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1961-05-16 第38回国会 衆議院 文教委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月十六日(火曜日)     午後二時二十九分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 臼井 莊一君 理事 坂田 道太君    理事 竹下  登君 理事 中村庸一郎君    理事 米田 吉盛君 理事 小林 信一君    理事 高津 正道君 理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    上村千一郎君       大村 清一君    田川 誠一君       高橋 英吉君    千葉 三郎君       灘尾 弘吉君    花村 四郎君       松永  東君    松山千悪子君       南  好雄君    八木 徹雄君       井伊 誠一君    西村 力弥君       野原  覺君    前田榮之助君       松原喜之次君    三木 喜夫君       村山 喜一君    鈴木 義男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部政務次官  纐纈 彌三君         文部事務官         (大臣官房長) 天城  勲君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁計         画局科学調査         官)      高橋 正春君         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     木田  宏君         文部事務官         (大学学術局技         術教育課長)  犬丸  直君         農林技官         (振興局普及部         長)      江川  了君         通商産業事務官         (企業局企業第         二課長)    新田 庚一君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 五月十六日  委員原田憲君、上村千一郎君及び山崎始男君辞  任につき、その補欠として安井誠一郎君、福永  一臣君及び西村力弥君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員福永一臣君辞任につき、その補欠として上  村千一郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十六日  公立高等学校施設費国庫補助法案山崎始男君  外九名提出衆法第四〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七四号)  学校教育法の一部を改正する法律施行に伴う  関係法律整理に関する法律案内閣提出第一  七五号)      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出第一七四号)及び学校教育法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案内閣提出第一七五号)を一括議題とし審査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。高津正道君。
  3. 高津正道

    高津委員 私は、去る土曜日の当文教委員会がこの工業高等専門学校法案審議のために四人の参考人を招いた際、むろん出席して御意見を拝聴いたしました。論旨のみならず当人の本心を読みとろうとして聞いていたのであります。本案賛成者の一人である。元山梨大学学長安達氏は与えられた十五分を効果的に生かすべく、あらかじめ用意された原稿をあのように音吐朗々と読み上げられたのであります。その中に次のような一節がありました。戦後こつ然として六・三・三・四制なるものが出されてついに採用された、そのとき私はこれではわが国の産業進展に重大な悪影響があろうと思った、はたせるかな——はり声が高かったです。最近経済界から中級技術者の非常なる不足が盛んに政府に訴えられるに至った云々というくだりであります。この部分を読まれるときの安達参考人の音声には一きわ目立った情熱がこもっていたので、私はこの人は六・三制に強い反感を持つ教育行政家だという印象を強く受けました。もう一人の賛成意見の東京都教育長木下一雄氏は、イギリスの教育事情視察の御自身の知識、体験から、単線型の六・三・三・四制はあたかも時勢おくれであるかのように陰に陽に批判して、本法案のごとくすみやかに複線型に修正すべきだという主張でありました。参考人の四人のうち二人は賛成、二人は反対、その賛成の二人がそろいもそろって現行の六・三制に対して非常に反感を持たれ、不信の念をいだいていられるのに私は驚いたのです。私の頭にそのとき、悪魔は昔も今もしばしば美男であり美女であるという記憶が浮かんだのであります。お二人を悪魔だと言っているのではございません。また憲法調査会復古調のお歴々が、現行憲法アメリカのお仕着せだから、早くからだにぴっちり合う着物にしなければならぬと言われることまで、私は連想していたのであります。造船工業会等々の経済団体、すなわち財界から強い要望があるのでこれにこたえねばならないという、表面はきれいでありますけれども、教育畑本案賛成者に六・三制反対者が非常に多いという事実、このことは重視しなければなりません。アリの一穴から千丈の堤防もくずれるとも申します。この工業高等専門学校新設という形の複線型導入は、遠からず六・三制の本建築をゆるがす禍因であり、その第一歩ではあるまいかと、私はこの点を非常に憂えておるものであります。荒木文相は、そうではないとお答えになるでありましょうが、本案に対し広く持たれておる大きい疑点でありますので、この疑念が解消するような御説明お答え願いたいと思います。これが第一点です。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 この前の委員会でもお答えを申し上げた趣旨を繰り返せていただくことになろうかと思います。私は、六・三・三・四という制度が戦後アメリカによって示唆を受けて発足した事実は否定いたしませんけれども、今日まで十数年間あの線に沿って忠実に歩いてきた日本教育界実情、成果、そういうものを考えあわせまして、六・三・三・四の制度そのものに変更を加えねばならぬとは私自身一つ考えません。しかしながら、教育を受ける側から見ました場合に、ことに大学にいくかいかないかを中心に考えました場合に、すべての人が四年制大学にいかねばならぬ、いくほかに道がないということは、十全ではないと思います。教育を受ける国民の側に立ちました場合、単線型でなしに複線型である方が教育の場はそれだけ豊かになり、教育を受ける側から見て善政であると感じるのであります。そのことが技術革新の当面及び将来、長きにわたっての国家的な要請とはかならずも結びつくという意味において、産業界要請にこたえることにもなろうかとは思いますが、それより前に、今申し上げたような考え方のもとに、こういう制度が必要だと考えるのでありまして、六・三・三。四の制度そのもの微動だもさせるものではないと理解いたしております。
  5. 高津正道

    高津委員 六・三・三・四制の教育体系には微動だもさせる意図はないというお答えでございましたが、私はその御答弁ではまだ了承して疑念が雲散霧消するわけにいきませんけれども、同僚語君の質問も続くのでございますから、次に移ります。  政府の持っておる論理からいえは、私は低所得農民農業実情考えるとき、なぜ農業荷等専門学校を落とされたのか、その理由を理解することができないのであります。教育行政の点から見ると、ここで農民軽視の本質を暴露してしまったと見られるのであります。御承知のごとく、池田内閣農業基本法国会提出し、他産業所得に比べて農業所得は低過ぎるから、この所得格差を縮めるためにこの法案を出したのだ、農業農民を思っているのだと農民層にしきりにPRを行なっております。これに対し、予算の裏づけがそれに伴っていない、その方向さえも現れてはいないではないか、このような反対論が出ると、いやすでに農業基本法の線に沿って成長作物と非成長作物との分類をして、非成長作物の麦作をやめて、他の成長作物に転じようにする農民には、一反当たり二千数百円の補償費を国が出すことになっておると反駁をされております。一反当たりわずか二千数百円で作物転換など思いもよらない、外国産の麦、特にアメリカ小麦の輸入に便宜を与えようとするもので、いよいよもって悪いなどと、多くの点で農業基本法は今対立論が生まれておるのであります。このようなことは、申すまでもございませんけれども、農業教育という観点に立って観察する場合、農業基本法の第一の問題点は、池山首相農業構造改革論であろうかと思います。所得倍増のために十年後には農民の六割を第二次、第三次産業に移行させ、残り四割で近代化し機械化して農業生産に当たってもらうのだというような農民人減らし政策の発表は、農民には一個の大爆弾が投ぜられたように受け取られたのであります。十年後農民の六割は要らなくなるのだ、政府はどんな職業につけというのだろうか、思想的に大きく動揺し始めたのがここ数カ月の実情であります。農業という産業には将来性がない、斜陽産業であると一国の総理から宣告されたのでありますから、農業関係者は前途に光明を失うに至りましょう。それが敏感な農村青年に一そう強いことは、これも言うまでもありません。  そこへ第二弾を投ぜられたのがほかならぬ荒木文部大臣なのです。農業地帯の中学生や高校生は、今回の工業高等専門学校新設と開いて、農業には高専は設けられないこと々知って、池田内閣政策農業を見捨てるのだと感じ取るでありましょう。農業基本法の前文あるいは同法第十九条の農業教育云々はあるけれども、全くのから念仏、から宣伝で、農業には将来性はないと思うに違いありません。社会科の君も新聞には注意しますが、たとえば工業所得のすばらしさを知っては、いよいよ農業を見限るでありましょう。  ただ一つ典型的な事実を、ここに全く簡単に、お許しを得て申し述べますが、有力新聞が五月四日の朝刊で、昭和三十五年度の大企業売り上げ利益とがいかに増大したかを、本年三月期の各社の決算から割り出して集計報告しているのを私も一読して切り抜きました。それによると、昨年九月決算面から見ると、一千億円以上の売り上げの大企業の会社は五社にすぎなかったが、この三月決算から昭和三十五年度の売り上げ利益とを割り出すと、その数は十一社に上っており、うち日立製作八幡製鉄の両社の売り上げはついにおのおの三千億円台を突破した。東芝、富士製鉄、東京電力、松下電器等九社の名前が続いておるのでありますが、その九社の中には二千億円に迫っているのもあります。このような大企業の大きい売り上げと大きい利益、中には一社で百八十二億円の利益を計上しているのがあります。工業の領域では売り上げ利益もこんなにまで頂上に上れるのです。  資本主義自由競争で、資本力のあるものが自由手腕をふるって弱肉強食の道をたどり、その結果をもたらすことは申すまでもございませんが、これから見ると、農業農民農村という農の字は非常に気の毒な在存にあって、ここに目をつけなければそれは政治家の怠慢であり、ここをこそ私は大きい問題とせねばならないと思います。  しかるに農民——そこらあたりから票をたくさんもらっておる人々から構成される与党、その上に立つ池田内閣が、どうして農民にこうもつらく当たるのであろうか。——なぜならば農業はまるで顧みないで工業々々、高頂上にある頂上をどんどん引き上げるように、さらにその要望にこたえて中級技術者が要る。よろしい。それを供給しましょうといって、農業には何も与えないで工業にのみ奉仕しようとするのであるか。とにかく農民軽視ということが本案提出によっていよいよ明白になったと思うのであります。それに対し荒木文部大正、もしまた農林省からお見えになっておれば、農林省関係の方からも御意見が承りたいと存じます。
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 所得倍増にいたしましても農民も含めて所得倍増をいたしたいというのが池田内閣考え方であります。農業基本法もまたその線をたどる基本法であることは申し上げるまでもございません。高等専門学校法案との関係において農民をないがしろにしておるという意味の御指摘かと承りましたが、そういう考えは毛頭ございません。むしろ現在までの日本農村は、本来農業経営に必要とする適切な人口より以上に潜在失業とでも言うべきものを不当にかかえ込まされておると言い得ると思います。今後農業基本法の線に沿っての農業経済の改善ということは、必然的に合理的な農村人口をもって最大の効率をあげるという線から、農村における所得倍増以上を期待する考え方でございまして、その結果潜在失業者的に農村におります人口を、日本必然的な宿命とでも言うべき工業の伸展によっての所得の増大、その面に新たなる職場が必要でございますから、そういう方面農村にある潜在失業者的人口を吸収していくことによって、安定した新たな職場が提供される。そのあと農村においては合理的な経営ができて、一人当たり所得が増大していく望みが持てる。そういう相互関係にあろうかと思うのでございまして、工業だけを当面高等専門学校学科と予定して御審議を願っておりますのは、とりもなおさず農村において必然的、合理的に出てくるであろう青少年に対しまして、新たなる教育の場を提供し、よってもって安定した半失業者的な立場から完全に自立できる職場に導き入れたいという意図が当然にある意味において、農村対策でもあると存じておるのであります。もちろん六・三・三・四の四年制の大学にも農業関係学部等がございます。これは工学部その他の学部と同じように、四年制大学を充実していくという課題として、今後も努力を重ねていくことは当然でありますが、工業と同様に農業高等専門学校ということを考えないわけではございません。これは今後の検討に待たしていただきたいと思っておるのであります。と申しますのは、差し寄り工業高等専門学校ということを限定して御審議をお願いいたしますゆえんのものは、何としても単に産業界要望などとことさらに言えば、非常に低俗のように聞こえますけれども、日本経済必然的な方向づけから、四年化大学卒業者も必要だが、さらに適性能力、環境に応じて、多くの期待が持てるところの教育の場を見つけたいと思っておる農村子弟を初めとする青年に、卒業したらば新たな職場がもう待ちかまえておるということもあわせ考えまして、今度は工業に限定して御審議願っておるわけでございまして、さらに農業関係高等専門学校への道を開くことも、私どもとしては当然今後にわたって検討して実現をはかっていくべき課題とは思っております。今一番切実な社会要望国民経済の必至の要請にこたえることが今急ぐべき事柄だと考えておるわけでございます。一面新しい営農技術ないしは農業経営関連するところの技能を与える意味におきましては、御案内のごとく、中学におきましても技術家庭科新設によって、基本的な常識を与えることを考慮しておりまするし、高等学校におきましても、農業高校におきましては、教科課程等に前向きの考慮をいたしまして、新しい指導要領も一両年後には実施する段階に来ております。高等専門学校だけに関してのお尋ねでございましたが、そのことは今申し上げた通りタイミングとして切実さが工業ほど現在はないということで、御審議対象外に一応はなっておりますけれども、今後に関しましては、農業基本法との関連を十分に念頭に置きまして、検討を加えさせていただきたいと思っております。
  7. 高津正道

    高津委員 農業地帯青年にも安定した職業を与えるためであって、農民のためも思ってあるのだ、あるいは今工業高校をまず問題にしたのは、緊急必至の要望にこたえざるを得ないからだ、こういろいろ申されましたが、緊急必至の要望というのは、農業農村についても同じように言えるのじゃないですか。そこだけ伺います。
  8. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 見方によりますれば、お説ごもっともだと思います。ただ、量的に数多くの科学技術者を必要とするという意味合いから申しての緊急性ということだけから申しますと、先ほどお答えした通りに申し上げ得られようかと思います。質的にと申しましょうか、あるいは営農記述そのものの今後にわたっての新たなる角度での人材養成ということから、質的にはまさしく御指摘のような緊要さを感じますが、それは曲がりなりにも現在の農業高校ないしは四年生大学あるいは短期大学等によって当面は量的には一応まかなえるという推定がございますので、この点から、農業につきましては、高等専門学校考えるにいたしましても、時期的にはちょっとずらしてこれから検討させていただこうかということを申し上げた次第でございます。
  9. 高津正道

    高津委員 農業の衰微ということは、農業工業に比べて所得格差が云云されるのは、ほとんど必然の運命のようになっておって、原因がいろいろあると言われますが、実は人材が欠乏しているのだ。それにはやはり上級、中級、初級というおのおの人材も足らないのだと思うのです。農業では非常に困っておるけれども、このたびは見送りであって、県段階でも単位の農協でも、いい人材が集まっていないのですよ。それでは農業はいよいよ不振になるというのが常識でございますが、そこはまあ二の次にして、今回は緊急な需要に応ずるためと言われれば、やはり農民としては、われわれは軽視されているのだ、われわれはなるがままにまかされているのだ、こう受け取るであろうと思いますが、大臣のお考えはいかがでしょうか。
  10. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 あるいは御指摘のような気持を抱かれる向きもないとは言えないと思いますけれども、しかし農業は、日本農業について特にそうであると思いますが、いわば米作農家をとりますなら、投下資本は一年に一回しか回転しないというがごとき本質的な弱さを持っているのが特徴だろうと思います。さりとて、食糧を少なくとも自給できる線まで維持確保するという国民的な要請必然であると思います。そういうことから、食管法その他の支持政策がとられ、また営農面につままして、もろもろの補助金助成金等国民的な立場から考えてこれを支持してきておる。それを一ぺんに取り払うわけにはむろん参りません。しかしできるならば農業が、企業として、他の企業産業と同じような考え方で、自力でやっていけるようにということが一つの目標であることもすでに御案内のごとくでございますが、そういう方向には一挙にできませんので、おのずから順を追うて、それだけの能力農村に注ぎ込むことがあわせ行なわれて初めて可能だと思います。そういう意味合いから総合的な施策が必要であろうと思いますが、そのやむを得ざる必然的な総合施策緊急度合いに応じて、たとえば高等専門学校程度農業に関する学校施設等も必要ではございますが、タイミングからいえば、当面の工業に関して必要とするよりも時期的には幾らかずれざるを得ない。ずれてもやむを得ない事柄だと認識するわけでございまして、ことさら農業に関して高等専門学校工業と同時に発足せしめないということは、農業を軽んずるという意図から必然的に生まれてきたものではむろんございませんことを、御理解いただきたいと思います。
  11. 高津正道

    高津委員 政府論理に立てばという前提で今の質問をいたしましたが、農業高専を作りなさい作りなさいと言って勧奨しておるわけではございません。  それではお尋ねいたしますが、農業高校、それから農業短大、総合大学の農学部、それらの入学者志望者は過去三カ年、今年の三月を含めてどういうような傾向になっておりますか。減少しつつありや、増大しつつありや。
  12. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 数字的にお答え申さなければお答えにならぬかと思いますが、政府委員からお答えさしていただきます。
  13. 天城勲

    天城政府委員 今手元に数字を持ち合わせておりませんので、今すぐ取り寄せて御返事をいたします。
  14. 高津正道

    高津委員 数字あとでいいですから、増大しつつありや、減少傾向をたどりつつありや。
  15. 天城勲

    天城政府委員 傾向としては減っております。
  16. 高津正道

    高津委員 減っておるのならば、それに対して文部省はどういう対策を今日までのところとっておられるのか。
  17. 天城勲

    天城政府委員 農業関係学校につきましての最近の傾向でございますが、今全般といたしましては減少傾向にございますけれども、科目によりましては逆に非常に需要がふえておりますし、また入学志願者もふえてきております。たとえば高等学校農業課程のここ数年の傾向を見ましても、同じ農業の中で、たとえば園芸でございますとか、あるいは農業土木、あるいは農業関係のうちでも技術的なものを要する方面学科につきましては、在籍者もふえておりますし、学科数もふえてきておるのが一般的な傾向でございます。
  18. 高津正道

    高津委員 統計は完全なものでなければ結論が誤ることになりますから、中にはふえておるものがあるが全般的には減っておるということですが、トータルでいえば減っておるのですか。
  19. 天城勲

    天城政府委員 ただいま数字を取り寄せておりますから、正確なことは資料が参りましてから数字で申し上げたいと思います。
  20. 高津正道

    高津委員 昨日荒木文相は、六・三・制は一級国道のごときものである。この工業高専は二級国道のごときものである、二級国道を新たに敷設するということは、一級国道軽視ということにはならない、こういう論理お答えをなさったが、私はこの法案工業高等専門学校である点を考えれば、一級国道を持っておるものにまた二級国道をくっつけるので、政府論理からいえば、やはり二級国道農民に一本くらい与えてやってよいのじゃないか、こういうことになりませんか。今回は片一方には二つ与え、片一方はゼロです。
  21. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 国道にたとえるのも完全にぴたっといきませんけれども、その例で申し上げれば、工業に関する二級国道的な考察は、工業に関する一級国道が自動車や通行人であふれておりまして、国道の使命を果たしかねるような状態になっておるので、それを補う意味と、地域的に一級国道沿いのものでない遠隔の地域の人にも便宜を与える意味合いにおいて二級国道だ、一応設例として説明を申し上げればそういう意味合いになろうかと思います。そういう意味合いで、さっきお尋ねに応じて、農業につきましてはいろいろと総合的な施策が着実に進行する度合いに応じて対策を立てざるを得ない課題でもあると同じに、タイミングとしてもそれで一応問に合うであろう、こういう考え方に立って申し上げた次第であります。
  22. 山中吾郎

    山中(吾)委員 関連をしてお聞きしますが、この法案工業に関して限定をして専門学校を作るのだという立法趣旨提案説明をされて、そして出されておるわけですが、この法案国会で承認を得て、またあと農業に拡大する、水産に拡大するというならば、われわれをペテンにかける法案だと私は考えておりますが、一応工業関係に限定して出しておいて、そして次に農業専門学校を作る、水産専門学校を作る、そうしてあらゆるものに専門学校を作るという愚図でお出しになっているのか、いま一度はっきりここで言っていただかなければならぬと思う。
  23. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 制度論としましては、高等専門学校工業に限るということそれ自体は本来適切じゃないと思います。四年制の大学以外に高校と一体をなした一五年制の大学に準ずるような制度があることが教育の場を広げる、機会を多く与える意味において是認さ回るべき制度だろうという意味においては、工業だけに限ることそれ自体が私は適切でないと思います。工業だけに限りましたのは、数日来繰り返し申し上げておりますように、学校教育を、完成教育を受けて社会人となった場合、それがルンペンになろうとなるまいと政府の知ったことではないという考え方であってはいくまい、卒業をした以上は、その在学中に身につけました才能、技能学問等を十分に活用いたしまして安定した職場が与えられることも当然あわせ考えらるべきことと思うのでございまして、そういう角度から考えました場合、当面絶対間違いないと一応考え得られますことは工業だ、こう考えた次第であります。しかもこの学校制度は国立に限りません。私立の高等専門学校も当然予想された制度で、ございまして、私学の現状を不当に圧迫し、混乱させるようなことは避くべきである。まだはっきりめどのつかないばく然たる一般的制度をこの際打ち立てるということはいかがなものであろうか、そういうことを考えまして、現実面に即して工業に限った制度として御審議を願って通過さしていただけばその線でスタートしよう、今後農業について、さっき申し上げましたように、検討の結果今申したようなもろもろの条件を考え合わせましても必要なりと考えましたら、あらためて国会の御審議をお願いして追加すべきはする。そうすべきことが最も妥当であると考えておる次第でございまして、ペテンにかけるなどということでは毛頭ございません。むしろはっきりと工業に限って御審議を願って、必要があるものはすべて国会を通じて立法措置を経て追加するならばするということこそが、民主的な態度であると信じて御審議を願っておるつもりでございます。
  24. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私学を圧迫するから、専門学校というのは専科大学の変形という姿で出ておる関係から、聞くところによると工業だけに限る、そして圧迫しないんだということで私学団体に納得をさしたと聞いておるのですが、それはいかがでしょう。
  25. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私学との相談の途中におきましては、そういう御意見等も私学からあったようでございます。私学の日本教育に多年非常な貢献、協力をしてもらっておるその現実の立場及び力、それを無視してこういう法案は作るべきじゃない、御提案申し上ぐべきじゃないと考えまして、私学の方のそういう御意向も十分に尊重して考えたことは事実でございます。
  26. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、現在は私学団体がうるさいからまず工業に限って法律を作って、ほとぼりがさめたときに他の方向にこの専門学校を拡大していくというのが、文部大臣の率直なる腹の中でございますか。
  27. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 妙にひねくり回しておっしゃるとそんなふうなせりふになりますが、そういうことでなしに、さっきも申し上げましたように、私学というものの存在はまともな日本教育という立場から考えます場合に、当然尊重さるべき存在と思います。その私学が、当面は工業ならば私学としても賛成だ、その他のものはもっと検討してからにしたらどうだという意向がありました場合、その意向をまたわれわれも反芻して考えました場合、まさしくお説を尊重せねばならない値打ちを感じましたから、そういう御意向も念頭に置きながら工業に限定するという判断の基礎にはむろんなっております。私学がうるさいから賛成したものだけ——それは外面的に言えばそう言えないことはありませんけれども、いろいろと勘ぐって皮肉がましく山中さんのようにおっしゃればそういうせりふもあるいはあり得るかと思いますが、そうでなくして、大まじめに考えて、私学の意向は尊重すべし、日本教育考える場合当然のことだ、こういう心がまえで意見も拝聴したわけであります。
  28. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ひねくり回しておるのじゃないのですよ。事実私学に納得さすときには、短大を圧迫するということも心配なので、現在の中堅科学技術者養成という目的からは、農業教育も必要ではあるけれども、これは高等農業の充実とか農学部の充実で、中堅農業技術者などは要らないのだ、工業についてはどうしても中堅技術者が要るという本来の立場から、工業に限って専門学校を置く、そういう精神、そういう考え説明をされてきておったので、率直に私学関係においてもこれ以上ほかの学科に拡大しないということはうそでなくして、将来もそういう一つ教育政策でいくという観念からお出しになったとわれわれは受け取っておる。ひねくっているではない。そうじゃなくて、今大臣の思想の中に非常に重要な問題があるのです。戦前の専門学校という制度をあらゆる部面に、拡大をするという思想に立っておるならば、そういうように言って堂々と法案を出されなければならぬと思う。それをお聞きしておる。どちらですか。ひねくらないで答えて下さい。
  29. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 基本的な概念論としてはさっき申し上げた通りであります。高等専門学校というのは、工業に限らねばならない必然的な論理というものは私はないと思う。あくまでもこれは学校教育を目ざすところの国民の側に立って考えねばならないと思います。そういう意味合いから申し上げると、あえて工業に限らない。本質的にそういう意味工業も必要であり、農業も必要であり、商業も必要であるというがごとく、必要であるならば必要に応じて作られていくべきものと思います。その判断はあくまでも国会で御決定をいただくべき筋合いと思います。御提案申し上げる場合の前提条件として、私学の意向も尊重することも先ほど申し上げたように当然でございまして、そういういろいろな要素を取り入れつつ国会の御審議を願う必要があり、それに値すると提案者として考えました場合に御提案申し上げて、国会の意思によって御決定を願って追加すべくんばしていくべきもの、制度論としては私はそういうものだと思います。
  30. 山中吾郎

    山中(吾)委員 こういうことなんですよ、私は論理だとか何とかでなくて、現在の学校制度は小学校、中学校高等学校大学という六・三・三・四制である、それを今度専門学校は旧制の専門学校と同じように、いわゆる高等学校大学の中に中間的な一つ専門学校という新しい学校階程を入れた。工業だけに限るという思想ならば、六・三制というものを一応主流にして、そうして六・三・五ですか、これをまず枝葉のようにして工業に限っていくんだという、そういう思想になると思うんですね、そういうふうに大臣説明されたのです。今の思想ではそうではなくて、専門学校という階程を全部にほうり込むのだ、そうすると現在の六・三・三制に最初から反対なので、昔のように小学校、中学校専門学校大学という制度に持っていくという思想を今言われてきたことになるから、どちらがほんとうですかと言うのです。そういう思想の上に立ってはっきりと言われなければ、この法案の奥にひそんでくるこれからの発展の姿というものが違ってくるのですから、われわれの審議には重要な文部大臣の思想なので、これはひねくりも何もないですよ。大臣のおっしゃるところは、この学校制度を否定をして、専門学校階程を置くということならば、とりあえずまず工業が必要であるから工業を置いて、あと農業水産、家庭、全部専門学校階程を作るきっかけになるんだという御思想なんじゃないですか。
  31. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今の尋ねの点は、別に、提案理由を申し上げまして以来ことさら隠しておるわけではありません。さっき高津さんの御質問にも引用されましたように、設例は適切かどうかは別としまして、六・三・三・四というものは一級国道として厳然として存在し舗装も完成していくべきだ、しかしながら日本の現在及び将来を考えます場合に、これだけでは足りない、二級国道が当然必要だ、さらにまた繰り返し申し上げますように、教育を受ける側に立ってものを考えて判断さるべきだという意味において、複線型というものは青少年に対して教育の場を多く与える意味で、いわゆる教育の機会均等の線に沿って充実していく方向をたどることは否定できないことですから、諸外国の例等も考え合わせまして、制度として新たなものを複線型にくっつける。プラス・アルファとして添える、このことが必要であり適切であると考えて御提案申し上げておるということは、るる申し上げた通りでございます。そうしてまた学校制度論としては今も申し上げましたように、工業に限ることが本来理屈の上じゃおかしい、しかし現実には日本の経済が、日本国民が、国が、国民立場において必要とする線に沿うことが教育施策としては適切だと思うわけでございますが、その意味ではっきり見きわめのつけ得る、ルンペン製造にならないというめどを立てるとするならば、この際工業に限って御審議願うべきだ、そういう意味工業に限っておりますから、工業を中心に御説明が集中しておることはこれは必然のやむを得ざることであります。基本的な考え方としては複線型であってしかるべし、そういうことでございます。
  32. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大臣は私の質問を御理解願っていないのです。官房長に聞きますが、専門学校をだんだん拡大していくという思想のもとに今工業を置いてくれば、いわゆる大学高等学校の問に新しい専門学校という階程を置くべしとの前提の上に立つことになりますね。そういういわゆる六・三制というものに対する新しい学校制度を作るという思想の上に立っていることになるのです。それでいいんですよ。おのおの六・三に賛成の人もあるし反対の人もあるし、複線型にするか、あるいは六・三そのものに専門学校の階程を入れるという新しい学校制度を正しいと思うならば、それは正しいと主張されていいのですが、今の専門学校工業専門学校に限れば、これはちょっと回り道をする、国道を切りかえて一部補助道路になるだけなんです。ところが大臣の言うのは補助道路だけでなしに、新しく六・三・三の間に専門学校を置くということなのですから、違ってくるでしょう。学校制度に対する根本の考え方が違ってくると思うのですね。そこのところを聞いているのです。いい悪いを聞いているのじゃないのです。どういう思想の上に立っているかということを聞いている。
  33. 天城勲

    天城政府委員 御指摘のように六・三・三・四という学校制度にいたしまして、制度といたしましては六・三・五という学校制度ができることになる、こう思っております。
  34. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それなら学校制度、六二二制というものを変えていくのだとはっきりおっしゃってもいいくらいに思うんですよ。
  35. 天城勲

