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1961-06-05 第38回国会 衆議院 農林水産委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年六月五日(月曜日)     午前十一時三十三分開議  出席委員    委員長 坂田 英一君    理事 秋山 利恭君 理事 小山 長規君    理事 田口長治郎君 理事 石田 宥全君    理事 角屋堅次郎君 理事 芳賀  貢君       飯塚 定輔君    金子 岩三君       亀岡 高夫君    川村善八郎君       倉成  正君    田邉 國男君       舘林三喜男君    谷垣 専一君       中馬 辰猪君    寺島隆太郎君       内藤  隆君    中山 榮一君       野原 正勝君    藤田 義光君       本名  武君    森田重次郎君       八木 徹雄君    足鹿  覺岩       片島  港君    川俣 清音君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       山田 長司君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         農林政務次官  八田 貞義君         農林事務官         (農林経済局長坂村 吉正君         農林事務官         (畜産局長)  安田善一郎君         食糧庁長官   須賀 賢二君  委員外出席者         議     員 野原 正勝君         議     員 島村 一郎君         大蔵事務官         (主計官)   相沢 英之君         農林事務官         (農林経済局農         業保険課長)  中野 和仁君         専  門  員 岩隈  博君     ――――――――――――― 六月五日  委員上村千一郎君、綱島正興君、松浦東介君及  び中澤茂一辞任につき、その補欠として中山  榮一君、亀岡高夫君八木徹雄君及び川俣清音  君が議長指名委員に選任された。 同日  委員亀岡高夫君川村善八郎君及び川俣清音君  辞任につき、その補欠として網鳥正興君、松浦  東介君及び中澤茂一君が議長指名委員に選  任された。     ――――――――――――― 六月三日  湿田単作地域農業改良促進に関する請願(江  崎真澄紹介)(第五四〇四号)  麦対策に関する請願佐藤洋之助紹介)(第  五四〇五号)  農業災害補償制度改正に関する請願齋藤憲三  君紹介)(第五四〇六号)  同(田中彰治紹介)(第五四〇七号)  同外二件(足鹿覺紹介)(第五四〇八号)  同(飯塚定輔紹介)(第五四〇九号)  同(草野一郎平紹介)(第五四一〇号)  同(鈴木善幸紹介)(第五四一一号)  同(倉成正紹介)(第五四一二号)  同(中馬辰猪紹介)(第五四一三号)  同(濱田正信紹介)(第五四一四号)  同(山口六郎次紹介)(第五四一五号)  同外三件(井出一太郎紹介)(第五四五二  号)  同(鴨田宗一紹介)(第五四五三号)  同(芳賀貢紹介)(第五四五四号)  万国家禽会議誘致に関する請願野原正勝君紹  介)(第五四一六号)  同(加藤鐐五郎紹介)(第五四五五号)  同(坂田英一紹介)(第五四五六号)  同(八木徹雄紹介)(第五四五七号)  大豆かす自動承認制による輸入方式即時実  施に関する請願伊藤幟紹介)(第五四五八  号)  同(大野市郎紹介)(第五四五九号)  同(鴨田宗一紹介)(第五四六〇号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 六月三日  大麦及びはだか麦の作付転換に関する陳情書  (第一〇九  六号)  辺地農家低利資金融資に関する陳情書  (  第一〇九七号)  農林関係法律案成立促進に関する陳情書  (第一〇九八号)  家畜商法の一部を改正する法律案反対に関する  陳情書  (第一一〇〇号)  養蚕経営合理化対策確立に関する陳情書  (第一一〇一  号)  土地改良制度改正に関する陳情書  (第一一〇二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  肥料取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第一七一号)(参議院送付)  農業災害補償法の一部を改正する法律の一部を  改正する法律案内閣提出第一八三号)  オリンピック東京大会馬術競技に使用する施  設の建設等のための日本中央競馬会国庫納付  金等臨時特例に関する法律案野原正勝君外  一名提出衆法第五六号)  土地改良区の財政の再建に関する件      ――――◇―――――
  2. 坂田英一

    坂田委員長 これより会議を開きます。  肥料取締法の一部を改正する法律案を議題として質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。川俣清音君。
  3. 川俣清音

    川俣委員 この際当局にお尋ねしておきますが、今後肥料農薬区分が困難になってくるのじゃないかと思うのです。今度の改正を見ましても、かなり農薬に近いようなものが肥料として取り締まり対象となるわけですが、今でもかなり従来の肥料といいがたいものが肥料として市場にあるわけであります。肥効促進剤等肥料として販売されておるわけですが、今後、肥料及び農薬区分、その他促進剤等をどのように規定するつもりなのか、これは法律以前の問題でありまするけれども、この点を明らかにしてほしいと思います。
  4. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通りに、現在、肥料農薬と似ていると申しまするが、幾分従来の肥料観念とは違うものが出て参っておるわけでございます。そこで、今度の肥料取締法におきましても、第一番目には、葉面散布剤、第二番目に、農薬等を一部混入いたしまして労力を省こうというような性格のものが出て参りますので、これを肥料として取り上げたわけでございます。なお、川俣委員のおっしゃるように、たとえばホルモン剤成長促進剤がありますが、これらのものは、どちらかと言いますると、肥料といいまするか、植物栄養を与えるという観念から言うと従来の観念と違うわけでございまするが、従来肥料としても農薬としても取り締まり対象となっていないという現状であります。これらの問題につきましてはなお技術的にもいろいろ不十分な点がありますので、技術的に今後とも検討いたしまして、いずれかの方法によって、これが相当市販されて参りました場合には、十分一つ取り締まり対象にいたしまして、農民が迷惑をこうむらないように、そういう対策検討して参りたいと思っております。
  5. 川俣清音

    川俣委員 今答弁のあったように、肥料の中に農薬を加える、あるいは酵母菌を加える、あるいは促進剤を加える。この促進剤になると、これは肥料じゃないですよ。従来、あなた方は、促進剤肥料じゃないと称してきた。今後は、肥料にするのか、あるいはこれは農薬部類に入るのか。技術的には、農薬にも入らない、肥料にも入らないですよ。どうして法律対象になり得るのですか。規定がなければならない。日本農薬とは何か、あるいは肥料とは何か、今まで科学的・技術的な解明の限界を越えたものが市販されておる現状におきまして、この区別を明瞭にしなければ、法律対象にならないじゃないですか。むしろ技術的な解明の方が先じゃないかと思うのですが、技術的解明はあとにして法律を先行させましても、取り締まることができないんじゃないか。技術的に問題のあるものをどうして取り締まることができますか。この点を明らかにしていただきたい。
  6. 坂村吉正

    坂村政府委員 仰せ通りに、ホルモン剤等につきましては、まだ技術的にはっきりと解明されたという段階に来ておらない状況でございます。従いまして、ホルモン剤等については、今後十分技術的な解明をいたし、検討いたしますが、大体のあれから申し上げてみますと、たとえば人間で言えばビタミン注射のような、そういう性格のものでございます。従来の観点で言いますと、これは肥料とは言い切れない、こういうことであろうと思いますが、要は、農民が使いまするそういう肥料なり薬剤なりが、農民が非常に悪質なものを押しつけられて迷惑をこうむるということがないようにするということがねらいでございますので、技術的な解明は十分急ぎまして、その後取り締まりをどこの範疇に入れてどういう工合にやっていくか、そういう問題は一つ十分急いで検討したいと思っております。
  7. 川俣清音

    川俣委員 有機質のものでございまするならば、まだ分析をいたしまして幾分解明できると思います。最近相当無機質のものも市販されておるわけです。そういたしますると、これは解明しなければ取り締まり対象にならないんじゃないか。現在いわゆる肥料なりあるいは促進剤なりとして市販されているものは、かなり無機質のものが多く出ております。有名な住友のものであるとか、あるいは日産化学のものであるとかということで、相当市販されておるわけです。これは、効能を見るというと、おもに肥効促進剤ということでございます。これは対象になるのですかならないのですか。
  8. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在市販されておりますものの大部分は、肥料の中に農薬を入れているものがあるわけでございます。そのパーセントは非常に少ないものでございまするけれども、肥料として施用しますと同時に、たとえば除草効果があるとか、あるいは殺虫効果があるとかいうふうなものでございます。それが、今までは異物混入ということで肥料取締法上禁止をされているわけでございまするけれども、これらにつきましては大体技術的な解明ができておるわけでございます。そこで、今度これを肥料取締法対象といたしまして、農民が迷惑をしないように取り締まっていこう、こういうことを考えておるわけでございます。いろいろ、その他の問題につきましても、十分技術的にも検討して、御趣旨に沿うようにやっていきたいと思っております。
  9. 川俣清音

    川俣委員 肥料取り締まりというのは、肥料価値を十分公示して、そうして農民肥料の施用の上にあやまちなからしめるための、不慮の災害を受けさせぬための取り締まりであることは、これは言うまでもない。ところが、先ほど申し上げましたように、分析すると肥料分がない。促進剤でございまするから、肥料分としてはならない。従来のいわゆる肥料要素としての養分はないわけです。それを肥料取り締まりにするということは、問題が起きたときに取り締まることができないのじゃないかという点を指摘しておる。むしろ分析すると農薬としての取り締まりの範囲に入って、肥料取り締まりに入らない分析結果が出てくるのじゃないかと思うのです。成分分析表を見ましても、市販されているものを見ましても、肥料分じゃなくして農薬分成分が公示されておるわけです。そういたしますと、これは肥料取り締まりになり得ないのじゃないですか。
  10. 坂村吉正

    坂村政府委員 現在、今度の肥料取締法改正案肥料として取り締まりをしていこうという工合に予定しておりますものは、市販のそういうものの中で、大部分肥料分でありますけれども、それに、あるいは成長促進剤だとか、あるいは、殺虫効果のあるような、たとえばPCP尿素というのがございます、そういうものを一応対象にしているわけでございます。分析した内容が、今までの観念でも肥料と思われないようなものにつきましては、今後、技術的にも検討しました上で、いろいろな取り扱い検討して参りたいと考えておるわけでございます。
  11. 川俣清音

    川俣委員 局長だいぶ苦しいんだけれども、大臣が来たらなおお尋ねしますけれども、成分分析表を私きょう持ってきませんけれども、見ますと、確かに肥料が百分の三か四くらいあるのがございます。農薬は百分の四とか五とかで、むしろ、比率から見ると、従来の観念からすれば農薬対象になるようなものが、いわゆる肥料として販売されておるわけです。これは、しかし、無価値かと言えば、価値があるから使っておるのですよ。従来のいわゆる肥料成分とすれば非常に価値は少ないけれども、肥料を分解させる度合いがある、あるいは土壌改良になるかという意味での肥料であって、いわゆる肥料成分から言えば、成分は百分の二とか三とかである。これを肥料だと言われる根拠を明らかにしなければならないのじゃないか。ですから、部分改正ではなしに、肥料取締法根本から変えていかなければならない時代に今なっておるのじゃないか、こういうことなんです。取り締まられる意義はよくわかりますよ。それならば、そんなこうやくばかりではなしに、現在の肥料というものはこの法律ができたときの肥料の状態と違った形になっておるのだから、根本的な改正が必要なんじゃないか、こういう前提でお聞きしておるわけです。
  12. 坂村吉正

    坂村政府委員 仰せ通り、新しい商品がいろいろ出て参りまして、ただいま川俣委員のおっしゃるような、一例を申し上げまするとソイラックというようなものも出ておるのでありますが、これはどちらかといいますると物理的に土壌改良する、こういう性格のものが出ておるわけでございます。しかし、この問題は、なかなか技術的に、たとえばどういう効果で物理的な改良ができるのかというようなメカニズムや何かもまだはっきり解明されておりませんので、そういう問題は今後検討することにいたしまして、今度の法律改正案肥料取り締まり対象にしようとしておりまするものは、大体技術的に解明されたものを中心にして考えていこう、こういうつもりでございます。  将来の問題といたしましては、いろいろの商品が出て参りますので、これらのものを技術的に解明いたしますと同時に、取り締まりといいますか、検査の機構でも、たとえば農薬肥料というようなものが相当共通する面もあろうと思いますので、そういう点を根本的に一つ将来の問題として検討しなければならぬというふうな考え方をもって今後検討して参りたいと思っております。
  13. 川俣清音

    川俣委員 大臣、ちょっとお尋ねしますが、今ちょっとお聞きになったと思うのですけれども、この肥料取締法はかなり古い伝統を持っておりまして、過去のいわゆる三要素と言われます肥料から、最近は、今、局長答弁のように、土壌改良等を促進するためのもの、あるいは肥料成分をさらに分解して有効に吸収できるようにするというようなものがあるのです。これは、肥料と名づけられておりますけれども、化学的分析では決して肥料成分がないというのが従来農林省がとってきた態度であった。ところが最近は、これに押されて、需要量が増してくるに従って農林省の見解を放棄しなければならなくなってきているのが現状だと思うのですが、そういう建前から今度の肥料取締法改正をはかられたのではないでしょうかどうか、この点、大臣からお答えを願います。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 この肥料取締法等に関しましては、川俣さんの御指摘のように、日進月歩変化をして、薬品といいますか、あるいは肥料成分を高めるための薬剤とか、あるいは土壌を分解して肥料を吸収しやすくするための薬品、こういうものもだんだん出て、従来の肥料というものの概念を広めるのがいいか、また、それは別個取り扱いとして、やはり、生産に影響を及ぼすものとして、農家には損を与えないように有効なものとして取り扱うのがいいか、これらについてはまだ根本的にはきまっていないと私は思うのですが、先ほど局長が話しましたように、今日取締法の中に入れて一応取り締まっていこうというものについては、いろいろ科学的の研究も一応の結論を得ているようでありますから、一応これをこの中に入れて、農家のために取り締まりをして、いかがわしいものの動かぬようにしようというのがこのねらいだと思います。  しかし、私は、将来の問題としては、ただいま申しましたように、肥料として取り締まるのがいいのか、あるいは肥料外のものとして取り締まるのがいいか、こういう点についてさらに検討を加えて、新しい方策を見出していくことが必要であろうと思います。よけいなことですが、これらと同様のことが農薬についても出てきていると思います。これらは一連のものとして、あくまでも、根本は、農家にいかがわしいものが売られないで、いかなる形にしても有効な働きをして農業生産を高めるような方向に向かっていくように取り扱いに万全を期して、農業者の利益をはかっていきたい、こういう考えております。
  15. 川俣清音

    川俣委員 いかがわしいというのはどうなんですか。農林省は、今度認めようというようなものも、今まではいかがわしいというような表現をもって日進月歩肥料を押えてきた。いろいろな肥料成長を、これはいかがわしいものなりとして取り締まり対象としてこれを阻止してきたのです。それをとうとう阻止できなくなったから対象にしようということでありましょうが、現在、いかがわしいなどと言うことは、自分たちの頭の程度が低いために人が作ったものをいかがわしいなどと言うのではないか、今日もう行政府として考えなければならない段階に来たのではないか、このことを質問しているのです。大臣、どうなんですか。
  16. 周東英雄

