○石田(宥)
委員 私は、自由民主党、
日本社会党、民主社会党を代表いたしまして、ただいま御提案になりました
土地改良区の財政の再建に関する件の趣旨弁明をいたしたいと思います。
まず、案文を朗読いたします。
土地改良区の財政の再建に関する件(案)
全国の
土地改良区のうちには、
災害、事業進度の遅延等の原因により
農民からの負担金の徴収が思うにまかせず金融機関に対する借入金の返済に苦しみ、経営上困難に陥っているものがすくなくない。
政府は、早急に正確な実情の把握に努め、その
根本対策を樹立すべきであるが、とりあえず、三十七年度を目途として、業績の特に不振な
土地改良区に対し、指導の強化、合併の促進等により体質の改善を図るとともに、なかんずくその借入金の条件の変更により利子負担の軽減、償還期間の長期化等が可能となるよう所要の立法上、予算上の措置を講ずべきである。
右決議する。
昭和三十六年六月五日
衆議院農林水産
委員会
以上であります。
土地改良事業に関しましては、御承知のごとく、政府は
農業基本法を提案され、衆議院は与党の不合理な採決でありましたが、これを通過して、目下参議院において審議中でございます。わが国の
農業が国際競争力にきわめて弱い状態に置かれておりまするときに、国際競争力を培養し、
日本農業の
近代化、機械化をはかるにいたしましても、まず第一に、立地条件である
土地の
改良が
根本的な問題でございまするから、私どもは、
農業基本法以前の問題として、完全な
土地改良が行なわれなければならないと信じておるものでございます。
今日、
農業の機械化をはかり、
近代化をはかるにいたしましても、いまだ区画整理すら行なわれない地方がきわめて多いのでありまするし、また、古くいわゆる耕地整理等が行なわれた地方におきましては、
土地改良のやり直しをしなければならないという実情にあることは、各位御承知の
通りでございます。今日においては、もはや平面的な
段階を終えまして、立体的な
土地改良にならなければなりません。すなわち、暗渠排水をはかり、あるいは容土をする等、立体的な
土地改良を行なうにあらずんば、
農業の機械化、
近代化に応ずることはできないことは、言うまでもないのであります。
こういうふうな状況のもとにありまして、わが国の
土地改良の事業の内容を見まするに、先般愛知用水公団法の一部
改正で包含されました豊川地区のごときも、昭和二十四年に着工をいたしまして、今日いまだその半ばにも達しておらない。すでに十二年を経ておるのでありますが、あと七年を経過しなければ完成を見ることができないというような実情に置かれておる。このような事業の遅延した地域におきましては、
農民の借入
金等についてはすでに償還にかかっておる。事業
効果は全然あがらないにもかかわらず、借入金の償還をしなければならない、諸経費はますますかさむ一方、こういうふうな
現状に置かれておるのであります。これは
一つの例にすぎないのでありますが、全国至るところ、このような状態のままに放任されておる。ことに、最近の事業不振の内容につきましては、いろいろなケースがございますけれども、古い
時代のものにつきましては、今の与党である自由民主党が
土地改良事業の事業費の全額国庫負担というスローガンを掲げて
土地改良を促進された。
農民は、
農民負担はゼロであって全部国が負担をしてくれるのであるという希望と期待のもとに
土地改良事業に着手をした。が、その後自由民主党は
土地改良費の全額国庫負担というスローガンをいつの間にか下げてしまって、特定
土地改良工事特別会計法のごとく、従来六〇%国が負担しておったものを五八%に切り下げる等、だんだんと
農民の負担率を上げるような状況になって参りました。こういうところにも
一つの原因がありますし、また、事業の途中において計画設計の変更が行なわれたり、あるいはまた、一部の
土地改良区の地方ボスといわれるような人たちの独断専行等のために、
農民がこれに反発する等、
土地改良団体の運営必ずしも円滑にいっておらない地域がきわめて多いのであります。
政府の発表によりますと、
