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1961-02-14 第38回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月十四日(火曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員   委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       赤城 宗徳君    赤澤 正道君       稲葉  修君    臼井 莊一君       小川 半次君    菅  太郎君       北澤 直吉君    櫻内 義雄君       田中伊三次君    床次 徳二君       中野 四郎君    羽田武嗣郎君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    三浦 一雄君       山崎  嚴君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       小松  幹君    河野  密君       田中織之進君    高田 富之君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    長谷川 保君       松井 政吉君    佐々木良作君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         郵 政 大 臣 小金 義照君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         内閣官房長官 保岡 武久君         法制局長官   林  修三君         外務事務官         (条約局長)  中川  融君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君  委員外出席者         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十五年度一般会計予算補正(第2号)  昭和三十五年度特別会計予算補正(特第2号)      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を聞きます。  昭和三十五年度一般会計予算補正(第2号)、昭和三十五年度特別会計予算補正(特第2号)、以上両案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。小松幹君。
  3. 小松幹

    小松委員 私は日本社会党を代表し、第二次一般会計補正予算に関連して、最近の経済外交見通し等について若干の質問を行ないたいと思います。  まず第一に、外務大臣並びに総理大臣日韓交渉の問題についてお伺いいたします。日韓交渉質問は、昨日もこの席上からわが党の木原委員から、日本の所有する在鮮財産に対する違法性を言われましたが、私はそれと角度を変えまして、ただいま進行中の日韓交渉のいろいろ取りざたされ、また進められておることについて、少し立ち入ったお伺いでありますけれども、外務大臣にしたいと思います。この日韓交渉の問題は、すでに長い問題でありまして、相当難関も多い、韓国側も相当な強い意見で今日まで参りましたが、池田内閣になってから、新政権張勉内閣予備会談をもって進めております。小坂外務大臣もついこの前の四日、わが党の田中委員質問に対して、前途は相当容易ならぬ難関がある、こういうことを表明いたしました。ところが、つい先週の二月八日の日本の各新聞報道によりますと、日韓会談予備会談は大体三月一ぱいで打ち切る、四月から日韓会議に取りつける、そうして大体六月ごろまでに一応結論を出す運びになったということを報道されておりますが、それは事実でございますか、外務大臣にお尋ねします。
  4. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先般この場所におきまして、日韓会談前途について必ずしも容易でないということを申し上げました。それは例の韓国側における民議院決議がございまして、その中で、李承晩ラインというものは、これははずすことはできないのだ、あるいはまた財産請求権に関連して、今まで日本統治下にあって、韓国国民の受けた苦痛というものも財産請求権の対象になるというようにいわれておるように思いましたので、こういう考え方ではとても会談というものは円満に遂行することは困難ではないかということを考えたのであります。ところがそういう気持を持って先方代表部に話をさせましたところが、どうもその民議院決議前文に、そういう点を緩和した前文があって、これは必ずしも今の会談を強く拘束するものでないというような話もございました。先方もここまで来たのだから、何とか一つこの会談をまとめ上げたいという気持があるような表明がございました。そこで、わが方の沢田代表先方兪鎮午代表との間で、それではこれを一つ急速にまとめていくことに努力しようではないか、そうして今お話しのように、五月ごろになったら本会談に切りかえるような、そういう目標で進んでみようではないか、かような話がかわされたように聞いております。
  5. 小松幹

    小松委員 ただいま外務大臣意見を聞いておりますと、韓国態度が変わってきた、こういうようなおっしゃり方でございましたが、伝えるところによりますと、本月の三日韓国民議院では、李ラインの、平和ラインの堅持と、日本支配による苦痛の償いを国交回復の条件とするという決議をいたしておるようであります。また先月来野党議員等の提出した四項目の決議案を見ましても、国交正常化懸案解決あとにする、経済協力請求権を処理してからである、平和ラインをあくまでも守る、借款導入資金国交正常化あとにすると、相当強固な韓国側意見であったように承知しておりますが、韓国はこの基本方針を変えてきた、こういうようにとっていいのかどうか、その辺を伺いたい。
  6. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 張勉政権といたしましては、この際日韓関係正道に戻すということに非常に努力をしたいという気持が強いようでありますが、しかし国内には各種の議論がございまして、その調整にいろいろ困難を感じておるということではないかと思うのであります。従って、民議院決議もその強硬な分も出ておるし、またよく読んでみると、相当柔軟なところも見えるというようなことのようでございます。私ども昨日も申し上げたのでありますが、日韓関係正常化するということが今までできなかったことでありますから、非常に大へんなことのように一部で考えられるのでありますが、本来からいえば、韓国というものは現にあって、その間に日本通商関係を持っておる。しかも韓国の方の代表部は東京にあって、それが大使とかいう名前を持っておる。そこでこちらの方も当然そういうものが先方に置かれるべきであるのにそれが置かれていない、あるいは公海上に排他的な一つの線ができておって、そのために日本が非常に難渋しておる、そういうような問題をやはり双方の漁業を営む人たちの利益のために解決するということは、これは非常に当然なことでありまして、それほど大したことではない、いわば外交上からいえば当然なことをやるだけのことである、こういう趣旨に私ども立っておるのであります。そこで、そういうことを解決した上で、そうしてさらに両国の間の友好親善を深めるための、何と申しますか、今の言葉の借款、そのようなこともそのあと考えるということもけっこうだと考えております。ただ一部に借款考えるにしても、何が最も韓国の側にとって必要なものであるかということは、わが方も知る方がいいのじゃないか、そういう意味で最も効果的な経済協力をする上に、先方事情を見ておきたいというような人がありまして、そのことが何か借款でもってすべてをごまかすのじゃないか、こういうような誤解を韓国内にも生んでおる、こういうような事情もあったかと思いますが、すべて懸案解決してから経済的な協力関係を進めるということは、先方がそれを望まれる限りにおいてはけっこうなことだと私ども思っております。
  7. 小松幹

    小松委員 政府日韓会談進め方、今の外務大臣の話を聞いておりますと、国交正常化というきわめて簡単に、きわめてあたりまえのことをすらすらとやるような言い方をなさっておりますが、それほど簡単であれば、過去十年間、これほど日韓会談は混迷をしない、また停頓もしなかったはずなんだ。そこに日韓会談性格があるので、交渉順序は、今までは大体李ラインの撤廃、漁業問題の解決向こうからすれば対日財産権要求等解決を並行的に行なう、しかる後に国交正常化、すなわち議題でいうならば基本関係樹立問題があとにくる、過去はこういう順序会談であったわけでありますが、どうも前の方の李ライン解決の問題あるいは財産権請求の問題について解決がむずかしい。だから、こういうような解決のむずかしい問題はたな上げにして、まず日韓両国基本関係樹立の問題を先にして、そうして基本関係樹立経済協力資金援助等が先行するならば、その方針もやむを得ないというように最近の日韓交渉交渉の仕方が変わってきておるのではないか、こういうようにも私は想像するわけでありますが、日韓基本問題解決基本関係樹立という議題に対して一気にそのものずばり飛び込んでいくという外務大臣のお考えであるかどうか、それをお伺いしたい。
  8. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 過去におきまする日韓関係の一番のむずかしい点は、やはり感情問題が主だったと私は思うのであります。この感情を解きほぐしていくことから、初めてこの会談が成功し得るものだと考えます。そういう点に特に力を入れて、私も自分で出かけてみたりしておるわけでございます。その結果、会談空気そのものは大へんよくなって参りました。先方新聞やあるいは兪鎮午氏の書いた論文などを見ますと、とにかく十三年あるいは十年ということで低迷していた交渉が、予備会談を通じて日本国民韓国国民気持をだんだん理解してきてくれた、そのことが非常な収穫だというようなことも言っておられるようであります。  そこで私は、懸案はとにかく今までむずかしいから解決できなかったので、そのむずかしい問題を解決するのはやはり比較的入りいいところから入っていくという方法もあろうかと思うのであります。しかし、さればとて今仰せになりましたようにすべての問題をたな上げして、それでそれを一応の解決にしてしまうという考えも、必ずしも私はそう考えておるわけではないのでございます。そこで今御承知のように、財産請求権の問題、漁業の問題それから韓国人法的地位の問題、この三つが大きな問題になっているわけでございますが、できればこれを全部解決したいと考えておるわけであります。  そこで、この基本関係という問題でございますが、この基本関係に関する委員会というのは、今まで一度もやっておりません。これは両国国交正常化した際にその基本関係をどうするか、どういうふうに考えるかという問題になるわけで、一応そうした問題が解決したところでこの問題を議題にしたらどうかと今考えておるわけであります。結局、そういう基本関係樹立に関しましては、たとえば国連憲章を尊重するとか、あるいは相互の間にあるいろいろなものの考え方をこういうふうに変えていこうというようなことになるのでございまして、この基本関係の内容に盛り込まれる事柄というものは、結局今の会談がどういう形でできるかということにかかっておる、かように考えておる次第であります。
  9. 小松幹

