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1961-05-12 第38回国会 衆議院 文教委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月十二日(金曜日)    午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 臼井 莊一君 理事 坂田 道太君    理事 竹下 登君  理事 中村庸一郎君    理事 米田 吉盛君 理事 小林 信一君    理事 高津 正道君 理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    上村千一郎君       大村 清一君    田川 誠一君       高橋 英吉君    灘尾 弘吉君       花村 四郎君    松永  東君       松山千惠子君    八木 徹雄君       野原  覺君    三木 喜夫君       村山 喜一君    鈴木 義男君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部政務次官  纐纈 彌三君         文部事務官         (大臣官房長) 天城  勲君  委員外出席者         文部事務次官  緒方 信一君         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     木田  宏君         文部事務官         (大学学術局技         術教育課長)  犬丸  直君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 五月十一日  委員井伊誠一辞任につき、その補欠として和  田博雄君が議長指名委員に選任された。 同月十二日  委員和田博雄辞任につき、その補欠として井  伊誠一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月二十八日  日本育英会法の一部を改正する法律案内閣提  出第一六四号)(参議院送付)  高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一  部を改正する法律案矢嶋三義君外六名提出、  参法第一八号(予) は本委長会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七四号)  学校教育法の一部を改正する法律施行に伴う  関係法律整理に関する法律案内閣提出第一  七五号)      ————◇—————
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  学校教育法の一部を改正する法律案内閣提出第一七四号)及び学校教育法の一部を改正する法律施行に伴う関係法律整理に関する法律案内閣提出第一七五号)を一括議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますのでこれを許します。鈴木義男君。
  3. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 私はときどき欠席をいたしておりますので、あるいはすでに質問されておることが多いかもしれませんが、なるべく重複を避けたいと思いますので、重複をいたしましたところは、御答弁において調整されることを希望するものであります。  学校制度はなるべく始終変改しない方がよろしいということは当然であります。日進月歩は教科内容において調整をすればよろしいのであります。工業が景気がよくなったから工業教育学校を作る、農業近代化機械化促進のために、あるいは米麦の耕作から酪農、果樹農栽培に移るから、そういう農業学校を作るというようなことでは、始終学校種類を変えなければならない。学校は、専門学校にせよ、専門高等学校にせよ、大学にせよ、そこで完全に教育し終わることができるものではないのであります。そこでは基本能力を養うだけでありまして、すべては卒業後にやることであります。われわれの文科系学問でも、学士と称する課程をやってきても何の役にも立たない。実際に役に立つのは、二、三年実務について勉強し直していく結果、やや役に立つことになると思うであります。ですから学校において学問完成を求めるということは間違った考えであります。現行の六・三・三・四の制度がよい制度であるとはわれわれは思っておらないのであります。これは根本的に改正する必要があると考えておるでありますが、しかし、そのことに触れずに、ただこうやくばり的に一つ別個制度をここに挿入するというのはどういうものかと存ずるのであります。そういう意味において、工業を主とする五年制の高等学校というものを設けられるように見受けるのでありますが、そういう教育のあり方について文部大臣に一応御所見を承っておきたいのであります。
  4. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 お説の通り教育制度体系と申しましょうか、学校制度基本線が朝令暮改的であってはならないという原則は私も同感でございます。しかし、すでに御指摘がありましたように、六・三・三・四の制度それ自体は一応けっこうなものと思うわけでございますが、しかし、何せよ終戦直後に新しい教育制度として発足しましたことのために、日本固有の諸条件との関係において今後も引き続いてあれでいいかどうかということは、一般に少なくとも研究課題であると指摘されたところと思います。そういう意味合いで、中央教育審議会に一昨年来諮問されまして慎重に審議されつつあることも、御案内の通りでございます。建前としてけっこうであるにしましても、具体的に日本に適用する意味での再検討という角度から検討されておることと思いますが、それはそれといたしまして、中教審の意向としましても、やはり教育機会均等と申す角度からいいまして、大学程度教育課程考えるにしましても、専科大学という考え方で一本別のコースを考えたらどうだという答申がなされておると承知いたしております。そういう線から単科大学制度の法案が国会に提案されたと承知しておりますが、いろいろな都合によりまして審議決定に至らないままで最近に参りました。その決定されなかった理由等も、考えてみますともっともな点もございます。と申しますのは、六・三・三・四の基本線プラス短期大学ということで大学教育は行なわれておるわけでございますが、今までの考え方専科大学短期大学を移行させるという前提のもとであったように承知しておりますが、一面短期大学それ自体も、実施以来の実績に顧みますれば、それぞれの特色を持つ一つ制度として今後にわたっても継続されていくべき本質を持っておる。にもかかわらず、それを専科大学に移行せしめるという前提に立った考え方は適切でないという考え方になりまして、御審議を願っております高等専門学校制度を新たに作ったらよかろうということに相なったわけでございます。これにつきましても中教審には一応御相談を申し上げまして、答申をしていただいた線に沿って提案いたしたつもりでございます。  前に返りまして繰り返し申し上げれば、御指摘のように学校制度体系というものが朝令暮改であってはむろんいけないことは、方々われわれも承知いたしております。しかし、同時に学生生徒の側に立って考えれば、いろいろと家庭の事情、本人能力希望等が千差万別だと思います。ある者は不幸にして義務教育だけで社会人たらざるを得ない。またある者は高等学校程度社会人たらざるを得ない。四年制の大学に進む能力条件とを備えた人もおると同時に、短期大学程度で満足せざるを得ないという人もおる。さらに特に専門的な教育課程を通じて社会人たらんとする意図を持った人もたくさんおるわけでございまして、そのことを対象にいたして高等学校短期大学を結びつけたような、しかもそれは五年間一貫した教育を授けることによって、その向き向きの特色能力充実し発揮する、その姿で社会人となるということが、その学生生徒のためにも幸福であることも当然予想されるわけでございます。それは反面、経済の発展あるいは科学技術革新伸展等に相応じまして、学窓を巣立った者の社会人たるべき場が進歩、発展変化を遂げつつある、しかもその変化は急激であり広範にわたっておる。そういうことを対象として考えます場合に、社会需要というものに応じ得る制度を、しかもそれは当面一時的のものでなくして、私から申し上げるまでもなく御承知の通り、最近科学技術の新しい分野が急速に展開されまして、それが日常生活に密着する姿になって、その面からの人材の需要が熾烈なものがございます。これは世界的な傾向であり、日本もその例外ではない。これは将来発展的な姿を期待する限りにおいては、当然永続していくべき方向であろうと思うのであります。その社会的、経済的な方向に対処する能力を、この高等専門学校を通じて学生生徒に与えることは、教育の責任の立場において必然的に考えねばならない事柄であり、しかもそれは一時的なものでなく教育学校体系としてもう一本考えてしかるべき課題である、かような問題の取り上げ方に立脚いたしまして御提案申し上げ、御審議を願っておるつもりでございます。
  5. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 そうすると念のため重ねて伺いますが、今度のこの制度は従来の六・三・三制の外にある別個制度である、こう考えてよろしいわけですね。
  6. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御指摘通り制度だと考えております。
  7. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 そうすると、この四年制ないし五年制というのは、現在ある大学の一年、二年制と年令的に同じくなるわけであります。しかしいわゆる専門学校学生別個社会的取り扱いを受ける。これはかなり心理的に影響のあるものでありまして、われわれの学生時代にも、やはり中学を出たときに専門学校へ行くのと、それから高等学校に行って大学に行くと予定された者と分かれたわけであります。その間には、非常に心理的な葛藤があったわけであります。そういう点において、非常にまずいものができると思うのであります。むしろそこに短大というものがあるのでありますから、どうしてその短大を活用するわけにいかないのか、また高等学校の中にも高等工業学校——ほかの農業、商業その他は言う必要がありませんから申しませんが、そういうものとの関連において、もう少し考える余地があるのではないか、お尋ねをいたします。
  8. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 短大の場合は、短大に入ります前に高等学校卒業するわけでございますが、高等学校卒業それ自体完成された教育の形となって終わるわけであります。高等専門学校の場合は、現在の高等学校の一年に入りますときから始まって、それにプラス二年を通じまして五年間、一貫した専門教育中心に授けていこうというところにねらいの特色がございまして、短大とは別個目的を果たし得る、またそこに学ぶ人々の特性に応じた教育ができるという意味で先ほど申し上げましたような別個系統として取り上げたような次第でございます。  短大は、高等学校卒業して四年制の大学に入りたいと思った人で短大に行く人もございましょうが、短大目的とするところに自分考えを合わせまして、高等学校高等学校で終わったが、さらにもう二年なり三年なりの短大課程を終えることによって社会人たらんとする人々のための門戸であるということで、少なくとも学生生徒側から見て、教育機会がより多く与えられる角度から見ました場合に、これが別個制度としての存在価値が十分にあるものと存ずるのであります。これを卒業した者が社会的にいかなる待遇を受けるか、あるいはこれに入るときの心理状態がどうかということは、御指摘のような意味合いもあろうかとは思いまするが、要は五年制の高等専門学校を通じて身につけました人間的な内容なり、あるいは専門科目についての能力なりというものを社会が評価して受け入れるということに帰するとは思いまするけれども、少なくと本専門に関しまする限りは短大とは違った、内容充実した一貫教育を受けたるがゆえの社会的な価値判断が新たに生まれてくるものというふうに考えておる次第でございます。
  9. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 たとえば今度できる新制学校に入るとすると、中学卒業のときに決しなければならぬわけです。今日の中学卒業生は昔の中学卒業生とは年令的にもだいぶ違いまして、小学校を終えてその先三年やるだけで、このころの二年の差というものは、昔の中学五年を終えた者は、自己の進むべき道について相当自主的に決定する能力があったと思う。今日の中学を終えた者が、お前はこれからどういう方面で生きていくか、自主的に決定をする能力が十分にあるとはちょっと思われない。そうすると親や先生やその他の指道者がきめてくれるという形でこういう高等専門学校を選ぶということになると思うのであります。しかもそれが全生涯を支配する問題だ。教育の上から申しまして本人が後日、自分が自主的に選んだなら別な方を選びたかったというふうに考えることは非常に気の毒なことだと思う。そういう憂いがないか。そういう点については当局としてはどういうふうにお考えですか。
  10. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいま御指摘の点は、ある程度私も同感の意を表するにやぶさかでございません。しかしながら、一方考えますと、現在でも中学を出て農業筒校に進むか、あるいは工業高校に進むか、一般大学系統を志して普通の高等学校に進むかということの判断につきましては、同じ立場に立たせられると思うのであります。それよりも五年間を通じた教育が待ちかまえておる。五年間内分の意思決定が制約されるという意味においては、程度の差において御指摘の点を私も憂えるものではございますけれども、その差はそう大きくはなかろう、もしその懸念ありとするならば、そうでない場合よりも、中学における先生方生徒に対する将来の方途を選ぶについての助言が幅広く行なわれなければならぬということは当然出てくると思いますが、そういう意味では中学先生方にごめんどうを願って、本人適性能力に応じて方向を誤らないように、また親たちにいたしましても、こういう学校を選定するときに、今まで以上の見通しを持って、自分の子供の適性能力等も冷静に考え本人意思決定の援助をしてもらうという面は付加されるとは思いますけれども、そのことは実際問題として可能なことであり、また特にそういう考慮を払ってもらうことによって、漫然と高等学校卒業して、大学を選ぶときに本人意思が尊重されるよりも、より悪くなって、本人にとって不幸が待ちかまえるというほどのことではなかろう、十分な親切気を持って考えます限りは、誤りなきを得るのではなかろうかと期待している次第であります。
  11. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 あるいは今度の新制専門学校卒業した後に、本人が向学心が強ければ四年制の大学に入る道もあるのだ、こういう弁解をされるかもしれないと思う。事実そういう説明を聞いたことがあるのです。しかし、それは制度の上でできるというだけのことで、実際にこういう学校を山た者が現在の大学の三年、四年に入るということは——まあ不可能ではない。それは試験を受けて及第すれば入れますけれども、実際は大学において教えておる学術あるいは技術、そういうものを修得するには基礎となる一般教養が足りない。大学とその他の学校との差は、一般教養が十分であるかいなかということにかかっておるのでありまして、実際はやれない。それで今日でもそういう人で普通の大学の三年に編入を希望して別な学校を受けたときに、入ってはくるが、卒業ということになって一般教養が足りないということで学士号をもらうことができないという学生が相当おるのであります。それと同じような意味において、現在の大学制度につながるということは、言うだけであって実際は効能がない、こういうふうに考えておるのであります。その点についてはいかがお考えでありますか。
  12. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 高等専門学校が五年きりで完成をして、四年制大学とのつながりが全然ない、いわゆる袋小路の制度であるということでありますれば、学生生徒本人の、これこそ教育機会均等の権利とでもいうべき立場を無理、に押えるということになるわけでございます。そこですでに御指摘通り、四年制大学に編入する道もあわせ開いておくべきであるという考慮はいたしております。しかし、普通の高等学校卒業して自由に選ぶ場合と、教育課程内容が違うから不便不自由があるのじゃないかという御指摘でございますが、この点も一応考えあわせたつもりでございますが、具体的に教育課程につきまして御理解のいくような御説明がちょっと私にできかねますので、その点は政府委員から御説閲することをお許しいただきたいと思います。
  13. 天城勲

