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1961-03-14 第38回国会 衆議院 内閣委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月十四日(火曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 伊能繁次郎君 理事 小笠 公韶君    理事 草野一郎平君 理事 宮澤 胤勇君    理事 飛鳥田一雄君 理事 石橋 政嗣君       内海 安吉君    島村 一郎君       辻  寛一君    服部 安司君       福田  一君    藤原 節夫君       杉山元治郎君    田口 誠治君       山内  広君    受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 池田正之輔君         国 務 大 臣 小澤佐重喜君  出席政府委員         総理府総務長官 藤枝 泉介君         総理府総務副長         官       佐藤 朝生君         総理府事務官         (北海道開発庁         総務監理官)  木村 三男君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   島村 武久君         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    久田 太郎君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   杠  文吉君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    黒澤 俊一君  委員外出席者         総理府事務官         (北海道開発庁         主幹)     鈴木  登君         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房総務課         長)      宮城 恭一君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局核燃料課         長)      田中 好雄君         検     事         (民事局付)  住吉 君彦君         自活事務官         (行政局行政課         長)      岸   昌君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 三月十三日  建国記念日制定に関する請願外三十三件(金子  岩三君紹介)(第一二六九号)  同外五件(佐々木秀世紹介)(第一二七〇  号)  同(牧野寛索紹介)(第一二七一号)  同(小山長規紹介)(第一三〇〇号)  同外三件(床次徳二紹介)(第一三〇一号)  同外八件(松浦東介紹介)(第一三〇二号)  同(小川半次紹介)(第一三五三号)  同(小山長規紹介)(第一三五四号)  同(纐纈彌三君紹介)(第一三五五号)  同(宇野宗佑紹介)(第一三六八号)  同外四件(神田博紹介)(第一三六九号)  同(牧野寛索紹介)(第一三七〇号)  同(綾部健太郎紹介)(第一四〇八号)  同(河本敏夫紹介)(第一四〇九号)  同(志賀健次郎紹介)(第一四一〇号)  同(瀬戸山三男紹介)(第一四一一号)  同外一件(山口好一紹介)(第一四一二号)  傷病恩給の是正に関する請願前田正男君紹  介)(第一二七二号)  同(纐纈彌三君紹介)(第一三五六号)  同(藤本捨助君紹介)(第一三五七号)  暫定手当解消に関する請願外十五件(久野忠治  君紹介)(第一三〇三号)  同外四十六件(加藤清二紹介)(第一四七四  号)  建設省定員外職員定員化に関する請願外百三  十三件(阿部五郎紹介)(第一三〇四号)  建設省北海道開発局及び運輸省港湾建設局定  員外職員定員化に関する請願淡谷悠藏君紹  介)(第一三〇五号)  同外二件(實川清之紹介)(第一三〇六号)  同(宮澤胤勇紹介)(第一三七一号)  同外三件(石橋政嗣君紹介)(第一四七三号)  元南満州鉄道株式会社職員期間恩給年限通算  に関する請願舘林三喜男紹介)(第一三〇  七号)  同(保科善四郎紹介)(第一四一四号)  同外一件(愛知揆一君紹介)(第一四七一号)  同(田中龍夫紹介)(第一四七二号)  福島県熱海町の寒冷地手当増額に関する請願(  伊藤幟紹介)(第一四一三号)  金鵄勲章年金及び賜金復活に関する請願(松永  東君紹介)(第一四一五号)  同(塚原俊郎紹介)(第一四七五号)  国際会議場を箱根に建設請願森島守人君紹  介)(第一五一五号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術会議設置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第三一号)  総理府設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第四八号)  北海道東北開発公庫法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四九号)  原子力委員会設置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第五〇号)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  科学技術会議設置法の一部を改正する法律案総理府設置法の一部を改正する法律案北海道東北開発公庫法の一部を改正する法律案及び原子力委員会設置法の一部を改正する法律案の四案を一括議題とし、前会に引き続き質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。飛鳥田一雄君。
  3. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 まず第一に、原子力委員会原子炉安全専門審査会設置する問題にからめて冒頭伺いたいと思いますのは、御存じ原研の第二号炉CP5の問題であります。このCP5は、アメリカAMF社から輸入をいたしまして、昨年の九月に臨界試験をおやりになったはずであります。すると、出力一万キロワットという予定のものが、一キロワットしか出ない。一万キロの一キロワットといえば、一万分の一です。こういう事実が出て参りましたし、さらにこの二月にはAMF社保証期限が切れるはずです。この保証期限が切れたところで、もう一度今度は出力を上げる検査をやり、試運転をやる、こういう御予定のようです。こういう責任問題その他については、決算委員会で盛んに質問が行なわれておりますから、私はそれをあえてここで繰り返しませんが、そこで問題になると思いますのは、原子炉等規制法を見ますと、運転最初に始めるときには原子力委員会認可が要る。その後、一度認可をとってしまいますと、あと原子力局監督下に入ってくるわけですね。そして原子炉等規制法とは関係がなくなっていくわけです。ところが原子力局監督下に入って今後出力を上げる実験をなさる場合に、AMF社は、もし一キロワット以上にお上げになるのなら責任は持ちませんと言っていますし、原研はやると言っているわけです。そうなりますと一体どんな結果が出るのか。幸いに結果が成功すればよろしいわけですが、万が一、いや私は相当その失敗可能性もあるだろうと思います。そういう場合にいろいろなことが考えられるわけです。現に科学朝日の三月号を見ますと、藤本陽一さんという東京大学の先生はこう言っておられます。この出力を上げる実験について、「私は配管のギッシリつまっているせま苦しい重水ポンプ室が汚染したありさまを考えさせられる。体裁をととのえるために出力上昇を無理に背伸びする前に、考えることはないのだろうか。あやまちを繰り返さぬために、」云々と言っておられるわけでありまして、ある程度の危険が出てくるわけです。こうした場合に原子力局は、そういう出力を上げる実験についてどういう態度をとっていらっしゃるのか、これが一つです。もし間違った場合に原子力局は、放射能が周辺を汚染していくことについてどういうふうに責任をとられるのか。  そこで第二に伺いたいことは、この場合に安全審査会というものはどのように法制的にタッチしていくのか、この問題を伺いたいと思います。原子炉等規制法を見ますと、安全審査設置について安全なりやいなやを審査するだけであって、設計ができて建設されてしまって、実際運転に入ってくる。運転にも臨界試験もあれば最高限出力を出す試験もある。いろいろな段階があるはずです。そういう運転段階一つ一つ安全審査会はチェックするように法律的にはできていないはずです。そういう点で、このCP5の出力を上げていくことについて、安全審査会はどのように関与なさるのか、この二つを一つ、とりあえず伺いたいと思います。
  4. 杠文吉