    小松委員 外務大臣は、これまでのいきさつというものを、韓国日本との感情問題というようにおとりになっておるのでありますが、私はもちろんそれは否定はいたしません。しかし、韓国がどうして日韓交渉に対して強い反発をしておるかというのに、私は最近は二つあると思う。一つは、日本が過去に資本力をもっていわゆる朝鮮に渡って支配をした、独占的な資本的な、あるいは権力的な支配をした、そういうことが再び起こるのではなかろうかという一つの心配がある。同時にまた一つは、韓国自体の中に、日本と結んで張勉内閣考えておるような反共国家というものを強く打ち出していくことが、はたして韓国永遠の将来に対していいのかどうか、北鮮問題等のからみ合わせというような北の思惑もあり、南の日本に対する思惑もあって、二つの問題がからみ合ってここにむずかしさをかもし出しておる。同時に、日本日韓交渉進め方にしても私は問題があると思う。これは久保田発言でも重大な問題になったように、久保田さんが最後に、結局朝鮮日本が行かなかったならば、明治時代に、ロシヤ清——シナかがおそらく日本と違った形で支配をしておったのではないか、だからどうせお前方はロシヤかあるいはシナから支配されるのだ、それを日本支配したのだからありがたく思え……。あるいは今の交渉委員として当たっておる沢田さんの発言等を聞いてみますと、日本日本の力を鴨緑江まで押し返していくということが明治以来の一つの念願である、こういう考え方でこの交渉に当たっておる。だから日本交渉する者が、朝鮮民族永遠の幸福を願っての立場を考慮しておるのかどうかという問題がやはりあると思うわけです。そういう意味韓国李承晩ラインに対する考え方というものは非常にこだわってくると思うのですが、最近の韓国国内情勢は非常に強腰になっている。特に最近日本資本導入ということが言い出されました。そうして財界人等が入れかわり立ちかわり朝鮮に渡る。張勉内閣ができて以後は、企業家あるいは金融家等朝鮮に渡るというような出入りがある。こういうことが、かえって再び日本資本がこの日韓会談のどさくさにまぎれて入ってきて、あわよくばうまい汁を吸うのじゃないかというような批判も生まれてきておると思う。そこに張勉内閣アメリカに対する買弁内閣だけでなく、日本に対する買弁内閣であるという意味で反政府的な意見あるいは行動というものが非常に旺盛になっておる。さきの民議院のこの決議というものも、張勉内閣の弱腰、買弁的な性格というものに対して腰だめをしよう、同時に日本のそうした考え方を是正しようという考え方があるのだ、こういうようにも見ておるわけでありますが、外務大臣は、韓国の民衆といいますか、韓国大衆がこの問題については非常に強腰であるということに関して、どういうお考えを持っておるか。
  10. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほど日韓会談に対して一番障害になっておるものは感情問題であると私は申し上げましたが、今小松さんがおっしゃったような、そういう問題を含んで申し上げたつもりであります。何といいましても、日本というものは敵視すべき国民であるということを李承晩政権が長きにわたって教育しておったわけであります。考えてみれば、日本統治下にあって、はなはだわれわれ不自由を三十数年間にわたって忍ばされた、こういうような気持にぴったりくるような政策現実にとられておったわけでありますから、その気持をわれわれは解きほぐすことから始めなければいけないと考えておるのであります。もとより戦後の日本は非常に大きく変わりましたし、ものの考え方に対しても一般に非常に変わってきたわけなのでありまして、今日日韓が相携えて経済的に繁栄していくということのために、なにが日本人が経済侵略などということを考えるものであるかということを、私はよく機会あるごとに言うのでございます。そういう点からいたしまして、私はだんだん先方気持がほぐれつつあるということは、現実の問題として認められると思うのでございます。私が韓国へ参りましたときも、先方がわれわれの同胞の漁業者を全部釈放してくれたのでありますが、そのとき記者団会見をやったら、先方記者諸君が、君は韓国に来て漁夫を全部釈放するという大きなおみやげをもらった、君はおみやげを何を持ってきたか、こういうふうな質問があったくらいで、やはり先方はまだ日本というものを知らず、日本国民あるいは政府考え方というものに対して疑いを持っておると思うのであります。われわれはそうじゃないということを示すことに、機会あるごとに努めておるのでございまするが、そういうことが日韓会談に対して従来は一番障害であり、それを解くことが今後の日韓会談を進める上の一番の支えになると考えておるわけでございます。ただいまのような多くの財界人が行って、そしてそれが経済侵略するのじゃないかということで先般問題を起こしたようでございますが、かりに私にそういう御相談があれば、私はおそらくとめたろうと思います。これは全くわれわれと関係なく進められた問題でございまして、やはりこの会談進行中におけるわれわれの言動、行動というものは、できるだけ先方を刺激しないように努めなければならぬ、こう考えてもおる次第でございます。
  11. 小松幹

    小松委員 国交正常化外務大臣は非常に単純にお考えになっておりますが、この基本問題樹立の問題は、いわゆる最後には国交条約化であり、基本関係樹立の問題は北朝鮮との問題において明白な一線を引かざるを得ないのであります。政府はこの前の田中委員質問にも答えて、対韓と対北朝鮮基本的態度は、いわゆる韓国はガバメント、——政府、そういうふうに確認して、北朝鮮をオーソリティズ、いわゆる権威として区分しておる。三十八度線以南統治の及ぶ限りにおいてこの韓国というものの政府を認めて交渉しておる。これはすなわち一九五七年、昭和三十二年暮のあの久保田発言の取り消し、抑留邦人の帰還問題のときにも、きのう木原委員が言ったように、日本財産権をそのときに放棄しておる。その放棄しておるときに、三十八度線以南に限るという建前、だから相手にしている韓国というものははっきり三十八度線以南の権限であって、この財産権の放棄もこの三十八度線以南である、こういうような考え方で基本問題を処理していこう、だから三十八度線以北北朝鮮については、全然含まないという方針に立っておると思うわけであります。しかし、交渉相手韓国自身は、全朝鮮地区をおれが代表しているのだという建前会談に臨んでおる。ここに基本問題樹立最後の煮詰めたところにおいては食い違ってきておる。これは認めざるを得ないわけでありますが、この基本問題樹立の最終の食い違いに対しては、どういうようなお考えを持っておるのか。
  12. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 われわれは日韓交渉をいたしておりまして、この財産請求権の及ぶ範囲は、現実韓国政府施政の及ぶ範囲であるということは明瞭なことであります。先方はどういう考えを持っているか、これはまだいろいろ意見食い違いもあろうかと思いますが、私は施政権の及ぶ範囲以外のところの財産請求権を認めるわけにはとうてい参らぬと考えております。その基本方針でおります。ただ、一九四八年の国連決議によりまして、韓国が自由な国連監視下選挙をやった。北の方はそれをやらなかったということで、その選挙をやった韓国というものを国連において三十四カ国が認めておる、こういう実情はございます。そういうことを頭に入れて交渉いたしておるわけでございます。
  13. 小松幹

    小松委員 外務大臣のおっしゃるような単純な日韓交渉正常化というならばきわめてやすいのでしょうが、表面はそう簡単に取っつけるようにあるけれども、しかしそこをよく考えてみると、基本問題の樹立において最後条約化、そして日韓共同条約が成立した場合には、明らかに日本二つ朝鮮を認めざるを得ない、同時に今でも一応北朝鮮韓国という概念的な分離はしておるけれども、条約をはっきり結ぶことによって、その観念は具体的に政治的に国際的にコンクリートに固まるわけなんです。韓国との国交回復は、同時に北朝鮮政府に対するある程度敵視政策に陥るということも考えなくてはならぬと私は思うわけなんですが、この二つ朝鮮をはっきり認めざるを得ないということに対して、外務大臣はどういうお考えを持っておるか。
  14. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 現実朝鮮が三十八度線を境にして北と南に分かれ、われわれはその韓国交渉しておるわけです。先ほどからお話し日本財産請求権の問題に関しましても、一九四五年にアメリカ軍当局がこれを接収し、一九四七年にこれを韓国政府に渡し、そして講和条約の第四条(b)項によってわれわれはこれを放棄している。しかし、その放棄した事実は一九五七年にアメリカ解釈というものを日本が同意して、のみました際に、その事実は十分考慮するということになっているわけです。ですから、そのいきさつにかんがみましても、この財産請求権の問題というものは、南に限られておるということになろう、それは明瞭であろうと思うのであります。  そこで二つ朝鮮を認めることになるというお話でございますが、現にわが国は韓国との間に韓国代表部というものを持っておって、そこの人が大使とか公使とかいっておるわけです。現実にそういう関係になっておるわけです。そこで条約的にこれを明瞭にするということは、何も北の方敵視するということには全然ならぬと思う。これは朝鮮が、国連監視下によって自由な選挙を行なって統一されるということは、世界じゅうの国がさようなことを望んでおると思います。日本ももとよりさようなことを非常にけっこうなことだと思うわけであります。そうした暁には、その一つのユニットになった範囲においてまた交渉をするということも可能なわけです。少しも敵視というようなことにはならぬと思っておる次第であります。
  15. 小松幹

    小松委員 最近韓国の内外には、私は率直に言うて、上からではなくて下から、大衆の中に、あるいは知識人学生労働者、そういうものの中に、南北統一運動が熾烈に起こっておる。学生組織あるいは文化人組織——向こうでは既成世代という、大人ですか、おとなという意味、そういう大人というものが、学生との統一問題に関するシンポジウムというような話し合いもしたり、南北統一の機運というものが非常に盛んである。一月五日の韓国日報は、統一に関する国民大衆要求がこれ以上防ぐことができない段階に到達したものとの実感を持っておる、こういうようにも書いてありますし、あるいはアメリカ側の方としても、十二月二十二日に、米国のいわゆる上院議員のマンスフィールドという人の報告書にも、オーストリア中立方式による朝鮮統一が可能である、そういうことも考慮すべきであるというような表現がなされておる段階で、朝鮮民族の新しい激動というものが今熾烈に起こっておる。いわゆる小坂外交の進められる昨年末からことしの正月、最近にかけて、南北統一すべきであるという意見、あるいは組織運動というものが非常に表面に出てきておる。だから、新民党の議員政策面でも、相当これを北鮮との取り入れ、あるいは郵便物の交換というようなことまでもやらねばいかぬ、そして同時に北鮮金日成政府も、連邦論というものを出して、相当傾聴される南北統一意見を持って出ておるという段階に来ておりますが、こういう韓国の現状を見たときに、この際日本があえて日韓交渉を通じてその基本問題に割り込んでいって、表向きは日韓正常化だというようなきわめて安易なのんびりしたような言い方交渉の中に、案外とげとげしい一つ南北二分と国際分割というようなものをひそめた交渉が進められておるのではないだろうか、こういうように考えるわけなんです。このいわゆる南北統一韓国内の動きというものに対して、政府はどういうような把握をしておるのか。そういう情勢を知っていなさるのか。あるいは知っておってなおかつ、いやそういう情勢があっても、しゃにむに基本問題を取り組んでやらなければいかぬのだ、こういうようなお考えに立っておるのかをお伺いしたいのであります。
  16. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 民主的な社会のあり方というものは、いろんな議論がかわされるということが特徴であろうと思うのであります。その意味で、張勉政権ができましてから、民主的な政府樹立されてから、そういった南北間の交流等に対するいろいろな議論、そういうものが活発にあるということは、これは私は否定もいたしませんし、むしろ議論があるのは当然だと思っております。しかし、それをどう実際上に扱うか、政治上に扱うかという問題でありますが、これについては、今お話のございました民議院の新民党、その方にも議論があったようでありますけれども、現在ではこの事態においてそういうことで政党が動くのは適当でないということになりまして、一応政界、保守党筋では、そういう動きに対しては行動をとるまいということになっておるように聞いております。しかし、これはほかの国のことでございますから、われわれとかくの論評をすべきでないと思いますが、小松さんにもぜひ一つ考え願いたいと思いますことは、非常に韓国日本に近い国である。そしてその韓国国民の感情というものは、必ずしも日本人によくない。しからばこれは南北統一されたらそれじゃすぐよくなるかというと、そうもいかぬだろうと思う。そこで、幸いにして、親日ということを非常に大事なことと考え先方はなってきたわけであります。張勉政権は親日政策ということを強く打ち出してきたわけでありますから、この機をとらえまして、韓国国民感情というものを日本の方へしっかりと向けてもらうように、われわれはこの会談を通じて努力し、そして日韓関係正常化する、このことが非常に必要だと思っておるわけであります。それは待っておって決してそのままでよくなるとは思いません。しかも北鮮韓国との間が統一されたら、それではもう文句なしに親日感情が出るかといえば、私はそうも言えないと思うのでありまして、そういう意味から韓国との交渉というものは非常に大事なことである、私はかように考えておる次第であります。
  17. 小松幹

