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1961-04-24 第38回国会 衆議院 内閣委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月二十四日(月曜日)     午前十時二十二分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 伊能繁次郎君 理事 小笠 公韶君    理事 草野一郎平君 理事 高橋  等君    理事 宮澤 胤勇君 理事 飛鳥田一雄君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君       内海 安吉君    大森 玉木君       仮谷 忠男君    佐々木義武君       島村 一郎君    田澤 吉郎君       服部 安司君    福田  一君       藤井 勝志君    藤原 節夫君       保科善四郎君    前田 正男君       緒方 孝男君    杉山元治郎君       田口 誠治君    原   茂君       山内  広君    横路 節雄君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         防衛庁参事官         (長官官房長) 加藤 陽三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  小野  裕君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君         調達庁長官   丸山  佶君  委員外出席者         防衛庁書記官         (防衛局防衛審         議官)     麻生  茂君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 四月二十一日  建設省北海道開発局及び運輸省港湾建設局定  員外職員定員化に関する請願井手以誠君紹  介)(第二七二八号)  同外九件(石山權作君紹介)(第二七二九号)  同(井手以誠君紹介)(第二七九五号)  同(井堀繁雄紹介)(第二七九六号)  同外九件(石山權作君紹介)(第二七九七号)  同外六件(和田博雄紹介)(第二七九八号)  同外三件(大矢省三紹介)(第二七九九号)  同(片山哲紹介)(第二八〇〇号)  同外四件(佐々木良作紹介)(第二八〇一  号)  同(田中幾三郎紹介)(第二八〇二号)  同(西尾末廣君紹介)(第二八〇三号)  同外一件(本島百合子紹介)(第二八〇四  号)  同(井手以誠君紹介)(第二八八六号)  同外五件(石山權作君紹介)(第二八八七号)  同外七件(緒方孝男紹介)(第二八八八号)  同外三件(岡本隆一紹介)(第二八八九号)  同(井手以誠君紹介)(第二九九〇号)  同(岡良一紹介)(第二九九一号)  としよりの日を国民の祝日に制定請願(植木  庚子郎紹介)(第二七三〇号)  同(大倉三郎紹介)(第二八〇七号)  同(小笠公韶君紹介)(第二九九二号)  恩給法等の一部を改正する法律案の一部修正に  関する請願前田義雄紹介)(第二七三一  号)  同外一件(大沢雄一紹介)(第二八〇八号)  同(河本敏夫紹介)(第二八〇九号)  同外一件(山口六郎次紹介)(第二八一〇  号)  同外一件(荒舩清十郎紹介)(第二八八四  号)  同外一件(中村幸八君紹介)(第二八八五号)  建国記念日制定に関する請願外一件(尾関義一  君紹介)(第二八〇五号)  同(千葉三郎紹介)(第二八〇六号)  農林省に園芸局設置に関する請願中澤茂一君  紹介)(第二八一一号)  同(松平忠久紹介)(第二八九二号)  建設省定員外職員定員化に関する請願外七十  四件(和田博雄紹介)(第二八一二号)  厚生省に老人局設置に関する請願中山マサ君  紹介)(第二八九〇号)  山形県河北町西里、溝延両地区の寒冷地手当増  額に関する請願牧野寛索紹介)(第二八九  一号)  米軍厚木基地による騒音防止に関する請願(安  藤覺君外三名紹介)(第二八九三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二七号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  二八号)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。飛鳥田一雄君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 防衛庁の方に防衛二法の問題について伺いますに加えて、去る二十一日藤沢市に米軍ジェット機墜落いたしまして民家に非常な被害を与え、あまつさえ貴重な人命を失うに至ったわけであります。この点についてまず詳細な御報告を、この機会に調達庁長官より述べていただきたいと考えます。
  4. 丸山佶

    丸山政府委員 二十一日の午前九時十分ごろ、厚木基地を離陸いたしました米海軍ジェット機四機編成のうちの一機が、東京電力株式会社所有の高圧線に接触しまして、その架線を切断し、炎上しながら藤沢市高倉の麦畑を滑走して沢野一郎さんの家屋に墜突いたしました。そのため沢野家家屋四棟を全焼し、御主人の沢野一郎さんは死亡し、妻の喜代さんは身体に火傷を負ったのであります。さらに付近渡貫治助さんの家屋二棟及び沢野勇さんの納屋一棟も類焼、全焼せしめたものであります。なお渡貫梅太郎さんの家屋も半焼し、付近一帯の立木及び農作物等被害を与えたのがこの事故の概要であります。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 現在までもこの種の被害というものは非常に多かったわけです。つい最近のものを見ましても、一月十一日から十八日にかけて米海軍厚木基地所属ジェット機四機が、たった十日かそこらの間に相次いで被害を与えている。たとえば一月十一日午後三時ごろ、厚木市上空で訓練中の米海軍厚木基地海兵隊所属ジェット機同市妻田麦畑墜落して、パイロットは脱出をいたしましたが畑に非常な被害を与えた。同じ十一日の午後六時三十分ごろ、大島東南九十三キロの海上でA4Dスカイホーク一機が墜落し、さらに十三日の十二時ごろ、厚木滑走路で同基地所属のA3Dスカイウォリアー墜落して、ジェット機は大破し、搭乗員が四名死にました。また十八日午前十一時十分ごろには、神奈川県大和市、相模鉄道相模大塚駅の東六百メートルの同鉄道路線の土手に、厚木航空基地を離陸した直後のA4Dが墜落し、飛行機は燃え、搭乗員一名は即死したという事件すらあります。すなわちちょうど電車がそこにとまっておりませんでしたために被害はなかったのでありますが、もしたまたま電車がそこを通過中でありましたならば、何百人という死傷者を一ぺんに出すような状況だったわけです。こういうふうに次々と事故が頻発をして被害を受けておるわけでありますから、こういう問題に対して今回の事件を含めて、一体防衛庁あるいは調達庁の方々は、どのような態度でこれに臨もうとしていらっしゃるのか、その基本的な問題をまず承りたいと思います。
  6. 丸山佶

    丸山政府委員 お話のように厚木関係で本年におきましても、もうすでに数件の飛行機墜落事故あるいは墜落に至らずまでも、衝突等事故がございました。これに関する原因究明または予防措置に関しまして、調達庁現地米軍とともに調査、究明、またその措置対策樹立努力しておるわけでございますが、この厚木関係一つ原因考えておりますのは、あそこの滑走路に関しましては、オーバーラン安全地帯整備が目下整備中で完成しておらない。先般来このために滑走路の延長上のオーバーラン整備というものに努力をいたしておるのでございますが、今お話のございましたような相模鉄道、それに沿いまして県道がございますが、その県道のつけかえをいかにするかというような点に関しまして、まだ地元関係者の間の計画が具体的になっておりませんために、オーバーラン整備されておらない。そのために、お話しになりました事故も、おもに離陸のときあるいは着陸のときに、もしオーバーランが完成しておれば、かりに行き過ぎて着陸する、あるいは行き過ぎて離陸するというようなときにおいても、飛行機事故が防げるのでございますが、その点の整備が今最中でございまして、十分なっていない、これが私一つ原因考えておりますので、その整備を急いでおる次第でございます。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういう態度で交渉をなさるから、問題が起きるのじゃないでしょうか。元来米軍は、この厚木飛行場でどういう練習をしておるかと申しますと、航空母艦から発進する、航空母艦に着艦する練習をしておる。すなわちゴー・アンド・タッチ訓練と申しますか、そういう特殊なやり方をやっておるわけです。こうした訓練というものは当然飛行機に無理を与えますし、操縦の方法にもかなりな無理が出てくるわけです。だから滑走路の長い短いではなくして、訓練内容そのものに当然の無理を含んでいる訓練なんです。しかもそういう訓練をあの人口稠密厚木飛行場でやるということに問題があるのであって、むしろ調達庁合同委員会議題として、ああいう人口棚密の中にある飛行場の中で、そういう特殊な、しかも非常な無理の出ている訓練、そういうことをやることについての異議を申し述べるべきであって、滑走路を延ばしたって問題は解決しませんよ。たまたま一月十八日午前十時ころに起こった相模鉄道にぶつかった事故は、なるほど滑走路関係もあるかもしれません。それ以外の事故はどう見たって滑走路関係がないじゃありませんか。たとえば厚木市の妻田麦畑墜落した飛行機、こういうものは滑走路とは全然関係ありません。妻田というのは御存じでもありましょうが、滑走路の方向にはありませんよ。これなどは当然ゴー・アンド・タッチ訓練の無理をした飛行技術の中から出てくるものです。こういうものについて調達庁は何らかの形で抗議をなすっていらっしゃるのですか。滑走路の問題にすりかえてしまうということは、むしろ不自然です。一体そういうことをアメリカ軍に対して申し出たことがありますか。
  8. 丸山佶

    丸山政府委員 お話通り厚木飛行場訓練の中には、艦載機航空母艦に離着陸する、こういう訓練が含まれておりまして、しかも厚木を使用すること非常に頻度ひんぱんでございます。これはまさにお話通りでございます。一つ原因として私は滑走路オーバーラン関係を申し上げました。滑走路は十分にあるのでございますが、オーバーラン整備されておらない、こういうことが一つでございまして、それに対する対策を講ずる。  もう一つは、お話にもありましたように、あそこの地形等から見て、飛行訓練頻度度合い等において、今のままを継続することは、付近に重大な危険を与え、また現に事故も起こしておる。従ってこの飛行場を使用する訓練関係において格別なる考慮を加えて、この訓練を別の場所でやるなり何なりをいたしまして、安全度合いを増す方途を講ずる必要がある、このようなことで昨年の末から今日にかけまして、関係飛行部隊とともに検討を加えておるのでございます。それによりまして何らかこれを緩和し、安全度合いを増すところの方途も、今漸次話が進んでおる次第でございます。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それを一部分木更津に移そう、こういうお話だと思いますが、しかし木更津とて同様ですよ。厚木飛行場周辺の人家の模様からいえば、少しも変わりありません。当然こういう問題について木更津人口稠密でいけない。東京都の周辺だ。また厚木飛行場も非常に人口稠密で危険だ。こういう問題は当然航空母艦それ自体でやるべきであって、何も日本がそのために基地を提供してやる必要はないわけです。そういう点で木更津に移す話などをどんどんお進めになることは、今度は木更津の住民が非常な迷惑をこうむる、こういう点ではなはだ危険千万だと言わなければならないと私は思うのですが、この点についてどうですか。
  10. 丸山佶

    丸山政府委員 御指摘のようなことも検討をいたしておるわけでございます。しかし木更津あるいは厚木も合わせまして、このような訓練度合いというものが絶対的に周辺の安全を脅かすというような事態であるならば、もちろんこの全体的の計画においてなお検討を要するとは考えておりますので、それらを全部ひっくるめまして、なお向こうとともに検討を加えている次第でございます。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 厚木などは頻度の多いときには、一分に一台ぐらい飛び上がり飛びおりているわけです。これで事故を起こすなという方がむしろ無理なんです。こういう点についても当然調達庁は、もっと強く米軍要求をなさる権利があるはずです。たとえば新しい地位協定の第三条三項を見ていただきますと、「合衆国軍隊が使用している施設及び区域における作業は、公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」と明確に書いてあるわけです。ところが今までもしばしば事故が起きているにもかかわらず、何ら公共の安全に妥当な考慮を払っていないじゃないですか。権利としてこの地位協定をあなた方は後生大事に守っていらっしゃるのですから、権利として要求できる基盤がここにあるじゃないですか。こういうことを単なる相談ではなしに、この第三条の三項に基づく権利として要求をなさるお心持がありますかどうですか。
  12. 丸山佶

    丸山政府委員 もちろんこの地位協定の第三条の三項によりますところの、公共の安全に妥当な考慮を払う、この条項によりましてこうすべきである、ああすべきであるという要求を私どもはいたしているつもりでございます。ただしかし飛行機というような特別の専門的な部面、その演習訓練における専門的な軍事面、これらの点におけるいろいろな問題がございます。その公共の安全に妥当な考慮を払って、周辺事故のごときものを起こさないような措置をとれ、これは常々事故たびごとに私ども要求しておったわけでございますが、それに関する予防措置あるいは今後の措置に関しまして、軍事訓練あるいは飛行機の性能、滑走路の工合、その他の種々なる事項に関して、そこに不備欠点がありはせぬか、あるいは訓練計画全体においてあまりに頻度がひんぱん過ぎる面がありはせぬか、こういうことについて協議検討をいたしていると申し上げておきたいと思います。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今の協議検討というお話ですが、一体調達庁米軍からあらかじめ行なわれる訓練あるいは演習計画を、事前に受け取っているのですか。
  14. 丸山佶

    丸山政府委員 米軍自身がやる訓練計画等事前に受け取っておりません。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは当然要求すべきじゃないですか。そうしてあらかじめ行なわれる訓練なり演習なりの計画を受け取って、このような低空演習をせられることは迷惑である、変更してもらいたい、このような編隊でもってこの地帯を通ることは困るから変更してもらいたい、こういうような要求はあなたの方でできるのではないですか。
  16. 丸山佶

    丸山政府委員 米軍演習計画訓練等をどのような方法でやり、どのような計画のもとに施行するか、このこと自体調達庁事前に連絡を受け、承認する等の権限を持っているとは私は思っておりません。しかしながら基地そのもの、つまり飛行場あるいは演習場というものに関しましては、いろいろその使用上の条件もございます。また今御指摘のありましたように第三条三項の、こういう条件で私ども権利を持っているつもりでございます。従ってそういう角度において安全度合いを増すための要求等はいたす。それに関連いたしまして、それならば一体現在の訓練計画等はどんなようになっておるのだろうか。こういうことであるから事故が起きるのであろう、こういう関連においてそのような事項協議変更を加える、こういうことになると存じます。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ここで思い出すのは西ドイツ政府が結びました行政協定であります。普通ボン協定と呼ばれておりますが、ボン協定の中には、はっきりと駐留米軍演習をいたします場合には、その演習計画をあらかじめドイツ政府提出をし、ドイツ政府がこの演習計画に対して希望あるいは条件変更等を申し述べてこれを許可する、許可したところで演習を施行するという規則がちゃんとあるはずです。ところが日本の新地位協定は、全然その点を野放しにしてあるわけです。野放しにしてあるわけではない。すなわち第三条の第三項に基づいて基地を使用する場合には、「公共の安全に妥当な考慮を払って行なわなければならない。」という形で米軍を縛り、この妥当な考慮を払わせるという条文を通じて、あなた方は演習計画提出要求し、その演習計画について適正な変更を加える権利を持っているはずなんです。そう解釈できませんか。もし解釈できないとすれば、ボン協定がきちっと国民権利を守る態度をとっておるのに、日本の新地位協定は完全にしり抜けの新地位協定を結んだものと考えざるを得ないのでありますが、そういうふうに新地位協定ドイツボン協定に比べてはるかに劣等なものであるということをお認めになるのか、それともこの三条三項を通じてアメリカの軍の演習計画に対しても、日本政府は意見を述べ、これを変更する権利を持っているのか、どっちなんですか。
  18. 丸山佶

    丸山政府委員 演習計画あるいはその訓練実施自体内容、あるいはそれを承認する、許可する、そのような日本側行為がなければ米軍ができないということには、日米間の協定はなっておりません。しかしながらそれらの「施設及び区域における作業」と書いてありますが、これは広く米軍の行動すべてを含むものと私は解釈いたしております。従ってこれが周辺公共の安全に対して非常に危険を増すようなことになり、公共の安全に妥当な考慮を払ったものでないということであるならば、当然われわれ側はそれの変更なりあるいは修正なりを要求する権利はあると私は考えております。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますとこの新地位協定というものはボン協定に比べて、はるかに国民権利を守ること薄い協定だ、こうお認めになったと同じことにならざるを得ないと思います。しかしもしあなたのお説に従ったとしても、もう再々事故は起き、被害は生じているのです。だからそういうゴー・アンド・タッチ訓練それ自身について、あらかじめ計画をお出しなさい、そしてこれをこう直してもらいたい、こういうことを言う権利は十分にあるじゃないですか。一体何万人死んだら、何万人殺傷を受けたら、あなたは初めてそういう行為に出るのですか。もう出る条件は熟しているじゃないですか。そういうふうに計画変更要求する。今後あなた方の方ではボン協定と同様に演習計画提出せしめ、そしてこれに対して日本政府として妥当な変更を加えていく勇気がおありですか。西ドイツ国民と同じ程度に、少なくとも日本国民はこの国の政府によって守ってほしい。こういう希望を持つことは一体無理でしょうか。西ドイツ国民よりももっと危険な状態の中で、がまんしていかなければならないという理由一体どこにあるのでしょうか。この問題は一つ防衛庁長官から、総括責任者としてお答えをいただきたいと思います。
  20. 丸山佶

    丸山政府委員 私から先に見解を申し上げまして、あと大臣からお答えをいたすことにいたしたいと思います。ボン協定との比較検討の問題は、全般的に見なければ彼我どうこうであるという決断も出ないと思いますが、おのおののそれは国の実情に応じた処置がとられているものと私は考えております。なお今具体的な、演習及び訓練公共の安全に関する問題に関しましては、お話の筋によりまして私どもも十分に検討いたしたいと考えております。
  21. 西村直己

    西村国務大臣 まず厚木におきまして貴重な人命がそこなわれましたことは、まことに遺憾であると思います。また飛鳥田さんがお話になりますように、米軍事故が最近頻発しておる。これに対しましては調達庁はその所管の範囲内において十分、あるいは合同委員会あるいはその他の方法を通じて折衝する。私も確かに地位協定の第三条三項に基づきまして、やはりこの精神というものはあくまでも貫かしていかなければいかぬ。元来この安保協定そのものが、日米共同利益、また相互信頼に基づいていること御存じ通りでありますから、その精神を生かすのであります。従ってわれわれは貴重な人命をそこなうような方法において、安保体制を守るという考えはないのでございます。しかし現実の問題になりますと、いろいろな状況もありましょう。従って調達庁長官責任において、またそれ以上の事柄におきましては私も責任を持って、この三条の精神が貫けるように努力をして参りたい、こういう考えでございます。
  22. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今調達庁長官が、ボン協定との比較においておのおの実情がある、実情がある、こう言われたのですが、実情もへったくれもない問題なんですよ。経済的な、どっちが利益を受けているとか、こっちが少しよけい経済的な利益を受ける、こっちが損をしているという問題なら、比較ということもあり得るし、国力国情に応じてというお好きな言葉も使えるわけですが、事人命に関することについて、実情の違いなどというものはあるはずがないじゃないですか。西ドイツ国民人命だから大事で、日本国民人命だから低くていいという理由はどこにもないわけです。事人命を保護するという点においては、少なくとも同等あるいはそれ以上でなければならぬわけです。にもかかわらず日本の新地位協定というものは、完全に底抜けでないですか。演習計画さえ出させられない。そしてその出した演習計画に対して、こちらの側から適当な変更を求められないというような、そういうミゼラブルな、まるでこじきみたいな隷属関係を、あなた方はそのまま肯定していかれる必要は全然ない、こう私は思うわけです。  理屈ばかり言ってみたところで仕方ありません。そこで第三条の三項を足場にして、その要求は十分にできるのではないか。せめて条約を結ぶときにあなた方がミスをなすったそのミスは、この三項を足場にして合同委員会で、公共の安全に妥当な考慮を払わなければならないという条文足場にして、演習計画をお出しなさい、こういう要求をすることができるわけです。これを私がどちらかと言えば御忠告的に申し上げているのに、それさえやろうとおっしゃらない。これでは一体日本国民はどうなるのです。またまたこういう被害は次々にと出てきますよ。厚木において、あるいは移動した木更津において、飛行機着艦訓練をやっている以上、次々に出てきます。しかも落ちた飛行機を見てごらんなさい。A4D、これは低空用攻撃機ですからまだいいのです。ところが一月十三日に落ちたA3Dスカイウォリアーですか、これは長距離光度攻撃機爆撃機です。そして最近アメリカで出した海軍の白書を見ますと、明らかに核及び普通兵器搭載と書いてある。これは核兵器も積めるのですよ。なるほど安保加藤さんは、両用兵器の場合には事前協議の対象にならないのでしょう。ですが現実にはそれが飛んでいるのです。核兵器を積んでいてそれが落ちたらどうしますか。こういう点についても、演習計画を出させて、核兵器を搭載しないということを確認しておかない限り、両用兵器なんですから危険きわまりないじゃないですか。そんなことはない、相互信頼だとおっしゃいますが、しかしだれかがこっそり運んでおって、それがぽこんと落ちて被害を与えたら、これは単に数軒の農家だけではなしに、藤沢市も厚木市も大和市も、みんな壊滅してしまうのです。だから演習計画を出させるということは非常に重要なんですよ。ところがそれさえもおやりになろうとおっしゃらない。  もう一度伺います。ボン協定ですら、アメリカ西ドイツ政府要求に基づいて了承しているこの問題を、この日本防衛庁はおやりになる勇気はないのか。ちゃんとやる法律的な足がかりもあるのですから、今後演習計画を出させ、その演習計画に対して日本政府がそれでは困りますという要求をし、変更を加えるとうような態度に出るお気持ちがあるのかないのか。向こうが聞く聞かぬは別として、そういうことを要求されるという態度をお約束願えますか。これは一番重要な問題ですから、一つ防衛庁長官お答えいただきたい。
  23. 丸山佶

    丸山政府委員 先ほども申し上げたと存じますが、現在の協定上のものといたしまして、米軍演習あるいは訓練計画内容等を事前に知りまして、それをこちらが承認するとか、その他の処理には当たっておりません。しかしながらこの協定三条三項の「公共の安全に妥当な考慮を払って行わなければならない。」この関連におきまして、それらの処置に関しまして修正要求するとか、その他のことは必要があると考えますので、その点は十分に検討いたした上処置いたしたいと思います。
  24. 西村直己

    西村国務大臣 基地全般に対する防衛庁長官としての考え方でございますが、この問題の前提になりますので申し上げますが、私はやはり基地につきましては提供すべきもの、また日本が遂行すべき義務というものははっきりして参りたい。また国民も、安保というものが国策として体制が立っている以上は、一つその線は堅持をお願いしたい。これは相互信頼一つの線だと私は思う。と同時に向こう側に対しても、守るべき精神というものはまたはっきり守ってもらいたい、これが私は相互信頼だと思うのであります。ですから率直に申しまして、ただ基地は困る、安保は反対だからといって騒ぐことは、やはり私は相互信頼をくずす一因にもなろうし、同時に今度は向こうが多少無理をして基地を使用することになりますれば——やはりそこは相互信頼で、あくまでも両者が結びました条約を忠実に守る。しかし目的は共同利益でございます。貴重な人命を損傷してまで共同利益が立つということは私は考えません。そこで個々の問題に入って参りまして、今度はこの三条三項に基づいて演習計画を出させる出させないという問題になって参りますと、それはその精神から割り出して参りまして、大きな立場から、演習計画のたとえば核を積む積まない、そういうような問題であるとか、大きな方針については私は事前にも十分に打ち合わせる。しかし個々具体的の演習計画まで、われわれの方が事前に検閲的な態度をとり、介入までする必要はない。そこはやはりお互いの基本をまずしっかり立て合いながら相互に信頼する。しかもその目的は共同利益である。そしてその人命を損傷するというようなことについては、絶対避けていくという努力はわれわれもして参りたい、これが私の考えでございます。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ずいぶん皮肉っぽい言い方ですが、西ドイツ政府よりも日本政府の方が、アメリカを十分に信頼している度合いが強いということですか。西ドイツ政府アメリカとの相互信頼の上に立っているはずなんです。にもかかわらず、それだけのきちっとした要求を出して、協定の中にきちっと入れているのですよ。そうすると、日本はいれてもいないし、これから要求もしない、それだけよけいにアメリカ政府を信頼するということですか。
  26. 西村直己

    西村国務大臣 ボンの地位協定の問題は、これはまた条文の立て方も違うと思います。地上等におきましては施設区域外の訓練等についても、日本とは違って相当広範囲なものを認めておるとか、立て方も違っておると思うのであります。ただ私はドイツ比較してどうだという問題ではなく、われわれは日本安保体制地位協定という、相互できまったものを忠実に履行して参りたい、こういう考え方でございまして、ボン協定とどうだという考え考えているわけではありません。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 忠実に守っていく結果が、何十人、何百人という人々が殺傷されていくじゃないですか。忠実に守るという中でそういうことが隠されていいのかどうか、なかなか問題があります。しかしこれは議論しても水かけ論になるようです。  そこで調達庁長官に伺いますが、一体基地の上空外、たとえば高倉とか藤沢とか宮ケ瀬とか妻田とか、そういうところの上で訓練、いわゆる演習をする米軍権利というのは、地位協定の何条ですか。私は権利はないじゃないかと思いますが……。
  28. 丸山佶

    丸山政府委員 日本の領空において米軍演習訓練する、このことにぴったり規定した条文はないと思います。しかしながら米軍安保条約第六条の使命を遂行するために、日本基地を使用しているのでありまして、また基地間における連絡、移動、これらの権利も持っておりますし、また各所に対地爆撃場その他の演習場、あるいは海上に空対空の演習場等も設定しております。それらの関係を総合してみましても、日本の航空管制その他空に関するいろいろな法令に準拠し、これに違反しない限り米軍が領空において訓練演習ができる、このように私は解釈しております。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 非常に苦しそうな御答弁ですが、権利ないじゃないですか。たとえば那珂湊の対地爆撃訓練場のようなものは、きちっと地位協定に基づいて基地が提供せられているから、その上で空中訓練をやる権利は与えられているのです。また海上の空中演習場、たとえばチャーリーとかなんとかたくさんありますね。そういうものも日本政府との合意に基づいてきちっと設定されているから、それで訓練する資格がでるわけです。権利があるわけです。ところがそういうものが何にもなしに、どこでもここでも、この国会の上空でも空中訓練を平然と行っていないなんという権利一体あるのですか。これは明らかに不法なる領域侵犯ですよ。もし安保条約をもとにして、米軍日本に駐留する権利があるのだから、その安保条約の目的を達成するために必要なことは何をやってもよろしいというのならば、この地位協定なんか要らないのじゃないですか。地位協定を定めたというころは、少なくとも安保条約第六条に基づいて、米軍がこの日本という土地の上で行ない得べき権利義務を明確に定めたということです。それ以外のことはできないのです。それ以外のことができるなどとおっしゃったら、これは大へんなことになりますよ。一体米軍が、定められない、地位協定によって規定されない地域の上で、勝手に組んづほぐれつの空中演習をやる権利は、何条に基づくのですか、もう一度伺います。無権限で政府がそういうことをやらせており、しかもその無制限な行為によって、高倉において今日何人という人が死んだとするならば、これは明らかに政府の殺害行為ですよ。単なる賠償をすればそれで済むなどという問題じゃないはずです。もう一度伺いますが、いかなる法律の何条の何項に基づいてそういう権利があるのですか、はっきりとおっしゃって下さい。それを指摘できない限り、あなた方の殺人だと認定せざるを得ないですよ。
  30. 丸山佶