    杠政府委員 まず第一点の問題でございますが、やはり御指摘通りAMF保証期間は二月十四日に切れております。切れておりますが、原子力研究所考え方といたしましては、出力保証の問題もさることながら、ただいまいろいろ御心配をいただいておりますように、もし万一の事故が発生することがないようということで、アメリカのアルゴンヌの国立研究所で長らくCP5の炉の運転に従事しておりましたスチーブンスという人に、二月二十日に日本に来ていただきまして、現在もずっといて、CP5の状況をいろいろ見てもらい、忠告をしてもらっているわけでございますが、その忠告等も十分に尊重いたしまして、今月の六日からまず十キロワットに上げていくという計画を立てまして、その後引き続き二百キロまで上げる計画のもとに、昨日まで二百キロ運転をやっております。その結果は、何ら故障の個所が出ておりません。そこで来週に入りましたら五百キロワットまでは上げる。同時に今月末におきましては一千キロワットまで、その結果によりまして上げる。そうしますと当初の研究目的は、第一回の燃料装荷におきましては、一千キロワットまで上げるということにおいてすべての計画がなされておりますから、その研究計画には支障を来たさないであろうということでございまして、その問われわれ原子力局といたしましては、どういう措置をとっているかということでございますが、やはり原子炉等規制法に基づきまして性能検査をやっておりまして、常時立ち会っております。そして月末の一千キロワットを目標としておりますから、一千キロワットの二、三時間運転というまでは検査官は常時立ち会っていく。そういうような関係でございまして、局としては万全の措置をとっておりますから、万一の事故もないということを確信いたしておりますけれども、しかしながら何しろ原子力関係はまだまだ新しい学問の分野でございますから、未知のことが発生しないとも限りません。そのような際には直ちに炉をとめる。そのために八個の放射能を検出する装置がついております。ほかの炉においては二、三個ついているところに、この炉におきましては非常な安全のサイドをとりまして、八個の検出装置をつけているということでございます。  それから御質問の第二点でございますが、この審査部会でございますが——従来は審査部会でございますが、今回審査会ということで法案を御審議願っているわけでございますが、従来の審査部会におきましては、何しろCP5というのは、出発が三十一年でございますから、当時は審査部会がございませんで、審査部会がこれを直接に審査したという事例がございませんけれども、しからば今後審査会は、この法案を御審議いただいて、これができた暁においてどういう関係に立つかと申しますと、やはり御指摘通り原子炉等規制法におきましては、設置の際においてこの審査会審査をいたすのでございまして、その後の関係におきましては、原子力局は、行政当局として常時監督していくという立場にあるわけでございますから、審査会にはこのCP5は、設計上の大きな変更をされるとかいうことがない限りにおきましては、審査の対象とはなり得ないと考えております。従いまして原子力局は、常時監督するという立場において完全なる運転ができるようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  5. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 三月六日に十キロ、きのうきょうに二百キロ、来週中には五百キロ、月末には一千キロに上げていく。そして原子力局はその性能検査検査権を発揮して立ち会っていく。かなり十分な注意をしているから、もし万々一のことがあれば直ちに炉をとめる、こういうお話ですが、そして百パーセントの努力をしておる、こういうお話ですが、そんなことを国民は信用しないわけです。原子力局が、今までコールダーホール型を輸入なさる場合でも、またCP5の注文をなさる、いろいろなものにタッチされる場合でも、全部が全部といって失敗だらけじゃないでしょうか。今度もまた一万キロのものが一キロしか出ないというような失敗が出ないとはだれも保障できない。しかもこのCP5の炉の計算それ自身がどんなに甘かったかは、いろいろな学者によってきちっと証明されているじゃありませんか。そういうたくさんの手落ちをなさっておきながら、また今度も最善の注意をするからよろしい、こういうことで、もし万々が一放射能が漏れて汚染されるようなことがあったら大へんではないだろうか。日本原子力局よりももっと慎重な努力をしているアメリカにおいても、イギリスにおいても、不時の事故というものは相当出ました。原子力局では私たちよりもたくさん例を御存じでしょう。しかも今度は日本の学界の相当な方たちが非常に懸念して、危険じゃないかと言っている以上、単なる行政機関としての原子力局監督をしているというだけで大丈夫ですか。ほんとう監督をしているだけということで大丈夫ですか。しかも、私はあまり原子炉等規制法法律を知りませんが、現在の立ち会っていくというやり方と、あらかじめその実験を行なう場合に、実験を行なうことそれ自体を安全審査会なり安全審査部会でもって審査をして、慎重に検討をした上でやってみて、そして立ち会うという場合とは、相当違うでしょう。ただ立ち会うだけでは、そういうものの保障はできないはずです。どうしても原子力局の今までやっていらしたことに一つもあやまちがない、こうおっしゃるならば、初めにさかのぼってコールダーホール型から、あるいはCP5の輸入から、全部一ぺんずっとお話し合いをしなければ私はいかぬと思いますが、しかしそういうことはできるだけ決算委員会でやってほしいと思いますから、私は省略したわけです。そういう点で私の重点を置いて伺いたいことは、これは大臣に伺いたいのですが、途中から見えてちょっとおわかりにくいかと思いますが、今度法案で御提出になっている安全専門審査会ですね。これは部会と言われたそうですが、これが原子炉等規制法などを見ますと、その設計建設のときについてだけ安全を審査して、認可は、その答申原子力委員会に来て、その答申に基づいて原子力委員会がよろしいという答申をいたしまして許可をしてしまいますと、あとは全部安全審査会ノータッチになってしまうわけです。発電炉ならば、これは民間のものですから通産省の管轄になりますし、研究炉ならば、科学技術庁原子力局監督下に入っていく。すなわち官僚だけが、行政機関だけが、監督していく形になるわけです。一体何のために安全審査会などというようなものをきめておくのか、私は非常に疑問に思わざるを得ないのです。設計建設のときにだけ安全審査会が立ち会う、あとは分かれて通産省へいってしまう、原子力局へいってしまう、そうしてもうノータッチ、こんな安全審査会なら作らない方がいいのじゃないかとさえ私は思うわけです。しかも私は少し横道にそれますけれどもコールダーホール型を作る場合に安全審査部会が何をやったか、ほとんど官僚の思うままの決定をなすったじゃないですか。そういう意味一つ大臣、ここでもう一度お考え直しをいただいて、せっかく安全審査会というものを法定しようとなさるのですから、設計建設のときにも安全審査会にかける、また今度は臨界試験をおやりになるときは、安全審査会許可を得てやる、さらには最高出力を出すという次の段階にいったときでも、また安全審査会にかける、こういう工合に一つ原子炉建設から最後に至るまで、すべて安全審査会監督下にある。監督と言うとおかしいですが、タッチできる範囲に置いておく、こういう形になさることが安全審査会最大限度に活用をし、そしていろいろな学者の知恵をここに投入していける道を開くものじゃないか。原子力問題というものは、もうほかのことと違って、万全の上にも万全の措置をとるのが私は当然だと思うのです。そういう意味で、安全審査会をそういう形に作用させていくように法律をお直しになる意思がないのか。直せるのです。この法案はきょう通してけっこうなんです。ですが、原子炉等規制法などの改正案が出ています。この改正案の中に、安全審査会タッチさせるということを一項目お入れになれば、それでやれるのですから、今私の申し上げるように、誕生から墓場まで原子力については全部安全審査会が関与できるようにできるのですから、そういう形を大臣はおとりになる意思がないのか。決して私は無鉄砲なことを申し上げているつもりはないのです。そしてこのことは、大臣がよくおっしゃっている官僚による独善というものをチェックする意味でも、非常に私はいい方法じゃないだろうか、こういうふうに思いますので、私の建設的な提案として大臣にもう一度この点について御答弁をいただき、よろしいということなら、そういうふうにしていただきたいと思います。
  6. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 ただいま飛鳥田委員お話の中に、コールダーホールあるいはCP5を入れるときのいきさつ等に関連して、官僚が勝手にきめたのだ、多数の学者の入れるのに反対意見があったというお話でございますけれども、これはもちろんどの程度のことをおさしになったのかわかりませんが、若干あとから反対したり、妙な学者もおることは事実であります。しかし日本学者の大部分は、これに賛成してできた、これだけははっきり申しておきたいと思います。それはいつも反対ばかりしているような、何を言っても、右と言えば左、左と言えば右というような、反対屋みたいな学者もおりますが、そういうのはわれわれは問題にしておりません。その他まじめな学者意見は、いつもわれわれはこれを取り上げて、それに耳を傾けてやっておるというのが私ども態度でございます。  それから今の安全審査会設置の場合にだけこれを審査してということですが、常時これをやれるようにというのも一つの御意見だと思いますけれども、御承知のように最初が一番大事でありまして、その設計に従って、これならばやっていける、そしてあと審査してでき上がったならば、ほうり出して何も知らないようでは困る。昔の言葉で言えば職人ですが、職人がこれをやっていくというようなものではなくて、あなたも御承知のように原研にいたしましても、その他にいたしましても、それぞれ一流学者一流技術者がおって、これを安全運転しております。従ってそれ以上のことは必要ないのでははないか。それを常時審査会委員がそれにタッチするというふうな形は、あるいはかえって複雑になっていけないのではないかというような考えもあり、そんなようなわけで、一応最初設置の場合だけには非常に慎重にこれを審査してもらって、そしてあと専門の方々におまかせする。しかしこれは原子力委員会及び原子力局がございまして、そこで常時報告をとるときには検査官がそれに立ち会ってやっておりますから、そこに十分有機的に作用し合って、そして安全を期していくというのが私ども考え方でございます。
  7. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 大臣、ずいぶん乱暴なことをおっしゃる。反対のための反対学者は歯牙にもかけぬとおっしゃるのですが、そういう御態度が結局、大臣の前のことだから、言ってみてもしようがないのですが、CP5の今度の失敗になっておるじゃないですか。AMF社設計がどんなに甘かったかということは、もう今さら説明の要はないでしょう。その甘いものを原子力局も受け付け、何も受け付けてやってしまった。それに対してはっきりとこういう点がおかしいですよと言っておった学者は多いのですよ。反対のための反対なんかしていはしないですよ。みな心配だから言っておるのじゃありませんか。それをそういうふうにお吹きになるのは、御商売だから仕方がありませんが、しかし人を傷つけるようなことはおっしゃらないで下さい。結果があるじゃないですか。だから僕らは心配しておるのです。一万キロワットのつもりで輸入したら一キロワットしか出ない、しかもある部分がだめで、一ぺん送り返して、そのために二十八カ月も建設がおくれたでしょう。一体その責任はだれがとるのですか。私は、それは決算委員会でおやりになるから、あえて申し上げなかったわけです。むしろ私は、ここでできればほんとうに安全な方法をと願って、申し上げておるわけです。そうして初めが大事だとおっしゃるのですが、初めが大事だなんて常識です。この原子力関係に関しては、初めも半ばも終わりも大事なんです。あなたもこの前どこかで御答弁になっておるように、原子力研究は神代の時代だとおっしゃっておる。それほどわからないだらけのところですから、これなら大丈夫だと思って設計し、建設しても、まだまだわからない部分がその途中においてたくさん出てくるのです。そんな科学を無視したようなことをおっしゃらないでいただきたい。ですから、それだけにこそ安全審査会をあらゆる段階タッチさせるようになすったらどうですか。そういうふうにしたって決して損をなさるわけではない。むしろあなたの領域は広まるだけで、かえっていいのじゃないかとさえ思うわけです。  そしてもう一つ私は提案したいのです。と申しますのは、放射線審議会というものが総理府の中にあります。そして科学技術庁のいわゆる原子力委員会とは別建になっております。従って放射線審議会がこれはだめだとおっしゃれば、原子力委員会はどんなに張り切ってもできないわけです。僕はそれと同じくらいのものにしたらどうだろうか。むしろこの安全審査会総理府の中に放射線審議会と同様な形で置いたらどうだろう。そうして原子力の問題はあちらからもチェック、こちらからも検討という形で、あらゆる検討を積み重ねていくという形で行なうべきじゃないだろうかという感じさえするわけです。一体そういうことについて大臣はどうお考えでしょう。急に僕が申し上げてお心持が定まらぬかもしれませんが、一つ御感想などをお聞かせ下さい。
  8. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 飛鳥田さんの言われることももっとものように聞こえますけれども原子力委員会には、審査会のほかにいわゆる原子力委員会というものがありまして、そこであらゆるものを厳重に審査したり協議したり相談にあずかったり、そうして最終的な責任決定はそこでしておるわけなんです。そういうものがございますから、今のあれとは若干違うのではないかと思います。大体今の内閣にある放射線審議会とはちょっと性格が違うのではないか。その点も一つ御了解願いたいと思います。
  9. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 性格の違うことは僕も百も承知です。あらゆる観点からチェックなさるには、そういう独立機関になさる方が便利じゃないかということを私は申し上げた、そうして効率的じゃないかということを申し上げたのです。  それでは事務当局に伺いたいと思いますが、こういう関係について外国は一体どうなっているでしょう。たとえばアメリカでもいろいろなのが動いています。ピッカーとかドレスデンとかシッピングポートとか、いろいろなところの原子炉が動いておりますが、その一つの例をとって、申請から現実にフル・パワーで動き出すまでの、原子力委員会同様アメリカにも安全諮問委員会というのがあるそうです。そういう安全諮問委員会その他の行政機関が、どういうふうにタッチしていったかをごく簡単に年表的に一つお話し下さい。
  10. 杠文吉

