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1961-04-05 第38回国会 衆議院 農林水産委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月五日(水曜日)    午前十時四十八分開議  出席委員   委員長 坂田 英一君    理事 秋山 利恭君 理事 大野 市郎君    理事 小山 長規君 理事 田口長治郎君    理事 石田 宥全君 理事 角屋堅次郎君    理事 芳賀  貢君       安倍晋太郎君    飯塚 定輔君       川村善八郎君    小枝 一雄君       田邉 國男君    内藤  隆君       中山 榮一君    野原 正勝君       福永 一臣君    本名  武君       松浦 東介君    森田重次郎君       八木 徹雄君    有馬 輝武君       片島  港君    川俣 清音君       北山 愛郎君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       山田 長司君    湯山  勇君       玉置 一徳君  出席政府委員         林野庁長官   山崎  齊君         自治事務官         (行政局長)  藤井 貞夫君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   宮崎  仁君         自治事務官         (行政局行政課         長)      岸   昌君         参  考  人         (森林開発公団         理事長)    石坂  弘君         参  考  人         (秋田県知事) 小畑勇二郎君         参  考  人         (林業経営研究         所所長)    野村 進行君         参  考  人         (全国町村会会         長)      山本 力蔵君         参  考  人         (全林野労働組         合中央執行委員         長)      亀井 忠衛君         参  考  人         (長野県伊那市         会議員)    田畑五郎司君         専  門  員 岩隈  博君     ————————————— 四月五日  委員中馬辰猪君、足鹿覺君、東海林稔君及び内  海清辞任につき、その浦欠として川村善八郎  君、川俣清音君、有馬輝武君及び稲富稜人君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員川村善八郎君、有馬輝武君及び川俣清音君  辞任につき、その補欠として中馬辰猪君、東海  林稔君及び足鹿覺君が議長指名委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  森林開発公団法の一部を改正する法律案内閣  提出第四五号)  公有林野等官行造林法廃止する法律案内閣  提出第四六号)      ————◇—————
  2. 坂田英一

    坂田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出森林開発公団法の一部を改正する法律案及び公有林野等官行造林法廃止する法律案一括議題として質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。湯山勇君。
  3. 湯山勇

    湯山委員 まず林野庁長官にお尋ねいたしますが、今回の官行造林廃止ということについて、どういう方面からそうしてほしいという要望がどういうふうな形で出てきたか、そういう事例があれば一つお述べ願いたいと思います。
  4. 山崎齊

    山崎政府委員 この制度改正につきましては、どういう方面から要望があったという意味ではなしに、やはり、林野庁としまして、今後の水源林造林というものをやっていきます上から種々検討いたしました結果、こういう方法が最も適当だという考え方に立っておるのであります。
  5. 湯山勇

    湯山委員 それでは、官行造林関係しておる町村なりあるいは国民の側といいますか、そういう側からは何の要望もなかった、ただ林野庁としてこうすることが適当だという判断のもとにこういうことをおやりになった、こういうことでございますか。
  6. 山崎齊

    山崎政府委員 こういう制度改正を実施するに至りました基本的な考え方は、今お話し申し上げました通りであります。これが法案の形になる段階におきまして、この地方事務関係しております自治省あるいは市町村会市町村会議長会というようなところと、この考え方について種々打ち合わせを行なったという経緯に相なっておるのであります。
  7. 湯山勇

    湯山委員 今の長官の御答弁は、むしろ長官の方から自治省なり市町村会の幹部の人を説得したということであって、国民の側といいますか、当事者の方から要望があったというのじゃない、こういうことですね。
  8. 山崎齊

    山崎政府委員 その点は、当初御説明いたしました通り経緯でありますので、御了承願いたいと思います。
  9. 湯山勇

    湯山委員 こういうことは、大体長官御存じのことと思いますけれども、全国の各町村あるいは部落、場合によっては林業経営しておる従事者といいますか、そういう人たちに非常に関係の深い法律であると思います。そこで、民主的なあり方としては、特に今日まで町村なりあるいは部落なり、そういうところと直接契約までしておるというような事実から考えてみれば、むしろそういう人たち意見を聞いて、しかる後に立法化ということを考えていく、これが私は民主政治の常道であると思いますが、長官はそういう点についてどのようにお考えになられますか。
  10. 山崎齊

    山崎政府委員 お説のような行き方をすべきであるということもまことに重要なことであるように考えるのであります。この改正に伴いまして、市町村のいわゆる造林あるいは市町村林経営というふうなものが従前以上に市町村自主性をもって運営せられていくという問題、並びに、市町村等に対しましても経済的な負担の増というものは何らそこに起こってこないということ、総合的に考えまするならば、市町村等の側にとりましては、この制度改正によりまして、将来の全体としての市町村経営というものがより順調に進めていかれる大きな契機ともなるという考え方に基づきまして、林野庁でこういうものを立案いたしたという経緯であるのであります。
  11. 湯山勇

    湯山委員 かりに、長官の言われるように、この法律ほんとう町村にとっても喜ばれるというようなものであったとしても、そういうことの了解や、あるいはそういうことでの意思を十分確かめることなく、長官だけの判断で、これはいいんだからということだけでもって押しつけていくというやり方は、長官は、林野行政責任者として、あるいは政府の一部局を担当する行政官として、そういう考え方、そういうやり方は一体妥当なやり方だとお考えになられますか。当事者の方から希望のないことは、かりに非常にいいことであっても——いいことであればそれだけによく了解させればみな納得して協力してくるわけですから、そういうことが先行してしかる後に法律を作っていくということならば筋は立ちますけれども、長官判断で、これはいいんだ、いいことだから、たとい理解はされなくても、あるいは協力態勢はとれなくても、とにかくいいことだからやるのはあたりまえだ、これにはついてくるべきだ、こういう行き方がはたして民主的な行政あり方かどうか、伺いたいと思います。
  12. 山崎齊

    山崎政府委員 この法律趣旨といたしております点をそれぞれ市町村または関係の方々に十分徹底するようにいたしまして御理解を願わなければならないということは、私たちも十分に考えておるのであります。その私たち考えていることのPRと申しますか、趣旨徹底がまだ不十分であるという点につきましては、私たちも十分反省しなければならぬというふうに考えておりまして、今後ともそういう点につきましては十二分な努力を払って参りたいというように考えております。
  13. 湯山勇

    湯山委員 長官の今の御答弁了解できると思います。そういうお考えならば、今急いで法律を成立させて、通ったから仕方ない、やれというのではなくて、実際に法律が通れば直ちに協力態勢ができるというようなことをまずやっていく、つまり、法律の成立を急ぐのではなく、むしろ長官の言われるようなPRというか理解を深めていく、そのことを先におやりになって、これならいけるという段階で初めて発足する、こういうふうに今からでもすることが私は政治の正しいあり方ではないかと思います。と申しますのは、私は先日郷里の方に帰りまして、官行造林をやってもらっているある町長にも会いました。それから、それに関係している人にも会いました。二人だけですけれども、聞いてみますと、こういうことなんです。官行造林廃止になるということはうわさでは聞いている、けれども、正規の話は何もない、そういうことになることは大へん不安だし、従来通りやってもらいたいけれども、法律で押しつけてこられることになればいたし方ないではないかというような、あきらめのような気持を持っている。これじゃ新しいやり方に対する積極的な協力は得られないし、また、長官が言われるように、非常にこれはいいんだ、自主的な運営がなされていって、むしろそのことの方が国家百年の山林のためにはいいんだとかりにお考えになっても、そのことはちっとも理解されていないし、そうして、むしろ、それについては、今のように、ほんとう反対だけれども、法律ができれば仕方がないといったようなことしか言っていない。これではものが逆ではないかと思う。それならば、むしろ、そういう点については、年度も越えたことですから、ここで思い切ってそういうふうに今までのやり方を変えて、一度よく理解をさせて、ぜひやってもらいたいという空気を作って、その中でやっていく、そういうふうに、今からでもおそくはないと思いますので、転換される御用意はないかどうか、伺いたいと思います。
  14. 山崎齊

    山崎政府委員 この法案が固まります段階におきましても、営林局長あるいは県の林務機構というものを通じまして、関係方面にはそれぞれ会議等を開かせまして、その趣旨徹底に努めたのでありますが、お説のように、その点がまだ不十分な面があるということは、私たちも十分反省いたしまして、現在の時点におきましても、その面の御理解を願うということに努力して参らなければいかぬというふうに考えまして、それぞれ不安を持っておられるであろう方面に対しましては、営林局長あるいは県等機構を通じまして、現在の時点におきましても、いろいろと御説明申し上げ、御理解を願っておるという段階にあります。
  15. 湯山勇

    湯山委員 にもかかわらず、ずいぶん官行造林廃止には反対の請願や陳情が来ていることを長官御存じでしょうか。
  16. 山崎齊

    山崎政府委員 私たちのところにもそういう意味陳情等文書でときどき来ておるという現状にあるのでありまして、そういうふうなところに対しましては、営林局長県等の人にわざわざそこに出かけていってもらいまして、この趣旨徹底をはかり、御了解を願うということに努力いたしておるのでありまして、私たちの目からいろいろとそういう面を見て参りますと、やはり、この分収造林特別措置法というものに基づきました事業のやり方というものに十分な御理解を持っておられないというようなところに大きな原因があるように考えておりますし、それらの点、今後なお十分に御理解を願うように一つ努力していかなければいかぬ。現在の時点におきましても、そういうふうな向きに対しては、関係者が出向きまして、分収造林というものの性格、町村土地所有造林者との関係というようなことにつきましての御説明を十分にいたすという考え方でおります。
  17. 湯山勇

    湯山委員 私が林野庁長官にこういうことを言うのは大へん失礼だと思いますけれども、ほんとう長官は山とか木というものを御理解になっておるんだろうかどうだろうか、今の御答弁や今までのやり方から大へんそういう点で私は疑問を持つわけです。と申しますのは、何といっても木は生きものですし、それから、季節というものがございます。手入れをするにしても、植付をするにしても、それぞれ季節というものがあるわけで、そういうことを考えてみますと、長官が一体いつごろからこういう構想をお持ちになったのか存じませんけれども、もしほんとう長官山林ということをよく御理解になっておるとすれば、こういう構想ができて、それからこれを実施するということまでの間には、少なくとも一年ぐらいはかかるとか、半年くらいはかかるとか、そういう判断は、いやしくも林野行政に当たって植物という生きものを扱っている以上は十分おわかりだと思うわけです。一体、法律が通ったからすぐさっと事が実施できる、そういうようなことを長官はこのことを着想になった当初からお考えになっておられたんでしょうか、そしてまた、いつごろからこういうことを着想になられたんでしょうか。
  18. 山崎齊

    山崎政府委員 こういう構想をいろいろと検討し始めましたのは、やはり三十五年度の夏ごろからでありまして、自来事務的にいろいろと企画、検討等を行ないまして進めて参ったのであります。この造林にいたしましても、お説の通り時期があるわけでございまして、従来官行造林等関係しておられたところにつきまして、この春に植えなければならないというような場所が全国で百数十カ所あるというふうにも、私たちも検討し、十分その点は承知いたしておるのでありまして、そのために十分趣旨徹底をはかり、この法律の通過とともに円滑にそれが進んでいくようにということを念願いたしまして、国会にできるだけ早く御審議を願うようにということも考えまして努力して参ったのであります。
  19. 湯山勇

    湯山委員 今となりましては、林野庁長官が、そういうほかの政治的な問題よりもやはりほんとうに山を愛するし、それから、あなたの下で働いている職員を愛するというような気持に立たれれば、今無理に法律を成立さすことを急ぐのでなくて、むしろそういう態勢を作っていくことに重点を置いていくということを再検討する段階だと思いますので、これは御答弁は要りませんけれども、ここで実際真剣に長官として一つ考え願いたいと思います。  それから、末端の市町村部落は、これについて反対もしくは疑義を持っていることはほとんど全部だと思います。それで、政府部内でもこれは問題があったのじゃないか。政府部内でぜひ官行造林廃止すべきだというような積極的な意見はどういう省庁からありましたでしょうか。これも長官からまず伺いたいと思います。
  20. 山崎齊

    山崎政府委員 林野関係の施策につきまして、これを立案し実行するというのは、御存じ通り林野庁責任を持ってやるわけであります。他の省庁というような面から積極的にこういうものを廃止しなければならないじゃないかというふうな御意見というものはもろんないわけでありまして、林政上の今後の方向という点からいたしまして、林野庁で企画立案いたしまして、関係省庁意見を聞くという形に進んでおるのであります。
  21. 湯山勇

    湯山委員 その、他の省庁協議したときにどういうところと御協議になったのか、自治省大蔵省あたりはその中心になるところだと思いますが、その場合に、最初からそれはいいというので積極的に賛意を表されたのか、いろいろ疑義があったのか、その辺はどうです。
  22. 山崎齊

    山崎政府委員 大蔵省あるいは自治省等と当然協議をいたしたわけでありますが、その際に、今後のたとえば公有林政策というものはどういうふうになければいかぬのか、そういうものと官行造林の問題あるいは公団造林等がどういうふうな関連になるであろうかというような点を十分お話し合いをした上で、それぞれのところにおきましてこれに対する御了解を得たという形になっておるのであります。
  23. 湯山勇

    湯山委員 先ほど、長官は、昨年の予算編成期、夏ごろからこういう構想を持ったという御答弁がございましたが、それにしては、自治省行政局長との了解事項、これが二月二十一日、もう予算国会審議に移ってそのまゝ最中においてこういう了解事項を取りつけなければならないということは、これは、私は、やはり政府部内でも相当異論があって、同じ政府部内でなければむしろ反対であるというのを無理に納得させて、こういう措置に出たのではないかというふうな疑念を持つのですが、いかがでしょうか。
  24. 山崎齊

    山崎政府委員 それぞれの部局におきまして法律等を企画立案いたしまして、その原局といたしまして大体確信が持てるというふうなものができます段階におきまして関係省庁打ち合わせをいたすわけでありまして、自治省ともこの問題につきましては数回もいろいろと打ち合わせをいたしまして、その結果、最終的に、二月の二十一日でありますか、この段階了解事項作成いたしまして、意思の統一をはかられたという形に進んで参ったわけであります。
  25. 湯山勇

    湯山委員 自治省との話し合いはいつごろから始められたのでしょうか。そうして、何回くらい話し合ったのですか。
  26. 山崎齊

    山崎政府委員 自治省との話し合いを始めましたのは一月中であったように思いますが、自来数回にわたって両者打ち合わせをいたしたという経緯であります。
  27. 湯山勇

    湯山委員 またもとへ返りますけれども、同じ政府の中で、そして自治省などはよくもののわかった人の多いところです。そういう自治省との話が一月の中ごろから始めて二月の末までかかっております。しかも数回はわたらなければ話がわからない。そうなんです、事実が。それを、今不安を持っている地方町村に、法律が通ったのだからこうだといって直ちに了解工作を求めていく、PRをやっていくと言っても、自治省のようにものわかりがよくありませんから、これはなかなか私は容易じゃないと思うんです。ですから、長官は今のように法律が通ればすぐにもできるようなことをおっしゃいますけれども、なかなか私は困難だと思いますし、そういう点からも、もう一度再考を促したいと思います。  それから、次に、今のに関連してお尋ねしたい点は、一体、立法するにあたって、たとえば農林省が原案を作られるにしても、自治省原案を作られるにしても、あるいは大蔵省が作られるにしても、こういうふうに林野庁長官自治省行政局長との間に覚書了解事項文書交換しなければ立法できない、こういうことはきわめて異例なことだと思うんですが、これはどうですか。
  28. 山崎齊

    山崎政府委員 それぞれ関係省庁関係します事項につきまして事務的にその運営等につきまして問題点ももちろんでありますが、両者で問題でなくても将来のために覚書等事項として文書とじて残しておくということは、きわめて異例なものではないように考えております。法律によりましてはそういうものがやはりあるということも少なくないように考えているのであります。
  29. 湯山勇

    湯山委員 それでは、行政局長にお尋ねいたしますが、こういう形で覚書といいますか了解事項を相互に文書として交換するというような場合は、全く問題のない場合はそういうことはないと思いますし、これは当然あるいは次官会議なりあるいは閣議できまることですから、そういう正規の手続以外に事務担当局長あるいは林野庁長官あるいは他の省庁局長との間に行政局長がこういう覚書といいますか了解事項をしかも文書で確認する、こういう例はどれくらいありますか。それから、こういうことをするのはどういう場合にされるか、そのことについて藤井局長から御答弁願いたいと思います。
  30. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 法律案作成の過程におきまして関係各省間において覚書あるいは了解事項というような形式で今後におきまする法律通りました後における運営の基本的な事項につきましてお互いに意思の疎通をはかっていくということは間々ございます。全然問題のないものについては、今御指摘のございましたように、そういうことをやることもございませんですが、相当重要な案件ということに相なりました場合においては、そのような覚書なり了解事項交換ということを、あるいは両次官の名において、あるいは局長の名において行なうことは間々ございます。
  31. 湯山勇

    湯山委員 今間々あるということをおっしゃいましたが、間々あることは私も存じております。しかし、それは、先ほど申しましたように異例の場合であって、私の経験から申しますれば、両者意見が対立する、そうして、どちらかと言えば、たとえば今度の場合で言えば、林野庁の方が積極的にやりたい、自治省の方はそれはちょっと困る、問題があるというような場合に、こういうことがなされるのが多かったと思うわけです。今度の場合も、今おっしゃったように、問題がなければこういうことはないわけですから、官行造林廃止自治省が全面的に賛成だということならば、こういうことはしなくてよかったわけです。そうじゃなくて、いろいろその間に問題がある、技術的な問題もあるでしょうし、その他いろいろな問題がある、そういう問題があるためにこういう覚書交換をされたということじゃないかと思うのですが、その点はいかがですか。
  32. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 問題のあったことは、これは事実でございます。これは、この問題だけに限りませんで、いろいろな案件についても起こることでございまして、こういうことを申し上げる必要もないかと思いますが、各省、それぞれその所管事項について、行政を推進し、あるいは法律案作成に当たる、そういう場合に、他の省といたしましてこれに関連のある事項についてそれぞれの立場から意見を持つこともございます。それを調整をはかることによって法律案が成り立っていくということでございまして、問題のあったということは、これは事実であり、そういう問題点を将来にわたって解消していくという含みをもちまして、私たちの方といたしましては意見を出し、これを林野庁といたしましては御了解をいただきまして覚書了解事項という形に相なったものでございます。
  33. 川俣清音

    川俣委員 関連。  きのうは行政課長から自治省を代表しこの御意見を伺ったわけですが、それは、自治体の権利を守る立場にある自治省としてはこの法律廃止になっても既存の契約には影響を与えないという意味了解をしておるということでした。ところが、林野庁説明によりますると、この法律廃止することによって解約てこ入れができるという説明でございます。あなたの方は、この法律はなお今後とも効力があるのであるから強制解約を受けることはあり得ないという観点に立っておられるようです。これはきのうの弁明でございます。法律は確かに、国と民間が結んだところの契約法律廃止するということは憲法違反になるので法制局もその効力を存続させるという法制化をとったものと私も理解するし、自治省理解されておる。ところが、林野庁は、これを廃止することが解約てこ入れになるんだという理解のようです。ここに大きな違いがある。そうすると、あなた方とだいぶ食い違いがあるのじゃないですか。あなた方は、強制解約を受けるということは、あるいは勧誘にいたしましてもしいて解約を受けるということは非常な契約違反のことでありまするし、もしもが契約を破棄しますならば大きな損害を負担しなければならない立場になる。ところが、林野庁解約する場合には、法律一本で解約をしようということはこれは無理なんで、この廃止法案でも効力を存続させようという法律になっていますね。そうでしょう。そう理解しておるのでしょう。きのうの説明はそうなんです。強制解約を受ける必要はないんだという、そうじゃないですか。強制解約を受けてもやむを得ないという解釈ですか。そうじゃないようですね。そうすると、林野庁強制解約てこ入れがこれでできるんだということと大きな食い違いじゃないですか。御承知の通り、この造林というものは長期にわたるものである。植栽もまた十年あるいは七年という長期なものです。二年か三年植えてまだ植栽残存期間が残っておる。その残っておるのを公団にやらせようと、こういうわけです。これは私の質問のときにまたあなたを呼んでよくやりますけれども、きょうは関連だが、大きな食い違いがあることはここではっきりしたでしょう。あなたは、食い違いがないと思いますか、あると思いますか。この点だけはっきりして下さい。
  34. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 別に大きな食い違いはないと思っております。法律自体の附則におきましても、「この法律の施行前に公有林野等官行造林法に基づき締結された契約については、同法は、なおその効力を有する。」ということでございますので、私は強制解約というようなことにはならないというふうに理解いたしております。
  35. 山崎齊

    山崎政府委員 お話のありました、この法律の成立によりまして強制解約といいますか解約てこ入れができるというふうに林野庁としても考えておるわけじゃないのでありまして、この新しい制度というものの趣旨、そういうものを関係の方々に十分御説明申し上げまして、市町村に経済的な不利というものがない、あるいはまた、市町村の公有林の経営につきましての能力向上、そういうような点に対する御説明、御了解というものを得られますように、十分お話し合いの上でやっていくということを根本の考え方といたしておるわけであります。
  36. 川俣清音

    川俣委員 長官は今そういう説明をされましたが、それでは、なぜ、今——この法律が通らない限りにおきまして、審議中にはやはり契約に基づいて植栽の義務を負っておるものだと思う。ところが、この法律が通るから植栽をやめるんだということで、実際はやめさせておるじゃないですか。自治省、どうなんです。もうすでに植える期間が来て苗木が腐るというのに、これであわてて自民党の諸君は、もう四月の植付期から植えなければならない、もっと前から植えなければならないのに、この法律の規定によっては植栽をしないで公団にまかせるんだからして植えないということで植えないでおる。これは、従来の契約を忠実に履行するとすれば、もう三年目、四年目の植付に入っていなければならぬ。ところが、実際においては植付に入りていないと思う。法律によって公団にまかせるからということで、現実には植栽に入っていないですよ。それは大きな契約違反だ。契約に対する侵害なんだ。この侵害を受けていながら、自治省は、食い違いはないというふうなことを言うことは、少なくとも自治体を代表しての答弁とは受け取りがたい。  これはいずれかの機会に言いますが、この問題を聞いておいて、委員長、別の機会に、この法案が上がるまでの間に、審議中に意見を述べることを保留いたしまして、これだけ申し上げます。自治省は検討が足りない。
  37. 湯山勇

    湯山委員 今のことですが、林野庁長官はその点については非常に涼しい顔をしておられますけれども、これは一体どうなんですか。既契約、すでに植栽した分、それからこれからの植栽契約と、二つあるわけです。そうですね。そのどちらも契約は履行する義務があると思います。そこで、自治省の方は、やはりそういうふうに、契約というのは契約の内容によって区別するのでなくして、契約はあくまで契約だから、すでに結ばれた契約は実施される、こういう認識でしょう。自治省の方はどうですか。
  38. 藤井貞夫

    藤井(貞)政府委員 先刻申し上げましたように、附則の規定もその趣旨でございまして、強制解約というのは既締結の契約分についてはないというふうに了解をいたしておるわけでございます。
  39. 湯山勇

    湯山委員 それは当然だと思う。
  40. 山崎齊

    山崎政府委員 今お話のありましたように、もうすでに契約いたしまして植栽いたしましたところにつきましての自後の手入れあるいは維持管理というような面につきまして従来のように官行造林法に基づき国が事業をやっていくということは、これは私たちももちろん当然考えておるわけでございます。ただ、今まで契約いたしましてまだ植栽されていないというものがあるわけであります。これらにつきましては、先ほど申し上げましたように、この新しい制度というものが市町村有林等の造村に対しまして今後どういうふうな関係に立っていくのか、利害関係はどういうふうになるのか、あるいはまた、それの経営というものにつきまして、町村自主性、あるいは官行造林で行なってきました場合の町村というものの自主性と申し上げますか、そういうものとの関連等を十分に御説明して、強制解約等の措置でなしに、お話し合いの上で新しい制度に移管するものを考えていくというふうに持っていきたいというふうに考えておるのであります。
  41. 湯山勇

    湯山委員 もし、そのときに、いやだ、契約通りやってもらいたいということになれば、おやりになりますか。
  42. 山崎齊

    山崎政府委員 そういう新しい制度趣旨等を十分御説明申し上げましてもなおかつどうしても新しい制度を希望されないという向きに対しましては、この法律趣旨にのっとってやっていかなければならぬというふうに考えております。
  43. 湯山勇

    湯山委員 法律趣旨は既契約はそのまま継続するということです。ちゃんと書いておるんですから。そうすると、当然その分については法律通り官行造林を続けていく、こう解釈していいわけですね。
  44. 山崎齊