    丸山政府委員 私の先ほどの説明におきまして、若干言葉の足りない、あるいは不足の点もあったかと思いますが、私もこの演習あるいは訓練における場所というものは、御指摘のように海上の空対空の各種のもの、あるいは陸上における空対地その他のものに指定しておると思います。また各航空基地、いわゆる飛行場でございますが、飛行場において発着等の訓練は許されると思います。従いまして厚木の場合におきましても、艦載機航空母艦の発着訓練というものにあそこを利用しておる。これに関しまして、それならばその周辺の鎌倉でも、横浜でも、あるいは国会の上でも、どこでも彼等が勝手に空対空の演習をやっておる、こういうことを申し上げたつもりはございません。あくまでもその演習訓練というものは、飛行機基地なり、それから特定の演習場なりというもので行なわれるべきものであります。しかしながらその各演習場あるいは航空基地等の各相互間の飛行は許されておりますし、そのような観点におきまして、今回の事故原因となりました当の訓練も、その飛行場演習場というものを離れた訓練ではございません。何にもない、いかなる上空においてもそういう訓練をやってよろしいという規定があるものではないと私は解釈しております。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 冗談言っちゃいけません。今度落ちた高倉というのは、滑走路の前後の延長の地点にはないのですよ。ずっとはずれたところにあるのです。高倉の例を一つとってみたところで、単に厚木基地飛行場の発着、それだけの訓練ではないということを、はっきりと今度の事故個所が物語っているじゃありませんか。妻田だってそうです。その他の場所における被害だって、みんな単に滑走路を飛び上がり、飛びおりる練習だけに基因しているとは、とうてい思えないわけです。もし何ならあなたと二人で横浜の調達庁へ行って、事故を全部調べてみましょう。必ずやそこには、単にあなたのおっしゃるような基地の出入だけの、基地から出たり入ったりするだけの問題でないということがはっきりわかってきますよ。あっちでもこっちでも訓練をやっているのです。現に茜ヶ久保代議士の地元においても、タンクを落としたなんという例があるじゃないですか。タンクだか自動車だか知りませんが、運んでいる飛行機が落としたという実例もあります。すなわち基地外においても盛んにやっている。現に私だって横浜に住んでいますから、ときどき見ますよ。横浜の上空で、あるいは鎌倉の上空で、藤沢の上空で、空中訓練をやっていますよ。なるほどそれはぽんぽんサイドワインダーを撃ったり、あるいはその他のものを撃ったりするという形の訓練はやっていないけれども現実にやっているじゃないですか。この間もここから見ておりますと、そちら側の空に、明らかにトス・ボミングの練習をやっている飛行雲が現われていました。あれは府中じゃないはずです。東京都の上空において、原爆投下をやるトス・ボミングの練習をやっている、こうとしか思えないのです。現実にやっている事実をあなたは否定なさって、単に基地に出入りをするだけだとおっしゃるなら、大へんなことになりますよ。幾らでもそういう演習を写した写真はありますよ。きょうは持ってきておりませんが、もし必要だとあるならば持ってきてごらんに入れます。一体基地の上空以外において訓練をする権利は、何条に基づくものなのですか。どの法律の何条に基づくものなのですか、それからお答え下さい。
  32. 丸山佶

    丸山政府委員 航空機の訓練を直接に直接に規定した条文は、私先ほど申し上げましたようにないと思っております。しかしながら基地飛行基地あるいは演習場というものの使用を許しておる実状、並びに各施設区域間の連絡、移動ということに関する規程は、地位協定の第五条にもありますことは御承知の通りでございます。これらのことによりまして、米軍基地において、あるいは演習場において訓練を行なう、また飛行基地間の移動、連絡、これらのことを行なう、それも一つ訓練になる事項であろうと思います。そのようなことによって行動しておるのでありまして、今までのいろいろの事故になりましたような事例、実例等、ただいまのところ具体的のところを詳細に、私もつまびらかな資料を持っておりませんが、米軍飛行機訓練演習あるいはその基地間の移動等に関しましては、第五条の移動の規定、それから第二条、第三条における施設区域関係あるいは海上における演習場についてのもの、これらのものでやると思っています。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 どうも長官、よく条文を読んでいただきたいのですが、五条は、入港料または着陸料を課されないで日本の国の港または飛行場に出入することができるという、いわゆる入港料、着陸料、こういうものを中心に規定しているわけです。五条の二項をごらんいただいても「移動し、及びこれらのものと日本国の港又は飛行場との間を移動することができる。」ということも、また使用料その他そういう料金関係を中心に規定をしているだけであって、基本的な権利をこれが設定するものではないのですよ。むしろあなたがおあげになるのならば、三条の一項をおあげにならなければならぬはずです。三条の一項には「出入りの便を図るため、」云々とあるわけです。こういう条文をあげなければならぬのであって、てんでそっぽの条文をあげて私たちをごまかそう、まあ私はごまかされてもいいです。しかし国民はごまかされては困るのです。そういうインチキな条約の適用の仕方をされては私たちは困るのです。すなわち、くどいようでありますが、米軍はこの地位協定認めたとして—私たちはあんまり賛成してないのですが、認めたとしても、この基地の上空以外において訓練を行なう権利はないのです。これをここではっきりと確定をしていただく。だから米軍訓練をしたいと思うならば、当然日本政府事前訓練計画を持ってきて、長官である丸山さんの承諾を得た後におやりになるべきです。そういう形を出さない限り、今後も藤沢における事件は続発しますよ。そういうことをあなた方は覚悟しなければならぬ。そのときにああまたも起こった、お気の毒でございます。こう言って防衛庁長官がここで遺憾の意を表せられて、できるだけ損害は弁償いたしますなどと言ってみたところで、親を失ってしまった子どもはもう再び親を持てないのです。今度の藤沢事件でも、いたいけな二児が両親を一挙に失ってしまいました。私もその子どもがぼう然と立っている写真を見て涙が出てしようがなかったです。そういう問題が今後も出ますよ。今ここでその人たちに対して遺憾の意を表していかにお金をやったって、もうおやじやおふくろは出てこないのですよ。それを防ぐ方法は、今申し上げたように明確に米軍に対して、君らの方は基地上空以外において訓練を実施する権利はないのだ、こういうことをはっきりと通告し、もしやりたければ訓練計画をあらかじめ政府に持っていらっしゃい、こう言ったっていいわけです。ちっとも相互信頼にもそむかないでしょう。ボン政府でさえやっているのですから、ボン政府がやっていることを日本政府がやっていけないなんという国際常識はありません。そういうふうにおやりになる勇気があるかどうか、もう一度私は伺っておきたいと思います。くどうようでありますが、これは今度の被害を少なくするという意味で重要です。
  34. 丸山佶

    丸山政府委員 演習あるいは訓練に関しましては飛行基地、それへの出入、あるいはその間の移動、それからまた特定の演習場等において行なわるべきものだと私は考えております。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 考えているだけじゃだめなんです。
  36. 丸山佶

    丸山政府委員 いや、その通りの解釈が条約及び協定の意味するところであると私自身も思っております。またこれによって周辺事故は、これは御指摘にもありましたような第三条三項にありまして、これによって公共の安全を阻害するということは、してはいけないところでありますので、これに関連いたしまして、必要な米軍演習あるいは訓練というものの修正を要するやいなや、これらの点は十分に検討いたしまして処置いたす所存であります。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 処置いたすつもりでありますなどとおっしゃったってだめですよ。私にそういうことをやりますということをはっきり約束して下さい。だって、もう長官のところにも報告が行っているでしょう。厚木飛行場は、最も使用頻度のひどいときには、一分何十秒に一台ずつ飛び上がっているのですよ。汽車だって五分以上間隔を置かなければ危険だというので、もうそれ以上増発できないじゃないですか。ところが飛行機などというスピードの猛烈な、しかもジェット機、これが一分何十秒に一台ずつ舞い上がっているというような状況、こういう状況から事故が出てこなかったら不思議でしょう。これは何も今始まったことではないのです。もう一年も二年も前から行なわれておるわけです。そうして大和の市民や何かはその爆音のためにとうてい生活できないというので、再々あなたのお役所へ陳情をしておるのです。だからあなたのお役所がそういう事実を知らぬとは言えないはずです。そんな無理な訓練をすれば必ず事故が出てくるのですよ。これも火を見るよりも明らかじゃないですか。だからあなた方はそういう訓練計画に対して、人間の名において、人間の生命の名において、しかもこの新地位協定の第三条の三項の名において、異議を申し述べる権利があるのですよ。ところがその権利は一ぺんも行使なさらない。そしてまた今度は大きな事故を起こしてしまったわけです。あなた方は過失による殺人という条文があるのを御存じでしょう。これは明らかなる怠慢による殺人ですよ。過失による殺人ですよ。くどいようでありますが、センチメンタルなことを言いたくありませんが、一挙に両親を失ってしまったいたいけな二人の子供に対して、あなた方は何とおっしゃって顔を向けられるのです。基地を管理する責任がある防衛庁長官も、あるいは調達庁長官も、この二人の被害者のところへ何らかの形でおいでになりましたか。あなた方の明らかなる過失に基づいて出たこの事故について、お見舞くらいいらっしゃいましたか。両長官に私は伺いたいと思います。
  38. 丸山佶

    丸山政府委員 この事故におきまして直接に生命を失われた沢野さん、またその奥さんが火傷された、実に遺憾にたえない事故でございます。調達庁、私としましては、当日この事故の発生を警察から連絡を受けますとともに、横浜調達局の局員は現場に出かけまして、軍と連絡をとって応急処置をするとともに、私の命を受けて局長自身も現場に参り、私の名前をもってお見舞いを申し上げた次第でございます。なお私、応急処置として軍側と連絡もとりまして、とりあえずのテント、それによって仮小屋その他の資材あるいは炊事道具その他毛布、必要なものを差し上げる。またわずかながらも志をお見舞として差し上げるというような措置を当日とった次第でございます。なお本問題の、この演習訓練頻度が非常に激しいという事情は、私自身もよく承知しております。従いましてこれに関して何らか適切な措置をすべきであるという考えのもとに、先般来軍側とも交渉をいたしておるのであります。いろいろ事故予防の措置等のために、オーバーランの問題、あるいは頻度自信の緩和の問題等も先ほど申し述べた通りでございますが、なお一そう公共の安全をはかる措置を考究し、軍側にとらせなければいけないと私は考えておる次第でございます。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう時間がありませんから、両長官とも見舞いに行かれないと言うことだと思いますので、これ以上申し上げません。しかし今申し上げたように、非常にあなた方の手落ちじゃないでしょうか。何にもなくて現実被害があった場合には、補償をすればいい、こういうことで済むかもしれませんが、明らかな手落ちじゃないですか。だからその場合には、藤沢なら大して遠くないのですから、お二人ともわざわざお出かけになって、お気の毒だったといってお線香の一本くらい上げられる。そのお気持ちがはね返って、国民権利を守ろうという気持ちになるのだろうと私は思います。しかしもうこんなことは強くは申し上げません。  そこで、あなたは今交渉しているとおっしゃったのですが、実は逆じゃないでしょうか。アメリカ軍から、基地周辺に高い煙突を建ててはいかぬとか、あるいは基地周辺に三階建以上のビルヂィングを建てないでほしいとか、こういうことを逆に要求されている。そしてあなた方は、基地周辺に対して建築制限なんかを現実にやっているじゃないですか。それでは交渉どころか、まるでおべっかを使っている。向こうのやりたいほうだいにやらせていると言う以外に方法がないと思うのですが、米軍基地周辺に対して高い煙突を建ててはいかぬとか、建物を建ててはいかぬとかいうことを言ってきていませんか。
  40. 丸山佶

    丸山政府委員 厚木飛行場周辺に関して、確かに高い立木がじゃまになる、あるいはもし高い煙突を建てるならば支障があるという要求は出ております。これはやはりあくまでも安全をはかるための処置でございます。飛行機の離着陸あるいはその出入の際の安全をはかるためには、それに支障になるようなものをなくすることが必要である、これの趣旨から出ておるのでございまして、これがその関係者との関係において、直ちに今の状況においてそういう制限的な強制的な処置をとり得るような法令はございませんが、やはり基地がある以上、基地を必要として日本がそこに置き、米軍をそこに駐留させておる以上におきましては、公共の安全をはかる意味からも、その周辺においてはできる限りの安全処置を講じなければいけないのでございまして、このような趣旨のもとにそのような要求も出ておりまして、これに対して私どもは対処いたしたいと考えております。
  41. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局要するところ、厚木という人口稠密なところに基地を置くという点に大きな間違いがある。同時にまたその基地において、航空母艦に離着するような、ゴー・アンド・タッチ訓練というような技術的に非常にむずかしい訓練を、ここであえて行うところに無理がある、こういうことだと私思うのです。それを全部認めておいて、基地がある限りとおっしゃって一切をごまかしていこう。それでは問題の解決にならないのです。それが基本ですよ。そして第三には、今言うように、基地外の上空において訓練を許すところに問題がある。法律的な根拠も何もないのに許すところに問題がある。こう言わざるを得ないわけです。こういう点について、もうこれ以上あなたに申し上げてみたところで、のらりくらりの御返答しかないでしょう。大ぜい傍聴して下すっている方々が、きょう政府はいかに無定見で、勝手なことを米軍に許しているかということを了解してくれただろうと思いますので、あらためて私は申し上げません。  最後に、このようにして思いがけなく両親を失ってしまったような被害者に対して、いかに被害を弁償してみたところでもうもとへ戻るわけではありませんが、一体どういう工合に補償をなさるおつもりであるのか、これを一つ伺っておきたいと思います。
  42. 丸山佶

    丸山政府委員 補償に関する限りは、できるだけの措置をいたしたいと思っております。現に調査を進めておりまして、いわゆる物的損害と申しますか、家屋その他の問題は、実際の損害を完全に補償する。またおなくなりになりました御主人の措置に関する遺族補償の点も御承知の通りでございます。のみならずこのような事態におきましては、速くその措置をとることが必要だと考えておりますので、概略のところの結果に基づきまして、概算的にでも一部分前払いという形にでもすみやかに措置いたしたいと考えております。
  43. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これはこのようにして起こった—お聞きをいただいてもわかりますように、明らかに政府の手落ちです。ですからこの問題については、今までありましたような米軍の自動車にひかれた、あるいは米軍と話しているうちにけんかになってぶんなぐられた、こういうことに対する補償とは違った措置を特別に御考慮になっていいのではないかと私は思うわけです。たとえば防衛庁長官の特別のお見舞金という形でお出しになったっていいですし、僕は何かあると思うのです。そういう規定以外の措置を、両親を失った子供たちを中心とする被害者に考えておやりになる意思があるのかどうか。これを一つ最高責任者である防衛庁長官に伺っておきたいと思います。
  44. 西村直己

    西村国務大臣 その前に一言、基地の問題につきましてきょう飛鳥田さんがお述べになりました点は、私としては非常に参考になります。私も基地の問題をごまかしていこうという考えではない。従って政府におきましても防衛庁調達庁だけでございません。関係各省の協議会も近く発足させて、環境改善とかいろいろな手を打って参りたい。出すべきものは出していくかわりに、守るべき向こう側の義務もできるだけさせて、相互に気持ちのいい立場で参りたいという考えを持っております。  それから貴重な人命が失われたということは、まことに遺憾であると私は思います。そこで私といたしましてもできることは、一つ飛鳥田さんが言われましたようなことについて工夫はしていきたい。特に私は基地に関して日米間の共同利益というために、いたずらにただ日本人の一部が犠牲を払っておるということだけは、避けていきたいという真剣な気持ちだけは申し上げておきたいと思います。
  45. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 長官も特別のことを考える工夫はするとおっしゃるのでありますから、それ以上、今幾ら出してやるのかといって伺うことも無理でしょうし、了承いたしますが、そこでもう一つ問題がある。今度のは明らかに米軍の過失です。従って米軍に対してこの子供たちの補償のために特別の要求をなさるお心持があるのかどうか。政府が特別の考慮を払って下さるとうお約束は今伺いましたからけっこうです。今度は米軍に対してどうでしょうか。
  46. 丸山佶

    丸山政府委員 そのことはすでに私ども考えておることでございますから、御了承いただきたいと思います。
  47. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局厚木基地の問題は、厚木と横須賀港との関係、さらには第七艦隊と厚木基地との関係、それから沖縄との関連性を議論しない限り、なかなか無理だろうと思います。従ってそれをここで展開しておりますと、時間をいたずらに食うだけでありますから、それはいずれ次の機会に譲らせていただいて、きょうは藤沢に起こりました事故の問題だけに限って申し上げたわけです。一切の質問は次に留保します。
  48. 久野忠治

    久野委員長 横路節雄君。
  49. 横路節雄

    ○横路委員 長官にお尋ねをいたしますが、第二次防衛計画が今日まで延び延びになっている、非常におくれている理由はどういうわけなんですか。
  50. 西村直己

    西村国務大臣 私いつも申し上げますように、防衛計画の長期の見通しはあった方がよろしい。それで昭和三十四年に一応の試み案として、赤城構想なるものを発表いたしました。それから自来、昨年でございますが、それらを中心に、おそらく私着任以前でありますが、防衛庁において意思をきめ、国防会議等で決定を見るのが順序だと考えられたのでありますが、昨年の国会が終始ああいう状況に立ちまして、それから政変、選挙、内閣改造、それから同時にまたアメリカ側の政変も変わって、多少援助の見通し等も変わるといいますか、そこにもう少し確実性を持ちたい、こういう線からおくれて参りました。今日鋭意その検討を進めておる段階であります。
  51. 横路節雄

    ○横路委員 第二次防衛計画については、池田総理が渡米なさるのか、そういうことは全然関係がないのか、それとも今国会中になさるのか、今国会の終わりになさるのか、それとももっと延びて秋になるのか、あるいは年末になるのか、そういう点はどうなんですか。
  52. 西村直己

    西村国務大臣 これは政府全体の内部の意思の決定でございますから、私だけの意思、防衛庁長官だけの意思できめられるものではないのであります。事柄は、財政関係の大蔵大臣その他国防会議の議員等の意思が一致し、また議長である総理の意思ももとよりいただかなければならぬのでありますが、私といたしましては、総理の渡米とは直接何の関係ない、長期計画というものがやはりあった方がいいと思います。それからことしの一月十三日の国防会議におきましても、すみやかに防衛庁において案を得て慎重審議する、こういう決定に従ってやって参りたいというふうに考えております。
  53. 横路節雄

    ○横路委員 これは三十七年度から五ヶ年の第二次五ヶ年計画になるわけですが、その場合によく長官は、本委員会でも国民所得の二%を防衛費に充てたい、こう言っているわけです。それから先般来国会で所得倍増計画というので、いろいろと政府の方から総理を初め御答弁があったわけですが、そうすると第二次防衛計画の最終年度の四十一年度国民所得は幾らというように考えていらっしゃるのか。もしも長官から御答弁が困難であれば、経理局長からでもけっこうです。
  54. 西村直己

    西村国務大臣 これは推定のとり方がいろいろ起こって参ると思いますが、一応の案は十八兆という見当で見ております。
  55. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると、長官からたびたび言われるように、防衛費は国民所得の二%だということになると、第二次防衛計画の最終年度、昭和四十一年度の防衛費は三千六百億円ということになるわけです。そういうように考えてよろしゅうございますね。たびたびの長官のここでの言明ですから、われわれそういうように考えておいていいのではないかと思います。この点一つお聞きしておきます。
  56. 西村直己

    西村国務大臣 これは私だけではございません。従来の防衛庁長官におきましても、防衛費のあり方という問題、これをどこにめどを立てていくか。長期計画においてどこにめどを立てるか、これはむずかしい問題でございました。そこで基本的には国力国情に応じてという抽象論でありますけれども、具体論となって参りますと、さてそれは何%が妥当であるか。必ずしも財政のワクからすぱっとパーセンテージでとることがいいか悪いかの問題が一つございます。言いかえれば、積み上げてくる逆算の方法もあります。現実の一般財政の伸び方との比率も、国民所得でなく、財政力と申しますか、これには当然社会保障費なり、公共事業費なり、そういうような見方もありますが、一応大づかみとしては、二%ないし二%前後ということをとりますと—かりに二%という数字を充てれば、三千六百億という数字が出ることは間違いございません。
  57. 横路節雄

    ○横路委員 この点は長官、三十四年の七月の二十六日であったと思いますが、札幌で前の赤城長官が記者団に第二次防衛計画を語られたのですが、その場合には、昭和三十六年から五ヶ年計画の昭和四十年をもって終わりとする、その昭和四十年のときの防衛費というのは、大体二千九百億ないし三千億というふうにわれわれは聞いておったわけです。もちろんそれは二%ということは変わりないのでございましょうが、しかし実際の金額として、防衛庁としては大体七百億ぐらいですね。二千九百億が昭和四十年、それが昭和四十一年度の今後の計画では三千六百億、約七百億伸びたわけですが、そういう点についてどうしてそういう違いが出てきたわけですか。
  58. 西村直己

    西村国務大臣 先ほど申し上げましたように、一応の見積もり、考え方というものをわれわれが国会を通じ—もちろん具体的にはなかなか申し上げる段階まできていませんけれども、抽象的に、おまえのめどはどの辺に置くかという場合において、私は二%という言葉を、場合によっては二%前後という言葉を使って参りました。そこで赤城構想の時代にも、数字は御存じ通り正式に出しておりませんが、二千九百億くらいの見当になるのではないかというふうに、私も一国会議員として大体推定をするわけです。その間に少し伸びがあるのではないかとおっしゃいますが、国民所得全体が大きく動いております。それを具体的に言いますと、国民所得が伸びた、従って、国民所得の伸びには多少の物価その他が上がることをたしか計算の中に入れておる、それらも一つの材料になってくるのではないか、こう思うのであります。   [委員長退席、草野委員長代理着席]  それからもう一つは、防衛費というものは二%でいいが、下から積み上げて参りましても、いろいろな構想によってはそれをはるかに突破する方法もあります。また逆にそれを下げる方法もありますが、あくまでも二%前後、これは国民所得に中心を置いたものですから、その数字の差が出た、こういうふうに見ていただきたいのであります。
  59. 横路節雄

    ○横路委員 加藤官房長にお尋ねいたしますが、昨年の三月二十九日の参議院の予算委員会で、社会党の鈴木委員の質問に答えてあなたは、日米安保条約の調印に際して、第二次防衛計画の大綱を文書にして携行して行ったというように答弁しておられる。これはあとであなたから間違いがあるとかなんとかいうことを言われると困りますので、実はそのときの予算委員会会議録を私はここに持って参りましたが、あなたは、向こうでもしも説明を要求されれば説明をしたいと思って持って行ったのだ、こういうのであります。たとえば赤城さんのときの第二次防衛計画について私たちがお尋ねをしても、なかなか国会では答弁なさらないわけなんです。ところがアメリカには、向こうで説明を要求されれば説明をしたいと思って、第二次防衛計画の大綱を文書にして持って行った、こういうわけですね。そうするとこういうことになりませんか。今度は池田さんが向こうにおいでになる。今長官からお答えのように、池田渡米とは関係はないという。しかし私はそういうことはないと思いますよ。これから一つずつお尋ねします。だからそれまでに国防会議で第二次防衛計画が決定されれば、当然それはどなたかおつきになれるでしょうから、第二次防衛計画を持っていく、私はそれまでに必ず決定して持っていくものと思うが、しかし日本の国会では防衛計画についてはあまり詳細に御報告にはならない。アメリカ側には文書にして持っていく。これまでよく防衛庁の皆さんがおっしゃるように、日本の自衛隊というのは、もちろん私たちも自主性を持っておやりになっていると思うのだが、防衛計画全般についてはそうではなしに、どうも国会でわれわれに発表しないでも、アメリカ側にはお知らせしなければならない何か義務と責任を感じているように思うわけです。これは今度はどうなさいますか。もちろん池田さんの渡米までに決定されれば持っていくでしょうから、それとは関係ないと言うが、関係なくても向こうに行けば当然話が出るわけです。今度はどうなさいますか、加藤さん。
  60. 加藤陽三

    加藤政府委員 今度どうするかということについて、私お答えすることは適当でないと思うのですが、前回のときは私は随員を命ぜられて行ったわけでございます。話を外務省としておりますときに、防衛の問題については触れることはまあないだろうということでありました。ただしかし大臣レベルの間でそういう問題が出ますときには、わたしはやはり岸総理大臣、藤山外務大臣その他の方々を補佐しなければいけない。大体防衛庁考えていることはこういうことだということくらい、あまり異なった方向で話が進むのはどうかと思いましたので、私は用意のために持っていったわけでございます。
  61. 横路節雄

    ○横路委員 長官にお尋ねいたしますが、去年はまだ前の安保条約のもとに新安保条約が調印でおいでになった。今度は新安保条約が締結され、効力が発生されて初めて総理が向こうにおいでになる。そこでこの安保条約の第三条ですが、これは私が今ここで読むまでもございませんが、一応読んでみますと、「締結国は、個別的に及び相互に協力して、継続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。」こうなっておるわけです。去年安保条約の特別委員会でいろいろ議論しました際に、当時の岸総理並びに藤山外務大臣からは、これは特別に防衛力増強の義務を負ったものでない、しかしもしも防衛力を削減する場合においては、アメリカ側と協議しなければならない、こういうふうになっているわけです。もう一度申し上げますよ。防衛力増強の義務を負ったものではないけれども防衛力を縮小する場合においてはアメリカ側と相談しなければならない。こういうふうになっておる。これは藤山外務大臣の安保特別委員会における答弁です。この点はどうなっておりましょうか。西村長官にお尋ねしたいのです。
  62. 西村直己

    西村国務大臣 第三条は、御存じ通り。私から申し上げるまでもなく、毎国会あるいは特に安保の際に御議論も非常に出たわけでありまして、三条の政府の趣旨といたしましては、武力攻撃に抵抗する能力を維持、発展するという一般的な決意の表明だ。具体的にこれを幾ら防衛力を増強するとか、具体的に防衛力をどうするかとかいう義務を負ったものではない。こういうふうに解釈いたしておるのであります。従って、われわれとしては、その具体的な問題についてはこちらの意思、一般決意で維持、発展をする。従って一般に毎年々々防衛予算を増加するとかどうとかというのは、あくまでも日本側の意思で決定をして参る、こういう考えに私どもは三条を解釈し、その意思を表明して参った次第であります。
  63. 横路節雄

    ○横路委員 ところが西村長官、そうではないですよ。これも参議院予算委員会で木村禧八郎氏の質問に対して、当時の森アメリカ局長は、このアメリカ側の供与はバンデンバーグの精神が充実されておらねば停止される。アメリカ側の供与というものはバンデンバーグの精神が充実されていなければ停止されるのです。バンデンバーグの精神とは何か。その国がみずから守ることの責任を明確にして、そうしていわゆるMSA協定の第八条にあるように防衛力増強の義務を明確に果たさなければ、これはバンデンバーグの精神に基づいて停止すると言っておる。このように参議院の予算委員会で当時の森アメリカ局長は答弁しているわけです。ですから今あなたがおっしゃるように、ただ日本だけが考えて、これは増強されたというものではなくて、相手側にもなるほどこれは日本が増強したのだということを明確にされなければならないということを、第三条で責任を負っているのですよ。この点それはどうです。だから私はあなたに去年の一月、現行安保条約の調印とは違って、いよいよこの現行安保条約が調印された以降における今度の池田渡米の問題については、必ずこの三条に伴って、一体どの程度日本防衛力が増強されたのかということを、向こうは問いただしてきますよ。この点はどうですか。西村長官、参議院の予算委員会ではそう答弁していますよ。
  64. 西村直己

    西村国務大臣 私どもとしましては、三条はどの程度とか、具体的な防衛力増強とは関係ないと思います。あくまでもこれは日本側の自主的な態勢に限られる。たとえば日本の財政力が大きな災害にあったとかいうような場合におきましては、防衛費というものは具体的には多少変化され、あるいは延ばされるという場合もあり得るかもしれません。しかし一般的にはあくまでも武力攻撃に対しては抵抗する能力、これを維持、発展していくという決意だけは変えない、こういうふうに表明をいたしております。そのワクの中でもってわれわれは今度は自主的に、その年度々々の増勢なりその他をきめて参る、こういう趣旨でございます。
  65. 横路節雄

