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1961-02-23 第38回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月二十三日(木曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員   委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       赤澤 正道君    井出一太郎君       稲葉  修君    臼井 莊一君       小川 半次君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    菅  太郎君       北澤 直吉君    倉石 忠雄君       櫻内 義雄君    田中伊三次君       床次 徳二君    中野 四郎君       羽田武嗣郎君    前田 正男君       松浦周太郎君    松本 俊一君       三浦 一雄君    山崎  巖君       淡谷 悠藏君    岡  良一君       木原津與志君    小松  幹君       河野  密君    島上善五郎君       田中織之進君    高田 富之君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       横山 利秋君    永井勝次郎君       野原  覺君    松井 政吉君       受田 新吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         自 治 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         法制局長官   林  修三君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      新井  裕君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (理財局長)  西原 直廉君         国税庁長官   原  純夫君         中小企業庁長官 小山 雄二君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月二十三日  委員尾関義一君、田澤吉郎君、飛鳥田一雄君、  島上善五郎君、横山利秋君、井堀繁雄君及び受  田新吉辞任につき、その補欠として赤城宗徳  君、中村三之丞君、長谷川保君、松井政吉君、  堂森芳夫君、田中幾三郎君及び佐々木良作君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員田中幾三郎辞任につき、その補欠として  西村榮一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算  昭和三十六年度特別会計予算  昭和三十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 船田中

    船田委員長 議事進行について発言を求められております。これを許します。川俣清音君。
  4. 川俣清音

    川俣委員 先般の委員会におきましても、議事進行を求めまして、予算案関係する法律案提出の時期を迫っておりましたところ、二十四日までに最終時限として提出する約束をしておられます。また、議運の委員会におきましても一月二十五日官房長官は「予算関係法律案提出は二月二十四日金曜日を最終時限といたしておりまして、それまでに全部仕上げる決意で当たっております。予算関係のない法律案につきましては、これもできるだけ閣議決定の手続を進めまして、おそくとも三月十日までには御提案の運びにいたしたいというように指示いたしまして、鋭意督励をいたしておる次第でございます。」こういう答弁をいたしておるのでございますが、本日までに予算関係法案はいまだ半分も提出されておらない事態でございまして、明二十四日までの期限でございまするから、すみやかに明日の期限までに予算関係法案提出を見なければ予算案審議ができないことを委員長において十分政府に鞭撻あられますようお願い申し上げる。並びに、われわれといたしましては、二十四日の期限以上おくれますというと、予算審議に対して重大な決意をしなければならないことを申し添えまして、動議といたしますからお取り計らい願いたい。
  5. 船田中

    船田委員長 御趣旨了承いたしました。     —————————————
  6. 船田中

    船田委員長 質疑を続行いたします。島上善五郎君。
  7. 島上善五郎

    島上委員 私は、選挙法改正問題に関連して、過ぐる選挙におけるきわめて遺憾なる悪質選挙違反事件等々について若干質問したいと思います。  まず私は最初に、これは総理に伺うことかもしれませんが、お見えになりませんので、官房長官にかわって伺いますが、総理大臣になったつもりでお答えを願いたいと思います。  去年の九月十五日に池田総裁ができましてから、自民党が新政策発表いたしました。その新政策の前文にこういうことが書いてあります。「思うに、現下政治最大の課題は、まず政治姿勢を正して国民に信頼される公明な議会政治を確立することであり、これがすべての政策前提である。」大へんけっこうな文章でございます。そこで、私は伺いますが、政治姿勢を正して国民に信頼される公明な議会政治を確立するには、まずその出発点ともいうべき、あるいは源ともいうべき選挙が、金や物によって汚されることのない、権力や不当な勢力によって支配されることのない、すなわち国民の自由な意思の表明による正しい選挙が行なわれる、公明なきれいな選挙が行なわれるということが、さらにその前提ではないかと考えます。これに対する官房長官のお考えをまず伺っておきたい。
  8. 大平正芳

    大平政府委員 全く同感でございます。
  9. 島上善五郎

    島上委員 それならば伺いたいのですが、こういうりっぱな新政策発表してスタートした池田内閣のもとに初めて行なわれた総選挙が、戦後最大の金のかかった選挙、すなわち金や物によって汚された選挙であるという事実は一体どうお考えになりますか。これは遺憾だとおっしゃるでしょう。すべての政策前提がこのようにくずされ、汚されておる事実を遺憾だとおっしゃるならば、私は単に遺憾だといって通り一ぺんの大臣答弁をすることではなくて、この事実に対する謙虚にして厳粛な反省がなければならないと思う。その反省の実がなければならないと思う。これに対するお考えはどうですか。
  10. 大平正芳

    大平政府委員 仰せのように、政府におきましても厳粛な反省を加えて、これからの施策に誠意をもって当たりたい決意でおる次第であります。
  11. 島上善五郎

    島上委員 私は、この質問をするのは、何も政府を困らせたり、いやがらせをするという意味で質問をするのではないのです。このような悪質違反を根絶するための措置をすみやかに講じなかったならば、すでに来年の参議院選挙事前運動と思われるような動きが始まっております。私は、このことをこうして問題にするのは、今度の国会で必要な法改正をしなかったならば、来年の参議院選挙は過ぐる選挙にさらに輪をかけたような悪質選挙になるのではないかということを心配するからです。一体政府は今度の国会法律改正をしようとする熱意があるのかどうか、私はもうどういうふうにお答えするかわかっております。今度の国会法律改正をしようとする熱意がない、今度の国会において国民の要求である、そうしてすでに与党、野党においても検討し尽くされ、選挙制度調査会からも答申があり、緊急に必要だと思われる改正を今国会においてしようとするお考えがあるかどうか、伺いたいと思います。
  12. 大平正芳

    大平政府委員 御指摘のようにこれまで調査会から御答申をいただきまして、まだ実現に至っていない案件をも含めまして、その他必要と認める事項の御審議を願うために、今法案を用意いたしておりまして、近く御提案して御審議を願うことにいたしております。この審議会におきましては期間を一カ年と限りまして、早急に成案を得るという建前で御提案申し上げる用意を今いたしておるところでございます。
  13. 島上善五郎

    島上委員 近く提案されようとするいわゆる選挙制度審議会設置法のことについては、あと関係大臣について少しく詳しくお伺いするつもりですが、この選挙制度審議会設置法を出して、審議会を設置して諮問をするということは、要するに今度の国会では何の改正もしないということなんです。改正をしないために体よく逃げる手段にすぎない。池田総理はかつてどこかで、この審議会答申されれば、今度の国会でも改正したい、こういう答弁をしておりますが、こんなごまかし答弁はありませんよ。一体審議会設置法国会へ出されるのは早くて三月初めでしょう。これは順調に審議が進むとしましても、衆参両院を通過するのは三月の末か四月の初めでしょう。それから委員を委嘱して諮問して今度の国会答申が出ますか。これは出ません。従って審議会設置法を出すということは、今度の国会では何の改正もしないということにほかなりません。今度の国会改正しようというお考えがあるならば、私は改正案そのものをずばりと出すべきだと思う。今度の国会改正しようとするお考えがありますかどうか。総理は間に合えば今度の国会改正しようということをどこかでおっしゃっていましたが、私は今言ったようにそれは事実上できない、単に一時を糊塗しようとする答弁にすぎない。できないのです、これは。改正しようとするお考えがありますか。
  14. 大平正芳

    大平政府委員 先ほど申し上げましたように、まず審議会を作りまして、その慎重な御審議を経た上で措置すべきものと思っております。
  15. 島上善五郎

    島上委員 今私が言ったように、従って今度の国会では選挙法改正は何にもしようとする熱意がないということです。そこで私がさっき言ったように、今度の国会改正しなかったならば、来年の参議院選挙はまたぞろおそるべき金と物に汚される選挙運動になる危険性がそのまま放置されるということです。私はあとでだんだん具体的な問題についてもお伺いしますが、悪質選挙、金のかかる選挙といいまするが、選挙運動期間中の二十日間よりは、むしろその前の事前運動により多くの弊害があるのではないかと思う。これはこの前総理がこの予算委員会質問された際に、過ぐる選挙違反が多かったというのは、いわゆる百日選挙、百日も前から事前運動が行なわれたことが一つの原因であろうと思う、こういう答弁をしております。速記録がありますが、そうだとするならば、参議院選挙は一年選挙です。より多くのあの手この手の好ましからぬ事前運動が行なわれることは火を見るよりも明らかです。これに対して一体何の手も打たないで、審議会に諮問いたしましたといって一体済まされるような事態だとお考えですか。私は、これは過ぐる選挙の目に余るような悪質違反悪質選挙不正腐敗選挙に対するほんとうの反省がないからだと思う。深刻なる反省がないからだと思う。もう一ぺん伺いますが、これは事実ですから、戦後最大悪質選挙であったということははっきりお認めになりますね、そうですね。  そこで私は法務大臣にお伺いしたいと思いますが、私が戦後最大悪質選挙であるということを申しますのは、違反検挙の数が多いということばかりではありません。その検挙件数人数前回に比べて著しく多い。五割ないし八割。件数で五割、人数で八割ほどふえておりますが、その中で特に目立っておりますのは、買収供応という選挙違反のうちの最も悪質な違反が多いということです。これが特徴的であるということです。法務大臣、その数字をお示しを願いたいと思います。
  16. 植木庚子郎

    植木国務大臣 お答えいたします。私の手元に今届いております資料によりますと、本年の一月二十日現在の統計でございますが、その統計によりますと、違反受理人員は四万九百九十名でございます。前回選挙に比べまして、この人員増加が約四割増ということに遺憾ながら相なっております。そのうちやはり御指摘のように、いわゆる買収事犯が最も多いのでございまして、その人数は三万六千三百五十九名であります。ちょうど総体の八割九分に当たっておるような姿でございます。
  17. 島上善五郎

    島上委員 党派別とおっしゃる方がありますが、まあ私の大まかな調べでは残念ながら九五%までは自民党、残る五%のうち多いのが民社党、無所属、遺憾ながら社会党も百分の一くらいはあるかもしれません。このように自民党に圧倒的に多いということであります。しかもその違反規模たるや、これは何といってよろしいか、私は先般この違反事件を担当しておる検事から言われた言葉をそっくり誇張なしにあなたに聞いてもらいましょう。こういうことです。私に向かって検事がこう言いました。あなた方が想像するようななまやさしいものではありません。今あがった違反金額がある一人の違反者についてざっと五百万円であるが、実態はおそらくこの数倍でしょう。これは一人ですよ。二日にしていうならば徹底的な大がかりな買収選挙である。選挙そのものが全体的に買収選挙である。きわめて計画的に組織的に行なわれているということ。それからもう一つの特徴は、こういうような違反をやった人々がだれ一人として悪いことをしたという反省がない。運が悪くてつかまったのだ、あるいは警察が自分だけねらっているのだと、警察をさか恨みしている、そういう人がおる。こういう状態を放置したならば、もう民主主義も何もあったものではありませんよ、こういう言葉を吐いて痛憤しておりました。法務大臣、今度の違反が、この検事が言ったような言葉に該当するかどうかお伺いしたい。
  18. 植木庚子郎

    植木国務大臣 御指摘のような傾向があると考えます。
  19. 島上善五郎

    島上委員 それで私はあと質問をするために御参考までに私の方でもいろいろ調べておりますし、数通の投書も参っておりますが、これは当局の方からお聞かせ願って、それからお伺いしたいと思います。  今申しましたような悪質違反は、もちろん候補者全体からしますれば必ずしも多い数ではございません。自民党の諸君の中でもきわめてまじめな公明な選挙をやっておられるりっぱな方もおります。私どもはそれは事実として認めます。しかし今あげましたような悪質違反候補者に相当数あることもまた事実であります。私は先般質問する際に参考としてお調べおき願うように通告しておきました。名前をあげることは私にとってもこれは断腸の思いですけれども、具体的に質問するには名前をあげるしかありませんから、名前をあげますから、これらの人の違反概況をここでお答えを願いたい。警察庁の方でもよし、法務大臣でもよろしい、どちらでもよろしい。東京細田義安君、自民党大阪岸本義廣君、自民党、岡山の藤原節夫君、自民党、山口の安倍晋太郎君、自民党、同じく周東英雄君、自民党京都谷垣專一君自民党、同じく京都玉置一徳君、民社党、岩手の椎名悦三郎君、自民党、福井の植木庚子郎君、自民党、この九人について違反概況を、私通告しておきましたから御用意願っていると思いますが、私の調べたところではこれは全部が全部買収事犯であります。そらしてこの中には総括主宰者検挙されている人も相当おります。従ってやがて連座して失格する危険性のある人も相当数あります。この概況をお知らせ願いたい。
  20. 安井謙

    安井国務大臣 ただいま御指名の方々につきまして、これは公判請求をやっております起訴者の数とかその他につきましては一応の調べもありますが、法務省検察庁の方からの御報告の方が穏当であろうかと思います。
  21. 竹内壽平

    竹内政府委員 ただいまお示しのありました各派の違反状況ということでございますが、私の方はあらかじめお名前を伺っておりませんので、今手元資料を持っておらないのでございますが、なお法務省立場として一言申し上げておきたいと思いますことは、事件処理は、原則といたしまして地方検察庁検事正一任をいたしております。それから総括主宰者出納責任者の役職にあります者の違反につきましては、その処理に当たりまして、所轄検事長の判断にまかしてあります。それから当選候補者処理につきましては、検事総長一任をいたしておるのでございます。法務省といたしましては、総括的にどこで何件あるかということを日を限りまして、投票後二十日目、三十日目というふうに今まで全体的な報告をとっておりますし、処理につきまして、検事長あるいは検事総長報告をされました検察庁があわせて法務大臣にも報告をしてくるということになっておりますので、それらの報告に漏れておるものも多々あるのでございます。いずれ捜査が一段落になりましたときには、総括いたしまして、それらの資料を整えることになっておりますが、特に選挙に限りましては、右のような取り扱いをいたしておりますので、あらかじめお名前をいただきまして、調査をした上でないと、お答えいたしかねるような次第になっております。その点御了承願いたいと思います。
  22. 島上善五郎

    島上委員 それでは警察庁でもよろしいですが、警察庁には私ははっきり名前を出して、容疑概況と逮捕の人員と、出納責任者総括主宰者がその中に含まれているかどうか、それから逃亡しているものがあるかどうか、というようなことの内容まで添えてきょうお答え願うように、一昨日に通告しております。これは御報告願えるはずだと思います。
  23. 安井謙

    安井国務大臣 ただいま申し上げましたように、警察調べましたもので、一件書類全部現在法務省と申しますか検察庁の方へ回しておるのでございます。これをこの場でそのまま申し上げることが捜査上妥当でありますかどうですか。これはもう一回検察庁側と打ち合わせをさせていただきたいと思います。
  24. 島上善五郎

    島上委員 大部分捜査を打ち切って、起訴するものは起訴する、不起訴にするものは不起訴にする、そういう段階になっているはずだと思います。これは突然聞いたら、ちょっと資料がないからといってお答えに困るかもしれませんけれども、私は一昨日の夕刻すでに通告してあるのです。捜査概況——もちろん一から十まで全部ここであからさまにできない問題もあるでしょう、それは私は認めます。しかし捜査容疑概況、私が今言ったように、全部が全部買収です。選挙で最も悪質な買収容疑です。ポスターがどうしたとか、文章がどうしたとか、そういう軽い形式違反じゃないのです。全部が全部選挙違反のうちの最も悪質な買収事犯であり、この中には相当数総括主宰者出納責任者がその渦中にあって、逮捕されておるものもある、逃亡しておるのもあるはずです。そういうことを私の方から言ったならば、正確を欠いてはいけませんから、そこであなたの方からこのことを伺いたいと言って通告しておいたのです。それがお答えできないはずはないと思う。警察庁長官が何か都合でおいでになれないというのでしたら、刑事局長が来ているはずですから、お答えを願いたいと思います。
  25. 新井裕

    新井政府委員 お答え申し上げます。島上委員からお尋ねのことは承っておりますが、私の方もまだ全部調査を完了いたしておりませんので、ここでお答えいたしかねます。
  26. 島上善五郎

    島上委員 大阪の場合には検事正が中間発表しているじゃありませんか。それは大部分新聞に報道されておりますよ。それ以外のことでも私の方で調べて知っておりますよ。おりますけれども、こういうふうに名前をあげた以上、私の方から言ってもし正確を欠いてはいけませんから、そこで私はあなたの方から聞こうとして前もって通告しているのです。それでは大阪岸本君、前法務次官、前最高検次長検事、高検の検事長であった、そして選挙制度調査会委員として選挙法改正に長い間審議に加わってきて、選挙法についてはすみからすみまで承知しているはずのこの人が、私の知る限りでは今度の悪質違反の中の一番か二番といわれる代表悪質違反であります。これは中間で検事正発表しているはずです。その発表でもよろしいから、ここであらためてあなたからお聞かせいただきたい。
  27. 竹内壽平

