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1961-02-09 第38回国会 衆議院 予算委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年二月九日(木曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員   委員長 船田  中君    理事 愛知 揆一君 理事 青木  正君    理事 重政 誠之君 理事 野田 卯一君    理事 保科善四郎君 理事 井手 以誠君    理事 川俣 清音君 理事 横路 節雄君       相川 勝六君    赤澤 正道君       井出一太郎君    稻葉  修君       臼井 莊一君    江崎 真澄君       小川 半次君    上林山榮吉君       菅  太郎君    北澤 直吉君       櫻内 義雄君    園田  直君       田中伊三次君    床次 徳二君       中野 四郎君    中村三之丞君       羽田武嗣郎君    前田 正男君       松浦周太郎君    松野 頼三君       松本 俊一君    三浦 一雄君       山崎  巖君    淡谷 悠藏君       岡  良一君    木原津與志君       小松  幹君    河野  密君       田中織之進君    高田 富之君       楯 兼次郎君    堂森 芳夫君       永井勝次郎君    野原  覺君       長谷川 保君    松井 政吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         法 務 大 臣 植木庚子郎君         外 務 大 臣 小坂善太郎君         大 蔵 大 臣 水田三喜男君         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君         厚 生 大 臣 古井 喜實君         農 林 大 臣 周東 英雄君         通商産業大臣  椎名悦三郎君         運 輸 大 臣 木暮武太夫君         郵 政 大 臣 小金 義照君         労 働 大 臣 石田 博英君         自 治 大 臣 安井  謙君         国 務 大 臣 池田正之輔君         国 務 大 臣 小澤佐重喜君         国 務 大 臣 迫水 久常君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         内閣官房長官 保岡 武久君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  石原 周夫君         厚生事務官         (社会局長)  太宰 博邦君         厚生事務官         (保険局長)  森本  潔君         通商産業事務官         (公益事業局長)大堀  弘君  委員外出席者         日本国有鉄道総         裁       十河 信二君         専  門  員 岡林 清英君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十六年度一般会計予算  昭和三十六年度特別会計予算  昭和三十六年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 船田中

    船田委員長 これより会議を開きます。  昭和三十六年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三案を一括して議題といたします。  質疑を続行いたします。永井勝次郎君。
  3. 永井勝次郎

    永井委員 私は、物価問題についてまずお尋ねをいたしたいと思います。  池田総理は、総選挙の洗礼を受けて、さて所得倍増だというので、すねをまくり、手につばをしてスタートラインについておるわけであります。所得倍増スタートラインで立っておるときに、物価倍増の方が先に走り出して、どんどん走っておるわけであります。このような状態では、所得倍増物価倍増に追いつけるかどうかというので、国民は非常に心配をしておるわけであります。家庭主婦が台所に立って水道のせんをひねっても、ガスをひねっても、電気のスイッチを入れても、あるいは食卓についてパンを切り、バターをつけるにいたしましても、ここには、池田総理から無償で物価値上がりという贈りもので迷惑をしておるわけであります。最近では、火葬料も上がりました。お医者さんの値段も上がり、坊さんのお布施はどうかわかりませんけれども、火葬料が上がって、ゆりかごから墓場までということは、われわれの常識では社会保障かと思っていたところが、そうではなくて物価倍増であります。火葬料は最近二千四百円だったものが四千円、三千二百円であったものが六千円、五千五百円であったものが九千五百円、こういうふうに火葬料が上がって参りました。この世だけで済まされないであの世まで物価値上がりが追っかけてくる、こういうことで、国民の多数は池田ノイローゼにかかっておるわけであります。このノイローゼをどういうふうにしてなおすのか、主治医である池田総理にまずお尋ねをいたしたいわけであります。どういうふうにしてこれは具体的にこの国民ノイローゼを治療していただくのか、このカルテを見せていただきたい。
  4. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話のうちに、所得倍増よりも物価倍増が早くいっているというお話でございますが、数字を申し上げて恐縮でございますが、統計にはそうは出ておりません。統計には出ておりません。問題は、私は所得の方がうんと上がって、物価の方が上がり方が少ない。うんと少ないというのが理想でございます。もちろん、卸売物価につきましては横ばいでございますが、お話の点は消費者物価と思います。消費者物価につきましては、質の変化等もありまするが、やはり手間賃、いわゆるサービス料上昇ということは経済成長につきものなんでございます。だからこの分を絶対にとめるというわけにいきません。ある程度は、やはりサービスをもって仕事としておられる方々がおられるのでございますから、労働者賃金が上がったり、あるいは役人の賃金が上がったりすると同時に、やはりサービス方面にもある程度上昇は、これは合理的なものは認めなければなりません。その点は所得上昇でカバーできるかできぬかが問題でございます。だから所得上昇でカバーできるものならある程度はやむを得ないという考え方であります。たとえば生活保護を受けておられる方々につきましては、御承知通り一八%も基準で上げておるのでございます。私は各国のそれから見ましても、消費者物価上がりようは、日本先進国ほどにはないと考えておるのであります。
  5. 永井勝次郎

    永井委員 サービス料金の上がっていくということは、これは当然のことだと思うのであります。ことに現在上がっております理髪であるとかパーマであるとか、あるいはそばであるとかうどんであるとか、こういった関係のものは従来は日陰の谷間にあった業種でありますから、内容といたしましても賃金部分でありますから、これは上がっていくのは私はあたりまえだと思うのであります。しかしこういうサービス料金が上がっていくことによって、これはやはり全体のコストを下からプッシュしていくという役割はお認めになるであろうと思うのであります。この点はどうでありますか。
  6. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 合理的なサービス料手間賃の上がることは、これは認めなければいけません。それが合理的である以上われわれは認め、そうして他に、それより別にそれ以上の所得増加を期待いたしておるのであります。
  7. 永井勝次郎

    永井委員 所得倍増計画の中で拝見いたしますと、あまり物価の問題は論議されておらないようでありますが、この物価の問題はどのように、またどのような位置において論議されたのかお示しを願いたいと思います。
  8. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 大体物価につきましては、卸売物価消費者物価がありますが、卸売物価につきましては大体横ばいということでいっておるのであります。昭和三十六年度につきましては卸売物価はある程度下降する、消費者物価は一%余り上がる、こういう計算でいっております。長い目で見ては、物価はある程度——卸売物価横ばいという考え方であります。
  9. 永井勝次郎

    永井委員 総理統計々々と言いますけれども、消費者物価指数にいたしましても、これが実態を正しく反映しているもの——これは現実家庭主婦なんかが物価値上がりで困っておる、こういう音を上げていることはこれは取り越し苦労であり幼稚な考えであって、また幼稚な体験であって、政府の持っておる消費者物価指数というものは、これはより真実性の高いものだ、指数の方が高いのだ、こういうふうな比重において理解されておるのかどうか。
  10. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 われわれが政治をしていく上におきましては、一応の統計によって判断することが至当だと考えております。
  11. 永井勝次郎

    永井委員 統計作業した当局だって、これは少しいろいろデリケートな関係があって、この作業の上においてはいろいろ問題だ、こう言っておるのであります。ことに今度資料をまとめました関係におきましても、郵便料金なんかは、はがきをウエートにとっておるので、これは上がっておらないのであります。あるいは公団住宅ウエートとり方にいたしましても、あるいは医療の関係にいたしましても、あるいは国鉄関係にいたしましても、この中で特に比率が上がっておるのは、私大その他の授業料が非常に数字が上がっております。これは現実の動いておる経済実態とは離れております。こういう内容によって、これが信憑性があるものだ、こういうふうにお考えになるのでありますか。これは数字算術計算においてはいろいろな数字が出ましょう、またなるべく刺激的でなくて低い指数でこれを示そうと思うならば、これはウエートとり方幾らでも動くのであります。もっと数字の読み方が政治家としての心がまえだ。その数字を絶対の条件としてそれをよりどころにするのか、その数字を通してもっと実態に動いておる状況をお考えになるのか、その政治家としての気持を一つ伺いたい。
  12. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 この点は今国会におきましても、一週間ぐらい前でございましたか——今の統計とり方お話の各品目のウエート見方等によりまして違ってきますし、また昭和二十六、七年だったと思いますが、そのときよりは品物が変わってきております。たとえば繊維品なんかでも、テトロンなんかこの時代にはなかった、こういう点から考えまして、私は消費者物価につきまして、一つ別の意味で再検討したらどうか。この統計は、今までの統計は今までの統計でやっていきますが、別の見方一つやってみたらどうかということを三週間ぐらい前に実は私は企画庁にお願いしておるのであります。生活様式が違って参っておりますので、常に今までの十年近い前のとり方でいくか、また新しい見方でいくか、両方勘案していくというふうな方法は、政治をする上において必要だと思います。
  13. 永井勝次郎

    永井委員 真実を追求しようという立場におけるこの指数の改訂、試算のやりかえというような立場ならば私は了承しますが、もっと低い数字を出せ、こういうような作為的な作業ならば、これはお断わりした方がよろしいと思うのであります。  そこで現在の物価値上がりというものは、天から降ってきたのでもなければ、地からわいてきたのでもない、経済一つ動き現象の事実としてここに現われておるわけであります。それならば、物価値上がり要因というものは幾つかあります。その幾つかあるものの中で、現在の物価値上がりせしめている一つ要因は何と何であるとお考えでありますか、伺いたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 自由主義経済のもとにおきましては、需給関係が一番大きゅうございます。季節的、また需要の質の変化等需給関係が一、そしてまたその次にはやはり先ほど申し上げましたサービス料増加、これは主として消費者物価について申し上げておるのであります。
  15. 永井勝次郎

    永井委員 通貨の量が膨張していけば、相対的に物価が上がっていくということは、これはあたりまえのことだと思うのでありますが、経済規模に比例して財政規模は大きいとはお考えになりませんか。予算及び財政投融資等を加えて二兆からの膨大な通貨の散超であります。これが大きな刺激剤一つになっておるとお考えになりませんか。
  16. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はそう考えていないのです。通貨膨張物価高を来たすかということですが、私は物価がある程度上がってから通貨膨張ということになると思うのです。原因結果どっちが力が強いかということは言えませんが、今の状態では、国民所得から申しまして、日本銀行発行銀行券は過大じゃございません。どちらかといったら少ないくらいじゃないかというくらいに考えております。それから財政投融資を入れて二兆円をこす規模は膨大ではないか、これは私は膨大とは思っておりません。このくらいで適当だと考えております。
  17. 永井勝次郎

    永井委員 総理がああいう巨大予算を組んだのでありますから、これは行き過ぎだとは言えないでありましょうが、一般通貨の量が物に比例して散超に過ぎておる、こういうふうに批評しておる者が多いのであります。また金利引き下げました。金利引き下げは私は賛成であります。これは原則的に賛成であります。もっと下げてもいいと思います。また、そうでありますが、このような条件の中で金利引き下げた。金利引き下げたことによって、私はすでにいろいろな現象が出ておると思っております。たとえば株価の値上がり等に現われておりますように、私は、預金が引き出されて、先行き物価値上がりするという見通しのもとでは、黙って金を死蔵しておくばかはないと思うのであります。株に流れていく、あるいは株に流れていくならけっこうでありますが、先行き物が上がるということになれば、これは物を買うという方向に金が流れるのではないか、それがさらに通貨の量をふやしていく一つ原因になっているのじゃないか。通貨面から物価値上がりのいろいろな要因一つは出ておる。すべてではありませんけれども、一つは出ておる、こう私は思うのでありますが、金利引き下げによるいろいろな現象についてどのようなお見通しを持っておられますか。
  18. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 御承知通り日本金利は他の国に比べまして高い。私は金利の低下が経済成長役割をする、そうして金利引き下げ物価下落のもとをなす、こういう考えで、金利が下がっていくことを私は期待いたしておるのであります。それから日本銀行券発行は、私は先ほど過少とは申しませんが、決して多くない、国民所得に比べまして、大体通貨というものは、昔は一割二、三分というところでございました。日本はそこまでいっておりません。外国でもやはり一割をこえるというのが通常のあれでございます。私は、通貨が非常に多くて、物価に影響している状態だとは全然考えておりません。かえって逆くらいに考えております。
  19. 永井勝次郎

    永井委員 たとえば物価値上がりするという一つの環境の中で、それならば何を買ったらいいか。物価値上がり総理はしないと言います。それならば原始産業関係はどうですか。木材なんか急にこれは造出することはできないでしょう。あるいは資源産業関係電気であるとか、ガスとか、こういうものがそれに比例してタイミングを合わせてそんなに造出されるものではない。こういった関係のものが、通貨膨張し、刺激されてくれば当然値上がりしてくるのはあたりまえであります。土地のごときものも、これは金をどれだけ出そうと、どうしようと、生産性の向上において土地というものは造出されるものではないのであります。土地値上がりは当然これは起こってくる。こういう関係をどういうふうに考えているのか。またタイム・ラグの問題をどれだけ総理は織り込んでお考えになっているのか、承りたいと思います。
  20. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 材木の値が上がっている、もちろん私も存じております。卸売物価を見まして、昭和三十年ごろに比べて今一〇二とか三とかいっておりますが、その一〇二、三の内容を調べてみますと、昭和三十年に比べて上がっているものは材木並びに建築資材、そして食料が上がっております。他の鉱工業生産はおおむね、ほとんど全部下がっております。  食料の方は、米の関係もございましょうが、野菜の関係もある、いろいろありましょうが、一番上がっておるものは木材である。どこに原因があるかというと、木材供給者は主として国でございます。国有財産、民間の産業もございますが、ある程度供給は確保しておりますが、需要が非常に多い、建築が行なわれておる。もう一つパルプ材に対しての需要が非常に多い。パルプ材はなぜ需要が多いかと申しますると、貿易自由化方向に向かってパルプ会社が非常に増産のための設備拡張をやりました。そのために木材は非常に引っぱりだこになっておるというのが状況でございます。これを輸入するにはやはりソ連関係が多いのでございますが、ソ連の方は日本木材価格を見ておりまするから、なかなか安く売らないということなんです。今農林大臣にお願いして、木材価格のこういう高い地位におることを少し是正するようにお願いしておるのでございます。こういう原因で、ただいまのところ昭和三十年を基準にして、木材建築資材食料以外は相当下がっておるという状況でございますから、こういう上がっておるものにつきまして特段の措置を講じていきたい。  土地値上がりにつきましては、これは経済発達進展によってある程度やむを得ない。行き過ぎの点はございまするが、これを是正するのはなかなか困難でございまして、今どういう方法がいいかということを考えて、まだ結論は出ておりませんが、これにいたしましても不当に上がるということは何とかしなければいかぬと思っております。
  21. 永井勝次郎

    永井委員 木材の問題を農林大臣に話して解決させよう——これは何ですか、木材をもっと切れと、こういうことなんですか、伺います。
  22. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 木材をもっと切られるかどうか、そうして外国からの輸入がどうか、そうしてパルプ関係をどう調整するか、これは通産大臣との関係もありますが、こういうことを検討さしております。
  23. 永井勝次郎

    永井委員 木材関係は、戦時中これは乱伐して、そうして治山治水関係でおわかりのように、非常に山を荒らしております。さらに戦後におきましても風倒木その他で大きな損耗をいたしております。現在幾ら蓄積があって、成長率幾らで、どのくらいの切る可能性があるのか、原価に食い込まないで成長率を切っていくことができるのかどうか、この点を農林大臣に伺いたいと思います。
  24. 周東英雄

    周東国務大臣 こまかいことは事務の方から答弁させますが、大体お話通り戦時中における過伐ということ、それによって山が荒れておることを直すについてここ十数年苦労して参りました。しかし、現在のところ大体三十年くらいの期間に順次切っていく、その間に造林植林人工造林という方向をそれに合わせて進めていこう、このくらいのタイミングであるならば、ある程度需要に応じつつ林力を減らさぬような形になるかと思います。ただそれにいたしましても、かなり植林に関しましては樹種の転換を行ない、また林業経営におきましても、ある程度栽培林業と申しますか、肥料施肥方法を講じつつ林力を早急に引き上げる方向へ持っていく措置をとりつつやっても、大体三十年くらい今の伐採量植林関係との時期を合わせるためには考えていかなければならぬと考えております。
  25. 永井勝次郎

    永井委員 私は今木材の問題を価格の面から——三十年、四十年、五十年先の問題をここで基本的な問題について論議しておるのじゃない。当面しておる木材値上がりをどう処理するか、対処するか、それに対する当面の政府対策を伺っておる。物価問題として私は伺っておる。さっき私はことしの政府財政あるいは経済の政策の中にタイム・ラグの問題が相当あると、こう言った。木材関係から見たって、四十年、五十年のタイム・ラグがあるのじゃないですか。総理木材をもっと国内において切ろうというのですか、どうなんです。
  26. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいまのお尋ねが、大体、林力増強が現在どうかというお尋ねだったから申し上げたのですが、今の重ねてのお尋ねについて申しますと、もちろん今の成長率に相応した形において伐採量をきめていきたい。従って、ただいまの木材値上がりに対処するについてどうするかという問題でありますが、国有林の三十五年、三十六年度における現在までの計画伐採量に対しまして、将来の林力増強に見合って、ある程度の増伐はまだ可能であります。その点は、しかし幾らにそれを増加するかということは、ただいま研究中でありますが、同時に、お話のありましたように、かなり国内における木材価格を引き上げておる点は、御指摘のように、パルプ材需要が多いことでありまして、これは今日まで建築用材は実は影響を非常に受けておりますけれども、これの増加というものは大体三割前後であります。ところがパルプに対しましては、約三倍弱近く、これが現在の要求量でありまして、これを全部国内において求めており、いろいろと山等について将来のパルプ用材の確保の動きがありますためにいろいろ影響しておると思います。  そこで私ども考えることは、今後における木材価格値上がりを防止する方法としては、一面国内における国有林その他について、どの程度まで従来より増伐をなし得るか、また外国材輸入をどの程度に見るか、またパルプに対する対策といたしましては、外国アメリカ等のようなかなり木材資源について豊富なところですら、枝先あるいはくずの木、それらを全部利用するような方法にまでパルプ対策が立てられております。日本はややその点においては荒っぽいのじゃないか。だからパルプ材に対する対策というものをいかなる形に考えるか。従来も一部輸入問題がありますが、しかしこの点は国内パルプ製造業とも関係がございますので、それらの点について総合的な対策を立てようと考えております。
  27. 永井勝次郎

    永井委員 抽象的にいろいろ論議すれば、幾らでもあります。私も木材の問題だけで時間をつぶしているわけにいきませんが、木材の問題が出たから、ここで話題にするのでありますけれども、少なくも成長率をどのくらいに見て——蓄積は六十五億石内外だろうと思います。それに対して、成長率を三%とすれば、その程度限界より切るべきでないと私は思う。またどんどん切って、今補植をしておるのでありますが、補植関係は数量の点においてもまだ不十分でありましょうし、あるいは虫害であるとか、ネズミの害であるとか、いろんな故障が起こって、予定通りにはなかなか累積することができないだろう。ところが消費の面においては、今農林大臣が言ったように、パルプ関係だけでもここ三、四年の間に三倍くらいにふえた。これだけつぶすキャパシティが大きくなれば、いやでもおうでも、これはその量をつぶしていきます。輸入に待つといっても、そんなに待てるものではない。林力にも一つの制限がある。そうすれば、建築材その他消費関係で弱小の業者を併呑してどんどんそこに収奪するということが起こるし、物価値上がりというものがそういうところから出てくる。そういう関係において、何も政府考えないで、行き当たりばったりで、上がったら輸入すればいいのだ、こういうような形では、私は物価の問題というものは処理できないと思うのであります。この問題については、農林大臣は全国の治山治水協会の会長でありますから、木を食い荒らされた跡始末のために、あなたは非常な努力をしておるのでありますから、少なくとも農林大臣としての地位においては、私は木を切る限界というものははっきりとしておると思うのです。そのときどきの状況において、あるいは災害があった、火事があった、こういう臨時の処理に対しては、これは特別に何してもよろしいかもしれませんけれども、少なくも木材の恒久的な消費に対して、林力を食いつぶしてこれをまかなうなんという、こういうばかな考えだけはすべきではない。輸入関係において、あるいは処理関係において、いろいろそういう総合処理をしていく、少なくも総理大臣木材値上がりに対する一つの押えとして、もっと木を切れというような不当な要求に対してはがんとしてはね返すべきだとこう思うのであります。この問題は、私はここであまり長く論議することを差し控えまして、また別の機会に譲りたいと思います。  そこで、総理大臣にお伺いするのでありますが、総理大臣は今までの答弁の中において、物価値上がりは極力押えると、こう言っておられるのでありますが、具体的にどのように押えられるのか、法的にはどういう根拠によって、行政措置においてはどういう措置によって、経済的な対策としてはどういう対策において、物価の値上げを押えようとされ、そしてどういう品目に対して、どういう方向においてこれを処理されるのか、一つ具体的に伺いたいと思います。
  28. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 物価も種類によりまして、いろいろ方法がございます。先ほど申し上げましたように、需給の関係がもとをなすものでございます。私は、所管の大臣に詳しく説明させることにいたします。
  29. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 物価と申しまして、全体的に物価の問題というのは、生産のコストと、それからあと需給関係物価を動かす大きな原因だと思います。大体生産のコストというものの中には当然労賃が入りますが、労賃の値上がりは直ちに価格値上がりに反映することなく、おおむね生産性の向上によって吸収し得ると思います。従って問題はむしろ需給の関係にあるのでありますが、現在の状態においては、需給のバランスが悪くてそのために物価値上がりしつつあるというものは、ただいまお示しの木材、あるいは最近においてやや不漁でありまする魚介類、そういうようなものに若干そういう傾向が現われておりまするが、多くの物について、ことに工業製品のほとんどすべてについては、需要供給関係というものは割れていないと思います。従って物価を押える方向というのは先般来総理大臣が仰せられておる通り手間賃値上がりがいかに消費者物価にはね返ってくるかということを押えることが主たる要点になると思います。そこで自由主義の経済でありまするから、便乗的な値上げがもしあるとするならば、業者間の協定によってこれを押える以外には方法がありません。従いましてそういうような業者間の協定が行なわれる場合に、独占禁止法なりあるいは環境衛生に関する法律なり、現在の法律の力によってその内容を審査して上がらないようにするということが主たる方法であります。公共料金につきましては、個々それぞれの具体的な場合に即して、そしてこれは絶対に必要な限度を政府が認定するのでありまするから、そういう方向で押えていく、こういう考えでおります。
  30. 永井勝次郎

    永井委員 そういたしますと、便乗をする値上がりがあればこれを押えるという一つの仮説なんです。具体的に現在動いている物価について、値上げを押えるのだという手はないのだということが今わかりました。そこでサービス料関係値上がりは、これは押えることができない、その通り理解してよろしいですか。
  31. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 言葉の問題ですけれども、サービス料手間賃が上がってくることによって、たとえば、パーマネントであるとか散髪料であるとかいうものが上がってくることを絶対に押えることはできないということを申しているのでありまして、それが便乗的に不当に上がることを押えることはできます。
  32. 永井勝次郎

    永井委員 所得格差をなくすという倍増計画からいえば、現在のサービス料関係はほかの賃金部分に比べて高いとは言えません。もっともっと上がらなければならない。所得格差をなくする方向をとるならば、もっとこれは上がっていく性格を持つものだ、こう理解してよろしいですか。
  33. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 言葉の使い方が非常にむずかしい思うのですけれども、もっともっとというその限界の問題ですけれども、先ほどから申し上げておりますように、手間賃で収入を得ている人たちの収入は当然ふえなければならない。ほかと均衡を持った段階においてふえなければならない。その部分に関する限りは上がっていってしかるべきだ、こう思うのです。
  34. 永井勝次郎

    永井委員 そういたしますと一たんこういう関係のものが上がれば盛り土のようにこれは下がりません。さらにその上に土を盛っていく。こういうことで現在でも生産の設備はたくさんある、操短をやっているというような中でも物価は上がっていく。これをコスト・プッシュ型のインフレ、こういっているのではないですか。でありますから、このサービス料関係値上がりというものは、これは下から突き上げていく、値上がりを刺激していく一つ要因である、こう言うことができると思います。この点はどうですか。
  35. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 先ほど申しましたように、一般的な卸売物価につきましては労働賃金値上がりというものは、生産性の向上によって大体吸収し得ると考えまするから、労働賃金上昇物価を下から突き上げてくる要因にはあまりならない、こう思っております。
  36. 永井勝次郎

    永井委員 経済企画庁長官は、今までの物価値上がり需要物価を引っぱっていくのだ、こう言われていたのでありまするが、最近の忍び足のインフレという、こういう課題でいろいろ論議されておる関係からいえば、これはコスト・プッシュ型のインフレとしてサービス関係値上がりというものは、これは避けられないのだ、ことに所得倍増という大旗を掲げている以上、そうしてその所得の格差をなくしようという、こういう政策を掲げている以上、そういう要因がこのサービス料関係物価関係から出てくるということは、これはいなめないと思うのですが、これを否定されますか。
  37. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 言葉にこだわって相済みませんけれども、物価という言葉を使った場合の問題ですか。
  38. 永井勝次郎

    永井委員 料金と物価を区別するのですか。
  39. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 私が申し上げておりますのは、一般的な商品の卸売物価、そういうものについては労働賃金上昇というものが下から突き上げてくる要素にはならない。それは生産性の向上によって吸収されてしまう、こう思っております。ただし、サービスの方、すなわち手間賃の上がることによって当然上がってくる、たとえば散髪料とかパーマネントというものは、これは当然上がる。これはむしろ私は物価上昇の問題でなしに、その方面に働いている人たちの労銀の問題と理解すべきだと考えておるのであります。それは上がりますが、それが物価全体を突き上げる要素にはならない、こう申し上げておるのであります。
  40. 永井勝次郎

    永井委員 それはとんでもない間違いだと思うので、あとでまたよくこの問題については論議をいたしますけれども、一たん上がった賃金は下がりません。さらに所得格差をなくすという関係からいえば、さらにこれは上げていかなければいけない、こういう関係物価への影響というものは相当あるのであります。ウエートが高いのであります。ことにサービス料関係値上がりというものが、一般家庭の生活に大きく響いて参りますことは当然であります。将来ということは別として、現在どのくらい家庭にこの関係から影響をもたらしているかという計算をしたことがありますか。あったら一つ示していただきたい。
  41. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 消費者物価指数を引き上げてくることについては、お話通りでございます。しかし昨年の統計によりますというと、昭和三十五年は三十四年に比べて三%強上がっておりますが、これはおおむね食料品、ことに魚介類、肉類等の値上がりに基因するものでありまして、サービス料金の向上によって占める割合というものは比較的少ないと理解しております。この数字はもし必要であればあとで調べて申し上げます。
  42. 永井勝次郎