    山崎政府委員 この法律趣旨からも明らかでありますように、お説のようなことになるわけであります。
  45. 湯山勇

    湯山委員 それでよくわかりました。それならば、もうすでに三十六年度の造林にはかかっておられるはずですね。契約があって、その契約でまだ解約されてないはずですから、契約を履行しつつあるというのが今の状態だと思うのです。実際に今局長の御答弁のような形で契約した分について官行造林が行なわれますか。
  46. 山崎齊

    山崎政府委員 この法律を事務当局として企画立案いたしまして、四月一日から新しい制度を実施するということを目途といたしまして考えて参ったわけであります。従いまして、関係の、全国百四、五十カ所になると考えておりますが、それらの方々につきましては、この趣旨の御説明もいたしたわけでありまして、この新しい制度への移行という点につきましては大方の御了解も得られるように考えておるのであります。
  47. 湯山勇

    湯山委員 従来も解約した例があると思います。契約しておって、その解約の手続、条件は内規ではどんなふうになっておりますか。
  48. 山崎齊

    山崎政府委員 解約等につきましては、もちろん両者の合意によらなければならないということは当然でありまして、地元の市町村等におきまして、自分自体で経営能力があるというふうな原因に基づきまして解約する場合、あるいは、植えました自後におきまして、樹種の選定を誤るとか、そういうふうな事態から非常に成林の見込みがないというふうな場合、あるいはまた、契約しました土地のある部分は造林に適しないというふうな現実が明らかになったというふうな場合等におきましては、両者話し合いの上でこれを解約していくということをやっておるのであります。
  49. 湯山勇

    湯山委員 そういう場合に、今度の場合はそういう両者の任意性というものがずいぶんそこなわれると私は思うのです。法律が通ったんだからということが一つ大きい条件になって、そして、解約を強要——強要という言葉は悪いかもしれませんけれども、考え方によれば強要する、押しつけていくという形がとられると思いますので、そういう行き方も大へんな問題だと思います。向こうから官行造林廃止して公団にやってもらった方がいいという了解がよくいけば、それじゃこっちからやってもらおう、これなら話はわかります。しかし、権力を持っている側が、こうだから一つ解約せよ、解約しようじゃないかという行き方そのものに私は大きな誤りがあると思うわけであります。どういう形で解約を進めていかれますか。これは、国会での答弁ということではなくて、個人のもあるわけですから、その個人のところに長官が行って田のあぜで、あるいは縁側に腰かけて話すように、一つよくわかるように話していただきたい。
  50. 山崎齊

    山崎政府委員 それぞれの関係の方々に御了解を得るための御説明を十分するわけでありますが、まず第一点といたしまして、新しい制度というものによりまして、従来の土地所有者の方々が受けられておりました利益というふうなものがどういうふうになってくるであらうかという問題をまずよく御説明しなければいかぬと思うのであります。それから、第二点といたしましては、この官行造林という形で造林し、国が維持管理するという場合と、土地所有者の方々が土地所有者となりあるいはまた造林者となるというふうな場合におきまして、その対象となる森林の維持管理というふうなものにつきまして従来とどういうふうに変わってくるであろううかという点につきまして十分な御説明をしなければならぬということ。並びに、第三点といたしましては、造林の技術的な面に関しまして、国とか——と申しますのは営林局署とかあるいは県とかいう機構がどういうふうに親身になってお世話を申し上げることができるであろうかというふうなことを十分に御説明申し上げなければいかぬというふうに考えております。
  51. 湯山勇

    湯山委員 それで契約解除に応じない場合は責任を持ってやはり新植をされるということが明確に言い切れますか。
  52. 山崎齊

    山崎政府委員 そういう点を十分に御説明申し上げました場合には、土地所有者の方々等にとりましても、従来の制度よりも決して改悪ではない、むしろ改善だというふうに私たちとしては考えておるわけでありまして、大方の御了解を得られるものだというふうに考えておるのであります。
  53. 湯山勇

    湯山委員 こういう重要な問題を、得られるものという推測で御答弁をされても、それはいただけないと思います。もしそういうことを長官が言い切れるのであれば、この法律を出すまでにちゃんと個々にお当たりになって、ここはできる、ここはできる、こういうことを明確にしてならばあるいは私も了解できると思いますけども、今の御答弁では、改悪じゃなくて改善だから了解を得られるものと思う、いかにもひとりよがりなところがあります。もしそういう態度でお臨みになるとすれば重大な問題だと思います。今のような態度だとすれば、私どもはむしろ逆にそういうことには応じないように言いたいくらいになるわけです。  そこで、もし契約の解除に応じない、とことんまで訴訟してでも争っていくというような事態が全国各地に発生したらどうなさいますか。
  54. 山崎齊

    山崎政府委員 それぞれの関係の方々へのお話は、営林局署の機構あるいは県の機構等を通じまして、今までも徹底ははかって参ったつもりでおるのでありまして、なおその点不十分な点があるのじゃないかという御指摘を私たちも十分に反省いたしまして、今後十二分な徹底をしていきたいと思うのであります。しかしながら、そういうふうにいたしましてもどうしても御了解を得られないという向きがないということは言い切れぬように思うのでありまして、そういう方々の契約地というものにつきましては、国が責任を持って造林あるいは維持管理していくということを考えなければいかぬというふうに考えております。
  55. 湯山勇

    湯山委員 それで非常に明確になりました。  そこで、今度の法律提出とともに、三十六年度の予算では官行造林予算が全部なくなっておりますが、これは、昨日角屋委員の御質問にもありましたように、そういう部分の官行造林の継続につきましては、大蔵省の方で予備費あるいは予算の他の方面からの流用等で新穂の事業が行なえるようにする、こういうことについては大蔵省了解しておられるかどうか。
  56. 山崎齊

    山崎政府委員 林野庁といたしましては、先ほど申し上げました通り、十分な努力をするつもりでおるのでありまして、その結果としてどういうふうな面積のものが新植として残るであろうかという点は、今後十分なお話し合いの結果、また大蔵省とも御相談するという形にしなければいかぬように思っております。
  57. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 予算におきます予定といたしましては、三十六年度から新植分は新しい制度のもとでやるということで組んでございますが、もちろん、今の長官のお話のように、法律趣旨によりまして、実際に既契約のもので必要があるということになるといたしますれば、予算の遂行上尊重して参らなければならぬと思います。その際の措置につきましては、きのう角屋委員の御質問にもお答えをいたしましたが、いろいろの方法がございます。どちらにいたしましても、国有林野特別会計の予算が総体の額といたしますと相当大きなものでございますから決してそう心配のことはないのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。ただ、私どもといたしましては、林野庁の方で全体を新しい制度に切りかえるということでやっていかれるということは、その方針で進むものというふうに考えております。
  58. 湯山勇

    湯山委員 予算というものは法律に従って組まれるものだというように私どもは了解しております。そうすると、法律で明らかに既契約分については従来通りやっていくのが建前である。それを今のような話し合い等で契約解除するということは、法律趣旨から言えば、この項目から言えばむしろこれは特例に属する、こう判断するのが私は常識だと思います。にもかかわらず、全然新植の費目をゼロにしてしまうというのは一体どういうわけなんですか。そして、項目のないものに新たに支出をするという場合にはどういう手続が必要ですか。
  59. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 法律趣旨に従って予算は組まれておる、こういうふうに私は考えております。問題は、そういった制度の切りかえをやる計画が予算で予定した計画通りいくかどうかという見通しの問題があるかと思います。その点につきまして、御議論は私どもも了解いたしますけれども、これは主務官庁のお考えでそういうふうにできるということでございますので、私どもはそれを信用しているわけであります。予算の技術的なものといたしましては、国有林野特別会計の事業費という項がございますが、その中にこういうものが入っております。節で分かれておると思いますが、その中で実施できるかどうかということをまず検討いたしまして、実施できればそこでやる。もしできないということであれば予備費使用ということになりますし、あるいは場合によって移用ということも考えられます。いずれも技術的には可能であります。
  60. 湯山勇

    湯山委員 その場合には、それの権限はだれにあるのですか。大蔵大臣ですか。今の節内の流用ということになれば林野庁長官あるいは農林大臣でできるわけですか。
  61. 宮崎仁

    ○宮崎説明員 移用、流用は農林大臣の権限でできます。もっとも、先ほど申しましたように、実際組まれております予算は節でございまして、九億四千五百万円という官行造林の経費が予定されておりますが、その節でございますので、流用の措置も要らないわけであります。林野庁長官の御判断でできるということでありますが、予備費使用をいたします場合には、閣議の決定が必要でありますので、もちろん大蔵省にも御協議を願わなければなりません。
  62. 湯山勇

    湯山委員 長官にお尋ねいたします。  今ので長官の権限で実際新値もやろうと思えばやれる状態にあるということが明瞭になったわけですが、もうすでにその時期になっておるわけですから、契約分で急いでやらなければならない新値の分には着手すべきだと思います。法律国会を通らなければ施行できないわけですから、直ちに新値を、今のような中で長官の計らいでもって移流用できる面があるわけですから、着手してもらいたいと思うし、それが契約した人の大部分の意思だと思います。その責任が私はあると思います。これで時期を失して、植えたものの成績が悪い、あるいは活着率が悪いということになれば、これこそ重大な問題ですから、必要な地域については直ちに新柄を始めるということについて長官は確約されますかどうですか。
  63. 山崎齊

    山崎政府委員 この制度の切りかえという趣旨を、なお私たちといたしましては関係の方々に十分お話しいたしまして、お話し合いの上で切りかえできるものは切りかえていくという措置を講じて参りたいと考えておるのであります。官行造林費という節の中で移用と申しますか、節の中での経費の使用という点はもちろん権限としてあるわけであります。御存じ通り、この予算全体といたしましては、新値だけでなしに、手入れ等を前提として三十六年度に必要なものが組まれておるわけでありまして、そういう点からいたしまして、この官行造林全体としての経費というものがどうあるべきかという問題に直接つながるわけでありますので、そういう点は今後必要な場合には大蔵省等と協議して進んで参りたいというふうに考えております。
  64. 川俣清音

    川俣委員 関連。  主計官にお尋ねしますが、主計官答弁中に憲法違反のおそれのあることがあったように思う。これはおそらく大蔵省を代表しての御意見とは受け取りがたい。いずれ速記録を調べた上で主計局長から御答弁願いたいと思いますが、そのことを主計局長にお伝えを願って、御出席あらんことをお願いいたしておきます。
  65. 湯山勇

    湯山委員 今長官はきわめて事務的な御答弁しかなさいませんでした。しかし、そういう事務的なものではなくして、契約はした、そしてすでにもう植える時期に達しておる、かりにきょう法律が通ったとしても、きょう植えなければならない苗は相当たくさんあると思います。かりに通ったとしても、それから公団側へいろいろな手続もしなければならないというようなことをすれば、時期を失するということは当然考えられるわけです。そこで、そういう面については、相手が生きものですから、直ちに時期を失しないように今の予算の移流用の範囲でとにかく新植を始めるということが私は林野庁長官としての責任であると思う。だから、そういう面については時期を失しないように直ちに着手する、おくれておるものについては早急に進めていく、こういうことはやらなければならないことだと思いますが、どうでしょうか。これは、今から説得していく、話し合いしていく、それで何日かかかる、法律が通ってからその手続等をきめて、それからみんなにその手続等を流していく、それから手続があってやっていく、しかもそれは今までの経験者である林野庁の人はこれに直接タッチしない、こういうことになってくると、そのまごつきやいろいろなことをやっていくと、とても日数がかかると思います。だから、とにかく契約をして責任を負っていることについては、その責任と義務を果たしていく、これが私は林野庁長官としてとるべき態度だと思います。そういうふうな措置がとられるかどうか、重ねて伺いたいと思います。
  66. 山崎齊

    山崎政府委員 御存じ通り造林事業というものには適期があるのであります。そのいわゆる適期の中におきまして技術的ないろいろな検討も加えまして、この適期の中におきまして造林をしなければならないというふうに私たち考えておるのであります。法律通りました節にはもちろん、それまでの間にも、十分関係の方々にお話しし、御了解も得るという措置を現に行なっており、今後も十分並行してやっていかなければいけないつもりでおるわけであります。そういう適期を失することのないように措置は私たちとしても十分気をつけてやっていきたいと思うのであります。また、技術的な指導の面につきましては、営林局署等におきましても民有林に関するいろいろな造林技術上の指導をやるということが一つの使命としても置かれておりますし、また、各地方々々に県の機構によります改良指導員等がおるわけでありまして、こういう人々が親身になって技術的な御指導もする、十分なお世話もするということで、適期を失しないような造林というものを技術的にも十分検討してやって参りたいというふうに考えておるわけであります。
  67. 湯山勇

    湯山委員 適期を失しないようにやるとおっしゃる意味は、くどいようですけれども、大事なところですからもう一ぺん聞かしていただきたいと思います。契約解除にならないものについては、あるいは契約解除の交渉中、そういうものでも、適期のものについては林野庁責任において官行造林はやっていくということなのかどうか。そうでないと、契約解除の要請をしていく一方、応じないで話が長引く、長引いたことによって不利益な扱いを受けるというようなことがあってはならないと思うわけです。当然、毎年の例ですから、どの地域は何日ごろから植林にかかるということはおわかりになっておるわけですから、自治省の方がこの了解事項をこうした意味もそこにあると思うわけです。そうだとすれば、適期を控えて、しかも既契約のもので了解を得られないというものについては、その地方々々の、それから樹種によっての適期があると思いますけれども、その適期に必ず新穂をするということがはっきり言えるのかどうか。簡単でけっこうですから……。
  68. 山崎齊

    山崎政府委員 お説の通り、木を植えます適期があるわけであります。それが一日とか二日とかいうふうな意味でなしに、やはりその地方々々である程度の幅のあるような実情であるわけでありまして、そういう間にその造林ができますようにわれわれとしては十分努力しなければならぬと考えております。
  69. 湯山勇

    湯山委員 今までは大体法案をお作りになった経緯等についてお尋ねしたわけですが、今度は法案の内容について若干お尋ねいたしたいと思います。  その一つは、今技術面についていろいろ長官おっしゃいましたが、実は、関係者が心配しておる点は、従来の官行造林と民間の請負の造林とを比べますと、活着率その他が非常に違っている。官行造林には非常に信頼度がありますけれども、請負等にはその信頼度がきわめて低い。きわめてと言うと言葉が悪いですけれども、それに比べると信頼度が低い。これが現実です。そういうことも一つ大きな心配になっておるのですが、そういう点について何か資料がございますか。
  70. 山崎齊

    山崎政府委員 国の行ないました造林と民間が行なっております造林と比較いたしまして、活着率に大きい差があるというふうには私たちは現実の問題として考えていないのでありまして、民間の造林技術というふうなものも非常に進歩いたしておるわけでありまして、そういうふうには認識をいたしていないというのが現状であります。また、御存じ通り、国有林の造林につきましても年々八万町歩弱を実行いたしておるのであります。民有林におきましては三万町歩を越す程度の造林が毎年行なわれておるわけでありまして、これも歴史的に見ますと相当長い過程を経てそういう造林が行なわれておる。また、造林地の成績等を見ましても、民有林の造林の成績が国の造林よりも悪いのだというふうに言うことは、現実の問題として相当問題があるのじゃなかろうか、技術的に民有林におきましても相当高度の造林の技術は持っておるというふうに認識しておるのであります。また、公団造林の事業を移しました場合に、その仕事が請負になるというふうにいろいろ御心配されている向きもあるように思うのであります。この造林は分収造林法による造林をやっていくわけでありまして、その造林者として市町村みずからがやっていただくというようなことを私たちとしては非常に希望いたしておりますが、市町村にその能力がどうしてもないという場合には、公団が一方的にその造林者をきめるということではなしに、土地所有者も信頼し公団も信頼できるという造林者協議の上選んでやっていただく。また、その造林につきましては、土地所有者から見たいろいろな条件もつくわけでありますし、その辺のところにつきましては、一がいに請負になってどうだというふうなことはないように考えております。
  71. 湯山勇

    湯山委員 これは多分長官御存じだと思いますけれども、今のような御答弁になるのじゃないかと思うのですが、必ずしも民有林が悪いとは私も申しておりません。ただ、官行造林で直営でやった場合と、請負に出して下請でやらした場合とではどうも違うというのが、一般の風説というよりも、もうちょっと根拠を持ったみんなの観測です。そこで、そういうことについての資料がおありになるだろうかどうだろうかということをお尋ねしたわけですが、資料がおありにならないにしても、そういうことを長官もお聞きになっておることは、先ほどの御答弁でもそういうことを言う人もあるけれどもというようなことでしたが、これは実際はどうなんですか、そういうことを具体的にお聞きになったことはございませんか。
  72. 山崎齊

    山崎政府委員 先ほどもお話し申し上げました通り、民有林におきます造林は年生二万町歩を越す程度行なわれておるのであります。それら造林の姿を見ましても、お説のように請負等で造林新植等の仕事までやるというふうな形態はきわめてまれなように思うのでありまして、造林事業というものはやはり愛情を持った行き方でこの仕事がなされなければいかぬというふうに私たち考えておるわけでありまして、請負の場合と直営の場合とどういうふうに違うのかというような点につきましては、資料を持ち合わせていないのであります。
  73. 湯山勇

    湯山委員 先ほど、長官は、関係者と話し合うときには技術面についてもよく話し合うということでしたけれども、今のようなばく然としたことではなかなか納得いかぬと思います。やはり、これについては、的確な資料をお持ちいただいて、そういうふうな風説があるけれども、事実はちっともそれには変わりはないのだとか、あるいはこの程度の違いはあるけれども、この分は営林署の方でこういう指導をするから克服できるのだとか、何か納得するものがなければ、今のような、そういうことはあり得ないことだというようなことだけでは、私は一般を納得させるものは出てこないと思います。何かそういう資料をおとり願うことができるかどうか、そういう調査はできないものがどうか、これはどうでしょうか。
  74. 山崎齊

    山崎政府委員 それらの点につきましては、現地におきまして関係の方々と具体的にお話をするわけでありまして、苗木はどういうものでなければいけないとか、どういうものが一番いいのだとか、あるいは必要なら営林局署で従来作っておりました苗木をこの程度お世話できるというふうな問題を、具体的にお話しし合うつもりでおるのであります。また、だれがその造林というものを具体的にやるのか、町村責任を持ってやっていただくということを私たちは重点に置いて考えていきたいのでありますが、それができない場合でも、それでは具体的にどなたに造林者として責任を持ってやってもらったらいいだろうか、その人の技術はどうであろうかというふうな点を、個々の場合に応じてそれぞれの土地所有者の方々と話し合いの上できめていくということをやるわけでありまして、それらの点は、個々の場合におきまして十分にお話し合いすることが、この建前から言ってもほんとうの筋であります。そういう点で進んで参りたいと思います。
  75. 坂田英一

    坂田委員長 ちょっと湯山さんに申し上げますが、簡潔に一つお願いいたします。
  76. 湯山勇

    湯山委員 それでは、あとの質問はまた次に残させてもらって、今の点だけ指摘しておきます。  私、直接会って聞いてきたことでありますけれども、ある町です。ここでは、人夫を集めるのに、世話をする人の人柄が悪いということで人が集まってこない、そんなことで造林が進んでいないという事例が一つあります。それから、直接やってほしいということでいろいろ折衝して、結局直接やってもらうことになったのだが、やはり少しおくれて仕事が残ったというような例もあります。いろいろそういう点については実際の現場ではかなり大きい問題で、昨日も御指摘があったかと思いますけれども、しかも今人手というのはなかなか得にくい。直営ならば行こうかという人はあっても、請負になって、あの人の下で働くのはいやだというようなことも、これは地域の感情としては相当あると思うわけです。こういうことも一つ御配慮に入れてもらわぬと、これはなかなか容易なことでないと思いますので、今長官がおっしゃったように簡単なものではないということだけ指摘して、質問はあとで引き続いてさせてもらうことにいたします。
  77. 山崎齊

    山崎政府委員 今お話しの点、まことにごもっともだというふうに考えております。従いまして、市町村みずから造林等の仕事を受け持ってやっていただくということを念願いたしておるわけであります。市町村が万一造林等はどうしてもできないという場合におきましては、新しいこういう制度が始まるわけでありますので、既存の造林の世話をしていた人はだれだというようなことにはこだわらないで、市町村の不安のないように、市町村の御意見を十分にお聞きして、適当な人を両者で探すと申しますか選び合うということで造林者というものをきめていくということをぜひともやって進めていかなければならないというふうに強く考えておる次第であります。
  78. 坂田英一

    坂田委員長 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五分休憩      ————◇—————    午後一時二十二分開議
  79. 坂田英一

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  なお、本日長野県伊那市会議員田畑五郎司君がお見えになっておりますので、この際市長の代理として他の参考人とともにその意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  80. 坂田英一

    坂田委員長 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。  これより森林関係法案について参考人各位より御意見を聴取することにいたします。  参考人各位には御多忙中にもかかわらず本委員会に御出席下さいまして、ありがとうございました。  それでは、これより参考人より意見を聴取することにいたしますが、参考人の御意見は約十分程度にお述べを願います。  なお、小畑参考人は所用のため時間の都合がございますので、便宜まず小畑参考人より意見を聴取し、質疑を行なった後、他の参考人より順次意見を聴取することにいたします。  それでは、まず先に小畑参考人。
  81. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 秋田県知事の小畑でございます。今回官行造林制度廃止いたしまして公有造林森林開発公団に移管するよう森林開発公団法の一部改正案が提案をされております。これに対しましては国有林所在の県として重大な関心を持っておりますので、これまで二、三度関係市町村の会合を求め、また、県議会でも特に意見書を議決をいたしておるのであります。そのあらましを御報告申し上げまして、私の意見もつけ加えたいと思うのでありますが、この問題につきましては知事会といたしましてまだ議論をいたしておりませんので、知事会の意見として申し上げるものではないことを申し上げたいと存じます。  意見を申し上げます前に、この案を提案されるまでの措置について多少不満を申し上げさしていただきたいと思うのであります。  実は、この官行造林は、御承知の通り、大正九年に発足したものでありまして、四十年の歴史を経ておるのでありますから、昨年の十月には山形県知事、秋田県知事関係市町村が全部そろいまして盛大な祝賀会を開きまして、その前途の発展を大いに祝い合ったのでありますが、二、三ヵ月を経ないで突如われわれはこれを承ったのでありますので、勉強も不足でございますし、また、この問題が実際実施をされますと、公団の実施と地元市町村の間に立って県があっせんをしなければならない面も大へんあるのでありますが、そうした地元県の意見も十分徴していただきたかったと思うのでありまして、今後、このような重要な問題を提案される際には、関係県とも十分一つ御折衝をいただきたいと思いますので、冒頭そうした希望を申し上げたいと存じます。  まず、市町村側の不安でございますが、第一点は、森林公団に移管された場合に、従来のように市町村有地が優先されるかどうかという問題について懸念を持っておるのであります。現在の官行造林法におきましては造林の対象地の優先順位は、第一に市町村、第二が部落林野と、こうはっきりなっておりますが、今後公団に移管された場合にもこうした優位性が保たれるかどうかということが非常に懸念をされておったのであります。特に、今後水源涵養林が強化される場合には条件の悪い土地に実施をされますので、収支の均衡につきましても今までよりも念慮を払わなければならない。公団においてそうした優位性が保持されるかどうかということが市町村側の懸念の一つでございます。  第二点は、市町村の財政上の懸念でございますが、ただいまの案では、従来の通り五分・五分、さらに、事業実施をいたした場合には歩増しがあるのでありまして、その点市町村はやや安堵をいたしておりまするが、聞くところによりますと、林野庁におきましては、最初は四分・六分、市町村が四分ということで自治省と折衝をされたが、自治省と折衝の結果五分・五分になったのだが、林野庁の御当局におきましてはこの四分・六分をあきらめておらない、──現に、四月三日の時事通信によりますと、今後自治省に説得をして四分・六分ということをしたい考えだというふうに伝えられておるのでありますが、こうしたこともはっきりしていただいたならば、市町村では非常に安堵をするのではないかと思うのでありますが、こういう点も問題になったのであります。  第三点は、国有林の経営はいろいろな使命があるのでありまして、申し上げるまでもないのでありますが、山村振興という見地から、地元住民や地元市町村の福祉に貢献することが最も大きな使命の一つであろうと思うのであります。従来、官行造林の実施によりまして、このようなつながりは大へん深まりつつあったのでありますが、官行造林廃止によって埋められるであろうこの間隙を埋めるだけの十分な覚悟と具体策があるものだろうかということも問題になったのであります。  市町村側の意見としましては、こうした第一、第二、第三の点が解明をされるならば、この実施に対しては賛意を表したい、こういうような意向でございます。  県議会の意見書は、はなはだ抽象的でありまして、ここに持っておりまするが、要は、森林資源の育成と地方公共団体における基本財産の造成の目的を明確にするとともに、関係住民の福祉増進に寄与することを強く要望したい、こういう趣旨でございます。従いまして、やはり、第一点は、公有林野の育成強化が後退しないかという点、第二点は、市町村の基本財産の造成にマイナスにならないかどうかという点、第三点は、関係住民の福祉の増進が失わしめられはしないかという点、こういう点につきましていろいろな真剣な議論が行なわれたのでありますが、この案の審議にあたって特にこの三点を要望したいということを満場一致議決になったのであります。  なお、労働問題につきましては、他のお立場の方々からいろいろ議論があると思いますが、私もこれは再三陳情を受けておりますが、これが合法的な首切り案であって国有林に働く労働者の数を減少するような実態でございますれば、県下の雇用対策としても重大な問題であろうと思うのでありまするが、その点もぜひとも解明をしていただきたいと思うのであります。  以上、県会あるいは市町村あるいは労働団体等でいろいろ議論された問題でありまするが、何分私どもも研究が不十分でございまするので、この際私自身の意見としてこの案に対して的確な意見を申し上げるまでの研究はございませんが、むしろこの市町村の皆様のこうした不安あるいは労働団体のこうした不安あるいは県議会の要望等につきまして十分御審議を下さいまして、これらの不安をこの際御解明下さいますることを要望を申し上げたいと思うのであります。  率直に申し上げまして、単なる経済問題として考えますならば、市町村や森林組合にやらせる場合の方が従来の官行造林よりも安上がりにつく場合が多いだろうということは、これははっきり申されるのであります。しかしながら、造林は国家百年の大計でございまするから、単なる経済問題としてだけ割り切るべき問題ではないのでありまして、要はその市町村と森林組合の体制いかんがこの経済効果を測定する問題であろうと思うのであります。なおまた、この地元感情といたしましては、多年のこの営林事業の実施によりまして、想像以上に官行造林、営林局に対する信頼が深いのであります。他面、また、公団に対する認識は、特に私の地方は希薄でございますので、ばく然たる不安を持っておるようでございます。このような見地からいたしまして、この事業のPRと申しまするか、解明が非常に不十分なように思うでございますので、できるだけこの趣旨徹底をさして、こうした不安を除去さしていただくと同時に、希望といたしましては、この法案を実施する場合におきましても何らかの適宜な経過措置を附帯をしていただくことが適当ではなかろうかと思うでありますが、私見を申し上げまして私の意見の開陳を終わることといたします。(拍手)
  82. 坂田英一