    竹内政府委員 先ほど御通告をいただいておるということでございましたが、私の方は通告をいただいておりませんので、個々の事件についてお尋ねをいただく以外にお答えのしようがないと思います。その点御了承願います。  ただいま岸本派違反についてお尋ねがございました。これは御指摘通り、本年一月十二日の各新聞に、大阪地検橋本検事正から中間発表されました件について報道されております。従いまして私ども立場からも発表内容につきまして問い合わせました結果、報告を受けておりますので、概況を御報告申し上げます。  岸本派につきまして現在までにわかっております状況を申し上げますと、同派の買収金額は約五百万円に上っております。被検挙者は約百七十名、うち逮捕して取り調べた者は四十二名、すでに起訴いたしました者が二十五名、その他はなお捜査中でございます。
  28. 島上善五郎

    島上委員 今御答弁をいただきましたが、これは名前はここでは申されませんけれども、これが必ずしも全貌ではない、むしろ氷山一角ではないかということさえ聞いております。私の方で調べたところによりましても、大体氷山一角という言葉が適当であるかどうか知りませんけれども、これが全貌ではない。さらにもっともっと警察及び検察の手の及ばない広範囲な、大規模なものではないか、こういうふうに想像されますが、そういう点についてはどういうふうにお考えでありますか。
  29. 竹内壽平

    竹内政府委員 風評といたしましては、今お話のようなことも私どもいろいろ聞いておるのでございます。しかし証拠に基づきまして明確に犯罪事実を調べて参りました結果はどのようなことになりますかは、今後まだ捜査を継続しておりますので、その捜査を待ちませんと、何とも申し上げかねる次第でございます。
  30. 島上善五郎

    島上委員 この違反事件に関しては総括的主宰者出納責任者もその被疑者の中に入っている、渦中にある、こう聞いておりますが、その通りであるかどうか。
  31. 竹内壽平

    竹内政府委員 総括主宰者がだれであるかということは、今後捜査を待ちませんと確認いたしかねるわけでございまして、出納責任者につきましては、被疑者として取り調べをしておりますが、その出納責任者逃亡中でございます。
  32. 島上善五郎

    島上委員 それから、もう一つ東京細田義安君の状況を、今の程度でもよろしいですからお知らせ願いたい。
  33. 竹内壽平

    竹内政府委員 細田派違反につきましては、大体買収総額は二百四十万円ぐらいでありまして、すでに起訴いたしました者は七十九名でございます。
  34. 島上善五郎

    島上委員 この違反も、総括主宰者並び出納責任者被疑者としてあげられていると承知しておりますが、あげられておるかどうか。それから逃亡者があるかどうか。
  35. 竹内壽平

    竹内政府委員 大体細田派につきましては、現在捜査を終了しておるような状況でございます。総括主宰者も、すでに検察側といたしましては確認をしております。総括主宰者出納責任者とも違反関係しておりまして、それぞれ起訴済みでございます。この派には逃亡者はないように伺っております。
  36. 島上善五郎

    島上委員 それから、これはこの前の本委員会においてもたしか質問されたはずですが、通産大臣椎名悦三郎さんの総括主宰者は、夫婦で今なお逃亡中のはずですが、今回の違反もまた悪質な買収事犯と私承知しております。その概況及び総括主宰者出納責任者がどういうふうになっておるか、お知らせ願いたい。
  37. 竹内壽平

    竹内政府委員 現在までの報告によりますと、この派におきましても、買収供応等関係して取り調べを受けた者が相当数あるようでございますが、違反金額はさほど多いものではないと聞いております。  それから、前の選挙におきまして、この派の出納責任者であります者の夫妻が逃亡しておりまして、いまだに取り調べができない状況でございますが、この関係公訴時効停止状況になっておりますために、発見次第取り調べの上処置する考えでございます。
  38. 島上善五郎

    島上委員 そうしますと、この逃亡者に対する時効停止と申しますか、そういう措置を講じておりますね。
  39. 竹内壽平

    竹内政府委員 その通りでございます。
  40. 島上善五郎

    島上委員 今度の悪質違反の中でも、またぞろ逃亡者が相当数あるようであります。逃亡者は現在三十六名と聞いておりますが、その通りであるかどうか。
  41. 竹内壽平

    竹内政府委員 著明な逃亡者につきましては、私の方に報告がありますのでわかっておりますが、全体といたしましてどの数字になりますか、大体三十名から四十名の範囲内だと聞いております。先般警察庁では、三十六名について指名手配をしておるということでございますが、指名手配をしていない者で若干はあるのではないかというふうに想像しております。
  42. 島上善五郎

    島上委員 指名手配をしておる者だけでも三十六名ということですが、どうも今まで三年たった今日、なお逃亡中の者があるくらいですから、この逃亡者は、いずれ時効になることを待って、それまで逃亡しようという考え逃亡している人が多いのではないかと思うのです。もう現にあった事実ですが、前回違反逃亡して、時効になって出てきて、また今回の選挙総括主宰者になって違反にひっかかって、また逃亡している、こういう人もあります。この三十六名の逃亡者に対して、私は、そういう時を待って時効になってというような考え逃亡している人が多いと思いますので、時効停止の措置を考えているかどうか。それから捜査については、いわゆる公開捜査をおやりになる考えであるかどうか。今までの捜査ではどうも実効が上がっていない。思い切って公開捜査をやるべきではないかと私は考えますが、その点をお伺いいたしたい。
  43. 新井裕

    新井政府委員 お答え申し上げます。三十六名とこの前御報告申し上げましたが、その後三名逮捕いたしまして、現在三十三名でございます。  それから、お尋ねの公開捜査とおっしゃるのは、私の方でやっております凶悪犯の総合手配のことをおっしゃっておると思いますけれども、ただいま選挙についてそういうことをやる計画は全然ございません。
  44. 島上善五郎

    島上委員 これはある学者も言っておりますが、いろいろ議論のあるところだろうと思いますけれども、見ようによっては、あなたが今公開捜査をやっている凶悪犯というようなものは、被害者は必ずしもそう多数ではない。ところが、選挙悪質違反というものは、私の考えによれば、被害者は全国民だと言ってよろしいと思う。日本の政治そのものが被害を受けている。凶悪犯の場合には、また同じような凶悪犯罪を犯す危険性があるという点は、これは確かにあるでしょう。しかし公開捜査をやらないで、捜査の実効を上げることができますかどうか。今までの捜査の限りにおいては、必ずしも実効が上がっていない。そこで、私は、一般国民にも注意を喚起し、国民の協力をも求めるという意味において、公開捜査をやるべきではないか、こういう考えを持っておりますが、なぜ公開捜査をやらぬのか、その理由があったらはっきりとお答えを願いたい。
  45. 新井裕

    新井政府委員 今御指摘のございましたように、反復して犯罪を犯す危険性があり、社会としてこれを防衛しなければならないという見地から、総合手配を行なっておるのでございますが、選挙につきましては、私どもはさように考えておりませんので、御意見は参考にいたしまして、将来は検討の材料にいたしたいと思いますが、ただいまのところ全然そういうことを考えておりません。
  46. 島上善五郎

    島上委員 反復して同じようなことをやるおそれがないとおっしゃいますけれども、私が今例をあげましたのは、昭和三十三年の選挙で、総括主宰者逃亡して指名手配を受けたがつかまらず、そうして時効になって、時効になったときに出てきて、また今度の選挙総括主宰者をして違反にひっかかって、また逃亡したという事実があることをあなた御存じですか。
  47. 新井裕

    新井政府委員 はっきりした氏名を記憶いたしておりませんが、そういうことは聞いております。ただ御参考までに申し上げますと、今度の選挙違反の最中に、ある新聞に、どうして新聞選挙違反被疑者についてだけは何とか氏という氏をつけるのだというような読者の投書がございまして、それに対しまして、新聞社側としては、選挙違反につきましてはいろいろの関係から氏をつけるのが適当だと思うという答弁を紙上に載せておりました。私どもは、そういう一般の人たちの一つの感情、あるいは直感かもしれませんが、そういうものを尊重して、捜査に御協力を仰ぐというのが最も穏当なる手段だと思っておりますので、先ほどお答え申し上げましたように、ただいまのところはそういう方法をとることを全然考えておりませんとお答え申し上げた次第であります。
  48. 島上善五郎

    島上委員 私は、納得いきませんけれども、しかし、逃亡して時効になることを待っているようなこういう人に対しては、時効停止をすべきものではないか、こう考えておりますが、今回の逃亡者に対して時効停止を峻厳にやるというお考えがあるかどうか。
  49. 竹内壽平

    竹内政府委員 時効停止の点でございますが、逃げ得ということにならないように処置をいたしたいという考えを私どもとしては持っております。ただ、しかしながら、時効停止をいたしますのには条件があるわけでございまして、私どもの基本的な考え方としますと、逃げておる状態でそのまま起訴をいたしますことはむしろ異例なことでございます。必ずその前につかまえて取り調べをいたしまして、罪状のあるなしを確認した上で起訴する者は起訴し、不起訴にする者は不起訴にするという措置をとるべきものだと思っております。しかしながら、共犯の者あるいはその他の状況証拠によりまして、本人の弁解を聞かなくても罪状明白であるという者につきましては、逃亡のまま起訴をいたします。そういう場合には起訴状の送達ができませんから、公訴は棄却になりますけれども、以後は、逃亡しておる間は時効は進行しない、停止状態になるわけでございますから、これはまあ理屈をいえば、何年先でありましても起訴できる、こういう状況になるわけでございます。法律的にはそういう建前になっておりますが、逃亡するというようなことの社会的意味、そういうものをよく逃亡者におかれましては十分考えまして、これに協力して早く捜査を終結するように協力していただくことが大事だ、私はかように考えております。
  50. 島上善五郎

    島上委員 それに協力するようだったら初めから逃亡しないと思う。逃亡したまま起訴して時効停止するという場合と、それから本人の罪状がまだ明白でないために本人を起訴しないが、関係者を起訴して時効を停止すべきである、こういう判断をした場合に時効を停止することもありますか。
  51. 竹内壽平

    竹内政府委員 御承知のように公選法によりますと、短期時効になっておりまして、一般の形式犯は六カ月、買収犯のようなものは一年、おとり犯罪のようなものは二年、逃走をいたしました場合には、時効期間がその倍になるわけでございますが、そのほかに、刑事訴訟法の規定によりまして、共犯がある場合には、共犯の最終の行為のときから時効は進行することになっておりますし、共犯が起訴された場合には、その裁判が、起訴によって時効は進行を停止することになります。そこで共犯者があります事件につきましては、共犯の事件が確定をいたしますまでの間はずっと停止しておるわけでございます。かりに逃走中のまま起訴いたしませんでも、共犯者が確定をしますまでの間は進行を停止しております。そういう状況で、実際には二年が三年以上も時効はそのまま停止しておる状況になることが法律上たくさんあるわけでございます。
  52. 島上善五郎

    島上委員 今回の三十六名の逃亡者中、すでに時効停止の措置をとった者は何名ございますか。
  53. 竹内壽平

    竹内政府委員 時効停止の措置と申しましても、今の逃走中のまま起訴するという場合が時効停止の措置で、法律上時効の期間が延びて参りますのは停止の措置ということができないかと思いますが、前者のいわゆる逃亡中のまま起訴するという措置をとりました案件はまだ報告に接しておりません。
  54. 島上善五郎

    島上委員 それでは事実上は、今回の場合は逃亡者中に起訴者がないということですね。
  55. 竹内壽平

    竹内政府委員 今日までの状況では起訴者はないというふうに承知いたしております。
  56. 島上善五郎

    島上委員 今おっしゃるようなことだから、どうしても逃亡者がだんだん——この前に比べて今度は逃亡者がふえておる。この次はもっと逃亡者がふえるというようなことになりかねないと思う。いわゆる逃げ得だという印象が非常に強いのです。私たちは、先ほども申しましたが、悪質選挙違反に対する反省が必要であると同時に、迅速、峻厳な処分が必要だと思うのです。今連座制というものがあるけれども、この連座制についてはあとでまた時間があれば質問したいと思うのですが、この連座制はあってなきにひとしい状態です。昭和三十三年の違反の連座が、十一月選挙が済んでからその判決があった。およそナンセンスです。今回の悪質違反件数も多いし、人数も多いので、これは大へんだろうと思うけれども、私たちは、すみやかに裁判を進めて峻厳な処罰をすることが必要だと思う。そういう方針をお持ちかどうか。これは法務大臣からお答え願うことが適当かと思います。
  57. 植木庚子郎

    植木国務大臣 悪質なる逃亡者につきまして、時効停止その他の方法によって、あくまでもその責任を問うということにつきましてはわれわれ同じ考えております。仰せの通り、また先ほど刑事局長お答えいたしました通り、原則としましては、やはり指名手配等の方法によりまして、本人を十分調査をしまして、その上でそれぞれの処分をするのが当然でございます。しかしながら、逃げ得になってはいけないということは全くわれわれも同感でございますので、こうした場合につきましては、先ほど申しますような、異例の措置ではございますが、いわゆる時効停止の方法になるような処置を講じまして、そうしてやって参る。しかしながら、その異例の措置を講じますためには、たとえば先ほどの例にもありますように、共犯者の犯罪が確定したとか、あるいはその他関係者の供述等によりまして、明瞭に犯罪の事実ありということが推定のできる場合でありませんと、これはまたいろいろの問題も起きますから、そういう意味におきまして、証拠十分なる場合においては時効停止の措置を決して時期を誤まらずにやって参りたい、かように考えておる次第でございます。
  58. 島上善五郎

    島上委員 官房長官一つお伺いしますが、私は実は先ほど申しましたように九人についてここで容疑概況を全部御報告願えるものと思っておりましたが、この九人の中には、残念ながら閣僚が三人おります。そうしてこの閣僚三人とも、まあ人員の多い少ない、金額の多い少ないの差はありますけれども、いずれも買収容疑で相当数逮捕されております。国民に信頼される公明な議会政治を確立することが一切の政策前提であると、こうおっしゃっておる内閣、そうして私の質問お答えしたように、さらにその国民に信頼される公明な政治を確立するにはきれいな公明な選挙をやることがさらにその前提である、こういうふうにお考えになっていらっしゃる政府の閣僚の中に、悪質買収違反者が三人もあるということは、少なくとも国民の側から見ますれば、本気になって選挙法改正考えている、ほんとうに悪質違反に対する厳粛な反省があるとは受け取れない。閣僚として、私はこれらの諸君がそれぞれの担当部門のエキスパートであるということは認めます。認めますけれども、大へんりっぱな政策を掲げて、一切の政策前提であるとさえ言っておるのですから、そういう政府の中にこういう閣僚がいらっしゃるということは、少なくともその看板が、にせものであれば別ですが、本物であるならば、考えなければならぬところがあるのではないか。少なくとも政府にとっては一つの傷であるということは言えると思うのですが、いかがでしょう。
  59. 大平正芳

    大平政府委員 政治姿勢を正して参りますためには、その前提として選挙が公明に行なわれることを保障しなければならぬということは、全く島上委員のおっしゃる通り同感でございます。ただ、ただいま御指摘がございました具体的な案件につきましては、裁判の結果を見まして、政府において慎重に判断し措置すべきものと思っております。
  60. 島上善五郎

    島上委員 実は私のところへ投書が参っております。いろいろな投書がありますけれども、その中の一つには、こういうような閣僚に対しては罷免要求の決議案か不信任案を出したらどうか、こういうような意見をつけて投書がきております。党内にもそういう考えが多少あります。そこで私は、自分の選挙運動から選挙違反中の最も悪質な買収という容疑者を出しておる閣僚の方々に御感想を伺いたいのです。罷免要求というようなことになったら、これは数でもって否決することはできるでしょうけれども池田内閣にとっても、本人にとってもずいぶん不名誉なことだと思うのです。こういうりっぱな看板を掲げている政府の閣僚として、何か考えるところがあるかどうか、どのように反省しているかどうか、その御感想を一つ伺いたい。
  61. 植木庚子郎

    植木国務大臣 私の場合におきましては、こうした間違いがないようにと考えまして、私も数回の選挙を経験いたしておりますが、毎回自分も十分に注意をし、また運動してくれる関係の者にも十分戒めて参っております。従いまして従来こうした違反が非常に少なく、ほとんどないと言ってもいいくらいに私は少なかった。それがたまたま不幸にして、昨年秋の選挙のときには、あるいは運動員の熱心の余りかとも思いますが、法律違反の疑いを受けるような者が若干出まして、非常に残念に思っております。私が入閣当時におきましては、こうした事情を知りませんでした。と申しますのは、やはり関係の者も私に心配をさせまいという気がねでございましたか、何も知らしてくれない、私は何も存じませんでした。ところが最近に至りまして、起訴を受けた者があるということが、国へ帰って初めてその状況が若干わかりましたような次第でございます。今にして省みまして、非常に申しわけがないというふうに考えておりますので、この点今後十分戒心して参りたい、かように考えております。
  62. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 今回は第三回目の選挙でございました。まことに不徳のいたすところでありまして、毎回選挙違反を出しておりますことはまことに恐縮に存じております。今後は一そう戒心をいたしまして、さようなことのないようにいたしたいと思います。
  63. 島上善五郎

