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1961-05-25 第38回国会 衆議院 内閣委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十五日(木曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 伊能繁次郎君 理事 小笠 公韶君    理事 草野一郎平君 理事 宮澤 胤勇君    理事 飛鳥田一雄君 理事 石橋 政嗣君    理事 石山 權作君       内海 安吉君    大森 玉木君       佐々木義武君    島村 一郎君       福田  一君    藤原 節夫君       保科善四郎君    牧野 寛索君       松田 鐵藏君    緒方 孝男君       岡田 利春君    杉山元治郎君       山内  広君    受田 新吉君  出席政府委員         総理府総務長官 藤枝 泉介君         総理府総務副長         官       佐藤 朝生君         総理府事務官         (総理府特別地         域連絡局長)  大竹 民陟君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君  委員外出席者         参議院議員   田中  一君         総理府事務官         (調達庁総務部         総務参事官)  藤本  幹君         総理府事務官         (調達庁総務部         総務課長)   財満  功君         総理府事務官         (調達庁不動産         部次長)    小宮山 賢君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      林田悠紀夫君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁政課長)   尾中  悟君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 五月二十四日  委員服部安司君、柳田秀一君及び受田新吉君辞  任につき、その補欠として川島正次郎君、渡辺  惣蔵君及び西尾末廣君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員西尾末廣君辞任につき、その補欠として受  田新吉君が議長指名委員に選任された。 同月二十五日  委員松治郎君及び渡辺惣蔵辞任につき、そ  の補欠として松田鐵藏君及び岡田利春君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員松田鐵藏辞任につき、その補欠として今  松治郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月二十三日  地盤沈下対策特別措置法案田中一君外四名提  出、参法第三〇号)(予) 同月二十四日  建国記念日制定に関する請願外一件(藤原節夫  君紹介)(第三九八六号)  同(小澤太郎紹介)(第四〇三一号)  同(田邉國男紹介)(第四〇三二号)  同(高田富與紹介)(第四〇六五号)  同(川野芳滿紹介)(第四〇九三号)  同(高田富與紹介)(第四一二一号)  同外一件(纐纈彌三君紹介)(第四二四一号)  同(尾関義一紹介)(第四二八四号)  同外一件(福田篤泰紹介)(第四二八五号)  同(森田重次郎紹介)(第四二八六号)  同(本名武紹介)(第四三一七号)  としよりの日を国民の祝日に制定請願(星島  二郎君紹介)(第三九八七号)  同外一件(中山マサ紹介)(第四〇六七号)  としよりの日に関する請願原田憲紹介)(  第四二四四号)  自衛隊那加飛行場による岐阜県那加町の騒音防  止に関する請願外七件(田口誠治紹介)(第  四〇〇二号)  建設省定員外職員定員化に関する請願畑和  君紹介)(第四〇〇四号)  同(畑和紹介)(第四〇六八号)  同外三件(井堀繁雄紹介)(第四一七三号)  同(畑和紹介)(第四二四三号)  恩給法等の一部を改正する法律案の一部修正に  関する請願山口喜久一郎紹介)(第四〇〇  五号)  同外六件(谷垣專一君紹介)(第四〇六六号)  同外一件(湯山勇紹介)(第四一二三号)  農地被買収者問題調査会廃止等に関する請願(  栗林三郎紹介)(第四一一九号)  同外三件(堂森芳夫紹介)(第四一二〇号)  厚生省に老人局設置に関する請願中山マサ君  紹介)(第四二四二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特殊海事損害賠償請求に関する特別措置法  案(内閣提出第一二二号)  北方地域漁業権者等に対する特別措置に関す  る法律案内閣提出第一九七号)  地盤沈下対策特別措置法案田中一君外四名提  出、参法第三〇号)(予)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。地盤沈下対策特別措置法案議題とし、提出者より提案理由説明を求めます。田中一君。
  3. 田中一

    田中参議院議員 ただいま議題となりました地盤沈下対策特別措置法案につきまして、提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  近年、地盤沈下による災害が各地に発生しており、まことに憂慮すべき事態にあります。大阪及び尼崎地方においては、ジェーン台風による災害を契機として地盤沈下に対処するため建設された防潮堤その他の施設が、その後の地盤沈下により、著しくその機能の低下を来たし、再び高潮の恐怖にさらされているのであります。東京の江東地区についても同様の実情にあります。また新潟市においては、可燃性天然ガス事業の発展に伴い、最近数年間に一メートル数十センチの沈下が記録され、港湾施設等の一部がすでに水中に没しているのでありまして、これらの地域地方住民は日夜不安におののいているのであります。  これがため国、地方公共団体等は、河川海岸港湾等公共施設につき、地盤沈下による災害対策事業を急速に進め、その必要事業量は増加の一途をたどりつつあるのでありますが、関係地方公共団体等の財政がきわめて窮迫している現状からすれば、地盤沈下対策として不可欠の事業すらも、一部放棄のやむなき事態を招来するものと思われます。そしてその対策が遷延されるならば、一たん、暴風、高潮等災害が発生したときに、その被害は甚大なものとなるであろうことは容易に想像されるところでありまして、ここに地盤沈下による災害に関する対策事業に要する経費についての国の負担割合につき、特別の定めを設けることが必要となるのであります。また地盤沈下原因である地下水採取につき、国がその規制を行なうことができることとする等の措置を講ずることにより、地盤沈下による災害に関し総合的な解決をはかるべきであると考え、今回この法案提案するに至った次第であります。  以下、この法案内容につきまして、その概略を御説明申し上げます。  この法案の骨子は、次の三つの点より成り立っております。すなわちその第一は、地盤沈下に関する調査を行ない、その結果に基づいて地盤沈下対策地域指定することであります。第二は、地盤沈下による災害を防止するため、地盤沈下原因となっている地下水採取について規制を行なうと同時に、地盤沈下を生じさせるような施設代替施設設置等につき、必要な資金確保その他の援助に努めることであります。第三は、地盤沈下対策事業に要する経費についての国の負担割合につき特別の定めを設けたことであります。  まずただいま申し上げました第一の点であります地盤沈下に関する調査及び地盤沈下対策地域指定について申し上げます。調査に関しては、まず内閣総理大臣は、関係行政機関の長及び地盤沈下対策審議会意見を聞いて、地盤沈下に関する調査基本計画を作成し、これに基づいて行政機関調査を実施し、内閣総理大臣がその結果を取りまとめて関係行政機関の長及び関係都道府県知事に通知しなければならないことといたしました。次に地域指定につきましては、内閣総理大臣が右に述べました調査の結果、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係都道府県知事及び地盤沈下対策審議会意見を聞いて、地盤沈下による災害を防除するために必要な地下水採取規制または地盤沈下対策事業が行なわれる区域を地盤沈下対策地域として指定することができることといたしました。  さきに申し上げました第二の点のうち地下水採取についての規制につきましては、通商産業大臣及び建設大臣が、地盤沈下による災害を防止するために必要があるときは、それぞれ地盤沈下を促進し、または促進するおそれのある工業用地下水もしくはガス溶解水または冷房用地下水採取地盤沈下対策地域内で行なわれるものについて、期間を定めてその停止もしくは制限を命じ、またはその禁止を命ずることができることとするとともに、内閣総理大臣は、地盤沈下による災害を防止するために特に必要があると認めるときは、地盤沈下対策審議会意見を聞いて、通商産業大臣または建設大臣に対し、それぞれこれらの措置をとるべきことを要求することができることとしたのであります。  次にさきに申し上げました第二の点のうち、代替施設設置等についての助成措置に関しましては、地盤沈下対策地域における地下水採取によって生ずる地盤沈下を防止するために必要があるときは、国は工業用水道の布設、可燃性天然ガスの採鉱、ガス溶解水採取のための設備の変更もしくは他の施設設置または冷房設備の改造について、必要な資金確保その他の援助に努めなければならないことといたしたのであります。  さらにさきに述べました第三の点でありますが、まず地盤沈下対策事業は、その事業の範囲を河川海岸港湾、漁港、下水道及び農業用施設とし、これらの公共施設主務大臣関係都道府県知事及び地盤沈下対策審議会意見を聞いて作成した案により、閣議の決定を経た地盤沈下対策事業計画に基づいて、国、地方公共団体港務局、これらの機関及び土地改良区が実施するものでありまして、この事業に要する経費についての国の負担割合について特別の定めをするとともに、他の法律規定による国の負担割合の特例との関係を明らかにすることといたしました。すなわち、地盤沈下対策事業に要する経費については、国の負担割合が三分の二以上で政令で定める一定の割合を下らないように措置することとするとともに、他の法律規定により、この事業につき特別の国の負担割合定める場合においては、右に述べました措置により定められた国の負担割合基礎として、特別の国の負担割合定めることとしたのであります。  次に地盤沈下対策事業施行者は、地盤沈下原因となった事業を営み、または営んだ者に対し、地盤沈下対策事業に要する経費の一部を負担させる、いわゆる原因者負担制度を設けることとしたのであります。  以上のほか、総理府地盤沈下対策審議会を設けることとするとともに、地盤沈下対策事業に要する経費のための地方債について、国が利子補給を行なうこととする等の措置を講じております。  以上この法案提案いたしました理由及び内容概略を御説明申し上げたのでありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さるようお願い申し上げます。
  4. 久野忠治

