○池田(正)国務
大臣 それでは、まず最初に声明書を読み上げます。
私は、さきに
文部省当局に対し科学技術者の養成の早急な達成をはかり、とくに今年度中にもその実現を図るため、公
私立大学に協力を
要請するよう所要の
措置をとることを勧告した。しかるに、
文部省当局は、これに対し、何等の誠意ある
措置を講ぜず、今日に至ったことは、きわめて遺憾にたえない。
幸い、各
私立大学においては、勧告の
趣旨にのっとり本年度は定員をはるかに超えて増加入学せしめたので、勧告の
趣旨は事実上所期の目的を達成したものと認められる。しかしながら、この増加入学の現実に即しその育成を計ることは、あげて
文部省当局に残された責任である。
勿論、
わが国における最近の設備投資の増加と第三次産業による技術者採用の異常な増大傾向等各方面の理工系学生に対する需要は想像以上のものがあり、その増員計画の達成のために
大学の体質改善と教授方式近代化等こんご
政府として格段の努力を必要とする。この点については、文部当局の認識と努力にまつものであるが、本
大臣としても今後引続き大きな関心をもって注目を怠らない所存である。これが私の声明書でございます。今読み上げましたように、大体
文部省の元来の性格からいって、これは私が最初
希望するような
措置はおそらくとり得ないかもしれない、そういう危険をはらんでおるということを、私は実は洞察しておったのであります。はたせるかなそういう結果になりまして、そこで私としましてはこれはどうしてもこの際はいかなる犠牲を払ってもこの理工系の学生の増員ということはやらなければいかぬ。というのは、申すまでもなくこれから日本の科学技術の推進をはかっていくというためには、御承知のようにこれはその基礎となるものは人とものであります。物的要件と人的要件であります。物的要件というのは、申すまでもなく、研究機関なりあるいは研究の環境をよくするとか、あるいは予算をよけいつけるとか、そういったようなことでありまして、それともう一つは、いわゆる人的要件、すなわち理工系の人材を養成すること、これが二つの柱となっていかなければ科学技術の振興ということは
考えられないのであります。そういう
意味でその二つのうち、それじゃどっちが先かといえば、これは当然人材を養成することがまず先、さような
意味において私の立場から申しますと、人材を養成することはまず最大の急務である。ものの面においては、物的要素におきましてはすぐにはできないものもございますけれども、ものによっては金さえ出せばすぐに間に合うものもございます。しかし人的要素というものはこれはすぐには絶対間に合わないのであります。さような
意味においてこれだけはどうしてもやらなければいけない。いかなる犠牲を払っても、今の国家の
要請としてやらなきゃならぬという私は政治的信念に立ってこれを実は勧告をいたした次第であります。さような
考えからいたしまして、先ほど申し上げたように、文部当局の従来のあり方から見て、どうもおそらくは私の期待するような結果は得られないかもしれないという危惧を私は持ちましたので、そこで自分の手の及ぶ範囲、すなわち主として
私立大学の諸君の参集を求めて協力を願ったわけであります。その結果、各
私立大学はことしは非常に、悪い言葉でいえば、水増しの入学を許可した。そういうような数字が大体約八千人くらいと私は見積もっておりますが、まだ正確な数字はつかんでおりませんけれども、そういうようなことであります。それと現在各
私立大学は手続をとっておる。これらを合わせますと、約一万をオーバーする数字が、ここで最初
政府が予定したよりも増加したという結果になりましたので、これで大体私は目的は達したということをここでうたった次第でございます。
特に後段で私がこの最近の状況を書きましたが、それはいわゆる設備投資の非常な増加、それから第三次産業にわれわれが予想以上に理工系の卒業生が吸い上げられておるという事実、こういう事実に即応して、これからもまたこれだけで満足すべきものじゃないので、もっとうんとこれはふやさなければならない。それには
大学それ自体の体質改善と、それから現在日本の
大学のやっておるような理工系の特殊な科目になりますと、二十人とか三十人といったようなゼミナール式なといいましょうか、そういう教授方式をとっておる。これは当然改めて、もっと大量的と申しますと、大へん悪く響くかもしれませんけれども、ソビエトやドイツやアメリカがやっておるような教授方式、これは近代科学を利用することによって可能なんでありますから、そういう面に文部当局も日本の
大学の学者諸君も、これはぜひ一つ協力してもらっていくことによって、所期の目的がある
程度達せられるのじゃないかというのでこれをつけ加えた、こういう
意味でございます。