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1961-02-22 第38回国会 衆議院 予算委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月二十二日(水曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員   委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤城 宗徳君       赤澤 正道君    井出一太郎君       稻葉  修君    臼井 莊一君       江崎 真澄君    小川 半次君       尾関 義一君    上林山榮吉君       仮谷 忠男君    菅  太郎君       北澤 直吉君    倉石 忠雄君       櫻内 義雄君    園田  直君       田澤 吉郎君    田中伊三次君       床次 徳二君    中野 四郎君       羽田武嗣郎君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    三浦 一雄君       山崎  巖君    飛鳥田一雄君       淡谷 悠藏君    岡  良一君       木原津與志君    小松  幹君       河野  密君    島上善五郎君       田中織之進君    高田 富之君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       松井 政吉君    横山 利秋君       井堀 繁雄君    受田 新吉君       田中幾三郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         内閣官房長官 保岡 武久君         法制局長官   林  修三君         調達庁長官   丸山  佶君         外務事務官        (アメリカ局長) 安藤 吉光君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         外務事務官         (国際連合局長)鶴岡 千仭君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     —————————————  二月二十二日  委員赤城宗徳君、中村三之丞君、堂森芳夫君、  長谷川保君、松井政吉君、稲富稜人君及び佐々  木良作辞任につき、その補欠として尾関義一  君、田澤吉郎君、横山利秋君、飛鳥田一雄君、  島上善五郎君、西村榮一君及び田中幾三郎君が  議長の指名委員に選任された。 同 日  委員田中幾三郎君及び西村榮一辞任につき、  その補欠として受田新吉君及び井堀繁雄君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算  昭和三十六年度特別会計予算  昭和三十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。飛鳥田一雄君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私はこの一般質問の中で、新安保下における軍事基地の動向についていささか伺いたい、こう考えておりました。ところが突然昨夜からけさにかけてのニュースにおきまして、無視することのできない重大問題が発生いたしたように考えますので、まずその問題から外務大臣に伺いたいと思います。  本日の新聞によりますと、帰国しておられました松平国連大使は、二十一日午後外務省で開かれました外交問題懇談会に御出席になり、意見を述べられた。さらに続いて、外務省において記者会見を行なわれたわけであります。この二つ機会において国連大使は、日本が当然コンゴ問題について、ハマーショルド国連事務総長要請に応じてコンゴ国連軍派兵国となるべきである、こういうことを明確に言われておるわけであります。しかしこれは非常に重要なことでありまして、今まで外務大臣その他政府当路者方々のお述べになりました意見とは全然逆であります。一体こういう松平国連大使発言が事実であるのか、また事実であるとするならば、外務大臣はこれに対してどのように対処をなさるのか、これを伺いたいと思います。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ただいまの御質問の点に関しまして、私承知いたしておりますることを申し上げたいと思います。  松平国連大使は、今お話しのように、昨日外交問題懇談会出席いたし、その後において記者団会見をいたしました際に、新聞に出ておるようなことを言うたと伝えられておりますが、これは言うたこと全部が載っておるわけではございませんで、いろいろ仮説のようなものがついておるわけでございます。そこで私問いただしましたるところによりますると、結局松平君は、純粋に学問的に、国際法学者としての気持もあり、また国連におけるそうした空気というようなものを身近で聞いているものの気持として、個人気持を言うたもののようであります。あくまで国連大使としての立場で言うたのではございませんで、この言うたことによりまして、政府見解、また私などここで申し上げておる見解に対してごうまつも変更を意味するようなことではない、かようなことでございます。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 学問的であり個人的であって、政府態度は変わらないとおっしゃるのですが、しかし学問的、個人的ということを——少なくとも国連大使という公職にあり、従って当然その人の発言というものは、世界的な注目の的になるはずです。そういう点を重々考えなければなりませんし、しかも発言をせられた場所は、政府諮問機関である外交問題懇談会において発言をせられた。かてて加えて外務省において、外務省という建物を使って記者会見をなすっていらっしゃるわけです。一体私が外務省に出かけていって、個人的に外務省部屋を借りて記者会見をやるなどと言ったらお許しになるかどうか。国民の一人がげたばきで入ってきて、外務省において記者会見をやりたいから部屋を貸してくれないかと言ったら、大臣は簡単にお貸しになりますか。やはりここに、外務省において記者会見を行なったという点において、それは決して個人でないことを証明しておるわけです。そういう点を考えてみれば、これを学問的とか個人的とかいう言葉の先だけの説明で解消し去ることはできないのじゃないか。問題は、むしろ、あなたがどうお答えになるか、つじつまを合わせるかということではなしに、こうした発言がなされた以上、世界の人々、日本国民が、少なくとも、自分の胸に落ちるようなきちっとした説明を伺うという点にあるわけです。ここは詭弁ごっこだとかのれんに腕押し禅問答ごっこの場ではないはずです。少なくとも、あなたは、この機会を通じて国民納得をさせるということでなければならないはずですから、今申し上げましたように、政府正式機関であるところの外交問題懇談会においての御発言であり、しかも外務省という公の場を使用しての記者会見である、こういう点、さらには、おそらくこれは昼間でしょうから、国連大使の公務中のことだろうと思います。こういう点から考えてみて、学問的という言葉個人的という言葉がそのまま人に納得をされるかどうか、お考えをいただきたいと思うわけです。むしろ、私は、こういう問題について政府はもっと明白な態度をおとりになるべきだろう、こう私は考えるわけです。この点について、もう一度伺いたいと思います。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まず申し上げたいことは、外交問題懇談会というものは外務省なり政府諮問機関ではございません。これはかねて申し上げておると思いまするが、外交に対する世間のいろいろな良識と申しますか、そういうものをいろいろ論議してもらう場を作る、こういうことで、総理府にそうしたあっせんをしまして外務省がその庶務をとる、こういうことになっておりまして、官制上の機関ではございません。そこでかわされまする意見というものが、いろいろ国民各界各層意見を代表し、反映して述べられ、また外務省考えているようなこともそういう方々を通して知ってもらう。そのことが国民の全般に対する外交知識を普及する一番よい道の一つになるのではないか、こういう考え方でやっておる一種の懇談会でございます。そこで決定がなされるとかあるいはその決定政府を拘束するとか、そういう機関では全然ないわけでございます。  そこで、その場所において松平大使が出ましていろいろお話をする、自分の思うことを全部言うということは、これまた非常に意味のあることだと思います。ということは、外交問題懇談会においてだれが何を言うたというようなことは一切オフ・ザ・レコードにするということになっている。その会の規定が最初からそうなっておるのであります。それでないと、なかなか思うことが言えない。思うことを言い合って一つ日本外交をできるだけよいレベルに上げていくようにしようじゃないか、国民全体に理解してもらうようにしようじゃないか。また、国民意見も十分反映するようにしていこうじゃないか、というのが目的でございますから、ここにおいてどう言った、こう言ったということは一つ不問お願いしたいと思います。  それから、そのあとの記者会見でありますけれども、そこで自発的に言うたというよりも、むしろいろいろ質問があって抽象的に直言を言うて、国連外交国連外交といってこれを強化するということはけっこうなんだけれども、自分らあっちへ出ている者の立場からすると、まあ日本はみんなほかの国がやっているようなことをやらぬで、そうして立場だけよくしようといってもなかなかむずかしいところがある、こういう気持を言うたにすぎないようでございます。そういう点は一つ意見として、われわれも、やるやらないは別として、そういうことをそこにいて感じておる者がありとすれば、そういう意見を聞いてやる雅量を持ってもいいのじゃないか。ただ、それを聞いてやるということがすなわち政府の施策になり政府方針になるということは、これは全く別の問題であります。意見が出るということは私はいいことだと思う。意見が出て、それを検討し、それをとるべきものはとればいいと思うので、意見が出たことをもってそれをけしかるとかけしからぬとかいうことは、私は少し行き過ぎではないか、かように思っておる次第であります。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ずいぶん話が逆になっているんじゃないか、こう私は思います。なるほど外交問題懇談会の中で自由な意見を出させるために、その問題について拘束しない、こういうお説はわかります。だがしかし、外交問題懇談会の中で自由な意見をお述べになったとしても、それは外務省の方が当然聞いていらっしゃるはずです。政府とは全然正反対意見を述べた、しかし、今度はその人が、会が終わって外務省の中で記者会談をするということになれば、政府意見とまっこうからぶつかるような意見記者会見として述べさせるということは一体どうでしょうか。今、あなたは自発的であるか、いろいろ質問によって誘導的に答えたのだ、こういう区別を述べられましたが、一体、おとなですよ、子供じゃあるまいし、少しぐらいの誘導尋問がかりにあったとしても、胸にないことを言うはずはないのであります。その言葉が出てきました契機が、自発的に、積極的に自分が述べたのか、あるいは幾らかの質問にあって初めて答えたのかという、そういう形式の問題ではなしに、内容の問題を国民は問題にするわけです。少なくとも、そのことについて責任をとらなければならないものとして国連大使発言をなすったはずです。記者質問にあってやむを得ず答えたのだというのは子供の言いぐさです。そういうものとしてちゃんと記者会見で発表をなさる、こういうことでした。そのことは今大臣もお認めになりました。だがしかし、一般的な議論として、一つの官庁に勤めている者が、そのかしらといただいている外務大臣意見と全然真反対意見を述べようとする場合には、まず第一に、少なくとも、自分はこう考えておりますということを外務大臣、すなわち自分の首長に向かって意見具申をすべきが当然ではないでしょうか。そして、なおかっこういう意見を私は持っております、だから広く大衆の批判を受けたいと思いますから、外部に発表いたしたい、どうぞそういう自由をお認めいただきたい、ということを外務大臣に具申し、よろしい、できるだけ大衆意見を聞く方がいいだろうから、お述べなさい、こういうことで、初めて省の根本的な方針と相反する意見を述べるということが普通なはずです。ところが、大臣は初めてそのことを聞いたと冒頭の答弁でお述べになっていらっしゃるのですが、初めて、新聞に出てからあるいはそういう記者会見が行なわれてから御存じになったようです。松平さんからそういう意見も聞いていない、そしてまた、そういう意見松平さんがかりに述べたときに、世間に向かって発表していいか悪いかということもあなたは言っておられない、こういう状況のように思われます。もしそうだとすれば、少なくとも、外務省松平国連大使がそのような記者声明をすることについて、間接的あるいは消極的な態度であろうとも援助したことになるわけです。そういうことをあなたはお認めになりますか。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 まずこの事実からおわかり願わなくちゃならぬと思いますが、それはまあおわかり願うというと失礼ですが、飛鳥田委員すでに御承知と思いますけれども、今度のコンゴの問題に対しまして、国連軍というものは、これはもうアフリカの諸国の人をもって構成するということがハマーショルド事務総長の不動の方針なんです。従って、それに対して日本人が参加要請せられるということは、前提としてもうないわけなんです。これは事実のことでございますから一つ御了解願いたいと思います。  それから、御承知のように、国連規定には国連軍というものができる正式な条章はないわけなんです。要するに、国連憲章の四十二条、四十三条の関係で、必要があれば、国連軍というものを作ってやることを妨げないということになっておる。これは国連憲章によるところの派兵の義務というものはないわけなんです。そこでいろいろ学問的にも問題がありましょうし、実際問題としても、考え方にいろいろ問題があると思う。現実国連加盟国はみな軍隊を持っておるので、そういうことにいつでも応じ得る体制にはなっておるわけなんですが、日本の場合は違うわけです。そういう事実というものを前提にして、松平君はいろいろな話をしたわけです。ですから、それをすぐに国連大使政府方針と違ったことを方針としておるとか、そういうことはとられないわけです。そういう事情を頭に置いてお考えいただければ、これは一つ意見を言うたにすぎないので、方針を述べたわけではないと私は思います。その意見を述べるということについて、一々外務大臣の了承を得ないじゃないかというお話でありますが、国連大使もそれこそ子供でないのでありますから、それは十分経験に基づき勉強したことを言うということは、いろいろな意見が出ることは、決して悪いことではない。ただそれをとるかとらないかということは政府方針です。政府がとらないということは、松平君は十分承知の上で言っておることでありますから、この問題は、その程度で御了解願っておきたいと思うわけであります。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の国連において、コンゴ派兵軍がどのような形で構成されておるか、あるいはまた日本、いわゆるアジアの諸国参加をしない、参加要請をせられていないものなのか、そういうあなたの御説明は私におっしゃるよりは、国連大使におっしゃる方がいいだろう。国連大使はそういうことを十分承知の上で、こういう発言をなすっているわけです。方針ではないとおっしゃるけれども、少なくとも今後はせめてオブザーバー派遣できるようにしたいという、このしたいということは、一つの希望ではないでしょうか。そしてそれは当然外務省方針となるべきものという要求ではないでしょうか。こういうことを現実に言っておられるわけです。伺いますが、一体国連大使という仕事は、国連の本部の所在地である土地にいるときにだけ、その機能を発揮するものなのか、日本へ帰ってきたって国連大使であり、国連大使として発言をすることが当然できるはずだと私は思うのですが、松平さん個人が、かりに意識的に、自分個人立場発言をなすったとお考えになっても、外務省において堂々と記者会見をなさる以上、世間はこれを国連大使の資格として発言をせられたものと受け取らざるを得ないのじゃないか、こう私は考えるのですが、何か問題を学問的とか個人的とか、なるべく意見をよけい出せるようにとかいう一般論の中に解消し、少なくとも世界に対して、日本外交方針二つに分かれているような印象を受け取らせるような、こういう事態に対して、一体あなたはどういう責任を追及なすっていらっしゃるのか、こういうことを伺いたいと思います。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 外交に対する責任は、外務大臣がとります。もちろん、憲法の規定によりまして、政府は連帯して国会に対して責任を負うわけでありますから、これは内閣責任を負うわけでありますけれども、直接の責任は私であります。国連大使というのはその下僚でございますから、これに対して、私の言うことが日本考え方であるということは問題ないことだと思います。ただ国連大使というものが何か言うた場合に、国連の場において言う場合は、これは日本政府訓令に基づいて発言をするわけでございます。しかしこちらへ請暇して帰ってきて、こちらで言います場合には、これは国連大使として政府訓令によってものを言う場合と、個人意見を言う場合もあろうかと思う。その意見を言うなということでは、ほんとうにこれをロボット化することでありまして、そういうことでは外交は活発にいかぬ。やはり外務省の官吏の意欲を暢達せしめる、こういうことは、私はあながちとめるべき問題だとも思いません。しかし意見そのものは、日本政府方針ではないということは、はっきりしている問題だと思います。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 少なくとも国連大使という身分を持ち、しかも日本に帰来し、そうして外交問題懇談会出席し、そうして外務省記者クラブにおいて会見をなし、堂々と意見を述べる以上、いかにあなたが外交責任者は私だと、こう言われてみたところで、外務省の内部に意見対立がある、こういうことを人が感ずることは否定のできない事実だろう、こう思うわけです。なぜ私たち意見対立がある、そうしてこれを重大視しなければならないと考えるかと申しますと、松平さんの考え方それ自身に相当な問題があるのじゃないか。少なくとも国連大使として出席なさり、そうして何か派遣軍軍隊を送らないと肩身の狭いような思いをなすっていらっしゃる。そうしてせめてそれができないのならば、今後はオブザーバーなりとも派遣をしたいという考え方、こういう一つ考え方の傾向、こういうものを基礎として今後あの方が国連の中で外交をなさる、こういうところに問題があるのじゃないか、こう私たち考えるわけです。一体国家公務員法第九十八条を見ますと、「職員は、その職務を遂行するについて、法令に従い、且つ、上司職務上の命令に忠実に従わなければならない。」と書いてありますが、日本国家公務員上司意見、あるいは省の意見、こういうものに反したことを勝手やたらに自由自在に発言をしてよろしいものですか。これから伺いましよう。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 問題をはっきりさしておきたいと思いますが、松平君の記者会見は、外交問題懇談会において何を話したかということに対しての、記者団質問に対しての答えでございます。従って、外交問題懇談会というのは、先ほど申し上げたように、非常に自由な機関で、懇談機関でございますから、いろいろな意見を紹介するということは、これは少しも差しつかえないことだと思うのであります。  そこで、そのオブザーバーなりともどうとかいうようなことは、考え方としてどうかということでありますが、これは速記録をとっておるわけではございませんから、その通りの言葉を使ったのかどうか、私は存じませんが、私が聞いておりますところでは、国連外交というものを、日本世界じゅうで最も大したことをやっているのだというふうにさせるためには、他の国がやっていることも、日本は十分にやるということにおいて、初めてそれができるのじゃないか、こういう意味のことを言ったように私は聞いております。そういう松平君としてはまことに苦しい胸のうちを言うたのでございましょう。彼は彼なりに、現在与えられておる職能の範囲内において十全を尽くしておる、こう考えておる気持を言ったにすぎない、かように思う次第であります。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ここであなたとコンニャク問答を何べん続けてみたところで、国民の疑問というものは解消いたしません。言葉のあやで問題が片づくという段階ではなさそうです。  そこで私、大臣お願いをいたしますが、どういう重大な発言をなすった松平さんにこの委員会に来ていただいて、これは政府委員としてでもけっこうです。お越しをいただいて、そうして私たち松平さんの意見も聞き、そうして事態を明確に、正確にした上でいろいろ今後議論をしていきたい、こう私は考えるわけです。松平さんは、新聞によりますと、二十五日まで日本に滞在せられるということでありますから、当然お時間があるはずです。きょうの午後でもけっこうです。ただいまでもけっこうです。今後松平さんをここに一つ政府委員として御出席願えるかどうか、これを外務大臣に伺いたいと思います。と同時に、委員長にも、この問題は非常に大きな問題のように思います。そうやすやすと解決をしてしまったのでは、また妙なコンニャク問答事態が伏せられてしまった、くさいものにふた、こういう形で片づけられたという印象国民が持ってしまいがちです。そういう意味委員会としても、ぜひ松平さんをお呼びいただけるように、一つ委員長からもお口添えをいただきたい、こうお願いをいたします。どうぞ。
  14. 船田中

