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1961-04-13 第38回国会 衆議院 内閣委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月十三日(木曜日)    午前十時二十四分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 伊能繁次郎君 理事 小笠 公韶君    理事 草野一郎平君 理事 高橋  等君    理事 宮澤 胤男君 理事 飛鳥田一雄君    理事 石橋 政嗣君 理事 石山 權作君       内海 安吉君    仮谷 忠男君       佐々木義武君    田澤 吉郎君       服部 安司君    福田  一君       藤原 節夫君    保科善四郎君       前田 正男君    牧野 寛索君       緒方 孝男君    杉山元治郎君       田口 誠治君    原   茂君       山内  広君    受田 新吉君  出席国務大臣         内閣総理大臣  池田 勇人君         国 務 大 臣 西村 直己君  出席政府委員         法制局長官   林  修三君         防衛政務次官  白浜 仁吉君         防衛庁参事官         (長官官房長) 加藤 陽三君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛庁参事官         (教育局長)  小幡 久男君         防衛庁参事官         (人事局長)  小野  裕君         防衛庁参事官         (経理局長)  木村 秀弘君         防衛庁参事官         (装備局長)  塚本 敏夫君         調達庁長官   丸山  佶君         総理府事務官         (調達庁総務部         長)      大石 孝章君         総理府事務官         (調達庁不動産         部長)     柏原益太郎君         総理府事務官         (調達庁労務部         長)      小里  玲君  委員外出席者         防衛庁書記官         (長官官房総務         課長)     島田純一郎君         防衛庁書記官         (長官官房法制         調査官)    高瀬 忠雄君         防衛庁書記官         (防衛局防衛審         議官)     麻生  茂君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 四月十一日  委員今松治郎君、江崎真澄君及び辻寛一君辞任  につき、その補欠として仮谷忠男君、田澤吉郎  君及び藤井勝志君が議長の指名で委員に選任さ  れた。     ————————————— 四月十一日  寒冷地手当増額に関する請願外六件(安宅常彦  君紹介)(第二二二六号)  同外一件(淡谷悠藏紹介)(第二二二七号)  同外六件(猪俣浩三紹介)(第二二二八号)  同外十二件(石田宥全君紹介)(第二二二九  号)  同外一件(稲村隆一紹介)(第二二三〇号)  同(野口忠夫紹介)(第二二三一号)  同外一件(北山愛郎紹介)(第二二三二号)  同外一件(小林進紹介)(第二二三三号)  同外一件(下平正一紹介)(第二二三四号)  同外一件(中澤茂一紹介)(第二二三五号)  同(中島巖紹介)(第二二三六号)  同(原茂紹介)(第二二三七号)  同(松平忠久紹介)(第二二三八号)  同外一件(三宅正一紹介)(第二二三九号)  同外八件(矢尾喜三郎紹介)(第二二四〇  号)  同外三件(山中吾郎紹介)(第二二四一号)  建設省北海道開発局及び運輸省港湾建設局定  員外職員定員化に関する請願外一件(井手以  誠君紹介)(第二二四二号)  同外二件(木村俊夫紹介)(第二二四三号)  同外四件(石山權作君紹介)(第二二四四号)  同外三件(滝井義高紹介)(第二二四五号)  同外八件(安井吉典紹介)(第二二四六号)  同(井手以誠君紹介)(第二二八〇号)  同外四件(石山權作君紹介)(第二二八一号)  同(井手以誠君紹介)(第二三二〇号)  同外四件(石山權作君紹介)(第二三二一号)  同(中村寅太紹介)(第二三二二号)  同外三十八件(渡辺惣蔵紹介)(第二三二三  号)  同(相川勝六紹介)(第二三八二号)  同外八件(有田喜一紹介)(第二三八三号)  同(井手以誠君紹介)(第二三八四号)  同(外三十八件(伊藤五郎紹介)(第二三八  五号)  同(伊藤幟紹介)(第二三八六号)  同外一件(宇都宮徳馬紹介)(第二三八七  号)  同(大高康紹介)(第二三八八号)  同外十三件(黒金泰美紹介)(第二三八九  号)  同外十三件(小島徹三紹介)(第二三九〇  号)  同外十七件(兒玉末男紹介第二三九一号)  同(鈴木仙八君紹介)(第二三九二号)  同外九件(高橋清一郎紹介)(第二三九三  号)  同外八件(富田健治紹介)(第二三九四号)  同(中山榮一紹介)(第二三九五号)  同外九件(永田亮一紹介)(第二三九六号)  同外一件(丹羽喬四郎紹介)(第二三九七  号)  同(橋本登美三郎紹介)(第二三九八号)  同外八件(原健三郎紹介)(第二三九九号)  同外一件(林博紹介)(第二四〇〇号)  同外四件(牧野寛索紹介)(第二四〇一号)  同外四十件(松浦東介紹介)(第二四〇二  号)  同外一件(山口六郎次紹介)(第二四〇三  号)  同外二件(米田吉盛紹介)(第二四〇四号)  宮城県石越町の寒冷地手当増額に関する請願  (吉村吉雄紹介)(第二二四七号)  建国記念日制定に関する請願始関伊平君紹  介)(第二二四八号)  同(小川半次紹介)(第二二八二号)  同(臼井莊一君紹介)(第二四〇五号)  同(加藤高藏君紹介)(第二四〇六号)  同(田中正巳紹介)(第二四〇七号)  同(岡田修一紹介)(第二四六九号)  元南満州鉄道株式会社職員期間恩給年限通算  に関する請願池田清志紹介)(第二三二四  号)  同(村山喜一紹介)(第二三二五号)  建設省定員外職員定員化に関する請願外五件  (小川平二紹介)(第二三七五号)  同外一件(木村守江紹介)(第二三七六号)  同外七件(黒金泰美紹介)(第二三七七号)  同外七件(牧野寛索紹介)(第二三七八号)  同外四十一件(松澤雄藏紹介)(第二三七九  号)  同外十五件(林博紹介)(第二三八〇号)  同(山口六郎次紹介)(第二三八一号)  恩給法等の一部を改正する法律案の一部修正  に関する請願浦野幸男紹介)(第二四六  五号)  同(植木庚子郎君紹介)(第二四六六号)  同(仮谷忠男紹介)(第二四六七号)  同(濱田幸雄紹介)(第二四六八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣  提出第二七号)  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出  第二八号)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び自衛隊法の一部を改正する法律案の両案を一括議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。保科善四郎君。
  3. 保科善四郎

    保科委員 私はただいまから総理大臣に対しまして、特にわが国防衛あり方について基本的な考え方をお伺いいたしたいと思います。  なぜ私がこういう御質問をいたしたいと考えましたかというと、今回の防衛法案の中には相当基本的なものが含まれております。統合幕僚会議の権限の強化とか、三自衛隊の編成に関すること、こういう重要なる問題が含まれておりますし、またすでに赤城構想というようなものが発表されておって話題をまいておることは承知通りでございます。特にケネディ大統領が登場いたしましてから、一月三十日の一般教書において、アジアにおける中共態度を相当激しく批判いたしておるわけであります。また三月二十八日には国防予算特別教書を議会に送りまして、非常に広範なる防衛に関する基本的なことを述べております。特にその中で、国防基本的政策として、軍備の主目的は平和であって戦争でない。米軍先制攻撃をしない、こういうようなことは、かって軍職におった者としては考えられないことを言い出しておるわけであります。それから米国の軍備予算のワクに縛られることなく、誓約にこたえ、安全を保障するに十分なものでなければならぬ、それからわれわれの軍備はシビル・コントロールを完全にやらなければならぬというような、広範なる国防に関する考え方をはっきりさしているわけでございます。ところが一方また共産陣営におきまして、軍備の全廃を唱え、あるいは核兵器製造禁止を唱えておりながら、依然として一月六日の共産党の党集会において、フルシチョフが戦争を三つに分けて、世界戦争局地戦争解放戦争、そしてこの局地戦争はやはり将来もあり得るのだと規定しております。ことにこの解放戦争は正義の戦争であって、神聖なる戦争と確認をして、これに全幅の支持を惜しまない、こういうようなことを申しております。それから中共戦争不可避論を唱えておることは御承知通りであります。戦争を正当、正義化しておる。平和共存西欧側を欺く一時的な戦術としてこれを認めることができる、現段皆を戦争と革命の時代と規定する、こういう物騒なことを言うておるわけであります。ことにきのうはソ連人間を乗せた宇宙船を回収することに成功いたしまして、これから冷戦がますます激化するのじゃないかということも予想されるわけであります。こういう段階において、総理はこの現情勢を一体どういうように判断しておられるか、これに対処して日本防衛力あり方というものを、どういうように規定していかれるかという基本的なお考えをお伺いしたいと思うのであります。
  4. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 世界の両陣営、いわゆるアメリカソ連において今お話のようなことが言われ、行なわれておることは、私も承知いたしておるのであります。しかしいかに科学進歩がありましても、われわれ人類はあくまで平和でいくことを念願しておると思うのであります。従いまして両陣営におきましても、核実験停止とかあるいは軍縮とか、いろいろ努力いたしておるのであります。われわれはこの努力を続けていくよう犬馬の労をとりたい、こういう考えであります。
  5. 保科善四郎

    保科委員 今総理の基本的なお考えはわかりましたが、今度の防衛法案をめぐりまして、反対党諸君からもいろいろな論議が行なわれているわけであります。また実際問題として大新聞論説等にも、これからこの日本自衛力整備というものは一体どういうように行なわれるかということに対しても、相当な疑問を投げかけております。また日米安保条約は、日本軍備の増強の責務を負わしたというような誤解も行なわれているわけでありますから、この機会においてそういうような世上流布されておる言説に対して、総理のはっきりしたお考えをここに示していただきたいと思います。
  6. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 われわれは戦争を放棄いたしましたが、自分の国土を守る自衛権はあくまでも持っておると私は考えるのであります。従いまして自衛権を持ち、その自衛権あり方につきましては、国力状況国情あるいは世界情勢に即応いたしまして、できるだけの自衛力強化ははかっていきたい、こういう考えでございます。こうしてその自衛力漸増は、あくまで自主的にわれわれがきめることであると考えておるのであります。
  7. 保科善四郎

    保科委員 今総理の御答弁によってはっきりいたしたと思いますが、実はもうすでに三十二年の国防方針によって漸増するということはきまっており、私はこの長期防衛計画がこの漸増方針に従って防衛力を持って、日本の安全を日米安保条約との協力によって、どういうように持っていくかということについての具体的なことが出てないために、いろいろな論議が行なわれておるものと思います。すでに何回も本会議等でも前岸総理から言明がございました。この事態に即応して長期防衛計画を作成するのだということもしばしば言われております。防衛庁長官も、これはなるべく早く設定をするのだというように言われております。これは何も日米安保条約ができたから、これをやらなくちゃならぬというものではなくて、すでに日米安保条約を改定する前に、こういうような基本的なものをきめておかないと、これは自主的な日本自衛力造成ということにはならないのでありますが、いろいろな状況によっておくれておるのだと私は推察をいたしております。総理はこういう基本的な長期防衛計画設定に対して、どういうお考えを持っておられるか、お伺いをしたい。
  8. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 第一次防衛計画昭和三十五年で一応済んだのでございます。第二次防衛計画は、今年一月の国防会議できめまして、防衛庁で一応案を作成するようにしておるのであります。三十七年度から五カ年にわたる第二次防衛計画を今防衛庁において策定中でございます。
  9. 保科善四郎

    保科委員 ただいま長期防衛計画策定をしておられるということを承りました。私はこの長期防衛計画がこの現情勢に対処するような線においてできますれば、ただいま世上心配しておるようなことは雲散霧消していくのじゃないかということを確信して、早くその成立を期待しておるものでございます。ただ私はこの長期防衛計画ができましても、一番重要なるものは、何と申しましてもほんとう防衛力の根幹、いわゆる基本的なものはその裏づけをする防衛生産力造成ということが一番大事であり、同時にこの防衛をあずかる人、人的方面整備ということが非常に重要な点であると考えるのでありますが、特に総理は三軍の最高指揮官でございますので、この防衛庁人的面の振作と申しますか、昔流の言葉で言えば統帥とでも申しましょうか、そういう点について相当強い関心をお持ちにならぬと、でき上がったものに対する国民の信頼ができないということになると大へん困ると思うのですが、この防衛庁人的面における整備なり、あるいは統帥面におけるお考えについて、最高統帥者としてのお考えをちょっと伺っておきたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 防衛関係職員心がまえにつきましては、自衛隊法五十二条にはっきり明記してあるのであります。しかし法律で明記いたしましても、実際の訓練、訓育、指導ということにつきましては、これは為政者が常に心がけていかなければならぬ問題だと思います。私は就任直後、三幕僚長と会いましていろいろ実情を聞きますのみならず、先般の防衛大学卒業式にも参りまして、つぶさに学生の気持あるいは訓練状況等を視察し、またその後におきましても毎月一回国防会議の議員と、そうして防衛庁職員との懇談会研究会を開きまして、自衛隊あり方等につきましてはできるだけの努力を今まで払ってきておるのであります。私は施設の問題あるいは武器その他の問題も考えなければなりませんが、お話のようにこれを扱う人の養成、訓練につきましては、それ以上の関心を持つべきものと心得まして努力いたしておるのであります。
  11. 保科善四郎

