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1961-04-21 第38回国会 衆議院 文教委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月二十一日(金曜日)     午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 濱野 清吾君    理事 臼井 莊一君 理事 坂田 道太君    理事 竹下  登君 理事 中村庸一郎君    理事 米田 吉盛君 理事 小林 信一君    理事 高津 正道君 理事 山中 吾郎君       伊藤 郷一君    伊藤宗一郎君       上村千一郎君    大村 清一君       久保田藤麿君    田川 誠一君       高橋 英吉君    灘尾 弘吉君       花村 四郎君    松永  東君       松山千惠子君    南  好雄君       八木 徹雄君    村山 喜一君       門司  亮君  出席国務大臣         文 部 大 臣 荒木萬壽夫君  出席政府委員         文部政務次官  纐纈 彌三君         文部事務官         (大臣官房長) 天城  勳君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 清水 康平君  委員外出席者         文化財保護委員         会委員長    河原 春作君         労働事務官         (職業安定局職         業訓練部長)  有馬 元治君         専 門 員   石井  勗君     ――――――――――――― 四月二十日  委員田川誠一辞任につき、その補欠として山  口喜久一郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山口喜久一郎辞任につき、その補欠として  田川誠一君が議長指名委員に選任された。 同月二十一日  委員原田憲君、八木徹雄君、井伊誠一君及び鈴  木義男辞任につき、その補欠として久保田藤  麿君、伊藤宗一郎君、佐々木更三君及び門司亮  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員伊藤宗一郎君、久保田藤麿君、佐々木更三  君及び門司亮辞任につき、その補欠として八  木徹雄君、原田憲君、井伊誠一君及び鈴木義男  君が議長指名委員に選任された。 四月二十一日  養護教諭必置に関する請願(板川正吾紹介)  (第二七四三号)  同(岡良一紹介)(第二七四四号)  同外一件(下平正一紹介)(第二七四五号)  同(原茂紹介)(第二七四六号)  同(平岡忠次郎紹介)(第二七四七号)  同(山崎始男紹介)(第二七四八号)  同(山花秀雄紹介)(第二七四九号)  同外一件(和田博雄紹介)(第二七五〇号)  同(板川正吾紹介)(第二八二七号)  同(岡良一紹介)(第二八二八号)  同外二件(西村力弥紹介)(第二八二九号)  同(原茂紹介)(第二八三〇号)  同(八木一男紹介)(第二八三一号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第二八三二号)  同外二件(和田博雄紹介)(第二八三三号)  同(岡良一紹介)(第二九〇六号)  同外一件(西村力弥紹介)(第二九〇七号)  同外一件(山花秀雄紹介)(第二九〇八号)  同外二件(和田博雄紹介)(第二九〇九号)  同(三鍋義三紹介)(第二九九七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 四月二十日  高等学校生徒の急増に伴う対策費増額に関する  陳情書(第  六一八号)  公立学校施設費国庫補助算定基準坪数引上げに  関する陳情書  (第六一九号)  義務教育学校施設費国庫負担法の一部改正等  に関する陳情書  (第六四五号)  文教施設整備充実に関する陳情書  (第六四六号)  教育制度改善等に関する陳情書  (第六四七号)  学校教育法の一部改正に関する陳情書  (第六四八号)  義務教育学校建築費全額国庫負担に関する陳  情書  (第六九二号)  義務教育施設整備に関する陳情書  (第六九三号)  高等専門学校制度創設に関する陳情書  (第六九四号)  高松市に国立工業高等専門学校設置に関する陳  情書(第七三三  号)  同(第七八一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提  出第六八号)  文化財保護に関する件      ――――◇―――――
  2. 濱野清吾

    濱野委員長 これより会議を開きます。  文化財保護に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。高津正道君。
  3. 高津正道

    高津委員 去年の五月七日に、あなた方美術工芸課査問会が持たれたでしょうか、どうでしょうか。まずそれをお尋ねします。
  4. 清水康平

    清水政府委員 査問会というお話でございましたが、ちょっと記憶がないのでございますが……
  5. 高津正道

    高津委員 文部技官小山富士夫氏は、去年五月六日の日付で、愛知県瀬戸市の瀬戸史編さん委員で、古瀬戸研究をやっている人に対して実に長文手紙を出されているのです。プリントになっておりますから、私も手紙を読みましたが、三十円も切手を張ってある非常に長文のものです。その中に次のような一節があるのです。明日、文化財保護委員会美術工芸課で古瀬戸問題の査問会がありますので、あれを見せ一切をぶちまけて話をするつもりです、こう書いてあるのです。手紙の書かれた日が去年の五月六日だから、明日というのは五月七日になります。課長のだれにでもお聞きの上で局長からお答えをいただけばけっこうです。
  6. 清水康平

    清水政府委員 私昨年四月以来、これが問題になりましてから調査するように具申をいたしたわけでございます。その後美術工芸課関係といたしましては、小山技官にも来てもらい、いろいろと事情を聞いたり討議したということは、そのころあったと記憶いたしておりますが、今おっしゃいましたような査問というようなことは別に記憶いたしておりません。
  7. 高津正道

    高津委員 そうすると、小山技官に出てもらわねばわからぬことになってしまうが、小山さんはうそを書かぬでしょう。明日、文化財保護委員会美術工芸課で古瀬戸問題の査問会がありますので、あれを見せ一切をぶちまけて話すつもりです、こういうことを書かぬでしょう。査問会があるということを言って向こうをだます必要もないし、ここまで打ち明けて手紙を書いているのですから。課長さんか何かに御相談になって、清水局長お答え下さってけっこうですが……。
  8. 清水康平

    清水政府委員 これが問題になりましたので、上野の博物館専門技官がたくさん集まりまして、小山技官の意見を聞いたということは事実でございます。これは私個人の想像でございますが、小山技官としては非常に恐縮いたしておりまするので、そういう意味合いから、そういうお言葉を使われたのではなかろうかと思うのでございまして、小山技官査問するとかなんとかということで特に開いたというようなことはございません。
  9. 高津正道

    高津委員 それより前に、昨年の二月十九日に、小山富士夫技官は、瀬戸市の瀬戸窯研究会長である菊田清年氏の宅の集まりに出席されているわけです。その席には、今長い手紙を受け取ったという当の滝本知二、同じく陶器研究家加藤鉱一氏とその家の主人公菊田清年氏の三人と、かけつけた朝日、毎日、読売、中部日本新聞の有力な記者が一ぱいいて、そのとき、小山氏はついにかぶとをぬいで、私は責任上帰って役所をやめますと言われると、一同しゅんとなりましたと昭和三十六年四月号の日本美術工芸菊田氏自身が書いているのです。なおこの菊田報告には、私は会談模様をテープ二巻にとって保存しております。お望みに応じて何時でもお聞きいただきます。お聞きいただくと、だれがどう言ったかよくわかっていただけると思いますとまで書いているのです。小山技官は、昨年二月下旬瀬戸市のその会合を済ませて帰京され、瀬戸市における会談席上での言明通り上司に対して辞職を申し出られたのでしょうか。
  10. 清水康平

    清水政府委員 二月ごろ小山技官が現地に参りまして、加藤氏のお子さんに会って、いろいろな人と話の結果、真相を聞いてがく然としたということも報告を受けております。自分といたしましては、相当に責任を感じているので、どういうふうにしたらいいものであろうかということを、主管課長に言ったことは聞いております。
  11. 高津正道

    高津委員 主管課長は、それに対してどういうように指示されたのでしょうか。そのうかがいに対してどういう答えをされたのでしょうか。
  12. 清水康平

    清水政府委員 事がここに至ったならば、より一層慎重に調査をいたして善処すべきである、責任者の一人として、より一そう慎重に調査すべきではなかろうかと言ったというふうに聞いております。
  13. 高津正道

    高津委員 それでは、専門審議会のその後の真贋を見きわめる審査に小山氏はずっと立ち会われたのですか。
  14. 清水康平

    清水政府委員 先般も申し上げました通り文化財保護委員会といたしましては、数十人からなりまする専門技官によって調査を開始いたしたわけでございます。その中に確かに小山技官もその一人として参加いたしておったわけでございますが、小山技官は、あからさまに申しまして、ほんとうに謙虚な態度でその調査一緒に従事したということをここで申し上げることができると思います。
  15. 高津正道

    高津委員 謙虚な態度で欠席されたのですか、出て発言されているのですか。
  16. 清水康平

    清水政府委員 謙虚な態度真相を明らかにするという態度でもって、他の人たち一緒調査に従事したということでございます。
  17. 高津正道

    高津委員 どうも小山氏をみんなでもって非常に擁護されるようなので、小山氏をやめさせられないというふうな重大な事情があるらしいというように今伝えられておって、私にもそれが耳に入ってくるのですが、どういう重大な事情があるのでしょうか。今となっては、何もかもここでお答えをいただきたいのです。
  18. 清水康平

    清水政府委員 文化財保護委員会といたしまして指定し、文化財保護委員会としてこれを解除する、これが法の建前でありますので、責任はあくまで文化財保護委員会にあると考えるのでございます。小山技官個人の気持から申したならば、非常に恐縮し、進退をどうしたらよいだろうかというふうに申し出ているぐらいでございますが、文化財保護委員会として、また私といたしましては、これの真相を明らかにするために、謙虚な態度で、専門技官を相当動負いたしまして、それが結果を明らかにするということがわれわれの責任であるから、あなたも一緒にそのつもりで調査に従事してもらいたい、こういうふうにして今日までに至り、先般、まことに遺憾なことでございますが、解除するやむなきに至ったということであります。その点はまことに恐縮に存じておる次第でございます。
  19. 高津正道

    高津委員 その重大問題というものを知っている人が三人あるのですよ。一人は久志卓真、この人は内藤匡博士同様に陶芸評論界における正義派です。その人が知っている。もう一人は小山富士夫氏、それから加藤唐九郎氏、少なくとも、以上の三人が知っている事実だそうであります。上司たるあなた方にはきっとおわかりだろうと思うのですが、それをここで言うわけにいかぬのですかね。
  20. 清水康平

    清水政府委員 今おっしゃいましたことは、全く心から申し上げるのですけれども、どういうことか、私は何も存じておりません。どういうことでございましょう。
  21. 高津正道

    高津委員 陶器展覧会天皇皇太子がおいでになった場合にその御説明役に当たるのはほとんど小山技官であったというが、その事実はだれだって記憶に非常に残っておることであろうから、その点はどうですか。写真もあることでしょう。
  22. 清水康平

    清水政府委員 毎年、文化財保護委員会主催伝統工芸展を開いておりますが、伝統工芸展の中には陶器もあれば陶磁器もあるし、ウルシもございます。そういう方面の説明小山技官がやっておったと記憶いたしております。
  23. 高津正道

    高津委員 そうすると、天皇皇太子に対する日本工芸会展覧会の際には、それらのものは鎌倉物の作品として、松留窯式のものを、そういう説明などをむろんしているわけですね。それだけは説明しないで、そこだけ走って通るわけのものじゃないでしょう。
  24. 清水康平

    清水政府委員 今御指摘の、いわゆる松留窯の焼きもの、いわゆる永仁のつぼの展覧会について、小山技官がその説明役になったかどうかということについては、ちょっと私、記憶いたしておりません。伝統工芸展のときには、小山技官がやったことを私は記憶いたしております。
  25. 高津正道

    高津委員 それではちょっと角度を変えてお尋ねいたしますが、小山技官鑑定によって、国の税金でもって、たとえばあの四耳壷のようなにせもの国家国立博物館に買い上げておる。こういうことは外国に対しては国辱であるし、国内的に見れば国民に対しては税金乱費であって、非常に悪いことである、こう思いますが、文化財河原委員長はそれをどのようにお考えでしょうか。私に同感なさいますか、別途にお考えでありましょうか。
  26. 河原春作

    河原説明員 あの四耳壷につきましては、たしか博物館で購入したあと指定されたように聞いております。私弁解するようで申しわけないのですが、私、二月二十四日に委員長に就任したものですから、もしその事実が間違っておりましたら、ほかの者から訂正させますが、そういうふうに聞いております。むろん、模古品を昔のものとして扱っているということについて、それはお話のように非常に遺憾に思います。
  27. 清水康平

    清水政府委員 補足説明を申し上げたいと思うのですが、今の御指摘の四耳壷、これは昭和二十五年一月に東京国立博物館が購入いたしております。文化財保護委員会が発足いたしましたのはその後で、そのころはまだ法律的に保護委員会はできておりませんで、文化財保護委員会の発足前でございますが、国立博物館でこれを買いましたのはいろいろ理由がありますが、私の聞いておりますのは、もちろんその当時はこういう模古作ということは存じませんでしたけれども、いろいろな展覧会に出て、これはりっぱなものであるというふうにだれもが感じ、特に、鎌倉時代としてあれくらい大きなものが割合きずがなくて、模様が非常によくできているというのは珍しいというのでもって、二十五年に博物館が買った、こういうふうに聞いております。その後二十八年でございましたか、重要文化財指定されましたが、昨年秋から科学的調査も加えて調査いたしましたところが、鎌倉時代でないと認めるに至りましたので、これも解除一つとして解除いたしたような次第でございます。
  28. 高津正道