    永井委員 肉の価格にしましても、卵の価格にしましても、従来その中に占むる労働部分というものは非常に低いのであります。所得の格差をなくするというならば、その均衡をはかるというならば、その関係も高い価格で維持しなければならない。また上げていかなければならない性格のものである。それが上がってくるから肉は輸入してこれをたたく、乳製品が上がればこれをたたく、こういうふうにしていけば所得の格差の是正ということはできなくなるではありませんか。そういう部分から私はサービス料関係及びそういった今まで日陰にあった関係物価というものは当然上がってこなければならない。また上げる政策をとるのが所得格差をなくする大筋ではないか、こう思うのです。その分から当然値上がりというものは期待できるではないですか。押えるというのはどういう意味ですか。
  43. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 お話は小売面におけるところの労賃の上昇が、そのまま小売物価に反映する場合のことをおっしゃっておられるのだと思いますが、それはもし需要供給のバランスが変わらなければ、その手間賃といいますか、小売面に従事する人たちの労賃の値上がりというものは、小売物価に反映しまして、若干の高騰をしてくることは当然であって、それを押えるということは考えない方がいいと思います。しかし商品の小売物価を動かす非常に大きな要素というものは、何といってもその基礎における需要供給による卸売物価の部分が非常に大きな要素でありますから、たとえば肉類が上がり始めた、これは労賃が上がることによって上がるよりももっと上がっておるという場合には、その部分だけを供給増加によって埋めていく、こういう考え方は当然であって、その場合に小売面に従事する人たちの労賃の値上がりを否定しようとは決して思っておりません。それを吸収していこうと考えておるわけであります。
  44. 永井勝次郎

    永井委員 そういたしますと、現実に肉が上がっておる、またバターも上がってきた。この対策は具体的にどうお考えですか。
  45. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 昨年の九月に生じましたたとえば豚の値上がりは、要するに豚の供給が少なくなって、逆に豚を食べる方が多くなったために需給のバランスが破れたためにあれだけの顕著な値上がりをした。その部分につきましては、従って肉類を輸入することを農林省に御相談をし、農林省もそう考えて下さって、輸入することによって一応落ちついてきておる、こういうことであります。
  46. 永井勝次郎

    永井委員 値上がりをしたという現象面だけをとらえて、そうしてその値段を押えるために輸入をする。そういうことになりますと、生産者、農家の関係では、豚の子がこういう状況から高くなっておる。高い豚の子を買って、飼料も高くなっておる。高い飼料を買って育てて、ようやくそれが市場に出るころは、労働賃金その他ただになるような価格で買いたたかれる、しわ寄せは農民にくる、こういう形の悪循環が出てくるではありませんか。乳製品にしても同様だと思うのです。この関係はどういうふうにお考えですか。
  47. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 そこのところが実際問題として非常にむずかしいところなのでありまして、農林省も豚を育てておるところの農家の立場考える。従って不当に何と申しますか、上がり過ぎたような場合にそういうことの手は当然打ちますけれども、同時に農家の立場も十分考慮していく。これが総合的な政策だと思います。
  48. 永井勝次郎

    永井委員 こういった面における物価値上がりのいろいろな要因があると思います。こういう要因のあるところに、さらに政府はこれを具体的に押えるというならば、政府みずからの手で物価をどうでも左右のできるような公共料金というものは相当お考えにならなければならないと思う。自分の手でどうにもならない、また法的にも押える手がないというような、こういう市場の一般物価についてはこれは押えるのだと言って、政府みずからの手で可能な公共料金の値上げを刺激剤として一斉に上げるということはどういうことなんでありますか、総理に伺いたいと思います。
  49. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 ちょうど農家の生産確保価格維持対策と同じような気持で、当然合理的に上げていかなければ日本の将来の経済に悪影響を及ぼすというふうなものにつきましては、これは押えるばかりではいけないので、その産業を伸ばしていく経済の基本を強くするという意味において、やむを得ざる程度の値上げはこれを認めていかなければならぬと思います。
  50. 永井勝次郎

    永井委員 これら一斉に公共料金の値上げが物価にどのようにはね返ってき、どのような刺激になるかということは、政治的にも十分お考えになったのでありますか。たとえばお考えになったとするならば、上げるにしても私はいろいろなやり方があるだろうと思う。原価計算主義によって公共料金は今後貫く、そういう条件を確立していく、こういう方向において公共料金をお考えになっておるのか伺いたいと思います。
  51. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 大体そういう考え方でいっております。
  52. 永井勝次郎

    永井委員 それならば国鉄における赤字線というのは、どういう計算によって赤字であるという計算をお出しになったのか、赤字線の計算の基礎を一つ示していただきたい。国鉄総裁がおられるから国鉄総裁からでもけっこうであります。
  53. 十河信二

    ○十河説明員 赤字線は、大体予想しておった旅客貨物が予想通りにまだ出ていない、そこで輸送には一定の固定した経費が要りますから、その固定費をまかなうことができないで赤字が出ているという状態になっております。
  54. 永井勝次郎

    永井委員 私は地方における赤字線というのは、これは相当計算はむずかしかろうと思います。ただ鉄道の収支計算からだけそろばんをはじいてこれが赤字である、こう出すならばこれは簡単であります。簡単でありますが、その線を敷くためには鉄道の原価計算を確立するために収支が償うという、こういう単純な計算で線を敷いたのではないだろうと思う。地方の開発ももちろんあるでありましょう。あるいは文化をずっと普遍するというような内容もあるでありましょう。この鉄道線を敷いたことによってその地方の開発が進み、地価が上がり、生産が高まる、あるいは文化が向上した、こういう経済的、社会的、文化的価値というものをどのように国の関係において評価するのか、総理大臣に伺いたいと思います。ただ鉄道会計の収支計算からだけこれを赤字だ、だから値上げするのだ、こういう単純な原価主義なんですか。
  55. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話しの通りその区間だけで計算するということは、私もいかがなものかと思います。将来の国家の発展、民族の福祉に非常に役立つこともあります。またその区間だけの計算では赤字であっても、その区間を通じた貨物が黒字線の方へ行って、黒字を多くする場合もあるのでございます。この計算はなかなか厄介な問題だと思いますので国鉄専門家に一つ説明していただきたいと思います。
  56. 永井勝次郎

    永井委員 国鉄専門家、一つ計算の基礎を出して下さい。
  57. 十河信二

    ○十河説明員 国鉄で計算いたしておりますのは、総原価と直接原価と、こう二つに分けて計算をいたしております。直接原価は列車を運転するについて必要な駅だとか、あるいは乗務員の給料、あるいはその他の施設費、修繕費とか、そういうものを直接の原価といたしております。それから総原価はそれに要した資本に対する利子であるとか償却であるとかそういうものを見ております。その以上にこれが文化、経済にどういう影響を与えるかということは、これはちょっとそろばんに乗りにくい。それで、もちろん鉄道は文化、経済に大きな貢献をしているということは認めておりますが、その計算はどうもわれわれの手ではっきりできません。総原価、直接原価等につきましても、これを旅客と貨物に分けるとか、各地方別に個別に分けるという正確な計算は、これはできにくい、大よその見当をつけて経営の指標といたしております。
  58. 永井勝次郎

    永井委員 赤字線というのはどういう基準で言っておるのですか。
  59. 十河信二

    ○十河説明員 赤字線はこれもいろいろ基準があります。総原価をまかなうことができない線と、あるいは直接原価もまかなうことのできない線と二つに分けております。直接の原価をまかなうことのできない線は、運転すればするほど赤字がふえるということになるのであります。総原価をまかなうことができないという線は、利子は払えないが、直接の原価は、費用は償うことができる、その上にあるいは若干利子にも貢献することができるというものもあります。
  60. 永井勝次郎

    永井委員 私は赤字線と政治路線とは、これを区別すべきだ、峻別すべきだと思う。今やっておるのは、赤字線ではなくて、いわゆる政治路線の範疇に入るものだと、こう思うのであります。  そこで国鉄総裁に聞くのでありますが、原価主義のワクをはめられて、独立採算制でいけと、こうワクをはめられているのに、株主総会とも言うべき国会で、赤字の出る線を、これをやれあれをやれとこう決定をして、これを押しつけられる、そうして国鉄は金もうけをしてはいけない、営利事業をやってはいけないというワクをはめられて、そういう営利事業をやってはいけないというワクの中で、赤字の出る線をこれをやれといって押しつけられて、そうしてその上で独立採算で原価主義でいけと、こういうような任務を与えられて、どうしてあなたはおめおめと国鉄総裁を、そういう任務を果たすために責任を持ってやっておられるのですか、その点を国鉄当局として、くどくど説明は要りませんけれども、簡単に一つ立場をはっきりさしていただきたいと思います。
  61. 十河信二

    ○十河説明員 お話しの通り非常にむずかしい。国民の皆さんの要望をかなえるということは、とうてい私にはできません。できませんが、その中ででき得る限り、皆さんの御要望も入れ、そうして経営も何とか成り立つように努力するのが私の責任だ、こう考えて私はやっております。
  62. 永井勝次郎

    永井委員 国鉄の経営、運営の中にも相当の問題があります。外郭団体その他の関係も問題がありましょう。あるいは赤字路線の問題もいろいろ問題がありましょう。こういう問題を無目的に投げやりにどんどんやっていて、そうして赤字が出るからといって最後に運賃値上げの形をもってこれをしりぬぐいを国民にさせるというやり方は、これはどこにも公共性というものの寸分のにおいもない。こういうやり方は、私は池田総理がどうおっしゃられようと、妥当な行き方ではない。たとえば運賃の値上げによってこれを調弁する以外に方法がないならば、これはやむを得ませんでしょう。幾らでも方法がある。しかも国鉄の計算には乗らないいろいろな公共性の分野がある。そういうものを計算に入れないで、それを全部国民に転嫁するというやり方は問題であろうと思います。国民に運賃値上げの形をもってしりぬぐいさせることによって、負担の不均衡ということを総理大臣はお考えにならないかどうか。またいろいろな方法があると思うのでありますが、それらの方法について検討されたのかどうか。たとえば国の予算においてこれをやる、あるいは建設部門は国の方でやる。新線の建設まで料金でまかなうというようなやり方というものは、私は妥当な方法ではないと思うのでありますが、これはいかがですか。
  63. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国民の負担においてということよりは、私は利用者の負担において、こう申し上げたいのでございます。国鉄を利用する方々が、国鉄の独立採算制の線に沿って必要な経費を負担していく、こういう建前でいくべきだと思います。しこうして、しからば運賃値上げによるか、あるいは借入金によるか。もちろんいずれの場合におきましても経営の合理化が根本でございます。料金引き上げかあるいは借入金によるか、これは私は考慮しなければならぬ問題だと思います。今の国鉄におきましては、借入金と運賃値上げと両方でいこうといたしておるのであります。  なお、一般会計からこれを補助するということは、これは前にはそういうことをいたしておりました。今から十一、二年前には、一般会計から年に三百数十億の補助を出しておりましたが、これはよくないのでやはり独立採算制でいこうということで、一般会計からの補助はもう十年来やめております。ただ今回の新線につきましての利子補給は、今度初めてしたのでございます。ことしは三億あまりの利子補給はいたしましたが、あくまで国鉄は独立採算制でいく、そしてそのための適当な借入金、適当な引き上げは利用者において負担すべきものだ、こう考えます。
  64. 永井勝次郎

    永井委員 海運事業は、港湾とか灯台とか、こういうものは全部国でやっておるのであります。事業者は船を運営すればそれでよろしい。航空事業は、飛行場その他の施設というものは全部国がやって、そして航空事業者は飛行機を飛ばして営業すればよろしい。あるいはバス、運輸の関係のものは、道路は国が全部やって、そうしてその上で運営だけすればよろしい。電気事業に対しましても、電発会社が発電を設備いたしまして、これを供給してやらせておる。すべてではありませんけれども、そういうふうにやっておる。あるいは食管会計なんか、これは性質が違うかもしれませんけれども、一般財政から価格支持のために数百億の金を投資している。こういう関係と国鉄という公共事業の関係と比較して、国鉄事業の関係だけは、新線までもすべて利用者によってこれを負担する、こういうやり方は不均等ではありませんか。たとえば新しい東海道線なんか、七十、八十の老人がかりに今の高い旅客運賃で乗っても、新線がつくまで利用者として生きているかどうかわからないのであります。こういう恒久的施設に対しては別途な方法によってこれがまかなわれるのがあたりまえじゃないですか。つり合いがとれておらないじゃないですか。この関係はどうですか、総理大臣に伺います。
  65. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 灯台その他につきましてこれを船会社に負担さすという例は、私は世界にないことだと思います。国鉄とか電電公社というものは、その発足が非常に古くて、独立採算制でできるという立場になっておるものですから、そういうようなことをやっております。今飛行場とか港湾につきましては、ある程度利用者に負担させておりますが、飛行場の建設なんかを今の飛行機の料金に入れてやるということは、国の政治としていかがなものかと思います。  なお国鉄の経理の内容、どこを借入金でやり、どこを料金引き上げでやっているかということは、関係の当局に説明させます。
  66. 永井勝次郎

    永井委員 いろいろ質問がありますから、そういうこまごましたことは、また分科会その他がありますからそれに譲りたいと思いますけれども、一つ考え方方向としてだけはここで確立し、また政府の意見を聞いておかなければならないと思うのであります。私は、国の方の予算でやったらどうかと思う。三十五年度においては自然増が四千億からあった。三十六年度の経済見通しからいきましても相当の自然増が期待できる。そういうものをこっちの方に向けたらどうです。また、租税特別措置法で一千四百億から一部の大企業に対して税金を負けてやっておる。このような手厚いものを一面にやっておきながら——鉄道運賃の値上げということは、生活保護を受けておる者も何も全部、大企業の者も同様な負担においてこれをまかなわされておる。税金でやるのと料金でこれをまかなうのとでは大へんな違いであります。国民の七割は税金を納めておりません。減税の恩典も何も受けておらないのであります。そういう負担力のない層がこの鉄道運賃の値上げによってその犠牲にならなければならぬ。国の税金でやるというならば、負担力のある者が建設その他にこれを出すということになって、負担の公平という立場からいっても私はこれは国でやるべきものではないかと思うのであります。また、新線というような関係は、公債その他によってまかなえばよろしいのです。子孫のために美田を買う必要はない。いかがですか。
  67. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは、国鉄、電電公社を公社にして独立採算制でいこうという決定を見ておるわけです。従来は、先ほど申し上げましたように十年あまり前は一般会計から相当出しております。三百五、六十億年に出しておった。そういうことはよくないというので改めた。またもとに戻せという御議論なら別でございますが、私は今の国鉄、電電公社の独立採算制というものに賛成いたしておるのであります。今の税金でこれを経営するということは、私はあまり賛成いたしません。やはり利用者が負担していくということが適当であると思います。
  68. 永井勝次郎

    永井委員 総理お話は、料金を値上げして、負担能力その他に関係なく大衆の負担において鉄道建設をやって、貨物運賃その他は割合に安くして大企業に奉仕しよう、こういう一貫した方向として受け取っておきます。  こういうような鉄道運賃の値上げによりましていろいろな物価の値上げを刺激してくる。ことに直接影響を受けるのは、従量の物であって値段の安い関係の物、これはコストの中にこれを吸収することはできません。現に石炭なんかは、十一万人の犠牲者を出して合理化をはかって、三十八年度までにトン千二百円を引き下げるのだという方向でやってきた。ところが、労働者の十一万人の犠牲はそのまま、石炭の値下げは鉄道運賃その他の関係でできない、こういうようにもうすでに石炭の関係にこの影響が出てきておるのでありますが、石炭の合理化に対する鉄道運賃の値上げに関連しての総理大臣の所見を伺っておきたいと思います。
  69. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 鉄道料金の値上げによって物価に影響するという考え方は、一応机の上では出てくることでございます。そういう考え方は、昔、物価安定帯を設けてやったような時代にはそういう計算が出ております。私のあれによりますると、昭和二十八年に一割収入を増加いたしました値上げ、昭和三十二年に一割三分の収入増の料金引き上げをやった。今回は一割二分をやっておるのであります。二十八年と三十二年の鉄道運賃の値上げに今と同じような御議論がございましたが、結果は二十八年の卸売物価は上がっておりません。三十二年の卸売物価は上がっておりません。だから私は、全体として生産性の向上で卸売物価には影響していなかったと言い得ると思います。しかし今回がどうなるか、われわれは過去の事例のごとくそう上がっていかないと見ておるのであります。  石炭の問題につきましては、これはバルキーでございますから相当影響はあると思います。しかしこれは私は石炭関係の合理化によりまして吸収してもらいたいという気持を持っております。
  70. 永井勝次郎

    永井委員 卸物価が上がらないという関係については、私は後ほど触れたいと思います。これは独占価格でボロもうけしているから、そのもうけの一部分をはじき出せばいいのでありますけれども、そういうボロもうけしてないで、ぎりぎりの線で動いている関係の運賃負担なり郵便料金負担なりガソリン税の引き上げによる負担というものは、これはぴんと響くのです。砂糖関係だって超過利潤が公称八十億からある、こういわれておる。八十億もボロもうけ、超過利潤を持っているところは、運賃の値上げなんか簡単です。それは卸売物価やなんかに響いてこなくてもやれます。私は後ほどその問題には触れますけれども、総理大臣が言うように、運賃値上げが国民のいろいろな物価関係がないんだということは、これはどうもどこを押したらそういうことが出るか。とにかく鉄道運賃料金の値上げによって何百億かというものは現実に上がっている、郵便料金の値上げによって上がるのです、ガソリン税が上がっております。これだけの吸収力が国民生活の中にあるような弾力性のある経済措置を今までやってきておりますか。私はそこに問題があると思うのであります。それならば、この鉄道運賃の関係については税金でおやりになるお考えもない、公債によるという考えもない、何が何でも大衆負担においてこれはやるんだ、こういうお考えですか。
  71. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは先ほど申し上げましたように借入金でもやり、料金引き上げでもやっております。租税によってまかなうという分も、ことしから新線につきまして利子補給をやっております。また財政投融資につきましては、借入金に対しまして財政投融資の方からも出しております。あれこれ適当な措置で、日本経済拡大に向かって調子を合わせていくということが必要であると思います。
  72. 永井勝次郎

    永井委員 郵便料金の問題、医療費の問題等ありますけれども、これは別といたしまして、ガソリン税の問題について一つお尋ねをしておきたいのでありますが、このガソリン税も、この影響は消費者の現場へ行きますと、個々に不合理な点が非常に起こってきている。たとえば農業関係でいいますと、耕耘機が現在五十一万八千台あります。あるいは農村関係でありますいろいろな機械化によって、農業用機械のガソリン消費というものは非常にふえております。ガソリン税の値上げによって、これは約一億からの影響が出て参っております。この耕耘機その他は畑で使うものであって、道路には全然使わないのです。利用者でないものにこういう負担をさせるという形が出てきておるのでありますが、こういう関係の不合理をお感じになりませんか。
  73. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 そういう点を考慮して、漁業用のものにつきましては特別措置を講じております。農業用につきましてそういう要望のあることは知っております。ただ課税技術上どういう措置で免税するかというところに悩みがあると思いますが、その点につきましては関係当局から御説明いたさせます。
  74. 永井勝次郎

    永井委員 関係当局から答弁がある前に、そうしますと農業用のこういった関係のガソリン税は特別措置を講ずる、こういうお考えなのでありますかどうか、あわせて御答弁を願います。
  75. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今総理が申しましたように、この問題は技術的に困難であるということが一つと、それから税制的に考えましても、自動車に使用するだけでない揮発油の用途というものがまだたくさんございまして、そのうちで農業用一つを無税にするということは税制上から考えてもむずかしい問題があるということで、私どもはこのガソリン税創設のときからこの問題は問題になっておりましたが、実際問題としてはこの特別な措置は困難だというような結論になっております。
  76. 永井勝次郎

    永井委員 困難だということは不可能だという困難さでありますか。ただややこしいから、めんどうくさいから、こういうのですか。やろうと思えば可能です。いろいろなことを政府はやっているのですから。たとえばビート工場の関係については、一つの工場を対象にして、その工場から二億数千万円ずつ毎年吸い上げるというような——これは一つの工場ですよ。普遍的なものでない。そういう工場に対してだけ吸い上げるというようなことを法律を作ってやっているのです。やろうと思えば何でもやれるのです。農民のこういうような大きな犠牲を、困難だから、技術的にむずかしいからやらない、不可能だというのですか。厄介だからやらないというのですか。
  77. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 精油業者に一括課税する方法になっていますので、今の徴税方法なら非常に簡単でございますが、そうじゃなくて、個々の使用する人の税を免除するということをやりましたら、これは大へんな手数でもございますし、またこの徴税費というものは相当莫大なものになりますので、今の徴税技術から見たら、これは事実上不可能だというふうに私どもは結論づけております。
  78. 永井勝次郎

    永井委員 機械が現実に動いておるのでありますから、その機械に対して、たとえば徴税の面でむずかしいというなら、一たん吸い上げて還元するという方法だってあるじゃないですか。いろいろな方法はあると思うのです。不可能でなければ若干の手数があってもこれをやってやるというのが親切な方法でないですか。漁業の面にだけやって、農業の面にはやれないというはずはない。重ねて答弁を願います。
  79. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 まだそのほかに、たとえばクリーニング用とか千差万別にございますので、それらを考えますと、この問題一つをそういう形で解決するということは、やはり税制上にもいろいろ問題がある。両方あわせて考えまして、これは今のところ私どもとしては簡単にやれないという結論になっております。
  80. 永井勝次郎

    永井委員 結局弱いところにしわ寄せしてほおかぶり、こういう政府一般的なやり方の範疇であるということに理解をしておきましょう。それではこういうサービス料金及び家庭消費財の関係値上がりすることは押えられない。さらに公共料金の関係がこのように一斉に値上がりする、こういう物価値上がり要因というものが、大きな流れにおいて二つ出てきております。これが値上げをある程度阻止できないというものであるならば、値下げのできるところから値下げをさせなければならないと思うのでありますが、値下げをさせるという面は総理大臣考えになりませんかどうか、大きな企業の関係において目立ったところがたくさんあります。どういうふうにお考えですか。
  81. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 自由競争を建前といたしておりますので、先ほど申し上げましたごとく卸売物価建築資材材木あるいは食料がある程度上がっておりますが、その他のものはおおむね三十年と比較して下がっております。私は、企画庁長官経済演説で言っておりますように、卸売物価は下降の趨勢だ、こう考えます。自由主義経済ではお互いが創意工夫をこらして、いい品物を安く作るということが原則でございます。今の建前でいくならば、卸売物価というものは一般に下がっていく傾向にあると考えております。今特にそのものを下げなければいかぬというふうなことは、先ほど申し上げましたように、材木が何とかして下がらぬかというようなことは今考慮中でございます。
  82. 永井勝次郎

    永井委員 それじゃ伺いますが、鉄鋼関係はどうですか。ここ数年前に比べて、あるものによっては三倍、あるものによっては四倍、さらに設備投資の競争が激しく起こっておる。設備投資の競争が激しく起こるというところは、ここがもうかるからやるのです。もうからないところにだれもそうわんさと押しかけてくるわけはありません。自主調整さえきかないほど鉄鋼関係は今投資ブームにわいておる。この鉄鋼関係はどうですか。どのような状態になっていますか。私は総理大臣に伺いますが、鉄鋼は、銑鉄関係では富士、八幡それから鋼管の三社だけで七一・四%の独占です。そうして生産の関係では銑鉄は三十年五百四十四万トンであったものが三十五年は一千百九十万トン、こういうふうに生産が非常に増強しておる。生産が増強しておるにもかかわらず価格はどうかといえば、三十年が二万五千五百円であったものが二万六千五百円とこれは上がっております。厚板におきましては、これは三社が五三・八%の独占、生産は三十年が百八十三万トンであったものが、三十五年は三百三万トン、価格は四万八千円の据え置きです。薄板も、これは三倍ぐらいにふえておりますが、価格は六万円で据え置きであります。このように、生産が三倍にも四倍にもふくれて、そうして総理大臣のお考えでいえば当然下がらなければならないものが下がらないで、あるものは上がっておる、あるものは据え置きである、こういうようなことはどうお考えになりますか。
  83. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 鉄鋼の需要は御承知通り年々非常にふえております。今やここ一、二年のうちに世界第四番目の国になろうとしております。それだけ需要が多いのでございまするが、片一方におきましては借入金の金利とか、あるいは労賃の引き上げ、あるいはまた新しい設備の拡張——新しい設備の拡張に一番たくさん使っておるようでございまするが、そういうことで需要が非常にふえておるにもかかわらず、それだけの供給をやっていったから大体安定しているといえるのであります。そうお考え願わなければならぬ。ものが三倍になったから、すぐそれだけ安くなるというのじゃなく、新しい設備に非常に金を要する。それで大体安定しておる。これが下がるに越したことはございません。鉄鋼にいたしましても、おととしに比べたら昨年はちょっと下げております。二千円くらい下げております。昨年何月でしたか下げておると思います。これは今後増産をどんどんしていくにつれまして需要がそれにマッチしない場合は相当下がりますが、需要がマッチしておる場合におきましては安定し、しかも設備増強によりまして下降傾向だ、こう説明するのでございます。
  84. 永井勝次郎

    永井委員 総理大臣、需給の関係からだけでなくて、あるいは利子、あるいはその他、設備投資のためにコストが高いというようなことを言っておりますけれども、それならば原材料はどういうふうになっているかといえば、輸入の原材料は鉄鉱石は三十年一五・九ドルであったものが三十五年は一四・三ドルに下がっている。原料炭はどうかといえば三十年二一・一ドルであったものが一七・一ドルに下がっている。鉄くずは五四・一ドルであったものが四八・七ドルに下がっている。原材料がこれだけ下がって、生産性が三倍、四倍に上がっていて、それで値段が下がらなかったならば、いつのときにどういう条件のときに下がるのです。ただ需給関係からだけ下がるのですか。独占を強化して系列をずんずん拡大していく。今だってずいぶん系列会社を、それぞれなわ張りを拡大しております。そういうような市場独占を確立して、このような形において値段を下げないでおる。不当利得をここに取っておる。自由競争といいますけれども自由競争の前提条件は、これはやはり独占禁止法の徹底です。自由競争というものが鉄鋼の関係においてありますか。カルテルをやっているんじゃないですか。どこに自由競争がありますか。だから下がらないのです。この点はどうですか。
  85. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は独占禁止法に違反してどうこうしているとは思いません。だから今の状態が、お話の三社が銑鉄におきましては七十数%を持っておりますが、この傾向はだんだん変わっていくと思います。これは三社以外の川鉄とか住金等が相当の設備拡張をしております。そこで今は設備拡張をしながら需要にマッチしている。この設備拡張が終わって進んでいきまして、需要よりも供給の方が多くなることをわれわれは期待して、下がることを望んでおるのでございます。今の場合といたしましては、私は外国のそれから申しましても日本の鉄鋼が非常に高い、独占的に高くしているとは考えておりません。
  86. 永井勝次郎

