○
石田公述人 私は今度の
国会に提案されておる
予算について、中小
企業の
立場からいろいろお願いやら何やらいたしてみたいと思います。
私どもは、今
国会で冒頭に総理
大臣あるいは
大蔵大臣からいろいろお話がございましたが、その中に、特に中小
企業の
立場から印象深く覚えたものが二、三ございます。これは皆さんに申し上げるまでもないことでございますが、
国民所得を倍増するということが目標で、特に農業と非農業、あるいは大
企業と中小
企業、あるいは地域相互間に存在するところの格差を是正して、これが結果としてわが国経済の底辺を
引き上げ、その構造と体質の改善をはかる、これは総理
大臣のお話でありましたが、同様に、
大蔵大臣からも、
国民各層を通ずるつり合いのとれた
生活へ向上させる、そういうことが結局福祉国家としての当然の責務である、この意味で、総理
大臣のお話と同じように、産業間、地域間、階層間の格差、特に
所得格差という言葉を使われておりますが、この縮小をはかることが必要だということをはっきりと申されておるのであります。私どもこのお話については全く同感でありまして、まさにぜひその通りやっていただきたい。
政治のあり方というものは、やはり乏しきを憂えずひとしからざるを憂うということが昔からあるそうでありますが、そのように九千万
国民すべてが乏しいならこれまたやむを得ないと思うのであります。しかしながら、その間に公正でないもの、不公正なものがあるということならば、それは最も注意をしなければならぬことじゃなかろうか。こういう意味から私は特に
大蔵大臣が農業と中小
企業の近代化あるいは後進地域の開発並びに
社会保障施策の充実に努めるというお話を伺ったので、大へんけっこうなことだと感じておるわけであります。そして、こういう点から私は本年の
予算というものも、こういうふうな点と
所得倍増計画というものの中身に基づいて当然
予算が盛られたというふうに私どもは感じておるわけであります。そういう点からこの
予算を中小
企業の
立場として拝見をしてみますると、精神においては私はまさしくその通りであろうと思う。
大体今日までの
日本の中小
企業政策というものは、諸外国と比べても、
政策的にはあまり劣っておるとは私は思わない。私はまだアメリカだけしか見ておりませんが、アメリカを二回ばかり見て参りまして、あちらの中小
企業庁あたり等のお話を伺いましても、
日本の中小
企業政策と申すものは、決して向こうに劣らない。きめのこまかい、いろいろな点で非常に注意をされた
政策であるということは私どもも認めざるを得ないと思うのであります。しかしながら、この中に、
政策がこまかいということと、
予算の面でそれが実際に現われている点とはおのずと相違があるのではなかろうか、こういう点で私は実はいろいろ中小
企業の
立場から、
所得倍増計画の中でわれわれが振り返ってみなければならない点が二、三ありますので、申し上げてみたいと思います。
それは何かというと、第一点は、中小
企業の姿、特に小規模
企業を含めての姿が、
所得倍増計画の一応の目標である
昭和四十五年にはどうなるであろうかということなんであります。これはいただきました資料の中にも出ております通り、あまり変わらない、むしろやや劣っていくだろうというふうに私どもには解釈ができるのであります。この点大へん情けないことでありまして、私ども中小
企業の
立場としては困ったものだと思うのであります。ただこの問に、私どもが欧米
各国を見ますると、
中小企業者の数としては、欧米
各国の九五、六%に対し
日本のように九九・九%という例もございまするが、あまり変わらない。しかしながら、その
企業に働く人の数と
国民経済に及ぼす
影響というものは、欧米
各国と
日本とはずいぶん違うと思うのであります。雇用人口も、
日本では働く
人たちの中の六割近くが中小
企業に働いている。欧米
各国では大体二割くらいであります。そして国の経済に及ぼす
影響も、欧米
各国ではよく見て三割、普通では二割であります。
日本においては、産業構造の中でのいろいろな形が六割ないし七割、特に輸出に至りましては、間接輸出を入れますると、八割が
中小企業者の力でできておると思うのであります。こんな点をまず注意してみなければいけない。そして