    保科委員 この従来の総理にも増して、特にそういう面において努力されている状況を伺いまして、大へん感謝にたえませんが、何と申しましても今の自衛隊にはインフェリオリティ・コンプレックスが、若干憲法の問題から出ておると思います。大へん気の毒な境涯に、国を守る重要なる職務を持ちながら、軍服を着て堂々と町も歩くのを遠慮しなくちゃならぬというようなことは、まことにお気の毒で私はたまらないのであります。こういう意味から申しまして、特にこの人事行政上について、これは防衛庁長官にも特に要望いたしたいと思うのでありますが、人事行政上においても十分なる考慮を払って、喜んで国家の守りに応じ得るような御配慮が、特に総理大臣とともに一つ格別なる御留意をお願いいたしたいと思うわけであります。特にそういうような点から考えまして七、私は現段階に、御承知のように兵器が非常な革命的な進歩を遂げておるのでありますから、こういうような事態に応じるように、十年もたったこの防衛庁法改正というようなことも、やはりこれは考えなくちゃいけないのではないか。特にケネディ大統領のこの国防に関する教書等に現われているこの思想から見ましても、よほど大きい観点から戦争抑制に乗り出すような機構の改善というものが、これは大へん必要になってきているのではないだろうか。これは金がかからずにできることですから、ぜひこういうようなことについても私は総理大臣にお考えを願いたいと思うのでありますが、この点に関する総理大臣の御所見を一つ伺っておきたいと思います。
  12. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 自衛隊ができました当初におきましては、お話のように何と申しますか、日陰者というふうな空気がなかったとは申しません。しかし、それは私はだんだんそういうものが薄らいできておる。ことに先般大学を私見まして、彼らの教養が非常に高度なところまで他の大学教養と比べて、教科の課程から申しまして、進んでおるとも絶対に劣っていない。私は非常に意を強くしております。また自衛隊幹部諸君心がまえも、想像以上にりっぱなものであるということを見まして、私は非常に心強く感じたのでございます。今後におきましても、こういう崇高な任務を持っておる自衛隊あり方につきましては、先ほど来申し上げておるようにできるだけの努力をして、りっぱなものにしていきたいと考えておるのであります。なお大学教育その他につきましても、お話のように今後ますますりっぱなものとしていくということで、特段の留意を払っていきたいと思っております。
  13. 保科善四郎

    保科委員 これは防衛庁長官も、国民に基盤を置いた自衛隊にしたいということで、非常な関心を払って努力をされているようでありますが、何と申しましてもこういう事態なんですから、正しいことを言っても、ときには笑われるようなことも起こるようなアブノーマルな事態であると思います。そこでやはりほんとう国際情勢あり方、あるいはどういうようなことをもって国家の安全をはかるかというようなことについて、十分なる国民の御理解を得るということは非常に必要なことだと思います。ことにこれから長期第二次防衛計画を作り上げまして、ほんとう戦争抑制日米安全保障条約基幹として乗り出すということになりますれば、特に国民の御理解を得て、協力のもとに、これから激化する間接侵略等に対して対処するということは非常に重要なことだと思いますが、この国民理解を得る面において、総理大臣はどういうような構想を持ってこういう問題に対処されようとしておられるか、これは非常に重要なことだと思いますので、総理のお考えを伺っておきたいと思います。
  14. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 やはり政治を担当しておる人が 自衛隊というものに対しての関心を非常に持っているのだということを、国民に知ってもらうことが私は必要であると思う。その意味におきまして、先ほど来申し上げておるように努力いたしておる。また従来には例はなかったと思いますが、そういう意味におきまして、各閣僚が防衛大学へ行って話をするとか、あるいは他の自衛隊の現地に行って視察するとか、こういうことも一つの方法だと思います。防衛庁におきましても、最近自衛白書でございますか、何か自衛隊についてのPRをやっていこうと計画しておられるようでございます。とにかく親しまれる自衛隊、そして国としてなくてはならない自衛隊なんだということにつきましては、できるだけPRをしていきたいと考えておるのであります。
  15. 保科善四郎

    保科委員 日米安保条約ができましてから、総理はこれを基幹といたしまして防衛力整備し、日本の安全をはかるためにいろいろ御努力をされている点はわかります。日米安保条約主軸として戦争抑制をして、ほんとう日本を平和な土地にするためには、これを十分に活用して、その精神を国民によくわかってもらうと同時に、具体的にそれを進めていくことが非常に必要じゃないか。今度のケネディ大統領国防白書等も出ておるのでありますが、これらのアメリカ考え方、どういうようにして共同して戦争を抑制するか、そういう点から言うと、情報の交換とか、あるいは専門家の間の連絡を密接にする委員会とかというようなものは当然作られて、この目的がりっぱに達成できるようにすることが必要だと思うのであります。そういう点、もう一つ経済協力の面でございますが、こういう両面を土台にして、戦争抑制をしようという考えのように承っておるのでありますが、そういう面についての総理のお考えをちょっと伺いたい。
  16. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 わが国土の防衛につきましては、もちろんわれわれの自衛隊のみでは足りないことは当然であります。従いまして国連あるいは特に日米安保条約主軸として、国土防衛に当たっておるのであります。そうすればやはり日米間におきまする軍事上の協議、共同、またこれに加えまして新安保条約に盛りました経済協力、こういうことにつきましては随時緊密の度を増すようにしていかなければならぬと思います。ただ安保条約第二条の経済協力の点につきましては、具体的にこの条約によってとは言えませんが、日米間の経済協力気持は年とともに進んでおり、今後もこれを中心に東南アジアの開発等々、協力の度を増していくよう努めていきたいと私は考えております。
  17. 保科善四郎

    保科委員 ちょっと防衛庁長官にお伺いします。  四月七日の日本向けモスクワ放送は、防衛法案日米安保条約に基づいて、核兵器装備のために自衛隊を再編成するものである、こういうように言うておるのでありますが、これは実に事実を誤報していると思うのです。長官はこの委員会を通じて、こういうデマ放送に対してはっきりとした考えを述べておいていただきたいと思います。
  18. 西村直己

    西村国務大臣 まず防衛法案改正そのものが、よく世間から安保条約に基づいて改正するのじゃないか、こういうふうに一部宣伝され、解釈される向きもありますが、私どもはそういう建前ではございません。ただいま総理からるるお話がありましたように、わが国わが国の立場において、国力国情に応じて自衛力というものを漸増して参る、この基本方針に基づいたものが今回の防衛庁設置法あるいは自衛隊法改正でございます。いわんやこの防衛法案を曲解いたしまして、あるいは曲解以上の宣伝の意味をもちまして解釈をいたしまして、核装備などと結びつけるということは、これはいささか私どもとしては噴飯に値する程度の解釈ではないかと思うのであります。核装備とこれとは何ら関係がないということを、この席を通じましてはっきり申し上げる次第であります。
  19. 保科善四郎

    保科委員 先ほどもちょっと触れましたが、昨日のソ連人間を乗せた衛星船の成功は、科学技術進歩の上から見てまことに喜ばしいことであると考えております。本日の朝日新聞論説にも出ておりますが、「われわれがソ連に対してもっとも強く希望しておきたいことは、この力を国際政治の手段として利用すべきではないという一点である。相手に難きを強いるといった態度が目についたのでは、せっかくの人類史的な偉業も著しく割り引かれてしまう。ラオスの問題にしても核実験停止の交渉にしても、当面ソ連側が、世界の平和に対して建設的な回答を寄せねばならぬ問題は多いが、われわれは、力が強ければ強いだけ、むしろソ連が自信をもって譲るべきは譲るという態度を示しうるのだと考える。」ということを論説で述べているが、全く同感でございます。私はこういうものを冷戦の具に供してはいかぬと思います。いずれ近いうちにアメリカも上げるように新聞に出ておりますが、これはどこまでも全くわれわれ人類の幸福のために活用すべきである、こういうように考えるのであります。日本国会等においても、こういうようなものが冷戦の具に供されないように心から念願をいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  20. 久野忠治

  21. 石山權作

    石山委員 私は総理が今度渡米されるにつきまして、日本の経済とかあるいは極東の平和とか、いろいろな問題をばお考えになって渡米されることと思いますが、私たちが気にしています点は、日本防衛考えた場合、どうしましても今度の安保条約の問題が浮かんできてなりません。この安保条約は、どうしましてもある特定の国を仮想敵国として考えながら結んだ、こういうふうに思われるわけです。ですから首相が渡米される場合におきましては、必ずアメリカ日本の極東に対する判断を第一に聞くのではないかと思います。それから第二には、その判断に基づいて日本の国はどういう格好でアメリカ協力するか、その協力の体制をもかなり強く明細に聞くのではないかと思います。その明細に聞くという中に、第二次防衛計画をば日本はどういうふうに組み立てるのか、こういう問題がかなりに大きく浮かんでくるのではないかと思います。もちろんアメリカのドル防衛等にからんで、首相は経済問題をもかなり突っ込んで聞くだろうと思いますけれども、私たちは隣の大国、特に日中友好、国交回復の問題は、仮想敵国の範疇から見てもかなりに大きな問題になるのではないか。ですからアメリカは首相に対して、日中問題をば日本はどういうふうに見るのか、この問題をあなたはどういうふうに処理しようとしているのか、おそらくこういうふうな格好で聞かれるのではないかと思います。この点につきまして首相は防衛第二次計画をばアメリカに持っていかれるかどうか、日中問題に関しましてはどういう態度をもってアメリカ大統領に答えられるのか、この二点をまずお聞きしたいのです。
  22. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほどお答えいたしましたように、第二次防衛計画は今防衛庁策定中でございまして、持っていく持っていかぬの問題ではございません。それからどういう質問があるかということは、私はまだ想定問答もこしらえておりません。自分といたしましてはわが国がよりよくなるように各方面と折衝をいたしたいと考えております。
  23. 石山權作

    石山委員 私が池田首相にお聞きしているのは、持っていくというのは、おそらくあなたは国として公文書の形式で持っていくというふうにお考えだろうと思う。私はそういう形式的なことをお聞きしているのではございません。あなたはおそらく防衛問題を聞かれるだろうと思います。あなたは答えざるを得ないわけでしよう。そのあなたの腹づもりを私は聞こうとしているわけです。それから日中問題に関しましても、私はそんなことを聞かれるか聞かれないかわからぬと言っているのですが、聞かれた場合にあなたはどういうふうにお答えになるかということも、私たちにとっては大切なことなんです。聞かれたとして、あなたはどういう態度で現実に日本を説明し、あなたの持っている日中国交の問題をば説明申し上げるか、そのことをお聞きしているわけなんですから、お答えを願います。
  24. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 第二次防衛計画はそのときまでに作成できるかできないか、またできまして国防会議できめるかきめないか、まだ未決定でございます。しかし防衛力漸増計画におきましては、従来からの政府の方針は私ははっきり言えると思います。第二の御質問の中共に対する態度、これは私は中共というものを日本だけが独自でどうこうというわけには参りません。世界の各国の考え方も見なければなりません。今までの、従来のいきさつも考えなければなりません。従いましてそういう方面についてただいま鋭意研究をいたしておるのでございます。まだここで申し上げる段階にまで至っておりません。
  25. 石山權作

    石山委員 防衛問題は渡米前までに大体腹案を得たい。それではどうも国会が今開かれているとき、国会で第二次防衛問題をば声明できないで、国会が終わってから他国の大統領に第二次五カ年計画をば披露申し上げる、これはどうなんでしよう。私ははなはだ政府が怠慢だと思うのです。国防担当者は怠慢だと思う。国会軽視という形になるのではないでしょうか。なぜ国会に間に合うように工夫なさらないのか。防衛二法を今通そうとするこの段階において、防衛問題を論ずるこの段階において、第二次計画案をば論議の対象に出さないで、国会がまさに終わろうとするとき問題の集約を行なうなどとは、全く私は怠慢の至りではないかと思います。日中問題につきましても、日中間で友好関係、国交回復を結べば、われわれは日本国防に対して別な面で検討を加えていくという段階が新しく生まれるではありませんか。私どもは今でも憲法改正をしない日本自衛隊というものは、極限にきていると信じているのです。今度の第二次計画は縮小じゃないのでしよう。ふやすという建前なんでしよう。腹づもりとしては、漸増計画をそのまま遂行していくという考え方とすれば、特に私たちとしては日中問題は思想というものでなく、私たちが当面与えられた内閣委員の任務として、首相の持っている考え方、政府の持っている考え方、保守党の持っている考え方というものを、えぐり出してでも聞きたいという態度でございます。もっと内容をば詳しくこの際御説明いただきたいと思います。
  26. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は日米会談のときに、第二次防衛計画を説明申し上げる、そういうことは言っておりません。今作成中でございます。いつできるかわかりません。今防衛庁におきまして、あらゆる角度から鋭意研究中であるのであります。でき上がりましたらもちろん私は国会に出さなければならぬと思います。三十七年度からでございます。第二次防衛計画というものは、防衛法案の問題とは別個に私は検討願っておる次第でございまして、まだ結論は出ていないのでございます。
  27. 石山權作

    石山委員 あなたは日中問題はちっとも言ってくれないじゃありませんか。日中問題は私は手を突っ込んでもあなたの腹の中から取りたい、つかみ取ってみたいと言っているのですから、一つ説明して下さい。
  28. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 日中問題につきましては、私はずっと今国会におきまして申し上げた程度でございまして、まだ腹の中には何もできておりません。
  29. 石山權作