    周東国務大臣 私は、今取り締まり対象にしたものをいかがわしいと申しているのではないのです。あなたが将来の問題についてどう考えるかということをおっしゃっておりますから、現在のものはすでに科学的にある程度の結論を得たゆえにこれを取り締まり対象にしている、しかし、将来も、実際上としては、肥料としてでなくても、肥効を高めるとか土壌の分解をよくするとか、いろいろな化学的薬品等も出て参りましょう。しかし、そのものをいかにして農家に使わせるかということに関しては、いかがわしいものが取り扱われないようにするためには新しい方策検討の上に立ってものを考えていかなければならぬのだ、こう申し上げたわけであります。
  17. 川俣清音

    川俣委員 いかがわしいか、いかがわしくないかという科学的な基準がなければならないと思うのです。従来は、葉面散布類のごときは、農林省から見ればいかがわしい肥料部類に入っておった。世間では最近の趨勢に応じた適当な肥料だと言われておりましても、取り締まり対象になっておりました。しかし、ついに農林省も寛大な取り扱いをしなければならないままに現在使用されておるわけです。これを従来農林省肥料成分のないいかがわしい肥料として取り締まり対象にしてきたのです。なかなか公然と売りにくかった。ところが、需要の大勢に押されて、やむなくこれを肥料として認めざるを得ない段階に来た。だから、いかがわしいとか、こんなものはだめだという農林省判定力時代からおくれておる。おくれておるためにこういう結果が来たのでありますから、おそまきながら改正しようとする意図は、私は了承するのです。しかしながら、そこまで来たならば、さらに抜本的な改正の時期にもう来たのではないか、すでにこの対象を越えたような種類が非常に多くなってきたのであるからして、肥料というものに対する観念を、従来の農林省的な肥料という観念から変えていかなければならない時期に来たのではないか、こういうわけです。一方では農業近代化とかなんとか言うけれども、言葉だけです。農業近代化というものが行なわれようというときに、肥料は従来のままだというような考え方で従来取り締まってきたのです。従来の肥料取締官はなかなか熱心で、これは私は非常にけっこうだと思う。熱心だけれども、新しい時代に対する感覚がおくれておる責任というものは、これは行政府責任なんです。むしろ農家の方がより進んでおって、行政府の方がおくれておるのであるからして、もっと先を見た基本取締法に変えていかなければならぬじゃないかというのが私の大臣に対する質問の要点なんです。わかりにくいかもしれぬけれども……。
  18. 周東英雄

    周東国務大臣 いや、よくわかりました。先ほどそれで私はあなたのお尋ねに対してお答えをしておるのです。だから、今までは肥料としては入らなかったかもしれぬけれども、今後日進月歩出てくるものを考えて、それは狭い意味における肥料に入らなくても、広義の肥料の中に入れる方がよろしいか、あるいは肥料というものの範疇から外にして別個取り締まりにするか、いずれにしても大きな立場で検討して考えますと、先ほど申し上げたわけです。
  19. 川俣清音

    川俣委員 そういう答弁であれば、従来のこそく肥料取締法を基本的に変えなければならない。従来はこそく取締法になっておる、それで改正をしようという、その前進した気持は理解できる。しかし、それならば、これでは一部より解決がつかないから、やはり、根本的な解決のために、この肥料なるものの考え方を基本的に変えた肥料取締法にしなければならないのではないか、徐々にやるのだということでございましょうが、すでに行政府の方がおくれておるのだから、これを取り返すためにも、基本的な根本取締法に変えていかなければならぬのじゃないか、取締法というか、あるいは助長法というか助成法というか、今後は、必ずしも従来のような取り締まりでなくて、取り締まりも入るけれども、助成も入るような法律に変えていかなければならない時期になってきたのではないか、単にお役所が権力をもって肥料というものは取り締まるのだという考え方ではなしに、むしろ肥料というものは助成をしていくのだ、助長をしていくのだ、これは必ずしも予算的な助長でなくても、指導していくのだという建前をとらなければ、肥料行政というものはやれなくなってきたのではないか、こういうところから、肥料根本的な取り締まりと申しますか、助長と申しますか、奨励策というものを法律に盛ったものにしていかなければ、現状肥料需要を満たすわけにはいかないのじゃないか、こういうことなんです。今後、果樹園芸等をやっていかなければならぬ、あるいは高度園芸をやるということになりますと、肥料の複雑さというものがさらに数段と高まるわけです。農業近代化に伴いまして、肥料農薬というものの重要さは数段と高まっていくわけです。あなたの方は、農業近代化資金法というものを出して近代化を進めると言いながら、取り締まりは依然として旧来の権力的肥料取り締まりなのだという考え方は、非常にずれているのではないか、一方で、頭だけが近代化だとか、いや高度園芸だとか、農芸だとか、フレーム園芸農業だとか言いますけれども、それに即応したような肥料肥料界が追いつこうとするようなときに、あれはいかぬこれはいかぬということで取り締まるだけでは、近代化を促進するというわけにいかなくなってきたのではないか、そこで、せっかく改正しようといういい意図が出てきたのだから、もう一歩前進したらどうか、なぜ前進できないか、こう聞いているのです。
  20. 坂村吉正

    坂村政府委員 先ほどから申し上げております通り、従来の肥料取締法は、「土じように化学的変化をもたらすことを目的として、土地にほどこされる物」を肥料だと言っておったわけですが、そういう法律規定現状では合いませんので、それを直しまして、「土地にほどこされる」というところを「植物栄養に供することを目的として植物にほどこされる」、こういうふうに直したわけでございます。ただ、従来の観念から申しまして、土壌化学的変化を与えるというのが肥料の一番基礎的な観念でございますが、これに物理的な変化を与えて土壌改良をやるものもだんだん出て参っておるわけでございます。これは当然今後の問題として検討しなければならぬ問題でございますが、今は、まことに遺憾でございますが、まだ物理的にどういうメカニズム土壌改良をされるのか、そういうところが究明されていないわけでございます。従いまして、今後そういう問題を十分検討いたしまして、この中に取り入れて、そうして十分な取り締まりができるようにしていきたい、こういう意図でございます。そういう意味におきましては非常に踏み切ったわけでございまして、根本的に川俣委員のおっしゃるようなところまではいっておりませんけれども、今後、技術的な研究の成果と相待ちまして、農民に迷惑のかからないようにやっていきたい、こういうつもりでおります。
  21. 川俣清音

    川俣委員 しかし、現在、デパートの園芸部を見ましても、あるいは一般の第一園芸等を見ましても、物理的変化を来たすような肥料が最近非常に多くなってきた。売れ行きをきのう聞いたのですが、最近は物理的変化肥料を求める人が非常に多くなった、こういうことなんです。きのう私はわざわざデパートの図芸部及び第一園芸に参りまして、最近の売れ行きを聞き及んだわけです。税務署ではないということを念を押しまして聞いたのですが、むしろ物理的変化を求めるところの肥料の売れ行きが非常に多くなってきたと言っている。ことに園芸や花をやる者たちが物理的変化をもたらす肥料によって土壌改良をやろうとする傾向が非常に強くなってきている。これはここへ参考人を呼んでもいいのですが、それほどのことではありますまい。ただ、あなた方は、机上で権力をもって肥料を取り締まればいいという時代から前進されなければならぬ。この肥料取締法だけでは、土壌に物理的変化を来たすような肥料対象になっていないわけです。葉面肥料にいたしましても、必ずしもこれは肥料分でなしに、やはりこれは物理的変化を来たさせるというのが重要な要素になっておると思う。従来は、あなたの説明されたように、「土地にほどこされる物」ということで、木の葉や幹に変化を与えるというものは肥料ということにはなっていなかった。今度は一歩進んだとは言われまするけれども、法律目的、定義に反するものをこそこそと対象にいたしましても、十分な取り締まりができないんじゃないか。今後有象無象のいろいろな物理的変化を促進するような肥料がまねて出てくる危険性が現在出てきたんです。今では相当な信用のある肥料会社が作っておりまするからよろしゅうございますが、これをまねたものがたくさん出て参りますると、あなた方が取り締まりに困難を来たすのじゃないか、やはり、目的、定義から根本的に変えていかなければならないときに来たのではないか、これが私の指摘なんです。それで参りますと言えば、それでいいのです。変な抗弁をしなければいいのです。
  22. 周東英雄

    周東国務大臣 川俣さんに申し上げますが、私はさっきそのことは触れて御答弁をいたしておるわけです。あなたのおっしゃるそのことについて私は一番最初に答弁しているのですよ。もう一ぺん繰り返しますが、今後の発展に基づいて土壌に物理的な変化を与えるというふうな問題になって参りますと、従来の肥料取り締まり範疇にいかぬものがあるかもしれない、しかし、それを広義の肥料として取り締まる方法もあろうし、肥料以外の形において取り締まることも考えられるし、かつそれを誘導していくことの必要はあろうから、根本に今後考えますと申し上げているので、今あなたが言うてくれとおっしゃることは、もう先回りをして言っておるのです。
  23. 坂田英一

    坂田委員長 川俣君、相済みませんが、簡潔にお願いいたします。
  24. 川俣清音

    川俣委員 こちらから説明しなければならないために時間がかかるのです。出直してくればもっと早くなるのです。肥料というものに対して、従来のような取り締まりというところからもう脱却して、あるいは奨励とかあるいは助長するとかいう段階に来たのではないかというのが、私の見解なんです。この法律はもう古いのですよ。読んでごらんなさいよ。これを部分的に改正するといったって、根本的に応じられない状態になった、こういうことなんです。  そこで、もう一つ新しく聞きますが、周東さん、硫安についてだいぶ通産省と折衝をせられたはずですが、最初は相当通産省に押されて、硫安の安くなることをちゅうちょされた、遠慮された傾きがありましたが、ようやく最近腰を上げて、農民のために硫安価格を下げようという、いわゆる硫安工場に対する割当等に対して発言権を盛り返したようですが、それは非常にけっこうなことだと思います。その努力は多といたします。しかしながら大臣、聞いておいてほしいのですが、従来、もっともっと肥料というものが合理化されていなければならなかったのにかかわらず、硫安業界が価格引き上げのために生産を抑制してきたのであります。この抑制をしたために合理化がおくれてきたことは、これはもう業界も認めておるし、農林省も通産省も認めておるところであります。最近、さらに合理化を前進させるために、いわゆる合成硫安から副産硫安へ、あるいは回収硫安へ変わってきたようでございまするけれども、ほんとうに農業生産費を低下させるためには、何としても重要な要素でありまする硫安の価格の引き下げが重要なことだと思うのです。この硫安価格の引き下げは、他の肥料の価格にも非常に影響することでございまするから、一段と努力をしなければならないはずでございますが、まだ十分でないようでございます。どうですか、近く農林省の意見がいれられて肥料はどの程度引き下げられるという自信がありますか。この点だけを聞いて、答弁がよろしければ私の質問はこれで終わりますが、悪ければ続いて伺います。
  25. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいま通産省の方でやっております能力査定も大体終わって、積極的な合理化計画が進むようであります。その間におきまして低コストという考え方で計画を進めさせるということでございますから、硫安価格値下げについては相当効果が出て参ると思います。
  26. 川俣清音

    川俣委員 各硫安工場の生産能率等を調べたのがございまして、詳しくお聞きしたいと思いますけれども、委員長のお勧めによりまして保留しておきますから、さよう委員長においてお含みの上善処あらんことを望みます。
  27. 坂田英一

    坂田委員長 他に質疑の通告がありませんので、本案に対する質疑はこれにて終局いたしました。     —————————————
  28. 坂田英一

    坂田委員長 これより討論に入りますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  29. 坂田英一

    坂田委員長 起立総員。よって、本案は原案の通り可決いたしました。(拍手)  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  30. 坂田英一