    船田委員長 委員長といたしましては正午理事会を開きまして、今の問題について十分話し合いをすることにいたします。
  15. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国会運営の問題でございますから、私から一切申しません、委員長におまかせいたします。
  16. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは国会運営というよりは、むしろ外務省として事態を明白にするという責任を果たす上で、どのような政府委員をお出しになるか、説明員をお出しになるかといろことは、外務省の問題だと私は思います。どうぞ一つ大臣の方から問題を明解にする意味で、積極的に松平さんを御出席さしていただく、こういうお答えをいただきたいと思います。
  17. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 松平君は国会政府委員でもございませんし、説明員でもございません。従いましてそういうことをおきめいただくのは、国会の諸先生方であるということを申し上げておるわけであります。
  18. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは政府がしばしば政府委員の取りかえをなさったり、説明員の追加をなさったりするはずでありますから、そういうことは簡単にできるものと私は考えます。そういう形式的な手続を言い立てて問題をこじらせていこう、避けていこうという態度こそ、むしろ奇怪千万だと言わなければならない、こう私は思います。できますならば即時理事会をお開きいただいて、この問題をおきめいただきたいと思います。
  19. 船田中

    船田委員長 質疑を続行願います。
  20. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それではお昼に理事会でおきめをいただくということですから、この問題に関する私の質疑はそれ以後に譲らしていただきます。  そこで私のこの一般質問で伺いたいと思いましたことは、新しい安全保障条約が昨年強行されたわけです。このできます経緯などについてあらためて御説明の必要がないでしょう。少なくとも国民の非常なる反対を押し切っておやりになった、こういうことだと思います。従ってこれを強行せられた政府は、この安全保障条約なり新協定なりを正確に、少なくとも政府立場から見て正確に施行せられる、実行せられる責任が私はあると思います。また国民自身といたしましても、新安保下におけるいろいろな事態がどのように動いているかということを知りたい、そして意見を述べたい、こういう気持は熾烈なものがあると私は考えます。そういう意味でたくさんのことを伺ってみたいのですが、きょうは一番安保条約の中でも重要問題であります一つ軍事基地の問題これに限定をして伺ってみたいと思います。  まず第一に伺いますが、政府一体日本が提供をいたしております軍事基地の動向について、そしてそれの使用されている状態について常時御検討になり御調査になっていらっしゃるのですか。それとも、貸したから貸しっぱなし、何をやっているか私は知りませんという形でございますか、いずれでしょうか。一つこれは外務大臣に伺いたいと思います。
  21. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 政府は条約の締結当事国といたしまして、この条約なり協定なりがいかような状態になっているかということについては、常に注意を怠らぬつもりでおるわけであります。
  22. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それではまず第一に伺いたいと思いますのは、ラオス問題について日本の米軍基地がどのような行動をとっておられるのか、こういう点について外務省あるいは調達庁から、そのお調べになりました限度を、問題を一つ御回答いただきたいと思います。
  23. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 ラオスの事態が紛糾いたして参りましてから、われわれは外交的に、これは米軍、アメリカ政府のみならず、これに関係のある国との間に常に通常の外交ルート、すなわち大使館、公使館等を通じまして、これは日本にありますものもラオスにありますものも含めて、そうした外交的なルートでその情勢をいろいろ聞いたりしておるわけであります。日本にありまするこの基地の状況等につきましても聞いておりますが、特段の変わったことはございません。
  24. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 特段の変わったことはございませんというお答えですから、それに関連をして一つ伺いたいと思いますが、ラオスに日本製の武器、弾薬あるいは洋服、こういうものがかたりたくさん現われたということでありますが、この点については政府は御確認になっていらっしゃるでしょうか。
  25. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 武器弾薬は出しておりません。朝鮮事変以後、そういうことは一切ないと承知しております。
  26. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ラオスに日本製の武器弾薬が現われたという事実を確認していらっしゃるかどうかということです。
  27. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そういう報道がある週刊誌に出ましたので、それについて私どもさっそくこちらでも調べましたし、ラオスにあります日本大使館にも問い合わせたところ、さような事実はございません。
  28. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ございませんというお話ですが、それでは一つ防衛庁の長官に伺いたいと思いますが、タイ国の大使館に駐在いたしておりまする伊藤知可士さんという駐在武官がおられるはずですが、これは防衛庁から出向されていると私は聞いておりますが、いかがでしょうか。
  29. 西村直己

    西村国務大臣 外務省の身分をもちまして防衛庁から派遣になっております。
  30. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その方が昨年の暮れから元旦にかけてビエンチャンその他のラオス戦線を視察せられた。そしてこの方が、日本製の武器を使用しておるという事実を確認せられた一番最初の人です。この方からラオスの大使である別府さんにお話がありました。また別府大使から命令を受けまして菊川参事官——この方もおられるはずですが、一等書記官かもしれません。この方が現実に調査をせられて、百五ミリの榴弾砲その他の一部を証拠品としてタイ国大使館の中に今保管中だということが明らかだと私は思います。こういう事実は大使あるいは伊藤駐在武官の方からおのおの所属長に対して報告がきていないと私はとうてい考えられないわけです。こういう事実を一体外務省なり防衛庁は御存じないのか。
  31. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 ラオスに日本の武器弾薬が出ておるのではなかろうかということが新聞記事あるいは雑誌にあるというので、私、先ほどからお話がありましたように米軍、大使館、国内の関係庁、いろいろ調べてみました。常時また連絡をとっております。しかし先ほども大臣が申されました通り、朝鮮事変以後は域外調達その他で米軍に、あるいはまた米軍の域外調達で武器弾薬を売ったことは一ぺんもございません。ジープとかトラックとかはどこの国でも売っております。域外調達でも売っております。あるいは被服も売っております。これは正常貿易と同じでございます。今の伊藤駐在官の話は、報告は参っておりません。事実大使館に調べましても、そのような日本の武器弾薬が直接日本から行っておるというような事実は確認されておりません。
  32. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、伊藤知可士武官から何らの報告がなかったということですか。報告はあったけれども武器弾薬については触れていない、こういうことですか。
  33. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 報告はございました。しかし武器弾薬が行っておるということは承知いたしておりません。
  34. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 少なくともすべてのジャーナリストが認め、そして現実に現地に行かれた、これは外国のジャーナリストであるかもしれませんが、そういうジャーナリストに対して伊藤武官がお会いになってそういうことを発言し、あるいは菊川参事官もまた日本製の武器が使われているということをジャーナリストに対して確認している、こういうことを私たち現実に知っているわけです。にもかかわらず政府にはそういう報告が来ていないということが私は非常に奇怪しごくだと思います。もし現実に報告が来ていないということでありますならば、もう一度私の申し上げたような点を添えてお聞きをいただきたいと思います。と同時に問題は、何か政府自分の方から売ったという形跡がないという点を強調したがっておりますが、このラオスに現われました銃砲弾というものは、最近でき上がったものではないという話もあります。朝鮮動乱当時に日本が特需として売ったもの、作ったもの、こういうものが少なくともラオスに今回っているのではないか、こう私は考えるわけです。そういう点で冒頭に外務大臣日本軍事基地がどう動いているかお調べになりましたか、こういうことを私は伺ったわけです。神奈川県の池子——逗子市の中にありますが、池子の弾薬庫、これは米陸軍の極東における最大の弾薬庫ですが、この池子の弾薬庫がどのような動きをしておるか、あなた方はお調べになっていらっしゃいますか。重要な問題ですよ。そのお調べになりました御報告を伺いたいと思います。
  35. 丸山佶