    石山委員 池田首相、それではあなたはあんまり誠意のある御答弁とは承れないではございませんか。あなたがアメリカヘおいでになった場合には、今度の第二次計画の中身にあるいわゆる武器の無償貸与という問題、これは赤城構想の場合は一千五百億程度というふうに見積られているわけなんです。この話題が出ないと第二次五カ年計画を遂行できるわけじゃないのでしょう。大体予定が組めない。私の方ではこういう計画を立てましたから、ケネディ大統領、あなたの方でこの点をば援助していただかないと、第二次五カ年計画は穴があきます。これはあなたのかっての同僚であった赤城構想の中に、これが明示されているではございませんか。第二次五カ年計画最終年度二千九百億円、約三千億円、アメリカの期待援助額一千五百億というようにちゃんと出ておる。この問題があるからあなたはここでしらを切っても、ケネディの前に立ちましたならば、防衛二次案をどういう計画であろうが示さざるを得ないのではないか。ですから私は言葉を返して言うようでございますけれども、今アメリカへ行ったならば、あなたは防衛法案を通過したという手みやげを持って、あなたの期待通り防衛法案を通過させましたよ、その手みやげをかかえて、ですからあなたの方でも第二次防衛計画に対しては、この点は穴埋めをして下さい、こういうふうに言うのではないでしょうか。言うでしょう。あなた黙ってアメリカへ自費でおいでになるのじゃないでしょうね。国費でおいでになる。一国の総理大臣国防問題をば論ずる。担当委員会としてのわれわれがつんぼさじきに置かれるなどとは、はなはだ不可解だと私は思う。防衛問題はケネディとの場合には何にもお話しにならぬという御意見でございますか。
  30. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 赤城構想は私はつまびらかにいたしておりません。従いましてこの問題を主軸としての答弁はその資格がない。問題は、第二次防衛計画の樹立にあたりまして、アメリカからの防衛援助をどの程度にするかという問題は、防衛庁で研究していると私は思います。私の考え方で、第二次防衛計画がそれまでにできるか、できぬか、これは先ほど来申し上げた通りであります。今のところ防衛援助をどの程度にしてくれとかなんとかいうことを私の方からは言い出さない考えです。しかし第二次防衛計画がどうなるかということがきまりまして、そして必要あればあれでございますが、ただいまのところ防衛計画防衛援助のようなことまでも話をする段階までにはいかぬのではないか、そういう問題はこちらにおいてもできますし、下のレベルでこれからしていくのではないかと思います。
  31. 石山權作

    石山委員 この問題のみに時間をとるようですが、アメリカへ行ってあなたが日本国防問題をどういう格好でお話しなさるかということは、やはり私たちには大事な問題なんです。あなたは何も持っていかないというのですが、くれるものならもらう。私は個人の交際にはそんなことはないと思うのです。国際慣行、特にアメリカケネディ大統領とあなたの場合の新しい交友関係がどういうふうに展開するか知りませんけれども、黙っていてただもらうということは、これは友情だかどうか知りませんけれども、珍しい慣行じゃないでしょうか。何かをやるから何かに応じなさい。アメリカが今まで一貫してとってきている政策は、軍事援助であれ経済援助であれ、ただで上げますよということはないじゃありませんか。われわれは終戦後のあの食糧の問題、今度国会でだいぶ問題になる例の援助物資の問題につきましても、ただだと思っていたらただでない。あなたは黙っていても、向こうでくれるというふうなものならばというふうに言葉を濁しておりますが、われわれはこの防衛二法をば、今の自衛隊あり方をば、つまり憲法にかんがみても経済的にかんがみても、今の自衛隊の処理の仕方というものは私は別に考えなければならぬと思ってきております。このままでほおかぶりをして戦力増強をするという形は、避けなければならない段階に来ていると思っております。こういうとき国内的にいろいろ問題をかかえているにもかかわらず、ここに与党の理事諸君を初めたくさんの人が出てきておりますが、顔を会わせれば防衛二法を通せ通せと言う。問題をろくに審議しないうちから防衛二法は通せと言っている。これはやはりあなたの六月の渡米に手みやげとして、いわゆる無言の手みやげを持っていくという前提だろうと思う。池田内閣にとっては第一に重要法案防衛二法、第二には農民向きの役にも立たないところの、声だけの農業基本法、第三にはILOが重要法案だ、その三つのうちの一番右翼を占めるのが防衛二法だ、その防衛二法をばアメリカにおみやげに持っていくという態度、この態度は言わずともがな、アメリカに対して第二次防衛計画を、あなたが持っていくということを示しているのではないですか。そうして期待援助額というものを大統領が口にするか、あなたがこっそり口にするか、あるいはアメリカ大使館に言わせるか、西村防衛庁長官も行くと言っているのだが、西村防衛庁長官に言わせるかわかりませんけれども、いずれにしてもあなた言わせるのじゃありませんか。それをこの際においても知らぬ存ぜぬ、まだ検討中々々々というのは怠慢だと私言っているのですが、怠慢だと思いませんか。
  32. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は防衛法案アメリカへ行く手みやげにしよう、そんな考えは毛頭持っておりません。われわれとしてこれは当然通過をはかり、そして日本の自衛の合理化をはかる、こういう考えで、アメリカヘの手みやげ、そんな気持は万々持っていない。はっきり申し上げておきます。  なおまた第二次計画につきましては、怠慢とおっしゃいますが、これは各方面いろいろな角度から考えなければならぬのであります。しかもそれは昭和三十七年度からの予定でございますので、今ここでこうでありますという段階にまで至っていないことは、これは私はそう怠慢というわけのものでもないと思います。
  33. 石山權作

    石山委員 そうしますと怠慢でないけれども防衛問題を検討する能力が少し欠けているということになりそうですね。第二次五カ年計画というのは、われわれ委員会においては昨年から論じている。第一次五カ年計画は、計画通り遂行しないといって委員会からは批判を受けているわけなんです。ですから第二次五カ年計画というのは、自民党内閣にとっては懸案の問題ではございませんか。それがいまだもって検討中、あらゆる方面から詳細に検討中という言葉で逃げるというのは、私は当を得た、誠意のあるものの考え方でないと思います。西村長官にお伺いします。あなたの手元でもまだ池田首相に示すような構想はまとまらぬというのでございますか。
  34. 西村直己

    西村国務大臣 お答えいたします。第二次防衛力整備計画は、御存じの通りかって昭和三十四年七月、赤城長官時代に最初に示されたものがあることはあるのでございます。しかしこれは防衛庁として正式にまだきまったものではない。その防衛庁の事務段階において試案としてきまりました。それが一年後において、三十五年度ないし三十六年度を初年度として五カ年計画というような構想で固まりつつあったところへ、昨年一年は安保国会あるいは総選挙というようなことで支障を起こしたことは御存じの通りであります。従って一面またお話のありましたアメリカの政権の交代等によって、多少の援助関係も変わってくるのではないか、それらの事情を勘案しましたから、三十六年度につきましては防衛力の五カ年計画の第一年度にならなかったわけであります。そこで一月の十三日に急遽国防会議を開きまして、当面の防衛力整備の取り扱いとしての態度をきめて、今回の二法案の御審議を願っておるのであります。従って昭和三十七年度以降の長期見通しにつきましては、私の手元の部局におきまして現在あらゆる角度から検討を尽くしておる。これも防衛庁としてはできるだけすみやかに成案を——しながらこれは国防会議等におきましてさらに関係閣僚、また総理大臣等の意見のもとに政府の案がきまる、こういう経過をたどるわけであります。
  35. 石山權作

    石山委員 もう一つ防衛庁長官にお聞きしますが、ケネディ政権になりましてから、アメリカの大統領は防衛に関する白書を出しました。その結果において、われわれ極東の治安というふうなもの、平和というふうなものを一応任務として考えている日本の場合、以前のアイク政権の中における日米相互援助法、安保条約関係から見ても変わるのか、変わっていないのか、その点一つお聞きしたい。  それから毎度心配をしている核兵器に関する問題は、アメリカの局地戦の場合と結び合わせてどういうふうにこれを処理なさっているのか。特に最近には長距離の兵器が発達しておりますから、日本からも大陸に対して自由に原子力の攻撃ができるようになった。この点に関しましては私たちはいたく心配をしているわけでございます。  池田総理にお伺いしますが、あなたがおいでになった場合に、防衛二法を手みやげにはしない、しかし期待援助額を考えるということは、これははっきりしているだろうと思います。そうした場合に、何か特定な軍事上のあるいは外交上の密約を考えるのではないか。たとえば例の原子力潜水艦であるポラリス等の軍事基地としてどこかを提供する。これはある意味では滞在期間というふうなことにしてもよろしい。いずれにしても、合法的な脱法行為によって、そういう有力な潜水艦を日本のどこかに置く、こういうふうな密約をするような考え方を持っているかどうか。そして私はこの防衛問題に関する限りは決して密約はいたしません、こういうふうに明言できるでございましょうか。
  36. 西村直己

    西村国務大臣 先の第一問の方のお答えを申し上げます。ケネディの国防教書六億ドルの追加要求をいたしました際に出しました意見でありますが、これが極東なりあるいはわが国にどう影響するかという点でございますが、ケネディは御存じの通り先制攻撃をかけないという一つ基本方針ははっきりしております。それから軍備の拡張は、確かに追加要求をするくらいでありますから、やっているわけでございます。しかしこれは軍縮交渉の前提としての軍備拡張、言いかえれば話し合いによるところの力の政策、従来の単なる力の政策から変わったと思います。それからもう一つは、抑制力としては核兵器をやはりやる。特にその中でポラリス潜水艦、ミニットマンのような長距離弾道弾、この二つに力を入れる。同時に一つ新しく登場をしましたものが局地戦能力の拡充であります。そこでこの極東の戦略に対しましては、司じように事態を見ているように私ども解釈をいたしております。特に極東における局地戦能力に対しましては、それぞれの関係与国、同盟国と申しますか、条約国のそれぞれの能力に応じて自衛をしながら共同して当たる、こういうことを非常に要望いたしております。こういう観点から見ますと、わが国の局地戦に対する自衛というものは、国情に応じてやって参るのであります。ケネディの教書から見ましても、わが国は当然これと相待って、結果としてはわが国自衛力漸増ということはよいのではないかと考えております。  それから核兵器の問題につきましては、ケネディはあくまでも全面戦争は期待しないという風潮のもとにおいて、考え方の基本におきましては抑止力として考えております。従って核装備そのものがわが国の自衛に直接結びつくということは、私ども考えておりません。あくまでも戦争抑止力としてこれは解釈している、こういうようにとっております。
  37. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 民主主義国の総理といたしまして、国民に発表できないような約束はすべきものでないということは、石山さんも御承知と思います。従って密約はいたしません。
  38. 石山權作

    石山委員 核兵器につきまして、総理大臣もおいでになっていることですから、この点に関する限り、前には小型の原子砲程度は使えるというふうな発言を前内閣では行なっているわけですが、今の日本の現状におきましては、アメリカの要請があろうとどうであろうとも、核兵器を持たない、核武装をしない、こういうふうな明言はできるでございましょうか。
  39. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 前の内閣もそう言っておりますし、私が組閣以来も機会あるごとに言っております。核兵器、核武装はいたしません。
  40. 石山權作

    石山委員 今度の防衛二法の改正につきまして、一方では自衛隊の幹部が、十三個師団編成は治安の問題に大へんに関係があるという発言を行なっております。そうすると今度の防衛二法というものは、外に向けられるべき十万を日本の国内に向けるような底意のある防衛二法の改正になる。先ごろ私どもの石橋委員が十一日の委員会で質問した場合には、これは防衛庁長官は取り消しをなさっているのですが、しかしその前段としてこういうことを長官はおっしゃっているわけなんです、つまりウエートがかかりつつあるという表現を使っております。しかし統幕長の発言はやや行き過ぎの感があるというふうには訂正していますが、この自衛隊を治安と間接侵略と結びつけて、ウエートがかかりつつあるという表現は、われわれとしましては聞き捨てにならない軍の移り変わりだと思う。われわれは憲法に否定されている自衛隊がある程度今日まで成長してきたというのは、われわれの身辺を守ってくれる、国を守ってくれるというふうなイメージに抱かれて育ってきたと思うのです。それが今度逆に、治安維持のために出動を敏速可能にするために、一個師団の火力は落としても自衛隊を十三個師団に編成がえを行なうということになれば、これは外に向けられる銃眼が国民に向けられるといっても過言でないような現象がおのずから生まれるわけですが、その点に関しましては長官の御意見もお聞きしたいし、総理大臣の御意見も伺いたいのでございます。
  41. 西村直己