    杠政府委員 アメリカドレスデン等、すべてアメリカの制度としては同じでございますが、御承知通り日本原子力委員会に相当するものが、AECと略称しておりますが、アメリカ原子力委員会というのがございまして、その下部機構としてただいまおあげになりましたような安全審査諮問委員会がございます。そこで審議しておるという状況でございまして、あくまでも最終責任としてはAECにございます。たとえば今回不幸にして三人の事故死者を出したところのSL1炉の事故のごときも、AECが直接に調査等に当たっております。
  11. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 原子力局の方は案外知らないですね。最近原子力委員会下部機構でなくなったはずなんです。私の伺いたいのは、安全審査委員会がその後原子力委員会からはずれて外部に出たはずです。その出たか出ないかはけっこうです。一つのものが設計から終わりに至るまで、あるいは設計建設についてだけ安全諮問委員会がチェックしているのか、その後の臨界試験、フル・パワーで運転するとき、そういうすべての段階にチェックを加えているのか、法律的にですよ。そういうことを一つ教えていただきたい。もし今すぐあれでなければ、関係条文等をそろえて資料として私たち提出していただいてもけっこうです。
  12. 杠文吉

    杠政府委員 ただいま御答弁申し上げましたけれども、資料によって差し上げたいと思いますが、私の方の説明員とし燃料課長がここにおりますけれども、つい最近までアメリカの方へ原子力のアタッシェとして行っておりまして、ごく最近の新知識として私どもはやはりサブ・コミッティ、すなわち下部機構として承知いたしております。詳細については説明員から答えてもよろしゅうございますけれども、その法令等のお尋ねでございますから、資料をもって後日出したいと思うのでございますが、やはりフル・パワーの運転等はAECがやっているということで、ございます。
  13. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 日本ではフル・パワーについてはAEC、すなわち原子力委員会タッチしないでしょう。
  14. 杠文吉

