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1961-04-07 第38回国会 衆議院 商工委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十六年四月七日(金曜日)    午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 内田 常雄君 理事 小川 平二君    理事 岡本  茂君 理事 中村 幸八君    理事 長谷川四郎君 理事 板川 正吾君    理事 田中 武夫君 理事 松平 忠久君       岡崎 英城君    海部 俊樹君       齋藤 憲三君    笹本 一雄君       首藤 新八君    田中 龍夫君       中垣 國男君    野田 武夫君       濱田 正信君    加藤 清二君       小林 ちづ君    中嶋 英夫君       中村 重光君    西村 力弥君  出席政府委員         内閣官房長官  大平 正芳君         公正取引委員会         委員長     佐藤  基君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  坂根 哲夫君         警  視  監         (警察庁保安局         長)      木村 行藏君         通商産業政務次         官       砂原  格君         通商産業事務官         (通商局長)  今井 善衞君         通商産業事務官         (企業局長)  松尾 金藏君         通商産業事務官         (繊維局長)  松村 敬一君         中小企業庁長官 小山 雄二君  委員外出席者         総理府事務官         (公正取引委員         会経済部調整課         長)      吉田 仁風君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局参事         官)      黒津兆太郎君         専  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した案件  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件  私的独占禁止及び公正取引に関する件      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  通商産業基本施策に関する件、経済総合計画に関する件、私的独占禁止及び公正取引に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 私はまず中小企業政策のうちで、小組合についてお伺いいたしたいのですが、御承知のように中小企業団体組織法を成立せしむるときに、中小企業等協同組合法改正いたしまして、二十三条の三を加えて、そこで、政府中小企業の小組合に対し、税制上、金融上の特別の措置を講じなければならない、こういう規定を入れたのであります。ところがその後政府といたしましては、何らこの規定に基づく特別の措置配慮というものはなされていなかったのであります。去る二月十四日、予算委員会におきまして、同僚横山委員から椎名通産大臣に、このことに対しまして質問いたしました。御承知のことと思いますが、そのときに通産大臣は十分な答弁ができなかったわけであります。そこで、重ねてこういう点について要望をして終わっております。そこでお伺いいたしたいのでありますが、通産大臣が見えないので、中小企業庁長官に尋ねるより仕方がないのですが、中小企業協同小組合に対しまして、今までに特別な何らかの方法をやったかどうか。また二月二十四日の横山質問後、この質問趣旨に沿うて何らかの措置を考えておられるかどうか、お伺いいたします。
  4. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 中小企業団体組織法制定の機会におきまして、今お話し通り事業協同組合制度が作られまして、それに関する条文のうちで、事業協同小組合に対しましては、金融上、税制上特別の措置を講ずるものとする、こういう規定がなされた次第でございます。これを受けまして、金融上の措置につきましては法律制定後、中小企業長官の名前でもって組合金融機関であります商工組合中央金庫に対しまして金融上、その趣旨に沿って融資円滑化に特に遺憾なきを期せられたいという趣旨通牒を出しまして、その後それに基づいて商工組合中央金庫融資実行に当たっておるわけであります。その内容といたしましては、小口の特に十万円以下の貸付に対しましては担保の貯金、事業資金使途等に関して一般に対しまして制限を緩和するということ、あるいは提出書類簡素化貸付手続迅速化等につきまして十分配慮しまして、いやしくも資金不足を理由として、小組合金融等については申し出を断わることのないよう、あらかじめ貸付見込額等を考えてやってもらいたい、こういう内容通牒でございます。  税制の問題につきましては、実は税負担の公平というようなことがございまして、その後いろいろ私どもも研究もいたしましたし、関係方面とも話し合い、折衝というところまで実は参りませんが、話し合い等もいたしましたが、税負担の公平というような問題がありまして、特段の措置が実はなされておらない、こういう次第であります。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 今の御答弁と同じような御答弁が、予算委員会において通産大臣がなさっておるのです。そのとき横山君も言っておりますが、企業長官通牒、こういうものは別に法律がなくともやれるわけです。従ってこれがこの法律に基づいた通牒とはいえない。特に法によってこのように明確に規定せられておるのでありますから、それに基づいてどんなことをしたか、このことを尋ねておるのですが、遺憾ながら実際やっておられないからお答えできないと思います。さらに税金の問題につきましては租税の公平という面からやれない、このようにおっしゃっておりますが、現に租税特別措置法とかいろいろな方法によって、大企業なりその他の特別なものに対しましては十分な配慮がなされておるわけです。従って小組合に対しましても、あるいはそれに対して一定条件等が必要かと思いますが、租税上の、税金の上の特別の措置が講じられないということはないと思います。これはやろうという気がないのであります。これも大臣がおられないので、ちょうど官房長官が見えておりますので、官房長官にこれは尋ねたいと思うんですが、内閣の全体の事務を所管しておられるといいますか、調整的なことをやっておられる官房長官でございますので、大蔵省等との関係においても、まず官房長官でいいのだと思いますが、今中小企業庁長官が答えましたような租税上の平等の原則に反するということですが、現にいろいろな法律によって特別な措置がとられておるわけです。従って中小企業協同小組合におきましても、ある程度の、もちろん法律による条件というものは必要かもしれませんが、租税上の特別の措置を講ずることが、私は租税の平等の原則からははずれないと思いますが、いかがでございましょう。
  6. 大平正芳

    大平政府委員 お話ごもっともでございまして、今政府当局において鋭意検討中と承っております。大企業に対する租税特別措置等は、終戦後の荒廃から立ち直る場合におきまして、国民経済を維持する上において必要な限度においてやって参ったわけでございますが、しかしそういう役割を一応果たしたものから順次撤廃の方向に行っていることは御案内通りでございまして、その時点におきまして緊要度の高いものから順次取り上げて参りまして、これを具体化して参るという方向施策を続けて参りたいと考えております。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 租税特別措置法がいろいろ議論なり、考え方があろうとしましても、言われたように戦後の荒廃の中から立ち上がるために、まず重工業的な大企業に必要だということ、だがもうそれぞれ復興したので順次はずしていこう、そうすると今日政府のいわれている所得倍増計画の中で一番大きなことは所得格差の縮少ということです。それには今問題になっているのは、やはり大企業中小ことに零細企業との所得格差の問題であろうと思うのです。しかも今日では御承知のように小組合組織せられるものは零細中の零細組合であります。そうするならば政府所得倍増計画からくるところの所得格差の問題から見ましても、今官房長官の言われたような御趣旨から言うならば、取り上げるのがもうおそ過ぎるような事態になっていると思うのです。  重ねてお伺いいたしますが、そういった政府施策全体からながめて、私は現在零細企業の問題に特別な措置を講ずる必要があろうと思いますが、いかがでございましょう。
  8. 大平正芳

    大平政府委員 仰せのように、もうそういう問題を取り上げなければならぬまた取り上げるべき段階にきたということにつきましては、田中委員見解を同じういたすのでありますが、先ほど申しました通り御要請もありましたので国税当局検討中でございまして、私どもとしてはそれを督励して参りたいと考えております。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど長官の御答弁は、小組合につきましてそういった税制上のこともあわせ考えていく、こういうような漸進的な御答弁であったと了解いたしたいと思います。  そこで中小企業庁長官にお伺いいたしますが、この法の改正がなされました当時、金融上、税制上の特別の措置ということに大きな魅力期待を持ったわけです。従って十余りの小組合が直ちにできたと思います。ところがその後一向に何もしてくれない。こういうことで最近ではこの小組合制度に対しては魅力を失っている。現にあの法律改正以来、今十か十一でしょう。それはさらにできてあとからできるというのは、そういう期待がはずれたからやらないということです。そこで現在中小企業のうちの、ことに零細企業を小組合組織化していく、こういうことは先ほど来申し上げている所得格差を少なくしていくという面からも必要であり、零細企業対策の面からも、ぜひ取り上げなければならぬ問題であろうと思うのです。そのためにはやはりある程度魅力を持たなければいけない、こういうようにも考えますが、中小企業庁長官としましては小組合組織化零細企業組織化は現在急務であろうと考えるのですが、それに対しての指導方針と、今申しましたようなある程度の魅力を持たなければならぬ、そのことについてどうお考えになりますか。
  10. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 お話通りこの小組合制度は、現在までのところ十分に制度が活用されていないということはまことに遺憾でありまして、実は法律ができましてから二年ばかりの間、十ばかり、それ以上あまり数もふえなかったというような状況でございます。その後いろいろ県当局とも連絡をとりまして、現在昨年の秋あたりから少しふえまして、現在は二十二できております。しかしながら、それにしても制度が十分活用されておらないということは、はなはだ遺憾でございます。それでお話し通り零細企業対策というものは非常に大事でありながら、その対策たるやなかなかむずかしいということでございまして、この小組合の方に雰細業者が集まりまして、ともに相互扶助の精神で、協同経済事業を推進していくというような制度、そこまで持っていくまでの間——なかなかそこまでもいかない。いろいろ中小企業対策等をやっておりますが、そういうことがあることも知らない、あるいはそういう線に乗っけるのに非常に困難を感ずるというような状況であります。そこで昨年度商工会組織等に関する法律を作りまして、全国的に商工会議所商工会の網を張りまして、これでまず零細業者中小企業対策制度あるいは政策に乗っけていくための指導をやっていこうという仕組みを考えまして、せっかく努力中であります。この小組合制度零細業者に対する一つ制度でありまして、まずそういう啓蒙、教育を通じてその利便を教え、そっちに持っていくということに努力いたしたいという段階にあるのでございます。  それで、ただ、今もお話し通り、小組合を作りましても一つも利益がないということなら小組合はできない。これはうらはらの関係に相なると思いますが、法律趣旨に沿いまして金融上その他の優遇措置についても、関係方面とも相談いたしまして、できるだけのことをする方向において特別の措置をせっかく検討し、成案を得ますれば実施して参りたいと考えております。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 今、長官がいみじくも言われたように、零細企業はその日の仕事や生活に追われて、こういう制度があることすら知らない、その通りなんです。それを知らしめ、あるいは、組織化指導していく仕事がお宅の振興部仕事じゃなかろうかと思うのです。  それから、関係方面とも相談をしてできるだけ、こういうことなんですが、やっぱり一番の出発点はあなたの方でなくちゃならないわけなんです。もちろん関係方面相談をする必要があろうと思うのですが、ただあなたの方が、できるだけといったような抽象的なことでは相談のしようもない。従って中小企業庁としては、これこれの点についてこうしたい、このくらいの腹組み計画がなくちゃならぬと思う。そういう点を具体的に示していただきたいと思う。そういう上に立って各方面関係者と協議をしてこうしたい、こうこなくちゃいかぬ。できるだけということでは抽象的です。
  12. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 法律規定されております優遇措置としては、金融上、税制上特別の措置を講じなければならないとあるわけでございます。先ほども申しましたように、金融の問題については手続の問題、あるいは資金の分量の問題、その他政府資金供給による中小企業に対する金融をやる機関がいろいろあるわけでございますので、これにつきましては、担当機関の全体の仕事やり方その他とも関連をいたしまして、小組合組合員に対して、一般よりは比較的優遇した特別措置を講じやすいということで、実は先般予算委員会横山委員からのお話がございましたので、その後具体的にどれだけの優遇措置を講じ得るかというようなことを検討しておるところでございます。その検討の結果、全般金融やり方もございますので大蔵省とも相談をいたしまして、——これは比較的実施に移しやすいと考えます。具体的に申しますと、これもまだ成案を得ておりませんので、はっきり申し上げられませんが、ある程度ワクを作っていく、それから担保問題等につきましても、一定金額以下のものは担保を取らないで融資実行していく、その他いろいろ手続上の問題もございますが、そういう点につきまして一般よりは特別の優遇的な措置を講ずる方向検討いたしておるわけでございます。ただ税の問題につきましては、零細企業に対する税制というものは、全般税制改正のつど、いろいろ配慮を加えて軽減が行なわれておるわけでございます。この小組合組合員であるがために税を軽減するという考え方が成り立つか成り立たぬか、そこら辺にいろいろ問題がございまして、これは私の方としてはそういう考え方もあるいは成り立つのじゃないか、私どもとしましては、この程度のことはやってもらえまいかというような素案を持っておりますけれども、これは税制全体の問題もありまして、大蔵省自治省等ともいろいろ話し合いをしたいと思いますが、なかなか税負担の公平という点から申しまして簡単に参りかねる、率直に申しましてそういう感じを持っております。これは税体系全般の問題とも関連しますので、われわれとしては検討を重ね、折に触れて関係方面と折衝して参りたい。金融上の措置につきましては、比較的運用で取り扱える面がございますので、成案を得次第実行に移して参りたい、こう考えます。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 長い答弁をいただいたのですが、結局は中身の具体的なものは出てきていないわけなんです。そこで実は、この小組合に対する中小企業等協同組合法二十三条の三に基づく特別措置に対して、われわれは具体的にこのようなことをしてもらいたい、こういうように書面にいたしまして、二週間ほど前だと記憶しておりますが、私は行けなかったのですが、当委員会理事であり、党の中小企業特別委員長である松平議員が、官房長官にお目にかかって今私が手にいたしておりますような申入書を渡したと思います。このことにつきまして、実は官房長官十一時に所用があるそうでございますので、まだあとにも質問があるのですが、官房長官にまずこの申入書を受け取られてから、どういう措置を党内あるいは政府内においてなされたか、それをお伺いするとともに、このことは多分中小企業庁長官の方にも回っておると思いますので、あと中小企業庁長官に、具体的にこういう点については、どうだったかということをお尋ねしたい。もし官房長官の方で、今これだけ長いものを読み上げる余裕がありませんが、一項目から四項目に分けてやっておりますが、この一項目についてはどう、二項目についてはどうというようにお答えが願えれば幸いだと思うのですが、お伺いします。
  14. 大平正芳

