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1961-02-18 第38回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月十八日(土曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員   委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 保科善四郎君    理事 井手 以誠君 理事 川俣 清音君    理事 横路 節雄君       赤城 宗徳君    赤澤 正道君       井出一太郎君    臼井 莊一君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       菅  太郎君    北澤 直吉君       櫻内 義雄君    田中伊三次君       床次 徳二君    中野 四郎君       中村三之丞君    羽田武嗣郎君       前田 正男君    松浦周太郎君       松野 頼三君    松本 俊一君       三浦 一雄君    山崎  巖君       淡谷 悠藏君    小松  幹君       河野  密君    田中織之進君       滝井 義高君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       長谷川 保君  出席国務大臣         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 古井 喜實君         農 林 大 臣 周東 英雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 木暮武太夫君         労 働 大 臣 石田 博英君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 池田正之輔君         国 務 大 臣 小澤佐重喜君         国 務 大 臣 迫水 久常君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         厚生事務官         (社会局長)  太宰 博邦君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    泉 美之松君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 二月十八日  委員橋本龍伍君及び松井政吉辞任につき、そ  の補欠として仮谷忠男君及び滝井義高君が議長  の指名委員に選任された。 同 日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として松  井政吉君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  分科会設置の件  昭和三十六年度一般会計予算  昭和三十六年度特別会計予算  昭和三十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。     —————————————
  3. 船田中

    船田委員長 この際お諮りいたします。昭和三十六年度総予算審査のため分科会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
  4. 船田中

    船田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、分科会の区分、分科員の配置及び主査の選定等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
  5. 船田中

    船田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。     —————————————
  6. 船田中

    船田委員長 質疑を続行いたします。前田正男君。
  7. 前田正男

    前田(正)委員 私はこの際、まず科学技術から政府の所信をお伺いいたしたいと思う次第でございます。  技術革新時代に、人類の繁栄に寄与するために科学技術の画期的な拡大というものが必要であることは、御承知通りでございます。従いまして、科学技術振興研究開発人材養成等についていろいろと問題があるわけでありますが、さきに政府から科学技術会議諮問をされまして、科学技術の十年後の目標を検討されて、総合的な基本方策というものが答申されておるわけであります。これを具体化するのが政府努力すべき目標であると思うのでありますけれども、今回所得倍増計画というものを出しておられますが、この所得倍増計画というものの基礎としては、科学技術的に検討しなければ、この所得倍増計画というものを具体的に実現することが困難ではないか考えられる次第であります。そういう点において、この答申というものをさらに所得倍増計画の実現の見合いといたしまして、具体的に、長期計画として年次的に作っていく必要があるのではないかと、こういうふうに考えられる次第でございます。従いまして、十年後の基本的方策というものを科学技術長期計画として具体的に樹立するということを、この際科学技術会議諮問すべきではないかと、こう考えられるのでありますけれども、この会議議長総理がやられ、諮問をされるのも総理でありますが、きょうは総理大臣が御出席でないようでありますから、科学技術庁長官から、これについてどう考えておられるか、お答えを願いたいと思う次第でございます。
  8. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 お答え申し上げます。科学技術振興については、政府といたしましても、鋭意これに努力をいたしまして、御承知のように、科学技術会議を作りまして、その答申に基づいて、その方向に向かってわれわれ施策をやっていく、こういう考えでおります。従って、明年度予算におきましても、おそらく前田さんなんか御不満かもしれませんけれども予算の面におきまして、ともかくも、科学技術庁要求予算というものはほとんど新しいものが芽を出しまして、金額としては来年度はあまり大きいとは申されませんが、これがやがて大きく芽を出し、花を咲かせ、実を結ぶ、かような形に発展する傾向をとっておることは御承知通りだと思います。  なお、さらに、ただいま御指摘がありましたように、科学技術会議というものは大事なところでございますので、そこで、科学技術会議議員を今度二人ばかり定員を増加いたしまして、そうして鋭意日本の今後の科学振興方向に向かって、大きな示唆を与えてもらうように検討してもらう、かような立場をとっておる次第であります。
  9. 前田正男

    前田(正)委員 この問題は、所得倍増計画の中にも、実は科学技術投資に対しまして、こういうふうなことが、昭和四十五年度には約三千億と試算されると、こう書いてあるのでありますが、先進国における研究投資の割合は二%、これは日本所得倍増計画に見合いますと四千四百億でありますが、それまで高めることが望ましいというふうに書いてあるわけであります。また、この所得倍増計画の中にも理工系大学不足が十七万人というふうにこれまた書いてございます。また、この総合的な基本方策によりますと、工業高校人員不足が約四十四万人というふうに考えられておるわけであります。これらの問題を取り上げましても、そのほかにいろいろと科学技術的に問題があるわけでありますが、これはやはりこの所得倍増計画が実現するための年次的な長期計画というものを具体的に出していかなければ、これは所得倍増計画というものが実現する基礎にならないと思うのであります。そういう点において、この年次的な長期計画というものを一つこの際科学技術会議に再諮問して出すべきだと思いますが、これに対しましては、当然予算関係の問題が出てくるわけであります。大蔵大臣科学技術会議議員でありますが、こういう問題について、この所得倍増計画を実現するために、具体的に科学技術総合的基本政策を年次的な長期計画として樹立するということに御賛成であるかどうか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  10. 水田三喜男

    水田国務大臣 科学技術振興長期計画賛成でございます。私の方は、科学のどの部分をどういうふうにという年次計画は現在できておりませんので、そういうものが立てられることは好ましいと思いますが、現在科学技術会議答申された技術者人材養成の問題は、今年度の予算でも、大体倍増計画期間内に十七万人理工科系技術者不足するという計算が出ておりますので、なるたけこれを充足する方法として、大学理工科系人員をふやすとかいうようなことを配慮した予算を盛ったのでございますが、この点は大体計画を見通して今度の予算でやったつもりでございます。そのほかの問題はさっき科学技術庁長官から言われましたように、今後年次計画が立てられることは望ましいと思います。
  11. 前田正男

    前田(正)委員 そこで、大蔵大臣にお聞きしたいと思うのでありますけれども、今お話しのように答申を送っておることについては、科学技術庁長官も、あるいはまた大蔵大臣も、年次計画を作ることに賛成のようでありますから、いずれこれを一つ政府は取り上げて、会議にも諮問をしてやっていただきたいと思うのであります。ところが、こういうものをやっていきますについて、きょうはまだ経済企画庁長官はお見えでないようでありまするけれども、この問題は、今御承知通り生産者価格を上げないで、そうして所得倍増をしていこう、こういうことで生産性でもってこれを吸収しようとしておられますけれども物価を押えないで、賃金値上げを吸収しようということになれば、それは労働強化をせずにやるということになれば、科学技術の力によらなければならぬということはおわかりの通りだと思います。しかし、科学技術だけで、これが合理化されて、十分に吸収できるかというと、単に生産向上だけでは吸収できない部分もできてくると思うのであります。いずれこれは経済企画庁長官がおいでになりましたならばお聞きしたいと思うのでありますけれども、その私が吸収できない部分と思いますところは、どうしてもこれはやはり新しい品種、新しい品質の発明とか、工業化とか、あるいは新技術開発特許拡大、こういうようなことに力を入れなければできない、こう考えられるのであります。ところが、まずこの発明奨励関係でございますけれども、これは大蔵大臣も御承知だと思いますが、昭和三十五年も、三十六年度の予算もわずかに五千五百万程度でございまして、ほとんどふえていない。ところが、すでに新聞その他でもやかましくなっております通り、大体外国からの技術導入、いわゆるノーハウとかパテント料とか、そういったものは、大体これはいろいろと計算の仕方はありますけれども、少なくとも、三十四年度で二百二十億以上も日本外国に支払っているのじゃないか昭和三十五年になれば三百億以上になるのじゃないか。本日の新聞を見ておりますと、さらに、最近は技術導入の申請が非常に多い、こういうふうに書いてあるわけであります。こういうようなことでは、この所得倍増計画を、実際に物価値上げしないで、そうして所得をふやしていこうということで、吸収していくのには不十分じゃないかと思うのであります。もう少し発明奨励関係予算というものは、年度的にも私は少しふやしていく必要があるのじゃないかと思いますが、大蔵大臣いかがお考えですか。三十四年が二百二十三億、三十五年が三百億というのに対しまして、奨励の金はわずかに三十六年度でも五千五百万です。三十四年度は五千四百九十八万、こういう数字であります。いかがお考えであるか、ちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  12. 水田三喜男

    水田国務大臣 きょうの新聞を見ますと、昨年の四月から今年の一月まで技術導入件数が三百何十件、昨年に比べて百件もふえているというような趨勢でございますが、これはもうやむを得ないことであろうと私ども考えております。まだまだ技術の立ちおくれ部分が非常にたくさんございますし、所得倍増計画の途中で、新技術開発もむろん必要でございますが、まだ間に合わない部分は、外国技術を導入するという必要が今後まだまだ相当期間続くだろうと私は思います。ですから、それと並行して新しい日本技術研究費、それから新技術開発ということをやらなければなりませんが、今年の予算では技術開発費などは去年の二倍以上計上しているつもりですし、機構もまた新しい機構を作るというようなことで、その道を作りましたから、これに沿って毎年予算を強化していけば、そういう面に十分こたえられるのではないかと思っております。
  13. 前田正男

    前田(正)委員 今の大蔵大臣の御答弁は、新技術開発方針の方でありまして、これは確かに今お話し通り、新しい新技術開発機関をお作りになりまして、そうして伸ばしていこうとされる。しかし、それも三億でありますから、私は金額は少ないと思いますけれども、しかしそういう道ができたことは私も了とするところでありますが、先ほど私が申し上げましたのは、そういうものと違って、発明奨励関係予算というものが非常に足りないということを申し上げた。それで今大蔵大臣の御答弁の中で、技術関係予算は昨年の倍もつけて大いにやったと言われたが、そんなことはありません。これは大蔵省から出しておられます予算説明を見ますと、分類をしておられますけれども科学技術関係予算というものは、御承知通り、全体が、今度予算が二三%伸びておりますのに対しまして、科学技術関係は三十二億、一三%の増であるということを大蔵省のこの説明書に書いてある。そのほかに文部関係とかあるいは教育関係その他にも科学技術関係予算がふえておることは私も認めますけれども、しかし、大蔵省で分類されている科学技術関係予算は、この項目だけでも、少なくとも一般予算のふえた率と同じぐらいの予算は当然つくべきではないかと私は思う。科学技術振興時代でありますから、当然今お話し通り、いろいろと新しい道をつけられたりあるいは教育関係とかその他に大へんな努力をしておられること、政府努力というものは私もよくわかりますけれども、しかし、少なくとも皆さんの方で分類しておられるところの科学技術関係機関、この中には文部省の費用も各省の研究機関費用も全部入っておりますが、そういった伸びが全体の予算伸びに比べて少ない。二三%に対して一三%である。こういうことではやはり科学技術振興であるとは言えないのではないか、こう私は思うのであります。もう少しこの点については大蔵大臣の方も今後の御努力を私はお願いいたしたいと思っておるのであります。  そこで、経済企画庁長官に先ほどちょっと御質問しようと思ったのですが、私が先ほど来所得倍増計画科学技術会議総合基本方策との間の関係について御質問をして、ぜひこれを年次的に具体的にやらなければいけないということについては、科学技術庁長官大蔵大臣も御賛成していただいたのでありますけれども、ここでちょっと経済企画庁長官にお聞きしたいと思うのであります。こういうふうな所得倍増計画というものを、生産者価格を上げないで、いわゆる生産価格というものを上げないで所得倍増をやっていこうというので、これを生産性向上で吸収していこうとしておられます。それはもちろん科学技術によりますところの設備の改良だとか生産手段改良だとか、こういったことが必要であると思うのでありますが、そういう点が具体的に計画の中にも十分に書いてないのであります。しかしながら、そういうふうなことを、やっていかなければなりませんが、年次的にやはりその当初に幾ら要るか、あるいは技術者に幾ら要るかというような長期計画を、具体的に、この所得倍増計画に合わしたものを作らなければ、ほんとうのものはできないと思うのであります。その点については先ほど大蔵大臣賛成しておられましたからいいのでありますけれども一体経済企画庁長官は、この毎年の賃金上昇というものは、どの程度まで生産合理化でもって吸収できる考えでおられますか、賃金値上げ率というものが一体どの程度まで合理化で吸収せられると考えておられるか、物価を上げないで、生産者価格を押えておいて、どの程度上昇率までは吸収できると考えておられるか、ちょっと御説明願いたいと思います。
  14. 迫水久常

    迫水国務大臣 御質問をちょっと私うまく受け取りかねたわけですけれども労働賃金上昇はどの程度まで生産性向上によって吸収し得るか、こういう御質問かと思います。これはもちろん産業の種類によって非常に違って参るとは思いますけれども、私ども考え方は、賃金上昇というものはすべてこれを生産性向上によって吸収するという考え方でございます。
  15. 前田正男

    前田(正)委員 すべてこれを吸収するという考え方でいきますと、お話し通り所得倍増計画というものは卸売物価を上げない範囲において所得倍増していこうというのでありますから、それを七・二%毎年やっていくと十年で倍になるという計算ですから、七・二%までの範囲は吸収できる、こういう計算でおられるのではないかと私は思うのであります。しかしそれは私が今申し上げました通り生産性向上というものだけでは困難ではないかと思う。やはりもう少し科学技術的に、新しい品種、新しい品目、あるいは新しい発明特許、こういうものができてきて——これは実は戦後においても、御承知だと思いますけれども、現在は戦前に日本になかった産業というものが相当行なわれており、それがまた非常に良質のものが安く作られておるということが、今日の経済の成長というものに大いに役に立っておるのだと思うのでありますが、そういう点において、もう少し所得倍増計画というものを重点的に考えていただくと同時に、大蔵大臣にもお願いしたのでありますけれども、そういうふうな予算をもう少しふやしてもらいたいということであります。  それはその辺でけっこうでありますけれども、次に通産大臣にちょっとお聞きしたいと思うのであります。この科学技術会議答申にも書いてあるのでありますけれども特許行政改善というものが必要であるということが答申されておるわけであります。これは前から言われておることでございますけれども特許関係は非常に未処理件数が多く、遅延しておるとか、いろいろな問題がありまして、毎年通産大臣は、これについて通産省としても努力はしておられると思うのでありますけれども、この際、この特許行政というものについて、科学技術行政と一体化して、思い切った改良をしなければできないのではないか、こう私は思うのであります。通産大臣はどういうような特許行政の改新の御方針を持っておられるか、お聞きしたいと思います。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お答えいたします。特許行政につきましては、最近出願件数が非常にふえて参りまして、とかく渋滞がちでありましたので、去る昭和三十年から五カ年計画で人あるいは施設等相当増強をいたしまして、だんだんその改善方向に向いてきておるのでありますが、しかし、また最近の出願件数は激増しておりますので、とても従来のままでは処理しきれないという状況でございます。ただいま特許実用新案件数だけでも二十三万件たまっておる。これでは、現在の処理能力では二年半かかるというような状況であります。その他意匠、商標あるいは審判の件において、いずれも現在の能力では数年かかるというような状況でございますので、さらに三十六年から人を相当増強いたしまして、そしてこれらの渋滞を一掃するようにしたい、こう考えております。しかし、それだけではなお不十分でございまして、工業所有権あるいは実用新案、そういうようなものについては多分に技術的な能力を要するのでございます。それで工業技術院のそれぞれの職員に下調べを頼んで、事務処理が進行いたしますように、今年度からそういうことを始めたい、かように考えております。
  17. 前田正男

    前田(正)委員 科学技術関係質問がまだ残っておるのでありますけれども外務大臣外務委員会の方に御出席のようでありますから、科学技術関係質問をあとに回しまして、先に外務関係質問をいたしたいと思います。  実は私がこの際外務大臣にお聞きしたいと思いますことは、中共関係の問題でございますけれども、私が立場上御質問したいと思いますことは、おもに内政干渉の問題でございます。私は、本年は中共が国際的な地位、いろいろと国連の代表権の問題であるとか、核実験の停止問題であるとか、あるいは軍縮交渉の問題であるとか、こういうことで世界の問題になるということは間違いないと思います。また、総理大臣がことしは日本中国との間の国交改善の年だ、こう言われたことも私は賛成でございます。そういう点についてはわれわれも大いに改善を要するものである、こう思うのでありますけれども、しかしながら、国交正常化というものについては、中共側の方は三原則を示しておる。われわれの方は、政府がたびたび声明しておられる通り内政不干渉、相互の立場の尊重、こういうことを言っておられるわけであります。そこで私たちは、国交正常化するという以上は、この正常化に伴っていろいろと問題が起こってくると思うのでありますが、その中において特に内政不干渉、こういう問題について、一応いろいろと不安な問題が出てくるのじゃないか、御承知通り安保問題とかあるいは警職法の問題とか、こういうときにそれに類するような問題がいろいろとあったといわれて、いろいろと保守側の諸君においても心配をしておられる。国民の中においても相当この問題について心配しておる人が多いと思う。ところが、正常化しようと思うならば、こういう心配を取り除かなければならないのであって、私たちは、国交正常化するという以上は、対等の立場で話をするわけであります。何も日本が頭を下げて、屈してつき合うわけじゃないと思う。従って、この内政不干渉ということは、これはどうしても原則として貫いていかなければならぬ。国交正常化する以上は、お互いに善意立場でやると私は思うのであります。従って、相手もそういうふうなことを考えていないと思うのでありますけれども、しかし相手善意だけにたよっておったらそれではいいかというと、安保問題とか警職法の問題のときのように、いろいろとそれらの問題について不安を持っている人も相当おるわけです。従って、これは内政干渉を受けないような国内態勢というものを私は整備をしなければいけないのじゃないか、こう思うのであります。そういう点において外務大臣は外交上いろいろとお調べを願っていることだと思うのですけれども、現在中共国交を持っておられる国、こういう国の今日のそういう体制ですね、治安体制といいますか、内政干渉を受けてもそれを防いでいけるだけの十分な体制というものを各国では整えておると聞いておるのであります。イギリスにおきましてもすでに相当の刑法的な体制を持っておられる。あるいはまたインドは、私たちの聞いているところでは、予防拘禁法というものがありまして、あるいは相当思想警察に近いようなものもあって、十分な体制を整えておると言われております。あるいはまた御承知通りアラブ連合のナセルの国は、共産党を禁止しております。こういうふうな態勢であります。また私たちがつき合おうという共産圏自身も、ソ連、中共自分たち国内法として、この治安関係の法律というものは、相当十分な体制を整えておるというふうにわれわれは聞いております。整えておるだけではなしに、相当きびしい取り締まりをしておると聞いておるのであります。こういうような点について、私たちはこれから日本中国国交正常化をしなければならぬ年だ、こういうときでありますから、まず第一に国内内政干渉を受けても十分であるという体制というものを整えていかなければならぬと私はこう考える。  その点において、まず第一に外務大臣にお聞きしたいのは、私が今申し上げましたような話を聞いておるのでありますけれども外務大臣としては、現在中共国交を開いておるような国々が、一体どういうふうな国内体制を整えてこの内政不干渉原則を貫こうとしているのか、そういうことを、ごく概略的でけっこうでありますから、お聞かせ願いたいと思います。
  18. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 中共との関係改善いたしまする際に、われわれとして強く銘記しなければならぬ問題は、今お言葉にありましたように、内政不干渉の問題、双方がその立場を尊重するという問題、また双方の国民経済に利益のある貿易をしていく、かような三点であろうかと思っておるわけであります。しかし、お話のように、わが国の国内がなかなか一致した行動がとれないのではないか、むしろ内政干渉を誘発するごとき言動も一部には見られるということは、遺憾なことだと思っております。その意味において、外交を考えまする場合、政争は水ぎわで打ち切って、そうして日本の国の基本的な立場というものを一致しておいて、そうして他との交渉に当たるということでなければ、どうしても真の意味の友好関係というのは生まれないと思うのであります。それでさようなことに努力したいと思っておるのでありますが、ただいま御設問の中共関係を結んでおる、国交を結んでおる諸国のうちアラブ連合、パキスタン、ビルマ等においては共産党が非合法化されておるのであります。またその他共産党が合法化されている西ヨーロッパ諸国やインド、セイロン等の国でも、通常時、特に共産党を対象とする治安立法というものはないわけでありますけれども、しかし今申し上げたように、割合に国内が一致して他に当たる場合には国論の統一というものができておる、こういう点がどうもわれわれの方に欠けておる点ではないか、こういうふうに思っておるわけであります。
  19. 前田正男