    永井委員 総理大臣、場当たり、そのときそのときの答弁をなすっては私は困ると思います。総理がそうおっしゃるならば、八幡製鉄の稲山副社長が本年の正月の新年交礼会の席上で五つの感謝の言葉を言っております。この中にはあるいは池田総理が出席されていたんではないかと思うのでありますが、五つの感謝の言葉を言っておるのでありますが、その一つ日本の気候風土に感謝する、第二は明治、大正の先覚者に感謝する、第三は戦争で京都製鉄工場が戦禍を受けなかったことに感謝する、第四は独禁法があるのにいろいろの恩典に浴しておることに感謝する、こう言っているんですよ、総理大臣。独禁法に触れたようなことがないなんて言って、独禁法があるのにいろいろな恩典に浴しておる、これに感謝する、こう言っておる。第五に何と言っているかといえば、一人の英雄が現われたことに感謝する。これは所得倍増の旗を振って鉄鋼の利益をはかる池田総理大臣を鉄鋼カルテルの英雄として感謝しているんですよ。総理どうですか、業者がこれほど言っておるのに、そうしてこの値段が下がらないのに……。原料がこれだけ下がって、これだけ生産性が上がっているのにこの価格が下がらない。それはどういうわけですか。鉄鋼から感謝されている一人の英雄として答弁を願います。(笑声)
  87. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 一人の英雄かどうか稲山君に聞かなければわかりませんが、今日本の鉄鋼は非常な発展期に向かっておるのであります。だから私は国際価格から見ましても日本の鉄鋼がそう独占的に特別の価格をきめているとは思いません。そうしてまた鉄鋼につきましては所管の通産大臣からお答えするのが適当と思いますが、独占禁止法に触れないように常にこの問題につきましては通産省が公取委員会と話し合っていっていると思っております。もちろん今の鉄鋼につきまして将来の自由化からいって下げる余地のあるものがあるかどうかということにつきましては、これは私は研究しております。通産大臣にこういうものはどうなんだと言ったことがございますが、この品目はここで申しません。私は鉄鋼の値段につきまして常に鉄鋼と繊維、これが物価のもとでございますから、鉄鋼と繊維につきましては常に関心を払い、将来の自由化を私は考えて、今の丸棒とかあるいは薄鉄板以外のもの、昨年下げたもの以外のものを、世界のカルテルと比較して下げ得るものはないか、研究をしろということは通産大臣にも言っておりますが、私は独禁法の関係でどうこうということは考えておりません。これは稲山君にお聞き下さったらよいと思います。
  88. 永井勝次郎

    永井委員 総理の答弁を聞いておりますと、鉄鋼の代弁をやっているように聞こえるわけでありますが、私は、鉄鋼業者から一人の英雄として推奨されるよりは、国民の側から一人の庶民として、よくやってくれたと、こういう声なき声の感謝が大衆の中に沈潜するように、そういうような政治のあり方でなければならないと思うのであります。鉄鋼から一人の英雄としてほめられて、そのまま、独禁法があるのに、いろいろな恩典に浴しておる、これほど感謝されているのに、それがないんだなんて、そういうことは私は言えないと思う。  通産大臣にお伺いいたしますが、今まで鉄鋼関係価格について、行政指導や何かにおいて、カルテルを指導したようなことはありませんか、伺います。
  89. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 鉄鋼の価格につきましては、数年前に非常に鉄鋼危機に見舞われて、そして日本じゅう非常に大騒ぎしたことがあります。これにこりまして、鉄鋼界では年々非常に膨大な設備資金をやりくりして、そうして供給需要に追いつかないというようなことが再び起こらないような努力をして参っておりまして、ただいま総理から申し上げるように、大体において今安定しておる、こういう状況であります。  それで、この価格についてカルテルを指示したことはないかということですが、カルテルはできておりません。鉄鋼協会というのがありますが、これはカルテルではない。ただ個別に業界の方からいろいろな相談に参りまして、それに対附して適当な指示を与える——命令をするのではありません。ただ指示を与える、そういったようなことで大体適当な誘動をしておるのであります。昨年の八月でしたか、二千円ないし四千円の引き下げをいたしましたが、これまた別に横の連絡を持ってやったのではない。そういう事実は、ただいまのところございません。
  90. 永井勝次郎

    永井委員 時間がありませんから、それでは次に移りましょう。  砂糖はどうお考えですか。砂糖は、昨年は八十億からの超過利潤があったといわれる。その前の年は三十五億からの超過利潤があったといわれる。これだけの超過利潤がぬくぬくともうかっておる。しかもこれは輸入が大部分でありますから、輸入の料金と国内における価格とを比較すれば、どのくらいの超過利潤があるかということは、一目でわかるわけです。そういうような長期にわたった超過利潤を黙ってもうけさせておいて、そうしてこれが家庭の大きな響きになっておるわけでありますが、ことしになってさらにこの自由化の問題についてうろちょろしておる、こういうようなことはどういうことであるか。砂糖に対して総理大臣は大へん詳しいのでありますから、御見解を承りたい。
  91. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 砂糖の値段が高い、引き下げたいという気持を私は持っておったのであります。昨年、大蔵、農林、通産の三大臣が相談の上で、砂糖の輸入を自由化して、そうして五円くらいでしたか関税を上げようということに話がきまったというので、私の部屋に入ってきた。それはけっこうだが、ちょっと僕は資料を見たいと言いまして、資料を見まして、大体これでいいんじゃないか、こういうことを言っておいたのであります。その後新しい農林大臣ができまして、その三人で御相談になったようでありますが、どうも国内産甘味原料との関係で、この自由化ということはいかがなものかという結論になった。私は前の決定はやめたのかと言ったら、もう少し待った方がいいのではないか、片一方は関税委員会がございますので、急いで関税を上げるか上げないかということがありますので、この際は関税の引き上げもせずに、もうしばらく様子を見よう、しからばそのときに砂糖の値を下げるときにはどういうふうにやったらいいか、これは今の輸入が大体百五万トンから百十万トン前後でございますので、こういうように経済成長いたしますと消費も伸びるから、もし砂糖の値を下げようとすれば、もっと輸入をふやしたらどうだ、そうすれば自然に下がっていく、今の砂糖工場の能力は相当あるから、国内産甘味原料との関係を考慮しつつ輸入をふやして、砂糖の値を下げるようにしたらどうかということを農林大臣には私は言っておるのであります。詳しくは所管大臣からお聞きを願いたいと思います。
  92. 永井勝次郎

    永井委員 所管大臣よりも、砂糖の関係に関しては総理大臣がよくおわかりでありますから、伺うのでありますが、砂糖の需要は、これはおわかりのように、お盆と暮れが一番あるのです。ところが通関の実績を見ますと、お盆の二カ月くらい前には輸入量が非常に減っております。あるいはお正月の少し前には減っております。一番需要の多い時期に輸入量を減らして、国内を品不足にして、価格のつり上げをやっている。これは人為的なやり方だと思います。しかもこれは、設備にいたしましても、実績割当だとか、あるいは製造能力割当だとか、いろいろ割当におけるファクターがあって、そうして割当を受ければ、それだけ大きくもうかるものですから、必要な設備に対して各社が設備競争をして、さらに現在は設備に対して五割か六割の操業よりしておりませんでしょう。四割以上は遊休です。その設備の分まで消費者がこれを負担して、消費者にぶっかけて、そうして適正利潤というものが十分計算されているにもかかわらず、その上に超過利潤が一年に八十億からある。ただ輸入して、これを溶かして精製するだけの手続をとるだけで八十億からの超過利潤を黙って見ている。こういうような消費者に対する不公正な、不親切な行政というものは、私はないだろうと思うのであります。これを二年間ほおかぶりしてきております。その理由は何かといえば、国産精糖を保護するためだ。国産精糖をそんなに保護してきておりますか。この超過利潤に対してどういうような——ただ税金で取るだけですか。また今後輸入量をふやすといったって、これは時期的に操作されればだめなんです。ランニング・ストックというものをどのくらい見ているのか、そうして、そういうときにどういう操作をするのか、関係大臣にこの点は伺います。それから基本的な点については総理大臣から承りたい。
  93. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話通りのことを知っておりますから、私は企画庁長官に、砂糖の輸入量は、一応外貨予算できまっているが、毎月どんな格好で砂糖を入れているか、そこにつり上げの方法、何か操作があるかないかということを調べて、これを早期に下げなければいかぬぞということは、私はもう三週間くらい前に、物価の問題がやかましくなってから、企画庁長官に命じております。ですから、お話のように、時期的にそういう操作をしないことと輸入の割当をふやしていけば、自然に私は四、五円くらい下がってくるというのを考えまして、今の三省の決定と同時に、企画庁長官並びに農林大臣には、輸入をふやして砂糖の値を下げるように努力してくれ、こういうことを言っておるわけであります。
  94. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えをいたします。先ほどのお話の中に、年末要るときに輸入制限をしたというようなお話、これは多少誤解があると思います。早くから手当をしておったようでありますが、船の関係における争議がありまして、非常におくれた。そこでああいう事態が起こりましたが、御承知のように、五万トン近く輸入をした。船がこちらに参りまして、大体百二十円程度まで下がってきた。こういう実態を見まして、今大体百十万トンくらいの輸入になっておりますが、将来はその問題をよく当局と考えまして、さらに十万トンくらいを増加する目安のもとに、しかも今のお話のように、月別に大体平均的にでも輸入させるような方途を講じつつ、国内における砂糖の値上がりというものを防止いたしたい、かように思っております。
  95. 永井勝次郎

    永井委員 経済企画庁長官に伺いますが、砂糖が一週間か十日前に少し下がりました。あれはどういう理由によって下がったのですか。議会で騒ぎそうだから人為的に下げたのですか、下げる余力ができて下げたのですか、その経済的な関係一つ伺いたい。
  96. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 農林大臣からお答えいたします。
  97. 周東英雄

    周東国務大臣 これはただいま申しましたように、かねがね計画されておった砂糖がずっと正月になって入ってきております。それで現実に数量の増というものが出て参りました。これが下がってきた原因であります。
  98. 永井勝次郎

    永井委員 八十億から超過利潤をとっているのに今まで下げないで、議会が開かれて、物価問題が議会でだいぶやかましくなってから、言いわけのように下げるということは、これはどういうことですか。これは政治的値下げですか、経済的値下げですか。
  99. 周東英雄

    周東国務大臣 その点は、私は政治的とかそういう問題じゃなかろうと思う。現実にあなたの御指摘のように、私どもは十二月くらいまでに早く入ればいいと思ったのですが、船の手配の関係あるいは争議等の関係でおくれておった。それが正月になって入ってきた。現実に五万トン近く入っております。その姿が、結局需給関係からいきまして値下げに出てきたと思います。私どもは、先ほど総理お話しになりましたように、一時自由化が見送られたとしても、これは輸入外貨の割当において、価格の騰貴を来たさぬように、必要量について、そのときの情勢を見まして、先ほど申しましたように、相当量輸入のワクを広げて、そしてこれに対処する考え方でおります。
  100. 永井勝次郎

    永井委員 とにかく二カ年間にわたって百数十億の超過利潤をとって、消費者に苦い砂糖をなめさせたというこの事実は、国民消費大衆がよく理解するでしょう。  ここでいろいろこの問題について言っても時間がありませんから、先に進みますが、それならば、この砂糖の自由化をやめたということについては、国産砂糖の保護がないようだ、こういうのですが、この自由化はどういうふうなお考えですか。ずっと自由化をやらないというのですか、あるいは非常な短期の期間やらないというのですか、あるいは国際情勢から、キューバその他から砂糖を入れるという関係は、これはアメリカなんかから、そんなものを自由化する必要はない、こういうことをいわれて、国内的な事情も含めて、こっちの腰が砕けてきたのか、自由化を取りやめた経過を承るとともに、国産砂糖にどのようないい影響があるのか承りたいと思います。
  101. 周東英雄

    周東国務大臣 自由化の問題につきましては、これはできるだけ早くやりたいという考えを私どもは持っております。ただ、今の状態におきまして、国内甘味資源関係に対する保護が確立しておりません。ことに澱粉から作る精製ブドウ糖の問題につきましておくれております。この点を確立しなければならぬと思っておりますが、それにつきましてただいま考究いたしております。まだ確定しておりませんが、ブドウ糖、すなわち精製ブドウ糖の関係につきましては、だんだん技術も進歩し、工場の設置も進めてはおりますが、実は三十四、三十五年の経過を見ますと、まだそれだけの工場の設立が進捗いたしておりません。これは一つには、精製ブドウ糖に対する一般需要者といいますか、国民の嗜好というものがまだ確立されておらぬ。手近に砂糖という安いものがある。それに対して新しい砂糖、精製ブドウ糖というものが衛生的にはいいといっても、なかなかそれに食いつかない現状にある。こういう点は、われわれはイモを作っている農家並びに国内のブドウ糖精製業者というものについての保護もはからなければならぬ。それにはかなりいろいろな面から考えなければならぬ。今の精製ブドウ糖の需要増加に対する宣伝、また工場設置に関する低利資金の融通、またこれを売らせるについての協力をどういうふうにすべきかというような点を含めて、甘味資源の保護、振興についてできればある制度を立てたい、こういうふうに考えております。
  102. 永井勝次郎

    永井委員 農林大臣に伺いますが、ビート工場の設置については、どういうような段階にあって、どのような方針で、どのような時期に御決定になるのか、伺います。
  103. 周東英雄

    周東国務大臣 この点は、従来三大臣にも四大臣にも諮って、まだはっきり決定がなされておりませんが、しかし、北海道のビート工場につきましては、政府の別途ビート栽培に関する助長というものが効果を結んで参りまして、どうしても本年一ぱいには新しい精製をする工場の設置が必要となっておりますので、できるだけ早い機会に北海道に対するてん菜糖工場の設定をいたしたいと思っております。なお、てん菜糖に関しましては、単に北海道のみならず、御承知のように、暖地ビートと申しますか、中国、九州方面の問題、さらにやや北海道に似た条件にあります東北地方におけるてん菜糖の奨励、この点に関しましても、徐々に工場設置に関して助成の道を講じていきたいと思っております。
  104. 永井勝次郎

    永井委員 ビート砂糖の助長についても効果を上げてきた、こう言いますが、私は効果が上がり過ぎていると思うのです。上がり過ぎているから、各工場がもうわんわんと設置運動をやっている。もうかり過ぎていると思うのです。もうけさせ過ぎていると思う。どの点がもうけさせ過ぎているかということを農林大臣承知ですか、あればそれを承ります。
  105. 周東英雄

    周東国務大臣 一つは、御承知通り日本の甘味資源というものは大部分が輸入糖に仰いでおります。これを十年計画等におきまして、内地の砂糖によってできれば七〇%あるいは五〇%くらいまで増加していきたい、この奨励策が一つと、しこうしてこれを奨励するについて、やはり工場設置に関して、一、二カ年の間というものは生産費と実際の売買価格との間に開きがあるということで、御承知通り一応これは政府が買い上げることになっております。こういう点が非常に好結果をもたらしており、あなたのおっしゃるように、もうけ過ぎということになるかどうか知りませんが、私は業者に与えているよい影響だと思う。これはしかし大体二カ年と承知しておりますが、こういうふうにだんだんよくなって参りますれば、おのずからそういう処置を講じなくても独立ができるような形になることを望んでおります。
  106. 永井勝次郎

    永井委員 農林大臣、そういう償却をこれだけ見てやるとか、資金をこうしてやるとか、あるいは耕作地域をこう、原料地域をこういうふうに区分してやるとか、こういう表向きだけのことではないのです。農民をごまかして、農民を搾取させておるのです。御存じですか。私はビート工業についてはこれは政府がもう少しまじめにならなければいけない、こう思うのであります。ビートは種をドイツなり何なりヨーロッパから持ってきた、耕作方法もドイツをまねしている、製造の機械もドイツから持ってきた、製造技術も向こうから入れてきた、何もかも向こうを先進国として持ち込んでおきながら、取引の面だけはドイツのまね、ヨーロッパのまねをしない。ヨーロッパではこの取引は含糖率で取引をしております。日本は目方だけで取引をする。ビートは家畜に食わせるものじゃないのです。目方で砂糖はできないのでありますから、その目方の中にどのくらいの砂糖が含まれているかということが、これは当然それが取引の基準にならなければならぬ。この点をそういうふうにやらないでごまかして、農民と目方だけで取引をしているのですよ。今バレイショだって澱粉の含糖率で取引をしているのに、家畜ビートと同じように目方だけで取引をしている。そうして政府はそれに対してどのくらいの含糖率と査定しているかといえば、一五%内外の含糖率があるにもかかわらず、あるいはもっとあるかもしれませんが、そのような含糖率があるのに、一三%であるとか、あるいは一三・二、三%であるとか、こういうような査定をして、農民のピンはねをやっているんです。ごまかしているんです。この超過利潤というのが何億とあるんです。手厚い保護を受けた上に取引の面で農民にはビートを千斤三千百五十円で何年もこれを据え置きにしておいて、そうしてビート会社はそこで含糖率の取引をしないでごまかして、そうして超過利潤をぬくぬくともうける。もうけ過ぎるからビート会社はあんなに大騒ぎするんです。改めるお考えはありますか。即刻これは改めなければいけないです。簡単にこれは改められる性質のものです。世界はみなやっているんです。
  107. 周東英雄

    周東国務大臣 てん菜糖工業に対する保護の行き過ぎということがありとしますれば、私ども十分検討をいたしまして、処置を考えたいと思います。
  108. 永井勝次郎

    永井委員 問題は、含糖率で取引するという世界共通の条件日本だけでやらないという理由があるなら承ります。どういうわけでやらないのですか。
  109. 周東英雄

    周東国務大臣 よくその点については検討の上、必要があれば配慮をいたします。私はただこの問題について、含有率、その他についてどういう取引になっているかということをよく承知しておりませんから、その点についてはよく調査をいたしました上処置いたします。
  110. 永井勝次郎

    永井委員 私は鉄鋼の関係一つ取り上げました。鉄鋼は今言ったように、不当な高い価格で維持されております。砂糖の点をとれば、砂糖の輸入業者は何十億というちょっとわれわれには想像つかないような超過利潤をぬくぬくともうけておる。国産の関係でいえば、農民がそろばんに合うかどうか、ぎりぎりの線で一生懸命で生産している重要な生産者にはその利益が少しも還元されない。その中間のビート工場が何億という超過利潤を吸い上げておる。このような形において価格が維持されているのですから、こういう企業の関係においては、鉄道運賃が少し上がろうと、郵便料金が少し上がろうと、こんなものはその中に吸収できるのはあたりまえですね。そういうところだけを総理大臣は対象にして、そうしてぎりぎりの線でやっておる農産物価格が運賃の値上がりしたことによってどれだけはね返ってくるか、ガソリン税が上がったことによって農家がどのくらい苦しむかということには目が届いていない。もちろん目は届いているのでありましょうけれども、そういうところに目を届かしたらなかなかできないから、ほおかぶりして独占企業への奉仕をせっせとやっている。所得倍増は、独占資本の強化をはかっていくところの政策以外の何ものでも私はないと思うのであります。  そこで、私はさらに電力の問題を伺いたいと思うのでありますが、電力の料金の問題は、九州電力については総理大臣は十何・何%かに査定する、こう言っております。九州電力から申請されたものは一七・幾らという申請です。これは原価主義でありますから、どのように計算してもそう大きな狂いはないと思うのでありますが、こういうふうな査定が行なわれるということは、九州電力に水増しの原価計算内容がある、こういうところから水をしぼり出した査定をしたのでありますか、この点を伺います。
  111. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 申請と、それから通産省並びに企画庁でやりました査定の基準につきましては、私はこまかに数字は存じません。とにかく経費の合理化、それから修繕費なんかにつきまして十分再検討を加え、ぎりぎりのところまで下げてくれ、こういう方針でやらしたのでございます。結果は多分一〇・八%かと思います。こまかい数字事務当局から説明させます。
  112. 永井勝次郎

    永井委員 電力の体制は、機構は現在のままでいいとお考えですか。九電力に分割しておいて、これでいいとお考えですか。最近、きょうの新聞あたりでも広域運営をもっとうまくやれ、こういっておるのでありますが、広域運営をやるということは、九分割では不適当だということの一つの修正だと思うのです。もっとこれを進めていくならば、こんな狭い国の中で九つに分割して、会社々々で料金が違う地域差があって、そうして会社々々のいろいろなこういうむだな経費をして、それから発電関係でいえば、同じ富山県から出る水流が、あるものは関西に、あるものは中部へ、あるものは北陸へ、あるものは東京へと、こういうふうに同じ地域の電力を各所に長距離輸送したり、非常なむだな、無理な経営をしている。これは電力の関係は大きく一つ転換しなければならない段階にきておると思うのでありますが、これを統一して、経営を合理化して、全国料金を一本にして、さらに料金その他の低減によって消費者へ利益を還元するというような、こういうお考えがありますかどうか。どこまでも会社の利益を個別に守ってやるという立場において、こういう関係にはほおかぶりされるお考えでありますか、承ります。
  113. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 所管大臣から答えると思いますが、そういう議論は私は耳にしております。しかし、今の全国を一本にして料金も一本にするという議論までは私は聞いておりませんが、何と申しますか、地域的に似たところの分をある程度一緒にしたらいいじゃないかという議論があることは聞いております。所管大臣から詳しくはお答えいたさせます。
  114. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 九電力の体制に対する再検討の声がまあまだ微弱でありますけれども、ちらほら聞こえる。でありますから、ただいまの体制は、これは万全な体制であるとも考えませんから、そういう点につきましては細心の注意を払って、なおよく考究したいと思います。
  115. 永井勝次郎

    永井委員 電力料金は、水力では旧では生産原価は一円三十二銭です。新は三円四十九銭です。火力は、旧は五円八銭、新は三円八十九銭、こういう一つの発電原価でありますが、電灯の場合は十一円五十六銭という非常に高い価格でこれをきめております。そうして、大口電力に対しましては三円三十五銭、火力の旧で言いますと、原価を割った非常な安い価格でこれを供給しておる。場所によっては、大口電力がふえればふえるほど、発電原価を割るというような料金査定のところもあります。これは突き詰めていけば、資本系統は同じところなのだから、電力でもうけても工場でもうけても、入る財布は同じだという関係から言えば、それは同じかもしれませんけれども、しかし、そのように大口に発電原価を割った低い価格で、不採算の価格でこれを供給しておいて、そのしわ寄せを全部電灯消費者である一般消費家庭にこれを転嫁するというような料金査定は、これは何としても理解できないのであります。納得できないのでありますが、この関係について通産大臣一つ御答弁を願います。
  116. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御承知通り、戦争前の建設にかかるのが非常に安くできております。その間に大きなインフレがありまして、最近はどうかと申しますと、水力必ずしも安くはない、火力が必ずしも高くない。新鋭火力というようなものがだんだんできて参りまして、これを総括してみますと、今日から見ると事情の変更が非常にありますので、それでいわゆる二段料金制などというようなものも実施しておるのであります。これに関しましては、電力料金の審議会において、今後としてはなるべくこれを是正して、そうして一本の値段にしなければならぬというような答申も出ておるのであります。これらの点につきましては、実情に対してあまり飛躍した行き方は避くべきだと思いますけれども、漸次ならして参るという考え方で行っております。  それで、お話しの個々の料金の事例等につきましては、私もまだ詳しい資料を持っておりませんので、もし御必要があれば、係、局長から申し上げます。
  117. 永井勝次郎

    永井委員 私個人が必要とか必要でないとかいうのではなくて、公共事業でありますから、これは政府みずからが、求められなくても国民の前にその経理の内容等を公開して、値上げをするならば、こういう理由によって値上げをするのだということが、納得のいく形において国民に説明されなければならない性質のものであります。必要があればなんという、そういう無礼な話はないと思う、怠慢な話はないと思うのであります。国民の前にもっと説明をする責任が政府にあると思うのでありますが、その点はあとでお聞きいたします。時間がありませんから…。(「聞いたらいいじゃないか。」と呼ぶ者あり)それじゃその料金の格差の理由を、数字計算の根拠を一つ示していただきたい。
  118. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 会社にもよりますが、総じて電灯料金は、大口需用に対して高いじゃないか、こういう御議論でありますが、それはやはり配給の手数、それから施設等が小さく分かれて、そして一つ一つにかかるというような関係から、必ずしも電力量によって料金がきまるというわけには参りません、原価主義をとりましても。大量でありますと、まとめて大口に消費するという関係で、それに要する人件費、施設費、そういったようなものが低利につくというような関係で、そういう違いが出てくるのであります。それからさっき申し上げましたように、安いコストで電力を作ったものについては安く、最近の設備によって電力を作ったその電気料金は高い、こういったようなことになっております。その点もあわせて御参考までに申し上げます。
  119. 永井勝次郎

    永井委員 そういう個別原価計算でいくならば、大口関係に発電原価を割ったような価格でこれを供給しているのはどういうわけですか。大口のところに生産原価を割って供給をしているのはどういうわけですか。
  120. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 原価を割っておりません。ただ会社全体として安いコストで電力を発生さしておるその当時の原価によって大口の供給契約をやったというようなものがありまして、そしてその後新しい設備をどんどん高いコストで作りますから、会社全体としてみますと非常に原価を割っておるじゃないかというような、逆に計算しますとそういう現象がなくもないのであります。しかしながら、その個々の場合においては原価主義で忠実にやっておる。それを原価を割って供給するというようなことは、一つも例はありません。
  121. 永井勝次郎

    永井委員 旧発電設備、新発電設備と、これは原価計算の場合、紙上では区別はつくかもわかりませんけれども、実際に送電する場合には新も旧もなく、同じ形の電力が供給されるわけでありましょう。同じ施設の中で、お前のところは旧で契約したのだからという個別の価格を査定するとするならば、一般家庭は、おれのところは旧の送電をしたのだから旧の料金で、こういうことになるじゃありませんか。もし新しい電力の需用が起こってそこにどんどん供給するというならば、そしてその新の発電が非常にコストが高いというなら、新しく供給を受けた会社がその部分を負担すべきものであって、旧電力によって、安い電力によって供給を受けている家庭はそのあおりを食う、しわ寄せを食う理由はないじゃありませんか。そういう計算方式でやっているのですか、伺います。
  122. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 詳細の点につきましては、局長から申し上げます。
  123. 大堀弘