    久野委員長 本案についての質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 久野忠治

    久野委員長 次に、特殊海事損害賠償請求に関する特別措置法案及び北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律案の両案を一括議題とし、質疑を許します。  質疑の申し出がありますので、これを許します。松田鐵藏君。
  6. 松田鐵藏

    松田委員 二、三質問をしたいと思います。まず第一に北方地域の旧漁業権者に対する特別措置ということですが、二十四年の十二月の十五日に漁業法制定されて、また同日において施行法制定されたのであります。当時における南千島地区においてはマ・ラインが敷かれておって、日本行政権が施行されなかった。そういう事情からして漁業証券交付を見ることができなかった。ところが二十八年の八月の八日に漁業法が一部改正になり、漁業証券百八十何億というものは、その免許料許可料を全廃された。日本主権がある南千島に対して漁業証券というものが残されていなかった。当然政府は、主権日本にあるのだから漁業証券を与えなければならないであろうとわれわれは考えたが、漁業法施行法には、あれはもう時間切れになっておる、よってその方法を講ずることができなかった。そういう建前から今日まで、これら漁民に対して何らの措置も行なうことができなかった。幸いにして政府は、これら引揚者及び漁民に対して何らかの救済の道を講じてやらなければならないという親心から、こうした特別措置に関する法律案を提出することになった。私ども漁業関係する者、また日ごろ気の毒な生活をしている者に対して、大へんけっこうなことだと思うのでありますが、この法律案からいきますと、わずかに十億という国債交付するようになっておる。しかも年六分ということになっております。たとえば十年間この国債交付してやっても、年六分でありますから十年で六億ということになる。この資料からいきますと一万四千名になっておるが、この一万四千名の者に、これから事業をさせ利益を上げることもできるだろうと思うけれども、現在十億ということからいけば、一人当たり約七万円程度のものになる。十年後においてようやく十万円そこそこになる。このようなことで、終戦以来今まであの通り困難に直面して、気の毒な生活をしておるという者に対して、この金額ではたしていいのかどうか。政府はもっと思いやりのある方法をとらなければならなかったのじゃないかと思うのであるが、どのようにお考えになっておるか、この点を聞かしていただきたいと思います。
  7. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 いきさつはただいまお話の通りでございまして、そういう意味でこの四島の置かれた特殊な地位にかんがみまして、漁業補償という意味ではないのでありますが、特別な措置考えたわけであります。十億の交付国債で十分かというお尋ねでございます。いろいろな事情を勘案いたしましたが、まずまずこの程度交付国債で、そして今度新たに作られる北方協会がこれらの引き揚げた方々の生活状態生業状態等を十分考えながら、有効適切な処置をしていただきますならば、何とか気の毒な立場に置かれておるこれらの人々の立ち上がりに資することができるのではないかというふうに考えた次第でございます。
  8. 松田鐵藏

    松田委員 この南千島というものに対しては、日本主権ありとしばしば声明されておるのであります。そこでこの島がいつ返るものやら現在では見通しはつかないけれども、今交付国債を十億与えて、そして北方協会というものを作って、それらの指導によってどうにか生業の立つように、生活の安定を期させようということであるが、もし島が外交交渉によって返って参りましたときにおいては、あらためて漁業民主化をするために法律を作って漁業証券交付をしなければならないと思う。日本主権になって、日本人がそこへ行くことになれば、この給付というものは、今暫定的に漁業証券にかわる内払い考えても差しつかえないのか、この点を一つ聞かしていただきたい。
  9. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 漁業権関係については水産庁の方からお答えいただきますが、この処置は、先ほど申しましたような、これらの島におられた人たちの現在置かれている特殊な地位、すなわち日本領土でありながらそこへ帰れないという立場に対する特別な対策という考え方でございます。従いましてこれらの島々が日本領土に完全に返って参って帰島することができる。従って北方協会というものが必要なくなるという場合、これが解散した場合の処置については、この法案にもありまするように、別の法律定めるということにいたしておりますので、そのときの考え方になろうかと思います。しかしそういう場合の帰島対策として何らかの処置をするというようなことは考えられるというふうに思っておりますが、ただいまお尋ねのような漁業補償内払いというふうにお考えになるのはどうか、この法案を提出しました意味はさような点はまず考えていないということを申し上げておきます。
  10. 松田鐵藏

    松田委員 この法律案の提出された趣旨は、私も先ほど申し上げたし、御答弁もそのようにあったが、これがまた大事なことなのです。日本漁民漁業を営むには、かつてはこれは免許漁業であって、定置漁業権というものがあって、財産権であった。日本漁業そのもの漁業法によって民主化されて政府が全部買い上げてしまった。そういう点からいきますと、島が返ってそこで漁業を営む場合において、当然現在の漁業法基礎としてこれに民主化された漁業を営ませなければならないことになる。そうした場合において漁業法が適用されたとすると、今までの財産権でもって漁業を営むことができるか。これはできないはずである。そうした場合においては、やはりこれは漁業証券を再び与えて、民主化された漁業に持っていかなければならないのです。そういう点からいったら、今十億という金を北方協会に対して先ほどの理論のような政府の特別の措置でもって与えてくれた。しかし将来漁業ができる場合において民主化された漁業を営まなければならないということからいけば、当然漁業証券交付を再びしなければならないことになろうと思います。そういう場合において、いつのものやらわからぬけれども、それが今これでもってすべてを打ち切りだということになったら、どうも漁業権そのもの趣旨からいって非常な誤りになるのではないか。もし打ち切りになった場合においては、財産権が残っておるということになる。北方協会を作るこの特別措置法を今作るときにおいて、われわれは非常に感謝をしておるが、こういう大事な点を一つはっきりしておかなければならないであろうと思う。御答弁水産庁からでもけっこうでございます。
  11. 林田悠紀夫

    林田説明員 もし北方地区日本の完全な領土権が及び得るという事態ができました場合には、漁業法がそこに施行されるということになりまして、水産庁といたしましては、やはり漁業制度改革に準じたような方法漁業権補償もいたすべきものと考えておる次第であります。そういうふうなこともこの基礎にはございまして、たとえば残有財産の処分というような規定もあるようなわけでございますが、そういうふうな場合には新しい措置といたしまして考えるということにいたしておるわけであります。
  12. 松田鐵藏

    松田委員 そこで明確になったのですが、まあ当然あるべきことだと思います。非常に明快な御答弁をいただいたので、北方引揚者人々もさぞ安心しておることだと思います。たとえば七億や十億というようなことをもって、今使い道はない金ではあるけれども、やがての日を楽しみに懸命の努力をして生活の安定をしようということになることであろうと考えます。非常にけっこうなことだと思います。  そこで、かつて私どもが議論をしておりましたが、この金は北方協会へまず一括して交付する。どこまでも個人対象であるけれども、かつて漁業証券を与えたときに、もう個々のものだということで、どこまでも個人々々のものであったけれども、それがために霧消してしまって、北海道においては五十五億の漁業証券が来たのだが、水産会館一つ建ったきりであとはどうにもこうにもならなくなってしまった。そういうところをよく研究されて、困っておる人々、力のない人々がばらばらになっていくよりも、北方協会というものを作ってまとめて、困った人人を上手に有利に指導して、そうしてその金を生かして使わしてやろうという考え方でいこうということだと思う。そういう点から言ったならば、私はこういうあり方というものは非常にいいことだと思うのであるが、その北方協会の組織というものは、この法案にも書いてありますが、これが論議の対象になる。ややもすればどこでも協会というものでやった場合に見るように、理事者が非常に多くて、もう俗にいう船頭が多くて山へ船が上るということであっては、せっかくの政府考え方がむだになってしまうということからいって、どのような協会あり方をお考えになっておるのか、こういう点について考えておる点をお知らせ願います。
  13. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 北方協会の設立につきましては、この法案が御承認をいただきました上でのことでございますが、ただいま御指摘になりましたように、役員の数が非常に多かったり、職員の数が多くてむだな費用がかかって、実際の引揚者に対する処置が十分でないというようなことがあってはいけませんので、十分その辺を考えまして、役員の数、職員の数等も必要最小限にとどめまして、能率のいい協会を作りたいというふうに考えております。
  14. 松田鐵藏

