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1961-04-21 第38回国会 衆議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月二十一日(金曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 伊能繁次郎君 理事 小笠 公韶君    理事 草野一郎平君 理事 高橋  等君    理事 宮澤 胤勇君 理事 飛鳥田一雄君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君       内海 安吉君    大森 玉木君       仮谷 忠男君    佐々木義武君       島村 一郎君    田澤 吉郎君       服部 安司君    福田  一君       藤原 節夫君    保科善四郎君       前田 正男君    牧野 寛索君       杉山元治郎君    田口 誠治君       原   茂君    山内  広君       横路 節雄君    受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         防衛庁参事官         (長官官房長) 加藤 陽三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  小野  裕君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君  委員外出席者         防衛庁書記官         (防衛局防衛審         議官)     麻生  茂君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 四月二十日  金鵄勲章所持者の処遇に関する陳情書  (第六一二号)  北富士演習場使用中止等に関する陳情書  (第六三四号)  沖繩公営住宅建設に関する陳情書  (第六三五号)  世界歴戦者連盟主催国際会議代表派遣に関す  る陳情書  (第六五六  号)  東京都下新島自衛隊ミサイル試射場設置反  対に関する陳情書  (第六八〇号)  米海軍厚木航空基地爆音防止対策確立に関す  る陳情書  (第七六二号)  同  (第七六三号)  同  (第七六四号)  同  (第七六五号)  金鵄勲章年金及び賜金復活に関する陳情書  (第七六六号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二七号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  二八号)      ――――◇―――――
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。飛鳥田一雄君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 防衛二法について質問をいたします前に、ほんのわずかな時間でありますが、新島の問題を伺いたいと思います。  新島についていろいろな問題が起こっておりますことは御存じ通りでありますが、当然、新島試射場に付随いたしました海上漁業制限が発表せられております。一体この漁業制限はいかなる法律的な根拠に基づいてなさっていらっしゃるのか、それを伺いたいと思います。
  4. 西村直己

    西村国務大臣 ただいま新島の問題について御質問がございましたが、新島御存じ通りどもとしては基地ではない。基地だというお説もありまして、いろいろ批判なり強い反対運動もありましたが、基地でない。現在のところは、本村におきましては九割の島民の御賛成を得ているというふうに私どもはとっておるのでございます。もちろんこれが試射場と申しますか、ミサイルの誘導の試験場が設置されて開始されますれば、当然年間においてある程度、大体二十回くらいという考えでありますが、二十日とか一月とか、特定の時間海上制限を受けなければならぬ。それにつきましては十分現地関係者と了解を得まして、そのもとに協定なり補償なりの問題を進めて参りたい、こういう考え方でございます。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私の伺っているのは、すでに防衛庁の方はどの範囲ということをある程度発表なすっていらっしゃいますし、それから防衛庁担当官と各漁業組合幹部諸公との話し合いも行なわれているようです。だとすると、その範囲はほぼ明らかになってきたわけですから、いかなる法律的な根拠でそういう漁業制限をやられるのか、これを伺っているわけです。それだけずばりお答えいただけばけっこうです。
  6. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 お答えいたします。自衛隊法の百五条に「訓練のための漁船操業制限又は禁止」という規定がございますので、これに基づきまして地元の各関係漁業協同組合契約を結びまして、その契約範囲内において制限あるいは補償を取りきめたいと思っております。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 長官の御説明と今の経理局長の御説明は、完全に矛盾しているわけですよ。自衛隊法百五条が適用になるのならば、これは訓練場であって、試射場ではない、実験場ではない、こういうことは明確になるはずですよ。今まで訓練場ではない、演習場ではない。試射場試射場だと何百ぺんもおっしゃってこられて、現実法律適用演習規定適用なさる、こんな矛盾がありますか、これは一体どらなさるのです。
  8. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま私お答えをいたしました説明が多少不十分でございましたので補足させていただきますと、自衛隊法の百五条に「訓練のための漁船操業制限又は禁止」という規定がございますが、この規定に準じまして地元関係漁業協同組合契約をいたしまして、公法上の契約に基づいて制限なり補償をいたしたい、こういう趣旨でお答え申したわけでございます。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは一種の権力行為です。権力行為に準ずるなんという解釈は初めて伺ったのですが、そういう乱暴な法律解釈を今の政府はなさるのですか。百五条を適用する、あるいはこれに準ずる限り、これは明らかなる演習場じゃありませんか。長官、それはどうするのですか。
  10. 西村直己

    西村国務大臣 私はこの実態はあくまでも試験場あるいは実験場、従って当時の社会党との話い合いにおきましても、名前は試験場であろうが、実験場であろうが、けっこうでございますが、ある程度両者の間にあるいは第三者の間に話し合いがつきかけたことは御存じ通りでございます。従ってわれわれは法律問題よりは、むしろ実際の地元代表者合意を遂げてその契約のもとにやって参りたい、こういう考え方でございます。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと念を押しますが、自衛隊法百五条はこの操業禁止の問題とは全然無関係ですか。それとも準ずるなどというごまかし的な関係が成立するのですか。防衛庁は今まで純粋な試験場だ、実験場だとおっしゃっていながら、その適用法律においては完全に自衛隊法訓練目的とした条文適用なさるというようなことをはしなくも発言なさったので、これは新島の本質が何であるか、このことを全国民に知らせるためには非常に重要な問題です。あとから補足などというこそくなことをおっしゃいますが、この事実は消えませんよ。  もう一度親切な意味でお伺いいたしますが、自衛隊法百五条はこれと何らの関係のない条文なのか、あるいは何らかの形で関連性があるのか、この点、長官にはっきりお答えをいただきたいと思います。準ずるなんという法律は全然ないのですから……。
  12. 西村直己

    西村国務大臣 損失補償等がありました場合におきましては、当然百五条を準用していかなければならぬと思います。その他におきましては、私どもはあくまでも合意を中心に考えて参りたいと思います。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 くどいようですが、準ずるということは、法律が準じ得ることを命じ、あるいは準じ得る可能性を示したときに準じ得るのであって、そんな法律はどこにあるのですか。その準ずるという法律条文を見せて下さい。
  14. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 法律的には百五条そのもの適用になるのではございません。あくまでも、これは先ほど申し上げましたように、契約を結びまして、その契約に基づいて権利なり義務なりが生ずる、こういう関係になります。ただし先ほど私が申し上げました準ずるというのは、たとえばほかの地域自衛隊訓練のために漁船操業制限をやって、それに基づいて損失補償をいたします。そういう損失補償と、新島における、契約を結んで、その契約に基づいて補償をいたしますけれども、その契約に基づく補償とが非常に隔たりがある、全然無関係だというわけには参りませんので、そういう意味損失補償算定等についてはこの規定に準じた取り扱いをいたしたい、こういうことであります。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今申し上げたように、試験場々々々と口ではおっしゃっているけれども、実は演習場のつもりだから、百五条などという言葉がちゃんと出てきて速記録に残ってしまう。それが増し刷りされて日本じゅうに配られるでしょう。あとからどんなにおっしゃったって、法衣の下からよろいやかぶとが見えるということがはっきりわかる。しかしそんなことを言っても仕方がありません、一応御訂正になられたらしいですから……。あらかじめ国会答弁でお断わりしておきますが、私が法律的な根拠を伺っているときには、法律的にお答えいただきたいと思うのです。あなたが準ずる、準ずるとおっしゃるのは、補償その他をお出しになる場合に、防衛庁の方が、このぐらいまでは出そうということを自分腹づもり考えるときに、百五条にきめられた補償基準というものがあなた方の腹づもりとしてあるというだけで、第三者関係であるのではないのです。それを準ずる、準ずるなどとおっしゃるから、準ずるという言葉を、あなたは法科大学を卒業になったかどうか知りませんが、お習いになったかどうか疑問に感ぜざるを得なくなってしまうわけです。そしていたずらに質疑応答が混乱するだけになりますので、一つ法律的なことを伺ったときには法律的な正確さをもってお答え願うようにお願いしておきます。  そこで百五条を適用しない、これは関係ない、こういうふうに長官お答えになったようでありますが、しかしそれは非常に不思議な、私たちの間に混乱を起こさせるわけです。と申しますのは、政府部内で意見統一していないとしか考えられない。たとえば二月十六日にわれわれの同僚であります西村関一君が農林水産委員会で伺いましたときには、高橋説明員は明らかにこの場合は自衛隊法百五条の適用によって事を処すべきものだと明確にお述べになっているわけです。農林省防衛庁とでは法律的な解釈、これからとろうとする行為法律的な根拠というものは白と黒というほど違っているわけです。全然これから仕事が新しく始まります前、ほんとうの準備段階でありますならば、そのような意見統一ということもあり得るでしょう。そしてそれは御努力によって調整なさればよろしいのです。だがしかし現にもう新島ではあんなにも苛烈な住民との闘争があるじゃありませんか。そして防衛庁は盛んに大衆に向かって、あれは演習場ではありません、試射場です、こう言って百五条の適用のないことを暗に示してある。もうすでに国民防衛庁との間のいろいろな事実行為は数年にわたっています。数年にわたってなおかつ農林省防衛庁の間には、かくも根本的な矛盾があるではありませんか。こういう政府部内の意見の不統一というものを一体どうなさるのです。ただ不統一だといっては済まない。国民はいずれをとっていいのかわからぬです。現に私は神奈川県庁に聞いてみました。そうすると県庁水産課は、当然百五条の適用によってわれわれの意見を聞いてもらえるものだと期待をしています。ところがただの一ぺんもあなた方は聞いてきていません。それはそうでしょう。神奈川県庁水産課は、何といったって農林省水産庁関係意見を重要視するにきまっています。だからそう思って待っているのです。ところがあなた方は全然水産庁とは別の意見で、勝手にやっている。政府というのはかくのごとく頭としっぽは別々に走るものですか。長官、いかがですか。
  16. 西村直己

    西村国務大臣 私といたしましてはこれは基地にしない。もう国会という公式の場面を通して何回も声明申し上げ、またお話し合いさえ進めば、いつでもこれはいかなる方とも、特に社会党のようなお立場方々とは話し合いを進めて、しかもそれは必要があれば閣議決定にもするという態度を、私は今日も堅持いたしておるくらいでございます。問題は補償をしなければならぬ。私はできるだけ補償話し合いも進めてみたい、こう考えております。ただ問題は補償のやり方の問題についての法理論的な御見解が今述べられたわけであります。これは私は一つの御意見として十分自分は検討していかなければならぬと思います。末端におきますと、あるいは政府政府委員等水産庁においてあるいは多少ニュアンスの違った答弁をしておりますれば、私どもはこれは部内を通してあるいは政府を通して十分調整をしてはっきりさして参りたい、こういう考えでおります。
  17. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そんなゆうちょうなことをおっしゃって、新島では現実になぐり合いが行なわれ、けんかが数年続けられておるではありませんか。それをこれから部内調整してなどとおっしゃって、そんなことで政府としての責任は済みますか。これはあなたの良心に私は聞きます。水産庁防衛庁とが多少ニュアンスが違うなんということを言えるでしょうか。うしろ法律専門家がおられますから、うしろを振り向いてお聞きになってごらんなさい。多少のニュアンスの違いですか、そういうでたらめな言葉のごまかしによって、現実新島で行なわれているあの事態を、ますます激化していくような行為があったら大へんじゃないでしょうか。そしてこれはもう三年も四年もたっていることですよ。今ごろ政府部内の統一ですか。多少のニュアンスの違いですか。私たちは恥ずかしくて、国民に向かってこういうことを報告できませんよ。しかしもう済んでしまったことですから、私はあまりくどくは言いませんが、水産庁とのこういう完全に白と黒というような意見の違いを、防衛庁考えるような方向で統一できる御自信がありますか。
  18. 西村直己

    西村国務大臣 農林大臣御存じ通り閣議に出席しております。また新島村会も、これが基地でない、また演習訓練のためでないということは十分知っております。あと法運用としての事務的な段階において多少発言が違っておれば、それは私は政治の立場から是正して参るべきだ、あるいは調整をはかるべきだと考えております。また新島におきましては、本村におきましてはすでに九割以上の賛成者を得ておることは皆さん御存じ通りでございます。従ってできるだけすみやかにこの漁業補償——問題はそういった問題よりは一歩前進した補償問題に入る。そのためには私ども話し合いを進めて参りたい、こういう考えでございます。
  19. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 よろしゅうございます。ともかく必ず百五条を適用しない、こうおっしゃるわけです。それでは伺いますが、補償々々とおっしゃいますが、百五条を適用しないとすれば、政府公法上の一個の法人と見、ここに出漁する個々漁師、これとの間の民法上の契約を結んで補償する、こうおっしゃるわけですね。これは間違いありませんね。
  20. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 その通りでございます。
  21. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もし国家もまた民事契約の一当事者としての契約によって補償するとすれば、この限られた区域の中に船が入ってくることを海上警察権をもって強制的に排除できませんぞ。これはもう百も承知でしょうね。もし無理に入って参りましても、あとそれは契約違反による損害賠償請求対象となるだけですよ。これでもいいですな。
  22. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 その通りでございます。
  23. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと式根島漁師諸君、あるいは千葉県の漁業組合諸君、あるいは神奈川県の漁業組合方々——神奈川県の場合には三崎、長井、小田原、平塚、こういうところからサバの一本釣、縦はえなわというのですか、こういう漁に、大体百二十隻から百三十隻ぐらいその制限地域に出漁しております。そして年間約三億以上の収入がここからあがっておるそうです。この人たち防衛庁との交渉に応じない、こういう場合もあるでしょう。またかりに交渉に応じて、補償を受ける民事上の契約を結んだとしても、あと防衛庁から損害補償請求を受けることを覚悟して、その地域実験の行なわれる日に出漁いたしましても、海上警察力をもってこれを排除できないということは、はっきりとお認めいただけますかな、今のお話では……。
  24. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 もちろんこれは国と各漁業権利者あるいはその組合あるいは連合体との民事上の契約でございますから、従ってただいま委員が御指摘になりましたように、契約違反に対してはこれは損害賠償請求権を生ずる、こういうことに相なります。
  25. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それから漁業権者あるいは漁業組合の人とは一応、警察力をもっては強制することのできない民事契約が成立するかもしれない。だがしかし、ここは公海に属している部分がたくさんあります。従って最近は非常にはやりですから、私もヨットの一隻ぐらい買って、あるいは久野委員長洋上会談をやるかもしれません。そういう場合はこれは契約対象ではありませんよ。これに対しても海上警察権をもって排除するということはできませんな。どうです経理局長、早くお答え下さい。
  26. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 この漁場には新島、若郷及び式根島の三漁業協同組合漁業権が設定されておりますので、他の都県の漁業権漁業者でもって、この地元漁業権漁業者の同意を得て入会漁業をやっておるというような方々につきましては、これはやはり補償対象にはなります。なりますけれども、しかしただいまおっしゃったように、警察権でもって入ってきたのを排除するというようなことは、これは問題にならないと思います。
  27. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 わかりました。新島闘争の新しい道が開けたことをはっきり感じます。もし試射場ができ上がりましても、試射をなさるその日に、大ぜいの漁民たちあるいは私たちのようなのんき者が、船に乗ってその制限区域の中にどんなに蝟集していようと、海上警察力は行使できない、こういうことがわかりました。  それでは第二の点について伺います。新島について防衛庁は、本年度新島突堤工事、すなわち黒根港の突堤工事の、もとの部分都庁が作る、それを延ばす部分について、三分の一の予算をお組みになったわけです。島民の方はいつできるかといってこれを非常に待っている人もあるでしょうし、反対している人もあるでしょうし、悲喜こもごもでこれを迎えているわけです。一体この突堤延長工事というのは、今年度中に実施するおつもりなんでしょうか、おつもりでないのですか。
  28. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 これはただいまおっしゃったように、東京都が昭和三十五年度におきましては、離島振興法による補助金工事をやっております。従って今後防衛庁がその残りの部分を引き受けます場合には、都庁との間のいろいろな協議が必要でございます。その協議を現在進めておる段階でございまして、協議が整い次第、本年度内できるだけ早く防衛庁工事に着手いたしたい、こういうつもりであります。
  29. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 念を押して伺っておきますが、防衛庁技術担当方々は、賛成派村会議員さんに対して、あれは技術上非常に——たちしろうとにはわかりませんが、何か海の底がむずかしくなっているので、技術突堤延長工事は不可能であるということを再々語られたということですが、それでも必ずやれますね。
  30. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 その技術上不可能ということが、どこから出たニュースであるか私存じませんが、今まで私たちが調べて参りました範囲におきましては、そういうことはございません。技術的には可能でございます。
  31. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もっともっと新島問題に対してたくさん伺いたいと思うのですが、もう本論に入りたいと思います。  そこで今度の防衛二法について、今まで石橋さんが非常に精密に伺いましたので、私は別にそれをなぞるような形はもうしないつもりです。従って幾らか大ざっぱな議論になるかもしれませんが、日ごろ疑問としているところを伺いたいと思います。  まず一番最初に私の伺いたいと思いますことは、先般源田航空幕僚長のお説を拝見いたしました。非常にりっぱなお説で、私たちも教えられるところが多かったわけです。その冒頭に源田さんは、「何といっても状況判断というものが第一にこなければならぬ。正しい状況判断の上に立って初めて次のステップが踏み得るものだ」ということを強調なさり、そしてその具体的な適用として、まず第一に、「われわれはこの制限せられた自衛隊によって、防衛力によって、一体何ができるかということを正確に直視しなければならぬ」、こうおっしゃっているわけです。なるほど私たちもそうだと思います。何が一体この自衛隊によってできるか、こういうことをお互いに確定せずして議論をすることは、基盤なしに勝手な立場に立って議論をするのと同じことになります。そこでわれわれの同僚議員からもいろいろ個々についての御質問はありましたけれども、ここでまとめてごく簡単に伺っておきたいと思います。一体自衛隊は今の段階で何ができるか。そして今後問題を分けて、第二次防衛計画があなた方のお考え通り進んだ場合に、何をなさんとするのか、こういうことを一つ伺っておきたいと思います。  まず第一に伺いますが、今の自衛隊は、全面戦争について何ができるのでありますか。そしてまた全面戦争抑止勢力として一体どの程度の効果があるのか、これを伺いたいと思います。局地戦争の場合は次に伺いますから、除いて下さい。
  32. 西村直己

    西村国務大臣 もちろんわれわれの自衛隊は、全面戦争そのものを直接担当する能力がないことは、これは御了解いただけると思うのであります。従ってわれわれは全面戦争のないことを念願すると同時に、また全面戦争は不可能であるという大国間の抑止勢力考えております。従ってその意味全面戦争に対しましても、日米安全保障体制があった方がよい、こういう意味安保体制を結んでおるのであります。自衛隊といたしましては、その主目的は、局地戦なりあるいはその他自衛隊法に明記してある任務に邁進をいたす、こういうことであります。
  33. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 全面戦争に対してはほとんど無力である、わかりました。そうして言葉を濁されましたが、全面戦争の抑止的な能力もほとんど否定的である、こういうことがわかりました。  それでは続いて局地戦争、そういうものの可能性が一体あるのか、こういうことを一つ伺いたいと思います。局地戦争可能性というものは日本にあるのか。
  34. 西村直己

    西村国務大臣 全面戦争抑制力が全然ない、こうは断定できないと思います。私はやはり小さい自衛力でありましても、それらがお互い同士が組み合わさることによって、また全面戦争の起こってくる態様——これが突然全面戦争になるというわけでない場合もあります。いろいろな形を持ってくるのであります。従って私はやはり全面戦争に対する抑制力にもわが自衛隊はならないとは断定できない。むしろなっている場合もあり得る。言いかえれば、極東の安全、平和あるいは世界の平和にも、わが自衛隊は貢献しておる、こう考えてしかるべきではないかと思います。  また局地戦争が起こるのか起こらないのか。われわれは局地戦争も起こらぬことを念願しておるのであります。しかしながら一国が独立を保つ以上は、いかなる態様かによって局地戦争というものがあり得る。現実にまた世界現実の姿をごらんいただきましても、局地的な紛争というものが絶えないことは事実であります。  私はそういう意味局地戦争もあり得る、あるいは絶対にないとは言い切れぬ、こういうふうに考えております。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう少し部内思想統一をしておいてほしいと思います。と申しますのは、源田さんは、「従ってたとえば今日本が持っている防衛のためだけのような軍備は、今言ったような戦争抑止兵力としては役立たないということがいえると思う」、こうはっきり言っておられるわけです。あなたは役立つと思い、現実にそれをハンドルしている現役の将軍たちは役立たないと思う。こんなてんでんばらばらで一体自衛隊というものは動いていくものでしょうか。私たちは少なくとも正直に一体何ができるかということをはっきりと見定めるということが大事だということは、一つの原則だと思います。しかも皮肉なことに、こういうことさえ言っておられるわけです。「ところが、それは現実にそうだというわけではないが、われわれはえてして、現在の中途半端な防衛力でも大いに役立つのだということを前提に、特殊な状況を導き出しがちである。」すなわちあなた方のお立場からは、自分たち立場を少しでも合理化するために、えてして特殊な状況を導き出しがちである。しかしそれこそ真の防衛という点からは危険だということを強調していらっしゃるわけです。あなた方はえてして特殊な状況を引っぱり出しがちであることを、一つ部内に聞いてみていただきたいと思います。現実抑止勢力としてはあまり効果のないものだということを断定しておられる。そこで議論になりますから、局地戦争について世界じゅう至るところにとおっしゃるのですが、世界の国々はみんなおのおの異なった地理的条件、国際的な環境、外交的な環境、そういったものの中にあります。そういうものを除いてしまって、ラオスでやっているからうちでも、コンゴでやっているからうらでも、こういうよらな原則で大ざっぱなやり方で、国費を二千億も使われたのでは、国民はたまらぬわけです。一体日本では想定されるものとして、どういう形でそれでは起こり得るのですか。全然想定をなされずに、ただ起こる起こるとあなたはおっしゃっておるわけじゃないでしょう。ではどういう形で起こるのですか。私どもはこの日本局地戦が起こり得る。そしてそれが局地戦でとどまり得る可能性というものは発見できないのですが、一つ御教示をいただきたいと思います。
  36. 海原治