    ○大堀政府委員 先ほど大臣から御説明申し上げましたように、電気料金につきましては、個別の原価計算によりまして、大口、家庭用等の電気料金を計算いたしておるわけであります。産業用の大口等につきましては、第一次の変電所から直ちに工場に供給されますので、コストの面で非常に安くできるわけでございます。家庭用の場合は、第二次、第三次変電所を経て、配電も相当こまかい配電網を経て家庭に送られますので、経費の面で相当高くなる。この個別原価計算によりまして、私どもといたしましてはキロワット・アワー当たりをとりますと、家庭用は十円とか、大口電力があるいは二円、三円という場合もございますが、その関係は決して家庭用に吹っかけて大口を安くしておるという関係には、計算上相ならぬわけでございます。ことに大口ですと特約電力等もございます。これらあたりは、渇水いたしました場合には二、三カ月はとめていただくというような約束で供給しておりますので、そういう場合は特に安く相なっております。従って、質の悪い電気は安くなっておる、こういう面もあるわけであります。  それから先ほど大臣が申し上げました新しい電気という点は、二段料金制をとっておりますところにつきましては、割当額以上使った二段料金についてはどうしても高い電気代になっておりますので、その関係を大臣が申し上げたのであります。
  124. 永井勝次郎

    永井委員 私は、電力料金の問題については値上げの問題からずっと知っておりますし、アンペア制に切りかえて、計算の単価をずらして、前のものと比較できないような形においてごまかして値段を上げておる。あるいは冬料金の高い料金から夏料金に切りかわる時期に、従来ずっと高い料金を納めてきたのに、その高い冬料金のまま夏料金に滑り込んで消費者をごまかしておる。こういういろいろなやり方等をもっとこまかく時間があれば申し上げて話し合いをしたいのでありますが、これだけではありませんから、なおあとにたくさん質問を控えておりますので、これを省略いたしますが、何としても電力の関係については、これは外からなかなかわからない。それから原価計算の方式なんかもなかなかむずかしくて、しろうとにはわからない。こういうややこしい形を通して質の悪い電気をごまかしてなにをしている。質の悪いあるいは質のいい電力ということを申しましたけれども、われわれの家庭に送電されている電力が、はたして約束通りのものが約束通り来ているかということについては、問題があると私は思うのです。そういう点は関係の行政庁が、ちゃんと消費者の代理としてこれを管理する役割があると思うのであります。  電力の問題についてもう一つ伺いたいのでありますが、公益事業でありますから、また電気の性質上これは生活必需品であると私は思うのであります。この生活必需品が公益事業として地域独占を認めさせている以上は、その地域については、公益事業としての公的な任務があると思うのでありますが、たとえば農村電化のような場合、不採算であるからここは引かない、こういうようなことを平気でやっているわけです。たとえばこういう関係については農林省が補助を出しております。確かに二万円前後の補助は出ております。しかし電灯が普通の状態でつかないような地域というものは非常に不便なところで、生活の条件からいえば、開拓農民その他食うや食わずの人々が住んでいる地帯、そういう地帯に電灯を一つつけるのに十五万、二十万の自己負担をしなければ電灯がつかないという状態になっている。それに対して二万円前後の農林省の補助があります。この補助だって、農家のふところに入るのではなくて、農家のふところを通して電気会社の方に吸い上げられるのでありますから、電気会社に対する間接補助といってもよろしいと思うのであります。農家に対する補助ではありません。これは十五万、二十万の負担をするのであります。その負担をさせた上に、お前のところは単価が高くなるからといって、普通の家庭電力よりも五割も六割も高い電力料金を取っておる。農林省から補助を受けて十五万、二十万の電灯をつけた施設は、自分たちで電柱を山から切り出してきて、規格通りのものをやるというような形においてやりますけれども、これが十年、十五年たちますと、施設が腐朽してくる。施設を交換しなければならぬ。これは今施設を更新しなければならぬという時期にだいぶあちこちでかかってきているわけです。そうしますと、五十戸、六十戸の一つの部落がこの送電施設を自分の負担で更新しなければならないために、一千万、一千数百万円という負担をしなければ電灯一つ引けない、こういう状態に放置しているのですよ。今問題は、二万円の補助があるからというので、とりあえず二十万前後の負担なら借金してもということでやりますけれども、この一千万、一千四、五百万という施設を自分たちの負担で更新しなければならないとしたら、これは大へんなものです。この状態が放置されているのです。こういう公益事業というものがありますか。こういうような状態現実にあるのです。そうして一方においては、先ほど家庭電灯が、これはいろいろこまかく分けるから、設備がかかるからというけれども、各家庭における消費量というものは単価がうんとふえていると思うのです。原価計算を出したときには、うんと会社においては有利な条件で推移していると思うのです。こういう貧しい農民を切り捨てて、しわ寄せを全部ここに置いて、大企業が採算的に成り立つような条件ばかりを電力料金で値上げをしていくというやり方は、私はどうしても納得できない。この点は、技術的な内容については農林大臣通産大臣から承りますし、電力料金のあり方について、基本的な態度については総理大臣から伺いたいと思います。
  125. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はせんだってNHKの私たちの言葉というので、ある学生が、電灯のある家に行って非常にうらやましかったということを聞き、また私が子供のときに中学でランプの掃除をしたことを思い出しまして、電灯というものは全家庭につけるべきだという強い気持を持っております。またお話のような例も全国各地にあるということも知っております。私はそういうことを聞くたびに、通産省あるいは会社の方へ何とかしてつけられぬかということを勧誘しておるのであります。具体的の問題につきましては所管大臣から答えさせます。
  126. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 無電灯の地区はだいぶ内地においてはなくなっておると私は了解しておりますが、しかし、お話のような事例はまだ北海道等においてはかなり残っておるようでございます。もちろん地域的独占事業でございますから、できるだけ住民の希望をかなえてやるということが当然でございますけれども、何しろ相当費用もかかるし、それがまた従来の一般消費者にはね返ってくるというような状況にもなりますので、この点についてはまことに苦慮いたしておるのでありまして、できるだけ電灯会社を督励いたしまして、そういう無電灯地域の急激に減少するように努めたいと考えます。
  127. 周東英雄

    周東国務大臣 今御指摘のような点は私は各地にあると思います。またそういう点からいたしまして、かつては農村、山村等については小型発電というものを町村なり団体に許すというような方法をとったことがありますが、電気という特殊性から統一されて、今電気会社にゆだねられておるのですが、そういう点に思いを及ぼしまして、現実の姿を見、今後電力会社に統一してやらせる以上は、農山村における供給電力について、またその施設等について、今日農林省から補助しておりまするような場所におきましては、相当電力会社として考えさせたいと思います。
  128. 永井勝次郎

    永井委員 私は先ほど来物価の問題で話を伺ってきたのでありますが、サービス料はなかなか下がらない、上がっていく。それから原始産業関係の物資も、これは価格差是正の方向からいえば上がっていかなければならぬ。ここに上がる要因がある。また公共料金は、政府みずからの発意によって値上がりをしておる。しかし生産をしていけば安くなっていくのだ、こういうお話でありましたから、生産性の上がっておるそして非常に利益の上がっておるところは品物が下がるのかと思うと、鉄鋼にしても下がりませんし、一年に八十億から超過利潤のある砂糖の値段でさえなかなか下がらない。電力料金も、今言ったように端々の方は一年に何万という電灯料金を負担しなければ電灯もつかないというようなところが放置されておる。そうしてそれに対する対策はどうなのか、是正するというのでありますから、是正をするならばどういうふうに是正をするのか、具体的に伺いますと、ただ電気会社に言ってみただけの話で、それ以上の前進は一歩もない。原価主義でいくならば、原価主義の料金の全体の中で、そういう地域の小部分は是正する方向ぐらいは、考え方としても出して出せないことはないではないか、全然そういうものは切り捨てて顧みない。こういう方向におきましては、これは一切のものが農民にしわ寄せがくるのであります。農民や一般庶民にこういうしわ寄せが全部家計の中に折り重なってくるわけです。  私はさらに肥料の問題について聞きたいのですが、肥料はどうするのですか。これは暫定的な行政価格政府はなにしたのでありますが、価格はきまらない。今、春肥の問題を控えて、肥料の問題というものは非常に大へんになっております。ことに石灰窒素や燐酸、石灰窒素は三割からの値上がりです。燐酸肥料は五割からの値上げです。カリも原料が国際的なカルテルにあって品不足でもありますし、値段も非常に上がっておる。加えて硫安の価格が今度は鉄道運賃その他の関係で、これはなかなか値下がり方向はとらないだろうと思うのでありますが、これらの関係について通産大臣農林大臣から肥料の問題についてはお答えを願いたいと思います。
  129. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 肥料のうちでも重要なのは硫安でございますが、これは御承知通り、ただいまの制度によって年々値下がりを見ておるのであります。ただ一方において、輸出の方に非常なしわ寄せをいたしまして、相当の損失を招いておる。これを何とかしなければならぬというのがただいまの現状でございますが、これに関しましては、審議会等においてなかなか意見の一致を見ないというので、今暫定価格で過ごしておるのであります。それで、できるだけ早く農民に対しましても安い肥料を供給する。それからまたメーカーの方に対しても、もうこれ以上無理を強いることもできませんので、合理化を実行さして、そして合理的にスムーズに肥料の値段を下げるというような方向にただいま誘導しておるのであります。関係の農林省、経済企画庁等々とも相談をしておりますが、近くこれらの問題につきまして結論を出したいと考えております。
  130. 周東英雄

    周東国務大臣 お話の点ごもっともであります。今、硫安につきましては、通産大臣からもお答えいたしましたが、従来からも、御承知通り年々合理化したそれだけのメリットは大体農民の方に値下げの形で進んでおりました。しかし、合理化々々々といっても、毎年々々どれだけやるのか、一体わからぬじゃ困る。むしろ外国との競争もありますし、この三年間ぐらいの間における合理化の全貌というものをはっきりさせてもらいたい。そうしてそれを年別にどういう姿に出てどれだけ下げるのだというふうなことを今要求しております。またそれに対しまして、ただいまお話のありましたように、合理化に必要な資金は政府から出して、はっきりとこの二、三年の間に合理化させつつ、国内に対しても安い肥料が渡せるように、そうして外国との輸出産業としての硫安工業についても、今のような圧迫を外国から受けぬような形に持っていきたい。それから御指摘のカリとか、燐鉱石についても、やや上がっておりますが、御承知のように燐酸肥料につきましては、燐鉱石をだいぶ輸入しております。これはすでに自由化をいたしております。原料等の関係から値上がりするというのならば、これは輸入をして対処したいし、カリも近く自由化の方向へ進むと思っております。いずれも国内にその肥料の原料の少ないものについては、必要があれば輸入増加していきたいと思います。
  131. 永井勝次郎

    永井委員 三十五年度の硫安の国内価格は一俵七百八十九円から七百四十九円、輸出はどうかといえば、五百六十七円から五百九十五円、べらぼうに安い価格で輸出している。輸出の量も少しではなくて、尿素、硫安を含めますと相当の量でありますことは御承知通り。輸出会社がここに百億からの赤字が蓄積されているといいますが、この赤字が経営に影響を与えない、これは切り離してあるんだから別なんだ、こういうことを口先や紙上でいったって、経営が一体なんでありますから、そんなことは無関係であるということはあり得ないと思うのです。そうして農民に約束した合理化計画は、第一次は一トン六十五ドルを五十ドルに下げるんだ、これは下がってはおりません、とんでもない話です。第二次計画は五三・六七ドルを四十二ドルに下げるんだ、下がっていない。てんで問題にならない状態になっておるのであります。この計算基礎にいたしましても、バルク・ラインの方式でやっておる。バルク・ラインの方式で、たとえば三十四年のなにを見ますと、バルク・ラインの中に入ったのが十社あります。十社ありますけれども、このバルク・ラインで決定いたしました価格は一トン一万九千七百三十一円十九銭、この価格で引き合う会社はどのくらいかというと三社よりありません。バルク・ラインの中に入った会社でありましても、この価格よりみんな単価は高くなっておる。いわんやこのバルク・ライン外の会社の一番多くコストのかかりますのはもう二倍以上です。一万九千という価格がきまっておるのに四万一千九百六十三円というようなコストの向上がついてきておる。こういうところに私はこの計算方式だっておかしいのではないかと思う。決して私は肥料会社が大もうけしておるとは思いません。非常に困難な状態にあると思います。私も一昨年ドイツへ行きまして肥料工場を視察して参りましたが、ドイツにおきましても、肥料だけを作っておる工場は、これは相当設備はあったけれども、つぶれた。こういうことでドイツあたりはほとんど廃ガスなりあるいは副成なり、そういうただの原料でやらなければなかなか太刀打ちできないというような国際競争の激しい状態が今出てきておる。そのときに国民の方にはこれだけに下げるんだ、第一次合理化だ、第二次計画だと、根拠のないような数字を出して、そして一寸延ばしにごまかしながら、実際はそれだけの値段を下げるようなことをやっていない。国際情勢がこれだけ動いておるのでありますから、石炭をコッパース方式に変えるんだ、固体原料ではだめだから流動原料に変えるんだ、こんなことを口先だけで言わなくて、もっと製鉄なり石油化学なりこういう面からのガスも出る、天然ガスも出る、もっと思い切って国際競争力のあるような合理化にぐっと進まなければならぬ。結局、輸出の犠牲を国内の農民に転嫁して、それで何とかやっていけるんだという甘い考えから、合理化も進んでいないと思う。こういう形で先へ進めば、値段が下がる下がると言いますけれども、独占価格関係やこうした大企業の関係はなかなか下がらない。下がらない分がみんな下の方にしわ寄せになっておる、こう思うのであります。肥料の対策は基本的にはどういうふうにお考えになるか、私は伺いたいのであります。両大臣から簡単でいいですから方向だけ伺いたい。
  132. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 合理化計画は着々と進んでおります。そうして必ず三十八年度におきましては四十数ドルに下がる、そういう的確な目標を持っております。
  133. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいまお答えいたしましたように、私もこの合理化については、今までの行き方が手ぬるかったと思っております。それで新しい対策を立てるについて、先ほども申しましたように、一体今後三カ年のうちにいかなる方法でどれだけ下がるのかという毎年のことを明示するようにということを要求しておると申しましたのは、そういう点に触れておるわけです。ことに御指摘のように、外国におきましては、日本が下げれば向こうも廃ガス等の利用というような新しいやり方によってさらに下げるということになれば、国際競争上はますます困難になることも考えられますので、日本でも、どこまでどうやれるかということの立場に立って、一つ思い切った合理化をされた姿を今後三年間毎年のものを出すようにということをやっております。それに必要な合理化資金は出す。こういうことで今話を進めておるわけであります。近く答案が出ると思います。
  134. 永井勝次郎

    永井委員 私は、鉄鋼、電力、肥料、砂糖、こういう輸出の犠牲を国内に転嫁している関係、超過利潤を上げて値下げをしない実例、独占を強化してカルテルで値段を下げない実例、こういう二、三の例をとりあえず引っぱったのでありますが、さらに問題を個別的に、具体的に上げれば、サケのカン詰が上がって、値段が下がらないのも、北洋の魚田を、国の資源を大企業が独占して、そうしてそこで上げた魚の値段を維持するために、これらの資本家が沿岸漁民から魚を一手に集荷して、そうして沿岸でとれた魚も含めて、自分たちの価格を維持するための独占価格をここにしいておるというような実例やなんか、これは数え上げれば限りがないと思うのであります。そばの値段がどれだけ上がった、床屋さんの値段がどれだけ上がった、こういう問題で、いかにも物価の問題はそういうところにあるように、家庭に響きますから、家庭でも問題にしておりますが、また政府もそういうところに問題をずらしてやっておりますけれども、実際のことをいえば、日本では独占価格国民を収奪しているのです。主要産業における生産集中度という、ここに独占の状態というものはちゃんと出ています。漸次独占が強化されていっているのです。寡占の状態が強化されていっているのです。こういう態勢——生産増強所得倍増の計画の中で格差をなくすんだということと、現実には独占、寡占の状態が強化されている関係のこの現実とを総理大臣はどのように理解され、今後政策の上でどのような方向をおとりになるのか。金融の面を探しても、あるいは外貨割当の面を考えましても、一切のものが独占へ独占へと集中しているのです。これでは独占が太るのはあたりまえです。私はその点について総理大臣の所見を伺いたいと思います。
  135. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 独占禁止法を活用いたしまして、過度の企業集中ということは、私は自由主義の面からいっても望ましくないと考えますので、おのおの工夫をこらして生産の能率を上げるように、全体が均衡のとれた伸び方をすることを期待いたしております。
  136. 永井勝次郎

    永井委員 ここに政府の出した統計があります。これで見ますと、二百万以上の会社、法人の階層別の収益がここにあるわけでありますが、三十四年度の例をとってみますと、資本金二百万以上一億未満、日本の企業としては相当大きなところでありますが、これらの法人四十三万六千五百五十一、これに対する純益が三千三百五億であります。ところが一億以上の会社が千七百五、この千七百五の純益が四千三百九十七億。一億以下の全法人がかかっても一億以上の千七百五の純益に太刀打ちできない。これほど収益が独占されている。またこの「財経詳報」の統計を見ましても、食糧を除く原料品のウエートが二十八年に対する三十四年の比が、原料の関係では一一・八であります。これが半成品になりますと四・五、完成品になりますと一・六。こういうふうな数字が出ておりまして、この数字に基づくといかに原料高で製品安であるか。原料は独占価格を維持して高く売って、その高い原料を受けた加工の部門においていかに低賃金で働いて四苦八苦しているかということが、これらの点においてわかるわけであります。これほどはっきりしている問題に対して、少なくも所得倍増、格差をなくするんだと銘打った政策の中では、総理大臣はもっと具体的な政策を出さなければいけないと私は思うのであります。  私はここに農業関係家庭の中で生計費がどのようになっておるかということを二、三十軒、北海道関係でありますけれども、戸別に私は調べてもらいました。また一般消費家庭における消費もいろいろ調べてもらいました。これは三万五千から四万の所得階層の家庭におきましては、現在の値上がりの直接の影響というものが少なくも月二千円前後あります。でありますから北海道の場合、四町五反の耕作農家で従来八十八万くらいの粗収入のあったところは利益がここで飛んでしまいます。こういう値上がり実態というものが、また独占資本における収奪というものがこういう形において各個の家庭の中にこれは強い力で私は入ってきておると思うのです。こういう点に目をおおうて、ただ架空の卸売物価がどうだ。独占価格横ばいしているのはあたりまえです。これはもっと下がるべきなんです。下がらないでいるのを基準にしてかれこれ数字をもてあそぶということは、国民の実生活に触れた血の通った政治でないと私は思うのでありますが、この点については、これほどの実数がはっきり出ている。こういう点において総理大臣はもっと具体的に、肥料をどうするこうするという個別の問題でなく、政治の姿勢として、方向としてどこを指向するのかくらいのことは私は言えるのではないかと思うのです。もっと具体的な、国民が納得できるような答弁をわずらわしたいと思う。
  137. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 いろいろ御議論があるようでございますが、私は過去十年間の状態を見て、日本国民生活は全体としてよくなっておる、こういう確信を持っております。またそういうふうに国民の大多数もお考えになっておると思います。ただ、だんだんよくなって参りまするが、その格差がこのままほうっておいたら広がる傾向がございますので、これは成長を通じてこの格差を縮めていこう、全体が均衡のとれるような状況に持っていこうというのが私の政策の根本でございます。今のように一億以上の会社がどう、一億から二百万円までの中小企業の問題がどうとか、こういう状態がございますから、中企業に対しまして政府としては特に力を入れようといたしておるのであります。農民の方々所得が他の産業に比べて低いから、これをどうやってよくしていこうかというのが今後の問題、それを農業基本法その他で徐々にやっていく。十年でやっていこうというのを一年でぱっとできるものじゃありません。長い目で国民とともに国民の努力が実を結ぶように、そういう雰囲気、環境を作っていこうというのがわれわれの考え方でございます。
  138. 永井勝次郎

    永井委員 総理大臣総理大臣は今中小企業に対して力を入れておる、こう言いましたけれども、予算の面から見たって、事業所にして九八%まで中小企業です。それに対する近代化予算というものは幾らありますか。スズメの涙でしょう。四十何億よりない。その四十四億前後の近代化の金の使い方はどういう使い方です。私は中小企業なり農業のこれからのあり方というものは、個人企業の形態ではなかなか近代化の方向がとれないと思うのです。どうしたって共同化の方向をとらなければいけない、こう思うのであります。ところが、この中小企業の近代化の資金の流し方は、助成金の流し方はどうかというと対象は個人でしょう。大企業がどんどん経済の領域を拡大していく、中小企業はだんだん土俵が小さくなっていく。その小さくなっておる土俵の中で過度の競争が起こっている。過度の競争の起こっている中に、この近代化助成の金が個人対象で流される。個人対象で流されますと、これは二分の一は自己負担でありますから、それだけの力のないものはやれません。でありますから、その力のあるものは何かといえば、大企業につながった系列企業です。でありますから、ある意味においては池田総理の流している金というものは、当然親企業であるべき大企業が、自分の下請として投資して設備拡張しなければいけないものを、中小企業の助成金をもらって拡大していく。そうして自分の系列を拡大する。結局第二次的独占への奉仕という形においてこれが動いておるじゃないですか。そしてそういう形において個人対象にして、その中で助成金をもらって設備を拡張した。拡張したらその拡大した人だけは伸びますけれども、そのために土俵がきまっておるのだから、その中で追い落されるものがどんどん出てくることは当然であります。でありますから政府統計を見ましても、農業関係あるいは中小企業関係の有業人口はだんだん減っていって、そうして業主がみんな労働者へ転じて雇用の方へ回っておる。こういう統計が出ておるのは、これは統計としてはつじつまが合っておると思います。つじつまは合っておりますけれども、これで中小企業を振興するんだなんて、そんな大きな口はきけないと思います。こういう形でいきますならば、私は中小企業は麦飯も食えなくなるのじゃないかと思いますが、これはどうです。
  139. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 中小企業の設備近代化の金が、昨年に対しましてほとんど倍近くふえておる。こういうのはわれわれがそこに力を入れておる証拠でございますが、お話の点、中小企業に近代化資金を、あるいはお金をどんどん出すということに反対ではない。私はそういう意味におきまして国内の資金のみならず、アメリカの輸出入銀行の資金も使って、中小企業の基盤強化をやっていこうとしておるのであります。私は統計から申しましても、中小企業はだんだんよくなっていっていると認めておるのであります。これが非常に悪くなるということは、私は考えておりません。
  140. 永井勝次郎

    永井委員 一人の者が残って万卒枯る、こういう方向がとられているんだということを私は言っておるわけでありますが、時間がありませんからまたその問題はあとでなにします。ただこの中で、一つ政府から出された資料の中で納得できないものがありますから、これは経済企画庁ですか、総需要増加要因所得変動の要因、この印刷物を出してちょっとお知らせを願いたいのですが、これによりますと三十六年度は総需要の五〇%個人消費にかけております。これはずいぶん、昨年は三六%であったのが、ことしは五〇%と個人消費に非常に期待していることがわかるわけであります。そこで所得変動の要因で見ますと、個人所得は一千億減っております。そうして個人消費の面では昨年に比べて一千六十七億ふえております。個人所得で一千億減って、そうして消費の面で一千億ふえているということになれば、差引二千億消費の面でふくれる。こういう計算になるのでありますが、この二千億はどこから持ってきた二千億でありますか。貯金を引き出して使うという、こういう金でありますか、どうですか。これは数字に強いという池田内閣でありますから、この計算は私にはわからないので伺います。
  141. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 お持ちの資料がよくわかりませんが、「昭和三十六年度の経済見通し経済運営の基本的態度」というものについておりまする表でございますと、国民所得昭和三十五年度の見込みが十一兆五千三十億……。(永井委員「それと違う」と呼ぶ)ちょっと調べますから……。
  142. 永井勝次郎

    永井委員 それではそれはあとで質問します。  私は、物価の問題を考えていくときに、また所得格差の是正という問題を考えていくときに、稲山さんの言ったように、大企業から、独禁法があるのにこんな恩典を浴しているといって感謝されるような、こういう運営ではいかぬと思う。独禁法があるのでありますから、独禁法でもっとはっきりとやって——その独禁法の中には、世界的な傾向としては私は価格の問題が入ってきておると思うのです。日本にはそれがありません。価格の問題を入れて、そうしてほんとうに不当な値上がりというものを池田総理が押えるというならば、独禁法を強化し、さらに、独禁法をゆるめる方向ではなしに、価格の問題を含めて自由競争の条件というものを確立することが消費者に対する親切なやり方だ。事柄のよしあしは別です。少なくも自由経済がこれで筋を通すというならば、独禁法を強化する以外には筋は通ってこないと思うのであります。これに対して大臣のお考えを願いたい。
  143. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 自由主義経済を建前といたしておりますわれわれといたしましては、その方向で行っております。ただ、経済は生きものでございます。ことに国際関係につきましては、ある程度独禁法の制約をはずしていくことが国全体としていい場合があることは御承知通りでございます。
  144. 永井勝次郎

    永井委員 しかし総理大臣の言葉とは逆で、昨年は審決の勧告審決が何件ありましたか。現実にカルテルが何百とあるのです。潜在が何十とあるのです。独占、寡占の、この独占行為というものは、カルテル行為というものは、そこらにたくさんころがっている。それに対して勧告審決が一件あっただけでしょう。公取は何をしているのですか。そうして、こういう重要な問題を扱わせる公取としては、どれだけの陣容と、どれだけでありますか。本年の予算として千六百万の予算が公取にふえている。人員として一課を設けて五人ふやすだけが精一ぱいの予算ではないですか。これでこれだけ全国的に広がっておる独占の問題と取り組まそうというのは、いかに独占に独占を強化する方向で目をつぶろうと、言いわけだけをしようとする方向かということがここでわかると思うのですが、この予算で十分だとお考えですか。
  145. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 予算内容はよく存じませんが、大体お話しの通りに公取の機能を強化していこうという考え方に間違いはございません。
  146. 永井勝次郎

    永井委員 この場合、一つ貿易の問題でいろいろ話を申し上げたい。大蔵大臣、外務大臣にお尋ねをいたしたいと思ったのでありますが、時間があまりないようでありますから私は省略いたしますが、現在の手持ちドルはどのくらいありますか、お尋ねいたします。
  147. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 十八億八千万でございます。
  148. 永井勝次郎