    坂田委員長 小畑君は時間の都合がございますので、質問は簡潔に一つお願いいたしたいと存じます。  まず、川俣清音君。
  83. 川俣清音

    川俣委員 時間がないそうでございますから、ごく簡潔にお尋ねいたしますが、今地元住民の意向をるるお述べになりまして、不安を一掃するようにという趣旨の参考人の御意見がございました。ごもっともだと思うわけでございます。  そこで、お尋ねしたいのですが、非常に不安があるということをどうして解決するかということになりまするというと、いい方を取らせればいいという選択の自由を与えれば、公団でもいいし、従来の官行造林でもいいし、選択の自由を与えるということになるというとこの不安が除かれるのじゃないかと思いますが、この点どうでしょうか。どちらをとってもいい、条件のいい方をとっていいということになれば不安は除かれると思うのですが、この点どうでしょうか。
  84. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 市町村長と話をしてみますというと、営林局でも非常に解明に努められておるのでありまするが、まだその趣旨徹底が足らないように思うのであります。時間もないので無理もないと思いますが、私の考えまするには、この趣旨の解明を十分徹底をしていただくことによりまして、おおむねその不安は解消をするのではないかと思うのでありますが、なお解明できないものについてどうするかということにつきましていろいろ議論があると思うのでありますが、何分、私どもも、この現地のお話だけを聞いておりますので、まだ林野庁御当局のお話を直接承る機会がございませんので、的確な意見を申しかねまして非常に恐縮でありますが、今申し上げましたような点につきましては、御説得を下さいましたならばおおむね解明をするだろうと思うのであります。それにしても、これを三十六年度から直ちに実施することについては、十分御検討の余地がありはしないかと思うのであります。
  85. 川俣清音

    川俣委員 おそらく、小畑参考人は、ことしいろいろ協議をするとなると相当な時間がかかるだろう、——そう急速に、部落であるとか町村であると自治体でございますから、不動産に対する地上権を設定しておるものに対する問題であるだけに、市町村長が専決処分はできないと思います。やはり、市町村会を開くなり、部落総会を開いて態度を決定しなければならないということになりますと、首脳部が了解をしましてもなかなか異論が出て参ったりすると納得しがたい場合が出て参りまして日数を非常に要するだろうと思うわけです。その点が心配だろうと思うのです。そこで、そういう協議をしておる間に植付の時期が過ぎてしまいますと両方損害を受けるということになるので、今のような御発言が出たものと思うわけです。  そこで、お尋ねしたい点は、知事さんとしては、この協議にはやはり一カ月なり一カ月半を要するのではないかというふうにお考えでございますか、一週間か十日で説得すれば納得するというふうにお考えですか、この点お尋ねしたいと思います。
  86. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 第一回の会合をされた場合には、営林局で非常に親切に解明をされまして、集まった方が大部分納得をされたように承知をいたしたのであります。第二回に集まった際には、これは全部でなかったのでありますが、なお私が申し上げましたような不安が残っておるように思うのであります。従って、私は、この解明をもう少し徹底的に、今申し上げましたような趣旨につきまして十分解明をされたならば、そう長い日数と繁雑な手数はかからないのではないか、こう思うのであります。ただ、そもそも私どもに何も相談がなかったじゃないかというような不満があるものですから、そういう先入主もございましょうが、こと自体そのものに全県下にわたってほうはいたる反対がある、そういうものではございませんが、ごくしさいに検討した場合には、長い間親しんで参りました官行造林でありましただけに、愛着と、また官に対する非常な信頼、そういうものが依然として残っておりますし、他面また秋田県という地域では公団というもののなじみが少ないのでありまして、この二つの解明はぜひとも十分やっていただきたいと思いますし、その解明にはそう長い日数と繁雑な手数は要らないのではないかと思うのでありますが、一応私の見通しを申し上げました。
  87. 川俣清音

    川俣委員 もう一点だけ。これは林野庁とか農林省と契約をしたのではない、法律に基づいて国との契約になっておる。国と契約するならば途中で解約をさせられるようなことを受けることはあるまい、あるいはそういう勧誘を受けることはあるまいという信頼のもとに契約をしてきたと思うのです。ことに、森林というようなものは長期契約でございますから、必ずしも短期のように不安定であってもまあやってみようかというような性質でないものだと思います。それだけに、信頼度が高くなければ、なかなか契約を結んで地上権まで設定するということにはいかないのではないか。それだけに、国に対する信頼感が失われますというと、単なる林野行政ばかりでなくして、地方行政の上におきましても、国と契約をしたものを途中で解約されるというようなことが一例でも出て参りますと、非常に国に対する信頼感が失われるというようなことになるおそれがあるのじゃないかと思いますが、この点の心配はないでしょうか。
  88. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 私ども個々具体的に町村に当たっておりませんので、いろいろ折衝の結果どの程度まで伸びるかよく見当はつきませんが、国に対しては非常な信頼がある。特に地元営林局に対しては絶対の信頼がございますので、私は、局で個々に折衝されまして懇切に将来のことをお話し下さったならば大部分は解決がつくのではなかろうかと思うのであります。要は、公有林野に対する優位性をいつまでも持ち続けるのだ、それから、分収歩合五分・五分というのは決してこれを下回らないようにするのだ、それから、官行造林廃止になっても住民たちの福祉、山村振興についてはこれだけ力を入れていくのだ、この三点を解明されまするならば、低迷したものは大部分解決できるのではないかとうふうに考えております。しかし、この点についてはなお一そう御努力を願いたい、こう思う次第でございます。
  89. 川俣清音

    川俣委員 これで終わります。
  90. 坂田英一

    坂田委員長 芳賀貢君。
  91. 芳賀貢

    ○芳賀委員 小畑参考人が時間の都合で退席されるそうですから簡単に質問します。  第一の点は、先ほどお述べになった中にありましたが、知事さんとして市町村有林に対するいろいろ御心配の点は述べられたが、御承知の、公有林野等官行造林法の一条の一項の規定は、これを一号、二号、三号に分けて、一号が市町村有林、二号がいわゆる部落の共有林等を主たる対象にしている。三号の場合には、一号、二号の林野に特に水源涵養の目的で造林をする場合、それに近接した私有林についても三号の規定で及ぼす、こういうことになっておるわけで、当然、小畑参考人の御心配から言えば、単に市町村有林だけについてどうかというだけじゃなくて、やはり、部落の共有林とか共同使用林等に対する今後の分収制度というものがどうなるかという御心配も必要でありましょうし、また、県下の各林業経営しておる住民あるいは林業に依存しておる住民に及ぼす影響等についても御心配なさっておる点があると思うのですが、それらの点についてももう少し具体的な御説明を願いたいと思います。
  92. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 私の申しておりますのは、もちろん部落有林も含んでおるのでありまするが、官行造林の設定については、地元の事情を営林局がよくお聞き下さいまして非常にうまくいっておるのでありまするが、何分公団の仕事に理解がないのであります。水源涵養林というと、奥地の非常に条件の悪いところになりはしないか、そういうところも今までのように進んでやってもらえるのだろうかというばく然たる不安でありますが、これは国のはっきりした方針を宣明していただくことによって解明されるのじゃないかと思うのでありますが、地元市町村のそうした不安を率直に申し上げたわけであります。
  93. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは御承知と思いますが、先ほどもお述べになった四十年の歴史を持つ官行造林制度というものを政府廃止する意図を持って法案を出した。万一この廃止法案が通った場合には官行造林制度というものはこれでなくなるわけですね。それでは今後どういうような形で分収造林が行なわれるかというと、これは、御承知の通り、昭和三十三年に分収造林特別措置法というものができまして、これによって官行造林以外の分収造林は行なわれておるわけであります。ですから、官行造林制度はなくなる、そうしてこれを森林公団に行なわせる場合は、公団の行なう造林事業というものは水源涵養林の造林事業だけに限定されてしまうわけです。それ以外の事業は公団としては行なわないわけですね。林道事業等をやった地域の付帯的な造林はやるが、しかし、普遍的な造林事業というものは水源涵養のための造林事業ということで、公団事業は公団法の中で限定を受けてしまうわけです。事業の性格というものは、今度は分収造林法に基づいて公団契約を締結して行なうということになるのです。そうなると、今知事さんが言われた心配が全面的に出てくるということになる。単に市町村有林の中の水源涵養林としての限定地あるいは部落や私有林の中の水源涵養林として認定された地域だけに限って公団が分収契約を結んで事業を行なうということになると、非常に局限されたものになってしまうと思うわけなんです。そういうことを急激に行なうことが地方公共団体の立場から見て妥当であるかどうか。単に林野庁や営林局が説明だけして、それでもうやむを得ぬということなるかどうかということは重大な点だと思うのです。特に秋田県の場合には全国的にも林野事業のすぐれたところですから、なみなみならぬ御心配をしておられると思いますが、そういう制度上の変革が行なわれるわけですから、もうちょっとこの点に対して遠慮のない御意見を聞かしてもらいたい。
  94. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 その点につきましては、造林というものは総合対策でありますから、地元といたしましては、たとえば、官行造林廃止によって、公団が行なう場合には水源涵養林だけだということにかりになりましても、他の方法によりまして、部落有林、市町村有林の公有林の増進をはかれる措置が十分期待できるのだ、こういうことになりますれば、これは納得できると思うのでありますが、それらの点につきましてもいま少しく地元民に徹底をさせる必要がありはしないか、こういうふうに考えているわけであります。
  95. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次は、これは関係の知事会等ではもう御承知と思いますが、ことしの二月二十一日に、林野庁長官自治省行政局長との間において、この問題に対する了解事項というものが取りかわされた。いわゆる覚書ですね。この中にいろいろあるわけですが、特に市町村有林の場合は分収歩合を五分五分とするということが一応うたってあるわけです。これは今後非常に法案審議の上にも重大な点であるわけです。この分収造林法から見ると、単に市町村有林だけを優先に取り扱えという規定は何もないのです。われわれが政府から求めた資料によれば、三十三年に法律が通って以来今日まで分収造林法に基づいて契約された分収率の内容は、これはもうすでに御承知と思いますが、たとえば土地所有者、造林者、費用負担者いう三者にこれが区分できるわけです。場合によっては、土地所有者と、費用負担者と造林者が一者になって二者契約を行なう場合と、それぞれ三者間の契約が行なわれて三者に対する分収率の取りきめを行なうという契約内容が出てくるわけです。この点については、必要なときは都道府県の知事が契約のあっせんを行なうということが分収造林法の中には明記されておるわけです。秋田県においても過去二カ年の間知事としての職責に立ってこれらの分収造林上の契約のあっせん等をされた御経験があると思いますが、それらの場合にはどのような分収率による契約が締結されたか、その事例があれば示していただきたい。
  96. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 大へん不勉強でありまして、この問題が起きてからにわかに勉強いたしましたが、過去どういう事例であっせんをしているか、今記憶しておりませんので、調べまして文書委員長にお届けをいたしたいと思います。
  97. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、その点は、お帰りになってからでいいですから、なるたけ早い機会にお届け願いたいと思います。  分収造林法の第二条には、契約締結のあっせんという条がありまして、その中で知事が適正なあっせんを行なうということになっておるわけなのです。われわれが調査した内容によりますと、五分・五分の分収契約を行なったのはないのです。有利な条件の場合に、土地所有者、市町村にしても部落にしても個人にしても、土地所有者が四分ないし三分、そして、二者契約の場合には、造林を行ない費用を負担するものは六分ないし七分、三者契約の場合には、その中で造林を行なうもの、これが一分ないし二分の分収を受けるということになっておるので、こうしたすでに契約された全体的な趨勢を見ましても、分収造林法による契約というものは五分・五分の分収率の契約というものはないということなんです。そういうことが通例であるという一つの既成事例というものが今生まれつつあるわけですね。そういう中において、単に市町村有林だけが、分収造林として、今までのものは経済林として経済効果の上がるものが行なわれておるわけでありますから、これは有利なことになる。知事さんが言われる非常に経済上不利益な地点において造林をやるということになれば、これは造林者及び費用負担者がむしろ経済上不利な条件を排除して事業をやるということになると思います。そういう場合に五分・五分というようなことは、常識から言ってもわれわれとしてはあり得ないと思うのです。そういうことを越えて、法律が提案される前に、審議の過程以前において林野庁自治省との間においてかかる分収率の覚書までも交換されたということに対しては、これは国会の問題としてわれわれは究明するわけであります。ですから、五分・五分だけに安心して、そうなるから心配ないということには、結果的にならないと思うのです。もしこれが四分六とか七三ということになった場合、それでもやむを得ぬということで制度の根本的な改廃に対して御協力なさるかなさらぬか、そういう点いかがですか。
  98. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 この自治省林野庁との折衝の経過等も官庁速報あるいはいろいろな文書等で承っておりまして、最初心配をしておりましたが、国会立場から見ますといろいろ問題がございましょうが、ともかくも自治省も納得して五分・五分になったということにつきましては地元としては安堵いたしておりますが、心配は、この五分・五分がこれを下回らないという方針を何らかの形で明確にしていただきたい、こういうのが地元の非常に強い希望であります。現在、五分・五分そのものについては、きまったことについては喜んではおりますが、しかし、最初四分・六分とかいろいろな案が出たものでありますから、その経過にかんがみて、将来これはくずれはしないだろうか、この際少なくとも五分というものは下げないのだといったような見通しがはっきりされれば、地元は非常に安堵するのではないか、こういうようなことでございます。
  99. 芳賀貢

    ○芳賀委員 そういうことは全然きまっておらぬということは、はっきり記憶して帰っていただきたいと思います。  それから、もう一つは、自治省林野庁覚書内容は、単にこれを市町村有林と限定しておるわけです。それでは、知事の立場は、部落林や住民の行なうこの種の事業の場合、市町村林以外は三分になっても四分になってもかまわないという御意見ですか。
  100. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 この点につきましては、部落有財産は、市町村合併、部落有財産統一等によって、ほとんど市町村が関与しておりますから、部落有のものにつきましてもこれに準ずるものだとわれわれは理解をいたしておりまするし、もちろん、経済力の強い市町村が五分になりますれば、個人のものはこれより下回ることはあるまいと期待をしておるわけであります。
  101. 芳賀貢

    ○芳賀委員 いや、それが期待に沿わないことになっておるのですよ。自治省なんていうものは、県とか町村くらいは心配するが、それ以外の部落とか住民のことはあまり心配しない役所ですから。今度の覚書の内容等についても、市町村有林について五分・五分でやるというそういう了解自治省林野庁の間で取りつけたからといって、何もこれが効力があるとかなんとかいう問題じゃないわけです。ですから、今知事さんの大事な部落や住民のことは考えてないのですよ。これは、当然、今の分収造林法から言うと、いわゆる土地所有者、部落とか住民はよくて四分、悪くて三分という分収率で、もう二カ年の間そういう契約に基づいた分収造林が行なわれておるわけです。それらはあなたがあっせんしてきまっておるわけなんです。こういうところに問題があるというように申しておる。  時間がないからもう一点申し上げますと、今までの官行造林の現況を見ると、特にあなたの県は非常に造林面積は大きいと思うわけなんです。県だけでも秋田県は二万町歩からの契約面積があるわけなんですが、これを今度経済林と水源涵養林に区分した場合、これは営林局別にした資料しかありませんが、たとえば秋田営林局管内の官庁造林による面積は二万四千町歩あるわけです。そのうちでこの水源林として認定される面積の造林実施はわずかに七百町歩くらいしか行なっていないわけです。そういうことになると、官行造林法がなくなって、公団が単に分収造林法に基づいて分収造林をやるということになれば、おそらく、今までの実績から言うと、秋田営林局管内においてはこれの対象になるような地域はほとんどないというようなことにもなるのではないかと思う。これは林野庁から出た資料を私は言っておるだけなんです。そういうことになるので、この官行造林制度を直ちに公団が全面的にやるということじゃないのです。ですから、水源涵養林だけに限定するということの影響は地域によって非常に違うと思うのです。ですから、それらの点についても十分検討していただく必要があると思いますが、もう再度お呼びする機会はないので、こういう点についても、きょうは知事さんは一人しか呼んでおらぬのですから、関係の知事の皆さんを代表したようなお気持で忌憚のない御意見を述べていただきたい。
  102. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 どうも大へん不勉強でありまして、何分きのう来ましたところが突如お呼び出しを受けましたので、今までの市町村長との折衝、また県会の審議の経過その他を率直に申し上げたのでありますが、今先生から御指摘のような点は、帰りまして十分調査をいたしまして、なおその結果意見を申し上げるようなことがございますれば、先ほどの点とあわせて委員長文書で申し上げたいと存じます。
  103. 芳賀貢

    ○芳賀委員 大体お伺いする点はその程度ですが、今の御意見にもありましたが、これはやはり、関係都道府県ではどういう説明を受けておるかわかりませんが、非常に重大な内容を包蔵しておるのです。もし必要とあれば、たとえば関係の知事会等においても速急にこれを取り上げて、たとえば自治省林野庁からまじめな説明等を聞いて、こういう改廃が直ちに行なわれることが不適正であるとするならば、これはやはりすみやかに何らかの意思表示をされる必要もあるのじゃないか。もしそういう御意思があれば、場合によってはわれわれとしてはある程度審議期間を延ばして、そして大いに国民意思を反映するために努力をするのが当然であると思っておるわけですが、小畑さんは知事会の有力なメンバーというように聞いておるのですが、もしそういう御意思があってするとすれば、この際御意向だけ承っておきたい。
  104. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 これは私一存では申し上げられませんので、よく知事会とも相談いたしましてお答え申し上げます。
  105. 坂田英一

    坂田委員長 参考人に対して聞かなければならぬこれをお聞きを願いたい。どういうことであるかという問題は一つ林野庁長官に聞いていただきたい。  野原正勝君。
  106. 野原正勝

    ○野原委員 この際小畑参考人にお伺いしたいと思います。  公有林野造林のことについてはもうすでに十分おわかりだと思いますが、これは、本来なら、分収造林とか、あるいは官行造林、それから公団による分収的な造林は好ましくないと私は思う。むしろ、市町村がみずから持っておる山林については、公共団体の財政基盤を整備するための措置として、みずから進んで大いに造林をしていただくのが一番好ましいことだと思う。ところが、遺憾ながら市町村に対する造林長期融資の道というものは従来なかったわけであります。ところが、すでに御承知の通り、一昨年農林漁業金融公庫法の改正によりまして長期融資の道が開かれました。そして、市町村と最も深い関係のある公営企業金融公庫の手によって貸付制度まで開いたというようなことで、四分五厘の金利で二十年間の据え置きというような、実にわが国の農林金融政策としては画期的な金融制度ができたということで、しかも公有林については全額貸付という制度が実はできたわけです。その制度によりまして、ほんとうにやろうとすれば大部分が公有林の造林はみずからやることができる情勢になったということは、かつて公有林の造林については地元の財政がなかなか苦しい、従って官行造林にだけ依存してきたというような時代とだいぶ違って参りましたことは、すでに御承知だと思います。そういったようなみずからの公共団体の手による造林を実現したいということがやはり第一点であります。こういう政策を合わせながらも、やはり、いろいろな点で、自分ではなかなか容易ではない、ある一部はみずからもやるが、多少条件の不利なところ、自分で困難するようなものは分収造林、こういうような一つ公団造林というふうなことでやってほしいというような要望もあるやに聞いておりますが、そういう点で、今後の造林については、公有林野造林措置は、あの農林漁業金融公庫の長期資金の道が開かれたということと、それから、公有林野官行造林廃止して公団法というものができて、公団によって国の代行機関として造林をする、しかもこの造林の実施については地元市町村の森林組合にやってもらうというようなやり方、まあその二つの方法があれば、ほとんど完璧に近いものじゃないかというような気がするのですが、小畑知事はその点についていかようなお考えを持っておるか、その点をまず伺っておきたい。
  107. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 今野原先生おっしゃる通り、原則としてはやはり市町村造林市町村が自己の財源によって自己の計画によって充足すべきであるということは、これは私どもそう思っておるわけであります。従って、先ほど私申し述べましたのは、官行造林廃止に伴って、この公有林野市町村部落有林みな含めました公有林野の対策に対しては、一そう力強い施策を講ずるのだ、——公庫融資の道も開かれたのでありますが、あれは非常に善政でありますけれども、遺憾ながらワクが十分ではございません。従って、今後ああしたワクをもっと拡大して、心配ないようにするのだという方針も一そう宣明して下さいますと、そうしたことも解消されるのではないかと思うのであります。要は、私の申し上げました点は三点ございまして、この官行造林廃止に伴って公有林野造林対策は後退しないのだ、むしろ前進するのだということを一つ積極的に具体策を示して御宣明を願いたい。また、いろいろな経路から言いまして、この分収歩合が下がるのではないか、また、今は一応きまっておるが将来不安がないかといったようなこともございますから、決して今よりは不利にしないのだということも一そう明確にしていただく必要がありはしないか。それから、官行造林を着手したのにはいろいろの目的があろうと思うのでありますが、やはり、山村振興ということが非常にあると思いますけれども、官行造林廃止によっても山村振興に対する国の施策というものは決して後退しないのだということも一そう裏づけていただきたい。ただ、問題は、市町村の体制と森林組合の強弱いかんがこの経済効果を左右する問題でありますから、そうした市町村に対する財政基盤の強化、森村組合の財政基盤の強化、あるいは指導体制の強化というものをあわせて行なうことが必要であろう、こう思いますので、そういった経過措置につきましても十分お考えをいただきたい、こういうのが結論でございますので、つけ加えてお答え申し上げます。
  108. 坂田英一