    松田委員 巷間伝えるところによりますと、この北方協会というものに対しては、理事だとか、評議員だとかいうものの自薦他薦が非常にあるように聞かされておる点もあるのであります。どうかそのような自薦他薦のようなことでは、先ほど私が申し上げたような点が出てこないとも限らぬ。この北方引揚者に対して救済の道を講じてやらなければならない、安定した仕事をさせなければならないと真剣に努力されておる北海道知事があるのであるから、また同じ道民であるならば、それが責任者であると私は思う。それから内地の引揚者もあることでもあるが、やはり中心となってこれらのことを真剣に考えている点からいったならば、私は北海道知事がそれこそ真剣になって考えていかなければならないと思うのだが、こういう点に対する——今ここで私が、北方協会の会長をだれにせいとか、理事をだれにせいとかいうようなことではなく、そういう意味におけるまじめな、経費のかからぬような方法をお考えになって指導してもらえれば、私は非常に好都合だと思うのであるが、ややもすれば職員が多くて、そうして給料をやらなければならないなんということではなく、自薦他薦のようなものでなく、ほんとうに北方のこの引揚者に対して考えを持ってやっていくように御指導願えれば私は非常にけっこうだと思うのだが、そういう点は北海道知事お話し合いになったことがありますかどうか、この点を一つ……。
  15. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 ただいまお話のように、引揚者の大部分は北海道におられるわけでありまして、北海道知事がこの引揚者に対して、今までも非常な御努力をなすっておられるわけであります。従いまして十分北海道知事と協議を重ねまして、そうして適当な協会の構成を作りたいと考えておる次第であります。
  16. 松田鐵藏

    松田委員 あとはこの北方協会のいろいろな法律的な問題が残されておるのでありますが、こういう点は専門家である内閣においてよく吟味されればいいことであるが、先ほど申し上げたように根本的な対策及び島が返ってきた場合のことに明快な御答弁をいただいたので、私の質問はこの程度で終わっておきたいと思います。
  17. 久野忠治

    久野委員長 次に岡田利春君。
  18. 岡田利春

    岡田(利)委員 ただいま審議をされております北方地域漁業権者等に対する特別措置に関する法律案提案をされておるわけでありますが、私は特にこの法律案提案理由説明で若干気にかかる点があるわけであります。それはこの提案理由説明の中で、「歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島につきましては、わが国固有領土であるにもかかわらず、昭和二十年八月ソビエト社会主義共和国連邦により占領されて以来事実上同国の支配下にあり」と提案理由説明をされておるわけであります。そこでこのわが国固有領土は、北方地域においては歯舞、色丹、国後、択捉に限ってのみ固有領土考えられておるかどうか、いわゆる中部千島あるいは北千島あるいは樺太については、これはもう固有領土という考え方は全然ないのかどうか、この点の見解をまず第一点として承っておきたいと思うわけです。さらに「昭和二十年八月ソビエト社会主義共和国連邦によって占領されて以来」とありますけれども、これはどういう条約あるいは終戦当時の宣言等によって、どういう根拠においてこういう判定を下されておるのかどうか、これは私は非常に問題があると考えるわけであります。特に歯舞、色丹、国後、択捉につきましては、昭和二十年の八月とありますけれども、これは事実上いつ占領されたのか、この点まず明らかにしていただきたいと考えるわけです。この点についての長官の見解を承りたい。
  19. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 今度のこの特別措置につきましては、御承知のようにサンフランシスコ条約その他等によりまして、樺太、千島等の領土権を放棄いたしておりますが、まだその帰属は国際的には決定してないことは御承知の通りでございます。ただこの四島につきましては常に、終戦後もわが国においてわが国固有領土であるということを主張し、あるいは日ソ交渉におきましてもこの主張をいたしましたが、日ソ共同宣言においてはついに解決がつかなくて現在に至っておるというような事態がございますので、この北方全体についての対策はまた別といたしまして、とにかくこの四島について、従来わが国が主張をいたしておりました固有領土であるという点を考慮いたしまして、この措置をこの四島に限ったような次第でございます。  それからその他、占領の時期等につきましては、局長から御答弁申し上げますが、いかなる条約によってかということにつきましては、これは条約等によらず、ただ事実上占領されておるというふうに理解をいたしております。
  20. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 ただいまの占領がいつ始まったか、それはどういう根拠によるのかという御質問でございましたが、占領の性格から見ますならば、戦時占領と申しますか、戦争の結果占領が行なわれたということでございまして、他の地域がそれぞれ当時占領されましたと同じ意味合いを持つものと考えております。それ以外の特別な性格を持っておるというふうには考えておりません。事実上いつから占領が始まったかという点につきましては、必ずしも私ども明白にいたしておりませんが、八月の十五日過ぎにソ連がだんだん進駐いたして参りまして、この四つの島にソ連が上陸をいたして参りましたのは、九月ころであるというふうに聞いております。
  21. 岡田利春

    岡田(利)委員 こういう問題は非常に大事な問題ですから、提案理由の中でも明確に私は述べておくべきであると思うのです。そこで今長官の答弁では、歯舞、色丹、国後、択捉については固有領土である、こういう主張からとりあえずこの四つの島に限って今回のこうい立法措置をとるのである、こういう説明でありますけれども、私は端的に聞いておる。中部千島、北千島、樺太については、もちろんサンフランシスコ平和条約は、南千島を含んで、この領土を放棄して——帰属はもちろん今日まだ明らかになっていないという主張をされておりますけれども、放棄をしておると考えておるわけです。そうしますと中部千島、北千島あるいは樺太については、固有領土ではなかった、ないと、明確にお答えできますか。
  22. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 領土問題という観点からいたしました場合、北方地域がどこまでであるかということにつきましては、実は総理府設置法に関連いたしまして、北方地域というものを定めました政令がございます。これは総理府の所管をきめることに関連いたしまして定まっております政令でございまして、この政令の中におきましては、ここに掲げてございます歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島、これのほかさらに総理大臣が指定するその他の島、こういう表現になっておるわけであります。これはただいまお話にありましたような事情を考慮いたしました上で定められた北方地域に関する規定であるというふうに考えるのでありますが、今回の措置はとりわけ具体的な措置でございまして、その対象の範囲をはっきりさせる必要がある、そういう観点からすでに四つの島が具体的に指定になっておりますので、その四つの島に限って今回の措置を行なう、こういうふうに考えておるわけであります。
  23. 岡田利春

    岡田(利)委員 しかし提案理由の中には明らかに「歯舞群島、色丹島、国後島及び択捉島につきましては、わが国固有領土であるにもかかわらず、」このように述べておるわけです。そうしますと、先ほどから私が端的に聞いておるのですが、まさか固有領土であるかないかは総理大臣が指定するしないに私はかかわらないと思うのです。ですからそのあとについて、中部千島あるいは北千島、樺太等については固有領土であるか、領土でないのか、この辺が私は今の答弁では非常に理解に苦しむわけです。ですから、提案理由説明の中で明確に述べている、わが国の固有領土である、そうするとそれ以外は固有領土ではないと考えられておるのかどうか、このことを私は端的に質問をいたしておるのです。もちろんサンフランシスコ条約の場合にも、アメリカの代表からは歯舞群島については若干異議の申し出があったことは、私ども聞いておるわけでありますが、特に国後島及び択捉島については当時においてすら全然問題にならないで、一応日本は放棄しておる。そういう関連からいって、この北方地域領土の問題について見解が明らかでないとすれば、とりあえず歯舞、色丹、国後、択捉に限るのだとすると、将来時間がたって、総理大臣が指定すればこれがわが国の固有領土となるのかどうか、どうもその点、私は理解に苦しむわけです。この点いかがですか。
  24. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 この提案理由に申しました四島について、わが国固有領土であると断定をいたしておりますのは、御承知のように日ソ交渉その他の経過において、常にわが国が固有領土であると主張をいたしておるところでございます。従いましてその意味を言ったわけでございます。だからその他は固有領土ではないというかどうか、この点はさらに十分考えなければならない点であるというわけであります。
  25. 岡田利春