    島上委員 私は本人をこれ以上追及するのもどうかと思っておりますけれども、毎回選挙違反を、しかも買収をやって総括主宰者逃亡しておる。私は、この総括主宰者が出てきたら連座する性質のものだと思う。さっき言ったように、現在の連座規定は実効が上がらないようにできておるから、任期中にはのうのうとしておられるかもしれませんけれども、少なくとも総括主宰者買収で刑に処せられるならば連座して失格するのですから、そういう人がいかに通産行政のエキスパートか知りませんけれども、きれいな選挙をやろうとすることが一切の政策前提であるとまで言っておる政府において、そういう閣僚があるということは、これは池田総理にお伺いしたいことなんですけれども国民から見ますれば非常に信頼のできないことだと思います。第一、総選挙に入る前に社会党が、今度の選挙一つ各党とも自粛してきれいな選挙をやろうじゃないかといって、もし選挙中でも悪質違反を出す者があったら公認を取り消そうではないか、選挙が済んでからでもそういう者が出た場合には、各党において厳重に処断しようではないか、そういう申し合わせをして国民の前に明らかにしようじゃないかという申し入れをしました際に、自民党民社党も断わりました。私はもうそのときから、ははあ、これはほんとうに選挙をきれいにやろうという考えはないのだな、口先ではそう言っているけれども、本心はそうではないのだということを疑ったのです。大部分がこういうようなあなた方の党に悪質違反者があるのですが、これはあなたは党の役員という関係からしてお答えできなければ、やがていつかは機会がありましたら池田さんに聞こうと思っておりますが、こういう悪質違反者、今まだ裁判の進行中ですから結論を下せないかもしれませんけれども、裁判が確定しまして、本人に責任がある、連座すると思われるのも相当おりますから、そういうものに対しては、党において何か党紀に照らして措置するというお考えはありますか。——お答えできなければできなくてもよろしいです。
  64. 大平正芳

    大平政府委員 これは党の問題でございますので、私から御返事申し上げるのは僭越だと思います。
  65. 島上善五郎

    島上委員 これは私はそれでよろしいと思う。私はやがて党の総裁である池田さんに一ぺん聞こうと思う。そこで、どうも今お答え願った範囲でもきわめて悪質な違反者があなたの党の中に多数おるということは、これは事実ですね。そこで一体こういうふうな悪質違反が何が原因で起こっているというふうにお考えですか。そうして、どうしたらこのような悪質違反を防止できるとお考えになっておりますか、これを伺いたい。
  66. 大平正芳

    大平政府委員 被選挙者も有権者各位も、総じて順法意識が弛緩しておるというところに最大の原因があると考えております。現在の選挙制度上の欠陥の是正につきましては、ただいま申し上げましたように、審議会法を出しまして早急に答申を求めたい決意でございます。一般の順法意識の高揚につきましては、政府におきましても、国民各位の御協力を得まして最善を期して参りたいという決意でございます。
  67. 島上善五郎

    島上委員 ただいまの御答弁を聞きますと、まるで一般の国民に、選挙民に責任がある、国民の順法精神が足らない、こういうようなことですが、私は、この悪質選挙違反については国民に責任を帰すべきものではないと思うのです。順法精神が足りないのは党ですよ。及び候補者ですよ。それから候補者を中心とする運動員ですよ。さらに言うならば、その順法精神が一番稀薄なのはあなたの党ですよ。あなたの党で一番違反者を出しているのですから。そこで私は、各党が申し合わせをして自粛してきれいな選挙をやるということも必要でしょう。さっき社会党がそのために提案したのですから、選挙に先立って提案したのですから。しかし、それよりも必要なのは法律を改正することですよ。今の法律があまりにもゆるやかで抜け穴だらけで、勝ちさえすればいい、当選しさえすればいいというような傾向が助長されているのもそのためなんです。私は国民にも全然責任がないとは申しません。国民の側にも、候補者に寄付をさせる、候補者に金を使わせるというような風習がないでもありません。しかし国民の順法精神とか、国民の自覚協力ということを言う前に、党が自粛すべきものであり、そうしてそれよりも必要なのは法律の改正だと思う。一番私は法律の改正が必要だと思う。現在の状況のもとにおいては一番必要だと思う。この点についてどうお考えですか。
  68. 大平正芳

    大平政府委員 全く同感でございまして、鋭意その準備を進めておる次第でございます。
  69. 島上善五郎

    島上委員 同感であるなら、私はこれは自治省大臣にもお答え願いたいことだと思うのですが、なぜ一体今度の国会で、すでに答申もあったし、ある程度各党で検討もされておるし、公明選挙連盟からも先般意見の具申があったはずです。そういう問題を今度の国会で取り上げようとしないのか、改正しようとしないのか、私にはどうしても納得できない。要するに政府改正熱意がないからにほかならない。鉄は熱いうちに打つべしとあなたの党の幹部が言っております。そして今度の国会でこれこれだけの改正は緊急の問題としてすべきであろうということを公式に意見を発表しておる方もおります。なぜ一体今度の国会でそういう検討済みの事柄を改正しようとしないのか、理由があったら一つお聞かせ願いたい。
  70. 安井謙

    安井国務大臣 お答えいたします。お話しの通りに、この選挙制度の改正というものは、非常に緊急を要するものであることも重々わかっておるわけでございます。また選挙制度調査会答申案も出ております。しかしこれは昨年のいろいろな経過を見ましても、選挙制度の改正というようなものは、なるべく各界一般から共通の御意見のまとまりを見た上でやるのが一番よろしかろう、こういう見地から申しますと、昨年一ぱいなかなかこの大事な問題につきましての結論が出なかった次第でございます。なお今度、今まで出ております選挙制度調査会答申案なるものにつきましても、これは非常に原則的な点を指摘されておりまして、いろいろ列記されておりますが、さてこれを実際問題に移そうということになって参りますと、なかなか現実でいろいろまだ疑問も多いわけであります。たとえばこれは比喩が正しいかどうかは存じませんが、同じ公営をやりますにつきましても、売名とかあるいは泡沫と世間でいわれているような候補者を同列に置いてやることがはたしていいかどうか、これもまた皆さんの世論でいいという結論にまで到達すればむろんやるべきものでございましょうが、そういった点の異論もなかなかあるわけであります。また連座制等も、趣旨としては当然早くやるべきでございますが、選挙違反だけに限って罪を九族に及ぼすといったような思想で刑罰を科すべきものかどうかといったような点につきましても、なかなか議論が実際問題になると分かれておるわけであります。そこで私どもは早急にでき得る限り権威のある審査会を作りまして、そしてこういった従来の選挙制度の答申案をもとにしまして、さらに具体的な肉づけを一日でも早くやっていきまして、そしてできるだけ各般の御共鳴をいただきまして、早く改正を実一現させたい、こう思っておる次第でございます。
  71. 島上善五郎

    島上委員 そういうふうにおっしゃいますけれども、今やっている政府考えによりますと、私がさっきも言ったように、順調にいって、早くてこの次の通常国会の終わりごろです。下手をすると、それがまた継続審議にならないとも限らない。そうすると、先ほど申しましたけれども、来年の参議院選挙事前運動はすでに動いているのですから、百日選挙だから違反が多かった、一年半選挙だったらもっと違反が多いということになるのではないですか。こういうことに対してどういう措置を、防止するための措置を何かお考えですか。
  72. 安井謙

    安井国務大臣 お話しの通りに、参議院の選挙は来年六、七月ころに予定をされておるわけでございまして、前回の衆議院総選挙等の実積にかんがみまして、この点は、取り締まりその他につきましては、十分に厳重に予防措置を講じたいと思っております。なお、この国会中に間に合わぬじゃないか、こういう御説もごもっともだと存じます。ただ私どもも、従来の選挙制度調査会委員の先生方の御意見によりましても、これは一括して全体的にやるべきものであるという御意見、あるいは部分的にやるべきものであるという御意見等も、個々に当たってみますと分かれておるようであります。これは今度審議会ができますれば、もし部分的にやるべしという結論になりますれば、その部分は早急に取り上げて何とか至急に間に合わす。しかし審議会が全体の御議論を待って一年なら一年時ってやるべしという結論になりますれば、その線に沿わざるを得ない、そういうふうにも考えておる次第であります。
  73. 島上善五郎

    島上委員 これは私はほんとうに政府改正しようとする熱意のない証拠だと思うのです。すでに一昨年の十二月、選挙制度調査会から——これは総理府設置法に基づいてでき上がって長年活動しておる選挙制度調査会から、ちゃんと要綱について答申があったのです。一昨年の十二月ですよ。これは一般的なものであるとおっしゃいますけれども、この一般的な答申内容については、さらにここにおるあなたの方の青木君を首班とする調査委員会においても検討しているはずです。私の方でも検討しておる。そうして当面必要と思われるような改正案については、いつでもできるだけの検討は進んでいると思う。私の方ではこの前の通常国会に出しました。解散によって廃案になりましたけれども。さらに過ぐる選挙のあの実態にかんがみて、各方面の意見を取り入れて今度の国会にも出すつもりです。当面必要と思われる、そうして各党ともかなり意見の接近している問題もあります。一致している問題もあります。そういう問題を、土俵を変えるというような根本的な問題とさしあたっては切り離してやるのでなければ、緊急必要な法改正がいつまでもずるずると、今まで延ばしてきたように延びると私は思うのですよ。切り離してやるか、一括してやるかは審議会の意見によってやる、そういうようなことでは、緊急必要な当面の改正をしようとする熱意がないといわれても仕方がないと思うのです。政府の方針として、緊急必要な改正は今度の国会でやって、土俵を変えるような根本的な問題は審議会に諮問しようというのなら話はわかりますよ。そういう問題をひっくるめて審議会に諮問して、審議会の意見次第でということは、結局は今度の国会では何にもしないということであり、緊急必要という言葉だけは言っておるけれども、その必要に合わせた法改正をやろうとする熱意がないという証拠だと思うのです。  そこで伺いますけれども、一体選挙制度調査会というのは、総理府設置法に基づいてあって、去年の十月たしか任期が切れたはずです。その当時は、今あなたが答弁したように、新たに選挙制度審議会というものを作ろうという構想はなかったはずです。委員を委嘱しないで、開店休業にしてほうっておいて、そうして今度の国会で世論がやかましいものですから、公選法改正の世論が強くなってきたものですから、さも改正するようなゼスチュアとして審議会を設置しようというのではないかと、私ども推測せざるを得ない。一体なぜこの従来あった選挙制度調査会委員が任期が切れたのを機会に、りっぱな委員を委嘱して、権威のある答申をするようにこの活動を開始しないのか。これをそのままにしておいて、新たに選挙制度審議会を作る。一体どこに違いがあるのですか。どこに権威の違いがあるのですか。これを伺いたい。
  74. 安井謙

    安井国務大臣 選挙制度調査会答申案等を中心にしまして、これは各会派で今までもそれぞれ非常に御検討願っておることはお話の通りでございます。そういった問題が各会派を通じて成案になるということになりますれば、私どもはこれを今国会中にでも間に合ろような運びにぜひやりたいという熱意に変わりは一向ないわけでございます。ただ昨年中あるいは一昨年を通しましても、非常に大事な問題につきましては、どうしても御意見のまとまりも非常に困難な状況もあったものでございますから、今度は一つ権威のあるこの審議会を通じまして、今まで議論になりましたものに対する肉づけを十分にいたし、そうして早急に事を運びたい、こう考えておるわけでございます。従来の選挙制度調査会、今度の審議会につきましても、性格的にも構成的にも今度は相当質的に権威のある扱いのあるものにいたしたいと思って、せっかく今案を作成中でございますので、よろしく御審議を願いたいと存じます。
  75. 島上善五郎

    島上委員 あなたは今なお、できれば今国会中でもやる熱意があるとおっしゃいますけれども、今国会中には今政府考えておるような方法ではできないですよ。あなたはできるとおっしゃいますけれども、できないですよ。法案を出すのは三月の初めでしょう。四月になって委員を委嘱して、一ヵ月かそこら足らずのうちに一体どういう活動ができるとお考えですか。これは今度あなたの方で考えておる選挙制度審議会という法律を新たに作って、新たにやるということではできません。これは私ははっきり言っても差しつかえないと思う。できるかのように言うのは、これはごまかしですよ。やろうとする熱意があるならば、この選挙制度調査会委員の任期の切れたのを機会に、もし今までの委員が適任者でない、権威がないというのなら、権威のあるりっぱな委員を委嘱すればいいじゃないですか。そうすれば、今までの調査会ならば答申した経緯もあるのですから、それに肉づけをするといってもそう時間がかからずにできるでしょう。今度の新たなる審議会ではできないことはわかり切っておる、見え透いております。  そこで私は伺いますが、かりに今度の審議会にそういう事項を諮問するとしましても、選挙制度の区制とか、選挙制度の根本、いわば土俵を変えるような大きな仕事を当面の改正と一緒に関連さして答申を求めようとすれば、これはなかなか時間がかかると思う。それは簡単なものじゃない。そこで私は、どうしても実際問題としては、当面必要な後援会の活動の規制であるとか、政治資金規正法の改正であるとか、罰則の強化であるとか、連座制の問題、時効期間の延長とか、もうすでに世論が一致している問題については、これからもそう時間をかけて検討する必要はないから、そういう問題を一応切り離して、二段の構えでやるというふうにしなければ、当面必要な改正がずるずる延びてしまう、現に延びておるのですから。私はそういうふうにあくまでも考えるのですが、この考えに対して、政府には何らかの考えがあるかどうか。
  76. 安井謙

    安井国務大臣 この選挙制度につきましても、非常に複雑で、多岐にわたりておることはお話の通りでございます。従いまして、これは審議会ができてからのいろいろな御検討の次第にもよりますが、政府といたしまして、これを作ります目的には、今お話のように、全体をひっくるめて審議もするし、その中で部分的にこれを取り上げたいというふうなものにつきましては、部分的にでもこれを取り上げて至急にやっていただくというふうな運びにいたしたいと考えておる次第でございます。なお、この制度につきましても、今各会派で御検討願っております部分について、これは御賛同が得られますならば、審議会の成立も早め、そうしてまたその審議も早めるような措置も十分にいたしたいと思っておる次第であります。
  77. 島上善五郎

    島上委員 私は今までのお答えの限りにおいては、政府の新しい構想の審議会設置法というものは納得できません。やはりさっき言ったように、あくまでも国民の世論である緊急な改正を回避し、ずらそうとするものにほかならないというふうにしか受け取れません。  そこで次の問題を伺いますが、自治大臣は、これはどこであったか私はっきり記憶しておりませんが、今衆議院の人口と議員定数のはなはだしいアンバランスが生じておる。この改正をしなければならぬということも、これはすでに議論の余地はない。どういうふうにするかという区割の具体的な問題は別としまして、改正しなければならぬということは議論の余地がない。この改正に対しては自治大臣が、それならば参議院の地方区も同様である。地方区も改正しなければならぬというようなことを言っていらっしゃいましたが、私もその点については、参議院の地方区においても現に定員四名区で二名改選のところが、定員二名区のところより人口が少ないという矛盾がある。人口についていえば、東京などは百二十万に一人の割合、ある区においては三十五万に一人の割合、こういう三分の一か四分の一の権利しか都会地がないということは、衆議院同様のアンバランスを生じております。このアンバランスを是正するについて政府考えは、参議院の地方区も同時に改正しようというお考えであるかどうか。また改正しようとするお考えであるならば、来年の参議院の選挙の前にそれをやろうというお考えであるか。
  78. 安井謙

    安井国務大臣 お話のように衆議院の定数改正というものも、非常に差し迫った問題であると存じます。同時に参議院側におきましても同じような矛盾が現在ございます。私ども取り上げます際には、これは両方同様に検討すべきものと存じております。ただ時期的に言いましてどちらを先にやりますか、今一緒にやるかということを、取り上げる時期といったようなものにつきましては、もうしばらく検討さしていただきたいと思います。
  79. 島上善五郎