所得倍増計画の
一つの背景としては、四十五年には、輸出は現在の輸出の三倍以上になるところの九十億ドルというものを達成しなければならぬ。こういうことを
考えてみますると、いろいろなことが諸外国の
政策の上で問題になります今日、今の
日本の輸出が三倍になるということは、決して多量なマス・プロのものだけが出るとは私どもは
考えられないのであります。やはり国々のうちで受け入れやすいところの、金額的にはごく少ないが、自然と
国民性にマッチした
日本の物を受け入れていただくようなことにどうしてもなるのではなかろうか、一ぺんに多量なものが出るということで輸出が三倍になるとは思えないのであります。そういたしますると、
倍増計画の中にありまするところの中小
企業の国の経済に占める比重は今と同じくらいであろう、やや劣るかもわからない、あるいはその比重が半分くらいになるということについては、問題が
一つあるのじゃなかろうか。かりに
倍増計画そのものを是認するといたしましても、その場合には、少なくともよほど中小
企業が輸出できる態勢になければいけない。ということは、貿易自由化というものがこの四月からぐんぐん門をあけられるといたしますると、やはり
日本の大
企業も中小
企業も小規模
企業も世界の国際場裏で競争しなければなりません。大
企業は、目下の状況では、私は十分競争ができるのじゃないかと思うのであります。しかしながら、中小
企業なり小規模
企業は、今の生産性あるいは付加価値の作り出すところの力では、競争できないものが大部分じゃないかというふうに
考えられるのであります。そういたしますると、今まで温室のようなところであり得た中小
企業がいきなり冷たい風にさらされて、十分うまくいくとは毛頭
考えられません。まして十年後にこういうふうな階層を土台としたところの輸出が三倍になり得るとは、私は思えないのであります。こういう点にまず問題があるのではなかろうかというふうに
考えられるのであります。
第二の点は、この
所得倍増計画の中についておりまするところの小
委員会報告を見ますると、中小
企業の中の十人以下の小規模
企業に対しては、現在の生産性を大
企業に比べて二六%と押えております。私どもの調べたところでも大体二六、七%であろうと思うのでありますが、この
人たちを十年後には四九%に
引き上げたいというふうに書いてあるように見受けられるのであります。もちろんこれは
所得倍増計画そのものではないのでありまして、付属書類でありますから、一応実情をあげられたのだろうと私は思うのでありますが、この四九%というものがかりに十年後の小規模
企業の姿であるといたしますると、これまた私どもはずいぶん問題があると思うのであります。欧米
各国の生産性を見ましても、小規模
企業でありましても、大
企業に劣らない、むしろすぐれている場合が多いのであります。悪い場合でありましても、七五%以下という例は
一つもないのであります。なぜないかということについては、いろいろ問題もあろうと思います。今日までに諸外国がすでに完成した今日の姿だけを見て、過去においてもそうであったというふうには
考えられないのでありまして、過去においてはやはり
日本と同様なときがあったろうと思うのでありますが、ともかく今日では小規模
企業といえども七五%以下ではない。なぜないかというところに長い生産性向上の歴史があり、国家の助成の歴史があると同時に、私は大きな人道問題があると思う。
最近のアメリカの経営学を申し上げるまでもなく、最近のアメリカの経営者の申しますることは、一番最初に経営において注意しなければならない特徴として、ヒューマン・リレーションをあげております。その次に何をあげておるかというと、マーケッティング・リサーチをあげておる。そしてコスト・コントロールというものをあげて、この
三つが経営の特徴でなければいけない、価格の安いもので、しかも市場を十分注意して、そうしてこれらを作り出す
人たちに対して、人間関係の調整という見地からも、ヒューマニズムに土台を置いたところのヒューマン・リレーションというものを
企業の特徴としなければならぬということを申しております。こういうふうなことは今の経営学としては当然の
考え方であり、われわれ