    ○横路委員 これは去年の安保特別委員会で、岸総理から自民党の石坂委員の質問に答えてこう言っているのです。この条約第三条は、アメリカにおけるバンデンバーグ決議といわれたものの精神を取り入れてある。その内容は、アメリカが他の国と相互防衛の条約を結ぶ場合においては、少なくとも相手国が自分の国を自分で守るという意思を明らかにする。この点は西村長官のおっしゃる通りでしょう。またそれについて努力をしている国でなければということは、ただ口で努力をしていますよと言うのでは、相手側に意思が通じないわけです。努力をしているということは、具体的に前の防衛力よりはこれだけ伸ばしました、これだけ防衛力を増強しましたということを見せて、相手がよろしい、なるほどあなた方は自分で守るという意思を明らかにして、それについて努力しています、こう認めて、初めていわゆる第三条の精神が生きてくるのです。だからただ口で私の方では努力をしていますと言うのでなしに、その努力をしていますというのは、具体的には防衛計画の中に現れてくるべきである。だから私は先ほど長官が、池田さんの渡米におけるケネディとの会談の際には、何もこの第二次防衛計画関係ないと言うが、私はそうではないと思う。この点は長官と私は考えが違っていますが、そういう意味では明らかに今あなたの方で急いでおやりになっているこの第二次防衛計画は、安保条約第三条に基づいて、新たなる防衛力増強の義務を負っておやりになるのではありませんか。違いますか。
  66. 西村直己

    西村国務大臣 われわれは一般論として、とにかく武力攻撃に対し抵抗する能力を維持、発展させる。この決意で今度は国内的に、われわれとしては国情国力に応じて長期の見通しを立てて参りたい。でありますから、これは何も池田渡米が目の前に迫ったから取り上げたのではございません。これは横路さん御存じ通り昭和三十四年の七月に、すでにその声が出、それ以来終始検討すべき、あるいは進めるべきものがおくれて参った、それを私どもは急いで参る。同時にまた国内的にもそれがあった方がいい、こういうことの決意を国防会議で先般決定を願って、できるだけすみやかに防衛庁側の一つの試案を持とうじゃないか、この努力をいたしておるわけであります。
  67. 横路節雄

    ○横路委員 これは長官も、去年は予算委員会で安全保障条約の論議については、与党の理事として非常な御努力をなさったわけですが、御承知のように前の安保条約については、いわゆる防衛力増強の義務は負ってないわけです。ところが現行の安保条約はどの点を受けたかというと、日米の相互防衛援助協定の第八条を第三条に受けたわけです。これは明らかに国会で答弁しているわけです。第三条とはどういうのかというと、それは防衛力増強です。こういうようになっておるではありませんか。「自国の防衛力及び自由世界の防衛力の発展及び維持に寄与し、自国の防衛能力の増強に必要となることがあるすべての合理的な措置を執り、」こうなっている。ですから、まえに安保条約では防衛力増強の義務は負ってないのです。しかし現行の安保条約の第三条はそうではなしに、相互防衛援助協定の第八条の防衛増強の義務を負ったのです。それは日本ばかりでなしに、自由政界の防衛力の発展及び維持に寄与し、自国の防衛力増強に必要なるすべての合理的な措置をとる、こうなっている。だからこれは、ただ西村さんが長官になったから、おれの考えでやるというものではなくて、これは去年の一月調印されて、国会で問題になったこの現行の安保条約は、前の安保条約と違って、第三条でこの相互防衛援助協定の第八条を引き受けて、防衛力増強の義務を負っているのです。どうですか、長官
  68. 加藤陽三

    加藤政府委員 相互防衛援助協定第八条は、これは御承知のごとく昭和二十九年に調印をされ、効力を発生したものであります。その中第八条のような規定があるわけです。これは軍事援助を与える米国の対外軍事援助に関する法律の規定を受けまして、日本に軍事援助を与える条件として米国がきめておりますことをこの八条に移したものでございます。今度の安保条約の第三条は、間接には関係がありますが、直接この規定に関係があると申しますよりか、バンデンバーグ決議の精神を取り入れてああいう規定ができた、こういうふうに考えております。
  69. 横路節雄

    ○横路委員 それでは第二次防衛計画についてもう少しお尋ねをしますが、赤城構想のときの第二次防衛計画アメリカのいわゆる兵器の供与は大体年間一億ドル、大体三百六十億、それがこの間から国会で第二次防衛計画を論議している際に、あなたの方では、アメリカの兵器の供与はことしでたしか二百二十億くらい、来年以降は大体二百億くらいに減るだろう、こういうわけです。しかし第二次防衛計画をかりに二百億としても、五年間で一千億のいわゆる兵器についての供与を期待している。それを入れて第二次防衛計画ができるわけです。ところが先ほど私が指摘をしましたように、外務省の当時の森アメリカ局長は、参議院の予算委員会で、社会党の木村禧八郎氏の質問に答えて、バンデンバーグの精神が取り入れられていなければ、いわゆるアメリカの供与についてはこれを停止するのだ、こうなっている。あなたの方では、第二次防衛計画は最低一千億を期待している。一千億を期待して第二次防衛計画を作ろうとしておる。ところがいわゆるアメリカ考えているバンデンバーグの決議の精神が充実されていなければ、アメリカの供与は停止するという。停止するとはどういうことかというと、自分の方だけ、これでよろしいのだというわけにはいかないですか。やはり相手のアメリカ側でも、なるほど自分の手で一千億の兵器の供与をした、なるほど自分たちが考えているようにバンデンバーグの決議の精神が充実されているということになって、初めて向こうから武器の供与を受けるということになれば、言いかえたら、日本防衛計画というものはもちろん私も防衛庁が自主的におやりになるであろうと思うが、しかし自主的にやると同時に、アメリカ側においては一体バンデンバーグの決議の精神が充実しているのかどうかということを常に向こうで見て、充実しておれば黙っておる、充実してなければ停止する。そうなれば、これは当然日本が自主的に防衛計画を定めるといっても、まるきりアメリカの供与を受けないなら別ですよ。五年間に最低一千億受けるのなら、向こうではその決議の精神が充実していなければ停止するというのだから、そうなれば当然第二次防衛計画についても、私はある程度——干渉というような言葉はきついですが、ある程度アメリカ側と話が通じて、軍事顧問団の了解も得なければならぬということになるのじゃありませんか。どうですか。長官加藤さんでもいいですよ。
  70. 加藤陽三

    加藤政府委員 お答え申し上げます。次期計画を現在作成中でございますが、この次期計画の中にある程度のアメリカの援助を期待しておることは、これは申すまでもないところであります。この米国の援助を得るにつきましては、これはマーグを通しまして米国側の了解を得なければならない。どういうふうなものをどういうふうにほしい、またくれるがどうか、そういう点についてはさっき仰せになりましたそうg防衛援助協定の第八条の方の適用になると私は思います。新しい安保条約の第三条は、バンデンバーグの決議の精神を取り入れた抽象的なと申しますか、決意の表明であるのでありまして、この面からいいましても、アメリカ側が関心を持つことは私は当然だとは思いますが、今おっしゃったようなところまでいっておるかどうかということにつきましては、私は若干疑問を持っております。
  71. 横路節雄

    ○横路委員 これは長官にもそれから加藤さんにも申し上げておきますが、私は今の官房長の答弁は納得できないわけです。なぜならば、これがまるきり日本の国の予算だけで第二次防衛計画が立てられているならば、私もそういうことは申し上げません。しかし第二次防衛計画の中で、少なくとも一千億はアメリカの兵器の供与を期待しておる。しかもそれはバンデンバーグの決議の精神に基づいてやらなければならぬ、こう言っておる。また日本はそれを停止されても仕方がない、こういうように受諾しておる。そういうふうになれば、第二次防衛計画はもちろん自主的ではありましょうけれども、これは安保条約の中で自主的というより、アメリカとの一体関係において第二次防衛計画が立てられることは当然じゃありませんか。日本におけるアメリカの駐留軍、その装備、その兵力の配置、そういうものを抜きにして第二次防衛計画は立てられますか。長官、どうですか。立てられないではありませんか。
  72. 西村直己

    西村国務大臣 私は横路さんのお考えがどこにあるかわかりませんが、池田総理の渡米と二次防衛計画を直接関係させての御質問のように受け取っておるのであるますが、池田総理が渡米されるために、あるいは渡米の際に持っていってもらう、こういう考えでわれわれは二次計画をやっておるのではございません。ただ基本的には、安保体制、共同防衛、駐留を認めておる、もう一つは貸与を期待する、こういう面からの日米間の共同と言いますか、関連があることはこれは当然でございます。従って二次計画を作りますのでも、それはある程度の援助の期待を取り入れて計算して参ることも当然であります。しかしこれが総理と大統領との交渉とか、あるいは直接の対象になるとか、そういうふうな目的を持って私らは二次計画考えていないのであります。従って二次計画を進める過程におきましても、その援助を受ける部分におきましては、在日米軍顧問団とも十分打ち合わせつつ、あるいは見通し等を立てるという面は起こって参ります。全体の計画を米側と相談するとか、そういうような行き方をとっていないのが現実であります。
  73. 横路節雄

    ○横路委員 しかし日本防衛力というのは、在日米軍の兵力、その装備、そういうものを抜きにして第二次防衛計画は立てられますか。立てられないではありませんか。私は今問題を次に発展してあなたにお尋ねしておるのは、第二次防衛計画は在日米軍の兵力、その装備、配置、そういうものとの一体的な関連において立てられると思うのですが、どうですか、こう聞いておるのですよ。それは間違いないでしょう。
  74. 海原治

    ○海原政府委員 お答え申し上げます。今横路委員から、具体的に在日米軍との関連においてどのようにものを考え作業しておるか、こういうお尋ねでございましたが、具体的に事務的に申し上げますならば、私どもはいわゆる在日米軍の中で、陸軍関係は御承知のようにいわゆる米軍におきましては補給、管理、施設部隊、従いましてこれとの関連ということはございません。そういうことで考えてみますと、直接の関係が出て参りますのは在日米軍でございますが、在日米空軍でございますが、在日米空軍の実力というものが、あくまで二次計画を進めて参ります前提ではございます。しかし米海軍におきましては、御承知のように横須賀、佐世保の基地はあくまで補給修理の基地でございます。直接米第七艦隊との関連はございません。これをさらに要約して申し上げるならば、具体的に私どもが第二次計画考えて参ります過程におきまして、一応計画の前提として協力関係を具体的に考えますのは、在日米空軍の実力、こういうことに相なろうかと思います。
  75. 横路節雄

    ○横路委員 今の防衛局長の答弁で、第二次防衛計画の根本というものははっきりしたわけです。私もそうだろうと思うのであります。陸軍においてはアメリカとしては補給部隊が五千人いるかいないか、しかし空軍については絶対在日空軍というものを抜きにしたF86FなりF86Dなり、F104Jなりというものは考えられないわけですから、その意味では第二次防衛計画の中心をなす、これから一つ一つお尋ねしますいわゆる航空自衛隊については、在日米空軍との関係で当然一体関係で立てられてくるわけです。しかし海上自衛隊についても、第七艦隊との関係で同様なことが言えると思うのです。これはあとでお尋ねしますが、ですから長官、第二次防衛計画というものは日本におけるアメリカ軍隊の兵力、その配置、それから装備の内容、そういうものを抜きにして第二次防衛計画というものは立てられないのですよ。それはもちろん第二次防衛計画は自主的に立てるでありましょうけれども、その前提となるもの、その基本となるものは、在日米空軍の兵力なり配置の状態なりであるということです。これは今防衛局長お話ししたから次に進めたいと思います。   第二次防衛計画については石橋委員からも、四月の十一日の本委員会で詳細にお尋ねをしているのですが、私から重ねてこの具体的な問題についてお尋ねをしたいと思います。これは先ほど申し上げた三十四年七月二十六日に札幌で新聞発表した赤城構想というのと、その骨格はさしたる違いはない、こういうように答弁されておるのですが、それでよろしゅうございますね。さしたる違いはないということですが、長官、どうですか。
  76. 海原治

    ○海原政府委員 さしたる違いの具体的意味についての御質問かと思いますが、これは非常にむずかしい言葉でございます。先般私が一応申し上げましたように、どなたでございましたか、ナイキはどうするのだということにつきまして、一応事務的の段階におきましては二個大隊ないし四個大隊というものを考えております、こう申し上げました。その二と四の違いくらいのさしたる違いは、これはあろうかと思います。しかし基本的な構想としては、歴代長官が本委員会においてお述べになりましたことをそのまま受け継いでおる、このように考えております。
  77. 横路節雄

    ○横路委員 それではこれは長官ではなしに、防衛局長から一つ御答弁願いたいと思います。それは防衛計画の今のミサイルについての四個大隊というのと二個大隊との違いだろうということですが、陸上自衛隊について赤城さんはこう言っておったのです。読んでみます。「兵力十九万人を目標とし、災害時の部隊活動などを通じて国民に密着するため、建設部隊を増強、各方面隊、各管区隊に建設群を漏れなく置く。」これが一つ。第二番目の点は、「現在の管区隊及び混成団の編成を改め、できれば一個師団単位(一個師団は九千人)に小型に改編」次がちょっと違います。「各師団はいわゆるペントミック化にならい、火力機動化を強化する。」(草野委員長代理退席、委員長着席)これは赤城さんの新聞発表ですからその通り読みますから聞いていて下さい。第三番目は「現在一万五千」、現在というのは三十四年です。今はたしか一万八千になったのですか、七千になったのですか。「昭和三十四年に一万五千人の予備自衛官を三万人にふやすほか、一年間入隊の短期予備自衛官三万人を新設する。さらに消防、民間の防護団などと関連した民間の予備自衛官を二万ないし八万を確保する。」これは当時の新聞発表です。  しかし私はここで消防局長にお尋ねしたいのです。なるほどここでまず六管区四混成団は、これを一個師団九千人に改めるというのはその基本方針の通りなんです。そこであなたにお尋ねしたいのは、兵力十九万ということで考えていくのか、それから十五個師団というのはどうなるのか。今度出している十三個師団は、第二次防衛計画の四十一年末でもそのままいくのか。石橋委員の質問に対しては、大体そういう答弁もしておるようでございますが、合わせて予備自衛官については五万人、予算についてもある程度人員をふやしておるけれども、こういう一年単位の予備自衛官三万というのは、あらためて当時の新聞発表で私も読み直してみたわけですけれども、この陸上自衛隊についてはどうなさるのですか。防衛局長でいいです。
  78. 海原治

    ○海原政府委員 一つ一つお答え申し上げます。十九万という数字は考えておりません。十五個師団という編成数も考えておりません。十三個師団で参ります。それから予備自衛官につきましては、先生の御質問の中に五万ということがございましたが、この数字につきましてはただいま検討中でございます。
  79. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると十九万は考えていない。しかし去年これも安保特別委員会で、当時の赤城防衛庁長官から十八万をこえないつもりだ、こういう答弁もある。そうすると第二次防衛計画の陸上自衛隊は四十一年においては十八万、こういうようにも当時答弁されているわけですが、私はまあ十九万と聞いたのですが、その点は十八万はどうなのか。ことしは十七万一千五百、こうなっておりますが、その点が一つ。次に十三個師団というのは四十一年の終わりまででしょう。十五個師団については考えていないということですね。予備自衛官については、あなたの方から五万とか三万とかいうようにちょっと答弁がはっきりしなかったのですが、予備自衛官についてはどうなさるのか、もう少し具体的に答弁して下さい。
  80. 海原治

    ○海原政府委員 予備自衛官につきましては、その募集と申しますか、採用の目標数につきましては、現在事務的に検討しておりまして、まだ結論を得ておりません。
  81. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長、あなたは今五万と言ったから聞き直したのです。
  82. 海原治

    ○海原政府委員 私が先生のお言葉を筆記いたしませんでしたので、先生は五万とおっしゃったかもしれませんがということを申し上げたのであります。
  83. 横路節雄

    ○横路委員 十八万の点はどうなんですか。その点今答弁して下さい。
  84. 海原治

    ○海原政府委員 その前にお断わり申し上げておきますが、先般の本委員会の節にも申し上げましたように、二次計画というものは、現在私、すなわち防衛局長の手元で整理中の作業の段階を申し上げておりますから、一つその点はあらかじめ十分御了承願いたいと思います。その整理の段階の過程におきましては、一応十八万ということで目標を現在は考えております。
  85. 横路節雄

    ○横路委員 予備自衛官については一万五千がことしは一万七千ですね。そうすれば当二次計画では三万とか何万とかいうものを考えているわけでしょう。この点はどうなんでしょう。
  86. 海原治

    ○海原政府委員 今先生のおっしゃいましたように、増加の方向で考えてはおりますが、その数字を三万にするのか、五万にするのかということは、具体的な応募の状況と申しますか、見通しの問題に関連をいたしますので、まだ結論を得てない、このように申し上げたわけであります。
  87. 横路節雄

    ○横路委員 これも海上自衛隊です。当時の赤城さんの談話としては、四十一年の第二次防衛計画で、海上自衛隊については、「七千トンない八千トン級のヘリコプター航空母を作り、これに駆逐鑑、対潜哨戒群を加えたハンター・キラー・グループを三群作る。」それから二番目については「約五万トンが廃艦になるので、これを穴埋めするため艦艇はせいぜい十五万トンないし十六万トンどまりとする。」こういうわけです。そこで今ちょっと防衛局長に申し上げておきますか、この間私はあなたの方から資料をいただいたわけですね。そうしますと昭和三十五年十二月三十一日で自衛艦の貸与されているものが百四隻で、五万二千六十二トンある。おそらくこのことを言っておるのだろうと思うが、これが三十六年から四十一年まで——これは四十年までしか出ておりませんが、それで二万八千二百九十五トンは更新しなければならない。四十一年ですから、三万五千トンくらい出てくるだろうと思うのです。これだけ私から申し上げておきますが、今の赤城構想の海上自衛隊は、やはり大体この方針でいくわけですね。
  88. 海原治

    ○海原政府委員 最初のいわゆるヘリコプター母艦につきましては、先般大臣からお答え申し上げましたように、ただいまヘリコプター母艦を装備することについての最終的な検討をいたしております。従いましてこれを三群持つことになるかどうかということにつきましては、私からもまだ何とも申し上げられない段階であることを御了解願います。  それから第二の代艦建造の点でございますが、これは先般もお答え申し上げましたように、艦齢を超過いたしました船のうちで本来の目的に使用できない、すなわち第一線の船として使っておりましたものを、たとえば予備艦、練習艦にするということを意味するわけでございますが、そのような扱いをしなければならないと思われるものが一応三万六千トン前後のものがございます。これらにつきましては、どのように代艦を建造していくかということは、現在検討いたしております。
  89. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長、これは予算委員会の分科会で、三十六年度予算の防衛庁要求としては、ヘリコプター空母については一隻は要求したわけですね。そうでしょう、そういうように答弁されておりますから……。
  90. 海原治

    ○海原政府委員 大蔵省との折衝の段階におきまして、防衛庁といたしましては予算を要求いたしました。
  91. 横路節雄

    ○横路委員 長官、三十六年度予算でヘリコプター空母を一隻もちろん予算要求として大蔵省にしたというのは、これは三十六年度の単年度の防衛計画としてやったのか、三十七年度以降の第二次防衛計画の一環としてやったのか、その点はどうなんですか。
  92. 西村直己

    西村国務大臣 私の着任以前に予算の概算要求が出ておりました。私の解釈といたしまして、防衛庁としては継続意思を持っておりますから、防衛庁としてお答えいたしますれば、単年度として要求したものだ、長期計画の一環としてではないと思います。なぜならば当時長期計画は立っておりませんから……。
  93. 横路節雄

    ○横路委員 防衛庁が三十六年度の単年度計画としてヘリコプター空母を一隻要求した。これは予算折衝で落とされたのですが、しかしこの基本的な考え方は、三十七年度以降の第二次防衛計画の中に基本的な方針として当然あるわけですね。これが一群に一隻になるか、二隻になるか、三隻になるかという点については、まだ明確になってない、こういうわけでございますか。その点どうなんですか。
  94. 西村直己

    西村国務大臣 長期計画の二次防衛の中におきましては、一応ヘリ空母というものも検討をするということは私も考えております。
  95. 横路節雄

    ○横路委員 それでは次に航空自衛隊について防衛局長にお尋ねしたいのです。これは十一日の本委員会でも石橋委員の質問にだいぶ詳細に答えられておりますが、もう一ぺん重ねて恐縮ですが、赤城さんは航空自衛隊の第二次防衛計画で、まず第一番目に、「防空誘導弾の発達を考え、ナイキ・アジャックス、」これは前に答弁されていますが、「これは高々度用である。それからホークをそれぞれ数個中隊」あそこでは数個中隊と言って、必ずしも四個大隊とも言っていないようでございます。その次は、当時まだロッキードかその他か、きまっておりませんでしたから、「今日F104Jを二百機含んで千百機」、第三番目に「三十五年度に全国二十四のレーダー基地の返還が終わるので、侵入機に対するレーダー探知距離を延ばすために」、これはBADGEですか、警戒要撃組織といいますか、そういうものを近代化する。大体この三つが赤城さんの構想ですが、石橋委員にもこの程度のお答えをしておりますが、大体これは間違いありませんか。
  96. 海原治

    ○海原政府委員 今先生のおっしゃいますように、大体間違いないかと言われますと、私としましては具体的にお答えできかねるのですが……。
  97. 横路節雄

    ○横路委員 それでは一つ私の方から具体的にお尋ねします。これはこの前私にあなたからナイキ・アジャックスについては相当程度詳細に話があった。ナイキ・アジャックスの一個大隊を首都防衛部隊として下志津、武山、木更津について置くということでしたが、これはこの第二次防衛計画の中でやるのですか。それとも第一次防衛計画の引き継ぎとしてやるわけですか、この点はどうですか。
  98. 海原治

    ○海原政府委員 お答え申し上げます前に、ちょっと説明を補足させていただきたいと思いますが、先生のお言葉の中に、首都防衛用ということと木更津とか武山という具体的な場所がありましたが、これは先生の方の御質問でございまして、私どもとしましては、一応関東周辺に置くということ、それから置く場所は自衛隊の施設内に置くということで検討する、このように申し上げたわけでございます。  そこで次の問題でございますが、第一次のナイキの部隊でございますが、これは第一次防衛整備計画の中におきましても、自衛隊の装備というものは年々いいものにかえていくのだ、研究開発を進め、近代代をはかるということになっております。御存じのようにナイキは高射砲の進歩したものでございますので、旧式になって参ります。その高射砲というものをナイキに置きかえるということで、具体的には第一次防衛整備計画内容でございますが、その実行は、第二次防衛整備計画の期間内において行なわれるということでございますから、その実施の面をつかまえますれば、これは第二次計画内容ということになろうか、こう考えております
  99. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長、あなたがそういうふうに開き直って答弁されると、私はきょうは相当慎重に資料を持ってきているから、やはりそうでなしに—あなたは答弁しておりますよ。私は読んでみますよ。きょうはあなたの方からそういうことを一々言われないように、記録をみな持ってきておりますから、そう開き直って答弁しないで、私の方もきょうは静かに聞いているのです。私はこう言ったのですよ。これは予算委員会の分科会で、今あなたが言ったように、「これは一次計画としては、二カ年間の訓練を終えて帰ってくると一個大隊を作るのだ。その一個大隊の編成というのは、指揮中隊が一、実戦中隊が四で、そうしてそれは首都防衛部隊として、木更津、武山、下志津に配置されるのだということですが、この点はどうですか。」と聞いている。あなたはこう言っている。「お答えいたします。一個大隊は、今申されましたように、指揮中隊が一個中隊、射撃中隊が四個中隊、合計五個中隊で編成いたします。場所は、今お話がありましたような自衛隊の施設内に配置することを現在検討いたしております。こう言っておるのですよ。だから私も特に変わったことを聞いているのではない。またあなたが答弁したことをひん曲げて、別なことを言おうとしているのではない。だからその点はあなたの方でもそう一々開き直って—前に国会で問題になり、これが新聞に出たら、直ちにどこですか、木更津その他の市会で反対決議をして、わんさとあなたの方に反対陳情をしてきたので、だいぶ警戒しているようですが、一ぺん答弁したことは答弁したこととしておかなければいけない。そこで今お話のようにこれは第二次防衛計画の一環としてやるわけですね。これはこの前お話がございましたが、一個大隊についてはすでに百五十何名か予算を取って出す、こういうわけですが、第二次防衛計画では一個大隊では当然これは済まないわけですね。だから二個大隊になるか、四個大隊になるかということは、第二次防衛計画の中で当然考えていかなければならないと思うのですが、その点はどうなっていますか。
  100. 海原治

    ○海原政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、ナイキの部隊をさらに数をふやして持とうということは検討いたしておりますが、それを二個大隊持てるかあるいは四個大隊まで編成できるかということは、従来から申し上げておりますようにまだ結論は出ておりませんせん。それからこの機会をお借りして申し上げたいのでございますが、決して開き直ったつもりではございません。一つその点は御了解願いたいと同時に、今速記録の私が申しました趣旨は、先生のおっしゃいましたようなという、ようなを受けまして、自衛隊の施設にということを特に自分としては強調したつもりでございますが、一般にはその地名の方にどうも重点がかかったような気がいたしますが、その点私が至らなかったと思うのですが、言った自分といたしましては、今申しましたようなつもりでお答えしたわけでございます。
  101. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ちょっと関連させて下さい。これはようなというのであなたは片づけられるのですが、ところが地元の人々にとっては、ようなということでは片づかないわけです。ナイキのようなものがやってくるなどと言って笑っていられないわけです。そこであなたは自衛隊の施設内ということを強調しておられますが、すると横路さんのおあげになった個所の中で、横須賀の武山というところは確かに自衛隊の設備があるわけです。従ってここが一番疑いが濃くなってくるわけですが、武山についてナイキ部隊を配置することを御検討になっていらっしゃるのですか、いらっしゃらないのですか、これを一つはっきりお答えいただきたい。
  102. 海原治

    ○海原政府委員 先ほど来申し上げておりますように、ナイキ部隊は関東周辺防衛ということで考えております。またその配置の場所も自衛隊の施設ということで検討いたしておりますので、今先生のおっしゃいました武山というところも、検討の対象になる候補地の一つであることは間違いございません。
  103. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その場合に、候補地になっているとおっしゃるのですが、ところが武山の自衛隊の隣、ほんとうにくっついたところに立教大学の原子炉が建設されるということは御存じでしょうか。もし入るとすれば、原子炉とナイキ部隊とが隣合わせにすわるのですよ。そしてまたそのすぐそばに富士電機が、大体労働人口四千人ぐらいの、この立教大学の原子研究所の成果を受けて、これを工業化すべき工場を建設するという約束になって、もう着着準備を整えているということも御存じなんでしょうか。もしナイキ部隊がそこへ来るということになれば、立教大学の原子炉は変更しなければなりません。だってナイキ部隊の隣に原子炉を置くなんということは、世界じゅうどこを見たってないですし、原子炉設定に関する国際基準と言われているファーマー博士の論文を見ましても、実戦部隊はおろか、飛行場周辺にさえ原子研究所を置いてはいかぬということになっているのですから、どっちかがどかなければならぬわけです。あげくの果てに横須賀市は労働人口四千人も来る富士電機の招致をギブ・アップ、断念しなければならない、こういうことも出てくるわけですから、そういうこともあわせて武山の御検討をなすっていらっしゃるのかどうか。一つそれをはっきり伺っておきませんと、横須賀は今後平和都市、工業都市として人口四十万の都市に伸び上がろうとしている最中でありますから、都市計画に非常な大きな影響を与えてしまうわけです。この点すでに御検討済みであるか。初めて私にここで聞かされたのか、それを一つ伺っておきたいと思います。
  104. 海原治