    永井委員 十八億八千万といっても、この中には短期もありましょうし、ユーザンスもあるだろうし、いろいろなものがあります。安定した資金としてどのくらいありますか、この内訳を示していただきたいと思います。
  149. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 短期の負債は民間の負債で、これは一応不安定というふうにもいわれておりますが、この負債に対しては一方債権もあることでありますし、大体今持っている政府の外貨準備高は、私はそう不安定なものではないと思っております。
  150. 永井勝次郎

    永井委員 不安定か不安定でないかという判断は、内訳がはっきりしてからお互いの立場でこれは判断すべきものであって、大蔵大臣のように、私だけが知っている、あとは信じろ、こんなことを言ったって、これは信用のしようがありません。数字を明らかにしてもらいたい。
  151. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 内訳を言いますと、十八億八千五百万ドル、一月末現在の準備高でございますが、金で二億四千七百万ドル、外貨で十六億三千八百万ドル、そのうちの預金が七億三千三百万ドル、それから外貨証券で運用している額が九億五百万ドル、合計十八億八千五百万ドル、こういう内訳でございます。
  152. 永井勝次郎

    永井委員 ケネディのドル防衛政策というものは、私はそうなまやさしいものではないと思います。ただ制限貿易をしない、保護貿易はやらない、こう言っているからといって、それで安心できるような条件ではなくて、国民全体の運動を通して、国産愛用運動を通して、現実輸入は非常な困難な状態にあると思います。従来だって、対米貿易においては五億ドルからの日本から見れば入超であります。そういうような状態が、日本では設備拡張するためにはいろいろなものを輸入しなければならない。さらに外国へ、アメリカへ、輸入が、綿製品を初めとして、これは当面ぶつかっている問題ですから、相当困難なことが出てくるのじゃないか、こういう不安定な外貨の手持ちで、物価安定のためには不足ならどんどん輸入するから心配するな、こういうような大きな口は私はなかなかきけるような外貨の状態ではないのじゃないか、こう思うのです。対米貿易その他、地域別に貿易の本年度の計画を是正しなければならない段階に来ておるのではないか。少くもそれだけの心がまえをとらなければならないのではないかと思うのでありますが、その点について大蔵大臣、外務大臣の答弁を願いたいと思います。
  153. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 御承知のように、政府はこの三十六年度の国際収支の見通しにつきましては、経常取引が大体均衡する、一千万ドルぐらいの黒字になるだろう、資本取引において一億九千万ドルぐらいの黒字になる。合計して、総合収支で二億ドルぐらいの黒字になるという見込みを立てておりますが、この見込みの中にはもちろん対米貿易をどれくらい見込むとか、東南アジアの貿易をどのくらい見込むとか、いろいろ一応の見込みを立てておりますが、今のところ当初の見込みがどういうふうに狂いそうかという問題でございますが、ケネディの国際収支に関する特別教書を検討してみますと、今後東南アジアの中にも貿易センターを作るという具体的なこともはっきり申しておりますので、こういう点において相当輸出競争というものは激しくなる。政府もよほどここで輸出政策というものに対して本気にならなければならぬだろうということは考えられますが、前のアイゼンハワー指令のときと違ったこともまたできておりまして、たとえば軍人家族の引き揚げというような問題があのときの指令には出て参りましたが、今度の教書では軍人家族の引き揚げ、削減というものをやらない、そのかわり耐久消費財などというものを買うようなことを制限するというようなことが出ております。私どもはこのアメリカのドル防衛政策の影響というものを、大体ICAの資金による域外調達の停止というようなことで、この三十六年度は六千万ドルぐらいの響きが日本にあるだろう、それから特需の部面においてもそのぐらいある、合計一億二千万ドル前後の影響があるだろうと考えておりましたが、家族の削減が行なわれないというようなことは、当初の見込みよりは少し緩和されたことになるだろうと思いますし、ちょうどきょうの新聞でございましたか、民間の商社のケネディ政策の影響についての見方が出ておりますが、ICAの域外調達停止というものは、当初の六千万ドルの予想よりも非常に縮小する、三千五百万ドルぐらいの影響で済みはせぬかというようなことが、日本の商社側の全般の見方として一致したというような記事が出ております。こういう点では当初の見方よりも割合に影響は少ないという面もあると思いますが、問題は向こうが長期的な赤字の原因と、短期資本の流出による一時的な赤字の原因とをはっきり区別して、この二つに対してそれぞれ対策をはっきり打ち出してきている。長期的な赤字克服対策として、貿易についての強い意図を向こうで示しておりますので、この点がこれからどういう影響を日本の貿易に与えるか、これが一番影響としては私どもとしては重要視するべきものだというふうに考えますので、今後これに対しては十分な対策をもって臨みたいと考えております。
  154. 小坂善太郎

    ○小坂国務大臣 外交の面から見まして、輸出全体を一〇〇として見ますると、アメリカ、カナダに対しまして大体三三%ぐらい、それからアジアに対しまして約三〇%、それから中近東、アフリカ等に対しまして一二%ぐらい、それから西欧諸国に対しまして一一%ぐらい、中南米諸国に対して七ないし八%ぐらい、それから共産圏に対して一・幾つという程度になっております。日本の外交は、終戦後出て参ります時期がおくれましたために、やはり日本を知られないという面が非常に多いので、御承知のようにガット三十五条を適用している国が十四カ国もあるような状況で、日本に対する相当な差別があるわけであります。かてて加えて、東南アジア等で独立いたしました国が、まだ日本との間に通商航海条約を結んでいない。従って日本人がそこへ行って商売ができないというようなところもあるわけでございまして、そういう障害を取り除くこと、それから日本を知り、日本の工業というものをよく知ってもらうということが非常に必要であるという観点から、先方の有力な政治経済部門で活躍している人に、できるだけ日本を見てもらうような方法をとるというようなことをもって経済外交を進めて参りたい、かように考えております。
  155. 永井勝次郎

    永井委員 もう時間がありませんから、簡単にこの関連だけで防衛庁長官に一言伺いますが、先日軍人、軍属家族の引き揚げの問題で、横須賀ではPXで二百五十名からの首切りがあった、こういうことでありますが、そのほかにもいろいろ計画があり、動きがあるように聞いておるのであります。この関係はどうなっておるか、長官からお示しを願いたいとともに、その後における転職その他離職者に対する問題をどういうふうに考えているか、答弁を願います。
  156. 西村直己

    ○西村国務大臣 ドル防衛自体が直接影響する面は、駐留軍の経費の節約という点から、駐留軍労務者等に関係が出てくる場合がある。もう一つは、購入物資等の関係がありますが、駐留軍労務者につきましては、家族の引き揚げは今のところ見合わせる。しかし新大統領の国際収支の特別教書等でも、年間一軒で八十ドルぐらい節約させようという線から、非常に強い影響は出ていないと思います。ただしすでに横須賀で直接雇用の労務者につきまして、PXの従業員が千名のうち百九十五名、これが二月までに漸次整理される、こういう格好になりまして、その他につきましてはまだ強い影響は出ておりません。しかし私は多少の経費の節約が出て参ると思います。これが対策としては、御存じの通り、駐留軍労務者に対する離職の臨時措置法ができておりますのと、それから事前からいろいろな駐留地域内における職業あっせんあるいは職業訓練、こういうようなものを労務省とタイアップしてやって万全の措置をとって参りたい、こういう考えでございます。
  157. 永井勝次郎

    永井委員 最後に、今まで物価の問題についてお尋ねした限りにおいては、消費者に対する考えというものは非常に弱い。大企業に対してのみ奉仕するというような傾向がありましたことは、るる今までの質疑の中で明らかにされたと思う。どうしてもこれは消費者のための行政機関を作って、サービス消費者のためにもっと行政的に開く必要があろうと思いますし、公共料金や重要物資価格については、単に当該大臣の認可事項としないで、やはり国会でこれを決議するという法的措置も必要でありましょうし、独禁法の強化あるいは公取委員会の活動、こういった一連の、消費者が納得できる物価というものに、もっと私は政府の方も国会も動かなければならない、こう考えておるわけであります。そういうような意味において、われわれは今後なお物価の問題とは取り組んでいって、独占企業の方にのみ向けておる池田総理の顔をもっと消費者の方へ向けさせるように、政策転換をさせるように、われわれは今後努力しなければいけないと考えておるわけであります。問題はなお分科会その他において追及したいと考えます。
  158. 迫水久常

    ○迫水国務大臣 先ほど御質問に相なりました表のことでお答えをいたします。  この表は、実は私の方から配付したものではないようでございますが、個人所得が昨年は一兆一千三百十一億、ことしは一兆三百五十億で、一千億減っているじゃないか、こういうことでありますけれども、これは増加分をここへ表わしておるのでございまして、当たってみますとそういうふうなことになるようです。この表は知りません。従いまして、別な計算をいたしてみますると、GNPの、国民所得増加分と国民個人消費増加分を対比いたしますと、昨年度は四二%、三十六年度は五八%、若干消費性向が上がっているということです。ただし国民所得全体と個人消費全体との比をとってみますると、三十四年五四%、三十五年五三%、三十六年は五三・五%、こういうことで、貯金を引き出してくるというふうにはなりません。
  159. 船田中

    船田委員長 午後二時三十分より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後一時二十七分休憩      ————◇—————    午後二時四十六分開議
  160. 船田中

    船田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。長谷川保君。
  161. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私は主として社会保障制度の問題についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  まず質問に入る前に、非常に根本的な問題について一言池田総理のお考えを伺ってみたいと思うのであります。先般来、アメリカには若い大統領ケネディが出現をして、そして就任の演説、その後の幾つかの教書が出たのでありますが、ケネディの就任演説その他を拝見いたしまして、いかにもそこに格調の高いものを感ずるのであります。ことにその後出て参りました教書の中などを見ましても、たとえばインドのネールを非常な理想主義者として、彼が立った壇上に自分が立つということを誇りとしておったようであります。私はケネディのその格調の高さというものがどこから来ておるかという問題を考えて、また池田総理の先般の本会議における施政演説その他を拝聴いたしまして、そこにどうも、まことに失礼な言い分でありますけれども、残念ながらケネディのような格調高きものを感ずることが私にはできない。私の胸に響くものがないのであります。大へん失礼な言い分でありますけれども、その差が一体どこにあるのだろうかということを考えるのであります。  私はケネディの就任演説その他の中に貫いておりますものは、非常に強い、徹底したヒューマニズムだと思うのです。それがこちらの方の池田さんの演説の中には、どうも十分に読み取れない。ここに今日の日本政治の、自民党政府のおやりになりまする政治の、根本に何かそれが欠けているのじゃないか。この問題が日本国内のいろいろな混乱のいわばもとになっているのではないか。いわばわれわれのように今、民主社会を建設しようとし、経営しようと深く志している者にとりましては、共通の場というものはやはりヒューマニズムに求めるよりほかにないと思うのであります。このヒューマニズムの立場というものが、われわれ革新政党の側にも、また保守党の自民党の側にもありますならば、そこに共通の場が初めてできるのだ。それ以外には共通の場というものはなくなって、結局政治は階級的な政治になり、またそれに対する階級的な闘争となるという形になると思います。こういうように考えるのでありますけれども、まず池田総理にお伺いしたいことは、民主主義というものの根本をどうお考えになるか、民主政治というものの根本をどう考えるか、まずこの点を伺いたいのであります。
  162. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 民主主義の定義をここで申し上げることはいかがかと思いまするが、御質問によりまして、私は施政演説でうたった通りでございます。ああいう考え方でいって初めて民主政治が成り立つ。お互いに自由を愛し、人を尊敬し、協力していくということが民主主義だと考えております。
  163. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 確かにそれもその通りだと思うのです。しかしより根本的な問題としては、私は今のヒューマニズムを貫くということと、さらにその根本の問題としては人間の尊厳、人間の生命に対する無限の評価、ここに基礎があるのではないか。人間の生命の無限のとうとさというものを基本としてものを考え、そして政治を行なっていくというところに、民主主義の根本があるように私には思えるのでありますけれども、その点総理、いかがです。
  164. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほどお答えしたことで、あなたの御意見にも合致すると思います。
  165. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それでは端的に一つ事実をもって御信念をもう少し伺いたいと思うのでありますが、ごく最近のことでありますけれども、福岡県の筑豊炭田地帯に四百人の捨て子があった。そのうち二才から五才までの男の子約十人がアメリカに養子としてもらわれていくという記事が出ておりました。総理もごらんになったと思うのであります。私はまず筑豊炭田地帯の四百人の捨て子という、これは実に容易ならぬことだと思います。こういうことが起こっているということ、実にここに今日の政治の欠陥と申しますか、貧困と申しますか、それがあるのではないかと胸の痛む思いをするのであります。一体あの狭い地域に四百人捨て子がある。これはおそらく貧しい炭鉱夫、あるいは失業いたしました炭鉱夫の方々のものが多いのではないかと思うのであります。まずこういうような事態が起こってきたということそれ自体に政治の欠陥がある、行き届かないところがあるということを思うのでありますけれども、さらに私が考えますのは、このうちの十人の二才から五才までの男の子がアメリカに養子にもらわれていくということ、アメリカの方では非常な親切を持ってやってくれるのでありますけれども、私はこの捨て子をされたときの情景を描いてみて、おそらく幾日も幾日も思い余って、全く食うに困って、このままではこの子は飢え死にをするのではないかというようなところから、親となっては幾日か幾日か夜両親がいろいろと涙を流しながら考え抜いたあげくに、非常な決意をして捨てることにした。けれどもおそらくこのお母さんたちは、この子供を捨てはしたけれども、だれかが拾ってくれるだろうから、それが拾われていくまで、どこぞの物陰に隠れて見ておったのではなかろうか。さらにまた、今は捨てるけれどもやがてまた日がたてば、いつかは必ず自分のところに引き取ろうという強い念願で、子供にあやまりながら捨てたのだろうと思うのです。ところがアメリカ人のだれかが非常な御親切で、この不幸な子供を引き取って育てたいとおっしゃる。しかし私はどうもそのところに割り切れないものを感ずる。児童福祉法の第一条には「すべての児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない。」第二条に「国及び地方公共団体は、児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う。」こう児童福祉法にははっきり書いてある。この四百人の捨て子がここにできたということそれ自体が、政治を担当する者として、政治関係する者として相済まぬと思います。同時にまたこの国のものであるわれわれが、その母親のあやまりながら涙を流しながら、いつかはもう一度自分の家に引き取ろうと泣きながら捨てたに違いないというこの母親の願いというもの、父親の願いというものを、このままいったのでは無視してしまうのではないか。児童福祉法の責任というものをわれわれは果たしていないのではないかというような感じがするのであります。この問題について首相はどうお考えになるか。そういうことがあるならば、何とか日本にこれをとどめておいて、やがていつの日にかまことの親に返してやろう、それまで責任を持って育てよう、こういうようにお考えになるかどうか。またこの四百人の捨て子がこのわずかな地帯にあるという事態について、政治の欠陥についてどうお考えになるか、これを承りたい。
  166. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 お話の点全く同感でございまして、炭鉱離職者、またそれに関係するあの地方の人々が、そういうほんとうにお気の毒な状態になったことにつきましては、われわれも遺憾の意を表し、これが対策を講じなければならぬと思います。アメリカに養子縁組をするということにつきましては、実はきょう私は知ったような状況でございます。この点につきましては関係大臣より答弁をいたします。
  167. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 エリザベス・サンダース・ホームのような混血児をおもに入れていらっしゃるところ、こういうところでは向こうの方が大いにお考えになって引き取って下さるということはけっこうだと思うのです。けれどもこういうような、おそらく考えられる限りにおいては炭鉱夫の子供であろうと考えられる、こういうような子供たちに対しては、私どもが先ほど来申しましたような民主主義政治の根本というもの、人間の尊厳、人間の生命に対するとうとさというものに対する深い考え方というものが民主主義の根本である。民主政治の根本であるという私の考え方からすれば、ぜひこの点については十分な御配慮を願いたい。首相のお立場を一応了としながら、私は質問に入りたいと思います。  私の第一の質問は、今日の医療界の混乱とその解決策であります。御承知のように昨年来病院ストが続発をいたしました。また日本医師会所属の医師やあるいは病院におきましても、各地で診療の休診が行なわれる。先ほど来申しました生命のとうとさ、これに直接つながる問題として、私はこれは非常に重大な問題だと思うのであります。どうも見ておりますと、なかなか終息をしそうもない。逆にいよいよ十九日には全国の診療の休診が始まる。また病院ストも順次波及をしていっているという事態で、事態は実に容易ならぬものを感ずるのでありますが、一体この混乱の原因につきましてはどうお考えになるか。この混乱の実情、その原因というものをどうお考えになるか、この点をまず総理並びに厚生大臣に伺いたい。
  168. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 医療費の問題につきまして、最近日本医師会が一斉休診ということをきめたと聞き及んでおります。まことに遺憾なことと存ずるのでございます。なお、今は一時おさまっておりますが、この医療費の問題に関連して、昨年、病院ストの問題があったことも承知しております。私は何とか円満に解決するよう念願し、厚生大臣にも、こういう不穏なことのないように、一つ医師会等と早急に話し合って、国民に迷惑の及ばないような措置を講じてもらうよう要望しておるのであります。厚生大臣よりお答えいたさせます。
  169. 古井喜實

    ○古井国務大臣 昨年からの病院ストでありますが、これもまだすっかりおさまったわけでもないのでありまして、総理も今申しますように、早く円満な解決を得たいものだと思うのであります。それに加えて昨今、医師会側のお医者さんの実力行使というものが行なわれておる現状であります。  病院ストにつきましては、他の機会でも申し上げたかと思いますけれども、このストそのものにつきましては、せっかく労働大臣も尽力をして下さっておることでありますが、しかし原因に対して対策を講じないと解決を得ないではないか。起こりは待遇がまずいということでありますけれども、なぜ待遇が悪いのかと考えますと、やはり病院の経営が苦しいというところに一つ原因があるのじゃないだろうか。いま一つには、経営管理が少し今日の時代に合わない、まずい点があるのじゃないだろうか。そこでこの二つの点に対して対策を講ずることが必要だと思いますので、経営管理の近代化、合理化という問題について、三月までという期限を切って、実は専門家、実務者の人に集まってもらって、今検討してもらっておるところであります。経営の苦しい点については、そのためばかりで言うのではありませんけれども、医療費の不十分な点もあるのではないか、今の点も考慮いたしまして医療費問題も解決しなければならぬ、こういうことできているわけであります。  それから医師会の実力行使でありますが、これは当面の問題としては、医療費の引き上げの幅が足らない。あるいは方式が自分たちの言う通りにぜひさせたい、しないとだれも言っておりませんけれども、そうさせたいと思っている。こういうことや、さらにさかのぼって、お医者さんの経済もなかなか苦しい。経済問題、もう一つは社会保険、保険医療ということになってから、とかく統制というか、制限診療、統制というふうな傾向を持ってくるので、自由診療、自由な立場を持ちたいというお医者さんの立場からいうと、どうも不満である、こういうことも根源にあるようにも思うのであります。やはりこれは言い分に理由がないとは少しも思いませんし、問題は穏やかな話し合いの場を持って、そうして話し合いをし、合理的な結論を出すということにしませんと、よい解決が得られないではないか。そこのところを目ざして努力してみようというのが今日の段階であります。
  170. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 医療の問題は、さっき申しましたように、直接生命に関係するという非常に大きな問題であるとともに、社会保障制度という立場から申しましても、病気というものと貧乏というものとが悪循環をしておる。これを何とか断ら切らなければならぬという大きな問題をはらんでおるのでありまして、私はこのすみやかな解決策を政府が用意し、解決に進まれんことを心から念願するのであります。今日の混乱、ただいまお話のようないろいろな問題をはらんでいるわけでありますけれども、しかし今日のこの医療界の混乱の根本の問題は、どうも医療というものの本質、人の生命を守る、そういう第一義的な問題と第二義的な経済の問題が混乱してしまっているというところに、大きな原因があるように私は思うのであります。それを正しませんと、この問題の解決の道がついてこないのではないかというように考えられるのであります。それでまず病院ストの問題でありますが、病院ストについては、今全国でどのくらいストをやっておりますか。また今後の情勢はどんなふうになる情勢でありましょうか。
  171. 古井喜實

    ○古井国務大臣 病院ストでありますけれども、これは国立の病院の関係も、全部ではございませんけれども、相当ありますし、赤十字、済生会という公的なものの範囲もあります。民間の病院もありますけれども、むしろ主たるところは赤十字など公的な病院の方の関係でありまして、だいぶ広がっておりますけれども、昨今の状況は、しかしこれがだんだん広がっていくというふうにまでは見ていないのであります。消えたというのではありませんけれども、そういう状況に見ているわけであります。
  172. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 医師会が非常な不満を表明しておりますのは、ただいまもお話のありましたような金の問題も、経済の問題もありますが、同時に医療の本質の問題に関係した部分が、相当医師を硬化させている原因であるというように思うのであります。医師会がよく奴隷医療という言葉を使いますけれども、そこらにそれがうかがえるのでありまして、ことに医師会が掲げております今のお話のような規格診療あるいは制限診療の撤廃、診療報酬の引き上げ、保険事務の簡素化、甲、乙二表の一本化、地域差の撤廃、こういうような問題をずっと見て参りますと、そこにやはりそれが感ぜられるのであります。まずこれは昭和二十八年ごろに盛んにやった問題でもあり、またこの前の三十二年の改正のときにも盛んにやった問題でありますけれども、医者の技術差というものが今の行き方では全然生きない。これはやはり本質的な欠陥だと思います。当時言われた例でありますが、大観のかいた絵と夜店の絵かきがかいた絵とは、同じ値段ではないではないか。ところが医者に限って同じ値段になるじゃないか。こんなばかなことがあるか。この医療の技術差というものが対価として出てこないということは根本的な欠陥だと思うのでありますけれども、もう昭和二十八年以来この問題はずいぶんもみにもんで、しばしばやってきたのでありまして、厚生省としてもこの問題についての何らかの解決策というものをお持ちだと思いますけれども、この点について当事者はどんな解決策をお持ちでありましょうか。
  173. 古井喜實

    ○古井国務大臣 だんだん保険診療の面が広がってきますと、お話のように規格診療のような格好になってきて、そこですぐれた腕を持ったお医者さんでも、そうでないかけ出しの未熟な人でも、同じことになってしまうというような欠陥があるように思うのであります。のみならず、この規格に当てはめますために、個人々々の腕がふるえない、ふるえるという問題のほかにも、一日々々進んでおる医学、医術というものを、保険を通しては国民が多数恩恵に浴することができない、こういうようなことも起こっておるのではないかと思うのであります。やはり保険診療となりますと、全然何もかもワクをはずしてしまうということはできないにいたしましても、何とか診療の内容については、進んだ医学、またお医者さんの方のすぐれた腕をふるうことができるようなふうにする方法はないものだろうか。それが制限診療の撤廃であるのか、あるいは現物給付という建前でなしに、医療はもうお医者さんを信頼してやっていただく。金の面においてある限度の保証をするというふうな療養費給付のような方式がさらに徹底するのではないであろうか。これはそういう基本の問題があると思うわけであります。これにつきましては今日即刻、軽率に結論を出すには事があまりに重大であります。しかし右にせよ左にせよ、これはとことんまで詰めて結論を出したいものだと私は思うのであります。それが解決がつきますれば、点数、単価だというふうなこともあるいは軽い問題になるかもしれません。これはもう少し時間をいただきまして、しかしただ延ばすだけの意味で申しておるのではありませんが、研究させていただきたいと思います。
  174. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 昭和二十八年ころ、私は衆議院でずいぶんこの問題を論議したことを記憶するのでありますけれども、それから見ますともうすでに八年もたっている。その間、今なおこの問題が何らのめどもついていないし、これはやはり政府当局としても非常に怠慢のそしりを免れないと思います。  しかしまあ第二の問題に入っていきましょう。経済的なものとして医師側でも、またこれが直ちに病院ストの問題にもつながるわけでありますけれども、非常に大きな問題は診療報酬の不合理であります。たとえば入院料、厚生白書で拝見しましてもそうでありますし、私の関係している病院の実際におきましてもさようでありますが、大体結核患者を入院さして一日五百円です。入院さして、つまり二千四百カロリーの食事を差し上げて、看病して一切のめんどうを見て、そうして診療をして、薬を与えて、消毒までみなやって、それを一切やってとにかく一日五百円、これは私はもうだれが考えても、こんなばかなことはないと思うのです。同僚の、精神病院に関係になっておる方に伺いますと、まだこの半分だと言われていますが、厚生白書で見ますと大体結核の病院よりも少し安い程度だそうであります。結核の方は月で一万五千円ないし一万六千円くらい、精神病院の方がもう少し安くて一カ月で一万四千円くらいが厚生白書に出ているようであります。何にしても入院料、診療費、看護料、みんな入れてこういうような値段であるということは、だれが考えても論外だと思うのですよ。こんなばかなことはあり得ないと私は思うのです。この間もある病院に行って見ますと、完全看護をやっておる。看護婦が十分でありませんし、またそれだけの用もありませんから、深夜は看護婦の数を減らす。それに対しまして県庁の役人がやってきて、夜も昼間と同じだけの数の看護婦をつけておけ、つけておかなければ完全看護を取り消す、こう言ったといってその病院では困り抜いておりました。大よそ一日五百円くらいで飯も食わせ、診療もし、薬もくれ、看護もし、部屋も用意し、何もかもやるというのでは、どうにも問題にならないと思います。  それから診察料の問題でもそうです。御承知のように普通は一回五十円、五十円で一体何をやらせるのか。何でも開業医が一日五十回診察をすれば、どうやらこれで食えるようになるのだそうですけれども、これはどうか存じませんが、五十人の人を一人ずつ一日診察をするということは、まじめにやればとうていできることではないことは明らかです。夜間診療しても何にもない。夜一里の道を往診をして二百五十円、これは前からずいぶん言われた問題でありますけれども、耳にたこができるほど言われてもこの問題は解決しておらぬ。これは実は容易なことではないと思います。こういうような不合理は直したらどうかと思うのであります。  つい六日の日に、かつて本院において非常な活躍をされました下川儀太郎君がなくなられました。私が行ってみますと、午前一時ごろに息子さんと二人でアパートの三階からおりてすしを食べた。それから帰ってきてしばらくすると気持が悪くなり、胸が苦しくなった。そこで息子さんが飛び出して医者の家を三軒かけ回ったが、だれも来てくれない。場所は恵比寿の駅のまん前の公団アパートの三階です。ずっと歩いたがだれも来てくれない。とうとうやむなく救急車を頼んだ。救急車が来たときには、彼は心臓の冠状動脈の狭窄でもって死んでしまったという事態が起きた。これは一下川君の問題だけではなくて、全国に起こってくると私は思う。しかしそれでは夜起きて往診に行かなかったお医者さんが悪いかというと、この夜間の往診料を見たのでは、行けという方が無理である。こういう問題は全国に広がって、今日幾らでもあると私は思います。だから一番先に申し上げました、総理に伺いました生命というものをどう考えておるか、民主政治をお互いにやるというならばどう考えるのか。こういうような不合理というものは直ちにもう解決されておらなければならぬじゃないか、こう思うのであります。じんぜん日を延ばしているときではないと私は思うのです。この点、厚生大臣どうお考えになりますか。
  175. 古井喜實