    西村国務大臣 杉田幕僚長の発言が中心でありますから、さしあたり私からちょっと答弁さしていただきます。杉田幕僚長が暮れに、自衛隊は治安部隊として、というような表現が新聞その他に載りました。そこで私どもとしては閣僚として、これは自衛隊本来の任務が変わったものではない、発言の内容が、少しとられ方がといいますか、表現のされ方が少し激しく出たのではないかというふうに訂正をしておりまして、ただいま出しております十三個師団編成の目的は、もう申し上げるまでもなく大きな部隊を小型化して機動力を与え、効率を上げる、その点は御了解願えると思います。その目的は何かといえば、やはり自衛隊の本来の任務に変わりはございません。直接侵略と間接侵略、それから同時に警察の後方支援として、警察力を失った場合における国内治安の維持というようなものがこの目的でございます。ただ先般石橋委員から御質問がありました場合に、従来の安全保障条約におきましては間接の内乱条項がございましたが、それが削除になっておりますから、間接侵略も一応日本の本来の単独の任務でございます、そこで従来の自衛隊を間接侵略にも多少ウエートを置いて考えていくことは、これは私も正直に認めます、こう石橋委員にお答えした次第でございます。経過を申し上げました。
  42. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 防衛庁長官がお答えした通りでございます。
  43. 石山權作

    石山委員 池田首相、間接侵略の問題につきましては、これは人のことだというふうにお考えになるだろうと思うのですが、われわれ社会党、私などは、間接侵略という言葉は他国のせいではないと思っています。全くその起こる原因は、日本の場合なら日本の国内における政治的責任に由来するものではないかと思う。たとえば経済の不安定というふうなものにつけ込まれて、いろいろな問題が起こるのでございますから、間接侵略を非常に重点的に考えるとするならば、時の政府の権力に異議を申し立てる人たちを、間接侵略という名前で自衛隊をもって弾圧するという姿が、おのずから生まれると思うのです。私はその点は十分にお考え願いたいと思う。それから国民のかなりの数の反対を押し切って、特定の軍事ブロックに国が加担をし、お先棒をかついだような現象が起きた場合においては、国民はその不合理性に対し反対の行動を起こす。これを自衛隊によって、治安維持の名のもとに弾圧するとするならば、これは時の政治の責任だと私は思うのです。池田首相は、よもやそういうことはやらないだろうと私は思うけれども、この治安のために数多く出動をなすようになりますと、軍事力を背景にした軍部の発言が強化される。あるいは、これは東南アジアその他に見るのでありますが、軍事力を背景とした革命が行なわれるという場面が招来されるのです。ですから私のお聞きしたい点は、治安のために出動する軍隊に対しましては、事前に国会の承認を得るという形式を踏むのが、この場合より正しくして現実に合うのではないかと思いますが、それに対する総理の御意見を伺いたい。
  44. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 間接侵略の定義についてはいろいろ説がございますが、これは外国の使嗾によって起こるものと私どもは心得ております。従いまして、間接侵略によります暴動その他のことが起こった場合には、これはやはり防衛庁設置法あるいは自衛隊法の規定によってやるべきであると考えております。従いましてできれば事前に、それができない場合には事後に国会にお諮りすることになると思います。
  45. 石山權作

    石山委員 たとえば自衛隊をば出動させるなどといういわゆる事変の起こることは、かなりの問題がひそんで長い時間をかけて成熟して、そうして時の権力に対して反抗するような行動になるのでございますから、決して突発的に起こる問題ではないだろうと思います。ですから努めてという言葉よりも、むしろ私などに言わせるならば自衛隊法をば改正いたしまして、治安出動の場合には国会の事前の承認を得るというくらい表現が必要なのではないかというふうに考えておるわけです。これは自衛隊のためにも大切な事項ではないか。われわれから見れば、軍部のファッショあるいは革命形式の一つとして、そういうことが起こり得ることであれば未然に防ぐ、こういうことになりはしないかと思うので、私は総理のもっと強い言葉をいただきたいと思います。
  46. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 間接侵略でなしに、純然たる内的の原因によって起こります内乱、これも事前にわかるとあなた方は断定されますが、必ずしも歴史はそうではございますまい。従いまして初めからわかれば国会の承認を得ることになりましょうが、わからない場合がある。こういう場合においては事後に承認を受けることに相なっておるのであります。従いまして治安出動なども、よほど慎重に国民の名においてやるような制限がつけ加えてあることは御承知通りであります。
  47. 石山權作

    石山委員 今度の自衛隊二法を見ましても、政府の腹としては漸増考え方をば捨てないと見ます。漸増したいと願っておるようであります。そうしますと私たちが現に心配しておるのは、池田内閣が掲げておるところの、もの珍しい所得倍増論でございます。それとの関係は一体どういうふうになるだろうかというふうに私たちは考えるわけでございます。今まで日本の産業の基調をなしてきたのはアメリカの景気だろうと思っております。アメリカの景気がかなり日本の産業成長の支柱をなしてきたど見ております。その頼みとするアメリカがかなり経済的に不安の様相を呈してきておる。しかし日本防衛力漸増しなければならない。期待援助額にかなりのそれこそウエートをかけて、第二次計画をば推し進めていくだろうと想定されるだけ、アメリカの期待額が薄くなれば、それだけ国民の負担にはね返ってくるのではないか。池田内閣にとりまして、所得倍増はどこまでも遂行する。しかし基幹をなす国防力の充実もはかる、こういうふうな二つは、一体並べ通していけるめどを持っているのでございましょうか。それとも今度の第二次五カ年計画は、日本の産業の成長等とからみ合わして、現在より大きくできないのだ、むしろ編隊がえをして、縮小のという言葉がもしお気に召さないとすれば、体質改善でもよろしい、金のかからないような傾向をつかむ。池田さんは二つ並べてどこまでも持っていこうというお考えでございますか。
  48. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 自衛力漸増しなければならないというのではないのでございます。国力の増大、国民生活の向上とにらみ合わせて、そして漸増したいと言っている。国力がどんなになろうと防衛力漸増しなければならないという考え方ではないのでございます。だから私はこの二つは両立すると考えております。
  49. 石山權作

    石山委員 そうすると第二次五カ年計画というものは、融通無碍のものだというふうに解釈をしてよろしいか。今年は千七百億使うが、来年景気が悪ければ一千二百億に削ってしまうという、融通無碍な態勢をとっていくという建前で、第二次五カ年計画をば計画なさっているのか。
  50. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 その経済の発展というのは、そのときによって違います。しかし基調というものはやはりおのずからわかってくるわけであります。だから第二次五カ年計画というものは、そういう経済の発展の基調を見通して一応立てるわけでございます。しかし一応計画は立てましても、そういうことはないと私は確信しておりますが、もし景気が非常に不調であるという場合におきましては、年度々々におきまして、計画による分を改訂することもあり得ましょう。その点は国会の御審議をいただいて行なうことにするわけであります。
  51. 石山權作

    石山委員 経済問題に関しましては、池田さんの方が先輩だと言われておりますから、私も言いにくいのでございますけれども、経済の成長が自衛力と並立をしていく。しかしあなたはどこまでも経済の所期の目的の高度成長をばお考えになっていると思います。そうした場合において、私は自衛力はやはり日米安保条約等の関係があって、なかなかその年度における経済の問題だけで、今度は縮小します。体質改善をいたします、というふうにはなり切れないと思うのです。そうした場合に、私たちが過去の歴史に見るのは、国家の財政投資の仕方でございます。今池田内閣はかなりに公共投資をなさっておいでになります。独占企業にもかなりの投資をなさっておる。しかしこれが、アメリカの不安がそのまま現われますと、所期の目的を達しないと思います。あなたが描いています高度な成長は遂げられないと思います。そうしますと、私たちがかって日清。日露以後に見ているところのいわゆる軍事費の増額によって、防衛産業の繁栄をもたらし、それに関連するところの産業の繁栄をばはかる、こういうことを行なって、軍備を増強し、増強された軍備にわれわれは押しつぶされてしまったという歴史を持っておる。ですから、あなたのお考えになっている経済の成長を推し進めていくという場合に、日本経済の高度の発展という中には、国民生活の安定を犠牲にしない、国民生活の個々の一人々々の生活の向上を守る、こういう建前に立たないと、とんでもない誤算が起き、われわれがかって歴史に知っているところの——私など、ここにいるたくさんの同志の人々は、みんなお互いさま苦い戦争の経験を持っているわけですから、そういうことにならないようにしなければならぬのですが、あなたの投資の考え方、たとえば公共投資が行き詰まったら、産業の発展のためには防衛力にもっと力を入れて過去の歴史を活用する、こういうふうなお考えになるのではないかというふうに私たちは危惧しているのです。その点はどういうふうになって——たとえば高度の成長がとまった場合、何によってそれをば奪回なさろうとしておるかを、この際お聞かせ願いたいと思います。
  52. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 先ほど防衛力漸増につきましてお話を申し上げた通りでございます。そのときも申し上げましたが、国力の伸展と国民生活の安定、向上と見合いながら漸増を行なっていくという方針でございますから、国民生活の安定、向上を犠牲にして、自衛隊の増強をはかるということはいたしません。それは今の国民の観念からいっても、政治体制からいっても、それはもう十分おわかりいただけると思います。
  53. 石山權作

    石山委員 経済成長発展のためにも、防衛力の観点から見ても、国民の民生安定をば第一にするという確言を池田総理がなさったと私は受け取ります。  次にお伺いしたい点は、このように大きくなった自衛隊、これは軍隊でないとか戦力を放棄したとか言っておりますが、大きくなった。それに防衛年鑑、防衛庁関係していられる防衛年鑑、この中にこういうことが書かれているわけです。その冒頭を読み上げますと、「占領のおとし子といわれた警察予備隊も発足以来、もう十一周年を迎えた自衛隊に対して国内では依然として違憲論が根強い。しかし、国際的には、いつの間にか立派に軍隊でとおっている。」こう言っております。そして第二次計画が行なわれようとしておる。いろいろな言葉が最近出ております。日陰の花という言葉も一つの言葉でございました。それから誇りなき卑屈感ということが隊員の中にあるというふうな言葉も言われております。それが今までならば私たちは目をつぶるということもできたでしょうが、目をつぶっても巨大な姿で浮かんできたのが今の自衛隊の姿でございます。しかもこの自衛隊が治安出動をひんぱんに行なうような構想を示しておる。こうした場合に、今のままで自衛隊を日陰の花だとか、あるいは誇りなき卑屈感などという言葉で目をつぶって、第二次増強計画をばなさろうとするのか、それともこの際何とか方法を変えて、誇りある考え方をば自衛隊員に植え付けるような方便を講ずるということを考えているのか、この点をば総理に伺いたい。
  54. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は自衛隊の任務は国土防衛でございまして、何ら憲法に違反するものではないと確信いたしておるのであります。従いましてこういう大切なりっぱな自衛隊を、日陰者とかなんとか思われないように、われわれ政治家自身がやっていかなければならぬ、こういう考えのもとに、先ほど保科委員にお答えした通りに、私は国民に愛されるりっぱな、なくてはならない自衛隊ということを宣伝と申しますか、国民にわかっていただくように努力を続けて、いきたいと思います。
  55. 石山權作

    石山委員 池田首相、それは精神の問題でしよう。しかし私の言っているのは組織上から見た、いわゆる国家機関から見た、巨大な、膨大な組織の自衛隊を言っているのです。これがかりにも違憲のそしりを受けているようであるとするならば、大へんなこととなるのではないか。ですから私は政府でこの組織上、国家機関上膨大になった自衛隊に対して、精神上の解決策ではもうだめです。実際の組織上の解決策の生まれない以上は、これ以上増大してはいけないのじゃないか。黙っておりますとわれわれは仮想敵国を作り、仮想敵国よりも優位な武力を持ちたいというのが念願なのでございますから、ともすると保守党はそのまま遂行していく。社会党が常々言うところの平和建設隊として自衛隊をば縮小すべし、こういうふうな意見は皆さんの前には耳を傾けさせる段階に至っていないけれども、これ以上大きくしないという努力をこの際政府が行なわないで、あらゆるものにいろいろな不安を持っている、危惧のある、それを解決しないで、在来通りのやり方で自衛隊をば増強なさるということは、はなはだもって不安をば増大するということになるのではないか、不合理性をば増大するということになるのではないか、不健全な財政をば多額に投資するという形になるのではないか、こういうふうに思うのですが、池田首相の場合の精神訓話では、私は納得できません。組織上に対して、西村長官でもよろしいし、この問題は首相がじかに答えるべきが当然だと私は思うのですが、御意見をば承りたい。
  56. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 自衛隊が必要であり、違憲でないということは、国会でもうたびたび論議せられて、多数の承認を得ておるのであります。自衛隊法あるいは防衛庁設置法が厳然としてあるのであります。ただ問題は、思想的に違った方々がこれに対しましていろいろ批判を加えられることも、これは民主主義の立場からいえばやむを得ない。しかしわれわれは国民の、国家の意思によってこれがきめられておるということはもう事実でございます。従いましてその事実をもとにして、同じような考え方になるよう努力を続けていく。それにはここで議論されることもよろしゅうございますし、政治家として心がまえの問題をPRすることもいい、両方面からやっていくべきだと考えます。
  57. 久野忠治

