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1961-04-18 第38回国会 衆議院 内閣委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月十八日(火曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 伊能繁次郎君 理事 小笠 公韶君    理事 草野一郎平君 理事 高橋  等君    理事 宮澤 胤勇君 理事 飛鳥田一雄君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君       内海 安吉君    仮谷 忠男君       佐々木義武君    田澤 吉郎君       服部 安司君    福田  一君       藤原 節夫君    保科善四郎君       前田 正男君    牧野 寛索君       杉山元治郎君    田口 誠治君       原   茂君    山内  広君       受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         防衛庁参事官         (長官官房長) 加藤 陽三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  小野  裕君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君         調達庁長官   丸山  佶君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         外務事務官         (アメリカ局長)安藤 吉光君  委員外出席者         防衛庁書記官         (防衛局防衛審         議官)     麻生  茂君         総理府事務官         (調達庁不動産         部連絡調査官) 沼尻 元一君         検     事         (刑事局総務課         長)      神谷 尚男君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 四月十五日  建国記念日制定に関する請願賀屋興宣君紹  介)(第二四七〇号)  同外五件(唐澤俊樹紹介)(第二五九七号)  同(大村清一紹介)(第二六七六号)  新島のミサイル試射場設置反対に関する請願外  七件(川上貫一紹介)(第二四七一号)  同外七件(志賀義雄紹介)(第二四七二号)  寒冷地手当増額に関する請願外七件(安宅常彦  君紹介)(第二四七三号)  同(淡谷悠藏紹介)(第二四七四号)  同外五件(猪俣浩三紹介)(第二四七五号)  同外十二件(石田宥全君紹介)(第二四七六  号)  同(稻村隆一君紹介)(第二四七七号)  同外一件(北山愛郎紹介)(第二四七八号)  同(小林進紹介)(第二四七九号)  同外一件(下平正一紹介)(第二四八〇号)  同外一件(中澤茂一紹介)(第二四八一号)  同(中島巖紹介)(第二四八二号)  同外九件(内藤隆紹介)(第二四八三号)  同(野口忠夫紹介)(第二四八四号)  同外十一件(芳賀貢紹介)(第二四八五号)  同(原茂紹介)(第二四八六号)  同外一件(三宅正一紹介)(第二四八七号)  同外八件(矢尾喜三郎紹介)(第二四八八  号)  同外三件(山中吾郎紹介)(第二四八九号)  同(永井勝次郎紹介)(第二五九八号)  建設省北海道開発局及び運輸省港湾建設局定  員外職員定員化に関する請願井手以誠君紹  介)(第二四九〇号)  同外八件(石山權作君紹介)(第二四九一号)  同外一件(緒方孝男紹介)(第二四九二号)  同外十件(下平正一紹介)(第二四九三号)  同(井手以誠君紹介)(第二五五四号)  同外四件(石山權作君紹介)(第二五五五号)  同外十五件(安井吉典紹介)(第二五五六  号)  同(井手以誠君紹介)(第二五八九号)  同外十件(石山權作君紹介)(第二五九〇号)  同(福家俊一紹介)(第二五九一号)  同外五件(松本七郎紹介)(第二五九二号)  同(井手以誠君紹介)(第二六七三号)  同外九件(石山權作君紹介)(第二六七四号)  同(滝井義高紹介)(第二六七五号)  建設省定員外職員定員化に関する請願外一件  (下平正一紹介)(第二四九四号)  農林省に園芸局設置に関する請願原茂君紹  介)(第二五五七号)  同(増田甲子七君紹介)(第二五九九号)  恩給法等の一部を改正する法律案の一部修正に  関する請願生田宏一紹介)(第二五九三  号)  同(加藤常太郎紹介)(第二五九四号)  同(濱田正信紹介)(第二五九五号)  同(藤本捨助紹介)(第二五九六号)  同(岡田修一紹介)(第二六七七号)  同(富田健治紹介)(第二六七八号)  同(原健三郎紹介)(第二六七九号)  同(田中伊三次君紹介)(第二七二七号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二七号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  二八号)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますのでこれを許します。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 先日に引き続きまして質問するわけでございますが、きょうは主として防衛二法のもう一つの柱である統幕強化の問題についてお尋ねしてみたいと思います。  最初法案自体について、条文についてお尋ねをしたいと思いますが、防衛庁設置法の二十六条四号「出動時における自衛隊に対する指揮命令統合調整に関すること。」というところに新しく「指揮命令の」の下に「基本及び」というのを入れるというのでございます。この項でございますけれども出動時というのが明らかになっておらないのでございますが、これは自衛隊法との関係から防衛出動治安出動要請による出動、そういうものを全部含めておるのか。含んでおるとするならば、その辺の自衛隊法との関連を明らかにしておくべきじゃないかという感じを持ったのでございますが、この点ちょっとお尋ねしておきたいと思います。
  4. 西村直己

    西村国務大臣 お尋ね出動時と申しますのは、防衛庁設置法二十六条第四号、出動時の自衛隊、これは自衛隊法の七十六条一項内閣総理大臣命令によって行なわれる防衛出動、それから七十八条一項でございますか、内閣総理大臣命令によって行なわれる治安出動、それから八十一条一項、二項の規定による都道府県知事要請によって内閣総理大臣の命ずる治安出動、この三者を含めて出動時、こういうふうに解釈いたしております。
  5. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それはわかっているのです。おそらくそうだろうと思うのですが、いわば密接不可分関係にある自衛隊法といえども、この防衛庁法とは直接違うわけですね。従ってそのところを自衛隊法関係法規をここに明記しておくべきじゃないかということをお尋ねしたのですが、これは事務当局で……。
  6. 加藤陽三

    加藤政府委員 お尋ねの御趣旨はよくわかるのでありますが、これは自衛隊法の中で出動という言葉を使っておりまするのは、先ほど長官のおっしゃいました三カ条でございますので、大体防衛庁設置法の方で出動時と書きますると、その意味合いは了解できるという趣旨で、単に出動時というふうにしたわけでございます。
  7. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 しかし防衛庁設置法の中では明記がないわけですよ。自衛隊法の七十六条・七十八条・八十一条を受けるであろうということは、お互いではわかっても、一般の場合にはわからないわけです。法律条文として私はどうも不十分なような感じがするわけです。  それからもう一つ自衛隊法第二十二条第一項、これが今度の改正で関連を持ってくるわけですが、特別の部隊編成、この特別の部隊編成内閣総理大臣がやることになっているのですが、そういうふうに解釈していいわけですか。
  8. 加藤陽三

    加藤政府委員 この第二十二条に、この第一項の場合におきましては内閣総理大臣が特別の部隊編成する。第二項の場合におきましては長官が特別の部隊編成することができるというふうに、条項によりまして分けておるわけでございます。
  9. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 防衛出動治安出動、それから要請による治安出動、そういうものは内閣総理大臣が指示することになっているわけですが、そういった場合の特別の部隊編成についてまで、内閣総理大臣が直接やるというのが私には理解しにくいのですが、こういう部隊編成まで直接内閣総理大臣がやるわけですか。直接やるとすれば、これを直接補佐するのはだれですか。長官でしょう。長官ということになると、別に一項と二項を分ける必要は出てこないのじゃないか。結果的には同じことになるのじゃないか。一項についても長官をして何々させる、そういう形がとられるべきじゃないかと思うのですが、何かほかに意味があるわけですか。
  10. 加藤陽三

    加藤政府委員 この第二十二条の第一項に書いております特別の部隊編成につきましては、七十六条の防衛出動の場合、七十八条の命令による治安出動の場合、八十一条の要請による治安出動の場合でございまして、いずれもこれは内閣総理大臣命令によりまして出動を命ずる場合でございます。部隊編成法律上の規定の特例を作るわけでありますから、そういう趣旨からいたしまして、内閣総理大臣命令いたしまして出動させる部隊という場合におきましては、その部隊編成内閣総理大臣が博引にきめ得るというふうに考えたわけであります。
  11. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうするとあくまでも七十六条一項、七十八条一項、八十一条二項の場合の部隊編成まで直接総理大臣がやるという思想ですか。
  12. 加藤陽三

    加藤政府委員 実際の手続といたしましては、防衛庁長官が担当されまして、内閣総理大臣補佐をされるということになろうとは思います。しかし最後の決定権者内閣総理大臣であるというふうに規定したのであります。
  13. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 出動命令するのは内閣総理大臣であることは間違いありませんけれども部隊編成するのが内閣総理大臣という考え方が私にはわからないわけです。内閣総理大臣を直接補佐する幕僚はないわけですから、これは長官がやられる以外にはない。そうすると第一項も第二項も内容としては少しも変わらないわけです。特別にこういう規定を置いておく意義も全然ないわけです。出動を命ずることを総理大臣権限とすることは大切なことでしょう。しかしその際における部隊編成まで、総理大臣がやらなければならぬという理由があるとするならば、その理由を示していただきたい。
  14. 加藤陽三

    加藤政府委員 これは一つ立法政策上の問題でございまして、必ずしも内閣総理大臣でなければならないというふうには思いません。しかし事柄の軽重を考えまして、総理大臣自分出動命令する重大な場合でございますので、部隊編成につきましても内閣総理大臣権限とした方がよろしかろうということで、かように相なっておる次第でございます。
  15. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 別に格段の理由はないと私も思います。とれば長官をして編成させることができるとして十分だと思う。  次に、今度の自衛隊法二十二条の四項ですが、この四項でちょっと疑問が出てくるわけです。「前二項の規定により編成され、又は同一指揮官の下に置かれる部隊陸上自衛隊部隊海上自衛隊部隊又は航空自衛隊部隊のいずれか二以上から成る場合における当該部隊に対する長官指揮監督について幕僚長の行う職務に関しては、長官の定めるところによる。」とあるわけですが、第一項の場合、すなわち防衛出動命令による治安出動要請による治安出動、こういう場合の編成された特別の部隊に対する長官指揮は、今度統幕議長を通じて行なわれることになるわけですね。そうしますとこの第四項でいう「当該部隊に対する長官指揮監督について幕僚長の行う職務」というのは一体何なんですか。新たに統幕議長を通じて行なうことに今度は規定する。にもかかわらず、なお各幕僚長の行なう職務というものがあるというのがちょっとわからないのですが、これは第一項は要らないのじゃないか、第二項だけを受ければ四項は足りるのではないかという感じを受けたのですが、ここのところはいかがですか。
  16. 加藤陽三