    大平政府委員 三月二十四日に日本社会党委員長名でお申し入れをいただいたのですが、こういう申し入れを受けた場合、私どもとしては、関係各省連絡をいたしまして、政府の態度を私どもに御通報いただくことに毎回いたしております。ただ、これを書面でもって御回答申し上げるということは、今まで内閣の慣例上やっておりません。と申しますのは、無数にこういう申し入れが多いわけでございまして、機会あるごとに口頭または会合等の席でお答えをすることにいたしております。間違いなく達しております。御通報申し上げて御検討いただくような措置は講じております。  で、中小企業庁等から私どもに対しまして一応の答えが参っておりますから、あらましを申し上げたいと思います。  第一の、小組合組織化促進補助について、具体的に御提案がございます。これに対しましては、従来、政府としては協同組合等経済事業を行なう団体に対しましては、こういった御提案のような事務費補助はいたしておりません。従って、これをやるとすれば、そういう今まで踏襲して参っておりまする財政政策の変更に相なりまするので、今後の検討問題だと心得ております。ただ、中小企業者組織化促進であるとか、経営の改善ないしは指導等は、御案内中小企業団体中央会というものがございますので、この団体におきまして、今後も零細事業者のために一そうこういった方向施策を積極化していくこと、このことが必要であると思います。  第二番目の、小組合に対する共同施設費補助でございますが、これは、まだ小組合自体が数も少なく、小組合からの貸付申請等も、今までは比較的少なかったわけでございますが、組合数もその後漸次増加して参っているように承知いたしておりますので、こういう御提案方向検討を続けていきたいと思います。  それから、金融措置でございますが、それは今中小企業庁からの御答弁にもございましたが、金融上の特別措置といたしましては、商工中金の小組合及び組合員に対する融資を円滑にするため、必要に応じて小組合及び組合員に対し、それぞれ融資ワクを設定して、貸付期間その他貸付条件についても、できるだけ実情に応ずるよう緩和して、簡易かつ迅速な貸付を行なうようにいたしたい。こういうことでございます。  税制の問題につきましては、先ほどからも御指摘がございましたが、こういう問題を税制上の問題として取り上げる段階にきたということにつきましては、私も同じ見解を持っておるのでございますが、お申し入れを受けましたのが三月二十四日でございまして、この問題は行政措置で参らないことでございますので、先ほど答弁申し上げました通り、引き続き関係当局で鋭意御検討いただくように督励いたしたいと存じておる次第でございます。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 第五項の社会保障特別措置
  16. 大平正芳

    大平政府委員 五項の社会保障特別措置、この案件につきましても厚生省で御検討いただいておりますが、ただいまのところ私の方へまだお返事が参っておりません。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 三月二十四日のわが党からの申し入れに対しての現在における官房長官の御報告を受けたわけですが、聞いておりますと、結局は、商工中金についてのワクを設けることと、金融についてある程度の考慮を払うこと、これ以外には何も考えられない、こういう答弁と同じなんです。商工中金につきましては、わが党の申し入れ以前からなされておったわけです。そうすると、わが党から申し入れたことに対して特別の配慮がまだ払われていない、このように考えるわけです。まだ二週間そこそこですから、これを直ちに全部ここで官房長官からどうしますというような回答をいただくことも無理かと思いますが、ただ一つだけ取り上げましても、第一項の小組合組織化促進補助につきましても、今仰せられたように協同組合中央会があって云々でございますが、これだと、同じ中小企業の中においても、性格なり基盤が違うというところから小組合ということを特に認めたわけです。御承知のように、昨年通過いたしました商工会法におきましては事務補助費が出ておりまして、具体的に言えば、いわゆる普及員として二万円、今度は四千円上がったのですか、の給料と、それからそれの活動のためのモペット、単車を与えておる。こういうことでございますから——これはもちろん地域的なことが基礎になっております。小組合は産業的な縦の組織だと思うのですが、商工会のいう小規模企業者、これと小組合でいうところの小組合員となり得る資格、これはともに同じレベルにある零細中の零細企業でございます。従いまして、ただいま直ちにこのすべての解決を迫りませんが、事務補助につきましては、商工会の先例もございますので、そのようなことについてはぜひ本年度内においても特別な考慮を払っていただきたい、このように考えるのですが、時間の関係もありますので、その点だけ伺って、あとのことは関係担当者に伺いたいと思います。
  18. 大平正芳

    大平政府委員 田中委員の言われましたことは、お気持はわかりますけれども、しかし、私が先ほど申し上げましたのは、経済事業を行なう団体に対する事務補助は、今まで見ていないわけであります。商工会というのはそれ自体経済事業を行なう団体でございません。従って、協同組合または経済事業を行なうこの種の小組合等に対して事務費補助財政で見るかどうかという問題については、私はただいまのところ消極的に考えております。その方の事業の助成は、先ほど問題になりました別な金融税制その他の措置によってカバーしていくのが穏当じゃないか、そういう感じ方が今いたします。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 経済事業をやる、すなわち、協同組合であるから出せない、こういうことであろうと思うのですが、その活動と同時に、組織基盤ということを私は考えた場合に、先ほど来言っておるように小組合商工会に編成せられる、組織化せられる業者というものは同じようなものだ、特に政府みずから言われておる所得倍増計画の中における所得格差の縮小といいますか、格差をなくするという上に立っても、零細企業に対しては格別な方法を講ずる必要があることは、官房長官もお認めの通りなんです。しかしそれが縦であるからとか横であるからとかという、組織のために取り扱いを別にすることでなく、中小企業中の零細企業について何らか特別の措置を講ずるというところから、そういう縦割りの理論で考えずに、広く政治的な面に立って、商工会と同様に小組合に対して——その小組合についてはある程度の条件があればそれはやむを得ないと思いますが、こういうことをやる、あるいはこういうことを現にやっておる小組合に対しては事務費補助を出そうということについて、もう一度考え直してもらいたい、このように重ねて要望し、もう一ぺんあなたの見解を伺いたいと思います。
  20. 大平正芳

    大平政府委員 小組合事業が拡大し、その構成員所得水準が上がって参るということは、もとより期待し、またそういう方向施策しなければいかぬわけでございまして、そういう小組合事業を拡大し、事業が活発になるようにあらゆる施策を傾注して参らなければならぬと存じますことは、全く意見を同じゅういたしております。ただ事務費補助の問題でございますが、これは私先ほど申し上げましたように、ただいまのところ消極的に考えておりますということでございますが、仰せもございますので、関係当局検討を進めていただきたいと思います。
  21. 松平忠久

    松平委員 関連。今の小組合の問題は、実はここにおられる首藤さんが非常に考えておられて、当時議員提案で推進したものなんです。それであの条項、金融上、税制上の優遇措置を講ずるというのも、われわれ与野党一致して、こういうふうに育てなければならぬという考え方でできたいきさつがあって、前の官房副長官をやっておった小笠君なんかが非常に心配して、それを推進するということになった。実際いうと、名前が小組合というふうに変わったのは、小組合というみずから小さいということを名のって、そこに入ってくるということはちょっとまずいじゃないかというので、名前についてはかなり難点があったが、一応こんな格好になった。小笠君がそういう名前をつけたのです。そこで今になってみると、その名前も変えていかなければならぬと思うのですが、金融上、税制優遇措置を講じなければならぬという義務規定があるにかかわらず、やらなかったということは、川上君が中小企業庁長官のときに、彼はまず一つなり二つなり作らしてみようじゃないか、それで実績が幾らか出てきたらやろう、こういう考えであったのです。これは間違っているので、実際いうと優遇措置がないところに、そういう組合ができるはずはない。ある程度別の組合よりも特別な優遇措置を講ずるというのが思想なんです。だからそこをやはり内閣では考えてもらって、長官も変わったので当時のいきさつはよく知らぬかもしれぬから、これはぜひとも一つ政府の責任において、われわれの希望通り方向に持っていってもらうように努力してもらいたい。おそらく首藤さんだって同じ気持だろうと思うので、こういうことを私からも特に要望しておきます。  それからこの機会に長官に伺っておきたいのだけれども、現在当委員会において低開発地域工業開発促進法案という法律案が出ております。ところが建設省では広域都市建設法案というようなもの、自治省では基幹都市建設云々という同じような法案が用意されておるやに聞いておるので、こういう法案と一緒でなければ、なかなか審議は並行してうまくいかぬじゃないかと思う。全部関連があるのです。いわゆる工業分散化というか、地方へ工業を興す、こういう関係になってきておるわけだ。そこで現在政府の中では、建設省のいわゆる広域都市と自治省の基幹都市という、この二つの間に調整をしなければならぬということがあるし、そこへこの通産省の工業というものをどういうふうにからませていくかということによって、通産省側の意見も盛り込んだようなものにしなければならぬというので、この法案が今日出てきておらない、こういう状態なんです。これは一体内閣としては、この国会に出すつもりなのかどうか、この見通し等をこの際承っておきたいと思います。
  22. 大平正芳