中小企業者といえども同じように
考えなければいけないと思うのであります。
この場合に、中小
企業の経営者がその経営に働く
人たちに対してなさなければならない大事な点がございます。それは、この働く
人たちに満足をさせるという場合に、物心両面を満足させなければならない。物と心であります。これはもう賢明な諸
先生方によけいなことでありますが、心の面は別といたしましても、物の面といえば、ずばり賃金だと私は思う。かりに十年後に四九%の生産性というふうなことになりまして、これも
日本の中小
企業の特に小規模
企業の
立場でやむを得ないといたしまして、半分しか生産性がない場合に、はたしてその
企業に働く人にどのくらい賃金を与えることができるであろうか。あるいは支払うことができるであろうか。ここに大きな問題があるのではないかというふうに
考えられるのであります。そういうときに、はたして円満な労使の間の関係を維持することができるか、こういう点でこの
所得倍増計画というものを見なければならない。まして四九%に小規模
企業を上げるにいたしましても、今の生産性の二・九倍と申しまするから、三倍の生産性を持たなければならない。大
企業は一・六倍であります。毎年五%ずつ生産性を伸ばして参りましても、
所得倍増計画の通りになると思うのであります。小規模
企業のものがこれから十年間に、今十の生産性しか持たないものを三十に上げるということになりますると、毎年二割五分ないし三割近く上げていかなければならない。これはなかなか大へんだろうと私は思うのであります。
しかしながら、とにかくいろいろ詳細な調査の結果得られたこれらの
計画について、私どもは一応その姿をすなおに受け入れながら、何とか努力をしていきたいと思うのでありまするが、こういう中で、はたしてしからばわれわれの
予算はどうなったであろうか。私は冒頭に、
日本の中小
企業に対するいろいろな対策は諸外国にも劣らないと申し上げた通り、今度の
予算の中にもその通りいろいろなものが盛られておると思うのであります。そして今のような問題を一応是認しながら私どもが参りますると、こういう中で何が一番大事であろうかということが問題になってくると思うのであります。それは
予算の面で、私これから申し上げて参りたいと思うのでありますが、一番根本は、やはり生産性を伸ばすためには、設備の近代化ということに当然なると思うのであります。設備の近代化と申せば、これはもういろいろな機械も器具も、あるいはそれに付帯するものも直していくことで、これについては中小
企業そのものの力と、それから国がいろんな助成策をとるより道がないと思うのでありますが、それが今回は二十五億円認められたわけであります。そしてこの二十五億円も、中小
企業庁がお
出しになった
数字を百パーセント認めたわけでありまして、この点で私は大へんありがたいと思うのであります。ただ不幸にして今回の
予算に対しては、
予算を作り出す場合に
一つのワクがきめられておりまして、五割よりふえてはいかぬというふうな話があったそうでありまして、そのために中小
企業庁では非常に遠慮した
予算をまず盛られた、ここに大きな問題が私は実はあったと思うのであります。五割というのは、国の
予算——今回は二兆円
予算というような膨大な
予算になったわけでありまするが、この
予算の中で、全体としては五割よりふえちゃいかぬということ、しかしながら、やらなければならないもの、あるいは
所得倍増計画のスタートを切る年として、これだけはどうしてもやろうということになれば、それに対してのワクというものは、私はかなりゆるめられてよかったと思います。こういう点で私どもは、この二十五億円というものが、一応中小
企業庁としては要求され、それを御承認になられたということについてありがたいと思うのでありまするが、どうもこの点では、われわれの側では、ことに少ないのではなかろうかという感じがいたすのであります。ということは、
東京都の本年の
予算を目下審議いたしておりまするから、まだはっきりいたしませんが、
東京都でも、機械の貸し
出しあるいは商業関係の店舗の改造資金その他を入れまして、本年大体二十億円になる予定であります。昨年までがたしか十六億円でございます。そういたしますると、
東京という特殊な場所であるとは申しながら、国の