    加藤政府委員 これは、今度挿入いたします第三項におきましては、条文によりまして「第一項の規定により編成された部隊陸上自衛隊部隊海上自衛隊部隊又は航空自衛隊部隊のいずれか二以上から成る場合における当該部隊行動についての長官指揮は、統合幕僚会議議長を通じて行なう」、こうなっておるのでありまして、当該部隊行動についての長官指揮を新しい第三項できめておるわけであります。行政——補給とか人事管理とか、その他の面につきましては第三項の適用はないわけであります。やはり第四項の必要がある、かように考えております。
  17. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 行動だけが統幕議長を通じて行なわれるのであって、その他一切は従来通り幕僚長を通じて行なわれる、こういうふうに解釈するというわけですね。そうするとこの統合部隊ですが、これは一人の司令官の完全な指揮下に入るということになるわけですか。
  18. 加藤陽三

    加藤政府委員 統合部隊を作りました場合におきましては、統合部隊の特別の司令部が設けられることになると思います。
  19. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 その司令官は自己の所属しておる各幕に対して、それでは行動についての報告をする義務などはあるわけですか。
  20. 加藤陽三

    加藤政府委員 行動につきましては統合幕僚会議議長を通じて長官指揮を受けるわけでございますから、統合幕僚会議議長報告する。統合幕僚会議におきまして、議長がそれぞれの幕僚長に連絡するということになろうかと思います。
  21. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますとこの統合部隊司令官がかりに陸幕の所属にあっても、陸幕長報告を行なう義務はない、一切の責任統幕議長に対してのみ負う、こういうことになるわけですか。
  22. 加藤陽三

    加藤政府委員 この点は、新しく規定されます第三項におきましては、行動についての指揮統合幕僚会議議長を通じて行なわれるというのでありますから、その面につきましては統合幕僚会議議長の方に報告する。それ以外の行政管理というような面につきましては、それぞれ自分の所属する幕僚長にも報告する必要があろうと思います。
  23. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは、その統合部隊に集まってきておる陸幕部隊海幕部隊空幕部隊というものがあるわけですが、その個々の部隊行動について直接所属する幕僚長報告義務があるのか、あるいは責任を負うものか、この辺はどうですか。
  24. 加藤陽三

    加藤政府委員 行動については統合幕僚会議議長だけであると思います。
  25. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そうしますと統合部隊に所属しておる各幕僚部隊も、直接自分の所属する各幕僚長報告する義務はない、そういう形で完全にここに統合部隊に対する行動指揮統幕議長を通じて一貫して流れていくような形がとられるので、実質的に統幕強化になるというふうに考えておられるものと了解いたします。  ところでこの統幕強化ということは、二、三年前から世界的な傾向として行なわれておるわけでございますが、アメリカの例をとりましても、他国の例をとりましても、兵器の目ざましい発達に即応するために、指揮命令流線化という言葉が使われておるようでありますが、作戦指揮系統流線化して有事即応体制をとろうというので、こういった統幕強化というものがとられておることを了解するのでございますが、そういう措置がとられておる場合、必ず、アメリカの場合でいいますと、国防大臣権限強化というものが相伴っておると私は思う。すなわち統幕強化されればされるほど、シビリアン・コントロール強化ということも、あわせて十分に検討が加えられておるように私どもは理解しております。またそうでなくてはならないと思う。三軍が一体となってこれが強力になってくればくるほど、これをコントロールするシステムというものもまた強化されていかなければ、非常に問題は微妙になってくると私ども考えておるのでございますが、今度の日本のこの場合、統幕強化されたけれどもシビリアン・コントロール強化が相伴っておるというふうには理解できないのでございます。この点は何らかの措置をお考えになっておられるのかどうか、長官にお伺いしたいと思います。
  26. 西村直己

    西村国務大臣 今回は防衛庁設置法におけるシビリアン優位の原則はくずしてないつもりでございます。統合幕僚会議の所管の事務を変更した。そうしておっしゃる通り作戦流線型といいますか、機動化効率化をはかっていく。それによって何ら私どもは文民優位、政治優位の原則はくずさない。防衛庁設置法のたしか二十条でございましたか、内局を通じ長官補佐し、そしてその上に総理大臣国防会議あるいは国会監督と申しますか、意思を十分反映していく。その基本線はくずしていない、こういうふうに考えております。
  27. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 軍事はあくまでも政治の一部であり、一環であるという考え方を私どももとっておるわけでございまして、政治が常に優先、指導的な立場に立っていかなくちゃならぬというふうに考えておるわけであります。ところが一応いわゆる政治家、これを直接補佐するところの文官というものと、いわゆる制服というものと対比させて考えていく場合に、制服権限がずっと強くなってきた場合には、こちらの方が現状維持というのであったら、これはある意味においては弱化するというふうに考えられないこともないと思う。だからこそアメリカの場合でも統幕強化が行なわれれば、それに比例して国防長官権限というものもぐんと大きくして、将官の任免権すら持つような形が与えられておるというふうに私ども理解しておる。現在提案されておるこの法案によりまして、統幕強化されたという、ところが片一方のいわゆるシビリアン・コントロールシステムというものが現状維持というのであったら、私はこれは必ずしも強化されたとは言えないのじゃないかという感じを持っておるわけです。法律的には、出動の場合には国会の承認を得なくちゃならないのだとか、あるいは総理大臣命令がなければ動かないのだというようなことで、常にシビリアン・コントロールというものが論ぜられておるわけでございますけれども、私はそういう形式的な論議だけでシビリアン・コントロールというものを考えていけば、またもやあやまちを犯すおそれなきにしもあらずということを申し上げておきたいと思うのです。現に長官もある席上でそういう不安を述べておられるじゃありませんか。これはこの間もちょっと引用いたしましたが、三月十五日号の「政府の窓」で奥野信太郎教授長官が座談をしておられるときのその一節にも、あなたはその悩みというようなものをちょっと述べておられます。いわゆる政治家を直接補佐する文官というものに人を得ない。今のような状態ではどうもシビル・コントロールという面に不安を感じないわけにはいかないということを認めておられる。ちょっとここで読んでみますと、「文官の人も最初から防衛庁に育って文官立場シビル・コントロールをお手伝いして、よい意味軍事を育成するのだという落ちついた気持でやっていただかないと、いま文官系統はどちらかというと、各省からの出店になっているので、腰掛的ですぐ原省に帰ってしまう。」確かにこういう現象はあると思う。こういう形をいつまでも続けておったら、私はシビル・コントロールと言っておっても、それは条文上だけのこと、形式的な問題にだんだんなっていくおそれが多分にあると思う。長官はこういう状態にあるから、今の防衛庁国防省に昇格させなければだめなんだというような考え方を持っておるようですけれども、それでは私はいけないと思う。単に防衛庁総理府外局であるとか、あるいは国防省に昇格しなければだめだというような、比較の形の中から論ずべき問題じゃないと思う。もっと真剣にこの防衛庁のいわゆる文官をどうしなくらやならないかということを考えなくちゃならぬ時期が、もはやきておると思うのでございます。こういう統幕強化というものが制服の側でどんどん行なわれておる。これと比例してここに根本的なメスを今にして加えなければ、悔いを千載に残すと思うのですが、長官国防省に昇格しなければお手上げだという考えを持っておるのですか。
  28. 西村直己

    西村国務大臣 私の意見をお読みいただいて私むしろありがたいのでありますが、私自体もそれをいいかげんな気持で話しておるのではございません。実は任浅うございますが、防衛庁に入りましてから何と申しましても私の立場からは、自衛隊と申しますか、新国軍と申しますか、これを正しい意味で育成強化していく、同時に政治優位の原則をやはりきちっと立っていく、この意見は根底において強く持っておる人間でございます。そこで統幕強化そのものをなるほど流線型にするとか効率化するとか、内部の部隊指揮する、行動においての指揮、これについては一本化する面が今回はかられております。しかしそれではかりにこの統幕強化をはからないと考えましても、私はいま少しシビル・コントロールを人的にあるいは制度的に考えていくべきではないかというのがその意見でございます。かりに現状でも、もちろん長い十年の歳月の間に、内局にはそれぞれ各省から優秀な諸君が参っております。しかし一方、御存じの通り防衛大学卒業生というものが長い月日をかければ漸次卒業し、これが軍の中枢に入ってくることは明らかであります。そこでそれが一つの、悪い言葉でいえば、集団的な意識を持って政治を動かす場合があってはいけない。それに対してはやはり腰の落ちついた内局というものが将来育って、長い来歴と長い政治との接触面においての補佐がとられるような体制に持っていかなければならない。これは統幕強化とは何ら関係なしに、私は長い国防というものを考えた場合に、そういう方向をたどるべきだというのが私の所論でございます。従いましてその場合において、でき得るならば単に総理府外局というような立場よりは、省というような立場においてシビル・コントロール補佐する者も育成されていったらいいというのが私の所信でございます。結論的に申しますと、統幕強化内局、他の各省から出向して参られる人は直接の関係はないつもりで、その意見を申したつもりでございます。統幕強化はあくまでも作戦上あるいは戦術上の一つ効率化石橋さんがおっしゃられる流線型にして能率を上げさせたい、こういう範囲内においての統幕権限強化でございます。その上に立つ政治優位は、現在のものを人的にもあるいはさらに制度的にもよりよくしていきたいというので、直接の関連はなしにこの意見を述べておるつもりでございます。
  29. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 直接の関係がないとおっしゃいますけれども、私は関係がないとは思えないのです。この文官優位、政治優位、シビル・コントロールというものを完全にやっていく場合に、悪い言葉でいえば分裂支配というか、陸海空対立を利用してそういう形でいくなら一番やりやすいでしょう。しかしそういうことをやっておったのでは、いざという場合、軍事面から考えていった場合には役に立たない。従って陸海空対立をなくして、これが一体になって動けるようなシステムに持っていくということをどうしても考えなければならない。そうすると勢い平時においてもどうしても力を強くしていくことになる。いわゆる文官優位という立場から考えてみても、これを押えることが非常に困難になっていくわけです。だから、押えるためにはやはり確固たる強固な組織というものを持っておらなければ、向こうが一体になればなるほど押えにくくなる。そういう意味で私は統幕強化がはかられればはかられるほど、いわゆる文官優位の体制をくずさないような、こちら側の体制強化されなければならぬと言っておるのです。決して私は関係ないとは思っておりません。それで長官は直接関係がないとおっしゃっておりますが、それはどちらでもいいのです。とにかくシビル・コントロールというものを真剣に考えなくてはならぬということはお認めになっておるのですから、そうしますと実質的にどういうふうにしてこれを確固たるものにしていくのか。直接政治補佐する立場にあります文官、こういう人たらがあなたの言うように腰を落ちつけて防衛庁にどっかりとすわって、そして防衛庁の将来を考えていくようにしむけていくためにはどうしたらいいか。今のように各省からお役人が出てきて、何年かたったらさあ帰れたと喜んで帰っていくということではいかぬとあなたもおっしゃっておるのですから、そういうことを直すためにはどうしたらいいと長官はお考えになっておられるのか。国防省にしなければだめだと思っておられるのかということをお尋ねしているわけです。
  30. 西村直己