    小松委員 私は外務大臣といささか考え方も違ってくるわけなんですが、過去日本が台湾交渉においてついに台湾政権と結んで、二つの中国を作り、ついに広大な中共政権というものに対して好まざる敵視政策に加担せざるを得なくなってきたという、あの台湾、中共との交渉の愚を再びここで朝鮮半島において二度繰り返す必要はない。どうも日本の最近の外交は、台湾においてしかりですが、ベトナム賠償においても、北ベトナムの大きな犠牲というものは顧みずして、いわゆる鶏三羽の南ベトナムに大きな資本投下をして、ついに南ベトナムとの友交を結ぶ、同時に北ベトナムに対しては敵視政策をとらざるを得ないという羽目になってきておる。そういうことから顧みた場合には、この日韓交渉というものは、基本問題樹立に深入りをして、表向きは日韓正常化であるというようななまっちょろい考え方を言いながら、実は朝鮮永遠の民族を二分するということに日本が加担をするんだという、この日韓交渉は私は考えなければならない。あくまでも最初に日本考え李承晩ライン解決、あくまでも漁業問題として誠意ある解決を追っていく。そのためにはきのう木原委員が言うたように、日本がかつて三十八度線以下に多くの蓄財、いわゆる財産というものを築き上げてきたことを放棄した、そういうような見返りにおいてこの李承晩ライン解決ということができないことはないという、あくまでも李承晩ライン解決という漁業問題にしぼってやらなければいけない。そういう問題をほったらかして、ただ単にいわゆる基本問題の解決という名のもとに正常化を進めるということは、まことに危険である、こういうように考えるのであります。そこははっきり政府考えている意図と私は違う。あくまでもわれわれは南北二つに分けない、そうして日本が南だけに片寄って北朝鮮というものを放棄しないという立場において、日韓交渉を進めてもらいたい、こういうことを私は考えておるわけでございますが、この点について外務大臣のお考えはいかがですか。
  18. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 現在韓国との間に正式な外交関係を結んでいる国はたくさんあるわけでございます。国連でこれを認めました国は、先ほど申し上げたように三十四カ国あるわけでございます。それらの多くの国と正式に外交関係にあるわけであります。ところが一番近い間柄にある日本との間にそれがない、こういうことでございまして、日本だけが韓国を認めて外交交渉をしようというわけではないわけであります。それから、今は漁業の問題についてだけ韓国交渉しろというお話がございましたけれども、それはやはりそういう問題をやりましてかりに解決ができましたら、それは韓国との間にそうした基本条約ができるわけであります。ですから漁業だけでなくて、今日本にたくさんおります韓国人の法的な地位の問題あるいは財産請求権の問題、これもひっくるめて解決するということが私は妥当であろうと考える次第であります。
  19. 船田中

    船田委員長 この際関連質問を許します。田中織之進君。
  20. 田中織之進

    ○田中(織)委員 ただいま小松委員小坂外務大臣日韓会談に関しまする質疑応答を伺っておりますると、非常に重要な問題が出ておると思うのであります。と申しますのは、最後のただいまの御答弁では、日韓両国の間に正常な外交関係がないということを外務大臣が申されましたけれども、先ほど小松委員からの質問に対しまして、現在日本にありまする韓国代表部というものは、何らか一つの正式な外交機関のような口ぶりで申されたと私は伺っておるのであります。これは、先方は、国内的にやれ大使であるとか公使であるとかいうことを申しておりますけれども、これがいわゆる外交上の正式の大公使というものでないということは、これはすでに今までの国会の論議を通じて明らかにしてきておると思うのであります。昨日、私委員会に出ておらないのでありますが、現在韓国を独立国として日本が承認しておるというような根拠を対日条約の問題に政府側が求めておられるようでありますけれども、私はやはりただいま小松委員が伺いまするように、対日平和条約ができたときに、すでに三十八度線で南北朝鮮というものができており、その間に一種の戦争状態があった状況のもとに、対日平和条約、サンフランシスコ条約というものが締結されている。従って、この条約によりまして、朝鮮の独立というものを日本が認めたのだということになったといたしましても、現実に南北朝鮮が分裂をいたしておるという事態の上に立った朝鮮の独立ということに私はならざるを得ないと思うのであります。この点は、条約上現在日韓関係については根拠がないので、従ってそれを正常な形に戻そうということが、会談を開始せられる大きなねらいだと私は思うのでありまするが、そういう点と先ほど来の小坂外務大臣の答弁とは大きく食い違うと思いまするので、この点を明白にしていただきたいと思います。
  21. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 先ほどから申し上げておりますことと今の御質問食い違いは少しもないと思います。ということは、先ほど私が申し上げているように、先方から代表部というものがあって、大使とか公使とかということを言っておるということを言っておるのでありまして、これが正式と言っておるわけじゃございません。ただ日本の方はそういったようなものが韓国にないのでありますから、これはやはり両方ともちゃんとした形において、正式に認める形において置き合うのが、これは国と国との関係で当然必要なことである、かようなことを申し上げたわけでございます。  なお条約上の解釈につきましては、条約局長から御答弁する方がさらにしさいを尽くすと思いますから、さようにお願いいたします。
  22. 中川融

    ○中川政府委員 ただいま御質問のありました通りでございますが、日本が平和条約で承認いたしましたのは、朝鮮の独立でございます。朝鮮という国家が日本から離れて独立した、そういうことを日本は認めたのでありまして、その朝鮮という国家がそのとき現実には二つに分かれておるということはその通りでございまして、そのような状態のもとにおける朝鮮の独立を日本は承認したわけでございます。しかしながら同時に、その当時から大韓民国政府というものがすでにあったことも事実でございまして、また多くの国が大韓民国政府国連決議の趣旨に従って正常な国交関係を持っていたことも事実でございます。それで平和条約が発効いたしました際に、日本韓国との関係がどうなったかと申しますと、先ほど問題になりました韓国代表部というものが、従来はマッカーサー司令部に対して派遣されていました韓国代表部というものを、平和条約発効と同時に、日本政府交渉するための外交代表部という格好で日本は認めたのでございます。従って、そのときから日韓間には、正式の外交関係でありませんが、それに準ずる関係がそのときからできておる、かような事態になっておるわけであります。もちろんこの外交代表部につきましては、日本は相互主義を主張しておるのでありまして、その主張は依然として続いておるのでありますが、今までのところ、相互主義に基づく在韓国日本代表部というものは設立されていないという状況のことは御承知の通りでございます。
  23. 田中織之進

    ○田中(織)委員 もう一点、ただいまの条約局長の答弁に関連して伺いたいと思いまするのは、従来日本が独立前、いわゆるサンフランシスコ講和条約の発効前に、連合軍総司令部に韓国側から派遣していた韓国側代表部を、講和条約の発効と同時に日本に対する正式の外交機関ではありませんけれども、それに準ずる代表部として認めることに日本がいたした、しかもそれは相互的だ、であるけれども、韓国側日本側の韓国内における代表部の設置を認めないのだ、こういう点でありまするが、講和条約の発効と同時に、従来占領軍の総司令部に対して派遣しておった大韓民国の代表部を、日本に対する外交使節に準ずる代表部に切りかえたということについての条約上の根拠はどこにありますか。
  24. 中川融

    ○中川政府委員 お答えいたします。平和条約発効と同時に、その当時日本におりました、つまり従来は総司令部に派遣されておりました韓国代表部の団長と日本外務省との間に外交文書を交換いたしまして、そのようなステータスが変わるということをお互いに認め合ったわけであります。
  25. 田中織之進

    ○田中(織)委員 それではいわゆる条約上の根拠ということには私はならないと思うのです。外交当局のそういう文書の交換によって、いわゆる外交上の代表部に準ずるところの使節団の設置を認めたというところに、今日日韓両国間の国交正常化するために大きなやはり障害になる問題を引き起こしてきていると私は思うのです。この当時から見て、占領軍司令部に派遣をしておった大韓民国の代表部を、そのまま外務省が、両国の間で、まだ、独立を認めたとはいいながら、南北朝鮮に分かれておるのでありますから、国交正常化されておらないにもかかわらず、外務省と韓国代表部との間でそういうとりきめをやったからということで、それが外交機関に準ずる取り扱いをされる、こういうような形をやるから、日本の独立を危ぶまれるような日韓会談における韓国側要求というようなものが私は出てくると思うのです。その点からいたしまして、この間の私の質問の際に、韓国側と打ち合わせて発表すると申しておりました昭和三十二年十二月三十一日の日韓共同声明の根拠になったアメリカ側のメモランダムの問題等も、いまだにこれが発表されない。私はこういうところにも、どうも日本のいわゆる三十八度線以南韓国に対する関係においては、外務大臣はたびたび日本の独立国としての立場、しかも一番近い立場にありながら、国交が正常なものになっておらないことを言われますけれども、占領時代から、またポツダム宣言によりまして朝鮮の独立というものを日本が認めざるを得なくなった事態から出発したところの韓国に対しまする日本の基本的な方針というものが明らかでないから、こういう結果になるのだと私は思うのであります。その意味から見て、ただいまの条約局長の答弁では納得できませんが、私は関連質問でありますから、いずれ別の機会に追及することにいたしまするが、この際、過般の私の総括質問の際に外務大臣が御答弁になりました今後の日韓会談における重要な問題になりまするところの、日本の三十八度線以南財産請求権の放棄と見合いになっておると解せられまするところの、いわゆる昭和三十二年十二月三十一日のアメリカ政府のメモランダムをこの際発表していただき、もしまだ韓国側との手続がとられていないということになりますれば、いつそれを発表せられるか、この際、外務大臣からお答えいただきたいと思います。
  26. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 お話の一九五七年十二月三十一日のいわゆる米軍の解釈、これの内容について韓国側の了承を得ればここで発表するということを申し上げました。従って、先方にこれを問い合わせてみたのでございます。ところが、先方の申しますのには、韓国側でも今いろいろとこの日韓交渉に対しまして意見がございますし、ことに財産請求権の問題に対しては、相当に過大な期待もあるわけであります。そういう際でございますからでありましょう、今はちょっと時期を待っていただきたい、適当な時期に自分の方からも発表してよいと同意するということを申し上げるから、それまで待ってくれという話でございましたので、このことは会談をうまくやる上において、しばらく発表を待つ方がよくないか、かような判断に立っております。
  27. 田中織之進

