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1961-05-18 第38回国会 衆議院 予算委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月十八日(木曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 重政 誠之君    理事 野田 卯一君 理事 保科善四郎君    理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君    理事 横路 節雄君       相川 勝六君    井出一太郎君       稻葉  修君    臼井 莊一君       小川 半次君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    北澤 直吉君       櫻内 義雄君    正示啓次郎君       田中伊三次君    床次 徳二君       中曽根康弘君    中野 四郎君       中村三之丞君    羽田武嗣郎君       橋本 龍伍君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    三浦 一雄君       山崎  巖君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       小松  幹君    河野  密君       田中織之進君    楯 兼次郎君       堂森 芳夫君    永井勝次郎君       野原  覺君    長谷川 保君       松井 政吉君    春日 一幸君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         厚 生 大 臣 古井 喜實君         農 林 大 臣 周東 英雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 木暮武太夫君         郵 政 大 臣 小金 義照君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 中村 梅吉君         国 務 大 臣 迫水 久常君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         食糧庁長官   須賀 賢二君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      岡本  悟君  委員外出席者         日本国有鉄道副         総裁      吾孫子 豊君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 五月十八日  委員菅太郎君、小松幹君及び春日一幸辞任に  つき、その補欠として正示啓次郎君、三鍋義三  君及び稲富稜人君が議長指名委員に選任さ  れた。 同日  委員三鍋義三辞任につき、その補欠として小  松幹君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  昭和三十六年度特別会計予算補正(特第1号)  昭和三十六年度政府関係機関予算補正(機第1  号)      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度特別会計予算補正(特第1号)及び同じく政府関係機関予算補正(機第1号)を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。春日一幸君。
  3. 春日一幸

    春日委員 まず最初に、最近の経済動向金融政策について、総理所見をお伺いいたしたいと思います。  総理はしばしば、また昨日もそうでありましたが、経済のことは私にまかしておけと揚言されておるのでありますが、私も池田総理が、その閲歴においてわが国有数財政経済権威者であられること、これは認めるにやぶさかではありません。けれどもその実績はどうかと申しますと、そのことごとくが常に成功をおさめておられるという筋合いのものではないのでありまして、特に池田財政積極方針をとられたときには、おおむねその結末は景気逆調を招きまして、幕切れば何となく悪い形に相なっておると思うのでございます。現にこの時点におきましても、さまざま多くの警戒信号が現われ始めておることは、総理新聞紙上その他経済評論によって御承知に相なっておるところであろうと思うのであります。私は、総理のような豊富な経験の持ち主が、今日のような現実に経済過熱におもむかんとしておりますこの段階において、このような経済実勢を対象とされて、依然として高調子で経済高度成長を叫ばれておるということについては、何となく合点がいかないのでございます。私は、総理がこの期に至ってもなお積極財政方針を堅持されておるということは、これはだれが見ても財政金融の常道にはずれており、経済原理原則を無視したやり方でありまするので、これは言うならば、私どもの率直な考え方でありまして、また仲間同士ともそんなことを話し合っておるのでありますが、総理がこのような多くの危険信号に気づかれないはずがないにもかかわらず、なお高いアクセント高度成長積極財政を叫ばれておるということは、ちょうど池田内閣成立をいたしました前後期において、例の所得倍増政策というものを掲げられまして、これが池田政権に対するいわゆる池田ブームの一要因をなした、あるいはそんなことに何か自己陶酔にかかられてしまっておるのではないか、あるいは何か意地っぱりになっておられるのではないか、あるいは高度成長を掲げられ、所得倍増を言われた手前、その自分言葉に金縛りにされてしまっておられるのではないか、そんなふうに、むしろけげんな感じがしてならないのでございます。私ども総理が多くの経験を積まれ、また昨日来言われております通り、真剣にいろいろな現象について取り組まれて勉強されておること、これは認めるにやぶさかではございませんけれども、与党と野党の立場で原理原則の観念的な論争をむだに行なうというのではなくして、違った人種が違った言葉で話し合いをして物別れをしておるというのではなくして、私どもがここに論ぜんといたしておりますることは、できるだけ資本主義経済自由経済の中においても、その自律調整作用によるところの大きな振幅、山が高ければ谷が深いというような、そういうような形にならないように、これを最小限度にとどめて安定成長をはかろうとするその気持にほかならないのでありまするから、どうか一つ真剣な気持——むろん真剣な気持で御答弁にはなっておるでありましょうけれども、聞くべき意見は一つよく聞いてみる、そうしてチェックしなければならない点については、これは何らこだわるところなく、虚心にその問題について政策的な考慮を払ってみる、こういう態度で建設的に御答弁が願っておきたいと思うのでございます。  まず最初にお伺いをいたしたいのでありますが、何といっても現在の設備投資がこのような大きな形になって参りまして、昨日も永井君からも指摘されております通り、その設備投資実額は、実に経済計画において昭和四十五年度に予定されておる実額が、第一年度において実施されようといたしておる。その他経常収支国際収支の面におきましても、多くの赤字現象が現われて参っておる。経済基調が何となくここに変化のきざしを現わしておるというこの実態にかんがみまして、総理は今もなおその積極政策について何ら変更をするの必要は認められていないのであるか、この点についてあらためて総理からその御所見伺いたいと思うのでございます。
  4. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいまの経済基調は、私は数字を申し上げて恐縮でございますが、私が考えておるよりも少し成長度合いが強いような気はいたします。それは私は昭和三十五年の国民総生産を十三兆六千億と見まして、そして九・二%程度年平均でございますよ。三十六年度、七年度、八年度同じようにという意味ではございません。大体三年間は九・二%ぐらいでいくだろうという見込みを立てたのでございます。しかるところ、春日さんも御承知通り、三十五年度の実績が十三兆六千億でなしに、十四兆二千三百億ぐらいの実績が出るのでございます。そういたしますと、三十四年におきましては鉱工業生産は三十三年に対して三割の増をいたしました。二九%何ぼの増でございます。農業所得と合わせて一七%の増をした、そのあとにおいて九・二%と思ったのが、鉱工業生産では二割二、三分の増加になり、そうして全体といたしまして三十五年度は一三、四%になっておるのであります。しこうして三十六年度に入りまして、どうかと見ますと、鉱工業生産はやはり前年に対して二割程度、あるいはそれをちょっと上回る増でございます。そうすると三十五年度は九・二%ぐらいのものが、政府予定はもっと低うございましたが、そのとき一七%ということになっております。三十六年度もそうなりそうだということが今の現状であります。従って私としましては、予定よりも鉱工業生産伸びが非常に上っている。予定以上にいっておる。そこへ持っていって、この高度成長になれたのか、民間では必要な業種もございますが、そう急がないものにつきましてかなりの設備投資を見込んでおる点は、私はきのうも指摘いたしましたように、少し行き過ぎの点があるのではないかということを考えておる。しからば政府がこの設備投資をどういうふうにして押えるか、どの業種についてどういうふうにして押えるかという問題につきましては、ただいま通産省でいろいろ検討をしていると思うのでございまするが、私は、経済基調伸びていく、その伸びよう自分の予想しておったよりも少し早過ぎるという気持は持っております。しかし全体としてはそうではない。ある業種につきましては相当伸ばさなければならぬ。しかしある種類におきましては少し伸び方をゆるくしなければならぬ、こういうのが今の現状でございます。  しからばこれを押えるのに、法令で押え得るところと、なかなか押え得ないところとございます。こういうことは金融政策で実はいくべきものと思うのでございまするが、いかんせん金融政策につきましては政府が積極的にこれをどうこういうわけには参りません。その中心は日本銀行がやるべきでございまするが、日本銀行の貸し出しは前年よりも大体二千億円程度上回っておるようでございます。通貨の発行高もかなり上回っておる。こういう点から金融界がまずこの設備投資につきまして、その必要の度合い等を私は考えるべきではないかと思う。それと設備投資の場合におきましては、金利水準というものは実際においてなかなかききにくい、やはり心がまえの問題が主であろうと考えます。各国の例を見ましても、先進国のそれに比べまして日本設備投資は非常に高い。しかし高いということも高度成長の原因でございます。高過ぎてはいけません。高過ぎないようにりっぱな成長のもとを続けていくようにしたい。今お話しの十年後の四十五年の状態を今現出しているというお話でございまするが、そこまではいっておりません。ただ、新聞なんかには各社が思い思いに出した見込みを集計しておるのでございまして、その通りにはいかない。その点は各業種別に実情を見てから考えていく。総体として自分の考えておるよりも予想以上にいっておるという事実は私は認めておるのであります。
  5. 春日一幸

    春日委員 今総理基調は変わってはいない、わずかに行き過ぎておるような気配を感じはするけれども、そう心配するほどのことではないと言われでおる。その点において私どもと根本的にその認識が違うのでございます。と申しまするのは、現在象徴的に現われておりますのは、この設備投資に対しまする行き過ぎの点であります。これは後ほどずっとその面においていろいろと論証したいと思いまするが、いずれにいたしましても、三兆六千億という設備規模は、所得倍増計画目標年次でありまする昭和四十五年度の国民総生産が二十六兆円のときにおける民間設備投資総額の、大体構想されておりまする額に見合うと思うのでございます。現在の国民総生産、総所得というようなものから考えまして、十年先のその設備投資が今ここでこつ然と現われておるということが、本日の時点においてのみならず、来年あるいは再来年等においてこの設備が大きな生産力を現わして参りましたときにおいて、われわれは、国民経済全体の均衡をこわすようなことになりはしないか、まあそんな点もいろいろと心配されてならないのでございまするが、それはその局面においてさらに具体的に論ずるといたしまして、ただ私はここに総理に特に御留意を願いたいと思うことは、昭和三十二年の五、六月、きょうこのごろ、これが何となく、わが国経済において、今日の時点とあたかもほうふつたるものがあると思うのでございます。すなわち、昭和三十年、三十一年と、当時わが国経済が、今日と同じように急テンポに発展をいたしまして、同時にまた、当時急激な設備拡大が行なわれたのであります。これはスケールにおいてその程度こそ違います。しかし質においては、あたかも今日の経済事情と全く似通ったものがあると思うのであります。しこうして、当時財政政策担当者は、今日の総理であられますあなたが、大蔵大臣としてその責任を負われておりました。従って私は、当時のことを回顧いたしまして、そうしてこの際その教訓を学び取るということは、決してむだではないと思う。よって私は、そのような考え方から、某新聞縮刷版をとりまして、そこでその当時の経過がどんなものであったかを、その新聞の中から、足取りを調べてみました。そういたしますと、こういうような形に現われておるのであります。  すなわち昭和三十一年十二月二十三日に石橋内閣成立をいたしまして、そうして池田蔵相が就任をされた。昭和三十二年の一月七日、この当時すでに景気過熱の様相が現われて参りましたのに対しまして、日銀総裁山際氏は、こんなことを述べておりました。設備投資を軸とした好景気がこれ以上続くことは、インフレになる危険があるということで、きびしい態度の表明が行なわれたのでございます。同時にこの設備投資限界輸入性向に大きな影響を与えまして、輸入依存度が強かったために、国際経常収支が非常な逆調になりまして、十二月の輸入信用状が三億ドル、輸出信用状が一億九千五百万ドル、こんな形で、経常収支は大きな赤になりました。にもかかわらず、一月の九日、予算編成方針が決定されましたときには、これは積極政策を盛ることにいたしまして、同時にまた、当時も同じように、輸送の隘路を打開するということでありましょうか、運賃の値上げも行なわれました。そうして、財政基盤強化方針が打ち出されておったのでございます。二月上旬ごろ、ここの予算委員会の議論の焦点は何であったかと申しますると、これまた本日と同じように、景気論争にその重点が置かれておりました。総理大臣施政演説積極財政であり、大蔵大臣財政演説経済拡大を推進するというところにアクセントが置かれておりました。それから、二月十一日には、大蔵大臣——あなたは、インフレ心配は絶対ない——インフレ心配はないという、この点については、私は当たっておったと思うのでございます。かくて二月二十三日に石橋内閣が総辞職し、そうして岸内閣成立をいたしました。それから、二月の月末ごろになりまして、米国の好況頭打ちになってきた。結局伸び悩みになり、頭打ちになりまして、日本経済に対する警戒信号が発せられたのでございます。そうして三月二十日には公定歩合引き上げが行なわれておるのでございます。こういうような形で、だんだんと好況の頂上は近いから銀行筋でもさまざまの警戒論が現われて参りまして、四月の下旬には、大蔵省国際収支改善について検討をされて参りまして、さらに五月の八日には公定歩合の二厘の再引き上げが行なわれておるのでございます。大蔵省では預託外貨の引き揚げと輸入金融引き締めをその時点にやりまして、同時に日銀窓口規制強化もそのころ相前後して行なわれたのでございます。そうして、五月の二十五日には、池田大蔵大臣は、投融資計画圧縮はしないと、新聞で、これは断定的に言明をせられました。ところが、だんだんと国際収支逆調が大きくザクロの口を開いて参ったものでありますから、二十日ばかりたちました六月十四日には、閣議決定をもって国際収支悪化防止に対する総合対策が立てられまして、そうして六月の十九日には、これに対する緊急対策に基づいて財政投融資一五%の繰り延べを含むところの強烈な引き締め政策がとられたのでございます。私がここで特に御留意を願いたいと思いますることは、当時も、池田大蔵大臣としては心配はない、だから投融資計画の縮小はしないのだ、まあまあちょっとやそっとのことでは心配しないで、日本経済拡大均衡の方向にとにもかくにも進んでおるのだからという言明がありました二十日ばかり後に、結局は財政投融資の一五%繰り延べから、その当時の総合政策を拾ってみますると、ずいぶんなことが行なわれております。財政投融資計画は当初計画に対して一六%の圧縮でありますか、官庁営繕費二〇%の繰り延べ公共事業費は前年度からの繰越額を若干上回る繰り越しを行なう。それから金融引き締めはずっと行なわれまして、そうして運用部保有にかかる公社債七百億円を市中に売却するというような非常手段といいましょうか、荒療治が行なわれたことでございます。すなわち当時の積極政策から急転直下いたしまして、そうして異常の緊縮政策がとられまして、さて経済事情はどうなったかと申しますと、御承知通り神武景気から仁徳不景気というようなことで急転直下の奈落というような形になりました。  私はこの点について——むろんその当時とはスケールが違います。また外貨事情もそれは違いましょう。外貨事情の問題は後ほど国際収支の面において数字に基づいていろいろと意見を交えたいと思うのでありまするが、いずれにしてもこの池田財政というものが、経済原則、ドッジ・ラインの昔のことは問わないといたしまして、積極政策に転じられました、そういう方針をとられました、そのたびごとに、何となくその前面に危険信号が上がって参る。この場合の幕切れはこんな形で非常に悪い。だといたしますると、この段階においてこの教訓を何とか一つ生かして活用されるようなお考えはないのであるか、またその必要は全然ないとするならば、その理由は何であろうか、こういうことについて、この三十二年度の経済実勢、今日われわれが当面いたしておりまするこの経済情勢、こういうものと考えあわせまして、総理所見についてあらためてお伺いをいたしたいと思うのであります。
  6. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国際収支上の危機という言葉は少し強うございまするが、赤字状態昭和二十八年と三十二年、二度ございました。私は昭和二十八年の国際収支上の赤字に対しましては、ちょうどそのときは自由党の政調会長でございまして、二十八年に外国を回りまして、そうして状況を見、二十九年の一兆円以内の予算大蔵大臣の小笠原君に進言をして、そうして為替上におきましても昭和三十二年にやった措置よりももっと強い措置をとりました。昭和二十八年から九年にかけまして……。そうしてその状況世界好景気によりまして、昭和二十九年、三十年はちょっとやはり伸びる前の縮かまる格好をとろう、こういうのでありましたところ、世界好景気が急に参りましたので、二十九年からはすぐ黒字になりました。  それからそういう経験をもちまして三十二年の予算を作ったのでございます。このスケールが違うということは、春日さんがおっしゃったから申し上げませんが、ほんとうにスケールが違います。と同時に、あのときには三十一年の秋の初めに起こったスエズ運河紛争によりまして、世界状態一触即発であったのであります。二十九年、三十年、三十一年と、大体三億ないし四億の黒字が続きました。従って外貨が相当あるということと、スエズ運河一触即発状態相当物が上がってくるというので思惑輸入をいたしました。すでにそれは一月のときからわかっておりますので、思惑輸入をなるべくとめようといたしましても、政府として思惑輸入をとめる手はございません。そこで私は議会で、今外貨は減っても物がどんどんふえておるのだから心配はない。預金が在庫品にかわるのだということを大蔵大臣として答弁いたしました。しかし、それにいたしましても、今度は逆に、大蔵大臣国際収支心配はないといっても、為替統制外貨予算をうんと切り詰めてやるのじゃないか、外貨不足によって輸入が思わしくないようになるのじゃないかというので、またスエズ運河思惑に加えて外貨不足思惑輸入をしたのであります。従いましてあのときにおきましては、これは年度計算年計算で違いますが年度計算では大体四億から五億の赤字が出ました。そのときに私が輸入原材料増加を見ますと、七億ドルないし八億ドルの輸入原材料があったわけです。そこで国際収支赤字があっても日本経済としてはこれは大丈夫だ、しかし、思惑輸入があるからというので、昭和二十九年にやりました為替管理措置をとったわけであります。私は七月にやめましたが、そのときに、日本経済は健全である、十月からは黒字になるということを申してやめたのであります。これは縮刷版をごらん下されば、はっきり私は十月には黒字になりますよ、日本経済心配ないのだ、こういうので私は大蔵大臣をやめましたが、はたせるかな十月から黒字になりました。  そこで、そのときの状態を見ながら私は手を打ったのですが、お話通り思惑はございませんし、スケールはうんと違う。あのときは二十八億ドルの輸出に対しまして四十二億の輸入だったのでございますよ。今は二十八億ドルの輸出がずっとふえて参りまして四十数億の輸出状態になっております。そうして物価はあのときから比べますと、日本からの輸出品は大体三十年を基準にしまして九五%、輸入物資船賃の下がりによって八五%でございます。一割五分下がっております。しかも世界好景気を見越して、品物が安いとき、船賃の安いときに入れようということと、生産伸びによります輸入原材料が減っていること、そうして在庫率在庫指数も減っていることを考えて、羊毛、綿花、くず鉄、鉄鉱石等をある程度ふやした今の状態は、私は不健全ではないと考えておるのであります。ただ思惑があってはいけません。しかも私の見るところでは、今後為替・貿易の自由化によりまして、日本産業基盤を強化し、近代化するための機械の輸入はある程度認めなければいかぬ。私はこういう点から見まして今注意はいたしております。決して楽観はしておりませんが、春日さんの御心配になるような、昭和二十九年とか三十二年にとったような措置をとるべきではない。  そうしてあなたは急転直下と言われまするが、三十二年、三十三年の生産伸びは、皆さんこれも縮刷版でごらん下さればわかりますが、決してGNPも落ちておりません。不景気とは言われますけれども、これは伸び方が非常にゆるくなって横ばいよりもちょっと上へいっておる。不景気というものはそういうものではない。伸びていってすっと谷になるといいますが、あのときの状態日本経済全体として谷になっておりましょうか。しかも通常在庫よりも七億ドルの原材料をやっておりましたから、三十二年の十月からどんどん黒字になりまして、そうして日本経済の今日をあのときにもたらしたと私は考えております。人は非難いたしましょう。しかし私は自信を持っておる。それは、私があのときアメリカに参りまして、アメリカ銀行家から日本のあの経済伸展に伴う国際収支のときに打った手はほんとに賞賛すべきものだ、君は当路者として話をしてくれと言われて銀行集会所で講演をしたことがあります。これは自画自賛じゃない。アメリカ人外国人はそう見ております。だからあれが生産が減ったり失業者が非常にふえたり、こういう場面は出ずに、ずっと急激に上っていった二十九、三十、三十一年の分が、上り下りが非常に少なくなって、横ばいよりちょっと上程度だということをお考え下さいまして、三十二年暮れから三十三年、三十四年、三十五年の上昇のもとはあのときにあったと私は考えておるのであります。だから私はきのうも申し上げましたように、過去の経験と、長い目で見てずっとやっていけば、今そう非常手段をとるべきでなしに、またあまり息切れのするような走り方をせずに、ステディにやっていくことは必要でございますが、特別措置をとる必要はない。また私はそのときには皆さんと御相談いたしまして、適当なさじかげんをするにやぶさかではございませんが、今のところは、楽観はいたしておりませんが、そう御心配になることはない、こういう結論でございます。
  7. 春日一幸

    春日委員 何となく原則論になるみたいでございまするけれども、私は資本主義経済自由経済というものは総理も御承知のことであろうと思いますが、野獣的な、いうならば原始的な一つの性向を持っておると思うのであります。従ってこれを近代経済にコントロールいたして参りまするためには、山の高さと谷の深さというものをできるだけなだらかに財政金融で調整をはかっていく、それはやはり政治の力でやる以外に道はないと思うのでございます。私は三十二年度後半期におけるあのような外貨危機、その結果としてのおそるべき不況、こういうようなものを克服するためにとられた措置というものは——私は長く大蔵委員をやっておりますから、この点についてその当時のいろいろなポジションを記憶しておるのでありますが、その当時、昭和三十一年の秋ごろ、日銀調査局の関根君がいわゆる関根警告というのを発しまして、今にして設備投資というものを抑制するにあらざれば、後日大へんなことになる、外貨危機を招来して非常な荒療治をせなければならぬ、だから早期にこれは緊縮政策をとらなければならない。財政は緊縮、金融というものを抑制せなければならぬ、こういう関根報告が出ておりまして、経済評論家の仲間でも、これは相当重視されました。けれども、私が今縮刷版によって申し上げた通りに、総理施政演説は積極的なものであり、大蔵大臣財政演説経済拡大、こういうところにありましたものですから、今日と同じようにこれが経済界の刺激をいたしまして、日銀の観測とはまた別の方向をたどっていって、今申し上げますような荒療治をせざるを得なかった。  そこで私が申し上げるのは、今総理の言われるところから判断をいたしますると、長い目で見れば結果はいい、それは日本国民の持っておりまするところの実力、生産力、英知と努力、こういうもののもたらす自然の結果であって、そこには政治の効果というものが何も現われていないと思うのでございます。私が申し上げるのは、やはり谷を埋め、山の頂をできるだけぶっかいて安定成長をはかっていくのでなければ、結果的によくなったとしても、そのつどつど谷間々々において国民の犠牲というものが現われてくる。失業者も出るであろうし、中小企業の倒産もあるであろうし、そういう犠牲者を出さないで、全体として均衡な発展をはかっていくためには、事前措置、予防措置というものが必要ではないであろうか。すなわち昭和三十四年度におきましての安定成長をずっと今日まで持続しておりますのについても、やはり昭和三十四年度において準備預金制度でありますとか、あるいは公定歩合の一厘引き上げでありますとか、そういうようなチェックをして今日に至っておることは御承知通りであろうと思うのであります。でありますから、どうかそういうような意味合いにおいて、一応大きな谷間にいっても、その谷間の向こうには必ず山があるんだから、やがて山へ上がっていく、経済は回復をして、そして拡大されていくんだ、こういうやり方ではなくして、できるだけその谷の中に落ちないで、山の中腹あたりから次の峰々へ歩んでいけるようなコントロールというものが必要であり、今そのコントロールをするの時点ではあるまいか、こんなふうに考えておるのでございますが、この点はいかがでございましょうか。
  8. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今政府がコントロールする時期ではないと思います。ただ特殊の業種につきましての設備投資拡大につきましては、いわゆる行政上とられる措置は私は通産省でとると思います。三十二年のあの政策についていろいろございますが、あのときには道路予算を一兆円でやっておる。そして鉄道の運賃を引き上げまして鉄道建設をやりました。私は今から考えると——ちょうど予算で今度道路五カ年計画二兆三千億といっております。あのときに一兆円、倍以上であります。あのときにやっぱり一兆五千億ぐらいやっておいたらよかったのじゃないか。また鉄道も運賃を引き上げてやりましたが、まだまだ足りなかったと私は考えることもあるのでございます。ただあのときの経済とはよほどあれになって参りましたから、私はこの程度をやっておかないと、日本人の英知と努力がはっきり現われないようなことになってはいかぬ。だから政府といたしましてはそれを見ながらやっておる。ただ民間におきましていたずらに、政府が健全な積極政策だからわれわれは相当不健全でも思惑をやっていこうかというような気が起きたならば、これはゆゆしいことでございますからとめなければなりません。従って最近におきましては、銀行家もある程度そういうことを考えておられるような状態でございまして、私はけっこうなことだと思います。
  9. 春日一幸