    久野委員長 石山君に申し上げますが、お約束の時間が参りましたので、質問を簡潔にお願いします。
  58. 石山權作

    石山委員 これで終わります。私は首相に、反対派の一人としてお話を申し上げるよりも、この際国民の一人として言っているのでございます。たとえば旧職業軍人と一般隊員の給与の関係等からしてもいろいろ問題がある、治安出動の場合にも問題がある、経済に見合ったところの漸増計画というものにも問題がある。もちろん憲法に関しては池田首相は違憲でないというようにおっしゃっておるけれども、憲法学者の多数はこれまた違憲であるというふうに断定をしておる、こういうような場合にその問題を解決しないで増強をなさるということは、不合理性と不安、危惧というものを増大した形で、政府は政治を行なおうとすることに通ずるのではないでしょうか。そうしてこの不安、危惧、不満の増大がなされた場合において、間接侵略だからといって治安出動をなさるということをするとするならば、これは全くファッショのお手先をば勤める。手先を勤めるのが池田内閣となりそうでございます。ですからそういうことにならないように、その問題が解決されるように、解決しないうちは防衛力をば増強しないように工夫なさってくれるのが、私は政治の本旨であり、政治家の任務だ、こういうふうに考えて、またいずれこの問題については質問する機会があるだろうと思いますけれども長官一つ十分に御研究なさっていただいて、われわれが納得のいくような防衛隊増強に対しての説明をしていただきたい、性格をば説明をしていただきたいというふうに要望しておきます。これで終わります。
  59. 久野忠治

    久野委員長 次に山内広君。
  60. 山内広

    ○山内委員 きのうのあのニュースが非常なショックを与えられたことは、私一人ではないと思います。国境だ、戦力だといって争っていることがいかに意味のないものになったかということは、桜の花が一夜で雨にぬれて色があせた以上に、私は意味のないものになってしまったと思うわけであります。けれども政治は現実でありますし、そういう感傷に浸っておるわけにも参りませんので、感情を殺して、これからしばらく国防会議の議長である総理のおいでがありますので、二、三お尋ねしておきたいと思うわけであります。  実は議案の問題に触れる前に、これは同僚の諸君には御迷惑と思うのでありますけれども、若干防衛の基本的な問題でお尋ねしておく必要を感じます。一つは議会の構成が変わったということでもあり、新しい議員は活字の上ではいろいろ政府の所信も承知しておりますけれども、この際基本的なものを確認しておきたいと思うわけであります。  その第一は、憲法の九条、特にあの第二項の問題は、いろいろな角度から議論し尽くされた問題ではありますけれども、さきに申しましたような理由から、政府の最終的な統一的な見解をまずお聞きしておきます。
  61. 林修三

    ○林(修)政府委員 法律的な問題でございますから、私からお答えいたします。従来政府としてこの解釈は憲法第九条第一項——まず第一項でございますが、第一項は御承知通りに、国際紛争を解決する手段として、戦争あるいは武力の行使あるいは武力による威嚇は永久に放棄する、こう書いてあるわけであります。これは従来からの解釈として「国際紛争を解決する手段として」というのが、やはりある国際紛争を自国に武力をもって有利に解決する、そういうことを意味するものであって、国が他国から不当不正な侵略を受けた場合に、これを自衛するという意味自衛権を否定するものではない、かように考えられておるわけでございます。また自衛権がある以上は、その自衛権の範囲内において、他国の侵略を排除するための自衛行動というものも否定するものではない、かように考えております。そこで第二項の問題になるわけでございますが、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。」この意味になるわけでございますが、ここにおいて保持しないと言っております戦力とは何かということになるわけでございますが、これにつきましては、戦力という言葉につきましては、いろいろな解釈、単純な言葉だけの意味で申せば、いろいろな意味づけはあり得ると思います。最も単純素朴に言えば、戦いに役立つ力ということに——いわゆる警察力のごときもこれに入るということになってくるかと思います。しかし憲法九条二項はそういう趣旨ではなかろう。やはり第一項と関連づけて規定されております以上は、第一項で自衛権は放棄しておらない、あるいはそのために自衛権の範囲内における行動は認められている、こういうことから申せば、その裏づけとしての自衛のために必要な最小限度において、その自衛のため必要な実力を持つことは、憲法九条二項で禁止されているいわゆる戦力に入らない、かように考えるべきだというのが従来の解釈でございます。  その次に「国の交戦権は、これを認めない。」という規定もございますが、これにつきましては、一項で自衛権は放棄していなくても、交戦権がないのだから、他国から侵略を受けても抵抗できないのではないかという御議論もありますけれども、この点は憲法議会以来一貫して、この交戦権というものはそういう意味ではない。戦時において交戦国が国際法上認められておるいろいろな権利、占領地行政あるいは中立国の船舶の捕獲とか、そういう権利の集大成をいうのであって、そういうものは日本は国際法的には持っておると思いますけれども、国内法的には憲法で否定されておる。従いましてそういうものは認められない。しかし他国の侵略に対して自国を守る意味において抵抗するということは、ここで言う交戦権の放棄とは関係ないのだ、かように解釈しているわけでございます。
  62. 山内広

    ○山内委員 条文に対する解釈の御見解は、大体そうであろうと私も書類を通じて承知しておったわけであります、これは了承いたします。もちろんこれについての解釈には私なりの意見はありますけれども、今ここでは申し上げないことにいたしたいと思います。  そこで今お話の出ました憲法で否定されておる戦力と、否定されていない自衛権関係は、具体的にどういうことなのか、自衛の三原則ということも実は先輩から聞いてはおりますけれども、こういうことについてはっきりと御明示いただきたいと思います。
  63. 林修三

    ○林(修)政府委員 いわゆる自衛力と申しますか、単に自衛力と申せば、ここでわれわれが考えております九条二項で否定されておらない自衛力というものは、やはり自衛のために必要最小限度の実力、かように考えているわけでございます。つまり自衛という点にしぼって考えれば、日本の国との関連において、周辺の国より数倍する実力を持てば自衛は最も完全に遂行し得ることは、これは常識上はそうだろうと思います。しかし憲法はそういう趣旨は認めておらない。これはそういう大きな実力を持つことが過去において非常に悪用されて、日本国民を非常に悲惨な運命に陥れたということから、そういうことは認めない。しかし他面において独立国である以上、自衛権を否定することはあり得ない、自衛権はある。しかしその両者をかみ合わせまして、日本として持ち得る、九条二項で否定されておらない限度は、自衛のために必要な最小限度ということに考えているわけであります。それを越えるものは九条二項でいう禁止された戦力に当たる、かように考えるわけであります。その限界につきましては、これは今申し上げたのは抽象的な考え方でありますが、具体的にはそのときどきの国際情勢、国際環境できめていくほかはないものと思います。これは毎年度の予算等において国会で御論議になりまして、はたしてこれが自衛のために必要な最小限度を越えるものやいなやということを、そのときどきにおいて御判定になっていくもの、かように考えます。
  64. 山内広

    ○山内委員 ただいまの回答は法制的な立場からの御回答でありますけれども、それはけっこうでございますから……、これは総理なり長官の方から、実質的に、具体的にどういうところに限界を置いておるのか。もちろん最小限度という、この最小の意味であります。たとえばこの前から出ております国民所得の二%ぐらいは当然だという御回答もあります。そうすると何%以上をこえた場合には、これは戦力と見ざるを得ないだろうか。あるいはまた、予算の問題は今申した通りでありますけれども、今度出されております案は、自衛隊員を二十六万八千三百三十三名という、これに予備自衛官一万七千を含む提案をされておるわけであります。非常に膨大な人数があるわけであります。これが一体どの程度までふくれ上がれば最小限度を越えるのか、これはもちろん今の時限の御判断よりできないと思います。将来までは……。そういうことも、深く考えればその基礎になる国際情勢とか、いろいろなことは議論になると思いますけれども、そこまで深入りせぬでも、自衛隊はどの限度を最小限度と考えているか、この点最初は、ミサイルを持つことはもう自衛の範囲を越えるという、前のどなたかの総理のときの説明もあったように、書類には出ておるわけであります。しかしいつの間にかそれも公然と持っておる。きょうのこの委員会では、長官も核武装は絶対せぬと、非常に色をなしてこの点は言明されておるわけであります。そうしますとミサイルまではいいが、核武装を持つことをもって戦力になってしまう、そういうふうに一つの限界をお考えになっておるのか、この点の具体的な話を総理なり長官からお聞きしたいと思います。
  65. 西村直己

    西村国務大臣 戦力と自衛力の具体的な限界というものは、必ずしも私は一口には言えないと思います。これはただいま法制局長官からも答弁がありましたように、自衛ということは、相手をいろいろ考え、また周辺の様子を考える。と同時に、その起こってくる戦争の形態でございます。あるいはまた戦争の起こってくる、侵略の中に使われるところの兵器の様相、進歩状況、これらともあわせて考えていかなければならぬし、一面において国内における経済はもちろん、民生はもちろん、国全体の安全というものも考えて参らなければなりません。そこらを考えて参りました場合に、私どもはまだ現在の自衛力では国土の安全というには不十分である、これをやはり増強しなければならぬという観点には立っております。しかしながらこれをまた国全体の経済力あるいは民生安定、国土建設その他の面とかみ合わせての漸増主義をとっておる。従って当面予算を通し、同時に法案を通して、国会において民主的に十分その内容は御検討願って、国会の意思をきめていただきたい、こういう趣旨でやっておる次第でございます。
  66. 山内広

    ○山内委員 そういう御回答であれば、何もあらためてこういうことをお聞きする必要もないわけであります。国民は今自衛隊がどんどん大きくなっていくことに対して、かりに自衛隊の存在を認める人であっても、一つの不安を感じておる。それは限界がわからぬから……。実は十一日の委員会であったと思いますけれども、私どもの方の石橋さんから、具体的な例で質問がありました。それはロケットで日本が侵略を受けた場合にどうして防ぐのだ、そのときに、防衛局長であったと思いますが、こういう回答をしております。防ぎようがない、だから外敵に対してはアメリカに、野球でいえば外野の役割を果たしてもらう、日本は内野だけなんだ。そのことは非常にふざけた御答弁のように思いました。しかし考えてみると、これは正直なことを率直に認められておる。私はむしろその答弁に好意を持った。要するにお手上げなんだ。そこで関連質問に立った飛鳥田委員が、それでは外野の役割を与えられたアメリカは、敵のロケットに対してどういう防衛の方法を講じ、力を持っておるのかということを迫ったら、これには回答がなかったはずである。直接侵略を受けた場合には防衛するのが自衛隊の任務であると言っておる。お手上げして何の自衛ですか。そこを私は聞きたい。このことは私少し意見になりますけれども、もうこういう兵器がどんどん発達してきた。シビヤーな兵器は秘密裏にどんどん各国で作っておるという報道もある。大陸間弾道弾がどんどん飛ばされてくる。モスクワ−ニューヨーク八千キロを三十分で飛んでくる。飛鳥田氏の意見であれば、樺太にかりにあったとすれば、これはあると報道されておると言っておりますけれども、数秒で日本に来るではないか。それをどうして防げるか。防ぎようがないじゃないか。これだけ兵器が進歩した。劈頭に申しました通り、あのゆうべのニュースを見ても、もう日本のミサイルだけでは守れないというのが本音ではないでしょうか。言葉を返して言えば、核武装も余儀ないのだ。長官は、あるいは総理も先ほど来否定されておりますが、これはもう常識の限界になってきたと思うのです。ほんとうに直接侵略を守ろうと思えば、そこまでいかなければ抵抗ができないところにきておる。けれども日本の憲法はそれを許さない。これは西村さんではございませんでしたけれども、前の長官が、自衛本能は憲法以前のものだということを新聞に書いておった。憲法を無視して何でもやっていいということは、もちろん内容を読んでみると、そういうことを言っておられるわけではないけれども、このことはここにおられる西村さんも、これは新聞で見たのでわかりませんけれども、小さい記事ではありましたが、自衛の範囲を出なければ小型の核武装はやむを得ないのじゃないか。言った言わないを私ここで問答しょうとは思わない。しかしおそらく防衛の任にある長官以下の腹の底では、そこまでお考えになっておるのではないか、そのことを国民は非常に心配しておる。あらためて核兵器についての長官の御見解をお聞きしておきたい。
  67. 西村直己

    西村国務大臣 先般の委員会で飛鳥田委員から、ソ連が樺太からミサイル攻撃を日本にかけた場合どうか、こういう御質問がありました、この設問自体が、私必ずしもそういうことがあり得るとは考えられません。また想像もいたしたくはないのでありますが、しかし現実にそういった事態があったと考えた場合においては、おそらくただ端的にぽんと樺太からミサイルが飛んでくるのではなく、全面戦争の様相のもとにおいて行なわれる、こう考えていただきたいのであります。その場合には、もちろん日米安全保障体制におきます共同防衛としてのアメリカの役割は、十分に抑制力が同時に攻撃力に変わっていくでありましょう。同時に日本自衛隊は、座してただ見るのではございません。そのときの全面戦争下における日本国内の動揺、あるいはその他に対しましては、自衛隊は後方においてあるいは内地において、みずから死力を尽くして国民を守る、この任務の遂行のために当然やるべきだ、またやる覚悟を持っておるのであります。ただそういう事態は私ども起こらぬことを望むと同時に、また米ソ両国間も抑制力として考える。全面戦争になれば一国ではおそらく守り切れない。おそらく世界じゅうが巻き込まれて、世界の破滅を来たす。従って抑制力として考える。従ってこの席を通じて、国民核装備を心配されるのではないか。これは政府がはっきりたびたび申しております。ことに原子力基本法をごらんいただけば、核というのは原子力基本法によってぴったり、平和利用として押えられておる一点がございます。それから私が憲法解釈で言ったのは、法理上純粋にこの理論に立っていえば、あるいは小型か防御的なものであります場合におきましては、絶対にいけないとは解釈はできないかもしれない、こういうことで核ということは一応出たのであります。現在の憲法のもとにおいて、核装備は一応ただ政策としてとらないというだけではなく、原子力基本法、また憲法の解釈、これらから考えて、攻撃的な意味における核武装はあり得ない、こういうふうに思います。
  68. 山内広