    天城政府委員 六・三・三・四という制度に対して六・三・五という制度ができることで、六・三・三・四以外に一切学校制度がないという前提で、それに別の制度ができれば六・三・三・四制度を変えたという御議論ならば、まさに変えたということになりますけれども、六・三・三・四が残っておるということでは変えていないということになります。ちょっと言葉のあれになりますが、はっきりそういうことがいえます。
  36. 山中吾郎

    山中(吾)委員 農林省の局長さんおられましたね。農業基本法政府案の中の十九条に教育の充実と書いてあるので、これは文部大臣としては責任があるわけなんで、そのときに農業教育の充実というものは、一方に農林省の責任がある。そういう法案を提案されたのですから、今工業だけが技術者の養成ブームに乗って論議をされておるのですが、こういう法案が出るときには、反対農業教育についても忘れてはならないと思うのです。そのときに農林省では農業教育の振興についての基本的方策は、文部省と十分に御連絡になって対策を立てておられるかどうか、それが一つ、それから農業教育の場合には、一体中級農業技術者養成というような専門学校、こういうものが必要であるかいなか、教育の充実は、農業の場合には農業高等学校を充実するということが私は一番いいと思うし、それから農学者を作り、高級の指導者を作るならば、大学の農学部がいい、農業専用学校というものは農業教育の場合には私は不適当だと思うのですが、御意見がなければいいですけれども、それもあわせて言って下さい。
  37. 江川了

    ○江川説明員 先ほど御質問がありましたので、あわせてお答えいたしたいと思いますが、農業が御指摘のように、これまでの食糧増産を中心とした自給農業から、少しでも所得の増大をはかるという方向に向いたいわゆる商品生産の農業へ大きく変わりつつあるということは御指摘通りでございます。かててただいま御審議を願っておりまする農業基本法案の線に沿いまして、選択的拡大あるいは生産性の向上、農業構造の改善というような方向へ大きく持っていきます上につきましては、特にこれは農業就業者の資質の問題ということに帰一して参ると思います。かてて資質の問題となりますと、結局はそれは教育の問題であり、また私どもが担当いたしておりまする普及事業の問題であろうかと思います。そういう観点から私どもといたしましても、農業あるいは農民の知識、技術の向上ということについては、特にそういった新しい方向へ向かっていく今日、非常に大きな関心と努力を払わなければならないと考えておる次第でありますが、面接農林省の担当部といたしましては、現在農民教育、いわゆる農業就業者の技術水準を高めるという役割を農業改良普及事業という面から担当いたしておりまして、そのために大体全国で一万九百六十四名の農業改良普及員というものをかかえております。まずもってその農業改良普及員を通じて農業者の資質向上をはかっていくということが当面の最も大きな課題であると考えております。それにつきましてはひいては普及員の資質の向上をはからなければならない。特に選択的拡大という方向から見まして、これまでの農業に対比いたしまして特に果樹農業あるいは畜産部門というものが今後大きく伸びて参ります。従いましてそういう部門について普及員の整備拡大をはかっていくということを実は考えておりまして、そのために現在畜産につきましては九百十三名、果樹につきましては四百九十一名のそれぞれの特技普及員がおりますが、それらを大体昭和三十八年を目途といたしまして、畜産につきましてはさらに千四百六十五名の拡大をする、果樹につきましては八百六十七名を増員をしていくというように考えております。なお農業自身教育、普及員を通じての教育と同時に、農民自身教育対策といたしましても、特に本年度からはラジオ農業学校の開設、あるいは青年会議の開催等を通じまして、農民の研究あるいは農業改良の実践活動をさらに推進していくというように考えておる次第であります。特に御指摘の問題と関連いたします問題といたしまして、はたして現在の学校施設でそれが十分であるかどうかということがそのことに関連しようかと思いますが、ただいま申し上げましたような方向で私ども農民教育農業教育を進めていくことにいたしておりますが、現在の段階において別段学校施設に不足を来たすというようなふうには実は、感じておりません。
  38. 高津正道

    高津委員 各段階の何というか、各級の農業教育をやっておる部分は、今度の工業高専新設によって非常な打撃を受けるであろう。農業短大はもちろんでありますが、短大全般も大きい被害者であろうと思うのですが、その点に対する大臣の御所見を承りたいと思います。
  39. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 工業高等専門学校の設置によって農業短大等が被害を受けるというふうな御指摘でございますが、私どもはそうは考えません。農業短大あるいは農学部を置く大学はそれなりの本来の使命を持ち、本来の志望者を吸収して教育をする場でございまして、工業高等専門学校はもう読んで字のごとく工業プロパーの立場に立っての教育でございますから、あれとこれと本質的な競合関係は生じないと思います。ただもしさっきも申し上げました通り農村に潜在しておる一種の半失業者的な過剰人口、それが新たな職場の明るい前途を見てこの方に入学志願者が殺到するであろうということは、それ自体農村のためにもけっこうなことでありまして、そのほかに営農技術が新たな分野に対して即応すべき人材の養成等の問題というものは、先ほど来申し上げましたような今後に対しての高等専門学校についても検討を加えて、その求めに応ずる努力が当然なさるべき課題としてある、だけであって、加害、被害、害を加えるとか、害を受けるとかいうような相関関係には私は立たないと考えます。
  40. 高津正道

    高津委員 農業関係の入学志望者が総体的には減少傾向にあるというそういうお答えがあったのでありますが、ここに工業専門学校というものが新たにできれば一そうそれが少なくなると考えるのが、これが常識であります。しかしもっとこまかい、本年三月の状態はどうであったかなどの数字を聞いた上で、また他の機会に質問をいたします。
  41. 小林信一

    ○小林(信)委員 関連して、今農業のことと教育のことで話し合いができ、また農林省の方からも部長さんが来ておられて、非常にいい機会だと思いますので、質問いたします。  今大臣のおっしゃった農村にある潜在失業者ですね、これを工業関係——大田のおっしゃることは私不適当だと思うのです。今潜在失業者である農村の人たちが、高等工業専門学校ができたから救われるということではなくて、まだ工業学校へも行くことが考えられないような状態なんです。それは財政的なものだけが問題でなくて、やはり農村に止まれた者は農村でもって何とか生きたいという希望が、私は一番強いと思うのです。従ってそれがすぐ、高等専門学校ができたから非常に希望が持たれたというふうなことにはならない。そのまだ前の段階工業高校すら行くというようなことに迷っている状態だと思うのです。そのことはさておいて、その潜在失業者を救うのに、工業関係の方へ吸収するように努力すベきだというようなお考えが強いと思うのですが、農民考えというものは必ずしもそうでなくて、農業全体においてその潜在失業者も救われていきたいというふうな考えがあると思うのですが、この点大臣は、農業そのものでもって救うというお考えでなくて、かえって工業方面へそういう人たちを吸収するように仕向けよう、そういう努力を払う気持でおいでになるわけですか。
  42. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お尋ねの点は、ちょっとこれは所管外で責任のあることも申し上げかねますので、抽象論を出でませんが、考え方としましては、御指摘通り農民の気持は率直なところ、農業に従平しながら他の産業との格差を縮めて、少なくとも同列以上になっていきたいものだという希望が一般的だろうと思います。思いますけれども、現実問題は、先刻も触れましたように、農業それ自体に内在する経済的条件の劣悪さ、これは世界的な共通のことだと思いますが、また日本の耕地面積が狭い。言いかえれば農民一人当たりの耕地面積というのは、世界一に狭い国だと思います。それを集約農業で今日までどうやらやってきた。さらにここで所得倍増を目ざしてやるとするならば、おのずからそこに限界がある。限界があっても、なおかつ農業所得をふやしていく施策が講ぜられねばならないときに、いわば必要以上の人口を、余儀なくではありましょうけれども収容しておる。その余剰人口をどこか安定した職場に収容する施策が当然行なわるべきであり、そうしてその反面、一人当たりの耕地面積ないしは農業収入が向上するということが結果づけられるということもあわせ考えられねばならない。そういう前提に立って先刻来申し上げておるのでありまして、従って御指摘通り、まず工業同校の配置もその線に沿って農村地帯に考慮されねばならぬと思います。同時にまた工業高等専門学校のごときも、ブロックごとに配置を十分に考えねばならぬと思います。そういうことがあわせ考えられて初めて、農業それ自体について生活を安定し、向上せしめていくという希望が達せられると同時に、潜在失業者的な宿命をかこっておる人たに対してほがらかな前途を約束し、新たな雇用関係ないし職場が展開されていく、両面あわせまして初めて農村の期待にこたえ得るのではないかと私は思っております。
  43. 小林信一

    ○小林(信)委員 先ほどの御答弁を聞くというと、高津委員からお話しになったように、農業軽視ということが非常に感ぜられるわけです。今政府農業基本法を出して——この農業の方は工業と逆の立場で、瀕死の状態にある。殷賑をきわめる者だけに施策がなされるということは非常に片手落ちだと思う。かえって瀕死の状態にあるものに適切な施策をしていくということが大事な点だと思うのです。そういうような考えからお聞きして参りますと、どうも農業それ自体で新しい技術者を作っていくというふうなことよりも、かえって工業の方になるべく農村人口を移動させる方がいいのだというようにも受け、取れるわけなので、まずこういう点から文教政策、あるいは文部大臣と言ってもいいわけですが、農村に対するこれらの人たちの教育という面が非常に重大に考えられてこなければならぬわけです。そこで農業基本法政府の案で今衆議院を通りましたもの、これから考えて参りますと、池田総理大臣もいつかの本会議でこれが上程されたときにはっきり答弁しているのですが、今後の農村資本主義の中でりっぱに成り立つようにやっていくんだ。その後のいろいろな意見を聞いてみますと、従来の保護政策の中で農村をたくましくしていくというふうなことは考えなければならぬ、もっとたくましい農村を作っていくためには、やはり企業化して、企業として成り立つようにやっていくことがいいんだ、結局それは簡単に言えば、今の一般経済界の中に行なわれているような、弱肉強食をあえてやらせるところに農村の新しい発展があるのだというふうにも考えられるわけです。そういうことを根本的に持っている政府とすれば、やはりそれなりの教育というものがなければ、今の農村の人たちは単に農業労働者になってしまう。自立経常をしろというふうなことを言っておりますが、それは一部の人たちに許されることであって、あと農村の人たちは、単にその下で賃金をもらって働く労働者に終わってしまうのではないか。そういうふうなき件は、必ず政府としては考えられてこなければならぬわけですが、しかし教育もこの農業基本法の中で十分考慮していくという、あの法案を作った政府一つの根拠を持っているわけです。その教育の面を担当する文部大臣が、依然として農村そのものの自立化を要請するとか、農村の基幹となる青年教育というふうなものは、あまり考えずに、いかにして潜在失業者、農村人口を他に移動させるかに苦労する、従って高等工業専門学校を作ることはその点で非常に意味があるのだということをお述べになられて、ますます今度の農業基本法そのものあるいは文教政策そのものが農村軽視する、農村に対する施策はまことに冷酷きわまるものであるというふうに私たちは感ぜられるわけなんです。そこで、農業基本法の根本的なものを大臣はお考えになっていると思うのですが、そういう点からすれば、今後の農村に対する教育はどういうふうにしていくかといこうとを私はお伺いしたいと思うのです。
  44. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 本来、農業基本法なるものを本国会で御審議をお願いしておるゆえんのものは、世界的な科学技術、それはひいては工業の進展を意味すると思いますけれども、それを中心に大きく、急激に変わりつつある。この風潮はもっと時がたつにつれて顕著になっていく宿命的なものがあろうかと思いますが、そういう態勢に照らし合わせて、日本農業を見た場合に、これではいかぬ、もっと基本的な総合的な施策を国家的に考えるのでなければ、日本農民は助からぬぞということが、私はねらいだと心得ます。従って、その考え方は数年前からよりよい、役所関係でいえば各関係者で暗中模索しながら懸念しつつ対策を練っておったことと想像するのでありますが、それが農業基本法の制定によって、国として責任づけられる姿で、総合施策が推進されることを期待するのが農業基本法と思います。現に三十六年度予算を編成しまして、国会の御審議を願い、衆議院を通過するかしないころに農業基本法は御提案申し上げたと思いますが、そのタイミングから申しましても、率直に、露骨に申し上げれば、今小林さんのお尋ねのような今後の農業基本法を契機として将来にわたって、農業農村プロパーの立場において、そのための教育施策がいかにあるべきかということを言ってみろとおっしゃいましても、実は系統的な責任ある内容のものを申し上げることは不可能であります。不可能で、あるといって、むろんおっぽり出そうというのじゃございませんで、農業基本法の制定の趣旨に従って今までばく然と考えておったもろもろの事柄を、有機的に結びつけて、単に文部省のみならず、農林省とも密着しながら、いかになすべきかを今後に向かって検討を加えねばならぬ責任を感ずるわけであります。と申しますのは、農林省自体日本農業を一体どういう構造に持っていこうとしておるのかとも相照応して考えるべきものと思うのでございまして、そういう意味では、率直なところ、農林省もこれからの作業であり、これからの問題だと思います。概念論としての構想はむろん農林省では持っておられるとは思いますが、それが関係各省に反映して、相呼応して施策が具体的に講ぜられる段階には今までになっておるはずがない、今後の問題だと思うのであります。  せめてお尋ねに応じて私どもが申し得ることは、毎度申し上げることですけれども、一般的な立場において、小学校時代から、科学技術——これは農村関係農業関係を含めた広い意味での科学技術の受け入れやすい基礎作りをすることも必要であろうという線から、新しい教育課程も制定されたと承知いたしておりますが、中学校におきましても、先刻も触れましたように、技術家庭科などが登場しましたことも、まさにその線に沿った、必要に応ずるための対策でございます。高等学校における新しい課程の構想もその通りでございますのみならず、農業高校における学科等につきましても、今申し上げたような線に沿った考慮が具体的に払われて、実施を待ちつつあります。それと一連の関連において、高津さんの御指摘のような意味での高等専門学校のことも今後について、検討さるべき切実な課題でもあろうかと思いますが、しからば、いつからどうするのだ。小、中学校を通じ、同等専用学校を通じ、四年制の大学、短大等を通じて、どんなふうな教育内容にしていこうとしているのかをお尋ねにあずかりますと、系統的に責任を持ったお答えを申し上げる確定議はまだございません。今後の検討に譲らしていただかなければ不可能だと申し上げるのはその意味でございます。ただ農業基本法について繰り返し申し上げますが、国家的に、総合的に、農林省日本農業をいかにせんとするかの構想とマッチしました責任のある対策が真剣に取っ組んで講ぜられねばならぬことだけを痛感する次第でございます。
  45. 小林信一

    ○小林(信)委員 大臣もなるべく、できるならそういうこまかいところにまで答弁をしたい、こういうふうな気持で御努力なさっておることは、私は非常に感謝するものでございます。しかし私も無理にそういうふうな点までお聞きしようとは思っておらないわけです。やはりそこに私はきのうから大胆に御質問申し上げておる、私の納得いかない点が一つ出てきているわけなんです。と申しますのは、先ほどもお話がありましたように、二級国道一級国道の問題なんです。一級国道通りにくくなってきたから、二級国道を作ってもいいじゃないか。一体、この二級国道一級国道をここでもって例に出すということが私は非常に問題だと思うのです。第一京浜国道と第二京浜国道ならいいのです。一級国道と二級国道は必ずしもこれは同じ目的地に行く道筋ではないわけです。これはやはり建設省からだれか呼んできて聞かなければわからぬかもしれません。そういうでたらめな例を取り上げているところに、私は六・三・三・四の問題が大臣にもう少し真剣に考えてもらいたいと願うところなんです。というのは、今の大臣の例でいいと思うのです。例をとって言っていきたいと思うのですが、一級国道がもう交通量が増大してのめない。だから二級国道を作ってもいいじゃないか、いわゆる並行道路ですかね、作ってもいいじゃないか。ところがその一級国道がのめるとかのめないとかいう問題ならば、これは普通の道路と違いまして、道の幅を広げるとか——これは普通の道路を作る場合にはちょっとむずかしいかもしれませんが、六・三・三・四というものは政治の力でもって幅員を広げることもできると思う。あるいは立体交差をさせることもできる。橋が狭かったら橋広げればいい場合もあるわけです。今の農業基本法を一方に出す。これは農村が今町かに直面したのじゃない。宿命的に農村というものは非常に問題になっておる状態なんです。今始まったことではないのですから、こういうものに十分な施策をしていくことが、これが今まで持っておりましたところの一級国道というものを整備し、あるいは広げたり、あるいは立体交差をするところを作ったりすることだと思うのです。そういうことが、今大臣が言われる通り、これからこの基本法が出て、関係官庁とのいろいろな話し合いによって適切な道を開いていこうというような工合で、すべて立ちおくれているわけです。その方の仕事を怠っておるから、並行する道路を作っていかなければならぬというふうなことになるのですが、もっと基本的なものをしっかりお考えになれば、あえてこういう並行道路を作らなくしてもいいということになりはしないかと思う。そういう意味からしても、農村問題、農村教育というふうなものについて、私は一つの実例をあげてお考え願ったわけなんですが、私の特にこれから考えていただかなければならぬことは、農村というものが、今の農業基本法的な政府の出しておるものでいくならば、単に技術者を、養成するというふうな形でいったら、これはとんでもないことになると思うのです。もっと経営能力をもつことができるようなそういう農村を作っていかなければならぬと思うのです。単に技術提供者になれば——農村というものは、やはり農業経営者と、今の一般農村青年というふうなものは労働を提供する労働者になってしまう。今の農村の自主経営を増強するというふうなものは看板になってしまって、私は農村というものは依然として恵まれない状態になるのじゃないかと思う。今改良普及事務所のお話がございましたが、これは農林省として最も力を入れているところだと思うのですが、教育の分野でも相当に考えていかなければならぬことであって、農林省自体だけでこういう問題を考えておることがほんとうは変則だと思うのです。やはりこれは教育行政を並行して、深い関係、密接な連絡をとっていかなければならぬと思うのですが、今改良普及事務所の所員の数が述べられましたけれども、これは私たちの地方で見るならば、対象にするのはたいがい農村青年諸君なのです。千人の農村青年が二、三人の改良普及事務所の所員を相手にして仕事をしているわけなのです。これはおそらく部長さんは御存じだと思うのですが、毎晩引っぱりだこでほんとうに寧日ない状態であって、農村の今の果樹にしようか、あるいは野菜にしようかというような問題のこれが一番の力になっておるわけなのです。しかもその改良普及事務所の人たちの実例をあげれば、私の近所の青年が豆を作ろうとしたのです。ところが改良普及事務所の人たちの指導したものが、どこか寒冷地のものを持ってきて一生懸命に指導しておったので、農村青年がそれを聞いて栽培したところが、これが気温が違ったり地質が違ったりしたために非常に失敗したという例があるくらい、その土地の事情あるいは温度というようなものをほんとうに改良普及事務所の所員が真剣に研究をして、実際効果のあるような指導をするなら別ですが、今人が少ない、その人たちの教育のされ方もきわめて幼稚であるというような点から、農村青年諸君というものは、数の問題からも質の問題からもほんとうに要望するものがもっと大きいわけなのです。こういうふうなものにたよって農村というものが今その窮位を脱しようとしておるわけなのです。これは技術の面です。ところが今度は、資本主義の中で農村というものをりっぱに生かすような形にするという農業基本法政府の精神を聞きまして、これは大へんだ、そういうふうなものについてほんとうに教育行政が注意を払って今後やっていくかどうか。単に技術者を養成すればいいんだというのではなく、貿易の自由化がはかられる、だから世界市場のことも知らなければならぬ。あるいは機械化される、機械的な、科学的な技術も覚えていかなければならぬ。あるいは販路の開拓とかあるいは生活の改善とか、いろいろな問題で農村には開拓されなければならない非常に高度の問題がたくさんにあるわけなんです。こういうものについてまずそれじゃ高等専門学校と同じように高等農業専門学校を作っていくかというふうなことでもってまたやられたら、これは大へんだと私は思うのです。とうてい今の農村の人たちはそんなところへ行けるものじゃないのです。大臣高等専門学校を出れば非常に農村に明るいものをもたらすことができるというようなお話なのですが、決してそんなものじゃないのです。もっと程度の低いところで農村の人たちにそういうような教育を施すことによって農業基本法というものは生かされていく。従って、六・三・三・四の基本的な道を整備し、あるいは拡充することによっていくということが今の文教施策の重点だと思うのです。それを大臣が当初おっしゃったように、単に農村にありますところの潜在失業者だけをこういうものでもって吸収し、人口の移動をすることによって農村が救われるんだというようなことでもってほうっておかれるとするならば、これは非常に無責任だと私は思うのですが、大臣にこれ以上このことでもってお聞きをすることは、今大臣がおっしゃった通り、これからだということでございますので、お聞きいたしません。特に私お願いしたいのは、二級国道一級国道を今の六・三・三・四、そうして高等専門学校の問題の例に引かれるということは、六・三・三・四を非常に冒涜するものである、軽視するものであるという点で大臣に御反省を願いたいという点と、そして農村問題についても、今当面要求されるものは、その道幅を広げ、あるいはそれを舗装化することによって問題が解決されるのであって、いたずらに盲腸を作ったり、あるいはどこへ行くかわからぬような二級国道を作って、教育行政はこれでよろしいというような態度でおるということは非常に問題であり、ことに農村にとっては悲劇をもたらすものだということを御忠告申し上げて、私は関連質問を終わりたいと思います。
  46. 濱野清吾

    濱野委員長 三木君。
  47. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 今日技術革新ということが各方面で論じられまして、産業界といわず、教育界といわず、なお国会でもこの問題が取り上げられていろいろ論議をされておるわけなんです。むしろただいまの大胆のお話のように、技術革新に伴うところの技術者養成問題についてはおそきに失したということが言われておるのでございますが、私もその通りございまして、科学技術者を養成するということについては、決して反対するものでなく、双手をあげて賛成するわけなんです。ただここに問題になりますことは、たびたび同僚議員から言われておりましたように、このことに対して急な余り、施策としても、あるいは国論の統一の上におきましても、勇み足があってはいけないということです。これにつきましては同僚議員からすでに指摘されましたが、過去におきましては、あの三年制の工業教員の養成問題におきましても、あるいはこの五年制の工業高専の問題におきましても、拙速であるという点、これが指摘されました。なお早くするという考え方から、科学者に最も重要に考えなければならない教養という面が欠けるのではないか、この点も指摘がされました。なお六・三制を破壊するのではないかという問題についても触れておりますので、私はその点を省略いたしまして、以下、この科学技術あるいは技術革新に対応するところの学校制度のあり方として、われわれはどう受けとめるかという問題につきまして、要点的に御質問いたしまして、政府の所信をお聞きしたいと思うのです。  まず第一点は、教育制度としてこれを受けとめる場合、われわれはこれに対して間違いを犯していないかという問題。第二点といたしましては、その制度の内容について、これは同僚議員が触れておる面がありますから、その点はよけていきたいと思います。第三点は、さしずめ今のところでは、短大があるのにこの高専を作るのだというようなおぼろげな計画がありますけれども、これについての予算は一体幾らであるか、そうしてどれだけお金が要るのだということをここに明快に予算を裏打ちしてこの法案審議していくことが一つの方法じゃないかと思う。これが問題点だと思う。第四点といたしましては、これはすでに科学技術者の養成の観点に立って、数回野党といわず与党といわず政府にその所信をただしたわけなんですが、所得倍増計画とこの科学技術者の養成との数的な問題、大きな計画、いわゆる青写真というようなものを、これが最後の科学技術者養成に対する法案審議でございますので、これを明らかにしていただきたい。他端五点は、このことに至った経過、言うなれば、政府はすでに三十六国会におきましてこの問題と取り組んで、専科大学という形でこのことを取り上げておりましたにもかかわらず、この際高等専門学校という形になら、なお法案の内容においても若干修正がなされておりますが、その修正個所と旧の専科大学との比較において、今度の高専意図するところを法的にお聞きしたい。法の条項を私はお開きしたい。経過も聞きたい。こういうような考えでございます。従いまして、ただいまいろいろ設問の大体の課題を申し上げましたが、そうした中で、なるべく重複を避けていきたいと思います。あるいは設問の都合上ダブっても一つお許しいただきたい。  第一点として、これを制度としてわれわれが受けとめようとする場合、いわゆる学校制度でありますが、当然そこに欠陥を来たさないように、お互いに気をつけて、十分りっぱな制度としていかなければならぬ、これは論を待たないところでございますが、参考人をお呼びいたしまして、その参考人の口からも出た言葉でございます。なお、大臣の方からも、ソ連、アメリカ、あるいは西欧諸国の制度を取り入れることは、何らちゅうちょする必要はないということをおっしゃっておりましたが、まず第一に、制度として取り入れる場合に、西欧並びに諸外国の制度をどのように日本に持ってこようとしたか、いわゆるどこの国のどういう点を参考にしたかという点を聞かしていただきたい。これは数回そういうことが出ておりますので、その点を一つ明らかにしておきたいと思います。
  48. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 制度としてどう受け取るかというお尋ねの点について申し上げたいと思いますが、すでに先日来繰り返し申し上げておることの繰り返しにとどまるかとも思いますが、申し上げす。教育制度学校制度としまし  ては、私はいわゆる六・三・三・四の単線型、アメリカのように単線型でやっていくやり方もございましょうが、ソ連、西欧諸国のように、複線型でいくこともまた当然考え得る。どっちがいいかとなれば、私は複線型の方がいいと思います。そのいい悪いの根拠は、単線型がすっきりしている、今まで使いなれた、十数年経験を経たんだからというだけで、それのみで最善であるという結論には当然にはならぬと思います。繰り返し申し上げましたように、六・三・三・四の制度そのものが、今日やってみまして、そのことそれ自体に私はけしからぬ点があるとは思いません。しかし、学校制度考える場合には、単にそういう制度の抽象的な評価以前に、何のためのものか、教育制度というのは、学校制度というのは、あくまでもその学校において学ぶであろうところの青少年の側に立ってものを考えるのが、基本的な価値判断の基準だと思います。そういう意味から言いますと、六・三・三・四のコースをたどることも、これもけっこうなこと、同時に六・三・五というコースをたどる道もあっていいじゃないか。四年制の大学では、研究を主体とする創造力、クリエイティヴな能力を養うことを主たる目的とするのが四年制の大学の眼目だと思うのでございますが、そういう研究あるいはクリエイトする能力のある、適性を持った人も当然必要であり、存在すると同時に、現在ある科学技術を完膚なきまでに応用するという能力に特にひいでた者、しかしその人は研究者としての立場においては必ずしも能力がひいでてないという入がたくさんいるのであります。従いまして、四年制大学において研究し、かつ応用的な学問を学びながら、現実には社会に出て、その応用面を活用して、自分の人生を切り開いていくという人が圧倒的に多い。それはそれなりにむろんけっこうでございますが、その人の家庭的な条件、もしくは能力、適性等が、四年制大学に適しない、適しないけれども、それしかないから、それにいくほかないんだということよりも、そのほかに最も応用的な能力を中心とした、今考えられておる、御審議願っておる高等専門学校のようなものが新たにできることによって、そういう適性、能力、特色を持った人に対してぴったりした教育の場が与えられる、それがアルファとしてプラスされることこそが、学ぶ側の、青少年の側に立って考えてよきことだと私は思うのでございまして、そう意味複線型の制度を加えることをこの高等専門学校法案を通じて国民に御理解をいただきたい、こういう考え方であります。これは単に当面の応急措置というよりも、日本人の特性を生かし、人おのおのの特色を自然にこの方に導き入れることが教育政策としても適切である。従ってこの制度は今後長きにわたって堅持されてしかるべき値打を持ったものだ、かように考えて御提案申し上げておるわけでございます。
  49. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 問いの形が悪かったために大臣に再び同じことを言ってもらって恐縮でございます。私の申し上げるのは、政府委員の方から答弁いただいていいわけですが、こういう学校制度の改変というようなことと取り組む場合に、諸外国の例をサンプルにしたということを再三述べられておりますので、どこのどういうところを参考にしてこういう制度と取り組まれたかということをお聞きしております。
  50. 天城勲

    天城政府委員 結論的に申し上げますと、特定の国の制度をそのまま採用したわけではございません。ただ考え方といたしまして、必ずしも単線型でない、複線型と申しますか、二本、三本の行き方でそれぞれの目的に応じた学校制度を立てておるところも、ございますし、それらの点を種々勘案したわけでございまして、特定の国の特定の制度を取り入れるという考え方では毛頭ございません。
  51. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 複線なら複線大臣もはっきり言っている。複線のこういうところを参考にした、こういう国の例があるじゃないか、すでに参考人からもイギリスの例をあげておられた。そこは政府施策なんですから、こちらの設問の中に落とし穴をこしらえて、政府をそこへ引っぱり込んで文句を言うようなものではございませんから、ここを参考にしたということをはっきり言っていただきたいと思う。
  52. 天城勲

