○堀昌雄君 私は、
日本社会党を
代表して、ただいま説明されました
選挙制度審議会設置法案について質問をいたします。
わが憲法は、その前文において、「日本
国民は、正當に選挙された国會における
代表者を通じて行動し、」という言葉で始められております。民主主義政治の基本は、すなわち、ここに求められるべきで、何よりも、まず第一に、選挙が正当に行われるのでなければなりません。このことは、およそ政治に関心を持つすべての
国民にとって、しごくあたりまえの常識でありますが、では、現在の選挙がはたして
国民の常識通りに正当に行なわれているかと尋ねられるならば、何人も、おそらく、いなと答えることでありましょう。(
拍手)法治国の
国民は法を守らなければならないと、よくいわれますが、その、
国民の守らなければならない法を作る立場にある者こそ、さらにきびしく法を守る者でなければならないのは、当然のことであります。(
拍手)この当然過ぎるほどのことが選挙に関しては少しも守られていないところに、
国民の政治への不信の第一の源があると思います。
選挙違反の数は回を重ねるごとに増加し、
池田内閣のもとで初めて行なわれた昨年の総選挙では、その件数においても、
内容の悪質な点においても、実に戦後最大の悪例を残したのであります。(
拍手)さらにおそろしいことは、違反を犯すことこそ当選への近道であると、公然とこれを犯して何ら恥じることのない候補者がいかに多いかということであります。————
—————————————。この、ありのままの事実を指摘するだけでも、近代的な政党としての資格はもとより、憲法の前文にいう「正当に選挙された
国会における
代表者」としての資格においても問題があると思うのであります。(
拍手)自由民主党総裁である池田首相は、謙虚にその非を認めて、
国民に謝罪されてしかるべきであると考えますが、この点、首相はどのようにお考えになられるか、お伺いいたします。
グレシャムの言葉に、悪貨は良貨を駆逐するという言葉がありますが、現状の選挙の姿こそはまさにその通りであると思われるようであっては、
国民の政治への不信感をぬぐい去ることはできません。公明な正しい選挙を求める声が激しく巻き起こってきたのも当然のことであり、選挙
制度の
改正を行なう立場にある私たちの責任は、まことに重大であります。
では、具体的には
国民は何を求めているのでありましょうか。まず第一に、選挙公明化のために、連座制を初め、悪質違反に対するもっと強い措置をとってほしいということであり、第二は、政治
資金の規正を厳格にすることであり、第三は、人口と議員定数の不均衡を是正してもらいたいということであります。これらは、何も今に始まったことではなく、すでに数年も前から強く要望されていることであり、ただ、あまりに最近の選挙の腐敗が激しいために、もうこのままではがまんができないというのが、偽らぬ
国民感情なのであります。(
拍手)はたして、
政府は、この
国民の突き詰めた気持をすなおに理解しているでありましょうか。現在とられようとしているやり方を見ていると、率直に申して、
国民の期待を裏切るものであることは明らかであり、まことに遺憾しごくに思うのであります。
振り返ってみると、
昭和二十四年
法律第百二十七号をもって選挙
制度調査会が設けられ、これまで七回にわたって各種の答申が行なわれてきておりますが、
昭和三十四年十二月二十六日には、「選挙の公明化をはかるため、現行選挙
制度のもとにおいて、さしあたって講ずべき措置について」という答申がなされております。
そのおもなものを取り上げてみると、一、現行の選挙運動に関する
規定はあまりに繁雑に過ぎ、自由な運動を制限し過ぎるきらいがあるので、言論による事前運動の自由化、個人演説会の開催回数の制限撤廃、頒布する文書図画の制限緩和等、言論及び文書による運動の制限はなるべくこれを緩和し、合理化すること、二、選挙運動を公正にするため、選挙の公営を拡充強化するとともに、既存の公営
制度の合理化をはかること、三、選挙運動費用の制限が実際に即しないので、制限額を再検討するとともに、費用公開方法を実効が上がるように合理化すること、四、選挙の腐敗を粛正するため、次のような措置を講ずる。特に、ここが重要なのでありますが、(一)として、悪質な違反に対しては、必ず選挙権及び被選挙権を停止するものとすること、(二)、連座制については、適用範囲の拡張、免責
規定の再検討等、さらにその強化をはかること、日、時効期間を延長すること、(四)、裁判の促進をはかること、その他高級公務員の立候補の制限と議員定数の問題等となっております。
以上は、だれが見ても妥当なもので、