    ○山内委員 今の長官お話で、前段は非常に私もわが意を得たりと聞いておりましたが、最後の核武装の小型の問題、攻撃に使わなければいいのだ、防衛のためならば憲法上認められておる点ではないかという、その一点が非常に大事なところである。これがまた発展する心配が非常にある。そういうことでミサイル基地も今どんどんなされておる。もう一ぺんこの点についての長官の見解をはっきり、憲法違反なら違反だと言っていただきたい。
  69. 西村直己

    西村国務大臣 現在やっております、あるいは導入計画を持っておりますミサイルにつきましては、これはあくまでも小型であり、かつ防空用を中心にしましたミサイルのものであります。これと核とは直接の関係はございません。  それから憲法の解釈としましては、将来核というものがいろいろ研究開発されていった場合に、純粋の理論からいった場合に、これはあくまでも防御であり、小型であるものまでも、今の憲法で絶対に禁止しているか、そうまでは私は自衛のために言い切れないと思います。しかし政策としても、また国の法律としても、はっきり原子力基本法なり何なりで制御されております。また政府としてもそういう決意をずっと述べております。ですから憲法上純粋の解釈としては、そういう解釈も成り立つのではないか。絶対に核というものを憲法が正面から全部禁止しておるというふうには解釈できない、こういう意味であります。
  70. 山内広

    ○山内委員 今の御回答は私得心参りません。けれども今は主として総理にお聞きしておく時間でありますので、これはまた他日の機会に譲ります。  そこで総理にお伺いしておきますが、確かに先ほど総理長官も核武装はしないということを明言されました。しかしこれは共同防衛に立つ相手のアメリカ日本に持ってくること、これもだいぶ前に議論になって、紙上ではある程度の見解を承知しておりますけれども、これに対する現在の総理考え方、それからまたかりに今度渡米されましてこの問題でお話が出た場合、どうしても核武装せんければお前の国は守ってやれぬ、だからおれの方の核武装をする、お前の基地でやる、そういう申し出があった場合に、きぜんとこれを拒否するだけの決意をお持ちになっているかどうか、その点を明らかにしていただきたいと思います。
  71. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 核武装はいたしませんと国民に対して言っておる私が、アメリカから核武装をしろと言って、これを引き受ける理由はございません。また私は日本国民気持も、アメリカはよく知っておると思います。従って御心配のような点は私はないと確信いたします。(「あったとしたらどうする」と呼ぶ者あり)もしあったにいたしましても、先ほど申し上げた通り、私は国民に約束しておるのでございます。この約束を破ることはいたしません。
  72. 山内広

    ○山内委員 総理のはっきりした国民に対する約束は、一応聞いておきます。しかし総理が渡米されますと、前においでになったときも、お帰りになったときのおみやげは必ずしも国民の喜ぶものばかりではない。特に今回はいろいろな国内の事情も考え国際情勢もある中で、アメリカに行って、さてお帰りになって、みやげを国民の前であけてみたら、急に国民全部がしらがになるような、浦島太郎のあの玉手箱のようなおみやげだけは絶対にお持ち帰りにならぬように、あわせて希望しておきます。  ではその次に、これは前に石山委員が触れられたことなんでありますけれども、ちょっとここで私からもあわせて確認しておきたいと思うのであります。それは十三個師団の編成がえの意図するところでありますけれども、いろいろ御説明があったわけであります。けれども自衛隊が発表いたしました問題の治安行動綱領草案ですか、あの内容を新聞で拝見いたしましても、どうしても国民の目は何かしら銃がこっちに向いてきた、同胞相はむような残酷な時代がくるのではないか、そういう非常な危惧の念を抱くわけであります。特に今度の配置転換を見ますると、今まで北海道、九州といったああいう離れた土地から、今度は関西、中央といった工場地帯にその主力が移動してくる、そういうことで非常な疑惑を持つのは国民として当然だと思います。先ほどもちょっと防衛局長の先般の説明を引用して申し上げたのでありますけれども、内部にほこ先が向かってきた、こういうことで、私どもはこの十三個師団編成の真意というものをどうしても理解することができない。もう一ぺん、先ほどいろいろ制限はつけられるようなことを言っておりますけれども石山委員の言われるように、事前に国会の承認をやむを得ない場合にはすべきだ。事後承認は認めない。治安に対しては警察力もあることなんですから、それ以上二日や三日その治安を守れないという事態はないわけです。これについて私からも聞いておきたいと思います。
  73. 西村直己

    西村国務大臣 ただいまのお話は、自衛隊法七十八条による総理大臣の命令による治安出動だと思うのであります。この場合におきましては、この条文にもはっきり書いてあります。「間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合には、」ですから警察力が十分であり、あるいは相当程度備えられる間は、自衛隊に対するこの命令は、おそらく総理もせぬだろうと思います。しかもその一般の警察力の壊滅した場合において出動された場合におきましても、さらに国会において事後の承認を求めて、政府が責任をとるという体制でございますから、私は十分だと考えております。
  74. 山内広

    ○山内委員 この問題はまたあらためて議論をしたいと思います。  時間が短いために、少し整理してお尋ねいたしたいと思います。今回の審議事項の中に、実は前から自衛隊の方から内閣委員会に対してしばしば御説明のありましたヘリコプター空母の予算が出るのであろうと私どもは思っておったわけであります。というのは、前々からこのヘリ空母はどうして作らなければならぬのか、その理由についてはかなり詳細な御説明もあったわけであります。ところが今回これが消えてなくなりました。このヘリ空母の建設をあきらめられた理由は、今まで必要を主張しておったのでありますから、そういう立場からすれば、何か原因があって、たとえば予算上の問題か何かあって、予算化できなかったと思うのであります。その点をお伺いしたいと思うわけであります。ただ私も実は一つの懸念を持っております。というのは、今回は出さなかったけれども、第二次防衛整備計画ができ上がりますと、その裏づけでもって強力な要望をしてきて、今度は絶対削減しないような方法で予算化してくるのではないか。そういう考え方も実は持っているので、その点をまずお伺いしたいと思います。
  75. 西村直己

    西村国務大臣 ヘリコプター空母は、むしろヘリコプター母艦といった方が実態と合うと思うのでありますが、今のやり方については、この機会に御説明申し上げないでも了解いただいておると思います。ただ問題は、将来において第二次計画でどう扱うか。これの性能と申しますか、役割等につきましては、まだ私ども検討は十分して参らなければなりません。目的は御存じの通り対潜哨戒でございます。それと五年間におけるの財政力に占めるその位置でございます。そういうものと十分にらみあわせて、今後第二次計画の過程において検討を加えて参りたい、こういう考えであります。
  76. 山内広

    ○山内委員 第二次計画との関連で検討するということで、出すとも出さぬとも話がない。それでは、これは私の意見になるかもしれませんが、これはお出しにならぬ万が賢明なのではないかと思いますので、若干申し上げます。  この間の説明では、ソーナーという機械でしょうか。海中に投入して、一万メートル先の潜水艦のスクリューの音をキャッチすれば、それがすぐヘリコプターに伝わつて魚雷を発射するのだ。この整備がなければ万全を期することができない、こういう詳しい御説明があったわけであります。なるほどこういうことを聞きますと、対潜水艦という問題だけに限りますと、どうも何か必要性を認めざるを得ないような気がいたします。しかしこれは全般を通じて言えることですけれども、海上自衛隊世界各国とも強化されて、これは最近新聞か何かで読んだのでありますけれども、ウラジオにも艦艇七百隻、五十万トンが待機しておる。すぐ目と鼻の先であります。そこには百二十隻の潜水艦がある。最近の潜水艦は、もう私の口から言うまでもなく、原子力の潜水艦であります。何十日も海中におって、海中でも三十ノット以上の速力が出せる。そして大陸間弾道弾の打ち上げもできるような装備がなされておる。それが百何十隻も日本の周辺をうろうろしているところへ、かりにこういう母艦が、局部的に必要なものがあつたとしても、そういうものを作ってみても、一朝有事のときは意味のないものになるであろう、むだづかいになるであろう、そういうことを私は懸念しておるわけであります。そのほか理由はたくさんありますけれども一つの例で申しますと、かって前の戦争のとき、大和、武蔵というものを国民の目をおおって、かこいの中で何年もかかって作り上げた。できたときは不沈艦と誇ったのでありますけれども戦争になったら何の役にも立たないで、二そうとも沈んでしまった。この母艦を無理して作っても、今置かれているような平時に使うならば別であります。たとえば海難を救うとかいろいろそういうことに使われるというのなら別でありますが、戦争では役に立たぬということだけは常識的に考えられる。幸いにして予算を組まないのでありますから、こういう国費のむだづかいは、この際また畳みかけて議会論争の起こらないように、この点は御注意申し上げたいと思います。  まだお尋ねしたいこともたくさんありますけれども、与えられた時間も参っておりますので、以上質問を終わりたいと思います。
  77. 久野忠治

    久野委員長 次に受田新吉君。
  78. 受田新吉

    ○受田委員 総理もお疲れでしょうが、重大な法案ですから、一つ私の質問をお聞き取り願って、明快な御答弁をお願いいたします。私は最初にこの防衛法案に盛られた改正内容に関連する問題をお尋ねします。  今回防衛庁設置法によりまして人員の増強計画が立てられており、自衛官一万一千余名、文官二千四百名の増員を計画しておられる、ところが現に自衛隊の陸上部隊を中心にして、定員の欠員は二万一千名をこえておるのでございますが、これは定員がこれだけ不足している。一方においては膨大な増強計画を出すといういかにも矛盾じた案が出されているように思うでございます。これに対する当局の態度を明快に御説明をお願いします。
  79. 西村直己

    西村国務大臣 やや事務的な面でございますので、私から御答弁申し上げます。海空につきましては欠員問題は多少ございますが、これは従来と変わりないと思いますが、陸上自衛隊については十七万の定員に対して二万余名の欠員がございます。一方それに対して千五百名の増員をする、一見矛盾ではないか。一応一見矛盾であるかのごとき観がございますが、この点を御説明申し上げますと、千五百名は御存じの通り新しく建設部隊をさらに千名従来のものから加えて作りたい。これは民生安定協力、こういう意味でございまして、非常に御要望に応じた形をとっておるわけであります。一方十七万名に対して千五百名をふやすから、十七万名は減らしたらどうだ、こういう考え方も出ると思いますが私ども自衛隊というものは一つの編成を持たしておるわけであります。この編成が積み上げられてきまして、そして一つのいろいろな部隊になってきております。従ってそれには基幹要員というものを養成して、それぞれ配置いたしております。また一面そういう意味から私どもはこの編成をくずすことは、軍と申しますか、自衛隊の性格上、むしろ軽々にいじるべきものではない。千五百名の分につきましては、これは新しく建設部隊の編成でございます。欠員が多いということにつきましては、御存じの通り予算の充足率等の関係一つはございます。いま一つは募集が困難であるということも率直に認めます。しかしわれわれは内部におきまして十分予算の充足率を利用しながら、その編成に近づける努力はして参りたい、こういうふうに考える次第でございます。
  80. 受田新吉

    ○受田委員 今欠員のある問題について、その原因が募集難であるというお言葉があったわけです。自衛隊の募集難というものは重大な問題である。せっかく定員が計上されておりながら、それをよう募集し得ないというぶざまなやり方は、自衛隊の権威に関する問題だと私は思います。この募集難の原因はどこにあるとお認めになりますか。
  81. 西村直己

    西村国務大臣 御存じの通り募集難と申しましても、難の限度があります。絶対的なものではございません。努力によって相当開拓もできますが、一方におきまして景気が上昇し、かつ完全雇用と申しますか、それに近づく努力をしております。一方国民の自衛意識に対しましても、まだ私ども努力を今後続けていかなければならぬ点も十分認めていくつもりでございます。それらを勘案いたしまして、当面そういう欠員があるということは率直に認める次第でございます。
  82. 受田新吉

    ○受田委員 すでに沖縄に自衛隊員の募集に乗り出してみたり、また防衛庁の内部には、この募集難の対応策として、募集年令を十八才から十七才に低下して、人材を吸収したらどうかという御意見もあると聞いておりますが、年令を十七才まで下げるという検討をしておられるのですか、どうですか。
  83. 西村直己

    西村国務大臣 アメリカその他の国々でも、十七才とかあるいは十七才半とかいうようなあれがございまして、いろいろ能力とかそういう点から見ますれば十分でございます。しかし私どもはこういう年令の一年引き下げということは、軽々に思いつきできめるべきものではありません。十分検討を加えて、それによってさらに募集の陣容と——たとえは十七才になりますと、学校を卒業してからしばらくの期間があいてから入るより、割合卒業後間もなく入るとか、いろいろ利便もございます。しかしながら一方においてそれだけ若い者ばかりが中心に入ってくるということによって、いわゆる軍の質の低下ということがあってもいけませんし、そこらを慎重に検討して結論を出したい。ただいま検討をいたしておる段階でございます。
  84. 受田新吉