    大平政府委員 そういうお話があることは伺っておりますけれども、今国会にこれを法案化いたしまして御提案申し上げるというところまで、まだ内閣の方ではきまっておりません。  なお小組合の沿革についていろいろお教えをいただいてありがとうございました。そういう経緯も含めまして、私の方で検討を進めていきたいと思います。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 今松平委員からも当時のいきさつを申し上げて、官房長官も今のような御答弁になったわけなんで、長官も時間がないそうでございますからこれでけっこうですが、最後に強くこのことを要望しておきます。同時に全部でいけなかったら一つか二つかモデル的なものを取り上げて、それに対して行政上の措置として育てていくというような行き方もあるじゃないか、こう考えるので、そういう点について御検討を願いたい。これで長官はけっこうです。  官房長官が結婚式ということでやむを得ぬので、約束の十一時ちょっと過ぎましたが帰ってもらったのです。実はもっとおっていただいて進めたいと思ったのですが、そういうことでありますので、あと中小企業庁長官にお尋ねいたしますが、あのような答弁官房長官はしておる。だが先ほど松平委員が申されましたように、これには特別ないきさつもあってでき、しかも長官が言っておるような、中央会において一緒にめんどうを見るというような性格ではない、特別な扱いをしよう、こういうのが当時二十三条の三を入れた特別の理由であります。従って今申し上げておるような特別な措置——経済事業をやっておるからということでなくて、商工会と小組合に編成せられる、組織化せられるというものは同じレベルである、しかもその人たちは先ほど来あなたも言っておるようにそういう制度があることすら知らない、こういう人なんです。その制度があることを知らしめるためにも、商工会と同じような普及員というものも必要ではないか、こういうように考えるので、ぜひ一つ事務費補助というものについては考えていただきたい、こう思いますがいかがでございましょうか。
  24. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 実は小組合が二十幾つありまして、そのまとまりは従来ばらばらでして、やっと最近まとまりができまして、その方々のお話をいろいろ聞いておるわけです。それから実は私も当時の事情を知りませんので、当時の速記録をずっと読みまして、そういう趣旨は非常によくわかるのであります。わかるのでありますが、先ほど官房長官のおっしゃいましたのは、たとえば共同施設の補助も、昔はやりっぱなしの補助金を出しておったのですが、経済事業をやる組合には、やりっぱなしの補助金でなしに、貸付金に相当するというようなところまでだんだん変わってきておりますので、そういう趣旨からいいますと経済事業をやるような組合にじきに補助を出すということは、制度的にはなかなか問題があると思いますが、普及とか趣旨徹底というような意味の事務補助というようなことなら、あるいは考え方も成り立つかと思いますので、私どもとしましてはせっかく仕組みとして成り立つ方法——ざっくばらんに私のちょっと考えていることを申し上げますと、中央会の中の補助金の別ワクみたいにして、それを通して流すというようなことでもいいかとも考えるわけです。要するに指導事業、普及事業補助するというような趣旨補助が成り立ち得るかどうか、なお検討いたしまして、私どもといたしましてはそういう方向で努力いたしたいと思います。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 実はあのときは小委員会で懇談的に話したから議事録にはないのです。しかし私や松平氏が言ったのでは野党だから、何でしたらここにおられた首藤氏あるいは小笠さん等当時協議いたしました与党の人の意見も聞いていただいて、できれば行政措置等で、この事務補助費だけは、ぜひ考えてもらいたいと思います。  この申し入れについて、一項々々お伺いしたいと思っておったのですが、あなたも御存じなんですね。——官房長官からも答弁がありましたが、官房長官官房長官としてこれを受け取って、各関係にこれを配付し、意見を求めたという程度でございますので、それの中心になって考えてみるのは中小企業庁である。従って中小企業庁においてこの問題に対しまして、ことにわれわれの申し入れをどのように具体化し、実現化していくかということについて、なお一そうの検討をしていただきたい。そのように要望しておきます。  それから中小企業の設備近代化助成法の関係についてお尋ねしますが、今度改正もできまして、中小企業団地を造成しようということになっている。これに対して、実際のところあのときおっしゃっておったようにトラックも入らない、場末のすみの方で、ちょこちょこ仕事をしておるというのがこういう零細企業なんです。従って三つの小組合としてまとまって環境を改善していくということは、一つの大きな課題であろう、従ってこの助成金による団地の造成についても、小組合向けのワクというようなものを別に考えて、現在の予算の中からこれは小組合に、零細企業のためにやるのだというような方向をとってもらいたい、このようにも考えるのですが、その点いかがでしょうか。
  26. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 団地はもちろんその主体は事業協同組合あるいは事業協同小組合あるいはその連合会である事業協同組合連合会というものが対象になっておりまして、小組合ももちろん入りますが、今のところ小組合分としての予算の別ワクというようなことは実は考えておりません。これはその各地の要望を見まして、そういう要望に沿うようにやるためには、そういう別ワクをあるいは作った方がいいということに相なりますれば、そういうことも考えたいと思いますが、目下のところは実は小組合を中心としたそういうもくろみも聞いておりませんので、そういうものが出てきました実情によりまして考えてみたいと思います。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 まだ聞いていないということですが、してやろうということなら計画を出すのです。そのときには特別に考えていただけますか。
  28. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 計画が出てきますれば、その小組合趣旨に沿って、むしろそこに重点を置くような意味で考慮したいと思います。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 小組合関係はまだまだ問題があるのですが、後ほど中小企業庁長官からわれわれの申し入れに対して、どのように誠意をもって実行しようとしておるかという、一応実績を見せてもらった上でやるということにして、この申し入れ長官は誠意をもって、できるだけ実現できるように努力してもらいたいことを要望いたします。  次に松尾企業局長の登壇を願います。百貨店の関係につきまして企業局長にお伺いいたしたいのですが、局長も御存じと思いますが、先日日比谷公会堂で中小企業の小売商の方が全国から寄りまして、百貨店の増新築、拡張反対の総決起大会をやりました。これには与党からは塚田氏が党の責任者として出席をし、当委員会の首藤氏も出ておりました。私も党を代表して行ったわけですが、与党の諸君もなかなかわれわれにもまさる勇敢なあいさつをしておられまして、お前たちの言うことはもっともだ、百貨店法は改正の必要がある、こういうように小売商の方に約束したわけです。それはそれとして、与党が約束するならば百貨店法の改正も可能であろうと私は考えておりますが、現在全国のあっちこっちで百貨店拡張問題が、中小企業のグループ、小売業者のグループ等の間に大きな問題になっております。私先日帰郷いたしましたが、兵庫県ですが、姫路市においては市の全商店及びその付近の小売店が共同して、姫路市にある二つの百貨店の拡張反対の猛運動を起こしております。そこでまずお伺いいたしたいのですが、今日百貨店はそれぞれ各店とも拡張、新築競争に入っているようです。現在通産省ないし地元通産局に対して、増新築の申請がなされておるのは何件であって、その申請の売場面積は、全体で幾らくらいになるのですか。百貨店法を五年前に制定して規制したときと、現在との売場面積の関係、及びその申請あるいは計画されておるのが実現した場合には、当時のなんぼくらいの割合で広くなるか、あるいは店舗がふえるか、こういうような点についてお伺いいたしたいと思います。
  30. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 今お話がございましたように、最近東京都内だけではなく、地方都市におきましてもかなり百貨店の、一部は新たな営業を始めたい、あるいは売場面積の増加の申請が、かなり大きな数字として出て参っております。その数字を申し上げますと、東京都内におきましては現在までに六店申請が参っておりまして、その売場面積の合計は約十万平米でございます。さらに地方都市におきまして現在までに六店の申請が参っておりますが、これもその申請増加面積の合計をいたしますと、約二万六千平米になっております。合計をいたしますと全部で約十二万六千、約十三万平米の申請に相なるわけでございますが、現在百貨店法の適用を受けております全国百貨店の売場面積の総合計は百五十二万平米になりますので、百五十二万平米に対しまして約十三万平米の増加ということになります。そういう状況でございますので、もちろん百貨店法の運用の精神にかんがみまして、これはそれぞれの地区における具体的な状況で判断をしなければならないと思います。総合計だけで判断はつきにくいと思いますが、それぞれの地域における中小業者に対する影響度を慎重に検討いたしまして、こういう数字が、このまま全部百貨店の拡張ということが実現するとは私どもも考えておりませんが、十分その点は慎重な検討を必要とすると考えております。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 大体十二万平米の売場面積の拡張の申請が出ている、こういうことです。これを普通の小売店に直すと八千二百八十軒ばかりの小売店ができるのと同じことになるわけです。御承知のように百貨店法ができましたときに、その前後を通じましていわゆるかけ込み増設が行なわれた。それがようやく終わったときに、いわゆる消費ブームといいますか、ことに政府所得倍増計画、こういうことに便乗して問題が起きたので、またまた百貨店が増改築の競争に入った。このままの状態であるならば、何のための百貨店法であるかということを言いたいのでありまして、百貨店法は百貨店規制をし、小売商の利益を守ろうということが大きな目的であったが、現在百貨店法はそれと反対の動きをしておる。反対の効果を上げているといっても過言でないわけです。  そこでお伺いいたしたいのは、御承知のように百貨店法第三条及び第六条で新築、増築の場合は、ともに通産大臣の許可が必要であります。通産大臣はその許可を与えるにあたりましては、百貨店審議会の意見を聞くということになっておりますが、これはあくまで意見を聞くということであって、その意見に拘束はせられない。だがしかし、大体審議会の答申通りになさっておるわけです。従ってあなたは百貨店審議会の答申を得て云々とお答えになるだろうが、今申しましたように、それはあくまでも百貨店法に基づいて意見を聞くというだけであって、法律的拘束はないわけです。従って通産省自体としてこういうような新築、増築の百貨店の競争、これからくる小売商への大きな圧迫等々を考えられて、どのような方針で臨もうとしておられるのか、その点をお伺いいたします。
  32. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 御承知のように百貨店法の手続によりまして、今御指摘のございましたように申請の内容を公示いたしまして、それぞれ地元のいわゆる商調協の審議、意見を聞きまして、さらに各方面の意見を聞いて、今お話のありました百貨店審議会で審議をしていただくことになっております。現在までの状況はただいま申し上げました申請十何件のものは、いずれもまだ今申しました手続の公示の段階でございます。一部地方の商調協の論議に上がっておる程度でございまして、その審議の状況あるいは先ほど申しましたように、具体的にそれぞれの地域の状況を十分把握いたしませんと、一律に総合計で幾らという判断は非常にむずかしい。そういう事情もございますので、この申請に対する判断は、もうしばらくこの事態の検討をした上でないと、今ここでどうということは私は申し上げかねると思います。ただ先ほど申しましたように、これだけ大きな申請が出てきているので、そのままそっくり通るということは私は想像できない。その通りにそのままそっくり増築ができるということは、私は常識的にも非常にむずかしいだろということを、一般的に現状では申し上げられると思います。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 こういう段階ですから具体的にお答え願えないのもやむを得ないと思いますが、少なくともこれは大臣に聞くべきはずですが、大臣は決算委員会へ出ておりますので、担当のあなたに聞くのですが、担当の局長としてこういう方針で行くのだ、こういうくらいの——この申請通りにはなりせんがというような妥協的なことではなく、確固たる信念の上に立ってこういうような方針で行く、こういうような腹組みで行くのだということは、もうすでにこれだけの問題が起き、しかも現実に申請が出ているのですから、あなたとしては考えておかれる必要があろうと思います。そういう腹組みをお伺いしたい、こういうことでございます。  もう一つは、百貨店審議会ですが、審議会の性格は先ほど申し上げた通り許可にあたって大臣は意見を聞くということなんです。しかしその意見が重要な役割をなすことも過去の事例からわれわれも知っております。そうすると問題は百貨店審議会のメンバーなんです。  百貨店審議会のメンバーは、ほんとうに利害関係を持つ人が入っていない。むしろこれは考え方によって利害関係のない第三者がやってこそいい意見が出るのだ、こう言われるかもしれないけれども、事死活に関する問題であります。従って当然利害関係者等の意見を十分聞いてやる必要があろうと思います。審議会のメンバーについても再考すべき段階ではなかろうかと思いますが、この二点についていかがでございましょう。
  34. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 現在申請の出ておりますものに対する考え方の基本は、先ほど申し上げたように具体的なケースで判断をしなければ一律な議論は私はできないと思いますけれども、当然百貨店法の精神によりまして、中小業者事業活動の機会を十分確保するように、それに対する重大な影響を与えないようにということで、具体的なケースで十分慎重な判断をしなければならないと思います。  それから第二点の百貨店審議会の構成あるいはその運用の問題でございますが、御承知のように百貨店法の仕組みは、先ほど申し上げたように、具体的なケースについての判断が非常に重要でございますので、それぞれの具体的な場合に、その地域の商調協におきまして、ここには当然利害関係者を含めて、十分利害関係者の意見を織り込んだ調整意見が、そこでまとめられる仕組みになっております。またそれ以外に商調協の場所だけではなくして、利害関係者はだれでも百貨店審議会その他に意見を申し出ることができるような仕組みになっております。そういうところで利害関係者の意見は十分聞かれており、また百貨店審議会には反映していると思いますけれども、なおそういう運用の仕方に不十分な点がございますれば、これは審議会の運用上、さらに利害関係者の意見が十分反映するようにということは、今後さらに検討いたしたいと思います。  ただ重ねて申し上げますけれども、百貨店審議会のメンバーそのものは、やはり利害関係でない方が、事態の公正な慎重な運用を期し得るのではないか、これは法の精神がそうなっていると思います。今後も私はその点だけは、やはりそういう仕組みの方がいいのではないかというふうに考えております。
  35. 田中武夫

    田中(武)委員 百貨店審議会のメンバーがどうであるかということは、いろいろ見方があろうと思います。私は第三者だけできめるのが公正だということは一応理論的にうなずけるが、その第三者が現在ではほんとうのことは大企業すなわち百貨店の側に立つ人が多い、これはいなめない事実です。従って利害関係を持ち、しかもそれが死活の問題にまでなっておる人たちの意見を十分に聞く、こういうようにしてもらいたいと思う。御承知のように東京都内だけでなく全国においてこのような問題が展開せられておるわけです。従って今度の申請に対する許可の問題については慎重の上にも慎重を重ねてもらいたい。下手をやると、これは大きな問題になるんじゃなかろうかと思います。先日の決起大会のときにも、おそらく多くの人が企業長官にも陳情に行ったと思うのです。あの小売屋の、どっちかといえばああいう格好の人がはち巻を締め、たすきをかけて、労働組合にもまさる元気で大会を開くということは、もう相当苦しくなっている、足元に火がついているという証拠であろうと思う。そういう点について十分な配慮と見通しの上に立って検討をしてもらいたいことを要望しておきます。  そして、私はこの百貨店法の審議に当たったときに、百貨店法それ自体の中にインジャンクション、すなわち差しとめ命令の規定を置かなければ十分な効果を果たせないのじゃなかろうか、そういうことを言った覚えがあるのですが、現在すでに多くの建設をやっており、準備を進めておるという段階なんです。ところが、百貨店審議会といえども、また企業庁といえども、あれだけの金を投じ、あれだけの建物を建てたのであるからということで人情が移って、まずいけれどもというようなことで、おそらくある程度認めなければならぬという状態も起きてきているのも事実なんです。建ってしまって申請が出てから問題にしたのではもうおそすぎる。従って百貨店を作るであろう、百貨店を作るということで建てておるときには、少なくともインジャンクション、差しとめ命令を出して、まず百貨店として許すのかどうか、あるいはどの程度の売り場面積なら許せるかを検討した上で、それに合わせた建築をする、こういうことが望ましいというふうに当時も言って参りました。現在もそう考えております。そこで百貨店法を改正して——改正の点はいろいろありましょう。しかし特に差しとめ命令の規定というようなことを考える必要があるのではないかと考えておるわけであります。私、実は先日池袋の実態を見て参りました。現在ではどの百貨店も競争で建てておるという建築ブームであります。これが全部申請通り百貨店になるとするならば、そうでなくとも動きのとれない東京都が、ターミナルにおける百貨店の林立によって、ますます交通等の関係からいって動きのとれない状態になると考えます。それではこれを許可しなかった場合においては困るだろう。もちろん巨額の投資をして建てた人たちも困るわけであります。そこでこれは当委員会よりかむしろ建設委員会で、あるいは住宅局長等にここに来てもらって、意見を述べる方が正しいかと思うのですが、三年先のオリンピックに際して、ホテル等が不足しているということは一つの問題になっている。そこで百貨店として建てておるものを、この際思い切ってホテル等に転用していくということも、一つ方法ではなかろうかと考えておるわけなんです。そのことについて企業局長に意見を聞いても、それは建設省の関係だろうが、そういうことも私は考えるので、企業局長の立場からそういうことはどうかということです。百貨店法の改正については、ことにインジャンクションの規定についてはどういうように考えますか。その点をお伺いします。
  36. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 御承知のように、百貨店法の建前が特に百貨店の営業規模に関する制限という形で参っておりますので、その入れものである建物そのものを押えるということは、立法技術的にかなりむずかしい点があると思います。ただ従来の運用について申し上げますと、御指摘のようにすでに建物について大きな投資をやってしまった場合については、そのあとの扱いがなかなかむずかしいではないか、確かにそういう点もあろうかと思いますが、ただ従来の百貨店法の運用の実績を見ていただきますと、建物ができた場合に比較的よけいに売り場面積が許可されたということにはなっていないと私は思います。御承知のように、でき上がった建物の大きさに引きずられて営業面積を許可するのではなくて、現実に周辺の小売商その他との調整を考えてどこまで許可できるかということで、十分考えて参ったつもりでございます。今のお話しの点は、もし徹底した方法で考えるということならば、建物そのものまでにさかのぼってということは、方法論としては考え得ないことではないと思います。ただ立法技術的には、今申しましたようにかなりむずかしい点があろうかと思いますが、従来の運用は、田中先生御心配のようなことには、私は必ずしもなっていないと思いますけれども、今後の問題としてさらに十分検討して参るつもりでございます。
  37. 田中武夫