    前田(正)委員 そのほかに私たちの聞いているところは、今の外務大臣の御答弁のほかに、インドなんかにもある程度日本より進んだ治安的な立法もある、また情報機関等も、そういうものも備わっておるように思うのでありますが、やはり何といっても私たち治安関係の確立をするということが一番大事であって、この問題についてとやかくいろいろと言われる人は、かえって中共日本との間の国交改善というものに対してそれをおくらせるようなことになるのじゃないかと実は私は考えておるのであります。それで、私たちはそういう点についてもう少し法秩序の維持だとか、あるいは法律の不服従だとか、非合法的な革命手段だとか、こういうものに対する法制の整備とか、そういうものが必要になってくるのじゃないか考えております。そういうものがなければ、これは内政不干渉というものを原則として掲げておりましても、実際に安保問題とか、警職法の問題等でそれに類するようなことがあると言われておるのでありますから、それに動じないような体制というものを整える必要があると私は思う。こういう点について、この際法務大臣と公安委員長の御所見を一つお伺いしたいと思います。
  20. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お答えいたします。最近における社会情勢の不安な姿は、まことに遺憾にたえません。こうした問題に対処するために何らか適当なる立法上の対策を考えておるかという御質問と拝聴いたしますが、最近におけるこの事態は、何とかして早く平穏なる時代を来させなければならぬのでございまして、立法上の問題としてはそれぞれ既存の法律を最も適切有効に運営していくということが第一番に考えなければならぬ問題だと承知しております。そうして、この適切なる運用によりまして、対策を講ずる反面、また現行法の不備等がないか、どういう点についても平素怠りなく研究を続けておりますのみならず、さらに新しい立法等につきましても、これまたその必要性の有無等について十分検討をいたしております。関係当局との間にも緊密なる連絡をとっておる次第でございます。ただ、こうした問題は影響するところ非常に大きいのでございまして、そのために慎重なる態度で、しかも熱心に検討いたしておるということだけをお答え申し上げたいと思います。
  21. 安井謙

    ○安井国務大臣 御指摘の通り、思想傾向あるいは政治の全く違った国同士の関係でございますので、お話のような危惧というものは十分に考えて、あらかじめ対処しなければなるまいと思っております。また、今法務大臣のお話のように、現在のところは、現在の法制のもとで最善を尽くしたいと存じます。さらに状況の変化いかんによりましては、各関係方面ともよく相談いたしまして、善処したいと思っております。
  22. 前田正男

    前田(正)委員 私は外務大臣もお急ぎのようでありますから、外務大臣の問題を先に集中しますけれども、やはり、日本中国との間の国交改善の年である、われわれも政府のその所信には賛成でありますけれども、そういう年でありますから、この改善ができるための体制というものをまず整えるということにこの際外務大臣一つ政府部内で意思を統一するように御努力をぜひお願いいたしたい。そういうような不安な体制では、私たちはせっかく改善しようと思っておりましても、外交というものは善意だけでやらなければならぬわけでありますけれども、御承知通り、事実上対日問題については事ごとに声明が出てくる。きょう午前中総理大臣がここで御答弁になったことは、夕刊には北京からの放送としてもう日本の記事に出ておる、こういう状況なんです。放送がくる、宣伝がくる、いろいろなものが出てくる。こういうような実情であって、これは内政干渉に類するものもあれば、内政干渉に類しないものもありますけれども、そういうような体制であれば、情報機関にいたしましても、宣伝機関にいたしましても、私たちはこういう点についてやはり思想、体制の違う国と国交を開こうというのでありますから、体制を整えることを、ぜひ外務大臣が中心になられてまず整えていただきたいと思うのであります。  次にもう一つお聞きしたいと思いますことは、この中共問題は先ほど申しました通り核実験の問題だとか、あるいは軍縮交渉の問題等で非常に国際的な問題になってきまして、さらにこれが代表権の問題で、ことしの秋の国連総会においては相当大きな議題になると私は考えられる。これには当然外務大臣は御出席になると思うのでありますけれども、私は、こういうような重要なときには、外務大臣はもちろん御出席願わなければならぬと思いますけれども日本の国の将来に関し、また国際的な外交問題などもあるし、また国の方針としても国連外交を強化しようというときでありますから、私は、やはり総理大臣外務大臣みずから御出席さるべきものじゃないか。私は、この国会終了後に総理大臣がアメリカに行かれるということに別に反対するわけではございません。これはぜひ行かれた方がいいと思いますが、しかしまた国連総会のときに総理外務大臣そろって——各国の首脳が昨年のときは出てこられてやられたが、日本はそのときに選挙を控えた国内的な問題がありましたから、総理が国を離れることは大へんだったと思いますけれども、ことしはそう政局多端でもないと思いまするから、こういう大きな国際問題、特に政府が言われました日中改善の年で、この中共問題が大きく取り上げられるときには、政府としては総理外務大臣等がこぞってこれに出席されて、日本立場というものを中外に明らかにすべきではないか、こう考えるのでありますけれども外務大臣の御意見をお聞きしたいと思います。
  23. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 御意見につきましては、まことに私は同感でございます。  前段のお話の日中の関係改善につきましても、やはり外交というのは国民の利益のためにやるわけでございます。その結果といたしまして、日本国民が不利益になるような立場国交を開きましても、これは真の意味の国交改善にならない、関係改善にならないわけであります。そういう点につきましては、やはりある意味で内政と外交はつながっておるものである、非常に強くつながっておる、かように考えまして、御意見の線に沿うて努力しておる次第であります。  後段の国連の出席の問題でありますが、これまた世界の大勢といたしまして、たとえばイギリスのマクミラン首相が行くというような場合にはヒューム外務大臣がついて行く、あるいはカナダのジーフェンベーカー首相が行くときにはグリーン外務大臣がついて行く、そういうふうに総理大臣外務大臣とペアになって動くというのが最近の通例のようでございます。この秋の国連は、今お話しのような意味でも重要でございますから、十分お話の線に沿うて考えて参りたいと思っておる次第でございます。
  24. 前田正男

    前田(正)委員 外務大臣はけっこうです。  それでは中共問題が話に出ましたので、これに関連いたしまして少し聞きたいと思います。この内政干渉を防ぐということについては、情報関係の問題が非常に中心をなすと思うのでありますけれども、これは官房長官まだおいでになられませんから次にいたしますけれども、その情報関係に関連いたしまして非常に大きな問題だと思いますのは、わが国のスパイ活動の問題でございます。これは法務大臣に一つお聞きしたいと思うのでありますけれども、世間一般に、わが国はスパイ天国だと言われておる。なるほど考えてみますと、スパイに対しまする取り締まり的なものは何もありません。こういうようなことでは、私たちの国がこれから考え方も違う国々とつき合っていかなければならないそういうときに、やはり私たち国内のスパイ活動というものに対しましては十分な体制を整えないことには、内政干渉してはいけないといっても、彼らはこれを利用していろいろな運動をやる可能性が非常に多いのであります。すでにその一、二のものは、これはアメリカの占領中でありましたけれども摘発されて、そうしていろいろと事実も出てきております。私たちは講和独立したのでありますから、この際、私たちの国においてこういう問題を取り締まるということを考えなければならぬじゃないか。一部には、防衛生産とかいろいろな関係から、秘密保護法を作ったらどうかというような意見があるようでありますけれども、私はその点については必ずしもそうは思っておりません。私といたしましては、秘密保護法というよりも、このスパイを防ぐという関係で、防諜法というものをこの際制定していくべきものではないか国内の言論とかその他を抑圧するという考えでなしに、この日本の情報というものを売って外国から利益を受けよう、こういうものを取り締まるのがまず第一の問題ではないか。秘密保護法もさらに検討を要する問題であると思いますけれども、まず第一番に必要なものは、情報を売って外国から利益を得よう、こういうような行動に対しましては、当然私たちはこの際独立国として対策を整えなければならない。現在までそういうようなものを各国は全部持っておる。一流国というものはほとんど持っておる。私たちはこれから各方面にわたって国交を開いていこうというわけであります。また独立国としての体制を整える。これは一つ真剣にお考え願わなければならぬと思うのでありますが、法務大臣はどうお考えになっておりますか。これは法務省の所管だと思います。
  25. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 お答えいたします。前田委員の仰せの通り、一部では日本はスパイ天国と言われるほどスパイ活動が盛んじゃないか、また楽じゃないかというような御質問でございますが、その是非批判につきましては、私どもも、どうもそうじゃないかと思える節があるのであります。われわれ当局といたしましては、この問題につきましては常にやはり検討を続けております。たとえばこの問題につきまして関係の当局と十二分に打ち合わせしております。個人に秘密があるごとく国家にも守るべき大事な秘密があり得ると思います。あるいはまた、防衛上の見地から申しましても、同様に守らなければならない秘密があり得るのであります。しかるに、最近のこうした社会不安の情勢から、どうもスパイ活動がますますはなはだしいのではないかという傾向も察せられますので、われわれといたしましては、さしあたり現行法の範囲内で十分に監察、調査を続けておる、こういうわけであります。しかし、これについて今直ちに防諜法を作るかどうかという問題につきましては、こうした問題は、ややもしますと大事な、お互い憲法上保障せられておるところの言論の自由でありますとか、学問の自由でありますとか、あるいは裁判上の公開の原則といったような基本的な権利に関係するところも非常に深いのでございまして、こうした意味で十分これらとの間も研究いたしまして、そうして適切に機を誤りなく研究を続け、必要に応じてはこうした立法も考えなければならないのではないかというので、鋭意関係当局と連絡中であります。
  26. 前田正男

    前田(正)委員 今の御答弁の中で、私、法務大臣に特にお話しておきたいと思うことは、お考えとしてはけっこうでありますけれども、裁判の公開の原則に触れるのじゃないかというようなことをよく法務省の方は言われるのでありますけれども、裁判になったときは、これは秘密じゃないのです。裁判は憲法上公開の原則でおやりになったって私は何にも問題はないと思う。裁判に提起されたようなときのものは秘密じゃない。そういうふうなことで情報がすでに漏れてしまった、外国にスパイされてしまったあとのものは、それは裁判として処罰するだけであって、今後のそういうものを防ぐためのものであって、裁判の公開の原則に触れるから防諜法を作るのはどうかという議論を法務省の人はよくされるのでありますけれども、そういうのはおかしいじゃないか。そういうのはやはり憲法に従って裁判は公開でされたらいいじゃないか。裁判ざたになってからスパイ活動というものは別に効果はない。だから裁判では堂々と全部さらけ出して話していったらいいのだと私は思うのです。ただそういうものが外国に漏れるまでの間が一番大事だ、漏れないようにするのが防諜法の精神だ。漏れてしまった事実をつかまえてやるということは、今後のためにもまたそういうことを犯した人に対しても処罰しなければならぬのでありますから、それ自身は別に公開して困るものじゃない、私はこう考えておるのであります。そういう点について法務大臣も一つよく御研究願って、防諜法というものについても、もう少し独立国としての体制を整えるようお考えを願いたいと思います。  次に防衛庁長官にお聞きしたいと思うのでありますけれども中共の関連の事項でありますが、最近中共は将来核武装をする、核実験をやる、こういうことが言われておる。しかもこれはたしか昨年の正月の新聞だったと思いますが、中共の首相が将来核実験、核武装をやるというようなことを声明したことが新聞に載っておったと思うのでありますけれども、そのほかいろいろな情報が入っておるわけであります。私はこういうふうな、中共が将来核実験をやる、核武装をやるということに対しまして、日本は御承知通り核武装はしないというのが日本考え方でございます。こういうふうなことは、日本は、何も日本だけじゃなしに、世界に向かって核実験だとか核武装をやめろということを政府としては忠告してきた。当然今度中共核実験というものがもし具体化するということになりましたならば、政府も、フランスの場合と同様に抗議をすると思いますし、現在私は、これだけいろいろな情報が流れておるのに、日本にある原水協という団体が反対運動をしないというのは実は不思議でしょうがないのです。どうしてやらないのかと思いますけれども、しかしその構成人物に多少問題があるようでございますから、あるいはそうかもしれませんが、しかしいずれにいたしましても、こういうような態勢というものが具体化されることになりますと、われわれといたしましても、やはりこれは対等の態勢というものを整えなければならぬ。しかし日本はこれに対しまして、対等といっても核を持つわけにはいかぬ。ところが核というものは御承知通り核兵器が一人で来るわけではありません。これを必ず運ぶものがあるわけであります。ジェット飛行機なり、あるいはミサイルなり、こういうものがあるわけであります。そういうふうなことを日本に対してしかけてくることはないとは思いますけれども、私たちはやはりどういう方面から——御承知通り日本をめぐる国はアメリカもソビエトも、最近また中共もということになりますが、そういうふうな核兵器を持つことになるわけでありますから、必ずしもこれは中共だけじゃありません。あるいはどういう方面から飛んでくるかもわかりませんけれども、われわれとしては十分に防衛をしていくということになれば、この核兵器を持ってくるものを落とすよりほかに方法がないのじゃないか。これを持ってくるものを落とすという態勢を整えて、初めて自主的な防衛態勢というものが整うのじゃないかと思う。これを落とすものといえば、ジェット飛行機にいたしましても、ミサイルにいたしましても、これはやはり防空用のミサイルあるいはミサイルに対抗するところのミサイルというものを作っていかなければならぬのではないかと思うのであります。日本においては、核兵器を持ったりあるいは核的な装備をするというふうな技術を持つこともできませんし、またそういうことを考えることも必要ないと思いますけれども、しかし、そういうふうな態勢というものが私たちの国をめぐる態勢にはあるわけでありますから、やはりこれに対抗するところの防衛態勢というものがなければ対等の立場というものはあり得ないと思う。それを対等の立場にしようと思うならば、このミサイルというもの——第二次防衛計画では一応アメリカからもらおうとされておるようでありますけれども、私は、日本をめぐる国が核兵器を作る技術を持つならば、日本はそれに対抗するミサイルを作る技術を持つということがやはり対等の立場ではないかと思うのであります。そういうものが使われるということは私たちとしては絶対に避けなければならぬことだと思いますけれども、しかし私たちは、そういうものをおれは持っておるぞというような威嚇を受け、あるいは威嚇に近いようなものを受けては、日本の国の立場というものを維持することは困難であると思います。従いまして、私たちはやはりこれに対抗できるだけの力を持つことが真の防衛ではないか、兵隊をそろえるとかあるいはいろいろな装備を持つということも大事であります。大事でありますけれども、そういう一朝有事のときには対抗できる力を日本は持っているぞ、技術を持っているぞ、生産力を持っているぞということが、私は真の日本の国の防衛じゃないか、こう思うのであります。そういう点において、日本をめぐる核兵器の情勢というものはだんだんと時期的にも非常に早くなるという話が多いのであります。伝えられるところの第二次防衛計画ではどういうふうになっておるか知りませんけれども、この間の御答弁では、初めアメリカから持ってこられるようなことを言っておられましたけれども、私はこの第二次防衛計画の中に、ミサイルを作る態勢というものをこの際持つということがやはり一番私たちの国の根本的な防衛体制ではないかと思うのでありますが、それに対する防衛庁長官のお考え一つお聞かせ願いたいと思います。
  27. 西村直己

    ○西村国務大臣 中共が核武装をする、あるいはまた核実験をやるという的確な情報はつかんではおらないのでありますが、しかし、不確実な情報としては核実験を数年あるいは二、三年後には行なうのではないかということが言われておるのであります。また核実験とは別に核武装の方はより安易であろうと思うのであります。従ってわが国に対してこれ自体が直接の脅威になるかどうか、この問題につきましては、とにかくそういう方向をとることについては好ましくないということは一応言えると思うのであります。もちろんこれに対して、先ほどお話がありました核実験等は外交上の問題あるいは原水協等が取り上げらるべきじゃないかと私も同感に存じております。問題は、日本の防衛はあくまでもわが国の国土、国民の防衛でございます。従いまして国防会議等で当初に基本方針を定めました通り、国力、国情に応じたわが国の国土の自衛という観点からものを考えて参らなければなりません。従って、かりに各般の核からくる攻撃の脅威があったにいたしましても、私どもといたしましては、わが国の国情、国力に応じた範囲内においての自衛はいたしますが、それ以外には集団安全保障体制の力により抑制しあるいは防御をする、これが基本観念でございます。もちろんわが国といたしましても装備の近代化ということは不断に考えておるのであります。従って装備の近代化の一つには、前田委員からおっしゃいましたように核を運んでくるいわゆる飛翔体、ミサイル、あるいはこれらを撃ち出す航空機というものを考えて参ります場合に、わが国の自衛力といたしましても、有人機の近代化、ここに今日104Jの生産が始まっておるのが一つでありますが、いま一つは、これらを早くキャッチする防空組織いわゆるBADGE組織であります。電子頭脳によって簡単にこういう状況を把握する。そしてわが国の被害を最小限に食いとめていく、これも一つ考え方であります。いま一つは、これを抑制しあるいは防衛するためのミサイルの開発であります。ミサイルの開発につきましては、すでにたびたび申しましたように、現在技術研究本部において、わが国情に応じた限度の開発はやっておるのであります。問題は、これを国産化するかという問題が一つあると思います。ミサイル自体につきましては、サイド・ワインダー等一、二のものにつきましてはすでに導入に手をつけておるのでありますが、国産化の問題につきましては、もちろんわれわれは国力、国情に応じてこれはある程度の国産化ははかって参らなければなりません。ただ、ミサイルというものは御存じの通り、非常に広げて参りますれば、また相当な規模、相当な金を食う場合もあり得るのであります。そこいらを十分に考えて、私どもとしては、最もわが国の自衛に適した方法においての導入、国産化、こういう観点で二次防衛計画の中で十分検討を加えて参りたい、こういう考えでございます。
  28. 植木庚子郎

    ○植木国務大臣 先ほどの私の答弁が不十分でありましたために誤解をお与えしたように思いますから、さらに補足さしていただきます。  裁判所の公開の原則等にも関係することがあると私が申し上げたことにつきまして、裁判になってしまってからでは、その案件は外へ漏れてしまったのだから公開の原則に何も関係ないじゃないかというような御意見、御批判のように承りましたが、私ども考えておりますのは、やはり具体の案件そのものは、かりに漏れてしまった問題でありましても、公判審理の途中におきまして、おそらくこうした場合によりましては他の問題に波及する、それが議論になってくるという場合も当然これは予想せられるのであります。そういう意味におきましてやはり慎重な考慮が必要である、検討が必要であるという意味において申し上げたのでございますから、御了承願いたいと思います。しかし、御趣旨の存するところは十分に拝聴いたしまして研究いたします。
  29. 前田正男