    高津委員 あなた方は、国の文化財指定をやったりあるいは解除したりするのを、税金をもらって本職にしておるのですから、ただ評判がいいからというのでそれを買い入れたり、あとで、重要文化財指定したのであるけれども、これは間違っておったというのじゃ、なかなか済まないのではないか。国立博物館買い入れというのは——日本国立博物館というものはあの程度のものだといわれることは国辱だと私には思えるし、国民税金で、国の予算で買うのですから、国立博物館文化財保護委員会下部機構です。だから、ああいうものを買い入れるということは税金乱費であり、そしてまた外国に対しては国の名誉を非常にそこなうものである。その点はどうですか。
  29. 清水康平

    清水政府委員 今高津先生のおっしゃいましたこと、全くおっしゃった通りだと私は思いますが、この点は今後買い入れについては十分慎重にしていかなければならないと思うのでございます。私の調査によりますと、昭和二十年に買い入れますときには、やはり博物館買い入れ監査会議というものがございまして、そこでもっていろいろ購入物件がございまして、そのうちからこれを選んだ。ところが、今日見れば、これが思わしくないということになったのでございまするので、今後は十分この点に意を用いて、二度とこういうことのないようにして参りたい、かように思っておる次第でございます。
  30. 高津正道

    高津委員 税金乱費という点、外国に対して不名誉この上もない、こういう点はお認めになるのですね。
  31. 清水康平

    清水政府委員 博物館にそういうものを買ったということはまことに遺憾に思う次第でございます。今後こういうことのないようにいたしたいと思うのでございます。大へん言いわけがましくなるのでございますけれども、これが問題になりまして、以後ずっとこれは保存しておりまして、展示はいたしておりません。将来の参考資料になるかもしれませんが、展示はいたしておらぬ次第でございます。
  32. 高津正道

    高津委員 きのうの御答弁にも少し不明なところがあるので、きちんとして速記録を残したいと思います。  申すまでもなく、今回の文化財保護委員会重要文化財指定は、三つも誤っていたことをみずから認め、またみずから指定解除を行なったわけですが、この事件はわが国文化財権威を著しく傷つけた、このように私は考えますが、河原文化財保護委員長はこれをお認めになりますか、私の発言をお認めになりますか、そうだとお思いになりますか。
  33. 河原春作

    河原説明員 文化財保護委員会指定した物件に対して、その指定解除をいたすような状態を引き起こしたことに対しましては、非常に遺憾に存じます。
  34. 高津正道

    高津委員 わが国文化財権威を著しく傷つけたとお認めになりますか、という質問です。
  35. 河原春作

    河原説明員 言葉の表現というものは非常にむずかしいのでありますから、あなたのおっしゃるような意味において私が御返事申し上げたかどうかは、これはとりようでありますが、繰り返して申し上げます通り自分指定したものをさらにその指定解除するというのですから、はなはだ遺憾と申し上げるよりほかにないような事柄であることは、私認めます。
  36. 高津正道

    高津委員 私は常識でものを言いたいのですが、文化財一般の信用が傷つけられておるだろう、これは本物だろうかにせもの、だろうかと、これからは特に思わねばならないようになったのですから、文化財権威を傷つけた、それをお認めになりますか。
  37. 河原春作

    河原説明員 ただいまの高津さんのお話のような意味でございますなら、私もそう思います。
  38. 高津正道

    高津委員 それではさらにお尋ねいたしますが、文化財保護委員会の国宝または重要文化財指定をするというその行為は、国家最高鑑定行為であると思います。だれが考えましてもそれ以上の鑑定はないでしょう。そうして文化財専門審議会が誤った指定を行なうに至ったのは、陶器の担当の小山富士夫文部技官の主張をその専門審議会が容認したからであります。そのことも私の言っていることには少しも間違いありません。このために、文化財保護委員会指定ということも、文化財保護委員会も、権威を傷つけられたと私は認めます。河原委員長は私の見解に同意して下さるのか、同意できないのですか。詭弁などということは一つもなしに、きちんとした御返事をいただきたいと思います。
  39. 河原春作

    河原説明員 たびたび申し上げます通り、とにかく指定をすべき職責を持っておる文化財保護委員会指定したものを取り消した、解除したというのでありますから、むろんお話のような趣旨も了解できるのであります。
  40. 高津正道

    高津委員 ほんとうに失礼ですが、文化財保護委員会も、それから指定というようなことも権威を傷つけられた、こういうようにお認めになりますか。
  41. 河原春作

    河原説明員 繰り返して申し上げて恐縮ですが、とにかく指定いたしたものをその指定解除をいたしたのでありますから、その点において権威を傷つけられたとおっしゃられても、私もそういう考え方に同意いたします。
  42. 高津正道

    高津委員 指定行為が傷つけられて、今後指定行為にみんなある程度の不安を感じ、疑問を持つようになった。それから文化財保護委員会もやはり権威を傷つけられておると、二つ並べて言っておるのですが、どうでしょうか。前のはいいが、うしろのはどうだとか、二つともお認めになりますか。
  43. 河原春作

    河原説明員 おっしゃることが非常にむずかしいのですけれども、とにかく自分指定したものを自分指定解除したのですから、それをおとりになる方が両方とも傷つけたんだとおとりになっても、私は反対いたしません。
  44. 山中吾郎

    山中(吾)委員 関連をしてお聞きします。高津委員委員長との質疑応答の中に、結局責任所在というものは行方不明であって、実際ははっきりしないということは、いわゆる文化財保護委員会という組織の中にあるのではないかという疑問が私は出てきたので、お聞きいたしたいわけですが、日本文化財保護行政最高責任所在というものはどこにあるわけですか。
  45. 河原春作

    河原説明員 ただいまの御質問に対してお答え申し上げますが、それはむろん文化財保護委員会にあるものと思います。
  46. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文化財保護委員会合議制行政機関であるわけですが、そうすると委員長を含んで五人ですか、その五人の構成をしたその委員会責任がある。そうするとその責任をとるという場合には、その委員のだれということでなくて、五人の委員全体が責任をとることになるのですか、あるいは委員長が特別の責任があることになっておるのですか、その責任はどうですか。
  47. 河原春作

    河原説明員 五人の間には別段相違はないと思いますが、しかし委員長は特別に事務局指揮監督する、そういう職責を特別に持っておりますから、委員長はほかの方とはまた違うと考えます。
  48. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この法規を見ると、委員長というのは委員会を代表するという権限は規定されていない。他の委員と同じようになっておるのですが、いかがでしょう。
  49. 河原春作

    河原説明員 とにかく委員会というものがございまして、委員長というものがその委員の間から互選せられるのでありますから、その代表者として委員長があることはこれはもう常識だと思います。
  50. 山中吾郎

    山中(吾)委員 合議制行政機関でありますから、保護行政責任というものは委員長一人がとるのでなく、五人の委員が全部一蓮托生で連帯責任だと思うのですが、そうでないのですか。
  51. 河原春作

    河原説明員 法律論なんというとむずかしいのですけれども、しかし委員長といえども自分だけの考え委員会の意思を決定するわけにはいきません。要するに合議体機関において、その決議としてでき上がったものに対して委員長委員会を代表する、私はこう考えております。それから先ほど申し上げましたように、事務の執行については、委員長は単独に事務局指揮監督することができるようになっておりますから、その点はほかの委員とは違うもの、だと考えております。
  52. 山中吾郎

    山中(吾)委員 局長にお聞きしますが、今の委員長の覆われたことは何条に書いてありますか。
  53. 清水康平

    清水政府委員 第十九条の二項に「事務局長は、委員長指揮監督を受けて事務局事務を掌理し、所属職員指揮監督する。」とあります。
  54. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、事務局指揮監督する範囲は、今度のような永仁のつぼその他を指定するという指定行為は、この中に含むわけですか。
  55. 清水康平

    清水政府委員 指定解除、これはすべて合議制行政機関である文化財保護委員会が行なうのでございます。
  56. 山中吾郎

    山中(吾)委員 具体的にお聞きしておるわけですが、そうすると、こういう指定及び指定解除といういわゆる行政行為、こういうことは委員会責任行為であって、事務局事務じゃないですね。あなたの方で指定解除するとか指定するなんということは、いわゆる事務局事務行為でなくて、これは合議制委員会全体の最高責任に関する行為であると思うので、第十九条の二項に該当するものではないと思うのですが、いかがですか。
  57. 清水康平

    清水政府委員 指定についてはその通りでございます。
  58. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そして、この二十条に付属機関として、文化財専門審議会がある。専門的に判定を下すというふうな指定行為というものは、文化財専門審議会ほんとうは実質的な決定をすると私は思うのです。文化財専門審議会指定とか指定解除、そういうふうな決定をされて、その上に今度は文化財保護委員会はまた屋上屋を架してどういう権限があるか。内閣行為天皇が承認するような形式的な行為にすぎないのか。何かほかに実質的な権限があるのですか。
  59. 清水康平

    清水政府委員 法律の規定を待つまでもなく、文化財専門審議会は、文化財保護委員会付属機関であると同時に諮問機関でございます。従いまして、文化財専門審議会は、文化財保護委員会の諮問事項につきまして調査審議をしてその結果を答申する。答申に対して文化財保護委員会は、文化財保護委員会責任においてこれをしかるべく処置するというところに、文化財保護委員会の職務があると思います。
  60. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、文化財専門審議会は間違った指定をしても何ら責任がない、そういうことになりますか。
  61. 清水康平

    清水政府委員 指定は、文化財専門審議会指定したのではなくて、文化財保護委員会指定したのでございますから、その責任文化財保護委員会にあると考えます。
  62. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうすると、この文化財保護法はどうも責任所在を不明にするように作っているような感じがしてしょうがない。責任追及をするのではない。今後の法改正について、最後に委員長の意見を聞きたい。二十条に付属機関と背いてある。付属機関というのは、国立博物館とか国立文化財研究所というように、一つの独立の行政機関であって、そこには何か独立の責任を伴うような機関の場合に付属機関というのがわれわれの常識であるのに、諮問機関である文化財専門審議会付属機関として書いてあるのはどういうわけですか。
  63. 河原春作

    河原説明員 第一点の御質問は、私全く同感なんです。戦前には行政委員会というものはなかったのです。戦後だれの趣旨によってできたかは別問題としまして、行政委員会というものがたくさんできた。こういう例を引いてはまことに申しわけないのですけれども、昨年の安保反対の闘争の際には、警察の責任が総理大臣にあるのか、国家公安委員会にあるのか、ほんとうはわからないで済んでしまった。これもやはりそういうようにお考えになってもやむを得ないと思います。しかしこの行政委員会は私は全面的に否認はしまん。非常にいいところがある。それは何かというと、ことにこういう行政につきましては、自分の好みによってこの人の絵が好き、だとか、あるいはこの人の焼きものが好き、だとか、こういう人が一人ですることはよくない。やはり数人の人か寄って、多少お互いに牽制し合うという制度が私はいいと思います。ただしこれは今御指摘になりましたように責任所在が非常に不明確だ。保護委員会責任を負うと申しましても、五人のうち五人全部それに賛成したかどうかは、外界には発表できません。そうすると、かりにその人が個人的に責任を負わなければならぬということになると、反対した人にとってこの上もない迷惑だ。私は責任ということを論じますときには、この行政委員という制度は非常に悪いものだと思います。しかし先ほど申しましたようにいい点もあると思います。これらのことにつきましては、ことにこの文化財保護法は参議院と衆議院の文教委員会のお力によってでき上がった法律なんですから、一つ適出に御研究を願いたいと思います。  付属機関の問題でありますが、両方付属機関としても、私少しも差しつかえないと思います。これは事務の立て方ですから、私はそれは差しつかえないと思いますが、諮問機関は、必然どこの部門に参りましても諮問機関責任を負わせるというようなことはやはり私はあり得ないと思います。ことに先ほど申したと同じ理屈で、反対していた人だってずいぶんいるんですよ。文化財保護行政についてはあまりないようですけれども、それでも数年前この問題に関して、田澤金吾君が干支のことについて異論を唱えて、延期になった。あれは延期になったからいいけれども、それで多数で押し切られれば、自分は反対したのだけれどもということが成り立つわけですから、諮問機関は私は何も責任の範囲内に入らないものと考えております。
  64. 山中吾郎

    山中(吾)委員 この法律は議員立法だというので、あまり非難をするとみずからつばをかけることになるのでまことに困ってきたわけですが、ただし君子は危うきに近づくにやぶさかでなくてもいいわけですから、その意味において率直に論及したいと思いますが、文化財保護行政なんというのはどうして合議制機関でなければならぬかということに疑問がある。何となれば、国宝に値する、重要文化財に価するという認定は、専門家の寄った文化財専門審議会があって、これが実質的に権威のある判定を下す。そして上におる委員は、別に美術あるいはその他の専門家が委員になっていない。委員長も現にあなたは専門家じゃないのだ。そうでしょう。
  65. 河原春作