    田中(武)委員 今の企業局長答弁は、五年前、百貨店法が審議になったときに私が申し上げたときと同じような答弁なんです。しかし建てた側からいっても、これだけの売り場面積を持ってこうしたいというのを、まあ今までは大体妥協という線で、こうなってきておるのだろうが、半分とか三分の二とかいうことになっておるわけなんです。あなたは、建てたからやむを得ぬということでなく、実際の状況を見てやっておる、こうおっしゃる。なるほどそうであろう。しかしながら、せっかくあれだけのものを建ててしまったのだからということも、いなめない心理状態なんです。同時にまた一方建てた方も、予定の半分程度しか許可にならないとすれば、あとは映画館にするとか集会所にするとか、あるいは結婚式場にするとかなんとか、いわゆる法の盲点をくぐって利用しようとする。またそうせざるを得ない。こういうことになれば、建てた方にもやはり百貨店法のために不測の計画上の狂いがくると思うのです。従って、もちろん立法論としては百貨店の規制ということから一歩前進という態度になろうと思うのですが、私はインジャンクションの規定が、百貨店を建てようとする側にも、またそれができて困る中小企業の小売屋の側に立っても、これは適当な措置だと思うのです。これは立法論、政策論になりますので、むしろ大臣にお伺いしたいのですが、大臣が来るまでは、幸い有能な政務次官がいらっしゃるので、こういうような点について、どういう政策の上に立っていくべきかということを、大臣にかわって御答弁願いたいと思います。
  38. 砂原格

    ○砂原政府委員 先ほど企業局長からも御答弁申し上げましたように、法的の面から見ましたら、大へん困難ではないかと考えられるのですが、しかし田中委員のお説もごもっともな点があるのでありまして、検討してみたいと思います。さらに、ホテルが不足しておるから百貨店の建物をその方に利用してはどうかというお話でございますが、考え方としてはおもしろいと思いとしてはどうかと考えますので、その経営者がその方針に持っていきたいと考えた場合は、これはまた別の角度において考えられる問題ではないかと私は思います。
  39. 田中武夫

    田中(武)委員 次官の答弁は結局経営者がそう考えたら、これは野放しなんです。そうでなく、やはり政治的な立場から指導すべきじゃないか、私はこういうように申し上げておるわけなんです。立法論についても、今ここで、明確な答弁を求めることは無理であろうと思いますので、この点は大臣に保留をいたします。  しかし百貨店法ができ、小売商業調整特別措置法ができました。しかし一つ法律ができるとこの盲点をつく、そして脱法行為を行なおうとすることは常に行なわれておる。その盲点をつき、脱法行為が公々然として行なわれているのに、この百貨店法と小売商業調整特別措置法があるわけなんです。百貨店法の脱法行為としてはいわゆる名店街その他によるスーパー・マーケットの存在であります。それから小売商業調整特別措置法の盲点として行なわれておるのは——これは一例ですが、小売市場です。これが十以上ではいけないというので、最初九人ほどで作るんです。そして作ってしまってから中を分けて委託経営という格好でそれをまた幾つかに分ける、そういうことによっていわゆる小売商業調整特別措置法の盲点をついた市場がたくさんできておる。こういうことに対して法の改正あるいは法に基づく行政措置等々によって規制をせねばならない面がたくさんあるわけです。従ってわれわれとしてはこの両法の改正を考えておるわけですが、そういう点について当局としてはどのように考えておられるか、これを担当の両責任者からお伺いいたします。担当といえばこれは通産大臣になるんだが、中小企業庁長官企業局長にお伺いいたします。
  40. 松尾金藏

    ○松尾政府委員 百貨店法をくぐるものという御指摘でお話がございましたスーパー・マーケット、あるいは俗に類似百貨店といわれておりますけれども、これらはその全部が必ずしも百貨店業者につながる営業であるということではないのでありますけれども、しかし確かに御指摘のようにその大部分あるいは相当部分は、百貨店営業の別会社形式というような形で営業をしておるものが、相当多いわけであります。これに対しましては御承知のようにそういう店が外観的に百貨店の営業につながっておるようなそういう形でお客を吸収することはまずいということが、まず第一の問題であろうと思います。それから同時に百貨店法では御承知のように営業時間あるいは休日等について制限をされておりますけれども、そういう制限をそういう別の形でくぐるというようなことは困る、この点がそういうスーパー・マーケットあるいは別会社形式といわれるものに対する実質的な弊害の点であろうと思います。現在の百貨店法では、これを法律の上からとらえることはできませんので、従来行政指導の形で、たとえばそういう店で使っております商標あるいは包装紙、特に店の名前、そういうものがそのつながっておる百貨店に類似するようなものを使ってはいけないということで、今申しました事実上弊害を与えます、実質上の弊害の第一点を取り除くように、従来行政指導をして参っております。また閉店時刻、休業日というような点につきましても、これは逆に百貨店法の制限に近いところまで、みずから制限をするようにという行政指導をやって参りまして、従来までそういういわゆる類似百貨店の部類に属するものは、おおむねその行政指導に服して参っておりますが、ただ先ほど申しましたように、必ずしも百貨店の息のかかっておるものだけではなくて、それ以外のスーパー・マーケットその他もあるわけでございます。従来は事家上実害のないようにということを中心に、行政指導をして参ったというのが実情でございます。
  41. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 小売商業調整特別措置法につきまして一例としてあげられましたが、法律的に盲点がある、実は例としてあげられました小売市場の問題につきましても、特に関西方面につきましてざっくばらんにいいますと、罰金を払う覚悟で、いろいろ問題を起こすというような例さえあったわけであります。十人の小売商が一つの建物に入って指定の商品を扱うというのが小売商、こういう定義をしておる、その裏をくぐられるケースがいろいろあったわけであります。実はこの規定と罰則等の関係につきまして、相当ひまがかかったわけでありますが、法務省等とも相談をいたしまして、小売商一店入れるごとに違反が一件ずつあるというような解釈で、これは裁判でございますので結果はどうなるかわかりませんが、大阪の例で、そういう法務省の見解を統一してもらいまして、それで実は告訴をしておるというのが一つございます。これが一つ法律的なテスト・ケースになるわけでございますが、そういうことで確かに小売市場を縛るというようなことも、法律的な縛り方というものは非常にむずかしいのでありますが、そのテスト・ケース等で今もし裁判で負けるというようなことになりますと、どうしてもこれは法律の目的を達するために、法律改正ということもやらなければならぬということで、今告訴をして裁判をやっておるような状況であります。できるだけ法律趣旨が達成されるような運営を極力やりまして、それでまだ明らかに穴があるということになりますと法律改正をいたさなければならぬかと思います。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 今お二人の答弁にもあったように、現に百貨店法あるいは小売商業調整特別措置法の盲点をつく脱法行為が行なわれておる、こういうことはお認めの通りであります。従いまして私は施行せられまして一方は五年、一方は三年たった、この間にこういうものが出てきたということは、それだけの情勢の上に立って、この両法を再検討する必要に迫られておる、このように考え、改正の要点等についても意見を聞きたい、このように考えておるわけでございますが、大臣が見えませんので、これらの点は大臣への質問として保留いたしておきます。  次にお伺いいたしたいことは、これは警察庁に対してでありますが、青少年の犯罪あるいは続出せるテロ行為、これは目をおおうものがある。従って治安当局として治安上これに対するいろいろのことを考えられることは当然であろうと思う。ところがそのことに伴って、その余波を受けて、中小ことに零細企業がたくさん倒産をしていくというような状態が現実に起きておるわけです。そういうことに関連いたしまして、私は去る三月七日に質問主意書をもって内閣に対して質問をしたわけでありますが、その答弁がもちろんこの種のものでございますからきわめて抽象的である。そこで若干この政府答弁に基づきまして、これを具体的に一つお伺いいたしたい、このように考えておるわけでございますが、今度治安当局としては、銃砲刀剣類等所持取締法改正を出すといわれて、まだ国会に出てないようでございますが、近日中に出されるようであります。この法案の持つ、たとえば警察官の調査権限、これが憲法三十五条との関係、あるいはまたこの調査権それ自体が、かつて問題になった警察官職務執行法の改正と同じような役割を果たすのじゃなかろうかという危惧等々につきましては、これは担当委員会において十分行なわれると思いますので、私は、現在ここで、三十五条との関係とか、あるいは警職法との関係等々には触れようと思いませんが、このことによりまして、六センチという制限が設けられておるために、今日まで、ことに兵庫県の三木、小野あるいは岐阜県の関等々では、こういった刃物生産をもって生計を立てておる零細企業が多いのでありますが、そういう運動というようなところから、返品が続く、あるいは契約解除がくる、在庫はふえる、こういうような状態であります。昨年の暮れ、小野市では、五十五才になる肥後守の熟練工が、そういうことで首になって、それ以外に使い道がない、世を悲観して自殺をしたという事件があります。これも形を変えた肥後守殺人事件だ、こう思う。現在業界では、実はこういった肥後守を(実物を示す)窮余の一策として考え、試作しようとしておる。これも肥後守と名を打っておるのですが、いわゆる刃物追放運動によって刃物にならないよ、こういうことだと思うのです。まるくして鉛筆だける削るようにしておる。こういう苦心を払っておるわけです。  そこで、警察庁にお伺いしますが、刃物追放運動、すなわち銃砲刀剣類等所持取締法の改正において、刃物の定義をどうきめ、そしてこういった家庭用品とか文房具、これらとの関係をどのように規定をし、あわせて中小企業零細企業の産業がつぶれないようなことも考える必要がある。この運動は、確かにわれわれは否定するものではありません。だがしかし、角をためて牛を殺す、こういう結果になりつつあるということを、われわれは憂えておるわけでございます。従ってこの取締法の改正と、それに伴う刃物、ことに文房具あるいはまた家庭用品、大工さんの道具、こういうようなものはどういうように取り扱いをしようとしておられるのか、お伺いいたします。
  43. 木村行藏

    ○木村(行)政府委員 銃砲刀剣類等所持取締法の改正につきまして、近く国会に提案いたしまして改正いたしたいという準備中でありますので、数日中に、おそらく改正案が国会に提案されると思いますが、ただいまの問題で、特に最近飛び出しナイフを用いての犯罪、ことに暴力犯罪、あるいはあいくち類似の刃物、あるいはそれ以外に一般刀剣類以外の刀物が、殺人強盗、傷害、恐喝、こういうふうな凶悪犯罪、粗暴な犯罪に用いられている率が非常に多うございますので、ただいま田中委員からお話がありましたように、やはりこれはぜひ改正いたしまして、そういうふうな暴力犯罪に供用される刃物あるいは銃砲についての規制を、若干強化して参りたいと思うのであります。  ただいま御質問の第一点は、刃物の定義の問題でありますが、現在銃砲刀剣類等所持取締法の定義といたしまして、銃砲それから刀剣類、この二つがございます。銃砲はピストルとかあるいは空気銃とか、こういう……。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 関係の刃物だけでけっこうです。
  45. 木村行藏