    天城政府委員 今度の高等専門学校教育課程の問題につきましては、その学校教育目的自身からいきましても、かなり充実した案を現在検討いたしております。特に今後の社会の目まぐるしい発展を予想いたしますと、あまり目の前のすぐ役に立つ教育ということだけに引かれていくということは十分でございませんので、この高等専門学校におきましても、やはり基礎的な科目にかなり重点を置いて考えていこうと思っております。もちろん、それには技術系のことを中心考えますので、自然科学系、特に数学また外国語につきましては時間も相当とって、基礎を固めるつもりでおりますし、人文社会系一般教養科目につきましても、現在の高等学校短大を通ってきた程度のことは十分やれるだけのものを組み込もう、こう考えております。従いまして、制度といたしましては一応独立の学校制度でございますから、当然大学に結びつくという形にはなっておりませんけれども、本人希望によって、さらに大学に進学したい場合には、学校制度が違うわけではございますけれども、基礎的にはかなりの力を持った教育ができると考えております。
  14. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 その御答弁は私は満足がいくと思っておりません、が、押し問答をしても仕方がありませんから一応先へ進めますが、こういう学校の設立によって、 理工科系教員がさなきだに不足しておるのですが、これによって一そう深刻化するのじゃないかと思いますが、この見通し及び対策等について、お考えはさまっておるのであるかどうかお聞きしたい。
  15. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 一般教員組織充実は、特に理工系におきまして非常に困難をしておることは御推察の通りでございます。四年制大学であれ、短大であれ、またこの高等専門学校にいたしましても、その悩みは同じ立場に置かれるわけでございます。そこでこの高等専門学校だけに限らず、大学を初め高等専門学校に至りますまで、さらには工業高校教員の獲得ということにも一般的な対策が必要であるわけでございますが、工業高校につきましては、別途御審議願いました制度によって、まがりなりにも充足できるであろうと期待いたしております。この高等専門学校教員組織は、四年制ないしは短大教員組織とほぼ同程度のものを要請されるわけでございますから、大学院課程を履修したものを期待せざるを得ないわけでございます。ところが、この大学院入学志望者も年々むしろ減少の傾向にあるということが、一般問題として非常に憂えられるわけでございます。これに対しましては、大学教授それ自体給与改善の問題もありますと同時に、この高専の教員に対する給与の問題も、むろん同様の角度から、今後にわたって充実する努力をすることによって、民間にスカウトされる率を少なくするという一般的課題があろうと思います。それはそれなりに年々の努力によって積み重ねていくべきものと心得ております。その一応の第一段階は、御審議決定を願いました人事院の勧告によってある程度満たされておりますが、これだけではむろん足りませんから、今後の努力に待ちたいと思います。大学院に入ります者に対しまして研究費研究手当を出す、さらには奨学育英制度の上から、今まで以上に金額をふやしまして、大学院に学年を誘致するという考え方で、すでに御決定願いました三十六年度予算に何がしかの予算を計上いたしておるわけであります。そういう教授グループ教員組織充実のための方法としては、今申し上げるようなやり方以外には当面ないのでございまして、今後の努力にも待たざるを得ない点、があり、十分じゃございませんけれども、極力今申したような線を推し進めることによって、教員組織充実に遺憾なきを期したい、かように思っているわけであります。
  16. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 この問題は相半深刻な問題で、教員不足の問題は今無理に充員すればなくなりますけれども、それは形を整えただけで、適任者であるかどうか疑問であるという学校が多くなるように思うのであります。むろん待遇その他を改善しなければなりませんけれども、それは理工科教授だけの待遇をよくするわけにいかない。そこで大学を出て長い問民間のそれぞれの専門工業生産に実際従事している技術者で優秀な人を、講師というような形で活用したらどうかと思うが、なかなか講師にも採用しない。むろん特定の会社とか企業から連れてくるということは、情実を生ずる、その企業に利益を与えることになるとか、いろいろなことを申して結局遠慮するわけでありますが、何か一定の基準を設けてそういう弊実をなからしめるとともに、一つ会社だけをずっと続けてやることは会社にとっても迷惑でありますから、かわる、がわる二、三年ずつ手伝わせるというようなことによって、実は専任の教授などよりは有能で、ほんとう指導のできる教員を獲得できると思うのであります。これは私の一つの試案として申し上げておきますので、それについて当局のお答えを聞こうとは思いません。  とにかくすでに高等専門学校教科内容というものを新聞に発表されまして、拝見いたしましたが、いかにも専門科目に片寄っておる。私は学校教育上最も尊重されなければならぬものは、どういう種類の職業の学校にせよ、基本となる一般教養である、こう思うのであります。それができておれは、卒業した後に十分活用し、自分技術をみがいて、そしてあらゆる面で役に立つ人間ができる。その土台の方ができていなければ、いかに機械を動かすことだけを早くから教えても、それは一つ職工にはなるかもしれません。が、それ以上のものになるということはちょっとむずかしいのじゃないか。むろん中学を出てすぐに入る工業高等学校というものがありまして、そこを出れば一通りの優秀なる職工あるいは技手というようなものになり得るわけです。これはどういうものをねらっておるか存じません。が、大学を出た者は技師というものになるとしますれば、これを出た人はその中間を行く、下士官みたいなものを養成するという趣旨じゃないかと思います。そこまで持っていくくらいならば、やはりもっと一般的教養に力を入れて、短大でもよろしいから、そこを出た軒を工業の方に回す、工業系統短大をふやすということの方が実際に即するのじゃないか、かように思うのであります。私今から四十年ほど前に留学しておるとき、ギリシャの遺跡を見たいと思って、イタリアから船を艤してギリシャのアゼンスに向かったのです。そのときに船の中に二日ほどおりまして一緒になったのがドイツ高等工業学校を出た技師であります。これからギリシャ鉱山自分指導のためにいく。そこに数年おって働くつもりである。ところが私はそういうことはちっともちんぷんかんでわからぬから、私と話したことは政治のことであり、外交のことである。ところがプラトンを語りあるいはアリストテレスを語り、とにかく博識なのに驚いた。それが鉱山技師であり、ドイツ技術高等学校卒業した人であります。そういっても大学と同じことですが、私はやっぱりああいうふうだから、ほんとうに異国に行っても、心に楽しみを持って働いていくことができるとともに、その人のやることが足が地についているのだ。この、ころでは日本技術出身方々もだいぶそういう人がふえましたが、とにかく一般的な教養というものが十分にあって、その上に専門的な教養並びに技術を身につけておるということは非常にとうといことであります。どうもそういう点についてこういう制度は中途半端で、結局は、もし即日役に立つ優秀な技手を養成するというなら、工業高等学校で必要にして十分じゃないか。それを一つ拡大し、増加すればよろしい。もし技師として大いに技術革新についていくだけの人を養成しようというならば、せっかくある大学をもっと充実させて、それに充てればよろしいはずであって、すでに短大を含めて五百数十の大学があるといわれるわが国に、いま一つ別個のこういう高等専門学校というものを設けなければならないということは、法律の上で制度として設ければ、必ずこういうものを、公立としては幾らも作らないかもしれないが、私立の方ではどんどん作って、結局はまた別の種類の、この種の学校を許すことになり、そして従来の短大を圧迫する。これは教育制度教育行政の上から容易ならぬ混乱を引き起こすのではないかということを私はおそれるものであります。そういう点について御所見を承りたい。
  17. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 初めにお話になりました教員組織充実の一端として、民間企業に現に働いておる人を講師というようなことで応援させるということを考えたらどうだという私案ということでお話になりましたが、私どもの方でも、そういう方法は必然あわせ考えてやるのでなければ現実問題としてやれないであろうという考慮はいたしておるわけでございます。当面の民間企業の事業欲にまかせて、高給を与えて、スカウトするようた格好で取りはしましたものの、後続部隊の養成ができないことを最近痛感し始めまして、何とかそういう面でも協力しないことには、一時的にはいいの、だが、長い目ではだめであるという気分も産業界には発生しておるように承知いたします。そうでございませんでも、御説のような考え方をやるべきでありますが、そういうふうな風潮がありますことは、そのことを実行しやすくする要素でもあろうかと思って、ある程度期待をつないでおるような次第でございます。  さらに、この高等専門学校が中途半端なことになるのじゃないかという御指摘でございますが、見方によればそう言えないでもないと思います。しかし現実の必要というか、あるいは学生生徒能力なり特性なりというものが、この高等専門学校を通じて育成され、社会人となることを期待し、かつその教育によってその人の能力を百パーセント伸ばし得る道でもあろうかと私どもは期待しておるわけでございます。御指摘のような四年制大学程度のものを履修したいという人はその方を選ぶ、またそうでない高等専門学校を選ばんとする者はこれを選ぶということで、それぞれの特色を発揮するようにすることもまた教育一つ目的であろうと存じまして、新たなる制度として御提案申し上げているような次第でございます。一般教養科目が必然的に他の大学に比べますれば足りない点があることは、御指摘通りになら、ざるを得ないと思うわけでございますが、しかしこれも運用の仕方によりましては、実質的にその欠陥を最小限度にとどめ得ることも不可能ではなかろうと思いまして、当該学校の運営上特に考慮をいたして参りたい、かように存じておる次第でございます。
  18. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 そういう点について私ども心配するとともに、どうも行政当局としてもあまり確信のあるような、自信のあるようなお答えでないということを遺憾に存じます。これは一つ真剣に考えていただきたいと思うのであります。ことに今の大学あるいは諸種の学校に配分される予算等を見ますると、いずれもスズメの涙式のものでありまして、とうてい一つの営利会社の研究所にも及ばない。個人の待遇が悪いことはもちろんとして、弟子はみなりっぱな月給をもらって豊かにやっておる。先生はいつまでも焼イモをかじりながら研究室に閉じこもっておるというような調子でありまして、これは仕方がないといえばそれまででありますが、日本技術教育の伸展の上にしかく真剣に考えていただかなければならない問題だと思うのであります。研究の設備等も、これはお話にならない貧弱なものばかりであります。現在すでに貧弱なところへ、またこういう学校ができて、これに新しい設備をどれだけ予算の上で提供し得るか、どうも従来の実績にかんがみますると、危惧なきを得ないのであります。どうかそういう点について十分に安心のできるようなお答えが望ましいと思うが、できないのじゃないかと思う。ことに短大を圧迫することは民間でも非常に心配をしておるところであります。短大において工業学校ができるならは、一そう研究設備の充実、研究資金の供給、そういうことを豊かにしませんければ、結局学生ができなくなる。先ほど大学院が利用されないとおっしゃいましたが、今のような制度では、よほどの物好きで道楽な者でもなければ大学院に入るわけにはいかない。必ず二年間おれば修士にだけはするようでありますが、あと三年おれば必ず博士にするかというと、必ずしも卒業論文等が通過するとは限っておらない。でありますから結局物好きにあそこに金持ちのむすこが行っているというだけのことになりまして、もっとほんとうに必要を感じて勉強することができるような国内留学みたいな制度にして、各企業体が学費を出す、あるいは優秀な者に対しては国家が学費を給して、そして大学院程度の勉強をさせるというならば、大学院が活用されると存じます。今のような程度大学院に行くことはほとんど耐えがたい犠牲を負うことになります。  私がある会社にお頼みしてとってもらった優秀な青年が、高等工業学校を出てそこに職工として就職したのでありますが、非常に向学心に燃えておるので、特に会社に頼んで夜間の工科大学に入れてもらったのであります。しかるにそこを優秀な成績で卒業した。会社にとってはもっと深い勉強をしてやってもらいたい。そこで化学の方でありますが、東京工業大学大学院の試験を受けたのであります。なかなかむずかしいのでありますが、首尾よく合格しまして、そして会社で前の普通の大学までは仕事をした上で夜だけ通わせる夜学だったのですが、今度は会社を休ませてそして学費を給して大学院へ行くことを会社は奨励しておる。そういうまれに見る例がありますが、そういうことが行なわれば初めて優秀な青年が大学院という制度ほんとうに活用できるのであります。そうでもなければちょっとむずかしいと思うのであります。ましてやこういう中途半端な学校を出た後は、ただ実務について、そして科学技術革新といいましょうか、非常な変化と進歩であります。従来基礎教養の足りない職工あるいは技手はついていけない。今日中年で失業する者が非常に多いのは、何ともどうも使い道にならぬ。若い者にどんどん押されて、どういうふうに機械を扱っていいかわからない、こういうまことに気の毒な人が多いわけであります。そういう者こそ再教育して、そして技術革新についていけるようにすることが、私は企業の使命であり、国家の任務であると存じます。中小企業などではやはり同じ悩みがありますけれども、とても自分の力で学校に留学させて中年の技術革新におくれた職工教育をやるわけにいかない。これはどうしても国家と企業とが共同してめんどうを見てやるほかはないのでありまして、そういう点にこそ、こういう学校を出たらすぐに入る、少年時代、青年時代の学校としてでなく、世の中に出た後その教育の足りなさを感じておる者を再教育する方途について考えるべきではないか。そういう制度一つ考えになった方がなお実際的である、かように考えるのでありますが、そういう点はいかがでありますか。
  19. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 すでに社会人になった者を特性に応じて再教育することを国として考えることが実際的であり、必要ではないか、こういうお説でございます。が、まことに示唆に富んだお話として承ります。検討さしていただきます。何とか制度づけをし、もしくは予算的な措置をすべきかいなか、するとしてどうだということはわかりませんけれども、一つ課題として検討の価値ある御提案であろうかと思います。  短大等を圧迫するのではないかというお話がその前にございましたが、これは露骨に申せばそういうこともないとは言えないと思いますけれども、しかしそれは国立の高等専門学校を作って圧迫するなどということでなくして、私学におきましても、要すれば高等専門学校のこの建て方の学校を経営することは当然道が開けておるわけでございますから、私学みずからの自主的な判断において高等専門学校のコースを作られるところもございましょうし、あるいは場合によりましては工業関係短大高等専門学校に、これまた私学の自主的な判断によって引き直すということを是なりとする向きも出てくるかもしれません。短期大学制度で十分ならずとするならば、短期大学を四年制大学に持っていくということを私学側で考えられることもあるでございましょう。あくまでも私学それ自体の自主的判断において、新たなこういう制度に突っ込んでいくかどうかということは、私学それ自身の問題として考えられ、それに必要であるならば国も援助を惜しまないという考え方に立って初めてこの問題が調和を得て存続し得るものと考えておるわけでございまして、この制度それ自体短大を圧迫するということを一般的にお考えいただく必要はないように実は考えておる次第でございます。
  20. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 これは議論になりますから他の機会に譲りますけれども、実際学校経営者の立場から言うと、こういうものができますると、どっちかに片寄らないと経営が困難になってくる。大体短大というものはあまり採算がとれない、そういうものであります。文科系のものならばどうにかやっていけるが、理科系のものになったらおそらくペイしないと確信する。われわれの間でも、しばしば工科系の短大をやろう、あるいは四年制の大学をやろうという議は起りますけれども、そろばんをとってみると、とうていペイいたしませんからやらない。おそらくはかもそうであろうと思います。すでに存在する短大はどれくらいか存じませんが、こういう点ごくわずかであろうと思います。おそらく成立が不可能になりはせぬかということを心配いたすものであります。そこでわれわれの考えでは、すでに高等工業学校があるのだから、その方でこれを拡大し、充実して、できるだけ需要を満たすとともに、残るは工業専門学校大学というような二本立にせずに現在の大学を生かしてやっていくべきではないか。ことに現在の大学は御承知のように非常に文科系に偏重しておる。こんなに文科系に偏重しているのは世界でも珍しいのではないかと思います。ただ肩書きさえもらえばいいというような連中が文科系にみんな行っているわけです。ほんとうに生産に参加して、そして大いに貢献したいというような者は工科系、理科系、そういう方面に行かなければならぬのでありますけれども、大体そういう学校が非常に少ない。あっても収容する人員が非常に少ない。そして設備が非常に不完全である。出てから大会社の研究所に行った方が近道なんです。今の大学院なんかにぐずぐずしておるよりは、いわゆる大会社の研究室に行った方が早い。よく勉強ができる。こういうことで、非常に問題がそこに横たわっておるわけであります。ですから、文科偏重を排するというか、もっと一つ理工科系に力を入れて、それでそういう方面で学生教をふやし、設備を思い切って充実させる。いろいろそういうことをわれわれは期待いたしたいのであります。そういう点についてはいかがでありますか。
  21. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいま御指摘の点は、一般大学制度がいかにあるべきかについて、先刻も申し上げました通り中教審で慎重に御検討を願っておる課題につながることと思います。前の松田大臣のときに、金のかかる理工系は国立にして、金のかからない文科系統は私学に全部ゆだねたらどうだというふうなことをアドバルーン的に言われたことが新聞に出ておることを私は見たことがありますが、それがそうでなければならぬという意味でなくして、今鈴木さんのおっしゃったような意味では、現実と大学制度とのギャップが非常にはなはだしい意味においてある程度示唆された発言かとも心得ておりますが、いずれにしましても、中教審の慎重な検討を待って、方向づけを一応承って、その基礎の上に十分検討をして今後に向かっての体系づけを考えねばならないことかと存ずるのであります。大学が多過ぎるなどと言われますが、一応の推定ではございますけれども、池田内閣の政治目標たる所得倍増ということだけを考えましても、大学卒業程度の人材が理工系について相当足りない。今までの実績を基礎としておる点において十分でない点はむろんございますが、教員組織の隘路のゆえに、入学定員一万六千人程度を一応十年がかりでやることたらざるを得ない推定になっておることは、大学が多過ぎることではないという、現実の必要性との関連においては感じられる点もございます。いろいろと考えるべき課題が多過ぎまして、今すぐお説に対して私どもの考えを明確に申し上げ得ないことは申しわけないことと思いますけれども、しかし、お話のことは当然好む、好まざるにかかわらず、直面した課題であり、なさなければならぬ課題であることは十分了解できるのでありまして、今後の努力に待たしていただきたいと思います。
  22. 鈴木義男

    鈴木(義)委員 なるたけ簡潔に午前中に終わるように努力いたしますけれども、せっかく始めたんですから、いま少し御了承願いたい。  ところで、私数年前に中共に視察に参りましたときに、あちらの大学学生がどれくらいの比率で、どういうふうに勉強しているか調査したのであります。今ここにその統計を持ってきておりませんが、法科系の学生というものは、あの四百余州の六億二千万の人口のところに九百何人というように記憶しております。そして理科のほか工科の学生が十六万人、もっと多かったかもしれません。卒業するとみな羽がはえて飛んでいく。在学中からみんな行く先がきまっておる。そういうのは社会主義的建設の途上にある国としては当然であろうと思うが、何も社会主義的建設だけでなく、わが国だって同じことだろうと思うが、わが国はその逆をいっている。法科、文科、経済科、そういうところが七、八万、それ以上と思いますが、理科、医科というようなものが四、五万、工科関係だけをとれば実に少ない。そして工業生産が十分に上がらないということを嘆息しておる。これは一つ大いに実際家も行政当局も相協力して考えなければならぬ問題である、かように申し上げておく次第でりあます。ことにわれわれの立場からは、中小企業に働いておって、そしてだんだん時勢におくれて適格性をなくしていく職工技師そういう者をどうして再教育するか、そして新しい技術革新に適応させていくかということが大切な問題でありまして、別にそういう一つの案を提案いたしたいと考えておる次第でありまするが、政府としてもただ少年時代から上に上がっていくときの学校制度だけを考えずに、諸外国でやっておる市民大学的のもの、つまり一般に世の中へ出てから、そのときそのときに不足を感ずる知識を補充して、時勢におくれないでついていくことができるようにさせる教育、そういう教育制度について、この機会に十分一つ考えを願いたい、こういうことを申し上げて、一応私の質問を終わることにいたします。
  23. 濱野清吾

    濱野委員長 午後一時半まで休憩いたします。    午後、零時十八分休憩      ————◇—————    午後一時五十二分開議
  24. 濱野清吾

    濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山喜一君。
  25. 村山喜一

    ○村山委員 初めに大臣にお尋ねをいたしますが、今回所得倍増計画なるものが政府の閣議決定で出されているわけでございます。その中に科学技術者の不足が十七万人ある、工業高等学校卒業程度技術者の不足が四十四万人予想をされる、こういうようなことがございます。そこでこの学校教育法の一部を改正する法律案の提案理由を見てみますと、中堅技術者の不足を解消するということになっているわけでございますが、所得倍増計画の中におきましては、科学技術者というような形の中にこれが入っておると考えるわけですが、その所得倍増計画を作られた際においては、大学における科学技術者の養成ということが言われているのでございまして、こういうような高等専門学校におけるところの技術者の養成というものは考えられていなかったはずであります。これがここに中堅技術者の養成というような立場で出されてきておりますが、これでは大学卒業者は科学技術者であり、そして今回この高等専門学校ができますと、これの卒業生というものが中堅技術者、さらに高等工業卒業生が初級技術者、こういうふうに体系づけて今後考えていこうとするものであるのか、この点について大臣はどのように所得倍増計画の中にこれらの問題を反映をしておられるか、それとの関係はどういうふうになっているのかという点を承りたいと思います。
  26. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 科学技術者あるいは中堅技術者、技能者等いろいろな用語が使われておるわけでございますが、今御指摘の所得倍増問題に関連する十七万人の供給不足と申し上げておるその意味科学技術者、その範疇にこの高等専門学校を出た者は入る概念としてとらえておるつもりでございます。
  27. 村山喜一

    ○村山委員 そういたしますと、この所得倍増計画の中におきましてはこれの養成の問題として、新しい工業大学を設置するというのと既存の大学における学部学科の構成に検討を加え、そして定員増加をはかっていく、こういうことを出されているわけです。ところがこの所得倍増計画の中においては今の高等専門学校考え方というものはないのです。だからそれとのズレは一体どういうふうにして、その十七万人の科学技術者の範疇に入るということであれば、それらの問題に対してどういうふうになっているのかということをさらに説明を願います。
  28. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 所得倍増計画に関連いたしまして、現行学校制度のままであるならば、約十七万人が不足する推定になる、それを大学教育充実するという建前で、入学定員一万六千人の増加をはかりたい、それが累積しますと七万三千人見当になる、差引九万七、八千というのが不足するという推定になるということを御報告を申し上げておるわけでございますが、この推定の計算の中には、御審議願つておりますこの法案に基づいて出てくるのであろうところの工業高等専門学校卒業生というのは、その数字の中には見込んでいないわけでございます。言いかえますと九万七、八千の不足を上ずる、その赤字補てんにはなりますけれども、一万六千人の学生定員の増という中には見込まないでおります。
  29. 村山喜一