    坂田委員長 角屋君。
  109. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 簡単に知事にお伺いいたしますが、私どもきのうからこの問題の審議に入っておりますけれども、従来官行造林として四十年近く実施してきたのを一挙に廃止をして公団にやらせるという、しかも、公団にこれを一〇〇%移すわけではなくて、従来対象になったものでも対象にならないものが御承知のように出てくるわけですが、やらせるという理由の中に、これは時間がありませんから詳細述べるわけにいきませんが、きのうの質問の中でも明らかにしたことでありますけれども、例の農林漁業基本問題調査会の林業の基本問題と基本対策という答申の線で、公有林野政策あるいは部落有林政策というものは知事は後退しないようにと言うけれども、確かに変貌する方向を明示しておる。これは家族経営的な林業経営に対して市町村の公有林、部落有林を払い下げるということも明らかに方向として指示しておるし、そういう方向で指示しておると同時に、市町村としても、こういう財産収入にたよるのではなくて、税収入に切りかえるべきだということは答申の中でも出ておるし、同時に、分収歩合そのものについても問題を提起して、こういう問題が地代額というふうな観点においてこれは下げるべきであるというふうなことも言っておる。この方向に基づいて、官行造林として実施していけばなかなかこの改変はむずかしい、そこで官行造林を全面的に廃止をして、公団に移管することによって、ワン・クッション置いてそういう方向を切り開こうということを林野庁として考えたと思う。ところが、この答申の線と自治省の自治体財政というものとがまつ正面からぶつかって、了解事項、こうなったのであって、林野庁の本来所期したところは自治省との覚書になかった。つまり、地方自治団体の抵抗の中で妥協の産物としてこれが出てきた。従って、知事も心配しているように、基本問題の方向を貫いていくとするならば、来年度以降としてはこの覚書がいつどうなるかということについては予断を許さない性格を持っておる。こういうふうに思う。従って、私どもは、きのうからの質疑の中でも、本法案の意図しておるところはきわめて多くの問題を持っておるという点からいろいろ意見を述べておるわけですけれども、知事も寝耳に水の改変だということを言われましたが、当面従来の既契約の問題もあり、また、地方自治団体としての取捨選択というようなことも考えて、官行造林の道というものはそのまま生かし、延命策として考えてきた公団のこの仕事の受け入れ体制というものについても、もし必要があるというならばその方面でもやらせるということを考えることも一案かと思いますけれども、従来公団の林道関係の仕事にもずいぶん問題があったことは御存じ通りですが、造林をいたしましても、わずか百七十四名で、しかも、この造林関係の仕事を直接は六十四名で全国的な公団の仕事をやろうということにも問題がある。十分な監督指導やいろいろなことができるかということにも問題がありますが、そういうようないろいろなことを考えてくると、知事あるいは市町村長の立場から言えば、こういう全面的な切りかえによる公団移管という問題についてはむしろ問題を提起すべきじゃないかというふうに、私は率直に言って感ずる。しかも、基本問題のねらっておるところを真一文字に行こうとした林野庁自治省とがぶつかっておる今日の段階の中で、この問題についての将来の展望というものを見た場合には、単に覚書あるいは了解事項だけで安心していいかどうかということは、やはり予断を許さないと思うのですが、その辺のところを伺いたい。
  110. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 いろいろこれには問題があろうかと思いまするが、行政の首長としての知事の立場から申しますと、一番関係の深い市町村長の皆様の御意見、また、県民の意見の具申機関でありまする県会の意見、こうした意見を十分参酌いたしまして、当面の私の意見なり問題点を述べたのであります。市町村意見、これについては数回開いてやっておりまするが、しぼり尽くされた問題点は、今申し上げましたように、公有林野の見通しについて後退しないかという点、それから、ただいま先生お話しのように、五分という分収歩合について将来不安がないかという点、それから、山村振興、山村住民の福祉に対してどういう具体的な用意があるのかといったような点、かなり突っ込んだ議論が行なわれたわけでございます。県会の意見書も期せずしてこの三点にしぼられたのであります。いろいろこれには問題はありましょうが、地方立場から見たものをしぼりまするとこの三点に尽きるのでございまして、これらの点につきましては要望も申し上げましたが、十分一つ御解明下さいまして、地方に不安を与えないようにしていただきたいということを繰り返して申し上げたいと思います。
  111. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今知事のお話を聞いておりますと、従来から営林局長を非常に信頼をし、また緊密な連携をとってやってきた、官行造林の問題についても、特に知事からも問題を提起されたわけでございますから、こいねがわくば存続できるものならばそのまま存続してやっていただきたい、こういう気持が私は話の中にあるだろうと思う。新しく公団に切りかえる問題については多くの不安がある、従来やってきた官行造林問題に特に問題はなく、従来から緊密な連携をとってやってきたんだから、これは存続できるものならば存続していってもらいたいという御意見が知事の御意見の中に流れていると思うのですが、いかがですか。
  112. 小畑勇二郎

    ○小畑参考人 ただ、私申し上げました通り、これは、一つの経済効果という面を考えますならば、従来の官でありますものを市町村なりそれから森林組合でやった場合にはもっと効果が上がる場合が少なくないということは是認せざるを得ないのであります。また、原則といたしまして、市町村自体に財源と能力があるならば、やはり、官行造林という形でなく、市町村自体がやるべきだという原則もまたわれわれは認めておる次第でございます。従って、繰り返すようでありまするが、公有林野対策についていま少しく前進した公有林野対策が立ち、また、市町村の強化なり森林組合の強化がはかられるならば、やはり建前といたしまして市町村自体が行なうことに対して国が積極的に援助をする、その援助は、財政的な援助だけではなく、市町村の財政基盤の強化はもちろんでありますが、森林組合自体の強化も並行してやっていただくべきではなかろうかと思う次第でございます。
  113. 坂田英一

    坂田委員長 小畑勇二郎さん、お忙しいところをありがとうございました。  本会議が開かれますので、本会議が終わるまで暫時休憩いたします。    午後二時十六分休憩      ————◇—————    午後二時四十五分開議
  114. 坂田英一

    坂田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  森林関係法案について参考人よりの意見聴取を続行いたします。  参考人各位には大へんお待たせをいたしました。  なお、野村参考人は御病気上がりとのことでございますので、他の参考人の方にはまことに恐縮でございますが、まず野村参考人より意見を聴取し、質疑を行なうことといたします。野村参考人。
  115. 野村進行

    ○野村参考人 主として私、農林漁業基本問題調査会の林業部会の第一委員長をやっておりました関係で、私に与えられた問題は基本対策と主として公有林対策に関する問題だろうと思いますので、基本対策に盛られている公有林対策の考え方の大方のところを申し上げたいと思います。  御存じのように、この基本問題調査会は、一次産業その他の所得格差の解消の問題を契機として起こされたのでありまして、従いまして、林業の調査部会におきましても、大きな問題としては所得格差の問題、それから、もう一つは、最近、御存じのように木材の需給が非常に逼迫しまして、供給が需要になかなか応じ切れないというような関係で、基本問題も、第一生産政策、それから第二構造政策という考え方で進んだのでありまして、その生産政策と構造政策の中における所得格差の解消という問題をどうしてかみ合わせるかというところに非常にむずかしい問題がありましたので、なかんずく公有林の問題におきましてもやはりこの二つの問題が出たのでありますが、端的に申し上げますと、公有林で十分自営できる市町村、ことにこの林業に対する意欲の旺盛な市町村に対しては、できるだけ財政投融資その他の方法によって生産性向上のために協力をお願いする、それから、もう一つ、この構造政策の問題で出てくるのでありますが、従来主として部落有林で非常に粗放な林業が営まれたところで、これをある程度地元の方々に利用してもらえれば所得の向上に役立つだろうという部落有林、しかもそれが分解過程にあるもの、あるいは分解私権化の可能性のあるもの、そういうものについては家族経営林業というものの創設を考えよう、それ以外の公有林で、奥地その他で地元市町村がみずからの力でやり得ないものというものについては、今問題になっておる水源林造成その他やはりある程度まで政府の援助によって造林を促進するということでありまして、どこどこまでも、基本問題で提起しておる問題は、こうしなくちゃならないということはほとんど提起してないのでありまして、問題の所在点と今後の大きな方向を指示したということでありまして、先ほどの分収歩合その他の問題も基本問題に書いてありますが、これは、林業地代の問題は、御存じのように、農業地代以上に非常にむずかしい問題がありまして、かなりいろいろ討議したのでありますが、林業地代の問題については、従来のものそのまま認めるかどうかということは別として、今後は十分検討する要があるというように答申案には記載してあるわけであります。  以上、非常に簡単でありましたが、基本問題と公有林政策に対する大体の考え方を申し上げた次第であります。
  116. 坂田英一

    坂田委員長 それでは、先ほど申しましたように、野村参考人が御病気の関係もありますので、質疑も引き続いて行いたいと思います。角屋堅次郎君。
  117. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 野村参考人病気上がりだそうでありますので、おそらく最後までおれないのではないかと思いますが、本法案関係をいたしまして数点お尋ねをいたしたいと思います。  私はきのうも取り上げたのでありますが、今お話しになりました林業の基本問題の答申と本法案関連の問題であります。これは、御承知のように、生産政策の中で分収造林及び官行造林の問題という条項が一項設けられまして、その中で、官行造林の問題については、お読みするまでもないのでありますが、「官行造林事業は、昭和三十一年の法律改正によってその対象が拡大されたが、さらにこの方向を強くおし進めるべきであるという見解もある。しかしながら、部落林野を含めた公有林野造林のために官行造林の方法をさらにおし進めることは、従来の実績とその林業構造に与える影響とにかんがみ、構造政策との関係において多くの問題がある。今後は、林業経営の主体としての適格性と水源林涵養の意義とに検討を加え、生産政策の目的に沿うのみならず、構造政策の目標にも沿いうるよう考慮すべきである。」、こういう一項で官行造林事業の問題について答申が見解を表明しておるわけであります。御承知の通り林業の基本問題答申の中では、最初の冒頭のところで少数意見にわたる事項は少数意見として数項目あげてございます。今のは本文の中で取り上げられた内容でありまして、従って、少数意見というよりも、本文の中の内容というのはそれだけ少数意見よりもウエートが高く取り扱われておると思うのです。つまり、本法案で出してきておるように、官行造林を一挙に廃止をして、そしてこれを森林開発公団でやらせるというところまでの踏み切り方というものは、答申で述べておる官行造林事業の冒頭の見解、つまり、「この方向を強くおし進めるべきであるという見解もある。」というような表明と、さらに、後段の部分で、多くの問題があるから十分構造政策とも見合って検討すべきだという部分との関連においては、これはやはり答申との関連で相当に問題を提起していることだというふうに私は思います。その点一つ……。
  118. 野村進行

    ○野村参考人 官行造林の問題につきましては、今先生おっしゃったように、いろいろの意見があったのでありますが、御存じのように、最初部落林野からずっと続いて治山事業の一環として行なわれた官行造林も相当の年数を経たことでもあり、また、その中には非常に成績のいいものもあるし、またかえって町村に迷惑をかけているような官行造林というものもなきにしもあらずということで、この際官行造林の問題については根本的に再検討したらどうかということが基本問題で提起した問題でありまして、それを今どの方向に持っていけとかいうようなことは、答申案としてはちょっとそこまで言うことはどうかというようなことで、大いにこの際再検討を要するというところで問題提起をしたということであります。
  119. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 前段の部分との関係はどうですか。
  120. 野村進行

    ○野村参考人 大いに官行造林を推進しなければならないという点ですね。——これも、市町村関係の方々で、町村というものは十分林業経営の能力もある、だから、官行造林もうんと進めてやってくれれば、非常にいい方法でもあり、今後もそれに対して実力も十分持っているというふうに意見を述べた方もありましたもので、そういう意見もあったということをここで述べたのでありまして、その二つを直接結びつけたという関係はないのであります。しかし、この審議の過程で、御存じのようにいろいろなたくさんの意見があるものですから、それをできるだけ取り入れろということで、少数意見以外の意見も、皆さんの述べられたことはなるべくこの中に織り込んであるということで、そういう意見が主張されたということで、こうなくてはならぬという答申の仕方ではないわけであります。
  121. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 野村さんは林業経営研究所の関係をやっておられて、林野庁の方から年々、三十五年度の場合には千五百万円、三十六年度の場合には三千万円の研究委託費を受けて仕事をやっておられる。そういう関係にあって、この答申で言っておる中身をわれわれとしてはそのまますなおに伝えてもらいたいというふうに思うのだが、何か前段の部分で書いてあっても、やはり本文の中でうたっていることだから、取り扱いのウエートというものはおのずからそこにもつとあるはずだし、しかもそれは前段と後段ではやはり意見の問題について分かれた点なんだ。それで、四十年近く実施してきたこの問題を、一挙に今林野庁が実施するような形で百八十度転換、しかも、先ほど小畑さんのお話を聞いても、青天のへきれき、四十年近くやってきたものを、四十周年の祝賀をやったとたんに、われわれに十分連絡もなしにやってしまったということで、戸惑うているという姿を率直に述べられたわけですけれども、それに地方の知事、市町村長ばかりではなくて、これは基本問題の答申を出された林業部会の関係から言っても、もう少し十分検討されてはどうかというのが、率直な基本問題調査会に関係した者の意見ではなかろうかというふうに思うのです。きょうは、私は、実際は、部会長をやられた楠見さんがお見えになれば総合的立場から詳しく伺いたかったのですが、これは第一小委員会、第二小委員会と分けられて、野村さんは需給関係の小委員長をやられたというふうに思っているのですが、構造政策そのものについてはまた別個の立場からもう一つの小委員会でやられたわけですが、しかし、あなたも委員会に関係されたわけだから、委員会の意見として言われる場合は一つすなおに問いに答えていただきたいというふうに思います。
  122. 野村進行

    ○野村参考人 基本問題の取り扱い方についてはいろいろな考え方があったのでありますが、正直に申し上げますと、問題の所在と、それから、これから林業政策の歩むであろう大きな方向を示しただけで、それ以外のものはやはり行政の場で十分やっていただきたいということであります。今問題になっておる官行造林廃止の問題あるいは水源林造成の問題は主として行政の場の問題でありまして、この答申案を書いたときにはそういう問題は考えていなかったのであります。今答申案から行政の場に行った問題を答えろと言われても、私としては、答申案で問題になった点、それから、考えた点、それ以上の点はお答えすることがむしろ行き過ぎじゃないかとも思われます。
  123. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 きのうも問題になり、きょうも午前中質疑の過程でいろいろ論議が行なわれた問題ですけれども、例の林野庁長官自治省行政局長との間の了解事項の問題の中で、分収歩合の問題が問題に提起されたわけです。先ほど小畑さんも分収歩合の問題に触れられておりましたけれども、基本問題調査会の答申の中では各所でこの問題に触れております。たとえば、一例をあげますと、構造政策の中で利用権の設定ということに関連をいたしまして、御承知のように、家族的な林業経営という場合には、公有林、部落有林あるいはまた場合によっては国有林というところに利用権の設定等をやって、そして経営の安定をはかっていこうという構想が答申の一部に出ておるわけですけれども、そういう問題とからんで、利用権の設定について問題となるのは地代額です。その基準についてはさらに検討を要するが、少なくとも現行の分収造林特別措置法で採用されている基準は引き下げる必要がある、こういうことで、分収造林特別措置法の場合の分収歩合についての問題をはっきり引き下げるべきであるということを提起いたしておるわけであります。しかも、これは同様に官行造林の場合の分収歩合という問題にも関連をして考えていることは間違いがない。つまり、それは、その他のところで、市町村の合併等が行なわれた場合の合併後の新市町村について、その建設促進に伴って、財産収入に強く依存するのではなく、税収入を中心にして財政の安定をはかるべきである、こういうふうなことも御承知のように提起しておる。つまり、いわゆる公有林等によるところの財産収入というようなことでなくて、税収による方向に切りかえていく、これはやはり新しい公有林政策一つの変貌であろうというふうに思うわけですけれども、同時にまた、そのあとの条項で、「以上のような観点からすれば、従来のような方針で公有林野直営主義をそのまま拡大することは問題であるように思われる。」と、公有林野直営についても問題を提起しておる。先ほど小畑さんは、これは直営林業ということからこの問題を拡大をするようなことに期待を持っておるようですけれども、基本問題調査会としては直営生産方式にも問題を投げかけておる。単に土地を提供して、そうして金を出資をしてもらい、造林をやってもらうという従来の分収の方法でなくて、市町村自身が直営の形でやることにも問題を提起しておる。こういうふうな形に御承知のようになっておるわけです。そうすると、こういう分収歩合の従来のやつを変えていこうという基本問題調査会の方向というものは、これは文章上明らかに出ておる。あなたがどういうふうに答弁されるということじゃなしに、文章上明らかに出ておる。そういう問題と例の自治省覚書というものは、これは私は小畑さんに質問の中でも言ったように、基本問題調査会の方向で林野庁としてはおそらくやられたんだろうと思う。われわれはそういうふうに話を聞いておる。それが四分六であったか何であったかは別として、基本問題の線でやろうとしておる。ところが、従来の官行造林なり何なりでやってきたそういう方向の地方自治団体の間でまつ正面に意見がぶつかった。そうして当面五〇%を標準とするということで覚書の文章がなっている。この五〇%を標準とするという覚書の中身は、これは明らかに基本問題調査会の答申の方向とは矛盾する問題を持っておることは事実であると思うのですが、これはどうですか。
  124. 野村進行

    ○野村参考人 林業地代の問題は、これはかなり長期間にわたって論議された問題であります。農業地代と違って、生産期間が非常に長いということと、それから、人工によらない天然によるものがたくさんあるということで、どの程度の地代というものが——地主の取り分がどう、それから造林者その他の取り分がどうという問題は、いろいろ論議したのでありますが、大体の傾向としては、今の五分・五分というものは地主に有利になるんじゃなかろうかというような意見もありましたが、これは単なる地代論として議論しているのでなくて、五分・五分がいいか四分・六分がいいかということになってくると、具体的にやはり投資の計算、その場合は地代の問題、労銀の問題すべてのものが入ってきて、その期間も非常に短い期間に答申を求められた関係上、十分な結論は得なかったのですけれども、委員の大部分の方は、やはり従来の五分・五分というものはもう少し下げた方がいいんじゃないかという意見がかなり強くて、そのことがここに書かれてあると思います。  それから、官行造林の問題は、それもやはりここで問題になったのでありますが、これは、できたときの経路その他から考えてみますと、必ずしも経済計算をして五分・五分というものをはじき出したんじゃなしに、ある程度まで政治的、行政的な配慮というものが十分加味されて五分・五分というものが生まれたというふうに聞いておりますので、自治省のこの経路はよく知りませんけれども、やはりある程度まで、従来の既得権と申しましょうか、今までやってきた分を大体認めたというようなことになるんじゃないかとも思います。
  125. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私の問いの焦点に対して必ずしもまともにぶつかって答弁をしておるように思わないのです。私は、答申の数点を引例しながら、あなたに、覚書の点と答申とは矛盾をするんじゃないか、こういうふうにお尋ねをしておるわけです。財産収入に依存する点から税収入の方向へという問題の中にもその問題はやはり含まれてくる要件だと思うし、それから、地代額の問題の中での分収歩合というものを土地所有者に対しては引き下げていくという、そういう方向の考え方の中にもそれははっきりしておる。とするならば、そういう方向を提示しておる考え方了解事項との間では、明らかにこれは矛盾することは間違いない。しかし、それは政治的ないろいろな取り扱いの問題でそう処置されたというのならわかるけれども、答申そのものははっきり文章的にも明らかに表現として書いてある点もいろいろあるわけですから、それとの間にはやはり矛盾が起こっておるということは間違いないんじゃないですか。
  126. 野村進行

    ○野村参考人 その矛盾とおっしゃる点は私よくわかりませんが、先ほどの町村の自営の問題とそれから税収入その他の問題でありますが、私、地方自治関係あるいは財務関係の点はあまり詳しくありませんが、そこへ列席されていた財務関係の方それから地方自治関係の方々にはこういう意見もかなり強く主張されていたということをここへ一応取り上げておいたのでありまして、それを行政の場におろすときにどうしなければならぬか、どこがどう矛盾するかというところまでは、ここではやはり触れてないわけでございます。
  127. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 答申の文章をすなおに読まなければならぬ。こういう意見もあるという書き方のことを私は今の引例の場合に引例したのではない。はっきり引き下げるべきだというふうに書いてある。あるいは財産収入から税収入いう方向へと書いてあるのだけれども、それは意見もあるということだと言われるが、官行造林のところで前後後段で読んだところでは、文章の表現はそういう形になっていない。だから、そういう形になったということをあなたの意見で言われると、答申の出てきた答えというものをわれわれの前にもう少しすなおに説明されたらどうですか。
  128. 野村進行

    ○野村参考人 それは答申の態度の問題であろうと思いますが、この答申では、大まかな方向ということ、それからいろいろな問題点を提起しておりますけれども、あなたのおっしゃったように、はっきりこうなるのではないか——ただ、分収歩合の問題の場合には、町村の場合は別としまして、一般の私有林その他に対しては、従来の部分林の例その他のあれもあるものですから、やはりこれは分収造林の場合でももっと引き下げた方がいいんではないかという意見はほとんど全体的に多くありました。ですけれども、町村林の官行造林とかこういう問題のときには、先ほど申し上げましように、五分・五分というものがかなり歴史的な沿革があって、私たちの聞いているとところでも、別に経済計算できちっとこう出したものではないというふうに聞いておりますので、おそらく林野庁の問題もその辺の点を十分お取り上げになってこういうことになったのではないかと思います。
  129. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これ以上お聞きしても、お互いの繰り返しになってもいかぬと思いますが、われわれの聞いているところでは、この林野庁長官自治省との覚書の点については、これは基本問題調査会の事務局でも相当な不満と批判があるというふうに聞いておるわけだし、また、大蔵省関係もやはり基本問題の線から見て相当に不満を持っておる。それは知事の先ほどのお話の心配にもなって、今こういうふうに覚書になっているけれども、何となく将来の点が不安だという、そういうことを率直に言わざるを得ない点に現れておったと思いますけれども、その点は、野村さんはやはり昔は秋田の営林局長もやり、関係が深いためにずばりと私の問いに対して答えられておらぬし、答申の文章にすっぽり書いてあることについても、そういう意見が多かったという形で言われておりますが、この程度であなたに対する質問は終わります。
  130. 坂田英一

    坂田委員長 芳賀貢君。
  131. 芳賀貢

    ○芳賀委員 野村さんにお尋ねしますが、この基本問題の答申を見るとあなたも言われた通り、ある程度問題の提起は行なわれておりますが、かくあらねばならぬという明確なものがあまり出ていないんですね。そういう点が迫力がないというふうにわれわれは考えておるし、もう一つは、今の政府にどういう迫力のあるものを出してもこれは取り上げられないという、そういう諦観もあって、問題の提起に重点を置いたのではないかとわれわれは理解しておるのですが、きょうは、官行造林制度廃止と、それを公団に事業の一部を移行させるということの点について御意見を伺ったのであります。この法案審議関連して、この答申の内容によると、今後のこの林業経営の方向について、特に農業との関連の上に立って家族経営林業というものを相当重視したような点が所々に見受けられる。それに比較して、今後の共同経営林業というものはそう重要視されていないんですね。これは政府が今出しておる農業基本法との関連でそうしてあるかしれませんが、この点についてもう少し見解を尋ねたいわけなんです。  それから、もう一点は、これにあわせて、林業所得に関係あるのですが、林業に従事しておる特に労働者、林業労働者の賃金の上昇の問題等についても若干触れておられるが、この点について御意見をお聞かせ願いたいと思います。
  132. 野村進行

    ○野村参考人 この家族経営林業というものがかなり強く出てきたのは、御存じのように、今までの林業政策というものは、おもに山とか木を見て、山村住民を見なかったからということで、やはり生産のにない手としての山村住民に焦点を合わせてこれからの政策を考えなければならぬということでございまして、そのときに、これを家族経営林業というものに分けてから共同化をはかる、協業化という言葉を使ってございますが、あるいはそのまま生産組合式に持っていくのがいいのかという議論もありましたが、今までのいろいろな実績から見ると、森林組合における生産組合というものはあまり成績がよくないというようなことで、やはり、一応家族経営林業という林業の相当の大きな単位を創出して、それの協業あるいは協同組合化をはかったらどうかという考え方に落ちついたのであります。  それから、賃金の問題は、これは御存じのように、非常に山村におられる方々の賃金が安いので、これは当然大きな私有林者も国有林もあわせて合理化によって社会的に適正な賃金を払うように十分努力すべきではないか。ですから、だんだん、単なる余剰労力という方向でなしに、やはり十分な生産のにない手として、しかも安定した賃金によって将来林業協力させるようにしたらいいのではないかということで、もっと林業の合理化をはかれば賃金はもっと払える余地があるのではないかという考え方がここに述べてあるわけであります。
  133. 芳賀貢

    ○芳賀委員 ここで問題になる点は、今突然にこれを自立的な農業との関連のもとで家族的林業ということを打ち出しても、この歴史的な経過というものを一応見る必要があると思うのです。特に、山村の農業の置かれた実態というものは、非常に過小な経営を行なっておる。しかし、それは、一つは山村の場合には国有林野との関係ですね。もう一つは大山林地主との関係ですね。農業自体は非常に自立性のない過少なものであるが、その家族的な農家の経営としては、やはり国有林野に対する林業労働者的な経済的な依存とか、あるいはその地元における大きな山林地主に対する経済的な依存、そういうような歴史的なものが、農地改革が行なわれたけれども、林野の面については近代的な革新というものは少しも行なわれなくて今日に至っておるわけであります。ですから、この支配関係というものをどういうふうに脱却させるかというところにその政策の方向というものがなければならぬとわれわれは考えておるのでありますが、そういう解明があまりないですね。こうした方がいいということで、しかも、順序としては、やはり、この林業経営というものが、経済的に見ても、個々に分散した家族的経営というよりも共同的経営の方が、農業よりもむしろ林業の方が可能度も高いし達成率も高いというようにわれわれは見ておるのですが、こういう点が、今後のたとえば官行造林制度廃止とか、あるいは主として分収造林制度で自分の力で造林ができないような場合には依存しなければならぬというような問題と対応した場合においても、なかなか明快な答えが出てこないと思うのですが、こういう点はあまり掘り下げてないのですか、委員会においては。
  134. 野村進行