    ○田中(織)委員 その点については、韓国側の言い分も、これはわからないではございません。しかし、日本国民といたしましては、朝鮮にありましたところの在外資産、個人、法人を含めまして、国の関係のものは別といたしまして、膨大なものが、この共同声明に従いまして、しかもアメリカのサゼッションに従いまして、放棄をいたしておるのであります。しかも外務大臣の答弁から伺いますると、それとの見合いにおいて、韓国側日本に対する財産請求権というものが、その限りにおいて、全額であるかどうかは別といたしまして、チェックされるという内容を持っておるということをこの間答弁せられておる。従って、今韓国側日韓会談において請求する財産請求権の根拠に関連するところの重大な内容を持っておるアメリカ側の見解であると私は思うのです。韓国側は、それを出されることは韓国側が対日請求をする場合の根拠がなくなることになりまするから、私は非常に重大な考えに立たざるを得ないと思うのでありまするけれども、日本国民といたしましても、韓国請求権をはるかに上回るであろうというところの私有財産を含んだところの請求権現実に放棄せざるを得ないところにアメリカの意思表示というものによって決定づけられてきているのでありまするから、これは韓国側の都合というものも尊重しないわけには参らないと思いまするけれども、外務大臣は責任を持ってこれを国民の前に発表しない限り、日韓会談というものがかりに政府の手によって妥結しましたとしても、国民は承知しない性質の重大な問題を含んでいるということを申し上げて、私の関連質問を終ります。
  28. 小松幹

    小松委員 外務大臣にお尋ねいたします。最近李承晩ライン財産請求権との差し違えにおいて、日本資本導入、すなわち経済協力援助というような日韓交渉が裏舞台で行なわれつつあるということがたびたび言われておるのですが、それは事実であるかどうかということをお尋ねします。  さらに、米国のドル防衛政策によって、韓国経済援助の肩がわりを日本が持ち込まれつつある、こういう見込みだとも言われておるのでありますが、これは事実でありましょうか。それは昨年の十月下旬日韓会談が開かれて順調に行っているが、十二月の初旬、例の六億無償借款日本韓国に払う、それによって李承晩ライン財産請求権との交換をやるのだということがもっぱら流布されておる。それ以後そういう問題があったかどうか、資本の投入があったかどうかは別にしまして、日本の財界等も相当しげしげと昨年の暮れから今年にかけて韓国に渡って、日本の元公使だった金竜周などが個人の招待で日本の財界の視察団等を招き入れる、こういうような計画が行なわれているのであります。これは六億ドル無償借款あるいは日本資本の投入ということが日韓会談の裏舞台として行なわれておるのかどうか、それをお伺いします。
  29. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 さようなことはございません。何も裏舞台で経済協力の話を進めていくことは、私は聞いておりませんし、ないものと承知しております。  なお、お話にございました六億ドル何がしというものは、これは全く私の関知しないところでございます。さような事実はないと考えます。  なお、日本財界人が非常にしげしげ行っているということは、私はよく存じませんが、いわゆる財界人というものがそう何べんも韓国に行っているということはないのではないか、私はそういう事実を承知しておりませんので、さように思うわけであります。
  30. 小松幹

    小松委員 外務大臣はそれを否定されますけれども、韓国新聞の東亜日報の十二月の報道によりますと、まことにうがったような書き方でありますけれども、毎年約二億ドルに上る米国の対韓経済援助が、今度のドル防衛によって打ち切られる結果になるかもしれない、そういう場合に、日本が将来この二億ドルの経済援助というものを肩がわりに負担する、そういう現実が次第に表面化してきておる。これは韓国の朱商工部長が東亜日報の記者に特種だと言うて語っておる。こういうように、事実無限でもないような情報でございます。日本の情報は一向入りませんけれども、外務大臣はそういうふうにまことにつんぼさじきにすわったような格好でありますけれども、韓国側から入ってくる情報というのは、経済援助の数字まであげて言われてきておるということはどういうわけなんですか。このことは全く外務大臣は関知しないことかどうか。
  31. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 全く根も葉もないことだと思います。なお例のICAの資金による日本からの買付というものは、李承晩政権時代は全く日本を除外しておったのでありますが、今度は、日本が近いところではあるし、よいものが日本ではできるということで、むしろ積極的にICA資金によるところの産品の買付は日本からも買おう、こういうことになっておるように承知しております。
  32. 小松幹

    小松委員 六億ドル、三年計画で年にして二億ドルというのだから、ずいぶん大きい額になる。日本円に直すと二千億円からの金になるわけです。そう簡単に、やすやすそういうものがきめられるわけのものでもないが、それがまことしやかに日韓会談の中に伝わってきているということに、私は日韓交渉の裏というものがありそうに思うわけであります。また、きのうかおとといかの新聞によりますと、これは日韓交渉とは離れて、外務大臣アメリカのガリオア、エロアの援助資金の返済を、大体池田総理大臣が六月にアメリカに渡るときまでに六億ドルを積極的に返済する、こういう取りきめをやるような決意であるということが、きのう、おとといの新聞に出ておりましたが、ガリオア、エロアの資金の六億返済を積極的にやるということはあなたの本意であるか、また池田内閣としてそうきまっておるのか、池田総理にもお伺いいたします。
  33. 小坂善太郎

    小坂国務大臣 このガリオア、エロアの問題は、御承知のように阿波丸事件がございましたが、昭和二十四年にわれわれの方で、院議として、阿波丸に対する請求権を放棄したことがございます。しかし、その際に、それと関連して交換公文がございまして、その中で従来の債務を今度は日本が支払わないという意味ではないという付帯の交換公文がついておりまして、それについて当時の吉田外務大臣が参議院でそういうことを言っておられるのであります。二十九年に東京におきまして、五回だったと思いますが、返済の問題に関する会談を開いておりまして、三十年に重光外務大臣アメリカへ行かれたときに、この問題はできるだけ早く解決しよう、こういうことを共同声明の中で言っておるのであります。日本は独立いたしましてから十年になります。これが全然払わなくていいものでありますれば、私はあくまで抵抗しますけれども、とにかくそういう経緯がございますから、あまり払う、払うと言っていつまでも逃げ回るような格好は、これは日本の矜持にかかわるというふうにも思いまして、解決するならこちらも積極的に話をして、そしてできるだけ少ない金額で妥結できるものならしたい。このあとの問題についても、こちらから話をすれば、こちらとしても話がしいいのじゃないか、向こうに追い詰められて、どうにもしようがないから払いますということより、積極的にわれわれの意思というものを表明する方がいいのじゃないか、こんな考え方に立っております。しかし、その金額については、私はまだ全然金額に触れた覚えもございませんし、またさようなものまで固まっておらないというのが現実でございます。
  34. 小松幹

    小松委員 初めて外務大臣の口からガリオア、エロア資金を積極的に返済するということを表明されたが、これは私どもとしては重大な疑義のあるところで、この問題はここで補正の問題に関連して私は申し上げましたけれども、これだけでまた別の問題をとって、ガリオア、エロアの資金が返済するべきものかどうかというのは、私は正規にお尋ねせねばならぬと思いますが、それはそれとしまして、おかしいことには、どうもその六億ドルというものが、いわゆる対韓交渉における日本韓国経済援助に差し違えになるのだ、こういうことも、まあ流言といえばそれまでですが、流説されておる。しかもそれは韓国側からまことしやかに、アメリカのドル防衛によってアメリカ経済援助というものの肩がわりをせねばならぬ。どうせ日本がそういう時期にきたから、六億ドルといういわゆる数も六億、ガリオア、エロアの支払いも六億。六がなかなか重なってきておるわけですが、池田総理大臣が渡米するのも六月、アメリカの新しい会計年度でいよいよケネディが経済的な予算を出すのも六月。どうも会計年度も六月、池田さんが渡米するのも六月、対韓交渉の援助の金額も六億ドル、ガリオア、エロア資金の返済も六億ドル、こういうように言われてきておるわけなんであります。外務大臣の方も一向知らぬ、こういうように言われておりますが、池田総理にお伺いします。あなたは六月に渡米するのに、ガリオア、エロアの資金の返済方で行くつもりなのか、あるいは日韓交渉の打ち上げによって、——日韓交渉も大体四月から本会議に入って、六月に終わるという。だから池田さんが渡米するのに合わせて日韓交渉が進められて、スケジュールがあなたの渡米にみんな集中しておる。こういうことになれば、あなたの責任も相当大きいと思いますが、今までの日韓交渉の模様なり、ガリオア、エロア資金の返済方なりについての考えを、あなたはアメリカに六億ドルのおみやげを持っていくのか、韓国の見返りを持っていくのか、その辺をしっかり偽わらぬところを申し述べてもらいたいと思います。
  35. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 日韓交渉につきましては、外務大臣からお答えした通りでございます。  お話しの六億ドルの韓国への信用供与とか、経済援助とかということは、私は全然考えておりません。ここであなたがこの前質問せられたのを聞いただけでございます。政府としては全然考えておりません。それからガリオアエロアの問題は、たびたび申し上げておりますごとく、私は従来から債務と一応心得ております。しかし確定した債務じゃございません。これをいかに処理すべきかということは、お話の通り非常に重要な問題でございますから、ただいま検討をいたしておる次第でございます。
  36. 小松幹

    小松委員 日韓問題は大体これで終わりたいと思いますが、どうも政府が言っていることと、現実韓国等から日韓交渉について流布されておることとはだいぶん様子が違う。私はその情報を信ずるというよりも、池田さんあるいは小坂さんがここで正規にわれわれに答弁することが正しいと思っておりますが、どうも両国関係に対する会談では最近、韓国の対日期待、いわゆる米国のドル防衛、日本経済援助というような三つの要素というものが——韓国は非常に日本経済的な期待を持っておるのではないか。そういうことが要素としてからみ合って、ここにいろいろな意見が出ておる。意見じゃない、韓国としては本気にそういうことを考えているかもしれぬと思いますけれども、私は、韓国がいかに本気でそういうことを考えておろうとも、日本はあくまでも六億ドルというような考え方は、膨大な二千億に当たる賠償的なものは考えられない。今までフィリピンの賠償にしても千六、七百億であったと思いますが、そういうことはあり得ないことを期待もいたしますし、同時に漁業の、李承晩ラインという非合法的なラインの撤回にそれほどな犠牲を払うことはないと、かように考えて、政府の今後の日韓会談の推移を見ようと思いますが、どうか一つきょう言うたことを偽らぬように、しまいになってとうとう、言うたことがほんとうだったというようなことにならないようにしていただきたいと思うわけであります。  以上で、大体外務大臣に対する質問を終わりまして、次は補正予算に関する質問に移りたいと思います。  十一月十四日の予算委員会において自民党の愛知議員が、第二次補正予算は組む用意があるのかどうかということを水田大蔵大臣に尋ねましたところが、大蔵大臣は、今のところ第二次補正は考えていない、つい年末にそういうことを言ったのでありますが、年が明けると、またその言をひっくり返して、のうのうと第二次補正を組んで、しかも膨大な額を組んできたが、一体どういう考えで第一次補正を組んだときにそういうことを言ったのか。またどうしてそう急に、大蔵省のいわゆる三十六年度予算では第二次補正を考えていなかったのに、急に一月の半ばにいって、すったもんだのあげく、第二次補正をこしらえてきたのですが、それはどういう意味できたのか。あなたの思い違いか、あるいは何かの政策食い違いか、その辺をはっきりしていただきたい。
  37. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 この問題は、先日井手委員の御質問にお答えいたしました通りに、第一次補正予算を組むときには、私どもは第二次補正ということを、あの当時は考えておりませんでした。その後、来年度の予算編成にあたりましても、当初大蔵原案においては、この産投会計の資金に繰り入れる必要というものは、これは相当ございましたので、これをどういう形でやるかということについては、三十六年度の歳入を充てて済むという考えで大蔵原案を作ったわけでございましたが、この大蔵原案が最後政府案になる過程におきまして、三十六年度の歳入は他の歳出に充てることが適当だ、そして産投会計の資金繰り入れの必要は、三十五年度の予想される自然増収をもって充てることが妥当だ、こういう方針に一番最後の瞬間に変わったというのがいきさつでございます。
  38. 小松幹