    ○海原政府委員 お答えいたします。局地戦がどういう形で起こるかということについて具体的に説明をしろ、こういう御要求と存じますけれども御存じのようにいかなる形で武力的な紛争が起こるかということは、なかなかいろいろな条件と申しますか、前提が必要になってくるわけであります。また世界的な情勢の変化ということも、直ちにいろいろな形において影響して参ります。従いまして一つの型をお示しするということは、またその型に執着した議論に発展するおそれもございますし、また私ども長官が再三お答え申し上げておりますように、日本というものを考えました場合、そこに周辺の諸国のいろいろな情勢というものを考え合わせました場合に、あるいはひょっとして起こり得るかもしれないという場合に備えての自衛力を持つということが方針でございます。この起こり得るかもしれない情勢が、具体的に申しますと北の方からあるいは西の方から、何個師団あるいは空挺で、潜水艦でということは、これはいろいろな考え方があり得るわけであります。しかしそれは防衛庁といたしまして私どもはこういうふうに想定するということを申し上げることは、決して適当なことではないと思うのであります。その辺のところは一つ御了解願いたいと思うのであります。また軍事というものは、およそあり得る侵略をされる被侵略の危険性に対して備えるものであるということが、根本的な原則ではないかと思います。従いまして私どもはあくまで国力国情に応じて、あるいは起こり得るかもしれない万一の不幸な場合に備えた力を備えつけるということが、私どもの部隊編成の根本的な方針としております。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 古い議論ですからあまり繰り返しませんが、しかし起こり得る可能性というものについて全然お考えになっていないとすれば、それは怠慢です。軍隊を持っている以上、可能性考えるのはあたりまえで、しかもそれを相当精密に考えておくことは、防衛庁の責任です。それはわかります。だがしかしそれを発表できないとおっしゃるのですが、しかしイギリスの国防白書をごらんになったことがございますか。かなりこまかに自分の今対峙しようとする勢力を明確に述べ、そしてそれが侵攻してくるであろう大ざっぱな可能性だけはちゃんと書いてあります。そして国民に納得する努力を求めているわけです。ところがあなた方は秘密だ秘密だ、そんこなとは不適当だという言葉で、何もしてない。空から星が落ちてくることを考えて帽子をかぶって歩いている人と同じ結果になりはしませんか。われわれはそれを杞人の憂と唱えておりますが、そういう杞憂のための軍隊なんですか。そういうふうに国民に理解されることをあなた方は阻止する努力をしてないじゃないですか。一体そういう起こり得る可能性、そういうものの大ざっぱな道筋さえもあなた方は示し得ないのですか。
  38. 西村直己

    西村国務大臣 私どもはもちろん軍事を担当しております以上、それに対処する非常な変化、いろいろな角度の態様局地戦あるいはその他の場合の対処能力というものを持たなければならぬ。その意味での検討を加えるべき責任は当然感じており、またそれを遂行しなければいかぬと思います。問題は、ただ日本が置かれた立場において、それを今国会の場において、どこの国あるいはどこの土地を仮想の敵としてお互いが論戦することが、はたして妥当であるかどうか、こういう問題も一つお考えを願いたい。同時にわれわれは、一般的に申しましても、国際共産主義の脅威というものは明らかに一応感じております。これに対していろいろな考え方というものを持って対処していくことも、当然であると考えております。
  39. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 だんだんわかってきました。ともかく具体的なあなた方の内部の作業なり訓練計画なり防衛計画については、はっきりとした目標を持っている。だがしかしそれは表側には言えない。こういうことだと了解してよろしゅうございますか。
  40. 西村直己

    西村国務大臣 もちろんわれわれの作業の過程において、具体的にどこの国ということを明示することは避けております。しかし少なくとも今申し上げましたような国際共産主義の脅威というものに対して、一般的に考えられる事態というものは、われわれはその中に入ってきておると思うのであります。
  41. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 わかりました。これは相当な前進だと思います。今まで仮装敵という問題については、一言も具体的なことをお述べにならなかったわけです。きょうはっきりいたしましたことは、一つの目標は現実には持っているけれども、外へは示せない、そして国民には国際共産主義の脅威ということで理解をしておいてもらいたい、こういうことのように思います。まあこれは総合的に一わたり伺っておくことが目標ですから、それについて議論はいたしません。  それでは次の問題ですが、局地戦争というものが全面戦争に至らないで済むという可能性をお考えになっていらっしゃいますか。
  42. 海原治

    ○海原政府委員 局地戦争が発生いたしました場合に、それがどういうふうな事態にまで発展し、またいかなる形においてそれが終結するであろうかということにつきましても、これはいろいろな条件によりましてその考え方が違うわけです。しかし私どもは先ほど長官からもお答えがありましたように、幸いにして、全面戦というような、結果的には人類文化の破滅に至るような核の撃ち合いによる全面戦というものは、私どもの英知によって避けられるだろうという前提はございます。さらに局地戦につきましてはそれ以下の小規模なものでございまして、局地戦争自体もそれが起こるととは決して好ましくございません。従いましてかりに起こった場合におきましても、その戦禍と申しますか、被害の及ぶ範囲はきわめて局限されるべきものであると考えておりますし、またそのような方向に発展するだろうことを希望しておるわけでございます。
  43. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 希望と現実とは違うと思います。そして客観的な事態とも違うと思います。希望なさることは何百ぺん希望なさってもけっこうです。しかしあなたの希望を国民に押しつけるわけにはいきません。そしてまた国民はあたなの希望をそのままに信じなければならない責任もないはずです。結果は国民が負うのです。  そこで一体局地戦争があったとして、それが自衛隊の動きによって全面戦争に発展しないという可能性があり得るのですか。もう一度聞きます。日本のことです。
  44. 海原治

    ○海原政府委員 可能性があり得るかという御質問でございますと、可能性ということにつきましてはいろいろな意味がございます。私ども考えておりますのは、局地戦局地戦でとどまるものであるという前提に立って、ものを考えております。
  45. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その場合にアメリカ軍というものはどの程度に関与してくるのか、全然関与してこないのか、こういう点も伺いたいと思いますが、その前にまたここでも私たちは、あなたのお説と現実に軍を動かしている方々のお説と、全く違う事実を指摘しないわけにいかないのです。源田さんはこう言っておられます。「しかし、日本がたとえば朝鮮事変のような限定戦争に入る可能性は、非常に少ないのではないのではなかろうか。日本に対して、中共なりソ連から直接侵略が行なわれた場合、これが全面的戦争にならずに済む可能性はほとんどない。必ずアメリカが手を出してくるからだ。」ちゃんとこう書いてあるのですよ。空軍の長であるこの方がそう言っている。ところが内局のあなたは全然それと相反した議論をしている。防衛庁というのは一体どこを信じたらいいのですか。しかも私はよく知りませんが、防衛庁なり軍人なりの方々が論文を発表なさったり講演をなさったり、そういう場合には必ず届け出て許可制になっているはずです。従ってこういう講演なり原稿なりというものは、防衛庁内部で許可をなさったはずです。これは枝葉末節ですから、この点に問題をそらさないように願いたいと思いますが、全然違うのですよ。国民はどっちを信じたらいいのですか。しかしともすれば私たち現実に戦争を職業としていらっしゃる方の戦略、戦術を信じたいような心持がいたしますが、いかがでしょうか。
  46. 海原治

    ○海原政府委員 先ほど来私がお答え申し上げておりますのは、私個人の単なる意見ではございません。源田幕僚長もその構成メンバーの一員でおられますところの統合幕僚会議というところで、一応十分に検討されました結論というものを承ってお答えしておるつもりでございます。ただいま私どもの手元では、先般来申し上げておりますように第二次防衛力整備計画というものを鋭意作業中でございます。その場合におきましても、今先生からお示しのありましたような、一体どういう事態を考えるかということにつきましては、あくまで局地戦以下の事態に対処するというようなことでもってただいま作業を進めておるということを、さらに私の御説明の補足として申し上げておきます。その作業の前提となりますのは、幕僚監部のやはりそれぞれの専門の立場のスタッフの意見が十分取り入れられておるものでございます。
  47. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 さらに続けて「日本において限定戦争が起きるとすれば、それはいわゆる代理戦争であろう。」こうはっきり断定しておられるわけです。こういうことも今第二次防衛計画を策定なさっている過程で御討論になり、決定なさっているのですか。
  48. 海原治

    ○海原政府委員 今先生のおっしゃいました代理戦争であろうというような性格づけの点はいたしておりません。
  49. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、限定戦争に際して米軍が関与してくる、これはもう安保条約第五条があるのですから当然でしょう。そういう場合を想定なさっていらっしゃいますか。
  50. 海原治

    ○海原政府委員 先ほど申し上げましたように、いろいろな想定というものが現実には考えられるわけでございます。従いましてそういうことを想定しておるかという御質問に対しましては、そういうことも考えられますということを申し上げざるを得ないと思います。ただ私どもといたしましては、日米安全保障体制というものは厳然として存しております。またアメリカの力に依存することはきわめて多うございますが、私ども日本の国土を守るわけでございますから、あくまで私ども自衛隊の力でもってできるだけのことをやる。やれない分をアメリカの方の力におすがりするということになるのが、一応常識的な考え方ではないかと考えます。
  51. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その場合にアメリカにおすがりをする。おすがりするという言葉お互いにあまりいい気持じゃありませんが、あなたがお使いになったからそのまま使いますけれども、おすがりをする場合に、アメリカの兵隊は当然核兵器を使用するだろう、とう私は思っておりますが、その点についての想定はいかがですか。
  52. 西村直己

    西村国務大臣 先般来核兵器の国内における使用については、安保で論ぜられました事前協議の十分な対象になって参ると思うのであります。
  53. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この点についても源田さんは非常にずばりと言っておられるわけです。「そして、アメリカが手を出すとすれば、兵力としては少ないから、兵器の優秀性によるべく、どうしても核兵器を使うことになるのである。」こうちゃんと言っておられるわけです。全然違うじゃないですか。もう少し意見をちゃんと統一しておいて下さらなければ、聞けば違う、聞けば違うでは、一体僕らは何をたよりに質疑応答をしたらよろしいのですか。これでは私たちたまりません。もしいけないのならば、この源田さんの講演はもうすでに昨年の十月十五日に出ている。本もお見せします、出ているのですから。あなた方、それに対して訂正なさるなり何なりの行為をなさっておかなければ、国民はこれを読むのです。市販されているのですから。しかもこの「新国策」という雑誌の国策研究会というものの理事には、わが党の浅沼稲次郎氏も加わっているくらい。パブリックなものですから、そこで講演なさったのですから、訂正なさってもいいわけです。それをそのままほっぽといて、ここへ出てくると違うことばかり言っておる、それではたまらないのです。「もしアメリカが手を出すとすれば、兵力としては少ないから、兵器の優秀性によるべく、どうしても核兵器を使うことになるのである。」こう源田将軍が言われるのをあなた方否定できるのですか。事前協議対象となりますなんと言っても、この事前協議ということは、そういう忽々の際にやっておられるはずはないじゃないですか。あらかじめこういう問題についてはぴちっとした態度を防衛庁政府が全部が矛盾なくきちっとなさっておかない限り、忽々の際に事前協議、お断わりしますなんといっても、言うことを聞きはせぬですよ、アメリカは。一体この点はどうですか。
  54. 西村直己

    西村国務大臣 そのために安保条約の運営につきましては、先般来申し上げますように、安全保障協議委員会の最高のメンバーもありますし、またしかるべき近い機会に、われわれは当然会合を持って参りますし、平素また関係の方面とも随時連絡もあるわけであります。  それから源田君がどういうふうな場でどういうふうなことを言われたか知りませんが、ただその前後のことも私は十分考えなければならぬと思うのであります。それと同時に私どもといたしましては、防衛庁全体、また統幕全体ですべてを調節し、同時にそれはまた私だけの意見ではない。総理大臣あるいは国防会議あるいは国会、こういうものの関連において、すべて行動基準というものをきめていかなければならぬわけであります。その点は私の言葉が正式の発言である、こうお考え願いたいのであります。
  55. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 正式々々とおっしゃったって、下ではみんな違うことを言っておるのですよ。そういうことをほっぽっといて、正式でございます、正式でございますと言っても、それでは国民は信頼できないですよ。正式であるならば正式であるような権威をお持ちなさい。現にアメリカにテーラー大将という方がおられますが、この方は最近退役なさったのですが、この方が現役のときに演説をし、それを発表しようとしたときに、国防省はちゃんとこれに関与して、言論の自由は封殺しない、だがしかし国防省として注釈をつけますぞということで、至るところに、この点は国防省の通説ではない、この点は違っている、この点はまだ討議していない、テーラー大将の個人的な意見である、こういうことをきちっとつけて発表していますよ。私は何も言論を封殺することを求めているのではないのです。しかし軍事に関する限り国民は迷うのです、知らないから。だから従って、テーラー大将の論文に対してアメリカの国防省がやられたような、きちっとした態度をとってこそ、初めて私の発言は正式でございます、こうおっしゃる権威が生ずるのです。言葉だけ正式々々とおっしゃってみたところでナンセンスじゃないでしょうか。まだまだこういうことをたくさんあげていけばきりがありませんが、これは最初に序幕として伺っているのですから、御意見は御意見でけっこうです。  そういたしますと、局地戦争全面戦争に至らない範囲であり得る、そしてそれを防ぐためには自衛隊も米軍も共同することもあり得る、こういう御説明と伺っておいてよろしいわけですか。
  56. 西村直己

    西村国務大臣 その前にただいまの正式の問題を申し上げておきます。たとえば先般の杉田発言の場合におきましても、私は翌日直ちに閣議におきましてはっきり私の所信を述べておいたのです。従って私はどういう雑誌にどういうふうに源田君の意見が載っているか知りませんが、私としてはそれを読めば、私はそれに対してまた同じような態度をとるでありましょうし、またただいまおっしゃいましたような点は、私言いかえれば、テーラー大将の例を引かれましたが、それも一つの貴重な参考意見として私は今後考え国民が惑わないように、国民がよく理解できるような自衛隊の運営をやって参りたいことは、再々私の申し上げておる通りの所信でございます。  それから局地戦争は、局地戦争自体に対しても自衛隊が存在し、訓練し、強化されておることは、私は抑制力になろうと思います。もちろん局地戦争がわが自衛隊で十分能力がないという場合におきましては、安保体制というものは当然発動さるべきであろうと考えております。
  57. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その場合の局地戦争の仮想敵と呼ぶことが語弊があるならば、対抗的な勢力というものは国際共産主義である、こうおっしゃったわけですが、それもよろしいですね。これからの議論の出発点になりますから……。
  58. 西村直己

    西村国務大臣 私どもは仮想敵というものは一応考えないし、またこれを議論しない方が、わが国の置かれたる諸般の情勢から適当であると思いますが、少なくとも私はその中の一つには、われわれが考えられる国際共産主義の脅威というものに対して、安保体制なりその他が行なわれておる。またそういうことがわれわれの国土の守りのためにも必要である、こういう趣旨で申し上げております。
  59. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今まで自衛隊が何をなし得るかということについての、一通りの御見解を承りました。意見は私の方にたくさんございます。しかしこれで議論をしておりますと切りがありませんから、いたしません。そこで、明らかになりましたことは、間接侵略と直接侵略、こういうことを考えていらっしゃる、こう考えられますので、その一つ一つについて伺いたいと思います。間接侵略についてはずいぶん大ぜいの同僚がお聞きになりましたから、それと触れないように伺います。  間接侵略について私の疑問に思っておりますことは、まず第一に自衛隊法に間接侵略の定義がないことだということです。それについて加藤さんはこの前、一ないし二国以上の教唆、扇動による大規模な内乱、騒擾、こういうふうに定義を下されました。これもわかったようでわからない議論です。そして同時に国際的には間接侵略の定義がない、こういうことをお認めになりました。この二つを出発点として伺いたいと思いますが、一体自衛隊法の七十八条という規定は、総理大臣が自衛隊の出動を命ずる規定でありますから、総理大臣の認定によるものです。一個人の認定による以上は相当正確にこの定義を定めておきませんと、総理大臣に白紙委任状を提出したのと同じ結果になってしまいます。これもきっと御議論ないだろうと思います。そこで国民は、やはり白紙委任状ではなく、ある程度この間接侵略という言葉を限定的にきちっと定義しておかない限り安心ができない、こういうことになると思いますので、間接侵略の定義というものをもう少し詳しく聞かせていただけないでしょうか。教唆、扇動などというわかったようなわからないような、どのようにでも認定できるそういうことではなしに、これこれの条件を整えた——普通法律には構成要件というのをよく言いますから、そういうきちっとした定義を長官からぜひ聞かせていただきたいと思います。
  60. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、まず総理大臣が最終的に七十八条の適用につきましては認定をするわけでございます。ただこれは飛鳥田委員御承知だと思いますが、自衛隊法の中には国家公安委員会その他と密接なる連絡を保つような規定がございます。総理大臣の認定にあたりましては、これらの法文の適用もあることは当然だと思います。そういう関係方面の方がいろいろな資料を集めまして、その資料に基づいて総理大臣が認定されるということになろうかと思います。  それから間接侵略の定義でございますが、これもこの前石橋委員のお尋ねにお答えいたしました通り、私ども国際的には間接侵略とはどういうものだということについての定義を見出しがたいのであります。やはり事態はいろいろ変わりますので、今考え得ないような事態も将来起こってくるかもしれません。先を見越して今きちっとしたこれだけのワクということを申し上げることは、非常にむずかしいと思います。ただ自衛隊法の制定の当時におきましては、当時の旧安保条約の第一条に、先ほどお述べになりました一または二以上の外部の国の教唆または扇動による大規模な騒擾または内乱に対して、駐留しておる米軍を使用できるという規定がありました。これが大体間接侵略の概念に近いものであるという意味答弁してきて参っておるわけでございます。
  61. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 間接侵略の定義を伺うつもりでおりましたところ、ちょっと横道に問題が出てきたように思いますし、日ごろ私の疑問にしておることに触れたので、それを伺っておきたいと思います。ちょっと横道にそれますが、かんべんして下さい。  今総理大臣が認定をする、その場合には当然国家公安委員会が関与する、こういうお話でしたが、それは法律的に関与するのではないと理解できます。そこで問題があります。この間から西村長官は、間接侵略というのはあくまでも侵略ということに重点があるのだ、その本質は侵略である、形態は間接であっても侵略である、こう言ったわけです。なるほどそれはお言葉解釈としてはその通りでなければなりません。ところが一体侵略ということになるならば、これに対置すべき行為防衛です。一体警察法のどこをひっくり返してみたら防衛という概念が出てくるのですか。警察法第二条を見ますと、侵略に対処するという任務は警察にはないのです。あったら教えて下さい。
  62. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 今申し上げました第一の点は、自衛隊法の八十五条に、これは飛鳥田委員御承知と思いますが、総理大臣は、第七十八条第一項または第八十一条第二項の規定による出動命令を発するに際しては、長官と国家公安委員会との相互の間に密接な連絡を保つ、この規定を私申し上げたわけでございます。それから間接侵略というものは、一つの形といたしましてはこれは国内的に起こるものであります。外国からの武力行動というようなものとは違いまして、国内的に起こるものです。国内的に起こる事柄に対しましては、治安維持の任務からいたしまして、私は警察の任務に当然入ると思います。言葉にそういう間接侵略という言葉を使おうと使うまいと、これは治安維持の任に当たる警察の当然の任務であると考えております。
  63. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 多分私もそうおっしゃるだろうと想像しておりましたが、そういたしますと警察が最初に出て、あとからそれで足りなくなったときに自衛隊が出るという順序がおかしくないですか。事は初めから侵略の本質を持っておるのです。だから、治安維持を警察がなさるのはけっこうです。しかし当然侵略の本質を持っておる以上、その本質的な部分に対して対置すべき行為というものは、あなたのお説の通り警察はできないでしょう。そうだとすれば、警察で足りなくなったときに自衛隊が出るという言葉がおかしくなるわけです。僕はいやに言葉をやかましく言うようでおかしいですが、そうなる。従ってもしこの自衛隊法第七十八条を正しく解釈しようとすれば、警察の能力が足りなくなったときに自衛隊が出るというのは、「間接侵略その他の緊急事態」と書いてある。その緊急事態の場合だけじゃないですか。間接侵略のときには初めから自衛隊が出なければ、論理の矛盾でしょう。僕は無理なことを求めておるのではないのです。当然の解釈だけを伺っておるのです。そうでないと勝手なことをやられても困るものですから……。
  64. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これは飛鳥田委員のお考えとちょっと違うのであります。間接侵略でありましても、今言いましたようにその実態から考えますと、内乱または騒擾でございます。これがもし警察の手で解決できるならば、私はそれでよろしいのではないかというふうに思うわけでございまして、この場合は警察とは別に自衛隊が出動しなければならない、これは考え方でございます。考え方でございますが、実際の扱いといたしましては、それでよろしいのではないかというふうに考えております。
  65. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それならば間接侵略というものについて、侵略性ということを特に長官が強調なさるのはおかしいじゃないか。それからまた警察法の二条を改正して、自衛隊法七十八条の場合を含めるような改正の仕方をしておかなければいけないのじゃないか、こういう感じが私はします。しかしこれもあなたと私の議論の違いだとおっしゃられればそれきりですが、私はともかく現行の警察法においては少なくとも侵略に対処する——間接であろうと直接であろうと、侵略という本質に対して対決をする行為は任務とされていない、こういうことだけは間違いないと思います。  そこで問題を具体化して参りますために、間接侵略というものの定義をもう少し詳しく伺いたい。と申しますのは、国連でもまた国際法上でも、間接侵略という言葉は非常に議論されているのです。そして実例がたくさんあがっているのです。その一つ一つについてあなた方の見解を明確に伺っておくことは、今後の問題としてかなり重要だろう、こう思いますので、国連で問題になりました間接侵略の事例、これは意見が一致してないのですよ。方々の国で、ある国は賛成した国もあるし、ある国は間接侵略とみなさないという国もあるのですから。いずれにしても議題となった事例について一つ伺いたいと思います。  まず第一は、他国の内部変革または侵略者を利する政策転換の強要、こういうのが問題になっているそうです。しかしこれは非常にあいまいですし、ちょっと私たちもその事例を的確にあげられませんので、その次の問題を伺いますが、内乱の誘発をねらう宣伝、こうなっています。内乱の誘発をねらう宣伝があり、そして現実に騒擾が起きた場合に、一体これを間接侵略と認定なさいますか。
  66. 西村直己