    ○野村参考人 その点は、先生のおっしゃる通り、明確に──そういうことを申し上げては済みませんですけれども、林業関係の資料というものは非常に乏しいものですから、その乏しい資料の中からいろいろなものを読み取っていくものですから、やはり、具体的な問題になってくると、行政の面までおろすことについて基本問題についてはこうならなければいけないというほど確信のある答えは出なかったものがかなりあります。
  135. 芳賀貢

    ○芳賀委員 一応お尋ねだけしておきますが、それで、この答申の中には、家族的林業経営を行なうために、たとえばあまりに経済効率の上がっておらぬような公有林についてはそれを開放するとか、あるいは国有林野についても、里山と称されるような地域の経済林的な相当期待の持てるものは家族林業の面に開放すべきである、こういう点ははっきり答申には出ておりますね。どうですか。
  136. 野村進行

    ○野村参考人 それは、家族経営林業といいますけれども、これは、最初は大体農家林業という言葉で来たのが、途中で農家林業の定義その他の問題で、家族経営林業という言葉に変わったのですが、大体の考え方は、農業畜産、それから林地とあわせて自立可能なものを考えようじゃないか、また、農民の立場にとっては、上の方では畜産局とかあるいは林野庁とかその他あるけれども、農民の立場においては同じく土地所有の問題であるから、ある程度までの土地を与えれば農民自体がそれを全部総合して自立経営農家——主として農家ですが、そういうものに到達するだろうということで、必ずしも林業だけで自立するというものを前提に置いたよりも、むしろ山村における農民の所得格差を向上するために、畜産用地並びに林地を提供しよう、その場合には、東北地方のように歴史的ないろいろな沿革がございますが、軒下官林のようなところで当然地元に提供すれば地元の山村住民の生活水準向上に非常に役立つ山もあるのじゃないか、そういうところはやはりこの際思い切って払い下げたらどうか、それから、公有林でもりっぱに経営し、しかも経営意欲を持っていられる公有林は別として、ほとんど投げやりの公有林というようなものとか、あるいはほったらかしの私有林というようなものには、ある程度まで利用権設定その他のことを考えて、山村住民の自立をはかったらどうかという考え方であります。
  137. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その場合、国有林とか公有林だけに開放の問題を触れているんですよ。僕は、一番大事な点は、たとえば一千町歩以上もあるような大山地主がたくさんあるわけです。全国の民有林の過半は、頭数は少ないが、とにかく一千町歩以上の所有単位のものがもう過半数を占めているわけです。ですから、そういうものに全然触れないで、国有林をどうせよとか公有林をどうせよということだけでいわゆる家族経営林業の発展とか実現をはかるということはできないんですよ。もう少し、こういう点をどうするかという、これはもう一番困難な問題ではあるけれども、そういう点に、どうも私たちは、調査会が何か御用機関的な構成によって作られて、せっかく皆さんが苦労されても、こっちがそういう目で見るせいもあるが、期待しておった重大な核心に触れておらぬという非常に残念なんですが、この大山林地主の林業に対してどうしたらいいかということはどうなったのですか。
  138. 野村進行

    ○野村参考人 大森林所有者で、その前段の方によく書いてありますように、財産保持的な単なる所有だけしていて、経営してない山林所有者が非常に多いということもよく書いてありますし、ほかのところにも、十分に経営されている私有林は別として、粗放な、投げやりな私有林に対しては利用権設定等を考えて家族経営林業を設定するということは、この基本問題の中に書いてあるはずです。
  139. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは有権的に行なうべきだという意味なんですか。放任しておいてはそういうことにならぬですね。
  140. 野村進行

    ○野村参考人 その辺、利用権設定ということを有権的にやるかどうかというところまではあまり深く論議されず、とにかく、そういうものは生産政策上にもはなはだ好ましくない山林所有者である、それは利権用を設定して家族経営林業の創設に役立てようということです。
  141. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それから、もう一つは、国有林もそうでありますが、一番弊害とするのは、パルプ資本の擁護というところに運営の重点が置かれておるが、これは否定なさらぬでしょう。国有林にしてもそうだと思います。民有林にしてもパルプの独占的な資本的な資本力というものが支配しているというこの事実はだれも否定できないので。ですから、こういう関係をどうするかということは大事な点ですが、答申の場合もやっぱりその擁護ということを念頭に置かれているんじゃないですか。たとえば、貿易自由化の場合も、それではパルプの自由化を進めて、そうしてその作用によって国民経済的な利益を国民に与えるということをすべきであるということもはっきり言ってないですね。パルプの自由化も必要であるというようなことをなまぬるく言っておるが、だから、やはり、一番ガンをなしておる点は何であるという点をもう少しあなた方に明らかにしてもらわぬと、これはいかぬと思うのです。たとえば分収造林にしてもあるいは今後起きる問題等にしても、そういう傾向はあると思うのです。所有者自身が造林をやる能力がないし、育成する能力がないという場合に、やはり分収方式というものは一応現実の問題としてとられるわけですね。そういう場合に、非常に強い資本力の者が造林者とか費用負担者という形でこれを進めるということになれば、やはり民有林関係においてもそうだし、また国有林全体の経営の中においてもそういうことははっきり言えると思うのです。こういう点は真剣に議論なさったのですか。
  142. 野村進行

    ○野村参考人 貿易自由化の問題とパルプの問題でありますが、これは、この答申には、貿易自由化を前提としてあるいは考慮してこれからのパルプのあり方も十分考えなくちゃいけないという表現でありまして、自由化が来たからパルプをどうしなくちやならないというようなことは書いてありませんが、初めの方の分析過程において、パルプの資本の進出によって木材価格に非常に大きな変動を与えておる、また木材の需要構造にも大きな変化を与えておるというようなことは書いてありますが、先生のおっしゃったところまでは触れておりません。
  143. 芳賀貢

    ○芳賀委員 特に国有林の場合は、これは国民の山ですから、当然国民経済的な考え方から運営されなければならぬと思うのです。それが、たとえば立木の払い下げ方式にしても、製品の払い下げ方式にしても、すべてパルプ優先主義というものが貫いているわけですね。これを根本から排除するような運営方式がとられなければ、それ以外のことだけをいかにやかましく言っても、大きな目的は達成できないと思うのですがね。  次に、答申の中に分収造林官行造林の問題も触れておるが、これは所有と経営の分離はいけないという意味なんですか。
  144. 野村進行

    ○野村参考人 そうは書いてなかったと思います。
  145. 芳賀貢

    ○芳賀委員 好ましくないというのですか。
  146. 野村進行

    ○野村参考人 ええ。  もう一つのパルプ資本と国有林の問題ですが、これは直接パルプ資本についての論議はしておりませんですが、国有林というものは、当然国民の経済生活に非常に重要な関係を持ち、従って、木材の需給並びに価格調整について十分の機能を発揮しなければならない、しかるに、従来の国有林はそういう点において非常に不完全な点がある、だから、今後は木材の価格あるいは需給調整について国有林はもっと積極的に処置しなければならない、場合によっては、現在の機能においてそれが困難な場合においては、林野庁の事業と事務の分離、あるいは公社の問題まで考えて、国民から預かった国有林を国民の希望するような処分に持っていくように十分配慮しなければならないということは、二、三カ所にうたっておると思います。
  147. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、分収造林の問題について、今後はできるだけ大規模私有林地を対象にして造林事業を進めるべきである、そうなると、今度は従来と異なった方針で大山林地主を対象にした分収造林が進められるべきであるということになるわけなんです。これはそうなっておるのですよ。しかし、その場合もあわせて適当な地代をこの際検討すべきであるということになるのですね。ただ、今のような形で、重点的に大規模な山林所有者の分収方式を進めて、今のような土地所有者に非常に有利な分収歩合だけでやるということになると、これはますます大きいものだけを擁護するということになっていくと思うわけです。ですから、地代等については、これは先ほど角屋委員も言った通り委員会等において適正な山林地代というものを理論的にある程度検討を加えて、大体この基準くらいが妥当じゃないかというようなものをほんとうは出された方がよかったと思うのですがね。検討が必要であるということでなくて。
  148. 野村進行

    ○野村参考人 学界その他では地代論ということではかなりいろいろ論議されているのですが、さて具体的に、地主の取り分がどれだけ、それから造林者の取り分がどれだけという問題になりますと、先ほど申し上げました労銀の問題、賃金の問題、しかもこれは非常に生産期間が長いし、その間に貨幣価値の変動も非常に大きいものですから、答えがある程度まで出ていれば計算するのは容易ですけれども、答えなしに最初から計算すると、学者百人集めて計算されると百人百様の答えを出すというのが現状でありまして、研究所その他で——この問題は林野庁でも非常に関心を持たれてそっちこっちに研究を委託されておりますけれども、今のところ早急に明確な結論が出るということは、私個人の意見でございますが、なかなか確信が持てないという段階であります。
  149. 芳賀貢

    ○芳賀委員 もう一つ、国有林の経営の中で、その目的を、一つは国土保全的な方向を示して、もう一つ国民経済的な経営ということを言っておるが、この国土保全という点については、今後国有林野が保安林等の買収取得を進めていくということも述べておるわけでありますが、それならば、今度の法案関係のある水源涵養林等は当然保安林の中の主たるものなんです。かつても保安林整備臨時措置法というものがありまして、それは進めているのですが、今後国土保全を国有林野事業の大きな柱として進めていくということになれば、当然水源涵養林等についても従来よりも一そう積極的に買収造成を進めていく必要がある。それが進んでいけば、当然買収された国有林野の林地内において完全な水源涵養の造成ができるということになるわけであって、そうなれば水源涵養林の分収制度は要らぬということになるのですが、やはり発展の方向はそこに求めているのでしょう。どうなんですか。
  150. 野村進行

    ○野村参考人 理論的に申し上げれば、そういうものを全部国が持てば一番いいということで、ドイツの林学者などは、保安林その他のものは全部国が持って、法律その他のめんどうなものは一切やめたらいいという意見もありますが、保安林を買うことも非常に金のかかることで、なかなか容易じゃないし、今のそういう問題は、今は全体として農林大臣の諮問機関の臨時国有林野事業経営調査会というのがありますが、ここで国有林のあり方というものをもう少し検討して、どこに今後の重点を置くかという問題を検討しておこうということであります。ですから、民間に持っていただいては非常に迷惑なんだというようなものは、当然将来国が買収する方向を持つということはこの中で考えていくべきだと思います。
  151. 芳賀貢

    ○芳賀委員 以上で質問を終わりますが、最後に、あなた方が作った答申でこの二法案を照らした場合に、われわれがすなおに見ると、答申の意図するところと背反したような法律改正ということになると思うが、実際に答申を作られたあなた方の立場からこの法律を照らした場合、どういうようなお考えを持たれるか。これは個人的でもいいから率直に言ってもらいたい。何も政府に遠慮する必要はない。
  152. 野村進行

    ○野村参考人 まあ、生産政策という点でいろいろの問題があるでしょうが、財政投融資の問題としてもなかなか容易じゃないし、このように木材が極端に不足していますと、やはり何とか手のつけやすいところから手をつけて、できるものならば山にできるだけ木を植えた方がいいということで、その方法その他についてもいろいろ議論があるでしょうが、今の状態では、とにかく何らかの方法で早く生産性の悪い山を林地転換していかなければならぬ。という考え一つの現われじゃないかとも思います。
  153. 川俣清音

    川俣委員 関連して。  野村さん御病気のところお伺いするのは恐縮に存じますが、野村さんは林野庁のいろいろの審議会の委員などもしておられますし、林野庁の顧問格でありますので、お尋ねいたしておきたいのですが、病人にあまり大きい声を出しては悪いので、遠慮しながら申し上げます。  第一にお尋ねしたいことは、林野庁がなぜ治山事業をやらなければならないのか。最近、こういう公益性のものは建設省がやるべきではないか、こういう意見がかなり有力に出ておるわけでございます。国有林野事業を主体として一般の林政を受け持っている林野庁として無関心であり得ないのでやっておられると思いますが、何ゆえ治山事業を積極的に林野庁が受け持ってやらなければならないのか、この点一つ教えを受けたい、こう思うわけであります。
  154. 野村進行

    ○野村参考人 この点は、経済審議会その他でたびたび問題に出るのでありますが、長年の伝統ということですから、やはり理屈だけではいけないというようなこともあるし、林野庁の方の考え方では、水を治めるのにはまず山を治めるということで、大きな接触点は堰堤工事のところに問題が来ると思うのですけれども、その点は問題が非常にデリケートで……。
  155. 川俣清音

    川俣委員 なぜ林野庁がやらなければならないかということがあまりはっきり答弁できない、こういうことのようだと思います。しかし、これがやはり山を治める基本だと思うのです。一方において、やはり公共企業体だからしてそういう公益性のものに手を出さないでもいいじゃないか、こういう議論があるの対しましては、いや、そうでなく、山林というものは、やはり一般林政をも受け持つところの林野庁が役目を果たしておるのであるから、国民経済に寄与する上からやはり関係の深い林野庁がみずから進んで治山をやるべきだというのが従来の大まかな主張だ、私はそう理解しておるのでありますが、この理解は間違っておるでしょうか。
  156. 野村進行

    ○野村参考人 おっしゃる通りでいいと思います。
  157. 川俣清音

    川俣委員 そういたしますと、次に、公共企業体だからして治山事業はやってはならないのだということにはならないと理解してよろしゅうございますか。
  158. 野村進行

    ○野村参考人 公共企業体とおっしゃるのは国有林の場合ですか。
  159. 川俣清音

    川俣委員 そうです。
  160. 野村進行

    ○野村参考人 国有林の行き方にやはり二つの議論があって、これはやはり一つの企業体として徹底して、ですから企業に関係のないものは一般行政にみなまかしてしまったらいいじゃないかというような考え方。それから、一つは、やはり国有林に関係のあるものは今の関連林道の問題その他できるだけやったらいいじゃないかというような考え方。主として会計学者あるいは財務当局の方々の意見を聞いてみますと、公共企業体なら企業として徹底した方がいいじゃないかというような意見がかなり多いと思います。
  161. 川俣清音

    川俣委員 そこをあなたにお聞きしたかったのです。一般は俗に企業体というものは企業の範囲にとどまるべきだというのが一般の意見ですが、少なくともあなたのような林政なり日本の林業御存じの方は、山というものは、森林というものは企業体だけではなかなか保護育成はできないものだ、一般の山村民の理解協力を待たなければ、林地にあるところの管理をするのであるからして、事業の遂行ができないというところから、私どもはそういう考え方になるのだと思っておる。単なる企業体だけではやれないのだというのが林野の本質だ、私はそう理解しているのですが、この理解は誤りでしょうか。    〔委員長退席、大野(市)委員長代理着席〕
  162. 野村進行

    ○野村参考人 私たち委員会で言いたいと思うことを川俣先生にすっかり言っていただいたような関係ですが、おっしゃる通りだと思います。
  163. 川俣清音

    川俣委員 そこで、その理解の上に立って一つお尋ねをいたします。  従って、山村民との協力ということになると、やはり常に山村民に信頼を受ける林政をやっていかなければならないということになると思うのです。今日まで林野行政がとにもかくにも曲がりなりにも信頼を保ってきたということは、山村民の一般林政に協力してきたという報いがあるから今日においてなお協力を惜しまない体制ができておる、私はそう理解をいたします。  そこで、次にお尋ねをしたいのは、三十一年に公有林野官行造林法が改正になりまして、等というものを入れまして、部落有林からさらに水源林も入る、一方、御承知のような治山事業に関連する事業もこれに吸収いたしまして、公益性の高い官行造林を進めてきたと思うわけです。こういう犠牲を払ってきたというところに、山村民から、及び広く農民から信頼を受けてきたものだと思う。確かにこれは大きな犠牲だったということは認めます。その犠牲を払ったということは、公益性が高い、公共性も高いものだからして犠牲を払ってこられた、私はそう理解しておる。そういうことによって一般林政に協力することによってさらに信頼度を高めていこうという努力が、三十一年の法の改正になり、しかも三十二年から四十四年まで官行造林を遂行する計画ができて、この計画のもとに官行造林を実施するのだといういう計画書ができておる。この計画書によって出先は契約してきたものだと理解いたします。この信頼の高いということは、林野行政については国民を裏切ることがないのだ、一度契約をすれば、それはどこまでも誠実に実行して、山村民の協力に報いるのだという体制があるからだと思うのです。それが突如変更するということになるのかならないのか、いやおっしゃる通り契約したものはそのまま続けるのだという理解なのか、今度は切りかえて公団にやらせるというのであるか。四十四年まではこの計画を遂行するという建前で国会を通過いたしておるのは御承知の通り。四十四年までの計画書がついておる。この計画に基づいて契約されたものであることはみなお認めのことだと思います。その契約を打ち切るのか、一体打ち切らないのかということは非常に大きな問題です。打ち切るというのはいろいろな事情からして打ち切らなければならぬことがあるかもしれませんが、一度結んだ契約は、もしも土地の所有者がこの契約を破棄すれば偉大な損害を受けなければならないような条項になっておる。国は裏切らぬのだから、これは進んで解約しないのだから、国に対する解約責任は御承知の通り負わせていないのです。解約は民間がやるものだという観点に立って、民間側から解約を申し入れた場合には相当な責任を負わせる体制になっておる。国というものは解約をしないのだという建前で諸法規ができておることは皆さん御承知の通り。ことに野村さん御承知の通りなんです。そういうことを予想しない、国から解約することはないのだという前提に立って法規もできておるものを、この際突如変更するということは、非常に大きな信頼を裏切ることになるのではないかと私は非常にこれは憂えるのですが、野村さん、どうでございましょうか。
  164. 野村進行

    ○野村参考人 地元その他が国有林に対して協力するという体制は今後ますます深めなければならないということは、今先生おっしゃった通りでございます。ただ、まあいろいろの行政組織とかあるいは会計制度とかいうものの変更であって、たとえば従来の態度とか本質的なものには、今度のものが特に変わったというふうには私どもはとっていないのです。
  165. 川俣清音

    川俣委員 変わったととっておられないなら、私どもと意見は同じなんです。契約をしたのであるから、その契約だけは履行してもらえると思っておるのだろうと思うのです。これは合意解約をするらしいのですが、進んで民間側から解約の申し入れがあった場合は従来の責任を負わせないで解約に応ずるのだということであれば別問題です。今度は切りかえていくという建前です。法律はそうじゃないですよ。法律は切りかえていくという建前はとれない。なぜかというと、法制局がこれを審議する際に、憲法に反するじゃないか、既得権の侵害じゃないかということから、既得権を侵害しないような条文になっておることは御承知の通りです。それをあえて切りかえていくのだという考え方が述べられたり、そうじゃない、従来の信頼を保つために既存の契約、目下進行中の契約は忠実に履行するのだというのか、それとも無理にこの際解約を強要して公団に移すのかということが、いまだにあいまいでおるわけです。あなたの理解はやはり大きな変化がないということになると、既契約については誠実に履行する義務を負って信頼をつないでいきたいというのが本質だと思うのです。物の移動、動産の移動のようなものでありますれば、その契約というものは個々の変化によって変えていきますけれども、森林事業というものは、御存じ通り長期計画を持たなければなりませんので、長期計画の上に立った施策であります。長期計画というものはそうそう変更すべきものでないのが長期計画の本質であります。長期計画が毎年変わるのでありますれば、それは長期計画にならない。従って、森林事業全体からして長期計画を保つのだということになりますれば、やはり途中で解約のないようなことが望ましいこと、御存じ通りだと思います。そこで、既存の契約は三十一年から始まりましたから、二年か三年のものもあります。まだ植栽の終わってないものもある。義務を負って、さらにことしも来年も、四十四年まで、——あるいはもっと前に植栽の終わるものもありますけれども、最高度は四十四年度まで植栽を履行する義務を負ってすでに契約を結び、地上権を設定しておる。物権、不動産に大きな制限を受けておるわけであります。土地を提供して地上権を設定しておる。従って、これだけ義務を負ったのだから、お前の方は間違いなく履行せよというのが官行造林の諸規則の規定するところです。ところが、国の方が解約をするんだということが一つもないものだから、国というものは信頼をしていい、国が裏切ることはないんだということが裏になっていると私は理解しておる。国が違反するのだということになりますれば林政が立っていきませんから、国というものは誠実に履行するんだ、そういう信頼があると思う。特に、今までの実績から見ましても林野行政の中で裏切ったことが少ないから、今後も裏切ることがないという大きい信頼の上に林政というものは樹立されていると思う。それが、ごく一時的、便宜的なことのために、この信頼を失うようなことは、これは先輩として慎ませることが妥当じゃないか、私はこう思う。解約をしたいというならば、今までのようなやかましい規定は適用しないで解約に応ずるんだ、これはよろしいですよ。これはいいと思う。ところが、もう法律はなくなったのだからお前はもう解約しなければ不利だぞというような、権力をかさにきて解約を勧めるということは、既得権の侵害になるおそれのある法律だというふうに私は理解します。説明いかんによっては憲法違反の疑いが出てくるものだと理解します。法律そのものの文章じゃないですよ。文章はそうじゃないけれども、実際がこれを裏切るということになったならば、これは憲法違反の疑いがある。民主主義の基礎であります既得権の侵害という大きな問題が出てくる。単なる林政の問題でなくて、日本全体の政治の上に非常に大きな影響を与える。これは長官一代の問題ではなくて、永久にこの不信というものは続くおそれがあるから、林野の先輩はよほど御指導あってしかるべきじゃないかということが私の意見ですが、どうでございましょうか。
  166. 野村進行

    ○野村参考人 従来の林野庁行き方から見ますと、おそらくそういう信頼を裏切って地元民を失望させるような処置は講じないだろうと思いますけれども、私、当事者でないものでありますから、具体的にどういう手を打ってどうやっていくかということはわかりませんけれども、その点は、今までもそういうことがなかった、今後もそういうことはないだろうというふうに考えております。
  167. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 次に山本力蔵君にお願いをいたします。山本君。
  168. 山本力蔵