    坂田委員長 異議なしと認め、さように決しました。      ————◇—————
  31. 坂田英一

    坂田委員長 この際、石田宥全君より、自民、社会及び民社共同提案により土地改良区の財政の再建に関する件について決議をいたしたい旨の申し出があります。これを許します。石田宥全君。
  32. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党を代表いたしまして、ただいま御提案になりました土地改良区の財政の再建に関する件の趣旨弁明をいたしたいと思います。  まず、案文を朗読いたします。     土地改良区の財政の再建に関する件(案)   全国の土地改良区のうちには、災害、事業進度の遅延等の原因により農民からの負担金の徴収が思うにまかせず金融機関に対する借入金の返済に苦しみ、経営上困難に陥っているものがすくなくない。   政府は、早急に正確な実情の把握に努め、その根本対策を樹立すべきであるが、とりあえず、三十七年度を目途として、業績の特に不振な土地改良区に対し、指導の強化、合併の促進等により体質の改善を図るとともに、なかんずくその借入金の条件の変更により利子負担の軽減、償還期間の長期化等が可能となるよう所要の立法上、予算上の措置を講ずべきである。   右決議する。    昭和三十六年六月五日      衆議院農林水産委員会  以上であります。  土地改良事業に関しましては、御承知のごとく、政府は農業基本法を提案され、衆議院は与党の不合理な採決でありましたが、これを通過して、目下参議院において審議中でございます。わが国の農業が国際競争力にきわめて弱い状態に置かれておりまするときに、国際競争力を培養し、日本農業近代化、機械化をはかるにいたしましても、まず第一に、立地条件である土地改良根本的な問題でございまするから、私どもは、農業基本法以前の問題として、完全な土地改良が行なわれなければならないと信じておるものでございます。  今日、農業の機械化をはかり、近代化をはかるにいたしましても、いまだ区画整理すら行なわれない地方がきわめて多いのでありまするし、また、古くいわゆる耕地整理等が行なわれた地方におきましては、土地改良のやり直しをしなければならないという実情にあることは、各位御承知の通りでございます。今日においては、もはや平面的な段階を終えまして、立体的な土地改良にならなければなりません。すなわち、暗渠排水をはかり、あるいは容土をする等、立体的な土地改良を行なうにあらずんば、農業の機械化、近代化に応ずることはできないことは、言うまでもないのであります。  こういうふうな状況のもとにありまして、わが国の土地改良の事業の内容を見まするに、先般愛知用水公団法の一部改正で包含されました豊川地区のごときも、昭和二十四年に着工をいたしまして、今日いまだその半ばにも達しておらない。すでに十二年を経ておるのでありますが、あと七年を経過しなければ完成を見ることができないというような実情に置かれておる。このような事業の遅延した地域におきましては、農民の借入金等についてはすでに償還にかかっておる。事業効果は全然あがらないにもかかわらず、借入金の償還をしなければならない、諸経費はますますかさむ一方、こういうふうな現状に置かれておるのであります。これは一つの例にすぎないのでありますが、全国至るところ、このような状態のままに放任されておる。ことに、最近の事業不振の内容につきましては、いろいろなケースがございますけれども、古い時代のものにつきましては、今の与党である自由民主党が土地改良事業の事業費の全額国庫負担というスローガンを掲げて土地改良を促進された。農民は、農民負担はゼロであって全部国が負担をしてくれるのであるという希望と期待のもとに土地改良事業に着手をした。が、その後自由民主党は土地改良費の全額国庫負担というスローガンをいつの間にか下げてしまって、特定土地改良工事特別会計法のごとく、従来六〇%国が負担しておったものを五八%に切り下げる等、だんだんと農民の負担率を上げるような状況になって参りました。こういうところにも一つの原因がありますし、また、事業の途中において計画設計の変更が行なわれたり、あるいはまた、一部の土地改良区の地方ボスといわれるような人たちの独断専行等のために、農民がこれに反発する等、土地改良団体の運営必ずしも円滑にいっておらない地域がきわめて多いのであります。  政府の発表によりますと、土地改良区の数は、昭和三十五年三月三十一日現在で一万二千七百三十二地区あるのでありますが、面積は三百三十九万二千ヘクタール、こういう膨大な面積を抱えておる。そのうち約一万地区はいわゆる不振地区でありまして、いずれも事業不振に陥っておるということであります。もちろん、中にはきわめて規模の小さいものもございまし、専任職員すらも置くことができないという土地改良区がそのうちの八〇%を占めておると言われておるのでありますが、この中の特に事業不振であるという地区、三百二十九地区だけの抜き取り調査によりますと、面積が十四万二千ヘクタール、その負債が五十四億三千三百万であり、うち、延滞しておる融資額が八億八千四百余円という膨大なものがあるのでございまして、こういう実情のもとに放置いたしますならば、百年河清を待つにひとしいものがあると考えるのであります。  私どもは、かつて、本委員会におきまして、土地改良というものが国営、県営、団体営というようにばらばらに行なわれておるところに根本的な問題があるのではないか、——農民は、当初の計画に対する承認をするにあたっては、国営だけの予算と計画設計の説明だけを聞いて、反当たりで一万円なら一万円できるんだ、農民の負担は一万円だというふうにして承認をいたしますると、次いで今度は県営部分が出てくる。その部分がまた一万円もかかるということになる。次に今度は団体営部分が出てくる。ここにもまた一万円かかるといたしますと、反当三万円の農民負担が起こってくるということに相なるわけでありまして、こういうふうな国営、県営、団体営がばらばらに計画設計が行なわれ、事業が行なわれるというようなところに問題があるのではないか、これはやはり一貫して、特に水系別に一貫して計画設計が行なわれて、最終的に農民の負担がどの程度であるということが明らかになった後でなければ、みだりに土地改良区を作る事業に着工することは後にいろいろ問題を残すことになるのであって、そういうような土地改良事業の進行の仕方には多くの問題があるのではないかということを強く指摘をして参っておるのでありますが、いまだにこれについては政府は明確な方針を示しておりません。全く誠意を認めることができないのであります。  私どもは、農業近代化、機械化をはかり、国際競争力にたえ得るような日本農業を作るにあたっては、まず第一に土地改良事業の完成がはかられなければならないと考え、その意味におきましては、農地法の一部を改正し、あるいは土地改良法の抜本的な改正をはかることが必要であると考えるのでありますが、しかし、今早急にこれらの土地改良法の抜本的改正やあるいは農地法の改正というような問題はできるものではございません。よって、ただいま申しましすような一万余に及ぶところの不振土地改良区、特にその中でいろいろな事情できわめてその事業が不振に陥っているもの、中には、にっちもさっちも動きがとれないで、役員も総辞職をする、農民は全然賦課金の徴収に応じないというような地区すら残っておるのでありまして、そういうようなどうにも動きのとれないような特定の不振土地改良区に対して財政再建についての立法を必要とするということを主張して、さきに法案も提出いたしました。私どもがこの土地改良区の財政再建に関する法案を提出するにあたりましては、実はこれではきわめて消極的で根本的な解決にはならないものではありますけれども、その程度のことは政府も賛成しなければならない筋合いのものであり、与党もまたこれに賛成をしなければならない筋合いのものであるとして、最小限度の法律案を提案をいたした次第でございます。  これについては、与党側にも多くの賛成者がおられるのでありますけれども、今日になりましては、あと残すところ幾日もないという現状のもとにこの法案を成立せしめるということはかなり困難も予想せられますので、よって、この機会において、ただいま申し上げました決議案をここに御採択を願いまして、同時にまた、農林大臣からただいま私が申し述べたような土地改良区の財政再建に関していかなる態度をおとりになるか、これに対してどれほどの熱意をお持ちであるかの御意見も承って、すみやかに不振土地改良区の財政再建をはかるよう特別の対策をしなければならないと信ずるのでございまして、何とぞ皆さんの満場一致の御賛同をお願い申し上げて、私の趣旨の弁明とする次第でございます。(拍手)
  33. 坂田英一

    坂田委員長 ただいまの決議案について討論の通告がありますので、これを許します。倉成正君。
  34. 倉成正

    倉成委員 ただいま、自民、社会、民社三党提案の土地改良区の財政の再建に関する件について石田委員より提案理由の御説明がありましたが、私は自由民主党を代表して賛成の討論を行ないたいと思います。  土地改良事業の重要性につきましては、われわれ自民党といたしましては、一貫してこの重要性を認識して推進して参ったのであります。しかしながら、提案の理由の御説明にもありましたように、事業の遅延あるいは災害、また、この案文には出ておりませんが、設計上の誤り等いろいろな事由によりまして今日の土地改良区がいろいろな困難な状態に入っておることは万人の認めるところであります。従って、書類の上ではりっぱにでき上がっておりましても、実際にはその効果が十分現われてないという点があるわけでありまして、新潟その他大規模の土地改良区以外の、特に離島、僻地等の土地改良区につきましては、大きな声は出ておりませんけれども、いろいろ複雑な問題が伏在しておるわけであります。これらの問題につきましては、何よりも、実情を正しく認識をいたしまして、面子にとらわれないで、この現実の中から新しい方策を講ずることが必要と考えるわけでありまして、私はここに本件に対し賛成の意を表するものでございます。(拍手)
  35. 坂田英一

    坂田委員長 ただいま石田宥全君より提案されました土地改良区の財政の再建に関する件を本委員会の決議とするに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  36. 坂田英一

    坂田委員長 起立総員。よって、本件は本委員会の決議とするに決しました。  本決議について政府の所見を求めます。周東農林大臣
  37. 周東英雄

    周東国務大臣 私、この職につきまして以後、土地改良区の問題についてはいろいろの場面で話を聞いて参りました。この現状の姿をそのままにしておくということは、これは農政上困る問題である。ことに、新しい農政の方向としては、どうしても土地改良法等の改正もやらなければならぬであろうということを実は考えて、事務当局にも検討を始めさせておりますが、そのことと関連もありまするし、また、あるいは、検討の結果それの根本的なところにいかなくても、まず土地改良区の困っている問題だけの解決をどうしたらいいかということについて切り離してやる必要が起こってくるかもしれません。いずれにしても、本問題については、十分御趣旨のあるところを尊重し、私どもはこれが解決について努力をいたして参る所存であります。
  38. 坂田英一

    坂田委員長 なお、本件の関係当局への参考送付等の手続につきましては委員長に御一任願います。      ————◇—————
  39. 坂田英一

    坂田委員長 次に、農業災害補償法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。足鹿覺君。
  40. 足鹿覺

    足鹿委員 私はただいま上程されました案件そのものには直接この際質疑をすることを差し控えたいと思いますが、今までの経過から見まして、この際農業災害補償制度の抜本改正の法案が今国会にも提案をされておりますが、われわれが期待しておりました協議会の答申が無視じゅうりんされておりますと同時に、本国会の会期末でもありますし、十分審議が尽くされないままにこの一部改正が当面の料率改訂の必要によって提案されておりますので、抜本改正の問題とはこれを切り離しまして、当面する若干の問題についてお尋ねをいたし、農林大臣、関係当局から納得のいく御答弁があれば、本案に対しては若干の修正意見等も持っておりますので、あとでお諮りをいたしたいと思っております。  そういう趣旨からお尋ねをいたしたいのでありますが、先般の当委員会におきましてもわれわれは一応問題にいたしました。それは、組合解散阻止通達の撤回の問題についてであります。御存じのように、農災法第四十六条の規定によりまして、総会において三分の二の同意を得た場合においては共済組合の解散を議決することになっておるにもかかわらず、農林省は、過去三回にわたりまして、広島県、秋田県、愛媛県等の知事あてに、三県知事が解散申請に対する取り扱いについて意見を求めてきたものに対しまして、「農業共済組合の解散申請に関する行政処分について」という通達等、これはそれぞれ若干表現には変わったものもありますが、こういう通達を発しまして、その解散を押えて今日に至っておるのであります。農災法四十六条の規定は自由裁量の多い規定であると言っておりますが、解散の基準をわれわれが幾たびも従来から明示することを迫っておるにもかかわらず、それを全然無視いたされまして、ただ単に公共性、健全性の見地から実質的に審査を行なった結果が不当であるとして解散を認めないということは、合法的でないばかりでなく、明らかに行政権の立法権に対する侵害の疑いすらあるのでありまして、この点につきましてはきわめて重要な問題でありますので、農林大臣としていかように行政責任を感じておいでになりますか、この際大臣の御所見を承ってみたいと思います。
  41. 周東英雄

    周東国務大臣 お尋ねの点でありますが、農業災害補償法の第四十六条の規定に基づく組合員三分の二以上の決議をもっての解散の申請でありますが、これは御指摘のように行政官庁の認可ということになっておる。この認可は、常にやらなければならぬという縛られたものでなくて、やはりそこに行政官庁の裁量の余地があろうかと思うのでありまして、それが、従来の取り扱いとしては、いろいろ農家の利益のことも考え、ある程度災害補償の問題が公益的な立場をとっておるものでありますから、今までそれを認可しないような指導方針をとって参りましたが、今日の各般の情勢から見まして、必ずしもこれは今日の場合に至りますと適当でない部分もございますので、これらにつきましては、私は、改正をいたしていきたい、かように考えております。
  42. 足鹿覺

    足鹿委員 最後の御答弁がよく聞きとれなかったのですが、その通達の撤回を検討するという御答弁ですか。
  43. 周東英雄

    周東国務大臣 さようでございます。
  44. 足鹿覺

    足鹿委員 検討すると申されますと、それはいつになるのですか。この際具体的にその内容等について明らかにされる御用意があるのでありますか。
  45. 周東英雄

    周東国務大臣 私は、早急にこれが改正に関して処置をとりたいと思っております。
  46. 足鹿覺

    足鹿委員 改正の措置をとるということは、法第四十六条の改正なんですか。私が申し上げておるのは、先ほどからもお聞き取り願いましたように、三十四年の二月二十三日に広島県県知事に出されました農局第五八七号の通達によりましても、全文は省略いたしますか、その後段において、制度に対する不満等を直接の理由とする解散の議決に対してはこれを認めることができないと考える等の字句があるのであります。制度に対して不満もなく満足をしておれば解散などということは起きるはずがないのでありまして、現に、農林省が当委員会提出をされました資料によりましても、いろいろな原因はありますが、解散議決をするとかまたはそれに匹敵すべき実情にあるものが十三組合と承知しております。これは、しかし、氷山の一角とでも申しますか、その背景としてはほとんどがこの問題に対しては大きな不満を持っておる。特に災害の頻発する地帯においてすらも不満がある。いわんや、掛け捨てを続けておる地帯におきましては全く不満は爆発状態に達しておりまして、組合の解散は出しても押えられるから、事実上において、耕作細目書の提出を拒否するとか、あるいは掛金、賦課金の納入を拒否するとか、あるいは事業の休止をやるとか、看板はかけておるが実際上の運営は行なわないとかいったような実情にあることは当局も御存じであり、それなるがゆえに、昨年一カ年間にわたって制度改正協議会等も設けて衆知を集めて今日の状態に至っておるのであります。しかも、その制度改正協議会の最大公約数としてお互いが不満があったが事態をまとめるためにはというのでまとまった案に対して、それに基づく作業すらも行なわずして、一方的に制度改正協議会の答申を重要な点において骨抜きにするような案を立てられ、それらが累積して本国会におけるところの通過が困難になる今日において、いよいよもって私どもはこの農民の不満というものは高まってくると思うのであります。ですから、この通達に示されておるように、制度に対する不満を直接の理由としては解散は認められないというがごときは、全く法を無視する農林省の独断とでも言いますか、立法の趣旨なりその運営からして農民が満足しておれば解散などは出るはずはないのに、何ら農民の不満を解消するに足る施策を講ぜずして、一方的に、しかも局長通達によってこれを押えるということは不法であり不当であると思います。一体農林大臣はいつ局長にそのような通達を出すことを命令をされたのでありますか。また、次官が命令されたのでありますか。私どもは了解に苦しむものでありますが、少なくとも、従来の経済局長のお話によりますと、制度改正が行なわれる暁においてこの解散通達の撤回をやるのだということをしばしば言っておられるのでありますが、むしろ、農民の判断によってそういう運動が起きてくるならば、まず一応法の定めるところに従ってこれを処置し、そしてその事態に真剣に目を向けて、ほんとうに農民の求めておる農業災害補償制度を制定することによってこたえていくことが妥当ではないのでありますか。一片の通牒によってこれを押えていく、しかも制度改正まで待て待てというのは、今日までの経過から見て、全国の農民はもはや納得できないと思います。大臣はいつ経済局長に対してこの通達を発することを命令されたのでありますか。経済局長はいつ農林大臣その他上司からこういう通達を出すことを命を受けられたのでありますか。経済局通達のごとき一片の行政官の通達をもって、立法権を侵すがごとき、しかも国民の権利を束縛するがごときは、大それたやり方ではないかと思うのでありますが、その実態を明らかにしていただきたいと思います。
  47. 周東英雄

    周東国務大臣 これはどうも当時の当時者がいらっしゃいませんのでよく私はわかりません。三十四年の二月あるいは三十三年に出ております。よくわかりませんが、しかし、私は、ただいま、通牒に関する措置は改正をいたしたいと表明をいたしておるわけであります。この通牒に関して過去における事態はともかくとして、今日の事態において改正をいたしたいと先ほど答弁をいたしておる次第であります。私は過去のことはよくわかりませんが、しかし、少なくとも、四十六条の規定の三項によって、行政官庁にはその解散認可申請に対して裁量の幅がある規定だと思っております。従って、当時の事情から、当時農林大臣としてはこういうふうな通牒は一つの行政の指導の基準として示したものと思います。しかし、いずれにいたしましても、私は、今日の情勢下におきましてこの通牒に関して改正を考えております。かように申し上げます。
  48. 足鹿覺

    足鹿委員 改正々々と言われますが、大臣、何を改正されるのですか。あなたは、別に、その法の改正をされるのか、何の改正をするかということを明確にされませんが、出ておるのは経済通達にすぎないのですよ。それを大臣改正されるのですか。どうもそれはおかしいのじゃないですか。
  49. 周東英雄