    ○海原政府委員 今飛鳥田委員のおっしゃいました事実は、私は承知いたしておりません。
  105. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは横須賀の武山に立教大学の原子炉がくるかこないかということは、横須賀地方のかなり大問題になりました。そしていろいろ論争をすること約一年で片づいたわけです。それから横須賀市がそこへ富士電機を招致するということも、かなりはっきりした事実です。そういうことを御存じにならずに、武山などといってうかつに、横路さんの誘導尋問にひっかかったとあなたはおっしゃるかもしれませんが、しかしいずれにせよ、そういうことを述べられることは、横須賀市の今後の平和都市、産業都市として伸びていくのに、どんなに影響を及ぼすか、お考えになったことがありますか。これは大へんなことですよ。立教大学の原子炉がすぐお隣だということ、そんなことを知らぬなどあなたはおっしゃったって、それは通りませんよ。だって武山をどう処理するかということで自衛隊は割り込んだのじゃないですか。武山の米軍が退いたあとのあの広大な地域をどう使うかということについて、横須賀市はあそこに工場招致をしたい、こういう希望を持っておりましたところ、防衛庁が盛んに折衝をしてあそこの部分を取ったのじゃないですか。横須賀市民の半分くらいは、自衛隊に割り込まれたという印象を持っているのですよ。それにもかかわらず、その隣に何ができているか、どういう計画が行なわれているかどうか、知らぬで済みますか。防衛庁は自分のところの第二次防衛計画さえスムーズに進行させれば、横須賀市なんかぶっつぶれたってかまわない、横浜市なんかぶっつぶれたってかまわないという態度にしか見えないじゃないですか。もっと慎重にやってほしいですな、正直言って。立教大学の原子炉はもうすでに今アメリカででき上りつつあるのです。おそらく本年度の後半にはそれが据え付けられるのです。原子炉とナイキ部隊が隣合わせなんというのは、世界じゅうでおそらく初めてですよ。そんなうかつなことをあなた方はおやりになることはなかろうと思いますので、もっと真剣に調べて、そして検討していただきたい。万事がその調子でおやりになっているのじゃないだろうか。防衛庁中心にこの世の中が動いているなどとお考えになったら大へんな間違いです。どうぞ一つその点、今後の御検討があるでしょうから、十分検討していただくようにお願いをします。
  106. 海原治

    ○海原政府委員 今先生のお述べになりましたような具体的ないろいろな事情というものは、それぞれの基地についてあろうかと思います。これは今後の検討の課題になって参りまして、私どもが今検討を行なっておりますと申し上げましたのは、具体的にナイキを配置いたしました場合の、配置の土地の利用の可能性とか、自衛隊の現在までの経緯がどうなっているか、あるいはその付近状況がどうなっているかということでございますので、今先生がおっしゃいましたような点は今後十分考慮に入れて参りたい、かように考えております。
  107. 横路節雄

    ○横路委員 ナイキ・アジャックスについてすでに一個大隊を設置する、それは首都防衛部隊という言葉が適当でなければ、関東に配置をする。それを二個大隊にするか四個大隊にするかはなお検討中だ、こういうわけですが、当然そうなればそれはだれが考えても、配置される予定のものは、名古屋工業地帯周辺、阪神工業地帯周辺、北九州工業地帯周辺、これに東京周辺、京浜周辺ということで、ナイキ・アジャックスが四個大隊設置されれば、ちょうど今防衛庁考えておられる四個大隊は、それぞれ今日の日本のいわゆる工業生産の原動力になっているというところの防衛ができる、こういうように考えていいのじゃないかと私は思うのです。やはり四個大隊を設置しようというのは、そういう基本的な考え方で言っているわけですね。その点どうですか。
  108. 海原治

    ○海原政府委員 赤城構想を立てました場合の四個大隊の配置の基準ということにつきまして、先生お述べになったと思いますが、そういう考え方も一つにはございます。 しかしナイキとホークとの組み合わせという点もございます。従いまして今先生のおっしゃいましたようなことで今後考えていくかどうかという点は、今しばらく御猶予願いたいと思います。
  109. 横路節雄

    ○横路委員 これは加藤さんでもいいのですよ。私はあの防衛計画ですね。今の点などはそうお隠しにならないで、やはりここで議論できるものなら議論した方がいいと思う。自分の方としてはやはり東京周辺なり、東京から川崎、この周辺防衛する、これが一個大隊だ。もしも防衛計画で四個大隊というものができるとすれば、それは当然名古屋の工業地帯周辺だとか、阪神の工業地帯周辺だとか、北九州の周辺というものが四個大隊になろう、私のそういう考え方が違っているならば、いやあなたのそういう考えは違っている、防衛庁としてはこういう考え方でいくのだ、こういう考え方というものをこの委員会を通じてやはりお述べになったらどうかと思う。その点をただ私の方から聞かれただけ答弁されて、問題にならないように問題にならないようにという考え方は、少なくとも西村長官のもっと日本防衛力をしっかりしたいという考えからいけばちょっとおかしいのです。ここでやはり堂々とお述べになるべきだと思う。四個大隊を設置するという基本的な考え方からいけば、どういう考えがあるのですか。私の今申し述べたような考えもありましょう。しかしそのほかに考えがあるならば承りたいのです。これは加藤さん、前の防衛局長でしたから……。
  110. 加藤陽三

    加藤政府委員 御指名でございますから私からお答えいたします。当時考えておりました軍事的な要求といたしましては、ただいま横路さんのおっしゃいましたようなところもございますけれども、ほかにもまだあるのでございます。たとえば北海道はどうするとか、青函地区はどうするとか、関門海峡はどうするとか、いろいろな軍事的な要求はあるわけでございます。ただそう申しましても、なかなかあそこにもここにもというわけにいかないということで、大体四個大隊ぐらいが精一ぱいではなかろうかというところで検討しておったわけでございまして、それをどこに置くかということまでは、当時はまだ検討していなかったわけでございます。確かにおっしゃったようなところも考慮すべき場所の一つでございます。
  111. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長にそれでは次にお尋ねしたいのですが、ナイキ・アジャックスについては大体わかりました。ところがそのレーダーをよけて非常な低空で飛んでくる、そういうものについては、ナイキ・アジャックスではうまくない。そこでホークということになるわけですね。このホークについては当然これはナイキ・アジャックス同様に—今あなたからナイキ・アジャックスの配置は、ホークの配置との関連の上で考えなければならぬという話がありました。ナイキ・アジャックスについてはだいぶここで議論したわけですが、ホークについてはこの第二次防衛計画で大体何個大隊を設置されようとしているのか。どうなんですか。
  112. 海原治

    ○海原政府委員 この点も先ほどお答え申し上げましたように、まだ具体的な数字が出ておりません。と申しますことは、ナイキの部隊を編成いたしますにつきましても、先生御存じのように約二年間アメリカに留学させまして、向こうで勉強してからこちらに持ってくる、こういうことなんですが、アメリカの方の教育訓練計画にもいろいろと予定がございますが、ホークにつきましてもやはり同様な過程が必要でございます。日本なんかではここだけで教育のできるものではございません。従いましてその編成をどのようにすれば適当に教育訓練を受けられるかということは、先方との打ち合わせもございます。そういう点もございますし、さらには先般お話がございましたが、所要経費の見積もりとの関連におきましては、どの程度のものがはたして持てるだろうかという点の考慮もございます。そういう事情もあわせましてただいま検討しております。こういうことでございます。
  113. 横路節雄

    ○横路委員 そうするとホークについても、ナイキ・アジャックスのほかに特別の訓練要員を国の予算の中で見て、ナイキ・アジャックスとは別にやるわけですか。それともナイキ・アジャックスの二カ年の訓練の中でホークの訓練も受けてくるわけですか、その点は教育局長、どうなっておるのですか。
  114. 小幡久男

    ○小幡政府委員 ホークにつきましては、まだ明確にいつ何名派遣するというふうにはきまっておりません。また最後のナイキ・アジャックスの訓練部隊の中で、あわせてホークの訓練を受けるかという御質問に対しましては、あわせては受けません。従いましてもしホークを装備するとしますれば、ホーク固有の部隊を派遣するということになろうと思っております。
  115. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長、今のホークの点ですね。これは先ほどあなたから言われたように、ナイキ・アジャックスの配置に適当な場所と、ホークについては、これは一応われわれ今まで承知しているというか、われわれが聞き及んでいるところによると、これは主として北海道ですな。ホークについてはあるいは稚内における宗谷海峡であるとか、まずそういう点、あるいは北海道における野戦部隊としてホークは絶対に必要なんだ。ナイキ・アジャックスについては固定陣地なんだ。ホークについてはある程度移動もできるのだ。ホークについては移動できますね、防衛局長。ですから特にあなたの方では十個師団のうちの四個師団は北海道に置いて、特に真駒内の師団については日本で一番進んだ機械化部隊にする。対戦車ミサイルについては、もう間近に用意するでしょうが、そういう点からいけば、北海道においては野戦用のミサイルとしてはいわゆるホークというものを、あなたの方の考え方からいえば絶対に置かなければならぬ。またいわゆるレーダーをよけて低空で飛んでくる、そういう爆撃機に対しては、なかなかレーダーでつかまえることは容易でないから、そういう意味では宗谷海峡等の防備のためにも、野戦のためにもホークは必要だ。この点はどうなんですか。やはりこういう機会に明らかにされたいのです。
  116. 海原治

    ○海原政府委員 ホーク部隊の運用につきましては、今先生のおっしゃいましたように野戦防空用と申しますか、機動的な運用が主である。特に高高度でない、いわゆる低高度に適しておるということになっておることは事実でございます。しかしそれをどのような形において配置した方がいいかということにつきましては、先ほども申し上げました総体としてどの程度の部隊が編成されるかということともに関連いたしますので、まだ具体的に、たとえば多くは北海道へ持っていくということは申し上げられないということでございます。
  117. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長、もう第二次防衛計画の中では、ホークについては一個大隊になるか四個大隊になるかは当然考えて、その第二次防衛計画の中には入ってくるわけですね。その点一つお伺いしたい。
  118. 海原治

    ○海原政府委員 私どもとしてはそのように考えます。
  119. 横路節雄

    ○横路委員 次に防衛局長にお尋ねしますが、これは私も何も専門家ではありませんからあなたにお尋ねしますが、この日本列島の非常に長い、しかもその奥行きが短いといいますか、そういう中で、ナイキ・アジャックスあるいはホークというものを、ナイキ・アジャックスは四個大隊だ、あるいはホークについても四個大隊だ、あるいはレーダー基地にも置くということになれは、四つのレーダー基地に置かなけれはならぬ、そういう非常に縦が長くて横が短いといいますか、そういう日本全体の防衛からすれば、そうではなしに、この際射程距離の遠いボマ−クを数カ所設置した方が、いわゆる軍事的な立場からいけば、ナイキ・アジャックスなりあるいはホークを置くよりは、はるかに設置の個所は少なくて、そうして距離も長いわけですから、いち早く遠く海上においてとらえることができる。従ってナイキ・アジャックス、ホークからいけば、当然ボマークについても第二次防衛計画考えられるべきだ、こういう意見もあるわけです。この点はどうなんですか。
  120. 海原治

    ○海原政府委員 防衛計画検討いたします際に、ボマークも考慮の中に入れるべしということであれば確かにそうだと思います。ただナイキとホークとボマーク、それぞれの持っておりますプラスの面、マイナスの面がございます。かつそれぞれ要する費用の点もございますし、私先ほどからお答えいたしておりますように、まだ私の手元で検討の段階でございますが、はたしてボマークというものの編成ができるかどうか、編成することになるかどうかということにつきましては問題でございます。
  121. 横路節雄

    ○横路委員 それでは次に長官にお尋ねしますが、人の乗る戦闘機ですね—乗らない戦闘機もあるわけですが、この戦闘機、飛行機はもうF104Jで終わりなんでしょうね。これはどうなんですか。
  122. 西村直己

    西村国務大臣 104J二百機の生産には、御存じ通りもう着手いたしております。二次計画におきまして有人機を将来どうするかは、結論を出してないのが現状であります。私は先ほどから伺っておりますと、ボマークであるとか、あるいはホークの大隊であるとか、あるいはただいまの有人機等におきましても、これらはやはり全体の財政力と申しますか、そういう国力とのかみ合わせで考えていかなければならぬ。それから片方、防衛生産の問題もございます。そういった面からも今の問題などは検討を加えていく。今のところ、もう有人機はこれでおしまいですというふうには申し上げられない。また有人機自体につきましても消耗もございましょう。それからミサイルと併用していくという有人機自体の価値も、戦術上当然あるわけであります。そういう面で検討を加えていく。ただ有人機をどの程度にどうするということについてはまだ結論を出してない。防衛局の段階でまだ検討しているのではないか、こう思っております。
  123. 横路節雄

    ○横路委員 この点は加藤さんにお尋ねをしますが、これもここにおられます石橋委員とあなたとの、ロッキード戦闘機を選ぶ際における内閣委員会質疑を私は読んでみたわけでありますが、日本でF104Jを購入するようになった理由は、今日高度六万フィートで速度が一・五マッハから一・八マッハくらいのいわゆる爆撃機というものは、アメリカとイギリスとソ連しかない、こういうように答弁されているわけですね。そうすると今ロッキード戦闘機というものは、F104Jについては、まさかイギリスの爆撃機が飛んでくるということを想定して買ったわけでもないでしょうし、また安保条約によって日本防衛に役立っていると言われているアメリカ爆撃機が飛んできて爆撃するというわけでもない。ロッキード戦闘機を、F104Jを購入したのは、ソ連の爆撃機というものが対象になっておる。言葉の言い回しは別ですよ。言葉の言い回しは別ですが、答弁しているそのときは、ソ連だけとは言わないが、アメリカとイギリスとソ連だと言っている。そこでマッハ二のこのロッキード戦闘機が必要だ、こう言っているのですが、これは間違いありませんね。ロッキード戦闘機を購入するその主たる理由は、アメリカ、イギリス、ソ連の爆撃機が高度六方フィートで速度は一・五マッハから一・八マッハ、それに対抗するためにこれを買ったのだ、これは間違いございませんね。
  124. 加藤陽三

    加藤政府委員 正確に覚えておりませんが、その後フランスでもその程度の飛行機が開発できたかと思います。それから今私申し上げましたのは、生産をしておる国を申し上げたわけであります。これは事実を事実として述べたのでございます。これを使う国がどうかということは、また別の問題でございます。これは申し上げるまでもないことと思います。
  125. 横路節雄

    ○横路委員 そこで長官加藤官房長が当時防衛局長で、ここにおられます石橋委員の質問にそう答えている。だからこれは何と言おうと—今のお話では、フランスで大体同様な爆撃機ができたという話であるが、わざわざ好きこのんでフランスから飛んでくるわけでもありませんから、そうするとロッキード戦闘機というものは、これは明らかにソ連の爆撃機が相手だ。ところが、これは西村長官御承知だと思いますが、去年の一月の当初にソ連のフルシチョフ首相は、人の乗る爆撃機は時代おくれだと、こう言っているわけです。だからこれは漸次減らして、全部ロケットに切りかえる。その後U2機におけるところの全世界に対する声明も、このロケットについて声明している。あるいはキューバの問題についても、フルシチョフの声明の中には、やはりロケットについて言及している。そこで去年の四月六日、アメリカでは当時のアイゼンハワー大統領は、当時のゲーツ国防長官その他を集めて、一月におけるソ連のフルシチョフの声明を重視して、ソ連は有人爆撃機というのはすでに廃止の方向だ、従ってアメリカとしては全面的にいわゆる戦略、戦術について変えなければならぬ、こう言っているわけです。従ってナイキ・アジャックスであるとか、あるいはボマークB等についても、漸次廃止をして、そうしてアトラスであるとか、あるいは特にポラリス潜水艦について、拡大をしていっているわけです。売りつけた方のアメリカは——日本にロッキードを売りつけて、これから五年、昭和四十年十二月までかかるのですよ。ところが飛んでくる相手のソ連の爆撃機の方は、ソ連ではフルシチョフ首相が、もう有人爆撃機は時代おくれだと言い、日本に売りつけたアメリカも、それはそうだ、だからおれの方もソ連の有人爆撃機相手の対抗手段はやめて、将来は大陸間弾道弾なり、ポラリス潜水艦でやるのだ、こういうときに、一体何でこれから五年間かかっておやりになるのか。しかも私は今あなたの答弁を聞いて、このF104Jで人の乗る戦闘機はやめたのかと思っていたら、まだあなたは、人の乗る飛行機については、F104Jの生産が終わった後でもまだ生産を続けようとしておるのか、ミサイルと半々でいこうというのか、どうもそこら辺のところは、私は長官考えは、国防を担当している長官として、ふに落ちない。しかもこれは先ほど言ったように、防衛局長は第二次防衛計画を立てるにあたっては、陸上並びに海上については、それぞれ独自の立場でやるが、しかし航空自衛隊、ミサイル等については、これは明らかに今日日本にいるところの在日米空軍というものを考えて、それとの一体でやると、こう言っている。どうもそういう防衛庁の事務当局の考え長官考えと、だいぶギャップがあるのでないか。この点についてあなたは国際的な視野に立って、どういうようにお考えになります。
  126. 西村直己

    西村国務大臣 私もしろうとでございますけれども、しかしそう目標をはずして申し上げているつもりはないと思うのでありまして、フルシチョフもいろいろな表現を使って国際政治の場面で発言はしております。しかし同時にその相手と申しますか、抑制力を強度に発揮しているアメリカ側も、国防教書において、確かにミサイルのことも言っておりますが、同時に有人機もまたその必要な機能があるということを発表しておるのであります。またなるほどアトラスとか、ああいう長中距離ミサイルになりますと、その作用はどちらかというと、特にこれにもし核弾頭を使えば全面戦争になるということは、大国間ではよく知っておると思います。従って今日御存じ通り、ケネディの国防教書にも局地戦ということを非常に強調しておる。従って局地戦におけるところの防空体制としては、いわゆる短距離と申しますか、小型のミサイル、あるいは有人機というものがやはりその使命を果たす。特に人間の判断というものは、やはりいかに機械が発達いたしましても、正確さあるいは判断の適当さ、いわんや日本の局地戦的な立場に置かれやすい状況から申しまして、そういう面で有人機の使命というものはまだまだある。それに必要な限度のことは私どもやって参らなければならぬ。この点は部内におきましても、別に意見がそう違うわけではない。ただこれらはすべて金がかかることでありますから、この金の使い方を最も効率的にやっていくという観点からは、それぞれ検討し、調節をしていかなければならぬ、こういうふうに考えておる次第であります。
  127. 横路節雄

    ○横路委員 あなたは今機械の操作よりも、人の乗っている戦闘機の方が判断は正確だというようなお話でありますが、これは逆でございませんか。人の方の判断があやまちを犯すのです。  防衛局長にお尋ねしますが、ロッキード戦闘機のF104Jの滑走路は、あれは一体何メートルあればいいのでしたかね。
  128. 海原治

    ○海原政府委員 先般来いろいろな機会で防衛庁から申し上げておりますように、二千四百あれば足りるということでございます。
  129. 横路節雄

    ○横路委員 そうですか。これはきょうの新聞に「防衛庁は航空自衛隊の次期主力戦闘機ロッキードF104Jの滑走距離がこのほど帰国した調査団の報告で、当初予定していた二千四百メートルよりはるかに長い二千七百メートルから三千メートルを必要とすることが明らかになり、」こういうように書いてある。きょうの新聞ですよ。こういう事実はないですね。二千四百メートルあれば絶対いいのですね。そうして二千七百から三千が必要だということは、そういうことはないですね。
  130. 海原治

    ○海原政府委員 今先生のお読みになりましたのはおそらく東京新聞の記事かと思いますが、そこに書いてございます調査団がこのほど帰国して云々という点は、私そのための調査団が行ったことも知りませんし、また帰ってきたことも知りませんので、調査団の結果の報告ということにつきましては、私は全然承知いたしておりません。  次に滑走路の問題でございますが、これは二千四百メートルあれば間に合うということは、先般来申し上げております。しかし先ほどのアメリカ空軍のジェット機事故の点につきましても、いろいろと問題になっておりましたように、滑走路はやはり長ければ長いほどいいことは当然でございます。ある程度余裕を持ったオーバーランを作るとか、さらにそのほかに若干の開豁地を持つとかいうことが、そこに部隊を配置いたしました場合、危害予防という点からは当然に考慮されてもいいところでございます。従いまして先般の委員会におきましても、二千四百メートルあれば十分足りる。しかし長ければ長いほど、そういう面では危害予防その他でけっこうだという意味の答弁を実はいたしております。従いまして私どもの手元で、二千四百メートルあれば絶対大丈夫だということでございますと、ちょっと絶対大丈夫だとは申し上げられません。ただ計画上の立場でございますと、やはり具体的な飛行場状況によって、二千四百メートルありましても、さらにこれに若干のオーバーランをとるというようなことが、貴重な飛行機及び貴重な人命を予防する上に必要ではないか、こういう感じは持っております。
  131. 横路節雄

    ○横路委員 大体今の防衛局長の答弁は正直でいいと思うのです。やはり二千四百メートルちょっきりというわけにはいかぬ、二千四百メートルよりも幾分長くなければ困る、それは当然そうでしょう。さてそうなると、この新聞にも指摘せられておるように、二千四百メートル以上の滑走路を持つ飛行場というのは、今日の段階では北海道の千歳なわけですね。そうするとF104Jができて、これが一番最初に配置になる飛行場はどこかということになると、それは当然北海道の千歳ということになるわけですね。この点は防衛局長どうです。
  132. 海原治

    ○海原政府委員 滑走路の長さから直ちに部隊を配置を一応推定しておられますが、これも先般来申し上げておりますように、このF104J、F86D、さらにT33、これは練習航空機でございますが、これらのすべての配置を今検討いたしておりますので、ただいまのところ千歳が第一であるということを申し上げるわけには参りません事情にあることを御了解願いたいと思います。
  133. 横路節雄

    ○横路委員 もう少し防衛計画その他についてもっと質問したいと思うのですが、今委員部の方から暫時休憩してくれというなにがありまして、ちょうど切りがいいので……。
  134. 久野忠治

    久野委員長 それでは午後二時より再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時五十四分休憩   —————◇—————    午後二時十四分開議
  135. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。横路節雄君。
  136. 横路節雄

    ○横路委員 長官にお尋ねしますが、F104Jは昭和四十年の十月末までに二百機完成するわけですが、この104Jが完成し、それぞれの飛行場に配備された場合には、米空軍というのはそのときにおいても現在のまま配置されているのか。それともかつてアメリカの陸軍が撤退をしたように米空軍は撤退するのか。その点はこの第二次防衛計画の最終年度におけるF104Jの完成との関連において、米空軍の配置がそのとき一体どうなるのか、その点についてお尋ねします。
  137. 西村直己

    西村国務大臣 F104Jを国におきまして方針をきめました当時の状況から考えまして、米軍の現状は、特別な状況変化がなければ現状を基礎にして、一応104Jはそれだけのものを国力に加えていく。米軍の方は現状の体制である、こういう考え方でいっておりますし、また私もそういうふうに考えております。別に変化がないと思います。
  138. 横路節雄

    ○横路委員 F104Jが昭和四十年末に予定されている機数が完成されて、それぞれの飛行隊に配備されれば、そのときにおいては米陸軍の撤退したように米空軍についても相当程度縮小する、特に戦闘機部隊についてはほとんど撤退するのであろう、そういうようにわれわれは予測していたのですが、そうではなしに、104Jが完成してもアメリカ空軍の配備についてはいささかも変化がない、こういうわけですか。
  139. 西村直己

    西村国務大臣 空に関しますわが国の自衛力というものが、まだきわめて年数が浅いわけで、そこで104Jというものを加えていく。これももちろん生産過程におきまして年数がかかります。従ってわれわれとしては104Jの生産に入る。国会その他の御審議を通して、予算面において債務負担行為認めたという当時の状況から考えても、そう大きな変化がない。しかし国力がついてくればおのずからその間に多少の変化は起こるかもしれません。全然変化がない、こうは言い切れぬと思います。それからもちろんこれは、言葉は悪いかもしれませんが自衛力でありますし、またアメリカの方は安保体制に基づく対敵共同防衛のもとに駐留しておるのでございますから、それらの相手方の状況判断、言いかえれば防衛に対する状況判断というものから変化はくると思います。原則としては一応現状の体制の中へ104が加わる、いささかも変化しないという意味ではございません。
  140. 横路節雄

    ○横路委員 それでは長官、第二次防衛計画の最終年度においても、日本防衛というものはそういう意味では自主的な体制はとれない、こういうわけですね。なお104Jの二百機についてそれだけ完成して配備されても、今の言葉でいささかもということではないであろうけれどもということだが、基本的にはアメリカ空軍については、いわゆる縮小なり撤退なり、そういうことが期待できないということになると、一体いつのときに日本防衛力というものは、日本の自衛隊をもって自主的なそういう対応ができるわけですか。あなたのお考えはどうですか。
  141. 西村直己

    西村国務大臣 自主的という言葉のとり方でありまして、あくまでもわれわれは国力に応じてやって参ります。特に空軍に対しましては、御存じ通り非常に金のかかる仕事であります。維持にもまた生産にも金のかかることはわかっております。従ってわれわれが完全にただ自分の手だけで守る、こういう体制をとろうというならば、莫大な経費もまた急遽必要でありましょう。そこらをにらみ合わせて考えていきますと、今の段階あるいは二次計画において、あるいは四十年末において考えられる体制としては、共同防衛の線が空については残ってくるのではないかと思います。
  142. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長ですか、装備局長ですか、去年私安保特別委員会でお尋ねしたのですが、F86Fについて、性能が悪いといいますか、偵察機その他に変更しなければならぬという理由等もあり、パイロットの人員の少ない点もあって、木更津飛行場に相当程度油づけになっておる。油づけという言葉が誤解があるようですが、しかし皆さんの方では油づけと呼んでいるから……。油づけして腐らないようにしてある。F86Fについては四十五機木更津飛行場の格納庫に油づけになっている。これはどういうように配置転換あるいは改装等をなさるのか、今日なお四十五機あるのかどうか、その点についてお尋ねしておきます。
  143. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 三月末でございますが、現在木更津には八機残っております。十八機を改装するために新三菱に送ってしまってありまして、四十五機が漸次各航空団へ配置されまして、現在のところ木更津には八機残っております。
  144. 横路節雄

    ○横路委員 次に、なお装備局長にお尋ねしたいのですが、去年の予算で、F86Fの上昇力及び上昇高度の性能を上げるために、航空機修理費の名目で、F86Fの胴体後部に、ノース・アメリカン社で開発したロケット・エンジンを取りつけて、敵機に近づいたとき、この補助エンジンに点火して攻撃上の優位を獲得しようというのが基本的なねらいだ、こういうことで、F86Fの最高速力〇・九マッハを一・二マッハ、上昇限度一万三千五百メートルを一万六千五百メートルということで、二機について改造費五千七百万円を組んだというようにわれわれ承知しているわけですが、これは予定通り二機についてはその改装が終わり、なおその改装した結果によっては、F86Fについてはさらにロケット・エンジンをつけて、そういうように速力並びに上昇限度について伸ばすように、なおやろうとしているのか、三十五年度の予算だけでとどめたのか、その点はどうなっていますか。
  145. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 ロケットをつけての改装につきましては、米側においていろいろ研究いたしてもらったのでありますが、その研究の結果、一機当たり大体八千万円くらいかかるというようなことになりまして、われわれは改装することを断念いたしました。去年の予算も使わずにしまったわけであります。今後その改装の計画は持っておりません。
  146. 横路節雄

    ○横路委員 これは装備局長にお尋ねした方がいいのだろうと思いますが、F86F、F86D等から見ると、年間の消耗率というのは一体どれくらいに見ているのか。年間の消耗率、墜落したり事故であれしたりする、そういう消耗率です。これは当然、部隊の編成といいますか、飛行隊の編成といいますか、飛行集団の編成といいますか、そういうものについては、特にF86Fについてはもうこれは生産しないわけですから、消耗率はどういうように……。
  147. 海原治