    河原説明員 そうです。
  66. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そしてそれを今度は合議制に持っていって、五人の委員がおのおの自分の主観的な意識に五分の一の責任しかないような感じで審議をして何の意味があるかはわからないのです。教育委員会のように、教育委員が教育行政について偏向しないようにといういろいろの現実の問題があって、直接そこできめる場合は別で、文化財の場合には、専門審議会においては専門家があらゆる論議をしてきめて、上の人たちは行政的にただ判定を下すだけの話で、私は責任を負うための委員会だと思うのです。日本の古い伝統的な文化を保存する最高責任は、文教行政の責任者である文部大臣にはっきりと持たすべきである。そういう文化財保護に文部大臣が責任のないような機構を作って、責任のない者五人の合議制でだれが責任を持っているかわからないような機構というものは、日本の文化行政については不適当だと思うのですが、率直に文部大臣と委員長に御意見を伺いたい。
  67. 河原春作

    河原説明員 ただいまのお話ごもっともとは思います。しかし……(山中委員「議員立法ですから、遠慮しないで」と呼ぶ)私はほかのもの、公安委員会のようなものは別ですが、この委員会は今の方がいいのじゃないかと思います。
  68. 山中吾郎

    山中(吾)委員 私は反対に思っている。
  69. 河原春作

    河原説明員 反対というのは——今の法律をお作りになった人に敬意を表して、ほんとうにいいと思うのです。それはなぜかというと、専門家といいましても、建築の人もあるし、美術工芸の人もあるし、いろいろあるのですから、やはりあまり片寄った人はよくないし、私のように、御指摘になりましたように、何もわからないのが一人ではやっぱり工合が悪い。やっぱり数人委員がいることが必要だと思う。それから、世間ではとかく文部大臣に持っていった方がいいのじゃないかという方もありますけれども、文部省の系列に入っている現在の行政組織は非常にいいと思うのですが、しかし文部大臣はとにかく現在の政党内閣ではもう必ず政党出身の方がなられるし、政党の方は国家のほかの政治と切り離して仕事をなさることは私はできないのだと思う。こういう仕事は国家の政務といいますか、まつりごとという言葉は少し悪いかもしれませんが、そういうものをある程度独立した組織でやる方がいいと思う。従って現在のように文部省の系列には入っているけれども、文部大臣の指揮命令を受けない行政委員会という立て方は、私自身は非常にいいと思うのです。その点において立法の当時、参議院と衆議院の文教委員の方がそういう制度をお作りになったことに対して非常に敬意を表しておる次第であります。しかしほかの行政委員会がいいか悪いかということは、私考えが違いますが、それはここで意見を申し上げるべき場合じゃないと思いますから、御遠慮申し上げておきます。
  70. 山中吾郎

    山中(吾)委員 委員長の言われることと私は全然意見が反対なのです。公安委員会とかいうものは政党政治の領袖が直接責任を持ち、権力を持つことは一党一派に偏する危険があるので、公安委員会制度というものはこれは必要だと思う。その他のものについても、直接時の権力によって左右されるおそれのあるものは、独立性を持たした合議制が必要である。文化財なんというものは、自民党であろうが社会党であろうが、日本文化財指定するときに政党的に使うということはあり得ないのです。従って日本の伝統的な文化、貴重な文化を保存するというのには、文教行政の最高責任者が持つべきであり、その人が自民党の領袖であろうが社会党の領袖であろうが、左右されるなんということは一番危険は少いものなのです。だから文化財保護委員会というものが、少くとも五人が専門の眼識を持った人で、下に審議会を持たないでやるというときは別ですが、そうでないのですからね。これは文部省の文化保護局というようなものにして、そうして諮問機関であるところの審議機関があって、そこで専門的に科学的に審議をして、そうして文部大臣の裁可でやるというのが一番いいし、経費も節約できる。委員の人はどれくらい取っておるか知りませんが、いずれにしてもそれほどのことは要らぬのじゃないかということを思うので、合議制委員会の中では、もし改正するならこういうものは最初に改正すべきだと私は思う。大臣、文化財保護を見ておられるでしょうね。どうですか、大臣のほんとうの政治的識見は。
  71. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私も河原委員長のお説に同感でございます。
  72. 濱野清吾

    濱野委員長 山中君、高津君の関連質問ですから、立法論は、法律案の修正案でも出してもらうことにして、まず高津君の直接質疑している責任問題を追及して下さい。
  73. 山中吾郎

    山中(吾)委員 高津先生責任はどこにあるかということを今まで質問をされたので、これは機構的に責任が不明確なところがあるので、関連をして最も密接なところだけを私は今聞いたわけであります。委員長もだいぶ気にかかっているようですから、関連質問はこれで終わりますけれども、さらに一つだけ将来の研究のためにお答え願っておきたいのは、国宝級のものでも個人の所有になっているわけですね。管理し保護する責任個人にある。そうして国の方は、それに対して指定とか何かでこれをしっかり保護する責任があるぞというので、個人日本のとうとい文化財を保護する責任を持たせておいて、国の方は奨励するだけで、責任も不明であり、保護する責任も回避しているというふうに私は思うわけであります。従って、重要なものは、むしろ国の所有にして堂々と国が責任を持つべきであると思うし、そういうふうな所有と保護の責任個人個人に持たせておいて、輸出をするときには禁止をしていじめるとかいうだけで、国は責任も保護のなにも回避しているというふうな非常にあいまいなものがこの法案の中にあると思うので、こういう点について、永仁のつぼその他の思わしくない失敗その他が重なるに従って、少なくとも全体のあり方について改正する方向に有効にこれの反省を積み重ねていくことが非常に重要だと思うので、その点について委員長の御意見をお聞きして、これで私の関連質問を終わります。
  74. 河原春作

    河原説明員 ただいまお話し下さいましたことはほとんど全部賛成であります。ただほとんどと申し上げるのは、一つだけどうかと思う点があるからです。それは個人の所有に属している国宝を国有にしろというようなお話を伺ったようですが、それはちょっと今日の世の中では実行できないことと思います。
  75. 山中吾郎

    山中(吾)委員 金がかかるからですか。
  76. 河原春作

    河原説明員 いや、人の物を取り上げるということになるから、これはいかぬです。ただあまりやかましいことばかり言って、積極的に助長的な…。
  77. 山中吾郎

    山中(吾)委員 買い上げるんですよ。取り上げるのではないんですよ。
  78. 河原春作

    河原説明員 私の受け取りようが悪かったかもしれませんが、大体今のお話は政党間で他日改正の必要があれば、できるだけ御意思に沿うようにいたしたいと思います。
  79. 濱野清吾

    濱野委員長 河原委員長に申し上げますが、高津君の質疑には遠慮せずに明快に御答弁を願いたい。どうもわれわれが聞いてもちょっとあなたの考え方は受け取りにくい。用心しながら言っているようで、議事進行上まことに迷惑であります。
  80. 高津正道

    高津委員 今までの御答弁で、今回の事件のために国際的には国辱である。国立博物館にせものを買い上げて、数年すると今度はそれを重要文化財指定する。外国から見て非常に不名誉なことだと思う。私はそう申し上げたのです。それからまた日本の骨董店から、これは鎌倉時代のものだといってアメリカ、フランスその他に買って帰って、向こうで科学的に調査してみると、これは風化現象は見られるが、人工風化であって自然の何百年のそういう風化作用ではないということがわかって、日本の商業道徳まで傷つけられることになるわけですよ。それからまたむろん国立博物館で買い上げるのは、租税をそういうふうに乱費してはいかないのだと思います。私はこれは重大な悪いことだと思います。  もう一つ、第二に私が伺って、そうして同意をもらったのは、わが国文化財権威を傷つけた。今後重要文化財といっても国宝といっても疑ってみねばならぬ。ある程度の疑いの雲をかぶったことになったと思います。  それから第三には、文化財保護委員会も信用を落とし、国家重要文化財指定ということも非常に権威をそこなうことになった。  私は三つ言いましたが、それで今度は河原委員長は一昨日の当文教委員会において、私が小山という人は薩摩焼の研究で大きな問題を起こした人なのだ。もう一つ修武窯の問題という中国の窯跡の問題で実に大問題を起こした人だ、こう申し上げたら、そのことは自分は知らないが調べてみる、これは非常に公平な態度と私はそこのところだけはいいと思って御答弁を聞いたのですが、しかし小山さんに対して、もっと私は査問し厳重に調べられなければならぬと思うので、第四の修武窯の問題をここに資料がありますから、それは一番大事な部分ですから、やはり速記にとどめてそれを必ず参考にしてもらいたいと思うんです。「日本美術工芸」の百五十九号です。四十八ページ、館林唐一郎という評論家が書いたものでありますが、「小山氏の頭脳的小手先の器用さを以て堂々たる”北宋の修武窯”という研究発表となったのに対し、たまたま内藤氏の科学者としての忠実さが、小山氏発表の誤りに痛烈な学術的打棒となり、また久志氏が同じく小山氏発表に真向うから立ちあがって、その陋劣さを叱正する大打棒を放ったもので、破紋は未曾有の深刻さを加え、陶磁学界の大問題として発展したのである。」これはこの当時問題の大きさをこのように見ておるんです。それから「小山氏はこれを前人未知の埋もれたる名窯修武窯なりとして、文章に或は講演等により、頗る派手に宣伝し、定窯や南支の焼物を除いた、北宋時代の名器の殆ど全部は、この窯から出たものとした。言い換えるならば、マジック的な空想によって支那第一の名窯を作り上げ、この埋もれたる名窯の紹介は、小山氏自らの独壇場であるかの如き印象を一般に植え付けたのである。小山氏のすばらしい発表文を見た博物館や出版業者などは、慌てて名器の名を修武窯と改めてしまった程であった。ずっと名前をつけかえてしまったのである。それからもう一点学者がどのように見ているか。同じ館林氏の文章の終わりに五カ条に要約している。「小山氏は、(1)磁州窯という支那の一大名窯の一つを抹殺するに等しい提案をなしたこと。(2)磁州無手の名品はいうに及ばず、宋赤絵、宋三彩、均窯、汝窯等の北支の北宋時代の名品は定窯を除いては殆ど凡て修武窯のみの所産とし、支那第一の名窯修武窯なるものを作りあげたこと。(3)このかくれたる名窯修武窯の紹介者として自らの(小山氏)ありもしない業績を大々的に宣伝したこと。(4)小山氏の所網修武窯は、元来カールベック氏の紹介した焦作窯そのものであるが、その焦作の名に屁理窟をつけて、先ず修武窯と改名し、次ぎにカールベック氏の論文は『読んでも疑問の点多く、修武窯の概念も得られず、これを発表すれば害を後世に残す恐れあり』などと極端な言葉を用いて、カールベック氏の報告を葬り去ろうとしたこと。(5)小山氏の翻訳は、誤解、独断に満ちているばかりでなく、カールベック氏報告文に虚構の事まで附け加え、カールベック氏の意見は成っていない、と極力攻撃していること。この五点を振りかざして小山氏は“修武窯創作”に懸命な立廻り演劇を展開したものである。以上の五点は、内藤、久志の両氏によって、或は鋭く、或いは軟らかく、或は明瞭に、或は暗示的に指摘されたにもかかわらず、小山氏は一切の答弁を避け、頬被りを押し通しながら、その裏に廻って、妄想の産物たる修武窯の宣伝に汲々如としているのは、更に大打棒を加える必要あるやに思われるのである。」こんなことではもっとも一つとたたかねば、これはどうしても日本ではほおかむりして全然黙っておるだけなんです。そうして静まるのを待つばかりなわけです、この人の手は……。そこで外国の方がやかましくなった。外国の方ではこういうように書いているのですよ。ボストン博物館から出しているファー・イースタン・セラミック・ブレッチンの一九五二年十二月号なんですが、カ−ルベックという人が「小山氏は県の名を取って焦作窯を修武窯と呼ぶ。その理由は“支那の地図にも地名字典にも焦作はないからだ”というが、私の持っている二つの支那の地図に焦作は載っているから小山氏の理由は理由にならない。元来焦作窯の名は窯の発見者で且つその破片が金になることを村民に始めて知らせたスワロー氏が名付けたもので、ホブソン氏も一九三七年に既にこの名を用い、大典博物館もこの破片に長い間焦作窯の名をつけているから、これを固執すべきである。」と書いておる。そうしてまたファー・イースタン・セラミック・ブレッチンの編集者はこういうことを言っているのですよ。「焦作窯を(一番近い部落の名をとって)修武窯(非常に離れている県庁所在地の名をとって)などと呼ぶので混乱が起った。小山氏が支那の伝統に従って県の名を使って焦作窯を修武窯とすべきだということは地理上一応言訳は立つように見えるが、焦作窯の名はスワロー、ホブソン、カールベックが既に用い、修武窯より十七年も先きから名が確立している」と書き、小山氏にも一文を求めて、そうしてその雑誌に載せている。それはこの間読んだ謝罪文なんです。小山さんは外国に対しては謝罪文を書くが、国内ではまるでほおかむりするというのは、これは大へんなことですよ。これは小山さんに関する、あの人を裁く場合に逸してはならない第四の重大な点、そういうように私は考えます。  ここでちょっと質問に切りかえますが、河原委員長はこれをどう思いますかね。好ましい文部技官だと思いますか、やっぱり悪いことをしているなと思いますか。
  81. 河原春作