    杠政府委員 直接にタッチしているということはございませんで、やはり立て方が、アメリカ原子力委員会は独立の機関でございますから、日本においてはこれはいろいろ解釈の違いはございますが、やはり諮問委員会とでも申しますか、そういうような性格のものでございますから、その違いがそこにはっきり現われているのではなかろうか。AECというのは委員会でありますが、同時にアメリカの行政委員会としての性格を持っております。
  15. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 そこで問題点が出てきたように思うわけです。日本原子力委員会は諮問機関ですから、大臣なり何なりから諮問がない限り、現実には動き出せないわけです。安全審査会も、その諮問機関である原子力委員会から諮問をされる機関ですから、これもまた当然諮問がない限り動けないわけです。そして必ず法律的に諮問をしなければならないという点は、設計建設の場合だけ法律できめられているわけです。従ってそれ以後は全部野放しで原子力局に行ってしまう、発電炉ならば通産省に行ってしまう、こういう形で現実にはせっかく学者をお集めになり、衆知を学識経験に聞こうとしたことがみんなはずれていってしまうわけですよ。そしてそれは原子力局通産省の方は、自分の権限が多くなるのですからお喜びになるのはあたりまえでしょうが、しかし原子力という問題を扱うのに一体妥当だろうかという疑問を、みんな持たないわけにはいかないのじゃないでしょうか。そういう意味アメリカの場合を見ますと、まあ最新の知識をお持ちになっていらっしゃる方には私も頭を下げざるを得ませんけれども、何か原子力委員会が行政委員会として活動をし、その中に今までは安全諮問委員会があったのだが、これに保健局等が加わって放射能安全審議会というものができ、それは原子力委員会の外部に出た、そしてほぼ対等の力でチェックし合うような形になっているそうです。そういう形がアメリカでも行なわれ、そして現実にアメリカAEC日本原子力委員会よりもずっと強力ですから、日本原子力局よりもずっと断固たる意思を表示せられますから、すでにもうここのところ三、四件申請がリジェクトされた例があるそうです。それだけの権威を持ってやっておる。ところが日本は財閥が、いわゆるメーカーが会社を作って、原子力第一グループとか第三グループとかいう形で押してくればみんな押されっぱなしになってしまって、それがコールダーホール型、CP5型という形で醜態の連続なんです。私は別にそれを責める気持はありません。今後そういうことのないように、また同時に最も安全にするようにという意味で、私は安全審査会性格を変えて、単なる諮問機関である原子力委員会のまたその諮問機関であるというような形でなしに、これを放射線審議会と同様な立場独立機関とし、そしてそれの意見は聞かざるを得ないような形にすべきだろうし、それができないならば諮問すべき事項を幾つかにきちっときめて、設計からフル・パワーで活躍するまでの各重要段階に、すべて安全審査会を関与せしめるということを考えていくことが本命じゃないか、こう私は思うのですが、そういうことについて何か具体的に、こういうことであるから大丈夫だ、そんな必要はないのだという御説明がなされたように伺いません。何かもっと僕らは安心できるようにきちっとお話をいただきたいと思います。同じ質問を何べんも繰り返して恐縮ですが、これは原子力というような重要な問題であるだけに、私はもっときちっとした根拠を得ておきたいと思います。
  16. 杠文吉

    杠政府委員 ただいま御指摘になりましたアメリカAECの例は、すなわちわが放射線審議会に当たるような、フォールアウト、すなわち放射物が下降してくるものについて主として審議をやっているということでございますが、わが国におきましては、それは放射線審議会で取り扱ってもらっております。  それと同時に、原子炉の安全に関しましては、先ほど詳しく御説明申し上げませんではなはだ恐縮ではございましたが、まず保安規定というものを作っていただく。原子炉の利用者において作っていただくその保安規定を原子力局においては十分に審議する。それによって具体的計画が、安全の面からの保安規定の中に表われてくるその計画、スケジュール通りにいくかいかないかというようなことが、検査官の重要な指針になっておるわけでございます。従って保安規定が十分にいっているならば、その通り運転がなされていくならば、安全であるということは言い得るのではなかろうかと考えておるわけでございます。
  17. 島村武久

    島村政府委員 以前のお話も出たものでありますから、私からも、趣旨は原子力局長と全く同じでございますけれども、補足して説明させていただきたいと思います。  じっと拝聴いたしておりまして、私自身も飛鳥田委員のおっしゃるお話はよくわかるわけでございます。つまり原子力の推進の方を受け持たせる役割のところとチェックするところは、分けた方がいいのではないかという御議論だろうと思うのであります。これは原子力委員会がそもそも生まれますときにももちろんそういう議論もありましたし、その後も、私どもといたしましては諸外国の傾向等ともかんがみまして、絶えず念頭には置いておる問題でございますが、日本原子力委員会の場合には、むしろ国民的な輿望をにないまして、単に推進することにだけ一生懸命になるのではなくて、そういうような放射線の問題あるいは原子炉の安全等も十分にまかせ得るだけの原子力委員会にしたい、こういうのが当時与党も野党の方々も一致した御見解であったと思います。私どももそういう意味での原子力委員会のあり方というものに、今なお大いに期待を寄せておるわけであります。つまり防護の面、保安の面につきましても十分な考慮を払った上で、原子力の推進をやるというような機構が最も望ましいということの考えは、今もって変えていないわけであります。ただ今後の推移によりまして、再びその問題を検討しなければならぬことがあるいはあるかもしれませんけれども、現在のところはあわせ考えて推進するというような行き方の方がやはりよろしかろうというふうな見解を持っておるわけでございます。  なお、原子力委員会行政機関といたしましての科学技術庁原子力局との問題でございますが、実は飛鳥田先生はすべてを御存じの上でいろいろおっしゃっていらっしゃるだろうと私は思うものでございますから、よけいなことを申すようでございますけれども法律によりますと、ただいま原子力局長が申しました保安規定というようなものも、行政府としての科学技術庁原子力局だけで認可できるわけでございます。それから設計等に関します限りにおきましては、これは原子力委員会内閣総理大臣から諮問いたしまして、その意見に従っているわけであります。後の行為、つまり行政府たる原子力局がチェックいたしますのは、その通り行なわれているかどうかということを確認するような検査を受け持っているわけでございますので、私は精神といたしましては、原子力委員会あるいは今度提案いたしております審査会というものをないがしろにして、原子力局が一方で行政行為をやるという関係には立っておらないことを御認識いただきたいと思います。  なおこれも御質問にないことでございますので申し上げるのもどうかと思うのでございますけれども、実は日本原子力研究所につきましては、これは研究を行なう原子炉についてもいろいろやってみるということが使命でございまして、先ほど来お話の一般的に動力炉を入れるとか、動力炉の審査の場合と違うものでございますから、原子力研究所に関する限りは、原子炉等規制法によります設置許可申請というのは要らない建前になっているわけでございます。しかしながら科学技術庁長官と申しますか、内閣総理大臣といたしましても、あるいは原子力委員会側の意見といたしましても、現在、飛鳥田委員指摘になりましたような、一面において国民的な不安というものもあるものでございますから、法律上は義務づけられておりませんけれども、その後はずっと内閣総理大臣からそのようなこと、つまり法律で義務づけられていないことでも、委員会に諮問するというような形をとっているわけでございます。それからもし、一度審査をいたしまして許可になりましたものでも、いろいろ御指摘がございましたようなことがございまして、かりに直すというようなことになりますれば、これは当然変更ということになりますので、あらためてその部分に関しましては少なくとも手続のやり直しが行なわれます。再び安全審査会のお世話になるという関係に立っております。原子力局が実施いたしますのはあくまでそれの確認の仕事、その通りに工事が行なわれているかどうかというような、純行政面の仕事を担当いたします。すべて御存じの上でのお話だと思いますので、申し上げる必要もないと思いますが、その点は御了解いただきたいと考えているわけでございます。
  18. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 今のお話、よくわかりますが、今のお話の中でも何かしろうとの私たちがだまされていくような感じが、正直するわけです。と思しますのは、言葉じりをとらえるわけでありませんが、原子力局検査というものは、一度安全審査会許可になった設計通りにやっていくかどうかを検査するだけだ、こうおっしゃるわけです。そうすると不測の事態が生じてくる可能性のある、そういう問題については検査もできないじゃないですか。臨界実験をやってみた、検査通りやっている。今度はフル・パワーで動かしてみよう、許可通りにやるに違いない。だがしかし不測の事態が起こる可能性があるという場合に、今度は検査の対象にならないじゃないですか。そういう意味だからこそ私は、そのつどつど安全審査会のチェックを必要とすると考えざるを得ないし、もう一つ重大なことは、設計変更等については初めから出直し安全審査会の対象になる、こうおっしゃるのですが、その上に字が御説明に抜けているはずです。重要なという字が抜けている。重要な設計変更に関しては出し直しなさいということです。ところが重要であるか重要でないかを判断するのは原子力局じゃありませんか。それならばかなり、重要であるかないかということについて論議があるはずです。しろうとの私にとっては大したことでない、そんなネジ一本くらいいいじゃないかと思われることでも、専門家から見ればこのネジこそ重要であるというものがあるかもしれません。また原子力局は業者に押されて、はなはだ無礼な言葉ですが、いいじゃないかと、こう思っても、池田さんのおっしゃる反対せんがための反対学者にとっては、非常にこれが重要なものであるかもしれない。そして現実に重要な設計変更だということでなしに、通してしまった結果、ほんとうの大事故が起きたら一体どうなるのですか。私はもうこういう言葉のやりとりだとかなんとかということで、この国会を通したり引っ込めたりするのではなしに、ほんとうに安全な方法原子力の平和利用のために、皆さんと一緒になって考えていこう。そしてすっきり、変な財閥とからまないものを作っていくということが、皆さんや私たちの任務だろうと思うのです。そういう意味で、今のお話の中でも、重要か重要でないかの判断はどこでする、こういうことを考えてみますと、率直に言ってこの条文は空文です。ですからこそ、私は一つ一つ段階において、安全審査会がチェックすべきじゃないかと思うのです。そう私が申し上げる根拠には、私は矢木先生に、前に水戸の那河湊の対地爆撃基地の問題のときに、テレビの対談でお目にかかったことがあります。そのとき矢木先生が何げなくお漏らしになった安全審査部会というものは、設計建設のときについてだけ責任を負えばいいので、それ以後のことは私たち責任ではありませんとおっしゃった。そのときに私は、矢木先生が悪いという意味ではありませんが、制度として何か寒けがいたしました。国民全体の非常に重要な問題について、そんなルーズなチェックの仕方でいいのだろうかという、そういう疑問が抜けないわけです。今皆さん方の御説明を伺っていけばいくほど、重要なという言葉をわざと抜かして御説明になったり、たまたま私が知っているからいいようなものの、ああさようでございますかと言えば一巻のおしまいです。そうして何十万の国民は放射能の被害を受けるかもしれない、こういうことになるわけですから、この点について、私は別にもうこれ以上くどくしろしろと言いません。しかし安全審査会は、法律的には設計建設のときにだけしかタッチできなくとも、これは運用によって、あらゆる段階タッチをして審査していただくように、あなた方の行政的なやり方でできるはずです。これは非常に妥協した言い方で、正直言うと私としてはしゃくにさわるのですが、しかしともかくそういう形ででも、万全の措置をとっていただくようにお願いしたい。さっきの御説明で、諸外国の例に照らしてとおっしゃったのですが、諸外国の例をぜひ一つ出して下さい。アメリカでもイギリスでもフランスでも、この問題は一つ一つ段階にチェックをちゃんとできるようにしてあるはずです。私の図書館での調べ方が足りないかもしれませんが、私はそう了承いたしております。ぜひ一つ出してみて下さい。そしてあなた方が諸外国の関係をもう一度見直すことによって、何か得るところをおとりになれば、私としてはこの質問はけっこうです。
  19. 島村武久