    岡田(利)委員 私の記憶では、当時鳩山内閣が日ソ平和交渉におもむいて、一応戦争終結の宣言によって、問題の解決をはかっておるわけでありますが、当時の内閣は民主党内閣であって、この公債については、当時の自由党は南千島に限って領土権を主張するという考え方に強く反対した事実があるわけです。今日民主党と自由党が合同いたしまして、自由民主党という新しい政党が生まれておるわけでありますが、そういう意味ではこの北方地域領土に関する見解の統一といいますか、そういうものを私は聞いたことがないわけです。新しく自由民主党になって、北方地域領土について何か党としてあるいは政府として明確な見解の統一が一体されておるのですかどうか。
  26. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 実は日ソ交渉のありました鳩山総理大臣が参りましたときは、すでに自由民主党になっておりまして、その自由民主党の意思としてあの鳩山さんの訪ソを認めたわけでございます。その後に特にこの問題について党議を決定するとかどうとかしたことはございません。
  27. 岡田利春

    岡田(利)委員 あまりこの問題にひっかかるのもどうかと思いますが、もう一点、そういたしますと、将来自由民主党がこの歯舞、色丹、国後、択捉以外、もし固有領土であるという見解が新しく出た場合には、やはり同様こういう特別措置を当然考えるのだ、こういう御意思でございますか。
  28. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 将来そういう事態が起こりますれば、当然同様の処置考えなければならないと考えております。
  29. 岡田利春

    岡田(利)委員 今回の特別措置について、当時予算編成過程においては二億円の北方見舞金を一応内示額として、予算に計上された事実があるわけです。その後予算の最終決定にあたって、この問題は十三億の国債交付をするということで、自由民主党、政府あるいはまたそれぞれ関係者の間で了解が成立をしたということは、もう新聞報道によっても明らかですし、この該当者に対してはこういう決定がなされたということが伝達をされておる事実があるわけです。今回のこの法案が提出されて、内容を見ますと、十億円の国債交付をする、こういうことになっておるのでありますが、この経過は一体どういうことなのか、さらに十億円の国債交付するにあたって、一体どういう算出基礎に基づいて十億円の国債交付するのか、全然算出基礎というものがなくて、ただ単に山勘で十億円の国債交付をしておるのではないと私は思うわけです。もちろんこの対象はこの条文の中にも大体明らかに示されておるのでありますが、その内容基礎について明らかにしていただきたいと思います。
  30. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 この問題が予算の編成過程においていろいろ事情のありましたことは、今御指摘の通りでありますが、別に予算に計上したというような事実はないのでございます。それからまた国債交付するという金額についても、確定的な金額を予算編成過程において決定をいたしたわけではございません。そういう方針でその後関係各省の間において協議をいたしました結果、この提案理由その他にも申しましたように、旧漁業権者あるいはその他この四島におりました漁業権者以外の人々、こういう人に対する特別な処置として考えたのでありますが、その大部分は漁業権者でありますので、その算定の基礎といたしましては内地で行なわれたような漁業権補償の算定の方式を用い、さらにそれに漁業権者以外の人に対する処置もございますので、いわゆるプラス・アルファをして十億ということでございます。
  31. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、いわゆる漁業権補償という考え方が明らかにおもなものであるという点が出て参ったわけですが、そうするとこの十億のうち漁業権補償分は一体どういう算出基礎に基づいて、どの程度考えられておるか。あるいはまた大体七割近くは漁業従事者であって、あとの三割は中小企業とかそれ以外の居住者、あるいはその地域に入漁の免許を受けておった者、こういういろいろの内容を持っておるわけでありますが、漁業権補償ということが強く出されるならば、やはりそういう一応の基礎に基づいてこの十億円というものが国債交付としてきまったと思うのです。これはただばく然とそういう抽象的な考え方で十億という国債交付をはじき出したのか。もう少し具体的な基礎がないのですか。
  32. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 ただいま申しましたように、はっきり漁業権補償ということは、現在の法制上その他不可能であります。しかしこれらの人々の置かれた特殊な地位にかんがみましてこうした処置をとったのでありますが、その算出の基礎につきましては、八割近くは漁業権者であったという事実から考えまして、内地の漁業補償と同様な計算をいたしまして、そのほかに漁業権者以外の人に対する措置、あるいは調査研究のための費用等も含める。従ってこの十億の中心になりますのは、内地であるならば補償されたであろうというものを計算の基礎にいたしておるわけでございます。
  33. 岡田利春

    岡田(利)委員 私はやはりこの問題は、この十億の国債交付のいわゆる性格ということに関連があると思うのです。しかも今後できると想定される北方協会の業務方法書の作成、こういうものにも当然重大な影響を与えると考えざるを得ないわけです。そういう考え方に立ちますと、内地の漁業補償を一応準用した、しかもそれにプラス・アルファして居住者等の援護対策考えておるのだという御答弁でありますけれども、どうも私はその計算で大体十億の金がはじき出されるというふうには考えられないわけです。何か具体的な数字がありますか。
  34. 林田悠紀夫

    林田説明員 この十億の算定をいたしました基礎といたしましては、ただいま総務長官から御説明がありましたように、漁業権補償というのを端的に基礎にいたしたわけではないわけでございます。そのほかに引揚者対策と申しまするか、いろいろそういうふうなものも含めて考えまして十億という数字になった次第でございまして、その中の漁業権につきましては、御承知のように専用漁業権と、専用漁業権に対する入漁権がありますし、そのほかに特別漁業権定置漁業権がございます。それで二十六年に漁業権補償を行なった次第でございまするが、そのときに、北海道に対しましては五十二億円ほどの漁業権補償を行なった次第でございます。それで北海道のその時分の漁獲量等、それからこの四島の漁獲量あたりを比較いたしまして、十分均衡を考えて、もしこの四島について漁業権補償を行なったならば、どのくらいのものを補償すべきかということをいろいろな角度から算定いたしまして、一応基礎といたしましては七億五千万円くらいのものを考えたような次第でございます。そのほかに、その他を含めて十億ということにいたしたわけでございます。
  35. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと十億のうち、専用漁業権、入漁権、特別漁業権定置漁業権、この四つの漁業権補償として七億五千万、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  36. 林田悠紀夫

    林田説明員 その通りでございます。
  37. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、あとの二億五千万というものは、この漁業権者以外の元居住者、いわゆる四島の居住者に対する援護といいますか、特別措置、こういう理解でよろしいですか。
  38. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 その計算の基礎をそういたしたということでございます。二億五千万という中には、この北方協会の行ないます北方地域についての調査研究等の費用も含めている。従って漁業権者以外の引揚者に対するのが二億五千万と御理解いただくのは少し違うと存じます。
  39. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の長官の答弁を逆に解釈しますと、二億五千万で、北方協会のいろいろな経費その他の必要な経費を充てて、これともと四つの島に在住しておった島民の人々に対する特別措置として考えた。そうするとあとの七億五千万はいわゆる漁業権補償として考えているのだ、こういう理解でよろしいですか。
  40. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 この特別措置は、いわゆる漁業権補償とか、この四島に置いてきた財産の補償とか、そういう考え方でなくて、しばしば申し上げるように、こうした方々の置かれた特殊な地位にかんがみてこういう処置をとるということでございます。ただその計算の基礎をばく然と目の子でやるわけにはいきませんので、漁業権者が大部分であったから、もし内地であるならばどれくらいの補償が要ったであろうかということを算定の基礎にいたし、さらにそれに加えて漁業権者以外の引揚者に対する処置並びに北方協会が行ないます調査研究等の費用、こうしたものを考えて十億という数字にいたしたのでございます。従いまして今後北方協会事業を行なうについて、七億五千万は漁業権補償で、二億五千万は引揚者だというふうにせつ然と分けるという考え方ではないわけです。
  41. 岡田利春

    岡田(利)委員 私は北方協会が設立をされた場合、この業務内容を見ましてもなかなか明確に区別されないと思う。ただこの協会の性格なり運用というものは一この十億の額を決定した一応の考え方というものは、大体業務の内容に影響されてくるのではなかろうか。もちろん数字的には明確にならぬでしょうが、考え方あるいは運用の仕方としては、大体そういう影響を受けるのではなかろうか。こういう意味で、この金の性格と今後の北方協会の運営というものを考え質問をいたしているわけなんです。先ほど松田代議士が質問しておりましたけれども、七億五千万程度のものは、大体二十六年の北海道に対する漁業権補償の一応の見合いとして考えると大体七億五千万程度である、こういうような答弁を今いただいたのでありますが、これはさらに将来領土が帰属した場合、この財産の処分の問題とも若干関連を持ってくると私は思うわけであります。これはもちろん法的には、別途法律定めるということになっておりますけれども、しかしこの性格から考えてみますと、一応漁業権はこれで補償され得るのだ、明確にどんぴしゃり明らかになっておりませんけれども、一応補償され得るのだという考え方でよろしいですか。
  42. 林田悠紀夫