    西村国務大臣 統幕強化すればシビル・コントロール強化しなければならないと言われますが、これはあくまても出動時における作戦であります。平常時から統合部隊を作って、そうしてそれによって統幕議長に強大な権限を与えているわけではありません。いわゆるいざ鎌倉というときの部隊の運用であります。しかもそれは作戦面です。しかも行政面におきましては補給であるとか人事管理、これは全部各幕僚長に分散さしております。しかも内局は現在の制度におきましては、予算なり人事その他国会関係政府関係の折衝は全部基本内局を通し、長官を通し、重要事項は総理大臣あるいは国防会議、最終的には国民の意思による国会によっておきめ願っておる。こういう建前でありますから、私は現状においても制度的には差しつかえない。ただできるだけこういうものは制度だけではございません。もちろん制度におきましては私は省昇格を熱望しておるものでありますが、それ以上に人が現実には問題になろうと思います。従って統幕議長に人を得る、あるいは各幕僚長に人を得る。なるほど内局に、現在は防衛庁が発足しまして警察予備隊以来わずか十年の歳月でございますから、学校を出て防衛庁に入ってきた人でもまだ最高幹部までくる段階ではないのであります。漸次現状におきましても私はりっぱな人材を育成していくべきである。その間には各省から来た方々も真剣に、たとい身分は二年なり三年の出向でありましても、やはり専心やっていただいていると思うし、また今後もやっていただくように長官としても指導していきたい、こういう考えでございます。
  31. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私もその気持はわかりますけれども、一生懸命やってもらっておるつもりですということでは済まないですよ。それは来ておられる方々はいいかげんな仕事をしていると申しているわけではございません。しかしきた方はまた大蔵省に帰って行くのだ、通産省に帰って行くのだということになりますと、やはり部内の下部統率ということにも問題がありましょう。ましてや各幕に対しての威令といいますか、威厳といいますか、そういうものがうんと軽くなってくるということは、常識的に考えてもわかるわけなんです。こういうものを今にして直しておかなければ大へんな問題になるのじゃないか、とう申し上げておるわけですが、さしあたって別にいい腹案もないようでございますから、またいずれ徐々にお伺いしてみることにしたいと思います。  それからもう一つ統幕強化の問題ですが、今長官はこれはいざ鎌倉というときの場合のことであって、平常のこととは別だというようなことを言っておられますけれども、そういう考えは私は成り立たないのじゃないかと思う。いざ鎌倉の場合と平時の場合とは全然別だというようなことで軍事を論じておったら、大へんなことになると思います。  アメリカの場合でも思い起こしていただけばわかると思いますが、この統幕強化がはかられ、いわゆる統合部隊に対する指令、指揮というものは、統幕議長を通じて行なわれるようになっておりますが、平時の段階においても、すでにいわゆる各陸海空軍の手を離れておるじゃありませんか。たとえば日本に直接関係のある太平洋軍ですね。この太平洋軍もかつてはいわゆる海軍作戦部長の指揮監督を受けておった。ところが現在では統幕議長指揮を直接受けるシステムになっておるはずです。これは全海外駐留の米軍についても言えることであって、欧州軍、カリビア軍というのは、従来陸軍参謀総長を通じていわゆる指揮監督が行なわれておった。それから東大西洋軍、地中海軍、あるいは大西洋軍、太平洋軍というようなものは、従来海軍作戦部長を通じて指揮監督が行なわれておったのが、今度は直接統幕議長を通じて行なわれるようになった。あるいは戦略空軍、アラスカ軍、北米防空軍というようなものは、従来空軍参謀総長の指揮監督を受けておったのが、これまた統幕議長の直接指揮監督を受けるようになった。平時からそういうシステムをちゃんと組んで、一たん緩急に備えておるという形がとられておると思うのです。私は軍事を論ずる場合にはこうなくてはならないと思う。いざ鎌倉というときのことを考えて体系をちゃんととっておると言っても、日ごろからやはり訓練も必要であろうし、あらゆる面で習熟しなければならない点もありましょうし、画然と切り離しておくのでは、統幕強化もほんとうにいざ鎌倉というときに能率よく効果を上げていくかどうかという点で、多分に疑問が出てくるのではないか、全然平常時においては手は打たれておらないのですか。
  32. 西村直己

    西村国務大臣 私の言葉が足りなかったのですが、もちろん作戦時だけに統合部隊はできます。作戦指揮命令はその際であります。しかしながら御存じの通り統合幕僚会議も作ります。また統合幕僚会議におきましても、作戦のそういった場合における訓練といいますか、あるいは基本計画的なものは、作戦面においては当然考える。その意味におきましてはもちろん平素におきましても十分関係はあることは私もわかるのであります。その点は言葉が足りなくて、さっきのいざ鎌倉というのは、ただそこで突然にそういうときになるということではないということを御了承いただきたいと思います。
  33. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 アメリカ国防省改組の端緒になったのは、一九五八年のアイクの教書だと思うのですが、この中で非常にうまいことを言っておると私は思うのです。すなわち独立の陸戦、海戦、空戦というものは永久に去ったのだ。もしわれわれが再び戦争に巻き込まれるようなことがあれば、われわれはあらゆる兵力、三軍を全部集中し、統一したものを戦力として戦うであろう。平時の準備活動も機構のそれもその事実に合致するものとしなければならないということを述べております。それから戦略、戦術の計画は完全に統一化され、各戦闘部隊は統一部隊編成され、それぞれの統一軍部隊は科学が生み出し得る最も有効な兵器、体系を整備し、単一の指揮官のもとに三軍の区別なく一体となって戦う体制としなければならない。こういう考え方の上に立って教書が出され、先ほどちょっと申し上げたような機構上の変革が遂げられていったと理解しておるわけです。こういうふうにアメリカ自体国防省改組に乗り出してきた一番大きな原因、それはいろいろあるでしょうけれども、最も一般に早わかりする原因は何かというと、やはり私はあの新兵器の開発にあったという感じを受けておるわけなんです。陸軍、海軍、空軍がミサイルの開発の面においていわゆる協力体制をとらないで、いたずらに無用の競争をやっておる。そういうところから著しくソ連に立ちおくれを来たしたのではないかという批判が猛然と出てきた。これではいけないというのが一番大きな直接の端緒になって、こういう改組が行なわれたと思うのです。やはりこういう面が平時における新兵器の開発ということに関連を持ってくるわけです。日本の場合は、開発の面でそこまではいっておらないかもしれませんが、現にアメリカから供与を期待されておりますミサイル兵器の所管の問題については、もう争いが起きておるわけです。空幕の所管にすべきだ、いや陸幕の所管にすべきだといったような形で起きてきておるわけです。そういうものに目をふさいで、足して二で割る方式でホークは陸幕のもとに、ナイキは空幕の方でといったようなことでやっておって、はたしていざ鎌倉というときの組織はできません。統幕強化ははかられたと言っておっていいものかどうか。私はそういうところからえりを正して、文官たる皆さん方がいかにあるべきかということをぴしゃっと押えていかなければだめだと思うのです。  それからもう一つ、世界は長い間陸海空軍の対立に悩んできた。その中から統幕強化ということが必然的に出てきておる。日本の場合は、まだ誕生して日なお浅い今の段階において、いっそのこと一足飛びに思い切ってこの際、陸海空軍なんという区別をなくしていこうということを考えたことがおありですか、そういうことについての意義をどういうふうに認めておられますか。
  34. 加藤陽三