    島村政府委員 私の申し上げました点で、言葉が足りませんことはおわびいたします。ただ私が申し上げたかったのは、いわゆる法律の面で義務づけられていないようなことでも、科学技術庁原子力局といたしましては、しょっちゅう原子力委員会、あるいはその下部機構であります、従来でありましたら審査部会というようなところと連絡をとりまして、万一のことがないようにという気持で、最善の努力を払っておるということを申し上げたかったわけでございますので、その点は一つ御了承をいただきたいと思います。
  20. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 やりとりをするつもりは全然ありませんが、民主主義というのは、やはり個人の善意に依拠せずして、制度としての善意に依拠していくものだと私は思います。そういうお気持で一生懸命やっていただいておることには感謝をいたします。しかしあなた方が一生原子力局の係にいらつしゃるはずはありません。どんどんお偉くなっていくに違いありません。その次にどんな悪人がくるかもわからない。しかしなおかつきちっと担保せられていくところに民主主義というのは成立するわけですから、ある意味ではそういう制度をきちっとすることに、もう少し熱意を持っていただけないだろうか。おれは一生懸命やっているからいいじゃないかということなら、何も民主主義など要らぬのです。憲法など要らぬのです。私はそういう意味で苦情を申し上げるつもりではありませんが、制度としてもきちっと処理をなすっていくということ、こういうことをぜひやっていただきたいと思います。それでは時間もかかりますから、次の科学技術会議の問題について伺いたいと思います。科学技術会議の運用について私たちが拝見をしますと、一番ふに落ちないのは、この科学技術会議の事務局を科学技術庁計画局で担当していらっしゃる、こういう点です。なぜ科学技術会議専門の事務局を独立で作るという形をおやりにならないのでしょうか。私たちもいろいろな労働運動をやりましたし、いろいろな大衆運動をやります場合に、そのカンパニア組織の議長をとるとか副議長をとるとかいうことよりも、実は事務局にだれがすわるかということをかなり重要視いたします。すなわち事務局は大体原案を提出していきますから、事務局というものは非常に大事なものだと私どもは思っております。ところがこの科学技術会議の事務局が計画局に置かれておるということでは、この科学技術会議の独立の行動というものについて、いささか疑念を差しはさまざるを得ないのじゃないかという感じがいたします。なぜ独立の事務局を構成しないのか、この点について劈頭大臣一つ伺いたいと思います。
  21. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 飛鳥田委員の御説は非常にごもっともな御意見だと思います。そういうふうなことにいくことが最も望ましいことだと思います。しかし今までの、これのできたときの経緯などから見ましても、今急にそこまで持っていくということは実際上困難なようなわけであります。そこでおそらく飛鳥田委員は事務局が計画局にあるから、従ってあそこから出てくるものはいろいろな制約を受けるというようなことをおっしゃりたいのだろうと推測をするのであります。それは私も同感でありまして、ことに今度出ました第一号答申案なんかを見ましても、各役所の制約を受けまして、言いたいこともはっきり言っていないというところを私は気がついておる。そこで私はこの問の科学技術会議の席上で、これからああいうものを作るときには、よその役所の意見を絶対取り入れちゃいかぬ、さようなものは絶対取り入れるものじゃない、独自の立場一つすっきりしたものを出してみろ、こういうふうにすっきりした態度で出たいものである。それには今あなたがおっしゃったように、事務局も独立していけばそれが可能だ、そうでないとそれができぬぞという御心配のためにおっしゃっただろうと思いますが、そういうつもりで私は運営していきたいと思います。
  22. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう大臣に先手を打たれてみんな私の言いたいことを言われてしまったのですが、ともかく同時にまた科学技術会議の幹事も関係行政機関の職員が全部握る、こういうことになっておるはずです。この点も事務局の問題と同様な意味を持っていはしないだろうか、私はこういうことを考えるわけです。たとえばこの科学技術会議の分科会に出ていらっしゃる専門委員の先生方に伺ったりいたしますと、第一専門委員の人選それ自身が事務局から出てくる。すなわち日本学術会議というちゃんとした会議がありながら、その中から官僚の方々が自分の思うがままの先生方をひっこ抜くという弊害が出ている。また会議に行っても、その日に議題を配付されて、勝手なことを言って帰ってくるよりしようがない、こういうようなことをおっしゃる方もあるわけです。なるほど報告書を見ますと、各先生方の独自の意見がばらばら木に竹を継いだようにちりばめられてはおりますが、総合的な討論として確定したようには私たちしろうとが見ても見えないわけです。そういうようないろいろな弊害を、この事務局を計画局に置くということ、さらにはまた幹事を関係行政機関の職員が握っていくということ、そういうことの中に発見していいのじゃないかと思うのです。この点は大臣、私の意見に賛成の模様ですから、至急是正をしていただきたいと思います。よその官庁の意見を絶対聞いてはいかぬなんというのは、私はあまり賛成いたしません。一つぜひこの事務局問題と幹事問題だけはお改めいただくようにお願いしたいと思います。  そこでそれの非常に大きな弊害として現われているもの、そういうものを実はこれを読んでいるうちに感じたわけです。たとえば一号答申を拝見いたしますと、「三、方策策定の構想と課題」という項目があります。この中に「十年間における社会経済活動と密接な関連のあるものを所得倍増経済計画達成のためのうらづけとして設定し、」こう書いてあります。すなわちこの一号答申には、この基礎をなすものとして池田さんが発表をなすった所得倍増計画というものを採用しているわけです。所得倍増計画に基礎を置いて書いてあります。ですが、この一号答申が各分科会の意見を集約なすったのは、昭和三十五年八月三十日、ここで内容が確定されているわけです。この八月三十日というのは池田総理大臣が登場して何日目ですか。そして池田総理大臣が所得倍増ということを内閣の政策として発表なすってから何日目ですか。おそらく一週間か十日しかたっていないですよ。一週間か十日しかたっていないものが、直ちに十年後を目標とする科学技術振興の総合基本方策の基本にいつの問にか入ってきてしまうということは、一体どういうことでしょうか。なるほどこういうふうに伺いますと、きっとあなた方は、経済企画庁に経済規模倍増計画というのがあった、こうおっしゃるでしょう。ですが、企画庁が内々に進めてきた経済規模倍増計画の基本構想というものは、まだオーソライズされていないわけです。これは企画庁の内部企画にすぎない。総理大臣によってはっきり打ち出された国の政策ではないのです。従ってそれがこの科学技術会議答申の基本になるということは、あり得ないでしょう。従って経済企画庁と連絡をとりながら、経済規模倍増計画に基礎を置いたのだという御説明は、何ら説明になりませんよ。それはあらかじめお断わりしておきます。しかも経済規模倍増という言葉と、所得倍増という言葉は、経済学的には全然異質のものです。範囲が違うはずです。この点もきちっとお考えに入れて、なぜ八月三十日にもう分科会の報告が全部集まって実質的には内容が確定したものが、たった一週間か十日のうちに池田さんの政策を取り入れて、十年間の基本政策をお引きになったのか、それほどそそっかしい作業が行なわれていいのか、こういうことを一つ伺いたいと思います。しかし私は別にあなたを責めているわけではありませんよ。と申しますことは、そういうことは何もかも事務局をあなた方計画局が握っているというところに、そういうすりかえの手品があるのじゃないかと思いますので、その点に重点を置いて伺っているのです。
  23. 久田太郎