    ○受田委員 十七才ということになれば、これは特別職の公務員として採用する年令においても問題があるわけです。他の一般職種との関係もあるわけです。それを十七才まで下げて、まだ心身の発育不十分な者までも採らなければならぬという検討を始めておるということは非常に重大な問題だと私は思うのです。大体かつて木村保安庁長官時代に、二十二、三万くらいに自衛隊員がふえてきたら、徴兵制ということも考えられる、志願兵制度というものは限界があるということを発言をなされております。その時期が来て、もう二、三万こえておるのです。二十五、六万にも増員されておるのです。この段階でもはや志願兵制度には限界がきておる。沖縄にまでも募集に行き、また十七才までも下げてやらなければいかぬという検討をしておる。こういう段階になっていることを、池田総理大臣、あなたは十分お考えにならなければいかぬ。大体志願兵制度の限界にもう近寄っておるということを示しておると大臣はお思いになりませんか。そして志願兵制度の限界に対応する策として、徴兵制というものが、世界各国の通例から当然日本の国内にも政府部内にそういう問題が起こるような危険も、私はひそんでおると思うのです。その問題について二つの立場からお答えを願います。
  85. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は志願制度に対して限界が来ておるとは思っておりません。これは自衛隊の必要性、その他宣伝でもありますまいが、自衛隊内におきましても、たとえば海空につきましては相当の応募率であるのであります。空に対しましては相当な超過でございます。それからまた陸上にいたしましても、宣伝と、それからできるだけいい人を入れよう、こういうようなことでやっております。限界が来ておるとは思いません。従って徴兵制度をしこうなどと私は毛頭考えていないのであります。
  86. 受田新吉

    ○受田委員 徴兵制度というものは憲法を改正しなければできない憲法事項であるかどうか。憲法を改正しなくても徴兵制度をしくことが法律をもってできるのかどうか。お答え願います。
  87. 林修三

    ○林(修)政府委員 普通の意味でいわれる徴兵制となれば、私は憲法の問題になると考えております。
  88. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、憲法を改正せずして徴兵制度をしくことは絶対にできないというふうに、はっきりした言明を池田総理大臣からしてもらいたい。
  89. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は常にそういうことを他の機会で言っておりますが、憲法を改正しなければ徴兵制度を置くわけに参りません。
  90. 受田新吉

    ○受田委員 もつ一つ憲法に関係をするのでございますが、現在の政府がなしくずしに自衛隊の増強をはかっておる。実際は戦力として憲法に抵触するほどのものを蓄積されたと一部では見られておる。こういう段階で、憲法の規定からいって現在の自衛隊は合憲であるというお立場をとっておられると思うのです。現状において自衛隊の増強について憲法の改正の必要はない、この点もはっきり言明ができますか。
  91. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は自衛力の今の状態は、憲法の認めるところであると確信しております。
  92. 受田新吉

    ○受田委員 日本の置かれている立場から、憲法の第九条の改正は将来においても必要としないといりお考えをお持ちになるかどうか。
  93. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私はそう考えております。
  94. 受田新吉

    ○受田委員 きわめて明快な将来に対する宣言もされておりますので、憲法第九条の改正の必要なしと明快な総理の答弁をいただいたと私は了解します。  そこでもう一つここに問題が起こるのは、今回の改正案に関係する自衛隊法の七十八条の規定です。これは命令による治安出動でございますが、先ほど以来お二人の社会党の議員からお尋ねになった問題で解決しないところがある。それは自衛隊法の七十六条には防衛出動の規定があって、原則は事前に国会の承認を得なければ出動できないことになっている。ところが七十八条には、命令による治安出動に対しては、総理大臣の命令でこれが自由に出せるようになっている。国防会議にも防衛出動の審議規定がありますが、治安出動の規定はない。こういうことから、この出動に関して二つの形式の違った大臣の命令が出されるようになっている。総理大臣いかがですか。
  95. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私の記憶では、防衛出動の場合におきましても国会の事後承認でできると記憶しておりますが、一応取り調べまして法制局長官から御答弁いたさせます。
  96. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは原則と例外とを混同しておられる。七十六条の規定をお読みになっていただけばきわめてはっきりする。「内閣総理大臣は、外部からの武力攻撃に際して、わが国防衛するため必要があると認める場合には、国会の承認を得て、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」とはっきりうたってある。七十八条には、「内閣総理大臣は、間接侵略その他の緊急事態に際して、一般の警察力をもっては、治安を維持することができないと認められる場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。」あなたの権限でやられることになっておる。はっきり原則が違っておりますが、いかがですか。
  97. 林修三

    ○林(修)政府委員 これは自衛隊法を作るときからこうなっておるわけでございまして、そのときの理由は受田委員もよく御承知だと思うわけでございますが、外国から正規の軍隊による侵略を受けた場合の防衛出動というのが七十六条でございます。間接侵略その他というようなものはそうではなくて、形態的には国内的に問題が起こる。しかしその背後に外国があるという場合には間接侵略ですが、七十八条は間接侵略には限りません。その他にも非常に治安が乱れたりして、警察力をもってしては収拾できない、そういう場合のことも入っておるわけでございまして、そういう場合とおのずから多少事態のウエートも違い、従ってそこにおいて七十六条は原則として国会の事前承認、しかし必要やむを得ざる場合には事後承認、七十八条は事後の二十日以内の国会の承認ということになっておるわけであります。この二十日以内の承認にいたしました理由は、これは警察法をごらんになりますとわかりますが、警察法の七十四条でございましたか、緊急事態も実は同じような格好になっておるわけでございまして、緊急事態の布告も大体事後承認で、期間も二十日以内ということになっております。大体それと平仄を合わせたものだと考えております。
  98. 受田新吉

    ○受田委員 すでに政府当局は、自衛隊の任務について、間接侵略に対応ずる方策にウエートが置かれつつあることを言明しておられるのです。そういう段階で、総理大臣がこの間接侵略の解釈を適当にやって、国会の承認なしにぱんぱん発動をされたならば、大へんなことになると思うのです。私はその危険を感ずる。情勢が変わっておるのです。現情勢に対応するために間接侵略に重点が置かれておるというこの段階で、直接侵略に対しては国会の承認で出る、間接侵略に対しては総理大臣の命令一本で出るというこの規定を、七十六条と同じく国会の承認によって間接侵略に対する命令による治安出動にせしむべきである、かように私は思うのです。総理大臣、あなたは軍事力の政治統制という立場から、文官優位の原則、国会の尊重、あらゆる世論の尊重というような立場から、好戦的な挑発的な総理大臣があなたのあとで出られた場合は——あなたはりっぱであるから私は心配を感じませんが、あなたのあとにこの伝家の宝刀を振り回す危険な総理が出たときには、いやおうなしに総理大臣の命令でやられてしまうのですよ。ここで国会の承認という規定を原則として設けることが必要ではないかと思います。法制局長官法律的な事務的な賛助などを得ないで、あなたの自信ある答弁を願います。
  99. 林修三

    ○林(修)政府委員 総理のお答えがありますが、私から法律的な問題で、受田委員の御意見でちょっと誤解しておられるのじゃないかと思います点を補足さしていただきたいと思います。実は七十八条は「間接侵略その他」というふうに、間接侵略を一例にあげておるわけでございますが、要するに治安が非常に乱れておる、一般の警察力をもってしては治安の維持ができない、そういう場合でございます。あくまでもこれは国内的な様相で出ておる場合、もちろんその背後に外国がある場合もありますけれども、そういう場合でございます。むしろその解釈で今受田委員の御心配になりますのは七十六条の問題の方だと思うのでありまして、七十六条は直接侵略でございますが、さっき不正規兵によると申し上げましたが、不正規兵による侵略も直接侵略だという考え方も一部にあるわけでございます。そういう場合において、いわゆる防衛出動の範囲においてはいろいろおっしゃるような点があるわけでございます。これは国会の事前承認ということが原則でございます。しかし七十八条の方は、原則として形態は国内的な問題でございます。そういうことでございますから、今おっしゃるような、それをもっていわゆる外国に対する防衛出動にすりかえるというようなことは起こり得ない、かように考えるわけでございます。
  100. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 七十六条の点は、先ほど法制局長官のお答えした通りに国際間の問題でございまして、私はあの規定は当然だと思います。しかし七十八条の国内の治安出動という場合におきましては、これは七十六条と同じようにしろという議論もありましょうけれども、やはり国内の問題でございますので、そうしてまた間接侵略あるいは内乱というような場合は、前からあまり予測できないことも事例としてあるわけでございます。私はあくまで総理大臣の責任においてやる今の制度でいいと考えております。ただお話のように、むちゃなことをやる人が出たら大へんだ、こういうことはお互いに国会で承認した首班でございますから、そういうことはないと思っております。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 私はそこに危険があると思うのです。あなたは非常に安易に考えておられる。私はちっとも七十六条と七十八条を混同しておりません。七十八条の場合は間接侵略とはっきりうたってあるのです。その他の緊急で一般の警察力をもっては治安維持ができないという段階に来ておるのですから、これは重大な段階です。今壊滅という言葉が出たくらいです。そういう段階自衛隊が出動するのでありますから、たとい国内問題であったとしても、国会に諮って国会の承認を得る。自衛隊の出動という特殊の出動でございますから、警察力では間に合わぬというような事態は重大な事態です。そのときに総理の独得の権限でこれを発動されるということは危険がある。あなたのような円満なお方が総理に相次いで承認されるとは限りません。ときにはまた好戦的な総理が出ることもあるのですから、あなたはこの際、間接侵略に重点を置くとはっきり防衛庁長官の説明があった段階においては、ウエートをそれへかけるようになっているという意見が出ている段階では、従来とは立場を変えて、国民の代表である国会の承認、世論の尊重、政治の力で軍事力を抑えるという原則を、この際一つはっきりあなたの強い意思を持ってお示し願いたいと思うのです。あなたの権限になるのですから、御自分の良心で判断をされないで、一つの国という高い立場で将来のことも見通して、一つこの際命令による治安出動に対しても、七十六条と同様の規定を設けるべきであるということを、強い御意思を持っていただきたいと思いますが、いかがですか。
  102. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 間接侵略に重点を置くと私は考えております。私は直接侵略もないことを望み、間接侵略も、そういうことはないことを非常に心から期待しておるのであります。また私は国内問題で、しかも事後承認を要することでございますから、決してそう無理なことをすることはないと考えております。
  103. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは事後承認というのを軽く考えておる。事後承認というのはできたあとの跡始末ですよ。そういうときはろくな解決になるわけがないのです。それをやる前に、国会の意思を尊重して、少なくとも自衛隊の治安出動という重大事項については、総理が国会に諮るというお手続を踏まれることが妥当であると思うのです。いかがですか。
  104. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は、内閣総理大臣が責任を持って国政を運用し、しかも事後国会の承認を得る。承認が得られないときには、これは直ちに引かなければなりません。またそれによって内閣総理大臣は責任を負うのであります。今の規定で私はけっこうだと考えております。御意見は御意見として承っておきます。
  105. 受田新吉

    ○受田委員 ナチ・ドイツがあのような強大な権限を獲得するに至ったことも、われわれは先例として学んでおらなければならない。日本の旧軍が政治力を押えてついに敗戦に導いたということも、あなたはおわかりいただいておるわけです。ときには自衛隊そのものがクーデターを起こす場合もある。現に昨年五月にはトルコがこれをやっている。あなたはこの七十八条の規定で、自衛隊そのものが文官優位の原則をこわして内乱を起こすというような場合、昨年のトルコにおけるような事例が起こった場合には、どういう立場をおとりになりますか。
  106. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 わが国民の良識によって、そういうことはないと確信しております。
  107. 受田新吉

    ○受田委員 現に日本でも二・二六事件というのがあるのです。これは当時非常に強大な軍の統制の中でさえも、ああいう事件が起こっているではありませんか。そういうことで日本の国にもそういう事例があるのです。そういうときにこれをどういう立場で押えていくかという問題がある。
  108. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 昔の軍国時代とは違って、お互いにこういうようにして、防衛庁設置法につきまして議論をしておるのであります。前の時代とは私は違っておると考えるし、またそういうことはない、起こり得ないと確信いたしております。
  109. 受田新吉

    ○受田委員 政治的な力で、国会の力で、国民の声で、そういうことのないようにするという原則をとるべきであって、行政の責任者によって勝手な行動がとられることのないような規定にしておいてもらいたいということなんです。  これに関連するのは、今度の改正案で統幕会議の、特に議長の権限強化の問題がある。この権限強化は陸海空の自衛隊の中の二つ以上の共同作戦をとるような場合には、統合幕僚会議の議長が長官にかわって指揮権をとる、命令権を執行するということになっているのです。こういう重大な改正案が今度出されているのです。この問題について従来の文官優位の原則が、統合幕僚会議の議長という自衛官によって、これがだんだんと侵食されるのではないか。防衛庁の内部の所掌事務に基本という言葉がある。国防の基本、自衛隊の基本、これが今度やはり統合幕僚会議の議長の権限の中に、基本並びに統合調整という言葉に切りかえられる法改正がなされる。文官優位の原則、これはだんだんとこういうところからくずれるのではないかという危険を感ますが、御答弁を願います。
  110. 西村直己