    島上委員 この問題については、実は去年総選挙の直前に国会で議論されて、かなり具体案まで出てきた。しかしもう選挙が目の前に迫っておる等、その他の事情があって、これはとうとう実現しませんでしたが、私は衆議院は次の選挙にはぜひともこの矛盾は訂正しなければならぬと思う。都会地の政治に関心の高い、比較的政治的レベルの高い人々が、農村の三分の一の権利しか持っていないということは、どう考えてもこれは民主政治の土台がゆがんでいるとしか言えない。ところが参議院の場合には来年選挙である。これに間に合わすためには早急にしなければならぬ。しかも参議院の場合には、めんどうなことには奇数がない。二名か四名か六名か八名か、こういうことです。奇数がないために非常にアンバランスを直す際に都合の悪い場合がある。衆議院の改正については先ほど申しましたような関係で、自治省においても幾つかの具体案を持っておりました。しかし参議院の場合はそういう奇数であるのと、総ワクがきまっておる。百五十名、百名ときまっておる。それを減らしたりふやしたりということは容易にできない。衆議院の場合には総ワクが必ずしもきまっていないのですから、多少できる。実際問題としては矛盾しておる理屈は同じで、改正しなければならぬということは同じであるけれども、来年選挙であるということや、奇数であって総ワクがきまっておるというふうな、そういう問題があって、今あなたが何げなくお答えになったように、衆議院と参議院を同時にやるということは、実際問題としては困難ではないかと思う。今自治省の役人から何か打ち合わせがあったようですが、もう一ぺんはっきりお答え願います。
  80. 安井謙

    安井国務大臣 参議院には奇数がないというので実は今ちょっと打ち合わせていたわけなのでございますが、なるほどこれは二回に分けておりますものですから、総数では奇数がないわけであります。しかし一名、三名というのが一回分の選挙ではあるわけです。そういうような事情もございますし、それから時期的にも確かにおっしゃるように非常に差し迫っておるというような事情から、これを必ず同時に仕上げなければ衆議院の問題は取り上げない、こういうふうには私は決して考えておらぬのでありまして、ただ原則としては両方ともあわせて考えるべきものである。しかしその取り上げ等につきましては、緩急あるいはでき上がり工合によりまして十分考えたいと思っております。御承知のようにこれは地方議会では選挙のたびに、現在定員がいかにありましょうとも、これをその規定内できちっと分けて改正をしておるようなことでありまして、国会につきましてそれが長年行なわれていないということはまことに残念だとも思っております。なるべく今の御趣旨に沿いまして実現できるように努力したいと思っております。
  81. 島上善五郎

    島上委員 それからこの選挙区制の問題ですが、私は選挙区制について最近いろいろ議論、意見が出ておりますことを知っておりますけれども、これはいわば土俵を変えることですから、十分に日本の過去の経験や現状や外国の事例等も検討する必要があると思うし、それからこれは多数なるがゆえに話し合いをしないで押し切って勝手に自分の党の都合のいいようにやるというようにすべきものではないと思います。かつては政府が小選挙区にしようといって非常に熱を上げておりましたし、今でも小選挙区論者もだいぶおるようです。今政府はこの制度の区制について、何か政府として固まったお考えがあるかどうか。またかりに固まったお考えがあるとしても、私が今言ったようなこの問題は各党にとって非常に重大な土俵を変える問題ですから、十分各党で話し合いの上でやるべきもので、一党、多数なるがゆえをもって一党でもって押し切るべきものではない、こういう私の考えに対してどうお考えになりますか。
  82. 安井謙

    安井国務大臣 お話の通りにこの区制につきましては十分検討する余地がございますし、また小選挙区制というような問題が将来の理想であるというような一般の非常に強い主張があることも十分承知いたしております。これは非常に基本的な問題になるわけでありまして、これを一部の力だけによって押し切っていく、そういうようなものは毛頭考えておりませんし、また現在政府におきましては、こうしたらよかろうという成案を持っておるわけではございません。
  83. 島上善五郎

    島上委員 時間がきたということですが、それでは最後にもう一つ伺っておきたいのですが、選挙を公営にしよう、公営の範囲を拡大しよう、もしくは完全公営という言葉がありますが、公営をだんだん広げていって候補者個人のやる面を少なくしようという点においては、これは与党も野党も一致しておると思うのです。それからもう一つ、先ほど官房長官の御答弁にもありましたが、国民選挙に対する協力をもっと求める、啓蒙と申しますか、そういうような措置も必要であると私も思う。ところがそうするには現在の選挙管理委員会の機構、制度、予算というものではできないと思うのです。現在の選挙管理委員会の制度をもっと改革し、あるいは拡充し、予算もふやすというような措置をとらなければできないと思う。これに対してどういうふうにお考えですか。
  84. 安井謙

    安井国務大臣 先ほど官房長官からもお話がありました国民に公明選挙を徹底していくということは、これは側面的にどうしても必要なことであろうと思います。池田総理もこの点につきましては非常に強くお考えになっておる事情もございまして、実は今お話の管理委員会の末端まで世話役にいたしまして、三十六年度からは相当大きい国民に対する認識運動というようなことを始めたいと思っている次第であります。予算等につきましても、むろん不十分ではございますが、今までも地方の団体に対しまして、いわゆる基準需要額というものに選挙のこういった費用を加算はいたしておりますが、地方団体では交付税につきましてはそういうひもつきでは受け取っておらぬものでありますから、なかなか費用の点からも思うように参っておりません。今度は従来に比較しますれば、数倍の予算も計上いたしておるようなわけであります。そういうようなものを直接政府から末端へも流すことによりまして、今お話のような運動もできるだけ効果を上げていくようにやろうと、今考えておる最中でございます。
  85. 島上善五郎

    島上委員 私は現在の選挙管理委員会の機構をもっと拡充して、独立した事務局を持つというところまで踏み切らなければ、特に地方の長、たとえば市長とか町長の選挙というようなことになると、まるで地方の市役所あるいは町に従属しておるというような関係でありますために、そういうところから弊害が起こって、現に市長選挙が無効になった事案があったことを、あなたも御存じでしょう。そういう弊害もありまするし、地方自治体の財政上の問題もありまするし、今のようなことでは結局は五十歩百歩、今までと似たり寄ったりということになると思うのです。私は市以上の選挙管理委員会は事務局を持って、地方の自治体と独立するというような形まで強化しなければ、公営を拡大すると口では言っても、かりにそういう法律改正ができても、その面において不可能になってしまうという制約があると思うのです。今のような程度ではとうてい今後の要請にこたえられない、こう私は考えておりますが、もっと具体的な、かりに今度の予算にはあれだけしか計上しなかったけれども将来はこういうようにしたいという、積極的なお考えがあったらお聞かせ願いたい。
  86. 安井謙

    安井国務大臣 方向としまして、公営の拡大はどうしてもさらに広げていく必要がございますし、また管理委員会の常時活動というものもさらに活発にしていく必要があろうと存じております。ただいまの予算ではむろん十分とは申せません。これに対しましては同じように地方団体からも費用を出し合って、国とタイアップしてさらに強力にやっていきたい。さらに次年度、その次からもますますこれを拡張していきたいと思っております。
  87. 島上善五郎

    島上委員 私はこれで質問を終わりまするけれども、この質問お答えを通じて、残念ながら政府選挙法改正に対する積極的な熱意があるということは受け取れない。そこで私たち社会党は、遠からず国民の世論を反映した独自の改正案を出すつもりです。この改正案を出しますれば、政府並びに与党がこれにどう対処されるかによって、法改正熱意があるかないかということがはっきりとわかるようです。私は最後に、あくまでも選挙制度審議会を新たに設けて今国会を逃げようとするということではなしに、それはそれとしても、当面必要な改正については今国会に提案して、来年の参議院選挙事前運動の弊害を防止する、こういう措置をとることを要求したい。そうして私たちは、政府が出す出さないふにかかわらず、独自に当面必要な選挙法改正案を出すということを、この機会にはっきりして、政府一つ再考を促しておきたい。      ————◇—————
  88. 船田中

    船田委員長 この際御報告申し上げます。先日委員長に御一任願いました分科会の区分及び主査の選任につきましては、次の通り決定いたしました。  第一分科会、皇室費、国会、裁判所、会計検査院、内閣、総理府(経済企画庁を除く)、法務省及び大蔵省所管並びに他の分科会の所管以外の事項、主査相川勝六君。  第二分科会、外務省、文部省、厚生省及び労働省所管、主査北澤直吉君。  第三分科会、経済企画庁、農林省及び通商産業省所管、主査三浦一雄君。  第四分科会、運輸省、郵政省、建設省及び自治省所管、主査中野四郎君。  以上であります。  分科員の配置は公報をもってお知らせいたします。  なお、分科会の審査の都合上、裁判所当局より出席説明の申出があります場合は、これを承認するに御異議ありませんか。
  89. 船田中

    船田委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  午後は本会議散会後直ちに再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      ————◇—————    午後五時十九分開議
  90. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質議を続行いたします。横山利秋
  91. 横山利秋

    横山委員 まず大蔵大臣にお伺いをしたいのは、明年度の税制もさることながら、かりにその税制が改正をされても、税の問題だけは、法律改正だけでは問題が解決しないという問題であります。つまり納税者にとっては税法がどうであろうかということが半分ある。確かにそれも問題だ。けれども実際税務署の職員のさじかげんによってずいぶん違うということが、まあ言われておるわけであります。明年度は約四千億になんなんとする自然増収が、税法はほとんどそのままでこれが徴収をされるのでありますから、結局ことしに比べて明年度は四千億余分に出すということになるのであります。経済のあり方はいろいろ議論がございます。このまま好況が持続するのか、あるいは下半期になってから伸びがとまるのか、人によっていろいろ議論はある。かりに伸びがとまったときにおいては、私のところは今度はもうかっておりませんと言うのだけれども、あなたのところは去年もうかったのだから、これだけ出すのだという第一の矛盾が生まれてくる。それから、もうかっていない、もうかっているという論争が明年度一ぱい、さらに引き続いてその次の年度においても、これは納税者と税務署の間に相当の波乱が起こると思わざるを得ない。苛斂誅求が行なわれるおそれなしとしないのであります。  私は、大蔵委員会で原長官や主税局長に聞くよりも、むしろ大臣にきょうここでただしたいのは、この心がまえの問題であります。どうも聞くところによれば、税の徴収の仕方について格別に新味があるわけではなさそうであります。ちょっと機構をふやすとか、多少人員をふやすとか、これは人員は問題にならぬようでありますが、その現在の機構で四千億という莫大な自然増収を得るについては、税務職員もなみなみならぬ努力をしなければいかぬ。そして、そこに多くの波乱が起こると思うのであります。この点について、大蔵大臣の御感想をまず承りたいと思います。
  92. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 そういう問題は絶対にないように、私ども心がけるつもりでございますが、問題は徴税の仕方、課税の方式、いろいろの問題で、通則的な規則を総合的にこしらえる必要があるということを考えまして、今この問題を税制調査会で検討を願って、成案を得たら来年度から私ども実施したいと考えて検討中でございますが、こういうものができますれば、納税者の権利擁護と国の課税権確保との調和がはかれて、明朗な徴税ができるようになるのじゃないかと思っておりますが、来年そこへいくまでに、今年度におきましても、もう国税長官の方から、部内に対しては特にこういう問題の指示が再三されておりまして、今おっしゃられるような問題を起こさないつもりでやっていきたいと思います。
  93. 横山利秋

    横山委員 納税者の権利擁護とおっしゃいました。どういう方法で納税者の権利の擁護をなされるのですか。私が最近徴税のあり方について調査をいたしましたところ、最近はずいぶん新手が出ておるそうであります。たとえば、まず第一に基幹調査というのがある。この基幹調査というのは、たとえば横山商店が脱税しておるかどうかは問題ではない。横山商店がたとえば自転車屋さんだとする、鉄工所だとする、その鉄工所なり自転車屋さんなりの状況を知るために、たまたまモデルに選ばれて、そうしてそこに深度の深い、八日間なり何なりみっちり時間をかけて徹底的にやる。白であったら問題はない。黒であったら税金はいただく。初めからモデルとして選ぶのが基幹調査であります。それからその次は重点調査方式という。これは特定の法人を選んで分厚い調査をやる。この次は概況調査という。概況調査というのは、三分か五分くらい「今日は」と言って状況を聞いて、ずっと二十軒くらい一日に回るそうであります。これまた、そこが問題があるかないかは問題ではないのであります。とにかく調べるのです。それから今度は循環調査方式がある。これは三年に一回、五年に一回徹底的にやってみる。そこで、人が足らぬから、全部その調査をするわけにはいかぬから、あるうちを、お前さんのところは三年くらいやっておらぬらしいということで、三年目にがさっとやって、水準を上げて、それをモデルにしてやって、しばらく見ておってまた三年ごろやる。これが循環調査方式という。実況調査方式というものがある。はなはだしきに至っては夜間調査、また早がけ調査というのがあるそうであります。この早がけ調査というのは、これは調査方式にはないのでありますが、税務職員が言っております。朝早く行くというわけです。夜間調査というのは、夜の商売をしておる人は夜でなければならない。たとえばふろ屋さんを昼間行ったってだめだというので、この間感心した税務職員の話でありますが、ふろ屋のおばさんが、あの人知らぬ人だな、このごろようござるなあ、こう思ったら、ふろで裸になって、ふろおけから人数まで勘定した、あれは税務署の職員だったという美談があるわけであります。これは夜間調査。まだふろ屋に裸になって入って見ているのはお客さんですからいいですけれども、お客さんがたくさんおる中へ「今日は」と言って夜やってこられるのはかなわぬ。早がけ調査というのは、これは説明を省略いたしますけれども、こういうようなものまであるそうであります。この各調査の中で最も私が戒心をしなければならぬと思いますのは、早がけ調査だ、夜間調査だ、基幹調査だ、循環調査方式だというて、実際はそこの横山商店が脱税をしておるかどうかは問題ではないのであります。そこに問題があると私は言うのです。きょうは基幹調査に参りました、お宅が決してあれだというのではないのですが、一つのモデルとして調査をさせて下さいと言うなら、それはいいんですよ。けれども、あたかもおたくは問題があるというような格好をして、腹の中では黙っておって、深度の深いのを八日間もやる、こういうわけです。こういうやり方で、それでいやだというなら、ああそうですが、そんなら何かあるんですね、こういうことになる。まさにオールマイティの考え方であります。私は決して脱税を慫慂もしなければ、それを正当化するつもりはないのです。けれども、税務職員のリミット、権限の範囲というものが何かあるべきだというのです。たとえば、一例で言いますけれども、こういう基幹調査の場合、そこのうちが白であろうと黒であろうと問題でない。そこのうちをモデルにして、そこを深度をかけて、営業しているところを、四日も五日も——この間私が聞いたのは、三人で八日間でした。うなぎ屋さんだった。うなぎ屋さん、しまいに怒って、うなぎ屋をつかまえに来るやつがあるかと言ったそうでありますけれども、全然白だった。それに対して国は、営業上、信用上損失を与えたものに対して、へえさようならということで済んでおるわけです。少なくともこの中小企業なり何なりは問題があるというてかかるならばともかくとして、問題があろうがなかろうが、問題ではない。こういうやり方について大臣はどうお考えですか。
  94. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私もいろいろそういう調査の実情について国税庁から説明も伺いました。やはり各業種の実態調査ということをやる必要もございますので、今のような調査もやっておるようでございます。その場合、これは脱税を調べに来たのじゃないと断わってやればこれはいいかもしれませんが、しかし税務署は一応そういう場合の調査の権限は持っておるのでありますから、まあ行ってモデル調査の意味で調べるということもあるようでありますし、夜間調査は原則としてやらないということになっておるそうですが、しかし事業の実態を見るというためには、夜間営業の業務については、夜間に調査に行くということが、一番把握しいいという問題もあって行くこともある。例外的であって原則的には夜間調査というものはやらない。いろいろの問題は聞きましたが、今おっしゃるように、やはりそれにも相当の限度はあると思いますので、無理のないようなやり方をしたいと思っておりますが、実情はいろいろ私も聞いております。
  95. 横山利秋