    周東国務大臣 通牒を改正すると申しましたことは、この内容を検討いたしまして、不適当なものであるならばこれをやめます。また、新しい立場に立っていかなる認可標準を示すかということは、いずれも改正をいたす内容でございます。
  50. 足鹿覺

    足鹿委員 通達が間違っておれば、あなたの権限においてその通達を撤回せしめられれば事足りるのではありませんか。法に忠実であれば、それをあなたが撤回を命ぜられれば事足りると思うのです。改正などということは、これは意外千万な言葉でありまして、四十六条を改正されるのかと思ったら、そうでもない。そういうことは、あなたがこの際言われるまでもなく、間違っておるとおっしゃれば、通達を撤回せしめる、秋田、広島、それから愛媛の三県知事に出されたものについては一応通達を撤回する、そうして、あらためて、行政処分を必要とする場合の基準と申しますか、一応の目安をあなた方が妥当適正と思われるならば、それをさらに通牒として示されれば事足りるではありませんか。その何を改正されるのか。いやしくも農林大臣局長通達を改正するなんということを言うことは、大臣、これは十分に御理解になっておられない証拠ではないですか。もっと真剣に、よく事態の重大性を御認識になって御答弁願いたいと思います。
  51. 周東英雄

    周東国務大臣 私はよくわかっておるつもりなのです。あなたが、命令したかと言われるから、それは、かつて三十三年、三十四年に出したのは、その当時の事情において農林大臣が委任をしたと思います。従って、この通牒の改正ということは、当然撤回することは改正の極致であります。しかし、新しい認可基準というものを示すということは必要であろうと思います。そういうものが必要であるかないかも検討しなければならない。従って、これを撤回をさせて新しい基準を出すということもありましょうし、撤回だけでほかの基準を示さない場合もありましょう。いずれにしても、出たこの通牒に関して私は処置をいたしますと一番最初に申し上げておるのだけれども、あなたは私の申し上げておることをわかっていないと思う。一番最初に、通牒に対して処置をいたしますと、こう申し上げております。
  52. 足鹿覺

    足鹿委員 私が申し上げておりますのは、三つのケーがあるのです。今申し上げたのは、昭和三十四年二月二十三日、農経局第五百八十七号によるものであります。いま一つは、昭和三十三年の三月でありますが、秋田県と愛媛県知事あてに出された「農業共済組合の解散議決について」という通達文がございます。これは若干表現は前者と異なった点はございますが、大体趣旨は同じようなものでございます。この通達が出た当時あなたが大臣をしておられなかったことは私もよく存じておるのでありますが、少なくともこの農業災害補償制度の抜本改正は過去十年余にわたって論議に論議を重ねられた問題でありまして、あなたの前任者であります福田さんの御意思をあなたも受けられて、制度改正協議会等も引き続き設置されて御諮問にあった経過から見まして、前大臣がやったことだから自分はどうもというようなことでは済まされない重大な問題でございます。従って、前任者がやられたことであっても、この問題については、この二つの通達は一応これを撤回または取消しの通達を出され、あらためて行政処分の認可についての一応の考え方の基礎となるべきものをどういう形式でお出しになるのか、その基準のおもなる条項はどういったことを考えておられるのかということを私どもは聞いておるのであります。ですから、この二つの、三県知事に出された通達の処理と、新しくとられようとする措置の内容について伺うわけであります。大臣検討中と言われましたが、理事会その他においてもいろいろと意見の交換があったと聞いておりますが、少なくともこれは大きな問題でありますから、この委員会においてその構想を明らかにせられんことを望みます。
  53. 坂村吉正

    坂村政府委員 先ほど大臣の御答弁で大体尽きていると思うのでございますけれども、補足をいたしたいと思います。  おっしゃる通り、昭和三十三年におきまする秋田県知事・愛媛県知事に対する通牒、それから、三十四年に広島県知事に対しまして通牒が出ておるわけでございます。それは、その当時としてはこういう指導方針をとられたことも実態上必要があったかと思うのでございますが、最近の実態から申し上げますと、このままこの方針を続けて参りますことが現状に即せない点もあろうと思うのでございます。これは前々から問題になっておりますので、ぜひ従来の考え方を改めたい、こういうことであります。形式的に申し上げますれば、従来の通牒にかえまして、今後、解散認可の申請がありました場合の現状に即しまする取り扱いの方針を知事に新しく通牒として出しまして、取り扱いに万全を期してもらうというふうに考えたらどうかと考えておるわけでございます。  それから、内容につきましては、これはいろいろまだ検討中でございまして、最終的に固まった問題ではございませんけれども、おっしゃる通り、最近の実態が従来のように強制的にこれ押えておくということが実状に沿わぬ面もございますし、それから、一面におきましては、今抜本改正の法案がこの国会にも提案されていろいろ御審議をいただいておる段階でございますので、これにつきまして今後の制度についての農民のある程度の理解もあろうと思いますので、そういう面も十分考えまして、今の事態で無理にとにかく何でもかんでも解散決議は認可しないのだという考え方はとらないということでございます。実際に解散いたしました場合の、今後の災害に対するその地帯における対策であるとか、あるいは組合の財政上のいろいろの処理の問題だとか、職員の身分保障の問題だとか、そういうような問題が具体的な問題として非常に大事な問題になろうと思いますので、そういう点を中心にいたしまして、認可の基準といいまするか、考慮すべき問題点をはっきりと示しまして、そうして今後知事もやっていただくというふうにいたしたらどうかと考えるわけであります。
  54. 足鹿覺

    足鹿委員 その場合、もうちょっとその内容を詳しく御説明願いたいと思いますが、その形式はどういう形式でおやりになるのですか。また、通達をお出しになる場合、その法的な根拠は何に基づいてそういう通達をお出しになるのでありますか。その内容が緩和されるといなとを問わず、一つ法律に定められ、四十六条に定められ、そうして解散を議決する行為が適法に成立をし、その解散することの意思が決定をされておる場合に、知事が行政処分をもってそれを押える、その押えることについて農林省一つの統一見解を示される、それも、ほんの参考までに、念のためにという程度のものでありますならば、これは、法の適正な運営という見地からも、従来も本問題に限らずあり得ることでもありますし、やむを得ないと思いますが、これほどの重大な問題を起こしており、今後も起こり得る可能性のある問題に対して、法的な根拠を明確にせずして、少なくとも基準といったようなものによって知事の行政処分に制約を加えるということは、明らかに私は不当であると思います。またそれは不法な行為を続けることになりはしないかと思うのでありまして、少なくともその内容をわれわれはある程度御説明を願わない限り、納得はいかないのであります。今私が述べましたような、念のために農林省一つ考え方をお示しになる、慎重にしよう、こういう点については留意の上配慮せられたい、という程度のものでありますならば、これは通達でありましょう。が、しかし、一つの四十六条の知事の行政処分に対する考え方を拘束するかのごとき内容を持つ場合におきましては、これは、明らかに、どのように緩和をされたといたしましても、秋田、愛媛、広島知事に出されたものの延長としか受取れないではありませんか。ですから、判断をするために、もっとその内容を、御用意があれば朗読をされるとか、それに対するさらに詳細な見解を発表されるとか、お願いしたい。
  55. 坂村吉正

    坂村政府委員 法律論として申し上げますと、農業災害補償法の仕事は、これは大体国の仕事でありまして、その国の仕事を知事に機関委任をやっておる、こういうことになっておるわけでございます。従いまして、農業災害補償法の四十六条で認可を受けなければならないという場合の知事の認可は、大体知事の裁量で認可、不認可ということはきまる、こういう工合に考えていいのじゃないかと思うのでございまするが、全体が国の制度でもございまするので、それについて統一的な考え方を制度としてする必要がある、こういう意味で、知事の認可に際しましての考え方を、従来指導方針として示して参りましたわけでございます。しかし、先ほど申し上げましたように、今の実情は、従来の方針をそのまま続けるということは必ずしも適当ではないというふうに思うのでございますので、今までこういう取り扱いをしてきたところであるけれども、現在の実情では次のような点を一つ考慮して、十分慎重に認可に際しては扱ってもらいたいというようなことで、従来の通牒を撤回いたしまして、そして新しい現状に即する指導方針を知事に説明したらどうか、こういうことを考えておるわけでございます。その際に、全部いわゆる通牒によって知事の認可権がきちんと拘束されてしまうというような考え方は、仰せ通り、とるべきではないと思っております。従いまして、現状におきまして、こういう点、こういう点、先ほど申し上げましたような点が認可をする際の知事の判断の基準になるべき問題でございますので、そういう点を示しまして、そういう点を十分慎重に考慮されて知事の方で検討して、その上で認可するしないの問題をきめてもらうようにという考え方で新しい通牒を出したいというふうに考えておるわけでございます。そういう趣旨で大臣にもいろいろ御指示を仰いでおるわけでございます。
  56. 足鹿覺

    足鹿委員 大体最初からそう言われれば事足りるのを、ああでもないこうでもないと言われるからわからなくなる。今御説明によりますと、今までの通達はこれを撤回し、そしてあらためて全国の都道府県知事に農林省の統一見解を通達する、こういう御趣旨に承ってよろしいですね。
  57. 坂村吉正

    坂村政府委員 さようでございます。
  58. 足鹿覺

    足鹿委員 その場合、先ほどから申し上げておりまして、くどいようですが、その考え方の基準ともなるべき事項についてはいかがですか。これは、制度改正協議会等においても、この制度の根本にも通ずる問題でありますし、相当論議されておることは局長も御存じの通りでございます。従って、今私が述べたような趣旨から申しましても、強い拘束を受けるような印象を受けるものであってはならぬと思うのです。やはり、都道府県知事は、自分の良識において、その組合の実情等をよく勘案をされて措置されるわけでありますから、そうあなた方がいろいろなことを想定されてあらかじめ知事通牒を発せられなくても、事態は解決すると思うのです。特に、その解散をした場合に、先ほどの話によりますと、職員の身分の問題、あるいは災害発生時においてその災害の補償はどうするかというお話がございました。それは、もちろん、解散を決議し、法的にその解散が認められて事業が廃止をした場合におきましては、それは組合の意思によってそういう議決がなされるわけでありますから、やむを得ないと思いますが、しかし、国の施策の一環として、都道府県なり市町村という地方公共団体の責任において従来といえども全然放任しておったわけではないのであります。組合の経営の困難なところには、財政の苦しい中にあっても、相当の金を出し、赤字のあるところには赤字の処理資金を出す、また合併の世話をやくというように、市町村自治体においても必要な措置がとられておることは御存じの通りでありますし、中には市町村の公営に進んでおるところも二百以上に及んで現存しておる実情でございますから、少なくとも、市町村なりあるいは都道府県の農業対策の一環としても、みずからの努力によって、ある部分においては従来もなされ、今後もそれは拡大されていかなければならぬものだと私どもは考えておるのであります。従って、むしろ、そういうところにあっては、法そのものにも共済制度に欠陥があり、また運営よろしきを得ないためにさらに拍車をかけて解散等が起きるのであって、主としてその運営上から来る問題が大きいのでありますから、その運営を適正化するためには、あなた方は市町村に移譲等の積極的な指導をなされることこそが必要ではないのでありますか。それを行なわれることによって、災害発生時における災害の補償、あるいは現共済組合に勤務している第一線の常勤役職員の身分の安定等もあわせて処理することが可能になるのではありませんか。現在、不十分であるとはいいながら、現行法によってあなた方が行政的に積極的な指導をもっと親切に果敢に行なわれるならば、未然にこの解散問題等についても防止しこれを阻止することができると思うのです。一片の通牒によることではなくして、まじめな親切な行政指導によってそれが期せれていかなければならぬと思うのでありまして、むしろ、今後は、そういう通牒に意味があるのではなくして、この制度そのものの欠陥は法律改正を待たなければ行なわれませんが、現行法において許された範囲内におけるところの組合運営の健全化、適正化ということに対する、むしろ指導を積極的に行なわれることが必要なのであって、通牒そのものは私どもは第二義的な問題であると考えておるのであります。そういう見地から、その内容をこうこういうものであるということをこの際明らかにできませんか。
  59. 坂村吉正

    坂村政府委員 まだ内容については最終的に固まっておる段階ではございませんので、先ほど申し上げましたような点を中心にいたしまして、できるだけ、先ほど申し上げましたように、この基準できちんと縛ってしまうのだというような考え方ではなく、知事の判断の基準を、いろいろの実情、現状に即しまして示しまして、それで判断して知事が処理していただくというふうに持っていきたいと思っておるのでございます。そこで、やはり、足鹿委員のおっしゃいますように、今後の災害対策としても、ぜひともこの制度を改善をいたしまして農民災害対策一つの柱にしなければならぬという実情でもございますので、そういう点も十分頭に置きまして、解散した場合におきましての職員の身分の処理あるいは財産の処理、そういうような問題を中心にいたしまして、判断の基準を、考慮すべき問題を知事にも示して、そういう点を十分検討の上やってもらいたい、こういうことで指導いたしたいというふうに考えておるわけでございます。  なお、現状におきまして、市町村移譲という問題は、今までも大体三百ぐらいのものが市町村経営になっておりますけれども、なかなか、今までの状況では、職員の身分の年金通算といいますか、そういうようなものが非常に障害なっておりまして、進まないような実態でございますが、市町村に移管されたものは、運営の面からいきましても、そう工合の悪いところは割合にないのでありますので、割合に円滑にいっておるところがあるのでありますから、この国会にも年金通算の法律が出ておるのでありまして、これがもし通りますれば、今までの市町村移譲の欠点も障害も相当緩和されるだろうと思っておるのでございます。現状の制度におきましても、できるだけ運営の円滑にいきますように十分な指導をして参りたいと思います。
  60. 中澤茂一

    中澤委員 関連。  通達を出すについて、四十六条の解散認可規定というものは、この前も議論したように、自由裁量規定と言うのだけれども、法律に完全自由裁量規定というものはないと私は思うのです。もし完全自由裁量規定というような解釈を四十六条についてするのなら、法律を作る意味がない。一切が行政でできるということなんです。そうでしょう。そういう結論になってしまうのです。そこで、解散認可の四十六条の規定というものは、あなた方の方では、自由裁量規定だから、こういう通牒を出しても違反じゃないのだと言うが、私が、この前追及したように、解散を認可しないという通牒を出しておる。認可は認めない方針であるとちゃんと秋田、愛媛などに対するものには書いてある。そうすると、認可を認めないのなら法四十六条というものは要らないということになる。そうすると、今度また通牒を出すとしても、自由裁量規定というものは法律規定としてどの程度の限界があると考えておるのか。これは農林大臣にはっきりさせてもらいたい。自由裁量規定というものは、この前のような認可を認めない方針であるという通牒を出せば、これは明らかに法四十六条の違反をやっている。そういう通牒を出しておるのです。そこで、それを追及すれば、これは自由裁量規定であると言う。自由裁量規定ならどんな行政通知も出していいのか。四十六条があるのに解散は認めない方針であるという通牒は、明らかに四十六条違反の通牒なんです。そこで、自由裁量規定というものは、これは法理論ですが、限界というものがあるはずである。自由裁量規定そのものの限界いかんということです。要するに、その法律的な自由裁量規定の限界というものが明らかにならぬと、またどういう通牒を局長が出すかわかりはしない。それでは問題の蒸し返しになってしまう。だから、これは大きな法律の解釈の問題だから、自由裁量規定の限界というものはどの辺にあるのだということを大臣は明確にしておく必要がある。
  61. 周東英雄