    加藤政府委員 ただいま石橋委員のお述べになりました通りアメリカにおきましては太平洋軍あるいは欧州米軍とかアラスカ軍とか、いろいろ特別の部隊編成しておりまして、昔はこれを陸軍長官あるいは海軍長官の管轄下に置いておったのですが、最近はこれを全部統合参謀本部の指揮下に置いておるというふうに、兵器の進歩というものがだんだんとそういうふうな傾向を生んできていることは間違いないと思います。ただ日本の現状について考えますると、今われわれは陸海空自衛隊がそれぞれ相当程度と申しますか、ある程度の能力を持つに至った、これを今度は統合して運営することを考えるべき段階に至った、こう思うのでございます。陸海空につきましては私どもはそれぞれ任務を与えております。これはこの委員会におきまして今までも何回も申し上げましたが、陸上部隊におきましてはもし上着陸というものがありますればこれに対する防御をする、または国内の警察の後拠となって治安の維持に当たる。海上につきましては沿岸の防備または機雷の掃海あるいは港湾の防備、外航、内航の護衛、それから航空自衛隊につきましては防空、それぞれの任務を与え、それぞれの任務に応じた装備をしておるのであります。これらの装備の発達によりまして、アメリカにおきましても最近は御承知と思いまするが、サイミントン報告というものが出ておりまして、サイミントン報告によりますと、陸海空の三軍の組織を改めまして、戦略軍、戦術軍、防衛軍、三つに分けたらいいじゃないかというふうな意見でございます。これもはなはだ傾聴すべき点を多分に持っておるように私ども思います。しかし日本の現状について考えますと、大体の方向としては了解できるのでございますが、やはりこういうものは現実にどうすれば一番うまく運用できるかという現実の力と申しますか、体系と申しますか、そういうものを頭に置きながら考えなければいけない問題であろうと思います。私どもは日本の自衛隊現状からいたしますれば、方向としてはわかりますけれども、現在の段階としてはこういうふうな統幕強化ということで進んでいくことが適当であろうというふうに考えておる次第でございます。
  35. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今の私の質問は、事務当局が答えるべき範疇に属しておるとは思わないのです。やはり防衛の直接の責任者として総理大臣補佐しております防衛庁長官として、現在の世界の国際情勢、軍事情勢その他いろいろ勘案した場合に、そういうことを一応御検討あってしかるべきではないか、こう考えて、お考えになったことがございますかということをお尋ねしたわけです。
  36. 西村直己

    西村国務大臣 私そういう石橋さんのような御意見につきましては、民間のそれぞれの見識ある方々からも時たま御進言があったり、あるいはまた質問されたりすることもありますし、私自体も多少考えないことはないのであります。しかし何しろただいま十年の歳月を経た私どもの目から見れば、国土の守りとしてはまだ十分でない自衛隊でありまして、わが国の地形に応じてそれぞれ特殊な任務を持っており、片やミサイル開発に伴って三軍共通に近代兵器化されていくのが世界の趨勢であり、わが国の守りとしてこの趨勢は当然取り入れるべきであるという観点から見ますと、将来におきましてはこの統合運用から制度的な統合というものもやがてある時期においては、あるいは海空の問題においてあり得る場合もあるのではないかと思いますが、当面はそういうことについては現状の中から統合運用して作戦効率化をはかり、与えられたる器材あるいは装備、人員の中で最大限の能率を発揮するようにやるべきがいいのではないか、そういう意味から現状においての部隊の統合運用ということを立案し、御審議を願っておる次第でございます。
  37. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 統合幕僚会議議長権限強化する、そうして作戦指揮系統流線化して、有事即応体制を整えるということなんでございますが、日本の自衛隊の場合、もう一つ考えておかなければならない面があるわけです。それは何かというと、米軍との連携ということを考えずして、いくら自衛隊だけの組織をいじくり回してみても、私は有事即応体制がとれたとは言えないと思う。この間私どもの質問に対して、ミサイルの攻撃に対してはお手上げだと御説明がございました。そういう場合にはすべからく米軍の力を仰ぐのだ。日本の自衛隊は内野守備であって、外野守備は一切アメリカにお願いするのだということを言っておられますが、そういう点から考えてみても、内野と外野との連携、それから監督一体だれなのか、こういうところがはっきりしておらなければ、いくら統幕ばかり強化してみたところで、この連携が悪ければ戦いは明らかに敗北になることはわかり切っているのでございますが、この面はどういうふうに検討されており、どういう体制がとられておるのか、ここを一つ御説明願いたい。
  38. 西村直己

    西村国務大臣 石橋さんの御質問は、安全保障体制の問題と思います。安全保障体制基本的な運用につきましては、私と外務大臣、それからハワイの極東司令官と在日大使との間で運用されておる御存じの通りの安全保障協議委員会というものがございます。昨年開きまして、大使もかわりましたので、私もライシャワー新大使が見えましたならば、やがてなるべく近い適当な機会に、この四者のトップの会談を開くように外務大臣と相談中でございます。相手方に御依頼もしてみたい、こういう考えであります。これはあくまでも運用の基本的な問題でございまして、そのほかにおけるいざ、いろいろな事態の場合における共同行動あるいは共同作戦と申しますか、共同防衛につきましては、各幕僚あるいは統合幕僚会議議長におきまして、時々適切ないろいろな打ち合せ等はさせておるわけであります。
  39. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 安全保障協議委員会のことをおっしゃったのでありますが、これは新安保が効力を持って以来一回でも開かれたことがございますか。
  40. 西村直己

    西村国務大臣 昨年の九月八日、第一回の会合を持っております。その後におきまして選挙、政変等がございまして、また大使の更迭もございましたから、今日まで持っておりません。それで新大使が着任したならば、相手方の都合等も考慮した上で持ちたいと、内々外務大臣と相談中でございます。おそらく従ってこれは実現できる、こう考えております。
  41. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 この安全保障協議委員会は、もっと高い立場のいわば政治的な分野に属すると思われる面を論議する場だと思う。今私がお尋ねしておるのは、この軍事行動の面、統幕強化に見合った日米の軍事提携といいますか、いわゆる有事即応体制をどういう形できちっと形づくっておるのかということをお尋ねしておるわけです。一つの例として今度防空演習が行なわれます。大演習が行なわれる。これには米軍がやはり入ってくるわけでございますけれども、日本の空の守りということを一つ考えてみても、米軍の応援なくしてはどうにもならぬ。これはあなた方率直にお認めになっておる。そうしますと自衛隊と米軍との連携が平時においてはどういうふうに組まれて、しっかりと一つに体系づけられて、指揮命令のもとに一体になって行動ができるようになっておるのか。またいざというときにはどういうふうな組織になって、一本の指令のもとに両軍が行動をともにできるような組織になっておるのか、その辺がはっきりしていなければ、幾ら日本の自衛隊統幕強化だけやってみたところで、完全なものではないのじゃないか、こうお尋ねしておるわけです。
  42. 加藤陽三

    加藤政府委員 この点につきましては、これも前々から御答弁申し上げておりまするが、今私が考えておりますところは、日本の自衛隊と日本におりまする米軍とは相互に密接な連絡をとりながら、場合によりましては司令部を同じところに置くというようなこともあり得るかと思いますが、とにかく密接な連絡をとりながら、共同の任務に向かって責任を尽くす。統一した、単一の司令部のようなものを作るというようなことは考えておりません。そういうことでやっていこうということでございます。今回の統合幕僚会議強化いたしますと、そういう面におきまして、なるほど石橋委員の御指摘になるようなところへどんぴしゃりとはいかぬかと思いますが、やはり日本側の方でも行動の能率を上げる上におきましては私は益するところがある、米軍との連携もより有効にとり得る面もあるであろうというふうに考えておるわけでございます。
  43. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 どうも直接軍事面に携わっておられる方の答弁とは受け取れないのです。そんなことで戦いができるなどとまともにお考えになっているとは思えません。先ほど私ちょっと申し上げました防空演習、これなんかの面でどういうシステムになっているのですか。敵襲だといったような場合、どこの機関で受けて、どういうような形で命令が流れていって、日本の航空団が出発し、アメリカの在日米空軍が出発していくのですか。
  44. 加藤陽三

    加藤政府委員 防空のことについてお尋ねがございましたので具体的に申し上げますと、レーダー・サイトは、これは前に申し上げておりまする通り、全部日本側に返還になっております。そこで日本側の方が二十四時間レーダー・サイトを運営いたしまして、日本の領空を侵す飛行機でもありますれば、監視しておるわけでございます。そのレーダー・サイトの上にADDC、防空管制所と申しますが、そこが上部機関としてございまして、これが各航空団及び方面航空隊と連結をしております。その上にADCC、防空統制所と申しますものがございます。これがやはり方面航空隊と直結しておるのでございます。そして府中に中央の機構がある。そこにはわれわれの方の航空総隊の司令部がある。こういうふうになっております。  そこで、かりに敵襲がある。どこかの国籍不明機でも入ってきたということになりますと、その系統を追いまして上部の方に伝達をされます。その伝達を受けまして、わが方はわが方でこれに対応する系統を通じてスクランブルを命ずるわけであります。もし米軍が発動する場合におきましては、府中の米軍の方からその系統を通じまして米軍機にスクランブルを命ずる。その場合、わが方の司令部と米軍の司令部との間には密接なる連携を保ってやっていく、こういうことでございます。
  45. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 密接なる連携を保っていく組織というものを私はお尋ねしているわけなんです。特に一分、一秒を争う防空というような場合に、それがよほどうまくいってなければ意味ないわけなんです。そういう組織がうまくいっているのかどうか、またなぜそういった最高司令部が現実にあるにもかかわらず、ないようにおっしゃるのか。そういうところでこだわっておられるのは、何か理由があるわけですか。
  46. 加藤陽三

    加藤政府委員 これは私どもといたしましては、現在のところ、そういうふうなやり方で日米共同して防衛に当たるという建前をとりますることの方が適当である、こういう判断でございます。
  47. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 内部の問題としてみれば、陸海空幕というものが従来のように割拠しておったのではどうも工合が悪い、だから統幕をこの際強化するのだと言っておきながら、いざそれがアメリカとの関係になると、今度は全然別個のものとしておっても一つも差しつかえないようなことをおっしゃる。私はこれはつじつまが合わないと思います。しかしこれはほかの方々も御質問になりましょうし、私ほかに質問がありますから次に移ります。  今度統合幕僚学校というのができて、これが統幕の直接管理に服することになっているようですが、これは従来の陸海空の各幹部学校を一本にした構想のものなんですか。
  48. 小幡久男