    ○丸山政府委員 池子の弾薬庫はお話の通り重要な大きな弾薬貯蔵の施設でございます。最近におけることといたしましては、約一週間前にロケット弾の信管取りはずし作業中に事故がありまして、二名の労務者が負傷いたしました。これに関しましては目下調査をさせておりまして、その結論によりまして善処いたしたいと思っております。
  36. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 実に悲しむべきことです。丸山さんがその程度のことしか池子の弾薬庫の活動について御存じにならないとすれば、これは全く野放図なやり方をさせているとしか思えないわけです。この池子の弾薬庫について三つの事実をそれでは私は申し上げましょう。  第一は、一昨々年です。丸山長官も御存じのように、池子の弾薬庫に対応すベきもう一つの弾薬庫として横浜に田奈という弾薬庫がありました。これが閉鎖ということにきまって、ここから約六千箱の弾薬を池子に運んだわけです。これはもう長官御存じの通りです。この弾薬というものはすべて朝鮮動乱の当時日本から特需として買い上げたものです。従ってすべては日本製です。一部バズーカ砲については信管の取りはずし作業をやって運びました。従って田奈では閉鎖になりましたので労務者が失業いたしました。弾薬庫を池子に持っていったのだから、仕事の量がそっちでふえるだろうから、ぜひそっちで使ってくれぬだろうかということを、神奈川県の渉外部を通じて米軍に申し入れたわけです。すると米軍は、だめだ。今運んできたものは将来MAPの対象とすべきもの、すなわち無償援助の対象とすべきものとMDAP、有償援助の対象とすべきものと、さらには信管をはずしたバズーカ砲は日本国内に売るのだ、こういう三つに分類作業中である。無償援助にすべきMAPに相当するものはこのまま貯蔵する。だがMDAPに相当するものは東南アジア向けに売りさばいてしまう。こういうことを神奈川県の渉外部を通じて、私たちにきちっと答えてきたわけです。信管をはずしたものはそのまま東洋化工という会社に払い下げました。東洋化工はこの払い下げを受けまして、御存じのように金沢で大爆発を起こして事件を起こしたわけです。すなわちこの際でも池子を通じて日本製の銃砲弾が東南アジアに売りさばかれたという事実が一つあります。それは一昨年の後半から昨年一ぱいにかけてのことです。  同時にまた昨年の十二月二十八日からことしのお正月の三日までにかけて池子の弾薬庫は戦時状態に入りました。しまってありました弾薬をどんどん持ち出して、梱包をして横須賀の長浦という港から海外に向かってどんどん持ち出していきました。こういう事実があります。しかもこれを梱包いたしました労働者たちに聞きますと、信管は日平産業製、そうして弾体、たまの本体は小松製作所あるいはその他大阪のメーカーのものであった、こういうことをはっきり証言しております。今からわずか二カ月ばかり、いや二カ月もたたないころでありますが、池子の弾薬庫は戦時状態と同様の繁忙な状態で梱包し、これを海外に運び出した。朝鮮動乱当時に特需で買い付けたような弾薬がアメリカ本国に運ばれていくでしょうか、あるいはその他のところへ運ばれていくでしょうか。当然これもまた東南アジア向けであることは明らかでありますし、すでに横須賀におりました第七艦隊が昨年の十一月に展開を終わって南支那海に集結をしているということも否定できない事実です。こういうことを考えてみますと、池子の弾薬庫からアメリカ軍が武器弾薬を持っていってラオス軍に供給している、そうしてしかもそれは日本製である、こういうルートがわかって参ります。  それだけではありません。二月の十日でありますが、今丸山長官お答えになりましたロケット砲の話、朝八時でありました。急に命令が下ってロケット砲及びロケット砲弾を梱包する、しかも梱包するだけでなくて、飛行機から落下傘をつけて落とせるように、アメリカ軍の落下傘部隊がやって参りまして梱包をいたしました。そうしてでき上がったものはトレーラーに乗せて立川に向かって出発したわけです。午後三時ごろになりますと、今のは演習であったというので、全部梱包を解いて再びしまった。すなわちラオス戦線の様相から考えてみますと、少なくともコン・レ軍とバテト・ラオ軍の背後にそういうものを落とす戦術的な必要性が出てきたものと考えて少しも不思議ではありません。またアサヒ・イブニングを読みますと、沖繩には千二百名の特殊部隊が結成せられ、これは敵戦線の背後に降下し、白兵戦をやり、いろいろのことをやる特殊部隊として訓練されている、こういうことがニューヨーク・タイムズの特派員によって明らかにされております。こういう点から考えてみましても、池子の弾薬庫で、落下傘で降下させるようにロケット砲及びロケット砲弾を梱包した、そういうことをやっているという事実は、かなり重大なものとして私たちは見ていかなければならないだろう、こう思います。少なくともラオス戦線に日本製の武器が現われたということを存じません、報告がございませんという形で、かなり国際的に明確になった事実を、自分だけの耳をおおってみたところで問題は解決しない。少なくとも日本軍事基地というものがどのように動いているかということをあなた方は常時観察をなさり、この点についてあなた方のお説に従えば、補給行為でしょうから事前協議の対象にならぬときっとおっしゃるだろうと思います。事前協議の対象にならぬという態度をおとりにたるならばなるとして、少なくともラオスに現われた日本製の武器はかくして現われたのだというルートを明白にすることが日本政府責任じゃないか、そして同時にまたアメリカ軍に対しては、そのように池子に貯蔵してある弾薬をどしどし日本の弾薬庫から持ち出して長浦港を通して持ち出すなどということは御遠慮願いたいということを少なくともあなた方がおっしゃるのが、安保条約下におけるあなた方の義務じゃないだろうか。国民は少なくともラオスに対してどっちの軍を支援したい、こういうことを明白に言っていないわけです。と同時に、なるべくそんなものに介入したくない、巻き込まれたくない、こういうことを言っているわけです。そういう国民意見を正しく反映する意味でも、あなた方は安保条約下における軍事基地というものを正確にとらえて、その動きを終始観察をし、適切な手を打つべきじゃないでしょうか。このことについて、私ですら知っておる動きを何で調達庁長官は御存じないのですか。ただ二人がけがをしたなんてばかなことをおっしゃって、それで国民が新しい安保条約というものを納得するとあなたはお考えでしょうか。それではあまり虫がよ過ぎやしないでしょうか。安保条約をあなた方が強行なすった、そしてそれをいいものとして国民に押しつけていこうとせられる限り、これに対してちゃんとした手を打っていかなければならぬはずです。なまけ者で、サボッておって、それでごまかして、自分の思うような形に問題が進むなどとお考えになるのでしょうか、こういう問題は外交問題ですから、やはり外務大臣にきちっとお答えをいただきたいと思います。
  37. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 日本製の武器弾薬がラオスにおいてあるという報道がございましたので、われわれの方としては、現地の大使館に問い合わせまして、精細に調査してもらったわけであります。その報告が先ほど申し上げたように、ないということであるわけであります。そこで、寡聞にして私は今のお話を存じませんけれども、どういう人がどういうことを言うたかは、やはりこれは非常に重要な問題だと思いますから、言うたものもちゃんと聞かなければいけないと思います。ただ私は、結論的に申し上げることができますのは、ラオスの状況というものは御承知のように非常に好転しております。御承知のような国際監視委員会のあっせんということにアメリカは同調いたしました。ソ連はそれに多少渋っておりますが、今度新しい提案が出たわけです。バッタナ国王というものから提案が出まして、そしてだんだん平静化の方向に向かっておるということであります。ラオスの問題というのは二つあることは御承知の通りでありまして、一つは現在の内乱というものをできるだけ早期に終息するという問題、あとラオスというものを保障していく、ラオスの国民がその堵に安んずることができるように関係各国がこれを保護し、保障していく、こういう二つの問題があるわけでありますが、こういう二つの問題の線に沿うて、あとの問題については現在のブン・オム政権というものをもっと幅の広い基礎の上に立てるべきだということで、ノサバン副首相がプーマの方へ話しにいくとか、いろいろな動きもあるわけでございまして、御心配のような点はわれわれとしても十分気をつけなければならぬことだと思いますけれども、そういう点はいつ幾日どういうことをしたということは、外交問題ですから申し上げられませんけれども、しかしそういう方向に沿って努力した結果が非常に平静の方へ向かっておるということであれば、それをもって御了解いただけるのではないか、かように思う次第であります。
  38. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私はラオスに関する一般的な外交問題を伺ったわけではないのです。ラオスの問題を平和の方向に好転させるためには、日本の国内における米軍の軍事基地についても十分監視をし、今私が申し上げたようなルートで日本製の銃砲弾がラオスに行くなどという形をあなた方が防ぐということも必要だ、そういう意味軍事基地の監視を十分になすっていらっしゃらないのじゃないか、おかしいじゃないかということを私は申し上げたわけです。そういうような形で安保条約が自然にうまくいくなどとお考えになったら大へんだ、こう私は思います。そうしてこのことは、少し離れるかもしれませんが、防衛庁なども十分御存じのはずだと私は思います。防衛庁は一体ラオス問題について米軍とどのような打ち合わせをなすっていらっしゃるか、一つ防衛庁長官に伺いたいと思います。
  39. 西村直己

    西村国務大臣 自衛隊は国内の安全と独立を守るのが任務でありますから、別に米軍とラオス問題について打ち合わせなどはいたしません。
  40. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは伺いますが、昨年の九月十五日から二十五日まで、広瀬一佐、高杉一佐、横山鉄夫二佐その他数名の方がハワイの太平洋軍総司令部に御出張になりませんでしたか。
  41. 西村直己

    西村国務大臣 具体的な事実は存じませんが、時おり、年に一回か二回ぐらいは米軍の招聘で視察等はいたす場合があろうと思いますが、それらの一つの事実ではないかと思います。詳細必要であれば政府委員から説明いたします。
  42. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 時間がありませんからこっちから申し上げますが、広瀬栄一さんというのは陸幕第二部の部長です。すなわち情報幕僚です。それから高杉一佐とおっしゃる方は練馬分室の室長であって、練馬分室というのは対ソ通信謀略班といわれております。横山鉄夫二佐は対ソ情報班に属しておられます。すなわち日本の自衛隊のG2に当たるわけです。このG2に当たられる方ばかりが出席なさり、向こうもG2が出てきて、アメリカのG2と日本のG2がここで合同会議を開いたということは否定できない事実です。このG2の合同会議の中で議題が二つあった。一つは安保条約の騒動の後における問題として、戦後成長した日本の民主主義勢力を一挙にくつがえすために必要なる日米の軍事量の計算をなすったはずです。これは重大な問題です。第二には、東南アジアの軍事的な側面の検討という議題があったはずですが、こういう点から考えてみて、当然ラオス問題について日米両軍は相当な話し合いをしておる、こう言わざるを得ません。  それでは次に伺いますが、二月二日に杉山幕僚長が陸海の副幕僚長をお連れになって、マニラかハワイか、いずれかに御出張になっておりませんか。
  43. 西村直己

    西村国務大臣 お答えいたします。私の記憶では逆で、海幕長が陸幕の者を連れて三、四名でマニラにありました演習展示と申しますか、それに招聘を受けて行って帰って参った、こう記憶いたしております。
  44. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 けっこうです。いずれにもせよ、そういう自衛隊の非常な高官が、このラオス問題を中心にして雲行きただならぬ東南アジアの情勢の中でマニラに出かけていき、アメリカの高級軍人あるいはフィリピンの高級軍人と話し合いをなさるという事実の中で、ラオスについて触れないというはずはない、こう私たちは思います。いずれにもせよ、こういう形で冒頭申し上げましたように、日本軍事基地を使って銃砲弾が持ち出されていくということが、全然日本政府に無通告で行なわれているとは私たちは思いませんでした。従って、御存じだとお答えになると思いましたが、この点についてはお答えになりませんので、いずれ外務大臣も今お約束をいただきましたように、菊川さんなり、別府大使なり、伊藤知可士駐在武官なりにお確かめをいただいた上でお答えをいただくということですから、その問題については、後に他の委員会で伺いたいと思います。しかし、いずれにもせよ、非常に用意周到なお互いの打ち合わせのもとにこうして米軍の軍事基地から朝鮮動乱当時特需で調達いたしました日本の銃砲弾がラオス戦線に持ち出されているという事実は、何らかの形であなた方はきちっと御説明をなさらないといけないのじゃないか、こう思います。  時間がありませんので、次の問題に移ります。第二の問題としては、安保条約を拝見いたしますと、米合衆国の海軍、空軍、陸軍の三軍は日本の施設及び区域を使用することを許されると書いてあります。日本で基地を使えるものは陸海空の三軍に限られておるように思いますが、この点について外務大臣、ほかに使用できる権限のあるものがありましたらお示しをいただきとうございますし、またその条文をお示しをいただきたいと思います。安保条約を見ますと、日本軍事基地を使用できるものは、米陸海空の三軍に限られる、こう書いてあるように思いますが、軍以外で軍事基地を使うことのできるものがございますか。
  45. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のように、安保条約の第六条におきまして、「アリメカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。」となっております。従って、それ以外のものは条約上の規定はございません。
  46. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ところが、そういうお答えに反して、現実には軍事基地を陸海空の三軍以外の機関がたくさん使っているのじゃないか、こう思いますが、こういう点について何か調達庁の長官はお調べになりましたか。
  47. 丸山佶