    ○久田政府委員 私から事務的な経過を御報告申し上げてお答えしたいと思います。科学技術会議にこの第一号諮問が出ましたときに、当初答申の時期として予定いたしましたのは、大体昭和三十五年六月を目標にしておりまして、そのころに答申をすれば、いわゆる十年を目標とする場合の第一年度として、三十六年度予算を各省でまず要求します段階に、事務的に十分間に合うであろうというつもりで、作業を進めて参ったわけでございます。ただいま御指摘のありましたように、経済企画庁におきましてまず経済の成長に関する二十年の展望作業という作業が行なわれまして、続いて経済の十年計画についての作業が進められておったわけでございます。それが事務的に若干おくれて参りまして、私どもの方の審議の内容としまして、できるだけこの経済計画の裏づけになるような技術の発展あるいは研究投資、人材養成等の問題を盛り込むためには、そちらと作業のテンポを合わせなければならないというので、若干その調整をいたしまして、飛鳥田委員からすでにお話のありましたように、事務的に十分連絡をしながら各分科会で問題ごとに御審議をお願いしたわけでございます。それで八月末にこの結果を一応分科会として取りまとめまして発表して、各方面の方々の御意見も聴取し、引き続いて各省の意見の調整等を行なう段階で、分科会の審議は一応報告として結果は出ておりましたが、分科会の主査会議もたびたび開きまして、各分科会の間の意見の調整等もございましたので、それらを合わせ、なお所得倍増計画との関連を密接に保ちながら、九月一ばいかかりまして最後の意見の取りまとめをしたわけでございます。その意味では事務的に十分所得倍増計画の方と連絡を密にしておりますので、人材養成面における、たとえば科学技術者の不足数であるとか、研究投資の目標の額であるとか、あるいは必要とする技術の分野であるとか、そういった点にりきまして科学技術会議答申の内容、一方所得倍増計画におけるそれらの点とは十分連絡を密にして、意見の統一をはかったわけでございます。
  24. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 大臣は参議院の予算の方で早く来てくれと言っておられるそうですが、私も別にそうねばるつもりはないのです。長くなるのは御答弁の方に責任があるのではないかという気がするのです。みんな問題をずらして答弁なさるからで、私は端的にこういうことを伺いたかったのです。所得倍増計画池田総理が出てから初めてオーソライズされた計画、こういうことです。ところが二年も作業なすった会議の結果が、たった二カ月でもってころっとひっくり返って、それを挿入していくということは不見識じゃないかということを伺いたかったのです。
  25. 久田太郎