    ○木村(行)政府委員 刃物だけについて申し上げますと、刀剣類は、すでに現行法でも、御案内通り刃渡り十五センチメートルをこえる、それ以上の刀、剣、やり、なぎなた、そういうものであります。それともう一つは、あいくちでございます。このあいくちは、刃渡りにかかわらず刀剣類の定義の中に入っております。それ以外に五・五センチメートルをこえる刃渡りを持った飛び出しナイフ、この三つが刀剣類の概念に入っております。この三つの刀剣類につきましては所持を原則として禁止いたしております。それ以外に、今度あいくち類似の刃物というのがございまして、これは二十二条で、業務その他正当の理由のない場合には携帯してはならないという携帯禁止規定がございます。これがいわゆる刃物の関係の現行法における定義でございます。  今回規制を新たにいたしたいと思います刃物は、第一点は、飛び出しナイフの中で刃渡り五・五センチ以下のもの、これは現行法では所持が自由になっております。しかし、最近の数年間の状況を見ますと、所持が自由になっておりますところの五・五センチメートル以下の刃渡りを持った飛び出しナイフによる暴力あるいは粗暴な犯罪に使われているのが、法で規制いたしておりますところの刃渡り五・五センチメートルをこえる飛び出しナイフの二倍ないし三倍近くになっておりまして、そういう関係がありますので、飛び出しナイフのうちで五・五センチメートル以下の刃渡りを持ったナイフについても、原則としてこれを所持禁止の対象に加えたい、これが第一点であります。ただその中で、御案内通り、現在飛び出しナイフは岐阜の関市でほとんで作られておりますけれども、この関市で、すでに生産しておる飛び出しナイフの中でも、一応ボタンを押しますと飛び出しますけれども、固定装置がなくて戻ってくる、また峰の先端部がまるみを帯びておる、また刃先が直線でありまして、刃先がくぼんだり、あるいは一つのふくらみを持っておるというようなものでないものを生産いたされておりますが、こういうふうなものにつきましては、五・五センチメートル以下のものにつきましては、これを犯罪に供用いたすにしてもあまり威力もありませんし、またそれほど、それをもって脅迫するという場合にも、あまり威迫感を感じません。また、かたがた、一面鉛筆削り用にも使われまする関係もありまして、若干の社会的効用もありますので、そういう類の条件を満たしたような飛び出しナイフにつきましては、今度の法改正におきましても所持を自由にいたしたい、こういうことでございます。  それから現行法二十二条で、あいくちに類似する刃物は、先ほども申し上げましたような業務その他正当な理由がない場合には携帯してはならない、禁止いたされておりますが、これも最近の状況を見ますと、なた、あるいはのみ、切り出しナイフ、その他あいくち類似以外の刃物で、凶悪犯あるいは粗暴犯に使われておりますところの率が非常に多うございますので、そういう関係もありますので、あいくち類似の刃物にかえまして、先ほど田中委員から御指摘のありましたように、刀剣類と同じような殺傷力を持ちますところの刃物につきまして、正当の理由のない場合は携帯してはならないというふうにいたしたいと思うのであります。先ほど御指摘のように刃体六センチメートルをこえる刃物——刃体と申しますと、さやの部分を除きましたいわゆる刃渡りの部分と、それからあごまちの部分両方含めまして、刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物につきましては、やはり殺傷力を持っておりますので、これらにつきましては業務その他正当の理由のない場合は携帯を禁止いたしたいと思うのでございます。ただこれには例外を、政令あるいは法律でいろいろ条件をつけまして、ただいま田中委員から御指摘のありましたように、肥後守のような、あるいはポケット・ナイフのような折り畳み式のナイフで、それが刃体を立てましてももとに戻る、すなわち固定装置のないもの、あるいははさみのようなもので、先端の著しく鋭利でないようなもの、これらにつきましては六センチでなしに、刃体八センチまでは携帯自由にいたすべきではないか、と申しますのは、社会的効用がありますし、それから比較的身近に携帯する必要度も高うございますので、そういう意味合いにおいて、ただいま申し上げたようなものにつきましては、そういう条件があれば自由にいたしたい。それからくだものナイフあるいは切り出しナイフにつきましても、そういうような一定条件を付しまして携帯の自由を認めたい。大まかに申し上げてそういう状況でございます。  それから補償その他業者に与える打撃の問題につきましては、確かにこれは非常に大きな問題でございまして、刃物を持たない運動の展開にあたりましても、この運動はもともと民間から盛り上がりまして、ついで中央青少年問題協議会で取り上げ、あるいは各地方の青少年問題協議会で取り上げまして、広範な民間団体が協力して展開された運動でありますけれども、間々この運動の行き過ぎもあるやに思われる、これらの面においても、われわれ関係のあります警察といたしましても、行き過ぎのないように、それぞれ関係団体と密接に連絡をいたさせております。ただ今度新たに法規制によって、たとえば五・五センチメートル以下の刃渡りの飛び出しナイフにつきましても、規制を受けますと、これは結果において国内向けについての販売ができない状態になりますし、その他二十二条の改正によりましても、若干影響があるやに思われるのでありまして、こういう問題につきましては現在の法理論からいいますと、これを直接補償するということは制度的に無理かと思いますけれども、できるだけその業者の受ける損害を少なくするというような方法につきましては、通産省御当局ともいろいろ連絡して、密接にタイアップしておるわけであります。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 長々と御答弁どうもありがとうございました。あいくちだとか、ピストルだとか、いわゆる社会的通念による凶器のことを私は言っておるのじゃありません。今われわれが問題にしておりますのは、たとえば植木ばさみとか、肥後守とか、あるいはポケット・ナイフ、あるいは生花用のはさみ、こういったいわゆるわれわれの日常生活に必要なものでございます。私ここではさみとか、ナイフ等の寸法別の売り上げ、使用の状況を調べたものを持っておりますが、たとえば肥後守ではいわゆる刃渡りというのですか、今言われた刃のところの長さが七・八センチメートル、これが七〇%、七センチが二〇%、すなわち七センチのところで九〇%を占めておる。それからポケット・ナイフで、七・五センチから六・五センチの間で七〇%というふうになっておるわけであります。そこで六センチで制限をせられる、しかし特別なものについては政令で除外を認める、こういうことになっておるやに聞いておるわけですが、問題は六センチで持てない、こういうことが一般的観念となっておるために、これらのものが全然売れない、こういう状態であります。従って治安警察がこれは持ってもよいのだ、こういう宣伝はどうかと思いますが、持てないのはこれだ、こういうPRをしていただくとともに、一方許されるものについては、これなら買って持ってもよいのだという——しかも生活上必要なものであるので、そこにいわゆる行き過ぎということのないように、ことに法律で六センチときめて政令で除外して八センチときめても、一般が知るのは法律で、政令の方まで知りません。従って一番業界が心配しておるのは、そういうことによって六センチ以上が売れないとなれば、今言ったように七〇%なり九〇%の生産ができないということになる。それをどうしてくれるのだ、こう言っておるのであります。従って法律と除外をせられる政令との関係、及びこれに対する一般的な認識を与える方法、こういう点について治安当局としてどうお考えでしょうか。
  47. 木村行藏

    ○木村(行)政府委員 この法案を策案ずる作業の過程におきまして、業界と何回か折衝いたしまして、相当具体的にいろいろな刃物類の種類、形状、その他の条件について打ち合わせをいたしました。もちろん今後法案が通過いたしました暁には、この法案の施行予定期日以前にPRの期間もありますし、また施行になりました以後におきましても、十分にPRしまして努力をいたしたいと思います。業者の方で一番心配しておられることは、ただいま田中委員からお話がありましたように、ある程度法律で規制して、政令でいろいろ条件がつけられても、政令の内容はあまり一般の方に読まれないというようなことについて不安があられるということは、まことにごもっともなことで、ただいま御指摘の折り畳み式のナイフ、特に肥後守のことにつきましては、法案の中にいわゆる例外といたしまして、刃体の長さ八センチメートル以下の折り畳み式のナイフというふうにして、肥後守もまたポケット・ナイフも入りますので、法案を見ても一目でわかるように、法律の中に入れてあります。それからはさみについても八センチメートル以下という条件で入れてあります。これは法律案に織り込む予定でありまして、最初は政令でありましたのを、業界の方の御意見もありまして、十分取り入れまして、法律に入れました。  以上であります。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは最初は六センチと原則をきめて、例外は政令というのをやめて、この政令部分も法案に入れる、こういうことなんですね。
  49. 木村行藏

    ○木村(行)政府委員 さようでございます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 それは治安当局としては、そういうものの青少年の犯罪等から考えてやむを得ないということは言えると思う。しかしだからといって——私はまだこの委員会で論議すべきではないから申しませんが、いわゆる憲法三十五条の捜査権の点についてはこれは別の問題です。そこで事業所管の通産省に聞くわけですが、この私の質問主意書に対しても、内閣として、「1できるだけ危険性の少ない刃物を工夫して生産する。2鍛工業として進出の余地ある家庭用器物等の生産により品種の多様化をはかる。3当面の滞貨融資、今後の立ち直りのために必要な資金等については、商工中金等を通じて融資円滑化をはかる。」こういうように答弁せられているわけです。先ほどちょっとお見せいたしましたように、こういったものを試作しているわけです。これにしたって相当資金も必要だと思う。治安当局は治安当局の立場があろうと思いますが、それに伴って受けておる零細企業の危機といいますか、こういうものに対して、どういうような援護、救済の対策を具体的に考えておられるか、あるいはこういった試作(実物を示す)なんかをやる場合のめんどうを、どの程度見てやるというおつもりなのか、あるいはこの刃物追放運動に関連し、業界を指導監督する事業所管省としての立場から、どのように考えておるか等々のことについてお伺いいたしたいと思います。
  51. 小山雄二

    小山(雄)政府委員 実はこのものの所管は軽工業局でございますが、中小企業一般の問題といたしましても、非常に影響の大きい問題であります。先般来軽工業局が通産局、県その他をいろいろ督励いたしまして、今申されました品種転換その他の問題を、具体的にどのように指導していくかという具体案を検討中のようであります。ただ実情は確かに法律ができるという雰囲気でもって、許されるものまで全部生産がとまっているというような実情のようでありまして、これは法律がはっきりしていけばそこははっきりしていくと思いますが、品種転換その他を具体的に指導するとともに、これに関連する融資の問題その他につきましては、政府関係金融機関、これは従来国もある程度やっておりますけれども政府関係の三機関に対しましては、つなぎ資金あるいは転換資金というものにつきまして、特別の配慮をするように極力指導をいたしております。ただ、今申し上げましたようにまだ具体的な転換のやり方等がきまりませんので、具体的な融資の申し込みその他はまだないようであります。そういう受け入れの態勢をかまえまして具体的な要求が起こりましたときには、直ちにこれに応じ得るように手配をいたしたいと思います。   〔委員長退席、中村(幸)委員長代理着席〕
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 実はわれわれはおとなしいから委員長に協力をし、法案審議に協力した関係上、たくさんの懸案の質問事項があったのをおいでおいで、今かためて中小企業の問題だけやろうというのがきょうでありまして、従って広く浅くというような格好になって、しかも関係政府委員を多くということになって、軽工業局長も呼ばなかった。それが直接の担当者だということもあるし、あるいは大臣自身から考えを聞かなくちゃならぬ問題がありますので、この点につきましても大臣質問に保留いたします。しかし中小企業庁としてもそういう事態があるということの認識は持っておられるわけです。従って、今日そういうようなことからくる打撃を何とかのがれたい、時代に即応した生産をしたいということであがいておる零細企業のために、十分めんどうを見てもらいたい。また具体的な相談があれば応じたいということでありますから、それぞれの業界において、具体的な計画でも出れば、また具体的に相談いたしたいと思いまして、この件に関する質問は保留しておきます。  次にこれも先日、すなわち三月二十四日に私が質問主意書をもって内閣質問した問題でございますが、アメリカの綿製品の輸入制限と、いわゆるギンガムの輸出対策の問題でございます。御承知のように五年前から制限を受けている業界においては、自主調整をやっております。その五年の調整期間が本年切れる。それで、業界としては今までの自主調整四千万平方ヤードですか、これを二千万ふやしたい。ところがこの回答によると一千万ふやすように努力したいということである。そこで、これも大臣に聞くのがほんとうだろうが、アメリカの綿製品の輸入制限、ことに今回のドル防衛措置に対するアメリカの輸入制限、これに対して日本としてはアメリカ向け輸出の振興について、どのような努力を今日まで払ってきたか、あるいはどういう措置をとってきたか、また今後とろうとしておられるかお伺いいたしたいと思います。
  53. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 具体的のギンガムの問題につきましては、繊維局所管でございますので、繊維局長お答えを願うようにいたしたいと思います。一般的な問題といたしまして、ドル防衛とアメリカの輸入制限の関系につきましては、私は制度的にはつながりはないと考えております。御承知のように日本のいろいろの製品の輸出が、一時的にアメリカ市場に殺到するのに対しまして、ずっと前から関係の米国の業界が、業界として反対をしております。これは御承知のようにいろいろの品物がございます。それに対しまして成規の救済手段と申しますか、互恵通商協定法という法律がアメリカにありまして、関係業界はその実情を具申して、関税引き上げなりあるいは輸入割当ということを、関税委員会なりあるいは政府に提訴いたしまして、それに対しまして関税委員会が調べ、さらに大統領に勧告する。大統領がそれを取り上げるかどうかは大統領の判断によってやる、こういう仕組みになっておりまして、今までわが政府といたしましては、相手方の関係業界が騒ぎますと、大使館を通じ、あるいは直接関係業界がこちらから出かけて参りまして、向こうの関税委員会でもっていろいろ意見を具申する、かようなことでもって未然に関税引き上げなり、あるいはそういうことを防げましたものが今までの大部分のケースでございました。この綿製品、特にギンガムの問題につきましては繊維局長からお答えいたします。
  54. 松村敬一

    ○松村政府委員 ただいまお尋ねのギンガムの問題でございますが、先般の内閣からの答弁書にもございますように、現在のワクの四千万平方ヤードを、業界から一応六千万平方ヤードにという要求があったのでございますが、日本側の過去のギンガムの輸出実績及び今回の綿製品交渉におきましては、すでに御承知通り、日本側が自主規制を過去四年間やって参りました間に、この規制を始めました一九五七年と比べまして、日本側の分け分が非常に減っておるわけでございまして、そういうことが非常に不合理であるということで強く主張をしよう、こういうことの方針にいたしておるわけでございます。そういう面から申しまして、こちらの論拠を非常に強めようということから申しますと、実はアメリカのギンガムの世界から入りますことしの大体の予定数量が六千万平方ヤードくらいになっておりますので、もとの一九五七年ごろの日本の分け前の九〇%、そういう形で、少なくとも五千万平方ヤードという形の主張をいたした方が、こちらの主張の力がなお強いのではないか、そういう意味の両方から、六千万平方ヤードという要求が一応ございましたけれども、五千万平方ヤードに変えたわけでございます。ところが、これはむしろ業界の——先ほど業界の要求と申しましたのは、一応形は、輸出組合のような形から業界の要求がございましたわけで、当時から生産業界の方といろいろ相談をいたしましたところでは、最近の米国のギンガムの需要から申しましても、六千万平方ヤードは少し無理で、むしろ五千万平方ヤードくらいで、ちょうどいいんではないか、こういう声もございましたわけでございまして、そういう意味でいろいろな点から、今回はむしろ五千万平方ヤードということで、それを非常に強く主張するということの方がより適当ではないか、そういうことで数字を五千万にいたした次第でございます。
  55. 田中武夫

    田中(武)委員 日本が五年間自主調整をやっている間に、香港とかスペインとかポルトガル等の後進国のギンガムが相当アメリカに進出しておる。日本が遠慮しているうちによそに市場をとられつつある。日本が自主調整をしておっても、それらの他国が自由にやるならば、損をし、ばかを見るのは日本だけなんです。そういうことによってアメリカ側が関税の引き上げ等の措置をとった場合に、日本はそれに後進国の無制限輸出のために巻き込まれる、こういう危険性があるということも尋ねたのですが、それには「アメリカ側としては新たな対日輸入制限措置を講じないとの了解も存在していることでもあり、おそらくこのような関税引上げは実施されないものと考えられる。」こういう答弁なんですが、そういう確固たる見通しがありますか。それから五千万平方ヤードならば、これははっきりと話し合いがつく、こういう見通しはあるわけなんですか。いかがです。
  56. 松村敬一