    ○丸山政府委員 すべて陸海空軍三軍の機関あるいはその所属下にあるものが使っておると考えております。
  48. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは伺いますが、厚木の海軍航空基地の一部かあるいはその中か存じませんが、連合技術顧問団と称する団体がかなり広範な地域を使っております。ジョイント・テクニカル・アドバイゾリー・グループと言っておりますが、連合技術顧問団、これを略してJTAGと呼んでおります。このJTAGというのは、一体何軍に属するのですか。軍事基地を提供なすっている責任者の丸山さんに伺いたいと思います。
  49. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お話しの連合技術顧問団もやはり在日米軍司令部に所属して、その指揮下にあるものと考えております。
  50. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 考えておりますとおっしゃるのですが、一体そのことについての確証をどうお持ちでしょうか。まず第一に申し上げると、これにはAPOはないのです。もし軍の所属でありますならば、アーミー・ポスト・オフィス・ナンバーが必ずあるはずです。ところがございません。同時にまた、このJTAGに送られてくる貨物は、一切横浜のノース・ピアから揚がって参りますが、それにはアメリカ大使館気付JTAGと書いてあります。米軍に属すべきものがアメリカ大使館気付JTAGとは、一体どういうことでしょうか。
  51. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 補足してお答え申し上げます。JTAGというのは、ジョイント・テクニカル・アドバイゾリー・グループ、御存じの通りでございます。連合技術顧問団、これは今年一月三十一日、この活動を中止いたしました。それまでは在日米軍司令部に付属しておりました。米軍部隊の兵站補給の任務に当っています。
  52. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは米軍所属のものではなくして、形だけはそういうふうになっておるかどうかは知りませんが、CIAの直轄機関です。だからこそ大使館気付JTAGという形で荷物が送られてくる、こういうことになりますし、厚木の軍事基地司令官カーネル・マスターソンさんは、新聞記者に対して、あれはおれの指揮下にはない、こういうことを明確に言われました。もし必要とあらば、その会見をされた新聞方々何人かとあなた方お会いをいただいてけっこうです。そういう形で、これは米軍の関係ではないのじゃないか。こういう米軍関係以外のものに対して日本政府が基地を提供するということは、非常に重大な問題じゃないか、こう私は思うわけです。  しかもその内容はどういうことをやっておるかということが問題になりますが、一口で言えば、これは完全にスパイ養成機関です。同時にまた、ここから、先国会において問題になりましたU2の搭乗員が出勤をしておりました。ここに住んでおりました。少なくとも軍とは無関係な完全にスパイ養成基地、こういうものに日本軍事基地を提供していくということについて、あなた方は何らの反省をなさったことがないのでしょうか。あるいは向こうに向かって、そういうことは困ります、こういうことをおっしゃったことはないのでしょうか。その点を伺いたいと思います。
  53. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 事実問題でございますから、私からお答えさせていただきます。米軍司令部に照会いたしました結果、この顧問団というものの存在は決して秘密事項ではない、従ってさっき申しましたいわゆる兵站補給任務に当たっておったものでありまして、少しも秘密にしておったわけではありません。(「調べたか」と呼ぶ者あり)調べました。
  54. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私はこれが秘密か秘密でないかを聞いているのではなく、ここでやっている作業がスパイ養成機関だという。こういうものに対して軍事基地を提供していいのか悪いのか。そしてCIAといえば中央情報局と言われておりますが、アメリカの軍には属していないわけです。その所属機関が、かりに名前だけちょっと軍の名前をかりておったとしても、現実日本に来て活躍する、こういうことに対して軍事基地を提供していいのか悪いのかということを私は伺っているわけです。外務大臣、どうでしょう。
  55. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 スパイ行為はお断わりする、許さないということをはっきり先般来から申しております。
  56. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃこのJTAGが現実に何をやっておったか御存じですか。今おっしゃるように補給だなんとおっしゃるのですが、補給ではないはずです。その点についてもう少し詳しく、事実問題ですから、アリメカ局長でけっこうです。どうぞ。
  57. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 私たちもいろいろ調べました結果、先ほど申し上げた通りでございまして、兵站補給任務をやっております。なお、この労務者というのは決して秘密になっておらない機関であります。労働基準局にもちゃんと登録されて、就労状況等もちゃんと国内法に違反しないようにできておる次第でございます。
  58. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 御存じなければこちらから教えて差しあげますが、これは昭和二十六年の七月の十五日に創立されたものです。そうして二十七年か八年に厚木に移って参りますまでは、茅ケ崎にありました。そうして、この茅ケ崎で、台湾系中国人あるいは朝鮮の人々を百人ないし五十人ぐらい連れて参りまして、これに特殊工作員としての教育を授けておりました。スパイをここで養成しておったわけです。この点について御疑問をお持ちになるならば、そういう人々が二、三逃亡をいたしまして、藤沢の警察あるいは茅ケ崎の警察等でこれを捜索いたしました事実がありますから、藤沢の警察署員あるいは茅ケ崎の警察の署長にでもお問い合わせをいただきたいと思います。  当時そういうスパイ養成を終わった人々に対して何を持たせてやったかと申しますと、雨に打たれないように、ろうづけしてこしらえてあるピストル、カービン銃あるいはその他の携帯無線機、こういうものを持たせて出してやりました。どこから出してやったのか、厚木ないし立川であります。これを運んでおりました飛行機は国籍を表示していないDC3型の飛行機です。やがて厚木へ移りました後にも同様なことをやっておりまして、毎回台湾系中国人とか、あるいは朝鮮の人々をスパイ訓練をして、そうして中国奥地深く飛行機で送り込んでやっているわけです。しかも見のがすことのできないのは、このころから時限爆弾を持たせてやった、こういうこともはっきりいたしております。もしその点の事実についてお疑いがあるならば、そういうことを目撃いたしました者を数人ここに証人として出してもけっこうです。さらに時計は耐震性の時計で、懐中時計、銃、ピストル、こういうものをろうづけし、テープレコーダー、写真機、通信機、こういうものを持たせて出してやるのです。そうしてその行き先は中国です。これは御存じでもありましょうが、対応する記録がきちっと出ております。一九五四年の「人民中国」を見ますと、「一九五一年から五四年の間に飛行機から中国へ投下された特殊機関員を百二十四名逮捕した、」こう書いてあります。しかもこの中には「米五八一空中補給通信連隊司令官ジョン・ノックス・アーノルド大佐以下十四名を救うために新しく飛行機でやってきたジョン・トーマス・ダウニーという人を逮捕した、それも含まれている」と書いてあります。そうして、それらの者の自供によると、「中央情報局所属の在日諜報機関から飛来したものだということを自供した、」こう言っております。こういうふうにぴちっと合うわけです。こういう形でこのJTAGは諜報員を養成するために使われてきたという事実が出てきます。また、時間がありませんからみんな申し上げてしまいますが、現実昭和二十九年一月二十四日に行方不明になりましたソ連の二等書記官ラストボロフ、このラストボロフがアメリカに立ちますまでこのJTAGに潜伏をしておったという事実も、目撃者によって明らかになっております。こういうことが日本政府の管轄下における領土の中、あなた方が平気な顔をして提供をせられておる軍事基地の中で公然と行なわれているわけです。これで日中関係の改善をはかろうなどとおっしゃったって、一体何ができるでしょうか。しかも大臣は今、スパイ行為はお断わりだとおっしゃった。お断わりもいいところ、昭和二十六年から本年まで公然とそういうことが行なわれてきておるのです。ところがその国の外務大臣は、予算委員会なり国会の中では、お断わりだとおっしゃって平然たる顔、これは喜劇でなくて何でしょう。裏返して言えば悲劇かもしれません。日本の民族の悲劇かもしれません。こういうことが行なわれている。こういうことについてあなた方は全然御存じなかったのでしょうか。これを一つ、事務担当の方でけっこうです、お答えをいただきたいと思います。
  59. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 お答え申し上げます。米軍司令部について調査した結果は、先ほど申しました通り、兵站任務をやっておったということでございます。今御指摘のラストボロフ等のことについては、ざっくばらんに申し上げまして非常に古いことでございますし、はっきりここでその事実は私は承知しておりませんけれども、なかったものと思います。
  60. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 なかったものと思うという程度でこれだけのことが公然と行なわれていることを否定できないじゃないでしょうか。今私委員長の方にお願いいたしましたが、このJTAGの写真を持ってきました。これをごらんいただきながら聞いていただきましょう。ちょっと政府の方に一つあげてくれませんか。まん中のクラブと書いてあります——小さな字ですが、クラブと書いてあります少し左上にBOQと書いてありますが、これはバチェラー・オフィサーズ・クォーターだと思いますが、ここに昨年八月までU2機の搭乗員が住んでおりました。さらにその上に鉛筆で書き込んであるやつがありますが、この写真には載っておりませんが、そこにU2搭乗員の家族の宿舎が建築されました。森の横っちょに約七軒ばかりの家が、白い屋根の家を中心といたしまして小さく並んでおります。これがスパイ訓練を施しました宿舎です。そうして画面の中央の、比較的森の中にちょっと屋根の出ておるのがありますが、これが解散まで日本人全然立ち入り禁止のスパイ関係宿舎です。こういうような形が現実に行なわれているのです。そうしてあなた方が御存じなかったとは言えない、と申しますのは、たとえばラストボロフがアメリカに現われて、これに対して現在の柏村長官それから防衛庁の人事局長をやっていらっしった山本さん、このお二方が現実にラストボロフを調べにアメリカへ行かれたはずです。だからそのときにラストボロフに会われれば、あなたは行方不明になられた二十四日から三日間日本の国内のどこにおられましたかということを尋問しているはずです。していなかったら、その人は無能です。普通の警察官として無能です。警察庁長官にまでなられるほどの方ですから、当然それは聞いていらっしゃるはずです。そうすれば、厚木のJTAGにいましたという答弁がある。従ってラストボロフの供述調書には、そういうことが明らかになっているはずです。それを日本政府は御存じのはずです。ところがそういう具体的な縁由があるにもかかわらず、これを全然お調べにならぬ。そうして依然として貸している。こういうようなことは、行政協定やあるいは安保条約違反じゃないですか。またこの厚木のやつはお説のように、一月三十一日に一応解消しましたけれども、まだほかにもたくさんあるはずですが、一体、こういうものに対して、スパイはごめんだと小坂氏はお答えになりました。今後そういうスパイ行為を行なっている基地に対してどしどし返還要求をなさる、こういうおつもりですか。お言葉からすれば当然のことだと思いますが、どうでしょうか。
  61. 西村直己

    西村国務大臣 わが国土の安全、平和を守るために、自衛隊が直接並びに安保体制のもとに共同でいろいろ日本の安全をはかっておるわけであります。従って所管の調達庁におきましては、米軍基地の提供にあたりましては、不断に最小必要限度、同時にまた基地の使用目的等を十分打ち合わせて提供しておるし、また不必要と認めて話し合いがついたものは、調達庁の手を通して返還要求もいたしておる、こういう状況であります。
  62. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 お答えにはならぬわけです。スパイの基地が今後発見されたら、どしどし返還の要求をするか、そうしてまたそういう基地がありはしないか。あなた方の方でも積極的にお調べになって行動をとられるかどうかということです。
  63. 西村直己

    西村国務大臣 私の方といたしましては、もちろん安保条約の精神にのっとりました態度で、調達庁は返還要求すべきもの、提供すべきものを合同委員会——たしか合同委員会の中に施設提供の委員会があると思います。そこで調査は続けていくつもりでございます。
  64. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 まだもっと申し上げたいのですが、時間がありませんから次に移りますが、同様な基地は、JTAGの支部は、同じことをやっているものは厚木だけではないのです。CIAから日本大使館、大使館からワシントン・ハイツの中に本部、その下に、少なくとも私の知っておる限りでも横須賀に一つ、立川に一つあります。そうしてこのスパイを運ぶものとして、国籍を表示していないDC3型の飛行機が少なくとも二台ないし三台は立川にいる、こういう事実を申し上げておきます。当然お調べになって、そういうものに対して返還要求をなさることを私は期待します。そうして今後外務大臣のおっしゃるように、スパイはごめんだ、こういう態度を明確にして、いやしくも日本の基地を使って中国や北鮮やその他に対するスパイ行為のないように、こういうことを申し上げておきます。  第三の問題として、行政協定の二十四条を見ますと、路線権という言葉が出て参ります。この路線権の正確な定義を一つ伺わして下さい。これは外務大臣どうぞ。
  65. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 学問的な定義は事務当局の方から申し上げますけれども、要するに路線権というものは、われわれが施設及び区域を提供する、それを使えるような、そこへ持っていくための必要な、その施設、区域が使えるようにするための施設並びに措置を言うものであると思います。
  66. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今のお話で、こういう問題が起きているのです。ほかにもたくさん出ていますから、例をあげろとおっしゃればたくさん出しますけれども、まず私の住んでいる横浜市で、上瀬谷の通信部隊の周辺に市営住宅を建てようといたしまして、相当広範な坪数を買い入れました。そして市営住宅を建てようといたしますと、上瀬谷の通信部隊の大尉がやってこられて、そこへ建ててはならぬ、こういう通告です。そしてその根拠はと聞くと、路線権らしいのであります。一体こういう事実を外務省は御存じでしょうか。これは一月十七日の合同委員会にかかったそうですから、御存じだと思います。
  67. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま御指摘のありました事実については、外務省承知しております。しかしながらそれは行政協定、今度の地位協定に基づくいわゆる路線権の問題では必ずしもないのでありまして、現在話し合いによって円満な解決をするように努力しておるのでございます。従来までに解決したものもあることは、飛鳥田委員承知の通りと思います。
  68. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 話し合いによってと言いますが、米軍がそういうことを日本政府に要求してくる根拠は何だと言っているのですか。全然法律的な根拠のないのに、そういうことを米軍が言ってくるのを、あなた方はみな話し合いに応じてしまうのですか。
  69. 丸山佶

    ○丸山政府委員 上瀬谷の周辺に関する問題でございますが、あそこの電気通信施設の作業に支障が及ぶおそれのあるところの建物あるいは施設をされては困る、これは今条約局長が答えました通り、日本側に来ております。この根拠は地位協定の第三条の二項の後段に、「日本政府は、合衆国軍隊が必要とする電気通信用電子装置に対する妨害を防止し又は除去するためのすべての合理的な措置を関係法令の範囲内で執るものとする。」こういうものがありますので、向こう側は日本側に申し入れてきておるのでございます。
  70. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ところが、もしそれだとするならば、一体基地の周辺の人々の憲法上保障された所有権の制限をすべき法律というのは一体どこにあるのですか。いかぬと言われて、現実に横浜市は市営住宅を建てることを中止してしまいました。そのためにこうむっている損害というものは何千万円という莫大もない金額です。日本国民に対してその所有権を行使することを制限する法律をあげてみて下さい。
  71. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お話の通り、米軍の要求をそのままにいれて、直ちに建設の中止等の処置ができるかどうか。これはその今の地位協定の文言にもありましたように、日本政府は合理的な措置を関係法令の範囲内でとらなければいけない、こういうことでありまして、しかもなおこの要求に対しましては、日本側は検討中でございまして、向こう側とこの範囲のことをするということを約束した事態ではございません。しかしながら電子装置の妨害に対する予防措置をすることも必要であるし、これに対する周辺の住民の方々の利害との調節という問題をいかにするかということを、目下関係各省ともに考究しておるのであります。横浜市の市営住宅の関係について申し上げますと、このような事態にあるので、もし建てられてしまったあとで、あるいは電波法等の関係で除去等の問題が出てきては困る。そこでこの変更等ができないか、また変更したためにいろいろ市としてお困りの状況等をどうするか、これらのことをお話し合い申し上げておる最中でございます。
  72. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 多分そうおっしゃるだろうと思ったのです。今初めてこの問題が起こったのなら、関係官庁と御相談になって、相談中だという話も、はい、さようでございますかと僕は受け取っていいと思うのですが、しかし今から二年ぐらい前、いや三年前かもしれません。この上瀬谷の通信基地のすぐそばに、日本金属という会社が工場を建てようとした。同様な苦情、要求を上瀬谷の通信基地から受けて、調達庁はもう四苦八苦したという事実があるはずです。そしてとうとう違うところに調達庁は土地を買って、どうぞ一つこっちでがまんして下さいということで、日本金属にはそっちへ工場を建ててもらって、ようやくその場を糊塗したという事実が二年か三年前に現実にあるはずです。従ってこの問題は今始まったことではない。もう二年もあなた方お考えになっていらっしゃるのですか。ずいぶん慎重御考慮だと思いますが、二年考えるそれだけの理由が一体どこにあるか、一つぜひお聞かせいただきたいと思います。なぜ二年かかったのか。
  73. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お話のように日本金属の問題がございました。調達庁が別の土地を買ったのではございませんが、先ほど申し上げましたような事態の付近でございますので、別の土地をあっせんし、そこでいかがかという話し合いのもとに、別のところへ移っていただきましたような次第でございます。このような土地でありますので、この措置をいかがするか。二年もかかっておってまだ結論が出ない。まことに遺憾でございますが、この米軍の要求する障害物除去の範囲が非常に広くあります。一マイル四方にもわたるような要求を出しております。この通りの措置をするためには、非常に影響する範囲が大きい。またこの通信施設自身の電波妨害という問題がそれほどの必要があるのか、このような技術的な点を十分に日本側とも調査協議しなければいかぬ。このような技術的の調査研究の問題、特にその範囲の問題等がありますので、実はまだ結論に至っていない次第でございます。
  74. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 では二年間に合同委員会をこの問題をテーマにして何べんお開きになりましたか。
  75. 丸山佶