    ○海原政府委員 手元に各機種別の詳しい数字を持ち合わせておりませんが、ちょっと私の手元の数字を調べさしていただけませんでしょうか。
  148. 横路節雄

    ○横路委員 それでは装備局長にお尋ねをしますが、F104Jについては、その代価といいますか、価格については変更はないのだろうと思いますが、価格について、もしも将来変更が起きるとすれば、どういう点で起きてくるのか、その点一つお尋ねをしておきたい。
  149. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 三月末に契約いたしました契約そのものは、限度付の概算契約と申しますか、最高限をきめました契約でありまして、実際生産されましたものを年々納めていくわけでありますが、この契約の末期におきまして、それが実際幾らかかったかということを、これは大体五、六十人の現地の駐在官がおりまして、一々毎日の伝票を調査しておるわけであります。その結果に基づきまして最終的な計算を、契約の最後においてやるわけであります。そういう意味におきまして、最高限は、一応この契約額をこえるわけにはいかぬ、ただし生産の結果、実際がそれより低い場合はその低い価格でいく、こういうことになるわけであります。そういう点で、まずこの限度をこえることはないとは存じますが、ただ労務費につきましては、一定の上昇するための余裕は見てありますが、われわれが予想いたしております以上な労務費の上昇というような問題がありますれば、あるいは追加をしなければならぬ、かように考えておるわけであります。それから現在考えております性能に、さらにアメリカ側と交渉しましてほかの装備をつける、あるいはまた性能を向上する、これは飛行機につきましてはよくそういう仕様書の変更をやるわけであります。そういうような問題で、しかも多額の費用を要するという場合におきましては、その追加が必要になるのではないか、かように考えております。一般の資材費等の値上がり、これも非常なインフレ等によります物価の変動というものがない限り、これを最高限度にするということになります。   〔委員長退席、草野委員長代理着席〕
  150. 海原治

    ○海原政府委員 先ほどの数字をお答えいたします。F86Fについては、一応消耗率を二・三から二・一五、二・一、大体二%までの間で考えております。これはそれぞれの飛行機が何時間飛ぶかということによりまして、少しずつ消耗率は変わって参ります。F86Dにつきましては二・二五、二・一、二・0、一・九、大体この辺の数字が各年間の消耗率であります。それから104Jにつきましては、これはまだ計画上の数字でございますので、はっきりした経験率ではございませんが、四前後ではなかろうかということであります。これは今調査いたしております。
  151. 横路節雄

    ○横路委員 今の損耗率については、飛行隊といいますか、部隊の編成上大きな問題であります。F86Fについては二・三%、二・一%、大体平均して二%くらい、F86Dについては二・二五%、これも二%前後、ところが104Jについては四%という損耗率を見るということは、相当高いわけですね。最終的に百八十機できる。その場合の四%というと七機ないし八機ということになってくるわけですね。そうすると五年間たつと四十機くらいいなくなるということになりますと、非常な大きな問題だと私は思うのですが、この点はまたあとに機会があればお尋ねすることにして、F104Jの最高限度は幾らですか。
  152. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 一機当たり、これは毎々国会で申し上げておりますのは百十二万ドル、こう申しておりますが、今度の契約によります最高限を一機当たりに換算いたしますと百十二万六百八十一ドル、こういうことになっております。
  153. 横路節雄

    ○横路委員 これで二百機の計算で総体の金額は変わりないわけですね。
  154. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 総体の金額は、これは部品を含めまして、初度部品を含めまして全体の契約をいたしておりますので、初度部品の分だけ、現在のところは一機当たり二百五十ドルくらい、日本の金額にいたしまして大体千五百万円くらいでありますが、その程度は食っておる計算になりますが、さっき申しましたように限度契約でありますので、最終年度には幾らか余剰が出るのではないかということで、大体当初の予算通りに契約はできておるのであります。
  155. 横路節雄

    ○横路委員 先ほど装備局長お話で、その他の装備あるいは性能の向上等のために特別の装置をすれば、また一機当たりの価格は上がってくる、こういうわけですが、やはり特別の装置をしたり性能向上のためにそういうことは予想されるわけですか。
  156. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 私そういう点ちょっと申しましたのは、これは西独等につきましてその後いろいろ研究をいたしまして、現在これを装着することになっておりますが、われわれ当初はそういうことを予定しておりませんでしたが、いわゆるアレスティングと申しまして、緊急の場合に飛行場に着陸するためのフック、これを装着する必要があるのではないかということで現在検討いたしております。これをつけますと、大体二百機全部で二億から三億くらい追加が必要ではないか、かように考えております。
  157. 横路節雄

    ○横路委員 この間装備局長からF104Jの契約書に伴って「防衛秘密の保護に関する附帯契約書」というのを資料としてお出しをいただいたんです。ここには「一般条項第六十二条に基づく防衛秘密の保護に関する附帯契約を、次のとおり定める。」乙というのは会社になりますが、乙の一般義務として、第一条「乙は、F104J及びF104DJ航空機航空機製造に伴う防衛秘密の保護に関しては、この契約条項の定めるところにより秘密保護の万全を期さなければならない。」二は「乙は、乙の従業員又は下請負者の故意又は過失により防衛秘密が漏えいしたときであっても、契約上乙の責任を免れることはできない。」こういうふうにありまして、以下第二条、第三条、第四条、第五条、第六条、第七条、第八条、こうなっているわけですが、これはいわゆるMSA協定日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、この適用ですか。
  158. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 これはMSA、いわゆるMAPに基づきますものについての適用もありますが、今度の104につきましては、全部がMAPではありませんので、それ以外の分につきましては、やはり米側でこういう点は秘密にしてもらいたいということがありますれば、それを秘密にしてあるということで、MAPだけの、MSA協定だけの問題以外にそういった米側との打ち合わせによる秘密の分もあるわけであります。
  159. 横路節雄

    ○横路委員 F104JについてはMSA協定以外のものもあるということですが、法律では日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法、こうなっておるわけですね。そうするといわゆるMSA協定以外のものがこの中に入っているが、防衛秘密の保護に関する附帯契約書に伴って、それならば秘密を漏洩したり何かした者は何によって処罰するわけですか。
  160. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 MAP以外の分につきましては、あくまでこれは私契約でありますから、契約の義務違反というだけでありまして、処罰の対象にはなりません。
  161. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると契約の義務違反ということで刑罰の対象にはならないというと、契約の取り消しとか、そういう意味ですか。
  162. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 そういう意味でございます。
  163. 横路節雄

    ○横路委員 F104Jについては私よくわかりませんからお尋ねしますが、この分についてはMSA協定で来た、だからこの分についての秘密漏洩は、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法で処罰する。しかしそれ以外のもので来たものについては、秘密の漏洩があってもそれは刑罰の対象にならない。そうするとその仕分けというものは、この契約書の中に出ているわけですか。私は秘密保護法をいただきましたし、それから全部契約条項をいただきましたが、その点はこの中で明確になっているわけですか。
  164. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 防衛秘密に閲するものは、例の米側援助の七千五百万ドルの中で、MAPでもらいますもの、この中でさらに米側が秘密にしてくれということを指定した分だけを、防衛庁から秘密保護法による秘密としまして、三菱側に別途通達を出すということになるわけであります。それ以外の分は単なる私契約ということになります。
  165. 横路節雄

    ○横路委員 そこで第八条に秘密保全規則というのがありまして、「乙は、社(工場)内及び下請負先における防衛秘密の保護を確実に行なうため、この契約締結の日より一カ月以内に秘密保全に関する規則(以下「秘密保全規則」という。)を作成のうえ、甲の確認を受けるものとする。ただし、その規則が既に作成され、甲の確認済であるときは、特別の指示がない限り、届出をもって確認に代えることができる。この秘密保全契約というものについてまずお尋ねをしますが、これはF104Jについて初めてやるわけでしょう。それともF86Fのときにもすでにあってやっておるのか、この点はどうなっておるのですか。
  166. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 86、33につきましては米軍の秘密はありません。ただP2Vにつきましては米軍の秘密事項がありましたので、こういう契約を結んでおります。
  167. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると今のお話で、P2Vについてはこういうものを結んだ。あれは新三菱ですか。
  168. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 川崎航空機であります。
  169. 横路節雄

    ○横路委員 これは新三菱ですから、新三菱は今度初めてこの締結の日から一カ月以内に秘密保全に関する規則、秘密保全規則というものを作るわけですね。これは一体どういうものですか。たとえばこれによって別に処罰するとか何するということはできないと思います。もしも秘密を漏洩した者は解雇するとか、そういう会社としての就業規則とは違うわけですね。これはどういう意味のものですか。まさかこれによっていわゆる刑罰に処するというわけにはいかないでしょうから。そうすると新三菱とは初めていわゆるF104J——今までF86についてもその他についてもなかったわけですから、これはどういう内容のものになるわけですか。秘密を漏らした者は首を切るというのか、どういう内容ですか。前のP2Vのときにはどういう内容になっておりましたか。
  170. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 これは秘密の保全方法を定めてありまして、秘密に指定された分につきましてはどういう書類の形式をとらなければならぬ、あるいは秘密に指定された部分の作業に従事する場合はどういう、たとえば勤労部長はその従業員としてどういう範囲の人を入れるということをきめなければならぬ、そういうことを指定してあるわけでありまして、その条項につきましては一々防衛庁の承認を受けさせる、こういうことにいたしておるわけであります。
  171. 横路節雄

    ○横路委員 第二次防衛計画の中で、ナイキ・アジャックスあるいはホークその他は入ってくるわけですね。最終的にはボマークも入ってくるかもしれない。初めは向こうから買い入れて、国内で研究をして生産するということになるでしょうが、その場合は、この日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法だけでいいのかどうか。たとえばF104Jについても、いわゆる特別な装置として敵味方の識別の機械、こういうものについては日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法だけではだめだ、いわゆる軍機保護法といいますか、そういう特別の秘密保護法の制定ができなければ、そういう特別の装置のものについては生産等はできない、こういうようにもわれわれは聞き及んでおるわけですが、そういう点はどうなりますか。これだけで将来ともに進むのかどうか。
  172. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 ナイキにつきましては、現在生産するということで米側と打ち合わせしておるわけではありませんで、防衛庁が直接もらうという形で現在米側と話し合いができておるわけであります。これを生産することになりますれば、どういうような防衛機密がありますか、その点まだ確かめておりませんが、ほかの現在やっておりますP2V及び104につきましては、現在の秘密保護法で十分である、かように考えております。
  173. 横路節雄

    ○横路委員 それでは装備局長、恐縮ですが、私どももこの秘密保全規則というものを、初めて今度F104Jについて秘密保護に関する附帯契約書を見せていただいてわかったわけです。さらにこの104Jについては、防衛庁と新三菱との秘密保護に関する附帯契約書というのは、三月三十日から一カ月以内というからまだ出ていないわけですが、P2Vについてはすでに出ているわけです。大へん恐縮ですが明日でよろしゅうございますから、一つ私たちにそのP2Vに関しての秘密保全規則というものがどういうものなのか、初めてきょうこれを出されて私たちわかったわけですから、ぜひ一つ出していただきたいと思います。
  174. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 P2Vにつきましてはすでにできておるものがあると思いますから、明日にでも提出いたしたいと思います。
  175. 横路節雄

    ○横路委員 装備局長に次にお尋ねしますが、輸送機です。今C46ですか、こういうことを言ってはどうも大へん失礼ですけれども、なかなか安心して乗っておれぬ、というと問題が多いでしょうが、第二次防衛計画の中で次期輸送機についてあなたの方では検討している、こういうわけですが、これは装備局長ですか防衛局長ですか、どちらでございますか、第二次防衛計画の中における輸送機については、現在どういうような検討が進められておるのか、その点についてお尋ねいたします。
  176. 海原治

    ○海原政府委員 第二次の計画中におきましては、C46は現在の見積もりでございますと、一応四十一年度におきましても、約四十機前後は現在のものが保有できる、こう考えております。しかし将来の問題もございますので、このC46がかりに命数がなくなりました場合にはどうするかということにつきましては、たとえばアメリカの方からのMAPが期待できるかできないか、あるいは国産機のものがこれに利用できるかどうかという点は検討いたします。しかし二次計画中に次期の輸送機というものが取り上げられるかどうかは、まだ確定いたしておりません。
  177. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長、実は私がそれをお尋ねしたのは、第二次防衛計画の中における次期輸送機をめぐって、ちょうどグラマンだロッキードだというように、またいろいろとその中に介在する会社といいますか、それらが起きてまた同じような問題が起きるのではないか、こういう点を心配されている向きもあるわけです。これは今日別にグラマン、ロッキードの問題を再び取り上げようとはしませんけれども、あれだけ国会において大きく問題になり、多くの人々が介入していることが明らかになったわけです。ですからそういう意味で、次期輸送機の選定等はどうなっているか、こうお尋ねしたわけです。そうすると第二次防衛計画の中では、今のC46は今あなたのお話では四十一年で四十機残るというが、しかし当然これは新しい機種その他についても選定していくわけですね。この点はどうなんですか。
  178. 海原治

    ○海原政府委員 あらかじめまたお断わりしなければいけないわけでございますが、これまた防衛局段階での考え方でございます。もう少し具体的に申し上げますと、二次計画の中には三十六年度におきましてC46は一応四十四機保有、これがどういう状態で今後推移するかということにつきましては、先生おっしゃいますように非常に古い飛行機ではございますが、非常にまた使いよい飛行機でございます。メインテナンスなんかをよくいたしますと、長持ちいたします飛行機でございます。そういう立場から大事に使っておりますので、四十一年度末におきましてもこの数字はおそらく四十一機程度になる。すなわち現在との差は三機程度ではなかろうかというのが一応の今の見通しでございます。従いまして先ほど申しましたように、この二次計画中に新輸送機の問題は必ずしも決定しなくてもいい問題であります、しかしさらに将来を見ました場合には、どうしておくかという問題もございますので、先ほどお答えいたしましたように、あるいはC46にかわる輸送機が米軍からMAPで援助を受けることができるかどうかというような見積もりの問題、それができない場合にあるいは国産の輸送機というようなものが、その方向に利用できるかという点を事務的に検討している、こういうことでございます。
  179. 横路節雄

    ○横路委員 防衛局長にお尋ねしますが、防衛庁ではナイキ・アジャックスについては、すでに訓練を受けて供与を受ける態度がはっきりした。ホークについても大体第二次防衛計画の中で入ってくるのであろうと思うのですが、今まで防衛庁ではアメリカ側に対して、スパロー、ファルコン、今すでに決定したナイキ・アジャックス、テリヤ、先ほどお尋ねしましたボマーク、タロス、ホークについても先ほどいろいろお尋ねしたわけですが、オネスト・ジョン、タイタン、この九種について供与を要請している。そうしてこちらへ持ってきてその開発の研究に資したい、こういうようにわれわれ聞いているのですが、この事実はないかどうか。もしもあるとすれば、一体この九種の誘導弾についてどういうような折衝になっているか、その点をお尋ねしたい。
  180. 海原治

    ○海原政府委員 御指名でございますので私がお答えいたしますが、私の知る限りでは、そのような要請をした事実は存じておりません。
  181. 加藤陽三

    加藤政府委員 それはたしか昭和二十九年か三十年だと思います。技術研究用に一組ずつ供与がしてもらえないかという要請をしたことは覚えております。その後どうなりましたかということにつきましては、向こう側から、当時秘密保護法その他の関係で困難であるという返事があったように聞いております。その後それは進んでおらないと思います。
  182. 横路節雄

    ○横路委員 次に防衛局長にもう一つお尋ねをしたいのですが、地対空のミサイルについては一応ナイキ・アジャックス、ホーク、あるいは、入る入らぬは別にしてボマークを私どもここでお尋ねしたわけですが、地対地についてはどうでしょう。その点について、将来一体このミサイルについては考えているのかどうか。今までは地対空、空対空についてはサイドワインダーその他についてすでに入ってきている。地対空については大体今第二次で二つ入ってくる。地対地についてはどうですか。
  183. 海原治

    ○海原政府委員 現在私の手元では検討いたしておりません。
  184. 横路節雄

    ○横路委員 次に長官にお尋ねをしたいのです。私がこれでお尋ねをするのは、予算委員会の分科会、それから予算委員会の全体会議、これで三回目ですが、どうも私納得ができないので、きょうは一つもう少し時間をかけて長官の真意をお尋ねしたいと思う。  それは核兵器と憲法との関係なんです。私は核兵器を持つことは憲法違反だと思うのです。この点は長官の御答弁をいただいてから私の考え方について申し上げたいと思いますが、長官はたしかこういうように言っていらっしゃったわけです。原水爆等のものであるならば、あるいはもっと言うならば、戦略用の核兵器とでも言った方がいいでしょう。しかし西村長官はそういう言葉は使っておりませんが、であれば、これは憲法違反だ。しかし小型核兵器といいますか、戦術用の核兵器といいますか、長官は戦術用の核兵器とは言いませんでしたが、これは憲法違反ではない。しかし池田内閣としては政策上持たないのだ、こういうわけなんです。この点きょうは、私は憲法違法だと思うので、その点重ねて長官から一つお答えをいただいて、それから私の考え方を述べて、長官と十分この点について論議をかわしたい、こう思っているわけです。
  185. 西村直己

    西村国務大臣 先般来国会においてもこの問題は私、と申しますよりは政府の所信を明らかにし、また政府は従来言っておりますことと変わっておらない。結論と申しまして、憲法だけを取り上げまして、そして純理論的に政府として解釈をいたします場合におきましては、攻撃的な意味においてのものは持たない。では核兵器あるいは核武装というものは絶対に憲法が禁止しておるかというと、そうではない。核兵器あるいは核というものが開発され、防御的な性格においてであるならば、持ち得ないということはない。言いかえればこれを否定してしまうという憲法解釈は、政府としてはとっていない。それからもちろん政策としてと申しますか、内閣として導入あるいは核装備ということは考えていない。もちろん法律の段階におきましては、原子力基本法におきまして核の平和利用ということを限定する、こういうふうに申し上げておるのであります。
  186. 横路節雄

    ○横路委員 それでは長官にお尋ねしますが、憲法違反にならない核兵器、憲法違反になる核兵器、大へん恐縮ですが、その違いはどういう違いがあるのでしょうか。憲法違反である核兵器、憲法違反ではない核兵器、これはどういう違いがありますか。
  187. 西村直己

    西村国務大臣 われわれはこの問題は理屈の上から申しますと、きわめて抽象的なお答えしかできないと思います。またわれわれとして当面これを持つという意思がないから、これを具体的に、どれがどうだという検討はいたしておりませんから、現在のところ具体的に一つ一つを拾ってどうということは申し上げられないと思っております。
  188. 横路節雄

    ○横路委員 長官、それはおかしゅうございませんか。憲法違反になる核兵器、憲法違反ではない核兵器、あなたは今そういうふうに答弁されたわけですよ。必ずしも核兵器を持つことは憲法違反ではない。しかし憲法違反になる核兵器もあるのだ。憲法違反になる核兵器と憲法違反にはならない核兵器というものは、一体どこが違うのか。その点明らかにしてもらわないと、これは非常に重大な問題なのです。きょうは幸い委員長の方からあまり時間のやかましい制約がございません。いつもはやかましい制約がありますから、きょうは一つじっくり長官から、この点は私も意見を述べますから、その点明らかにしていただきたいのです。ただ言葉の上で、なる兵器とならない兵器があるのではなしに、一般の兵器ではないわけですから、核兵器のことを言っているわけですから、この点一つ——私に対する答弁ということは、言いかえたらやはり国民に対する答弁なのですから、国民全般が納得するかどうかは、それは一つ長官、お考えになって御答弁していただきたい。だれが聞いたってわからない。核兵器には憲法違反になるのとならないのとある、それだけでは私は答弁にならないと思う。    〔草野委員長代理退席 委員長着席〕
  189. 西村直己

    西村国務大臣 私どもといたしましては、政策として、あるいは法律の段階においては核を持たない、これはもうはっきりしております。問題は憲法の純理的な解釈であります。その場合において、憲法というものはそれでは核という一つの武器は何が何でも否定しているのだ、核というものは持ってはいけないのだ、こういう解釈はとれない。やはり核の中でも、これはいろいろな性格のものが現在におけるよりは、将来に向かって開発される場合もあり得るでありましょう。そうすると憲法の解釈としてあくまでも、それはもう核と名がつけば何でも絶対否定するのだ、こういうふうに解釈はとれない、こういう意味で申し上げているのであります。
  190. 横路節雄

    ○横路委員 長官のおっしゃる核と名がつけは何でも憲法違反だとは言えない。そうすると長官の言ういわゆる憲法違反にならない核兵器というものは、どういうものを言うのですか。核と名がつけば一切がっさいそれは憲法違反だというのは間違いだ。そして私がここでお尋ねしているのは、政策上持たないということよりは、やはり国のいわゆる基本原則であるこの憲法をどう解釈するか。戦力と自衛力との関係もあるが、とりわけ一番大事な核兵器についてはどうなのか。だからここで長官から一つその憲法違反にならない核兵器というのはどういうのか、どういうものを憲法違反にならない核兵器というのか、その点きょうはぜひ明らかにしていただきたい。
  191. 西村直己

    西村国務大臣 私といたしましては憲法の解釈の問題でございまして、それを一つ一つの事例でもってお示しするということは、事きわめて抽象的な問題でありまして、私は核というものも時代が進むに従っていろいろ変化して参る、これを前提にして考えていかなければいかぬと思うのであります。ただこの核なら憲法違反で、これならどうだということは、私は答弁は困難であろうと思っております。
  192. 横路節雄

    ○横路委員 長官、そうすると核兵器について原爆や水爆以外の核兵器というのが、どういうのがあるのでしょうか。私は長官防衛庁長官だが、こういう兵器については必ずしも専門家だとは思わないです、率直なところ。そこで長官、これは防衛庁からいただいたものですけれども、一九六〇年、昭和三十五年の防衛年鑑です。この中に防衛研究所の一等陸佐の高杉さんというのが「共存する通常兵器と核兵器」というのを書いている。これは防衛研究所でやっているのだから相当専門家でしょう。長官、あなたは防衛庁長官だが、長官もめったにこういう点までお読みにならぬと思うのだ。私の方でここで、恐縮ですが読みますから。いいですか。「核兵器小型化の限度とその効力」「水爆では最小威力百キロトン程度までのものは開発可能といわれるが、現在小型核兵器として論議せられるものはもっと小さいもの、すなわち核分裂兵器(原爆)に限定せられるものでは、従来一キロトン前後が小型化の限度と見られていたが、ネバダ実験の例によると、もっと小型のものも、技術的には可能のようである。」「また威力の面で見ると、小型化といっても発熱量と爆圧の面のみのことであって、放射線効力は大して変らないことに注意する必要がある。発熱量が標準型原爆の千分の一になった場合の威力半径の減少割合を見ると、爆圧は十分の一、発熱量は三十分の一であるが、放射線は三分の一にしかならないといわれる。従って小型化核兵器の威力は大部分が放射線効力となる訳である。これは陸戦においては可なり重大な問題となることであり、原爆はやはり原爆だ」こう言っているのです。原爆はやはり原爆なんですよ。長官、この点よくあなたは核兵器は小型になるのだと言われる。ネバダの実験については非常に小型の核兵器が出ています。しかし実際には爆圧の面であるとか、あるいは発熱量、熱の問題であって、問題の放射線については効力は変わっていない。原爆はやはり原爆なんです。それを何で一体形だけ小さくなれば憲法違反でないと言えるのか、その点どうなんですか。
  193. 西村直己

    西村国務大臣 私はもちろん専門家でありませんし、また防衛年鑑に書いてあることも一つの意見であろう、一つの見方であろうと思うのであります。(「科学だよ。」と呼ぶ者あり)科学にしましてもそれは意見であります。意見として出しておるのでありまして、何も防衛庁が発表したものでもございませんし、また一人の、おそらく署名入りのだれかが書いておるものだと思うのであります。そこで問題は、原水爆と申しましても原理は核でありますから、核融合反応であるとか核分裂、これからくる威力であります。あるいは破壊力であります。これからくるところの放射能の発散であります。しかし問題は、私が言うのは憲法はそれではすべて、将来科学が発達してきて、そうして放射能においてもあるいは威力においても限度がある。あくまでもこれが小型なもの、また現に各国で、あるいは特にアメリカなどでは小型のものを非常に研究を進めております。そういう面からきた場合に、小型のもの、言いかえればこれは攻撃力がきわめて薄い。もちろんそれは他の普通の通常兵器よりはやや大きいでありましょう。しかしかつて、あるいは今日、原水爆と通常いわれておる入道雲の立つような、ああいう大きなものから言えばはるかに攻撃的な性格が薄い、こういうようなものになって参りますれば、私は今の憲法をすなおに解釈して、これをしも自衛力の中で一切がっさいいけないのだと解釈するのは当たらないのじゃないか、こういう趣旨で申し上げておるのです。
  194. 横路節雄

    ○横路委員 私は憲法解釈についてはさらに申し上げますが、長官はやはり防衛庁長官ですから、この点は政策上持つとか持たないとかいうことよりは、憲法上の解釈としてはっきりしておいていただきたいと思います。  それでは憲法の問題はさらに聞くとしまして、これとの関連ですが、陸戦ノ法規慣例に関スル条約というのが一九〇七年十月十八日に署名されて、効力の発生が一九一〇年十月二十六日、日本は一九一一年十二月十三日に批准書を寄託して、一九一二年一月十三日に条約を公布している。この陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約の中にこうなっているのです。「斯ノ如き非常ノ場合ニ於テモ尚能ク人類ノ福利ト文明ノトシテ止ムコトナキ要求トニ副ハムコトヲ希望シ、之カ為戦争に関スル一般ノ法規慣例ハ一層之ヲ精確ナラシムルヲ目的トシ、又ハ成ルヘク戦争ノ惨害ヲ減殺スヘキ制限ヲ設クルヲ目的トシテ、之ヲ修正スルノ必要ヲ認メ、」云々とこうなって、その条約の附属書、陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則の第二十二条に害敵手段の制限として「交戦者ハ、害敵手段ノ選択ニ付、無制限ノ権利ヲ有スルモノニ非ス。」、同じく第二十三条禁止事項として「イ 毒又ハ毒を施シタル兵器ヲ使用スルコト」、「ホ 不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物資ヲ使用スルコト」、どうですか長官、この陸戦法規の第二十二条、とりわけ第二十三条のイの項、ホの項、私は少なくとも核兵器の使用は、放射能によるところの惨害を考えた場合に、これは当然陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約の附属書である陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則の第二十二条、第二十三条の違反ですよ。だから核兵器を使用するということは明らかに国際法の違反なんです。この国際法に違反するようなことをやってもいいなんて、日本国憲法のどこに書いてありますか。これは長官がいかに憲法を拡大解釈するとしても、いかに自衛権を拡大解釈するとしても、国際法をあえて侵してまで自衛権などというものはないですよ。だから私があなたにお尋ねをしたいのは、原水爆の使用、核兵器の使用というものは、明らかに陸戦法規第二十二条、二十三条の違反行為ですよ、そう思いませんか。
  195. 西村直己

    西村国務大臣 陸戦法規そのものはもちろん日本が——私もここにちょうど拝見しておりますが、これは一九一一年に批准しております。しかしこれは別に放射能とか、そういう趣旨で書いてあるのではなくて、毒あるいは投射物とかいう不必要な苦痛を与える兵器を使ってはいかぬ、これは言いかえますれば、戦時においての陸戦の一つの武器使用の実体的規定だと思います。しかしこの前提となります精神をくみまして、できるだけ同じ戦争でも災害を少なくして、お互いがお互いに戦う場合における戦時規定の一つのルールである。私はこれとわが憲法とは直接何ら関係ないと思う。それからもう一つは、国際法の全体から言えば、おそらく核装備というものを今禁止をしているのではないか——禁止はないから、言いかえますれば、何とかしてこれを禁止する方向に持っていこうじゃないかといって、各国が努力しておるのが現状であります。われわれがそういうような情勢下に立ってわが国が一つの戦力と申しますか、それは否定しておる。自衛力は持っておる。その自衛力の範囲内において私どもはあの憲法をさっき申し上げたような趣旨で解釈して参りたいと思うのであります。だから核そのものが今の国際法あるいは国際法の精神で絶対的に禁止されておるかどうかというならば、核実験停止の何か会議は必要でしょうけれども、わざわざそこで取りきめをしないでも、すでに法規はあるということになります。私はそこまで世界というものが法文化されて、国際法上きめてあるのではないというふうに見ております。
  196. 横路節雄