    前田(正)委員 それでは今の防衛庁長官の御答弁で、このミサイル生産という問題が日本の国力に応じた範囲においてということで問題があるわけでありますけれども 私はもちろんそれを整えるには地上態勢というものを整備しなければならぬと思いますが、しかし、やはりわれわれがそういうものを作る能力を持っておるということが、国民における一番強い力というものを感じさせるのでございます。この国力ということが、やはり現物を持つというか、そういうものを製造する能力を持つということが一番大きな防衛力ではないだろうか。たくさんのミサイルの数を持つとか、たくさんのミサイルの施設を持つということは、それは国力に応じてなるほどやらなければならぬと私は思いますけれども、しかしそれはやはり国力の限度というものもありますし、また、日本をめぐる防衛情勢というものもありまして、そう無理をしてやるわけにはいかない。しかしそういう能力を持っておる、これがやはり一番大きな問題ではないかと私は思う。  そこで、今防衛体制の問題が出てきましたので、ちょっと防衛問題に次に触れてみたいと思うのでありますけれども、今お話しのようなことは、集団安全保障体制というものはもちろん現に存しております。存しておりますけれども、集団安全保障体制にだけたよっておるということなら——というわけではないと思いますけれども、しかし集団安全保障体制というものにあまり力を注ぐということなら、私は、これは少しく考え方を変えなければいけないのじゃないか。それはなぜかといえば、私たちは安全保障条約の改定というものを昨年やりましたけれども、私たち防衛に関係した者ほとんどすべての人は、まだ日本が安全保障体制を改定するほど実力がないじゃないか、時期尚早じゃないかというのがわれわれ党の国防部会のほとんど一致した意見であった。しかしながら、政府は大きく世界情勢を判断されて、この際安保条約を改定して日本は自主的な防衛をやるんだということで、そうしてもちろん集団安全保障体制の一環の中ではありますけれども、自主防衛というものを大きく表に出していかなければならぬ。安保条約を改定するという以上は、この自主防衛というものを表に出してこなければ、私は安保条約を改定されてきた意味がないと思う。そこで私たちもそういうふうに政府が大きな力を、この際自分たちで自主的に防衛をやろう、安全保障体制の一環としてやるけれども、従来と変わって自主的な防衛体制というものを大きく表へ打ち出していこう。こういう決意を示されたから、それならば私たちも安保条約改定に賛成しようということで賛成をいたしたわけであります。しかし私は、個人的には日本をめぐる情勢、国内の実力の態勢等から見て、まだなかなかその時期は早いんじゃないかと思って、たびたびそういうことを外交調査会その他の席においても申し上げております。しかしながら、政府がそういうかたい決意をされてやられるというのでありますから、そういうことはこれはほんとうにけっこうなことでありますから、ほんとうにできるならば私はそれはけっこうだ、こう思っておった。ところが、この安保条約が改定されてから現実はどうかといえば、この改定された精神というものはほとんどそのままになっている。それをもとにしまして、政府はそれじゃ自主的な防衛体制というものを整えるべく努力をされておるかというと、三十六年度の予算の編成に至るまで、この問題についてはわれわれはたびたび取り上げてお話しましたけれども、なかなか国防会議を開かない、あるいは第二次防衛計画も立てない、それを作ろうという努力もされない。安保条約を改定して自主防衛でやるというなら、早く第二次防衛計画を立てて、集団安全保障体制の一環でありますけれども、われわれはこうするのだ、こういう体制を打ち出していって初めて安保条約が改定された意味があるじゃないか。私たちは、そういう自主的なこの体制を整えて初めて安保条約に書いてあるところの経済協力という問題も生きてくるんじゃないか、そういうふうなことを考えるのであります。ところが、今度の予算編成においてやかましい議論になりまして、われわれの党の方からもいろいろと政府にも要望いたしまして、ようやく国防会議が開かれて、そうして第二次防衛計画はなるべく早く作ろう、こういうふうな結論になっておるようでありますけれども、しかし、三十六年度の予算のときにおきましても、この中の一つの問題でありますところのヘリ空母の問題はとうとう未解決で持ち越された、こういうふうな形になっておるわけであります。私は、第二次防衛計画というものをこの際早くまとめられて、次の来年度の予算の編成の事務的な折衝に入るのは御承知通り八月でありますが、七月の末までに各省が要求を出される。それまでには第二次防衛計画というものは政府としては成案を得て事務折衝に入れるようにしなければ、安保条約を改定された意味はないと考えるのであります。これは担当の大臣とされては防衛庁長官であり、それに一番関係あるのは大蔵大臣であると思うのでありますが、いつごろこれをまとめられるお考えであるか。大蔵大臣と防衛庁長官と両方から御意見を伺わさしていただきたいと思います。
  30. 西村直己

    ○西村国務大臣 安保条約が当初にできました当時は、日本の自衛力はゼロであったわけでありますが、その後におきまして漸次自衛隊等ができ、あるいは防衛庁が設置されまして、やがて安保改定になった。安保改定そのものは私は意義があると思います。言いかえますれば、安保によるところの集団安全保障体制と国の自主防衛努力と合わせて日本の自衛というものをやって参りたい、これが基本観念になっておると思います。その意味で、わが国の国力に応じた自衛力を漸増しようというので、本年度の予算におきましても二百一億でありますか、それ以外に国庫債務負担行為等において増勢をはかっておるのであります。先般の国防会議は、不幸にいたしまして国内のいろいろな諸情勢から約一年半ばかり開かれておらなかったのでありますが、この予算を前にいたしまして、単年度限りの国防方針というものを打ち出しまして、そうして陸上においては師団編成による改編等を行なったのであります。それと同時に、あわせてすみやかに防衛庁におきまして二次の長期防衛計画を立案する、私どもの方はその作業を急いでおるのであります。と同時に、ただ国防会議で突如こういうものをお互いが政府内部におきまして論議してもいけないのでありまして、平素からわが国の防衛をめぐる諸問題につきまして、閣僚あるいは総理を中心に政府内部の意思を十分述べ合うというような意味から、国防会議懇談会等も原則として毎月やろうではないかというような内部申し合わせがありまして、この二十三日に第一回の会合をやっていきたい、こういう考えでございます。
  31. 前田正男

    前田(正)委員 私の聞きたいのは、来年度の予算編成に間に合うように——事務折衝に入られるのは、七月の末に各省が事務的なものを出して、八月から入るわけですが、それに間に合うように第二次防衛計画というものを作られる方針であるかどうか、そこを聞きたい。
  32. 西村直己

    ○西村国務大臣 もちろん防衛庁長官といたしましては、来年度の予算編成以前にはっきりした予算折衝に入れる態勢の意味におきまして、国防会議決定によるところの二次防衛計画、防衛力整備計画というものを持つ強い決心でございます。しかしこれは政府内部全部を統一しなければなりませんから、事柄は他の関係官庁にも関係するわけでございます。その意味で国防会議懇談会等も常時持って参りたい、こういう考えでございます。
  33. 水田三喜男

    水田国務大臣 御承知のように第一次の防衛計画は三十五年度で終わり、すぐに二次の長期計画が必要でございますが、これは間に合わない。今年度はこの長期計画の観点から見ますと、ブランクの年になるわけでございますが、第一次計画そのものもまだ計画通りに実施されて実現しておりませんので、今年度はもっぱら第一次計画で実現してない部分の充実に努める、こういうことで今年度の予算は編成されておりますが、できるだけ早く第二次計画ができることを望んでおります。
  34. 前田正男

    前田(正)委員 どうもできるだけ早くという抽象的な言葉ではよくわからぬのですけれども、要するに、大蔵省としては、各省に七月末までに来年度、三十七年度の事務的な予算要求を出さして、八月から事務折衝に入る、これは毎年そういう方針でおやりになっていると思うのですが、三十七年度ももちろんその方針をおやりになると思うのでありますけれども、防衛関係も同様にそういうふうにおやりになるのじゃないかと思うのです。そうすると、事務折衝の七月末に書類を出させるまでの間に第二次防衛計画というものをまとめて、そして事務折衝に入れるような態勢を作るということに、大蔵省賛成であるかどうかということをお聞きしたいと思うのです。
  35. 水田三喜男

    水田国務大臣 本年度第二次計画はできなかったために今のような予算措置をとっているということにかんがみましても、来年度の予算要求があるまでにはこの計画は策定されなければならぬと思います。
  36. 前田正男

    前田(正)委員 よく明瞭にわかりましたから、完成される第二次防衛計画は大体時期はわかってきましたけれども、実際こういうものは予算編成されるときに十分に間に合うように政府としても方針をきめていってもらわなければならぬ。防衛というものは国の大事な政策でありますから、政府ももう少し責任を持ってやっていただきたいと思うのであります。  次に、この防衛問題で、安保条約が改定されて、今申しました通り、自主防衛というものを推進するということであります。そういうことなら、現在防衛関係の行政の責任は防衛庁がとっておるわけでありますけれども、防衛庁というものは大へんたくさんな人数がおるわけであります。従いまして、これを一つこの際責任官庁として当然省に昇格すべきであると私は考える。この問題については行政管理庁の長官からお聞かせ願いたいと思いますが、前にも行政管理庁の審議会にかけた答申の中に、総理府にあります外局というものは逐次これを独立さしていこうじゃないか、こういうふうな意見がありまして、そのうち特に自治庁は、そのままの姿でありましたけれども、消防庁がつきましたが、独立された。当然防衛庁も、内容の整備とかいろいろな意見がありますけれども、それは別といたしまして、自主防衛の立場でやろうというのでありますから、われわれの党の方も、とりあえず現在の姿でもいいから責任ある官庁にしたらどうか。これは私が詳しく言わなくても、同じ姿でも、国務大臣というものと外庁の長官というものでは、行政上の責任が違うということも御承知通りであります。この際私は、今のままの姿におきましても、安保条約を改定して自主防衛を推進しようというのでありますから、また従来の行政管理庁の、総理府の外局を整理しようという方針から見ても、この際これを省に昇格すべきじゃないかと思いますが、行政管理庁長官の御意見を一つ伺いたいと思います。
  37. 小澤佐重喜

    ○小澤国務大臣 前田君と同じような意見がたくさんあります。しかし諸般の情勢を考えてみますと、まだ少し早いのじゃないか考えております。
  38. 前田正男

    前田(正)委員 どうも今の御答弁では少しはっきりしないように思うのです。これはもう少し政府が態度を明瞭にしないことには——こういうものを推進することが、安保条約改定の一番大きな意義じゃないかと私は思うのです。だから先ほどから申しておる通りに、たくさんの金を使えとか、たくさんの整備をしろとか、そういうことは国情に応じてやらなければならぬけれども、私はやはり自主的な体制というものは、こういう責任官庁を作るとか、あるいはそういうものと対抗できるところの能力を持って国民に安心を与えるとか、こういうことが大事であって、これから、安保条約を改定した以上は、私たちもやはり従来の防衛の方針と少し変えて、ほんとうの防衛のあり方というものを考えいかなければならぬ。ただ単に金を使って、ただ単に人をふやすというのが防衛ではないと思う。だから防衛というものは、場合によれば防衛費が減るかもしれません。しかしそういうことでなくて、私たちはやはり自主防衛というものを整えていかなければならぬ。そういう点においては、もっと能力を持つとか、特に行政の責任のある官庁を省にされても、予算一つもふえるわけでもなし、部局がふえるわけでもなし、しかし大臣の権限が変わってくる。だからそういうところは政府としては踏み切っていいのじゃないか。そういうことをやられたところで別に問題はないと思うのでありますけれども、あまり私から追及しても、それ以上の答弁は無理かもわかりませんが、一つよくお考えを願って御研究を願いたいと思うのであります。  そこで時間もあれですから、私また初めの科学技術の問題に戻りたいと思うのであります。最近の科学技術の傾向といたしまして、民間の研究とか、それから総合的な研究、こういうものが非常に大きくなって参りまして、これに伴いまして、前から研究されておりますような研究法人法というようなものが必要になってくるのじゃないか、こう思うのであります。今国会にもその一つとして、鉱工業の研究技術の組合法が通産省から提案されますし、そのほかに文部省も、公益法人という形で研究関係の法人を持っておられる。さらにここで今、科学技術庁関係には特殊法人なんかもございますが、こういうようなもののほかに、さらに民間が総合的な研究をしよう、あるいは民間の研究の意欲を増大しよう、こういった問題がたくさんあるのでありますから、これらの問題について一つ研究法人法というものを検討する必要があるのじゃないかと思います。これらの問題について科学技術庁長官はどういうふうにお考えになっておるか。これらの問題は答申にもそういうふうな考え方が言われておるのでありますけれども一つ長官の御所見をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  39. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 そういう新しい制度の考え方も当然起こってくると思います。しかしこれは、ただ単に科学技術庁だけの問題じゃなしに、各般にわたっていろいろな問題も起こってきますから、これは慎重に検討いたしたいと思っております。
  40. 前田正男

    前田(正)委員 この研究法人を検討していく中で一番問題になってくるのは、かねて私たちの党からも大蔵省に要望しておる問題でありまして、大蔵大臣にお聞き願いたいと思うのでありますが、試験研究の準備金の損金算入の問題であります。そのほかいろいろとあったのでありますけれども、その点については大蔵省も非常に考えて下さいまして、寄付金の損金算入の問題だとか、あるいは特別償却の問題とか、いろいろと改善されている点も多いのでありますが、研究法人として法律を作っていくときに一番問題になるのは、試験研究の準備金の問題なのです。これは答申の中にも、最後の方に、損金算入の問題については大いに検討する必要があるということを書いてあるわけです。私たちは、国の科学技術というものを推進するのには、もちろん政府の力によるところも大きいのでありますけれども、しかし民間の自主的な研究というのも大いに推進しなければならぬと思うのであります。ところが、御承知通り経済というものには変動があるのでありまして、やはりこの損金に算入できるような準備金を作って、そうしてその中から研究費であるとか、あるいは研究機械の寄付であるとか、あるいはその他いろんな研究関係投資に使えるようにすべきじゃないか、しかしこれは、何もわれわれとしてはいつまでも積んでおくわけではありませんで、三年間とか、そういう一定の期間に使えないときはまたもとへ戻すというようなこともけっこうでありますけれども、一応そういうふうな態勢を整えて、研究のために十分な金を投じていくように政府奨励する必要があるのではないか。せっかく最近いろいろ考えて下さって、寄付金の問題その他研究の自主的な発展のために大いに考慮していただいておるのでありますから、もう一つの問題であるこの研究準備金というものについて、一つ大蔵省もこの際もう少しあたたかい御協力的な考え方を持っていただきたい、こう思うのでありますが、大蔵大臣の御答弁をお願いします。
  41. 水田三喜男

    水田国務大臣 今申されましたように、私どもは試験研究については、指定寄付金制度の活用とか、あるいは寄付金の損金算入限度についての考慮とか、あるいは特別償却であるとか、いろんなことについて極力税制上の優遇というものを考えて、今度の国会にも一部改正法を出しているわけでございます。今おっしゃられましたこの試験研究の準備金制度は、大蔵省でも非常に研究いたしましたが、今のところ税制上の制度としてこういう制度を認めるということは、非常に難点があって、私は困難だと思います。それでこの積み立ての場合とか、その金を取りくずしてどう使うかというような場合のしっかりした基準というものがなければ、これは下手をすれば、ただ利益金の留保制度というものに堕してしまうという心配がありますし、またこの種の制度を認めたら、同じような種類のいろんな準備金、そういうような要求というものも出てくることが考えられますし、いずれにしましても、利益金をこういう形で研究用として留保するものを、企業会計上損金として見るとか、税制上これを損金として見るという処置は、私はちょっと税制としてはむずかしいことで、できないのではないかと思っております。
  42. 前田正男

    前田(正)委員 この準備金というものは全然ないわけではないのでありまして、いろいろと損失準備金だとか、あるいは支店開設準備金とか、税制上全然認められていないわけではないのであります。その内容について、今大臣が御答弁のような問題点については、大いに話し合う必要がありますけれども、制度上これは認められないという考え方はおかしいのではないか。そういう点については、もう少し大蔵省一つ御研究を願いたいと思うのであります。  それから次に、人材養成の問題が科学技術においては一番大事でございますけれども、最近のような風潮になって参りますと、特に研究者、技術者の優遇という問題がこれに伴わなければ困難だと思うのであります。ところがそういうことは、いち早く民間の方は技術者、研究者の優遇というものを実施しております。従いまして、それに比例して問題となってきましたことは、官公庁とか特殊法人とかこういった方面が、実は研究者とか技術者の獲得ということに非常に困ってきておるわけであります。こういうことでは、これから科学技術というものは国政の重要部門を占めますのに、政府の大事な官公庁だとか特殊法人の中にそういう非常に有能な人材を得ることができないということになってきますと、私は政府の行政にも差しつかえてくるのではないかと思う。そこでやはりこの際根本的な給与制度その他の改善が必要だと思うのでありますけれども、この際科学技術庁長官はどういうふうにお考えになっておるか、お答えを願いたいと思います。
  43. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 お答えいたします。科学技術者に対する待遇が、日本の場合にはよその国に比較いたしまして決していいとは申されないのです。特に研究者等に対する日本の待遇というものは、研究職は一般行政職よりも若干優遇されておりますけれども、この程度ではよくない。それからまた技術者につきましても今のような状態でいったならば、これは非常に重大な時期に遭遇するのじゃないか。これは科学技術庁立場から、私の立場から見まして、これは各省にわたることでございますけれども、たとえば工科大学を卒業したその最も優秀な者は民間に吸収されて、残った者が諸官省にいく、さらに残った者が地方官庁にいくといったような今日の実情であります。この実情をこのまま続けていけば一体どういう事態になるか、私どもはこれを考えるだけでも、日本のこれからの科学技術振興の上に非常に寒心にたえないところであります。従ってこの問題につきましては、文部省その他関係各省と十分討議をいたしましてこれに対処していきたい、かように考えております。
  44. 前田正男

    前田(正)委員 次に人材養成の問題でございますけれども、これは先ほど大蔵大臣は、三十六年度予算でもってある程度必要な数字を予算化するように努力したということでありますが、私文部大臣にちょっとお聞きしたいと思うのでありますけれども、これで十七万不足されて、そしてさっき言いましたように工業高校は四十四万人不足だ、こういうふうなことで、不足十七万人に対しては二千五百人であります。国立が千七百九十人、私立が八音人、その二千五百九十人でもって一体十年の十七万がやっていけるか、それで十分だとお考えになっておりますか、私はこれではどうも足りないような感じがするのですがどうですか。
  45. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答えいたします。御指摘の通り、特に所得倍増計画を念頭に置いて、その裏づけとしての人材養成、その中でも大学卒業程度科学技術者を供給するという立場から申し上げますと、現在一応の考え方に立って三十六年度の予算も要求いたしておりますが、十年間に現在の養成施設では推計十七万人ぐらい大学卒業程度技術者が足りないということに応じますためには相当不足すると思います。おそらく半分程度の要求に応じ得るのじゃないかと思うのであります。ですからむろん満足しておるわけじゃございませんが、極力配置転換あるいは既成人物の応急養成等を各企業体等におきましても積極的にやってもらうこともあわせまして、幾らかでもそのギャップを埋めていきたい。むろん三十七年度以降の政府予算面におきましても、そのギャップが混乱を生じないようにという考え方のもとに十分配慮して参りたいと思っております。
  46. 前田正男