    ○小幡政府委員 お答えいたします。統合幕僚学校は従来の幹部学校とは別に作るものでございます。従来の幹部学校は、御承知のように陸で申しますと連隊長教育の指揮幕僚課程、それから高級課程といいまして、方面隊の幕僚、さらに高級の指揮官を養成します高級課程、この二つでございますが、その中間にこの統合幕僚学校が位するという格好になりまして、場所は市ケ谷の同じ建物の中に作りますが、学校といたしましては別のかまえでございます。
  49. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 幹部学校はどこが管理しているのですか。
  50. 小幡久男

    ○小幡政府委員 幹部学校は各幕僚監部が管理しております。
  51. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 教育局は幹部学校についてはタッチしているわけですか。新しくできる統合幕僚学校については全然ノー・タッチのようですが、これはどういうわけですか。
  52. 小幡久男

    ○小幡政府委員 ちょっと前言を補則いたしますと、幹部学校は長官直轄の学校になりまして、幕僚長を介しまして長官が直轄いたします。統合幕僚学校は統幕に移されますので、統幕長の方でこれを管理するということになっております。もちろん教育局は統幕学校につきましても基本的な構想、あるいは予算といったものにつきましては、長官を介してこれに関与するということは、教育の基本に関する事項ということが条文に書いてありますので、この条文に基づきまして統合幕僚学校につきましても、同じようにその基本に参加することにはいたしたいと思っております。
  53. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それから各幕の内部組織についてふに落ちない点が出てきたのですが、陸幕海幕空幕の内部組織が違うのです。海と空は同じようです。部があり、部の下に課があって、部長は各幕僚長の命を受け、課長は部長の命を受け、それぞれ部または課を掌理するという組織になっているようでありますが、陸幕だけは六部十四課があって、部の下に課があるのではない。各部長、各課長がそれぞれ陸上幕僚長に対して責任を負っており、相互の連絡はとっていく、こういうことになっているようですが、なぜこんなふうに分けているのですか。私はどこかに無理があると思う。こっちのシステムはよろしい、こっちのシステムはよろしいなんということがあろうはずはないと思います。どっちかに無理があるのではないかという感じを受けているのであります。いまだに放置しているところを見ると理屈もあろうかと思うのでありますが、これはどういうわけですか。
  54. 加藤陽三

    加藤政府委員 御指摘の通り陸上幕僚監部と海上及び航空幕僚監部とは、内部の組織において違った点がございます。これはやはり外国の軍隊を見ましても、陸海空の特性に応じまして、必ずしも同じような組織、編成をとっているとは私どもも思っておりません。わが国の自衛隊についてかように違っておりますことは、陸上自衛隊につきましてはいろいろな兵科と申しますか、職種がたくさんありますことからして、当初から米陸軍の編成組織にならいまして、一般幕僚という制度と特別幕僚という制度を設けて運営をして参っておるのであります。一部から五部までが一般幕僚という考えであります。いろいろな職種を統括したすべての問題について幕僚長なりあるいは方面総監、管区総監を補佐する。特別幕僚というものはそれぞれ特別の問題につきまして総監とか幕僚長補佐する。その間の調整は一般幕僚がやるということであります。これは長い間やってみまして、やはりいい点もありますし悪い点もあります。また海上及び航空の方でも陸のような一般幕僚、特別幕僚というような制度をとる方がいいじゃないかという意見もございます。できれば同じような考え方で通すことがいいかとも思いますけれども、この辺のところはよく実情に合うように慎重に研究して、さらに改正すべき点は改正していきたいと思います。
  55. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 いいものが二つあるわけはないと思います。やはりどちらかがベターだと思う。そういう各幕の組織の問題についてすら、そういう違いがあるということは、こちらの方がいいという線を出して、内局がやはり指導していくべきではないかと思います。遠慮しているのか、それだけの力がないのか知りませんけれども、いまだに放置しておくということは、決していいことではないと思う。いい方の組織に右へならえさせていくという考えでいくべきではないかと思います。  ちょっと話が横道にそれますけれども、長い間私たちも調達庁の将来というものをどうするかということを大臣に伺って参りました。最近新聞報道などにもちらちら出始めたのでございますが、どうにか何らかの芽ばえ、動きが出てきておるようでございます。現に防衛庁と調達庁の間に両庁連絡協議会というものも持たれておるようでございますが、今まで話し合いの中で調達庁をどういうふうにしようとしておるのか、どの辺まで固まっておるのか、この点をお伺いしたいわけです。たとえば今報道されておるところによると、防衛庁の中の建設実施本部と調達庁というものを一体にして、そうして施設局というものを作ろう、あるいは施設管理庁というようなものを作ろうというような構想も発表されておるようでございます。この辺の一つ現在までの話し合いの内容をお聞かせ願いたいと思います。
  56. 西村直己

    西村国務大臣 まだ正式に庁議として決定してくるまでの段階ではございませんし、もちろんこれは将来きまりますれば国会で御審議願う前に政府全体の意思をきめ、同時に特に行政管理庁という特別な所轄の役所もございます。まだそこまで行っている段階ではございませんが、考え方といたしましては私は、石橋委員の言われるように調達庁と防衛庁というものを一体にして、より以上一緒になるべきであるという構想を基本に置きまして、その中で施設関係あるいは建設関係といったようなことが効率的にいけるように考えつつ、かたわらさらにそこに勤める職員が安定しながらしっかり仕事ができる、そういう二つの面を考え、しかも国全体の行政に対して効率的になる、そういうふうな構想のもとに、私としましてはこれをじんぜん日を送るのではなく、できるだけ早く結論を出し、また関係方面とも十分その意思を交換し政府の態度をきめたい、こういうことでございます。なお細部、経過等につきまして、固まってはいないのでありますが、事務当局で多少意見を交換している点が、必要でございますれば答弁するつもりでございます。
  57. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それでは私から具体的にお尋ねをしたいと思います。今までいろいろとこの両庁協議会の中で話し合いをされたことを漏れ承りますと、今直ちにこの両庁を一つの役所に統合してしまうという考え方には問題がある、何年聞かの年次計画で一体化をはかっていくべきじゃないかという考え方が支配的であるように聞いておりますが、この点はいかがなものか。それからさしあたり漁業補償の問題、騒音対策その他の特損事項の問題、こういうものを防衛庁から調達庁へ移譲して、このような仕事に関しては従来調達庁と防衛庁が別々にやっておったものを調達庁一本でやっていこう、その次には土地の取得、管理まで移譲さすべきだというようなところまで、話が大体固まっておるということを聞いておるわけですが、その辺まで話は進んでおるかどうか、この点を伺っておきたい。
  58. 加藤陽三

    加藤政府委員 細部のことでございますから、私からお答えいたします。調達庁と防衛庁との機構の改革の問題につきましてはまだ検討中の段階でございまして、なるべく早い機会に結論を得たいと思いますけれども、ただいまのところでは具体的にどうなっておるというところまでは、何とも申し上げかねることを御了承願いたいと思います。考え方といたしましては、現在調達庁がやっておりますることは、労務の問題が一つあるわけでございます。それから施設の提供の仕事、これに伴う補償の問題、騒音対策の問題があるのであります。防衛庁の方でこれを申し上げてみますると、労務の問題はさしあたり直接対応するようなものがございません。用地の取得関係は、これは建設本部でやっておる。補償の問題とか騒音の問題とかにつきましては、主として各幕僚監部でやっておるのであります。補償の問題なら補償につきましても、これは各幕僚監部からはずしまして、建設本部なり調達庁なりに移すことがいいか悪いかというふうな具体的な問題につきまして、今検討しておるところでございます。それから年次を追ってやることも、確かに私は一つの案であると思います。内部にもそういう意見もございます。これらの点につきましてはまだここで具体的に申し上げる段階に達しておらないわけでございます。
  59. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それではおいおい検討を急いでいただいて、調達庁の将来問題に真剣に取り組んでいただきたいと思います。この問題はまた今後とも一つお尋ねをしていきたいと思います。  次に問題を移しまして、私少しお尋ねをしてみたいと思うのです。先ほども引用いたしました「政府の窓」を読んでみますと、長官は日本の防衛庁自衛隊というものは自主性を十分に持っている、決してアメリカに従属するものではないということを強調されておられるようです。この中で「私は防衛庁長官になったらアメリカのマッカーサー大使にでもあいさつに行くのかなと思ったら、向こうからちゃんと来ます。」というようなことを述べて、自主性のあるところを大いに強調しておられるようであります。しかし長官長官になった最初の日にあいさつに行くのかなと思ったそのことが実際のところなんで、向こうからあいさつに来たというのは、私は単なる形式だと思うのです。長官自身が長官になるまでそう思っておったのですから、これくらい確実なことはないわけです。私はきょうはそれを一つ立証してみたいと思う。国民の生活の面でも非常に関連のある問題でございます。こういう事件を一々検討してみますと、どうもほんとうに日本政府というものは、アメリカに対して自主性がないのじゃないかという感じを強く受けるわけなんです。それからもう一つ私は結論的に感じますことは、新しい安保条約、新しい地位協定というものは、旧安保条約、旧行政協定に比べて格段よくなったのだ、特に日本側の自主性が確保されたのだということを保守党の方々、それから皆さん方政府の人たちは強調されておるのですが、それもどうもごまかしじゃないかという感じを非常に受けております。一つ一つお尋ねしていきまして結論を大臣にお尋ねしますから、質疑を聞いておいていただきたいと思うのです。  それはどういうことかというと、私が具体的な例としてあげるのは佐世保港の施設及び区域の問題なんです。これは言うまでもなく岡崎・ラスク交換公文によって、暫定使用を認めておったところであります。いわば日本側としては米軍に正式に提供しておらない。旧行政協定の規定に基づいて合同委員会意見が一致を見て提供した地域じゃない。暫定使用地域だったわけです。それが新しい地位協定になっても、堂々と米軍のもとに提供されたような形がとられており、やかましい制限を日本の国民に加えてきておる。どうもふに落ちないというのが地元民の意向なんです。私は一つこの問題をとらえてお伺いをしてみたいと思うのですが、現在この佐世保港、岡崎・ラスク交換公文によって使われておった佐世保港が、新しい条約、協定のもとにおいても依然として使われておる法律的な根拠は一体何かということを、まず政府側にお尋ねしたいと思います。
  60. 丸山佶