    天城政府委員 これは外国の制度を一々申し上げるのもいかがかと思うのでございますけれども、イギリスにおきましても、中等教育のある段階から専門学校の道が開かれておりまして、ある意味では典型的な複線コースの形態をとっているわけでございます。最初に申し上げましたように、どこの国のそのままということではございませんで、私たち別にばく然と申し上げているわけではございませんが、イギリスもそういう複線型のコースになっております。それから御案内のようにドイツにおきましても、中等教育段階から職業学校専門学校というものが複線型のケースに分かれておりまして、それぞれの目的に向いた学校制度を立てております。ドイツの制度検討いたしました。フランスにおきましても、中等教育の後期において実業技術中等学校あるいは高等専門学校という制度が総合大学以外にございますので、この実情制度も参考にしたわけでございます。ソビエトにおきましても、中等教育を終わりましてから、四年ないし五年の専門学校制度がございまして、大学と別のコースがございます。それぞれの国の事情を見たのでございまして、特定の国のどれということでは、ございません。  なお諸外国における学校教育や高等教育等についても資料が用意してございますので、御必要ならば御提出することもできるようにいたしております。
  53. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 一つすっきり言っていただいて、時間の浪費をやめたいと思うのです。  外国の制度を取り入れよう、あるいは日本にそういう制度をやろうとする場合に、外国の制度をまず見習う、この態度はわれわれれとして当然だと思う。そこで、どこのどういうところがよかったかいうことを、一応参考にせられたならば参考にせられたということで一つお話しを願いたいと思うのです。これは大学局か、あるいはまた官房長の方で提示されたものか知りませんけれども、新聞にはソ連のテフニクム、これを比較して出しておる。いわゆる高専では三十九時間、テフニクムでは四十時間だというような比較もされておるのです。そうすると、時間的にはここはこうだからソ連のこういう強行軍のところはいい、あるいはイギリスの技術学校がこうだから、それが後に大学につながるという点がいいというような点を、一つはっきり言っていただきたいと思うのです。
  54. 天城勲

    天城政府委員 決してあいまいにごまかしている意味では毛頭ございませんで、この五年制の構想につきましては、この前も私は答弁申し上げましたけれども、昭和二十九年以来中央教育審議会の三回の答申もございますし、また科学技術会議からも五年制の一貫教育をする学校制度についての答申も出ておるわけでございます。五年制の構想につきましては、急でなくてそういう数年来の構想の上に立ってこの制度を実施いたすわけでございまして、特定の国のこの制度が一番いいから、それをすぐ持ってくるという考え方でとったわけではございません。  なお今ソ連のテフニクムの例をお出しになりましたけれども、これは特にテフニクムの制度を初めから意識してその制度を入れたという意味じゃございませんで、これも記者クラブとのレクチュアの一例として、外国の制度の中で専門学校教育内容についてどういうのがあるかということで、たまたまその資料が、機械工学科でありましたか、ありましたことで、原局の担当者がレクチュアしたというのが事実でございます。でありますから、初めからそれを移すためにこの制度を特に研究したという意味ではございません。
  55. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 そうしたら、その点はけっこうでございます。  私は、こういう諸外国の制度を取り入れる場合、特に科学技術者の問題につきましては相当大きな問題である、大臣もお触れになったと思いますし、私たちもその面の重要性というものにつきましては非常に認識を深めておるわけなんです。ただ文部省と文部大臣という形だけでは、この大きな問題は取り組めない。それくらい問題が大きいのであります。従って、こうした問題を当初計画する以上、われわれとしては相当大きな費用をこれに投入してもらわなければ、産業界並びに世界の技術革新要請には応じ切れないという願いがあればこそ、こうしたことも一応お開きしておるわけなんです。さらに話を進めまして、私が申し上げたいのは、かりにイギリスの制度を取り入れられたとした場合、あるいはそれを参考にせられたとした場合、私はやはりイギリスはイギリスなりの国情があると思う。まずその第一は、イギリスとしては国民所得の二%を科学技術者の養成に支払って計画しております。なお十年間に科学著を数倍にせよというような野党の強い意見もあるわけであります。現在の状態においては、理工系がイギリスは四四%、日本においては二一%、こういう数の上の劣勢がありますから、なおさら私はこれに対する予算措置あるいは大きな計画というものが必要じゃないかと思う。そういう考え方でかりにイギリスの型がいいとお考えになるとすれば、それに対する措置をとっていただくということが大事じゃないか、こういう立場でまずお聞きしておったわけでございます。  なお、私は、この学校制度として受けとめる場合に、その欠点であるところを補わなければならないということは先がた申した通りでございますが、特にこういう制度社会保障制度と結んでこれを考えていけば、相当ここにまた問題があるのじゃないかと思うのです。そういう科学技術者養成と制度の問題、そして、どうして科学技術者を多くするかというようなことを考えていくときには、三年制の工業教員養成のところでいろいろ話が出ましたように、給費の問題等も考えていかなければ、財界あたりのひもがついて、そうして工業教員養成をやろうとしたときに、それが完全を期し得ないというようなこともあると思うのです。そういう点、将来いよいよ科学技術者を重点的に養成しようとするならば、どのような奨学制度なり就職の問題あるいは奨学金の問題を考えていったらいいかということを、政府の方から言っていただきたいと思います。その点どうですか。
  56. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 社会保障、特に育英奨学の点がお話の点に一番密着した課題かと思いますが、これはひとり高等専門学校を対象とするのでなしに、全般的な対策として育英奨学の制度を充実発展せしめていくべきことは当然のことと心得ております。現実問題としては、この高等専門学校に入る人に相当特別奨学制度の特典を持ち得るような人が入ってくるのじゃないかと期待するわけでございますが、それはそれとしまして、今申し上げるように、全般的な育英奨学制度の充実をもちましてこの面の需要にも応じたいと考えておる次第でございます。
  57. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 なお科学技術者養成に対するところの施設の整備について、英国においては、先がた申しました国民所得の二%をこれに充てておる。数千億の金が予想されるわけなんでございますが、後刻その問題についてお聞きしたいのですが、日本においても、施設設備の充実という点について今後所得倍増計画による科学技術者の養成という立場から、どういうようにお考えになっておるか、これもあわせてお聞きしたい。
  58. 天城勲

    天城政府委員 今倍増計画の構想の中で、現在の研究投資〇・九%という数字を押えておりまして、倍増計画達成までにこれを二%までに倍増するという案を政府全体として立てておるのでございます。
  59. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 その次へ進みます。  これに見合うために、政府の方ですでにいわれております所得倍増計画によるところの科学技術者の養成という、この数です。われわれとしてこの技術者の養成の大きな計画の中で、技・術革新の必要から、このことの重大性をやはり国民に説き、あるいはまた国論をその方向に持っていかなければならない、PRもしなければならないというような考え方があるわけなんですが、同級技術者については、科学技術庁では十七万、文部省では七万三千というような数が押えられ、中級技術者についてもそれぞれの数が出されておるわけなんですけれども、前に同僚議員の質問にあたりまして、私はっきりしなかったのは、次々と作っていくところの学校、三年制の工業教員養成所とか、五年制のこの学校、それから大学の充実、こうしたところにどれだけの教授陣が要るか、科学技術者の中からその方向にどれだけの先生が要るかというところの見取図を一つ出してもらいたいと思います。   〔委員長退席、中村(庸)委員長代理着席〕
  60. 天城勲

    天城政府委員 先ほど三木委員のお述べになりました倍増計画あるいは科学技術者の増員計画と関連いたしまして、私たちの方で一万六千人の理工系の学生増加計画を現在のところ一応定めておるわけであります。これに必要とする教職員の数でございますが、これは、国公、私立、四年制、短大いろいろあるわけでございますが、一応国立大学についての標準とされております基準をとりまして検討いたしてみますと、教授、助教授、助手を含めて約三千九百人の教職員が必要だという見通しの数字を立てておるわけでございます。
  61. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 三千九百人というのは何に対してですか。
  62. 天城勲

    天城政府委員 先ほど申しました一万六千人の理工系学生増募実施のために必要な所要教員数でございます。
  63. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 所得倍増計画によって、大体文部省で七万人の同級技術者、こういう計画を持っておられるのですか。私たちはこのこうした技術者の養成に当たるところの教員の数、それからその養成計画、なおこれらの人の給与、免許状というようなものがどういう関係にあるかということで、この五年制の高専の場合は質問をさきにしておったのです。私の申し上げておるのは、そうしたことを含めて、政府の計画によると、七万人の高級技術者を作るために、十年間に、大学で、あるいは短大で、それから三年制の工業教員養成所で、高等学校で、五年制の高専でというように分けて、ここにいわゆる政府所得倍増計画が十七万だといっておるけれども、現実の、今のところではこれだけの人でよい、これだけの人を大体文部省としては考えるんだ、いわゆる高級技術者七万に対してどのような人数を必要とするか、そういう全体計画を一つお聞かせ願いたいと思います。
  64. 天城勲

    天城政府委員 倍増計画で検討して参りました需要数、それから供給数でございますが、いわゆる理工系の高等教育機関の卒業生に相当する技術者が、倍増計画を達成するまでに、現在の規模でいけば、十七万人不足する。これに対して、私たちの方でこの期間に現在の学生定員を一万六千人増加することによって、さらに七万人の技術者を供給しよう、養成しよう、こういう構想でございます。一万六千と申し上げましたのは、学生の年間の一学年の定員でございまして、七万は累計の数字でございます。それに対しまして一万六千人の定員増をいたしますれば、これは当然学年進行をして、四カ年に七万になるわけでありますが、これを遂げるために必要な教職員の数を三千九百と先ほど申し上げたわけでございます。
  65. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 三千九百人の教員の充当、どこから充当して不足はどういう工合にして補うかというような計画はないのですか。
  66. 天城勲

    天城政府委員 三千九百人のうち、短大の助手等を除きまして、基本的な教職員の供給源は、これは大学院とわれわれは考えております。ところが現在理工系の大学院の学生は、いろいろな事情でもって定員通り十分に入っておりませんので、今われわれの推計でいきますと、三千九百人、現在の状況のままでは大学卒業生をもって十分埋めることが困難だという見通しがございます。従いまして、この期間になすべき一つの重要な問題といたしましては、研究者の後継者養成という意味大学院の充足ということをあらゆる面から努力いたさなければならぬ、こう考えておるわけであります。
  67. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 現実の問題でお聞きしたいと思うのですが、政府ではすでに大学については一学部五十三学科の増加を本年度なさっておるわけです。それに対する教授陣あるいは助教授陣というものは、新年度はもう発足しておるわけでありますから、決定しておると思う。これについて、現在教授が不足しておるというようなことはないか。その辺の充当状況を一つ聞かしてもらいたい。
  68. 天城勲

    天城政府委員 御指摘のように、本年度学部ないしは学科新設がございましたけれども、これはそれぞれ予定の教職員の充足を見まして発足をいたしております。なお全体として教職員について学科によって欠員のあるところもございますが、現在の状況では何とかやっていく形でございますが、将来にわたって、今申し上げたような十年間の見通しにおいてはかなりの供給不足が見込まれますので、先ほど申し上げたようなことを現在考えておるわけでございます。
  69. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 新設学部の大阪大学の場合、基礎工学部として機械工学、合成化学、電気工学、こういう工合いにして各学科を見ていきますときに、なお新設学科としてそれぞれの大学に付設されておるわけなんです。それを具体的にどこがどのように足らぬかというようなことをお聞きしておるわけなんで、若干足らぬとかあるいはおよそ充足しておるとかいうようなことでなくて、そうした具体的なものをお聞きしておるわけです。
  70. 天城勲

    天城政府委員 新しい学科あるいは学部が発足いたしますときには、国立大学でも設置基準に照らして審議会の審議を経て、実施いたすわけでございまして、教授陣が満たされなければ新設は認めないわけでございます。従いまして、現在発足いたします学部学科については必要な教職員は充足いたしております。ただ私が申し上げましたのは、事務官等の採用と違いまして、それぞれの講座における教職員の採用は欠員があればすぐ埋まるという形に参りませんので、全体として欠員があるということを申し上げました。三十五年では理科系で二・五%、工学系で八・一%という欠員を見ております。
  71. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 一つ心配しますことは、こうした学部をふやし、なお五年制の工業高等専門学校新設していくという場合に、大学の教員の仕事がオーバーになる。この場合に充足はされたけれども、従来の教授の仕事の上にこうした仕事が付加されたような格好でやられておるかどうかということも、やはり考えの中には入れなければならない問題だと思います。その点どういうことになっておりますか。
  72. 天城勲

    天城政府委員 もちろん学生を増募いたしますれば、それに伴う教官の増、学科新設いたしますれば、基準に即した教員の増は当然実施いたしております。
  73. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それはどこからそれを補われたのですか。当然それに対して新しい人によって補ったわけですか。
  74. 天城勲

    天城政府委員 今私が申し上げましたのは、制度学部学科ができますれば、たとえば理工系で教授四人、助教授四人というような定数の増加がございますが、これに教職員を充当いたしますのは、これは大学関係教授会が中心になって職員を充当いたすわけでございますが、助手の中から助教授に昇格する方もございましょうし、ある大学の助教授から他の大学の教授に移ってこられる方もございましょう。それはいろいろな道で出て参りますが、制度といたしましては、教官の定数をふやすということと、それから実際に各大学で必要な教員を採用するという形によって、増加学生に対する教育に支障のないようにはかっておるわけでございます。
  75. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それでは、政府は今後の一定の鉱工業生産の伸びと、それに対応するところの技術者需要要請という立場は立って、それぞれ技術者養成の計画を立てておると思うのです。その点について、最後に全体計画をお聞かせ願いたいと思います。これが明白でなければ、池田内閣所得倍増計画は成り立ちません。現実は先ほど言いましたように七万と十七万というような食い違いができてきますが、これは漸次それに対するところの充足を考えていけばいい問題で、ございます。大体所得倍増計画と技術者の養成需要数ということについては、この文教委員会でも相当やかましく言われ、あるいは荒木文部大臣並びに池田長官の間でも話し合いの進められておることだと思いますので、そうしたものがすでに立てられておるだろうと思いますから、その点についてお聞きいたしたいと思います。
  76. 天城勲

    天城政府委員 あるいは質問の御要旨を取り違えておるかもしれませんけれども、所得倍増計画において策定いたしました倍増計画達成の年度でございます昭和四十五年における労働需要が、各市平均的な増加によって達成されると仮定いたしまして、三十五年から四十五年までの各年次における高等教育機関卒業程度の技術者需要数を算定いたしたわけでございます。それで規定定員に基づきます各年次の理科系の高等学校卒業予定者を差し引きまして一応計算して参りますと、十七万という不足数が推定される。これに対して、現在の見込みといたしまして昭和四十三年までに定数として短大及び四年制を含めて一万六千人の定員増を考えまして、累計として七万二千の新規の卒業生を追加していこう、こういう計画を立てたわけでございます。
  77. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 三十六年度から——現実的には高級技術者の場合は三十九年度からになりますが、現在も出ておるわけでございますので、三十六年度から見て四十五年度まで高級技術者が要る数、それから中級技術者が要る数、なおそれに対するところの損耗補充数というもの、それから新規需要数というもの、現在定員による年平均をどれだけに持っていくかというようなこと、こういう点についてはお考えになっておりませんか。今の数ではちょっと数が合わないのです。
  78. 天城勲

    天城政府委員 現在正しい意味での中級技術者の供給源というものがないと申しますか、はっきりしないわけでありまして、現在十七万人の不足を考えられたときに、この領域における技術者というものの基礎には、むろん大学専門学校も含めて、そのレベルの人たちが現在担当している領域、それを前提に置いて十七万という不足数が推定されておるわけでございます。もちろんこれを考えます場合に、経済の伸びに伴います新規需要と、それから御指摘の損耗補充というものも、要素といたしましては加味いたしまして計算いたしております。
  79. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 三十五年度に計算した数がここに出ておるわけなんですが、これは所得倍増計画とは離れておりますので、それであえてお聞きいたしますが、三十五年度から三十九年度までの間、修業者の増加数を高級技術者を十一万、それから中級技術者を四十四万五千、損耗補充数を三万四千七百何がし、それから中級技術者を十一万九千、新規需要数を、高級技術者を十四万五千、中級技術者を五十六万四千、こういう計算の仕方をしておるわけなのです。そうした考えで全体計画を一つ出していただいて、その上でわれわれとしては技術者をどういうように養成していかなければならないか、どういう学校がまだ足りないかということを具体的に押えていくことが大事ではないかと思います。数の方はもうけっこうですから、そういうように一つ御計画をお立て願いたい、こう思います。  最初に申し上げましたように、一応科学技術者を養成する場合、われわれの側といたしましては六三制を堅持して、その中で科学技術者を養成してもらうということをるる申し上げておるわけなんですが、しかしながら、ここに複線型において科学技術者の養成がなされようとしておるわけなのです。しかしそれには今も申しましたように、予算ということが問題になると思う。国会法によって、法案は予算というものを裏づけなければ審議の対象にならないというように思うのですが、その点はどうですか。予算が出ていないようなのですが……。
  80. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいま御審議願っておりますこの学校教育法の一部を改正する法律案によります高等専門学校は、一つ学校制度の調節でございまして、これをどう実施していくかということはこの法律直接ではございません。たとえば国立学校設置法のような格好で特定の学校を設置するという形の法律の御審議を願いますときには、法案とマッチした予算をあわせて御審議を願わなければならぬことは当然だと思いますが、この法律は御審議をいただいて通過をすれば、明年度から実施いたすということでございまして、どこにどう作っていくかということでなくて、学校制度の問題でございますので、必ずしも今年度直ちに予算を合わせなければならぬという性質のものではないと考えておるわけであります。
  81. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 予算のおよその見通しはお立てになっておりますか。何校作って、それに要する費用はどれくらいか。
  82. 天城勲

    天城政府委員 先ほど申しましたように、一つ制度でございますので、これをどこにどの程度設置するかということはこれからの問題でございまして、もちろん、一校を建てるのにどのくらいの見当か、どのくらいの経費がかかるかというような見当につきましては検討いたしておりますけれども、総体の計画がきまりませんと、総額で幾らということはまだ今日の段階ではきめかねております。
  83. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 それではその次に進みます。  予算は今のところは考えないということですが、しかしながら、内容については先般もこの委員会審議されたわけですが、この法案と比較対照しながらお聞きしたいと思うのです。すでに専科大学として御審議になる用意を持っておられたわけなんですが、それが高等専門学校という形で今提出されてきたわけです。従いまして、前の学校教育法の一部を改正する法律案国会に出されましたものを見ましても、その内容で、前の専科大学のときには教諭を置くというようなことが法案の中に入っていたが、今度の場合には、特に名前まで高等専門学校ということにしておきながら、教諭については触れておられない。これは一体どういうことですか。内容としてお聞きします。
  84. 天城勲

    天城政府委員 以前国会提出いたしました専科大学案でございますが、これは原則といたしまして、専科大学の修業年限は二年、あるいはまた三年ということでございまして、高等学校に準ずる教育を施す必要があるときに五年または六年ということで、その場合に、高等学校教育に準ずる教育の部分を前期、こう考えておったわけでございまして、それは高等学校に準ずるということで、内容的に、現在の高等学校教育課程は教職員の資格等を考えたためにそういう制度があったわけであります。このたび御審議を願っております高等専門学校は、五年間を一貫した教育制度として、全然新しい制度でありますので、専科大学と異なり、同じ種類の教員組織にいたしているわけでございます。
  85. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 これは、「修業年限を五年又は六年とする専科大学にあっては、教諭を置かなければならない。」こうなっているのですね。今度の場合は五年及び六年ということでなくしても、五年ということははっきりしているわけなんですね。それになぜ教諭をはずされたか。私の心配するところは、先ほども大学の教職員についていろいろお尋ねしましたが、御答弁では確たる数的な判断が私はできなかった。しかしながら教諭をはずしていくということになれば、なおさら教職員の充足に困られるのではないか、こう思うのです。従って教諭の方をなぜはずされておるかということをお聞きしておきたいと思います。
  86. 天城勲

    天城政府委員 五年制の一貫した教育制度でございまして、専科大学の五年制の場合のように、前期の課程、後期の課程という区別がございません。専科大学におきましては、前期は高等学校に準ずるということにいたしておりますので、教諭が置かれたわけでございますが、今度の専門学校においては一貫した教育考えておりますので、特に教職員の種類を分けておらないわけでございます。  なお高等専門学校の教職員をしからばどういう形で資格を定めたり、どういうところを供給源と考えるかということにつきましては、前に局長が申し上げましたように、現在設置基準というものを考えておりますので、それによりまして高等専門学校の教職員に最もふさわしい資格基準を定めたいと考えております。
  87. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 結論は、教諭を入れるお考えがあるのですか、ないのですかということです。そうでなかったら、将来にわたって教師陣容が足らぬのではないか。その点どうですか。
  88. 天城勲

    天城政府委員 制度といたしましては、教諭という制度はとってないことを申し上げたのでございますが、実際にどういうところから供給するかという御質問かと思うのでございますが、設置基準で高等専門学校の教員に最もふさわしい基準を定めるつもりでおりますので、供給源としては、あるいは高等学校の教諭の資格を持っておられる先生方も入ってくることも考えられると思いますが、制度として教諭、教授という二つの制度を置いてないことを申し上げたわけであります。
  89. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 一、二内容についてお聞きしたいのですが、大学審議会に対して高専審議会というものが考えられておる。この構成についてはもちろん別の法によって示すということになっておりますけれども、大体大学審議会に準ずべきものですか、その点お聞かせ願いたい。
  90. 天城勲

    天城政府委員 ここでは高等専門学校の設置主体が国立の場合も私立の場合も公共団体のものも、ございますので、そのことも加味いたしまして考えるつもりでございますが、大学の現在ございます審議会につきまして、その趣旨を十分考えながら定めたい、こう考えております。
  91. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 この法によりますと、七十条の七に、学校の設置の許可に関しては、高等専門学校審議会に監督庁は諮問しなければならない。この四条の後には、「学校(……高等専門学校学科についても同様とする。)の設置廃止、設置者の変更その他政令で定める事項は、監督庁の認可を受けなければならない。」、こうなっておりますが、ここの関係一つお聞かせ願いたいと思います。
  92. 天城勲

    天城政府委員 この法律学校教育法の一部改正でございまして、必要なところ以外はただ準用いたしておりますので、この七十条の九という条文で関係規定を準用いたしております。七十条の九で学校教育法六十四条を準用いたしておりますが、六十四条では、現在大学は文部大臣の所轄に嘱する。監督庁は文部大臣だということになっておりますが、その規定を準用いたしまして、高等専門学校は文部大臣の所管にいたしております。従いまして他の規定で、たとえば七十条の七で、「監督庁は、高等専門学校審議会に諮問しなければならない。」というような規定は、これは文部大臣ということを意味しております。他の条文でも、大学についての規定は全部こういう読み方をいたしておりますので、高等専門学校につきましても監督庁は文部大臣ということでございます。
  93. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 次に経過の点につきまして、最も私たちが不思議に思っております一点だけお聞きいたしたいと思います。  この法案がすでに過去何回か日の目を見ようとして見なかったのが、会に高専法として出て参りました。その中で本年の三月九日、中教審に対しましてこの法の了承を求めた。すでに昨年五月以来、中教審は大学制度の改善について大学の目的あるいは性格などについて審議をしておりますが、その審議を待たずして、突如として三月九日に中教審が了承を与えておるということは一つ問題であります。それはいいとしても、突如として了承を求めて、これを国会に出した。ここに巷間一般に伝えられるところによりますと、こうした大事な国の制度を中教審がただ一ときの了承のもとにこれをきめてしまったというところに、中教審の権威あるいは中教審というものに対するところの世間の疑惑というものがあると思うのです。この点は経過の上でわれわれは見のがすことのできない重要な点だと思いますので、これは文部大臣にお聞きしたいと思います。こういうようなやり方をしていいものかどうか、もちろん財界の要請あるいは企業要請が急であったということは、われわれもたびたび聞いておりまして、わかりますけれども、そうしたことで便宜主義的に中教審をお使いになるということはいかがなものかと思うのですが、その点についてお伺いいたしたい。
  94. 天城勲

    天城政府委員 ちょっと経過について私から申し上げます。  前から御説明いたしましたように、中教審で五年制の一貫教育について再三にわたって御答申がございました。それを受けまして、ただいま御指摘のように専科大学法案として国会の御審議も願った経験があるわけでございます。従いまして私たちこの高等専門学校の構想を定めます場合にも、従来の中教審のいきさつということは十分考慮いたしておったわけでございます。一方御指摘のように中央教育審議会におきましても、現在大学制度について全面的な御審議を願っておる段階でございますので、この両者の関係について慎重に考えまして、従来からの御答申もあり、法律案提出した経過もございますが、このたびの高等専門学校は前のと少しも同一でございませんので、中教審議会の第十五特別委員会という委員会がございまして、これは大学制度の目的、性格を審議するために特別に設置せられた委員会でございますが、この特別委員会にお諮りをいたしまして、審議されまして、このような新しい制度を設けることについて異議がないという特別委員会の結論が出まして、この特別委員会から今おっしゃった三月九日の中教審議会の総会にこれが提出されて、ここにおいて適当と認められて御承認を得たことが経過でございます。
  95. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 経過的には今政府委員から申し上げた通りでございます。元来中教番の答申に基づいて専科大学法律案が前後三回にわたって提案せられ、はしなくも三回とも審議未了になっておるのが事実でございますことは御承知の通りであります。私は、専科大学の案そのままで提案するのも一つ考えだと一応思いましたけれども、現に国会で、いかなる理由であれ三回にわたって審議未了になった原因を考えざるを得ない。言いかえれば、その背後にひそむところの国会の潜在した御意思を一応検討するのが当然だと心得ました。その主たる理由は、御案内通り、専科大学制度が現在の短期大学そのものを必然的に専科大学に移り変わらせるという内容を持っておる点、特に私学の方面において短期大学がそれ自体創設以来数年を経過して現実に根をおろし、社会要請にもこたえ、青少年の教育の場として実効をあげておる、そのことを否定したような、これを抹殺するような相関関係を持った専科大学制度であるがゆえに、その意向が国会に反映して審議未了になった、これが主たる理由だと私は理解いたしました。その事実は、四回目の提案をするにあたりましては何としても当然考慮せねばならぬと考えました。従って便宜的でなしに、現に短期大学制度というものが社会的に価値を認められておる、特に私学方面におきましても情熱を込めて短期大学が運営せられ、学んでおる学生諸君もおのずから所を得ておるという現実はこれまた尊重しなければいかぬ。従ってそのことを尊重しつつ、さらに四年制大学にあらざる、大学卒業と実力的にはまさるとも劣らぬところを目ざす、応用面を主とした学校考えるという考え方で、専科大学意図しました実質的な中教審の答申の趣旨は一応貫かれるであろう、そういうことを考え合わせまして、そういう考慮のもとにこの制度を提案したいと思うが、中教審の御意向はいかがであろう、そういうことで今政府委員が申し上げましたような意味においての御相談をしたわけでございます。   〔中村(庸)委員長代理退席、委員長着席〕 そこで、そういういきさつと私どもの考え方を十分に中教審でも検討されました結果、中教審としての意向が異存はない、こういう保証を得ましたので、そういう客観的な御判断を基礎に、自信を持って国会の御審議をお願いする段階になったと存じて提案を申し上げ、御審議をお願い申し上げておる次第であります。
  96. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 今大臣の方からお話がありましたようないろいろな政治的な配慮あるいは経緯というものがありまして、「その後数日して、自民党の文教部会がひらかれたが、とに角文部省の案を成文化せよという議員の慫慂により、文部省では高等専門学校案の要綱を三月九日急速中央教育審議会にはかり、即日その承認をえたので新聞発表したわけである。」これは今お話があった通りだと思います。ただあとにこういうことを善いてあることが私は遺憾だと思うのです。「なおまた、今回の高等専門学校制度は、戦後の民主化された単線教育制度の一角をくずして、戦前の教育制度を復活させる端緒を開くものであるのにかかわらず、中教番は教育制度全般を検討せずに、わずか数十分の審議によって、文部省の案に了承を与えたということは、中教審がいかに便宜主義であり、文部省の責任逃がれの御用機関に堕してしまったかを証明するものである、」というような意見が出ておる。この点は私はやはり今後審議会のあり方というものがこういうふうに御用機関的になってしまっては問題だと思いますので、これは政府の方に言うことでなくして、中教審に望みたいことであり、今後あらゆる審議会に望みたい問題であるわけであります。  最後に申し上げたいことは、高津委員の方からもそういうお話がありましていろいろ質問をされておったのですが、私の心配することは、限られた予算の中で今後高等学校を増設しなければならない。またこうした五年制の高等専門学校新設する、三年制の教員養成所を作っていくということになりますと、勢い既設の高等学校あるいは短大、まあ農業方面学校が犠牲になる、商業学校が犠牲になるということにおいてこのことが実施されていくとするなればまことに遺憾なことである、こう思うのです。高津委員質問の中にもこういう点の心配があったようでありますが、念のためにこの点をお聞きしておきたいと思います。既設のものをつぶす、なくするという犠牲において今後の工業技術者の養成に当てるということはないわけですね。
  97. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 先刻高津さんにもお答え申し上げたのでございますが、もちろん御指摘通り六・三・三・四の現在の制度、小中学校高等学校ないしは四年制の大学、さらには短期大学等、たくさんの学校が現存しておりますが、さらにこれを増設せねばならぬという要請も生徒増に対応してございます。既存のものが施設、設備ともにまだ不十分であることを十分認めます。従ってその方面に対する努力すべき責任も重大であることもむろんと思いますが、さらにまた二面、それはそれとしてこういう制度新設することも国民的な要請にこたえるゆえんであり、そうである限りはあわせてこれについても努力すべきことも当然でございます。その結果として既存の学校施設、設備の充実の課題がなおざりにされやせぬか、その犠牲においてこんなものが出てくるのじゃないかという御懸念からの御激励の言葉と心得ますが、これは絶対そういうことのないように全努力を傾ける責任を痛感いたします。財政規模がかりに三十六年度と同じと仮定いたしまして、大学高等学校その他の既存の施設設備に対する充実のための予算規模もまた同一だと仮定いたしまして、中学の生徒急増に対する施策が一応おかげをもって段落をつけましたので、ここに予算規模からきます何がしかのゆとりがございます。最小限度そういうゆとりも一応期待できるわけでございますが、そんな消極的、なことに甘んじておるべきじゃむろんございませんので、今の御忠言の趣旨を体して全部もっともっと充実する予算を御審議願えるように努力せねばならぬと心得ております。
  98. 三木喜夫