    前田(正)委員 時間がありませんので、もう少し話をしたいと思いますけれども、飛びまして、ほんとうならば、人材養成のためには、こういう予算的な処置と同時に、前から問題になっております専科大学の問題とか、あるいは管理経営部門が必要であるということは、所得倍増計画のところに書いてあるのです。そういう方面として、工業経営学科をふやすとか、いろいろ問題があるのですが、その中でも産学協同、産業と学術の協同体制というものが必要だと思うのであります。そこでこれについては特に文部大臣も考えておられると思いますけれども、地方の農業、水産、林業あるいは工業方面には技術者、指導員というものが非常に少ない。それでもう少しこういうものをふやすためには、大学と試験場、研究所との間の連絡、人事交流、こういうものをもっとふやさなければいかぬのじゃないか。医学の場合にはその点が非常にうまくいっておりまして、割に大学から地方の病院それからいなかの山村の中の診療所まで人事交流とかそういうものがうまくいっているわけであります。私はこの点について文部大臣も一つ産学協同という問題についてお考えを願いたいと思います。  特に農林大臣にちょっとお聞きしたいと思いますけれども、この産学協同の中で一番問題になってくるのは、所得倍増計画の中において、あるいは農業基本法におきましても、これから農業のあり方というものをさらに多角的に変えていこうとしておられる。畜産だとか園芸だとかいろいろふやしていこう。そういう方面の指導員とか技術者というのはなかなか十分にすぐに獲得するということもむずかしいし、それから大学卒業生の数も不十分だと思う。そこで私は前から問題になっておる食糧管理関係ですね。食糧事務所だとか農林省の地方の出先の方々がたくさんおられる。この人たちは現在のような豊作が続いていきますと、その縮小という問題が出てくるわけです。これはいずれもみんな農業に関係しておられる方たちでありますから、こういう方たちとかそのほか適当な人たちを、今申し上げました産学協同の面から、試験場であるとかあるいは大学であるとか、そういうものをもっと活用されて再教育をされないと、農業の部門が今度今までの米麦中心から変わってきているわけですから、そういう方面の技術関係技術者の養成、特にせっかくこれから配置転換を行なわなければならぬというような人たちを再教育するという問題について、農林大臣のお考え一つお聞かせ願いたいと思います。
  47. 周東英雄

    ○周東国務大臣 お話の点はまことにもっともでありまして、このたびの予算の中にも御趣旨の点に沿うて考えております。食管会計の将来を考えて、その中の職員を訓練したらどうかというお話もありますが、まず今日考えておりますことは、試験場における試験研究の拡充であります。  第二は、お話のように現在農業改良普及員として約一万九百人余りおりますか、これに特技——畜産だとか果樹だとかいう特殊な技術をつけたい、今後発展させようという方面への再教育をやる計画でおります。現在その特殊な技能を持っておるのは一万九百人余りの中に九百人ばかりおりますが、これではとても足りませんので、これらの普及改良員の再教育をやる。大体園芸試験につきましては平塚試験場とか、東海、近畿の農業試験場の園芸部門あるいは九州の農業試験場の園芸部門等におきましてこれの再教育をやる。  第三番目は、農業者自体に対してこういう方面への特殊技術の修得をさせる必要がある。そういう意味合いにおきまして、三十五年度に着手いたしておりますが、各府県の農事試験場等におきまして、畜産、果樹等に対する再教育を一カ所五十人ぐらいずつ二カ年でやる、こういうような形で育てていきたいと思っております。なお、畜産につきましては、今後中央試験場におきまして同じような関係で全国から集めてやると同時に、地方の種畜場等におきまして、畜産センターというようなもので再教育をやっていこう、こういう考え方でおります。まだ十分それで満足はいたしておりませんが、徐々に今後の計画に沿って、御趣旨のように、試験研究機関における拡充、指導、普及員等に対する指導員の増加というようなものをはかって、われわれの政策の態勢に見合った形に持っていきたいとかように考えております。
  48. 前田正男

    前田(正)委員 時間がありませんから最後の質問に入りたいと思います。  南極探険の問題は、御承知通り三十六年度には予算化されていない。これは地球観測年でやっておられましたものを今度宇宙観測年に切りかえていくわけでありますけれども、せっかく政府がこれまで努力して、また学界の皆さん方も協力してやってきたわけですから、これは当然継続されるべきではないか。しかも南極条約というものができまして、これができますにあたりましては、わが国が講和条約の関係から領土の主張権がないというようなことから、日本があっせん役みたような形になりまして南極条約というものをまとめております。そうしてその条約ができましたときには、これは義務ではありませんが、南極観測は続けていこうじゃないかということをお互いに申し合わせておるわけであります。これは私は当然継続していかなければならないと思うのです。ところが三十六年度に予算化していない。この点について早く意見をまとめられて、予備費とか、その他いろいろな方法があると思うのですが、これは継続すべく努力すべきではないか、こう思うのですけれども、文部大臣のお考え一つ伺いたいと思います。
  49. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 お答え申し上げます。大体三十六年度でもって一応打ち切るということを、従来の科学技術会議等の御見解も伺いまして、昨年閣議決定の了解を求めまして、予算上も、三十六年度としましてはいわば迎えに行く予算だけが盛られておるわけであります。今までの南極観測につきましては、いわば臨時的な、地球観測年に応ずる考え方のもとに計画され、実行され来たっておるものですから、いろいろな設備、準備等が、それに応ずる程度しかできていない。もしお話のごとく今後も続ける、腰を落ちつけてやるとしまするならば、もう少し本格的な準備も必要でございましょうし、宗谷のあのよたよたでいいかどうか。天佑神助に助けられてようやく脱出するというがごとき不安定なやり方では、貴重な人命にも関することでございますから、もっと本格的に取り組んで、絶対大丈夫の船も準備してかかるというがごとき準備態勢それ自体もなかなか容易でございませんので、これまた学術会議の御意見もありまして、推進本部で今後どうするかを検討を加えてみたらどうだ。さらに今まで得ました貴重な資料等の整理、保存、活用の方法等につきましても、推進本部でよく検討することを要望するというがごとき御意向でありますから、とくと検討を加えた上でしたいと思いますが、さしよりのところは今申し上げたような意味で一応打ち切る、こういうことに相なっておる次第であります。
  50. 前田正男

    前田(正)委員 これは今お話しのように本格化してやらなければならないということは私も賛成でありますが、今までの学界と協力せられた地球観測年というものを今度宇宙観測年として本格化するということなら、これは宇宙観測関係のものは科学技術庁関係の方が宇宙観測をやっておられる。従って科学技術庁が各行政官庁とも調整する権限をお持ちのようですから調整されて、本格的に継続するのがやはり国際信用の問題ではないか、南極条約の立場からいってもそうではないかと思うのですが、これは科学技術庁長官の御所見を最後にお聞かせ願いたいと思います。
  51. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 お答えを申し上げますが、その前に、ただいま文部大臣からこの問題に関して科学技術会議が反対意見を出された、これは文部大臣は言葉が間違ったのだろうと思うのでございますが、速記録に載るといけませんから、これは訂正しておきます。これは科学技術会議でなくして学術会議の方でございます。学術会議がどういう意図をもってこういう決議をされたのか私は存じませんけれども、これははなはだ方向が違っているのじゃないかと思います。従って、これはあくまでも私は関係各省と協力して、今前田さんから申されたほかに、政治的にもあるいは産業的にも、いろいろな角度からこれは重要だと思いますので、ぜひ私は科学技術庁長官立場において推進いたしたい、かように思っております。
  52. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 日本学術会議の誤りでございます。私が申し上げましたのは、政府部内で意見が違っておるのでは毛頭ございませんで、今までの臨時的と申しますか、応急的な課題としての地球観測年の観測については今年限り。さらにこれを別の角度から本格的に取っ組んでどうするかということは、今後の検討を要するという意味合いで、さしよりのことは本年限り。ただし先ほども申し上げましたように、本格的にやるにいたしましても、たまたま無事でよかったということでなく、絶対安全な措置を講じた上でやるべきものでなかろうか。こういう意味で申し上げましたから、補足いたします。
  53. 船田中

    船田委員長 午後一時より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時二分休憩      ————◇—————    午後一時二十五分開議
  54. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  ただいま川俣清音君より議事進行の発言を求められております。この際これを許します。川俣清音君。
  55. 川俣清音

    ○川俣委員 私はこの際政府に議事運営上警告を発しておきたいと思うのでございます。それは、本予算委員会の審議の上から見ても、また地方議会の円滑なる運営から見ましても、すみやかに地方税法の一部改正案を提出さるベきものと思うのでございます。しかるに、いまだ提出のめどがつかない状態でありますが、いつごろ提出される予定でありまするか、明らかにしていただきたいと思うのであります。  またその基本でありまする三十六年度地方財政計画の概要の提出の時期はいつごろであるか、これも明らかにしていただきたいのであります。  参考に申し上げますが、従来の例によりますると、三十五年度の地方財政計画の概要は三十五年二月十七日に提出されて、石原国務大臣より説明がなされております。三十四年はそれよりもさらに早く、二月五日に提出されまして、青木国務大臣より説明されておりますが、さすが青木国務大臣だけありまして、前例なく進行を示しております。これは予算に忠実なる青木さんの意向がここに出ておると敬意を表するのでございます。  さらに地方交付税第七条に基づく地方団体の歳入歳出総額の見積額も当然法律に基づいて提出されなければなりませんのに、それもまた怠っております。このような状態は、遊興飲食税の免税点をめぐりまして、業界から強い圧力があるために、ごたごたしておるのであろうかと存じますが、まことに嘆かわしい事態だと思うのであります。都道府県会においては、これ以上減税額がおくれたり、あるいは遅延することは許されないとしております。単に地方財政の問題であるばかりではなく、これ以上おくれることは、政治に対する信義の問題であるという非難の声も上がっておるのでありまして、かかる状態の中では、予定通りの日時に本委員会の審議を終わることは不可能になると思います。予算委員会の審議の進行状態に非常に影響すると思いまするので、政府は責任を持ってこの点を明らかにしていただきたいと思うのであります。大蔵大臣並びに政府を代表して官房長官、自治省から御説明を承りたい。それによって私どもは審議の日程をきめて参りたいと思いますから、明らかにしていただきたい。
  56. 大平正芳

    ○大平政府委員 法案の提案準備につきましては、鋭意政府もやっておりますが、ただいまの目標といたしまして、二月の二十四日までに予算関係の法案は出したいということ、このことは議運にもあらかじめ御了承を得まして準備いたしております。若干おくれるものがございましても、今月中には全部出してしまいたい、こういう計画で進んでおるわけでございます。御注意もございますので、鋭意これからさらに鞭撻いたしまして、なるべく早くお手元に差し上げるように努力いたしたいと思います。
  57. 安井謙

    ○安井国務大臣 地方財政計画がおくれておりまして、まことに申しわけございません。実は、地方税その他につきまして目下検討中のものがございましておくれておるのでありますが、来週一ぱいには財政計画を御提出できるようなふうにいたしたいと存じておる次第でございます。  なお、地方税の問題につきましても目下検討中でございます。それにあわせて急いで提出いたしたいと思います。
  58. 水田三喜男

    水田国務大臣 私の方の関係予算関係法案は三十六件予定いたしておりますが、二十数件提出済みでございまして、今官房長官の言われました日程内に全部提出するつもりであります。
  59. 川俣清音

    ○川俣委員 政府はたびたび議会政治を尊重するという声明をなすっておるわけでございまして、従って、予算審議に重要な関係を持つところの法律案を当然出されることが、議会政治の尊重の基礎であると思う。この基礎からくずしていかれたならば、どんな声明をいたしましても、みずから議会政治をくつがえす結果になると思うのです。そこで、極力私ども予算審議に協力する建前をとって今日に至っておるわけでございますが、付帯する法案が提出されなかったり、あるいは今の自治庁長官の説明のように、もしもこれがごたごたいたしましてすみやかに提出されなければ、分科会に入ることもできませんし、既定の期日に予算審議を終了することが不可能になると思うのであります。この不可能の責任は、あげて政府が負わなければならないと思いまするから、私どもは、こういう法案が提出されない以上、身を張っても審議に応ずるわけにはいかない事態が起きることをあらかじめ警告をいたしておくのでございます。  そこで、委員長に要望しておきますが、委員長はこの事態を十分認識されまして、政府に対して、予算案に付帯する法案の提出、特に地方議会におきまして待っておりまするところの地方税法の改正等の法案をすみやかに出して、予算の審議に便ならしめるよう、警告を委員長から発するよう要望いたしまして、私の発言を終わります。委員長に一言しておきます。
  60. 船田中

    船田委員長 御趣旨を了承いたしました。  滝井義高君。
  61. 滝井義高

    滝井委員 昭和三十六年度の予算一般的な質問大蔵大臣以下関係閣僚にいたしたいと思いますが、一国の予算はその国の顔を示すといわれております。同時に、それは政党政治でございますから、自由民主党の池田総裁の顔をもこの予算は現わしておると思うのです。しかし、私たちはこの予算をじっと見てみますと、どうも池田さんの顔だけでなくて、二重写しにもう一つの顔が見えます。それは下村さんの顔です。まあ池田、下村の顔が見えるということです。そしてその顔は、二重写しになっておるために、どうもおたふくのような顔になっておるのです。いわば、ことしの予算はぞうすい予算といいますか、何となく水ぶくれをしているのですね。従って、おたふくのような顔をしておるために、重点がない。一応それは公共投資、減税、社会保障と三本の柱を立てたと言われますけれども、その三本の柱も非常にかぼそい柱でございます。特に減税あるいは社会保障に至ってはその感が深いのです。この三つの政策は三本のかなえの足なんだ、どの政策が大きいということもなければ、小さいということもない、均衡がとれているのだと池田さんはおっしゃっているが、そのかぼそい三つの柱の中でも、特によく見ると、公共投資だけは何となく大きく見えるのです。こういう予算だと思うのです。それらの一つ一つについて詳細に御質問を申し上げる時間がございませんが、まず端的に私は一つ質問に入ってみたいと思うのです。  まず第一に、ことしの予算の中で、国民の租税負担率ですね。国民の租税負担率というものは、あなたの談話その他を見ると、二〇・七ないし二〇・八%だということが、一月十九日の予算編成が終った後のあなたの談話にあるわけです。これは二〇・八あるいは二一%程度ですが、そういうことは間違いございませんか。
  62. 水田三喜男

    水田国務大臣 昭和三十五年、今年度の大体の国民負担率、国民所得に対する率は二一%に至ると思います。三十六年度は、三十五年度の当初予算のとき程度、二〇・五%程度の負担率にとどめるつもりでおりましたが、揮発油税の増徴ということをやりましたので、中央、地方を合わせて大体二〇・七%前後になるものと思います。
  63. 滝井義高

    滝井委員 二〇・七%前後というが、一つその大ざっぱな算定の基礎を見せて下さい。これは二〇・七%をこえておるはずです。
  64. 水田三喜男

    水田国務大臣 この基礎計算は、それでは主税局から御説明いたさせます。
  65. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。昭和三十六年度におきましては、国民所得が十二兆七千三百十億円、国税の総額、これは専売益金、特別会計をも加えてでございますが、一兆八千五百六十九億三千四百万円、これに地方税が——まだ減税の額が正確にきまっておりませんので、大体のところでございますが、七千七百八十億円程度、両方合わせまして二〇・七%でございます。
  66. 滝井義高

    滝井委員 三十六年度の国民所得は十二兆七千三百十億円、それはその通りだと思います。国民所得が一億伸びたら、税というものは一体幾ら伸びるとあなた方はお考えになっているのですか。昨年は、国民所得は、補正予算を入れて十一兆五千三十億、今度が十二兆七千三百十億円ですから、ここに約一兆二千三百億伸びたわけですね。そうしますと、これは一兆程度の国民所得の増加だったら、国税は大体、財政学者によると二割六分伸びるのですよ。地方税は八・五%伸びるのですよ。それから一兆二千ないし三千億になると、国税は二割七分伸びるのです。それから地方税は九%くらい伸びる。このくらい伸びるのです。あなた方は一体どういう計算をしたら国税と地方税がこういう関係になるのですか。
  67. 泉美之松

    ○泉説明員 お答えいたします。国民所得が一兆円伸びた場合に租税収入がどれだけ増加するかということにつきましては、国民所得のうちどういう部面が増加するか、たとえば個人所得が増加するのか、あるいは法人の所得が増加するのか、その増加する部門の差違によっても租税収入の増加率に相違を来たすのでございます。滝井委員のおっしゃる学者のいわゆる租税負担の限界函数と申しますのは、まだ確立された見方ではないのでございまして、過去の実績をとりましても、二六%あるいは二七%というような高い収入の率が上がりましたのは昭和二十八年以前の物価変動の著しい時代のことでございまして、その後最近におきましてはさような高い率を示してはおらないのでございます。従いまして、単純に国民所得が一兆三千億増加するから租税収入は幾らに増加するということは申し上げかねるのでございます。
  68. 滝井義高

    滝井委員 今の答弁では納得がいかないことは、大蔵大臣もそうだと思うのです。なぜならば、大蔵省はことしの国税を一兆八千五百何がしと出してきていらっしゃる。それから地方税を七千七百八十億と出してきていらっしゃるわけです。それならば、一体国税の伸びと地方税の伸びが、一兆二千億の国民所得伸びたときに、どういう比率でこういう伸びになったかということを、ここで説明ができなければいかぬですよ。大臣ここを説明をしてみて下さい。これは一番大事なところですよ。
  69. 水田三喜男

    水田国務大臣 これは今までの税収の実績その他も勘案しておりますし、各税日ごとの積み上げ計算でやったものでございますので、そういう今言ったような国民所得に単純な率をかけて算定したものではございません。
  70. 滝井義高

    滝井委員 それならば大蔵大臣、具体的にお尋ねしますが、三十五年度における当初予算に見込んだ以外に、税はこの年度末までにどの程度の自然増がございますか。
  71. 水田三喜男

    水田国務大臣 十二月末の収入の工合を見ますと、見積もり予算に比べまして今五・九%という伸びを示しておりますので、今後この通りにいくかどうかはわかりませんが、かりにその比率で三月末までいくと仮定しますと、見込み得る額は二千三百億円前後という数字が出てきますが、そこまでいくかどうかはまだ未確定要素がございますのではっきりしませんが、今までの率をそのまま単純にかけて計算するとそうなろうかと思います。
  72. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今あなたは当初予算のときに、財源を一応自然増を見込んで使って、そのあとになお二千三巨億程度の自然増がある、こうおっしゃったわけです。そうしますと、あなたの方の三十六年度の予算においては、大体三十五年度の当初予算に比べて三千九百億円程度の自然増がある、こういう見方をしておるわけですね。そうでしょう。三千九百億円の中には二千二百億円というものはすでに入っているわけです。そうすると三千九百億マイナス二千二百億になると三十六年度の自然増というものは千七百億になるのです。いいですか、一兆二、三千億も国民所得が増加をして千七百億しか自然増がないという、こんなばかな計数はない。幾ら学者のそういう意見があっても、過去の実績では間違っておる。二十八年まではその物価の変動が著しかったから、滝井の言うように二割六分とか七分とかいう非常な高率を見たけれども、今度はそうはいかないというのだけれども、一兆二、三千億の国民所得の自然増があって、わずかに千七百億円の税の自然増とは、これはだれも信用しないのです。これは一体そういうことになるのですか。将来いろいろこれは計数が間違っておりましたなんということは言わせません。一兆二、三千億の国民所得の増があるということは、すでにわれわれは予算書ではっきりしてきておるわけです。ところが予算に出してきたものは、千七百億の自然増しかありませんという形で出てきておるわけです。だからこの千七百億というものが正しいという確信があれば、今後もそんなに大きな狂いはないはずです。これはやはり当初予算のときですから、千七百億増加の科学的な根拠をお示しいただかぬといかぬことになります。これはどうも私納得がいかないのです。
  73. 水田三喜男