    ○村山委員 一万六千人の学化定員の中には見込まないで、新たに大学でない一つの高等職業訓練を目的にするところの学校として高等専門学校が作られていく、それは十七万人の科学技術者養成計画の数の中には入って参る、こういうことになりますと所得倍増計画を作られた当時においては、こういうような高等専門学校制度の養成制度というものが考えられていなかった。その後において、この問題は出てきたんだ、こういうように把握して間違いございませんか。
  30. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 午前中も鈴木さんのお尋ねに対してお答えを申しまして、幾分触れたつもりでございますが、この高等専門学校の構想は、淵源を申し上げれば、中教審答申によれば、御案内の通り専科大学制度を立てることによって、これと似たような目的を果たしたらどうだろうという構想から、数回法案が提案されたのでありますが、審議未了に終わったことも御案内のごとくであります。その審議未了になりましたのは、一つには現在の短期大学との関係において、当時の構想は短期大学を漸次専科大学に移行していくという建前になっておったと思いますが、そのことがはしなくも短期大学なるものが止まれ出まして今日までに独自の境地を開拓して、それ自身存続の価値ある姿になっておる、その現実とぶつかったために、短大方面からの反対の声もあって、そのことが国会で考慮された結果、審議未了になった有力な一つの理由であったと私は承知いたします。そういうことを考え合わせつつ、さらに昨年の正式の答申は、暮れに近かったと思いますが、御案内の科学技術会議の政府に対する答申、今後の十年後における科学技術振興のための諸方策が答申されましたが、その中にやはり今御審議願っておる構想と類似の考え方で、新たなる教育制度考えてしかるべしという答申がなされております。その構想を取り入れまして今も申し上げました通り、現在あります短大はそれ自体として存続させる、また存在させる意味がある。そのほかに高等専門学校という構想のもとに新たな教育の場を作ることがそれ自体として有意義であり適切であるのみならず、技術革新関係から社会の要請となって現われます人材の供給、それにも応じ得るであろうということで考え、御提案申し上げたわけでございまして、そういう関係から所得倍増計画の推定数字の中に、すなわち一万六千人の学生定員の増というその計画の中には入りかねました数字が、今まで御被露されておる次第でございます。  経過を申し上げると以上の通りでございます。
  31. 村山喜一

    ○村山委員 経過につきましてはただいまの大臣の答弁で了解いたしますが、この高等専門学校卒業生は科学技術者の中に入るのだ、こういうようなお答えのようでございますので、では科学技術者の養成になる科学技術教育の本質というものは、大臣はどのように把握をしておいでになるのかということをお尋ねをしたいのです。というのは先ほど新聞で五月の九日にその教育内容がきまったとして伝えられております。この五年制高専の授業時数は週に三十九時間という内容を見てみますと、いわゆる科学技術の非常に革新的な伸展の中にあります今日の現象から考えて、はたしてこれは科学技術者と言われるような人物を養成していくねらいを持っているだろうか、その教育内容ははたして適当なものであるだろうかということを考えなければならないような気持に打たれますので、科学技術者の教育というものの本質はどういうようなあり方でなければならないとお考えになっているか、大臣にお答えを願いたいと思うわけです。
  32. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 正確な表現では私も申し上げかねることを思いますが、本来の四年制大学教育は、学問のうんのうをきわめるということを目標にしておると思います。それは同時に学生教育ということとあわせて、研究をするという課題を含めてそう理解されると思うわけでございますが、この高等専門学校におきましては、学問的なうんのうをきわめる研究という目標は一応伏せております。近代的な高級の科学技術を理解し、身につけるということを主眼とし、言いかえれば学生教育ということを第一にし、それですべてであるというふうな考え方での教育を目ざしております意味で、四年制大学とは趣きを異にするかとは思いますが、少なくとも学生専門的な教養を高めるということでは、大学と何ら異なるところのないことをねらいとしておる。その意味において、換言しますれば研究は一応伏せるのだが、四年制大学で目ざすところの専門教育課程は十分に身につけさして送り出したい。そういうところをねらっておるわけであります。
  33. 村山喜一

    ○村山委員 提案理由の中に「工業に関する中堅技術者を養成し、もって産業の発展に寄与するため、深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成することを目的とする高等専門学校制度を設ける必要」性があって提案をした、こういうふうになっているわけです。最近におきますイギリスやあるいはアメリカ、そういうような先進資本主義国家におきましても、最近の科学技術の飛躍的な発展という問題から考えて、国民に自然科学や技術基礎について現在よりも高度な知識や能力が要求されるに至ってきた。それは今後においてどのような職業やあるいは進路をとろうとしても必要なことであるということで、イギリスの技術教育白書やクラウザー報告、アメリカのコナント報告等を見てみましても、これからの科学技術教育というものは、現在の技術に密着した、狭い融通性のない知識や技術についての修得を目ざすものではなくて、自然科学や技術について広い基礎的な学習が考えられなければならないということを批判をしておるようでございます。そういうふうに警告がすでに発せられているわけでございます。この五月九日にきまったといわれる教育内容、これは今回この法律案通りますと、学科なりあるいはそれの内容については省令できめるようになっておりますので、すでにこういうようにやるのだということで文部省で内定をしているものだろうというふうに考えるわけでございますが、この内容は確定的なものとして論議して差しつかえないかどうか、この点について大臣はどのように事務当局から報告をお受けになっていらっしゃるかをお尋ねをします。
  34. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 実は新聞に出たのを私は知らない程度でございまして、所管局で今まで検討を加えておった一応の素案であり、試案であると存じます。確定的なものではございません。文部省として形式を整えて決定しましたものではないことを申し上げます。
  35. 村山喜一

    ○村山委員 ところが不思議なことには、これは教育専門の新聞、だけではありません。一般の商業新聞、大きな新聞は全部この内容について、すでに決定をしたかのごとく知らしているわけです。だからこれらの内容については、ただ記者がそれを察知するというだけでなくて、こういうようなものについて今後の教育内容といたしたいということで、文部省において大臣は知らない間に事務当局の方から新聞記者諸君に原稿が渡されたに違いないと思う。そうでなければ、きわめてこの内容は具体的であり、しかも明確に出されているのですから……。その点はどうですか、官房長。
  36. 天城勲

    天城政府委員 これは法案の御審議を願っている過程でいろいろ中身の問題等もわれわれ研究を進めて参っておりまして、高等専門学校教育課程におきましても事務局において幾多の案を考えておったわけであります。今日大体こういう試案が今の段階で考えられておりまして、特に現在の段階で高等専門学校という五年制の学校というだけで、どういう教育をやるか中身がよくわからないからという記者クラブの方の御要望もあったりして、少しレクチュアをしてくれないかということで、特に新聞発表された文部省の最終決定ということでなく、教育内容として試案として考えられるものはこういうものがあるということで御説明申し上げたのが、先ほどのものであります。なおこの高等専門学校教育課程でございますけれども、こういう形でもって省令にするとか法規的に実施するという考えを持っているわけではございません。
  37. 村山喜一

    ○村山委員 内容の問題も非常に今後の荷等専門学校の性格を規定づけていく上において重大な問題があると思うのです。今度提案理由の中にありますように、この五年間の教育課程を終わりまして卒業した者で、将来四年生の大学に編入する場合の道も開いていく、教育の袋小路をなくしていくのだというようなことも提案現出の中に出されているのです。そういたしましたら、そういうような学校に進学ができるような形のものが教育内容においても考えられなければならないし、さらにまた今日の科学技術革新の時代にあっての新しい教育のあり方、そういうような点から、この内容についてはもちろん考えていかなければならないと思う。そうした場合において、その問題は現在まだ実施に移っていないで、移行的な段階にあるわけですが、高等学校の新しい教育課程に対するところの考え方というものとの間における関連というものも当然考えていかなければならない問題がある。きょうは与えられた時間がそうよけいございませんので、それらの問題については後ほど時間がありました際にお尋ねをいたすことにいたしまして、まずこの問題はいわゆる制度の上から一つ質問をいたしてみたいと思います。  大臣が先ほどからいろいろ今日の法案提出に至るまでの経過措置についてお話がありましたが、その中でたえず言われるのは、中教審ということを非常に尊重しておいでになるわけです。今回もこの法律案を提案するのにあたっては、中央教育審議会に了承をしてもらって国会に提案をした、こういうふうに聞いているわけでございますが、ちょうど昨年の二月、時の文部大臣であります松田さんが、中央教育審議会に対して大学制度の問題について諮問をされた。それが御承知のように、いよいよ大学制度の問題についての審議の過程が大詰めにやって参りまして、五月二十日前後には総会が開かれて、大学制度に対する答申案が、総会で決定を見る運びである、こういうふうに聞いているのであります。そういたしますと、この内容がどういうようなものであるかはまだ私たちもはっきりわかりませんが、それらの中教審答申も待たないで、しかもこの法律案施行についてはことしからやるというのではない、来年、三十七年の四月一日からやるようになっているわけですが、そういうような大学制度全体の上に立った高等専門学校一つのあり方として、その位置づけをやる。そして大学教育との関係というものをとらえながら、今後の問題として処置していくという基本的な考え方をとらないで、ただこれだけを突如として——突如ではなくても、産業界の要請もあったでしょうが、そういうような形で大学に類するような学校でありながら、その大学制度とは切り離した形で提案をしなければならなかった理由というもの、その緊急性というものがまだわれわれには説明がなされていない。法案を提出に至ったところの緊急性があれば、その理由を大臣から説明を願いたい。  それと同時に、中央教育審議会の結論がいつごろ出て、大体審議方向はどういう方向に向こう見通しだというようなことがわかっておれば官房長からお答えを願いたい。
  38. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 大体この構想そのものにつきましては、先刻ちょっと申し上げましたので繰り返しませんけれども、中教審自体の意向として専科大学の必要性はすでに正式に意思表示がなされておったのであります。そのことの関連も当然考慮に入れまして、大学制度一般についての検討が昨年以来行なわれておりますことは御指摘通りでありますが、そういう関連において中教審においても先ほど申し上げましたように、短期大学との現実の関連性を中心として、またこの高等専門学校の目ざしますところの実質的のこともあわせ相談いたしまして了承を得た経過でございます。  緊急性があるといいながら、実施は三十七年度からだとなっておるが、その理由はどうだというお尋ねでございますが、これは提案理由でも申し上げましたように、さらにまた当面の所得倍増計画との関連におきましても、さらにもっと根本的にいえば、技術革新の世界的な趨勢、その中にあります日本立場からいたしましても、何としても科学技術者の面において人材教育というものが急がれる、その求めに応ずる方法としましては四年制大学基本線はもちろんのこと、短期大学それ自体におきましても推進されていくべきものでございますが、制度それ自体の変更を要するとすれば、中教審答申待ちということでいかざるを得ない。さりとて現実の必要性は刻々に迫っておる。そのために専科大学の実質的な構想を基本にいたしまして、高等専門学校という姿のものを実施しようというところにあるわけであります。  三十七年度から実施する予定のものをこの国会で御審議願いますゆえんは、もろもろの準備態勢を整えるにいたしましても、やはりこの年度内から準備いたしませんければ、三十七年度初頭からの実施が事実上困難であります。そういう関係におきまして、法案はまずこの国会で御審議、御決定を願って、その決定されました暁において万全の準備態勢を整えていきたい、こういうことからただいま御審議をお願いしておるような次第でございます。
  39. 天城勲

    天城政府委員 中教審答申のことをちょっと経過的に申し上げますと、答申が今まで三回ございまして、特に短期大学制度に関連して、五年の一貫教育をやるような教育制度の実現についての御答申が二十九年、三十一年、三十二年とございましたことを申し上げておきます。  なお、現在の中教審審議の状況でございますが、大学制度全般についての審議でありますので、かなり広範でございますし、委員会としては慎重に議論を進めておられる状況でございまして、特に問題が複雑でございますので、幾つかの部会を設けようという考え方で、現在その第一部会として、特別委員会といたしまして、大学目的、性格についてということで今日まで審議を進められてきております。それで今月一ぱいくらいで、一応のその第一部会の中間的な案がまとまれば総会に報告するという段、取りにきておるわけでございます。従いまして、大学制度全般について中教審がどういう答申をなさるかということは、現在の段階ではまだわれわれとしてはうかがい知る段階に来てない、こう考えております。
  40. 村山喜一

    ○村山委員 大臣にこの提出をされた緊急性について承りますと、いわゆる専科大学の構想というものに基づいているという点と、それから必要性、それにもう一つの理由としては準備が必要だ、こういうような説明があったわけです。私がお尋ねをして聞きたかったのは、たとえば鉄鋼関係会社が、もうとても文部省の考え方を待っておったんでは一向に結論が出ないので、企業内で共同して一つ工業専門学校のようなものを作り上げて、自分たちの企業内に役立つような中堅技術者を養成していく計画がある。それであれば学校一つ教育体系をこわしていくような格好にもなるので、そういうような意味から、企業の恣意を押えていくために公教育の中で技術者養成の問題を考えていく必要性もあるのだ、こういうようなことでも一言われるのかと思っておったら、一般的なことしか言われないので、この点についてはどういうような見解を持っておられるのか、あとでお尋ねをいたしたいと思いますが、この中央教育審議会に昨年の二月諮問をして、それから今日まで一年四カ月というような長い日数がたっているわけですね。たしかこの大学制度委員会の委員長は森戸先生だったと思いますが、六月にはアメリカからヨーロッパの方に行かれる、こういうようなことを聞いているわけです。そういたしますと、その小委員会の結論がただ中間的な報告という程度の中において今日とらえられておるといたしますと、それが総会にかけられて、日本大学制度についての目的なり性格なりというものを、最も権威あるものとしてかねがね大臣が尊敬をしておいでになる中央教育審議会の結論というものがいつ出るのか、全然見通しが文部省自体においてつかないというようなことでは——これは大学ではないけれども、大学と同じような、それに類するものとして、いろいろ法律案内容を見てみますと、文部省の所管事項としてお取り扱いになっていらっしゃるようでもありますし、また科学技術者もそのメンバーの中に入れるようにお考えになっていらっしゃるのですから、そういうような点からいえば、大学全体の問題の一つとして今後の問題を検討していくのが正しい姿だと思うのです。そういうような意味から全体的ないわゆる結論というものが出されなければならない時期がもうきていると思うのですが、中央教育審議会答申がいつになるかわからないというようなことでは、これは非常にまずいじゃないかと思うのです。それらの点について今までどういうように措置をしておいでになったのか、その点重ねてお尋ねをいたしたいと思います。
  41. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御案内の通り中央教育審議会は、現行制度としましては教育基本的な問題についての法律に基づく最高の諮問機関でございます。その答申を待って措置すべきものはするという態度が当然とむろん心得ております。中央教育審議会審議状況の概要は先ほど官房長から御説明申し上げましたが、何せよ問題が複雑であり広範であり、しかも基本的な問題であるしいたしますから、諮問されまして以来ひんぴんと会議が開かれ、十幾つかの分科会までもできましての審議のありさまはまことに恐縮するくらいの熱心さでございます。一体いつ結論が出ますかと質問することのむしろ失礼さを思うくらいの真剣さでございまして、直接伺っていないままに今日にきておりますが、私は、まあ間接ではございますが、予算措置も伴なう問題が必然的に起こるわけでございますから、できれば三十七年度の予算編成に間に合う時期に答申が出ればありがたいなあと思い続けて、今日まできております。さりとて人為的にそれに合わせるような注文を出すわけにも参りませんので、御質問に対してぴったりしたことをお答えできないことをその意味では遺憾と思いますけれども、またやむを得ないことでもあると御理解をいただきたいと思うわけであります。  なお鉄鋼関係の方面で、文部省手ぬるしとしてみずから専門教育をやるようなことを考えておるということを私も聞いておりますが、そのことにあえて言及しませんでしたのは、いわば御指摘のように学校制度を乱ることになるおそれを感じますそのことに関して、その予防策としてということよりも、もっと広く、単に鉄鋼問題に限らず、いつも御指摘になりますように世界的な技術革新日本においてもその例に漏れない当面の必要、そのことは同時に将来ほとんど永遠にわたってつながるであろう科学技術振興に結びつくその方面の教育充実という立場から、しかも当面します所得倍増問題を考え合せましても、とても今の状態ではじっとしておれないという必要性に主眼をおいてそのことを考えたと申し上げたのでありまして、その緊急性の一つの具体的事例として、御指摘のように鉄鋼関係者が文部当局手ぬるしというがごとき動きをしておるということはむろん私も理解いたしますが、単にそれだけでない、一般的に緊要性を感じたという意味で申し上げたことを御理解いただきたいと思います。
  42. 村山喜一

    ○村山委員 中央教育審議会が十幾つの小委員会に分かれて会合もひんぱんにやって一生懸命やっておられるので、いつその結論が出るのかということを聞くのでさえも遠慮するような気持になっておるほどよくやっていただいておる、こういう大臣の御答弁でございました。そういうふうに一生懸命やっていただいておるということはわれわれも感謝するわけですが、もしもこの中央教育審議会高等専門学校の問題はやはり専科大学の流れをくむ一つ考え方だとして打ち出したその立場からこれを了承をして出したとするならば、それは大学制度そのものに対する一部分であるのだ、こういうような認識の上に立っているに違いないと思う。だからそれが専門立場において位置づけをしていかなければならないにかかわらず、この問題だけについてはたやすく了承を与えているということに対しては、私だけじゃなくて、日本の各大学先生たち、学界あたりにおいても、全部の中の一部を律していくのに、全部の構想がまだ確立をしていない中でたやすく了承を与えたという点はどうもおかしいじゃないかという疑問を感じておる向きが非常に多いわけです。こういうような点から、何らか結論が近いうちに生まれるであろうというような予想もすでに教育界においてはなされているというふうにも聞いておるわけなんです。ところが今官房長にお尋ねをいたしますと、いつのことになるのやらわからない。まあ大臣に言わしたら、予算を伴うことになるので、予算編成になる前にそれを期待しておる、こういうようなことでございます。これではこの法律案について大学制度の上においてどのような地位を占めていくのかという根本的な問題に対するわれわれ国会の論議は、その中央教育審議会の結論を待たないで論議をして、もちろん立法府でございますから、これはわれわれが国会の立場においてこの議会において結論を出して差しつかえないわけでございますが、そういう全体の構想を踏まえた上でこの問題を論議していくのにあたって、文部省自体として、先ほどの大臣の答弁は遠慮がましい答弁でございましたが、今まで中央教育審議会に事務当局の方からそれぞれ下話でもされて、中央教育審議会の会長なりあるいは特別委員長の森戸先生あたりにこれらの促進について話をされた事実はございましょうか。どうですか。
  43. 天城勲