    西村国務大臣 私どもはその場合におきまして、七十八条にすべての条件が該当して参りますれば、そう認定します。該当しなければそうは認定できない。こう思うのでありまして、七十八条には、内閣総理大臣は間接侵略その他の緊急事態に際して、しかも警察力をもって治安維持が困難というか、できないと認められた、こういうふうになっています。ですからへ現実の状態にこういうふうなものが当てはまってくるかこないかの問題になろう、こう思うのであります。
  67. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 長官、ちょっと法律の見方が違いはしませんか。間接侵略その他緊急事態についてというのであって、間接侵略と緊急事態とは二つの現象ですよ。それが二つの要件ではないのですよ。勘違いじゃないですか。
  68. 西村直己

    西村国務大臣 私も法律の専門屋ではないのですけれども、これは一応の、何といいますか、従来の解釈はやはり例示になるわけです。間接侵略その他の緊急事態——緊急事態の一つの例だそうです。
  69. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 法律屋でないことは認めますけれども、あなたの所管の自衛隊法ですから、ちゃんと読んでおいていただきたいと思います。そのことについて私思い出しますことは安保闘争です。安保闘争で警察が大ぜい出てきた。二万名出てきたそうですが、それでなおかつなかなかおさまりそうにない。これはあとで池田さんにも伺おうと思ったのですが、このときに池田さんも岸さんも藤山さんも、あの当時のすべての閣僚は、赤城長官を除いて全部自衛隊を出動させることを要求した。いやむしろ束になって、束になってと言うのも無礼ですが、束になって赤城長官をうんと言わせようとして、自衛隊の出動を要求したという実績があります。あの安保闘争のときも、よその国では盛んに安保闘争を激励するような放送をしてきた、こういう事例もあります。すなわち内乱の誘発をねらう宣伝、こういうふうに池田首相も岸さんもきっとお考えになったのだろうと私は思うのですが、一体こういう場合に内乱の誘発をねらう宣伝、これは間接侵略の要件ですか。間接侵略の具体的な一例になりますか。もっとはっきりお答え願いたい。
  70. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 私どもはこの治安出動命令の条項の発動につきましては、その手段、方法というものももとより大事でありますが、起こりました実態について考えたい。宣伝があったからといって、ほんの小規模なことがあって、暴動とも内乱とも言えないようなものに対して発動するということではない。起こった実態に即して、それがもう警察力で収拾できないという事態になって、しかもそれが外部との連係があるかどうかということに着目をして、間接侵略かどうかということを検討すべきではないか。七十八条の適用自体は、間接侵略というのは今長官もおっしゃいました通り例示でございます。この緊急事態ということが中心でございます。間接侵略に当たるかどうかということは、そのときの事態にあたって考えるべきものだ、こう思います。
  71. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと誘発をねらう宣伝というものは、必ずしも間接侵略の成立要件ではない、こう考えていいわけですか。
  72. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 ある事態がありまして、その事態そのものが相当重大なものであり、その事態と宣伝なり何なりが非常に緊密に結びついておるということが実証されますれば、私は一つの形態の間接侵略と言うこともできるのではないかというふうに考えますが、なおこの点は外務省とも相談をした上で、政府の意思としては決定したいと思います。
  73. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 あと政府統一的な意見を伺わしていただけるということですから、それを伺ってその問題を聞きます。  さらに内乱発生の支援、その支援の形態として幾つかの事例があがっています。たとえば第五列の派遣、特定政党に対する物的あるいは財政的支援、こういうことが議論されているようです。これはアメリカの側から、ハンガリー事件だとかその他について盛んに主張されたことのようですから、あなた方もよく御存じだと思います。内乱発生の支援、これははっきりしておかないと大へんですよ。と申しますのは、現にこのキューバの問題一つを見たって、ケネディがどのような態度をとっているか、アメリカがどんなことをやっているか、こういうことについていろいろ問題があるわけです。ですから内乱発生の支援、その具体的な例として第五列の派遣、これはどうですか。
  74. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 その点に対するお答えは、今の宣伝その他についての考え方と同じでございまして、やはり一つの大きな、重大な事態があるということが前提でありまして、その事態とそれとが直接に結びつきがあるかどうかということを検討して考えなければいけないと思います。
  75. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 六百万人の人口のところに五千人上陸してくるというのはどうですか。
  76. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 それもやはりその当時の事態について考えるべきでございます。ただ場合によりましては、六百万人の人口のところに五千人もの者が入ってくるということになりますれば、それは直接の武力攻撃というように見るべき場合もあろうかと思います。
  77. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その直接の武力攻撃と見られるかもしれないものを、自国の領土内において募兵をしたり、訓練を施したり、訓練場を提供したりするようなことは、内乱発生の支援になりませんか。そういう場合をあなた方は間接侵略と断定なさらないかどうか、これも一つ伺っておきたい。
  78. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これも先ほどから御答弁申し上げております通り、具体的な事態につきまして、その場合に検討しなければいけないと思います。
  79. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それではもう切りがないのじゃないでしょうか。やはり具体的に、国民というものはこういう場合、こういう場合という、かなり安定した法解釈政府が明示しておいていただかない限り、すべてが総理大臣の認定いかんにかかってしまうというような法律を、安心して守っていけない、認めていけないのじゃないか。だから具体的に法解釈というものは、なるほど加藤さんのおっしゃるようにいろいろ事例もありますし、その一つ一つについて明確には言えないでしょうけれども、たとえば他人の財物をその意思に反して侵すような場合を、いろいろな態様があるのをひっくるめて窃盗という形で包括するように、何らかの形の包括、何らかの形の特定が行なわれていなければ、間接侵略という言葉を通じて内閣総理大臣の独裁が成立するじゃないですか。おそらく池田さんはそんなことないでしょうけれども、ヒットラーのような人が現われれば、この法文を利用して独裁を実施しますよ。少し大げさな言い方ですが、そういうふうに間接侵略という言葉を不明確にしておけばやれるのです。そういう点で明確にしてもらわなければ私は困るのじゃないかと思う。それは困難なものですが、しかしある程度の努力はしておいていただかないと困る。現にそういうことは、国連その他の至るところで具体的な事例をあげて討論しているのですものね。よそでやらないで日本で初めてやるというなら文句は言えませんが……。
  80. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 今の点、これは飛鳥田さんのおっしゃった通り、やはり国際法秩序というものは国内法秩序とは違いまして、まだそれほど固定化し、定型化していないのです。そこに大きな問題があり、今の国際連合あたりにおきましても、間接侵略の定義をどうするかということについて、いろいろ意見があるというのが実情であります。またこの条文適用につきましては、あなたはその間接侵略というところに重点を置いてお述べになっておりますが、私どもが先ほどから述べております通り、間接侵略その他の緊急事態に際して、総理大臣が出動命令を発するということでございまして、緊急事態かどうかということの認定の方にむしろ重点を置いて考えたいと思います。それならどの程度まで内乱なり何なりが起こったら緊急事態かとおっしゃいますと、それはなかなかむずかしい。山を定義してみろとか川を定義してみろということに類するような場合も私は出てくるかと思います。しかしこれはおよそ常識ある点が観念としてはあるのではないか、そういう事態に即しましてというふうに考えます。
  81. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 都合が悪くなると緊急事態の方に逃げて行ってしまうのですが、この前長官石橋委員質問に対して、十三個師団の編成ということは間接侵略というものに相当ウエートをかけて、そういうもののウエートが増大してきたことを認めるのだ。だからこそ十三個師団、こういう説明があって、間接侵略という言葉が非常なウエートでもって、長官のお言葉の中から浮かび上がってきたから僕は聞いているのですよ。そんなものは大した問題じゃないのだ、緊急事態ということで一点張りでいくのだということならそれでけっこうです。前の長官言葉を取り消して下さればけっこうです。
  82. 西村直己

    西村国務大臣 私が石橋委員に対しましてお答えいたしましたのは、自衛隊の任務に変わりはない、直接侵略ですか、それから間接侵略、その他緊急事態等を含めまして、同時に公共秩序の維持、これはたしか自衛隊の任務に書いてあります。その意味安保体制等におきましても内乱条項等も変わって参りましたから、そういう点も考慮しながら、自衛隊の任務を、言いかえれば万全を尽くすような意味で今回の改正法案等も出ておる、こういうふうに申し上げたのであります。  そこでこの間接侵略も一つの事例であります。ですから、われわれは間接侵略その他緊急事態に対処してやる。ただそれでは間接侵略はどういうものをさすかといえば、先ほど最初に防衛庁としてはっきり申し上げておるように、窃盗が人の財物を盗んだ、こういうことになれば、同じように外国の一国または二国による教唆、扇動に基づく、こういうことで御説明しておるのです。大体その程度のことは私は御理解願えるのではないかと思うのであります。そこでその間接侵略が同時に態様としては緊急状態となれば、しかもそこに警察力がすでに困難であれば、総理大臣が認定をして、しかもそれは国家公安委員会等と十分な連絡を保ちつつというふうに八十五条ですか、規定をしております。率直に申し上げますと、すなおにこれを見ていただきますれば、また良識をもって御解釈願えば、大体の判定というのは出て参ると思います。先ほどのヒットラーのような総理大臣が出たら乱暴ではないか、確かにそういう議論も立つと思います。しかしそれでは法律だけでもって私どもはそういう独裁者を押えることができるか。問額は法律以前の問題になってくるのではないかと思います。独裁的な場合には、形はなるほど法律で押えるようにできましても、問題は政治全体として、政治のあり方にもっと疑問があるのではないかと私は思うのであります。
  83. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 こっちをつけばあっちへ逃げる、あっちをつけばこっちへ逃げるという答弁ですが、そういう国民の民主的な教養も覚悟もみな必要なんです。やはり間接侵略という言葉を、加藤さんのおっしゃるように、国際法上の未確定な概念を、国内法の中に持ち込んだところに問題があるのですよ。従って問題のあることを承知している以上、民主主義を守りたいとおっしゃる皆さん方ですから、これについて限定的な解釈をきちっとしておかない限り、この条文一つを使っても当然ヒットラーのようなことはできるのですよ。ですからきちっとしておいていただきたいというのが、われわれの要求なんです。そうしてむずかしいからその努力をしていただきたいというのが、われわれの願いなんです。まだほかにも、特定政党に対する物的あるいは財政的支援というようなことも例にあがっていますし、破壊行為の奨励ということも例にあがっています。平和的な紛争解決の拒否ということも事例にあがっています。そういうものを含めてきちっとした定義を今度は一つ作って下さい。そうして少なくとも防衛庁の見解として、有権的な解釈をしていただく必要があるのじゃないか、こう私たち考えています。従って間接侵略という言葉をどう解釈するかということをはっきり定めていただきませんと、次の問題にからんでくるわけです。たとえばこの間から盛んに安保体制安保体制とあなた方はおっしゃっているが、安保体制との関係上も、間接侵略という定義をきちっとしておかないと、大へんなことが起こるのじゃないでしょうか。その点についてどうお考えですか。
  84. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 間接侵略の定義につきましては、おっしゃるところはよくわかるのでございます。ただこれは今言いましたようにやはり国際的にもいろいろ問題になっていることでございまして、日本だけひとりこういうふうに解釈するというやり方がいいのかどうかという点につきましては、なお検討を要する問題があると思います。  なお自衛隊法自体の適用につきましては、先ほどから御説明申し上げておりまする通り、間接侵略その他の緊急事態でございまして、緊急事態というものがこれは問題になるわけでございます。本質的に間接侵略であるから、七十八条の中でも特別な行動をとるということではありません。七十八条の適用がありました場合におきましては、それに基づく手続なり権限なりは別の条文にきめてあるわけでございまして、これはよく御承知のことであります。  それから安保条約の関係でございますが、新しい安保条約におきましては、先ほど申し上げましたように、「一又は二以上の」云々という字句は削除されております。今米軍の出動を見る条件といたしましては、新安保条約の第五条にあるのですが、わが国の領域に対する武力攻撃、これが侵略であります。これがあるかどうかということでございまして、間接侵略そのものがその条文に該当しない限りは、これは第五条の問題にはならないと思います。
  85. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この第五条の武力攻撃に関して、この武力攻撃をどう解釈するかという議論が当然あるはずです。NATO条約でも同様な言葉が使われているわけです。このNATO条約の武力攻撃という言葉について、アチソン国務長官は、この条約が締結公表をされたのちに、ここにいう武力攻撃の中には、第三国の干渉または教唆に基づく大規模の内乱または騒擾を含むものであるという、締約国間の有権的解釈を公表されたのであります、こういうふうに外務省の人は発表しております。この武力攻撃という言葉の中には間接侵略を含んでいるのだという解釈が、NATO条約締約国各国間における有権的解釈として確定しているのだ、こう言うのです。従って日本の場合にも同様の解釈をせられなければならぬと思うのですが、いかがでしょうか。
  86. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 その話は、なおよく外務省と打ち合わせてみませんと、私ここで確定的な御返事をすることをちゅうちょいたします。お許し願いたいと思います。
  87. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それはちゅうちょいたしますとおっしゃったって、現実にあなた方の関係のある間接侵略の問題なんですよ。そういうことをちゃんとアチソン国務長官が言っているのですよ。しかもNATO締約国各国間の有権的な解釈として確定しておるのだ、こういうのです。それではそれはそれでよろしゅうございます。さっきの内乱のいろいろな態様と同時に、あとで聞いて次会にお教えいただけばけっこうであります。  そこで問題があります。というのは、この武力攻撃という言葉について、NATO締約国各国は、武力攻撃という言葉だけでは不明確だから、これに内乱、間接侵略を含めるか含めないかということを有権的にちゃんと解釈統一しているのです。日本政府は、長官に伺いますが、この第五条について間接侵略は含まないとか含むとかという有権的な解釈をアメリカと締結していますか。
  88. 西村直己

    西村国務大臣 私どもはそういう解釈についてのことは別にきめてはないと思います。
  89. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 政府だって、この間接侵略という言葉が非常にあいまいもことしておって、使う人の勝手に使われているということは御存じでしょう。国際法的に定義がないということは御存じでしょう。いかがですか、長官
  90. 西村直己

    西村国務大臣 安保条約第五条に基づく武力攻撃は、結局は、今NATOの例をお引きになりましたが、NATOはNATOにおいてのまた特殊事情があろうと思います。その国際間の環境等もありましょう。また言葉の問題でありますれば、その解釈とか運用とか、それぞれの地区の安保体制の運用者のトップの考え方というものが大いに影響してくる。われわれの方といたしましては、特にアメリカとこの問題を取り上げて議論しませんでも、御存じのようにNATOのようにたくさんの国が集まってできているのではありません。日本の場合は、日米間の意思の合致でできております。従いましてわが方としましても、武力攻撃は一国が他国に対して組織的、計画的な武力を行使する武力の攻撃だ、こういうふうに解釈し、国会でも答弁を今までも申し上げております。これはわれわれとしては、アメリカ側においても異論のないところである、こういうふうに考えておりますから、これは別に安保協議会等で論じ合う必要はない、こういうふうに考えております。
  91. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 大事なことですから念を押しておきますが、第五条の武力攻撃の中には間接侵略は含まないということについて、日米間に意見の不一致はない、意見は一致している、こう伺ってよろしいのですね。そう長官の責任において断定なすってよろしいわけですね。
  92. 西村直己

    西村国務大臣 間接侵略が含まれるか含まれないかというような議論は、われわれはいたしておりません。問題は武力攻撃とはどういうものだというものに対して、もう一度申し上げますが、一国があるいはその他の国々が他国に対して組織的かつ計画的に武力をもって攻撃する、こう考えております。ですから、その態様はおのずからわれわれといたしましては、間接侵略という言葉とはかなり概念は違ってくると思います。ただ問題は間接侵略の場合でも、計画的、組織的に不正規兵等を投入してくる場合においては、私どもこれを武力攻撃と見るかどうか、そういうような具体的な判定の困難な場合においては、安保条約による随時協議と申しますか、そういうもので意思の合致は見ていっていいのではないか、こう思います。
  93. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと第五条の武力攻撃というのは、場合によると間接侵略的なものも含む場合もあるかもしれないということですか。どうもその辺明確でないのですよ。はっきりして下さい。
  94. 西村直己

    西村国務大臣 ですから、われわれの方は問題の取り上げ方を武力攻撃の方から見ております。それがわが国に対して組織的に、計画的な——だからほんとうにただ五列を入れたとかどうとかいうことでなくて、組織的に、計画的に、しかも武力による攻撃、こういうふうに考えておるわけでございます。
  95. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 押し問答してもつまらぬのですが、それでは間接侵略の場合も含まれてしまうじゃないですか。だってあなた御自身おっしゃったように、不正規兵を大量投入してくるとか、それから財政的な物的な援助をするとか、向こうの侵略国でできた民間団体が義勇兵を送ってくるとか、みんな武力攻撃ですよ。それでは入るのですな。
  96. 西村直己

    西村国務大臣 もう一度申し上げますが、ですからわれわれの方としては、武力攻撃とはという場合において、もちろん武力による攻撃ですが、それが前提としては外部から組織的に計画的にということで、われわれは国会に向かって国民に向かってお示しをし、その間において日米間において異論はない。そこで、たとえば間接侵略が全部入るとは言えないでしょう。間接侵略の態様にもよりましょう。たとえば不正規兵が相当組織的にかつ計画的に武力による攻撃を加える、この場合においては武力攻撃だ、こう解釈すべきでありましょう。ですから、われわれこの間接侵略のどの部分がどこまで入る、あるいは間接侵略が入ると簡単には言い切れぬのですけれども態様によっては、武力による組織的、計画的な態様を持ってくれば武力攻撃、五条に言うものに取り上げざるを得ない。ただその態様というものが、非常に複雑な形で現われるような場合におきましては、それは日米間にさらに協議等も重ねていくということは当然でありましょう。
  97. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると、間接侵略が武力攻撃という形態を伴う限り入る、こう解釈していいのだろうと思います。そういたしますとアチソン氏が言うようなNATO諸国が有権的に解釈を確定しているような、第三国の干渉または教唆に基づく大規模の内乱または騒擾は、この武力攻撃には絶対に含まないという解釈でいいのですね。もう一度読みましょう。第三国の干渉または教唆に基づく大規模の内乱または騒擾、これは絶対入らない、こういうことでいいのですね。
  98. 西村直己