    ○三木(喜)委員 八月に入りますと、新年度のまた予算を構成しなければならぬ。この期になりまして、今国会科学技術者の養成問題ば相当大きな問題であります。なお科学技術庁との間に非常に食い違いができて、科学技術庁長官としてはかなりのはっぱをこの文教委員会にもあるいは文部省にもかけてきたわけであります。従ってこの予算の構成期において、もちろん予算として相当大幅のものを要求していいと私は思うのです。もちろん科学技術者の養成ということに対する緊急性からして、先ほど言いましたいろいろな行き過ぎあるいは拙速をとうとんで疑義のある点は今後監視をしながら、予算面については相当大幅な——大臣もそのことに若干触れられたと思いますが、画期的な予算を組んでいく必要があるのじゃないかと私は思う。その点について相当大国としてもがんばっていただかなければならないということを私は要望いたしたいと思います。  なお、最後に一つ申し上げたいことは、財界、企業あるいは経団連の要請というこのことが最初審議の過程において明らかにされておったわけですが、この要請に対してのわれわれの応じ方、あるいは工業学校ないしは文部省の応じ方というものが私は問題だと思うのです。現在すでに大学当局では、文部省と一緒になって、過度の引き抜きが行なわれないように、就職試験の日あるいは発表の日等を協定をしておられる。これは私はいいことだと思う。  なお、こうしたことも今後考えられるのじゃないかと思うのです。これは新聞に出ておったことですが、ある会社で十人ほどの学生に給費して、卒業を待って採用するつもりでいた。もとより明確な契約書をかわしていたわけではないけれども、卒業してみるとみなほかへ行ってしもうたというようなことが書いてある。こういう反省にかんがみて、今後財界あるいは企業者のひもつきができてどうにもならぬというような格好が現われるようなことは厳に戒むべきことではないかと思います。それを一つ御注意願いたいということと、最後に、同じ新聞が、この科学技術者の速成のためにこういうことを書いてあります。これは一つの見方でありますから、このことを必ずしもそうだというような肯定はされないと思いますけれども、この欠点をやはりお互いに考え合わしてその是正に努めなければならない問題だと私は思うのです。人間そのものの本質は少しも前進しない。逆に徳性が堕落の一途をたどっているように思われ、このような事態を歓迎すべきか嘆くべきか私は知らない。政府技術専門の速成学校を急設して、当面の技術者需要に応ずる方針だという。短時日に技術知識をたたき込み、ロボットまがいの人物を多量に生産するそうだ。これによって一時の急は緩和するかもわからない。だが前記のような徳性の欠けた人間のみを多量に生産することが、終局において人類の幸福となるかどうかは別問題だ、ということがいわれております。私はやはりこの科学技術者養成のこれは頂門の一針ではないかと思います。今までたびたび言ってこられた問題ではありますけれども、再三再四この問題については政府として、為政者として考えていい事柄だと思うので、要望を付して私の質問を終わります。
  99. 天城勲

    天城政府委員 先ほど高津委員の御質問にございました農業高等学校の最近の状況でございますが、御報告さしていただきたいと思います。  最近高等学校の進学率が非常に高まってきておりますので、ここ数年の傾向は、農業も実数においては必ずしも減少はしておりません。大体同じ数をたどっておりますが、全体の高校の進学率の関連考えてみますと、商、工あるいは普通課程との関連におきましては、ここ五年間の間にたとえば三十年で農業学校の占める比率八・三%が、三十四年度では七・一%という工合に落ちてきておりますので、先ほど簡単に申し上げた点を数字に基づいて御返事申し上げておきます。
  100. 濱野清吾

    濱野委員長 この際、六時二十分まで休憩をいたします。    午後五時十八分休憩      ————◇—————    午後六時四十六分開議
  101. 濱野清吾

    濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。野原覺君。
  102. 野原覺

    ○野原(覺)委員 ただいま提案されております高等専門学校法案については、いろいろな角度から同僚委員の諸君から質問がされたわけでありますが、私は若干重複する面があるかもしれませんけれども、大事な点について大臣の御意見をただしておきたいと思うのであります。  まず第一にお伺いしたいことは、中教審に諮って了承を得ました、こういう答弁がなされたのでありますが、事は学制の根本に関する問題なんです。教育制度に関する問題でございますから、中教審に対しては当然諮問をして十分なる論議をしていただくことが、文部省設置法二十六条の中教審を設けた趣旨ではないかと私は思う。一体了承を求めたということはどういうことでございますか。なぜ諮問しなかったのか、この辺についてお伺いいたします。
  103. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 休憩前にもお答え申し上げたように、実質的にはすでに三回国会に提案いたしました専科大学制度に端を発するものでございます。この専科大学制度につきましては、中教審の十分の審議を経て三回提案申すという経過を経ておるわけでございます。異なりますことは、高等学校と単科大学と一体をなして、五年を通じて一貫した教育をするというところで、形式上も、従ってまた実質的にもある程度の相違がございますので、その点をあらためて中教審に考慮していただくという立場から、特別委員会に、諮問第何号という形はとりませんでしたけれども、審議を願いまして、中教審の総会にもかけて中教審の意向がよろしい、賛成という形で表われまして、その結果を体して御提案を申した、こういうわけでございます。
  104. 野原覺

    ○野原(覺)委員 中教審にかけて、中教審の意向はよろしいということであったのだと言いますが、それは中教審の総会ですか。その総会に出席された中教審の委員の名前を一つ教えていただきたい。
  105. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 政府委員からお答え申し上げます。
  106. 天城勲

    天城政府委員 当日の出席者につきましては、今中教審の名簿を取り寄せておりますが、それを提出いたしたいと思います。
  107. 野原覺

    ○野原(覺)委員 名簿を見てから、あとで答えていただくなれば、それでもいいわけですが、大臣お尋ねをしますけれども、私のただいまの質問に対してあなたはすでに中教審からは、今度の高等専門学校法案については十分な審議をしてもらっておるのだ、こういうことを申されておるわけであります。だから今度のこの法案を出すにあって、あらためて審議をしてもらう必要はないんだ。こうなると私は事は重大だと思う。専科大学法案と、今度の高等専門学校法案は違うでしょう。あなたはひとり合点をされて、同じだと言いますけれども、これは明らかに違うじゃありませんか。今度の高等専門学校法案は、五年を通じて一貫した教育を行なうのだ。この前国会に出して流産いたしました専科大学法案というものは、そうではなかった。前期と後期に分かれておったのです。名前は専科大学なんです。いやしくも文部大臣としては、文部省設置法に基づいて行動されることが至当でございますから、自分でひとり合点をされて、同じものだというような考え方で了解をして下さい、こういうような提案の仕方というものは、私はこの種の学校制度に関しては、いささか軽率ではないかと思うのであります。これは、あなたは軽率でないとおっしゃるかもわからない。そこで、中教審はこの種の法案に対しては、いつどういうような審議をされたか、過去三回といいますが、それはいつ、そうしてどういう中身の答申を文部大臣にされておりますか、一つ詳細に承りたいのであります。
  108. 天城勲

    天城政府委員 中央教育審議会におきます過去三回の御答申がございますが、それについて簡単に御説明申し上げます。  第一回が昭和二十九年十一月十五日の第六回答申でございますが、これは大学入学者選考及びこれに関連する事項についての答申ということでございまして、主として大学の入学試験に関する問題についての答申でございます。その中で幾つかの入学試験問題についての御議論がございますが、同時に現在の大学入学志願者に対して、大学の収容力が少ない現状にかんがみ、収容力の増加をはかるということも検討すべき問題であるけれども、それよりもまず各大学に対する志願数を平均化するような努力が必要である、そのためには試験方法だけでなくして、学校制度その他の点についても考慮する必要があるということで、幾つかの点を御指摘になった中に、短期大学の問題に触れられまして、その中で、ことに短期大学の課程と高等学校の課程とを包含する新しい学校組織を認めることと、そして充実した専門教育を受けるために、五年制の課程において、一般教育と専門教育の学年配当を容易にすることも必要であるということで、ここに五年制の一貫教育の構想が答申されたのが最初でございます。  第二回は昭和三十一年十二月十日、十三回答申でございますが、これは短期大学制度の改善についての答申というものでございますが、ここでは前の答申を受けながら、短期大学制度についてはさらに検討して答申をするということで、短期大学についての問題点を触れられておりますが、その中で二年または三年とする修業年限であるが、必要ある場合は、現行高等学校の課程を合わせて、五年または六年とすることができる、そして専門教育を充実し、応用能力を育成するために、実験、実習、演習実技を重視する等を内容といたした答申が出ておるわけでございます。  それから昭和三十二年十一月十一日でございますが、これは科学技術教育の振興方策についてという答申でございます。この中におきまして、やはり短期大学における科学技術教育についてということで、今日産業界において、旧制工業専門学校卒業者に相当する技術者要望が強いけれども、現在その面での制度が十分でないということで、短期大学制度とともに、短期大学高等学校とを合わせた五年または六年の技術専門の学校を早急に設けることという御答申があるわけでございます。それぞれ答申の表題は必ずしも一致しておりませんが、いろいろな機会に、この五年一貫教育についての御答申をいただいておる次第でございます。
  109. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、第一回の答申は昭和二十九年の十一月十五日、今から七年前の答申であります。それから第二回の答申は、昭和三十一年の十二月十日、この答申は五年前です。それから一番最後に審議をした答申というのが、昭和三十二年の十一月十一日、四年前です。四年前のその答申を、もうすでに審議がされておるのだというような、そういうことで中教審に臨む大臣考え方というものは、これは私はいかがなものかと思うのです。お尋ねしますが、昭和三十二年十一月十一日の中教審のメンバーは、今日中教審を構成しているメンバーと、いささかも変更はございませんか。変更がなければ、私はこれは若干譲歩いたしましょう。昭和三十二年十一月十一日当時の中教審のメンバーは、今日のメンバーと移動はないかどうか、これを一つ明確に示してもらいたい。
  110. 天城勲

    天城政府委員 今、当時の委員を一々記憶いたしておりませんが、今日の委員と、多少の移動は、任期の関係であったと思います。なお先ほど資料の提出をお待ち願いましたけれども、ここに中教審の委員の名簿はございますが、特にこの問題については、先ほど申し上げましたように、三回の御答申をいただいておりますけれども、このたびは短期専科大学ではないものですから、大学制度の目的、性格を審議しております第十五特別委員会にお諮りをしたわけでございますが、その十五特別委員会委員は、委員長として、独協の校長の天野貞祐氏、それから早稲田の大浜信泉氏、慶応の奥井復太郎氏、東大の茅誠司氏、大妻女子大の河原春作氏、東京都の教育委員長の木下一雄氏、読売新聞高橋雄豺氏、評論家の細川隆元氏、立教大学の松下正壽氏、それから広島大学の森戸辰男氏、秩父セメントの諸井貫一氏、白鴎高校校長の両角英運氏、それから臨時委員としまして、愛媛大学長の香川冬夫氏、科学技術会議の議員の梶井剛氏、京都大学の高坂正顕氏、それから都立工業短期大学長の清家正氏、東大教授の前田陽一氏、以上の方々でございます。
  111. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は今二点お尋ねをしているわけですが、ただいま官房長があとの方で説明をいたしました中教審の今のメンバーで、ございますが、中教審は全員何名おりますか。
  112. 天城勲

    天城政府委員 制度上は二十名以内の委員ということで現在委員長以下二十名で、ございます。そのほか臨時委員といたしまして問題ごとに臨時委員を任命する制度になっておりますが、現在臨時委員が五名おられます。
  113. 野原覺

    ○野原(覺)委員 中教審が了解をした、意向を表明したという場合には、やはり中教審を構成するそれぞれのメンバーの一人々々が了解たということに世間の人は受け取るのです。ところが今官房長の答弁によると二十名ということですが、今度の高等専門学校法案をこの国会に提案することについて了承を与えた者は臨時委員は別にして二十名の中教審の委員のうちの何名なのか。
  114. 天城勲

    天城政府委員 言葉が足りませんでしたけれども、大学の目的、性格を検討しております第十五特別委員会に特に最初に御審議願いまして、その特別委員会委員を今申し上げたわけでございますが、この委員会審議した結果御承認をされまして、特別委員会から総会に報告されて、三月九日に中央教育審議会の総会として最終的な御審議をいただいておるわけでございます。
  115. 野原覺

    ○野原(覺)委員 特別委員会審議をしたといいますが、特別委員会では高等専門学校法案について審議をしたのですか、それとも前の専科大学のとき検討したことがあるから、それに似たようなものだから、まあこれはいいということにしようじゃないかというようないいかげんなことではなかったのかどうか、私どもはこの点若干疑問を持っております。これは正直に答えてもらわなければ困る。あなたの答弁のいかんで、いいかげんな答弁をするならば私は中教審の適当な人にこの委員会に来てもらわなければならぬと思うのです。いかがですか。これはほんとうに審議しましたか。
  116. 天城勲

    天城政府委員 先ほど申し上げましたように三回の御答申がございましたので、それからすでに専科大学法案につきましては国会提出した経緯もございまして、中教審の皆様もよく御存じでございますので、このたびの専門学校につきましては法案の要綱を中心にいたしまして従来の答申、それから前の専科大学との違いを申し上げて、この制度の内容の御審議をお願いしたわけでございます。
  117. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは私が前に指摘いたしましたように過去三回の答申ということを大臣は答弁されましたが、これは四年前なんです。四年前といえばだいぶ時代が違いますよ、その四年前の答申を生きたものだと考えることは大臣の御自由でありましょうけれども、いやしくも四年前の答申があったからこれでいくんだ、こういう考え方は私はどうかと思うのです。問題は学校制度の根本的な改革なんです。これはあとで触れたいと思う。複線型か単線型かいろいろ論議はあります。ありますが、こういう教育制度の基本的な改革とも思われる問題を四年前に審議をしたから、四年前ないしは七年前その審議をしたからというので、それをうのみにして了解をしてもらいたい、こういうような諮り方はこれは明らかに中教審の軽視です。だから中教審の了承を得たというような点はこれは何ら価値のないことなんです。これは形式的に中教審にその了解を押しつけたものじゃないかと私は思う。中教審は新たにあなたが諮問をしたならば当然論議をいたしますよ。論議があるならばこれは当然の結果として前の三回は専科大学についての答申でしょう。今官房長の答弁を聞きましたが、昭和二十九年十一月十五日の答申はこうなっておる。「大学入学者選考およびこれに関連する事項について」——これは官房長もそう申しておりました。そうしてその答申の中にこう書いてあります。入学難緩和のため短大を恒久的職業教育機関とすると書いておるわけです。今度は短大じゃないでしよう。何か昭和二十九年十一月十五日の答申がこれは生きていますかね。今度は短大ではないじゃないですか。短大を恒久的職業教育機関とする。その名称を短期大学あるいは専科大学とし——今度の名称は短期大学ですか、専科大学ですか、同等専門学校だ、これは全然違いますよ。それから場合によっては高校と合わせて五年制とする、ここに重点を置かれると思う。しかし場合によっては高校と合わせて五年制とするということも、短期大学あるいは専科大学ということに重点を置いた答申をしたのです。短期大学を充実させなければならない、専科大学ということにして衆議院にこの前の国会に提案をいたしましたように、五年制の専科大学とするならば前期は三年だ、後期は二年だ、こういうものをこの前は衆議院に出しておる、過去二回にわたって。こういうような答申があった。だからこの前の専科大学法案は確かにこの意味においては私は中教審の答申を尊重した案だと思う。今度はこれは違うじゃありませんか。  それから昭和三十一年十二月十日、「短期大学制度の改善について」、ここの答申では何とあるか、「短大四年制大学と別個の恒久的、制度的存在とし」とある。どこにも、高等専門学校は官房長うたっておりませんよ。ごまかしてはいかぬです。「短大を四年制大学と別個の恒久的、制度的存在とし、場合によっては高校と合わせ五、六年制とする。」これはあります。これはありますけれども、短大を別個の恒久的、制度的存在とするのだ、高等専門学校を作るのだという、そういうことはどこにも答申をしていないのでありますから、これは昭和三十二年十一月十一日の答申においてもしかりです。だからいやしくもあなた方が高等専門学校の一貫教育の五年制のものを国会に出そう、こういう場合には大体年数からいっても四、五年前の答申だ、しかも中身は若干変わってきておるのでありますから、なぜ諮問をしないのですか、諮問をして中教審をせっかく文部大臣の諮問機関にしておるのですから、十分な論議をしていただかないのですか、私はどうも文部省の方でこういう原案を立てて中教審を通した格好にしないと国会審議がうるさいからというので、せっかく作った中教審を全く形式的なものに追い込んでおるのではないかと思う。私の言うことが間違いならば、私は文部大臣の反駁をいただきたいと思う。いかがですか。
  118. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 昭和二十九年以来の中教審の答申の線は、野原さんも御指摘なさいましたように、職業教育を施す教育機関としての答申の線が出ておると理解いたします。短期大学一つの改善案という角度からの構想ではございますが、職業教育というのが主眼点だと思います。そういうことで五年ないし六年の一貫したものが適切であるという線も出ておると理解するのであります。そういう意味の中教審の答申を待って国会の御審議を願うべく過去において数回提案したこともまさに御指摘通りだと思います。むろん今度は同等専門学校と名前が変わっております。のみならず短期大学の改善案というのじゃなしに、それとは別のものだという構想になっておることも事実でございますが、実質的な教育の場を新たに与える意味においては、職業教育を主眼とします限り、中教審の従来の御答申と実質を同じくしておると考えるのであります。しかし、御指摘のごとく、今申し上げたがごとく、相違点もございますから、中教審にあらためて御意向を伺ったのであります。実質上の審議が数年来行なわれきたっておるということは、それだけ中教審が慎重に審議された実績だと心得ます。従って、今度も、それを無視したのじゃなしに、中教審の御意向をあらためて伺うということで御相談をしたのでございまして、中教審を軽視したなどということではなくて、中教審を尊重するがゆえにあらためて御意思を伺ったということと御理解をいただきたいと思うのであります。
  119. 野原覺

    ○野原(覺)委員 では、角度を変えてお尋ねをいたしますが、専科大学という法案を過去二回この国会に文部省は提案したのであります。そうして、これはついに成立を見ていないのでございますが、過去二回提案いたしました専科大学の内君と、中身と、今度の高等専門学校法案の中身の相違点を明確にお示しいただきたい。これは大臣から——よく御理解でございましょうから、あなたから説明していただきたいと思います。
  120. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 相当具体的なことを申し上げる必要があろうと思いますので、政府委員より答弁をすることをお許しいただきたいと思います。
  121. 天城勲

    天城政府委員 前の専科大学は短期大学を恒久化するということが前提でございまして、二年または三年の修業年限を持つ学校制度でございまして、必要な場合に、高等学校教育に準ずる教育を行なうための課程を合わせて五年または六年とするというのが、まず制度的と申しますか、学校の形において根本的に違っております。しかも前の専科大学は、基本的には大学という構想で進んでおりますので、大学の目的におきましても「深く専門の学芸を教授研究する」という前提に立っておりまして、また短期大学の目的としておりました基礎分野を包含する意味で、職業または実際生活に必要な能力を育成するということを目的としておったわけでございます。それに対しまして、今度の高等専門学校におきましては、これは初めから義務教育終了中学校卒業者を入学者といたします五年制の一貫した教育制度でございまして、前期、後期という構想を中に持っておりません。この点では基本的に違っておるのであります。また、この学校の目的を工業に限っておりますために、特に女子教育等を予想した実際生活に必要なという目的も含んでいません。また、短期大学との関係におきましては、この高等専門学校は全然新しい学校制度でございますので、短期大学制度については全然触れない、短期大学についてはこれは全然別個の問題であるという考え方をとっております。この辺が基本的に異なる点だと思っております。
  122. 野原覺

    ○野原(覺)委員 文部大臣、今官房長から説明がありましたように、あなたもお聞きのように、これはだいぶ違います。内容が。そうして、この種の内容の、いわゆる今度提案されました高等専門学校法案というものは、いまだかつて中教審が審議していないはずです。審議しておりません。あなたは、あなたのひとり合点と申しますか、職業教育機関について答申があったのだ、こういうことを言いますけれども、なるほど職業教育機関についての答申はありました。しかしながら、それは短期大学を充実することだ、専科大学にすることだ、こういう答申なんですよ。ところが、今度は高等専門学校でしょう。、だいぶ違うのですよ。今度は前期とか後期はないでしょう。前期と後期がないために大へんな問題が起こるのです。中学校卒業生が今度は同等専門学校に入る。入るときに、その中学生がみずからの意思で、僕は将来中級技術者になるのだ、こういう明確な意識を持っては入らぬのです。今日の中学三年卒業程度ではまだそこまでわからぬのです。現実には中級技術者にしたらまあ生活も安定するだろうといった親の希望で無理やりに学校に入るのです。三年たったら、どう考えても僕は工業には向かない、僕は法文系に向く、あるいは芸能方面に僕は向く、こう考えても、転科ができますか。工業高等学校ならば大学の法文系にでも行けます。五年一貫ということで縛るために、三年たって法文系に進むということの自由を今日与えておりますか、官房長、今度の法案は。まずこれをお聞きしておきましょう。
  123. 天城勲

    天城政府委員 この学校制度は初めから五年制度の一貫した教育を目的としておりますので、完成教育が目的であります。また、現在学校制度の上では、大学の入学資格といたしまして、もちろん高等学校卒業を原則といたしますが、同時に、十二年間の学校スクーリングということを資格要件ともいたしておりますので、制度的には、大学において入学試験に合格すればこれは進学し得るという制度があるわけでございます。
  124. 野原覺

    ○野原(覺)委員 じゃあお尋ねしますが、三年終了という証明で四年制の大学の入学試験を受けることは、制度としてはできるようになっておるのですね。
  125. 天城勲

    天城政府委員 それは大学の入学資格ということで、特にこの学校制度としてではなくて、現在の学校教育法大学に入ることのできる資格として、高等学校だけでなくして、これは広く外国の学校制度のことも前提に置いて、広い意味での十二年の学校教育を終了したお方が、もちろん大学の入学試験はございますが、資格としては現在もそういう計算になっております。
  126. 野原覺

    ○野原(覺)委員 しかし、事実上はできない。形式的にそれはできても、事実上は袋小路だ。これはあとで私触れたいと思いますけれども、教科課程を見たら一見してわかる。今度の五年制高等専門学校学科内容、あの時間割りで大学受験をして及第するわけがございません。これは実際は袋小路に置いている。そうして文部省は国民説明していわく——この袋小路ということを言われることがあなた方一番今日まで頭が痛かった。だから、袋小路ということをなくするために、今度の高等専門学校卒業したら四年制大学の三年に編入することができるのだ。これを大きく要綱の中で取り上げておりますけれども、これは言うだけのことなんです。実際はなかなかそうはいかぬのですよ。五年制の一貫した職業教育だけを受けて何が法文系の東大の入学試験やらあるいは早稲田大学の政治経済学科というようなむずかしいところに入れますか。本人が行こうとも行けない。そのときに本人が後悔をするのです。そういうおそれもあるから過去三回中教審はこの答申をいたしまして、やはり前期、後期に分けることが教育としては正しいのではないか、こういうことで今日まで来ておった。五年制一貫ということは、その他の学校制度との関連から問題があるではないか。一貫教育ということは、職業教育としては徹底した修行ができるかもわからないけれども、その他の六・三・三・四の学校制度全般を今日のままに放っておくならば、これは若干無理があるのではなかろうかという考え方できておった。そういう考え方をしておる中教審をとらえて、今度の高等専門学校法案は前と同じなんだ、こういう認識の仕方でこの法案に臨んでおられる文部大臣考え方というものは、これははたしていかがなものか。これは私は考え直していただかなければならぬと思うのです。だから、あなたが今日まで同僚委員に対してなされた、中教審の了承を得ております、中教審は過去三回審議をしていただきました、こういう答弁は撤回して下さい。これは何の価値もありません。中教審を完全に無視してきておるのですよ。  そこで、なおお尋ねをしたいことは、過去二回この法案提出しております。昭和三十三年の第二十八通常国会に専科大学法案というものを出した、これは衆議院で審議未了、廃案ということになりました。次いで昭和三十三年の秋、第三十臨時国会にまた同じ専科大学法案を出しましたところ、衆議院は通過いたしましたけれども、参議院においては審議未了、廃案ということになったのであります。そして今度は三度目です。三度目で今度は中身を変えたのです。私はここが問題だろうと思うのです。文部大臣はかわりましたよ。しかしながら前に提出した専科大学法案が成立しておれば、今度の高等学校法案提出されなかっただろうと思うのです。いかがですか。前出したのが成立していないから、今度高等学校法案提出したんだということになれば、文部省の方針は一貫してない。そのつどあなた方はその場当たりの思いつきで学制をいじくり回しておる。今度高等学校法案が参議院で審議未了になったら、また変えて出すのか。日本学校制度というものがあなた方の思いつきでいじられるような学校制度であっては、はなはだ国民が迷惑しますよ。成立しなかったから今度はまた姿を変えたんだ、これがつぶれたらまた変えるんだ、私は日本教育制度はそんないいかげんなものであってはならぬと思う。二十八国会、三十国会、ずっと自民党の政権です。その文部省が出すならば、なぜ前の専科大学法案を一貫して出さないのですか。これを出さなかった理由を聞きたいのです。前審議未了、廃案になった専科大学法案を出さないで、今度は先ほど官房長が説明したような中身の違う高等専門学校法案を出しておる。専科大学法案を出さなかった理由、特に大きな点があれば文部大臣から御説明願いたい。
  127. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 中身と形式がいささか異なっておることは御指摘通りでございます。しかし中教審が答申されました職業教育を主とした学校制度考えるべきだという実質においては一致しておると存じます。またそのつど変わるとおっしゃいますが、いいことならば変わることが当然だと思います。国会で御審議をお願いすべく二回提案をいたしましたが、審議未了になった。審議未了になぜなったかということを考えるのは、行政府としての当然の国会に対する責任だと思います。そのことを検討しました結果、私は国会審議未了になった非常に大きな理由の一つは、短期大学制度が当然に専科大学制度に移行するがごとき構想のもとに出ておるところに難点があったと存じます。そういう理由によって審議未了になったとするならば、そのことを考え直すことは、今申し上げた通り当然の責務と思うのであります。しかも短期大学そのものは、何度も申し上げましたように、それ自身として現に十年の歴史を経て、国民的な学校制度としてなじんでもおると同時に、教育目的を達しつつある。それが必然的に専科大学に移らねばならないと考えたところに実情にも合わない点があればこそ、国会審議未了という形でいわば否決されたものと理解するのであります。従いましてその点を考え直して、しかも職業教育の目的を達するような学校制度はいかがあったらよろしかろうということを考えるのも、きわめて必然事柄と私は思います。そういう考え方のもとに、実質は同じであるにしましても、形式、内容何がしか異なりますがゆえに、あらためて中教審の御意向を承るべく御相談をしたのであります。中教審は何も文部省の考えたことに仰合するための機関ではございません。御案内通り法律に基づいて厳然と存在しておる諮問機関でございまして、みずからの権威に立って、日本教育制度いかにあるべきか、また今まで職業教育学校制度として専科大学を答申したのはまさに事実ではありますが、それとこれとを考え合わせて、いかにあった方がよろしいかという角度から、十分に独自の見識を持って御検討願ったと心得ます。その結論をお答えいただきまして、私どもも自信を得て、あらためて御審議を願う段取りにした、こういう経過であります。
  128. 野原覺