    春日委員 どうも総理はみずから持することあまりに頑迷固陋みたいなものでまことに度しがたい印象を受けるのでありますが、この際一つ、ならば水田大蔵大臣から所見を伺ってみたいと思うのであります。  国内資金需要面について大蔵大臣はどう考えられておるか。すなわち、昭和三十五年度末は前年度末に比べて日銀貸し出しは今総理もおっしゃった通り二千二百億でありますから、加えて六千四百六十一億、そして今度は日銀券発行高でありますが、これまた二千億円余を加えまして一兆七百七十億、膨大なものであります。この日銀券の増発が二千億円、比率にいたしまして二二・九%、年度間で二〇%をこえて増発されたのは、これは総理は御記憶が正確でありましょうが、とにかく昭和二十五年以来初めてのことであります。この増発の傾向というものはなお本年度に持続されております。このような日銀貸し出しの増大や日銀券発行の増発、これは生産、物価、賃金などに作用して循環的な過熱現象に追い込まないとは、私はこれは保証することができないと思う。わけてスペキュレーションがないと言われる、スエズ運河のときと情勢が違うと言っておりますけれども、どのような事態がどのように起こるか、寸善尺魔と申しまして、いいことは少なくて悪いことのみ多かりけるという世の中ですから、特に朝鮮問題、ラオス問題、キューバ問題等含みまして、あのようなスエズの規模の紛争がいつ何どきこの日本の近くに起きないと、これまた断定できるものではございません。でありまするから、私はこの経済のスペキュレーションというものは予測しがたく、これは突発するのでございます。でありますから、ある程度どのような事態にも備え得るだけの体制というものは必要であろうと思うのでありますが、それはそれといたしまして、大蔵大臣、今のような通貨の増発の傾向、その継続的なあり方、日銀貸し出し、オーバー・ローンのこのような激しいあり方、これは循環的に経済過熱に対して大きな悪い影響を与えはしないか、この点について何ら警戒的な印象を持たれてはいないか、大蔵大臣の確信ある御答弁を願いたいと思うのであります。
  10. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 所得倍増計画にも前提の問題として書いてありますように、成長政策をとる場合に、その成長に見合った必要な資金量をいかに円滑に供給するかということが一番大事であって、これができないとあなたの言われるような波を打たせてしまうというので、この波を小幅にするためには、必要資金の供給を円滑にするということが一番前提的なことだ、と書いてある通りに私もそう思っております。従って私ども経済伸びるに従って、必要とする資金の供給をどうやるかという問題でございますが、これは非常にむずかしい問題で、実際において今の現状においてこれだけの金が出ておるのがいいのか、出方が多過ぎておるのか、あるいは通貨の出方が少な過ぎておるのかということは、いつのときでもこれはむずかしい問題で、なかなか判定がつきません。従ってこれはやはり実情に応じた現在の需要のあり方、それに対してどういう緩和策をとるか、あるいはどういう窮屈さがあってもいいかという問題を実情に即して私どもは判断して、そのときどきの手を打つよりほかに仕方がないと思っております。  今われわれに見通せるところでは、この六月末ごろには非常に資金需要が多い。多いときに揚超の時期に入りますので、資金が非常に窮屈になるということは、あらかじめわかっておりますので、これをいたずらにゆるやかにして、今おっしゃられているような設備投資を刺激するというようなことがあってはなりませんが、しかしそうかと言ってこれを押えるために本来あるべき必要な資金というものを不円滑にするというわけには参りませんので、そこらをどういうふうにやるかということは私どもが今一番頭を使っている問題で、これはそういう弊害のない形の資金政策をとるというので、今いろいろ私どもも考えて準備しているところでございますので、今言われましたように、いたずらに金が出過ぎて心配だという事態にだけは絶対に見通しとしてはならないものと私は考えております。
  11. 春日一幸

    春日委員 そういうふうにお伺いをしておるのではありませんが、ただ申し上げたいことは、昭和二十五年以来の飛躍的な日銀券の増発、それから貸し出しにいたしましても、一年間に二千二百億というような貸し出し増、これは異様な現象ではないか、これがストップの傾向にあるならばいいのでありますけれども、なおそういうような形でその傾向が続いておる。こういうものを手放しでほかっておいて差しつかえないと大蔵大臣として確信が持たれるかどうか、こういうことを伺っておるのであります。二二・九%というような前年度対比率、こんな通貨の増発というものは経済の常識ではあり得べからざることである、まれに見ることである、しかし政府積極政策が刺激をいたしまして、全面的に民間においてこのような設備投資の傾向を誘発をしておるのでございますが、結局その結果として、こういうような日銀貸し出しの増、通貨のこのような発行が著しくふえてきておるこの傾向を何と考えられておるか、大蔵大臣から伺っておきたい、こういうことでございます。コントロール云々という問題ではなくて、この現象をこの時点において何と受け取っておるか、これでございます。
  12. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 これは経済の規模が大きくなった実情からも、また現実に資金需要の非常に旺盛な実情から見まして、今程度のものは決して不健全なものではないと考えております。
  13. 春日一幸

    春日委員 これは非常に困ったことであろうと思うのでございます。日銀当局はこの傾向に対しまして、相当神経をとがらして、窓口規制に転じようとしておりまして、それぞれの貸し出し計画について削減措置をとりつつあるのでございます。そういうようなムードが現実にある。それは必要を認めて、日銀が円の通貨価値を確保しようというような責任的な立場からその措置をとっておりますのに、肝心の大蔵大臣がこれは適切であろう、もっと出てもいいんだというようなことを述べられておりましては、その結果まことにおそるべきものがありはしないか、まことに深憂にたえないところでございます。  しかし、時間がありませんので、その問題はその問題といたしまして、総理にお伺いをいたしたいことは、日本経済高度成長は、その計画されておりますように、またただいま申されましたように、毎年何%というような一本調子の成長というものが可能であると考えられておるのでございますか、この点についてお伺いをいたしたいと思うのでございます。本来、資本主義経済におきましては景気循環の原則というものは避けることができないと思います。従来、それを経験をして参ったところでございます。すなわち、景気の後退が一転して景気の上昇となり、またこれが成熟をいたしますると同時に、再び反転をいたしまして景気の後退となって参るのでございますが、これは何といっても資本主義経済原則的な一つの姿でございます。過去においてはこの景気循環を自然に放置をいたしまして、そうして経済自律調整作用にこれをゆだねておった。けれども近代におきましては、これを財政、金融政策によってコントロールをして参ってきた。そうして景気の波動を安定的に小幅にとどめる、こういうことが可能であり、またその試みが国民全体の福祉のためにとられて参っておること、御承知通りであろうと思うのでございます。そこで、今日、日本経済が趨勢として高度成長の飛躍的発展段階にあることは、これはもう何人も是認しておるところでありますが、このことは決して私は一本調子の発展というものが可能であるということではないと思うのでございます。従いまして、高度成長は具体的には景気循環の波動を通じて実現されるというこの資本主義の原則的なあり方、これを無視することはできないと思うのでございます。でありますから結局はそのような場合において、国家の責任というものは、できるだけの振幅を小幅にとどめていく。国民全体の立場において、その犠牲がある一点に集約せられるようなことのないように努力をしていく必要があるのではないか、そのために財政、金融というものが政府の手に握られておると思うのでありますが、この一本調子でずっと高まっていくという、そういう考え方、これはどんなふうの御理解になっておりまするか、総理より御答弁願いたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 資本主義経済のもとにおきましては、計画的なあれでございません、市場経済でございますから、伸びの大きいときと少ないときもありましょう。あるいは横ばいのときもあり得るのであります。過去の十年間の平均の伸びは九・一%くらい、過去五年間を平均しますと九%余ということになっております。しこうして生産伸び、国民所得の方のあれも、昭和三十四年は前年に対しまして国民所得は一七%伸びましたが、前年の三十三年は三十二年に対しましてそうは伸びておりませんという状態で、長い口で見れば九%くらいいっておりますが、そのときどきの様子を見ますると、あるいは多いときには一七%、去年も一二・三%と思いまするが、そういう波を打つことは考えなければならない。従って春日さんのおっしゃるようにその波をできるだけ高低を少なくすることは、財政経済上常に考えなければならぬ問題だと思っております。
  15. 春日一幸

    春日委員 従いまして、私どもが特に強調してやまないところは、景気が推移しておりまするこの現段階において、今こそ金融政策の弾力的な運用によって行き過ぎをチェックしていく、設備投資を抑制して景気の波動を大きくしないようにその予防的な措置をとっていくべきではないか、こういうことを強く主張してやまないのであります。しかし総理は今その段階ではない、こういうことを言われておりますることは非常に寒心にたえないところでございます。しかし時間の関係がありますのでそれは後日さまざまな結果が現われることによって論ずることにいたしまして、次は国際収支の悪化の対策についてお伺いをいたしたいと思います。  経常収支赤字、これはもうむしろ基調的なものではないか、これはさまざま論評がなされ始めておるところでございます。すなわち三十五年度の国際収支経常収支で七千万ドルの赤字、資本収支では六億七千万ドルの大幅黒字、差引総合収支で六億ドルの黒字であったといわれております。けれども本年一月以降の足取りをたどって見ますと、経常収支では一月が九千九百万ドルの赤、二月が九千三百万ドルの赤、三月が五千七百万ドルの赤、こういうことになりまして、資本収支じりではユーザンスの短期資金の流入等によりまして大幅黒字になってはおりまするが、結局総合収支じりでは経常収支じりの赤字を埋めてなお一月七千三百万ドル、二月六千三百万ドル、三月一千九百万ドル、こういうような黒字を総合収支では示しておるのでございます。ところが昨日来の御答弁によりますると、これは季節的な傾向のものであってそう心配はない、こういうようなことを言われておりまするけれども、だとすれば昨年の足取りはどうであったか、これを見てみますると、昨年は一月から三月が経常収支じりの赤字はわずかに六千七百万ドルでございました。これが本年一月−三月ではその赤字がかれこれ四倍の二億四千九百万ドル、昨年同期に比べて四倍になっておりまするから、これは総理が昨日来述べられておりまするような必ずしもシーズン的なものではない。季節的な要因のみにその理由を求めておられるということは、言うならば真実の事態を糊塗、隠蔽されておる作為の答弁のごとくにしか受け取れません。  のみならず輸入輸出の動向を大観をいたしてみますると、輸出は三十四年には二〇%伸びたものが三十五年には一七%の伸びにとまっております。輸入は三十四年度には一九%伸びたものが三十五年には二五%と大きく伸びを見せておるのでございます。このような輸出入の動きは、これはアメリカ景気の後退、それから国内生産の増大、これを反映するものではありましょうけれども、しかしこの米国の景気というものはまだ最近底入れ気配が見え始めたという程度のものであって、これも急激に上昇するというその保証はございません。また一方国内の設備投資意欲というものがいよいよ強大でありまするから、これが相当の外貨を食って参るということは、これは従来の実績が明らかに示しておる通りでございます。こういうような輸出停滞と輸入増大、これはもはや基調的な変化であると見るべきではないかと思うのでございまするが、依然として総理は、これは単なる季節的な現象であって憂うるに足らないと確信をお持ちになっておるのでありましょうか。この点についてもう一度、このような事実上の数字の経緯にかんがみまして総理の御見解を伺っておきたいと思うのであります。
  16. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 生産伸びますときには輸入が相当ふえてくるのでございます。その問題と、日本というのは上半期は輸入の増大があるというこの二つ、それに向かってもう一つつけ加えなければならぬことは、今は輸入原価が先ほど申し上げましたように一割五分くらい五、六年前に比べて下がっておる。その一割五分ぐらい下がっておるのが今度上向くのではないか。この三つが原因いたしております。しからばその三つを兼ね合わして一−三月で二億五千万ドルの経常収支の赤がいいか悪いかという検討をいたしますると、これは私はこれでいいとは申しません。いいとは申しませんから輸入の必要なものはやらなければならぬ。従って片一方では輸出増加をはかっていかなければいけない。輸出ムードを起こすべきだ、こう考えておるのであります。輸入をとめるという状態よりも、これに見合う輸出をふやしていこう、この方法でいくべきだと思います。
  17. 春日一幸

    春日委員 時間のないことがまことに残念でありまするが、いずれにしてもそのような方向で強力な具体策を効果ある形でとっていただかなければならぬかと思うのであります。  私はこの際国際収支改善という点につきまして、この三十六年度の経済見通し、これでは国際収支について輸出は九・四%増、輸入は一〇・三%増、こういうふうに押えておられる。経常収支で一千万ドル、資本収支で一千九百万ドル、それで結局は二億の黒字が本年度出る、こういう計画政府がみずから見通しを立てられておるのでございます。この見通しはもうくずれて参っております。せいぜいとんとんでおさまることができればいい。とんとんにいたしましても一億ドルの予算狂いということになると思うのでございます。そういう立場に立ちましてこの三兆六千億というような予想される強烈な急激な設備投資、これが輸入依存度は大体において一三%ないし一七%、こういう形で推算をしてみますると、ここに旺盛な設備投資が、さらに大きな輸入増大の要因になってきはしないか、そのために外貨が相当減ってきはしないか、こういうふうに思われるのであります。  総理は一昨日の質問に答えられて、とにかく実額としてかれこれ十二億ドル程度外貨の保有があるし、昭和三十二年のときは実額二億五千万ドル程度しかなかったんだから、この準備外貨を食いつぶしていけばそれは心配なくやっていける、こういうふうの意見が述べられておりました。私どもそうなることを望むのであります。けれども万が一ということがあります。特にユーロ・ダラーなどというものは、信用によってここに預託されておる形のものでございますから、従いまして条件が変わって参りますと一本にまたもとへ戻っていってしまいます。大きな額が流出をするような場合がなくはないのでございます。あるいは輸入思惑が行なわれるような外交情勢も、絶無ではないと思うのでございます。でありますから、そういうときになってさてというようなことになって参りますと、わが国経済そのものの中に大きな犠牲をしいる形になって参りますので、今から事前措置、予防措置、そういうことのためには、やはり設備投資というものの金融面からくるところの抑制、それから外貨を確保することのための的確なる輸出増進の具体的な施策、こういうものを推進していくのでなければ、こういうような形の中において、昨日の永井君に対する御答弁の中では、大体総生産の中の一一、二%しか輸出をしていないのだから、また外国の例も少ないのだから、全体としての国家経済をはかる場合においてはというようなお話もございました。けれども、こういうような外貨事情から考えますと、何といっても集約される一点は輸出の増大にあると思う。それをはかることのためには、何としても的確な具体的な施策というものがここに強く打ち出されなければ、はからざる結果に陥らないとは保証しがたい。そういうことになってしまってからでは何にもならないのでございます。すなわち、国際収支を改善するという方向について、今述べられたお考え方のほかに、具体的な政策として何かお考えになっておるものはあるでしょうか、それからお伺いをいたしたいと思います。
  18. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 経常収支の黒赤は、やはりこれも長い目で見なければいかぬと思います。昨年三十五年度は七千万ドルの赤字でございましたが、その前の年は二億ドル、正確に申しますと一億九千万ドルの黒字、その前の年は経常収支で五億ドルの黒字になっております。その前のときは九千万ドルくらいの赤字、だから、本年の見通しにつきまして、きのう通産大臣が二億ドルくらいの経常収支の赤になるのではないかとこう言っておりましたが、まあそのくらいになるかもわからぬと私は思っております。  しかし、今の輸出振興策といたしましては、これは今年度の予算におきましても従来よりも増してやっております。また、予算面には出ておりませんが、輸出見本船の新設とか、私はやはり低開発国と通商上の条約を結んで、われわれが海外で自由に働けるような立場をとることが必要だ、こういうので就任以来その辺に力を入れておるのであります。またガットの三十五条の問題にいたしましても、手を変え品を変え、イギリス関係のユナイテッド・キングダムの連中には非常に働きかけております。それからまた私は商社を集めていろいろ督励もいたしておりますし、またこれ以上の輸出振興についての策も関係大臣に私は要請しておる状況でございまして、できるだけ振興策は今後とっていきたいと思っておるのであります。
  19. 春日一幸

    春日委員 それでは総理に対するお約束の時間が終了いたしました。  次は関係閣僚にお伺いをいたしたいと思うのでありますが、まず経済企画庁長官にお伺いをいたします。  五月十日の新聞報道によりますと、経済企画庁はこんな工合に述べられております。「経済企画庁は、ここ四、五年間の経済が目ざましい高度成長を遂げたにもかかわらず、所得の格差が縮まらないばかりか、米国、西欧諸国とは逆に広がる傾向にある事実を重視している。このため、国民所得倍増計画の達成を目ざす今後の高度成長政策の推進にあたっては、同時に社会保障政策、税制の改正、完全雇用政策などを通じて所得の再配分をはかる必要があるとして、格差縮小政策の強い実施を政府各省に呼びかける考えである。」と報道いたしておるのであります。このような考え方でありますけれども、これは具体的にはどのような措置をおとりになっておるのでありますか、お伺いをいたしたいと思います。
  20. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 その新聞を私は実は見ておりませんし、どういう出所で出たのか知りませんが、現在のところにおいて、各省に具体的に所得格差の是正についての強い政策を要請しているという事実はまだございません。所得格差の是正ということについては、私たちももちろん考えなければならぬ立場でございまして、その点についてはいろいろ部内では検討はいたしておりますけれども、具体的に各省に対して要請はまだいたしておりません。
  21. 春日一幸

    春日委員 では長官としてではなく、経済企画庁のしかるべきオーソリティがこの見解の表明をしたものと思うのでありますが、この新聞報道の中身、すなわち所得格差が縮まらない、本日の東京新聞にもいろいろのアンケートに答えてのデータが報道されておりましたが、それもまたこのような事柄を裏づけいたしておるかと思うのでございます。現在この所得倍増計画なるものも、まだそんなに実績をおさめてはおりませんが、しかしこれについてどうお考えになっておりますか。とにかくかれこれ八カ月、十カ月の治績を通じまして、所得格差を圧縮するということは一つの池田内閣の政策の目標でもあったと思うのでありますが、その効果は現われ始めておると思われるか、あるいは何らそのような効果を現わしてはいないとお考えになっておりますか、いかがでありますか。
  22. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 所得格差の是正というのが一朝一夕でできるものでないことは御承知通りでありまして、池田内閣成立以後八カ月、具体的にその効果が出ているかという御質問でございますけれども、私は全体的な感じから言いますと、低所得者の数が逐次少なくなりつつある事態というものは、所得格差が逐次縮まりつつあるものであるということを意味するものであると考えております。従って所得格差は是正の方向へ今進行している、こう考えております。
  23. 春日一幸

    春日委員 本日の新聞のそのとりましたアンケートによるデータによりますと、現実には所得というものがふえておる者も若干あるが、ふえていないというような者も同じくらいの数である。そういうことでありまして、当然あのようなベース・アップもなされておりますし、また賃金アップもなされておりますから、そのことは当然のことではあると思いますが、しかし一面には、中小企業のもとにおけるその関係労働者、こういう者の低賃金、重労働の実態は、なお実質的改善を見るの段階には至っていないと思うのであります。当然政府所得倍増計画を推進されるにあたっては、重要なるテーマとして所得格差を圧縮することのための善良な努力をされなければならないことは、論を待たないところであるのであります。  従って私はこの際石田労働大臣にお伺いいたしますが、お見えになるのがおそかったものですから、長い間お待ちいただいて恐縮でありましたが、私はこの際最低賃金法について、もはや現行法律そのものについて再検討をされるべき段階に至っておるのではないかと考えるのでございます。当時、最賃法は相当の非難がございましたけれども、まずないよりもということで、とにかくああいうような法律が成立をいたしました。けれども、さぞかし労働委員会で深く論じられておるところと思いますが、現行のそれは最低賃金としての本質を備えてはいないと思いまするし、さらに実施されましたその成果から判断をいたしましても、評価いたしましても、これは大きな政策としての指導性はあまり有力なものではないのではないかと思われまするし、加えて高度成長が次第に実質的なその成果を各般に及ぼそうといたしておりますときには、この最低賃金法そのものについても、この経済の実勢に合わせて何らかの再検討、改正的な方向に向かって検討を加えるの必要があるのではないか。そのことは所得格差を圧縮するという政策効果をもねらいながら、そういう方向へ踏み切るべき段階ではないかと思うのでありますが、大臣の御所見はいかがでありますか。
  24. 石田博英

    ○石田国務大臣 結論から申し上げますと、最低賃金法の内容について改正の方向へ向かって検討を開始すべき時期が来たように思っております。事実検討を命じております。先ほど現行の最低賃金法の内容、性格その他について御議論がございましたが、もちろん現行の最低賃金法がそのままの形で完全なものと思っておるわけではございません。まず第一に最低賃金制というものを各般に広めていきます。普及していきまず役割を果たしつつありますし、また実際上実施以来一年半でありますが、その一年半の間にすでに七十万をこえる対象労働者に普及をいたしました。経営者の数も四万をこえておるわけであります。そこで私どもは、この最低賃金法を三十六年を初年といたしまして、今後三カ年で二百五十万を対象とするところまで普及をさせたい。この普及をいたして参ります努力を通じまして、一には最低賃金制というものの理解を広め、第二には、その中から、実施を通じて問題点を拾い上げ、そうして漸次理想的なものへ改めていきたいと考えておったのであります。しかしながら現在まで実施をいたしております過程において、この最低賃金法自体が決して業者間協定だけを規定しておるものではないのでありますが、実際は業者間協定が大部分である。しかもその中には、日本最初の法律でありましただけに問題点も多いのでありますから、これに検討を加えるべき時期に来たと考えておる次第であります。  それからただ実際的効果、これはもうすでに最近でき上がっておりますものは十五才で二百三十円から二百五十円というところが大勢を占めるようになって参りました。私どもは早い時期にできました低い最低賃金額につきましては、これを現行作り上げられておるものに引き上げるように目下行政指導いたしておりますので、行政的効果あるいは格差縮小という方向に向かっての現行法の果たした役割というものは私は決してむだでなかった、こう思っておる次第であります。
  25. 春日一幸

    春日委員 大臣の御答弁によりますと、現行最賃法は再検討段階にあり、さらにその作業に着手した、こういうことでございまして、私どもの要望するところとその方向は合致するのでありますが、何と申しましても、今大臣も述べられました通り、これは本質的にさまざまの問題点が含まれたまま施行されておるものであり、しかも現在の高度成長経済の実勢に照合いたしますとなおなお、その業者間協定というものは労働者が期待するそのレベルよりも相当の隔たりがあるのが実態であろうかと思うのでございます。わけて、今二百五十万を対象にされて三カ年計画だということでございますが、御承知通り中小企業関係労働者、そのもとに働く店員、工員の労働条件は、一口に言えば低賃金、重労働、従いまして、二百五十万というものを一応教訓的に、PR的に対象とされることはわかるのでありますが、しかし所得格差を圧縮するというこのような政策目標から考えましても、やはり重点はそういう低賃金、重労働の立場に置かれておる多くの労働者の労働条件改善、こういうところへ飛躍的な焦点を置いていただく必要があろうかと思うのでございます。従いまして、これは当然御研究のねらいもそこにあろうかと思いますが、もはやある時点において、ある一定賃金というような指導性のあるものに踏み切るの段階ではないか。当時、そういう方向に対して非難的でありました諸君も、だんだんとそれに対して理解を持って参ったようでございますので、できるだけ一つ善処を願いたいと存ずるのでございます。  あわせて私、この所得格差を解消することのための政策といたしまして、通産大臣にお伺いしたいのでありますが、伺いますと、農業基本法は今国会においてその日程に上程されました。しかしながら中小企業の問題はいまだしの感がございます。中小企業庁で発表されたところによりますと、中小企業基本法なるものを早期に提出をしたい、党としても成案を得たい、政府としてもそんな努力をしておるということでございましたが、中小企業基本法なるものはどういうふうにお考えになっておるのでありますか。政府としてあるいは党として、次の国会に中小企業基本法を上程し、中小企業者と大企業との所得の格差、そういう二重構造を是正するための政策的な努力が払われようといたしておるのであるかどうか。中小企業基本法に対する政府の構想をお伺いいたしたいと思います。
  26. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 農業基本法を生まれた根拠は、私は相当根深いものがあると思うのであります。従来の農業政策というものを全く脱皮して、そして近代的な農業というものに政策を踏み切ろうというのでございますから、これは今日の法律の提案を見るまでに、相当苦しみ抜いた結論であるということを察するのでございます。これとやや趣を異にしておるのが中小企業でありまして、今農業基本法が論議されておる、中小企業もこの例にならって基本法を作るべしというような意見もないわけではないように私も考えておりますけれども、農業の衣がえと違って、中小企業の問題についてはいろいろすでに各方面から論議されてきておるのでありまして、各般の施策が行なわれており、従来の考え方を一変して云々というような状況では私はないように考えます。そうかといって、中小企業と大企業との格差是正について考えないのかということでございますが、これはもちろんその点につきましては、中小企業の政策の基本でございますから、すでに現在の施策がすべてそういう方針のもとに行なわれておるのでございます。これも集大成して基本法を作る考えはどうかということにあるいはなるかと思いますけれども、御承知通り中小企業と申しましても非常に千態万様であって、農業といったようなわけには参りません。そういう考えでございまして、そのねらう精神についてはもちろん私は人後に落ちないのでございますけれども、はたしてこの基本法を作って集大成をするという、その方法についてはよほど慎重に研究し、考慮しなければならぬ問題が多々あると思うのでありますから、この際は御趣旨はよくわかりますけれども、次期国会に提案するかどうかといったようなことについては、まだそういう段階ではないということをお答え申し上げておきます。
  27. 春日一幸