    横山委員 私がお伺いをしておるのは、その店が何か脱税の疑いがあるということで調査をされるのはよろしいけれども、税務署や国税局やその税務官庁の必要に基づいて、そこが白であろうと黒であろうと問題ではない、資料をとる必要に基づいて、その企業に対して黙って断わりもなく、調査に参りましたと言って、深度の深いやり方をやるということは越権行為である、こう言っているのです。従ってもしやるとするならば、その点については断わってやるべきである。基幹調査でございますから御協力を願いますと断わってやるべきであって、あたかもそこが何か脱税をしているかのごとき口吻を漏らして、実は国税局なり署なりの必要に基づいてやるというけしからぬことは許されない、明らかにこれは法律にもそういうことは書いてないのであります。法律に許されておる条項は、その納税者が脱税なり何なりの容疑があるとか疑いがあるとか問題がある場合に、質問検査権は許されておるのであって、国税局の都合によって許されているのではない、こういうことを明確にしてもらいたいのです。
  96. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは税法に認められた質問権の範囲内でやっておることでございますが、私のいろいろ調べました実情で言いますと、こちらの必要でやるというのではなくて、そういう調査をすることによっていろいろの会社の実態がわかるということが結果としてあるのだ。じゃその場合に先ほどの八日もやったという例でございますが、この例は別でございますが、そのほかのところに行って調べる。多くの場合は、やはり今申告の指導というような意味で行って、非常によくいっているところは簡単に済むし、そうでなくて、その申告の問題についても若干手をかける必要があるというように思われたところには多く行って調査するというようなこともあるし、いろいろ場合々々に応じていろいろなことがあるようでございまして、一がいには言えないと思いますが、さっき言いましたようにこちらの必要で行くというのじゃなくて、やはりいろいろなそういう問題があってたまたま行って長く時間をかける。(横山委員「たまたまじゃないのです、計画的ですよ」と呼ぶ)それはまた計画的と——今の事例に対してこれは疑ってやったというのではないのですが、やはりこの申告の指導の過程において税務署が疑いを持ったというような場合には計画的と申しますか、そこの家は特に調べたいという考えを持ってこの調査権を行なうというようなこともございますし、これはなかなか一がいには言えない問題で、要するに無理のない調査をやらせるというほかは仕方がないだろうと思います。
  97. 横山利秋

    横山委員 大臣、ごまかしてはいかぬですよ。私の言うことがあなたは十分にわかっておるはずですね。私の言っているのは、納税者に問題があって質問検査権を発動するならよろしい、しかしこれもおのずからリミットがありますよ。ところが納税者に問題はないのです。税務行政上の必要に基づいてやるのです。その納税者に問題はないのです。しかしやらなければならぬなら断わってやるべきだ。あたかもその納税者が問題があるかのごとき態度でやるということは、これは逸脱行為である、こう言っておるのですから、一つ大臣も常識的なお答えをいただきたいと思います。私の知っている例は枚挙にいとまがないのですけれども、そこの人は何か私のところに問題があるかしらんと思って、しようがないから店の一室を提供して八日間三人かかって調べられた。途中で、いや実は何でもないんですけれどもね、局の必要で基幹調査をやっているんですよということを聞いて、全くばかにしておるといって怒ったんです。しかも結果は白です。そういう基幹調査というものをいろいろ国税庁の必要に基づいてお作りになることは、これは私はそこまでも妨げませんけれども、これは質問検査権を悪用したやり方であって、本来の調査方式ではない。納税者をおどかして、そしておやりになるということはいけないと言っているのです。その点を明確にしてほしいんです。
  98. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 納税者をおどかしてやるというようなことはむろんいけませんが、私の聞いているところでは、税務署の署員の人手は少ない、全部を調べるということはこれは人手がなくてできないことでございますので、何年かに一回は大体疑いの少ない者でも調べるということを税務署はやっておる。従って疑いの少ない人でも何年かには一回調べるというような計画をいろいろ立てて調査をやっておる。ですから、疑いの多いというものについては特に手をかけるというようなことはあるかもしれませんが、これはその人がおかしいとかなんとかいうことじゃなくても、本来ならずっと個々のうちを一ぺん当たるべきものを、人手がないために何年かに一回はできるだけ調査するという方針でやっておることでございまして、まあたまたまそういう問題が起こるかもしれませんが、特に迷惑をかける調べ方をするといえばこれは税務署が悪いということになりますが、別に自分は何でもないのに来て調べられたという非難があっても、これはそういうものでも何年かに一回は見にいくという方針になっているのですから、これはやむを得ないことだろうと思います。
  99. 横山利秋

    横山委員 私の言うことをあなたは重点調査方式にすりかえたり、一般の申告に対する調査にすりかえたりしておられるのです。私は今のところは基幹調査に問題をしぼって言っているのです。基幹調査というのは大臣もお聞きになったと思うのだけれども、基幹調査の本質はその納税者が実は問題じゃないのですよ。国税庁の一つ資料を作るために、その業種の資料を作るために出かけるのですよ。その納税者が疑いがあるかどうかはその人は知らぬのです。やっていくうちにあるかもしれぬ、ないかもしれぬのです。けれどもそれを調べるのが目的じゃないんです。そこのところをはっきり割り切って、まず考えをあなたの頭で整理してもらって、国税庁の必要に基づいて、その納税者を訪れて、しかもそういうことを言わないで、あたかもそこが問題であるかのごとき深度の深い調査をするのが基幹調査なんです。そうしてその材料を各業種に及ぼして、ことしは大体この辺がもうかっておるとか、ああなっておるとか、こういうのです。私は基幹調査が絶対いかぬと言っているのではないのです。少なくとも、その納税者が疑いをかけられたかのごとき雰囲気で深度の深い調査を黙ってやるのはいかぬ。基幹調査を税務官庁の必要に基づいてやるならば、まずそれを明示してやるべきだ。私がこういう質問をします根本的なものの考え方を一つ披瀝をしておきますけれども、戦後の税務行政というものは、混乱期においては非常に権力的なやり方でした。また納税者の態度も、必ずしもいいことがあったとばかりは思われません。けれども、今経済が一応ノーマルな状況になってきたときにおいては、税務行政は権力的なものをできるだけなくしていって、合理的な、民主的な税務行政にしなければいかぬとかねがね主張しているのです。ところが、たとえば人がない、こういう意見が国税庁内部にある。あなたも今おっしゃった。人がないからというようなことや、納税者は大体大なり小なり脱税をしているものだという潜在意識や、そういうものがあって、質問検査権というものが全くオールマイティになっている。税法の上では、納税者に対する質問検査権は多少規定があります。そんなことはしかし実際問題として断わる人はないのです。それを見せて下さいと言われた場合に、これは見せられませんと言って断わる人はそうないのです。断わったならばあとで問題があると思って結局は出してしまう。だからすべてオールマイティという格好になっている。この基幹調査に至っては、最もそれが悪用されておると私は痛感をするのです。ですから、民主的な合理的な税務行政をするとするならば、この税務職員の権限についてリミットを打たなければならぬ。四千億の自然増収だ、その自然増収は、今では割当はもちろんないかもしらぬけれども、大体前年度と比べて本年度このぐらいの自然増収がそれぞれの署になくてはならぬだろうという予測というものが大体あるわけですね。それを一定の水準にして督励をするわけです。それが質問検査権の乱用ということになってくるのです。ですから、私の言う意味はよくおわかりだと思うのですが、少なくとも基幹調査というような税務行政の必要上に基づいて行なわれるものについては、明らかにまずもって明示をすべきだ。まずそこから、四千億の自然増収があるかどうかわかりませんけれども、四千億を苛斂誅求のようなとり方はしないとおっしゃるならば、大臣として明らかに所信をここでお話しなすったらどうだ、こう言っておるのです。
  100. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 適正な課税が行なわれておるかどうかをサンプルについて調べるということは税務署にあるそうでございまして、あなたの言われるような基幹調査というのはそのことをさすのかどうか私も詳しいことはわかりませんが、まあ特に脱税の疑いを持って行く調査でなければ、そういう趣旨の調査だということを断わることはこれは一番いいことだと思いますが、やはり基幹調査といっても、適正な課税が行なわれているかどうか調査する一つの方式でございますので、問題はそのやり方が度を越すとか何とかということについてはあろうと思いますが、そういう調査が税務署によってなされることが悪いということは言えないだろうと思います。
  101. 横山利秋

    横山委員 なぜ悪くないのですか。質問検査権の乱用だと私は言っているのです。   〔委員長退席、青木委員長代理着席〕 質問検査権というものは、納税者に疑いがあるとか、申告に問題があるとか、そういう場合に質問検査権が発動されるのであって、全国すべての人に対していつでも自由に質問検査権が適用できるなどというお考えを大蔵大臣がお持ちになるのは、言語道断じゃありませんか。それじゃどういうところに質問検査権のリミットをあなたはお考えですか。納税者であれば、だれが行って、どういうふうに調べたって自由だとあなたは言いそうな話ですね。そうでないとするならば、どこにリミットをおくかというのです。その納税者が脱税しているかいないかという問題でなくて、税務行政の必要上、たまたま選ばれたところであるならば、断わってやるべきだというのが正当な質問検査権の解釈じゃありませんか。なぜあなたは固執するのですか。
  102. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私にはよくわかりませんが、ただ資料を作るためだとかなんとかという目的で行ってこの質問検査権を行使したというようなことなら、あるいはそれは少し範囲を逸脱しているということが言えるかもしれませんが、結局今言う基幹調査といわれるものも、課税が適切に行なわれているかどうかということを、このサンプルについて調査するということでございますので、やはり適正に行なわれているかどうかの調査でございますので、これは、問題は程度の問題、やり方が特にひどいやり方をするということは問題があると思いますが、こういう調査が行なわれてならぬということは、私はないんじゃないかと思います。
  103. 横山利秋

    横山委員 私の言っているのは、基幹調査が行なわれてならぬと言っているのではないのです。少なくとも基幹調査は、税務行政上、必要に基づいて、その納税者の云々でなくて、行政上の必要に基づいて行なわれるのであるならば、まずもってそれを言うて、それから了解を得てやるべきだ、こう言っているのですよ。基幹調査をやってならぬということを私が一体いつ言いましたか。
  104. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この疑いがあるかないかというような問題は、これは調べてみなければわからない問題でございまして、税務署としては、この調査に行くことは税務署の一つの仕事でございますし、人手がなくてめったに全部へ行くというわけにいきませんので、何年かの間に一回ずつ行くというようなことで、行くときには疑いがあろうとなかろうと行くという場合もございますので、疑いが出てきた場合には、特に厳重な調査をすることはございましょうし、調査した結果、非常によく申告がなされているという場合には、もう戸口で帰ってくるという場合もあるというふうに聞いております。これは一々断わっていく問題かどうか、これは調査してみなければ、実際は税務署としてはわからないんじゃないかと思います。
  105. 横山利秋

    横山委員 あなたの言っているのは、循環調査方式のことです。私の言っているのは、繰り返し、基幹調査のことを言っておるのです。うしろの方から原長官がものを言いたそうな顔をしているのですけれども、私の言っているのは、繰り返し言っているのですけれども、基幹調査のことです。税務行政上の必要に基づいて行なわれるのであって、たまたま横山商店なら横山商店が選ばれたにすぎないのです。そこが白であるか黒であるかは問題でないのです。税務行政上必要に基づいて行なわれるのにかかわらず、そこへ黙って基幹調査ということを言わずに、いかにも問題がありそうな顔をして、深度の深い調査をするということは、質問検査権の乱用だと、こう言っているのです。私の質問の趣旨はおわかりでございますか。
  106. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 趣旨はわかるような気がします。
  107. 横山利秋

    横山委員 いやもう長官に質問する気持はあんまりありません。これは常識の問題なんですよ。私は法律問題よりも、むしろ常識問題として、大臣の御判断をいただきたいと言っているのです。繰り返し申しますけれども、四千億の自然増収が、税法はこのままでどういうふうに行なわれるか、大へん問題が起こると私は見ているのです。だから一、二の例をあげて——大臣が、苛斂誅求をしない、民主的なやり方でいくとおっしゃるのであるならば、この基幹調査のことぐらいは、大臣が常識的な判断をなされるべきだ。これは与党の委員の皆さんでも、野党の委員の皆さんでも、これだけくどく私がお話をすれば、だれだって私の言うことに御賛成を願えておるはずだと思うのです。一つのこれは例ですよ。質問検査権というものがどうあるべきかという一つの例ですよ。  じゃ、もう一つ、今度先ほど話が出た夜間調査について話を移しましょう。夜間調査は、先ほどあなたがおっしゃったように、夜商売をしておる人はしょうがないじゃないか、こういうような御意見がありました。この税法は、夜間調査は原則的に禁止をしておるのです。国税徴収法は、原則は、夜間はしない。旅館とか料飲店のみだ。役所の都合で人が少なく、仕事が忙しいから頼むというて、その以外のところでも、夜間調査が行なわれておるのです。国税の犯則法では、緊急証拠を集める必要ある場合を除いて夜間調査はいかぬ、こういっておるのです。民事訴訟法もまた夜間、休日の執行の制限、執行裁判所の許可ある限りにおいて認めておるのです。刑事訴訟法もまた百十六条で日の出前、日没後は令状に記載ない限りはやめなければいかぬと、こういっているのです。この国税徴収法、犯則法、民事訴訟法、刑事訴訟法、すべて原則として夜間はやらない、夜間やるときにおいては、格別の場合だけだ、こういっている。ところが、一般の法人税、所得税の調査については、実はそういうきめがないのです。そういう法律の条文がないのです。けれども、特別な問題であるこの徴収法や犯則法や民事、刑事の訴訟法で、これを夜間は原則としてやらないといっておるのですから、当然普通の調査などにおいては、この旅館とか、飲食店、料飲店以外は夜間はやらないということを考えるのが当然だと思うのです。これも常識的な問題ですが、いかがですか。
  108. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたように、原則として夜間調査はしないということになっておるそうでございます。
  109. 横山利秋

    横山委員 ところが、実際は、人が足らないということで、夜間行なわれておるのです。ここに一つの例を示しましょう。例として極端な例を示しますと問題になりますから、普通の例であります。あるブドウ糖を酒作り屋さんへ納めておる商店がある。ところが、そこが国税局に昼から来られて、そして病人です。病人というとあまり特例になりますからなんですけれども、事実は病人でした。一日飯を食ってなかった。そこで調査の結果、一つあなたは来てくれというので、国税局へ連れていかれた。夜の九時まで調べられて、そうしてあなたは判こをつかなければ帰さないということで、やむなく判こを押した。しかし、ブドウ糖を酒作り屋さんに納めること自身何ら問題はなく、そこは何ら脱税をしていないのです。問題はそのブドウ糖を買った酒作り屋さんが混和をしておるであろうかどうかということが問題なんですね。おわかりですね。それを反面調査というのです。直接の脱税容疑の納税者じゃなくて、関係の納税者ですね。その関係の納税者が、最近非常に調査方式が厳重になっておるのです。銀行についても同様です。このブドウ糖屋さんは、どうにもあの病気のからだで飯も一日食わなかったのであるから、うろ覚えであったし、帳面も見ずに言ったことであるからといって、あくる日訂正を申し込んだが断わられた。そのあくる日に行ったけれども、どうもうまくいかなかった、こういう事件なんです。重ねて申しますけれども、そのブドウ糖を卸している家は脱税ではないのです。正当に売っているのです。けれども、買った酒作り屋さんが混和しているのではないかという疑いです。その酒作り屋さんへ行ったのでは十分な証拠がないから、反面調査として関連の取引先を押えるというのが最近のやり方です。しかし、そこのブドウ糖を卸すお店屋さんは、まことに何といいますか、迷惑を受けたわけです。そこで、質問検査権の問題になるのですけれども、取引先でありますから、質問検査権を発動してもいいと私も思います。問題は、一つには人権の問題です。一つは夜間調査の問題です。夜間調査の例は私は枚挙にいとまがありません。多くは言いませんけれども、夜間調査ということは、特例として先ほどお話ししたような各法律によってきめられているのですけれども、普通の法人税や所得税では夜間調査がいいとも悪いとも書いてないのです。けれども、税務職員の立場をかりに考慮して言うならば、人がないから、三月十五日の確定申告までにとてもじゃないけれども、そんなにやれませんよ、えらい悪いですけれども、夜一つお願いします、これで済んでしまうのです。私は少なくとも普通の家へのこのこ出かけて、夜、帳簿を見せてもらいたいとか、あるいはお宅はどうだということは、これはいかぬと思います。もし法人税、所得税でそういうことが許されるならば、何で国税徴収法や国税犯則法や民事訴訟法、刑事訴訟法で夜はいかぬとなぜ言うのでしょう。こういう特例の場合でも夜はいかぬというのでありますから、普通の場合は、夜はやらぬというのが当然のことではありませんか。このブドウ糖の家の問題は一例ですから、おそらくあなたはそういうことは例外だとか、そういうことはその場合はけしからぬとかおっしゃるかもしれませんが、私の言いたいのは、夜間調査というものはなすべきでない、こういうことです。いかがですか。
  110. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 令状によって強制調査をする場合には、法律上の制限がありますし、一般の税法の場合では、別に夜間調査禁止の規則はございませんが、しかし、さっき申しましたように、これは原則として夜間調査はやらぬ方がいいということで、そういうことになっておりますので、たまたまさっき申しましたように、夜間営業についての調査とかなんとかいうことが現に行なわれているところもあると聞いておりますが、やはり原則として夜間調査は私はやらない方がいいのじゃないかと思います。
  111. 横山利秋