    ○丸山政府委員 佐世保の港は、佐世保市内には十一カ所の施設、区域がございますが、そのうらの佐世保海軍施設、このうちに含まれたところの施設、区域になっております。従いまして施設、区域として米軍に使用さしておるのでございます。
  61. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は法律的な根拠をお尋ねしているわけです。いかなる法律的な根拠に基づいて米軍は佐世保の港を使っているのですか。
  62. 丸山佶

    ○丸山政府委員 地位協定の二条でございます。行政協定の時代におきましては、お話のありましたように岡崎・ラスク交換公文による保留施設ということで、その使用内容に関しましても従前の例に従う、このようなばく然たる規定をもって占領時代の使用状況を続けて参りました。平和条約発効後、鋭意この問題につきまして協議検討を遂げまして、たしか三十四年の末と思いますが、この使用の態様を明確にいたしました。従いまして新しい地位協定におきましては、それに引き続きまして、ただいま施設、区域の一部とされておるものでございまして、その根拠は地位協定の二条一項の(b)によるものであります。
  63. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんなばかなことは私はないと思うのです。(b)項で認められているのだというが、試みに新しい地位協定の二条の(b)項というのを読んでみますと、「合衆国が日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定の終了の時に使用している施設及び区域は、両政府が(a)の規定に従って合意した施設及び区域とみなす。」という規定で、第二条の1の(a)は、新しい地位協定によっても、施設及び区域の提供はあくまで合同委員会を通じて両政府意見の一致を見なくてはならぬというのが原則としてうたわれているわけだ。これは旧協定の二条と同じであります。その(b)として、暫定切りかえ措置として、今まで米軍が旧行政協定によって認められてもう現に使っているものは、新しい地位協定に基づく合同委員会にあらためてかけなくてもよろしいというふうな解釈をとるべきじゃないか。そうしなければ、岡崎・ラスク交換公文で暫定的に使っておった地域までがこの(b)項に入るというのでは、明らかに改悪じゃありませんか。この地域については、旧合同委員会においても、新地位協定による合同委員会においても、両国政府意見の一致を見ないままに、ずるずるっと米軍の使用を認めさしてしまう。こんなべらぼうなことがどうして認められますか。私はこれは根拠にならないと思う。この(b)にいうところの、旧行政協定の終了のときに使用している施設及び区域は、あくまでも旧行政協定に基づいて合同委員会意見が一致して、正式に米軍に提供されているもの、それは新しい地位協定によってあらためて合同委員会にかけなくてもよろしいという解釈をとるのが当然だ、こう考えておりますが、いかがですか。
  64. 丸山佶

    ○丸山政府委員 岡崎・ラスク協定に基づくいわゆる保留施設というものは、平和条約発効当時にたしか五十ほどあったと思います。これをその後、アメリカ側と鋭意折衝いたしまして、日本側に返還すべきものは返還させる、使用するものは明確なる使用条件を付する、こういう方針のもとに、平和条約以後折衝をいたしてきまして、逐次このようなものがなくなって参り、たしか昨年の初めごろには十カ所に縮まっておると思います。このうちで、今の佐世保の問題につきましては、先ほども申し上げたと思いますが、従来のいわゆる岡崎・ラスク協定によるところの保留施設時代のものは、占領時代のそのままで、地域内におけるところの使用条件、制限が何ら明確になっておらなかった。いわば米軍が一般的に、旧占領軍時代と同じように、これは自分の専用、絶対的な地域のごときもの、つまり漁業制限の告示にも当初ありましたように、従前の使用方法による、このようなことできたわけです。これを先ほど申し上げましたような方針のもとに検討を加え、折衝を続けて、たしか三十四年の末と思いますが、地域的にいわゆる内港と称される分は、この地域線を結ぶ北及び西の部分であって、これは常時漁業を制限する。また外港といわれる部分がありますが、ただしその外におけるこれらの地域についても、艦船の停泊地、あるいはその沿岸に米軍の施設があるものから九十二メートルの範囲内においてはやはり漁業を制限する、このような使用態様に関する協定を遂げまして、そうして岡崎・ラスクの保留施設に基づくようなものでない。日本側とアメリカ側とが合同委員会を通じ一つのはっきりしたものにいたしまして、そうして地位協定に移りがえたわけでございます。
  65. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 昨年の安保条約の審議の際に、行政協定の問題には一言半句も及ばないうちに強引に押し切ったので、こういう問題が出てくるわけであります。第一、岡崎・ラスク交換公文というもの自体に問題があるんですよ。私から言うまでもなく、平和条約の第六条(c)項には何と書いてあるか。講和発効に伴って九十日以内に日本政府に返還しなければならないということが規定されております。もちろん「相互の合意によって別段の取極が行われない限り、」というただし書きはついておりますけれども原則はあくまでも九十日以内に日本国政府に米軍はこういう施設、区域を返還するということです。それの例外中の例外規定として岡崎・ラスク交換公文というものが出ておるわけでありますが、一体この例外の暫定規定を八年間も放置しておくというようなことが認められますか。そんな暫定がありますか。国際法上許されますか。試みにこの岡崎・ラスク交換公文を思い出していただきたいのです。何と書いてあるか。「合衆国軍隊による施設及び区域の使用が、それぞれの政府が日本国との平和条約、安全保障条約及び行政協定に基いて有する権利を条件として、両政府間の合意に基かなければならないと陳述されました。」こう確認しております。あくまでも施設の提供は、日米両国政府の合意に基づかなければならないということがまず確認されております。そうしてその次に、「合衆国政府は、この取極をできるだけすみやかに完成させるための協議が緊急に行われるべきものであることに両政府意見が一致していることを信じます。」いいですか。この米軍に提供すべき施設及び区域を取りまとめるために、緊急に会議が持たれるように意見が一致したと書いてある。それを八年間も放置されておって一体緊急ということが言えますか。これにも特例があります。「避けがたい遅延が生ずることがあるかもしれません。」ということが書いてありますけれども、この九十日の間に佐世保の港の問題などは提案もされておらないじゃないですか。私はここに問題があると思います。この岡崎・ラスク交換公文の原則から言っても、なるべく早い機会に提供を承認するか、あるいは返還してもらうか、結論をつけなければならないという大原則がある。これはなるべく早くその結論を出さなくちゃならぬという大原則であるはずです。それが八年間も放置されておることから言って、国際法上からもこの岡崎・ラスク交換公文なんというものは、すでに旧条約のもとにおいて消滅すべきものだと考えます。  いま一つは「避けがたい遅延」の中に、この佐世保の問題などが入るかどうか。この猶予期間九十日の間に、米軍は絶対に使わせてくれ、日本側はそれは全部制限されては困る、そういう提案が相互になされて、真剣に論議がなされておりますが、一回だって提案されていないじゃありませんか。何をもって避けがたい遅延と認めるわけですか。こういうところからいっても、岡崎・ラスク交換公文自体が国際法を踏みにじるところの違法なものになっておる。そういう違法なものを認めて、日米両国政府の承認を得ないままに、新しい地位協定のもとにおいてずるずると使用を認めてしまう。今度は合法的に認めさせてしまうなんということは、できようはずがないと考えております。  もっといい例がありますから、お尋ねしましよう。これは法務省の刑事局長が来ておられると思いますからお尋ねしますけれども、この岡崎・ラスク交換公文によって米軍に暫定使用を認めておった地域、この中において刑特法の適用がございましたか。
  66. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 その場合には、刑特法第二条の適用は解釈上疑義がありますので、適用いたした実例はございません。
  67. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 明らかに適用されていない。そうすると今新しい地位協定によって第二条の一項の(b)で提供したのだなんということを、外務省や調達庁は言っておりますけれども、そうすると今度は、従来岡崎・ラスク交換公文時代には刑特法の適用はしなかったけれども、新しい地位協定になってからは適用するという見解に立つわけですか。
  68. 竹内壽平

    ○竹内政府委員 新法のもとにおきましては、一般抽象的に申しますと、適用を見ることになっております。しかしながら具体的になって参りますと、刑特法第二条の解釈上、その区域が明確になっていなければならないことは当然でございますし、さらにまたその区域に立ち入ることが禁止されておるということが明らかになっておらなければ、刑特法二条の適用を見ることはできないわけであります。
  69. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ここに問題があるわけです。少なくとも岡崎・ラスク交換公文によって使用されておった時代においては、法務省は正式にアメリカに提供された施設及び区域とは認められないという見解の上に立って、刑特法の適用を除外しておりました。適用されないものだと言っておりました。米軍の使用は、いわゆる法律的に根拠がないのだ、そういう解釈を法務省はとっている。そういう地域をずるずると新地位協定によって、今度は正式の提供施設としてみなすということが一体許されますか。明らかに改悪じゃないですか。いかがです。
  70. 丸山佶