    ○横路委員 西村長官はどう思うのですか、核兵器を使用することは。今私が指摘しました陸戦ノ法規慣例ニ関スル条約の附属書である陸戦ノ法規慣例ニ関スル規則の二十二条、二十三条の核兵器を使うことは違反だとは思いませんか。
  197. 西村直己

    西村国務大臣 この条約は御存じ通り一九一一年にできておりますから、核発見以前の法規でございますが、これから核兵器云々の問題が出てくるのではないか。その後における核の発達、核の実験、あるいは使用、こういう段階に来ておりますから、私はこれ以上の新しい大きな問題だと考えております。それからもろちん私といたしましては、日本の国が核装備をする、核を兵器として使用するということは、内閣の一員でありますから、これはまっこうから反対であります。ただ憲法の解釈を問われるならば、さっきのような解釈はあえて私だけでありません。歴代そういう解釈のもとに憲法を解釈しているということを、私もこの機会に申し上げておきたいのであります。
  198. 横路節雄

    ○横路委員 今長官から、各国とも核兵器を持っておると言われたが、核兵器を使用したのはアメリカ日本の広島と長崎で使っただけですよ。あれはどうなんですか。戦闘に参加しておる者もあったであろうが、多くは戦闘に参加していない者に対して、大量の殺戮をしたわけです。あれは明らかに人道上の重大な問題ではありませんか。この二十二条、二十三条ばかりでないですよ。ここに窒息性、毒性又はその他のガス及び細菌学的戦争方法を戦争に使用することを禁止する議定書、一九二五年六月十七日にジュネーブで署名したものですが、その中に、「窒息性、毒性又はその他のガス及びすべての類似の液体、材料又は考案を戦争に使用することは、文明世界の世論によって至当に非難されている」とある。ですから広島、長崎にアメリカが原爆を使用したということは、大量に日本人を殺戮したということなんですよ。あなたがこういうことについては国際法違反でないとか、日本の憲法だって大したことがないというようなことをおっしゃるならば、それは明らかに大問題です。藤山外務大臣は三十四年の十一月十九日の社会労働委員会で、社会党の大原亨委員の質問に答えて、これは人道上大問題である、こういうようにいっているのです。これは明らかに人道的な立場から言っても、国際法の違反だと言っておるのです。またあなた自身そう思いませんか。広島、長崎に使われた原爆で、多数日本の非戦闘員がやられた。それを再び日本が——それは小型の核兵器であろうとどんなに小さくしても核分裂なんです。放射能の被害というものは、相当甚大です。それをただあなたは自衛権の名のもとに、今の日本の憲法の建前から言って、小型になれば使えるのだ、こういうことが言えますか。それなればこそ、国際連合ができてから大量殺戮防止に関する条約をきめたじゃありませんか。今日世界の人々が、もちろん毒ガス等によるところの陸戦法規、ジュネーブ協定、さらにそれから進んで今日のこの国連の協定、今あなたの方でお開きになっているが、一九四八年十二月九日の国際連合第三回総会で採択をして、一九五一年の一月十二日、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約、この第一条であるじゃございませんか。「締約国は、集団殺害が平時に行われるか戦時に行われるかを問わず、国際法上の犯罪であることを確認し、これを防止し処罰することを約束する。」と、こうなっているじゃありませんか。なるほどあなたの言うように、これはヘーグの陸戦法規その他について足りない点もあったであろう。ですから集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約でそういうふうにきめてあるのです。それを、平和を希求してやまない日本憲法のもとにおいて、自衛権の名のもとにおいて、小型核兵器であるならば、これを使用しても憲法違反でないということは、明らかに間違いですよ。あなたが間違いでない、小型核兵器を使っても憲法には違反しないのだと言うと、これ驚くべき防衛庁長官になりますが、この点はどうですか。
  199. 西村直己

    西村国務大臣 あなたのおっしゃいました引例の集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約、これは確かに一九四八年、戦後でありますが、国連の総会で採択して、五一年に効力が発生していますが、日本はまだ不幸にしてこれを批准はしていないのであります。といって、私は広島あるいは長崎の大量爆撃と申しますか、殺戮に対しましては、一般論としてはこれは国際正義上残念だと思います。たださっきのヘーグの陸戦法規は、これはずっと以前のものでございまして、核以前の問題であります。ですから、実体的に核を持つことがいいかどうか、核を使っては悪いかという法律上の実際の問題になってくると、国際間では議論があろう。そこで国際間で何とかして実験停止からまず始めたいということで、今日政治的ないろいろな激しい動きがあり、またこれ自体、われわれなりわが国も非常に熱望しているところなのであります。憲法の解釈については、私ははっきり申しますけれども、これは残念ながら横路さんと御意見が違うのでございまして、憲法だけを取り上げていくならば、核が人類に不幸を与えないということは、われわれは当然であります。日本の憲法が、それでは何でもかんでも核というものは一切禁止されているのだという解釈は、従来もとってないし、現在も憲法解釈としては政府一体となってとってないのであります。ただ政策なり法律上の建前において、はっきり核武装はいたしません、これは断わっております。理論の問題としては、政府の解釈は、あくまでもそういう解釈をとっておる。これは横路さんとは残念ながら意見が相違する点であります。
  200. 横路節雄

    ○横路委員 西村長官のそういう憲法解釈はまことに残念だと思います。この憲法の前文に「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」ここにありますように、恒久の平和を念願をしているのだ。しかも平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼をして、われわれの安全と生存を保持しようと決意したのだ。これがただ単に憲法第九条だけではなしに、憲法の前文を流れている精神なんです。よく予算委員会でも私はあなたと議論をしたが、憲法では禁止されていない。しかし原子力基本法の第二条では禁止されていると言うが、それはそうじゃないのですよ。原子力基本法の第二条は、この憲法前文から流れ出て、原子力は平和的以外には利用してはならぬ、平和的利用に限るとなっているのです。この点は、それは歴代の保守党内閣が、いわゆる戦力は保持しない、交戦権は放棄した、しかし自衛権はあるのだ、そういう建前をあなたの方でとっていらっしゃることは、今日の自衛隊の防衛二法案でも明らかだが、しかし少なくともこの核兵器だけは——しかも原子力基本法の第二条で、原子力の利用は平和的目的に限る、それがこの憲法とは独自に、ぽんと原子力基本法が出てきたような解釈をなさるが、そうじゃないのです。原子力基本法の第二条は、そのいわゆる立法の精神からいっても、平和憲法の前文を流れるこの精神から来ているのですよ。その点、何も歴代といったって、歴代の内閣がそう言ったのではないのです。岸さんからそういうことを言い出した。岸さんからですよ。何も歴代そう言っているのじゃない。吉田内閣がそう言ったわけでもない。この点は一つ防衛庁長官、あなたは少なくともこれから第二次防衛計画を策定をされる。そういう中でこの問題は非常に重大なんです。私は自衛力あるいは自衛権の発動というものに名をかりて、そしてこの憲法の前文、この精神を没却してはならぬと思う。それなればこそ、あなたから言われているように、このへーグの陸戦法規あるいはジュネーブの議定書その他が足りないから、さらに国連における第三回の総会で明らかにした。今あなたは条約を批准していないと言うが、国連に加入しておる日本ですよ。国連に加入しておる日本が大量殺害に対して、こんなものをまだ批准してないから、何かの必要があればおれたちやったっていいのだ、とんでもないです。(「そういう趣旨でない」と呼ぶ者あり)そういう趣旨でないと言っても、あなたは批准してないからと言う。批准をしてないからのがれる道があるというふうに——この間のアイヒマンの裁判を見たってそうじゃありませんか。なるほどユダヤ人を六百万も殺したが、一体原爆の使用はどうなっておるのかとイスラエルの諸君がそう言っておるじゃありませんか。この点は、あなたは歴代の内閣、とりわけ防衛庁長官は、自衛のためならば小型核兵器を使っても憲法違反ではない、こういう解釈だと言うが、それならもう一ぺん小型核兵器というものはどういうものです。どんなに小さくなっても核分裂、原爆、放射能、しかもその放射能はこの陸戦法規の第二十三条の上のホの項にある「不必要ノ苦痛ヲ与フヘキ兵器、投射物其ノ他ノ物質ヲ使用スルコト」、これに明らかに抵触しておりますよ。さらに先ほど言いましたこの国連の集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約にも触れますよ。それならばこそ、小型の核兵器を使うじゃありませんか。使って大量に侵入してきたのに対して、大量に殺害しようとするじゃありませんか。これが憲法の前文のどこから流れ出るのですか。これはただ今まで観念的に、小型兵器であるならば憲法違反ではない、こう言ったからといって、それを繰り返すだけにとどまらないで、日本の自衛隊は平和のための自衛隊だ、あなたはそう言うのだろうと思う。それであるならば、当然いかなる意味においても、核兵器を使うことは憲法違反ですよ。政策上ではなしに、憲法上から言っても絶対に自衛隊は核兵器は持たない、こうならなければならない。長官、どうですか。
  201. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん憲法の前文も私よく存じております。また原子力基本法に対しましても、私は本会議であの賛成演説をした人間でありますからよく存じております。平和と自由、このためにありますが、同時に平和と自由の一つの基礎には自衛というものがある、これもはっきりしておるのであります。そこでただ自衛のなしの平和、国の守りのなしの平和というものは、われわれは想像してない。国の安全であります。そこで憲法の解釈といたしましては、私は何でももう核と名がつけば一切禁止しておるのだ、ここまで広げた解釈はとれない。これはまた私だけの意見ではございません。内閣も同じような全体として意見を持っておるのであります。残念ながらその点は横路さんと御意見が違う点でございますけれども、そういうふうに私ども考えております。
  202. 横路節雄

    ○横路委員 それではよく国連を中心にした外交、こう言いますね。これは池田内閣の一枚看板のようです。そうすれば、この一九四八年十二月九日に国連の第三回総会で採択になって、一九五一年の一月十二日の集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約、この第一条に「締約国は、集団殺害が平時に行なわれるか戦時に行なわれるかを問わず、国際法上の犯罪であることを確認し、これを防止し処罰することを約束する。」こうなっておるのです。これとの関連はどうなんですか。明らかに向こうから、今日の自衛隊からすれば、相手の国からわが本土に、いわゆる上陸してきた。それに対して武力攻撃を加える。武力攻撃を加えるといっても、小型核兵器というのは、これはいわゆる放射能によるところの大量殺害をねらっておるものです。これはどうなんですか。
  203. 西村直己

    西村国務大臣 私どもはもちろん国連中心の外交を進めること、これは偽りない事実であり、天下に声明いたしております。また国連としましても、私どもがその傘下の一員であり、そういった精神は守るのである。問題は、ただそれ以上に大事なことは、その具体的内容、言いかえれば核の実験停止、あるいはそれからくる保有の停止であるとか、こういうような問題が今大きな政治問題として動き、またわが国もそれを主張しておる際であります。しかしながら憲法としてわれわれが解釈を求められ、また国の方針として見たならば、そういう方向で行きながらも、一切こういうものを今の憲法が禁止してしまっておるという解釈は私らはできない。その精神はもちろんわれわれは守っていくようにいたしますけれども、憲法の解釈を求めて、憲法からそれは一切——応用的な、または核が開発されたら小型になって、放射能あるいはその他の威力も小さいものであっても、一切持てないのだという解釈はできないと、われわれは言っておるのであります。言いかえますれば、従ってそういう限度においての核というものは保有もできる、こういう解釈になるわけであります。
  204. 横路節雄

    ○横路委員 そうするとあなたは、いわゆる核兵器を使用しても、ヘーグの陸戦法規、ジュネーブの議定書その他については国際法違反ではない。あるいは核兵器を使って大量に人を殺しても、いわゆる先ほどから私の指摘しているこの国連第三回総会できまった集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約の違反ではない、こういうわけですか。とにかく今まで核兵器を使われて大量に人が殺されたというのは広島と長崎の、日本だけなんですよ。だから私は聞いておるのです。核兵器を使って大量に人を殺すことは国際法違反ではないか、国連第三回総会のこの集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約の違反ではないか、この点を私はあらためて聞きます。この点はどうですか。
  205. 西村直己

    西村国務大臣 今の国連の決議その他も、不幸にして広島のできごとが起こった後に国連ができ、そうしてそういう決議が採択されておるのであります。従ってとにかく陸戦法規におきましては、当時は核というものを予想はしてなかったと私は思うのであります。また陸戦法規で規定している以上の大きな問題でもある。それだけに横路さん御存じ通り、世界で最大の問題になっておるわけであります。ですから私どもとしてはそれに対して、そういう精神には沿うていきたい。ただ憲法の解釈を求められれば、憲法の解釈は一応そう解釈せざるを得ないというのが、われわれのずっと、ただいままで申し上げている態度なんです。
  206. 横路節雄

    ○横路委員 私はその点が、防衛庁長官の答弁の納得のできない点なんです。陸戦法規の第二十三条に、いわゆる不必要な苦痛その他を与える兵器、投射物を使用してはならぬ。ところが広島と長崎で使ってみたら、その陸戦法規の第二十三条どころではないと、こうなった。これは大へんだというので、国連総会の第三会総会で、集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約を作った。それなればこそ今核実験の停止会議をやろう、そして今世界各国は、核兵器の全面的な禁止をやろうとしているのですよ。いいですか、長官。そのときに日本の平和憲法は、これが世界に類例のないものとして、先ほどから私が言っているように、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、しかもわれわれは恒久の平和を念願して、この憲法を作ったのだ。ですからこの憲法の精神からいけば、当然へーグの陸戦法規の二十三条しかり、ジュネーブの議定書しかり、ましてやこの集団殺害罪の防止及び処罰に関する条約しかりなんです。われわれは平和憲法はそういう意味で世界に誇ってよろしいのだ。こういう憲法であるのに、あなたはこの憲法の前文に一つも触れないで、第九条のところだけに触れて、自衛権はあるのだ、自衛権はあるのだ——自衛権のことについてはこれからゆっくりやりますがね。そしていわゆる小型の核兵器であれば、使用してもいいのだということは間違いですよ。防衛庁長官としては、私はその点は少なくともこの憲法の前文を流れる精神、原子力基本法の第二条もこの憲法の前文を流れる精神から、この原子力の利用は平和の目的に限るとなっている。原子力基本法は憲法とは無関係でできたものではないのです。この点は長官一つここで前の岸総理だとか、赤城長官だとか、あるいはこの間の池田さんもあまりはっきりしなかったけれども、池田総理の答弁をややくつがえすということについては、本意でないかもしれません。しかし私は、ほんとうに、自衛隊が平和を愛する自衛隊であるならば——そうでなければ別ですよ。平和を愛する、自衛隊であると私たちも考える。ですからそういう意味では、憲法の前文を流れる精神からいって、この核兵器を使用することは、これは憲法違反ですよ。だから私は、政策上は持たない、今は持たないと、そういう言葉ではなしに、憲法上からいっても核兵器を絶対持たない、憲法上からいっても絶対持たない、そうならなければならないと私は思うのです。この点、もち一度お尋ねしておきます。
  207. 西村直己

    西村国務大臣 憲法の前文あるいは憲法を流れる精神も、私は国の安全と相調節しながら、国の平和と自由を守って参る、こういうふうに憲法をとるべきではないかと思うのです。そこでこの国の安全また自衛という範囲内におきまして、この現在の現行憲法を解釈いたしますれば、私がさっきから申し上げました解釈をとらざるを得ない。この解釈は、残念ながら横路委員とは解釈が違うかもしれませんが、われわれとしてはそういう解釈をとっておるのであります。
  208. 横路節雄

    ○横路委員 いや長官、これはお隣にちょうど前々の元防衛庁長官がおられて、これは主として参議院の内閣委員会で議論したときに、伊能長官が初めて言って問題になった。たしかこう言っています。たとえば射程距離四十キロないし五十キロ等のオネスト・ジョン等に核弾頭をつけて使用することは——勇ましいのです。核弾頭をつけて使用することは、憲法違反ではありません。これがその一番最初のきっかけなんです。何も歴代内閣ではないのです。私は今日長官、これは一つよく国民の立場であなたは聞いてもらいたい。今日の防衛庁の幹部の方々の中には、たとえばナイキ・アジャックス——これはもうここで論議されているように、今日はナイキ・アジャックスについては、たしか一万八千発かなんぼ作って、これはアメリカで中止になっておるわけです。全部ナイキ・ハーキュリーズだ。だからナイキ・アジャックスからナイキ・ハーキュリーズ、何年かあとにそういうことでなしに、できれば一挙にナイキ・ハーキュリーズなどを取り入れたいという向きもある。私はこの点は、ほんとうにこの平和憲法の前文から、この防衛二法の質疑にあたって、あなたから、絶対に政策上持たないではなしに、憲法上この核兵器は持たないということを答弁されたら、どんなにか日本国民は安心すると思う。その点の答弁がないことは、はなはだ残念です。それなればこそ、自衛隊は平和のためにというよりは、国内に放射能をまき散らかすということで、私は重大な問題になると思うのです。しかしきょう長官から、がんとして歴代内閣の防衛庁長官だということで、変更してないようだけれども、しかしだいぶきょうはあなたも率直なところ、陸戦法規その他で、少しは私はお考えいただいたであろうと思うのです。  次に長官にお尋ねしますが、これはこの間山内委員の質問に加藤官房長がお答えになっているわけですが、きょうは西村長官にお尋ねしたいと思います。安保条約第六条の交換公文からする事前協議です。第六条にいう事前協議のうちで、御承知のように装備における重要な変更というので、一つ核兵器の持ち込み、一つは運搬手段たる中長距離のミサイルの持ち込み、施設事前協議の対象になる、こういうことを言っているわけですね。そこで私はこの点どなたから聞いたかはっきりしないのですが、西村長官、重爆撃機はどうですか。重爆撃機核兵器の運搬ができるわけですが、これは一体事前協議の対象になるのかならないのか。
  209. 西村直己

    西村国務大臣 事前協議の対象にならぬと考えております。
  210. 横路節雄

    ○横路委員 重爆撃機事前協議の対象にならない。わかりました。それからこの安保条約の第六条の交換公文からすれば、核兵器の持ち込みは絶対に禁止されているというのではないですね。事前協議の対象になるということであって、アメリカ核兵器の持ち込みは、この第六条の交換公文からすれば絶対にしてならないということではないわけですね。その点一つお尋しておきます。
  211. 西村直己

    西村国務大臣 お説の通りでございます。
  212. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると長官、この条約第六条本文また交換公文からすると、アメリカ核兵器の持ち込みについては絶対拒否できるという保証はないわけですね。
  213. 西村直己

    西村国務大臣 かりに要請がありますれば、それは一にかかって日本政府の意思であります。その意思が決定する、こういうことになります。
  214. 横路節雄

    ○横路委員 長官、しかしそれは絶対に反対だというなら、条約の中に持ち込みは絶対にできないと書いておくべきです。事前協議の対象にしておくということは、持ち込んではならぬという場合もあるし、いよいよもって戦争状態が激しくなればやむを得ないという場合もあるわけですね。その点どうですか。
  215. 西村直己

    西村国務大臣 もちろんこれからただ自動的に絶対にではなくて、協議の対象になる。言いかえますれば、装備の重要なる変更としてこれを扱っていく。もちろんこれは拒否して参るという考え方のもとにわれわれ政府としては考えております。一応協議の対象にはなるでありましょう、相手が求めて参りますれば。
  216. 横路節雄

    ○横路委員 そこで私があなたにお尋ねしたいのは、これが絶対に持ち込み反対であるというならば、条約に持ち込み反対だとしておけはよかった。それを協議の対象にするということは、絶対だめですと言う場合もあるし、しかし必要があればその使用を認める場合もあり得る、こういうように考えられるわけですね。その点はどうですか。
  217. 西村直己

    西村国務大臣 横路さんも安保の国会で大いにお働きになって御存じ通りでありますが、アイク・岸の共同声明文にもはっきり書いてありますが、日本の意思に反してアメリカは行動しない。事前協議にかかる事項について、米国政府日本政府の意思に反して行動しない。ですから私どもは、日米間の相互信頼の上に立つている以上は、日本の意思がはっきり核装備しません、こういう意思がはっきりしている以上、相互信頼の上に立つアメリカというものは、そういう話し合いは事前協議の対象にも持ってこないとわれわれは相互信頼すべきだと思います。
  218. 横路節雄

    ○横路委員 それは今長官が言うように相互信頼以外にないわけですね、条約上の規定はないのですから。その点確認しておきたいのです、ないならないと。
  219. 西村直己

    西村国務大臣 それはすでに安保の国会におきまして、あなた方ベテランの人たちが大いに論議されて明らかになっている通りであります。われわれは条約の条文、岸・アイクの共同声明文、これからもはっきりいたしており、また交換公文の趣旨の運用におきましても、その相互信頼に立って、アメリカ側が日本政府事前協議における意思に反しての行動をすることはまずない、こういうふうに確信いたしております。
  220. 横路節雄

    ○横路委員 しかし長官、必ずしもそうでないのじゃないですか。あなたもここで答弁されていますが、今日の日本の自衛隊というものは、これは戦争抑制力ですね。しかもこれが、あなたの方ではこういうように言われているのじゃないですか。アメリカの軍隊と一緒になって、世界戦争に対する抑制力の一半を担当しているのだ。こういうようにあなたの方で言っているじゃありませんか。私の言い分は間違いですか。日本の自衛隊はアメリカの軍隊と一緒になって、そうして世界戦争の抑制力の一半を日本もしょっているのだ、この点はどうですか。
  221. 西村直己

    西村国務大臣 もちろんわれわれの自衛隊は国土の守りでありまして、従って日本の自衛隊の能力は局地戦闘を対象にしております。しかし先般も、それでは局地戦だけで何も世界の平和に貢献せぬかとおっしゃるから、そうではありません。自衛隊が国内において日本の国土の平和を守ること自体は、やはり極東が平和になり、かつ世界の平和の一翼に貢献している、こういう趣旨で申し上げておるのであります。
  222. 横路節雄

    ○横路委員 この点は長官、前の安保国会で赤城長官は、相手の国から核攻撃が行なわれた場合には、われわれはアメリカに対して核の報復力を期待している、こう答弁していますよ。この点は今でも変わりませんか。核攻撃があった場合においては、日本アメリカの核の報復力に期待をしている、これは間違いはございませんか。
  223. 西村直己

    西村国務大臣 もちろんわれわれは全面戦争というものは期待いたしません。おそらく大国の核武装、核兵器と申しますか、近代大型兵器が抑制力として平和を保っていくであろう、こういうふうに状況を判断いたしております。ただ先般も飛鳥田委員から、樺太から突然ミサイルが飛んで来たらどうすると言われた。おそらくそのときは全面戦争だ。全面戦争の場合には、われわれは日米安全保障体制としての抑制力が、行動力として日本を守るであろう、これは当然期待はいたします。しかしそういう事態はないことをわれわれは念願すると同時に、まずあり得ないというふうに考えております。
  224. 横路節雄

    ○横路委員 核攻撃があった場合には、アメリカ軍の核の報復力に期待をしているという。一体今日の政府が、いよいよという場合にアメリカから核兵器の持ち込みをされた場合に、アメリカの核報復力に期待をしているというのに、向こうからどうですかとなったときに、私の方はいやですよと言えますか。きまっているじゃないですか。核兵器の攻撃があったらアメリカの核報復力に期待をしている。そこに事前協議というのがあるじゃないですか。だから事前協議というのは、初めから絶対反対だというのではなくて、核兵器については反対だという場合もある。しかし場合によってはそれを受け入れる場合もある、それが事前協議ではありませんか。だから核兵器の持ち込みについては絶対反対ではなしに、そのつど、これは反対だ、あるいは核の報復力に期待をしている場合には、アメリカ核兵器の持ち込みに賛成せざるを得ない、そういうことになりませんか、核の報復力に期待をしているのだから。
  225. 西村直己

    西村国務大臣 赤城長官がどういうふうな答弁をされたか知りませんが、私は全面戦争はないし、またこれは抑制力として働くというのがほとんど十中十だと信じております。しかし万一、設例のように全面戦争になった場合におきましても、安保体制による共同防衛米軍の抑制力が行動力になった場合におきましても、国内において核が使用されると私ども考えていないのであります。国外におきましてこれが抑制力あるいは行動力として、りっぱにわれわれの国の共同防衛の役を果たして参る、こう考えております。
  226. 横路節雄

    ○横路委員 長官、その通りです。私もあなたの言う通りであると思う。アメリカ核兵器を持ってきて、日本の国内で使われたら、たまったものではない。だからアメリカ日本核兵器を持ってくるというのは、核攻撃があった場合に核の報復力を期待しているということは、相手国に向かってやるということなんです。そのために核兵器の持ち込みをやるということなんです。今あなたがおっしゃった通りなんです。  次に私は加藤さん、この間あなたの答弁を聞いていて、私は珍しい答弁をされたなと思って聞いておった。事前協議の対象には核兵器の持ち込みしかり、運搬手段として長距離、中距離のミサイルの施設の持ち込み、そうである。山内委員から長距離はどうかと言ったら、一万キロメートル以上、中距離はどうだと聞いたら、二千五百キロメートルから三千キロメートル、これは近距離、短距離についてはあなたのおっしゃる通り、この安保条約の第六条の交換公文にいう、これは事前協議の対象になっていないわけですね。そうすると近距離、短距離ということになると、今日の中距離というのは二千五百キロメートルから三千キロメートルだ。これはあなた十分そういうことを念頭に置かれて答弁されたと思うのですが、そうすると近距離、短距離についてのミサイルについては事前協議の対象になる。これは間違いないですね。その点ちょっと……。
  227. 加藤陽三

    加藤政府委員 装備の重要な変更につきまして、一つには核弾頭の問題、核弾頭は絶対事前協議の対象といたします。運ぶものについてはどうかということでございます。運ぶものについては、長距離ICBM、IRBMというようなものが対象になるということを申し上げました。
  228. 横路節雄

    ○横路委員 加藤さん、これはどうですか。八百キロ、千キロあるいは六百キロとか四百キロとか、そういうものは中距離ではないわけですね。これは近距離である、短距離になる。この程度のものは事前協議の対象にならぬですね。
  229. 加藤陽三

    加藤政府委員 八百キロとか千キロとかいうことになりますと、今の状況では、私はおそらくは核弾頭と通常弾頭と併用ではないか。これはただ片方においては核爆弾そのものが発達いたしまして、ミサイルそのものも発達いたします。現在のところでは大体通常弾頭と核弾頭の併用であろうと重います。   〔委員長退席、草野委員長代理着席〕
  230. 横路節雄

    ○横路委員 通常弾頭、核弾頭の併用だけれどもアメリカの方では八百キロとか、六百キロ、四百キロとか、千キロとかいうようなものについて、これは中距離ではない。これは近距離、短距離だ。なるほど核弾頭と通常弾頭との併用ではあるけれども、絶対に核弾頭は持ち込まないということだったら、これはいわゆる事前協議の対象にならないでしょう。
  231. 加藤陽三