    小松委員 産投会計の資金に繰り入れるということは、少なくとも大蔵大臣が予算編成において第一次補正を作るときに、産投会計がからになっておるということはわかっているはずなんです。わかっておりながらそれを組まないで、最後になってどたんばに来て自然増収が多くなったから組みますと、私は、少なくとも財政をあずかっておる者が一カ月か二カ月の間にこういう大きな食言、正規の国会における答弁において食い違いを生じたということは、私はこれは重大な責任だと思う。いわゆる財政当局者というものは、もう少し責任のある答弁をせねばいかぬ、また責任のある行為をせねばいかぬと思う。この点について、ただ言いそこなったとか、あるいはやむを得なかった、そういうようなことで済ますから、私は政治家というものが国会においていいかげんなことを言うと、先ほども私が外務大臣にだめを押したように、よそではこういうようなことを言われておる。ところが御当人が知らぬと、あくまでも知らぬとここでしらを切る。けれども、しらを切ったあとから、いやあれはこうだったと、必ず今まで例として外交問題などは言われてきておる。ところが大蔵大臣がたった二カ月前に組んだ補正予算に対して、しらを切って、第二次補正を組まぬと言いながら、のうのうと組んで出してきて、どうぞこの予算を通してくれ、こういう点についてあなたの財政的な責任というものをどう考えるか。それでのうのうと過ごしていくつもりなのか。これは腹切り問題です。この点について池田総理大臣はどう考えているか。あなたはかって三十一年の同じような補正を組んだときも、これはあなたが大蔵大臣のときだ。どうも財政を知ったかぶってやっている者が案外うそをついたり、あるいはごまかしをしたりする。すなおにやらない。あなたがあまりわかり過ぎているからすなおにやらないと、こっちはひがむわけでもないけれども、こういう出し方は、この前のときはあなたが大蔵大臣、今度はあなたが総理大臣、どうもそういう点がおかしいと思うのですが、この点大蔵大臣並びに総理大臣の所見を承りたい。
  39. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 ただいま急に産投会計の資金の繰り入れをやったというお諾でございましたが、そうじゃございません。私は今年度百五十億円の産業投資が必要だということを考えまして、大蔵原案の中には、先ほど申しましたような本年度の歳入からこの資金繰り入れ、百五十億円を充てるという原案でございましたが、それが最後の調整におきまして、本年度の歳入から繰り入れることをよして、そうして三十五年度の補正予算においてこれをするのが妥当だというふうに変わったということでございまして、必要性を認めておりますからこそ、最初の大蔵原案にそういう歳出を立てておったということでございます。と同時に、うそうそと申しますが、昨年は、今のところこの補正を考えていないとあのときの答弁にもございましたように、自然増収の見込みがあの当時は不確定でございましたので、先にいってごくわずかの自然増収があるようであったら、これはもう別に考える必要はない。同時に愛知さんの心配しているそういう事態があったときは、そういう構想も賛成であるが、今のところそういう自然増収が確実なものとしては見込めないと、こう申したので、絶対に何が何でも、どんな必要が起こっても第二次の補正予算は組まぬ、そろいうことは申しておりませんので、そうぬけぬけとうそを言ったつもりはございせん。
  40. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 三十二年度予算におきまして、その審議の途中、三十一年度補正予算として三百五十億だりたか組んだ記憶がございます。これは十二月二十三日に石橋内閣ができて、そしてやったのでございますが、補正予算を組む、組まぬの問題じゃない。私があのとき組みましたのは、日本経済の膨張のために資金が必要だ、しこうして後年度において使うべき資金がその年度で必要だ、こう考えて、資金として必要だから組んだので、何も財政法に違反するとは私は考えておりません。今回の措置もそういう意味でございまして、私は適当な措置と考えております。
  41. 小松幹

    小松委員 水田大蔵大臣は、もう予想しておったのだという。予想しておったら、産投会計が枯渇しているからどうせ組まねばならぬというのなら、ことしの予算で組めばいい。それで最初は組んでおったのでしょう。それをなぜ急に変更して、そうして補正に繰りかえたか、そこが問題なのです。すなおにやればいい。あくまでも財政法の当たり方として当初の考えをそのままやればいい。また国会で答弁したことをそのままやればいい。それをみずから知っておりながら、しかも予想しておりながら、それをあえて変えるというのだからなお悪い。こういうように考えますが、これはどういう考えで変えたのですか。
  42. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 それは今御承知の通り、政府経済成長政策をとるという大きい政府の目標施策を持っておりますが、この施策に対して本年度の歳入を充てることがどうしても必要だという最後の閣議の意見でそういうふうになったというだけでございます。同時に、この政府案が決定するときには、その後の税の徴収の工合、いろいろなことから税の自然増収が予想されるという状態がございましたので、この必要な資金は三十五年度の歳入を充てるということによって、この必要性に対処することがいいというふうに、両方見合ってきめたわけでございます。
  43. 小松幹

    小松委員 そこで補正追加予算を組む場合の財政法上の立場といえば、財政法の二十九条、私はこれ以外に予算補正の基本法はないと思うのです。二十九条が補正予算を組む場合でありますが、この財政法二十九条にはどう書いてあるかといえば、予算編成後に生じた事由に基づき必要避くべからざる経費必要避くべからざる緊急性によって初めて予算というものを組むのだ、こういうように、うたってはっきりしてある。しかもこの予算というものは単年度主義の上に立っておる。こういうことから考えれば、この補正予算は、そういうような意味の使い方、資金の繰り入れ方、次の年に使い、さらにもう一つ先の次の年に使うような賃金のプール場所をこの補正で見つけるということは、財政法上私は違法であると思う。明らかにこの二十九条以外に、幾ら読んでみても、この資金の必要避くべからざる緊急性というものは出てこないと思う。次の来年、再来年度に至るまでの必要性、三年間にわたる必要性というならば、これはそういうことも言い得るけれども、単年度主義予算に立っている緊急性というものならば、その年に要る予算、そのときに要る資金ならばいざしらず、三年も先、二年も先の資金を、今緊急性があるからというて吸い上げるということは、財政法の二十九条の拡大解釈以外何ものでもないと思う。これは先例もあることだけれども……。こういうことになりますが、先例先例というて許しておけば、いつまでたってもこういう財政法上の拡大解釈というものは改まらない。こういうふうに考えますが、これは財政法二十九条に対してどういうような御判断を持っておるか、大臣にお伺いします。
  44. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように年度独立の原則に対して資金設定という例外規定が会計法上に認められておるということでございまして、財政を弾力的に運営するために資金というものが必要だ、必要なときは法律をもって定めろということになっていて、そうして定められたのがこの産投会計に資金を置くということでございます。過去においても、ここに資金が繰り入れられて、そうしてこれを三年間にわたって使って、今この原資がなくなってきたということでございまして、この原資を補充する必要というものは、三十五年度の当初予想しておりましたよりも、いろんな情勢の変化によりまして、特にこの資金需要というものが多くなっている。これを今年度使わなければならぬというようなことはございませんで、資金というものは、もし今年度使う歳出を立てるのでしたら、資金の繰り入れば要りませんですが、将来資金繰り入れということがどうしても必要だということを私どもは認めて、そうしてその資金の繰り入れをいつやるかという問題でございますが、今やることが必要だと認めて、この補正予算で繰り入れをするということでございますので、二年、三年使うことが必要ということじゃございませんで、この三十五年度の自然増収の一部を、今繰り入れておいて、そうして将来必要な政府出資が行なえるようにするということは、私どもは必要だと考えてやったというわけでございます。
  45. 小松幹

    小松委員 財政法四十四条で、資金の繰り入れということは一応認めておるが、そのことを私は言っているのではない。資金は繰り入れてもいいだけれども、補正予算として組むということに問題があるわけです。資金として一般会計で当初予算に組むならいいでしょう。ところが年度末押し迫って第二次補正であわてふためいて資金を補正で繰り込む。だからその補正予算の立て方として、財政法二十九条の拡大解釈だと言うのです。あなたが幾ら緊急性を言っても、資金の必要が今あるんだから、こう言っても、必要避くべからざる緊急性というものは今何もないじゃないですか。ただあるのは、このうちしいて言えば、三百五十億のうちの百五十億というものは三十六年度で使うというから、それは三十六年度に必要だということにもなるわけです。ところがあとの分のものは緊急性は何にもない。そうなれば結局補正予算としてそういうものを組むということは、私はあくまでも法の拡大解釈だと言うのです。それはあなたは緊急性があるとこう言っている。しかし法律というものは主観で解釈すべきものでない。今あなたが緊急性とか避くべからざると言うことは、便利がいいから、今しておけば都合がいいから、こういうことに近いと思う。今組み入れておけば便利がいい、今組み入れておけば都合がいいというそういう解釈というものは、法の私的解釈である。あなた自身の、いわゆる今の池田内閣自身の私的な解釈にしかすぎない。私は法律というものは、そんなに私的な解釈をすべきじゃない。一般だったらいいでしょう。補正で組む場合は、もっとすなおな必要避くべからざる経費。必要避くべからざる経費というものは私はおのずから補正予算の性格を現わしておると思うのです。膨大な資金を補正予算でぼんぼん組んでいくというような財政の組み方というものはあり得ないと思う。これはしろうと考えで言えば、銭が余ったからどこか直しておけ、こういう考え方であるかもしれない。ところがそういう考え方は緊急性でもなければ、必要やむを得ないということでもない。これは金が余ったからどっか直しておけというわけです。そういう意味のやり方なら、補正予算を組む必要はない。補正予算というものの組み方はもっとワクの狭い経費というものを考えておらなければ、私は自然増収の扱い方というものをむちゃくちゃにすると思う。そのときそのときの大蔵大臣の考え方で自然増収を当たっていく——私は自然増収というものは、最初の見積もりが悪いという責任があると思うのです。最初の見積もりがよければ、そうむちゃくちゃな自然増収というものは、ある程度はパーセントに生まれてくるとしても、そんなに一次補正、二次補正、しかもまた資金の繰り入れと三段飛びのロケット弾みたような速度でもっていく予算編成というものはあり得ない。これは当初予算の組み方が悪かったからだ。その組み方のしりぬぐいを、しかも補正予算というワクの小さい財政法のワクであえてやろう、こういう考え方というものは、私は大蔵大臣としてとるべきじゃない。これは法の拡大解釈をやればどういう解釈もできます。あなたたちは自分が内閣を持ち、あるいは権力を多数で持っているから、やろうと思えばどういうことでもできるがもしれませんが、厳然と財政法というものがあれば、そんなに拡大解釈というものはやるべきでないと思うが、この点はどうなんですか、拡大解釈でないのですか。
  46. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 問題は産投会計の資金に繰り入れる必要があるかないかということでざいますが、あえて繰り入れる必要性に迫られていないという場合の措置でございましたら、それは、この予算補正は妥当を欠くということは言えるかもしれませんが、現実に出資需要の多いという経済情勢を前にして、この資金への繰り入れを私どもは必要だと認めてやったことでございますので、これは別に財産法違反でも何でもない。いわゆる必要と認めて、本年度の歳入を資金繰り入れという歳出に立てるという行為は、別に財政法違反でもない。しかもその必要性にこたえたものであると考えております。
  47. 小松幹