    ○山本参考人 私は全国町村会長をいたしております千葉県の小見川町長の山本でございます。昨日電話で、本日出て参って参考人として意見を述べろという御命令でございましたが、緊急でございますので、全国町村会としての意見を取りまとめる時間がございません。従いまして、本日私が申し上げさせていただきます意見といたしましては、先般官公造林廃止になるということを伺いましたので、私ども、公有林野の問題につきましては特に山村僻地の自治体といたしまして重要な問題でございますので、幹部、理事会の一部の者がこれらの問題を検討いたしまして、その結果に基づきましての意見を私が申し上げるのでございます。さらにまた、技術的な詳細な面につきましても、個々の町村はいろいろ事情がございますが、これらを個々に検討する余地がございませんので、どこまでも市町村の自治体の立場におきまして一般的な原則的な意見として申し上げさせていただく点も御了承賜わりたいと存ずるわけでございます。  官公造林につきましては、すでにお述べ下さいました通り、大正九年から四十カ年間にわたりまして三十万ヘクタールほどの官公造林が行なわれまして、もうすでに伐採期に入りました。このために町村といたしましては分収金が相当に入りまして、地方の財政に大きな貢献をされたことにつきましては私ども感謝しているわけでございます。  そこで、今回官公造林を廃しまして公団造林に移るのでございますが、これにつきましてもいろいろの意見がございます。私は率直に簡単に申し上げますると、今度の改正によりまする趣旨が、私ども自治体の本旨でございますところに沿っておる。それは市町村造林意欲と造林技術を活用いたしまして自主的に公有林野を造成するという趣旨でございます。これにつきましては、私どもかねてから公有林野の管理改善を叫び、これが改善をいろいろ要求しております関係上、この御趣旨につきましては自治体の立場からは何ら反対する理由がないわけでございます。  それから、この条件でございまするが、従来の官公造林土地所有者の分収割合は五割が標準となっておりますが、今回の改正でも従前の割合を尊重されておるようでございます。さらに、市町村造林者となった場合には、それだけ分収分が付加されるというように伺っております。これが事実でございますれば、従来の官公造林方式よりも有利に考えられるのでございます。さらに、今回の改正によりますると、従来の官公造林は一団地十ヘクタール以上を標準として契約しておったのでございまするが、今後は五ヘクタール程度の小団地をも対象として改正されるということでございますので、これは水源地帯の整備上有意義であると考えられるのでございます。  こういう、条件も有利である、自治の本旨にも沿っておるという二つの点が、私どもが今度の改正に賛成をするゆえんでございます。しかしながら、この間にこの問題が出まして条件がないわけではございません。各町村よりも、官公造林廃止につきまして心配して、いろいろ反対の御意見もございますし、いろいろな意見が参っております。その趣旨によりますれば、一つ趣旨の不徹底公団造林に対しまするところの認識不足の点もございましょうし、それから、直ちに官公造林公団造林に移った場合に、その市町村が技術的等に対しまして非常な困難があるのじゃないかという心配もあるわけでございます。従って、これらのために市町村が不利になるのじゃないかという心配があるようでございます。さらに、農林従事者の失業の問題等も御心配があるようでございます。それから、先ほども御意見がございましたが、既契約の分が直ちにこれで解消されてしまったというようなことでは困るわけでございます。やはり、すでに契約の分は伐採まで契約を履行していただくという点等も要望があるわけでございます。こういう点を、今後御審議あるいは実行の場合に十分お考えをいただくという点で、今回の改正につきましては、一応今まで私どもの協議の結果賛成を申し上げる次第でございます。  さらに、この際お許しをいただきますならば、一言希望を申し上げさしていただきたいと存じますが、ただいまの官行造林は奥地の水源地帯でございますが、私どもがほとんど直営しておりますところの公有林野は、経済林すなわち里山地帯でございまして、これにつきましては、昭和三十四年度より、国会並びに政府の非常な御高配によりまして、公有林野の整備資金の融資制度、画期的な制度が創設されました。三十六年度の予算も八億という増額をしていただきまして、非常に喜んでおります。この点は私も厚く感謝申し上げたいと存じます。これによりまして、いわゆる経済林の公有林野等は非常に整備改善されまして、従来自治体が経営しておりましたところの公有林野に対する不信の念は自然解消される、私はかように考えておるわけでございます。しかしながら、ただいまの限りによりますと、八億ではまだ要望には相当足りませんから、今後、来年度は相当の増額をしていただきたい。さらに、できますならば伐採の資金に対しましても、融資の道を講じていただきたい、かようにお願いする次第でございます。  いま一つは、国有林の偏在地帯におきましては、今回、経営構造の改善のために、国有林の払い下げは一部住民に払い下げるという御意見のようでございます。これはけっこうなことでございますが、これと同時に、偏在地帯の市町村の財政がきわめて困難でございます。町村合併促進法によりまして、町村の財政を助けるために国有林の払い下げの法律ができましたが、この実績は必ずしも私どもの要望に沿っておりません。今後、これらの国有林の偏在地帯につきましては、市町村の基本財産の造成等にかんがみまして、国有林の払い下げを促進していただきたい、かようにお願いをあわせて申し上げまして、私の意見を終わらせていただきます。
  169. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 次に、亀井忠衛参考人にお願いいたします。
  170. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 亀井でございます。国有林野事業に働いております十五万人の職員の総意というものを反映する全林野立場において、反対という立場に立ちまして、ただいまから若干意見を申し上げてみたいと思います。  意見の内容といたしましては、まず、反対の基本的な理由といたしまして、今次の法案というものが、首切り法案と申しますと語弊があるかと思いますが、われわれ国有林野事業に従事をする職員といたしまして、首切りにも等しい、あるいは極端な労働条件の低下というものを来たす、こういうふうな判断をしております。それから、法案提出に当たっての理由根拠というものがきわめて薄弱である。それから、第二点といたしましては、この法案の中に含まれております個々の問題点といたしまして、約六点ほど意見を申し述べてみたい。内容としては、ただいままでもいろいろ論議がありましたように、従来の官行に対する契約解消の問題、それから、市町村の優先順位というものが今くずれ去るというふうな危険性の問題、次には水源森林というものに対する範囲の問題、それから、次は、分収歩合というものについても非常に疑問を持っております。それから、第五点といたしましては、森林開発公団の将来性という問題、それから、最後に、林業基本問題の答申の中に関連を持たせまして、以上各項目に従って御意見を述べて参りたい、かように存じます。  まず、反対についての基本的な理由でございますが、先ほど首切り法案であるということを申し上げました。三十五年度の予算で推定をいたしましても、官行造林の新植、これは補植も含めておりますが、大体延べ人夫にいたしまして百三十二万人という数字に上っておりますが、さらに、保育関係についても百二十六万、計約二百五十八万という人がこの百行造林に働いておるわけでございます。このうち、今回の法案が実施をされますと、新値関係の百三十二万、大体人数にいたしまして六千人というふうに算定いたしますけれども、これらの人たちが直接首切りの対象になる、こういうふうに考えております。これは三十六年度についてこういうことが考えられるわけですけれども、さらに、三十七年度以降については、雑草木の刈り払いつる切り、枝打ち等の保育関係の仕事というものが年々減っていきます。と、勢い総体的な事業量というものが減って参ります。こういうふうな結果において毎年なしくずしに整理をされていく、こういうことが予想されるのであります。単に現場関係だけではなくして、現在全国の営林署の数というのは約三百四十八に上っておりますけれども、このうち官行造林を主体にしておる営林署の数が二十署くらいあります。さらに、その下における担当区の数に至ってはおそらく数百に達するであろう、こういうふうに考えております。今回の官行造林廃止というものが実施をされた場合に、当然これらの営林署とか担当区の統廃合というものが出てくるでありましょうし、その結果担当数の職員の配置転換あるいは首切りというものが出て参るというふうに考えらまれす。この件については、今まで本委員においてもしばしば林野当局は、首切りはしない、犠牲者は出さないのだということを言明しておりますけれども、明らかに事実に反しております。特に、現在官行造林に従事しております作業員を国営生産事業に振りかえる、その他の造林拡大の面に振りかえるというようなことを言明しておりますけれども、林野庁の方針というものは、これらの直営生産事業というものを年々縮小していって、請負を導入をするというような経営の方針を強めて参っております。私たち林野としては、請負の導入に反対の態度なり、さらに雇用の条件では常用の増大を要求をしておる、こういうようなことを戦いとして仕組まざるを得ない羽目になっているわけでございます。委員会の中でしばしば述べている具体的な裏づけのないこういうような当局の態度についてだけで安易にわれわれとして引き下がるわけにいかない。これは具体的な事実を申し述べますけれども、すでにこの春、長野の営林局管内においても、毎年定期作業員として八ヵ月以上働いておった人たちの雇用期間を六ヵ月に短縮をするという内容が指示をされております。さらに、飯田の営林署、あるいは瓜田、大町、こういうところで八カ月のものが六カ月に落ちている、あるいは四カ月以上働けるというある程度の保障のあったものがそれ以下に切り下げられたり、それから、大町の営林署においては、すでに官行造林用の苗木を育成しておった苗畑が廃止をされ、そこで働いておった十数名の人たちが配置転換を余儀なくされておる、こういうふうな事実があります。もちろん、組合としても黙っておるわけではなくて、地本なりそれぞれ交渉をしておりますが、長野当局のこの計画というものは変更する意思はないということをきっぱり言い切っております。さらに、大阪の管内においても、全署を網羅いたしまて約百二十名からに上る定期作業員の不採用という事実が出て参っております。こういう現実を見るときに、当局側がこの委員会で答弁をしているものとは全く相反した逆行したものがこれらの署に出ておりますし、さらに、全国的規模で見るならば、われわれはこれをいわゆる首切り法案であると認識しておりますが、これより大きな数字が発生をしておるかと思います。  次に、官行造林廃止をする根拠はきわめて貧弱であるということ。それから、既契約地までも解約しようということは、目的のためには手段を選ばない、こういうふうな強引な態度が感ぜられるわけであります。今度の官行造林廃止公団移管に対して、多数の市町村なり地方新聞が反対の意向というものを伝え、さらに報道をしておりますけれども、また、農林省内あるいは林野庁内においてもこの問題についての批判の声があるということを言われております。そういうふうな声を反映いたしまして、去る三月十三日でございますが、農政タイムズの中に、「里山も水源林、ナゾを秘めた公団移管」という見出しにおいて、官行造林公団移管は農林部内の立法手続から言っても非常に疑問がある、早計であるというふうなそしりは免れないだろう、こうふうな意味のことが出ております。  さらに、官行造林廃止について林野当局は明確な説明を避けておりますけれども、法案提出理由になっておりますものは、官行造林を新開発公団に引き継ぐから官行造林法は廃止をするというふうな、まさに三くだり半的な字句しか書かれておりません。林野当局の今回この法案提出にあたっての唯一の理由としては、国有林の仕事が非常に忙しくなる、今後小さい団地が分散化をするので、従来のような形においての官行造林事業というものではとても人手が回らないというふうなことをあげております。しかし、これは今まで当局側が言明をしてきたこととは全く矛盾をしているというふうにわれわれは感じております。特に、昭和三十一年のこの関連する法律改正の際に官行造林は一部の水源私有林に対象を拡大しておりますけれども。そのとき当局は、水源林の造成は、営林局署の技術を動員し、その責任において造林地の管理経営を行なうのが最も適切確実妥当な方法であるということを強く主張しておったのであります。これは今ここででたらめを言うわけではなくして、その間の経緯というのは、林野庁のいわゆるPR誌である林野時報、それから前長官である石谷さんなどが、参議院の農林水産委員会の三十一年二月十四日の議事録にも出ておりますが、その言明によって今申したような態度を明確に出しております。しかも、法律改正をされて一年を経て三十二年度から、林野当局はそれまでの公共事業でやっていた水源林の造成事業を廃止をして、以来水源造林を全部官行造林でやるということにいたしました。三十二年二月に林野庁が発表した「今後の官行造林」というパンフレットが出ておりますけれども、それについての理由を次のように説明をしております。従来の水源林造成事業による新値費を全額補助するのみであとの保育、保護管理等一切を土地の所有者にまかせる方法では、森林造成の全きを期することは至って困難な事柄である、こういうことを述べております。また、林地が分散し零細化し、現在の国有林と関係なく分散することがあっても、そういうところこそ市村町あるいは森林組合に請負わせるから、事業の円滑かつ能率的執行は可能であるという点に触れております。  以上がこれまで林野庁官行造林に対して公にとってきた態度でありますが、このような理論に立つときに、林野当局の現在の論理というものは全然成り立っておらないのではないか。由来、森林政策というものはきわめて長期の展望に立って策定をされなければならぬと思いますけれども、わずか四年ないし五年たった今日において、ネコの目の変わるようにこれらの方法というものが変わっていくことについては、きわめて疑問を持っておる。しかも、十分なる審議討論の期間を置かないで、短時日の間に出して今次の国会で一挙にこれを通そうという点についても、全林野としてははなはだ疑問に感ずるのであります。  そこで、内容に入りたいと思いますが、第一に、単なる費用負担者で、造林地の保護、保有に関して責任も能力もないところの森林開発公団が水源造林事業に不適格であるということは明らかであると思いますが、官行造林でなければ県行造林などを実施すべきであるというふうに全林野としては考えております。  第二に、零細分散化して営林署が事業を実施するのが不適当な場所、こういうところについては、市町村あるいは森林組合に委託をして事業を実行すればよい。何もここで森林開発公団という特定のものに結びつけたり、考えようによっては退職者集団というものに全事業の経営をまかせて、しかもいろいろな点での上前をはねさせるということが何としても納得がいかない点であります。この官行造林の目的でありましたところの、町村財政の基盤を確立する役割を果たしつつある市町村の山というものが大切であるか、国有林野事業に全生活の基盤を置いている作業員の生活が大切なのか、わずか一握りの退職官僚の食いつなぎの方が大切か、こういう点を率直に御判断下さいまして、慎重なる御審議をお願い申し上げたい、かように思います。  第二点に入りまして、この二つの法案に含まれている個々の問題点について述べて参りたいと思いますが、以上のような官行造林廃止公団造林の開始をねらいとしておる二法案は、立法の根拠がきわめて薄弱であるという点を先ほど申し上げましたが、かりにこの二つの法案が成立をいたしますと、市町村にとって、また今後の林野行政にとって非常に重大な問題が生じてくるであろうと考えるわけであります。本来、こうした点については、林野当局があらかじめ市町村あるいはその他の関係者に内容を明確にして、十分理解納得さすべきが至当だと思いますけれども、今まで、先ほど来の参考人の方々の意見を聞き、あるいは数日来審議の内容を承ってみましても、実際にそれらのものが十分に行なわれたとは思えないのでございます。特にここで重点的に次のような問題点考えてみたいと思います。  第一に、最も切実な問題は、既契約地の解消であります。市町村を、林野当局は、解約に応じない限り造林ができないというような形で脅かしておるということも聞いておりますけれども、言うまでもなく、三十六年度の特別会計予算の中にはこの新植費というものが全く計上されておりません。林野当局は、市町村了解を得ることなくして、契約解消を前提として、こういう新植予算を全く見ないというふうな暴挙をあえて行なっているわけであります。かりに解約に応じないような場合でも、何とかしてこの契約を解消したいというふうな考えがあるやに聞いております。もちろん、当局は従来締結をした契約というものを履行する義務があるわけですけれども、どこからこの新植費というものを出す考えであるのか。ほかの面で圧力などをかけて、結果的には応ぜざるを得ないような方法をかりに考えるとしたならば、まさに言語道断と言うべきであろうと思います。この問題については、全国から、私たちの知っている範囲においてもすでに六万名に上る反対請願署名というものが集まっておりますけれども、そのほか多くの市町村においても、林野当局の今までとってきたこういうような態度については非常に憤激をし、二法案に対して反対を示しているのであります。なお、昨日のこの委員会において自治省側の政府委員は、官行造林廃止をするこの法律案の附則によって、既契約地については契約は有効だということを言っておりました。これは二法案の建前とは全く相反しておるのではないか、私は特にこの点について本委員会の慎重なる審議をあらためてお願いをしておきたいと思います。  第二に、官行造林法が廃止をされますと、市町村有地を優先的に造林をするという従来の原則がなくなってしまいます。現行法では市町村有地あるいは部落有地に水源林以外の一般林地であっても植栽ができるというふうになっておりますけれども、法の廃止後においては私有地と全く同格地されるというふうな内容を含んでいるというふうに考えられるわけでございます。今後、林業基本問題答申の公有林野消滅政策と申しますか、あのような答申の内容に基づいて政策が実施をされて参りますと、公団市町村有林を対象からはずしていく、さらに、私有地などを主たる対象地として不当な利益を与えるというふうなおそれがないということは言えないと思うのでございます。  第三点といたしまして、森林開発公団が不当に私有地に国費をつぎ込むような機関にならないかという心配は、全部水源造林という概念のあいまいさというものに関連を持ってくるわけでございますけれども、この点についても、三十一年の法改正の際の石谷前長官国会答弁、及びこれに基づく同年七月の次官通達の中にある造林地の選定基準、この内容といたしまして、水源地私有林に対する官行造林の対象を、森林法の第四十一条の保安施設事業による水源林造成事業予定地、すなわち保安林あるいは保安林予定地に限っていたのでありますけれども、しかしながら、林野当局はこの実行を独断的に無視しております。普通林地に対しても水源造林の名で植栽しているということが言われております。この点も大きな問題でございますが、今度の公団造林では、ついに、保安林予定地が多いだろうけれども必ずしもそれに限らないということを明白に言い切っております。公団造林の対象地は農林大臣の指定をする水源地域の中から選ばれるというふうに説明をしておりますけれども、それは市町村を単位として選定され、保安林以外の普通林が公然と対象にされる、そういうふうな内容が考えられます。ここにいわゆる水源林というのは、いわゆる森林法上の水源涵養林とは違う、非常にあやしい内容に変わってくるのではないかというような危険性を感じておるものでございます。  第四には、市町村の分収歩合の点について申し上げたいと思いますが、初め林野当局は、この分収歩分という問題については、状況に応じてきめたいという態度をとっておりました。市町村自治省側からつつかれて五分・五分だという標準を示したわけですけれども、しかし、現在でも林野当局は、これはあくまで標準であって、現行法のように原則ではないということを言っております。そのため、現在林野当局が各方面に配っております「水源造林のしおり」の中にも、個々の分収歩合は土地の状況あるいは費用負担の割合によっても違ってくるし、それから、造林費などが多くかかるかあるいは少なくかかるか、こういうふうなものによって違うので、一律にはきめられないということをパンフレットの内容に明らかに書いておるのでございます。それがどういうふうに違っていくのか、これらの算定方式について当局はその明らかな内容というものを示しておりません。  さらに、分収問題について不可解に感じますのは、林野庁長官自治省行政局長との覚書に対する林野当局の態度であります。四月三日の時事通信の地方版にも、林野庁があのような覚書を取りかわしたのになお分収率の変更をあきらめていないということを報道しておりますが、据え置きにした理由について、明年度から従来の官行造林事業が森林開発公団に移管されるのであるから、急激に率の改定をするのは好ましくない、暫定的に五分・五分としたのだというようなことを説明をしておるということをしるしてあります。従来市町村に対して行なっておりましたいわゆる五分・五分というものを今後とも引き続いてやるという意味の、そういうニュアンスを与えるという意味PRから見るならば相当食い違っておるのではないか。こういう点を見るときに、明らかに、市町村を一時的にペテンにかけて、ともかくこの二法案を通そうというふうな、そういう態度が見られるのではないかと考えられるのでございます。  なお、現在林野当局が公表しております分収率というものは、どろなわ式と申しますか、非常に急いで作ったので、でたらめな内容を含んでおるというふうに考えます。  その第一点としては、公団から造林費の全額を支給される造林者が二〇から一〇%の分収を受けるというふうになっておりますけれども、なぜそれだけの分収を受けるのか、理由の説明がついておりません。造林者は全然出費をしないで、いわゆる請負業者というものとほとんど内容的に異ならないにもかかわらず、こういうふうな分収を請求をする権利がどこから考えられるのか。この点非常に問題を感ずるわけでございます。  次に、これに関連をいたしまして、市町村造林者である場合には、林野当局の公表した分収歩合でいいますと、大体七〇%から六〇%にするはずでございますけれども、この点についても当局側は五五%というふうに、いわゆる値切った数字を出しております。この点も、市町村造林者として一緒に仕事をやる場合に、造林者の取り分というものが明らかに半分から四分の一に減っておる。その辺の計算の根拠というものが全く明らかになっていないわけです。また、市町村有地に対して森林組合が造林者になる場合には、森林組合の取り分というものはそれぞれどういうふうな数字を示すのか、この点も全くわからないということが言われます。ことに、この問題は市町村のいろいろな面に重大な関係を有する問題でございますし、このような明確でない態度のままに、急いで審議を打ち切って、悔いをあとに残すことのないように、特に要望を申し上げておきたいと考えるわけでございます。  公団移管が実現をした場合の公団造林の将来についてでございますが、先ごろ周東農林大臣が国会答弁の中でこういうことを言っております。それは移管になっても官行造林と何ら変らないのだ、かえって能率的になるのだ、こういうふうな言い方をしておりますけれども、今まで私が申し上げたように、この国会の中でした答弁というものは、官行造林の性格というものが根本的に変わっているにかかわらず、それに全く目をおおった説明なり表現であるというふうに考えられます。しかも、私ども全林野は、公団に移管になったとしても、はたしてこの公団造林の将来というものが遠い何十年も先において存続できるものかどうか、この点に非常に疑問を持たざるを得ないのでございます。さらに、林野当局は、基本問題答申に基づいて国有林の公社移行という点を準備をしております。これは、答申の中にも、経営行政を分離をせよということで、その中から考えられました、いわゆる従来ありますところの国鉄なり、専売、こういうふうな相似た公社制度というものの検討を進めておりますけれども、はたして、そういう公社というふうな体制になっていった暁においても、現在当局が考えており、かついろいろ説明をしておるような無償出資というものを毎年公団に対して行なうことが可能なのかどうか。こういうふうなことは今までの三公社の中にも例を見ない形でございますし、きわめて危惧の念にかられるわけでございます。私たちはこういうふうな点から見ても、何ら長期の見通しがないままに公団に移管をする、このために各市町村については取りかえしのつかないような損害を与えるであろう、このたびの官行造林法の廃止について反対をする、こういうふうなことを申し上げたいと思うわけでございます。  最後に、林業基本問題答申との関連について申し上げたいと思います。  林業基本問題答申は公有林野の縮小政策というもの、そういう方向を指摘をしておるということは、先ほど来の答申自体に基づく質疑の中からも明らかに読み取れるところでございますけれども、答申は、市町村林野の直営というものを否定をし、また、家族経営林業育成ということで、市町村有地上の実質部落有地の利用から下層の農民を締め出そうというふうな考え方をいたしております。答申では、このために官行造林市町村有地導入というものに反対をしたい、こういうふうな考え方が答申の中に出ておるわけでございます。自治省覚書を取りかわしたにもかかわらず、林野当局はそれを一時の便法というふうに考えておるだろうと思いますが、依然として他の面においては答申強行の準催を進めております。農業基本法案の第二十二条に書かれておりますのは、林業の家族経営育成ということが載っておるわけですけれども、今次の国会において林業経営安定化資金の制度化を内容といたしました、いわゆる農林漁業金融公庫法の一部改正法律というものが成立をしておりますけれども、これらの家族経営林業の対象地というものは、いわゆる国有林であり、市町村有林であります。ここで、官行造林廃止をして、市町村の優先順位というものがなくなったいわゆる公団造林というものが発足をすれば、このような公有林野政策の大転換に伴って、市町村林野を見捨てるということが容易になるのではないか、こういうふうな考えを持っております。現在、この国会の内外におきましても、農業基本法をめぐっていろいろ論議が白熱化しておりますけれども、しかし、基本問題答申、農業基本法案というものは、いわゆる多数の農民から農地を奪うだけではなくして、今回、このような措置によって、多数の農民は農地だけでなくして山林原野もさらに奪われるのではないか、部落林野は一部の上層農家というものに分割集中されるというふうな傾向が出てくるでしょうし、市町村林野についても解体をされようというふうなことが懸念をされるのでございます。  私たち林野として官行造林廃止公団移管に反、対をしておりますのは、今まで各項目について意見を述べましたが、このような観点から根本的な矛盾を感じ従来の公有林政策と全く逆行した政策が行なわれていくであろう、さらにまた国有林野事業に働く労働省の生活が極度に脅かされんとしている、こういうふうなことから反対をしております。  最後に、本委員会が慎重な審議を尽くされまして、私たちのこうした危惧の念、私たちの期待に十分こたえられんことをお願いいたしまして、以上をもちまして私の口述を終わりたいと思います。(拍手)
  171. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 次に田畑五郎司君にお願いいたします。
  172. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 私は長野県の伊那市の市長代理で伺ったわけであります。本件に対しましては、先ほど来秋田県知事さんの参考人がお述べになりましたことと大体において共通をいたしておりますので、ごく簡単に私どもの地方の実態の点を御参考に申し上げて御批判を仰ぎたい、かように思います。  実は、私どもの地方といたしましては、現在まで官行造林地帯は海抜干メートル以上というところから二千メートルぐらいというふうな非常に高いところでありますので、実際問題としてはいかに公有林野といってもその市町村がその植栽をし撫育育成をするということは不可能、こういうところを現在まで四十年間にわたって官行造林でやられてきた。その結果が先ほど来るるお話のありましたように、収穫の時期になりまして、この官行造林事業の地方公共団体あるいは一般農山村に及及ぼす影響が非常な利益であり、かつまた加えて国土の保全という観点から申しましたときにもこれは申し分ない、こういうことをこの四十年来の実績において深く確認をいたしているわけでございますが、今回突如としてこの法案改正が出されまして、そうして出先機関によって契約団体等に説明をいたしたところによりますと分収率の点において、先ほど来お話のありましたように、自治省とその後の話し合いがあったという話ですが、当時の説明によりますと、五分・五分の分収より土地所有者が少なくなるのだ、こういう不安を与えられたわけです。さようにいたしまして、さらにこの造林育成の一つ機構としては、先ほど来お話のありますように、造林者があり、土地所有者の契約者があるというふうにさらに複雑化をいたすわけでありますが、その造林者というものが、実際問題といたしましては、今まで国有林野等の官行造林におきまして永年築き上げてきたところの労務配置の問題が切りかえられてはたしてうまくいくかどうかということが重大な不安に相なるわけであります。従いまして、これが不安になって参りますれば実際問題とすれば土地所有者と二者契約というような問題が想像されますので、先ほど申し上げました通り、この実態は官行造林によってやられたよりほかにこのいい方法はないと考えているのであるから、ここで二者契約によって労務協定を契約者たる土地所有者がやった場合には、これは実際の植栽撫育という問題はできないという見通しの上に立っておりますので、この点に対しましても重大な不安が生じ、従いまして、できないできないということが続いて参りますれば、実際問題としては、この造林、山を植林をしていくということが今度は低下していくであろう、こういうふうに想像をいたします。従いまして、そういうことが低下して参りますれば国土の保全上に重大憂慮を生じて参る、こういうことに考えますので、以前通りにおいて官行造林事業によりましてこれをぜひ継続していただきたい、こういうわけであります。もちろん伊那市の市会といたしましてこれに対しまする反対決議をいたしたわけでございますけれども、それらは、全林野労働組合等が先ほど来るるお話がありましたように労働低下の問題、または地方公共団体の財政基盤の問題、そういう問題等も非常な広範囲にわたっての提案で請願がありましたのと、それから、もう一つは、契約団体二十一団体がありますが、その団体も、先ほど申し上げた出先機関の説明をよく聴取した上で、これはやられては大へんだという判断の上に立って市会に対しまして請願をいたしたので、それに加えて、市会におきましても、この点を十分検討をいたし、そして、法案改正は非常に危険であると同時に、住民の不利益である、しかも国土保全の上に非常な憂慮すべき点が将来起こるであろうという判断の上に立って決議をいたした次第でございます。  いろいろとお話が参考人の方からありましたことと重複をいたしますので、ごく簡単にこの程度で私の意見を終わります。
  173. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 これより参考人に対する質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。中澤茂一君。
  174. 中澤茂一