    加藤政府委員 私はその通りに思います。
  232. 横路節雄

    ○横路委員 そうすると私はこの間から加藤さんの答弁を聞いていて、たとえば北海道の千歳からウラジオストックまでの距離は八百キロメートルだ。そうすると千歳にいわゆる近距離ミサイルの陣地を作っておくと、これは届くわけです。そうするとあなたの方のこの間の答弁として——もちろんこれは条約審議のときにも、中距離、長距離しかならないということは、藤山外務大臣から何べんも答弁されたと思いますが、私はあなたの答弁を聞いていて、これは非常に危険な点である。あなたの山内委員に対する答弁を聞いていて、八百キロ大したことはないようだが、これは千歳からウラジオストックその他に、裏日本からは全部届くわけです。この点は今あなたから答弁されましたから、事前協議の場合に、去年まだそういう点についても論議は十分しませんでしたから、この点は一つお尋ねをしておきたいと思ってしたわけです。  ちょっとこれは予算上の問題に関連しますが、装備局長、この間ゆっくり聞いておきたいと思ったのですが、それを聞いておいてから次に移りますが、読んでみますよ。防衛庁ではさきに富士重工より善処方申し入れのあったL19E複座連絡機購入中止に関し、同社の未償却費約七千万円の処置を庁議で具体的な処置方針をきめることとなった。この経過については、私が言うまでもなく、このL19Eの連絡機は、陸幕が制式の連絡機として採用することにきめて、去る三十一年八月十三日の庁議で、三十一年度の試作を皮切りに、三十三年度十二機、三十四年以降毎年度二十機あて購入する方針をきめたもので、これに伴って生産担当会社の富士重工はアメリカのセスナ社との間に同機国産に関する技術契約を結び、その生産に着手したが、三十一年度の試作は二機、三十三年度は十二機で、当初計画通り、三十四年度は計画の二十機がわずか八機、三十五年度の発注はゼロになった。そこで調達本部としては百機内外の調達はあると考えて、このペースで償却を考えて契約処理を行なっていたが、ヘリコプターに装備の重点を置くという装備方針の変更によって打ち切りとなった。  そこで私の方であなたの方にお尋ねしたいのは、富士重工が見積もったL19E関係の未償却費は、特許使用料三千二百万円、開発費六百万円、専用治工具費三千二百万円、計七千万円、このため富士重工は再三再四L19E連絡機の調達問題について打診をしてきたが、ヘリコプターを装備するという方針に変わりがないため、去年の九月陸幕に対して、L19Eの調達中止に伴う未償却費約七千万円の善処方を申し入れた。これをきめたそうですね。きめたのじゃないのですか。これは七千万円については——初め百機の計画が実際には二十二機だった。従って七千万円については何とかしてやらなければならない、これはどうなっていますか。
  233. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 現在具体的にこの問題をどうするかということをきめる段階にはまだ至っておりません。将来部品等を買う場合に、部品の製作の場合に、この治工具を使うか。使うのであれば、この治工具が部品の値段に入るかどうかということは、私はある程度入れざるを得ないのではないか、かように考えております。また部品の調達の契約をいたしておりませんで、まだ具体的には決定はいたしておりません。
  234. 横路節雄

    ○横路委員 富士重工側の希望としては、三十五年以降において発注されるL19Eの機体オーバーホールと同補用部分品に賦課して三十九年度までの五カ年間に償却する。その償却方法としては、まず補用部分品は販売価格に二〇%の償却費を配賦する。これによる五カ年間の償却額は千八百六十四万円だ。機体オーバーホールの作業については、一機当たり三十六万円を配賦する。これによると五カ年間の償却額は五千百八十四万円で、計七千万円の償却が完了する。それで装備局長、これは初め買うときに、そういう契約をしたのですか、しなかったのでしょう。
  235. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 L19を買う場合につきましては、そういった点では別に契約をいたしておりません。
  236. 横路節雄

    ○横路委員 これは、装備局長、契約書を作っていないのだから、ほんとうは払わなくてもいいわけですね。そういうことでしょう。
  237. 塚本敏夫

    ○塚本政府委員 契約面上はその契約は一応終了いたしておるわけでありまして、もちろん契約書からいいますと、払う必要はないわけであります。ただ将来部品を作ります場合に、この部品を作るのにこの治工具等が必要でありますから、L19EそのほかL19Aがありますので、これの部品を作ります場合に、富士重工が、こちらがそういう償却を全然見ない値段、治工具はただであるというような値段で応ずるかどうかという問題であろうと思います。でありますから、今後の問題になるかと思いますが、私としましては、これは個人的な見解で恐縮ですが、やはり富士重工に対しては、ある程度見なければなかなか契約はむずかしいのじゃないか、かようには考えております。
  238. 横路節雄

    ○横路委員 この問題は実は私は会計検査院を呼んで聞いてみた。これは違法でないか。これはどうしてかというと、この償却方法としては補用部品は販売価格に二〇%の償却費を配賦する。これによる五年間の償却額は千八百六十四万、機体オーバーホール作業については一機当たり三十六万円を配賦する。これによる五カ年間の償却は五千百八十四万円だ、こういうやり方は違法でないか、こうやったら会計検査院は困って、違法ではない、違法ではないけれども不当だ、こう言うのです。そこで私は会計検査院に不当とはどういうことかと聞いたら、まず会計検査上不当ということは、それは大へんなことです、まあこういうわけです、私はこの点についてはそれだけ言っておきます。  これはあなたの方で百機の契約はしなかったが、おそらく口約束をしたのでしょう。それが実際には二機、全体で三分の一にも満たない、こういう点等でございましょうが、どうもそういう点、私は防衛庁の予算といいますか、そういう支出といいますか、そういう問題について正確にといいますか、あとあと問題にならないようにといいますか、少なくとも会計検査院からあとで不当だ、そういうことの言われないようにすべきではないか、私はこういうように考えます。これはこの前もちょっと触れましたが、時間もございませんから、その点を申し上げておきたい。不当ということは容易なことでない、そういう意味だそうです。  次に長官自衛隊法七十六条と安保第五条との関係についてお尋ねをしたいわけです。これはこの間からだいぶ飛鳥田委員、石橋委員との議論を私も拝聴しておりましたので、きょうは一ついろいろ私もお尋ねをしたいと思うわけです。  まず私がお尋ねをしたい点は、この、自衛隊法七十六条の「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。但し、特に緊急の必要がある場合には、国会の承認を得ないで出動を命ずることができる。」私がここで長官にお尋ねしたいのは、前段のことなんです。「外部からの武力攻撃に際して」その次なんです。「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認を得て出動を命ずることができる。」私がこの条文についてお尋ねしたい点はこういうことなんです。「外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合」そうすると、「認める場合には」と書いてあるということは、必要がないという場合もあるわけですね。この点なんです。わざわざここに法律上外部から防衛するため必要があると認める場合、そうすると必要がないと認めた場合もある。だからここの解釈からいけば外部からの武力攻撃が行なわれた場合には、総理大臣は必要があると認めた場合には自衛隊の出動を命ずるが、そうでない場合には外交交渉その他に訴えることもできる。こういうことにその他ほかの委員がお考えになったかどうかわかりませんので、大へん恐縮ですが、この点一つお尋ねしたいと思うのです。特にわざわざこういうように認めた場合においては、こうなっておる。
  239. 西村直己

    西村国務大臣 私は大体原則的には武力攻撃があれば、総理大臣としてはまず普通は認めると思います。ただ法文の解釈からいえば、理論的には認めないで、外交交渉その他でいくという場合もあり得るのではないか、そういう意味に解釈していいのではないかと思います。
  240. 横路節雄

    ○横路委員 私もその点は長官の法律解釈と同じなんです。わざわざここに、内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃に際して、わが国を防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認を得て、自衛隊の出動を命ずることができる。従って当事者間の外交交渉に訴えることができる、あるいは国連において扱うことができる、こういうわけですね。この点は私は長官考えは同じなんです。ところが長官、今度は安保の第五条なんです。安保の第五条は、「各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危険に対処するように行動することを宣言する。」、長官、これは当然この自衛隊法に基づいて行動するわけですね。そうするとこの安保の第五条は武力攻撃があった場合には直ちに出なければならない。この点はどうなっているのですか。この点は国連のいわゆる外交交渉とか、平和的手段でやれるようになっているのか、この第五条は武力攻撃があったら直ちに有無を言わさず武力反撃に出る共同の行動をとることを宣言する、こういうことですか。この点はどうなっているのでしょう。
  241. 西村直己

    西村国務大臣 私、もちろん外務省を担当いたしておりませんから、外務省の意見はどうであるか知りませんが、一応私、防衛庁としての解釈を申し上げますと、一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくする」、こういうふうに書いてあります。平和及び安全を危うくする。従ってその事態の解釈というものは、一応私は自衛隊法の趣旨と相待っていくと思います。自衛隊法でもやはり武力攻撃に際して、これは国の安全を危うくするというような場合におきましては、おそらく原則としては防衛出動を国会にお願いすると思うのであります。ただそれ以外に、やはりそれまでいかない、あるいはそれ以外の場合において必要がないと認めた場合、言いかえれば交渉でいく場合、こちらの方も、一方に対する武力攻撃という趣旨は、ただそこが非常にあいまいもことして、武力攻撃というよりはかなり明白度が強いものではないが、危うくするということが書いてありますから、そういう趣旨で、私は何ら矛盾するものではない、そういうふうに思っております。
  242. 横路節雄

    ○横路委員 長官、私がお尋ねしたいのは、この第五条はこの武力攻撃があった場合は直ちにやるわけですね。これはなかなか議論があるところですから、きょうは一ついろいろこの点について伺いたい。第五条については、日本に対して武力攻撃が行なわれた。そうすると直ちに武力行動をやる。いわゆる武力反撃をやることの共同行動をとることを宣言する。ところが一方の七十六条ですね。当然この第五条については、第七十六条の手続を経なければならぬ。第五条に対する自衛隊の出動は、第七十六条の手続を経なければならぬでしょう。第五条に対する自衛隊の出動は、自衛隊法の七十六条による手続を踏まなければならぬ。ところが七十六条の手続は、ここにあるように、わが国を防衛するため必要があると認める場合には出動を命ずる。しかし平和の手段でやりなさい、外交交渉でやりなさいという場合がある。ところが第五条には、この条約だけから受け取れば、武力攻撃があったら直ちにやるということが、国内法の手続である自衛隊法第七十六条との間に矛盾を来たすではありませんか。この点は長官、どうですか。
  243. 西村直己

    西村国務大臣 自衛隊法の第七十六条は非常に幅広く書いてありまして、外部からの武力攻撃または外部からの武力攻撃のおそれある場合を含む、こういうふうに解釈して、非常に幅広くとつております。ですから私どもは、これとこれとは矛盾をしないのではないか、こういう解釈であります。
  244. 横路節雄

    ○横路委員 しかし長官、武力攻撃の内容はそれぞれありましょう。大規模な武力攻撃もございましょう、小規模な武力攻撃もございましょう。従ってなるほど長官から今言われたように、外部からの武力攻撃のおそれのある場合を含む。もちろん外部からの武力攻撃のおそれのある場合に直ちに出るということはないでしょうが、ここはそのカッコの中を受けているかもしれませんが、しかしやはり法律上は外部からの武力攻撃に対してわが国を防衛する必要があると認める場合には出る。しかし平和的手段にゆだねる場合もある。そうするとこの安保の第五条では、同じ国内法の手続で自衛隊が出動すべきことは当然だが、この安保の第五条からいえば、武力行動があった場合、有無も言わさず自衛隊は出なければならない。この第五条については、国内法の手続からいけば当然こういうようにはなっているけれども、これは平和的手段も同様にあるもの、こういうように解釈してよろしゅうございますか。
  245. 加藤陽三

    加藤政府委員 これはただいま長官がおっしゃったことで重要なところは尽きておるわけでございます。第一項は「武力攻撃のおそれのある場合を含む。」こう規定してありますので、その次の「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」という文句も入っておるわけでございます。実際問題といたしましては、自衛権の発動でございますから、武力攻撃があれば当然に出動することになるだろうと私は思います。ただ問題は、ほんのわずかな数人と申しますか、数十人と申しますか、そういうものが小銃を持って入ってきたというような場合には、武力攻撃かどうか。武力攻撃というものは、組織的、計画的な他国のわが国に対する武力の攻撃というふうに定義をしておるわけでございまして、それに該当をすれば、自衛隊は当然に行動を起こすことになるだろうと思います。
  246. 横路節雄

    ○横路委員 長官、この点は非常に大事だと私は思うのです。まずこの点については、それはどうしてかというと、今武力攻撃があった、だから自衛隊は直ちに自衛権の発動をして武力反撃に出る、こういうようにおっしゃるけれども、しかし自衛権の発動というのは——これは加藤さんの方が専門家だから私が申し上げるまでもないと思うが、自衛権の発動の限界というのは、一つは急迫不正の侵害である、第二番目は排除するために他に手段がないということである、第三番目には必要最小限度それを防御するために必要な方法をとるということ、これが自衛権の発動の限界である。そうすると、そういう意味ではやはり自衛隊法第七十六条の規定の方が正しいと私は思う。いわゆる武力攻撃があった。しかしそれに対して直ちに自衛隊を出動させるかどうかという場合に、排除するために他に手段がこれ以上ないのかどうか、これをとることが必要最小限度防御することになるのかどうか。だからそういう意味でここに「わが国を防衛するため必要があると認める場合には、」となっていて、必ずしも直ちに武力行動に出なさいとは書いてない。外交交渉でやる場合もある。あるいは直ちに国連でやる場合もある。自衛隊法七十六条をこういうようにきめた場合には、今私がここで申しました自衛権発動の限界というものを十分考えてやったものだと私は思う。ところが第五条になるとそうではない。有無を言わさず出ていかなければならない、こうなっている、この点はこの自衛隊法七十六条との間に矛盾があると私は思う。長官、どうでしょうか。私はここでこれをまた一つじっくり長官と議論をしたいと思っておるのですから……。
  247. 加藤陽三

    加藤政府委員 その点今御説明申し上げたところにつけ加えることは多くないのでございますが、結局七十六条の規定といたしましては今申し上げました通り、「外部からの武力攻撃のおそれある場合を含む。」ということが書いてありますから、認定の問題が起こる。それから自衛権というものは、今横路さんのおっしゃった通り、急迫不正の侵害に対してこれを排除するため他に手段がない場合、必要最小限度の行動をとることが国際法的にも自衛権と認められておる、これに談当するようなものでなければならない。武力攻撃というものをどう解釈するか、どう見るかということに、非常にこの問題がかかってくると思うのであります。単に一隻の船が沈められた、一つ飛行機が攻撃されたということだけで、すぐ武力攻撃と見るのかどうかというところが、非常に問題だと思うのです。ここで考えております自衛権発動の要件としての武力攻撃というものは、やはり組織的、計画的なる外部のわが国に対する武力による攻撃である、こういうように思うわけでございます。
  248. 横路節雄

    ○横路委員 今の官房長からの答弁はそうだと思うのです。組織的、計画的なわが国に対する武力攻撃——しかし第五条でアメリカが直ちに集団的自衛権を発動して出るわけなのだが、日本は国内法の手続たる七十六条に基づいて出るわけですね。その場合にアメリカは集団的自衛権で直ちに第五条に基づいて出ていく。しかし日本は個別的自衛権なんだから、そうすれば当然国内法の手読である七十六条に基づいて出ていくときに、内閣総理大臣が、いやこれは急迫不正な侵害ではない、これは平和的な手段でやってもいい、こういうことも起こり得るのではないか、私はそう思うのですが、私が長官にぜひお尋ねしたいと思って聞いているのは、長官は何といっても安全保障協議委員会のいわゆるメンバーなんですから、そういう意味ではまことに重大なわけで、この条約の解釈なり法律解釈なりというものは、やはりこういう際にきちっとしておく必要があるのではないか、こういうように思われる。そういう意味で私は加藤さんからの御答弁があって、今あなたにお尋ねしているのですが、第五条は、日本に対する武力攻撃があった場合に、アメリカは直ちに集団的自衛権に基づいて有無を言わせず武力反撃に出る。日本は個別的自衛権だから、従って国内法の手続である七十六条に基づいて出る。その場合に総理大臣が、これは平和的な手段で解決することもあり得るのではないか。片一方は集団的自衛権として直ちに武力行動に出る。片一方は、個別的自衛権で考えてみたけれども、それは計画的、組織的なものではない、こう言って平和的手段でやれる場合もあるではないか、そういう場合は起こり得るのではないかということを私が聞いている。
  249. 西村直己

    西村国務大臣 私は条約の解釈といたしましても、第五条の一方に対する武力攻撃——この武力攻撃というものは加藤官房長からも話したように、少数の者がぽこっとやってきたというのではなく、いつも武力攻撃という御説明に使っている趣旨は、組織的、計画的に、言いかえますれば私はこの事態は明白だと思います。そこで集団安全保障、集団的自衛権が発動する。同時にこの自衛隊法におきましても、この武力攻撃というのは、先般来同じように御説明申し上げております。ただ「おそれのある」という言葉もありますから、そこで「必要」という認定権を自衛隊法においては置いているのではないか。だからその間に何ら矛盾はない。それからもちろんわれわれは、四条その他によりまして随時協議と申しますか、そういうもので運用の誤りなきを期して参りたい、こういう考えでございますから、その点は御意見はございましょうが、われわれとしてはこれの運用上、国民利益に反するような事態は招来しないと考えておるのでございます。
  250. 横路節雄

    ○横路委員 私が長官にお尋ねしているのは、第五条に基づいて武力攻撃があった場合には、アメリカとしては集団的自衛権に基づいて行動するわけです。日本の場合は個別的自衛権で国内法の手続の七十六条で出る。だからその場合には、アメリカは集団的自衛権で直ちに武力行動に出るが、しかし日本においては七十六条によってあるいは平和的手段ということもとり得る場合もある、こういう場合は起こり得るのではないか、起こり得る場合もある、こういうように私は考えるのですが、この点はどうでしょうかと聞いておるわけです。
  251. 西村直己

    西村国務大臣 もし横路委員のおっしゃるような場合ですと矛盾が起こるのではないか、こうおっしゃるのですが、われわれとしては五条の武力攻撃、言いかえれば計画的、組織的な武力による攻撃、また七十六条の場合にも自衛隊が出る場合は、大体おそれのある場合はきわめて少ないと思います。武力攻撃として一応総理大臣の認定はありますけれども、認定する場合において、われわれが定義しておる武力攻撃でありますならば、やはり計画的、組織的というふうに一応考えますから、こちらも発動になりますから両者に矛盾がない。もしそこに中間のあいまいな運用が行なわれてはいけないという意味から、随時われわれは両者間における運用においては協議をしていく。国民の不利益にならぬようにやって参りたい。私はこの条文の間でも矛盾を起こさないし、従って運用においても矛盾を起こさないようにやって参りたい。そのための随時協議方法もあるのではないか、こう思うのです。
  252. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そのための協議方法があるとおっしゃいますけれども、どういう協議方法があるのですか。
  253. 西村直己

    西村国務大臣 われわれはそのための協議のあれはあるとは申し上げておりません。ただ実際は四条なら四条によりまして、「この条約の実施に関して随時協議し、」とございます。またそのために、たしか変換公文でしたか往復文書でしたかで、御存じ通り安全保障協議会というようなものもございますし、また情勢がいろいろ漸次変化をし、こういったような発動がありそうな、あるいはおそれがあるような場合におきましては、おそらく防衛庁あるいは責任者の段階におきまして、おのおのその事態の解明というようなものは、いろいろなルートを通して行なわれるわけでありますから、私は運用上心配はない。ただこの五条には、直ちに協議の対象にするという条文はないことは、これは私も認めます。
  254. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 横路委員が問題にしているのは、実際に武力攻撃があった場合のことなのですよ。武力攻撃があった場合に、米軍の方は直ちに出動するじゃないですか。日本の方は、この法律に基づいて自衛隊法の手続を経なくてはならない。この国内法の規定及び手続の中には、自衛隊法が入るのだという答弁を政府はしているのです。そうするとこの七十六条によっていかなくてはならぬ、その場合に日本側では、武力攻撃はあったけれども直ちに防衛出動するのはやめよう。いわゆる外交交渉なり国連の問題に移したり、あるいは国際司法裁判所の問題に移したりする法があるじゃないか、直ちに防衛出動するのはやめようじゃないかという場合が出てくるのではないかと、盛んにお尋ねになっておるわけです。武力攻撃があった場合に協議方法はないのですよ。武力攻撃がある前までは、それは四条での協議方法もあるかもしれませんけれども、武力攻撃があった場合には協議方法はないと、今まで政府は答弁しているのです。それをはっきりここに私引用してもいいですよ。林法制局長官の答弁にも「いわゆる自衛権の発動し得べき要件に当たるやいなやということは、これは明白な問題でございまして、協議をしなければきまらないという問題では実はないと思います。」と言い切っております。また岸総理も、これも特別委員会で「これは認定も何もない、明瞭な事実があった、事実の問題であります。」と言い抜いておりますよ。だから武力攻撃があったという場合には協議方法はないのだから、必然的にそこで食い違うということはあり得るわけですよ。あなたは協議するから大丈夫だとおっしゃるけれども、その協議する方法はないのです。
  255. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん五条の武力攻撃が発動する瞬間においては、条約上は協議の対象にならない。しかしその事前においてと申しますのは、非常に観念的御議論をなさいますからですけれども、キューバの事件でも、これとは当たりませんけれども、ああいう事態は突然起こるのではない。やはり両方がおのずからそこに一つの雰囲気がありますし、またある程度情報は入っておるわけであります。そういうような意味から、事前においてはむろん意思の疎通というものははかれる、こう考えております。私は突然地震のように起こってきて、ぱっとやる——明らかに武力攻撃というものは、明白と申しますか、組織的、計画的なものであります。そういう趣旨から、私は自衛隊法の七十六条と五条とは運用上矛盾は起こらぬのではないか、こういうふうに言っておるのであります。
  256. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうおっしゃいますけれども、武力攻撃があった瞬間において直ちに出動していくのと、何らかの形で、国防会議も開かれる、閣議も開かれる、国会の承認も得る、それだけの時間的余裕を見なければならないものとの間に、どうしたって時間的な差は出てくるのではないですか。それがかりに短縮されるということがあり得るかもしれませんけれども、全然時間的にズレはありませんと言い切ることは、私はおかしいと思いますよ。直ちに出ていけるものと、いろいろな手続を経なければならないものとの間に、時間的ズレがないというのはどういうわけですか。
  257. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん事態によってであります。国会の承認を得るというような問題も、手続上自衛隊法にあります。片方は直ちに出撃、しかし私どもはその事態が起こるまでの過程において、やはり意思の疎通というものが十分できる時間はありはせぬかと思います。普通の地震のように、突然ぽこっと天から物が急に落ちてきたり、地震のようにぽこっと武力攻撃が起こるという事態は想定できない。そこで意思を疎通しつつ、片方では片方で、五条によって動くでありましょう。こちらは七十六条によって動く。こう解釈していただくならば、実際の運用上それほど支障がないのではないか。観念としては、なるほどそういう断層はつきやすい。観念は起こりますけれども、実際の姿を当てはめて参りますと、計画的、組織的な武力による攻撃というものを考えた場合に、そういう心配は私はない、これは言いのがれではございません。実際の姿を想定いたしましてそう考えておるわけであります。
  258. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そうしますと、国会の承認を得る前に、実際問題として、アメリカ協議するのが先だということになりますね。アメリカ協議して、自衛隊も防衛出動をやりましょう、米軍の方も出動いたしましょうと意見が一致して、初めて国会の承認を得る、こういうことになりますよ。これは国会軽視ではございませんか。自衛隊法七十六条は空文ではありませんか。米軍との意思の統一が先にいって、国会の承認を得るのがあとになるというのは、形式的手続ということになりませんか。
  259. 西村直己

    西村国務大臣 もちろんわれわれは、日本の軍隊であります。日本の国会によって、これはシビル・コントロールで運用すべきでありますから、あくまでも国会の意思に従っていくべきであります。ただ共同防衛の線から、五条というものが一つの動きをするわけでありますから、そういう面では、事態が起こる以前においても、ある程度、あるいはもっと極端に言えば、あらゆる事態を想定して、国会におきましてもいろいろこういう角度の検討というものはあってしかるべきではないか、こう考えております。
  260. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 しかるべきはしかるべきかもしれません。しかし今ここまで議論は発展してきておるのですから、日本に対して武力攻撃があった。米軍は直ちに第五条によって出ていける。日本側の方は国内のいろいろな手続が要る。そうしますと、ここで時間的なズレが出てくるじゃないか。日本では防衛出動しなくて、外交折衝その他で片づけたいという意思がかりにあっても、アメリカの方が先に突っ走っていくという事態がありはせねかということを心配するのは、この条約でいけばあたりまえです、長官は心配要らないという。もう事前においては、特におそれのあるような場合には十分に日米両国が話し合いをするから大丈夫だというが、そうならば国会の承認を得る前に、もうアメリカと話し合いが先についてしまっておる。そうして一緒に出かけましょうというようなことが約束されておって、その既成事実の上に立って国会の承認を求めるということに、これはやはりなりそうですよ。どっちにころんでも矛盾があるのではないでしょうか。やはりしっかりここに協議する機会が与えられるか、あるいは足並みが完全にそろえられるような法律的な体系を整えられるか、どうにかしなければ矛盾は解消しないと思うわけです。
  261. 西村直己

    西村国務大臣 もちろんこれは、私どもはいろいろな場合を想定しなければならぬと思います。たとえば、なるほど国会の手続をとればおくれる場合もありましょう。しかしその場合にはただし書——事態によっては緊急措置、事後承諾のただし書きもここについておるくらいであります。それからアメリカとも相談して意思をきめるのじゃありません。国としては。……そういう場合には、こういう手続があるということを前提に考えつつやっていく。あるいはそのときの総理大臣に当たるべき人間が、当然国民あるいは国会の意思というものを尊重しながら、事態の推移を見つつ緊密な連携をとるのであり、私は運用上そういうような——もちろんこれが日米間の相互信頼がないというなら別でございます。それなら安保体制をやっている意味がないので、私はそういう意味で相互信頼があれば、両者の共同の利益、特に日本としては日本の総理大臣が日本国民の意思を十分に考えつつ、事前の——突然起こる事態はまずないのでありますから、様相というものを考えながら準備を進める、こういうことになると思いますから、私は運用上の矛盾は起こらぬ、こう考えでおります。   〔草野委員長代理退席、委員長着席〕
  262. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 それは信頼がなければ成り立ちません。しかし必ずしも常に情勢の判断なり、それに対処する方式なりが一致するとは限らないのです。特にアメリカ政府日本側政府とはかりに一致しても、今度はそれと日本の国会との意思が一致するとは限らないわけです。長官は、今ただし書きの方に逃げられますが、これは大へんです。最初から武力攻撃があったらもう出かけていくのだ、防衛出動は国会は事後承諾だということが原則じゃないのですから、ただし書きはあくまでも例外ですから、そちらの方に逃げないようにして、原則論で論議していただきたいと思う。これはやはり横路委員が今提起しておられる疑問は残るのじゃないでしょうか。何らかの手を打たなければ、私はこれは解消しないと思います。今まではっきりとした解消するような説明はないですよ。私は関連ですから、もうお譲りしますが……。
  263. 横路節雄

    ○横路委員 加藤さんは去年安保のときに、防衛庁長官を助けて条約解釈で非常に長い間の議論に参加されたのですから、この点は十分承知だと思います。しかし第五条と自衛隊法七十六条との間にそういう不安を感ずることは、私は当然だと思うのです。そこで次にこの問題についてさらにお尋ねをしたいのは、七十六条において「国会の承認を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」あるいは第二項で「前項但書の規定により国会の承認を得ないで出動を命じた場合には、内閣総理大臣は、直ちに、これにつき国会の承認を求めなければならない。」第三項は「内閣総理大臣は、前項の場合において不承認の議決があったとき、又は出動の必要がなくなったときは、直ちに自衛隊の撤収を命じなければならない。」そこで防衛庁長官にお尋ねしますが、自衛隊法七十六条に基づいて、とにかく出た。あるいは国会が開会中だったので、時間的に間に合ったから国会の承認を求めた。ところが国会は承認しなかった。そこで第五条に基づいて、アメリカ軍隊は集団的自衛権を発動して出ていった。日本の自衛隊は七十六条の手続に基づいて、国会の承認を求めたら否決になった。アメリカ側は出ていった。さてその場合に出ていったアメリカに、あなた帰りなさいと言うことは、どこで言うのです。
  264. 西村直己