    ○久田政府委員 ただいま御指摘の二カ月間でころっと変わったというような、事態は全然ございません。
  26. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 しかもこの所得倍増計画というものは、去年の秋だったと思いますが、大卒官房長官の説明によりますと、これは実施計画ではなくて、目標であると言っておられるのです。そうすると実施計画でなく、単なる目標にすぎないものを、たった二カ月の間にすりかえるということができますか。もっと私は科学的な判断をなさる場所だと実は思っておったわけです。ところが非科学的じゃないでしょうか。ことに、あとで私申し上げたかったのですが、この科学会議答申の中では、人文科学との関連というものがほとんどないわけです。いわゆる社会科学との関連において事が取り上げられるという点は一つもないわけです。だからこそ実施計画ではなく目標だ、淡い夢だ、こういう所得倍増計画にころっとたった二月で終わらせるということが出てくるわけです。こんなことで科学振興などという答申が出ても、私たちはそんなに賛成できない。それにまた二人委員をお加えになっても、どれだけのプラスになるだろうかという、はなはだ無礼な考え方を持たないわけにいかないわけです。そういうことについて一番基本的なものは、科学技術会議の事務局をきちっとしないからだ。そして独自な事務局を持って、そこに出てこられた先生方がよろしいと思われる事務運営をやり、よろしいと思われる先生方をお集めになってやらないからだ、こういうふうに私は考えないわけにいかない。  それでは所得倍増計画についてもう少し伺ってみたいと思いますが、所得倍増計画の中で、予算委員会でも明らかになりましたが、池田総理は農業経済の一年間の成長率を四・四%だと言いました。ところが淡谷さんに問い詰められると、それを三・三%に切り下げられた。バナナのたたき売りみたいですね。ところがそれに対して経済企画庁はまた二・八%とたしかおっしゃったと思います。こういうふうに一年間の経済成長でさえ、農業部門といえば日本の相当重要部門でしょう。まさか農業が軽々に捨て去っていいとお考えになる方はどなたもないでしょう。その重要部門においてさえかくのごとく食い違いがある所得倍増計画などというものを、十年の期間を置いて科学を振興していこうとするものの基本に置いてよろしゅうございますか。そんなあやふやなものにあなた方は満足していらっしゃるのですか。こういうことを一つ伺ってみたいと思います。
  27. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 今度の十年計画の中で、私が横から見まして、何といっても農業政策の面には非常に弱体だと思いまして、私は非常に不安を持っております。そこでこの不安をいかにして取り除くかということについて、私も実は若干苦慮いたしておる問題もございます。これは農林大臣の任務に関し、またひいては文部大臣にも関係する問題で、私から今ここであまり発言したくはございません。その点は御了承願いたいと思います。
  28. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 すなわち今の大臣お話でもわかりますように、単なる夢にしかすぎない、目標にしかすぎないと大平官房長官がはっきり言っておられる十年計画を基盤にして、科学振興をおやりになる。諸外国との関連から考えてみて、日本に本年後半に景気後退が起こるだろうという議論はかなり大勢を占めています。池田総理の技術でこれを繰り延べていくことができるかできないかという問題は、これからの問題でしょうが、出てきます。そうなれば所得倍増計画などというものも、ある程度基本的に考え直さなければならないことも明らかです。そういうものを科学振興の十年間のコースの基礎に入れるというのはいいのですか。私の言いたいのは、結局科学会議に参加をしていらっしゃる先生方だけではなしに、事務局を握っているあなた方が官僚的な作文をなさるからだということを私は言いたいのです。そういう作文をなさらずに、あなた方はもっと真剣に科学技術会議の真の知識を引き出していただいて、よいものを作るという気持になっていただかない限り、お二人ふやそうと、三人ふやそうと、五人ふやそうと、大した違いはありませんよ。ですから私は形式的にお二人ふやすということに別に反対はありません。ですが、それを運営していく基本の問題を制度としてきちっとしておくということ、運営していくにあたっての皆さん方の心がまえ、そういうものをはっきりしていただかないと、うまくないのじゃないかという気がするわけですよ。もう田口先生もお待ちですから、僕だけのことを伺っておっても恐縮ですし、ほかにたくさん聞きたいことがあるのですが、省略します。  それで最後に、今度の報告というものを拝見しておりますと、あくまでも邪推かもしれませんが、外国技術の導入ということがどうも頭にあるのではないか。外国ですでにでき上がったCP5を導入する、コールダーホール型を導入するというような形、あるいは高分子学界のいろいろな発見、許可認可、特許等を入れるということが頭に来てしまって、そういうものをどうやって受け入れていくか、そのための技術者をどう養成するかという考え方がどうも基本にあるような気がします。なぜならば、この報告の中には、基礎科学の研究は重要だということが二度繰り返して書いてあるだけです。基礎科学の重要性をただ文章として書いてあるだけで、それに対する具体的な対策というものは一つも書いてないじゃないですか。基礎科学ほんとうに育成していくということを、十年計画の中でじっくりおやりにならない限り、日本独自なものはできません。どうしたって外国からいろいろな特許を買ったり、いろいろな機械を輸入したりして、それをどうやって運転していくかというテクニシャンを養成するだけに陥ってしまうのはあたりまえでしょう。どうでしょうか、基礎科学をどういうふうに振興していくかということを具体的にお示しになっているところがあれば、お読み聞かせいただきたいと思います。
  29. 久田太郎

    ○久田政府委員 基礎科学の振興につきましては、科学技術会議がすでに第二号答申として、三十五年度における科学技術振興の重点方策という答申を出しましたときにも、その第一に掲げておるわけでございますが、第一号答申の十年後を目標とする科学技術振興の総合的基本方策につきましては、特にその方策を策定するための重要観点といたしまして、第四章の第一節に、基礎科学の振興というものをあげまして、わが国における今後の科学技術振興の基本的な方向として、まず基礎科学の振興が基盤として大切であろうということをうたっておるわけでございます。
  30. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 それを僕も実は拝見したのです。ところがなるほど二十行か三十行書いてありますが、大事だ大事だと書いてあるだけで、具体的な方策は何も書いてないのです。そうではなくて、どうやって基礎科学を振興させていくかという具体的な問題に入った提案がなされない限り、私はだめじゃないかと思うのです。たとえば二号答申でも——私はよくわかりませんが、物性論というような問題が全然抜けているじゃないですか。僕らしろうとでさえ、ソビエトがロケットを打ち上げた。その打ち上げたものが異常な高熱に耐えるためには、どういう物質の研究が必要かということくらいは感じるわけですよ。これがいろいろなものの基本になることもわかるわけです。今新しいオートメーションとかなんとかいう最新の技術段階に入って、物性論を抜きにして問題はできはしない。これは学界の定説だろうと思います。そういうものがずぼっと抜けておって、そうして片一方の第一号答申を見たって、大事だ大事だと書いてあるだけで、一体どれだけの具体策があるのか。「科学技術の教育および研究のための施設設備は大学および各省庁関係研究機関のほとんどすべてを通じていちじるしく陳腐化しているものが多く、近代的科学技術の教育ないし研究の場として十分とはいえない。」と書いてあるだけです。そうして「なお、教育および研究要員の充足および国際学術交流の促進にも留意すべきである。」こう書いてあるだけで、そんなことはしろうとの僕だって言えますよ。ですから何かそういうふうに基礎科学を抜いておるという点に問題がありはしないか。  そこで問題を発展させますが、科学技術会議というあなた方の官庁の中にある機関を別に作ることによって、日本のあらゆる学者が結集している日本学術会議を無視しようとしているのではないか。日本学術会議の中に結集している人々、さっき池田大臣の言われたように反対せんがために反対する方もおられます。しかしそういうすべての学問的な権威を結集する、そこからあなた方のエネルギーを吸い上げてくる努力をしないから、こういう作文になってしまうのです。こう私は思うわけです。ですから会議の議員をお二人おふやしになるということよりも、もっともっと日本学術会議に積極的に諮問をし、そうして討論の場を作っていく。そして日本全体の学者の総合的な討論の結果、学術振興の方策が生まれてくるという形をおとりになる御意思はないのか。なるほど科学技術会議の中にも兼重先生が入られて、そうして連絡部会はできました。しかし連絡部会というのは向こうのトップ・クラスとこっちのトップ・クラスが話をするだけで、学術会議の一般会員にまでは至らないのですよ。それを連絡がついておるという言いわけにお使いになろうとしたってだめなんです。いろいろな学術雑誌などもできる限り私、目次ぐらいは拾ってみました。すると大部分がこの十年計画に対する不満ばかりじゃありませんか。これをべたほめしている学者がありましたら教えて下さい。これも私読んでみたいと思います。そういうところに問題があるような気がします。どうでしょうか。
  31. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 学術会議の構成その他についてのいろいろな御意見でございますが、なるほどこれは理想的にいえばいろいろな形があると思います。しかし今最後に飛鳥田さんがおっしゃった学術会議との関連ということにつきましては、これは最初から非常に留意いたしまして、学術会議の会長及び副会長その他十六名の方、計十九名の方が参加されておりまして、常にこれは一緒に審議をしたりしております。従って学術会議との関係においては、私はこれ以上はそんなに数ばかりふやしたって仕方がないので、学術会議のいろいろな面の雑誌を私読んでおりませんから、どんなことが書いてあるか知りませんけれども、えてしてそういう方面の雑誌や何かになってくると、妙な説が出てくる場合もあるし、大いに尊敬すべき説もあるし、なかなかそれがおっしゃる通りむずかしい。ただ私どもが留意をしなければならぬことは、学術会議というものを、学術会議の内容がどういうものかよくわからないのでありますが、どういうような運営の仕方でどうなっているのか私よくわかりませんが、少なくとも学術会議というものを大いに尊重して、その大多数の方に参加を願っておるということだけははっきりしておりますので、従って今飛鳥田委員が御心配になるような、これをしいて参加いたさせないとかなんとかいったような考え方はない。むしろ逆に大いに参加してもらって、御協力を願っておるというのが実情でございます。
  32. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 学術会議を大いに尊重なさるというお話です。けっこうです。しかし尊重の仕方があるのですよ。ただトップ・クラスを連絡部会のような形で結びつけるだけではだめなんです。もっと学術会議の中にいらっしゃる大ぜいの学者意見を、総合的に会議へ吸い上げてくる努力が必要です。何もそれは専門委員会委員として参加させて下さいと私は申し上げているのではありません。学術会議に諮問なすったらいいのですよ。そうしたら学術会議全体が自主的に討論をなさって出してくるわけです。そういう方法を今後どしどしおとりになる意思があるかどうかが一つ。  それからもう一つは、今度の第一号答申に対して、学術会議では経済部会の小椋廣勝さんを中心にして検討を続けておられるそうです。そうして大体三月下旬には結論が出るだろうと言われております。そういう結論が出ましたら、そういう結論を十分に一つ尊重なさる御意思があるかどうか。またどこかで遠ぼえをしているなどという形で、軽く吹き飛ばしてしまわないようにお願いしたいと思うのですが、これは第二点です。いかがでしょうか。
  33. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 これは飛鳥田委員のおっしゃるように尊重するという意味に立って検討したいと思います。
  34. 久田太郎