    河原説明員 ただいまお述べになりましたことにつきましては、むろんあとで慎重に調査いたしまして適当な処置をするということを、この前たしかお約束申し上げたと思いますが、面会申し上げました通り、ただいまお述べになりましたこと、それからこの前の委員会で最後の部分にお述べになりましたことは、慎重に調査いたして適当な措置をすることを申し上げます。
  82. 高津正道

    高津委員 それでは小山富士夫氏に関する第五の問題点——これは大事な審議もいろいろあるのだから読みませんけれども、「茶わん」という有名な陶芸の権威ある雑誌があるわけです。その百二十七号から百三十一号まで五巻にわたって、薩摩焼を非常に研究している前田幾千代という学者が書いているのですが、前田さんの原稿を見て小山さんが自分の名で書いておきながら、前田幾千代という人をさんざんに攻撃しているというのです。だからこの事件が起きた場合にも、そういう前科があるから、この薩摩焼の研究の剽窃という——剽窃だけならまだ何だが、前田幾千代氏を非常に攻撃しているのです。私は長いし、めんどうなのに、これを読んでみたのですよ。いかにもこれはひどい、こう私は思ったのです。こういう五つのことが考えられる人間を、ずっとその位置に置くというのはどういうわけですかね。あまりもひどいでしょう。ものが一つならいいが、幾つも幾つもあるのに、ずっとその地位におって権力を振り回しておる。吉川英治氏はずいぶん金を持っているから、骨董屋がずいぶん売り込みに来る。その場合に小山氏の意見を聞く。小山氏がちょっと首をかしげると、しょんべんしてもうすぐ返してしまうのです。小山氏が箱書きを書いたらものの値段が上がるわけです。むろん重要文化財にすればそのものは十倍にも値段が上がるわけです。そういう値段の変動のあるところには投資を伴う。投資する者があるわけです。こういう人がそういう地位にずっていて、みんな周囲でそれをかばってどうもしないでいるというのは、大へんなことだと思いますよ。その意味では文化財保護委員会はたるんでいるように思いますが、小山氏をどうされるのですかね。
  83. 河原春作

    河原説明員 昨日も申し上げましたが、昨日の御質問並びに今日の御質問は、私の存じないことも多いのでありますから、先日も御返事申し上げましたように、ただいまお述べになりました事柄を十分調査いたしまして、適当に考えることを申し上げます。
  84. 高津正道

    高津委員 当委員会濱野委員長が、文化財河原委員長の御答弁はどうもはっきりしないところがある、こう言われたのでありますが、善処するあるいは考えてみるというのは、よくわかったからその意をくんで御期待に沿うようにそういう悪い役人はやめてもらう、こういう意味ですか、反対ですか。
  85. 河原春作

    河原説明員 先ほど申しました通り、いずれ速記録ができ上がることと思いますから、速記録について詳細に検討の上で処置をいたしたい、こういう御返事を申し上げます。
  86. 高津正道

    高津委員 その意味は、速記録を読んでと言われるので、どういう方向が出るかということは少しも暗示さえもされていないのでありますが、私は事ここに至れば、そんなのがずっとその地位におれば、文化財保護委員会の非常な不名誉だろうし、何とかすべきだというのが常識だと思うのですが、幸いにあなたが来られたが、直接責任のない方であるし、何とか御期待に沿うようにするというすっきりした答弁ができないものですかね。老骨をひっさげてたくさんのものを読んで質問をしているのに……。
  87. 中村庸一郎

    ○中村(庸)委員 関連質問。私は高津先生のいろいろな研究を拝聴し、全く敬意を表するものです。また文化財保護委員会のあり方、また国宝指定の問題と、いろいろ話を承って大へん勉強になったのですが、一体古美術の専門家がどういうものだかということはどうもむずかしい。また古美術の問題を法律的にすべて解決しようという御努力には敬意を表するのですが、なかなかむずかしい問題だと思う。古美術というものはほんとうにわかりにくいものだと私は思います。これを研究なさる方がいろいろな説をなさる。また研究発表が進むにつれていろいろな変化もあるでしょうし、いろいろなことが起こる。これに対して責任所在を一一論議していったら、これは研究発表する人も遠慮することになりはせぬかというような気もいたしますし、同時に、今までも古美術に対してはいろいろな研究が雑誌、書物に多数発表されておりますが、これを一々検討していったら大へんなことになる。そういう意味におきまして、この公開の委員会でこれを追及していくということは、かえってどうもわが国美術の権威というものを阻害する結果になりはせぬかというような心配をいたすものであります。でありまするから、こういう問題について公開の席上で法律的に解釈をするということ、何か結論を得ようということはむずかしい問題で、高津先生から大へんいいお話を承って非常に敬意を表するのですが、これ以上掘り下げてやっていくということは、かえっていろいろな問題が際限なく出てくるだろうと考えるのであります。高津先生質問に反対するのでありませんし、また質問をこの程度でと申し上げるわけでもございません。ただ古美術のむずかしい、またわかりにくい問題——専門家といっても、どういう人を専門家とするのか、これはむずかしいと思うのです。ことに陶器に関してはなおさらのことでありまするから、私は、いろいろな公的な席において、責任所在を追及したり、あるいは際限なく論議を進めていくということは、なるべく避けたいような気がします。しかしながら間違った問題、あるいは帯しい責任問題が明確になったものは別といたしまして、あるいはそういう必要がある場合には、専門委員会の方々ともひざを突き合わせて、お互いに研究もし、専門家の——また専門家という言葉を使いましたが、詳しい方々の意見を聞き、正しい方向に持っていきたい、かように私は考えるので、私は専門審議会の方々と新し合いをする機会をむしろ作ってもらいたい、かように考えるのであります。関連質問として申し上げた次第であります。
  88. 河原春作

    河原説明員 先ほど高津さんからお尋ねになりましたことは、速記録を拝見いたしまして、関係の者ともよく調査いたして、適当な措置をすることをお答え申し上げます。
  89. 高津正道

    高津委員 中村委員から御注意がありまして、おっしゃることになかなかもっともなところが多いので、少しの時間だけで質問は打ち切りますが、黒い白鳥が子供によって殺された、実にかわいそうです。しかしあの黒い白鳥をむだ死にさせてはならぬ、何とか生かすような道を講じなければならぬ、こういうことが今盛んに言われて、子供に動物愛護の精神を説いておる。一つの与件からいい結果をもたらそうとして一生懸命になっておる。その傾向はなかなかよろしいと思うのです。文部省文化財保護委員会においては、一つの問題が起きたらそれを全く包み隠して、みんなでその者がちっとも悪いことはないかのように弁護ばかりしている。それは実に悪い傾向だと思うのです。あまりほこりがたくさんたまったり水が停滞したりすると、何かおっくうでも水をかえなければならぬと思うのです。それからさっきの審議会あるいは諮問委員会のこときものは、どんな結論を出してもそれを処分することはできないのだ、全員がそうしようが何人かがそうしようが、それは処分することはできないものだという河原委員長の答弁でありましたが、私は小山技官のような人は、平素から調査しておらなければならぬので、二カ月に一ぺん出てくる審議員と違うのです。審査官で常にそれが担当して、いつも研究しておって、いやしくも間違いがあってはならぬ。研修に研修を重ね、毎日それを専門にやっておる。そういう文部省の月給をとっておる国家鑑定者としての専門の担当者です。そうであるならば、その人間が審議会でどう行動をして誤ろうと、それはどうもできないのだという、そういう責任に対するお考えには私は断固反対しますよ。考え方が間違っていますよ。間違っていないなら間違っていないと——そんなものは法制の建前から言えばどうもできないものだ、行政機構はそうなっておるのだ、それでいいのですか、委員長の御意見を承りたい。
  90. 河原春作

    河原説明員 初めにお述べになりましたように、こういう事件の起こったことを契機として、将来われわれ一同深く戒心いたしまして、さらにすべての事柄について慎重に取り計らって参らなければならぬし、また機構の不備の点があるならば、この際改正するか、とにかくこういう事件のあったのを契機として、適当な措置をとれというお言葉、まことにごもっともで、われわれもむろんそういうふうにいたすつもりでございます。  なお責任問題につきましては、先ほど申し上げましたのは専門審議会諮問機関なのであるから、諮問機関の人人に対して責任を負わせるわけにはいかぬと申し上げたわけであります。
  91. 高津正道

    高津委員 文部省の陶磁の方の係の人があるわけですね。その人の提案によって——ほかの人はガラスだとか織物だとか絵画だとか刀剣だとか建築物だとか、そういう人なのです。だから専門審議会の席上で意見をほんとうに吐く、権威ある発言をすると認められる人はその人で、その人がそういうようなことをどんどんやる人ということになれば、その人はどうも審議会の審議官だからそれには何とも言えないんだという、文部技官の辞令をもらって、そういう役職にあるその人の主導権で働いておるわけです。文化財の中の陶器、磁器に関してはことにそうなんです。だから人間国宝の指定など、私からいえば——きょうは中村さんの御注意もあり、質問はやめますけれども、めちゃくちゃですよ。人間国宝に一たび指定されれば値段がずっと上がるのですよ。その人のものをたくさん買い込んで持っておるものをうんと運動する、知らぬは亭主ばかりなりというような非常に評判の高い問題でありまして、これは他日また資料を整えて、あまり個人の傷つかないような方法で、なるべくそういうルールを守りながら他日に譲りますけれども、何とかしなければならぬと思います。速記録があるから明確に言われないが、プライベートに御和相談にも参りますよ。別の材料も持って、聞き込みもいろいろございますから……。  それではこの程度で質問を終わります。
  92. 濱野清吾

    濱野委員長 委員長、あなたにお願いしておきますが、私が言ってどうかと思いますけれども、できるだけ早い機会に高津君の質疑調査を進めて、その結果を委員会報告してもらいたい。これはみんな同感だと思うのです。
  93. 高津正道

    高津委員 けっこうです。      ————◇—————
  94. 濱野清吾

    濱野委員長 次に、学校教育法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査に入ります。質疑の通告がありますので、これを許します。村山君。
  95. 村山喜一

    ○村山委員 大臣にお尋ねいたしますが、今回の学校教育法等の一部改正についての要綱を見ますと、御承知のように定時制の高等学校の単位修得と技能教育の施設の単位修得とを通算ができるような措置をする、並びに通信制の高等学校の課程を独立をさせて、それに対しても文部大臣の承認を得て、監督官庁が認可をする、さらに特殊学校の幼稚部または同等部を設けることができるようにするというような点がおもな内容になっているわけでございます。この法律案を提案をされるにあたりまして、いろいろこういうような法律改正するのにあたっては、一つの大きな構想をお持ちの上で法律改正に乗り出されたものだと考えるわけであります。そういうような点から、後ほど技能教育施設の単位修得の問題につきましては質問をいたしますが、その前に現在提案をされております特殊学校の教育の問題について、その大きな構想をどういうふうにお立てになった上で幼稚部なり高等部の独立をさせていくんだ、これらの特殊学校の教育をどのような方向に進めていかなければならないんだという、一つの方向をお持ちになっていらっしゃるだろうと思いますので、それを明らかにしていただきたいと考えるわけです。
  96. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 私がお答え申すべきでございますが、相当具体的なことを申し上げないとお答えにならないと思いますので、政府委員からお答えすることをお許しいただきます。
  97. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 特殊教育につきましては、御承知の通りすでに盲学校とろう学校は昭和二十三年から義務制を施行しまして、昭和三十一年に小学部、中学部は義務制が完了したわけであります。それから養護学校、いわゆる肢体不自由児、精神薄弱児等の養護学校につきましては、これは学校教育法では義務制になっておりますけれども、付則ではずしておるわけでございます。これは政令をもってはずしておりますので、設置の義務と保護者の義務、この二つがあるわけであります。とりあえず文部省といたしましては都道府県に養護学校の設置を義務づけたいと考えているわけでございます。しかし保護者に対する義務は、さらに検討を続けていきたい、もう少し就学率の向上を見てから考えたいと思っております。  それから一般の小、中学校に特殊学級というものがございます。この特殊学級につきましては、精薄児童を中心に今日二千数百学級が全国にございますが、これもまだ非常に不十分でございます。そこでこの分につきましても、設置の義務は一定の規模の市町村、たとえば人口三万人以上の市町村に計画的に設置義務を課していきたいというので、これも大蔵当局と大体打ち合わせを済んでおりまして、五カ年計画で今進めております。ただこれにつきましても、保護者の義務につきましては、なかなかそこまで参りかねているわけでございます。そこで養護学校等につきましては義務教育にはなっておりませんが、少なくとも義務教育に準ずるような財政的な扱いをしているわけでございまして、建物の場合あるいは教職員の給与費につきましては、国が二分の一の負担をいたしております。教材費につきましても二分の一の食掛をしているわけでございます。  なお盲学校、ろう学校、養護学校等につきましては、生徒の就学奨励のために義務教育につきましては大幅に財政の援助をいたしまして、先般お願いいたしました就学奨励法の制定を見たわけでございます。この場合に義務制でない高等部につきましても、財政的援助としてはほとんど義務制に準ずるような扱いをしておるわけでございます。また幼稚部にはそこまで参りませんが、これも当然義務制の扱いと同じように就学奨励の方途を講じて参りたい、かように考えておるのであります。
  98. 村山喜一

