○高田(富之)
委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、
ただいま提案されました
昭和三十五年度
一般会計予算補正(第2号)並びに同
特別会計予算補正(特第2号)に対しまして、反対の意を表明するものであります。(拍手)
先日来本
委員会におきまして、わが党
委員から詳細に指摘されました
通り、このたび提案されましたこの補正
予算案は、明らかに財政法第二十九条に違反するものでありまして、この点は、昨日の大蔵大臣の本
委員会における見解表明においても、おのずから疑義のあることをお認めになったはずであります。(拍手)しかも今後これを真剣に
検討をする、それまでは二度と再びこういうことはやらぬということを言明されたにもかかわらず、今度だけは別だというようなでたらめな運用をされることを国会は
承認することはできぬと思うのであります。(拍手)かくのごとき重大な違法の疑いが確認されているにもかかわらず、
ただいまわが党の撤回動議に対しまして、与党の諸君は、多数の力をもって強引にこれを葬り、これを通過成立をはからんとしておるのでありますが、まことにこれは寒心にたえないゆゆしい問題だと私は思うのであります。およそ民主政治の根本は、国家財政の運営を厳正に、憲法、財政法の規定を厳守して忠実に執行するところにあると思うのであります。また国会はこれを監督する責任を有し、これまたわれわれにとりまして最も重大な任務であることも多言を要しません。
大体今回の第二次補正
予算なるものは、審議の過程でも明らかになりました
通り、そもそも三十六年度
予算編成の過程において、与党
自民党と圧力
団体のいわゆる
予算ぶんどり合戦が未曽有の激しをさ展開いたしまして、
予算はぎりぎり一ぱいに膨張し、三十六年度一般会計
予算の中から支出を予定しておった百五十億の
産業投資特別会計への繰り入れがとうとう締め出されるという事態になりましたために、窮余の一策として、あえて重大な違法行為の疑いがあることをおそらく大臣は知っておりながら、前例があるということでほおかぶりをいたしましてついに三十五年度第二次補正をやるという策をとったものであることは明瞭となっておるのであります。(拍手)言ってみれば、これは
自民党内の予期せざる緊急必要事態の発生に基づくものであります。(拍手)このことは、二重の
意味において、民主政治の重大な危機を私は
意味しておると思う。すなわち財政法の大原則、会計年度独立の原則を犯したという点が重大な第一点であることは当然でありますが、第二に、
政府の
予算編成権と国会の
予算審議権の軽視であります。政党
政府でありましても、
予算編成の大綱、政治方針については、もとより党の決定に従うべきことは当然ではありましようけれども、個々の費目の細目にわたって勝手に手を入れて、いわゆる
予算ぶんどりをやるというようなことは、国民の目に見えない楽屋裏の
予算取引以外の何ものでもないのでありまして、こうして一たんきまった原案を、与党多数の力で、違法であろうが、不当であろうが、問答無用で押し通すこととなっておる現状を、私どもは嘆かざるを得ないのであります。(拍手)われわれは国会においてこそ、与野党を問わず真剣に論議を尽くしまして、修正すべきところは修正し、適法ならざるものは撤回させ、国民の前に一点の疑念をも抱かしめない、公明なる、権威ある審議をしなければならぬと思うのであります。
さて
予算案の
内容について見ましても、四百四十億に上る膨大な歳入の自然増となっておりますが、昨年末特別国会において、三十五年度第一次補正
予算審議の際に、もはやこれ以上の財源はないという理由をもって、公務員給与の
引き上げを十月から実施することとし、五月からの繰り上げ支給に応じなかったし、またいわゆる上厚下薄の人事院勧告の是正もほとんど行なわず、
地方公務員の給与改善措置もとらなかったのであります。また年度内
減税もついに実施しなかったではありませんか。一カ月先にこれほどの自然増収があることがわからなかったとは言えないと思う。これは作為的なものであったと私は断ぜざるを得ないのであります。
すなわち国民には低
賃金と重税をもって臨み、独占資本には
産業投融資で手厚い保護助長
政策をとらんとする、これがこの補正
予算案の
意味するものであろうと思います。
ついでながら一言指摘したいことは、財政投融資は、なるほど今日までわが国
産業の高度
成長に大きな役割を演じたものであるとも言えましょうが、しかしその反面には、
産業構造を奇形的なものにし、いびつにし、所得配分を
世界に類例を見ない不公正なものとし、農業を初め、中小企業、勤労者
大衆の犠牲の上に、一部
産業の驚異的
成長を見たものであって、今日の段階では財政投融資については、そのあり方を根本的に再
検討し、もって国民
経済の均衡ある発展と所得分配の公平化を期すべき時点に立っておるといわなければなりません。
このようなときに、
昭和三十五年度には使用しない三百五十億円中二百億円を、三十七年度に使用するというようなことで、三十五年度補正
予算に、
産業投資資金の組み入れを行なうような乱暴な処置は、単に違法であるのみならず、
内容的にもきわめて不当なものであるといわなければなりません。
地方交付税についても、これは当然三十六年度一般会計で処理すべきものでありますが、
地方財政は今後
減税のはね返り、社会保障の
地方負担分の増加、公共投資の激増による
地方負担の増加その他で、いよいよ困窮の度を加えてくることは必至でありますので、
地方自治団体の財政強化のためには、特別の強力な措置を必要とするのであります。単に
地方交付税の増額でまかなえるというような安易な事態ではないと申さなければなりません。
最後に、本年度一般会計
予算の実質上のこぶとなっておる本補正
予算を含むならば、実に本年度は二兆円をこえる膨大な
予算となるのでありますが、財源は洗いざらい大盛りに盛りまして、所得倍増であるとか、九%
成長など、積極的な強がりを示しておりますけれども、すでに
インフレ、物価高の傾向は現に着々と進行いたしております。他方、
ドル防衛や米国の不況、イギリスを初めとする西欧の景気の頭打ち、またこれらが
後進国に与える
影響等を
考えますときに、環境は
政府、与党の楽観論とはまさに反対の方向に進んでおると申さなければなりません。もし一たび波綻を生じますれば、重大な反動的な不況をもたらす危険性はきわめて大きいのであります。このような不健全な冒険的な
予算の膨張は、政治の不健全、現
内閣の基礎がぐらついておる弱さの現われであると思います。(拍手)われわれはこの違法にして不当な補正
予算を、断じて
承認することはできません。そうして目下審議中の一般会計
予算案を与野党一体となって修正し、組みかえを行ない、大幅な
減税とか社会保障の充実など、
池田内閣の公的を忠実に織り込めるように改めることによって、正しい
予算と正しい政治のあり方を確立すべきであると
考えます。
以上簡単でありますが、反対の趣旨を申し述べた次第であります。(拍手)