ株式数の上場株式数に対する割合は、三十五年十二月末で八・六%、これ以外に、いわゆる法人関係とか何かで、金融機関が約二割ぐらい、金融機関以外の法人がやはり約二割ぐらい、法人関係だけで大体五割を持っておる。そういうような関係から見ますと、投資信託は三十五年十二月までは八・六%であります。この投資信託の組み入れ株式の取引売買高に対する比率は、三十五年を通じまして五・二%、特に組み入れ株式のいわゆる買い越し高で見ますと、一・五%ぐらいでございます。そういうのが投資信託の株式市場における売買取引における比重でございます。そういう点から見ますと、それほど大きいものではないのではなかろうかということも、この前申し上げたわけであります。今、ダウとの関係のことを申し上げたわけでございますが、三十二年二月から三十五年十二月までの四十七カ月間のうち、ダウと投資信託の純買付率が異なる方向に動いた月が二十七回ございます。そういうようなことから、投資信託が株式市場における株の動向に対してどういうような作用をなしているかということを、どう判断するかということでございますが、こういうような点から考えれば、必ずしも株価の激化要因になっているというわけではないのではなかろうか、こういうふうに考えているわけであります。もちろん、今お話しのように、大蔵省といたしましては、投資信託が、株式市場における機関投資家として公正な株価形成に寄与するように、十分指導と申しますか、そういう点を特に重要視していきたいというふうには考えておるわけであります。
  333. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 局長は、春日君に対する答弁を繰り返して述べられているのですけれども、たとえば、先ほど私が例にとりました、二月十一日の山一の第二オープンに組み入れた銘柄のうちでも、大隈鉄工を一つ例にとりますと、これが三百五十円、逆算して二十五倍の値上がりあとに、百五十万株組み入れたのですね。そうすると、利回りは一体幾らになるのですか。二分一厘余りにしかならない。それでいて、やはりこの関係で七分配当が可能だということは、どこからそういうマジック的な数字が出るか、私の不勉強かもしれませんけれども、私はやはり理解できないのです。  それから、これもやはり大蔵委員会の速記録で拝見いたしますと、バイカイについて吉岡さんはこういうように弁解されています。「そこである程度証券会社の中で両方同量のものがまとまりますれば、それに対して、市場の価格を見ながら、証券会社が中に立ってバイカイという方式をとるというのが一つの理由であり、」こういうようにあなたの方では言われているのです。私はこれは大へんなことじゃないかと思うのです。これは清算取引ではありませんし、同一のお店の中で相落ちのような、こういうものを理財局が認めるということになるかと思うのですが、その点は、やはりバイカイについては、大蔵委員会でお答えになったような見解を依然として西原さんはお持ちなんですか。
  334. 西原直廉

    ○西原政府委員 配当の点でございますが、昭和三十五年中における収益分配金の内訳を申し上げますと、平均いたしまして配当金から五八%、利息の収入のうちから二六%、売買益から一五%、こういうものからこの投信の収益分配をいたしているわけでございます。今後どういうふうになって参りますか、これは今後の趨勢によることと思うのでありますが、第一期決算では、売買益が二割あるいは三割を占めているのでありまして、ただいまのお話の点は、そういうような点から御判断と申しますか、御了承願えるんじゃなかろうかというふうに思うわけであります。
  335. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 バイカイの点でございますが、御承知のように、大証券会社におきましては、非常にたくさんのお客さんから注文が参るわけでございますが、それを一々場につないでおりましては、非常に大へんなことになるわけでございます。そういう意味で、ある程度同じ売り買いの注文がまとまりました場合には、両方を市場を通じましてバイカイを振るわけでございます。もちろん、市場外で勝手な値段でやるわけではありません。必ず市場に出しまして、直近の値段でバイカイを振るわけでございます。
  336. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それは一つ弁解で、成り行き注文ということの場合は別ですけれども、やっぱりさし値がある以上、さし値の売り注文というものを市場に出し、さし値の買い注文を出して、刻々に出会いで成立さしていくということは、私は考えられることだと思うのです。しかし、百五十万株というような大量なものになると、これは一カ月で四千万株、これをやはりバイカイで振るというような結果になると私は思うのです。これは実際の市場の実勢から見て、はたしてそれで認められますか、どうですか。
  337. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 お尋ねのように、さし値の注文に対しては、その値段に合ったものしか対等しないわけでございますが、一般的にそれが非常に大きな量になるということは、お客さんがある程度成り行き注文を出しておる結果かと思います。
  338. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 その点は水かけ論になりそうですからいずれまた大蔵委員会等でも議論をすることにいたします。  次に、日証金のことについて伺いたいのですが、これは日銀と大蔵省をバックにしたペテン会社だといって、例の森脇さんの「ザ・クエスチョン」ですか、リーフレットも出ておるようでありますが、だいぶ時間も経過しましたので、いずれ別の機会に聞くことにして、あと一、二点伺いますが、最近例の公開株といっている増資新株の売り出しですね。この関係の問題については、当局はどういうように見ておられるのですか。これは私は実質上の一種の贈与じゃないかと思うのですが、そういうことになると、これは勢い課税の対象にもなろうかと思うのですけれども……。
  339. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 今のお話、あるいは十分受け取りかねたかと思うのでありますが、増資新株について、どういう御質問でございましょうか。
  340. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 実際はいわゆるプレミアムがついておるのを、その前に特定の者に証券会社が出しているという関係ですよ。私は、そういうようなものが政界筋にも相当出ているということを聞いておるのですが、その点については御存じないですか。
  341. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 これは、増資新株のある一部のものを、証券会社が、特定の縁故者と申しますか、そういう者になにすることがあると思いますが、いろいろな論議があり、最近ある会社がやりましたように、一般に売り出すような場合もあり、その辺は個々の会社の事情によってやっておるのだと思います。
  342. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 それは、実は公開するということは宣伝はしますけれども、実際は公開はしないで、特定の者のところへいくというのは、これは一種の贈与だ。明らかに五十円なら五十円、七十円なら七十円というものがついていることを目の前にして、特定の者に――公開ということで殺到するのです。ところが、もう公開のときには、特定の者のところへそういうものが振り向けられる。公開するというので、いわゆる一対一で割り当てたあとの株のことです。これがもう特定の者のところへいっている。これはやはり証券業界に特殊な問題を投げかけるもとになるので、こういう点については、当局としても、公開するなら公開するで、不特定のお客さんにやはり回すべきだと私は思うのです。これは最近にもある一つのトラブルの問題で、ある有名な会社にちょっと口を聞きましたが、そのときにも、やはりそういう問題が担当者の間からちらっと――こんなことを言うと田中先生におこられるかもしれませんがと、こういうことで出てきておる点から見ても、私は、これは弊害があるのでやめさせるべきだと思うのですけれども、十分実情を調べていただきたいと思います。  それからもう一点伺いますが、最近、証券会社の支店だとか出張所だとかいう名義の店舗がどんどんふえていて、吉祥寺の駅前あたりは第二の兜町だというくらい、各証券会社が競って店を出しておるようであります。銀行その他の支店の新設だとかいうようなことについては、相当大蔵省やかましいのですが、証券会社はこういう点については何らの規制がないような形で、大いに出ておる。かつて、保全経済会だとかそういうような町の金融機関が、自転車操業をやって発展している時代には、全国のどんな町村にも、その出張所なり店舗が持たれた。ややそれに似たような感じを私は実は持っているのでありますが、これについて、大蔵当局はどういうようにお考えになっているか。はたしてこれらの店舗の建設が資本金勘定に属するのか、あるいは利益で建てているのか、それとも投資信託の運営資金でやっているのか、どのように大蔵省は把握されているか、伺いたいと思います。
  343. 吉岡英一