予算の約一割ないし一割二、三分を占める
東京都の
予算が二十億である場合に、国としてはやはり少なくとも十倍くらいに見ていただいてよかったのではないか、こういう感じが実はいたします。こういう点で、この二十五億円は、百パーセント認めていただいたので、私ども
中小企業者としては
大蔵大臣にお礼を申し上げなければならぬのでありましょうが、どうもその立て方の根本に少し誤解があったのではないか、このように
考えます。
そこで、これについては目下いろいろ御審議をいただいているときでありまするからなんでありまするが、そういうふうな
考え方がわれわれにあるということをぜひ御考慮いただきたいと思うのであります。そしてこれと同時に、設備の近代化ということについては、このような見地から
考えていただく。しかもそれが
所得倍増計画及び貿易の自由化と二つの面から緊急にやらなければならない。十年後にどんなにたくさん金を投じてもいいのではなくて、この最初の年、あるいは二年目、三年目、この両三年の間にうんと金を投じなければいけない。先は細くなっても今が一番必要だと思うのであります。その必要なときに、少ないのに対して、はなはだ遺憾だと実は思います。
そうして、これと同時に、この設備近代化の中に含まれております
予算として、団地
計画というものが三億円あるように承っておるのでありますが、これも私どもは実は、その額が少ないので意外とするところであります。中小
企業の団地
計画と申しますのは、御承知の通り、ただ中小
企業を各都会から移せばいい、あるいは新しく作り出せばいいというものではないのでありまして、現に非常に困っておりますところの中小
企業を何とかしてその生産性を伸ばし、同時にその伸ばす方法として、共同化することによって、先ほど
中林さんからいろいろそういう問題が出たのでありますが、力を合わせて共同化させるためには、どうしても団地
計画というものが要ります。たとえば足利地区のトリコットの問題、あるいは静岡地区の木材関係の
企業、
東京でありますと、芝田村町から佐久間町にかけての家具、建具の業者を移すということ、これが現今の場合ではどうしても移さざるを得ないのであります。新しい道路交通法ができて、往来に車をとめられない。道路でもって仕事をやれない。しかもこの仕事をやれる場所を、今までそういうふうなものに依存しておった小規模
企業者が今まで通りの仕事を継続するとすれば、どうしても別な場所に移さなければならぬ。しかも別な場所に移れば、そういう問題を解決するばかりではなく、共同化することによって、共同の検査所も共同の研究所も持つことができる、あるいは材料を受け入れるにも共同化によってコストを下げることができる。こんなような見地から、どうしても必要ではないかというふうに
考えられるので、これは中小
企業、特に小規模の
企業に対しては非常に大事な問題だと私は思うのであります。またこういうふうなことをやらない限りは、
中小企業者は、これから先設備近代化をやる場合にもばらばらになってしまって、非常に
工合が悪い。これが機械振興法の
一つの目的でもあろうと思うのであります。あの振興法に盛られた
内容のように、機械ばかりではなく、ほかの中小
企業に対しても十分こういう点が必要ではなかろうか。そういたしますと、一番最初に必要になりますことは、今小さな規模の
企業が都会のまん中で、あるいは端っこでも無理してやっておったものを移す場合に、一番先に必要なものは土地でございます。いかなる土地でも、今土地らしい土地は一万円以下のはございません。ちょっといい場所ですと三万円いたします。埋め立てましても一万円から二万円であります。こういうところに移る場合に、土地を買う資金はもちろん、家屋を建てる資金もない
中小企業者に対して、今この弱い生産性を伸ばすためにも、どうしてもやはり一応は国なり自治体なりが力をかさない以上は、できないと思うのであります。そういう意味から、この中小
企業の団地という問題については、もう少し今後の見通しを持っていただいて、うんと力をかしていただく必要があるのではなかろうか。またそうでないと、今の小規模
企業は、十年先も同じようだ、あるいはちょっと弱くなる。