    ○古井国務大臣 お話のように、たとえば初診料にいたしましても安いと思うのです。それから入院料も安いと思うのです。ただそこで個々の診療行為に対するものだけ特別に安いものもあるかもしれません。そのほかにまた全体として診療所の経営の経済から見て、要するに全体として経営が苦しいという全体的な問題もあるかもしれません。そこで、これは個々の安過ぎると定評のあるものもあるのでありますが、全体と両方あるだろうと思うのであります。これはほんとうは毎年々々でも是正をしていくのがよいことだと思うのであります。ところで是正をしようと思いますと、もう御案内のように、今の法の建前では、医療協議会を開いて、そしてその意見を尊重して、これを是正しなければならぬ。医療協議会がなかなか開けない、こういうめんどうな問題にぶつかってきておるのであります。これが何ほどこの医療の改善進歩の妨げになっておるか知れぬと私は思うのであります。これが実はよくても悪くても動かないということになっておるところに一つの問題があると思う。私は、この問題は今日のためのみならず、将来のためにも解決をしなければ、医療の改善、進歩がストップされるというふうな考え方を持つのでありますが、それだけとは申せますまいけれども、そういう不合理も今日たまっておるというのが現状であります。
  176. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 確かに個々の問題で不合理だけれども、全体としては調和がとれるということも場合によっては言い得るでしょう。けれども、大よそ医療のこういうような明白な不合理というものは、これは直ちに直すべきだ。何年もこういう不合理がほうっておかれるというところに、医師会といたしましても厚生当局に対して感情的なまでにと思われるほどの対立を示している原因がある。こういう問題は、医師会でも前から取り上げた問題です。こういうような不合理な問題は、個々の問題としても直すべきだ、そうして全体の問題も直すということにしなければなるまいと私は思います。じんぜん何年もほうっておくという問題ではありません。すみやかにこれは直すべきだと思います。  しかし今全体の問題が出ましたからそれでは、全体の問題として考えて、今の医療費というものが一体合理的であるであろうかという問題をごく大ざっぱに探ってみたいと思います。厚生省がみずから経営しておられます国立病院、その国立病院の経理の問題を、十分な資料がありませんから、十分こまかい合理的な分析はできませんけれども、ごく大ざっぱでありますが、この特別会計を基礎にいたしまして考えてみます。  国立病院特別会計を見てみますと、三十六年度の収入予定でありますけれども、予定の損益計算書及び貸借対照表で調べたわけでありますけれども、それには歳入予定額が百三十八億五千三百万円、そのうち診療報酬費が百二億三千万円、一般会計からの受け入れが二十八億二千万円、積立金よりの受け入れが五億円、雑収入が二億九千七百万円、この雑収入のうちを調べてみますと、利子収入千七百五十三万円、不用物品売払代千百六十九万円、地方債の証券の収入九百五十二万円、不動産の売却代一億八千万円、こまかいことは、私もきょう伺う時間がありませんから、また別の機会に譲りますけれども、こういうふうになっております。この内訳をずっと調べて参りますと、本年度利益というのが二十三億円ありますが、さきに申しましたように、一般会計からの受け入れ、その他のものが三十六億円ありますから、これを差し引くと十三億円の赤字になるということになります。しかしこれには償却が載っておりません。民間の場合であれば、当然償却を考えなければなりません。また民間の場合でございますと、仕事をやって、診療報酬を受け取るまでに三カ月ございますから、その間の融資に対する利息も考えなければならぬ、あるいは税金も考えなければならぬ、こういうようになって参ります。でありますから、この民間の場合になりますと、さらに大きな赤字になります。国立病院のこの会計だけでも十三億円の赤字になっておると私は大ざっぱに見ている。このほかに今のような固定資産に対する償却というようなものを考えればもっと大きくなりましょう。固定資産が二百二十六億余円ございますから、これに対する、もし五%の償却をするということになりますれば、さらにここには十二億円からの赤字が累積をするということにもなって参りましょう。また民間のことであれば利潤をも考えなければならぬ、こういうことになります。でありますから、どう考えましても、この国立病院の特別会計を見て参りますと、これは赤字だと私は考えるし、従ってまた民間の場合にはさらに大きな赤字になるというように考えられるのでありますが、私のこの考え方は間違っておりましょうか。
  177. 古井喜實

    ○古井国務大臣 国立病院のみならず、民間の病院の経済が赤字にならざるを得ないような事情に置かれておるのではないかというお話であります。国立病院の場合は、今のお話のように一般会計からある程度繰り入れておるわけであります。施設の整備費であるとか重要な医療器械の購入費であるとか看護婦の養成の費用であるとか繰り入れて、それだけ、自まかないだけでなしに助けておるわけであります。民間の方の病院——民間と申しては悪いのですが、県立、公的なものには一般経済の方から助けるということもできるかもしれませんが、純粋の民間のものにはそういう道はない、一そう苦しいことになる事情はわかります。とにもかくにも近年というか戦後、病院は、施設の復興もありましょうし、だんだん施設が近代化してきておりますので、非常に近代化のために金がかかるのであります。これは永久の問題かどうか知りませんけれども、とにかくここ数年来の一つの特色であります。これにはまた一方医学が進歩するために、それに対応する新しい設備などの面もあるかもしれません。そういうあるいは今日の段階における特殊な事情もある程度入っておるかもしれませんが、大きに金のかかる面のあることも事実だろうと思います。要するに国立病院にしても、その他の病院にしても、少なくとも病院経営は楽ではない、これはそう認めざるを得ぬと思うのであります。
  178. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 三十三年の八・五%アップを最初しましたとき、あのときにいたしました診療報酬の算定では、私の記憶ではたとえば固定資産の償却費というものはゼロ、また今お話のような、医学は絶えず進歩している、新しい器械設備をしていかなければならない、そういうものに対する考え方というものも入れてなかった。つまり診療報酬というものが拡大再生産をするということでなければならぬのに、単純再生産というように私は記憶いたしておるのであります。この点はいかがでありましょうか。
  179. 古井喜實

    ○古井国務大臣 お答え申し上げます。固定資産の償却費を三十三年の場合に全然見なかったかと申しますと、私の持っておる資料では見なかったのではないようであります。
  180. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 幾ら見ておりますか。
  181. 古井喜實

    ○古井国務大臣 これは一診療所単位でありますけれども、七千八百九十九円というのが三十三年の償却費であります。修繕費は別であります。これはちょっと確かめますけれども、一年の計算だと思いますけれども、これはちょっと保留いたします。——どうも失礼いたしました。一カ月だそうです。
  182. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 先ほど申しました医学は日進月歩している、従って医療の水準というものは絶えず上がっていかざるを得ない。上がらなければどうかしている。そうするとその上げて参ります——つまり拡大再生産ができるだけの新しい器械設備などを作っていくという病院、診療所としては当然なさなければならぬこと、それに対する原価計算はどうなっておりますか。これもなかったと私は記憶しております。
  183. 古井喜實

    ○古井国務大臣 ただいまの点は、ちょっと私も当時のことははっきりしませんから、事務当局から説明させます。
  184. 森本潔

    ○森本政府委員 お答えいたします。減価償却、それから機械器具の設備更新、こういうような点につきましては、これはある程度見ております。減価償却につきましては、これは計算通り見ておるわけでございますが、質の改善と申しますか、機械器具、それから設備の更新、こういうものの見方にはいろいろございますが、あるいは不十分かもしれませんけれども、ある程度見て計算しておるわけであります。
  185. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 どれくらい見ておりますか。
  186. 森本潔

    ○森本政府委員 数字をあとで調べまして……。
  187. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私はないと記憶しておるのですけれども、あったとしても、おそらくほとんど今のような一診療所で一年間の償却費が七千八百九十九円、こんなものは綿花だけでも足りません。要らなくなった薬だけでもこんなものでは足りはしません。こんなものは実際ないのです。単純再生産なんです。そのころわれわれは大いに議論したのです。  大蔵大臣に伺いますけれども、こういう償却も何もほとんどない——一診療所で年間七千八百九十九円という今お話であります。こんなものはよし一カ月にしても医者の診療所で——承知のように薬というものは次々に新しくなっていきますし、ずいぶんむだにもなるものです。また器械その他でもずいぶん古くなっていくものです。およそ一つの診療所で七千八百九十九円ということ自体だってずいぶんむちゃだと思いますけれども、更新していくための、あるいは拡大再生産をしていくための、新しい器械などを入れていくという費用は入っておらないわけです。そういうことは経理を担当するものはだれでもそうですけれども、常識からいってあり得ない。今日の資本主義経営といわないまでも、一応事業を経営していくについてこういうことはあり得ないし、そういう決算書を作ったら大へんなことになると思うのです。大蔵大臣は、そういう点はどうお考えになりますか。これはやはり無理だとはお思いになりませんか。
  188. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 償却率ということでしたら見当もつきますが、金額では私もちょっと見当がつきません。
  189. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 時間も非常に少ないので、いろいろ伺いたいために端折っていかなければならないのを残念に思いますけれども、一般の病院の経営を見ましても、こまかいことは申しませんけれども、東京都の医師会の資料を見ましても、無床の診療所、あるいはわずかの病床を持っておる診療所等にしても、これはずいぶん困難な経営であります。また精神衛生研究所で依頼したという東京医大の助教授の方の調査、この資料も拝見いたしましたが、これを見ると、大病院、千九十八床のでは総収入に対して六%のマイナスである。六百三十八床の病院ではプラス、マイナスなしの状況だ。百八十床でわずかに総収入に対して一%の利益しかない。中病院においては五十二床ので四%、平均いたしまして中病院では一〇%の利益。診療所におきましては有床、無床合わせて一六%の利益があるというふうになっております。この内容は十分こまかいデータを持ちませんから、どういう計算をしたか、簿記学的に、あるいは会計学的にどういう計算をなさったかということはよくわからないのでありますけれども、いずれにしても相当な投下資本がある。その投下資本に対して逆にマイナス六%の収支の計算になる、あるいはまたゼロであるというようなことはあり得ない。相当大きな利潤というものがここに浮かんでこなければ、民間の病院としてはやれないわけです。診療所では二八%平均の利益がある、こういうようにいっておるわけでありますけれども、およそ投下資本から見たならば、これくらいの利潤では事業経営をやる人はないでしょう。この間もある人が病院を経営したいというから、私の関係している病院の経営の実体を話したら、そんな資本の効率の悪いことではやれませんねと言う。だれが考えてもそうだと思う。全然うそをやってない、インチキの診療をやってない病院に私は関係しております。診療所もやっておりますから、いつでも御案内いたしますけれども、人件費は公務員よりもはるかに低い、そうして年に三カ月のボーナスを出しますと、償却も、負債の償還も、新しい器械の設備も何にもできない。全然できない。もしこれを公務員のベースにいたしましたら全然破綻いたします。こういう状態であります。これはいつでも御案内いたしますからお調べになって下さい。全然インチキはやっていないという病院、診療所でありますが、こういう状態です。しかもこの病院でお医者さんたちがやかましく申しまする、支払い基金事務所におきます過剰診療という形でチェックいたしまするものが、診療報酬粗収入の〇・五%ある。こうなりますとこれはどうにもならぬということは当然のことです。でありますから、こういう問題はずっとやって参りますと、私は何としてでもこの際相当額のものをアップしなければだめだ。ただアップが一般国民や勤労者、家族等の負担にならないような考え方を十分いたしませんと、池田首相の言われまする所得の格差を減らそうということが逆になります。その点は十分気をつけなければなりませんけれども、しかしいずれにいたしましても、今公立病院の特別会計をずっと精細に見て参りましても、これはあなた方が計算すれば、大蔵大臣、あなたの方で御計算になれば、これはもう何といっても大きな赤字になっている。大よそ会計を知り、簿記を知っている人なら、こんなばかな経営はないと言うにきまっています。だからそういうような点で相当のアップは考えなければいかぬ。今度の予算でもって一〇%のアップをするというようなお話でありますが、その論拠はどこにあるか。またそれの配分方法について医師会では非常に心配しておりますが、それは一体どういうようにお考えになっていますか。そのお考えお話し願いたい。
  190. 古井喜實

    ○古井国務大臣 医療に関するお互いの悩みというか、矛盾と申しますか、それは、医学、医術は一日々々進歩していく、設備も近代化されていかなければならぬ。それにつれて経費がかかることは当然の勢いであります。一方、国民経済力と申しますか、その進歩する医療にたえるだけの経済力というものが多数の国民に十分ないというこの矛盾に実際悩むわけであります。さればといって、経済優先でもって考えるわけにはいかぬと思いますけれども、困難はそこにすべてあるように思うのであります。ただいま病院のことにつきまして、設備、建物の投資等の辺もお話がありましたが、これは別途長期低利の融資などで援助するところは、やっぱり、医療金融公庫がそういう役目をしておりますけれども、そういう面も一方勘案していかなければ、すべてを診療費にかぶせてしまうということも、どうも少し無理があるような気もするのであります。別途考えるべきこともあるのじゃなかろうか、こういう点もあると思います。  それから今はおおむね病院のことについてお話しでありましたけれども、病院に至らない診療所という方面の経済の問題もあるのであります。どっちもあるわけであります。今回総医療費に対して一〇%ということに予算を組んでおりますのも、実を申せば、筋道、ルールから申しますれば、法できまっておる医療協議会を開いて、そこで関係の方がお集まりになり、資料を検討されて、そしてこれだけの幅が要る、また方法はこうなければならぬ、こうすれば今の足らぬ点が補える、あるいは多数の診療所が満足が得られるようになるということを出してもらって予算を組みたかったのであります。けれども、まことに遺憾ながら医療協議会が御案内のようなわけで動かないような格好になっておるのであります。そこでやむを得ませんから、今回はわれわれの手元において手の届く限りの資料をもとにいたしまして、全体としてどれだけのものを考えたらカバーできるか、こういうことを基礎にして予算を組んだわけであります。それは昭和二十七年三月の医業の実態調査が御案内の通りあるわけです。それ以後医業の実態調査が不可能なんであります。ことしも予算は組んでおりましたけれども、とうとう医師会の協力が得られませんために、私的な診療所を調べることができなかった。やむを得ぬから、せめて公的なものだけでもやりたいというので、これからやろうとしておりますけれども、それ以上の新しい資料がないのであります。二十七年の三月をもとにして、その後における変動をこれに加味いたしまして、つまり賃金値上がりあるいは生計費の上昇物価の変動、従業員数の変化、患者数の変化などを加味いたしまして、スライドして、これだけは全体的に少なくとも考えなければならぬじゃないか、それが一〇%というものになったのであります。そういう経過で作ったものでありますから、何とか建前上の通りに医療協議会というものを早く開いて、ほんとうにこれで足るのか足らぬのか、また方法はどうしたらば一番合理的で、多数の診療所に満足を与え得るかという方法論も検討してもらって、役所だけの考えでなしにきめたいものだ、こういうふうに考えておりますが、そういう計算をやったわけであります。
  191. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私は先ほどももっと詳しくやるとよかったのでありますけれども、時間がありませんからやりませんでしたが、国立病院の特別会計を見ましても、少なくとも二割の赤字を考えなければならぬと考えます。これは民間を見ますならばおそらく三割以上の赤字になると考えます。いささか事業を経営したことがある者としてこういうように考えるのでありますけれども、今の一〇%上げるという論拠は今お話のようなふうでありますが、しかしそれはずいぶん一方的な計算になっていないか。国立病院の特別会計だけをしっかりお調べになっても、国立病院はいつでも皆さんお調べになれるのでありますから、実態を十分お調べになれば、そういうことにならぬのじゃないかと考えるのであります。しかし医師会が一番心配しておりますのは、仄聞いたしますと、それをどう分けるかということのようであります。医療協議会を早く開いてやるということは私も心から希望いたします。また医師会の諸君もそうすべきだと思います。しかし同時にもう少しこちらが医師会を融和させるだけのかまえを持たなければ、なかなか融和できなかろうと思う。今日のように、ことに大衆的な運動になっていく場合になおさらだと思うのです。大衆というのは少し語弊があるかもしれませんけれども、下部の医師諸君を納得させるにはもう少し融和対策を立てなければなるまいと思います。今の一〇%をどう分けるかという問題が医師会の諸君の非常な心配のもとになっているようでありますが、その点はどうなっていますか。
  192. 古井喜實

    ○古井国務大臣 医師会の言っておいでになることも理由がないと考えるわけではありません。ただ一方的にお互いに言い合っておったのでは、適当な結論が得られませんから、しょせん共通の場で十分言うべきことは言い、主張はして、そして関係の払う方の側の人も納得をして結論を出さなければならぬと思うのであります。これが医療協議会の場であるのであります。そこで配分の方法につきましても、さっき長谷川さんもおっしゃるように、病院が苦しいという御意見もある。あなたの御意見は病院が苦しいというお話であります。ところがそうではなくて、一般の診療所の方を重く考えろという医師会的な考え方もある。いろいろあるのであります。それをどういうふうに満足させるかという方法論が点数、単価の問題になってくるわけでありますから、私はどういう結論になってもよろしい、しかし共通の場で関係者が論じたあげく一つの結論を出してもらいたい。こういうふうに思いますので、医療協議会ということを考えるのであります。
  193. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そこで一つ伺っておきますけれども、もし医療協議会でいろいろ相談した結果、一〇%のアップでは少ないと考えられてくるというときには、この一〇%は動かしますか。この点いかがですか。
  194. 古井喜實

    ○古井国務大臣 これは私だけで申し上げますのは少し過ぎるかもしれませんけれども、しかしだれが考えましても、経過から申しまして、つまりさっきも申しましたように医療協議会を初めに開いて審議をした結果をもとにして予算を組むべきであったけれども、逆になってしまった。これからかけるということであるならば、そこで十分審議をしまして、その結果一〇%は不十分ではないか、こういうことになりますならば、経過の筋道からいって私はこれには考慮を払うべきものだと、これは私だけの意見でありますけれども、思うのであります。
  195. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 この点、一つの病院ストにつながります医師会のスト、休診の問題を解決する道に持っていけるかどうかという急所でございますので、総理大臣いかがでございましょう。今のような医療協議会を開いて、それによって十分いろいろ相談した結果、もし一〇%ではいけないということになりますれば、この点は将来動かす、近い将来動かしてもよろしいというように言えますかどうか。この点は一つの急所であると思います。
  196. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 これは予算上また患者負担の点等々重要な問題でございますから、私は結果を見てから政府として考慮すべき問題だと思います。
  197. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 その点で総理が慎重であられる態度はわかります。理解できますけれども、その点は今申しましたように非常に急所であります。医療協議会を開け、開けといっても、一〇%はきめてしまった、また伝えられるところによると、厚生省の病院と診療所に対する配分の仕方は十四対六だ、こういうようなこともいわれておる。そういうところに医師会が非常に硬化をいたしました大きな原因がある。私は、何としてでも、この際この問題を解決しなければいかぬ。すみやかに解決し、先ほども申し上げましたような下川君のような事件が今日毎晩起こっている。こういう問題を解決する必要がある。だから、これは急所でありますから、私は少し大胆に首相のお考えも伺っておく必要があると思う。そうしないと、この問題の解決の糸口というものはつかめないのじゃないか。だから医療協議会を開いて、そとで第三者も入れて十分な討議をして、これでは足らぬということであれば、その国庫負担その他の問題につきましてはまた別途考慮するとして、一応医療協議会を開いて討議した結果、不当であるということであれば、これは動かしてよろしいということが言えるかどうか。それを大胆におっしゃっていただけばこの問題が解決する一つの大きな足場ができると思う。その点を一つぜひとも御答弁いただきたい。
  198. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 長谷川さんのお気持はわかります。そうしてまた今回の一割ということも、御承知通り計算の結果これで動かせぬという数字でもないのであります。腰だめといってはあれでございますが、一応の目安でございます。私は、今最も重大なことは、医療協議会というものがこういう状態であっては国民に迷惑である、政府としても困る。だからまず医療協議会にみな出ていただきまして、公正な、納得のいくような、そうして国民もそれを是認するような結論であれば、政府は何らこれに従うことにやぶさかではございません。しかし政府としてまだそれがいいか悪いか、論議もされない、結論も出ない場合に、これが一割以上になってもあるいはそれが五%になっても、それにすぐ従うのだということは、私は総理としてはここで申し上げない方がいいのじゃないか。厚生大臣はああいうふうに言っておるわけです。これでおわかりいただけると思います。
  199. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それでは首相の今の御発言を了といたしておきます。そうしてこの問題を推進せられるために、ぜひとも一つさらに十分な御努力を願いたいと思います。  ついででありますから、医師会の不満の点の、これに関係しますいろいろな問題をもう二、三伺っておきたいと思います。  制限診療の問題、規格診療の問題、この問題が医師としましての本来の職業的良心というものと相反するようなものをしいられることになる。また経済的にも、先ほど申しましたような全然うそをやらない病院においても、過剰診療の名のもとにチェックされるものが相当額ある、こういうことが経済的にも大きな現実問題として出てくるわけであります。もちろんこういう保険診療というようなことをして参りまする以上は、一応の診療の準則というものはあるべきだと私は思います。しかし今日のような、それをあくまで力で押しつけるというようなあり方というものは、医師というものの本質からいって、これはやはり方針を変えるべきではないかというように思うのであります。一応は準則は必要でありますけれども、この点はやはり医師の専門技術者としての立場というものを尊重する方針が、今後当然とられていくべきだと思うのであります。先ほど大臣も、一応そういうような御意見もあるやに御発言があったのでありますが、この点についてもまた医師会が非常に重大視しておるところでありますから、この制限診療、規格診療というものを、この方針についてはある程度考えるというようなことをやはりここで御言明がいただければ、これもまた今のスト解決の一つの有力な足場になると思いますが、この点御意見をもう一度……。
  200. 古井喜實

    ○古井国務大臣 ただいまの制限診療の撤廃の問題でありますが、これは医師会がおっしゃるまでもなしに、大いに検討すべきものだと私も思うのであります。ただそれにいたしましても、これは御承知通りに役所だけできめるべきものでないのであります。今の現物給付の形で制限を緩和するあるいは撤廃するということであるならば、診療報酬とも関連して、やはりさっきの医療協議会の議を経るべきものであります。役所だけではいけない。さらに徹底して、フランスあるいはスエーデンのような式の現物給付をよして、診療内容は自由、金である程度補償するという行き方までいこうとするならば、これはもっと社会保険審議会などの意見も聞くべき筋合いのように思うのであります。そういう手続を経なければならぬ。これはいつまでもというのでなしに、大いに検討して結論を出すべきものだと私は強く思っております。
  201. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 不満の第三でありますのは、今の保険診療の事務の煩瑣、これは専門技術者である医者を、毎月月末から月初めにかけて全く事務屋にしてしまう。これは国家的に見ても非常な損だと思うのです。この問題の解決の仕方を一つ考えなければならぬ。今のお話のスエーデン式あるいはフランス式の療養費払い的な行き方というものは、確かに一つ考慮に値すると思うのです。この問題についてもやはりすみやかに方法一つ進められるように、心から事務煩瑣を防ぐ方法を真剣にお考えになっていただくということが必要だと思うのであります。  それから甲乙二表の問題があります。この問題も、私は医師会もこれにこだわるのは変だと思います。病院協会もこだわるのは変だと思います。同時に、この問題についてもやはり医療の実態を十分に調査なさって、また医師の話を聞き、病院の話を聞いて、厚生省は説得に出られるべきだと思うのです。こういうようにして参りますと、その問題の解決の仕方というものはないではないのではないかというふうに私は考えられるのであります。先ほどの技術料の問題でありますが、たとえばこういうような問題はお考えになれませんか。特別診察料というもの、たとえば医科大学を出まして十五年間医者をやったそれ以上の人に対しては、自由な特別診察料というものを特別にとってもよろしい、とらぬでもよろしい。とりたい人はとってもよろしい、こういう点が出て参りますと、患者の方では、やぶ医者が特別診察料をもしとれば行かないだけだ。それから技術のいい医者は、時間をかけても十分その診察をしてやっていく、一万円とろうと十万円とろうとかまわない、こういうことにしますと、そこによほど技術差の問題が解決するのじゃないか。今の療養費払いの問題でもその点がある程度カバーできるというふうにも——もっともこれは私見でありますが、考えられるのであります。フランスに行ったときにもちょっとその点を調べてみたのですけれども、こういう点、今の特別診察料の問題とあわせて療養費の問題を厚生省はどういうふうに御研究になっているか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  202. 古井喜實

    ○古井国務大臣 特別診察料のお話でありますが、これは私もきょう考え方向を申し上げる程度にも自分の考えが熟していないのであります。ただ考えますことは、先ほどの制限診療の緩和の問題などと関連をすると思いますし、それからさらに突っ込めば、療養費払いの方式いかんというような問題とも関連すると思いますし、やはりひっくるめて検討して結論を出す方がよいのじゃないかと思うのであります。これはやはり同じことに戻ってくるのでありますけれども、役所だけではこれはどうもできませんので、医療協議会のあの問題にまた戻ってくるわけであります。
  203. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 先ほど来のお話、御口吻を聞いていますと、療養費払いについては相当お考えになっているようにも思われる。しかし、この問題で一番大きな問題は、金がない人が医者にかかれぬ。医者に行くのに非常に困ることです。そこでこういう問題を取り上げるときには、少なくとも二十四時間制の、夜でもいつでも開いている医療費の貸付の機関、こういうものを市町村等におきまして必ず何カ所か大きなところに開いて、そこへ行くといつでも療養費が貸してもらえる。一件の保険診療費はそういうのが多いのでありますから、少なくとも千円くらいまでは保険証さえ持っていけばいつでも金を貸してくれるという制度を作るべきだと思う。そういう制度なしにこんなものをやられてはたまったものじゃない。こういうふうに考えて参りますと、医療費の貸付の制度というのが御承知通りにございますけれども、ああいうものをもっと十分に活用してやっていけば、そういうものも取り入れる、少なくとも十分な考慮を払う道がある、こういうように思うのでありますが、そういう点については御研究になっておりませんか。
  204. 古井喜實