    周東国務大臣 お考えの点はごもっともでありますが、四十六条は、自由裁量の余地がないものとは、私はあなたのように考えないのであります。もしも裁量がなければ、当然二項に行政官庁の認可を要すると苦く必要はない。だから、ある。しかし、その限界はどこかということになれば、やはり、何といいますか、このごろの行政法の言葉でどう言うか知らぬが、公益裁量といいますか、農業災害補償制度というものは第一に農業者の利益をはかるためにできておりますが、それがただ決議だけによる解散を認めることが実際上組合員全体といいますか農業者のためにならぬ場合があるというような場合に限られて処置すべきものだろうと思う。具体的には、どういう場合、どういう場合、いろいろありますが、公益裁量といいますか、公益的な性質を持っておる農業災害補償制度に関して、ただ単に組合の一方的な決議だけでは、実際に即せぬという場合があるのではなかろうか。そういう場合を十分に考えて措置しなければならぬ。これが私は自由裁量の範囲だと思います。
  62. 中澤茂一

    中澤委員 大臣は、公益裁量というか、公益というものを基準にして考える裁量だ、こういう御答弁ですが、そうすると、公益と私益の問題が考えられるわけです。事実上、今度の改正を説明しても、それでもやめてくれという論議が多いのです。私は、農村を歩いて、懇談会で農民の皆さんの意見を聞いて、こういうふうに改正して、こういうふうに補てん額も上がるし、どうだと言っても、やめてくれという意見が多い。要するに、災害が平等に来ない。無災害地帯、この地帯はやめてくれというのは当然なんで、神奈川の一部では、昭和二十二年にこの制度が始まってから、一回ももらったことがないというところさえあるのです。そうすると、公益裁量といいながら、公益を基準にして自由裁量の基準を考えると大臣は言うが、そうすると、農民の損しておる私益というもの、一部の無災害地帯の農民の損失というものは、それでも公益の中に入るのかどうか。事実上損をしておる。卑近な例を申し上げると、私のところの長野市がもう三分の二の同意を取って知事に認可申請をしたけれども、知事は、通牒があるから認可ができない、こういうことで、一年越しすったもんだしておるのですが、これはこまかに計算してみた。二十八年災から入れてたといどのくらいでももらった方が多ければ、私はそれを材料になだめようと思って全部計算させてみた。ところが、明らかに掛金の方が多いのです。これでは、農民の私益が損するものを、政府が公益だ公益だと言ったって、農民とすれば、それは私益と公益の衝突で、農民感情というものはやはり許さないと思うのです。だから、そういう点について、大臣の言う公益を基準としてということで、はたして今の制度はいいのかどうか。公益の基準ということが言えるかどうか。むしろ、私は本法に欠陥があり、昨年一年間あれだけやって、そうして三十六年度水稲から間に合わせようと休会中もあれだけ協議会をやったのだからあの案をさっと出して、そうして通せばよかったのに、それを途中で勝手にひん曲げて、そうして最後の法律案がようやく出たのは先月だ。そういうようなやり方で、大臣が公益だなんと言ったってだめですよ。農民は損得まではっきり計算しておるのです。こういうものはあったって意味がないということで、解散を農民は主張しておるのですから、そういう大臣の言う公益の基準というものは私は納得できない。もう少し何とか、——どういう行政通牒を出すか、今度の通牒の出し方でこれはまた問題が起きてくる。だから、そういう点は一つ経済局長の方から大体のアウトラインぐらい話したらどうです。大体こういう考えでいくのだ、さっきみたいに抽象的なことじゃなくして、大体の案はあるでしょう。その案を読みなさいよ。
  63. 坂村吉正

    坂村政府委員 公益、私益の議論は、こういう実情だろうと思うのでございます。もちろん、大臣のおっしゃるように、公益裁量というような考え方で考えていいだろうと思うのですが、この前通牒を出しました当時は、非常に災害も頻発するという状況にございまして、そういう意味から言えば、災害補償法というものは、これはやはり農民の救済の手段になっておって、国で相当金を負担してやっておるのだということでそういう通牒を出したと思うのですが、最近の実態におきましては、御承知のように、そのままで続けていく状況でありません。そういうような意味で、解散を認めていくという考え方に直さなければならないとわれわれは考えておるわけであります。その際に、いろいろこの制度自体につきましても検討しなければならない、考えなければならないという問題もありましょうし、解散した場合におきましてもいろいろの処理の問題もございましょうから、そういう点を知事が判断の資料として研究をして、認可をするならしていい、こういう考え方でやっていこうと考えているわけであります。
  64. 中澤茂一

    中澤委員 その通牒がどういう案か知らぬが、それはまた具体的に出したときに論じますが、いやだと言うのは、私益の方が損が勝っておるのです。画一的に災害が平等に来ればいいのです。大臣局長も偉いから、災害を支配して、来年は九州に来て再来年は四国に来いというように災害を全国に按分してよこすようにすれば不平は起きない。ところが、災害というものは按分して来ないのですよ。大体北海道と九州が常襲災害地帯。去年は伊勢湾に間違って来たくらいのことで、そういう地帯は、この制度はぜひ現存してもっと有利にしてもらいたい。ところが無災害地帯の東北の県とか神奈川とか、長野県なんかも二部はそういう地帯に入るが、そういうところは違う。県によっても局地的に災害が平等に来ないところがある。そこに問題があるのだから、先ほど足鹿さんの言ったように、根本的には制度の欠陥なんですから、どうしても私益と公益で農民がいやだというところは大幅に解散させなさいよ。させなければ農民は承知しませんよ。今度のああいう中途半端の改正案が出たら、二、三年たったらまた解散してくれということで大騒ぎになる。だから、大幅に解散を認めるという通牒を出すのか、また、前の通牒は極端に四十六条を無視したような通牒だから、それをうまくごまかして経済局長的技術によってやんわりやるという二つがあるのだけれども、そのどっちの考え方なんですか。
  65. 坂村吉正

    坂村政府委員 いろいろ国会においてもあるいは国会の外におきましてもこの問題につきましては議論があるのでありまして、そういう実態、それから、全国におきますところの災害の実態そういうものを十分頭に入れた上で、今までいろいろ文句が出たような通牒でないように一つやりたいと思っておるのでございまして、私はどうせ立案をし文章を作る責任者でありますから、十分一つりっぱな文章を作って大臣の御決裁を得るようにしたいと思っております。
  66. 中澤茂一

    中澤委員 だから、それは僕の二つの質問の、どっちの通牒にウエートを置くかということの後段にあたるわけなんです。解散を大幅に認めるのか認めないのかということについての答弁ではないわけですね。だから、外からは文句が出ないようにうまく一つやりましょうというのは、前の認可を認めないという、四十六条のようなものをやんわりとやるが、依然として、内容は、解散は認めない、こういう通牒を出すのか、場合によっては大幅に認めましょうという通牒を出すのか、それはどっちかというのです。
  67. 坂村吉正

    坂村政府委員 これから文章を一つ作って、できるだけ早く自分の案を作りたいと思っておりますけれども、今までのように、解散を認めない方針であるというような通牒は少なくとも直したいということでございますので、御了承をいただきたいと思います。
  68. 中澤茂一

    中澤委員 無災害地、つまり、今まで二十二年に制度が始まってから、損得を計算してみれば、掛金が多くてもらった方が全然少ないというところは、それでは解散しなさいというように認めるのか認めないのか。
  69. 坂村吉正

    坂村政府委員 大体、考え方は、おっしゃる通りでございまして、ここはどうしても解散をしてもやむを得ないのではないかというところについては、これは解散を認めるということを認めていくという考え方で通牒の起案をしたいと考えております。
  70. 中澤茂一

    中澤委員 最後に一つだめを押しておくが、たとえば一つ卑近な例を長野市にとると、明らかに掛金の方が多い。こういう地帯は一ぱいある。二十二年制度が始まって以来ずっともらったのと掛金とを計算してみると、掛金の方が数倍上回っておるという無災害地帯が一ぱいあるのです。そういう地帯は解散を認めるということですね。これは念を押しておきます。
  71. 坂村吉正

    坂村政府委員 そういう地帯であるからといって機械的にこれは解散がされるということは、この制度の建前上適当でないかと思うのでございます。ですから、実態に即しまして、知事におきましても従来のそういう事態あるいは現象等も十分判断をいたしまして、解散を認めていいところについては認めるべきである、これはどうしても解散を認めなければならないというところもあるだろうと思いますので、そういう新たな基準を作りたいと思っております。
  72. 中澤茂一

    中澤委員 実態に即してなんて、それが議会答弁のごまかしなんだ。だから、事実上、農民がそろばんをはじいて、掛金がうんと多くて、もらったのが少ないからいやだというのですから、しょうがないではないですか。そんなものを公益だといって押しつけられますか。公益というのは、そういうことではなくて、全農民が、少なくともかけたぐらいは、あるいはより以上若干もらっておるというのなら、公益という理論も成り立つけれども、実際掛金の方が多いのだ。計算をしてみれば、出した金の方がうんと多くて、しかも十何年という長い期間においての計算をしてそうなるのだから、明らかにそういう地帯は損の地帯なんだ。この制度をやっておれば損の地帯なんです。だから、いやだと言うのです。そういう無災害の損の地帯はまた今後こういう問題が起きてきますよ。そういう場合は、十何年やったこの制度において、君らの方は災害がなくて掛金の方が上回っておるから解散するとか、何かこういう実態がそこにできないと、実態に即して実態に即してと言っても、認可申請を出したら、知事は、いや通牒が来ていますからだめです、こういう問題がまた出てくる。だから、明らかに掛金が多いという地帯は、もらった分が少ないのだから、これでは農民は無理はないから、こういうところは解散を認めましょう、そういう何か基準がないと、ただ実態に即してと言われたって、これは納得できませんよ。
  73. 坂村吉正

    坂村政府委員 農民の心理から申しますれば、私は、おっしゃる通りだと思うのでございます。しかし、農業災害補償制度の協議会におきましても、とにかく、この制度は、共済制度をもとにして、その上に保険というシステムを組んで、そうして何かの災害のときに損失補てんをやろう、こういうことでございますから、必ずしも、今までの経験から言ってかけた分だけもらえなかったということで、共済組合は解散していいんだ、そういう機械的な基準はなかなかできないだろうと思うのです。そういう機械的な基準を作りますことは、共済保険という制度を根底から考え方を変えることになるのでございまするので、それは機械的にはなかなかできないのじゃないかと思いますけれども、要するに、今までのそういう実情等も頭に置いて判断ができますような、そういう取り扱いをいたしたいと思っております。
  74. 足鹿覺

    足鹿委員 いま一度農林大臣に申し上げて、私の質問を終わりたいと思います。先ほども、経済局長がちょっと触れられましたが、市町村に移譲する、これは昭和三十一年の法改正の際にこの道が開かれまして、好まざる人人もあったようでありますが、先ほどの御答弁によりますと、三百をこえておるという実情で、順調に市町村移譲が進んでおる。しかも、共済組合の常勤役職員の勤務年数の通算制の問題等について十分な措置がとられないにもかかわらずあえてそのように進行しようという事態は、現在の共済組合のすべてとは言いませんが、相当部分にわたって、制度そのものにも欠陥があると同様に、それにさらに拍車をかけるがごとく運営が不適正である、運営よろしきを得ないところから解散問題というものが起きてくる。しかし、その役職員にしてみれば、長い間この制度に従事して、今市町村に身分が変わったときには通算が行なわれないということによって、ちゅうちょをする。ですから、この問題を大臣責任において急速に解決をされますならば、この問題はきわめて合理的に適正運営のための一歩前進として市町村移譲が促進をされ、そして、現にその成果があがっておる事態を見て農民は納得をしていくでありましょう。しかし、市町村に移譲されることによってまた権力的な掛金や賦課金の徴収が行なわれたりあるいは感情的な運営が行なわれたりしないために、市町村の議決機関の中に共済制度運営委員会というような一部門を設け、経験を持ち熱意を有する人々をそこに集めて、運営が粗雑にならないための措置等をあわせ考えていきますならば、これは行政指導の範囲内においてある程度成果があがるのであります。それらのことを前の須賀経済局長も自治庁と折衝しておると言いながら、先ほどお話がありましたように、これのしりも結んでおられませんから、さらに解散運動が随所に勃発し、それが大きくなる傾向すら見えてくるのであります。ですから、当然、あなた方としては、この通算問題、職員の身分問題に対して、大臣責任においてすみやかに事を処理するということをこの際御言明願いたいと思います。と同時に、伝えられておる今後の農業災害補償制度の運営の一文をわれわれ拝見をしまして、前段はまだ国会開会中でありますからこれは困るでしょうが、後段の一、二、三、四の問題につきましては、少なくとも二の条項あるいは三の条項、特に、解散の議決が形式的に適法になされたものであることはもちろん、本制度に対する組合員の実質的な理解のもとになされたものであること、という一文がありますが、解散の議決が適法に形式は整っていなければなりませんが、何でも形式を整えてそれやれそれやれということでは、この制度の本質から見て重大な欠陥になりまするから、われわれはあえてそういう軽率無謀なことは賛意を表することはできませんが、よく考えた上にも考えて当然解散の議決が行なわれるはずであります。それには賛否両論があって、大きく論議、検討された結果、その解散がなお議決をされたというならば、形式的にも実質的にもそれは認めらるべき筋合いであるが、特に、この解散の議決が形式的に適法であっても、実質的な組合員の理解のない場合にはだめだ、また解散しない、こういう行き方は、あなた方特有の与えておいてまた奪うという行き方であって、こういう考え方は非常に危険であります。一応秋田県知事に発せられた通牒を撤回して、新しい統一見解を出されるとするならば、今私が指摘したように、行政的な指導の面において、解散運動等が起きないような措置をあなた方の責任においてやることがまず第一条件なんです。それをやめておいて、いかようなこういう通牒を出されても、問題は解決しないことを私は指摘しておるのであります。その点を農林大臣はしかと胸にとめて、市町村移譲等の場合の勤務手数の通算制の問題、あるいは新しく運営通牒が出されようとしておる数項の考え方の中で今私が指摘したその第三項の通牒というようなことについては、十分検討にも検討を重ねて、名を与えて実を取るといったような、そういうテクニックを弄した運営通牒にあらずして、一新紀元を画するような内容のものを出されるべきである。また、法的にもある程度の拘束力を持つようなものは、これは法律にも根拠がないわけでありますから、あくまでも都道府県知事の慎重なる取り扱いに資する一つの念のための通牒、そういう趣旨のものであることを最小限度の条件としない限りは、われわれは認めるわけには参らぬと思います。大体不備なんですから、通牒よりも指導を中心にやることが大切なんですから、そういう意味から、通牒でもって事態を押えるという考え方に立たないで、運営通達等について検討される御用意があるかどうか。この二点について大臣の御所信を伺いまして、私の質問を終わります。
  75. 周東英雄