    春日委員 この問題は、先般中小企業庁筋の動向として新聞に載せられておりましたし、のみならず労働者には労働基本の三法があり、またこの際農業所得を増大する意図を持ってあのような農業基本法等も提出を見つつあるのでございます。現実の問題としてわが国産業構造が二重構造になっており、その底辺に中小企業の惨たんたる状態がある。単なる中小企業問題ばかりではなく、そのもとに働く千七百万の労働者の労働条件の改善の政策目的からいたしましても、中小企業の所得の増大をまずはかるということは必要にして欠くべからざる事柄であろうと思うのでございます。協同組合法や凡百の特殊立法はありますけれども、それによっては効果がおさめられてはいない。団体法がありといえども、それは不況となったときの手段であって、さらに所得を増大することのための積極的立法ではございません。そういう意味で中小企業の所得の増大をはかり、千七百万をこえるところのその多くの勤労者に対して労働条件改善の基礎を確保していくということは、これは当然にして必要な事柄であろうと考えるのであります。ただいま通産大臣はそういう方向については考慮しておるが、なお、ということでございました。中小企業庁でそういう作業に着手しておるといたしますならば、当然そのことを増進せしめられて所管大臣としてそのような政策効果をおさめるに足るところの所要の法的措置をとられることを強く要望いたしたいと存ずるのでございます。  次は、労働大臣にお伺いをいたしまするが、公労委の仲裁裁定は完全実施する慣行の確立についてでございます。私、資料によっていろいろ調べてみますると、昭和三十一年に石田さんが大臣に就任されまして以来、仲裁裁定は完全に実施をするという慣行が確立をされております。このことについてはその理解と決意に対して深い敬意を表するものでございますし、なお今回のこの予算案は公労委の裁定を実施するために必要な歳出の補正を行なわれるものでありまするから、この見解においては全面的にこれを支持するものでございます。ただし歳入補正については納得しがたい点がありますので、これは各省所管大臣に後ほどお伺いをするといたしまして、労働大臣にお伺いをいたしまするが、まず今回の補正による裁定の完全実施は、財源の見通しがあるから完全実施することができたのか、それとも裁定を尊重するがゆえに財源上の困難を克服して完全実施をされたのであるか、この点は、上林山君の御質問に答えられて、仲裁裁定なるがゆえに実施をいたしたと明確に答えられておるところではありまするが、なお明確を期する意味において、あらためてそのいずれであるか、一つ御答弁を願いたいと思うのでございます。
  28. 石田博英

    ○石田国務大臣 公共企業体の労働者諸君に対しましては、憲法で一般の労働者に与えられておりまする労働三権のうち争議権が与えられておりません。公共企業体関係労働法第三十五条はそれにかわるものとして仲裁裁定が労使双方にとって最終的なものであることを規定いたしておるのであります。そうしてまた三十一年の改正によって政府に努力義務があることを明確にいたしております。ただ御承知のごとく、予算の編成権、審議権の関係におきまして例外規定がございますことは事実であります。しかし私は公共企業体の労使関係安定の柱といたしまして、この公労法の精神を守っていくことが政府のとるべき基本対策であると考えておる次第でありまして、今回裁定を完全実施いたしましたのは、その金額が満足である、適当であるということではなくて、それが仲裁裁定であったからであります。
  29. 春日一幸

    春日委員 きわめてけっこうな御答弁でございまするが、ただ伺いたいことは、財源という問題は総理もしばしば述べられておりまする通り、これは準備されてあるものではなく、必要に応じて作るものである。それはまたそうであろうと思うのでございます。でありますから、今、大臣の御答弁によりますると、公労法三十五条の制約並びにこれを受けて十六条の規定、さまざまありまするけれども、それは国会の審議権に対する一つの形式規定であって、その実質の精神というものは仲裁裁定であるから、これは完全に実施すべきものである、こういうふうに大臣は確信を持って信条とされておるように思うのでございます。従いまして私はこの際政府は公労委の裁定については、今回のこの例にも見るがごとく、いかなる財源上の困難を克服しても、これを完全に実施することについて今後ともこれをただ単なるいい慣行ということではなくして、むしろ不文律みたような形で裁定には全面的に従うものであるということを本委員会においてむしろ天下に明らかに示されておいた方が、後日こういうような三公社五現業を中心とする公企体の労働の紛争に対処する立場において明確になると思うのでありまするが、その点はいかがでありましょうか。
  30. 石田博英

    ○石田国務大臣 予算上、資金上不可能な場合云々という規定は、私は単純に形式規定だとは思いません。今までわが国の財政や経済状態にかんがみまして、その実施を延期あるいは一部削除した事例がございますが、それは形式規定であるという論拠に立てば、やはり法の精神に反することになるわけであります。私はそうは考えません。そのときの財政事情、そのときの経済事情によってその当時としてはやむを得なかったものと思うのであります。また将来におきましても、そういう事態はこれは予測しがたいものでありますから、私は法律の精神が単純にそうだとは思わないのであります。しかし私は現在の財政状態、現在の経済状態、それから同時に公共企業体労働委員会の仲裁委員の各位が、わが国財政経済状態について十分配慮されるであろうということを信頼しての上に立って、そうして法の精神を私の責任を持っておる限りにおいては貫いていこうということを申し上げておるのであって、私の考え方は先ほどからお答え申し上げた通りであります。
  31. 春日一幸

    春日委員 私は石田さんらしくないと思うのであります。石田さんはこれが満足であろうと不満足であろうと、仲裁裁定なるがゆえにこれを実施したのだ、仲裁の道を憲法で求めておる以上、それを実施するにあらざれば公企体の労働基本権というものは守る道がなくなるのだ、仲裁の場所は他にはないのだ、最終的にこれに従わねばならない。また善意の努力をするということがある以上、そこに善良な努力を認めて、そうして予算上、資金上において難点があるならば、それはその方向において努力をなすべきである、こういうふうに今までは答弁されておりました。私は必要の限界をこえて余分なことを聞いたかと思うのでありまするが、とにかく私は、この法律が、三十五条、十六条が形式規定であるというふうにあなたに述べていただこうとは考えておりません。もとよりこれはこれといたしまして、その内容、実質ともに尊重せなければならぬではありましょうが、ただ前段で労働大臣が述べられましたように、やはり仲裁裁定というものは政府をも拘束するものである。資金上そういうものが困難であるならば、その財源は作るべきである。しかもその仲裁裁定の委員が、わが国経済の実情を理解するかしないかというような希望的な注文は、それは、いうならば越権の行為であって、機関として、政府によって選任され、責任を持って審議し、結論を得た以上は、その結論に従うのでなければ、その委員わが国経済の実情を知らない、財政の実態というものを知らないから従わないというようなことになって参りましては、せっかくの、三十一年以来あなたが大臣になられたことによって確立されたまことに権威ある慣行というものに、何となく汚れがつくと思うのでございます。私の質問は多少オーバーな点があったかもしれませんけれども、完全実施するんだ、この慣行は今後とも努力して実施していくんだ、守っていくんだ、こういうところへ集約されてもう一ぺん御答弁を願っておきたいと思うのであります。
  32. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は、単なる形式規定という御発言は、これは明確にしておかなければならぬということを申し上げたのであります。公労法の精神並びにこれを完全実施いたしました政府態度、それは先般から明確にいたしておる通りであります。これが公共企業体労使関係安定の基本であると考えております。
  33. 春日一幸

    春日委員 労働大臣もうけっこうであります。  そこで、今回のこの第一次補正の政府案の特徴でありまするが、これは一般会計から全くその財源の供給を受けてはいないという点は、特に異例のことであろうと思うのでございます。すなわち、それぞれの特別会計予算、それから政府関係機関の予算の内部で、それぞれ財源のやりくりを行なっておるのでございます。このような各機関の内部における財源の自己調達、こういうようなことは、私は制度上も疑わしい点があると思うし、どうも納得ができませんので、以降諸点についてお伺いをしたいと思うのでございます。  まず郵政大臣——郵政大臣がおらなければ大蔵大臣に兼ねて伺っておきたいと思うのでありまするが、この郵便貯金特別会計、簡保及び郵便年金特別会計における予備費の使用、この補正予算ではこの二つの特別会計の予備費の全額をそれぞれこの郵政事業特別会計の中に繰り入れてしまっておるのでございます。財政法第二十四条によりますると、予備費については、「予見し難い予算の不足に充てるため、内閣は、予備費として相当と認める金額を、歳入歳出予算に計上することができる。」こんなふうに規定をいたしております。従いまして、このような性格の予備費を、年度初めに、まだこの五月の中旬においてその全額を他に流用してしまう、こういうことは、財政法の建前から考えまして、予見せざる費用に充てるというその趣意から考えまして、これは異様なことではないか、財政法二十四条に抵触するの疑いなしとはしないと思うのでございます。わけて、この問題は、国家公務員に対しまするベース・アップが昨年十月に行なわれ、そうして当然それに従いまして、ずっと三公社五現業にやらなければならぬ、こういうような立場から十分予見し得たことでございまして、予見し得なかった支出に充てるという立場からいたしますると、予備費の流用、転用ということは、二十四条に抵触するんじゃないかと思いまするが、いかがでありますか。
  34. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私は、予見しがたい予算上の不足に対して政府が予備費を支出するということは、これは別に財政法の違反ではないと思います。ただ問題は、今おっしゃられたように、当初予備費を計上しておきながら、この予備費の全額を使用したということは不当ではないかということは、 おっしゃられる通りだと思いますが、今回の補正予算——承知のように、完全実施をするために財源的に私どもが一番苦労したのは、郵政会計、国鉄の予算でございましたが、今度郵便貯金、簡保は従来と方式を変えまして、従来予備費というものはございませんでしたが、今年度予備費を初めて計上しました。ところが、財源の捻出に非常に苦労いたしました結果、結局この予備費を使用する。じゃあとが困りはせぬかということでありますが、従来この会計には、予備費はなかったものでございますので、今までの実績を検査した結果、大体従来通りやっていけば、ここで当初予算に盛った予備費全額を使っても、そうえらい支障はないだろうということで、予備費を全額使用したというのがいきさつでございます。
  35. 春日一幸

    春日委員 何だかわかりはせぬです。ヒョウタンナマズというよりも、ナマズでヒョウタンを押えたようなもので、まるっきりそれはわかりやせぬ。いずれにいたしましても、財政法は、明確に規定いたしておりまする通り、一般会計、特別会計に適用される。そうしてまた公社等政府関係機関にも、法的には適用されないといたしましても、その精神というものは、当然これは踏襲されなければならぬと思う。そういう意味で、今お話しになったように、予備費というものが必要だから計上されてこの国会の審議を受けられたわけなんです。必要でないものなら、なぜ計上するのです。瞞着するもはなはだしいと思う。必要だから計上しておいて、そうして年度の初めに使ってしまえば、あと予見されざる経費の支出を必要とするの時点に際会したときに一体どうするのですか。私は、国会の審議というものはもう少し尊重されなければならぬと思う。こんなものは要りはしない、今までありはしなかったんだけれども、まあ書いておくというような形で、今までなかったものだから、こんなもの流用したって差しつかえないんだというような形で、当初予算でそのような案を国会の審議を求められたかと思うと、私はふざけておるのもほどがあると思う。私は、今後のために、こういう問題については十分一つ慎重に処理をされるべきであると思う。こういうような財源というものは、当然一般会計から新しく歳出を起こして、そうして正常な方式によって予算措置を講じられるべきものであって、まるでしどろもどろといいましょうか、あちらのものをくっつけ、こちらのものをくっつけ、これからいろいろとお伺いをしたいと思うのでありまするけれども、このやり方は、全く乱離こっばいである。こういうような予算の立て方というものは許されるべきではないと思います。特にあなたの所管でありまする造幣会計、印刷会計、これなんかでは、補助貨幣の回収準備資金の取りくずし一億円、日銀券の売り払い代金単価の増額を三億四百万円、こういうような財源の捻出方法をされておるのであります。私は、このような財源の捻出は——国の予算というものは、しぼれば幾らでもどこからでもしぼられてくるのだ、まるで国の政府機関の相互間の経済行為というものは、八百長というか、架空的であるというか、まるきりでたらめのことがなされておるのだというような印象を国民に与えはしないか、この点について何ら配慮されたところはありませんか。上林山君の御質問の中にもございましたけれども、そのような恒常的な支出、たとえば印刷局の印刷、そういうようなものを引き上げることができる、あるいは引き上げる必要性があるならば、それは当然当初予算の中においてなさるべきである。そうでなければ、国民が、政府相互間における取引はまるで架空なものであって八百長をやっているのだ、どんなことをやっているか知れたものではないというような、信頼感を失ってしまったら一体どうされるのですか。私はこのような予算措置は、額にとって一億、また日銀券について三億何がしという小さいものであるけれども、質においてわれわれ国民に疑惑を投げかける点において大きな影響をもたらすものであると思うが、この点についての反省はいかがでありますか。
  36. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 考え方は全く同じでございます。私は従来のようなやり方、裁定があっても何とかやりくりをする、そうして移流用そのほかで切り抜けるというやり方をする方が、これは信頼を失うのじゃないか、はっきりと、どういう財源の捻出をやったのか、どういう移流用をやったのかということをやはり国会で審議していただいて対処するということが、予算に対する信用を増すゆえんだと考えましたので、一部会計の中には、従来のやり方をすれば御審議を願わなくても移流用で財源の捻出ができるというものもこの中に含まれておりますが、そういう性質のものではなくて、いやしくも予算をいじる場合には全貌を示して御審議を願うことがいいのだということから、全部の予算を補正して御審議を願うという措置をとったわけでございまして、そういう考え方から出た処置でございますので、そのお考えには全く同感でございます。
  37. 春日一幸

    春日委員 国民の側からいたしますならば、株式組織の日銀から三億円なら三億円、五億円なら五億円、そういうものを単価を引き上げて請求することができたのだ、得べかりし利益ですね、そういうものを当初予算の中において全然権利を放棄しておったというようなことは、これは怠慢のそしりというか、ずさんなそしりというか、いずれにしても政府機関によってそれだけの利益が確保できるものであるならば、当初予算の中において当然それは計上して、国民の負担というものを重からしめざらぬように十分措置をすることが政府の義務である。大蔵大臣としては、当然造幣会計を通じてその所得増のそれだけの監督をされなければならぬと思う。それを当初予算において全然そのことをなさずして、今回そのような補正措置の中においてこういう無理算段のような、とっさの思いつきのような、こんなことをやられると、造幣ばかりではなしに、あらゆる政府機関のその経済行為というものは信頼できたものではないという、そのような印象を、現に私が持つ。また多くの国民もきっとそれを持つに相違ない。今後のために一つ十分検討されて、あやまつところなく善処されることを強く要望したいと思います。その点はそれでよろしい。  それから次に国鉄予算について質問をいたします。
  38. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今発言に違いがございますのでお答えします。今当初予算でなぜ日銀券の問題を盛っておかなかったかということでございますが、当初予算では盛れなかったものでござます。日銀券の印刷代というものは、これはコスト主義で、原価で計算したものを請求するということになっていますが、今回のベース・アップによって、印刷局の七四%の人たちが日銀券の印刷に従事しておるのでございますから、この七四%の人たちのベース・アップがこの印刷代に当然響いてきますので、この原価を計算してここに収入として立てたというのでございますから、当初予算ではごまかしておいて今になって突如として出たというものではございません。ベース・アップに伴う予算補正として当然な財源であります。
  39. 春日一幸

    春日委員 それは詭弁である。何と言ったところで、三公社五現業に対するところのベース・アップというものは、これは予見できなかったということではありません。大体は、その何パーセントというような的確なものは、それは裁定に待つにあらざれば正確にはわからないけれども、大きな計画の中において、当然ベース・アップというものがなされるであろう、なされるであろうとするならば、それだけコスト高になる、コスト高になればそれだけの経費が加わってくるのだから、当然予算にあらかじめ立てておくべきだ、善意の努力があってしかるべきです。そのことは強く要望をいたしておきます。  次に、国鉄予算についてお伺いをいたしまするが、この予算書では、資産充当五十八億円、これは具体的に何を意味するのでありますか。当初予算においては、資産充当は不用施設の売却収入、これによって十六億九千二百万円が計上をされております。今回の補正ではこれを一躍五十八億計上をして、この内訳は前年度より持ち越された資産を受け入れたものだ、こういう説明をなされておりますが、この資産は何でありまするか、御答弁を願います。
  40. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 前年度より三十六年度の資本勘定に繰り入れる金額でございまして、御承知通り三十五年度の決算による黒字であるか赤字であるかというようなことは、三十六年の九月ごろになりませんければ、正確な数字はわからないのでございますけれども、今回国鉄の仲裁裁定を文字通り実施することによりまするベース・アップによりまして、百九十二億円という今国会において御承認を願いました運賃改定の四百八十六億の四割にも余るような大きな数字でございましたので、予備費で八十億の中を五十五億とか、あるいは経費の節減で二十二億であるとか、あるいはまた特別退職の繰り越しでもって三十四億であるとか、あるいはまた新たに借入金を二十億いたします等、あるいはまた最近における金利低下の趨勢にかんがみまして、三百三十億円の借入金の一分の低下を見て三億円金利が出ずに済むのではないかとか、あらゆる方面で捻出をいたしまして、しこうして、まだ決算の実数はわかりませんけれども、決算の見込みによって五十八億という剰余金をこの百九十二億円の一部の財源といたす、こういうふうなことにいたしたわけでございます。
  41. 春日一幸

    春日委員 そうすると、この予算書に書いてありまする説明は不実なことが記載されておるのですか。前年度より持ち越された資産を受け入れたもの、こういうことになっておりまするけれども、決算をしてみなければわからないではありませんか。従って決算前に五十八億円という資産をどういう工合にして受け入れることができるのでありますか、御説明を願いたいと思います。
  42. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 ただいま申し上げましたように、決算はまだ今後相当の月を経過するわけでございますが、大体経費の節減であるとか増収であるとかいうようなことから見込みまして、三十五年度から三十六年度に繰り越す剰余金五十八億を見込んで差しつかえない、こういうふうに考えました次第でございます。
  43. 春日一幸

    春日委員 それではうそが書いてあるわけですね。前年度より五十八億円を持ち越すことのできるように決算をすることによってと、こういうことなんですか。
  44. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 決算の結果は、五十八億円ぐらいは剰余金が出るであろうという見込みでございます。
  45. 春日一幸

    春日委員 これは私は少なくとも国会審議にあたっては、すべてのことをあるがままに書いてもらわなければいかぬと思います。持ち越された資産ということは、過去完了になっておる。これだけのものが決算を立てられて、そしてこれだけのものが残ったのだ。だからこれだけ浮かすのだということでこれは提案をされておる。ところが今の御説明によりますると、決算をされていないので、どの程度赤字になるか黒字になるかわからぬけれども、まあこのぐらいは出るであろうと思われるのでということならば、よかれあしかれそのように書かなければいかぬ。事実に即して、やはり法案というものや議案というものはそのような作為的な文章によって国会を瞞着すべき性質のものじゃないと思う。よかれあしかれ事実に即して事実を記録しなければならぬと思う。今の御答弁によりまするとそれは不実のことが記載されておると思いますので、後ほどこの問題については運輸委員会その他において十分深耕細打して質問をいたす、このことを留保いたしておきたいと思います。  そこで仲裁裁定の実施によって国鉄では百九十二億の経費増、これが将来固定すると思うのであります。これが国鉄新五カ年計画の資金面においてどういうような影響をもたらして参るのであるか、これをお伺いをいたしたい。これは説明資料として一月二十六日の新五カ年計画の運賃改定、これをずっと読んでみますると、新五カ年計画によると、新線建設を別として五年間で九千七百五十億円、年平均にして千九百五十億円、これだけの資金を必要とする。そういたしまするとこの公労委の仲裁裁定は予見しがたいところの支出であるから、従ってこの千九百五十億円に対しまして百九十二億円、約一〇%の額がこの見込み違いという形に相なって参ると思うのであります。それでこれは将来国鉄収入は輸送量の増加、自然増収等もあるでありましょうが、当然それは千九百五十億の中に見込まれておるのであると思う。一方借入金の元利償還、新線建設、補強費用そういうようなものは、一そうこの経費が伴ってくる、ふえるばかりであると思うのであります。これは要するにベース・アップが国鉄の経営改善に相当の影響をもたらすであろうと思うのだが、これに対して今の予算措置でありまするとこれはいろいろの無理算段をして、さらに五十何億というものについてはまるで架空の財源と言っても過言ではないと思うのでありまするが、架空の財源措置がしてあるような形でございます。一体運輸大臣としてはこの点についてどういうような報告を受けられておるのであるか、お伺いをいたしたいと思います。
  46. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 三十六年度におきましては、ただいま申し上げましたような財源措置をいたしまして、ことしから発足いたしまする輸送力増強のための新五カ年計画の三十六年度計画においては、支障のないようにいたしておるわけでございます。三十七年度以降におきましては百九十二億円という、経営費に人件費が占むる分が約六一%というような、戦前戦後を比べましても今までかつてない人件費の大きな占むる割合ができましたわけでございますので、御心配になることは御無理もないと思いますけれども、これからの国鉄職員の努力によりまして、一方におきましては経済成長繁栄の時期でございますので増収をはかり、また経営費の節約をはかりまして、経済成長に見合う、隘路となっては困る鉄道の輸送力の増強の計画でございますので、支障なくやらせたいというふうに、運輸省としては考えておる次第でございます。
  47. 春日一幸

    春日委員 国民が国鉄の運営を運輸大臣並びに国鉄公社に委託をいたしておりまするが、こういうようなことでは、今言われたような輸送の隘路がいつ何どき資金面から頭を出してくるかわからぬ、不安にたえません。従いましてこういうことが悪影響をもたらさないように、当然さまざまな善処がされなければならぬと思うのでありますが、この際特に伺っておきたいことは、国鉄の固定資産の再評価についてでございます。固定資産を今回の補正で急に五十八億円の処理がされることになっております。これは固定資産ばかりではないかもしれませんけれども、一応文章ではそういうような形になっておる。これは資産再評価が行われていない現在では、その実態が不明確であります。どういうようなことになっておるのか、不急不用施設、余剰施設というものがどのくらいあって、どういう形になっておるのか、これはわかりません。従いまして国鉄は資産内容の改善、自己資本の充実、これをはかるためにも、今こそ長期計画を持って全面的な資産再評価、これをなすべきの段階ではないかと思います。新線建設についてもそうでありまするし五カ年計画においてもそうであります。多くの資本を必要としておりまするので、余剰のものやあるいは不急のものやあるいは要らぬ資産があるならば、これは急速に処分をしなければならぬが、そのためには一応そのめどを立てなければならぬ。資産再評価の必要があると思うのでありまするが、この点についていかがでありますか。
  48. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 日本国有鉄道が現在非常に大きな仕事をしておりますに対しまして、資本金がきわめて少ないということについては、従来いろいろ御議論のあるところでございます。   〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕 資産再評価をいたしてこれを資本金に繰り入れまするならば、おそらく兆をこえる資本金となると考えるのでありまして、資産再評価をして資本に組み入れるべしという御議論もかなり強くあるように考えておるのでございます。今後は検討をいたすべき重大な問題だと考えておる次第でございます。
  49. 春日一幸