    ○丸山政府委員 回数ははっきり記憶にありませんが、数回ありました。施設特別委員会のみならず、周波数分科委員会、こういうような専門の委員会にもかかっておるのでございます。
  76. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 二年間で、お説の通り伺ったとしても、数回です。しかし現実に被害がじゃんじゃん出ている。たとえば今おっしゃったように、上瀬谷を中心として半径一マイルの範囲で一切の建物を建ててはいかぬとか、電気を使ってはいかぬとか、こういう要求を現実出してきているわけであります。ところがこの一マイルの範囲内に入りますところは、建設省が指定いたしました工場地帯になっております。工場地帯に片一方では政府が指定し、そして工場を建てて早くそこで仕事をおやりなさい、こういう政府の指定に対し、片一方はちょっと待ってくれ。根拠も何もわからない、ただ折衝中だということで済むものかどうか。現実に大日本製作所という川崎にあります会社は、ここに工場敷地を買収いたしまして工場を建てようといたしますと、調達庁と県の渉外部からちょっと待ってくれ、こういうことでストップを食っているわけです。また安藤製作所という会社も、一千五百万円手金を打って土地を買ってしまいました。建てようといたしますと、建てられません。中小企業ですから、千五百万も手金を寝かして一年も二年も待っていたらぶっ倒れてしまいます。農民に契約解除をしてお金を返してくれと言いますと、受け取った農民は、もうみんな使ってしまって、ありません。こういう形で中小企業はみんなどしどし倒れていくわけです。しかもそれだけではありません。この通信隊から神奈川県の渉外部に対して、今申された半径一マイルの範囲内に瀬谷という町が入ってしまいますが、この瀬谷町においてはテレビの屋外アンテナを使わないように、一軒の家で螢光灯を二個以上使ってはならぬという要請があって、県の渉外部も、まさかそんなものを住民に対して通達すべき法律的な根拠もありませんし、そんなことをしたら憲法違反ですから、県の渉外部は間に入って困っているわけです。こういう大問題があるにもかかわらず、二年間もほうっておく。当然あなた方はこの問題について米軍に対して明確な要求をなさって、そういう電波の妨害というような場合には何キロ以内ときちっと——今お説の条文はこの行政協定ができましたときからで、今度の新協定に初めて出てきたものではありませんから、もうすでに八年近くある条項です。八年の間にきちっと何キロ以内ということをきめ、そうしてその付近の住民に対しては何キロ以内はこういうわけでだめでございます、しかもだめだと申し上げる法律的な根拠はこれですというので、新しい立法が必要なら新しい立法をし、公示しておかなければ、付近の住民というものは自分の所有権を十分に行使できないじゃありませんか。あなた方だけがのみ込んでおって、付近の住民はその所有権を行使することを全然妨げられている。こういうことが一体許されるでしょうか。この点について何べんお話し合いをお進めになろうと、合同委員会を開かれようと、憲法で保障されている国民の所有権の行使を妨げるべきあなた方の行為は出てこないですよ、新しい立法でもなさらない限り……。この点について一体どう考えておられるのか。これは調達庁を監督していらっしゃる防衛庁長官一つはっきりと伺っておきたいと思います。何万人という人が上瀬谷だけでも困っているわけです。新協定をこんなにだらしなく施行させてよろしいのですか。ひとり上瀬谷だけではありません。同様の通信基地は酒田にもあります。稚内にもあります。至るところで大ぜいの日本国民がわけのわからないままに、何となく官庁の権威で自分がやろうとすることをストップ食っている状態、そういう状態を防衛庁長官はそのまま二年考えたけれどもだめだ、また二年考えるとおっしゃいますか。
  77. 西村直己

    西村国務大臣 日米安保条約を改定いたし、同時に地位協定もできました。私もある程度上瀬谷の問題等を承っておるのであります。そこで米軍側の、一マイルでございますかの地域を電波障害からはずれるように日本の住民の利用方を制限というか、やってもらいたい、こういう要望と、それから住民の憲法上保障されました権利と申しますか、利益というか、こういうものを調節をしていく。今の段階では従って確かに話し合いによる交渉、こういうことでやっておりますが、同時にまた一面必要最小限度としての米軍の施設利用の方法、これらも十分わが方としての要望も、いま少し距離も縮めるとか、そういうような方法をしながら今日まで参ったのでありますが、できるだけ早く私どもはそういう話し合いの場において解決をして参りたい、こう考えております。
  78. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 できるだけ早くそういう話し合いの場においてとおっしゃるのですが、しかし話し合いの場とおっしゃいますが、話し合いの場というので、米軍と日本政府の間に話がつくということは、あなた方の態度ならば可能であっても、現実に被害をこうむる国民に対してあなた方はどうなさるのですか。それを強制する法律も何にもないのですよ。官庁の権威にものを言わせてやってしまうのですか、どうなっているのですか。
  79. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん私どもといたしましても、住民の憲法上保障された権利というものは尊重せねばなりません。同時にまた日米安保体制からくる基地提供義務を円滑に遂行することも、国際信義上またわが国の利益上必要な面であります。その間を十分調節して参りたいというのが私どもの考えであります。
  80. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 政府として、あなた方のお立場に立てば、行政協定なり安保条約を円満に遂行する義務があるかもしれません。しかし国民は憲法によって保障された権利を守っておればよろしいのでありまして、何も自分でわが身を締めて、自分が損をしてまで政府に協力をすべき責任はないと思うのですが、政府対住民との関係をどう規律されるのか、こういうことを私は伺っているわけです。
  81. 丸山佶

    ○丸山政府委員 お話の通り非常に困難な問題で四苦八苦しておるわけでありますが、結局その米軍の要求は、行政協定にあります通り、電波障害を除くことを日本側に要求できる。それを日本側は合理的な措置をもってこれに応ずる、こういうことであります。これに関連して、制限を受けるところの土地の所有者その他の関係者の方の利益の調節でございます。従いましてまず第一に、米軍との間にその範囲というもの、先ほど申しましたように、非常に広大な範囲が必要なのかどうか、その範囲に関する問題、また制限の程度、種類、こういうことの問題、これは電波に関する技術上の問題でございますが、そういうことを含めましてある範囲を定める、ある制限措置を定める。それに基づいて日本側が、地元の関係の方とどういう措置がとれるか、一つは電波法との関係でございますが、電波法によって補償等の措置がとれるかどうかという問題、また電波法では十分でないならば、やはり土地の所有者の方とこういう程度の制限を、この範囲においてしなければならないのであるが、これに応じていただくためには、その損害等についてどの程度の補償というものを政府がするか、こういうことを具体的に話し合いによって契約と申しますか、こういう形でもって措置するか、何らかの方法をとらなくてはいけないと私は考えております。そのような方法で、今せっかく関係庁の総合的な話を進めておる次第でございます。
  82. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 電波法はまず第一に、新協定による米軍の軍事基地には適用にならない、こう私は思います。かりに適用になったとしても、建物を建てさせないなんということは電波法ではできないはずなんです。せいぜい電波法でできますことは、雑電波を発する施設を改善しなさいということを言える程度であって、決して建物を建てちゃいけないとか、あの建物をぶちこわせなんということが電波法でできてたまるものですか。そんなことを言ったら、電波の発達というものは今後ますます激しくなるでしょうから、日本国じゅうみんなぶちこわさなければならなくなりますよ。電波法がそんな権限を持っているなどとお考えになることは、大きな間違いです。  第二には米軍が電波を使用する、その電波の妨害にならないことを日本政府に要求してくる、こういうことですが、先ほども申し上げたようにこれは八年も十年も前からのことですから、当然こまかいことは合同委員会の中でもうきめて、具体的にこうなっておりますと言って、ぴちっと私たちに見せてくれるのがあたりまえじゃないでしょうか。それを今までのんべんだらりとしておられて、今になって非常に困難な問題でございますなどとおっしゃったって、ございますで済むのはあなた方だけで、国民は済まないのです。自分たちの財産を侵害されるのです。そこで米軍が使う電波というものについて根本的に、何に使うのだ、どういうものなのだという戦略的な用途までさかのぼって御検討にならないと、この問題は解決できないのですよ。ところがアメリカ軍のやることは何でもかんでも仰せごもっとも、軍の秘密だのという形で、そこまで切り込まないで問題を解決しようとすれば、今度は戦略的な目的が変わって、こういう通信機械を据え付けたから、その範囲を一キロ拡大する、二キロ拡大するということに対して抵抗できませんよ。そういう点まできちっとこの数回やられた合同委員会の中で討論なすったのかどうか。それでは伺いますが、上瀬谷の通信基地が持っている米軍の任務というのは何ですか。それを聞かなければその範囲というものは定められないじゃないですか。そういうことまで御討論になられたかどうか。
  83. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 お答え申し上げます。上瀬谷の通信施設は艦船、航空機の航行安全のための通信をいたしておるのでございます。
  84. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 お認めの通り航行艦船、飛行機、軍艦等になすっていらっしゃる。しかも米軍はこの上瀬谷の通信基地から、厚木から出発したU2を指図しておったのじゃないですか。これはパワーズがソビエトにおいて取り調べを受けましたときにちゃんと自白しています。カミセイと書いてありますが、上瀬谷のことです。アメリカ人が読んだのでカミセイと読んだのでしょうが、カミセイの基地からどっちに行け、こっちに行けということを指図されて自分は行動したことがあるということを、きちっと、ソビエトにおいて自白しているわけです。さっき外務大臣はスパイはごめんだと言われました。それを指図している通信基地、その通信基地のために周辺の住民がテレビ・アンテナを外に出すのも制限され、螢光灯をつけるのも制限され、建物を建てようとすればちょいと待ち、工場地帯になってその土地が栄えようとすれば——これは建設省が認定しているのですから当然でしょう。栄えようとすればだめ、こういう形になっているのですよ。そういうところまで突っ込んで合同委員会で御議論なさったかどうかということを私は伺っておるのです。それでなければ正しい結論に達しないじゃないですか。今後の災厄を避けられないじゃないですか。私は上瀬谷の通信基地だけの特例としてこれを申し上げているのではなしに、酒田にも稚内にも、至るところにこういうものがある。そういう態度で米軍と対決をなすっていらっしゃるということでは、全般として軍事基地周辺の国民の権利は守れないじゃないかという一例として申し上げているわけです。合同委員会の中でそこまで話し合ったかどうか聞かして下さい。
  85. 安藤吉光

    ○安藤(吉)政府委員 お答え申し上げます。ただいまお話のございましたU2機云々の問題でございます。これはたしかミッチェル、マーチンという、米国からソ連の方に逃げていったという人が向こうで話したというのが、プラウダに出ていたように記憶しております。これは私たちの方も当時調べてみました。米軍の方ではこういったことをやらしていたことはないと確認をいたしました。第二にU2機が日本の基地から他国の領空侵犯をやったことはない、これも確認しております。
  86. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう時間がありませんからよしたいのですが、アメリカがそうじゃありませんと確言すれば、もう一切問題が氷解してしまう、そういう態度はどうでしょうか。私は少なくとももっともっと側面から資料を集めてみて、その資料とアメリカの確言とがきちっと合うときに、初めてあなた方が納得をされるということでなければならぬと思うのです。ところが全然そういう調査をおやりにならずに、いつでもアメリカがこう言っていました、わかりました、アメリカがこう断言しました、はいさようでございます、国民にお伝えいたします。こんな態度では一体行政協定や安保条約というものが、すなおに国民に受け取られていくでしょうか。そうお考えになること自身が問題だ、私はそういうことを問題にしたいために、さっきから幾つかの実例をあげているわけです。いたずらに事を暴露して楽しんでいるわけではありません。現実にあなた方の態度に反省を求めたいというところにあるわけです。アメリカ局長というお名前は、今の御答弁では残念ですがアメリカの局長という感じにしか受け取れないわけです。いやなことを申し上げましたが、そういうところで一つあらためて軍事基地の実効そして現実、こういう問題についてはアメリカの情報だけにたよらずに、現実にあなた方の方でもきちっとお調べになって、言うべきことは常にずけずけおっしゃっていただく。そういうことでなければ、かりにあなた方の立場に立って行政協定を是認してみたところで問題は解決しませんよ。たとえば行政協定の第二条を見ますと「合衆国軍隊が使用する施設及び区域は、この協定の目的のため必要でなくなったときは、いつでも、日本国に返還しなければならない。合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。」こう書いてある。絶えず検討いたしますためにはこちら側も資料を持たなければならぬのです。こちら側が資料を何も持たずに行って、向こうからあれは要らなくなったから返します、ありがとうございますというのは「たえず検討する」という言葉には当てはまりません。少なくともあなた方は具体的に絶えず自分たちもそういうものを監視し、観察し、資料を収集し、その資料を持っていって、こちらから要請する、こういう態度をとるべきです。また第二条の二項を見ますと、「いずれか一方の要請があるときは、前記の取極を再検討しなければならず」と書いてあります。「いずれか一方の要請があるときは、」というのは、アメリカの要請のあるときはというだけには解釈できますまい。どんなにあなた方が片寄った法律解釈をなすっても、これはアメリカと日本、いずれか一方がという意味です。従って日本は常にそういう要請をする資料を整えている責任があるわけです。これは行政協定によって、安保条約によって、——行政協定という言葉を使うのがくせで申しわけありませんが、一切新協定、新地位協定というふうに御了解いただきたいと思いますが、新地位協定によるあなた方の責任ですよ。国家の官吏としての義務ですよ。そういう責任及び義務を果たしていらっしゃるような事実は、今私の一時間半の質問の中でたった一つも出てこなかったじゃないですか。今後厳格にあなた方はあなた方のお立場でやって、国民の前に常に事実を明らかにしていかれる責任が私はあると思います。そういうことをやって下さるつもりかどうか、こういう点を最後に伺い、そして同時にこの上瀬谷の問題、電波の問題については、戦略にまでさかのぼって討論をなさり、使用目的にさかのぼって討論をなさり、具体的に一刻も早く確定をし、そして周辺国民すなわち日本国民に明確な態度政府がお示しになって下さるものかどうか、その点を一つお約束として伺って私の質問を終わりたいと思います。いずれにもせよ、ただ近い将来にとおっしゃるのでは私は納得できません。ですからこれについては一月なり一月半なりあるいは二十日なり、一応の努力目標の日にちだけくらいは設定して下さい。くどいようですが繰り返します。行政協定や安保条約を正しく施行なさるために、あなた方のお立場からあなた方が負っている基地に対して始終監視、監督し、資料を集めてこちらから問題を持ち出すというような努力をなさっていただけるかどうか、これが一つ。上瀬谷の問題について具体的に努力目標の日にちを定めてきちっとお約束をいただきたいと思います。防衛庁長官いかがですか。
  87. 西村直己

    西村国務大臣 ただいま飛鳥田委員のおっしゃる行政協定の二条等に書いております両国で不断に検討を加える、また一方の要請があればまた検討を加える、これは私全く同感でございます。従って日本側といたしましても、基地に関しましては、不断に必要であるか不必要であるかということの検討を加えて参らなければならぬ。ただそのよる検討の根拠は、日米間の安保体制による共通利益というものも十分に考えて参らなければならぬと思うのであります。なお具体的な上瀬谷の問題につきましては、もちろん私はこれも住民にある程度の制限を要求しておると同時に、アメリカ側にも、あの巨大な、移転いたしますとすると百億以上かかるのでございますから、とにかく大きなものでありますから、これは簡単に移すというわけにもいかない。その間の利害というものを十分調節して参りたい。従ってこれは何月何日までにということは私はここではお約束できませんが、できる限り調達庁関係あるいはその他関係の者が合同委員会等として熱心にやる、こういうことだけを申し上げたいと思っております。
  88. 船田中

