○石川次夫君 私は、
日本社会党を代表して、今回提案になりました
公共用地の取得に関する
特別措置法案に対し
質問をしようとするものであります。
われわれは、公共事業が正常に迅速に進むことを心より望んでおります。そして、そのために障害となるごね得があれば、それを排除することは当然と信じております。本
法案は、その
趣旨にのっとって出されたものであるとは思いますけれども、それにしては、あまりに多くの問題を包蔵いたしております。本
国会においては、このほか、市街地の改造に関する
法案、さらには、宅地造成法等の提案も予定されておるやに伺っております。これらは、いずれも
公共用地取得難の現状に対処して、強硬に、かつ、迅速に用地を取得せんとするものでありますけれども、なぜ、かくも用地難に陥ったかの根本
原因には、ことさらに目をおおっておるのであります。
すなわち、
一般物価や株価の値上がりに対しましては、それなりに、不十分ながらも、何らかの
対策を講ずるのが常でありますけれども、ひとり地価の高騰に対しては全くの無為無策であったことが、この根本
原因であります。(
拍手)このため、
昭和三十一年ころよりの地価の著しい高騰は、全く目に余るものがございます。たとえば、戦前に比較いたしまして物価は三百四十倍でありますけれども、地価は、全国平均で約七百五十倍、特に東京のごときは、
昭和三十一年に比して、すでに宅地は倍でございます。工業用地は六倍になっておるという状態であります。そのため、
一般庶民は、毎月々々の乏しい収得をさき、あるいは退職手当等を引き当てて老後の安住の地を得ようとする、ささやかな、しかも、人生最後の最大の夢は、むざんにも打ち砕かれておるわけであります。これこそ、歴代保守党
政治の最大の失政の一つに数えなければなりません。(
拍手)なぜこうなったかといえば、保守党は、その代弁する資本家階級の持てる膨大な土地が
政府の無策によって高騰し、労せずして膨大な利益をおさめることをよく知っております。だからこそ、最近では、商事会社、貿易会社が、
政府の無策によって地価が高騰し、不当な利益を上げ得ることを見越し、不動産部門へ殺到いたしておるということ、そして、そのことによって地価の値上がりに拍車をかけておるというようなありさまでありまして、この地価抑制の
根本策を講じないことには、資本家の利益を暗黙のうちに守り、そのことによって
国民生活を徹底的に破壊しておるといわれても、弁駁の余地はないと信ずるのであります。(
拍手)のみならず、地価
対策を抜きにして、現象としての用地
対策だけに集中するということは、全く枝葉末節の
対策でありまして、木によって魚を求めるの非難を避けることはできません。
さらに、これに関連をいたしまして、諸外国では、
国民生活の安定のために地代、家賃の統制を何らかの形で行なっておるところが多いのでありますけれども、住宅事情の逼迫しておる現状であるのにかかわらず、地代家賃統制令を一挙に撤廃して、ひいては地価を引き上げようとする
法案が本
国会に提案されておるというがごときは、まことに
時代逆行であり、資本家擁護であり、
国民生活無視の暴挙でありまして、このままでは、われわれは断じてこれを許すわけには参らないということを、この機会に強く訴えたいのであります。(
拍手)ともかく、
政府は、その地価抑制の根本
対策として、官民合同の総合機関を設け、その中で、まず、先ほども
質問がありましたけれども、現在あいまいのまま放置されておりまする補償基準を具体的に明示して不公平を是正する、かつ、国家機関としての評価鑑定機関というものを全国各地区に設け、そして、高度の識見を持つ公認鑑定員制度を設けて評価に権威を持たせるということが、特に緊急に肝要なことであると思うのであります。その他、税制あるいは都市分散計画等、いろいろの
対策は、この
公共用地審議会というような、場当たりのものでない、総合的な国家機関の審議にまかせて、早急に決定をしなければならぬと思うのであります。このような根本
対策なくして、
公共用地の獲得だけを先行させるということは、まことに本末転倒でありまして、
効果を期待することはできないと思うのでありますけれども、この機関の設定について、総理大臣の確固たる所信を伺いたいと思うのであります。(
拍手)
現在の土地収用制度にも多くの問題がありまして、なかんずく、収用委員会は知事の任命になっておりますけれども、その保障された身分にあぐらをかいて、被収用者に対しては、刑事裁判官が被告に接するような態度で臨んでおるのが多い現状であります。公共のための犠牲者であるというあたたかい気持で接するような民主的な人を選んで、かつ、その運用にも多くの改善を施すことが、本
法案の前提として、ぜひ必要であると思いまするし、そのためには、この際、あわせて
法改正が必要であると考えるのでございますけれども、建設大臣の御意見を伺いたいと思うのであります。(
拍手)
今度の
法案の
対象となる事業は七つに限定をされたと言われておりますけれども、諸外国の例に見るように、市街地の交通麻痺、動脈硬化に対処するところの高速道路、その他二、三の、真に緊急やむを得ざる公共事業だけに限定すべきではないかと考えるのであります。特に、公共事業の名の
もとに、私鉄、電力事業等の営利を
目的とする民間企業を含めることは、納得ができがたい。また、将来さらに他の産業にまで
拡大解釈の余地を残すことになるのではないかという懸念を持たざるを得ないのであります。(
拍手)たとえば、原子力の発電施設のごとき、本
法案によって当然特定公共事業の
対象となるとすれば、将来に大きな禍根を残す危険がありますけれども、この点は一体どうなのか。さらに、ガス、水道等は公益事業であるという見解も成り立ちます。さらに、肥料、鉄鋼等も
社会的影響の大きい事業であるという見解の
もとに、際限なく拡大されるおそれなしとしないのであります。現に、全国知事会におきましても、地方道その他に大幅にその