    春日委員 納得はできませんが、時間に迫られておりますからもう一点だけお伺いいたしたいと思います。  鉱山保安施設の整備に関する予算措置についてでございます。本年三月三十日本院本会議において全会一致をもってこれら諸対策の完全実施を政府に要望いたしました。しこうしてまた三月三十一日参議院の予算委員会で、政府はできる限り今国会中に予算上質金上の措置につき万全を期すべし、この決議をいたしました。予算委員会が満場一致でこんなばかげた決議をするということは、私はおかしいと思う。その必要があるならばその予算を修正なすべきであると思うのでありますが、いずれにしても満場一致で政府にそれだけのげたを預けました。これに対する水田大蔵大臣答弁は、政府はできる限りすみやかに予算上資金上必要な措置を配慮すると答弁をされまして、さらにそれにつけ加えて、ただいま予算上資金上必要な措置をとると申しましたが、その内容を申しますと、現地をすみやかに調査して、その結果必要ある経費はこれを支出するということにして、通産省から三十余億円という概算の要求が出ておりますから熱意を持ってこれに当たることにいたします。と言っておられるのでございます。しかるに政府はこのような両院の要望に対してわずかに今回の補正予算において三億円の予備費の充当をもって事足りる、こういうことは、これは一体どうしたことでありますか。全く公約違反ではございませんか。言うた通りを実行しなければ、政治家の言動が漫才、落語と同じことになっては、国会の権威というものは一体那辺にあるのか。少なくとも大蔵大臣が責任を持って、通産当局から提案されておるものは三十余億であるから、これに対して熱意を持って善処する、最もすみやかに善処する、予算措置を講ずる、資金措置を講ずる、こう述べられておるのであります。しかるに今回の第一次補正においてそのことがなされていない理由は何であるか、御答弁願います。
  50. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 各省と炭鉱災害防止の対策を検討しました結果、五月十二日に鉱山保安の確保と産業災害防止に関する対策というものを閣議で決定いたしまして、これに基づきまして私どもは国会でも申しましたように、この予算措置、資金措置をとることにいたしました。実地を調査してから予算措置をとる方が妥当だというものにつきましては、至急実地調査することにいたしておりますので、その結果によって次々にいろいろな措置をとっていく。第一段としてはさしあたり緊急と思われる措置だけをとろうということでございまして、融資として十億円、それから予備費から三億七千四百万円、とりあえず支出したということでございますので、これで全部この対策を終わったというわけではございません。今後次々に調査によって必要な措置を講ずるというつもりでございます。
  51. 春日一幸

    春日委員 鉱山保安局はこの炭鉱保安施設の整備に要する費用といたしまして、さきに保安監督強化に要する費用一億四千万円、保安施設の整備拡充二十三億一千万円、保安新技術の実用化試験経費に二千九百万円、それから炭鉱の終閉山対策費に六億二千万円、計三十一億一千万円、これを政府に対して予算化を要求いたしておると思うのでございます。これに対して、今回のいわゆる閣議によって決定されたというものは、この予備費から充当されようとしておる三億何千万円と、ほかには中小企業金融公庫から保安施設に対する低利融資が十億円、これでありますから、足らざるところはなはだしいのでございます。通産大臣に伺いますが、少なくとも通産省が内閣に対してその予算化を要求いたしましたのはかけ引きであろうはずはないと思うのでございます。両院の決議に従うためにも、またその責任を果たすためにも、必要にして最小限度の費用として三十一億円を要求されておると思う。それに対してわずか十三億円しか予算化されてない、あるいは資金の手当がなされてはいない。これでは、その責任が果たし得ないのではないかと私は思うのでありますが、通産大臣は炭鉱保安対策を進めていく上においてこれで支障はないと考えられておるのであるかどうか、この点についてお伺いをいたします。
  52. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 三十一億の予算及び融資、これは一文でも欠けても絶対に責任が果たせないものでもございません。しかしながら、三十一億と十三億では非常な開きがございますから、これではとてもやっていけない。ただし、今大蔵大臣からお話がございました通り、保安強化の問題につきましては相当の人員を増員しなければならない。その問題がまだ未解決であります。定員法に関する提案の問題ともからみまして、これはなるべくすみやかに充足いたしたいと考えております。   〔愛知委員長代理退席、委員長着席〕  それからもう一つ重要な問題は終閉山の対策であります。保安の関係から見てもうこれはやめた方がいいというような山が一体どのくらいあるか、百ともいうし、百五十ともいいますが、ともかくその実態を至急に調査いたしまして、そして大体終閉山をしなければならぬというような炭鉱を具体的に確定して、これに対する鉱害の問題あるいは離職者の問題、いろいろございますが、それらの対策というものがまだ未解決のままになっておる、そういうものがはたしてどれくらいに達するかということをはっきりとつかみまして、しかる上において第二次あるいは第三次に及ぶかもしれませんが、予算措置あるいは融資措置を講じて参りたい、かように考えております。
  53. 春日一幸

    春日委員 ただいま通産大臣の御答弁によりますと、三十一億の要求に対して十三億では足らないことはなはだしいので万全を期しがたい、だから足らざるところは早急に予算措置、資金措置を講ずるのだ、こういうことでありますが、これは一つ政府の責任において確約を願いたいと思うのでございます。  申し上げるまでもなく、最近におきまして中小炭鉱の災害が続発をいたしております。これは人命に関する重大なる問題であるのでございます。従いまして、今調査する、調査するといわれておりますけれども、少なくとも通産省の予算要求の中には終閉山対策費として六億何千万円という数字が上がっておる、上がっておるということはすでに調査されておるということの証拠である。ただその予算化がなされていないだけのことでございます。さらにまた十億円の保安施設の整備拡充というものも、これも必要なる最小限度の額二十三億何千万円という数字も明確に計上されておる。調査に口をかりて、その予算措置を怠っておられるのだということ以外に何ものでもございません。しかも国民世論にこたえて、かつは国会の意思にこたえて、大蔵大臣が参議院の予算委員会においてあのような具体的な御答弁をなすっておるいきさつ等もあるのでございますから、この段階において私はくどくど申しませんけれども、今通産大臣が御答弁になりましたように、すなわち資金上の手当についてはこれは金利等の関係があって閣議決定で事足る問題とも考えられますし、また終閉山対策費等については予備費の流用等においてもあるいはまた早急の手当も可能であると考えますので、中小炭鉱における被害続発の実態を重視されまして、すみやかにその人命の安全を期することのためにも、どうか一つすみやかなる措置をとられんことを強く要望いたしまして、いろいろと残っておりますけれども、時間も到来いたしたようでありますから、私の質問を終わります。(拍手)
  54. 船田中

    船田委員長 午後二時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時八分休憩      ————◇—————    午後三時三十六分開議
  55. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。楯兼次郎君。
  56. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は、仲裁裁定と処分問題並びに補正予算によって将来国鉄が五カ年計画が完遂できるかどうか、この三点にしぼって御質問いたしたいと思います。  まず第一番に、労働大臣にお尋ねいたしたいと思いますが、出されました仲裁裁定というのは、これは労働組合の組合員に対して出されたものだと思います。しかし当局の説明によれば、非組合員の賃上げの予算も計上して補正予算を組んだ、こういう説明を聞いておるのでありますが、この仲裁裁定が出されるごとに自動的に非組合員に適用されるべきものかどうか、この点ちょっと解釈上疑義がありますので、お聞きをいたしておきたいと思います。
  57. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は裁定も正確に記憶はいたしておりまんけれども、非組合員については自主的にこれをきめろという裁定であったと記憶いたしております。
  58. 楯兼次郎

    ○楯委員 その場合の値上げ率でありますが、賃上げのパーセンテージはやはり裁定の内容と同じものを適用していく——非組合員といいましても、いわゆる公労法上の初めから組合に入れない非組合員、それから組合を脱退した非組合員、こういうふうに分けることができると思いますが、両者とも同じものを適用していく、こういうことでありますか。
  59. 石田博英

    ○石田国務大臣 仲裁裁定は労使間の紛争についての解決でありますから、労使間においては、それを最終決定として両方ともそれに従ってもらわなければならぬわけであります。その場合に、その企業、現業当局が自分の従業員の間におけるその結果生じまする給与その他の均衡を保ちますために適切な措置をとりますことは、この現業当局の責任でありますから、その責任の範囲でやられたことと思います。私どもの関与するところではございません。
  60. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は関与するとかどうとかということでなくて、仲裁裁定は労使の紛争によって労使間に提示をされる、そういう場合に、この裁定の範疇に入らない人たちに自動的に適用をされていくとは法解釈上考えられないわけなんです。実情は同じ企業に働いておるのでありますから適用をされるでありましょう。過去の実績もそうであったと思います。しかし労働組合の組合員に対して提示をされたものが、同じ率で同じように適用をされるということは法解釈上私はあり得ないと思う。
  61. 石田博英

    ○石田国務大臣 同じ率で自動的に適用をされる必要はないと思います。しかしその結果として、その企業の中で企業の経営者がその責任で自己の企業に働いている人々の給与の均衡をはかりますために、自動的に経営者の判断としてなされたものだと思います。結果的には同率でございますけれども、判断は自動的になされたものと思います。  それから従来は非組合員も含めて給与総額についての裁定であったと記憶しておりますが、今回はそれを分けられたのであります。
  62. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは運輸大臣と、それから郵政大臣にお聞きしますが、今度の裁定による非組合員の実施額は、労働組合員に対すると同じ額で適用をされるのかどうか、こういう点についてお聞きをいたしたいと思います。
  63. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 組合に加入している者と加入していない者と同じ率でございます。
  64. 小金義照

    ○小金国務大臣 同率、同様の取り扱いをいたします。
  65. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは次にお聞きをいたしますが、おとついでありますか、上林山委員から今日まで仲裁裁定が何回出されたか、どれだけ完全実施をされたかという御質問がございまして、ちょっとその労働大臣の答弁でふに落ちない点がございますので、もう一回お聞きをいたしたいと思います。  今回の同じような公共企業体に対しまするベース・アップに対して十七件裁定が出ておるわけです。だからこれを件数で言いますると、今日までに九十件あるいは百件、こういう数字が出てくるわけでありますが、これはちょっと一般的に理解に苦しみますので、公共企業体になってから、ベース・アップの裁定は何回ぐらい出て、そうして完全に実施されたのは何回であり、不完全は何回であるか、こういう点について再度お聞きをいたしたいと思います。
  66. 石田博英

    ○石田国務大臣 今回の数が十七件でありますから、そういう計算であります。現在まで給与に関する裁定が出ましたのは七十六件であります。そのうち完全実施をいたしましたのは六十四件、それから時期をずらして実施をいたしましたのは十一件、それから一部を削除して実施をいたしましたのが一件であります。ただし昭和三十二年から、三十一年の公労法改正以後の分は、給与に関するものは五十七件でありまして、これは全部完全実施をいたしております。
  67. 楯兼次郎

    ○楯委員 数が大きいのでちょっと理解に苦しむわけでありますが、国鉄の場合、これはほかの公社の場合でもいいのでありますが、国鉄の場合に例をとってお伺いをいたしたいと思います。私どもの記憶では大体八回、調停も一件ありますが、公共企業体になってから八回裁定が出ておるというふうに承知をいたしております。その中で三十二年に出ました新しい公労法改正の三号は、将来という字句について組合側あるいは当局側の解釈が違っておりましたから、これは除外をするといたしましても、八回のうちで不完全実施が四件、それ以後のものについて完全実施はしておる、こういうように解釈をいたしておるわけでありますが、どうでございましょうか。
  68. 石田博英

    ○石田国務大臣 三十二年以前のものについて、今ここで正確に私は記憶をいたしておりませんが、すぐわかります。——国有鉄道に関するもので給与に関係がございますものは二十一件出ております。国鉄に関するものは二十四件でありますが、そのうち給与に関するものは二十一件、完全実施をいたしましたのが十七件、それから実施時期をずらしたものが三件、一部削除いたしましたものが一件であります。ただし三十二年以降は完全に実施をいたしております。
  69. 楯兼次郎

    ○楯委員 大体そのようにわれわれの方の調査もなっておりますが、三十二年以降は、石田労働大臣がこの前なられましてから百パーセント実施をする、こういうことで改正以後は、三十五条の改正もありまするけれども、完全に裁定は実施をされたと思います。しかしそれ以前に出ました裁定については、公労法三十五条では、最終的決定であるとして労使双方がこれに服従をしなければならない。そういう絶対的のような法規定になっておるにもかかわらず、ほとんどが不完全実施であったと私は考えておりますが、こういう政府の取り扱い方が、非常に公共企業体の組合員に対して、政府に対する不信感を抱かしておったと思います。従って私は将来ともこの仲裁裁定というものは百パーセント完全に実施すべきものであるというふうに考えておるわけでありますが、石田労働大臣がやっておられるうちは私はいいと思う。しかしおとついの上林山委員のようなお考えの方もおられまするので、労働大臣がかわられたらまた一部実施ということにもなりかねないと思いまするので、将来ともこれは完全実施すべきものであるかどうか、この点くどいようでありますが、お伺いをしておきたいと思います。
  70. 石田博英

    ○石田国務大臣 公労法の法の条項はよく御存じであろうと存じます。私は、三十二年以前の問題は、これはそのときの財政上、経済上の問題について、その立場からの御見解からの措置だと思います。ただ財政上、経済上の事情というものは著しく好転をいたしました。そうしてまた公労法で争議権を停止いたしておりますという建前から申しましても、私どもはやはり公労法の精神からいって、仲裁はこれを完全に実施していくべきものだと私は思っておるわけでございますが、私の後任者、将来にわたってまでの法律解釈について私は言及する資格もございません。私の法律解釈はその通りであります。  それからこれはよけいなことでありますが、上林山委員の質問は、一部実施という言葉ではございません。従来実績として三十二年以降完全に実施してきたのであるから、事前にこれを完全実施するということを言う必要がなかったのではないかという御質問であったと記憶をいたしております。
  71. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは、上林山委員の発言が、私の考えましたのと違っておりますれば訂正をいたしておきますが、しかしこれはただ単に国会だけの問題ではございません。たとえば四月二十日の日に、日経連の総会がございました。それで総理大臣あるいは石田さん自体もこの総会に御出席になりまして、幾分やりとりをされております。そのときに、新聞記事等によりますると、今度のこの賃金というのは、裁定の金額というのは高過ぎるじゃないかというような批判が相当行なわれておるように承知をいたしております。これに反発をされまして総理大臣あるいは石田労働大臣は、いや民間賃金にさや寄せをしたのである、こういうように反論をされておりますが、こういう議論が国会の中あるいは財界で議論をされるというところに、先ほど御質問申し上げましたような将来に対しまする疑惑を抱くわけなんです。しかもこういう議論が相当良識のありまする財界やあるいは政治家の間で議論をされますと、何だか過去に行なわれました裁定の金額というのが、政府の容喙によって左右できるのではないか、低く押えることができたんじゃないか、それをお前たちはなぜやらないのか、こういうように私どもは受け取れるわけなんです。一部組合では、三十二年に公労法を改正をして仲裁委員会の構成を変えた、しかも政府の意向の入る人たちが二名なり三名なり入ってくるようになった、こういう非難もあるわけなんであります。従って、私どもが従来仲裁委員会に対して、政府の容喙によって多少とも賃金の裁定の高い低いが左右できるかどうか、こういうことはないと思いますが、労働大臣からこの点についてお聞きをいたしたい。
  72. 石田博英

    ○石田国務大臣 何事についても各方面の方々がいろいろ御議論をされることはこれは自由でございます。従って今度の裁定の金額が高いとか安いとかという御議論をなさることも自由でありまして、これについてどうこうと申し上げるわけには参りません。ただ私どもが申し上げたいと思いますことは、労使関係の安定の基礎はやっぱり相互の信頼と理解の上に立てられなければならないと思います。従って労使関係の問題についての議論は、どちらが勝ったか、どちらが負けたかということは、それ自体私は無意味である。やはり理解が深められなければ、何の価値もないと存ずるのであります。そういう事態にいくことを私どもは望ましいと思うのでありますが、にわかに、いろいろな行きがかりもございまするし、それが期せられない場合には、やはり第三者の権威と公正に対する信頼を高めることが、それまでの経過あるいは媒介の処置として私は適切であると思います。これは単に公共企業体だけでなくて、一般の労使関係紛争処理の私は根本であるべきであり、それによって平和な合理的措置が期待できる、こう私は考えておるわけであります。従ってあの議論の根底の中に政府が仲裁裁定、仲裁委員会の裁定額に干渉できる、また干渉すべきだということが前提になっているかのごとき雰囲気があったことを私は第一に遺憾といたします。従ってこれは、むしろ仲裁でありますから、あるときにおいては使用者に不満、あるときにおいては労働者に不満ということはやむを得ない。やむを得ないけれども、そのときどきの不満を双方ががまんをして、仲裁委員会の権威と公正に対する信頼を高めていくことが必要であると思います。従って私どもは、あの裁定というものがそういう意味で価値があったのだ、それに疑惑を持たれるかのごとき議論は私ははなはだ遺憾といたすのでありまして、私は労使関係安定の基本方針としてただいままで申し上げておったようなことを考えておりますので、さような事実が全くないこと、またさような行為を私は神かけてした覚えがないことを明言をいたしたいと存じます。
  73. 楯兼次郎

    ○楯委員 それではそれに関連してもう一つお聞きいたしますが、十四日の各新聞紙の報道によりますると、この日経連の前田専務理事でありますか、この方が東北に行かれましてこういうことを言っております。要約をいたしますると、人事院勧告による公務員のベース・アップを行なった政府措置を非難をいたしております。そうして来春には賃上げ額を日経連自体が先に示して、大幅な値上げを押えるムードを先に作っていく、こういうことを各新聞紙は、前田理事が発言をしたということを報道をいたしております。こういう記事を見ますると、第一には、来年はある程度の賃上げをすでに財界が認めておる、こういう一面と、それからことしのような大幅なベース・アップでは困るから、おれたちがこれから、来春は牽制をしよう、こういう二つの解釈の仕方があるわけでありますが、労働大臣、当然この記事をお読みになっておると思うのでありますが、この前田理事の発言に対してどうお考えになりますか。
  74. 石田博英

    ○石田国務大臣 私どもは前田さんの御発言というものを拝見はもちろんいたしました。しかし新聞記事だけでありますから、正確に御発言の内容を知っているわけではございませんので、これは論評する筋ではないと思います。というよりは、楯さんのおっしゃったお言葉に対して私の見解を申し上げたいと思います。昨年の人事院勧告は、それは昨年五月における時限の民間賃金並びにその当時における公共企業体の労働賃金というものが前提となって出されたものでございます。従ってそれがあとに影響するという事実は私は否定できないと思いますが、しかしながらこういう問題の責任の追及というものは、これは鶏と卵以上明白でありまして、昨年公務員の賃金が上がった前提が、民間の賃金であるという関係をこれは明確にしておかなければならないと存じます。  それから来年賃上げをすべきかすべきでないか、それは本年から来年にかけての生産性の向上によってきめらるべきもので、賃上げは生産性の向上に伴って行なわれるべきものであり、しかも生産性向上の全部が賃金に分配さるべきものでなく、やはり相当部分は大衆への還元あるいは資本の蓄積へ向けらるべきものであると思っておるのでありまして、その来年の予想その他については私は言及すべき範囲でないと思います。民間はそれぞれ自主的に自己の企業の生産性の向上というものとにらみ合わせて労使の間でお話し合いをつけていただくことを望むものであります。
  75. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は今裁定による補正予算が出ましたので、裁定のことを二、三お聞きしたわけでありますが、公共企業体の団体交渉でありますが、争議権がない組合でありまするから、私は何もかも裁定に持ち込んで第三者の公平な判断によらなければ事態が解決をしないということは、これは一番の私は愚だと思うのです。だから争議権のない団交でありまするから、争議権があってもなくても団交は重要でありまするけれども、特に公共企業体の場合には、団交に労使双方とも最大の信頼とまた団交を尊重するという意思がなければ、心持がなければ私はいかないと思う。すべて団交によって物事を解決をしていくというのが最も望ましい公共企業体の私はあり方である、こういうふうに考えるわけであります。ところが事賃金の問題になりますると、団体交渉の相手方の交渉員の代表でありまする総裁の権限というものがほとんどゼロであるわけです。これが公労法が改正になりまする前までは予算上基準内と基準外の流用だけは総裁に私は認められておったと記憶をいたしておるわけでありますが、改正と同時に基準内外の流用すら予算総則において縛ってしまった。こういう無能力者と言えば語弊があるかもしれませんが、そういう人とまじめになって、公労法の三分の一も費やした条文の団体交渉によって物事を円満に解決をするということを言っておるのが、私はおかしいと思うのでありますが、こういう点について労働大臣はどうお考えになりますか。
  76. 石田博英

    ○石田国務大臣 でき得る限り団体交渉に労使双方とも誠意を尽くして、そうして団体交渉において労使関係を解決していただくことは望ましいのであります。従って今回の団体交渉にあたりましてもゼロ回答しか出せないような諸条件、これはわれわれの方といたしまして排除に努めたのでありまして、今回各経営当局はそれぞれ相当数の実額を提示いたしました。ところが組合側が一たんきまったところから全然変化がございませんし、従って片っ方が提示したものと、もともととの間に歩み寄りが見られなかった。というのは双方とも歩み寄りが見られなかった。経営者側は従来と違って相当金額を現に出しております。そこで双方とも歩み寄りを見られなかったので、使用者側の当局としては、これはやはり団体交渉だけでは解決しないと判断をいたしたものと私は思っております。そうなって参りますると、私どもの方としてはやはり公労委の御活動に期待をするより仕方がない、こう思うのでありまして、歩み寄りはやはり双方でしていただかなければならないのであります。
  77. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は今度の裁定の実態を言っておるわけではありません。この総裁がほとんど予算上無能力者扱いをされておって、公労法では団体交渉による解決を最も大きく取り上げて、多くの紙数を費して条文をうたってある。しかしこれは予算に対する実権がないのでありますから、賃金問題は最初から調停あるいは仲裁に持っていけ、こう言った方が早いのじゃないかと私は思います。電電の総裁なりあるいは国鉄の総裁に、予算上労働組合に対する要求を受け入れ得る余地が一体どれだけあるかということをお聞きをしておるわけです。これじゃ無能力者じゃないですか。
  78. 石田博英

    ○石田国務大臣 従って、今回におきましては、そういうゼロ回答しか出せないような諸条件の排除に努めたわけであります。しかし、労使が双方話し合いまして、ほんとうに使用者側が自己の責任において両者の話し合いの妥結点を見出した場合、そこで使用者と労働者が一致した場合、それが予算上、資金上縛られるということになれば、それから先は今度は使用者側と財政当局との次の話し合いに移ればいいのでありまして、私はそこまで無能力者とは別に考えていないのであります。
  79. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは水かけ論になると思いますので、進みたいと思いますが、企業体の交渉委員の代表は総裁ではありませんけれども、とにかく総裁が代表するのです。それが自由裁量権がない、予算は弾力性が一銭もない、こういう人を相手に賃金問題で幾ら団交をやるといいましても、背後に政府がおりまして、それじゃ情勢を見てこのくらいはいいだろう、一律にやる、ということ以外には、私は団交の成果というのがないような気がするのです。だからほんとうに公共企業体としての円満な運営を将来期そうとするならば、ある程度当事者、総裁に対する予算上の弾力性を持たせなければ、言うべくして行なわれ得ない、こういうことを私は心配をいたしておるわけです。  そこで、これはノーというお答えが出ることはもちろんでありますが、こんな公共企業体等労働関係法というようなものを作って、そしてやれ調停だ、仲裁だと、同じ日本の労働組合でありながら、めんどうな使い分けをするより、いっそこれは労働組合法一本にしぼって規制をしていく、あるいは労使の正常な運営を行なう基礎を作っていく、こういうふうにした方がいいのであるし、当然だと思うのでありますが、この点についてはどうお考えになりますか。
  80. 石田博英

    ○石田国務大臣 政府としてはやはり国民に迷惑をかけない、公共の福祉、安全というようなことを考えなければならないのでありまして、そういう見地から、公共企業体の勤労者に争議権を付与いたさないのはやむを得ないと思っております。そこで、そういう場合の代償として仲裁裁定の尊重、実施ということがうたわれておるわけでありますから、そういうことで私は公共企業体労働者の権利は守られると考えております。  それからさっきの御質問、水かけ論だとおっしゃいますけれども、経営者が団体交渉の結果、経営者の責任において話がまとまったということになれば、経営者がその与えられた予算の中で処置できないとすれば、それは財政当局と経営者が折衝するということが残されるのであります。だからまとまらないというのは、財政上縛られているからということだけでなく、経営者がその責任において組合側の要求に応ぜられないということであろうと私は解釈いたしております。
  81. 楯兼次郎

    ○楯委員 争議権にかわる仲裁裁定制度で公共企業体の職員の利益を守ればいい、労働大臣はこうおっしゃいますが、それでは、公共企業体の組合が公労法の適用を受けるようになってから今日まで約十年余たっておるのでありますが、その前後における公共企業体の職員の利益がはたして維持されたか。向上とまで私は言いません。向上とまでは言いませんけれども、適用を受ける以前の待遇措置がそのまま維持されたかどうかという点を大ざっぱに見てみますと、維持されておらないのです。たとえば賃金でまず申し上げましょう。これは労働大臣みずからが、民間賃金にさや寄せをするんだ、こうおっしゃっています。ところが戦争前、あるいは公共企業体になる前のこれらの職員の給与はどうであったか。そのいい悪いは別です。いい悪いは別でありますが、とにかく民間の賃金より高かったわけです。高かったのが、公労法の適用を受けてから、今日総理大臣や労働大臣が、民間賃金にさや寄せをするんだ、こういう演説をみずからなさっておるのを見ましても、これは立場が逆転をしておるということが私は言えると思う。それから一説には、どうもこいつらは争議ばかりやっておって働かぬ、こういうような議論もあるわけでありますが、作業量を見てみますと、たとえば全逓の場合を見てみますと、過去五年間に郵便物の量は四四%も増加をしておる。ところが人員はわずかに七%しかふえておらないわけです。だから一人当たり取り扱い量は三四%、いやそうじゃない、非常勤といいますか臨時の人を入れておるからとおっしゃいますけれども、定員と作業量との比率は三四%もこの五年間にふえておる。国鉄はもう私が統計や数字を申し上げる必要はないと思う。作業量はまさに倍に近いわけです。それで人員はどうか。機械化をするとおっしゃいますけれども、とにかく人員は定員法以来減少の一途です。倍も働いておる。賃金はどうか。賃金は戦争前、公労法適用以前には民間賃金より高かった、それがついに追いかけなくてはならない。政府自体が認めているじゃないか。はたしてこれで、いわゆる争議権にかわる調停、仲裁制度をお前たちにやったから利益は維持されておる、向上しておる、こういうことが言い得られるのかどうか。この点は率直に一つ労働大臣の見解をお示し願いたいと思います。
  82. 石田博英