    ○野原(覺)委員 朝令暮改という言葉があることを大臣は御承知だろうと思う。なるほど朝令にはならなかった。しかしながら朝令暮改を事とする人たちは、いいことを変えるんだというのが口ぐせであります。いいことは変えるんだ、これが朝令暮改主義者の言葉であります。私はいやしくも文部省が提案する学校制度なるものが、ほんとうに確信のあるものならば、たとい一つや二つ国会審議未了、廃案になろうとも、そう簡単に変えられちゃ困るというのです。その裏を返して言うならば、学校制度の改革というものは国民全体の声によってなされなければならぬということを私は言っておるのです。あなた方があなた方の頭の中で考えた思いつきだから、今度また審議未了、廃案になったら、また変えますか。参議院ではどうなるかわかりませんよ。衆議院はきょう通るかもわからない。しかし参議院で審議未了、廃案になったら、それは国民の意思がそこになかったんだ。よく形式的な議会主義者は、議会で物事がきまれば国民がきめたんだと、こう言います。形式的にはそう言えるが、今日の議会主義というものはなかなかそう簡単にいかぬのです。だから結局そういう論法で言うならば、参議院で審議未了になったら高等専門学校法案はもう一ぺん白紙に返して、文部省は出直すのですか。これは一応参考のために伺っておきたい。いかがですか、文部大臣
  129. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 審議未了になるかいないかは国会の御意思によってきまることでございまして、提案しました私どもとしましては、ぜひ通していただきたい、こう思っておるのであります。
  130. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなた方の今日までの答弁、それから中教審に対するそういうものの考え方学校制度に対するものの考え方という点から見れば、なかなかそう簡単には国民が納得しないでしょう。国民が納得しないことを背景として、そう簡単にはこれは通すわけにはいかぬでしょう。これはこれからの審議を私も見守っていきます。参議院においてはどういう審議がなされるか、そのつもりで一つあなた方もしっかりやってもらいたい。  そこでなおお尋ねしたいことは、これは産業界からも意見が出されておったように私は記憶いたします。中教審に諮問した答申とともに産業界——産業界とは名付けて日経連、日経連から相当な意見が出されておったように思いますが、これはいかがですか。その点があれば一つ御答弁願いたい。どういう意見がいつ出されておりますか、これは非常に重要な点ですから私お伺いしておきたい。
  131. 天城勲

    天城政府委員 民間の団体、特に産業界からの方の御意見でございますが、昭和三十四年十二月に日本経営者団体連盟から特に中堅技術者の養成が急務であるので、修業年限五年とする教育機関の設置を要望した御意見が出ております。それから関西の方でも、昭和三十六年大阪の商工会議所から同じような趣旨要望が出ております。それから三十六年の一月に関西経営者協会からも御意見が出ております。それからなお科学技術会議の諮問第一号に対する答申におきましても、五カ年を一貫とした技術者教育のための機関を作るような愚見が出ております。
  132. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は過去三回に出された中教審の答申と、それから今官房長から指摘されました日経連から出された意見、これを比較してみますというと、今度の高等専門学校法案が、ずばりと言って日経連の意見によって決定づけられたものであると遺憾ながら認めざるを得ないのです。私は指摘いたします。昭和二十七年の……(発言する者あり)このようなことを言われますと、なかなか痛い人があると見えて、目の色変えてヤジりますが、痛い人は心静かに聞いてもらいたい。私は事実を指摘して申し上げる。昭和二十七年の十月十六日に日経連は「新教育制度の再検討に関する要望」というのを政府に対して出したのであります。その中に「大学卒業生の多数は産業界に入って将来幹部に当るべき人材であるのに、新制下における大学教育の現状は産業人としての人間教育面に遺憾の点が少なくなく、大学専門学校別の存した旧学制がむしろ好ましい」いいですか。旧専門学校、これがよかった。こういうことをずばりと昭和二十七年の十月十六日に出した。昭和二十九年の十二月二十三日には「当面の教育制度改善に関する要望」という題で次のことを述べております。「一、大学における法文経偏重の是正、二、大学の全国的画一性排除、三、専門教育の充実、四、中堅的監督者職業人の養成、五、教育行政の刷新強化、六、学歴偏重の是正、」(発言する者あり)ここに非常に感服していらっしゃる方がありますから、もう少し先をお聞き願いたい。四つ目の中堅的監督者職業人の養成の中身であります。これが問題です。この中身にこう書いてある。一部新制大学の年限を短縮すること、一部短大と実業高校の一体化による五年制を新設すること、一部中学と実業高校とを一体化する六年制職業高校新設すること。今度の高等専門学校法案は、先ほどの中教審から出された答申と、この産業界、日経連から出された意見と、どっちにこれは近いのですか。中教審から出された答申は、短大の充実、専科大学ということであった。ところが日経連から出された意見は、昭和一三十一年十二月、レファレンスにありますが、これは省きます。省きますが、私は全くこれは日経連から出されたものがそのまま形に現われてきたと思う。ここに出ておりますように、よいものは日経連から出されておるものでもよろしい。だからよいものか悪いものかということは、これから私は質問によって明らかにしていきたいと思う。いずれにしても産業界意見というものが、日経連の意見というものが、今度の法案を決定づけて、文部省にそこに踏み切らせたということは争えぬのであります。文部大臣いかがでございますかとお尋ねすれば、そうではありませんとあなたは答えるかもわからない。しかしながら、現実にはこうなっておるのです。一応御所見を承っておきましょう。
  133. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 私は昨年第一次池田内閣のときに、科学技術庁長官を兼務させられておりました。そのときに科学技術会議が、内閣総理大臣に対する答申案を出されるための下ごしらえをする立場にあったのであります。科学技術庁、文部省、経済企画庁等の事務当局の応援を得まして、緊密な連絡のもとに作業が進められまして、そうして科学技術会議答申案ということになって答申されたわけであります。私はこの五年制の一貫教育高等専門学校制度がいいものだなあと思いました私の心境を決定づけましたものは、第一には科学技術会議の答申に指摘された点にあるのであります。さらに先ほど来申し上げましたように、中央教育審議会にもあらためて御意向をただしたところ、御賛同を得ましたことが第二の理由であります。経済団体産業関係方面からの意見書など私直接見たことはありませんが、御指摘のごとく一致しておれば、産業界も良識を持っておったのだなあという証拠になろうかと思います。また卒業生を受け入れる側で、必ず卒業生がルンペンにならない一つの保証である意味においてけっこうな意見であるというふうにも受け取れます。基本的には今申し上げました二つのことを中心に、私はこういう案画をする決意をいたした次第であります。
  134. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたの御所見はお尋ねしたのですから一応承っておきましたが、これは漸次明らかにして参ります。そこで問題点の第一は、科学技術会議ということをあなたが今おっしゃったのですが、御都合のいいときばかり科学技術会議の決定を持ち込んじゃ困るのですよ。私はあなたの御都合の悪いことをこれから触れていく。その第一は、科学技術会議——これは資料を文部省が出したのでありますけれども、十七万人の科学技術者の不足、四十四万人の技能者の不足ということを確認したのです。これを決議したのです。そこでお尋ねしたいことは、今度の高等専門学校卒業者は十七万人に入るのですか。これをお尋ねします。
  135. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 十七一万人の不足を補う対象になります。
  136. 野原覺

    ○野原(覺)委員 科学技術者というのは、これは科学技術会議の決定によれば大学卒業者となっておりますね。そうなりますと、十七万人の不足というのは、科学技術者中級技術者を含めたものだと解してよかろうと思いますが、いかがですか。
  137. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その通りでございます。
  138. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そうなって参りますと、今度の高等専門学校大学とどう違うのかということです。この目的を見てみますと、五十二条に、「大学は、学術の中心として、」云々と目的が書かれてある。高等専門学校の方は今度新しく七十条の二に目的が書かれてある。これはだいぶ違いますね。十七万人というのは私も中級技術者をも含めたものだと解釈する。というのは、四十四万人は技能者に限定しているわけでありますから、中級技術者というのは十七万人の不足の中に入らなければならぬことは明らかでありますけれども、この大学高等専門学校の違いは文章の上からもこれは明らかに出ておるわけでありますが、どういう点が違うのか、これを御説明願いたい。わかりやすい言葉で、文部省はどう考えておるか一つ伺いたいものであります。
  139. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいま御指摘のように、大学の目的でございますが、大学は学術を中心としました教育の一環で特に教育研究ということを学校自身の性格として持っております。高等専門学校におきましては、学校の性格自身としてはこれは職業教育を施すということを考えておりまして、機関として研究機関という性格を持っておらないところが基本的に違うのではないかと思っております。
  140. 野原覺

    ○野原(覺)委員 五十二条の目的を見てみますと、「大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。」とあります。ところが今度のこの高等専門学校の目的は、「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする。」とあって、広く知識を授けるということは書かれていない。それから研究ということも書かれていない。知的、道徳的及び応用的能力を展開させるということも書かれていない。つまり大学においては一般教養ということが重視され、基礎学力ということが特に尊重される。そういうことの当然の結果として、応用能力というものを十分に展開することが大学卒業した場合には可能であるけれども、今度の中級技術者——高等専門学校卒業の者は、応用的能力については欠ける。つまりそのことは一般教養というものが十分でないから、基礎学力が十分でないから、応用能力においては大学に欠ける。このことをお認めになられますか、お尋ねします。
  141. 天城勲

    天城政府委員 この高等専用学校は、先ほどからしばしば御指摘がございましたように、いわゆる中級技術者の養成を目標とした学校でございまして、特にその意味職業に必要な能力の育成ということを目的といたしております。今日の科学技術者として単に目先のすぐ役に立つという教育だけで済まされないことは万々承知でございまして、この点につきましては教育課程におきましても十分考慮いたしておりますが、そういう現在の技術者の要求される性質を考えまして、特に「深く専門の学芸」という言葉を使いまして、ここに基礎的な能力あるいは広い意味での教養というものを含めた意味に表現いたしたわけでございまして、決して人間教育を無視するとか、基礎学力を無視するとかいう考え方はとっておらないのでございます。
  142. 野原覺

    ○野原(覺)委員 大学と同じものならば大学と同じ目的を書いたらいいのです。ところがあなたの方は大学と同じ目的を書いていない。明らかに大学と違う。これは内容からいっても明らかに違うのです。この問この委員会に文部省は臨時工業教員養成所を提案した。それから免許法の改正も提案した。そして今度の高等専門学校が出てきました。この三つをじっとながめてみて一般教養というものが工業教育においては軽視されている傾向にあるのではないかということを感ずるのであります。科学技術会議ではそのことが非常に批判されております。私が文部大臣に、あなたの御都合のいいところばかりおっしゃるなと言ったのはそこなんです。科学技術会議では一般教養という点に実は非常に重点を置いておるわけです。これは佐々木さん。ですか、科学技術会議の専門のメンバーになっておられる方が、わざわざ学術研究という雑誌に答申と一緒にそのことを書いておる。一般教養というものを十分に尽くさなければならぬ、基礎学力を十分に尽くさなければ、今日の非常に進歩のテンポの早い科学技術に対応することはできない。原子力という時代に対応することはできない。十年前の科学技術教育であってはいけない。そのためには一般教養ということを尊重しなければならぬということに、科学技術会議では結論が出たはずです。ところが工業教員養成所しかり、免許法においては教養科目、一般教養というものがほとんど無視されて学校の教員を作る、今度はまた大学と比べるとお話にならない粗雑な中身のもの、であって、そして応用能力ということは目的にもうたっていない。知的、道徳的及び応用的能力を展開すると大学にはうたってあるけれども、今度はこれを切っておる。つまり経営者や企業者から突っつかれれば、はいはいといって、間にあって、旋盤をいじくり、ハンマーを振り上げる組長か係長級か知りませんが、そういう人間しか今度の高等専門学校法案ではできない。こういうことに実はなろうかと思いますが、そのことをねらったものと私は思う。率直に大臣から御答弁願いたいのです。私はそうだろうと思います。あなたが今まで答弁したことから私考えますならば、確かにそうではなかろうか、そうでないならば、なぜ大学と同じ目的をうたわぬのですか。この点いかがですか。
  143. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 これは私の個人的な思いつきでなく、科学技術会議の答申の基本線に沿い、かつまた中教審の答申の意上間にも沿う意味において提案申し上げておるわけでございまして、大学高等専門学校の相違点は先刻政府委員からも申し上げました通り、端的に最も特徴あることを申し上げれば、午前中もお答え申し上げた通り大学では主として研究ということに主眼を置いておると理解いたします。高等専門学校においては研究を目的としない。現在知られておる科学技術をマスターして、これを応用する能力を育成することによって、職業能力を充実しようというところに特徴を求めておる考えでございます。従いまして恒久的な制度として新たに付加しょうというねらいであります。先ほど引例されました工準教員の養成所等は、当面の必要に応じますためのやむを得ざる次善の策であると申し上げました通り、あくまでも臨時的措置でございまして、あれで十分とはむろん思っておりません。おりませんが、教員不足による間隙を生ずるよりもまさること数等であるという意味で、なさねばならないこととして御審議決定をいただいておることであります。
  144. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この高等専門学校卒業者は、ここしばらくは重宝がられるかもわからないと思うのです。しかしながら先ほど申し上げましたように基礎学力が不足しております。なるほど時間をうんとかけてうんと詰め込むようにしておりますけれども、目的から見ても考えられるように、あのような詰め込み主義のやり方からも言えるように、基礎学力の不足は争えないのです。そういう点で科学技術の発展のテンポに間に合わなくなるおそれがあと何年かしたら必ず出て参ります。そういうおそれがあるから、今度は高等専門学校を作ったでしょう。工業高等学校じゃだめだ、工業高等学校卒業者というものは単なる技能者でしかない。われわれが学生時代、今から何十年か前には、工業高等学校というものは、工場においてかなりの働きを示し、かなりの地位を占めたものでありますけれども、今日では単なる技能者です。そこで今度は高等専門学校考えた。高等専門学校が科学技術の発展のテンポに問に合わなくなることは明らかでると思いますが、大臣、この点についてはいかが考えますか。
  145. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 旧制度専門学校が非常な使命を果たしたことは、私も承知いたします。終戦後最近に至りまするまで、旧制の専門学校卒業した人が、日本の今日の経済の発展に科学技術面で現実に非常な働きをしたことも私は承知いたします。この高等専門学校は、旧制の専門学校そのものじゃございませんけれども、あの果たした役割という角度から比較してみまして、旧制の専門学校の比ではないと考えております。   〔委員長退席、中村(庸)委員長代理着席〕 旧制の専門学校は、中学はなるほど三年でなく、五年でございましたが、五年にプラス三年という制度であったと思いますが、一貫性はなかった。この高等専門学校は中学三年を終えた、義務教を終えましたものが、まる五年間の専門教育を受けるのでございますから、私は旧制の専門学校よりはるかにまさった知能を持った社会人たり得る、かように考えるのであります。
  146. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その点はあなたとだいぶ見解が違うのです。旧制の専門学校の場合は、中学五年から希望して行きますから、本人の希望によって行くのです。本人みずからが自覚をしておる。僕は工業に向くんだ。今度の高等専門学校は義務制の中学校から入るのです。これは本人の希望でも何でもない。本人の意識はない、自覚はないのです。本人は困って来るのです。そのうちの何割かは親から押しつけられて行くのです。中学生というものはそんなものです。私はそういう進路を決定する能力はなかなかないと思うのです。それは偶然にある人もあるかもわからない。しかしそういうおそれは多分に出てくるでしょう。そういう点から見て、私はあなたとはだいぶ意見が違うのであります。  そこで、六・三・三・四のこの新しい学制に対して、六・三・五の高等専門学校法案がここに出たわけでございますが、六・三・三・四という教育体系に六・三・五という体系が、そこにもう一つ枝が出てきた。今度は六・三・・五から六・三・三・四の四の三に編入されるということで、完全な袋小路には形式的にはならぬような措置はとっておりますけれども、いずれにしてもこれは複線型の体系をとってきた、私はこう思うのでございますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  147. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御指摘の点も、午前中の御質問お答えしました通り単線型にこの五年制の高等専門学校を新たに加えることによって複線型になるといえないことはないと思っております。今までよりも新たに教育を受ける場がふえる意味において、日本学校に行きます青少年の側に立って考えた場合、いい制度が新たに加わるものと理解しております。
  148. 野原覺

    ○野原(覺)委員 それはどうなんですか。そうなりますと、複線型が教育体系としては妥当なんだ、こういう結論に達した結果のことでございますか。
  149. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その通りでございます。
  150. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これも前の委員質問したかもわかりませんが、大事な点ですから……。工業科にだけそういう複線型を積極的におとりになられたわけはどういうわけですか。
  151. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 本来教育の目的は、青少年に教養を与えて、社会人として安定して幸福な生活を送らせることも重大目標であろうと思います。ただ学校は出たがルンペンになるのかどうかわからないということであっては、原則としていけないと思います。その意味においてこの複線型を考えます場合、午前中も申し上げました通り高等専門学校という新たなる学校制度それ自体は何も工業に限らねばならないというものではないと理解いたします。さらに必要であれば、工業以外に、農業あるいは商業等も考え得るかとも思います。思いますけれども、当面最も必要とする現実面に即して考えねばならない、また考え得る高等専門学校はまず工業である、こう考えまして、工業に限定した内容として御審議をいただいておるわけであります。
  152. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その点どうもあなたの考え方は一貫してないと思う。というのは、複線型がいいのだというならばみな複線型にしなさい。複線型がいいと言っておきながら工業科だけというところは、どうも私は納得できない。あなたは、なるほどそれは完全なる就職ができないからだといいますけれども、教育体系として理想的なものならばかえたらいいじゃないですか。工業だけにしないで農業も商業も水産業もやったらいかがですか。複線型がよいのだとあなたおっしゃったのですよ。よいものならば農業高等専門学校、商業の高等専門学校水産高等専門学校というものもお作りになったらいかがですか。どうも私はその点あなたのおっしゃることに矛盾があるように思われます。もう一度御説明願いたい。
  153. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 概念的に申し上げれば、御指摘のように工業に限らないという意味において複線型が理解されてしかるべきものとむろん思いますが、同時にそれは現実に即して学校施設がなされるためには現実面を忘れてはならないことは、また心がくべきだと思うのであります。そういう意味工業につきまして特にその緊要性を感ずるわけであります。また工業についてのみ特に複線型をとっておる諸外国の例も仄聞いたしております。そういうことをいろいろ考え合わせまして、当面は工業高等学校を作ることを国会を通じてお許しをいただくならば、最も適切な施策じゃなかろうか、かように思った次第であります。
  154. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、いずれは農業水産も複数型にかえられるべきだとお考えですね。
  155. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 概念的には、制度論としてはそういうことはやるべきじゃないと申すべきではなかろうと理解いたします。その現実の必要性は、あくまでも必要ありと考えましたときに、提案者としましては、政府側としては国会で御審議願って、それがはたして日本のそのときの事情に即するかいなかを御判断願って、その上で追加すべきものはいたすべき性質のものだ、かように考えておるわけであります。
  156. 野原覺

    ○野原(覺)委員 制度的には、これは高等専用学校農業も水産業もすべきだ、こういうならばなぜしないのですか。やったらいい。あなたが工業だけ持ってきたというのは現実面を考慮したといいますが、私もそれはそうだろうと思います。今日財界は工業だけを要求していますからね。あなたの現実面を考慮したというのは、農業や水産業については日経連や産業界は触れてないですよ。だからこうしたのでしょう。正直に言って下さいよ。制度的にいいならば全部切りかえたらいい。それを全部切りかえないで工業だけにしたというのは、そこにはそこがある。そういうような学制のいじり方でいいのですか。高等専門学校が正しいならば、なぜずばりと実業学校はみな高等専門学校にしないのかと言いたい。工業だけちょっぴり持ってきて、農業や水産業はほっておく。これはどうなんたと言えば、いや制度的にはそうしたらいいのだ、じゃするのかと言ったら、するとは言わない。そこに今度の高等専門学校法案がかりにりっぱなものであるにしても、あなた方のそういうものの考え方に私どもは納得のできないものを感ずるのですよ。失礼ですけれども、スポンサーの注文は工業だけでしょう。私は、そういう点を考えるならば、やはりここに問題があるのではないかと思います。私は、単線型がよいとか複線型がよいとか、そういう観念的な議論をあなたとしようとは思いません。しかし、あなたが複線型がよいというならば、なぜ思い切った複線型の構想をとらないのか。これはあいまいです。実にいいかげんなことしかやられていないから、私はこれに問題があろうかと思うのであります。そこでお尋ねいたしますが、これは大學に限定して尋ねてみようと思いますが、日本大学では文科系と理科系の学生の比率は今日どうなっておりますか。それから欧米においてはどうなっておりますか。これはご概数でけっこうです。
  157. 天城勲

    天城政府委員 大学の全学生につきまして理工系とそれからそうでない方、と申しますと法文とか教育課程その他いろいろ入りますが、その比率で見ますと、理工系が二三%、その他が七七%でございます。これは国、外、私立全部を含めての比率でございます。諸外国の例は、年度が若干違うのでどんぴしゃり参りませんけれども、大体の傾向は、アメリカが二九・五、イギリスが四四、西ドイツが四一、フランスが四四、ソ連が四三というような比率でございます。今のは理工系だけでございます。
  158. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そうなりますと、日本では文科系に片寄っておるということが言えようかと思うのであります。  文部大臣お尋ねしますが、今日の日本の理科系を必要とする産業界あるいはその他文系を必要とする社会要請にこたえるためには、どのような比率が正しいと文部当局は考えていますか。文科系はどのくらいだ、理科系はどのくらいだという大学卒業者の比率、これは文部省では検討されておるはずだと思いますが、どの程度の比率が正しいとお考えですか。   〔中村(席)委員長代理退席、委員長着席〕
  159. 天城勲

    天城政府委員 これは科学技術会議の答申にもございますように、何%がいいということはなかなか数字的には出ておりません。昭和四十正年には理工系の比率は相当高まるということしかいっておりませんで、私たちも何%くらいがいいかということは必ずしも申し上げられないと思います。ただ、なお理工系の比率がふえなければならぬということは十分考えております。
  160. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういう点がはっきりしないと困るのですよ。十七万人の不足を解消するんだとか、四十四万人の不足を解消するんだ——私はあとお尋ねいたしますが、これは長期の計画が立てられなければならぬ。その場合に、文科系はどれだけだ、理工系はどのくらいあれば大体やっていけるんだというおよその見通しが立たないと、不足解消といいましても計画は立ちませんよ。だから昭和四十五年には十七万人と四十四万人の不足が完全に解消されたとして比率はどうなるのですか。
  161. 天城勲

    天城政府委員 十七万の数字を計算いたしますときに、理工系の需要並びに供給について検討したわけでございますけれども、その他のいわゆる法文、社会、家政、いろいろの課程についてこういう数字がございませんので、そういう推計を出しておりません。最終の段階において理工系対の対の方が出ておりませんので、はっきりした数字を申し上げかねるのであります。
  162. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは一つ考えて今後見ていただきたいと思うのであります。  文部大臣お尋ねしますが、いよいよこの法案がかりに通過するといたしますと、高等専門学校昭和三十七年四月一日から建てるようであります。どのくらいお建てになるのか、その場合に、国立の方は大体あなた方もうすでに計画されておると思う。それから公立はどのくらい、私立においては高等専門学校を、どのくらい考えていこうという計画なのかお示し願いたい。
  163. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいまのお尋ねの点につきましては、的確にお答え申し上げる段階までの検討はいたしておりません。と申しますのは、公立にしましても、私立にしましても、それぞれの設置者がその意向をもちまして、この新しい法律に基づいての認可申請があって初めてきまることでございますから、日本の今の学校制度及び文部省との相関関係におきましては、国の意思を私学ないしは公立の方に天下り的に要請するという立場にございませんので、これはむろん考えられないわけでございます。国立につきましてはむろん考えがあってしかるべき筋合いではございますけれども、具体的に一カ所にどのくらい予算があって、教員組織がどのくらい要るかということを今検討はいたしておりますが、それすらもまだ最終的にはなっておりません。ただばく然と常識論々申し上げますれば、第一段階におきましては、地域的なブロックごとに一校ずつくらいはあってよろしいのじゃなかろうか、たとえば北海道、東北、関東というごとく。そういう国立の高等専門学校を設置することが一応の常職的な目安ではなかろうか、こうは思いますが、さてしからば、三十七年に年次計画でどこにどうだというお尋ねには答え得る程度の検討はまだいたしておりません。
  164. 野原覺

    ○野原(覺)委員 その場合に、国立短大を高等専門学校に持っていくのですか。それとも新たに建てることも考えておるのですか。
  165. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 原則としましては、高等学校第一年から始まって五年後に完成するというがごときものを新設することが基本線だと思います。ただし、実際問題として、現にある国立の短大をこの高等専門学校に切りかえていくかどうかということも考えるべき一応の対象ではあろうと思います。それも具体的にはまだ結論を出した段階ではむろんございません。考え方の基本線は、申し上げるように新設が本則であって、また便宜短大が切りかわることも絶無とは言いかねると思います。
  166. 野原覺

    ○野原(覺)委員 不勉強ではなはだ申しわけありませんが、国立の工業短大というのは今日幾らありますか。
  167. 天城勲

    天城政府委員 現在昼間のが五校、夜間が十一校でございます。
  168. 野原覺

    ○野原(覺)委員 かりにこの法案通りますと——学校設立ということは容易ではないのです。法案が通ってから準備をされる、こういうことでありますが、大体の腹案はあるのだけれども、文部省はこれを言うと問題になるから伏せていらっしゃるのじゃなかろうか、それならば安心です。しかし、文部大臣が言うように、全然白紙なんだということであれば、来年の四月一日から発足できますかね。新たに学校を建てていくには、土地の買収もしなくてはならない。それからすっかり準備をして、それに教授だって助教授だって、前にも委員諸君が質問しておられましたが、これは一体、どこからどうしてだれを教授にしていくのか、それもきめていかなければなりませんがね。これはあるのじゃないですか。ないとしたら、これは昭和三十八年の四月一日に提案の法文を修正してもらわなければいかがなものかと思いますが、どうですか。
  169. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいま申しましたように、建前としましては新設するということが本則であります。便宜現在の短大をこれに切りかえた方が適切であるということが結論づけられますれば、そういう内容の法律案としてまた御審議願うこともむろんあり得ると思うのでございますが、具体的にどこにいつからどうしてということは、まだ御披露する段階に至っていないことは今申した通りでございます。
  170. 野原覺

    ○野原(覺)委員 この前この委員会工業学校の教員養成所の法案が出た。それから今度は高等専門学校法案が出た。それから工業高等学校新設というものも昭和三十六年度の予算においては確保しておる。こういうように理工系に重点を置いた文教政策を進めておられるのは、科学技術会議の決定である、先ほど大臣が申しました十七万、四十四万の不足解消という方向に対する努力であろうと私は思うのですが、いかがですか。
  171. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 その通りでございます。
  172. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと十七万、四十四万の不足を解消するということは、ただ不足を解消すると言うことだけでは到達することはできないのです。長期の計画が要るのです。十年間の計画が要る。長期とは十年間。十年間の計画が要るのでございますから、昭和三十七年度には工業高等学校はどれだけ募集するのだ、昭和三十七年度には高等専門学校は幾ら建てるのだ、短大はどれだけで大学はどれ、だけ、そうして三十八年にはどれだけだというプランがあるだろうと私は思うのですよ。ところが今お聞きいたしますというと、高等専門学校は幾ら建てるかまだわかりません、これで一体あなたは科学技術会議の不足解消に向かっておると言えますか。計画性がないじゃないですか。あの計画は昭和四十五年までを十年間としておるのですから、ことしから始まっておる。そうしたら、ことしの工業高等学校はどれだけ、それから高専は幾ら、短大は幾ら、大学は幾らということが明確に数字の上で出されなければなりませんし、来年度はそれがどれだけになるという計画がなければならぬと思う。今はいろいろな政治情勢もありますし、いろいろなことがありますから、具体的にどこへ高等専門学校を建てるかということは言えないでしょう。しかしどれだけのものを建てて、どれだけの生徒を収容するくらいの計画がなければ、私はその不足解消に努力しておるということは単なる口頭禅だと思わざるを得ないのです。そう思いたくありません。これは文部大臣には計画があろうと思う。従って十七万、四十四万の不足解消計画の年次別の計画書を提出するように、私は過日教員免許法の質疑の際に、委員長を通じて要求をしておったのでありますが、いまだに出てきません。これは単なる口頭でこういうものを言われては困るのです。私どもは科学技術会議の決定、政府所得倍増計画の基本方針に基づいて文部省においてどれだけ出されるであろうかということは非常な関心を持っておるわけでありますから、特に私どもの責任でもございますから——今やっと出て参りましたが、これを御説明願いたい。
  173. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 重ねての御要望ですが、この高等専門学校を年次計画でどうしようとしておるのかというお尋ねに対しましては、一つの計画として御披露申し上げる段階にないと重ねて申し上げるほかにないわけでございます。と申しますのは、学校教育法の一部改正という形で新しい制度国会でお認めをいただきたいという法案でございます。お認めいただいた後に、三十七年度に具体的に予算措置もあわせ講じながら、どこそこへ一応予定してこういうものを置きたいという、予算措置並びに高等専門学校設置に関しましての具体的立法措置も当然御審議願う段階があるわけでございます。そのときならばむろん御指摘のようなことをお答え申し上げる準備をいたさねば適当でないと思いますが、ともかく新しい制度国会の御承認を得られるかどうかという課題でございますので、時間的にもまだ余裕もございますし、課題そのものが仰せのようなところまで習熟できない性質を持っておるので、以上のように申し上げておる次第であります。  なおついでながら、十七万人の大学卒業程度の科学技術者が不足するというあの数字に対しまして、七万二千人ばかりの養成計画を一応推定しておりますのは、すでにある学校制度のもとに立って、入学定員の増加等を累計しまして七万二千人の養成計画を一応立てておるのであります。その差が九万人ばかりになります。その九万人の赤字埋めの対象にこの高等専門学校がなるとは思いますが、今申し上げますように、しからば具体的に計画いかんとおっしゃいますと、まだその段階にまで至っていない。いくべき性質のものでもない、こう思っておるわけであります。
  174. 天城勲