    ○村山委員 今内藤局長から特殊教育振興の状況について現状の説明をいただいたわけですが、御承知のように現在の特殊学校の実情は、いろいろ調べてみますと、盲学校並びにろう学校の小、中学校の場合は、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律に基づきまして、職員の定数等もほぼ定められておるわけでございますが、高等学校なり幼稚園については御承知のように基準がないわけでございます。なお先ほどの説明で、施設設備については同等部の場合は義務制に準ずる取り扱いで、それぞれ措置がしてあるというふうなことがございますが、これらの内容についてはそういうようなことは法律的にされておりませんので、これはただ交付税の中で見ているかどうか、そこははっきりわかりませんが、そういうような実情にあるということを、まず認識を間違っておられるのではないかと思います。その点はどうですか。
  99. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 盲学校、ろう学校、養護学校等の特殊教育につきまして基準が不備であるということは、私どもも十分承知しておるわけでございます。高等学校一般につきましては、あるいは幼稚園につきましては、これはそれぞれ設置基準がございまして、省令で出ております。ただ省令が不備でございますので、改善をしたいということは検討しておるわけでございますが、全然ないというわけでもないわけでございます。
  100. 村山喜一

    ○村山委員 高等学校の設置基準なり、あるいは幼稚園、大学校の設置基準は省令によって定められておる。しかしながら現実において盲学校などの場合を考えてみますと、文部・厚生省令二号のあん摩師、はり師、きゅう師及び柔道整復師学校養成施設認定規則、これに基づいて定員等がきめられているようでございます。それから各特殊学校の実情に即応したところの基準というものは何ら明確なものがないわけです。結局は各都道府県においてあるいは大きな市においては、それぞれの条例なりそれぞれの財源の事情に応じて教職員の配置等もなしているというのが実情です。そういうような点からいいますと、小、中学校の場合は一応義務制になっておりますので、これは完備されておりますけれども、高等学校あるいは幼稚部についてはほとんど今後に解決を待たなければならない点が多いのではないかと考えるわけですが、そういうふうにお考えになりますか。
  101. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 御指摘通り、高等部、幼稚部につきましては不備な点は先ほど来申し上げている通りでございまして、ただ厚生省のはり、きゅう、あんまの養成施設における基準、これは盲学校、ろう学校のはり、きゅう、あんまの課程につきましては、当然共同省令でございますので、置けるわけでございます。その他の一般教科の学校運営についての基準が明確になってはいないという御指摘はその通りでございますが、これは現在のところ一般の幼稚園及び高等学校の基準を準用する建前になっておりますが、むしろ特殊学校の場合、それぞれ盲・ろう・養護学校は一貫して幼稚部から高等部まで特殊な体系で進むべきであろうということで、文部省といたしましても、単に小・中・高等学校の規定を準用するということでなくて、独自な改善方策を講ずるということで今検討を続けているわけでございます。
  102. 村山喜一

    ○村山委員 それでありますれば、何か特殊教育を一貫した基本的な立場で振興させていかなければならないということで、特殊教育振興法というような法律でも作りまして、その中に施設設備、これは宿舎まで含めて、あるいは学級の編制、教職員等の定数、さらに給与その他職業免許の関係の内容を含めたような法律案を制定する準備でも考えておられるのかどうかという点をお尋ねしたい。
  103. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 非常に問題は広範でございまして、たとえば盲・ろうにつきましては、これは義務教育費国庫負担法の中で定員については解決済みでございますし、教材費についても解決済みであります。それから養護学校については、これは義務ではございませんが、養護学校の特別法がございます。そこで施設の関係と教職員の給与費については二分の一の国庫負担をするということで、これも解決済みであります。それから給与につきましては、一般の公務員の給与体系というものがございますので、特に盲・ろう学校あるいは養護学校の先生の給与につきまして約八%の調整手当をつけているわけであります。その他関係の法律が非常に多いのでございまして、かりにそういう総合的な立法措置をいたすにいたしましても、  〔委員長退席、中村(庸)委員長代理着席〕 それぞれの法律から全部抜いてこなければならないし、その関係をどうするかという点で、むしろ現在不備な点、その分について改善をしていくべきではなかろうか。たとえば現在の就学奨励の問題につきましても、それぞれ単行法でやっておるわけなんです。総合立法とおっしゃいますけれども、非常にむずかしいのではなかろうか。総合立法で単にそれぞれ各法律に委任してしまうならこれは意味がないし、また各法律にあるのを全部ここに持ち寄ってくるということも、インデックスには非常に役立つけれどもそれでいいのかどうか、むしろ現在の法体系の中で不備な点を指摘して、それを逐次解決していった方が適切ではなかろうか、こう考えておるわけでございます。
  104. 村山喜一

    ○村山委員 不備の点はたくさんあると思うのですが、その中でとにかくとりあえず早急にそういうような総合立法をすることは非常に繁雑であり問題もあるとするならば、まず高等部なりあるいは幼稚部の施設設備、これに対するところの助成なりあるいは基準というものを明確に示す、そういうような法律体系を作っていくとか、このような努力、重点的にやっていこうと考えておられるのにどういうものがあるのか、その点はまだ明らかにできないものですか。
  105. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 施設設備の基準は、これはすでにできております。この基準によって国の補助金を配分しているわけでございまして、施設については問題はなかろうかと思います。  それから教員の定数につきましては、小学部、中学部の義務制に当たる分については義務教育諸学校の定数法に規定がございます。幼稚部、高等部の定数基準については、一般のを適用いたしておりますが、これは不備でございますので検討いたしたい。教科内容につきましても、現在のところ一般の小、中学校の教科内容をとるという建前になっておりますが、これも非常に私は無理だと思うのです。たとえば精神薄弱児に一般の小、中学校あるいは高等学校の教育課程を履修させることは困難であろうと思う。ですからそれぞれ具体的に実態に合うような教育課程を踏むべきではなかろうかというので、これも今検討しておる最中でございます。
  106. 村山喜一

    ○村山委員 今回学校教育法等の一部改正の中で、幼稚部並びに高等部を独立をすることも例外的には認める、こういうような法律改正案が出ております。その中で、高等部については中学校の義務教育を終えた子供たちを高等学校の一つの集中したものに集めて、そこで相当な設備施設を整えて職業教育をまとめてやるということが、より効率的であるというふうにも考えられるわけですが、幼稚部を独立させるということの必要性、あるいはその高等部の独立は、今後どのような角度で取り上げていくのか、今まで、小、中、高等、この三つの一貫した教育が同じところにおいて行なわれてきた。ところがそれを幼稚部を独立さす、あるいは高等部も独立をさしていくことを認めてやるというそこには、いわゆる盲学校、ろう学校の今後の教育体系というものは、どういうような角度で振興をはかっていかなければならないかという基本的な考え方というものがなければならない。その方向をどういうふうになさろうとしているのか、明らかにしていただきたい。
  107. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 御承知の通り小学部と中学部は義務教育でございますので、この点は問題はないわけでございます。ところが高等部と幼稚部は義務制をしいておりません。そこで非常に少人数の幼稚部、非常に少人数の高等部ですと、なかなか学級経営がうまくいかないわけなんです。ところが中学校を出て高等部の生徒がたくさん集まってきますれば、職業教育の設備にしてもあるいはその他の学校運営にしてもうまくいくわけでございます。将来幼稚部なり高等部を義務制にするためにも、できるだけ高等部、幼稚部の教育を推進していかなければならない。それを推進するために就学援助の方途を一方に講じながら、他方においては高等部に就学する生徒あるいは幼稚部に就学する生徒をふやしていかなければならない。それが今日義務制でないので、そこの部分をまとめて、学校経営にも支障がないように、また生徒のいろいろな職業開拓等にも便宜を与えていきたい、こういう趣旨で実は——もちろん幼稚部から高等部までの一貫は望ましいのでございますけれども、必要がありますれば同等部と幼稚部の独立学校を認めることも、これまた必要ではないか、こういう趣旨でございます。
  108. 村山喜一

    ○村山委員 高等部の独立、単独設置というものは、これはやはりそういうような職業開拓の意味における効果があると思うのですが、これは幼稚部を独立さし、その中で特に盲学校の盲児の幼稚部という、やはりそういうものをお作りになるお考えがあるのですか。教育上、そういう盲学校の幼稚部を作って効果があるという判定ができるのですか。
  109. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 幼稚部は、親が非常に心配なわけです。まあ小学部でもそうでございますけれども、上にいけば大体寄宿舎で間に合っておるのでございますけれども、幼稚部はなかなか親が手放すのが非常に難儀でございますので、なるべく分散さして、そこで幼稚園の教育を普及していく、こういう趣旨でございまして、特殊教育の幼稚部の生徒を早くから就学さしたい、こういう趣旨でございます。
  110. 村山喜一

    ○村山委員 ろう児の幼児教育というのは、これはできるだけ早くから始めた方が効果が上がるわけですね。ところが盲児の幼児教育というのは非常に困難性がある。それが義務制の方向に進むということは、これは必要なことでありますけれども、その目の見えない小さな、まだ学齢期にも達しない子供たちに生活訓練といっても非常に困るし、実際その幼稚部を独立さしても、そういうような盲児の幼稚部が生まれるはずがないのじゃないか、こういうふうに考えられるのですが、それも生まれる可能性があるというふうに考えておられるのですか。
  111. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 お説の通り、ろう児については非常に要望が強いわけなんです。なるべくこれは早くやりたい。盲児については、御指摘通りそれほどでもないわけです。しかし、こういう道を開かぬと必要なものが生まれないわけなんです。ですから、道を開いたら全部がこうなるという趣旨では毛頭ないのでございます。
  112. 村山喜一

    ○村山委員 今回予算で、盲ろう学校生徒の新職業開拓というものが通過いたしたわけですが、その中で、一校当たり百十七万二千円というものを出して、新しい職業開拓に乗り出していくという線が出されました。これはろう児の場合の職業開拓というのは、確かに将来大きく期待ができると思うのですが、盲の場合ですね、これは現在のあんま、はり、きゅう師、これ以外に新しい職業開拓ができる可能性があるという点について、どういうふうにお考えになっているのか。しかもそういうような状態であればあるほど、現在の同等部三年、それに専攻科二年、合わせて五カ年間を必要とする。五カ年を習得してなお国家試験を受けて、そしてようやくあんま、はり、きゅう師の免許状がもらえる仕組みになっている。そういうような実情から考えますと、当然盲部の高等部については、これは生きるがための職業教育として、最低必要な線としてこれだけ修得しなければ生活ができないわけなんですから、それだけは少なくとも義務制にしていくのだというようなその必要性に応じた一つの前進の方向というものがもうここら辺で打ち出されなければならない段階にきているのではないかと思うのですが、この新しい職業開拓と関連づけて、盲の場合の対策、特に盲学校の高等部についての義務制への方向づけというものをどういうふうに取り上げておられるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  113. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 御指摘通り盲学校、ろう学校におきましては、高等部まで卒業いたしませんと、社会へ出て一人前の生活ができないわけなんです。少なくともあんま、はり、きゅう——あんまだけでも高等部三年を出ないと免許状がもらえない、こういうわけでございますから、高等部までを義務制に準じた扱い方にしておる。その扱い方といたしましては、入ってきた経済的困難な子供たちに就学奨励をしていくという点に重点を置いているのですが、盲学校は小学部、中学部の場合でも、義務制とは言いながらもまだ五割しか来ていない。それで就学率を高めていく。ろうの方は七割程度まできておりますけれども、非常に就学率が低い。そこで高等部の場合にも希望者は全員入学させるようにいたしておるわけなんです。決して盲学校、ろう学校の子供に制限をしているわけじゃない。あとは父兄が出す能力があるかないかという点でございますから、その点については義務教育と同じような就学奨励をしているということでございまして、実はまだ小学部、中学部の就学率が非常に低いのでございまして、高等部まで保護者に義務を課することはいかがかと思っているのでございます。
  114. 村山喜一