    ○石田国務大臣 戦前と現在の公共企業体の賃金と民間の賃金がどうであったか、またその比較がどういうところを対象として行なわれたか、私は今正確な数字を持っておりませんからこれについては論評をいたしません。ただ一般に、戦後の混乱期の中で、公務員あるいは公共企業体の従業員の賃金は、それ自体戦前の比率と比べて不利になっております。早い話がわれわれ自身がそうなのであります。これは、われわれが率先して国家の再建に当たらなければならないという公務員の立場、それからやはり税金によって最終的には保障されるというわれわれの立場から考えて、国家非常の際におけるやむを得ない事態であったと私は考えております。ただそれは是正されていかなければなりません。そこでその是正に努めておるのであります。  それから従業員の数と作業量との御議論でありますが、私はこのことは他の産業全体についても言えると思います。一般に労働の生産性が向上して初めて労働者諸君の待遇が上がるのであり、国民の生活水準は上がるのでありまして、作業量に沿って労働量が必要であれば、それだけ労働量がふえておるのでは労働者一人々々の生活の向上は期せられない。やはりそこに合理化が行なわれて、能率の増進が行なわれておるということが背景になければならないと思います。ただ私は、公共企業体の労働者諸君の今まで働いておられることが、民間の企業に比べてあたりまえだということを言うのではなくて、その努力については敬意を払いますけれども、それを全部、全国民がして初めて全国民の生活が上がるのだということを申し上げたいのであります。
  83. 楯兼次郎

    ○楯委員 民間賃金との比較は統計のとりよう、資料の比較でいろいろに言われておりまするが、今日公共企業体の組合の諸君がスト権をよこせ、こういう運動を大がかりにやっておるというのは、今秋が簡単に申し上げました、政府が保障をするという争議権にかわる調停仲裁制度でやってきたけれども、決してよくなっておらぬではないか、こういうところから私はきておると思うのです。それからこのスト権を与えれば——まあ公共の福祉であるとか、全体の奉仕者だとかいうようなことをいわれますが、これは公共の福祉に貢献しないような産業はないわけですし、それから国鉄の場合、私鉄の場合と比較しましても、これは同じことだと思うのです。だから私はそう影におびえる必要はないというような気がするわけです。労組法一本で争議権を与えて、世論という土俵の上で相撲を取らせればけっこううまくやっていく、こういうように考えるわけであります。  それからストの場合、私もストをやって要求を貫徹するというようなことには反対でありますが、しかしそのストが必要以上に使用者側あるいは政府の方から誇大に宣伝される面があると思うのです。極端なことをいいますれば、半日ストあるいは三時間ストによるより、これは交通関係に例をとれば、政府の方の責任によって国民に迷惑をかけておる部面の方が多いのじゃないか。簡単に申し上げますると、たとえば都市交通の今日の混雑さ、あるいは踏み切りによる人命の死傷等を考えれば、これは政府の責任によって国民に迷惑をかけている方が多いのじゃないか、とこういうような気もするわけなんです。だから組合法一本で、世論という土俵の上で相撲を取らせるようにすべきである、こう思うわけでありますが、お答えは同じだとは思いますが、もう一回労働大臣の見解を承っておきたいと思います。
  84. 石田博英

    ○石田国務大臣 私の所管ではございませんけれども、都市交通の現状、あるいはそのほかの交通事故の頻発というものははなはだ遺憾に思っております。改善に鋭意努力しなければならないと思っております。しかしそれだからといって、公共企業体の労働組合が法律を犯してもいいという理屈にはならないのでありまして、私はまず一番労使関係の安定の前提はやはり双方国法を尊重する、ただいま御審議を願っておりまするILO八十七号の八条にも明確に、労使の団体は、それぞれの国の法律を尊重しなければならないという規定がございます。従って公労法自体に議論はあっても、現に実施せられておる法律である限りにおいては、公然とストという言葉を使うのは、やはり私はこれを法秩序に対する挑戦であると思う。そういう行動が国民全体の不安感を醸成いたしておるのでありまして、公共企業体の労働組合に争議権を与える、与えないという問題の根底をなす一般的不安感を除去いたしますために、やはり国法の順守ということをもっと徹底して行なっていただければ、私は国民の安全とか秩序というようなものは、そういう安心感が得られるということが前提でありますから、その上で問題の別の発展もあり得ようと思いますが、現在のところは争議権を付与する考えはございません。
  85. 楯兼次郎

    ○楯委員 私はストを起こして国民に迷惑を及ぼすことを推奨しておるわけではありませんが、一つの例を申し上げますると、たとえばILO批准に伴う国内法の整備ということをいっておられる。鉄道営業法を例にとりますと、鉄道営業法の中の二十六条には、定員をこえて乗車さした場合には罰金刑を課するということがうたってある。ところが何百人もアルバイトを使って、罰金刑の行為をやっておるわけですね。ところが政府が改正をしようと懸命になっておるのは職員の罰則の方だけなんですよ。なぜ政府の責任の方について謙虚な気持になれないのか、こういうやり方が非常に公共企業体並びに全般の労働組合員に対して政府の不信感を起こさしており、要らざる摩擦を起こさしておる。これは片手落ちじゃないですか。たとえば郵便法の七十九条でも、この前、私は論議したことがありますが、愛知さんが法務大臣のときに、この七十九条の制定は労働組合運動には適用しないと、制定の当時、政府がはっきりと国会の議事録に載せて、再三とにかく言明をしておるわけです。それをなぜ組合運動に七十九条を適用するのか、こう言って御質問をいたしましたら、情勢が変わってきた、こういう御答弁だったのです。こんなばかなことはないと思うのです。政府の一方的解釈によって、鉄道の公安官でもそうです。組合運動には適用しない、再三再四、国会で、そういう疑惑があるので、われわれ社会党の議員が確認をしておるにもかかわらず、政府が情勢の変化によるという一方的解釈によって、どんどん処罰をする、こんなばかなことはないと思います。だからこういうことが組合員に対して非常な不信感を与え、感情的にならざるを得ないという面がある、こういうことを先ほどから私は申し上げておるわけでありますが、こういう点も労働大臣はよく一つお考えをいただきたいと思うわけであります。  私は次に処分の問題に入りたいと思いますが、先ほど来二、三申し上げましたように、どうも私は政府に労働組合員に対する愛情がないような気がするわけです。といいますのは、こんなことは釈迦に説法になりますが、池田内閣は口を開けば、日本経済の画期的な成長、膨大な資本蓄積なんということを宣伝されますが、結局は政府計画をしただけでは、私はできないと思うのです。これはやはり何といっても、労働者がこれを生み出す。それから特に公共企業体の労働者というものは、ここでこういうことを申し上げていいか悪いか知りませんけれども、親子二代にわたり代々この仕事に従事するというような人たちが多い。だから処分をする方で見ればけしからぬと思われるかもしれませんけれども、われわれが職場に入って話をすれば、二年や三年で、処分をして、転勤をする管理者より、これらの人たちの方がこの企業に対する執着と愛情は非常に強いわけです。だからこういう点を考えられましたならば、今次春闘で行なわれましたようなあんなべらぼうな処分はできないわけです。私は三月に行なわれましたあのいわゆる春闘に対する処分は、明らかに三月三十一日の半日ストに対する政治的弾圧である、こういう気がするわけでありますが、この点どうですか。
  86. 石田博英

    ○石田国務大臣 鉄道営業法がもう改正すべき問題点をたくさんはらんでおることは御指摘の通りであります。今御指摘の条項もさることながら、男女の待合室は区別しなければならぬというのは、明治三十三年の、男女七才にして席を同じくせずという思想に出発しておるのであって、今日の男女共学の時代に合わないのは申すまでもありません。従ってこれは全面改正をいたさなければならない問題だということは御同感であります。ただ今回ILOの関係に付随して出されたのは、ILO条約批准に伴う業務の安全保障という立場から出された問題でありまして、これはそれ自体として御議論を願いたいと存じます。  それから愛情の問題でありますが、単に労働者と限らず、政府はやはり国民全部に対してあらゆる施策を行なうときに、常に愛情を持って行なわなければならぬことは申すまでもありません。たといそれが犯罪者であろうと、犯罪者を罰するにあたっても、やはり愛情を持って行なっていかなければならないと存じます。従って今回の行動、いわゆる春闘に対しましても、私どもは、当局が前もって無警告に処分をしたとは思いません。私自身も公労法違反行為をしないように、すれば厳重な処罰をせざるを得ないのだということをしばしば申し上げ、御警告をして参ったのであります。従って公労法違反の行為が行なわれれば、これは法治国家として法に従って各当局がそれぞれ処分をされることはやむを得ないのであります。そのこと自体は、私は公労法というものの片一方の仲裁裁定完全実施という精神を貫く一つの前提であろうと思います。  それから三十一日の半日ストに関してお話がございましたが、半日ストという言葉自身、あるいはそれを計画している行為自身、これは明確に公労法に違反をする行為をやろということであります。この行為をやろということは、処罰それ自体はどうであろうとこうであろうと、その行為に対しては政府はその行為を起こさせないように、つまり処罰されるような行為をさせないようにすることも私は法秩序を守るゆえんであり、同時に国民に対する愛情の現われであると考えておる次第であります。
  87. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は今彼ら処分者のやったことが、公労法上どうこうということを言っておるのじゃないのです。それはきょう労働委員会がありますから、詳細にわたってやるだろうと思いますが、私が今ここで言っておるのは従来の例から比較をしてあまりにも——それからあとで一、二の例を申し上げますが、処分理由が支離滅裂ですよ。驚くべき内容で解雇をし処分をしておるわけです。だからこういう実態を見ますと、明らかにこれは解雇権、処分権の乱用じゃないか。三十一日の予防処分じゃないか。しかも三十一日の日にあなたが努力をされた裁定に対して、これを聞かない、こういうことなら別なんです。しかし組合は公労法に明示した通りに双方受諾をし実施をして、口にすべきではないかもしれませんけれども、三十一日の半日ストをやめたのです。だからこのような慣例と比較にならない多くの処分者、あるいは処分の内容が支離滅裂である、こういう処分に対しては、これはすみやかに撤回をすることが、いわゆる親心のある政府のとるべき、将来に対します正常な労使の慣行を樹立するゆえんじゃないか、こう私は思うわけです。この点どうですか。
  88. 石田博英

    ○石田国務大臣 処分の県体的事例はそれぞれ関係当局がそれぞれの責任においてなされたことでありますので、これは私がお答えする範囲ではないと思います。従来の例とか例でないとかというお話しでございますが、従来例でないような行為もまたあるわけでありまして、法を犯したものに対する処分というものは、これは慣例によってどうこうということでなく、やはり法規の命ずるままに従って行なわるべきものだと私は考えておる次第であります。  それから三十一日との関連をよくお話しになりますが、私どもは処分が行なわれたのは三十一日に行動をしようとしておったものとか、あるいは行動が予測されるものとかいうことに対して行なわれたのでなくて、別の日に行なわれた公労法違反行為に対して行なわれたものと考えておる次第であります。  そのこととは関連はございませんが、繰り返して申しますけれども、世間には不法行為はやらせておいて、世論を背景にたたけばよいじゃないかという議論もございます。しかしこれは愛情を持って国民に対処する政府態度ではない。やはりそういう不法行為が起こらないように、また不法行為を行なわせないように政府は万般の処置を講ずることもまた、これは法秩序を守るゆえんでもあり、かつ愛情のある態度であると考えておる次第でございます。
  89. 楯兼次郎

    ○楯委員 愛情がばかに連発されるわけです。  それでは先に進みますが、労働大臣そうおっしゃいます。しかしあの三月中に行なった処分は事実誤認が非常に多い。それから公労法の適用を誤まっておる。それから刑事事件になったのは、従来の慣行とまるきり違ったやり方をやっている。だから私はこの点については政府として反省すべきではないか、こういうことを言っておるわけなのです。  そこで全逓に例をとって私は郵政大臣にお聞きしたいと思いますが、今私の方で調査した事実誤認がこのぐらいあるわけです。あなた方が処分をなさった理由に該当をしない人たちが、例を申し上げますると、すでに逓信委員会において議論がありましたので私はこまかく申し上げません。あなた方が処分をしたと思われる日に年次有給休暇の承認を得て旅行をしておる人が処分をされておるのが相当ある。それから病気休養中の者、しかも入院加療中の者が処分をされておる。それから争議当日結婚式をあげまして、休暇をとって旅行をしておる者が処分をされておる。それから当時当局の命令によって一週間も——当局の命令ですよ。一週間もよそに出張をしておる職員が処分をされておる。中にはひどいのは、父親が死んで葬儀を当日施行中の者が処分をされておる。郵政大臣はおそらく委員会あるいは地方局の実情をすでに御調査になっていると思うのでありますが、こういう間違った処分も面子と感情によってこのままにほうっておかれるのですか。処分をされる方はこれは生活権の問題なのです。どうですか、この点。
  90. 小金義照

    ○小金国務大臣 今具体的に事例をお示しになりましたのは、全逓の組合員というよりも、むしろ私、全電通の方ではないかと思います。(楯委員「両方ともあります」と呼ぶ)全電通の方は電電公社の方で処置をいたしましたので、私は間接的になりますが、事実の誤認があればこれはすみやかに処置をしろということを、すでにもう何べんも言ってあります。なお全逓の組合員の場合につきましては、やはり御指摘の通り五人ほどすでに間違っておりました。これは事実の認定が間違ったのでありまして、それはすみやかに取り消しております。なおそれらの点につきまして現実の問題を取り上げて、間違っておるものは正すということをいたしております。全般的には私はそういう間違いをしておるとは思っておりません。なお、今度の春季闘争全逓関係すなわち郵政関係におきましては、三月十八日の下市、上市の問題が一番大きい。これの日の処分でございまして、これも決して私は厳罰だとかあるいは断固たる処置ではなくして、冷静に考えて法律違反が生じたものについてはその通りの法律を適用しますということを、組合並びに各個人々々に行き渡るようによく説明いたしましたことは、先ほど労働大臣が総括的に申し上げた通り方針でございました。
  91. 楯兼次郎

    ○楯委員 だから労働大臣、今郵政大臣の御答弁をお聞きになったように、われわれの方では郵政関係は二百名ございます。事実誤認が二百名以上あるというふうに資料で調べております。数は今大臣の言われたのと違いますけれども、事実すでに数件誤認があったと言っておられるのです。こういう点どうですか。だから私はもう一回言いたいと思いますが、どうも私が調査しますと、当局が今まで団交でまとめた協定事項その他を、急にその日になって破棄しておるのです。だからこういう事例を見ますと、どうも政府が一本でこの際気に入らぬやつは理由をつけて処分をせよ、こういうことが行なわれておるのではないかという気がしてならないのです。どうですか、この点、事実誤認があるじゃないですか。
  92. 石田博英

    ○石田国務大臣 事実誤認があるという郵政大臣の御答弁がございました。それぞれの当局の中で行なわれました処分で事実の誤認があったものは、誤認が明白であれば取り消されるのは当然であり、取り消しの処分をされたということは御答弁にあったのであります。一般的に私どもはしばしば公労法その他法規違反行為に対しては法の命ずるままの厳重な処置に出るということは別に隠しているわけでも何でもなく、しばしば談話として発表いたした通りであります。これが一本の線が通っているといえばその通りであります。ただ具体的に各現業当局に対して気に入らない者云々というのは言い過ぎでありまして、法律に違反した人々は処分をせざるを得ないのであります。
  93. 楯兼次郎

    ○楯委員 これはちょっとおかしいと思うのです。処分をするということは労働者にとっては生存権の問題です。そんな重大な事柄を事実誤認があったとおっしゃっておるじゃありませんか、事実やっておるじゃありませんか、数はわれわれ社会党とは食い違うでしょう。しかし処分をしておいて間違っておった、もとに返す、これだけでは当人の名誉にとって、今ここで労働大臣が言明されるようななまやさしいことではないと思います。そういう事実をやっておるのです。だからこの点はあとで御質問をいたしますが、どうも十ぱ一からげにいわゆるねらい打ち的な取り扱いをしておるという気がしてならないのです。そこであと事例があるから申し上げたいと思いますが、争議行為の云々じゃなく、こういう事実誤認の問題については率直に改めても、何ら政府の方がかれこれ言われはすまいし、当然私は改めるべき問題だと思う。だから私の方では多数に上るこの事実誤認がある、こういう調査を持っておるのでありますが、数は合わないにしても誤認のあったものはすみやかに取り消しをなさるべきが当然だと思うのですが、この点について一つ……。
  94. 石田博英

    ○石田国務大臣 それは先ほどもお答え申し上げました通り、処分の具体的な決定は当局がなさるわけであります。従って事実を誤認したということが今郵政大臣の御答弁にも若干あったということ、これは先ほどからお答え申し上げたようにきわめて遺憾に思います。事実の誤認があったことが明白になったものの処置は、今郵政大臣が言明されたように適切な処置をとられておるのでありますし、またとられることを私は希望いたします。
  95. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は郵政大臣に希望をしておきたいのは、数の違いはあるけれども事実誤認があるのです。あるのでありますから、早急にこれは再調査を行なっていただきたい、そうして誤まったものはすみやかに取り消してもらいたいと思うのでありますが、この点についてどうですか。
  96. 小金義照

    ○小金国務大臣 ただいま事実が違っておったというので、処分を取り消したのが五人ほどありますと申し上げましたが、たとえば組合の機関責任者であった人が、もうすでに三月六日、すなわち十二日ほど前にその組合の職責を退かれまして、郵政局の方にその事実が通じてなかったというような、まことに気の毒なことでありました。そういうのはさっそく取り消しいたしました。なお今楯さんの御要望がありました通り、事実の誤認があるかどうかということにつきましては、慎重に考慮いたしまして、事実の誤認があるものについてはもちろん取り消します。
  97. 楯兼次郎

    ○楯委員 まあ郵政大臣はそういう答弁しかできないと思いますが、実際の現地はひどかったのです。というのは、そういうことを作為的にやっておるから、処分をした以後地方局の幹部は一週間も十日も逃げてしまって庁舎におらないのです。だから郵政大臣が考えておられるより下部においては深刻な問題になっておるので、私は再調査をしていただきたい、こう希望を申し上げておきます。  それから次に公労法の適用を誤まった処分がきわめて多い、これは事実誤認でありますが、一例を申し上げますと、指令を出した、直接上部機関の役員が行って現地で下部を指導した、そういう人以外に何ら関係のない人たちが公労法の解雇の処分を受けておる。これは抽象論ではだめでありますから具体的に申し上げましょう。今度は動力車組合に例をとって申しますと、四、五名の人たちが、闘争期間中動員計画あるいは闘争計画に全然参加をしておらない、中には、この人は支部長であるけれども、闘争期間中は全然支部長の権限を停止すると当局と確認をして、確約をしておる人たちまで、公労法十八条により処分をした。中にはあなたは機関車に乗って乗務員を説得し、連行をしたから公労法十八条によって解雇をする、こういう処分通告書なんだ。ところが本人は当日機関車に乗ったこともなければ話もしたことはない。ところが公労法によって解雇される、これは事実なんです。一体公労法十八条によるこの解雇が、指令も出さない、現地の指導者でもない、何も関係のない人たちになぜ適用されるのか、どう思いますか。
  98. 石田博英

    ○石田国務大臣 先ほどの事例と同様でありまして、具体的な法の適用はそれぞれ各公社、現業の経営者がやっておるものであります。従って私どもとしては具体的事例について一々お答えを申し上げるわけに参りませんけれども、しかし先ほどと同じように、もし全く事実無根であるということが明らかになった場合には、やはり適切な措置がとられるべきものと思います。
  99. 楯兼次郎

    ○楯委員 労働大臣は詳細を御承知ないと思いますので——国鉄、だれか出ていますか。運輸省、このことについて答弁できますか。
  100. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お答え申し上げます。ただいま御質問のございました処分の問題につきましては、いろいろ事実の誤認があるのではないかというようなお話を承っておりましたので、私どもといたしましては慎重に調査をいたしたのでございます。ただいまのところ、事実の誤認というようなことは認められないのでございますけれども、なお慎重に、さらに間違いのないように取り調べをいたしたいと考えております。
  101. 楯兼次郎

    ○楯委員 総理大臣が何か急用があるそうでありますから、これは全貌を質問してから、最後に総理大臣の見解を聞かなければ、総理自体も私は答弁のしようがないと思うのです。しかし何か急用があるそうでありますから、私はここで概略を申し上げてお聞きをしたいと思いますが、今まで各大臣に私が質疑応答をいたして参りましたのは、この三月のいわゆる春闘といわれる公労協の争議に対して、二万人を上回る処分者が出たわけですが、処分の正当性云々ということは別問題として、事実誤認による処分者が非常に多いわけです。当局と郵政省と国鉄あるいは社会党のわれわれとは数はくっつきませんけれども、今三分の一くらい具体的例に入ったところでありますが、郵政省の方では事実誤認の事例があったと、こう言って認められておるわけです。以下私が総理大臣以外の大臣の方に御質問をするのも、そういう事例があるという確信を持っておるわけでありますが、こういう点について春闘において事実誤認の処分をした事例が非常に多いので、私はこの処分については再調査をする必要がある、こういうことを主張しておるわけです。この点についてどうお考えになりますか。おわかりになりませんか。
  102. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 法に違反しない者を違反したとして処分することは、これは不適当でございます。そういう場合には取り消すことは当然であると考えております。
  103. 楯兼次郎

    ○楯委員 ところが私が各委員会で聞いておるところによりますると、なかなか再調査という点について渋っておられるようでありますが、事実当局側も事実誤認があるということを認めておられるのでありますから、われわれの方と数はくっつきません。数はくっつきませんが、再調査をわれわれの方はしてもらいたい、こういうことを言っておるわけでありますから、この点どうですか、総理大臣。再調査をする必要があると思うのです。
  104. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 政府といたしましては一応調査の上処分したのでございます。もし事実違反があれば、申し出によりまして具体的事実について取り調べることは当然でございます。
  105. 楯兼次郎

    ○楯委員 国鉄の公労法の十八条の適用について、ちょっと今ごたごたしておって答弁を記憶いたしておらぬのですが、もう一回やっていただけませんか。
  106. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 では再度お答え申し上げます。この処分の問題につきまして、事実に誤認があるのではないかというようなことをいろいろな方面から承っておりますので、私どもといたしましては慎重に調査をいたしました。その結果ただいままでのところ、事実の誤認というようなことはなかったというふうに確認いたしておるわけでございますが、しかし問題が問題でございますから、具体的にいろいろ御指摘等ございます場合には、なお慎重に十分な取り調べをいたしたい、さように考えておりますということをお答え申し上げたわけでございます。
  107. 楯兼次郎

    ○楯委員 これは再調査をしていただければわかることでありますので、これ以上申し上げません。  労働大臣にお聞きいたしたいと思いますが、公労法の十八条で先ほど申し上げましたように、指令者でもない、現地の指導者でもない。ただ分会長あるいは支部の役員であるがために、その闘争の計画会議、現地にも当日出動をしておらない、ただ役員なるがために処分をするということは、これは十八条の乱用じゃないか、私はこう思うのですが、どうですか。
  108. 石田博英

    ○石田国務大臣 全くおっしゃる通りでしたらその通りでありましょう。しかしながらそれ以外に行なわれました行為に対する責任、その他の事実関係については、どうも私は具体的な、私自身がさように聞いておるわけでもございませんので、私自身がまだ事実見ておるわけでもございませんからお答えをいたしかねるのでありますが、全くおっしゃる通りでしたら、それはそういうことが言えるだろうと思います。
  109. 楯兼次郎