    西村国務大臣 私は日本国民の各位は、わが国が武力攻撃を受けた場合に、国会が承認を与えないというようなことは、まず普通考えられないので、万一それがないという場合におきましては、われわれは法律なりその他を破るわけにいきませんから、それ以外の方法で最善の道を尽す以外にないのであります。われわれとしては一応政府が、総理大臣が認定して、国会の承認を求めれば、国会はおそらく満場一致で御承認下さるのではないか、こう考えております。
  265. 横路節雄

    ○横路委員 それは長官希望的な観測ですよ。なるほど長官としては、総理大臣が国会に出動について承認を求めてきた場合に、当然国会は承認してもらえるであろう、してもらいたい、そういう希望はわかります。しかし国会はそのときの情勢において承認はしない。否決されたという場合だってあり得るのです。その場合に、私が言うのは、否決をしてしまって、自衛隊は出動しない。第五条に基づいてアメリカ軍隊は集団的自衛権に基づいて出ていってしまった。そのときに、帰ってこいということは、条約のどこに基づいて言えるのかということです。
  266. 西村直己

    西村国務大臣 私どもは安全保障体制は日米間の約束であります。従って日米間の信義に基づいてアメリカは行動する。しかもわが国土が侵されている。その場合におきまして、国会がこれを否決していかれるということは、事実上私は考えられない。理論上はそういう事態もあり得るかもしれませんが、事実上としては私は考えられない。日米間の約束に基づいて出ていく。その信義に基づいて、また向こうも行動する。こちらも、国会の意思はもちろん尊重はいたしますが、それに基づいていく場合、わが国土が侵されている事態が起こっている状態に御承認を求めるのでありますから、私はそういう事態は想像はできないのであります。
  267. 横路節雄

    ○横路委員 しかし長官、先ほどから言っているように、あなたが防衛庁長官として、そういうことに対して希望を持っていらっしゃる。総理大臣が国会に承認を求めたときに、絶対否決してもらいたくない、そういうことは絶対ないだろう、またあっては困る。その意味はわかります。しかし自衛隊法でこうなっておるのですから、国会の承認を求めた。否決をした。そういう場合だってあり得るのですよ。全然そういうことがないなどとは言えない。そういうこともあり得る。そういう場合に、第五条に基づいて集団的自衛権を発動して、すでに出ていってしまったアメリカの軍隊に、私の方は国会の承認がなくて自衛隊の出動はやめました。あなたの方は一つ帰って下さいと言うのか。それともあなたの方は第五条に基づいて出ていったのだから、どうかお好きなようにやって下さいと言うのか、その点はどうなっているのですかと聞いているのですよ。願望や希望を聞いているのではない。
  268. 西村直己

    西村国務大臣 私は安保条約の第五条の一つの出動を考えましても、これは池田政府とかあるいは岸政府とか、政府アメリカと約束しているのではないのでございます。日本の国がアメリカの国と約束をしておるのでございます。そこで私は国会が約束を破るというようなことになりますと、これは安保条約以上の、さらに上の問題になってくるのではないか。従ってそういう事態は想像されないし、またないと考える、こういう趣旨でございます。
  269. 横路節雄

    ○横路委員 そういうことを言ったら、自衛隊法なんか要らないじゃないですか。安保条約を結んだ以上は、日本アメリカとの信義の上においてやるのだから、第五条に基づいて武力行動があったら、これは国会の承認も何も要らないので、おれにまかしておけということになるじゃありませんか。長官、ここに自国の憲法上の規定及び手続に従ってとあるのですよ。だから私はこういうこまかなことまで議論をしておかなければならぬ。一体自衛隊と安保条約の関連というものは、あなたは御存じのように、去年はここの質問の段階に至らないで、質疑が打ち切られた。しかもこの問題については、本委員会でもやっているでしょうけれども安保条約と自衛隊法関係は、この防衛二法案の中でしっかりやっておかなければならぬ。それを今あなたが第五条をたてにとって、そういうことはない、そういうことがあっては困るのだ、そういうことがあってはアメリカとの信義が裏切られるようなことになるのだ。あなたのそういう希望、願望についてはわかるけれども、この条約に基づいて出動する。七十六条の規定からいけば、これは当然国会の承認を求めるのですから、どうなんですか、基本解釈を。何でしたら、何も急ぎませんから、ゆっくり御相談なさってもいいですよ。長官の言うような、おれの希望だ、願望だ、信義を裏切るだけではだめなんですよ。どうなるのかと聞いているのです。
  270. 西村直己

    西村国務大臣 私どもといたしましては、条約は明らかに国と国との約束ごとでございまして、政府と向こうの政府の約束ではない。その点はやはり基本的な信義の問題、そこに五条が働く。われわれの方はこの条約の解釈として、自衛隊法を排除するものではない。従って自衛隊法によって防衛出動をする場合には、国会開会中でありますれば、緊急でない場合においては国民の意思を代表する国会の意思によってきめてもらう。私は、政治論としては国会が否認することはあり得ない。しかし法理論としては万一否決した場合には従わざるを得ない。国民の意思ですから当然です。
  271. 横路節雄

    ○横路委員 それはわかるのですよ。だからそれを聞いているのです。今あなたは、政治論としてはあっては困る。しかし法理論としては、国会の承認を求めたときに否決になったら従わざるを得ない。そこで私が聞いているのは、否決になった場合には当然従わなければならぬですよ。そのときに日本の自衛隊は、自衛隊法に基づいて出動しない。ところが第五条に基づいてアメリカは集団的自衛権に基づいて行ってしまった。そのときに、私の方はやめたからあなたの方も帰って下さいということはどこで言うのですか、こう聞いているのです。
  272. 西村直己

    西村国務大臣 それは条約以前の問題になってきます。そこに私は、安保体制というものは、単に条約、さらにその上に国家間の約束、こういうことを私ども考える。しかもこれは運用をほんとうに国民利益のためにやるには、この武力行動がある以前におきましても必要に応じ協議ということも行なわれるわけであります。だから私は、そういう意味から国会が否決されることは決してあり得ないと考えるが、しかし法理論としてそういう場合もある。その場合におきましても、もうこれは条約外の問題であって、その場合は条約には規定してないのであります。
  273. 横路節雄

    ○横路委員 そういうことはないのではないですか。そういう場合はどうなるのです。その場合には日本の国会は自衛隊の出動については否決をした。だから自衛隊は出ない。しかしアメリカは第五条に基づいて集団的自衛権の行動で戦闘を開始している。戦場は拡大をしている。そういう場合に日本政府としては、防衛庁としては、その点についてはあなたの方では、否決になったら外交交渉に訴えることになった、何になった、こういうことについては、アメリカ側についてはこうなったから一つこの戦闘行動は中止をしてもらいたい、何をしてもらいたい、外交交渉でやることにするのだということにつきましては条約以前ということになると、結局それは何にもできないということですね。そうすると結局日本の戦場の拡大、戦火の拡大その他については、一体日本の自衛隊というものがありながら、しかも自衛隊法に基づいて、われわれはきちっと出動はしてはならぬ、こうきめておるのに、日本政府としては、日本の国土に対して、国民に対して何も責任がないということになるのじゃないですか。条約以前ならどうにもしょうがない——何でしたら長官、これは去年の安保条約のときに議論しなかったのですから、部内でよく検討されてもいいですよ。外務大臣と検討されてもいいのです。ただ条約以前だから条約以前だからといって、条約以前とは何のことを言うのかわかりますか。
  274. 西村直己

    西村国務大臣 何も外務大臣と協議する必要はございませんと考えております。私はこの安保条約の条文そのものからは、そういう事態に対する対処の一応の道は法文的には出ておりません。しかし日米相互の信頼、相互の信義という建前から、万一国内で、横路さんの言われるように、一万分の一あるいは百万分の一かもしれませんが、そういうような仮定を一応置いて考えた場合におきましては、この条約ではなくて、日米間の信義で事を解決していく。政治上の問題だ、こういうふうにお受け取りを願いたいのであります。
  275. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 私は万一ではないと思うのです。十分にあり得ると思うのです。なぜあり得るかというと、これが新しい安保条約の非常な問題点なんです。どういうことかといえば、日米共同防衛、共同防衛とおっしゃっていますけれども、この新しい安保条約でアメリカの方は集団的自衛権を行使する場合があるわけです。ところが日本の場合は集団的自衛権を行使することはない、そういう解釈をとっているところに問題があるし、今例示しているようなことが起こり得る可能性が十分にあるわけです。日本も集団自衛権を新安保条約によって持っており、しかもそれを行使する義務があるというならば、それはないという方が強いかもしれません。しかし集団的自衛権を行使することが絶対ないと言っているじゃありませんか。確認しましょう。ないでしょう。新しい安保条約で日本アメリカに対する攻撃をみずからに対する攻撃とみなして、自衛隊が出動するということはないわけですね。
  276. 西村直己

    西村国務大臣 それはおっしゃる通り、われわれは集団的自衛権を行使する。いわんや海外派兵というものは考えておりません。そういうことはないと思います。
  277. 石橋政嗣

    ○石橋(政)委員 そこに問題があるのですよ。例をあげて申し上げますと、米軍基地あるいは日本の港の中におる米艦船、あるいは日本の領域におる米艦船、こういうものに対して攻撃が加えられた場合、アメリカの方が個別的自衛権を発動できる、出かけていきますよ。日本の方も集団的自衛権を行使する義務があれば、一緒に出かけていくでしょう。しかし集団的自衛権の行使はできない。その場合でも、もし出かけるとすれば、日本の個別的自衛権だとおっしゃっている。ところが日本国民感情として、いわゆる三海里の領海内であっても、アメリカがやられたのまで自衛隊が出かけていくのは許されぬという気持がそのとき出てきますよ。国民がそういう気持になっているときに、国会が承認できますか。その場合でも出かけていくということはあり得ますか。考えられますか。条約上はそういう場合でも個別的自衛権を行使して出かけるのだとあなた方はおっしゃるけれども国民にそういう説得をする力がございますか。集団的自衛権を行使するというなら説得力があるでしょう。共同防衛の建前に立っておるアメリカがやられているじゃないか、日本の領海の中で、日本の港の中でやられているじゃないか、だから自衛隊も応援に行くのだといえば、ある程度の説得力はあるかもしれませんけれども、幾ら日本の領海の中でやられても、米艦船がやられただけで、日本国民には実質的な被害は何にもない、にもかかわらず個別的自衛権を発動して自衛隊を防衛出動するといったって、国民は納得しませんよ。国民が納得しなければ国会が否決することは十分にあり得るじゃありませんか。法理論としてはあり得ても実際論としてはない、そういう解釈でありますが、実際論としても十分あります。今申し上げたように、それはこの新安保条約の解釈にあなた方が非常に無理をしているからあるのですよ。集団自衛権を行使することはできない。かりにアメリカがやられても、それは日本としては集団自衛権の行使じゃなくして、個別的自衛権の行使で自衛隊が出かけるのだとあなた方がおっしゃるから、そういう矛盾が出てくる。それでもあり得ませんか。そういう場合でも国民を説得する十分な御自信をお持ちですか。国会が必ず承認するとお考えですか。日本は実質的に何にも被害を受けていない。アメリカだけがやられる。そういう場合、それを日本は個別的自衛権の発動でいこう、そういう場合の説得力はございますか、いかがです。
  278. 西村直己

    西村国務大臣 私はまず日米間の信義に立ってやっている条約であることを前提に置きたいのであります。それからもう一つは、わが自衛隊なりあるいはわが国土の守りであります。言いかえれば領海内において非常な武力攻撃が加えられた場合に、日本国民というものは手をこまぬいて、あれはアメリカ側だけだからおれの方は知らないぞ、そういうようなことは私は日本国民の多くの姿ではないと信じたいので、あります。
  279. 横路節雄

    ○横路委員 先ほどの私の質問に防衛庁長官は答弁していないのですよ。これは答弁されなければこの審議は進まないのです。委員長もお聞きだと思うのです。いいですか、第五条に基づいて武力攻撃があった、アメリカは集団的自衛権で出動した。さて日本は個別的自衛権に基づいて七十六条で国会にかけたら承認されなかった。自衛隊は出ていかない。アメリカだけは集団的自衛権で出ていった。国民、国会は戦場の拡大を希望しない。これは平和的な手段でやろうとして、国会が否決をして、国民の意思は決定した。それであるのにアメリカ軍は集団的自衛権を発動して、戦場は拡大をしていった。やめろということはどこで言い得るのかと聞いたら、それは条約以前のことだと言う。これでは答弁にならないです。西村さん、これで答弁になると思ったら間違いです。  今石橋委員から言われている点をもう一ぺんあなたに聞きますけれども、今度は第五条で、同じく日本におけるアメリカ軍基地が攻撃をされた。アメリカは個別的自衛権で出動している。これに対して、日本国内におけるアメリカ軍軍事基地に対して、日本は個別的自衛権を発動して直ちに出なければならないということを第五条で言っているが、これには国際法学者は全部反対です。全部というと、一橋大学の大平君のように去年来て賛成したのもあるから、ほとんどと言いましょう。なぜかといえば、先ほど加藤官房長もそこで承認されているように、自衛権の発動というものは、一つには急迫不正の侵害の場合に行われる。アメリカの軍事基地がロケットその他で——もちろんそれが原爆、水爆が落ちて放射能によって周辺日本国民被害を受ければ別ですよ。普通火薬に基づいて、的確にアメリカの軍事基地がいかれた。日本国民には何も影響がない。その場合、ただ領空侵犯だ領海侵犯だというだけでいけますか。法律学者もそういう点については全部こう言っているじゃないですか。自衛権とは一体何なのだ。本来国内の治安維持を目的とする警察隊が、急な場合に外敵を排除するために抵抗するとか、あるいは国内にいる民衆が立ち上がるよう国家が要求する、国際法のいわゆる軍民蜂起の形で民衆が武器をとって抵抗するといったものも、自衛権の発動の一つである。しかも自衛権というのは権利であって、これは義務ではないのですよ、ですから、日本国内におけるアメリカ軍軍事基地が攻撃された、これは日本にとって何も急迫不正な侵害ではないのですよ。急迫不正の侵害の場合もあるかもしれない。原爆、水爆による放射能におおわれている場合もあるかもしれないけれども、そのときに直ちに武力をもって反撃せよというようなことは、本来から言えば個別的自衛権ではないのです、この点は憲法第九条との関係があって——加藤さん、あなたも知っているように、本来から言えば集団的自衛権ときめておけばこういう議論は成り立たなかった。集団的自衛権であれば、条約で共同の義務を背負ったのだから、国内の自衛隊法との関係でなしに、出なければならなかったのを、それを集団的自衛権と言えば、憲法第九条に抵触する海外派兵が行われるのではないかということになるから、苦しまぎれに個別的自衛権であるということになった。個別的自衛権となるから、こんなものは一般的に、国際法的に認められないのです。ですから先ほど来言っているように、自衛権発動のもとにおいては、日本国内の米軍基地に対する攻撃を日本国内に対する攻撃であるとして、武力行動を起こすことは無理なんです。無理なんだから、七十六条において、今石橋委員が言ったように防衛庁長官が何ぼ国会で通してくれと願っても、国民全体はやめてくれということになる。多数の意思ですから、国会は承認しないということになるのです。長官、そうなんですよ。あなたはアメリカとの条約上の信義とかなんとか言うが、ここがこの条約の問題点です。どうですか。日本国内における米軍基地が、第三国からロケットで攻撃された、それは核兵器ではなしに普通の火薬で攻撃された。しかも的確に攻撃された。被害はその基地の中にとどまった。こういう場合に、日本はこの第七十六条に基づいてやること自体が無理なんです。やること自体無理なんだから、従って国会にかければ否決されることは当然なんだ。だからあなたがどんなに希望したいとかなんとか言うてみたって無理なんですよ。
  280. 西村直己

    西村国務大臣 あなたの方が無理なんです。
  281. 横路節雄

    ○横路委員 何が無理ですか。集団的自衛権と個別的自衛権、これは大問題なんです。これはどうしても自衛隊法との関係で——こんなものが何で承認されますか。あなたはさっき百万分の一もないようなことを言っておったけれども、百万分の一でないですよ。アメリカに対する攻撃が行なわれた場合には、国民が承知しません。国民が承知しないものを国会が承認するわけはないですよ。それは長官、逆ですよ。それはそうと、先ほどの方の答弁をして下さい。どうやってアメリカ軍に帰っていらっしゃい、もうこれ以上やめなさいということを——ただ信義だとかなんとか言ったってだめです。どうなさるのです。
  282. 西村直己

    西村国務大臣 ただいま横路さんから詳細な一つの設例をあげられましたが、米軍基地がありましてもこれは日本の国土でございます。しかもただそれが一発何らかの形で普通のたまがちょこと落ちたということなら、これは国民側としても、自衛隊の出動を求めないかもしれません。継続した武力攻撃というような普通の状態を考えますれば、たとえばそれが基地内でありましても、私は国会は承認する、こう考えております。おそらく日本の国土を、基地であっても武力攻撃によって侵されておって、しかも日本国会が承認しないという事態はまず想像はできないのであります。領海の場合でありましても、日本のきわめて近くに、ただぽつんと現われた現象ならこれはいざ知らず、そこに継続性を持ったような意図がありますれば、必ず日本国民は、やはり愛国心を持っておると考えるのであります。問題はそれ以上に、万一国会が否定された場合にはそれに従う以外にはない。その場合における米軍が動いておる措置に対しては、私はこの条約からその措置を求めることは困難である、書いていないのですから……。それは従って日米間の信義で政治上の問題として解決をしていく。もちろんそのときの政府は、国民の意思を体してできている政府であります。民主主義に基づいてできておる政府でありますから、国民なり国会の中の意思を体して政府は行動しておるのであります。その点で私は日本国民の不幸にはならないと考えております。
  283. 横路節雄

    ○横路委員 長官は私の質問に対してお答えをしていただきたいのです。いいですか、何べんも繰り返しますが、これが第五条と自衛隊法との関係なんです。第五条に基づいて、武力攻撃があった、アメリカは集団的自衛権に基づいて行動した。日本は個別的自衛権に基づいて自衛権の発動というので、自衛隊法第七十六条の規定に基づいて国会にかけたら否決した。ですから、自衛隊は出動しない。ところがアメリカは集団的自衛権に基づいて、いわゆる戦闘行動をやっておる。この場合ここ……。
  284. 西村直己

    西村国務大臣 条約外だ。
  285. 横路節雄

    ○横路委員 この場合にどうするのですか。条約外とかなんとかでなしに、現に日本国内において戦闘が行なわれておる。それは日本国民の意思ではない。日本の国会の意思ではない。日本の国会がきめたことについては、政府はそれを行なわなければならない。それに対して、条約上の何にも取りきめがないから仕方がない。あなたの方で勝手におやりなさい、こういうことが言えますか。そういう場合にあなたは防衛庁長官として、一体今の条約上のいかなる機関においても、全然それはものを言うことができないというのか。政府国民の代表としての一つの行政府を作っておる。国会もそうです。そうであれば、当然国民の意思を代表してやらなければならぬと考える。その点はどうなっておるのですか、こう聞いておるのです。
  286. 西村直己

    西村国務大臣 あなた方は日米間の信義の上に立って安保条約ができておるということを抜かれて、それ以下のところで議論をなさるが、条約そのものが、日米間の相互信頼というものがまず基本でございます。そこで万一そういうようなことが起こった。万一国会が否定してあしだとげたみたいな形になったときに、あしだの方をどうするのかということがあなたの御議論だろうと思います。その場合におきましては、条約ではなく、条約以前の信義であるとかいうことで、日本としても最高政治の問題で、アメリカ側と折衝なり何なりして事を措置する。こういうことは当然考えられるわけであります。
  287. 横路節雄

    ○横路委員 だいぶあなたのお話は今で前進したのです。そのときは当然政府国民の意思を代表して、アメリカ政府に対して何らかの交渉をするだろう、こう言う。それは全然条約以前のことだからしようがないしようがないというのが、今までのあなたの答弁です。日本政府国民の意思を代表して、アメリカに対して意思表示をするであろう。しかし意思表示をするであろうが、それはもちろん信義の問題であろうが、この第五条と自衛隊法七十六条との間には、こういう非常に大きな問題がこの中に内存しているということです。  さて次、日本の国内におけるアメリカの軍事基地に的確に相手から普通火薬のロケットで攻撃を食った。日本国民には何にも影響はない。日本家屋にも別に何にもない。アメリカ飛行機その他がやられた。施設がやられた。そこで当然アメリカとしては個別的自衛権を発動していく。この場合に日本が個別的自衛権を発動してやることは、西村長官、これは七十六条のどこから行なわれますか。領空侵犯ということは武力攻撃があったことですか。そうではございませんでしょう。飛行機における領空侵犯が行なわれたからといって、必ずしも直ちに戦闘機がい舞い上がったり何なりして、撃ち落とすということでもないのです。 ですからアメリカの軍事基地に対して攻撃があったものによりけりですね。原爆や水爆等があって、周辺の多くの国民被害を与えたというならともかく、普通火薬のロケットでやられた。的確に命中をした。国民の意思としては日本がこの戦争に介入することは反対だ、こういうこと。これは個別的自衛権ですから、この点については国会は自衛隊に出動はしてはならぬ、こうきめた。この場合には長官、どうですか。僕はあなたが日米安全保障協議委員会の四人のメンバーの一人でなければ聞かないですよ。あなたが日米安全保障協議委員会の重要な日本の代表メンバー二人のうちの一人なんですから、しかも片や外務大臣、片やあなたなんです。そこで私は聞いているのです。これは私はあなたとは逆に、多くの場合は日本の国会はほとんど否決するだろうと思うのです。その場合にアメリカが個別的自衛権で出ていった。日本についてはこれは第七十六条に基づいて国会は否決をした、こういう場合は、何か条約上の問題が出ましょうか。どういうものでしょうか。
  288. 西村直己

    西村国務大臣 一つの極端な設例をお設けになって御質問のようでありますが、ただ一発ぽつんと落ちて、それだけで事態が済む。これは例としては一つたとえられるでありましょう。しかしそこまでに至る雰囲気というものは、基地に対する攻撃でありますれば、おそらくもっといろいろな情勢が起こっておると思うのであります。天からただ隕石がぽっと落ちてきたのとは違うのであります。わが国土に対する武力攻撃、言いかえれば組織的、計画的攻撃、そこには継続性もありましょう。そうなりますれば、私は国会は否定はされないと思います。しかし万一否定された場合にどうするかというならば、私どもは国会の意思に従って、あとのことは最高政治で処置する、これ以外に方法はない、こういう解釈であります。御納得をいただきたいと思います。
  289. 横路節雄

    ○横路委員 西村さん、この問題については、現行の安保条約で第五条に基づいて、日本におけるアメリカ基地に攻撃があった場合に、それぞれの国は個別的自衛権を発動するとこう規定をしたから、国会の承認を求めるのですよ。これが前の条約ではどうなっているか。前の条約にはないのですよ、アメリカの軍事基地に対する攻撃があった場合には、第五条のように日本は個別的自衛権に基づいて出るというようにはなっていない。そこでこの第五条で、本来からいえば集団的自衛権でいくべきものを、憲法第九条との関係でわれわれに追究されたものだから、そこで個別的自衛権で逃げたわけですよ。しかし本来からいえばもしもこの第五条がなければ、この前の条約であるならば、第三国から日本におけるアメリカの軍事基地が攻撃された。その場合に日本は中立国の宣言もできる。中立国の宣言はできても、交戦国にその基地を貸していれば、その第三国は当然その交戦国の権利としてこれを攻撃できる。日本アメリカならアメリカ基地を貸している。そうして第三国との間にいわゆる交戦した場合に、第三国はその交戦国の権利としてそのアメリカ基地を攻撃した場合には、中立の宣言をしておけば、日本はこれに対して何にも援助もしなければ、基地を貸しているというだけで、これに対して攻撃されたからといって、当然日本は一緒に戦わなければならないというものではないのですよ。だから日本の国内におけるアメリカの軍事基地がやられたから、それは日本の領土に対する侵害である、常にこう言って出動するということは、この条約の第五条で個別的自衛権の発動というように、本来からいえば集団的自衛権の発動であるべきものを、条約上義務づけられたのですよ。前の条約の、場合には、第三国との間に戦争があった場合においては、中立国の宣言をすれば、どんな攻撃をされても日本はだまっておればいいのです。また第三国は交戦国の権利としてこれを攻撃できる。だから日本におけるアメリカの軍事基地がやられたら、何でも日本は自衛権の発動でやらなければならないというのではないのです。これは条約第五条に基づいて自衛権の発動を約束したのですよ。義務づけられたのです。だから本来からいけば、この自衛隊法七十六条からいけば、日本国内におけるアメリカの軍事基地に対する攻撃は、日本に対する攻撃とみなして出動するということは、絶対にあり得ないのですよ。加藤さん、どうですか。あなたは専門家だからあなたに聞きます。
  290. 加藤陽三

    加藤政府委員 重大な問題については私の立場では答弁できませんけれども、ちょっと今おっしゃったことの中で、前の条約のときに日本が中立の宣言ができるかどうかで、できるようにおっしゃいましたけれども、私はやはり若干疑問に思います。と申しますのは、中立国の宣言をいたしますと、交戦国の軍艦に対して四十八時間以内に出て行けというようなことを言わなければならない規定があるのです。こういうことを実行しなければ、中立国としての権限を主張することはできない。前の条約のときでも、日本米軍の駐留することを認めているのですから、これと矛盾するのでございますから、ちょっとその点については異論がございますことを申し上げます。
  291. 横路節雄

    ○横路委員 これは加藤さん、軍事基地を提供していても中立宣言はできますよ。たとえば今のキューバの場合に、アメリカに軍事基地を提供しておりますね。アメリカとどこかの国が戦争を開始して、あそこが攻撃された場合に、キューバは中立だということが言えましょう。そうしてアメリカの軍事基地に対して、アメリカと交戦している第三国というものはどんどん攻撃する。その場合キューバはおれのところがやられたのだから、おれは個別的自衛権だ、こうは言えないでしょう。だからそういう場合もあるのではないですか。
  292. 加藤陽三

    加藤政府委員 これは私ども先ほど申し上げました点で、御了解をいただきたいと思います。やはりその場合はキューバは条約を廃棄しなければならない。廃棄しなければ、何時間以内に出て行けと言うこととは両立しないと思います。
  293. 横路節雄

    ○横路委員 この点は加藤さんと私と見解が違いますが、その場合には私の見解は、その交戦している第三国はそこを攻撃できる。その攻撃したものに対して、自国の領土が攻撃されたというのではなく、当然貸与されているその基地だから、その基地に対する攻撃ということは当然行なわれてもやむを得ない。私はそう思う。  そこで長官、あなたにお尋ねしますが、五時になりましたから、委員長と約束の時間でもあるし、長官にもう一つお尋ねしておきますが、私がお尋ねしているのは、この自衛隊法七十六条と第五条との関係というものは、この安保条約がなければこういう問題が起きないのですよ。これがあるために、この自衛隊法七十六条というものがせっかくありながら、実際には今あなたが言っているように、そういうことはあり得ないだろう、そういうことはあり得ないだろうと言うように——安保条約によって共同防衛の義務を負ったために、この自衛隊法が非常に制約されてきているということを私は申し上げたい。この点については——委員長、五時になりましたから、私もっとたくさんあるのですけれども、またあしたあらためて、午後やらしていただくことにして、大へん恐縮ですが、時間が五時ですから……。
  294. 久野忠治

    久野委員長 両案についての残余の質疑は、次会に譲ることといたします。  次会は明二十五日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時二分散会