    天城政府委員 先ほどちょっと申し上げましたように、短期大学の問題に関連いたしましては、二十九年の暮れから、すでに中教審からも三回五年制の一般教育制度についての御答申があったわけでございます。中教審といたしましては、大学制度全般の問題をもちろん現在検討中でございますが、同時に、すでに高等学校段階から始まる五年制の教育機関の必要性につきましては、前々から御意見も出ておりまして、われわれはこれを受けまして、案を付して国会に提出したこともすでに三回に及んでおるようなわけであります。中教審といたしまして、現在大学、広い意味での高等教育機関のあり方について、目的と性格という非常に基本的な問題から取り組んでおられますけれども、その過程におきまして、すでに五年制の問題につきましては御答申がございました。しかもわれわれはそれを二度も三度も法案にしておりますようないきさつ等もございますので、今回法案を提出する段階になって、中教審の前の御答申を受けて、今大学制度全般について審議されておりますので、この法案をまとめることについて御相談をいたしたわけでございますが、すでにその点については三回も答申をしておることだし、この構想に基づく学校制度を作ることは差しつかえない、こういう御答申をいただいておるわけでございます。
  44. 村山喜一

    ○村山委員 いわゆる専科大学の構想というものと、今日国会に提案をされております高等専門学校法案の内容を検討してみますと、たしか前のでは、これは公表された数字ですから申し上げますが、前期一年制、前期二年制、前期三年制、いわゆる高等学校のその学年に、相当するものを前期一年、二年、三年と呼んで、そうして短大に相当するものを後期一年、二年、こういうふうに呼んで、前の専科大学教育内容については構想が発表をされております。そして一般教育は、総単位において五十五単位、外国語が二十二単位、体育が十一単位、専門教育が九十五単位、こういうような数字のものが、文部省から前に専科大学のときに発表された単位数として出されているわけです。ところが、今回それに照らし合わせまして、五年制高専の問題についてレクチュアしてくれということで、あなた方が新聞記者の諸君に説明されました内容というものと比較検討してみますと、これは大きく構想が違っているのですね。前期一年二年、これまでは同じですが、あとの三年間に専門教育を集中的にやるのだ。こういうようなことで、結局高等学校教育課程の、その間の年限と、それから専門教育をやる年限との間を今度の案では振りかえている。前は三、二ということになっていたが、今度は二、三ということであります。こういうようなふうに内容的にも変わったものを中央教育審議会に了承を求めて、その了承をもらっておいでになるのか。そういうようなものは中央教育審議会としては審議をせずに、ただこの構想というものは、レクチュアを文部省自身がされたのであるが、それは文部省自身の大学教育中心にするところの考え方であるとおっしゃるのですか。その点はどうなんですか。
  45. 天城勲

    天城政府委員 この前に案を具して国会に御審議を願っておりました専科大学の構想におきまして、いわば三、二というような作り方の考え方中心になっていたことは御指摘通りでございます。今度は前期とか後期とかという考え方でございませんで、要するに五年一貫した教育制度という考え方でございますので、その点は必ずしも二、三というわけではございません。前のには必ずしも拘泥しないで、五年を通じての一貫したカリキュラムを制定したわけでございます。  中教審との関係でございますけれども、中教審においては、教育課程のこまかい内容までも前のときにお話しがあったわけではございませんし、今回も五年を一貫した教育制度考えるということでお話しをして御承認を得ているわけでございまして、現在われわれが考えておりますことは、もちろん文部省の関係当局中心になって考えている案でございます。
  46. 村山喜一

    ○村山委員 ちょっと内容的にも入りますが、今、五年間を一貫したものを考えているというふうな説明がございましたが、そこでちょっとお尋ねをするわけですが、それは、一般教育についても、あるいは外国語についても、さらに体育なり専門教育についてもそういうようなことをお考えになっていらっしゃるのだろうと思うのですが、それに間違いございませんか。
  47. 犬丸直

    ○犬丸説明員 お答えいたします。全体としてのそれぞれの科目の単位の分配は、五年間を一貫して考えております。ただ、科目によりましては、必ずしも五年まで、最後までやらない科目もございます。ですから、個々に科目をおとりになりまして、たとえば体育も五年続いておるかとおっしゃいますれば、体育は、これは続いておりますけれども、科目によっては低学年だけで終わるものもございます。
  48. 村山喜一

    ○村山委員 その科目内容等の時間数なり単位数の問題につきましてはあとで質問をさしていただくことにいたしまして、次に基本的の問題でお尋ねをしたいのだが、今回の提案理由並びに法案の内容を見てみますと、高等専門学校につきましては大学に準じた教職員の配置を持っている。そうして、現在の大学と同様に、国立のみならず、将来は公立、私立のものも作っていくのだ、そうしてそれはすべて文部大臣の所管事項だということになっているようであります。ところが、制度としてこれを見た場合には、完全に大学のワク外にある。教育公務員特例法にも見られる大学の自治の保障というものは何らない。そうして高等専門学校の学科に関する必要事項の決定も、監督庁であるところの文部省が一方的にこれをきめていく。もちろん審議会にかけることはできる。こういうようなふうに文部省の権限というものが非常に強化にされた形でなされている。従いまして、高等専門学校の人事なり、運営なり、教育内容というものにつきましては、当然中央集権的な考え方、統制的なものがあるのではないかということが危惧されているわけであります。そういうような制度のもとにおいて職業に必要な能力を育成する教育というものが行なわれていくとするならば、これは非常に日本教育制度そのものに大きな影響をもたらすと同時に、現在の大学の自治というものに対して、非常にその自治権をそこなうような方向というものが考えられているのである。こううようなことで、大学先生たちは相当な反対の意思表示があるわけです。そういうようないわゆる制度の上において、大学の自治というようなものを許すような方向に持っていかなかった理由、これを明確にお答えを願いたいと思います。
  49. 天城勲

    天城政府委員 すでに御説明申し上げましたように、この制度義務教育修了後に続く五年制の教育制度でございまして、主として専門的な実際教育を行なうという目的でございます。大学はすでに現在の学校教育法にございますような性格を持ったのが大学でございまして、大学の自治ということは、今お話がございましたけれども、いろいろな解釈があり得ると思いますけれども、少なくとも大学一つの使命であります研究という、学校制度そのものが研究を中心としてやっていくというところに特色があろうかと思います。いわゆる学問の自由ということから、制度大学の自治という制度発展してきているわけでございまして、この高等専門学校はいわゆる学問研究を中心とするということよりも、あくまでも教育中心とするという機関でございますので、大学ではない。そう考えておりますので、別に大学とは違う制度として所管の内部組織も考えておるわけでございます。
  50. 村山喜一

    ○村山委員 今度高等学校の新しい教育課程がきまりましたが、その中において基準性という言葉があったのが、基準という言葉もなくなっておるわけですね。しかし実質的には基準が非常に強く出されているとわれわれ見ているわけですが、そういうような中において、学科というような問題を考えていく場合の取り上げ方、これがいろいろ内容的に見てみますと、農業でも四十七ぐらいの学科に分かれる。工業に至っては一千幾らの学科が考えられるというようなことがいわれておるようですが、その学科の指定まで、これも文部大臣がきちっときめていかなければならない。こういうような考え方というものが非常に強く出されておるのは一体どういうようなわけですか。
  51. 天城勲

    天城政府委員 あるいは私が聞き間違えておるかもしれませんけれども、今、先生のおっしゃった学科について、現在の高等学校もそういう考え方を必ずしもとっていないのではないかと考えるのでありまして、あるいは授業科目のことをおっしゃっているのではないかと思いますが、この高等専門学校の場合には学科、これはたとえば工業で申しますれば機械工学とか、電子工学とか、化学工学とか、応用化学とか、そういうようなものを学科と言っておりまして、そういう種類について文部大臣は定めるという考え方を持っております。それからこれとの関連でございますが、教育課程そのものにつきまして、一切文部大臣が定めるという考え方を持っておるわけではございませんので、御了承願います。
  52. 村山喜一

    ○村山委員 そういたしますと、いわゆる教育課程については、そこの高等専門学校教授会なりというところできめていくような方向考えていらっしゃるのですか。監督庁が定めるものではないですか。
  53. 天城勲

    天城政府委員 高等専門学校につきまして、小、中、高等学校のような学習指導要領基準というようなものも定めませんし、今おっしゃったように、実際には学校で定めることになろと思います。ただ今申し上げましたように、工業に関する学科でも、機械とか、電気とか、応用化学とかいろいろございます。そういうものについて大体どういう教授科目があるかということにつきましては、われわれの方として、行政指導でいろいろこういう考え方があるということは示していきたいと思っております。
  54. 村山喜一

    ○村山委員 さきに免許法の改正で三カ年間の工業教員の養成機関が作られ、さらに四年間の新制大学を経た人で工業教員になろうとする者は、教職教育についての単位は全然とらなくて専門教科の単位をとることによって二級免許状を与えていくというような構想が出てきたわけです。それがいずれも衆議院を通過いたしましたが、今度ここに高等専門学校というようなものが出て参る。そういたしますと、この学校卒業した者は、高等工業学校なりの先生になるための資格というようなものがまた格下げで、もう万やむを得ない次善の措置であるというようなことで免許状が与えられていくというようなことがあるのではないかということまで心配をされているのですが、その点はどういうような考え方を持っておりますか。
  55. 天城勲

    天城政府委員 これはこの法律目的にもうたっておりますように、本来技術者の養成ということを主眼といたしておりますし、この教育内容につきましてもそれに最もふさわしいものを考えていきたい、こう考えておりますので、別にこれを教員養成の制度というふうには現在考えておりません。
  56. 村山喜一

    ○村山委員 今は考えていなくても、また教員が不足してくると、こういうような学校卒業した者も先生に引っぱらなければいかぬというようなことでやられる可能性がなきにしもあらずというふうにもなるわけであります。その問題は、現在はそういうようなものの目的学校を作るのではなく、中堅技術者を作っていくのだということが法律制定の目的でございますので、そのような観点から正しく解釈して質問を続けて参りたいと思いますが、この高等専門学校というものは産業界の要請が非常に強いということをわれわれも知っているわけです。そこでこの産業界の要請にこたえるというねらいが確かにあるだろうと思うのでございますが、先ほど触れましたように、中央教育審議会大学制度に対する抜本的な改革案をかりに答申をしなかったといたしましても、この肩等専門学校が産業界の要請に基づきまして、その一部がその要請に応ずることができるようになってくるわけであります。その結果というものは、この教育制度の複線化という問題がはっきりとした形で出てくるわけです。    〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕  これは先ほど鈴木委員の質問に大胆がお答えをされましたように、従来の六・三・三・四という学校制度とは別なものである、こういうようにお答えになったのですが、この複線型を充実していく、そういうような方向日本教育というものが重点を置かれていく一つのはしりではないか、こういうふうにも受け取られておるのですが、こういうような複線型の学校教育体系、これがどのような形の上において将来は考えておられるのか、この点を明らかにしていただきたいと思うわけです。というのは、これが従来ありました旧制の高等専門学校、いわゆる専門学校というもののコースを次第に拡大していって、そしてやがて今あるところの短大、これもこの高専制に切りかえていく、そして私立学校あたりの抵抗がなければさらにその問題を拡大をしていこうという一つのねらいというものがあるのではないか。そして学問を研究するには現在の新制大学なりあるいは大学院を赴く大学、こういうようなところでやって、実技について、職についていく技術者なり実際の職業人の養成はこの高等専門学校の形において、日本教育というものをそういうような方向に歩ましていく考え方があるのではないか、こういうことが言われ、また一部においてはそういうような心配がされているわけです。その点について大臣から明確にお答えを願いたい。
  57. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 まず複線型になるはしりであることは間違いございません。六・三・三・四の基本的な線は、中教審審議の結論としてもくずされることは私はないと思いますが、それが基本線としてありまして、もう一本六・三・五とでも言うべきものがここに生まれた。しかしそれは同時に四年制大学にも通ずる抜け道はむろん考えられなければならぬことは当然でございますが、複線型の新たなものの追加だ、複線型になる制度であるということははっきりいたしておると思います。またそういうことであってしかるべしと考えて御提案も申し上げておるわけであります。諸外国の例は私も直接つぶさに存じませんけれども、事務当局で検討してもらったところによりますと、諸外国でもやはり必ずしもアメリカ式の単線型ではなしに、複線型が中共、ソ連あたりでも考えられておる。欧州各国もそういう例がむしろ逆に多いということも聞いておりますが、外国の事例いかんにかかわらず、革線型か複線型かという問題は、学校に学ぶ学生生徒側に立って考えて、教育機会を均等に、しかもなるべく多く与えられることが望ましいことだと思うのでございまして、そういう意味では複線型であることは喜ばしきことの一つである、こう考えておる次第であります。短大との関係におきましては、先刻も申し上げましたように、専科大学制度のもとにおきましては、短大をその方向に持っていった方がよろしいという建前であったと承知いたしますが、繰り返し申し上げないでも御案内の通り短期大学そのものの独自の境地というものは確立されておると思います。ですからその短大制度そのものは今後も存続していくべき建前に立って、この五年制の高等専門学校考えた次第でございます。しかし実際問題としますれば、私学の自発的な考え方としまして、たとえば工業短期大学についていうならば、むしろこれは高等専門学校に切りかえた方がよろしいと考えられる私立大学もあろうかと思います。また同時に工業短期大学たる大学を四年制度の方に発展させていこうと考え大学もあるいはあろうかと思います。それと同時に工業短期大学それ自体として維持発展せしめていくというものもあろうかと思います。現実問題としてはいろいろ現われてくる可能性は当然予想されますが、そのことは高等専門学校制度を複線型を作ることによって短大を廃止するという意図を持った結果であろうとは、私は考えないのであります。考え考えぬにかかわらず、そういう制度ではございません。従って短大との関係は以上申し上げたように受け取っておる次第でございまして、複線型になることはこの制度の上からいきまして当然の帰結であると考えております。のみならずそのことはいいことだ、こう考えております。
  58. 村山喜一

    ○村山委員 複線型のはしりであるということはお認めの上で、しかもそういうようなことはいいことだ、こういうような認識に立っておいでになるようです。ところが先ほど大臣の答弁の中でお話がございました、短大制度については地位が確立をしている今日、社会のそういうような要求に応じているということでございましたけれども、世間は必ずしもそう思っていない。まあ女子の場合は短大についていろいろな関係もあってその程度のものは認めておるけれども、短大卒業したからといって、社会需要から考えたときに、その地位というものはきわめて低く評価されているということは、これは大臣も御承知の通りである。そういうような点から考えた場合に、こういうような形ができてきたら当然今の教育制度というものがこわれてくるということは、火を見るよりも明らかだと私は思う。高等工業学校の校長協会の方から発表された制度改革に対する案にいたしましても、これは今の高等工業では教育が不十分だ、これは三年間の教育を四カ年にしてくれ、こういう要求の声もあるし、あるいは短大でやるところの専門的な教育では産業界の要求にこたえることができない、だからこれを三年なりにすべきだ、いろいろな教育内容についての意見というものが、産業界からもあるし、それらの声の一端にこたえるために今度の案というものができたのだと、私たちはこう考えて見ている。そういたしますと、文部省自身で今度の案として考えられておるのは、さしあたり三十七年度からこの新制度で発足をしようというものは、今北見と久留米にあるところの国立の二短大、それから本年度新しく設けられた国立の三短大、あわせて五つの短大をそういうような方向に発足をさせていくのだ、こういうような構想を持っておられるやに聞いているわけですが、その点はどうなんですか。
  59. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 この高等専門学校制度は、お認めをいただけば直ちに五年制のものを作るというのが、本来の建前だと理解いたします。ただし実際問題として現にある国立の短大をこれに切りかえるということもなしとは言い切れないと思います。それはおのずから別個のことに理解いたしております。  それから産業界の要請にこたえることになると思います。しかしそのことは、よく言われますように、産業界の要請にこたえてお先棒をかついでという——現実問題、結果的にはそうなりましょうが、そのことはとりもなおさず日本の経済界、社会が、国そのものが、そういうことを要請しているということを意味すると理解するのでございまして、その意味学生生徒に対しては教育機会を新たに与えることになるということで、いいことだと考えた次第でございまして、私学関係で先刻も申し上げましたように、短大の今の制度のままにそれ自身として続いていくところもむろんございましょうし、またある私学においては、むしろ現在の自分短大高等専門学校制度に切りかえることをよしとされるところもむろんなしとしないと思います。しかしそれは結果的にそうであり、そのことが社会の要請にこたえ、私学それ自体の経営面を中心として考えて必要だからそうなることがあるというのであって、この制度ができたから私学の短大等を圧迫するというふうに理解すべきじゃないだろう、私はそう考えておる次第であります。
  60. 村山喜一