    林田説明員 漁業法が現在施行されておりませんので、今のところ補償されるということにはならないわけであります。
  43. 岡田利春

    岡田(利)委員 補償されるということを私は明確に言っておるのではありませんので、大体見合うのか、七億五千万といわれておりますから、一応それで大体補償されているのだ、どんぴしゃり補償されているのだというのではなくて、大体補償され得るのだという考え方になるのが当然ではないでしょうか。そうじゃないですか。
  44. 林田悠紀夫

    林田説明員 今回の措置は、先ほどから御説明がありましたように、単に漁業者の、漁業ができないということだけでなくて、いろいろな面から考え合わせられて、総合的な対策をやろうというふうな措置でございます。しかしその中におきましては、安全操業の問題も含まれており、漁業者がそこで漁業が行ない得ないということに対して、いろいろな措置をしようということでございますから、そういう点から申しますならば、これがそういう作用をするということになると存じます。
  45. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと、一応これは漁業権補償を中心にして額を考え、それ以外に安全操業の問題、あるいは旧在住島民に対する特別の援護措置、こういうものは一応数字は当たってみたけれども、大体十億というものはばく然と、ある程度政治的にこの程度ならできるだろうということで十億の国債交付がきまった、こういう理解より私はできないのでありますが、それでよろしゅうございますか。
  46. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 十億にきまりました根拠は、先ほど来説明申し上げたのでございます。こういう措置について、目の子でどれくらいと言うわけにも参りません。従いまして先ほど来説明申し上げたような計算の基礎に立ちまして、十億という数字を出したわけでございますが、漁業権補償そのものという形ではないわけです。
  47. 岡田利春

    岡田(利)委員 幾ら質問してもこれ以上出ないと思うのだが、これは私は、ある程度政治的に十億の額がきまったと思うのです。  次に、国債交付にあたって、普通であれば今年度予算に、六千万の利子について予算が計上されるのが当然だと私は考えるわけなのですが、大体今度の内容でいきますと、現在の北方協会はおそらく七月か八月ごろに設立をされて、とりあえず協会の運用をするという場合には、借入金によって運用せざるを得ないことになると思うのです。これはもう予算編成当時からこの問題は出ております。この点の措置をするということは、政府としては予算編成当時すでに考えられておったことなのですから、どうしてもう少し積極的に予算措置を講じなかったのか。この点非常に不親切ではなかろうか、あるいはまた若干不明朗な点があるのではなかろうか、こういう感じが実はいたすわけであります。この点の経過と見解をまずお聞きしたいのであります。  それから第二点の問題は、これを運用する場合に借入金によって一応来年度まで、おそらく来年の七月ころまでは借入金によってまかなわざるを得ないと思います。その運用については、一体具体的にどういう方法考えられておるか、この点お聞きしたいと思います。特に運用する場合に関係があることは、主たる事務所は札幌市に置くということになっておりますが、従たる事務所は一体どこに設ける考えであるのか。きょう出された資料を見ましても、大体北海道が圧倒的に多いのでありますが、それ以外につきましては、富山県等に約七%程度の人がおる。あとは分布状態はずいぶん広範にわたっておるわけでありますが、北海道は御存じの通り、東北六県プラス新潟という広大な地域である。もちろん半数近くは釧路、根室に居住いたしておりますけれども、こういう点等を考慮して、事務所の所在と運用については一体どう考えておるか。たとえば函館には千五百名程度の人がおると聞いておるのでありますが、こういう人々は今北洋漁業がふるわない、函館地区は慢性不況地帯の傾向にあるわけです。佐世保とか呉とかと全く同じような条件にあるわけです。ですから、引き揚げてきた方で漁業に従事していない人々は、日雇いとか零細な企業を何とか営んでおる、こういう傾向の人が非常に多いわけであります。こういう人々は、事務所の設置によっては札幌まで出かけていって金を借りなければならないというようなことになるのであって、実質上はもう適用されないというような結果にもなるわけです。そういう資金の運用と資金の貸出対象考えたところの、この従たる事務所の所在を、一体どのように考えられておるのか、お伺いしたいと思います。
  48. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 最初に、国債交付することにいたしまして、しかもその最初の利子を本年度の予算に計上してないのはいささか親切を欠きはしないか、こういうお話でございました。先ほど来御説明がございましたように、今回の十億円は、特別な対策の必要な基金として北方協会に出そう、こういうことでございます。十億円それ自身がすぐに運用できるというふうには考えておらないわけです。北方協会はこれを基金といたしまして、それから生じます利子をもちまして、当分の間運用していく、こういう考え方でございます。この基金に適当な形は、必ずしもすぐに現金をもって支出するということばかりではないわけであります。国債を用いましても一向差しつかえない、国債をもって支出することが適当である、こういう判断に立ったものでございます。  次に、実際に運用いたします場合に、広く散在しておられるそれらの人人のめんどうをどういう形で見ていくか、特に従たる事務所についての考え方はどうであるかという点でございます。札幌に置きますほかに、ただいま考えておりますのは、大体一番関係者が多く集まっておられます根室近辺に支所を設けて、そのほか若干の数がまとまっておられますところには連絡員というふうな形のものを設けまして、あるいはさらに部外の組織でありますけれども、すでに千島連盟というふうなものもございます。こういうようなところもお手伝いを願いまして、御不便をかけないように次第に仕事を広げていきたい、こういうふうに考えております。
  49. 岡田利春

    岡田(利)委員 今の資金の運用の問題でありますが、私の理解では十億円の国債の利子、年六分の六千万円をその資金として充てる、たとえば何々漁業協同組合で、その構成員が主としてもとの漁業権者であるというような場合に国債でこれを充てることができるのですから、そういたしますと、この十億の国債を逆に一時的には金融機関に担保に入れて、そこから資金の導入を随時業務計画に基づいてはかることができる、こういうことにも私はなると思うのですが、そのように理解してよろしいのですか。
  50. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 国債の利子は年六分でございますから、毎年六千万円でございますけれども、順次資金の貸付を回収いたしていくというふうなことになりますので、あるいは一時借入金というふうなこともございますので、資金量は六千万円よりも実際はある程度ふえて参るというふうに考えております。特に最初の間はいろいろ協会といたしましても事業に習熟しないというふうなこともございます。この制度関係者の全面的な理解を得まして、資金の需要も漸次高まっていくということになりますれば、自然ただいま申しました程度資金では不足するというふうな事態もあるいは考えられるか思うのであります。その際はまたそれに対応する措置を講じて参りたいと考えております。
  51. 岡田利春

    岡田(利)委員 端的に私はお答えしてほしいと思うのです。回りくどくなくてけっこうですから。初年度において、これはおそらく来年の七月なら七月、八月なら八月に利子の六千万が北方協会に直接渡るわけですね。それまではもちろん借入金で運用しなければならぬ。これが二年なり三年になると、貸した金が回収されて漸次ふえて一億になり一億五千万になるということは、これはわかる。しかしその限度はこの十億の国債の利子年六分、六千万円以内なのか、そうではなくて、先ほどあなたが言われたように、やはり国債をもって充てることもできるし、そういう論法でいくと、国債を担保に入れて一億でも二億でも三億でも、十億以内ならば、系統機関から借りて採算がとれるような状態であるならば、どんどんその金を借りていいのだ、こういうことになると思うのです。どうもその点はっきりしないのですが、どうなんですか。
  52. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 ただいま申しましたように、やがて資金量の問題が出て参ると思うのでございますけれども、この条文の中には、国債を担保に入れますことを禁止するような規定はございません。しかしそういう措置を必要とするという事態になりますれば、別にまた適切な方法政府部内において検討して参りたい、こういうことでございます。
  53. 岡田利春

    岡田(利)委員 どうもその点、私ははっきりせぬと思うのです。北方協会が設立をされてこの目的をより効果を上げるためには、実際は初年度の方が、一年、二年の方が、この六千万ではあまりできないわけですから、早急に相当金額がほしいわけです。ところがあなたは答弁として、資金量が将来どんどんふえてきた場合には、そのときには考えるのだ、こう言われている。むしろこれは端的にいうならば、現金で十億ほしいのが現状じゃないかと私は思うのです。しかし国債交付なんですから、結局初年度は六千万円、またさらに翌年度に六千万円、こういう工合に利子が北方協会に手渡されるわけですね。初年度の方が、初めの方が非常に資金的に融通がきかないといいますか、資金的に不足をするということになると私は考えるわけです。ですから、あなたの言うのは逆であって、初めからその点に対する態度を明確にすべきであって、三年、五年とたった場合には、あなたの今言われているような心配は大体なくなるということじゃないですか。逆であると思うのですが、この点どうですか。
  54. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 ただいま申されましたようなこともまた事実であると思います。資金量が足らないという事態は、やがて近い間にくるだろうというふうに私ども考えております。その際には、先ほど申しましたように、さらに政府部内におきまして検討をいたしてみたいというふうに考えております。
  55. 松田鐵藏