    ○楯委員 それでは私の主張にちょっと疑惑があるような答弁でありますので、こういう場合はどうですか。指令をした指令権者、あるいはこれを責任を持って現地で実行をした人以外の者が、公労法十八条の解雇処分になり得るかどうか。
  110. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は法律専門家でもございませんから、法の各条項についての解釈をいたす立場でもございません。ただその責任を持ってという言葉の範囲、度合いというところで問題があろうと存じますが、もしあれでしたら専門家に答弁させます。
  111. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは事実問題は別でございますが、法律の規定から申しますと、御承知のように十七条で「争議行為を共謀し、そそのかし、またはあおってはならない。」こう書いてございます。これに違反した者は十八条で解雇されるものとするとあります。従いまして今申しました共謀あるいはあおり、そそのかしということに入るか入らないかということで、もしも指令権者でなくても、このあおり、そそのかしというようなことに入れば、また入る場合もあるのじゃないか、かように考えます。
  112. 楯兼次郎

    ○楯委員 この点はやめておきたいと思いますが、ILO条約の国内法の改正というので政府がお出しになっておるこの改正案、これを見れば、言葉は足らなかったかしれませんけれども、私の申し上げまするのは、公労法十八条の適用は受けないのじゃないか、こういうことを私は申し上げたのです。  それから総理大臣に私は一点質問を申し上げたいことがありますので、ちょっと繰り上げて一つ御質問いたしたいと思いますが、今度の春闘で、当局が協定、申し合わせを一方的に破棄をして処分をしておる。これを先ほど申し上げましたが、実例を申し上げます。これは国鉄の場合を例にとりますると、北海道の音別駅において正常な業務の運営を阻害をした、こういうことで解雇処分を受けておる人があります。この人がその当日当局と団交をいたしておりましたときに、今まであなた方と話し合った事柄はこれは全部白紙にする、こういう当局から通告を受けたわけです。これで組合員は非常に激高をした、これが一つの例です。それからもう一つ、もっとよくわかる実例を申し上げますると、室蘭桟橋の民間委託というのがついせんだっての新聞に出ておりましたが、紛争を起こしました。このときに当局と組合とが団交による協定を結んだわけです。そこで事件の内容をごく大まかに言いますると、第八鉄栄丸という船を民間に払い下げるという問題です。そこで団交をして、この紛争が続く期間は処置しない、こういう団交を結んだわけです。ところが問題は、第八鉄栄丸の運航を禁止するかどうかというところに組合側はあるわけです。そこで覚書において第八鉄栄丸の運航禁止はやらない、話し合いがつくまではやらない、こういう協定を結んだわけです。ところが当局はもう民間委託はやめたんだ、当局の管理、運営事項によって第八鉄栄丸の運航をもう廃止するのだ、こういう取り扱いをやったわけです。そこで二名が解雇になっておるわけでありますが、これは幾ら理由をつけようとも、当局の今まで結んだ協定の一方的破棄、こういうこと以外に私はないと思うわけであります。この点についてどうですか。私は今概略申し上げましたから、労働大臣はちょっとおわかりにならぬと思いますが、運輸大臣御存じですか。御存じないでしょう。副総裁、どうですか。
  113. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お答え申し上げます。ただいま二つのことをおっしゃいましたが、初めの方の、何か交渉の途中でそれまで話したことを白紙に返すというようなことを当局側の者が申したというそのお話の方は、私詳細なことを存じません。ただ交渉でございますので、しばしばそういうような言葉を使うことはあり得ることでございますので、その事実はどういうことであったかは存じません。  ところで第二番目の室蘭の鉄栄丸の問題につきましては、これは一月ごろであったと思いましたが、あそこの要するにタグ・ボートでございますが、その作業を国鉄が自分で直営する必要がなくなりましたので、その作業を廃止するということに方針をきめておったわけでございますが、国鉄がその作業を廃止したために、荷主さん、船主さんというような方々に御迷惑をかけてはいけないので、その今まで国鉄が直営でやっておりました仕事を、民間のはしけ事業をやっておる会社に業務委託をするということで、この話が起こったのでございますが、当時組合の方から、そういうような業務委託をするというようなことには反対である、またむろん国鉄が直営しておるそういうはしけのタグ・ボートの作業を廃止することにも反対である、こういう強い意見がございまして、その紛争がもとになりまして、あそこの室蘭の埠頭における荷役作業を妨害するというような事実が起こったのでございます。それで当時一たん両方とも少し冷却期間を置こうじゃないかというようなことで、再度話し合いをするまでの間に少し時間を置いたわけでございますが、当局側の方もいろいろ考えまして、また事情を調べました結果、これは必ずしも民間の会社に業務委託というようなことをする必要はない、国鉄が単にその仕事をやめるということだけで、別にそのことのためにあらためて業務委託をするというような必要もないという結論に達しましたので、前回紛争を生じました際には業務委託をするということで紛争があったわけでございますが、その点は国鉄の当局側は取りやめにいたしまして、単にそのタグ・ボートの作業を廃止するということだけにとどめたわけでございます。しかしこの間埠頭におけるはしけの荷役を妨害するというような実力行使が行なわれまして、それらの行為は明らかに法律違反の行為であるというふうに判断されましたので、その責任者を二名処分をいたした、こういういきさつでございます。
  114. 楯兼次郎

    ○楯委員 ここに私は団体交渉による協定を持ってきております。その問題は民間委託であろうと作業の廃止であろうと、組合にとっては第八鉄栄丸の作業継続かいなかというのが問題なんです。そこで覚書確認というので、第八鉄栄丸の作業継続は、この状態が続く限り行なうというので、組合当局が調印をして協定々を結んでおるのです。これを民間委託は取りやめた、いや運航を廃止するのだということで、この協定は白紙になった。こういうことで、この問題をめぐる紛争の二名解雇が行なわれておる、こういう状態です。  それからこれはきょうの社労でもやっておると思いますが、門司においては、駅構内の照明が悪い。基準監督署が警告をしておる。組合が告発をしておる。昭和三十四年から三十五年、二カ年に門司鉄道管理局では、死亡十四件、重軽傷五百八十三件、全部この照明に関するものではないのでありますが、このような死傷事故を起こしておる。照明について紛争が起きておる。この紛争をめぐる三月の職場大会その他によっても処分をされておるわけであります。私は先ほどこの処分通告書を見てきたのでありますが、公労法による解雇を免職と書き、それから簡易苦情処理機関にこれは出せないわけですが、異議があれば苦情処理機関に出せ、こういうふうな通告自体が、解雇通告の書類自体がこの法律の体系をなしておらぬわけです。これはきょう、労働大臣も社会労働委員会でその現物を見られると思いますが、そういうあわてふためいたところの、何らか中央において動かす力によって支離滅裂な処分をしておるというのが、今次春闘における処分であるのです。総理大臣、これだけお聞きになってはわからないと思いますが、悪いことは悪いので、再調査をしてすみやかに処分の撤回をすべきである、こういうふうに私は思うわけでありますが、お考えをお聞きいたしたいと思います。
  115. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど申し上げた通りに、誤りがあれば取り消さなければなりません。その問題はやはり個別的に個々の事実として調ぶべきものだと私は思います。
  116. 船田中

    船田委員長 楯君の残余の質問は留保いたします。  川俣清音君。
  117. 川俣清音

    ○川俣委員 私はこの際総理大臣に三十分の範囲内で御質問いたしますので、あるいは矢つぎばやになりまして失礼な言葉も飛び出るかもしれませんけれども、その点は時間の制約のために起こる結果でございますから、御了承願わなければならぬと思います。  総理大臣はだいぶ農業基本法について御勉強になって、答弁もうまくなられたようですが、どうもこの答弁に二つの疑問が起こってきておるわけであります。一つは、企業農業を推し進めていくことによって、農業の構造改革を行なうことによって、他産業との生産性の格差を解消していくのだ、是正していくのだ、こういう御説明が一方でなされるわけであります。一方では、規模を拡大して家族経営農業をやることによって、農民の所得を増していくのだ。この二つの説明がなされておるわけですが、一体企業農業として農業を推し進めていくという政策をおとりになるのか、あるいは日本の民族の基盤である農村を保持するために家族経営農業を遂行していくというのでありまするか。いずれであるかを一つ明らかにしてほしいと思うのでございます。
  118. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 両方一緒にやっていこうとしておるのであります。
  119. 川俣清音

    ○川俣委員 私は池田総理大臣が農村について全然知識がなければ、そういうことも言うのであろうといって、これは問題にしないで済むわけです。だいぶ勉強されたからには、同時に進めていくのだなどということが言えるわけはない、こう思うのです。  もう少しそれでは具体的に申し上げましょうか。生産性が上がれば所得もふえるのだという言い方は、聞き方によりましてはあっさりしてわかりやすいようでございますが、ここに問題があるということが当然お気づきになっておると思うのでございます。時間がないから明確に言いますが、第一は他産業との生産性の格差是正をほんとうに目標とするのでありますならば、家族経営農業という美名のワクを抜け出して、構造改革の方向へ推し進めなければならぬだろうと思うのです。もし真に家族経営農業を維持発展させるということを主眼としていきますならば、生産性の格差を是正するということを取りやめなければならぬのじゃないかと思うのです。ほんとうに他産業との生産性の格差を取り除く、是正することができる農業ということになりますれば、それは明らかに企業農業の形態でありまして、別に家族経営農業でなければならぬわけはないのです。規模を拡大して家族経営農業をやるということは、これは所得拡大をはかるのだといいますけれども所得拡大ではないのです。家族経営農業というものは、家族の生活を高めていく農業だというのが経済学的に見るべきものだと思うのです。すなわち家族経営農業というものは、所得ではなくて、生活水準を上げていくために所得が必要だという農業なのです。家族経営というのは、雇用労賃でもなければ労働賃金でもないのです。家族経営自体が生活なのです。生活農業でありますから、生活を高めていく農業たり得ればいいのであります。必ずしもそれは企業農業ではないはずです。企業農業ということになりますれば、家族であろうと雇用者であろうと、機械に依存しようと、規模がどの程度になろうと、企業形態農業というものと、家族経営農業というものとは相反するものだ。相背馳するものだ。いつまでたってもこれは平行線なのです。平行線どころか、出発が誤りますと、一方は企業経営農業に走り、一方は生活を本拠とした家族経営農業に入っていくと思います。家族経営農業というものは日本の農本主義といいますか、重農主義のねらいでありまして、かなり崇高な目標を持ったものだと私は尊敬はいたしますけれども、そのことと企業経営農業とが両立するのだという考え方は、これは農業学者にお聞きになりましてもあやまちだと思うのです。調査会の議論を聞いてごらんなさい。企業経営でいくのか家族経営でいくのかという議論が行なわれておる。私はしかるべきだと思うのです。この割り切れないところ、基本法の足らざる点はここにあるのです。あとの点は別にいたしまして、この点なのです。企業形態でありますならば、他産業との生産性の格差というものを解消することは困難ではございませんでしょう。家族経営農業というものは、そういう生産性を上げて所得拡大して企業経営に持っていかないというところで家族経営農業というのでしょう。この点もう一度御答弁願います。
  120. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 川俣さんのおっしゃることが私にはわからないのであります。この家族経営というのは、経営をしておる人が家族の人であり、企業として成り立つということは所得の問題でございます。私は両立すると考えております。
  121. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がございませんからもうこれ以上論争しませんが、企業農業というものと家族経営農業というものは、農業の本質からいいましても同じだということについては、大臣、まだまだ勉強が足りないのでありまして、とんだ方向に日本の農業を持っていく責任を将来負わされるであろうということだけを警告いたしまして、次の問題に入りたいと思います。  次に、農業基本法と米麦の価格の問題についてお尋ねをいたしたいと思う。最近の経済成長は七・二%上がってきたということでありまして、農村の所得をこれらに追いつかせるためには、何といいましても、全体の日本の農業の重要な要素であります米価または麦価に大きなウエートを持っておるわけでございますから、従って麦価や米価が停滞するか、あるいはそれ以上に、伸びと同じように価格が上がっていくということになりますならば、従来と比較してある程度均衡のとれた所得が農村に入ると思います。そこで総理大臣に、もしもほんとうに農村に対する愛情があるというならば、ここ四、五年でもよいから、あるいはほんとうは十年計画で、この成長伸びと同じように米価または麦価を思い切って上げていく決意がおありになってもよさそうなものだと思うのですが、ないかどうか。
  122. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 農民の方々の所得を上げるために安易な価格の引き上げをやるということは、私は農業を毒するものであると考えます。しかもそれが国民の主要食糧であります関係上、国全体としてそういうことはなかなかとり得ないのでありまして、従って企業として成り立つようにするという意味は、生産性を向上して、そうして米価がそう変動しなくても所得が上がるようなことを考えていこう、こういうのでございます。
  123. 川俣清音

    ○川俣委員 どうせ池田さんの答弁は、その程度より出ないだろうと思います。ところが生産性と言いますけれども、産麦の中で、あるいは米も入れて、一番生産性の高いのは大麦なんです。大麦をやめて小麦を作れということは、一方では生産性の高いところに持っていこうとし、一方では生産性の低いところに持っていこうとすることも行なわれておるでしょう。計画されておるでしょう。大麦は日本の産麦の中では一番生産性が高いのです。まだ成長性があるのです。それをやめて生産性の低い小麦に持っていこうという。だから生産性を高めるというのがほんとうなのか、家族経営としてはその方がよいのじゃないかということで行かれるのかという問題も起きてくるのですが、そこまで言うのは無理でしょうからお聞きしません。  それではお尋ねしますけれども、統制を続けていくのだということ、並びに従来とって参りました生産費及び所得補償方式によって今度の三十六年度の米価も決定されるということのように、大臣は御了承になっておるのじゃないでしょうか。農林省はそういう態度をとって作業に入っておりますが、これは総理大臣の了承なしに作業に入っておるのですか、どうですか。   〔委員長退席、愛知委員長代理着席〕
  124. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 農林省はそういう方向で検討しておると聞いております。
  125. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますれば、御承知通り生産費が物価高の影響を受けまして、農業パリティが非常に上がってきております。次に自家労働を都市労働で換算するわけですが、農業団体及び農民団体は三十人以上の規模の製造工業の平均労働賃金をもって書きかえるわけでございますが、農林省は従来四人以下一人までの小規模の製造工業の労賃をとりまして、算定をいたしておるわけです。ところが総理大臣御存じのように、大規模の労賃も上昇しておりますけれども、この四人以下の小規模の労賃が非常に上昇しておるわけであります。そういたしますと、もちろん絶対的には三十人以上の規模の労賃よりも低いけれども、前年度、前々年度と比較いたしますと、その上昇率は非常におびただしいわけでございます。賃金の上昇が。小規模ほど労賃の上昇が高い。そういたしますと、この算定の基礎になっております労働賃金が異常な上昇を示し、パリティが上昇してきたということになって参りますと、必然に米価も高く買わなければならないという結果になるのではないでしょうか。しかしそういう結果を何らかの措置で押えるというのでありますか。計算は計算として、それを是認するという方向をおとりになるのでありますか。この程度のことでありますれば、農林大臣でなくても、総理大臣でも御答弁できる、こう思います。
  126. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、農林省におきましては所得及び生産費補償方式によっていったらどうかということを検討しておるのでございます。その結果につきましては、まだ私は聞いておりません。その検討中においてあなたの今おっしゃるような事態が起こってくるでしょう。どの程度起こるかということを今検討しておるので、研究し、計算しておるのでございます。結果につきましては聞いておりませんし、三十六年度から所得並びに生産費補償方式でやるのだという結論も出ていないのじゃないかと思います。検討はしているようでございます。
  127. 川俣清音

    ○川俣委員 それは総理、間違いです。なぜかと申しますと、方針がきまらないと、あの精密な作業というものはできないのです。どの方式をとるのかということがわからないで、そろばんを置けるものではございません。大臣御存じの通りです。従って、この方式に基づいて計算すればどうだ、この方式に基づいて計算すればこうだということで、少なくとも農林省の企画課で外部にも発注いたしまして計算をいたしましても、従来の経験からいって半月か一か月かかる。それほどかかるものを、まだ方針もきまらないのに作業をするなんという、そんなむだな経費はないでしょう、食管の中に。大体の方向はどうである、その方向に基づいて作業をする。その結果採択にならないこともあり得るでしょうから、ではばかを見たということになりましょうけれども、ほとんど徹夜でやっておるのです。今年も三十四年以来とって参りました生産費及び所得補償方式に基づいて計算をするのだということで計算をしていることは事実なんです。それを総理大臣が採用するかあるいは農林大臣が採用するかということは、別問題です。作業はそういう方向で作業されているということは、これは明らかです。そこでその作業を終わったならば、その作業を無にするのか、それをお使いになるのかと、こう聞いておる。そのくらいのことはできるでしょうということです。
  128. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 多年の問題でございまして、農林省はそういうふうな問題点を今検討しておるのでございます。そうしてどんな方式でいくかということは、検討の結果を見なければ何とも申し上げられません。これ以上は農林大臣から答えるほかにはございますまい。
  129. 川俣清音

    ○川俣委員 総理大臣、時間がありませんから、どういう方式でいくかということの検討はしておる。これは作業ですから、計算ですから、この方式でやればこうなるであろう、あの方式でやればこうなるであろうという作業はしておりますよ。それはやっております。どういう方向へ持っていくかというようなことは検討しておりません。これは末端の計算をする者は、どういう方向でいくのだなんということの作業ができるわけがない。最高の方針がきまれば、この方式でいけば高くなるから、この方式でいけば安くなるからというような検討はしておりましょう。これはやっておりましょうけれども、そこで作業の結果、従来とって参りました生産費及び所得補償方式をおとりになるのかならないのか、こうお聞きしておるのです。
  130. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは重要な問題でございますので、どの方法でこうなる、あの方法でこういう結果が出るということを見ました上で、どの方法でいくかということをきめるべき問題だと思います。
  131. 川俣清音

    ○川俣委員 農林大臣の示唆を受けての御答弁だとすれば、農林大臣は米価の上がることをおそれて作業を変えるという意図があるから、そういう耳打ちをしたものと理解をいたします。(池田(勇)国務大臣「何も聞いておりません。」と呼ぶ)そう断定してかかります。(重政委員「食管法できめておる通りだ」と呼ぶ)せっかく重政さん、食管法できめておる通りだということになりますれば、今日の作業を取り上げるという自民党の中にも御意思があると理解いたしまして次に移ります。  次に、基本法の中に一つ欠けておるものがあるとお気づきになっておると思うのです。この点について触れたいと思います。それは生産構造についてはいろいろと検討を加えられた方針が出ておりますが、消費構造と申しますか、需要構造については何らの検討が行なわれていないのです。ところが大臣、今度洋行されればわかりますが、アメリカにおきましても小麦の需要構造、消費構造についていろいろな研究がなされております。これはアメリカばかりでない、欧州においてもなされておる。日本は米麦というと、粒で食うか粉で食うか、粒食か粉食より方法がないような考え方を今もなお続けておられる。ところがヨーロッパに行かれましてもアメリカに行かれましても、粒食と粉食の食い方があるなんていっても、これは理解しませんよ。中国は幾らかそれがありましょうが、あとほかの国では粒食、粉食というような理解はないのです。御承知でもございましょうが、大体世界的に穀物の食い方といたしましては四色に分かれておるようでございます。一つはかゆにして食うという食い方、おかゆです。英国のオートミルのようなものが穀物の発生の過程のようです。次が焼いて食う、粉を焼いて食うといういわゆるビスケットのようなもの、あるいは日本でいうともち菓子であるとかというやり方、次にパンであります。第四に醸造飲用酒、これが穀物の食い方の四つの世界的な一つの分類になるようでございます。日本は米というものはたいて食うものというけれども日本のうどんあるいはそばもまた、かゆのうちの一つに入るのだという学説さえ行なわれておる。時間がないので詳しく申し上げませんが、そこで、ポーリッジといいますか、オートミル・ポーリッジ、あるいはフラットブレッドというのはビスケットだ。それからソ連のカーシャというのは、これもまたおかゆなんです。そういうふうに食い方が国によってもいろいろ違う。発生によって違っている。それを日本は米というものはたいて食うのだ、こういうことだけで消費構造は将来どうするのだということに対しては何ら検討がない。また農林省は——これは聞いてほしい。  今後大麦は食わなくなって小麦を食うのだと言いますけれども、だんだん先進国はむしろ小麦を食わなくなってきている。アメリカの統計を見てごらんなさい。これを一つ例を申し上げましょうか。世界を四つの型に分類いたしまして、A型、これは減少型といわれておりますが、先進国に属する国でオーストラリア、カナダ、アメリカ、ベルギー、ルクセンブルグ、フランス、スペイン、スイス、イギリス及びエール、ニュージーランドの十一カ国が、これが小麦の減少型でございます。それからB型といわれるのは中間型でございまして、大体伸びもしなければ減りもしないというのが、デンマーク、フィンランド、ドイツ、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、この六カ国は小麦が主食だが、そのほかにライ麦やばれいしょの比重がかなり高い国で、戦争でかなり減少したけれども、大勢としてはふえている。しかしあまり伸びるような傾向も減退する傾向もないような型をB型といわれておるようであります。これは分類の仕方です。C型が今後幾らか増加する型でございまして、小麦が主食として圧倒的に多く、ますますその比重を高めている国として、アルゼンチン、ブルガリア、ハンガリー、ルーマニア、ユーゴスラビア、チリ、ウルグァイ、ギリシア及びイタリアの九カ国、日本はD型の範疇に入るそうでありますが、小麦以外の穀物が主要な地位を占める諸国で、一人当たりの小麦の消費量はA型、B型、C型に比べて少ないけれども、幾らか今後消費量がふえる国の中に仏領モロッコ、チュニジア、ポーランド、ポルトガル、エジプト、インド、このエジプト、インドと並んで日本が入っておるというので、これから幾らか伸びる方向にはありますけれども、エジプト、インドよりも文明が進むといたしますならば、蛋白質の方へ参りまして、穀物の消費が減ってくるというのが世界の食物の大勢でございます。それを一方酪農だ、鶏卵だということで、蛋白質を多く食わせるような状態を作り出す生産を進めて参りまするならば、小麦の消費量というものは変わってこなければならない、見込み違いがくるのではないかと思う。そこでやはり一番生産性の高い大麦の消化のことについてもこれは検討していかなければならぬじゃないか。適しない、経費をかけて、しかも小麦のごときは雨にたたかれますとくず小麦が出まして、これは食糧にならない。えさにはなりますけれども、食糧にならない。大麦が割合対抗力を持っておる、日本の国土に向いたものです。しかも生産性の高いものをやめるというのはどういう考え方なんですか、詳しいことは別ですよ。総理にそのくらいのことなら御答弁できるということで一々お聞きしておるのですが、どうです。
  132. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 生産性の高いものを作るということは、経済の一方の原則でございます。しかしできたものが需要に向かないものを作ることは経済に合わないことでございます。だから需要と生産を見ながらやっていくのがほんとうでございます。大麦、裸麦はだんだん需要は非常に減って参っております。生産性が高いといっても、一トン当たりの外国の大麦、裸麦と比べて日本がいかに割高かということも、日本経済全体を考える場合におきましては考慮に入れなければなりません。経済というものは需要、供給の原則に従わなければならないものでございます。
  133. 川俣清音