    ○村山委員 現在盲学校に入っておる子供たちの中には、ただ目が見えないだけでなくて、そのほかにも身体的な障害があって、例の二重、三重の苦難を背負って入っている子供たちもおるわけでございます。そういうような身体障害者に対するところの教育の基準というもの、あるいは方針というもの、さらにまた途中で障害を起こした、目が見えなくなる、もうこれは学齢児ではない、そういうような場合のいわゆる措置、こういうようなもの等についてのいわゆる法律整備というようなものはほとんどなされていないというのが現実の状態であるわけです。そういうような点から考えまして、この特殊教育の諸学校の実情をよく見詰めていただいて、現在就学率がまだ半分にも満たない、こういうようなのはなせそういうふうなものになっているのか、そこら辺もやはり督励をしてもらって、それはやはり生活の問題もあるでしょうけれども、その学校におけるところの寄宿舎の整備の問題、そういうようなものが十分になされていないところにも収容ができない。だからせっかく就学奨励法は制定をされて予算はついたけれども、なお依然として就学率が低い、こういうことになっているのですから、もっと非常にかわいそうな立場にある恵まれない立場の特殊教育の問題については、内藤局長もまだ十分におわかりになっていらっしゃらないようでございますので、特に大臣も内藤局長におまかせになることのないように、この問題は重点に取り上げて、今後解決をしてもらいたいと思うわけです。それだけ要理申し上げまして次の点についてお尋ねをいたします。  今度通信制の高等学校、これを単独で設ける場合、文部大臣の承認を得て、そうして監督庁が認可にあたる、こういうように学校教育法の一部を改正しようとしておられる。これはもともと私立学校の場合は、大学を除いて高等学校の場合は、都道府県知事がほとんど監督庁としての権限を行使している。だから通信制の場合でも、今まではその都道府県知事が監督権に基づいて認可をしておったわけです。それを文部大臣がこの各都道府県の監督庁が持っている権限を取り上げる。しかも私立学校法の一部改正の内容を見てみますと、従来よりもなお非常にやかましく学則の変更にまで一々文部省の承認を得て、そうして認可をするような形になっているようですが、そういうふうに持っていく考え方というものがどこから生まれてきたのかということなんです。というのは、もともとこれは監督庁が認可すればいいのであって、文部省は定時制なり、あるいは通信制の教育については指導と援助を与えれば、振興法と別に法律があるようでございますが、定時制教育なり、通信制教育の振興にあたっては指導と援助を与えるべきだ、こういうような立場がはっきりしているわけですが、それをさらに乗り越えて文部大臣がそれに対して承認を与えていかなければならない、こういうように考える必要がなぜあるか。大体監督庁である都道府県が、それらの広域の地域にわたる場合には、その関係の都道府県知事にそういうようなことを相談をして、自治体同士できめていけばいいのではないか。それを一々文部大臣の承認がなければできないようなふうにして、文部省の権限を強化していこうというのは、これはどういうような意図から出てきているのかという点について、大臣がもしそういうようなお考えでお作りになったのだったら、大臣の方から答弁を願いたいと思うし、事務的ななんでお作りになったのだったら内藤局長の方から説明を願いたい。
  115. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 今御指摘の点はおっしゃるような文部省の権限を強化しよう、広めようなどという意図は毛頭ございません。あくまでも通信制の高等学校の設置の要望、だんだんと日に日に熾烈になっていく、その方向を指導、助成していこう、そのための必要性から手続としてこうしなければ所期の目的が達し得ないであろう。むしろ都道府県知事の認可権限が順当に効果的に誤りなく行なわれるための必要条件でございますから、単にそういう角度から便宜文部省がいわば仲介的な立場において相談をして話を取りまとめる、そういうことがねらいでございまして、繰り返し申し上げますが、権限を拡大するなどという意図は全然ないことを御理解いただきたいと思います。
  116. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 ただいま大臣がお述べになった通りでございまして、決して文部省の権限を拡充するという意図ではございません。ただ通信教育で現在はその府県内の学校しかやっておりませんが、今後広域地域になりますと、どこの県の子供が入ってくるかわからぬわけであります。全国的の子供が通信制に入るわけでございます。そういたしますと、関係府県といっても、四十六都道府県の子供が全部関係してくると思いますから、そこでその当該都道府県の管轄は知事でいいかもしれませんが、その他の府県の子供たちの進学その他教育について配慮が必要である、こういう趣旨から実は文部大臣の承認を得てということで、特例を設けた次第でございます。  〔中村(庸)委員長代理退席、委員  長着席〕
  117. 村山喜一

    ○村山委員 そういたしますと、現在の私立学校法の第五条に書いてあります監督庁の権限が、今回のこの法律改正案の中で拡大をされておる。今までは設置者の変更並びに開設廃止、これについて規定づけられてあるのが、今回は私立学校法の一部改正の中で「学則の変更の認可を行なうこと。」こういうふうに学則の変更の認可まで、この際広げられた趣旨はどこにあるか。
  118. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 設置の条件が、学則の変更で、実は非常に乱れる場合もございますので、決して私立学校について、監督を強化するという趣旨じゃございませんので、設置の目的通りにいっておるかどうかという点を見るためでございます。
  119. 村山喜一

    ○村山委員 これはしかし、私立学校に対するところの監督の権限を、やはり学校教育法改正の中において、拡大したのが、ここにちゃんと明らかに出ているわけです。それについての提案説明の中においては、これは規定の整備をはかったという程度に理由は説明をされている。その点は他意はないのだというような説明でありますけれども、やはりそういうような学則までも一々認可を得るように持っていかなければならない理由というものが、まだ明らかにされていないわけです。なぜそういうようなのまで、この際整備という名のもとに、監督庁の承認を得なければならないように持っていかれたわけですか。
  120. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 教育課程の問題で、当然文部大臣に御協議を願わなければならぬ。同様に学校経営の画から法人の問題が出てくるわけでございます。法人の場合に設置の目的に反しないようにという、念のためにそういう規定を置いたわけでございます。一つは学校経営の面、一つは教育内容を維持する、こういう点で、別にその私立学校の監督を強化するという意思ではないわけでございます。
  121. 村山喜一

    ○村山委員 監督を強化する意思ではないといっても、学則の変更にまで監督庁の権限が及んでいるのですから、それだけ私立学校に対する監督権が強化することは事実です。そういうようなことは、やはりそういうようにワクを広げていくのだったら、単に整備をするというだけでなくて、そういうふうにしなければならない必要性というものを提案理由の中で明らかにされるべきじゃないか。それはまあ意見になりますので、後ほどまた申し上げます。  続いて例の企業内におけるところの単位の修得の問題と定時制高校の単位修得の関係について御質問いたします。  先般来からこの問題について大臣や内藤局長にちょっと問いただして参ったのでございますが、大臣がこの際学校教育の立場から、現在わが国の青少年の後期中等教育の現状というものに対して、はっきりした分析の上に立って、今後日本の後期中等教育というものがどのような形の中で推進をされ、それに対して文部大臣はどういうような指導性を持つべきだ、こういうような大きな構想というものがこの法律改正の背後にはなければならないと思うわけですが、それに対して文部大臣がどのような大きな構想をお持ちになっているのか、一つこの際明らかにしていただきたいと思います。
  122. 荒木萬壽夫

    ○荒木国務大臣 高等学校の入学志望者は年々ふえておる。その方向がだんだんと推進されまして、終局的には義務制に準ずるような扱いをしてもいいようなとこうまで、できることならば持っていくべきであろう、同時に、勤労青少年として家庭の事情等から中学を終わって職場で働かざるを得ない人が、現実問題としてたくさんある。にもかかわらず、向学心は燃えるがごときものを持っておる、そういう人たち対して何をなすべきかという角度から、今度の問題も取り上げたわけでありまして、この方向も年々歳々充実していきまして、一人も漏れなくその希望が達成されるようにというめどをもって努力すべきものと心得ております。
  123. 村山喜一

    ○村山委員 義務制化の方向と、働きながら学ぶ者全員が希望に応じて後期中等教育が受けられるような方向に努力をしていきたいということでございますが、現実の日本の後期中等教育の実情を見ますと、非常に問題が多過ぎると思うわけです。特に、きょう職業訓練部長がお見えになっておられますので、労働省の技能養成の問題に関連をして、今後の日本の後期中等教育のあり方の問題についての考え方を明らかにしておきたいと思うわけでございます。私たちが考えますことは、技術革新の時代に即応した勤労青少年の職業技術教育というのは、人間養成の立場に立って基礎教育が重視されることはもちろんでございますけれども、その教育というものは、いずれも学校教育体系の中に一元化されていかなければならないものだと考えているわけでございます。それに対して労働省の技能養成の考え方というものは、そういうような基本的な考え方というものをお持ちになっていらっしゃるものかどうか、それとも一企業の要請に応じた一つの腕をみがくための技能者教育、労働者教育、こういうようなものが中心になるべきだとお考えになっているのか、その基本的な立場というものをこの際明らかにしていただきたい。
  124. 有馬元治

    ○有馬説明員 私どものやっております職業訓練は、学校教育法とは別の職業訓練法に基づいてやっておるわけでございますが、現在、ただいまの先生の御質問の後期中等教育の完成という観点から、これをどういうふうに考えていくかというふうな問題でございますが、これにつきましてはいろいろ御意見はあろうかと思いますが、私どもは終局的には学校教育の体系と矛盾しないように、また提携をさらに積極化しつつ、二つの制度がこの産業界の要請にこたえ得るように今後持っていきたいと思います。従って村山先生が御指摘のように、今すぐ学校教育体係の中に一本にしなければいけないというふうな点については、まだ根本的に検討しておりませんが、今覆ったような提携を積極化することによって二つの制度が矛盾しないような運営をして参りたいと考えております。
  125. 村山喜一

    ○村山委員 職業訓練法の中に、今言われましたように職業訓練と学校教育法上の学校教育との重複を避ける云々ということがもちろんあるわけですが、そういうふうな立場からでなくて、今後のいわゆる青少年の教育というものが学校教育法上の一つの教育という体系のもとに行なわれる場合と、企業の要請に従って腕をみがく、上級、中級、下級の労働者群の養成をしていく場合のそれぞれの目標なりとは、明らかに違ってくると思う。現在、企業内の訓練所あたりにおいて三カ年間ぐらいのいわゆる少年工、養成工に対する上級の技術者、技能者としての養成が行なわれておる。それから一般の本工程度の技能者養成というものが行なわれておりますし、片方においては非常に低いところの臨時工的な技能者養成というものが行なわれていることは事実であります。そういうような状態で三つのグループに技能者養成の現状を分析できると思うのですが、その教育課程を見てみましても、それぞれ非常に問題がある。そうして人間教育的な立場やあるいは基礎学習的なものがおろそかにされまして、すぐに企業のために役立つような教育というものが事業所内の訓練所あたりにおいて、あるいは公共職業訓練所あたりにおいては行なわれておる。これが実情である。私たちはいろいろ実情から調べまして承知しているわけですが、そういうような内容を持つものと学校教育という一つの目的に従って行なわれる教育との間においては非常に食い違いがあると思うのです。その食い違いを是正をしていくために、事務当局あたりで文部省の初・中局あたりと打ち合わせをされた事実がありますか、どうですか。その点について有馬部長にお尋ねいたします。
  126. 有馬元治

    ○有馬説明員 訓練所で養成訓練をしております人材養成の目標は、先生が御指摘になりましたようにいろいろな段階があるわけでございます。半熟練工程度の訓練を目標とする場合もあるし、それから熟練工の素地を与えることを目的とする訓練もあります。それによって訓練期間もあるいは三年あるいは一年あるいは二年というふうに違うわけでございますが、これはやはり産業界の現場で養成をしている人材養成の度合いがどういう度合いになっておるかということによって、その目標が違ってくるというわけでございます。従って学校教育のように、高等学校教育であれば全日制は三年、定時制は四年というふうに画一的に私どもはこれをやっておらないのであります。また、学校教育とはその教育目標が違いますから、同じ高等学校に例をとりますと、機械科と申しましても三年みっちりやった高等学校の機械科の学力と、さらに旋盤以下の各種の機械を工作できる技能と両方完全に身につけたものを養成する場合と、短期速成で、何と申しますか、旋盤だけの単能工的なものを養成する場合といろいろあるわけでございます。従って訓練の基準もそれに合うようにいろいろ各種の基準がこまかく分かれておるわけでありまして、そういう意味では学校教育のように制度として単純化されていない。従ってそのかみ合わせにつきましては本米非常にむずかしい。それぞれ教育法の目的と訓練法の目的と違いますので、ゲージが合わない面が相当ございます。しかし、先生御指摘のような今後の技術革新、技術進歩に対応いたす人材としましては、従来のような職人的なかたぎといいますか、徒弟の養成の仕方では新しい技術のもとに生産に従事するいわゆる近代的な技能労働者というものは育ちませんので、やはり必要な専門学科については、基礎的な学科の補強も今後は大いにやっていかなければならぬと思います。従いましてものによりましては文部省の工業教育と共通するような場面も相田ございますので、文部省といろいろな観点から事務的にも連絡をとり、御協力を得て私どもの訓練の内容を改善して参っております。職種によっては学校教育ではやっていないものもございますので、この辺についてはまだ訓練の独自の分野として必要な基準を設定してやっておりませんが、今後の行き方としましては、御指摘のような方向で文部省と事務的に接触連絡を密にして両方のゲージがなるたけ合うように今後進めて参りたい、かように思います。
  127. 村山喜一

