○谷口
委員 本案に対して
日本共産党は反対であります。
反対の根本的な
理由を短時間のうちに申し述べることは大へん困難であります。なぜかと申しますと、
政府が今国会において押し切りました各種公共
料金値上げの政策は、
政府のいわゆる所得倍増
計画と称する経済政策、すなわち安保体制下アメリカ帝国主義と
日本独占資本の残酷な人民収奪と軍国主義的、帝国主義的膨張政策の一環をなすものでありまして、
政府の売国的、反人民的経済政策の全体を論評することなしには、明らかにできないからであります。しかし、私は以下簡単に、この法案に沿う範囲内で若干の反対すべき点に触れたいと思います。
今回の改定案で、
公社側は、
料金の値上げにならないということを主張されました。しかし、この
委員会の審議の過程で明らかになりましたことは、値上げにならないような
状況のもとで、実際は値上げになることが明らかであります。かりに
公社が言われるように幾らかの値下げになる分ができたといたしましても、実はそれによって現在の
電話料金が不当に高い独占価格である点は、ごうも変わらないのであります。三十六年度の
予算計画を見ましても、二千四百億の
料金収入に対して純利益が実に六百十三億であります。しかもなおその上に減価償却積立金として五百三十六億
——もちろんこの減価償却が本来の
意味で現在の施設の腐朽を回復していくというものに使われるならば、必要なことでありましょう。しかし、これは明らかに新設、拡張のために使われる減価償却の名前によって計上された費用であることは、皆さんのお出しになった資料で明らかであります。この二つを
考えただけでも、実に五〇%に近い利潤を上げていることが明らかでありまして、これほど残酷な超過利潤を得ている、その
基礎になっているのが現在の
料金であります。この高い
料金をそのままにしておいて、そうして今度の
料金体制の新体系が
計画されているわけであります。もしも
公社が言われるように三十数億の減収になるという面があるとするならば、これは討論の中で明らかにされましたように、特に独占資本が利用しております市外長距離
電話においてその減収が出てくるのでありまして、従って利益するものがだれであるかは、まことに明らかであります。私どもが質問して明らかになったとろによりますと、
加入者総数のうちわずかに十五万八千の構内交換機を有する大口利用者が多く長距離
電話を利用するものであることは、すでに明らかであります。これらの利益のために、その減収分は彼らの利益として壟断されることは、実に明らかな次第であります。
しかし、今回の
料金改定のほんとうの目的は、
公社がいみじくも正直に言われました
通り、別なところにあるということを私どもは知るのであります。それは、自動交換機に付属した自動的課金装置を備え付けることによって
料金算定を機械的、自動的にやろうとする、その点を今度の
改正で法律によって確認し、もって
電話事業におけるオートメ化、合理化を無限に拡大する前提条件を作り上げたということであります。オートメーション化、自動化、機械化はよいことかどうか。もちろん、先ほど民社党の受田さんが言われた
通り、新しい技術を用い、こういう
事業における近代化をやることは、技術的に見て決して悪いことでなく、それは社会の進歩であるといって間違いでないと思うのです。しかし、問題はそこにあるのではありません。だれの利益のためにそれがなされるか、だれの犠牲によってそれがなされるか、これを抜きにしてこの問題を論ずるわけにはいかないのであります。そして、今度の
政府と
公社のこの審議の中で示され、また原案が示している本質は、明らかに労働者階級と国民の犠牲によって、一部一握りの
日本独占資本とアメリカ帝国主義に奉仕させよう、
公社というわれわれの公共
事業を通じてそういうものに奉仕させよう、そういう本質を備えているのであります。
一体どれだけの犠牲を国民にしいておるか。私は主観的に申しません。皆さんのお出しになった資料から判断します。先ほど申しました
通りに、高
料金による国民からの収奪、これは実に
料金収入の五〇%に近い毛のを利益として得ておる。しかもそのほかに
電話債は
加入者すべてにかけられて、これがことしだけの
予算額で見ましても、五百二十七億であります。これは、
公社は、
加入者の
料金、
加入者に
負担させることによって、その金によって
拡充計画をやり、合理化
計画をやるという
基本的な
立場を持っていられることを示します。
設備料金は六十三億です。これらのものはすべて
加入者に
負担させられるのであります。この
立場に立って
公社は
資金計画を立てていられるのでありまして、こういう点をわれわれは見のがすわけにはいかないのであります。この討論の中でこういうふうに皆さんは言われた。なるべく早く
電話をつけること、できるだけ早く即時化をすること、現在の
加入者に対して利益を還元するのじゃなくて、国民全体に利益を還元する、言葉はまことにけっこうです。きれいに見えます。しかしそういうことがほんとうの公共