    西村国務大臣 それは私どもは、従ってその態様が武力攻撃になって現われてくれば武力攻撃として今度は安保の対象になります。武力攻撃でない場合においては、おそらく第五条の武力攻撃としては取り上げないということであります。
  99. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 かなりはっきりしました。間接侵略も武力攻撃の形態をとる場合には第五条に該当し、武力攻撃の形態を伴わないときには第五条の武力攻撃の中には含まれない、そう解釈していい。それでは伺いますが、武力攻撃の形態を伴うとおっしゃるのですが、どの程度をもって武力攻撃とみなすのでありますか。今度のキューバの問題でも、一、二のアメリカの人が上陸軍に参加をしており、つかまって処刑をされたという事例が出ていました。それがほんとうであるという断定を私はここでするわけではありませんが、そういうニュースがありました。一体どの程度なんですか。
  100. 西村直己

    西村国務大臣 一国またはその他が武力攻撃を加える。従ってそこに何らかの形で一国の意思と申しますか、武力攻撃を加える国の意思が出てなければいかぬと思うのであります。ただアメリカの、たとえば今の設例で申しますと、一人の人間や二人の人間がぽこっと入った場合に、はたしてそれがその所属する国の意思をある程度出しているかどうか、そこが問題になろうと思います。
  101. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると武力攻撃を伴う場合、その武力攻撃は他国の侵略的意図をちゃんと看取し得る段階に達した場合でなければならぬ、こういう意味ですな。
  102. 西村直己

    西村国務大臣 もちろんその判定は、いろいろ議論が出やすいところでありましょう。また形態によってむずかしい問題も起こります。それは飛鳥田さん御存じ通りでありますが、しかし明らかにとかなんとかいう言葉の表現だけで済むかどうかの問題でありますが、少なくともそれが客観的に見て一応妥当と思われる意思が加わっている、こう見なければいかぬと思います。
  103. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこで、うしろにいらっしゃる専門家に相談なすってけっこうですが、自衛隊法の七十六条と七十八条とを一つ見て下さい。ここには「外部からの武力攻撃」、こういうふうに明確にきちっとしているわけです。それから七十八条は「間接侵略」、こうなっております。外部からの武力攻撃を含む間接侵略なんという言葉はない。さっきの第五条の武力攻撃の解釈の仕方でだんだん苦しくなって、変な解釈に達せられますと、七十六条と七十八条の間に大きな矛盾が出てきますよ。おかしいじゃないですか、もっときちっとして下さい。
  104. 西村直己

    西村国務大臣 七十六条はこれはやはり国際間の関係です。ですから外部から、他の国からの武力攻撃、こう解釈していただけばいいと思います。
  105. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 関連して。それでは七十六条の「外部からの武力攻撃」の場合にも、あなた方がしょっちゅう使っておられる間接侵略という形も含まれておる、こういうことですか。
  106. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 おっしゃる意味はわかります。ただこれは七十六条と七十八条とを一緒に読んでいただきたいと思います。この七十六条ではとにかく武力攻撃を押えまして、外部からの武力攻撃に対して七十六条の防衛出動を適用する、これは国連憲章五十一条の規定に対応する規定でございます。七十八条の方は、「間接侵略その他の緊急事態に際して、」どうするかということでございまして、この間接侵略そのものよりも、そういう理由であっても緊急事態が起こるかどうかということで、七十六条と七十八条とを対比して、この場合は防衛出動、この場合は治安出動、こういうことになるわけであります。
  107. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 おかしいですよ。あなた方の説でいっても、七十八条の場合の間接侵略その他の緊急事態のうちで、最も代表的なものが間接侵略なんでしょう。そういう御説明でしょう。例示したとさっきおっしゃっているのだから……。そうすると間接侵略というものは、七十八条のいわゆる命令による治安出動の対象になるものなんですね。ところが今飛鳥田委員とあなた方とのやりとりを聞いておると、そういう間接侵略もあるが、七十六条でいう防衛出動の対象となるべき外部からの武力攻撃に含まれるべき間接侵略もある、こういう解釈になっているのですよ。だから私は念を押しているのです。七十六条の防衛出動の対象となる外部からの武力攻撃、この字句の中に該当する間接侵略の形態があるのですか、こう聞いているのです。
  108. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これは先ほどから申しておりまする通り、安保条約の五条の関係におきまして、また七十六条の関係においては、武力攻撃というものを押えておる間接侵略というものの形態が必ずしも明瞭ではございません。そこでいろいろ議論が残るわけでございますが、一応考えておりまするのは、一または二以上の外部の国の教唆または扇動による大規模の内乱、騒擾、これになりますと、これは外部からの武力攻撃ということには該当しない。もしその間接侵略という定義をそれに限定して考えますと、私は該当しないと考えます。
  109. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 これは私の考え方、見方ですが、この自衛隊法ができた当時の間接侵略についてのあなた方の定義と、現在の間接侵略についての定義とが違うのですよ。そこに問題がある。だから受田さんがこの間から言っているような議論も出てきているのですよ。あなた方が今とっている解釈は、この七十六条の外部からの武力攻撃の中に間接侵略という形態が入っているのです。この自衛隊の設置当時は、間接侵略というのはあくまでも内乱で、内乱がちょっと変形したものだ、こういう解釈でこの法律はできておる。ところが最近の政府与党の見解では、この外部からの武力攻撃の色彩を帯びた面を、多分に間接侵略と言っているのですよ。これは重大な問題ですよ。何としてもこれは池田内閣としての意見統一しておいてもらわなければ困りますよ。この外部からの武力攻撃の中に間接侵略という形態は入るのか入らないのか。入るとすれば、簡単に国会の承認もなしに、これは直接侵略じゃない、間接侵略だからというふうな口実さえ設ければ、どんどん防衛出動もできるという受田理論も出てくるのですよ。だから当然間接侵略も国会に諮る対象とすべきじゃないかという受田理論も私は出てくると思う。  それからもう一つ、この七十八条で、盛んにあなた方説明しておられる間接侵略、この場合に、これの間接侵略に対処する第一番目の責任を持っておるのは警察だということを言っておるのですね。間違いありませんか。
  110. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これは先ほどから申しております通り、「間接侵略その他の緊急事態に際して、」ということでありまして、間接侵略とその他の緊急事態とを分けておらないわけでございます。この条文解釈上は私はそういうことになっておると思います。
  111. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると、これは自衛隊法の第三条の任務ともちょっと矛盾してくるのではないかという感じを持つのですが、間接侵略に対処する主たる任務を持っておるのは警察じゃなく、自衛隊じゃないのですか。警察がどうにもし切れなかったときにのみ自衛隊が行くのです。間接侵略の場合そういう説明をしておられるが、そうじゃないですよ。自衛隊法の第三条を読んでも、間接侵略に対処する主たる任務を持っておるのは自衛隊じゃないでしょうか。ここにも矛盾があります。私はこの二つの問題について、しからば早急に政府統一見解を出していただきたい。まず七十六条の「外部からの武力攻撃」というものに間接侵略という形態が含まれるか含まれないか。それからもう一つは、あくまで間接侵略に対処する第一段階の責任は警察にある。警察がどうにもならなかったときにだけ自衛隊は出るのだという解釈が正しいかどうか。この二つについての責任ある答弁を、池田内閣としての統一した見解を一つ出していただきたいと思います。
  112. 西村直己

    西村国務大臣 一応はっきり申し上げておきますが、私も防衛局長とこれは同じ読み方をしておるのでありまして、七十六条は、外からの武力攻撃があれば、これはおそらく直接侵略がほとんど大部分でありましょう。しかしさっき申し上げたように、間接侵略の場合も武力攻撃の外部からの形態がはっきりしておれば、これは防衛出動として当然国会の御承認を得る、事前に。それから今度はおそらくそういうような事態が起こる場合におきましては、緊急事態になっておると思うのであります。この緊急事態に対して一般警察力は、当然防衛出動の場合にじっとしておるわけではございません。おそらくいろいろな緊急事態が起こりやすい、また起こっている場合があります。その場合には警察は当然警察自体の仕事をやっておりますから、その支援でできない場合において、その部分をこの七十八条は私は規定しておると思うのであります。それから三条は何と申しますか、一つの目標としてここに掲げました任務、直接侵略、間接侵略の任に当たる、これを三条は規定してある、こういうふうに解釈すべきではないかと考えております。
  113. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは納得できないですよ。七十六条と七十八条とわざわざ二つに分けておる理由が不明確じゃないですか。外部からの武力攻撃というものと間接侵略というものと、ちゃんと分けているのですよ。自衛隊法によれば外部からの武力攻撃があった場合には、あくまでこれに対処するのは自衛隊であり、その自衛隊は、出動する場合にこれは国会の承認を得なければならぬ、こういう規定になっている。ところが間接侵略その他の緊急事態の場合は、これは治安出動なんだ。だからこれに対処するのは主として警察なんだ。自衛隊はその警察がどうにもし切れなかったときに初めて出るのだ。あくまでも純然たる国内問題だから、これは国会の事前承認を必要としないという形が、現行法でとられているのですよ。私はおそらくこれは立法当時、制定当時の考え方はそうであったろうと思う。ところがその後だんだんこの間接侵略というものに自衛隊自身もウエートを置き出した。ウエートを置き出したが、それと同時に間接侵略の定義も変わってきて、非常に解釈が今広がってきているのですよ。そしてこの七十六条でいう「外部からの武力攻撃」に含まれる間接侵略もあるような解釈を最近とり始めてきている。だからその点、それでははっきりと外部からの武力攻撃、この七十六条でいう「外部からの武力攻撃」の中に含まれる間接侵略という概念がありますか、この点を統一見解を出して下さい。これに答えて下さいよ。もし時間が必要なら今休憩していただいて、政府のしっかりした答弁をしていただかなければ、大へんな問題ですよ。休憩していただいていいです。ちょうど昼休みですから、暫時休憩して下さい。再開冒頭にお伺いしますから……。
  114. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 おっしゃる通り、間接侵略ということの解釈が明瞭でないことからくる問題であると思います。七十六条の「外部からの武力攻撃」に対しましては、先ほど長官が御答弁になりました通り、その形を押えまして、直接侵略でもまた間接侵略でも、外部からの武力攻撃であれば七十六条の適用がある。これは七十六条の適用があるかどうかということは、一つには八十八条等によりまして、国際的な問題としてこれを律するのであります。七十八条の方は、国際的な関係に至らない自衛隊の武力行使の問題でございまして、この権限等をごらんになりましても、国内法、国内問題として適用しておるわけでございます。
  115. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんなことをおっしゃるなら、七十八条から間接侵略を抜くべきじゃないですか。代表的な例示事項としてあげておいて、そんな解釈はとれませんですよ。そんな解釈をとるなら、少なくともこの点だけでも早急に削除修正の提案をすべきですよ。だから、そんな簡単に言ったって、その答弁で私は納得しませんよ。最も代表的なものとして間接侵略をあげているのじゃないですか。七十八条の「その他の緊急事態」の例示事項として……。
  116. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これは削除するということではないと思います。私どもの今考えておりまする間接侵略というものの大多数は、これは七十八条には該当すると思います。ただ七十六条に該当する間接侵略の形態というものがあるかないかということが今問題になっておりまして、これは間接侵略であっても、外部からの武力攻撃に該当すれば七十六条でいこう。七十八条の間接侵略は、これは国内法の関係で律せられる場合が大部分でありますから、これを削除するということにはならないと思います。
  117. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 だから私はさっきから、間接侵略というものをもっと厳格に定義しなさいと言っているのですよ。ところがその間接侵略というものを厳格に定義もできず、一々例をあげて伺おうとすれば、外務省に相談してみなければまずいとおっしゃる。そうして今度石橋君、私たちから純粋な他の条文から伺っていけば、間接侵略の形態が明らかでないからそういうことになるのだと言う。それでは一体どうなるのですか。ですから石橋君の言うように、七十八条から間接侵略という言葉を削除するか、それでなければ、私がさっき冒頭申し上げたように、間接侵略というものをもう少し正確に法律的に定義をするか、どちらかしかないじゃないですか。どうですか。
  118. 西村直己

    西村国務大臣 私はどうもその御議論賛成できないのでありまして、七十六条はあくまでも「外部からの武力攻撃」というところで、事前承認による国際間の問題として武力攻撃がある。ただたまたまその中には間接侵略的な、言いかえれば、必ずしも正規兵ではないけれども、不正規兵の形において組織的に計画的に、義勇軍と申しますか、そういうようなものが武力攻撃を加えてきた場合には、やはり七十六条で動かす。それから第七十八条は、なるほど間接侵略というものの言葉意味が、外国の教唆または扇動による、こういうことで先ほど来説明しておりますが、その程度の、一つの例示の中で緊急事態という、あくまでも国内の内乱、騒擾等、緊急事態でしかも警察法をもってできない、国際間の関係は直接的には非常に薄いというものであります。片方は組織的に、しかもその意思がはっきり現われてきて、しかも正式の軍隊でないものが武力攻撃を加えた場合を七十六条の防衛出動で押える自衛権の発動、片方は治安維持の仕事であります。言いかえれば、命令による治安出動、こういうふうに解釈していただくならば、必ずしもこれをたって削除しなければならぬということにはならぬと思うのであります。むしろ削除する方が事態を混乱させはせぬかと思うのであります。
  119. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これも前に言ったことですが、だからこそ私は、アメリカとそういうあなたの解釈が一致していますかということを冒頭に聞いてあるのですよ。ところがアメリカは、少なくともNATO条約に関しては、今アチソン長官の言明のような有権的な解釈をきちっと出している。だから国際法的に言っても、あなた方のお説は少し少数説のようです。そういう関係で、しかも安保条約第五条との関係において間接侵略という問題はかなり重要な問題であるだけに、あなたがおれたちはこう解釈するというだけでは済まないのですよ。外国との関係、アメリカとの関係があるのです。そういう点で非常な混乱が起きるから、最初に私は、アメリカとあなたのおっしゃるような解釈統一してあるのですかと聞いたら、統一はしてないが意見の一致はしている、こういうお話だった。ところが聞けば聞くほど八幡のやぶ知らずのように、迷路にまぎれ込んでしまう。そういう迷路にまぎれ込んでしまうような、意思統一というものはしてあるのですか。
  120. 西村直己

    西村国務大臣 安保条約の解釈につきまして、私は迷路とか八幡のやぶ知らずではないと思います。武力攻撃という第五条に対しましては、先ほど来申し上げましたような、一国が他国に対して組織的、計画的に武力を投入する、これについては別にお互い同士異論がない。その場合に組織的、計画的に、しかも一国の意思を表わして出してくるなら、形は正規兵でなくても武力攻撃であると受け取るべきである。そこでNATOの場合は、私は日本安保体制とはだいぶ環境その他が違うと思うのでありまして、そこで集まって有権的な解釈とかなんとかする。片方は日米間の安保体制、二国間の問題であります。ですから私は、安保体制の武力攻撃の解釈について、あえて日米間に意思を強く求めなくても、おのずからそこにわれわれの意思と向こうとは一致しておると解釈していいのではないかと思います。
  121. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは安保条約についての御見解をお伺いしますけれども、第七十六条でいう武力攻撃と新安保条約の五条でいう武力攻撃とは同じですか。
  122. 西村直己

    西村国務大臣 私は同じと考えております。
  123. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 とんでもない話です。自衛隊法の七十六条では「外部からの武力攻撃」となっております。新安保条約ではただ「武力攻撃」、旧安保条約では「外部からの武力攻撃」で、旧安保条約と新安保条約とでは違うのですよ。前の安保条約では「外部からの武力攻撃」とあって、この自衛隊法と符節を合わせておった。新しい安保条約では「外部からの」を削除して、単なる「武力攻撃」になっている。これでもなおかつ同じですか。それなら何のために「外部からの」を取ったのですか。
  124. 西村直己

    西村国務大臣 私当時の経緯は十分は存じておりませんが、今事務担当の者から聞きましても、国際連合憲章の文章にのっとったので、その趣旨は何ら変わってないそうであります。
  125. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんなことはないですよ。前は「外部からの攻撃」とそれから間接侵略の定義として、加藤さんのしょっちゅう使う一つまたは二以上の外国の教唆、扇動によって起きたと思われる大規模な内乱、騒擾とが並列されておった。ところがこの後者の内乱条項と言われておった間接侵略、こちらの方は今度の新しい安保条約から削除されたのですよ。それと同時にこの「外部からの武力攻撃」という面の「外部からの」を取ってしまっているのです。ここでも変化が現われているのです。最近この間接侵略の考え方というものが、自衛隊法制定当時と、あるいは旧安保条約、新安保条約制定当時と非常に変わってきているということです。だから何としても間接侵略というものの定義をはっきりさしてもらわなければ、法自体の適用を誤まりますよ。あなた方は削除する必要はないとおっしゃっておるけれども、少なくとも削除する必要がないならば、七十八条で言う間接侵略というものはどういうものだという、きちっとした法制上の定義がなくちゃいけませんよ。あなた方の理屈で言うならば、外部からの武力攻撃を伴わない間接侵略とかなんとか、はっきりしないことにはつじつまが合わないじゃないですか。あるときには七十六条の間接侵略、あるときには七十八条の間接侵略、そんなことでは法の適用を誤まるし、飛鳥田さんがさっきから心配しているようなとんでもない、総理大臣が何でもできるということになりますよ。私はもう少しこれは慎重に統一的に見解をまとめて、われわれが納得できるようにぴしゃっとした回答をいただきたいと思います。幸いにもう昼休みの時間ですから、休憩して下さい。水かけ論を言ったって同じですから。われわれもまた意見統一をはかります。
  126. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 七十六条と七十八条との関係につきましては、私どもは間接侵略というものを、先ほどから申し上げております通り、一または二以上の外部の国からの教唆または扇動による大規模な騒擾または内乱というものが、その典型的なものであろうというふうに考えておるわけであります。そこで今の石橋さんのお話でございますが、七十六条と七十八条とをあわせて見ますると、もしかりに間接侵略というものの定義が広くなって、七十六条に該当するようなものが出てきた場合は、この七十八条の間接侵略という言葉は、七十六条に該当しない、七十六条に該当するものを除いた間接侵略というふうに解釈しなければならない、これは当然そういうふうな解釈になると私は思います。
  127. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 あなたは間接侵略の定義というのを、いつ開いても旧安保条約を引用しているのですから、旧安保条約を思い出して下さいよ。旧安保条約では外部からの武力攻撃という概念が一つありましたよ。それからもう一つ、あなたが盛んに間接侵略の定義として述べられる条項がもう一つあった。内乱条項と明らかに違うのです。外部からの武力攻撃と間接侵略と明らかに違うのです。だからこれも分けてあるのですよ。今度はあなたが間接侵略、間接侵略と言っておるものの一部が、こっちに入ってきておるじゃありませんか。そうなると旧安保条約で分けておったのすらおかしいということになりますよ。何のためにあのときに外部からの武力攻撃、もう一つは一または二以上の教唆、扇動によって発生した大規模な内乱、騒擾と分けておりましたか。あなたはその後者の方は間接侵略だと盛んにいつも説明しているじゃありませんか。そんなこと言ったってつじつまが合いませんよ。それなら、あなたの解釈なら、ああいうふうに旧安保条約で二つに分けておったのはおかしいということになるじゃありませんか。
  128. 久野忠治

    久野委員長 ちょっと速記をとめて下さい。   〔速記中止〕
  129. 久野忠治

    久野委員長 速記を始めて下さい。  本会議散会後再開することとし、この際暫時休憩いたします。    午後零時四十五分休憩      ————◇—————    午後三時十一分開議
  130. 久野忠治

    久野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、加藤官房長より発言を求められておりますので、これを許します。加藤官房長。
  131. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 午前中の当委員会におきまして問題になりました点につきまして、法制局とも打ち合わせた結果をお答え申し上げます。  自衛隊法の第七十六条に言っておりまする外部からの武力攻撃というのは、日米安全保障条約第五条と同様でありまして、他国のわが国に対する計画的、組織的な武力による攻撃をいうものであります。自衛隊法の第七十八条の間接侵略というのは、旧友保条約の第下条の規定にありました または二以上の外国の教唆または干渉による大規模な内乱または騒擾をいうものと解釈し、現象的にはいろいろございまするけれども、本質的にはこういうものと解釈して、従来そのように申し上げておるところでございます。この意味の間接侵略は、原則的には外部からの武力攻撃の形をとることはないであろうと思うのでありまするが、その干渉が不正規軍による侵入のごとき形態をとりまして、わが国に対する計画的、組織的な武力攻撃に該当するという場合は、これは自衛隊法第七十六条の適用を受け得る事態であると解釈するわけでございます。結論的に申し上げますれば今の通りであります。
  132. 久野忠治