    天城政府委員 ただいまお手元に提出いたしました資料について概略御説申し上げます。  最初の第一表は、三十六年から四十五年に乗る高等学校工業課程の生徒の入学定員増加の予定数でありまして、四十二年度までに、三十六年度から一万、一万五千、二万とここに書いてありますような教字で増員して参りまして、定員としては八万五千人増加をもくろんでおります。これは逐年に重ねて参りますと、大体四十二万人、この増募によります新規の卒業生が出てくるというような計算をいたしたわけでございます。もちろんこの年次別は一応今の予定でございますので、いろいろな事情によって多少の出入りはもちろん起こると思いますが、一応こういう推計をいたしております。  それから第二表でございますが、これは理工系の上級技術者十七万人の不足との関係でございます。二ぺ−ジの下の表はそれに対して一万六千人の増員計画を年次計画で実施すると仮定した場合の数字でございますが、大学と短期大学に分けて、これも一つの推計でございますので、必ずしもこの通りにいくわけではございませんが、毎年に割り振った場合一万六千がこういう姿になろう、こういうことでありまして、三十六年は二千八百ほど予定したのでございますが、現実には三千二百二十、注に書いてありますようなふうに増員になりまして、計画より若干前向きに進んできております。これは申請を待ってやるために、必ずしもこちらの計画通りにはいかないわけでありまして、そういう条件はございますけれども、一応年次割を出しますと一万六千をこういうふうに考えたわけであります。短大は回転が二年でありますので四十三年まで、こういう考え方でございます。それで卒業生を年次を追って推計して参りますと四十五年までに七万二千二百という数字を推計いたしておるわけであります。簡単でございますが以上の通りであります。
  175. 野原覺

    ○野原(覺)委員 科学技術会議に文部省から出されました資料を見てみますと、昭和三十五年には理科系が五百八十不足、それから工科は一万七千四百三の不足、こうなっておる。それから三十六年には理科系は四百二のマイナスで、工科は一万六千四百七十、三十七年は理科が三百五十九のマイナス、工科は一万五千七十七、これのトータルをとってみますと昭和四十五年まで十年間に理科系が四千四百四十六の不足で、工科は十六万六千五百八十五の不足だ、この合計が十七万だ、こういうことになっておるようであります。この十七万の不足を解消するのに、今日ある学校を利用するならば七万三千だといいますが、これはここでできます高等専門学校中級技術者は十七万の不足解消の中に入るんだということでありますから、これを入れて、それから池田科学技術庁長官からも勧告がありましたように、私立大学の入学者に対する文部省の補助なり、あるいはいろいろな締めつけ方をもっとゆるくしてやって、そして最大限どの程度の見通しを今日つけておられるのか、これを承りたいのです。
  176. 天城勲

    天城政府委員 ただいま技術会議の資料について御指摘がございましたけれども、この答申の百八十四ページを御指摘になったのだと思うのでございますが、それが今プリントで差し上げました二ページの上欄の数字でございます。これは、その理工系のところだけを出して十七万一千という数字を出したのがこの数字でございます。今御質問の十七万の不足に対して、これは一万六千の定員増による七万二千の累計供給増ということでございまして、これは前々から申し上げておりまするように、現在の学校の規模、教員の能力というようなことから一応推計される数字、それも一応ここに翻り振りましたような年次別で推計した数字でございます。これが年次を早めれば、累計においてはこの数字は伸びて参りますし、あるいは中間の数字がふえていけば、もちろん一万六千がさらに増すこともできるわけでありますが、それらの点につきましてはとにかく、十七万の不足ということが推計されますので、少しでもこれに近づけるべく供給の増をはからなければならない、こう考えておりまして、理工系の学生増につきましては国、公、私立の大学を通じましてさらに促進をいたしたい、こう考えております。今のような状況でございますので、はっきり幾らの数字になるかということは、現在の段階では推計の段階でございます。
  177. 野原覺

    ○野原(覺)委員 文部相というところは理工科系のためだけ考えるところじゃないと思うのですね。農学系統も科学技術者なんです。だからそれも考えておられると見えて、農科の表が百八十四ページに出ておる。それを見てみますと——あなたの手元にもあるだろうと思うが、昭和四十五年までに十年間で三万一千六百五十七名余分になる、この点についてはどういう検討をしておりますか。これは昭和三十五年には二千九百七十九の余りがある。昭和三十六年は三千二十五だ。十年間に理工科系は十七万足らぬかわりに農学系統は三万一千六百五十七余るのだという。これは余りっぱなしでほうっておくのですか。どう考えておられますか。
  178. 天城勲

    天城政府委員 この答申の百八十四ページの表の御指摘でございますが、御指摘通り四十五年までに農業関係の高等教育卒業者数字は余る推計になるわけでございます。これにつきましては私たちも余りっぱなしでほっておくということはもちろん考えておるわけではございませんし、農業という一くくりの中で、実は専門によりましては過不足がかなり、顕著になってきております。農業関係におきましてもいろいろな方面の発達あるいは要求によりまして、学科によってはかなり需給が従来と異なってきております。そういうことを考えまして、たとえば蚕糸あるいは農業というようなものにつきましては、このままでいけば余る数字でございますが、逆に農芸化学とか農業土木あるいは農業工学という面ではむしろ不足する数字も見込まれるわけでございます。従いまして現在大学における農業教育をいかにするかということにつきまして、農業教育の質の問題ですとか、あるいは農学部卒業者の需給関係の問題とか、いろいろな問題につきまして関係者で鋭意検討いたして、大学における農業教育の今後のあり方について検討いたしております。本年国立大につきましても、農学部においてきわめて需要の多い、また希望者の非常に多い農芸化学とかあるいは農業土木関係学科を増設いたしまして、その場合に定員に満たないような学科もございますので、逐次そういうところの転換をはかりながら、いわば体質改善と申しますか、内容的な改善に着手いたしておりまして、今後とも今申し上げました方向農業教育の問題についてはさらに検討を続けていくつもりでおります。
  179. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは文部大臣に伺いますが、三万一千六百名程度余るという、これはいろいろ考えておるというけれども、現に文部省の調査では十年間にこれだけ余る。私は単なる考えではこれは消化できないと思うのです。そこで文部省では、たとえば農科の入学者を減らすとかいろいろ考えていらっしやるのじゃなかろうかと思いますが、いかがですか。これはそう考えるべきじゃないですか。
  180. 天城勲

    天城政府委員 ただいま御説明申し上げましたように、これは農学部系統でございますので、学科によっては需給あるいは入学者の多算が非常に違っております。従ってその問の転換はもちろ考えていくわけでございまして、同時に農業教育のあり方についても考えていく。ただいま申し上げたのはこのことでございます。
  181. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は農業にもいろいろな学科があることは知っております。工業に類似したような農業もあるだろうと思う。そこで、これはまことに常識的なお尋ねですが、文部大臣工業というのはどういうことになりますか。というのは、今度あなたが高等専門学校法案を出したために、ある私立学校の人が私のところにやってきたんです。それで、私の学校は各種学校でございますけれども、ぜひ高等専門学校にしていただきたいのですがいかがですか、というのです。そこで私はふと困ったんです。困ったというのは工業という概念ですね。その人は機械を使用して物を製造するのが工業ではございませんか、こう言うのです。これは文部大臣どう考えますか。機械を使用して物を製造するのが工業じゃありませんか、私の各種学校は機械を使用してあるものを製造するための学習、教授をやっておるんだ、こういうわけです。これは抽象的にいったら工業に入るのじゃなかろうかと思う。だから工業々々と簡単に言うけれども、これはやはりはっきりしてもらわなければならぬと思う。工業は磁気だとか応用化学とか土木とか建築とか常識的には言いますけれども、ほんとうに突っ込んで考えるといろいろ問題があろうかと思うのです。文部大臣どう考えますか。
  182. 天城勲

    天城政府委員 おっしゃる通り農業の分野でも化学あるいは土木、機械という専門の技術を取り入れました農業土木科、農業学科、それぞれ出ております。工業専門学校は一応工科に関する学科を置くことになっておりますが、これは産業が発達して参りますと、非常にこの専門分野の、種類が多くなって複雑になって参りますけれども、われわれとしましては、必ずしもすぐその分野のものだけを出すということでなくて、やはりこの技術系統の一番基本になりますところで問題を考えていきたい。現在機械の卒業生がどこに行っているかと申しますれば、これはあらゆる産業分野に行っております。農業分野にも行っておりますれば、製造業分野にも行っておりますし、商事部門にも行っておる方たちもございまして、やはり基本的には機械に関する技術と基礎知識が必要だということでありますので、あまり専門に分化しないで、基本的には機械とか電気とか、やがてはそれが電気は通信にも弱電気にも電子にも発展するわけでございますが、工業専門学校においては基本的に電気を中心として考えていこう、こういうことでございますので、卒業生が決してただ工場に行くということではおそらくなくて、いわゆるセールス・エンジニアに行く者もありますし、あるいは農村関係農業機械を製造するメーカーに行く分野もありましょうが、そういう広い分野を考えながら基礎的な問題を考えていきたい、こういう考えでおる次第であります。
  183. 野原覺

    ○野原(覺)委員 洋裁学校というのはどうなりますか。洋裁学校はミシンという機械を利用して洋服を作るのだから、機械を利用してものを製造する事業ですね。これは大きくいって工業に入れたら悪いんですか。
  184. 天城勲

    天城政府委員 それは工業の種類で被服も大きな工業化がございますし、みそ、しょうゆも現在大きな工業化しているものもございますから、そのことについて企業の規模についてどうこうということは私たち考えておりません。ここでは技術関係技術者を作るということを考えておるので、洋裁も家庭でミシンを踏んででいる場合もありましょうし、大規模な工場でやっている場合もございましょうし、それを私たちが工業であるとかないとかいうことは、ちょっとこの法案との関連考える場合には少し違うのじゃないか、こう考えております。
  185. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたは違うのじゃないかと言っても、申請してきた場合相手は納得しませんよ。洋裁学校が今あるが、この洋裁学校が、今度五年制の問等専門学校ができたから洋裁学校の五年制高等専門学校を作るのだ、こういうような申請をしてきた場合に、どうなるか。これは断わりますか。
  186. 天城勲

    天城政府委員 洋裁ということでおっしゃれば、これはこの学校の対象には考えておりません。
  187. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いろいろ問題があると思うのだが、最後に私は文部大臣お尋ねしておきたいのは、池田科学技術庁長官が、人事院に対して、科学技術者の給与が低いというので勧告をする、こういうようなことを私は新聞で拝見したのです。この点について何かあなたは池田長官からお聞きでございますか、お尋ねします。
  188. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 まだ承っておりません。私も新聞記事で見た程度でございます。
  189. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そうなりますと、私は科学技術関係人材養成の責任者は文部大臣だと思う。これは池田科学技術庁長官が、科学技術庁設置法に基づいた勧告権によってやられるといえばそれまででありますけれども、あなたがかねて主張しておられますように、こういう、面の待遇問題というものは、むしろ文部大臣が積極的に人事院に働きかけるとかなんとかなさってしかるべきものではなかろうかと私は考えますが、いかがですか。
  190. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 もちろんその通りに思います。科学技術庁長官が人事院に勧告することかりにありせば、単なる科学技術関係の公務員ないしは民間産業に供給さるべき科学技術者にとどまらず、その養成面における大学教授等についても当然勧告をされるであろうと思います。これは制度上当然のことと思いますが、それはそれといたしまして、いつも申し上げるように、大学教授を初めとして、教員の給与の改善には、文部省みずからも人事院に積極的に働きかけて改善に努力すべきものと心得ております。
  191. 野原覺

    ○野原(覺)委員 いつ働きかけますか。どういうような中身で今働きかけようとされておりますか。その構想があれば承りたい。
  192. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今事務当局で検討させておるところであります。
  193. 野原覺

    ○野原(覺)委員 これは事務当局からでもよろしいですが、どの程度の処遇の改善をしたら妥当なのか。また科学技術会議の決定にによれば、優秀な科学技術者を行政、教育産業等の分野に吸収し、その能力を十分に活用するためには、その処遇についても特に積極的な対策を講ずべきである、こうなっておるわけであります。だから科学技術会議の決心は尊重するということで文部大臣も先ほど言われたわけでありますが、私はこういう決定こそすみやかに具体化してもらわなければならぬと思う。質問をしたらいつもおざなりです。あなた方の待遇改善というものは、どの程度のことが今文部省では検討されておるのか。ほんとうにやっておりますか。これは今検討の課程であるならばそれを出してもらいたい。それをこの程度まで検討しておるのだということがあるならばお示しを願いたい。これは科学技術会議の決定ですから、これをすみやかに人事院に働きかけるべきです。こういうような法案を出すよりも、こういうことをやりなさい、こういうことをやることによって工業教員も充実できるのだ、これ以外にないのだということを、私どもは口をすっぱくして実は主張してきたのはここにある。こんなことをほったらかしで、そうして小手先のことばかり弄されておる。こういうことではどうもならぬと思いますが、今日ただいまの検討の過程にある事柄をお示し願いたいと思います。どういう事務局でだれがどんな検討をしておりますか承りたい。
  194. 天城勲

    天城政府委員 現在われわれ行政内部で検討段階であります。もちろん最終的に大臣に御報告いたしておるわけではございませんが、大学の教官の給与体系につきましては、職務の性質が一般公務員とかなり違いますので、まず初任給の問題から一般の公務員とかなり違った考え方をとらなければならないのだということと、特に国立大学につきましては、教官の定年制がございまして、一般の公務員よりは勤続年数がきわめて長い。職務のとり方もかなり違って参りますので、独特の給与体系をとるべきではないかという考え方をとっておるわけでありまして、比較して申しますれば、やや司法官に近い給与体系が本質的にはよいのではないかというような考え方を持っておるわけであります。その場合に初任給を幾らにするか、どの段階でどの金額にしたらいいかということは国の給与体系、給与政策の問題でありますので、ある程度相対性を要求されてくるわけでありますので、一方的に文部省だけでなかなかきめかねておりますが、考え方においてはそういう構想で、昨年の給与改訂のときにおいても基本的にはその考え方で臨んでおりますし、現在においてもこの基本的な考え方で各段階検討をしておるところであります。
  195. 野原覺

    ○野原(覺)委員 私は教員免許法のときにも、大臣にはこの問題では非常に失礼なことを申し上げました。大臣もこれは御記憶されておると思う。私はこれ以外にないと思いますよ。ほんとうに科学技術の振興をはかるのには、科学技術者を優遇する以外にないと思うんですよ。それから教員の確保もそうなんです。これをやれば出て行けといったって行きませんよ。教育ぐらい神聖な仕事はないのですからね。それはだれだって給与がよければ学校に踏みとどまります。自分の研究も十分できるのだし……。給与が悪いからなんです。あなたは検討さしておるというが、検討しておるのは本気でやっておるのかどうか知りませんけれども、まことに簡単きわまる答弁が官房長からなされた。私はこういうことはもっと真剣にやってもらいたいと思います。そうして少なくともいつごろをめどに人事院に対して勧告をするのかということも、ちゃんとめどを定めて、本腰を入れてやっていただきたいと思う。そういう努力をした上の高専法案、そういう努力をした上の教員養成所法案ならば、私どもは真剣に考えます。肝心の努力はほおったらかしになさっておられて、一体やるのかやらぬのか。おそらく私はこの一九六一年度内には人事院に対する働きかけをなさらぬのではなかろうかという気がしてしようがありません。ことしじゅうにやって来年か再来年に実現するのです。あなたが、けしからぬ、そういうことを言うならばというので奮起されればこれはいいことですけれども、私はどうもなさらぬというような気持がいたすわけなんです。これは一つ真剣にやってもらいたい。池田長官が勧告するということが新聞にあるならば、あなたは積極的に池田長官に話をして、君が乗り出したことに対してはおれもこう考えておるのだくらいの話は、同じ閣僚ですからやられたらどうかと思うのですよ。これは一つこの前同様に最後に要望をいたしておく次第であります。  そこで私はもう一点だけ申し上げておきたいことは、これは前の同僚委員質問したときにもそうであり、出したが、本日の私の質問に対して、あなたの御答弁は、工業高専が一体、どれだけできるのかということについては目下白紙だ。それから従って予算措置についても白紙だ。それから生徒の募集人員についても、一体何名募集したらよいか全く今は考えていない。それから教官の確保をどうしてやるのか、短大の教授が今日おりますから、それを横すべりするのか、それでもおそらく足らぬでしょう。短大の昼間制のものは五つしかないのですからね。これはブロックごとといえば十近いブロックがありますから、そういうことになる。だからそういうことになってきますと、全く肝心かなめの点になれば私どもに対しては御答弁をなさらないのであります。そうしてこの法案だけ出してこれを審議して通してくれといっても、私どもはなかなかこれは応ずることができません。一切の文部省の考えておる、大臣考えておられる事柄、どういう学校を作ってどの程度でというところまでいって初めて審議が成り立つのです。これでは審議はできないと思うのです。遺憾ながら私どもは反対せざるを得ないのであります。全く審議はできないのですからね。  それから単線型、複線型に対しても、あとで討論の際に同僚委員から申し上げると思いますけれども、これは全く徹底を欠いております。複線型がいいと言いながら工業科だけにしておる。私は、これは見解が違っても、物事というものは徹底した方針でやってもらいたいものだと思うのであります。  以上申し上げまして私の質問を終わります。(拍手)
  196. 濱野清吾

    濱野委員長 山中吾郎君。
  197. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は同僚委員質問に重複しないことを心がけながら御質問をいたしたいと思いますが、四点についてお開きいたしたいと思います。その一つは手続上の疑義についてお伺いいたしたい。それから科学技術者養成という文教政策立場から疑問があるので、その点も重複しない点についてお開きいたしたい。それから学校制度との関係においての疑問についてお聞きをいたしたい。それから最後に、本案の内容について関係法案との関係で私は矛盾を感ずるものをお聞きいたしたいと思います。  第一の手続上の問題でございますけれども、先ほども野原委員から中教審に対する諮問についてるる質疑をされ、答弁をされたのでございますが、今度のこの法案については、文部省ではたしか五年制専門教育機関設置要綱案という形で諮問をされたと教育新聞に載っておるのでありますが、そういう形式で諮問をされたということは事実でございますか。
  198. 天城勲

    天城政府委員 さようでございます。
  199. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると五年制の専門教育機関は是か非かという諮問ではないでしょうね。そうですか。
  200. 天城勲

    天城政府委員 是か非かという形ではもちろんございません。
  201. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは五年制教育機関は中教審に対してよいか悪いかという諮問でなくて、作るが要綱はどうだという押しつけ諮問になると思うのですが、いかがですか。
  202. 天城勲

    天城政府委員 若干前の御答弁と重複する点があるかもしれませんが、短大の恒久化あるいは専科大学については中教番においてすでに御答申がございまして、その中で五年制の一貫教育という構想が出ておったわけでございます。現在中教審におきましては、広い意味での大学高等教育機関につきまして御検討中でございますので、現行短期大学もそれは当然高等教育機関、大学の一種として中教審の審議の対象になっておるわけでございますので、専科大学の構想では従来の御答申はございましたけれども、あらためて大学問題を検討して参りますれば、当然審議の対象になるわけでございます。そういう意味で中教審が前々から広い意味での大学の問題を御検討のときに、大学に関して別個の案を立てるということはいかがかと存じたわけで、それは別として五年制の一貫教育をするという中教審の従来からの一つの線につきましては、高等専門学校という案を出していかがでしょうかという御意見を伺ってきた、こういういきさつでございます。
  203. 山中吾郎

    山中(吾)委員 五年一貫をした教育がいいということは、短大に付属高等学校を置く、予科を置く、いろいろの形式があるので、それに対して五年制の専門教育機関設置要綱というような出し方をされればまことに非民主的である。こういう法案の出し方は、諮問の形はとっておっても実際はそうでないのだと私は思うのですが、その点大臣から、今後の問題もありますから、その点適切であったかないかを率直にお答え願いたいと思います。
  204. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 今政府委員が申し上げましたように、私も先刻来申し上げておりますが、中教審の今までの御検討の一応の結論として類似の構想がすでにあったわけでありまして、その構想を念頭に置いてこういうふうな要綱を作りましたがいかがでございましょうということを、諮問しますことは、これが是か非かということもむろん含んでいることは、言わずもがなのことであると思うのであります。是か非かということに加えて、具体的にはこういう考え方でいきたいと思うがいかがでございましょうということまで含めた中教審の意見を求める態度である、と私は思って諮問したのであります。
  205. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私はそれはこじつけだと思います。そういう出し方は不適当なんで、前例をお調べになりますと、こういう出し方の諮問案なんてどこにもありません。だからこういう提案をするまでの諮問の手続その他について、すでにこの法案というものの中に欠陥があるのではないか。これはどうせお答えはそういうお答えしかしないと思いますが、今後こういう諮問の仕方をすべきでない、私はそれだけ注意を申し上げておきたいと思います。  それから、その前に諮問をされたいわゆる専科大学についての諮問について、その諮問についての答申は生きておるのですか、死んでおるのですか。
  206. 天城勲

    天城政府委員 現在においては空きておると思いますが、ただ中教審で現在大学制度全体を御審議中でございますので、その中でこの構想がどういうふうに取り上げられ、あるいは生かされ、あるいは吸収されてくるか、これはまだわからないところございますが、現在の過程では諮問は生きているというのでございましょうか、諮問をいただいた以上はその趣旨は生きている、こう言わざるを得ないと思うのであります。
  207. 山中吾郎

    山中(吾)委員 生きておるでしょう。死にかかっておるかもしれぬがまだ生きておる。そうすると、また専科大学法案をお出しになりますか。
  208. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 概念的には答申が現にあって、あれを引っ込める、取り消すという意思表示がない限り生きていると申さざるを得ませんが、生きておるとしましても、私一個の考えではございますけれども、専科大学制度法案国会で御審議願おうとは今思っておりません。
  209. 山中吾郎

    山中(吾)委員 将来についてはわからない。これは答申に対する諮問の考え方は、短期大学の改善についてという諮問に対する専科大学案の答申であったのですか。そうでしょうね。
  210. 天城勲

    天城政府委員 中教審の御答申は必ずしも短期大学そのものではございませんで、たとえば、第一回は大学の入学試験制度の問題との関連でございます。第二回目は短期大学制度そのものでございますが、第三回目の御答申は科学技術教育の振興方策という中で触れられたわけでございます。
  211. 山中吾郎

    山中(吾)委員 今度の法案は短期大学はそのままにするんだ、それに触れないで五年制の専門学校を置く法律であるという御説明をしばしば大臣がされておる。そうして短期大学の処理の案として専科大学法案が出されてきたわけですから、専科大学の諮問が生きておるとすれば、専門学校を作って、また専科大学としての形で短期大学を処理するということが残っておると思うのです。そういうふうなあいまいもこたるあり方の中にこの審議を出されてくると、われわれは当惑するわけです。従ってそういう短期大学のあり方についての一つの処理の形として専科大学というものが考えられており、この法案の中に短大を触れていないという提案理由の説明関係考えますと、国会に対して短大の処理について明確にお答えにならなければわれわれは審議ができない。大臣から明確にお答え願いたいと思います。
  212. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 短期大学の問題は他の大学と一緒に総合的に今中教審で二年越しの御検討中でございます。その答申を待たなければ中教審としての御意向は伺えないのでありまして、そのときに、現在の短期大学は当分の間ということに制度上なっておるようですが、それが当分の間でなく、恒久的なものであらねばならぬとする中教審の意向が出てくるかいないかということは、答申待ち以外にお答えすることはできないと思います。
  213. 山中吾郎

    山中(吾)委員 専科大学は、これが短期大学一つの最後の姿として答申があったのであって、短期大学に関することは一応答申が出たのじゃないですか。そうじゃないのですか。
  214. 天城勲

    天城政府委員 今までの段階におきましては御答申がございましたわけですが、現在大学制度全般ということで、短期大学から大学大学院まで含めて中教審では御検討段階でございます。その結論がどうなりますか私たちにはわかりませんが、検討の対象にはいたしております。
  215. 山中吾郎

    山中(吾)委員 大学制度のうち短大に関するものだけは答申が出たでしょう。今大臣の答弁は事実に相反している。まだ二年くらいかかるとかなんとか言ったが、出たのでしょう。
  216. 天城勲

    天城政府委員 繰り返すようでありますが、短大に関しましてはいろいろな機会に御答申が出ております。しかし現在大学制度全体について審議している中教審の態度として、大学院から短期大学まで含めて現在相互関連の上に検討を進めておられますので、その結論はあるいはこれを再確認されるか、ほかの制度としの関連で別個の御意見を出されるかわりませんが、とにかくなお検討の対象に入っておるということを申し上げます。
  217. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうしたら専科大学案は、諮問案を撤回して御破産にしなければいかぬと思うのですが、官房長と大臣との話は当然違いますよ。相談してみて下さい。
  218. 天城勲

    天城政府委員 別に大臣と矛盾したことを申し上げておるとは思いませんで……。   〔発言する者多し〕
  219. 濱野清吾

    濱野委員長 静粛に願います。
  220. 天城勲

    天城政府委員 現在ございます大学院や大学、短期大学を全部高等教育機関として、そのレベルの教育機関、教育制度について検討中で、ございますので、当然現在の短期大学は対象になっておるわけでございます。すでに短期大学については三回の御答申がございますけれども、中教審はなお短期大学を現在全体との関連において審議の対象にいたしておりますので、結果はどうなるか、いわば答申待ちという段階だということを申し上げたわけでございます。別に大臣と矛盾したことは申し上げておらないわけであります。
  221. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それならばほかの方からお聞きしますが、短大協会の人々に対して、短期大学についてはこの法案の提案については当分このままにするが、次の国会にはきっちり提案をして、そして短大を安定化するようにしてやるという公約をされたと聞いているのですが、これはほんとうですか、大臣にお聞きします。なければないでけっこうです。
  222. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 具体的にそういう意思表示をしたことはございません。と申しますのは、今官房長が申しましたように、短大も含めた総合的な検討を前大臣のときに諮問されて、それが検討中でございますから、答申を待たないことには、私どもとしては勝手に短大についてかれこれ申し上げる段階ではないと思います。
  223. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは短大関係にこういう公約をされていない、それは了承をいたしました。そういうことでこの法案が出れば、また伏線があるのでわれわれとしては審議に非常に迷いを来たす。  そこでいま一度聞きますが、専科大学の諮問を撤回しなければ、その答申についてまた専科大学案を皆さんが出さなければならぬと思うのです。私は親切に誘導尋問をしているのですから、遠慮なしにもつとはっきりしなさい。大へんですよ。
  224. 天城勲