    水田国務大臣 千七百億というわけではなくて、もう少し多くなるかもしれませんが、今私が申しましたのは、三月末までの予想でございまして、この予想が狂えば千八百億とか、九百億という数字になろうかと思いますが、来年度の増収の見込みは、今申しましたように、積み上げ計算をやっておるということと、それから来年度の経済の伸び率というものは今年度と比べてもっと少い九%という伸び率を見ておりますので、今年ふえたような大きいふえ方を来年税がするとは思えませんし、これは一応積み上げ計算で算定しましたので、この基礎説明すればおわかりだと思います。
  74. 滝井義高

    滝井委員 大臣、ある程度やはり数字を示してもらわなければいかぬと思うのです。これは常識で考えても——財政学者のだれでも呼んで聞いてごらんなさい。国民所得が一兆二、三千億も増加するのに、税の自然増が千七百億なんというのは、これはどんなことがあったって言えませんよ。そうなりますと、あなたは今国民をごまかしているわけです。いわゆる国民の税負担率というものは、国民所得に比べて二〇・七か八だ、こうおっしゃった。これは今年だって二二か三%になるでしょう。三十六年度になったらおそらく二二・五か六くらいになってしまうのです。そうしますと、六百二十八億円の減税というものが非常に少ないことを意味するわけです。税制調査会が二〇・五%くらいだ、こういうことを立てた、あるいは二〇%以下にとどめたいといったのだけれども、あなた方は税の取り過ぎをどんどんたくわえていっておる。そうして国民の目を数字でごまかそうとしている。これは一番単純な計算です。国民所得が一兆二、三千億増加したのに、税の自然増の千七百億が正しいか正しくないかということです。これが正しくないならば、六百二十八億の減税をもっとふやさなければならぬわけです。これは慶応大学の高木先生あたりの計算によっても、六百二十七、八億の減税は少ない、政府はもう二千二百億くらい追加減税をやる能力があるのだと言っておる。高木先生のそれほどないにしても、もう千億くらいは追加減税をしてもいい計算になる。千七百億というものは絶対うその数字なんです。きょうは私はまだほかに主たる問題を持っておりますから、これはいずれあとで同僚その他にもう少し研究してもらいますが、これはでたらめです。池田内閣が減税政策というものに、いわゆる長期的な見通しに立った計画的な減税政策を持たないことを意味するのです。そのときそのときの行き当たりばったりの減税政策をやっておる。そういうことを意味するわけです。それだけ一つ答えていただいて、私は次の問題に入ります。
  75. 水田三喜男

    水田国務大臣 この委員会で一ぺん、来年の税収の見方の根拠について主税局長からもう御説明してございますが、もし必要でございましたら、もう一ぺんこの基礎についての御説明をいたします。そうでたらめな計算をやっておるわけでは絶対ございません。
  76. 滝井義高

    滝井委員 千七百億ではないことは確実です。あなたも、幾分ふえるかもしれない、この計算はあるいは間違いがあるかもしれないということを少しはおっしゃっているのですから、これはいずれ主税局長からもう一ぺん適当の機会に、分科会か何かで御説明していただきましょう。  次は経済企画庁長官にお尋ねをいたします。今回池田内閣の重要な経済政策の一環として、所得倍増計画というものをお立てになったわけです。この所得倍増計画における社会保障の未来像ですね。これは長期の倍増計画があれば、当然所得の格差を縮め、日本経済における二重構造を解消するということがやはりこの倍増計画一つの大きなねらいになっておるわけです。従って、そこには当然所得の再分配政策というものが重要な政策として掲げられてこなければならぬ。所得の再分配政策において、日本のような貧富の格差の激しいところでは、どうしても振りかえ所得というものが重要な役割を演じてくるわけです。この十年後における振りかえ所得関係というものをあなたはどう見ておるかということです。
  77. 迫水久常

    迫水国務大臣 所得倍増計画におきまする振りかえ所得計算、数字だけを申し上げますと、昭和四十五年度の目標年次におきましては一兆二千九百三十四億円と見込んでおります。これは基準年次すなわち昭和三十一年、三十三年度の平均の三千八百四億円の約三・四倍に当たりまして、これを出発点として計算をいたしますと、年率で九・九%の増加に当たっております。この振りかえ所得の国民所得に対する割合は、基準年次で四・八%でございますが、目標年次すなわち昭和四十五年度におきましては六・一%に上昇することになっております。そういうのが所得倍増計画に現われた計量でございまして、所得倍増計画におきましてはこの数字だけを計量いたしておりまして、その内訳の保護基準をどうするとか何とかというようなことについての詳細の計量はいたしておりません。
  78. 滝井義高

    滝井委員 厚生大臣はおられませんか。——古井さん、今昭和四十五年における所得倍増計画において社会保障の最終的な計数は一体どうなるのでしょうと言いましたところが、結局四十五年には国民所得の六・一%であるということなのです。もちろん年率は九・九%ずつ増加をしていくそうでございますが、これで一体あなたの方としては日本の二重構造のある程度の解消、所得格差の縮小に役立て、少なくとも世界の文明国並みにやっていけるとお考えになるのかどうかということです。
  79. 古井喜實

    ○古井国務大臣 お話のように、目標年次における振りかえ所得が六・一%というのがただいまの計画書に載っておるわけであります。これで四十五年にその程度でその段階において日本の社会保障が整って、これでよいという程度にいくかどうか、まあ大見当のところでは、私は無理ではないかという感じを持っておるのであります。ただ、そう申しますにも基礎と根拠がなければいかぬわけでありまして、そこで毎々申し上げておるように、社会保障についての長期的な計画というものを持たなければならない。それをもとにして四十五年にはこういうことまでいきたいという根拠をそこに持たなければなりません。そこで今長期計画ということを何とか具体化したいということで、相談を始め、プログラムを考えておるようなことであります。きょうのところではそこまでしか申し上げることができないのであります。
  80. 滝井義高

    滝井委員 経済企画庁にお尋ねいたしますが、あなたの方でこういう計画をお立てになるについては、十分厚生省と基礎数字をお打ち合せの上、こういう積み上げをおやりになったものだと私たち考えておるのですが、そうじゃないのですか。
  81. 迫水久常

    迫水国務大臣 この計画を立てましたのは、経済審議会が立てたわけでございますが、その立てるのにつきましての材料を集めたりいろいろいたしますのにつきましては、私の方の役所も厚生省も手伝いました。結局、十年所得倍増というワクの中でこういうような計画を立ててあるのです。理想的にいった場合はどうなるかといったときには、所得が倍に増えただけでは問題が理想的にはいかないんじゃないかと思いますが、一応十年間で所得が倍にふえるその過程においては、こういう限界で行く。これは厚生省とも話し合った数字でございます。  なお、国民所得に対して六・一%という数字は低いのでありますが、その低い一つの原因は、国民年金制度がまだフルに働き出していない、目標年次においてはフルに働き出していないところに一つの原因がございます。
  82. 滝井義高

    滝井委員 国民年金がフルに働き出すためには、四十年の後になるわけです。四十年まで今のわれわれに待てと言ったって、私なんか四十年の後にはこの世にいない。だからそういうあまり先のことでなくて、やはり十年計画をお立てになったら十年の中でやはりわれわれに希望を与えてもらわなければ困る。厚生省に今お伺いすると、こういうものは今きちんときまった基礎的数字をもっておったわけじゃない、こうおっしゃっておるわけですね。そうすると、あなたの方の所得倍増計画というのは何ですか。画にかいた餅ですか、これは。昭和四十五年になって、社会保険積立金も入れて一兆五千八百二十億円になりますね。国民所得二十一兆三千億に比べたら約七%程度です。この積立金を入れますと、これは一体今から十年後の姿は、ヨーロッパのどういう姿になるのですか。きょう池田総理がおったら私聞きたいと思うのですが、池田さんは西欧諸国をずらずら出してよく比較されるのですが、一体西欧諸国のどういう状態にこれはなるんですか。まあ西欧諸国もウサギとカメの競争の眠るウサギじゃないですからね。西欧諸国のウサギはどんどん飛んでいくんですよ。日本はカメです。カメの方もどんどん飛んでいかなければならない。ウサギが眠っていてくれれば追いつきますけれども、ウサギも眠らない。西欧諸国も進んでいくんですからね。一体どの程度になるか、西欧諸国の何年ぐらいになるんですか。
  83. 迫水久常

    迫水国務大臣 十年たって日本のこういう所得倍増計画が達成された後における日本の国民生活の状態が、そのころにおける西欧諸国に追っついているかというと、決して追っついていません。しかしウサギとカメの例でいいますれば、日本の方がウサギであって、向こうがカメなのですから、カメはずっと先に行っているものです。ですから非常に走ってもなかなか追っつかないわけなのでございますけれども、私は十年たった後に、ちょうど今のイタリアとおっつかっつぐらいになればいいんじゃないかと、率直に言ってこういうふうに考えております。従いまして、社会保障費の方の国民所得に対する割合も、西欧諸国ではおおむね一〇%前後の辺が多いように思っておりますが、それになるべく早く追っつくわけであります。私はもう一ぺん繰り返して申しますけれども、進歩の速度はこっちが早いが、向こうがうんと行っちゃっているから、なかなか追っつかない、こういうことだと思っております。
  84. 滝井義高

    滝井委員 イタリア程度、一〇%程度と申しますと、これは七%ですから、三%開きがある。九から一〇にしますと二兆円要るのですね。二十一兆三千億円ですから、九から十にすると二兆円程度要るのです。二兆円にするということになると、これはもう五千億円要るわけです。そうすると、五千億所得倍増計画で振りかえ所得に回すことは、これはどこに変化が起こるかというと、あらゆる面に連鎖反応が起こって、この計画は全部根底からやりかえたければならぬことを意味するのですよ。ちょうどこの前、農業における十年後の姿というものを議論しておった。一体それは十年後には何ぼになるんだ、五割になるという説と三割三、四分になる説、どういう計算の間違いか、農林大臣は五割説をとっておったが、やっぱり最後には三割ちょっとでございますと、かぶとを脱いだんですね。社会保障はそれと同じです。ILOの最低基準に持っていくにしても一〇%ですよ。そうすると、日本は四十五年になっても社会保障のILOの最低基準にいかないのですから、こういう哀れなものを所得倍増計画に出しておいて、そして、これで格差を解消するんだ、二重構造を解消するんだというのは僣越しごくだと思うのです。こういういわば大きな欠陥が社会保障の中であるということです。そして、池田内閣は三本の柱の一つに社会保障をお立てになったけれども、さいぜんの減税もインチキです。この社会保障もインチキです。三本の柱の二本というものはインチキです。いわばこれはカヤの柱みたいなものです。そこで私はもっと具体的に……(「インチキと不十分は違うよ」と呼ぶ者あり)インチキと不十分は違うと言っているから、具体的に、科学的に示していきたいと思うのです。  今大きな数字を一応言いましたが、今度は少し小さいところからいっていいと思うのです。まず生活保護基準です。今度予算は二四・四%拡大されたのです。ところが生活保護基準は一割八分しか上がらなかったのです。予算は二割四分上がったけれども、貧乏人のための拡大は一割八分だったという。こういう大局的な見方からしても貧乏人は優遇されていないのです。そこで一体一八%お上げになった少し科学的な根拠をだれか御説明願いたいと思うのです。一八%上げたら一体人間は栄養失調でなくて食っていけるのかどうかということです。問題はここです。数字が、一割八分がどうのこうのということじゃない。それは一割でもけっこうです。五分でもけっこうです。人間が栄養失調に陥らずに食っていける姿ができれば私たちはそれで満足です。この一割八分をお上げになった根拠、これを一つ厚生省ですか、大臣おわかりなければ事務当局でもけっこうです。
  85. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 生活扶助の基準を一八%引き上げました根拠は、大体生活費の中で最も基本をなします飲食物費につきまして、栄養審議会及び昭和三十三年度国民栄養調査というものを参考にいたしまして、これは積み上げ計算をいたしまして、飲食物以外の経費につきましては、大体同じような低所得水準にありまする家庭の実態調査というものとの比較におきまして、まず一般の世帯でこの程度のその他の経費でもってまかなっているという比率を出しまして、それで大体のその見合いにおける経費を出して、これを生活保護基準の世帯でありまする五人世帯、これに直しましたものが一八%の増、こういうことになるわけであります。
  86. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、大臣にお尋ねしますが、一八%上げたら、エンゲル係数は幾らになるのですか。生活保護者のエンゲル係数はどの程度になるのですか。
  87. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 御承知通りエンゲル係数と申しますのは、その世帯の消費支出の中に占める飲食費の割合、これはやはり実態でもって調べてみるべきが正しいものと考えます。生活保護世帯は、申し上げるまでもなく約その半ば以上の人は何らか稼働いたしております。従いまして、その他の稼働収入というものがありますので、この基準だけでもってそれを論ずることは必ずしも正確ではないと私ども考えておる次第であります。
  88. 滝井義高

    滝井委員 稼働しておる人は生活保護家庭の中で五割九分六厘程度あります。約六割程度は稼働者を世帯に持っておるもので、あととにかく四割程度は稼働者を持たないものなのです、従ってこういう稼働者を持たない世帯が四割程度あるわけです。そこで税金によって全部まかなわれておるのですから、最も典型的なエンゲル係数が出てくるわけです。それをお調べになっていませんか。
  89. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 今回基準を引き上げます分につきまして、その非稼働なら非稼働世帯のエンゲル係数がどのくらいになるかということにつきましては、その年齢構成、その性別、そういうようなものにつきましてのこまかい展開をいたさなければなりません。ただいまその展開の作業をいたしておる段階でございますので、これはもう少しお待ち願いたいと思います。
  90. 滝井義高

    滝井委員 一国の政治の根底をなす生活保護費において、消費支出の中で飲食物費がどの程度を占めておるかということが、この大事な予算審議の過程でまだ出てきていないという、こういうだらしのない政治がありますか。それじゃまるきりこれはでたらめの数字といわれても仕方がないじゃありませんか。大臣、お尋ねしますが、総支出の中に飲食物費が一体どの程度占めておるかということは一番大事なことです。たとえばここに労働経済指標というのがあります。これは毎月都市の勤労者のエンゲル係数を出しておるのです。いわばみずから働いて賃金を持っている労働者のエンゲル係数でさえもが毎月こうして出してきている。これはどこで出しておるのですか、労働省ですか、毎月出てくるのです。ところが、一番大事なわれわれの税金によってまかなわれている人たちのエンゲル係数が毎月どういうような変化をするかということさえも日本の政治かわかっていないというならば、これでは貧乏人に対する対策というものは、科学的なものは立たないでしょう。これはなければいいですが、これ以上まだ……。(「あるよ」と呼ぶ者あり)あるならば一つ出していただきたい。
  91. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 大体先ほど申し上げましたように、今回の一八%の基準引き上げにおきましては、同じような状態にありまする低所得階層の生計費を参考にして作っております。その同じような世帯のエンゲル係数は、大体低いところで五四、それから高いところで五八くらいの世帯でございます。従いまして、それが大体の東京のFIESの世帯の、四人世帯、有業一人ということになりますが、実態でございます。従いまして、それとのかね合いで出しておりまするので、私の方の保護世帯のエンゲル係数も、ほぼその前後においてきまるものだろうかと思います。しかしながら、これを正確に申し上げますには、各性別・年令別の展開をいたさなければなりませんので、その正確なものは今作業中であるということを申し上げたわけでございます。
  92. 滝井義高