    横山委員 率直に大臣はおっしゃったのですから、それでは夜間調査は原則としない、なるべくやめるようにということを徹底させて下さいますか。
  112. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 国税長官からあなたもお聞きでございましょうが、私の聞いたところも、国税庁はそういうふうな指導をしておるということであります。
  113. 横山利秋

    横山委員 この例として基幹調査、夜間調査を例に出しましたが、こういう調査方式の欠陥を並べ立てると全く私は枚挙にいとまないのです。少なくとも自然増収四千億の推算の過程についての議論はいろいろ持っておりますけれども、そろばんの上で四千億自然増収がある、ないといったところで、実際問題としては、全国の納税者が明年度個々に問題になる問題でありますね。そこに非常なトラブルが私は起こると思うのです。政府としては、無理がなくて四千億は集まるとお考えになるかもしれませんけれども、まさにこの自然増収は前史未曽有の自然増収ですから、そう簡単に集まりませんよ。集めようとするならば、今私が言いましたいろいろな調査方式が縦になり横になって、そうして苛斂誅求が行なわれるか、質問検査権の乱用となるか、どちらかだと私は思うわけです。  ところで、反面、税務職員の気持を私は先般来個々にいろいろな角度で聞いてみました。その中で一番感じられたことは、ふいとこういうことを言ったのです。これは前の晩にクラシックを聞くとあくる日仕事がやりきれない、前の晩に徹夜でマージャンをするとあくる日は何も考えずにもりもり仕事をする、こう言う。どういう意味だか、あなたおわかりになりますか。税の不公平、徴収上のいろいろの不公平、法律上の不公平、運用上の不公平というものが現にあると言うのです。税法通りきちんと取れば、その企業に対して非常な打撃を与えることがはっきりわかっておると言うのです。それでは納税者が言う。おれのところからぎょうさんとっておって、実際その歳出はどうなっておる、汚職がある、何がある、軍事費に使う、そんなことは私の知ったことではありません、国会議員がきめたことです、と答える。けれども、納税者はそれに対して了解はしない。おれのところとあそこと比べてみよ、こう言う。大企業と中小企業と比べてみよ、勤労者とお役所と比べてみよ、こういう不公平論は各位御存じの通りです。大臣も御存じの通りです。税法通りきちんととったら、それは私の役目は勤まります、けれども私の気持の中に何となく釈然としないものが残る、結局他の業種との均衡を考えながらやらざるを得ない。一体私の良心は何でありましょうか、前の晩に厳粛にというかクラシックを聞いて心静やかに納税者に向かう場合には、その公平論、正義感というものがどうにも私を心中じくじとさせる、徹夜でマージャンをやったあと考える必要はない、仕事の通りにやればいいじゃないかということでどんどん仕事をやる気になると、こう言う。私はその話を聞きまして、税務職員の諸君に非常に同情を禁じ得なかったものであります。かてて加えて、あなたもおっしゃるように人が足らぬのです。足らぬから結局重点調査、夜間調査、早がけ調査、こういうことになるわけです。そういう点では、私は大臣が、この前古未曽有の四千億の自然増収を明年度徴収をするということについて、今まで通りでやれ、そうして国税庁で適当に考えろ——まあそんなこともおっしゃるまいけれども、しかし、今の法律で今の運用で四千億が集まるのだと頭からきめられたのでは、このような問題は私は山積すると思う。人が足りなければ人をふやしなさいよ。そうして民主的な合理的な徴税が行なわれるようにしなさいよ。マージャンをやればそんなことは考えずにもりもり仕事をやるのだという考え方、まだ心中じくじとした正義感にもとるような考え方が起こらないように、税務職員を元気づけなければならぬと私は思う。いかがでございますか。
  114. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは、そういう税務行政をぜひやりたいと思っています。で今四千億と言われましたが、今度の予算は三十五年度の当初予算に比べたら確かにそうでございますが、事実上は自然増の非常に多かったのは三十五年度でございまして、三十五年度の最終の収入に比べますと、来年度の増収というものは、この間もここで御説明しましたように、二千億前後、それ以内ということでございまして、従ってそう苛斂誅求をしなければならぬような事態でもないと私は考えております。以前どうしても一定の額の税収が必要だといって、終戦直後各税務署に割当が行なわれたとか、実際にあったかどうか知りませんが、そう言われて非常に税務署がきつい調査をしたという非難が昔あったことはございますが、今ではそういう徴税方法をやっておりませんし、国税庁においては——今の長官は私も知っておりますが、無理のない親しまれる税務署になれ、納税者がわからないときに自由に相談に行って、どうしようと言って税務署にかけ込むような税務行政をやれということを、たびたび訓示しておるということを聞いております。そういう方向で、私は無理のない税務行政をやっていきたいと思っています。
  115. 横山利秋

    横山委員 やっていきたいということと実情がどうであるかということとは別なんです。失礼な話でありますけれども、私が申し上げたことについてまだ御認識が足らないような気が私はするのです。裁判では疑わしきは罰せずということになっております。けれども税法では、残念ながら疑わしきは課税するという立場を原則的には立てております。推計課税方式がとられておるのも、そのゆえんであります。おたくは帳面がどうもはっきりせぬとか何がはっきりせぬ、大体この辺が法律上標準率表で、うどん屋さんで腰かけがこのくらい、どんぶりがこのくらいならば、このくらいのお客さんが来るはずだ、おふろ屋さんなら、大体ふろおけが幾つで電力料が幾らならば、このくらいのお客さんが来るはずだという推計課税が許されておるわけです。つまり裁判では疑わしきは罰せずだけれども、税法では、税務行政では、疑わしきは課税するということになっているのです。片や質問検査権の乱用だと私は言うのですけれども、結局は質問検査権というものは自由勝手になっているわけなんです。ただ口先だけでそういうことのないようにと言っても、法律上あるいは規則の上からリミットをつけなければ、何の足しにもならぬと私は考えておるのです。その中間に立つ税務職員も、そういう矛盾と悩みをしながらやっておるのであって、あなたが親しみやすい税務行政にしろということは、それ自身私も何らの異存はございません、そういうふうにしてもらいたいと思うんですけれども、口先だけでなくして実際に親しみやすくするためにはどうあるべきか。質問検査権を制限をする、こういうことも大事ですし、あるいは夜間調査等は断わってやるということも大事ですし、あるいは調査をするときには税理士に通知して立ち会いをしてもらうということになっているのですけれども、これもなされておりませんし、そういうようなことを考えますと、もうこの辺で税務行政について、あなたもほんとうに納得のいく民主的な税務行政をおやりになるとするならば、権力的な要素を少しなくして合理的な民主的なやり方にするべきです。そのためには人もふやすべきです。そうして苦情処理の機構も充実すべきです。私は大蔵委員会でかねてから協議団制度について意見を言うてきましたけれども、これは改善の余地はありました。ありましたけれども、まだこれは不十分であります。租税裁判所のような構想も考えてみるべきです。そういうようなことに、かてて加えて私が最後に意見として言いたいのは、先ほどから、るる納税者の権利が侵されておる、質問検査権が乱用されておると言ったのですけれども、先ほどのブドウ糖を納めたうちは商売に差しつかえ、自分のところの脱税の問題でないのに夜までとめ置かれて、そうして病気のからだで判こを押しておる。こういう状況なんですが、それに対して何ら国家は補償のあれがありません。税務行政のやり方によって被害を受けた、しかもそれが脱税ではなくして初めから白である、調査をした結果白である、信用にも営業にも差しつかえたにもかかわらず、それでしまいということになっておるわけであります。これについて大臣はどうお考えでございましょうか。私はそういう例は少ないと思います。しかし少なくても、質問検査権の乱用なり税務署の必要に基づいて行なわれて、納税者にあり得べからざる不利を招き信用を失墜した者に対して、どういう補償があるべきかという点であります。それは国家賠償法の問題はありますけれども、そんなことで今議論をしたところで、これは問題にならぬのであります。もう少し納税者に対する利益、権利というものを守り、補償をするという考えにならなければならぬのではないか。そうしてこそおのずからリミットができると私は思います。税務職員が不当に納税者に不利を招き、そうして損失を招いたときにおいては、その責任をとる、ないしはその補償をするという制度を確立してこそ、初めて税務職員も、これはまあほどほどにしなければいかぬという問題も起こるでありましょう。今そういうことは全然ないのですから、結局オールマイティということになるのであります。いかがでございますか。私が申し上げたのはいろいろございますけれども、苦情処理機構をさらに充実しなければならぬし、そして、また税理士に通知をしてから調査をすべきだ、きちんと税理士に通知のあるものはそういうことも実情通り、規定通りやるべきだし、それからこの補償制度を考えるべきだし、人はふやすべきだ、こういう点を、私は、自然増収の実際の徴収にあたってあなたが民主的な合理的な徴税制度をやるためにお考えになるべきときである、それでこそ納税者は信頼するであろう、こう申しておるのでありますが、いかがでありますか。
  116. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいまのような質問検査権やあるいは納税者の救済手続というようなもの、それらのものをやはり全部網羅しました国税通則法というようなものの制定の必要があると私どもは認めて、今税制調査会に諮問もして、さっき申しましたように、できたら来年度から実施したいと考えておるときでございますので、この立案の過程においてそういう問題も十分に私ども考えたいと思っております。
  117. 横山利秋

    横山委員 時間の関係上、いろいろ徴収の問題については議論があるのでありますが、その次に一つ金融の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  このごろはやりの言葉で「銀行よさようなら、証券よ今日は」というキャチ・フレーズがあるのです。銀行は今や斜陽産業だ、こういうことがいわれているのでありますが、私はこの銀行よさようならの陰に、一番心しなければならぬのは、実は中小企業の問題だ、こう思っておるわけであります。先般も大蔵委員会であなたに言ったわけですが、今回の金利の引き下げというものは、何も国内的事情にあったわけではない。事実年末の繁忙期に、または、一月から三月の揚超の気配があるときに、金融の逼迫しておるときに、金利の引き下げをしなければならぬという理由は、国内的事情ではなくて、実は国際的事情にある。アメリカのドル防衛に協力して、西欧も金利の引き下げをした、だから、日本も協力してくれということで金利の引き下げをしたということに私は考えておるわけであります。ところが、金利の引き下げという問題が実際問題としてどこまでいくかというと、預金金利の引き下げまでいくわけですね。預金金利は四月に引き下げる、とこういうお話であります。そうすると、大衆の預金者は、勤労者なり零細な企業の預金者は金利引き下げの損な部面だけ受けて、そうして金利引き下げの得な部面はもっぱら大企業が受ける。こういうことはこれもまた常識的に容易にわかることだと思うのです。最近、まあ証券の問題とも相並んで、信用組合や相互銀行や信用金庫等で、預金金利の引き下げはあまり感心しないという意見が出ておるようであります。それは「銀行よさようなら、証券よ今日は」ということにもなってきたんだから、預金金利まで下げて、さらにその追い打ちをかけるように直接投資の方へ自分のところの金を持っていかれるのはかなわぬという気持もあるでしょうが、むしろ、私は、その人々よりも、零細な金を郵便貯金に、あるいは銀行預金に預けておる大衆の気持を思えば、金利の引き下げが国内的事情でなくして、国際的事情であって、しかも、結局大企業に奉仕をするだけだ、おれたちには何の得もなくて、損のことばかりじゃないか、こういう気持が渦巻いてくることは当然なことであります。しかも、金融の常道によって、金融が緩和したから引き下げたのではないわけですね。金融が逼迫しておるときに引き下げるのですから、これは理屈からいえばますます逼迫をするわけですよ。今日は、少なくとも、いずれの大臣であろうと、総理大臣であろうと、本委員会なり大蔵委員会で言ってきた常道論からいうならば、緩和をしておるときに引き下げるのではなくて、逼迫する過程において引き下げるのですから、ますます逼迫をする。そうすれば、限りある貸付資金量でありますから、結局これまた中小企業には金融が逼迫をしていって、金利引き下げは中小企業にもうまくいかない、こういうことになってくるわけです。この私の考え、分析、それに大蔵大臣はどういう所見をお持ちでございましょうか。また、そうであるとするならば、これから中小企業金融なりあるいは零細な預金者に対して、どういう保護をなさろうとするのですか、これをお伺いをいたします。
  118. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 日本の金利水準を下げなければならぬという事情はあなたも十分おわかりだと思います。ですから、昨年政府ができましてから、この金利引き上げについての環境を作るために、政府は努力するということを申しましたが、それ以来この問題については努力をしておって、今回ようやく金利引き下げの実現の動きが見えてきたということでございまして、今度の金利引き下げとドル防衛とは、別に、全然、最初からもう関係がないことでございましたし、また関係のあることと私ども思っておりません。  で、昨年の夏以来の金融の逼迫状態から見ましたら、この年初以来の金融情勢というものは、非常に順調にいっているときでございますし、かたがた日本経済が落ちついているときでございますので、私は金利引き下げをするのにはいい時期ではなかったかと考えております。この金利引き下げということによって、公社債の消化というものが非常に多くなった。ここにまあいろいろ問題があるようでございますが、では、そういうことによってどういうことになるかと申しますと、大企業は社債の発行というようなことによって、長期資金の調達ができておる。その結果どういうことになるかと申しますと、長期資金の調達の結果、あるいは一部銀行に債務の返済をするところも出て参りますし、また、一部には、今まで問題にされておりました下請企業、中小企業への支払いが遅延しておっていけないというような非難をされておる問題がございましたが、これによって中小企業、下請企業への支払いがどんどん進んできて、百二十日の手形でやっておったところが、六十日になったり三十日になってきたというような動きがすでに始まってきまして、これが中小企業を圧迫するという方向に働いているというわけでも別にございませんし、かたがた銀行が大企業に今まで資金を相当使用されたものが、この肩の荷が軽くなったという問題が、今後中小企業の金融に向かっていくという部面も出て参りますし、やはり金利引き下げというものの一連の動きがこれからだんだんに、いろいろな派生的な効果を持ってきて、これが中小企業圧迫という方向にはいかぬだろうと思います。また、それがいったら大へんで、そういうことのないように、また私どもが一連の金利問題を考えているということでございますが、この金利問題は結局均衡をとった一つの体系をなすのでなければ、これはいろいろ工合の悪いことが起こりますから、長期債の金利の問題、公社債の条件というようなものが今後順々に調整がとれていかなければならぬということと、同時に、日本の金利水準を引き下げるというためには、特に高い日本の預金金利の問題にも当然これが及ばなければ、ほんとうの金利水準引き下げにはなりませんので、今後そういう方向へも均衡をとって及んでいく。これが一応調整がとれて落ちついたときが日本の金利水準が一段下がったという状態のときになり、そうしてこれによって日本の国際競争力、企業の競争力というものが初めて強固になるということになるのでございますから、今一連のそういう方向に政府も努力しますし、民間が自主的にいろいろ努力しておる最中でございまして、この現象が悪い、中小企業を困らせる方向へいっているものというふうには私ども全然考えておりません。
  119. 横山利秋

    横山委員 野放図もない楽観説だと思うのです。あなたの立論は、大企業が楽になれば中小企業は楽になるよ、大銀行が楽になれば中小金融機関も楽になるよ。こういうお考えで、それこそ池田さんと全く同じようなお話だと思うのです。現に中小企業金融機関の預金量が最近とてつもなく減っているではありませんか。預金量がどんどん減りつつあるじゃありませんか。まだ減りますよ。御存じの通りでありましょう。それが直接投資へ逃げたという言い方もあるし、それから先ほどの金利引き下げの影響がそういう方面に現われたという考え方もあり得るわけです。私どもは大企業が楽になれば中小企業が楽になる、常に一歩二歩おくれて楽になるという考え方よりも、常に大企業は財政投融資でも何でもほかってしまいなさい、自由に自分の力で伸びていくなら伸びていきなさい、政策の恩恵は中小企業に与えるべきだと言うておるのですが、その辺はもうあなたと私と意見の分かれるところとなるかもしれません。  そこで通産大臣にお伺いをいたしたいと思うのですが、今後中小企業金融機関から預金量が減って、しかも景気の動向からいっても需要が非常に多くなっておる。こういう点について、私は大蔵大臣に御質問をするのがほんとうかもしれませんけれども、いま少し中小企業金融機関というものを充実しなければならぬのではないか。中小企業の担当の大臣として、中小企業金融についてどういうふうにお考えになりどういう手を打っとられるか。今国会に提案されておるものでは、なるほど商工中金なり中小企業金融公庫の金利が三分減ります。それはわかっておりますけれども政府金融機関の資金量というものは全中小企業資金量の中できわめて微々たるものです。従って政府金融機関だけを議論するのではなくして、全中小企業金融機関を論じて、その預金量が減って、貸付のワクが減って、しかも中小企業の金融の需要が非常に増加しておるという状態についてどうお考えですか、どういう処置を今後おとりになるのですか、それを一つお伺いいたします。
  120. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中小企業専門金融機関の預金量が減っているという御指摘でございますが、これはただいま調べてみます。  大体中小企業金融が昨年の七月、八月ころ割合に窮屈になっておったのであります。例年の通り年末資金の需要が旺盛でございまして、これに備えて昨年は、一昨年百億だったものを二百億これに準備をいたしました関係上順調に越年をした。こういう状況でありまして、その後の中小企業全般の金融は特にこれで満足だという状況ではありませんけれども、従来に比して非常に窮屈になっておるというような状況ではないのであります。
  121. 横山利秋