    船田委員長 午後一時三十分より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時二十六分休憩      ————◇—————    午後三時二分開講
  89. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。この際、外務大臣より発言を求められております。これを許します。小坂外務大臣
  90. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどの問題につきまして、再度松平君を招致いたしまして、その真意を問いただしましたるところ、国連におきまして日本の常駐代表として常に感じており、また各国代表も日本国連協力の方法について感じておる問題の一つとして、この点が重要なものの一つであると考えておりましたので、これを個人立場から本国の識者に聞いていただきたいという気持で申し述べたということでございました。しかしながら、場所と発表、表現の方法については、不適当かつ不用意なものであったと思わないかと申しましたるところ、さように思うと申しておりましたので、以後かかることのないよう厳重に戒告をいたした次第でございます。
  91. 船田中

    船田委員長 飛鳥田君。
  92. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、今の外相の御説明は、松平国連大使がけさの新聞に出ておりますような事実を述べたということをお認めになって、その上での御説明のように伺いますが、そう伺ってよろしいですか。
  93. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 けさほど申し上げましたように、外交問題懇談会において、いろいろ質問に応じて話をいたした、その点についてどういうことを話したかということを、あと記者団会見を求められて問われましたので、その御質問お答えをした、そのうちの抜粋が新聞に出ておるわけでございます。従って、その言うた通りに出ておるかどうかは、新聞によってもいろいろ違うのでございますけれども、まあしかし飛鳥田さん初め社会党の各位の御心配になっておるような点は、これは今申し上げたように、どうも場所柄といい、また表現の方法といい、不適当であり、また不十分な不用意な点がありました、こういうことを申したわけであります。
  94. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 新聞に発表になっておるような発言をなすったというお話でありますから、かりにそれが場所柄不適当であった、あるいはまたそれが公務員としてりっぱなものでなかった、従って厳重な戒告をこれに加えたというお話でありますが、それだけでは問題は解決しないのじゃないか。ここに述べられている事実あるいは意見というものは、かなり重要なもののように思います。従って、この点について一つ一つ外務大臣のお考えを伺う、こういう形をとって国民の疑念を明らかにしたいと思います。  まず第一に、朝日新聞によりますると、「コンゴ問題についてハマーショルド国連事務総長のもとに諮問委員会、調停委員会が設けられているが、これはコンゴ派遣国連軍派兵国で構成されている。」すなわち諮問委員会、調停委員会派兵国で構成されておって、「このような点からみても、派兵していないわが国はコンゴ問題に関する限り、国連での発言権が制約されている。」国連での発言権が制約されている、こういうことであります。これは意見ではありません。一つの事実を述べておられるだけであります。意見を述べておられるのならば別として、これは事実を述べておられるわけです。一体派兵をしていないために、わが国はコンゴ問題に関する限り国連での発言権が制約されている事実があるのかないのか。そしてまたそういうことについて、すでに今の外相のお話でもわかりますように、日ごろ感じていること、こういうことを述べたんだということでありますから、当然その発言が制約せられているというような事実は外務省に報告があり、訓令を仰いでいるはずだから少なくとも報告があったはずだ、こう思うのですが、この点はいかがでしょうか。これは意見ではありません、事実を述べているのですから、国連大使といえどもまさかうそをおつきになりますまい。もしそういう事実がないと外務大臣がおっしゃるのならば、国連大使は虚偽の事実を申し述べて日本国民を欺こうとしているのだと言わないわけにいかないと思います。どっちでしょう。
  95. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 派兵をしておる国が自動的に諮問委員会委員になっているというのはその通りでございます。  なお、事のついでに申し上げますと、安保理事会が現在開催中でありますが、安保理事会理事国がこの問題について現在発言をする立場にあるわけであります。しかし、この安保理事会が何かの機会で緊急特別総会にかわることもございますが、そうすれば安保理事国以外の国が発言することになるわけであります。日本は、御承知のように安保理事会理事国を一期やりまして、現在ECOSOC、経済社会理事会理事国にかわっておるわけであります。さような実情だけ申し上げておきます。
  96. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 発言権が制約されているかいないかということを伺ったわけです。ただ法律的にどの委員会に所属しておるか、どういうことをやっているかなどということは、私の伺ったこととは別問題のように思います。発言権が制約されているかどうか、こういうことを伺っているわけです。
  97. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 諮問委員会に入っておるものはその諮問委員会において発言する立場にあるわけです。しかし、諮問委員会に入っていないからといって本質的な行動の限界が束縛されておるということではありません。ただ諮問委員会に関する限り、そこにおればその諮問委員会発言できる、あたかも予算委員会委員が予算委員会発言できるということのような程度であります。
  98. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 諮問委員会の中だけで発言権が制約されているかいないかということでありますならば、その委員国になっていない以上、幾らか発言機会が少ないということはこれは当然でしょう。ですが、ここで松平大使が問題にしておりますのは、「このような点からみても、派兵していないわが国はコンゴ問題に関する限り、国連での発言権が制約されている。」こう言っておるわけです。一体国連全体の中で発言が制約されているのかいないのか、このことを私は伺っておるわけです。派兵をしない以上発言を差し控えなければならないような状況があるのですか。
  99. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 諮問委員会が今非常に活躍しておるわけであります。しかし、諮問委員会において発言するのは、諮問委員会委員発言するわけであります。その意味においての発言機会は少ないかもしれません。しかし、そうだからといって、本質的な制約を受けておるとは思いません。
  100. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もしそうだとすれば、国連大使はあなたのおっしゃるように発言権が本質的に制約せられていないにもかかわらず、国民に向かって国連での発言権が制約されている、こういうふうに事実を報告しているわけです。そういうことは国民を欺罔するもはなはだしいものがあるじゃないか。それじゃあたかも国民国連発言権を増大するために派兵したらいいじゃないかという考え方にいくように、一定の意図を持って発言されておるように思いますが、こういう虚偽の事実を報告することが個人としても許されますか。かりに個人であったとしても、その人は同時に国連大使なんですから、国連について少なくとも正確な報告をする義務があるはずです。国連について正確な報告をする義務があるべきはずの大使が虚偽の事実を報告している。これは意見じゃないのですよ。発言は制限されていない、こういうふうに大臣お答えになっているから、大臣がそういう答弁をなさる以上、それと真反対な事実はうそだと言わざるを得ないのじゃないでしょうか。その点についてどうでしょうか。
  101. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどから申し上げておりまするように、諮問委員会委員が諮問委員会において発言するわけであります。従って、諮問委員会の問題が非常に大きくクローズ・アップされておるときに、日本においては諮問委員会委員じゃありませんから、その発言はなされない、こういうだけのことであります。従って、今のようないろいろな誤解を生ずるとすれば、発言が不用意であり、かつ適当を欠いておる点もあるということを申し上げたのであります。
  102. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 発言機会が少ないということと、発言が制約されているということとは、日本語として違うはずなんです。従って、制約せられているという場合には、言わんと欲して何らかの形で言えない事情があって言えないのだ、こういうことだろうと思います。発言機会が少ないという場合は、そういうチャンスが少ないというだけのことであって、意味は違うはずです。こういう点でも、大臣のおっしゃる点と松平さんのおっしゃる点とは全然違うじゃないか。意見が違うならかまわないのです。意見が違うならば、場合によれば、一国の外務大臣として責任を持って私はこう思う、こうおっしゃるのならば、まだまだ私たち納得できますが、少なくとも事実に対する報告が違う。しかも外務大臣よりも国連の場に毎日々々常駐して、少なくとも大ぜいの他の国連諸国家の代表と接触をしている一番前線にいる人が、その前線の事実の報告をしておる。それがあなたのお説とまるで正反対だというに至っては、松平さんにここに来ていただいて、ほんとうの事実を話していただく以外には手がないのじゃないでしょうか。  もう一度伺いますが、派兵していない限り、わが国の発言権は制約せられていた。こういう事実を外務省としては確認をせられていないのですね。
  103. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、派兵している国が諮問委員会というものを構成し、その委員になっておるわけです。逆に言いますと、派兵していない国は諮問委員会委員になっていないわけです。現在コンゴ問題について発言しておるのは諮問委員会である。従って諮問委員会委員発言をしておる。すなわち諮問委員会委員でない日本発言をする機会がないわけです。そのことを言っておることだけであります。
  104. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 国連の活動というものは諮問委員会だけでしょうか。国連総会においても発言できるはずです。ところがこの報告によりますと、国連での発言が制約されている、こう言っているのですから、総会における発言まで制約されているかのごとき感を受けざるを得ないわけです。この点について、私はもう一度、松平さんに来ていただいて現実の具体的な説明をしてほしい、こう言わざるを得ないわけです。  そこで、それでは第二の問題として、「現に日本派兵していないことは国連協力のあり方としても反省せねばならない。」こう言っております。「一九五八年のレバノン問題にさいし、わが国が国連監査団への派兵を求められた時も、政府はこれをことわることになり、私としては窮地に立った。こんごはせめてオブザーバー派遣できるようにしたい。」こう述べておられますが、この点について、窮地に立った、(「窮地に立ったのは事実だ」と呼ぶ者あり)こういうことを外務省に対して報告をしてこられたことがあるのかどうか、こういうことを伺いたいと思います。今もそこで不規則発言で、窮地に立ったのは事実だと言っておられますが、多分事実だろうと思います。もしそうだとすれば、当然外務省にそのことを報告してきて、あらためて外務省訓令を仰がれたはずだと思いますが、この点についてはどうでしょうか。
  105. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 窮地に立つ立たないということは個人的な感じの問題だと思いますが、国としての方針は、前々から申し上げておるようにきまっております。従って派兵はしないという訓令出しており、大使としてはその訓令に従って行動をしているわけであります。ただ個人的にそういう感じがしたかもしれませんけれども、それは別に何の問題でもないと思います。
  106. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 個人的な感情として窮地に立った、こういう感じはやむを得ないと、どういうふうに外務大臣はおっしゃるのですが、そこに問題があるのじゃないでしょうか。やはり外務省としては、派兵を断わる、こういう態度こそが日本の平和への貢献の道であるという信念と、そういう自分の今行なっている外交に対する自信を持った大使を当然置くべきであり、そしてまたそういう自信を持った態度で諸外国の代表に接触をしない限り、日本態度を向こうに納得させるだけの説得力を持ち得るはずがないじゃないですか。自分がおなかの中で困った困ったと思いながら、だけれど本省から言ってきたから仕方がないというので諸外国の代表に話をしておって、一体説得力がありますか。私はむしろそこに問題があるような気がするのです。あなたのおっしゃるように、窮地に立ったということが主観的な感想であったとするならば、日本外交はそういうインフェリオリティ・コンプレックスの上に立った外交というものを展開していっていいのですか。むしろ堂々と、派兵をしないことが日本の平和に対する貢献の最大の道であるということを他の国々にちゃんと説得するだけの自信を持ってやるべきじゃないでしょうか。そんなものを今まであなた方はおっぽっておいたのですか。そういう点で、窮地に追い詰められたというならば、どのような事態かということをあなた方はもう少し詳しく調べてみる必要があるし、そしてまた、こういうふうに説得しなければいかぬじゃないかという意思疎通を、出している大使と十分になされるべきじゃないでしょうか。そういう点で、あなた方がこの問題についてどういう話し合いを松平さんときょうなさったのか、それをまず伺いたいと思います。
  107. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 私には別に窮地に立ったとかなんとか、何も言うておりませんでした。ただ新聞にそういうふうに出ておりますから、そういうことがありとすれば、そういうことは個人的な気持であったのかもしれないということだけを言うておるのでありまして、私は窮地に立つからどうしてくれとか、困ったとかいうようなことを言うたことはないのであります。従って、そういうことを問題にしてここでいろいろ申し上げさしていただくことも、どうもなかなか私としてはお答えしにくいのであります。日本政府方針としては、毎々申し上げるように、派兵をしないという方針であります。御承知の通りに、世界の各国が軍隊というものを持っておるわけですが、日本は特殊な憲法を持っておることは飛鳥田委員も御承知だと思うのです。スエズ運河の問題のときにも、国の基本法を変えて派兵することにした国もあるわけです。そういうような国があるものですから、日本だけその方針を貫いていくということは、先方の大使とすれば、周囲の人たちがみな違う方針をとっておるのに、おれはこれでいくのだということを言い抜いてきたという、むしろ誇らしげな表現ともとれるわけであります。そこは、政府方針がゆらいでいない以上、出先の人がこちらへ帰ってきて、自分個人的な気持をどう言ったか、これも速記録があるわけではございませんけれども、一応そういうことを言ったという新聞でございますから、それを肯定して申し上げますれば、それはあくまで個人的な気持を言ったものでありまして、われわれ政府としては関知しておらない、従ってそういうことは問題にする必要はない、こういうことでございます。
  108. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 現に日本派兵していないことは、国連協力のあり方としても反省をせられなければならない、こういうふうに明白に言い切ったあとで、窮地に立った、こういうふうに言われているわけです。窮地に立つその基本的な考え方は、派兵をしていないことが国連協力のあり方として反省をすべきだという考え方の上に立って、窮地に立っているわけです。それならおかしいじゃないですか。(「邪推だよ」と呼ぶ者あり)邪推じゃない。書いてある。そういう点で何といったって私たちは、その基本的な問題について、やはり松平さんにここに来ていただいて、その点を明らかにすべきだということがここでも出てくるわけです。大体日本派兵していないことは、国連協力のあり方として反省をせられなければならないということは、何を根拠として言い、何を具体的な事実としてふまえて言っておるのか。こういうことは重大な問題です。そう軽々に聞き流していい問題だとは、外務大臣もお考えにならぬでしょう。そして同時に、国民外交ということをおっしゃっている以上、外務省の中でえらい人が数人集まって、この問題をごちょごちょっと話をきめてしまうというだけではなしに、国民の前に明らかにさらけ出して、堂々と討論なさる、こういう態度こそ好ましいのじゃないか。国民外交というものは、こういうことから出てくるのです。だからこそ、この問題について松平さんが、こう明白に言い切っておられる以上、そしてそのことをあなたがお認めになっている以上、やはりこの点について何をふまえ、何を根拠としてこういう断定をなさったのかということは、この委員会で当然聞くべきではないか、そして国民の討論の場に移すべきではないか、こう私は考えるわけです。そういう点でも、松平さんにぜひここに来て、その根拠を聞かしていただきたい、こう私たちは思います。  来ていただくということに関連して、一つ外務大臣に伺いますが、国連協力のあり方として派兵をしないということが、何らかの意味で反省に値しますか。これはあなたに御意見を伺いたいのです。
  109. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 その前に、私は外務大臣といたしまして、外交に対して、国会に対して責任を持っているのは私でございますから、私が冒頭に申したように、松平君の新聞に出ている問題については、個人的な気持を言うたこともあろうけれども、その場所あるいはその用語等について不適当であったものがあるから、こういうことは厳重に戒告しておいた。こういうことを言っておるのでございますから、これ以上本人をお呼び出し願うということは、私は御容赦を願いたいと思っておるのであります。  なお派兵問題につきましては、私がしばしばここで申しておるように、あるいは総理大臣も言われておりますように、そういうこと自体ここで問題にすることがないように、明確になっておるのであります。個人的な気持の表現が新聞に出ているからといって、そういうことを言われることは、私は御容赦を願いたいと思います。
  110. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 せめて派兵ができないのならば、オブザーバー派遣するようにしたい、こう意見を述べておられますが、オブザーバー派遣するような気持が、今後おありですか。
  111. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この点も、私は松平君に問いただしました。オブザーバーというのは、必ずしも意味は明確でありません。そこで松平君が申しますには、これは決して軍隊というような意味で申したのではございませんで、技術者あるいは医者というような立場の者を考えておったのでございますということでありましたから、かわって申し上げます。
  112. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういう医者とか技術者とかいうことをおっしゃりながら、実はかつてこういうことがありました。緒方副総理であったと思いますが、海外派兵はいたしません。ですが、公務員の海外大量出張はあり得ると思います。こうおっしゃいました。自衛隊の方も公務員です。そういう形で自衛隊のお医者様、あるいは自衛隊の技術家、いわゆる技術部隊、こういう人々が国外に大量に出張する、そういうようなことをなさることになるのじゃないか、こう私たちは思わざるを得ないわけです。そして、ことに派兵にからんで、それができないのならば、せめてオブザーバーをと、ちゃんとひっかかっているわけですから、従ってこのオブザーバーというものが、ただ単に技術者を派遣するなどという形であるはずがないわけです。そういう意味で分けて伺いますが、少なくとも派兵にからんだオブザーバー、そういうものは絶対に出される意思はないと伺ってよろしいのか、これが第一。第二は、緒方副総理が言われたように、公務員の大量海外出張などという妙な形で、自衛隊関係方々コンゴに出かけていくようなことがあり得るのかないのか、こういうことを一つはっきり伺っておきたいと思います。
  113. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 海外派兵はいたしませんということは、先般も申し上げた通りで、その方針は堅持いたしております。またさようなことにまぎらわしいことも避けるべきであるというふうに考えております。従って、いたしません。
  114. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 海外派兵をなさらない、こういうことですが、この海外派兵をなさらないということは、現池田内閣の政策としてなさらないことが適当だとお考えになってなさらないのか、あるいは憲法違反としてできないという意味でなさらないのか、この点を明白にしておきたい、こう思います。
  115. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 憲法解釈を私から申し上げても、実は柄からいってどうかと思いますから、政治解釈を申し上げますと、政府方針といたしまして、さような方針をとっております。なお憲法解釈につきましては、先般こちらでもって法制局長官が答弁いたしましたので、その点で十分かと思います。
  116. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 外務大臣といえども、憲法解釈についてはっきりとした意見をお持ちになることは当然でしょうから、故意にお避けにならずに、一つ外務大臣の憲法解釈をお聞かせいただきたい。
  117. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 どうもその柄でないようなことを答弁しろということで……(「謙遜するな」と呼ぶ者あり)それは謙遜いたしますが、私の解釈は、先般来申し上げておる通りでございます。海外派兵をいたすことは、憲法上不適当だと思います。ただ将来、国連軍というものが今の軍隊というのとかわっていわゆる警察的な、ほんとうの国際的な警察勢力として適当なものになる場合は、これはそのときの情勢で判断すべきものだと思いますが、現状においては派兵をいたすことはよろしくない、かように思っております。
  118. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 どうも異なことを伺うもので、海外派兵に幾種類もあるはずはないと私たち考えています。Aの目的をもって派兵する場合には憲法違反だ、Bの目的をもって派兵する場合には憲法違反でないというような説明は、少なくとも私たちは通らないと思う。少なくとも海外派兵というものそれ自体が憲法違反だ、こういうふうに法制局長官のお説では私たちは伺っておりましたが、法制局長官意見外務大臣意見とは違うのですか。この点を一つ伺っておきたいと思います。
  119. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 国会に対して責任を持っておる政府といたしましては海外派兵はいたしません。
  120. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 憲法解釈として適法か適法ではないかということを伺っているので、現内閣が政策としておやりになるかな心ぬかということを伺っているわけではありません。その点について憲法解釈を正確にしていただきたいと思います。
  121. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御承知のように現在の憲法解釈からいたしますと、自衛のため以外に兵を用いることはできないわけでございます。そこで自衛ということを越えての派兵ということは政府はいたしませんと言っているのは、憲法上かかる解釈が不適当だ、こう認めているからしないわけであります。将来の問題として——これは将来の問題は言う必要はないかもしれません。しかし解釈でございますが、国連軍というものが純粋に国際間の警察的な平和維持の力になった場合、それに協力するということが、いわゆる兵というものを出す概念に当たらない場合ができるかもしれません。そういう場合はその概念によって律するほかはないということであります。
  122. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今外務大臣お答えになっわけですが、全然矛盾した二つのことが出てきているわけです。一つは自衛以外の目的をもって兵を動かすことは憲法違反である、こうおっしゃったわけです。自衛以外の目的をもって兵を動かすことは憲法違反である、これは自民党の解釈としてさもありなん、こう思われます。ところが一方において国連軍が将来できた場合、それが純粋に警察的な意味を持って事を処理する場合、考え直さなければならないような事態が出てくるかもしれないとおっしゃったのですが、しかし純粋に自衛の目的以外に兵を動かさないとするならば、国際警察軍というものは日本の自衛とは関係ないじゃないですか。関係ある部分も出てくるかもしれない。しかし大部分は関係のない部分があるはずです。しかもコンゴへ出すとか、あるいはラオスへ出すとか、あるいはアイスランドへ出すとか、いろいろな問題があるでしょう、そのときどきに応じて。だがしかし、それは日本の自衛とは関係がないのです。たとい日本と自衛の上で関係がなくとも出せると片一方で言い、片一方では憲法上自衛のためにだけしか動かせない、こういうことは完全な矛盾じゃないでしょうか。少たくとも自衛のため以外には兵は動かせないという立場を貫かれる必要があると私は思う。もし貫かれれば国連警察軍というものは、当然自衛の範囲を越えたものとして、この要請に従って派兵することは憲法違反であると考えていただかなければ、これは大へんなことになるのじゃないかと思うのですが、今申し上げたような矛盾をあなたはどう説明せられるのか、もう一度伺いたいと思います。
  123. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 海外派兵をしないということについて、飛鳥田さんと私は全く意見を同じゅうしておるように思います。そうでございますね。
  124. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうです。
  125. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 そこで海外派兵というものが国連の場においてどういう場合あるかというと、こちらの意思を拘束してまで派兵しろという要請がくることはないのであります。従って私どもが海外派兵をしないということは、現在国連に対して日本が協力する道として派兵考えていないということであって、これを憲法解釈を言われますが、私も実は法律専門家でないものですから、やはり専門家に解釈してもらうのがいいと思いまして、法制局長官に答弁いたさせたいと思うのでありますが、しかし、それに対してお前でもいいから解釈しろと言われますから、私はしろうと論議で失礼でございますが、解釈を申し上げたのです。本質的には変わらないと思います。
  126. 船田中