    滝井委員 これは私、もう少し根本的なところにこれから入りますから、これ以上言いませんが、一ぺん十分数字を検討して、りっぱな展開をやってみて下さい。二六%の引き上げでも、あなたの方がかつて発表したものでは、これはエンゲル係数は五七%程度なんです。問題は、やはり稼働していない世帯で一ぺんやってみる必要がある。実は、われわれは昨年極秘に、一カ月かけて生活保護の実態調査をやったのです。驚くべき結果が出てきたのです。どういう結果が出てきたかというと、その集約された問題点は、生活保護の家庭では、まず第一に、今の生活保護の基準では、もう憲法でいう健康で文化的な生活水準などというものは、はるかかなたの夢であるということです。これはもうはっきりしてきました。もう一つは、保護費で食うことは死を意味するということです。私たちは二百三十世帯のものを極秘に調査したのです。二百三十世帯の中で、国から与えられる、おとなでいえば約二千円程度のお金で食っている世帯はたった一世帯あった。そのたった一世帯も、一体どういう人であったかというと、六十六才のおじいさんです。あと二百二十九世帯というものはどこかでかせいできておった。あたかも、ちょうどあの南極に置いてきた多くの犬の中から、タローとジローという二匹の犬が、翌年行ったら生きておった。あてがい扶持のほしタラも幾分食っておったが、何を食って生きておったかわからぬが、とにかく二匹の犬が生きておった。そのタローとジローの二匹の犬が生きておったと同じ姿が、日本の今の百六十万の生活保護の世帯の中にあるということです。すなわち二百二十九世帯というものは、月にしてみれば五割、一カ月おとなでいえば最低五割ないし七割をどこかでかせいでおる。ケース・ワーカーあるいは民生委員の目を盗んでかせいでおることがわかりました。すなわち五割といえば千円、七割といえば千四、五百円です。これをかせいでおる。そして、ちょうど南極でタローとジローとが何かを食って生きておったと同じように今生きておる。それが実態です。そして、その二百二十九世帯の中でたった一人二千円だけ、与えられたその経費で食っているおじいさんの身体検査をしてみました。おじいさんは栄養失調です。全身浮腫です。からだが全部はれてしまっておるのです。生けるしかばねです。二千円の生活保護費では、ほかに何もかせがなければ生けるしかばねになるというの日本の現実です。従ってわれわれは、保護費で食うことは死を意味することを発見しました。さらに、人間らしい家に住んでいないのです。保護費では人間らしい家に住むことができません。さらに子供の教育が破壊されております。電気を夜つけて勉強しようとしても、電気代が出てこないのです。だから、もう夜は勉強せずに電気を消してしまいます。こういう実態です。さらに、そこには正常な家庭生活が営まれておりません。そこにはまともな交際がないのです。お隣とのまともな交際は全然しておりません。そして健康はそこなわれる一方です。もう保護基準自身が、その被保護者が立ち上がり、世帯更生をやっていく自立更生の道をはばむ一つの手かせ足かせになっていることがわかった。これはわれわれが極秘に百万円かけて、昨年の三月一日から三月三十一日まで、東京のある地帯を調べた実態です。  そこでこういう実態がはっきりしてきた。だから社会党は、これは最低五割上げなければならぬという結論に到達をいたしました。この社会党の主張に、厚生省の幾分の良識は二割六分を主張したのです。自民党の中にも良識の士があった。賀屋興宣、あの賀屋委員会は五割を主張したのです。賀屋さん、おそらく罪滅ぼしだと思うのです。戦争の結果、深い傷あとが日本の大衆に及んだ。これはやはり罪滅ぼしをしなければならぬということが賀屋委員会の五割の念願ではなかったかと思う。ところがそれは頑迷固陋な政治によって消されてしまいました。これが実態です。  そこで、こういう実態の上に立って、私は厚生省が出しておる具体的な献立表を手に入れたのです。かつて厚生省は日患その他の団体交渉の席上で、二十五才から六十才の、厚生省が食えるという成年男子の一人一日の献立表を発表しておるのです。私は、これは夢物語みたいなものなんですから、これで一体今の世の中で食えるかどうかを大蔵大臣なり——厚生大臣は一ぺん私は言っておるから、まあ大蔵大臣なり厚生大臣に十分一つ聞いてもらいたいと思うのです。それはまず朝飯です。米と外米と押し麦十一円三十八銭です。みそ汁、じゃがいも五十グラム、みそ三十グラム四円十七銭、つけもの、たくあん四十グラム一円八銭です。十六円六十三銭です。これは私は集団給食なら食えるかもしれぬと思います。二千人、三千人の集団給食なら食えるかもしれませんけれども、これが一人か二人の家庭で、一体朝飯が十六円六十三銭でどうしてできますか。しかも昨年の四月から以降ずっと米もみそもしょうゆもみな一割から一割四、五分値上がりしておりますよ。一八%上げたのなんかみんな帳消しですよ。昼飯は、御飯十一円三十八銭、イカのくず煮五円三十六銭、野菜の油いため、小松菜七十グラム、油五グラム一円五十銭、十八円二十四銭です。お昼十八円二十四銭で一体食わしてくれるところがありましょうか。下の食堂でさいぜん僕らは昼食をとりながら冗談ごとを言ってみた。横路議員が、滝井君、それは一日に一合ずつ牛乳を三回飲んだらいいだろう、そうすると四十五円である。一合といったって、あの小さなコップ一ぱいですが、あれ三合飲んで四十五円で、あと二十円何か食う。これで一体生きられますか。これが昼飯です。夕食、うどん、ほしうどん七円九十五銭、ひき肉四十グラム十円六十八銭、しょうゆ四十グラム五十銭、砂糖三グラム三十二銭、その他ネギ、油など五円三十銭、つけもの、たくあん四十グラム一円八銭、合わせて夕飯は二十五円八十三銭、計六十円七十銭です。一割八分を計算の都合で二割上げたとしても、一日に七十二円になるんですよ。一体今一日に七十二円で食えということを、人に言う前に、まずみずからやってごらんになっていただきたいと思うのです。私は来週一週間、一つ大蔵大臣と厚生大臣が六十円七十銭で、私もそれは一緒にやってもよろしいと思うのです。これで食えるかどうかということです。国会に出て答弁が——答弁は軽労作ですが、それでやっていけるかどうかということです。政治は人に施す前にみずからやってみることですよ。みずからやってみることなくして、これで食えるのだといって、数字の上で押しつけたのでは大へんです。だから栄養失調です。これで一週間やってごらんになったら、国会に出てこられませんよ。(笑声)これは実際笑いごとではない。こういうことが二十世紀後半の原子力の時代に、平気で日本では政治でまかり通っておるところに問題があるのです。保守党の政治の盲点があるのです。保守党の中にも、私は良識はあると思います。こういうものがどうして直せないかということです。大蔵大臣どうですか。あなたの方が、二割六分を厚生省が要求したのを、二割六分では多過ぎるといって一割八分にお削りになった。これであなたがやっていけるというならば、七十二円で一ぺん私と二人でやってみようじゃありませんか。そうして三日くらいやってみたらわかる。生活保護者は同じわれわれの兄弟ですよ。われわれ日本人ですよ。そういう人が苦しみの声を上げておるのに知らぬ顔をする政治というものは許されぬと思う。それも四千七百億円の自然増があるときに、わずかにそれを一割八分上げて、これで社会保障は日本の財政史始まって以来の歴史的な前進を示したなんて、一体どこのところからそういうことが出るのですか。これを一つどうです、やってみる意思がありますか、どうです。三日間でけっこうです。それならば予算を修正をして二割六分程度に上げなさい。これは現実ですよ。もはや数字の遊戯と魔術ではだめです。こういう現実を日本の百六十万の国民大衆に押しつけておるのですから、どうですか大蔵大臣、二割六分に立ちどころにこれはここですると言うあなたに良識と勇気があるかどうか。
  93. 水田三喜男

    水田国務大臣 今までとにかく生活保護費は一般の働いている人の賃金上昇とか物価の、生活費の上がり方とかということに比べて非常に低いと思いましたればこそ、今回は表面の均衡をとってできるだけの基準の引き上げをやりたいと思って一八%にいたしたわけでございますが、生活保護を受けている人についての問題は、保護基準を上げるということもむろん必要でございますが、それよりもさっきお話がございましたように、民生委員に内緒で働いているということも問題でございまして、働いて所得があればすぐにこの生活保護費を切られるということが実際においては非常に不合理な制度だと考えまして、できるだけ被保護者の勤労意欲を増させるというようなことも、ことに生活保護者に対しては必要な施策ではないかと私は考えましたので、この勤労控除を引き上げるという措置のために十三億一千三百万円という予算を予定しますし、そのほかに住宅、教育、生業の各扶助基準を引き上げるということも四億以上の金を見ておりますし、従来なかった期末の一時扶助というものも新たに設けるというようなことで、この方面に十八、九億円の予算を強化する。そして生活扶助基準の引き上げの方は一八%で五十一億円でございますが、合わせて昨年度に比べて一挙に七十億円前後の予算強化をやったというわけでございまして、やはりこの種の施策というものは財政に応じて順を追ってやっていくよりほか仕方がございませんし、また一方日層い労働者、こういうような人たち賃金を増すということも考えなければなりませんが、そこらの均衡を害したやり方というものは、社会保障制度としてはまた別の弊害を起こしてきますので、そういう点を勘案して、今回できるだけの予算強化を私はやったつもりでおります。
  94. 滝井義高

    滝井委員 大臣、問題をすり変えてはいけません。働いている者に勤労控除をやれば、これは当然のことなんです。なぜならばそれだけ栄養が要るし、それだけカロリーがよけいに要るわけです。私が今問題にしているのは、何も仕事をしていないという世帯を中心にして問題にしているわけです。この一人当たりの、おとなでしょうが千六百二十カロリーを基礎にしておるわけです。最近は千六百五十八カロリーくらいになっております。これは働けばさらに五百とか六百とか七百のカロリーが加わって、二千以上のカロリーがなければ働けないのです。問題は何もしなくて基礎的な代謝をやり、軽い労働をやるという、こういう程度のもので一体どの程度のものが必要か、ここが問題なんですよ。それを私はあなたに、そのために二割六分を上げる必要がある、こう言っておるのです。厚生省は最低二割六分というものを出してきたのだから、それをこの際は認める必要がある。生活保護家庭の実態調査をやってごらんなさい。極秘にやってごらんなさい。そういう実態なんです。科学的にいっても、これは血液の濃度をはかってみたらわかるのです。血液の濃度をはかりますと、血液の重さというものは、ある一定の栄養をわれわれの肉体が保っている限りは、血液の比重、重さというものは軽くならないのです。そのある一定の血液の重さがだんだん軽くなって貧血に移行する。その限界点は一体どの程度の、物質的な経費を中心に考えたらどの程度の限界があるか。これは労働科学研究所でやっております。五千円です。五千円が限界です。五千円を下ると血液の比重が軽くなるのです。それで貧血が起こって浮腫が出てくる。日本ではこういうものは幾らか、労働科学研究所では八千円と言われている。私は、財政上の問題があるから一挙に八千円とか五千円を要求しません。しかし二千円のものを千円くらいは上げる必要がある、こういうことなんです。社会党はそう言っておる。厚生省はそれを二割六分程度は上げて下さい、こう言っている。人間を栄養失調にすることは政治のヒューマニズムが許さぬと思うのです。そういうことを言ってもなお大蔵大臣、耳を傾けることができないという、こういう情けない大蔵大臣かと思うと質問するのもいやになりますが、しかしまあ一応私はそういう主張を耳に入れておきます。あなたがほんとうに日本の貧しい大衆を愛して国民所得の格差を縮めようとするならば、みずから六十円七十銭で一ぺんひそかに、国会が終わったらおやりになってみるといいです。大へんです。第一、六十円七十銭でどういう工合に料理しようかと思うと大へんですよ。まあ、そういう点だけ指摘をいたしておきます。  それならば今度物価が、初めは〇・七%の物価上昇だったはずなんです。いつの間にか物価は一・一%の上昇に修正してしまった。一割八分の決定のときは〇・七のときの決定だった。〇・七%物価が上がるときに一割八分の引き上げという決定だった。その後ガソリン税を上げたりなんかして、国鉄運賃はあとから上がってきたのです。生活保護費が決定したあとに上がってきた。それで一・一になった。ところが専門家は、一・一では済まない、二ないし三にいくのだと言い始めた。これは一体どうですか。古井厚生大臣、物価情勢は違ってきましたが、依然としてなお一・八%の引き上げで足るとお考えになるのですか。あの決定をしたときは〇・七だったのです、物価の情勢は。
  95. 古井喜實

    ○古井国務大臣 生活保護費は実際上げたいと思うのであります。これはまた物価の問題もありましょうし、国民生活全体の水準の変化もだんだんありましょうし、とにもかくにも日本の国の中の国民生活のいわば底でありますので、これを上げていくということは日本全体の進歩だと思うのであります。で、一挙に思うところまでいかなかったのは心残りでありますけれども、特にこの問題はできるだけこれからも考えて上げていきたいと思うのであります。
  96. 滝井義高

    滝井委員 政治は実践です。いかに偉大なる夢を描いても、思っても、それが現実に移されていかなければ何にもならないのです。命が風前のともしびにある栄養失調状態がわれわれの同胞の中にどんどん持続をし拡大をしておるときに、考えるだけでは困ると思うのです。やはり政治家は、ときには一番大事な点においては政治生命をかけて守るぐらいの勇気が必要だと思うのです。その勇気が各閣僚に欠けておることを非常に残念に思います。  そこでお尋ねいたしますが、生活保護世帯に転落をする原因の一番大きなものは一体何でしょうか、厚生大臣。
  97. 古井喜實

    ○古井国務大臣 まあこれはいろいろ見方はあるかもしれぬと思いますけれども、大きな情勢にも関係があると思いますけれども、私はやはり病気だと思うのです。病気が一番大きな原因だと思うのです。
  98. 滝井義高

    滝井委員 その通りです。厚生白書にも一番大きな、生活保護に転落する五割四分というものは疾病である、こう書いてある。さいぜん出てきましたが、生活保護を受けている家庭の中で五割九分程度、約六割程度はその世帯の中に仕事をしておる人がおるということです。ここです問題は。生活保護に転落する人の五割四分が病気であるということは、いか日本の医療保障というものが脆弱であるかということを、これは具体的に生活保護の家庭がわれわれに示してくれておるのです。生活保護の家庭の中で六割程度働いておるにもかかわらず、なお生活保護を受けなければならぬということは、日本賃金いかに低いかということを具体的に示しておるのです。はしなくも生活保護というその日本の一番底辺をとったときに、日本の国民の消費支出の中で最も低い人たちの状態をとったときに、その中に日本の政治の貧困、政策を重点的にやらなければならぬものが現われてきておるのです。すなわち疾病対策というものをやるということです。食えるだけの賃金を確立するというこういう面が現われているのです。これがやられていないのですよ。ことに私は問題があると思うのです。  そこで今の日本の状態を見てみますと、まず私なら私が日雇いに行っております。そうして私が病気をします。あるいは私の家内が病気をします。そうすると、私はなるほど日雇いの健康保険で病気を見てもらいます。これは初診料を払えば、あとは要りません。入院ならば一日三十円払えばいいのでしょうが、ほとんど金は要らないのです。しかし一たび家族が病気したら一体どうなるのだということです。家族が病気したら、立ちどころにその日雇いの人は生活保護を受けなければならぬ。医療扶助を受けなければならぬ。それならば、どうせ国の金でやるのならば日雇いの賃金を上げてやったらいい。どうせ国の金で生活保護の医療扶助をやる。生活保護を、食うために主人なり奥さんが病気したときにやらなければならぬというならば、初めから日雇いの賃金を食えるだけの賃金にしておったらいい。いたずらに事務を繁雑にし、役人の組織を大きくするだけの冗費を使っておるのです。これが今の日本の政治の姿でしょう。こういう点にどうもメスを入れられない。そしてそれがもし結核であったら、結核予防法が今度はそれに加わっていくのですから大へんです。一人の人間を救うのに、日雇いの健康保険と生活保護の医療扶助と生活保護のいわゆる生活扶助と、それから今度は結核予防法とこう加わっていくのです。一人の人の病気を救うために四つの法律が働かなければ助けることができない。しかもそれがみんな何が金を出しているのかといえば、国の税金でやっているのです。それならば日雇いのところで一本で片づけたらいい。日雇いの健康保険で片づけたらいい。これが行なわれていない。こういう中途半端ななま殺しの制度が日本では横行しているのです。こういうところに私は根本的な問題があると思うのです。こういう点どうですか、古井さん、まず日本の一番下の底辺というものの問題をもっと真剣に取り組んでいく必要があると思うのです。こういう人が病気をしないためには、まず憲法にいうところの健康で文化的なというぜいたくは申しません。しかしまあ血液が軽くならない程度の栄養だけはやっていただきたいと思うのです。そして病気になったら何か一つの制度でかかる、働いたら食えるだけの賃金を与えてくれる、こういう制度をやはり私は確立する必要があると思うのです。それができていないのです。どうですか、古井さん。一つ厚生大臣としてこれを勇気をもっておやりになる意思はありませんか。
  99. 古井喜實

    ○古井国務大臣 今の賃金の点で、相当たくさんの部分をひっくるめて解決したらどうだという御意見でありますが、これはまあ私でなくて労働大臣の方からお答えした方がいいかもしらぬと思います。ただ医療の関係とか、ことに日雇いの健康保険の関係とかという方面で改善すべき点がないとは私は申しません。特に日雇いの関係では健康保険にもいろいろ問題があると思います。ほかにも国保やいろいろございますけれども、深刻な問題があると思います。ひっくるめて医療保険全体のことを見直さなければならぬ時期に来ておるようにも思いますので、やはり保険のための国費を全体としてやたらにふやしていくばかりが能でもありませんから、全体の中の組合の保険の状況などと考えあわせて、その保険全部をひっくるめて考えると、だいぶ考え得る余地もあるのじゃないかという気もいたしますし、ひっくるめてこれは大きな問題として検討したいと思います。
  100. 滝井義高

    滝井委員 しっかり一つ検討してもらいたいと思うのです。  私は今一番底辺の問題を少し問題にしてみました。栄養失調で食えない状態、これは何とかすみやかに改善をはからなければならぬという事態にきておることは明らかです。しかしこれを政治が放任している。しからばその上のボーダー・ライン層、低所得階層はどうなんだ。生活保護の上には、かつて昭和三十三年、四年ごろは二百四十六万世帯、千百十三万人、ちょうど所得税を納めておるのと同じような九人に一人の割で生活保護とすれすれの、それと同じような生活をしておる人があると言われた。最近は、ことしの厚生省の白書によると幾分減って百六十万世帯、六百八十五万ということになっております。上におるわけです。この実態を分析してみますと、この約千万になんなんとするこの低所得階層の実態というものは一体どういう階層が多いかというと、そのうちの三割——私は千万はおると見ております。厚生省のこの数字は少し過小評価している。その約千万程度の低所得階層の内容を分析してみますと、三割は零細農民です。しかもそれは集中的に南海地区に多いのです。鹿児島とか宮崎とか高知とか、あるいは東北四県です。南海地区に多いのです。もう沿岸の漁業がなくなっておるこの零細農民というものが多いのです。いわゆるこれは農業の近代化、農業基本法との問題に関連してきますが、あるいは都市における移動の問題とも関連してきますが、これが多いのです。三割は農民ですよ。そうして一割が零細の自営業者です。中小企業者です。二割が低賃金労働者です。これはもう低賃金労働は今幾らでも中小企業におります。そうして二割は就業不定です。いわゆる日雇いです。そうして二割が無業です。ところがそれらの中で全体の四割というのは老齢、母子、廃疾です。いわゆる労働能力喪失の者です。四割、四百万程度は労働能力喪失です。そうしてあとは結局これは不完全な就業形態のために所得が低いということです。やはりここにも最低賃金が必要になってくる。こういう実態から考えてみますと、老齢とか母子とか廃疾とかというものは、これは年金がなければ解決できない問題です。だから従って日本では、いわゆる一番底辺の者とその上の者との問題は、医療保障と年金がある程度完備してくると、これらのものはずっとなくなってくるのです。ところが昭和四十五年になっても日本はイタリアよりかはるかに低い状態です。国民所得の六・一%程度しかいかないならばこの格差はますます開くばかりです。上の方の人と、この底辺とその底辺の次のこの二つの層の格差は拡大するばかりです。これは一万円のものが二万円になり、千円のものが二千円になれば格差は拡大しておる、こういうことなんです。だからよほどこれはふんどしを締め直していかないとだめです。  そこでこれは石田労働大臣が来たのでお尋ねいたしますが、今来たばかりですからわからなければ古井さんでけっこうですが、日本における完全雇用というものは一体どういうことを意味するのか、日本における完全雇用の意味するものは一体何なのですか。
  101. 石田博英

    ○石田国務大臣 完全失業者の、雇用労働者の中に占める率という点だけから見れば、日本は現在諸外国に比べてそう悪い数字ではございません。日本の場合におきましては、これはやはりもっぱら不完全就業状態を解消するということが、現実的には完全雇用の実現への道であろうと思います。すなわら量的拡大をはかるとともに、質的な改善を求めていくということが、日本における完全雇用の特殊的な、かつ具体的な目標であろうと考えております。
  102. 滝井義高

    滝井委員 量の拡大をはかって質の改善をやることは当然ですが、日本の現実を見ると、ヨーロッパでは三%、四%あったところで、これは摩擦失業で完全雇用だ、こういっておる。ところが日本では、これはあなたの方から出した統計だと思いますが、就業人口は四千五百七十五万です。これは去年の十一月、これが一番新しい、一番最近にきたおたくの統計ですね。そしてそれで完全失業者というのは三十三万、〇・七%です。もう完全無欠な完全就業です。資本主義における産業予備軍がないという形です。そしてなお日本では今のような状態、私が前に述べたような姿です。もう、ちょっとだれか一人家庭でけつまずく者がおると、直ちに生活保護を受けなければならない、医療扶助を受けなければならない、こういう実態です。こういう実態が、どうもただ何でもかんでも仕事につけさえすればいいんだ、賃金は業者間協定のような二百円以下を割るような賃金を平気でやらしているということ自体がやはり問題だと思うのです。これはやはり石田さんの勇断で、もうそろそろこういう労働力の不足の現象が幾分出てきつつあるのだから、八千円程度の最低賃金に踏み切るべき時期がきておると思うのです。  そこで、今度は石田さんの方にお尋ねすることになるのですが、今度日雇いの賃金をお上げになった、日雇いさんはニコ四さんという。かつて二百四十円。ニコ四がニコ八になって二百八十円になった。ニコ八が三〇になって三百四円になった。そして昨年ごろから三百三十四円になり、ことし五十二円上がって三百八十六円になった。ニコ四から三〇を卒業して三百八十六円ですか、こうなった。しかしわれわれが地方の実態を見ると、ニコ四大学十年になるけれども、ニコ四大学を卒業できない者がざらです。ニコ四大学を卒業できない。今度あなたの方で五十二円、これは一五・六%に当たりますか、これをお上げになった根拠というものは、どういうところに根拠があるのですか。
  103. 石田博英