    小松委員 金を繰り入れするという場合には、そんなにむだ使いをするのでなければ、必要でないものを組むわけがない。大蔵大臣は必要だから組んだのでしょうけれども、あなたが財政運用上必要だ、これは認めますよ。けれども補正予算として組むのに、必要やむを得ない緊急性を持っているかどうかというこのウエートのかけ方というものは私は違うと思う。何も補正予算で産投会計に吸い上げて資金にしなくとも、同時にそんなむずかしい拡大解釈をしないでも、目の前に三十六年度予算があるじゃないですか。なぜ三十六年度予算で吸い上げないか。あるもので吸い上げないで、無理をして補正予算でとろうというのはどういうわけですか。これは一般会計の三十六年度予算がなければ、どこを探してもないから、仕方がない、野党にしかられるかもしれぬが、補正予算でも組もうということはあり得るけれども、たなぼた式に三十六年度の一般会計が出ているのに、これに手をつけないでしゃにむに掘り起こすような補正予算をなぜ組むのか。必要ということはあっても、こっちにとればいいじゃないか。なぜ三十六年度予算でとらないのか。
  48. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 当初はそういう考え方でございました。三十六年度に必要な政府出資は三十六年度の歳入をもってまかなってやれるということでございましたが、予算の編成過程におきまして、先日も申し上げましたように、私どもは予算の編成についていわゆる三つの柱を重点に編成するということを考えてみました。ところが実際に私どもの目的とする経済成長を達成するためには、やはり経済成長の原動力は国民にございますし、国民の能力の向上政策ということも、これは重要な施策になって参りますので、そこで教育、科学技術の問題に当初予想したよりももっと大きい必要な経費というものに迫られたというようないろいろな関係がございまして、本年度の歳入はそういうところにあげて充てることがいいという判断をして、本年度の歳入の中から産投資金の設定をやめる、そうして将来にわたって弾力性を発揮できる目的を持ったものがこの資金でございますから、三十五年度の自然増収をもってこの資金への繰り入れを充てていくことが、財政の運営上妥当ではないかという判断に最後になった、こういう事情でございます。
  49. 小松幹

    小松委員 今の大臣の御意見を聞いておりますと、これは緊急性の序列が下がってきた。私はあくまでも緊急性の序列は高いのかと思った。三十六年度予算をやっていると、最初は入れたところがまだそれよりも緊急性の必要なのがあとから出てきたから、序列は最初一番だったのが二番になり三番になり四番になり退けられてとうとう行き場がなくなったから、しょうがないから補正予算にきたのだ、こういう言い方をされたと思う。それだったらこれははっきり緊急性はないじゃありませんか。ほんとうに緊急性があるならば、序列一番のものは最後まで序列一番でなければならぬ、それが序列一番でなくして、しまいにはああこうああこう言って追い出されて、行き場がなくなって補正予算に食い込んできた、そういうような流れ、追い込まれた形のいわゆる補正予算、そういう補正予算は私は緊急性がないと思う。それは流れものを最後に受け入れたというしか——行き場がなくなったものをさっと家に入れた、入れぬでもよかったのだけれども、無理に泊めてくれというから泊めた、こういうようなものと同じものだ。財政法二十九条の補正予算の解釈は、そういう流れものを仕方がないから入れるというような意味の補正予算の組み方ではない、はっきりしている。いわゆるそのときに一般会計で組んで、この一般会計をだんだん使っていくうちに、とうとう一般会計でどうも足らない、一般会計の運用の途中で、その後に生じた事由に基づいて緊急避くべからざる場合においてのみ補正予算追加を組むことができる、こういうようにはっきり書いてある。そうなったら今の場合に、三十六年度一般会計に組むものがだんだん追い出されてきて、そして序列が五番か六番になったやつを、緊急性がないのをここに持ってきて据え付けた、こういう緊急性の予算編成は私はあり得ないと思う。しかもそれでもまあどうにかこうにかとにかく行き場がなくなったのだけれども、ことし使うのだから百五十億だけはどろにか繰り入れてくれと言うならばまだわかる。ところが百五十億じゃない、ことし三十六年度に使うよりもなお先の三十七年度以降に使うところの資金まで一緒にかぶって、ここに補正予算に積み重ねたということは、明らかに私は財政法上の違反である、拡大解釈にしかすぎない、これは何べん言ってもそうだと思う。この点大蔵大臣、少し緊急性の序列が下がったのであるか、どうなのか。
  50. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 緊急性の度合によってきめたということではございません。産投会計資金への繰り入れが必要である、必要性は各政府の施策費ともみんな同じ必要性を持っているわけでございますが、三十六年度で私どもが産投会計の出資について、各出資要望についてどれだけの施策をするかを考えましたときに、住宅公庫、住宅公団、農林公庫、輸銀、その他これだけは政府出資をしなければならぬと思われるものだけでも四百億円はどうしてもここで負けないというものがありましたが、この産投固有の原資は二百四十八億円しか現在ございませんので、どうしても百五十億円前後は不足する、これは必要な経費でございます。それを三十六年度の歳入の中からやるというのが最初の考えでございましたが、編成の過程において本年度の補正予算でやるか三十六年度の歳入でやるかということをいろいろ考えて、そこで当初私どもは第一次補正予算を組むときに確実として見込まれ得なかったものが、その後の九月決算の状況が明らかになってきますし、いろいろ税収の現状を見まして、当初考えたよりも自然増が見込まれる、こういう状態も同時にそのときに出ておりましたので、そこらを予算編成としてどういうふうに対処するかということを考えた結果、私はこの資金への繰り入れ——そのほかの経費を考えたわけじゃございません、この必要な資金への繰り入れは、今年度の補正予算をもって対処することが大体妥当だ、こういう判断に落ちついてこの補正を出すことを決心した、こういうことでございます。
  51. 小松幹

    小松委員 大臣の言い方は、あくままでも主観でものを言っていると思う。自分が最後に追い詰められてきたから横を見たところが、ことしの自然増収もあることだし、まあまあここでよかろう。腰を落ち着けて三十五年度の補正に組んだ、あくまでもいわゆる便宜主義によって、あなたのいわゆる御都合主義によって手前のいい解釈によって、三十五年度の補正に目をつけた。もうこれはあなた自身が言っておる。最初は三十六年度一般会計に目をつけたんだけれども、だんだん追い込まれてきたら、そこに自然増収があるから、そこからとるのが都合がいいかもしれぬ。幸い財政法四十四条は資金の繰り入れが認められるから、それがいいというのでそこをとった、こういうような言い方は、あくまであなたの便宜主義にしかすぎない。財政法というものはそういう大蔵大臣の便宜主義によってやるべきものじゃない。正しくこの法律というものを解していかなければ、ことに財政の問題というものはところどころ違うと私は思う。たとえば話がちょっと変わりますけれども、三十一年度補正予算を、先ほど言った池田さんが大蔵大臣のときに組んだ。ところがそのときにどういうやり方をしたかというと、森永主計局長がおったと思いますが、予算の単年度主義あるいは補正予算の非合法性というものをつかれて、そのときの産業投資特別会計法を都合のいいように適当に修正してしまった。森永さんがすぐにそのときに修正して、これはすぐに法律も別に修正案を出しますというわけで、産投会計の法律修正を出している。ところがその法律を見ると、産投会計の中にまず一般会計から受け入れるのに窓口を二つあけた。一つの窓口は資金という窓口、一つの窓口は一般会計からじかにそのものずばりでいくところの窓口をあけてある、こういう法律としてはまことに妙な編成をしたと私は思うのです。産業投資特別会計に一般会計かち出すなら一本の姿でさっと入れればいい。それだったら一本の資金として繰り入れればいい。それをつかみ銭のときには資金でやる、そのときには窓口はそのまま入れる。これは産業投資特別会計法の第一条の第二項に、資金からの受入金  これが資金を受け入れる窓口、もう一つは附則第十三項の規定、附則規定によって一般会計からの繰入金を財源とする。だから言うならば、この一条の中に資金として繰り入れる、附則条項によって一般会計から受け入れる、一カ条の中に窓口を二つあけてある。こういう違法をあえてやっていると思う。一般会計から産投会計に入れるのに窓口を二つあける必要はない。一つでいいじゃないか。資金会計であったら資金会計にぽんと入れればいい。それを今度は資金会計今度は一般の繰り入れ、こういうようなテクニックをやったということは、これは私は森永主計局長のときにやったんだと思うのですけれども、そこはどうか知りませんけれども、そういうやり方を産投会計でも適当にやる、適当にそのときそのときでうまいことを考えて、附則条項でやってみたり——だからあの産投会計を見ると、資金からの受け入れとこう書いて、そうして今度は一般会計より繰り込み、とそのとき限りとする、その前年度限りの予算、こう書いてある。同じような一般会計から繰り入れるのに、わざわざ本年度限りの予算です。あるいは資金として束になって入ってきたのです。こういうふうに産投会計で当たってあるのを見ると、この産投会計も附則条項に基づく一般会計の繰り入れなんというのは考えぬでいい。一ぺんに一般会計から資金にぽっと落とせばいい。資金の繰り入れとしてやればいい。それをそういうことをやらない、こういうようなことがきわめて合法的というか、御都合主義によって一補正予算などのときには、資金としてぽんと一括取り上げてしまう、こういうような論拠を作ってきたのだと思うのです。この点、これは法制局長官が来ていますが、あなた、産業投資特別会計法の第一条二項ですか、窓口を二つあけてあるのは法制上いいのですか。合法的かもしれませんけれども、どうもおかしいと思うのですが……。
  52. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは産業投資特別会計における結局必要性という問題から出てくるわけでございます。毎年度予算の定めるところによって、一般会計からその年に投資すべきものを繰り入れるという方法と、もう一つ一定の資金を設けまして、相当の額をそこに資金としてプールしておいて、それを年度を何回かに分けて、適当にその必要性に応じて繰り入れて、その資金から取りくずしていく、こういう二つの方法を今産業投資特別会計はとっているわけでございます。三十一年度における産業投資特別会計法の改正でもそれが行なわれたわけでございます。これは結局そういう二本のパイプを作るということが、いわゆる産業投資特別会計の運営上適当である、こういう観念から出ておると思います。これは私決して法律上——もちろん法律で書くわけでございますからできるわけでございますが、内容から申しましても不相当であるというものではないだろうと思います。  同じような例は、実は食糧管理特別会計にもある程度はあったわけでございまして、たとえば食糧管理特別会計において決算上赤が出た場合に、一般会計から繰り入れるということを年度によってやった例もございます。あるいは現在はいわゆる調整勘定に資金を置いて、その調整勘定に資金を作って食糧管理特別会計で赤が出れば、その資金を取りくずして使う、あるいは益が出ればその資金に繰り入れるという方法もとっておるわけであります。こういうふうにある特別会計に対して、その特別会計の運営上、場合によっては一般会計からも繰り入れをやる、そのときの年度の必要によって一般会計の繰り入れもやるし、場合によってはある程度プール的な資金を置いてやる、これは私は適当なことだと思うわけでございます。  先ほどの大蔵大臣の御説明の、ちょっと補足になりますけれども、これはお考え願わなければならないことは、つまり財政法二十九条は予算編成後生じた緊要欠くべからざる経費、こういうものを補正予算で組めるということが書いてございます。いわゆる緊要欠くべからざるかどうかということは、もちろん客観的な判断を要しますが、これは大蔵大臣が御説明になったように必要である、しかもそれは三十五年度においてやるわけでございまして、決して三十六年度とか三十七年度で繰り入れをやるわけではございません。その資金の使用は、あるいは後年度にまたがります。これは資金の性質上、当然そういうことは起こることでございまして、それで繰り入れば本年度にやる、決して三十六年度にやるわけではないのでございまして、そういう意味においての緊要欠くべからざるという要件に、私は当たっておると思います。  これももう一つ蛇足でありますが、小松委員御承知の通り、産業投資特別会計に三十五年度において三百五十億を繰り入れるという法律案は出ておるわけであります。その法律案が成立すれば、当然その法律に従って繰り入れの必要も出てくる、この両方を合わせて考えておるわけでございます。
  53. 小松幹