    ○川俣委員 そこで、もしそれだけわかっておるならば、食わないものをなぜ輸入しなければならないのか。大麦をなぜ輸入するのです。国内でも余っておるものをなぜ輸入しなければならぬか。従来も輸入しておる。だんだん減らしてはおりますものの、輸入しておるじゃないか。食わないものをなぜ輸入しなければならないか。先ほど私が言ったのは、今後の需要の構造をどう変えていくかということを考えながら、このものはこういうふうにしていこうじゃないかということの計画がなされなければならないじゃないかということを、先ほど提供したのです。絶対食わないものを作ったらいいなんということを言っていない。今後消費構造なり需要構造がどう変わっていくかということと対応しながらやっていかないと、農産物というものは、ことしからほしくなったから急に作るとか、あるいは来年から牛乳がちょっとふえるであろうから牛を飼え、そうはいかない。機械工業や製造工業と同じようにいかない。設備をすればどんどん生産ができるというものとは違うのです。そこで今後の需要構造というものはこういうふうなあり方をするであろう、あるいはそれは間違うことがあるが、間違うことがあっても、たまたま間違うことがあるかもしれませんけれども、一定の需要構造の趨向というものを見出して、これは各国の学者がみんなやっておることです。それを参考にして政府が政策を立てておるのですから。日本はこれがないですよ。ないということは、あまりに米が豊かであり過ぎましたために、検討が足りなかった。むしろ米が非常に不足した場合には、どうして一体この米を食わせるかという需要構造について検討されましたけれども、今では農民の恩恵に浴して、いたずらにただ手をこまぬいておるような結果が起きて参りますと、この農民の心理に与える影響は非常に甚大でありまして、結局為政者に対する反撃がいつ起こらないともしれない危険をはらむのではないかと私は憂慮する、これは私の憂慮です。なかなか総理はそこまで憂慮できないと思いますが、私は少なくともそう憂慮する。  次に、今後文化が発達いたしまして工業が伸びて参りますと、人類の生活の上から水が大量に必要になってくる。文化生活に伴う必然の要求です。工業用水が必然の要求として生まれてきますのは当然のことでございます。そこで政府はいろいろ苦慮されまして、水資源促進法とか開発公団とかいうようなものをお作りになるということでございますが、これは水の方は、どうもおかしいのは需要構造を考えての法案なんですね、こっちの方は。米や麦の方は生産構造だけだけれども、水の方は需要構造のことについて非常に熱心に案を練られておるのですが、この水の生まれてくる開発については何らの考慮が払われていない。日本の法律もそうでありまするし、今までの施策もそうなんです。河川というと、日本では河川というのは河川法の河川あるいは河川法を準用する準用河川までが河川であって、それ以上のものは小河川ともいう、その小河川の上流は私の川になっておる。そんなことはないというならば——うしろで言うだろうと思うけれども、災害を見てごらんなさい。災害が発生した場合に、これに対する補助やあるいは融資があるかというと、それは私川の領域に関することだからということで、融資もなければ補助の対象にもならないのが河川の中にある、上流河川には。準用河川まではありますよ。小河川などは町村の管理として補助がある場合もありますけれども、その上流になりますと、水がほんとうに生まれてくるところは、これは私の川だ、私有物になります。従って一単位十万円以下の災害は災害の対象にならないで、自己資金がこれを防御しなければならないし、流水もはからなければならないというふうになっておる。ところが流れてきた自然の水をためて利水をするのだということについては、今申し上げたようにいろいろな施策が講ぜられて、今後も講ぜられるということはまことにけっこうでございますが、上流の水をたたえることや、穏やかに流れてきて利用できるようにすることが、ほんとうの水の開発だと思うのです。これは途中で平坦地に降ったやつを持ってこようと思ったら洪水なんです。山にあるのが除々に流れる。きょう降ったやつが三日、四日おいて自然に穏やかに流れてくるというのがほんとうの水の開発でなければならない。それには荒れないように、激流にならないように、上流において小さな土砂どめのダムを作り、水を穏やかに順次に流してくるというやり方をしなければならないはずなんです。水をほんとうに利用しようとするならば。ところが今日までは、治山については周東さんも非常に熱心なんですが、荒れた山を直そうということについては、山林保護のためにぜひやらなければならないということで非常に熱心だけれども、いわゆる農林省、林野庁で言う予防治山については遅々として進まない。これは大蔵省におられたから知っておるでしょう。予防治山になると、一つ覚えのように、あまり経済効果がないのだということで怠慢だからして、今日水に窮する事態が起こってきた。そこで予防治山であります小ダムの建設が必要になってきておるのであります。下流のことについては企画庁も非常に熱心だけれども、上流のことについてはどうかというと、それは農林省の所管だということで逃げられておる。周東さんは治山については非常に自信があるのですけれども、予防治山についてはあまり熱心でないようですが、今後どうされるのですか。水が必要だというその必要に応じて貯蔵をして流してよこすということがあなたの責任だと思うのですが、どうですか。
  134. 周東英雄

    ○周東国務大臣 御熱心に予防治山について御意見を述べられまして傾聴しておりますが、農林省はこれを捨てておるわけではありません。三十五年度からは一般の治山に対応しまして、三十五年は十三億、三十六年はさらにふえまして、それから以後における五カ年計画においては大体八十三億というものを計上して予防治山に当たろうといたしております。
  135. 川俣清音

    ○川俣委員 今、周東さんはああいううまいことを言うけれども、これは治山についての順序、基準というものがあるのです。この基準には予防治山的な、水源地で予防するという予算のつけ方については、その基準が非常に低い。従ってこれがあと回しにされるのです。周東さん、そんなことは私が言わなくたって十分御存じの通りですよ。治山の順序といいまして、基準というものがある。林道には林道の基準というものがある。この基準に落ちればあと回しということになって、あと回しにされておるのです。時間がありませんから例をあげませんけれども、そうなんです。従って、企画庁もせっかくこの水を文化のために利用させあるいは工業用水に用いて経済成長を願うならば、もっと上流から治めてこなければならないが、これをやらない。今日の電源会社のダムの効率が下がっておるのも、計画量の発電ができないのも、みな土砂がたまってしまうからです。土砂どめをするということが水を保存することの唯一の方法なんです。これは倉庫なんです。水の倉庫的役割を上流で果たさなければならない。私は、その意味において、総理大臣もう一つ、その方法を突っ込んで御指示願いたいと思うのです。  次に総理大臣、今度全責任をもってアメリカへ行かれるわけですが、従来とかくどういう経費で行ったのかということで野党側ではときどき総理大臣の渡米費用あるいは渡欧費用について疑問を持って調べたのでございます。総理大臣は今度どういうふうにされるか存じませんが、従来は外務省の庁費あるいは報償費あるいは予備費からお使いになっておるようです。庁費を使うなんていっても、庁費なんというのは、水だとか、器具だとかそういうこまかしいものを集めたのが庁費でありまして、庁費には余裕はないのです。これの査定は厳格なんです。大臣御存じの通り。その中から庁費をさいて旅費にするなんということは今度はおやりにならないと思いますけれども、どういう予算で行かれるのですか、総理大臣は全責任を持って行かれるということですから、当然旅費についても責任を持って行かれるはずだと思いますので、おれは知らないなんということは言えないはずだと思います。御自身で行かれるのですから、当然お考えになっておると思います。
  136. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 まず第一に、農業基本法について需要の点を考えていないというお話、価格の点、需要の点、よく考えております。  それから第二段に治山治水の問題、建設省、農林省がいわゆる山を治めるに砂防でいくか森林法でいくか、法の建前はできておりまするが、その間に各省微妙な点もないことはないと思います。しかし、山を治めることは、これは政治の根本でございますから、私はあなたの卓見によりまして、今後も善処いたしたいと思っております。  三番目の私のアメリカ行きの旅費につきましては、まだ私は考えたことはございません。旅費請求は正々堂々とやっていく考えでございます。
  137. 川俣清音

    ○川俣委員 もちろん正々堂々でしょうが、どこの款項目でお取りになるのか。大蔵省におられなかった人なら款項目を知らぬから、どこからでもいいから出せと言われるかもしれませんが、少なくとも予算を組んだことのありまする総理大臣といたしましては、どこの款項目から出してくるかということを明らかにしなければならぬ。この項目から出たから堂々と持っていっても、別な項目から持っていったならば、御存じの通りそれは違法なんです。そこでお伺いしたいのですが、まあそれはそれでいいです。時間がないから。  そこでもう二つ簡単なやつを聞きたいのです。日ソ漁業交渉がもう妥結を見なければならないと思いますが、昨年は五月十七日に妥結をいたしまして十九日に出航しております。もうきょうは十八日でございます。そこで現地におきましても、日本の水産業のためにも、また業界のためにも、漁民のためにも急いでこの解決を願っておるわけです。これは漁民の立場からそうです。日本の外交の上からいっても、例年行なわれる日ソ漁業交渉をただ長引かせるような外交のやり方は、決して世界的にほめられるものじゃないと思う。そこで総理は非常な決心を持って妥結に当たっておられると思います。総理みずから当らないにいたしましても、農林大臣をお使いになって全力を上げておられると思いますが、いつごろ一体解決する見通しですか。もちろん漁民の方は八万トンを要望しております。この八万トン獲得のためには、一日、二日おくれてもよろしいという考え方はあるかもしれませんけれども、長引いたが予想に反したような妥結をいたしまして、おくれた上に数量が減るということになりますれば、政府の信頼を失墜することになると思いますので、この際お尋ねしておきたい、こう思います。
  138. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御質問第一点の旅費の問題でございますが、私はできるだけ一行を少なくして、経費を使わないように考えております。そしてどういう方法をとりますかは、もちはもち屋におまかせいただきたいと思います。  それから日ソの漁業交渉でございますが、お話しのように、非常に心痛いたしております。規制区域の問題につきましては、われわれは所信を断行して、ソ連の申し出をけりました。しかし今度は区域内における漁獲の問題につきましては、ソ連は昨年の七万トンを八万トンにふやしていると私は聞いております。今年は豊漁年でございますから、われわれは八万トンと申し出ておるのでございますが、五万トンを向こうは主張しております。その後だんだん日本の漁獲量をふやして参っておりまするけれども、われわれの意に満ちません。それで、お話しの通り、昨年は十九日に出帆しております。去年は十七日にきまって十九日に出発しております。きょうは十八日、このせっぱ詰まった状態をいかに処置しようかと私はほんとうに心痛いたしております。できるだけいい条件で——いい条件じゃない、悪くない条件でいきたいということで農林大臣並びに関係当局とやっておるのであります。
  139. 川俣清音

    ○川俣委員 いつごろまでに……。
  140. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これはいつごろということは、やはり交渉の関係がございますので、お許し願いたいと思います。
  141. 川俣清音

    ○川俣委員 今外国旅費につきましては、もちはもち屋にまかしておけと、こういうことですから、それではここで一つもち屋にまかしてほしいのは、予算を審議するこの委員会に旅費を補正予算として請求されるのが一もちはもち屋にまかしておけというあなたの言葉そのまま正直に受け取れば、補正予算を一つお組みになって正々堂々と行かれることが望ましいのじゃないかと思いますが、この論争は時間がないからやめます。補正予算をお出しになるのは、それはけっこうですよ。
  142. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 一国の総理大臣が数名で外国へ旅行いたしますのに、補正予算を出すというふうなことは、私は予算に非常にお詳しい川俣さんとも思えぬ議論だと思います。そういうことは、私は議論にならぬと思います。
  143. 川俣清音

    ○川俣委員 こういうことはやりたくないのですよ。予備費を調べてみたり、庁費を見たけれども、なかなか窮屈にできておるようなんです。それでは一つ別に予算を組まれたならばよろしいのじゃないか。私は、多く使っては悪いとか、そういうけちな考え方じゃないので、堂々と一つ予算を組まれて行かれることが外交を推し進める上においても権威あらしめるものじゃないかという考えで申し上げたのです。急いでおられますから次に参ります。  そこで、先ほど造林計画あるいは治山計画について意見をお伺いしたのですが、経済成長に伴いまして、都市の工業方面の求人要求が非常に激しくなって参りましたために、秋田県の例でございますが、大曲公共職業安定所長の名前で「就職促進について」という大きな広告を出しております。この広告は「現在は例年にない経済の好調によって、関東、名古屋、関西方面から大手筋の求人が多数申込まれております。県内外の造林関係、水産(罐詰)関係、土建業界、その他につとめていて、毎年冬季になれば退職して失業保険を受けている皆さんのうちで、特に独身の二十五歳以下の二、三男女の方は、この際俗に言う出稼ぎをやめて、一日も早く永続性のある事業所に就職し、働きながら教養を身につけて、立派な職業人となることをおすすめ致します。」という広告が出してあります。これはこれ自体はりっぱだと思う。石田さんどうですか、これはあなたは異議ないんだと思うが、どうですか。
  144. 石田博英

    ○石田国務大臣 働く人はそれぞれ安定した常用雇用で、いい条件の中に行かれることは、労働行政としては望ましいと思っております。
  145. 川俣清音

    ○川俣委員 周東さん、どうですか。臨時の造林関係や何かへ行くな、こういうのです。
  146. 周東英雄

    ○周東国務大臣 今後はこういう形で農村から出ていく人も、あるいは農村において他産業に従事する方々もより有利なところへ持っていくようにあっせんし、指導していきたいと思っております。
  147. 川俣清音

    ○川俣委員 結局今後山村ではむしろ雇用が悪化して参りまして、造林事業であるとか伐採事業が困難になるんじゃないか。半年契約であるとか四カ月契約なんという不安定なものは、あっせんとしては取り扱えないという意思表示だと私は思います。ところが、依然として林野庁は永続した雇用を確保するというやり方をしないじゃないですか。全く政府の中で一方は雇用の安定をはからなければならないということで、こういう不安定な職業につくなと、こう言う、安定した職業につけと言う、その通りだと思う。そうしてそれに対応いたしまして、常用作業員等につきましては、短期の契約ではなく、やはり長期の契約を結んで、雇用の安定をはからなければならないというのが石田さんのお説なんですから、閣議の中でいろいろ議論が分かれるといけませんから、二つの案がありますので、一つ御相談おきを願いたいと思います。総理大臣、こういう問題がございますから、どうぞ御仲裁になっていただきたい、こう思います。片方は不安定なところへ行くなと言う。片方は造林事業、伐採事業を進める上にその必要なときの期間だけ入り用だという。片方はそんな不安定なところへ行くなと、こう言うのです。どっちももっともなことなんですから、これは総理の裁定を要することだと思います。総理はどちらへ御判断しますか。
  148. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 その地方の状況、個人の考え方によっておのずから結論が出ると思います。
  149. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 川俣君に申し上げます。申し合わせの総理大臣に対する質疑の時間はだいぶ経過いたしましたから、もう一問だけお許しいたします。
  150. 川俣清音

    ○川俣委員 そこで、総理予算総体についてお尋ねをいたしたいのですが、今度の補正予算は、主として予備費をもってベース・アップの費用に充てておるわけです。これはやむを得ないと思います。ところが、この予備費というものは、予見せざる事態の発生した場合に使用するために予備費がございます。おもに日本としては災害の発生が予見せざる大きなものとして取り扱われて今日まで予算が組まれた。この予備費の使用を見ますと、従来ほとんど災害復旧がおもなものになっております。このいわゆる予見せざる事態の発生のために使うべき予備費がこうくずされて参りますと、災害が起きたときに、急に間に合わないという事態が起きるのではないか。日本のような災害発生国におきましては、自然の運命をしょっておるのでありますから、常にやはり災害に応じ得る態勢というものが必要ではないかと思うのですが、これは総理、どういうふうにお考えになっておりますか。
  151. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今回の補正予算につきましては、予備費を使っておる、こういうことであります。もちろん使っておりますが、予備費ばかりではございません。それから一般会計におきましての予備費は、相当災害につきますし、補正予算も相当災害によって組みますから、大体今回におきましても各特別会計で、災害の起こる場合、これは鉄道、国鉄が一番多いのでございますが、こういうものにつきましては、一応はやはりそういう災害関係の分にあまり手をつけないようにしてやっておることと思いますが、御心配の点はそうないんではないか。災害にもよりますけれども、私は今回の補正予算の編成はそう御心配の点はないと思います。詳しくは大蔵大臣から答弁申し上げます。
  152. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 郵貯会計のようなところの予備費は使いましたが、災害関係などの関係は、現業を持っておる国鉄、電電、郵政というようなところは、国鉄が二十五億、電電が五億、郵政が八億予備費を残してございまして、過去のいろいろな実績から見まして、大体まかなえる程度だろうと思います。
  153. 川俣清音

    ○川俣委員 あと、委員長、保留して……。
  154. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 楯兼次郎君。
  155. 楯兼次郎

    ○楯委員 三十分残っておるそうでありますので、簡単に一つお聞きしたいと思いますが、補正予算のうちで運輸大臣にお聞きしたいと思います。国鉄の資産充当でありますが、当初は十六億円当初予算に資産充当費として計上されておりましたが、これはどこから出た金額でありますか、お聞きいたしたいと思います。
  156. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 お答え申し上げます。遊休施設の売却を主として考えております。
  157. 楯兼次郎

    ○楯委員 日鉄法四十一条によりますと、利益金が出ました場合には、積立金として積み立てることになっております。ところが補正予算が当初組まれましたときに、兼松理事は、当然昭和三十七年度に使用すべきものであるけれども、この補正予算に計上をし、裁定実施の原資にしたい、こういうことを言っておられましたが、これは当然三十七年度に使用さるべきものではないか。そうじゃないですか。
  158. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 御承知通り、今回の仲裁裁定を完全に実施いたしますためには、百九十二億という膨大な財源を必要とするのでございまして、国鉄におきましても、かれこれこの財源を工夫をいたしまして、先ほど来申し上げましたように、予備費八十億というものの中の五十五億とか、あるいはまた借入金を二十億ふやすとかいうようなことをいろいろやりまして、そうして三十五年度から三十六年度に剰余金として繰り越すことのできるであろう五十八億というものを見込みまして、そうしてこれも財源として今までにないような人件費の膨張を来たします百九十二億の財源をいろいろの方面から財源として調達をいたした、こういうふうなことになっておるのでございます。
  159. 楯兼次郎

    ○楯委員 この補正予算を組むにあたって一番問題なのは、国鉄の予算の補正でありますが、運賃値上げをして、ここに五十八億の資産充当費の計上をしたということは、われわれ社会党、あるいは一般の国民を愚弄しておるではないか。これだけの財源があったなら、たとい運賃の値上げをやるとしても、率が変わっておるはずだし、また相当前からこの剰余金については予見ができたはずだ。だから当初予算の資産の売却費十六億円にプラス何がしかの資金を計上すべきではなかったか、こういう非難が私は非常に多いと思うが、この五十八億円の内訳を御説明願いたいと思います。
  160. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 五十八億のいわゆる剰余金というものは、三十五年度の決算が、ことしの九月ごろでなければきまらないものでございますので、すでに当国会において御承認を得ました運賃改定の案は、本国会に出します予算案を作成いたしました一月、ころには、これを予期するということはなかなか困難であったことと、また単年度におきまして剰余金がございましても、これをもって長い間の見通しの国鉄の輸送力強化をいたします財源とするわけには参りません。御承知通り、運賃改定によりまして四百八十六億円というものを調達いたして財源といたしましたのは、五カ年間の国鉄輸送力を増強いたしまして、今後における経済成長に見合って、輸送力が隘路とならないような長い間の計画をいたしたのでございます。従いまして、単年度に剰余金があるからといって、これを財源をするということは経理上危険でございますので、運賃の改定を今回の国鉄輸送力増強の財源の一部に充当させていただいた、こういうわけでございます。
  161. 楯兼次郎

    ○楯委員 私は先日来からこの委員会でこの資産充当五十八億の議論を聞いておるのですが、ふに落ちないのです。といいますのは、たしかおとついの委員会では、三十四年度が赤字であって、三十五年度には十億の赤字になると承知をしておったのだが、これは何か。こういうような議論も聞いたのでありますので、五十八億円の内訳を一つお聞きをしたい、こう思うわけです。運輸大臣でなくてもけっこうです。
  162. 岡本悟

    ○岡本政府委員 五十八億の内訳を申せというお尋ねでございますが、三十五年度の決算は、先ほど大臣が申し上げましたように、まだ確定いたしておりませんけれども、大体推定いたしますと、二百六十五億円ぐらい、予算に比較いたしまして増収の見込みでございます。ただ、これに対応する経費の増がございますので、差引これは六十三億円に相なります。それで、予算では十一億円の赤字を見込んでおりますので、これを差し引きますと、五十二億円の剰余金が出るわけでございます。それと三十四年度の剰余金六億を合わせまして五十八億円に相なります。
  163. 楯兼次郎

    ○楯委員 時間の関係で私は急ぎますが、九月の決算で、もし五十二億円の剰余金が見られない場合にはどうするのか。
  164. 岡本悟

    ○岡本政府委員 ただいま申し上げました数字は、もちろん九月になってみませんとはっきりいたしませんが、大体確実であるというふうに考えております。
  165. 楯兼次郎

    ○楯委員 今回の補正百九十二億は、ほとんど予算規模を変えないでここに上程されたわけです。国民は、予算規模をほとんど変えずして補正をするならば、運賃の値上げをしなくてもこれはできるんじゃないか、こういう疑惑を非常に深めておると思いますし、本年度に関する限り、われわれも運賃の値上げをしなくても五カ年計画の第一年度は予算の編成ができたのじゃないか、こう思いますが、どうですか。
  166. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 先ほど申し上げました通り、これからの経済成長、発展の隘路となるおそれのありまする現在の国鉄輸送力を、本年度を起年といたしまして、五カ年間に増強する計画を立てた次第でございます。これに要する経費の一部分といたしまして四百八十六億円の運賃の改定の承認を願いましたわけでございます。繰り返し申し上げますように、ある一年に剰余金がありましたからといって、これをもって長い見通しの長期計画の財源に充てるということは経営上すこぶる危険であると考える次第でございまして、三十五年度の剰余金が五十八億円ありましても、あるいは次の年に剰余金がどのくらいになるか、あるいは赤字になるかわからぬことでございますので、この際確定の財源を得る、輸送力増強の五カ年計画の財源としては運賃の改定にお願いをいたしたような次第であります。
  167. 楯兼次郎

    ○楯委員 この前の本予算のこの委員会でも、私は、三十四年度は黒字であった、三十五年度も見通しとしては相当な黒字が出るはずであるがという質問をしたのです。そのときにあなた方は、ぎりぎりの黒字しか出ない、ごくわずかでありますという答弁をされたのを私は記憶しておるのです。この四十億、五十億であなた方が計画をされておる五カ年計画遂行の原資にはならないにしても、すでにもう三月にはこれが五十億以上も黒字になるということは想定できたはずです。なぜ率直にそのときに言明なさらないのか。そのことが国鉄に対する不信の念を非常に強めておると私は思うのです。だから、そんなときに二十億、三十億、言葉の上で、いやとんとんでありますと、こんな答弁をしたところで、この膨大な国鉄の五カ年計画というものを左右することはないはずですから、三十四年度は六億の黒字、三十五年度は五十何億の黒字が出ると想定されます。こう率直に述べるべきであったと思うのです。ところがつい一カ月前には、あたかも赤字であるがごとき、ないような答弁をされて、今日五十八億の資産充当を上げてきた。ここに、あなたの方で言われれば痛くない腹かもしれませんけれども、国民が悲観をする原因がある、こういうことを十分考えていただきたいと思います。それから運輸大臣は、一時的にそういう黒字、利益金が出ても、長い目で見ればそうも言えない、こうおっしゃったのであります。私は、今あなたの言われました長い目で見てこの運賃の値上げを今年やったけれども、それだけでは第二次五カ年計画は実行できない、もうほとんど五年間のうちに再修正するであろうということを予言をしておいてもまず誤りないのじゃないかと思います。といいますのは、第一次五カ年計画でもそうでありましたが、予期せざるを裁定の実施によって、つまり人件費の値上がりによって、第一次五カ年計画ができなかった、こういうようなことをあなた方は資料としてお出しになっておる。ところが今度もそうです。今度は予備費やその他で幾らかの金は、結果論的に見ますれば、これはお考えになっておったようでありますが、すでにここで日経連の前田専務理事新聞発表を引用いたしまして、来年も日本の財界はある程度の値上げというものを容認をしている。こういう考え方からすれば、来年か再来年か、五年のうちにはまだ裁定の一回や二回は出てくるんです。ところが予期せざる裁定によって五カ年計画を変更しなければならないというような考え方なら、この五カ年計画というものは再修正せざるを得ないと私は思う。当時常務理事の兼松さんが、これじゃたまらぬ、これは定期の再値上げを考慮せざるを得ないという、これが五カ年計画を実施しようとする国鉄幹部のほんとうの腹じゃないかというふうに考えるわけでありますが、この点についてはどうですか。
  168. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 今回の仲裁裁定によりまして、経常費の約六一%という人件費になりまして、戦前戦後を通じまして、国鉄といたしましては人件費が経営を非常に圧迫しておりますことは事実でございます。  しかしながら、ただいまも御説明申し上げました通り、いろいろ工夫をいたしまして、三十六年度予算におきましては、この補正予算によりまして、新しい五カ年計画の仕事に差しつかえないようにいたしておるのでございます。三十七年度におきましては、今回の国鉄職員の方々に対する待遇の改善等によりまして、国鉄の人たちは一致して増収に努力するとともに、経営の合理化によりまして、経費の節約をいたしますので、また万一の場合には借入金をある程度ふやすこと等によりまして、この五カ年計画は初めの計画通りに間違いなく実行していくように指導していきたい、こう考えておる次第でございます。
  169. 楯兼次郎

    ○楯委員 仲裁裁定が二、三回出てくる、それから総理大臣が、それでなければ月給が倍になるということではないとおっしゃいましたが、それでなければ職員の給与も上昇しない。こういう面から考えると、それを予測しなければならぬ。しかも来年はILOにおいて労働時間の短縮というような議題もあるのです。それらを考えると、国鉄の第二次五カ年計画にはある程度給与費の余裕を持って計画を遂行していかなくちゃならぬと思うわけです。ところが国会へ来てあなた方の御答弁を聞いてみますると、まるで人間なんていうやつは古びた機械のようで、給与も考えなければ、使えば使っただけ得、こういう考えでは勤労意欲の上昇にもならないし、円満に第二次五カ年計画を遂行することはできぬと思います。  きょうは時間がございませんから、私はいろいろ申し上げませんが、今大臣がおっしゃるように、ここで五カ年計画は修正しない、少なくとも五年のうちは、割引運賃を上げるというようなものを含んで、運賃の値上げをせずして、五カ年計画を修正せずしてやっていくということを、はっきりここではおっしゃることができますか、どうですか。
  170. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 御承知通りに、第二次五カ年計画をいたします財源の一部といたしまして、先に国会の御承認を願いました運賃の改定をいたしておるのでございますので、五カ年計画の遂行の間は、ただいま運賃を改定しようという考えを持っておりません。
  171. 楯兼次郎