    船田委員長 この際関連質問を許します。横路節雄君。
  127. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣にお尋ねしますが、外務大臣は先ほど海外派兵の問題については、私の柄ではないから法制局長官に来て答弁をしてもらいたいが、自分というのでしいて答弁しますがというお話ですが、しかしこれは去年この場所で、予算委員会でも、あるいは安全保障特別委員会でも日米の安全保障条約の改定をめぐってその衝に当たったのは外務大臣なわけです。特にその際に問題になりましたことは、その安全保障条約の中で、一体自衛隊の海外出兵が行なわれるのではないかということがずいぶん問題になりましてここで質疑をかわしたわけです。もちろん小坂外務大臣は当時の外務大臣ではございませんが、しかし日米安全保障条約を履行する上においては、何といっても当面の責任者なわけです。そこで今私のお尋ねをしたいのは、そういう意味で小坂外務大臣が柄ではないというけれども、やはり安全保障条約の運用をめぐって重大な問題なわけですからお尋ねをしたいわけです。自衛隊の海外派兵は憲法違反ではないのか、われわれは憲法違反だ、こういうようにお尋ねをしたわけです。これは飛鳥田君がそうお尋ねしたところが、自衛隊の海外派兵は不適当だと思う。不適当だということと憲法違反だということとは違うのです。この点を一つ明確にここで外務大臣から御答弁いただかなければ、自衛隊の海外派兵は憲法上不適当だということと憲法違反であるということとは全く違うわけです。もしも今外務大臣のような御答弁であると、日米の安保条約の運用をめぐって重大な疑義が出てくるわけです。ですからこの点は一つ明確に、あえて法制局長官出席を待たないでも御答弁を明確にしていただきたいと思うわけです。
  128. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 横路君にお答え申し上げますが、私も外務大臣として、従来御答弁がありました程度の法律知識でありますならば、これはもう私十分お答えする自信を持っております。しかしなお念には念を入れて飛鳥田委員に対して敬意を表する意味において言ったんでございますが、私はいいかげんのことを申しておるつもりは決してございません。その点あらかじめ申し上げておきたいと思います。  そこで問題は、憲法第九条の解釈でございますが、御承知のように九条は「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」というのが一項にあるわけでございます。そこで国連軍というものが国際紛争を解決する手段なりやいなやということだと思います、ただいまの質問に関連して取り上げられる問題は。そこで、現在の国連軍というものは、これは御承知のようにアクティブなものではないのです。むしろパッシブなものです。現状をいかに食いとめるかという問題であるわけです。この国権の発動として、国際紛争を解決する手段としての戦争、これはわれわれは放棄しているわけでございます。もちろん、そういうものに加担するわけにはいきません。従って、そういうものに思われるような海外派兵ということは不適当である、しない、こういうことを言っているわけなんです。しかし、それを純粋に法律的に言うことは、これは法律家の解釈を待つ方が適当であろうと思って申し上げておるわけであります。
  129. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣にお尋ねをしますが、今の外務大臣の御答弁の中にある言葉は、これは非常に重大な問題です。外務大臣は——いわゆる自衛隊の海外派兵は憲法違反です。私どもはそういうように考えてお尋ねをしているんだが、あなたはそうではなしに、自衛隊の海外派兵は不適当なんだ、この場合においては不適当なんだ、あなたが今そう言った。あなたの場合は、不適当だということは——不適当だということは適当な場合もあるということです。ところが、そんな、そういうような解釈なんというものは、今まで歴代の内閣の総理大臣にしたって、外務大臣にしたってないですよ。あなたが初めてです。憲法上これが不適当だということは。(「はっきりしている」と呼ぶ者あり)いや、ですから、その点はあなたが憲法違反です、自衛隊の海外派兵は。そういうことをおっしゃれば、私もこの問題はこれで次へ移りたいのですけれども、あなたがいつまでも憲法上声それは不適当なんだ、こういうことをおっしゃるから私はお尋ねをしているのです。いつまでもそれを御答弁繰り返されるなら、もう一ぺんしていただきたい。不適当なのか、憲法違反なのか。
  130. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 自衛隊の海外派兵は憲法違反であります。ただ、今のお尋ねは国連軍に関連してということでございますから、国連軍のそのままの性格ですね、それは現在及び将来にわたっての性格というものを考慮に入れる場合には、必ずしも憲法違反と言い切れない場合も将来出てくるかもしれぬということで申し上げたのでありまして、その点は賢明なる横路委員において十分御了解いただけると思います。
  131. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、しかし私は、今のあなたの御答弁は非常に重大だと思うのです。なぜ重大かというと、あなたは、松平国連大使の、新聞によると、第三番目の談話というか、考え方とあなたは意見が一緒だということです。いいですか。松平大使はこう言っていますね。第三点としては「将来、国連による世界新秩序ということで国際警察軍を考えねばならないことにもなるのだから、日本が絶対に派兵しないということでは筋が立たない。派兵は本来、国連協力の根本をなすべきものだ。」そうすると、あなたの考え方としては、将来はいわゆる国連協力という意味で海外に自衛隊が派兵されても、その場合には、現在の憲法上に基づいてもそれは違反ではない。その場合には適当だといえるのだ、こういうことに、あなたなるわけですよ。そういうようにこの憲法を解釈してよろしいんですか。たとえば、日米安保条約の審議の際に、現に日本に対して他の国から武力の攻撃が加えられた場合においても、いいですか外務大臣、武力の攻撃が加えられた場合においても、現に日本が他の国から武力の攻撃を加えられた場合においても自衛隊の海外出兵はできないのですよ、憲法違反で。現に武力攻撃が加えられても、わが国の自衛隊は海外に出兵できないのです。それは憲法違反だから。それほど厳重に規定してあるのに、あなたは、今の憲法のもとで、将来国連協力の根本をなすためには自衛隊の海外派兵であっても、それは憲法上は違反ではない、適当だという場合はあるのです、とこういう解釈を今の憲法のもと、第九条のもとでやるのですか。これは大問題ですよ。
  132. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど冒頭に申し上げたことをぜひお聞き取り願っておきたいのでありますが、松平君の発言は、用語において不適当な部分も多い、だから厳重に戒告したということを申し上げているでしょう。それをまたあなたは新聞を引かれて同じだ、同じだと言われても、私は答弁に困るおけです。そこで、問題にもどりますけれども、憲法解釈として、海外派兵はいたしませんということを先刻来から申し上げており、この前の委員会でも申し上げたと思います。そこで、あなたの御設問は、将来の国連のあり方というものにも関連しているわけです。国連というものでもって、完全に国連が警察的な機能を持つようになって、すべての国が軍隊なんというものをやめて、国連が警察軍的な、警察的な機能を営むようになる、その場合にこの憲法解釈はどうなるかというお話でございますが、そういうことは、今日私はここでお答えするのは不適当だと申し上げているのであります。現在の憲法解釈からすれば、海外派兵というものは憲法上よろしくない、できないことである、だからこういうことはいたしませんということを繰り返し申し上げるわけです。
  133. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、あなたは今私に反駁されたが、私は、何もあなたが答弁されなければ、お答えがなければお尋ねしなかったわけです。それをあなたがそういうように、今私が反駁したことをそこであなたが答弁をなすったから私が言ったのです。あなた、御自分が言ったのです。ですから、その点はあなたは取り消しをしたことになる。だから、あなたの今の説明からすれば、松平国連大使のこの第三点というのは誤りです。ただ、あなたは、先ほど私がお尋ねをしていて、国連において日本の代表として感じている点を、常日ごろ感じている点を個人立場から識者に聞いてもらいたいと思って言ったんだ。国連の場において、日本の代表としてこういう日本の憲法上重大な違反行為を起こすようなことを平気で言うようなものが——これはあなた、ただ用語が不適当だ、ではないのです。憲法に対して忠実に考えていないわけですよ。あなたはそう思いませんか。松平国連大使は、日本国憲法に対しては忠実に守ろうという精神がないからこういうことが行なわれている。どう思いますか。
  134. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 忠実に憲法を守るという忠実なる官吏である、と私は松平君を考えております。ただ、これは人間でございますから、いろいろ日本は人にだけやらしてお前の方は何にもしないのかというようなことを言われるらしいのですね。そこで、そういうときには、彼も彼なりにどうもいろいろ工合が悪いということがある。しかし、そういうことはあくまで、先ほども繰り返して言っているように個人の感傷で、そういうことは一体問題にすべきものではないのでありまして、日本政府方針は確固としてきまっている。、その方針に従い、また外務大臣訓令に従って松平君は行動している、こういうことであります。それ以外に何もありません。
  135. 横路節雄