    ○松村政府委員 第一点でございますが、これは当初一九五六年に、五七年以降五カ年の自主規制の相談をいたしました際に、アメリカとしましては、そういう自主規制に対して今後輸入制限的措置をとらないように、できるだけのことをするという了解が一方あったわけでございまして、そういう意味におきまして米政府ができるだけのことをするはずである、そういうような形の意味でございますが、しかし現実の交渉の経過をちょっと述べさせていただきますと、現在米国に対しまして初め大使を通じ、その後係官がいろいろと交渉の具体的なことをやっております。ただいま米国側といたしましては閣僚級の委員会を作りまして、商務長官がその委員長になって、米国の繊維産業が今後どうあるべきか、それに従って外からの輸入に対してどういうことを講ずべきか、そういうことの報告を出すという形になっております。これは米国政府としては、繊維産業問題というのを、新政権として一番初めにそういう形で取り上げたので、今度の交渉の日本側に対する回答については、その報告を待ってから答えさせてほしい、それは数週間ぐらいのうちには答えが出るはずであるから、こういう返答でございまして、実は昨日、米国の商務次官補が通産大臣のところに見えました際にも、大臣から特にこの綿製品問題を指摘いたしましたに対しまして、やはり同じような答えをいたしておるわけでございまして、結局、そういう米国の今の閣僚の委員会、それの報告に従って、大統領がどういう新しい政策をきめるかということにかかっておりますので、どういう措置はとらないであろうということを予想して申し上げることは非常にむずかしいのでございますが、ただ新政権といたしましては、自由貿易主義を貫徹したいということを、一応言っておるわけでございまして、そういう意味で、すぐ関税の引き上げが行なわれるということは、必ずしも予想されないと思う次第でございます。  それから第二点の方でございますが、これは五千万平方ヤードでやれば成功するか、こういうお尋ねでございます。これも、相手がある交渉でございますので、そういう成功をするかどうかということもはっきりいたしませんけれども先ほど申し上げました理由によりまして、六千万平方ヤードという形で持ち出した場合よりも、五千万ということで初めから強く主張する方が、より成功の可能性が多い、そういう判断をいたした次第でございます。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 業界は六千万平方ヤードを希望しておるのですが、今言われたような理由から五千万平方ヤード、この線で行くんだ一しかも内閣答弁として、強力にこれを交渉するということだ。関税については、今申しましたように、「おそらくこのような関税引上げは実施されないものと考えられる。」こういうようにちゃんと内閣答弁しておられるのですから、この線に沿うてさらに実現——しかし業界としては、五千万平方ヤードでも不足だろうと思うが、ともかく内閣答弁したことだけは実現するように努力してもらいたい。従って、こういう状態でありますので、このギンガムを作っておる播州織物業界は、相当な長期不況という状態に置かれておる。ちょうど私がこの質問書を出しました三月二十四日、この当時はギンガムの工賃といいますか織り賃が——私も専門のことはよくわかりませんが、織り工賃が四十七インチ幅かける百二十ヤール物が標準の損益分岐点だそうです。それが二十一円六十七銭だ、こういうわけです。ところが、それから今日、まだ二十日ばかりもたたないうちに、現在では二十一円五十銭に、織り工賃が値下がりになっておるわけです。まだ、ますます値下がりの傾向があるわけです。それに対して政府答弁は、「本年四−六月には織機一台当たりの月間生産許容限度量を従来よりも更に一〇%削減する」、こういうことを書かれておるわけです。こういういわゆる生産調整ということによって押えていく、こういうことによって織り工賃を維持したいというような考え方であろうと思いますが、この方法によって、この標準織り工賃がなお値下がりをしないという自信があるのか、それとも、もっと強力な政府としての対策といいますか、あるいはそれに対するある種の援助というか、そういうことも必要であろうと思いますが、いかがでございましょう。
  58. 松村敬一

    ○松村政府委員 ただいま織り工賃に関連してのお尋ねでございますが、御指摘のように、最近、特に一月から三月ごろの間、米国の需要が非常に減っておりまして——実は今月に入りましてやや上がってきておる徴候はございますが、特に一−三月、米国の注文が減っておりまして、御指摘のように播州地区におきましては、本年一−三月にわたる生産が昨年の同じ期に比べまして、約九%減少をいたしておったわけでございます。そういうことと関連いたしまして、この答弁書にございますように、本年四−六月の織機一台当たりの月間生産許容限度が従来基準の八割となっておりましたのを七割ということにいたしまして、生産が過剰にならないようにいたすことによって、対米及び織り工賃という問題でございますれば、対商社の関係を生産者に対して有利にいたしたい、そういう意味でこのお答えがあるわけなんでございますが、実は織り工賃の先ほど御指摘の標準ものにつきましての推移を見てみますと、これは商社とメーカーとの関係でございますし、また同時に先ほどおっしゃいました対米の標準ものの織り工賃の場合と、東南アジアや豪州向けのものと工賃にいろいろ差がございまして、対米向けは非常に大量な注文がございますので、織り工賃としては比較的に安いような形になっておるわけでございますが、これが昨年の初めは、今の標準もので申しますと、十九円五十銭くらいの織り工賃であったわけでございます。これはヤード当たりの円でございます。それが昨年の後半からだんだん上がって参りまして七、八、九と二十一円五十銭くらいで、それから十、十一、十二とだんだんと上がって参りまして、十二月には二十二円五十銭というところまで行った次第でございます。それがこの一、二、三と二十二円五十銭から二十二円、二十一円と先ほど申し上げました不況とも関連いたしまして下がって参ったのでございますが、四月はまたちょっと上がりまして、さっきおっしゃいました二十一円五十銭ということになっておるわけでございます。これが損益分岐点を下回るかどうかという点は、さっき申し上げましたように、ほかの豪州側とのいろいろな関連もございまして、ちょっと幾らということがなかなかわからないのでございますが、今われわれの感じといたしましては、二十一円五十銭という現状で、それが損益分岐点を下回る事態に至っておるということは必ずしも言えないのではないかと思うのでございます。ただ初めに申し上げましたように、対米の需要が一時減っておりまして、そういうことに関連した織り工賃の差、それに対する対策というのも、なかなか商社とメーカーとの話し合いの問題もございますので、むずかしい次第でございますが、先ほど申し上げました生産調節の問題と、今幸い一月に入りましてかなり需要が延びてきておりますので、現在当面の問題としては、若干心配の度合いが薄れてきておるというふうに一応考えておる次第でございます。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 損益分岐点が二十一円五十銭であるのかもう少し上か下かということは、しろうとの私にはわかりません。しかし少なくとも損益分岐点がどこであるかということは、業界ともよく御相談していただいて一応きめていただく。そうしてそれの維持のために相当の対策が必要である。ここで私は価格支持制度と同じような制度がいいかどうかというようなことまでは申しませんが、そういったような制度すら考えられるのではないかと思います。  それからなお一〇%の生産制限、こういうことの結果が、そこに働く労働者にしわ寄せとなって現われないように、たとえば賃金カットだとか人員整理とか、こういうような方法によって現われないような措置もあわせてとっていただきたい、このように思うわけでございます。いかがでございましょう。
  60. 松村敬一

    ○松村政府委員 ただいま御指摘のような点につきましては、特に注意いたしましてやって参りたいと思います。
  61. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ちょっと関連して。実はこの問題は、予算委員会で私が質問いたしましたおりに、詳細は商工委員会に譲るということで留保になっている問題でございます。そこで今の田中委員質問に関連してお尋ねしますが、繊維製品のアメリカ輸出の成績が諸外国と比較をいたしまして非常に成績が悪くなっているという点は、これは明らかに政府の貿易政策の失態のしからしむるゆえんである、失敗のゆえんである、私はさように思っておるのでございます。なぜかならば、田中委員も申し上げましたように、一九五八年度におきまする日本のアメリカ輸出の占めるパーセンテージが七一・七%でございました。ところがそれが四〇%に下がり一七・六%と当初の三分の一以下に下がっておるのでございます。その間に今お話のポルトガルであるとかスペインであるとか、ことには香港の上昇率は十六倍程度に伸びております。同じアメリカが安い品物でよい品物を入れたら、これは報復手段がくるではないかという、いわゆる水鳥の羽音に驚いて自主規制をした結果は、日本だけが自主規制した。そして日本だけが減ったんです。ところが他の国々は伸びた。同じ市場において同じ時期において。これは明らかに自主規制が間違っていたと言わざるを得ない。言葉をかえて言えば、アメリカの水鳥の羽音に驚いて自主規制した、つまり正直者がばかを見た、こういう結果になるのであります。この点は通産大臣もお説の通りである、こう言っておられるのであります。従って幸いその自主規制の五年という長い年限が終わりました。新しく契約を結ぶ時期に到達している今日でございまするので、政府としてはこの際どのような前向きの姿勢をとるかという質問に対して、大臣はお説の通りであるから悪いところは改めて前進をする、こう言っておられる。それが三月一日の予算委員会でございます。以来すでに業界の代表もアメリカへ行き、あるいは労働者の代表もアメリカに参りました。いろいろ個々折衝をいたしておられまするが、やがて総理がアメリカに行かれることは、これはもう明らかな事実でございます。こういうチャンスをのがさずに、繊維局としても通商局としても、ほんとうに業界を愛し、日本貿易の伸展をはかろうとするところの決意がありとすれば、具体的にかくかくのことをいたしました、こういうことはやります、こういうことを答えていただきたいのでございます。具体的に一体どういう施策がございますか。一七%以下に下がったところのこれをどこまで盛り返すか、目標はどこに置いて、どのような具体的措置をとるか、こういう問題についてお答えを願いたいのであります。
  62. 松村敬一

    ○松村政府委員 ただいまの御質問の問題につきまして、特に総理の渡米との関連のお話もございました。これはまた大臣から答えられる問題かと存じますが、今現在やっておりますことにつきまして申し上げたいと思うのでございます。御指摘のようにこの五年間に日本が自主規制をいたし、ほかの国がしなかったために、日本の分け前が非常に減った。これは御指摘の通りでございます。  それで今後まず二つに分けまして、ことしの折衝の問題と明年以降の問題になると存じますが、ことしの折衝のやり方といたしましては、ともかく五年間そういう約束をいたしまして、それで自主規制をやっておるわけで、その最終年として今年ワクをやめるのだ、こういうことは必ずしも適当でないので、今年はともかくワクは規制はするけれども、減った分け前について、従来四年間に五%しかふえておらなかった。従ってことしは全体といたしまして三〇%ぜひともふやしたいということで、それぞれの品目別に、はっきりと論拠を立てまして、現在非常に強く交渉中でございまして、それに対しましては、先ほど田中委員の御質問お答えいたしましたように、アメリカ側としては日本側が、自主規制をやった結果非常に損をした、そういうことについては十分よく了解しておるので、できるだけのことは考えたいが、しかし今申し上げました新政権の特別委員会の報告が出た上で、具体的なお答えをしたい、そういうことを言っておる次第でございます。  それで今後の交渉のやり方につきましては、これは明年以降の問題でございますので、現在の交渉とは切り離しまして、おそらく秋あたり話し合いをすることになると存じますが、今回の交渉は、先方の出方によりまして将来のこちらの交渉方針をきめるための一つの見当をとる交渉にもなると思っておるのでございますが、現在まだ向こうのアメリカ側の政策というものがどんなことになるか、これはそういうことをただ待っておるというのではございませんが、そういう政策の出方によって、こちらの主張も違ってくるわけでございまして、そういう今回の交渉によりまして、向こうがどういう態度をとるか、それに従ってこちら側として最も適当なやり方で折衝いたしたいと思っておる次第でございまして、秋の交渉になると思う次第でございます。現在どういう方針ということは、やはり先方の出方を見てきめた方が適当であると思います。
  63. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 三〇%アップが目標である。その三〇%はいつを基準の三〇%でございますか。  それと、その三〇%アップが基準目標額ではある。ところが具体的な方策としては、相手の出方を待って進む、こういうお答えでございますが、それでは負けるにきまっておる。相撲の場合でもそうなんです。相手の出方を待ってこちらから攻めていくというようなことは、横綱とふんどしかつぎの間では可能だ。最初から負けることははっきりしておる。相手の出方を待ってこちらが攻めるなんということは、とんでもない話なんです。この際ぜひ政府の皆さんにこういうことをよくわきまえていただきたいと思う。それはほかでもございませんが、第一に、いかなる出方があろうと何があろうと、アメリカの綿製品の需要が今日より減るようなことは、ケネディ政権は絶対にとらないでございましょう。と同時に、アメリカの同業者の同じような生産数量がぐっとふえて、外国からの輸入をすっかりなくしてしまうというような状況も一、二年には出来しないでございましょう。さすれば、何と争うかといえば、アメリカへ輸出をする他の国々との間の争いであって、決して買ってくれるアメリカとの争いではないはずです。そこの点をよくわきまえていただければ、これは日本が一番有利なはずでございます。なぜかならば、第一は、すでに過去においてとった正直な態度でばかを見た、こういうことになっておることが一点と、またの一点は、いかなる国がアメリカへ向けて、綿製品、毛製品、何でもいいのですが、輸出をいたしましょうとも、ことに綿製品に至りましては、その材料を日本はほとんどアメリカから仰いでいるということなんです。言うなれば、日本からアメリカに輸出される綿製品は、アメリカの原綿と日本の加工のあいのこなんです。しかも今後出されるところの輸出の数量というものは、アメリカから材料を買ったところの原綿から生産される一体何分の一であるか。少ないときは百分の一以下です。一番多いと言われても二十五分の以下です。二十五分の一もよう買わない。しかもそれはあいのこである。材料の点においてもそうですが、技術の点においてもそうなんです。電気の技術においても、あるいはミシンのシンガーのパテントにいたしましても、加工の過程におけるところの技術その他は、ほとんどアメリカ物なんです。加えたものは何かと言ったら、日本の織機と紡機と、あとは天から降ってきた雨から得たところの電気だけなんです。なお加えたとすれば、それは日本の労力です。そうやってできたものです。アメリカの資源とアメリカのパテントとアメリカの機械、日本の労力と英知、これが加わってできたものです。それが向こうから輸入されたところの材料の二十五分の一や三十分の一を輸出して、そうしてそれが多過ぎるの何のと言われて、はい自主規制をいたしますなんということでは、これはあなた自身の問題ではなくて、歴代にわたる繊維局の態度があまりにもアメリカに対して卑屈過ぎるではないかと言うても過言ではないと思う。こんないい材料が、輸出しようとするものに、ほかに何かありますか。そこの点をよく向こうへ納得していただきさえすれば、向こうだって決してその点は間違いであるとは言わないでしょう。もし日本がアメリカから原綿を買わずに、自由貿易になったからエジプトその他から買いますと言ったら、向こうは一体どういうことになりますか。こういう立地条件がありながら、なお先方の出方を待たなければ、向こうの言い分を聞かなければ、こちらの答弁ができないというようなことでは、これはあまりにも逃げ口上と言わざるを得ない。  そこで政務次官、あなたはこれに対してどうお考えになりますか。これはぜひ一つ、通産省、外務省、大蔵省あげて輸出振興のために、この際御努力をいただかなければ、正月から二月と赤字が続いて、上半期はおそらく貿易の帳じりは赤字であろうと言われている、これを解決することはできませんぞ。政務次官の勇気ある御覚悟を承りたい。
  64. 松村敬一