    周東国務大臣 通牒よりも指導が大切だからということ、これは御意見の通りでございます。今後における指導の面については、十分考慮して、正しい指導をしていきたいと思います。  同時に、ただいま御指摘の通算問題は、これは実は政府から社労委の方に通算年金通則法案がかかっておりまして、これが通りますれば通算ができることになっておりますから、御了承願いたい。  それから、通牒等に関する内容等については、十分お考えを取り入れて、よい通牒を出しますから、御了承願います。
  76. 坂田英一

    坂田委員長 芳賀貴君。
  77. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣に二、三点お尋ねしますから、率直な答弁を願います。  第一点は、この法案は現在の事態から見るとこれを成立させる必要がないと私は考えておるのですが、大臣はどういうお考えですか。
  78. 周東英雄

    周東国務大臣 これはぜひ通過さしていただかないと、料率の改訂が三年ごとに改訂になっておるのが通らぬと空白状態になるのではないかと思うのです。
  79. 芳賀貢

    芳賀委員 この法案の提出の理由は、今国会において農災法の根本改正を行なうということを前提にして、それを行なうためには料率改訂の期限を延長する必要がある、こういう理由であったわけです。ところが、一番大事な親法案である農災法の根本改正法律案が、これは重要法案でありますからして、衆議院の本会議において大臣から提案理由の説明が行なわれたのが五月の二十五日であります。今国会は五月二十四日に終了することになっておったにもかかわらず、与党が一方的に十五日間の延長を行なったわけでありますが、正規の国会終了の翌日にこの法案が出されたのです。ですから、普通の百五十日で会期が終われば、根本改正案なるものは提案を見ないで終わったということになるわけです。このような状態で、政府が国会に対して根本改正をやる意思がないということが現実の問題として明らかになった以上、それではこの料率改訂の期限延長の理由が失われたのであるからして、これは自発的に法案を撤回するのが適当ではないか、これが私の質問点ですが、大臣はどう考えますか。
  80. 周東英雄

    周東国務大臣 この点に関しましては局長から答弁させます。
  81. 坂村吉正

    坂村政府委員 農業災害補償法の抜本改正のための法律改正案をとにかく今国会に提案をいたしまして三十七年産米から実施しよう、こういうことで準備をして参ったのでございますけれども、いろいろの都合で提案等もおくれ、あるいはまだほんとうに審議が尽くされていないというような状況であるのでございますが、その法律におきまして三十七年度から新しい法制度の料率を改訂する、こういうようなことになっておるのでございます。従いまして、あとの一年の間に新しくまた料率を改訂いたしますことは、非常な手間もかかりますし、時間もかかりますので、その間一応据え置いたらどうか、こういう考え方でこの法案を提案いたしたわけでございます。  そこで、現実問題といたしまして、農業災害補償法根本法律改正がこの国会でかりに通らないようなことがございましても、いずれこの制度改正はお願いしなければならぬということで私どもも考えておるのでございまして、その間、今の段階になりましては、今の料率を改訂するといいましても非常な時間も食いますし、まことに申しわけないのでございますけれども、とにかく一年間は延長をいたしませんと、違法状態になるというようなことでございますので、よろしくお願いをいたしたいと思っておるわけでございます。
  82. 芳賀貢

    芳賀委員 今延長国会に提案された根本改正の内容を見るとこれは問題があるわけですよ。第一は、政府が作りました農災制度の改正の協議会において非常に熱意を持って行なわれた答申というものが当然根本改正の内容をなすべきであるということをわれわれは期待しておったわけでありますが、提案された内容を見ると、全く協議会の答申と比べて異質な内容の法案が出されておるわけです。ですから、こういうものを出す場合は、やはり、われわれとてしては、料率改訂を簡単に延ばさせるわけにはいかない、そういうことになる。しかも、この経過を見ると、政府案が先に出て、それを今度は自民党に提案して、そして自民党の政調の中でそれが骨抜きになったり、性格が非常に歪曲されて、そうしてそれに相当何カ月かの日子を費やして、しかも、その内容の変形した法案の提出さえもこの延長国会にようやく提案された。これは全く政府の怠慢と無責任によってこういう事態が起きたわけですから、それだけを取り上げて言っても当然この法案というものは自発的に撤回して不明を天下に謝すべきであると私は考えておるのですが、これはぜひ農林大臣から責任のある答弁をしてもらわなければ困る。
  83. 周東英雄

    周東国務大臣 本法の改正がおくれましたことについては、種々の事情がありましたとはいえ、はなはだ恐縮しておるわけであります。しかし、それあるがためにこの料率改訂に関する法案を撤回せよということは、私には受け取れないのでありまして、ただいま局長が申し上げました通りの理由によりまして、どうかこの法律は御通過を認めていただきたいと思います。
  84. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣も御承知の通り、農災法の本法には料率改訂は五年ごとということになっているわけです。これを昭和三十二年の国会において根本改正を試みたのですが、これも十分にはいかなかったが、その際、料率改訂の五年の期間はこれは長きに失する。そういうことで、基準反収の実情に沿ったような引き上げと、料率改訂については、最近の米の生産技術や、あるいは全国的な生産が高まった、災害に対する抵抗の度合いが高まったというような実情を考慮した場合においては、料率改訂は少なくとも三年ごとに行なうのが当然であるという、改正のまた改正法案というものを出して、自来これは三年ということになっておるわけです。この法案の本旨は、それをまたもとへ戻すという考え方の上に立って、これが通ると今度また五年で料率改訂ということになるので、根本法案が成立しないことは政府の怠慢で、せめて料率改正だけは現行の規定によって三年ごとにきちんきちんとやってやった方が農民は喜ぶというふうにわれわれは考えておるので、この点に対しては大臣はどう考えていますか。——局長、なるたけ大臣にさせないと、長くかかりますよ。
  85. 周東英雄

    周東国務大臣 料率改訂に関する問題については局長から答弁させます。
  86. 坂村吉正

    坂村政府委員 仰せ通り、現行本法では五年になっておりますのを、この前の改正法案で三年ということにしたわけでございますが、今度抜本改正法律案を提案いたしましたものも、そちらの法律の中では三十七年から新しい料率を作るということになっておるわけでございます。従いまして、法律技術上、五年という本法の元に戻すという法案になっておりますけれども、ねらいは、この一年間とにかく料率を延ばすということで考えていただかなければ御了解を得られるのではないかというふうに考えておるわけであります。そういう趣旨でございます。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣にお尋ねしますが、われわれがこの法案を政府みずから撤回すべきであると言うのは、この根本法案が今国会で成立の見通しというものは考えておられないと思うのですが、そういう場合に、この制度を運用して一番農民の利益になるやり方とすれば、むしろこの法案を撤回されるか、成立させないで、すみやかにこの際料率改訂を現行法に基づいてやった方が農民にとっては有利になるわけですが、せめてそのくらいのことをおやりになったらどうかと思うのです。
  88. 周東英雄

    周東国務大臣 こまかいことは局長からお答えいたしますが、もうこれは芳賀さんよく御存じの上でああいう御質問をなさっていらっしゃると思うのだが、すでに本年度の保険の引き受けが始まっています。それで、三年ごとがいいからと言って改正しますと、また混乱を生じますので、一年だけ従来の関係で行く、こういう形でこの法案が出ているわけです。この事情をよく御存じの芳賀さんは、御了承になることと思います。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 この法案は二年延ばすという目的の法案なんですよ。一年じゃないですよ。これをよく読んでもらわなければ困りますよ。それから、政府の怠慢と無責任によって今日改正案の提案がおくれたことが原因になってこの国会では審議ができないという場合ですから、その罪滅ぼしの意味も含めて、この際すみやかに料率改訂を行なえば、内地府県においては過去五年間豊作が続いておるし、常襲地帯の北海道においても四年間豊作が続いておるという状態なのですから、そういう現実の上に立って料率改訂をやった場合においては、全国的に農民負担が下がるという答えは、当然農林省で試算して持っておるわけです。そういうものを持っていながら、もう一年延ばしてもらいたいとかいうのは、この制度に対する農民の不信を一そう買うことになると思うので、私は、むしろ協力的に好意的に、この際罪滅ぼしに自発的に法案の撤回をされたらどうかということを言っておるわけです。
  90. 周東英雄

    周東国務大臣 ただいま申し上げました趣意をもって、撤回する意思はございません。むしろ混乱を与えないために、従来通りの形で進めたいと思います。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 混乱なんか起きないですよ。これは、昭和三十四年の予算において、三十六年度に料率改訂を行なうということを理由として、百四十万円予算を政府が獲得して、改訂に備えて作業をやっているじゃありませんか。ちゃんと、国は、われわれが承認して、百四十万あなたの方へ金をやってあるのですよ。だから、それをまじめに使えば、当然これは料率改訂の作業は整っておるはずです。法律が通る通らぬは国会の意思によってきめることであって、政府としては、国会の意思に従って、三十六年度は当然法律に基づいて料率改訂をやるのであるからして、その作業だけは忠実に進めておくのが当然じゃないですか。この法律がもし通った場合には、これは期限一年延長、二年延長ということになってその改訂は延びるということになるが、法律が通るか通らぬかわからぬうちに、全くその仕事をボイコットしていくというようなことは、これは重大な役人の怠慢であると同時に、そういうことを大臣が知らないで放任しておったということも、農林大臣の政治的な責任になると思うわけです。
  92. 坂村吉正

    坂村政府委員 事務的な問題もございますので、お答え申し上げますが、昭和三十五年度の予算で百四十万円の料率改訂の事務費があるわけでございますが、これは、その当初から、新しい制度改正をやろう、そういうつもりでいろいろ考えておりまして、新制度に移行した場合の料率を実は当初は三十六年度から実施しようという計画でやっておりまして、その料率改訂の作業をずっと進めて参っておったわけであります。そういう関係で、実際の法律の提案等に至りましたときにおきましては、三十六年度から実施ということになりませんで、非常におくれて申しわけございませんでしたけれども、そのために非常に時日を要して料率の策定をして参ったわけでございまして、そのために一年間とにかく延ばしていただくようにお願いしようかということでお願いを申しあげておるわけでございます。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 その作業を怠ったということは率直に今答弁されたのですか。作業を怠ってまことに申しわけないというのですか。
  94. 坂村吉正

    坂村政府委員 三十六年度の旧制度のもとにおきまする料率改訂の作業につきましては、おっしゃる通り、私たちはその準備を十分いたしておりませんでしたので、この点はまことに遺憾に存じております。しかしながら、それにかわりまして、新しい制度に移りかわろうという非常な熱意を持ってそっちの方に重点を置きまして仕事をやっておりましたので、新しい制度におきまする料率は大体現在でき上がっておるというような状況に相なっておるわけであります。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 それは、なかなかむずかしいようなことを言われますが、毎回定期に改訂をしておるのですから、何も今改訂ができないということはないでしょう。農林省は都道府県の末端組合までに対して改訂の指示をする必要はないわけですね。農林省の行なう仕事は都道府県までの改訂の作業をやればいいわけです。そして、都道府県知事は実質的には都道府県の共済連合会の協力を求めて、そうしてその区域内の組合ごとの料率に対しては具体的な作業を進めるということになるので、皆さん練達の士のそろっておる経済局長あるいは保険課長が少しがんばれば、簡単に料率改訂の事務的作業は農林省段階は終わると思うが、いかがですか。
  96. 坂村吉正

    坂村政府委員 おっしゃる通り、事務的な問題としては、今までの経験もございますので、農林省段階においてはそう何カ月もかかるような仕事じゃございませんが、これが、県に参りまして、県段階、あるいは県から組合の段階、組合から各農家に対する段階、そういうところまで参りますためには、少なくとも三、四カ月はどうしても事務的にも要るわけであります。今までの経験から申しますと、半年くらいかかっておるわけであります。これは決して事をサボっておるということじゃありませんで、詰めてずっとやりまして少なくとも三、四カ月の時日を要するという状況でございます。そういう状況でございまして、特に、昨年の災害、伊勢湾台風とか、そういうようなものが入って参りますので、料率が非常に変わって参るわけでございます。そういう点から言いますと、なかなか簡単に参らない作業でございますので、どうぞ御了承をいただきたいと思います。
  97. 芳賀貢

    芳賀委員 局長、われわれを相手にして、しろうとをだますようなそういう答弁をぬけぬけとやるとすれば、われわれは絶対にこの審議も慎重を期さなければならぬということになるのですよ。一体、四カ月もかかるというべらぼうな話はないじゃないか。われわれもこういう一応資料を持っているのです。あなたがどうしても三カ月ないし四カ月かからなければできないとすれば、もう少し突っ込んだ議論をしたいと思う。だから、正直に、われわれをつかまえてしろうとだましみたいな政治的な答弁をしないで、事務当局を代表する局長として、事情の内容を率直に述べて、委員会の了解を求めるような答弁をしないと、われわれはそういうおどかしに絶対乗らぬですよ。
  98. 坂村吉正

    坂村政府委員 決してうそを申し上げておるわけでもございませんで、私ども、従来の経験等を基礎にいたしまして、実はこの間も大体仕事を分析してはじいてみました。そういたしますと、かりに六月の中旬に各県に対しまする作業要領の指示をいたすといたしますと、それから末端まで参りまして、危険階級がみんな末端まできまって、料率がきまるのは、幾らぎりぎり急ぎましても物理的に八月十五日までかかる、そういう計算になりまして、まことにどうも弱っておる状況でございますので、御了承願いたいと思います。
  99. 芳賀貢

    芳賀委員 とにかく、最近は電子計算機時代ですから、農林省は幾ら原始的なことだけやっておったって、時代はそう変わっておる。だから、そういう計算機がなければ、農林大臣に言うか総理大臣に話して、直ちに性能のいい計算機を手に入れれば、これは立ちどころにできるのですよ。県なんか、全部そういう計算機を備えて、事前に作業を終わっているわけだ。それにもかかわらず、——今二カ月になったが、もう一度答弁すれば一カ月くらいになるでしょう。そういうサバを読まぬで、実はこれこれのことでなかなか大へんであるのでというような率直な答弁を願います。
  100. 坂村吉正