所得倍増計画の中にいわれているように、なくなってしまうのではないかというふうに感ずるわけでございます。
そうして、そういうふうな見地から、なお業種別
指導ということになりますか、あるいは小規模
企業の
指導と申しまするか、本年はだいぶたくさんの費用を実はこの点に見ていただけたのであります。
東京の例でありますと、
昭和三十五年には、たしか四十名くらいの
指導員を置くことができたのでありますが、来年は百三十何名か置くことができます。この点については、私は
政府の
一つの進歩だと思うのであります。今まで見捨てられておったところの小さな製造業者あるいは小売業者、サービス業者というふうなもの、あるいは環境衛生の関係の
人たち、こういう
人たちに対して、こういうふうな形から、きめのこまかい
指導をやるということについては、全くありがたいことだと思うのであります。しかしながら、ここで
一つ見落しておられることがあるのではなかろうか。ということは、こういうふうな多種多様な業種で、農業のように土地に依存して物を作るというような単純なものではなくして、物を作る、売る、あるいはサービスをする、あるいは賃金を得るような環境衛生の方々に対する
指導というものは非常に複雑で、大へんだと思うのであります。こういうふうな仕事に対して、ただ人だけを与えていいかどうかということがまず
一つ。その人がこういうふうな多面的なものをやる場合には、相当の力を持っていなければいけないのじゃないか。ところが昨年は二万円でございましたか、都会に対しては一人当たり二万円の月額をいただいたのでありますが、本年は、この
予算では二万三千円かに上げていただいております。しかしながら、二万三千円という金を一カ月で見ますと、この
人たちが賃金としてあるいは給与として得る金は、せいぜい一万六、七千円だと思うのであります。一万六、七千円の給与しかもらえない
人たちにはたしてそのようなこまかい
指導ができるかりどうか、私どもは実はここに非常な心配があると思うのであります。さしあたりは、まだこういう仕事に入り、これから訓練し、伸びていく
人たちでありますから、がまんをするであろうと思うのでありますが、今後はなかなか大へんじゃないか。この点についても、今後の見通しについて、毎年この
人たちが伸びていけば給与も上げなければならぬという点について御注意を願いたい。
同時に、この全国にわたって数千の
指導員ができる場合に、この
人たちの力を組織化したものがはたしてあるであろうか。私は
東京でありまするから、実はこの点については都に強く要請をしております点が二、三あります。ということはこのたくさんの百数十名の
指導員の方一人々々が万能ではございません。さすれば、この百三十名の人がいろいろな商売の方の人の
指導に当たり、あるいは小さなものを作る
人たちの
指導に当たり、サービス業の
指導に当たる場合に、この
人たちの力を上手にあんばいする機関が要るだろうと思うのであります。
東京でありますると、この役に立つものは、
一つには工業奨励館という制度がございます。もう
一つは、商工
指導所という制度があるのでございます。あるいは繊維関係でありますると、繊維工業試験所と申しますか、電気でありますと電気研究所というものがあるのでありますが、これらの機関はあくまでも都だけのものでありますので、なかなかこの
人たちに力をかしてくれません。私どもは
東京都でありますから、都の者にもこの点を強く要望したのでありますが、国がこういう
人たちを置きます場合に、この
人たちの力をいろいろ合わせ、なおこの
人たちに教育をし、訓練してやっていくためには、どうしても中央にこの
人たちのそういうふうな組織化するための機関が必要だったのではなかろうか。そして、府県と申さなくても、幾つかの県を合わせてブロックとしてもいいと思うのでありますが、そういうふうなブロックにこの
人たちを
指導する機関が必要ではなかろうか。こういうものがないと、この
人たちは全くばらばらのさむらいになってしまうと思うのであります。これでは私は困るだろうと思うのであります。やはりこういう
人たちを組織化し、教育し、訓練して参るところに、この数千名の人が
日本の中小
企業に対して十分な
指導ができ、かつ非常に効果的な