    ○古井国務大臣 ただいまの点、ことに療養費給付などにいたしますれば、今の金を貸せる制度をあわせて考えることが非常に必要だと思うわけであります。農協なども普及して、だいぶ整っておりますし、具体的の問題はともかくといたしまして関連して考えるべき点だと思います。
  205. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 夜間の診療の問題でありますけれども、これも夜間の時間外診察料というものを設けるべきだと思うのです。こういうものはそうしたら解決するのではないかと思う。だから私はそういう問題を考えていけば、この医療問題は改善できないことはないと思う。ただ勇気が必要です。けれどもこれは先ほど申し上げたように非常に大きな問題である。勇気と、また先ほど申しましたような生命を大事にするという医療の第一義の問題に、経済問題を第二義としながらからませていかなければ問題は解決しないと思う。筋を立てなければ解決しないと私は思います。それにしても私はここに解決する道がないではないと思うのであります。もちろん今のアップの問題も、これを患者負担あるいは単なる保険者負担にしないためには、これはどうしても結核や精神病等を全額国庫負担、あるいはそれに近いものにしなければならぬ。今度の中でもある程度の改正案は出ておりますけれども、今のように国保は世帯主だけは七割給付だというようなことではなしに、また措置入院の者でなければ市町村の方が二割で国が八割見るというようなことだけではなしに、結核と精神病は全額国で負担する、少なくともそれに近いものにするという点があわせて行なわれますと、これらの問題が解決するのじゃないかと私は考えるのです。その点どんなふうにお考えでしょうか。
  206. 古井喜實

    ○古井国務大臣 ことに結核、精神病でありますけれども、これはお話のように今度は国保でも七割給付、しかし世帯主だけということになりましたので、これで済んでしまったのではない。問題は残ったと思います。  それから強制入院、命令入院、措置入院などの点もこまかく論ずればあれかと思いますけれども、済んでしまったのじゃない、あとは残った問題だと思います。
  207. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 まだこの点でいろいろ伺いたいのでありますけれども時間がありません。以上いろいろ伺いましたところでおわかりのように、この問題は解決できない問題ではないし、総理国民の問題として、この医療の問題がどんなに大きな問題であるかということを十分お考えになれば、解決の道はないではないと私は思う。今日まで厚生省と医師会が対立をし、また病院ストが起こって解決をされないということは、私には政府の怠慢といわれても仕方がないのじゃないがというように考えられるのであります。先ほど来申しましたように、大きな問題としては最近では少なくとも昭和二十八年、もちろんその前からの問題でありますが、この問題が今日までこうやってほっておかれたということは、やはり私は最初に申しましたように、ほんとうに国民の生命を大事にするということに対する熱意というものが足らないのではないか、こういうように疑われても弁解の余地はなかろうと思う。すみやかにこの問題を一つ解決をしていただくように、強く要望する次第であります。  まだほかにたくさんありますが、次の問題に移ります。今度いろいろお出しになりました改正等を見ておりますと、非常に重大な問題として、医療の谷間があると思います。医療の恩恵を受けられない谷間の問題がある。今度の予算書を見ましても、どうもこの問題は十分納得のいくほどの解決ができておらぬというように私は思います。  まず第一に無医地区の問題であります。御承知のように、半径四キロの中に人口三百人以上で、医師のいない地域を無医地区と呼んでおるようでありますけれども、この無医地区が、三十三年の八月の調査で千百八十四ある。無歯科医地区が二千四百二十四、このうちで第二種無医地区といわれておりますのは、人口、面積、地勢、交通の状況というところから、医療機関が設けられても経営困難、これが全国で六百五十六カ所あります。この無医地区の解消についても御尽力になっておることはよくわかりますけれども、しかし、今の程度の御尽力では、とうてい解決しないというふうに思われるのであります。また第二種以下のいわゆる特別僻地と呼んでおりますようなところ、こういうようなところもずいぶんたくさんあるわけであります。今度の予算を見ますとこういうところに診療車を回送いたしまして、幾らか穴埋めをしようとしておるようでありますけれども、こういうような消極的なことでは解決しないと思います。この無医地区の解消について、私今度の予算を見ますと非常に予算が足らぬ、また方針が足らぬ、やはりここにも十分な熱意を見出すことができないように思いますけれども、この無医地区の解消について首相は一体どういうように思いますか。
  208. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 今日のお話は私は大体においてわれわれも了解をし、同じ方向ではないかと思っております。御意見の点を十分に考えまして努力いたしたいと思います。無医地区の問題は以前から非常に政府としても考えておることで、お話しの通り無医地区の種類にもいろいろありますし、今早急に特別にお医者を補助して全部の無医地区をなくすということも必ずしも困難な状況でございますから、財政の事情その他を見まして、できるだけの努力をいたしたいと思っております。
  209. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 この無医地区の問題で非常に大きな問題は、医師の問題であります。一体国立病院その他のいわゆる公的医療機関というもの、これが開業医と競合している今日のあり方というものは、あるべきでないと思うのです。無医地区のような、こういう困難な問題の解決に、これに向かって国が、あるいは公的医療機関がなぜもっと大きな力を入れないか。こういう点が、やっていないとは言いませんけれども、きわめてわずかなものだ。ことにこれからは、この諸君は国民皆保険になって保険料を納めるわけです。しかし、それにもかかわらず医者にはかかれぬという事態になるわけであります。こういう問題で公的医療機関というものが開業医と競合しているというのは大きな間違いであって、なぜこういう方面にやらないか、またこういう方面に行く医師、たとい医療機関を作っても、来てくれる医師がないという大きな問題があるわけであります。なぜ医師が行けないかという問題、いろいろ理由はありましょうが、もちろんこういうところに行ったら、僻地へ行って勉強もできないということは大きな問題でしょう。子女の教育もできないということも大きな問題でしょう。けれども同時にまた非常に不便なところで、夜でも、雪の日でもあらしの日でも往診に行かんならぬということになりますと、非常な危険がある。ところが医者というものはからだ一つが資本なんです。もし命を失えばこれはどうにもならぬ。全く妻子は路頭に迷うということになります。そういうものに対する身分保障という制度ができていないのではないか。これは十分な身分保障をして、相当な特典を与えるということをしなければならぬ。そういうような努力がちっともされておらぬように思うのであります。それではこの問題は一つも解決しない、こういうように思うのでありますが、その点は厚生大臣いかがでありますか。
  210. 古井喜實

    ○古井国務大臣 無医地区の解消の問題に関連して、公的医療機関が巡回診療あるいは出張診療そういうことをもっとすべきではないかという点は、これはごもっとも千万で、これはできるだけ、きょうまでもある程度はやっておるのでありますけれども、もっと努力すべきものだと思います。  身分の保障といいますかこれはまあ共済組合のようなものでも考える方式かもしらぬと思います。保険医の方の共済組合という問題は今までも論議をしておる問題でありますが、まあ公的の方にはとにかくその身分に応じての共済制度などもありますから、残った民間のお医者さんの側について、結論はまだ出すまでに至っておりませんけれども、研究は大きにいたしたいと思います。
  211. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今の共済制度ぐらいではこの問題は解決しない。医師の身分の問題が、共済制度ぐらいでは解決しないと思うのです。そういう点をもっと突っ込んでやってもらわぬとこの問題は解決しない。  それから第二の問題は精神衛生の対策でありますが、精神障害者が御承知のように百三十万人、これは精神病、中毒性の精神障害とか、あるいは知能指数五〇以下の精神薄だとか、精神病質だとか、精神神経症だとかいうような、就労就学ができない、あるいは他人に迷惑を及ぼす、こういう者だけが百三十万人おるわけです。このうちの四十三万人は精神病院その他の施設に収容せねばならぬという人です。ところが御承知のように病床数は年々ふえてはおりますけれども、精神病床数は三十四年で七万六千床しかありません。こういうような状況であります。四十三万人の人が入らなければならぬという状況のときに、あまりにもこういうような施設——これは精薄の施設ももちろん不足しておりますけれども、あまりにもひどいではないかというように考えられるのでありますが、こういう点、今度の予算を見ましても、これは少しはふえておりますけれども、しかし大よそまだ需要に対しては問題にならぬではないかと思うのです。この点いかがでしょうか。
  212. 古井喜實

    ○古井国務大臣 大きに足らぬ方面だと思います。それで現在の病床の数は今おっしゃったのより少しふえておりまして、九万四千四百床であります。なお三十六年度には国庫補助の分、国立療養所の分、また医療金融公庫の貸付によって作らせる分、合わせて八千八百床をふやしたいという計画を持っておるところでありまして、これで済むわけではありませんが、それだけの努力をするわけであります。
  213. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 御承知のようにこの精神病床でも、人口一万対日本八・三であります。イタリアは一七・九、フィンランドは二二・八、スイスは三五・七、スエーデンは四〇・九、アメリカ、ニュージーランドは四五・四、こういうような数字になっております。でありますから、日本がいかにこの点でおくれておるかということが——少しこれは古い数字と言えば古い数字かもしれませんけれども、一応こういうような数字になっております。どんなにおくれているか、この点に対する対策というものが、やはりお茶をにごす程度にしか考えられぬじゃないかというように考えられるわけであります。  それから第三の谷間としては低所得者層の結核の問題があります。結核の死亡者が最近減少いたしまして、昭和二十五年までは毎年十万人を数えておった。その死因別としては第一位であったものが、三十四年にはわずかに三万三千人だ、また第七位になったというわけであります。しかし考えなければならぬことは、低所得者層の結核が変わってはおらぬということです。これは厚生白書にも出ておりますけれども、江戸川福祉事務所の被保護者の結核の実態調査あるいは大阪市の民生局の調査等を見ますれば、実にりつ然たるものがある。日本の最悪の結核のときがまだこの低所得層においてはそのままであります。一般の結核の十倍というような事態になっておる。その半数が空洞を持って、八六%が排菌者であるというような事態であります。自覚しても医療を受けない者が二五%もある、あるいは要入院者の入院率——入院しなければならぬ者がわずかに三五・四%しか入院できないというようなふうになっております。病床がないのではない。病床の使用率は、結核は御承知のように大体八〇%ぐらいで、二〇%ぐらい余っている。にもかかわらずこれがこういうことになっている。低所得者層においては非常にひどいことになって少しも改善されない、こういうようになっている。この問題が一つやはり大きな医療の谷間、特に今直面する大きな問題だと思う。もちろんこの問題につきましても今度の予算の中にあります。対策がある程度できています。けれども、しかしこの実態から見ますればこれは問題にならぬと思うのであります。この問題について御意見をお聞きしたい。
  214. 古井喜實

    ○古井国務大臣 結核と低所得者層の関係でありますけれども、これは確かに低所得者の方に多いということは数字の上でもはっきり出ております。それで今計画しておるのが足らぬというようなお話でありますけれども、国保のあの給付率の引き上げなどもそういう辺を考慮しておることであるのでありまして、さらに今後拡充していく道をとりたいと思っております。
  215. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 さらに第四の谷間として当然考えられるのは、扶養義務という言葉によって、被扶養者であるけれども、扶養義務を持っております者が費用を出さない、生保あるいは国保の一部負担を出さない、こういうことのためにできない、あるいは少額の財産を持っておるということのためにできない、生活保護にかけることができない、あるいはまた皆保険になってきて、なおさら重大な問題となりますのは、国保の半額の自己負担分というものを払うことができない、そのために病気になり、保険料を納めておりながら保険を利用しない、医者にかかれない、こういう人々があるわけであります。こういう人々に対する対策というものは、まるきり進んでおらぬ。もちろん医療費の貸付という制度はあるにはありますが、しかしこういうような事態で、必ずしも実際には十分に使われておらぬというように思われる。だから、こういう問題に対する対策というものがもっと進められなければならぬと思いますが、今度の予算書を見ても、どうもそれがない、何らそういう施策がないと思いますが、この点はどうでございましょうか。
  216. 古井喜實

    ○古井国務大臣 生活保護関係で扶養義務者がある場合、あるいは財産がある場合には、ある制限があるわけでありますけれども、しかし、これも相当な部分は、運用の妙を得るならば実際的にいい処理をできる部分もあると思うのであります。しかし、運用だけでは足らぬかもしれませんけれども、まず運用の適正を得るという点からこの問題は考えた方が穏当な道ではないかと今思っております。
  217. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 時間もありませんから次の問題に移りますが、生活保護の問題でこれもいろいろ聞きたいこともありますけれども、ごく重要なもの一、二だけ伺って参りたいと思います。  保護基準を上げるということが今度の予算でも出て参りました。一八%上げるということになりましたが、御承知のように、生活保護の保護基準というものが大きな問題となって取り上げられて参りました。ことに朝日判決がありまして以来、この問題が非常に深刻に考えられてきたわけでありますが、初め厚生省は二六%アップしよう、それは最低限だと主張しておったというように伺っておるのであります。それが一八%になったということでありますけれども、この二六%がついに一八%アップになってしまったということについて、厚生大臣はどうお考えになりますか、大蔵大臣はこれをどういうようにお考えになっておりますか、その点を承ります。
  218. 古井喜實

    ○古井国務大臣 保護基準一八%までしか上げられなかったという点でありますが、できるならもうちょっと上げたいと思ったのでありますが、これは他の機会に申し上げましたように、不満足といえば不満足でありますけれども、今まで一%か二%くらいしか——一番多い昭和三十二年度で七・五%いっときに引き上げたような過去の例に比較いたしますと、とにかく一挙に一八%引き上げたということは画期的なことでもありまして、十分とは申しませんけれども、この際はこの程度にして、また次の段階で考えるほかはない、こういうふうに思ったのであります。
  219. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 大蔵大臣、この点……。
  220. 水田三喜男

    ○水田国務大臣 今厚生大臣からお話がありましたように、過去のいろいろな上げ方もございましたが、これも実際の一般の勤労者の賃金の問題、いろいろな問題との均衡をとって、過去でも引き上げをやってきましたのですが、今回もこの問題は一番重要に考えまして、最近の消費物価値上がりとか一般の労働賃金とか、それからそのほかの政府施策によるものの今度の予算強化の割合とか、そういうものとの総合勘案の結果、一八%ということにいたしましたのですが、問題は、この生活保護によって保護をされる被保護世帯の勤労意欲をなるたけ向上させるという方に、今非常に意味があると私どもは考えまして、これが働いて少しでも収入があったらすぐに保護費を打ち切られるということが、今までいろいろな障害をなしておったと考えますので、私どもは勤労控除を引き上げるということ、それから住宅、教育、生業の各扶助基準も引き上げる、そして期末一時扶助も、今までなかった制度でございいますが、これをこの前の補正予算のときにいたしましたが、これを今回も強化する、こういうような幾つかの保護を厚くする措置との見合いもまた考えまして、大体この一八%というのは、当初まあ私どもの大蔵省原案の過程では、そういう点を考えて一五%と私どもは考えておりましたが、いろいろの情勢を見まして、財政の許す範囲内で最大限の引上げをしようとしてやったわけであります。
  221. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 一八%上げたのについて幾ら幾らということは予算でわかっておりますが、もう幾らあったら二六%になるのですか。またその際における被保護者の人数の増、これはどういうことになりますか。
  222. 古井喜實

    ○古井国務大臣 数字事務当局から申し上げます。
  223. 太宰博邦

    ○太宰政府委員 ちょっとこまかな数字は今覚えておりませんが、約十億前後であろうかと思います、その点だけで申しますれば。
  224. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 あと十億だということで、私はちょっと違った数字を持っておるのでありますけれども、大体十億ぐらいという話でありますが、十億ばかりの金が、どうでしょうか、二六%を一八%に切らなければならぬという数字でしょうか。総理はいつも口ぐせのように格差をなくするということを言っていらっしゃるのでありますけれども、この最低の生活をしておる——朝日判決におきましては、御承知のように、今の生活保護の保護基準では憲法違反だという判決が出たわけです。そういうようなときに、社会的なあるいは経済的なその他いろいろな原因からいたしまして、一番社会の底に悲しい生活をしておりますこの人々に対してわずか十億の金、しかもこれは御承知のように六十万五千世帯、百六十三万八千人、これは三十五年六月現在でありますが、この百六十万、しかもこれは実は固定的に沈澱しているのではなくて、いわゆるボーダー・ライン層というものと交流をしている。大体年間三分の一ぐらいで交流して循環をしておるのであります。従ってボーダー・ライン層六百八十五万人合わせて八百五十万人、人口の九・二%という非常に膨大な人々に関係しているわけです。この人々が、ボーダー・ライン層と被保護者とが交流をしているというような形になっているわけです。こういうような人口の約一割にも及びまする不幸な人々、いざというときにその最低を守るという、こういうようなものにわずか約十億ばかりで何ゆえ二六%を一八%に切らなければならなかったか私には理解できない。総理のいつもの生活あるいは地域、職業、収入等の格差をなくするという御言明にもあまりにもふさわしくないやり方である。この八百五十万人にも及びまする人々に関係いたしまする重大な問題を、わずか十億ばかりのことで二六%を一八%に切ったということは、これは私には理解できないのでありますが、総理の御意見はいかがでありますか。
  225. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど厚生大臣がお答えいたしましたように、われわれは従来から生活保護基準を引き上げたいというので、過去十年間だんだん上がってきておるのでございます。過去の実例を見ましても五人世帯で百円か二百円、三十二年の石橋内閣のときに七・五%、六百円ばかり上がったと思っております。こういうことを考えましてまあ一八%なら一つがまんしていっていただいて、今後またできるだけ早い機会に引き上げをいたしたい。一般の生活水準の引き上げと比較いたしまして、生活保護基準上昇が劣っているということは私も十分認めております。しかしやはりものには程度があるのでございます。一ぺんにぱっとやるということよりも徐々にやっていくことが財政のあれからいっても当然である。私は、今度生活保護基準の引き上げと同時に、今生活保護を受けておる人が失業対策その他にいった場合にその収入のほとんど八割あるいはそれ以上を取り上げている、こういう勤労控除というものを拡大するのもこれは一つ方法じゃないか。いわゆる生活保護を受けておる人がそれより上に上がっていくということも考えなきゃいけない。これで多分十三、四億いっておると思います。それから住宅関係の方においてもやはり四億くらい、それから期末の手当で一億数千万円、こういう記憶をいたしておるのでございます。今の一八%を二六%にして、十億という正確な数字は存じませんが、これを上げていきますと、今生活保護を受けていないそれよりもちょっと上の人、これをまたどうするかという問題があるのであります。私はこの点は今までの倍以上、今まで一番上げたときの倍以上上げておるのでございまして、そうしてほかの施策とも一緒にやっております。それから今後これをやっていく、上げていこうという考えで、この程度で御了承願いたいと思っております。
  226. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 今までわずかしか上げなかった。ほとんど米が上がるときに米の値段だけ上げたとか、あるいはほんのわずかずつ手直しをしたというのがずっとであります。昭和二十一年以来確かにこの制度はだんだんよくなってきています。しかし今までのやつは実にわれわれが何べん社会労働委員会で強くそれを主張しても、厚生当局はほとんどろくにお取り上げにならないでやってきたのであって、今までから見れば一八%というのはとんでもない上がったのじゃないかといいますけれども、今までのが問題にならぬ。だからついに憲法違反というような判決が出てしまった。政府ではあの判決をどうなさるか知りませんけれども、およそ憲法違反というような判決を国でやっている生活保護がされるというようなことは、こんなみっともないことはないと私は思うのです。今までが問題にならぬ低いものである。これはもう基本人権を守る憲法二十五条というようなものとはおよそ縁の遠いようなものであった。少なくとも今のままでやってきたということについては、これはもう政治を担当する者はみんな反省せねばならぬ。これがわずかに十億円あるいは十三、四億円そこそこの問題でこの八百五十万人の人々が——これは、ちょっと落ちる、すぐこれにかかる、そうして立ち上がった、また次の人が何かで落ちる、これにかかる。ことにこの被保護者のうちのいわゆる不就業者の半数は、傷病人、病気かけがをしている人であります。こういう状態考えて参りますと、そしてまた実際に就業している者でも、自営業者が二八%ある。これはどんな生活をしているのか。常用の就業者は二一%、あるいは日雇いは三三%、内職が一八%というようなふうになっていますが、大体月収が二千円から六千円までの人が二分の一というような、こういう状態であります。こういう状態でありますから、大よそ十億円や十五、六億円というような金が、今日の二兆円予算を組むときに、こんなものを惜しむというのは、何だかここに池田内閣の本体が暴露するような気がする。何だかやっていることはおやりになるけれども、いろいろあっちこっちやっていらっしゃるけれども、どうもあかぎれこうやくをあかぎれにつけているような格好に見える。その程度社会保障政策をおやりになっているというように感ぜられる。その最も端的に見えるのがここなのであります。こういう問題はずいぶんと、この人口の約一割にも及びまする人々が、大きな関心を持って見ておるわけであります。また、その人々の人権を守るために、こういうようなわずか十億か十四億の金を切るというようなことはすべきでないし、また、厚生大臣自身もこの点は、私どもが聞いているところでは、二八%が最低線だといって強く主張しておられたのに、これを引っ込めるというのは、古井さんらしくないとも思う。これをなぜ主張なさらなかったか。また、大蔵大臣としても、なぜそんなわずかなものを切らなければならなかったか。どうもここらに、先ほど来いろいろ具体例を申し上げてきたのでありますけれども、やはりこの内閣の性格というものが暴露するような気がするのであります。しかし時間もありませんから、次に国民年金の問題に移りましょう。  今度いろいろな改正案が出まして、確かに一歩前進であります。しかし、私今度の改正案をいろいろ拝見し、予算を拝見しまして、そして率直に感じますのは、今度出されます改正案というのは、わずか一年前にお互いに国会におきまして論争し、そして社会党が主張いたしました主張のうちのあちこちを、いわば小出しに、あるいはこま切れに改正をしていらっしゃるように思うのです。いかにも不見識のように考えられる。そんなことなら一年前にわれわれが主張したときに、今の現行法のようなものでなしに、なぜお変えにならなかったのか。わずか一年であまりにも不見識だというように考えられるのであります。古井さんが当時厚生大臣でなかったわけでありますから、古井さんの責任を追及するのは気の毒だとも思いますけれども、まあ自民党の幹部でいらっしゃったから、この点今厚生大臣としておやりになるとしていかにも見識がないと私は思うのだが、この点はどうですか。
  227. 古井喜實

    ○古井国務大臣 国民年金の内容でありますけれども、不十分な点もあると思いますために、わずか一年でありますけれども、すぐさまにも直すべき点は直そう。こういうわけでありまして、全部がこれで大きく解決されて、済んでしまったとは思いませんけれども、漸進的にまず議論の一致した点から改正していきたい、こういうことで、数個の点を今度改正したい、こういうように考えておるわけであります。その他は今後の問題に残しておきますけれども、これも捨てたわけではないわけであります。
  228. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 しかし、今度五つばかりあちこち改正をなさるようでありますが、これらの改正もきわめて不徹底きわまるものでありますけれども、そればかりではありません。まだそのほかに、今度改正の日程に上がってきて参りました問題以外にも、重要な問題がなお相当残されておると思うのであります。改正をおやりになるならば、そこまでもっと突っ込んで改正をすべきであると思うのでありますが、それらの点について重要な点を三、四お伺いをしてみたいと思うのであります。  まず、物価の問題であります。物価と年金の給付額の問題でありますが、先ほど午前中、物価問題を激しくいろいろと同僚議員が御質問になりました。ちょうど私調べものがありまして座をはずしておりましたので、あるいはちぐはぐになりますと大へん恐縮でありますが、現行法では、御承知のように、第四条に、一応生活費その他の著しい変化のときには、ある程度処置をするように書いてございます。しかし、御承知のように、今日国民年金をいよいよ四月一日からやるというときに、相当な反対の勢力もあるわけです。また、その反対の主張の中にも、私はもっともなことがたくさんあると思う。その中の一つであります物価が将来上がっていくということになると、まあ二十才の人がかければ、四十五年たたなければ給付金、老齢年金がもらえないのだ。その間に物価はどうなるかということが非常に大きな心配になってくる。だから、当然生活費の変動、物価の変動に対するスライド制を取り入れるべきであるし、その基準というものを法律の中に明確にうたうべきだ。これが年金に入りまする国民諸君の非常な心配のもとなんです。当然、基準を法律の中に書くべきだと思う。これが何ら改正を見ておられぬようであります。物価が上がる、上がらぬという、いろいろ話はありますし、所得倍増計画も、三十三年を土台といたしましてやっていくというような、いろいろな計算も出ておりますけれども、まあ、昨年、三十五年、一年で、大体東京の消費物価は三・八%上がっているというような数字が出ておるようであります。こういうように考えますと、二十年、三十年、四十年という先に年金の給付を受ける者にとりましては、当然物価に対するこのスライドの問題が大きな心配になるのは当然のことであります。なぜ基準を法律に入れないのか、その点を承りたい。
  229. 古井喜實

    ○古井国務大臣 将来、物価が上がっていくとか事情が変動した場合にこれを改めていく基準を具体的に法に書き上げるかどうかという問題でありますが、これは今後検討することは十分そう思いますけれども、具体的にこれをきめるということはなかなかむずかしい面もあるのじゃないだろうか。また、きめましても、スライド制にも、当然自動的にいくようなきめ方はなかなかむずかしいのじゃないかと私は思うのであります。むろん、この物価等の、生活費の上昇などがありますれば大きに考えなければなりませんけれども、一方、必ずしも十分、それが決定的とは言いませんけれども、財政事情なども考えなければなりますまいし、やはりこのスライド制をほとんど自動的に近いようなところまで書くというところには、もう少し検討いたした方がよいように思うのであります。ただし、上げていくという方針はきまっておるのでありますから、あとは運用の妙を得るということを考えることが穏当ではなかろうか、一応今のところはそう思っております。
  230. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 公務員に対する人事院勧告についても、御承知のようにちゃんと基準があるわけです。それだから、基準ができないというのは困難だからというようなことはあり得ない。だから、公務員の人事院の勧告にちゃんと基準がある以上は、これに当然基準考えられるのはあたりまえだ。今の基準がむずかしいというようなことは、私は納得できない。この点どうして基準ができないのですか。公務員の人事院勧告にはちゃんとあるじゃないですか。だから、これができないということは言えないと思う。こういうことをちゃんときめないというところに、ある意味では年金をかけます国民に対しまして一面においては非常な不親切、一面ではまた非常に官僚独裁のような形になっている。それだから、今、私はこれを後に伺いますけれども、三月二十一日までに登録しないときにはどうなるかという大きな問題が出てくるわけです。今後の国民年金が一体うまく続くかどうかという問題も出てくるし、同時に反対の意向を持っております国民諸君に対しましては、大きな影響が出てくるわけであります。でありますから、先ほどの医師会あるいは病院ストの問題と同様に、この問題もやはり親切にやってやらなければだめだ。およそ、社会保障制度を前進させようとするならば、こういう点を親切に考えなければだめじゃないか。基準が人事院勧告でははっきり出ておるのに、これを出せないというのはどういうわけか。もう一度お答えをいただきたい。
  231. 古井喜實