    松田委員 関連して。どうも話がおかしい。十億の国債交付するのでしょう。これはここに北方協会という組織を作って、この恩典のある金をむだづかいしてはいけないから、そこで北方協会が指導して金を使うということなんだから、六千万円という年六分の利息は当然くるのであって、北方協会は十億というものを対象として資金の運用をやることができる。そうじゃないのですか。国から十億の国債交付したならば、それこそ交付したものの主権交付されたものにあるのだ。それをむだづかいしてはいけないから——その引揚者はみんな苦しいから、岡田君の言うようにもう現金がほしい。現金がほしくては、漁業証券交付して水産会館一つ建てたようなものになるから、これではいけないから、北方協会というものを作って、北方協会がこの恩典のある金を、よく事情調査して、また事業をやるにしても指導して、そうしてその金をなくしないように導いていこうということでしょう。岡田君が心配しておるように、これは当然六千万円ずつやって、そうしてそれでもって運営しろというのじゃないと思うのだ。この点、はっきり……。交付するのでしょう。法律には交付と書いてある。交付ならくれるのだ。くれるのなら、どこまでも政府が干渉する必要はない。当然与えてやらなければならぬ。それがために北方協会というものを作るのだろう。それをはっきりしなくては、いつまでたってもわけのわからないことになってしまう。
  56. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 交付するものであるかどうかということでございますが、交付するものであることは間違いございません。ただその形が、現金で交付するのでこざいませんで、国債交付するという形になります。従いまして実際運用できます現金といたしましては、さしあたりそれから出て参ります国債の利息の六千万円ということになるわけでございます。先ほどの岡田先生のお話は、たとえばその国債を担保に入れるようなことをして、実際運用できる資金の幅をさらに急激にふやしたらどうか、こういう御趣旨であったと思うわけであります。その点につきましては、私申しましたように、国債を担保に入れて資金化するということを禁止する条文は書いてございません。しかしながら国債を担保に入れて資金を借りるということは、必ずしも関係者にとって有利な措置でもない場合があり得るというふうに考えられるのであります。そういう場合におきましては、国債につきまして、必要な資金とにらみ合わせまして、政府部内でさらにどういう措置をとるか、考慮して参りたいと思います。
  57. 松田鐵藏

    松田委員 三十一条に、「協会は、次の方法によるほか、業務上の余裕金を運用してはならない。」「銀行又は主務大臣指定するその他の金融機関への預金」「国債地方債又は主務大臣指定するその他の有価証券の取得」云云とあるのです。交付したものを、協会を作って、そうして協会が指導してやるのに、ほんとうのことを言ったら、煮て食おうと焼いて食おうと、勝手じゃないか。それを担保にして六千万円ずつの金利でもって、あれだけの一万何千名というものを救っていけるとほんとうに思っているのですか。十億でさえ不足だと思っている。それが十年たったら十六億になる。十六億になったって十万円だ。その交付したものを、あなた方の監督下に置いてとやこうする必要がどこにある。先ほど北海道知事とも打ち合わせをしましたという岡田委員質問にも、ちゃんとしたと言ったじゃないか。そのくらい北海道知事は信用のないものではありませんよ。そんな御心配なくはっきりと、どこまでも困っておる人々を救うためには、利息だけでもって救われるものではないのだから、こういう点は明快にしておかなければだめだ。あとから大蔵省のがめついのにとやこう言われてはとてもだめだ。はっきりしておいてもらわなければだめだ。こんなものまで自分の監督だという。これは一番大事なところだと思う。どうですか。
  58. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 ただいまお話の通りの問題があるわけでございます。私が申し上げておるのは、少し言葉が足りなかったわけでございますが、国債資金化いたしますのは、必ずしも銀行に担保に入れて資金化するという方法だけではないわけであります。さらに検討を要します問題は、たとえば十年間とただいまきめてございますが、さらに繰り上げて償還するというようなこともあるわけでございます。そういう問題を関連して検討してみたいということであります。
  59. 松田鐵藏

    松田委員 だからその点はいいのだ。あなた方の方で、政府がめんどうを見てやろうというのだから、来年度でも繰り上げてやってくれればいいのだ。それはとてもいいことだ。しかし根本的な問題はこの十億という金は政府から交付したものでしょう。交付したものなら、さっき言う通りに煮て食おうが焼いて食おうが勝手だということになる。とんでもない言葉を使うようだけれども……。であるからその北方協会というものは、引揚者がほんとうに困っているのをどのようにしてやったらいいかという案を立てて、政府に要請するでしょう。そうしてほんとうのことを言ったら了解を得て——得なくてもいいのだけれども、得て、そうして十億のものをことし五億使うの八億使うのということはやらしてもらうようでなかったならば、何も意味がないということです。長官、これはどうですか。
  60. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 北方協会の今後の計画等につきましては、十分その趣旨が生きるような処置をやって参りたいと思います。
  61. 岡田利春

    岡田(利)委員 長官はきわめて明快に答えておるようですけれども、私はきわめて不明快だと思うわけです。これが十分生かされるようにやるとするならば、これはだれが考えても、すでにもう終戦後放置された漁業権者あるいは島民がおるわけですから、しかも生活にも非常に苦しんでおるという具体的な事実もあるわけです。そうするとこの手当は当初やはりできるならば十億よりもっとほしいわけです、正直に言えば。しかし国債交付で十年償還であるから、この法の趣旨をずっと見てみますと、はっきりはしていないけれども、当初は六千万円の利子で運用していく、こういう考え方に貫かれておるように私は判断をいたしておるわけです。あなたの今言っておられることですと、北方協会ができて十分困らないようにやれるように政府としては考えるのだということなのです。これはもう北方協会に全部まかせるから、この交付された十億の国債を担保に入れようがどうしようが、要するに業務計画で認可ができる限度内でこの運用ができるならば、そういう自主性というものは百パーセント与えるのだ、こういうことになるのですか。それでよろしいのですか。
  62. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 これを担保にして現金化するとか、あるいは、これは検討を要しますが、ただいま局長からもお答え申しましたように、繰り上げ償還というようなことも考慮されますが、いずれにしましても北方協会事業計画によりまして、この特別措置趣旨が十分達成でき、しかもその十億という金が、先ほど来松田委員が言われるように、雲散霧消してしまわないようなことを一方において考えながらやっていきたいというふうなことであります。
  63. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますとこれは六千万の金利見合い金にこだわらず、いわゆる業務計画を立てて、その業務計画の遂行が北方協会の将来の業務の安定に支障のないという限度においては自由にできる、こういう工合に私は理解しておきたいと思います。  それから先ほど来問題になっておりますように、内地の漁業権補償の問題については、これは繰り上げ償還が行なわれているわけですね。当初五年間ということでありましたけれども、その後二年で繰り上げ償還されている事実があるわけです。先ほどの答弁によりますと、この問題をめぐって今までの質疑の過程において、繰り上げ償還ということは当然積極的に、意欲的に考えておる、こういう工合に私は答弁の中から受け取ったのですが、そういう考え方が意欲的にあるのですか。
  64. 藤枝泉介