指導ができていくのじゃないかと思う。こういうふうなただばらばらにあるという形に対して、結果的に申せば、そのために商工会があり、商工
会議所があるということになるのだろうと思うのでありますが、実は商工会といえども、あるいは商工
会議所といえども、なかなかそういうふうなことはできないような体制でありますし、
予算もございません。
東京の例をあげましても、百三十三、四名の
指導員をお預りすると同時に、実は
東京の商工
会議所だけで二千万円新たに補助金が要るのであります。国と地方の
予算のほかに、商工
会議所自体が、小規模
企業者より上の
人たちの会費のうちから二千万円を一カ年間に投じて、小規模
企業の
指導をやっていることになるのであります。こういう例を見ますと、やはりせっかくここまでおやりいただいたのであれば、そのような形でぜひお願いをしたかったと思い、またぜひそのようになるようにお願いをしたいと思うのです。
この問題を取り上げながら、私どもが
考えてみたいと思うことは、実は先ほど申し上げた貿易の問題でございます。貿易の問題については、三倍になり、それに対してわれわれ中小
企業の力が耐えられるかどうかということが非常に問題だと思うのであります。この貿易の
予算は、今回一応御審議願っている中身というものは、輸出振興として四千五百九十三万三千円でありますか、昨年よりは一割ばかりふえておるのでありますが、見ておられるわけであります。しかしながら、この中の
一つの技術研究を取り上げても、これが千七百四十六万円、あるいは試作奨励費補助は二千四百四十万円というようなものであります。まして、中小
企業の優秀品の展示費が百十万六千円というような額があげられております。そして輸出向きの特産品の販路開拓の資金も二百五十八万円であります。こういうふうな
数字については、私どもは実は問題にならないと思うのであります。このほかに見本船をお作りいただくということが、何かいろいろな方法で御決定願っておられるように聞き及んでおりますので、これなんかもこの中に当然入るべきものだと思うのでありますが、ともかくも輸出を三倍にするためには、これはよほど奮発をしていただかないと
工合が悪いのじゃないかというふうに
考えているわけであります。そして、こういうふうに
予算の面で私どもは希望をいろいろ申し上げるものでありますが、とにかくこのように、いろいろな形でお願いしているものがこまかく取り上げられたということは、今度の
予算の
一つの進歩でありますが、ただ取り上げられただけでは
工合が悪いのでありまして、やはり
政策をお示しになると同時に、その
政策が生きて動くように十分な
予算措置がぜひ必要ではないか、このような
考え方を私どもは持っているということを申し上げたいと思うのであります。
それから、中小
企業問題で特に問題になります点がもう二つあると思うのであります。
一つは、中小
企業の金繰りの問題だと思うのであります。資金をどうやってやるか、私ども本年の今審議されております財政投融資の中身を拝聴いたしますると、私どもに対してお
出しいただく金が、中小
企業金融公庫で四百二十五億、
国民金融公庫で三百七十五億、商工組合中央金庫で四十億、中小
企業信用保険公庫で二十億というふうになっているように仄聞しておるのであります。合計して八百六十億ということになるわけでありますが、昨年の当初の
予算が六百五十三億、補正
予算を入れまして八百五十三億でありますから、これよりはまさにふえております。大へんありがたいことだと思うのであります。しかしながら、ふえておりまするが、この場合に、はたしてそれでは純増はどうだろうかということを一ぺん見てみたいと思うのであります。本年こういうふうな各機関から
政府にお返ししなければならぬ金が五百四十五億ございます。そうしますと、八百六十億
出していただけるのでありますが、返済する金が五百四十五億でありますと、実際の貸し
出し増というものは三百十五億になるのであります。
昭和三十四年度を見てみますと、貸し
出しは、本年から見まするとずっと少ない、七百九十二億でございます。しかしながら、返済がこのときは少ないので、三百五十二億しかございません。そういたしますと、
昭和三十四年度では貸し
出し増と申すのが四百四十億実はございました。これだけ中小