    ○村山委員 先ほど大臣は、別個のものとして作っていくのだというお考えのようでございました。ところがわれわれが漏れ聞いているのでは、現在の国立の五つの短大をそれに切りかえていく、こういうふうに聞いているわけです。そういうような切りかえる場合もあり得るのだというふうに説明をされて、原則としては別個に作るのが建前だ、だけれども切りかえる場合もあるのだ、こういうような二元的な考え方を持っておいでになるようですが、そういたしますと、それらのいわゆる内容、構想というものについてもまた承らなければならないと思います。しかし先ほど大臣が、まあいいことだ、短大短大として生きていく道があるとおっしゃいますが、いわゆる社会の要請、産業界の要請というものからいえば、こういうような五カ年間の一貫した技能教育といいますか、技術教育をやるような学校ができて参りますと、私立あたりの現在の短大がそういうような方向に進まざるを得ないような方向にひとりでに持っていかれるということは、これは私立学校関係の、特に短大側の人たちが非常に危惧している点です。そういうような点からいいますと、ここに一つ制度が新しく創設をされていく、その結果私立短大の経営というような問題が非常にむずかしくなってくるのではないかということが言われております。そういうような方向が将来主流になって、短大の現在の姿というものが本流から支流に、小さなものになっていくのだ、こういうような発展方向というものが、見通しが一応できるのではないかと思いますが。そういうような見通しの問題を大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃるのか、その点をお答え願いたいと思います。
  61. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 おっしゃるような見通しは、私はどうも実感としては立たないように思います。短大についての人材需要面からする不満というか、注文というものがありとすれば、四年制大学との比較においてのことだろうと想像するのであります。これは私の一個の想像でございまして、あまり当てになりませんけれども、私はそういうふうに感じるわけでございます。従ってそういう意味だとするならば、短大内容それ自体に何か検討を要するものがあるであろうという課題として現われるだろうと思います。この高等専門学校は一貫性を持ったところに特色があり、そうして五年で一応完成した人間として社会に送り出されるという意味においても特色があるというところに、ある程度の魅力が新たに加わるとは思いますけれども、短大短大なりに今日まで存続をしてきておる。従ってそれが当然に高等専門学校に食われてしまうということではなかろう。私は見通しとしてはそう思います。しかし先ほども申し上げましたように、短大を経営しておる私学それ自体の経営上の必要からして、私学短大たるものがこれに移行するということも、その道は当然できておりますから、必要とあらば直ちに五年制の高専を私学として経営する道も当然開かれるわけでございますから、少なくとも私学を圧迫するという非難はあり得ないというふうに理解いたします。
  62. 村山喜一

    ○村山委員 現時点においてはまだ生まれるものでもございませんし、に発足をするのが三十七年からですから、一応の予測に立たなければならないわけですが、私はこの問題は私立の短大の今後の経営の上には非常に大きな影響を及ぼすと思うのです。やはりそういうような一貫した教育を受けた人たちが出てくるようになって参りますと、そちらの方が技術的、技能的には優秀な訓練が施されてくると思う。そうなりますと勢い、そういうような格好のものが現在においても産業界の要請として出ておるのですから、それにこたえたいという意味においてはそのような方向に現在の短大制度方向が変わってくる。こういうふうに全体の見通しを立てなければならないのではないかと思う。  その問題は意見になりますが、一応おきまして、これは大臣が御承知でなければ官房長でもけっこうですが、日本学術会議の第三十三回の総会、これは四月二十五日から二十七日にかけてございましたが、その総会において採択をされたいわゆる決議といいますか、それにいて御承知ですか。
  63. 天城勲

    天城政府委員 申しわけ、ございませんけれどもまだ承知いたしておりません。
  64. 村山喜一

    ○村山委員 これは総理府の所管で、文部省の所管ではございませんので、そういうこともあるだろうと思いますが、科学研究基本法という法律案を作るべきだ、科学技術基本法というような法律を制定するように政府に勧告をしたということになっております。ところがこれは今後この高等専門学校教育内容についての考え方なりあるいは学校教育体系の上におけるところの筒等専門学校の位置づけ、そういうようなものを考える上においてきわめて重大な内容が入っているようです。これはただ一つ技術教育だけでなくて、自然科学に対するところの考え方というようなものを、日本の最高の権威者であるといわれる日本学術会議の人たちがどういうように取り上げているかということをわれわれも知りながら内容の討議をしていかなければならないと思う。特に人文社会科学というものも含めた上で討論がされておりますので、それの資料を委員会に提出をしていただくように手配方をお願いしたいと思います。委員長の方でその点を処理願いたいと思います。
  65. 臼井莊一

    ○臼井委員長代理 了承いたしました。
  66. 村山喜一

    ○村山委員 きょうまだ質問が残っているのですが、三時から社会党の部会を開催いたしておりますので、これで質疑を一応打ち切らしていただきます。
  67. 臼井莊一

    ○臼井委員長代理 竹下登君。竹下登君。
  68. 竹下登

    ○竹下委員 ただいま議題となっております学校教育法の一部を改正する法律案について、若干の質疑を行ないたいと思います。すでにわが党におきましては、八木徹雄君また臼井莊一君、私と三人が質疑を行なったのでありますけれども、その重複するものを避けまして引き続き質疑を行ないたいと思うのであります。  この法律案の提案理由を拝見いたしますと、「この法律案は、工業に関する中堅技術者を養成し、もって産業の発展に寄与するために、学校教育法の一部を改正して新たに高等専門学校制度を創設することとしたものであります。」すなわち従来の六・三・三・四制のほかに一本六・三・五という大きな柱を立てたところに、この法律案の重要な点があろうかと思うのであります。そしてさらに「現在、わが国における産業経済の著しい発展に伴いまして、科学技術者の需要は著しく増大し、特に工業に関する中堅技術者の不足が痛感される情勢になったのであります。このような情勢に即応し、政府においても各方面の意見を勘案して検討を重ねました結果、このたび、新たに高等専門学校制度を設け、社会が強く求めている有為な中堅工業技術者の養成をはかる必要があると考えた次第であります。」云々というふうに書かれてありますが、ここで、各方面の意見を勘案して検討した結果、この各方面という問題、また社会が強く求めている有為な中堅工業技術者、この社会が強く求めているという提案理由、この二つが質疑を展開するにあたって、あるいはイデオロギー等を前提としたものの考え方の上に立ったときに、非常な大きな問題点になると思うのであります。先般来の各新聞紙の報ずるところを見ましても、産業界に教育が従属するというような理由でもって反対の意見があるやにも書かれてあるわけでありますが、その誤解をも払拭するために、特にこの各方面の意見を勘案して、また社会が強く求めているという各界の要望というものは、具体的にどういうものであるかを伺いたい。なお、あるいは要望書といったような具体的なものがありますならば、それについての御説明を承りたいと思います。
  69. 天城勲

    天城政府委員 お答え申し上げます。  私たちの方に世間が強く要望しているという形で具体的に現われておりますのは、幾つかの要望書という形で出ておりますので、一、二の例を申し上げますと、たとえば日本経営者団体連盟の技術教育委員会から三十四年に要望書が出ております。それから大阪の商工会議所の会頭から、三十六年の二月にやはり同じ趣旨の御要望が出ております。    〔臼井委員長代理退席、坂田(道)委員長代理着席〕 また三十六年には、関西経営者協会の会長から同じ趣旨、特に中小企業における雇用対策という問題と関連いたしまして、同じ趣旨の御要望が出ております。また日本鉄鋼連盟からも、三十五年の十月に理工系教育に関する要望書の内容としてこのことが指摘されております。また一方「十年後を目標とする科学技術振興の総合的基本方策について」という学術会議の諮問第一における答申の中におきましても、科学技術者の養成機関として要望せられる制度として、五年制の一貫教育制度の創設を要望されております。そのほか府県あるいは地方団体においても、こういう学校の設置の要望について、最近かなり私たちの方に要望書が出ておるのが実情でございます。
  70. 竹下登

    ○竹下委員 ただいまの御答弁でそれぞれ明らかになったのでありますが、一番問題でありますのは、いわゆる経団連でありますとか関経連その他ございますそうしたもろもろの経営者団体の強い要望に基づいて、この制度考えられたという印象を与えることが、当初政府なりまた私どもが考えております本来の各方面の要望ということが曲げて解釈せられまして、一部産業界に従属する教育制度かのごとき印象を与えがちであろうと思うのであります。それがゆえに、ただいまの答弁を承りますと、あるいは中小企業対策角度からする要望また科学技術会議からの要望また府県、地方公共団体等からの、要望がなされておるということがはっきりいたしましたので、この点は私は産業界の要求に教育があとから従属してくっついておるということを払拭するに十分なものであろうと思うのであります。  さて、さらにこの問題につきまして、いずれ参考人の意見等においてそれぞれ明らかになろうかとも思うのでありますけれども、純粋な教育団体でありますとか、あるいはPTAとでも申しましょうか、そうした一般的な団体とでも申しますか、そういうところからの要望というものはいかにお受けになっておるかということを承りたいと思います。
  71. 天城勲

    天城政府委員 先ほど村山委員の御質問にもお答え申し上げましたように、広い意味教育問題の基本を検討されております中央教育審議会が、すでに二十九年以来三回にわたりまして、高等学校段階及び大学の二年に当たる段階の一貫教育につきましては、教育上の見地から御意見を出されておりますし、一方高等学校長会におきましても、高等学校教育につきましてかねがね制度改革の御意見を持っておりまして、これはいろいろな御意見がございますけれども、最近も、これは高等学校中心考えられた御意見でございますけれども、要するに五年制の教育機関を作ることが今までの経験から見て教育上必要であるという御意見もわれわれの方に提出されておりまして、私たちといたしまして、単に卒業生の消化をはかるという産業界の要望だけでなしに、教育上の見地からも特に技術教育という今日きわめて基礎の広い、しかも高度の技術を伴う教育のためには、こういう制度が必要であるということを考えたわけでございます。
  72. 竹下登

    ○竹下委員 質疑を展開していきます間において、徐々にではございますけれども、いわゆる教育的見地からして、こうした一本の柱を立てることの必要性というものが逐次解明されておるように私は理解いたします。  さて、ここにおいていま一つの大きな批判となります問題は、すぐ役に立つ専門の職業教育を施すという問題についていろいろな考え方であろうと思います。いわゆる学問というものは、なかんずく理工系にありましては、一つ基礎的な科学知識でありますとか学問体系でありますとか、そうした上に立ってそれぞれの時代に即応した高度な技術教育が施されていく、これが理想であり、理工系教育の体系であろうと思われます。が、ここでこの高等専門学校なるものが社会にすぐ役に立つ専門の職業教育を施すのだという印象のみを強く国民に与えるということは、俗に近ごろはやり語のインスタント教育といわれ、そして逆な立場で申しますならば、今すぐ役に立つ教育だけを、そうしてなかんずく技術、ハンドリングだけを教え込むならば、そういう一つ基礎的な科学理論というものの上に立たないで、時代の変化に応じて直ちにまた役に立たなくなる技術者を養成するではないか、こうした批判がなされておるということは御承知であろうと思うのであります。それがゆえに、その問題に対する心がまえとでも申しましょうか、またいわゆる教育という見地から考えた場合に、人格形成等が無視された偏重の技術教育という批判もあろうかと思われますので、その辺に関する一つの心がまえを承りたいと思います。
  73. 天城勲

    天城政府委員 ただいま御指摘なさいました点でございますけれども、これは私たちがこの制度考えます場合にやはり一番留意した点でございまして、言われるように、すぐ役に立つ教育はすぐ役に立たなくなる教育という実態は、十分配慮しなければならぬ点だと思っおります。特に最近の科学技術の進行がきわめてテンポが早いし、また基礎知識を持たなければ特にすぐ役立つことさえできないくらいに深い基礎が必要なわけでございまして、私たちはこの高等専門学校教育課程を現在試案をいたしております中でも、専門科目につきましては十分実習実験ということを中心とした教育を施すつもりでおりますが、同時にその基礎になります科目、たとえば数学、物理、化学というような基礎的な知識については最大の力を注ぎたい。また技術の世界的な関連を考えまして、外国語の知識もゆるがせにできないので、これにつきましても相当の重点を置く。また一方、これも御指摘のございました人間形成に必要なといわれております人文科学系の教科につきましても、自然科学的な基礎教科とバランスをとって、かたわにならない人間形成の配慮をいたしておるわけでございまして、大ざっぱに申しまして、この高等専門学校教育課程の分量で申しますと、専門にかなり力を入れながらも、基礎考えられるものを中心とした一般科目についても、約四割近くはそっちの方に時間をさくような配慮を現在いたしておるようなわけでございます。
  74. 竹下登

    ○竹下委員 ただいままでに二つのこと、すなわちインスタント教育に対する問題、そして六・三・三・四制の中に新しく六・三・五という一本の柱を立てるという問題、そしてそれらの問題というものが、いわゆる藤業界の要望もさることながら、各般の角度からいたしましても、これが教育的見地からも、あるべき姿としての提案せられたことがやや解明せられたと思うのであります。  さらに少しくきめのこまかいと申しましょうか、質疑を展開してみたいと思うのでありますが、高等専門学校に置かれますところの教員種類は、校長、教授、助教授、助手、そのほか講師を置くことができるというようになっております。そして教授と助教授学生教授することになっておる。大学におきますところの教授の職務規定というものは「学生教授し、その研究を指導し、又は研究に従事する。」となっており、「助教授は、教授の職務を助ける。」、助教授、読んで字のごとく、教授を助ける、こういうことになっております。大学においては、教授と助教授にそういう一つの大きな職務規定に違いがございますが、この高等専門学校教授の職務規定というものは大学と全然違っておる、この異なっておるという理由を明瞭にお答えいただきたいと思います。
  75. 天城勲

    天城政府委員 これはやはり基本的には高等専門学校学校の性格ということに関連があると思うのでございまして、大学教授学生教授と研究ということをうたっておりますのは、大学そのものが研究を主体とした教育機関であるという点にあるわけでございます。この高等専門学校は、この点ではその学校自身が、研究機関、研究を中心とするという考え方じゃなくて、技術中心とする教育機関であるということを明瞭にいたしましたことと関連をいたしまして、この専門学校における教授は、もちろん個人として研究なさることは当然でございますし、必要でございますが、機関の性格としては学生の授業に専心していただくという意味で、職務規定の表現において差異が出て参っておるわけでございます。それから助教授につきましては、大学の場合には長い問講座というような考え方中心となっておりまして、教授中心で、助教授はやはり教授の研究を助けながら学化の授業に当たるということで、本質的には教育、研究という大学の使命から出発した助教授の使命でございましたが、この専門学校におきましては、むしろ学校の性格が違いますので、教授も助教授学生教育ということにおいては同等の立場に立つという意味で、職務規定の書き方が違っているわけでございます。従いまして、高等専門学校における教授、助教授の相違と申しますか、名称からくる相違は、職務は同じでございますので、結局資格要件が高い低いという、資格要件の相違からくるのでございまして、職務としては学生に向かっては同じような立場教育に専念する、こういう考え方をとったわけでございます。
  76. 竹下登

    ○竹下委員 その場合、これは私のはなはだもってしろうとの印象でありますが、大学においては教授と助教授ははっきり職務規定において取り扱いと申しますか、その職務が違うわけでございますけれども、同等専門学校においてはどっちも同じことをするという場合に、教授大学教授と比していささかの劣等感とでも申しますか、そういうものを感じ、助教授の方はむしろ大学の助教授よりもそれに優越するような感覚を持つというようなおそれがないかということをさらに承りたいと思います。
  77. 天城勲

    天城政府委員 むしろ大学教授、助教授関係におきましては、研究ということにあくまで中心が置かれ、かつ原則として、法律上はそれははっきり規定したわけじゃございませんけれども、一つの講座というものを中心に置いて、そこに教授、助教授、助手という一つの職が置かれている。それが教育、研究の一つの単位であるという考え方をとっておるために、職務規定においてそういうことが現われておりますけれども、高等専門学校におきましては、そういう教育、研究の基礎単位の講座というような考え方をとっておりませんので、それぞれの教職員がそれぞれの任務を持って仕事をするということで考えられたわけでございます。今御比較の大学の助教授専門学校の助教授とは、職務規定が違うので、何か差別的な感じが出ないかというお話でございましたけれども、これはおのずから職務が違うのでございますし、その点は私たち、学校の性格も違うし、そういう心配はないのじゃないかというふうに考えております。
  78. 竹下登

    ○竹下委員 さらに教員の問題ばかり話すようでありますが、高等専門学校の前期の三カ年というものは、年令的にも学力においてもすべてが現在の高等学校に相当するものであります。そうなると教諭、助教諭というものが私は必要になってくると思う。ところがこのたびの高等専門学校教員には教諭、助教諭というものは初めからおらない、こういうことでございます。私は前期の課程においては少なくとも教諭、助教諭というものが十分活用できるものではないか、必要ではないかと考えるわけでありますが、それについてのお答えをお願いしたいと思います。
  79. 天城勲

    天城政府委員 お言葉を返すようで恐縮でございますが、この高等専門学校考え方に必ずしも前期、後期という考え方はとっておりませんで、あくまでも一貫した教育課程による教育を行なうということを考えておるのであります。もちろん御質問のように義務教育終了後から始めるわけでございますので、低学年におきましては高等学校段階の年令の子供でございますし、知識その他においてもこれに準ずると考えなければなりませんので、その点は十分考慮しなければならぬと思っておりますが、教育課程の組み方において必ずしも高等学校に準じたという形で考えておりませんで、五カ年の全部を一貫して教育課程考えておりますので、一年から五年までが相通ずる意味教育をいたします。場合によりますれば、最終学年を担当する先生が第一学年の授業を担当するという場合も考えられましょうし、あるいは低学年の授業を担当する先生は上級学年を担当しないというようないろいろな構成は起ころうかと思いますが、制度といたしましては、高等学校に準ずる教育という考え方をとっておりませんので、特に高等学校の教諭、助教諭というものを置くことにいたしていないわけでございます。
  80. 竹下登

    ○竹下委員 そうしますと、高等専門学校教員の方の資格はどういうものを考えておられますか。
  81. 天城勲

    天城政府委員 高等専門学校教員は端的に申しまして、すべて免許状を考えておりません。それは小、中、高等学校において現在免許状制度がございますが、これはそのいずれでもない新しい学校制度という考え方でいくということで、免許制度考えておらないわけでございます。しからば教員の資格はどういうふうにして考えるかということになりますが これにつきましては今高等専門学校の設置基準を考える予定でおりまして、その設備基準の中で高等専門学校教員の資格基準というものを定めて、それを基準にして教員の採用を行ないたい、こう考えておるわけでございます。
  82. 竹下登