    天城政府委員 法案のように一度出して二度出し直せないというような意味でお考えかもしれませんけれども、一応答申は出て参っておりますが、さらにこの問題を含めて中教審が検討しておるという段階でございますので、中教審がこれを追認されるのか、あるいはこれと異なる制度を立てられるのか、これは中教審で現在やっておられる段階でございますので、取り消しとかいう問題は起こらないのじゃないかと考えております。
  225. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あるときには答申をたてにして、民主的に尊重しておるといってお出しになり、ある問題については中教審に諮問をしないからわれわれはどうだといい、都合の悪いものは握りつぶすということになってしまう。だからこの問題の中に、法案自身に短期大学の処理がはっきり出ておるならば私はわかるが、そのままほうってあるのですから、その諮問とは関連があるからまたごまかしが出る。ごまかさないようにして下さいよ。これはこれでけっこうです。  次に政府法案提出されたことについて、私は手続上道義的に少し疑義があるのでお聞きしたいのですが、この同じ国会法律案として国立学校の設置法の一部改正が行なわれて、そして短期工業大学が四つですかをした。それを、この同じ国会の中に五年制の専門学校案も出して、そしてそれは専門学校に切りかえるんだ、こういうふうに言われておると私、聞いておるんです。そうすると国立大学に短期の工業大学というものを設置することが必要だとして、われわれに説明をし、そして一カ月もたたないうちにこの法案を出してひっくり返すというのは、ペテンだと思うんです。法案の出し方が道義的にまことに釈然たるものがない。この点は文部大臣にお聞きしたいのですが、どういうことになるのですか。短大は短大のままで切りかえるのではないんですか。
  226. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 この高等専門学校法案は、ただ単に国立の関係のみならず、公立も私立も当然に予想された新しい学校制度創設案でございます。従って国立の短期大学があるとしましても、それが当然にこれになるという性質のものではございません。そうは考えておりません。現に短期大学にしましても、国立のものは昼間のが夜間のものよりはむしろ少ないという状況であります。しかし先ほど野原さんの御質問だったと思いますが、それにお答えしました通り、今後の現実の事態を考え合わせて、現にある国立の短期大学を、この高等専門学校に切りかえるということが絶無とは私は申し上げ得ないと思います。それはしかしあくまでも国会においてあらためて法律案として御審議願って、お許しを得てしかできないという関係に立つのでございまして、何もペテンにかけるのなんのという性質のものじゃ、本来ないと理解しております。
  227. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部大臣は長続きされないから、そのあとは知らないということになるのでしょうが、ちょっと取りかえるんじゃないかということを私は疑う。われわれは審議するときにはやはり気分が悪い。それはなぜかというと、三月二十日の読売新聞で、犬丸技術課長新聞説明の中に、国立五短大を専門学校に転換させる、宇都宮、長岡、宇部、北見、久留米とちゃんと文部省の責任主管課長新聞に出ている。だからやはりそういう意図のもとにあったことは明らかなんですが、犬丸課長説明して下さい。
  228. 犬丸直

    ○犬丸説明員 公立の短期大学につきましては、ただいま大臣が御答弁されたように、この短期大学高等専門学校に切りかえていくことも絶無ではないと思いますが、なおそれにつきましては、今後大臣の御指示に従って検討したいと思っております。
  229. 山中吾郎

    山中(吾)委員 絶無ではありませんと言って、あなたの方で転換させるとあなたは言っているのだが、その当時はそういう方針であったが、やはりいろいろ反省してみて、そうでないというならわかるんですよ。それはごまかす必要はないのですから、はっきりしないとあとまた困るんですよ。
  230. 犬丸直

    ○犬丸説明員 ただいま大臣から御答弁ございましたように、この転換をいたしますにつきましては、あらためて法案にしまして御審議を願わなくちゃならないわけでございますから、記事はどういうことになっておりましたか、私存じませんが、これは筋道といたしましてただ行政的に切りかえるというようなことはできないものだと思っております。ただいま大臣から御答弁申し上げました通りだと思います。
  231. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それじゃ大臣の意思に従って切りかえられないと言うが、私がなぜ疑うかというと、この法案が通過しても来年出発ですね。そしてこの法案の附則に、昭和三十七年四月一日前には設置することができない。ただしその前には準備をすることができると書いて、あくまでもこの発足は来年にしてある。そして国立の工業短大を本年に設置をしてそして、課長がこれを切りかえるんだと発表している。だから大体その方針であったことは間違いない。しかし大臣は、よく考えてみると、専門学校法案を出した、国立学校の設置法も同じ国会に出してすぐ切りかえるなんということは、やはりどうしても国会に対しては工合が悪いというので、ほんとうに切りかえるというふうな方針を変更したのか、あるいは適当にお答えになったのか、だけははっきりしておいていただかないと、一年以内のうちにこれが実際に現われてくると、私らは不愉快です。文部大臣からいま一度その点をはっきりしていただきたい。一年以内にするかしないか。
  232. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 事務当局が話したことが新聞に出たのかどうかも私は知りませんが、また出た通りのことを事務当局が考えておったとしましても、それだけでもって国会と無関係にできることでないことは今申し上げた通りでございます。(山中(吾)委員「この法律が通過したらできるのですよ」と呼ぶ)通過しましても、切りかえるとするならば、切りかえることそのことを法律案として御審議願って御決定願わぬことにはできないわけでありますから、事務当局が何と考えましても、そうきまっているのだということは少なくとも国会に対しては申し上げられない。また現実問題としても、今後検討の結果すでにあります短期大学がこれに移りかわった方がいいという判断をしちゃいけないということもございませんので、そういうこともあり得るだろう、しかし建前は国立のみならず、私学、公立等も当然に対象とする学校制度法案でございますから、従って私は、今新聞記事で御指摘になりまして何かそこにインチキがあるようなニュアンスでおっしゃることは、理論的にはおかしいことだと拝聴いたしております。
  233. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そういうふうに強弁されたら、私もやはりもう少しこの問題で聞かなければならぬのですが、今までの説明の中で、短大はそのままにするのだということをしばしば答弁されている。そうして一方に課長は短大を切りかえると新聞に載せている。そうしてしかも同じ国会の中にこういう矛盾した二つの法案が出ている。さらに言えば、この法案を設定するについて、五年制の専門学校の基本的計画を発表せいと言えば、何もないと言っている、そうして一方では課長がそう言っているのですから、疑うのは当然です。そうではないのですか。
  234. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 建前として少なくとも制度論として申し上げた場合、この法案は何回も申し上げますように、国立もありますし、私立もありますし、公立もあります。また現にある短大が切りかわることがありやなしやということは、国立に限らず、私学につきましても公立につきましてもあり得る課題だと思います。私学については、政府側から切りかえたらどうですかなどということがあるはずはない。私学みずからの判断で五年制の高等専門学校というものを経営したいという意図を持った場合、新たに同等学校一年から発足することもあるでありましょうし、また現に持つ私学の短大をこれに切りかえた方がよろしいという判断のもとに申請が出てくることもあり得ると思います。ですから少なくとも理論的に申し上げれば、国、公、私立を通じまして、先ほど来申し上げているような筋道のものと考えます。
  235. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それではこの法案ができたあと、国立の専門学校は何校お建てになるのか、所得倍増計画に関連して工業技術者要請ということを説明されているのですから、計画がなければならぬ。従って何校来年作るのだ。この国立短大を変更しない限りは計画がなければおかしいのですからね。(「何回同じことを聞くのだ、頭が悪いぞ」と呼びその他発言する者あり)明瞭にすれば聞かぬよ。
  236. 濱野清吾

    濱野委員長 静粛に、静粛に。
  237. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 所得倍増関連しましての技術者養成問題に関連して、現状のままでは約十七万人の不足が推定される。それを大学と名づける学校制度を通じてできる限り——入学定員で申し上げれば充実していくとして、十年後に学生定員一万六千人ばかりを追加増員するという推計を立てるほかに今としては方法がない。そうした暁において、その推定のもとにおきましては、不足要請数の追加を累計して計算しまして七万二千人ばかりになる。従って十万人——十七万人不足に対しては九万七、八千の不足、赤字ということになる。こういう見通しを今まで申し上げてきておるわけでございますが、この高等専門学校の構想は、科学技術会議の答申にその構想の大綱が述べられてはおりますものの、現に存在しておる制度ではないものでありますから、今の十七万人の不足推計につきましても、充足方法につきましても、この高等専門学校からどれだけということはまだ全然未必のことでございますから、計算に入れておりません。従って、何度も申し上げたように九万七、八千不足すると推定されておるものを補う制度として、現実には働いてくるでございましょう、こう申し上げている次第でございます。従って三十七年度に新たに、高等学校一年から発足したものを、すぐ五年制のこの学校を幾つ作るか、あるいは場合によっては短期大学を切りかえることもあるかないかということも、今後の検討を重ねました上で、あらためて国会の御審議をお願いするという課題なものでありますから、そのことを率直に申し上げておる次第でございます。
  238. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは設置計画はないことが明らかになった。従ってこの法案については、予算なんというものは少しも無関係の、何らの予算も要らない、そういう法案ですね。
  239. 天城勲

    天城政府委員 これは学校教育法の一部改正——学校制度として定めておりますので、これがすぐ具体的な学校になるわけではございませんので、予算は直接この法案に関してはないわけでございます。国立でやる場合には国立学校設置法を改正いたしまして、予算案を付して国会の御審議を得る段取りになる、こう思っております。
  240. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それでは国立の短大を転換するということを前提としていないということにお聞きして、私は一応受け取っておきたいと思います。  その次に学校制度との関係でお聞きいたしたいのですが、戦前の旧制の工業専門学校と今回の専門学校とを大体同じものとしてお考えになっておるのですか。あるいは全然別のものとしてお考えになっておるのですか、どちらです。
  241. 天城勲

    天城政府委員 前の制度は義務教育六年、それから中等学校五年でございまして、その上の三年ないし四年がいわゆる旧制専用学校でございます。このたびの制度は六・三——九年の義務教育終了後に続く五年制の専門学校でございまして、年令的には異なっているわけでございます。その点では違うということが言えると思います。別の面で申し上げますれば、専門の教育を後期の中等教育から高等教育にかけて行なう段階では、あるいは似た点があるかと思いますが、新しい制度のもとにおける新しい学校制度としてわれわれは考えておるわけでございます。
  242. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そこで官房長に聞きたいんですが、戦前の基礎教育というのは、十一年基礎教育、普通教育をして、そして高等専門学校に入って三年ないし四年の専門教育を受けた。今度の場合は、その基礎教育、一般普通教育がたった九年、そしてあと専門教育に入ってしまう。どっちが教育制度としていいと思いますか。
  243. 天城勲

    天城政府委員 専門学校だけを例にとれば十二年目から分かれる形になりますけれども、現在でも九年の義務教育終了後、高等学校段階で各種の職業高等学校がございまして、分化の段階はどのレベルですれば一番いいかということは、いろいろ議論があろうかと思っております。あまりに早い時期に分化することにつきましては、これは世界各国の教育制度の上で議論がございますが、十五才——われわれの今度の制度考えております段階での分化は、むしろ適当な年齢ではないかと考えております。
  244. 山中吾郎

    山中(吾)委員 戦後の非常に短かくした九年にしても、これは義務教育です。そうして義務教育のために、新制中学といっても、旧制中学よりも低くやらざるを得ない、選抜でないのですから。そうして九年に縮めて、今度の高等専門学校——これは学校制度の退歩です。旧制中学の五年を——入学試験を受けてある程度素質のいい者が入って、そうして五年普通教育を受けて高専に入る。そうして高専に入った者は、経済界からも相当優秀だといわれたから、戦前の高専なら私もわかる。戦前の高専じゃない。今度はずっと低い。大体基礎教育なしにやっているのだから、これは後退です。こういうものを日経連なんかにいわれてふらふらっとするから、学校制度はだんだんと後退をしていって、改善にならない。大体高等学校の三年というものを合わして、ちょうど前と同じくらいの程度の普通教育の基礎ができるので、やはり専門教育はそのあとにすべきじゃないか。それで旧制中学と同じつもりで、大体いいんだというような第六感、第八感ぐらいで自民党の委員の人が賛成する。もってのほかだ。専門教育は実は徒弟——技能教育になってしまう。その点について、私は改悪だと思うのですが、改悪でないという説明大臣からして下さい。確信のあるところを——官房長でもいい。
  245. 天城勲

    天城政府委員 今御指摘の点は基本的に、基礎教育と申しますか、基本的な教育を十分に踏まなければならぬということは、私たちも同感でございます。従いまして五年制の今度の高専にいたしましても、決して手先の技術教育を中心とするのでなくして、先ほども野原委員の御質問お答えしましたように、これから激しく変化して参ります技術革新の変化に備えまして、基礎に重点を置いた教育をいたしていきたい。専門におきましても、あまりこまかい、社会の分化にすぐ応ずるということでなくして、特に基礎的なものに重点を置くという考え方をとって、十分気をつけているわけでございます。
  246. 山中吾郎

    山中(吾)委員 答弁になっていないけれども、けっこうです。だから、これは中等教育ですか、高等教育ですか、どっちなんですか。
  247. 天城勲

    天城政府委員 高等専門学校でございますので、教育の成果といたしましては、高等教育のレベルを完成の段階においては授けたい、こう考えております。
  248. 山中吾郎

    山中(吾)委員 制度は中等教育と高等教育と一緒にした、中等でもない、高等でもない学校じゃないのですか。
  249. 天城勲

    天城政府委員 学校制度の見方でございますけれども、現在中学校高等学校を中等段階教育という考え方で前提にいたしますれば、中等教育の後期と高等教育のある段階を含めた制度だということが言えると思うのであります。  なお先ほどのお話で、旧制の専門学校と今度の高等専門学校の比較の御質問がございましたけれども、学校体系が戦前と戦後と基本的に違うわけでございますので、ただ高専の部分だけ比較してそこだけで議論するのはいかがかと私たちは思っているのでありまして、基本的な制度の上でこの高等専門学校の位置づけは考えていくべきではないか、こういうふうに考えております。
  250. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると工業高等学校、これは将来は廃止される方向にお考えになっているわけですか。
  251. 天城勲

    天城政府委員 そういう考え方は持っておりません。
  252. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうしますとこの専門学校ができることによって、工業高等学校の位置づけというものは非常におかしくなってきて非常に何か低いものになる。その辺はこれはよほど慎重に考えておかないと、工業高等学校というふうなものは、昔の新制中学と同じような格好に、工業学校と一緒になってしまって、専門学校大学扱いにしないのですから、そうすると、工業満等学校は昔のいわゆる工業学校に格下げになり、そうしてこの高等専門学校は高等工業学校にならないのです。基礎が高等学校から入っていないから、そういう格好になって、工業高等学校専門学校というものはどちらも私はわけのわからぬものになると思うのですが、この二つを並立していくと……。その点は特色をはっきり出せますか。
  253. 天城勲

    天城政府委員 あまり個人的な意見を申し上げるのは議論のようで恐縮なんでございますけれども、やはり社会がだんだん発展して参りますれば、教育制度におきましてもいろいろ実態が変化して参りますし、また技術革新を中心とする産業の変化を考えますと、社会構造も非常に複雑になって参りますので、工業高等学校、それから高等専門学校あるいは大学、さらには大学院、それぞれの教育段階がやはり必要になってくるのではないか、こう考えております。
  254. 山中吾郎

    山中(吾)委員 あとでいろいろ矛盾ができてきて、数年のうちに専門学校廃止案などがまた国会に出てくるのじゃないかということを私は心配しているのですが、まずそういうことのないように一つ大いに運営をよくやってもらわなければならぬと思います。  その次に技術者養成の文教政策立場からお聞きしたいのですが、大臣に基本的な問題としてお聞きします。科学技術者養成についての国の責任とそれから企業の責任というものは、企業は自分の使う技術者ですから、どこまでを企業にやらして、国はどこまで責任を持てばいいか、この基本的な考えをお聞きしたい。
  255. 天城勲

    天城政府委員 それはきわめて大切な基本的な問題だと私たちも考えております。私たち制度考えます事務当局の意見を最初に申し上げます。産業界技術の進歩が非常に激しいので、私たちはやはり基本的に基礎的な力を持った、それぞれの段階に必要な技術者の養成が学校教育に課せられた一つの使命だと考えております。同時にまたきわめて高度の研究能力を有する研究者あるいは基礎的な研究につきましては、やはり学校制度の中で大学ないしは大学院の持っている役割だ、こう考えております。
  256. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると国の科学技術者養成の責任というものは基礎的な技能知識である。すぐに役に立つということについては、企業が自分の予算において負担をしてやるべきだということだと思うんですが、その通りですか、大臣……。
  257. 天城勲

    天城政府委員 基本的には学校制度としてはそうだと思います。ただ企業には大企業もございますれば中小の企業もございまして、企業と申しましてもいろいろな段階がございますので、それぞれの需要要望は異なるかと思いますが、基本的には学校の持っている使命は先ほど申し上げた通りであると考えております。
  258. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そういうことが同時に裏づけられて企業の方からもやはり基礎を十分に作ってくれたものは一年たつと非常に役に立って、最初は骨が折れるけれども、やはり伸びる、それですぐに役に立つよりも、基礎をうんと作ってよこせというのが私はむしろ実業界のほんとうの要望だということを聞いておるわけです。そういう点からいいまして、やはりこういう五年制の専門学校というふうなものを、今の新制中学を出たときから技能者養成のような危険を感ずるような方向に移っていきやすい制度というものは、決して経済界要望だと私は思っていないのです。その点は資料はございますか、具体的な産業の……。確信を持って言えればいいのですが。
  259. 天城勲

    天城政府委員 企業の方でどういう技術者要望しておるかということは、先ほど申し上げましたように、企業の種類、規模あるいは成長の速度等によってかなり違うように私どもも拝聴いたしております。たとえば現在の四年制大学卒業生を企業側で受け取る態度におきましても、すべてが今後の企業の上級の技術者になり得るかどうかというようなことは必ずしも考えておらないようでございまして、やはり企業内における訓練と申しますか、職場にあたっての成長によっていろいろ異なってくることがあろうかと思っておりまして、その点につきましては私たちもまだ完全な確定的な資料を持ち合わせておりませんけれども、機会あるごとに産業界の方々とこの点についてはお話し合いをいたしております。
  260. 山中吾郎

    山中(吾)委員 産業界は第六感で言っているのでしょうと思うのですよ。予科と本科に分ければ、私はほんとの国の責任における技術者の養成ができ、そうして実際に伸びる技術者に、あとでなり得るということになれば、どちらも共鳴するのだろうと思うのですが、今のように五年制の専門学校、予科も何もしないでこのまま狭い技術養成の構想に入っていく危険性のある専門学校は、私は事実に合わないのじゃないか。そういう点について十分に分析をされていない私は不適当な構想であると思います。あなた方はそういうふうな具体的な資料を十分に検討しないで、ただ思いつきで専科大学じゃ通らないから、五年制の専門学校だから出したのじゃないかということを私は思うのですが、その点は腹の中で学校制度についてはもっと慎重に科学的に検討するという責任を持ってもらわなければいかぬと思うのです。  次にお聞きしたいのは、現在の科学技術者養成を、文部省の文教政策としては高級科学技術者、中堅技術者、初級技術者技能者、この四つというものを想定をして技能者は企業内訓練へまかす、そうして三段階技術者を養成するという、そういう方針でお考えになっておるのか、その中に専門学校構想が出たのか、それは大臣からお聞きいたしたい。
  261. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 中堅の科学技術者の養成ということから申しますれば、今の四年制の大学及び短期大学、それにあわせてこの高等専門学校、この三種があるということになると思います。短大を含めまして大学は先刻も申し上げました通り、いずれかといえば研究に主眼を置く。現在ある科学技術を理解して応用面を中心に考えるものは今の大学制度の第一義的なものではないと私は理解いたしますが、現実に社会が必要としますのは研究的な能力の、創造力のたくましい人もむろん必要でございますと同時に、またそういう人が特殊な本来のその人固有の能力に立って初めて期待できることであり、多くは私は応用の才を持っておる者が大多数であると考えますが、その場合に大学のように研究を主眼とするのでなしに、応用を主眼とする制度があってしかるべきではないか、そういう考え方にマッチするものがこの高等専門学校制度だろうと考えておるのであります。
  262. 山中吾郎

    山中(吾)委員 高級科学技術者というのは大学卒業考えておるわけなのですか、あるいは四年制大学を含んで言っているのか、その辺今の文部大臣の言うことがちょっとわからなかったのですが……。
  263. 天城勲

    天城政府委員 科学技術会議の使っております用語を中心に申し上げますと、いわゆる上級技術者中級技術者というのは、大学、短大、今度できます高専もこの領域に入ると思うのでございますが、高等教育機関で養成される者、それから今おっしゃいました初級技術者、これは工業高等学校卒業生ですが、科学技術会議の方では技能者という言葉を使っているのじゃないかと思います。それから先ほどおっしゃった技能者というのは熟練者という意味で使っておりまして、義務教育プラス職業訓練という形でこの熟練者の養成を考えて構想を立てております。  なおこの上級技術者の領域の中に研究者というような領域も考えておりまして、高度の創造的な活動をする人たちも広い意味ではこの上級技術者に含めて大学あるいは大学院を養成機関と想定いたしております。
  264. 山中吾郎

    山中(吾)委員 前の科学技術委員会文教委員会の合同審査の場合に、私、科学技術庁の長官にも文部大臣にもお聞きしたときは、文部省の科学技術者養成は二段階で、上級技術者中級技術者の養成を考えておるので、三段階考えていない、それがために計画の中にも上級の科学技術者は七万、中級は四十四万、この二つを考えておるのだ。二段階と答弁をされて、そうしてあらゆる資料がそうなっているのですが、それを今度は三段階に変えていくことになってきたわけですか。そうではないのですか。
  265. 天城勲

    天城政府委員 御指摘通り科学技術者という言葉でお話したときの範疇には、今御指摘の上級あるいは中級という領域を含めて考えておりまして、この養成の問題は科学技術関係で議論があったと思っております。今広い意味での技術者を含めて議論する場合に、上級、中級、あるいは技能者、熟練者という全体が問題として上がってきたわけでございますが、上級、中級含めて特に科学技術者というような表現を使って議論している場合がもちろんございます。
  266. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それをなぜ私が繰り返して聞いておるかと申しますと、工業高等学校卒業生を技能者的にお考えになっているのはとんでもない。工業高等学校はやはり中級技術者として最初から考えて、教科課程その他も出ておると私は思うのですが、そうじゃないですか。
  267. 天城勲

    天城政府委員 科学技術会議の答申で工業高校卒業者技能者という範疇で呼んでいるわけでございまして。
  268. 山中吾郎

    山中(吾)委員 工業高校卒業者をですか。
  269. 天城勲

    天城政府委員 工業高校卒を技能者という表現で科学技術会議の答申では呼んでおるので、その例を使って私先ほど申し上げたわけでございます。
  270. 山中吾郎

    山中(吾)委員 技能者というのは不適当ですよ。文部省としてはそんな表現は認めるわけにはいかぬのじゃないですかね。それでいいのですか。それでそういう中級技術者として所得倍増計画のときについても四十四万を含んでたしか発表されたと思うので、その点を、こういう専門学校という、大学でもない、工業高等学校でもないものを出してきたものだから、文教政策というものをきっちり調整すべきだと思うので私お聞きしているのですが、工業高等学校卒業生は技能者ですか、それでいいのですか。
  271. 天城勲

    天城政府委員 倍増計画で十七万人不足するといわれておる科学技術者、これの基礎には現在職場で働いております過去からの蓄積がここにございますから、その学歴を見ますと、旧制大学、それから旧制の専門学校、それから新しい制度の四年制の大学、短大の卒業生で占めている領域を含めて、利用度を考えて十七万不足、こういうことをいっているわけでございまして、現在の学校制度で申しますれば、四年制大学と短大だけでございますので、別にそのときに高専問題がございませんわけで、現在、この構想が出て参りましても、その辺は別にこのためにごちゃごちゃしたというわけではございませんので、いわゆる科学技術者といっている領域は、過去の制度卒業生を含めてそのレベルの技術者、こう考えているわけでございますから、この制度が出てきたためにこの辺がごちゃごちゃになったというわけではなくて、広い意味での科学技術者の中に、すでに上級、中級という考え方を含めてあの構想の中では考えておったわけでございます。
  272. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その辺は、私は工業高等学校をもっと重視して、そういう概念をもっと整理をしておいていただきたいと思います。  法案の中でちょっと疑問のあるところをお聞きいたしたいと思いますが、この法案の七十条の二、「高等専門学校は、深く専門の学芸を教授し、に必要な能力を育成することを目的とする。」深く専門の学芸を教授するというのは、大学の目的と大体同じですね。そして職業に必要な能力を育成するというのが、いわゆるここの職業人養成ですか、ここの同等専門学校の目的を考えると、これは大学教育だ、大学教育としてお考えになっている、こう見ていいわけですね。
  273. 天城勲

    天城政府委員 現在、御指摘になりました大学の目的、深く学芸を教授、研究するというこの目的は、四年制大学でも、短期大学でも両方に適用されている規定でございます。ただ先ほど来申し上げておりますように、学校の性格としてこの研究というものが入っておりますが、このたびの高等専門学校では、「深く専門の学芸を教授し、」という点につきましては、当然そのレベルの高等教育機関を想定いたしておりますので、こういう表現を使ったわけでございます。
  274. 山中吾郎

    山中(吾)委員 こういう大学と同じ目的を書いているものですから、実質は専科大学と同じなんです。表現が大学と同じですから、いろいろと説明の中に矛盾がたくさん入っていると思うのですが、これから見ると専科大学でしょう。
  275. 天城勲

    天城政府委員 大学という言葉の使い方がいろいろあろうかと思っておりますけれども、私たち現在、学校教育法では、大学というのは教授、研究という本来の使命を制度として持っておるという点に基本的な線を画しておるつもりであります。このたびは学生に授けられる教育の水準といたしましては、高等教育機関を想定いたしておりますが、制度といたしましては大学でないということで高等専門学校ということをうたっておるわけでございまして、非常に抽象的な言い方をして恐縮でございますけれども、専門学校であるためにこれは大学ではないわけでありまして、専科大学ではございません。
  276. 山中吾郎

    山中(吾)委員 法文は非常に矛盾があると思いますが、各人が帰心矢のごとくでありますから、一応これはこの程度にしておきますが、その次の七十条の三に、「高等専門学校には、工業に関する学科を置く。」として、見出しは、工業専門学校ではなくて、高等専門学校という見出しですから、この法案の体制からいって、あらゆるものを将来拡大をしていくのだという法の意味と解釈するのが私は自然だと思うのですが、今までその点についてあいまいなる論議があったと思うので、その点は工業に関する学科を置くというのは、当分の間というのを実は隠してこういうふうに規定してあるのだ、こういうように私は思うのですが、その点は間違いないですか。
  277. 天城勲

    天城政府委員 これはやはり学校教育法という学校体系、学校制度全般を規定しております法律の一部改正でございますので、学校制度としてどういう制度かということを明らかにするためには、学校の性格として高等専門学校であるということでこの一章を設けたわけでございます。ただその目的と学科の設置につきましては、この場合におきまして七十条の三という形で工業に関する学科を置いたわけで、附則で当分の間ということは、学校教育法の系統で考える場合にはそういう考え方はちょっと出ないのじゃないか、やはり本則でうたってあります以上は、あくまでも工業に関する学科を置くというのがこの学校の性格で、本則の問題としてあくまでもこれを考えております。
  278. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、やはり工業高等専門学校に限定して、他のものには、大体現在の法案の思想は普及する意図はない、文相はそのうちに皆さんに諮ってとかなんとかいっておりますが、法の体制はそうでないのですね、そういうようにお聞きしていいのですね。
  279. 天城勲

    天城政府委員 本則で工業に関する学科を置くと書いたのでございまして、当分の間という意味ではもちろんございません。
  280. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それから「前項の学科に関し必要な事項は、監督庁が、これを定める。」この監督庁というのがちょっとわからないのです。それから学校学科に関する必要な事項は全然タッチしないで監督庁がみんな作るわけですか。
  281. 天城勲

    天城政府委員 これも先ほどほかの先生の御質問関連してお答え申し上げたのでありますが、この法律の七十条の九で学校教育法の何カ条かの準用規定を定めております。第六十四条を準用いたしておりますのは、大学の所管が文部大臣に属するという規定でございまして、この趣旨を準用いたしまして、高等専門学校は文部大臣の所管に属するということで読んでいるわけでございます。従いまして、この学校教育法の体系がみな監督庁ということで規定して、最終にどこが監督庁かということを規定しておりますので、その体系で申しますと、この監督庁は文部大臣ということになるわけでございます。  なお「前項の学科に関し必要な事項」と申しますのは、工業学科でございますけれども、一応常識的には機械工学とか、電気工学とかあるいは応用化学とかいうものがいわれますけれども、同時にその他工業に関する学科として適当な規模、内容のある学科を省令で定めるという意味でございまして、どこにどういう学科を置くかということは文部大臣がきめるわけじゃございませんで、工業に関する学科の種類を規定いたすという考え方でおります。
  282. 山中吾郎

    山中(吾)委員 次に七十条の六に「校長、教授、助教授、助手及び事務職員を置かなければならない。」これがあるわけですが、工業高等学校に相当する前期三年、それからいわゆる短大に相当する部面と、この点については教授と教諭というふうに分けないで、全部教授という行き方をするようですが、それについての特別な設置基準は作ってないといつか答えられたのですが、それではあとで免許法の関係においていろいろ矛盾が出ると思うのですが、その点の矛盾は吟味されておりますか。
  283. 天城勲