    藤枝政府委員 この点については、意欲的と申しますと多少問題だと思うのですが、十分検討いたしたいと思っております。
  65. 岡田利春

    岡田(利)委員 そういたしますと具体的に事業内容に基づいてそれぞれ資金の貸付等が行なわれて参ることになるわけなんですが、今質問した趣旨答弁内容から考えると、金融機関からある程度資金を導入する、こういたしますと、通常一般金融機関からの導入の場合には七分とか七分二厘とか七分五厘、こういうことが考えられる。そしてまた貸付にあたってはこれはどのように考えられておるか、考え方を明らかにしていただきたいと思うのですが、今生活保護にかかっているような、あるいはボーダーライン層にある高人の生活の実態というものがあるわけです。こういう人々援助資金生業資金の貸付等は一体どういう工合に考えられておるか。そういう資金の貸し出しは金利をどの程度考えておるか。これは普通の五分とか六分では、もう事実上この金を借りることはできないことになるわけです。この点は一体厚生省あたりの大体三分程度の金利を考えておるのか。そうした場合に当然資金量が初年度六千万を上回る、あるいは次年度一億以上、一億五千万になった場合に、金融機関との利子の差額についての補給を金利の中から行なわなければならない、六千万の中から行なわなければならない、こういう点が出てきます。あるいはまた貸付をしても、実際担保のない人が非常にたくさんおるわけです。そうした場合に、償還ができないという事態も起きてくるわけなんです。こういう場合には当然損失補償といいますか、こういう点については六千万の中から考えておるのか、こういう点について一つ見解を承りたいと思うわけです。
  66. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 この資金をもちまして生活資金も貸し付けて参ろうということは、お話の通りでございます。その場合の貸付の限度、あるいは利子、あるいは償還の問題、あるいは担保の問題というふうなものをどういうふうに考えておるか、特に資金の量とにらみ合わせてどういうふうにする考えかという問題でございます。生活のために必要な資金を貸し付けるということになっておりますが、やはり先ほどからお話がございましたように、この基金は大切に取っておかなければならぬという一面も持っておるわけでございます。従いまして貸付の当初から償還が不可能であるということが見通せますような資金、純然たる消費的な意味をもちまして生活保護法の対象になりますような者、これはまたそれぞれの法令の規定によりまして救済方法があるわけでございます。ここで考えておりますのは、それよりも少し程度の高いと申しますか、そういうところを一つのねらいとして考えておるわけでございます。金利などもほかのいろいろな制度との関係はございますが、しかしこの特別措置の性格にかんがみまして、なるべく安いところでまかなっていきたいというふうには考えております。お話の中に三分程度というふうなお話がございましたが、三分にいたしますか、あるいはそれ以上にいたしますか、その辺の問題は、さらに北海道の実情ともあわせまして、検討して  いきたいと考えております。
  67. 岡田利春

    岡田(利)委員 どうもその点、これは資料として島民の在島時と現在の職業別、あるいは府県別の分布の状況調べの資料が実は出ておるわけなんです。これらから判断いたしまして、また実際釧路、根室の元島民の貧窮化している生計の現状等を考えてみますと、生活保護を受けておる人は別にして、受けなければならぬような人、いわゆるボーダー・ライン層ですね。こういう人々は一番この恩恵を受けることを待ち望んでおるわけなんです。今の答弁でいきますと、こういう人々には当初金を貸さないのだ、回収見込みがないとか、なかなか危険が多いという人には金を貸さぬのだ、こういうような方針のように、考え方のように、私は今の答弁を受け取ったわけなんですが、これでは私はこの特別措置の精神といいますか、こういう措置をとらざるを得ないような理由から見て、非常に実態と遠のくのではなかろうか、いわゆる今ほんとうに待ち望んでおる人は手が届かないということになるのではなかろうか、このように私は考えざるを得ないのです。しかもこれだけの資料を出しておるのですから、その現状については、北海道庁なり、あなた方の方で十分詳しく調べて、そういう実態認識の上に立って、この特別措置というものが私は提案されておるという工合に理解をするわけなんです。それを今の答弁のように、簡単にほわっと、見込みのない人には当初貸さないのである、こういうようなことであっては、これは何か一定水準以上の人でなければ、この恩恵を現実の問題としては受けることができないという結果になると私は思うのです。さらにまたあなた方は調べておられると思うのですが、今日のそういう旧島民の生活の現状を見て参りますと、当然四分なり五分なりの高い利子では、借りたくとも借りることができないというのが実情なんです。これはあなた方の方はよく調査されておると思うのです。少なくとも三分以下でなければ、こういう特別措置が講じられても、とても手が届かないということはもう明らかなんです。それに対して考え方をある程度明確に示すことができないというのは、私は遺憾だと思うのです。漁業協同組合あるいはそれぞれの関係団体に貸付する場合でも、農林中金やあるいは特別公庫の場合には現在六分五厘なんです。これよりも高いということは考えられないのです。そうするとこれは五分か、あるいは四分五厘ということが、大体この特別措置を講じた趣旨からいって、私はそのように当然ならなければならないような気がするわけです。その点もう少しはっきりしなければ、幾らばく然と十億の国債交付をするといっても、非常に多くの問題が将来残ってくると思うので、この点もう少し確信のあるところを具体的に答弁願いたいと思います。
  68. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 先ほど申し上げましたところで、低額所得者は除外するというふうに、その点を非常に強調したようにお受け取りいただいたと思うのでございますが、この生活資金というものは、むしろ逆にいいまして、富裕の方と申しますか、所得の多い方には必要としないというふうな性質のものであろうというふうに考えております。資金の種類といたしましては、漁業その他の事業のための資金というのもございます。ここに申しました生活のための資金というふうなものもございます。それぞれの貸付の対象あるいは貸付の方法というものは、それぞれの対象に応じまして、業務計画の中で定めていかなければならぬというふうに考えております。生活資金につきましては、特に先ほど申しましたように、生活保護の対象になるというふうなものは、また別個の問題として検討を要すると思うのであります。そういう意味で申し上げたのでございまして、日常生活が相当富裕なランクにおられる、こういう方々は、生活資金という点から見ますと、事実問題としては、資金計画の中に入ってこないということになりはせぬかというふうに考えております。
  69. 岡田利春

    岡田(利)委員 ばく然として雲をつかむようなお話ですが、少なくともこういう具体的な特別措置を講じておるのですから、この趣旨に伴うこの業務方法書の重要な柱になる事項については、ある程度もうはっきりしためどを説明してもらわなければならないと私は思う。そういうものがなくて、そういう考え方がはっきりしておらぬで、こういう特別措置を講ずるということは、私はむしろあまりにも政治的であって、この運用についても、そういう政治的なものによって運用されていく危険性を非常に感ずるわけです。これは私が先ほど来申し上げておるように、島民の生活の実態というものは、こういう措置を講ずるにあたって、当然あなた方はもう詳しく実態調査をされておるわけです。そういたしますとそういう実態に即応した考え方というものが明らかにならなければならないと思うのです。ですから私が今申し上げておりますように、終戦当時大体千八百人くらいの世帯の人々が、うちは内地にありましたし、漁業とかそういう点で、漁具、漁船等については無傷の人がいるわけなんです。七割くらいの人は樺太経由で引き揚げてきて、しかも現在漁業に従事している人は大体二一%程度だと私は記憶いたしておるわけです。七割のうち二一%程度である、こうなって参りますと、この対象になる、特にそのために生活が非常に困窮している、こういう人々がやはり一番このことを待ち望んでいるわけです。大体二一%の中には、むしろ昔よりも現在の生活が非常に安定しているという層もだいぶあるわけです。こういう面から見ると、私はむしろこの生活が非常に困窮している人々に対する措置というものに、一番重点が向けられていかなければならぬし、その面を十二分に配慮しなければならないと思うのです。ですから私はそういう点で、そういう人々に貸付をする資金の金利というものは、五分や六分では実際問題として手が届かないということになる。少なくとも三分以下でなければ手が届かない。三分であっても償還がその通りできるかどうかということは、非常に考えさせられる面があるわけです。こういう実態を御存じでしょう。そうすると業務方法書の少なくとも重大な柱になるこれらの面については、考え方をもう少し自信を持って明らかにしてもらわなければならないと思うのです。あるいは漁業関係についても農林中金や特別公庫の六分五厘を上回るのでは意味がないわけでしょう。もう最高限度五分というのは当然具体的に答弁できる問題じゃないかという工合に私は考えるわけです。あるいはまた新しくこの措置に伴って生産を行なうために、そういう施設を作る生産関係の貸付資金については、これもまたあまり金利が高いのではこの措置は生きてこないのです。私はこういうものは三分五厘程度でなければむずかしいと思うのです。この点をはっきり言わなければ、これは初めから終わりまでふわふわと政治的に処置されて、その陰に黒い手が——黒い手か白い手か知らぬけれども、いろいろ動いて、むしろ国民の疑惑を買うという傾向をより一そう強めるという工合に判断をするのですが、その点はどうなのですか。
  70. 大竹民陟

