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1961-05-26 第38回国会 衆議院 地方行政委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年五月二十六日(金曜日)    午前十一時十二分開議  出席委員    委員長 濱田 幸雄君    理事 田中 榮一君 理事 中島 茂喜君    理事 丹羽喬四郎君 理事 吉田 重延君    理事 太田 一夫君 理事 川村 継義君    理事 阪上安太郎君       伊藤  幟君    宇野 宗佑君       小澤 太郎君    大沢 雄一君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       久保田円次君    田川 誠一君       永田 亮一君    前田 義雄君       佐野 憲治君    二宮 武夫君       野口 忠夫君    松井  誠君       山口 鶴男君    門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         警察庁長官   柏村 信雄君         警視監         (警察庁保安局         長)      木村 行藏君         警視監         (警察庁警備局         長)      三輪 良雄君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁保安局         保安課長)   小野沢知雄君         文 部 技 官         (文化財保護委         員会事務局美術         工芸課長)   松下 隆章君         専  門  員 円地与四松君     ――――――――――――― 五月二十六日  委員三木喜夫君辞任につき、その補欠として渡  辺惣蔵君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 五月二十五日  地方財政確立に関する陳情書  (第八四一号)  同  (第九六一号)  私立学校育成のため地方交付税法改正に関する  陳情書(第九〇〇  号)  教育費に対する住民の負担解消に伴う財源措置  に関する陳情書(第  九二七号)  地方税法の一部を改正する法律案成立促進に関  する陳情書  (第九三一号)  後進地域開発に関する公共事業に係る国の負  担割合の特例措置対象となる指定事業の拡大  に関する陳情書  (第九五九号)  後進県の市町村が行なう公共事業に対する国庫  負担特例法制定に関する陳情書  (第九六〇号)  個人の道府県民税所得割課税方式に関する陳情  書  (第九六二号)  奄美群島に対する経済援助に関する陳情書  (第九六三号)  地方交付税増額等に関する陳情書  (第一〇  一三号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件  参考人出頭要求に関する件  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一七六号)      ――――◇―――――
  2. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより会議を開きます。  この際、連合審査会開会申し入れに関する件につきましてお諮りいたします。すなわち、水資源開発促進法案及び水資源開発公団法案の両案について、建設委員会に対し連合審査会開会申し入れを行ないたいと存じます。これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 濱田幸雄

    濱田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  なお、連合審査会開会の日時は、建設委員長と協議の上、追ってお知らせいたしますので、さよう御了承をお願いいたします。
  4. 濱田幸雄

    濱田委員長 銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑を継続いたします。松井誠君。
  5. 松井誠

    松井(誠)委員 昨日に引き続いてお尋ねをいたしたいと思います。一言、わかり切ったことなんですけれども申し上げたいと思いますが、法律運用の実際の結果というものは、これはもう法律の字づらだけを何べんひっくり返して読んでみましても、それだけではもとよりわかるはずはございません。それがほんとうにどういうように運用されて、どういう結果をもたらすかということは、その法律運用執行に当たる、いわば権力者というものの性格がどうなのか、その人がどういうことを考えているのかという、そういうことも考え合わさなければ、ほんとうの姿は出てこないと思います。たとえばあの治安維持法で、国体の変革だとか、あるいは私有財産の否認だとか、そういうことに限って処罰をしようとしたのが、自由主義者までも縛ろうとするようになってしまった。このことは法律制定当初は予期もされなかったことであります。しかも、そのような治安維持法執行運用に当たったその人たちが、世の中が何かこう変わったように見えますが、なお国政に参画しておる。何とかグループというような名前で、そういう人たちがまだ参画をしておる。従ってそういうときに私たちは、この法律の字づらだけをながめるのではなくて、やはりその周辺を、そしてその権力の内部、その権力者の意向、そういうものをもっと調べなければ、ほんとう法案性格というものは出てきません。形式的にはその周辺を調べるようでありますけれども、しかし実質的にはその法案性格をお聞きしておるのだということがあり得るわけであります。こんなことは、法律執行あるいは運用に当たった人にとっては、わかり切ったことなんですけれども、しかしそういうことを私が今さら言わなければならないようなこの委員会空気というものを非常に残念に思います。時間を非常に制限されましたので、そういう意味で私が今までお聞きしておりました六・一五事件のことにつきましては、非常にしり切れトンボになりますけれども、一応のケリをつけて先に進みたいと思うのです。  そこで、これは警察庁長官にお伺いをいたしたいと思いますけれども、六・一五事件は、現在刑事事件として捜査が行なわれておる。しかしそれとは別に、行政上の処分対象意味で、いろいろな調査も行なわれておる。そして私が大体問題にして申し上げておる一つは、デモ隊とは全く関係のない報道陣、あるいは全く孤立をしておった学校の先生、そういう非常に派生的な事件一つ。それからもう一つは、あの衆議院の車庫の前におりました教授団に対する事件。それから参議院の第二通用門の付近における、いわば警祭官の不作為による職務違反。その大体三つをお尋ねしておるわけであります。そして、たとえば三宅坂事件としましては、これはもうあの当時の文書によりましても、警察官がわざわざ病院に見舞いに行っておるということまで具体的にはっきりしておる。あるいはラジオ関東島アナウンサーの場合には、これはどうしても逃げ隠れもできないソノラマとして残っておる。あるいはラジオ東京アナウンサーの場合にしても、私は面接には読みませんけれども、「ジャーナリスト」という雑誌の去年の六月二十五日号には、その被害者自身がそのことを書いておる。このようないわば動きがとれないような、しかもそれを私が任意に取り上げたのではなくて、例の政府衆議院に対する答弁書という形で出しておるものの中だけから取り上げた、そのような非常に明々白々たる具体的の事実、それから教授団に対する場合にいたしましても、これは告発人が協力しないとかなんとかいうようなことをこの間言っておりましたが、しかし、この被害者の手記というものは、おびただしくその当時発表されておるわけであります。今さら形式的な告発人協力云々などというような問題ではないわけです。しかも大事なことは、教授団に対する暴行というものは、デモ隊に対する暴行ならば、あるいは過剰防衛という問題もあり得るかもしれません。この過剰防衛そのものも非常に疑問でありますが、とにかくそういうことを主張し得る一つの根拠が警察官の中にあるかもしれません。しかし、教授団の場合には、いかなる意味でも過剰防衛などという主張はあり得ない。なぜこれが一体正当防衛になるのかということは、私はもうお聞きいたしませんけれども、おそらくそういう理由はどこからも出てこないと思います。従って、これは単なる職権乱用ということじゃなくて、まさに全然職権のないところに起こった全く民間の暴徒の暴力事件と同じだ。これはデモ隊に対する乱暴とは形の上では似ておりますが、少なくとも法律評価においては全く違わなければならない。全くこの事件そのものは、日本警察実力行使の歴史における汚辱の一ページだと私は思います。明々白々たる事実を私は申し上げて、そうして一体そういうことについてどの程度のことがおわかりなのかということをお尋ねをいたしましても、確たる御返事がない。実際は第三者の調査に待つということでございます。それならばそれで、刑事事件捜査についてはそれでよろしゅうございますけれども、少なくとも警察庁あるいは警視庁は、個々の具体的事実は別といたしまして、だれがだれをどうしたとか、警察官傷害の中にはだれという固有名詞はわからなくとも、この事件行政措置としてお調べになったことによって、警察官によっていろいろな傷害事件が起きた、非常に行き過ぎがあったという程度のことはおわかりだと思いますので、そのことをお尋ねいたしたいと思います。
  6. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 一年前の六月十五日の事態というものは、私から申し上げるまでもなく、松井さんも御承知のように、ああいう非常に大きい渦の中において起こった事件でございます。その間に警察として、私は警察の態勢としては、常に満ちてあふれない、行き過ぎがあってはならないし、行き足らないところがあってはならないということを戒めておるわけでございますが、ああいう騒ぎの中において、個々警察の行為というものを反省してみますれば、私は行き過ぎはなかったということは申さないのでございます。そういうことはあったであろう。しかし、きのうもるる申し上げ、また法務省の方からも申しましたように、現在捜査過程にあるものでございますので、その結果を待って必要なる措置考えたいというのが警視庁態度であるし、私どももそれを了承いたしておる状況でございます。
  7. 松井誠

    松井(誠)委員 そのような行政処分としてはそれもあるいは一つ方法かもしれません。通常の場合ならあるいはそれも許され得るかもしれません。しかし、このような非常に大きな事件、しかも世論の反響があれほど激しかった事件で、そういう場合に、少なくとも警察がこの事件における警察官の行動の評価というものを、外にあるいは内に発表するというそういう形ででも、われわれは警察官がやったことは一体どう考えておるのかという、最小限度そういう評価ぐらいは公にすべきではないでしょうか。そうでもしないと、あの事件に対する評価がいつまでたっても、もう一年近くなります。それが刑事事件の発表まで一切そういう公式な意見さえも出さないということになりますと、そういうことがやはり警官の職権乱用に対する甘やかしというそういう空気を助成してくるのではないか。少なくともこの点は、最小限度これだけはいけないのだという線ぐらいはぴしっと御意見を発表なさるという、そのことの方が必要なんじゃないだろうか、そういうことを考えますけれども、御意見伺いたいと思います。
  8. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、全体の動きの中の部分的に私は行き過ぎはなかったということを申し上げてはおらないのでございます。これは当時にも申し上げておるわけなんであります。しかし六・一五を中心としてあの大きな騒ぎの中において、警視庁がとった態度を全体的に見ますれば、私は警視庁の第一線の警察官がよく働いてくれたよいうふうに考えておるわけでございまして、一部に行き過ぎがあったということを否定はいたしませんけれども、全体としてあれを評価して、私はけしからぬことであったというふうには考えておらぬわけでございます。
  9. 松井誠

    松井(誠)委員 この裏件は、私は今主として警察官職権乱用の面から取り上げておりますけれども、もとよりこれはそういう面からだけ取り上げらるべき問題ではございませんし、いずれ刑事処分が決定をいたしました暁に、国政調査の面から全面的にやはり取り上げるべき問題であろうと思いますので、きょうはこれでこの点についての私の質問は終わりたいと思いますけれども、私は、やはり今までのそのような警察当局の御答弁を聞いておりますと、国民の不安というものは消えない。元来権力を持っておる人がその権力乱用したいという、そういう誘惑にうちかつということは非常に困難だということがだれかの言葉にもありますけれども、元来権力というものはそういう誘惑される面というものを持っておる。そこへもってきて日本警察当局乱用についてそのような甘い考えを持っておる。きびしい態度をとらないというので乱用の危険が倍加されている。そこへもってきまして、あとで私はお伺いしますけれども、この改正案内容そのものが、その法律の構造において元来乱用されるべき要素を多分に持っておる。そのようないわば乱用の三重の危険というもの、こういうものがありますから、私は今までそのようなことをお伺いをしておったわけなんです。  そこで、この改正案はいろいろの効果を意図しておるでありましょうけれども、一体それでは改正前、現在の銃砲刀剣類等所持取締法が十分に活用をされ、そうして守られておるだろうかという、一つの具体的な例をお尋ねをいたしたいと思うのです。  それは例のことしの一月からまだ続いておりまする新島ミサイル基地におけるいろいろな紛争、その過程で起きた一つ事件。もう御承知だと思いますけれども、あのときに右翼の暴力団が猟銃を持っておる。その猟銃を持っておることに対して、基地建設反対派人たちはしょっちゅう警察抗議をしておる。それにもかかわらず、その猟銃は依然としてそのままになっておりまして、少なくとも彼が退島をするまでそのまま所持が続けられておるという事実があるように聞いておりますけれども、その点について警視庁あるいは警察庁にお伺いいたしたいと思います。
  10. 三輪良雄

    三輪政府委員 ただいまのお尋ねでございますが、三月の十四日に防共挺身隊長福田進氏そのほかの人が新島に渡ったのでございますが、東京を出発をしますときに桟橋で猟銃らしいものを持っておる。もちろんむき出しで持っておるわけではございませんけれども、持っておるということで、そういうものを持っていかれない方がいいという警告を常のごとくにしたわけでございます。そのときの場合は、もう一人参りました独立青年党清水党首も持っていったのでございますが、大島に寄ってそこで狩猟をするということでございました。御承知のように狩猟最後の時期のようでございます。そこで、そういうことでございますし、所持正規の許しを持っておりまする関係から、船に乗ることをそこでとめるというわけにはいかなかったわけでございます。十五日に大局に上陸をいたしまして、二人でまさしく狩猟をしたということでございます。なおそこでもう一度警告をいたしまして、一方の人は旅館にそれを置いていったということでございますけれども、福田隊長はこれを持参をしたまま新島に向かいました。新潟でさらに警告をいたしまして、絶対に持ち歩かないという誓約で本人宿舎に置いていたのであります。それが十六日に着いたのでございまして、あの右翼オルグ団の数人の者が争いを始めましたことから端を発して、いわゆるなぐり込み事件というような事件が起こったわけでございますが、その三月十七日の夜、ここにオルグ団の者が大ぜい押しかけたわけでございます。そのときに袋に入れて置いてありました銃を隊員の一名の者が持ち出して参りましたので、私服警察官がその場でこれを押えて戻したのでございます。もちろんたまの入っているというような状態ではなかったわけでございます。そうしてそこでは猟銃を撃つとかなんとかということになりませんでしたが、二十一日島を去るときにもちろん持って帰っておるわけでございまして、この隊長が初め行くときに警視庁に話しましたことでは、隊員を引き揚げるその跡始末に行くんだ、ついてはその途中大島狩猟をするのだというふうなことであったのでございます。御承知のように正規に手続をいたしまして持っており、しかも狩猟をするということでございますれば、これをとめるということは強制的にできないのでございまして、繰り返しこれに警告をいたしましたのは先ほど申したようでございます。そういう趣旨で、これを持ち歩いたとか積極的にこれを脅迫の用に使ったということではなかったように聞いておるのでございます。
  11. 松井誠

    松井(誠)委員 これは現行法の十条によりますと、かりに許可を受けておっても不法な目的で携帯、運搬をしてはならない、そういう規定がございますね。それで大島までのことは別といたしまして、そのような不穏な新島に持って上がった以降のことでございますが、新島はあのような空気になっておる。そういうときに、かりに許可を受けた猟銃であろうとも、それを携帯をするということ自体、しかも現場で携帯をするということ自体、これは十条違反というようにはお考えにならないですか。
  12. 木村行藏

    木村(行)政府委員 第十条は今御指摘のように、正当な理由がなければ銃砲携帯してはならないということになっておるわけであります。その正当な理由の認定が問題でありますが、猟期中であって、新島で猟をするのだ、こういうふうなほんとうの意図があれば、これは正当な理由があるわけであります。しかしその点について事実でないということなれば若干問題になります。それから島に行きましてから、猟に行くのでなしに携帯する、護身用とかその他の関係で持つという場合には、この条文にひっかかります。また今回の改正法案によりましても、正当な理由について、十分に疑う理由がある場合に携帯しているという場合については、それを調査したりあるいは危害防止のために一時保管するというような改正案の二十四条の二の規定が発動し得る余地があるわけでございます。
  13. 松井誠

    松井(誠)委員 その改正案のPRはいいですよ。そういうことじゃなくて、それではもう少しお尋ねをしますけれども、じゃこの新島はその当時、現在もそうですけれども、禁猟期問というのですか、禁猟区ではございませんか。
  14. 木村行藏

    木村(行)政府委員 若干説明が足りなかったかと思いますけれども、大島の事実は私もつまびらかにいたしておりませんでしたので、若干修正いたしたいと思いますが、大畠では現実に猟をしたという事実もあったようであります。従ってそのために持ち歩く場合は正当な理由があるわけであります。この十条違反にはならない。
  15. 松井誠

    松井(誠)委員 新島及び式根島並びにその周囲二キロ、これはその当時禁猟期間——長い禁猟期間ですけれども、そういうところではなかったのですか。
  16. 木村行藏

    木村(行)政府委員 その現地そのもの自体禁猟区になっているかどうか、具体的に今責任を持ってお答えできませんのを残念に思います。
  17. 松井誠

    松井(誠)委員 私が調査をしたところでは、先はど言いましたように新島及び式根島、その周囲二キロ、もう少し正確な文句は忘れましたけれども、そこは昭和二十七年の二月の一日から三十七年の一月の三十一日まで禁猟期間、そのことは現地の連中が警察抗議をするときも、これは禁猟期間じゃないかという抗議までしておるわけです。ですからそういうことがわかっておりながら——私はそういう条件がなくても、あのような不穏なところで猟銃を持っているということ自体十条違反だと思う。しかし、それにプラスこのような明瞭な事情があるときに、一体どうして退島まで便々とあれを所持させておったのか、そのことをお尋ねしているのです。
  18. 三輪良雄

    三輪政府委員 先ほど私が申し上げました通り、新品で猟をするということを言っておったわけではないのでありまして、大局におきましても三月十五日が狩猟期間最後の日だそうでございますが、三月十五日に大島狩猟をいたしまして、御承知のように新畠に渡りますためには大島で船をかえて行くわけでございますから、大島に途中でとまりましたときにそれを使い、そして新島に渡って帰ってくるということであったように聞いておるのでございます。従いまして、本人は住所が東京でございますから、大島狩猟に使うために持って行き、それを東京に持って帰るために、彼は新島に寄るわけでありますから持っていくということが彼の主張でございます。そこで島においてはこれを宿舎に置いて、絶対に持ち歩かないようにということを警告をし、そのような約束をして、宿舎に置いておったということを聞いておるのであります。
  19. 松井誠

    松井(誠)委員 私のお伺いをしておるのは新島における所持携帯のことをお尋ねしているわけなのです。すると、これは行くときに大島に置いて、帰りにまた大島から持って帰るということはできないのですか。
  20. 三輪良雄

    三輪政府委員 それが望ましいと思いますし、また一方の人はそうしたそうでございます。ただし、これは自分のものでございますし、大畠に預けていくということになるわけでございますから、本人がそのつもりになって預けるということを納得し、本人が承諾して預けていかない限りは、これを無理に置かすということは現行法上できなかろうと思います。
  21. 松井誠

    松井(誠)委員 新島禁猟期という事実がわかり、しかもそういう不穏な状況のときに、しかも三月十七日の緊迫した空気の中で、彼は家の中におってそれをかまえておる。そういうことは十条違反現行犯としての処置は何かできませんか。
  22. 木村行藏

    木村(行)政府委員 本人の言い分からいえば、行き帰りに大畠で猟をするために、やむを得ず新島まで持って行かなければならぬ。しかし、新畠に持って行った場合は、正当の理由がなくて街頭まで持ち歩くことは十条違反になりますが、かまえただけでこの十条違反になるかどうか……(発言する者あり)かまえただけで携帯違反になるかどうかということは若干疑問がございます。
  23. 松井誠

    松井(誠)委員 非常に寛大な御解釈で、そういう寛大な取り扱いならば、この改正案でどんなに強化されようと、あるいは警職法がもっと強化されようとも心配ないと思う。しかし、私は前にも申し上げましたけれども、時にオオカミになるその警察官と同じ警察官が、時として羊にもなり得る。オオカミになったり羊になったりする、その警察官が一番こわいのです。この新島警察官は例の有名な第四機です。その第四機がこのように非常に寛大な処置をしている。こういうことはこれも乱用の著しい例だと思う。ですから、こういうことでは法律改正しようと、緩和しようと強化しようと、そういうこととは関係なしに、実際の取り扱いはそれとは別に行なわれるのじゃないか、そういうことを非常に心配いたしますのでお尋ねをするわけなんですけれども、何しろ時間を制限されておりますので……。
  24. 川村継義

    川村(継)委員 関連。今の問答でちょっと疑問なんですが、その猟銃は持っておった本人のものですかどうですか。それをどうして確認されたか。現行法によると、そういう猟銃を持ち歩くには許可証というものを持っておらなければならぬが、その辺の確認をしておるかどうか。それが一つ。第二はあとで聞きます。
  25. 三輪良雄

    三輪政府委員 聞いておりますところでは、最初に警告をしたときにすでに許可証を持ってこれを示し、猟をするということを言ったので、やむを得ず乗船させたということを聞いております。
  26. 川村継義

    川村(継)委員 大島で猟をすると言って持ち出した。あるいは船に乗るときにそういうことであれば、皆さんの立場としては、あえてそれを取り上げるということはできなかったかもしれぬと一応は推測される。大島に渡って新島に持って渡っておる。新島に持って渡るときには、新島はああいう険悪な問題を起こしておるし、しかも禁猟期間でもあるというようなことであれば、大島から持って渡るときに、何とかの方法でこれを大島に残すというようなことはやるべきじゃないですか。それはやれませんか。
  27. 三輪良雄

    三輪政府委員 聞いておりますところでは、そういう警告もいたしまして、現に一方の人は旅館に預けていったというのでございます。しかしながら現行法では、大局で猟をするということが正当であるといたしますると、いわば遠回りになるわけですけれども、自宅に帰る往復の途上ということであって、大島に自宅があるならばもちろん大島に置いていかせるわけでありますけれども、他人にそれを預けていくということになるわけでございます。これを説得いたしましても、本人が絶対に間違いはしない、そうして自分は持って帰るのだということでございますれば、現行法上それ以上強行はできなかろうかと考えるのでございます。
  28. 川村継義

    川村(継)委員 いろいろ理屈はあるようですけれども、そのような事態がちょうど現地に起こっておるときに、そのような弁解あるいは理屈を並べられても、これはおそらく世人を納得させることにはならぬと思う。そういうような処置をおとりになるから、えてして警察というものが右翼に対しては取り締まりが緩慢である、あるいは寛大であり過ぎる、こういうことになるのであります。今のような理屈もあると思うのですけれども、ちゃんと普通の人が猟に行くのじゃなくて、いわゆる対抗手段として新島に渡ろうとしておるものだし、そういうようないわゆる暴力団の仲間であれば、そういう銃を持っておる持っておらない、大畠でやるやらぬという、ただそれだけの理屈でなくて、別の方法でこれを阻止し、いわゆる危害を未然に防ぐということは警察当局としてはなし得るものだ、そういうことで考えてもらうと、また問題は別の方に派生していくし、先ほど松井君が指摘しておりますように、現行の法律というのが一体改正の必要があるかないかという議論もまた起こってくるのじゃないかと思うのですが、その辺のところは長官どうですか。それは現在の法律に照らしてみても、あるいはそういう暴力団が銃を持って渡っておっても、向こうがそういう理屈をこねるなら、あらゆる方法をもってしてもやれない、これを阻止し得ないということになるのでございますか。はっきり一つ聞かしておいていただきたい。
  29. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 現行法の第十条によりますと、「第四条又は第六条に掲げる用途に供するかその他正当な理由がある場合を除いては、当該許可を受けた銃砲又は刀剣類を携帯し、又は運搬してはならない。」これの違反になるかならぬかということの問題だろうと思います。そこでこの第十条第一項を見ますると、先ほど警備局長から申し上げましたように、大局狩猟をするという自由は万人にあるわけであります。しかも許可された猟銃を持っていくということでございます。それはいろいろと想像すれば、うそだということを想像することもできるかもしれませんけれども、本人が言う限りそれを警察としてはやはり信頼すべきものだろうと思うのです。これは右翼であるとか左翼であるとか一般人であるとかにかかわらない問題であろうと思うのです。現実に大島で猟をした。ところがこれは自分のものでございますから、人に預けることを勧告して任意に預けるということをすれば、これはそれでけっこうで、一番よかったかと思いますけれども、本人がどうしてもおれは持っていくのだというものを、強制的に取り上げる方法はないわけであります。しいて申しますならば、新島に持っていくことは単なる途中ではない、自分の所有のものであるけれども、新島に行くからには、東京に持って帰って、あるいは大島に預けて、そうしてそういうものを携帯しないで行かなければいかぬのだ。もしそれを携帯すれば、正当な理由がないのだから第十条違反であるということで、現行犯で逮捕するということまでいくかどうかという問題でございます。そこでまず遠回りとは申しながら、大島で猟をして新島では外出のとき絶対持ち歩いたりせぬ、袋に入れてしまっておくということで、それを警告し、本人もそれを納得するという状況でありますれば、たまたまそこに踏み込んだ人間が見つけたということであって、外でこれによって脅迫したとかなんとかいう事実はないわけでございますので、ここでいう正当な理由で持って行ったと推断せざるを得ないのではないかというふうに考えるのでございまして、でき得べくんばもっと強く勧告して、大畠に残すとか、あるいは東京に持って帰らせるとかいうことが望ましいには違いありませんが、法律上これを強制するということは困難であろうというふうに考えます。
  30. 二宮武夫

    ○二宮委員 関連して。長官にお等ねしますが、その際新島には警察の機動隊その他は出ておらなかったのですか。
  31. 三輪良雄

    三輪政府委員 そのときにも機動隊は出ております。
  32. 二宮武夫

    ○二宮委員 そうしますと、災害、騒乱その他の地方の静穏を害するおそれのある情勢の中においては、これを禁止しあるいは抑制をしなくてはならないという条項が二十六条にあるのですが、その機動隊を出しておるという状態は、まさしく静穏な状態とは私は考えられないと思うのです。従ってあなた方がどのように正当な理由があると認めるといたしましても、そういう本人の行動はすでに警察当局ではわかっておるはずでございますし、同時にまた警察の方としても、相当数の警官を出してその警備に当たらせなければならないという情勢になっておる新局の状態を考えると、ここで禁止をし抑制をするという行動をとらなければ、明らかに二十六条に基づく行為としては怠慢ではないか、こういうように私は考えるわけなんですが、これは当然あなたがやられるということでなくて、警察系統において当面の責任者が当然そのようにやられることが正しいのではないかというように私は考えるわけなんです。ここで皆さん方が答弁のための答弁をやるというのではなくて、法律というものをもう少し国民のために正当な立場に立って解釈をして運用していくという、こういう大らかな気持で考えて参りますと、第十条だけでこれを解釈すべき筋合いのものではなくて、その状態はまさしく二十六条の状態ではないか。大島までの問題は、三輪局長が言われたように、正当だと認めたということも、本質は別にいたしまして、法文の解釈上一応成り立つかもしれませんけれども、警察自体が相当数を新島に送って、しかも本人は常々どういう行動をとっておったかということがわかっておる。その本人新島に行くという状態のときに、これを禁止しない、あるいは持っておることに対して抗議を申し込んでそれを禁止すべきであるという申し入れをしたのに対して、何らそれに対して正当な行動をとらない。こうなりますと、これは明らかに警察官として公安委員会でやるべき二十六条の行動をやっておらないのじゃないかというように解釈されるのですが、その辺はどうですか。
  33. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この第二十六条は「災害、騒乱その他の地方の静穏を害するおそれのある事態に際し、第四条若しくは第六条の規定による許可又は」云々とございまして、「銃砲又は刀剣類の授受、運搬又は携帯が公共の秩序を維持する上に直接危害を及ぼすと明らかに認められる場合においては、」というふうに非常にしぼってございます。それでこれは単に右翼とか左翼とかいうふうに限らないで、一定の公告式による告示で、とにかくあそこに刀剣類あるいは銃砲を持っていけば必ず撃ち合いになるのだというような状況下において、期間と地域を定めてこれを禁止する、そして違反者を処罰するという規定でございます。従いまして、あるいはそういう危害を及ぼすというふうに認めて、あらかじめ都公安委員会においてこの措置をとることもあるいはなし得たかと思いますが、現実にそういう危害は起こっていないのでございます。そうして必要なる警告措置はとっておったのでございますから、あのとき事前に、たとえば新島で問題が起こったときに直ちに二十六条第一項の発動によって期間、地域を定めて禁止するということも、必ずしも不適当でない、むしろ適当であったかと思いますけれども、それをしなかったことが非常に責むべき怠慢だというふうには私は考えておらぬのでございます。
  34. 二宮武夫

    ○二宮委員 長官警察官の肩を持たれるという答弁もわかりますけれども、やはり法律というものを正直に国民のためにみんなが納得のいくような解釈をしようという立場に立つと、これは明らかに怠慢であったからどうということで責めるとかなんとかいうことじゃないのですよ、そういう相対抗して言うのではなくて、一緒になって法の解釈をするという立場に立つと、これは責められるべき筋合いのものであるかどうか、あるいは行政処分やその他の問題、あるいは公安委員会のとった態度がどうこうというのではなくて、私が心配をします問題は、あとから銃砲を打たなかったからいいじゃないかということじゃなくて、新島の状態というのは、皆さん方が警察官を出されたということ自体考えてみても、やはり静穏を保っておる状態じゃないと思うのです。ですから地方の公安委員会がある地域に対して、今三輪さんがおっしゃるように狩猟をやるのだからいいじゃないかというので正当の理由と認めた、こういうことで携行さしたというのですが、やはり新島の実際の状況を皆さん方が判断されますと、ここでは明らかにこういう人物がこういうものを狩猟のために大島に持っていったぞ、従ってこういう問題は——事実銃砲の発射はしなくても、持って威嚇をするという行動はやっておるということを認めて、そういうことは取りやめてもらいたいという抗議も申し込んでおるわけですから、これは責めらるべき筋合いのものじゃないということではなくて、やはり法に従って解釈をすれば、ここでは正当な理由ありとして認めたけれども、大場から新島に行くという段階においてはやはり禁止するのが至当であって、事前にそういうことを予防する意味からも妥当な措置ではなかろうかというように考えるのです。そのような、ただやったことを一方的に弁護するということではなくて、もう少しそういう立場に立って法の解釈をするとすれば、そういう措置をとっていいのじゃないか。それでは、もしそのとき発射をするという事態が起こったらどうなんです。今結果論としてそういうことが起こらなかったからいいようなものの、銃をかまえて威嚇するという行為をした事実が起こっておるのですから、結果としてなかったからいいのだというような考え方でなくて、非常にエキサイトしておるような雰囲気の中に持ち込ませるということに対しての措置は、私はやはり妥当でないというように考えるのです。あなた方の答弁を聞いておりますと、それは公安委員会の責任でもありましょうし、そういう人のやったことが悪いのだとここできめつけることも、あなた方の立場として困る問題もあろうと思いますけれども、やはり法は拡大解釈をされないように、ちゃんと解釈されて正しく運用されるということを考えないと、特に今度の改正案では警察官の認定という問題、情勢判断という非常に大事な問題が二十四条の二では起こってくるのです。そういう場合に、この問題はやはり大事な問題であろうというように思うわけです。
  35. 松井誠

    松井(誠)委員 新島猟銃の問題というのは、右翼に対する取扱いと、いわゆる反対派に対する取り扱いとに著しく差別待遇があるという具体的な典型的な一つの例なんです。右翼の暴力というものが一月から再三行なわれた。それに対して十回にわたって告訴、告発をやっておる。それに対してその当時はほとんど手が打たれていない。ですから、現地反対派人たちは、こういうように右翼に乱暴させて、そうして第四機動隊が入ってくる口実を警察はわざわざ作らせておるじゃないか、そういう警察から言わせればいわれのない邪推かもしれませんが、とにかくそういうことを思わせるような状態の中で行なわれたこれは一つ事件なんです。  そこで、時間もありませんので次に参りますが、ただいま木村局長が、家の中で猟銃をかまえておることが携帯になるかどうか必ずしもはっきりしないというようなことを申されましたけれども、これは私は保安局長としての木村局長の言葉としてははなはだ受け取りかねるわけです。その際に、何か今度の改正案によれば、このような事態をもう少し効果的に処理し得るかのような御答弁がございました。しかし、私から言わせれば、それじゃ一体ほんとうにこの改正によってそういうものをこの際効果的に処理できるのか。相手は浅沼美知雄とか清水亘とかあるいは福田某とかいう名だたる右翼のテロなんです。しかも今度の改正案は、あとで各論に入ったときにお聞きしますけれども、これはもとより強制力というものがないわけです。御本人が、いや私はそういうものを持っておりません、出すこともいたしませんと言えば、それきりです。従って、そういう意味でいえば、現行法でも、改正法によったところで、そういう連中に対する効果としてはちっとも変わらない。ひっかかってくるのはざこだけです。ですから、この改正案の問題点の一つはそこにもありますけれども、そのような、何か今度の改正案が出れば今までのいろいろな不都合が解消されるような幻想を与えるということは非常に危険だと思う。  そこで、この改正案についてお尋ねをいたしたいのでありまけれども、その前に、昨日も阪上委員が申されましたように、この二十四条の二は、警職法の改正の当時の第二条の三項にほとんど同じで、その警職法の二条というのは、それの前にあるのは例の職務質問の規定であります。実際の取り扱いとしても、職務質問とこのような銃砲刀剣の開示あるいは提示の要求とは相前後して行なわれる事例が非常に多いだろう。従って、この職務質問が現在どのように行なわれておるかということを検討することが、この二十四条の二が実際上の効果としてどういうものをもたらすかということに、理屈の上でも実際の取り扱いの上でも密接な関係があると思うのです。  そこで現行警職法の二条の職務質問に関連をしてお尋ねをいたしたいと思うのですが、この職務質問に限らず、この間から長官が再々申しておりますけれども、純然たる任意手段ならば警察法の二条によって、警察の職責として当然できるというお言葉であります。しかもこの職務質問は、純然たる任意である。そういう前提に立ちますと、この警職法の二条の職務質問というものは純然たる任意手段であるのかないのか、まずそれをお尋ねしたいと思います。
  36. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 職務質問に答える義務はないわけでございます。従って、あくまでも強要して口を割らせるということはできませんけれども、これに対して心理的に、納得してしゃべるように仕向けるということは相当強く要求することができるという程度にわれわれは考えておるわけであります。
  37. 松井誠

    松井(誠)委員 そうすると、その職務質問のために停止をさせるということは、この警職法の二条の規定がなければできないことであって、二条の規定があって初めてできることだというように受け取ってよろしゅうございますか。
  38. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警職法の第二条の停止につきましては、これはいろいろ判例もございますが、ある程度、即時強制とまでは参りませんけれども、即時強制的要素を持つ。たとえば自転車に乗って行く者に荷台に手をかけて、ちょっととまれと言って聞く。それから肩を押えて、ちょっと待て。しかしこれを長く拘束してあくまでもがんじがらめにして押えつけるというような、いわゆる逮捕に至るようなことは許されないけれども、まったくの任意にとまってくれと言うだけに限られるというふうな解釈ではございません。従いまして、純然たる任意よりは、停止させてということは相当に強いということが判例上も認められておるわけでございます。
  39. 松井誠

    松井(誠)委員 純然たる任意ではない。即時強制に近いようなという表現であったと思いますけれども、そうすると、どちらかといえば強制に近いというように受け取ってよろしいですか。
  40. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 強制と申しますと、権限としてもう全くとめてしまうというふうに受け取れるので、そうはできない。しかし気分の上で、松井さんもよくおわかりと思いますが、とにかくある程度力を用いてとめるという意味においては、強制的な要素を含んだことまで認められておるというのが判例の実情でございます。
  41. 松井誠

    松井(誠)委員 この職務質問が正当な職務行為であって、それに対する抵抗が公務執行妨害であるかどうかという判決例は相当たくさんあるわけです。そのたくさんあるということ自体は、その職務質問というものを一体警察がどのように指導をされておるのかという一つの反映でもあると私は思う。そこで具体的に、職務質問はこういう程度ならできるのだ、これから先はいけないのだという具体的な御指導の内容としては、どういうように指導をされておるか。
  42. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 各種の判例が出るまでもなく、ただいま申し上げたような解釈運用上の注意をつぶさに与えておるわけでございまするし、新たなる判例等が出ますれば、それをさらに周知徹底させるという方法をとっておるわけでございまして、この職務質問というのは、警察活動の第一線の基礎になるものでございますので、警察学校等においてはもちろんでございますが、その他日常においても非常に注意深く指導をいたしておるわけでございます。
  43. 松井誠

    松井(誠)委員 その警察の実際の指導が、このような判決例の具体的な事実の基礎になっておる。そうしてそのような基礎を判決が認めると、さらに今度はその判決を一つ理由として、警察はそのような指導をされる。もっともこの判決と申しましても、第一審の若い判事の判決と、高等裁判所にいってからの判決とでは相当違う。いわば旧憲法の感覚しかお持ちでないお年寄りは、やはり昔の不審尋問的な考え方からどうしても抜けられない。そういうことで、そういうことが一つの判例になると、それを基礎にしてまた警察は職務質問範囲を拡大される。それに基づいた事実によって、また裁判所はそれを基礎に置いて判決を行なうということになりますと、両方がお互いに原因を作り結果を作って、だんだんその職務質問の範囲が広がっていくのではないですか。ですから私はこのような場合には、このような具体的な事実の判決というものを金科玉条にしないで、むしろ警察が当初から考えておる範囲というものは一体どうなんだという、そういうことをもっと明確に明確にと言っておる。これは具体的な事情がいろいろな違いがありますから、ほんとうの具体的な御指導はむずかしいと思いますけれども、もう少し明確な御指導があれば、しょっちゅうこのような混乱というものは起きないのではないかと思う。  そこで実は今のような強制に近い任意だという考え方で職務質問のための停止というような考えになりますと、今度は、この改正案の二十四条の二が憲法違反かどうかという問題にぶつかってくる。それから逆に、これはいやそこまでいかないのだ、そこまではいかない単なる任意手段、あるいはその任意手段も、この具体的な判決例ほどひどいものではないにしても、多少の実力はやむを得ないという程度ならば、これは私が先ほど申し上げましたように、大物はひっかからないで、ざこしかひっかからないという結果をもたらす。どちらにしても私は問題があると思う。そこでもう一度お伺いしますけれども、この二十四条の二のことではございませんが、職務質問の際における警察官の行使の方法というのは、どちらかといえば即時強制に近いという、それは警察庁警察当局の統一的なお考えでありますか。
  44. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 任意ではあるけれども、この停止させてというのは、相当に強いということは警察庁はもちろん、われわれ関係している通説でございます。それからちょっと申し加えておきますけれども、この第二条の運用につきまして、これは私どもの考えとして、むしろ「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると認められる者」、こう制限されている。いわゆる停止させるとか、質問するという内容の問題よりも、相手方というものをしぼって、こういう者については相当に追及するということが警察としては必要であり、またこれが社会の公共のために警察の責務として課せられているものである。この場合の対象というものをルーズに考えて、そうして停止とか、職務質問というものをゆるくするとかいうようなことは、私は警察の行き方として非常に好ましくないことであって、むしろ非常に疑わしい者についてこれを調べる。しかし疑わしいということの相当の理由がない者については、これについて自由を拘束するような、あるいは迷惑をかけるようなことは一切しないということが非常に大事であろうというふうに考えるわけでございます。これは御質問にございませんが、先ほどの御質問に関連して私どもの態度を申し上げておきたいと思います。
  45. 松井誠

    松井(誠)委員 その対象の条件は極力しぼっていくかわり、手段としてはあまりしぼりたくないということは、私は考え方としてはわかります。そこでこの判決例の最もひどいのに、たとえば百メートル余りを追いかけていって肩に手をかけて引き戻すということまでが職務質問のための停止ということで許されるという判決があることは、おそらく御承知だと思いますけれども、このような学者の中でも非常に異論のある具体的な状態における警察官態度、それがやはり判決で認められておりますから、警察は職務質問はここまでできますのだという、そういう妙な御指導をされるつもりでございますか。
  46. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 判例のすべてについてその最大限をやれという意味で指導しておるわけではございませんけれども、とにかく怪しい者については十分注意をし、これを捕捉する、捕捉というのは警察の立場として十分監視をするということが善良なる人たちの保護のために絶対必要なことでございますので、対象はできるだけ厳重にしぼるけれども、おかしい者については警察の納得のいくだけ十分追及をする。しかしこれが強制にわたってはならないわけでございますので、その点についての限界というものについては十分やはり指導を遂げていただきたい、こう考えておるわけであります。
  47. 佐野憲治

    ○佐野委員 柏村長官お尋ねしますが、犯罪捜査規範の八十一条をお持ちになっておりますか。
  48. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 犯罪捜査規範の第八十一条を読み上げます。「捜査を行うに当っては、犯罪に関する有形又は無形の資料、内偵による資料その他諸般の情報等確実な資料を収集し、これに基いて捜査を進めなければならない。特に被疑者の逮捕その他強制処分を行うに当っては、事前にできる限り多くの確実な資料を収集しておかなければならない。」
  49. 佐野憲治

    ○佐野委員 規範の改正があったかもしれませんけれども、職務質問に対する規定があるでしょう。八十何条だったですか。
  50. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 「第二章捜査の端緒」の「第一節端緒のは握」というので、現行法の第五十九条でございますが、「端緒のは握の努力」「警察官は、新聞紙その他の出版物の記事、匿名の申告、風説その他広く社会の事象に注意するとともに、警ら、職務質問等の励行により、進んで捜査の端緒を得ることに努めなければならない。」第六十条が、「職務質問に当り、必要があると認めるとめは、直ちに、指名手配その他の手配又は通報の有無、被害届の有無、鑑識資料の有無等を、電話その他適当な方法により、警視庁若しくは道府県警察本部又は警察署に照会しなければならない。」この規定でございます。
  51. 佐野憲治

    ○佐野委員 職務質問をする場合の根拠は、規範で明確になっているということでありますが、私の今持っておるのには、条文はちょっと改正になっているかもしれませんけれども、質問を行なうにあたって必要があると認められたときは、相手方の承認を得て携帯所持品の点検、身体検査を行ない、凶器等を発見するように努むべきであるというような規定をしておるわけですね。職務質問をするときには相手方の承認を得てとある。だから刑事手続と行政手続は違うということを、はっきり警察官に範囲を明らかにするために、こういう犯罪捜査規範の中に規定してあると思うのですがね。これがいわゆる第一線の警察官の職務質問に対する唯一の根拠規定になっておると思います。
  52. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今お手元にお持ちのものをちょっとお見せいただけますれば真偽のほどがよくわかるのですが……。
  53. 佐野憲治

    ○佐野委員 いやこれは、問題はそういうことよりも、今は関連質問ですから後ほどまた質問でいろいろとお聞きしたいと思いますが、今のように皆さんの方では判例でどうのこうのと言っておられるからいいんですけれども、末端の警察官は、警職法の第二条によって質問をする。そういう場合においては、やはり相手方の承認を得ることがまず第一だ、強制してはならないのだ、こういうことをやはり明らかにしなければ、第一線の警察官の職務質問、捜査はできないでしょう。その点が明確になっておらないと思うのです。判例だって第一審と第二審とでは違う。初め第一審において、行き過ぎである、職権乱用であるといっても、第二審においては、適法な職務質問であった、こういうことが出てくるわけで、そんなものを一々出しておったら警察官はわからなくなってしまう。警察官は、その職務基準によって第一線でやっておられるだろうと思いますが、そういう根本的な規範について、長官とか局長さんあたりが、そんなものはどこかにあったような気もするけれども、今手元にないからわからないというようなことでは、少し不見識ではないかと思います。そこでこれは私の質問のときも触れていきたいと思いますが、こういう明確なものがあり、それから警察官職務質問執行法もあり、それから田中さん、勝田さんの二人の警察官が出しおられる職務質問に対するいろいろなものがあると思いますが、そういうものは刑法による刑事手続じゃなくて、行政措置としての手続なんだ、それが警察官に与えられた権限であるということをやはり明確にしてもらいたい。それは第一線に示されておると思いますが、そういうものが法規の中に明らかにされておられない。そのうち起こってくる職権乱用あるいはそれに伴う公務執行妨害、こういうことにおける警察と民衆との紛争を防止するためにも第一線にはこういう規範を示しておられる。しかしながら、そういうものを立法の中に明確に規定していくことが、やはり警察としても、第一線の警察官が法を守り法に基づいて行動するということになるのじゃないかと思います。そうでなくて今のような抽象的な判断なり、法規を見ても具体的な規定が抜けてしまっておる。立法者の意図というものは今のような形で国会において説明がなされるが、しかし法規の規定というものは実に抽象的に規定されておる。ですから具体的な警察官の行動に対しては、こういう犯罪捜査規範というものが生まれてくる。その規範にはある程度まで明確にしてあるが、しかしこれは内部の者しか知らない。一般の国民大衆は知らない。だから、これはいろいろな問題が起こってくるということになってくるのじゃないかという意味において、今松井さんが御指摘になり、今いろいろ質疑が続けられておることにも関連して、やはり一番大切なことは、そういうことは刑事手続なのか、それとも行政措置としての任意捜査なのか、これはやはり国民大衆に明らかにする必要があると思います。そのために皆さんが規範に示されるところを法律の中に入れ、これは本人の承認を得なければ物品の検査、身体検査もできないのだということをはっきりすることが必要だと考えますが、どうですか。
  54. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 できるだけ法律に詳しく規定することは、お話しのように私も好ましいことだと思うのであります。しかし、法律に非常に微に入り細にわたって書くということは、従来法律の作り方としてそういうふうになっていないわけでございますし、そういう法律に基づいて、国会における質疑応答の過程を通じ、またその他いろいろの方法によって一般民衆に対しても法の理解に努めていくということが必要ではなかろうか。法律に書いてあること、非常に簡単な文句でも、これについて知らない一般の方が多いわけでございますので、非常にこまかに規定してはたしてその規定が徹底するものかどうか。むしろ、いろんな方法によって法についての理解を深めていくということが必要でありましょうし、また特に警察の職務執行に関連する法律というものは、法律的に掲げたら非常にとっぴなことが行なわれるというようなものでなくて、一般に警察が行なうことについて是認される程度のものであるということが原則的には正しい行き方であろうと私は思うわけでございます。そういうふうに考えておるわけでございまして、御趣旨は私もごもっともと思いますけれども、捜査規範にあるような問題をすべて法律に掲げていくということまではちょっといたしかねるのではないかと思います。
  55. 佐野憲治

    ○佐野委員 そういうことを聞いているのじゃないのです。すべてということではなくて、こういう重大な問額ですね、刑事手続か行政措置か、この区分というのは非常にむずかしいと思うのです。学者によりましても論争がいろいろ繰り返されておる。また警察権というものとは非常に関係の多い一般の国民にとっては、非常に理解することのできない問題だと思うのです。ですから、これは行政措置として任意捜査なんだ、国会においても大臣は答弁にしきりにこの点を強調しておられて、だから憲法に抵触しないのだ、こう言われる。それはそれほど重大な問題は、これは任意捜査なんだ、諸君らの同意を受けなければ身体検査もできないのだ、携帯品の検査もできないのだということをはっきりすることが大事ではないか。というのは、刑事訴訟法によると、結局黙秘権が許されておる。あるいはまたいやなことはしゃべらなくてもいいということを告げなくてはならぬとか、いろいろそれに対する厳重な規定が存在していると思います。行政措置の場合はそれがない。あなたはいやなことはしゃべらなくてもいいのですよ、こう言うこともでき得ない。そうすると、刑事訴訟の場合非常にきびしい規定で基本人権を尊重しながら、行政措置の場合は逆に基本人権が踏みにじられてもこれを救済する道がないということになっては非常におかしい。そこで行政措置なんだから当然ここにおいて本人の承諾が必要なんだ、これが一大前提になってきておる。ですから、この前提を法規の中に明らかにすることによって、官の職権乱用、国民の警察に対する一部の恐怖、こういうことが防ぐことができるのではないか。そうしなかったならば、結局善良な国民がいろいろな意味において人権じゅうりんされ、あるいは犯罪捜査ほんとうの目的である松井さんが指摘になっておられるような暴力団、やくざ、こういう連中が法律を知っておるということになる。だから、そんなものはしゃべらなくてもいいのだという形になってきますと、こういう条文を入れたって無意味になって、善良な者だけが逆に警察権の乱用の結果としてのいろいろな問題を引き起こすおそれがきわめて多いということになるのじゃないか。こういう点に対して、大臣がおられればもう少し立法者として法規定の間における問題点をお聞きしたがったのですけれども、おられないものですから、いずれ私の質問をいたすときにまたお尋ねするとして、長官に、今までの警察の運営の実態という点から、こういうふうな法規を持つということに対してどういう考えを持っておられるかを念のためお聞きしておきたいと思います。
  56. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 職務質問に関連してのお話でありますけれども、この職務質問というのは警察官行政的な行為でございまして、捜査いわゆる司法手続の問題ではございません。従って任意捜査という段階ではないのでございます。被疑者を特定して、これについて任意に捜査するという問題ではございませんで、これが捜査の端緒になる場合はもちろんございますけれども、そのもの自体捜査の段階には入っていないわけでございます。なおこの警職法を最初作りますときに、今お話に出ました、いやなことはしゃべらぬでもいいぞという趣旨のことを書いたらどうかという御意見も一部ございましたけれども、とにかく風体のおかしな人間、怪しい人間をつかまえて、もしもし答えなくてもいいですよ、あなたはどこに行きますかというような聞き方はできますまいということで、やはりこれはその場に応じた聞き方をすべきであるということで、そういう規定は入れなかったいきさつもございます。これは非常に強い意味主張されたわけではございませんけれども、その点は実際に即しないと同時に、刑事被告人に対する取り扱いとはおのずから異なる行政的な行為でございますので、やはりずばりと聞いて答えさせる、あるいは答えないときには様子を見るというような性質のものでございます。
  57. 松井誠

    松井(誠)委員 それでは全般的な立場からの質問として最後お尋ねしたいと思います。先ほどもお尋ねしましたけれども、強制と任意との中間で、どちらかといえば強制に近いというような考え方が一応統一的な御見解だというふうに承りましたけれども、しかしこの警察行為について、純然たる任意の行為であっても、それはやはり書かなきゃだめなんだという考え方と、そうでない今言われたような考え方と、学者の間にも二通りの考え方があるということは御存じですね。
  58. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 学者の間に二つの考え方があることは承知いたしておりますが、しかし、書かなければ何もできないということでは、いわゆる聞き込みなどもできないわけでございます。情報の収集などもできないということになるわけでありまして、やはり警察法第二条に規定された警察の責務を行なうについては、その必要の限度において警察活動はできる。しかし、これが人の自由を拘束するというようなことにわたってはならないという考え方を、私どもは堅持しておるわけでございます。それから提示させてということについて、半ば強制的な要素を持つということを申し上げたのでございまして、この中の任意というものには算術的にどこまでだということを申し上げるような性格のものではなくて、非常にニュアンスがあると思います。今回の改正の提示させてというようなことについては、これはあくまでも任意でございますので、強く促してそういう気持を起こさせるということには努力いたしますが、強制にわたるような実力を使うというようなことはできないという解釈を堅持いたしておるわけでございます。
  59. 松井誠

    松井(誠)委員 お答えは簡単に願いたいのですが、そのように学者の間でも二つの意見があるということ、それからこれは私何か忘れましたけれども、あの警職法改正の当時に、警察関係の人でやはりそういう考え方を持っておられて、元来これは純然たる任意なんだけれども、しかし国民の権利義務に関することは細大漏らさず書いた方がいいんだという建前で書くんだという、そういう立場で議論をされておった人もあったように思います。あるいはまた俗にその任意と強制との中間的な概念を、何か考え方を学問的に考えて主強されておられる人もあった、そういうことでいろいろの考え方があるわけです。いろいろの考え方がある中で、そのように警察一つのはっきりした立場をとられるということが一体適当かどうかということについて疑問があるわけなものですから、お伺いをいたしたわけですけれども、大体お考えはわかりましたので、申し上げましたように、全般的な立場からの私の質問はこれで終わりにいたしたいと思います。ただ各条につきましては、いろいろと問題がまだあろうと思いますので、そういう意味ではまた保留させていただきたいと思います。
  60. 濱田幸雄

    濱田委員長 午後一時半より再開して質疑を続行することとし、これにて休憩いたします。    午後、零時二十九分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  61. 濱田幸雄

    濱田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。門司亮君。
  62. 門司亮

    ○門司委員 この法案で最初にお聞きいたしたいと思いますことは、提案理由の説明ですが、この程度の提案理由の説明では少し不十分じゃないかと思うのです。と申し上げますのは、のこういう事犯の起こっておりますのは、主として若い青少年に多いということが一応考えられるのです。この提案理由の中には青少年が特に多いからと書いてないが、私はこういう法案を出された動機はそこにあるのではないかと考えられる。そういたしますと、青少年対策というものがまず一応考えられなければならないと考える。ところが、あまり回りくどい質問はやめまして率直に申し上げておきたいが、日本の青少年のこれらの犯罪、いわゆる凶器による犯罪を犯しております者のごく最近の一これは何か統計がずっと書いてあるようでありますが、青少年のこれらの犯罪を犯すまでの趨勢は大体御報告できますか。
  63. 木村行藏

    木村(行)政府委員 一応お手元に差し上げてあります国家公安委員会の白表紙の資料でございますが、そのあとの方に今申された傾向が、全部じゃありませんが、一部の傾向につきましては出ております。たとえばこの第五表で飛び出しナイフが犯罪に供用された状況、これは検挙された件数をあげておりますが、二カ年間の合計で、三十四年には飛び出しナイフの犯罪供用によるその犯罪の検挙、これが八百八十五件、三十五年が九百七十三件になっております。このうちで、ずっと右の方の欄に二十才未満の者が三十四年で八百八十五件のうち六百一件、約五六%強であります。四三%あまりが二十才以上でありますから、青少年ということになりますと、二十数才も入りますと、おそらく七割、六割強くらいは飛び出しナイフによる犯罪供用が青少年によってやられているというふうに言えると思います。それから三十五年は、ただいま申しました九百七十三件のうちで、二十才未満、すなわち十九才以下は六百六十八件でありまして、五九%強、約六割であります。従いましてこれも二十四、五才、いわゆる青年も入れまして青少年という観点に立ちますと、あるいは七割をこえるかもしれない。これは飛び出しナイフだけの状況でありますが、そのはかの刀剣類の所持違反あるいは犯罪供用についても、青少年が非常に多いということは申せると思います。
  64. 門司亮

    ○門司委員 青少年のそうした犯罪の動機、それから犯罪の原因とでもいいますか、そういうものを社会学的に何かお調べになったことがありますか。
  65. 木村行藏

    木村(行)政府委員 青少年の犯罪あるいは非行に至る原因についての追及は、非常に多岐にわたってむずかしい問題であります。ただいま門司委員からお話の、社会学的に、あるいは科学的な研究というような点につきましては、一昨年の四月から認められました科学警察研究所におきまして防犯少年部というものを新たに設置いたしました。そこで社会学者あるいは心理学者、教育学者などの専門的な要員も入れまして、社会学的な観点あるいは心理学的な観点についての要因の検討はいたしております。
  66. 門司亮

    ○門司委員 その結果として、それは予防を兼ねておりますか、ただそういう分析だけでありますか。
  67. 木村行藏

    木村(行)政府委員 分析はもちろんのこと、予防も兼ねていろいろ研究いたしております。
  68. 門司亮

    ○門司委員 その予防について、私はこの法案を出されます趣旨がさっき申しましたようなことだと思いますので、これを取り締まるというだけではどうにもならない。従って青少年教育が非常に重要な問題になってくると思いますが、警察でやっておいでになりますのは、取り締まりを対象としての分析、それからさらに補導といっても、警察には少年係というものがあって、主としてこれがある程度補導の役目をしているということは事実でありますが、これらの中心が——私は率直に言いますが、中心がないのですね。実際日本にはどういう役所がこれをほんとうに受け持ってやっているのか、ちっとも考えられていない。そこで警察も青少年問題に手をつける、あるいは厚生省も何か白書みたいなものを出して、統計だけは出す、あるいは文部省も同じようなことをやって統計だけは出す。統計はいろいろ集まってくるが、ほんとうに直そうとする研究機関はどこにあるかというと、どこにも徹底したものはない。都道府県知事あるいは市町村長が熱心であれば、ある程度おのおの自治体で多少やっている。しかし、これも教育委員会でやっているのか、あるいはその他の機関でやっているのか、はっきりしたものはほとんどないようであります。中央には中央青少年問題協議会とかいうようなものがありますが、これの分身が各都道府県、市町村に必ずあるかというと、必ずしもそうではない。しかもそういうものについての経費はほとんど盛られておらない。従って法律で取り締まることは考えられる、あるいは動機までは検討されるかもしれないが、これを予防するという立場になってくると、ほとんど手がつけられておらない。私は野放しというと言い過ぎかもしれませんが、野放しにひとしい状態ではないかと思う。  ところで大臣に一応お聞きをしておきたいと思いますが、大臣はこういう治安の責任者としての立場からお考えになって、それら青少年問題を中心とした一つの役所——役所をふやすことは必ずしも賛成はいたしませんが、しかしどこかにまとめて、これが矯正のできるようなことをした方がいいと考えるのだが、大臣はその点どうお考えになりますか。
  69. 安井謙

    ○安井国務大臣 私も、青少年の補導育成という問題について総合的な機関がないという御指摘につきましては、ごもっともなお話だと思う次第でありまして、ただ青少年の補導とかあるいは問題を扱う面が非常に多岐にわたっておるというようなことから、一つの役所に固定さしていくというのがなかなか困難なので、たとえば青少年問題協議会といったようなものを総理府に置いてそれぞれやっておる。しかし、実際はどうもあまり強力でないという点にも同感でございまして、私はかねてからもう少し強力な総合的な機関を、いわゆる行政官庁という形でなくて、やはり行政委員会のような形で持つべきものじゃないかという気がいたしまして、かねがね多少の検討はいたしておるわけでありますが、まだ結論を得るところまでいっておりません。
  70. 門司亮

    ○門司委員 今の大臣の答弁ですが、私はそういうことではいけないと思うのです。大田は、こういう問題について、はっきりさっき申し上げましたように治安の責任者としては当然やられることだと私は思うのです。それをここまでは教育だ、ここまでは治安の関係だから主としてこれは取り締まりの関係だ、ここからここは養護関係だからこれは厚生省がやるんだ、こういう区別をしておりますと、実際の問題としては、われわれも調査をいたしましても、どこに調査に行けばほんとうのものが出てくるかということがわからぬのです。従って大臣の気持をもう少しはっきり聞かせておいていただきたいと思いますことは、治安関係だから治安関係だけを取り上げてみましても、警察で一応調べるといいますか、補導した青少年に対するその後の処置ですね、あるいはごく悪いのは鑑別所に送る。それからそういう処置と同時に各家庭その他に対する協力をどういうように一体求められておるのか。それから家庭の協力を求められると同時に、それの保護の状態がどういうふうになっているか、私もよく詳しいことはわかりませんが、実は横浜にも横浜市だけでやっております青少年問題協議会がありまして、ここではかなり警察と密接な連絡をとって、そうして相当長い問、あまり公にはされておりませんが、かなりたくさんの書類をずっと出しております。その中でずっと私どもが見て参りますと、出てくるのはやはりいろいろな原因が私はあると思う。そしてそれはほとんど家庭に結びついた原因であって、従って単に警察で非行少年だからといってつかまえてきて一つかまえるというと語弊がありますが、補導という言葉を使っておりますが、補導して悪いのを鑑別所に入れただけではどうも足りないような気がする。環境が悪いとか、あるいは子供の性質上工合が悪い、非常に孤独感の強い子供であって友だちができないとかいうようなものが、つい非行に走りやすいとかいういろいろな原因が出てきている。従って、そこまでいけばおそらく社会教育の問題にぶつかってくる。もう一つは、環境の中には家庭が非常に生活に困っておって、親御さんが共かせぎをしている、子供は一日中野放しだというようなところを一体どうするか、ここまで踏み込んでこの問題に対処することを考えなければ、私はこんな法律を幾らこさえても結局罪人をこさえるだけで別段大した効果はないと考える。そして今統計で見てみますように、今の統計は飛び出しナイフだけでありまして、その他の問題はあまり改正案対象になっていない。従ってあまり書かれていないようでありますけれども、私は、今日の犯罪の大部分というのはこういう二十才前後の諸君で行なわれておると思う。それからもう一つは十八才未満のところ、いわゆる小学校の四年から五年あるいは中学校の年令のところに非常に大きな原因をこさえる環境的にも問題が伏在しておるように私どもには見受けられるのですが、そういうものについては文部省その他と連絡をとられて、そういう非行少年に対する処置等について協議されたことがございますか。またそういう連絡の機関がございますか。
  71. 木村行藏

    木村(行)政府委員 一応正式の連絡機関といいますと、先ほどお話がありましたように中央青少年問題協議会で、いろいろな具体的な統計なり材料なりケースを持ち寄って相談しておりますが、それ以外に文部省に対しましては、私たちの方から防犯課長あるいは私が向こうの担当局長といろいろこういう問題について連絡をしております。また厚生省には児童局がありますので、厚生省当局にも連絡はいたしております。
  72. 門司亮

    ○門司委員 その結果はどうなっておりますか。ただ連絡をするだけでなく、私がさっき申し上げたように、これにはいろいろな原因があるんです。子供自身を矯正すれば直るのと、家庭から矯正していかなければ直らぬというのと、住んでいる環境まで直さなければならぬと思いますけれども、そういう地帯に住んでいる、悪い言葉で言えば一つの悪の巣みたいなものがある。そういうところに住んでいる人は、そこからどこかへ行ってしまえばそういう子供はよくなるかもしれない。しかしそこへ置いている間はだめかし、実際はそれを今のままで移すわけにはいかないのです。そういうものについてまでも一体検討されて、そうして処置がされておりますか。
  73. 木村行藏

    木村(行)政府委員 中央官庁といたしましては、大体全般的ないろいろな方針なりあるいは対策について話し合いをしておりますが、門司委員の御指摘のような具体的なケースについてのそれぞれの非行に至るところの原因というものが多岐にわたって、しかも特定しておるわけでありますから、それらの原因の解剖につきましては、たとえば第一線におきましては県警察本部あるいは第一線の警察署それぞれの単位で関係機関とは連絡をいたしますが、特に第一線の警察署におきましては少年相談所というものがありまして、その相談所において、たとえば特定の非行少年を発見した、それの補導に当たったという場合に、その少年をめぐるいろいろな環境について具体的に父兄と相談したり、あるいは学校の先生と自発的に連絡しまして、その原因を掘り下げていく。また、その原因によってそれぞれとるべき措置については関係機関に連絡しておるというケースは、第一線には非常に多うございます。
  74. 門司亮

    ○門司委員 第一線に多いことは私も知っている。この種の問題はほんとうに検討していこうとするなら、第一線の警察で非行少年を保護し補導した者との連絡が一番手っとり早く発見ができる。これはすぐにわかりますから、従ってそれに基づいて地方ではやっておることは事実なんです。が、しかし、救護する、あるいは環境の問題を何とかしてやればどうにかなるんだというところまで世話をされておるかどうかということなんです。具体的な問題を解決するためにどれだけの努力がされておるかということです。これは今やられておりますか。
  75. 木村行藏

    木村(行)政府委員 あるいは私、取り違えてお答えしておるかもしれませんが、中央官庁としては、特定のケースについて具体的に文部省あるいは厚生省とそれぞれ対策を連絡はいたしておりません。
  76. 門司亮

    ○門司委員 どうも私はそうだろうと思う。ほとんどやられていないのが事実だと思います。  それからもう一つの問題は、何らそういうものに対する予算的の措置が実はないわけであります。だから宵少年を研究するといいましても、国から金を出すわけでもなければ何でもない。さっき申し上げたように、都道府県知事あるいは市町村長で非常にそういうことに関心の深い諸君は、おのおのの自治体の費用の中からさいて、警察と相協力して何とか補導していこうという考え方で行なわれております。しかし国その他はこういう問題に対してはほとんど予算的処置はいたしておらぬのであります。同時に、これは大臣に一つ考えを願いたいのでありますが、従ってそういうものについての予算的措置というようなことが国の予算の中で考えられるかどうかということであります。具体的の問題をどう処置していくかというところまで予算がつけられるかどうかということです。それから各都道府県や市町村で、この問題に対して十分に掘り下げて、そして研究所なりあるいは補導する経費は国がめんどうを見るということができるかどうかということです。私は、一番末端にいけばあげて経費の問題になると思います。調査資料はいろいろ集まってきます。しかし具体的に直そうとすれば、どうしても予算がついてこなければ動きがとれない。調査自身もやはりある程度予算が伴わなければ調査することも困難です。だから、そういう問題について予算的措置を大臣はお考えになることができるかどうかということを、一つはっきり御答弁を願っておきたいと思います。あとでまた請求に参りますから、はっきり言ってもらいたい。
  77. 安井謙

    ○安井国務大臣 この問題につきましては、たびたび申し上げますように、文部省なりあるいは厚生省といったような面接関係の部門からそれに相応した予算も組まれてはおると存じます。しかし、またわれわれ自体は地方自治体を指導する上からも、あるいはまたもう一つ警察という立場から、この青少年を具体的に補導、育成していく面からも、今後十分一つ検討いたしまして、今までの費用で足りない面は今後も補給していきたいと考えております。
  78. 門司亮

    ○門司委員 それはあとでまた青少年の非行その他の小委員会ができておりますので、いずれそこで協議をして、そしてさらにお話をすることに一応いたしておきます。  次にお聞きしておきたいと思いますことは、この法安米の考え方についてであります。提案の理由を読んでみますと、大臣のお話を聞いてみますと、事態がこういうふうになったから、それでこういう改正法案を出すのだということでありますが、この五条の改正をされました動機は一体どこにあったかということを一応お聞きしたい。
  79. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 五条の改正は、従来許可をしてはならないという場合といたしまして、許可を受けようとする者自体について欠格条項を定めて、それに該当するときは許可しないということにしておったわけでございますが、たとえば許可を受けておった者が、あるいは許可を受けていない者でも、その者が非常に暴力的な犯罪の常習者であるというような場合におきまして、許可を受けている場合には取り消して、その銃砲刀剣を持たないようにすることができるわけでございます。そういう場合におきまして、実際には自分が支配しておる家族の者の名前で許可を申請してくるというようなことになりますと、現行法においては、その弟なり子供なりというもの自体は欠格条項に当たらないということになりますので、許可をしなければならぬということになるわけでございますが、そういうことのために、実際にはそのよろしくない者がこれを使用して、犯罪の用に供するということがあるわけでございますので、そういう甲案を防ぐという意味におきまして、家族の中に危険な者がおるという場合には許可しないことができるということにいたしたいというのが趣旨でございます。
  80. 門司亮

    ○門司委員 そういたしますと、非常に大きな問題が次に出てくるわけでありますが、きょうは法案についてのみ主として聞いておきたいと思います。現在日本全体で、この法律規定してあります、銃砲刀剣という書いておりまして、この中には許可をするものとそれから届出をするものというようにいろいろ分けてありますが、いずれにいたしましても、この法律対象となるものは大体どの程度あるかということは、一応この統計表に出ております。たとえば許可した数、何をどれだけ許可したということを書いてあります。しかしこの中には含まれていないと思いますが、現実に日本に凶器を持っている人はたくさんあるわけですね。第一に警察官、これは凶器を持っておりましょう。これにちゃんと当てはまる。これは職務上持っておるんですよ。それからその次には戦車まで持っておるのが自衛隊ですね。これは私物であるか公物であるか別にしまして、彼らも鉄砲を持っていることは事実です。そういたしますと、これが一体どのくらいあります。警察官の数は大体わかっておりますが、あるいは鉄道公安官が持っておる。それから麻薬や何か取り締まりに行くときに彼らも凶器——凶器と言うと怒られるかもしれませんけれども、何か護身用銃砲くらい持っているかもしれない。そういうものがどのくらいあります。この法律で一応取り締まり、あるいは届け出の対象外になっている、公に自分の職務上所持しているものがどのくらいあります。これはわかりますか。
  81. 木村行藏

    木村(行)政府委員 正確に数字を申し上げるのは、目下ただいまのところできませんが、警察官の数は十二万幾ら、自衛隊が二十万をこえておる、鉄道公安官が幾らということで相当の数になるということは申し上げられると思います。しかし拳銃を持っておるのがどれくらいあるかということについて確定的には申し上げかねますが、三十何万、その前後じゃないかと思います。正確には申しかねます。
  82. 門司亮

    ○門司委員 そういたしますと、文部省の方おいでになっておりますか。——この改正法案に直接関係がありませんが、こういう取り締まりの対象にならないものとして一応考えられておるものが、文部省で例の工芸品として、文化財として保存されておるものがいろいろ私はあろうと思います。しかし概念としては火なわ銃からいろいろな刀剣のすべてがこの中に含まれております。銃砲刀剣という概念には含まれておるから書いてあるわけですが、ただ許可をするか、あるいは保存の届け出でよろしいか、あるいはあなたの方から重要文化財として指定されたものは保存してよろしい、そういうものは届け出ればよろしいということになっておるが、これはしかし取り扱い上の一つの概念から出てきたものであって、凶器という考え方からいうと、同じことです。国宝の刀であっても人は切れる。文化財として保存されている火なわ銃でもたまを込めて火をつければやはり飛ぶのです。凶器としての考え方からいくと、私は同じものだと考える。そういうものが従来は、この法律に基づいては三章の十四条の登録というところで大体済まされております。しかし、この数は一体どのくらいございます。
  83. 松下隆章

    ○松下説明員 お答えいたします。ただいま文化財保護委員会で登録しております数は、銃砲、刀剣合わせまして約七十四万四千ほどあります。そのうちに国宝、重要文化財、重要美術品約千九百くらいが含まれております。
  84. 門司亮

    ○門司委員 さらにもう一応聞いておきたい。非常にたくさんあるということで驚いたのですが、七十四万もあっては大へんだと思いますけれども、これの保存を御依頼になっておるというか、あるいは命ぜられておるというか、その人についてはどういう基準でこれにまかされておりますか。
  85. 松下隆章

    ○松下説明員 登録制度と申しますのは、あくまで美術品である銃砲刀剣そのものを保存しようということが目的でありますので、特にこの所有者については別に条件あるいは資格というようなことは考えておりません。あくまでも物中心で登録しております。
  86. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、これは警察庁に聞きたいのだが、この法案の概念として、私どもは今申し上げましたように銃砲刀剣というものが全部これに含まれる。そして十四条に登録ということがあって、これに書いてある。こういうことを見て参りますと、こういうものがやはり一つ法律対象になっているということは事実だと思う。そうしますと、許可その他を受ける者だけが、今この法案の提案の理由のようなことで、一応またワクを広げて、そして同居の親族その他がこれに含まれるということになって、登録の方にこれは適用ができないと思うのです。この法律改正では五条だけの改正でありますから、十四条をいじっておりませんからどうにもならない。しかしその考え方はどうなんですか、工芸品として保管すべきだと考えられるものは、これは国民が登録すれば自由に持てるのだ、しかしこれは場合によっては凶器になり得る可能性があるのだ、この点の関連性はどうなんですか、取り締まり当局はどういうふうに考えておりますか。
  87. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 確かにお話しのように美術品あるいは骨董品としての銃砲刀剣というものは、そのものの価値ということに着目いたしまして保存されるべきものとして登録を申請して登録するということになっておりますので、これを所持する者についての制限はない。登録証というものとともに他に移すこともできるということに相なっておるわけでございます。取り締まりという面だけから網をかぶせると申しますか、そういう建前をとるということになれば、確かにこの点は第五条からはずれておるわけでございますから抜けておるということになると思いますが、そう全部のものについて第五条的な感覚でやらないで、物の価値ということで、十四条の登録銃砲刀剣につきましては従来通りの考え方でいこうということで、あえてそれまで網羅することを考えなかったわけでございます。従来の五条に関する限り幅を広げた、規制の幅を広げた、こういうふうな考え方でございます。
  88. 門司亮

    ○門司委員 そこで私どもがちょっとおかしいと思いますことは、従来の五条の関係は、たとえば工芸品のようなものではなくして、人に許可をしておるということは事実です。しかしそれは本人に限られておった。今度のこれは本人に限らないで、そうして同居の親族等にどうもおかしい者がおれば許可をしなくてもよろしい、こう幅が広げられたということですね。これは凶器が乱用されるということですね。本人には預けておいてもいいのだが、ほかの者が使うかもしれないというのでこれを押えようというのが今度の五条の精神だと思います。そうすると、文化財として今までは必要でなかったのだ、しかしそれが凶器になり得る可能性を十分持っておるということですね。なぜこれを一体規制しなかったのですか。私はこの規定は非常におかしいと思う、文化財の関係とこの関係というものは……。これは文部省の方は御迷惑かもしれませんが、おれの方にそんなものはないとお考えになるかもしれませんが、しかし法律考えてくると、そこまで考えないと、私はこの法律は非常におかしな法律になってきて、そうして一方では対人問についてはこういう規制を設ける、対物については同一の危害が加えられるような凶器であっても、物だからこれでよろしいのだということになると、抜け穴ができたような気がするのです。今まではこれでよろしかった、申請をしてきた人の身元を調査して、この人ならよろしかろうということで許可をしておった、従来は物と人とがそういうウエートの上に置かれておった。今度これが広げられておりますから、そうするとやはりこういう重要文化財であっても——重要文化財というようなものは別でありましょうが、保存するいわゆる登録の範囲にとどめられるものも何らかの規制をしておかないと、この規制法律改正される概念——と言うと言葉が大き過ぎるかもしれませんが、動機あるいは原因あるいは考え方とどうも私は食い違ったような気がするのですが、この点はどうなんです。
  89. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 確かにお説のようにある面で食い違っておるということは、現行法においてもその通りやはり食い違っておるわけでございまして、登録刀剣につきましては、持っている人間の、だれが持っているということには着目しないで、物と登録証と転々と動いていく、ただ動く場合がある。ただしかし、だれが持っているかわからぬということではいけないので、それが登録された場合においては、その所轄の都道府県公安委員会文化財保護委員会から通知するということがあり、またこれが譲渡されたりした場合においても、届出義務を課し、同時に都道府県公安委員会に通知するということには相なっておるわけでございます。食い違いということをおっしゃる点につきましては、現行法も食い違っておるし、今度も食い違っているということは率直に認めざるを得ないのでありますけれども、従来それ以上に規制していなかったものまでこの際ひっくるめてやるというところまで踏み切って規制を強めるということは考えないで、この程度改正をする、煮え切らないといえばあるいは換え切らないかもしれませんが、今までの五条の範囲では、いかにも脱法的なことが行なわれるということになるので、これを是正していくという考え方であります。
  90. 門司亮

    ○門司委員 私は、今でも同じことだといえば同じことですよ。今度は法律改正して片一方だけよけい規制しようとするから、開きがだんだん大きくなってくる、これは事実だと思う。現実の問題としてそういうことになるから、重要な点で一つ聞いておきたいと思うことは、たとえば淺沼委員長を刺した山口二矢のおやじさんは、あれはたしか自衛隊に関係のあった人でしょう。自衛隊の階級はたしか二佐というのですか、昔の中佐くらいの階級だった。あの人のうちにあった刀ですね。私は、あの人は身分上対外的に見ればあるいは登録されたものをお持ちになっておったかとも考えられる、合法的なものであったかとも考えられる。実際は、それが持ち出されてああいうことになった。だから私は翻って聞いておきますが、あの山口二矢のおやじさんの持っておった刀というものは登録の部類に属しておったのか、許可の部類に属しておったのか、無許可で持っておったのか調べられた結果はどうなっておりますか。
  91. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 山口二矢の父が所有しておりました刀剣は、許可を受くべき刀剣であって、許可を受けていなかったということであります。
  92. 門司亮

    ○門司委員 大へんなことにだんだんなろうかと思いますが、そういう許可を受くべきものであって許可を受けていなかったということについては、これはこの法の処罰の対象になる。しかし、さっきから私が申し上げておりますように、許可を受ける対象にならなくても、今お話しのように、七十何万もあるといたしますと、かなりたくさんあると思います。そういうものが凶器に使われないという保証はできない、どんなことがあっても。そこでやはりこれらの問題についても、持つ人口によっては、今度この法律改正された概念からいいますと、持っておる本人許可してもよろしいのだ、しかしうちにそういう者がおれば取り消すと、こういうのでしょう。そうすると、本人は登録しておればそれでよろしいのだ、しかし家族にこういうものがあったら一体どうするのです。同じ概念で私はここに入れるべきだと思うのです。それをそうしないと、片一方は野放しになって、片一方だけそういうものが出てくる。こういう考え方が、どう考えても私には考えられるのですが、その辺はどうですか。登録者は全部善良な人であって、その家族も全部善良なる人であって、これも今度の改正法案にはひっかからないという保証は私はできないと思うのです。
  93. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 その点は、登録刀剣についても確かにお話しの通りそういう危険はあるわけでございます。それは現在も、登録した本人がおかしな人間であっても、美術品として登録されれば持っておれるという規定でございますから、あぶない者には持たせないという趣旨を一貫していく、徹底していくということになれば、美術品たる刀剣についてもそこまで規制していくということが一つの行き方だと思うのでございますけれども、従来とも価値のあるものについては、そうした危険性ももちろんあり得るわけでございますけれども、これについては所持について規制を加えないということでずっときておりますので、今まで規制を加えておった部分の家族について広げるから、こちらも家族の人柄まで洗うべきだというところに踏み切らなかったわけでございまして、今までも登録刀剣については本人がどうであるかということも検討しないで、単に物について考えておったわけでございます。ただ美術品であっても、正当な理由なくして携帯する、持って歩くというような場合につきましては、規制の対象になることは許可刀剣と同じでございます。
  94. 門司亮

    ○門司委員 どうもその答弁だけでは納得がいかないのですね。それなら突っ込んでもう一つ聞いておきますが、この法律をこういうふうに直される動機は、犯罪事実としてどのくらいありましたか。どうしてもこういうふうに改めなければ、今のようにただ許可しておっただけでは持ち出されていたずらされて困るという改正の動機になった資料が何かありますか。
  95. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私、数字的にこの改正の条項に該当するような事件が幾つあったかということは承知いたしておりません。今まで規制の対象になっておりませんので、現実に犯罪がそういうことによって起こったという統計はおそらくとっていないかと思いますが、この資料のあとの方に二、三そういう事例をあげておるわけでございまして、やはり家族にそういうおかしな者がおるということによって不都合が起こる危険性が相当あるということは確かに言えることではないかと思うのであります。
  96. 門司亮

    ○門司委員 どうも根拠がきわめて薄弱だと私は思うのです。言えることは言えるのですよ、その点は文化財の方にも同じことが言えると思う。今まで絶無ではなかったと思うのです。当然登録してよろしい刀剣類あるいは銃砲類で人を殺傷しなかった、例はなかったと言い切れぬと思ます。私は文部省の方に数字を言えとは言いませんが、あったことは確かにあったと思うのです。そうすると、五条の許可に該当するものは私は同じことだと思う。だから示してもらいたいのは、こういうふうに法律改正すると、この法律は非常にやっかいな法律でございまして、私は本会議で申し上げましたように、場合によっては戸口調査をしなければならぬようなことになる。そうしなければ、ほんとう——願い出た本人の身元を調査することは簡単ですけれども、そのうちにどういう者がいるかということをずっと調べて、同居の家族はどういう性質でどういう行動をするかということを調べなければならない。絶えずそういうことを行なっていなければならない。そうなって参りますと、昔の戸口調査のような形が出てきやしないかと考えられる。警察の中で一番おそろしいのは、そういう昔の警察の概念というものが依然として私は警察の首脳部の頭の中から消えていないのじゃないかと思う。  昔の古い記録を書いてあったのがありますが、古い記録には戸口調査をせよとはっきり書いてある。これは古い記録でありますから、今こんなことを言うとあるいは笑われるかもしれませんが、明治八年の「太政官達第二十九号、行政警察規則」と書いてある。これは警察の法典の中にみんな書いてあって、警察概念はここから出てきたようなことが書いてありますが、その中にこう書いてある。警察というものは「人民ノ凶害ヲ豫防シ安寧ヲ保存スルニアリ」、これを警察官の職責というようにちゃんと定めてある。そうして「持區内ノ戸口」持区と善いてありますが、受け持ちの区内の「戸口男女老幼及其職業平生ノ人トナリニ至迄ヲ注意シ若シ無産艦之者集合スルカ又ハ怪シキ者ト認ルトキハ常二注目シテ其擧動ヲ察スヘシ」というのが明治八年の太政官達の行政警察規則に書かれてある。この概念が警察はどうしても抜けないのではないかと思う。何かものを考えているうちに、こういう許可だけしたのでは、本人はよろしいと思っても、その回りの人に悪いのがおれば、これも押えておかなければならないということが一つ考え方の中にあって、その考え方のさらに奥の方には、こういう古い警察概念があって、絶えずそういうものに注意しておらなければならないという概念がどうしても抜け切れないのではないか、こういう気がするのです。警察自身をどう考えるかという概念等についても、明治憲法時代のたとえば美濃部さんの警察とは何ぞやという理論あるいは新しい憲法になった田上先生のものの考え方を比較いたましても、実はそう大して違わない。ただ主権者がかわってきたからということが少し憲法の上で違うだけであって、警察行政の概念はそう変わっていない。そこで新しい中にどうしてもこういう古い警察の概念があって、今長官のお話のように、実際にこういうことをしなければならなかったほどの数字的な根拠というものは、今われわれの前にはっきり示されていないと言ってもよろしいと思う。全然そういうことがなかったとは言い切れない、あることはあると思います。しかし、法律改正しなければならないほど差し迫った問題があったかどうかということについては、私は疑問があります。むしろ刀剣銃砲等のこういう凶器を所持しておる者に届け出等に対して十分に注意する方がよかったのではないか。今の山口二矢の問題にいたしましても、当然届け出るべきものをおやじさんが隠して持っておって、それが凶器になった。こういうことを考えて参りますと、私はどう考えてもここは工合が悪い。今の御答弁を聞いて、山口のおやじさんは当然許可を求むべきものを求めなかったというお話でございますけれども、あの人の職業柄は軍人ですね、これは願い出れば、職業柄当然許可されておったと思う。ところがそれが持ち出されておる。だから、あなたの方の改正されるような議論がもし成り立つとするならば、警察官自身の身分は一体どう考えられますか。今の十何万人かおる警察官あるいは二十万人かの自衛隊、凶器という言葉が悪いか、そういう銃剣等を持っている自衛隊の諸君、あるいは公安官の諸君というような諸君の同居の家族の中に、もしこの法律に該当するような者がかりにあるとするならば、その警察官はやめさせますか。凶器を持つことのできない警察官——凶器と言うと悪いが武器を持つことのできないような警察官は、職務は勤まらぬと思う。そこまで伸びやしませんか。そこまでお考えですか。
  97. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 警察官につきましても、銃砲刀剣については一般人と同じでございます。拳銃につきましては、特に公務上持つ必要があるので持たせるわけでございますが、この保管についてはきびしく指導し、要すれば帰るときは警察署にこれを保管するということを原則にしておるわけであります。またどうしてもうちに持って帰るという場合においても、これをちゃんと格納するというような方法をとりまして、家族の手にわたるようなことのないような注意を十分怠らないようにしておるわけでございます。もしそうしいこともできないような者は、これは警察官としての資格がないものと思いますけれども、そういう注意を怠らない者でありますれば、かりに家族の中におかしな者がおったということになりましても、これをやめさせるということはあり得ないことでございます。
  98. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、そこはどう考えてもおかしいですね。ピストルは一般の者が持っていようと警察官が持っていようと同じことなんです。警察官が持っていようとその家族の方が持っていようと、これは同じことです。それは盗み出されればけっこう使われるのです。ですから私は、一般にこういう法律改正して規制するのなら、これが職務上持っておるところまでどうしても波及せざるを得ない、適用せざるを得ないと思うのです。これは今のままならよろしいのです。片っ方は許可によって持たせる、片っ方は職務上持っているのでありますから。これを見ると、許可をして持っておるということと職務上持っておるということについては、本人自身が対象で家族が対象じゃないのですから、そう変わらぬと思うのです。ところが今度の場合は、一般人には家族にそういうやかましいことを言う。ところが警察官にはそういう者があってもよろしいんだということになれば、これほど危険なものはないと私は思う。そうすると、警察官や鉄道公安官の家族くらいぶっそうなものはないということになって、非常におかしなことになりゃしないかと私は思う。これはどうなんですか。もう少しお変わりできませんかね。今長官の御答弁のようなことでよろしゅうございますか。それでよろしいということになると、えらいことになろうかと私は思いますよ。
  99. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 私は、私がお答え申し上げたのでよかろうというふうに考えるわけでございます。それは公務上必要があって持たせるということでございますが、これは公務のためにのみ使用する。そのために保管というようなことについても厳重に監督をいたすわけでございます。一般の許可銃砲刀剣等については、その保管について特別の監督をするというようなことは、これはまた行き過ぎでございますので、心配ない者、また家族にも心配がないということなら自由に持たせておくという建前でございますが、もしそこに心配があるということであれば、許可をしないことができるということにして今後改正をしようというわけでございますので、公務上持って、厳格に保管について注意をする、平素もそれについての監督を怠らないという体制とは、一般人と同一に論じ得ないのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。
  100. 門司亮

    ○門司委員 どうもその辺が理解ができないのですが、やはり民間人にこういう法律を適用しようとするなら、これは事実同じように許可になるのですから、持っている人については、それが職業であろうとなかろうと、私は法律はやはり同じように適用されるべきだという考え方に立つのが当然だと思います。極端なことを言いますと、警察官の諸君を前に置いてこんなことを言うと怒られるかもしれませんが、警察官の家庭には多少のそういう危険性のある者がおっても、その家庭内にピストルが持ち込んでおけるのだということですね。どんなに保管を厳重にせよと言ったって、金庫の中に一日じゅうしまっておくわけにもいきますまい。寝る場合にも一切がっさいからだにくくりつけておくわけにはいかぬと思う。やはり多少のすきもあるし、整備時間もあるかと思う。片っ方の許可の方には、そういう怪しい者があるから、お前の方は許可しなくてもいいが、片っ方の者はそういう者があっても職務だからよろしいのだということになると、これは少しおかしいような気がするのです。だから、この場合に聞いておきたいことは、さっき申しましたように、この法律が施行された場合における警察官やなんかの取り扱いも、重ねて申し上げておきますが、それに準じて行なわれるのかどうかということです。
  101. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 もちろん従来とも警察官についての保管に関しましては厳重に注意をいたし、規則をいたしておるわけでございますが、もしこの法案が出るということになりますれば、さらにただいまお話しのような御趣旨に沿って十分家族に使用されるようなことのないような措置を厳重にとっていかなければならぬと思います。また、かりにこの法案改正にならなくても、今後注意の点は十分考えまして、さらに注意を喚起して参りたい、こう考えます。
  102. 門司亮

    ○門司委員 いいかげんにごまかされては困るのだが、私の言っているのは、この法律の適用は、事実があったからこれが適用されるのじゃないのです。そういう疑いのある者については許可をしなくてもよろしいということなんです。警察庁の方にも同じようにやってもらいたい。警察官の家族の中にそういう疑いを持つ者があるとするならば、これを同じように取り扱えば、警察官をやめさせなければならぬということになってしまうでしょう。だから、一体どういうふうにこれを警察として、取り扱っていくかということを私は聞いておる。ところが、事犯が起こればといっても、今まではあまりやめさせるというような者は少ないのです。実際は交番などでときどき取り上げられることも、取られることも、あるいは盗まれることもある。しかし、すぐその人が免職にならなかったという事実はありますね。だから、ここまでこの法律改正をされますと、どうしてもわれわれとしてはそういうことにならざるを得なくなってくるのですが、職務だからよろしいのだ、そしてそれは法律の適用外だというような考え方だけは持ちたくないのです。やはり同じようにこの法律の適用は受けるのだという考え方を持っておらないと、私は非常に危険があると思うのです。それは同じように全部あなたの部下でしょうが、警察官でも、ここまで言うと言い過ぎますけれども、たとえば、おやじは警察官だが、その家庭の中にこういう者がおる。だから家族の者は気をつけなければいけませんよというようなことを十分浸透するようにしておかなければいけないと思うのです。だから、私があなたにお聞きをしてはっきり言っていただきたいと思うことは、この法律改正でこれの適用されるのは、職務として持っておる諸君も同じような趣旨で適用はあるのだということ、許可するとか、しないということは、片方は持たせるから処分でやられるので、これは別です。しかし、同じような概念でこれは法律の適用はあるのだということにしておきませんと、非常に大きな片手落ちになりはせぬかと思うのです。
  103. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 御趣旨はよく了承いたしますし、私も先ほどお答えいたしましたのは、事件が起こったら処置するというのでなくして、この法案が成立した暁には、御趣旨のような考え方でさらに厳重に保管等について考えたい。また、かりにこれが成立しなくても、お話しの点は警察官としては当然考えるべき問題でございますので、厳重に指導して参りたい。もっと具体的に申しますれば、原則としてうちには持って帰さないという建前を現在とっておりますけれども、特におかしな者がおるというようなものについては一切うちに持って帰させない、署に保管するというような方法考えるべきであるということを申し上げておるのであります。
  104. 門司亮

    ○門司委員 そこまでかばわなくてもいいじゃないですか。もう少しあっさりいけませんか。私は警察処置でこの法律の適用というものは違うと思うのです。まあ警察がそういう御心配をされるのは当然だと思う。しかし、法律の適用上、作用はやはり国民全体と同じように作用するのだという概念だけは一つ打ち立てておきませんと、およそ警察官なるがゆえにそういう規制はされましょうけれども、少し変なと言っては悪いですけれども、持ち出して何か犯罪を犯しはしないかというようなのがかりに世間の目から見ておっても、あれは警察官だからよろしいのだ、ピストルを持って帰ってもよろしいのだ、そういう者がうちの中におってもよろしいのだという概念を国民に与えるのはよろしくないと思うのです。一方は、私なら私個人は何もしないけれども、お前の子供によくないのがおるから許可しない。片方は、どうも世間から見ておかしいのがおりそうだといっても、あれはおまわりさんだからよろしいのだということになると、この法律を適用する概念というものが非常におかしなものになってきはしないか。だから、やはり法の前には同じような処置ができるような考え方をしておいていただかないと、あまりかばい過ぎて、おれの方にはそんな者は絶対いない、だから間違いないのだというようなことは、あなたの立場とすればそう言わなければならぬかもしれませんが、やはり法律の適用によって作用してくる対象になった者としては、それはちょっと片手落ちになるじゃないかと思う、こういうことなんです。
  105. 田中榮一

    ○田中(榮)委員 ちょっと関連して。ただいま同僚の門司委員から警察官の拳銃の持ち帰りの問題が今問題になっておるようでございますが、警察庁長官にお伺いいたしますが、大都市の警察等においては、警察署に拳銃の保管の設備を作りまして、そうして警察署が帰宅する場合にはその拳銃、弾丸を全部警察署の保管施設に寄託して、そうして帰宅する。こういう制度になっておるように思うのですが、いかがでしょう。
  106. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 その通りでございます。
  107. 田中榮一

    ○田中(榮)委員 その制度が大都市だけの警察になっておりますでしょうか。たとえば駐在巡査、駐在所などはどうですか。
  108. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 おおむね各府県とも今のようないき方をとっておるわけでございます。そういうふうに指導いたしております。しかし、駐在所等は、常時そこで勤務するという体制でございますので、これは就寝時等については、格納の箱を渡しておりまして、これに格納するように指導いたしております。  門司委員のお話はよく私もわかるのでございまして、法の前にはすべて平等であり、規制も同じようにしなければならぬという点はその通りでございます。私が先ほどから申し上げておりますのは、公務のために拳銃を警察官というものは持つ必要があって持つのでありますが、ただいま田中委員からもお話のありましたように、原則的には、うちに持ち帰らないように保管するという制度をずっととってきておるわけでございます。特に家族におかしい者があるという場合におきましては、絶対持ち帰らせない、公務の場所以外には家庭には持っていかないということを厳格に守るように指導していくということによって、弊害は除き得るのではないかというふうに考えるわけであります。
  109. 門司亮

    ○門司委員 あなたがそんな答弁をされると、押し問答をいつまでもしていなければならない。私はそういうむずかしいことを言っているのではないのです。警察はそういうふうに指導することはあたりまえなんです。こんな法律があろうとなかろうと、一つの凶器であるには間違いないのです。凶器というと悪いかもしれないけれども、凶器になる可能性は十分持っているのですから、あってもなくてもそういうことであると思うのです。ところが今のお話のように、警察官といえども油断をすることもありますし、いろいろな問題があるわけなんです。そこでさっき言いましたように、世間から見ると、そういうふうに見えるのである。そういう議論があなた方の方でなされるということになると、私は警察官の居住の問題を少し話さなければならないと思うのです。警察官としての居住の設定というのは非常にむずかしいのである。私は今の警察官の住居の設定は誤りだと思っておるのです。寮をこしらえたり、あるいは住宅が集団しておったりするということは、警察行政として非常に大きな誤りだと思うのです。私はこれについてほんとうによく警察行政だけを議論するなら聞いておきたいのです。警察の概念というのは、警察官一つの寮の中に同じような生活をしておる、一つの地域に警察官の住宅が集団のような形で密集しておる、そこで警察官が生活をしておるということは、社会的構成の上から非常に大きな誤り、だと私は思っているのです。警察官というのは絶えず民衆の中にあって、警察官の生涯自身が絶えず民衆に理解され、了解され、そして初めて警察官としての一つの任務が勤まるのでありますので、警察官の住居が隔離されておって、そして私生活その他が民衆から離れたところで生活をするという概念は誤りだと思うのです。警察行政については、そういうことをほんとうにいくんならそこまでこういう問題を処理しても私はいきたいのです。だから警察官が集団された中におれば、どうしても世間の目は通らないのですね。そこでややもすれば警察行政というものが独善に陥りやすい。いわゆる警察官の実態というものが世間となじまない。私は民主警察というのは、勤めている警察署にいる間あるいは交番に立っている間は職務だからよろしろが、うちに帰ってくれば、一般人と同じような家庭の雰囲気の中に、町の中に警察官がおってこそ、初めて民主警察としての要素がそこに生まれてくるのであります。従って警察官は、やはり全体の市民と同じようなところに住んで、同じような環境の中にあってということを原則といたしますと、今申し上げましたように、隣のうちはおやじさんはりっぱな人で許可を願い出たけれども、子供に悪いのがいて許可ができなかった。こっちの方はおまわりさんだから、ピストルを持って帰ることもときどきあるけれども、どうもあのうちはあぶないという概念を持たせないとは限らないと思うのです。今警察官は住居まで隔離されておりますから、そういうことが往々にしてあります。横浜などあります。あそこのうちは一体どこの住宅だというと、警察官の住宅だということで、察官ばかり住んでおるところがあります。こういう形になっておるのですから、そういう考え方が出てくるのじゃないかと思いますが、どうですか。これは押し問答をいつまでしておっても時間ばかりかかるのですが、この法律の適用は、そういう意味で職務で所持しておる者にも同じような考え方で通用がされるものだというような答弁はできませんか。
  110. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほどから申し上げておりますように、御趣旨はよく了解できるのでありますが、公務によって持つ者が、家族のうちにおかしい者がいるからといって、公務についても持たせないということは、これはいたしかねるわけでございますので、むしろ必要な持たせ方をして、害のないような管理をするということが必要であろうというふうに考えております。
  111. 門司亮

    ○門司委員 これはいつまで押し問答しておっても始まらぬと思うのですが、警察庁の頭は少しかた過ぎる。もう少し法律についてはオープンに考えてもらわぬと、そこまでかた過ぎると、どうも工合が悪いですな。むろん警察官の中にはそういう間違ったやつはいないのだぞという観念の上に立ってお話しになっていることだと思います。立場上、どうも私の方の部下には怪しいのがおりますというようなことで話はできないと思います。しかし、それはそれとして、法の趣旨がこういう趣旨ですから、本人以外、いわゆる所持を許された者以外の者に怪しい者があれば困るという法の趣旨なんですから、改正の趣旨がそこにあるのですから、改正の趣旨は生かしておってもらわぬと、当然職務で持っている者はこの改正の趣旨からはずれるのだというような考え方では困ると思う。そういう法律でないと思うのですが、どうなんでしょう、違うのですか。これは一般の者だけに適用するのだ、今職務で持っている者は適用しないのだという考え方なら、これは別です。そういうことなんですか。そうじゃないので、やはりこれは法律ですから、みな適用されるのでしょう。
  112. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 さっきから申しておりますように、頭がかたいかもしれませんが、門司さんのお話の趣旨はその通り私も率直に受けるわけでございます。ただ実際問題として、おかしな息子を持っておった警察官に公務上必要があるときは拳銃を持たせる場合がある。持たせるということ、そこまで否定をしてしまうと、私の方の商売が成り立たないのであります。
  113. 門司亮

    ○門司委員 商売が成り立たないのじゃないのですよ。私は別にそれでやかましく商売をするなと言うわけじゃない。ただ法の適用はそういうところに及ぶのだということだけは聞いておきませんと、何か警察官であるがゆえにどういう者があってもよろしいのだ、しかし一般人はいけないのだというようなことでは、法を審議する者としてははなはだ片手落ちで困ると私は思うんです。だからその辺は、気持がわかるなら、そういうふうにはっきりしておいてもらわぬと、どうも警察官という立場だけで、自分の部下だからという立場だけでお話しになると、何とかしてそういう御答弁になろうかと思いますけれども、それは一体どうなんです。いつまでこんなことを繰り返しておってもしようがないが、私にはどうしてもその辺がわからぬ。今言いましたような三条の規定と五条の規定、今の三条と五条なら、同じように取り扱っておりますから、これでよろしいと思うのです。職務で持つ者、許可を受けて持つ者は、これは本人中心でありますからよろしい。しかし、許可を受ける者には本人以外の者を規制して、そうして本人に持たせないというのですから、職務で持っている方もそういうふうにしておいてもらわぬと、職務で持っている者は何でもいいのだ、一般人はこれでワクを広げて取り締まるのだということになると、法の建前上少しおかしいということを聞いておるのであって、いつまでたってもあなた方がそういう答弁をされるなら、三日でも四日でも続きますよ。解決するまできょう中繰り返さなけばならぬ。例を言えというのなら例を話してもいい。おまわりさんの持っておった拳銃が凶器に使われた例がないわけではございますまい。盗み出されたものが調べていったらおまわりさんから出ておったという例がないわけではございますまい。登録制、許可制にいたしましても、この法律によって外人をどうするかということですね。私は何年か前にこの委員会で話したことがありますが、アメリカの軍人が国に帰るときに、ピストルを安い値段で売っていくのです。こういうものはどんどんやみに流れておる。今そこらのやくざの持っているものはほとんど全部と言っていいほどそうでしょう。日本の国でこしらえたものでもなければ、登録されたものでもない。彼らはいつも自由に持てるのです。またうちに帰ればいつでも自由に手に入るのですから、日本にいるときに高く売れるところに売っていこうと考えるのでしょう。実はこういうのがたくさんあるのですよ。だから、こういう法律の幅を広げて、そうして国民の権利とまでは私は申し上げません。悪いことを権利とは言えないかもしれない。しかし、今は自由になっておるものを拘束しようという法の建前の上には、やみで持っておるものも同じようにこの法の影響を受けるのだというようなことぐらいは、言われたって大したことではないと私は思いますよ。その次に来るものは、そういう警察官があったらやめさせるかということを意地悪く私は申し上げましたが、そういうことになると困るのだという親心はあろうかと思いますけれども、しかしこれも考え方によっては、私は、公安を維持する上には必要だと思う。そうして警察官の品位を高める上にも必要だと思う。あまり警察官をかばい過ぎて、警察官の中からそういう間違いが起きたときには、それだけやはり警察官の品位を失墜する。だからどうなんですか、これっきりしか私は聞きませんが、どうしても法は平等に作用するのだということだけは言えませんか。
  114. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど来申し上げておりますように、法は完全に平等に作用するわけでございます。ただ法において、特に公務上持たせるというものと一般に自由に持とうとするものについての規制の相違ということはあると思いますが、しかし現実の取り扱いとして、それによる不都合のないように十分に注意をするということにいたしたい、こう考えておるわけであります。
  115. 門司亮

    ○門司委員 どうも先まで答弁をされるものですから、こんがらがってくる。注意することはわかっている。わかっているから注意するのだ。私はただ作用するかどうかということを聞いておるのであって、いつまで聞いたってこれは同じことなんです。  それからその次に聞いておきたいと思いますことは、この法律狩猟法との関係、これはどうなっておりますか。同じ銃砲ですがね。狩猟の方もこの中には銃砲もあれば刀剣もあるでしょう。甲、乙、丙とか何か三つに分かれておりまして、あるいは銃砲を使って狩猟をするもの、あるいはその他のものを使って狩猟をするもの、網でとるものと、狩猟法の中に三つ書いてあるんですがね。その中の、俗に言えば猟銃でものをとろうとするものとの関係です。許可条件が違うんですが、所持するのは同じですね。だからこれは一緒になりませんか。許可条件が違うんですよ。
  116. 木村行藏

    木村(行)政府委員 狩猟法の方は、御案内の通り狩猟をする場合に、その免許を受ける狩猟免許の関係で規制しておるわけであります。従って一番問題は年令の問題でありますが、狩猟免許を受ける場合には、狩猟法においては未成年者は免許を受けられない。こういうふうになっておりますが、この所持取締法の方は所持許可でありますから、この所持許可については、十四才未満は欠格者ということになっておりまして、年令の差が一番大きい差になっております。従いまして所持取締法では十三才以下は所持許可されない、十四才以上になれば所持許可を受けるということであります。
  117. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こういう解釈をしてよろしゅうございますか。狩猟という目的について許可を得ようとすれば未成年者はいけない。ただ同じ猟銃であっても、所持することだけなら十四才でもよろしい、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  118. 木村行藏

    木村(行)政府委員 さようです。
  119. 門司亮

    ○門司委員 そうすると非常に大きな問題が出てくる。目的が違うからといって所持の年令が違うということになると、一体どうなりますか。この銃砲刀剣類等所持取締法というのは明らかに治安立法です。狩猟法の方は、治安にも関係いたしますが、一つの行為に対する問題です。従って狩猟免許には税金がくっついているということですね、行為についてかけておりますから。片っ方は行為を中心として許可をする、片っ方は所持することに対して許可をする、こういう食い違いがありますね。この法律の趣旨というのは犯罪を防止することなんですが、犯罪を防止する方では十四才から大体許可してもよろしいということになっておりますから、これは六つの年の違いがあるということですね。その辺の考え方はどういうわけですか。この考え方はどうも最初からわからぬのです。銃砲等についても一応これで取り締まりを行なっているが、農林省の諸君に来てもらった方が私はよろしいと思うのですが、農林省の概念としては、二十才未満の者に鉄砲を持たせればあぶないという考え方でおそらく許可していないのじゃないかと考える。ところが銃砲刀剣類等所持取締法の方では十四才未満はあぶないのだという考え方だとすると、法律の文言は違いますけれども、同じ国法で制限を受けていながらこういう違いが出てきている。この違いは一体どこからくるものですか。その点をもし農林省がおいでになるなら農林省に聞いておいてもいいと思うのですが、許可はいずれも公安委員会ですから同じような形だと思います。
  120. 木村行藏

    木村(行)政府委員 ただいまお話しの通り、たとえば例を申し上げますと、十五才くらいの者につきましてはこちらで所持許可される。従いまして持つことはできると思います。しかし十九才以下につきましては、狩猟法によって狩猟免許を受けられないのでありますから、狩猟にそれを使って発射することはできないという問題になるわけであります。今お示しのように、そこに六才の開きがある、開きが大き過ぎるのじゃないかというふうな御疑念がいろいろあろうかと思うのでありますが、一応われわれの解釈といたしましては、十四才以上になれば持つことはできる、しかし実際に狩猟をする場合には二十才以上でなければできない。その間において公安委員会の指定する射撃場で射撃の練習はできる。しかし狩猟はできない。六年間の準備期問というのは長いと思いますけれども、一応の解釈はそういうことになっております。
  121. 門司亮

    ○門司委員 その答弁はどうもおかしいと思うのです。一方では、危険だからということでまず二十才までは実際には使わせない、射撃場その他と限られておりますから。ところが片っ方では十五才からよかろうというようなことでこれを持たせるということですね。しかし犯罪を犯そうとすれば、その目的以外に使おうとすれば使えるのです。狩猟免許法では使えないのだが、撃つことはできるのです。鉄砲ですから、たまを入れて撃てばけっこう撃てる。そういうところにこの法律狩猟法との間に非常に大きな観念の食い違いがありはしないか。だから、狩猟法で一応二十才まではこれは許可しないのだということを立てておくならば、銃砲刀剣類等所持取締法においてもそれとやはり合わせておかないと、国民に及ぼす被害は同じだと思うのですよ。むしろ銃砲刀剣類等所持取締法の方がその点は非常に大きな抜け穴があるのです。片方では厳重に取り締まっている。片方では射撃を六年も練習するかどうかわかりませんが、とにかく練習というものがあるから、十八だからお前、鉄砲を撃ってもいいのだ、しかし許可しないから鳥は撃ってはいけないぞというのはどうかと思う。ここら辺はこれは同じ公安委員会許可ですね。片っ方は農林省関係ではありますけれども、取り締まり行政の上からいけば、警察関係としては同じなんです、許可のなにが違うだけですから。これはどういうわけですか。もう少し詳しくその理由を聞かしておいてくれませんか。そのほかにたくさんありますよ、同じ許可をしないでよろしいという規定が食い違っているのが。
  122. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 正直に申し上げまして、狩猟法の年令制限の関係とこっちの方の年令制限の関係についていろいろ論議がなされております。そしてある程度再検討して年令の面についてもあるいは改正すべきではないかという課題がいろいろ論議されております。実際にその論議についてわれわれもいろいろ資料を集めておりまして、まだ最終結論には至っておりません。ただ一応の考え方といたしましては、狩猟法の方の関係では、狩猟法にいろんな順守すべき法規といいますか、法律及びそれに基づく政令の順守事項がたくさんありまして、それらの事項の順守などについても、未成年ではなかなかしにくかろうという問題もありますし、それからまた、かりにこちらの法律所持許可を受けましても、狩猟法の免許を受けていない場合は、弾丸は買えないことになっておりますので、従ってその弾丸を買う場合には違法になる。こういう関係もあるのでありまして、若干そこらの点はもっと詰めるべき問題がありますけれども、今回の改正には問に合わなかったのでございます。
  123. 門司亮

    ○門司委員 まだほかに大きな違いのあるのは、狩猟法では空気銃を除いているのです。ところがこれには空気銃が入っている。これも同じもので許可をするのとしないのと、食い違いがあるのです。使えば同じ行為になるのです。こういう同じものを二つの法律があって、そうしてこういう食い違いがずっとどこにも出てくるというようなことはあまりよくないと思うのですが、これはどっちにまとめようとするのですか。まとめるなら、どっちかにまとめておいてもらわぬと、国民としては迷惑をするのです。そういうところから往々にして間違った犯罪が起こる。鉄砲を撃つことはできるが、烏を撃つことはできない。そのほかのものはたまさえ手に入れば撃てるのでしょう。さっき新島の問題がありましたが、鳥を撃つことは二十才にならなければできない。しかし持つことができる以上は、今お話しの射撃場において射撃することができる、たまを撃つ行為は行なうことができる。ただ鳥を撃つことができないのかどうかという違いだけです。鳥を撃つことはできないが、人間を撃ってもよろしいということになると、えらいことです。こういう問題もある。こういう矛盾がこの二つの法律の中にたくさん出てきているのです。これはどうあなた方取り締まるつもりですか。
  124. 木村行藏

    木村(行)政府委員 狩猟法とこの所持取締法との関係につきましては、ある程度調和点はだんだん詰めて持っていかなければならぬと私たちも思っております。しかし、どちらに重点を置くかということについては、今直ちに結論を申しかねるのでありまして、さらにいろんな資料あるいは関係省とも折衝いたしまして、その問題については詰めて参りたいと思います。
  125. 門司亮

    ○門司委員 私は、そういう答弁になろうかと思いますけれども、せっかくこういう法律改正して、できるだけ犯罪の予防をしていこうという考え方で、明らかに憲法違犯とも考えられる住居の中に入らなければ実際の調査はできない五条の改正というようなことが行なわれておる。権力だけは非常に強くなっておる。しかし実体について何ら改正がされないというのはおかしいじゃないですか。警察の権限だけは強くする。しかし狩猟法とのそういう食い違いについては、ちっとも考慮されていないというのはおかしいじゃないですか。むしろ私は、こういうところこそ改正して、そして銃砲が非常に危険だというなら、この狩猟法に見合って、二十才以下の人は鉄砲を撃ってはいかぬというならばよろしいが、鳥は撃ってはいかぬが、人は撃ってもいいというような間違った行為が行なわれるような危険の方こそ、私は穴をふさいでおいてもらいたい。そうすることの方がこの法律改正に沿うのじゃないか。警察は、自分たち権力は強くすることを考えるけれども、民衆のためにものを考えないんじゃないですか。警察の定義というのは、あなた方が大学で教えているものの中には、こういうことを書いているのです。「そもそも警察は国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受するものでなければならない。」これは警察のいろはなんです。警察行為の権限は、国民の厳粛な信託によってあなた方は行なわれる。しかし、それからくる利益というものは国民がひとしくこれを享受すべきものである。それにもかかわらず、国民の利益は、今申し上げましたように、おかしな法律改正はやらずにおいて、あなた方の権力だけを強くするというわけにはいかぬのですよ。どうしてこういうところの改正ができないで権力だけ強くするのか。
  126. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 第五条の改正につきましては、警察官の権限を大きくしょうということでは決してございません。むしろこういうことによって不都合のないように、国民の利益を増進しょうということが改正の趣旨でございます。
  127. 門司亮

    ○門司委員 それはそう言わなければ、おれたちの権利を強くするとは言えぬでしょう。私たちの方から見ると、一つ警察権力が強くなってきたことには間違いない。どう考えても、許可を申請した者以外の者まで調査をする。それだけ幅が広げられたということは間違いない。それがやがて国民の福祉になることは、それはあなた方の立場からは言えると思う。そうでなければ、こういう改正をする必要はないと思う。それはわかっておりますが、今申し上げましたような、この問題については非常に大きな問題であって、どう考えてもこの法律改正する趣旨の中で忘れられた大きな一つの問題だと考えております。  次に、もう一つ聞いておきたいと思いますことは、同じ狩猟法との関係で、今の年令その他でなく、欠格条項が幾つか食い違っているでしょう。あなたの方で読んでもらってもいいが、あなたの方は大体御存じでしょうが、狩猟法の方では欠格条項が割合に緩慢になっております。ところが銃剣所持法の方は比較的厳重になっておる。これも同じ銃砲ですから、欠格条項等についてはできるだけ私は合わせる必要がありはしないかと考える。その点についてそういう努力をされる御意思がございますか。
  128. 小野沢知雄

    ○小野沢説明員 ちょっとお答え申し上げます。ただいまの狩猟法と銃砲所持取締法との関係でございますけれども、所持法は、前提といたしまして、鉄砲を持てる者がいわゆる猟銃による狩猟ができることになっておるわけであります。
  129. 門司亮

    ○門司委員 私が聞いておりますのは、狩猟法の方は主として本人を中心としてやっている。要するに、二十才未満の者、白痴または瘋癲——瘋癲という字を使っておりまして、瘋癲とはどんなものかわからないのでありますが、これらの者は許可しないと書いてある。狩猟法ではその他いろいろ書いてある。しかし持つものは同じものだということでしょう。私は、猟銃であっても、銃砲所持取締法にひっかかってくる。どうしてこれを同じようになさらなかったかということです。この改正されようとする法律の五条には、明らかに「十四歳に満たない者、精神病者、麻薬若しくは大麻の中海者又は心神粍弱者、住居の定まらない者、第十一条の規定により許可を取り消された日から起算して三年を経過していない者、第三条第一項の規定違反して罰金以上の刑に処せられた者で、その刑の執行を終り、又は執行を受けることがなくなった日から起算して三年を経過していないもの、人の生命若しくは財産又は公共の安全を害するおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者」。そうして二項で「都道府県公安委員会は、変装銃砲刀剣類については、許可をしてはならない。」こういうふうに書いてある。あとは「国際競技に参加する外国人に対する許可の特例」これに今度は改正を加えられようとしている。ところが狩猟法を見ますと、第六条に「未成年者、白痴者又瘋癲者ハ狩猟免許ヲ受クルコトヲ得ス」「狩猟免許ヲ受ケタル者白痴者又ハ瘋癲者ト為りタルトキハ都道府県知事ハ共ノ免許ヲ取消スヘシ」こう書いてある。この同じ猟銃を片一方はこういう厳重な取り締まりの規定がある。片一方には許可をしないでよろしいというふうに、これだけしかない。この場合一体適用はどっちをしているのです。狩猟免許状の方は狩猟免許状で許可して、銃砲所持の適用をしているのですか、していないのですか、どっちを適用しているのですか。
  130. 小野沢知雄

    ○小野沢説明員 これは法の目的によりまして規制の仕方が違うのでございます。というのは銃砲の方はまず鉄砲を持つことによりましての一般的な危険ということを考えて欠格条項をきめたわけであります。そういうふうな一応の標準、一応の関門を通りましたものが、今度もう一回いわゆる保護鳥かあるいは撃っていい鳥か、あるいは発砲する場所が危険であるかどうかということを判別でき得る能力を加味したものが、狩猟法の欠格条項になっております。
  131. 門司亮

    ○門司委員 私の聞いておりますのは、そういうふうな話をされますと、まただんだん話を進めていきますが、狩猟法の方には講習会という条文があるのですね。現実に許可するときは講習会を受けなければならない。火器その他の銃器の取り扱いについては講習会が法律できめられているのです。そして一定の講習を受けるようになっておる。ところが片一方の方は講料も何も要らないのです、許可さえすれば。しかも二十才でなければ持つことは持っても狩猟は許されない。従って、持ってはいいが撃ってはいけないという妙な規定になるわけです。問題はやはりそこにあると私は思うのです。だから同じように許可ができないという権限が、目的が違うから法律も違うのだということは、一応言いわけにはなろうかと思いますが、私はあまりいい言いわけにはならぬと思います。目的が違うと言うが、もしこれが同一の——同一とは言いませんが、狩猟に使わないで凶器に使う場合があり得るということ、また現実に使われているということなんです。これは目的が違うから、法律が違うのだからといったところでそうはいかぬでしょう。だから狩猟については、狩猟法によって違反行為その他が書かれてある。しかし、これはいわゆる狩猟という許された行為に対する違反行為である。この法律の行為は全部禁止されておる。ほとんど許可された範囲なんというものはないわけですね。銃砲刀剣等を使って人を殺傷したりすれば罪になるということはわかり切っている。ところがものは同じなんです。鉄砲は同じ鉄砲なんです。それを持たせるのに、あるいは許可しないという条項の中に、こういうふうにたくさん違っておってよろしいかどうかということなんです。私は年令の問題だけをさっき聞きましたけれども、年令の問題だけじゃない。こういうものがたくさんあるのです。それは一つの行為である狩猟だけを考えればそれでよろしい。しかしこの法律の建前から考えれば、これでは不十分だということが言えるのじゃないですか。  そこでやはりこういう条項については両方ともできるだけ同じように接近をさせておかないと、そのことが犯罪行為を起こす原因になりはしないか。だから、この欠格条項についてはもう少しくっつけて一つ考えはできませんか。もしあなたの方でこれは十分おわかりにならぬというなら一つ農林省から来てもらって……。これは農林大臣の許可ですから、都道府県知事が委任されておる行為です。
  132. 木村行藏

    木村(行)政府委員 所持取締法と狩猟法の関係は、ただいま門司委員からお話がありましたように、直接の目的が違う。片一方の方は所持によるいろいろな危害を予防しようという規定であります。片一方の方におきましては鳥獣の保護という面の行政目的があるわけでありますから、直接の目的は違いますが、やはり銃砲を用いての関係が関連してきますので、一応両方の法律関係は、所持取締法を土台にして、その所持によって許可されておるものでなければもちろん狩猟免許もできませんし、そういう意味で一応所持法のいろいろな欠格条項などが土台になって所持を規制し、さらに狩猟免許については狩猟法の免許状の基準というか、欠格条項というものをかみ合わせて狩猟免許を許可する、こういうふうに考えております。
  133. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こう解釈してよろしいですか。狩猟法との関係はまず銃砲刀剣等の所持に関する法律に基づいて許可を受けて、それから狩猟の免許の申請をする、こういうことに大体なるわけですね。
  134. 木村行藏

    木村(行)政府委員 大体その通りであります。
  135. 門司亮

    ○門司委員 そうしますと欠格条項が、今申し上げましたように持ってはよろしいのだということが前提になっている。そうして狩猟法によって許可の申請をする。その場合に欠格条項が違っておって、持つことはお前さんできるけれども、こっちではだめだ、こういうことになり得ることがあるということですね、これは。そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  136. 木村行藏

    木村(行)政府委員 その通りでございます。
  137. 門司亮

    ○門司委員 私はそこに問題が実はありはしないかと思うんですよ。片方は十四才以上でよろしい。片方は二十才以上でなければ困るという、その辺から問題が生まれてきはしないか。しかし問題になりますのは、持ってよろしいという規定があって持つことができて、そうしてその人がその行為を行なうことができないということは、これはおかしいじゃないですか。お前は鉄砲を持ってもよろしい、しかし撃ってはいけないのだということが考えられるということは少しく無理がありはしませんか。だから、どうしてもここは合わせておかないと、そういう矛盾が出てきはしないか。
  138. 小野沢知雄

    ○小野沢説明員 大体こういうふうになっておるのでございますけれども、銃砲の中にたとえば空気銃なんかございます。それからまた猟銃もあるわけでございますけれども、とにかく持っている段階の許可の標準と、これを使う場合の標準は、やはり使う場合の方が強化されてもっともだと思うのです。そういう違いがあるわけです。
  139. 門司亮

    ○門司委員 そういうことは言わない方がいいな。逆なんですよ、それは。逆だというのは、狩猟免許法の方には空気銃を含んではいないのです。片方は空気銃を含んでいるのです。片方は規制しておいて、銃砲刀剣等の公安委員会許可を得れば、空気銃で撃つには狩猟免許は要らないのです。だからあなたの考えたその辺は実際は逆なんですよ。
  140. 小野沢知雄

    ○小野沢説明員 実は最近それは改正になりまして、狩猟免許の中に空気銃の免許が丙ということで入っているわけであります。現在では空気銃でもってスズメを撃つ場合でも、これはただ空気銃を持ったということだけで撃てないのでございまして、別に丙種の狩猟免許が要るわけであります。
  141. 門司亮

    ○門司委員 これは私の持っておるのが古いのか、三十六年版と書いてありますが……、しかし許可の問題については、そういうことがこの新しい狩猟法の中にもまだ書かれておりますね。私も大体この法律自身について、まだ狩猟法の方をあまりよく調べてありませんが、問題になりますのは、そういうきらいがあるということです。どうしてもこの食い違いが出てくるということです。年令など最も大きな例なんです。そういうものをどうしても合わせておきませんと、持ってはいいのだが撃ってはいけない。しかし持たせている以上は撃つということ、撃たないためにだれが持つかということです。持つということは撃つ意欲があるから持つんですよ。ただ飾るために持っているわけでは決してない。その非常に大きな危険性がどこにあるかということです。だから狩猟免許の方であなた方が規制しておるよりも、実際は私はたくさんの鉄砲があろうかと思う。これは鉄砲を持っておればそういうことができるのではないか。ことに猟銃に対して、さっき新島の問題もございましたが、私は危険に考えておるのは、この狩猟免許の中にはいろいろな条件があるわけです。単に本人が遊ぶ猟として許可を得るものと、農民がやむを得ざる立場から鳥獣害を駆除することのために必要なものと、それからもう一つは、生活の根拠にするために猟師が行なうという、この三つの要素がこの猟銃というものの中にはあるわけです。  そこで一つの問題は、今申し上げましたように自分が、ハンターという名前が使われてよく言われておりますが、遊びにこれを使おうとするものの考え方、従ってこれにはおのおの許可の制限を私はある程度厳重にしてもよろしいかと考える。一方は農民が害鳥獣を駆除するためにどうしても必要がある。本人自身は何も関係がない。しかしイノシシが出てくるから、鉄砲を持っていなければ村の人が困る。あるいはコジュケイが畑を荒らして困るから、猟をするのでもなければ遊ぶためでもないが、自分の職業を守るためにどうしても必要だというもの。もう一つは生活を営むものがある。その場合に、この五条の適用が出てきたら一体どうなるかということです。これは単に鉄砲を許可する、許可しないということですが、同じ猟銃でもそういう三つの段階がある。この銃砲で一番大きな問題は猟銃だと思うのです。それ以外の火なわ銃などというものは大した問題にはならない。その猟銃には三つの段階があるが、その中で一番大事なのは、農民の害鳥獣駆除のためのやむを得ざる行為、それから生活のかてにするためにウサギやキジを打つという場合、それが同じように、その家族に危険な者があればその者には許可しないのだということになると、その辺に影響が必ずしもないものでもないと思うのですが、こういう点はどうです。
  142. 小野沢知雄

    ○小野沢説明員 ただいまのお話はごもっともでございまして、そのために実は五条の改正は、鉄砲を持ちたいと思う者の同居の家族に銃を悪用するおそれのある者がある場合におきましても、許可しないというのが本則でなしに「許可をしないことができる。」というようにしてあるわけであります。その場合、たとえば持てなかったらカラスなどの害鳥も駆除できない、あるいはその銃を持てなかったら生計が成り立たないというような場合には、やはり保管を厳重にするというような条件をつけまして許可することもできる。それから、持っても持たなくても生活上どうということでないという、いわゆる道楽で持つ場合には、それが持たしたら同居親族が悪用するようなおそれがあって、かつ保管も厳重にしそうもないというような場合には許可しない、持たせないという考え方であります。
  143. 門司亮

    ○門司委員 それは考え方で、許可しないことができると書いてあるだけで、許可しないとは書いてない。字句の解釈としてはそういうことも言えるかと思います。しかし、概念としてはなかなかそう受け取りにくいのです。私は銃砲許可をこういう形で幅を広げるということは、事実上の問題としてそういう面もほんとうに考慮していないと、今の御答弁では許可しないとは書いてないということですが、もしこれを許可しないと書いたらえらいことになりますよ。それは憲法違反でしょう。これで生活している人に、お前は家族にこういう者がいるから持ってはいかぬということになったら、えらいことになる。だからそれは書こうとしても書けないのですよ。これはあなた方の捜査の権限の範囲で、認定に基づいてやるのでしょう。これ以上のことは、何もこれには書いてないでしょう。そういうものを認定するにはだれが認定するかというと、警察官の認定だけでしょう。何かほかに法律がありますか。どうもあのうちにあやしいのがいそうだということは単なる認定でしょう。たとえば前科何犯だとか、あれはこういう犯罪を犯したから許可してはならないというはっきりしたものは、この法律を見てみますとないでしょう。ただ単なる警察官の認定でしょう。その警察官の認定に基づいて生活権を抹殺するというのは言い過ぎでありますけれども、脅かす危険がこの中に含まれておると思う。単なる戸口調査その他の問題ではなくして、狩猟免許法の許可の中にはそういうものがあり得るということが書いてある。そして害鳥獣駆除のために使う猟銃というものは、半ば公のような形で許可されておる、あるいは奨励しているという形がある。実例を言うなら、私は山梨県の例をあげてもよろしゅうございますけれども、山梨県では、かつて税金が非常に高くなって、何も当てのないものに鉄砲を撃つ必要はないのだから、そんなに税金を取られるならやめようといってやめて、県から、税金は半分おれの方で補助するから鉄砲だけは持ってくれといって頼んだことがある。そういう実例がある。農村というものはそういう形を持っているのです。そういうことを考えられないで、単に家族の中にそういう者があるならこれに許可しない、もしこの規定をこのまま乱用する——と言うと言葉は行き過ぎかもしれませんが、そういうものを考慮しないで適用された場合は、それらの農民の生活権を脅かすことになると私は思う。だから、こういう点について当局の今の答弁だけでは私は承服できない。字がそう書いてないのだからいいのだというような答弁ではあぶなくてまかせられない。
  144. 木村行藏

    木村(行)政府委員 その認定は法文の中には都道府県公安委員会が認定することになっております。その許可の基準に関しまして、市町村当局などに対する照会その他万般の資料が現在でも都道府県公安委員会あるいは警察本部にあるわけです。それらの資料に基づいて、第一線の警察官でなしに都道府県公安委員会が認定する。ただいま門司委員の御指摘のように、諸般の情勢を考えまして、そういう必需品としてどうしても生計上やむを得ないものにつきましては、保安課長から答弁がございましたように、いろいろな厳重な制限をつけまして、保管上厳重に責任が持てるように、またその同属の親族、いわゆる第六号に該当するような同居者に対しては十分に監督の行き届くような保証をとりまして、その上でそういう場合には例外的に所持許可を与える。こういうことも考えられます。
  145. 門司亮

    ○門司委員 例外的にということになりますと、これも問題でありますが、それだとすれば、ここの定義をもう少しはっきりしておく必要はないかということであります。公安委員会がきめるといったって、公安委員だってそうわかるものじゃない。公安委員というものは一つの県に三人か五人しかいないのです。それが三百万、五百万という県民の実態がわかるはずはない。どうしても一線の警察官の認定に基づく以外にないのです。従って、こういうふうに、単に私どもが言う平等の原則とか、あるいは憲法の規定で戸口調査ができるとかできぬとかいうことでなくして、この問題は、底を掘り下げていけばどうしても農村のそういう問題にぶつかってくるのです。そうなると、これは人間の生きていくという基本的の権利です、よく使っている言葉ですが。そこでそれをどう緩和するのか。今の答弁だけでは私はこれをそのまま認めるわけにいかない。これはもう少しはっきりしたものにしていただかぬと、現実に困るのですからね。もう少しはっきりしていただけますか。法文か、あるいは規則か何かの中にそういうものをはっきり入れるということはできますか。
  146. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほど課長の方からも申しましたが、許可しないことができるということで、例外に許可するという考え方はむしろとるべきでないのであって、どうしてもこれは許可することが危険であるという確証のあるようなものについて許可しない。これはたとえば先ほど私が例を申し上げましたように、実際は自分が使うのだから名義人を弟にするというような、明らかに危険性があるというようなものについて、現在の法律上は、がんばられればどうしても許可せざるを得ないというようなものについて、許可しないことができるというふうにいたしたいというのが趣旨でございます。従いまして、ただいまの門司委員のお話のように、実際の生活上の必要というようなことで申請されるものについては、条件などをつけるとか、いろいろの注意は与えまするけれども、そういうようにしても当然許可するようにいたし、許可しない場合というのは、きわめてはっきりとした害が考えられるというようなものについて許可しないということにいたすように、十分に注意をいたして参りたいと考えます。
  147. 濱田幸雄

    濱田委員長 安井国務大臣及び警察庁長官は、参議院の要求によりまして約三十分くらい退席いたします。  理事会を開会するため、暫時休憩いたします。    午後四時十分休憩      ————◇—————    午後四時四十二分開議
  148. 濱田幸雄

    濱田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  参考人出頭に関する件につきましてお諮りいたします。すなわち、ただいま審議中の銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案について、来たる二十九日午後一時より参考人より意見を聴取することとし、参考人の人選等につきましては委員長に御一任を願いたいと存じます。  以上につきまして御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  149. 濱田幸雄

    濱田委員長 御異議なしと認めます。よってそのように決しました。      ————◇—————
  150. 濱田幸雄

    濱田委員長 銃砲刀剣類等所持取締法の一部を改正する法律案の質疑を続行いたします。門司亮君。
  151. 門司亮

    ○門司委員 今まで大体この改正案の及ぼす影響の範囲について一応お聞きをいたしましたが、どうもいずれもはっきりしないような気がします。ことに狩猟法との関連性というようなものは全く考慮されないでこれが改正されるというように解釈いたしますのと、同時にまた、さっき申し上げました国民がみずからの生活を営むに必要な行為として行なう銃砲等の使用に対するものにまでこの法律が及んでいくということになると、適用の仕方によっては非常に大きな社会問題が起こりはしないかという点が考えられる。そこに非常な危険があります。こういうことを考えていきますと、捕鯨船のようなものまで入りゃしないかということになるのですね。捕鯨船は相手が鯨ですから、海の中ですから、そんなに人を傷つけるようなことは私はないと思うのですけれども、やはりこの砲の中には入るのですね。一つの砲であることには間違いはない。中にやっぱり入っている。漁業の中に入ってくる。漁業の中に入ってくるからといって、海の中に撃つものを少しぐらい、ことに固定されたものでありますから、鉄砲のように持ち歩きはむやみにできるわけではありません。固定されたものについての考え方だから、これまではあまり議論しなくてよろしいのじゃないかというように考えておりますが、この法律でいう移動の範囲というのは一体どういうふうにお考えになっておりますか。こういう銃砲刀剣等が許可された人の移動の範囲、先ほど新島の問題でだいぶ議論があったようでありますが、どの点までこれが認められるのですか。
  152. 木村行藏

    木村(行)政府委員 今度の改正案では携帯、運搬に関しての面が主でありまして、移動という点については直接考えていないわけであります。
  153. 門司亮

    ○門司委員 私の言い方が悪かったのかもしれませんが、大体運搬するのも、やはり動いておりますから移動の一つではないかと私は考えるのです。銃砲が一人で歩いているわけではないでしょう。だれかが持って歩いておるのに間違いないので、まあ移動しておるものだと考えておりますが、この法律で取り締まろうとする問題で、かりにこの法律がこのまま生きてきて、そうして二十四条の二が適用されて、持っておることがわかる。わかるがしかしそれはどこかに持っていくんだという、要するに使用目的というものがある程度明確になっているというようなものについては、これは適用しないのですか。これは一時保管するというようなことはしないのでしょうね。
  154. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 この法律でも明記いたしておりますように、「異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して他人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる場合において」その疑われる物を提示させる、あるいは開示させて調べる。またそういうものを発見した場合におきましては一時保管することができるということになるわけでございますが、理由がはっきりして、他人の生命または身体に危害を取ぼすおそれがあるというふうに判断されない場合には一時保管というようなことが行なわれることは絶対あり得ないわけでございます。
  155. 門司亮

    ○門司委員 それからもう一つの問題として、たとえばさっきの文化財との関係です。文化財との関係は、私法律を見てみますと、他人にこれる譲り渡したりなんかするときには届け出をしなければならない、その許可を得なければならない、これも一つの移動だろうと思います。しかし、たまたま文化財関係のものはなかなかじっとしていないと私は思うのですよ。重要な文化財として指定されておる千何百なんという国宝級の物については動くようなことはめったにないと思いますが、七十何万もあるということになりますと、かなり私は物が移動する危険性を持っておると思います。こういう場合に、この法律でいう所有権のかわるような場合は、もう一つその中に含まれようかと思う。それから保管する人がかわる場合もその中に含まれようかと思う。しかしそれ以外の理由で、その物が歩くというわけには参りませんが、移動するような場合は、やはりこの法律の適用を受けるようになりますか。
  156. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 携帯、運搬される場合におきましては、この法律の適用を受けるわけでございます。
  157. 門司亮

    ○門司委員 そうするとこういうことですね。文化財関係の方では、当然所有権の移転というようなこととは違いまして、許可を受けなくてもよろしいが、持ち歩く場合にはこの法律は適用を受ける、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  158. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 その通りでございます。
  159. 門司亮

    ○門司委員 次にこの法律との関係で聞いておきたいと思いますことは、法の三十五条関係についてであります。これは昨日阪上君から聞かれたことでございますから、私は多くを聞かないことにしたいと思いますが、問題になりますのは製造業者あるいは修理業者、それから販売業者というような人に及ぼす影響、いわゆるこの法律ができたことのために及ぼす影響というものは、どの程度にお考えになっておりますか。
  160. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今度の改正によりまして製造業者、販売業者等に直接及んでくる影響というものは大した問題はなかろうかと思います。ただ飛び出しナイフを原則として全面禁止をいたしますので、従来関市等において飛び出しナイフを作っておった業者につきましては、若干の影響があるかと思います。
  161. 門司亮

    ○門司委員 それについては何か補償をするというようなことが行なわれておりますか。
  162. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 こうした法律制定の際に若干の犠牲が起こるということが、ございましても、そのために補償するということは、従来もいたしておりませんし、今回もそのためには考えておらぬわけでございますが、しかしこれは、私どもの方でなしに通産省等において、ほかの事業を営むというようなことについての資金の融通をするとか、また差しつかえない刃物の製造ということに指導をするというような点については、考慮をされることになると考えております。
  163. 門司亮

    ○門司委員 その範囲は大体わかりませんか。輸出する部分は私は製造してもかまわぬと思いますが、国内の所持が禁止になりますと、それからくる影響は私は業者には大体わかると思うのです。いずれ参考人等が来ればその辺もはっきりしようかと思いますけれども、この法案のきめられます過程において、そういうものを十分に検討され、あるいはそれらの諸君の意見を聞かれた経緯がありましたら、一つお話しを願っておきたいと思います。
  164. 木村行藏

    木村(行)政府委員 確かに門司委員の言われました点については、非常に問題がありますので、この立案の過程におきまして、去年の暮れごろから一月ごろにかけまして、その後もずっと何回か関の業者、あるいは肥後守につきましては兵庫県の業者が多うございますので、そういう業者及び中央の全体の連合会みたいなものがございまして、その連合会とも、飛び出しナイフの規制の具体的内容についていろいろ相談しました。それと同時に、この案にもありますように、一定の条件のもとにおいて威力の少ないものというものについては、ただし書きとして所持の規制の対象にしないということについてもいろいろ具体的に相談いたしましたし、それから二十二条の従来あいくち類似の刃物については正当の理由がない場合には携帯を禁止されておりましたのを、この法案ではその範囲を広めまして、刃体が六センチ以上のものにつきましては、正当の理由がない場合には携帯を禁止されるという法案の内容になっているわけでございます。それらの具体的な内容についても相談いたしましたし、またそれについても、その種類や形状について一定の条件のもとにおいて必ずしも殺傷力が高くない、また社会的効用もある、日常持ち歩く頻度も高いというようなものについても、具体的に相談いたしまして、業者とは十分に話し合いをいたしました。
  165. 門司亮

    ○門司委員 その話されたことはその程度でございますか。私の聞きたいのは、これからくる被害をどういう形で補償するかということ等については、今お話しのように別段のものはなかった、あとは通産省かどこかが考えるだろうというようなことではやはりいけないのではないか。私どもは、やはりこういう法律を審議し、きめて参ります過程において、少しでも国民の生活に影響がある、いわゆる憲法で保障されておる仕事を営んでおるわけでありますから、それに影響のあるようなものが、かりに法律であるとすれば、やはり法律でそれの救済の道をあけておくということが必要ではないか。   〔委員長退席、丹羽(喬)委員長代理   着席〕 たとえそれが附則でありましょうとも、法律のどこかに、この法律によってこういう影響を受けるものについてはこういう措置をとるのだという親切なところが、やはりどこかにあっていいのじゃないかと私は思うのですが、そういう配慮はされなかったのですか。  それから、ついででありますから聞いておきますが、大体どれぐらいの被害があるかということを、業者の方にお聞きになっておれば、私はわかると思うのですが、年産にしてどれくらいの被害があるのか。しかもそれがその一つの地域、たとえば関なら関の地域の全体の生産高の何割ぐらいに当たるのか、その辺がもしおわかりだったら聞かしておいていただきたいと思います。
  166. 木村行藏

    木村(行)政府委員 国家公安委員会の名前で提出いたしました白表紙の資料の中に、第七表といたしまして、特に飛び出しナイフにつきましては、五・五センチ以下のものが新たに規制されることになりますので、その中で、輸出は別にいたしまして、輸出については特別に今度の法案で規制しておりませんので、五・五センチ以下の国内向けのものにつきましては、ここに書いておりますように、三十一年、三十二年、三十三年、三十四年というようなことで、製造の本数、それから金額というものを掲げておりまして、一番最近の資料としては、ここに大体製造の本数が約十万本、価格が一千百万ばかりであります。三十五年はこれより若干減っておるようでありまして、これより上回っているような数字にはなっておりません。
  167. 門司亮

    ○門司委員 これがどのくらいの影響を受けることになりますか。製造高はわかっておりますけれども、私の聞いているのは、どれくらいの範囲で影響を受けるかということです。
  168. 木村行藏

    木村(行)政府委員 今度の規制で、法案の第二条の改正で、飛び出しナイフの中で刃渡り五・五センチ以下のもので、刃先、刃のついている部分が直線である、またみねの先端の部分がまるみを帯びている、あるいは一定の角度で必ずしも鋭利でない、また、さやと刃体が、刃体が飛び出して参りました場合に、その飛び出した刃体が、突けばもとに戻るというような固定装置のないような条件につきましては、殺傷力も弱うございますし、ある程度の社会的効果も全然ないわけではございませんので、それらについては若干の例外的なものとして考慮をいたして、規制の対象からはずしたわけであります。そういうものがありますので、これをただいま申し上げた数字、たとえば三十四年でいきますと、一千百万円というような数字から若干下回ってくるのではないか、こういうふうに私は思いますけれども、どれくらい下回るかという点は正確に申し上げかねると思います。
  169. 門司亮

    ○門司委員 それは生産に対する関係でありますが、私はさっき冒頭に申し上げましたように、販売業者まで含めてどういう経済的影響を及ぼすかということが、これだけでなくて、考えられませんか。製造業者に及ぼす影響は、これは三十四年度の数字が出ておまりすからわかるのですけれども、それ以外のものにどのくらい影響がありそうですか。これは全部なくなるということになると、突っ込んで聞いておきますが、これだけの製造を禁止するということになりますと、これが関市なら関市の全体の生産商の何%になって、そして従事しております工員がどのくらい失業するかというようなこと、大げさにいえばそういうことになろうかと思いますが、そういう数字がわかりますか。
  170. 木村行藏

    木村(行)政府委員 ただいまお示しいたしました第七表の中の注にも書いてありますように、三十五年の十二月末現在の調べで、飛び出しナイフの製造を専業といたしております業者が二十玉人、まあこの二十五人が業者として専従いたしておる。直接雇用されております従業員が三百四十六名、またそれに関連しまして下請の稼働に従事している者が四百二十四名、合計七百七十名、こういうふうな業者が直接、関連を持っておるわけでありますから、これが全部失業するとかあるいは非常に規模が収縮するというふうには考えられませんが、あの程度の影響は受ける、失業者も一、二出るかもしれない、こういうふうに考えております。
  171. 門司亮

    ○門司委員 私の聞いているのは一番最後のある程度の影響、失業者が幾らか出るかもしれないということをはっきり知りたい、こういうことなんです。それはまだ数字は出ませんか。
  172. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 正確にどのくらいの失業者が出、どのくらいの損害額があるかということは、ただいま木村君から申し上げましたように、正確にはわからないわけでございますが、趣旨といたしましては、できるだけ許されたる製造の方に転向していくように指導をする。また飛び出しナイフについては、先ほど申し上げましたような例外の規定を設けておりますので、そういう製造の方法をとるということにいたしますれば、そう大きな影響はないように思われるのでございまして、業者とも再三再四話し合いをいたしまして、こういうふうな規制であれば同調できるということになっておるような次第でございますので、製造業者についてはさほど大きな影響はなくて済むものというふうに考えておりますし、これの販売というものは全国に広がっておるわけでございますので、またそれだけを販売しているというものはないわけでございますので、この影響というものはきわめて微々たるものではなかろうかというふうに考えておるのでございます。
  173. 門司亮

    ○門司委員 私の聞きたいのは、どのくらいの失業者が出るかということです。  それでは、今できている品物はどう処理されるつもりですか。こういうことはこれだけではありません。従来こういう規定を設けたときから同じ問題を繰り返すのでありますが、今持っておる品物については全部これをなくするつもりですか。それとも、これから先製造をさせないつもりか、今までのものは販売してもよろしい、こういうことになるのですか。
  174. 小野沢知雄

    ○小野沢説明員 実はその点も業者とよく話し合いをいたしまして、実はこの法案が公布されましてから実施されるまでに三カ月は間を置こうと思っておるわけであります。実は近来、非常に業界からの協力もございまして、積極的に、業界の方も青少年に悪影響を及ぼすああいう飛び出しナイフのようなものは作りたくもないし、売りたくもないということで、ただいま局長の方から説明がございましたように、先をまるくしまして、そして飛び出す便利という点を生かしまして、そっちの方へ転換していこうというふうに、積極的に業者の協力もあるわけであります。なお、これが通りました後三カ月の問、業界とよく話し合いをいたしまして、その先をまるくするように、これは業者の方も積極的に協力しようというふうに話し合いができておるわけであります。   〔丹羽(喬)委員長代理退席、委員長着席〕
  175. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、こういう解釈をしたらよろしいのですか。たとえば今販売業者のところにあるものも全部引き揚げて、そうして頭をまるくするように作りかえる、こういうことをされるつもりですか。
  176. 木村行藏

    木村(行)政府委員 この法律ができて、その法律にひっかかるものがすでにできておるものについては、それを作りかえて、今おっしゃるようにこの法律にひっかからないような形に作りかえていただければ非常にいいと思います。しかし、それでもなおかつできて残っておるというものについては、所持許可対象になりませんので、その点については業者としては若干しわ寄せを受けるというふうに考えております。
  177. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、今大体製造元にあるものはある程度作りかえることができると思いますが、頭をまるくすることは業者にやらせれば技術的にそんなにむずかしい仕事ではないと思う。しかし、販売店にずっときているものはなかなかそううまくいかぬのではないか。そうすると、どうしも今まであるものはそのまま売られるということになりはしませんか。販売の禁止まできちっとやっておりますか。販売の禁止までやっておれば別でありますが……。
  178. 木村行藏

    木村(行)政府委員 販売の禁止はやっておりません。従いまして、今おっしゃるような問題が残りますので、結局すでに販売業者におろされている、それを持って帰って作り直すことは技術的にむずかしいという話になりますと、やはり販売業者としては犠牲があるわけであります。しかし、従来の法律改正においても、公共の福祉の限度からいろいろ改正した場合に、その犠牲を受ける部面があるわけであります。それについて国で補償するという例は今までありません。しかし、先ほど長官からお話がありましたように、通産省とも話し合いをしまして、設備転換などの融資をはかるなり、いろいろな製造方法を変えるなりして形態を作りかえ、できるだけ業者にしわ寄せがいかないように、あるいは販売業者にしわ寄せがいかないようにということは話し合いを進めておるわけであります。
  179. 門司亮

    ○門司委員 その辺ですが、法律ができて、幾ら公共の福祉とはいいましても、ごく少数の一部の人にのみ犠牲を払わせることは実はどうかと思うのです。売れないのですから結局それだけ全部損をするのです。価格が高いとか安いとかいうことは別の問題でありまして、従って、これは私はほんとうに法の趣旨を生かしていこうとするのには政府が何らかの手を打つべきではないか。たとえば原価で買い上げてしまうということにすれば、この法の趣旨が生きると私は思うのです。そうしなければ、元をかけて仕入れたものを売ってはいけないといわれましても、法律以前のものですから、法律以前の商行為まで取り締まることはどうですか、実際問題として非常にむずかしい問題ではないですか。現在まではりっぱな商行為として認められたものを、それが法律ができたからといって、その商行為がだめになって損害を与えるということは、これは金物屋全体からいえば大した数字にはならぬかもしれませんけれども、しかし考え方によっては、法律でそういうものを一ぺんに禁止をする場合には、やはり国で補償することが——憲法には国が使用する場合は正当な価格で買い取らなければならないということが書いてあります。無料で没収してはいけないと書いてあるわけであります。それと同じことがいえるのではないですか、やはり法律で押えるのですから。そうすれば、正当な価格で国がこれを補償するという建前ができればこの法律は徹底すると思うのです。それ以外にはこれはなかなか徹底をしませんね。現実に持っているのですから、三カ月あればその三カ月の間に大急ぎで売ってしまえということになるかもしれませんけれども、それではまとまってあるものが全国に散らばってしまうのですから、危険なものが外に出るのですから、外へ出さないようにするためには、この法律が施行されたら正当な価格で国が買い上げるということにすれば、これが製造元に返されて改造されるということが行なえると私は思う。こういうことができれば、これは政府でも大きな損にはならぬと思う。そういう配慮は行なわれませんか。
  180. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 確かにお話しのように、法律で一定の者について損害を与えるわけでございますから、これを補償する、国で買い上げるというようなことができますれば、業者としても一番満足する問題であろうと思いまするし、国の施策としても私はけっこうなことだと思うのでございますが、従来この種の法律改正につきましてはそういう例がございませんので、今回もそこまで私ども考えて、そういう要望を満たすことはしなかった次第であります。
  181. 門司亮

    ○門司委員 今までそういう例はなかったからやらなかったといえばそれだけの話ですが、例がなくても私は例を開いてもいいと思うんです。この種の問題については、やはりできるだけ私はそうした親切な態度が必要じゃないか。これは製造業者はこれからこしらえないと言いましたが、実際は半製品がありますからね。そして下請工場にはすでに部分的にはでき上がっているわけです。親工場に持っていって組み立てればいいのだ、実際問題としてはこういうものがあるわけです。従って半製品についてもそういうことが言えますし、補償の関係が出て参りますし、それからことに販売業者については、もうかなり私は個々の販売業者については大きな痛手にもなろうかと考える。しかしこれは公共の福祉だからお前たちがまんしろ、これだけでは私は済まないのじゃないかと思う。何も小売の価格で利潤を見ても買い上げる必要はないかと思いますけれども、少なくとも損をさせないというくらいの配慮はこの際必要ではないか。そういうものを入れましても、国の予算からいいますと大したものじゃないと思うのです。この数字を見てみますと、一年間にこしらえたのが千百万円ですからね、価格が。三十四年度にこしらえた価格全体を見ても千百万円程度であれば、これは現在市中にある数字というものは私はそう大きな数字じゃないと思うのですが、こういうことがやはり配慮されないと困るのじゃないですか。その数字をお調べになったことありますか。大体年産はこのくらいであるが、今現在市中に出ておるものがどのくらいであるだろうかというようなことを、業者との間に大体お話し合いになったことは、ございますか。これはある程度まで業者の方ではわかると思うのですが……。
  182. 小野沢知雄

    ○小野沢説明員 実はその推定を、やはり先ほど局長から御説明ございましたお手元の配付資料の七表をごらんいただきまして、まあ大体これを見ますと、一年間に二十万本程度出ているわけでございます。それを五年間くらいその消耗度を見まして、世間にいわゆる使用されておる推定がこの一年間に製造されまする二十万本ないし三十万本程度の五倍程度、百万本ないし百五十万本くらいあるのじゃないかというふうな推定ができるわけであります。
  183. 門司亮

    ○門司委員 そんな数字になりますか。ここに書いてあるのは、昭和三十四年度で二十万もこしらえていますか。この表を見ますと、総数が七十九万二千でしょう。そうして今度の問題にひっかかるものはこの中のずっと下の欄であって、約十一万程度のものじゃないですか。価格が千百六十七万一千九百五十円、こういうふうに考えればよろしいのですか。この数字は違いますか。
  184. 小野沢知雄

    ○小野沢説明員 この表のうちのいわゆるマルCというわけでございます。五・五センチ以下のもののうち国内に市販されたものということでございます。この数を見ますと、毎年、たとえば昭和三十一年には二十四万本、それから昭和三十二年には二十五万本、昭和三十二年には二十七万本、それから昭和三十四年には十万本というような数が出ておるわけでありますけれども、そういうものの年産額を五倍いたしまして、ただいま私が申し上げましはような推算をいたしたわけでございます。
  185. 門司亮

    ○門司委員 どうもその辺わからぬのですが、在庫商がどのくらいあって、そうして市中の販売がどのくらいあるのかという推定は、私どもしろうとだからこの数字を見ただけではわからぬが、五倍も八倍もあるわけじゃない。大体一年度に生産されるものが二年か三年のうちに消化されなければこれは商売にならぬと思うんです。何年も蓄積されて、何年もたまっておったのでは商売にならぬ。大体この種のもので、私は経済のことはわかりませんから、一年に何回転くらいをするものかわからぬのです。いわゆる製造されたものが何年のうちに全部消化されて、どういう回転をしているかということについては、これは経済に暗い私どもとしてはわからぬ。特にこの種の問題を私どもはそういう角度から検討したことがないから、どれだけ製造しているから現在どれだけ残っておるはずだ、こういうことは業者に聞けば大体わかると思う、商売ですから。それがわからなければ製造ができない。どのくらい需要があるということがわからなければ供給の計画は立たないのですから。この数字を加えたものが残っておったら、一本も、全部売れていないという計算が出てくる。私は売れていると思う。だから私はそうたくさん残っているとは思わない。その数字を一体どのくらい見積もられて、かりに補償するとすればどのくらい金が必要かということをお調べになったことがありますか。
  186. 木村行藏

    木村(行)政府委員 先ほど百万本と言いましたのは、五年間において売れた大体の推定でありますので、業者の手持ちとして残っておって、法施行の際にそれがしわ寄せを受けて犠牲を受ける、その損害はどれくらいあるかという問題については、ただいまこれは正確な数字は把握いたしておりませんが、できるだけ至急調べて御報告申し上げたいと思います。
  187. 門司亮

    ○門司委員 その次に聞いておきたいと思いますことは、これから先この法律ができて、取り締まりが厳重になって、製造が禁止されるということになります。そうしてその場合によく問題になりますのは、輸出するものはこしらえてもよろしいということになっていますね。輸出するのはよろしいのであるが、これは往々にして間違ってキャンセルされることがあるんだ。キャンセルされた場合に、それが不良品として返ってくる場合がある。そういうものが市販として流れるのは、この種の品物については往々あるのですから、やはりこれについて何かはっきりした、商品等について製造会社のマークならマークをはっきり打たしておけば、この商品がどこでできたかわかる。そういうように輸出からはね返ってくるもの、あるいはもぐりで販売されるような危険があるとするならば、輸出用でありましても、マークをきちんとさしておく。そうしてかりにキャンセルされて返ってきたものが市中でやみで販売された場合に、これはどこの製造会社で生産されたものだということが明確にわかるような処置を私はとる必要があると思いますが、そういう処置はとられますか。
  188. 木村行藏

    木村(行)政府委員 飛び出しナイフの生産者の九分九厘は関市で、大体そこの実態をつかめばわかるわけでございます。今確かにお示しのように大体輸出用のものと国内に販売されているものとあります。今度は所持ができないわけでありますから販売はできない。その面で区別する必要があるので、お示しのような表示といいますか、マークといいますか、しるしといいますか、そういうものに若干の差異をつけて一目してわかるようにするということは非常に名案ではないかと思いますので、研究いたしたいと思います。
  189. 門司亮

    ○門司委員 ぜひこの法案ができたら、私どもこういう法案はあまり賛成はしないのでありますが、おそらく大体通すことに努力をされておりますから通るかもしれない。この場合に一つ処置としては、やはりこういう法律ができれば有効に使われることが望ましいのであって、ざる法であっては私はならないと思うのです。そういうことを一つ考えていただくということと、今先ほどからあとで調べてというお話がありますが、これはぜひ一つ、私どものこの法律を審議いたします過程における一つの参考として教えていただきたい。そういたしませんと、業界と長い間お話し合いがあって、そうして了解が得られたということになっておりますけれども、われわれが法律を審議して、そうしてこれがかりに国会を通って、そうして国会で変なものをこしらえるものだから、おれたちがこれだけ損をしたというようなそしりをあまり受けたくないのは私どもの気持で、これは当局も私は同じだと思います。だからぜひ一つ数字を明らかにしていただきたい。そうして何らかの補償処置ができるならこれを補償していただきたい。そうして法の実施にやはり間違いのないようにしていきたい。そうしなければ、結局損をしただけはどこかで取り戻すという観念がみんなありますから、やはり隠れてでもあるものは売るという形が私はどうしても出てくると思います。置いておいてそれを売らせない、そんな殺生なことを言うものじゃありませんよ。金をかけて仕入れて店に並べてあるものを、法律ができたから売っちゃいけない、どこかへ持っていって捨ててこいというわけにはいかぬでしょう。あなた方の方はそういうことは言えるとしても、業者の方はさようでございますかといってくず屋に売るわけにいきません。くず屋に売れば、くず屋はどこへ持っていって売るかわからない。廃棄処分を厳重にしなければならぬ。廃棄処分を厳重にさせようとするなら、政府がある程度の犠牲をしょって、それが完全に行なわれるような処置が必要だ。私はここまで考えますから、製造業者、販売業者との関係については、数字がわかりましたら、そういうことを配慮するというふうに考えておいてもらいたいと思います。これは大臣の方はどうです、予算措置が多少要ると思いますが、そういうことは考えられますか。
  190. 安井謙

    ○安井国務大臣 だんだんと伺っておりまして、門司さんのお話は非常にごもっともな点があるのでありますが、これを今予算措置をもって直ちにどうするということにはちょっと踏み切りにくいのじゃないかと思っております。しかし、側面的に今の御趣旨をできるだけ生かすように今後も施行にあたっては気をつけていきたいと思います。
  191. 門司亮

    ○門司委員 あまり誠意もないですね。何も業者の立場に立つわけじゃありませんけれども、法を徹底させようとすれば、徹底したことをやらなければ徹底しませんよ。幾ら法律だけこしらえて取り締まって歩いたって……。われわれのような者は、字を書いたり読んだりしておりますから大して影響はありません。それでほかから給与をもらっていればいいかもしれない。しかし、業者の心理というのはなかなかそうはいかぬと思う。資金を投じて仕入れてきて、それを売ってはいけないということになれば、その始末をどうしてくれるということは当然出てくる一つの大きな権利だと思うのです。それに対しては、やはり法律をこしらえた方で責任を持って処理するという考え方に立っておいてもらいたいと思うのですが、今そういう処置をするわけにいかないから考えておくということになると、二、三年考えられてなくなってしまいますから、一つ大臣にはその辺も数字がわかりましたら、私は製造高と金高の面から見ましてそうたくさん残っておるものじゃないと思いますが、ぜひ御配慮を願っておきたいと思います。  その次に聞いておきますのは、警察官職務執行法二条とこの法律との関係でありますが、これはいろいろ問題になろうかと思います。こういう法律をこしらえる、ところがこの法律は体裁上は銃砲刀剣類等所持取締法改正になっていますね。しかし、実際は警職法二条の改正だと見ても差しつかえないのですね。そういうふうに私どもは解釈しても差しつかえないような気がするのですが、どういうことになりますか。
  192. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今度の改正銃砲刀剣についてのみ規制措置でございますので、銃砲刀剣類等所持取締法改正によってその目的を達するということが適当ではなかろうか。交通問題であれば道路交通法にあれする。しかし、そういう個々の法令によらないで警職法の改正ということで、この前の改正案のように広く凶器というようなもので、どれか一つ法律で取り上げかねるというものにつきましては警職法の改正を待つということが適当ではなかろうか。しかし、これは便宜の問題でございますから、警職法の改正で今回の改正をして悪いという問題ではなかろうと思いますが、この銃砲刀剣類等所持取締法改正によってやることが最も適当な改正の仕方であるというふうに私ども考えておるわけであります。
  193. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、法律の実施の効果の点は警職法の改正と何ら変わりはないのだ、こういうふうに今の答弁では解釈せざるを得ないのですが、そういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  194. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 実際に警察官がこの改正の趣旨をよく体して活動いたしますとすれば、警職法の改正にこの条文と同じような改正をするということで、結果は同じに相なると思います。しかし、特に昨年末刃物を持たない運動等を起こし、刃物というものについて特別に考えるという啓蒙的な意味等から申しますれば、やはりこの銃砲刀剣類等所持取締法改正ということでいった方が、一般に与える啓蒙的な効果もより大きかろうと思いますし、筋としても法律的にこの法律改正によるのが妥当であろう、こう考えるわけであります。
  195. 門司亮

    ○門司委員 今の御答弁ですが、効果としては警職法の二条とほとんど変わらない。実際はそれをただ列挙して何か抽出しただけなんです。しかし警察官の行為というものは同じ行為なんです。凶器というものの考え方あるいは犯罪を犯そうとするおそれのある者の考え方の中に凶器を所持しているか所持していないかということが実際は含まれる。犯罪を犯そうとする、警職法の二条に書いてある範疇に含まれる。それをただ具体的に抜き出してきて、そしてこの法律で行なう、こういうことになろうかと思います。警職法の二条を具体化してきたものである。今の長官の説明を言葉をかえて言うならば、なおより以上具体化したものである。警職法の二条は少しばく然としておる。しかしこれは銃砲刀剣というものに限ったのであるから、一応範囲が明確になっておる。私は狭くしたとは言いません。狭くしたわけではありませんが、明確になってきたということは一応言えると思う。だから、今の長一官のような答弁は一応できると思う。しかし法全体の解釈からすれば、法二条が拡大されたものであるというふうに私どもとしては解釈せざるを得ない。それはなぜかといえば、警職法の中に、いわゆる犯罪を犯そうとする者について、周囲状況から判断して合理性があれば取り調べることができると書いてある。この法律も、やはり銃砲刀剣等を持っているという疑い、いわゆる犯罪を犯そうとする疑いのある者については、これを取り調べることができる。こういうのですから、ただ片方には犯罪を犯そうとする者という大きな一つのワクが抽象的にしか書いてない、これは具体的に書いた、こういうことになろうと思う。だから、こっちで取り締まった方がよろしいのじゃないかということになろうかと思います。立案の趣旨自体は警職法二条の改正と何ら変わりない効果を持っているのであって、警職法二条の中に書かれてもちっともおかしくないものだと考えますが、たまたまこういう法律があるからここに入れたんだということになろうかと思います。こういう法律がなければ、こういうものの考え方は警職法の中に当然含まれる、具体化問題として出てくる、こういうことじゃないかと思います。これは多少理屈をつけ過ぎたような気もいたしますけれども、われわれの考え方としては、警職法の一部改正が、すりかえられたという言葉はあまりいい言葉ではありませんが、便乗したという言葉を使いますか、あるいは悪い言葉で言えばごまかしたというか、警職法二条を改正すべきであるが、しかしこういう法律があるから、これの改正でまず警職法二条の改正を補った、あなた方から言わせると欠陥を補ったということになろうかと思います。われわれの方から言えば、悪いものを補ったということに大体なろうと思います。そういうふうに解釈していいんじゃないですか。
  196. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 今度の改正は警職法二条の改正ではございませんで、銃砲刀剣類等所持取締法改正でございますが、ただいまお話しのような、法を改正してこういう規定を入れることはもちろん可能でございます。そういう行き方も一つあり得ると思うのでございます。
  197. 門司亮

    ○門司委員 警察に関する法律は、御承知のように、よく言われておりますように、六法全書に書かれておる警察関係と思われる分類の中の三十五、六ありますね。法律はたくさんあります。麻薬の取り締まりから何から一切入れて、要するに警察権の行使と考えられる関係のある法律というのは、この岩波の六法全書にはありませんが、大きい方にはたしかそのくらいの数はある。分類するとそのくらいある。そのほか都道府県の条例があります。だから、警察行政に関する法規というのは、都道府県の条例まで入れますと非常にたくさんある。そうしてそれがいろいろ輻湊いたしております。しかし、できたときの法案の立案の動機並びに立案の趣旨からいいますと、おのおの私は特徴を持っておると思います。そしてこの銃砲刀剣等の取り締まりの問題については、これはやはり一つ銃砲刀剣という限られたものについて、これをどう取り締まっていくかという問題であって、一般警察行政のものの考え方の中に、範疇に入るかどうかというようなことについて私は少し疑問があるのじゃないかと思う。もし警察権がここにこういう条文として入れられるなら、私どもはこの警職法に必ずしも賛成するものではありませんが、当然これはやはり警職法の中の警察の一般行政の中にこれを入れておくことの方が、私は法の建前からいえば妥当ではないかというような気がするのですが、こういうふうに法律を直していきますと、いろいろなものにこういう慣例ができてきやしませんか。そうして、たとえば麻薬なら麻薬の問題についても、持っている者についてはこういう形で取り調べることができる、あるいはそのほかの警察関係法律にはみんなこういうふうにくっついてきて、そうして警察権の拡大が行なわれると同時に、法律が複雑になってきて、取り締まりの上にも非常に困るような——困るという言葉はどうかと思いますが、非常に法律が輻湊してくるきらいがある。いわゆる警職法というものが一つあって、その上にまた同じようなものをこしらえて、これが入れられたら、これが一つの慣例になって、今度はその次の何かの法律に、やはりどうもこういうものを入れた方がよろしいというような考えで、そこにもまた警職法と同じ趣旨のものが入ってくる。そうして警職法が一応つぶれたのではありますが、だんだんあの警職法を改正されるというときの考え方というものが強くなってきて、そうしてなしくずしにずっとこういう警察関係法律にみんなそれが入ってくるというようなことに私どもはなりはしないかと考える。だから、もう一応御答弁を願いたいのは、この法律改正はあくまでも警察官職務執行法の権限の範囲を越えたものではないのだというように御説明ができますか。警察官職務執行法の二条に書かれております警察官調査権がありますね。これの範囲を越えたものではないのだというように解釈してよろしゅうございますか。
  198. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 第二条の現行法からは若干はみ出しておる。たとえば一時保管というようなことは、全然警職法にはございません。また、きわめて任意に提示を求めるというようなことができないわけではございませんが、ある程度それを強く促すというようなことは、やはり明文の規定で書かれるということになりますれば、二条にこういう規定改正するとしても若干はみ出るということに相なろうかと思います。  それから先ほどお話がございましたように、元来警職法の改正でいくべきだという話でございますが、やはりこうした特別法にのみ限られた権限というものは、その特別法の改正でやっていくのが適当ではなかろうか。たとえば風俗営業法で立ち入り調査するというようなことも、これは風俗営業等取締法で規定されるわけでございまするし、路上における警察官の各種の交通規制上の措置というものにつきましては、道路交通法でこれを規定していくということになるわけでございますので、そういうものに盛られない一般的なものについて警職法でこれを規定するということがやはり妥当な行き方ではなかろうかというふうに私どもは考えておるのであります。
  199. 門司亮

    ○門司委員 そうすると、今の答弁ではっきりしましたのは、この今度の改正は警職法の二条の条項が少し拡大されたということにならざるを得ないもので、これはどうしても警職法よりも少しオーバーしている、こういうことが言えるかと思います。これは実に困った話で、私どもは警職法自身ですら実に厄介なものであると考えておるのに、これをさらにオーバーしたような法律ができるということは非常に迷惑なことでありますが、そういうふうに解釈することができると私は思います。  もう非常におそくなっていますので、御迷惑ですからあまり長く質問することを避けたいと思いますが、行政として、警職法より以上のワクを広げて銃砲刀剣類の法律で規制をしていこうとする考え方ですね。これについて、一体こういうものをしなければ銃砲刀剣類等の規制ができない、これは一番最初の質問に戻りますが、ということは、今まで私のずっと聞いて参りました質問の中には非常にたくさんの矛盾が実はあるのです。たとえば、農民に対する処置をどうするかとか、あるいはその他の五条の改正等からくる国民の権利に及ぼす影響というものをどうするかというようなことは、ほとんど具体化されておらないと同時に、私は最後に聞いておきたいと思いますことは、警職法の二条の拡大化されたということが一つ、と同時に、五条はどこまでもこれを任意調査としてほんとうにこの法の精神を生かすことができるかどうか。要するに、本人以外の者で同居の親族にそういう者があるということは、何によって認定され、何によって調査されるわけでありますか。その点をこの機会に明らかにしていただきたいと思います。
  200. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 五条の三項の運用でございますが、これは先ほど原則的な運用の仕方ということについては申し上げました通りでございます。はっきりとそういう危害が起こるおそれのあるというような場合に許可をしないということでございまして、これは調査方法といたしましては、まず取り消した人間の家族あたりから申請があるということになりますれば、これは非常にはっきりする。また近所のうわさで、あそこにはひどい乱暴な者がいて、しょっちゅう暴行をする、傷害ざたを起こすというような情報がございますれば、そういうものをもとにして、きっかけとして調べていくということに相なろうと存じます。申請人についても同様でございまして、申請人がそういう者であるかどうかということも、やはりその前科の経歴であるとか、あるいは近所の風評であるとか、いろいろそういうものを聞いてやるわけでございまして、積極的にすべての家庭について詳細調べた上でなければ許可、不許可をきめないというように、積極的に調査するということは、何らかのきっかけを得て初めて行なわれる場合がむしろ多かろうと思うのであります。従いまして、先ほどお話しのような戸口調査、あれはもう居住しておる各戸について調査をしたのですが、それに類するものとしては、最近巡回連絡ということで任意の連絡をいたしておるわけでございますが、そういう過程におきましてわかった事情ももちろん参考にいたしますけれども、何らかのきっかけによってそういうことが現われてくる。そうしてこれは許可することが非常に危険であるということがはっきりした場合において許可をしないというように運用して参りたいと考えております。
  201. 門司亮

    ○門司委員 その点ですが、これは私よりもあなたの方が商売だからよく御存じのはずであり、また警察の権威としては十分だれでも知っておることであって、珍らしいことではありませんが、御承知のように憲法でいう警察権の行使の権限の中に、例の捜査権については、一応の犯罪の捜査というものについては憲法が認めておりますね。しかし調査の権限という、いわゆる行政警察に属する分については非常に取り扱いがむずかしいと私は思う。この法律案を見てみますと、このけじめを一体どこでつけるかということが非常に私は問題になろうかと思う。たとえばこれは現実の問題として、願い出をしたときからその本人の家族の調査をしなければなりません。あなたの言われるように、日常かりに戸口調査などやらないにしても、願い出をすればいやが応でもその家族にそういう者があるかどうか見ないわけにはいかぬ。許可条件ですから、あなたの方で見ないわけにいかない。そういう場合にどういう形で調査するか。本人ならば、その本人の身元調査をするというのは当然だと思う。願い出た本人とは人格的には全然別の春が、戸籍上の同居の親族という形で、願い出た者のために調査を受けなければならない。あなた方の方はまた調査をしなければならない。私なら私が願い出れば、私の子供あるいは私の家内あるいは同居の親族といいますか、兄弟がおれば兄弟も入るかもしれない。親もいれば親も入るかもしれない。それらの諸君の身元調査がおそらくされる。こういう法律ができた以上は、許可証というものはそうなっていますから、それらの諸君の身元調査が公安委員会に行かなければ公安委員会許可されないわけです。そうすると、その間の調査権というものはどういう形で行なわれるかということです。この点は、私どもとしては非常にむずかしいところだと思うのです。いわゆる司法警察権としての権限は、これは学問的にはぴしっと割り切れてしまうのですね。犯罪の捜査であるからということでこれは当然だということになる。しかし行政警察の面になってきて、犯罪の予防だ、社会の秩序の保持だということだけにこれがしぼられてきますと、警察権限がどこまで及ぶかということは非常に重大な問題ですね。これが行き過ぎるととんでもないことになる。しかも学問的にはぴしっとそういうふうに割り切れるのであるが、実際の行為については割り切れないですね。たとえば行為一つでも割り切れない。現行犯一つでも割り切れない。どこまでが予備行為であって、どこまでが現行犯であるという境などは非常にむずかしい。この場合でも、二十四条の二等にもひっかかって参りますが、ほんとう警察官の認定というのは、要するに行政警察官の認定は非常にむずかしい。そういう二つの権限が警察行政の中で、学問的にはぴしっと割り切れるのだが、しかし現実には割り切れるものではない。まして同じ警察官が二つの権限を行使する。そういたしますと、こういう会合で、答弁では、どこまでも調査権でございます、調査権だということで答弁をきれることは当然であります。しかし、現実の問題で、認定する警察官がその範囲を越えるか越えないかというととは非常に大きな問題になる。そこに警察権の乱用のおそれがきわめて大きいということです。従って私は、こういうととが法律できめられますと、いやが応でも警察官調査をしなければなりません。報告をしなければならぬ。報告の義務が出てくると思う。許可条件の中に、身内の者にそういう者があるかないかということは必ず公安委員会に報告せよというにきまっておる。またそうでなければならないと思う。そうすると、その調査について往往にして行き過ぎができる危険性がありはしないかということが一つ。  もう一つは、今の日本の状態から見ますと、昔のような戸口調査がなくなって、そして各家庭でかなりのんびりしておる。そういうときに、おやじさんが何かの関係で鉄砲を撃ちたいからといって願いを出してくる。そうすると、お前さんの子供にこういう者がいやしないかとか、ああいう者がおるとかで、もし許可がおりなかった場合の社会的影響というものは一体どういうものが出てくるか。それが現実にあって、子供の中に人殺しをした者があったとか、あるいは気違いがおるからあの家はとてもあぶないのだと、世間の批判を受けるような場合は別ですけれども、しかし主人はまじめな人で、外から見た分には家族にそういう人がないような環境に置かれておるというようなときに、たまたま世間の思惑と異なった結果が出ないと限らぬと思う。出た場合に、その家庭に及ぼす影響はかなり深刻なものがあろうと思う。鉄砲を撃つことを願い出たら、むすこの行状が悪いから許可されなかったというようなことが世間に出てくると、犯罪行為がなくても警察に烙印を押されてしまう。そういう点はどうなりますか。
  202. 柏村信雄

    ○柏村政府委員 先ほども申し上げましたように、本人についてはもちろん現行法においても調べるわけでございますが、本人について調べると同じような程度、すなわち本人の経歴からそういう性癖を持っておるかどうかということは、家族についても、もちろん任意の調査でございますが、先ほどお話のございましたように、世間で非常にひんしゅくされている人間がおるかどうか、また過去の経歴からそういう行状があって、現在もそういう性癖が続いておるかどうか、そういうことを現実に具体的に見きわめようということでございまして、個々に家族を呼び出して尋問するとか、家の中に入って捜査に似たような調査をするというようなことはもちろんできないわけでございますし、そういう気持もないわけでございまして、外見的に世間でそう言われるというようなものがみすみす見のがされない程度調査をしたいということと、それからさっき言ったように過去の経歴からそういう危険性があるかどうかという客観的事実というものを考えて、許可、不許可をするということに相なろうかと思います。
  203. 門司亮

    ○門司委員 これで最後です。こういうことはいつまで議論しても切りがないと思いますが、こういうことになりませんか。こういう法律警察官に権限を与え——私はこれは一つの権限だと思います。それから警察官に義務づけるということになれば、いやが応でも警察官は行使せざるを得ない。それよりも、もしそういう意図があるならば、世間にわからないような形で、烙印を押すというようなことのないように、行政指導でそういう面はできませんか。どうしてもこういう権力を与えなければやれないという警察行政のものの考え方は誤りではないか。この程度のものは行政指導でやれるのではないか。法律による権限を警察に与えるということでなくて、十分行政指導でやれると思う。そのくらいの住民と警察との民主性が保たれることの方が望ましいのではないか。何でもかんでも権力でなければいけないというようなことは、警察行政としては逆行じゃないかと思うのです。その点に関する考え方を大臣から承っておきたいと思います。
  204. 安井謙

    ○安井国務大臣 お話しのように行政指導によってやるということが、あるいは理想的であるかもしれませんが、今日の警察官の行動に少し明確な線を与えて、その限界と責任をはっきり確認をさせるという意味からは、こういった改正をした方が運営上より効果があるという考え方でございます。
  205. 濱田幸雄

    濱田委員長 次会は来たる二十九日に開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時四十九分散会