    ○竹下委員 新しい制度、一本の大きな柱を立てるわけでありますから、ただいま免許状も必要としないということは、これが教授、助教授である場合はそのことも私にも理解できるところでありますけれども、私はそういう高等専門学校というものが六・三・五制であって、なお年令的には前期に当たるものはまるっきり高等学校学生と一緒であるし、そうしたことから新制度としての高等専門学校というものが、下手にとると、だからこれは学校体系の非常に違う私生児であるという批判を受ける一つの要素でもあろうと思うのであります。そこでこの高等専門学校教員の資格の点についてはあくまでもこれは六・三・三・四制の中に新しく六・三・五制という一つの大きな柱を立てたという、名実ともにこれは中外に宣明できるような教員の資格につきましては、ただいま設置基準云々の御答弁がありましたが、格段の慎重な配慮を払われるべきであろうと思う次第でございます。  そこで、そうなりますと、この教員も新たなものでありますので、たとえば給料等においては高等学校の教諭と大学教授、助教授、どこへ比較してこの給与体系というものが立てられるかということについてお伺いしたいと思います。
  83. 天城勲

    天城政府委員 御指摘のように従来の学校制度とは異なりました新しい制度を立てているわけでございますので、現実には六・三・三・四のどの学校のどの段階と相応ずるかというような比較も一応はできるかとも存じますけれども、制度といたしまして、とにかく新しい制度でございますので、見方によってはすべてそれに即した内容考えなければならぬ、こういうふうに原則的には考えております。ただ現実問題といたしまして、現在短期大学につきましては短期大学設置基準がございまして、そこで教員の資格基準等も定めて、これに基づいて採用いたしておりますので、それにならいまして高等専門学校設置基準で最も適当したものを定めたい、こう考えているわけでございます。これと関連して御指摘給与の問題がすぐ出てくるわけでございますが、現在の給与制度大学高等学校、小、中学校という学校制度に即した給与制度でございますので、この高等専門学校教員給与につきましても理論的には新しいものができるべきだ、こう考えております。ただ免許状の資格につきましても御指摘がございましたように、高等学校段階、あるいは大学段階という比較もできるレベルでございますので、どっちの基準に近いかという問題が必ず起きると思いますが、私は最終の学校目的からいって、これは現在短期大学においても大学教員と同じ俸給レベルを考えておりますので、原則的には高等専門学校教員につきましてもこの基準で考えていきたい、こう考えております。
  84. 竹下登

    ○竹下委員 さらに七十条の七でありますか、高等専門学校審議会ということが書かれておりますが、現在大学設置審議会がございますので、別に新たに高等専門学校審議会を置かなくても、その大学設置審議会に設置認可も諮問したら、それで済むのではないかという考え方についての御答弁を承りたいと思います。
  85. 天城勲

    天城政府委員 御指摘のように、現在大学の設置に関しまして大学設置審議会がございます。この設置審議会を共通に使ったらという御意見のようでございますけれども、先ほど申しましたように、高等専門学校目的、性格から申しまして、これは大学ではございませんので、やはり新しい制度として新しい設置基準を考えて、それに即した審議会で審議するのが適当だろう、こう私どもは考えておるわけでございます。
  86. 竹下登

    ○竹下委員 私は今までに各界の要望、またいわゆるインスタント教育に関する問題、それから教授、助教授教員の問題、さらにそれにつきまして前期の課程高等学校教員で間に合うのではないか、そうした問題、また高等専門学校教員に免許状が要らない問題、その給与体系の問題、さらに大学設置審議会で間に合うのではないか、これは大学ではないから、あくまでも新しい制度であるから、これは高等専門学校審議会が適当である、こういう答弁、そのおよそ七つ八つの質疑のうちにきわめて明らかにされましたことは、あくまでも現在の高等学校とか短期大学とか、そうしたものを連想したものでなくして、新たなる制度である。だから内容において教員の問題もあるいは設置審議会の問題も、すべてが新たであるという政府の一貫した一つ高等専門学校に対する姿勢というものは、私は理解することができたと思います。さらに前回のたしか八木委員の質問であったかと思うわけでありますが、ただいまもちょっと触れました前期課程、後期課程というような前期、後期という言葉を使っての質問々展開いたしておったわけでありますが、前期、後期と分けてなくて、一貫教育をほどこすという答弁をはっきりなすったと思います。たしか八木委員の質問であったかと思います。そこでこの教育課程についてのそういう一貫教育の主たる特色とでも申しましょうか、内容につきまして、少しく詳しく御答弁いただきたいと思います。
  87. 犬丸直

    ○犬丸説明員 ただいまの御質問に対しまして、今度の高等専門学校教育課程といたしまして、私どもの方で一応の仮の試案といたしまして専門家の意見を聞きまして考えましたものにつきましての概要を御説明申し上げます。  この間八木委員の質問に答えまして若干お話申し上げたのでございますが、あの際申し上げませんでした点につきましてだけかいつまんで申しげますと、まず、その際に一般教育専門教育とのバランスがどの程度になっているかということは申し上げたのでございますが、その一般教育の中におきましても、特に自然系、なかんずく数学につきましては、週単位にいたしまして十八時間、現在の職業高等学校あるいは普通高等学校でやっておりますものの標準的なものの約二倍近いものをやったらどうかということが考えられておるのであります。  それから第二の特色といたしましては、外国語というものに非常に重点を置いております。これも職業高等学校の場合には原則として三時間ぐらいにしておりますけれども、十八時間という非常に大きい時間をかけております。これは普通高校のやはり二倍近くになっております。それが英語でありまして、そのほかにさらに四時間ぐらいの第二外国語をやったらどうか、そういうことでございます。  先ほど来のお話にも、あるいはこの高等専門学校教育があまりに目先にこだわった専門教育的なものに重点がかかり過ぎるのではなかろうかということでございますが、そういう弊害をなくするために、特に、そういう基礎的なものにつきましてはみっちりやりまして、将来伸びていく可能性をここに蔵するように、そういう教育をやる、こういうことでございます。  それから専門教育の中身につきましては、これは学科によっていろいろ違います。機械工学の場合はどうであるとか、応用化学の場合はどうであるとか、いろいろ違いますが、たとえば機械の例を一つとってみますと、これも一応の試案でございますが、たとえば製図というようなものは普通の高等学校ではないのでございますが、相当の時間、一学年からずっとやっていく。その機械技術者に一番必要な基礎的な製図というようなものは、相当早い時期からみっちりやっていく、こういうようなこともやるわけであります。またそのほか、これは、今までの教育課程にとらわれない有効な時間の使い方ができるのではなかろうかというふうに考えられておるわけでございます。
  88. 竹下登

    ○竹下委員 これはいささか枝葉末節になるかとも思うのでありますけれども、現に高等専門学校という文字を使っておる各種学校がございます。私も栄養士や調理士を作ります学校関係者でありますが、これも高等専門学校という文字を用いております。そこでこれは「三十七年三月三十一日までの間は、なお従前の名称を用いることができる。」というふうにせられておるわけでありますけれども、この法律改正により新設される高等専門学校と、各種学校でこの名称を用いておるところとが、まぎらわしくないようにするための経過措置として、「三十七年三月三十一日までの間は、なお従前の名称を用いることができる。」というふうに考えていいかということ、それからいま一つは、高等専門学校という名称を用いておる各種学校は大体全国にどのくらいあるか、また高等専門学校という文字の間に高等栄養専門学校とか、高等技芸専門学校とか、そういう普通名詞を入れた場合にはこの法律に抵触しないものであるかどうかということについて承りたいと思います。
  89. 天城勲

    天城政府委員 御指摘通り、現在各種学校でもって高等専門学校の名称を使っている学校がございます。この名称禁止の規定を設けました趣旨は、これは学校制度といたしまして公共性を保証いたしますために、名称は同時に中身を天下に保証しなければならぬということで名称について一種の禁止規定を設けたわけでございますが、従来は各種学校につきましては学校教育法第一条の名称以外の学校の名前をつけることについては何ら制限はございませんということで、高等専門学校の名前があるわけでありますので、その既得権のことも考えなければなりませんので、従来からこういう場合の取り扱いといたしまして、経過規定を設けて、既得権の尊重と学校教育の公共性の保証ということでこういう規定を設けて参ったので、その例にならったわけでございます。  なお、現在高等専門学校という名称を使っております各種学校は全国で六校ございます。  なお最後に御指摘のございました名前のことでありますが、高等専門学校ということでわれわれ法律の名称といたしておりますので、この間にいろいろな名称をお入れになったりすることは別に法律上からとやかく申し上げることじゃなのじゃないか、こう考えております。
  90. 竹下登

    ○竹下委員 いろいろなこまかい点も質問いたしたのでありますが、これは私質問体系としては整理できていない問題でありますけれども、承ってみたいことが二、三ございますので、いま少し継続してみたいと思います。と申しますのは、中級技術者という言葉がこの提案理由にも使われておりますし、最近いろいろなところで使われている。初級、中級があれば、今度は高級技術者というものが常識的にあろうかと思うわけであります。俗にいう中級技術者というものの概念について少し承ってみたいと思います。
  91. 天城勲

    天城政府委員 これは非常にいろいろに使っておりますので、私の方も一義的になかなかお答えできない点、恐縮に存じますけれども、たまたま科学技術会議におきまして「十年後を目標とする科学技術振興の総合的基本方策について」という答申におきまして中級技術者に対して要請せられる資質ということを述べております。これは私の意見というよりも、ここに書いてありますが、公の文書で使っております中級技術者の定義みたいなものでございますが、これは研究者または技術者が組織的に活動を行なう場合に、一般的指揮のもとにこれらの者の専門的補助者となり得る者、これを中級技術者とか研究補助者という意味に使っております。そういうような者の養成機関として五年制の、われわれ考えております高等専門学校に該当するものがここでも答申されておりますので、われわれ提案いたしましたときにも中級技術者という言葉を使ったわけでございます。それぞれの企業の規模とかあるいは研究の度合いによりまして、またそこにおける中級か上級かという概念もあろうかと思いますが、一般的に申しますと、やはりこの辺のところで現在われわれは考えておる次第であります。
  92. 臼井莊一

    ○臼井委員 関連して。ただいま中級技術者、高級技術者と、いろいろの問題が出ておりますが、この法案によると、この高等専門学校を出てから、さらにいわゆる高級技術者を志して上の大学の方へ進学の道も開ける方法をとるというお話でございますが、逆に、初級技術者といいますか工業高等学校を出られた方がさらに中級技術者になりたいという場合には、現在短期大学というものがあるわけですが、そういう人が、短期大学ではなくて、こういう荷等専門学校の方に転校といいますか、一つの進学ではあるが、転校みたいな形になるのですが、そういう道ができるものかどうか、それを考えておられるかどうか、その点を一つお伺いしておきたいと思います。
  93. 天城勲

    天城政府委員 現在の学校教育法制度から申しますと、本人能力に応じてはできることになっておりますけれども、ただ実際問題といたしまして、この高等専門学校教育のやり方が、先ほども御説明申し上げましたように、五年の一貫教育でございまして、前期、後期という段階を踏んで同等学校のことと並んだ教育の仕方をしておりませんので、高等学校からこの四年相当のところに入ってくるというようなことは、実際問題としてはなかなか困難ではないかということは考えられます。
  94. 臼井莊一

    ○臼井委員 そういたしますと、先ほど大臣の御答弁でも、短期大学短期大学なりに意味がある、こういうようなお考えのお話があったのですが、やはり工業高等学校を出てもさらに上の方に行こう、それは大学の道があるはずですが、大学まででなくても、せめて短期大学でもう少し上のをやりたいという場合もあろう。従いまして、今国立の短期大学がどれだけあるか知りませんけれども、これが全部高等専門学校になるということに対する一つの問題点があるのではないか、こういう論点ができると思うのです。  そこで、短期大学については今中央教育審議会で御研究中でありますから、いずれ結論は出ると思いますから、そのときにまかせますが、やはりそういう一つのさらに上に進んでいく向学の道を、本人希望に従って初級から中級、中級からさらに上級というふうに、あらゆる面に進めるような道をやはり一応考えていく必要があろう、こう考えます。  それからもう一つついでにお伺いいたしますが、こういうふうに高等専門学校を作ろうということは、一つは中級技術者を教多く作ろうという産業界の要望、社会の要望というものがあると思います。非常に数が足りない。これはひとり中級技術者ばかりでなく、いわゆる大学出の人にしても、高等学校卒業技術者にしても少ないということは言えるのですが、これは予想以上に日本の産業が非常に発展した、こういうところにあると思う。というのは、かつて二、三年前に私が文部省に技術者の養成の数が足りないではないかということを個人的に言ったときに、四年間八千人技術者を養成するということは、経済企画庁の方針に従って、それに合わせてやっているの、だ、こういうお話があったのです。ところが実際になるというと、やはりわれわれが不安を感じているのと同じように、現在これが足りなくなってきているということは、日本の経済の異常な発展に対する見通しというものを各方面でうれしい誤りをしていた。技術者が足りないことに対する予測を誤ったということはうれしいわけでないのですが、予想以上に発展したということは非常に喜ばしいことで、そこで先般来からここで論議になって、数口前に通した免許状のあれも、レベルを多少下げてでも教員を獲得したいとか、あるいは三年制の教員養成の方法を講ずるとかという、ある程度の次善の策もやむを得ないということになってきたのであります。この五年制の高等学校を作るということになると、卒業までには少なくとも五年かかるわけですね。この高等専門学校卒業生は、その道については正直一に言って、忌憚なく言って、現在の短期大学を出た人より確かにすぐれたのが出るということは私たちも信ずるのでありますけれども、数という点にたると、それからまた時期をできるだけ早くということになると、少なくとも五年待たなければならぬ。ところが短期大学であれば、とにかく同等学校から出てきた者を二年間である程度やらせる、そういう点があるのですが、そういう方面の調節といいますか、そういう点について、数の点でどういうふうなお考えをお持ちになっておりますか。少し複雑な問題かもしれませんが、一つついでに伺いたい。
  95. 天城勲

    天城政府委員 臼井先生の最初の御質問にございました工業高等学校卒業生のさらに上級の教育機関の点につきまして、やはり現在の段階では短期大学の存在の意義があろうかと思っておりまして、国立につきましても、現在十六の理工系短期大学を持っております。特にそのうち十一は夜間でございまして、今先生指摘のような形の学生がやはりこの十一の夜間短期大学を活用しておるのでございまして、十分その存有意義があるのじゃないかと考えております。  それから技術者の養成の数と高等専門学校との関連でありますが、御指摘のようにこの法律が予定通り成立いたしまして明年から学生募集を始めましても、出てくる学生は五年後ということになるわけでございまして、倍増計画の後半になってしまうという問題が確かにございます。先ほど村山先生のお話にもございましたが、私ども一万六千人の増員計画を立てましたときには、まだこの高等専門学校制度はございませんので、短期大学中心に一万六千人の割り振りを一応考えておったのでありますが、御指摘のようにわれわれもこの高等軍門学校卒業生については、かなり実力のついた教育ができるのではないかということを考えておりますので、一日も早く作り出したいと思っておりますけれども、倍増計画の流れと学生の学年の進行との食い違いということが最大の問題になっておりますので、今後この法案が認められますれば、明年度からの増募計画あるいは設置の動きにつきましても、一万六千人の数を中心にいたしまして、年次別にさらに検討を加えたいと考えております。御指摘のように、その間における短期大学の使命は決して少なくはないということは考えているのであります。    〔坂田(道)委員長代理退席、委員長着席〕
  96. 臼井莊一

    ○臼井委員 もう一つ高等学校を出て二年間で中級技術者と申しますか、そういうものになることは非常に必要で、そこに短期大学の使命はある。しかしながら現在の短期大学がその使命を十分に果たしているかどうかということについては、少なくとも科学技術系統では問題点があるわけで、この五年制の高等専門学校が問題になってきたということもそこにあると思うのであります。しかし、やはり短期大学内容充実させて、高等学校を出ても相当実力のある技術者を養成するという道はある。これはいずれ、今中教審先生方がいろいろ御研究でありますから、回答が出ると思うのでありますが、そこに問題があると思うのです。  そこで一つお伺いいたしますが、現在の大学短期大学を含めて、において一般教養を非常に重要視しているということはいいのですが、それがために専門科目の方が不足する。高等学校でやってきた一般教養的な科目と、大学における一般教養科目とがだいぶ重複して、それは程度は高いかもしれないでしょうが、また、勉強なり研究する方法は違うかもしれないけれども、どうも同じようなことを繰り返す。論理学なり倫理学なりやってきたものをまたやるとか、心理学をやってきたのをまた復習するというようなことになっていると思います。それは単位でありますから、選択によって補えるじゃないかと思いますが、どうもそういう傾向がある。そういう点は高等専門学校なり五年間一貫してですから重複が省ける、そこに能率的に専門に必要なところに精力が使えるということで特色ができると思うのですが、どうなんでございましょうか、相当重複的なあれがあるように思うのですが、そういう傾向がありますかどうか、その点をお伺いしたいと思います。
  97. 天城勲

    天城政府委員 現在の大学基準によりますと、いわゆる一般教養科目の必須がございます。これが人文系、自然系、社会系それぞれ十二単位ずつという系列がきまっておりまして、どういう進路にいくにしても、一般教養、人文、自然、社会系それぞれ十二単位ずつという基準的な拘束があるわけであります。短大は同じような短大基準によりまして、大学のある程度圧縮した姿をとっておりますために、それぞれ四単位ずつ人文、社会、自然の系列がございます。これが二カ年の非常に短い教育でございますので、これが専門科目との関連で特に人文、自然、社会という形で一般教養を四単位ずつとりますと、専門科目との関係で何と申しますか、若干一般科目の拘束が強過ぎまして、専門科目の弾力的な割り振りが困難であるという実情は指摘されております。また高等学校でやっておりますものと、一般教育の三系列とのそれぞれの内容重複の点も問題になっおりまして、大学につきしては、中央教育審議会において大学の問題を議論しているときにも、やはり一般教育の取り方についてもう少し弾力的な考え方をしたらどうか、特に一般教育科目と、それから専門基礎との関連ということも十分考えれば、重複や空白というものがない充実した教育が同じ期間内でもできるのじゃないかというような指摘がされておりまして、私たちも本来の目的を殺すことのないような形でこの辺の工夫はいたさなければならないということを先ほどお話したわけであります。
  98. 米田吉盛