    ○中澤委員 田畑さんに伺いますが、出先機関が皆さんに、分収歩合が少なくなる、その少なくなるという理由はどういう理由を説明されたのか、それをいま少し具体的にお聞きしたい。
  175. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 お聞きの点は、三者、すなわち公団造林者土地所有者いわゆる契約者、この三者の関係にあるから、造林者と称する部分が二割ないし三割の分収をするのだ、従って、土地所有者は三割、四割あるいは五割であるかもしれぬというような説明をされておりました。最近においてはその点が固まって参っておるようでありますけれども、そういう説明であったから、勢い不安をかり立てた、こういうことであります。
  176. 大野市郎

    ○大野(市)委員長代理 中澤君に申し上げますが、山本参考人が五時にどうしても帰らなければならぬ用事がありますので、もし山本参考人に御質疑がありましたら先にしていただきたい。——それじゃ芳賀君。
  177. 芳賀貢

    ○芳賀委員 山本参考人は、正式に全国町村会を代表した意見でないというお断わりがあったので、それは了承しますが、住まいが千葉県のようですから、参考までに、千葉県下における官行造林の実態と、一昨年三十三年にできました分収造林の実態、県内の各市町村においてどういう状態で行なわれておるか、おわかりの範囲でお聞きしたい。
  178. 山本力蔵

    ○山本参考人 はなはだ赤面の至りでございますが、私の方は、御承知の通り、千葉県にあまりたくさん国有林もございませんし、自分の町も利根のほとりでございまして、個人的には林野行政についてはなはだ知識がございませんで、千葉県の全体につきましても今直ちにお答えをする知識がございません。恐縮でございますが、御了承賜わりたいと思います。
  179. 芳賀貢

    ○芳賀委員 これは御存じないかもしれませんが、官行造林法も分収造林法も、おもに国有林野以外のところで実施しているのがこの造林法なんです。ですから、あたりまえから言うと、千葉県に国有林野が非常に少ないことはだれも知っているのですが、ないところほどこの官行造林とか分収造林制度が必要になる。ですから、そういう点で、この制度を非常に活用されているかどうかということで聞いたのですが、県下では全然分収造林というのはやってないのですか、どこでも。
  180. 山本力蔵

    ○山本参考人 やってないことはないと思いますが、数字につきましてはっきり存じません。
  181. 芳賀貢

    ○芳賀委員 実は林野庁から出た資料によると、千葉県は官行造林は公有林も私有林もゼロということになっております。これは何か間違いでないかと思ってお尋ねしたのですが、それでは林野庁の資料の方が大体正確と見ていいのですね。どうですか。
  182. 山本力蔵

    ○山本参考人 その資料が正しいと、私の知識で想像します。
  183. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それで、ただいま田畑参考人あるいは先ほどの秋田県の小畑知事からもお話がありましたが、造林事業や林業に非常に関係のある都道府県や市町村は、この制度の改廃に対しては重大な関心を持っております。それらの関係都道府県、関係市町村は、無条件賛成というのは一つもないのですね。先ほど参考人から御意見もあった通り、住民の国会に対する反対の請願とか、市町村議会や県議会における反対の決議等が各地で実は行なわれておるわけなんです。そういう重大な問題ですから、おそらく、全国市町村会の事務局においても、全国の動向がどうなっておるかということは、あなたは御存じないとしても、事務局においては大体大勢というものは察知されておるんじゃないかと思うのですが、ただいまの御意見で言うと、まず賛成というような御意見に尽きておるのですね。それでは、地方の実情や、町村長会のメンバーであるこの林業関係のある市町村の意向に沿わないような御意見になるのではないかと思いますが、その点はいかがですか。
  184. 山本力蔵

    ○山本参考人 冒頭に申し上げましたが、各地から官造林廃止につきまして反対陳情がたくさん参っております。これらについて正式に、それぞれの特徴のある町村長、さらに知識の高い関係者を集めて検討すべきでございましたが、その時間的余裕がございませんでしたので、そういう点については全般的な町村長会の意見としては申し上げられないと存じますが、常任理事会の終わりましたあとにこの問題がやはり話が出まして、農林当局等からおいでいただきまして、林野関係の深い人が特に出席しまして検討しました結果は、市町村に大した不利がないということ。特に私どもが従来公有林野の管理改善というものを三、四年にわたって研究して参りましたが、従来は市町村造林はどうもあまり信頼されませんでした。これらについていろいろ検討いたしました結果、いわゆる公有林野の融資の問題がまず大事だ、長期・低利の資金が必要だという点を取り上げまして、政府国会陳情いたしまして、現在の制度ができたわけでございますが、その後の、たとえば部落有林の問題とか入会地の問題とか官行造林の問題につきましては、専門委員会でまだ検討に入っておらないわけであります。一応私の意見といたしましては、今までの先ほど申しました役員会におきまして検討の結果自治体のあり方といたしまして自主性を持って市町村造林意欲と技術を活用して自主的に造林するということは今後の自治体の運営する方向から言って適当じゃないか、かような一般的な見地に立ちまして賛成を申し上げる次第であります。こまかいいろいろな技術的な面あるいは労働の問題等につきましては、これはまた労働関係の方々に不利がないように、さらにまた、市町村に対して技術的な援助を続けていただきまして、市町村が不利がないように御高配をいただきたいということを希望しながら賛成いたした次第であります。
  185. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あまりおわかりないようですからこの程度にしておきますが、ただ、かりそめにも全国の会長さんですから、全国市町村においてこの問題には反対であるそういう声が非常に高まっておることですから、その会長さんが軽々と賛成の意見を述べたなんということがあとで伝わると、御苦心なさる場合があると思います。個人的な御意見ということでわれわれは了解して、老婆心ながら申し上げます。
  186. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 関連して。  山本参考人にお伺いしたいのですが、あまり山に対する知識がないということですけれども、従って、おそらく読んでおられないのではないかと思うんですが、林業の基本問題と基本対策という農林漁業基本問題調査会から出された答申に目を通されたことがありますか。
  187. 山本力蔵

    ○山本参考人 お恥ずかしいですが、勉強しておりません。
  188. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 われわれがきのう以来問題にしておるのは、林業の基本問題と基本対策という中で出ておる公有林野政策あるいは部落有林政策、これは生産政策の面でも高度生産の面でも一体答申は何を言わんとしておるかという点を非常に問題にしておる。そういう問題と、今度官行造林関係を排除して公団でこれをやらせるという結びつきは一体どうなるのかということを昨日来非常に真剣に論議をしてきておるわけです。その論議の過程の中で、答申の中で言っておる家族的林業経営、これは農業を含めて五町歩、望ましくは十町歩、林業経営を中心にしてやる場合には二十町歩というような家族的な林業経営を育成強化していく。そういうものの山の対象地というものを国有林に求め、公有林に求め、部落有林に求める。特に部落有林等については積極的に家族的林業経営の対象にして分割売り渡し等をやっていこう、公有林等についてもそういうことは相当に強調されて出ておるわけです。しかもまた、自治省林野庁との間に結ばれた土地所有者の分収割合五〇%を標準とするという問題は、これは、答申の方向から言うならば、やはり、今後の条件設定あるいは家族的林業経営を育成強化するためには、地代額としての観点から従来の分収歩合は土地所有者に非常に高過ぎる、これは答申の方向としては引き下ぐべきであるということが端的に出てきておるわけです。そういうふうなことから見て、公団移管の問題は、官行造林をそのまま続ければなかなかそういう方向を打ち出すわけにはいかぬけれども、公団に切りかえることによってワン・クッション置いてそういう方向に出そうとする。おそらく山本さんも聞かれたと思うんですが、林野庁あたりは分収の場合の問題については相当下げてやろうとする傾向があったようにわれわれも聞いておるわけです。ところが、自治省との間に妥協の産物としてこれが出てきた。小畑さんがその点将来どうなるかという御心配の意見も先ほどに述べられたが、それはどこから出ていくかというと、やはり、これから長期にわたる林業政策というものを、答申の指向している方向、公有林野政策あるいは部落有林部面の政策こういう問題の中で出てきている。それと今回の二法案というものと、われわれが詳細に精査した場合にそれがどうなるかということを非常に真剣に考えて論議をしてきているわけです。従って、単に従来国がやってきておったものを公団がやるのだ、市町村造林もできるのだという形で安易にこの問題を見ることは、いわゆるこの問題と基本問題と関連を十分に精査した判断とは言えないと私どもは思う。特に地方財政上のいろんな問題もありますから、分収割合が五〇%の問題については単なる地代額としてこれを考えるわけにいかないというふうな面からこの問題をとらえているわけですけれども、その点を十分、先ほど何か役員会とか言われたのですが検討の上に立ってやられたのか、その点をお伺いしておきます分収歩合の問題につきます。
  189. 山本力蔵

    ○山本参考人 分収歩合の問題につきましては、私どもとしまして、現在の五分・五分、むしろ今度改正市町村造林者になれば割がよくなるという建前に立ちましての賛成でございまして、市町村が従来の条件より悪くなるということでありましたならば、これはもう賛成することはできない。  それから、農業基本問題との関連の問題につきましては、私知識がございませんのですが、ただ、今回の改正は大体奥地の水源地帯の問題が影響が大きいようでございまして、一般の経済林につきましては、私どもといたしましては、あくまでも、今度の融資ができましたので、直営でいこうということでございます。はなはだ不十分なお答えで恐縮に存じますが、以上で御了承を賜わりたいと思います。
  190. 湯山勇

    湯山委員 関連して一点だけお尋ねしておきたいと思います。  それは、今回の法改正によって市町村が自主的に造林をやっていくということはいいことだから御賛成になった、こういうことですが、従来市町村でやっていない造林を今度は市町村で引き受けるという形が出てくると思うわけです。地方財政計画の中ではそういうことに伴う人件費等は見ていないようですね。そうすると、かりに今のようなことを方針としては賛成であっても、三十六年度の地方財政計画の中ではたとえば専門技術者を置くとかいうことについての地方財政計画ができていない。そうすると、その分は、計画だけ進んでおっても、四十年の向こうでどうなるかということは別として、さしあたって少なくとも三十六年度では市町村の持ち出しという形が出てくるわけです。こういうことについては林野庁の方とのお話し合いの中で御議論になられたのだろうか、あるいは、そういう点についてはどういう説明があったんでしょうか、また、それについて会長としての御意見を伺いたいと思います。
  191. 山本力蔵

    ○山本参考人 私どもが了承しておりますのは。先ほども御意見が出ましたが、官行造林廃止しまして既契約の分まで直ちに市町村経営するということは了承しておりませんで、伐採をされまして今度新規に植林をする場合、その費用はなるほど地方財政計画にございませんが、今度の公団から必要なる経費は全額政府で持つわけでございます、再造林するわけです。
  192. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それは公団もやらぬわけです。できないことになっている。
  193. 山本力蔵

    ○山本参考人 町村がやります場合、公団から経費が出るわけでございます。それで経営をやることになっております。それから、経費は全部公団の方で、国の方が心配してくれる、そういうことに了承しているわけであります。
  194. 湯山勇

    湯山委員 ほんとうにそういう説明がありましたか、今おっしゃった通りの……。
  195. 山本力蔵

    ○山本参考人 私どもはそういう工合に了承しております。
  196. 湯山勇

    湯山委員 それじゃけっこうです。
  197. 大野市郎

    ○大野委員長代理 山本さん、どうぞ。御苦労さまでした。  中澤君。
  198. 中澤茂一

    ○中澤委員 田畑さんに伺いますが、伊那市の場合、私有林面積はどの程度あるのですか。
  199. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 約六千町歩あります。契約面積ではありませんが、全面積。    〔大野(市)委員長代理退席、委員長着席〕
  200. 中澤茂一

    ○中澤委員 そうすると、私有林面積に対する官行造林契約面積というものはどのくらいありますか。
  201. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 ありません。——ちょっと私が聞き違えましたシとは伊那市の市有ですね、私ではないのですね。——私ですか。ありません。
  202. 中澤茂一

    ○中澤委員 今度、融資方式もあるが、官行造林を打ち切った場合、あなたの言われるような千メートル、二千メートルという、そういう高いところのものを森林組合あるいは市が造林するという経済的能力と申しますか、そういう力は森林組合なり市の行政措置なりでできる可能性はあるのですかないのですか。
  203. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 可能性はありません。と申しまするのは、現在公団契約をしてあるのは造林者造林費を算定して渡すという目標がおおむね五万円ないし五万何千円と言われておるわけです。しかし、そういう奥地でありますので、先ほど申し上げたように、官行造林事業でやって参ったということは、その労力計画配置においてやって参ったので、今新米の市町村が、あるいは、森林組合がこれを引き受けてはできないだろうということの考えが強く、それでできるという自信は持てないわけであります。従って、持てないような状態になりますれば、実際問題として、形だけは植えてみても、将来の育成というものが非常に危ぶまれる、こういうわけでございます。
  204. 中澤茂一

    ○中澤委員 市会の方で反対決議をされたり、われわれも請願、陳情等受けたわけですが、市会で反対したおもな論拠というものは、さっきあなたのおっしゃったことで大体わかりましたが、その問いろいろ市会としても意見を統合しただろうと思うのですけれども、結論的には、これはできない、それは無理だ、やはり今まで通り官造でやってもらった方がいいだろう、そういう結論だったと思う。その間市会といい、やはり林地所有者、そういう多くの方々から陳情、請願等があって市会がああいう決議をされたんですか。
  205. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 先ほど申し上げたのですが、この問題は、突如として法案が出る、それで、全林野の労働組合、それから、さらに重大なことは、契約二十一団体がこの問題に対して取っ組んで研究をする、それで、出先機関の説明を求めるというふうにしてやった結果、先ほど申し上げたように、この問題に対しましては絶対に不利益であるという判断に立った、こういうことです。
  206. 中澤茂一

    ○中澤委員 いま一点お伺いしますけれども、当局者の方は、首は切らないんだ、それから、先ほど亀井さんの口述にもあったように、労働組合の方は、首切りだ、こういう点が非常に対立点になっておるのですが、現実の問題として、あなた方が現実にこの仕事に森林組合と取り組んでみて、事実上そういう問題がどんどん頻発して出てくるという傾向はあるんでしょうかどうでしょうか。
  207. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 この労務問題は、常識的に考えると、今まで官行造林事業でやっておった労務者が即公団いわゆる造林者の方へ肩がわりをするということになれば、なるほどというふうに思えますが、実際問題としては、しからばその造林者が森林組合あるいは契約者たる土地所有者等になった場合に、はたして今の官行造林事業で活用していったようなことが——今の何というか長い歴史において築き上げた組織であるのを、ここで切りかえた場合においては、非常にこの運営はむずかしいだろうと想像をいたしておるわけで、やってみないからわかりませんが、そういうわけであります。
  208. 中澤茂一

    ○中澤委員 最後にいま一つお伺いしますが、新規の官行造林契約、そういうものがあるのかないのか。それから、今までの契約でまだ伐期に来てないものが相当あるのですね。そういうものはどういう状況ですか。
  209. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 先ほど申し上げましたように、約六千町歩の原山林があるわけです。その中で、現在契約されている面積が二千町歩ございます。そこで、三十一年七月以降において契約されたものがそのうち七百町歩くらいあります。従いまして、前に契約したのが千三百町歩。その中で、先から申し上げると、千三百町歩中には、もう伐期齢に参りましたものがあり、二年ほど前から入って主伐にかかっておる。そういうことで、先ほど冒頭に申し上げましたように、この造林施策が非常にいい政策である、こういうことをつぶさに体験をいたしたわけであります。それから、その七百町歩の三十一年度以降の契約の分に対しましては、現在植栽されたものが三百町歩ございまして、四百町歩がまだ未植栽でございます。さらに、その二千町歩以外に契約をお願いしたいというものが三、四百町歩あります。このときにおいて突如としてそういうことに相なって参ったのに、七百町歩中の残った未植栽の四百町歩、さらに将来希望したところの三、四百町歩というものが落胆をいたしておるわけであります。だから、落胆をするということは、過去の千三百町歩中の伐期に入った実績から見て、非常にありがたいことである、こういうわけであります。ただありがたいありがたいと申し上げても、実際は、それじゃ国の全体の合理的な造林計画というものから言うとどうだという御議論もあるけれども、私は信じて、この問題は、国が赤字だか黒字だか存じませんけれども、たとえば赤字の官行造林でありましても、国土保全の観点に立ったときに、非常な効果をもたらしたと思う。一雨来れば百億や百五十億は飛ぶことはあたりまえだが、それじゃその植栽を続けていったらその百億、百五十億が年々要らなくなるかということは、これはもちろん断言できませんけれども、ある程度の災害の減少はでき得る確信を持っております。そういう観点から言って、かりに、官行造林事業が赤字だか黒字だか知りませんけれども、赤字でありましても、全国土の問題から言ったら微々たる問題である、こういうふうに思っております。
  210. 中澤茂一

    ○中澤委員 林野庁意見としては、もう伐期に来て相当な収益をあげておるのだ、収益を相当あげておるのだから、その収益で自主的にやっていけばいいじゃないか、簡単に言えばこういう考え方もあるわけです。そういう点については御意見どうでしょう。お宅の方の場合、主伐期が来たものの受益は、次々とこれをやっていけるならいけるという見込みはあるのでしょうかどうでしょうか。
  211. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 その点が、御承知のように、特に山村の市町村財政というものが、現在再建整備を適用されるというようなものが順次続出しておるというような状況にあるわけであります。この山林の所得がさらに再生産に向けていくという余裕は現在のところありません。だから、これらの問題は、そういう国家的の効果があるから国家においてやっていただいてもいい、こういうように思っておる。ということは、一面、今まで官行造林事業がなかったならば、その山野は放任しておいて雑木を切って売っていく、こういうことでありますので、その森林の経営効果としては、もちろんその雑木林に放任して、その売却による低位の収入であります。それは、そういう計画造林をやってできたからといって、これは国でも多少の問題あるいは損失的な部面はあっても、全体の上において平均されればそういうことはないだろう、別に私どもはそういうことは深く存じませんけれども、そういう想像をいたしております。
  212. 坂田英一

    坂田委員長 芳賀君。
  213. 芳賀貢

    ○芳賀委員 亀井参考人にお尋ねしますが、第一の点は、先ほど述べられた中に、現在の官行造林制度廃止になると、現在の林野庁の職員に対してもいろいろな大きな影響があるというようなお話ですが、その場合予想されることは、現在までの林野庁官行造林事業の中でも、特に主体となって行なってきた営林署あるいは担当医、こういう点、事業所が縮小あるいは閉鎖されるような事態が起きてくるということも言われましたし、また、それに伴って三十六年の林野庁予算の中には官行造林の新植等の予算はないということになると、これはやはり作業員の人件費との関係も出てくるわけですが、われわれの認識では、そういう事業所の縮小とか閉鎖とか、あるいは人員の整理とか配置転換を行なうような場合には、当然当局と組合との協約に基づいて事前協議というものが行なわれるべきでありますが、今度の法改正に伴う事前協議のようなことは、今まで組合と長官の間において行なわれたかどうか、その点はいかがですか。
  214. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 ただいまの御質問でございますけれども、この法案提出するというようなふうな情勢が生まれて参りましてから、全林野として十分内容を検討いたしました。先ほど私がるる申し上げたような内容をもって、この法案提出は見合わせてもらいたい、こういうことを林野庁長官話し合いを持ったわけでございますが、詳しい内容の説明のないままに、これは何ら問題がないのだ、心配はないのだ、首切りなんということは絶対にやらないからということで、組合が反対立場をとるならばやむを得ないという形で現時点まで至っております。当局側は、首切りはないということをよく申しますけれども、国有林野の雇用実態として、毎年、六カ月ないし八カ月あるいは日雇いとして四カ月程度の人もおりますし、一週間、十日の人たちもおります。そういう人たちが毎年国有林野の事業に生計を依存するという形で、反復雇用される状態がずっと引き続いておるわけです。中には、そういう雇用のきわめて不安定な身分のまま十年ないし十五年の表彰を受けたという人が多数あります。首切りはしないと言いますけれども、毎年、春に採用になるときに、何だかんだと理由をつけて、事業量が減った、あるいは本人の衛生上の欠点があるという理由をつけて採用しないという場合があります。ですから、首切りと不採用ということは全然別なものであるということを当局はしばしば言っております。ですから、普通言われるように首切り云々ということを常識判断考えると、この点林野の雇用実態の中からなかなか理解しにくい問題があると思いますが、首切りではない、不採用だ、こういうようなことがしばしば私たち労使の間に言われております。特に、きのうの論議の中でも、優先雇用云々という問題で、毎年働きに来ておる人でもまたことしも働きに来たいという人は当局も当然のこととして考えておる、ただ、組合側とこういうような問題について協約を結ぶという点は、まだ予算が成立しておらない段階でことしの雇用量を決定することはできない、こういう説明をしておったやに聞いております。しかし、組合側が用いている優先雇用という字句は、文字通り、かりに百人の人を採用するという場合に百二十人の希望者がいる、これはどういうふうな順序立ての中から百人を優先的に選び出すかということで、完全雇用というものとは内容が異なっております。ですから、予算がかりに通っておらないとしても、従来反復雇用してきて五年なり十年なり毎年そういう状態を続けておった、あるいは組合側と話し合いの中から本年何名使えるか、あるいは予想でもよろしいと思いますが、そういう場合にはどういう順序でやるのだということで、そういう協約ですら結ばない。それが現在林野庁がとっておる態度でございます。  今御質問にありましたような事前協議という点でございますが、これは、私たちも久しき以前から、いろいろな林野の国有林野事業としての経営の方式なり、特に先ほど述べたような林業基本問題答申の中から今公社化というふうに大きく機構改革が出て参る、そういうふうなことを十分考えまして、われわれとしても今後の方向というものを忌憚なく話し合い、そういう態度について組合の意見も十分述べたい、そして十分話し合いのついた中からそういうことを実施すべきであるという考え方で、事前協議ということを締結してほしいという要望を出しておりますけれども、その点は、いわゆる管理運営権であるとか、あるいはそういう事項について組合側と文書上の協約は結ぶ必要はないということで、内容としては当局側としてその計画を説明をする、こういうことにとどまっておるわけでございます。三十年以来林野庁は林力増強計画というものを非常に強力な体制で推し進めておりますけれども、これらの計画のすべてについても、組合側に説明をするきわめて消極的な態度に終始をしております。今回、官行の問題についても、先ほど申したようなことで、具体的な内容の説明なり、こういうものはされないままに今日に及んでおる、このことを申し上げておきます。
  215. 芳賀貢