    ○吉岡説明員 証券会社の店舗の増設と申しますか、新しく店舗を作ります場合に、一体その資金をどうしておるかというお話でございますが、証券会社の資産内容の充実につきましては、かねがねわれわれといたしましても指導をいたしておるところでありますし、非常に過大な固定資産を持ちますことは、いわゆる法律できめております負債倍率と、その資産の流動化の点にも問題がございますので、そういう意味で指導をいたしておるわけでございます。御参考までに申し上げますと、昨年の十二月末で、全国の証券業者の自己資本に対しまする固定資産の比率は約四九・四%になっております。そのうちで、有形の固定資産、まあ、不動産その他の率は、二三・二%になっておるわけであります。
  344. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 大蔵省は、銀行等の店舗の問題については相当やかましく言われるのですが、銀行とは性質が若干違うと私は思いますけれども、やはり問題は、証券会社の殷盛というものは、国民大衆の零細な資金で――先ほど直税部長が言われたし、私もそれを否定するものではない。それは、りっぱなビルができるということは、資産内容がよくなるということになるかもしれませんけれども、私は、やはりそこに投資信託というものが、これは法的な根拠も持って、前向きに進んでいるときはいいけれども、一たび何かの衝撃を受けて株価が低落するというような形になると、これは非常にゆゆしい問題を起こす。その意味から見て、ただ高度成長で九%の成長を維持できるのだといっているときに、案外おそろしいつまずきが出てくるような感じもする。これは事実なければけっこうです。ここで、私は、ただ伸びているときだけの面を見たらいかぬので、やはりそういう反動期に備える考え方の上からも、こういうような点については、協会もあり取引所もありするのでありますから、当局が十分気を配ってもらわなければ、国民大衆であるお客さんをそこなうことになるので、その点は一つ警告をしておきたいと思う。  それからもう一点伺いますが、いわゆる四大証券の自社株の公開ということが問題になっておりますが、これは認める方針ですか。これは、かつての新東と同じような形で非常に問題のあることで、これは私は慎重にやらなければならぬ問題だと思うのであります。当局は大体これを認める方針のようでありますけれども、かっての新東時代のような、そういう投機的なものになっていくということになると、先ほどから私が申し上げておりますように、証券界全体に、下手すると反動を誘致するような契機になりかねない、こういうことも、最悪の場合を考えると懸念せられるので、この点は慎重にやられるべきではないかと思うのでありますが、その点についての大蔵大臣の御見解を伺いたい。
  345. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それぞれ自社株の操作はさせないというようなことで、今おっしゃられるような配慮を十分にして、これは認める方針で今のところおります。
  346. 田中織之進

    ○田中(織)分科員 この点は、かつての新東の例もあることですし、それでなくとも、こういうことに投機的な要素が加わってくる場合に、やはり一番ねらわれるところでありますから、これは慎重にやっていただきたいと私は思うのです。  これでこの点についての私の質問を終わりますが、私がこの点をるる質問を申し上げたのは、ほかでもございません。こういう形で今日一兆に近い大衆の資金が動いているのですから、それが健全な産業金融として循環していくように、そこにはやはり大蔵当局も、それから証券業界も、ともに考えなければならぬ問題があるのではないか、こういうようなことが、現内閣の方針である経済の高度成長政策の面において、金融の面から積極的なそれの裏打ちをしていくという面で考えられるべき時期にきておるのではないか、こういう考え方の上から私は質問を申し上げたのであります。そういう点について十分検討を進めていただきたいという希望を申し述べまして、私の質問を終わります。
  347. 相川勝六

    相川主査 明二日は午前十時より開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後七時五十三分散会