    横山委員 御答弁にどうもなっていないようでありますが、あなたは中小企業金融機関の資金量が最近減ってきておるということを御存じないのでありますか。それとも知っておって数字がわからぬというのでございますか。どちらでございますか。
  122. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 特に中小企業専門金融機関の預金量が減っておるという顕著な事実はないようでありますが、地方銀行において相当預金が減っております。従って、その結果地銀の中小企業に対する融資に影響があるものと考えられますが、具体的にまだ数字をつかんでおりません。その状況がもし相当考慮すべきものであれば、専門機関に対する融資の手当をしなければならぬ、かように考えております。
  123. 横山利秋

    横山委員 いささかどうも私は通産大臣の御答弁に失望すると同時に、まことに遺憾の意を表したいと思う。今や新聞を見たって、預金量の急激な減少と、投信なり公社債に対する急激な増加というものは今日の話題の中心なんであります。そうして中小企業金融というものが、政府としても金利の多少の引き下げやら、あるいは財政投融資の多少の増加があっても、なおかつ政府が呼号される景気の状況からいっても、もう明確な事実です。たとえば通産大臣が近代化資金の増加をされたというても、これがどのくらいの需要と資金量の状況であるかはあなたも十分に御存じのはずじゃありませんか。私は、少なくとも今日の預金量の減少というものに対して根本的に一つ中小企業金融について考えてもらわなければならぬことじゃないかと思うのです。たとえば普通銀行には中小企業向けの特別のワクを設けさせるとか、あるいは今日銀行の店舗の新増設は許可制度である。株屋さんの店舗の新増設は届け出制度である。こういうような状況についても、中小企業金融の面からいって考えるべきことでないかと思うのですし、それから中小企業専門機関に財政投融資を思い切ってこの際流すべきではなかろうかという点も真剣に考慮されてもよろしいし、中小企業金融公庫に公債の問題を提起してこれをやらせるというのも一つの方法であるし、設備資金はもとよりでありますが、最近の中小企業の求人難、あるいはそれに基づく住宅等について、この福祉厚生施設に対する特別の制度、これはもう厚生年金の還元融資ができそうでありますけれども、微々たるものです。こういう点については国民金融公庫にも、中小企業金融公庫にも、今まで設備金融やあるいは運転資金の問題はあったけれども、福祉厚生の問題については、刻下の中小企業の一番の根本の問題であります福祉厚生施設に対する金融について、中小企業金融公庫、国民金融公庫に大幅な仕事をやらせるという必要がありはしないか。数え上げれば幾らもあるのでありますが、しかし、その数え上げる前に通産大臣が、失礼な話でありますけれども、案外基本的な現状の認識に乏しいということに私はきわめて遺憾の意を表せざるを得ない。私がただいま例示いたしました点について、どうお考えでございましょうか。
  124. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 中小企業の求人難は顕著に最近現われて参りました。結局賃金の問題、あるいは福利厚生施設等の問題がどうも手が回らないということにあるように思われます。今度の予算で御審議を願ういわゆる設備近代化でありますが、三十五年度十三億ばかりでございましたが、約三十億と、倍以上にふやしまして、その一部をもっていわゆる中小企業の団地問題の資金にこれを充てるということを考えております。従来の環境からいたしまして、いかに設備を近代化しようとしても、その効率が上がらないごちゃごちゃした横町に点在しておるというような状況では、これは十分に設備更新の実も上がらない。いわんや、中小企業の労務者の厚生施設等については、もう全然考えられる余地はないというような状況でありますので、これらに対しまして、あるいは団地の土地の取得、あるいは建物の建造、共同施設あるいは福利厚生施設、そういったような問題を広く取り入れまして、そしていわゆる設備近代化の範疇の中で今年からやっていこう、もちろんこれはきわめて少額でございまして、私はこれをもってすべての中小企業の方面に満足のいくようなことはできないと思いますが、初年度でもございますので、これを一つテスト・ケースにいたしまして、明年度からだんだん拡充して、ただいまの労務者の福利厚生施設まで手が十分に及ぶようにしたい、かように考えている次第でございます。
  125. 横山利秋

    横山委員 たった三億円で、全国団地の候補地が十カ所でありますか、十で割れば三千万円、それで膨大な団地の計画ができるとお思いでありましょうか。またあなたは今のお話の中に、設備の近代化の中に厚生福利施設を含めるのだ、こうおっしゃいましたが、間違いございませんね。それでしたら中小企業金融公庫や国民金融公庫の貸し出しに福利厚生施設をこの際盛って、そして今日の喫緊の問題として福利厚生施設に対する金融を大幅にそれぞれ取り入れるということに御賛成下さいますか。
  126. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 従来商工中金におきまして、貸し出しの目標の中に厚生施設を入れておりましたが、もちろんこれとても十分ではございません。今後十分に一つ拡大してその点を充実して参りたい、かように考えております。
  127. 横山利秋

    横山委員 もうちょっと明確に言って下さい。従来商工中金に入っておるけれども、今後云々で何だかわかりません。中小企業金融公庫、国民金融公庫、商工中金等政府金融機関等においては、福利厚生施設を金融の対象として取り上げて、ワクを作って実施をするということに御賛成下さいますか。
  128. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 従来、今申し上げたように、商工中金においてこれを対象にしております。おりますが、これはまだ十分ではございません。それから国民金融公庫あるいは中小企業金融公庫、これらについてはまだ十分な対象になっておらない。そういうことを考えまして、この方面についても考究してみたいと考えます。
  129. 横山利秋

    横山委員 考究してみたいということは、私はすなおにとって、実施をして下さる、その方向でお考えになるというふうに理解をいたしたいと思いますが、重ねて率直な御意見を、中小企業のために御答弁を願いたいと思います。
  130. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ここで必ずやるということまで、まだはっきり申し上げかねますが、そういう方向に努力いたします。
  131. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんから、その次は、今度は「証券よ、今日は」の方で一つ質問をいたしたいと思います。  きょうの新聞を見ますと、証券取引審議会は第二取引所の問題の検討に正式に入った模様であります。今日の証券界の動向、問題については全くたくさんの問題がございます。どうしてここまで大蔵大臣が放置をされておるのか。簡単に言うと、放置されておるのが私は全く不思議だと思うのであります。先般も明らかになったところを見ますと、大阪の斎藤卯証券は三年間にわたって簿外帳簿をつけておって、そうして十五億の損失を投資家に与え、それに対して方々から金を集めて、二割の見舞金をようやくにして投資家に送った。しかもこの三年間に二回大蔵省の検査がありながら、何らその片りんを発見することもできなかったということだそうであります。これは私が言うのでなくして、大蔵省の説明でお伺いをしたのであります。一体何たることだと私どもは思ったわけであります。しかし、同時にまた、何たることだとはいいながら、また一方で今の証券行政について私は逸脱行為だという点をも、逆説ながら意見を開陳をしたことがあります。といいますのは、先ほども私がちょっと説明かたがた言ったのでありますが、銀行の新店舗は許可制度だ、証券業者の新店舗増設は届け出制度だ。片方は作ってはいかぬという立場になり、片方はお作りになるならどんどんお作りなさい、これが法律上の取りきめになっておる。それで、おかしいのではないかと言うたら、いや、実は法律上はそうなっていますけれども、私ども一つの証券会社に大体一年に三店舗にとどめてくれ、こう言っております。何の権限でそういうことを言っておるのですか、あなたの法律上の立場は何ですか、こう言ったんですけれども、詰まっちまったわけです。今の証券のさまざまの諸問題について、何らの法律的な根拠なくして、大蔵省はああだこうだと権限外のことをやっておる。私は逆説的にものを申しておるのです。こういうような考え方を持つのであります。最もはなはだしきにおいては、第二取引所の問題があります。今東京の証券取引所の中に実栄会なるものがあり、大阪にもまたそれらしきものがあって、実際問題として名古屋の証券取引所の取引量の倍くらいを、その東京取引所の中に一室を設けてある実栄会が取引をしておる。これは取引所法や証券取引法にははっきり書いてある。一つの取引所ですね。そういうことを実際やっておる。しかも名古屋の取引所以上の、倍になんなんとする取引をする第二取引所が現に存しておる。これは明らかにといって、まあ影響があまりあるのはいかがですから、少し言葉を濁しますが、疑いがある。取引所法違反、証券取引法違反の疑いがある。それが隆々たる勢いでやっておるのにかかわらず、大蔵大臣は一体これに対してどういうお考えを持っていらっしゃるのでありましょうか。今日まで放置しておいた理由は何でありましょうか。私は今の証券界については、大蔵大臣——まああなたの前からですから、あなたばかりを責めるわけにもいきますまいけれども、今の証券行政についてはおかしなことがずいぶんあると思うのであります。まずその基本的な点について御意見を伺いたい。
  132. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 従来の店頭取引の数量はそう大きいものではございませんでしたが、最近は御承知のように、三百万株の売買というようなことになって参りまして、地方取引所の取引よりも多いというようなことになって参りますと、このままこれを今の形でやらせるのがいいか、いわゆる第二市場というものを考える方がいいかと私ども考えまして、これを証券取引審議会に今相談をかけて、そして一応結論を出してもらったら、この店頭取引を第二取引所としてはっきりさせて指導することがむしろいいのじゃないかと考えておりまして、今審議会にこれを相談しておる最中でございます。
  133. 横山利秋

    横山委員 証券取引法百九十一条「何人も、有価証券市場に類似する施設を開設してはならない。」例外は何もないのですよ。明確にこういうことをしてはならないということが法律上あるわけです。あなたは驚いたことに、今このまま続けてよいか悪いかということを平気でおっしゃっていらっしゃる。これは私は不思議でならぬのであります。それでは証券取引審議会が第二取引所を作らないということをかりにきめたら、あなたはそれに従いますか。現在の実情を証券取引法百九十一条に照らし合わせて大臣はどうお考えですか。
  134. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 店頭取引の株式の会社の最近の成長が非常に大きい、そしてまた資本調達の必要に迫られている会社、これから伸びる会社であって、ますますこの会社の数が多くなるという趨勢でございますので、政策的に見ましても、私は第二市場を作ることがいい。すでに外国にも例がございますので、そういう方針で今相談をかけております。そしてそういう形で解決することが私は一番いいのじゃないかと思っています。今やっていることが違法であるかどうかについては、この実情を聞きましたが、なかなかむずかしい問題がございます。しかし今あなたがおっしゃられるように疑わしいことであることは確かでございますので、やはりそういう形で解決するのがいいのじゃないかと思っております。
  135. 横山利秋

    横山委員 私は第二の質問を続ける前に、一つ大臣に腹をきめてもらいたい考え方があるのです。それは今指摘をされておる証券界の誇大な宣伝、それが一つある。それから大衆投資家は損失を知らぬのです。株というものは上がる場合もあるし下がる場合もある。もうかる場合もあり損する場合もあるのにかかわらず、昔の株式の問題を知らぬ長屋のおかみさんやあるいは勤労者も、株を買っている人が一部にはある。その人たち、ずっと伸びていった大衆投資家は損失を知らぬのです。株というものの真の実態というもの、昔の状況を知らぬのです。私はこれほど心配なことはないと思う。一方投信は大型株をねらわずに、品薄株やあるいはガラ株をねらって、値段が上がるばかりである。ダウ平均千五百円というような状況が、はたしてノーマルな株式市場の実勢であるかどうかということについて、あなたはどうお考えでございましょうか。私は少なくとも政府は公正な株価の形成とそれから投資家保護のために全力を上げるべきときである、そう思うのです。きょうも大蔵委員会で高橋亀吉さんや小池さんを呼んでいろいろ話を聞いたのですが、あの人々はまあ専門家です。私ども政治家であり、しろうとであるけれども、今日の全く誇大な宣伝や、損失を知らぬ大衆投資家や、投信の値段をつり上げるためのころがしや、いろいろな問題や、それからダウ平均、これだけが上っておることは正常な姿とは思わぬ。政府としては公正な株価の形成と、投資家保護のために、今力を尽くすべきときだ。一時はそれによって株式市場の人気が害されることがあっても、大衆投資が抑制されることがあっても、終局的には堅実な合理的な市場を育成することが、株式投資を振興するゆえんだと私は考えるのです。株に影響のある話はまあまあにしてもらいたいとか、あるいは自然の姿でもとへ戻るだろうとか、こういうひより見的な態度はいかぬと思う。どうですか。
  136. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私も全く同感でございまして、誇大な広告とかそういうものについての取り締まりといったようなものは、相当現在強く行なっておりますし、また品薄株に対する今の状態は確かに一部投機化しておるところがございますので、これらに対する警告措置とかも、私どもとしてはしばしばやっておるところでございまして、できるだけそういう方向に指導したいと思っております。
  137. 横山利秋

    横山委員 あなたは簡単に御答弁になったのですが、それだけのことを実際に、大衆投資家の保護をするためにどれだけたくさんのことをやらなければならぬかということを、あなたは今お考えでございますか。たとえば先ほどの斎藤卯証券の十五億円の損失が、投資家に二割しか救済ができなかったということ一つ考えてみても、いろいろな問題が発生してくるわけです。大蔵省は二回その中で調査をやっておる。まじめに調査をやったとおっしゃる。けれどもそれは簿外の帳簿であるからわかるはずがないと答弁をなさっておる。それがわかるようにするためには機構を変えなければなりませんし、あるいは人員を増加しなければなりますまい。それがまたわかったときに、たった二割しか補償ができないようなことについても考えなければなりますまい。投資家の保護のために、補償制度なりあるいは証券会社の積立金制度が考えられなければなりますまい。きのうどこの証券会社でありますか、外務員が百万円持ち逃げしたということが新聞に出ておりました。少なくとも銀行だとか証券会社の問題は、預金者保護、投資家保護という名前に隠れて、どうも政府の態度は徹底しないうらみがある、こう思っておるのです。ほんとうの投資家保護というもの、預金者保護というものは、銀行をかわいがったり証券会社を保護したりということではないはずです。もっと義務を負わせるべきだと私は思うのです。まずい銀行があって、たとえば千葉銀行がそうじゃありませんか。ああいうことがあったときに、預金者保護に名をかりてまあまあまあといつまでもやっておるからああいうことが直らぬのです。証券会社については、投資家保護という名前をかりるから、さっきの斎藤卯証券や外務員の持ち逃げが起こるのです。こういう点についてあなたは簡単に御答弁になったけれども、ほんとうに私の言うように、一時株式市場の人気が害されても、大衆投資が抑制されるきらいがあっても、終局的には堅実な合理的な市場を育成するという決心がほんとうにあるならば、あなたはなさるべきことがずいぶんたくさんございますが、ほんとうにおやりでございますか。私の主張に共感をされて具体的な措置をおやりでございますか。しかりとするならば、どういう方法でおやりでございますか。
  138. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 斎藤卯証券のごときは、確かに大蔵省が監査をしておりながら、簿外の操作がわからなくて、二回もやっておりながら、ああいうことになったというようなことにかんがみまして、この検査を強化するという方向はただいまやっておりますし、またこれは監督官庁の力だけではいきませんので、会員組織である以上、各証券取引所においても自主的にこういうものに対するいろいろの配慮をしてほしい。そうして違反者が出た場合には、まず自主的に除名するというようなこともやっていただきたいというようなことで、関係者間においてもそういう方向の取り締まりの問題、自粛の問題については、今いろいろやっておるところでございます。金融等、証券界のあり方についてお触れのようでごさいましたが、私はこれは一つ政策を推進していこうというときには、同時に一度にいろいろなことができるのでしたら、これはまたよろしいのですが、そうではなくて、順を追って一定の政策を行なうという場合には、いろいろの現象が過渡的に出てくると思います。それで今やっておる金利政策が長期金利に及び、公社債の条件に及び、株式の今度御審議を願います法律によって再評価益金の資本繰り入れというようなものが進み、そうして配当のあるべき姿というようなもの、一連のものが規制されるときに、金融証券の調整が適当にとれて、今見られるような一部不当と思われるようなものも是正されるときでございますし、全体のそういう総合的な政策とからんで、個々の問題を問題として、また配慮するというようなことによって解決するよりほかにはないのではないかと思っております。
  139. 横山利秋