    ○米田委員 関連してお伺いいたしますが、今技術系統の国家試験がどのくらいございますか、中級以下で。突然ですから、おおよそでけっこうです。
  99. 犬丸直

    ○犬丸説明員 ちょっと全般的に当たってみませんと、見当がつきかねるのでありますが、一、二見当たるのを当たってみますと、たとえば建築士がございます。これは国家試験がございます。技術系ですと測量士がございます。それからこれは最近できました制度でございますが、技術士というのがございます。その他資格要件をきめております試験のございますのは、ちょっと当たりましたところ、そのくらいでございますが、そのほか大学卒業資格によってございますが、今日につきましたのはそれだけでございます。
  100. 米田吉盛

    ○米田委員 私はちょっと思いついたのですが、戦前は乙種工業学校というのが相当たくさんありました。各種学校のようなもので、今の高等工業学校というのは三年間きっちりかかります。年限もかかるし、程度の高いものが養成されますが、一、二年程度で、相当の年令に達しておれば、やや高等工等学校に匹敵する実力を備える者を養成するということは、私は必ずしも三年でなくても可能だと思う。そこで町に各種学校で一年半なり二年程度のものが、ちょうど英語学校がたくさん今町にありますが、ああいったような格好で相当の技術系統の各種学校ができるということが、所得倍増の技術員を養成することに相当役立つだろう。これは文部省直接の御所管ではないはずですが、何らかのアイデアでそういう方向をつけることが必要ではないか。それからこれに関連して、そういうような教育機関ができながら、今の国家試験をこれに焦点を合わせて制度を設けていく。たとえば機械なら機械の何級というものは今までありませんが、何級程度機械技術士であるとかいうような一つの国家試験のような制度を設けていけば、実力をいろいろの方法で養成するというような篤学の士がたくさん私は日本にあると思う。従来、これは教育機関を直接所管しておられる文部省のお仕事ですから、高等工業学校であるとか、今の高等専門学校であるとか、そういったようなものが多く出ておりますが、そういう国家試験というような制度をこの際創設せられて、これは場合によれば短期大学に匹敵する程度の、やや高級な試験も必要であるかもわかりません。それから高等学校程度のもの、もしくはそれのちょっと下の昔の乙種工業学校程度のもの、そういうものをずらりと並べて、そしてその選考範囲をうんと狭めてやられるというようなことになれば、部分々々に通じた人がその資格を取るというようなことが相当可能になってくる。これは何も大都会でなくても、こういう方法であれば勉学の道はできるだろう。ことに昼間工場に通っておって、実際面は十分知っておって、あと学問の方を少し習えばいい、こういうようなことでかなり私はこれが助けになるのではないかと思います。そういうような基本考えから国家試験の制度を創設していく。巧妙に細分化して、大まかではいけないですよ。たとえば一級建築士とか二級建築士というような非常に広範囲の学問を習得しなければ合格できないような高度の、しかも広い範囲のものでは、これはこなしきれない。そうでなしに、非常な部分的々々々のもので、程度もやや低いもの、それから段階的に、それを取れば、今度はもう一つ上の段階のものを取るというような制度の工夫をすることによって、学校教育のほかに、補充的にかなり大きなものが私はできなくちゃならぬと思う。今、終戦後、英語学校というものは御承知のように非常に多いのですが、あれほどいかなくても、私は相当な分量がこなせなくちゃならなとい思うので、そういう方面の御工夫を一つ大臣ともども御研究を願って、何らかの打開を私は期待したいと思っております。
  101. 天城勲

    天城政府委員 今の御質問の御要旨は私たちも非常に同感でございますし、また教えられるところがたくさんある問題点だと思うのでありますが、こまかいことは今手元に資料がございませんのでわかりませんが、労働省との関係で現在かなり多くの技能検定が行なわれております。その技能検定を行なうために、技能検定を通るための教育訓練をどういう形でやるかということで、御指摘のように、非常に種類の多い各種学校が現在できております。英語学校、洋裁学校ということじゃなしに、工業関係技術的な各種学校が現在できております。もう一方私たちの方の所管では、社会教育通信というか、通信教育の形でもって最近は技術系統が非常に出て参りましたが、この教育と技能検定を結びつけていけば、今御指摘のような形の方式によっても幾つかの技術者の養成ができるのじゃないかということはわれわれも考えてはおります。特に倍増計画の流れの中で中学校から高等学校への進学者が非常にふえて参ることが見込まれるのでございますが、なお中学校を終えて高等学校へ行かない十五才以上の青少年の教育をどうするかということを、私たちも昨年いわゆる教育白書で指摘したわけでございます。そういう青少年にも何らかの形での技能教育あるいは技能訓練を授けるという意味で、今申し上げました各種学校あるいは通信教育というようなものを最大限度に活用し、それに今労働省の考えておられる各種の技能検定をかみ合わせていけば、青少年の教育という面からも、また社会のそれぞれの技術を持った人たちの養成ということからもいいんじゃないかということを考えて、よりより検討はいたしておりますけれども、現在数字的ないろいろな資料を持ち合わせておりませんので、大へん抽象的でございますけれども、そういうことをお答え申し上げておきます。
  102. 竹下登

    ○竹下委員 先ほど私が中級技術者についての概念についてお尋ねしたわけでありますが、ただいまも御答弁にございました通り科学技術会議諮問第一号に対する答申におきまして「研究または生産の場において、研究者または技術者が組織的にその活動をおこなうに際しては、その一般指導の下に、これらの者の専門的補助者となりうる者、すなわち中級技術者や研究補助者の存在」云々、こういうふうに書かれてあります。またさらに中級技術者の問題につきまして「大学卒業者のそれが未知領域を自力で開拓しうるための訓練であるのにくらべ、むしろ既知の技術を用うる能力の修得」が中級技術者に必要であるというような書き方がなされてありますが、そうしたところからいたしまして、私はこの高等専門学校において学ぶことによりまして養成される技術者というものを、およそ理解することができるのでありますけれども、あえて私がこういうことを申し上げるゆえんのものは、高等専門学校というのは、学校教育法に「学校とは、小学校、中学校高等学校大学、盲学校、聾学校、養護学校及び幼稚園とする。」とありますが、その「大学」と「盲学校」との間に「高等専門学校」というものをはっきりと加えるというのがこのたびの学校教育法の第一条の改正でございますから、あくまでも学校教育法に基づく学校でございます。そこで中級という言葉から受けるところの印象というもの、そしてそうしたもろもろの科学技術会議答申の抜粋等から受ける印象というものが、いわゆる高級があり初級があり、その間の技術、テクニック、ハンドリング、そうしたものの格づけであるような印象を与える。それがゆえにこそ、これがインスタント教育であり、あるいは産業界に従属するものであるという批判も生む一つの要素となっておるのではないかという感がございますので、そこで提案理由の中で申されております中級技術者というものは、そういう意味一つ技術水準からする中級であるとともに、技術改革のこの世界の中にあっての中堅的な役割をする技術者、こういう考え方で私はこれを理解したいと思うのでありますが、その点について大臣の御所見を承りたいと思います。
  103. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ちょっと明確に申し上げかねる面もございますが、竹下さんが言われたのとほぼ同じような気持で私も受け取っております。話が少しそれますけれども、先刻もちょっと鈴木さんにお答えした中にあったかと思いますが、所得倍増になぞらえて申し上げれば、大学卒業程度科学技術者が今のままだと十七万人不足をする。そこで大学学生定員を十年後に一万六千人ふやし、累計すれば七万人余りが供給できるが十万人近くが足りないということで、申し上げぬでも御承知の通りの数字が出ておりますが、その大学卒業程度科学技術者という中には四年制の大学短期大学を想定しておるわけでございます。その表現の仕方からいいますと、上級、中級などという差別はなしに考えておるわけでありますが、それと学校制度からいって、学校教育法の中に書いてあります今お読み上げになった学校の分け方は、短大というものは特に出ていないで、大学の一種としてその範疇に入っておると思うわけでありまして、学校そのものの分け方と、身につけた技能あるいは技術というものを中心に上、中、初と分けることと、概念の分け方は二種類になっておると意識するわけでございますが、学校制度等から申し上げれば、高等専門学校大学に準ずるものという理解をいたしております。技能ないしは技術というところからいけば、四年制大学に対しましては、短大と並んで中級技術者だ、こういうふうな概念の受け取り方で私も考えておるつもりでございまして、厳密な学問的な根拠あるいは法律そのものに基づく定義づけというものはございませんが、今竹下さんおっしゃったとほぼ同じような受け取り方をしております。
  104. 竹下登

    ○竹下委員 ただいまの御答弁でございますが、私があえて申し上げましたことは、その学校の中で教育を受けておる学生というものは、それは老人もときにはおりますけれども、ほとんどが私どもよりも若いと思う。そういう若い青年が夢なり希望なり、あるいはある種のロマンチシズムなりヒロイズムなり、そうしたものを持って学ぶ際、おれは中級技術者の養成機関におるのだということから受ける印象よりも、私は大臣が提案理由の中に言っておられます中堅技術者であるというその中堅という言葉から受ける印象というものが、学生にとっては私はとうといものである。そういう意味においてあくまでも学校でございますから、そこでそうした青年の夢とか希望とかそうしたものを総合して勘案した場合の中堅技術者というものでもって、今後私はこれの諸般の問題に中堅技術者の養成であるという提案理由にお示しのごとく、そういうものの考え方なり気がまえで臨んでいただきたいという意味のことを私は申し上げたかったのでございます。それがゆえに中級技術者の定義とか、そういうことから引っぱり出したのであります。そこに一つの心がまえの問題があろうかと思うのでございます。  さて、各般の点から質疑を展開いたします中においてきわめて明瞭にせられましたことは、いわゆる一つの産業界のみからの要請に基づく、それに従属したものをとっさの場合に考えたものではないということ、明らかに教育的見地から、各般の角度からこの新しい一本の六・三・五制という柱が必要であるという判断の上に立って、この高等専門学校法というものが提案されたということは明瞭になったと私は思います。  そこで最後に、この一本の柱というものが、中教審の昭和三十一年十二月十日の答申においてそれの一つの根拠となっております。ところがこの答申はあくまでも短期大学制度改善についての答申である。すなわちこれを拝読いたしますと、そこに高等専門学校を必要とする一つの思想が出て参りますものの、これ自体はあくまでも短期大学制度改善についての答申である。だから中教審というものは文教行政については大きな権威ある存在であることは私も認めるのでありますけれども、その権威はもとよりのこと、さらにこの科学技術者の振興方策についての答申、そうしてまた各国における学校系統図及び高等教育機関の種類等、私もここに用意いたしておりますが、そうしたもの、そうして産業界また教育界、中小企業団体、科学技術会議、府県、地方団体また教育者の一つの団体でありますところの高等学校長会、そうした各方面のものの意見を勘案して、ここに一本の柱を立てたという態度を強く堅持せられまして、将来この高等専門学校教育の運営について積極的な諸施策を打ち立てられることを要望いたしまして、私の質疑を終わります。
  105. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 御要望に対しまして、これ以上かれこれ申し上げることもないと思いますが、まさに今おっしゃたような考え方の新しい制度を作る、付加するという建前であることは午前中の御質問に対してお答えを申し上げた通りでございます。あくまでも教育目的社会に役立つ人を作るということもありますが、その前に学生生徒に、青少年によりよき教育の場をあらゆる努力をして作り上げるということが根本であって、その結果が産業界の要請、経済界の要請、日本の進展に寄与するということにあわせてなることが当然理想として考えられねばならない。そういう必要に応ずるための制度としての高等専門学校であることは申し上げるまでもございません。そのことをコンバインする意味において最後に御要望をいただいたと理解いたしまして、蛇足でございますが、以上のことを申し上げます。
  106. 濱野清吾

    濱野委員長 小林信一君。
  107. 小林信一

    ○小林(信)委員 せっかく高等専門学校の設置ということがいいことであるという雰囲気の中に私のような質問をすることはいけないと思って実は遠慮したのですが、坂田委員から時間をなるべくかせぎたいということで質問せよという御命令ですから、せっかくの御趣意を無にしてはなりませんので質問したいと思います。と申しますのは、私も今竹下委員の御質問をお聞きしておりまして、これになお私としてもお聞きしたい点がたくさんございますので、その点をこれから質問して参りますからお答え願います。  まず第一番の社会の、要請という問題で質問が展開されたわけですが、お聞きしておりまして、竹下委員はきわめて簡単にこれを了解されたのですが、もう少しその要請の内容というものをどういうふうに文部省は受け取っておったかという点も私はお聞きしたいのでございます。と申しますのは、どこから要請があってどういうところから要望書が出ておったというその要望書の出た結論を申されたのですが、その人たちは、どういう趣旨でどういう目的をもって要請されたか、その点を逐一お伺いしたいと思います。と申しますのは、私の疑義をはさんだのは、従来の六・三・三・四という制度の中で作られる技術家というものが、どうも不満であるということだとするならば、これにこたえて、この高等専門学校制度というものを作る文部省は、自分の今まで維持しておった学校制度というものを無視したことにもなるわけでございまして、この点、もう少し明確に御答弁がなされないと、私は非常に疑惑を持つものだと思うのです。それで工業高校では現在の技術界なり産業界にとって程度が低いといったようなことを文部省はお考えになったのか、あるいは大学卒業生の程度では少し高過ぎるというようにお考えになっておるのか、ここら辺に非常に疑問があるのです。単に要望書が出たから、それに沿うということであれば、かえって竹下委員の問題にされておりました、単に工業界の要請に迎合した、追随した文教行政であるということをみずから裏書きしておるというような形になるわけでございまして、もう少しここら辺は明確な御答弁を明示していただきたいと思います。
  108. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 経団連その他からの要望があったということは、私は一つのアクセサリーだと心得ております。それより以前に六・三・三・四の学校体系というものは戦後今日まで習熟して、その体系それ自体もちろん本来の建前として堅持していくべきものと私は心得ております。ですけれども、いわゆる単線型の典型的なものであるわけですが、そのたくましい単線型の学校体系というものはそれ自体りっぱなものであって、堅持すべきことは今申し上げた通りですが、およそ学校教育について国が国民に対してサービスするという側に立って考えるという角度から申しますれば、教育のための教育であるはずがない。あくまでも国民本位の、青少年本位の青少年の幸福につながるということが基本的な目的でなければならないと思うわけでございますが、そういう意味で受け取ります場合に、単線でなければ絶対にいけないのだということはないと私は思います。むしろ諸外国の例にも見ます通り、諸外国の例をとるまでもなく、教育を受ける側に立って見ました場合に、その人々の一人々々の能力なり環境なりという諸条件に応じていろいろな教育体系が、極端に申し上げれば、多ければ多いほど教育機会に恵まれるはずでございますから、そのことが基本的に目ざされねばならないと思う次第でございまして、そういう角度から見ます場合に、同時にまたそれが社会人となって学問そのものの探求におもむく人もございましょうし、学問なり技能なりを学校教育を通じて得まして社会人となる、その社会人となった場合に、社会の必要と密着してその人個人の生活が幸福であり、安定するという結果づけも当然考えねばならないものと思うわけであります。そういう意味から、家庭の事情その他でもって六・三・三・四のコースではいけないが、しかし六・三・五という体系ならばいけるという人も当然あるわけであります。そのことがまた社会に出ました場合に、現実に要請もあり、同時に当面経団連が要請したからけっこうだということも一つのアクセサリー的には考え得るのですけれども、技術革新の現在から将来を通覧してみましても、その線に立って考えて、ますますその必要性は多くこそなれ少なくなるはずがないということも疑いなき事実かと思います。青少年そのものの幸福につながりつつ、社会の要請にもこたえる、それがとりもなおさず本人社会人としての幸福につながる限りにおいては新たなるものが考えられてしかるべきだということに根ざしての制度だと私どもは考えておるのであります。そのもっと客観的なものの考え方の裏づけとしましては、中教審で多年検討されました結論、現在ある短期大学との関連ではございますけれども、高等学校とあと二年ないし三年を結びつけた教育の必要性を学問的に、あるいは政策的に検討されました結論が出ておりまして、そのことに論拠を置きながら、社会的な必要性、将来に向かっての当面のそういう要請——要望書ではなしに、長きにわたって見通しましても、その必要性があり、結びつくものがあることを信じますがゆえに、こういう制度を立ててしかるべし、かように思ったことであることを申し上げさしていただきます。なおお尋ねの具体的な要望の趣旨等につきましては、必要であれば、政府委員なり説明員から補足さしていただきます。
  109. 小林信一

    ○小林(信)委員 先ほど私が申し上げました通り、竹下委員の方からの御質問に答えた文部省の態度がまことに簡単であるということから、その点をさらに深くお聞きしたいという点でお尋ねしたんですが、はからずも大臣のこの法案提出に対するお考えが述べられたんです。これは私もその点についても一つの疑問を持っておりましたので、機会を見てお尋ねしようと思っておったのですから、この機会にその点をさらに大田とお話しをしておきたいと思うのです。従ってしばらく最初の質問の趣旨はおきまして、お話をして参りたいと思います。  と申しますのは、大臣は、非常に希望はあり、素質は持っておっても、進学の道というものは財政的なものから阻止される人たちがたくさんにある、こういう人たちの希望を満足させるためにも、単に一本の体系というようなものを堅持していくことが文教行政の目的ではない。やはり複線というようなものを作って大ぜいの国民の満足を買うということがまた必要であるという点から、前には教育機会均等という言葉をお使いになられまして、この高等専門学校の設置に対してお考えが述べられたんです。私は機会均等ということは、教育行政をする者の大きな責任である。これは十分に考えていかなければいかぬという点では、私も賛成するんですが、この機会均等という意味をこれへ当てはめて大臣がいかれることは、趣旨はわかるんですが、何か意味のはき違いをするおそれがありはしないか、私はこう思うわけなんです。要するに、国が衆知を集めて作った六・三・三・四という学校の体系というものは、もちろん大臣が御心配になられるように、国民全体を満足させるようなことができないかもしれません。しかしそこにはいわゆる教育機会均等という政治責任というものが、時には奨学資金を与えるとか、あるいは助成方法をもちまして、そういう人たちの進学の道を切り開いていくということが機会均等であって、この機会均等そういう人たちに満足させるために今の体系を改めて、すぐ単線型を複線型にしていくことが機会均等であるということになってしまうと、機会均等の本来のものが失われるような感もするわけですが、その点はいかがですか。
  110. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 本来のと申しますか、教育機会均等の理念というものは、厳密に言えば、むずかしくてあしらいかねる面もございますけれども、人おのおの能力自分自身の社会的環境というものは固有のものがございます。  その固有のものに応じて千差万別でございましょうけれども、しかしその人なりの能力条件のもとに教育を受けようとすれば、受け得る機会を与えるというそのことが教育機会均等に対する国としての責任の点ではないかと思うわけでございます。  そういう意味から申し上げまして、四年制大学の、しかも学問のうんのうをきわめ、人間的教育を受けると同時に、研究を主眼とするという大学に行きたい、行き得る人、そういう能力のある人もございましょうけれども、ここに御提案申し上げているような、五年間の教育を通じて工業に関する専門的な教養を受けて社会人となるのが最も適した人もあまたおるであろうことは当然考えられるわけであります。もしこの制度なかりせば、四年制大学にはいけない。従ってやむを得ず工業高等学校で終わらざるを得ない、そのあとは社会人となって産業界にでも入って、その会社の技能教育施設にたよるほかないというコースをたどるかと思うのでありますが、そういう人があると仮定いたしまして、その人々に対して今申し上げた意味合いでの教育機会を与える、そういうことで重要な意義があり、使命を果たし得る制度だ、かように理解するわけであります。
  111. 小林信一