    久野委員長 質疑を継続いたします。石橋政嗣君
  133. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今のお答えでもはっきりしてないと思うのです。一番わかりやすいのは、午前中にもちょっと申し上げたように、旧安保条約と新安保条約とを比べてみたら一番わかると思うのです。旧条約においては米軍が出動できる場合、二つの規定がございました。直接外部から武力攻撃があった場合、それからもう一つは、日本政府の明示の要請を必要とはしましたけれども、とにかく今間接侵略の定義として官房長が述べられた一または二以上の他国の教唆、干渉、これによって国内に発生したと思われる大規模の内乱、騒擾、この場合にも米軍は出動できる、こういう二つの、いわば直接武力攻撃があった場合と、いわゆる間接侵略という場合と二つある。ところがこの間接侵略の面は、今内乱条項という言葉で言われておった。私はおそらくこの自衛隊法七十八条にいう間接侵略、これであったと思う。ところが新しい安保条約ではこの内乱条項は完全に削除されて、そして武力攻撃一つだけになったわけです。ところがこの武力攻撃の中には従来の内乱条項は入ってない、こういう解釈政府は一貫してとって参りました。そうしますと、どう考えても旧安保条約でいうところの外部からの武力攻撃、これをそのまま持ってきているのが自衛隊法の七十六条、それから内乱条項といわれる条項をそのまま持ってきているのが私は七十八条だと思う。ところがこの武力攻撃の中に、この間接侵略と言って説明してきたものの中の一部分であろうと何であろうと含まれるということになると、安保条約の面でも武力攻撃の中にその従来の間接侵略、内乱条項といわれたものの一部分が入るということになってきますよ。私はそういう解釈をとっていいのですかと言っておる。そういう解釈をとられたら、従来安保委員会でもう盛んに総理も外務大臣もあるいは法制局長官も条約局長も答弁しておられたことと食い違ってくるじゃありませんか。全然この外部からの武力攻撃の中には間接侵略というものの中に含まれる要素のものは入ってないのじゃないですかと、こう言ってきているのですが、問題は入るのですか、入らぬのですか。
  134. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 この問題は、安保条約の審議の際に石橋さんから詳細な御質問がございまして、政府の方から答弁しておるわけであります。ただ御記憶にあると思いますが、旧安保条約第一条の外部からの武力攻撃と、いわゆる内乱、一または二以上の外部の国による教唆または干渉による大規模の騒擾、内乱、これはオーバーラップするという面があり、内乱条項そのものは削除されたけれども、今言ったオーバーラップされた部面は残っておるのだということを、当時政府側としては答弁しておるのでございます。
  135. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 いわゆる内乱条項は全然削除されて、今度の新しい武力攻撃の中には入らぬという解釈なんです、政府解釈は。今あなたのお述べになった解釈でいうと一部分は入るということになる。どうしても食い違ってくるのですよ。私はそこのところが不明確だから間接侵略というものの定義がぴしっとしていなければ大へんな問題になると、こう言っておるわけです。大臣、どうなんですか。その間接侵略というものの定義を、官房長は今まで旧安保条約の内乱条項そのまま持ってきて説明しておられるのです。その点は間違いない。そうしてこの旧内乱条項は新しい安保条約のいわゆる武力攻撃の定義の中には全然入らないと、こう説明しておる。それで新しい安保条約の中の武力攻撃というものには入らない。そうしなければ、さっき言ったあなたの答弁とまた違うじゃありませんか。前段であなたがおっしゃったことと、旧安保条約の、いわゆる武力攻撃というものと外部からの武力攻撃というものとイコールということでは、これはまたつじつまが合いませんですよ。そうじゃないですか。この自衛隊法七十六条でいう外部からの武力攻撃というものは、旧安保条約で言ういわゆる外部からの武力攻撃に相当する。ところが七十六条の外部からの武力攻撃は、新安保条約第五条の外部からの武力攻撃とイコールだと今おっしゃったじゃないですか。そうすると、この自衛隊法七十六条の外部からの武力攻撃というものを仲介にして、これはイコール旧安保条約の外部からの武力攻撃、こういうことでイコール新安保条約の外部からの武力攻撃、こういうことになりますよ。それではつじつまがますます合わなくなる。旧安保条約の外部からの武力攻撃と新しい安保条約第五条の普通の武力攻撃と、これを仲介にしてイコールということになりますよ。それでは平仄が合わないですよ。どうですか。
  136. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 その点は私の答弁が足らなかったかもわかりませんが、当時の安保条約審議の際は、そういうふうな外部からの干渉による不正規軍等の侵入がありました場合には、現象的に見れば内乱条項にも該当するし、また外部からの武力攻撃にも該当する、オーバーラップするのだということが当時の答えでございます。この武力攻撃というものは、でありまするから、国連憲章の五十一条の武力攻撃と同じに解釈しておる。その武力攻撃の解釈といたしましては、わが国に対する外国の組織的、計画的な武力による攻撃をいうのだ。通常の場合は正規軍による侵入という形でありましょう。しかしそれが不正規軍等による侵入というものもあるかもわかりません。またその場合は、これは言うてはおりませんけれども、間接侵略と、一つの形態として間接侵略というものの観念の立て方によりまして、そういうふうに見得るかもわらぬ、しかしこれは武力攻撃であるという点において押えておるわけであります。現在の自衛隊法の直接侵略と間接侵略という分け方でなしに、外部からの武力攻撃というので第七十六条、七十八条は間接侵略その他の緊急事態、こういっておるわけでありますから、そういうふうな分け方をしておるわけでございます。
  137. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 間接侵略の定義ができないわけでしょう。飛鳥田さんが一々例示しても、それが間接侵略に入るか入らないかわからないとおっしゃっているのですね。定義してくれれば話が進みますけれども、間接侵略の明確な定義は、その場に当たってみて現象を直接見てみなければわからぬというのが、あなた方の解釈なんです。そうすると勢いこの条文の上で用いられている法律用語自体をとって論議せざるを得ないわけなんです。そこで私お尋ねしているわけなんですけれども、今法制局とも相談の上、統一的な解釈を述べますと言った前段に、新しい安保条約の第五条でいう「武力攻撃」と、この自衛隊法七十六条でいう「外部からの武力攻撃」とは同じでございます。こう述べておるでしょう。その点確認して下さいよ。間違いないですね。
  138. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 その通りでございます。
  139. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうすると新しい安保条約でいう策五条の「武力攻撃」、いわゆる「外部からの」というのがついていない「武力攻撃」と、この自衛隊法の七十六条でいう「外部からの武力攻撃」というのはイコールだとこういう。それから外部からの武力攻撃というのは旧安保条約でいう「外部からの武力攻撃」とまたイコールです。そうですね。そして旧安保条約の内乱条項といわれるものは七十八条の間接侵略とイコール、こうなのでしょう。今あなた方が答弁しておられるのはそうなりますよ。そうすると旧安保条約の「外部からの武力攻撃」イコール自衛隊法七十六条の「外部からの武力攻撃」イコール新安保条約第五条の「武力攻撃」、こういうことになるじゃありませんか。それでは今までの政府説明と違うじゃないかと私は言っている。旧安保条約の「外部からの武力攻撃」と新安保条約第五条の「武力攻撃」とはイコールじゃないとおっしゃっているのだから。そうじゃないですか。
  140. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 私最初に申し上げましたのは、現在の自衛隊法防衛出動規定、あの「外部からの武力攻撃」と新しい安保条約第五条の規定と同じだということを申し上げたわけであります。かりに旧安保条約の一条の「外部からの武力攻撃」というものと、自衛隊法の七十六条でありますかの武力攻撃は同じといたしましても、旧安保条約でいう「外部から武力攻撃」の中には、先ほど申し上げました通り、外国の教唆、または干渉による大規模な内乱または騒擾の中でオーバーラップするものがあるということを言うておるわけでございますから、その点は私は間違っていないのではないかというふうに思います。
  141. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは官房長が間接侵略というのは旧安保条約の内乱条項なんだという説明に無理があるのですか。
  142. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 私はその点は前々から一応、一また二以上の外国からの教唆または干渉による大規模な内乱または騒擾だということを申し上げてきておるわけであります。その教唆、干渉による内乱または騒擾の中に武力攻撃をオーバーラップするものがあるというのが今の説明でございますから、私は矛盾しないと思います。
  143. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先ほどから私申し上げているように、自衛隊法ができたときと今の間接侵略というものについての考え方が、変わっているのじゃないですか。そうなればある程度理解できるのですけれども、変わっているのじゃないですか。
  144. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 自衛隊法のできましたときから、私今まで申し上げておるような答弁を繰り返しておるわけでございます。ただその際に、今のようなオーバーラップする面があるかどうかということについては、当時は深く研究はしていなかったということは言えると思います。しかし答弁の趣旨としては変わっておりません。
  145. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 変わってきているのですよ。そういう意味なら、それならそれである程度わかる。しかし変わってきておるというところに問題があるわけですね。確たる定義がないものだから、この自衛隊法ができた当時と現在とは、数年間経過している中で、間接侵略というものの定義自体が変わってくる。変わることもあり得るわけですよ。確たる定義がないわけですから。それだけに運用上非常に危険が出てくるのじゃないか。だから間接侵略といわれるものの中にいわゆる「外国からの武力攻撃」とこう重なるものがあるとおっしゃるならば、当然この防衛出動の規定をそのまま準用すべきものが、この間接侵略といわれる中にもなくちゃならぬという受け取り方、これが出てくるわけですけれども、そこまで念を押しておかなければいけないのじゃないか。少なくとも用語の上でそれだけはっきりさせておく必要があるのじゃないかということを言っているわけです。それからもう一つ、この間接侵略に対処するのは警察力だ、これが警察の主たる任務だ、警察がどうしても対処できない場合にのみ初めて自衛隊は出動するのだという説明と、自衛隊の主たる任務の中に直接侵略に対処する道と間接侵略に対処する道と二つあるというのと、ちょっと矛盾しませんか。
  146. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 自衛隊法の第三条では、直接侵略及び間接侵略に対処することが自衛隊の主たる任務になっているのですが、そこで第七十六条及び第七十八条は、先ほど申し上げました通り、直接侵略という言葉を七十六条には使っておらぬわけであります。「外部からの武力攻撃」という言葉を使っておる。もしもこの点を、「外部からの武力攻撃」という中に、今説明いたしましたごとく、武力攻撃をオーバーラップする面の事柄も入るのだ、こう解釈いたしますれば、七十六条の武力攻撃の中には、これは別の言葉でいえば、直接侵略と一部間接侵略に該当するものが入るのだというふうなことは言えると思います。また一般的に申し上げまして、いずれにいたしましても、七十八条の場合にいたしましても、間接侵略に際しまして自衛隊が出動するという規定はあるのでございますから、任務とその実際の出動の仕方というものとは、私は、何と申しますか、書き方の相違はあってもおかしくはないのではないかという感じもいたします。
  147. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは結論的に言って、あなた方の立場でいった場合には、七十六条の防衛出動の場合に、外部からの武力攻撃とそれから間接侵略の一つの形態とを含めねばいかぬですね。明示しておかねばいかぬですね。単純に従来武力攻撃といわれるものだけではないぞ、防衛出動の対象は、いわゆる間接侵略の中にもこの防衛出動の対象となるべき筋合いのものがあるぞということを、法律上明示しておかねばいけないということになりますね。これは私ども立場ではない、あなた方の立場からいっても、そうしなければ、今ここで論議されている疑義は解消されないということになりますよ。その点いかがですか、大臣。それだけのことをしておくべきですよ。防衛出動といえば大へんな問題です。
  148. 西村直己

    西村国務大臣 私どもはそれでいいと思います。言いかえますれば、武力攻撃と解釈される場合におきましては七十六条による防衛出動、従ってそういう場合には国会において事前の承認をいただく、こういうことになると思います。
  149. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それではやはり念を入れて、「外部からの武力攻撃」というのはやめて、「武力攻撃」という表現にして、その中にはこの間接侵略というものの中に考えられがちな一つの形態も含まれるのだということを、法律上もはっきりさせる必要が、あなた方の立場でもあるというふうに思いますし、それを確認したものと理解していいですか。
  150. 西村直己

    西村国務大臣 私は従って、「外部から武力攻撃」でございますから、原則的と申しますか、大体の事象は、直接侵略と申しますか、一国の意思が明示されている武力、しかしそれには形態によっては、間接侵略の中にも一国の意思が入って、外部から組織的な計画的な武力による攻撃、これも入ってくる、その手続は七十六条によるべきものであると思います。
  151. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 非常に大へんな問題がここに出てきたわけです。ずっと受田委員飛鳥田委員質疑を重ねておる中に、私もどうもおかしいと思っておったのですが、この防衛出動の対象の中に、従来一般国民、われわれも間接侵略というものの中に含まれるものと思っておったものの中で、防衛出動の対象になるものもあり得るのだということをお認めになったことは、私は非常に重大な問題だと思います。これに対する質疑意見等は、私また別の機会にやらしていただくことにして、きょうは関連質問ですから、私の質疑はこれで終わりたいと思います。
  152. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、今まで安保条約の審議の際に、政府は、岸さんを初めとして、第五条の「武力攻撃」の中には間接侵略、内乱、そういうものを含まないのだということを非常に強く説明してこられたわけです。そういたしますとオーバーラップ、オーバーラップと盛んに鬼の首でもとったように言われますが、しかしオーバーラップしようとしまいと、間接侵略の一部がこの安保条約第五条の中に含まれるということだけは確認をしてよろしいわけですね。今、石橋委員自衛隊法の方から述べましたけれども、今度は私は安保条約の側から伺っておきたいと思います。
  153. 西村直己

    西村国務大臣 例示をあげますれば、武力行動でありますから、外部からあるいは一国の意思によるところの外部からの武力攻撃であります。従って一つの例示をあげますれば、正規軍による外部からの武力行動、こういうものは当然対象になってくると思います。
  154. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、先ほどNATO条約の有権的解釈についてアチソンが述べた解釈は、そのままここで肯定をせられる結果になってしまうのじゃないですか。さっきあなたは全然違う、こう言っていばられたのですが、いかがですか。
  155. 西村直己

    西村国務大臣 NATO条約はNATO条約の立場において解釈しておると思います。私どもはあくまでも外部からの武力行動、その点においては一致しておると思います。
  156. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうすると結果としてはそれを是認するという結果に終わりますよ。
  157. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 この点は安保条約の審議の際にも、石橋委員の御質問に対して条約局長も答えておるのでありますが、要約して申しますと、アチソンの場合の言明も、やはり純粋な内乱というものは当てはめるべきではない。ただレボリューショナル・アクティビティ、革命的な行動であります。これが外部から教唆されたりあるいは外部からの武力団体的な援助を受けた、そういうものの場合とこれは異なった問題である、こういうふうに考えておるということを答弁いたしております。
  158. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 レボリューショナル・アクティビティ、いわゆる革命的な行動というのは、外部からの行動だけに限らないと考える。そうではなく、結局外部からの武力攻撃を含む間接侵略は第五条に含まれるという断定とここで承って、次の質問をしてよろしいかどうかということです。今までその点が明確でありませんでしたから……。
  159. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 それは当時の答弁で、レボリューショナル・アクティビティ、これが外部から教唆されたり、それから外部からの武力団体的な援助を受けた、そういうような場合を言っておるのでございます。
  160. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 革命的行動というものを今一例にとったわけです。しかし外部から教唆されたり、または武力的な援助を受けたという形で外部から教唆をされるだけの革命的行動というものも、この中に含まれ得るようにとられるわけです。しかしその問題の解釈は別として、武力攻撃をいささかでも含む間接侵略は、安保条約第五条の中に含まれるという前提に立って、これからの質疑をやってよろしいのかと言っておるのであります。
  161. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 その第五条の解釈は、先ほど申し上げましたようにわが国に対する組織的、計画的な武力による攻撃というふうに規定をいたしておりますので、これは直接侵略、間接侵略という言葉の言い回しとは違うのでございまして、この要件に該当する限りは五条による適用はあると申し上げるよりほかはないと思います。
  162. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうしますとその点についての押し問答をしても仕方がありませんから、次に移ります。  間接侵略、こういう問題については石橋さんに対して先日長官は、アメリカの援助を期待しない、こうはっきりおっしゃったわけです。そうすると間接侵略の本質を持つものでも、第五条によってアメリカと共同作戦をとるという場合もあり得るわけですね。今の加藤さんのお話ですと、長官のお話とはだいぶ違ってくるのですが……。
  163. 西村直己

    西村国務大臣 私は一般論といたしまして、国内的ないわゆる内乱、騒擾ないしは単なる武力行動をはっきり伴わないような場合におきましては、これは日本が警察あるいは自衛隊の治安出動でいくべきである。たまたまそれが例外的に直接侵略と重なり合って、しかもさっきから申し上げておるように組織的ないわゆる武力行動と解釈される面においては、この五条の適用もあり得るのだということはやむを得ないことではないか、こういうふうに解釈しております。
  164. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと、そこで最初に私があなたに伺っておいたのですが、間接侵略とはどのようなものかということをアメリカとの間にちゃんと決定しておきませんと、今おっしゃったような種類の間接侵略だということで、アメリカ軍は行動をとる。ところがあなた方はそうではない。アメリカ軍にここで出てほしくないと思うような場合でもそうなってしまいますよ。ですからあらかじめきちっと有権的解釈を間接侵略についてつけておきませんと、こちらが欲しないのに安保条約第五条に基づいて、米軍が行動する。行動する権利を持っているのですから、そういうことになってしまいますよ。それは一体どうなりますか。
  165. 西村直己

    西村国務大臣 あくまでもわれわれは直接侵略とか間接侵略とかで第五条でなくて、武力攻撃というものに対処する共同行動でございます。従ってもちろんこれは個々具体的には態様は非常に複雑な場合もありましょう。それは認定の問題でございます。しかし一応普通の場合において想像される第五条はもちろん原則的には直接侵略あるいは武力行動がはっきり出てくる場合、それから武力行動がはっきり出てこない場合におきましては、われわれはこれは当然普通の内乱あるいは国内的な治安問題として処理して参る。これと米軍とは関係がない。この点は私は観念としては制止は十分できると思うのであります。
  166. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 武力攻撃のない間接侵略というものがあるのでしょうか。この安保条約第五条は、外部からとか内部からとかいうことを全然規定していないわけです。内部においても政府に対する武力攻撃というものはあり得るわけです。外部からも日本政府に対する武力攻撃というものがあり得るわけです。従ってそうなって参りますと、武力攻撃、武力攻撃とその点だけを強調しますと、あらゆる問題について米軍出動のチャンスを与える。これは安保条約の審議の過程の中で岸さんや藤山さんが極力いやがった問題に、あなた方は積極的に入っていこうとしている。解釈が変わってきているわけです。その点はどうでしょうか。
  167. 西村直己

    西村国務大臣 私どもは当時と解釈は変わっていないと思います。言いかえますれば、やはり武力攻撃というものは「外部からの」と自衛隊法の第七十六条にははっきり明示してあります。この趣旨と同じ趣旨だと思います。言いかえますれば、従って他の国の意思が表示されながら、武力の組織的な計画的な攻撃を加えられる。これが第五条の解釈であろうと思うのであります。
  168. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 間接侵略そのものだって全部組織的、計画的なものですよ。組織的、計画的でない間接侵略というものはありはしないです。それは単なる騒擾にしかすぎません。あるいはモッブの自然発生的な動きにしかすぎません。そういうのは騒擾というのです。ところが間接侵略と少なくとも言葉を使う限り、計画的、組織的でなければなりませんし、それが要件です。同時にまたそれに何らかの形で外部からであるか内部からであるかは別として、武力行動が伴うというのが、これが通常の形態ではないだろうか。今長官のお説のような形でいけば、結局あらゆる事態に際して米軍の出動を許容してしまう結果に陥る、こう言わざるを得ないのではないか。だからこそ岸さんも藤山さんも何べんも、間接侵略はこの五条には含まれませんということを強調なさったのだろう、こう私たちは思っておるのですが、今度長官、すなわち池田内閣は、はっきりと五条にそういう余地をちゃんとあけるわけですか。
  169. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 その点は、安保条約の審議の際と答弁を変えていないつもりでございます。その際も先ほど長官からも御答弁のありましたように、外部からの不正規兵等によって武力攻撃がある場合には、五条に該当するのだということを言っておるわけであります。その不正規兵等による武力攻撃を一つの直接侵略、間接侵略という分け方に当てはめまして間接侵略と見れば、これは私は間接侵略も第五条に入るということは言えるかもわかりません。しかしあくまでも武力攻撃という観念でしぼって見ておるわけでございます。
  170. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 この辺は議論ですから、もう時間もありませんからそうひどくやりませんが、武力攻撃という面からしぼろうとしぼるまいと、今まで岸内閣は第五条には間接侵略は含まないということを言い続けてきたわけです、表面は。そして聞いてみますと間接侵略の場合は、第四条の協議事項だということを強調なすったのですよ。もしあなたのおっしゃるように武力攻撃という点からしぼってみたところで、実質において間接侵略が第五条に含まれるかということを認められる以上、第四条の協議なんというものは必要ないじゃないですか。第四条の協議事項だということを岸さんは何べんも何べんも言いました。あげてみれば、ちゃんと二、三べん言っていますよ。読み上げてお聞かせしてもけっこうです。いずれにもせよ、そういう意味で私どもは間接侵略というものが第五条の中に含まれるのだということを、きょう初めて正式に政府の口から伺ったわけです。  そこでそういう御説明の上に立って、それではさらに中へ入って伺いますが、そういたしますと間接侵略という本質を持ちながらも、ある程度武力攻撃を伴うというような場合には第五条になってしまう。従って第四条の協議の問題は全然出ない。そういう段階に至らないものは第四条の協議になる。すなわちアメリカ政府日本政府との話し合いになる、こういうことになると思います。この第四条の協議になる後者の部分について、長官はお認めになりますか。あまりお話が変わるので、ちゃんと一つ一つ確認していかないとまずいですから……。
  171. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 間接侵略につきまして先ほどから申し上げております通り、一または二以上の外部の国の教唆または干渉による大規模な騒擾または内乱というふうに定義をいたしますれば、主として武力攻撃に該当するかどうかという問題は干渉の方に起こってくると思います。教唆の方につきましては、私はそういうふうな問題を起こさないであろう。これらは純粋に新安保条約の第四条で、一つの問題として取り扱われることになるだろうというふうに考えております。
  172. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その第四条の協議の結果はどうなるのですか。協議してどうするのですか。
  173. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 協議の結果どうなるかというお尋ねは、ちょっとよくわからないのでありますが、協議をして意見がまとまったところに従いまして、日米両国がそれぞれ法律に従って措置をとるということになるであろうと思います。
  174. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その協議に際してこの前長官が、アメリカ軍の行動を期待いたしませんというふうに石橋さんにお答えになったのは、その協議に関してですか。
  175. 西村直己