    ○古井国務大臣 検討しないと申しておるのではないのでありますけれども、それにちゃんと、ほとんど自動的に近いくらいに具体的なものがきまっていくような基準を書くことは、なかなかむずかしかろうと思うのであります。人事院の勧告俸給の問題がありますけれども、俸給はとにかく、生活費を全面的にささえるものでありましょう。国民年金はこれで全部の生活費をささえるということにいくのかいかぬのか、これは上げるにもまだ基本にもいろいろ問題があることでありますから、この基本をそのままで、スライドするというだけの点で、精密なよい規定ができるかどうか、研究はいたしますけれども、今後の研究にもう少し待ちたいと思うのであります。
  232. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 どうも古井さんのお言葉は、あまりにも官僚的というか、非民主的というか、こんなことがきまらぬはずはないのでありまして、これが一つの大きなガンになっておりますよ。今の国民年金に対する加入を拒否する人の、反対だという人たちの一つの大きなネックになっておるわけです。だから、こういう問題はきまらぬはずはないのでありまして、その点、私は、まことに非民主的であり、不親切であると思います。時間がありませんから、——拠出年金の保険料と申しますか、拠出金と申しますか、これが定額になっている。私ら社会党は、御承知のように、これは定額制はいけない、こういっているわけです。当然これは所得割、資産割、均等割というような立場をとるべきです。どうしてこれができないのですか。
  233. 古井喜實

    ○古井国務大臣 その点は、主義、考え方として、資力に応ずるということがいけない、こういうことを申すのではありませんが、立法の当時から、これは大いに議論のあった問題であります。実際問題として何を標準にして差別を設けるかという辺にも多々議論はまだ残ると思います。考え方を否定するわけではありませんけれども、そういう辺もありますので、さらに検討したいと思うのであります。
  234. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 御承知のように、国民健康保険でも、保険料をとりますのに、所得割、資産割、均等割という立場をとっておるわけです。だからそれとどうしてこれが違うのですか。いろいろ御意見のあることは私も承知しております。学界にもいろいろ御意見のあるということも承知しておりますけれども、一応とにかくこれを発足させるにつきましては、そういう点をとらなければ、いわゆる働いておりまする大衆、貧しい大衆の方に割高になるではないか。ことにこの積立金というものを使用する点、どういう方面に使用するかというこの点を後にお伺いいたしますけれども、そういう点を考えて参りますと、当然これは国保と同じように、所得割、資産割、均等割という点にいくべきではないか、しかも非常に膨大な積立金ができる、そういうふうにいくべきではないか、こう思うのでありますが、それができないという理由が私にはわからないのであります。今の現行法の行き方では、大衆はむしろ非常に割高になる。だから、ここでも総理のおっしゃいますところの格差を縮めるということと反対になってくるじゃないか。国民健康保険でもやっているんだから、これができないという理由、またやるべきでないという理由は立たぬと思う。どうもこういう点にも非常に今日の政治のやり方というものに対して私は心外なものを感ずる。どうしてできないのですか、もう一度……。
  235. 古井喜實

    ○古井国務大臣 国民年金制度というものについては、ずいぶん考えてみれば議論をすべき点がたくさんあると思うのであります。今おっしゃる点も一つの点でありましょうし、金額の程度なども大きに問題でありましょうし、いろいろ基本的に論ずべき点は残っておると思うのであります。そこで、そういう方面の今後の改善、拡充を考えないはずのものじゃありません。将来もっとこれは内容の豊かなものにもしなければなりませんし、改めなければならぬ点もあると思いますけれども、とにもかくにも制度が発足して間もないことでもありますし、はっきりこれはもうだれが考えても当然だと思うものは今回改正いたしますが、その他の点についてはなお実際に即してよく考えて結論を出したいものだというふうに考えておるのであります。
  236. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そういう行き方では、私は生活水準の格差をなくすというようなことはできない、反対になっていくというふうに思うのであります。同時に、これもまた同じような問題でありますが、老齢年金の問題であります。御承知のように、四十五年かける、満期になると、満期までみなやった人は三千五百円もらえる、二十五年では二千円、十年では千円、十年未満ではゼロということになります。一体このボーダー・ラインにおりますような低所得の人々にとりまして、もちろん免除される人は別でありますけれども、年四回拠出金を出す、一回夫婦でやれば千円ぐらい出さなければならぬ、年にすれば四千円、これを十年も二十年もかけるということは容易なことでないということは、これはだれでもわかります。これがたとえば十年未満、五年かけてやめになった、これは全然ゼロになるという形になるわけであります。こういうようなことになりますと、これはやはり所得再配分という社会保障制度の原理が逆になって、逆配分になってしまうと思うのであります。今度こういうような改正のいろいろな案を出されたのでありますが、なぜこういう点をも改正なさることになさらないのでしょうか。こういう点に触れられないということは、所得再配分の原理に立ちまするこの社会保障が逆になってしまうのではないか。さっき言ったように、非常に膨大な人口の層があるわけであります。こういう人々が、もちろん生活保護と同水準といえばこれは免除になりますが、少し上の人はこれはかけなければならぬ。これが途中までかけてだめになってしまった、ゼロだということになったら、これじゃもう所得再配分じゃなしに、逆配分になるのではないかと思うのですが、この点どうですか。
  237. 古井喜實

    ○古井国務大臣 できました初めの法律には、例のかけ捨ての問題がありますので、これはいかにももまずい、こういう意見が一致いたしておりますので、今度改善したいと思うのであります。しかし、ある程度の期間の納付が要りますということは、こういうふうな保険的な体制をとっておるのでありますから、その利益を得ますためには必要な限度もありますので、かけ捨ては今度は改めますけれども、全然一年も納めなくてもいい、足らなくてもいいという、こういうふうまではこの建前としては行き得ないでおるわけであります。悪い極端な点は改めるわけであります。
  238. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 これは今申し上げたように逆配分の形になるでしょう。もしそういうことになりますと、非常に気の毒なボーダー・ライン層、その生活に近い、それよりちょっと上の諸君というものは、大体ただとられてしまうということになるでしょう。死亡した場合は死亡一時金が今度出るようになりましたけれども、そうでない人は途中でだめになってしまいませんか。
  239. 古井喜實

    ○古井国務大臣 今の、原則的に全部取り払ってしまうというわけには参りませんけれども、しかし免除を受ける人間の場合の取り扱いでありますが、この点については、少し詰めて今検討しておるところでありまして、ある程度の解決を、十分とまでいかぬでも、する道があるのではなかろうか、これは今成案を研究している中途であります。
  240. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 研究をしている中途であるならばこれ以上追及いたしませんけれども、しかし、ここらにもどうもずいぶん不親切な、民主的でない政治のやり方というものが浮かび上がってくると思うのであります。  次は、積立金の運用の問題でありますが、御承知のように、積立金がピーク時におきましては三兆六千億になり、また厚生年金の積立金が四兆八千億にもなる。こういうような両方合わせまして八兆四千億というような大きな積立金ができるときがくるわけでありますけれども、この積立金の運用の問題が、また同時に今日国民年金に入ることをいやだという人々の大きな問題になっているわけであります。御承知のように、社会保障制度審議会の建議があり、国民年金審議会の答申がある。また資金運用部審議会の方の答申も出ておるようであります。社会保障制度審議会におきましては、私ども社会党の主張とほとんど同じでありまして、これは本来は厚生省で管理すべきものだ、そして少なくとも根本的には各種年金、それに類するものを一つにいたしまして、特別の会計を起こすべきだというように主張しておるのでありますが、当分やむを得なければ、特別勘定としていくようにというようなことを、社会保障制度審議会では建議をいたしておるわけであります。また国民年金審議会の方も、少しそれと違うけれども、ほぼ同じような答申がなされておるわけであります。この答申、ことに社会保障制度審議会につきましては、設置法においてこの答申については十分尊重しなければならぬというようになっております。ところが、どうも巷間伝え聞くところによると、必ずしもそうならない。これは一体どういうように運営していくつもりか、まず厚生大臣に伺います。
  241. 古井喜實

    ○古井国務大臣 この国民年金と厚生年金は似たような性格もありますけれども、特に国民年金は一体どういう人から出した金かと考えますと、まことに零細な事業の従事者あるいは農村の人、そういう弱い貧しい人々だけから出した金でもありますし、この金の性格から考えまして、この金の行方が心配だ、あるいは疑問が起こるということでは、とてもこれは納得が得られないと思うのであります。またこの金がなるべく身近な方面、自分たちの身近な福祉施設など、あるいは国民生活に直結したような方面に運用されるのでなければ、使途としてこれは適当でないわけであります。そこで、この積立金の使途につきましては、国民生活に関係を持つ、特にまた身近な福祉厚生施設などに振り向けるような方向考えまして、今年の計画でもごらんいただいておる通りに、基幹産業とかあるいは輸出振興などの方面には全然振り向けていないのであります。この金の趣旨に従って運用しなければならぬのだと思うのであります。またこの金がそういう使途に使われるように、安心がつくような運用の手続、方法も守らなければならぬわけであります。またその結果、こういうふうになっておるということも国民にわかるようにしなければならぬわけでありまして、金の趣旨に合いますようにいたしますることは、先ほどおっしゃった答申に合うように考えたい、この点はもうはつきりそう考えておるのであります。その趣旨については答申の通り考えておるわけであります。
  242. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 お話のように、これは非常に零細な人々が拠出したものである。しかも非常に膨大な金になる。日本の将来の、ことに倍増計画その他に対してもこれは非常に大きな影響を及ぼしてくる問題でもあります。所得格差の是正の問題、あるいは景気の波に対しまするいろいろな経営の問題等々、あらゆる点で、これは使いようによっては非常に大きな効果をあげる問題であります。けれども、いずれにいたしましても、私が今申しましたように、零細な人々が出したのでありますから、理論的な考え方としては、これらの人々の福祉のために使うというのは当然過ぎるほど当然です。さればこそ社会保障制度審議会の答申があって、——まあこの答申を読んで私は正しいと思うのです。当然こうすべきであると思うのでありますけれども、この点非常に重大な問題でありますから、総理大臣の御意向を一つ承りたいと思います。
  243. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国民年金の使用の方法につきましては、審議会の答申をもとといたしまして、大蔵、厚生両大臣で今検討いたしておるので、私は両大臣が円満な妥結案を生み出すことを期待いたしております。
  244. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それでは具体的に言います。これは特別勘定としていくのかいかぬのか、この点を一つ厚生大臣に伺います。
  245. 古井喜實

    ○古井国務大臣 先ほど申しましたような実態を確保いたしますれば、実質的にはこれは特別勘定と称するものと一つも変わりはない。そこでこれを事務的に格好をどう仕上げをするかということを、今総理が申されたように大蔵大臣とも話したところでありまして、実態については一つも答申と変わったところはありません。仕上げをいま少し論じておる、こういうことであります。
  246. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 この点が、この会計の明確さ、ことにその使途の明確さというものが明確になるかならぬかということが、今反対をしておりまする人々を納得させるかさせないかの、これまた一つの重要なキー・ポイントである。それだから、この点で私は今安易な妥協をされては困ると思う。そうすると、われわれはその反対者を説得する道がなくなる。だからこの国民年金という問題は、これは反対だという、つぶしてしまえというようには私は考えないのであります。これを当然あるべき姿に、これを拠出いたしました零細な生活をしておりまする方々のほんとうに生活の福祉のために使うという線が、徹頭徹尾、徹底する必要があると思う。それがはっきりすれば、国民諸君はわからぬことを言うわけではないのであります。ただ自分たちが非常な苦労をして、しかもたとえば二十才の人でございますならば、自分がもらうときまでには、老齢年金はおそらく二十数万円になっている。そういうようなことを自分の生活からわきへよけてやっていくということは実に重大なことで、私ははたしてそれができるかどうかと思って非常に心配しているのであります。また零細なる農民諸君にしてもそうです。それができるだろうか。反対だという諸君も確かに無理はない。四十年春先にもらうものを、零細な農民を初め働く人々が一人について二十何万円も横にして積んでおくというようなことは、それはもうとうていたえ得るものではなかろう。だからそれをたえさせるには、その積立金というものを、その人々の生活を直接よくするところの福祉に使うということが明確にならなければ、これは承知しませんよ。事実不可能でしょう。おそらく不可能だと思う。そういうことにこの積立金が用いられて参りますならば、事実その金はいつでも自分たちの生活をよくしていくということになりまするから、総理の言われまする生活の格差ということをなくすことにも役立って参ります。けれども、もしこれがそうではなくて、独占企業というようなものに持っていって使うということを主にしていく、その独占資本というようなものをもうけさせるために使うということになれば、逆に格差は大きくなるということになる。しかもこれは非常に安い利息で回すことになります。何といっても五分五厘か六分五厘というような安い金で回すことになりますから、なおさらであります。どうしてもこれは明確に、むしろこれを厚生省が管理して、特別にこういうような年金のこの種のものは一つに集めまして、やっぱりそういう基金を作っていくというような形にして、そういう会計を独立して作っていくという形にしていくのが、最も明確で、拠出する人々を納得させる道だと思う。しかし一歩を譲って、一応しばらくの間は資金運用部に持っていくにいたしましても、少なくともこの困難な問題を反対する人々に納得させるには、これを明確にしなければならぬ。特別勘定でこの収支というものを明確にし、そうしてそれが福祉に使われているということをはっきりさせなければ、納得しないと思うのです。だから、この点は総理も先ほどのような責任のないことを言わないで、——もう四月一日からやるかやらぬかということで非常な問題が起こってくるわけであります。この点一つついでに伺っておきますけれども、もし四月一日になってなお登録をしないという人については、罰金一万円という罰則がついていますね。それをやるかやらぬかということです。もし納得しないという人には、その法律の罰則を適用するのかどうか、こういう大きな問題が出てくるわけです。一体罰則を適用するのかどうか、この問題を一つ厚生大臣にお伺いいたします。
  247. 古井喜實

    ○古井国務大臣 もともとが今の厚生年金にも入れないような五人未満というような企業の従業員とか農村の人人、弱い人々だけからとる資金でありますので、この金を、届け出でも今日までだいぶん苦労がありますけれども、いよいよ徴収ということになると、これはなかなか苦労の多いことだと私どもも思っておるのであります。そうしてほんとうにどうも無理だというような場合には免除する制度もありますが、この免除する制度の運用も、乱に流れては全体がこわれてしまう。しかし、妙を得なければ実際に合わないということになってくる。その辺も実情を考え、この制度を育てていくという大目的も考え、よい工合に苦心して運用していきたいと思います。
  248. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 免除する人はちゃんと法律で免除するのだからそれはいいですよ。ただ問題は、そうでない人人が、納得しないものを、先ほど来申しましたような非常に莫大な金を積んでいかなければならぬ。これを無理やり罰則でおどかしてここへずり込んでいくということが、私は、およそ民主主義政治の根本と反するものだと思うのです。そうではなくて、今の反対をする諸君にも多少の理があるのですよ。大衆からそういう金を吸い上げて、非常に生活の困難な人々からこれをなお吸い上げていくというためには、少なくとも納得させるだけの使途がはっきりしなければならぬのですよ。それをはっきりするかどうかが今の会計をどうするかという問題なんです。だから私は、この点はあくまでも、この金はもう国民の福祉のためのほかは使わないという点は明確になっていなければいかぬ。一体四月一日からこれに反対する人をひっくくるかどうかという問題が目の前にきておるわけです。総理どうです。少なくとも特別会計を作ってはっきりしていくという御返事がいただければ、反対者の諸君に私どもは説得する道がありますが、そうでなければ私どもも反対者の人を説得する道を失う。総理の明確な御答弁をこの際承っておきたい。
  249. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国民年金というのは、社会保障制度の一つの大きいあれでございまして、私は国民方々が進んで御加入になることを希望いたします。熱望いたしておるのであります。従いまして、昨年作りました法律につきましても、いろいろな議論がある点は、世論を聞きながら是正いたしておるのであります。そうして積み立てられたお金をどういうふうに使うかということにつきましては、私は委員の方にも自分直接で意見を聞いております。考えは持っておるのでありますが、せっかく厚生省と大蔵省といい案を作ろうとして努力されるときに、私が今すぐここで結論を申し上げるということは、いかがなものかと思います。ただ問題は、みんなが進んで加入なさるように受け入れやすいものにしなければならないということは、私もあなたと全く同感でございます。
  250. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 まだその点も深く追及しなければならぬけれども、時間もありませんから、最後に一つ伺いたいと思います。  それは所得倍増社会保障制度との関係でありますが、十二月十二日の衆議院本会議におきまして、わが党から代表質問をしました山本君の質問に対しまして総理は答弁されました。その答弁の中に——要するに厚生省をしかった、厚生大臣をしかったという問題です。当時御承知のように新聞の報ずるところによりますと、大卒さんもあれは厚生官僚のクーデターだと言って、厚生白書の発表について非常に強い非難をなさったように新聞は書きました。事実は知らないが新聞は書きました。その問題でありますが、そのことについて山本君が伺いましたときに、総理はこういうように言っておる。「あの厚生白書にあります統計が、一九五三、四年、すなわち昭和二十七、八年ごろの統計を出しまして、いかにもこれよりほかに統計がないのだといって、古い前の時代、何と申しますか、占領直後の数字を、今、七、八年後に出して、これよりほかにないというのは、勉強が足りない、とたしなめただけでございます。」こう言いました。さらに「この厚生白書の中に各国の予算に対する社会保障費の割合が載っておったのでございます。日本は、予算に対しましての社会保障費が七・六%となっております。これは、昭和二十八年か二十九年の一兆円予算のときの社会保障関係経費が七百億円程度だったと思います。昭和二十七、八年のころでございます。」こういうように言われたのであります。そこで私、厚生白書を幾ら読んでもその数字が出てこないのであります。何べん読みましても、どこにもそういう総理のおっしゃるような数字が出てこない。多分総理は、国際比較の点を出されたのだと思うのですが、その点を引用されたのではないかと思うのでありますが、これはこの本の中にありまする四十三表、社会保障支出一九五三、四年の対国民所得比率、日本国民所得一人当りの比率が六・七ということになって、順位が二十一ということになっておる。また付表の三には「主要諸国における社会保障経費の規模」というところがありまして、ほぼ同じようなことが書いてあるのであります。多分この点を引用されたのだと思うのでありまするけれども、私らの党の代表質問に対する御答弁でありましたから伺っておきたいのであります。総理は何か勘違いされてこれを言ったのかどうか伺っておきたい。
  251. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 閣議で厚生大臣にお願いしたのは、多分国民所得社会保障費の率だったかと思います。一九五三年の数字だったものですから、その当時と今の日本は、社会保障に対しましての考え方はよほど変わって参っておるのであります。従いまして私は、今から七、八年も前の数字よりも、もっと勉強した新しい数字を入れたらどうか。これはそういうまとまった表が、たまたま国連か何かでございましょう。それにするにしても、もう七年も前の表を——もちろんその統計が出たのは一九五五年くらいかもわかりませんが、こういう重要なことは、もっと斬新な数字をあげるようにしたらどうか、こう言ったのであります。
  252. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 だから総理の言う予算に対する七・六%という数字は、厚生白書には出てきていない。そうでなくて国際比較の線で国民所得に対する六・七%というものが出てきております。もちろんこれは、日本における社会保障内容というものと、この国際労働機構の一九五八年版等に載っております社会保障内容は違います。内容が違いますから、そういう数字の差が出てくるのでありますけれども、しかし、そこで総理が厚生省をたしなめられた、しかったという問題、その問題が実は、はしなくも私は総理日本社会保障に対する、あるいは世界の社会保障に対する認識の不足を暴露しているのではないかというように感ぜられるのであります。そこで日本社会保障制度をあくまで推進しなければならぬという社会党としましては、この問題をやはり明確にしておいてもらいたい。  それからこの所得倍増とこの関係を少し明確にしておきたい。こう思うのでありまして、白書に出て参りますILOの資料を見ますと、今も申しました社会保障内容が違いますので、それをいろいろ合わせていかなければなりませんけれども、いずれにいたしましても、これにおきまして一九五三、四年でありますから、今から六、七年前でありますが、このときに日本は二十一番目、日本の下はイスラエルであります。上はスイス、順に申しますと、上へ上がっていくに従ってスイス、オーストラリア、ノールウェー、カナダ、オランダ、フィンランド、アイルランド、アイスランド、イギリス、デンマーク、ユーゴスラビア、スウェーデン、チェコスロバキア、ルクセンブルグ、ニュージーランド、イタリア、ベルギー、オーストリア、フランス、そして西ドイツが第一位、こういうようになっておるのであります。今読み上げましたところにずいぶんと小さな国がございます。しかし、日本はそれらの下にあって、二十一番目ということになっておるのであります。しかし、この二十一番目にあります日本、このときの国民所得はちょうど三十六年度で二倍になるのでありますが、所得倍増計画をずっと読んで参りますと、どうしても二十一番目がこの所得倍増計画では上へ上らぬと私は思うのです。  こまかい数字をあげることは略しますけれども、ILOの統計日本社会保障統計と調整して考えていってみますと、大体四十五年度の社会保障費は一兆五千億円と推定されます。これは四十五年度国民所得の七%に当たる。そうしてこれは一九五四年の西欧諸国の八・五%ないし一〇%に対して、十年後の四十五年になってもなお劣る。こういうようにやはり読めるのであります。厚生当局の言うのがほんとうであって、言いかえますならば、この所得倍増計画によって参りまする日本社会保障制度の前途というものは、やはり十年たってもなお西欧諸国のILOの水準、しかもその最低水準にまでも達しないというように考えられるのであります。そうなりますと、これは残念ながら日本は少なくともこの方面では大国ではなくて弱小国に入らざるを得ない、社会保障制度においては弱小国に入らざるを得ないというように考えられるのであります。でありますから、私が今言いたいことは、山本君に対する答弁は、また厚生当局をしかったということは、総理が対予算数字国民所得数字を、当然お考え違いになるような数字でありましたから、お考え違いになったと思います。しかし事実はそうではなくて、社会保障内容というものをアレンジいたしまして、そうしてILOの統計日本統計とを合わせていってみますと、やはり所得倍増が行なわれます四十五年になっても、日本社会保障政策、この所得倍増計画における限りは、残念ながらどうも西欧の最低水準にも、ILOの最低水準にも達しないし、西欧の国々と比べましていかにも劣るものだということ、これを認識してもらいたい。だから、その点についてその手直しをする必要がある、こういうように思うのであります。この山本君に対します答弁というものは違っておったのかどうか、私が言うごとくに、総理は勘違いなさったのかどうか、そして勘違いをしたとするならば、よほどあれを変えてもらわなければならぬと思うのであります。経済企画庁長官にもそのこまかい数字を伺うつもりでおりましたが、時間がないそうでありますから、だいぶおそくなりましたから、その点は省略しまして、総理のお答えだけをお願いいたします。
  253. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 国民所得に対する社会保障の割合も予算に対する割合も、各国のそれを見ればそう違わぬと私は思います。大体予算というものは国民所得に対しましてのある程度の割合を持っておる、日本におきましても…。そこで私は、一九五三年ごろのわが国の社会保障制度と現在とは、あなたもごらんの通り、よほど進んでいると思うのであります。ドイツが非常に高いということは、やはり軍人恩給なんかを相当入れておると私は思います。だからお話しのように内容を十分比較してみなければなりませんが、いずれにしても、できるだけ最近の統計をとるべきだというのが私の主義なんであります。これによって過去の社会保障制度に対する措置考えながら将来に思いをいたす、そして最も近い数字を比載するようにしよう、こう言ったのであります。  それから今お話しの、四十五年に対しまして社会保障関係経費が一兆五千億とかおっしゃいましたが、この分もこの前農業で申しましたごとく、政府の投資が十四兆のときに農林が一兆だ、これでは少ないのではないかという、こういう議論もあると同じようなもので、私は今後成長を見ながら——あれは一つの計画でございまして、参考案でございます。見ながら、どこに力を入れていくかということが私は政治家の努める道だと思います。今年におきましても、ああいうふうに社会保障制度が直接の分で三割六分もふえたということは、こういう考え方でいくならば、あの計画よりも上回ることを私は期待し、努力いたしたいと思います。
  254. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 最後に…。以上、いろいろな方面から、不十分でありましたけれども、今度の予算に現われました池田内閣の政策の問題を、社会保障制度中心の問題に限りましていろいろお伺いしたのでありますが、どうも私に言わせますれば、残念ながら、この予算書を拝見いたしまして、またそこに盛られました種々の改正案等をも十分な同情をもって見ましても、いわば今まで社会保障制度においては、国民に三合の飯を食わせなければならぬのに一合しか食わせなかった。今度は飛躍して一八%アップだ、二〇何%アップだ、こういうように言っても、それは一合二、三勺しか食わせない。ほんとうは社会保障制度で食わすべきものは三合だのに、それがおくれている。それを最後に申し上げたのでありまして、時間がありませんから、こまかい数字でいろいろ論争することは差し控えますけれども、別の機会に譲りますけれども、この程度社会保障制度では、今日の近代社会における、近代国家における社会保障としてはきわめて不十分だ。これでもって、もし社会保障制度は三本の柱の一つで、それだからうんと力を入れたなどと思ったら大きな間違い、そこに一番最後に申し上げました大きな問題が出てくるわけでありまして、そしてこの問題が、首相が勘違いなさった国民所得に対する社会保障制度の政策の予算の比率というものと一般予算に対する比率というものが同じようなものだというようなことは、とにかくそんなばからしいことはあり得ないのでありまして、今の軍人恩給その他をみなアレンジした結果がそういうことになる。戦争犠牲者その他の費用をみなここに入れてしまいました計算がそうなるのでありまして、こういう点につきましては、私どもは今回の社会保障制度の政策はきわめて不満だ、社会党として不満であるということを申し上げ、また非常に緊急な問題となっております先ほど来申し上げましたような医療の問題、生活保護の問題、あるいは国民年金の問題、もう四月一日に登録しなければ罰則を受けるのかどうかというような差し迫った問題になっている。それがうまくいくかいかぬか、国民年金が軌道に乗るか乗らぬかという重大な問題をはらんでいる。こういうような問題につきまして、どうか総理、各閣僚は積極的な態度をもってこの解決に当たられるように心から要望し、また、むしろ抜本的な改正をさらに善処されるように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  255. 船田中

    船田委員長 明日は午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時三十二分散会