国民の期待にこたえた、りっぱな答申であります。この答申をもとにして、過ぐる臨時
国会において、各政党とも、おおむね検討を終わり、わが
社会党においては
改正案を
提出したのでありますが、目前に迫った総選挙のためにその
改正は見送られ、今日に至っております。しかし、この答申そのものは、現在においても、りっぱに生きているわけであります。ところが、今回、
政府は、これまでの調査会の答申をないがしろにして、突然新しい
審議会の
設置を提案してきたのでありますから、
国民はその真意をはかりかねていると思うのであります。
選挙法の
改正は、次々と行なわれる選挙との関連で、提案の時期がきわめて重要なことは、私が申し上げるまでもありません。この通常
国会が最も適した時期であることも、また明らかであります。根本的に検討するということに名をかりて、時期をずらせて、問題をうやむやにしようとする
政府の態度は、政治の姿勢を正すという総理の発言とほど遠いものであることを痛感するのであります。(
拍手)このような状態では、ただに選挙
制度調査会の権威が無視されるだけではなく、
委員であった方々に対する重大な侮辱であり、
国民を欺瞞するものであるときめつけられてもいたし方ないでありましょう。
私は、これらの観点より、池田総理に次の諸点をお伺いをいたします。
第一に伺いたい点は、総理府
設置法によって設けられた選挙
制度調査会が厳として存在し、先ほど述べたように、過去十年以上にわたって専門的に研究検討を続けているものに対して、あらためて選挙
制度審議会を設けなければならない
理由は一体どこにあるのか、これが第一点であります。
第二は、今回の
法律案では、「
政府は、
審議会から答申又は
意見の申し出があったときは、これを尊重しなければならない。」という一項が設けられてありますが、
法律でこのように
規定をされなければ、各種の
審議会、特に選挙
制度調査会の答申については、
政府はこれを尊重する意思がないのかどうか、ということであります。
第三には、もし
法律による
規定がなくとも尊重するということでありますならば、具体的に私が述べて参りました従来の選挙
制度調査会の答申に基づいて、直ちに
法律改正をこの通常
国会に提案すべきであると考えますが、提案されるのかされないのか、二者択一でお答えをいただきたいのであります。
第四点として、この
国会に
改正案が
提出されないとするならば、何ゆえ提案をしないのか、その
理由と、それでは、いつの
国会に
提出するつもりなのか、その時期について明らかにしていただきたいのであります。
第五には、新たに
審議会を設けようとしているのは、明らかに、今
国会における
改正をずらせ、さらには、
制度の根本
改正と当面緊急の
改正とをからませることによって、選挙法
改正をますます困難なものにしてしまおうとしている点であります。
国民に対しては、あたかも
改正の熱意があるように見せかけ、その実は、
改正を引き延ばそうという
理由をここに求めようとしているのではないか、ということであります。(
拍手)
そこで、選挙法
改正に対する今後の取り扱いについてお伺いをいたします。すなわち、きわめて根本的な
制度の問題と、次に、定数と人口との関連の問題、そして、最も重要なのは、すでに答申をされ、各党においても検討済みである公明化に対する問題と、およそ三つに分けられると思います。これらを一括してでなければ取り上げないのか、あるいは、
国民の希望に沿って、緊急かつ重要なものから逐次、たとえば、公明化を第一に、定数問題はその次にというふうに取り上げていこうとするのか、または、次の参議院選挙には必ず間に合わせるという、はっきりした意思をお持ちになっておられるのかどうか、お伺いをいたしたいのであります。
参議院の選挙を明年に控えて、すでに事前運動が始められていると伝えられている今日、この通常
国会で、すでに検討済みの
部分は当然
政府より提案さるべきであり、もしもこの
国会で
改正をしないならば、明年の参議院選挙はさらに悪質化し、再び取り返しのつかないことになるのではないかと、心ある
国民は深く憂慮しているのであります。
審議会を設けることによって、当然行なわれるべき
改正を延期させる結果となるならば、正当な選挙を望む
国民の声を無視することとなり、まことにゆゆしきことであるといわなければなりません。
問題はきわめて重要でありますから御答弁が不十分な場合には再質問を保留させていただきます。どうか、私に答えていただくというよりも、広く
国民に向かって納得のいくように、具体的に、はっきりとお答えをいただくことをお願いいたしまして、私の質問を終わります。(
拍手)