事業のあり方でしょうか、たくさんの独占的な高
料金を取り立て、いろいろな経費を
負担させる、そうしてその
加入者に対して膨大な利益を還元するのじゃなくて、
公社は多くの国民に利益を還元するといっておりますが、
公社の
事業の拡大のためにそれを使うというやり方です。これは公共
事業のあり方としてまことに残酷な本末転倒のあり方だと思うのであります。
だれが利益を受けるか。これもこの
委員会の討論の中で明らかになりました
通り、少数の独占的なメーカーとの結びつきをもって、そうして不当な価格、独占的な価格による買い入れ、
設備、機械、工事、そういうものがされていることは明らかになっております。いわゆる経済拡大
計画と称する独占資本への独占集中拡大の一環として、地域的に今後はどんどん、たとえば地域的コンビナートあるいは
企業集団の建設が池田
政府の政策としてあるわけでありますが、これらと
東京、大阪等をつなぐところの、先ほどのお言葉で言えば都市集中政策、これによって独占資本に奉仕しようという
計画が大体今日までの
計画であり、将来の
計画の見通しであります。特に私は、小さいことのようでありますけれども、巧妙なものとしてここで明らかにしておきたい。
電話債はわれわれ
加入者が
公社から強引に強制的に買わされます。しかし
加入者の多くは、国民の多くはこれを二割ないし三割で金融業者に売り払わざるを得ないような
立場に立って
加入するのであります。七分の利子を出し、しかもこういう割引でもって金融業者から究極的には銀行資本へ利益が集中されていくという、そういうおそろしい性質を持っております。そういう
立場から金融業者がもうけているということも言えます。警察、駐留軍、防衛庁への不当に安い
料金と、
電話を通じての、公共
事業を通じての奉仕、この点につきましてはいずれ別な
観点から明らかにする場合があると思いますが、これもわれわれとしては無視できないものであります。
最後に、今度の
計画ではアメリカから七十二億の外債を入れられることになったようであります。
外国帝国主義の資金を入れて、これだけ国民
負担を大きくしている上に、さらにこの資金を入れるということは、今日まで経済上におけるアメリカの
日本経済の支配のやり方を見ましても、このやり方は今後
電電公社のあり方に対して重大な
意味を含むとわれわれは
考えざるを得ません。最後に労働組合に対する
公社の
考え方であります。これは国民に対する犠牲をしいるだけでなくて、そこに働いております職員に対する
公社の残酷な労働政策は、今度の
委員会の中で非常に明らかにされたところであります。
電電公社の
発展は、全国の職員、従業員の血の出るような労働によりますにもかかわらず、
公社と
政府は、全くこの
委員会の討論の中では、この職員、労働組合を敵とする態度に終始しております。これはまことに重大なことであります。
私どもはこう思うのです。少なくとも
電話料金は現在の二五%ぐらいは国民に還元されるべきである。
料金を安くし、労働者の生活条件をよくするために、少なくとも今日不当利得としてかかえております独占利益を、これを還元するという態度をとるべきだと思います。また
加入申込者の公平な取り扱い、こういうこともやはり
考えていかなければならぬことではないかと思うのです。またメーカーとの
関係の問題でありますが、これも公平な参加による
設備、機械及び工事費の独占価格を打破するという態度、これも必要でありましょう。それから、これは社会党の諸君と全く意見が一致するのでありますが、こういう
公共企業体は、産業投資会計による施設の拡大、つまり国家資金をもって、これは全国民の資金の裏づけでありまして、たくさんの国民に犠牲をしい、労働者に犠牲をしいてやっていくやり方は間違いであると思います。そういう点で国家資金による拡大政策をとるべきだというのがわれわれの意見であります。
最後に、労働者の組合活動の自由と正当な賃金と
定員の確保の問題、それから合理化による犠牲の完全な保障、これはまことに当面重大であります。それから春闘処分の取り消し、それから事前協議制を労働組合は要求しておりますが、これも私は当然
公社として
考えるべきだと思う。単に、今度のILO条約の
関係法律案といわれますあの法律の中に書いておりますように、労働組合の交渉の要求の範囲を単なる賃金や時間の問題に限り、そして
経営者側の
経営権とか
人事権に触れるような問題については、交渉の内容に入れないという態度を
政府は持っておるようでありますが、こういう態度は正しい労働運動の上からいって、まことに民主主義に反するものであります。当然労働者の要求として、
経営権にも触れて労働条件をお互いに話し合うという道を作り、その中から労働組合の正しい
発展に資すべきであるというのがわれわれの意見であります。そういう点で、今度の改定案はいずれの点から見ましても、われわれの承認できない売国的、反人民的なものであると
考えざるを得ません。共産党はこういう点でこの案に絶対反対するものであります。