    ○松村政府委員 私の先ほどの御答弁に対しまして、加藤先生のお聞き違いかと存じますが、私が申し上げましたのは、来年の交渉態度について出方を待ってと申し上げたのでございまして、ことしははっきりした態度でやることは、すでにきめておるわけでございます。それはそういう形でいたしますが、来年のやり方をどうしたらいいかという点につきましては、今先生の御指摘のような点につきまして、われわれもよく承知しておるわけでございまして、今年度たとえば三割増ということを、向こうがもしのむというような場合には、あるいはいろいろともちろん日本の分け前が減らないという前提のもとである程度の規制——これは必ずしも先方と相談した規制とは限りません、いろいろな形がある次第でございますから、ある程度の規制をやりました方が日本の綿製品の単価が高くなっておるというような若干の利点もございます。そういうような利点等とあわせまして、どういうのが日本として一番得であるかということで、強く交渉いたしたいと思うわけでございまして、現在業界の方からも現在の規制が日本に対して非常に損であったから、将来こういうことであれば一切規制をしないで行こうという意見も強力にございますし、同時に先方と相談づくではなくて、こちらで一方的な態度ではあるけれども、ある程度規制をやった方が業界としてかえって工合がいい、こういう意見もございます。いずれにいたしましても来年の方針につきましては、先ほど申し上げましたように、今年の先方の出方あるいは今年の先方の報告書の内容、そういうものをよく検討いたしました上で作戦を練りました方が、なおよい作戦ができると思う、こういう趣旨で申し上げた次第でございまして、決して先ほどの相撲のたとえのような意味で申し上げた次第ではございません。
  65. 加藤清二

    ○加藤(清)委員 ではこの問題については私まだ満足しておりませんが、この際は留保いたします。終わります。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 今の問題につきまして加藤委員も言われたように、私としても通産大臣が見えないので、はっきりした点を伺うことができないことを残念に思います。従って私もこの点については留保いたしまして、次に移りたいと思います。  実は通産大臣には十一時半にはこちらへ来てもらうということを決算委員長の方とも、私話し合いをつけておったわけなんですが、いまだに見えないので、この質問も結局は大臣が来なければ最終的には終わらない、こう思いますので、その点はあらかじめ委員長に申し上げておきます。  そこで大臣がいないので通商局長にお伺いしたいのですが、きょうの新聞によると、きのう態度をきめられたようですが、今まで強制バーター制度であったところの共産圏の中国、東ドイツ、アルバニア、 ハンガリー、この四カ国に対しては今月の十日から強制バーター制度を廃止する、こういうことをおきめになったようでございます。このことはわれわれといたしましても歓迎いたしたいと思うし、ことに日中関係の問題について少なくとも少しは前向きの情勢をとろうというお考えが出てきたということは、われわれ歓迎したいと思います。こういうことをおきめになった上について、今後どのような方針をもってこれらの諸国、ことに共産圏との貿易等については進めていかれるというお考えであるか、一つ伺いたいと思います。
  67. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 ただいま言われましたようにきのう通産大臣が、従来とっておりましたところの共産圏地域に対する強制バーター・システムを廃止しまして、新たに四月十日から許可制にするということを発表されたのでございまして、その趣旨は、これは御承知だと思いますが、従来共産圏貿易につきましては、強制バーターをとっておったという趣旨は、できるだけ輸出と輸入の片貿易というものをなくしまして、何とか両国間の貿易のバランスをとりたい、ところで御承知のようにたとえば中共につきましては、従来は取引する商社の数を非常に限定しておりまして、そのためにわが方からの輸出をすなおに受け入れてくれない体制であったと思います。従いましてそのままでいきますれば片貿易になりますので、従って個々の取引の際におきまして、個別的に輸出と輸入を結び合わせるという態度をとらざるを得なかったのでございます。ところでこの制度の本質は、貿易の均衡がとれない、従いまして個別契約においてバーター自体を強制するということは、一面におきまして向こうから言いますれば、向こうの国を日本が貿易面でも信用してくれないというふうに、向こうとして見られるおそれが多分にあるわけでございます。従いまして向こうとしましても、そういう日本の態度をいやがっておるような面もあったわけでございます。私どもといたしまして好んで、こういう制度を続けるつもりはなかったのでございます。ただ、今まで向こうの窓口が非常に狭かったということでとらざるを得なかったのでございます。先生御指摘のように、この国会におきましても与野党を通じ、何とかしたらよかろうというお話も承っておりましたし、関係業界からもいろいろ要望がございましたし、また特に最近におきまして、中共側におきまして従来十社にすぎなかったところの向こうのいわゆる友好商社の数を非常にふやして参りまして、現在約七十くらいに数がふえてきた。従いまして私ども考えましても、向こうといたしまして貿易を相当積極的にやりますと申しますか、わが方の輸出をまた積極的に受け入れる体制というものが看取されるわけでございまして、わが方といたしましても今後片貿易になる懸念は、一応なかろうという意味合いからいたしまして、この機会に輸出につきましても、輸入につきましても、片道現金決済という制度に改めた次第でございます。これによりまして従来のバーター・システムでとっておりました貿易手続の煩瑣さと申しますか、契約の機会を失いがちであるというふうな問題がなくなりまして、すなおに輸出、輸入ともに片道で決済できるということに相なりまするので、そういう手続上の関係から行きましても、今後輸出も輸入もできやすくなるというふうに考えますが、特にわが方の今までとっておりましたそういう態度を改めることによりまして、これが中共側によい反響を呼びまして、お互いに前向きの姿勢になっていく、個別契約方式をお互いに今後積極的に進めていくということにつきまして、一段と前向きになり、それによりまして輸出あるいは輸入がふえていくんじゃないか、かように考えるわけでございます。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 この措置によりまして、中国、東ドイツ、アルバニア、ハンガリー、この四国、それに今までのやつを入れてモンゴル、北ベトナム等からの輸入は、輸入貿易管理令第十条で、政府の許可だけで行ける、こういうことになるわけなんですが、輸出並びに輸入の許可に対して、せっかくこういうバーター制度を廃止するのだ、こうとられた、その許可とか、こういう点について手続上のいろいろな煩瑣があったり、許可に手間取ったり、あるいはシビアーな条件がつけられるということになると、せっかくのこの措置も生きてこないことになる。従ってこの許可については、どのような御方針で臨まれる御予定でございますか。
  69. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 輸出につきましては、許可制の品物というのは非常に少なくて、ほとんど自由にできるわけでございます。輸出につきましては今回のいわゆる輸入管理令の十条の事前許可とは関係ございません。問題は輸入だけでございまして、輸入につきましては、私どもといたしましては、特殊のケースを除きましては、原則として許可していきたい、かように考えておる次第でございます。なぜ許可制をとるかということは、共産圏の貿易というものは、向こうが社会主義国家でございますので、従いまして、計画性をお互いに持つ必要があるというようなこと、それからなお今後の事態の推移というものをよく見ながらやっていきたいということで許可制にした次第でございまして、許可の点につきましては、たとえばわが方の輸出はあまりふるわないけれども、輸入だけが非常に多くなって非常なアンバランスになったというふうな場合におきましては、ある程度実質的に許可制というものを文字通り活用するという必要も出てくるかと思いますけれども、それ以外の場合におきましては、特殊の物資以外は、これはフリーと申しますか、原則として、許可あれども許可なきがごとき状態でもって運用して参りたい。特殊の物資と申しますと、これはまだきめておるわけではございませんが、たとえば鉄鉱石だとか、たとえば原料炭だとか、あるいは大豆だとか、あるいは塩だとか、貿易政策全体に大きく響くような、たとえば現在、東南アジアから、せっかく塩を作らせまして塩を輸入しておるというふうな場合がございまして、中共から塩が入ることによって、他の地域との貿易が、また非常な混乱に陥るというふうなことがないように、非常に大きな物資につきましては、ある程度計画的に見て参りたいと思いますけれども、それ以外のものにつきましては、先ほど申しましたような方針でいきたい、かように考えております。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 ココムとかチンコムとの関係、そういうものはどういうことになりますか。
  71. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 これは従来からやっておることでございまして、ココム関係としまして、戦略物資として残っておりますものは、現状におきましては、もうごくわずかな物資でございます。それにつきましては、やはり従来通り許可制ということはございますけれども、それ以外のものにつきましては、輸出統制、その物資自体の自主規制というふうな他の目的による承認制なり何なりにかかることはございますけれども原則として、そういう場合以外は許可も要らないということで運用して参るわけでございます。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、まずココム、チンコムにきめられているものと、先ほど局長の御答弁にあったような特殊な二、三の物資、これ以外は、大体自由に行ける、こういうような解釈でよろしいのですか。
  73. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 さようでございます。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 そのことによって、いわゆる対共産圏の貿易が改善せられることは明らかであろうと思いますが、対共産圏の貿易でどのような——これはまだ今から許そうというときで、どういうような期待をするかということはおかしいかもしれませんが、対共産圏貿易で、大体どのような成果が上がってくるだろうというふうなことの見通しがあれば、一つ聞かしていただきたい。
  75. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 昨年の十二月十五日に、従来やっておりました強制バーターの運用を一部緩和いたしまして、ケース・バイ・ケースで認めるということにいたしたのでございます。昨年の十二月十五日から現在までの契約実績と申しますか、輸入につきましては約百万ポンド、三百万ドル程度、それから輸出は大体その半分でございます。中共貿易につきまして、今年度どの程度輸出を期待するかという点につきましては、通産大臣から、さきに、片道三千万ドル程度期待したいというふうに申されたのでございますが、従来はこのベースで進んでおりません。しかし先ほど申しましたように、いわゆる取り扱い商社の数が非常にふえて参りまして、大手商社も非常にたくさんそれに参加するようになったというふうなこととか、今回の改正によりまする貿易手続簡素化なり、向こうの態度に好転というものをわれわれ期待しておるわけでございますが、さらに中共におきましては、伝えられるところによりますと、昨年の出来秋の収穫が非常に少なかった。この出来秋の収穫に期待されている点が非常に多いと思います。従いまして、この夏なり、あるいは秋ごろから画期的に取引額はふえて参りまして、大体業界等の予想を見ますと、片道三千万ドルの輸出入が十分できるんじゃないかというふうな観測をしておるようでございまして、私どももそういうふうに期待したいと思います。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 中国だけについてお答えになったですが、私はほかの共産圏についても見通しがあれば聞かしていただきたい、こういう意味だったのです。おっしゃるように当国会の再開間もなしだったと思いますが、当委員会において松平委員質問に対して、今、局長が言われたように、通産大臣は、中国貿易については片道三千万ドル、そういうことを目標とするというようなお答えがあったことを私も記憶しております。しかし、御承知通り三十三年五月の貿易中断までは、片道約三百億円の貿易がなされておった。それがああいう変なことから中断になってしまった。そうして、こういうバーター制度をはずすという措置がとられても、なお本年度その三分の一の三千万ドル、約百億円がまあやれるだろうという程度だと思うのです。そこで少なくとも中断以前に早く持っていかねばならぬと思う。そういう方向と時期等についてはどういうふうにお考えですか。
  77. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 御承知のように、中共側からいわゆる貿易三原則を打ち出しまして、政府間協定に持っていきたいという希望がございますが、これは各大臣からいろいろ国会におきまして御答弁になっておるように、政府間協定は直接承認につながるおそれがあるということで、その点につきましてはまだ政府として踏み切っているわけじゃ全然ございませんで、今回の措置は、私どもは、それとは全く無関係措置である、かように了解しておるのでございますが、ただそこに至らない場合に、個別契約方式を積極的に積み上げていくという方法として、いかなる手段があるかという問題でございまして、今回とりました措置というものはその一つでございますが、そのほか、今後におきまして、まだ決済問題につきましても、あるいは保険と申しますか、いろいろの問題につきまして改善すべき余地はあろうと思います。私どもといたしましては十分検討しながら、向こうの様子も見ながら手を打って参りたい、かように考えております。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 政治的な問題につきましては局長に答弁をしいることは無理かと思います。先ほど通産大臣は、向こうを出られたという連絡があったのですが、まだお着きにならないので、これも結局は大臣の来るまで保留しなければならぬと思います。  時間も一時を回りましたので、最後に一つだけお伺いしておきたいのですが、今までいわゆる中国貿易について積極的な努力をしてきたのは、まず中小企業だったと思います。大企業は比較的冷ややかな態度をとっておる。この強制バーター制度がはずされたからといって、直ちに自由になるとはいえないとしても、少なくとも前向きの姿勢になった、あるいはまたこれからは拡大するという見通しが立った、こういうことになると、今まで冷たい態度をとっておった大企業が、今度は大々的に乗り出してきて、今までせっかく中断せられた中にあって、その道をつけるために努力をしてきた中小企業の、いわばトビが油あげをさらうようなことで取り上げてしまうのじゃないか、こういうことも考えられるわけなんです。そういうような点についても、特に中小企業政策という立場から考えていただきたい、このように思うのですが、いかがでございましょう。
  79. 今井善衞