    小松委員 法制局長官ともあろうものが、そんな法律の解釈をやって、それでよう勤まると思うのです。第一、産業投資特別会計に二つ窓口をあけておるのが合法的とか非合法を私は言っていません。技術的に一般会計から繰り入れる、その小さな産業投資特別会計に窓口を二つあけなければならぬという必要性があるのかないのかということを私は言っている。しかもあけるなら本法によるのに、附則十三項に基づいて一般会計からあけておるじゃないか。それならなぜ附則十三項に関連して窓口をあけたりするのですか。そういう附則条項に従って窓口をあけるようなことを法律上許しておったら、附則八項、附則十二項、プレミアムで何ぼでもこの窓口があくじゃありませんか。そんな考え方は……。   〔「考え直せとは何だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  54. 林修三

    ○林(修)政府委員 私は速記録ももちろん調べてみますが、お考え直しを願うということを申したつもりはございません。お考を願わなければならぬ点はこういう点でございますということを申したわけでありまして、決して小松先生に対して、お考えを変えてくれということを申したわけではございません。こういう点がありますことをお考え願いますということを申したわけであります。
  55. 小松幹

    小松委員 法制局長官が国会で答弁をするのに、何か自分が裁判長か何かみたいになって、質問した議員にお考え直しを願いたいなんて言うことはおかしい。  しかしそれはとにかくとして、もう一つ、あなたの言っておることは、資金の繰り入れが三十五年度に行なわれるからいいのだ。あたりまえじゃないか。予算編成したら、今入れたら今要るということは、そんなことはあたりまえだ。三十五年度に繰り入れしたら、三十五年度に必要だ。あたりまえなことじゃないか。あたりまえのことを言っておるにすぎない。三十五年度に資金の繰り入れをしたから三十五年度に緊急性がある、そんなばかな話がありますか。あなたはどんなことを考えておるか。そんなことを言えば、みんなどんな予算でも補正予算に組まれますよ。どんなにつまらぬ予算を組んでも、補正予算に今繰り入れたのだから今必要なんだ。繰り入れるということが必要だということになれば、どんな無謀な予算でもできますよ。かりに補正予算に、さっき言うた韓国の六億を、六百万円でもよい。六百万円を組みましょう。それは緊急性がないじゃないか。いや、今繰り入れたのだから緊急性があります、そういうようなことをあなたは言うて法制局長官が勤まりますか。緊急性というものはそんなものじゃない。今繰り入れたということは、その処置の現実の処置なんです。帳簿勘定とか、あるいは帳簿の上の仕切りなんです。仕切り勘定というものと必要性がこんがらがっておる。それだったら戦争するという費用を今補正予算に組んだら、必要性がないじゃないか。いや、今繰り入れたのだから必要があるのだ、そんなばかな説明がありますか。あなたの説明はそういう説明をしたのです。それならもう一回そこでやり直して下さい。
  56. 林修三

    ○林(修)政府委員 先ほど申し上げましたのは、要するに三十五年度に繰り入れの必要があるから繰り入れるというわけでありまして、後年度繰り入れるわけではないということを申し上げました。三十五年度に繰り入れる必要性については、先ほど大蔵大臣がお答えになった通りだということを申し上げたわけでございます。要するに三十五年度に繰り入れが必要であるからという認識のもとにおいてこの予算を組んだわけでございます。そういう意味においては、これはもちろん客観的な裏づけが必要でありましょう。必要でありましょうし、あるいは意見としてはいろいろ御意見があるだろうと思いますが、少なくとも政府としては三十五年度において繰り入れを必要とする、必要とするだけの客観的理由ありという、こういうもとにおいて組んだ、こういうわけでございます。
  57. 小松幹

    小松委員 大蔵大臣の方はまだ正しい。大蔵大臣はとにかく必要だから二次か、三次か、四次かわからぬけれども、とにかく必要だからというて必要なものをとってくる。あなたはその必要は一つも言わない。繰り入れたからそれは正しいのだ、繰り入れたから必要なんだと言う。繰り入れだけを必要だと考えておる。それでは大蔵大臣の答弁よりかあなたはなお悪い。それは三百代言以下だ。法制局長官、やめなさい。そんな解釈でもって、繰り入れたからいいのだなんという、そういう必要性なんてありますか。繰り入れる必要、よりて来たる原因というものを今聞いている。あなたはそのよりて来たる原因は説明せぬでおいて、今入れたから正しいのだという、そんな必要性なんてありませんよ。あなたの解釈なんてなっていない。全くコンマ以下だ。法制局長官の資格なし。これは大蔵大臣の方がはるかに正しい。正直に言っている。その正直に言っていることと、財政法上の誤りとは別だ。公私は混淆してはならぬ。これはもう大蔵大臣の言うていることはすなおに正しく、とにかく行き詰まったからこうしたこうしたという緊急性は自分の主観ですけれども言っている。私はあなたの主観を否定するのではないけれども、財政法上の見地からは違反している、こう言っている。あなたの個人の問題を私はとやく言ったって、あなたはこうだこうだと説明しているのだから、正直に言っている。ただそれは主観的な自分の立場あるいは自分の考え方で拡大解釈をしているだけだ。財政法二十九条というものはそうじゃない。よって来たるところが、この補正予算というものは狭められた範囲のものだ。これは補正予算だから買いなさい買いなさいという街頭ヤシの宣伝なら別ですよ。ところが補正予算というものは、なるたけ買いなさいじゃない。ほんとうにつつましやかにやっていこうという考え方でしょう。だから緊急なものを、ほんとうに必要なものをそこに入れようとする。というと、必要なものというものの法的な解釈、あるいは客観的な解釈が、三百五十億のいわゆる資金の繰り入れば今速急に急がなくてもいい。しかも急ぐならば、三十六年度の百五十億だけでもいいじゃないか、こう言っている。こっちも割り引きしますよ。こっちも遠慮しなければいかぬから、何ぼか割り引く。それならば三十六年度でくるだけの資金でもいいじゃないか。再来年、三十七年度に越すつかみ銭を、そこに緊急性があるというて補正予算に組むということは、これは違法であり、拡大解釈である、こう言っている。この点つかみ銭じゃありませんか。大蔵大臣どうですか、御答弁をお願いいたします。
  58. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 問題は、ことしこの資金に繰り入れなくてもいいのじゃないか、その必要はないじゃないか。必要が確かにないということでしたら、これはさっき話しましたようにこの補正予算は問題であると言われても仕方がございませんが、私はその必要はあるのだ、しかも当初予算編成後にこの必要は起こってきておるかと申しますと、これが今御承知のように当初予算編成のときには経済の伸びの見込みも誤っておりましたし、ドル防衛そのほか自由化を中心にした問題がその後の事態として起こってきておりますし、さらにまた政府が新しい長期計画を、当初予算当時ではなくて年末にきてこういう政策を決定したというような事情が重なってきまして、ここに政府の投資需要というものが格段にふえてきたという事情に迫られておりますので、この際この資金に自然増の一部を繰り入れることはどうしても必要だと私は考えておるのでございます。今までの予算編成を見ましても、これはそう言っちゃいけないかもしれませんが、必要な資金繰り入れということは、もう最初から必要であってもなかなか歳入に制約されて、資金繰り入れをしたいと思う繰り入れもできなかったというのが過去の例だと思います。ですから最後に歳入の状態を見て、そこに余力が出てきたというときに必要な資金への繰り入れをするということをやったことはしばしばございまして、こういう資金への繰り入れを補正予算でやった例は従来たくさんございますし、また先ほど法制局長官から出ました食管会計に調整資金、というものを作るというようなことも、多く補正予算で行なわれておるという例もございますので、これは私は、必要であるかないかが問題でありまして、必要だという以上は財政法の違反にはならないだろうと考えております。
  59. 小松幹