    西村国務大臣 私からお答えをいたします。統合幕僚会議の権限の強化、あるいは議長の権限の強化は、私は文官優位、文民優位と申しますか、政治優位のシビリアン・コントロールをくずすということは絶対に考えておりません。なぜなれば、防衛出動においては国会の御承認あるいは事後の承認というような手続をもって、国権の最高機関である国民代表の国会の権限に限られております。また同時に総理大臣最高指揮官でございますが、それが国会から承認と申しますか、選ばれたる方であるわけであります。同時にそのもとにおいて、また文民であります防衛庁長官が所在し、また内局におきましては、防衛出動に関する行動の基本というものは、防衛庁設置法のたしか二十条でございますかに厳然と残っております。ただ統合部隊は今日の戦略あるいは戦闘作戦の状況から必要でございます。その場合におきまして、その作戦上の基本を自分がかわってやるのではございません。防衛庁長官の名において執行していく、これだけのことでございます。
  111. 受田新吉

    ○受田委員 そこに問題があるわけでございます。従来は各幕の幕僚長がやっておった仕事を、統幕の議長が握ってくる。それから同時に長官がこれを委任するというような形になってくると、少なくとも統幕議長の力というものは非常に強大なものになる。これはまぎれもないことです。防衛庁の内部の所掌規程にあるこの基本の問題と、それから今度改正案にある指揮命令の基本の問題と、どういうふうに関係してくるのですか。内局というものはどういうふうになってくるのですか。
  112. 西村直己

    西村国務大臣 内局は政策全般の問題を握って参るわけであります。御存じの通りそのもとに立ちまして、今度具体的な問題をどうするか、統合部隊におきましては、統合部隊の具体的な行動につきましての作戦の基本は、なるほど立案して、またこれは内局相談の上、私のところへ持って参ります。事柄の重要性によりましては、それをまた総理の指揮を受けるということもあろうと思います。従ってあくまでも私はシビリアン・コントロールのもとにおきまして、統合幕僚会議や議長が命令を執行すると申しましても、今日の現行法によりましても、各幕僚長がやはり同じようにそうなれば、私の名において作戦の指導をするということは行なわれておるのであります。ただ統合部隊でありますから、統合幕僚会議ないし統合幕僚会議議長が行なう、こうなるわけであります。
  113. 受田新吉

    ○受田委員 議長の権限をここに作り出さなくても、統合幕僚会議でよかったじゃないですか。
  114. 西村直己

    西村国務大臣 それは立案の方は、統合幕僚会議で各幕僚長が集まりまして、ここで立案する。同時に執行の場合におきましては、迅速をとうとぶという意味で、単に命令の執行でございます。そういう意味で、それを伝達するというのであります。
  115. 受田新吉

    ○受田委員 この問題は非常に大事な問題でありますので、またあらためて委員会で質問することを保留しておきます。これは保留をはっきり記憶しておいていただきたい。  そこで総理大臣、問題があるのです。国防会議議長としてのあなたに与えられたお仕事は、その他という規定の中で、内閣総理大臣国防に関する重要な問題を会議に諮らなければならないとある。ところがこの統合幕僚会議の権限強化、議長の権限強化というような、国防の指揮命令に関する重大な規定を、あなたは国防会議にお諮りになっておらないじゃないですか。どういう理由からですか。
  116. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は国防会議に付するべき問題とは考えておりません。しかも今防衛庁長官が申しましたごとく、従来は陸海空二つ以上にまたがるものにつきましては合議の上幕僚長がやっておったのを、今回は陸海空三つが一体となって合議してやるような場合がこれから想像されますので、一体となって協議し、幕僚会議できめたことを今までは幕僚長がやっておるのを会議議長がやるのであります。それは単に長官の指示を受けて今までの機構通りにやっていく。ただ幕僚会議の議長でやった方が早いし、また弊害も起こらぬと私は考えておりますので、これを認めたわけであります。
  117. 受田新吉

    ○受田委員 私は国防会議の議題に付するべき重大な問題の一つだろうと思います。つまり指揮命令の系統において新しい形態ができた。そしてこういう重大な問題である十三個師団の編成ということは当然かけておられると思いますし、そういうものと全く対等の立場で論議すべきものだと思います。  その問題はまた後ほどやることにして、私最後にここで総理大臣にぜひとも大きな御認識で対処していただかなければならぬ問題を取り上げます。それはこの第二次長期防衛計画を、あなたの前任者の岸さんが、安保条約審議のごたごたにまぎれてとうとうお出しにならなかった。そうしてあなたになっても、まだじんぜんとしてそれをきめておらない、こういう原因はどこにあるか。これは非常に重大な問題が一つひそんでおると思う。それには予算の問題、防衛体制の問題、装備の問題、あるいは兵力の問題、いろいろなものがこんがらがって、一年半以上二年近くも第二次防衛計画は立てられないで、こそくな手段のその場しのぎの案をお立てになったのですか、いかがですか。
  118. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 第二次防衛計画は非常に重要な問題でございます。単に予算ばかりではございません。いろいろなことから十分検討いたしまして、国際情勢の変化等も考えましてりっぱなものを時間をかけても作りたい、こういうことで検討いたしておるのでございます。
  119. 受田新吉

    ○受田委員 ところが十三個師団の編成とか、ヘリ空母とか、ミサイル防空隊というようなものは、第二次長期防衛計画とはまた別な角度からこれを検討しておられるようだ。特に十三個師団の編成というようなものは、当然第二次長期防衛計画の基本的なものじゃないですか。違いますか。
  120. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は十三個師団というものが、第二次防衛計画の基本になるとは考えておりません。ただ今までの編成と違いますので、国防会議にはかけましたけれども、これは今の日本国情から申しまして、また機動性を強化する上におきまして必要と考えたのであって、第二次防衛計画のもとをなすものとは私は考えていません。
  121. 受田新吉

    ○受田委員 西村長官、今十三個師団をごく軽く総理は言われたが、あなたはその通りの御意見をお持ちですか。
  122. 西村直己

    西村国務大臣 十三個師団の編成は、御存じの通り人員等においては現在定員の中でやっておるのでございます。そこで第一次計画は十八万を目標にして、十七万の定員の中でこれを編成がえする。ただ十個師団を十三個師団に変えることは重要な編成がえでありますから、御存じの通り軍の編成は、かっては天皇の大権であったくらいで、やはり編成を変えるということは重要事項であるので、議長がお認めになって国防会議で決定されたのであります。第二次計画については、これらは第一次計画の補完として行なわれておりますから、第二次計画の中へ織り込まれてくることは当然の事実であります。現実にこの法案が通過いたしまして編成がえが行なわれていけば、第二次計画の中へやはり入っていくことは事実でございます。しかし第二次計画そのものの中心になってくるものではない。第二次計画は、やはりそれに新しい構想がいろいろ入ってくるのではないか、こういうふうに考えます。
  123. 受田新吉

    ○受田委員 私が今お尋ねしておるのは、このことが第二次計画の柱の一つであるのかということですが、総理は、それは柱の一つではないのだ、重要な問題ではないのだという御答弁です。しかしあなたは、この十三個師団の編成がえは第二次計画の中の幾つかある大事な問題の一つだと言っておられるが、どうですか。
  124. 西村直己

    西村国務大臣 これは第一次計画のワクの中でやっておりますが、この第一次計画は昭和三十五年度で一応形は終わっております。しかしそれは十分に入っておらない部分もありますから、今年度の事柄の防衛力整備については、予算編成を前にして国防会議を開き、その取り扱いを相談すると同時に、当面の重要事項として、第一次の定員の中では人数をふやしておりませんので、その編成がえを行なうことは重要事項であるとして決定を願う。同時に十三個師団をかりにお認め願えば、やはり二次計画は当然全体をやるべきでありますから、一次でやっても、二次計画の基礎にはなっておりまして、その中に入っておることは事実であります。しかしそれが二次計画の重要な事項になるわけではない。二次計画は二次計画としてのいろいろな構想が出てくるわけであります。
  125. 受田新吉

    ○受田委員 今の御答弁は、長官としてはきわめて場当たり的の御答弁に終わってしまったわけです。この十三個師団の編成などという国防の基本に関する重大な問題を今あわててやらなくとも、二次防衛計画ができたときに一緒にやるべき性質のものではないかと私は思っております。そういうものを抜き出してここでおやりになっておるということが一つの問題です。  もう一つはミサイル防空、これは非常に重大な問題であって、日本は核戦争はしないけれども、米韓、米比、米台ということで、周囲の国々は全部核武装をしておるときに、日本だけが核武装をしないで、それらの組織の中に入っていくということは非常にむずかしいことだ。こういう中で核戦争が展開された場合は、日本はお手上げだということになるわけですね。そのときはお手上げであるが、その防御をするために、核武装をした防空陣というものだけは用意しなければならない。そのためのいろいろな準備、訓練、装備はしておられるのですか。
  126. 西村直己

    西村国務大臣 たびたびお話が出ましたように、また御説明申し上げましたように、政府といたしましては核武装は全然考えておりません。またその準備あるいは訓練もいたしておるわけではないのであります。ただミサイルというものにつきましては 防空としては近代的な必要性がある。第一次計画においても、御存じのように最新技術は十分に入れるという決定も得ており、その一翼としてミサイルの導入をはかるということでございます。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 ミサイル防空隊というものは、現在は核武装をしていないけれども、たとえばナイキ・アジャックス、ホーク、ボマークのようなもので、アジャックスをハーキュリーズに切りかえるときには併用ができるようになる。そういうものに弾頭をつければ、いつでも核武装ができるような防空体制になっておるかどうか、これを一つ伺いたい。
  128. 西村直己

    西村国務大臣 われわれはできるだけ核武装ができないような方法においてのミサイル導入をはかっておるのであります。従ってナイキ・ハーキュリーズよりはむしろナイキ・アジャックスをやるということで、このために訓練員をアメリカに送るということでございます。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ防衛庁長官にぜひ御確認を願いたいことは、現在の日本自衛隊のミサイル防空体制というものは、ここにおられる伊能さんは、オネスト・ジョンに小型の弾頭をつけたくらいは憲法違反じゃないとおっしゃったのですが、そういう程度の、すなわち核武装をいつでもできるような、併用できるような形に、今はしてないけれども、してあるのかどうか。もう一つは被害を受ける立場で、防毒マスクのようなガス対策というようなものはちゃんとしてあるのか。それは自衛隊員だけがそういうマスクなどで体制がとれて、一般国民はガスの被害を受けるときはお手上げになっておるのかどうか、そのお答えを願います。
  130. 西村直己

    西村国務大臣 ミサイルの装備につきましては、核弾頭がつけられるようなものは、われわれはできるだけ排除して参りたいと考えております。ただ御存じの通りユニバーサル型というお言葉がありましたが、これはランチャー、発射台の問題です。発射そのものではありません。ただなぜこのユニバーサル型が考えられるか。アメリカにはもうアジャックスのランチャーというものは作ってない。こういうことですから、やむを得ずそういうものはユニバーサル型を使います。これはランチャー、発射台だけでありまして、ミサイルそのものはアジャックスを使う、こういうような考え方であります。  それからもう一つは、国民と申しますか、自衛隊自体が核物質で被害を受けることに対しまして、われわれは理論といたしましては核被害、放射能被害というものに対して防禦する方法は研究はいたしております。しかし装備そのものはまだ十分できてない。(「少しはできておるか」と呼ぶ者あり)まだそこまでいってないと思います。しかし放射能被害を排除するということについて研究するのは当然のことであります。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 当然の研究をやって、具体的なたとえば化学学校、化学教育隊のごときでそれをちゃんと防毒するための、防衛するための装置などをやっておるのかどうか。   〔「こそこそやっておるじゃないか」と呼ぶ者あり〕
  132. 西村直己

    西村国務大臣 お答えいたします。われわれはこそこそはいたしておりません。もし御必要があればいつでも開放してごらんに入れるのでありますが、問題は、われわれはそこまでまだ能力がいってない。放射能を排除する装備を持つまでの能力の段階には至ってないが、研究はいたしております。こういうことであります。
  133. 久野忠治

    久野委員長 お約束の時間が参りましたので、簡潔にお願いいたします。
  134. 受田新吉

    ○受田委員 第二次防衛計画を進め、または国民自衛隊あり方を大いに徹底させるために、長官はしばしば——この長官もそうですが、国防省を作りたい、そして大いに権威を保ちたいと言っておられる。池田総理、この防衛当局は防衛庁の省昇格を常に熱願をしておることを御存じかどうか。これについてあなたはどういう考え方をお持ちか、総理の御見解をただしたい。
  135. 池田勇人

    池田(勇)国務大臣 私は防衛庁が省になりたいという申し入れを受けたことはございません。聞いておりません。従いましてまだこのことにつきましては自分としては検討いたしておりません。
  136. 受田新吉

    ○受田委員 西村長官防衛庁を省に昇格することを総理に言ってないのですか。またあなたは意見としてこの委員会などでしばしばそういう御意見を言っておられるのですが、その意見をどういうふうにおとりになるか。
  137. 西村直己

    西村国務大臣 私といたしましては、部内の検討といたしましては、防衛庁は省であるべきではないかという角度から検討を加えております。その意見がきまりますれば、できるだけ早い機会に総理に御進言いたしたいと思います。
  138. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  139. 久野忠治

    久野委員長 両案についての残余の質疑は次会に譲ることといたします。  次会は明十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四分散会