    ○芳賀委員 私たちが当委員会を通じて承知しておる範囲では、この官行造林制度廃止された場合においても、人員、機構上の問題については、営林署の廃止とか、あるいは担当区や事業所の廃止、縮小は決して行なわない、その理由は、新植はやらないが、もうほとんど主伐期に入っておる地域が多いので、その方の事業等が相当分量拡大していくし、もう一つは、三十六年度から営林署の事業計画を従来よりも一割くらい増伐するというような計画が立てられておるわけであって、そうして主として直営生産方式をだんだん改善拡大していけば、現在の雇用量を縮小するということは絶対にない、むしろ、将来は、三カ年計画なり、今、亀井参考人が言われた、いわゆる非常に不安定な季節作業員等についても、事業量の拡大によってこれを通年化して、そしてその通年作業員あるいは固定した作業員というふうに吸収して、事業量の増加とかまた林量事業の近代化等によって、決してそういう不安な状態は雇用関係とか、あるいは事業面においては生じない、こういうことを長官からも明らかにされておるわけであります。その点幾分食い違いがあるわけでありますが、そういう食い違う点は、当局が今私が言ったような態度であるとすれば、今後組合との協議等において大体調節できるというような見通しがあるわけですか。
  216. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 ただいま官行造林の主伐期に入るということと、それから、すで計画に入っておりますけれども、約一千万石の増伐をするというふうに非常に事業量がふえてくるから、そういうものもにらみ合わせながら雇用量というものは絶対に減らさない、確保するということを昨日も言明しておられるようですけれども、この主伐期に入る、あるいは増伐部分については、われわれの判断からするならば、大部分というものはいわゆる立木処分で施業方式をやっていくのではないか、こういうふうに考えられます。つい数日前に全林野の本部としても雇用関係について当局側と団体交渉を持ちました。その際に雇用の点についても触れたわけですけれども、そのときの説明というものは、従来やっておった方式、たとえばその地区において直営生産が適当だとすればそのような形に従ってやるし、それから、立木処分の場合には、そういう立木処分の方がよいとするならば、その地区における両者の均衡、そういうものをにらみ合わせながらやっていきたいということの説明を聞いております。しかし、その反面、長官などが他の座談会に出た場合には、これらの増伐の問題については、この大半というのは立木処分でやるというふうな相当異なった態度というものが出されておるということも知っておりますし、それから、さっきちょっと触れました、今回の官造について雇用量については絶対に心配はないという点につきましても、長野においてはすでにそういう事態が出ております。大阪の事態についてもう少し詳しく説明をしたいと思いますが、大阪においては、すでに各営林局署が雇用計画を立てあるいは具体的に人選に入っておりますけれども、定期作業員十三名程度が今年度は不採用ということを申し渡されております。それから、従来官造に従事して四カ月以上稼働しておった作業員が三十八名程度落とされておる。それから、四カ月未満の作業員の場合にも七十四名程度落とされておる。その他日雇い作業員を含めて実に延べ人数にいたしまして十六万八千人というものがこの春の雇用計画から落とされておる事実がございます。それから、さらに、雇用期間というものが短縮をされる。毎年六カ月というふうな稼働の中から定期作業員という身分、雇用区分を保持しておった人たちですら、四カ月程度でということで六十名も落とされておる。あるいは四カ月未満の人でも四十名程度も短縮をされておる。こういうふうな実態が出て参っております。それから、営林署あるいは担当区の問題についても、ここ一、二年それらの統廃合というものが直ちに出てくるとは思いませんけれども、その後の展望についても何ら明らかにしておりません。すでに、大阪の説明でも、松江、姫路、こういう二署については四年ないし五年のうちに廃止されるであろうということを当局側も言っておる。それから、担当区などに至っては十六の営林署にまたがって三十四の担当区が官造廃止に伴って廃止をされる、こういうような状態が具体的に出て参っております。特に、長野のごときは、組合側がこの点を指摘をして、林野当局の説明をしておる点と違うという点に対して強く主張したにかかわらず、今出ておるような計画については変更する意思はない、こういうことを明確に言い切っておりますし、当然林野当局としてもこれらの責任追及というものに対して明確に出すべきではないか、こういうふうに私は考えております。  それから、三十四年度の三カ年計画で常用化するという問題は、林野当局も林野事業に働く作業員の雇用区分というものを固定化するという点は私たちにも約束をしております。具体的にまだ詰めておりませんけれども、漸進的にこれをやっていきたい、たとえば、きのうも申しておったように、三カ年計画で常用化の姿がどうなるかというふうな、各年度における過程の問題などもこれから具体的に論議があると思いますけれども、大事なことは、組合側と十分話し合いをして、その中から双方が摩擦のない形でこれらの案件を処理していくべきであると思いますし、先ほど芳賀先生から御指摘になりました事前協議というものをこの際労使の間において結ぶべきではないか、こういう点をつけ加えまして、ただいまの御質問にお答えしておきます。
  217. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、関連した問題ですが、先般仲裁裁定が出て、政府もこれを完全実施するということは表明したのですが、その場合、全林野の職員や作業員の場合、まあ一二%の昇給ということになるが、これは、配分については当局と組合が善意な合議によってやるということになっておるが、この作業員の関係についてはこの対象からはずされている部分もあるわけですね。組合側としては、どういうような方法によって、昇給された組合員と昇給の対象から一応除かれた作業員との調整を当局との交渉の中で進めるのか、また、当局においてもこれをどういう方向できめようとしておるのか。あわせて、今回の機会にその新賃金の協定が両者話し合いでできる道が開かれたというふうにわれわれは承知しておるのですが、その関連において御説明願います。
  218. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 今回出されました仲裁八十五号によって月給制の場合には、国有林野の月給制職員は大体二千三百円程度のベース・アップという結果が出て参っております。これは、御指摘のように、労使協議の中で具体的な配分を決定するということで、今折衝に入っておりますけれども、問題点は日給制の作業員にあります。これは、過去三ヵ年にわたってそれぞれベース・アップの要求を出して、仲裁裁定の結果ゼロ仲裁ということで、三十五年度の場合にはわずか一日五円ないし六円という額上げだけが決定したのみであって、ほとんど三年間ゼロ仲裁にひとしい結果になっております。今回の仲裁においてわれわれが期待したのは、わが国における経済事情の向上なり民間賃金の上昇、そういうようなものを考えて、当然、一般公務員法のワク内において律せられておるところの国有林野の現場の作業員においても同じようなベース・アップというものが適用されるべきである、そういうふうに考えておりました。ところが、この点についても、長年の当局側の主張というのは、現場の作業員の賃金というものはそれぞれの地区における賃金相場においてきめればよろしい、こういうふうな考え方を強く固執しておるわけでございます。仲裁委員会の中でも、当局側がそれらの事情を説明をし、さらに、最近における急激な賃金の暴騰、そういうものから見て、地区別あるいは職種別に一部の賃上げを当局としてもやろうという考えである、こういうことを言っております。当局の言によりますならば、大体全国平均にして五ないし六%ということを言っておりますが、今回出された月給制の一二%というものに比較をした場合に相当隔たっております。しかも、過去三年間というものはゼロ仲裁というような中で、林野の作業員の生活実態というものは非常に苦しい状態にある。たとえば林野の作業員のベースというものは大体四、五百円程度でございますけれども、これが二十四日ぐらいの稼働しかない。月に一万五千円程度の収入で、山元における食費、そういうものを除いて、うちへ持って帰る金が八千円程度しかない。子供が三人であって細君は一人なんですけれども、そういう中でどうやって八千円で食っていけるかという問題を林野当局に迫った際にも、林野当局はまともにそれを受けとめようとしないで、生活実態というものは単に今後来年度から計画をして調査をしますということで逃げております。非常にそういう苦しい状態から目をおおって地場賃金政策というものに縛りつけておるのが現在の林野庁がとっておる日給制の賃金政策であります。今仲裁案が出た現段階におきまして、私は、全林野としては少なくとも月給制の一二%に相当するものを賃上げすべきである、こういう要求を当局に出しておりますけれども、まだ日なお浅くして具体的な検討に入っておりません。しかし、当局側が言明をしておる五ないし六%というものについても、新年度予算正規に乗っておるものではなくして、聞くところによりますと、予備費の中にこれが組み込まれておるというふうなきわめてばく然とした回答しか出しておりません。今度の仲裁実施について数日を経ずして補正予算という形で何らかの措置をなさるやに聞いておりますが、日給制の仲裁実施あるいはべース・アップの問題については、前途の見通しとしては非常に暗い事情にございます。私たちとしても、早急にこの点の当局側に対する交渉を煮詰めまして、一二%の線を実現させたい、これが賃金あるいは仲裁実施に対する私ども組合の考え方でございます。
  219. 芳賀貢

    ○芳賀委員 今の地場賃金の問題ですが、林野庁から配付になった資料によると、大体平均ですが、造林事業の従業者は三百四十三円程度、それから、伐木造材事業に従事する者が五百八十五円程度、製材、木工所、ここへ就労しておる人たちの賃金が四百五十九円、大体こういう資料が示されておるのですが、造林事業関係ということになると大体三百四、五十円というのが平均の地場賃金ということになるのですか。
  220. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 平均賃金と申しまして、全国各営林局ごとにそれぞれ賃金がきめられておりますが、地場賃金の面から見るならば問題にならない額であるということが言えると思います。先般浜松の方に私が参りました際にも、その地区の営林暑に働いている造林作業員の標準賃金がたしか四百三十円程度だと思いますが、その地区においても少なくも五百円以上六百円程度もらわなければ働く人がいない。特に労働組合が組織運動の中から賃上げやそういうのをやらなくても、現実の問題として、作業員みずからが、五百円以上もらわなければことしは営林暑の山で働かないと言っております。これは単なる例でございますけれども、全国的に賃金というものがこう上がってきている中で、現在とっているこの低い賃金というものが国有林野事業そのものを全く阻害している大きな原因になっている、かように考えますし、当然、今回の仲裁裁定実施とも相からみまして、当局としては大幅な賃上げを実施すべきである、こういうふうに判断をしております。
  221. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この機会にお尋ねしておきますが、今国会には定員法廃止法案が出ております。これが成立しますと、今度は定員法がなくなって、各事業官庁の場合は予算定員の方式でやっていくということになるのですが、この点についても、林野当局の意向で言いますと、そういう予算定員になった場合は完全定員化することはもちろんである、そうして、従来いろいろ問題になっておった作業員等の常用化とか、それを定員に繰り入れるとか、こういう問題を早急にきめていく、それから、季節作業員等についても、今後の林野国民経済的な新たなる経営方式に基づいて、一挙にはいかないけれども大体三カ年計画くらいでこれを完全雇用の形で進める、そういう基本的な点については原則についてはこれは組合側と確認した事項である、こういうような説明も聞いておるわけです。時間がないので問題点だけ尋ねるわけですが、この点についてはどうなんですか。
  222. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 現在国有林野事業の中で定員内と言われている職員は大体二万六千ほどおりますけれども、その次に常勤作業員というものがございます。これが大体四千三百程度と思いましたが、それから、就業規則上の三十七条の適用者と言われている、いわゆる日給制であるけれども大体常勤に準じたような形、これは給与の点では明らかに一般作業員と同じようなきわめて悪い条件を甘んじて受けておるわけですが、この人数が大体八千五百名程度おります。それの次に、先ほど当局が言っている、三カ年計画で相当大幅に常用化をしたいという現在の常用の雇用区分範疇に属する人が約一万一千名ございます。私たち林野としては、今回定員法の撤廃に伴って、少なくも現在常用の雇用区分を受けている以上の人、こういう人たちを月給制にすべきである、定員内と同じような処遇にすべきである、こういうような主張を続けて参っております。しかし、遺憾ながら、今次の予算をきめる際に当局がいろいろ大蔵省と折衝したようでございますけれども、この点は、現在までの常勤作業員のうち二百二十名程度を残して、あと全員が定員内に入り得る、三十七条の場合には約六千七百名程度が定員内に入る、これは千何ぼか残るわけで、そういう人たちの一切を含めて定員内にすべきであるというような全林野の主張になっております。今後撤廃された上においては、予算規制とか、あるいは政令においての規制ということもいろいろ言われておりますけれども、やはり、この点、労使の間で十分話し合いの中からその数字なりをきめ、かつ法的な措置というものを講ずべきではないか、こういうふうに考えております。  それから、三カ年計画云々の問題につきましては、三カ年程度の計画をもって、最終的に雇用の状態というものはどういうふうにあるべきか、毎年、今年度はどの程度というふうな問題について具体的に今後協議をしていきたい。当局がよく言うのは、こういう前向きと申しますか、組合側が期待をする方向については、逐次やっていく、あるいは漸進的に十分検討してということを始終申すわけでございますけれども、一方、組合側に対して当局の考えというものを押しつける際は、これはもう時日の余裕がないくらいにいきなりぱくっときて、逐次もへったくれもないような状態が従来とも見られましたし、今後具体的な内容をきめていく際にも、内容をきわめて的確にそういうところの実施が完全に消化されるというふうなかまえの中で内容を  一致させてこの問題を考えていきたい、こういうように考えております。    〔委員長退席、田口(長)委員長代理着席〕
  223. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、今亀井参考人の述べられた点、当局と組合が熱意を持って話し合いを進めれば大体は話し合いというものは、可能であるということは言えるわけですね。特に池田総理は話し合いできめるということを盛んに宣伝しております。だから、林野庁においても話し合いの線をくずす考えはないと思っておりますが、時間がある程度かかるとしても、善意ある話し合いを進めれば話し合いというものはできる、結論が出る、そういう判断に立っておられるわけですか。
  224. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 どうも、十分な話し合いと申しますけれども、今後いろいろ協議する中で意見の一致を期して双方が話し合いを進める、こういう問題と、それから、労働条件としてみた場合に、われわれの判断からするならば、あらゆる問題というのは労働条件がうらはらの関係になっておるという点が非常に多くわれわれの間にあるわけでありますけれども、そういう問題については十分双方の意見を尽くした中で意見の一致を見出す、そのことを実行するというのが団体交渉なりの建前であると思いますが、少なくも現在とっている当局の態度というのは、組合の言うこともよくわかる、自分たちもこういうふうに考えるからやるのだと言うけれどもいざ文書に書けというと、それは書けないということを言って参ります。そういう態度はきわめて私たちとしても納得もいきませんし、過般優先雇用の問題でいろいろ団体交渉の中で論議をした際にも、内容的には組合の主張というものをほとんど認めておりながら、下部においての協約という問題になると、あくまでもこれを拒否するという態度を固執をしております。すでに過去においてもこの優先雇用の問題について協約を締結しておったにかかわらず、昨年の四月一日一斉にこれを一方的に破棄をするという状態が続いております。その後下部段階でいろいろ協議をした結果、議事録抄という形で辛うじて文書の形をつないでおる、こういうふうな状態がありますし、他にこれに類したような事案というのが相当数下部の状態の中にも起きて参っております。やるならばはっきり責任を持った態度で文書に書くということが林野庁として当然とるべき態度であろう、こういうふうに私たち考えておるわけです。
  225. 芳賀貢

    ○芳賀委員 以上で質問を終わりたいと思いますが、なお、最後に、たとえば従来の処分者等に対して昇給の延伸が行なわれた面もだいぶあると思うのですが、こういうのはその後どういうふうに処理されたか。それからまた、聞くところによると、特に地域を述べれば長野営林署の管内等においては、当局のある程度不当と類するような行為が組合員等に及んでおったり、また人事におきましても行なわれておるという点もわれわれいささか聞いておるわけですが、この二点についてお述べになる事項があれば述べていただきたいと思います。
  226. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 処分の問題については、今御指摘のあった定期昇給の欠格条項ということで、その昇給期間中に処分を受けた者はこれを昇給させないということを当局が持ち出しております。現在でも、処分を受けた際にその人が昇給期に該当しておっても三カ月間は昇給を延伸をされる。もちろん、処分の内容としては、戒告なり停職なり、そのときの処分の内容によって現実にそれらの本人の不利というものが出ておるわけですけれども、さらに引き続いて昇給期においても三カ月間延ばす。これは相当多数の人たちが今でも三カ月延びたままになっております。御承知と思いますが特にこういう官庁に勤めておる職員の場合は、長年在職をしてやめる場合においても、恩給とかいろいろ年金関係とか退職金、そういうものにすべて影響するわけですが、一ぺん処分を受けたらそれがずっと引き続いてやめるまで影響があるというような状態がありますし、それから、さらには、現在妥結をしております賃金体系の中で各俸給の等級がございます。上の級に上がる場合には昇格と言っておりますけれども、その昇格の際にもその期間中に処分を受けた者はその中から除くというふうな、きわめて苛酷な方法を現在林野庁がとっております。今までの処分の中で警職法の闘争をやったということでの処分の段階では、これは法案が成立をしなかったし、政府も悪いところがあった、だから、この処分については昇給延伸というものをそこで取り消しておりますけれども、それ以降の処分については、しばしば組合側の希望を述べて交渉しておりますけれども、いまだにこの点の昇給延伸の回復という事実がない、こういうことになっております。  それから、長野の特殊な状態につきましては、林野庁がとっている雇用政策というものと事実相反したようなことを長野の当局自身が非常に強く打ち出しておるという点、それから、いろいろ人事配置の面なり、その他労働組合に対するいろいろな面での圧迫というものは、昨年衆議院の社労委においてもいろいろな角度から問題点が提起をされておりますけれども、現時点に立ってのわれわれの判断とするならば何ら改まったところはないというふうに見られております。本日その点資料がございませんので具体的な例は述べられませんけれども、一昨年私たちの組織の中にも第二組合が出て参っております。その第二組合に走っている組合員の率というものが、長野の場合には全国の傾向から見ても相当高い率を示しておりますし、組合としても十分その点の検討をしておりますけれども極端に現われておるのは組合の活動家なり幹部あるいは第二組合員に行かない人に対して、非常に不利な圧迫を加えているという事実がございます。これは現在数件にわたって公労委に不当労働行為として申請中でございますけれども、そういうふうな観点、あるいは雇用問題についても、林野庁の方針というものから相反したようなことを強行せんとしている長野の当局の責任というものは、先ほど申したように、やはり林野庁としても十分考えるべき問題ではないか、こういうふうに全林野としても考えております。
  227. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 角屋委員
  228. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 田畑、亀井両参考人、おそくまで大へん御苦労さんでございます時間の関係もありますので、数点に限ってお尋ねをいたしたいと思います。  最初田畑さんにお伺いをいたしたいと思いますが、先ほど来、官行造林の伊那市における実態の立場から官行造林を引き続き続行してもらいたいという御意見であったわけでありますが、私どもも、四十年に近い官行造林の問題を一挙に廃止して公団に切りかえるという問題については、かねてから法案提出以来慎重に検討いたして参りまして、現にこの論議をやっておりますし、その点では、十分実態の把握の上に立ってこの法案の処理をどうするかという点について、与党側の方々にも謙虚に事業の推進に支障の起こらないように分相談をしてもらいたいというふうにわれわれは思っておるわけですけれども、従来官行造林をやって参った経験からいたしまして、官行造林運営上の問題点、たとえば一町当たり何本本数を植えるというふうな問題についても、その地域々々によってもう少し本数をふやしてもらったらどうかとか、いろいろな問題があるやに聞いております。運営の問題にわたるわけですが、そういう長い官行造林の対象地として運用して参りまして、そういう運営の問題で希望があれば、この際参考までに承っておきたいと思います。
  229. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 ただいまの御質問の要点でございますが、これは、その地勢、それから気候、特にその年の旱魃であるとかあるいは雨が多いとか、そういう問題で違って参りますが、要点は地ごしらえの問題、地ごしらえを完全にこしらえてあれば、あとは、気候に支配されることは、ある技術において植林した際において芝をかぶせて踏んでおくというようなことにおいて相当な何ができるから、坪当よりおおむね一本ぐらいの植裁をやっております。そういうことで差しつかえないし、この天災的の問題だけはそういう技術面においてカバーするより仕方がないというふうに思っておりますから特にこれに私どもごときがえらい意見を加えるということはございません。
  230. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 亀井参考人にお伺いしたいのですが、主として雇用関係の問題について芳賀委員からも詳細にいろいろお話がございましたが、この際、ここ数年来国有林野の事業の運営面で問題になっております請負事業の導入の問題でありますが、これは、北海道の国有林野造林の場合なんかはほぼ五〇%以上請負に依存するという傾向になってきたというふうに聞いておりますが、従来の請負の仕事の実績というようなものから見ますと、成績も必ずしもよくはないというふうな点から問題を提起しておりますし、また、国有林野関係に働いておる造林関係の賃金以上に請負関係の賃金が支払われておったりして、そこにアンバランスの問題があったり、実際は造林事業そのものは請負としてあんまりもうからないんだけれども、しかし、あと立木の処分とかいうふうなところの抱き合い利潤というものに期待しながらこういう請負事業に手を出しておるというようなことも言われておりますが、国有林野事業運営立場から見て、請負事業の導入というような問題について一体どういうふうに考えておられるか。
  231. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 特に造林事業については相当古い年代に一部請負をやった時代もございましたけれども、何せ生きものの木を植えてそれが生長するという特殊な事業だけに、請負というものが全面的に直営に切りかえられたという時代がございました。ところが、最近事業量が急激にふえておる、労働力が不足だということを理由にして、ここ数年来、今御指摘があったように、全国各地に造林関係の事業を含めて一斎に請負というものが入ってきております。労働組合として、請負が実行された場合に、今まで働いておった人たちの仕事の分野というものがだんだん狭められていきますし、労働条件というものが、すぐ近くで請負をやることによって低下するという実態が出てくるというところで請負導入反対ということを従来まで戦って参りましたけれども、最近出ておる造林の請負の中には、その造林事業を請け負うことによって数十万あるいは百数十万というような赤字が出たという話を業者みずから言ったということを私は耳にしております。それをどこで埋めるかという期待は、今質問の中にも触れておられましたように、やはり特売なり、立木処分という中で何らかの形においてこれを埋め合わせをしたいということの考え方を持っておるようでございます。  それから、賃金の問題では、造林関係の仕事でも、地ごしらえとかそういう面で、おそらく伐木造材手に劣らないような重労働がございます。そういうふうな労働量にかかわらず、賃金水準というものがきわめて低い。たとえば、先ほど芳賀先生が言われた中にも、造林関係が三百円ないし四百円としましても、伐木労働の中には六百円も七百円もということで、差があります。そういう点から、造林関係の仕事の低賃金ということでなかなか働きに来ない。それで、請負をやる人は出来高払いということで工程払いをいたします。それが一日千五百円も二千円にもなるということを言っておりますが、これは労働時間なり本人の労働力の消費あるいは仕事の成果というものについてもきわめて疑問視するような事態が出ております。せっかく植えた木が次々と枯れていったというような事実もこの請負の中には見られるようですが、林野庁は、この造林の請負というものについては、今後減らすなりやらないということは決して言っておりません。直営の事業量というものは今まで通り減らさないで、ふえた分だけを請負にするからいいではないかということを言いますけれども、具体的に岩手県の碇関あたりでつかんだ事実ですけれども、従来直営で働いておった優秀な技術を持っている造林のグループをやめさせて請負の仕事につかせようというふうなことをやっておる。全然林業に知識のない人が請負人となって、しかもある程度賃金の面でも考慮をしながら、そういうふうにして請負にやっていくという事実があります。現に、長野でも、早くに長野当局が各営林署の経営課長を招集して、その中で指示している事項というのは、官行造林廃止になれば請負というものが当然やられるであろう、その際に従来直営で働いておった作業員のグループというものをこの請負の中に引き入れるように指導しなければならぬ、こういうことなのであります。私たちは、請負というものではなくて、国有林野の長年働いてきた作業員の優秀なる技術、それから維持された良好なる労働条件の中で成果のある造林事業というものが将来に残っていくだろうというふうにあくまで考えておりますし、今林野庁考えておる方向についてはまっこうから反対の意向を表明をいたし、今後とも十分この点の努力をやっていきたい、こういうふうな考え方でおります。
  232. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 今度の二法案の問題について、林野当局として、四月一日以降の施行ということから、相当積極的に説明会を持ったり、あるいは。パンフレットを作ってPRをやったり、かつて予算委員会の分科会でもこの問題を取り上げたことがあるのですが、これらのPRの問題は林野当局の第一線の営林局あるいは営林署というところが担当しながらやっておって、森林開発公団というのは全然無関係立場で今日まで推移しておるのかどうかという問題が一つと、何か、林野時報でしたか、北陸方面で三月中に解約第一号が出たというふうな記事がたしかあったと思いますが、今日二法案が慎重審議されておる段階の中で、成立を見越して盛んにいろいろやっておる実態の一端でもわかっておればお話を承りたいと思います。
  233. 亀井忠衛

    ○亀井参考人 今度の法案提出した過程から、当局側としては各営林局あるいは県の関係者等を集めてそれぞれ説明会を開いたようでございますし、各営林局段階でも、下部の市町村関係者を集めて、この問題についてのいわゆる林野庁側から見たいい面だけPRに終始するような内容の説明をやっておったということを聞いておりますが、公団関係では全くこの点については無関係段階と申しますか、現在において公団が積極的にどうのこうの、説明会を開いたとかなんとかいうことは聞いておりません。  それから、申し込み第一号の件については、そういうことが「林野だより」ですかに載っておったということを聞いておりますが、その後具体的に相次いで申し込みが出てきたのか何か、その辺のことはよく組合としても承知しておりません。しかし、私たちも、当局との折衝の中で今法案国会審議中であるにもかかわらず、この法案が通る、あるいはすでに通ったかのような印象を受ける例のパンフレットなどを流すことについては言語道断であるし、また、下部についての説明態勢というものについても、この法案がきまったというような印象を与える説明を現に各地でしたという事実を指摘しております。当局も、その点は若干の行き過ぎがあったということで、その後下部に対してそういうことをやらないようにというふうな指示をしたということも聞いております。
  234. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 最後に田畑参考人にお伺いしたいのですが、この二法案は今国会審議されておる過程でありますけれども、二法案の成立を前提として皆さんの方に説明に来られ、場合によっては、さらに、公団に切りかわるということになりますから一つ解決をして切りかえようというふうなところまでの話があったのですか、今日の段階までに直接官行造林関係の深かった御当地の場合に、二法案の問題に関連しての状況を一つお伺いしたいと思います。
  235. 田畑五郎司

    ○田畑参考人 その点につきましては、先ほど申し上げたように、出先機関において説明をいたしておる程度で、任意解約というような段階までは入っておりませんが、お聞きのような、これが公団に移管されるであろうというような事態が参りますとすれば、今までの実際の実績上から見た点を退歩しないように、あらゆる角度から見てこれより前進するような内部の改正というか修正を加えましてやっていただきたいということを強く希望するのであります。
  236. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  なお、一言ごあいさつ申し上げます。参考人各位には、御多用中にもかかわらず長時間本委員会に御出席下され、貴重なる御意見をお述べ下さいまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  なお、石坂参考人には、恐縮でございますが、明日も御出席を下さいますようお願い申し上げます。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二分散会