    ○丸山政府委員 石橋委員のお説によれば、岡崎・ラスクのそれによる保留施設をそのまま日本側が検討を加えず使用させ、正規の協議を経ずしてそのままに捨ておいて、それが新しい地位協定によって引き継いだ、このような御立論から今のような御発言だと思いますが、私が先ほど申しました通り五十の保留施設、これを鋭意検討を加え、米側と折衝をしまして、正規なものにすべきものはする、解除させるべきものはさせる、条件を変更させるべきものはさせる、このような努力をいたして参ったものでございます。なるほど八年間も五十ばかりのものを片づけるのにかかっておるのは、そもそも岡崎・ラスクの精神からいっても、条約の精神からいってもおかしいという説はございますけれども、向こうとしては、このものはいずれも問題の個所でございまして、向こう側は占領時代と同じように、自分の全面的、専管的な使用方法を主張しておるものであります。こちらは、政府といたしまして、また地元の各種の利害関係を考慮しまして、こういう向こう側の主張を変更させる、このようなむずかしい個所でございます。従いましてその年数はかかりましたのでございますけれども、今回新たに条約が改正になり、行政協定が地位協定になる。それまでにおきましては、これらのものをいずれもこちらの主張、向こうの主張を調整いたしまして、条件を付すべきものは付させる、使用条件を制限するものは制限する、あるいはその区域を縮めるものは縮める、このような処置をとりまして、これを正規の双方の合意というものにした上で、そして初めてこの新地位協定によりまして施設区域になったものでございまして、決して占領時代のばく然と従前の使用方法によるという式なものでもって、この佐世保のものもずるずるとこのまま引き継いで、これを正規なものにした、このようなものではございませんということを私はつけ加えておきます。
  71. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 そんなことを言っても、それは日本政府立場からいえば五十のものが十四に減ったではないかということが言えるかもしれませんけれども、それでは残された佐世保の市民の立場から考えたならばどうなりますか。日本の法務省は、これは条約上、法律上、両国政府の正規の取りきめに基づかずして米軍が勝手に使っているというところから、これは法的根拠が全然ないのだ、こういう見解をとっておる。ところがアメリカの側からいえば、おれたちが出した規則をなぜ守らぬか、取り締まれ、逮捕しろ、こういってどんどん逮捕して送っておるではありませんか。そのたびに地検は、法的根拠がないからといってこれを釈放しておるのです。どえらい人たちが大へんな迷惑をこうむっておる。現実にそういう検挙された人たちだけではございません。船でそこを通りかかった人も、魚をとりにかかった人も、みな違法な米軍のそういった横車のもとにおいて、大へんな迷惑を八年間も受けてきているのです。それを今になって新地位協定のもとにおいて合法なりと認めたのは事実じゃありませんか。これは大へんな問題ですよ。すなわち法務省も海上保安庁も、何ら法的根拠に基づいて米軍が使っているのではないという見解をとっておきながら、アメリカ自分の方の規則というものを、取り締まり通達というものを至上無二のものとして、日本の国民に強要しておるのを、日本の政府はどうすることもできなかったじゃありませんか。そうしてアメリカの横車にずるずると押されて、新地位協定のもとにおいてこれを合法と認めてしまったという事実が現にあるじゃありませんか。私はもう少し謙虚に考えていただきたいと思います。長官は所管官庁のことなんですが、この点御承知でございますか。
  72. 西村直己

    西村国務大臣 正直に申しまして、事実は私は存じておりません。ただ事柄は一般市民の権利にも関しますし、しかし同時にまた従来の経緯もございますし、またただいま石橋委員政府委員との答弁の中に明らかになりましたように、一応の形の上におきましては合法の措置をとられておる。範囲が狭まって合法の措置に切りかえられておるということは私もわかりました。従ってその範囲内において処理はしていかなければならぬじゃないかと考えておるわけであります。
  73. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 少なくとも佐世保の港については、範囲は狭まっておりませんですよ。佐世保の港の点について範囲が狭まっておりますか。日本政府はもう全面的に譲歩して、米軍側の主張通り認めたのですか。新たな合意がなされたというならばいつなされたのか、そして全面的に米軍の主張を認めたのか、それでは今まで何のためにがんばっておったのですか、この辺を一つ明らかにしていただきたい。
  74. 丸山佶

    ○丸山政府委員 佐世保全体につきまして、地上の部分と海上の部分がございました。地上の部分に関しましても、一部返還をする、また地元の船舶会社等にも共同使用を許す、このような措置をとりました。また海上の港の部分に関しましては、先ほど申し上げましたように、いわゆる内航部分は従来のように常時漁業の制限をする。しかしながら外航に当たる部分に関しましては、船舶の停泊地域あるいはその沿岸の施設から九十二メートルだと思いましたが、この関係においては漁業の制限をする。しかしながらそういう事態のない場合にはその使用が許される、このような式に陸上における区域の縮小とともに、海上におけるところの使用の制限の措置をとりました次第でございます。
  75. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 昨年の八月八日ですか、この問題について合同委員会が持たれておるように聞いております。これは地位協定が成立した後ですよ。だからそれまでは両国政府の合意がなかったことははっきりしております。ないままに、新地位協定に基づく正式の提供施設として提供してしまっている。それであわててそのあとで合同委員会が持たれておる。こんなばかな話はございませんですよ。下手したら、今度は刑事特別法の適用もあるかもしらぬという。あの悪いといわれた前の安保条約、行政協定のもとにおいても刑特法の適用がなかったのに、今度の新しい——皆さん方の説明によれば、日本の自主性がより強化され、確保されたのだと言う、そういう条約、協定のもとにおいて刑特法の適用もあるという。こんなばかにした話はございません。そうしておいてあわてて合同委員会が持たれて、日米両国から提案がされておる。ところがこの提案の内容たるや、全くでたらめじゃありませんか。占領中以上じゃありませんか。こんなものをお認めになるのですか。ここに地図もございますけれども、米軍側の提案によると、一区、二区では一切の日本船舶は航行、操業を禁じられる。こういうことになると、港則法に定められた大型船航路も、SSKのドックに通ずる水路も、全部閉ざされてしまいます。それから立神の三号、四号、五号、六号の岸壁、これは全部日本側の倉庫地帯、それからSSKの修理船着岸地帯になっているのですが、これも完全制限水域になって、一体どうしろというのですか。具体的に言えば何ぼでもありますよ。とにかくものすごい制限のきびしいものを出してきている。  これに対して日本側の案というのが、また全く自主性がないじゃありませんか。今は佐世保の港は米軍の艦船も、特別の場合以外あまり出入りしていないのです。三十五のブイもほとんどがらあきです。何のためにこんなにやかましいことを言って制限しなくちゃならないのでしょうか。このような理不尽なことに対して、なぜ日本政府はもっと強硬にがんばらないのですか。八年間がんばったというならば、新地位協定のもとにおいては、それでは何でたやすく屈してしまうのですか。もっと日本の国民の利益というものを考えてもらいたい、国民の立場というものを尊重してもらいたい、そうしなければ、幾ら池田内閣が日本は自主性があるのだ、西村長官アメリカ軍といえどもわれわれは決して屈するものではない、自主性はあるのだと胸を張ってみたところで、一つ一つこういう具体的な例を見ていけば、どこに自主性があるのかと言わなくちゃならないような例がたくさんあるのです。佐世保の市民はこれでどれだけ困っているか。商港として、貿易港として、肝心なところは全部押えられてしまって成り立たないのです。これは二十数万の市民の生活の問題ですよ。しかもそれを米軍が現に使っているのだとか、必要だというならとにかく、ほとんど使っていない。こんなばかな話はないと思う。  私はこの問題をまず整理して申し上げますと、まず第一は岡崎・ラスク交換公文というもの自体が国際法上違法のものだ、あくまでも暫定的なものであるにもかかわらず、八年間もずるずるっとこれを効力ありとして、不法に日本の施設及び区域を使ってきたのは全くけしからぬ。これを阻止し得なかった、何ともし得なかった日本の保守党政府も、全くだらしないというととをまず申し上げたい。  それから第二に、今までとにもかくにも法務省あたりは法的根拠がない、アメリカの不法使用、一歩譲っても暫定使用、こういう見解をとってきた。そしてある意味ではほんの限られた部分として、検束されたとか検挙されたとかいう、そういう人たちだけですけれども、そういう人たちの立場はどうにか守られた——という言葉が当たるかどうか知りませんけれども、法務省が法的根拠がないから、そんなものでつかまえてきたってだめだといって釈放したということで守られた。ところが今度は新地位協定になったら、いつの間にか両国政府の話し合いもないままに、ずるずると正式提供地域にしてしまっている。一体自主性はどこにあるのかということを指摘したい。そうしておいて、あわてて昨年の八月から合同委員会を持って話し合いに入った。ところがアメリカが出してきておる制限の案というものは、占領中に匹敵するような過酷なものである。それに対する日本側の提案というものもまたまことに情けない、自主性のない提案だ、こういうことを申し上げたわけです。  そこで長官に申し上げたいのですが、調達庁を担当する大臣として、また自主性を強調する池田内閣の閣僚として、こういう不合理なことをお認めになるのか。ならないとすれば、とにかく早急に、国民の利益、人権というものを尊重する立場の上に立って、強硬にアメリカ側に当たるということをここでお約束願いたいと思う。あなたができないなら、私は総理大臣が来たときにまたお尋ねします。
  76. 西村直己