    西村国務大臣 私さっきから申し上げますように、第五条の発動はあくまでもこれは五条の部分としては武力行動に対して共同の措置をとるという場合に——言いかえますれば、間接侵略という面から見ますれば、事態は非常に複雑でありましょう。特に設例になりましたような不正規兵の投入というような場合におきまして、当然これはその認定がむずかしいから、おそらくそういうような場合は四条の一つの協議事項になろうと思うのであります。四条で協議が整わないときはどうするかといえば、当然これは協議が整わないものは、お互い同士無理をかけることはあり得ない。相互信頼に立っておる条約でありますから、あくまでも相互信頼ということに基準を置かなければならぬことになると思います。私ども従ってこの四条の協議が整わないというようなことに対しましては、お互いの信義であくまでもこれは認定を解決していく以外にない、こう考えております。
  176. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうではなく、間接侵略について米軍の進出があり得るかと言ったら、あなたは米軍の行動は期待しないとはっきり石橋君に、ついこの間お答えになったわけです。だから協議の結果、米軍出動ということはあり得ないのだというあなたの断定なら、協議して何をするのですかと言っておる。
  177. 西村直己

    西村国務大臣 ですから先ほど申し上げましたように、武力攻撃という面からである場合においては、アメリカ軍が共同防衛に立つという一つの部分が残りましょう。そうではなくて、それ以外の部分において十分私は協議対象になることは、この攻撃以外にもたくさんなものが協議対象になる事項はあろうと思います。また武力攻撃であるかどうかの認定自体も、協議対象になろうと思います。
  178. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局武力攻撃が外からあった場合は、五条ですから協議もへったくれもないのですよ。武力攻撃が伴った場合には協議もへったくれもないのですよ。第五条でいきなりいけるのです。そういう説明だったのです、あなた方の説明は。そうでしょう。認定もへったくれもないと言う。ところが武力攻撃が伴わない。純粋に国内的であるけれども、しかし非常にそれが大規模で、全国的な形になったような場合にはどうなさるのですかと言えば、それは第四条で協議をいたします、こう岸さんは言ったわけです。あなた方はもうアメリカ軍の出動ということを期待した協議はやらぬ、こういうことですか。
  179. 西村直己

    西村国務大臣 われわれは武力行動に該当しなければ、日本の安全とか極東の平和に関する部分について協議対象になることは当然だと思っております。
  180. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 武力攻撃がない場合は、当然極東の平和と安全の意味協議対象になる、こういうことですか。
  181. 西村直己

    西村国務大臣 武力攻撃という面からはっきりしておりますれば、これは五条の発動になります。しかしそれ以外の面においては協議対象になることがあろうと思います。
  182. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 なるほど外部からの武力攻撃、他の政府の計画的、組織的な武力攻撃はない。だがしかし間接侵略の本質は十分に認定できる。こういう場合に協議をなさる。その場合にアメリカ軍の出動を期待しませんとあなたはお答えになったのですが、それはいいですか。
  183. 西村直己

    西村国務大臣 繰り返して申し上げますが、武力行動の場合には五条で解決ができると思います。武力行動外の問題においては四条で私ども協議をする、こういう意味であります。従ってそういうような場合におきましては、米軍の出動というものは一応期待はない、こう考えるべきだと思います。
  184. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうしますと岸内閣と池田内閣とは完全にその説を変えたわけですね。読んでみましょうか。岸さんは安保条約の説明の中で、「第四条において協議をし、その事態に応ずるような必要がある場合における援助を受けるということもあり得る、」こう言っているわけです。すなわち岸さんは、協議の結果米軍の出動を要請することもあり得る、こう言っているわけです。ところがあなたは絶対にないとおっしゃる。そうだとすれば、池田内閣と岸内閣では意見を完全に変えたと言わなければならない、こう私たちは思うのですが、どうでしょうか。
  185. 西村直己

    西村国務大臣 それは字句から援助という言葉議論するのもどうかと思いますが、われわれは武力外にも日米間には相互信頼がありますから、援助のいろいろなほかの道はあろうと思うのであります。
  186. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 これは正式な速記録ではありませんからどうかと思いますが、当の条約の締結者である藤山さんは、こうはっきり言っておられるわけです。「問題は外国の教唆を受けて、また援助された大規模騒乱もしくは内乱であり、」内乱の場合まで含めて言っていますよ。「内乱であり、これはいわゆる間接侵略と言われているものであります。反対論の多くは、そうした場合にアメリカが軍隊を使わなければだめじゃないかというのでありますが、」すなわち内乱条項を今度は削除してしまったということについてだめじゃないかというのでありますが、「しかしこの条項を取り去ってしまいましても、そうした場合にアメリカ軍の出動を求めることは可能なのであります。もしそれが間接侵略ということがはっきり定義づけられれば、むろん内乱条項をとった日米安保条約でも、米軍が出動することができるわけであります。」こうはっきり言われて、岸さんが、援助を受けることもあり得ると言った。すなわち援助を受ける、こう言った説明をきちっと裏づけておられるわけです。これは佐藤さんの後援会の雑誌だろうと思います。「周山」という雑誌があります。長官など一番よく御存じだろうと思います。委員長御存じだろうと思いますが、その中でちゃんと速記をとっているものなんです。ですからその当時の岸内閣の解釈というものは、かなり明白なんです。ところが今度、間接侵略あるいは内乱でも、外部からの武力攻撃という形態が加わっていない限り、絶対にアメリカ軍の出動を要請しない、そうしてまたできないのだという御説明にうかがえるのですが、そうなりますと岸内閣と今度あなた方の説明とはだいぶ違うわけです。
  187. 西村直己

    西村国務大臣 われわれは新安保の四条の協議から、当然に援助が期待できるといいますか、援助が可能であるとは考えていないのであります。武力行動があれば五条で解決をする。武力行動外のことで、この第四条の方は、支援なり何なり協議対象にはなっていくだろう、こういうふうに考えております。
  188. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 くどいようですが、それでは内乱あるいは外部からの武力行動を伴わない間接侵略については、米軍の出動はあり得ない、こう私たちは伺っておいていいのですか。期待しないなんという言葉は非常に不明確ですよ。私たち法律解釈、こういうものをからめて伺っているのですから、明確にしておいてほしいと思います。もしそれを明確にしておいて下さるのならば、これを新しい池田内閣の態度として私たちは承ります。
  189. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 この点につきましては、今速記録を見てみましても、岸総理大臣は「武力行動が入るという意味ではございません。武力行動の場合は、五条に限定されておるだけであります。その他の方法によって、そういう事態をなくすように努力していくことは当然のことであります。」ということでありまして、私は意見の食い違いはないと思います。
  190. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それは松本七郎君に答えた速記録ですか。
  191. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これは戸叶委員に対する……
  192. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 松本君に対して答えたのを見て下さい。そういうことを私がくどく伺っておきたいのは、こういう事実があるからです。たしか昨年の十二月、エチオピアに騒乱が起きました。これは純粋な内乱だろうと思います。これはエチオピアの皇帝自身があとで、これは単なる政府の不満分子、不平分子が起こしたものであって、外部からの思想的影響その他はないということを、断定しておられるわけです。従ってこれは純粋な内乱です。ところがその純粋な内乱に、何と不思議なことには、アメリカの軍事顧問団が陣頭に立って政府軍を指揮しているわけです。そういう事実があるわけです。これは朝日新聞のカイロ支局長の瀬戸口さんが報道してきておりますので、私切り抜いておきました。非常におそろしいことだと思って、実は切り抜いておいたわけです。十二月二十三日の新聞です。「もう一つ注目されるのは、クーデター騒ぎの際、米国の演じた役割である。米軍の軍事顧問団は市街戦で政府軍を実際に指導したようだ。」こう書いてあるのです。だから、今あなた方と私たちの間でいろいろはっきりと確かめておく必要があるのは、そういう事例が現実にあるからです。ちょっとした、安保騒動に毛のはえた程度のものがあった。これを間接侵略であるとみなして四条の協議を行ない、直ちに米軍が出動してくる。あるいはマーグが、軍事顧問団が陣頭に立って指揮するなどということは、現に例があるのです。だから長官が、期待しない、アメリカ軍が出ることは絶対ない、こうおっしゃる断言は、非常に私たちにとっては喜ばしいわけです。しかし岸内閣と意見が違うから、それは池田内閣の新政策としてはっきり承っておいてよろしいですかということを伺っておるわけです。そういう懸念を持っているからです。
  193. 西村直己

    西村国務大臣 その当時の記録はここに出ておりますが、松本七郎君が御質問なすった場合において、岸当時の国務大臣としましても、「内乱条項を今度は削除したのでありまして、内乱についてアメリカが一方的に介入するということは絶対にございません。」松本(七)委員が重ねて、「それができないという保証は、条文のどこでそれが出ていますか。」岸国務大臣として、「米軍がそうした行動をとる場合におきましては、五条に、武力攻撃があった場合に限っておりまして、」というふうに解釈していまして、何ら私ども解釈と違わないというふうに私はとっておるのであります。
  194. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 松本さんの違う部分について岸さんが答えられたのが、さっき申し上げたようにちゃんとあるのですよ。「第四条において、協議し、その事態に応ずるような必要がある場合における援助を受けるということもあり得ると思います。」ちゃんとこう言っておられるのです。二十二ページです。だから、意見が変わった、こういう点を私は重要視したい。いい方に変わっている、こう思うわけです、今のお説では。だからその点ははっきりと、間接侵略の場合には米軍の出動というものはあり得ない、アジスアベバで行なわれたようなマーグが陣頭に立って指揮するというような形はない、こういうことをはっきりしておいていただければけっこうなんです。今申し上げたように、藤山さんなんかは全然違う見解をとっていらっしゃるのですから……。
  195. 西村直己

    西村国務大臣 その点は重ねて申し上げますが、私は、ここに国会速記録に載っておりますが、岸総理と申しますか、岸国務大臣となっております答弁と、何ら私たち意見は違っていない。言いかえれば、第四条によって武力干渉は考えられない。ただ援助ということは、武力行動以外のものである場合において、協議成立する場合には、そのような武力行動以外の米国の援助はある。同時にこの第五条は、あくまでも武力攻撃に対する共同防衛、こういうふうに五条を解釈しておるわけであります。私は従来と政府の意思は変わっていないと思うのであります。
  196. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと変わっている、変わっていないの議論は、これは水かけ論ですから、私の読んだ速記録と違うのですから、仕方ありません。しかしいずれにもせよ、内乱あるいは間接侵略において、第五条の武力攻撃に相当するものを除いた場合においては、米軍の出動というものはあり得ない、こう伺ってよろしいのですね。
  197. 西村直己

    西村国務大臣 その通りでございます。
  198. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 間接侵略について今までいろいろ伺ってきました。この間接侵略に一体それでは自衛隊がどう対処しようとするのか。そういう意味で十三個師団編成ということも考えられた、こういう御説明だったわけです。まあそれだけが理由だとはおっしゃっていない。それは私たちも認めますが……。そうした場合に、十三個師団というものはどういうふうに配備せられていくのか。大体私の知っている範囲では、百八十くらいの駐とん地があるそうです。その数字はきっちり正確ではありませんが、この百八十の駐とん地の大部分、すなわち三分の二以上は大中の都市に集中されている、こういう点を私たちは発見しないわけにいきません。ところが旧軍時代を調べてみますと、五分の一くらいしか都市には集中されていないわけです。結局今回の間接侵略を一つの任務として受け持つ自衛隊の配備は都市、そして都市に集中している労働組合あるいは民主的な運動、こういうものに対する一つの威嚇力としての意味を持ってくると解釈しないわけにいかないわけです。旧軍時代の配置の仕方と今度の自衛隊の配置の仕方というものは、全然違うわけです。もちろんこう申し上げたところで、あなた方がその通りでございますと、こういうことをおっしゃるはずはないと思うのですが、このような配置の方式というものが、民主主義勢力あるいは組合運動、労働運動、こういうものに対する無言の威嚇の役割を果たすという事実については、どうお考えになっていらっしゃるのでしょうか。
  199. 西村直己

    西村国務大臣 師団の配置の詳細につきましては防衛局長から申し上げますが、師団の配置は間接侵略を中心にしたものではございません。あくまでも自衛隊の与えられたる任務を全うするという趣旨から、長年の運営にかんがみまして、そうしてこれを十三の単位に分けた。従ってその配置個所も従来とそれほどの変化が起こっておるわけではありません。新しく配置される個所としては広島県の海田町ですか、それから前橋のそばの相馬ケ原ですか、この二つが新しく起こされたのでございまして、それ以外にそれほど配置個所が大きく変わったというふうには考えておりませんが、なお細部につきまして防衛局長から御説明申し上げます。
  200. 海原治

    ○海原政府委員 駐とん地の状況がどうなっているかという御質問でございますが、今先生のお示しになりました数字は何年ごろのかわかりませんのですけれども、私の手元に現在ございます数字を申し上げてみますと、現在の陸上自衛隊の駐とん地の数は、分とん地も含めますと百三十九、約百四十でございます。大きな部隊がおります駐とん地の数は百七でございます。このうち、市にありますのが六十六ということに一応なっております。今長官が海田と相馬ケ原の問題をあげられましたが、それぞれこれは部隊が現におります駐とん地でございます。十三師団の改編によりまして新たに部隊が配置されるというところは、ごく少数になるのではないかと私ども考えております。先般の委員会で御説明申し上げましたように、十三師団編成というのは、主として指揮系統の再編成でございます。新たに司令部ができるところはふえて参りますが、具体的な部隊の配置個所というのは、これによっては直ちに大幅にふえるというふうには考えておりません。市街地に大半集中しておるのではないかという御質問につきましては、私どもの手元の数字ではそのように考えておりません。試みに昭和十五年ごろの数字を拾ってみましても、いわゆる衛戌地といたしまして百ございます。この百のほかに学校として四十五ございます。さらにそのほかに官衙というものが二百五十ございます。この昔の衛戌地関係というものが現在の駐とん地の数に当たりますので、陸上自衛隊と旧陸軍というものは、駐とん地の数においてはほぼ同じである、このように申し上げても差しつかえないと思います。さらに海上自衛隊と航空自衛隊につきましては、いずれも旧陸海軍の所在地にほとんどが位置しておりますので、いわゆる駐とん地の数というものは、昭和十四、五年ごろの旧陸軍の所在地の数とほとんど変わっておりませんし、また配置の状況等につきましても、格別に新しい考え方で配置を変えたということはないと考えております。
  201. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 結局新しい部隊を設置して都市にこれを集中する。これは今の御説明の数を見ても、百のうち少なくとも六十は都市にあるわけです。こうすることによって、民主的な労働組合やあるいは民主的な勢力に対する無言の威圧、こういうことを現実に果たしていくのじゃないか、そういうことについてどうお考えになっているのか、こういうことを私は伺っているので、数字は一つの例証としてあげたのですから、御訂正の通りに承っておいてけっこうです。しかしその点についてどうお考えになるのか、こういうことです。
  202. 西村直己

    西村国務大臣 われわれは自衛隊と都市の労働組合や労働運動は何ら関係はない。自衛隊の任務は国土の防衛であります。そこで都市——都市と申しましても今日町村合併で非常に都市の範囲が大きくなっておるのであります。どちらかというと自衛隊御存じ通り旧米軍の施設の跡を相当使っております。言いかえれば、従来は師団司令部等は名古屋なら名古屋のどまん中にあったものが、むしろはずれている。そういうところは民間に開放されております。私は都市よりはむしろ郊外と申しますか、しかもそれは町村合併によって市の地域に編入されたものが多いのじゃないかというくらいに考えております。それによって都市労働者を威圧するとか、そういうような考え方は何らないことを御了解いただきたいと思います。
  203. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは時間もありませんから、間接侵略の話はこの程度にして、またあとで伺うことにしますが、直接侵略の問題について、さっき申し上げたように自衛隊はどう対処なさろうとしておるのか、こういうことを私たちは一つも聞かしていただけませんので、まあわれわれはわれわれなりに想像をするより仕方がありません。一体直接侵略の任務ということについて、自衛隊が今までどう考えてきたかということを見れば、これは子供でも北海道と九州に集中をしてきたという事実を見のがすわけにはいかないわけです。一体それは何のためだろうということも考えざるを得ません。いずれにせよそういう意味で一番集中度の強い北海道を見ますと、北海道では毎年演習をやっていらっしゃるわけです。しかも大演習というものは、みなと言っては語弊があるかもしれませんが、ほとんどその大部分は北海道に集中なさっていらっしゃるわけです。たとえば昭和三十三年十月十七日から六日間、さらに三十二年十一月二十六日から三日間、あるいは三十年十月十日から三日間、こういうようなことをみなやっていらっしゃるわけです。三十四年にもやっていらっしゃる。北部方面隊特科演習、第七混成団秋季演習、第五管区秋季演習、こういうことをしげくやっていらっしゃるわけです。なるほど北海道と九州に集中をし、そして北海道でそのような演習をたくさんやっていらっしゃるという事実は、自衛隊が何を考えているかということを想像するにかたくない事実だろう、こう私たち考える。そうして自衛隊の直接侵略というものに対するかまえというものを、私たちはこの中で見ざるを得ないわけです。こうした場合にそれでは一体どんな演習をやっていらっしゃるだろうかと調べてみますと、私たちにはよくわかりませんが、その表題としては上陸及び反上陸演習、こういうようなことをやっていらっしゃる、こういうこともわかります。その一例をあげてみますと、根釧原野に対して何個師団が空艇隊を先頭にして上陸してきた、これをささえ、水ぎわに追い込み、追い落とすまでの演習をやるだろうということも、新聞等で拝見するわけです。この場合に、もう私は仮想敵がだれだなんてやぼな質問はしません。一体そういう演習の中で想定をなさる場合に、上陸してくる敵軍はどのような兵站線を持ち、どのようなところからやってきたのだという想定なしに、ちゃんとした演習はできないはずです。演習は少なくとも彼我の兵站線というものを考えないわけにいかないでしょう。また来た部隊は、全然空中からの援護なしに来たという想定もナンセンスでしょう。ですから、どこからか空中援護を受けるものという御想定があったはずです。こういう点は一体どのように想定なすっておやりになっておったのか。もう仮想敵がどこだなんということを言葉としては伺いません。しかしそういう事実を一つ伺わしていただいて、直接侵略というものに対してどう皆さん方が対処しようとなすっていらっしゃるのかを、明らかにしていただきたいと思います。
  204. 小幡久男

    ○小幡政府委員 ただいま御質問がございました北海道演習等につきまして、一、二の例をもちまして、想定について御説明申し上げたいと思います。  三十年度に北海道で約一万七千名の勢力をもちまして、三千両の車両を使って秋季演習をやっておりますが、このときの想定は、第五管区隊の一部約五千名でございますが、これを対抗敵に見立てまして、この対抗勢力が石狩平野に展開しておる、それがだんだん南下していくという想定を作りまして、それに対しまして第二管区隊の主力がそれを迎え撃つという想定になっております。その際にも、今お話の通り、小規模の海上輸送演習もやっております。ただその際には、想定につきましては、ばく然と輸送途中で潜水艦に襲われたとか、あるいは対抗勢力はある程度の制空権をとろうとする、援護を受けておるというふうなことはもちろん想定しておりますが、そういう想定がだんだん進捗して参りまして、実際演習の姿になって現われましたのは島松付近であります。ここで遭遇戦をやりまして、そこで主として演練いたしました事項は、各級指揮官の運用能力とか、あるいは司令部相互間の連絡能力、それから移動及び集結の能力、それから陣地防衛あるいは陣地攻撃、まあ攻撃、防御のことでございますが、そういった問題を演練しております。これが三十年度の秋季演習であります。  三十三年度の方は、方面隊の主力を用いまして、勢力も約二万二千名を動員しまして、車両は四千両使っておりますが、これは方面隊に対抗するほどの大きな対抗勢力が北海道に上陸したという想定ではなくて、これだけの部隊が相当長期に機動的に集中し得る能力があるかどうかという点を中心に演習をやっております。もちろん演習でございますから、その途中には、空挺隊が降下した場合にどうするか、あるいは橋梁とか主要道路が空襲によってやられた場合にどうするか、あるいは一部海上勢力によって緊急上陸をされた場合にどうしたらいいかというようなことはもちろんやっておりますが、最終の上がりは根釧平野に集結いたしまして、長途の機動力を演練をするという点に主眼を置いております。  大体以上のようなのが北海道の主要演習の想定でございます。
  205. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 根釧原野でもやっていらっしゃるはずです。そこで伺いますが、アジアにおいて何個師団かを運び得る渡洋能力を持っている国、さらにまた飛行機を飛ばして他国に上陸したものを十分に援護し得る国、こういう国は幾つありますか。
  206. 海原治