    ○横路委員 外務大臣、私はお尋ねをしたいのですが、これは国連において他の国から風当たりが冷たいとかいじめられるとかいうことがあるかもしれませんが、日米の安保条約において、その条文の中にちゃんとしているではありませんか。自国の憲法の手続に従ってと、そうして、日本に対して現に外国からの武力攻撃が加えられても自衛隊は海外には出ないでアメリカ軍が出るのだ、自国の憲法の手続に従って、とこうなっておる、安保条約だって。それであなたの方は交渉して締結したではありませんか。そういう日本国憲法というものが厳としてあって、その上における国連協力というものは百も承知の上で、風当たりがどうも冷たいとかなんとかいうことでこういう談話を、日本国憲法に対する重大な誤りを——戒告では足りないですよ。その点を私は申し上げている。本来から言えば直ちにこれは免職すべきですよ。どうですか。外務大臣、あなたはお笑いになるけれども、憲法九条に基づく、いわゆる憲法を守るという精神がないのですよ。どうです。
  136. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 御意見は十分承ります。ただ、日米安保条約の場合、アメリカはもう十分了承している。しかしわからない国もあるということだけだろうと思います。世界には今国連に九十九カ国ありますから、九十九カ国の連中の中に何か言うのもおると思います。だからつらいとかなんとか言っているのではなくして、そういうものもおるということをただ紹介したにすぎないと思います。   〔「取り消せ」と呼びその他発言する者あり〕
  137. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それじゃちょうどいい機会に林さんがお見えになりましたから、ここでさっきから盛んに…。
  138. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 誤解があれば取り消します。
  139. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ちょうどいい機会ですから、林さんが見えましたから、海外派兵は、現内閣として不適当だという、政策として海外派兵をしないのか、あるいは憲法違反でできないのか、この点について、法律家としての林さんの御答弁を伺っておきたいと思います。
  140. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは、私どもといたしましては、憲法第九条一項に違反するような意味の海外派兵は、私はできないと思います。そこでいわゆる国連警察軍に対する協力ということは海外派兵に入るか入らぬか、憲法九条一項違反になるかならないかという問題は、また別の問題がここにあり得るわけでありまして、この問題につきましては、これは飛鳥田先生御承知と思いますが、私かつてレバノンのときにも石橋議員にお答えしたこともございます。最終結論としては申し上げておりませんが、こういう考え方がございますということは申し上げたつもりでございます。先般の予算委員会におきましても、佐々木議員の御質問に対して私はお答えしております。そこにいろいろな考え方はあるということを申し上げたのであります。
  141. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それが林さんの池田政府を代表した法律解釈として伺っていいですか。
  142. 林修三

    ○林(修)政府委員 要するに先ほど申しましたように、憲法九条一項に違反するような意味の海外派兵はできない。これはもう明らかだと思います。そこで問題になりますのは、憲法九条一項は何が問題かと申しますと、第一は、いわゆる侵略戦争と申しますか、国際紛争を解決する手段としての戦争、武力行使、武力の脅威を認めないということでございます。放棄するということでございます。その反面は、これは自衛権の発動は認めておる、こういうことが政府の持論の解釈でございます。従って自衛権ということを自衛戦争だといいましても、自衛権の範囲を逸脱するような海外派兵はもちろん認めない、こういうことだと思います。  そこで問題になりますのは国連警察軍という問題でございます。これは、国連国連警察軍を使って活動するという場合はいろいろございましょうが、内容を分析してみれば、これは実は自衛権の問題でもなければ、いわゆる侵略戦争の問題でもございません。つまりいわゆる国連国連の内部において、国連憲章に違反した国に対して、一種の制裁と申しますかを加えるという場合、あるいは制裁ではございませんが、そこの治安が保てない場合に、そこに警察的な行為をする、あるいは地域の画定がしないために選挙をするための選挙の監視をする、全く警察的なこと、こういう行動がいろいろあるわけであります。そういうような国連警察軍の行動、これに参加することが一がいに九条一項に違反するとは私は言えない。むしろ九条一項のいっている禁止しているものとは別問題の場合はいろいろあるわけでございます。そういう場合について、これを一がいに憲法違反とか憲法違反でないということは言えない、こう申しておるわけでございます。  そこで国連警察軍にもまたいろいろ内容がある。たとえばいわゆる北朝鮮事変の場合における国連軍のように、各国がいわゆる主権国家として主権国家の軍隊を並列的に持っていって、実は各国が国連軍という旗だけを立てて、並行して戦争したという場合でございます。それからレバノンのように、あるいはエジプトのように、一つ国連軍というものに溶け込んでしまって、各国が兵隊を供出し一つ軍隊を作ってしまって、各国がみずからの行動はしてない、国連軍の行動である、こういう場合もございます。そういう場合によってまた違ってくるわけでございます。それからいわゆる行動が軍事行動であるか全くの警察行動であるか、あるいは今の選挙の監視とかなんとかであるとか、あるいはオブザーバーであるとか、そういうものの内容によって、それぞれ解釈が違ってくるわけであります。一がいに国連警察軍に対する協力がすべて憲法に違反する、海外派兵に当たるということは言えない、かように考えております。
  143. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 憲法九条は、御存じのように侵略戦争の場合、こういうふうに限定をいたしておりません。これは林さんごらんの通りです。「国際紛争を解決する手段」あるいは「武力による威赫」あるいは「武力の行使」と書いてあるだけであって、それが侵略戦争の場合に限るという言葉は書いてないわけです。これは御存じの通りです。そこで今までの政府の解釈としては、こう書いてあるから、その例外として自衛権の発動としてだけは兵を動かせるんだ、こういう御解釈のようだったのです。ところが林さんのお説を聞いておりますと、それからまたふくらんで侵略戦争でもない、自衛権の発動でもない、そういう種類の国連軍というものにも出せる場合が出てきた、出てくる可能性がある、こういうふうに、お説がだんだん兵を動かせる範囲が広がっていく、ちっとずつちっとずつ広げていくわけです。そういう点でわれわれとしては非常に疑問を持たないわけにはいきません。それでは国連軍に対して派兵を憲法上できる場合あり、できない場合あり、そのときによるのだ、こういうお説ですか。
  144. 林修三

    ○林(修)政府委員 実はこれは、私は三十二年のレバノンの際にもお答えしておりますが、あるいは私どもの前任者の佐藤さんもお答えしたことがあると思いますが、これはやはりいろいろの場合を想定しなければいけません。もっともその前にお断わりいたしますが、今の自衛隊法は、明らかに日本に対する直接侵略と間接侵略に対する任務だけでございますから、今の自衛隊法上は、いかなる場合もそれはできないと思っております。ただ問題は憲法問題だけでございます。それでは憲法問題という場合に、たとえば、これは朝鮮事変のような場合ですが、これは、いわゆる中共というものは実は国連外の国です。それが国連との間に問題を起こしておる。そうして、これは国際警察軍と申しましても、ほんとうの意味の警察軍的な色彩は薄いと思います。しかも各国が自分軍隊を動かしておるという格好でございます。こういうものは、私は日本の今の憲法上はできないと思います。しかし、いわゆる国連の警察活動が理想的形態において、つまり国連の内部の秩序を乱したものを制裁する、あるいはその秩序を維持するという意味で警察部隊を作るという場合に、しかもそれが、何と申しますか、国連というものに統合しまして、各国の兵隊とか、あるいは各国の組織というものをそこで解消して、各国は人員だけ供出し一つの統合したものを作ってしまう、こういうことになりますと、実は九条の文言から見ますと、日本が主権国家として行動するわけでも何でもないわけです。そういう点においては憲法には直接当たってこない場合もある。それからまた、そういう警察軍が行動するのが、平和的な、いわゆる軍事行動をやらない警察軍もあり得るわけであります。そういうものは頭から九条一項の問題にならない、かように考えるわけであります。
  145. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ごちゃごちゃおっしゃいますが、あなたの解釈としては、その性質によって出せる場合あり、出せば憲法違反になる場合あり、その場合によって異なるのだ、こういうお説のように伺います。いずれにしても、そういう解釈はやがてもっともっと拡大して自由に海外に兵を出せるという状態になる道を切り開くものだとして、私たちとしてはどうしても賛成するわけにいかないわけです。しかし、それは意見の違いですから……。確かめておきたいと思いましたことについてあなたがおっしゃいましたが、現在の自衛隊法によっては、いかなる場合といえども国連軍派兵をすることはできない、こうあなたはおっしゃったけれども、これは間違いありませんね。
  146. 林修三

    ○林(修)政府委員 現在の自衛隊法のもとにおいては、自衛隊を自衛隊の形のままで持っていくということは、私は今の自衛隊法上できない。結局これは、いわゆるそういうものは個々の自衛官を海外出張させるということは、これは別問題でございます。調査の任務とか、あるいは視察のために個々の自衛官が出張することは、これは現在でも行なわれておるのでございます。こういうことは別でございますが、自衛隊を隊として持っていくことは、これは今の憲法では別でございますが、自衛隊法上からは自衛隊の任務を逸脱するもの、かように考えます。
  147. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 一体日本の自衛隊法というものは、憲法の趣旨を明確にするために作ったのだというのが提案のときの御説明だったように思うわけです。すると、憲法と自衛隊法とは相当食い違っている、こういうふうに理解をしてよろしいわけですね。範囲に広狭ありというふうに伺ってよろしいわけですね。
  148. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは一般の国の軍隊については、軍隊というものの過去からの伝統的な任務があるわけでございまして、個々の国でその任務を限定した例はあまりないように思います。従いましていわゆる軍隊というものが海外に出るというようなこと、あるいは国連軍参加することを積極的に禁止したものはもちろんないと思います。ただわが国の場合においては、自衛隊というものはほんとうの意味軍隊ではないわけでございまして、そういう意味におきましては、自衛隊の任務というものが直接侵略、間接侵略にやはり制約されておる。また憲法の範囲に広狭ありという意味でございますが、憲法の範囲を逸脱するようなものはもちろんいけないわけで、憲法の許す範囲において、自衛隊としてふさわしい任務を与える、これは立法としてできることだ、かように考えております。
  149. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の林さんのお答えによってもわかりますように、この問題については相当疑義があるわけです。そして海外派兵現実に慫慂するかのごとき意見松平大使現実になさっていらっしゃる。これは現段階において、少なくとも小坂さんの御説明でも、また林さんの御説明でも、将来国連軍というものは、国連警察軍というものができ上がった場合にはという、こういう御説明であったように思います。ところが現段階において派兵をすることを前提にした意見を述べておられるわけです。そうだとすれば、小坂さんの説明によっても、また林さんの説明によっても、この発言というものは憲法違反の発言だと言わないわけにいかなかろうと思いますが、いかがですか。
  150. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 冒頭にも申し上げたように、用語等について不十分、不適当な点があったと思いますので、厳重に戒告をいたしたわけであります。しかも、用語が新聞に出ておるのでありますけれども、どういうふうに一体正確に言ったのかということは、本人も、どうも私が聞いたところでは、このような必ずしも——新聞もそれぞれいろいろ言っておるようでございまして、私は外務大臣として国会に対して責任を持ってここに答えておるのでありますから、これで一つ御了解を願っておきたいと思います。厳重に戒告をいたします。
  151. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 厳重に戒告をなさるとおっしゃるのですが、少なくとも日本の公務員、これは憲法を尊重し、尊重するだけじゃなしに、これを擁護する義務を負っているわけです。少なくとも認証官に相当すべき、認証官たるべき重要な地位についておる人が、かくも憲法をじゅうりんするかのごとき発言をなさることについて、ただ戒告で済むとは私たち考えられないわけです。そうしてそういうことが、戒告をなさったとしても、現実にあなたの部内で行なわれておるということ、こういうことをどうお考えになるのか。あなた御自身自分の部下の統率なり、自分の部下の監督なりという点について、いささかも反省するところがないわけですか。この点について伺いたいと思います。
  152. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 この新聞を拝見いたしましたが、先ほど私が申し上げておることで尽きておると思います。十分な戒告をいたしたわけでありますし、何も松平君は現在憲法違反をやれということを一つも言っておらない。こういうような空気も自分は感ずることがあるという内語をいたしたという程度を出てないということを、この新聞を拝見いたしまして明瞭に感じておる次第であります。
  153. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の御説明でもわかりますように、実際に松平さんがどのように言っておられるのか、そしてそれをどういうふうに聞かれたのか、この点非常にあいまいです。従ってやはりこれだけ問題が詰まって参りますと、松平さんにここに来ていただいて御説明をいただく、こういうふうにお願いをしたいと思います。(「前例がない」と呼び、その他発言する者あり)まだ前例がないというお話ですが、かつて核兵器の問題について、科学技術特別委員会において、沢田廉三国連大使現実出席をなさっていらっしゃる前例があるわけです。そういう意味で疑義を明らかにするという点で、一つ松平さんをここに呼んでいただくように再度委員長お願いをいたします。委員長一つ理事会でお諮りをいただいておきめをいただきたいと思います。
  154. 船田中

    船田委員長 この際暫時休憩いたします。    午後五時九分休憩      ————◇—————