    ○村山委員 同じ事業内訓練所でありましても、中小企業がやっております共同職業訓練所の実情と、それから比較的大きな事業がやっております事業内訓練所、これの実情をいろいろ調べてみますと、内容的にも非常に差があるようでありますし、もちろん中小企業の場合は青少年を雇っておる雇い主の理解、協力なくしては、特に定時制の教育を受けるというようなことも困難であると思いますが、大企業の場合は、今度はもう企業内だけで自分たちのところは社内教育ですべてをやっていくのだ、だから高等学校の単位を修得する必要はないのではないか、こういうような考え方があるということもわれわれ知っておるわけです。そういうような場合に、いわゆる学校教育と企業内訓練所、こういうような職業訓練機関との連携という問題が、今学校教育法の一部を改正する法律案として出てきておるわけでございますが、それらの法律案を施行する際において、今後どのような方向に、この労働省が所管をしていく訓練機関と定時制高等学校の教育機関との連携をとっていくかというような問題について、今まであなたの方に文部省の方から相談があり、あるいはあなたの方から文部省の方に具体的な相談をし、その間に相互の関連がとれるように、教育課程の内容の改正等の問題についても打ち合わせ等がなされた事実がありますか。その点はどうなんですか。
  128. 有馬元治

    ○有馬説明員 御承知のように、今回の学校教育法改正は、三年来の懸案でございまして、私ども、最初にこの改正案が文部省で考えられて参りました当時から、事務的には御連絡申し上げ、われわれの意見も文部省にお伝えしてあります。今後の運用につきましても、実施の面におきまして十分文部省と連絡をとりながら、この法律の趣旨に沿って運用して参りたいと思っております。
  129. 村山喜一

    ○村山委員 十分連絡がとれているというのであれば、そういうようないわゆる高等学校の一部の単位を履修をし得る教員組織なり、あるいは設備その他の条件等に照らし合わせて、企業的訓練所で一体どの程度が該当するところだというふうに訓練部の方では抑えておいでになるのでしょうか。
  130. 有馬元治

    ○有馬説明員 これはなかなかむずかしい問題でございますが、先ほど先生からお話がございましたように、大企業の事業内訓練の三年制というものは、設備、指導員——こちらでは教員と言わずに指導員と言っておりますが、指導員の質また生徒の質等から言いましても、これは定時制よりはなかなか質がいいという者も相当ございます。従って、今度のこの法律改正によりまして、全部が全部こういった提携をするかどうか、この辺も多少疑問がございますが、その訓練生として夜学に通いたいという者がある場合には、それらの向学心を抑えないように、できるだけこういった道を利用しながら、二重負担を軽くしていくというふうに、大企業の使用者についても私どもとしましては指導、奨励をして参りたいと思います。また、中小企業が寄って、共同方式で養成をしている場合、これは御指摘のように、いろいろ中小企業の財政力その他が劣りますので、大企業の養成施設のような内容を持っていないものが若干ございます。それらにつきましてこの学校教育法改正によりまして、どの程度内容によって振り分けていくかというふうな問題が、現実問題としてあるわけでございますが、これは具体的に文部省と御相談をしながらその辺の調整をして参りたいと思います。従いまして、現在夜学に通っている者のうち、何割ぐらいかこれによって救済されるかという点になりますと、なかなかこれは数字がつかみにくいのでございまして、私の方もはっきりした数字はつかんでおらない状況でございます。
  131. 村山喜一

    ○村山委員 職業訓練部の方で数字がつかめないのであれば、文部省の内藤局長の方では、大体の見通し、数字というものはつかんでおられると思うのですが、その辺はどうでしょうか。
  132. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 これは今後具体的に協議会を設けまして、どの程度の者が該当するかということになろうかと思います。先ほど訓練部長からお話のように、大企業のものは大体該当するのではなかろうか。中小企業のうちどの程度がこれに該当するかという点については、双方ともまだ実態をつまびらかにしておりませんので、明確なお答えをすることは困難かと思うのであります。少なくとも大企業だけを見ても、今の技能者養成施設の一割五分くらいは該当するのではなかろうかと思います。
  133. 村山喜一

    ○村山委員 一割五分ですか。その一割五分というのは、どこから割り出した数字ですか。
  134. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 訓練生の中で、それが定時制に通っているわけでありますが、その通っている者の一割五分くらいが該当するのではなかろうかという見通しでございます。
  135. 村山喜一

    ○村山委員 そういたしますと、その一割五分の者は該当する、残りの八割五分は該当しないわけですね。そうすると、その該当しない者は、比較的恵まれた企業内で働いている者よりも、単位修得については不利な状況に置かれる。だから、同じ定時制に通う子供の間に差が出てくるわけです。その差を教育的な立場においてどのようにカバーしていくというお考えがあり、それに対するところの対策は立てられておるのですか。
  136. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 つまり、この法律は、二重負担の軽減でございますから、学校で十分に実力をつけてあげなければならぬと思うのであります。大企業の養成施設で、一般の実験、実習その他実技教科が十分に行なわれておれば、それは学校でやる必要はないと思うのですが、中小企業の場合でも、部分的にはまだ相当あろうと思います。部分的にその条件に該当する科目については、あるいは実験、実科については免除になるわけであります。だから、全部がなる場合と一部がなる場合、もちろんいろいろケースがあろうと私は思うのですが、要は、高等学校卒業程度の実力をつけることが目的でございますので、その実力につきましては、三年制の十分な施設でやっておりますれば、その分は軽減されるし、そうでないものは学校の方でこれは負担をする方が、むしろ適切ではないかと思うのであります。
  137. 村山喜一

    ○村山委員 その該当する者が一割五分程度だということは、残りの八割五分程度は企業内において訓練を受けたものが単位に認められないわけですから、それだけやはり企業内で恵まれた者との間には、学校教育を受ける場合の単位の修得の上において差が出てくることは当然言われるわけです。その差はそれぞれその共同——中小企業の特に企業内訓練の実態を調べてみますと、共同訓練所において訓練教育を受けている者の数は八五%ぐらいに及ぶようであります。そういうような中小企業に働く青少年の共同訓練所に対するところの国の助成というものは、訓練部長、ことし一人当たり幾らですか。千五百二十円ですか。
  138. 有馬元治

    ○有馬説明員 共同訓練に対しまして現在補助をしておりますが、国の補助は昨年の実績が約九百円でございます。それと同額府県が補助をいたします。従ってその倍額程度が平均的な補助単価であります。
  139. 村山喜一

    ○村山委員 時間講師の謝礼まで入れて、それがきまっていると思うのですが、一時間当たり二百五十円でことしは計算してありますね、どうですか。二百円ですか。
  140. 有馬元治

    ○有馬説明員 去年の実績はただいま申し上げた通りでありますが、ことしはおかげさまで国の補助額が約五割ばかり増額になりました。同時に地方もそれだけ負担分が増額になるわけでありますが、ことしにつきましては現在補助基準を大体のところ想定いたしまして、これは府県に対する補助でございますので、府県に現在流しておりますが、昨年の実績よりは補助の額もふやして参りたいと思います。ただ先生御指摘のように、時間講師等に対する実際の謝礼額から申しますと、補助の場合にはじいておりまする単価と比べまして、非常に補助単価が安いものですから、これらについてはなお今後の補助額の増額によって中小企業の助成をして参りたいと考えております。
  141. 村山喜一

    ○村山委員 これはやはり企業間の格差というものが、教育上の被教育者の上に及ぼす不平等性というものが出てくるわけです。それをカバーをしていく方法を同時に考えなければ、この法律案だけが通ったのではその不平等性は解決はつかないと思います。そういうような教育上の不平等性を解決する責任は文部省になければならないわけです。それには現在の定時制の同等学校の施設設備を整えるという点も一つありましょう。そのためには富山県でありますが、定時制のそういうような施設を、実際大きな実習訓練もするような合同の設備を作っていく、こういうような方法も考えられましょうし、あるいは労働省の方においては、恵まれない中小企業に働いている青少年が、高等学校の教育の単位を得るのに必要なように、この中小企業の共同訓練所に対するところの助成、これが今後もっと飛躍的にはかられなければ、大企業に働く青少年と、中小企業に働く青少年の間の格差は、ただ技能訓練を受けるというだけでなくて、高等学校の単位修得にまで影響があるということになってくるわけですから、そういうような点は特に考えてもらわなければアンバラな状態になってくると思う。そういうような点がやはり今後解決される問題として残っているのだということを、私もはっきり確認しておきたいと思うわけです。  それに先ほど有馬訓練部長の方からお話がございましたが、夜間に通う場合には、大企業の場合も中小企業の場合も奨励をしていかなければならない、企業者が快く出していくように指導をしていきたい、こういうようなお話でございましたが、今日の日本の青少年に対する技能教育、これを、欧米の先進諸国との関係を比較してみますと、西ドイツにしてもイギリスにしても、昼間週二日程度、賃金を失うことなく、労働時間内においてそういうような教育が受けられる権利というものが認められておるわけですね。そういうような方向というものによって青少年の教育というものが行なわれなければならないと思うのですが、それに対して労働省はどういうような対策をお立てになっているのか。定時制教育というのは夜だけという意味じゃないのですがこれを、昼間二日なら二日労働時間の中において教育というものが行なわれるような態勢というものを整備することが、労働省の青少年に対する職業指導でなければならないと思うのですが、そのような方向が考えられているのか、その実情はどういうふうになっているのか、お伺いしたい。
  142. 有馬元治

    ○有馬説明員 ただいま御指摘のドイツ、スイス等のいわゆる職業学校システムというものは、勤労青少年の、いわゆる働きながら学ぶという教育制度としては、私どもも十分参考にして参る予定でおります。現在中小企業の場合が特に問題になるわけでありますが、中小企業の若い従業員を共同して養成している場合に、共通学科、基礎学科、一般教養学科、それから基本実技、この段階までは一カ所に集合して訓練をする、そしてしかもそれは成規の八時間労働の中でそれだけの基礎的な訓練をやる、こういう建前になって、実際は大部分そういうふうに行なっております。ただ中に多少八時間労働をはみ出る場合がございますので、最近基準局とも連絡をとりながら、その是正指導を一部行なっておるところもございますが、私どもの訓練の考え方は、先生が御指摘になりましたように、ドイツ、スイスの職業学校方式というものを十分に参考にしながら運用して参るつもりでおります。
  143. 村山喜一

    ○村山委員 その趣旨には賛成だというようなことですが、これはやはり具体的に推進をしていくところの考え方、それの計画的な推進というものが、労働省自体においてもなければならないと思います。それに対してドイツやスイスのような法律を作りまして、そういう方向に進めていくという計画をお持ちになっていらっしゃるのですか。
  144. 有馬元治

    ○有馬説明員 これは私の方ではなくて、文部省が産業人全体に対する教育制度をどう考えられるか、そういう観点から検討すべき問題ではないかと思いますが、私ども現在の訓練法の運用の立場におきまして、先生からお話がありましたようなヨーロッパの制度を十分参考にしたがら、その運営をはかっております。今後もはかっていこう、こういう考え方でおりますので、今後この産業教育というものを、国全体としてどういうふうに見ていくかという問題は、また新しい別の問題じゃないか、かように考えます。
  145. 村山喜一

    ○村山委員 大企業内におけるところの青少年の技能訓練というものは、社内教育として推進をされておりますが、これに対して文部省は、こういうような企業内にとっては技能訓練の上から非常に役に立つ人間が養成できる、しかしながら、これをもっと十年、二十年永続してその企業に働くことができるように、多角的な技能を修得できるように、そして技術革新に即応できるような基礎学力が養成されて、もっと伸びがあるような人間を養成していくための方向を考えるという意味において、企業内の訓練施設を学校法人に切りかえていく、こういうような考え方をお持ちになっていらっしゃるか。もし持っておられるなら、その推進を今後はかっていく計画をお立てになったことがあるのかどうか、こういうような点を承りたいと思います。
  146. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 現在の段階では困難かと思うのでございます。昔青年学校が職場内に置かれましたけれども、現在のところはそういう建前になっておりませんので、できるだけ各事業場等で技能者の養成をしていただいて、国民教育として広く基礎的な教養を積むことは非常に大事でございますので、それは学校教育の面で補っていきたい。そこで今御指摘になったような事柄がこの法律案の中に盛られておるわけでございまして、労働省の職業訓練設備の整備と相待って、定時制教育のあり方にも検討を進めて参りたい。特に今のように夜間だけでなくて、昼間においても一週間に一日とかあるいは八時間というような規定をして、そこにおいて広く基礎的な知識を授けるような方向で検討を進めて参りたいと思うのでございます。
  147. 坂田道太