    ○海原政府委員 今突然の御質問で、ちょっと幾つという数字を的確にはお答えできかねますが、渡洋と申されましても、たとえば大規模な船団を組んで兵員を運ぶ場合もございますし、あるいは機帆船程度に分乗してくる場合もございます。いろいろな形がございます。それからこういう有事の場合におきましての、たとえば空輸能力ということになりますと、現在いわゆる軍の輸送機を持っておりませんので、民間航空機をもって兵員の輸送もできます。そのような状況を考えますと、おそらく極東の南の方にあります小さな国は別といたしまして、それ以外の国はほとんどその能力は何がしか持っておる、こういうことになろうかと思います。
  207. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 僕は今伺った演習に即して伺っているわけです。五千名の敵軍というものを想定しておやりになったわけでしょう。今のお話で、五千名を北海道へ運んでこられる以上は、まさか小規模なジャンクか何かに乗ってくるということはあり得ないのじゃないですか。ですから、やはり相当大きな船団を組んでくるということは、これは当然です。そういう意味で私は渡洋能力を伺ったわけです。そういう点で、ごく端的に申し上げますが、北鮮もない、韓国もない、中国だってそれだけの能力は今のところない。ソビエト以外にありますか。
  208. 海原治

    ○海原政府委員 今先生のおっしゃいました北鮮とか、中共とか、韓国とかいう国が、それだけでやろうと思えばむずかしいことかもしれません。しかしよその国の援助を受けますれば、当然そういうことはできるわけであります。それから演習は北海道でいたしましても、その演習の想定というものは、必ずしも北海道だけに限っておりません。そういたしますと、たとえば機帆船に分乗して多数の敵が襲来するということはあり得るわけであります。それから先ほど申しましたように、一般の民間航空の輸送機というものは、大体先生御存じのように、定員は五十名前後であります。こういうものを数機ないし十数機で何回か往復するということによって、渡洋空輸能力はつくはずであります。
  209. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もうばかばかしいからよしましよう。だって定員五十名の民間航空機で五千名運んでくるまで、あなた方黙って見ているつもりですか。そんなばかなことをおっしゃったって、戦争の場合ですよ。観光の場合じゃないのです。正直言って、ハワイへ遊びに行くというのならわかります。観光の場合じゃないのです。黙って見ていらっしゃるつもりですか。一国の防衛を担当しているあなた方は、少なくともここでお答えになる場合の見識を持たなければならぬ、こう私は思うのです。大ぜいの人が速記録を読むかもしれません。その場合に、私の質問もあまり上手でないかもしれませんが、あなた方が問題をそらそうそらそうとして、そういう落語まがいのお答えをなさって、一体軍の士気などというものが保たれていくだろうか、こう私は心配しないわけにいかないのです。よけいな心配するなとおっしゃればそれっきりですが、いずれにせよ、私はあなた方の直接侵略というものに対する演習態様から見て、その目的を大体想定せざるを得ないと思っているわけです。ですから当初に、私は別に仮想敵がだれだなどと言えと言ってやしない。そういう渡洋能力を持っている国は、アジアで幾つありますかと聞いているだけであって、どこどこでございますと、こうおっしゃればそれでいいのですが、その国が仮想敵だなどと無理に私は言わせようと思っていないのです。  もう一度伺いますが、一体五千名以上になんなんとする兵員を根釧原野なり十勝平野なり石狩平野なりに、あなた方の抵抗を排除して輸送し得る渡洋能力を持っている国は幾つありますか。
  210. 海原治

    ○海原政府委員 先ほどの私のお答えが不十分でございまして申しわけありませんが、決してふまじめな答えをしておるつもりではございません。と申しますのは、民間の輸送機の例を出して、引例が適当でない、こういう意味のおしかりのように承るわけでございますが、先般、たとえばスエズ運河で問題がございました際に、急遽イギリスはあそこへ空挺部隊を運んだわけですが、しかしそのときに最も活躍した飛行機は何かというと、BOACの旅客機でございます。このようなことは先生も十分御存じのことと思います。そのように一般の民間の旅客機というものは、有事の場合に、直ちに兵員輸送に転用し得るものである。これは決して間違いのない事実でございます。  次は五千名にも及ぶ人員を、五、六十名の定員の旅客機で何回運ぶか、こういうお尋ねでございますが、これはやはりそういう場合を想定いたしますと、第一回には兵員を運び、第二回にはさらに武器を運び、さらにその状況を見てその後方に物資を落とす、こういうことで、いわゆる空挺はただ一回で行なうものではございません。かりに正式の輸送機を用いましても、一個師団の兵員を輸送するためには、これを十数回に分けて輸送するのが常識でございます。従いまして北海道に五千名おりて参りますときには、私どもはいろいろな手段でおりてくる、そのように考えるわけであります。  さらには渡洋能力とおっしゃいますが、これもやはりわが国の周囲の状況をお考えになれば、十分おわかりになると思います。昔のように大船団を組んで堂々と行くということを必要としません。近距離にいろいろな国が存在していることは事実でございます。従いまして必ずしもわが国に襲来してくる外敵と申しますか、それが堂々の輸送船団を組んで来るのだということの想定は、これは非実際的だと思います。そういう意味合いにおきまして先ほど申しましたように、幾つあるかということになりますと、事態によりまして、どういう政治情勢下において行動するかという判断も出て参りますから、正直に申しましてその数はわからないというのが、偽らないところではないかと思います。特にこの際に、たとえばそれがソ連であるとか北鮮であるとか中共であるとかいうことを私が申し上げますことは、そのこと自体としていいことではない、このように私どもは実は考えております。
  211. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 わかりました。そこでその問題もそうしつこく申し上げません。ともかく政治的な配慮というものをあなたがなさる、そういうことであるなら、常識的にだれにでもわかることですからあらためて申し上げないのですが、しかし今度はその国がどこの国かという問題でなしに、今あなたのお話の中にも出てきましたが、堂々の船団を組んで来なくとも、近所にすぐ渡って来得るものがたくさんある。だから船団でなくていいのだ、こういう意味のことをおっしゃったと思います。その問題です。  長官に伺いますが、相手がどうこうということは別にして、北海道防衛ということをあなたが真剣にお考えになっていらっしゃるとすれば、北海道の周辺にはもうごく目の前に日本の領土ならざるものがあるわけです。これが直接侵略なり何なりの足場になることは当然でしょう。そこで分けて伺いますが、歯舞、色丹は元来日本の領土だとあなたはおっしゃっているわけです。あなた方の政府はおっしゃっているわけです。ただ、今のところポツダム宣言受諾の結果話がもつれて、日ソ平和条約の中で解決がつかないだけだ。元来日本の領土だとこうおっしゃっている。元来日本の領土ですから、北海道防衛ということになりますならば、歯舞、色丹も当然防衛範囲内に入るのかという疑問が出てくるのですが、いかがでしょうか。
  212. 西村直己

    西村国務大臣 実際私どもは、またわが党並びにわが政府は、はっきり歯舞、色丹はわが領土なりと言っておりますが、不幸にいたしましてこれを外交交渉の間に待つ以外にないと思います。従って防衛庁といたしましては、その間は歯舞、色丹は現実の問題として、われわれの防衛線の対象にするというわけにはいかない。
  213. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうしますと歯舞、色丹には住んでおる人があるわけですね。この人たちはあなた方のお説によれば、日本国民だということになるわけでしょう。
  214. 西村直己

    西村国務大臣 おそらく、ただ事実上、戦争の結果今、われわれの領土でありましてもそれが占領されてしまっております。従って日本人が住んでおるのではなくて、もしおるとすれば占領地にそのまま残っておるか、あるいは抑留されておるか、また日本人がはたしてどの程度いるか、それは私まだ知りません。
  215. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そうしますと、直接侵略という問題にからんで、具体的に北海道で演習をなさり、現実には北海道と九州に集中なさっておるのですから、この点を明白にしておく必要があるだろうと思いますが、北海道防衛をする——防衛々々とおっしゃるから防衛でけっこうです。北海道防衛をする。この場合に戦略的に歯舞、色丹、さらには択捉、国後、すなわち千島列島というものを除いて防衛は成り立ちますか。とれという意味でないですよ。とるとかとらぬとかいう意味ではなしに、これを除いて北海道防衛というものは成り立ちますか。原則論を私は伺っておるわけです。
  216. 海原治

    ○海原政府委員 ただいま先生の北海道防衛が成り立つかという御質問は、非常にむずかしい問題でございます。と申しますことは、北海道という島に、いわゆる一兵も上げないというような防衛という意味と、それから不幸にして直接の侵略がございまして、これが上がって参りましたものをどの程度で食いとめて、これを国外に退去させるかという問題とは、現実の問題として非常に違うと思います。私どもといたしましては、先般来御説明申し上げておりますように、あくまでわが国土、国民を守るという立場でございます。こちらからいわゆる先制攻撃などということは毛頭考えておりません。従いまして外敵が侵入して初めてこれを迎え撃つということになりますから、北海道に上がって参りました外敵を撃攘して、国外に退去させるということでございます。そういう意味におきまして、ただいまお述べになりましたような島というものの、北海道という島全部をきわめて白紙的に防衛するのに、いわゆる白紙戦術的に考えた場合にどうかという問題と、現実に私どもの北海道におります自衛隊防衛作戦というものとは、別個に考えるべきである、このように考えるわけでございます。
  217. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 一兵も上陸させないという意味においても、北海道とこれらの諸島とは一つの戦略の中に含まれるべきだと、私たちは戦略として考えれば考えられる。また上がってきた外敵を撃ち落とす、撃退するとあなたは今おっしゃいましたが、撃退する場合でも、これらの諸島を考慮に入れずして撃退できるでしょうか。だって私はこの前網走のレーダー・サイトに行ったのですが、網走のレーダー・サイトからレーダーで国後島は見えてしまう。あそこから飛びますと——そのときの兵隊さんの説明によりますと、三分か五分で飛行機が来てしまう。あそこには大きな飛行場ができておる、こういう話です。従ってこれを全然考慮に入れず、初めから撃退する場合も、上がってきたものを追い落とす場合も、いかなる場合であれ考えられるだろうか。私は戦略の原則論を伺っておるのです。
  218. 海原治

    ○海原政府委員 戦略の原則論ということになりますと、私がお答えする資格はないかと思いますけれども、私どもの方の制服の幕僚の方で、北海道の防衛につきましてはいろいろな事態を想定して研究はいたしております。そういう研究の構想と申しましては、先ほど申し上げましたように、外敵が侵入してきた場合、北海道にいわゆる橋頭堡を作って、逐次上がってくる。先ほど教育局長が御説明申し上げましたような演習の想定というのは、一応成り立つわけであります。その場合において、どこまで下がって、どこでどういうふうに外敵に対抗するかということは、十分に検討、用意がございます。その意味におきましては、今先生の申されましたような島が、北海道の防衛に戦略的に必要かどうかということになりますと、私どもとしては、そういう島を確保するという前提なしに、現実の姿において北海道を防衛するという立場でものを考えております場合には考慮の外にある、こういうことでございます。
  219. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 一体そういうことで真剣な防御ということが言えるでしょうか。少なくとも私たちのしろうとでさえそう思えるのです。しかもあなた方の演習の参加を調べてみますと、上陸用舟艇がたくさん参加しておるじゃないですか。きっとあなた方は、いや、うしろを回って違う北海道の部分に、たとえば根釧原野に上陸したという想定なら、名寄のあたりに上陸するための演習だ、こうおっしゃるでしょうけれども、しかしそれだけとはとうてい私たち考えられない。もしそれだけと考えておるなら、それは少し演習の想定自身がおかしい、窮屈だ、こう私は思うわけです。上陸用舟艇がたくさんある。しかも各国の海軍の様子を比率を調べてみました。すると日本は確かに各国の海軍に比べて、上陸用舟艇をたくさん持っております。比率は多いのです。これには二つ原因があると思います。一つはアメリカが第二次世界大戦中に使った上陸用舟艇が古くなったから、さしあたり日本にたくさんくれたということもあるでしょう。それは私は否定しません。だがしかし、それだけではないはずです。何らかの形で上陸用舟艇の必要とせられる条件が、直接侵略にからんであるからだ、こう私たち考える。同時にまたこの北海道の演習にも、ちゃんと上陸用舟艇がたくさん参加なすっていらっしゃる。こういう事実を考えてみると、どうもお説は現実とはうらはらな形にしか聞こえないわけです。ですが、こんなことを何べん押し問答しても仕方ありますまい。おなかの中では認めながらも、うわべはあなた方はお認めになれないはずです。  そこで違った方面から伺いましょう。日本の海軍は対潜作戦をやるのだと言っておられますが、対潜作戦が日本の海軍の重要な任務の一つだという事実は間違いありませんか。
  220. 海原治

    ○海原政府委員 お答え申します前に、先ほどの逆上陸のことにつきましてちょっと説明を補足したいと思いますが、私どもとしましては、北海道に上陸を受けました場合に、その逆上陸地点を包囲すると申しますか、あとから友軍が逆上陸するということが、あくまでも戦術の原則でございます。現在自衛隊が持っております上陸用舟艇というのは、まさにそのためのものでございます。その逆上陸をする隊員というものは、必ずしも北海道所在の部隊とは限りません。いわゆる内地から持ってくることもございましょう。そういうことでございまして、腹の中で何かはかのことを考えているのじゃないかというお話がございましたが、私どもははっきりと、いわゆる北海道なり九州なり、そういうところに敵が上陸しました場合には、これを撃攘するための逆上陸の手段として上陸用舟艇を必要としているということを、この際あらかじめお断わり申し上げておきます。  さらに次の対潜作戦というものに海上自衛隊の重点があるのか、こういうことは先生御存じのように、四面海に囲まれておりまして、重要な港湾を持っております。そういうところに対します潜水艦の攻撃ということがいかに重要なものであるか、またこれを防御するのがいかにむずかしいかということは、十分御存じと思いますので、その方面の研究は鋭意いたしております。
  221. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 その対潜作戦における対象がソ連の潜水艦だということは、かなり明らかになっているように思います。たとえば「国防」という雑誌の、堂場さんが海上幕僚長と対談をなすったのを見ますと、こう書いてあります。堂場さんの言葉ですが、「もし戦争が起った場合、ソ連の潜水艦を日本海に閉じこめて、太平洋に出さないということが一ばん大きな使命ですか。」幕僚長「相当大きな使命になるでしょうね。」こう書いてあります。そういう意味で、それを一つ考えていく場合に、千島列島の戦略的な地位というものはどうなりますか。
  222. 海原治

    ○海原政府委員 今御引用になりました海幕長のお答えは、私が今拝見したところによりますと、質問をされました堂場さんの方から、「ソ連の潜水艦は」、こう言っておられますので、それを受けてお答えになっておる。従ってソ連の潜水艦はということを想定するかどうかということがまず問題であることは、先ほど私がお答え申し上げた点で御了解願いたいのであります。  同時に千島列島というものが西太平洋と申しますか、極東の防備にどの程度の意義があるかということは、先生も私が下手なお答えを申し上げるよりも十分御存じのはずでありまして、一連の島嶼というものは、やはり西太平洋における千島というものは、いろいろな意味の戦略的な要点になっておる。このように私どもは感じております。
  223. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 少なくともアジアで潜水艦の寄港し得る港といえば、ウラジオストックとニコライエフスク、これは最近名前が違っているそうですが、僕は旧式人ですから昔の言葉を使わしていただきますが、この二つだと思います。津軽海峡を封鎖する、宗谷海峡を封鎖する、朝鮮海峡を封鎖する。かくてウラジオストックは日本海という生けすの中に入ってしまうわけです。千島列島を占拠する、あるいは千島列島をこちらの側の意思で使う。こういうことによってオホーツク海は完全に押えられるわけです。するとニコライエフスクはやはりオホーツク海という生けすの中に入ってしまう。すなわちどこかの国の潜水艦を太平洋上にのこのこ出してしまわぬためには、千島列島というものが非常に重要な価値を持っているわけです。そういう点で日本海上自衛隊の対潜作戦がどう行なわれるかということを、私たちはかなり真剣に見ていかなければならぬと思います。今度はヘリコプター空母はお出しになりませんが、しかしやがてはお出しになるでしょう。そういうヘリコプター空母をかって直接侵略にどう対処するか。こういうことになれば千島列島というものをかなり重要なものとして考慮に入れずして、われわれはその予算なり法案なりに賛成するとかしないとかいうわけにはいかぬでしょう。  そこであらかじめ私たちは、千島列島というものの戦略価値はどうなのだということを伺っているわけです。そうしてそれが直接侵略に対処する。対処すると長官は何べんも言われるのですが、対処の仕方の中で当然出てくる問題じゃないですか。この問題について海幕なりあるいは統幕なりでどういう討論が行なわれたか、意見があるのか、これを一つ伺わせていただきたいと思います。それでなければこの次にヘリコプター空母はお出しにならぬようこ……。
  224. 海原治

    ○海原政府委員 先般御説明申し上げましたように、第二次の防衛計画というものは現在私の手元で検討中でございます。その検討の過程の構想を申し上げますと、今先生の御指摘になりましたような千島列島を含めての防衛ということは考えておりません。少なくとも第二次防衛計画整備の期間におきましては、そこまで手が伸ばせるような自主性を持つことはとうてい不可能と考えております。なるほど千島列島は西太平洋全般の戦略、戦術を考えますと、非常に重要なものではございますが、私どもといたしましては北海道、本州、四国、九州、この四つの島を有事の場合に、どのようにつなぎ合わせて生きていくかということがまず先決であります。この四つの島をつなぎます海峡のいわゆる対潜作戦に対する防衛に対しましても、なかなか困難でございます。御存じのように千島海峡、朝鮮海峡におきましては、先般の戦争中に数万個の機雷を入れております。数万個の機雷を入れましても、アメリカの潜水艦は日本海に現われております。そういうようにいわゆる海峡の阻止であるとか防衛ということは、非常に困難である。従いまして先生が日本海を生けすとかなんとかおっしゃいましたが、そのようにすることは事実上不可能ではないかと私は考えております。
  225. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこまで伺えば、その次の私の問いが出てくるわけです。もちろん日本の現在の海上自衛隊が独力でそれをやるということは不可能でしょう。そこで千島列島の戦略的な価値が非常に大きいということはお認めになったわけですから、これについてどのような形態かはわかりませんが、少なくとも大戦争というような場合には、アメリカが一つの手を打つであろうということは必定です。これは終戦当時アメリカの国内でも、千島列島を譲ったことは間違いであった。こういう議論もあったように聞きます。そうしてまたそれを立証するように、千島列島のある島を占拠しておった日本軍のところへソ連がやってきたのは九月二日ですけれども、それ以前にアメリカがやってきた事例もあるそうです。いずれにせよ、そういう意味でこの重要な千島列島について、何らかの作戦が行なわれるだろうと思います。そのときに独力ではできないけれども日本海上自衛隊はお手伝いに出ていくのでしょうか。
  226. 海原治

    ○海原政府委員 今先生の御想定になりましたような事態は、私ども考えておりません。
  227. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 出ていかないということですか。
  228. 海原治

    ○海原政府委員 先ほどからの答えで御了解願います。
  229. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 いや、私はよく御了解願いますと言われてもわからないのですが、出ていかないというふうに了解してよろしいのですか。
  230. 海原治

    ○海原政府委員 その通りでございます。
  231. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういたしますと直接侵略ということについて、北海道と九州に兵を比較的集中し、そして北海道においていろいろ想定のもとに演習はしている。だがしかしその場合の北海道防衛に関しては、千島や歯舞も色丹も全然想定には入れていないし、考えてもいない。そして日米共同作戦という場合でも、日本の海軍あるいは空軍は出ていかない、こういうふうにあなた方のおっしゃる直接侵略というものを考えてよろしいわけですか。
  232. 海原治