    ○石田国務大臣 先ほどお話の中に、現在業者間協定で進めておりまする最低賃金が、二百円を割っておるものが大部分のようなお話でありましたが、しかし今日では、これは法制定当初におきましては、あるいは行政指導の段階におきましては、そういうものもございましたけれども、現在もう二百円をかなり大幅に出ておる状態であります。それは誤解のないように訂正をいたしておきたいと思います。今日十五才で二百円以下というようなものは、最低賃金などと私自身が考えておりませんから、それはもうはっきりここで申し上げておきたいと存じます。  それから、全国一律の業者間協定十八才八千円、十五才で二百三、四十円から五十円に近づきつつあるのでありますから、現実的には十八才になりますと、そういうところに、全国一律ということは別といたしまして、現実的には近づきつつあると思います。ただ、一ぺんに私どもはそういう制度にやりますよりは、現在の最低賃金法が制定されて今一年半ばかりであります。そしてようやく五十万適用労働者というところでありますので、これは三十六年度を初年度といたしまして、今後三カ年の間に二百五十万を目標にして行政効果を上げることに努力をいたしまして、そして中小企業の自覚と内容の充実をはかりつつ、その成果を見た上で所要の点の改正に着手をしたいと考えているわけであります。  それから、失対賃金の五十二円を上げました根拠は、失業対策事業法にありますいわゆるPW方式、その法規の範囲内で定賃金率を最大限に考慮し、かつ労働の、何と申しますか重軽労働率とでも申しますか、正確な言葉は忘れましたが、これもでき得る限り有利に計算をいたしまして、そして現行法規内で、PWの現状の中で最大限に計算した数字が五十二円でございます。
  104. 滝井義高

    滝井委員 三百八十六円を二一・五日働くわけです。そうしますと、八千二百九十九円です。都市における生活保護、五人世帯で今度一割八分上げられると一万一千三百五十二円です。この関係を一体どう理解しておるかということです。大蔵大臣、あなたは一体この関係をどう理解しておりますか。三百八十六円に上がって二一・五日の予算を認められているわけです。そうすると、八千二百九十九円、五人世帯で東京では生活保護が一万一千三百五十二円です。この両者の関係というものは一体どういうことになるのですか。
  105. 水田三喜男

    水田国務大臣 今度の予算折衝でも、この問題の調整が非常にむずかしい問題でございましたが、今労働大臣がお話ししましたように、この緊急失対法できめられている日雇い労働者の賃金のきめ方において、最高限になるようにという考慮をしてこの一五・六%というものを出したわけでございまして、これが完全に均衡がとれているとかとれないとかということについては、これはいろいろ問題があると思います。家族数が少ない場合、家族数が多い場合には、これは生活保護費の方が多くなるとか、いろいろなケースがございますが、それらを大体勘案して日雇い労働者の方の最高限の上げ方を私どもは工夫してやったつもりであります。
  106. 滝井義高

    滝井委員 私は家族数が多いとか少ないとかいう関係でなくて、日雇いの方はおそらく三・四かそこらの家族構成ではないかと思うのですが、そのくらいじゃないかと思うのです。しかし、それにしても、三人だとすれば二千七、八百円になるわけです。片一方は二千円程度になるわけです。しかし生活保護は、五人世帯という全くない架空の、ある数字を基礎にしておるのです。この関係というものが、おそらくこれは予算編成のときに関係があったはずです。関係があってこういうことになっておると思うのですが、ここらあたりもう少し私たちは解明してもらわないとわからないのです。世の中ではこういう議論をする人がおるのです。一万一千円も生活保護の人が働かぬでもらう、われわれは働いておって八千二百円そこそこじゃないか、これはけしからぬじゃないか、こういうことがあるわけです。ここらの解明を一体国民にどう労働省なり厚生省はおやりになるのかということです。それを一つわかりやすく解明をして下さい。
  107. 石田博英

    ○石田国務大臣 建前から申しますと、生活保護費とそれから失業対策事業の賃金とは直接的に関連を持たせて考えるべき法制上の根拠はありません。しかし、ただいま御指摘のように、現実的には今おっしゃったような議論が当然出て参ります。私も予算折衝の上におきましては、折衝上の一つの根拠といたしまして、この点の均衡を失しないことを当然要求いたしました。そして生活保護一八%、私どもの方の上昇率が一五・六%、その差額は二・四%であります。その差二・四%を認めた根拠いかんということに現実的にはなって参ります。それは昭和三十二年ですか、この前の前のPW決定のときからの生活保護費と失業対策の賃金、これはいろいろの機会で上昇して参りましたが、その上昇の比率が、正確な数字は忘れておりますが、この前の前から比較いたしますと、失業対策事業の賃金の方が二%強多く上がっておったわけであります。そこでその二%強以上の差をつけない、つまり今回の上昇率において二%以上差をつけないということが予算要求上の一つの根拠でありました。そういうふうにして、つまり働いている者と働かないで生活保護費をもらっている人々との間に均衡を失しないように努力をいたしたつもりでございます。  それから、今私どもの方に新しい数字がございませんので、古い数字を申し上げても大した参考にはなるまいかとも思いますけれども、ここに三百六円のときの、いわゆる日雇い労働適格者の六大都市における生活の状況、収支の状況を調査したものがございますので御参考までに申し上げておきます。これは今度三百八十六円になりますと、三百六円からでありますから二割五、六分強上がっているんじゃないかと思います。六大都市におきましては世帯人員が二・九六ですからまあ三人であります。それから就業人員が一・六七、これは本人が日雇いにいって働いているほかに家族が労働しておるというものを換算したものでありまして、その収入総額は一万四千八十六円であります。本人の勤労収入が八千五百二十九円でありますが、その当時におきましては一般の失対で四千三百九十一円、そしてそれ以外の、民間を含めまして安定所の紹介が七千九百七十二円、そして約六百円くらいがそれ以外の本人の収入、それから本人以外の世帯員の収入が三千七百八十二円、勤労以外の雑収入が千七百七十五円、こういうふうな調査でありまして、そのときの調査ではほぼそれに見合った支出になっておりますが、そのうちの飲食費の占める率が五〇%以上でありますので、やはり生活状態としては苦しいことは言うまでもございません。もっともそれは三百六円のときでありますから、今度三百八十六円になりますと改善はされると思っております。しかしこれで所得倍増に見合っているかとか、あるいはこれで健康にして文化的な生活だとかいうような面からの御議論になりますと、それはむろん御議論はあると思います。ただ私どもは定賃金率を初めあらゆる部門において現行PWのもとにおきまして最大限に検討いたしたつもりでございまして、これ以上現行法規内では計算のしようがないというところまで計算したつもりであります。
  108. 滝井義高

    滝井委員 今石田労働大臣の言葉の中にはしなくも現われてきましたが、いわゆる税金によってまかなわれる者の生活水準が働く者よりか当然低くなければならぬということですがね。(石田国務大臣「いや、そういうことは申しません。あなたがそうおっしゃったから、そういう議論もあるということを申しただけであります」と呼ぶ)そういう議論が、いわゆるこれは劣等処遇の原則という原則ですが、それが今働いているんですよ。政治に作用しているんです。従って生活保護が、人間らしい生活が行なえないで、足を引っぱる。保護を低くしているから、日雇いの賃金が低くなる、こういう相互作用がお互いに起こっているんです。この劣等処遇の原則というのは、ヨーロッパ諸国ではひっくり返されてだめになっている。まずやはり日本の憲法に言う、健康にして、文化的な生活という、これが目標でなければならぬ。だから働く能力がなくて、そして老齢とか廃疾になっておって生活保護を受けようとするならば、やはり少なくとも最低の、生活費とは申さない、最低の生存費だけは確保するということが、第一の前提でなければならない。その上に今度は、日雇いでは働いていくのですから、その上に乗っかっていく、こういう形ならばいいのです。ところが今は、劣等処遇の原則が働いて、何か暗黙のうちに、とにかく生活保護を受ける者は働いていないのだ、働いている日雇いよりか低くなければいかぬというので、日雇いの低賃金が即生活保護の低基準というものを格づけしていっているわけです。そして、同時にそれはPWなんという変なものを持ってきて、それをまた格づけする、こういう形が出てきているのですね。こういう点は、労働省なり厚生省というものはやはりお互いにもっと意思の疎通をはかって、すでに西欧諸国ではこの劣等処遇の原則なんというものはだめになっているのですが、それが日本では依然として——あなた方はそれを作用させていないと今御言明になったから、その通りでいいと思うのです。しかし、何か目に見えない法則として現実にこれが作用していることは間違いありません。だから、予算編成のときに、日雇いの賃金と生活保護費をどうするかということが一番大きな問題になってくる。どちらをどうするかということが一番大きな問題になってきたことは現実ですから、こういう点はもう少し両省の間で慎重な検討をやって、意思統一をやって、大蔵省に要求すべきものは要求し、国の政治の中心にそういうものを持っていくということが必要だと思うのですが、そういう点は両大臣、どうですか。
  109. 石田博英

    ○石田国務大臣 私は、失業対策事業の賃金計算が、現行法規上三百八十六円より大幅に引き上げるような計算ができないと申し上げた。そこで先ほどあなたがおっしゃった、世間の中には働いている者と働いていない者との差が違うということ、政府の出す支出が、上がり方が不公平になるということはけしからぬという議論——これはあなたがおっしゃったのです。そういう議論も別にあります。しかし、そういう議論も、労働省といたしましては、上昇率の間に非常な差が出たら困るわけでありますが、しかし、それだからと申しまして、現行法規から三百八十六円以上の計算はむずかしい。それと、今までの上昇率から換算をいたしまして、二%以上の不均衡が生ずることは、失業対策事業の方からいって困る。困るからそれで牽制をして、それで生活保護費はそれに見合うように押えてもらわなければならないというような量見は絶対にありません。私はむしろ、生活保護費がどんどん上がってくれれば、その二%以上の差がつかないという原則の方を主張することによって近づいていけるので、生活保護費がどんどん上がってくれることを希望いたしております。そういう場合には、他のそういう面からの主張を今度は出し得ると思っておったわけで、そういう生活保護費が上がる牽制勢力として失業対策事業の賃金が働いたということは全く心外でありますから、この点は明確にしておきたいと存じます。しかし、ただいまおっしゃいましたように、これは現実的に双方関連するものでありまして、生活保護費がうんと上がっているのに失対の賃金上昇率が一〇%も一五%も違っておるというのでは、これは現実的に困るのでありますから、これは双方関連を持って、次の予算には大蔵省と連絡をとって、さらにこの低い階層の待遇改善に一段と努力をいたしたいと存じております。
  110. 古井喜實

    ○古井国務大臣 今回の予算編成の場合にも、私の方から日雇い賃金の方の足を引っぱったこともなければ、労働省の方から生活保護の方の引き上げの足を引っぱったということもありません。そうあるべきものじゃないのであります。どっちも、あなたもおっしゃったように、健康にして文化的な生活というものを目標に進んでいくものですから、今回の予算編成においては、そんなことは絶対ありません。ただ私どもでも、これはとりようでもありますけれども、たとえば昭和二十四年から今日まで何ぼ上がっているかを見ると、二十四年を一〇〇とすれば二一八・三、失対の労力費の単価の方は二十四年を一〇〇とすれば二三六・二、ちょっと上がり方が、ここで見ると私どもの方がにぶいものですから、元気を一そう出したことは間違いありません。足をお互いに引っぱったことはないのであります。
  111. 滝井義高

    滝井委員 これはやはり日本の政治の基本的な問題点だと思います。そこでやはり劣等処遇の原則を排除して、大前提としては食えるだけのものが生活保護に行く。一方は働いているのですから、ある程度そこに当然考慮されなければならない。そこはまた最低賃金の問題になってくると私は思うのです。こういう点については十分一つ御検討を願いたいと思うのです。  次に、外務大臣と石田労働大臣、お急ぎになるそうですから少し雇用政策をやりたいのですが、端折って一つだけお聞きして、次には本論の医療問題に入りますが、最近西ドイツのルールの石炭経営者から、炭鉱の離職者を二千人程度受け入れたいという申し入れがあったということが、新聞報道されておるわけです。これは一体真実なのかどうか。申し入れられたとすれば、その条件というものはどういうものかを石田労働大臣から御説明願いたいと思う。
  112. 石田博英

    ○石田国務大臣 昨年の暮れに、今お話しの西ドイツのルール地方の炭鉱経営者から、非公式に、千五百人ないし二千人の離職者を雇用したい、こういう申し出がございましたことは事実であります。ただ、その諸条件については、これは詳細にまだこちらに向こうの条件というものは言ってきておりません。こちらではその条件等を問い合わせをかねて目下折衝をしておる段階でありまして、私はこれはぜひ実現をしたいという方針のもとに条件その他の折衝を命じておるところでございます。
  113. 船田中

    船田委員長 ちょっとお待ち下さい。迫水企画庁長官から訂正の発言がありますから、これを許します。企画庁長官。
  114. 迫水久常

    迫水国務大臣 先ほど、昭和四十五年度の目標年次におきまする日本の国民所得が大体イタリアに近くなると申したのですけれども、重大なる誤りでございましたので、訂正をいたします。現在のイタリアの所得は四百三十二ドルと一応算定されておりまして、目標年次における日本所得は五百七十九ドル、こういうことになりますので、現在のイタリアよりもはるかによくなっている、こういうことであります。ちょうど現在のイタリアと西ドイツの中間ぐらいにいく、こういうことでございますので、訂正をいたしておきます。
  115. 滝井義高

    滝井委員 石田労働大臣、きわめて具体的な内容を御説明にならなかったのですが、問題は、これは小坂さんの方にもこういう問題は関連してくると思うのです。で、小坂さんの方に、何かそういう問題について外務省に具体的なものが入っておれば御説明願いたい。
  116. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 お答えいたしますが、私どもの方の大使館には非常に詳細なものはまだないようでありまして、労働大臣がお答えいたした程度のものかと承知しております。
  117. 石田博英

    ○石田国務大臣 これは別に隠しているわけでも何でもないのでありまして、一応のいろいろな話はございますけれども、こちらも応ずる以上は、こちらの応ぜられるような条件を向こうにのんでもらわなければ困るのでございますから、そののんでもらえる、こちらの応ぜられるような条件をこちら側としては提示しなければなりません。それから、ドイツの社会保障制度の適用はどうなるか。それから、帰りの旅費あるいは途中で事故があった場合の問題とか、詳細の問題について目下折衝している段階なのでありまして、大筋の申し入れが、しかもそれが非公式にあった段階でございますから、詳細の具体的な問題というものは、現在、言わないのじゃない、まだないのですから、一つ御了承いただきたいと思います。これはやはり、私は、先ほど申しました通り、ぜひ実現をしたい。その実現をするのには、何しろ現在離職しているわけでありますから、離職して、向こうで三年なら三年働いて、そうして、帰ってきた場合の新しい就職の保証ということまで考えないと踏み切れない問題であります。そういうものを一貫して私はぜひこれを実現したいという目標で目下折衝しておるという段階でおります。
  118. 滝井義高

    滝井委員 雇用問題に少し入ろうと思いましたが、時間がございませんから、これで労働大臣よろしいです。  次は、医療問題ですが、昨日自由民主党の方で歯科医師会、医師会の両会長に対してそれぞれ最後的なあっせん案をお示しになったようです。しかし、それは新聞の報ずるところによると不調に終わったようでございます。御存じの通り昨年以来歴史的な病院ストがずっとなお続いております。慶応大学、慈恵医大学、織本病院と、一部は解決を見ましたが、なお一昨日も一斉ストがありましたし、なお二十三日にはストが行なわれるという情勢です。で、あすは一斉休診が行なわれることになるわけでございますが、このあっせん案の決裂にあたって、古井厚生大臣としては今後の見通し、今後の事態の処理というものをどういう方針でおやりになるおつもりなのか。これをまずここで明らかにしていただきたい。
  119. 古井喜實

    ○古井国務大臣 明日の一斉休診の問題は、国民全体に非常に心配を与えていることでもありますので、このこと自体を何とか回避できないか、こういうわけで、政府も、また与党とともに双方努力をしてきておったわけであります。それで、まあお話のように、党の方も三役を初め非常に努力をしておったのでありますが、きのうはああいうことでありました。まだこの努力を打ち切ってしまったわけではありません。最後まであらゆる手で努力を続けていこうという態度をとっておるわけであります。一方、当初は例の緊急要員と申しますか、保安要員と申しますか、というものもみな休んでしまう、考えないという様子に見えたのでありますけれども、この辺はだんだん様子が変わってきまして、きょうも午前十一時、昼前の現在の各地の状況を聞いてみますと、多数の府県では少なくとも保安要員は置く考え方をとってきておりまして、これは県の医師会全体としてそういう態度をとっておったところもあれば、郡市別に態度をとっておるところもあり、県の要請によって、協力という形でこうしようという話ができているところもあり、いろいろでありますけれども、三十三県は保安要員のことは大体心配ないのじゃないかという状況に、これはきょうの午前十一時のときの調べでありますけれども、というところまではきておるのであります。で、最小限度のことは心配のないようにしたい、こういうわけで努力をいたしております。それからまた、それでも十分でないところもありましょうから、国立病院や県立病院や公的病院の方には、あすの場合には特に迷惑を国民にかけないように、非常態勢というのは大ぎような言葉ですけれども、緊急要員の措置をしておくように手配いたしております。最小限度のことは考えつつ、しかし休診そのものも相なるべくは回避できないものかと努力を続けておるという状況であります。
  120. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、今後もなお一斉休診なり病院のストライキに対して努力を続けていくということでございましたが、その具体的な解決の方法ですね。昨日自由民主党の方で五項目にわたるあっせん案をお出しになったわけです。これも一つのおそらく解決の案としてお出しになったのだろうと思いますが、厚生大臣はあの案を御了承になって、党がお出しになったのでしょうか。
  121. 古井喜實

    ○古井国務大臣 昨日のあっせん案は、これは党として、党の側であのあっせん案を持って医師会に当たってみよう、こういうことであったわけであります。昨日のあっせん案はそういうことであります。
  122. 滝井義高

    滝井委員 党の案であるということはわかったわけです。大臣はそれを御了承になったのかどうかということなんです。
  123. 古井喜實

    ○古井国務大臣 私はそこで、党でどういう方法にせよこの事態を回避したいというので努力しておりますことは、これは大へんよいことでありますし、あのあっせん案自体につきましては、せっかくの努力をしておるところでありますから、結果がどうなるにせよ、あのあっせんが成り立つ、成り立たぬはわからぬ、こいねがわくは成り立ったらよいと思う状況ではありましたけれども、あのあっせん案の趣旨を尊重しながら今後の態度は検討したい、こういうことを私はあのあっせん案に対しては申しておった、これが実情であります。
  124. 滝井義高