    坂村政府委員 先ほど申し上げましたのは、都道府県庁の作業で危険階級並びに危険程度を表示する指数をきめるのに八月十五日ということで、最終段階までにはどうしても九月くらいまでかかる、そういうことになっておるのでございます。まことに、この点は、事務的にも芳賀委員のおっしゃる通り手ぬかりのこともあったと思うのでございますが、事ここまで来て、いろいろ末端でも保険の共済の引き受け等もどんどん行なわれている状況でございますので、何とかこういう政府の違法状態が続きませんように、一つお力を仰ぎたいというふうに考えておるのであります。どうぞよろしくお願いいたします。
  101. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、これは保険課長の中野さんからでもいいですが今料率改訂を行なえば、現在の料率に比較して大体最高はどの程度、最低はどの程度、そういう趨勢だけは見通しを持っておると思うのですが、その点だけは率直に説明をすべきだと思います。
  102. 中野和仁

    ○中野説明員 今局長も申し上げましたように、料率の改訂の作業を具体的にやっておりますので、料率といたしましては計算ができておりませんが、料率の元になっております過去二十年の被害率というもので調べてみますと、水稲につきましては、現行の料率が昭和十二年から三十一年まで二十年間で五・五四一%ということになっております。それを三年間新しく加えましてやりますと、五・四四五%になりまして、〇・〇九六%だけ全国平均で低下いたします。ただし、この場合も、低下する県が約四分の三、上昇します県が四分の一ほどございます。水稲の場合はそういうことになっております。麦につきましては、逆に、新しく三年間加えますと、〇・七七%上昇するというようなことになっております。
  103. 芳賀貢

    芳賀委員 これは、全国にそういうことだけは明らかにして陳謝の意だけは表明する必要があると思う。これは今後の問題でありますが、今度の根本改正をやる経過において、農林省としては、あるいは都道府県の農災関係の職員を集めたり、あるいは連合会の担当者等を集めて、いろいろ内容的な説明を終わっておるということはわれわれ聞いておるわけです。ただ、その中で、この根本改正が行なわれた場合は、従前災害の度合いが高くて非常にこの制度の恩恵を受けておったような地域に対しては今後農民負担が相当大幅に現在よりも高まる、こういう内容の説明を農林省がしておるということをわれわれは聞いておるのですが、これは重大な点だと思う根本改正の大原則としては、現在の農民負担をこれ以上上げない、合理的に引き下げるということが一番大きな柱になっておるにかかわらず、災害が多い地帯だから現在よりも上げますぞというようなことを法律が通る前に指示したり説明するということは重大なことだと思いますが、そういうことを農林大臣が指示して事務当局に説明させたかどうか、その点はいかがですか。
  104. 周東英雄

    周東国務大臣 どういうふうに指導したか、私聞いておりませんが、それは別に私は悪意をもって農民を惑わすようなことを指導したとも思いませんが、もし御指摘のような点がありますれば、今後は十分気をつけさしていきたいと思います。
  105. 坂村吉正

    坂村政府委員 新しく制度を改正する法律案の中におきましては、大体今まで県単位で考えておりましたのを、いろいろ料率にしても何にしても町村の組合単位にきめることになりますので、そういうことから申し上げますと、非常に被害の高いところはやはり料率がある程度上がるということはあろうと思いますが、全体としては農民負担を引き下げる、こういうことで考えております。そういう個別化が非常に進んで参りますので、そういう意味である程度出入りがあろうと思うのでございますが、そのかわり、被害の高いところにつきましては国庫負担も被害率に応じてしていくという考え方をとっておりますので、全体の農民負担としては下がるものと考えております。ただ、今までの会議等でも、内容はこういうことですということをお話ししておるのでございまして、これを特にいろいろ何らかのための宣伝や何かに使っておるというつもりは一つもございません。
  106. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、もう一回明らかにしておきたいのですが、今後根本改正を進める場合も、農林省の原則としては、いかなる地域においても法律改正を行なうことによって現在よりも実質的に農民の負担がふえないということを建前にして改正を進めるのであるという態度だけ明らかにしてもらわぬと、一方においては解散論がだんだん高まって、大幅解散してもいいというような通牒が出る、そうなれば、今度は無統制状態の中に混乱が生じて、そして災害地だけが完全な国家補償にいくのなら話はわかるが、保険方式のようなものを混淆した形でいった場合は、絶対にこの制度というものは改正したくらいでは済まないことになると思うわけなんです。だから、この点は、やはり、原則としては絶対にいかなる地域においても現在よりも農民負担がふえないということを建前にして臨むということを、ぜひ農林大臣から天下に明らかにしておいてもらいたい。
  107. 周東英雄

    周東国務大臣 将来の問題としてのお尋ねでありますが、これは、あくまでも、将来から農業者が現行法に対して不満としておった点、すなわち、負担がある程度多くてしかも共済金は少ないというような点がありましたに対して、料率あるいは賦課金等に関しては農家の希望をいれて、事務費あるいは人件費等の全額国庫負担をやるとか、あるいは料率に関しましても、私は個別的には相当に差があるものであり、それは保険の契約に対して農家単位方式という形に変わり、個別の反別別の形をとらないという行き方は、むしろ負担の料率は下がってきておる傾向である、かように考えておりまして、こういう点は、あわせて農家負担を軽減することを考え、同時に、共済金に対しましても、現在よりもおおむね倍近くの共済金を出すようにいたすということがねらいであり、また、それはぜひ実現をしたいと思っております。
  108. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、簡単でいいのですよ。原則は現在よりも農家負担をふやさない、それだけ言えばいいのです。それが言明できなければ、なぜ言明しないかをもう少しお伺いしなければならぬ。
  109. 周東英雄

    周東国務大臣 大体原則はあなたのおっしゃるような方向で考えていきたいと思っております。
  110. 坂田英一

    坂田委員長 本案について他に質疑もありませんので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  111. 坂田英一

    坂田委員長 本案に対し、田口長治郎君より、自民、社会及び民社共同提案による修正案が提出されております。修正案はお手元に配付してある通りであります。  まず修正案の趣旨について提出者の説明を求めます。田口長治郎君。
  112. 田口長治郎

    ○田口(長)委員 私は、自由民主党、日本社会党、民主社会党三派の共同提案になる農業災害補償法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案に対する修正の動議を提出いたします。まず、本文を朗読いたします。   農業災害補償法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。   本則中附則の改正規定を次のように改める。   附則第五項中「三年」を「四年」に改める。  この理由は、この農業災害補償法根本的の改正が次の国会に提案をされる予定でございますから、この期間を今回の修正によって一致させんとするものでございます。  どうか全員の御賛成をお願い申し上げます。     —————————————
  113. 坂田英一

    坂田委員長 これより本案及び本案に対する修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  まず、本案に対する修正案の採決をいたします。本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  114. 坂田英一

    坂田委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、修正部分を除いた原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  115. 坂田英一

    坂田委員長 起立総員。よって、本案は修正議決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  116. 坂田英一

    坂田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。      ————◇—————
  117. 坂田英一

    坂田委員長 次に、野原正勝君外一名提出オリンピック東京大会馬術競技に使用する施設の建設等のための日本中央競馬会国庫納付金等臨時特例に関する法律案を議題として、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。川俣清音君。
  118. 川俣清音

    川俣委員 これは、オリンピック東京大会に備えて、馬術競技に使用する施設及び設備の建設または整備に必要な経費を捻出するために、従来の競馬回数にさらに加えて東京競馬、中山競馬などを行なう、こういう趣旨でございます。そこで、提案者である野原君にお尋ねいたしますが、競馬法によって、各競馬ごとに年三回以内、一回八日以内になっているのですが、現在八日を大体使用しておらない実情でございますけれども、なぜ八日をやれないのですか。これを一つお尋ねしたい。
  119. 野原正勝

    野原(正)議員 現在の競馬はなぜ八日やれないかということは、これは畜産局長の方に説明さした方がよかろうと思います。オリンピックの施設をやるために競馬回数を二回ふやそうということは、これは私どもが提案した理由なんでありますが、今やれるやれないということについての実態は畜産局長から説明させます。
  120. 安田善一郎

    ○安田政府委員 これは、中央競馬で申し上げますと、中央競馬に出場を予想されまする馬の頭数でありまするとか、従来の勝馬投票券による場合とか、その他運営上の理由から、競走が公正円滑に十分やれるようにということからでございます。
  121. 川俣清音

    川俣委員 提案者、今畜産局長の説明の通りでございます。従来実際は法律上八日やれるのだけれども、能率を上げるために、あるいは勝率を上げるために、馬の頭数及び入場者の状態から見て、八日間をやることは無理だということで、かえって経費が低下するというところから開催日数を減らしているようでございます。そういう状態の中でまた回数をふやすということになりますと、むしろ、すでに契約されておりまする開催の日数をさらに減らさなければならないような事態が起きるのではないか。八日をフルに使えないのに、さらにまた二回加えるということは、その二回分を追加するために、六日あるいは七日やっておったのを、さらに日にちを減らさなければならないという事態が起きるおそれがあるのじゃないか。それを検討されたかどうか。ただやればいいということだけだったら困る。
  122. 野原正勝

    野原(正)議員 その点はいろいろ検討したわけでありますが、今後の見通しでございますので、私どもといたしましては、わが国の経済の実情等から見まして、まず可能であろう、こういう見当をつけて出したわけでございます。
  123. 川俣清音

    川俣委員 経済の見通しについては、あとであなたよりも大蔵省にお尋ねいたします。しかし、実際の運用の状態から見て、既定計画を減らさないで回数をふやすということは非常に困難ではないか。私は必ずしも馬を持っているわけじゃなし、この間ダービーに行ってみて聞きますと、趣旨はいいけれども、これは公認競馬を少し減らしてもらわなければ無理じゃないかというのが馬主の意見でありますし、競馬場あたりの意見もそういう意見であったので、計画はいいけれども、それは単なる思いつきにすぎない結果になるのではないかという憂いがあるためにお尋ねをしておるのです。反対じゃないのです。うまく成功させるためには、非常に危険な道を踏ませたくない、こういう意味でお尋ねしておる。了承されて御答弁願います。
  124. 野原正勝

    野原(正)議員 御注意の点は重々検討いたしまして、何とか一つ御協力を願って、オリンピックの競技のできますような施設拡充のための競馬を一つ開催いたしたい。馬の方のことは、非常に無理であるとすればこれはまた問題は別でございますが、何とかやれるだろうということで計画をしておるわけでございます。
  125. 川俣清音

    川俣委員 日本中央競馬会法の三十六条に、政府は第二十七条の規定による国庫納付金の額に相当する金額を有畜農家創設特別措置法等によるいろいろな畜産奨励のために支出するという項目、これはわざわざ設けたのでございます。大蔵省は納付金を取ってしまって畜産奨励に使わないおそれがありますので、三十六条は議員が修正をいたしまして特にこの条項を入れたのでありますから、従って、この条項からいたしましても、東京オリンピック大会に備えて馬事公苑等を設備するということはこの条項に当てはまる、経費の捻出が可能だと思うが、不可能なのかどうですか、この点お尋ねいたします。
  126. 野原正勝

    野原(正)議員 そういうことも十分に可能ではあると思います。しかし、一応競馬の従来の益金を国庫に入れまして、そして畜産振興その他に使っておりますから、そのほかに馬事公苑の整備をするということになりますと、やはり、競馬の回数も最小限度ふやしまして、その益金を国庫に納付しないで競馬の施設に使うことができるという一つの措置を講じたいというのがこの提案の理由でございます。
  127. 川俣清音

    川俣委員 三十六条でこれらの馬事施設に対して施設ができるということでありまするならば、一ぺん国庫納付金に入れて総体の中からこれらの経費を支出することは少しも差しつかえないのではないか。やれないということは、与党の連中がやらないからですよ。大蔵省の話を聞かせるなんて大きなことを言うけれども、やれないということは、これは何ですか。別に開催日を二日持って別個にやらなければ、国庫から持ってこれない、そんな情けない畜産奨励なんかありませんよ。やれるならやった方がいいじゃないですか。その方が予算上の措置としても運用上もむしろ適切なことです。あえて特別法を作ってやらなければならないことはない。これを正常なやり方にして当然な設備に備えた方が私は妥当なやり方じゃないかと思う。しかも、競馬の益金からなるべくならば一本に国庫に納入して、オリンピックで必要ならば、あえて競馬の益金ばかりでなく、国庫から持ち出ししてでもその施設を講ずるということの方が、世界オリンピックに対する日本の態度として望ましいことだと思うのです。競馬法は馬匹の改良だとか何とかいうことが建前になっておりまするけれども、今日のオリンピックは必ずしも馬匹の改良などのためじゃないのです。世界的な国民体育の向上のために行なわれることでございますから、馬のけつをたたいたその益金でやるなんというけちな考え方でなしに、やはり、これは当然国庫の納付金から出すべきだ、こう思うのです。なぜその道を講じなかったのか。なぜその講じなかった理由をあげないか。
  128. 野原正勝

    野原(正)議員 なぜ講じないとしかられても、実は答弁のしようもないわけでありますが、実は、私も、この案件を提案者として出しましたものの、東京オリンピック大会を開催するについては、何でも話に聞きますというと、各党各派からそれぞれ適当な方が委員になっておられて、そうしたいろいろな計画を持たれて、その中で、たまたま、馬術競技の問題については、やはり何かこうした競馬によっての益金をその方に使わしてもらおうというような案にまとまっておったやに聞いております。ただいま安田局長から耳打ちをされますというと、何でも今の法律では直接にはどうもこの馬事公苑を施設をするのには使い得ないようなことだそうでございます。もちろんこれは法律改正すれば別でありますが、ただ、このオリンピック競技の準備のためには、実は、社会党ももちろん、民社党も、各党がそれぞれ相談されて、一応こういうことでいこうというような話し合いにまとまっておった。そして、たまたま、政府では、これを政府案として提出することはいろいろな関係でどうも工合が悪いから、やはり議員提案ということで、実は私どもも非公式ながら社会、民社の方にも共同提案をお願いをしたわけなのであります。いろいろ手違いがございまして、どうもはなはだ遺憾ながら、農林委員会の方の関係で議員提案でやってもらいたいということで、私と島村君と二人の提案ということになっておりますが、その趣旨あるいは今までの経緯につきましては、あるいは党内でいろいろと聞いておると存じますが、そういう事情でございまして、もちろん政府の責任はございましょうが、各党各派の一致した見解として、何でもオリンピックに備えるための措置として馬の問題については競馬の方でまかなってほしいというようなことに相なったために、この問題がこういう形で提案になってきたということでございます。なぜやらないというようなおしかりを受けましたところで、私も内閣総理大臣ではございませんので、遺憾ながらどうもしっかりした答弁は申し上げかねます。
  129. 川俣清音