    ○坂田(道)委員 あと村山君の質疑があるとすれば、それを大体常識的に聞いていただいて、そしてもしこの本会議の問に社会党の方でいろいろな手続があればそれをとっていただいて、再開の委員会で大体終結に持っていっていただきたいという私の希望を申し上げます。
  148. 濱野清吾

    濱野委員長 それでは本会議終了後直ちに委員会を開いて、質疑を続行することとし、それまで休憩いたします。    午後一時十五分休憩      ————◇—————    午後三時三十四分開議
  149. 濱野清吾

    濱野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。村山喜一君。
  150. 村山喜一

    ○村山委員 先ほど内藤局長から、企業内訓練所で現在職業訓練教育を受けている者の一割五分程度が定時制に通っている者であるという説明がございましたが、この法律の施行によって、おおむね概数といたしまして、どの程度二重負担の過重から解消がされ、そして今後において年次計画等を作ることによってその拡大をはかっていくのか、そういうような一つの計画というものが立てられているのであれば、予算的な裏づけと相待ってその計画を示していただきたい。
  151. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 現在技能者養成施設で訓練を受けている者は約六万人でございます。そのうち定時制の学校に通学している者が約一割五分と申し上げたのでございますが、その法案が通過いたしました場合にどの程度が対象になるかと申しますと、約三分の一程度は少なくともこの法律の適用の対象になろうかと思うのでございます。ただ先ほど申しましたように、八割五分は定時制に通っておりませんので、今後通うような方向で、定時制のみならず通信教育を併用いたしまして、高等学校教育が受けやすいような状況にして参りたいと思うのでございます。具体的な年次計画と申しましても、これは本人の希望でございますので、それを推進するように指導はいたして参りますけれども、国の方で計画を立てることは困難かと思うのでございます。
  152. 村山喜一

    ○村山委員 現在、企業内に働いて、しかも経営者の学校教育に対する協力が得られる恵まれた青少年は同等学校に通って、そこで今回の措置によりまして二重負担がある程度解消をすることになるわけでございますが、そういうような二軍負担が解消される部面と、一方においては、所得倍増計画関係におきまして、農村漁村における定時制の教育というものが非常に不振な状態に陥りつつある。特に本年は中学校の卒業生が少なかったために、定時制に入学する子供たちが全国的に非常に低くなりまして、再募集をしなければならないという実態も出ているようでございますが、工場地帯と申しますが、企業内訓練所があり、そこで訓練を受けながら、しかも定時制の学校に通えるような地域の定時制教育と、農村地帯の、そういうような訓練施設もないし、単位の修得も認められないような地域における定時制との格差の問題が考えられるわけでありますが、農村地域における定時制教育の不振の状態を打開するための対策をどのようにお立てになっているか、この際お伺いをしたいと思うのであります。
  153. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 農村の場合に、定時制は四年でございますので、四年が長過ぎるという批判もあるわけでございます。これを前期と後期の二つの課程に分けるということも検討されているのでございまして、前期の課程は少なくともすべての者に就学させるようにするとか、あるいはその他の方法を講じまして、できるだけ農村に向くような改善をしていきたい。特に教育の内容の面におきましても、一般の高等学校とは若干趣を変身なければならぬ点も出てくるのではなかろうか。どうしたら農村の定時制教育を振興させ得るかという点につきまして、いろいろ検討をしているところで、ございます。
  154. 村山喜一

    ○村山委員 検討を加えているという段階であって、これは今後に問題の解決が残されているわけですが、今後、こういうような技能教育を高等学校の単位の一部の修得に認めていくという方式をとった場合に、定時制高校の生徒の数がふえていく可能性と、それから定時制高校自体の教育というものが、責任が企業におんぶされる面が出て参りまするので、施設設備というものに対して、定時制の方が見捨てられてしまうのではないか、こういうような危惧をしておるものも、中にはあるわけであります。そういうようなときに、今後高等学校の定時制教育を正しく推進をしていくためにはどうなければならないかという、定時制と技能教育施設との関係を、もっと今後の構想を、この際、ただ検討をしているだけではなくて、今後の抜本的な対策というものがなければならないと思うのですが、そういうのをお持ちになっているか、それをお持ちだったら、この際明らかにしていただきたい。
  155. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 できるだけ後期中等教育の完成を目ざして就学率を上げて参りたいと思います。特に所得倍増の進む四十五年ごろまでには、少なくとも文部省の計画では、現在中学校卒業生の六割が後期中等教育を受けておるわけでございますが、それを七割二分程度に引き上げたい、さらにそれを引き上げるようにいたす考えでございますが、この法案によりましても、定時制と技能者養成施設との連携、あるいは通信教育技能者養成施設との連携、こういうような方向で、今後この面を強化することによって、できるだけ後期中等教育をすべてのものに与えるような方向で前進していきたいと考えておるわけでございます。
  156. 村山喜一

    ○村山委員 最後にお尋ねをいたしますが、イギリスのクラウザー報告によりますと、イギリスの科学技術革新の時代にあって、こういうようなパート・タイム式の教育というもの、あるいは技能教育というものが推進をされていく方向がたどられていくならば、高等学校教育というもののワクの拡大というものは全入、高等学校に全員入学をさせていくというような方向から考えていくならば、技能教育というものが発達をしていくことは、決してそういうような方向に正しく進められていくものではなくて、全入の方向からするならば、かえって後退をしていく方向であるというように論ぜられている。このことは、論議されている内容はすでに御承知だろうと思いますが、このような形において、高等学校の教育というものが、全日制の教育という形態と、定時制と技能教育施設と二つ連関をさした形の中において、体系の違った別の形の高等学校教育というものが始まっていく可能性があるわけでございまするが、そういうような複線型の教育体系というようなものに発展をしていって、将来日本の高等学校教育、特に全日制の教育の形がゆがめられてくる心配があるのではないかというふうに危惧される点がございますが、その点に対してどういうようなお考えをお持ちになっているか、いわゆる定時制と全日制との関係についてお尋ねをしたい。
  157. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 全日制も定時制も教育内容は同一でございます。そこで技能者養成施設でやったものが全部高等学校に吸収されるわけではございませんので、高等学校の教育課程から見て適切なものが、一部高等学校の履修と見なされるわけでございますから、高等学校教育の本筋はゆがまないと思います。取り入れられる可能な限度において取り入れるのでございますから、そういう意味で高等学校の普及に役立つ、こういうふうに考えております。今後といえども全日制と定時制に差をつける考えは持っていないわけでございます。
  158. 村山喜一

    ○村山委員 基本的には差をつける考え方を持っていないということでございますが、今私が質問をしておりますことに対する答弁になっていないわけです。というのは、こういう技能教育というものが高等学校の定時制の中で単位として認められるような取り上げ方をやっていくならば、学校の教育体系が複線化の方向をたどることによって水準が低下していくような方向に向けられていく。そのことによっていわゆる全日制の教育というものの形がゆがめられてくることによって、高等学校を義務制化していく方向に相反する結果が出てくるのではないかということが、クラウザー報告によってイギリスでは指摘されている。そういうイギリスの、いわゆる日本における中教審のような機関のような非常に権威のある機関によってそのような指摘がなされているのに、日本の文部省の見解は、何ら差はないとお考えになっておるのか、そのあたりを危惧されているのか、将来のいわゆる方向というものに対してその点を明らかにしておかれたいということを申し上げたわけであります。
  159. 内藤誉三郎

    ○内藤政府委員 その点は御心配されるのも一応ごもっともだと思うのでございますが、この場合に、技能者養成施設の分を全部取り入れていくということになりますと、確かに低下が起きて参りますけれども、そういう心配があるからこそ、文部大臣が承認するのであって、高等学校と教員組織あるいは内容の面において施設設備の面において少なくとも同等以上というところを目ざして認定をいたしておりますので、このことによってすぐ低下ということは起きて参らぬと思うのであります。高等学校の教育水準というものはあくまでも確保していき、その中で取り入れられる可能なものはできるだけ取り入れて高等学校教育を普及していく。その普及することがやがては義務制という方向に進むものでなかろうか、こう思うのでございます。
  160. 濱野清吾

    濱野委員長 これにて質疑は終了いたしました。
  161. 濱野清吾

    濱野委員長 これより討論に入ります。  討論の通告がありますのでこれを許します。村山君。
  162. 村山喜一

    ○村山委員 ただいま附帯決議案を添えてわれわれの態度を明らかにいたそうといたしたのでありますが、残念ながら、社会党の附帯決議案につきましては、自民党のいれるところと相なりませんで、まことにその点につきまして、遺憾に考えるわけでございます。  今回学校教育法等の一部を改正する法律案が提案をされております。この問題は、中に三つほど大きな問題がございますけれども、いずれにいたしましても、抜本的な基本的な対策というものをかまえて、その上に立った法律改正案として提出されておるのであれば、まことにけっこうな点があるわけでございますが、残念なことには、この技能教育施設における単位修得と定時制高等学校の単位の修得とを通算する問題にいたしましても、あるいはまた特殊教育の整備の問題にいたしましても、さらにまた通信制の単独設置の高等学校の問題にいたしましても、もっと根本的な対策を講じていかなければならないわけでございます。中でも、技術革新の時代に即応いたしまして、勤労青少年の職業技術教育というものは、もっと学校教育体系の中にすべてのものが取り入れられていくような大きな構想のもとに、現在労働省あたりが行なっております技能教育のうち、少なくとも青少年に関する部面はこれを後期中等教育の一環として取り上げて、学校教育体系の中に織り込んでいくという基本的な構想というものがなければならないと思うわけであります。そういうような意味において、現在の日本の青少年に対する後期中等教育の現状を見まするときに、高等学校に進学し得ない約四割の青少年は、企業内において訓練を受けている実態をながめてみましても、非常に千差万別でありまして、その内容はきわめて不十分なものがあるわけでございます。しかも少年工なり見習工としての地位は企業内においても不十分であり、わが国の労働慣習の中においてもいまだにその地位が明確に保障されておりませんで、労働時間の中において賃金を失うことなく教育を受けるという制度が確立をされておりません。従いまして、そういうような青少年の教育態勢を、国の責任においてあるいは企業の責任において作り上げていくという考え方が根本になければなりませんし、それに対する諸般の対策が講ぜられた上において学校教育法弊の一部改正も行なわれなければならないと考えるわけでございます。しかも今日の段階におきましては、企業間の格差によりまして、大企業あるいはそれに準ずるような企業で働く青少年の教育と中小企業で働いている青少年の教育との間においては差が生まれてくる。教育条件の整備の差異がございまして、その点から、それに関連してその格差を是正していくための具体的な方策をとられていかなければならないわけでありますが、それに対応する年次的な計画もございませんし、また、そういう熱意だけは持っているように聞くのでありますけれども、具体的な各省間の打ち合わせも行なわれている模様ではございません。今日の都会における教育だけでなくて、農村山村における青少年の教育という問題も、農業基本法等にも一部その考え方が示されてはおりますけれども、この日本全体の青少年教育という立場から、その地域格差の中において青少年が教育を受けていく態勢を考えた場合に、そういうような農村地帯における青少年の教育条件をどのようにして整備していくかという基本的な態度を明確にされていないわけであります。従いまして、今後これらの問題を抜本的に解決をしていくためには、もっと大きな構想のもとにこれからの対策を講じていくと同時に、現在のゆがめられておる企業内の教育実態というものを是正していくための措置が講ぜられなければならない。  こういうようなことを考えて、この法律案をながめますときに、なるほど一部の青少年については、教育の二重負担の解消にが役立つことは事実でありますけれども、全体の立場に立つところの構想の上において関連が不十分でございますので、われわれはそういうような立場から附帯決議を付して賛成をする方向も考えてみたのでございますが、そういうような抜本的な対策、総合的な政策というものを十分にとられようという意欲がございませんので、まことに残念でございますが、この学校教育法等の一部を改正する法律案に対しましては、反対の立場を明らかにしておきたいと存じます。(拍手)
  163. 濱野清吾

    濱野委員長 以上をもって討論は終局いたしました。  これより本案を採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の御起立を願います。  〔賛成者起立〕
  164. 濱野清吾

    濱野委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決するに決しました。  ただいまの議決に伴う委員会報告門の作成、提出手続等につきましては、先例により委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  165. 濱野清吾

    濱野委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  しばらく休憩いたします。    午後四時一分休憩      ————◇—————   〔休憩後会議を開くに至らなかった〕