対象を拡大すべきであるということを決議しておるような次第でありまして、われわれの危惧が早くも現われ始めておるのであります。この点、建設大臣は、将来これ以上にふやさない、あるいはまた、現在の
対象をさらに検討する意図があるかどうか、伺いたいのであります。
また、
国民は、今なお住宅難にあえいでおりまして、建設大臣は、
国民生活に最も密接な
関係のある住宅
対策に苦心をされておるわけでございますけれども、その住宅用地、少なくとも、
政府施策住宅用宅地は、本特定公共事業の
対象にならなかったことを、どう考えておるか。少なくとも、営利追求の民間企業よりは優先するとの立場を貫かなければ住宅
対策の
責任を全うすることができないのではないかと思うのでありますけれども、この点、建設大臣の御所見を伺いたいのであります。
この
法案の原案は、御承知のように、
公共用地取得制度調査会で作成されたものでありますけれども、この調査会の設けられる際、内閣委員会におきましては、補償額決定以前に、起業者に対し、被収用者の
意思に反してその使用権を認めるがごとき公権力の
強化により私有財産権を侵害することのないよう強く要望する旨の附帯決議を付しておりますことは、当然、補償金前渡しの原則を確認したものと解すべきであります。ところが、今度の
法案では、緊急裁決があった場合、起業者が収用または使用開始の時期までに見積もり補償額を払い渡したときは収用の
効果が発生するとなっておりまして、明らかに、さきの内閣委員会における附帯決議を無視しておるわけであります。このように
立法機関を無視する
法案を提案するようでは、議会の権威、議会の秩序というものは保たれる道理がございません。(
拍手)あるいは、概算払いも前払いの一種であると強弁されるかもしれませんけれども、概算では、補償額の決定とは言い得ません。また、概算では、
関係者の完全な合意を得ることは不可能なはずであるにもかかわらず、その過程で強制収用が行なわれるというようなことは、明らかに
憲法第二十九条の財産権に違反する
疑いが濃いと思うのでありますけれども、この点、総理大臣の御所見を伺いたいと思うのであります。
次に、農林大臣に対して伺います。
本
法案に対しましては、農民組合はもちろんでございますけれども、農業協同組合等の農業
団体も、公権力の
強化をはかり、農地法を無視し、現に、農民が電力会社等の横暴と戦いつつあるダムや送電線までこの
法律に便乗させ、一挙に農民の要求をじゅうりんすることに対しては、断固
反対の態度を明らかにしておりますことは、農林大臣も、つとに御承知のところと思うのでございます。調査会の答申では、特定公共事業の用に供する場合は、農林大臣、知事の許可を要しないという原案であったのでございますけれども、これに対して、農林省としては、農地転用許可は、本制度の
趣旨の末端までの徹底を
措置した上で許可を行なっているが、この調査会の答申では、これらの
趣旨の
実現を確保し得るような制度が確立されないままで転用許可制度をはずすことになり、適当でないという意見を述べられておりますことは、きわめて妥当と思うのであります。本
法案では、農林省の主張が生かされて、本
法案に関連する農地転用許可に関する
法改正は行なわれておらないようであります。
公共用地の七割までが農地の転用であることを考えますと、農民を擁護する立場に立って、今後とも農林大臣はその
趣旨の貫徹を期することと信ずるのでございますけれども、念のため、農林大臣に所信を伺いたいのであります。
われわれは、財産権が神聖不可侵であって、すべてに優先する、とは考えておりませんが、強権による収奪によって生活権を脅かすおそれが強ければ断固立ち上がらなければならぬと思っておるのであります。本
法案では、補償と生活再建
対策で、従来より一歩前進しようとする
努力は認められますが、具体的な裏づけもございませんし、結果的には単なる倫理
規定に終わっている点は、まことに残念でなりません。ここに、百尺竿頭一歩を進めて、従来の生活より悪くはしないという
意味のことを明文化すれば、
政府に対する信頼も回復され、事業の進捗にも役立つところが多いと信ずるものであります。その具体的な裏づけとしては、収用によって生活に影響を与えられた人
たちのために、国の機関として補償金庫を設け、補償金とは別個に、生活の再建を容易ならしめるための援助、融資を考える温情ある
措置がなければ、いたずらに公権力を
強化する印象を与えるだけであると思いますが、この字句の追加及び補償金庫の新設について考慮しておるかどうか、建設大臣の御所見を伺いたいのであります。
この点に関しましては、自治省といたしましても思いをいたし、補償は現物補償を原則とすべきこと、さらに、生活再建
対策は起業者の
責任において処理する建前とすべき旨の意見を出しておりました。この意見は、きわめて不十分ではあるけれども、妥当なものと考える次第でありますが、残念ながら、本
法案では、この
趣旨は十分生かされてはおりません。この点、自治省大臣としては、
責任上、今後どう対処しようとされておるのか、御所見を伺いたいと思うのでございます。
政治は、
国民の幸福、生活の向上のためにあるのであります。いわゆる所得倍増というようなものが曲がりなりにも推進されるとすれば、ますます産業基盤としての公共事業は累増するばかりでございますけれども、その犠牲となる人
たちの幸福のために心から愛情のある
対策を考えること、及び、地価暴騰の根本
対策を講ずることこそが肝要でありまして、また、そのことこそが事業推進のかぎでもあると信ずるものであります。このことを忘れて、東京オリンピックが近いというようなことで、あわてふためいて、おのれの長年にわたる失政による事業の渋滞を強権をもって無辜の
国民に転嫁することによって打開をはかろうとするようなことに対しましては、強い警告を発して、私の
質問を終わる次第であります。(
拍手)
〔国務大臣池田勇人君
登壇〕