    横山委員 全然私の質問に答えて下さらぬのです。私が言いましたのは、一時株式市場の人気が害され、大衆投資が抑制される傾向があっても、終局的には堅実な合理的な市場を育成することが必要だと言ったら、全く同感だ、こうおっしゃっておる。その一時株式市場の人気が害され、大衆投資が抑制されることがあってもということは、なみなみならぬ決意が必要であり、そうして実行をしてもらわなければならぬということを言っておるのです。それにいささかも答えていらっしゃらないのですが、あなたが同感だとおっしゃるならば、どういうことをなさろうというのか。たとえば私が例をあげましたのは、先ほどから第二取引所の問題が出ています。また補償制度の問題が出ています。取引方法の改善も私はちょっと触れました。証券業者のあり方についても触れました。投資家の保護についても触れました。これらのことをただ抽象的にあれやこれやおっしゃっただけではわかりませんのですが、その決意ならどういうふうに、この基本的な終局的な健実にして合理的な株式市場をやるために、どういう措置をおとりでございますか。実は今なんにもない、そういう決意だけで、これからならこれからだ、それでもいいのです。せっかく決意を示されたならば、その手段を承りたいのであります。
  140. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 さっき申しましたようにいろいろの指導をやっておる。この保証金の問題にしましてもこれを多くし、さらにその銘柄をふやすとかいうふうに、そのときどき今私どもはいろいろの手を打っておるつもりでございますが、これはまた今後の様子を見まして、非常に悪い方向というようなものが出てくるときには、それに対して私どもはまた思い切った措置をとらなければならぬと考えておりますが、今はたとえば一時的な投機傾向というようなものが見られますれば、それに対して政府はいろいろ手を打って、指導していくということで、大体ただいまのところは落ちつきを取り戻しておるという方向へ来ておると私どもは思っておりますので、その動向を見てから、いろいろ考えたいと思います。また全般として今後証券対策としてどういう措置がとらるべきかというようなことは、先ほど申しました審議会に、今いろいろ諮問をして検討を願っておる最中でございます。
  141. 横山利秋

    横山委員 大臣の御答弁はきわめて私は失望いたしますけれども、時間がありませんから、遺憾の意だけ表して次の問題に移りたいと思うのですが、最後に証券の問題で一番私ども、世間でもだれでもうなずき、そしてどうなんだと言っているのは、証券業界の構造の問題であります。言うまでもありませんが、四大証券の独占的な市場となっておる。あとの中小証券も数多くありますけれども、そのまた大部分が四大証券の息がかかっておる。産業の二重構造と一般に言いますけれども、証券界の二重構造は全く極端なものだと私は思っておるわけであります。かりに東証の出来高を株数で拾ってみますと、四大証券でまさに七〇%です。あとの九十五社でたった三〇%です。九十五社で三〇%、四大証券で七〇%、しかもその九十五社の中で四大証券の息のかかっておるものが半分くらいはありはせぬかと思うのでありますから、全く証券界は四大証券の独占的な状況になっておるわけであります。私はこういうような証券業界の構造というものが、いつかは問題になると思う。きのうある人の株についての新聞記事を見ましたら、株はまだ上がるよと、こう言っておる。上がる原因は、四大証券がおる、四大証券が相当株式の問題について実力を持っており、上げる気持になっておるのだから、まだ上がるよ、だから買え、こういう意見を新聞で見たのです。そういうようなことで、四大証券の実力というものが株式を左右する。全部の左右ではないけれども、大きな影響力を持っておるということは、株式市場の健全な、私の言う合理的な市場に遠いのではないか、何か今後問題が起こると私は洞察をするわけであります。先ほどの新店舗の増設につきましても、まあ聞くならば、行政指導で一年に三店舗だけは認める、そうして四大証券も中小証券も同じように認めておるというお話であります。なるべく四大証券がこれよりも上がらないようにするというような御意見も、先般大蔵委員会で伺ったのでありますが、百尺竿頭一歩を伸ばして、証券業界の構造改革を必要とするのではないか。今のままでいきましたら、ますます四大証券は大きくなるばかり、これを何とかしてその傾向をとめようと思ったってとまるものじゃないと私は思う。たとえば証券金融を例にとってみましても、証券金融なんかはこれはもう中小証券業者にのみ、中小企業金融公庫や国民金融公庫のように、中小証券業者にだけ金融をさせて、四大証券はそんなところで金を借りぬでもいいではないか。それから新店舗の増設についても、これはもう中小証券業者を優先的に認めるべきではないか。認めるといっては語弊があります、今届出制度でありますから…。行政運用についてもそうではないか。第二市場を作るにあたっては、中小証券業者を中心にして第二市場を作るべきではないかとか、このように今後の証券の問題について、中小証券業者を健全に発展させ、育成させるということが、証券市場の極端な二重構造を解消する道ではないか、こう考えるのであります。その点について考うべき点は、私の立論の趣旨が、それでは原則として投資家保護の立場に立っていないではないか、中小証券業者保護だけの立場に立っているのではないかというようなあるいは反論があろうかと思う。確かにその点はある程度矛盾することはあります。けれども、それでは大証券が全く投資家保護の立場オンリーに立っておるかと申しますと、先ほど分析したように、必ずしもそうではないのでありますから、均斉のとれた一証券業界を形成するために、いろいろなことはあっても、四大証券のこの異常の発展を押えて、中小証券を伸ばして、そうして均衡のとれた証券市場を形成するということが必要である、こう思うのですが、いかがでございますか。
  142. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 中小証券の伸びる余地を与えるように、今まで四大証券のあれが大きくなるというものについては、いろいろな措置をとって当局もやっておったことは事実でございますが、結局信用をもとにする業務でございますので、信用の多い方にどんどん片寄っていく、今おっしゃいましたように、四大証券がもう六十何%、七〇%近い扱いをしておるという情勢でございますので、これについての配慮は、私ども今後の証券行政としてやらなければならぬ一番大きい重点だろうと思っております。  もし、今までやってきたことについての詳しいあれがあったら、政府委員から説明させます。
  143. 横山利秋

    横山委員 時間があまりありませんから、詳しいことを聞くつもりはございません。これは適当な委員会で聞けばよろしいのです。基本的に私の申し上げる証券業界の構造を改革していくという意見に御賛成をなさいますか。
  144. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは賛成でございます。
  145. 横山利秋

    横山委員 それではぜひ私どもが具体的に申しました点については、その基本的な方向に沿って改革をされるよう要望いたしたいと思います。  時間もございませんから、最後に通産大臣に二、三点お伺いをして、私の質問を終わることにいたしたいと思うのであります。  今中小企業政策の面で貿易・為替の自由化や、あるいはまたドル防衛の問題で一番喫緊の問題になっておりますのが、下請企業及び零細企業の問題だと私は思います。下請企業は景気がいいときにはいいで求人不足だとか、あるいは資金難だとかコストの切り下げだとか、こういう問題に見舞われる。景気が悪ければ悪いで、これは言うもがなであります。だからそういう人たちのことを目じりのしわだと言って、泣いても笑ってもしわが寄るといってひやかす人があるのでありますが、この下請企業の組合を特別に作って、そうして大企業に対して団体交渉権を付与して、下請コストがきわめて劣悪なものについての改善をさせる、もしそれが紛糾がありましたら、下請企業に関する特別の委員会なり審議会によってこれをあっせんなり調停をする。簡単に申しますと、私どもはそれを下請基本法ないし下請法ということで言っておるのですが、そういうことをおやりになる、制定をされるお考えはなかろうか。時間がありませんので、簡単に申して恐縮でありますけれども、こういうことが今日必要なのだ。これもまた証券市場と相並んで、産業の二重構造をどこで解消するかという点を考えれば、今最低賃金法が不満足ながらもしかれ、大企業と労働者の中間にあって団結力の薄い下請にその組織の基礎を与える、そうして団結をさせることが刻下の急務であると思いますが、いかがでございましょう。
  146. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 協同組合を活用いたしまして、下請企業の組合を作って、組織的に親会社との折衝に当たっておるという実例はございます。ございますが、団体交渉権を認められておるのでありますけれども、あまりその点を振り回さず運用しておるようであります。御指摘の問題につきましては、なお従来の制度を活用して、もう少しこれを拡大していく必要があるいはあるのではないかということを考えております。よく考究いたしまして、遺憾なきを期したいと思います。
  147. 横山利秋

    横山委員 零細企業の中で先年今お話の中の協同組合法制定、団体組織法制定の際に小組合が生まれました。しかしこの小組合は、その法律に税制、金融上の恩恵を受けると規定してあるにかかわらず、政府は何らの措置をそれにいたしておりません。従いまして法律によって誕生した小組合は、今きわめて不遇な立場にあるわけであります。小組合を結成したからというて何らの恩恵もない。しかし法律上は特別の税制、金融上の恩恵を与えると約束をしておるのでありますから、政府は当然の責務としてこれを実施しなければならぬのでありますが、この小組合に対する法律上の特別な税制、金融はどのような措置をおとりになりましたか。
  148. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 小組合の制度は、現在もちろんございまして、ただあまり活用されておらない、十くらいしかない状況であります。必要があれば、当然その法律の規定がございますから、それを活用して参りたいと存じますが、ただいまのところはまことにふるわないという状況であります。
  149. 横山利秋

    横山委員 そういうことを聞いておるのではないのです。私が言っておるのは、法律上小組合には特別な税制、金融の措置を講ずると明記されておるにかかわらず、何らそのことをしないからふるわないのです。ふるったからやるということでは理屈にならぬのです。ですから、どういう措置をおとりになりましたかと言っておるのです。
  150. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 小組合の組合員に対して金融上の措置を講ずる、こう書いてあるのでありますけれども、組合それ自体にはその権能がないということで、どうもそこに法律上の不備と申しますか、そういうことを感ぜられますので、この制度を改正いたしまして、そして十分に組合に行き渡るようにしなければならぬ、かように考えております。
  151. 横山利秋

    横山委員 どうも大臣がおわかりにならないようでありますが、法律には、協同組合の小組合には特別な税制、金融の措置を講ずると書いてあるのです。これの由来は御存じかと思うのでありますが、団体組織法ができました際に、自由民主党、社会党がいろいろな相談の末できたものでありまして、政府もこれを尊重するということになっておる。しかし経過はともあれ、今法律に明記してあるものについての特別な税制、金融の措置を何らなさってないのです。そうですね。そうでなければどうしてなさらないのであろうか。ふるったから、大きくなるまで待ってからやるということでは理屈になりません。どういう措置をなさったか、これからどういう措置をなさるのか、具体的にお伺いをしておるのです。
  152. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 法律には、組合員に対して税制、金融上の措置云々と書いてあって、小組合それ自身にそういう権能がないということになっておりますので、その点にギャップがある。でありますから、これはやはり改正をしていかなければならぬものだと考えております。
  153. 横山利秋

    横山委員 おかしなことをおっしゃいますね。私の質問とは違うわけです。あなたは法律の解釈を言うておられる。その解釈でも、かりにいいですよ。けれども、それでは小組合の組合員にどういう税制、金融の特別の措置がなされたか。では、そういう意味でお伺いいたしましょう。
  154. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 組合員に対してと、こう書いてある。そこで税制、金融上の措置をだれがどういうふうにしてやるかというようなことについて、どうも疑問がありまして、実際今のところはそれが活用されておらないという状況であります。そこで、もしも小組合の組合員に税制あるいは金融上の措置をやるということになれば、小組合それ自身が何らかの権能がなければできぬのではないか、こういう疑いがありますので、そういうことからこれは活用されておらない。遺憾ながらそういう現状でございますから、その点よく考究いたしたいと思います。
  155. 横山利秋

    横山委員 法律上不備があって、通産省として何もできないということであるならば、団体組織法ができて以来すでに三年の間ほうりっぱなしにしておるという理由がないではありませんか。もしもあなた方が考えて、法律上不備があってできないというならば、法律の改正をみずから政府が提案すべきではありませんか、それもしなかったのはどういうわけでございましょうか。少なくとも零細企業政策ということについては、私は例をたくさん持っておるのでありますが、結局政府の言おうとしておることは、それこそこじきのおかゆと私ども選挙区の名古屋では言うのです。大臣、こじきのおかゆというのは、ごはんが中にないから、いうばかりだということです。おわかりでございますか。そういうことでは、もう全然これは問題にならぬ、一つ理事諸公におまかせをいたします。それでは確たる小組合についての政府の措置を承りますまで、私の質問を保留いたします。
  156. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは小組合の法制上の不備だと私は思います。でありますから、小組合員に対して税制、金融上の措置を講ずることを可能ならしめるためにはどうすればいいかということを考えなければならぬと思うのです。その点につきましては、十分考究いたしたいと思いますが、ただ小組合の組合員として、金融、税制上の措置を講ずるばかりが唯一の方法ではない。一般の中小企業金融の問題もありますし、それらの点につきましては、何ら道がふさがれておらないのでありますが、ただ小組合員として法律に書いてあることが達成されないという現状でありますから、この点は十分に考究いたしたいと考えます。
  157. 横山利秋

    横山委員 きわめて遺憾なお話ですよ。小組合の組合員だけが恩恵を受けるのはいかがかと思う。今こうおっしゃった。そうでしょう、そういうことですね。だから、ほかの零細企業もあるから、それも考えなければならぬというふうに受け取れた。法律は、小組合ないし、あなたの解釈によれば小組合の組合員に、税法上、金融上の特別の措置を講ずると書いてある。それをあなたは法律に疑義を持つためにやらなかった。そうしてそれを検討しなければならなかった、三年間それじゃ何もやらぬという言語道断の話がありますか。国会がきめたそういう法律自身にあなたが疑義を持っておるとおっしゃる。疑義を持っておるなら、なぜ法律改正を上程なさいませんか。疑義を持っておって、私が言うまで知らぬ顔をしておって、言ったら初めて疑義があるからとおっしゃる。こういう言語道断の話はないですよ。もしもあなたが小組合の問題についてきぜんとした法律上の措置を、国務大臣として必要であるとするならば、これはこうこうの税法上、金融上の特別の措置をいたしますという具体的な御説明をなさることは当然のことではありませんか。私はその小組合に対する、ないしはその組合員に対する税法上、金融上の特別な措置を具体的にお伺いするまで質問を保留します。
  158. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 私は、十組合の組合員として税制上、金融上の措置を受けるということが、今日においては少しも実行されておらないということは、どうも運用上やはりまだ不備があるのではないか、こういうふうに考えられますので、その点を十分に考究いたしまして結論を出してみたいと思うのでありますが、ただ、小組合員としてではなしに、一般の中小企業者の一人として、金融あるいは税制上の恩典がもし開かれておれば、その方面において救済される道はある、こういうことをさっき申し上げたのであります。
  159. 横山利秋

    横山委員 委員長に申し上げますが、答弁が全然なっておらぬ。今の大臣の答弁をお聞きでございますか。大臣のおっしゃっておられるのは、小組合の組合員に対して、税制上、金融上の特別の措置を設ける御意思がないようであります。そうして、小組合の組合員であろうとなかろうと、零細企業に何かしなければならぬ、こうおっしゃっておる。明らかに、現行法律について、実際誠実に実行なさる御意思がないと見なければならぬのです。どうも運用がされないというのですれども、何をおっしゃっておられるのか、私にはわからぬのです。運用といって、運用するものがないのです。特別な金融措置や特別な税制措置がないのですから、運用するにも運用しようがないのです。それを運用してもらえないから云々とおっしゃっているのですが、この辺は大臣のおつむのおかげんがどうもきょうはおくたびれのように私には思えてならぬ。ですから、私は保留をいたしたい。
  160. 青木正

    ○青木委員長代理 大臣から答弁があるそうです。
  161. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 小組合の法律には、組合の組合員に対して、税制、金融の措置を云々と書いてありますけれども、これを実際実現する方法として、どうも不備があるようだ、そのために一つも実行した例が今日までないのでありますから、それを実行するためには、十分に法制上の研究をする必要があると私は考えます。それから組合員としてではなしに、零細な中小企業の一人として、税制、そういう点は開かれておるということを参考までに申し上げた。だから、やらない、それにそういう道があるから、小組合としては必要がないだろうということを私は申し上げおりません。ただ、せっかく法律にそう書いてありますけれども、今までこれが活用された実例がない。これはどうもその法制上の…(「それは大臣違うよ」と呼び、その他発言する者多し)運用上達成することができないのではないか、不備があるのではないかということを考えますので、その点をよく考究してみたい、かように申し上げたのであります。
  162. 横山利秋

    横山委員 大臣の御答弁と私の質問とにきわめて食い違いがあることは委員長も御存じですね、おわかりでございますね。私は、もう委員長に、質問答弁との間に食い違いがあるということを理解していただいて、その措置を委員長一任をせざるを得ない。
  163. 青木正

    ○青木委員長代理 明二十四日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時二十四分散会