    ○海原政府委員 先ほど私がお答えいたしましたのは、千島の防衛のために海上自衛隊が出ていくかということに対して、私はそのように考えません、こう申し上げたのです。今先生はそれをさらに米軍に対して何らの援助もしないのか、こういうような御質問に変えられたと思いますが、かりに日米共同して敵に当たるという事態が起こりました場合には、それぞれ応分のことをするということは当然のことだと私は考えております。
  233. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今まで海外派兵しないとかなんとか盛んに言っておられたはずですよ。ところが応分のことを千島に出かけていってやれば海外派兵じゃないですか。
  234. 海原治

    ○海原政府委員 私は千島には出かけて参りませんと申し上げたのです。それでは何もお前はしないかと申されますから、自衛隊はあくまでも四つの島を守って戦います、こういうことであります。
  235. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 よくわかりました。そういたしますと、全然出ていかないという原則を守って、直接侵略というものを考えていく、こういうふうに了解をいたします。しかし私一しろうととして伺うのですが、一体そういう直接侵略に対する対処の仕方というのはありますか。そうしてそういうことが可能ですか。そういうことに非常な疑問を持たざるを得ない軍隊に、私たちは二千億近い金を出すということになるわけです。どうですか。
  236. 海原治

    ○海原政府委員 今の先生の御質問につきましてお答えいたしますことは、結局意見を戦わすことになるかと思いますので、実は避けたいと思います。ただ先般申し上げましたように、いろいろな事態が想定されますからして、極端に申しますならば、外敵の侵入、侵略ということ、及びそれに随伴して起こるであろういろいろな事象というものを単一の例にまとめ上げまして、その際どうだこうだと言うことは私は決して適当ではないと思います。と同時に、先ほどから申しましたように、具体的にとやかく国の名をあげまして申し上げることはやはり避けたい、このように感じておりますので、一つ御了解願いたいと思います。
  237. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 最後に、鳩山総理はこういうことを僕らに言われたわけです。外国の基地からミサイルが飛んでくる、それを防ぐためにほかに手がない場合には、その基地をたたくこともあり得る、こうおっしゃったわけです。ずいぶんむずかしい問題ですが、そういう考え方に立って歯舞、色丹、択捉、国後などというものを考えてみますと、鳩山流の論理がここにも適用されるじゃないかという懸念を私は非常に持っておったわけです。先ほど申し上げましたように、国後等から飛び上がった飛行機は三分ないし五分くらいでもう北海道に達してしまうから、千歳からスクランブルで飛んでいっても間に合わない。F86Dではそういうこともしばしばあるそうです。そういう場合に鳩山式のミサイル論法はここでは適用にならぬということを断定なさいますね。
  238. 西村直己

    西村国務大臣 ソ連から……。
  239. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ソ連と言わぬでいいですよ。
  240. 西村直己

    西村国務大臣 いや、飛鳥田さんの御設問で、樺太からミサイルが飛んできたらという意味でソ連という言葉が出たわけでありますが、ミサイルが飛んでくると、それでもって日本はお手上げかとおっしゃいますから、そういう場合においては全面戦争、突然樺太からミサイルが飛んでくるというととはあり得ない。従って日米安保体制によるところの抑制力なり、あるいは共同防衛力が働く、こう思うのであります。それではそのとき自衛隊は手をむなしゅうして、あぜんとして見ているかというと、そうではありません。私は日本人及び日本の国土の安危に関しますから、日本人はおらそく百人が百人立ち上がって自分の国を守るであろう、こう考えるのでありまして、座して日を送るということはないと思うのであります。
  241. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 ぼくの伺っていることに、もうちょっとまっとうに答えていただけないでしょうか。鳩山式ミサイル論法が択捉、国後、歯舞、色丹等の、いわゆるすぐ目の前にあって、しかもかなり優秀な飛行場を持っている諸島ですね。そういうものに適用にならないのか。適用いたしませんとはっきりおっしゃるのかどうか。
  242. 西村直己

    西村国務大臣 もちろん私が申し上げますように、そういう場合におきましては、突然撃ってくるのではないと思います。いろいろな態様が出てきて、おそらくミサイルなり、特に核を使い長距離のミサイル等も使うような場合、あるいは相当強力な兵器を使っていく場合においては、相手方も全面戦争というものを一応覚悟して考えているのではないか。その場合においては安保体制が当然発動されておりますし、私はそれによって日本がその基地を先制攻撃するとか、あるいは少なくとも基地自体に対して日本が間に合わない武器を持って向かうよりは、自分自体の国土の中でやるべき任務、仕事がたくさんあろうと思います。
  243. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう少し僕の話を聞いておいていただくとありがたいのですが、国後島にはかなり大きな飛行場があって、そこからは三分ないし五分で北海道に達しられるわけです。そうして千歳からスクランブルで飛んでいっても、間に合わないことすらしばしばあるのです。これは現実にある事実ですから否定できないでしょう。そういうものについて、かつて鳩山さんは、向こうからミサイルが飛んできて、そのミサイルを防ぎ得ないというような、ほかに方法がないときには、向こう側のミサイル基地をたたくということもあり得る。こういう議論をなさいましたから、それと同じ議論がそういう諸島に適用になるということはありませんかということを伺っているわけです。ですからもう間に合わないというので、やはり択捉、国後の飛行場をとらなければならぬ、あるいはこれを爆撃せねばならぬ、こういうことになりはしないのかと言って聞いているのです。
  244. 海原治

    ○海原政府委員 国後、択捉の飛行場からの襲撃ということとミサイルで撃たれるということと、両方一緒に御質問になっておりますので、飛び上がっても間に合わないではないかという方を私からお答え申し上げます。というのは、そのような事態が起こりました場合には、いろいろと先ほどから長官も申しておりますように、その前提があるわけでございます。突然空から飛行機が落ちてくるということではございません。従いましてこれは航空自衛隊としましては、スクランブルで飛び上がりましても、領空侵犯的な態勢には対処できませんけれども、そういう危険な状況には、常時空中待機という方法がございます。これはどこの国でもやっているわけであります。従いまして状況が悪くなりました場合には、一応手持らの飛行機を空中で待機させておくというようなことによりまして、先生の御質問になりましたような不意のわが国に対する襲撃というものは、一応は防ぎ得るのではないか、このように考えます。
  245. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 横道に話がそれてしまいますが、常時待機という方法があることは私も知っていますが、一体そこだけにそんなに常時待機できるのですか。そうして常時待機とおいばりになりますが、一体今の自衛隊は、そのF86Dでさえ、あるだけの飛行機を操縦するパイロットを持っていないじゃないですか。F86Dの保有機数とパイロットの数を言ってごらんなさい。F86Fの保有機数とパイロットの数を言ってごらんなさい。相当開きがあるはずですよ。そういうパイロットの数が非常に制約されている段階で、常時滞空なんてできますか。そうしてまた常時滞空なんてナンセンスですよ。
  246. 海原治

    ○海原政府委員 私の説明が不十分で申しわけございませんが、先生の御設問の国後、択捉だけのことをつかまえてお聞きになっておりますので、勢いその面だけのお答えになるわけです。長官は先ほどから、そういうような事態はあくまで全面戦争的な要素を前提に置いてものを考えなければならないと申し上げておる次第でございまして、私も国後、択捉からの場合ということに限定をされますので、お答えをしておるわけであります。同時に、現在F86Dを常時待機させるということは申し上げておりません。幸いにいたしまして現在はそのような準備体制を必要とする事態でございません。かりにもし万一そのような事態が至りました場合においては、現在86Dにつきましては具体的に養成済みのパイロットの数を手元に持ち合わせておりませんが、少なくとも保有86Dは有事即応の体制に移り得るものであるということは、私ども準備として持っております。
  247. 小幡久男

    ○小幡政府委員 86Dの機数とパイロットの数を申し上げます。四月一日現在の機数は百十三機、パイロットの数が百一名であります。
  248. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今御発表になりましたように飛行機の数は百十三台あって、。パイロットは百一人しかいないのです。常時滞空という場合には、機数の五倍ないし十倍パイロットがいなければ、実際上常時滞空なんということはできないことは百も御承知でしょう。しかもああ言えばこう言うですぐおきめになってしまいますが、それでは長官のおっしゃるように全面戦争になった場合にはやるのですか。
  249. 西村直己

    西村国務大臣 私はやるやらぬでなくて、その場合におきましてはまず日米安保体制が発動されて、アメリカの抑制力が戦闘力とかわってこれを押えるでありましょう。それでは自衛隊自体は何もしないのか。やはり自衛隊は、自衛隊どころではありません。私は全国民が死力を尽くして、北海道民はこれを守るに必死の力を尽くすであろう、こう考えるわけであります。
  250. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 直接侵略にからんであまり意見をかわしておったところで仕方ありませんから、この程度で。あなた方の考えている直接侵略というものがどんなものであり、どういう御準備をなすっているかということは、問答の中で明らかになったと思います。  そこで今長官のお説の中にはしなくも出てきたのですが、アメリカ軍と共同で動作する、アメリカ軍が抑制力を発揮するだろう。抑制力じゃなく、その場合には攻撃力です。こうおっしゃるわけですが、その点は私たちは非常に疑問を持っているわけです。自衛隊もずいぶん大きくなっていますが、どうしてもアメリカさんに寄りかからなければやっていけない、こういうことですし、前会石橋さんが一つの例証としていろいろおあげになって、米軍の指揮を受けるのじゃないかということを言われたわけですが、私もやはり同様な疑問をそこで持たないわけにはいかないわけです。アメリカ軍に命令されればやる、択捉、国後だってやる、こういうことになるはずです。自主性というものはそこにない。北海道防衛という名に隠れてやってしまうということになりそうだ、そういう危険を非常に感ずるわけです。一つの例として、きのう日本自衛隊は警戒体制をとられたはずです。しかもそれはアメリカ軍からの情報提供による、こういうことであります。一番の問題点は、レーダー・サイトは日本のもの、ADDCは日本人が経営している。ところがそのもう一つ上のADCCのところへいくと、実際はアメリカ軍に握られておって、さらにその上の府中あるいはその他の最終判断のところへいくと、もっと米軍支配の様相が濃い、こういうところに問題があるのじゃないでしょうか。そういう点で日本自衛隊はうわべは独立のように見えながら、実は米軍に隷属しておるという形態、そういう機能しか持てないという感じがするわけです。しかしこれは石橋さんが御説明になったところですから、私はあらためて申しません。その一つの例を私は新地位協定第三条に見ないわけにいかない。今一体日本自衛隊とアメリカの軍隊が一緒に住んでおる。一緒に住んでいるというのもおかしいのですが、共同使用しておる個所というのは幾つぐらいありますか。
  251. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 米軍と共同使用しておるものは二十八件でございます。
  252. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 しかもそれはみな自衛隊の重要部分です。ところがアメリカが接収したアメリカの基地の中に日本軍が共同使用させてもらっておる限り、アメリカ軍のコントロールに従わなければならないというのが、地位協定の第三条です。管理と訳してありますが、英文の方を見ますとコントロールと書いてあります。一体このコントロールという言葉を、どのようにあなた方は解釈しておるのですか。米軍のコントロールを受ける部隊ですよ。
  253. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 地位協定に規定してありますことは、その施設の管理権を米軍が持っておるということでありまして、指揮関係には及ばないと思います。
  254. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこに問題があるわけです。米軍は、新地位協定の三条によって、施設についてだけ持っておるのですか。そうではないはずです。条文をよく見て下さい。米軍はその施設の中で必要なるあらゆる措置をとれるのですよ。出入も制限することができますし、使用施設一切のものが含まれておるわけです。この問題については前の行政協定には、権利、権力、権能と書いてあった。しかし同じことを、聞こえが悪いというのでやさしく、あらゆる措置をとることができる、こういうふうに改めたわけで、建物、土地についてだけの管理権ですか。そうじゃないはずですよ。その中に入ってくる一切のものについてのはずです。そうでなかったら米軍と、調達庁が供給している駐留軍労働者との関係なんというのはどうなんですか。
  255. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 地位協定の三条は、今おっしゃいましたように「施設及び区域内において、それらの設定、運営、警備及び管理のため必要なすべての措置を執ることができる。」この通りでございます。でありますから門を出たり入ったりということについて、向こうの管理上の都合によって制限するというふうなことはあり得ると思います。しかしそのことと自衛隊に対する指揮関係とは別ものであると思います。
  256. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 向こうのあらゆる措置をとれるものの中に入ってしまっているのですよ。従ってこれについては一切の行動を監督、管理されることは仕方がないのじゃないでしょうか。そういう点について私はコントロールという言葉をどう解釈されるかということを伺ったのですが、コントロールという言葉は字引を引いてごらんになると、管理と訳してありますから非常にやさしく響くのですが、同じ管理でもマネージメントとかなんとかいう言葉とは全然意味が違うのです。その辺について御研究になったことはございませんか。
  257. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 おっしゃる通りコントロールという言葉の受けるニュアンスと申しますか、マネージメントとは違うと思います。しかし現実の問題といたしましてわれわれ関係しておりまする限り、自衛隊が米軍によってコマンドされるということはありません。この点につきましても今申し上げた通り事実がないものでありますから、それ以上深く研究したことはございません。
  258. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それではぜひ帰って字引をお引きになっていただきたいと思いますが、コントロールという言葉法律辞典で引いてみますと、主人と家来、本店と支店のような権力関係を有する、こう書いてあります。これは条約に使われている言葉ですから、当然法律的な解釈をしなければならぬはずです。主人と下僕、本店と支店のような支配関係意味する。ちゃんと書いてあるのです。施設や何かについて運営、管理、こういう点であなたはお逃げになろうとするのですか。コントロールという言葉自身は、法律的にはそういう権力的な対人関係意味する。コントロール・タワー、こういう使い方が正当でしょう。そういう意味でコントロールという言葉は、今現実に平時のこの状態の中で、米軍からコマンドされるという事実はないでしょうが、いざという場合には、このコントロールという言葉を理由にして、指揮を受ける潜在的な可能性をちゃんと含めているのです。そういう点で私たちは非常に疑問を感じないわけにいかないのですが、この点について外務省なり何なりときちっと打ち合わされて、コントロールという言葉は違うのだ、そういう部隊に対する指揮とは無関係だということを明確に確認をされておかないと、いざという場合には、米軍からコントロールとちゃんと使ってあるじゃないか、こう言われた場合にぐうの音も出なくなってしまう、こう私たちは思うわけです。そういう意味で、今自衛隊は共同使用をしている限り、米軍のコントロール下にある、こう解釈するのが条約の正しい解釈だろうと私たちは思っていますが、いかがでしょうか。
  259. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 御承知の通り自衛隊自衛隊法によって運営されておるわけでありまして、自衛隊法におきましては、指揮系統というものは法律的に総理大臣から順次下まできめております。それ以外の、法律規定してある以外の指揮を受けることはできないわけであります。でありますから、そういう指揮系統に違反するようなことになる結果を招くような事態は、これは私は自衛隊としては考えなければならないと思うのであります。コントロールという言葉はよく調べてみますけれども、今申し上げた通り、その施設の中において、それは主人でありますから、そこはわれわれは一緒に入っておるわけでありますから、出入りのときにどうであるとか、あるいは炊事のときにどうであるとかいうふうなことは、時間的に朝食をしてからやろうじゃないかということは、これはあるわけであります。それ以上のことはないはずだと思います。
  260. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そういう危険を私たちは感ずるわけです。そしてまた現に条約はそういうことを示しているわけです。これは一つの例です。  もう一つの例を一つ伺ってみたいと思いますが、このごろ米軍は日本全土の地図を作り直しているはずです。もう九州の地図はでき上がったろうと思います。その後他の地区に移って作りかかっているだろうと思いますが、これについても建設省の地理調査所あるいは自衛隊はこれに協力をしていらっしゃる。今は仲よくしていますが、よその他国に日本をまる裸にするような地図を全部作らしてしまうというのは、一体どういうわけですか。これは自衛隊がやっていらっしゃるのですから、伺います。
  261. 海原治

    ○海原政府委員 私、自衛隊が協力して今先生のおっしゃいましたような地図の作成をしておるということにつきましては、まことに申しわけないのですが、ただいま事実を調べて承知いたしておりません。従いまして何とも御返事申し上げられませんが、至急調査いたしましてお答え申し上げます。
  262. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それでは日本政府がアメリカ軍に日本全土の航空図をとらしたり、それから地図を作らしたりしておられることは御存じでしょう。
  263. 海原治

    ○海原政府委員 日本全土の地図につきましては、いわゆる占領時代におきましても詳細な空中測定の地図ができております。従いまして今新たに特に、今先生のおっしゃいましたようなまる裸にする結果になるような地図の作成は私はあり得ないと思いますが、これもどういうところでどのような地図を作っておるのかは、至急米軍とも連絡いたしまして調査いたします。
  264. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこに私は一つの疑問を発したわけです。僕らしろうとでは、もう前の陸軍参謀本部の地図もあるし、いろいろ市販の地図もあるし、かなり日本全土は正確な地図がある。それだのにどうして作り直す必要があるかということを考えておったわけですが、たまたま聞きますと、前の参謀本部の地図などは、地形としてはかなり正確ですが、経緯度が狂っている。真駒内などは一分一秒東経で違うそうです。だから新しいものを作り直す必要があるわけです。なぜ作り直すのだろうか。経緯度がどうしても必要な理由、すなわちそれはミサイル時代に入ったからです。ところがついこの間、たしか十二月一日の朝日新聞であったかと思いますが、それを拝見いたしますとこういうことが書いてあります。「〔ワシントン三十日発AP〕米軍首脳部と世界地域に駐在する米統合軍司令官会議が、一日から二日間にわたってネブラスカ州オマハのオファット空軍基地にある戦略空軍本部で開かれる。この会議での主な議題は、技術の進歩と攻撃目標の価値の変化に応ずるよう戦略的攻撃目標のリストを改正することである」こう書いてあるわけです。これは私非常に重要な記事だと思って書き抜いておいたのですが、すなわちいざという場合には、ミサイルで一斉に攻撃する戦略目標をあらかじめ設定しておくわけです。そのためには経緯度を明確にしておきませんと、飛行機の爆撃と違いますから狂ってしまいます。一分一秒違っては真駒内に当たらないで、よそに当たってしまうでしょう。だから必要だ、こう私には思えるわけです。たまたま聞きますと、アメリカのこの攻撃戦略目標、これはボミング・エンサイクロペディアという形で、ちゃんと東経何度、北緯何度という形で、一斉に攻撃する地点が表示されている。これはトップ・シークレットですから、私たちには見る余地がありません。皆さんたちはきっと見る機会をお持ちだろうと思いますが、その戦略攻撃目標としてあげられている中に、大阪と東京と札幌があるというじゃありませんか。そういう点から考えてみますと、やはり日本全土の地図を作り直していくという作業が行なわれているのは当然だろうと思います。そういうことについて自衛隊方々はちっとも意を用いずにいるのか。邪推とおっしゃるならそれでけっこうです。しかし必ずしも邪推と言えないのじゃないか。沖縄にメースを置く。これについてアメリカの政府当局者は、これははっきりとメースかどらかわかりませんが、沖縄の役割はといってハーター長官にグリーンという議員が聞きますと、まず沖縄の第一の目標は中国向け、第二には日本向け、第三には東南アジア向けと答えております。そうすると沖縄にはメースができますし、その他のミサイルもできるわけです。第二には、日本向け、こう言っているのですから、アメリカから離れていこうとする日本向け、こういう意味でしょうね。そういう意味で、大阪、東京、札幌というのはあたりまえのような気がするわけです。こういう点について、ボミング・エンサイクロペディアというものがあり、これをごらんになったことがあるのか、その中に大阪、東京、札幌などというものが含まれているかどうか、こういうことについてもし御存じならばお答えをいただきたいと思います。
  265. 海原治

    ○海原政府委員 今先生のおっしゃいましたエンサイクロペディアは私どもは承知しておりません。さらにその中に大阪、東京、札幌が入っておるということにつきましては、私どもそういうことを聞いておりませんが、先生がそうおっしゃいます以上、確たる根拠があるかと思いますので、お差しつかえなければ一つお教えをいただきますれば、それについて私どもは調査いたします。なお米軍に対しましてもそういうことになっておるかどらか、私どもの方で調査いたします。
  266. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 私どもの方でも開き直られるだろうと思っておったのですが、うわさとして聞きましたから、ですから私は、あるのですか、ないのですかということを伺っているので、もし確たる証拠があれば、さあどうですとちゃんとお見せいたします。低姿勢で伺っているわけです。ですから早くそれをお調べになってきちっとしていただきたい、こう私は思う。しかし現実日本全土の地図を作っているという事実、そして今申し上げたように朝日新聞に発表になっておりますようなAPの記事、こういうものを私たちは無視できないのじゃないか、こういうふうに言っているわけです。そういう点で至急調べていただいて——もっとも調べてといってもこれは無理かもしれません、トップ・シークレットだそうですから。ともかくできればお答えをいただきたい、こう思います。  まだ実は統幕の権限強化あるいはシビリアン・コントロール、そういった幾つかの問題も伺いたいと思いますが、もう時間がありませんからあとにいたします。
  267. 久野忠治

    久野委員長 両案についての残余の質疑は次会に譲ることといたします。  次会は来たる二十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時十二分散会