企業は潤ったのであります。三十五年を同じような見方で見ますと、純貸し
出し増では三百二十五億なんであります。そして本年は、当初
予算ではこういう計算でいきますと三百十五億の貸し
出し増でございます。これから補正
予算もございますし、あるいはこの
予算の審議の
過程で、こういう実情を御記憶願っていろいろお直しいただくことがあるのかもわかりませんが、ともかく問題は大部分決定したように思いますと、私どもはだんだん逆に減っているのだ、三十四年度に四百四十億の純増であったものが、昨年は三百二十五億になり、ことしは三百十五億になったというふうにしか受け取りにくいのであります。この点についてはぜひ
一つ御考慮願いたい。そしてこの点が、実は
中小企業者が要望しておりますところの安い金利、長い貸付期間という、この長い貸付期間ができない
一つの理由なんであります。貸付期間を長くしてやるためには、毎年どうしても純貸し
出し増が相当なければいけないということを各公庫とも申しております。そういう意味からも、この点についてはもっと御奮発を願う必要があったのではないか。ということは、
所得倍増計画の中小
企業小
委員会報告で見ましても、
政府がかりに貸し出す金を五百数十億、本年の貸し
出し純増を五百六十億と見ておるようでありますが、この純増に対して、それでは
所得倍増計画にうたわれておるところの、十年先に小規模
企業なら四九%になるのだというときでも足らないのだ。そしてそういうことではいけないので、三十六年度には千二百六十二億円貸してやらなければだめだという指示がこの小
委員会報告に出ております。これから見ますると、三分の一、四分の一にしか実はなりません。こういう点で
所得倍増計画とこの
予算というものの関係が私どもはちょっとずれてきているんじゃないかというような感じがいたしますので、特にこういうふうな点には御注意願って御奮発を願いたいと私は思うのであります。
最後に、私は中小
企業で目下非常に問題になっておりまする労使の関係を申し上げてみたいと思うのであります。この問題については、もう皆さんの方が御承知のように、本年はいよいよ労働攻勢が激しく、中小
企業でも三千円ぐらいのアップを要望されるような姿になっております。中卒七千円ないし七千五百円、高卒九千円から一万円というのが今の姿でございますが、こういうふうな姿の中で初任給だけが上がれば問題はございません。私は最低賃金
委員会の
委員をしておりますが、初任給の上がった
数字の大体半分が全体の
企業では賃金が上がってしまいます。初任給が二割上がるときにはその
企業の働く
人たちの賃金は約一割上がるというのが今までの
平均した
数字でございます。こういうふうな点から見ますると、ことしから各中小
企業というものは非常な苦労をなめるだろうと私は思うのであります。しかしこれも人道的な見地に立てば、
企業の経営者が安い金で、大
企業から見たら半分ないし四割にもならないような金で各人に働いてもらうということはわれわれの間違いであって、もちろん十分な金を払わなければならぬのでありますが、しかしこの払えない理由、生産性が上がらないために払えないということも
一つの理由でございます。さすればこの点はお互いにいろいろと労使の間で話し合いをしなければならないし、また話し合いをしながら漸次生産性を上げ、賃金も上げていかなければばならぬと私は思うのであります。
こういうふうな場合に私ども
中小企業者としては、賃金の面では
政府のいろいろな助成策をいただきながら生産性を上げ、そして幾らかでも満足を得るようにしていかなければなりませんが、それ以外のいろいろな福利施設の問題であります。こういうふうな問題でも実は中小
企業ではできにくいものがたくさんございます。商工
会議所のかつての調べでありますると、商店関係で小売商の店で働く人は月間約三百円という福利費でございます。卸問屋さんで働く人は三千円でございます。月の間に、働く人にその小売商なり卸問屋さんが福利費として使う金でございます。製造業関係では、中小
企業でも小規模
企業ですと、月間五百円、大
企業は五千円でございます。これだけが
平均して使われておるという
数字が出ておりまするが、このように小さな
企業と、大
企業では十倍も福利費を使っておる。でありますから、賃金だけの差ではなく、こういう面で中小
