○谷口
委員 私は
日本共産党を代表して、本件に関する意見を申し上げます。
われわれは、本件並びに自民党の修正案に反対であります。
一般に、
公共事業の
料金の
値上げは、それ自体物価
値上げをもたらすばかりではなく、社会経済を刺激して物価全体の一そうの高騰をもたらす要因となるのであります。政府が本国会に国鉄
料金や
郵政事業関係の
料金の
値上げ案を提出しただけで、すでに短期間に
一般日用品諸物価が高騰し、国民生活に多大の圧迫を加えていることは、しばしば本
委員会におきましても
指摘されたところであります。本逓信
委員会に提出された幾つかの
法律案の
内容は、そのすべてが
料金値上げを中心とするものであって、今や本
委員会は、国民の恨みの的となっていると言っても過言ではありません。そうして、
郵便料金の大幅
値上げを企図した本
法律案こそ、その尤たるものでありまして、われわれは、次に申し述べる理由から絶対に反対するものであります。
第一に、政府はこのたびの
郵便料金値上げにあたり、第一種、第二種などの高等信の
値上げも同様に企図していたが、国民の強い反対にあって、意に反してこれらの
値上げは据え置かざるを得なかった。その結果、第三種、第五種、小包などの大幅の
値上げをすることになったのであります。
値上げ率
平均一九・六%という高率のこれら
郵便料金値上げは、国鉄の
料金の不当な
値上げに比べてさえもはるかに高率なものでありまして、
公共の福祉を増進するためになるべく安い
料金であまねく公平に役務を提供するという
郵便法の目的に反すると言えるものであります。ことに国民大衆の文化的、日常的生活や、労働組合その他大衆団体の活動に多大の
関係ある第三種
郵便物
料金や小包
料金を大幅に上げたにもかかわらず、二部独占的
事業会社や商社が利潤のために
郵便制度を利用している第五種
郵便物の一部にはわずかな
値上げしかせず、いわゆる
赤字の埋めを第一種、第二種
郵便物などの国民大衆の直接負担分の黒字に依存しようというのが今回の
値上げの特徴であります。近年
郵便業務が停滞し、いわゆる慢性的遅配現象を起こして国民生活に深刻な被害を与えている大きな原因は、ほかならぬ第五種の大部分を占めるこれら営利
事業会社による、ダイレクト・メール、つまりいたずらに消費ムードを助長するための宣伝でありまして、これらの
郵便物の病的な増大にあることは何人の目にも明らかであります。また、第三種などの
値上げは直ちに新聞、雑誌などの
値上げとなって現われ、大衆負担に転嫁される危険があることも明らかであります。今回の
郵便料金値上げ案は、このように大衆の犠牲によってこれら
事業会社を擁護せんとするところにその真の意図があります。
第二に、その特徴は、小包
料金や各種の認可料、手数料、使用料の決定権を国会の権限から行政府に渡したことであります。すなわち、従来
法律によって規定されたこれらの
料金の決定権を政令、省令にゆだねたのであります。これは、国権の最高機関である国会にかわって、政府もしくは
郵政省が
料金決定権を握り、行政
措置によって
郵政事業を一部独占資本、商事会社にいよいよ露骨に奉仕させる道を開くことでございまして、ただに民主主義に反するのみならず、
公共的国家
事業たる
郵政事業の破壊であると言っても過言ではありません。今回の
料金改定は、池田内閣のいわゆる所得倍増計画、経済成長
政策、すなわち、低賃金
政策と国家財政を通じての人民収奪による独占資本擁護の軍国主義、帝国主義、復活強化のための経済条件を固めようとする
政策の一環として行なわれたものでありまして、従って、今回の
値上げをもって一時を糊塗いたしましても、いわゆる所得倍増計画が必然的にもたらす病的な消費部門の拡大及びインフレーションの中ではたちまち破綻し、近い将来再び第一種、第二種をも含む
料金値上げをせざるを得ない本質を持っております。さればこそ、政府は、
公共料金決定権を国会より奪い、行政府の独裁を強化せんとしたのでありまして、小包
料金の決定権を政令にゆだねんとしたのはその第一歩と見るべきでありましょう。自民党政府は、かねてから国鉄、郵政
関係その他の
料金の決定権を国会から奪い、政府の手に掌握しようとしてきたが、今回この
郵便法の
改正によってその目的の一部を達成し、その野望の全面的達成の橋頭堡を作ろうとしておるのであります。
第三に、
郵便事業のごとき
公共的、文化的、国家的
事業の
料金は、
公共の福祉を増進することを目的として、なるべく安い
料金であまねく大衆に奉仕する見地より決定すべきであります。
郵便法第一条はまさにそのように命じております。そのためには、まず独占資本の負担をふやすとともに、場合によっては国の
一般会計より必要な
補てんをすべきだというのが国民全体の強い
要求であります。しかるに、政府は、低賃金と収奪で国民を苦しめながら膨大な軍事費と独占擁護に国家財政を消費するのみで、不当に
料金を増額して犠牲を大衆に転嫁するばかりか、本来国民大衆への
サービス機関である
郵便事業を利潤のために壟断している大
事業会社、商社の消費景気をあおるダイレクト・メール等に対する正当な適正な
料金値上げすらがえんじないのであります。
以上
指摘してきたように、
郵便法を
改正しようとする池田内閣の真のねらいは、第一、
一般会計、財政投融資を今後ますます新安保実施の方向に沿っての軍事費、弾圧費の増強と、大独占の内外への経済進出を強化するために集中し、鉄道、
郵便、
電話、電気、その他の
公共事業への資本投下を押えて、これをすべて直接大衆の負担でまかなわせようとする
政策を推し進めるために、国鉄とともに今回の
郵便料金の大幅の
値上げを強行しようとしておるのであります。
二つには、政府は、右の方向に沿って
郵政事業の大衆的
公共性をあえて無視して、これを営利
事業化しようとしておることであります。そのために
料金の決定について、国会を通じての国民の監視をのがれ、その要望に背を向けて一方的に強権的に決定し得るように道を開こうとしているのであります。
最後に、政府は、以上の方向への
郵政事業の再
編成の中で、いたずらに消費ムードを刺激し、助長することによって独占資本を太らすことにしか役立たぬような部分の
料金値上げは小幅に押え、大衆負担を増し、国民の社会的、政治的活動に大きな影響を与える部分の
値上げを大幅に行なっておるのであります。そうして政府は、
郵政事業を通じて独占資本への奉仕と大衆負担の増大とその社会的活動の制約の意図を露骨に示しているのであります。同時にその利益
採算を進めるため、合理化の名によって、直接郵政
関係労働者の労働強化と低賃金及び組合活動の弾圧を強めようとしております。
以上の理由から、
日本共産党は、本
改正案に反対するものであります。同時に、自由民主党の修正案に対しても反対をすることをここに表明いたしまして、私の討論を終わります。