    ○今井(善)政府委員 中小企業の立場は十分考えなければならぬと思いますが、ただ先生がおっしゃいましたように、今般のこの措置によりましていわゆる大企業が中共貿易に対しまして積極的な熱意が幾らか出てくるということは十分期待し得るわけでございまして、それによりましてわれわれ貿易が伸びるのじゃないかと思いますが、その際にいわゆる大企業とは何かというふうなことになりますと、たとえば鉄なり肥料なり、あるいは人絹、これは中小企業のない大企業だけの業界でございまして、そういう業界がある程度前向きになることを、われわれも期待するわけでございます。雑貨なりあるいは軽機械、これらの分野につきましては中小企業独自の分野と申しますか、従いまして品物によりまして、大企業中小企業の分野というものは違うわけでございますので、今回とります措置によりまして、中小企業の利益が侵されるということは、われわれ原則としてないものと思っております。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう面についても十分の配慮を願いたい、このように思います。  なお政治的な問題につきまして、今後の共産圏に対する貿易の考え方、進んでは国交改善の考え方等々についてもお伺いしたいのですが、これは局長さんじゃちょっと無理かと思いますので、大臣が来るまで保留いたしたいと思います。  時間もだいぶたっておるようですが、板川委員がちょっと質問があるそうですから、私はこれで質問を中止ということにいたします。
  81. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 板川正吾君。
  82. 板川正吾

    ○板川委員 先ほど田中委員が百貨店の問題について質問がありましたが、私はそれに関連して、公取委員長に若干質問をいたしたいと存じます。  百貨店に対する行政が世上うるさくなって参りました。なぜ百貨店問題がこういう世上にうるさくなってくるかというと、田中委員も言われましたように、百貨店法の第一条の精神が守られていないのじゃないかと私は思うのです。これは申すまでもなく「百貨店業の事業活動を調整することにより、中小商業の事業活動の機会を確保し、商業の正常な発達を図り、もって国民経済の健全な進展に資することを目的とする。」こういう趣旨が行政上生かされていないから、私は問題になるのだろうと思うのです。この百貨店法の成立に先立って、百貨店大企業がその経済的な地位を利用し、その権利を乱用しておるということについて、公取では御承知のように百貨店業における特定の不公正な取引方法についての公正取引委員会の告示、いわゆる百貨店の特殊指定を告示いたしたのでありますが、この特殊指定の運用状況が、その後どういうふうになっておるかということを、実はお聞きしたいのであります。昨年報告された昭和三十四年度における公取の年次報告、これによりますと、特殊指定の運用状況として、百貨店業について報告がございます。これは百貨店の特殊指定の項目をあげて、そうして「前年度において調査に着手した全国百四十八店舗の手伝店員の使用状況および作業内容について引き続き調査を行なった。」この程度の報告しかないのでありますが、私はこれはあまりにもお粗末な報告書じゃないかと思うのです。三十二年の年次報告を見ると、やや詳しく報告されておりますが、ほとんど調査をしたというだけの報告なのであります。調査の内容が報告されておらないのでありますが、調査のその後の結果、特殊指定の運用状況の概要について御報告を願いたいと思います。
  83. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 百貨店における不公正取引に関する特殊指定がありますことは御承知通りであります。この特殊指定が守られているかどうかということは重要な問題でありまして、われわれの方といたしましては特に手伝い店員の問題、あるいは特売、廉売用の商品の買いたたきの問題について調査しておるのであります。手伝い店員の問題につきましてはずっとやっておりますが、最近といたしましては昨年の十二月に、六大都市及び川崎市所在の五十一店舗について、歳末特に多忙をきわめておる販売部門について、手伝い店員の状況に関する報告書を提出を求めまして、目下それを整理中でございます。それから買いたたき問題につきましては、特売用、廉売用等の商品の買いたたきの取引はきわめてむずかしい問題でありまして、納入業者からの調査を行なったのでありますが、目立った事例はなかったのであります。ただ三十三年の六月ごろ、関西地区の百貨店が一部の商品について買いたたきがあるのではないかという申告がありましたので、調査いたしましたところが、その事実は見つかりませんでした。しかし最近に至りまして百貨店間の競争が非常に激しくなってきたので、買いたたき問題等もあわせて、全国百四十八店舗に対し、特売に関する調査を実施し、目下報告書の提出を求めておりまして、これをまとめますと、何らかの問題が出てくるかと思っておる次第であります。なおこの不公正取引につきましては、従来きわめて弱体でありましたので、この拡充を考えておりましたが、幸いに三十六年度予算におきまして若干の増員が認められましたので、先般取引課を新設いたしまして、この不公正問題について、さらに十分調査をし、善処したいというふうに考えておる次第であります。
  84. 板川正吾

    ○板川委員 特殊指定の運用状況について調査中だ、報告をまとめ中だというのですが、いつごろ報告書が出されますか。
  85. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 大体五月中にできると思っております。
  86. 板川正吾

    ○板川委員 その内容について伺いたいのですが、特殊指定の第一項に、御承知のように納入業者から購入した商品の全部または一部を当該納入業者に対して返品することはいけない、こういうふうになっております。しかし委託販売契約である場合はいいということになっておるのですが、最近実質的には売り上げ仕入れというような方式がとられておるそうであります。売り上げだけ仕入れたという形式で、法の盲点をくぐって、形式だけ整えて、事実上の返品が行なわれておる、こういう状況がはなはだしくなってきたということを聞くのですが、この調査の概要はどうですか。
  87. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 最近の売り上げ仕入れの問題は、われわれの方としても研究する必要があると思って調査しておりますが、現在その調査の途中でありまして、これも五月ごろには大体わかると思っております。
  88. 板川正吾

    ○板川委員 大体今までの調査の概要ですか、それは取りまとめたのは五月、国会の終了後ということになるのでしょうが、大体のところはわかりませんか。全国でどういうような事例があり、どういう傾向になっておるかというふうなことはわかりませんか。
  89. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 調整課長からお答えさせます。
  90. 吉田仁風

    ○吉田説明員 公正取引委員会事務局といたしましても、最近売り上げ仕入れの問題が相当大きな問題になって参りましたので、現在の特殊指定から、はたしてこれを規制し得るかどうかという点につきましては、若干疑問がないことはないのでございますが、これを放置しておくというのもまた適当ではないということで、まずその実態を調べてみようということで、昨年の末に主要百貨店に対しまして、その仕入れの状況につきまして売り場部門別に報告を求めまして、その提出期限が三月末ということになっておりますので、それをしさいに検討いたしまして、取りまとめできますのが五月一ぱいくらいかかるのではないかというふうに考えております。
  91. 板川正吾

    ○板川委員 売り上げ取引が現在の特殊指定からいって法的に疑問がある、こういうお話もありますが、実質的に特殊指定の法律をくぐって返品が行なわれておるなら、やはり特殊指定をした精神に従えば、大企業が経済的な地位を乱用して、中小企業を圧迫するということに対しては、法的に特殊指定の内容に無理があるならば、私は特殊指定を将来改正していくべきではないかと思うのですが、これに対して公取の委員長の考えはどうですか。
  92. 佐藤基

    ○佐藤(基)政府委員 売り上げ仕入れの問題につきましては、ただいま説明員から説明した通りでありまして、これが相当広く行なわれる、見方によっては特殊指定の脱法行為じゃないかという疑問がある。そこでこの三月末までに提出された書類によって実態を調査して、もしこれが脱法行為と認められるということであるならば、必要によっては特殊指定も改正しなければならぬ、こう思っております。
  93. 板川正吾

    ○板川委員 それから買い取り取引ですか、この分野が非常に少なくなって、委託販売の取引の額が非常に大きくなっておるという状況が、最近特にはなはだしいというのですが、その報告によりますとこの状況はどうですか。大体のところどういう傾向を示していますか。
  94. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 今の板川先生のお話の、大体仕入れの中でそれが何%かということは、今ちょっと正確に申し上げられませんが、御指摘のように、その特殊指定が一項があるものですから、漸次そういう形態に移行しつつあるということは、今までの調査でうかがえるわけです。従って、そこに委託に移行しておるが、その委託取引が実態はほんとうに委託であるのかどうか、こういうこともおそらく今調べている今度の調査の内容として浮かび上がってくる問題だと思います。
  95. 板川正吾

    ○板川委員 特殊指定のうちでは、私は一項と三項と六項が特に問題だと思うのです。先ほど委員長は、手伝い店員の状況については今詳細な報告を取りまとめ中だ、こういうのですが、昭和三十四年の年次報告で、手伝い店員の状況について作業内容等引き続き調査を行なう——三十四年からこの調査を行なって、三十四年、五年と二カ年もたってまだ結論が出ないということじゃ、実際はこれは大企業である百貨店の取り締まりが野放しの状態であったというふうに思われるのですが、この手伝い店員のその後の状況は、いま少しはっきりわかりませんか。
  96. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 手伝い店員の問題は、三十四年の報告に書いてありまして、その後大体毎年定期的に、この問題は重要問題でございますから、報告を求めておるのでございます。そして、ことしの調査は別として、大体今までのところの概略の方向といたしましては、絶対数は必ずしも大幅に減少してはおりません。しかし百貨店全体の売り場面積が増加しておりますから、その総体の比率から言いますと、私どもが調査の結果を見まして、法律的な根拠ではございませんが、行政的にと申しますか一応指示している方向には、だんだん近づいておるような模様でございます。なお今年度の結果はまたあらためて御報告申し上げます。
  97. 板川正吾

    ○板川委員 最近百貨店が商品の宣伝費を問屋に負担させるという事実があるそうですが、これは調査の結果はどうですか。
  98. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 ただいまの御指摘の点は、私どもの方に状況の報告でわかっておりますが、今度の調査の対象には入っていないのであります。
  99. 板川正吾

    ○板川委員 これは特殊指定の項目の中にありませんか。
  100. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 特殊指定の内容の中からはみ出ておる問題であります。
  101. 板川正吾

    ○板川委員 百貨店が宣伝費を問屋に負担させるという例が多くなったそうです。そうしますと、この商品の宣伝費を問屋に負担させるということは、特殊指定の精神からは脱法行為ですね。しかし特殊指定で、それは規定はしてありませんから、これは特殊指定をさらに改正をして、実態に合うように告示の内容をふやす必要があるんじゃないでしょうか。この点どうお考えですか。
  102. 坂根哲夫

    ○坂根政府委員 それは先ほど佐藤委員長から板川委員お答えいたしましたように、この告示がだいぶ問題にされたものですから、やはり経済の実態に即応して、もしかえるならばそういう問題も考慮したいと思います。
  103. 板川正吾

    ○板川委員 百貨店の特殊指定の状況ばかりじゃなくて、そのほかにも特殊指定の何項目かありますが、もっと特殊指定の運用を厳密に私はすべきじゃないかと思うのです。どうも消費者の利益を守るという公取が、特殊指定はしっ放しだ、その運用はもうしり抜けだ、それをそのままにしておくのじゃ、公取の目的にも反するのですから、一つ特に百貨店の特殊指定の運用状況については、早急に報告書をまとめて御報告を願いたいと思うのです。田中委員質問に関連して、したいと思ったのですが、今資料の提出を要望いたしまして、終わります。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 連絡の行き違いか何かがあったようで、十一時半までに決算委員会を終わって通産大臣はこちらに来てもらう、こういう約束を、実は決算委員長との間にしておった。ところが決算委員会が終わるとすぐこちらに来ずに、通産大臣は何か結婚式場に出られたらしく、それについては社会党の委員も何か了解したようなことも言っておられるので、今なんぼ言っても大臣は来られぬようです。今盛んに結婚式場でぶっておられるようです。委員会ではあまりしゃべらなくても、結婚式場ではずいぶんしゃべられるらしく、ぶっておるようですから、私の大臣に対する質問は、やむを得ず保留をいたしまして、次会に譲らざるを得ないことを残念と思います。  なお先ほど板川委員が問題にいたしました百貨店と独禁法との関係、この点についてもなお私自体としてもお伺いしたい点がございます。ことにこのごろいわゆる求人難といいますか、人が少ないという面から百貨店が問屋から人を出さしめる、いわゆる手伝い店員、これが多くなっている。しかも強制的に出さしめているというようなことは、百貨店法並びに独占禁止及び公正取引確保の法律の精神からいって、不公正な取引だというようなことも言えるのではないか、こういう点もありますが、もうすでに一時半にもなっているし、二時から本会議の予定だそうですから、きょうは質問を保留して、委員長代理からも委員長からも通産大臣に一言強く言うてもらいたいと同時に、次に機会を与えてもらうことを要望いたしまして、私はきょうはこれで終わりたいと思います。
  105. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 了承いたしました。  本日はこの程度にとどめ、次回は来たる十一日火曜日午前十時より理事会、同十五分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時三十二分散会