    天城政府委員 これも再三申し上げたのですけれども、この制度は必ずしも前期が三年で後期が二年という構想を立てているわけではございませんで、一貫してというところに特色を考えております。もちろん低学年におきましては、それに即した教育内容を考えなければなりませんし、同時に、年令的には高等学校段階の青少年でございますので、その点は十分考慮いたさなければなりませんが、学校といたしましては、一貫的に行なう一つ学校という考え方でおりますので、しかも最終の教育水準を高等教育機関のレベルを想定いたしておりますので、学校内の教員組織としては教授、助教授という一本の制度にいたしたわけでございます。従いまして、高等専門学校のこの教授、助教授の任用資格でございますが、高等専門学校の設置基準を定めまして、現在大学や短期大学の基準において教職員の資格を定めておりますので、それと同じような意味でこの学校に最も適した教職員の資格基準を定めたい、こう考えております。
  284. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それから、この学校の設置の認可についての諮問機関として高等専門学校審議会を設けることになっておるわけですが、私学関係の方から、私立大学審議会あるいは府県私立学校審議会があるが、これに限っては官公立全部を含んで高等専門学校審議会に一括して諮問される、そういう関係においていわゆる私学の自主性というものが、官公立を含んでおる諮問機関にされてしまっておるので一ほかのものについては私立審議会によって官公立と区別して民主的に構成されるものによって諮問をされるが、これはどうも心配だ、ここの中にどうも文部省の、必要以上の専門学校の、ことに私立の専門学校の場合についてはいわゆる統制というものが入ることに非常に疑問を持っておる。その点については、この構成その他について文部省はどう考えておるかということによって、やはりこれは私立学校法が前提として私立学校に関する特別の審議機関を設置しておる現在の立場からいえば非常に矛盾がある。そういう点はいかがですか。
  285. 天城勲

    天城政府委員 お答えいたします。  現在も大学設置審議会は国、公、私立を問わずここの審議会で審議しておりまして、私学審議会は私学法人だけの事項を取り扱っている審議会でございます。従いまして、このたびの高等専門学校におきましては、学校の基準そのものに関しましては大学設置審議会と同じように国、公、私立を一緒に高等専門学校審議会で審議いたしますが、同時に学校法人の関係もここであわせてやった方が適当だ、こう考えたわけでございまして、もちろん私立学校の自主性あるいは私立学校の本来の目的というようなことは十分考慮していかなければならぬと考えております。
  286. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その次の疑問は、これは学校教育法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案を一括して審議しておるわけですが、三十幾つの関係法案がずらっと並んでいるので、わけがわからない。一々聞く気はないのですが、良心的には聞くのがほんとうですけれども、聞くのはやめますが、その中で第二条の育英会法の一部改正、これによってここの専門学校をここに入れることになっておるのですが、ここの専門学校卒業生も教員にする目的が入っておるのですか。
  287. 天城勲

    天城政府委員 この高等専門学校は特に工業に関する技術者の養成を目的とした学校でございますので、教職課程を置いておりませんし、教職員養成を目的といたしてはおりません。なお育英会法の改正はそういう意味ではないと思います。
  288. 山中吾郎

    山中(吾)委員 育英会法の「第十六条ノ四第二項中「大学ニ於テ」を「大学又八高等専門学校ニ於テ」」だから、教員になることを前提とした場合の規定でしよう。
  289. 天城勲

    天城政府委員 少し説明が不十分で申しわけございませんが、免許状の授与を考えておりませんので、いわゆる小、中の先生に考えておりませんで、大学の研究者、助手等になることを想定して、この育英会法の一部改正を入れたわけであります。
  290. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうですが。これはちょっと事実に合わないのですが、これはちょっとそこで相談して下さい。そちらの答弁がおかしいんだ。
  291. 天城勲

    天城政府委員 この高等専門学校の学生で育英会の貸費を受けた学生が卒業高等専門学校、この自分自身学校の教官になることもありますし、大学の研究者になることもございますので、その場合の取り扱いを規定したわけでございます。
  292. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この育英会法のこまかくてまことに恐縮ですが、修業後一定年数以上継続して、中学校高等学校大学その他文教施設にあるときは貸与金の返還を免除する。そこに入れてあるわけですね。ですからこの間の免許法にも、教職課程はとらなくても工業関係の先生は免状を与えるのだという悪法が出ていましたが、適用になるのですか。
  293. 木田宏

    ○木田説明員 先般別の機会に御説明申し上げたかと思いますけれども、この高等専門学校卒業いたしましてまた大学へ入りまして大学卒業するという者も出て参るわけでございます。そういう人の中にはあるいは大学におきまして教職単位をとりまして、高等学校の教員になるという者も出てこようかと思います。そういう人がありました場合には、高等専門学校において貸与を受けました学資の奨学金の免除ということもあわせて考える必要もございますので、この中に大学を加えまして、高等専門学校というものを予定したわけでございます。
  294. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは詭弁ですよ。この専門学校において学資の補給を受けた者がこういう学校になったときに返さぬでもいいという規定なのですから、これは先生になることを予定したものです。これは他の関係からいいますと、思いつきの法案だからこういう矛盾が出る。われわれはこういうことを調べないからすっといってしまう。いってしまうのであるけれども、ほんとうはわれわれはまじめに考えれば、こういうことはもう少し皆さんも矛盾のないように出していただかないと、あとで変なものになる。それから二十四条、二十五条、この辺はわれわれは特殊土じょう地帯災害防除及び振興臨時措置法なり急傾斜地帯農業振興臨時措置法等にいろいろ諮問機関がある。その諮問機関の中にこの高等専門学校もそこに代表者として入っておる。農業専門学校を最初から作るつもりでこの法案を改正しているのですか。
  295. 犬丸直

    ○犬丸説明員 この関係の改正でございますが、これらの各種の農業関係の、確かに審議会でございますが、委員として、学識経験者として一般の学校教育法に定める大学の教授云々ということでございますが、そこは必ずしも農業関係だけではなしに、各種の学識経験者を集めるような構成になっております。それで高等専門学校学校制度として学校教育法の一条に定める学校としてある以上、しかも高等教育あるいはそれと同じレベルの学校としてこれに入れたわけでございます。なおこの点につきましては関係庁とも相談いたしまして、必要の有無を問い合わせましたところ、やはりそういう関係の者が望ましいということでそれを入れたわけでございます。
  296. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ほかの大学関係については農学部があるから、農学部に相当するものがあるので規定をしているのですから、工業専門学校と限定している場合に、農業関係そのほか海岸砂地地帯農業振興臨時措置法、畑地農業改良促進法から全部してある。この代表者を工業専門学校、ことに工業の専門者を作るのに、農業関係の代表者に入るのはおかしい。そのうち農業高等学校を作るのだ、衣の中からよろいが出てきたような感じがした。そういう用意周到な法改正が一部にあるように思ったので、その点もっと率直にそうならそうとおっしゃったらいいでしょう。
  297. 犬丸直

    ○犬丸説明員 学校制度といたしまして新しく学校教育法の中に入りました、しかも大学に準ずる学校といたしまして入れたわけでございまして、決して他意ございません。  なお、工業専門学校の教授は必ずしも工業専門教員だけではございません。一般教育の先生もおられます。いろいろな社会的な見地からいろいろな先生が学識経験者として入ってくるのは御承知の通りであります。
  298. 山中吾郎

    山中(吾)委員 良心的にこれを各関係審議をしていくためには朝までかかるが、あとでよく整理をすることを私は要望しておきます。ただ審議の中に、こういう思いつきでこの法案が出ているために、関係法令その他においてやはりまだ粗雑なものがたくさんあるし、それから六・三・三・四というものに旧制工業高等学校を想定をしてこういうものを持ってきたから木に竹を継ぐような制度になっていると思うのです。先ほど言ったように、旧制の中学校卒業して三カ年の技術者教育というところに大学と違った日本産業界に適した昔の専門学校卒業生があった。それと同じだと考えているととんでもない間違いであります。新制中学を卒業してから五年をやって、そして技能者的になるのですね。決してこれは応用の能力は出ない。そういう点からいっても、私は学校制度関係、文教政策といたしましてもまことにまずいと思うのです。この点について政府学校制度全体に直接関係のあるものは思いつきでこういう法案を出すべきではない。ときどきの思いつきによってこういうふうな自主性のない法案を出すべきではないと思うのです。池田長官から勧告を受ける、そういうふうな姿の中に私はこういう法案も出てくるのではないかと思うのです。この点については私はどうしてもこの法案賛成できない。その意味において私はどこからいっても疑問が多いのでありますけれども、私は一応これで質問は打ち切りたいと思います。  なお、委員長に私は理事会を開くことを要望いたしたいと思います。
  299. 濱野清吾

    濱野委員長 会議はこのままの姿で、理事の各位の御参集を願います。  速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  300. 濱野清吾

    濱野委員長 速記を始めて下さい。  お諮りいたします。ただいま、なお質疑の通告が、ございますけれども、これについて両案に対する質疑を終局いたしたいと存じます。質疑を終局するに御賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  301. 濱野清吾

    濱野委員長 起立多数。よって両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  302. 濱野清吾

    濱野委員長 これより両案を一括して討論に付します。討論の通告がありますのでこれを許します。村山君。
  303. 村山喜一

    ○村山委員 政府昭和一三十七年度より高等専門学校を発足させるために今回国会学校教育法の一部を改正する法律案提出しておりますが、私は日本社会党を代表いたしまして絶対反対の態度を表明いたしたいと思います。  その第一点は、政府は本法案提出理由といたしまして、工業に関する中堅技術者を養成し、もって産業の発展に寄与するために深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする高等専門学校制度を設ける必要を指摘しておりますが、現在の高度化いたしました科学の進歩に適応するためには、中堅技術者といえども基礎的な科学的知識とそれに見合うべきところの人格の養成を必要とすることは言うまでもございません。従って今後中堅技術者の養成に当たるべき教育機関は、当然専門の学芸についての研究、教育体制を保障するものでなければならないわけであります。しかるに本法案によりますると、高等専門学校については、現在の大学におけるがごとき専門の学芸に関する研究につきましてはこれを考慮しておりませず、提出理由に見られるごとくに目的を掲げているだけでございます。しかも高等専門学校は、一応大学に準じたところの教職員の構成をもって、現在の大学と同様に、国立だけでなくて公立、私立もすべて文部大臣の所管としておるのでございますが、制度といたしましては完全に大学のワク外に置かれているわけであります。教育公務員特例法に見られますような大学自治の保障は一顧だにされていないのであります。このことは、高等専門学校学科に関する必要な事項は監督庁による一方的な決定と相待ちまして、高等専門学校の人事、運営、教育内容に対する中央集権的な統制を危惧させられる点が十分であると言わなければなりません。このような制度のもとで、中学校卒業後五カ年間の修業年限の中で職業に必要な能力を育成するとするならば、勢い人格の訓練に最も必要な一般教育軽視が避けられないのみならず、専門的職業教育自体が当座の産業界の要求に応ずる近視眼的な職人養成教育となって、その卒業生が将来において真に国民の福祉に寄与し得るような産業界の中堅的人材になることは期待ができないと言わなければなりません。  第二に、大臣の答弁によりますれば、思想的には、三たび廃案になりました専科大学法案の再現であり、理論的には、工業に限らないで短大を将来は職業科についてはすべて切りかえるものがあるわけであります。さらに現在の短期大学を切りかえ得るものであるということも言明をいたしているのでございますが、これは明らかに大学からの格下げにほかならないわけでありまして、他の公、私立短大の将来に対しまして重大な影響を与え、短大がその土台を大きくゆさぶられることは明らかであります。  第三に、高等学校教育課程の改悪によりまして、コース制を強化し、普通高校職業高校との教育内容の格差をつけ、内容面から教育の袋小路を作っておるのでありますが、それ以上に、制度的にも内容的にもひどい高専法案を提案をして参りましたけれども、これは現代が必要といたします科学技術者大学におけるところの養成を忘れ、当面の独占資本の要求に屈したものであり、教育企業の要求する階層分化のための手段として利用しようとするものであると言わなければなりません。  第四に、文部省が目的を達し得なかった専科大学法案と同様のねらいを持ちながら、今回あえて大学のワク外において高等専門学校を強行設置しょうとして苦肉の策をとっておりますが、簡単な要綱案を提示されただけで了承をいたしました中央教育審議会の態度は不可解であり、しかも大学制度に関する全般的な諮問に対しましては、いまだに結論が一年四カ月にわたっても出されていない中において、大学制度全体に対する答申案が出されないにもかかわらず、産業界要請に一部応ずる措置をとろうとする緊急性があるとは考えられないのであります。質疑を通じて明らかにされましたように、十分な対策がなされておらず、教育制度複線型を充実して旧制度高専コースヘの方向を次第に拡充していくところの教育の逆コースの方向であると言わなければなりません。  第五に、六・三・三・四の教育体系は、旧師範学校、旧高等専門学校、旧大学教育体系のもとの差別をなくして、国民教育の機会均等を保障し、一般教養を高め、職業専門教育偏重をなくする上において効果を上げて参りました。複線型の教育体系が望ましいとしてその種の学校を増設することをもって教育の機会均等をなすという詭弁を大臣は弄しておりますが、教育基本法の機会均等とは、能力に応じて教育を受ける機会がすべての青少年に与えられるということであって、複線型の教育の袋小路を作ることではないのであります。旧教育体系に引き戻すことはわれわれは絶対に認めるわけには参らない点であります。  最後に、日本学術会議の総会で決定を見ましたように、科学技術の振興は、単に自然科学のみならず人文社会科学についての全面的な発展を必要とする技術革新の時代であります。従来の技能本位の技術教育では今日の時代に即し得ず、社会科学的な批判力を持った一般教養を身につけなければ、真にすぐれた科学技術者とは言えないのが現代の要求であるにもかかわらず、高等学校教育課程の改悪、工業教員養成制度の内容、さらに免許法の改悪、本法案の内容等に一貫して現われておりますものは、時代に逆行するものであり、民主教育を無視するところのエリート教育を本質とする教育思想に終わっておると言わなければなりません。  私は以上の点から社会党の絶対反対の態度を重ねて表明をいたしまして、討論を終わりたいと思います。(拍手)
  304. 濱野清吾

    濱野委員長 竹下登君。
  305. 竹下登

    ○竹下委員 私は自由民主党を代表して両案について賛成の意を表わすものであります。  今や洋の東西を問わず、文明の異常なる発達は、科学技術そのものの占める地位をますます大なるものといたしておることは、論を待たないところであります。わが国においても、その産業経済の著しい発展に伴い、科学技術者需要は著しく増大し、なかんずく工業に関する中堅技術者の不足が痛感される今日、これに対処するため新たに高等専門学校制度を設け、社会が強く求めている有為な中堅工業技術者の養成をはかることは、真に緊要であり、私をして言わしむればむしろおそきに失した感すらいたすのであります。  次に、現行の六・三・三・四の学校体系を充実するとともに、ここに新たに六・三・五の学校体系を設けることにより、本人の資質、環境に合致した教育を受けしめ、技術を修得させ、適当な職業につき得る機会をできるだけ保障することこそ、真に国民に対して教育の機会を拡大することになることを特に強調いたしたいのであります。(拍手)御承知のごとく諸外国の例を見ても、教育制度がわが国の戦後の六・三制ほど単一化されているところは、主要文明国にも例を見ないところでありまして、英、仏、独、ソ連等のヨーロッパ諸国はみなはっきりした複線型の学校制度をとっており、わが国の六・三制と同じ系統ともいえるアメリカ学校制度すら、わが国の学校制度ほど画一的ではないのであります。これを思うに、学校教育は、技術革新と経済進展に伴う社会の発展に即応し、未来の世界的進運に対処するものであることを物語るものであります。しかるにただ抽象的に、また観念的に、六・三制を固守するのあまり、他の一切の学校制度を認めないとするがごとき議論は、社会の強い要望に背を向け、国民要望を、いな世界的趨勢に眼をつむった単なる反対のための反対と断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  さらに高等専門学校は、中学校卒業後五年間の一貫教育を施すことにより、基礎教育、専門教育を充実させるはもとより、さらに一貫した効率的な一般教育を行ない、教育本来の目的たる人間形成に遺憾なきを期しておることは重要な点でございますが、さらに充実した五年間という学校生活を通し、まとまった期間に互いに教師と学生が、また学生同士が親密となり、切瑳琢磨の機会を得、りっぱな校風を作り上げていくことを思うとき、人間形成の上からさらに大いなる期待をかけ得るものと信じて疑いない次第であります。(拍手)また希望により大学への編入学のできる道も開かれていること等は質疑の間において明瞭にせられたところでありまして、かかることを思い合わせるときに、この新制度は全く時宜に適するものと考えるものであります。  最後に、私はこの新制度のもと、真に技術革新のにない手として青年学徒の諸君が希望に燃え、また新しい校風の創始者としての誇りを持ちながら学業にいそしむ姿を連想し、またかくあることを確信しつつ、賛成の討論を終わるものであります。(拍手)
  306. 濱野清吾

    濱野委員長 鈴木義男君。
  307. 鈴木義男

    ○鈴木(義)委員 私は民主社会党を代表して両法案に対して反対意見を表明いたします。(拍手)  本法案は、今日現存する工業同等学校や短期大学やあるいは四年制の大学のほかに、中学校卒業後入学する五年制のいわゆる高等専門という学校を設置しようというのであります。けだし学校制度に対する根本的画期的な変更というべきであります。六・三・三というくらいまでを堅持して、その上に特殊な新分野の専門を履修する学校を置くということであるならば、しかく根本的変革とは思わないのでありますが、六・三という義務的な、初歩的な教育課程の上に手っとり早く実際的な軽便な技術を主とする教育の施設を置こうというのでありますから、大いに考えさせられる点があるのであります。  第一に、教育にとって手っとり早く役に立つということは禁物であります。教育の理想はすぐには役に立たないが、しかし長い生涯を通して日進月歩の科学と技術と機械等の進歩についていける能力を養うにあることは申すまでもないのであります。単に特殊の技術あるいは技巧といった方がいいかもしれませんが、特殊の技術だけを身につけるというならば、昔の徒弟制度のように、学校というようなところへは全然いかずに、職人として親方のもとで幼少のときから訓練されればよいのであります。封建時代でもりっぱな職人はこの方法でできたのであります。明治以後、機械が農業工業方面に導入されてからも、それが比較的簡単なものであった間は、尋常小学校というごく初歩の義務教育を終わっただけでもどうやらやれたのであります。農、工、商に従事する者は久しく尋常小学校、せいぜい高等小学校をやれば十分で、中学にいくことはぜいたくとされたものであります。ところが昭和以後科学と技術の進歩は長足でありまして、とうてい小学校教育ではこれについていけなくなったのであります。単に年功と熟練だけではいかんともしがたいのでありまして、旧制の中学、新制の高等学校以上の知能を必要とするに至って、かつて優秀であった職工が職場から続々脱落する傾向が顕著になって参ったのであります。実に悲痛な気持を持って中年の失業者になる者が少なくないのであります。これは学問や教育軽視したむくいでありまして、先の見えなかった当時の文政当局、政治家の責任であります。  今日の短大や大学制度がこの点で万全であるかというと、決してそうではありません。しかしともかくも六・三の義務教育の上にさらに三年というより高い一般普通教育を経ているところに、あらゆる場合に対処することができる能力を持っているという点に大きな強みがあるのであります。どんな職業でも短大の二年や新制大学の四年だけでものになるようなものはないのであります。大学では専門の職業のひな形を学ぶだけであります。卒業後実務について何年か修練しなければ、とうてい一人前の職業人にはなれないことは公知の事実であります。その点では最初は見よう見まねの小学、中学出の職人上がりや小僧上がりにはかなわないものであります。ただ教育をよけい受けた者は、理解力や工夫力が豊かでありまして、いろいろの進歩、発達、変化に対応して、早くこれを理解し、それに適応していく能力が豊かでありますから、出発点において劣っていても、間もなく追いつき、さらに追い越して、有能な職業人になるわけであります。生産と文化の向上は、こういう人の多いか少ないかにかかっていることは、低開発国と比較してみれば、すぐわかることであります。  ところで、ここに提案されているような予備教育は、六・三だけで、これは昔の高等小学校卒にプラス一年だけであります。この六・三だけでいきなり工業という専門の職業教育に持っていこうとするものでありまして、昔の中学を出た者が一応役に立ったと同じ意味では、間に合うところの中級技術者、少し気のきいた職工、技手にはなるでありましょうが、この寿命がどのくらいであるかは大いに疑問なきを得ないのであります。手っとり早く役に立つということは、企業家にとって、最初のうちは魅力でありましょうが、本人にとり国家としては、間もなく時代に取り残される人を作ることでありまして、国策としてとらざるところであります。  昔、高等工業とか、高等農林とかいう高等専門の学校がありましたが、これは確かに高等専門と言って差しつかえない。今度の高等専門大学とはだいぶ違う。これが今回の提案と異なるところは、六・一または六・二をやって、その上に中学五年を終わって入っていく。たとい三年でもみっちりこれらの予備教育の上に専門の課程をやったのでありますから、ずっと役に立つ人間ができたのであります。  今回の制度でいくと、六・三という義務教育を終わっただけで、十四、五才で生涯の職種を選択して、早くも職業教育に入れられてしまうのでありまして、自主的にその選択を誤まらぬということを期待することは、至難であると存ずるのであります。また特定の職業に役に立つ人間を作るというのであれば、今日大学で行なわれているような、電気とか機械とか応用化学とか土木建築とか繊維とかいうような、大まかな分類と職種では、実際の需要に応じられるものではないのでありまして、数十、数百に分類して実習させる必要があるのであります。しかしそれは学校を工場にすることでありまして、言うべくして行なうことはできない。してみれば、教育の目的は、学校で一応完成した職業人を作ることにあるのではなくして、社会に出て、どういう種類の職場に行っても、自分の理解力と工夫力とによって熟練工となり、優秀な職業人となって、無限に成長発展のできる素質、すなわち能力を養うにあるわけであります。不景気な時代には、土木を出たのに機械の製造会社に入っておる学生を知っております。やはりりっぱにやっていっております。ほかに職場がないからといってそういうところに入るのは、その人の能力がものをいうのであります。それには一般的な基礎的な教育が何よりも大切でありまして、極端に申せば、大学までもすべて基礎教育だけをして、世の中に送り出すのがよろしいわけであります。あまりにも早く専門教育に入れ過ぎるというのがわれわれの賛成できないところであります。  むしろ現在の高校三年の上に二年だけ職業教育をするならば、つまり短大の拡充ということになりますが、それも一案であります。また高校の課程を二年にして、その上に三年の職業的、専門的、技術的な教育をするというなら、これも一案でありましょう。純然たる職工級のものの養成ならば、現在の工業高等学校を拡充すればこれまた足りるわけであります。  今回の制度の改正は、どうしても半呑半吐のものでありまして、大局から見てとうてい賛成いたしかねるところであります。実際は今日の大学すら専門教育としてはすこぶる不十分なものでありまして、社会はほんとうに役に立つものとしては大学院の二年ないし三年の教育を要求しておるということを考慮すべきであります。とにかく妙な割り切れない制度が生まれることを遺憾とせざるを得ないものであります。  次に、いろいろ賛成しかねる理由は多々にありますが、この調子でいくとあまり長時間を要しますから、以下個条的に簡単に指摘することにいたします。  その一つは、この制度が発足いたしますと、一年、二年、三年までは他の高等学校と同じであります。少しの学課目の相違はあるかもしれませんが、ほとんど工業同等学校と同じであります。ところで四年生、五年生となると、これは年令的にも科目的にも短期大学と同じであります。わが国民の常として、肩書きとか資格とか特権とかいうものを愛好する傾向がありますから、必ず心理的な不満を生ずる。大学生と同等のことをやっておるじゃないか。待遇においても、資格においても大学生と同じく扱えという要求が出てくるに相違ない。必ず短大卒業者と同じく扱わざるを得ないことになるでありましょう。してみると、短大のほかにこの五年制専門学校を設けることは混乱のもとでありまして、なぜ短大を拡大充実して中級技術者の養成に努めないのであるかと申したいのであります。  それから中学を出るときがちょうど十四、五才、多くとも六才でありますから、このときに前途の方針を自主的にきめさせるということは無理でありまして、必ず先生がきめてやるか、親がきめてやるということに相なるのでありますが、後日自分の選んだ道が自分に適切でなかったということを発見するくらい悲痛なことはないのでありまして、そういう点も十分に考慮する必要があります。なるほど政府の答弁のように、この専門学校卒業後通常の大学に入ることができるというのでありますが、大学に入るために必要とする普通の教養科目をやっておらないのであります。実際は大学に入ることがむずかしいし、入っても十分に能率を上げることができないという欠陥があります。  それから、これは最初わずかだけ建てるというならばどうにか間に合うかもしれませんが、一般の需要に応ずるように高等専門学校を増設するということになりますれば、教職員の不足というものは一体どうして解決されるのであるか。無理にただ間に合わせにそういうものを用いまするならば、実は実際の内容はこれに伴わない。看板に偽りのある学校ができることに相なるのではないか。そしてすでに発表されておる教科内容等を見ますると、やはり専門科目に片寄っておりまして、ただいま申し上げる最も必要な一般教養科目というものが非常に少ないのでありまして、いわゆるごく小さくまとまった技術人を作る、こういうことに相なることをおそれるものであります。  わが国においては、大学の数がずいぶん多いことにおいては、世界的にも誇り得るのであります。短大を入れて五百数十もあるのであります。これを有効に使わずに、さらに高等専門学校という間に合わせの学校を作るということは、おそらくはこの法律ができました後は争って私立の学校では作るように相なるだろうと思うのでありますが、非常に考えなければならぬ問題であると思うのであります。われわれは、現在ある工業高校あるいは理科系の短大及び大学の設備の改善を通じて学生の収容人員を大幅に増加させるということで解決していくべきであると考えるのであります。現在の理科系の教職員の不足は、理科系全般を通じて優秀な人材を確保するために、努めて待遇の改善あるいは研究設備の充実をはからねばならぬと考える。また研究費が実にわずかでありますから、教官の研究費、学生の学費の補助、いろいろな道を通して充実をはかるべきであります。特に短大におきましては、研究の設備拡充また研究室の増加、いろいろ産業界との協力による委託研究の受け入れということによって、連携を強化することが必要であると思うのであります。またわが国は文科偏重であることは否定できないのでありますから、理科系の拡大に努め、理工科系の方が多いくらいにすべきであるが、少なくとも同等の比率くらいまで持っていくべきである、こう考えられます。  さらに教授の質を高めるために、研究設備を充実し、研究費を十分に給する。待遇をよくするという点も、一般の公務員との比率においてなかなかむずかしいことでありますから、研究費を給するということが一つの方法であると思います。  それから、現在ある定時制の高校は、大企業において多く見られるいわゆる養成工の訓練施設などと、関連しておるいろいろな職業の地域社会の協力のもとに、公共化して活用することが必要であると考えるのであります。また中小企業に働く技術者及び労働者の技術水準の向上をはかるために、中小企業技術者、これは各企業が自分でやるわけにはいかないのでありますから、国家が十分にめんどうを見てやるべきではないか。これらの労働者の再教育の施設を整備いたしまして、いわゆる中年の失業者を作ることを防止するように努めなければならぬと存ずるのであります。  それから産業の高度化によって生産性向上方策の推進が必要であります。これがためには、高度の熟練労働者を必要といたしますので、職業訓練の徹底をはかる。諸外国がやっておりますような社会教育、市民大学というような設備を作ることによりまして、過去において相当の教育を受けていなかった人々に対して、その人の知的向上をはかり、社会的、経済的地位の向上と新しい技術革新に対する適応性を得せしめるというようなことをやるべきであると思うものであります。ことに農漁村地域あるいは工業地域等において、農業、商業、工業高等学校を中心とする教育施設をいろいろな形で作るべきでありまして、こういう画一的な高等専門学校というものは、名前だけであって、その内容は、先ほど来申し上げますように、察するに足りると思うのであります。  要するに、こういう教育制度は、朝令暮改は最もよろしくないことでありまして、産業界及び科学そのものの長期的な見通しの上になされるべきものでありまして、どう考えても、私はこの五年制高等専門学校なるものは、いわゆる間に合わせ的な、手取早くという、教育の根本趣旨に反する新しい制度であり、従来の制度を全体として変える場合に考えるなら別問題でありますが、突如として六・三・三・四制の外へこの制度を設けることにつきましては、学校制度を破壊するものとして反対の意思を表明せざるを得ないのであります。  以上をもって私の反対意見といたしたいと思います。(拍手)
  308. 濱野清吾

    濱野委員長 これにて両案に対する討論は終局いたしました。  これより両案を一括して採決いたします。両案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。    〔賛成者起立〕
  309. 濱野清吾

    濱野委員長 起立多数。よって、両案は原案の通り可決するに決しました。(拍手)  ただいまの議決に伴う委員会報告書の作成等につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  310. 濱野清吾

    濱野委員長 御異なしと認めます。よってさよう決しました。  本日はこの程度にとどめ、次会は明十七日午前十時理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、これにて散会いたします。午後十時四十三分散会      ————◇—————