    ○楯委員 それは、この前もあなたと押し問答いたしまして、私が若いのか根気がなくて負けちゃったのですが、あのときに予言をしておいたように、国鉄の運賃値上げに対してすでに私鉄その他が運輸省へ値上げ申請をしてきておると思います。今何社してきておりまするか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  172. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 ただいま何社私鉄で値上げの申請をしておりますか、具体的のことは事務当局から詳細にお答えをさせますが、運輸省といたしましては、公務員という立場から、申請がございますれば、昔の政治のやり方のように、けしからぬといってこれを拒否することはできませんから、これを受け取りまして、個々別々によくその経理内容等を調べまして、そうしてそれがはたして妥当なものであるかどうか、あるいはこういうことが一般の利用者にどういう影響を及ぼすか、物価にどういう影響を及ぼすかというようなことを、研覈考究をいたしておると存ずるのでございます。そういうことをいたしましたあとで、利用者の利益をはかりながら、これが物価問題にどういう影響を及ぼすかということを深く検討いたします次第でございますが、御承知通り、閣議におきまして、当分の間公共料金の値上げは抑制するということの了解がございました。この線に従いまして、当分の間は抑制していきたい、そういう行政指導をいたしたい、こう考えておる次第でございます。
  173. 岡本悟

    ○岡本政府委員 私も実ははっきり今記憶いたしておりませんが、確かに現在申請いたしておりますものは四社であったかと存じます。いわる大私鉄はまだ出しておりません。
  174. 楯兼次郎

    ○楯委員 私鉄の運賃値上げ申請は五社です。  次に移りますが、先日新幹線の世銀借款が協定をされましたが、この協定の中にはリンバース方式という方式をとって借款が成立をした。このリンバース方式というのはどういう方式であるか、御説明を願いたいと思います。
  175. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 お答え申し上げます。五月の二日にワシントンにおきまして調印ができました世銀からの国鉄に対します借款は八千万ドルでございまして、いわゆるインパクト・ローンという方式で、物資の輸入を伴いません借款のやり方である、こういうことでございます。
  176. 岡本悟

    ○岡本政府委員 お尋ねの点は、私も専門的にはよく存じませんが、決算した額の五分の一ずつを貸す、こういう方式をさように申すのであろうと存じます。
  177. 楯兼次郎

    ○楯委員 私が新聞等で読みましたところによると、一月ごとに工事の進捗を見て、そのかかった費用の二割が世銀から貸す、こういう方式のように承知をいたしておるわけです。そこで私が今一番心配をいたしまするのは、前年度、三十五年度の新東海道線に対する予算も四割以上が年度内に未消化になっておると思います。こういう状態で、これからめんどうな用地買収をやる、用地買収は、おそらく三十六年度までに完了をしなければ、五カ年間で完成をしないと思います。それから東京で申し上げますると、新橋の駅が移転するでしょう。品川の貨物の取り扱い場をどうするか、こういう重要な問題を抱えて、はたして総裁等が言っておりまするように、あと二年半で、一体仕事ができるか。せっかく八千万ドル調印したこのリンバース方式による世銀の金が消化できるかどうか、こういうことを心配をしておるわけでありますが、この点についてどうですか。
  178. 木暮武太夫

    ○木暮国務大臣 東海道新幹線の進行の模様につきましては、私どもが報告を聞いておりますところでは、約六割の用地買収が大体終ったようなわけでございまして、また東京−大阪間の五百キロのうちの約八〇%の四百キロにつきましては、仕事の着工をいたしておるようなわけでございまして、私ども予定通りにこの仕事が進行することを確信をいたしております次第でございます。詳細のことは国鉄から申し上げたいと思います。
  179. 吾孫子豊

    吾孫子説明員 お答え申し上げます。三十五年度の予算で未消化の部分が相当あるということは、御指摘の通りでございますが、これは用地の買収その他の関係でもう話がまとまる寸前まできておりましても、年度末までに決算ができなかったというようなものがございましたりしたそれらの事情によって、未消化の部分が相当あるわけでございますが、今後三年間におきまして、ただいま大臣から御答弁がございました通り、国鉄としては万難を排して完成の実現を期しておるわけでございます。
  180. 楯兼次郎

    ○楯委員 今秋が質問をいたしました新東海道線の工事、それから本年度から始まる第二次五カ年計画の工事費は、従来より約三倍とにかく膨張しておるわけです。それをこなす要因は従来と変わりがない。従ってあなた方、関係当事者に聞いてごらんなさい。これだけの人でとても物理的に計画通りには完成をしないと言っておるのが私は現状だと思うのです。こういう点をよくお考えいただいて、計画通り進めていただきたいと思いますが、先ほど私が質問したように、今の運輸大臣のお考えでは、やがて予想される仲裁裁定、やがて五年のうちには時間短縮というような問題も起きてくるでしょう。しかもあまりに人件費は頭においておらない、使い得だ、人もふやさぬ、こういうやり方ではついに国鉄五カ年計画は遂行できないか、再修正をせざるを得ない、こういう結果になるのではないかというふうに私は考えるわけです。従って、われわれが希望をしたいのは、すみやかに第二次五カ年計画を修正をして、運賃の値上げをやらないように再修正すべきである、こう思いますが、時間がございませんので、この点だけ要望して、私の質問を終わります。
  181. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 川俣清音君。
  182. 川俣清音

    ○川俣委員 農林大臣に主としてお尋ねいたしたいと思うのですが、四月一日から米の政府売り渡し価格を引き下げられた。一俵で二十五円、石当たりにして六十二円五十銭を引き下げられて、サービス料としての卸、小売の料金を見てやろう、こういうことで売り渡し価格を引き下げられたわけですが、その総額が二十三億と決定した。こういわれておるわけです。これは大蔵大臣にもちょっとお聞きしなければならぬのですが、総額二十三億で決定したのですか、それとも一俵について幾らといういわゆる歩合で総額が二十三億になったのであるかどうか。これは平均の二十五円だということになっておりますが、従来は手数料に地域格差がついておるわけです。二十五円というけれども、二十円のところもあれば二十七円のところもある、二十四円のところもあるということで、小売マージンについて、卸マージンについて差がついておるわけです。そこで大蔵省は、何か歩合でやるべきだという主張をされており、業界は、一ワクでほしいというような交渉が行なわれて、二十三億と決定した。こういうことを聞き及んでおるわけです。そこでこの配分がまだ業界できまらないということで、業界でごたごたしておるようですが、どのようにきまったのがほんとうなのか、この際明らかにしてほしいと思います。
  183. 周東英雄

    ○周東国務大臣 大体二十五円は、十六円が小売、四円が搗精費、五円が卸、こういうふうにマージンがそれぞれ増加したわけであります。
  184. 石原周夫

    ○石原政府委員 卸、小売合わせまして二十五円、卸が五円、小売が二十円ということで計算をいたしまして、二十三億に相なったのであります。
  185. 川俣清音

    ○川俣委員 いや、私のお尋ねしたのは、二十五円について不審を持って言うのじゃないのです。従来は卸、小売について地域的に差があるのである。これを二十五円をどう分配をするのか、このことをお聞きしているのです。卸について五円あるいは搗精料と言いますか、つき賃が四円とかいうことでございますが、その内容ではなくして、これは一様に二十五円プラスをするのか、地域によって分けるのか。従来は何割増しということであった。今度は二十五円というが、何割増しなのか、二十五円そのものなのか。これによって二十三億という金が動くわけなんです。単純な二十五円であれば動かないでしょうけれども、歩合でありまするというと数量に影響しまして、この二十三億が動くだろう、こう考えますのでお尋ねをしておるのです。
  186. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 今回の卸、小売の手数料の改訂につきましては、ただいま御指摘がありましたように、卸、小売を合計いたしまして二十五円、そのうち卸が五円、それから小売が十六円、搗精賃が四円ということで、合計二十五円。これは今回の場合は、従来それぞれ地域別にきめておりまする手数料に対しまして、それぞれ一律に、卸につきましては五円、それから小売につきましては二十円を加算いたしましてきめたわけでございます。従いまして今回は、この二十五円の加算分につきましては、特に地域別の調整はいたしておりません。  それから二十三億と申しますのは、ただいま申し上げました金額によって年間の扱い数量を、大体三十六年度では九千百万俵程度に見積もっております。従って、その九千百万俵に二十五円をかけますと、大体二十三億。従いまして、政府の売却量が九千百万俵よりあるいは増加しあるいは減るということがございますと、この二十三億という額は当然ある程度変わって参る、そういう筋合いであります。
  187. 川俣清音

    ○川俣委員 それではお尋ねいたしますが、これは大臣に御答弁願いたいと思うのですが、従来の地域差がついておりました手数料というものは是正しなければならないというところから、平均の二十五円増しになったのであるかどうか。これは手数料の比率が従来の比率と変わってきます。そこで、それは従来の地域的な差のあったマージンというものは是正しなければならないということで、是正をされる意味で一様に出されたのか。大蔵省意見は、これははっきりわかりませんけれども、やはり従来の基準に平均の二十五円になるようにすべきだというのが大蔵省意見のように漏れ承っております。これは業界にとりましては大きな問題だと思うのです。金額の問題ではなくて、将来、この地域的な差というものが配分されておったものが是正されるという意味であるのか。仮価格だということだからしてこれは是正に当たらない、こういうふうに御答弁になるのか。この点大蔵省と農林省からお聞きしたい。
  188. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 今回は、主として昨年の公務員の給与水準の変更に伴いまして、それが今回の手数料を改訂いたしました直接の原因でございます。従いまして、織り込み人件費を新しい公務員ベースに合わせまして是正をいたしましたのが、今回の改訂の主体でございます。従いまして、今回の改訂に伴いまして、地域別の手直しなり是正ということは、今回の改訂には特には織り込んでおりません。
  189. 石原周夫

    ○石原政府委員 ただいま食糧庁長官のお答えしました通りで異存ございません。
  190. 川俣清音

    ○川俣委員 これは安いところへ二十五円上がると非常に比率が上がったことになるでしょう。高いところに二十五円はあまり上がらないことになるのです。そのことがどういう影響をするかということなんです。地域的に売り渡し価格が違っておるわけなんです。小売価格が違っておるわけです。それで、将来小売価格の地域差をなくそうということでありまするならば、そういう意図を持って今回二十五円を考えたのか。やはり従来の地域差というものを——小売地域差ですよ。小売地域差によって手数料というものはおのおの違っておったわけですね。小売価格に見合ったマージンであったわけですが、今度は小売価格に影響のないマージンだ、こういうことになるのですが、そういう意図があるかないかと、こう聞いておるのです。私の質問の仕方が悪かったとすれば改めますが……。
  191. 須賀賢二

    ○須賀政府委員 御指摘のように、現在米の消費者価格は地域によって四段に分けてあります。この点は今回の手数料の改訂の際にも別にこの点につきまして是正をする、あるいは変更をするというような考え方は織り込んでおりません。従って今回の改訂では、従来通り小売価格の地域別の差は従来と同じ基準でついておるわけであります。
  192. 川俣清音

    ○川俣委員 これはまたあらためて米審のときに究明しなければならぬと思いますが、これは単に一様に二十五円ということは将来の取引マージンに非常な大きな影響を与えまするし、また小売価格に非常な影響を与えるものでありますからお尋ねをいたしておくのでありますが、どうも私は大蔵省の考えの方が、今ここでは食糧庁長官通りだという御答弁でありましたが、どうもこれは大蔵省の方が至当のような気がいたします。いつもは大体大蔵省の方が無理解なのですが、この点はどうも大蔵省の方が合理的だ、私はそう思うのですが、将来の問題に残します。  次にお尋ねしますが、先ほどは総理にお尋ねをしたのですが、日本でパンというと、どうしても小麦でなければならない、しかも硬質小麦でなければならないという根拠はどこにあるのでしょうか。食いなれた、アメリカの粉が入ってきてならされてしまったということが大きな原因でないかとも思うのです。ドイツあたりではライ麦を入れておるわけですね。ライ麦を入れたら膨張率が少ないので、形が小さいということがありましても、あれは健康のためにはむしろいいかもしれぬという問題もあるわけです。(「うまくないよ」と呼ぶ者あり)しかしうまい、うまくないというのは一つは慣習だと思うのです。うまいということになりますれば、うまいものを食うのだということになれば、これは小麦よりもっとうまいものもありますから、問題は別です。同じパンならうまいものを食うのだということなので、やはり食いなれるということ、食生活においては慣習というものが非常に大きなウエートを持っているのです。イタリアの、さっき申し上げませんでしたがポレンタという食い方もあるわけです。あるいはルーマニアのママリガというトウモロコシをおかゆにしたやつもある。そういうように各国いろいろな自分のところでできる農産物をどうして有効に消費するかという食生活が行なわれておるわけです。日本に比較的不足な、しかも硬質の小麦を外国から持ってこなければならないということにいつまでもなれさせるということは、これは消費需要構造の上から検討していかなければならぬ問題だと思うので、この意見を吐いておるわけです。日本だってもう少し大麦を入れるという方法もありましょう。ライ麦を入れるよりも大麦を小麦に入れた方がもう少し膨張率も高いのです。御承知でありましょうけれども、結局グリテンが入っているということによって練りやすいということが小麦の特質でしょう。練りの出ない日本の小麦でいいパンができないという原因にもなっておりましょうが、もしもライ麦を入れまするならば、日本の大麦を入れたパンということもなれて参りますならば、決してまずいものではないと思う。私ども毎日麦を入れて食べておりますが、これはなれると必ずしも悪いものではないのです。そのように麦の消費構造をどうするかということを農林省はもう少し真剣に考えなければならぬと思うのです。  もう一つは米についても余った、余ったと言いますけれども、余ったときにはどういうふうにして昔利用してきたかといえば、何といっても米の豊富なときは酒米になっている。酒米になってくるということは、酒米というのは精白度を高めるといい醸造酒ができる。長もちする酒ができるわけです。結局精白度を高めるわけですから、この精白度の高まった残余がえさ用になるわけです。米を人間と動物と両方で分配して食っている。動物に食わしたものをまた人間が摂取するというやり方があるわけなんです。だから余った、余ったじゃなくて、この消費構造を考えていくということが、私は今後食糧行政の大きな基本にならなければならないと思う。ただ売れなくなったといいますけれども、米を食わなくなったといいますけれども、このごろの握り飯の販売店を見てごらんなさい。東京都で握り飯の許可を受けたのが千百三十軒ある。これは保健所で調べた。もぐりもありましょう。保健所へ出ておるので千百三十軒ある。うちで食わなくなったけれども、ほかで握って簡易に食わせれば食うこともあり得るのです。千百三十軒もできたということは、食わないところに握り飯を作るわけはないのですから……。そのように消費構造について、需要構造についてもう少し検討する必要があるのではないか。それから麦の生産構造というものも結局考えていかなければならぬのではないかということなんです。農業基本法については、約二千万円もかけて資料を作られたり検討された。日本の特産物である米の消費構造について、需要構造についてもう少し検討する必要があるのではないかと思うのですが、周東さん、この点いかがです。
  193. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点ごもっともでありますが、私ども現在の米の状況におきまして、握り飯を販売する店が東京にもたくさんできておるというお話ですが、一面そういうものも入れましての米の消費統計が一人当たりだんだん減ってきておるのが現状であります。従って、私はそれをこのままにしておけとは言いません。もとより米の需要増加について考えることも一つのいき方でありましょう。お話しのように酒をもっと作らして、搗精歩合を上げてよい酒を作って、あと飼料にしたらということも一つの考えだと思いますが、今日では、酒の方は昔と違いまして、要求があれば米は酒米として増加して出すこともしたりしております。しかし、いかに出しましてもなかなか酒が売れないという状況です。これは御存じの通りです。これは税金の問題もありましょう。しかし、このごろは非常にウイスキーの方が売れて、従来の醸造酒の方が増加率が鈍化しておると思います。これはいろいろ考える点もありましょう。しかし、またそうなれば、ウイスキーが盛んなら米でウイスキーを作ったらというようなこともありましょう。そういうことも研究させておりますが、これは私は大きな流れにおける今日の肉類、蛋白、脂肪というものの増加に関係して、やはり一面米の消費が減っておるという現実をよく見なければなりません。これらを勘案しまして米の生産に対しての将来の施策を立てていきたいと思います。
  194. 川俣清音

    ○川俣委員 通産大臣が見えたので、肥料の点についてお尋ねをしたいと思います。この前も分科会において大蔵大臣並びに通産大臣にもお尋ねしておるのですが、日本の農産物の生産費を引き下げていく方向として、かなり肥料が下ってきておりますものの、一そう生産費を引き下げる要素としての肥料価格というものが重大になってきたと思うのです。そこで、従来肥料がもっともっと合理化によって安くなるべきであったにかかわらず、安くなっておらないということは、途中において生産制限をいたしましたり、操業度を下げて生産を抑制したことがあるのです。これは硫安協会が、あまり肥料ができますと価格が下がるというところから、業者間の協定でありましょうか、協会の決定でありましょうか、フルな工場の運転を阻止して抑制したのであります。そういう結果、もっともっと合理化されるのが中途でとどまっておったのでございますが、さらに合理化の方向、国際的競争にもたえ得なければならないということから、国内消費をバックにいたしまして、生産の増強に踏み切っておるわけであります。そこで、従来の設備で過大設備だからといって、あるいは転換設備がまだ残っておるというようなところもございますが、そういうところに対しまして、十分な生産を上げることを、協定で、あるいは通産省の指図でできるだけ生産を抑制しよう、できるだけという言葉が適切かどうかわかりませんが、そういう傾きがあるわけでございます。周東農林大臣はかなり努力をされておるようでございますが、いまだに決定を見ないでおるわけなんです。その資料を、通産大臣、資料をくれということを要求したところが、国会には出せない、こう言う。業者には示すことができても国会には出さない、これはどういうことです。業者には内示をして、お前のところは大体この程度だということを業界には示していながら、国会には資料を出せないということなんです。業者とならば話し合いができるけれども、国会とならば話し合いができないということは、通産大臣どういうわけなんです。この点明らかにして下さい。
  195. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今初めて伺うのですが、資料の御要求があればお出しいたします。
  196. 川俣清音

    ○川俣委員 要求があれば——業界にすでに出しておるのですよ。それを国会に出してくれと言ったって、どうもみんなに配付するなんて、あなたにないしょでなら出しますけれども、国会へは出さない。私はもらったんです。どういうわけです。業界へは全部出すけれども、国会には出さないというのはどういうことなんです。この点いかがですか。
  197. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いや、そんなことございませんから、御要求があれば資料を出します。
  198. 川俣清音

    ○川俣委員 それじゃ明日でもいいですから全員に出して下さい。  それでは周東農林大臣にお尋ねしますが、まだきまらないというのはどういうわけです。もうすでに肥料審議会等が今月中に開かれなければならない。去年から暫定価格でいっておる。結局生産能力と申しますか、これを押えておるために、三十六年度及び七年度、八年度の生産計画が立たないために肥料審議会が開かれないんだ。私はそう思うのですが、その他に原因があるのですか。
  199. 周東英雄

    ○周東国務大臣 これは川俣さんがかつて農林委員会で御指摘になった趣旨に沿って、むしろ通産、農林一緒になりまして、ほんとうに合理化された、価格の安くできる工場に助成して、そうして必要量を立てさせていくについてはどうしたらよろしいかというようなことで、真剣に取り組んでいる結果少しおくれております。
  200. 川俣清音

    ○川俣委員 むずかしい問題じゃないのです。この前大蔵大臣から、合理化ができなければ将来合理化資金等について、あるいは融資について、断然たる処置をとる、この言明があったわけですが、この言明が徹底すればもっと問題が早く片づくと私は思う。結局低コストのところを押えて高コストのところを擁護しようとする通産省の考え方がなかなか是正されない。農村の場合ですと、コストを下げる、生産性を上げるために大いにやれといって、基本法まで作っておりながら、その農産物の生産要素でありまする肥料の引き下げについて、もっともっと努力すべきじゃないかと思うのです。  それと同時に、えさの問題についてもそうです。結局採算がとれないということについて畜産の行き悩みがあるということを聞くのでございます。また大会等が開かれて、人間と同様に牛に食わせるえさをよこせという運動が起こっております。このためにも従来持っておる手持ちの穀類をすみやかに放出する等のことが考えられなければならない。周東さん大いにやると言っておられますが、いまだに問題が片づいておらない。幾らか出ましたけれども、大勢を支配するだけの力にはなっていないわけです。今後穀物にかわるに畜産物の増産をはかるのだというかけ声はかけられておりますが、なかなか農民がそれに乗ってこないのは、飼料対策についての不安があるためにこれが伸び悩みを示しておるんじゃないかと思うのですが、この飼料対策について、周東さんの見解をこの際なお明らかにしておきたいと思う。
  201. 周東英雄

    ○周東国務大臣 ごもっともな仰せであります。この点については、かつて予算委員会でありましたかでも申し上げたように、私は、恒久及び応急の処置として二つを考えております。  将来の問題としては、成長農産物としての畜産をふやすために、何といたしましても飼料対策を確保することが必要である。これについては、畜産の伸びに応じて、必要とする飼料の種類別要求需要量というものを考えまして、それがまず国内において自給し得るものは自給をする、国産によって供給する。また国産品を奨励する場合において、購買飼料というものと自給飼料とあるわけです。これらに関連しまして、草地、牧野の拡充というようなことも考えております。かくして、どうしても国内においての供給不可能なものについては、また不可能ではないが、時期的に外国のものを入れなければならないというようなものにつきましては、品目別に輸入計画を立ててこれに対処し、これを月別に平均的に輸入するとか、時にあわててなくなって入れるというようなことのないように、ならしてものを考えたいと思います。それに関連いたしましては、飼料需給安定法等の改正も必要になってくるんじゃないかと、目下研究を命じております。  応急につきましては、この間申し上げましたように、なるほど三、四月の候、一番ピークになって高くなっておりましたころは、国内における供給量が需要にマッチしなかった点もございます。それらのものにつきまして、ふすまに対し、あるいは大豆かすについて、またフィッシュ・ミール等につきましてそれぞれ対策を立てました。大裸につきましての食糧庁所有のものについては、御要望に応じて直接農民の団体である農業協同組合を通じて出すことにいたしましたが、多少まだごたごたしているのは、出したものが的確に飼料に回るようにするために、粉砕された麦を一々俵に入れて検査しておるというようなことで手間取っておることに対して、これを一つ何とか解決しなければならぬということはありますが、徐々にこれは出て参りまして、今の状態におきましては、大豆かすはまだやや強いですけれども、ほかのふすまなりあるいは大・裸を出したという関係におきまして、やや低落の傾向をたどっております。もう少し時期がかかると思いますが、私は、この対策は徐々に効果を上げて参ると思っております。
  202. 川俣清音

    ○川俣委員 時間がありませんからもう一問だけ申し上げておきます。周東さんは日ソ漁業交渉でお忙しいそうですから、一問だけ一つ。  米価審議会はいつごろお開きになる予定ですか、この点明らかにしていただきたい。  それにつけ加えて、これは大蔵大臣も聞いておいてほしいのですが、農業パリティが上昇したのですが、総計で上昇したばかりでなく、内容でありまする経営費が、三月で一四〇・八八、家計費では一二六・七、総計で一三一・四二と、昨年の五月と比べて非常な上昇を示しております。四月はおそらく経営費はもっと上るであろうと想定されるわけですが、今集計中です。そうすると、米価審議会がおそくなればおそくなるほど——八月ごろになることになると、パリティはもっと上がって、高い米価を算定しなければならなくなるのではないかと思うのですが、算定は算定だ、安く買うのだという考え方はおそらく水田さんは持っておられないと思う。やはり計算は計算ですべきであろう、こういうふうにお考えになっておるであろうと思いますから、一つ急いで米価審議会を開く必要があるのではないかと思うのです。米価の決定は秋でも悪くはないのです。しかし、やはり農家を安定させる上からも、農家経済の上からも、早くきめてやるという方が経営方針を立てる上に必要だと思うので、早い方がよかろうと思うのですが、この点についてあわせて見解を述べていただきたいと思います。
  203. 周東英雄

    ○周東国務大臣 米価審議会は、やはり米価の決定は予約出荷をお願いする立場からも、例年六月の下旬から七月の上旬には開く慣行になっております。大体その時期を目安に研究をいたしております。
  204. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 大体農林大臣の御意見通りでございます。      ————◇—————
  205. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 この際お諮りいたします。  明日、日銀総裁山際正道君を参考人として本委員会に出席を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  206. 愛知揆一

    ○愛知委員長代理 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  次会は明十九日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時五十二分散会