    ○小林(信)委員 大臣の気持はよくわかるわけで、その気持は国民のひとしく賛意を表するところだと私は思います。しかしそれには教育基本法でうたっております、教育機会均等でなければならないというこの精神が十分に生かされた場合には、私は大臣の説にほんとうに賛成をするものです。と申しますのは、十分な教育機会均等の施策というものがなされておるならば、これは理想論かもしれませんけれども、国の費用でもって、その本人希望があり、しかも素質があるならば、うちの財政がどんなでありましょうとも、四年制の大学卒業さすような道が講ぜられると私は思うのです。これは、世界各国のいろいろな事例が先ほども取り上げられまして審議が進められたのですが、世界各国の中に、全部学費を国がまかなって、そして本人の学究の目的を達成さしているところもありますし、高度の科学技術をそのために高揚しておる国々もあるわけなんです。従って私は、この本人のそうした進学の希望を満足させる教育機会均等の政治責任を果たすということももちろんございますが、今非常に科学技術の高揚というようなことを要望されておる場合とすれば、もっと国民全体の科学性、あるいは技術に対する知識、こういうふうなものを高揚する道も考えられなければならないと思うのです。こんな一部分の高等専門学校の問題でもって日本科学技術の問題が解決されるなんということを言っておることは、私は、国としては、どっちかといえば時代におくれた措置だと思うのです。国民全体のそうした水準を高めていくということが大きな目標であって、世界各国はこの点に相当な努力を払っておると思うのです。山間僻地の学校は、町村の財政が苦しいために十分な科学知識を身に傭えるような設備などは全然されておらないわけなんです。そういうところに政治的な配慮があってこそ、私はほんとう日本の科学を進展させる、あるいは、産業を進展させる道があると思うわけなんです。そういう機会均等ということが大事なものであって、こうした前提となるべきものが、とにかく私の考えでは、残念ながら今の施策としては非常に不十分だと思うのです。その不十分の問題をおいて、こういうふうな道を講ずることが教育機会均等の道であるというふうに——私はそれほど極端には承っておりませんけれども、国民の誤解を受けるようなことは、私は問題であると思うのです。これはいずれ大臣に特別に私は御質問申し上げて——この高等専門学校の最も根幹となるものでございますので、お伺いしようと考えておるわけなんですが、これは関連質問でございますが、官房長の方から、先ほどの答弁をもう少し深めて御説明を願いたいと思います。
  112. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 ただいまの点でございますが、後ほどまたお尋ねがあるかとも承ったのですけれども、今おっしゃることは私も同感でございます。教育機会均等というものがこの高等専門学校の問題で尽きるとはむろん思っていないことは、先刻申し上げた通りでございまして、第一に、義務教育にいたしましても、理想に遠ざかることはるかなるものがあることを痛感いたします。また、地域的に申しましても、市街地と山間僻地とでは相当の格差があるという事実も認めざるを得ません。その点についての努力がまだ足りていないことも痛感する課題の重要なことの一つでございます。それは今後努力していくべきことであって、それをなおざりにしてよろしいとは毛頭考えておりません。さらにまた、六・三・三・四という学校体系の中で今の大学制度の実態を見ましても、まだ十分でないことがたくさんございます。それも痛感いたします。今日これも義務教育と同じような意味において重大であり、努力すべき分量が今後に残されておると考える次第であります。それはそれとして、あらゆる努力を注ぎ込む、それはそういうことだと御理解下すって、この問題をまた一つのこととしてお考えいただきませんと、私どもの本意ではないのでございますから、その点は一つ御理解をいただきたいと思う次第でございます。また、経済的条件なり本人の生活環境のゆえに、金持ちの子弟は四年制の大学に行けるが、貧乏人であるから行けないということ、これもむろん望ましいことではないわけでございます。ただ、たとえば共産主義の国におきましては、教育は国費でやっておるかとも想像いたしますが、よしんばそういう国にいたしましても、やはり日本でいうならば、六・三・三・四の本来の大学に行く者も能力に応じてやられるでありましょうし、現にソ連にもあると承知しております。たとえば高等専門学校のごときところにいく適性の人は、そのコースを経て国費でもって育成するということたらざるを得ないのが現状で実態でありますから、その基本的な政治条件のあり方は別として、日本日本なりの、今日ただいまの状況下におきましても、ソ連ならソ連と同じように、大学に行くべき本質を持った人はその方に行く、この方が適当である人はこの方に行くという自由に選択の場を与える。そのための制度を打ち立ててその求めに応じるという意味において御理解いただけようかと思って御提案申し上げているのであります。
  113. 小林信一

    ○小林(信)委員 私も大臣の気持はよくわかるのですから、大臣、そういう誤解を受けないような御発言をなさることが大事だというような意味で実は申し上げたのです。四年制の大学へ行けないような子供たちのために二年減らした五年の課程で一人前にさしてやろうということをあまり強調されれば、しかも教育機会均等の行政を責任からやっておられるというようなことを言われれば、本来の教育機会均等という問題はなくなるという考えで私どもはおるわけなんです。大臣にこの点は特に御注意していただきたいと思うのです。  そこで、だいぶ混乱をしてきて委員の連中もあきてきておるようでありまして、私の方も実が入りませんが、竹下委員の質問条項で、今のような、たとえば社会の要請があるとか。そうしたら、官房長の方から数を盛んに列挙した。そうしたらもう竹下君はそれでもって了解されちゃったのですが、これを文部省がどういう意味で了解したか。そういうことが、どうも今の質疑応答の中にはたくさんあるわけなんです。私は、関連してそれを御質問申し上げようと志して立ったわけなんですが、どうも、あまり御迷惑がかかるようですから、それだけでとどめたいと思うのです。
  114. 天城勲

    天城政府委員 先ほど私、要望の意味が非常に広いと了解いたしたものですから、どういう方面からあるということだけを申し上げたわけでございますが、小林先生から特に、さらに中身に入ってのお話でございます。私たち、やはり中教審でいろいろ御審議いただきましたことを中心に問題を考えております。先ほど申し上げましたように、二十九年から今日まで三回にわたってこれに関連する答申がございますが、それも一々申し上げると非常に長くなりますので、たとえば第一回、昭和二十九年十一月十五日の答申におきましては、「大学入学者選考およびこれに関連する事項についての答申」ということで、大学入学者の試験問題に関連して大学制度に及んだいろいろな事項についての答申の中で、大学の入学試験の方法についてこうしたらというような御意見と関連いたしまして、「大学の入学志願者数に対し、大学の収容力が少ない現状にかんがみ、収容力の増加を図るということも検討すべき問題であるが、それよりも、まず各大学に対する志願数を、平均化することに努力することが必要である。その目的を達するため試験方法ばかりでなく、制度その他の点についても考慮する必要がある。」ということで、大学にはいろいろな性格がある、大学の性格をそれぞれはっきりするということにすれば、学生自分の志願と合わせて行く学校もはっきりするじゃないかと  いうことの一環として、その中で、「短期大学課程高等学校課程とを包含する新しい学校組織を認めること、充実した専門教育を授けるためには、五年制の課程において」云々、こういう答中が第一回にございます。第二回目の三十一年の答申は、さきに大学入学者の選考に関連して短期大学制度の改善について答申したけれども、その後というわけで、今度は短期大学そのものについていろいろと答申がございまして、その中で、短期大学の恒久化、特に五年の一貫教育という問題につい  て触れておるわけでございます。それから三十二年の十一月の御答申は、特に科学技術教育の振興方策についてという観点からの答申でございまして、これにおいても、科学技術の振興についていろいろ触れておる中で、「短期大学高等学校とを合わせた五年制または六年制の技術専門学校を早急に設けること。」というふうに出ておりまして、いろいろな角度から考えられて、やはり五年制の一貫教育が必要だという御答申を、文部省といたしましては一番教育的に考えておられる中教審からいただいておるわけであります。これに関連いたしまして、われわれは従来から幾たびか案を具して国会の御審議をお願いしておった経過がございます。  なお、先ほど、社会一般の御要望ということで、このほかに経済関係の団体からもございますし、そういうことでその例を申し上げたのでございますが、経済団体はそれぞれ経済団体の立場から、たとえば昔の専門学校がなくなったために、それから供給された技術者が空白を来たしておる、そういう教育機関が必要だというような御意見や、短大に対しての御批判から、高等学校段階と合わせた五年制の専門学校が必要だというような——これは経済界の立場からの御要望でございます。各種のそれぞれの立場からの御要望があるわけでございまして、それを総合して教育的にこれがいいという考え方でこの案を出したわけでございます。
  115. 小林信一

    ○小林(信)委員 文部省というところは学問の一切をつかさどるところでございますので、文章なんかも、その要旨というのをちゃんとつかんでお話を願うようにする一番大事な府だと私は思うのですが、今のお話はまことに中心をはずれておるような気がするのです。と申しますのは、竹下委員が質問しましたのは、経済界の要望にこたえて今度この専門学校を置いて、とかく産業界に追随をする文部省であるというようなことをいわれておるからどうかという点で質問をされて、そうでないという結論を両者でおとりになったわけですから、その点を究明するために今秋は質問をし、御答弁を願っておるわけなんです。もっと簡単に申し上げれば、今までの工業高校卒業した程度の者では技術が十分でないというのか、あるいは大学卒業生の方は、技術は上なんですが、これを使うのに金がかかって困るからもう少し安い技術家がほしいというのか、一般はそういうような疑惑のもとに、文部省は産業界に追随してこういう法案を作ったのじやないか、こういうようなことから出たと思うのですよ。そういう点について文部省はどう考えるか、私はそこのところを端的に御説明願いたいと思うのです。従来の工業高校程度では不十分というのか、大学出では少しよ過ぎるというのか、国民の疑問とするところはきわめて簡単なんですから、その点を聞きたいと思うのです。
  116. 荒木萬壽夫

    荒木国務大臣 政府委員からお聞きになったと思いますが、私はこういうふうに受け取るのであります。学校教育は青少年の人間としての完成を目ざすためにやるべきものであることは基本的に当然でございますが、その結果が高等遊民を作り中級遊民を作ることになったのではいけないと思います。そこで遊民にならないようにという角度から言いますと、産業界の要請というものは遊民にならないという一つの保証でもあるという意味において意味があろうかと思うのであって、産業界の、経団連の要請があるからそれに応ずる学校制度考えなければならぬというのは本末が逆だろうと思います。先ほど申し上げましたような意味合いで、青少年の特性なり能力に応ずるもろもろの制度がある方が教育機会均等意味においてはその趣旨にかなうゆえんであるというのがまずあって、しかもそれと同時に、ただ学問的には相当程度にいったのだけれども、社会に出ては使いものにならぬというのではいかぬと思います。その考慮を払うについての参考の意見として、経団連その他の団体からの要請というものが裏づけするというつながりに本来は逆に理解するのが当然のことだ。その理解の上に立って学校制度のことを考えるのが私どもの立場だ、そう純粋に思って、この問題を御提案申し上げたのは先刻申し上げたことに対する補足的な説明として、お許しをいただきたいと思うのであります。
  117. 小林信一

    ○小林(信)委員 大臣は御時分が純粋な気持を持っておられるから、この点にいささかも疑問もなく、今のような御答弁をなさるのですが、何か今までの工業高校では不満である、大学卒業も何か不満であるというようなことに応すれば——今の六・三・三・四というのは、先ほども申しましたように、国民の衆知を集めて作った学校制度なんです。それを一応否定されるような形であって、それを文部省自体が了承したら、今までの学校制度というものは非常に威信のないものになってしまうわけです。今日までこれを持続してきた以上は、何かこの六・三・三・四というものには国民全体の信頼があったわけです。それを、要望があったから簡単にこれを直すというようなことになりますと、学校制度そのものに権威がないと同時に、文教行政にも非常に権威がないことになってしまうわけなんです。だから私は、今産業界が要望しておるものは、高等工業程度では少し技術が低いというのか、あるいは大学卒業生は高くて使いにくいというのか、こういうふうな国民の単純な疑問を解決する答弁をしてほしい。大臣のおっしゃることを聞いておりますと、かえって今度は学校制度というものをみずからが否定してくるような形になってくるのですね。この点について、大臣でなくて、官房長の方からお伺いいたします。
  118. 天城勲

    天城政府委員 これは先ほど大臣も触れましたように、学校制度、そういうことを申し上げると少し理屈ぽくなりますけれども、学校制度はやはり国民の要望と申しましても、進学する青少年の立場、父兄の立場、また卒業生を受け入れる社会立場、それから教育上の理論とかいうようなことがいろいろ考えられた末に定めらるべきものであろうと私たちも承知いたしておりますので、今小林先生の御質問のように、端的にここのところとここのところがどうかという御質問だけでこの問題をきめたというふうに考えることは、私たちも無理だと思うのでございますが、それらのことを前提に置きまして、今先生の御質問の点をお答え申し上げますれば、産業界の要望といたしましては、大学高等学校も、またこの高等専門学校卒業レベルの技術者も、いろいろな段階の技術者が必要だというようなお考えだ、こういうふうに了解いたします。
  119. 小林信一

    ○小林(信)委員 いろいろな段階の技術者が必要である、これをもっともだというふうに文部省は了解するわけですか。
  120. 天城勲

    天城政府委員 ですから、お答えいたしますが、技術の進歩に伴う産業界のいろいろな規模や発展から考えまして、これは大企業もございますし、中小企業もございまして、いろいろな企業の姿がございます。それらを全体考えました場合に、結論的に三種類くらいの技術者が必要だろうということをわれわれも考えております。
  121. 小林信一

    ○小林(信)委員 私も先ほど技術、家に高級、中級、初級という程度をつけるというお話を聞いておって、両者とも、答弁をする方も、質問をする方も、そういうふうな形が当然あるべきだという形でもってお話し合いをなさっておったのですが、科学技術ほんとうに進歩させていく、産業界を伸展させていくというようなときに、技術家にそんな初級、中級、高級というようなものを作っていくということは、ほんとうはかえって科学技術の伸展することを阻害するものであるかもしれない、こういうふうに私は思うわけなんです。もちろんそういう階級を作って、初級の者は中級になろう、中級の者は高級になろうというような意欲をそそることは、私は効果があると思うのです。だがそういうふうなものをあらかじめ作っておいて、そうして学校制度の中でも初級のものを作る、中級のものを作る、あるいは高級のものを作る、またその中を今は三段階であるけれども、五段階にしたり、十段階にしたりする方法もあるかもしれませんが、そういうことを学校教育というものはあらかじめ想定をしてやるべきかどうか。そうすると従来の文部省の文教行政として作られた六・三・三・四というものは初級と高級しか作らなかった、こういうふうに解釈されてもよろしゅうございますか。それはやはり文部省は了承するわけですか。
  122. 天城勲

    天城政府委員 先ほども竹下委員の御質問で、上級、中級、初級という概念は、私どもも定義的に申し上げることは非常にむずかしいということを前提に置きまして、科学技術会議答申で使っております定義はこういうことがございますということを、御披露かたがた申し上げたようなわけで、初めから社会の階層を作るような意味学校制度を作ることは、御指摘通りわれわれは考えておらないわけでありますが、学校制度を国の制度として考える場合には、やはり先ほど申し上げましたように青少年の立場も、父兄の立場も、受け入れる社会立場も、いろいろな面を総合して考えなければいけないのではないかと思うのでありまして、現在の技術革新中心とした産業の伸び、産業社会変化というようなことから、特に今日そういう段階の技術者の要望も非常に強くなってきたということを、われわれも認識しておるわけでございます。
  123. 小林信一

    ○小林(信)委員 これはこの問題だけでなく、文教行政、科学技術振興というふうな基本的な問題で、もっと文部省の見解というものをお聞きしなければならぬような気がするわけなんです。初級、中級、高級というふうなものは、社会が作るなら社会の中で作ってもらえばよい、その基礎的なものを学校教育の中では作っていけばよいわけです。それで高度の科学技術を伸展させるためには、せっかくの優秀な者が、初級程度と評されるいわゆる工業高校でもって終るような者がありましたら、これは行政の責任で助成方法を講じて大学にまで進む道を開けば文部省はいいわけです。それを社会が作ってきた、何階級かに分けた技術体系をあらかじめ教育の中に入れて、これに応じようというようなことこそ、いわゆる財界、産業界の要請に追随する教育行政にもなると私は思うのです。この点は簡単な御答弁でございますので、文部省の中ではもっとしっかりしたものをお持ちになっておると思いますから、いずれ日をあらためてお聞きし、私たちもこの点を勉強して参りまして、なお深めて参りたいと思います。  これで質問を終わらしていただきます。
  124. 濱野清吾

    濱野委員長 本日はこの程度とし、明十三日午前十時より参考人より意見の聴取をいたすことになっておりますので、念のために申し添えて、これにて散会いたします。    午後五時十七分散会