    ○大竹政府委員 生活資金につきまして現在具体的に考えておりますことを申し上げますと、技術を修得いたしますような資金、たとえば新しくミシンの業務を習いたい、あるいは自動車の運転を習いたい、免状をとりたい、こういった技術の新しい修得に必要としますような資金、それによってもちろん生活の更生をはかっていくわけでありますが、あるいはその間生活のための資金も要するわけでありますから、そういう資金も検討をいたしております。あるいはまた子弟の就学、就業等に要します資金というようなものもございます。ただ私申し上げましたのは、非常に消費的一方の性質を持っております資金でございまして、当然通常の貸付対象というふうなものにはならない。むしろ初めから金を与えましてこれで援護していく、こういう種類のものもあり得るわけでありますが、そういう種類のものは今回の対象にはなりにくいと思うのでございます。純然たる消費的なものを省きまして、できるだけ生活を更生していきますことに結びついております、ただいま申しましたような技能修得のための資金、あるいは就業、就学の資金生活をそれによって改善していくための資金、かようなものを現在検討しております。  また利息の問題でございますが、先ほども三分というお話がございました。私どももこの制度趣旨にかんがみまして、できるだけ低い金利ということを考えておるわけでございまして、ただいまお話にありましたような、できるならば三分程度のものには持っていきたいということで、そういうことも一つの目安として現在検討をいたしておるということでございます。なおほかの事業資金等につきましても、かりに農業を営んでおられる人でございましても、生活資金だけでなくて、農機具を新しく買いますとか、あるいはリヤカーを新調されますとか、こういうものはまた別個な事業資金のワクで借りることができるということにも当然なるというふうに考えております。
  71. 岡田利春

    岡田(利)委員 今言われたたとえば生活困窮者といいますか、生活が非常に困難な人々に対しては、技能の修得、あるいはその修業期間の生活に対する生活資金の貸付、あるいは子弟教育等に対する貸付、こういうようなことをもう考えておられるでしょう。さっぱりはっきり答弁しませんけれども、ある程度具体的なことを考えておるのでしょう。いないのですか。何かもう雲をつかむような話を抽象的にされておるのですが、そういうものではないでしょう、こういう特別措置が講じられるのですから。さらに当然危険性が多いわけです。償還見込みに非常に危険が多いという階層が非常に多いことも御存じでしょう。もちろんその貸した金は返さなくてもいいというわけには参らぬでしょうけれども、そういう面についても最大限貸し付けるというのが方針ではないのですか。その程度くらいはっきりしてもらわなければ、どうも審議はできぬと思うのですがね。
  72. 林田悠紀夫

    林田説明員 貸付の資金の種類とか利率、そういう問題につきましては、ただいま局長から答弁いたしましたように、現在検討中でございますが、大体考えておるところを申し上げたいとじます。  貸付金の種類といたしましては、まず事業資金の方から申し上げますと、漁業の経営資金、それから漁業のほかに農業とかその他いろいろな事業がございますが、そういう事業の経営資金、これはそういう資金について、個人に貸す場合と漁業協同組合のような法人が営む事業について貸す場合とがございます。それから市町村の行なう福祉事業資金というのがございます。また生活資金といたしましては、世帯の更生資金を中心にして、今局長から申しましたような方法で貸すことにしております。そういうふうな事業対象にする資金生活対象にする資金と、大体二種類あるわけでございます。それでたとえば漁業経営資金についてはどういうものを貸すかと申しますと、漁船の建造とか取得、もちろんこれには改良、機関換装というようなものも含むわけであります。それから漁具、漁網の購入資金、着業資金であります。着業資金は短期の資金になるわけであります。そういうような資金を貸すことを考えております。それからその他の事業資金といたしましては、たとえば農業をやろうというので、農地を取得したいとか、あるいはこれを改良したいというような場合の資金、それから家畜を導入したいとか、農機具を購入したいというふうな場合の資金であります。それから営農のための短期の資金、それからそういうものを漁業協同組合等の法人がやりたいという場合に法人を対象にして貸す、あるいはまた漁業協同組合が転貸するというような場合に、漁業協同組合に貸すというようなことも考えられるわけであります。それから市町村の行なう福祉事業と申しまするものは、市町村がそういう人たちのために施設をやろうというような場合の資金であります。それから生活資金といたしましては、更生資金とか奨学資金とかいうようなものを貸すことになっております。  それから漁業経営資金につきましては、どれくらいの利率ということになりますか、これはもちろんなお検討を要するわけでございますが、現在農林漁業金融公庫がありまして、漁船につきましては大体七分五厘で貸しておりますそういう制度金融がいろいろあります。たとえば生活資金でありましたならば、厚生省関係の三分くらいの資金が相当出ておるわけであります。それからそういうふうに現在制度金融で行なわれておりまする資金の利率よりも、たとえば漁業の漁船でありましたならば、七分五厘を一分ないし二分くらい引き下げた六分五厘あるいは五分五厘というような低い金利で貸す。それから生活資金でありましたならば三分とか、そういうような一般の金利体系もございますし、しかしそれよりもできるだけ低いもので貸していきたいというように考えております。
  73. 岡田利春

    岡田(利)委員 この事業計画の貸付の対象が一からずっと載っておるわけですが、私はどうもほとんどの重点が二と三に向けられていくのではないか、こういうように考えざるを得ない。私はこういう趣旨からいって一の生活資金の貸付、当面そういう金が非常に必要であるという階層、こういうものは置き忘れられがちになるのではなかろうか、こういう気が非常にするわけであります。今若干具体的にいろいろ聞いたわけでありますけれども、特に現在の旧島民の生活の現状からいって、一の項によほど大きな配慮と力点を置いて、最大限その状況を調査をし、十分配慮を払って行動する、こういうような方法考えてもらいたい。もちろんその結果、初めから返さなくてもいいという金ではありませんけれども、返さない人も出てくるのは当然なんです。これだけの十億の国債交付がされるのでありますから、十億全体の中で、そういう問題の処置をはかっていく、これくらいの気持がなければ、特別措置意味がないと思うのです。そういう点、特に政府考え方、あるいは業務方法書を作る場合、あるいは北方協会を運用するにあたって、そういう点についての配慮をお願いしておきたいと思うのです。  最後に、北方協会の設立ができた場合、北方協会の運用に要する経費は、一体年間どの程度見込まれておるのですか。先ほど富山、根室に一応従たる事務所を作る、また旧島民の在住の多いところには連絡員を置くとか、支所を作らなければならないようなことが考えられてくるのです。北海道は広いところですから、そのためにどういう機関で代行するかという問題もあるでしょう。釧路と根室の間は、非常に近いようでありますけれども、急行に乗って四時間かからなければ釧路から根室に行けないものですから、ちょっとわれわれの常識から判断できない広大な北海道の土地に現在分布されておるわけです。そうしますと、相当な経費というものがかかるように予想されるのですから、この措置をとるにあたって、北方協会の運用の規模あるいはそれに伴う経費については、どの程度見込まれておるのですか。
  74. 林田悠紀夫

    林田説明員 初年度におきましては、大体半年くらいの事業になると存じまするので、大体年間といたしましては当初のところは千万円くらいを考えております。それで初年度はその半分の五百万円、そういう考え方でございます。
  75. 松田鐵藏

    松田委員 先ほど岡田委員質問の金利の問題、公債として六分きている。六分交付される、岡田委員の言う通りです。六分という金利がきておるのだから、こういう人々に対する金利というものは、半額くらいやったところで、まだ半分残る。これを七分五厘なり六分五厘となったら、この人々はどうにもならぬことになる。まずそういう点が一番大事だと思う。  次に担保の点からいったら、これが僕は一番大事だと思う。こういう人々は担保といってもない。何のために北方協会を作るのか。この交付金というものは漁業協同組合のようなのもあるし、個人に対してはみな個々のものである。当然建前はみな個人にやらなければならないものである。どうにもむだづかいになってはいけないということで、北方協会というものを作って、指導するということである。そうしたならば、この金というものは、お互いに北方地域人々が全部同じ立場になって、困る人のめんどうを見ていくというやり方でなければいけない。北方協会を作る意味はそこにもある。そういうことだから、担保の必要というものは、北方協会が十億というみなのまとまったものを持っておる。そうしたならば、その困っておる人々から担保をとるなんということはでき得るものじゃない。これはそこまでいかなければ、岡田君の言う通り、ほんとうにこれらを救済するとかめんどうを見てやるということはでき得ないと思う。それからまた漁業協同組合とか団体ががっちりしたものになっていけば、ものを作るとか船を作るということに担保をとるということは当然でしょう。しかし船とか店舗を作るというようなものに一々担保をとるということになったら、北方協会というものは作らぬでもいい。共通の責任を持つ、そのようなことでなければならないと私は思う。こういう点を協会に対して政府は指導してやってもらいたいと思う。関連ですから、私への答弁は要らない。
  76. 岡田利春

    岡田(利)委員 私、時間がないから質問を終わりますけれども、まだまだ不十分だと思う。従って政府委員の方でも、十分これらに対する見解なり重点的な柱を明確にされて、同僚議員からもあとから質問がありますから、そういう点明確に一つ用意をしておいて、明らかにしていただきたいことを要望して終わります。
  77. 久野忠治

    久野委員長 両案についての残余の質疑は次会に譲ることといたします。  次会は明二十六日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十六分散会