    川俣委員 それは、確かに、民間で競馬をやってその益金をオリンピックに使ったらどうかという意見のあることは事実です。民間は予算に対する発言権がないのであるから、従って、こういうものでもやったならばできるだろうということを言うのは当然なことです。自民党みずから予算に大きな発言権を持っていると世間に宣伝をしておるのですから、そうすれば、予算編成において当然これらの競馬から上がってくる益金というものを見積もって、そうして八日なら八日やらせることにして、今まで六日のものは八日やらせることにして、その中の納付金からちゃんときちんとした支出をさせることの方がほんとうの施設ができると思う。こういうあやふやな競馬の益金、しかもこれがばくちのような不安定のもので施設を講ずるということでは、忠実なるやり方じゃないと思う。不安の上に不安を重ねるようなことは、ほんとうに熱心な者のやるべき態度ではない、私はそう思う。  そこで、お尋ねいたしますが、三十六条から、国庫納付金からこれらの施設に使う費用は捻出できないのですか。国全体の予算編成の上から言っても、別個にこういう特別法を作って予算のぶんどりをすることの方が予算大綱から見てよろしくないかと私は親切にあなたに聞くんだが、主計官、どうですか。
  130. 相沢英之

    ○相沢説明員 ふだん、競馬法の関係は、私のところには直接予算の問題として上がってきておりませんものですから、不勉強で、あるいは当たらない答弁を申し上げるかもしれませんが、日本中央競馬会法の第三十六条でいう国庫納付金を充当すべき経費その他畜産業の振興のために必要な経費に、今回のオリンピックの馬術競技のための施設、そういうものが入るかどうかという御質問かと思いますが、これは、広く解釈すれば、この馬術競技のためにいろいろな施設をすることも、畜産業の振興に間接的にはなるかと思います。しかし、この法律の立法の精神としましては、もう少し端的に、畜産業の振興のために必要な草地改良であるとか、家畜の導入であるとか、畜産振興であるとか、こういうもののために必要な経費を出すというのがすなおな解釈ではないかと思います。
  131. 川俣清音

    川俣委員 畜産局長主計官にお尋ねしますが、オリンピックが終わったあとの施設はどうなる予定ですか。何に使うつもりでございますか。それによってあなたの答弁が妥当か妥当でないかという結果が生まれると思うのです。何に使う予定ですか。オリンピックに使うことだけはよくわかりますが、そのあとの施設を何のためにお使いになるという考え方なんですか。
  132. 安田善一郎

    ○安田政府委員 法律の解釈につきましては、私も主計官の申されたところと同様でございます。  この施設を今後どう使うのかということでございますが、まず、所有するのは中央競馬会、オリンピックに使うのは無料、オリンピックが済みましたら、中央競馬会が法律に従ってやれる事業で、公共性も強く、国民的にも利用できて、みなに喜ばれるような馬術関係の競技場として一般に開放するわけですが、あるものは、試験研究、展示などもございまして、そういうことにも使うわけであります。
  133. 川俣清音

    川俣委員 大蔵省、今の畜産局長答弁でよろしいですか。これらの施設は、将来の馬事振興や試験研究や、そいうものに使うということです。すると、三十六条の規定そのままじゃないですか。三十六条の規定によってこれをさらに活用するための施設というふうに理解されるのですが、三十六条の費用に使われないということはおかしいじゃないですか。オリンピックそのものは、あるいは三十六条の対象にならないかもしれないけれども、その後の、これを維持管理する目的は、三十六条の目的を達成するために使うということなんでしょう。三十六条の目的を達成するために使うのでなければ、この競馬の益金を充てることも違法だと言わざるを得ない。中央競馬会と何にも関係のないものを競馬の益金でやるということになると、競馬法及び中央競馬会法違反なんです。馬匹の改良が今後必要か必要でないかは別といたしまして、法律の体裁から言えば、馬匹の改良であるとかあるいは畜産奨励という必要上この競馬を行なうのだという建前になっておる。まさかばくちをやるために必要だという建前にはなっていない。そこで、オリンピックの終わったあとには、畜産奨励のため、あるいは馬匹改良のために、あるいは、試験研究のために必要な施設として残すという意味でございますから、三十六条の目的を達成するための施設ということになるのではないですか。それ以外の施設だということになると問題になるのですが、この点どうですか。
  134. 相沢英之

    ○相沢説明員 先ほどもちょっ申し上げたと思いますが、日本中央競馬会法の第三十六条にいう「畜産業の振興のため」という目的については、ごく広い解釈をいたしますと、そういうオリンピックの馬術競技のための施設に充てる経費ということも読めないこともないかと思いますが、この法律の精神といたしましては、先ほど申し上げましたように、直接畜産業の振興のための経費に充てるというふうに読むべきではないか、かように考えわるけであります。今回の特別立法では、この目的を明らかにいたしまして、オリンピック東京大会馬術競技のために使用するものの建設または整備に要する経費ということを目的に掲げたわけであります。これによりまして作った施設がそのオリンピック東京大会終了後に、先ほど畜産局長から答弁もございました通りに、馬術競技その他中央競馬会の行なう業務にとりましてもいろいろと関連のある仕事に充当されるということは当然考えられていいことでありまして、中央競馬会法の第二十条の第二項第三号といたしまして、競馬会の業務に、「その他競馬(馬術競技を含む。)の健全な発展を図るため必要な業務」ということをうたってあるわけであります。従いまして、こういったような施設を中央競馬会が保有することにつきましても、この中央競馬会法の目的から逸脱するものではない、かように存じております。
  135. 川俣清音

    川俣委員 中央競馬会法に規定されている範囲を逸脱するものではない、そうだったら、三十六条を適用されてこれに支出されることは一向差しつかえないじゃないですか。競馬会法で認められた範囲を逸脱した競馬をやるというならばこれは別問題ですが、中央競馬会法の目的の範囲内において行なう競馬だということが明らかでありますから、その競馬法によって得た益金といいますか、そういうものは、本来であれば国庫納付金として一度国に収納して年次割にオリンピックに出すということの方が筋としては通るのです。それを通さないで、あえて危険を冒してやるというわけで、しかも、そび競馬は、一定期間以上の非常に危険の多い回数なんです。これをやると確かに益金は出て参りましょう。そのかわりに競馬の回数が多くなると、ほかの方の納付金が減ってくることを予想しなければならない。日数は七日でありましても幾らか減らなければならぬ。回数が多くなれば、どうしても一回の益金は少なくなると見なければなりません。従って、やはり、全部を国庫に入れて、あらためて出すというやり方をすべきではないかと思うのです。なぜ大蔵省はこれを踏み切らないのか。賛成するならば、やはり、予算の大綱から見て、一本に収納して必要な経費を出すという、この会計法上の原則に基づいて支出をすべきが従来大蔵省の方の建前ではないか。会計法から言いましてもそれが建前ではないか。あえてその建前を犯さなければならないという特別の理由はどこにあるのか。
  136. 相沢英之

    ○相沢説明員 先ほど御質問の第一点に、日本中央競馬会法第三十六条にいう畜産業の振興ということと、それから中央競馬会法第二十条に述べてあるところの業務の範囲というものの関連について御意見がございましたが、第二十条は、中央競馬会自体の業務を規定しているだけでございまして、第三十六条には、その国庫納付金が充当さるべき畜産業の振興の目的を掲げてあるわけです。これは必ずしも全部同じというわけじゃございますん。建前として違って当然だろうと思います。  それから、第二点に、もし特別競馬を二回開催しました場合には、当然従来の売り上げに食い込む、ひいては国庫納付金に食い込むのではないかという御意見がございましたが、この点に関しましては、私たちとしましては、慎重に検討した結果、こういう事業の性質といたしまして、開催回数をふやしたら、従来五回行っておった人がその五回の範囲内において適当に延ばされる、従って従来の法律によります規定の回数内で来る人の数が減るかどうか、これはなかなかそういうことにもならず、かえって開催がふえたらやはり行く人はふえるのだろう、だから、当然そのふえた分は従来の収入の別になるのじゃなかろうか。これは私が自分で考えましてもどうもそういうような気がするのでございますが、そういった点から、これはやはり特別な収入になるだろう、こういうふうに考えたわけでございます。
  137. 川俣清音

    川俣委員 私は必ずしも趣旨に反対しないんだから、あまりしつこく質問する気はほんとうはないのです。答弁が下手なためにどうしても質問せざるを得ないわけです。私が別にほしいというのじゃないんで、「その他畜産業の振興のために必要な経費」というのですから、そのあとの残ったものは畜産振興のために使われるのでしょう。畜産振興以外に使うのですか。私は、やはり広い意味の畜産振興のために使う施設として残すのだろうと思うのです。これは私の想像ですが、別な目的に使うのですか。前の主計官の説明によると、広義の畜産振興以外には使わないんだ、従って競馬法の違反にはならないんだという説明ですが、畜産振興というものは非常に範囲の広いものです。従って、広義の畜産振興以外の目的にその施設を使うという考え方があるのですかないのですか。これは、提案者、どうなんですか。
  138. 野原正勝

    野原(正)議員 オリンピックが終わったあとの施設につきましては、これは当然馬術競技その他のいろいろな公共のために使ってもらう、畜産振興に関連のある仕事に使ってもらうというのはもちろんでございます。ただ、その施設が、なおその他公共の施設に利用できるようなものであるならば、それもまたいろいろ検討した上で使うべきである。非常にりっぱな施設があるのに非常に利用率が少ないというのはもったいないわけであります。その点はまた今後あらためて検討すればよろしい問題である。今のところは、とくに来たるべき東京におけるオリンピックの馬術競技を遺憾なからしむる程度のりっぱな施設を作っていただくということに御協力をいただく、その後においても畜産振興その他に十分活用するように、そのときこそ川俣先生の御意見等は十分参酌しなければならないというふうに考えております。
  139. 川俣清音

    川俣委員 了承できないのは、あとで何にするかということがはっきりしなければ、この支出が妥当か妥当でないかということがきめられないわけです。あとで考えるとなったらだめです。何のために必要かということで、この国庫納付金を国庫へ納めるのをやめて使うというのですから、そのあとの使用も明確になっていなければならないわけなんです。やはり国の金なんですから、目的がはっきりしないで、あとの使用の状態がはっきりしないでこの金を支出するということはいけないことだと思うので、そこで、上手に答弁してもらいたい、こういうわけなんです。
  140. 野原正勝

    野原(正)議員 御承知の通り、中央競馬会は全額国が出資をした団体であり、また、人間も予算も全部国の監督のもとに運営しておる団体ということでございます。また、現に、馬事公苑の利用状態を見ておりますと、年間かれこれ二十五万人くらいの小・中学生を初め学生あるいは一般市民までいろいろ利用しておる。こういう施設が完備しました暁は、おそらく二倍にも三倍にもふえるであろうというふうなことも予想されます。従いまして、これは、馬術の問題、あるいは、畜産の問題、あらゆる点で全体に公共的な用途として活用できるというふうに考えておりますので、今実はこういうものを作るということが主になっておりますけれども、あれだけのりっぱな施設を作るのでありますから、そのときこそ遺憾なくあらゆる工夫をこらして大いに利用すべきものである、かように考えておるわけであります。
  141. 川俣清音

    川俣委員 まことにけっこうなんですが、しかし、馬事公苑は、所有権のことで問題になっておって、まだ未解決なんです。従って、できたならば、馬主協会ですか、それらがもらえるのではないかという期待もないわけではない。あるいはそのときに問題を一挙に解決しようという意図もないわけではない。そういううわさも飛んでいるわけです。従って、これらの使用に対しては明らかにしておかないと、約九億の国庫納付金を削減してそちらに回すわけですから、国民といたしましては非常に大きな関心を持たざるを得ないわけです。競馬の益金などはあぶく金だという考え方は、この際私はやめるべきだと思う。あぶく金ではない。その意味で、十分考慮する必要があると思う。これは注意です。  次に、大蔵省にお聞きしたいのですが、大体ことしの秋ごろの下半期からは相当経済成長の伸びも停滞するのではないかという不安を大蔵省もお持ちになっているようです。大体競馬の国庫納付金の上がる率を見ますと、株式の上がったときは競馬の売り上げも上がって参ります。株式もばくちと見えまして、株式市場と競馬の動向は非常に似ている。私きょうは資料を持ってきておりませんが、統計を見ているとそういう結果が出てきております。従って、株式市場に投資するのも競馬に投資するのも同じような考え方でやっているかどうかは別にしても、傾向としては出てきております。そこで、三十七年までの見通しはつくでありまましょうが、三十八年、三十九年まで見通しておりますか。私の調べによりますと、株式の伸びと競馬の伸びとは大体並行している。これから三十八年、三十九年というものを想定いたしますと、経済の成長が従来通りいくというふうにはなかなか見がたいのではないか。輸出貿易の伸びの悩み等もありますし、従って、経済の成長がそれほど期待できるようなわけにいかないのじゃないか。そういたしますると、三十七年着手はいいでしょうが、完成の三十八年、三十九年には行き詰まる結果が出てくるのではないか。せっかくの計画が途中で挫折しなければならない結果が生まれるのではないか。そこで、もしもほんとうに必要ならば、先ほど申し上げたように、やはり、国の経費で、国の責任でこの計画を実行する方が妥当ではないかと思うが主計官主計官というのは主計官をやっている時代はいいかげんな答弁をするけれども、あとで局長になったときには、あのときは見間違いでありましたというわけにいかないのですよ。
  142. 相沢英之

    ○相沢説明員 今後どういうように経済の大勢が推移いたしますか、その辺のところはまたうちの大臣でもわずらわしませんとなかなかはっきりしないと思いますが、しかし、従来の競馬会の売り上げ状況を見ておりますと、ここ四、五年ずっと増加の趨勢にございまして、目下のところこれがにわかに減るというふうな見込みもないようでございます。先のことを心配いたすときりがないのでございますが、大体におきまして今の三十六年の歳入見込みを基礎にいたしましてその収入を特別開催による収入を見込んでおりますが、これは、従来の増加傾向等を見ますと、なお堅目でございますし、なお経費の面は一応の見積もりでございまして、今後精査すれば若干異動があるかもしません。そういったことをかれこれ考え合わせますと、この特別開催二回分、三年間で所要の経費をまかなうという点につきましては、そう不安はないのではないかというふうに考えております。
  143. 川俣清音

    川俣委員 では、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。この見通しが誤れば、提案者が誤るばかりでなく、これに承認を与えた大蔵省も共同の責任でございまするから、従ってこの計画通り実行できなかった場合には、その趣旨はよろしいのであるからして国費をもって負担をする意思があるのだこういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  144. 野原正勝

    野原(正)議員 私からも一言……。  大へんどうも先の先まで御心配いただきました御発言でございまして、まことにありがたく感謝しております。私どもも、提案者としまして出しました以上は、もし万一にもうまくいかない、予定通りの収入が上がらないというときには、あらためてまた御相談を申し上げたいと思います。
  145. 坂田英一

    坂田委員長 他に質疑はありませんか。  別に質疑の通告もありませんので、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  146. 坂田英一

    坂田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告がありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  147. 坂田英一

    坂田委員長 起立多数。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  148. 坂田英一

    坂田委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。  午後三時四十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時四十四分休憩      ————◇—————  〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕      ————◇—————