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1961-03-10 第38回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年三月十日(金曜日)     午前十一時三分開議  出席委員    委員長 足立 篤郎君    理事 細田 義安君 理事 毛利 松平君    理事 山中 貞則君 理事 平岡忠次郎君    理事 横山 利秋君       伊藤 五郎君    岡田 修一君       金子 一平君    川村善八郎君       簡牛 凡夫君    田澤 吉郎君       高田 富與君    高見 三郎君       津雲 國利君    西村 英一君       米山 恒治君    有馬 輝武君       佐藤觀次郎君    田原 春次君       広瀬 秀吉君    藤原豊次郎君       堀  昌雄君    武藤 山治君       安井 吉典君    春日 一幸君  出席政府委員         大蔵政務次官  大久保武雄君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      上林 英男君         大蔵事務官         (主税局長)  村山 達雄君         大蔵事務官         (管財局長)  山下 武利君         林野庁長官   山崎  齊君  委員外出席者         農林漁業金融公         庫総裁     清井  正君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国有財産特別措置法の一部を改正する法律案(  内閣提出第九号)(参議院送付)  国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五一号)  森林火災保険特別会計法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五三号)  税制に関する件      ――――◇―――――
  2. 足立篤郎

    足立委員長 これより会議を開きます。  国有林野事業特別会計法の一部を改正する法律案森林火災保険特別会計法の一部を改正する法律案及び国有財産特別措置法の一部を改正する法律案の三案を一括して議題といたします。  質疑の通告があります。これを許します。有馬輝武君。
  3. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 本日は、清井総裁お忙しいところ、非常に恐縮でございますが、このたびの国有林野事業特別会計に関する点につきまして、特に官行造林を廃止いたしまして、その事業森林開発公団にやっていただくことになるわけでございますが、この問題と関連いたしまして、現在まで農林漁業金融公庫が助成してこられました経緯、そういった点につきましてお伺いいたしたいと存じます。なお、ほかの関連もありますけれども最初清井さんにお伺いする点だけをお伺いいたしまして、あと長官に逐次お伺いして参りたいと存じます。  最初に、助成事業として補助金融資二つがあるわけでありますが、この二つ性格について林野庁としてはどのように考えておられるか、これを長官からお伺いしておきたいと思います。
  4. 山崎齊

    山崎政府委員 お話通り民有林造林事業の推進につきましては、補助造林事業と、それから融資による造林事業と、両者があるわけであります。造林事業実態を見て参りますと、現在三十万町歩に及ぶ造林民有林について行なわれておりますが、一件当たりの平均面積は四反歩強というふうな、非常に小さい形で行なわれておるということが、造林事業の非常に特異な点だと考えておるのであります。こういう小さい事業のものに対しましては、もちろんなかなか融資に乗りがたいという本質的な面もあるわけでありますので、造林事業に対する国の施策の第一点を補助造林事業ということに置いておりますが、ただ五町歩以上というふうな大きい造林を行なうものに対しましては、その金額から言いましても十分融資という形に乗り得るという性格を持っておりますので、そういうふうな規模以上のものは融資に回していくというふうに考えておるのであります。ただこの場合、市町村の行なう造林につきましては、この起債等関係からいたしまして、八十万円未満というものは金融公庫からの融資という対象にはなりがたいという問題、それから、御存じ通り入会権等のあります部落有林等に対しまして、入会権者が大ぜい集まりまして造林でもやるというふうな場合につきましても、やはりなかなか融資という制度に乗りにくいという本質も持っておりますので、そういう両者に対しましては、補助造林という制度面積が大きくてもやっていくという考え方をもって臨んでおるわけであります。
  5. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 清井総裁にお伺いいたしますが、公庫でやっておられます造林融資対象、それからその貸付を受けるもの、その利率その他について、一般的に、簡単でけっこうでございますから、お教えをいただきたいと思います。
  6. 清井正

    清井説明員 ただいま御質問のございました点でございますが、私ども農林漁業政府資金融資いたす仕事をいたしておるわけでございますが、その一環といたしまして、造林事業に対して毎年相当の金額融資いたしておることは御存じ通りでございます。本昭和三十五年度は、もうじき終わるわけでございますけれども林道等を含めますと四十億をこしますけれども造林だけで申しますと、当初は十四億四千万円でございましたが、ただいま相当増額いたしまして、約十七億八千万円のワクをもって造林を実施いたしておるのでございます。造林やり方といたしましては、ただいま長官からお話がございましたが、大体面積の少ないところは補助でいく。補助を受けたものの補助残融資というものも一部ございますけれども公庫としてはごくわずかでございまして、大部分は非補助に対する、割合面積の大きいものに対して公庫融資をいたしておるわけでございます。そのうち、また大きく分けますと、つまり一般公有林造林というものがあるわけでありますが、それに対する融資、それから五町歩以上の融資のみにたよる造林でありましても、割合に小さい規模の場合と、大きい規模の場合と両方ございますが、両方の場合は、融資条件を分けて貸し付けることにいたしておるわけであります。割合面積の低いところには有利な条件で貸し付けるということにいたしておるわけであります。非補助の場合は、利率としては四分五厘で貸付をいたしております。その場合も据え置きは二十年、償還は十年というものを最高にいたしまして、貸付をいたしておりますが、割合大きいものに対する貸付の場合は、その条件を多少変えまして、据え置きを短くいたしまして十年、償還を十五年というふうにいたしておるわけであります。いずれにいたしましても、当公庫融資といたしましては、補助残融資というのはわずかなものであります。それで、大部分の金は非補助融資でございまして、非補助融資は、ただいま申し上げました通り公有林に対する造林融資、それから公有林以外の一般造林者に対する融資がありますが、その造林者に対する融資二つに分かれまして、大きい方と小さい方とで融資条件を異にいたしておるわけであります。私どもとしては、小さい方の融資には割合条件をゆるくしてあるというようなことで、造林融資を実施いたしておるわけでございます。最近非常に造林貸付に対する希望が多うございまして、本年度は十七億八千万円のワク造林融資をいたすのでございますが、明年度は、予算をおきめ願いますれば、その予算によって実行いたしますれば、二十二億一千万円の金をただいま申し上げたような対象に対する造林融資ワクといたしまして、明年度貸付を実行いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  7. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今のいわゆる大規模のものと、それから中小規模のものとを区別して、償還期限なりあるいは利子率等において、総裁の御説明によりますと配慮が行なわれておるようであります。この点につきまして、私どももそういった配慮について感謝をいたしておりますが、問題は、大規模のものは、いわゆる回転率といいますか、年々収益が上がってくるけれども中小規模のものはなかなかそうは参らない。そういう点について、ごく零細なものは別といたしまして、中小のものについては、先ほど長官から御説明がありましたように、補助金ということで御配慮をいただいておるようでございますが、むしろ私は、公庫におかれましても、そういった面から、ただ単に償還期限問題等配慮するだけじゃなくして、ワクの面においても相当考慮されるべきではないか、こういう考え方を持っております。それで、大体一つのめどといたしまして、たとえば五十町歩以上はどの程度か、この本年度の十七億八千万円の貸し出しのワクでけっこうでございますから、それ以上のものとそれ以下のものとをお聞かせいただきたいと思います。
  8. 清井正

    清井説明員 ただいまの御質問に対して今はっきりお答え申し上げる用意がございませんので、申しわけございませんが、ただいま申し上げました今年度造林ワクの十七億八千万円のうち、いわゆる大造林融資いたしますワクが五億四千二百万円、それから、小造林と申しますか、小さい方の規模に対しまする融資ワクが四億五千万円というようなことにただいまなっておるわけでございます。  大と小との区分はどこでするかということでございますが、ただいま面積についての御指摘がございましたが、ただいま用意ございませんで恐縮でございますけれども、私どもは、大体大と小を経営面積の五百町歩、それから従業員の百人ということで分けておるわけでございまして、そういうような規模以上の会社は大造林、それ以下の規模会社は小造林ということのような思想で分けておるわけでございまして、そういうような大造林に該当するものが五億四千二百万円、小造林に該当するものが四億五千万円というワクで実行いたしておるわけでございます。なお、この小造林に該当する部分は、これは各県へずっと割り振りいたしまして、各県において、これを県庁推薦によって貸付をいたすというやり方をいたしておるわけでございます。大造林の場合は、県庁を通じない場合が相当多いわけでありまして、これは直接公庫から貸付をいたしますが、その場合にも県庁推薦等処置はいたしておるわけであります。ただいまのところはそういうことでやっておるのでございますが、明年度は、ただいまお話がございますが、小造林も大造林もともに六億円のワクにいたしまして、予算が通過いたしますれば、明年度はその同金額ワク貸付を開始いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  9. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今の問題に関連いたしまして長官にお伺いしたいと思いますが、現在までの事業経過から見まして、補助金の場合と融資の場合と、これは法律を定木ではかるみたいには参らないかと思いますけれども、どちらの方が有利か。そういった点について――もちろん融資ワク補助金の額に比べますと非常に少なうございまして、その点では問題があろうかと思いますけれども一般的に申しましてどちらの方がよろしいのか。まあ融資が効率がよろしいということであれば、これはワクの拡大に今後も御努力をいただかなければならぬと思いますので、そういった点についての長官のお考え方をお教えいただきたいと思います。
  10. 山崎齊

    山崎政府委員 補助の場合と融資の場合とどららが有利かという問題につきましては、非常に前提条件がいろいろあるわけでありまして困難でありますが、たとえば、補助造林の場合におきまして、新植林に対して平均四割の補助をするわけでありますが、残りの金は自己負担だという形になるわけであります。その自己負担の金がたとえばどういうふうな金利で回るべきかというところに、考え方が非常にめんどうな点があるわけであります。たとえば、国でいろいろ金利という点で基本的に従来考えてきておりました五分五厘というふうなものを前提にいたしまして、それで自己出資のものが回ると考えました場合には、やや補助造林の方が有利じゃないだろうかというふうに考えられますが、しかし、そういうものが一般市中銀行等におきまして六分五厘とか七分に回るんだというふうな観点に立ちますと、補助造林の方が必ずしも有利だというわけではないというふうな、実態上の関係にあるわけでありまして、六分とかいうふうな前後の金利を想定しますと、両者でほぼ均衡はとれているというふうに考える次第でございます。
  11. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それから、清井さんにお伺いいたしたいと思いますが、清井さん御承知のように、臨時国有林野事業経営調査会会長をしていらっしゃいまして、しかも中間答申を出していらっしゃるのでありますが、この際、農林漁業金融公庫総裁として御出席をいただきましたけれども、この問題についてお伺いしてよろしゅうございますか。
  12. 清井正

    清井説明員 私、できる限りお答え申します。
  13. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 それでは、その中間答申につきまして若干お伺いいたしたいと思いますけれども、その答申の中で、国有林野事業特別会計企業的弾力性という点について言及されておるのでありますが、その企業的弾力性を持たせるべきだというようなことは、どういう点を意図してこういうことをお書きになったのか。答申では明瞭になっておりませんので、その背景というものについてお聞かせを願いたいと思います。
  14. 清井正

    清井説明員 私は、公庫仕事のほかにこういうむずかしい仕事を仰せつかりまして、ただいままで会長を仰せつかっておるわけでございます。ただいま御指摘中間答申でございますが、これは、私は、委員長と申しますか、会長と申しますか、十数人の委員まとめ役でございますので、私自身の意見と申しますよりも、会の委員である十数人の専門家意見まとめ役ということでお聞き願いたいと思うわけでございます。昨年の十一月の初めに調査会ができまして、私ども委員を仰せつかったわけでありますが、そのときの林野庁側説明にもありますし、私もかねがね関係者の一人として申しておったわけでございますが、国有林の現在の経営特別会計法に基づいて経営されておるわけでございます。御承知のように、有馬委員専門家でいらっしゃるわけですが、国有林というものの経営自体が、毎年々々の単年度収支をきめていくという性格のものではないわけでありまして、造林事業にしろ、林道事業にしろ、治山事業にしろ、相当長期にわたる事業計画でなければならないということがあるわけであります。膨大な職員を擁し膨大な面積を擁しておる国有林は、経済的使命を持ち社会的使命を持っておるわけでありますから、経営をいたす場合におきましては、単なる普通の会計法でやるということは不十分ではないかという感じを持っておったわけでございますが、いろいろ御説明を伺っていきますと、ただいま申し上げた通り、単年度々々々でもって収入支出を合わせていくというやり方に現在なっているのは、非常に不合理な点があると思います。また、特別会計法を見ますと、襲業を合理的に運営していく場合に、臨機処置がとりにくい場合が相当ある。たとえば、災害なんか起こった場合に、災害費用が組んでありませんために、あらためて予算措置を講じて災害費用を捻出しなければならないということになりますと、臨機応急措置に間に合わないということが起こるというようなことで、現在の特別会計法法規自体が、やっております事業実態と合わない点がある。そこで、何とかして事業使命を完全に果たせるように特別会計法を少し改正する必要はないものだろうかというお話であったわけでございまして、私もまた同様に考えるわけでございます。  その点が一つと、もう一つは、特別会計から一定金額一般会計へ拠出して林政協力事業をやっております。私、公庫総裁といたしましても、国有林野特別会計を通じまして出資を受けておるわけでございます。私、そういう関係があるわけでございますけれども、それは別といたしましても、相当金額費用を毎年出しているわけでございます。その点も、現行法でいきますと、剰余金がありかつ利益があるということを前提として、初めてかかる措置が許されるということであります。というけれども、なかなか実際問題として、長い間の利益は生んでおりましても、当該年度利益剰余金がなければできない。そうすると、せっかくやろうと思った事業ができないという場合が起こってくるのであります。そこら辺の考え方をもう少し楽にする必要がないだろうかという問題があります。同時に、ひっくり返して考えますと、いかに林政協力事業といえども、やたらに特別会計自体運営に支障を及ぼすようなことがあってはならないのであります。あくまでも特別会計運営のために必要な資金を確保する。その確保する一線を画しておいて、なおかつそのほかに一定金額林政協力事業として他の事業に支出するという一つの線を画すべきではないか。今どれぐらい出していいか悪いかという基準がないということは、お互いに工合が悪い。国有林野特別会計事業運営にも工合が悪いし、林政協力事業に支出する面からいっても工合が悪い。そこら辺に何か基準を設けなければならないのではないかというお話もあったわけでございます。  その他いろいろこまかい問題がございますけれども、総じて現在の特別会計というものが、国有林野事業実態とその性格からいって、もう少しこれを弾力性あるものにしていったらいい、そのためにはどうしたらいいだろうかという御諮問を受けたわけでございまして、それらのお考えをまとめまして、私ども委員十数名が五、六回相談をいたしまして、昨年末に一応の中間報告というものをまとめたわけでございます。これの内容については、また御要求がありますれば御説明申し上げますけれども、大体今のような考え方をどの程度是正できるかということで、まあこの程度ならばできるんではないかという抽象的な基準でございますけれども、立てましたのがこの中間報告内容であるわけであります。
  15. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今、清井さんの御説明の点について、私たちもそういった弾力性を持ってしかるべきだというような考え方にウエートを置いたものの考え方をいたしております。その基本問題調査会答申を読ませていただきましても、また清井さんのこの中間答申を読ませていただきましても、国有林野を管理経営して、林業経営を行なう企業的な面と、林政協力の面と、これはたての両面だと思うのですけれども、その企業採算ということを特に強調されているきらいがあるのではないか。これは私の読み違いかもしれませんけれども、そういう点はどうなんですか。
  16. 清井正

    清井説明員 確かに御指摘の点は問題点だと思います。その点は委員会においても相当議論されたところでありまして、その点は、まさに有馬委員のおっしゃる通り国有林野事業自体性格は、単に営利的な事業をやっているだけではなく、一方に社会的な使命を持っている。この両方使命を果たすように、この特別会計を編成することはもちろんであります。そこで、問題は二つあって、二つ性格を持っている一つ特別会計を一緒に運営するから、そこに問題が起こる。片方では、事業という面からいえば、事業である以上は、一つ利益採算というか、損益計算をしなければならないことは当然であります。しかし、そればかりに専念いたしますと、社会的事業と申しますか、そういう性格は失われる。また片方では、社会的事業ばかりやるのは、企業でありますからできない。そこで、どこにはっきりした線を引くかというところに非常に苦心があるわけでありまして、それでこれに書いたわけでございますけれども、要するにこの国有林野事業の中へ二つ入っている。違った性質のものが二つありますから、中において二つを別々にして、勘定科目は別々にすべきである。そうして片方企業的な事業をやる分は、事業としての色彩を持たせたらいい。また、片方林政協力をやる事業は、林政協力事業としての色彩をはっきりしてやる。二つをはっきり区分すべきだという考え方に立っているわけであります。従いまして、その財源は、今まで百七十億の金を五十億と百二十億に分けまして、五十億の分は林政協力事業財源にする、片方は本来の国有林経営のための事業資金としてやる、こういうふうにして、二つ性質を持っているからこそ非常にむずかしい点があるのでありまして、同時にその二つ性質をごっちゃに運営するところに問題がある。ごっちゃにしないように、勘定科目を別々にして、こちらの勘定はこういうふうに運営する、別の科目はこういう運営をするという違った科目運営することによって、国有林野事業全体がうまくいくことになるのではないか、こういう考え方で、できているわけでございます。決して全体を利益のためにのみやったというのではなく、両方性格を持ったものを二つに区分して、それを一つに合わせるというところが苦心の要るところではないかというのでありまして、有馬委員指摘の点は、まさに問題になった点であります。そこで、ただいま私が申し上げたようなことで、区分してこれを運用するという工合考えたわけであります。
  17. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 基本問題調査会答申でも、この点については、今、清井さんからお話がありましたように、十分指摘されたところでありますし、また、この特別委員会におきましても、経営調査会におきましても、真剣に御論議がかわされたということを今お聞きいたしたのでありますが、お話の中にありましたように、やはり一つ企業である同時に、国土保全という大事な性格を持っておりますから、もちろん勘定を分けて云々と頭の中では分けられるでしょうけれども、実際の事業を遂行していく過程において、はたしてそのようにうまくいくかどうか。この点については私は疑問なきを得ませんし、本来の国有林野事業特別会計性格自体がそういったところから出発しておるのでありますから、これを無理に、今、清井さんがおっしゃったような形で勘定を分けるのだというようなことを進めていきますと、その本来の国有林野事業のカラーというものまでもそこなわれていくのではないかというような懸念がいたすわけであります。この点について長官のお考えはどうか、一ぺん伺いたいと思います。
  18. 山崎齊

    山崎政府委員 国有林野事業はどういうような性格をもってやるべきかという点は、先ほど清井総裁からお話のあった通りだと考えております。現在、国有林野事業特別会計の中には、御存じ通り、本来の国有林野というものを対象にいたしまして、企業的と申し上げましても、やはり公企業として公共的な性格を当然持たなければいかぬというワクの中におきまして、企業的と申しますか、能率的にこの事業運営していかなければならぬという一つの面を持っておるように思うのであります。それから、いわゆる一般林政に対する協力という問題があるわけでありますが、これらにつきましても、この答申の中に細部的にもうたってありますように、一般民有林事業に大きく貢献もでき、かつ国有林野事業運営にも貢献するという、両方性格を持っておるものもあるように思うのであります。それと、国有林野事業自体のといいますか、国有林野としての運営というものには直接の関係はないが、一般民有林の振興のために、ぜひとも考えてやらなければいかぬというもの、こういうふうな三つの性格を持っておるように考えておるのでありまして、それらがそれぞれ能率的な形において運営されますとともに、総合的にやはりその生産性の向上あるいは国土保全、そういうふうなものがそれぞれ総合されて、調和された形で運営されなければいかぬという、二つの大きい使命を持っておるというふうに考えておる次第であります。
  19. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 長官もその二つ使命を強く認識しておられるのですが、この点については、あと清井さんがお帰りになりましてから、今度の法律案を出された根本的な問題に触れて参りますので、詳しくお伺いいたしたいと思います。  なお、清井さんにお伺いいたしたいと思いますが、経営成果の判定は企業損益計算基準としてなされなければならぬというようなことを前提とされまして、単年度収支均衡原則歳出予算予算統制方式災害復旧のための財政措置について、経営成果の維持向上に必要があると認める場合には、合理的な例外措置を講ずべきだ、というようなことを答申で言っておられるのでありますが、これは具体的にはどういうものを予想されておられるのか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  20. 清井正

    清井説明員 具体的にどういうふうにこれを実際上表わしたかということは、これは政府の責任においてやっていただくことでありますから、私としてはこれを書きました意味を御説明申し上げたいと思います。むろん有馬委員承知のことと思いますが、先ほどちょっと申しました通り、単年度収支を必ず均衡させるというところに問題があるんだ。従って、長期の、たとえば林道事業をやって、それを二、三年間にわたった連年の長期の林道事業のようなことを計画した場合に、それが当該年度に終わらなければ、その事業をそのまま翌年まで持ち越すというようなことにいたしますと、形式的には収支が合わない場合が起こるかもしれない。しかし、それは、その事業といたしまして当然必要な事業であるし、林野事業というものは終わらない事業であるわけでありますから、当然一年間と限った事業でなしに、二年ないし三年間にわたる事業、その年度に終わらなかった場合には、その次の年度収支関係を持ち越すというふうに考えまして、できるだけ一年々々でもって収支をきちっきちっと合わしていくという考え方はとらないような考え方でやっていく、こういうような考え方に立っておるわけであります。たしか、この試案の中にも、そういう意味において、奥地開発設計等の計画整備等のために必要がある場合には、歳出の財源に充てることのできる持ち越し現金を歳入予定として考えたらどうかということを書いておきましたが、ただいま申し上げた通り、奥地開発のための施設をする場合等長期にわたって必要な場合、そういうときに現金を翌年度に持ち越してやるということによって、形式的には収入支出が合わないということがあっても、そういう事業性格上、単年度々々々で収支をきめるというやり方でない方がいいんじゃないかという考え方を持っております。そういうことをできるだけ政府としては考えてみたらどうか、こういう意味であります。  それから、予算統制方式と申しますのは、御承知通り予算と実行との関係予算ワクを越してはいかぬということになっておりますが、これは、御承知通り、たしか予算総則で弾力条項というものが現在設けられておるわけであります。弾力条項で、その歳入がふえた場合には、それを一部歳出に使い得る措置が今までもできておるわけでありますが、それが非常に直接的な事業に対してのみの支出しかできないのであって、造林事業その他の事業には支出できないような規定になっておりますから、それでは少し狭過ぎる。従って、たとえば山を切って非常に収入が上がって非常に金がある、何か事業に使いたいというときには、これは少し広い面において、将来に備えた造林事業なり、将来に備えた林道事業もできるようなことにしたらいいのじゃないか。そうでなくて、その年その年で収支をきめるということではなかなか事業ができない、そういうことでは森林の経営上不十分であるから、なるべくその予算総則の弾力条項というものを広くするというふうに考えていった方がいいのじゃないか、こういうような考え方であります。これも今度はたしか実現して、政府では少し広げて解釈されているように思っております。  それから、災害復旧のための財源措置というのは、先ほども申し上げましたけれども、これは、すでにこの予算の中に、たしか災害の起こることを予想いたしまして、林道施設等の災害の緊急対策賞として十一億の金額を計上しているわけであります。これは去年なんかはやっていなかったわけでありますが、ことしは、年度当初から、災害の起こった場合を予想いたしまして、そのときにあわてないようにということで、十一億の金額を計上しているというようなことがありますが、その他、これに関連いたしますことといたしましては、予算の項目を整理する場合も考えられますし、この予算そのものの弾力性を持たせるためにいろいろ考えられる措置があろうかと思いますが、私ども考えましたのは、その他もありますけれども、以上のようなことを中心といたしまして、できるだけ弾力的に特別会計というものは運営できるようにすべきである、こういう意味で答申をいたしたわけであります。
  21. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 次にお伺いしたいと思いますのは、国有林野事業の中で特に林政協力事業におきましては、民有保安林の買い入れ等のように、その事業遂行の結果、支出に見合う財産が残るものと、それから、それに対して治山事業を行なう場合のように、いわば消費的な性格を持つものと二つあるわけでありますが、この後段の消費的な性格を持つものについて、利益の範囲内で事業を行なわなければいかぬというようなことを、また答申の中では触れていらっしゃるようであります。しかし、これは、国有林野事業のあり方からいたしまして、利益の範囲内でというようなことを限定されることは、今お話しになったこととも少し食い違ってくるのじゃなかろうかというような気がいたすのでありますが、この点についての総裁のお考え、あるいは委員会での御論議の経過についてお聞かせ願いたいと思います。
  22. 清井正

    清井説明員 その点は確かに問題になった一点でございます。治山事業をいたす場合に、利益がある限度しかできないということでは困るじゃないか、こういうことが中心になるわけでございますけれども、先ほど私ちょっと申し落としたのでありますが、一般林政協力事業と申しますのは、要するに狭義の、狭い意味で、他の一般会計に金を支出するとか、あるいはその他これに関連をするけれども、本来の国有林野以外の事業にのみやる狭い意味の林政協力事業、ただいまの御指摘の点、林政協力事業二つに分けまして、いわゆる民有保安林の買い入れというものは財産になるわけであります。これは、一定の本来の特別会計なり国有林野事業経営に支障ない限度で、金があればやってもいいのじゃないか、こういう考えであります。財産でありますから当然であります。ところが、治山事業を行なう。その治山事業の方になりますと、これは、土木事業が中心でありますから相当な金もかかりますし、これが本来の国有林野経営とあるいは関係がないような治山事業をする場合も相当あるわけでありますが、そういう場合もむろん必要ではありますけれども、これはあくまでも国有林野事業特別会計の中の一つ事業としてやるべきである。そういったものは、やはり利益というものを前提として、利益の中から一部林政協力の方に回す、こういう考え方をとってやらないと、それが幾らでもやれるということは極端な話でございますけれども、限度なしに幾らでもそういうふうに極端にやるということになりますと、国有林野事業に悪影響を及ぼすということか思想的にあり得ることでございますから、今言ったように、思想を二つに分けまして、財産的な取得になるものは、これは大体国有林野事業に差しつかえない限度でやっていいけれども、ただ消費してしまうだけにとどまるものは、これは単なる金の消費でございますし、財産になるわけではございませんから、やはり元金がなければならぬ。それは、今申し上げましたように、特別積立金、その特別積立金は利益の中から一部出すということで、結局利益がなければできないということでございます。やはり国有林野事業特別会計というものは、国の特別会計として大きな事業をやっていきます以上、あまり財産を無視したことまでやるということはちょっと行き過ぎではないか。やはりこれは、財産になるものはいいけれども、そうでない、ほんとうに消費的な経費というものは、やはり利益をもととしたところの特別積立金の中から支出するというふうに線を引いておきませんと、両方考え方を混迷いたしますと、非常にむだな消費になると考えられる。こういう観点から、今有馬委員が御指摘になったように、区分を置いたわけでございます。むろん、そこの運営によっては、これは非常に利益前提とするから、あるいは支出が不十分になるのじゃないかといろ御指摘があるかもしれませんけれども、私は、やはり国有林野事業全体の使命を十分認識して、それでやっていることでございますから、その間の通常は十分やれるものだというふうに考えておるわけであります。ただ、そのもととなるところは、やはりきちっと二つに分けておいた方がいいのじゃないか、実は委員会でもこういう考え方になったわけでございます。
  23. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 実際に国有林野事業についても目を通してこられた総裁が、会長として、今出されたような、とにかく林政と企業をマッチさせなければいかぬということを一方では言われて、一方では企業的な会計制度の確立を強く要望されるところの答申を出されると、山崎さんは手をあげてしまうのじゃないかという気がするわけです、忠ならんと欲すれば孝ならずで。もともとそういった性格なのに、今おっしゃったような点でワクをはめて、頭を押えていて、しりをたたいて走れ走れということになって、これが現在までの私は――もちろん国有林野事業は大きな成果を上げておりますが、少し欠陥があるとすれば、根本はそこら辺にあったのではなかろうかとさえ考えるのであります。こういう点について私たちはよほど考えていかなければ、今言われますように、企業的な会計制度の確立を要望するの余り、国有林野事業それ自体が半身不随になっていくのではなかろうか、こうさえ考えるわけであります。この点につきましては、あと長官にまたお伺いをいたしたいと思います。  なお、次に、こういった形で融資を御担当いただいておるわけでありますが、今後の造林政策の重点というようなものは、どのような点に置かれるべきか。特に融資対象とされる場合に、現在までの欠陥、その中から将来の展望というようなものについて、総裁としてのお考えをお聞かせ願いたいと思います。非常にばくとした質問でありまして、お困りと思いますけれども、当然これは御配慮になっておることと思いますので、そういう点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  24. 清井正

    清井説明員 私ども政府金融機関といたしまして、政府の機関の一部を担当いたしておりますので、せいぜい林野庁の方針にマッチして仕事をしていかなければならぬ立場に立つわけでございますが、私ども、ことに私担当いたしまして二年ぐらいになることでありますけれども、最近造林に対する融資希望というものが非常に顕著にふえてきております。どこに行きましても、そういう希望が多いということでありまして、これは国家的に見て非常に喜ぶべきことだと思うのでありますが、その割合には、今まで希望に応じ切れるだけの融資ワクがなかったのでありますが、今年度は若干そのワクをふやしまして、明年度は相当大幅に造林ワクをふやしまして、多少でも御希望に応じられるようにいたしたい、こういうふうに実は考えておるわけであります。  私ども融資をして参ります上に一番考えられますのは、最近公有林造林というものの熱望が非常にふえて参っております。これは公営企業金融公庫に委託して仕事をいたしておりますけれども公有林造林熱というものが非常に高まってきております。こういう点に対しても、将来も公有林造林事業が伸びるようにいたしていきたいと考えております。その他、公有林以外におきましても、人造林でも小造林でも、およそ造林意欲というものが非常に高揚しておることは事実であります。大造林の中には、一部バルブ会社等が山に植えたいというものも入っております。大きな林業会社がやりたいというものも入っております。そういうものに対しても融資をいたしております。その他の一般造林希望者が、森林組合等を通じて、ぜひ造林したいという問い合わせが、私どもの本店あるいは支店に殺到しておるような状況でありまして、私どもは、今後造林ワクというものをさらにさらに増加していき、一般造林の希望に応ずるようにいたしていきたい、こういうふうに実は考えておるわけであります。利子も四分五厘でありまして、据え置きが二十年、償還が十年、造林という仕事性質上相当長期になっておりまして、割合に有利な条件になっておるわけでありますけれども、私どもは、このレートに従ってますますその造林希望者の需要に応ずるようにいたしていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。
  25. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 最後に、総裁にお伺いしたいと思いますが、分収造林の場合に、その契約の費用負担者として農林漁業金融公庫考えられないものか。この点についてはどういうお考えを持っていらっしゃいますか。
  26. 清井正

    清井説明員 むずかしい問題を指摘されたわけでございますが、よく研究させていただかなければならぬ問題だろうと思います。私どもの担当としては、なるべく造林事業というものが盛んになっていくことが必要でありまして、そのためには公庫がお役に立てば幸いだということで今後進めて参ることでありますので、今言ったように、分収造林費用負担者になるということについては、私どもは政府機関として政府の金を融資しておる金融機関の立場でございますから、それがどういう形になるというふうに理解していいのでしょうか、ちょっと私すぐにお答えを申し上げかねますけれども、非常にむずかしい問題ではないかというふうな感じがいたしますので、この点でごかんべん願いたいと思います。
  27. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 総裁にはお忙しいところを非常に恐縮でございました。あと林野庁長官にお伺いいたしたいと思いますので、適当な時間にお引き取りいただきたいと思います。
  28. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 ちょっと関連して、今の融資の問題でお聞きしておきたいのですが、融資の重点を一体どっちに置かれておりましょうか。水源林の方が主体になりますか、それとも一般林の方に主体を置いておられますか。
  29. 清井正

    清井説明員 私どもは大体一般林の方の融資が重点になると思います。これは私ども全部県に融資ワクを配賦いたしまして、県庁推薦によって貸付をいたしております。私どもの方で、これは貸すとか、これは貸さぬとかいうことはいたさないことにしておりますけれども、私ども融資性質上、一般林に融資の重点を置いております。
  30. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 総裁にちょっとお伺いしたいのですが、農林漁業金融公庫から造林事業に対して昨年度はどのくらいの融資をされたか。また貸し出しの要請が非常に旺盛だというお話を聞いたのですけれども、どのくらいの要請に対して、どのくらいしか応ぜられないのか。そこらの数字を聞かせていただきたいと思います。
  31. 清井正

    清井説明員 造林融資でございますが、三十四年度には造林だけの実績で十七億四千六百万円でございます。三十五年度の現在のワクは十七億八千万円でございます。しかし、これは、年度末の三月になりまして、もう少し増加ができれば増加したいと思っていますけれども、ただいまのところは十七億八千万円でございます。それから三十六年度予算では二十二億一千万円の貸付額を計上いたしております。  どのくらい一体希望があるかということでございますが、数字的にはなかなかつかみにくい問題があるのでございまして、公庫全体といたしましては、ことしは五百十七億のワクでございますが、大体四、五十億貸し残すのが普通でございます。そのうちどのくらいかということはよくわかりませんが、ただいまちょっと申し上げた通り、小造林とか公有林というのは、大体のワクを各県に割り当てまして、そのワクの範囲で県庁推薦してくるものに貸すということになっておりますので、大体ワクよりちょっと越す程度の希望しか実際には上ってこないわけであります。ただ無制限に幾らでも融資するということになれば、相当上ってくることになると思いますけれども、私どもワクがある関係上、そうむやみに増額いたしましても、需要者に不便をかけることになりますので、自然にある程度規模が調整されることがあるのじゃないかという気がいたします。  どの程度需要率が満たされておらないかということは、ちょっと私はっきり申し上げられませんが、いずれにいたしましても、受け取りまして、三月末に貸し付けられなければ、来年度に持ち越しまして、来年度でまた貸付をいたしますから、順送り順送りになっていきますので、多少時期を待っていただければ、貸付希望者には貸し付けられるといふうになっているのではないかと思います。
  32. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 そうしますと、大体ワクを設定して、それがたとえば地方の場合、県に委託をしているという形になっているわけですが、そこで需要と資金の供給とは大体とんとんくらいにいっているという見通しでございますか。
  33. 清井正

    清井説明員 とんとんにいっているとは考えないのであります。おそらく相当需要を県では調整して切っているのじゃないかと思います。県にはワクがきますから、県庁の方が希望者からとりまして、公庫にはこれしかないからがまんしてくれ、来年に回してくれというようなことをやっているのではないか。そういうものは来年から、こういうことでございますから、相当程度どもワクよりも需要は上回っているのじゃないか。それは永久に借りられないということじゃなしに、一年待っていただければ、その次の年に貸し付けるというふうになっております。数字的にどのくらいかということはちょっとわかりませんが、実態はそういうふうに動いていると思います。
  34. 広瀬秀吉

    ○広瀬(秀)委員 それでは、要請になりますけれども、各県などに照会をされて、資金需要額がどのくらいあるものかということをお調べになっていただきたいと思います。あれはなかなかだめだということであきらめている。比較的小規模のものなんかは、第一県へ行ってもだめなんだということで、あきらめてしまっているものもあるわけなんです。そういうようなことを一つお調べになっていただいて、やはり四十億ないし五十億公庫全体としては残されるというのですから、ある程度需要の度合いというようなものをつかんでいただくようにお願いをいたしておきたいと思います。
  35. 清井正

    清井説明員 御趣旨の点はよくわかっております。私どももそうしたいと心がけておりますが、今後もなるべく、需要をよくつかんでいくようにいたしたいと思います。私どもは、最近全国ブロック別に支店を作りまして、やっと地方の事情がわかるようになったのであります。今までは受託金融機関に受託さして、公庫は間接でございまして、なかなか需要がつかめなかったのでありますが、今後は一そう努力いたしたいと思います。
  36. 藤原豊次郎

    ○藤原(豊)委員 先ほどのお話の中に、国有林野事業の中を二つに分けて、一つ企業面とそれから林政面に分けられてお話がありまして、その企業面と林政面の二つの面を区分してやった方がいいんだというお考えと私は先ほど伺っていたのですが、一つ考えをずっと突き進んでいきますと、将来行政面だけは林野庁でやって、事業面はどっかほかへ持っていくようなお考えに受け取れるのですが、そういう点はどうなんですか。
  37. 清井正

    清井説明員 そういうことは、私自身は全然考えていないわけでありまして、また委員会でもそういう考え方は全然なかったわけでありますそれは、先ほど来いろいろ御指摘のある二面の性格を持っているということで、非常に苦心しているのでありまして、私どもは、そういう混迷したために今のような問題が起こってきたので、その混迷をなくすように努力したいというように考えております。これはあくまでも国有林野事業一つ運営としてなされる事業だということには間違いないわけですから、これを区分してやるということは私も考えておりませんし、またそういう意見委員会では出なかったように思います。
  38. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 林野庁長官にお伺いしますが、その前にちょっとお伺いしておきたいと思います。「水源造林のしおり」というものを林野庁から出されましたか。林野庁という名前が入っておりますが……。
  39. 山崎齊

    山崎政府委員 林野庁から出しております。
  40. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 いつごろ出されましたか。
  41. 山崎齊

    山崎政府委員 先々週くらいだと思っております。
  42. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 「水源造林のしおり」によりますと、「官行造林はどうなるか」「こんな恩典がある」「水源造林のすゝめ」「水源造林はどこにやるのか」というようなことで、すでに官行造林法律が廃止されまして、公団が仕事を始めているんだというような体裁で、このパンフレットが出されているわけであります。これは収益が非常に上がるんだし、有利なんだから、積極的に早く官庁その他営林署に行ったりして御相談なさいというようなことになっておるわけであります。これは大へんなことでありまして、林野庁長官は大へんなことを考えていらっしゃらないかもしれませんが、これは法律がまだ通ってないのに、通ったかのごとく行政の方でどんどん進められるということになりますから、これは国会の審査権をないがしろにするもはなはだしいのではなかろうかと思うのでありますが、こういった間違いに至った経過もちょっとお伺いしたいと思います。
  43. 山崎齊

    山崎政府委員 もちろん公団法の改正、官行造林法の廃止というものが国会で議決されなければ、今われわれが考えております仕事というものはできないということは当然の話であります。私たちといたしまして、政府がどういうことを考えていつのかという点を、時期的な事業関係もありまして、早急に一般にも認識していただくということを考えなければならぬという趣旨で、こういうものを使用さしたわけであります、その場合におきまして、法律が成立するという前提があるのだということはわれわれも十分承知しているわけでありますが、パンフレットにおきましてその点を明確に打ち出してないというところは、私たちとしてまことに遺憾な申しわけない次第だというふうに考えているわけでございまして、御了承を得たいと思っております。
  44. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 もちろん一つ事業を進める際に、あるいは法律の趣旨の徹底をはかるために、事前のプレスその他について、それこそ突き進んだ配慮の必要であることも、これは常識的にわかります。しかし、やはり法律でありますから、よほど慎重な態度をもって臨まれませんと、これはただ単に国会軽視というのではなくて、林野事業それ自体に対する、県その他自治団体を初めといたしまして、各般の信頼の問題にもなろうかと思うわけであります。ここでどんどん準備を進められて、万が一この法律案が通らなかった場合は、林野庁はどうされるのですか。これは私たちが問題にする問題ではなくて、やはり林野庁当局が慎重に臨まなければならぬ問題だと私は思うわけであります。林野庁長官お話がありましたから、私はしつこくは申し上げませんけれども、しつこく申さないだけに、よほど考えていただかなければいかぬと思うわけです。最初にいやなことを申し上げましたので大へんだろうと思いますけれどもあとは具体的な問題についてお伺いをいたしたいと思います。  まず第一に、昭和三十五年度現在の官行造林事業における契約市町村数、その面積、それから官行造林を主体とする営林署の数、それから年間の延べ人員でけっこうでございますから関係雇用人員、それからこの事業の立木売り払いの収入額、これは三十五年度のものがわからなければ三十四年度のものでけっこうでございます。これをお聞かせいただきたいと思います。
  45. 山崎齊

    山崎政府委員 官行造林事業造林いたしました面積からまず御説明いたしますと、大正十一年に具体的な造林を始めまして、三十五年度の見込みも合わせて三十一万一千八百町歩であります。それから、官行造林事業といたしまして売り払いました数量を申し上げますと、昭和三十四年度において七十一万立方メートル、金額にいたして二十億四千九百六十六万円で、これに関係しております職員の数は、いわゆる定員内職員と常勤労務者を合わせて、三十五年度現在において六百八十四名。営林局の数にいたしますと、これは大小いろいろありますが、十二の営林局がございます。営林署は、これももちろん非常に大小まちまちでありますが、約二百ぐらいの営林署が関係しておるという状況であります。町村数につきましては、旧町村との関係が従来からあったわけでありますが、旧町村にしまして約二千くらいかと考えておりますが、その詳細はあとで申し上げたいと思います。
  46. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 先ほどの話ではありませんけれども、準備をずっと進めていらっしゃいますからお伺いいたしますが、公団でやるといたしました場合に、土地所有者、公団、造林担当者の分収歩合をどのように予定していらっしゃるか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  47. 山崎齊

    山崎政府委員 分収歩合につきましては、具体的な場所におきます地代がどうなるかということ、どういう実態であるかということ、それぞれの契約の内容で、当然土地所有者として税金その他どういうものを負担するのか、造林者が具体的にどういうような内容々もって負担し、出資者が簡易な林道等に対してどういうふうなものを持っていくのか、それを所有者とどういうふうに負担し合うのかというような具体的な場合々々によって、もちろんこれを考えていかなければいかぬというふうに思っておりますが、きわめて大ざっぱにどんな範囲になるだろうかという点を見てみますと、大体分収いたします場合に、土地所有表が三割から四割程度の範囲のものではなかろうか。造林者が一側から二割程度の範囲のものだろう。費用負担者が四割から六割程度の幅の中に大体入るものではなかろうかというふうに、大ざっぱに考えておるわけであります。
  48. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 この分収率の問題と関係するわけでありますが、林野庁と自治省の間でこの分収率の問題について折衝を続けられたように聞いております。大蔵省のこれに対する考え方あとでまた聞きたいと思っておりますけれども、自治省と林野庁と折衝された経緯についてお伺いをいたしたいと思います。
  49. 山崎齊

    山崎政府委員 従来と違った形でこういう新しい制度が始まるということでありまして、すでに契約はしておるがまだ新植はされていないというものも現実に残されております。こういう制度の切りかえによりまして、市町村等に対しまして、従来よりも悪い取り扱いと申しますか、分収率と申しますか、そういう行き方はしたくないというふうに基本的に考えておるわけであります。従来官行造林でやっておりましたようなものを基準にして考えていきたいというふうに考えております。
  50. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 今長官がおっしゃったような考え方林野庁は基本にしておる。私の質問は自治省と林野庁がその間において折衝された経緯についてお伺いをいたしておるわけであります。
  51. 山崎齊

    山崎政府委員 折衝の経緯といたしまして、自治省の方の考え方といたしましても、従来から官行造林ということでやってきました経緯もあるわけであります。われわれの方従来同様な経緯をもって公有林に対して仕事をやってきたわけでありますから、両者におきまして従来よりも不利にしない、既往の程度基準にして考えていくというように、両者で話をしてきたわけであります。
  52. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 あとの方がわからなかったのですけれども、はっきり二月二十一日の覚書の交換されたものをちょっと教えて下さい。
  53. 山崎齊

    山崎政府委員 その概要を申し上げたいと存じますが、第一点は、従来の経緯にもかんがみまして、分収率につきましては五割、五割ということを標準とする。それから、その他公有林の今後の管理経営というものにつきまして、その生産性の向上等を前提として、自治省、林野庁両者一つ協議してしっかりやっていこうではないかという趣旨を、はっきりここでうたってあると思っております。
  54. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 非常にぼやっとおっしゃいますから、私が読んであげます。     昭和三十六年二月二十一日     自治省行政局長 藤井貞夫     林野庁長官 山崎齋  公有林野等常行造林法の廃止および森林開発公団法の一部改正に関する了解事項(案)  一 林野庁は、地方公共団体の自主性を尊重しつつ、公有林野の振興を図ることを基本方針として  (一) 公有林町の縮小を促進するような政策は原則としてとらないこと。  (二) 地方公共団体の林業経営能力の向上につとめること。  (三) 公有林野整備事業債に充てる資金については、その資金枠の拡大に努力すること。  二 自治省は、公有林野の管理経営体制を整備するよう法制上及び財政上の措置を講ずること。  三 林野庁は、森林開発公団の行なう公有林野の分収造林公有林野等官行造林法による百行造林よりも市町村にとって不利となることがないよう森林開発公団を指導監督することを基本方針として   (一) 森林開発公団が市町村との間に締結する森林開発公団法第十八条第一項第六号の規定に基づく分収造林契約における市町村の土地所有者としての分収割合は、五〇%を標準とすること。   (二) 森林開発公団が行なう公有林野の分収造林は、水源かん養のための造林に限定し、将来とも他の公有林野へ拡大しないものとすること。  なお公有林野に関しては、林野庁及び自治省の間において十分連絡協議するものとする。こういう覚書を交換されたわけであります。この点に関連して、私にはまたあとで申し上げるような意見があるわけでありますが、その前に伺いたいのは、こういう覚書に対しまして、基本問題調査会答申と相矛盾する点があるのではないかと思いますが、林野庁長官はそうお考えになりませんか。
  55. 山崎齊

    山崎政府委員 基本問題調査会におきまして、公有林野に対する施策と申しますか、今後とるべき方向はどういうものであるかという点を述べておるわけであります。その要旨といたしましては、要は、公有林野の生産性の向上を通じまして、林作物の供給の増大をはかる、あるいはまた基本財産としての使命も果たしていかなければならぬということが、大原則というか、第一点であります。その場合に、公有林野におきまして問題となっておりますことは、いわゆる直轄林地と――公有林自体が、地元の山村民等との直接利用権等に関係ない、いわゆる直轄林地というものがあるわけであります。もう一つは、地元の住民の方に土地を貸したり、あるいは人会権とかいう形で使用させるもの、二つに大きく分けることができるように思うのであります。この直轄林地につきましては、もちろん市町村が十分な経営能力を持つと申しますか、しっかりした市町村としての市町村有林の林業経営というものを高めていかなければならぬじゃないかということに尽きるわけでありますが、入会権がある、あるいはまた地元に貸している、山村民に貸しておるというふうな林地につきましては、これが今後経済的に貧困な山村民の林業経営を通ずる生活向上という面に大きく寄与さすようにしていかなければいかぬじゃないか。その方法には、分割するという方法もあろうし、あるいは利用権の設定ということを前提にいたしまして、協同組合、生産組合とかいうような形におきまして、その地元住民との関係を十分考慮して、その生産性をはかっていく。そして山村民の生活向上にこれを役立てる。結局、表現としては、方法としては、家族経営的林業というものの育成に寄与していくという方向を考えなければいかぬじゃないかということをいってあるのであります。従いまして、この覚書という点から申し上げましても、また既往の入会権の山というようなものの実態から考えましても、答申の中にもありますように、分割ということが方法としてはももろん考えられるのである。やはりそれぞれ現地々々というものの実情に応じて、そこの山村比の林業経営と生活向上との結びつきというものを十分によく考えて、現地に即した行き方をすべきじゃないだろうかというふうになっておるわけでありまして、この覚書自体というものと背反すると申しますか、えらい考え方が違うのではないかというふうにはなっていないというように考えておる次第であります。
  56. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 大きく変わっていたいとおっしゃるのですけれども答申では御承知のように分取歩合を引き下げるということになっております。それから今の宗族経営的な点についても指摘はされておるわけです。その点どうなんですか。大きく違っていない、現地々々の実情に応じてやればいいのだというおっしゃり方をなさったわけでありますが、そうしますと、基本問題調査会答申というものは、やはり一本の線が貫かれておりますね。これに私たちは意見を持っておりますが、林野庁としては、現地々々の実情に応じてやるのだからということで、答申の趣旨がぐっと急カーブを描いてもいいものかどうか。覚書が全然答申と合致しているのだとおっしゃるのですか。
  57. 山崎齊

    山崎政府委員 先ほど私が申し上げましたのは、今お話ししましたような観点からいたしまして、今後の公有林というものの経営のあり方という点から考えまして、そう大きい考え方の上における矛盾というものはないというよう御説明申し上げたわけでありまして、今お話しの分収率という問題につきましては、答申におきましても、その土地というものの取り分と申しますか、それが従来からやや多いのではないか、地代が多過ぎるのではないかということを、はっきりここでうたっておるように考えておりますが、国といたしまして、従来から官行造林ということを通じまして、国自体として、造林に投資するということによって、大きい収益というものを国があげなければいかぬという趣旨から、従来の官行造林事業にいたしましても出発しているわけではないのでありまして、やはり大きくいえば、公有林の荒廃というものにかんがみ、治山治水の面あるいは市町村財政の長い目から見た育成と申し上げますか、そういうものをこの事業によって果たさなければいかぬじゃないかという点からこの事業が出発してきたわけでありますので、そういう経緯からいたしまして、一般の私有林等に対する地代論というようなものとは離れた性格を持ち、意義も持っていいじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  58. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 あえて私がこの覚書に関連してお伺いいたしましたのは、大正九年以来実施して参りました、そして実際には、先ほど御説明のように、十一年から相当の事業実績を上げて参りましたこの官庁造林を廃止いたしまして、公団に移行するということは、これは単なる事業主体の転換じゃないというふうに私たちは考えておるわけです。そういう点から今みたいにしつこくお伺いするわけであります。  次にお伺いしたいのは、昭和三十一年に改正されましたけれども、この対象林地を民有林までその改正で拡大しながら、とにかく政策の趣旨はあくまで純公有林に対するものであるから、不当に少数の私有地の造林にならないようにというように関係者の注意を促しておったはずでありますが、この趣旨からだんだんはずれてくるのじゃないかと思うのでありますが、その点はどうでございましょうか。
  59. 山崎齊

    山崎政府委員 三十一年に改正いたしまして、従来公有林官行造林という法律でありましたものが、公有林野等官行造林というふうにこの法律を直しまして、その官行造林対象地を水源地域にあります私有林の散生地とか、未林牧地、粗悪林地、そういうものにまで拡大するということを目標にして、この法律改正がなされたわけであります。その結果というものを見てみますと、三十一年から三十五年まで契約いたしました面積が五万一千町歩にわたっておるのでありますが、この中で私有林というものに対しますものは約七千町歩という形でありまして、この法律の趣旨にいいますいわゆる公有林というふうなものを対象にして、主体にしてやっていくという趣旨は、そのまま受けつがれておるように思っております。
  60. 有馬輝武

    有馬(輝)委員 どうもそこら辺があいまいになってくるのでありますが、委員長とのお約束で、私はちょうど零時半までで私の質問を中断いたしまして、あとでまたお伺いすることになっておりまして、まだ序論にも入っていないわけです。ですから、ゆっくりお聞きいたしますので、ただ最初にお伺いしておきたいと思いますが、今度林野庁が予想されるところの新方式によりますと、公団というものは、ただ費用負担者という、きわめてあいまいな、いわば盲腸みたいな性格のものではないかと思うのであります。これでおっしゃるような意味での効率を上げ得ると全般的に考えていらっしゃるのかどうか。こまかい点についてはあとでお伺いいたします。
  61. 山崎齊

    山崎政府委員 費用負担者と申しますのは、分収造林特別措置法にもはっきりと載っておりますように、分収造林によって造林というものを行ないます場合に、いわゆる費用負担者、土地提供者、造林者の三つのものが合わさって、分収造林というものが初めて成立するわけでございまして、分収造林におきます造林者というものは、その性格からいいましても、やはりこの三者を対立させましたときに大きいウエートを持つものだというふうに考えておるのでありまして、それによりまして、植えられました立木については三者がそれぞれ持ち分に応じたいわゆる共有だという形になるわけでございます。費用負担者が六割とか四割とかいうふうな程度にその共有権の持ち分を持つというような点から申し上げましても、一番大きいウエートを占めるものであるというふうに考えておるわけでありますし、また、造林者といたしまして、この造林という仕事がほんとうに契約に沿って行なわれておるかどうか、それから事業計画というようなものが適切にいっておるかどうか、あるいはまた苗木等の品種がどうだとかいうような、いろいろなことにつきましての指導あるいは監督というものも当然やるわけでありまして、そういう面におきましては、この分収造林費用負担者というものは一番大きいウエートを持つものだというふうに考えるべきじゃなかろうか、こういうふうに思っております。
  62. 足立篤郎

    足立委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  63. 足立篤郎

    足立委員長 速記を始めて下さい。  午前の会議はこの程度にとどめ、午後二時まで休憩いたします。    午後零時二十八分休憩      ――――◇―――――    午後二時十五分開議
  64. 足立篤郎

    足立委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  税制に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。平岡忠次郎君。
  65. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 主税局の方にお尋ねいたします。  このほど埼玉県下におきまして、送電線線下補償をめぐって、不動産所得とみなして課税するという川口税務署と、損害補償だから課税するのは不当だとする川口市の農村地区住民とが対立してもめました。去月二十五日国税庁から線下補償金には課税するという指令が全国各税務署にきているのであるから、課税しないわけにはいかないとのことで、農民側が押し切られまして納税することになりました。納税の条件は、まず第一に、補償金の二割を経費として控除する。第二に、残り八割は五分五乗方式による分割納入で、累進税率を鈍化することによって納税額を軽減するという骨子からなり、話が一応ついたわけであります。二割を経費として一律に認めることと、五分五乗方式を用いたことそれ自体は、不動産所得として課税されるのであるとする限り、関係農民に対するフェーバーとなることは事実です。しかし、思いやりのある措置であるかどうかは、これからの議論でおのずから明らかになっていくと私は考えております。このケースで一番大事なことは、不動産所得とみなしての課税が妥当かどうかということであります。私は不動産所得とみなすことはまるきり見当違いであると考えております。もともと不動産所得は、地代、家賃のごとく、土地や家屋等を運用して生ずる所得であります。所有者の自発的発意に基づくところの運用所得であります。ところが、今回のこの線下補償の問題については、農民などの線下土地提供者は、公益事業等の用に供するための必要性を説得されて、土地収用法の強権発動に脅かされての受け身の、受動的な地役権の提供であることに間違いないと思います。取得した補償金は、高圧線下の土地はその利用が著しく制約されますから、それに見合う損害補償だとする農民側の主張に私はむしろ歩があると思っております。一歩譲りましても、取得した補償金は、少なくとも地役権設定に見合う譲渡所得と見るべきであって、自発的発意に基づく土地運用から生ずる不動産所得とは断じて異なる性格のものである、かように考えます。主税局はどうお考えであるか。ちなみに、現に線下土地利用の契約は、これは地役権設定として登記されております。この事実を申し添えまして御見解をお伺いいたします。
  66. 村山達雄

    ○村山政府委員 現行法上の解釈についてまず申し上げます。現行法によりますと、法律の第九条第一項第八号に、そのことがうたってございます。第三号と第八号、その関係の政令にうたわれておるわけであります。三号を読んでみますと、「不動産、不動産の上に存する権利又は船舶の貸付(地上権又は永小作権の設定その他他人をして不動産、不動産の上に存する権利又は船舶を使用せしめる一切の場合を含む。)に因る所得は、その年中の総収入金額から必要な経費を控除した金額」こういうふうにうたっております。八号は譲渡所得に関する規定でございますが、「資産の譲渡に因る所得(地上権の設定その他の契約により他人をして不動産を長期間使用させる場合のうち命令で定める場合においてその対価として一時に取得する所得を含み、前号に規定する所得及び営利を目的とする継続的行為に因り生じた所得を除く。)は、その年中の総収入金額から」云々を「控除した金額」、こういうふうにうたって、八号でカッコでもって地上権の設定の場合一時に取得する所得を含むということで、いかなるものを含むかということは施行規則に譲ってございます。そこで、施行規則を見てみますと、その関係が施行規則の七条の十に出ております。一項が大部分そのことをうたっておりますので、一項だけ読み上げてみますと、「法第九条第一項第八号に規定する命令で定める場合は、借地権(建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権をいう。以下本条、第九条の七及び第十一条の二において同じ。)の設定(その存続期間の更新を含む。以下本条において同じ。)により他人をして土地を使用させる場合のうち、当該設定に関する契約によるその存続期間が二十年以上であり、かつ、当該設定の対価として支払を受ける金額が当該土地の価額の十分の五に相当する金額をこえる場合とする。」こうありまして、一つ条件は、譲渡所得になる場合は、借地権、あるいはこれは地上権または賃借権をいいますが、その存続期間が三十年以上であるということ、並びに一時金として受ける対価が当該土地の価額の二分の一以上であるということが限定されておるわけであります。従いまして、これに該当しない場合には、現行法上は不動産所得にならざるを得ない、こういうことになっておるわけでございます。ただその不動産所得の課税を普通のように課税するか、あるいは臨時所得として課税するかという問題につきましては、同じ施行規則の十二条の二十二でうたっているわけでございまして、読んでみますと、「法第十四条に規定する命令で定める所得は、」これは臨時所得でございますが、「次に掲げる所得とする。」二号にそのことをうたっておるのでございます。「不動産、不動産の上に存する権利、船舶、採石権、鉱業権、漁業権並びに工業所有権その他の技術に関する権利若しくは特別の技術による生産方式及びこれに準ずるものを有する者が、三年以上の期間、他人をしてこれらの資産を使用させること(地上権、租鉱権その他の当該資産に係る権利を設定することを含む。)を約することに因り一時に受ける権利金、頭金その他の対価で、その金額が当該契約によるこれらの資産の使用料の年額の二倍に相当する金額以上であるものに係る所得」こういっておりますので、高架線の設定によって当該土地の使用が制限されるというのは、いわば地役権に類似するものが設定されたという解釈でございまして、ここにいう施行規則十二条の二十二の二号に該当する場合があり得るということでございます。従いまして、高架線を設定することによって補償金をもらいますと、現行では所得分類といたしましては不動産所得でございます。ただ課税といたしましては、そのうち臨時所得としての課税を受けます。言いますと、そのもらいました金額の五分の一を他の所得に加えまして、それに対する平均税率によって残りの五分の四にも同じような税率で課税する、こういう調整手段がとられておる。これが現行法上の扱いでございます。国税庁が現行法のもとでそのような取り扱いをしたということは、現行法上は適法な措置である、かように思っております。
  67. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 法文をお読み下さったのですが、私よく聞き取れなかったところもありますが、譲渡所得の対象となる場合において、施行規則の七条の十で二つ条件がありますね。二十年以上のことということと、もう一つはその価額の点が普通譲渡の場合の百分の五十、つまり二分の一以上という、二つ条件がありますが、私は、繰下補償の場合には、この条件二つとも満たしておると思うのです。ですから、一応そういう前提のもとに議論を進めていただきたいと思うのです。臨時所得の方は該当しないように思うのです。その点はどうでしょうか。もし右の前提に立った場合の主税局の見解をお伺いしたい。
  68. 村山達雄

    ○村山政府委員 使用収益権の種類が限定されているということでございます。借地権、その借地権をさらにこまかくいいまして、「建物又は構築物の所有を目的とする地上権又は賃借権をいう。」これに限定されているということでございます。これは施行規則の七条の十です。今の高架線の設定は、地役権類似のものである。従って借地権の中には含まない。こういうことから、形式的に申しますと、それから読まれてくるということであります。
  69. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 確かに七条の十は明確に借地権だけうたっているわけです。借地権をなお分類するならば、地上権と賃借権、この二つだけが該当するように書かれております。しかし、それはこの施行規則それ自身に欠点があるので、むしろこれは「借地権」のもとに「及び地役権」を挿入するのが正しいと思うのですよ。ですから、そういう精神と方向でこの問題をほんとうに客観的に妥当するよう、前向きに解決してほしいというのが私の趣旨であります。その点いかがでしょうか。
  70. 村山達雄

    ○村山政府委員 実はこの規定を挿入する当時も問題があったわけでございまして、実際を申しますと、高架線を設定する場合、農地等の上に高架線を張るという場合でございますが、そのときに、当時から、これは地役権類似のものである、これを譲渡所得に持っていくのか、あるいは不動産所得のうち臨時所得として調整すべきかという議論があったわけですが、実際問題としては、農地としての耕作には支障がない。ただ将来宅地にしてそこに工作物を建てる場合に支障が免ずる。こういう実情を考慮しまして、当時の施行規則のときには地役権を入れなかったという事情にございます。ただ純粋に法律論からいいますと、いずれにしてもその上に工作物を建てるということは、高架線がそこにある限り永久に失われる権利である。こう考えますと、それは土地の一部の使用収益権が永久に失われるのだ。この観点を強調いたしますと、おっしゃるように譲渡所得にすべきではないかという議論につながるだろうと思います。当時は、農地は依然として従来と同じように使用収益できながら、しかも補償金をもらうという実態関係考えて臨時所得にしたのでありますが、法律論からいいますと、今先生がおっしゃるように両方の議論があるということでございまして、いろいろそれに関する問題もありますので、われわれも、目下実情を調査いたしまして妥当の措置をとりたい、かように考えておるわけでございます。
  71. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 いずれにしても、この議論の妥当な解決は、まず地役権としてこれを認めるのかどうかということが出発点だと思うのです。現実に東京電力にしてもあるいは電源開発にしても、かような場合の登記としては地役権として登記されておるわけです。ですから今やその点はあまり争いはないと思うのですが、これはいかがですか。地役権であるべきであるか、それをまず御明示いただきたいのです。
  72. 村山達雄

    ○村山政府委員 われわれも、また、おっしゃるようにこれが地役権に類似する権利である、そういう意味で、あるいは地役権として登記されておってもきわめて当然のことであろう、この点についてはいささかの異論もないわけでございます。ただ、それを譲渡所得というのは、いわば権利金でございます。普通の宅地の場合に、借地権を設定して権利金を出しますと、その土地の上土部分が永久的に譲渡されたと同じに見て、そこで譲渡所得を課税している。現にその所有者は、その限りにおいて使用収益権が奪われるわけであります。法律的には、先ほど言いました高架線を引いて地役権をやりますと、工作物を建てることの権利は永久に失われる。しかし、現に使用しておるのは、農業として農耕の用に供している。従って、現在の状況下における農業として使用する限りにおいては、現実には使用収益権は失われていない。将来もし宅地として利用する場合、工作物を建てるという場合の使用収益権が失われている。この二つの、実際論にウエートを置いて考えるか、やはり法律的に、工作物を建てる権利が失われたという点を強調して考えるかによって、それが臨時所得になるか、あるいは譲渡所得になるかという点の分かれ目であろうというふうに考えるわけです。
  73. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 賃借権の場合には、土地の表面が永久に失われる、片や農業の用として供せられている限りは、一つもそのことによって阻害はされないという点で違うということをおっしゃいましたが、その通りと存じます。しかし、もう一つ特徴的なことは、賃借権の設定のときは、土地の所有者あるいは家屋の所有者というものは、自発的発意によってそれを運用して収益を上げるという、自発的な一つの立場でやります。ところが、この線下補償等の場合は他律的に、だから、この所有者の方から見れば、受動的にそれを強制されるという点が大きな違いがあるのです。その点が問題なのです。ですから、あなたはまだ歯切れが悪いけれども、もっとはっきり、これは明らかに地役権であるということを言い切っていただきたい。事実、登記等もそれではっきりしているし、私が非公式に尋ねた法務省の見解も、その点は一つも異論がない。明確なものであります。ですから、出発点においてこれが地役権であるということから議論を進めていきたいと思っております。その点は一つ御確認をお願いします。
  74. 村山達雄

    ○村山政府委員 それが地役権であるということ、普通の形の地役権とは違いますが、今の法律のカテゴリーからいえば、地役権であるというふうに解釈する以外に道はなかろうという点は、全く同感でございます。それから、他律的であるという点も同感であります。ただそれを譲渡所得と考えるか、依然として耕作の用に供して、現実には今まで使ってきたのと同じであるという点で、使用収益は現実には妨げられていない、法律的には妨げられている、そのどちらに重点を置くかという点がキー・ポイントであろうというふうに考えます。
  75. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 おおむね地役権の性格のものであるということは異論がない。そうなりますれば、地役権の性格は、地上権、賃借権と同範疇のものではないか。つまり借地権と同一の取り扱いを受けるべきものではないか。もしそうだとするならば、地役権設定による所得は、賃貸権設定による譲渡所得と同様に、譲渡所得の対象であるべきである、私はかように考えます。そういたした方が自然であると思うのです。ですから、むしろ現実に国税庁等から不動産所得だと通達され扱われていること自身が責められるべきであって、通達がすべての公準になるわけではなしに、むしろ地役権であるという建前から、そうした誤まった結論というか、現場の処理が導かれるようなことであってはならない。第七条の十、これを、先ほど申したように、借地権のあとに「及び地役権」という字句を挿入していただいた方が、明確になると思うのです。ぜひそのようにお運びいただきたいのです。
  76. 村山達雄

    ○村山政府委員 平岡委員のおっしゃることは、先ほど言ったような法律論としては、確かにそう考えられる節があると思います。しかし、われわれの方も、国税庁の方で現行のような取り扱いをしておるということは、現行法に関する限りまさに適法だと思います。従って、今おっしゃるように、七条の十に「地役権」と、そういう改正を加えるかどうかに焦点がしぼられるわけでありますが、純粋な形式法律論からいいますと、おっしゃるような点がございますので、われわれも前向きの方向で一つ検討したいと思っております。
  77. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 そうなると、その前向きの御解決で即刻やっていただきたい。というのは、この十五日で一応申告所得の期限が切れます。そういたしますと、即刻この改定がなされますならば、それにならって適正な処置がとれるのです。それで時間的に多少無理だなというふうにお考えなら、経過的に、三十五年分からこれを是正するということを一つうたっていただいて、もし十五日の締め切りまでに間に合わなかった場合においても、後日において誤納補正ができるような道をあけておいていただきたい。そのように一つお取り計らいができるものかどうか、お答えを願います。
  78. 村山達雄

    ○村山政府委員 先ほど両方考え方があると申し上げたのでございますが、法律論として、法律形式的な点を尊重すれば、おっしゃるような方向があり得るということで、その方向で検討しようと思うわけであります。何分にも三月十五日がもうすぐそこに迫っておるわけであります。今聞いてみますと、ほとんど各地におきましては、臨時所得の取り扱いということで、現行法ではそれは適正なわけでございます。しかもそれによってほとんど金額その他もおおむね話し合いがついておるという段階でありますので、われわれとしては三十六年分から改正する方向で考えるべきではないかというふうに考えておるわけであります。
  79. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 それはまずいですよ、村山さん。そんなものは何でもないと思うのです。この七条の十を直すときに、この修正は三十五年分から適用するという経過規定を挿入していただけばいいのです。それでも実際の申告はすでになされている人もおるでしょう。それから、三月十五日までに、大半が国税庁の指導のような臨時所得ということで申告をすると思うのです。それでもかまわぬじゃないですか。あとで誤納修正ということで、国税庁自身にそれを無条件で入れるということを取りつけておきさえすればいいので、私の今言うたような修正が正しいという御意見ならば、何も三十六年分からするという理屈は一つもないので、今私が申し上げたようなことで、三十五年分から、こういう修正の処置をしていただきたい。いかがですか。
  80. 村山達雄

    ○村山政府委員 先ほども申し上げましたように、これを譲渡所得とすることだけが法律的にはそうであって、必ずしも不動産所得として課税の方法について臨時所得にすることが百パーセント間違いであるという考えを持っていませんので、そこは、先ほど申しましたように、ものの考え方であるということを申し上げたわけでございます。現に耕地として使う限りにおいては何らの支障を受けない。それに関する限りそういう使用収益を現実に侵されていない。その面を強調すれば、それは必然臨時所得でいくべきであろう。法律的に、将来宅地にした場合の工作権が、工作物を建てる権利が失なわれておるという点に着目すれば、これは譲渡所得として扱うべきであろう。しかし、土地でございますから、いかなる形態にも使い得るわけでございます。そういう意味で、土地一般というものの規制を受けているという点で、先ほど申しましたように、譲渡所得として扱うということも法律的に当然考えられる道である、こう申し上げたわけでございます。それが一つと、実際問題としまして、ほとんど話が済んでおるということ、それから、さかのぼってやるということは、今まではあまりにないことでありますので、われわれは、先生のお話でございますが、その問題、いつからその方向で適用するかという問題は、さらに実際につきまして当たった上で検討さしていただきたいと考えるわけでございます。
  81. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 くどいようですが、経過措置としての条項を入れればそのことはできます。あなたは、形式的には地役権も可能だということをおっしゃっていらっしゃる。むしろその方が正しいかもしれぬとのことで、私の言うことを尊重する御発言があるわけです。私は、ただ形式論だけで言っていない。実際上送電線を設置するときの農民の抵抗というものは相当なものです。それで、もしあなたの言うようにじんぜん現行法に固執しているということになりますと、この一カ年間、これから起こるべき送電線の設置というものはほとんどできなくなるではないか、このように考えております。御承知通り、送電線の設置等につきましては、例の強制収用の発動もできるわけです。そういうことで、これは自発的な不動産運用によって所得を得るということとまるで違って、全く。パッシーブな形で強制されるわけです。ですから、私が申し上げたような地役権であるというようなことになれは、この送電線につきましては、例の収用等の場合の譲渡所得等の課税の特例ということが自動的に適用されまして、普通の譲渡所得の場合は、その譲渡所得額から士五万円並びに経費を引いて、その二分の一が他の所得と合算されて課税されるということになるにすぎませんが、高架線設置には、強制収用が当然適用されますから、送電線の繰下補償の所得は、これは最初から所得額の二分の一、それから十五万円を引き、経費を引き、そうして他の所得と合算されて課税されるということになるわけです。従いまして、言うなれば四分の一で済むわけです。農民等の土地提供者は、私の言うような数字で三十五年分が課税されフェーバーを受け得られます。たとえば百万円の繰下補償をもらった人は、そしてその人が他に五十万円の別の所得があるという場合におきましては、まず百万円の二分の一、五十万円、五十万円から十五万円を引いた三十五万円と、さらに川口税務署で認めた二割の経費を認めるということになりますと、あと二十万円引かれますね。そうしますと、結局十五万円だけが他の五十万円の所得と合算されて、要するに六十五万円が課税所得になり、一回で済むわけです。ところが、他の場合、すなわちあなたが固執されている現行の方式でとれが計算されると、同じ百万円から二割の経費を認める。そうすると、これは八十万円です。さらに十五万円の基礎控除が認められて六十五万円になります。六十五万円を、五分いたしますか、五分五乗ですから。そうしますと、十三万円。その十三万円と他の所得五十万円と合算した六十三万円がまず今年課税所得として計算され、翌年も、またその翌年もと、あと四年間、全体で五回取られるわけです。ですから、うんと違う。農民はもともと送電線なんか引いてもらいたくない。引いてもらいたくないけれども、最後になれば強制収用の発動もされるわけですから、それで泣く泣く提供しているわけです。そういう実態考えると、あなたが現行のやつでもこれは適法なんだと固執される理由はない。その点はあなたもそう考えておられるから問題はない。そうなれば、竿頭一歩進めまして、時間的にも三十五年分に間に合うようにあなたの方で善処されるのが適当ではないでしょうか。地役権設定の譲渡所得にと、そこまでお考えのことなんですから、あとは竿頭一歩三十五年分から適用してもらうということ。そのためには、私が先ほど申したように、第七条の十に必要の字句を挿入した上、経過措置として三十五年分からするという一項を差しはさんでいただけば、現場の国税庁自身も混乱を起こしません。一応申告されても誤納修正をされるという形で処理される。ですから、よいことは早くやってもらわなければならぬ。私がるる申し上げたように、農民の側においては、普通の自分の自発的意思に基づいた土地の運営での所得を目ざしているものではありません。全く強制的なものですから、そういう点を善意に御検討いただいて、すぐにもこれが新しい形で取り運ばれるようにぜひ御善処をお願いしたいと思いますが、いかがですか。
  82. 村山達雄

    ○村山政府委員 これは、強制的であるか任意的であるかという問題は、普通の二分の一は適用されるが、普通の譲渡所得にする場合にも、最初二分の一にして、経費を引きまして、それから十五万円引いて二分の一にするか、あるいは経費を引いた残りに任意であれば十五万円引いて半分にする、これが問題だろうと思います。おっしゃる通り、土地収用法の適用はあり得ますから、もし譲渡所得にすれば、おっしゃるように経費を引いた残りの所得について二分の一にして、それについて普通の譲渡所得としての十五万円を引いて、さらに二分の一にする、こういうことになるだろうと思います。ただ、問題はいつから適用するか。先ほど検討すると申しましたが、いつからするかという問題でございます。三十五年分と申しますと、三十五年の一月一日から三十五年十二月三十一日までの所得でございまして、実は所得計算期間は過ぎているわけでございます。従いまして、その暦年中途であれば格別です。今となっては全く遡及するということでございまして、今までの改正はさようなことはしないで、大体その暦年進行中の年分について適用するということでございます。しかも、その内容考えてみますと、先ほど平岡委員法律論でおっしゃられましたが、そういうふうに見ることも可能であるということを先ほど私は申し上げた。ただ、現行法考えは間違っているということを申し上げているわけではないので、法律論でいうと若干その方に傾く、こう申し上げているわけであります。ですから、われわれとしましては、もうすでに三十五年分としては計算期間が過ぎていることでございますので、やはり従来のルールに従いまして、改正するにしても三十六年分というのが適当ではないかというふうに考える次第でございます。
  83. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 不利益のことは遡及しないものだ。利益になることは遡及する。あなた方のベース・アップが遡及して行なわれることも周知の事実なんだ。だから、それをやってくれというのです。ですから、私の言うことは、もうすでに手おくれだという議論は成り立たぬと思うのです。不利益を遡及することはできない。これはもう厳然たる事実です。しかし利益は遡及し得る。いかがですか。
  84. 村山達雄

    ○村山政府委員 同じようなことになりますが、ですからこう申し上げておいたらいいかと思うのでございます。なおさらに前向きの方向で改正の方法は考えますが、その適用期限につきましては、過去の例その他の改正のルールというものがございますので、おっしゃる点はわれわれの方で十分検討することでお願いしたいと思います。      ――――◇―――――
  85. 足立篤郎

    足立委員長 次に、国有財産特別措置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案に対する質疑はこれにて終了いたします。
  86. 足立篤郎

    足立委員長 なお、本案につきましては討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ることといたします。  お諮りいたします。  本案を原案の通り可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  87. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は原案の通り可決いたしました。  なお、本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  88. 足立篤郎

    足立委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は来たる十四日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十一分散会