企業に働く人がだんだんなくなり、本年のように充足率がわずかに数%というような、百人人を求めて数人しか得られないような実情になってきておると思うのであります。
こういう点で
政府が中小
企業退職共済のような問題について御考慮をいただいて、いろいろ手直しをされたということについては私どもは感謝をしておるのであります。こういう点が確かに今後役立って参るだろうと私は思います。しかしながら遺憾に思いますることは、こういうふうなものと同時に、この
人たちに対してやらなければならない共同でやる施設、簡単に申せばいろいろな厚生施設、福利施設というものがございます。いこいの家という形で呼ばれておる場合もありますし、働く者の家という名前でやられておるものもありますし、地方自治体もずいぶんやっておりますが、こういうふうなものがやはり必要だったのではなかろうか、あるいはまたこういう
人たちに対して与える施設を
政府がやるという気がまえをはっきり
法律として現わす必要があったのではないか、中小
企業に対して働く
人たちに対する福祉法案とでも申しますか、こういうふうなものが私は必要だったと思うのであります。
若い中学校を出ただけの者あるいは高等学校だけを出た者が昼間働き、夜勉強し、あるいは昼間働いてわずかでも税金を納める、この
人たちに対して、
政府が学校へ通い
大学を出るこの
人たちと同じように、あたたかい気持を私は持っていただくことが必要だったのではないかと思います。官立
大学で申しますと、一人の生徒に少なくとも年間十万円かかっておると思うのであります。こういうふうな
人たちに対して、国の将来をになう大事な
人たちでありますから、金を出すことに対して私どもはやぶさかではありませんし、賛成をいたしたいと思うのでありますが、同じときに、働いて国の産業に貢献し、わずかでも輸出をしておるこの勤労青少年に対して、やはり同様なあたたかい
考え方が必要だったのではないか。そういたしますと、私は本年はどんな形であっても、勤労青少年に対する福祉法案というふうなものがぜひのっけていただきたかった、そして
予算の関係でできなくても、できるだけやろうという形にしてほしかったのであります。厚生年金でまさに三十億円、こういうふうな
予算が用意されておるというふうに伺っております。しかしながら、金というものだけで私はものが済むとは思っておらぬのであります。やはり働く青少年に対して、国が、
所得倍増計画の一翼をになうものは中小
企業であり、あなた方若い青少年だ。千五、六百万あるうちの三分の一は若い
人たちだと思うのでありますが、この
人たちに対して、そういうあたたかい思いやりから国があげてあなた方の福利厚生施設に対しても力を入れますということを言っていただいたら、どのくらいよかったかと実は私は思うのであります。こういう点でこの点がお取り上げにならなかったことについては私は残念だったと思うのであります。
私のいただいた時間も大体参りましたようなんで、一応本年の二兆円
予算に対して、中小
企業予算というものが四十五億、昨年から見ますれば八割ふえたことについてはお礼を申し上げたいと思うのであります。しかしながら、いただきましたこの「三十六年度
予算の説明」の三十三ページに中小
企業予算のことが出ておりますが、二、三ページ進みました三十六ページに、私は偶然見ましたところが、麦対策費というものがございます。この麦の対策費が本年は四十億円ございます。三百三十万の
中小企業者、ここに働く千五百万の勤労者に対しての施策費が四十五億円である、そして麦だけに対する施策費が四十億円であったということについては、ちょっと私どもも意外な感じがいたします。国の
政策にはいろいろ問題はございますと思いますが、しかしながら私どもが
考えますることは、
政府の施策に対しては十分協力をして参りたい、参りたいけれども、それに対してはあくまでも公正、公平であってほしい、そして国が示された
所得倍増計画というものについては、われわれはすなおについていきたいと思う以上は、その示されたものについてはぜひ
予算の上でも現わしていただきたいというふうに
考えておるわけであります。
大へん失礼を申し上げました。ありがとうございました。(拍手)