    西村国務大臣 基地の問題につきましては、基本的態度といたしましては、これは国民の中には安保体制を御否定なさる方があるかもしれませんが、私どもとしては安保体制というものは国会において成立をした。従って基地提供の義務は確かにあって、これを遂行して参らなければならぬ。問題は基地提供をする場合におきまして、もちろん安保体制そのものが日米間の共同利益であり、同時にまた日本の利益というものも考える。また基地を提供する地域につきましては、そこにおける住民あるいは市民の権利侵害という問題が起こることも事実であります。従ってその間の調節ということはなかなか困難な問題ではあります。安保体制に反対とか賛成とかいう立場を離れましても、私はそれは困難な問題はあろうと思います。いわんやわが国のような、比較的人口が多くて国土が狭いところでは、そういう問題は起こりやすい。しかしながら私どもとしては、国策として安保体制、共同防衛、基地提供ということも、一つ国際信義の上から当然やって参らなければならない大事な仕事でございます。従ってこの問題は、ケース・バイ・ケースによって具体的に解決をしていかなければならぬ。従ってまだほかにも問題がありますが、私の知っておる範囲におきましては、できるだけその調節点を発見して参りたい。一面におきましては、国際信義の上から与えるものは与え、サービスすべきものははっきりサービスする。そのかわり返していただくものは返していただくという態度を基本的に堅持していくことによって、当然自主性は保持できる。御存じの通り石橋さんも苦労されました駐留軍労務のことしの一月のベース・アップの問題でも、非常に難航いたしました。しかしながら私みずからが、率直に申し上げますと駐留軍最高司令官と、二日間にわたって交渉したのは御存じの通りです。決してあの段階において、日本が卑屈な態度で、あるいは私が自主性を失ってやったつもりはありません。対等でお互いの利益の調節点を発見して、一応解決はみたのであります。従ってこの問題は、個々具体的なケースによって私は解決をしていかなければならないと思う。こういう面から、ただいま私もこの席を通して、初めて佐世保の問題の一応の経過は承りました。従って私といたしましても、調達庁長官以下にぜひがんばってもらって、実際の調節点はどこで発見するかは、やはり今後も努力はして参りたいと思います。しかしながら一つお願いし、御了解を得たいことは、石橋さんには石橋さんの、あるいはまた党には党のそれぞれのお立場がございましょうが、基地提供はやはり一つの国策としての義務であるという面、それから市民の権益を害するという面との調節点には、お互いにそこで譲り合っていかなければいけないのでありまして、ただおれのところは困るから追っ払え、これだけではこういう問題は一切解決しない。そこで私どもは非常に困難を承知しながら、真剣に考えていく。そのかわり権益を害されやすい、あるいは害される立場の人に対しては、国家としても補償するなり、また私閣僚になりましてからも、基地の問題は前向きに——単に跡始末というよりは、犠牲をこうむる場合にはそれだけの環境改善を積極的にやるように、これは単に防衛庁、調達庁の仕事ではございません。たとえば水産問題であれば、当然農林省がやはり相当な責任を持ってこれに対して考えていく、こういうような措置をとりたい。従って近く基地関係の閣僚の協議会等も設けるように、私は準備を進めておる段階でございます。
  77. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 ケース・バイ・ケースとおっしゃいますけれども、私は佐世保の港というものを一つの具体的な例としてあげていろいろお尋ねをしたわけです。現に八年間、米軍の要求は不当なりという立場に立って、日本政府はがんばってきておるというはっきりした証拠があるじゃありませんか。それをずるずるとアメリカの横車に押されて屈してしまっておるということを私は指摘しているのですよ。今まで日本側の主張が正しいと思えばこそ、がんばってきたわけでしょう。アメリカの要求が不当なりと思えばこそ、がんばってきたわけでしょう。そういう態度をなぜ堅持なさらなかったかということを申し上げている。今度の安保条約、新しい地位協定がより日本の自主性を確保したのだとおっしゃるから、つじつまが合わないじゃないですか。前がんばれたことが今度はどうしてがんばれなかったのですかということを御指摘申し上げているわけです。何度も申し上げているように、少しも使ってないのです。アメリカの艦船の出入というものは非常に少なくなっております。三十五のブイはほとんどがらあきなんです。それもなおかつ確保しておこうという、そういう方法が不当だとあなた方もお考えになったから、今までがんばってきたはずです。そういう実情にあることをはっきり把握して、あなた方の立場からいったって方法はあると思う。不当な要求ではなしに、ほんの一部の制限水域を設けることによって、アメリカ側にも迷惑をかけない方法がある。そういう方法をとって、両々相待った結論を早急に出すように御努力をする意思がおありかどうかということをお尋ねしているわけです。
  78. 丸山佶

    ○丸山政府委員 繰り返すようでありますが、占領時代のばく然たる占用権というものを米軍に与えて、それをずるずるそのまま今度の新しい協定で正式のものにしたというものではなくて、私どもはあくまで米軍の要求の事項と地元の水産等の利害との調節点を求めていく。そして先ほど来申しましたような態様の制限ということにしたつもりなのでございます。しかしながら今の実情におきまして米軍はそれほどの必要がないのだ、にもかかわらず確保しているような状況、あるいはこちらにはこんなヴァイタルな必要性が地元にある、この点は米軍に譲らしても、何ら米軍に対して支障を与える事態ではない、このような実情のほぼ具体的なものがあるということでありますならば、私どもも常時、また今後もこの実情をよく調査いたしまして検討を加えまして、米軍と折衝して直すべきものは直していく、このように私は考えておる次第でございます。
  79. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 今まで岡崎・ラスク交換公文というものによって暫定的に使用しておったときにおいてすら、なかなかアメリカはがんとして聞かなかった。新しい地位協定によって一応合法というような形の装いをしてしまったら、ますます話はしにくくなったのじゃないか、そういう感じを私は受けるわけです。だからこれは単に調達庁あたりが事務的な段階で、一生懸命やりますと言って片づく問題じゃない。暫定措置使用の場合においてすら片づかなかった。ますます向こうは横車を押しやすい情勢を作っておいてがんばりますと言っても、これはもっと大きな背景がなければだめだと思うのです。だから私は防衛庁長官に閣僚としてお尋ねしているわけです。こういう理不尽な不合理な横車をずるずると認めさせてはいけない。現に話し合いは始まっているのですから、今度こそまた前の二の舞をしないように、前は八年間引き回されたのです。今度はもっとやりにくいかもしれませんから、いわゆる内閣とあなた方がしっかりとされて、そして早急にそういう理不尽をされないように、事務当局ががんばっているのだから、それをバック・アップして、やりやすいような態勢をおとりになっていくお気持がありますかどうかとお尋ねしているわけです。
  80. 西村直己

    西村国務大臣 私は基地の実際の状況はこれから勉強いたさねばならぬと思います。ということは、たくさんの基地にはいろいろな同じような問題もあります。従って基地対策というものは、基本的にはさっき申し上げた通りの態度で参りたい。従ってこの場合におきましては、地元の利益なりその他と米軍の要求なりを調節するということは、今後も検討はしていかなければならぬと思います。  ただ、もちろんこの米軍の基地にはもう一つ問題がございます。米軍の基地と同時に、それを自衛隊が将来使っていくかどうかという問題もからんで参るのであります。国の守りであります以上は……。旧軍港地帯平和都市転換法というものが一つございますが、私はこの平和都市転換法一つだけで問題を処理していくことは、疑問に思っておる閣僚の一人であります。将来の日本の海軍基地のあり方というものにつきましても、もう少し筋を通しつつ米軍と折衝しながら、しかも土地の発展を考慮していく。三者が一致するところで問題を解決していきたい。ただ何でも米軍から返してもらってほかの目的に使うということが、はたして国全体の利益であるかどうかの点も考慮しなければならぬ。こういう点も軍港については一つひそんでいるので、この点も御了承願いたいと思うのであります。
  81. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 いろいろとおっしゃいますけれども、とにかく事務当局が今までがんばってきた、そういう態度をささえるという気持政治家として大臣におありなのかどうか、この二言だけ承りたい。
  82. 西村直己

    西村国務大臣 事務当局のやって参りましたことが、私大臣としての所信と合致いたしますれば、十分これをささえるつもりでございます。
  83. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それはあたりまえのことです。合致しないようなことを事務当局はやっているのですか。  それで私が先ほどからお尋ねしているような問答を聞いておって、大臣は大臣としての一つの結論をお持ちになったと思うのです。佐世保の港というものについて、日米両国政府の間でいろいろとやりとりがあった。今初めて正式の議題になって、最後の結論を得ようとしている。ところが日本側の立場としてみればどうも不利になってきている。だから事務当局にまかしておったのでは、今までの日本側の主張がずっと後退するようなおそれが多分に出てきている。そういうことにならないように、正しいことはあくまでこれをささえていくというお気持がありますかとお伺いしているわけです。
  84. 西村直己

    西村国務大臣 その正しいということが抽象的でございまして、実際に合わしてどういうところで正しいということの線を引くか、問題であると思います。しかしそういう気持でいくととは石橋さんのおっしゃる通り事務当局が従来やってきたことをよく検討いたしまして、さっきから申し上げましたような考え方基本にいたして、これは処置して参りたい、こういう考えでございます。
  85. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 それではこの問題を終わります。外務省、法務省の方、どうも御苦労さまでございました。  最後に一つ防衛庁お尋ねしておきたい。これは最近の新聞に出ておる記事でございますけれども防衛庁の中にも創価学会が多分に入ってきて、非常に困っておるという記事が出ておるわけなんです。特にここで問題になっておるのは、陸上自衛隊の第三管区の今津駐屯部隊、ここで問題になったというふうな記事になっておりますが、この創価学会の隊内における活動状況とこれに対する対策、方針、こういうものをお伺いしたい。
  86. 西村直己

    西村国務大臣 私が創価学会に関係して一つ耳にいたしましたのは、防衛大学の校長とこの間も私話しましたときに、そういう問題はどうだと言ったら、大学の学生の中に一人創価学会の信者が受かって採用になった。しかしそれがいろいろな器物と申しますか、信心の対象等を持ち込んでいこうということだけは、一つ話し合って遠慮してもらった。もちろん宗教は自由でございます。私の方は今、防衛大学の学生の場合、一つそういう話を聞いたのであります。槇校長はそういう態度で指導して、宗教の自由というもの、これは当然あれでありますが、隊務と申しますか、あるいは防衛庁の任務というものをこわす、こういうような影響までは宗教の自由というものをある程度遠慮していただく。宗教の自由と言うと表現がまずうございますが、そういう本来の任務がありますし、また集団生活というものがございます。そういうことで横校長の防衛大学の一つの指導方針は納得したのでございます。   〔委員長退席、草野委員長代理着席〕  なお隊におきましてそういうような風潮がありますということは、私は今初めてお聞きするのでありますが、政府委員の方で聞いておられれば御説明いたします。
  87. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 新聞記事に出ておるのは、今申し上げた滋賀県の今津駐屯部隊ですが、創価学会の細胞が組織されておって、休暇をとっては会社に行ったり病院に行って、いわゆる折伏をやって回る、非常に支障を来たすのでいろいろと問題にしておるけれども、信仰の自由という問題もからんで、なかなかむずかしいというようなことを隊の方でも述べておるようなんですが、事務当局としてはこういう報告は全然聞いていない、従って対策も今のところないということですか。
  88. 小野裕

    ○小野政府委員 今非常に苦労しておるというようなこまかい報告は聞いておりませんが、よく検討いたします。
  89. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 これで終わります。
  90. 草野一郎平

    ○草野委員長代理 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十四分散会