    ○久田政府委員 先ほど飛鳥田委員のおっしゃったことに、事務的に二点ばかりちょっと補足説明さしていただきたいと思いますが、一つは基礎科学の振興の問題は二、三十行しか書いてないという御意見でございますが、実はこの答申の構成につきましては運営会議でいろいろ御議論いただきまして、結局その目標、人材、研究、情報、制度、そういう五つの分け方で検討しよう、その場合の共通的な重要観点としてただいま申し上げましたような基礎科学の振興、新領域の開拓、新技術の創出その他の問題を共通的基礎的観点として取り入れながら審議していこう、こういうことで御審議いただいたわけです。従ってこの答申をごらんになっていただきましても、たとえば人材のところにしましても、あるいは研究の部門にしましても、非常に大学関係、特に大学院であるとか、その他学部付置研究所等の、あるいは研究、人材というような点も特に重点を置いて御審議いただいておるわけでございます。これらはすべて基礎科学の振興に関連した問題でございます。
  35. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 もう私の申し上げたいことの意思は、御答弁のいかんにかかわらず御了解いただけたろうと思いますから、最後に一つ池田長官は原子力の長期計画について、二十年後は七百万ないしは九百五十万キロワットの原子力発電が実現できるようにしたい、こうおっしゃっているわけです。そうしてほんとうにできるかと言って堂森君が伺いましたら、できるかできないかは実際だれもわからない、まだ神代の時代だ、こういうふうに言い放っておられるわけです。しかしこの七百万ないし九百五十万というのは、確かに原子力長期計画の中に数字としてあがっていますから、一応原子力委員会等のかなり厳密な討論を経られたものだろうと思いますが、その厳密な討論を経られたものを、長官ができるかできないかわからない、まだ神代の時代だ。堂森さんがそれでは計画でなくて当てずっぽうではないかと言いますと、あなたは当てずっぽうと言えば言えるがと、こうおっしゃっています。原子力委員会その他の方々がきちっと策定なすったのだろうと思います。それを長官が当てずっぽうと言えば言えるなどというふうに御説明になっていいものかどうか。この辺ちょっと私疑問を感じましたので、伺いたいことが一つ。  それからもう一つは、そういうふうに原子力委員会その他が中心になってでき上がる原子力長期計画ですね。この計画をばかになさりながら、しかしなめながら現実にはこの計画が行なわれていくだろうと思います。ところがこんな計画を行なっていくような世界情勢にあるかどうか。私も今度の問題、初めてロビンソン報告というものを読んでみたわけです。きっと長官もお読みになったろうと思いますが、それで見ますと、世界じゅうでどこの国でもみな原子力発電というもののスピードをスロー・ダウンしているわけです。それで現在の問題ではない。今は研究、実験段階であって、実践の段階ではないという態度をみな出してきている。ところがひとり日本原子力委員会及び原子力局だけが猪突猛進、七百万キロワットから九百五十万キロワットまで出してやろうという形で、ぐいぐい問題をお進めになる。そういう世界との関連において、長官はこの原子力長期計画というものを今後どういうふうにやっていらっしゃろうとするのか。世界の傾向に合わせて再考の余地をお感じになっていらっしゃるかどうか、これが第二点です。
  36. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 非常に時宜に適した御質問だと思います。これは御承知のように二十年後に九百五十万キロまで出せるかもしれぬという目標——およそこういうものは目標というものがなければなりません。そういう意味において一つの目標として、専門家の方々やいろいろな方々が集まってお作りになった。しかしながらその間においてもどんどん原子力の内容が変わってきております。それから世界の経済、特に燃料関係における事情が時々刻々として変わってきておることは、あなたも御承知通りと思います。といいますのは、その案を作っておった時代から見ますと、その後急速に火力発電のキロ当たりのコストが下がってきております。現在の段階で見ますと、これは重油を燃料とする火力発電には遠く及ばないというのが今の段階だと思います。そこでこれから十年あるいは二十年後にはたしてそれと競争できるかどうか。実を申しますと、昨日もアメリカから来ました専門家の諸君と私は議論をしたのでありますが、アメリカでは現在石炭やガスと、これから二十年の間それより決して値段を高くしないという契約で、原子炉を作っておる会社もあるようであります。そういう事態でありますが、アメリカは御承知のようにAA諸国や何かの石油よりも高いのであります。サウジアラビアなんかの石油を買ってきますともっとコストが安くなる。現在市場に出ております油の値段も、おそらくこれから相当下がってくるのじゃないか、また下げ得るのじゃないか。私は専門家ではありませんから、専門家の話を聞いてみますとそういうような説もあります。そうしますと、一キロ当たりの電力の値段がさらに二円を割るような時代が必ずくるのではないか。そうなってくると、ますます原子力というものは追っつかなくなってしまって、合わないのではないかというようなこともあわせ考えますと、最初計画としてはそこまで立てましたけれども、これがはたしていけるのかどうか。あるいは安全性やその他の技術が非常に進歩いたしまして簡単に原子炉ができるようになってきますと、さらにもっと安くなるかもしれません。いずれもこれは未知の世界であります。しかし未知の世界だからといって、そのままほうったらかしておくわけにいきませんし、一応のめど、方向というものを定めて、それに向かって一応の努力を進めていこう、こういう意味でいわゆる長期計画というものは立てられる。しかしながらその計画は、今申し上げたように刻々変わってくる燃料事情、経済事情、いろいろな問題から、はたしてそれが実現できるかどうかということは、私は保証できないというふうに考えております。だからといって捨てるという意味ではございません。だからこそあらゆる角度からなお研究を進めなければいかぬ、こういうふうに考えております。
  37. 飛鳥田一雄

    飛鳥田委員 お話はよくわかるようでわからないのです。原子力長期計画に対して検討を加えるということですか、加えないということですか、イエスかノーだけでお答え願いたい。
  38. 池田正之輔

    池田(正)国務大臣 実質的に加えざるを得ないということであります。
  39. 久野忠治

    久野委員長 これにて総理府設置法の一部を改正する法律案北海道東北開発公庫法の一部を改正する法律案についての質疑は、いずれも終了いたしました。     —————————————
  40. 久野忠治

    久野委員長 これより各案について討論に入るのでありますが、別に討論の申し出もありません。  直ちに各案を一括して採決いたします。  総理府設置法の一部を改正する法律案北海道東北開発公庫法の一部を改正する法律案の各案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  41. 久野忠治

    久野委員長 起立総員。よって、各案はいずれも可決いたしました。  なお、各案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 久野忠治

    久野委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決定いたしました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十九分散会      ————◇—————