土地改良区の数は、昭和三十五年三月三十一日現在で一万二千七百三十二地区あるのでありますが、面積は三百三十九万二千ヘクタール、こういう膨大な面積を抱えておる。そのうち約一万地区はいわゆる不振地区でありまして、いずれも事業不振に陥っておるということであります。もちろん、中にはきわめて規模の小さいものもございまし、専任職員すらも置くことができないという
土地改良区がそのうちの八〇%を占めておると言われておるのでありますが、この中の特に事業不振であるという地区、三百二十九地区だけの抜き取り調査によりますと、面積が十四万二千ヘクタール、その負債が五十四億三千三百万であり、うち、延滞しておる融資額が八億八千四百余円という膨大なものがあるのでございまして、こういう実情のもとに放置いたしますならば、百年河清を待つにひとしいものがあると考えるのであります。
私どもは、かつて、本
委員会におきまして、
土地改良というものが国営、県営、団体営というようにばらばらに行なわれておるところに
根本的な問題があるのではないか、——
農民は、当初の計画に対する承認をするにあたっては、国営だけの予算と計画設計の説明だけを聞いて、反当たりで一万円なら一万円できるんだ、
農民の負担は一万円だというふうにして承認をいたしますると、次いで今度は県営
部分が出てくる。その
部分がまた一万円もかかるということになる。次に今度は団体営
部分が出てくる。ここにもまた一万円かかるといたしますと、反当三万円の
農民負担が起こってくるということに相なるわけでありまして、こういうふうな国営、県営、団体営がばらばらに計画設計が行なわれ、事業が行なわれるというようなところに問題があるのではないか、これはやはり一貫して、特に水系別に一貫して計画設計が行なわれて、最終的に
農民の負担がどの程度であるということが明らかになった後でなければ、みだりに
土地改良区を作る事業に着工することは後にいろいろ問題を残すことになるのであって、そういうような
土地改良事業の進行の仕方には多くの問題があるのではないかということを強く指摘をして参っておるのでありますが、いまだにこれについては政府は明確な方針を示しておりません。全く誠意を認めることができないのであります。
私どもは、
農業の
近代化、機械化をはかり、国際競争力にたえ得るような
日本農業を作るにあたっては、まず第一に
土地改良事業の完成がはかられなければならないと考え、その
意味におきましては、農地法の一部を
改正し、あるいは
土地改良法の抜本的な
改正をはかることが必要であると考えるのでありますが、しかし、今早急にこれらの
土地改良法の抜本的
改正やあるいは農地法の
改正というような問題はできるものではございません。よって、ただいま申しましすような一万余に及ぶところの不振
土地改良区、特にその中でいろいろな事情できわめてその事業が不振に陥っているもの、中には、にっちもさっちも動きがとれないで、役員も総辞職をする、
農民は全然賦課金の徴収に応じないというような地区すら残っておるのでありまして、そういうようなどうにも動きのとれないような特定の不振
土地改良区に対して財政再建についての立法を必要とするということを主張して、さきに法案も
提出いたしました。私どもがこの
土地改良区の財政再建に関する法案を
提出するにあたりましては、実はこれではきわめて消極的で
根本的な
解決にはならないものではありますけれども、その程度のことは政府も賛成しなければならない筋合いのものであり、与党もまたこれに賛成をしなければならない筋合いのものであるとして、最小限度の
法律案を提案をいたした次第でございます。
これについては、与党側にも多くの賛成者がおられるのでありますけれども、今日になりましては、あと残すところ幾日もないという
現状のもとにこの法案を成立せしめるということはかなり困難も予想せられますので、よって、この機会において、ただいま申し上げました決議案をここに御採択を願いまして、同時にまた、農林
大臣からただいま私が申し述べたような
土地改良区の財政再建に関していかなる態度をおとりになるか、これに対してどれほどの熱意をお持ちであるかの御意見も承って、すみやかに不振
土地改良区の財政再建をはかるよう特別の
対策をしなければならないと信ずるのでございまして、何とぞ皆さんの満場一致の御賛同をお願い申し上げて、私の趣旨の弁明とする次第でございます。(拍手)