    滝井委員 政治家というものは、こういう重要なときにはやはり——私はこの前そういうことを言ったら、それは独裁になる、こうおっしゃったけれども、やはりはっきりする必要があると思うのです。これをはっきりしないところに問題がこじれてくるわけですからね。はっきりする必要があると思う。政党政治ですから。だから一たびやはり政党政治のもとにおける閣僚として池田内閣に御列席になったならば、やはりその閣僚としての責任というものを、きちっとえりを正しておとりになることが政治を正すゆえんだと思うのです。これは今までは私はあなたの主張に賛成しておった。ところが、今のあれでは、その趣旨を尊重して何とかとこう言うけれども、それじゃ賛成なのか反対なのか、あの案はきわめて具体的な案なんですよ。たとえば第一項が特に具体的なんですね。さしあたり七月一日から若干の単価引き上げを行なうこととし、中央社会保険医療協議会に対し諮問する、こうなっております。きわめて具体的です。これの言葉は。今まであなたが私らの質問に対して、がんとして一貫をして答えなかった点です。だから私はあなたのそのがんとして一貫した筋を通す態度に敬意を表していろいろ悪口雑言も言いましたけれども、やはりこれは好敵手であり語るに足る尊敬する人だと思ってきたのです。しかし昨日になったところが、どうも重要な参考意見としてこれを尊重し検討するというようなことになって、今までの筋が少しゆがんできた感じがするのです。それならばなぜわれわれがあれだけ声を大にしていろいろ意見を具申したときに、断固としてはねのけてきたのかということが疑わしくなるのです。そうすると、古井さんの筋というものは、時に曲がり、時にまっすぐになるのかという感じがこれはするのですよ。だからそういうことであったから、私は一昨日、あなたが参議院に行ったときでも、もうこれから古井さんの答弁を求めませんぞと言ったのも、そういうことも実は含んでおったのです。きょうはあなたにここへ出てもらって答弁してもらうのもどうかと思ったけれども、社会党は、滝井義高はそんなことを言うとおとなの政治家になれぬぞという忠告もあったので、私は実はきょうはやっておるわけです。だからあなたもおとなの政治家になられるならば、政治家としてやはり自分の基本的な方針というものはきちっとお出しになったならば、だれが何と言おうと、それを貫いていく政治信念がないと信用がおけなくなる。これは若僧の滝井義高が大先輩の古井先生に申し上げる言葉ではないけれども、私は今までそういう主張をしてきたにもかかわらず、あなたがそうだったのですよ、ここにやはり問題があると思うのです。しかしこれはあやまちは直せばいいわけですから、そこでやはり正しいと思うことについては、どしどし一つ了承していただきたいと思うのです。  そこで私は具体的にお聞きをするわけですが、党のああいう案が出たのですが、あなたとしては、一応予算のワクがきまっておるわけですから、それで一割の医療費を引き上げますと、これは二百十七億になるわけです。そして患者負担が六十五億、保険負担が百六億。国の持つ分は四十六億と生活保護などの社会医療以外のものが二十八億で七十四億程度になるわけです。この場合に七十四億というものをあなたとしてはどうお使いになるつもりなのか、自民党のあっせん案を、趣旨を尊重して検討するということでございますが、自民党の趣旨はわかったんです。あなたとしてはあの趣旨の通りに、今度はまっしぐらに実行に向かって局面打開の手を打っていかれるのかどうか、それともああいうものは全く白紙に返して、新しい立場で今までの主張通りを貫いていかれる所存なのか、ここらをもうはっきりする必要がある。なお今後打開のために努力をせられるという。まだ夜中の十二時までには七、八時間ありますから、一つあなたの考えをここで明らかにしていただくことが一番いいと思うのです。それによってわれわれもあなたの馬の足というか、犬馬の労をとってやはりこの局面打開に努力できるのではないかと思うのです。一つ率直にこの国会を通じて国民に明らかにしていただきたいと思うのです。あなたは取引はやらぬということはおっしゃっておったのですね。きのうだいぶ松村先生、三木先生とも御相談をされておったようでございますけれども、それは取引ではないと思うのです。取引ではないと思いますけれども、やはり何かちょっとわれわれ社会党から見ると、古井さん取引を始めたのかという気持にもなったのです。そこできょうはこの席を通じて天下に明らかにしていただくということが一番いいことだと思います。どうぞ一つお願いいたします。
  125. 古井喜實

    ○古井国務大臣 医療費の引き上げの問題は、きょうの引き上げの問題は、繰り返して申すまでもなしに、引き上げの幅の問題と、それから引き上げの方法の問題とあるわけであります。そこで、党の方ではいろいろああいうふうに尽力してあっせんをして下さっておる、事態を回避したいということはみんな共通に願っておるわけであります。私は、この医療費の問題は、本来ならば、予算を組む前に医療協議会を開いて、そしてそこで幅も方法も検討しまして、出た意見をもとにして予算を組むのが一番すなおな順序だと思っておるのであります。ところが、御案内のような事情で努力はしましたけれども予算編成期までに医療協議会を開くという運びに至らなかった。どうする。そこで仕方がないから順序をひっくり返して医療協議会にはあとでかける、予算を一応われわれの手元の資料をもとにして編成する。順序を変えるという行き方しかこの場合進みようがない、そういうことにいたしたのでありますから、そこで医療費の引き上げに関する問題は、医療協議会に諮って、そこで論じて、やはりどうしても幅が不足だということになれば、まだ諮っていないのですから、その意見に対しては大きに考慮を払わなければならぬ。また方法についても諮っていないのですから、そこでまとまった意見を尊重してきめなければいかぬという行き方は、私が言うのじゃない、あたりまえのことだと思っております。だれが考えても筋道上、その考え方は依然として私は持っております。持ち続けておりますが、ああいうふうに党でせっかくあっせんをしたことでありますから、これも大いに成功を祈りたい、また尽力を多としなければならぬ。そういうわけでありますから、あの妥協案が成り立つといたしますれば、よくその趣旨を考えてどうするかということを検討してきめたい、こういう態度をとっておるのであります。きのうのところはあっせん案妥結に至らずであります。まだしかしきょう一ぱいあるわけであります。どういう結末になるか知りませんが、あの妥協案でまとまるのかまとまらぬのか知りませんが、まとまるとしました場合、趣旨を尊重しながら、そこで今までの私が申しておる行き方というものをどうするかということを検討して結論を出す、こういう考え方ですから、考え方の順序は至ってはっきりしておると思います。
  126. 滝井義高

    滝井委員 京都の本願寺の鐘よりか余韻じょうじょうだるところがあります。よくわかりました。あなたの腹は読めましたので、これ以上追及しません。  そこで、次に問題にさしていただかなければならぬ点は、患者負担の六十五億という点です。これが問題です。特に国民健康保険における患者負担四十六億、これが一番問題なんです。もちろん政府管掌の日雇いの健康保険についても問題がございます。しかし、これは国民健康保険の問題が解決してくると、だんだん政府管掌の問題も解決してくると思う。そこでこれは自治省にお尋ねをすることになるわけですが、過去数年の間の地方財政の実態を見てみますと、地方財政の赤字の主たるものは、少なくとも四割四、五分というものは、自治体の一般会計から国民健康保険の特別会計に金をつぎ込むことによって地方財政の赤字というものが大きく形成をせられておった事実があるのです。三、四年前までは、そういう傾向は非常に濃厚でした。現在の客観的情勢はどうですか。
  127. 安井謙

    ○安井国務大臣 三十四年度の現在におきまして、三十四億程度の繰り入れをやっております。三十五年度もほぼそれに近いものの繰り入れになっておろうかと思います。
  128. 滝井義高

    滝井委員 三十四億程度一般会計から特別会計へ流用をやっておるということでございます。御存じの通り、厚生省が行政基礎調査で国民健康保険の被保険者の実態調査を三十三年ごろからずっとやっておるようでありますが、被保険者で月の支出が一万円未満の者が、国民健康保険では被保険者の三割六分あるのです。それから一万五千円未満の者が六割四厘あるのです。そうすると、一万五千円以下というのが九六・五%あるわけです。これを健康保険の被保険者においては一万円未満というのは一六・八です。それから一万五千円未満が三四・六ですから五割一分、半分程度です。そうすると、九割六分というのは一万五千円以下というのが国民健康保険の実態でございます。そうしますと、今度医療費が一割上がるとすれば、一応これをわかりやすいように説明するために、単価だけでいくとすれば、五十銭は保険が見て、五十銭は患者負担になる、半分はとにかく被保険者全部を国保では見るわけです。そういう形になって参りますと、一万五千円以下の被保険者というものが九割六分もおるのですから、医療費の四十六億の増というものは、なるほどそれは一人々々にしてみれば十円とかなんとかわずかなものかもしれませんが、しかしこれはちりも積もれば山で、大へんなことなんです。そうしてもう一つ因ったことには、四月一日から拠出制の国民年金が始まるということです。拠出制の国民年金が始まりますと、一人が月に百円ずつ納めるわけです。国民健康保険の保険料は現在一世帯多分三千五、六百円です。あるいは三千七百円くらいになっておるかもしれません。北海道のごときは五千円になっております。非常にアンバランスがある。そうしますと、国民健康保険というものは、今申しますように三千五、六百円の保険料を払い、その同じ人たちが、同じ中小企業者と農民が拠出制の年金を——もし三十四才以下の御夫婦二人いたならば二千四百円払う、そうしますと、五千五、六百円は払う。医療費は上がってくる。こういう形になると、一体どういうことが出るかというと、逆分配が出てくる。すなわち医療を必要とする零細階層が医療にかかれない。すでに現在の日本の農村には、零細農は国民健康保険の保険証が使えない。だれが使っておるかというと、中農以上が使っておる。零細農は売薬でやっておる。そうすると、中以下の農民なり中小企業の諸君のかけた保険料というものが中以上の人の医療費にみな吸収されてしまう。いわゆる逆分配が行なわれてくる。こういう実態が農村にあるわけです。そういう実態のある中で、今度は四十六億を患者負担で国民健康保険をやらせるわけですから、大へんな事態です。すでに現実に三十四億以上を一般会計からつぎ込んでおるという事態ですが、古井さんなり大蔵大臣はどう一体打開されようとしますか。このままずっと押し進めていかれるのかどうかということです。私は一円引き上げの問題が一番わかりやすいから言っておるのです。大蔵大臣なり厚生大臣はこの事態をどう処理していくかということです。
  129. 古井喜實

    ○古井国務大臣 医療費の引き上げで患者負担かそれ相応にふえてくる、この点は問題が残っておるのであります。引き上げのために保険料を上げるということはしないで済ましたいというので、その考え方で措置を一応したわけでありますが、患者負担の分がふえる点は残っておるのであります。お話のように、一方国民年金がいよいよ金を集める段階に入ってきますので、困ったときにかち合ったものだというので、実際頭を痛めておるのであります。けれども、国民年金も何とか育てていきたい、こう思うのであります。今は貧弱な内容かもしれぬけれども、将来はもう少し気のきいた内容にまでして育てていきたいと思うのであります。一方医療費の引き上げはやむを得ぬということまではどうにも動かぬ、あと患者負担の点は患者負担の制度を置いているということ自体があります以上は、若干患者負担がこれに伴ってふえることは、この建前のもとにおいてはやむを得ない、こういうふうに思うのであります。そのためにそれが大へん負担が苦しいとか苦しくないとか言っておるのじゃありません。患者負担というものを、給付率を引き上げるとか、軽くするというような問題としては大きに考えなければなりませんけれども、これは患者負担の制度がある以上はどうにも仕方がない、まあ理解を得て進めるほかはない、こういうふうに思うのであります。
  130. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは大蔵大臣に私は言うわけですが、御存じの通り、国民健康保険の中核をなすものは、日本の人口の中で、約四割程度を占める農村が中心になってきておるわけですね。特に農民です。農業所得伸びは今年度は所得倍増計画で一%しか伸びないのですね。池田さんの答弁によっても、十年の後にはまあまあ五割にしたい、こういうことです。それならば、二・五%くらいずつ伸ばしていかなければならぬ。現実は一%、平均二・八%でしょう。第二次産業は三倍になる、第三次産業は二・六倍程度になる。そうなりますと、十年の後になっても農村というものは収奪されるだけで、ちっとも金が返ってこないのです。社会保障の面からも所得格差というものはますます拡大をするのですよ。これは収奪されるばかりです。こういう実態ですが、どうですか、この四十六億というものを今私は組めとは言いません。今もう年度の途中ですから、予算審議の途中ですから、なかなか組むとは言えないでしょうが、しかしこれはさいぜん私は冒頭に、まだ二千二百億程度減税をやるだけの余力がことしの自然増の中には残っているということを指摘したのも、こういうところの財源を見つけるために指摘したのですが、四十六億を一つ今年の年度末、年度途中にでも、どうせあなたはまだふえるであろうということを最初にちょっとお漏らしになったのですが、おやりになる意思はございませんか。いわゆる日本の中小企業、農民大衆の医療保障を前進せしめるためにおやりになる意思はないですか。
  131. 水田三喜男

    水田国務大臣 結局社会保障制度自身の問題に関することでございまして、この医療保障を強化しようというときに、これを何びとが医療費の負担をするかということについて、御承知のような保険制度をとって今対処しているということでございますので、これがいかなる医療を施そうと、その負担は全部——一般国民は含まれるのだから、全部国が出すのだということでしたら、やはり医療制度を保険制度に持っていくということに問題があるのでございまして、やはりこういう制度をとっておる以上は、これをそれぞれどういう分担に従ってこの制度を運営していくかということが重要でございますので、私どもはこの制度はくずさない形で運営しなければならぬ、もしそれが無理だというなら、制度自身を変えるよりほかはないと思うのですが、今回の場合も保険料をなるたけ上げずに済ましたいということと、一部国が二十億は見るというようなことも入れて、それで患者負担がどうなるかという問題ですが、医療費を一割程度ふやす限りでは、何とかこの程度の患者負担は制度の建前からも忍んでもらうよりほかないということで、今厚生大臣からお答えになったような形で、この一割の増という予算を組んだわけでございますので、国が金があるから出すとかないから出さぬという問題とは、これはまた別の問題だと私は思っております。
  132. 滝井義高

    滝井委員 どうも明確な答弁をいただけないのは残念ですが、これは政府管掌の健康保険についても同様なんです。政府管掌の健康保険は、御存じの通り九百万の日本の中小企業の労働者が集まって作っておる保険なんです。その政府管掌の健康保険に国が幾らの金を医療給付に出しておるか。九百万の零細企業の労働者です。その家族も入れたら千七、八百万になる。その千七、八百万の日本の零細企業の労働者とその家族に対してわずかに八億出しておる。日本の輸出産業が今後伸びるためには、この零細企業に働く労働者の労働力に依存するところが大きい。この所得倍増計画においては輸出を振興しなければならぬが、それを双肩にになう労働者の社会保障にわずか八億しか出していない。これを私が言ったところで、あなたは、それは少ないが、もうしようがない、制度がそうなっておるのだからと、こうおっしゃるでしょうから、私はまた機会をあらためてやりますが、こういう実態です。これはもう日本の一番下の最も所得の少ない生活保護、低所得階層、零細農民、こういうところを中心とする医療保障というものは全くなっていないという実態を今私は鳥瞰的にずっと示してきた。  そこで、もう時間が来ましたから、最後にちょっと年金の事務一問だけお尋ねしたい。  いよいよ四月一日から拠出制の年金が始まります。一体現在年金の届け出はどの程度になっておりますか。
  133. 古井喜實

    ○古井国務大臣 一月末の現状で全国ならしまして六九%余、七〇%ちょっと切れる辺になっておるはずであります。
  134. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その六割九分程度の届け出が出ておりますが、これは都市と農村あるいは町村部と市部との関係はどうなっておりますか。
  135. 古井喜實

    ○古井国務大臣 詳細の数字をちょっと持ち合わせておりませんが、市部で五四・一%、町村で九一・一%、こういう状況でございます。
  136. 滝井義高

    滝井委員 特に大阪とか東京とかいう大都市はどういう状態ですか。
  137. 古井喜實

    ○古井国務大臣 ちょうど資料をきょうは持ち合わせておりませんので、別途申し上げます。
  138. 滝井義高

    滝井委員 おそらく大都市は、——国民皆保険政策というものが、昨年末から本年の三月の終わりまでにかけてずっと実施される様相が強く出てきておるわけです。従って私の推定では、大都市の届け出が非常に少ないんじゃないかと思う。おそらく二、三割ではないかと推定をしておるわけですが、届け出はそれでいいでしょう。約二千四百万程度の人々を被保険者として届け出を行なっているわけですから、それでいいと思う。問題は、今後の保険料徴収の具体的な方法というのは、どういう方法でおやりになるか。
  139. 古井喜實

    ○古井国務大臣 正確でなかったらあとで訂正いたしますが、保険料は例の印紙で納めるという方式をとっておるのであります。各地方におきまする社会保険の事務所がこの仕事を扱うことになっておるはずでありまして、そういう方式で徴収するのであります。
  140. 滝井義高

    滝井委員 大臣、ちょっとそこらあたりまだおわかりになっていないようですが、これは実は国民年金手帳というものを皆持つわけです。そうしてこれはスタンプ・システムですね。そうすると、これはどういうことになるんですか。郵便局で印紙を買って自分の手帳に張って、そうして市町村役場に行って、その郵便切手と申しますか収入印紙と申しますか、それにスタンプをついてもらう、こういうスタンプ・システムになっていると思う。この場合に、自治省にもお尋ねするわけですが、そういう事務を今の市町村の人的構成その他でやる場合には、一体どうなるのかということです。その場合に大衆は金がないのですから、現金で印紙を買わなければならぬのですが、市町村がこれを立てかえてくれるのかどうかということです。こういう問題が起こってくると思う。
  141. 古井喜實

    ○古井国務大臣 今の一番大事な点は自治省の方からお答えになるだろうと思います。軽い方の点になってしまうかもしれませんが、今の印紙は市町村で売りさばく、市町村が売りさばきの仕事をするのだ、そしてスタンプは市町村でぽんと押す、こういうことだそうでありますが、そこの金の振替とかいう点は私にはちょっとお答えできませんから……。
  142. 安井謙

    ○安井国務大臣 これまた市町村の事務がふえることは御指摘の通りであります。しかしこれは大体国の事務を委託されてやるということで、全額国庫負担という建前にはなっております。そこで福祉年金につきましては九千八百万ですか、それから拠出年金につきましては二十一億五千万程度の、国からの補助が出ております。なお印紙、切手を代行いたします場合には百分の三をこの手数料として取るということで七億程度を計上いたしております。実際扱ってみましてこれは若干不足が出るのじゃなかろうかという懸念は持っております。
  143. 滝井義高

    滝井委員 そうすると、われわれは郵便局で売り出すという理解を初めしておったが、今の古井厚生大臣の御説明で、この印紙は市町村で売るということになれば、市町村が郵便局からこれを買ってこなければならぬが、その金は一体どこにあるのかということです。被保険者が金を出さなければ市町村にはそういう金はないはずです。これは何億となるのですからね。ことしの財源の中でも、国が百十五億出しておれば、保険料はその倍だ。二百三十億集まるわけですから。二百三十億というものは、これはいわゆるそのスタンプを押す収入印紙ですか、切手でまかなわれることになる。そうすると市町村がこれを買うというのは、市町村が郵便局から現金をもって買ってきておかなければならないのか、それとも市町村へ郵便局から無料で貸し与えるのですか。
  144. 安井謙

    ○安井国務大臣 その具体的方法につきましては、さらに今検討を進めておりますが、一応これは立てかえといいますか、借りておくといったような形式で、精算払いができるような方式を協議するつもりであります。
  145. 滝井義高

    滝井委員 年金の事務というものは、この歴史的な二千四百万人を対象とする拠出制の国民年金がうまくいくかいかいかの、一番古井大臣の得意の急所なんです。この急所について政府答弁が確信がない。こういうことでは拠出制の年金はうまくいきません。もう私は断言をしておいていい。今のような両省の研究の仕方ではこれは大へんなことです。もう少しふんどしを締め直してしっかりおやりいただくことを希望して、私の質問を終わります。ありがとうございました。
  146. 船田中

    船田委員長 次会は明後二十日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十四分散会