    小松委員 先ほど法制局長官が産投会計の説明をするときに、いろいろな調整勘定もあると言われた。調整勘定とこの産業投資特別会計とごっちゃにして——それは調整勘定なら調整勘定でいいでしょう。ところが産業投資特別会計になって勘定されておるのに、先ほど言ったようにつかみ金のときには資金に入れる、そうでないときには附則条項で入れる。こういうような適当な法律によってやる、だからつかみ銭をするときには資金に入れるのだ、それはいいでしょう。つかみ銭を資金に入れるのはいいでしょうが、そういうつかみ銭のときに、それを補正予算にぶら下がったというところに私はこの問題があると思う。大蔵大臣は正直なところで、こういう会計予算というのは、もっといえばバック・ボーンもなければ圧力団体もないから、いつもそでにされる。圧力団体のあるのはおそくから来ても最後には床柱の前に直る。ところが産投会計みたように圧力団体もバック・ボーンもないものは、最初からぜんに直っておってもしまいにおっぽり出される、だから仕方がないから補正予算に緊急性で入ったのだから合法的だ、こういうようにおっしゃっておられるのです。情状はよくわかる。しかし情状はよくわかるけれども、そういうことをたびたび財政法上で許すならば、もう財政法なんというのは適当に拡大解釈をしていいじゃないか。やはり一時は厳粛に私はこの補正予算というものを考えていかなければいかぬと思う。三十一年度の補正のときは、私もここに立って相当言ったのだけれども、力足らずしてこうなった。今度はそういうわけにいかぬ。徹底的に何時間でも私はこの問題をねばるつもりです。これはどうも緊急性がない。必要性はあったとしても、補正予算にとるだけの緊急性というものがどうも感じられない。財政法の拡大解釈であるから、これは一つ大蔵大臣、撤回をしてやり直さなければ、これは財政法違反として池田さんも過去においてそういうあやまちを犯した。今度水田大蔵大臣が続いてあやまちを犯すということは、財政のベテランの大臣、総理大臣がこういう非合法なことをするということは、許されぬことだと思う。ほかの財政に弱い大臣はこういうことをやっていない。財政に強い大臣がしゃにむに知能犯的なことをやって、補正予算を、つかみ銭を緊急性という名のもとに投げ込んでいく。これはまさにつかみ銭を投げ込んでいく、こういうような行為にしか客観的に見えない。これは何とか改むべきだ。私は今にして改めずんば——むずかしい言葉になりますが、今にして改めずんば、これはおそるべき財政法の拡大解釈となると思う。これは重大な問題だと思うから、水田大蔵大臣、考え直していただきたいと思いますが、いかがでありますか。
  60. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 私はさっきから申しました通り、必要性を認めていただける限りは、これは財政法の違反ではないと考えております。
  61. 船田中

    船田委員長 関連質問を許します。井手以誠君。
  62. 井手以誠

    ○井手委員 小松委員から条理を尽くして、財政法のいかに重要なものであるか、財政憲法についてるる説明があったにもかかわらず、政府は、その財政法違反を指摘されながらも、撤回の意思がないことを今お話しになりましたが、われわれはこれで承知できるものではございません。そこで私は、重ねて関連質問でお尋ねをいたしますが、大蔵大臣は、年度独立の原則が財政法の鉄則であることをお認めですか。簡単に……。
  63. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 認めます。
  64. 井手以誠

    ○井手委員 その鉄則に対して、例外は何と何でございますか。
  65. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 一つの例外は、さっき申しましたように、資金というものを作ることができる、そうしてその年度に使わなくても、これを将来の用に供し得るような、弾力的に財政の管理のできるような資金を作ることができるというのが、単年度原則に対する一つの例外規定だと思っております。
  66. 井手以誠

    ○井手委員 それは間違いであります。この単年度予算の原則、その年の歳出はその年の収入をもってまかなう、この年度独立の原則というものに対する例外は、継続費と繰り越し、債務負担行為、これですよ。財政法を見てごらんなさい。今の答弁は違いましょう。資金の問題じゃございませんよ、例外は。もっと財政法の原則を考え直して下さい。それは違うですよ。
  67. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今申しました三つに合わせて資金の問題も、もし年度内に使うというものでしたら、資金というものを設定する必要はございません。将来にわたって、その年度内に使用しなくて、次年度またはその次に使用することもできるという、財政管理の上にはそういう必要もございますので、その必要のためには資金というものを作ることができるというのも、やはり単年度主義の一つの例外の規定だと考えております。
  68. 井手以誠

    ○井手委員 年度独立の原則に対する例外としては、今私が申しました継続費、明許繰越費、債務負担行為のこの三つですよ。財政法にはっきり書いてあるじゃありませんか。資金の保有とは、第四十四条に「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」と書いてある。これは総計予算主義という建前から、予算は一本でなくちゃならぬ、これは原則ですよ。ところが、これに対して、国は特別に必要のある場合は法律をもって定めるが、その際には特別の資金を保有することができる——保有することができると書いてあるだけである。なぜこの規定を設けたか、それはあなたも財政通ですから御存じでしょう。それは国民の税金をもってその年度に収入し歳出を行なう、その例外に対して資金を保有して勝手に使っては困るから、特別の法律をもって定めなければならぬ、その場合には保有することができるという、そういうふうに書いてあるのですよ。保有することができる、勝手に使っちゃいかぬぞ、その使い方というものは法律で別に定めておる、これが第四十四条ですよ。この第四十四条の「資金を保有することができる。」という、その注意的な規定を、二十九条の大原則、すなわち、必要避くことのできないときにだけしか補正予算を組んではならないという、この大原則、これを曲げることは絶対にできません。いかにあなたたちがおっしゃろうとも、法制局長官が何と言おうと、これは曲げることはできません。私はこの際申し上げますが、私がこの前も申し上げたように、この財政法というものは、権力者が勝手に使ってはならぬという、きわめて重要な憲法である。財政憲法である。それをそのときの都合  都合であることは大蔵大臣がはっきり白状したじゃございませんか。今、小松委員質問に対しても、三十六年度に必要であったけれども、どうしてもほかの緊急なものがあって百五十億円組むことができなかった、幸いに三十五年度に自然増収があったから、これを資金として保有することにしたとはっきりあなたはおっしゃっておる。そういういきさつ考えて参りますと、何とおっしゃろうと、必要避くことのできない補正予算のこの事由には絶対なりません。私は絶対これは認めるわけに参りません。この大事な問題について、ただ言いのがれとか、あるいは多数であるとかということでこれを押し切ることは絶対できません。私は、この国会の審議において、この財政法を、時の都合やあるいは数によって押し切るなどということは絶対許してはならぬと思う。私どもはこれに対して対策を講じたいと思いますから、暫時休憩を願いたい。委員長
  69. 船田中

    船田委員長 質問を続けて下さい。
  70. 井手以誠

    ○井手委員 いや、ちょっとお待ち下さい。こういう重要な問題ですから、しばらく休憩を願います。
  71. 井手以誠

    ○井手委員 ちょっとお待ち下さい。こういう重大な問題ははっきりしなければだめです。
  72. 船田中

    船田委員長 政府は答弁がありますか。
  73. 井手以誠

    ○井手委員 いや、法制局長官の答弁は私は求めません。
  74. 船田中

  75. 小松幹

    小松委員 私たちが執拗にこの問題を……。
  76. 船田中

    船田委員長 小松君に発言を許しました。小松君。
  77. 小松幹

    小松委員 私がこういうことを執拗に、言っているのは、二つの理由があると思うのです。一つは、内閣において予算を編成する者が、いわゆる一般当初予算を編成する場合に、隠し財源としてそこに当初予算に持っていって、追い込まれた場合には逃げを打ってこっちにくればいいという、悪く使えば隠し予算の場所にもなる。当初予算に組んでおって、追い込まれて、圧力団体でだんだん切って切りまくられたら、仕方がないから、大蔵省原案を撤回するときには、予備金がいつもそこから一番先に逃げるでしょう。ことしも予備金二百億が逃げていく。その次には、こういう資金会計の何もバック・ボーンのない、うまく資金のつかみ取りで逃げられる会計が逃げていく。そうすればイクサナシ予算といいながらも、ちゃんと隠し財源をこしらえてのイクサナシ予算であったといわれても仕方がないと思う。あくまでもこれが必要ならば、がんばるべきなんだ。そういう点を考えて問題がある。同時に財政法第二十九条の拡大解釈というものをいつも許すならば、補正予算というものの観念を変えていかねばならぬ、こういうように私は考えます。そういう意味から考えて、どうしてもこの拡大解釈に基づくところの補正予算の審議というものは、とうていできない。だからあくまでもこれを撤回していただきたい。これはまことにめんどうな話でありますけれども、私は社会党を代表して、池田総理大臣並びに水田大蔵大臣に撤回の意思があるかどうかということをお尋ねいたします。撤回していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  78. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 先ほどから御説明いたしております通り、今年度この資金繰り入れの余裕がないということでございましたらともかく、余裕が出てきたということと、この出資需要が来年度三十六年度だけではなくて、三十七年度以降将来にわたってこの出資需要がふえるという情勢に対処していく方法としては、この際この資金に今年度の余裕を繰り入れるということが、やはり将来のためにも必要である。こういう判断でお願いしているわけでございますから、私どもとしては撤回するということは今のところ考えていません。どうしてもこの措置は、私は将来のために妥当な措置であると信じております。   〔井手委員「委員長委員長」と呼ぶ〕
  79. 船田中

    船田委員長 この際暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩      ————◇————— 午後六時十二分開議
  80. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、大蔵大臣より発言を求められております。これを許します。水田大蔵大臣。
  81. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今回の補正予算による産業投資特別会計資金への繰り入れにつきましては、政府としては適法のものと考えておりますが、財政法第二十九条との関係について疑義も出ておりますので、今後政府におきまして、この点について検討することにやぶさかではございません。  今後における補正予算による産業投資特別会計資金への今回のような繰り入れにつきましては、右の検討の結果を待つことといたしたいと存じます。
  82. 船田中

    船田委員長 質疑を許します。井手以誠君。
  83. 井手以誠

    ○井手委員 ただいま大蔵大臣から財政法の疑義について二点の発言を承りました。私どもは、財政法の原則から考えてあくまでこれを違反であると考えておりますが、この際、一点だけただいまの発言について念を押しておきたいのであります。  その点は、第二に述べられた今後における補正予算による産業投資特別会計資金への今回のような繰り入れについては、右の検討の結果を待つことといたしたいというこの発言、そういたしますると、疑義を検討なさる間は、今回のような補正予算は提出されないと解釈してよろしゅうございますか。
  84. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御趣旨に沿うように善処いたします。
  85. 船田中

    船田委員長 次会は、明日午前正十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時十四分散会